『特別展 昆虫』に行ってきた

 

先日、大阪市自然史博物館で開催されている『特別展 昆虫』に行ってきた。

   

 
網とカブトムシ(アクタエオンゾウカブト)を持って嬉しそうにしてるのは、俳優で虫大好きの香川さんだ。
これも彼の昆活の一環なのだろう。虫はマイナーだから、啓蒙活動ガンガンやってね。
よく彼を批判する虫屋がいるけど、賛成できない。たしかに虫屋としては三流かもしんないけど、香川さんの熱い気持ちはよく解る。言い方は悪いけど、こういう広告塔をやってくれる人には素直に感謝すべきだと思う。我ら虫屋が少しでも市民権を得る為には、こういった有名人がいた方がいい。大局が見えてない細かい事をゴチャゴチャ言うのは、虫屋の最も悪い性向だ。

 

 
この企画は去年、東京で大盛況だったから気になっていたし(44万人以上の動員があったらしい)、今月末には終わってしまうので、博物館の図書室で調べものをするついでに行ってみた。

入口はこんな感じ。

 

 
スタッフに確認してみたら、中で写真を撮るのは基本的にはOKみたい。ナイスだね。何でもかんでも禁止にしたがる最近の風潮からすれば素晴らしいよ。
但し、映像はダメとのこと。たぶん著作権の問題があるからだろう。そこは致し方なかろう。

 

 
入っていきなり、ミツバチの巨大模型があった。
そこそこリアルで、中々良くできてると思う。
こういうのは結構好き。もし本当にこれくらいの大きさのミツバチがいたら、どう戦ってやろうかとマジで考えるのは楽しい。ワシとがっぷり四つで戦っている様を想像したら、何だかo(^o^)oワクワクしてきたよ。
あっ、こんな事、思う人はあんましいないか…❓
脳ミソの基本構造がお子チャマ仕様なのかもしんない。

 

 
日本の国蝶であり、世界最大級のタテハチョウとも言われるオオムラサキだ。
ワタクシの守護蝶でもあるので、個人的には親しみを込めて「ムラさん」と呼んでいる。
でも、この模型はミツバチと比べてクオリティーが低い。何かオモチャ的で多々不満がある。
オモチャとは全然戦う気は起きんわい(=`ェ´=)。回し蹴りで一発粉砕じゃ❗

まず羽の質感が全然表せてない。こんなベタで薄い紫色、ちっとも美しくないわい。ニセモンだ。ちょっと虫を知ってる子供が見ても同感じゃろう。
本来は構造色なんだから、角度によって色が変わるくらいやれよなー。今の技術なら、そう難しくはなくなくねぇか❓

目も死んでる。実物はもっと透明感のある黄色だ。せめてガラス玉とかにしろよなー(・ε・` )

胴体のふさふさの毛も無い。ツルッツルッだわさ。
こんなんだったら巨大化する意味あんのかよ。細かなところをリアルに再現してこそ、「わっ、こうなってんだね。」と解り、驚きと発見があるのだ。そこにこそ、巨大化する意味があるんじゃないのかね。子供たちがそれを自由に触れるようにすれば、なお面白いじゃないか。

 

 
ミンミンゼミじゃ。
緑色の質感が本物と比べてくすんでいるが、コヤツなら充分戦える。
後ろから羽交い締めにして、(ノ-_-)ノ~┻━┻ おりゃーと後ろに倒してやったら、すかさずマシンガンキックの嵐じゃ。

 

 
言わずと知れたオオクワガタ様じゃよ。
デカイと怪獣感増すなあ。ウルトラマンの怪獣アントラーズを思い出したよ。
勿論、コヤツなら戦える。相手にとって不足なしじゃ。

先ずは正面から睨み合い、互いの出方を探りあって円を描くように動く。儀式の如き前哨戦だ。そして次の瞬間、グワシャ❗互いの両手をガッツリ組み合っての力競べじゃ。
(#`皿´)ヌオーッ、ガガカ…、ギギギ…。均衡のなかで、彼奴の最大の武器である屈強な大顎がカチカチ鳴りながらワイの頭部へとググッと迫ってくる。
(|| ゜Д゜)マズイ、ピンチじゃけぇ。だが気持ちは負けてない。どころかコチラも頭を近づけ、おもいきしバチコーン💥、パチキ(頭突き)をカマしてやる。
ダアリャーッ、両者飛び退くように離れる。
( ̄~ ̄;)うぬ~、力勝負では分が悪い。ここはスピード勝負じゃ❗蝶のように舞い、蜂のように刺ーすっ❗軽(かろ)やかなステップで、左右に細かに動きながら、右から左からと千手観音の如くパンチとチョップを、アチョー、アタタタタアーと連続で繰り出す。御陀仏せえや。
(@_@;)痛ってぇ━━━❗❗
わちゃΣ(゜Д゜)、我が手を見ると血だらけじゃないか。お前、硬いよー。反則なくらい硬いよー(T-T)。
クソッ、卑怯な程の防護プロテクターじゃねえか。
ならばコチラも反則の火焔放射器じゃ❗
🔥ゴオーッ、Ψ( ̄∇ ̄)Ψほれほれ~、業火に焼かれるがよいわ。そのまま黒焦げになってしまえ、(*≧∀≦*)ケケケケケケケ…。
しかし、オオクワガタの奴、びくともしない。その黒い甲冑様なもの、熱にも強いのか…。手強い。

その後も、拮抗した攻防は続いた。
そのなかで見えてきた。弱点は足だ❗オオクワガタの脚は体のわりには細い。そこを攻めてバランスを崩させれば勝機はある。でもコイツ、何でオオクワガタなのに立ってるの❓ふつう立ってないっしょ。
この際、細かい事はいい。死ねばもろとも、攻撃をかいくぐって果敢に内側に入り、スライディングして足元をすくう。
ぐらり。バランスを崩して前のめりに倒れてくる。迫って来るそれを巧みに避(よ)け、グワシャーン❗倒れたところをすかさずマウント。馬乗りになって、コレでもかコレでもかと雨あられの如く死ぬほど打撃を加えてやった。
(* ̄○ ̄)ハー、ハー、ゼェー、ゼェー。タコ殴りにしてやったワイ。ざまぁー見さらせ。
奴は、やがて意識を喪い、グッタリとなった。
落ちたな。しゃあー❗、拳を天に突き上げて雄叫びを上げる。イガちゃん、\(^o^)/大勝利ぃ~。おどれら、みんな死ねや~。

何をやっとるんじゃ( ・◇・)❓
妄想が酷い。我ながら、やってる事がアホ過ぎる。フザけるにも程がある。

 

 
ツノゼミだ。
コチラはガラスケースに入った模型で巨大ではない。
しかし、倍率をからすればオオクワガタやミンミンゼミと変わらないかもしれない。それだけ実際の大きさは小さい虫だってことだ。
まあ、コヤツがたとえ更に巨大化したとしても、楽勝で勝てそうだけどね。このワケのワカラン、何に役立っているのかも不明な飾りを掴んで捩じ切ってやれば、闘争心も萎えて大人しくなるじゃろう。勝負有りじゃ。
しかし、まだ予断は許せない。コヤツの意味不明の役割の頭部の飾りから💥ブシャーと毒液が飛び散り、目潰しを喰らうやもしれぬ。
(・┰・)アカン。まだ妄想暴走列車は走り続けとるやないけー。

 

 
この写真はそうでもないけど、平日のわりには結構人が多い。スタッフの数も多い。
正直、美術館じゃないんだから、そんなにスタッフいるか❓とは思う。

 

 
あっ、最近話題の野村ホイホイの実物だ。
画期的なトラップとして、とみに評価が高い。
けど、甲虫や蜂などには良いだろうが、鱗翅類のチョウやガには使えないよなあ…。おそらく、コレだと羽がボロボロになっちまうだろう。何か鱗翅類でも使えるような改造方法はないかえ❓

 

 
コレは蝶だが、甲虫とか他にも標本はそこそこあった。
でも、東京の時よか標本の出展数は減っているらしい。規模が小さくなってるとも聞いてるのは、そのせいかな❓
あんまり詳しいことは知らないけど、東京では標本を供出した人に対して一切ギャラが支払われなかったようだ。当然香川さんにはギャラが支払われているだろう。なのに標本を貸した人間はノーギャラというのはオカシイと思った人たちが何人かいたようだ。そのせいで、大阪では標本を貸す人がだいぶと減ったと聞いている。あくまでもまた聞きの噂話だから間違ってたらゴメンナサイ。話半分程度で聞いて下さればエエかと存じます。
まあ、この業界はアマチュア精神の善意で成り立っているから、標本を無料で提供するのが慣わしではある。しかし、コレは官の大阪市自然史博物館独自のオリジナルの企画ではないようだから、民間の企業の金儲けのイヴェントだろう。主催者の欄に読売新聞社と関西テレビ放送とあるからね。つまり基本的には営利目的だ。ならば、主催者側はギャラを払って然るべきだと思う。

結構、面白かったけど、入場料は¥1400は、ちょっと高いよね。そんなにボルなら、スタッフを削ってでも、標本を提供した人にギャラを支払うのが筋だと思うな。

昨日、酔っ払ってここまで書いたところで力尽きた。
でも朝起きて酔いも醒めると、果たしてここまで勝手な憶測を書いていいものかと考え直した。
このイヴェントには一ミリたりとも全く関わっていないから、裏事情とか本当の事は全く知らないのだ。
だから、何もわかっちゃいない人間の戯れ言だと思って読み流してけれ。
何かトーンダウンのグダグダの終わり方でスンマセン。

 
                   おしまい

  
追伸
今回も青春18切符の回と同じく、当初は写真だけ並べてサラッと最後にコメントを書いて終わる筈だった。
しかし、戦うとか妄想おふざけモードになってから止まらんくなった。おまけに事情を何も知らないのに噛みついてる。ホント、悪い癖だよ。

 

あおはる1day trip その四

 
第5話『やがて淋しき、腹パンパン男』

 
午後8時15分。三ノ宮駅まで戻ってきた。
さてとー、どうすっべかあ。腹パンパンだし、このまま帰ってもいい。って云うか、むしろ帰りたい。
でも、あんなどって事ないジビエでフィナーレってのは納得できないところがある。彦根の伊吹そば、びわ鱒丼から始まって、姫路のえきそば、姫路おでん、そしてジビエと食べてきたが、何かどんどん旨いもんクオリティーが下がってきてるじゃないか。

取り敢えず大阪方面の電車に乗ろう。
あとはその時の気分で決めればいいや。

 

 
電光掲示板に目をやる。
一番上に松井山手ゆきと云うのがあるのに気づいた。
そっかあ…東西線というのもあったなあ。三ノ宮まで繋がってんだね、知らなかったよ。となると、これは普通電車だからパスだが、尼崎か大阪駅で乗り換えれば、その先の京橋、住道、四條畷というのも視野に入ってくる。時間的にも何とか行って帰ってこれるだろう。そういえば住道駅にメチャンコ美味い餃子屋があった筈だ。住道なら時間も稼げるし、餃子くらいならまだ食べれそうだ。
取り敢えずは22分の新快速に乗ろう。乗ってからまた考えればいい。

退屈なので、他にも候補を探してみる。
例えば尼崎で乗り換えて塚本という手もある。そういえば魚が抜群に美味い『春団治』にも長いこと行ってない。行きてぇなあ…。
でもこのお腹いっぱいの状態で春団治に行くのは何とも勿体ない。誰が言ったか忘れたが『空腹こそ、最高の御馳走なり(註1)。』という言葉が、今更ながらに身に染みて理解てきるよ。腹が減っていなくては、どんな美味なるものでもその旨さは半減する。
ならばラーメンってのはどうだ? 最近この街はラーメン激戦区として、つとに有名になってきてると聞いたことがある。でもなあ…、もっと酒飲みてぇんだよ。
ラーメンと酒とは合わないというのが持論だ。
ハイ、ラーメン消えた。塚本、スルー。

大阪駅で環状線に乗り換えて一駅の、福島で降りるという手もある。
福島なら銭湯が駅の近くにあるから、一旦風呂に入って腹を減らすという作戦も可能だ。それに風呂から上がったあとのビールは旨い❗ワシの食欲も酒欲も一挙にV字回復じゃよ\(^o^)/
そのあとに『あやむ屋』で、あの最高の焼鳥が食えたなら、納得至極のフィナーレになる。あやむ屋は予約の取れない店として有名だけど、一人くらいなら入れるかも。いや、大体において運がいい男なのだ。どうせ入れるに決まってるやろ。そう考えたら、段々ぜってー大丈夫って気分になってきた。
まあ、たとえ入れんかったとしても、福島なら旨い店が他にも沢山あるから何とでもなる。

8時51分。大阪駅に着いた。

 

 
そこで、新たなる考えが頭をよぎった。
福島が有りなら、大阪駅を挟んだ一駅向こうの天満というのも有りだ。天満も旨い店がごちゃまんとある。銭湯はやや遠いが、あそこの銭湯はお気に入りの一つだ。天満でも悪かない。
そこで、ハタと思い出した。そういえば天満にはメッチャ行きたい店があるぞ。岡村隆史・なるみの『過ぎるTV』で、ゲストの古田新太が『こんなもん、旨いに決まっとるやないけー。酒、なんぼでも飲めるわ。』と絶賛していたポテサラがあるのだ。
塩雲丹とインカのめざめのポテサラだったっけ…。それと鮭とば酒粕クリームチーズ漬を頼むのが通らしい。それぞれが単一で優れた酒の肴だが、掟破りにもそのポテサラに鮭とばを乗っけるらしいのだ。それがメチャンコ美味らしい。それに、日本酒が反則違反なくらい抜群に合うらしい。
何と云う蠱惑的な酒の肴だ。その魅力には到底抗い難い。これで住道の餃子も福島の絶品焼鳥もフッ飛んだ。
Let it be. なすがままよ。おーしι(`ロ´)ノ、天満へ行こう

乗り換えが上手くいって、8時56分には天満駅に着いた。

 

 
🎵テッテレッテテ~、イガちゃんグルメのーと~。
ここで再びスマホにメモってあるグルメ情報の登場である。
それで店の名前は簡単にわかった。店名は『お酒がススムごはんや1975』。まさに酒を飲む為にアテがあるというネーミングの店だ。期待値が更に跳ね上がる。
でも、ここも三ノ宮のジビエの店と同じく詳しい場所を知らない。
となると、スマホ📲の機内モードを解除してネット検索するしかない。
Σ( ̄ロ ̄lll)ガア━━ン。しかしながら、その時バロムメーターの友情メーターはゼロを指していた❗
何でバロムワンが変身するための友情メーターが出てくるねん❗ どうやら脳ミソがだいぶとワイてきているらしい。移動の連続と腹パンパンなのと、長丁場に疲れているのだ。バロムメーターの事は忘れてくれ。
えー、もとい。スマホの電池は30%を切って25%になっていた。そんな重要な事ちゃんと気づいとけよなー、俺。だから疲れてんだよ、俺。言い訳すんなよ、俺。だって事実だろ、俺。頭の中のイガAとイガBがケンカを始めた。重症だ。やっぱ、アタマわいとるわい。
とにかく機内モードを解除したら、あっという間に電池は無くなるだろう。となれば、相当テキパキとネット検索しなくては店の場所が特定できない。このミッションに失敗すれば、新たなる方針を模索せねばなるまい。

機内モードを解除した。迷惑メールの受信を知らせる音が数珠繋ぎに鳴っている。と同時に見る見るうちに電池容量がどんどん減ってゆく。(@_@;)💦焦る。だが、中々地図が出てこない。ヤキモキする。やっと大まかな地図が出た。
えっΣ(-∀-;)❗、天満じゃなくて天満宮なのー❓と思ったところで、画面がブラックアウト。スマホ様は深い眠りに入られた。
というワケで、ここから先は一切画像が無いので了承されたし。

およその場所は解ったが、細かい場所まではワカラナイ。ギリ、セーフとも言えるし、ギリ、アウトとも言える状況だ。
それにしても、天満ではなくて大阪天満宮と云うのは大きな誤算だった。同じ天満とはつくが天満宮とは結構離れている。天神橋筋商店街を南に下り、地下鉄南森町駅を越えたまだ向こうまで歩かなくてはならないのだ。
なんだよ、天満宮だったら、大阪駅で東西線に乗り換えて大阪天満宮駅で降りた方が余程近いじゃないか。
またしても誤算というか、己の判断ミスである。良くない流れだ。嫌な予感がした。
今更、退けない。それを振り払って、歩き始める。

商店街を歩きながら、色んな事を思い出す。
この辺は歴代の彼女たちと数多く訪れているから、思い出がいっぱいあるのだ。多くは懐かしい思い出だが、苦い思い出もある。
中でも、当時の彼女が発狂して赤信号の道路に突っ込んで車と接触した事件は深く記憶に刻み込まれている。何故そういう行動に走ったのかは本当のところはワカラナイ。彼女が話したがらなかったので、今も謎のままだ。しかし、たぶんベロベロに酔っ払っていた自分が原因だったと思われる。
運転手に謝り倒して、その場を上手く納めたものの、彼女は正気には戻らなかった。わめき散らして再び道路に飛び込もうとするので、必死に止めた。
何があっても目の前で死なせることはできない。だが、如何に説得するも事態はいっこうに変わらず、最終手段として思いきり彼女を引っぱたいた。それで正気に戻るだろうと思ったのだ。後にも先にも妹以外で女性にビンタしたのはこの時だけだ。基本的に、女性に手を上げるのは最低の行為だと思っているからだ。
しかし、結果は更に火に油を注ぐ形になった。
暴れて再び道路に飛び込もうとする彼女を何とか捕まえ、路側帯で倒して上から抱きついて動きを止めた。そして、その状態で全身全霊で宥めた。すぐ横をブンブン車が通過していく。狭い道だから、そのうち二人とも轢かれるかもしれないという危険を感じた。しかし、事態は変わらない。打開策は無く、正直どうしていいのかわからなかった。
その異様な光景を見たドライバーの誰かが通報したのだろう。暫くして、赤色灯をピカピカ光らせたパトカーがやって来た。
警察沙汰になったが、実をいうと心の中ではホッとしていた。どうあれ、これで事態は何らかの方向にはいくだろう。
降りてきたポリさん二人に、必死になって事情を説明したっけ。酔いはとっくに醒めていたから、論理的に説明できたと思う。それでもブタ箱入りは覚悟していた。手を上げたのは事実だからだ。
だが、意外とアッサリ納得してくれた。
『じゃあ、気をつけて帰ってください。』とか何とか言って、パトカーに乗って走り去った。
そこまでは、よく憶えている。でも、そこから後のことは、あまり憶えていない。
おそらくタクシーを止め、彼女をそれに無理矢理乗せて帰らせたのだろう。その後、自分がどうやって帰ったのかは、まるで思い出せない。後悔と自責の念が堂々巡りのように繰り返される。

南森町駅の横を抜け、国道1号線を越える。
そこで暗い後悔のリフレインを断ち切った。
そろそろ目的の店のエリア内だ。全ては終わった話だ。今更、時間は逆回しできない。

チラッと見た地図の記憶を頼りに探す。
でも、道は碁盤の目ではなく、入りくんだ所に店はあった筈だ。それでも方向感覚抜群のオイラだ。その時はまだ、どうせ何とかなるだろうと思っていた。
しかし、何かの呪いに掛けられたかのように何故か見つからない。ぐるぐるとあっちこっち歩き回るうちに、マイナビセンサーは破壊され、やがて頭の中の地図が消えた。九月に入ったとはいえ、まだまだ夜は蒸し暑い。気がつけば、汗だくになっていた。何だか惨めだ。

たまたま何かの商店の中の時計が目に入った。
時刻は10時を過ぎていた。ここいらが潮時だ。諦めて天満駅へと踵を返した。
足取りは重い。魅力的な店が幾つか現れるが、入るのを堪えた。経験上、こういう判断ミス続きの時に下手に動けばかえって傷口を広げてしまうケースは多い。ここは確実を期そうと思った。天満駅そばにある居酒屋『肴や』に行けば鉄板だ。間違いなく旨いもんにありつける筈だ。
一瞬、そこにはその事件の彼女とも行ったことがあることを思い出すが、もういいや。全ては過去の事だ。それにその時の思い出には、少なくとも悪いものはコレっぽっちもない。

しかし、店は閉まっていた…。
まだ10時半前だから、たぶん定休日なのだろう。
力のない笑いが込み上げてきた。そうだ、嘲うがいいさ。ドツボな俺をみんな嘲えぱいい。
これで、気持ちが切れた。もう帰れってことなのだろう。

京橋・天王寺回りの環状線に乗った。
このままいけば、あとは新今宮で大和路線に乗り換えて難波まで帰るだけだ。
途中で意地がブリ返すかと思ったが、もう何処にも行く気にはなれなかった。それに、まだ腹がパンパンなのである。

電車は夜の帳を縫うようにして、ゆっくりと走っている。褪せたような光に照らされた車内は人も疎らで、誰もがおし黙っている。どこか淋しい風景だ。青春18切符の1day trip の旅もそろそろ終焉に近づいていると自覚する。なぜか再び彼女のことを思い出した。
それを押しやり、車窓から外に目をやる。
小さく、呟く。

「いつまでも、あおはるやってんじゃねえよ。」

やがて、電車は光溢れる新今宮駅のフォームに入っていった。

 
                    おしまい

 
追伸
そもそもこの一連の文章を書く目的は、溜まった画像を消すことにあった。だから当初はソリッドな文章で短く纏めるつもりだった。しかし、書いてるうちにどんどん路線が変わってきて、気がつけば恋愛モノローグだらけのオナニー文章になってしまった。
こんな文章に最後までお付き合いして戴いた心の広い御仁には、申し訳ない。ただ、ただ感謝である。

 
(註1)空腹こそ、最高のご馳走なり

古くはローマ帝国時代の哲学者のキケロという人が言ったらしいが、ギリシャの哲学者ソクラテスも「食物の最上の調味料は飢えであり、飲み物のそれは渇である」なんて言葉もある。他にも北大路魯山人であったり、「ドン・キホーテ」の作者、セルバンテスであったり、英国のことわざであったりと、諸説ある。
因みに英語の諺は、“Hunger is the best sauce.”(空腹は最高のソースである。)
和訳は「空腹は最高の調味料である」等、類似のもの多数あり。

 

月刊むし10月号が我が家にやって来た、ヤア❗ヤア❗ヤア❗

  
ポストに郵便物が届いていた。
見ると『月刊むし』だった。一瞬、購読してないのに何で❓と思った。けど、直ぐに解った。10月号に原稿を書いたんだわさ。
やったぜ、タダで貰えるとは思わなかったから嬉ぴーよ~ん\(^o^)/

💓ドキドキしながら、封筒から出す。

 

 
表紙は、かなりカッコイイd=(^o^)=b
幻想的で、お洒落だ。センスいい。
でも、惜しむらくはカトカラではなくて、ヒメヤママユとウチスズメだ。日本で32番目のニューのカトカラの特集号なのになあ…。
(・o・)あっ❗、巻頭の記事も岸田先生と石塚さんの記載文ではない。ヒメアトスカシバとか云う聞いたこともない蛾の幼生期についての記事だ。何故に❓綴じ方の関係で、そうせざるおえなかったのかな❓
まあいい。今の自分にとって、そんなのは些末な事だ。この号が世に出たことの喜びの前では、どって事ない。

でも、嬉しいんだけど、何だか怖いような恥ずかしいような変な気持ちで、まだ中を開いてない。
書いた内容は結構忘れているので、逆にとんでもないおバカ文章炸裂なのではないかと不安になってきたのである。
段々思い出してきたよ。かなりフザけたことを随所に書いた記憶がある。
取り敢えず、3日ほど寝かしてから読も~っと。

誌の発売日は25日の筈だけど、岸田せんせも石塚さんもFacebookに記事を既にあげておられるので、もう解禁という事でもいいのだろう。書いちゃえ。

 
【マホロバキシタバ Catocala naganoi mahoroba】

 
新種ではなく、新亜種になった時はガックリきたけど、周りが新亜種でもスゴい事だとおっしゃるので、そうなのぉー( ̄∇ ̄*)ゞ、じゃ、まっいっかと今は納得している。誰も興味のない矮小昆虫ではないし、あの毒舌家の秋田さんだって悔しがっているんだから、それだけでもう充分なのだ(^-^)v

上が♂で、下が♀である。
特徴は下翅の黒い帯が下部で繋がらない事である。
他の黄色い系統のカトカラはここが繋がるか、もしくは近接しているので、見分けるのは比較的簡単。
因みに、この♂は通常の型とは違い、上翅が蒼っぽい個体。普通は淡い緑色か茶色です。

和名は概ね好評のようで、イガラシキシタバなんてダサい名前をつけなくてよかったよ(笑)

一応、これでホッとした。
三ヶ月くらい箝口令が敷かれてたしね。

この場を借りて、もう一回お礼を言っておこう。関係各位の皆様方、色々と御尽力有難う御座いました。

 
                   おしまい

 
追伸
えー、つーワケで、『2018′ カトカラ元年』の連載を再開します。次の回の内容が、モロこのマホロバの発見と被ってて書けなかったのだ。
けど、まだ一行たりとも書いてないっす。下書きくらい書いとけゃよかったのにと思うが、その日暮らしのキリギリスにはそんな事できるワケがないのだ。

追伸の追伸
マホロバキシタバ関連の記事は、その後に当ブログにて三編書きました。一つは『喋くりまくりイガ十郎』と云うタイトルで、請われて名古屋でマホロバについて講演してきた話です。あと2つは、2019’カトカラ2年生のシリーズ連載、マホロバキシタバ発見記の『真秀ろばの夏』の前・後編です。現時点では、マホロバキシタバについて最も詳しく書かれた文章です。自分で言っちゃったけど、そうなんだから仕方がないのさ(笑)

 

2018′ カトカラ元年 再開の御報せ

  
月刊むしの10月号(9月25日発売)の発行がほぼ確実なったので、無事ニューのカトカラも世に出そう。
関係者の皆様、御尽力有難う御座いました。
というワケで、10月頭には連載再開の予定です。

 

 
とはいえ、まだ一行も書いてないけどさ( ̄∇ ̄*)ゞ

 
追伸
因みに並べたカトカラの種類数と順番は、テキトーです。

 

あおはる1day trip その参

 
第4話『もう食べれましぇーん(ToT)』

 
午後6時半くらいに姫路駅に着いた。
ホームに上がると電車が既に来ており、発車ベルが鳴っていた。で、反射的に乗ってしまった。と同時にドアが閉まった。
でも、閉まったで、しまった。
アホか、サイテーの駄洒落をカマしてる場合ではない。直ぐに気づく。( ̄▽ ̄;)あちゃー、新快速に乗るつもりが普通電車に乗ってまっただよー。新快速は10分後に来ると知っていたのになあ…。疲れて判断能力が鈍ってきてるのかもしれん。
あっ、ちなみに行き先は神戸・大阪方面ね。いくら導線ムチャクチャのドアホ男でも、この時間帯で更に西へは行かんよ。期待してた人、ゴメーン🙏。青春18切符だとはいえ、そんな無謀な事はでけまへん。

あちゃーとは思ったが、どうせ加古川駅で後から来る新快速と接続できるだろうと思い直した。何とかなるさ。
だが、じゃんじゃんに駅に停まる。新快速だと加古川から姫路まであっという間だったけど、間にはこんなにも駅があったんだね。やはり新快速恐るべしである。キミは特急料金を取らない特急だ。偉い❗
けど、同時にこんなだと新快速に余裕で追い抜かれるのではないかと不安になってきた。もしダメだったら加古川で降りてもいいや。18切符は乗り降り自由なんだもんね。行き当たりばったり、上等だぜ。糸の切れた凧みたいに、何処へだって行ってやろうじゃないか。

 

 
6時50分、加古川駅着。
すかさず電光掲示板を見る。

 

 
どうやらまだ新快速は来ていないようだ。
思って間もなく新快速がホームに滑りこんできた。セーフ。これで時間的ロスをせずに済んだ。
さて、次は何処で降りて飯を食おうか❓

明石駅はスルーした。
おでんを食ってからまだそう時間が経っていないのだ。寿司も明石焼きも食えましぇーん(ToT)。だいち、こんな腹いっぱいで寿司食っても旨くあんめぇ。お金が勿体ないだけだ。

次の停車駅は神戸。そして、三ノ宮、芦屋、尼崎、大阪駅と続く。
神戸駅は意外と何もない。降りるなら、そこで鈍行に乗り換えて次の元町駅で降りるよ。元町なら中華街がある。中華は重そうだし、今は食べたいとは思わないけど、中華街には『老祥記』がある。そこの豚まんが、まっこと美味い。しかも小振りだから1個くらいなら余裕で食べれそうだ。そういえば長いこと行ってないし、良い考えかもしんない。
でも待てよ。老祥記って早く店閉まるんじゃなかったっけ❓たぶん夕方までだよね。こりゃ、閉まってるなあ…。

となると、香港麺の『天記』はどうだろうか。
ここの海老ワンタン麺がムチャクチャ美味いのである。たしか、わざわざ香港から本場の麺を取り寄せてるんだよな。細麺でつるっつるっなのよね。でも、もっと美味いのが海老ワンタン。ぷりっぷりっで、これがもう体をよじらんばかりの絶品なのだ。
そういえば当時の彼女が、その海老ワンタンを下にボトッと落っことしたんだよね。あの時の一瞬の沈黙と、その後に漂ったえも言われぬ異様な雰囲気は今でも忘れられない。彼女の醸し出す痛恨ともいえる残念感には、ただならぬものがあったのだ。
可愛そうだから、普段なら『あっ、俺の1個やるわ。』と言いながら丼に移してやるのに、その時は『自己責任やな。』と冷たく言い放った事もよく憶えている。海老ワンタンがあまりに美味だったので、どうしても食べたかったのだ。その海老ワンタンは、別にそれで嫌われてもいいやと思うくらいに美味かったのである。
しかし、店が何年か前に無くなったと誰かに聞かされたことを突然思い出した。ならば、行きたくとも行きようがない。

となると、三ノ宮かあ…。
でも、全然まだ腹は減ってない。特に贔屓にしている店もないしなあ…。
次の芦屋はどうだ❓ けど芦屋で食べたいものなんてこれっぽっちも浮かばない。だいちお金持ちの街 芦屋だ。ここにきて高級料理は無いでしょう。それに三ノ宮から芦屋もすぐた。そんな短時間に腹が減るワケないじゃないか。

お次の尼崎はナゼか殆んど行ったことがないから興味はある。
尼崎城でフィナーレというのも有りかもしれん。けんど尼崎城は最近出来たもので、個人が建てて市に寄贈したものだ。果たして城好きがそんなんでお茶を濁していいものか…。
それに全然尼崎の食いもん屋の情報を持ってない。だったら飛び込みで旨い店を探そうか。いや、普段ならそれでもいいだろう。むしろそういう行き当たりばったりの方が好きだ。けどなあ…、今は腹いっぱいなのである。食べるなら確実に美味い店であるか、前から行ってみたかったとかでないと、食指が全く動かないのである。

大阪駅。
人だらけだし、いつでも行ける。そこで食事をする意味が全く見い出だせない。

ならば、いっそ京都まで行ってやるか。再び大阪を越えて東を目指すなんて素晴らしくバカだよなあ。何なら酔狂も酔狂で彦根まで戻ってやるか。一瞬、考えたが、そこまでいくと酔狂を通り越した本当のバカだ。だいち、そんな事しても誰も褒めてはくれない。もし一人ではなくて、誰か相方がいたなら話は別だけどね。バカバカしい事をやるのは面白い。但し、それも共有できる誰かが居ての話だ。

グダグダ考えてる時に、フッと思い出した。
三ノ宮に前から行きたかったリーズナブルなジビエ専門の店があったよな。そこはどうだ❓まだ食ったことがない熊とか穴熊の肉なら、好奇心で食欲も湧いてくるかもしれない。
ι(`ロ´)ノえ~い、腹は減ってないけど三ノ宮で降りてしまえー。

午後7時21分。三ノ宮駅で降りた。

 

 
駅の北側に出る。
たしかジビエの店はこっち側だったと記憶しているからだ。

 

 
三ノ宮に来るのは久し振りだ。神戸は好きだが、京都と比べて来る機会は少ない。女という生き物は、神戸よりも京都に行きたがるのだ。

店の名前は何だっけか❓ 思い出せない。
ここはドラえもんよろしく、秘策を出すっぺよ。
🎵たらたらったらぁ~、イガちゃんぐるめノ━━ト❗
🎵チヤッチヤッチヤッチヤッチャアー🎺
ここでイガちゃんぐるめノートについて説明しよう。イガちゃんぐるめノートとは、テレビ、雑誌、口コミ等で得たイガちゃんが行ってみたいと思った店を携帯にメモった秘密のノートの事である。しかし、珠に会う昔の彼女などには役に立たないゴミノートと罵られいるのだー(ここまでのくだり、次回予告編みたく口調は早口ね)。

イガちゃんぐるめノートを見たら、店の名前はすぐわかった。『ジビエスタンド inome』。らしき候補は他に無かったから、ここに間違いないだろう。
だが、問題は場所である。詳しい場所はわからないゆえ調べるしかない。頼みの観光案内所は既に閉まっているから、そうなるとネットで検索するしかない。でも機内モードを解除すると、一挙に電池が無くなる可能性がある。つまり迅速に場所を特定しなければならない。
機内モードを解除する。そして、大体の場所を素早く脳にブチ込んで再び機内モードにする。それでも電池は70%台から40%台に落ちた。大量の迷惑メールを受信したせいだ。迷惑メールめ~、クソ忌々しいわい。

店は駅からかなり近かった。地下にあるのは誤算だったが、幸い迷うことなくピンポイントで見つけることができた。

 

 
店の外観はこんな感じ。

 

 
中はこんな感じだ。
店名にスタンドとあるように、立ち呑み形式だ。
奥の壁に黒板があり、そこに本日のメニューが書かれている。丹波篠山産猪のハモンセラーノ、ジビエのリエットとパン、猪のソーセージ スモーク風味、猪のタン塩焼き、鹿のタリアータ(パルメザン添え)、ジビエのパスタ ラグーソース等々、中々に魅力的な品々が並んでおり、テンションが少し上がる。
 
取り敢えずビールを飲もう。

 

 
ビールを飲みながら、何をチョイスするか吟味する。
あんま食えないだろうから、オーダーは慎重を期したいところだ。

 

 
丹波篠山産猪のハモンセラーノ(¥580)。

こりゃビールじゃなくて、赤ワインだよな。
ビールをグッと飲み干す。

  

 
赤のロマーニャをグラスでもらう。
ここで見栄はって高いワインをたのむこともないだろう。

イノシシの生ハムは食ったことがないので、ちょっとお腹が空いてきたような気がしてきた。
イノシシの肉は豚肉よりもクセはあるが、野性味があって美味い。期待感を持って食べてみる。

しかし、味は猪の生ハムだけに野性的で濃いのかな?と思いきや、全然そんな事はない。旨みもコクも足りない。野性味もあまり感じられない。何かスカスカの味だ。

これじゃ、終われない。こんなフィナーレでは納得いかない。もう一品たのもう。

 

 
百日鶏の皮ポン酢(¥180)。
さっきの店で姫路名物ひねぽんを頼まなかった影響だよね。百日鶏(註1)というんだから、飼育期間が長いって事だよね。思えば普通のブロイラーの飼育期間は約40~60日間くらいだから、たしかに長い。
でも食ってみると、思っていたほど固くはない。皮だからか❓あっ、そっかあ、百日鶏は飼育期間は長いが、おばあちゃんのひね鶏とは違うもんな。
ひね鶏の飼育日数は一般的なブロイラーの9倍と聞いたことがある。だとすれば、360日から540日ほどだ。全然飼育期間が違うわ。
味はこれまた期待外れで、どって事ない。
クソー、これでは気持ちよくフィナーレを迎えられないじゃないか。ι(`ロ´)ノえーい、もう一品たのんだれー。

 

 
子ウサギの唐揚げ(¥580)。

ウサギを食うのは超久し振りだ。
東京でまだ役者をやっていた時代、先輩とよく高円寺だっけ中野だっけ?どっちかのビストロによく行ってた。そこはわりかしジビエのメニューもあってウサギもよく食べた。ウサギの肉は鶏肉っぽくて、あまりクセがないから食べやすいのだ。

出てきた料理は思っていたのと違うものだった。
もっとシンプルな普通の唐揚げを想像していたのに、何か洒落たソースが掛かっている。おそらくバルサミコソース辺りだろう。こういうカッコつけたのって全然望んでないんだよなあ…。味を誤魔化しているとしか思えん。

食べてみる。
やっぱバルサミコだ。甘酸っぱい。噛むと最初は鶏肉だが、最後にケダモノ臭が鼻から抜ける。サイテーだ。バルサミコソースを掛けたくなるのも頷けるわ。でも、臭みが誤魔化せてないから意味ないけどね。

(´д`|||)ひょげ~。連続惨敗にガックリだ。と同時に急に激しい満腹感が甦ってきた。腹、パンパンじゃよ。
もう、これ以上食べれましぇーん(ToT)

 
                   つづく

 
追伸
次回、最終回。

 
(註1)百日鶏
後に調べてみたら、「播州百日鶏」というのが正式名らしい。えっ、姫路でつくってんの?と思ったが、産地は兵庫県多可町加美地区らしい。飼育期間は思ってたとおり約百日間だった。
肉質は繊維が細やかで口当たりがよく、肉の締まりがあって歯ごたえも十分。甘みもあるという。機会があれば、今度は皮じゃなくて肉そのものを食ってやろう。

 

あおはる1day trip その弐(後編)

 

『お城とおでんとお菊さん』後編

 
晩飯に何を食うかは、彦根から姫路へと向かう電車の中で既に決めていた。
姫路といえば、今や「姫路おでん」である。それを食う為もあって、彦根からここまで青春18切符で大返してやって来たのだ。
姫路おでんは、以前は関西でもあまり知られていないローカルフードだった。しかし、数年前にTVで紹介されてから脚光を浴び、今やメジャーな食いもんにのし上がってきている。
でも実を言うと、姫路おでんって食ったことないんだよねー。12、3年前に当時のオネーチャンと来た時はまだ姫路おでんなんてもんは全然有名じゃなかったんである。あの時って、いったい何食ったんだろ❓
懸命に考えたみたけど、全然思い出せないや。夏場だったから、おでんなんて絶対食ってないことは確かだ。夏場におでんなんぞ食いたいとホザいたら、彼女にシバかれとるわ。シバかれとったら、いくら健忘症のニワトリおつむのオイラでも覚えているだろう。

帰り道は一本隣の小溝筋の商店街を通った。
TVで見た日本酒の酒造会社が経営している老舗おでん屋というのを探す。しかし、困ったことに店の名前を覚えていない。それでも何とかなるだろうと思ったのだが、どうもそれらしき店が見つからない。仕方がないので、もう1回観光案内所へ行く。そこで訊くのが一番の早道じゃろう。

行くと、受付の若い女性にパンフレットを渡された。

 

 
おでん屋のガイドマップだ。
こんなもん、あったのね。

でも開いてみたら、思ってた以上におでん屋だらけだ。

 

 
(# ̄З ̄)ちっ、裏にまである。

 

 
こりゃ、ワカランわと思って、その若い女性に訊いてみた。

『あのう…、この中でお姉さんのお薦めの店はどこですか❓もしくは一番有名な店はどこです❓あっ、一番老舗の店でもいいです。』
だが、何だか反応が鈍い。
ならばと間髪入れずに『酒造会社がやってる昔からあるおでん屋さんって、どれですかね❓』と訊いてみた。
そこで、漸くその女性が口を開いた。
『そういうことは、一切お答えできません(-_-)』
冷たい声でピシャリと言われた。
(;゜0゜)唖然とする。
言ってることは理解できる。観光案内所の人間が、どこか特定の店に肩入れして紹介するのは不公平だからと云う事たろう。誠にもって正しい意見ではある。
それに人にはそれぞれ好みというものがある。お薦めした店が万人に合うワケではないだろう。あとで、「不味かったやんけ、ボケー(#`皿´)」とも言われかねないのである。
でもさあ、他の場所の観光案内所では結構親身になって色々教えてくれたぞ。
例えば長野県上田市の観光案内所では、旨いそば屋を教えてくれませんか❓と尋ねたら、特にここが美味しい、お薦めだとは言わなかったけれど、ここが昔から有名な老舗店ですとか、ここがいつも行列ができてますとか、ここが有名観光地に近くて便利ですとか、ここが一番コスパがいいですとかとは言ってくれた。つまり特定のオススメは決して言わずに、ちゃんと広く情報は流してくれたのだった。あとは観光客がそこから好きなところを選べばいいのである。これならクレームが出ることもないだろう。賢いですな。

ワタクシの質問一つめと二つめの、お薦めの店はどこですか❓と一番有名な店はどこですか❓は、その若い女性の答えでもいいだろう。なぜなら、多分に個人的意見が入る余地があり、また答えは一つと限定できないからだ。
しかし、一番老舗の店はどこですか❓という質問は、その若い女性当人がちゃんと勉強していれば答えられた筈だ。貴方の好みを訊いているワケではないからだ。単に事実を訊いているだけだ。お薦めを訊いているワケではないのである。二度言うが、それならば、答えられた筈だ。
次の、酒造会社がやってる昔からあるおでん屋さんってのも、彼女の好みやお薦めを訊いているワケではない。もし知っていれば、事実を答えればいいだけのことだ。だが、答えられないと云うのは、どうせ勉強不足で知らないだけなのだろう。
ようは言い方である。上田市の対応がヒントにはなろう。そもそも観光案内所の仕事は接客業である。お客様に情報と云う価値あるサービスを提供してこそ、何ぼのもんなのである。そこには官も民も関係ない。たとえ市というお役所の運営だったとしてもである。
ハッキリ言う。彼女の答え方は全てのお店を公平に扱っていますという一見正当な理由の傘(笠)に甘えた、単なる怠慢行為に過ぎない。もし観光客に対して親身になって相談を聞いているならば、その紋切り型の答えはありえないだろう。
ワテは優れているから(笑)、何とでも解決策を見つけられるからいい様なものの、普通の観光客ならば困惑するだろう。己の力で探せってか❓だったら、パンフレットだけ置いとけや。アンタは、いらん。
(-“”-;)あっ、大人げなく怒ってしまったよ。
スマン、スマン。まだ若いからそれも仕方がないよね。是非この先経験を積んで、いい応対をして下さいな。キミなら、きっと出来るよ。大丈夫d=(^o^)=b

ここまで書いて、そこまで怒ることないじゃん、そんなのネットで調べればいい事じゃんか❓と疑問を持たれた方もいるだろう。おっしゃるとおーりである。
出来ることなら、ワシもそうしたかったとよ。でもスマホが古いのでバッテリーがバカになりかけてて、直ぐに電池が無くなるのだ。だから今日もずっと機内モードにしているのだが、それでも電池が無くなりかけていたのである。もし、ここで機内モードを解除してネット検索したら、迷惑メールがてんこ盛りでやって来て、あっという間に電池切れになることは明白である。そうなったら、姫路おでんの写真が撮れんのじゃよ、もしー。だから観光案内所に頼るしかなかったというワケなのさ。
何かここ書いてたら再び沸々と怒りが湧いてきたわ。

まあいい。怒ったところで問題が解決するワケではない。流そう。そんな事に拘ってても疲れるだけだ。
もうこうなったら自分で探すしかない。おでんガイドマップをガン見する。

丹念に見ていくと、それらしき記述のある店が見つかった。
店の名はどうやら『酒饌亭 灘菊 かっぱ』と云う店のようだ。言われてみれば聞いたことがあるような気もする。
紹介文にはこうあった。
「酒蔵が経営する”姫路おでん”の老舗。姫路駅前でカウンターと太鼓のイスで50年余。大串おでん。”SAKE”一合徳利瓶が名物。

【おでんダネの特徴】
旬の素材・地元の食材を一つ一つ丁寧に仕込んで、こんぶ、かつを、地酒を使った伝承の出汁で煮込みます。

ここまで書いてあるんだったら、教えてくれてもいいやんか❗やっぱあのアマぁ(#`皿´)、知らなかっただけか単に性格が悪いだけだ。地獄に落ちろや、ドブスめがっ❗❗
どーどーどー。幸い見つかったから良いではないか。そう怒る事はない。怒ると体によくないあるよ。

想像はしてたけど、やっぱ店は駅から近かった。
歩いて5分とかからなかった。

 

 
如何にも大衆的な感じがいいねぇ。
最近はお洒落な店よりもぐでんぐでんの酔っ払いのオヤジが好きそうな店に惹かれる。何やらそっちの方が落ち着くのだ。ようするに自分もオジサンになっちったと云うことなのね。

 

 
店舗の上がセクシー系の店なのに、ちょい笑う。
老舗感、大幅減やんか(^○^)

 

 
店内はこんな感じ。悪くない。
昭和33年創業というから、もう60年も続いてるって事か。ならば、それなりに期待が持てそうだ。

明るい声のオバチャンに煙草を吸う人用の壁際のカウンター席に座るよう促される。狭い店なんだから、どこだっていっしょだろうにと思うが、便宜上色々あるんだろね。酒飲むのにも面倒くさい世の中になってきたなあ。何かとコンプライアンスで、どんどんツマンナイ世の中になっていってる。まるで何かの寓話みたいだ。5年後、コンプライアンス人間は、みんな原因不明の奇病にかかって口がきけなくなるのさ。

そんな事よりも、先ずはビールである。

  

 
そういえば、今日初めてのビールだ。電車に乗る前に売店で買ったろかいと思ったが、まだおバカになるには早いと思って自重したんだったワ。コンプライアンス的にぃ~。

(≧∀≦)ぷしゅー。
あるこほるが、瞬時に全身の血管の隅々にまで運ばれてゆく。堪んないね。

落ち着いたところで、さてさて問題は何を頼むかだが、先ずは何をおいても姫路おでんである。
ここで姫路おでんとは何ぞやと申しますると、どうやら生姜醤油で食べるおでんのことを「姫路おでん」と呼ぶらしい。姫路には関東煮と呼ばれる濃い味付けのおでんと関西風の薄味のおでんの二種類が存在するが、出汁のベースには全く関係がなくて、生姜醤油で食べるかどうかが姫路おでんか否かの大きな決め手となるらしい。つまり生姜醤油で食べるおでんは全て「姫路おでん」ってワケ。おおらかだけど、ざっくりでんなあ。
姫路を中心に加古川~相生辺りの地域に限定されるもので、2006年に町おこしを考えるグループがその食べ方を「姫路おでん」と名付けたことが始まりのようだ。

ふぅ~ん(´・ω・`)
でもさあ、それって帰りにコンビニでおでん買ってさあ、家で自分で生姜醤油を作って、おでんにソレつけて食べたら「姫路おでん」ってことかあ❓
気せずも根元的な問題に触れてしまう。
そう考えると、果して姫路で今おでん食う意味あんのかえ❓という疑問が俄(にわか)に首をもたげてくる。けんど、強引にシャットアウト。こういう事に徒(いたずら)に疑問を持ってはならない。たとえそうであったとしても、先ずは本場の姫路おでんを食わなければ、姫路おでんの何たるかを己の中に規定できないじゃないか。基準無きものについては論じられないのである。だいち、それでは彦根から此所まで苦労してやって来た意味が瓦解してしまう。o(T□T)o意味ないじゃーん。
ワタシは姫路城を見る事と姫路おでんを食うことを目的に遠路はるばる此所までやって来たのだ。しかと、己にそう言い聞かす。

早速メニューを見る。あった、あった。コレだ。

 

 
TV放送での記憶だと、この店は赤おでんと白おでんってのがあって、それが名物のようだ。コヤツが多分それだね。
ふむふむ。どうやら大串セットというのお得のようだ。取り敢えず姫路おでんの定番そうな赤おでんのセット(¥540)の方をたのむ。

 

 
見た目のルックスが、まるで漫画の中の🍢おでんだ。
赤塚不二夫の漫画『おそ松くん』のチビ太がいつも手に持ってたのが、この形のおでんだね。それがやがて漫画の世界での典型的なおでんの形となっていったのである。

 
【チビ太】
(出典『越谷秘宝館』)

 
でも実際には、こんな形のおでんは見たことがない。あれはあくまでも象徴としてのおでんであって、この世には存在しないものだとばかり思っていた(註1)。それが今、現実的に目の前にある事に半分カンドーして、半分笑ってしまう。冗談かよ…。確信犯だったら、尊敬するわ。

具は上からスジ肉、玉子、厚揚げ、コンニャク、ごぼ天である。よく見ると、玉子も含めて全部小振りである。チビ太の事を考えての配慮かな。それとも赤塚先生へのオマージュ❓

カウンター周りで生姜醤油を探したが、あれっ?無い。どうやら生姜醤油は既にかかっているようである。この店では、そういうスタイルらしい。
でも自分でおでんを生姜醤油にジャバッとつけて、ヤアと食べるという、既成の概念を打ち破る勇気の瞬間が楽しみたかったなあ…。とはいえ、店にはそれぞれのスタイルというものがある。ましてや、60年もの歴史がある店だ。まあ、そこは致し方なかろう。

取り敢えず左手を腰にあて、チビ太の如くおでん串を右手に掲げ、直立不動で清く正しく食ってみる。コチラも赤塚先生へのオマージュだ。何だかバガバカしくって楽しい。

味はねぇ。よく味が具材にしゅんでる。ちょっと濃いかなと思ったが旨い。
でも破壊的な旨さではない。想像の範囲内だ。普通ちゃ、普通なのだ。因みに、生姜の味は思ったほどしなかった。

ふと、思い出した。以前も書いたことがあるような気がするけど、昔、ショットBarをやっていた頃のお客さんに「おでん」というニックネームの女の子がいた。アダ名はオラがつけた。客の名前が憶えられないニワトリ頭だからだ。とはいえ、言い訳させて戴ければ、当時はいっぱい客がいたから、そうでもしないと憶えられなかったのである。無い知恵の自分なりの苦肉の策だったのだ。
たしか彼女には「おでん」も含めて4つくらいのアダ名候補があった。でも候補といってもアッシが全部考えたもので、他の3つはそれはもう最低の酷いネーミングだったと思う。何でこんな手の込んだ事をしたのかというと、ニックネームをどうしても「おでん」にしたかったのである。
で、この4つの中から彼女に自分で選ばせた。答えは自ずと決まってくる。だって他の3つはサイテーなんだもん。
勿論、そこへ持ってゆくのに、別な布石も打っていた。
『おでんちゅーもんはなあ、万人に愛されとる庶民的な食いもんやないか。おまえの飾らないでいて、みんなに愛されそうな雰囲気にピッタリやないか。おでん、ええと思うでぇ。大丈夫。おでんそのものやなくて、ちゃんも付けたるやん。』とか何とか言いくるめるトークはそのものではない前にはしていたのだ。でも、ついぞ最後まで呼び捨てで、「ちゃん」をつけることは一度たりともなかった。酷い男である。

その「おでん」とは、一度だけ二人で飯を食いに行ったことがある。場所はお洒落系屋台の寿司屋だったと思う。
彼女は可愛いし、オッパイもデカイし、素直な性格の娘だったけど、話は全然弾まなかった。
何だかツマンナかったのである。別に彼女に魅力が無かったワケではない。単にフィーリングが合わなかったのだ。素直なだけで、個性を感じられなかったのである。そういうものは30分も話せばわかることだ。多分、少し変わった女が好きなのかもしれない。ロクでもない相手だとしても、相性が合えば惹かれあってしまうのが恋だとかいうものなのだ。

ひとしきりのモノローグが終えたところで、次は白の方を頼むことにする。
でも酒粕を使っているらしく甘い可能性がある。左党は甘いものは好まない。それにセットだと具は赤おでんと全く同じラインナップのようだ。飽き性の自分が、それに飽きないワケがない。
値段的には損だが、ならばと単品で白のスジ肉(¥250)を頼むことにした。

 

 
酒粕の良い香りがする。自分ところの酒蔵の酒粕だろうから期待は持てそうだ。当然ここは酒粕に絶対合うであろう日本酒を頼むことにした。

 

 
『本醸造なだぎく』。
意外なほどに辛口で、思ってた以上に旨い。

食ってみる。
濃厚だ。酒の味がスゴくする。甘いが、それほど気にならない。でも、そんなに幾つも食えないだろう。単品にしといて正解だ。

すかさず日本酒を飲む。合うねぇ。
あっ、閃いた。ここは一味をかけて、もっと酒との相性を良くしよう。

 

 
うん、いいね。正解だ。

店に来てから、ずっと懐かしい歌謡曲が流れている。
最初に耳に入ってきたのは町田義人の『戦士の休息』だった。🎵男はだ~れも皆 孤独な兵士~ 笑えて死ねる人生~ それさえあればい~い
懐かしい。映画『野性の証明』のテーマ曲だったよね。
次は小椋佳の『さらば青春』。あれっ❓『さらば青春の時』かな❓どっちだっけ❓とにかく、🎵僕は~ 呼び掛けはしな~い 遠く過ぎさるもの~に 僕は~ 呼び掛けはしな~い 傍らをゆくものさえ~ って方だ。
3曲目は尾崎豊の『15の夜』。これは誰でも知っているだろう。🎵盗んだバイクを…ってやつね。
4曲目はキャンディーズの『ハートのエースが出てこない』。言わずと知れた名曲だ。何かよくワカランがとても嬉しくなってきた。やっぱ、昭和の時代は良かったよ。

もう一品くらい頼もうかと思った。でもおでんはもういいや。とすれぱ、姫路名物だそうだが今まで聞いた事もない『ひねぽん』辺りを頼もうか…。ひねぽんのひねは卵を産まなくなった雌鶏(ひね鶏)の事で、ぽんはポン酢の事のようだ。
でもなあ…、ようはメスの親鳥の肉をポン酢で和えたものだろ❓味の想像はだいたいつく。無理して食べるほどのものでもないだろう。それにこれ以上食ったら、次の店で何も入らなくなるかもしれん。ここは思い切って移動することにした。
5曲目のザザンの『チャコの海岸物語』が終わったところで店を出た。さらば、昭和のノスタルジィー。

駅へと向かう。

 

 
既に陽は落ち、黄昏れ時になっていた。
路上ライブの歌声がビルに反響して谺する。
昼間の暑さが嘘のように涼しい。
風が渡ってゆく。何だか、ほっこりする。
そういえば、もう9月も10日なのだ。
秋の気配を感じた。

 
                    つづく

 
追伸
書き出すと言葉が溢れて、サクサク書けない。
理想は昔に書いた『西へ西へ、南へ南へ』の初回と最終回かな。本当はソリッドな文章を書きたいのだ。
次回、最終回。といっても予定としておこう。

 
(註1)この世には存在しないものだと思っていた
赤塚先生の串おでんのモチーフになった店があるようだ。チビ太のおでんは、公式には上からコンニャク、ガンモ、ナルトで、だしは関西風と設定されているが、この店の当時の具は「はんぺん」「揚げボール」「ナルト」だったという。
因みに、コンビニの「サークルKサンクス」が一時期「チビ太のおでん」と称して、この串に刺したおでんを販売していたようだ。
 

あおはる1day trip その弐(前編)

 

『お城とおでんとお菊さん』前編

 
2時50分前に彦根駅に着いた。
長浜・敦賀方面に行くか、それとも醒ヶ井・岐阜方面へ行くかは中に入ってから気分で決めよう。青春18切符なら、どっちへ行こうが自由だ。
あっ、でも考えてみれば、別に彦根で決めなくともいいや。そっち方面に行くならば、乗り換える米原まで行ってからでもまだ変更は可能だ。ひと駅だが都会と違って駅間は長い。それだけあれば考える時間には充分だろう。

 

 
でもこの電光掲示板を見て考えを変えた。
そうだ、姫路へ行こっ\(^o^)/
久し振りに姫路城を見るのだ。そういえば大かがりな改修工事が終えてからの姫路城をまだ見ていない。
おーし、テーマは決まった。本日は城攻めじゃあ~❗彦根城に続き天下の名城 姫路城をも攻め落とすのじゃ❗
ここで、だったら長浜城に行けばいいじゃんと訝る向きもおられよう。だが、悪いがあんなものは城とは言わん❗
なぜならば、現在の天守は30年か40年前に犬山城や伏見城をモデルとして模擬復元されたものなのだ。豊臣秀吉が最初に手にした歴史的由緒ある城ではあるが、でっかい模型には用がないのじゃ❗

それにしても、この新快速というのはスゴいな。始発は米原だろうから、そこから姫路まで乗り換え無しで一発で行けちゃうんだもんな。米原から姫路って相当離れてるぞ。しかも停まる駅はかなり少ないから、特急とかに乗ってるのと変わらん。あの長野や岐阜のクソ遅い、しかも滅多に来ない電車と比べたら、考えられんくらいに素晴らしい存在だ。長野や岐阜の人には申し訳ないけど、都会に生まれ育ったことにつくづく感謝するよ。移動においての時短を都会人の方が圧倒的に享受してるってことだ。ここで田舎と高齢者ドライバーについての話に怒濤の如く入ってゆきそうになるが、やめておこう。長くなるし、それについてはまた別で話す機会もあろう。

それにしても、今度は姫路とは大返しもいいところだ。完全に導線を無視している。しかし予定は未定であって、しばしば変更なのだ。それが旅の醍醐味ってもんだ。スケジュール有りきの旅行とは、そこが決定的に違う。旅と旅行とは似て非なるものなのだ。この話も語り始めたら長くなるので、やめておこう。電車だけに今回は脱線はあきまへん(笑)
しまった、おやじギャグがつい浮かんでしまった。止せばいいのに浮かんだら言ってしまうのがオヤジなのさ。誰にも止められやしない超特急\(^o^)/
あっ、またやっちまった。( ̄∇ ̄*)ゞ失礼しやしたー。

長野みたいにクーラーがたる~い温度ではなく、キンキンに冷えてて快適だったので、車内でいつの間にか爆睡。気がつけば大阪の高槻付近だった。

大阪駅で時間を確認したら、米原から所要時間約1時間15分だった。歩いたら、何日かかんねんである。昔の人は大変だったねー。でも道中は昔の人の方が楽しかったかもなあ…。効率化が進むことが、イコール幸せではない。

尼崎で、一瞬またしても予定を変更しそうになった。乗り換えて、宝塚で有名な玉子サンド食って、それから更に奥の丹波とか篠山まで行ったろかいと思ったのである。だが、何とか踏み堪えた。帰りのことを考えれば、早いし、電車の本数もある東海道線(山陽本線)の方が選択肢は広まる。

明石駅で又しても誘惑に駆られる。
明石で寿司食って、明石焼きでフィナーレなんてのも有りだ。城だって天守閣こそ無いが、明石城跡ってのがある。でもなあ、明石は今年の初夏に行ったし、行くにしても姫路の後だろう。

 

 
4時15分くらいに姫路駅に到着した。彦根から2時間ちょっととは恐れ入る。恐るべし新快速。

ホームを歩いてて、思い出した。

 

 
そういや姫路といえば「えきそば」である。
日本一の立ち食いそば屋と称されることもある名店だ。久し振りに食べたくなってきた。まだお腹は空いてないのに、誘(いざな)われるようにふらふらと券売機の前へ行き、食券を買い、中へと入る。

 

 
中は典型的な立ち食いそば屋である。
狭い店内はサラリーマンとおぼしきオジサンや近所のオバサンっぽい人、若い兄ちゃんでゴッタ返している。残念ながらピチピチの女子高生はいない。

セルフで水を入れ、食券を厨房内のオジサンに渡したら、何と4秒で出てきた。(゜д゜)どんだけ早いねん。驚き、半笑いになる。えきそば、恐るべし。

 

 
きつねと迷ったが、えきそばといえば天ぷらそばである。こういう場合は王道を外してはならない。経験上、変化球的なものを頼むと失敗する確率が高いと知っているのだ。

ここで、姫路名物「えきそば」を知らない人もいると思われるので、軽くレクチャーしておこう。
簡単に言うと、和風だしにかんすい入りの中華麺という、有りそうで無い禁断の組み合わせの立ち食いそばなのだ。

先ずは軽く汁をすする。
間違いない。ちょっと甘めの和風だしである。万人受けする優しい味だ。人気の秘密はその辺にもあるのだろう。
続いて麺をすする。これまた間違いない、紛れもなく中華麺だ。これがミスマッチかと思いきや、違和感をさほど感じない。全然イケてるのである。
七味を軽く振り、お次は天ぷらを少し囓じってから麺をすする。
この天ぷらがいい。豪華なものではないが、だし汁や麺にモノごっつ合うのである。食べ進めるうちに天ぷらの油が汁に溶け、味が僅かづつ変化してゆくのもいい。

旨かったっす。でも麺類って、けっこう腹に溜まる。
昼飯を食べ過ぎたかもしんない。調子乗って、そば湯を飲み過ぎたのも効いてる。

改札を出て、観光案内所へ行く。
地図を貰うためだ。そこで姫路城までの所要時間を尋ねたら、オバサンにもう姫路城は4時に閉まりましたよと言われる。そんなに早かったっけ❓
でも、そんな事に動じるワタシではない。姫路には来たことがあるから知っている。姫路城は城内に入らずとも城の姿はよく見えるのだ。それに元より入るつもりもなかった。中は知ってるし、見学してる時間が勿体ないと思っていたからだ。

駅正面に出ると、大通りの奥に姫路城が見えた。

 

 
スマホの画像だから小さくしか写っていないけど、肉眼だと、もっと近くにハッキリと見える。姫路城はデカイのだ。

大通りを避け、みゆき通り商店街を北に向かって歩く。先程えきそばを食ったばかりだけど、晩飯を食う場所を物色しながら姫路城を目指そうというワケだ。

城は近くに見えたけど、案外遠い。15分程かかって漸く門に辿り着く。

 

 
大手門をくぐり左に曲がると、直ぐ正面に城が見えた。

 

 
彦根城とは違い、スケールがデカイ。幾つかの天守が組合わされたその姿は勇壮だ。
しかし、威圧感はない。白鷺城とも言われるだけあって、白くて優美なのだ。さすがは世界遺産。コレこそがキャッスルと呼びたくなる。ヨーロッパの名だたる城にも全然負けてない。
でも、惜しむらくは改修工事が完全には終わっていないことだ。手前の櫓がまだ工事中のようである。

先ずは正面左へと回る。

 

 
こっちに城内への入口がある。
思い出した。ここから城を眺めながら近づいてゆくアプローチは素晴らしいの一言に尽きる。早めに来てたら、やっぱ入城してただろう。もし、姫路城に行く機会があったのなら、中にも入ることを強くお薦めする。金を払って入る価値は十二分にある。

姫路城の天守は、江戸時代のままの姿で現在まで残っている12の天守の一つで、その中でも最大の規模を誇っている。世界遺産だけでなく、もちろん国宝である。

今度は右手に回る。

 

 
コチラの方が外から城に近づける。
それにしてもデカイ。高さは石垣が14.85m、大天守が31.5mなので、合計すると約45mにもなる。
見上げる城の、この圧倒的存在感に心を動かされない者などいないだろう。スマホで撮った写真ではそれが全然伝わらなさそうなのがもどかしい。実際はデーン❗と感じで城がダイナミックに迫ってくるのだ。

 

 
傾きかけた陽が、雲に映えて美しい。シルエットの姫路城も悪かない。
気がつけば、辺りには誰もいなくなっていた。暫く静かに城と対峙する。次第に心がゆるりとほどけてゆくのがわかる。わざわざ姫路まで来て良かったよ。

城を出て、広場で煙草を吸う。
そこにレリーフというか説明書きみたいなものがあった。

 

 
揚羽蝶の家紋は我が家系のものでもある。自然と目がいく。
そういや姫路城の城主といえば池田輝政と云うことを失念していたよ。その池田家の家紋がアゲハチョウなのである。姫路城は関ヶ原の戦いの後に城主となった輝政によって今日見られるような大規模な城郭へと拡張されたんだったね。
ところで、小さい頃から揚羽の家紋は平家の流れだと聞かされてきたけど、あれってホントかね?(註1)

その横に、もう一つ説明書きがあった。

 

 
ジャコウアゲハが姫路市の市蝶なんだそうな。
それは知らなかったが、姫路城とジャコウアゲハの話は聞いたことがある。
説明書きを原文そのままに書き移そう。

「姫路城の城主、池田輝政の家紋が揚羽蝶であることや、この蝶の蛹が姫路地方に伝わる幽霊伝説の”お菊”に似ており”お菊虫”と呼ばれていることから麝香揚羽が市の蝶に指定された。」

「”」の使い方に違和感があるが、まあいいだろう。これ以上ゴチャゴチャ言うのは時間の無駄だ。そんな事よりも、この文だけでは説明不充分なので補足しておこう。
ジャコウアゲハが「お菊虫」と言われるのには、もっと深いワケがある。有名な怪談の皿屋敷(さらやしき)が関係しており、ひいては話は東海道四谷怪談にも通ずるのだ。少し長くなりそうだが、出来るだけかいつまんで説明しよう。

怪談 皿屋敷とは、数多くの異聞がある怪談話の総称である。お菊の亡霊が井戸で夜な夜な「いちま~い、にま~い… 」と皿を数えるアレである。で、特に有名なのが、播州姫路が舞台の『播州皿屋敷』と江戸は番町が舞台の『番町皿屋敷』。この二つがよく知られており、映画や歌舞伎、浄瑠璃、文学等々多くの原作になっている。
実際あった話が下敷きとされ、播州もの『播州皿屋敷実録』では戦国時代の出来事だとされるが、史実としてそこまでは遡れないようだ。

異説はあるが、物語の内容は大体こうだ。
『姫路城第九代城主 小寺則職の代(永正16年(1519年)~)、家臣であり城代の要職に就く青山鉄山が主家の乗っ取りを企てていた。これを忠臣 衣笠元信が察知、自分の妾だったお菊という女性を鉄山の家の女中として送り込み、鉄山の謀略を探らせた。そして、元信は鉄山が増位山の花見の席で主家を毒殺しようとしていることを突き止める。元信は花見の席に切り込んで則職を救出、家島に隠れさせる。
乗っ取りに失敗した鉄山は家中に密告者がいたと睨み、家来の町坪弾四郎にその者を探すよう命じた。程なく弾四郎は密告者がお菊であったことを突き止める。以前からお菊に惚れていた弾四郎はこれを好機としてお菊を脅し、妾になれと言い寄る。だが、お菊に拒まれてしまう。それを逆恨みした弾四郎は、お菊が管理を任されていた10枚揃わないと意味のない家宝の毒消しの皿「こもがえの具足皿」のうちの一枚をわざと隠す。そして皿が紛失した責任をお菊になし付ける。お菊は縄で後ろ手に縛られ、松(柳という説も有り)の木に吊るされて激しく折檻される。そして、ついには責め殺されて古井戸に捨てられた。以来、その井戸から夜な夜なお菊が皿を数える声が聞こえたという。
その後、元信らによって鉄山一味は討たれ、姫路城は無事に則職の元に返った。
後に則職はお菊の事を聞き及び、その死を哀れんで姫路城の南西に位置する十二所神社の中に「お菊大明神」として祀ったと言い伝えられている。』

 
【伊藤晴雨「番町皿屋敷」】
(出展『東京銀座ぎゃらりぃ秋華洞』)

 
因みに、この時にお菊が投げ込まれたとされる井戸が「お菊井戸」として現在も姫路城内に存在する。この井戸がいつから存在するのかはハッキリしない。
城外との秘密の連絡経路になっていたため、誰も近づかないように怪談の噂を広めたという説もあるようだが、これも定かではないようだ。過去に本格的な調査をしようとしたこともあったようだが、不気味な空気が流れて中止したという記録があるともいう。
Σ( ̄ロ ̄lll)ゾゾゾッ。

それから約三百年経った寛政7年(1795年)、城下に奇妙な形をした虫が大量発生した。これがまさしく赤い口紅をつけた「お菊さん」が後ろ手に縛られた姿に似ていた。そのことから、お菊さんの祟りだと大騒ぎになった。人々はお菊さんがその身を虫の姿に変えて帰ってきたのだと思ったのである。それ以来、その虫のことを「お菊虫」と呼ぶようになったという。
新たな「お菊伝説」の誕生である。

今では、この虫はジャコウアゲハの蛹ではないかと考えられている。
暁鐘成の『雲錦随筆』では、お菊虫が「まさしく女が後手にくくりつけられたる形態なり」と形容し、その正体は「蛹(よう」であるとし、さらには精緻な挿絵も添えられていたからだ。

 
【ジャコウアゲハの蛹】
(出展『じいさんの日記』)

(出展『あまけろの尼崎ネタ』)

(出展『大阪市とその周辺の蝶』)

 
お菊さんが後ろ手に縛られ、拷問の痛みに体をよじっているようにも見える。色が肌色というのも人間っぽくて、妙に艶かしい。蠱惑的でさえある。縛られて折檻される女性の姿には、倒錯の美がある。エロチックなのだ。何かもう、この蛹が情念の塊みたいに見えてきたよ。

続いて、斜め横から。

 
(出展『昆虫漂流記』)

 
言われてみれば、確かに頭部のオレンジ色の紋が口紅に見えてくる。或いは痛みに堪えかねて、強く唇を噛んで血に染まった様に見えなくもない。

そして、正面からの画。

 
(出展『大阪市とその周辺の蝶』)

 
段々、形が女性の凹凸のある体に見えてくるから不思議である。
この異形とも言えるフォルムもさることながら、日本ではこういう朱色紋が入るアゲハの蛹はない。庭木のミカンやカラタチ、サンショウなどにつく、当時見慣れたであろう他のアゲハチョウたちの蛹とは見た目が明らかに違う。見慣れない蛹だけに、見た人にはインパクト大だ。そういうところも背景としてお菊さんになぞらえやすかったのだろう。もしこれら全部をひっくるめて、この虫は「お菊さん」みたいだと他人に話せば、刷り込まれて誰もがそう見えてくるだろう。そうなると伝播は早い。そして、その見慣れぬものが大発生したとあらば、伝播は爆発的に広がる。因みに、ジャコウアゲハは蛹化時に食草から離れ、壁などの人工物で蛹になることが多い。だから必然、とっても目立つことを付け加えておこう。そんなのが壁一面にバアーッとくっ付いていたとしたら、もうそれは怨念の世界だよね。

以上のような因縁があった事から、ジャコウアゲハが姫路市の市蝶に指定されたようだ。
市には「ジャコウアゲハが飛び交う姫路連絡協議会」なる組織があり、その中には「ジャコウアゲハ倶楽部」と云う市民活動の会もあり、ジャコウアゲハサミットやスケッチ大会、フォトコンテストなどのイヴェントも開催されているようだ。

ついでだから、より理解を深めてもらうためにジャコウアゲハのことをもう少し詳しく説明しておこう。

 
【Byasa alcinous 麝香揚羽(ジャコウアゲハ)♀】

 
春から夏にかけて現れ、年3~4回発生する。成虫は午前8時頃から午後5時頃まで活動する。
決して珍しくはないが、何処にでもいてそうで意外と何処にでもいない蝶である。
分布は石垣島・沖縄地方から本州北部と広い。沖縄地方では離島間で特化が進み、各亜種に分類される。

(裏面)
(三点とも 2018.4.22 大阪市淀川河川敷)

 
画像は何れも♀である。
メスは明るい褐色なのに対し、オスは黒色でビロードのような光沢がある。
♂の画像は撮っていないので、他からお借りしよう。

 
(出展『しょうちゃんの雑記蝶』)

 
これは赤紋が発達する八重山諸島の亜種(ssp.bradanus)のようだ。

 
(裏面)
(出展『蝶一日』)

 
ジャコウアゲハの名前は、オスが腹端から麝香のような匂いを発することに由来する。成分はフェニルアセトアルデヒドで、香りは「蜂蜜のよう」「甘い」「バラの香り」「ヒヤシンスの香り」「みずみずしい」「草の香り」などと表現される。ジャコウはん、どこまで妖艶要素そろえとんねん(°Д°)

蛹だけでなく、蝶になった成虫の姿もエロチックだ。
頭や体の横側に赤色が配され、毒々しくも妖艶である。赤はお菊さんの怒りを具現化した紅蓮の🔥炎だ。騒動の時に、蛹からこの蝶が一斉に羽化して舞ったのなら、当時の人々は更に驚いて、それこそ黄泉の国から甦った「お菊さん」の化身と思ったやもしれない。その光景はちょっとした幻想夢物語だ。

飛翔はゆるやかで、飛ぶ様は中々に優雅である。そういえば「山女郎」という別名もあったな。女郎とはこれまた妖艶ではないか。女郎に身をやつした「お菊さん」なのだ。どこまでも不幸だねぇ~。
でもそれだけではない。その優雅な飛び方にも理由があって、それが更なる妖艶さを一層際立たせている。
幼虫の餌となる植物はウマノスズクサといい、この草には毒がある。幼虫はその毒を体内に溜め込み、鳥などの天敵から身を守っていると言われている。成虫になってもその毒を体内に持ち続ける事から、やはり鳥に忌避されて襲われない。飛翔がゆるやかなのは、敵に襲われないがゆえの余裕のよっちゃんなのだ。エロティシズムだだ漏れの美しき毒婦には、誰も近づけないのさ。

 
城を振り返る。
目を閉じると、姫路城とその城下を無数の麝香揚羽が飛び交っている光景が浮かんだ。やがて、蝶たちはスローモーションになって、ゆっくりと天に舞い上がっていった。

                    つづく

 
追伸
サクサク終わらせるつもりが、皿屋敷とジャコウアゲハの話になって大脱線してしまった。ゆえに前編と後編に分けざるおえなくなったんだよね。「電車なだけに脱線はあきまへん。」なんぞと云うオヤジギャグをカマしておきながらの大脱線とは世話ないよ(笑)。
タイトルが変なのもそのせい。皿屋敷とジャコウアゲハについて詳しく書く予定は無かったので、最初のタイトルは『お城とおでん』だったのだ。そこに「お菊さん」をつけ加えたってワケ。でも、それなら『お城とお菊さんとおでん』とすべきだよね。それはそうなんだけど、何かそれでは音感がよろしくない。と云うワケで、そのままにしておいた。それに、お城に続いてお菊さんとくれば、頭のいい人ならば、はは~ん、皿屋敷とジャコウアゲハの話だなと気づく。それを防ぐというのもあった。たとえ気づいたとしても順番が変なので、少なくとも攪乱することくらいは出来ると考えたのだ。

余談だが、『東海道四谷怪談』のお岩さんと『皿屋敷』のお菊さんは混同されることが多い。だが、お菊さんは顔半面が爛れていないし、お岩さんは皿を数えない。井戸とも関係がない。なのに、その二つがミックスされて記憶されている方も多いだろう。実際、自分もそうだった。
これは昔、『8時だよ、全員集合』などのドリフ(ドリフターズ)のコントで、志村けんが顔面にお岩さんみたいな瘤を付けて、井戸の側で「いちま~い、にま~い…、一枚たりな~い」とやったからだと言われている。
納得である。子供なんだから、そりゃセットで刷り込まれるわな。

 
(註1)揚羽の家紋は平家の流れだと聞かされてきたけど、あれってホントかね?

ホントです。
ことに平清盛の流れをくむ者が蝶の紋を多用したので、後世に蝶が平家の代表紋になったようだ。しかし、その美しさゆえ他の家も多く用いられている。公家の西洞院、平松、交野の諸氏や戦国時代・江戸時代に祖先を平氏と標榜する家は殆んどが家紋を蝶柄としている。また、清和源氏の流れの中川、池田、逸見、窪田の諸氏、宇多源氏の建部、間宮、喜多村の諸氏、他にも藤原氏を流れとする諸家、平氏の子孫と称した織田氏も木瓜紋と共に蝶紋を使用していた。
たぶん本当は平家とは全然関係ない田舎の豪族の末裔や百姓あがりだとしても、先祖は平家だと名乗るのが流行りだったんだろね。ようするに、平家とその家紋は一種のブランドだったのだろう。

 

天鵞絨(びろうど)の葉巻

 
前回(『あおはる1day trip 其の1~お城とデジタル蛾』)で、ビロードハマキについて少し触れた。それで何となく気になったので、ビロードハマキについて調べてみた。ちょっと面白かったので、この蛾のことを書く気になった。

先ずは、その前回の記事からビロードハマキの部分を抜粋してみよう。いや、どうせなら書きなおそう。

 
表御門跡・馬屋の横だった。
木のベンチに座ろうとしたら、その上で何かがピョンと跳んだ。で、ズズズイと動いた。クソ暑過ぎて頭がぼおーっとしてるし、幻覚でも見たかなと一瞬思った。だが、確かに何かが動いたように見えた。ベンチを凝視する。

 

 
(・。・;何だこりゃ❓
3~4センチ程と小さいが、よく見ると其所にはデジタル模様のカラフルなものが場違い的に静止していた。
はて(゜〇゜;)?????…。暫し固まる。
カラフルなウミウシの仲間(註1)にこんなのって、いなかったっけ❓
いや、でも海の中の生物がこんな所にいる筈がない。
そもそもコレって生き物なのかよ❓
誰かが服を釘とかに引っ掻けて、その千切れた切れ端が偶然にベンチに落ちて、それが風に飛んだとか❓
いやいや、そもそもこんな柄の服を着ている奴なんているのか❓ それにこんなド派手な柄の服なんて、そうは売ってないぞ。
じゃあ、てめえは何者なのだ❓
もしや、まさかの矮小型の👽宇宙人ではあるまいな❓ そのうち喋りだすかもしれん。
アホか俺。それこそ幻覚の白昼夢だ。一刻も早く病院に行った方がいい。
でも、何処かで見たことあるような無いような…。何か記憶の奥底にムズムズするものがある。何だっけ❓えーと、コレ何だっけ…❓そのもどかしさに脳ミソが右往左往する。しかし、何らかの答えを出さねばならない。頭の中でカチャカチャ計算が始まる。そして、脳は矢張り見たことがあるぞと認識した。そして、パラパラと記憶の中の映像の海を辿ってゆく。

一拍おいてから、ようやく思い至った。
シナプスが固有名詞とも繋がった。

(;・ω・)コレって、もしかしてビロードハマキじゃなくなくね❓

蛾に見えないけど、コヤツは蛾だ。葉巻みたいな形をしている蛾の仲間をハマキガというのだ。
記憶が次々と数珠繋ぎに溢れ出す。
だとしたら、蝶採りを始めた2009年とかそれくらいの頃に生駒の枚岡で見た時以来、二度目の遭遇だ。
確かオオムラサキを採りに行った時だから、6月か7月だ。何かの葉っぱの上に止まっていた。この派手な色柄だ、否応なく目に入った。そうだ、蛾だと本能的に感じてΣ( ̄ロ ̄lll)キッショ❗と言って飛び退いたのだった。その頃は大の蛾嫌いだったので、全身オゾ気(け)づいたっけ。走ったねー、悪寒。
でも毒々しくはあるものの、美しいといえば美しい。デザインがドットで構成されているのにも斬新さを感じた。気持ちが悪いっちゃ悪いけど、お洒落ちゃお洒落だ。デジタル模様の生き物がこの世に存在するとは想像だにしていなかったので、衝撃的でもあった。そうだ、己の審美眼がどう扱っていいのか判断出来ずに軽い目眩(めまい)を覚えたような記憶があるぞ。

もちろんその時は持ち帰らなかった。当時は蛾を触るどころか、近づく事さえも出来なかったのだ。
でも気になる存在だったので、名前は後で調べたんだと思う。だから、ビロードハマキと云う名前をちゃんと知っているのだろう。

それにしても、改めて見てもインバクトのある蛾だなあ。伊藤若仲の、あのデジタルな画を想起させられるようなデザインだ。

 
【樹花鳥獣図屏風】
(出典『ART LOVER』)

 
この屏風は方眼紙のように細かい四角の集合体から成っている。江戸時代にドットでモザイク画を描くデジタル的発想って、天才若沖ならではだ。微視的であり、巨視的な稀有な作品と言えよう。

ともかく、こんな蛾を世に産まれ落とせし神のデザインセンスには感服せざるおえんよ。

ベンチの上から毒瓶を被せる。
虫屋の性で、目的が虫採りじゃなくとも虫捕り道具一式は持ってたりするのだ。コレは虫捕りという一種のビョーキだ。このビョーキに罹患すると、救いようのないおバカになるのである。少なくとも世間一般的に見れば、およそ理解されない病理じゃろう。

 

 
んっ、どっちが頭なのじゃ❗❓
一瞬ワカンなくなるが、先がオレンジじゃない方が頭だ。思うに、コッチが頭だと鳥が勘違いして啄んだ隙に逃げるのじゃろう。ビロードちゃん、賢いねー(^o^)
それにしても、一般ピーポーからすれば蛾とは思えないような謎の形だ。自分でも本当に蛾なのか自信が無くなってきて、確認のために裏返してみた。

 

 
やっぱ蛾だな。下翅はどんなんだろ?と思っていたけど、鮮やかな橙(だいだい)色だ。表側は確認してないけど、おそらく蛾にしては綺麗なんじゃなかろうか。
蛾ってのは一部を除き、大体においては下翅が汚ない。上翅はそこそこキレイでも、下翅が汚くてガッカリさせられる事が多い。そこが今一つ蛾の世界に踏み入れられない理由かもしれない。

一応、展翅してみたが、蝶とは違い変な形なのでバランスがワカンナイ。
でも、たぶんコレで合ってんじゃないかな❓

 
【Cerace xanthocosma (Diakonoff,1950)】

 
上翅をもっと上げたい衝動に駆られるが、上辺の基点の位置からすると、これが正しいかと思われる。

触角が右片方ないのは残念だけど、まあいいっしょ。蛾はカトカラとヤママユくらいしか集めてないから、特段執着心はない。

たぶん♂だと思う。♀はもっと白斑が発達するようだ。気になる人はネットに画像が沢山あるので、そちらで見てけれ。

ネットで調べたら、漢字だと「天鵞絨葉巻蛾」と書くそうだ。これはビロードの漢字が「天鵞絨」だからだね。皆さん知ってるとは思うけど、ビロードとは織物の一つで、綿、絹、毛などを細かい毛を立てて織ったものだ。なめらかで艶があるのが特徴である。
ビロードはポルトガル語で、英語圏ではこれをベルベットと呼んでいる。似たような生地にベッチンがあるが、これは別物。

ビロードハマキはビロードの布地ほどには羽に艶がないのに、何でビロードなのかな❓
まあ、ノリみたいなもんで名付けたんだろね。きっと単に美しい様を表現したかっただけなのだろう。厳密的にはそぐわないけど、語感がいいから許す。

以下、ネットで調べた事とその感想を書こうと思う。

【分類】
ハマキガ科(Tortricidae)
ハマキガ亜科(Tortricinae)

日本のハマキガ科の中では最大種のようだ。

 
【学名】
Cerace xanthocosma(Diakonoff,1950)

軽く調べてみたが、よくワカンナイ。
唯一、わかるのは小種名の xanthocosma の一部のみ。おそらく前半部はギリシア語の xanthos(黄色の)で、それに他の語を足した造語であろう。

 
【分布】
従来は、本州(関東南部以西)、四国、九州、対馬、屋久島とされてきたが、近年は北上しており、東北地方にまで分布を拡げているようだ。ようするに元々は南方系の蛾なんだね。
平地から山地にかけて見られるが、主に低山地に分布し、照葉樹林帯を好むようだ。
国外では、樺太、中国(東北部~南西部)にも棲息するという。

 
【成虫発生期】
年2化。6~7月と9~10月に見られる。
へぇー、年2化なんだ。想像してなかったよ。つまり初めて見た奴は夏型で、今回見たのは秋型ってワケだね。

 
【開張】
♂34~40㎜ ♀40~59㎜。
♂より♀の方が大きいんだね。また、6~7月に現れる第1化は、第2化より遥かに大型なんだそうな。

 
【変異】
地理的変異は知られていないが、斑紋には比較的顕著な個体変異があるようだ。

 
【生態】
昼行性で、主に午後に活動するが、飛翔は緩やかで、あまり活発でない。夜間に灯火に飛来することもある。

どこかのサイトには歩くと書いてあったから、ズズズ…ズイと動いたのは錯覚ではなかったのね。

 
【幼虫の食餌植物】
ブナ科コナラ属のアラカシ、アカガシ、シラカシなどのカシ類、ツバキ科のヤブツバキ、ツツジ科のアセビ等の常緑樹のほか、カエデ科カエデ類などの落葉樹。
或るサイトでは、第1化の幼虫が常緑樹、第2化の幼虫が落葉樹を食べる傾向があると書かれていたが、別なサイトでは、1化はカエデを、2化はツツジ科のアセビ、ツバキ科のツバキ、ブナ科カシ属のカシ、カエデ科のイロハモミジ、ヤマモモ科のヤマモモ、モクレン科のオガタマノキを食するという記述もあって、よくワカラナイ。意外と本当は季節によって食性なんて変えてなくて、それぞれの個体が、それぞれ勝手に好きなもんを食べてるだけだったりしてね。

越冬態は幼虫で、食樹の葉を数枚綴って簡単な巣を作り、その中に潜むという。

そういえば思い出したけど、初めて会った翌年から、またビロードハマキには会いたいなと心の底のどこかで思っていたふしがある。枚岡なんかでは、今年も見ないなあと時々思ったからね。
もしビロードハマキにまた会ったなら、今度も採ろう。そして、雌雄完璧な展翅標本を作って、蛾ギライな女に送りつけてやろう。

                   おしまい

 
(註1)カラフルなウミウシの仲間
例えば、こんなんと言いたいところだが、セキュリティの問題で「世界のウミウシ」という素晴らしいサイトの画像が使えなかった。世界のウミウシで検索すれば、カラフルなウミウシが沢山出てきます。
ウミウシは多用で面白い。バリエーションが有り過ぎて分類は相当錯綜しているのではないかと想像するよ。

 

あおはる1day trip その壱

   『お城とデジタル蛾』

 
青春18切符が1回分残っている。
昔の彼女とぶらりと何処かへ行く予定だったが、ドタキャンを喰らったのだ。それも酷い形で。昔の男なんてものは女性にとって所詮は過去の遺物で、身分カーストからすれば底辺の存在なのだ。男にとって過去の甘い思い出は大切でも、女にとっては記憶のガラクタにすぎない。男たちは過去に思いを馳せ、女たちは未来を見ているのだ。
男は往々にして歴史好きだけど、女はあまり歴史に興味がないのは、きっとそのせいだろう。

まあどうあれ、切符は使わなくては勿体ない。
だが、どう活用して何処へ行くかを考えあぐねているうちに期限の9月10日になった。
こうなるともう、大の字。何も考えずに心の赴くままに任せてしまおう。その場その場、その時の気分で行く場所を決めればいい。出たとこ勝負の行き当たりばったりなのが旅というものだ。旅と旅行は違うと思う。普段もそれに近いものがあるけれど、それは殆んどが虫捕りだ。たまには本当にあてどのないワンデイ・トリップも悪かない。

先ずは大阪駅まで行き、そこで東へ行くか西へ行くかを決めよう。でも、この青春18切符で長野県白馬方面と岐阜県飛騨高山方面に行ったから、正直もう東にはウンザリだ。西は赤穂辺りまで行って、久し振りに日本一美味いとも言われる『さくらぐみ』のピザでも食おうか…。
とにかく今日は、腹がハチ切れんばかりにパンパンになるまで各地の美味いもんを食って食って食いまくってやる。

Σ(-∀-;)ハッ、でも痛恨の二度寝(-.-)Zzz・・💤
慌てて用意して何とか9時前に家を出た。
(×_×;)もう何だか先が思いやられるよ。

 

 
しかしJR難波駅に行くも、大和路線で何かあったみたいで、電車が止まっている。スタートから前途多難である。
(=`ェ´=)クソがっ❗、あのアマが全部悪い。

遅れは心配するほどでもなく、5分ほどで動いた。
しかし、乗換駅の新今宮駅でも大和路線のダイヤの乱れのせいで環状線が遅延していた。
(=`ェ´=)クソがっ❗、全部あのアマのせいだ。

ここでも10分程待って何とか電車に乗ることができた。

 

 
はあ~い\(^_^)/
午前11時13分。ナゼか東の彦根駅に到着。
おいおい、東やないケー。もうムチャクチャ言うてた事とちゃうやんかというツッコミが入りそうだが、コレにはそれなりのワケがある。
何でこないな事になったのかと云うと、大阪駅で突然神の啓示の如く彦根城に行こうと思い立ったのである。
実を云うと、何度も電車の車窓から彦根城は見ているものの、近くまでは一度も行ったことがない。今年の信州方面への計4度の行き帰りでも毎回その事が心のどこかで引っ掛かっていた。つまり、その思いが突然噴き出しちやったのだ。
それに鮎を食いたいというのもあった。店の名前は忘れたけど、彦根城下に鮎料理の専門店があることを思い出したのだ。
オイちゃん、無類の鮎好きなのに今年は殆んど食ってないんである。どうしても美味い鮎の塩焼きが食いたーい\(^o^)/
以上、ってなワケなのさ。

先ずは観光案内所に行き、地図とグルメガイドをゲットする。現地でその場で得る情報は大事だ。この先どうするかに大きく関わってくる。優れた男は、アバウトにして緻密なのさ(* ̄∇ ̄)ノ
一応、オバサンにお薦めの店を訊く。しかし、今日は火曜日で夢京橋キャッスルロードのお店は殆んどが休みだと聞かされる。どうやらそこに食べ物屋が集中しているらしい。
嫌な予感がした。そこに鮎の店もあったような気がする。
ガイドブックで確認したら、やはり怖れたとおりに目的の店『あゆの店きむら』はその何たらロードにあり、定休日になっていた。
また、コケた。これもあれも全ては、あのアマのせいじゃ(=`ェ´=)❗そう云う事にしておこう。
クソッ、今度アユおごれや( ̄ヘ ̄メ)

又しても躓くが、まあこれも行き当たりばったりの愉しさだと取ろう。予定は未定であってしばしば変更。何があるかワカラナイ方が旅は面白くなるというものだ。

 

 
駅前に銅像があった。
「桜田門外の変」の井伊直弼❓
でも上下(かみしも)じゃなくて、武将の格好だから違うな。だいち直弼は世間的には悪役にされてるからなあ…。
近づいてみると、井伊直政とあった。
なるほどね。直政といえば徳川四天王の一人である。徳川十六神将、徳川三傑にも数えられ、家康の天下取りを支えた功臣として知られている。しかもたいそう美男だったそうな。けど性格がキツくて嫌な奴だったみたい。皆に好かれてたら、もっと有名になってた筈だもんね。

 

 
10分ほど歩いて中堀に辿り着く。
中々ええ感じのロケーションだ。堀って、何だか落ち着く。
しかし、城よりも先ずはメシだ。早めに食っとかないと、この先、食間のインターバルが短くなる。間がタイトになればなるほど、食べまくるにはキツい。

歩く道すがら、グルメガイドで次の店の候補をいくつかピックアップした。

 

 
『献上伊吹蕎麦 つる亀庵』。
あまり聞いたことがない伊吹そばと云うのが気になった。江戸の町で評判だった蕎麦で、井伊家から将軍家への献上品だったそうな。この店がその蕎麦を復活させた店だというのに惹かれた。古(いにしえ)の歴史あるモノは旅情を掻き立ててくれる必須アイテムなのだ。ロマンチストさんは、そういうの大好物なりよ。
もう一軒気になる店があるから、そちらも見てから決めようと思ったが、店前の「びわ鱒の漬け丼」の幟が目に入った。それが有無を言わさぬ決定打となった。ビワマスは食べた事がないから、かねてから是非食べてみたいと思っていたのだ。
ビワマスとは琵琶湖に棲む鱒のことで、アマゴ(ヤマメ)の海降型亜種である。海降型というのは本来陸封型のアマゴが川を下って栄養たっぷりの海で育ち、サケみたくデッカクなったものだ。東日本のサクラマス、長良川に代表される西日本のサツキマスが有名だが、琵琶湖でも一部のアマゴが琵琶湖に下り、デッカクなる。それが幻とも言われる稀少なビワマスと云うワケなのさ。

 

 
店内は結構お洒落。
蕎麦付きの『びわ鱒漬け丼セット』をオーダーする。
お値段は¥1750(税別)と、ちとお高いが天下のビワマス様だ。この程度の金額は致し方あるまい。
でも後でミニびわ鱒漬け丼¥480ってのを見つけた。それと、もり蕎麦¥750を頼めばよかったかなあと軽く後悔する。

 

 
そば茶と、お茶うけの蕎麦の揚げたのが出てきた。
そば茶は香りが良くて結構好きだ。蕎麦の揚げたのは珠に見掛けるが、どってことない代物だ。しょっぱくもない甘くもないどっちつかずの野郎で、食べると正直な話し軽くイラッとくる。こんなもん、蕎麦崇拝主義者しか有り難がらんわ、ボケッ(=`ェ´=)

 

 
テーブルに三種類もの七味が並んでいた。
どれも見たことがある有名な七味だ。

 

 
へぇー、コヤツらが日本三大七味なのね。
左から東京は浅草寺の「やげん堀」、京都・清水寺の「七味家本舗」、長野・善光寺の「八幡屋磯五郎」。
それぞれどこかで何かにかけた記憶があるけれど、特にどうのという味の記憶はない。七味なんてウドンにかけてしまえば、純粋な味なんぞワカランのだ。
ヒマだし、試しに手のひらに振りかけて味見してみた。

(・。・;あっ、それぞれ全然違うや。
その違いに驚くが、相手がいないので心の中でキャッキャッする。
やげん堀は黒胡麻が効いていて香ばしい。七味家本舗は京都だから山椒の味が強い。善光寺のものは解説通りに一番辛い。しかも唐辛子の辛さがいつまでも舌に残る。そっかあ…。こりゃ料理により適した七味があって然りだね。勉強なりましたわ。

一人で妙にテンションが上がり始めたところで、御膳が運ばれてきた。

 

 
奥から琵琶湖三大珍味。右手に蕎麦、左手にびわ鱒漬け丼。これに味噌汁とそば湯がつく。

 

 
左から滋賀名物の赤コンニャク、モロコの佃煮、川海老と豆の佃煮である。
赤コンニャクは歯応えがあると言われるが、言うほどではない。モロコは焼いて食うと珍味だが、佃煮にしてしまえば、上品とはいえ所詮は佃煮だ。川海老と豆の佃煮は滋賀ではよく見かけるが、食べた事が殆んどない。
感想としては思った以上に良い組み合わせだが、膝を叩いて唸るほどのものではない。「あっ、こういう味なんだ。好きな人はきっと好きなんだろなー。」とは思う、そんなようなもんだす。

 

 
さて、蕎麦だ。
取り敢えず、ごく一部にちょい塩を振ってそのまま食べてみる。
うむ、香りはそこそこ良い。

お次に塩➕山葵でいってみる。
(-_-)…。山葵がクソだ。コレは本ワサビを擦ったものではなく、ホースラディッシュとかを混ぜ合わせた紛いものだろう。ワサビ本来の香りも味もしない人工的な味がする。(#`皿´)偽物めがっ❗、世の中の大半のワサビは信用ならんわい。

そして、ワサビ抜きでつけ汁につけてすする。
あっ、(^o^)美味い。コシがあって喉越しもいい。決して強くはないが、香りも鼻からいい具合に抜ける。
伊吹蕎麦って、期待してた以上に美味いぞ。長野の上田で行列に並んでまで食った蕎麦よりも百倍は美味いわい。
蕎麦って、ウドンよりもクオリティーの落差が激しいんだよなあ。そのわりには割高だったりするから腹が立つことが多い。何か蕎麦は通っぽい世界でカッコつけてる感じだしさ。時々、鼻につく。
どうあれ、美味い。嗚呼、レギュラーサイズのもり蕎麦とミニびわ鱒漬け丼にすれは良かったかなあ…。

そして、いよいよ琵琶鱒漬け丼である。

 

 
見た目はサーモンみたいに鮮やかなオレンジ色ではない。どちらかと云うと、くすんだようなピンク色だ。
感じ的にはサーモンというよりも鮭的。もっといえば、時鮭(時知らず)の刺身に近い。

期待をもって頬張る。
( ☆∀☆)うみゃい。味は脂は乗っているのだが、サーモンみたくシツコクない。脂の抜けがいいのだ。味的には時鮭に近い気がする。
でも御飯の量とのバランスが悪い。御飯の量に対してヅケの量が少ないのだ。やはり蕎麦➕ミニ漬け丼が正解だったかも。日々、勉強である。

味噌汁飲んで蕎麦湯も飲んだら、腹パンパンになった。この先、バカみたいに食べまくる自信が早くも崩れ落ちそうじゃよ。

 

 
赤松かなあ❓大木が奥まで続いている。
思わず、カバフキシタバはいないかと幹を凝視する。
虫屋の悲しい性だ。何だって虫とリンクさせて考えてしまう。

看板を見ると、いろは松と呼ばれているみたいだ。これは、かつてはいろはの文字数と同じ47本の松が並んでいたからだそうだ。土佐から持ってこられた松で、根が地上に出ないから人馬の往来の妨げにならないとということで植えられたという。確かに根がゴツゴツしていない。

 

 
佐和口多聞櫓。
青空と白壁のコントラストが目に眩しい。

表御門跡・馬屋の横で木のベンチに座ろうとしたら、その上で何かがピョンと跳んだ。で、ズズズイと動いた。目の錯覚かなと思い、暫く凝視する。
(・。・;何だこりゃ❗❓小さいがデジタルでカラフルな場違いなものじゃが、見たことあるような気もする。

 

 
更に一拍おいてから、ようやく思い至った。
コレって、ビロードハマキじゃね❓
だとしたら、蝶採りを始めた頃の2009年とかそれくらいの頃に生駒の枚岡で見た時以来の二度目の遭遇だ。
それにしても、インバクトのある蛾だなあ。伊藤若仲のデジタルな画を具現化させたようなデザインだ。こんなもんを世に落とせし神のデザインセンスには感服せざるおえんよ。

ベンチの上から毒瓶を被せる。
コレまた虫屋の性。目的が虫採りじゃなくとも虫捕り道具一式は持ってたりするのだ。コレは虫捕りという一種のビョーキだ。このビョーキに罹患すると、救いようのないバカになるのである。少なくとも世間一般的に見れば、およそ理解されない病理じゃろう。

 

 
んっ❓、どっちが頭なのじゃ❓
一瞬ワカンなくなるが、オレンジじゃない方が頭だ。思うに、コッチが頭だと鳥が勘違いして啄んだ隙に逃げるのじゃろう。
それにしても。一般ピーポーからすれば蛾とは思えないような謎の形だ。自分でも本当に蛾なのか自信が無くなってきて、確認のために裏返してみる。

 

 
やっぱ蛾だな。下翅がどんなんだろ?と思っていたが、おそらく蛾にしては綺麗なんじゃなかろうか❓

金800円也を支払って、城の核心部へと向かう坂道を登る。

 

 
やがて城郭が現れる。
石垣が、ええ感じだ。

 

 
登りきると、天秤櫓に続く橋が見えた。

 

 
美しい。見事なバランスだ。

 

 
橋の下から木組みをのぞむ。
機能美が芸術的なデザインを産む一つの証左だろう。

ぐるりと回り込み、橋の手前まで来た。
横に看板があり、ここでしか見られない植物の事が書かれてあった。

 

 
「オオトックリイチゴ」というんだとさ。
何だ、イチゴかよ(‘ε’*)
バラ科 キイチゴ属の一種で、彦根城以外では知られていない固有種のようだ。こんな狭いとこにスゴいやんと思ったが、自生の「ナワシロイチゴ」と中国・朝鮮半島原種の「トックリイチゴ」が自然交配したものらしい。なあ~んだ、雑種かよ(# ̄З ̄)

 

 
確かにイチゴの葉だわさ。
コレだけを食うチョウとかガの幼虫っていないのかなあ❓いたら、相当の稀種になるよね。
あっ(;・∀・)、また虫屋の性が何でも虫とくっつけて考えとるわい。

 

 
天秤櫓。

 

 
橋の真ん中で城下を見下ろす。
ちょっとだけ殿様気分~🎵

 

 
門をくぐる。
扉に歴史を感じる。築城は1604年に始まり、1622年に完成したそうな。四百年も前だ。そりゃ、歴史も感じる。扉は四百年前のモノじゃないとは思うけどさ。
あ~、この分厚い門扉に手裏剣投げてぇー。

 

 
道はジグザグに、各所で鋭角的に曲がって登ってゆく。
クソ暑い。汗がバカみたいに滴り落ち始める。気温はもう35℃を越えてるやもしれぬ。スーパー晴れ男も考えものじゃよ。

 

 
この造りは、ようするに戦(いくさ)の時の為だね。角の部分で敵兵が歩留まり、ごった返したところで、上の櫓から矢だの鉄砲の弾だのが雨あられと降り注ぐという寸法だ。攻める側からすれば、堪ったもんじゃありやせん。城というものは、そもそもが要塞だから、攻め手側の観点で天守閣を目指すと結構面白い。

漸く天守と御対面。
ひこにゃんもいる。

 

 
といっても、看板だけど。

 

 
モノホンのひこにゃん、そこいらに居ねえかなあ。
いたら、後ろから羽交い締めにするか、脇腹に一発蹴りを入れてやんのになあ。これ、マジで(笑)。

 

 
雲一つない青い空をバックに、たおやかに建っている。荒々しさは無く、むしろ優美でさえある。
天守は小さいが、変化のある破風が重なりあって美しい。さすが国宝じゃな。
これで国宝天守4つめだ。姫路城、松本城、犬山城は過去に行っているから、残りはあと松江城だけだな。

窓(花頭窓)が特徴的で、寺に見られるような粋な形だ。でも周囲を巡る廊下とか欄干が無いなあ。殿様ごっこが出来ねぇでねぇか。

中に入る。

 

 
物凄い急な階段だ。見た目は殆んど垂直。壁だ。
番をしている爺さんに訊いたら、62度もあると言う。

『こんなのお子ちゃまや爺さん、婆さんとか大丈夫なんですか❓登りはまだしも降りられますのん❓』

『時々、立往生しやはる人もおますな。そういう時は後ろ向きにか、座って一段、一段降りてもらいます。』

なるほどね。後ろ向きはまだしも座って降りるという発想は無かったわ。

 

 
意外と中の廊下は幅広い。

  

 
梁の木組みが面白い。
ぐにゃぐにゃ曲がってる木もある。

上から回廊に落ちる光が美しい。
日溜まりが耀いている。

 

 
窓から屋根をのぞむ。

 

 
詳しくはないが、屋根も個性的な気がする。

 

 
最上階まで昇ってきた。

 

 
琵琶湖が見えた。
この国も湖もワシのものじゃあ~Ψ( ̄∇ ̄)Ψ
暫し、殿様気分を満喫じゃよ。

降りて、西の丸に回る。

 

 
フォルムがいい。
裏から見た方が好きかもしんない。

そのまま西の丸、三重櫓、続櫓を経由して玄宮園へと廻るつもりだったが、通行止めになっていた。仕方なく来た道を戻り、玄宮園へ。

 

 
百日紅(さるすべり)には夏空がよく似合う。

 

 
玄宮園入口。

 

 
手前右側に見えるのは稲穂である。
最近になって復元されたようだ。五穀豊穣の祈願とかなのかな?

 

 
いわゆる池泉回遊式庭園というやつだね。

 

 
ここが一番のビューポイントかな。
木はカエデだから、秋深くには一層美しい姿になるだろう。

 
ここも美しい。

 

 
背後に天守閣が見える。
お月見にも良さそうなロケーションだ。

 

 
隣の楽々園。復元の途中のようだ。
ここも秋には美しいだろう。

彦根城って、中々ええやんか。結構、楽しめたよ。
それはさておき、今何時だろう?
確認したら、もう1時半である。1時には電車に乗ってる予定だったのに、あらあら知らぬ間に時間が経ってたのね。
さてさて、次は何処へ行きますか…。
長浜で久し振りに旨い親子丼を食ってもいいし、敦賀の気比の松原なんてのもある。もっと足を伸ばして若狭方面ってのも有りだ。小京都とも言われる小浜も捨てがたい。鯖街道の起点でサバを食うのだ。或いは福井まで行ってソースカツ丼とか越前蕎麦なんてのも悪かない。あっ、蕎麦は昼に食ったからもういいか。

候補をあれこれ考えながら駅へと続く道を歩く。
まあいい。行き先は、駅に着いてからその場の気分で決めよう。

 
                    つづく

 
追伸
写真を並べてサクッと終わらせるつもりが、ついつい文章を書いてしまい、長くなってしまった。
次回からは、もちっとサクサクいこう。

冒頭に青春18切符の画像を持って来るつもりだったのだが、なぜだか切符が見つからない。使い終わってるとはいえ、捨てた記憶は無いんだけどなあ…。
たぶん、神隠しだな。

 
 

秋の夕陽とメトロン星人

 
昨日の夕陽は、ちょっと珍しい夕陽だった。

 

 
とっても眩しい。

 

 
空の殆んどが雲の絨毯に覆われていたが、水平線の近くだけが空いていた。そこにデッカイ秋の夕陽が沈んでいったのだが、雲に邪魔されて光が拡散されることなく目映い束になって爆発していた。
メトロン星人がその向こうから現れそうな気がした。そう、メトロン星人とウルトラセブンが戦った名シーンも、こんな色の夕陽だったような気がする。季節もきっと今くらいの時期を想定して製作されたのではないかと思いたい。そんな空気感のある夕暮れだった。

 
(出典『植物屋 風草木』)

 
メトロン星人とダン(ウルトラセブン)がボロいアパートで、卓袱台で向かい合って語るシーンは哲学的でさえあった。神回と言っていい。メトロン星人はメチャンコ賢いけど、どこか人間的で魅力的な奴だったなあ。でもカッコつけて逃亡を謀ったはいいものの、アイスラッガーだっけ❓とかでセブンに真っ二つにされるんだけどね。何か子供心にも複雑な終わり方だった憶えが残ってる。

こういう夕陽というのは有りそうで案外見られない。
自称夕陽評論家としては、レアなケースにあげたい。

 

 
雲がオレンジ色に染まっている。
このまま上まで雲がこの色で染まってくれれば壮絶な夕暮れになるだろう。

  

 
しかし、残念ながら期待した光景にはならなかった。
心が震える夕陽には、そう会えるものではない。

                   おしまい