2019年 正月の献立 二日め夜

 
前回に、次回は虫の記事を書くと宣言したが、酔っ払って何と3つもの記事を同時進行で書き始めてしまった。で、収拾がつかなくなっている。
松の取れぬうちに(15日ではなく7日という説も有り)、正月の献立の記事なんぞはとっとと終わらせたい。
と云うワケで、急遽、先にこっちから進めることにします。

 
【自家製サーモンのハーブソルト】

 
ラップにハーブソルトと黒胡椒を散らし、その上にサーモンを置く。で、上からハーブソルト&黒胡椒を振ってラップで包む。ようするに、サーモン全体に満遍なく調味料を行き渡らせるって事ね。それを3日ほど冷蔵庫で熟成させれば出来上がり。途中、水分が出たら、ペーパータオルで拭き取りましょう。
技術はさしていらなくとも上手く作れる料理の一つ。簡単だけど失敗が少なくて旨いのだ。生のハーブがあれば、尚のこと美味い也よ。

  
【平目の刺身】

 
サーモンと合わせて紅白と云うワケだね。
平目はそれなりの値がしたけど、縁側が付いていたので思いきって買った。それを薄めの削ぎ切りにする。
先ずは塩のみで食し、続けて塩+レモン汁。飽きてきたらポン酢、さらに厭きたら醤油で食す。

(^^)旨いね。
特に塩レモンがええ。噛めば噛むほど、奥の方から平目の甘みがじんわりと昇ってくる。特に縁側はブリブリの食感も相俟って堪らんぜよ。
回転寿司の縁側はクソだが(たぶんオヒョウ(ハリバット)とかを使ってる)、ホンマもんの縁側は大好き。
けどハッキリ言って、刺身には日本酒とか焼酎の方が断然合うと思う。そうなのだ。今回はビールでもなく日本酒や焼酎でもなくて、ワインをチョイスなのじゃよ。

 

 
ワインショップで、たまたま目に入ったのがボルドーの白。ボルドーといえば赤だが、予定の料理のラインナップが魚貝寄りだったので白にした。
と言いつつ、実際はそうでもないけど…。

 
【肉のオードブル】

 
スーパーで出来合いのを買ってきた。
たいした事ないとは解っていたものの、半額なのでつい買ってしまったのだ。だから、盛り付けもぞんざい。全然気合いが足りない。やる気なんてものは、いつもスタンダードにあるワケではないのだ。

ラインナップは、中央にどって事ない生ハム、奥にどうしようもないレベルのローストビーフ。あとは焼き豚2種類とハム。これもどって事ない糞レベルだ。
(´д`|||)くちょー、こんな事なら自分で作ればよかったよ。

思うに、お節料理にこういう洋物が入ってきたのはいつの頃くらいからなのだろう❓自分の子供の時には既にハムなんかは普通だったけど、今やどんどん欧米化は進んでて何でも有りという感じだ。時代の流れとはいえ、全然縁起物でも何でもないものばかりが巾を効かせてるよね。
とはいえ、別にそれを特に批判しているワケじゃない。正月なんだから、縁起物より旨いものをと云うのは充分に理解できる。黒豆だの田作りだの地味な料理ばかりが並ぶのもちょっとねぇ…、全然嬉しくない。
とにかく、今後とも両者のバランスが保たれてゆくのを願うよ。バランスと調和こそが日本の真骨頂だ。他の国には、そうそう真似のできるものじゃない。頑張れニッポン、自信を持とうニッポンなのだ。
何か何言ってんのかワカンナクなってきた。飲み過ぎだな。

 
【鴨山椒】

  
青森の鴨をサッと出汁醤油で茹でて、粉山椒をかけただけのもの。
とはいえ、鴨は火を入れ過ぎると身が固くなるので、火入れには慎重を期した。
それでも身はやや固めの仕上がり。中はレアなんだけどね。人は養殖物よりも天然物をありがたがるが、ジビエが必ずしも美味いワケではない。個人的には、本鴨よりも柔らかい肉質の合鴨の方が美味いと思う。

 
【牡蠣とヤングコーン・オクラのオイル漬け】

 
牡蠣を刷毛で醤油を塗りながらじっくりと焼き、オリーブオイルに漬ける。ヤングコーンとオクラはサッと茹でて、水気を拭いてオリーブオイルに漬ける。あとは冷蔵庫で一晩以上おく。盛り付けたら、軽く塩を振って出来上がり。

\(^o^)/うみゃーい❗
ワインのアテとしては、今回はこれが1等賞だな。

そして、最後は何故かコレ。

 

 
そう、🍢おでんである。
ラインナップは、大根、手羽先、竹輪、すじ肉、玉子、コンニャク。
そして、ワインは白から赤へ。

 

 
赤ワインも同じボルドー産である。
赤ワインと謂えば、ボルドーなのだ(^o^)v
名前で満足すれはよい。それが庶民だ。ボルドー産と思えば旨い気がする。それでいいじゃないか。

そういえば、ボルドーって行ったことあるけど、バカみたいに高いところに架けられた橋のことくらいしか憶えていない。下に広がる町並みがオモチャみたいだった。
フツーの男の子じゃないから、当時でもそこそこのワインの知識はあった。それでも若い頃は旅する事で精一杯だ。ましてや貧乏バイク旅、ワインを嗜む余裕なんて無い。プライオリティーは二の次どころか、三の次以下だ。今なら目を輝かせてシャトー巡りとかしてそうだけど(笑)。

むしろ、そのあとのル・マンの方が印象的だった。
世界三大レースと言われるル・マン24時間耐久レースの公道コースを自分が走ってるだなんて不思議な気分だった。映像で見たことのある既視感と、当たり前だが現実的に見る網膜に映る風景は同じではない。
今思えば、夢のような時間だった。深い森の中を貫く真っ直ぐな道は気持ちいい。そして、うんざりするほどに長い。

おでんといえば日本酒だが、実をいうとワインとも意外に合う。特に赤ワインとは相性がいい。慣れれば違和感は失くなる。凝り固まった概念と云うヘルメットを外せばいいだけの事だ。ルールには、どこかに柔軟性が無ければならない。それが無いルールはクソだ。

そして、今宵もぐでんぐでん(@_@;)で、夜がふける。
 
                  つづく

 
追伸
 次回はちゃんと虫の記事を書きます。

  
 

2019年 お節料理 正月二日目

 
正月二日め、お昼の献立。
しこたま昨日は飲み倒したので、二日酔い気味である。流石に昼間っから酒を飲むパワーは無い。

とりあえず米でも炊こうと思った。
米を洗いながら、ふと思いついた。アレをこうしたら、アーなってコーなって旨いんちゃうんけー❓
一度思いついてしまうと止められない性格はいくつになっても変わらない。行動が幼少の頃から発作的なのだ。三つ子の魂、百までというし、性格と云うものはそう簡単には治りまへん。

で、炊き上がったのがコレ。

 

 
えーと、これは生姜ごはんです。
但し、生姜ごはんと言っても、ただの生姜ごはんではござらん。

ベースはコレ⬇

 
と言ってもワカランやね。
コレはですなあ。あの生姜漬け界に燦然と君臨せしめし、オラも大好き「岩下の新生姜」なのだ。
その汁を使って炊いた混ぜごはんなのであ~る。

作り方は、米1合に対して岩下の新生姜の調味液をブチ込む。液の分量が少し足りなかったので、お酒と水を足す。今思えば、だし汁でもよかったかもしれぬ。
新生姜本体は薄切りにして、炊き上がってから混ぜこんだ。一緒に炊いてしまうと、食感と辛みを失うのではないかと考えたのれす。

( ̄∇ ̄)ん~、味はそこそこ旨い。
だが、インパクトに欠ける。何かが足りないのだ。
そのままじゃ味気ないので、昨日夜ふけに酔っ払って作った昆布炊きをおかずにすることにした。

 

 
昆布もお節料理の定番だ。
よく昆布巻きとか結び昆布がお重に入っている。
昆布は「よろこぶ」にかけた縁起物。「養老昆布(よろこぶ)」と云う漢字を宛てて、長寿祈願も兼ねている地方もあるようだ。結び昆布の結びも祝い事を表しているし、昆布巻きも巻物と勉学向上とをかけている。
だが、ガキんちょには、そんな事はどうでもよく、常にお節どうでもええランキングの上位に入っていた。
妙に甘ったるくて中途半端な味付けが嫌いで、軽い憎悪さえ覚えていた。その思いは薄れこそすれ、基本的には今でも変わらない。どうでもいい食いもんだ。
だから、わざわざ自分でつくる気にはなれないし、ましてや金を出してまで買う気にはなれっこない。

と云うワケで、昆布の佃煮的なものをつくってみた。
但し、酒のアテとしてだ。甘ったるい味にはしない。
昆布を水にブッ込み、ふやかす。充分やわらかくなったところで四角に切る。それをまた水に戻して、鰹だしの素、醤油、照りを出すために味醂少々、山椒の実を加えてコトコト炊く。煮汁が殆んど無くなったら完成。

ふむふむ(・ω・)、ええんでねえの。
岩下の新生姜ごはんには、バッチリの相性じゃよ。
しかし、ここで又してもピコリン💡。新たなる企みを発作的に思いつく。勿論、思いついたら止まりゃしない。おいちゃん、ダッシュ💨でスーパーに向かう。
そして、完成したのがコチラ。

 

 
じゃあ~ん( ^-^)ノ∠※。.:*:・’°☆
大トロちらし寿司でごさる❗❗
大トロとは言っても、中トロと大トロの中間って感じ。でも、コチラとしては寧ろ渡りに舟だ。オジサンには今や大トロは脂っこ過ぎて、そろそろキツいのじゃよ。
値段は1パック、たったの380円だった。しかも、養殖とはいえ本マグロ、モノも値段に比してかなり良い。

勿論、ベースは酢飯がわりの岩下の新生姜めし。
そこに大トロを並べて、更に食感にアクセントを加える為に細かく切った数の子を適度に配する。仕上げに貝割れ大根と白ゴマを散らしたら、さあ出来上がり。
ちなみに、色めが悪くなるのを避けたいので、醤油と山葵は別にした。

オラ、オラ、オラー、御満悦で箸を持って構える。
しかし、これって向きがあってないよね❓
(*`Д´)ノえーい、色々角度を変えて写真を撮るっぺよ。

 

 
たぶん、これが正面だろね。

 

 
(`皿´)フガッ、(#`皿´)フガッ、(`皿´)フガガ。 
( ☆∀☆)きゃいーん❗興奮街道爆走ぱぴゅーん❗
バチ美味いやんけー❗❗
マグロの旨さもさることながら、数の子がごっつええ仕事をしとる。言ってみれば、豪華版トロたく(トロ&沢庵)ってとこだろうか。

おいちゃん、思わずついでに買ってきた冷酒の封を開けてしまう。

 

 
月桂冠「辛口 生酒」。 
(≧∀≦)くぅー、酒バカの愚かなる行為だけど旨いね~。

 
                  つづく

 
追伸
まだまだ正月の献立は控えているのだが、食いもんネタを書くのにも飽きた。次回は一旦、虫の話を書きます。

 

2019年 お正月料理その2 元旦夜編

 
【鰯の煮物】

 
本来的には田作り(ごまめ)を作るべきなのだが、ごまめは甘いので鰯の煮物で代用させて戴いた。
同じ理由から栗きんとんも除外である。酒飲みにとって、甘いものは邪魔。酒の肴にはならんのじゃよ。

田作りがお節の縁起物とされるのは、昔は五穀豊穣を願い、小魚を肥料として田畑に撒いた事からである。
農家ならまだ解るが、都会人にはあまり関係ないような気がするなあ…。農家の人だけ食ってればエエんでねえの❓
と書いて、自分の浅はかさに気づく。落ち着いて考えてみれば、作物がよく育てば我々都会人も恩恵を受けるのである。豊作になれば、野菜だって安くなる。飢饉なんてなったら、大変だもんね。
農家の人、m(__)mごめんなさい。

レシピは書くほどの事ではないが、まあ一応書いておくか。
出汁は鰹昆布。そこに酒、砂糖、味醂、塩、薄口醤油を加えて煮汁をつくる。そこに鰯を入れて火を点け、弱火で炊く。煮汁が沸騰したら火を止めて完成。
沸騰した煮汁に鰯を入れないのは、煮崩れを防ぐためと、徐々に火を入れることにより身をやわらかく仕上げる為である。どんな料理でも火加減は大事なのだ。

 
 
【若牛蒡の炒め煮】

 
ごぼうは、細く長く地中にしっかりと根を張る事から、縁起物とされる。
これも本来ならば、たたき牛蒡が定番だろう。しかし、天の邪鬼のあっしはそんなフツーな事は面白くないと思ってしまうのである。
若ごぼうは文字通りの若い牛蒡の事で、根だけでなく、茎や葉も食べられる。一般的にはあまり馴染みの無い野菜だと思われるが、大阪では八尾の辺りで盛んに作られており、独特の苦味と歯応えがあって、通には喜ばれる。これをツマミに、日本酒をチビチビやるのがいいんだよね~。
あっ、前回から料理を何の酒と合わせて食っとるのかを一切言及していないじゃないか。
えー、この日は昼間っから延々と飲んでいたのだが、ビールに始まり、日本酒、焼酎へと移行していき昏倒どした。

それでは作り方。
①根の部分を洗い、細かいヒゲ根を取り除いたら、適当な長さに切る。水に浸けてのアク抜きは不要。今の料理人の常識では、牛蒡のアク抜きは必要ないそうだ。水とか酢水に牛蒡を浸けておくと、水が泥水の如く茶色くなるけど、あれはアクではなく、ごぼうの旨味成分らしい。
茎も適当な長さに切る。軽く塩揉みをして熱湯で1分ほど茹でて冷水に晒し、アク抜きする。葉は佃煮にするのだが、ここでは割愛。それについては後日書く。

②根と茎を胡麻油で炒める。火がある程度通ったら、だし汁、砂糖、酒、塩、薄口醤油で作った調味液を上から掛ける。しばらく煮て、水分を適度に飛ばして出来上がり。

 
 
【蓮根の煮物】

 
蓮根は穴が開いている事から、先の事が見通せると云う縁起物だったかと思う。
出汁でサッと茹でて仕上げる。蓮根は歯応え重視派なのだ。茹で過ぎてホクホクのが良いという人もいるだろうが、あんな芋みたいな食感の蓮根は許しまじなのである。

 
  
【枝豆の煮物】

 
黒豆も甘いからパスである。
黒豆がお節料理の縁起物とされる理由は、豆は本来、丈夫、健康を意味し、1年間元気に働けるのを願っての事だ。「まめに働く」などの語呂合わせもあるだろう。
ならば、どんな豆でもエエではないかと考えたワケ。

作り方は少々手が込んでいる。
先ずは豆を鞘から取り出す。その際、鞘に残ったチュルチュルを親指でこそぎ取る。このチュルチュルが旨味成分たっぷりで甘いのじゃよ。捨ててはならん。
鞘も捨てないで取っておく。これは流石に食べない。じゃあ、どうするのかというと、水で茹でるのである。その際、すりこぎ棒やお玉でギュウギュウ押しながら茹でると尚よろし。これは何してるのかと云うと、鞘から良い出汁が取れるのである。水の色が結構変わるくらいに出汁が出る。
しっかり出汁が出たところで、鞘を取り出し、酒・塩・薄口醤油で味付けする。最後に枝豆とチュルチュルを入れて、火を止めて味を含ませる。

枝豆が残った時に使える技なので、暇な人は試してくだされ。

  
【海老の旨煮】

 
ここまで立て続けの煮物のオンパレードである。
よくよく考えてみれば、和食って素材を煮るという調理法が多いんだよね。

海老は髭が長く、背?腰?が丸まる事から老人になぞらえられる。つまり、腰が曲がるまで長生きすることを願っての縁起物というワケだね。

お節の海老は本来ならば頭付きを使用すべきなのだが、残念ながらお目がねに叶うような海老が売っていなかった。伊勢海老とは言わないが、それなりに立派な海老を買いたいところなのだが、如何せんコレが高い。今時、正月料金でもあるまいしと思うのだが、普段よりも確実に高いと思う。刺身とか海鮮ものは全般的に高値になってるのは、何か裏とか陰謀でもあるのかな?

そういうワケで、結局一番小さい海老、むき海老になってしまった。拘りを捨てるなら、徹底的に捨てた方が良い。それに、パッサパッサになりがちの海老よか、プリプリ感のあるむき海老の方が余程いいと思った次第なのじゃよ。

調理法は簡単。酒を沸騰させ、そこに薄口醤油と塩を加える。再度沸騰したら、海老をブチ込んだら火を止める。あとは余熱で火を通せば出来上がり。

(^o^)vうん、プリプリで旨いにゃあ~。
上出来、上出来。
 
それにしても、夜だと写真が綺麗に写らんなあ。
おまけにワードプレスに写真をアップすると、なぜたか画像が素より劣化するんだよなあ…。
そういえば誰かがマグロだか何だかの回で、理論はいいとしても写真がサイテーだとボロカス言ってきたよなあ。まあ、こちらの腕も足りないのだろうが、そのせいもあるのだよ。画質の劣化だけじゃなくて、画面が暗くなるのはワシのせいとちゃうでー。

                   おしまい

 

2019年 お正月の料理(元旦昼編)

 
皆様、明けまして御目出度う御座りまする。
今年、最初のブログでげす。

 
【数の子】

  
正月といえば数の子。これ無くして、お節は語れない。正直、他のお節料理が無くとも何ら文句は垂れないけど、これが無かったらΣ( ̄皿 ̄;;激怒するね。
それくらいオッチャンは数の子好きなのである。

しかし、口に入るまでには幾多の面倒な作業が必要である。恒例とはいえ、苦難の道なのじゃよ。
先ずは塩抜き。毎年、ここから躓いている。(@_@)アーパーだから、どれくらいの割合の塩抜き用の塩水を用意すればワカラなくなるのだ。で、ググって調べるんだけど、これがまた皆さん言うことがバラバラなんである。
水500mlに対して塩小さじ1杯とか水1㍑に塩小さじ1杯とか、もうマチマチなんである。
今回はその中間くらいの塩分濃度でいく事にする。
で、3~4時間に1回塩水を取り替え、それを4、5回繰り返す。途中で味をみて、頃合いを見計らって笊にあげる。で、白いブヨブヨの薄皮が残っていれば、そやつを小まめに取り除く。( ´△`)メンドくせ~。
それを出汁に浸けて一晩おく。今回の出汁は、白だしに薄口醤油とチビっとだけ味醂も入れた。この辺は各自お好みに調整されたし。
器に盛ったら、最後に鰹節を掛けて出来上がり。
今回は気合いの象徴として、割山椒の器を引っ張り出してきた。

 

 
いつ食っても、数の子は旨いねぇ~(≧∀≦)
いやはや、このコリコリ感堪りまへんな( ̄∇ ̄)
因みに、お正月に数の子を食うのは、ニシンは卵を沢山生むので、それを二親(にしん)と掛け合わせているのだ。つまり、子孫繁栄を祈ってのことだね。

 
  
【紅白なます】

 
紅白で目出度いって事だろう。
いつもなら、赤と白のコントラストを効かす為に金時人参を使う。普通の人参だと紅白じゃなくて朱白とか橙白になるのが気にくわないからだ。しかし、今回は冷蔵庫に余り物の普通の人参があったので、勿体ないからソチラを使用。

先ずは大根と人参を細切りにする。割合は大根を多めにしましょう。その方が仕上がりが美しく見えます。
それをビニール袋に入れて、テキトーに塩を振って揉み~揉み~Ψ( ̄∇ ̄)Ψ。で、一晩おきます。
翌日、出た水分を捨て。砂糖大さじ1に酢を大さじ3~4くらい入れて混ぜ合わせる。お好みで顆粒の昆布だしとか薄口醤油を入れてもええですよ。
そのまま出してもよいが、2、3時間から半日おくと、より味が馴染んでよろし。

 
 
【子芋のやわらか煮】

 
貝割れ大根を飾る位置で悩みまくる。
で、一番上の写真に落ち着いた。正月から悩みまくりってのは、どうもよろしくないね。

これも数の子と同じ縁起物で、親芋から多くの子芋ができるから、子宝に恵まれますようにと云う意味だ。

シンプルだが、とても手が込んでおりまする。正月早々から手を抜きたくないもんね。
それでは、オッチャンのレシピをひけらかそう。

①里芋の目利きは素人には難しい。周りに付いた土が出来るだけ乾燥していないものを選ぶようにするくらいで、ワシだってワカラン。あとは天に運を任すってな感じだ。強いて言うならば、値段の高いのを選ぶこと。それが一番失敗が少ない。
今回は愛媛産のもの。中国産は安いけど、当たり外れが激しい。とにかく、仕込みをするまでは良し悪しがワカランのだ。
えー、先ずは水で洗って泥を落とします。皮は剥きません。それを水から弱火でコトコト煮る。

②30分程煮たら、茹で汁を捨てて冷水に浸す。
あら熱が取れたら、手で皮を剥きます。簡単にツルリと剥ける筈です。もしも簡単に剥けなかったら、たぶんそれはダメな子芋率高しです。どう足掻こうとも何ともならないので、潰してコロッケにでもしなはれ。

③あとはお好みの出汁に入れて、弱火で煮る。
一応、今回の出汁は鰹昆布だしにお酒、味醂、塩、薄口醤油を加えた薄味よりにした。
芋がやわらかくなったら、火をとめて味を含ませる。煮物は冷める時に味が入りやすいのである。これも一晩おいて、翌日温め直して出した方が美味しおすえ。

ん~まい❗v(≧∀≦)v
我ながら、渾身の出来じゃよ。いつもより丁寧に作った甲斐があったよ。

 
 
【錦玉子】

 
またしても、盛り付けに悩む。
揚げ句、器まで有田焼に換える始末に。

 

 
それでも悩むオイラ。今年は何かと決断できない年にはならぬようにしようと思うオジサンなのであった。

錦玉子とは、黄色と白の入る二色の玉子焼きを金銀になぞらえ、錦とかけたものである。
溶き卵を混ぜ過ぎないのがコツだろうか?
とはいえ、調べもせずに自己流で作ったので、本当のところは分からない。
結果、出来は今イチ。実を云うと、半分側しか上手くいかなかった。上手くいった方は夜に食べた。
じゃ、何で上手くいった方を使わなかったのかというと、半分切って失敗だと思って片側は切らなかったのである。何事も早計はいかぬな。

 

 
コレ、更に補足すると、玉子焼きというか変則の出し巻き玉子。出汁がわりに年末に作った『海老とアボカドの卵白仕立て』の残り汁をブッ込んでやった。
と云うワケで、海老の出汁と片栗粉とが入っておる。
じっくり弱火で焼いてから巻きすで巻いて形を整え、冷蔵庫で冷し固めたもの。
ついでに言っとくと、お節料理には巻きものも縁起物としてよく登場する。例えば、昆布巻きとか牛蒡巻きなどがある。これは昔は大事な絵や文書は巻物にしていたので、それに因んだものだろう。知識や芸事が身につくようにと云うことだろうね。

 
 
【お雑煮】

 
すまし汁に焼いた角餅と小芋。飾りは貝割れ大根と人参と大根の紅白結び。仕上げに柚子を添えた。

お雑煮は関東と関西でも違うし、近畿圏内でも各県で差がある。もっと言うと、各市町村、各家庭によっても違い、様々なバリエーションがある。
関西では白味噌に丸餅の組合せで、餅は焼かずに煮るのが主流だと言われている。具は各家庭によりバラバラだが、大根と云う家庭が多いようだ。白味噌ならば、大根や蕪が相性が良いからなのかもしれない。

うちの実家は丸餅を焼かずにどろどろに煮ていた。
具は特に決まっていたような印象は無いが、大根と鶏肉、水菜ってところが多かったような気がする。
そして、関西なのに何故か澄まし汁である。
その理由を特に両親に訊いたことは無い。果して父親方の影響なのだろうか?それとも母方なのかな?
自分は結婚した事ないけど、新婚最初の正月には揉めたりするのかな?きっと両者の力関係で決まるんだろなあ。今時の御時世だと、何か想像つくなあ…。
頑張れ、世の男性諸君❗

皆様、今年も宜しくお願い御願い致します。

 

壮麗なる王女~ヤイロタテハ~(改訂版)

 
ここんとこ、ヤイロタテハの展翅をしてFacebookにあげている。
そこで、ふと思い立って記事を一つに纏めようと思った。本当は台湾の蝶シリーズを書くべきなのだが、次の題材選びに思いあぐねているのだ。当初はアサクラコムラサキの事を書こうと思ったのだが、そうなると、その前にタイワンコムラサキ辺りから始めないと話の流れが悪い。順番は大事である。後々、スムーズにいかなくなる。でもタイワンコムラサキだって、そう簡単に論じられるワケでもないのだよ、明智く~ん(ここんとこ江戸川乱歩関連の番組ばっか見ているのだ)。
そう、コレはブログの年末調整的にお茶を濁そうと云う計画なのである。それが、まさかの出口の見えない無間地獄に又しても陥る事になろうとは、この書き出しの時点ではまだ想像だにしていなかった。
(# ̄З ̄)ったくよー。

今までに、以下のような文章をFathbookにアップしてきた。
ついでだから少し手を入れたが、概(おおむ)ね文章は当時のままである。

 
去年、お嬢にお土産で戴いたマレーシア産のヤイロタテハ。

 
【Agatasa calydonia ヤイロタテハ♂ 裏面】

 
(@_@;)ゲッ、お漏らしで翅がグチャグチャやんか。揚げ句、首チョンパのバラバラ~。あらあら、腐ってたのね~。あと2頭残ってるから、まっ、いっか…。
とはいえ、この個体が最も紋が鮮やかで形もいいんだよなあ…。こういう汚れた蝶を綺麗に修復する方法って、ないものなのかしら。

Σ( ̄ロ ̄lll)ゲッゲッ~❗

 

 
2頭めのヤイロタテハもお漏らしさんだべさー。
フタオチョウとかコイツらって、下(しも)がホントっゆるい。食ってるもんも腐った果実や糞尿とかでサイテーの悪食だしさ。あと、現地でそのままタッパーとかに入れてたら腐るし、蟻にもよくタカられる。
何度も、マジかっ、ワレーΣ( ̄皿 ̄;;になったよ。
展翅も羽のバネが強過ぎて、すぐにズリ下がってきて超ウザイし、ボケ~(ノ-_-)ノ~┻━┻❗❗となる。

えーい、急遽、裏展翅じゃボケ~(* ̄ー ̄)

 

 
思うに、タテハチョウって裏の方がカッコいい奴が多いよね。
幸い裏側は汚れてない事だし、コレはお嬢に帰そっかな。でも、臭いと断られそうだな…。

ここからが、Facebookにアップしていない文章。

3頭めも、やはりお漏らしさんだった。
けれど、汚れがまだ少ない方なので、表展翅することにする。考えてみれば、表展翅は初めてだ。

 

 
ヤイロタテハって、上翅を上げるのはこれくらいが限界だと思う。下翅の下辺を無理に真っ直ぐにしようとすると、頭が翅に埋まってしまう。これはあまりにブサいくだ。再三再四そこかしこで述べているが、昔から言われている蝶の展翅のセオリーに囚われ過ぎるのはナンセンスだと思う。翅だけではなく、全体のバランスを考えて整形すべきだと云うのが、ここ数年で行き着いた結論だ。
とはいえ、人にはそれぞれの好みと云うものがあるからして、正解は一つでは無いんだけどもね。
それにしても、汚物で尻が真っ黒けになっとるやないけー。この蝶、お漏らし大王だから、ウルトラ完品って中々手に入らないのかもなあ…。

3日後、嬉しい事に一番最初に展翅したグチョグチョの個体が復活していた。

 

 
少し汚れてはいるが、コレくらいならセーフだろう。
とはいえ、何となく真っ直ぐに写真が撮れてないような気がするので、後日撮りなおす。

 

余計に歪んだ写真になっとるやん( ̄∇ ̄*)ゞ 
それにしても、美しいね(⌒‐⌒)

そういえば、昔ヤイロタテハについてアメブロに書いた文章があったな。

 
https://www.google.com/amp/s/gamp.ameblo.jp/iga72/entry-12110534183.html?source=images

 
暇な人は読んでみて下され。

とはいえ、自分で書いといて、どんな文章を書いたのか全然憶えてない。気になるので、再読してみることにした。

( ̄~ ̄;)むにゃあ~、不満だ。文章に手を入れたくなる。井伏鱒二先生ほどじゃないが、過去の自分の文章が気に入らなくて弄(いじ)くってしまう癖(へき)がある。それがしょっちゅうって云うか、時にパラノイア的であったりする。
大学の後輩が何年か前に言っていたが、或る種の完璧主義なのかもしれない。面倒くさい性格だ。

以下、改訂版である。

 
今回は謂わばマレーシアの蝶の番外編である。

紹介するのはAgatasa calydonia ヤイロタテハ。
この旅では季節が合わず、結局再会できなかった蝶だ。
平嶋義宏氏の『蝶の学名 その語源と解説』に因れば、学名の属名「Agatasa」は語源不詳だそうである。
とはいえ、ギリシャ語のaga(非常に)とtasis(力、強さ)とを合わせたもの、もしくは発音の類似から聖女で殉教者のアガタ(Agatha)に模した造語ではないかと推察しておられる。
小種名の「calydonia(カリュドニア)」は、古代都市の名前で、神話のカリュードンに因むという。

ここで、はたと気づく。そういえば学名の属名は変更されたんじゃなかったかな❓
確認したら、案の定だった。今はヤイロタテハ族・ヤイロタテハ属「Prothoe calydonia」と云う学名になっている。
「Prothoe」の語源は、ネーレース(海神ネーレウスの50人の娘)たちの一人であるprotho(プーロートー)のフランス名なんだとさ。相変わらずのギリシャ神話由来ばかりだ。もう、うんざりじゃよ。

ついでに言っとくと、英名はglorious begum。
gloriousはまだ解るとしても、begumという単語が何なのかさっぱり分からなかったので、これまた調べてみた。お茶を濁すつもりが、もう大変である。

「begum」とは、どうやらインドやパキスタンのイスラム教徒の位の高い女性を指す言葉らしい。辞書によっては、イスラム教徒の王女、王妃、貴婦人とも書かれている。

ここからが種の解説的なものになるのだが、文章の訂正加筆箇所が少ない事を祈ろう。

 
【Prothoe calydonia ヤイロタテハ】
(2011.2.20 Malaysia cameronhighland )

 
大型のタテハチョウの仲間で、フタオチョウに近い種類である(註1)。
和名の由来は、羽の裏側の豪華絢爛たる色彩からであろう。つまり八色からのヤイロなのだ。

4年前(2011年)、初めてキャメロンハイランドで見た時は、その存在さえも知らなかったので仰け反るくらいに驚いた。想像外のデザインだったのである。悪魔的ですらある、そのおどろおどろしくも美しい姿に畏怖さえ覚えた記憶がある。

前に何処かでチラッと書いたかとは思うけど、そのヤイロタテハのラオス産が出てきた。
師匠に戴いたおこぼれのボロだが、探して展翅しようと思うも見つからずに悶々としていたのだ。それが先日、何とまさかの標本箱から見つかった。
まだ展翅していないとばかり思っていたのに、ちゃんと既に展翅してあったのである。人間の記憶なんてものは、如何にいい加減かという証左である。いや、単に己の記憶力が悪いだけか…(笑)

言い忘れたが、師匠に戴いた頃はヤイロタテハは広く東南アジア全般にいる普通種だとばかり思っていた。
だが、それがどうやら違うようなのである。図鑑を見ると、分布はミャンマー、タイ、ラオス辺りから南にあり、その中心はスンダランドだ。驚いた事には、インドシナ半島には多くの空白地帯がある。

 
(出典 塚田悦造『東南アジア島嶼の蝶』)

 
分布図には、ラオスは入っていない。
しかも、既存の分布圏からもかなり離れている。ワケわかんないぞの混乱(´・∀・`)ぴよこちゃんだ。

ならばと他の図鑑でも確認してみる。

 
(出典 五十嵐 邁・福田晴夫『アジア産蝶類生活史図鑑』)

 
こっちの図鑑でもラオスは分布圏に入ってない。(・。・;)どゆ事❗❓

きっと亜種なのだろうが、じゃあ何と云う亜種に含まれるのだろう❓南ミャンマー亜種 A.belisamaなのか❓それとも新亜種なのかな❓

取り敢えずは二つを並べて見比べてみよう。
先ずはマレーシア産の原名亜種 ssp.calydoniaの裏面画像から。

 
(2011.2.20 Malaysia 19miles )

 
お次はラオス南部産の裏面。

 
(2011.4. Laos Tateng)

 
鮮度が悪いので、あまり色は参考にならないだろう。
しかし、上翅の黄色い領域は確実に広い。紋も細かく見れば違う。特に後翅根元の赤い⚡稲妻紋の形などはかなり違う。
だが、こういうのは個体変異もあるから一概には何とも言えない。この2頭だけで判断するのは意気焦燥だろう。

ならばと、表側も見比べてみる。

 
(マレーシア産)

 
(ラオス産)

 
Σ(-∀-;)びっくりだわっ❗、全然違う。
明らかに下のラオス産の方が、マレーシアのものよりも黒い部分が少ない。♀なのかもしれないが、上翅の形も全然違う。こりゃ、完全に別亜種だわ。
塚田悦造氏の『東南アジア島嶼の蝶』には南ミャンマーの個体は図示されていないが、『黄色味の強い基斑紋が後中央まで拡がった美しいもの』とあるから、マレー半島の原名亜種よりかは、そちらの方に近いかとは思われる。

問題は亜種 belisamaに含まれるのか、それとも新たな別亜種となるのかだ。
でも、塚田図鑑にはbelisamaの画像が無いのだから、両者を見比べられない。ここで行き詰まりだ。結局、何かワカランやんか。

 
一応、他の亜種も参考までに図示しておこう。

 
【c.auricinia スマトラ島亜種】
(出典 『東南アジア島嶼の蝶』。以下、何れも同じ。)

 

原名亜種とほとんど変わらないが、後翅裏面亜外縁の黄条が少し太まる。

 
【c.mahasthama ボルネオ島亜種】

少し小型になり、裏面の白色部が目立ち、後翅の白横条が太くなる。

 
【c.multicolor シンケップ・リンガ島亜種】

これもやや小型になり、♂の翅表第2室の黄斑が外に細まり、同室裏面黄色が濃色となる。♀は裏面の赤色紋が褐色に変わる。

因みに参考までに言っておくと、フィリピンに代置種とされるクリソドノイアヤイロタテハとゆうのがいる。

 
【Prothoe(Agatasa) chrysodonia】 

黄色味が強い。ミンダナオ島ではまだ比較的得られるようだが、ルソン、ミンドロ島では稀で大珍品らしい。

ラオス産の完品を見ないとわからないが、個人的には裏の色が一番濃いと言われる原名亜種が好きだ。
珍しい亜種よりも、種内で一番美しいものを評価すると云うのが基本的スタンスなのだ。
もっと言うと、亜種に限らず蝶全般を、どちらかというと珍しさよりも美しさで評価する傾向が自分の根本にはあると思う。普通種のベニシジミやキアゲハを素直に美しいと思うのだ。もし、これらが珍品ならば、拝み倒している人は多いと思う。この業界、珍しいか否かで美しさの値打ちが変わる傾向があるのだ。
まあ、どんな蝶でもよく見れば、大概はそれぞれ固有の美しさがあるんだけどもね。

                         おしまい

 
追伸
師匠にメールでラオス産のヤイロタテハについて尋ねたが、調べると言ったまま、いまだ返答がない。
だから、この文章は最初に書いてから、だいぶ経っているのだ。終わり方に尻切れトンボ感があるのも、そのせいなのだ。

後々、解ったのだが、どうやらこのラオス産のヤイロタテハは新亜種ではなく、亜種belisamaに含まれるようだ。

 
(註1)フタオチョウ

【Polyura endamipps フタオチョウ♂】
(2011年 4月 Laos)

 
大型のタテハチョウで、湾曲した羽と2本の剣のような尾状突起が💖萌え~である。頑強な体躯で矢のように飛ぶ事も含め、オラの大好きなグループの一つだ。
日本の沖縄本島にも天然記念物に指定されている亜種e.weismanniが棲息している(註2)。
但し、分布の最東端にあたり、別種と見紛うばかりに原記載亜種とは見た目の印象がかなり違う。大きさが下手したら二回りくらい小さくなり、尾突も著しく短くなる。また、白い部分も減退し、全体的にかなり黒っぽい。

 
(『日本産蝶類標準図鑑』より。)

 
見た目どころか、幼虫の食樹も違うし(インドシナ半島ではマメ科植物だが、沖縄ではクロウメモドキ科ヤエヤマネコノチチとニレ科リュウキュウエノキ(クワノハエノキ)、こんなのもう別種でもいいんじゃないかと思う。
それに噂では、幼虫形態やその生態も違うらしい。でも天然記念物であるがゆえに、採集は元より飼育も出来ない事になっているから研究も発表も出来ない状態のようだ。官がつくる昆虫関連の法律は、大概が柔軟性に欠け、結局クソなのだ。

ヤイロタテハは、激レア亜種は別として、大珍品とまではいかない蝶だろう。
かといって普通種でもなく、何処にでもいるという蝶ではない。図鑑の記述に拠ると、どの産地でも個体数は少ないようだ。
つまり、行けば誰でも簡単に見られるというものでは無いと云うことだ。実際、自分もキャメロンハイランド以外では見たことがない。しかも、いまだメスにはお目にかかった事がない。たぶんPolyura(フタオチョウ)と同じで、メスは珍品なんだと思う。
それに、たとえ見たとしても弾丸みたいに飛ぶから、先ず空中では採れないだろう。自分みたく運良く吸水に来たものが偶然採れるくらいだ。トラップが無ければ、基本的に採れない蝶なのだ。
そういえば思い出した。タイのチェンマイでお会いした爺さまが言ってたな。その爺さまは毎年チェンマイに通っているそうで、昔はヤイロタテハも結構いたらしい。それが10年ほど前から全く姿を見掛けなくなったという。きっと他にもそういう場所は多いだろう。
考えてみれば、図鑑『東南アジア島岨の蝶』が世に出てから、もう40年近くも経っているのだ。その頃とは珍稀度が大きく変わっている可能性がある。この蝶は低山地に棲む蝶のようだから、環境破壊の影響も受けやすいに違いない。現在のレア度はかなり高いかもしれない。
それでも東南アジアに行く機会があったなら、ぜひとも自然の中で生きている王女に会ってもらいたい。
その力強さ、威厳、悪魔的な色柄、深いジャングルと云うロケーションetc…。探す価値はある。

王女には、もう一度会いたいなあ…。

 
追伸の追伸
 それにしても、初期の頃の展翅は我ながら下手だねぇ~(笑)
よほど展翅しなおしてやろうかとも思ったが、思いとどまった。この文章の為だけになんて、(=`ェ´=)邪魔臭いわい。そこまで完璧主義ではごさらん。

おっ、そうだ。それで思い出した。そういえば、お嬢に貰ってすぐに展翅した奴があった筈だ。

 

 
(・。・)あれっ!?、2頭もしたっけか❓
それにしても、(´∇`)カッコいいなあ。
地面に止まっているのを見た時は、Σ(-∀-;)ビクッとなって立ち止まったのを思い出したよ。その存在を知りもしなかったので、(; ̄ー ̄Aあはは…、幻覚でも見てるんじゃないかと思った。それほどの衝撃だった。そういえば、下手したら、コヤツ蛾でねえの❓とも思ったなあ…。
震える指先で手のひらに乗せて、じっくり見た時の感想も思い出した。曼荼羅みたいだとか、歌舞伎的やなとも思ったっけ。
残念ながら、その時の画像は無い。興奮し過ぎて撮るのを忘れたのだ。初めての海外採集の、まだ二日めとかだったもんな。

  

 
おっ、表側もある。
と云うことは、やっぱり2頭を展翅したって事だね。

 

 
針を外した画像もあった。

 

 
と云う事は、全部で5頭も戴いたってワケだ。
お嬢、💖ありがとね。
こうなると、やっぱメスも欲しくなるなあ…。この蝶は雌雄同型だけど、メスはもっとデッカイ筈。どんだけデカイんじゃろう❓
何とか並べてみたいもんだよねぇ~。

(註2)
このあと、日本のフタオチョウは亜種から別種に昇格し、学名は Polyura weismanni となった。
この辺の事は拙ブログの台湾の蝶シリーズの第2話『フォルモサフタオチョウ』と、その番外編『エウダミップスの迷宮』、『エウダミップスの憂鬱』に詳しく書いたので、宜しければ併せて読んでつかあさい。

それにしても、文章の細かいところも含めてかなり書き直す破目になった。お陰で大掃除は進まんし、オジサンは疲れたよ。

                  おしまい

 
ここで終わりにするつもりだった。
しか~し、文章をアップする為に読みなおしたら、またドえれーところに気づいちまっただよ。
ヤイロタテハはフタオチョウに近い仲間と書いたが、本当かよ❓と云う疑問がムクムクと頭をもたげてきたのだ。又しても、無間地獄のドツボに嵌まっちまった。

疑問を持ったのは、フタオチョウの遺伝子解析の結果を思い出したからである。コムラサキ亜科とかの真正タテハチョウのグループだとばかり思っていたが、結果はジャノメチョウに近いという事が判明したのだった。
ヤイロタテハの、その頑強な体躯や翅の分厚さ、翅表の配色、後翅の尾突起らしき形状は、如何にもフタオチョウを彷彿とさせる。ゆえに両者は近縁関係だとばかり思っていた。しかし、フタオチョウがジャノメに近いならば、果してヤイロタテハもそうなのか❓虫の世界には、他人のそら似と云うのがよくあるんである。
よくよく考えてみれば、裏側の斑紋パターンはフタオチョウとはかなり違う。どころか同属のルリオビヤイロタテハを除けば、他に似ているものさえいない。
じゃ、あんた何者❓

ヤイロタテハの遺伝子解析の論文を探すが、見つからない。絶対、既に解析済みの筈なんだけどなあ…。学者さんが、その辺を見過ごすワケがないと思うんだよねぇ。
勝山さあ~ん、おせーてよー(ToT)
とはいえ、直接お尋ねする程の面識は無いもんなあ…。

ならば、幼生期の形態で判断じゃ。蝶は幼生期の形態で、大体の類縁関係が分かるのだ。
伝家の宝刀『アジア産蝶類生活史図鑑』を開いてみる。

(;゜∇゜)あぅぅぅ…ゲロリンコ、何じゃお主は❗❓

 

(出展『アジア産蝶類生活史図鑑』)

 
ヘ(゜ο°;)ノ≡3≡3きっしょー、最低クラスの醜さだ。バケモンじゃよ、バケモン。形だけでなく、色までトドメ色で酷いや。おどろゲロリンコ星人やな、おまえー。
それにしても、フタオチョウの幼虫とは全然似てないぞー。

 
【フタオチョウ幼虫】

 
【フタオチョウ頭部正面図】
(出展二点共 手代木 求『日本産タテハチョウ幼虫・成虫図鑑』)

 
一応、コムラサキ亜科特有のナメクジ型ではある。
強いていうならば、目の先の形状がスミナガシの仲間に近いかもしれない。いや、トゲトゲや突起物は無いけれど、ミスジチョウやイチモンジチョウ系の幼虫にも似てるっちゃ似てるか…?
『アジア産蝶類生活史図鑑』の解説を読むと、興味深いことに、その生態はイシガケチョウ属、スミナガシ属、イチモンジチョウ属、ミスジチョウ属など様々なタテハチョウ科の幼虫の色々な習性が混じっているらしい。何じゃ、そりゃ❓

蛹の形状も見てみよう。
左から側面、腹部側正面、背面側正面である。

 
(出展『東南アジア産蝶類生活史図鑑』)

 
解説にも書かれてあるが、蛹の形状は色は違えど何とまた別なタテハチョウ科のEuthalia(イナズマチョウ属)にソックリじゃないか。色が灰色じゃなくて緑色だったら、まんまである。

一応、フタオチョウの蛹も図示しておこう。

 
(出展『日本産タテハチョウ幼虫・成虫図鑑』)

 
違うなあ…。
この事実を見ると、とてもフタオチョウに近縁だとは言えそうにない。
それにしても、イシガケチョウ、スミナガシ、イチモンジチョウ、ミスジチョウの幼虫と行動様式に共通点があって、蛹はイナズマチョウに似てるって、もう鵺(ぬえ)的存在で、何が何だかワカラナイや。

因みに、食樹はバンレイシ科のDesmos chinensisと云う植物らしい。バンレイシ(蕃茘枝)って、たしか果物だよね?別名シュガーアップルとか釈迦頭と言われている奴だ。味はバナナとパインの合の子みたいで甘みが強い。けど、食感は梨みたいなシャリ感のある摩訶不思議な果物だ。
(`ロ´;)クソッ、食樹までも果物界の鵺とかキメラなのかよ。
とにかくバンレイシ科を食ってる蝶の幼虫だなんて、勉強不足かもしんないけど、知る限り記憶にない。上位分類にまで広げるとモクレン目になるが、それとてざっと見る限り、タテハチョウの食樹らしきものは見当たらない。クスノキとかモクレン系が含まれる目だけれど、それはアオスジアゲハとかのアゲハの食樹なんだよなあ。
これじゃ、植物に疎い自分には何に近い種なのか特定しようもない。
スマン。大風呂敷を広げといて、結局はグダグタの結末だ。

結論の無いまま迷宮に取り残され、歳末の夜は静かに更けてゆく。
皆さん、良いお年を。

              今度こそ、おしまい

  

2018′ 選抜高校野球回顧 決勝戦

 
今更ながらの2018年選抜高校野球の観戦レポートも、いよいよ最終回である。
でもこの試合、あんま印象に残ってないんだよねー。

 

 
試合は例年通りに、お昼に始まった。
そういえば、昔ナイターの決勝戦があったなあ…。
たしか同じく選抜の決勝戦だったと思う。対戦カードは愛工大名電vs済美だったかな。随分と昔のような気がするが、あれはいったい何年前だったのだろう…。

調べてみたら、何と2004年だった。何と14年前じゃないか。そりゃ、アッシだってオジサンにもなるわ。
Wikipediaによると、この第76回大会で初めて球速表示がされるようになったそうである。( ・∇・)へぇ~。
何でナイターになったのかと云うと、天候不順で試合開始時刻が夕方の4時にずらされたのだった。たぶん、この年はよほど日程がカツカツだったのだろう。
実際に試合が開始されたのは、午後4時55分だったそうである。そういえば結構待たされた記憶がある。
その日は物凄~く寒くて、ワンカップの熱燗を買って暖をとりなからの観戦だったのをよく憶えている。
後にも先にも甲子園で熱燗を飲んだのは、その1回こっきりである。
結果は6ー5で済美が勝利。記憶では愛工大名電が優勝したとばかり思いこんでたけど、勝ったのは済美だったんだね。その理由を朧気(おぼろげ)ながらに感じる。まあ、いい。思い出したくない事だってある。
そっか、そういえば済美が初出場で初優勝したんだね。しかも夏は準優勝だった。もし夏にも優勝してたら、もちろん至上初で歴史に残るチームになってたのに…。惜しい。亡き上甲監督が率いた中では、最高のチームだったかもしれない。
済美のエースはドラフト1位で広島カープに入団した福井だったと思う。そういえば今年どっかのチームにトレードに出されてたよね。あとヤクルトの鵜久森なんかもいて活躍した。彼はもう引退したんだっけ?
記憶は思い出し始めると、数珠繋ぎだ。
そして、約束していた彼女はついぞ球場に現れることはなかった。体だけでなく、心も寒さに震えていたのだ。思い出したくないってのは、この事実だ。
その帰りに見た夜桜が、満開だったのを今だに強く憶えてる。凄絶なまでに美しかったのだ(註1)。
春夏通じての長い高校野球の歴史において、ナイターで決勝戦が行われたのは、今もって唯一この試合だけだそうである。

何だか文章全体のカッコつけたラストみたくなっちまっただよ(笑)。
先のことを考えず、思うがままに書いているから脱線はいつもの事じゃないかと書いて、一旦手が止まる。だとしても、文章を閉じるかのような脱線は初めてだわさ。脱線癖もここまでくると重傷かもしんない。かといって急に治るワケでもない。まっ、気を取り直して続けまひょ。

 

 
本日も外野席に回る。
バックネット席も空いていたと思うが、1試合だけだし、勿体ないと判断したんだと思う。高校野球の試合って、すぐ終わっちゃうんだもん。2時間を切る試合なんかざらなのだ。

 

智弁和歌山は大阪桐蔭に対して公式戦3連敗中だそうである。智弁としては是が非でもリベンジしたいところだろう。しかし、実力的には矢張り桐蔭の方が上。順当にいけば大阪桐蔭の春連覇の可能性が高い。
とはいえ、戦前の予想がアテにならないのも甲子園である。智弁は準々決勝、準決勝とミラクルな逆転勝ちで延長戦を制してきた。謂わば波に乗っているチームだ。勢いのあるチームは侮れない。それに名将高嶋監督の今年中の勇退が決まってた筈だから、選手も監督も気合い充分だろうしね。

大阪桐蔭の先発はエースの柿木くんだとばかり思っていたが、何と昨日ロングリリーフした根尾くんだった。多分、柿木くんは監督に今イチ信頼されてないんだろなあ。って云うか、根尾くんはこの世代最高のピッチャーの一人だもんね。素人のワシでも根尾くんでいくわいな。

試合は初回から動くだろうと予想してたが、序盤はスコアボードにゼロが並んだ。何かツマンネーなあと思った記憶がある。

 

 
4回表の智弁和歌山の攻撃で漸く試合が動く。
先頭打者がセカンドのファンブルにより出塁。続く冨田がライトへヒットを打ち、ランナー1、2塁とする。ここで智弁で一番当たってる黒川くんを迎える。で、期待に応えてセンターへのヒットを放ち、満塁となった。
黒川ちゃん、やっぱスゲーわ。アンタ、最高❗
しかし、次打者がピッチャーゴロで1-2-3のダブルプレー。あっという間に2アウトとなる。( ̄▽ ̄;)あちゃまー。こりゃダメかと思いきや、次の東妻くんがレフトへ先制タイムリーヒットを放って、智弁が2点を先制した。
智弁が先制となると、俄然試合が面白くなる。大阪桐蔭が焦り出したら、智弁に勝機有りだ。

だがその裏、大阪桐蔭もすかさず反撃する。
藤原がピッチャーへの強襲安打で出塁。根尾のライトへのヒットで1,3塁とす。藤原くん、やっぱ足が速いわ。故障あけだそうだが、もう大丈夫みたいだね。
そして、山田が死球を受けて満塁となる。
続くバッター石川のショートゴロの間に大阪桐蔭か1点を返した。しかもショートがエラーかましてもうて
、一つもアウトが取れなくて満塁のまま~。
そして次打者のダブルプレーの間に、もう一人ランナーが帰ってきて、2ー2の同点とした。
よっしゃ、これで試合がスリリングなってきたぞー。
でも、智弁和歌山って守備が今イチだよね。少数精鋭でバッティング練習ばっかしてるからかなあ?
何か智弁和歌山って、毎年打撃は凄いけどピッチャーは程々だし、守備は普通か、それ以下ってチームが多い気がするなあ…。

5回裏に大阪桐蔭が1アウト2、3塁のチャンスを作るも、3塁走者が憤死して無得点。智弁も6回にランナーを出すが、無得点。膠着状態が続く。

7回裏、大阪桐蔭が均衡を破る。先頭打者がストレートのフォアボールで歩く。ここで投手交代。漸くエース平田がマウンドへ。
続く打者が送りバントを成功させ、2塁にランナーを送る。そして、宮崎のレフトへのタイムリーヒットが出て3ー2と勝ち越す。

8回表、智弁はフォアボールで出たランナーが、根尾の暴投で2塁に進むも、後続が凡退して無得点。完全に根尾くんを攻略しあぐねている。

8回裏、大阪桐蔭はフォアボールとピッチャーのワイルドピッチで、ノーアウト2塁とする。ここで4番の藤原がレフトへタイムリーツーベースを放ち、4ー2となる。流石、藤原くんだべさ。相変わらずの持ってる男だよ。男前で足が速くて、ここぞと云うところで派手に長打を打つだなんて、女子はワーキャーだな。
そして、二刀流ミスター優等生の根尾くんが、とどめとばかりのレフトへのタイムリーヒット。これでダメ押しの5ー2。いくら爆発力のある智弁打線でも、残り9回の攻撃だけで、根尾くんから3点取るのは厳しいと思った。

そして、とうとう9回表、智弁最後の攻撃まできた。
それはそうと、智弁も桐蔭も応援するブラバンのレベルが高いよね。これも高校野球を楽しむアイテムの一つだから、皆さん球場に行ったらシッカリと耳を傾けましょうね。

 

 
特に大阪桐蔭のブラバンはレベルが高くて、コンクールの常連らしい。
野球やってる子たちだけが青春じゃなくて、アルプススタンドでも青春が迸(ほとばし)っておるのじゃね。アルプススタンド好きのファンは、そこんとこが好物なのだろう。
演奏力だけなら、智弁よか桐蔭に軍配が挙がるかな。とはいえ、曲目は智弁和歌山の方が好き。「アメリカンシンフォニー」とか「シロクマ」が有名だし。それに何より魔曲「ジョックロック」がある。これがかかると球場全体が何かが起こりそうな雰囲気になるのだ。
あっ、そういえばこの選抜から新曲「ミラクルショット」が演奏されるようになったんだよね。これが巷では新魔曲だとか言われてて、もの凄く耳に残る。

 

 
これは聞いた事のある人が多いと思う。元ネタは「報道ステーション」のスポーツコーナーのテーマ曲。それを編曲したものらしい。マジで、この曲とジョックロックのメドレーが流れるとゾクゾクくる。この曲をバックに戦える智弁の選手は幸せものだね。

先頭バッターは黒川くん。今大会の智弁の躍進は、この男なくしては語れない最も期待の持てる打者だ。
もし智弁が三度目のミラクルを引き起こせば、高校野球史に残る名試合になろう。歴史的な試合の証人になる事は、高校野球ファンの願いだ。たかだか観客として、生で試合を観ただけなんだけど、なぜか自慢になる。自分がグラウンドでプレーしているワケでも何でも無いのにね。
しかし、生観戦にはTVでは分からない独特の空気感がある。アナウンサーの絶叫の無い世界には、押し付けの演出や感動は何処にも無い。そこにはリアルな音や匂いがあって、それが堪らなく居心地が良いのだ。

しかし、黒川くんが先頭打者と云う事は、チャンスで打席が回ってこない公算が高いって事だよね。
自分がもしピッチャーならば、黒川くんは最も警戒する打者だが、このシチュエーションだとむしろ気持ちが楽に持てるだろう。一番怖いバッターが、ピンチに打席に立たれる事が最も心拍数が上がるのだ。
と思ってる間に、ライトへのヒットで出塁❗やっぱ、黒川くんは凄いわ。このまま夏、来年と成長していってほしいよね。
しかし、後が続かず。代打が出てきて、空振り三振。
次はセンターフライ。最後はドン詰まりのファーストゴロで、あっさりゲームセット。

  

 
大阪桐蔭、選抜二連覇❗
とにかく、🎊おめでとう。

 

 
優勝投手は、去年に引き続き根尾くん。
二年連続で歓喜の真ん中にいられるだなんて、そうある事じゃない。しあわせな選手だよ。
柿木くんは、エースなのに口惜しいだろうなあ。
やはりエースたるもの、優勝の瞬間にマウンドに立っていないと嬉しさも半減するもんね。

 

 
球場を後にして、歩き始める。
歩きながら、ふと思う。来年もまた此処に来られるのだろうかと。立ち止まり、春の優しい青空を仰ぐ。
来年の事なんて、わからないや。

 
                  おしまい

  
ーあとがきー

準々、準決勝と比べて、この今一つ盛り上がりに欠けた試合内容が、冒頭の「あんま印象に残ってないんだよねー。」と云う言葉にきっと繋がったんだろうね。
まっ、決勝戦って案外つまんなくて、期待する程には熱戦にならない事が多いんだけれどもさ。そういえば今年の夏の決勝戦もワンサイドゲームだったなあ。
おっ、そうだ。告知と云う程の事ではありませぬが、夏の大会の観戦レポートは来年に書く予定でゲス。あくまでも気が向けばですが。
蝶の記事ほどではないが、甲子園レポートもそれなりに書くのに時間がかかるのだ。ようするに、面倒くせーって事ね。

え~、こんな今更ながらの文章にお付き合いしてくださった方々、本当に有り難う御座います。
えっ❓何でこんなタイムリーではない文章を今更ながらに書いたかって❓
う~ん、それは自分でも解るようでよく解らん。
人生には、時に本人にもよくワカラン行動とゆうものがあるのだ。

 
(註1)今年は春の訪れが早くて、その球場前の桜はとうに散ってしまっていた。年々により季節の移ろいは一様ではないのだ。
因みに、その桜の木そのものは今は無いと思う。たぶん、タイガースグッズのお店を建てる折りに、伐り倒されたのだろう。

 

2018′ 選抜高校野球回顧 準決勝

 
今更ながらの第90回選抜高校野球のレポートの第2弾、準決勝である。

  

 
前回に3日連続通ったと書いたが、実をいうと一日空いての4月3日の観戦。なぜかっちゅーと、今は準々決勝と準決勝の間に一日休養日が入るからなのだ。すっかり忘れてたよ。

  

 
強豪名門校が集まりましたなあ。
このうち智弁和歌山、東海大相模、大阪桐蔭は春も夏も優勝経験がある。三重だって昭和44年と、ちと古いが春には優勝した事があるし、2014年の夏には準優勝だってしている。充分強豪校と言っていいだろう。
とにかく強いチーム同士の戦いは、レベルが高いだけに面白くなる確率が高いよね。
実際、高校野球ファンの間では、実力伯仲のチームがぶつかるこの準決勝が一番面白いと言われている。
ベスト8までは組合せや運で進出できる事もあるが、準決勝は実力も運もあるチームでないと中々勝ち進めないからだ。今回はそのセオリーに違(たが)わぬ好チーム同士の白熱した試合になった。

この日はバックネット席は売り切れだったので、外野席に回ることにした。

 
第1試合 智弁和歌山vs東海大相模

 
試合は既に3回表の智弁の攻撃まで進んでいて、4ー0と東海大相模がリードしている。でも、コレは知ってた。なぜかと云うと、家でTVを見ていたからである。初回に東海大相模が2年生投手を攻めたてて一挙4点を先制し、智弁は早くもエースピッチャーを投入せざるおえない展開になったところで、急遽球場に行く事にしたのである。自宅の難波から甲子園までは、30分掛かるか掛からないかで行けてしまうのだ。
全国の高校野球ファン諸君よ、どーだ羨ましいじゃろう。Ψ( ̄∇ ̄)Ψそう~りゃ、Ψ( ̄∇ ̄)Ψそう~りゃ、羨ましがれ~、身をよじって羨ましがれ~。
( ̄ー ̄)フフフ…、あたしゃ性格が悪いのですよ。

 

 
センターのレフト側中段に陣取る。
取り合えずは🍺ビールをゴクゴクいかせてもらう。
ぷは~(≧∀≦)==3
世に働く企業戦士たちを尻目に、こうして青空の下で野球観戦しながら飲むビールは、やっぱ、最高じゃよ。
えー、ツマミは画像が無いので分かりませぬ。とはいえ、わざわざ写真を撮ってないところをみると、どうせ定番の枝豆とか唐揚げとかポテサラじゃろう。
と、アルコール摂取に気をとらわれてる間に智弁が2点返した。智弁は林、東海大相模は森下と云うプロ注目のスラッガーを中心とした強力打線だから、戦前の予想通りの打撃戦になりそうだなと思った。そういう試合は好物。皆はん、打って、打って、打ちまくりなはれ~。

4回表に智弁が3点取って、5ー4と逆転した。
やはり、智弁和歌山打線は伝統的に爆発力がスゴい。打ち出したら止まらないイメージがある。帝京との試合とかは凄かったもんね。

5回裏。東海大相模の攻撃。
1回にスクランブル登板で後続を断ち、ここまでスイスイと投げてきたエース平田くんが、この回もポンポンとツーアウトまで取った。こりゃ、智弁ペースになっていきそうだなと思った矢先、打ち取った筈のショートゴロがバウンドが変わってラッキーなヒットになった。そして、次打者渡辺くんがライトに強烈なツーランホームランを打ち、あっという間に6ー5とひっくり返した。
o(^o^)o面白れぇ~。
オジサンになるにつれ、いつしかどちらかのチームに極端に肩入れをして観なくなった。勝ち負けは2の次。そんな事よりもゲームの内容が大事。今は互いが死力を尽くした熱い試合を見られれば、それで良いと云うスタンスだ。どちらかのチームに強い思い入れを持つと、負けた時にガックリきて疲れるのよ。

6回裏、さらに試合が動いた。
ノーアウトから平田くんがフォアボールを許す。その後ファーストが二塁へ悪送球。更に前進守備のショートが正面のゴロを後ろに逸らす。とどめはサード林の1塁悪送球で、あっという間に10ー5になった。フォアボールに連続エラー連発って、負けるチームの典型だ。この時点で智弁の勝ちはないなと思った。

しかし、智弁は7回に1点返し、8回にはランナーを二人置き、エラーした林がライトフェンス直撃のヒットを放って2点返して10ー8と猛追。
それにしても、林くんよ、ホームランと思って、やったとばかりにカッコつけてバットを放り投げたけど、そのせいでシングルヒットどまりになったやないけ。低めのボール玉につられて空振りばっかしてるし、しっかり走らない選手はアカンえ~。彼は秋にはドラフト3位で広島カープに指名されたけど、そういうプレーをしてるとプロでは大成しないぜ。まあ、とはいえ入ったチームがカープだからシッカリ育ててくれるかな。まあ気合い入れて、お気張りしなはれ。
それはそうと、智弁和歌山の選手ってプロに入ってもあんまり活躍しないのは何故なんだろね。日ハムの西川くらいしか思い浮かばない。何か理由でもあるのかな?

そして更にチャンスは広がり、ツーアウト満塁に。
そこで回ってきたのが前の試合でさよならタイムリーを放った黒川くん。
彼はホント良い打者で、打ちそうなオーラがあるから打つんじゃないかなと思ったら、やっぱりのセンターへの鮮やかなヒットを放つ。これで10ー10と試合はふりだしに戻った。( ☆∀☆)スッゲー。

試合は延長戦に入った。
10回表。智弁はヒットとフォアボールのランナーをバントで進め、1アウト2、3塁とする。

当然の如く智弁アルプススタンドから勝ち越しの狼煙(のろし)、魔曲『ジョックロック』が大音量で押し寄せてくる。

 

 
冨田くんのセンターへの犠飛で1点を勝ち越す。
そして、続く黒川くんが左前適時打でダメ押しの2点目が入った。又しても黒川くん❗これで4打数3安打だ。完全に勝利の女神を呼び込むラッキーボーイだね。

その裏の東海大相模が無得点に終わり、12ー10で智弁和歌山が勝った。いやはや、見応えのある試合でした。

 

 
この日は、ぽかぽかして暖かかったんだよね。
春だなあ…と思った記憶が甦ってきたよ。

 
第2試合 三重vs大阪桐蔭

 
センター左中間寄りから、右中間寄りに席を移す。
客席の空席情況によって、席はよく移動する。場所が変われば、視点も変わるからだ。たぶん生来落ち着きの無いせっかちな性格なのだろう。

冒頭に少し触れたが、三重高校が2014年夏に準優勝した時の相手が大阪桐蔭である。謂わば今回は三重のリベンジがかかっている因縁の試合なのだ。
とはいえ、大阪桐蔭に返り討ちにあうだろうと云うのが戦前の予想だった。しかし、試合は意外な展開で進んでゆく。

3回表、三重の攻撃。先発柿木がレフト前にヒットを打たれ、すかさず盗塁を決められる。このチャンスにここまで5打点と当たっている梶田くんが三遊間を抜いて先制する。さらに右中間への大きな当たりで1点を追加。2ー0とリードする。

一方、大阪桐蔭は度々チャンスを作るも、あと1本が出ない。漸く6回に1点を返すが、流れからではない山田のソロホームランでの得点だった。反撃開始と云う程には、ムードは盛り上がらない。
記録を見ると、ピッチャーは5回表からは柿木に変わって根尾が投げている。思い出したよ。それで、三重打線がすっかり沈黙してしまう。今思えば、このエース柿木をあっさり諦めて根尾に変えた西谷監督の決断が、勝負の流れを呼び込んだのだと思う。西谷監督は、ただの流し目デブではないのだ。まだ若いのに名将と言っていいだろう。チンプンカンプンの迷采配をする浦和学院のモリシや横浜のヒラタ、中京大中京のタカハシとは大違いだ。そういえば、平安のハラダも『お前ら、最高だあー!』とか叫んでて、変だなあ。
でも、モリシの采配はあまりにもおバカ過ぎて笑えるんだよなあ。もうファンと言ってもいいくらいに、その一挙手一投足に魅了されてる。モリシー、来年に夏には待ってるよー。

 

 
7回を終わって、三重が2ー1と大阪桐蔭をリードしている。予想とは違うロースコアの展開だ。 
当時の思いでは、三重って準々決勝は乱打戦で結構相手チームにも打たれているのに何で桐蔭打線が抑えられているのかな❓と疑問しきりだった。
三重の選抜の準々決勝までの戦い振りが気になったので、せっかくだからここでちょっと調べてみよう。

見ると、ここまで日大三高を8ー0、乙訓を2ー1、星稜を14ー9と強豪高を破ってきている。
日大三高は夏の大会にはベスト4まで勝ち進んでいる。そのチームを8ー0と退けているのだから、間違いなく強いチームと言えよう。この日、桐蔭戦で投げている定本くんが先発して、日大三打線を散発7安打、与四死球2で完封している。日大三も強力打線が売りのチームだから、それを完封するとなると、やはり良いピッチャーなのだ。大阪桐蔭打線を苦しめているのも偶然ではなかったと云うことだ。
乙訓は夏の大会には戻ってこれなかったが、選抜では投手力のある好チームだったと記憶している。ベスト4くらいまでは勝ち上がるのではないかと思ったくらいだ。そのチームに接戦で勝ち上がると云う事は、チームに地力があると見ていいだろう。因みに、乙訓戦では定本くんは登板していない。
星稜は夏には2回戦で破れてはいるが、相手はその後ベスト4まで勝ち進んだ済美高校で、しかも延長13回の末にサヨナラ負けしている。つまり、星稜も相当強いチームだったということだ。因みに乱打戦になった星稜との試合では、定本くんは最終回だけの登板で、ピシャリと3人で抑えている。
三重の強さ、半年以上も経って納得なるほどだよ。

そして、試合はとうとうそのまま9回裏まで進んでしまう。球場内に、もしかしたら番狂わせが起こるのではないかという雰囲気が漂い始めている。強いチームが破れる時は、往々にしてこんな試合展開が多いものだ。自分も7、8割の確率で三重が勝つのではないかと思った。今思えば、後に春夏連覇を達成したこのチームにも絶体絶命のピンチがあったんだね。圧倒的な強さで、楽勝で連覇したイメージが強いけど、そうでもないのだ。

 

 
先頭打者の根尾が一度もバットを振ることなく、1塁に歩いた。球場がまた別な意味でざわつく。こういうフォアボールを出すのは、ピッチャーが勝ちを意識して体が固くなっている証拠だ。これで三重の全選手にも緊張が伝染する。観客もその辺のところは敏感に嗅ぎとっているのだ。高校野球の面白さは、メンタルがモロに出てしまうところである。それが予想不能なドラマを起こさせるのである。
ここで前の打席にホームランを打った山田がバッターボックスに入る。どうする❓その色っぽい流し目から全国のデブ専に絶大なる人気を博している西谷監督❗
しかし、山田は何とバントの構え。そうだよな、それが正しかろう。ここは是が非でも二塁にランナーを送り、1点をもぎ取って先ずは同点にする事が肝要だ。
だが、あろうことか山田がバント失敗。キャッチャーフライに倒れる。今度は逆に大阪桐蔭側にプレッシャーが掛かるだろう。こういうミスは流れを変えかねない。三重側に運が回ってしまうことだって、往々にしてある。
続く石川が三遊間ヒットを放ち、1、2塁となった。
こういう場面でヒットを打つなんて、メンタル強いね~。強いチームは技術だけでなく、心も強いから強いのだろう。
そして、次の小泉が外角低めの難しい球を執念でライト前に持っていって、土壇場で追いついた。
(≧∀≦)痺れる試合だね~。
あそこでエンドランをかけるとは、西谷監督って勝負師だねぇ~。エンドランじゃなかったら、打者だってあの球は振っていなかったかもしんない。

  

 
エンドランが掛かっていたので、ライナーは1、3塁。もう1本出れば、サヨナラ勝ちだ。
だが、後続が倒れて延長戦に突入。
準決勝は接戦になることが多いとはいえ、2試合とも延長と云うのは珍しい。ざっと記憶を辿ってみたが、思い出せない。調べてみたところ、28年振りで、選抜史上2度めだそうである。

11回裏。大阪桐蔭がツーアウト2塁のチャンスを迎える。しかし、途中出場の井阪の痛烈なファーストライナーを1塁手が好捕して、ピンチをしのいだ。球場内に呻きと溜め息が地鳴りのように広がる。
ここまで書かなかったが、三重の守備は素晴らしい。
この守備の固さが大阪桐蔭の得点を何度も阻んできたのだ。大阪桐蔭の残塁11が、それを示している。
いや~、それにしても完全に抜けたと思ったよ。それくらい良い当たりだった。

そして、ゲームはとうとう12回の裏までやってきた。
今大会から規程が変わり、今までは15回で引き分け再試合となっていたものが、12回を越えると試合形式がタイブレーク制に変わる事が決まっている。つまり、もし12回が終わっても決着がつかなければ、高校野球史上初めてのタイブレークの試合になると云うワケだ。ちょっとタイブレークを期待する。

ワンアウト後、ショートの悪送球でランナーが出る。
ここまで固い守りでしのいできた三重にとっては、浮き足立ちかねない痛い失策だ。そして、迎えるは打線の中軸である。球場内の空気が再び不穏になる。だが三番中川は三振。ツーアウトとなる。そして、打席に四番のイケメン藤原が打席に入った。
ちょっとタイブレークを見たかったけど、打つと思った。彼は、こういうチャンスに回ってくる巡り合わせみたいなものを持っている。そして、そこでド派手な結果を残すスター性みたいなものがあるのだ。去年の選抜決勝戦でも、2本のホームランをカッ飛ばして一挙に全国区の選手になった。ただの男前ではないのだ。

快音を残して、ドライヴの掛かった打球はグンとホップし、左中間に切れ込むようにして曲がりながら飛んでいった。そして、外野手の間を真っ二つに割って抜けていった。
1塁ランナーが疾駆してホームへ戻ってくる。
滑り込んだその瞬間、ゲームが幕を閉じた。
3ー2。大阪桐蔭のサヨナラ勝ちだ。

 

 
歓声が爆発して、やがて、ゆっくりとざわめきへと変わってゆく。

 

 
緑の芝生に照明灯の影が長く伸びている。そこに、夕暮れ間近の春のやわらかな光が降り注いでいる。
ゆっくりと腰を上げ、大阪桐蔭の校歌を背に球場を後にした。
いつ来ても、甲子園は素敵だ。

                   つづく

 

2018′ 選抜高校野球回顧 準々決勝

 
今更ながらである。
でも、今更だからこそ見えてくることもあるだろう。

例年なら『(@@)べろ酔い甲子園』と題して泥酔へべれけ観戦レポートを書いているんだけど、今年は色々あってついぞ書きえなかった。
色々って、何だったっけ(・∀・*)❓
あっ、そっか。この時期は麗しきカラスアゲハについて書き始めてて、アタマがΣ(×
×;)わいていたのだった。
そもそもがこの蝶、色んな人が色んな見解で分類しててシッチャカメッチャに錯綜している。それにも拘わらず、足を踏み入れちゃって立ち往生の脳内大混乱。いたずらに文章が止めどなく長くなってゆくと云う無間地獄に陥っていたのであった…(註1)。
アカン、のっけからの脱線だ。話を本筋に戻そう。

 

 
たしか1回戦とかは全然観に行けてなくて、いきなり準々決勝から3日連続通ったんだよね。
日付を見ると、観戦日は4月1日となっている。
あっ、エイプリルフールだったのね\(^_^)/
別にエイプリルフールだからって、何がどうと云う事はないんだけど、おいちゃん、ついプチ喜んじゃったよ。大概の人間は、こういうどうでもいい様な小んまい事に一喜一憂したりして日々過ごしているものなのだ。人生には多くの小さなアクセントとか句読点が必要なのである。でないと、誰しもがやっとれんだろう。

 

 
( ̄∇ ̄*)ゞあちゃー、全然記憶にないや。
取り敢えず残っている画像を見れば、ボチボチ試合内容を思い出してもこよう。相変わらずの無軌道無計画男だが、このまま書き進めることにする。

こうして対戦カードを見ると、感慨深い。
たとえ選抜でベスト8に残る実力があったとして、夏には来れなかったチームもあるんだなと気づく。この8つの中では日本航空石川、東海大相模、三重の3校が戻って来れなかった。たぶん序盤に破れ去ったチームならば、半分以上は戻って来れてない筈だ(註2)。
改めて甲子園への道は険しいんだなと実感するよ。

 

 
へぇ~、この日はバックネット(中央特別内野自由席)のチケットがまだあったんだね。しかも二千円だもんな。めちゃんこ安いわ。高校野球の魅力の一つは、このチケット代の安さにある。最大4試合まで観れて、この値段はコスパ最高のスポーツイヴェントでしょう。
それがさあ、この先の夏の大会になるとチケットは値上がりするわ、基本的に前売り制になるわで最悪。ふらっと来て『あっ、バックネット席あるやんかー、(^-^)vラッキー!』ってな事は、思えばこの選抜が最後になってしまった。
しかも夏には全席指定制になったんだよね。それって、席がガラ空きになっても移動できないって事じゃないか。世の中、適度なゆるさが失われて、どんどん息苦しくなってゆくばかりよ。嘆かわしい事やね。
値上がりはまだしも、チケットの販売方法を変えたのは完全に改悪だろ。むしろ入場できない甲子園難民を増やす結果になったと思う。オイラのような地元の者なら簡単に諦めもつくが、地方からやって来た人にはあまりにも酷な仕打ちじゃないか。高野連さんよ、その辺の事をちゃんと考えての制度変更なのかね?どうせ高野連なんて、自分たちの都合と金儲けの事しか考えてないんでしょうよ。

 

 
通路から観客席に入ると、突然目の前の視界がワッと開けた。この瞬間が堪らなく好きだ。
すり鉢状のスタンドとざわめく観客。バックネットの向こうに広がるグラウンドと駆け回る選手たち。後ろには巨大なスコアボードが聳え立っている。その上には、少し霞んだ眠たげな春の青空が天蓋の如く在る。そして、僅かな時間差を置いて耳に音の塊が飛び込んでくる。応援団の声援とブラスバンドの演奏だ。
甲子園には、いつ来てもゾクゾクする。特にバックネット裏からの光景は最高だ。球場に漂う独特の空気に一瞬にして包まれ、何だかジワッと全身を這い登ってくるものがあるのだ。これだけでも甲子園球場に来る価値は充分にあると思う。

 
第一試合は既に4回裏の東海大相模の攻撃に入っていた。スコアは1ー1。思った以上に日本航空石川が善戦している。

先ずは🍺ビールをグビッといく。
(≧∀≦)きゃひーん、朝から飲むビールは最高だね。性格が悪いので、働いている人、( ̄∇ ̄)ザマーミロと思ってしまうのだ。

 

 
画像を見ると、どうやらこの日の酒のツマミは紀文の「プリプリいか天」と「にせタラバ」だったようだな。
そうだ、ダイエー(イオン)が閉店していたから、仕方なく駅前のコンビニで買い物をしたのだった。
おっといけねー。にせタラバはオラが勝手につけた名前で、正式名称は「したらば」であったぞよ。
どちらもビールのツマミにはベリーgoodだ。プリいかは、中に刻んだイカが入っており、その食感のアクセントがごっつええねん。にせタラバは紀文の最高傑作だろう。プリでブリの食感と本物と見紛うばかりの蟹味。その完成度には驚きを禁じえない。たぶんタラバガニを食った事の無い奴にタラバガニだと言って食わせれば、『タラバって、メチャ旨いやん❗』と言う奴だっているに違いない。
ゆえに、まだ食べた事の無い人には先ずは基本のプレーンタイプをお薦めする。その驚愕のクオリティの高さを存分に味わうがよい。間違っても、ゆめゆめマヨネーズを中に仕込んだヤツなんぞを選ばぬよう。百歩譲って、それも旨い事は認める。しかし、邪道だ。何事においても入口と基本は大事。初めっからSMとか浣腸とか、ほにゃらら等の変態プレーに決して走ってはならない。そんな奴はロクな大人にならんぞι(`ロ´)ノ
思えば、岩清水八幡宮の帰りに京都ローカルのコンビニ『アンスリー』八幡市駅店で、この二つに出会ってから私の人生は大きく変わったのだった…。
ι(`ロ´)ノいかーん、また脱線暴走半島一人旅、ワケわかんねーモノローグが始まっちまうとこじゃったよ。
(  ̄ー ̄)軌道修正。

 

 
結果は、東海大相模がその後に追加点を入れて3ー1と勝利。
日本航空石川も頑張ったが、まあ順当な結果だろう。

 

 
第2試合は創成館vs智弁和歌山。
創成館は確か秋の神宮大会の準優勝チームだ。一方の智弁和歌山は甲子園常連の強豪校。好試合が期待される。

智弁の応援が始まり、人文字が揺れる。
智弁のブラバン演奏は好き。オリジナル曲も多いし、聴いていて楽しい。特にチャンスの時に流れる魔曲『ジョックロック』は、めっさ球場全体が盛り上がり、相手が浮き足だって逆転劇が起こる事が多い。魔曲たる所以じゃよ。

参考までに動画を貼り付けておきます。

 
聴けば、あっコレねと思う人も多いだろう。
そう云えば、過去に奈良の智弁と智弁和歌山が対戦した事があったっけなあ…。アレはとっても変な気分だった。グラウンドにいる全員が同じユニフォームで駆け回り、何が何だか分からなっちゃうし、微妙に違うとはいえ、両方とも白地に赤の人文字だし、どちらのスタンドからも『ジョックロック』が聴こえてくるんだから冗談みたくで笑ったよ。

試合は予想を越える激戦になった。
序盤は創成館がリードして、それを智弁が追いかけると云う展開だったが、中盤で引き離されて一時は5点差にまでなった。その後も智弁が点差を詰めれば、創成館が引き離すと云う目まぐるしい展開が続く。しかし終盤に智弁が盛り返し、最終回にとうとう同点に追いつく。延長戦に入って、創成館が1点を入れて勝利に近づくも、その裏に智弁が2点取って逆転サヨナラ勝ちと云う劇的な終わり方だった。
このシーンは流石によく憶えてて、両チーム絶体絶命の極面のツーアウト1、2塁だったんだよね。
そこで2年生の黒川くんが逆転の2点適時二塁打を放つのだが、打球が左中間の上を越えてゆく映像が今でも頭の中にハッキリと残ってる。彼はその後の試合でもチームを救う安打を打って大活躍したんだよね。そういえば、この日もホームランを1本打った筈。たぶん来年のドラフトにもかかるであろう良い選手なので、ほぼ出場の決まっている次の選抜も楽しみだ。

 

 
最終的なスコアは11ー12だった。
こういう取って取られての乱打戦の試合が一番面白いと思う。昔は緊迫した投手戦の方が好きだったけど、オジサンになると点がバンバン入る試合の方が退屈しなくて良い。球場も盛り上がるしさ。

 

 
いつ見ても、阪神園芸さんのグラウンド整備は素晴らしいやねー。中でも、この水撒きなんかは芸術的ですらある。当時のFacebookの投稿には、興奮していたのか奇跡の試合のあとの奇跡の水撒きとか書いてあったな。

 
第3試合は大阪桐蔭vs花巻東。
優勝候補の大阪桐蔭に、花巻東がどこまで食い下がれるかと云うのが試合の見どころだった。

しかし、序盤から大阪桐蔭の打線が💥大爆発。で、打ちも打ったりの結果は19ー0。
やはり根尾、藤原、柿木、横川、山田、中川とドラフト候補が目白押しのチームはポテンシャルが高いわ。
根尾くんは去年は主に投手と外野の二刀流だったけど、今年からショートとピッチャーの二刀流になったんだね。そういえば去年もショートを守った試合があったような気がするなあ。センスと身体能力が高いんだろね。
藤原くんは足の故障明けだったかと思うけど、所々でその類い稀なる走塁センスを見せてくれたような記憶がある。本来ならばシングルヒットのところを、野手の動きを見て、一気に二塁まで陥れたんじゃないかな?間違ってたら、ゴメンだけど。

 

 
第4試合は三重vs星稜。
試合は14ー9で三重の勝利。ナイターになった試合は8回に星稜が9ー9に追いつくという熱戦。しかし、9回に三重が一挙5点を奪って突き放した。
でも実をいうと、試合は殆んど観てないんだよねー。
なぜかっつーと、試合が始まってすぐにお迎えが来たのじゃよ。
誰かと云うと、❤SMのお姉さん❗
とゆうのは真っ赤な嘘でー。蛾好きの後輩くんです。
その彼と武田尾に春の三大蛾狙いでライト・トラップしに行ったんだよねー。

 

 
大の大人二人が人影の無い山中の暗闇で、夜中まで煌々と灯りを焚いて、一喜一憂しておりました。
野球あほうに加えて虫あほうって、ものすごく阿呆な気がする。

                   つづく

 
(註1)
気になる方は、拙ブログの『さまよえるカラスアゲハ』の回を読んで下され。
いや待てよ。もしかしたらこの時期に追い立てられていたのはホラー仕立ての『2017’春の三大蛾祭り』シリーズの執筆だったかもしんない。

(註2)
気になるので、ご丁寧にも調べてみた。
ベスト8以前に破れた28チームのうちで、夏に戻って来れたのは聖光学院、中央学院、日大三、慶応、富山商、近江、下関国際の6校だけだった。確率にすると、たったの約21.4%だ。しかも、記念大会で出場枠が2枠に増えた千葉の中央学院と神奈川の慶応は例年ならば出られていたかどうかは微妙だ。
ついでに言っとくと、ベスト8を含めた確率で計算しても36分の11だから、たったの30.5%しかない。
そう考えれば、大阪桐蔭の春夏連覇は凄い確率だった事がよく解る。マスコミに煽られた金農旋風に霞んじゃったけど、もっと評価されて然るべき偉業だと思う。
 

台湾の蝶17 タカサゴカラスアゲハ

 
   台湾の蝶17『高砂鴉揚羽』

 
前回の『さまよえるカラスアゲハ』で力尽きて、又しても時が経った。
そもそもがこの回を書かんが為に前回はカラスアゲハ全般の分類について長々と書いたのだが、台湾のカラスアゲハだけでも分類学的にやっぱりややこしい。で、『書くの面倒クセーなあ…』と思ってるうちに再び結構な時間が流れた。とはいえ、この回を書かないと前には進めない。ちゅーワケで渋々書き始めまあ~す。

先ずは前回のおさらい。
と言いたいところだが、そんな事を書き始めたらまた無間地獄に陥るので、前回の続きとしてそのまま書き進めます。気になる方は、前回『さまよえるカラスアゲハ』を読んで下され。

 
従来、台湾のカラスアゲハも日本のカラスアゲハも同じ種類「Papilio bianor」に含まれ、それぞれ別亜種とされてきた。しかし、近年の遺伝子解析の結果に拠り、日本のカラスアゲハは独立種 Papilio dehaaniiとして別種に分けられた。但し、八重山諸島に分布するヤエヤマカラスアゲハは、台湾のカラスアゲハと同じグループとされてPapilio bianorに組み込まれた。
因みに、どうやら台湾のものは、以前はクジャクアゲハ(Papilio polyctor)と呼ばれていたヒマラヤからインドシナ半島等に産するものに近いようだ。

台湾では2亜種が知られ、台湾本土亜種の他に蘭嶼亜種 Papilio bianor kotoensis(コウトウルリオビアゲハ)もいるが、今回は本土亜種のみを取り上げます。ただでさえ既にアタマがパニくりかけてるのに、コウトウルリオビまで論じる力は無いんでござるよ。そちらはまた別の項を設けて書く予定です。あしからずでありんす。

 
【Papilio bianor thrasymedes ♂】
 
(2017.6.19 南投県仁愛郷 alt600m)

 
(2017.7.4 南投県仁愛郷)

 
(2017.6.26 南投県仁愛郷)

 
(2017.6 南投県仁愛郷)

 
(2016.7 南投県仁愛郷)

 
【同 ♀】
 
(2016.7.12 南投県仁愛郷 alt1900m)

 
(2016.7.12 南投県仁愛郷 )

 
【学名】Papilio bianor thrasymedes

小種名「bianor」は、ギリシア神話の半獣人ビアノールの事で、ケンタウロス(下半身が馬で腰から上が人間の怪物)の一人である。
亜種名は世界的にthrasymedesで落ち着いているようだが、以前の学名はPapilio bianor takasagoであった。「takasago」とは台湾の先住山岳民俗の高砂族を念頭に入れての命名だろう。一方、「thrasymedes」はおそらくギリシア神話の登場人物の一人トラシュメーデスを指していると思われる。トラシュメーデス❓聞いた事はあるけど、全然イメージが湧かない。
と云うワケでググってみた。
wikipediaには以下のような記述があった。

「トラシュメーデース。ギリシア神話の人物である。長母音を省略してトラシュメデスとも表記される。ピュロス王ネストールの子で、ペルセウス、ストラティコス、アレートス、エケプローン、アンティロコス、ペイシストラトス、ペイシディケー、ポリュカステーと兄弟。シロスの父、アルクマイオーンの祖父で、アテーナイのアルクマイオニダイの祖。
トラシュメーデースはネストールやアンティロコスとともにトロイア戦争に参加した。ピュロスの軍勢15隻を率いたともいわれる。トラシュメーデースはキマイラを育てたというアミソーダロスの子マリスを倒した。またパトロクロスがアキレウスの鎧をまとって戦っている間、ネストールの指示でアンティロコスとともに前線から離れたところで味方に気を配りながら戦った。そしてアンティロコスがパトロクロスの死をアキレウスに知らせに行ったとき、彼がピュロス勢を指揮した。
後にアンティロコスがメムノーンに討たれたとき、トラシュメーデースはメムノーンを討とうとして果たせなかった。しかしアカマースを攻撃して戦場から退かせ、また木馬作戦に参加した。
戦後、トラシュメーデースはネストールとともに無事にピュロスに帰り、テーレマコスにも会った。」

(;・ω・)何じゃこりゃ?ゴチャゴチャ人物が出てきて、何ちゃらワカラン。ギリシア神話に通じてる人間でもなければ、チンプンカンプンである。
一応、他のサイトも覗いてみる。

「彼は弟のアンティロコスほどではないが、重要な若いアカイア人リーダーの一人として描かれた。ディオメデスとオデュッセウスがスパイに行った時、彼は鎧と剣を前者に与えた。弟のアンティロコスがメムノンに殺された時、父と共に死体を守って戦ったが、メムノンが優れて強かったため、アキレウスの助けを求めることを余儀なくされた。オデュッセウスがトロイアのお守りを盗んだ時、彼を乞食と思い鞭で打った。トロイの木馬に入った。彼は戦争を生き残り、父と共に故郷へ帰った。」(出典 「wik!」)

少しはマシな説明だが、理解が飛躍的に深まったとはいえない。話の本筋じゃないし、まっいっか…。
それにしても、何で台湾の蝶がギリシア神話と関係あんねん!?どう考えても高砂族の方が相応しいじゃないか。

学名に納得いかないので調べてみる。
藤岡知夫氏の『日本産蝶類及び世界近縁大図鑑1』を見て、漸くその経緯が解った。

「台湾産亜種の学名としては古くtakasago Nakahara et Esaki,1930が使われ、最近でもこの学名が使われることがある。これは台湾産亜種名formosanus Rebel,1906が、オナシモンキアゲハ Papilio castor formosanus Rothschild 1896に先取りされていて、亜種名としては使えないため提起された名である。しかし、永井(1996)も述べたようにPapilio polyctorの亜種として命名されたthrasymedes Fruhstorfer,1909の方がtakasagoより先行していて、大英博物館に所蔵されるタイプ♂♀の内、♂を図示してあるが、台湾のカラスアゲハそのものであるので、台湾のカラスアゲハの亜種名としてはthrasymedesを使うべきである。」

( ̄ー ̄)ん~、納得できるような出来ないようなモヤモヤした気分じゃよ。
学名って、いったい何なのかね❓混乱を避けるために最初に命名されたものに先取権があるのは理解できる。しかし、より相応しいものにフレキシブルに変更できないものなのかしら❓takasagoなら、学名を見ただけで台湾の蝶だと容易に想像できるけど、トラシュメーデスじゃ、想像力が全然もって湧かないよ。
とはいえ、まあ学名はコレでよしとしよう。問題は寧ろ和名である。コチラも、まことにややこしい。

台湾のカラスアゲハの和名は従来「カラスアゲハ」だった。しかし、遺伝子解析の結果、日本本土のモノは別種 Papilio dehaanii になった。そして、沖縄本島・奄美大島に分布するオキナワカラスアゲハも別種Papilio okinawensisになった。八重山諸島に分布するヤエヤマカラスアゲハも分けられ、台湾や中国・インドシナ半島・ヒマラヤに棲むものと同じグループに組み込まれ、Papilio bianor ryukyuensisとなった(オキナワカラスとヤエヤマカラスの学名が逆だと指摘される方もおられるだろうが、自分は和名と連動するコチラを推します)。
こうなると、区別しやすくするために和名も整理する必要があるだろう。dehaaniiは後から種に昇格したのだから、ニッポンカラスアゲハとかキョクトウカラスアゲハにすべきだと云う意見もあるだろうが、そんなクソ長いのは真っ平御免だ。だいち過去にカラスアゲハと記述されてきた出版物はどうなるのだ❓そんなの混乱の極みを生じさせる。それに長年親しまれてきた名前を廃棄するだなんて心情的に許せない。あくまで日本のカラスアゲハは「カラスアゲハ」。そう胸にも刻み込まれておる。他はあり得ない。
まあ、コレにはそう異論は無いとは思うけどね。

オキナワカラスアゲハとヤエヤマカラスアゲハも、そのままの和名で異論は無かろう。
いや、待てよ。ヤエヤマカラスはbianorなんだから、台湾や大陸のものと同じ名前にすべきだと言う輩も出てきそうだ。それには、アタシャ、(*`Д´)ノ断固反対します!!それも混乱を引き起こす事、明白じゃよ。そもそも和名は日本人に解るようにと作られたものなのだ。アタマの堅いリゴリズム(厳密至上主義)って、学名しかりどうかと思うよ。ルールを頑なに振りかざす奴にロクな奴はいない。八重山諸島にいるカラスアゲハはヤエヤマカラスアゲハでよろし❗
因みに台湾のカラスアゲハを同じbianorなんだから、ヤエヤマカラスアゲハと呼ぶべしと云う意見もあるようだが、そんなものは言語道断。論じる気にもなれない。

一番問題なのは台湾と大陸側に連なるbianorだ。
そのままカラスアゲハとするとややこしいから、タイリクカラスアゲハを提唱する人もいたような気がするけど、ここはもういっそのことクジャクアゲハの和名を復活させたらどうだろうか?勿論、異論は有るだろうけど、中国のモノは別としても分布の大部分の地域では孔雀の名に相応しい見てくれのモノが多いような気がするんだよね。
一応、かつてクジャクアゲハ Papilio polyctorと呼ばれていたものの画像も添付しておきましょう。

 
(2015.4.13 Thailand)

 
まあコレに関しては、それほど拘泥しているワケではないんだけどね。別にタイリクカラスアゲハでも構わないやって思う。それよりも何よりも気になるのは、台湾のカラスアゲハの和名だ。
杉坂美典さんのブログ『台湾の蝶』では、「カラスアゲハ」としている。その根拠に日本鱗翅学会の機関誌やどりがのNo.239(2013)の宇野彰氏の論文をあげられている。そこでは台湾産カラスアゲハの和名をカラスアゲハとしており、それに従う云々と述べられていた。
これには納得できない。じゃあ、別種になった日本のカラスアゲハは❓まさかニッポンカラスアゲハとかキョクトウカラスアゲハでもあるまいに。たぶん同じくカラスアゲハと呼んでおられる事でしょう。
今や別種とされる両者が、カラスアゲハと云う同じ和名で呼ばれるならば、その経緯を知らない者はワケわかんなくなるよ。
ゆえに、自分は一部で使われていた「タカサゴカラスアゲハ」を圧倒的に推す。それが最も台湾のカラスアゲハとして容易に認識しやすいではないか(因みに和名タイワンカラスアゲハは別種Papilio dialisに使用されているので使えない)。前述したように、和名とは本来日本人が理解しやすいようにと名付けられたのだから、いたずらに混乱をきたすような名前は宜しくないと云うのが確固たるワタクシの考えでござる。

 
【台湾名】
翠鳳蝶、烏鴉鳳蝶、碧鳳蝶

 
【終齢幼虫と蛹】

(出典 「典蔵臺灣」)

(出典 「台湾昆虫譜」)

(出典 「圖錄檢索」)

 
一見したところ日本のカラスアゲハの幼虫と変わりばえしない。それにしても正面から見た顔はイジケ顔で可愛らしい。何だか奈良美智の絵の女の子にも似てる。

 
【幼虫の食樹】
ミカン科
賊仔樹 Tetradium glabrifolium ハマセンダン
食茱萸 Zanthoxylum ailanthoides カラスザンショウ
Zanthoxylum nitidum テリバザンショウ
Euodia lepta アワダンモドキ

ハマセンダンの学名は、他にEuodia melifoliaやEuodia glaucaと云うのもある。植物は複数の学名があるものが珍しくない。属まで違う事だってよくある。蝶以上に学名バトルがあって、👿憎悪渦巻く錯綜した世界なのかもしれない。
因みに、ハマセンダンとカラスザンショウはヤエヤマカラスアゲハの食樹でもある。おそらくヤエヤマカラスと同じように、ヒラミレモンなどの他のミカン科植物なども利用しているものと考えられる。
余談だが、賊仔樹とは泥棒の木と云う意味らしい。
何でそんな名前が付けられたのかはワカラナイ。何れにしても酷いネーミングだよね。

 
【生態】
台湾本土全域の平地から高地(~2500m)まで広く分布し、雌雄ともに花に集まる。オスは山頂や尾根筋を飛び回り、谷あいの湿地で吸水する姿もよく見掛けられる。飛翔は日本のカラスアゲハと比べて緩やかで、ヤエヤマカラスアゲハの飛び方に近い。

 
【周年経過】
多化性で、成虫は冬期の1、2月でも見られ、周年に渡って発生するとされる。

 
台湾で初めて採った時は「(・。・)何じゃこりゃ❓」と思った。カラスアゲハの仲間なのは理解できるけど、種名が頭の中で合致しなかったのだ。勝手にイメージしてたのは隣の八重山諸島に分布するヤエヤマカラスアゲハ。それと同じような見てくれだとばかり思い込んでいたのだ。
だが、それとは異なる印象をうけた。ヤエヤマカラスと比べて全体的に色調が暗く、スリムに見えた。
ヤエヤマカラスのフォルムは四角っぽいBOX型だが、タカサゴカラスはそれに比して翅先が尖り、どちらかというとクジャクアゲハの翅形に近い。下翅の紋の色も違う。ヤエヤマカラスは紺に近い青だが、タカサゴカラスは水色っぽい青緑色だ。コレもクジャクアゲハ寄りだ。謂わば、ヤエヤマカラスと云うよりも、地味なクジャクアゲハみたいな奴っちゃなあと思った記憶がある。
ちょっと説明が主観的やもしれぬ。ここは藤岡図鑑(日本産蝶類及び近縁種大図鑑1)の力をお借りしよう。
それによると、「八重山産は前翅形が角張り、外縁が直線状または外に膨らむ傾向があるのに対し、台湾産では翅端が外方に突出し、表面の青緑色鱗粉の密度は台湾産の方が薄く、外縁近くまで達することはない。前翅裏面外方の白斑は台湾産の方が薄いなどの諸点で区別できる。」とある。
つまり、あんまり似てないんである。私見だが、正直、同種の亜種関係には見えなかった。
ヤエヤマカラスのパッと見は、むしろタイワンカラスアゲハ(Papilio dialis)に近いと思う。

 
ヤエヤマカラスアゲハ♂
Papilio bianor ryukyuensis
(2013.10.4 沖縄県石垣島)

 
タイワンカラスアゲハ Papilio dialis ♂
(2017.6.25 南投県仁愛郷)

 
一応、タカサゴカラスアゲハとヤエヤマカラスアゲハの標本を並べて見比べてみよう。

  

 
上がヤエヤマカラスアゲハで、下がタカサゴカラスアゲハである。こうして改めて並べてみると、見た目は明らかに違う。ヤエヤマカラスの翅形が全体的に丸い印象なのに対し、タカサゴカラスは細っそりに見える。下翅の青緑色紋の色も違う。またヤエヤマカラスの青緑色紋下部の線はシャープで、緑色の部分とのコントラストが強い。そして、緑色の鱗粉は全体的に散りばめられており、隙間があまりない。タカサゴカラスに比して明るく見えるのは、そのせいだろう。更には下翅外側の半月紋が消失仕掛かっている個体が多い(これに関しては手持ちの標本が偶々そういうものばかりだと云う可能性はある)。
大量の標本を検分したワケではないが、概ねコレらの差違は同定の目安にはなると思う。

裏側も検証してみよう。

 
【ヤエヤマカラスアゲハ♂裏面】

 
【タカサゴカラスアゲハ♂裏面】

 
藤岡さんの言うように、確かにタカサゴカラスの方が上翅の白紋が薄い。そして、私見だが下翅を縁取る白紋がヤエヤマカラスの方が発達する傾向があると思う。
こうして事細かに比べてみると、両者は見た目レベルで結構違う事が解った。
実際、遺伝子解析の結果でもそれなりに離れた関係のようだ。分析図では、タカサゴカラスはクジャクアゲハと同一クラスターに含まれるが、ヤエヤマカラスはそれとは分離が進み始めているように見える。

 

(出典 「蝶類DNA研究会ニュースレター」)

 
だからゆえか、ヤエヤマカラスアゲハを独立種とすると云った見解が何処かに書いてあったような気がするが、アレはどうなったんだろう❓個人的には、もう別種にしてもらいたいよなあ…。
(;・ω・)んにゃ❗❓そういえば、かつてヤエヤマカラスアゲハに学名 Papilio juniaを与えて、独立種として扱うと云う見解もあったのではなかろうか?
それならそれで色んな問題が解決するから有り難いんだけど、あまり学名として認知されてないよね?
いや、待ちなはれ。Papilio bianor juniaと云う亜種扱いの学名もあったような気がするぞ。
ジュニア❓何だそりゃ?年少組?下級生?息子?
じゃ、いったい誰の2世なのだ❓Σ( ̄皿 ̄;;キイーッ、バルタン星人Jrは本当にバルタン星人の息子かえ❓おまえ、パチモンやろがっ(#`皿´)❗❗
ハッ(゜ロ゜)、しまった。迷宮で迷走。ワケわかんなくなってきて、危うく気がフレるとこじゃったよ。脱線ポンコツ列車を止めねばならない。冷静になろう。
考えてみれば、そもそもがそのジュニアとは綴りが違うよね。そのジュニアならjuniaではなく、juniorと書く筈だわさ。学なし男の初歩的ミスでありんした。\(__)反省。
落ち着いたところで、先ずはjuniaの意味からさぐってみよう。

juniaと書いて、ユニアと読むようだ。学名の基本はラテン語読みという事をすっかり忘れてたよ。
ユニアとは、ローマ神話のユーノー(Juno)の事で女性の結婚、出産を司る女神。またユーノーはJune(6月)の語源でもあり、ジューンブライド(6月の花嫁)の謂われもユーノー神から来ているようだ。
ギリシア神話ではないけれど、又しても神話だ。ヨーロッパ人は神話が好きだねぇ~。
ユーノーが携えている聖鳥は孔雀だというから、その辺りが命名の由来だと推測する。カラスアゲハの英名は、「Chinese peacock」。中国の孔雀だもんね。

更に図鑑でjuniaの学名を探してみる。
1982年保育社発行の「原色日本蝶類生態図鑑1」では、オキナワカラスアゲハは別種扱いになっていたが、ヤエヤマカラスアゲハはカラスアゲハに含み、亜種 bianor juniaとしている。
一方、2006年学研発行の「日本産蝶類標準図鑑」のヤエヤマカラスアゲハの項には「与那国島産と西表島産・石垣島産の間では(中略)、一般的に、与那国島産の方が青色鱗が発達し、台湾亜種に近いと言われている。八重山諸島に産するものは八重山亜種 junia Jordan,1909とされる。」
(|| ゜Д゜)えー❓、青色鱗はタカサゴカラスよりヤエヤマカラスの方が発達してるような気がするぞー。人によって見え方が違うのかな?
それに、与那国島産も石垣島産も見た目には、そう大差ないと云う記憶があるんだよなあ…。
又しても混乱してきた。もうー(ToT)、結局のところヤエヤマカラスアゲハの学名がどれが正しいのー❓益々、ズブズブの混迷の域に突入じゃよ。もうアタマわいてきた。(_*)ワケわかんねえや。

しかし、確か両者の交配結果では妊性が充分あって、F1(第1世代)もF2(第2世代)も出来るんだったよね。
と云うことは、やっぱり同種と言わざるおえないのかなあ…。しかし、ふと思う。妊性の有無が、はたして種を分ける絶対的なものなのかしら?F1が出来てもF2が出来なければ別種で、出来れば同種って誰が決めたのだ?それだって、誰かが勝手に決めた線引きに過ぎないとは言えまいか?
まあ、きっと学術的にそう認められる整合性のある理論がちゃんとあるのだろうし、そんな事を言い出したら分類なんて出来ないんだけどさっ。
妊性は置いといて、見た目でそこそこ区別できるものは、もう全部に和名をつけちゃったらエエやんかと云う暴論を吐きたくもなってきたよ。
研究者の中で、もの凄くお偉いさんで人望がある人がスッくと立って、カラスアゲハの分類について英断を下してくんないかなあ。ダメならば、いっそこの際ネットの公開多数決でもいいぞー。その結果には素直に従いますよ。とにかく、スッキリさせて欲しいワ。

ここで重大な事に気づく。
書き忘れたが、成虫の画像はみな夏型である。
春に台湾に行った事がないのだ。実をいうと、八重山諸島にも春に訪れた事は無い。勿論、持ち合わせの標本もない。ここまで書いてきて、完全な片手落ちである。相変わらずの詰めの甘いダダ漏れ男なのである。

一応、春型の画像をお借りして添付しておくか…。

 
【ヤエヤマカラスアゲハ春型♂】
(出典「昆虫舘」)

 

 
(出典2点とも「虫村の日記」)

 
【同♀】
(出典「虫村の日記」)

 
前にも言った事あるような気がするけど、この方の展翅は上手いよね。

( ̄ _  ̄)うーむ、夏型とは明らかに違う。
解りやすく纏められている方の画像も見つけたので、更に画像をお借りさせて戴こう。

 
(出典『昆虫館』)

 
上から夏型の♂。春型の♀、春型の♂と云う順番で、その右側がそれぞれの裏面になる。
春型は夏型に比して全体的に色調が暗い。翅の形はヤエヤマカラスだけど、下翅の青緑紋の色調はタカサゴカラスに近いような気もする。でも青緑紋の形はヤエヤマカラスアゲハ寄りである。(-“”-;)むにゃあ~。

お次はタカサゴカラスの春型。

と書いて進めようとするも、おっとととっととー。
Σ( ̄ロ ̄lll)ぎゃひーん❗❗
でもググっても画像が全然出てこん。特に春型とかスプリングフォームと名打っている記述が見つからないのだ。
ここで、ハタと思った。タカサゴカラスって周年発生で冬も成虫がいるって事だよね。ならば、そもそも春型って云うフォームが存在しなかったりして…。だから、春型らしきものが見つからないのかもしれん。
いやいや、🎵ちょっと待て、ちょっと待て、お兄さん
八重山諸島でも、最西端の与那国島辺りまでくると、台湾と緯度は同じだぞ。経度も近い。晴れた日には、与那国から台湾が肉眼で見えるとも言うじゃないか。

再度、図鑑で確認してみる。
標準図鑑には、フォームの違いは特に記されていないが、3月上~中旬が第1化(春型)とハッキリ明記されている。生態図鑑には「八重山諸島では個体数は少ないが低温期にも姿を見ることがあり、発生に遅延はあっても本土産のように明瞭な休眠をしないものと考えられる。」と記述され、春型については触れていない。
\(@@;)/ひょえ~。オイちゃん、又しても迷宮に迷いこむ。
だが、今度は冷静だぜ。タカサゴカラスアゲハの垂直分布は、下は海沿いの海岸林から上は標高2500mくらいと幅が広い。思うに、低地では周年発生で、標高が高い所では日本と同じく蛹で越冬している筈だ。と云う事は、そこでは春型も存在するに違いない。
とはいえ、画像を図示できてないからなあ…。
それに生態写真を数多く見ていると、段々タカサゴカラスアゲハとヤエヤマカラスアゲハが同じに見えてきた。何だか自信が無くなってきたよ。ヤバイ。迷走グダグタだ。
(○
○)ひゅろろろろ~、ピッ・ボッ・ロッコ・ケ~。

『赤ん坊はもう疲れたよ。いつまでも壊れた玩具(オモチャ)で遊び過ぎたからね。もう、さよならをするよ。』

                  おしまい

 
 
追伸
かつてないスゴい尻切れトンボの終わりかたである。
無責任、敵前逃亡、オチなし。こんな突然ブッツリで終わるだなんて、自分でも過去に記憶が無い。
でも、頭の中がサドンデス、突然ブッ壊れてR.チャンドラーの小説『長いお別れ』の一節が口から漏れ出て脳が急停止したのだ。心と体が、これ以上考えるのはよせと命令したのであろう。久し振りの長文に耐えきれず、自己崩壊したのかもね。
ゆえに、この追伸は翌日に書いているのら。
時間が経って冷静さを取り戻しているので、書き直そうと思えば書き直せなくもない。しかし、このままにしとく事にした。コレはコレて良いではないかと思ったのだ。たまには、こう云う回もあってもいいでないか。

               2018.12.16

 
追伸の追伸
お願いだから『復帰早々、ポンコツかよヾ(¬。¬ )』とか言わないでよねー。
 
 

台湾の蝶16 1/2 さまよえるカラスアゲハ

 
(前書き)
2ヶ月前に草稿をある程度書いたところで、書きあぐねてそのまま放置していた文章である。
そもそもは台湾のカラスアゲハについて書く予定だったのだが、そうなると台湾のみならず他の地域のカラスアゲハについても言及せざるおえない。だが、コレが分類学的に誠にややこしい。説明するとなると、カラスアゲハの全体像を整理して書くだけでも長文にならざるおえない。そこから更に台湾のカラスアゲハについて論じなけれならないと思うと、オジサン、💫クラッと目眩(めまい)でよろめいたよ。
ゆえにここは敢えて分けて、先ずはカラスアゲハの種全体について書き、のちに回を改めて台湾のカラスアゲハのことを書こうと思った。だから第17話ではなく、第16 1/2話なんぞと云うややこしい表記になったのである。
言い訳とか御託はこれくらいにして、取り敢えず書き始めまーす。

 
  第16 1/2話『さまよえるカラスアゲハ』

 
カラスアゲハの分類は昔から学者やアマチュア研究家たちが百家争鳴、それぞれバラバラの主張が入り乱れてグチャグチャに錯綜してきた歴史がある。
次回に予定している台湾のカラスアゲハの回を上梓する前に、ここで今一度カラスアゲハの分類を整理しておきたいと思う。でないと書いてる本人もワケわかんなくなるだろうし、読んでる方はもっとワケわかんなくなりそうだ。
とはいえ、カラスアゲハの世界はラビリンス(迷宮)である。どこまで解り易く説明できるかは書いてみないとわからない。蝶採りを始めてまだ10年ゆえ、過去の分類の変遷史も、当時の論争がどんなものだったのかもあまり知らないのだ。出口の見えない無間地獄(むけんじごく)に陥るやもしれぬし、勝手な推察や思い込みがやたらと入ってしまい、正確性を欠く文章になるやもしれぬ。でもここは当たって砕けろで、ともかく舟を漕ぎ出そう。

 
従来、カラスアゲハは東アジアから中国北西部にかけての冷温帯から亜熱帯にかけて広く分布し、各地で変異はあるもののそれぞれ亜種とされ、全部ひっくるめて「Papilio bianor」とされてきた。

 
(出展『原色台湾蝶類大図鑑』)

 
しかし、沖縄諸島のカラスアゲハを雌雄の交尾器や斑紋の違いから、別種「Papilio okinawensis」とする研究者も現れた(川副・若林 1976)。
推察だが、その辺りから喧々諤々の論争が始まったのではないだろうか?
さらに奄美大島の亜種ssp.amamiensisを別種とする見解もあったようだし、それらを全て認めずに以前と同様にカラスアゲハ(Papilio bianor)1種とすべきと云う意見も多かったみたいだ。
確か日本で採れた蝶の種類数を競う「与那国ルール」では、遺伝子解析後も頑としてカラスアゲハは1種として数える事になってたけど、あれって今でもそのままなのかなあ……。

この時点で早くも書きあぐねだしたのだが、ここは落ち着いて先ずは日本に棲むカラスアゲハから説明していこう。

 
カラスアゲハは中国北西部から日本全国、北は北海道から南は沖縄・八重山諸島まで見られ、各地で独自進化は見られるものの各々亜種とされ、昔は全てが同種Papilio bianorとされていた事は既に述べた。
因みに日本国内では、以下のような亜種に分けられていた。

 
◆ssp.dahanii
カラスアゲハ(日本列島亜種)

(2018.4.28 大阪府大東市 飯盛山)

 
分布は北海道・本州、四国、九州、対馬など。
これがワシらが見慣れたカラスアゲハだね。

   
(2018.4.28 大阪府大東市 飯盛山)

 
(2018.4.23 東大阪市 額田山)

 
(2018.4.23 東大阪市 額田山)

 
上3つが♂、下が♀で、何れも春型である。基本的に春型は夏型に比べて小振りで、斑紋のメリハリがあって美しい個体が多い。

夏型はこんなんです。

 
【夏型♂】

 
【夏型♀】
(二点共 『日本産蝶類標準図鑑』)

 
なぜか標本が見つからないので画像を図鑑から拝借。
たぶん、あまり綺麗じゃないから真面目に採ってないのだ。実際、ネットで画像を探してもミヤマカラスアゲハばかりで、カラスアゲハの夏型の標本写真は数える程しかなかった。人気ないんだね。

それはそうと、よくよく考えてみれば春型のカラスアゲハ(ssp.dehaanii )って近畿地方でしか採った事がないや。多分、本土産はわざわざ他の地方にまで採りに行く蝶ではないからだろう。場所によってさして大きな差異は無いし、ミヤマカラスアゲハと比べればどうしても美しさにおいて劣るから、扱いが蔑(ないがし)ろになりがちなのだ。
とはいえ、厳密的には北海道産は明るめの色で九州産は黒っぽくなる傾向がある。かといって、どこでもそれなりに色調にヴァリエーションがあるんだよなあ。パーセンテージは別として、青系、緑系、黒系が同じ場所でも混じるのが普通かと思う。
元々、種として個体変異に幅のある蝶で、多型性を包含する某(なにがし)かを持っているのかもしれない。例えば遺伝子が変化しやすいとかさ。
あっ、そっか( ̄▽ ̄;)…。その辺が分類を難しくさせている原因なのかもしんない。

 
◆ssp.hachijonis
ハチジョウカラスアゲハ(八丈島亜種)

(出展『日本産蝶類標準図鑑』)

 
標本を持っていないので、図鑑から画像を拝借。
左が♂で、右側が♀である。特徴は本土のカラスアゲハに比べて色調が明るいところ。
カラスアゲハは毒のあるジャコウアゲハに擬態しており、ジャコウアゲハが分布しない地域(北海道、伊豆諸島、トカラ列島)では色調が明るくなる傾向があるという見解がある(柏原精一 1991)。

 
【ジャコウアゲハ♂ Byasa alcinous】
(出展『日本産蝶類標準図鑑』)

 
【同♀】
(2015.8.28 大阪市淀川河川敷)

 
けど、個人的意見としてはホントかね?と思う。
実際、海外でもこの法則はある程度あてはまるみたいなんだけど、だとしてもマネシアゲハなんかに比べれば擬態の精度は相当に低いと思う。
そんなに見た目が似ているとは思わないし、飛び方なんかは全く似てない。ジャコウアゲハは緩やかに飛ぶが、それと比べるとカラスアゲハは断然速い。飛ぶ高さだってジャコウアゲハよりも高いし、そもそもの生息環境が違う。ジャコウアゲハは主に草原的環境を好むが、カラスアゲハは森の蝶だ。
( ̄▽ ̄;)いや、待てよ。たまに森でもジャコウアゲハを見かけるなあ…。沖縄本島なんかは、わりかし森にもいたわ。草原と云う環境には後から適応したのかもしれない。
まあいい。そこは置いとくとしても、とにかくジャコウアゲハと間違えるだなんて、よほどのことがない限り有り得ない。一般ピーポーの素人ならまだしも、蝶屋で騙された事がある人って果たしているのかね❓いたとしたら、蝶屋としてさあー…。
やめておこう。人のことはどうでもよろし。
とにかく蝶の一番の天敵である鳥は、人間が思っている以上に賢い。犬よりも賢いという説まであるのだ。だいち、鳥の目は四原色でメチャクチャいい。この程度の擬態精度で、鳥の目が誤魔化せるとは思えない。学者やベテラン蝶屋は、ちょっと似てるくらいで矢鱈と擬態関係にしたがる傾向があるような気がするんだよねー。そこにはきっと擬態であって欲しいという願望が入ってんじゃねーかと思う。
まあ、とは言いつつ、ぺーぺーのクセに自分にもそう云う傾向が多分にあるんだけどもさ( ̄∇ ̄*)ゞ。

とにかくオラはこのジャコウアゲハ擬態説に関しては懐疑的である。真似してるとしたら、中途半端過ぎっしょ?速く飛ぶのは難しくても、ゆっくり飛ぶのは簡単な筈。本気で真似する気があるのなら、とうにゆっくり飛んどるわい(#`皿´)❗と思うんだよね。
翅の色が明るくなる事とジャコウアゲハがいない事との相関性なんて本当は無くて、単なる偶然の一致だと思うんだよなあ…。
擬態関係にしちゃうと、生物の不思議ワールド増幅でアカデミックと云うか、何となくカッコよく見えるのだ。それに大概の事がそれなりに都合よく説明できる。だいたい擬態って、言うほど効果とかあんのかね?意外と無いと思うぞ。そういえばヒヨドリ?か何かにバクッといかれたカラスアゲハを見た事があるなあ…。だいち、明らかに鳥に後翅を啄まれて損傷したような個体が多いじゃないか。中途半端な擬態は効果無しっしょ。Chilasa paradoxa(パラドクサマネシアゲハ)とかクラスの高い擬態精度が無いと効力は低いんじゃねえの?

  
◆ssp.tokaraensis
トカラカラスアゲハ(トカラ列島亜種)

 
戴き物の標本で、トカラ列島 諏訪之瀬島の飼育品である。
ハチジョウカラス程ではないようだが、コチラも青緑鱗粉が明るく、♀の上翅に黄白斑が出るのが特徴。図示した個体は、たぶん夏型だろう。

 
◆ssp.okinawensis
オキナワカラスアゲハ(沖縄諸島亜種)

 
(2013.2.28 沖縄本島 名護市)

 
【裏面】

  
両方とも春型。
オキナワカラスの春型も夏型と比べて小振りで、色鮮やかな傾向がある。個人的には春型の方が断然好き。

本土産に比べて地色の黒みが強く、下翅の赤色弦月紋が大きくなる。翅形も四角いので、次のアマミカラスと共にカラスアゲハの中ではかなり異質なグループだろう。

 
◆ssp.amamiensis
アマミカラスアゲハ(奄美諸島亜種)

  

 

 
(全て2011年 9月 奄美大島)

 
上3つが♂で下が♀。
上の2つは同じ個体ですが、色が撮影条件により随分違って見える事を示す為にわざと添付した。だから、以下の写真も色そのままを鵜呑みしないで戴きたい。蝶は光の当たり具合など諸条件でどうとでも変わって見えるものなのです。
ハハハ( ̄∇ ̄*)ゞ、自分の撮影技術の拙さを棚に上げといてよく言うよ(笑)
とにかく、色みは参考程度に思って下され。

これらは秋の個体だが、色調からして夏型と言っていいだろう。春型は下翅の青紋に赤が入る。

オキナワカラスアゲハに似るが、♂はより青みが強く、♀の下翅の赤紋は大きくなる傾向がある。また、翅形は更に四角くいボックス型。裏面の白帯もよく発達する。

 
【裏面】

 
う~ん、裏面の画像を入れると他も入れないとアカンかなあ…。
えーい(*`Д´)ノ!、これで誤魔化しちゃれー!!

 

 

 
(三点共 出展『日本産蝶類標準図鑑』)

 
あんまりカラスアゲハの裏をまじまじと見たことなんて無いけど、結構違うものなんだね。

 
◆ssp.junia
ヤエヤマカラスアゲハ(八重山諸島亜種)


 
(2013.10.4 石垣島 万勢山)

 
野外で見ると色は下の個体に近いが、斜め下から見ると上の個体みたく見える。
手持ちの標本は♂しかない。なぜか♀はボロしか採った事がないのだ。ゆえに画像を拝借させて戴こう。
ヤエカラの♀って、必死に探した記憶が全然ない。あんま綺麗じゃないから、探すモチベーションも低かったんだろなあ…。

 
(出展『虫村の日記』。画像はトリミングしています。)

  
全体的に地色が黄緑色っぽくて、♂の下翅弦月紋の目立たない傾向が強い。翅形はオキナワカラス程ではないが、やや四角っぽい気がする。本土産と沖縄・奄美大島産の中間くらいかな?少なくともお隣の台湾産よりは四角っぽいと感じる。台湾産は翅が外側に広がり、尖って見える。

( ̄□ ̄;)!!あっ、ここでオイチャン重大なことに気づく。
図示した個体は夏型だわさ。色も形も完全に夏型目線でした。そもそもワシって夏とか秋にしか八重山には行ったことがないわ。春型の実物は見たことがないから全然アタマに無かったよ。

 
【春型】

(二点共 出展『虫村の日記』。画像はトリミングしています。)

 
スマン、スマン。春型には、ちゃんと紋があるわ。
でも地味なことには変わりない。ハッキリ言ってババちいカラスアゲハだ。春型でこれじゃあ、人気がないのも解るわ。
それにしても、このお借りした画像3点共がキレイな展翅だなあ。この方の展翅は上手いなと思う。

ここで、ふと気づく。全ての亜種の春型と夏型の雌雄を図示するべきなんじゃねえの?と。
しかし、既にオジサンは疲れてへろへろなのだ。どうしても気になる人は、自分で画像を探してくだされ。

お隣の台湾のカラスアゲハ(ssp.thrasymedes)とはあまり似ていなくて、パッと見はむしろ別種のタイワンカラスアゲハ Papilio dialisに似ていると思う。春型は見たことがないから、あくまでも夏型目線でだけど。

 
【タイワンカラスアゲハ♂ Papilio dialis】
(2017.7 台湾南投県仁愛郷)

 
翅形など細部は厳密的には違うけど、少なくとも色とか鱗粉の粒子の粗さ具合なんかはかなり似ていると思う。
お陰で、なあーんも考えずに発作的に台湾に行った時は頭が混乱した。何も調べずに初めて行ったから、知識もショボくて台湾のカラスアゲハ事情なんて知らなかったのだ。採ってるうちに何となくどうやら2種類いるようだとは解ったが、どっちがホントのカラスアゲハなのか首をひねった。この辺の事は次回にて詳しく書きます。

それにしても翅が剥げててみっともない標本だなあ。
えー、恥ずかしながらこれは人為的損傷です。展翅後にアチキが誤って手を触れて、ゴソッといっちゃいました。
他にも手持ちのタイワンカラスは幾つかあって、キレイなのもあるんだけど、まだ展翅もしてない。これを機会に展翅しようかとも思ったが、面倒くさいのでやめた。書いてて、もうだいぶウンザリしてきてて、そんな気力は無いのだ。

以上、日本産のカラスアゲハの亜種は従来こんな風に分けられてきた。
しかし、大英博物館の「okinawensis」のところにあったタイプ標本(種の基準となる標本)を確認した或る研究者(藤岡 知夫氏?)が、そこにあったのが八重山諸島のヤエヤマカラスアゲハだったことから、八重山産のカラスアゲハにokinawensisの学名をあてるべきとした。
だが、阿江 茂氏(?)はそれ以前に大英博物館で確認した時には、okinawensisのところには標本が無かったこと(それ以降に標本が置かれた事になる)、学名の命名者であるFruhstorferが南西諸島の島の名前を間違うとは考えられないこと、原記載の論文で示した特徴がオキナワカラスアゲハに合致することなどにより、その論が間違いである事を指摘した。
これに対して藤岡氏は『日本産蝶類及び世界近縁種大図鑑1』の中で以下のような反論をしている。長いが引用しよう。

「bianor okinawensis のタイプ産地(最初に採集された場所)について、タイプがすり替わったのではないかと疑問がなされている(阿江 1990)。確かに、現在あるタイプがすり替わっている可能性は無い事はないが、記載者が何を見てどう判断したかまで考え始めたら、あらゆる動物のタイプに疑問が持たれることになる。Fruhstorferのokinawensisの原記載には、石垣島から手に入れたと明記されており、タイプ標本として大英博物館に残されている標本も石垣島産であり、Fruhstorferの記載以前にFritzが入手した個体はもとより、沖縄産のカラスアゲハの標本は大英博物館には全く無いのであるから、okinawensisのタイプは石垣島以外に考えられない。必要以上に学名を窄鑿してもサイエンスは何も進歩しない。」

中々の泥試合である。
藤岡氏はこの論に則って八重山諸島の亜種名juniaをを破棄して「ssp.okinawensis」とし、沖縄・奄美諸島のものには新亜種名「ryukyuensis」を与えた。
おかげで古い文献を読んでいると困る。中身が学名表記のみの文章だと、それがオキナワカラスアゲハを指しているのか、それともヤエヤマカラスアゲハを指しているのかが読んでる途中でこんがらがってくる。で、アタマがパニックになるのだ。
まあ、二つの学名が存在するのだから仕方がないにしても、後からこの世界に入ってきた者としては迷惑千万である。

だいたい、ryukyuensisという命名の根拠も疑問だ。
ryukyuは琉球を指すのだろうが、それが琉球王国なのか、それとも琉球諸島を指すのか判然としない。それによって微妙に示す範囲が変わってくるのだ。
琉球といえば、奄美諸島から台湾までの間を指すのが一般的だが、諸説あって薩南諸島や大東諸島、尖閣諸島も含むとする見解もある。何れにせよ広範囲なのだ。
だからryukyuensisを使用することによって、混乱を誘発させる可能性を十二分に孕んでるよね。知らない人なら、学名を見て奄美大島辺りから与那国島まで分布する蝶と思いかねない。
何で「yanbaru(山原)」とかにしなかったのかね?沖縄本島では主に北側の山原地域に生息してるしさ。
あっ、奄美大島にもいるから無理か…。
ワタクシ、書き疲れておりまする。脳が回らなくなってきております(@@;)
とにかく下手に地域を指す言葉を使って混乱を起こすような学名なら、嫁はんの名前でもつけとった方がまだええんとちゃうかー。
あっ、スイマセン( ̄∇ ̄*)ゞ。暴言です。ワタクシ、書き疲れておりますから、脳が回らなくなってきておるのです(@
@;)。

学名を巡る論争はまだまだ続く。
種の解明の為に各地のカラスアゲハの交配実験も盛んに行われるようになった。
ようするに生殖的に離れていれば、両者は別種という考え方だ。つまり交尾をして次世代が生まれたとしても、その世代に生殖能力が無ければ既に種分化しており、別種であると云う見解だね。
えー、もっと解りやすく説明すると、ライオンとヒョウが交尾すると「レオポン」と云う雑種(F1)ができるんだけど、そのレオポンには生殖能力が無くて、レオポンのオスとメスが交尾しても子供(F2)は産まれない。もしくは産まれても奇形だったり、親までちゃんと成長しない。ゆえにライオンとヒョウは別種であると云う証明になるってワケ。
一方、人間はたとえ肌の色が違っても子供はでき、その子供には生殖能力がある。だからブラックもホワイトもイエローも同一種で、ホモ・サピエンス(人間)は1種類ってワケだね。人類みな兄弟なのだ。
皆しゃーん、つまりは肌の色で差別するのはナンセンスなのですよー。

話が逸れた。戻ろう。
各地のカラスアゲハを交配したところ、本州産(ssp.dehaanii)とオキナワカラスアゲハとの交配ではF1(第1世代)の♀は不妊であり(浜 1977)、ヤエヤマカラスアゲハとは♂♀共にF1に生殖能力はあるが完全ではなく、同一地域のF1に比べると生育率は低い(阿江 1990)という結果がでた。

これに対して藤岡氏は次のような見解を述べている。

「交雑実験の結果によれば、沖縄のカラスアゲハは八重山及び本州のカラスアゲハに対し、100%別種ではないが、100%同種でもない、別種と同種の中間の状態であると言える。そこで、もし地殻変動が起こるなどで、二つの群が同所的に棲息を始めたと仮定したら、両者の間に、交尾形態が異なるといった交尾阻害機構が存在しない限り交雑し、交雑すればF1が生じるのであるから、両者の血は交じりあっていく可能性が高い。この場合も命名法上の単位としては、両種を一つの種として扱うべきである。」

おいおい、アンタ、大英博物館云々のオキナワカラスの学名のくだりで、たられば論は否定するような事を書いてたんじゃないの?現実には起こっていない地殻変動まで持ち出してきたら、それも立派な「たられば論」だじょー。

オキナワカラスは見た目にも他のカラスアゲハとは異質で、♂前翅表面の性標と♂♀の前翅裏面の白帯がミヤマカラスアゲハ的である上、幼虫形態も他地域のカラスアゲハと差異があるとされる。ゆえに別種と考える人も多かったそうだから、この交配結果で俄然オキナワカラス別種説が有力になったようだ。でも、沖縄諸島のものを別種にするならば、他の地域の亜種も別種にすべきであるという意見なども噴出したみたいだね。たぶんアマチュアの蝶屋の間でもそれぞれの持論が飛び交い、口角、泡飛ばして議論されたんだろうなあ…。絶対、人間関係とか悪くなったと思うな。

その後、台湾、八重山諸島、沖縄諸島、奄美諸島、本州の隣り合う地域間の交配も行われた(阿江 1990)。全ての組み合わせを試したワケではないものの、結果は生殖能力を持つF1が生じたようだ。この結果と先程の藤岡氏の見解が、全てのカラスアゲハを1種とカウントする「与那国ルール」のネタ元かもしんない。
因みに論文を直接読んでいないから、生育率はわからない。良くはないと推察するけどね。まあ、飼育は気温や湿度などの環境とか与える食餌植物、飼育者の技術力などによっても自ずと変わってくるだろうから、結果は一概に鵜呑みできないところはあるよね。また、1度だけの実験では正確性に欠くから、それをもって論じるのは危険だわね。じゃあ、いったい何回同じ実験を繰り返せば信頼できる結果だと言えるのか?これまた大きな問題ではある。3回?5回?10回?それとも100回?、最低何回の実験をすればいいのかなんて誰にも断言できないよね。

とはいえ、色んな人が交配を試したみたいで、ssp.dehaanii(本土産)とssp.okinawensis(沖縄諸島産)、ssp.junia(八重山諸島産)間には種間雑種F1(第1世代)は出来てもF2(第2世代)が出来ないことの方が多いから、別種説が次第に有力になっていったみたい。

また同時に、それまでは近縁ではあるが別種とされてきたクジャクアゲハ Papilio polyctorとの交配実験も試みられたようだ。
交配結果をお伝えする前に、ここでクジャクアゲハとカラスアゲハの分布を整理しておこう。
カラスアゲハは極東から中国西部を経てミャンマー北部まで分布し、クジャクアゲハの分布は西はカシミール(東アフガニスタン)から東は中国四川省・雲南省にまで達し、中国西部からミャンマー北部の間が両者の混棲地とされてきた。

それでは交配実験の結果である。
ネパール産クジャクアゲハと本州産カラスアゲハの場合はF1♂には生殖能力があるが、♀には無い。つまり両者は別種、或いはそれに近い関係だという事だ。だが、事は簡単には終わらない。
何と、クジャクアゲハと台湾産カラスアゲハとの場合は、F1♂♀共に生殖能力があるという結果が出た。両者の幼生期の形態、生態も殆んど同じで区別がつかないという(原田 1992)。
また、その飼育実験によると、四川省の♀が産卵した卵から、何とカラスアゲハと判断される個体とクジャクアゲハと判断される個体の両方、及びその中間型が羽化したそうだ。
こうなると、クジャクアゲハはカラスアゲハ(Papilio bianor)と同種ではないかと云う見解も出てきた。
ワハハハハヽ( ̄▽ ̄)ノ、日本のカラスアゲハだけでなく、大陸のクジャクアゲハまでカラスアゲハ論争に割り込み参戦じゃよ。いよいよ戦禍は拡大。🔥火の海じゃわい。

  
【クジャクアゲハ♂ Papilio bianor gradiator】
(2015.4.13 Thailand Fang )

 
因みに、図示した個体は多分グラディエーターと云う亜種かと思う。それにしても、綺麗ではあるがグラディエーター(古代ローマの剣闘士)とは大袈裟な亜種名じゃのう(  ̄З ̄)

そういえばクジャクアゲハを初めて採った時は、Papilio paris ルリモンアゲハかなと思ったんだよね。

 
【ルリモンアゲハ Papilio paris】
(2015.5.22 Laos Tabok Tadxaywaterfall)

 
蝶採りを始めて三年目、何の知識もなく行った初めての海外採集で、まだルリモンアゲハを採ったことが無かったから区別できなかったのだ。それくらい似ている。
とはいえ、見慣れれば間違うことはまず無いんだけどね。

クジャクアゲハも亜種がいくつもあって、ややこしい。西から東へ順に並べてみよう。

 
◆ssp.polyctor(原名亜種)
アフカニスタン北東部~西ヒマラヤ

 
(出展二点共『swallowtails.net』)

 
上が♂で、下が♀。
小型で青緑色が強い。パッと見はルリモンアゲハと見紛うばかりだ。これは飛んでたら、また間違いそうだな。

 
◆ssp.triumphator
ネパール~ブータン

(出展『日本産蝶類及び世界の近縁種大図鑑』)

 
前翅表面に青緑色の帯を生じ、後翅の青紋も大きいとされる。
藤岡さんの図鑑だと、ssp.triumphatorの分布はネパール~ブータンになってるけど、インドシナ半島北部や中国西部のものにこの亜種名を宛がう人もいるようだ。ネパールからこの辺のヤツをひっくるめてtriumphatorという亜種名になったのかな?ワケ、わかんねーや。

  
◆ssp.ganesa(Dobleday 1842)
インド北部(カシヒル&ナガヒル、アッサム)

(出展『swallowtails.net』)

 
青緑色紋の形がヒマラヤの亜種に近く、前翅外縁に沿う青緑色帯が広いという。

 
◆ssp.significans
北ミャンマー

(出展『日本産蝶類及び世界近縁種大図鑑』)

 
斑紋はpolyctor系だが、次のstocreyiの特徴である白紋が僅かに出るのが特徴のようだ。また、後翅赤紋の発達が良く、前翅の翅形も尖る傾向がある。

 
◆ssp.stockleyi
ミャンマー南東部~タイ西部(Dawana山脈南部)

(出展『pictame』)

 
上翅の白紋、下翅を縁取る白が異様に発達しており、シナカラスアゲハを彷彿とさせる特化振りだ。
これはいつか自分で採りに行きたいと思う。
( ☆∀☆)おー、そういえばこの辺にはワモンチョウの王様、Stichopthalma godfleyi ゴッドフレイワモンチョウもいたんじゃなかったっけ❗❓

 
◆ssp.pinratanai
タイ東南部

(出展『swallowtails.net 』)

 
stocleyiと並ぶクジャクアゲハの異端児。下翅の瑠璃紋の発達が著しく、美しい種群である。
stocreyiとpinratanaiは共にpolyctor種群の分布の端にあり、しかも連続しない隔離された分布圏だから特化が進んだのではと推測されている。
これも現地に行って、是非ともこの目で見てみたい蝶だ。
( ☆∀☆)おーっ、そういえばこの辺にも特異なワモンチョウがいた筈だぞ❗
えーと、何だっけ?確かStichopthalma cambodia ハイイロワモンチョウという奴で、コヤツもカッコいいんだよなあ。
それにしても、特異なクジャクアゲハの分布と特異なワモンチョウの分布が重なるだなんて偶然とは思えない。何か地史的なものが関係しているのかなあ…。

 
◆ssp.gradiator
タイ北部、ラオス、ベトナム北部、中国雲南省

(2011.4.19 Laos Samnua)

 
最初に図示したタイ北部産よりもラオス東部産(ベトナム国境に近い産地)の方が、より東側なだけに下翅の青紋が減退傾向にある。とは言っても、同じ地域でも個体差は結構あるんだよねぇ…。

 
ついでに、まだ紹介していなかった日本以外のカラスアゲハ(Papilio bianor)の亜種も並べておこう。

 
◆Papilio bianor bianor(原名亜種)
中国東部~中国南部

(Papilio maackii ミヤマカラスアゲハ Achillides私論)

 
(出展『日本産蝶類及び世界近縁種大図鑑』)

 
図示した個体は黒っほくて地味だが、西へ行けば行くほど青紋が出るpolyctor的な個体が増えてゆくようだ。
bianorは黄河の北側と南側、厳密的にいうと北緯34~35度を境にして北型と南型に分かれるという。北型は次の朝鮮半島亜種(ssp.koreanus)から日本本土へと連なる型で、青緑色をしている。一方、南型は青緑色の鱗粉の濃淡が無くなる黒っぽい型で、クジャクアゲハに連なってゆく個体群かと思われる。

 
(出展『日本産蝶類及び世界近縁種大図鑑1』)

 
クジャクアゲハの飼育実験のところでも触れたが、四川省や雲南省ではbianor系とpolyctor系が自然状態でも入り乱れており、両者の中間的な特徴を有したものも得られるようだ。
正直、クジャクアゲハとされるミャンマー辺りから中国西部に分布するインドシナ半島北部の奴らは、自分程度の眼識では同じ種群にしか見えない。アッサム辺りのモノまで含めても、さして変わらないような気がする。
特異なstocreyiとpinratanaiは別としても、こんなの一つの亜種にまとめればいいのにと思う。とはいえ、見た目が連続的に変移してゆくので、どこで線引きするかは西側も東側も難しいよね。そうなると、中国からアフガンまで全部bianor1種としなくてはならなくなるんだよなあ…。それもまた変な感じではあるから、お手上げだすなあ。

 
◆Papilio bianor koreanus
朝鮮半島~中国黄河流域北側及び山東省

(出展『Insect Design』)

 
トカラカラスと同じように♀の前翅に白斑が出るが、黄色くはならないという。
とはいえ、相対的に見れば日本本土に分布するカラスアゲハ(ssp. dehaanii)に極めて近いと云うか、自分にはほぼほぼ同じに見える。亜種区分する程のものかなあ?遺伝子解析の結果は知りつつも、形態的見地から見てもそう思う。注釈するのを忘れたけど、この項はあくまでも形態的見地の目線で語っております。

ロシアやウスリーに分布する亜種もいたような気がするけど、あれはシノニム(同物異名)になってんのかしら?

調べてみたら、それらしき古い亜種名が3つも出てきた。

・Papilio bianor doii[Matsumura, 1928]
・Papilio bianor mandschurica[Matsumura, 1927]
・Papilio bianor nakaharae[Matsumura, 1929]

3つともシノニムになっている。
ssp.doiiは、dehaaniiのシノニムになっているようだ。
ssp.mandschuricaは、タイプ産地が中国・満州になっていた(ミヤマカラスアゲハのシノニム?)。となると、ウスリー亜種ではない。
ssp.nakaharaeは、樺太産に与えられたもののようだ。しかし、これは北海道のモノと区別がつかない為にdehaaniiのシノニムになったみたい。

ということはdoiiがウスリー亜種にあたるのかな?
まあ、今やどっちでもいいけど。

調べてたら、ついでに各種の英名もわかった。
せっかくだから付記しておこう。

西ヒマラヤのpolyctor(クジャクアゲハ原名亜種)は、「West Himalayan Common Peacock」。
東ヒマラヤのganesaは、「East Himalayan Common Peacock」。
その更に東側のgladiatorは、「Indo-Chinese Common Peacock」となっていた。
クジャクアゲハの和名は、この英名由来からの命名なのかもね。
因みにカラスアゲハは「Chinese Peacock」。
ようするにカラスアゲハはみんな孔雀さんなのだ。

 
◆Papilio bianor thrasymedes(takasago)
台湾本土

(2018.6.19 台湾南投県仁愛郷)

 
(2017.7 台湾南投県仁愛郷)

 
(2017.7.12 台湾南投県仁愛郷)

 
あまり使われていないが、タカサゴカラスアゲハという和名がある。区別するのには便利なので、便宜上、以後台湾本土のものにはこの和名を使用します。

私見では、お隣東側のヤエヤマカラスアゲハよりも反対側の中国大陸のssp.bianorに似ていると思う。
タカサゴカラスについての詳細は、次回17話に書く予定です。

 
◆Papilio bianor kotoensis
台湾 蘭嶼・緑島

(出展『花居虫時計』)

 
(出展『Papilio maackii ミヤマカラスアゲハ Achillides私論』)

 
例によって上が♂で、下が♀である。

和名コウトウルリオビアゲハ。
その名のとおり明るい青緑色をしており、カラスアゲハ(bianor)屈指の美しさを誇る。
緑島産も同じ亜種とされるが、コウトウルリオビアゲハ的な明るい青緑色から台湾本土のようなタカサゴカラスアゲハ的な暗い色のものまでが混在しており、特徴が一定しないようだ。そのことから、緑島産をssp.kotoensisに含めるのを疑問視する声がある。

こうしてヒマラヤのクジャクアゲハから日本のカラスアゲハまで西から東へと順に並べてゆくと、分布の端と端とではかなり見た目の印象が違うが、連続的に並べてみれば徐々に移行していっているようにも見える。

 
(出展『微博台灣台站』)

 
上段左2つが中国・天津産、右側3つが雲南省産のbianor。下段は左から順にgradiator(ラオス サムヌア産)、stocreyi(タイ西部)、significans(ミャンマー シャン州)、pinratanai(タイ東部)、台湾本土産(台北)、kotoensis(台湾 蘭嶼)となる。

stocreyiは別としても、あとは似た者同士だ。
それゆえか、やがてクジャクアゲハとカラスアゲハとを全部包含して1種類(Papilio bianor)とする考えが主流となっていった。

つまり、こんな風になっちゃうワケね。

 
(出展『アジア産蝶類生活史図鑑』)

 
(×_×;)あちゃー、茫洋過ぎて蝶屋ぺーぺーには何ちゃらワカランような事態だ。
大まかな分類から細分化されて、再び大まかに戻るって、何じゃそりゃ❓で笑っちゃうよな。

しかし、時は2000年前後のミレニアムの頃、遺伝子解析という伝家の宝刀的なものが昆虫界にも登場してくる。そして、21世紀の幕開けに相応しく多くの蝶屋を驚愕させる結果がもたらされた。

自分も今イチわからんので説明は端折るけど、簡単に言うと細胞核のDNAではなく、人間と共生するミトコンドリアのDNA、そのND5遺伝子の塩基配列によって種とは何ぞや?ってところを探ろうと云う試みなのだ。
一言つけ加えておくと、何でミトコンドリアなんだというとですなあ、細胞核のゲノムでは変化があまりないので使えないのだ。例えると、人間とチンパンジーは明らかに別な生物だよね。しかし両者の細胞核の遺伝子配列はたった1%しか変わらないのだ。つまり、人間とチンパンジーの祖先は共通だと云うことくらいしかわからない。それに比べてミトコンドリアのDNAの変化(進化)は早く、そいつを調べたら人間とチンパンジーの遺伝子の違いは9%になる。ようするに、それだけ違えば別種の証明になるってことなんだね。

いやはや、ここまで辿り着くまで長かったよ(´O`)
やっとこれで本題に入ることができる。それでは、カラスアゲハの遺伝子解析の結果じゃよ~\(^o^)/
おっと、その前にネタ元はこれね。

 

 
JT生命誌研究館(高槻市)のオサムシ研究グループと基礎生物学研究所(岡崎市)の蝶類DNA研究会が発行した遺伝子解析のレポート(1995~2004年)を一冊にまとめたものである。
ニュースレターという形をとっており、正式に論文として発表される前段階のものと思われ、研究結果の速報、あるいは論文の予報みたいなものだろう。
その後、細かいところを詰めて各紙に正式発表されている筈だから、細部の違いはあるかもしれない。しかし概ねの論旨は変わらないものと判断して、そのまま引用させて戴きます。
字が小さくて見にくいですが、画像をクリックすれば拡大できます(の筈です)。できなければ、ハズキルーペを使いましょうね(^o^)

 
(出展『蝶類DNA研究会No.2 「カラスアゲハ亜属(Achillides)の系統関係」』)

 
カラスアゲハの仲間の系統図はこんな感じ。
普通レベルの蝶屋ならば、系統図を見ただけで『ふむふむ、なるへそね( ̄ー ̄)』となるとは思う。でも、キレイなオネーチャンと前途あるオコチャマたちの為に一応解説しときますね。

図を見ると、この群はナガサキアゲハ(P.memnon)やオナガアゲハ(P.macilentus)から分かれ、さらにオナシアゲハ(P.demoleus)と分岐した。このオナシアゲハから分岐したグループの総称がAchillides(カラスアゲハ亜属)と呼ばれているものだ。
そこから最初に分岐したのがperanthus group(アオネアゲハグループ)だ。

 
【アオネアゲハ Papilio peranthus adamantius】
(2013.2 Indonesia Sulawesi)

 
スラウェシ島亜種である。アオネアゲハは多くの亜種に分かれるが、コヤツは群を抜く巨大亜種です。
スラウェシ島の蝶は巨大化する傾向が強いんだけど、その例によくあげられている。

何だか展翅が下手クソなので、アオネアゲハグループからもう一点追加しよう。

 
【ヘリボシアオネアゲハ Papilio lorquinianus】

 
これは買った三角紙標本を自分で展翅したもの。
多分、マルク(モルッカ)諸島のBacan島亜種だったかと思う。触角が折れているが、これは最初から。でもオマケで付けてもらったモノだから文句は言えない。美しい種だし、いつかパプア・ニューギニアに行けたらシバキ倒したいね。

 
次に分化したのが、palinurs group(オビクジャクアゲハグループ)だ。
オビクジャクは幾つか採った事があるけど、全部ボロなので同じグループのブルメイアゲハ(オオルリオビアゲハ)でお茶を濁しときまーす。

 
【ブルメイアゲハ Papilio blumei】
(2013.2 Indonesia Sulawesi Palopo)

 
これもスラウェシ島特産だからバカでかい。
グループ最大種で、オビクジャクとは大人と子供ほどの差がある。
尾っぽまでギラメタで好きな蝶。

 
ブルメイと分化したもう一方のクラスターが、所謂(いわゆる)真性カラスアゲハ群と呼ばれているグループだ。
そこから更に2系統に分かれてゆく。
上側がbianor group(カラスアゲハグループ)、下側がPapilio maackii ミヤマカラスアゲハやタカネクジャクアゲハなどが含まれるグループである。
そして、ミヤマカラスアゲハ系のクラスターから先ずはparis group(ルリモンアゲハグループ)が分かれ、そこから更にPapilio karna(カルナルリモンアゲハ)のグループが分岐していった。

ルリモンアゲハはクジャクアゲハの項で画像を貼付したので、ここではカルナルリモンアゲハの画像のみ図示しときます。

 
【カルナルリモンアゲハ Papilio karna】
(出展『蝶の標本 麗蝶』)

 
ルリモンアゲハとカルナルリモンアゲハは何となく似ているから近い関係なんだろうとは思っていた。だから納得の結果だわね。とはいえ、大きさはかなり差があってカルナの方が断然大きい。

図示した個体は、ssp.irauana パラワン島(フィリピン)亜種だが、他にポルネオ(ssp.carnatus)やジャワ島(ssp.karna)にもいる。だが、ジャワ産のものとボルネオ・パラワンのものとは塩基配列に大きな違いがあるようだ。
また、ルリモンアゲハの各亜種も塩基配列に大きな違いが見受けられる。それをうけてか、たしか現在は台湾中南部のルリモンアゲハと北部に棲むルリモンアゲハ(従来オオルリモンアゲハと呼ばれていたもの)が別種扱いになっている筈だ。北部のものがルリモンアゲハ(paris)の亜種(ssp.nakaharai)とされ、中南部のものには新名タイワンルリモンアゲハ Papilio hermosanus が与えられている。両者は幼虫形態にも差があり、食餌植物も違うという。

 
もう一方のクラスターからは最初にオオクジャクアゲハ(Papilio arcturus)が分かれた。

 
【オオクジャクアゲハ Papilio arcturus】
(2016.4 Thailand Fang)

 
このオオクジャクが分布拡大して辿り着いた果てが台湾で、後に隔離されて進化したのがホッポアゲハだろう。

 
【ホッポアゲハ Papilio hoppo】

 
(2016.7.12 台湾 南投県仁愛郷)

 
上が♂で、下が♀である。
ホッポアゲハはオオクジャクアゲハの亜種とされた時期もあったようだから近縁なのは解っていたけど、やはりそうなんだね。
とはいえ、いまだにホッポアゲハをオオクジャクアゲハの亜種とする研究者もいるようだ。確かに成虫の生態はほぼ同じで、♂は山頂や尾根の高い梢でテリトリーを張る。しかし、両者の分布間には広範囲の空白地帯があるので雑交する可能性は極めて低いから、別種とするのが妥当だろう。ところで、オオクジャクとホッポの交配をした人っているのかな?

 
さらにクラスターはタカネクジャクアゲハとミヤマカラスアゲハに分離する。

 
【タカネクジャクアゲハ Papilio krishna】
(出展『オークファン』)

 
タカネクジャクアゲハはオオクジャクアゲハよりもミヤマカラスアゲハに近いんだね。ちょっと驚きでした。いや、図で見たらそう見えるだけか?分岐順は図とは関係ないかもしんない。何れにせよ、オオクジャク、ホッポ、タカネクジャクの三者が近い関係である事には変わりはないだろう。

クリシュナ(タカネクジャク)は、死ぬまでに一度はフィールドで生きてる姿を見てみたい。
もし見たら、アドレナリン💥爆発!採れたら悶絶必至じゃよ。

そして最後は日本人にも馴染みの深いミヤカラさん。

  
【Papilio maackii ミヤマカラスアゲハ】
(2013.6.23 北海道 芽室町)

 
(2018.4.23 東大阪市枚岡)

 
日本一美しい蝶を選ぶとしたら、おそらく最も票が集まるであろうと言われている美麗種。特に北海道産は輝きが強くて美しい。
日本にいるからあまり感じないけど、ヨーロッパやアメリカのコレクターなんかには憧れの蝶らしい。

 
そして、渋い美しさのシナカラスアゲハ。
何とミヤマカラスアゲハと同種だと云う結果が出た。

 
【Papilio syfanius シナカラスアゲハ】
(出展『蝶の標本 麗蝶』)

  
従来は別種とされてきたが、ミヤマカラスアゲハとの分布間に両者の中間的なものがいるから、一部では同種ではないかと噂されてはいた。にしても、この結果に衝撃を受けた人は多かったのではなかろうか。
だって見た目は全然違うもんなあ…。でも塩基配列がほとんど同じなんだよね。(´д`|||)う~ん、個人的には別種であって欲しかっただすよ。

あっ、こんなこと書いているから長くなるのだ。
とっとと肝心のカラスアゲハグループに進もう。

 
(図1カラスアゲハ亜属のDNAによる系統樹(『カラスアゲハ亜属(Achillides)の系統関係』より抜粋トリミング)

 
これが今回のお題であるカラスアゲハの系統図である(コチラも画像は拡大できます)。
いよいよ、ここからが主題であり本題です。いやはや、ここまで来るのはホント長うございました。

 
このグループからはPapilio dialis タイワンカラスアゲハが最初に分岐した。
ふう~ん、あんまり考えた事がなかったけどタイワンカラスはカラスアゲハと近いんだね。
タイワンカラスの画像は既に添付済みなので、ここではベトナムやラオスなどにいる無尾型(ssp.doddsi)ドドッシーの画像を添付しておこう。

 
【Papilio dialis doddsi】
(出展『蝶の標本 麗蝶』)

 
またしても『麗蝶』さんからの画像拝借なのだ。
展翅が他と比べて断然にキレイだから、いの一番にこのサイトから画像を探します。やっぱ、プロの展翅はちゃいますわ。

ここでふと思う。じゃあ、タイワンカラスの無尾型と見た目が似ているオナシカラスアゲハはどれに近いんだ?気になるなあ…。

 
【オナシカラスアゲハ♂ Papilio elephenor】

  
【裏面】
(二点共 出展『AUREUS butterflies&insects』)

 
近年、インド北東部(アッサム?)で何十年振りかで再発見された幻のカラスアゲハだ。

それにしても、これがカラスアゲハの仲間だとは到底思えない。何度見てもクロアゲハ、もしくはナガサキアゲハの出来そこないみたいな奴っちゃのーと思う。
カラスアゲハの仲間なのに頭と腹が白いのも変わっている。これは毒のあるアケボノアゲハの類に擬態しているからだと言われている。だとしたら、その擬態精度はかなり高い。カラスアゲハ本来の美しい姿態を捨ててまで生き残ろうと云う見上げた根性の持ち主だよ。
でも遺伝子解析をしたら、カラスアゲハじゃなくてクロアゲハに近かったりしてね(笑)。
流石にそれは無いとは思うけど、ミヤマカラスアゲハとか予想外の種と近縁だったら面白いにゃあ。

擬態のホストは、コイツかな?
擬態精度はかなり高そうですぞ。飛び型とかも似ていたら完璧クラスじゃよ。

 
【Atrophaneura aidoneus】

(二点共 出展『Butterflies of India』)

 
でもオナシカラスの遺伝子は簡単には調べられないよね。大大大珍品だから、標本数が極めて少ないし、ムチャクチャ高価(100万円くらい!)だから手に入れるのは容易な事ではない。それに遺伝子解析の為には標本の一部が必要だ。たった脚3本で事足りるらしいが、サンプルを提供してくれるような徳のあるコレクターはおらんじゃろ。コレクターにとっては、たとえ見た目に影響のない脚3本といえども、1本たりとも失いたくないと云うのが本音だろう。どうあれ標本が不完全になる事には耐えられないに違いない。

アカン、また寄り道してもうた。
もう一回言っとこ。ここからが主題であり本番です。

タイワンカラスと分岐した群は、やがて4つのサブクラスターに分かれる。

①韓国・対馬・福岡・京都・白浜・伊豆・石巻・北海道・樺太・八丈島・三宅島・悪石島(トカラ列島)

②沖縄本島・奄美大島

③西表島・石垣島・竹富島・与那国島

④中国広西荘族自治区・中国福建省・四川省・台湾緑島・P.polyctor triumphator(ラオス Lak Sao)・P.polyctor stocreyi(タイ)・P.polyctor polyctor(北インド)・台湾(本土)・P.polyctor triumphator(ラオス Non Het)・台湾蘭嶼

①は、ようするに日本本土はもとより八丈島やトカラ列島、さらには樺太、朝鮮半島のものも遺伝子的には殆んど差が無いことを示している(三宅島の1塩基差を除いて、他は塩基配列が全く同じらしい)。おそらく中国の黄河北側の個体群も此処に含まれるものと思われる。
でもハチジョウカラスやトカラカラスは現在もその亜種名は健在で、そのまま使用されている。たぶん、見た目から本土のものとはハッキリと区別できるからだろう。そういうものは自分も亜種にすべきだと思うから、全く異論はない。しかし、線引きの条件はあまりにも曖昧模糊だ。
例えばハチジョウカラスとトカラカラスを同じ標本箱にアトランダムにバラバラに混ぜて入れたとしよう。果たして、それでも両者を100%区別ができるものなのだろうか?どちらとも言えないような個体が、絶対いそうじゃないか。
ハチジョウカラスもトカラカラスも自分で採ったことが無いからこんな事を言うんだけど、自分には両者を確実に判別できる自信は無い。
( ・◇・)ん!?、でもソックリさん同士のオキナワカラスとアマミカラスは両方とも採ったことがあるから、パッと見で区別できる自信があるんだよなあ…。
いったいオラは何が言いたいのだ?長時間、文章を書いてるから脳ミソがふやけてきたよ。
たぶん、種の線引きなんぞはかなり曖昧なものだとでも言いたかったのだろう。

②のオキナワカラスとアマミカラスが同じクラスターに入るのは納得。
確か沖縄本島と奄美大島が陸続きになっていた時代があった筈だ。その後、二つの島の間の陸地が海に沈んだのだろう。いつの時代だったっけ?いやいや、八重山諸島、引いては台湾や大陸、日本列島にも繋がっていた時代もあった筈だよね❓

だが、地史を調べる前に系統図を見直して仰け反る。
Σ( ̄ロ ̄lll)ギョヘー、何とオキナワカラス&アマミカラスのクラスターにPapilio hermeli ミンドロカラスアゲハが入っているじゃないか❗❗

 
【ミンドロカラスアゲハ Papilio hermeli ♂】
(出展『蝶の標本 麗蝶』)

 
【ルソンカラスアゲハ Papilio chikae 】

(出展『花居虫時計』)

 
ミンドロカラスの♀の画像にあまり良いのが無かったので、替わりにルソンカラスの画像を貼付しといた(一番下が♀)。両種の見た目は殆んど同じ様なものなのだ。
表向き両者は別種とされるが、明らかに同種の亜種関係にある。これは色々と曰く付きで、ルソン島(フィリピン)のルソンカラスアゲハがワシントン条約の第1類に指定されて採集や売買が禁止になった事に起因する。
その後、同じフィリピンのミンドロ島でソックリな蝶が発見された。それがP.hermeliだ。しかし、ルソンカラスの亜種として記載してしまうと、これも採集・売買が禁止になってしまう。だから、どう見ても亜種なのに、わざと別種として記載したと云う次第なのである。
現地に行けば結構いるルソンカラスがワシントン条約の1類に指定されたのにも裏があるようだが、ここでは本題とは関係ないので割愛する。

見た目の華やかさからルソン&ミンドロカラスはてっきりミヤマカラスアゲハのグループかと思いきや、カラスアゲハグループなんだね。
でもよくよく見ると、どちらも下翅外縁の紋が派手なのが特徴だ。これはオキナワカラスやアマミカラスがメチャメチャ進化して、ルソン&ミンドロカラスになったとは考えられないだろうか?特に♀はそんな感じに思える。オキカラ&ミヤカラの延長線上にある蝶のような気がしてならない。
いや、反対も有り得るな。ルソンorミンドロカラスの祖先が沖縄までやって来て、長い年月の間に紋が変化してオキナワカラス&アマミカラスになった可能性だって有り得る。
どっちの島が地史的に成立が古いのだろうか?それがわかれば、どちらが起源種なのかも解明できそうだ。
でも、そもそもフィリピンと沖縄が陸続きに繋がった時代なんてあったっけ?

しかし、調べる前に本文を読み進めると、次のような記述が出てきた。

「ミンドロカラスアゲハ(P.hermeli)も後者(沖縄諸島&奄美大島諸島亜種)のサブクラスターに含まれるがこの種は他種と比べてなぜか独自の変異の数が多く(図1でこの種の横軸が異様に長い)、それがこの種を含むブートストラップ値を下げている。従ってミンドロカラスアゲハ(たぶんルソンカラスアゲハ(P.chikae)も)はカラスアゲハに近縁であることには間違いないが、図1における分岐点を正しく反映していない可能性がある。」

おいおい、正しく反映していないだなんて、遺伝子解析ってそんなに曖昧なもんなのかよ?
遺伝子解析って、明確で絶対的なものだと云うイメージを持ってたけど、そうでもないのね。
因みにブートストラップ値というのは、各分岐点の脇にある数字で、100回実験したらこれくらいの回数は同じ結果が得られますよと云うことを表している。ようするにルソンカラスならば、数字は56だから半分くらいしか同じ実験結果にならないということだ。これではいくらなんでも信頼性が低い。
とはいえ、このあとも更に実験は繰り返されてる筈だよね。新しい知見もあるに違いない。探すか…。

ありました。

 
(出展『蝶類DNA研究会 ニュースレターNo.3「東アジア各地産カラスアゲハ亜属の系統関係」』)

 
(´・ω・`)何だよー。レポート集の後ろに続報の論文があったわ。知ってたら、最初からそっちの系統樹を載せたのになー。まっ、早めに見つかったのはラッキーと思おう。

 

 
コチラがカラスアゲハとミヤマカラスアゲハを含むいわゆる真性カラスアゲハのグループだね。
そして、更にそれを拡大したものが、下図のカラスアゲハ bianor groupの系統図。

 

 
わっ!、前回よりもだいぶ各地のサンプルが増えて詳しくなっている。
こうなると、本来なら前文を消して書き直すべきなんだけど、メンドくせーのでそのまま書き進めていく。

4つに分かれるカラスアゲハグループの①と②は解説済みだけど再検証ねっ。
基本的にはあまり変わっていないが、ミンドロカラスの横に新しくルソンカラスが加えられている。
予想通り両種は別種ではなくて、亜種関係ということが証明されたワケだ。また、ルソンカラスグループはミヤマカラスアゲハのクラスターではなく、カラスアゲハのクラスターに入るのは、やっぱり間違いない事らしい。但し、4グループのカラスアゲハとの分岐順列は明確でないとあった。
そもそもルソンカラスはどこからフィリピンに侵入したのだろう?いったいどのカラスアゲハの末裔なのだ?
大陸➡台湾からなのか?それとも沖縄or奄美大島から?興味の尽きないところではある。希望的に言うと、沖縄・奄美大島からであって欲しい。その方が、見た目には進化の流れの過程としては納得しやすいもんね。

③は八重山諸島に産するいわゆるヤエヤマカラスアゲハのグループだ。
石垣島・西表島・竹富島の個体群と与那国島の個体とは2塩基異なるが、別亜種にする程ではないようだ(5塩基以内は同種)。因みに、オキナワカラスとアマミカラスも2塩基異なる。

④は台湾から中国、インドシナ半島北部を経て、インド北部、カシミールに分布するもの全てが、同一種であることを示している。
とはいえ、図を見てもこのサブクラスターは細かく分かれていて、複雑な様相を呈している。
チベットから中国広西壮自治区の個体群が分岐し、さらに台湾本土産と蘭嶼の個体群がそれぞれ分岐する。驚くべきなのは蘭嶼とラオス Non Het産のものが同じクラスターに含まれていることだ。蘭嶼のカラスアゲハが明るい青緑なのはそのせいなのかな? だとしても、両者の分布圏はあまりにも遠い。これはいったいどう捉えればいいのだ❓蘭嶼産の侵入経路が全くワカラナイぞ。遺伝子解析って、本当に正しいのかよ(# ̄З ̄)?
それは置いといて、そのラオスのヤツの亜種名がやっぱりssp.triumphatorってなっているではないか。triumphatorってネパール~ブータン亜種じゃないのー? むぅー、triumphatorの分布域はいったいどうなっとるのー?誰か、おせーて( ;∀;)
もう脳みそがグシャグシャのドロドロだよ。

更にそこから先は、従来クジャクアゲハとされてきた亜種群とカラスアゲハとされてきた群が一つのサブクラスターに詰め込まれた形になっている。
中国・福建省、四川省成都(P.bianor.bianor)、インド・カシミール(P.polyctor polyctor)、タイ西部(P.polyctor stocreyi)、ラオス Lak Sao(これも亜種名はtriumphatorになっている!)、そして、ここには台湾・緑島産のカラスアゲハも含まれる。蘭嶼とは由来が違うってことか…。
あっ、でも論文には全部塩基配列が完全に一致すると書いてあったなあ。
(-_-;)むぅ~、図の見方がイマイチわかっとらんのかのぅー。でも、どっかに5塩基以内の違いにおさまってるとかって書いてなかったっけー❓だったら、完全に一致しているとは言えないよね。
(;・ω・)もういいや。アタマわいてきた。どうせバカだから理解力が低いのさ。とにかく、クジャクアゲハとカラスアゲハは同種と云う事だすなあ。
それはそれとして、遺伝子解析と見た目からの分類とで、この先どう整合性をとってゆくのかしら?
一つの解決が、また新たなる疑問を生じせしめているだなんてパラドックスだ。益々カラスアゲハの迷宮無間地獄、💥爆発じゃないか❗❓
さすらいのカラスアゲハよ、何処へゆく。

 
日本のカラスアゲハだけに焦点を当てると、次のような系統図になる。

 
(出展『蝶類DNA研究会 ニュースレターNo.1 「日本産アゲハチョウ科の分子系統樹」』)

 
上から日本列島&トカラ列島、アマミカラス、オキナワカラス、ヤエヤマカラス、タカサゴカラス(台湾)、中国のカラスアゲハ(bianor)だ。
既に述べたが、「日本列島&トカラ列島」と「アマミカラス&オキナワカラス」が同じクラスター、「ヤエヤマカラス」と「タカサゴカラス(台湾)&中国のbianor」が同じクラスターとなり、2系統に別れている。
この4つは、別種とすべきほど塩基配列の違いが大きいらしい。この事から現在は亜種ではなく、別種に昇格したものもあるようだ。

朝鮮半島、ウスリー、樺太、日本列島、八丈&三宅島、トカラ列島のものが、全く塩基配列が同じことから独立種『Papilio dehaanii』となり、八丈島やトカラ列島はその亜種という扱いになった。
たぶん、遺伝子配列が同じということは、最終氷期辺りに分布を拡大した均一の個体群なんだろね。日本に入ってきたのは比較的遅い時代だと推測される。とは言っても何万年とか何十万年単位だけどさ。
トカラ列島や八丈島のものから考えると、まずは形態が変化して、後に遺伝子が変化してゆくのが進化の流れの常道なのかもしれない。

沖縄諸島と奄美諸島の個体群も別種になったもよう。
で、奄美諸島のものは沖縄個体群の亜種という扱いになったみたい。
しかし、その論文を読んでいないので、種名は果たして『Papilio ryukyuensis』なのか、それとも『Papilio okinawensis』なのかはワカンナイ。けど、感じではたぶん『Papilio ryukyuensis』になってそうやね。
とはいえ、現状は遺伝子解析後も「ryukyuensis」と「okinawensis」の両方が学名として使用されている。もうグッチャグチャなのだ。
ネットとかで見ると、3分の2は「okinawensis」を採用している。Wikipediaだって、okinawensisだ。たぶん、オキナワカラスアゲハの和名や分布から、そちらの方がしっくりくるからだろう。オキナワカラスアゲハの和名があるのに「沖縄の」を意味する学名「okinawensis」がヤエヤマカラスについてるだなんて納得いかないよね。
自分もその意見に全面的に賛成します。命名の先取権なんぞ糞くらえだ。ルールは大切だけど、アタマ硬いよね。もうちょっと柔軟性とかないのかね❓きっと蝶好きなんぞと云うのはオタクの集まりで、融通の効かないクソ真面目人間だらけなんだろなあ…。

八重山諸島産は台湾や中国のものと比較的近いことから別種とはならず、Papilio bianorの1亜種に組み込まれたようだ。別種くらい塩基配列が違うとか言ってたけど、その辺はどないなってもーたんかいな❓
個人的には別種でもいいんじゃないかなーと思う。
根拠はフィールドで見た時の印象が直感的に違うと思ったから。アバウト過ぎて叱られそうだけど、勘って意外と侮れないと思う。違和感と云うのかな、フィールドで何か微妙に違うなと思って採ったものは、大体が激似の別種とか擬態種だとか異常型なんだよね。
とはいえ、勘なんてものはあくまでも個人的なものだし、何となくだなんてあまりにファジー過ぎる。数値化も出来なければ、言語化も覚束ない。科学的でないと言われれば、ゴメンなさいなのだ。

これも亜種名が「ssp.okinawensis」なのか、「ssp.junia」のどちらになったのかはワカンナイ。どうせssp.okinawensisだとは思うけど、心情的にはjuniaを推す。
ホント、ややこしいよねー( ̄~ ̄;)
いっそのこと、新名『yaeyamaensis』とでもしたらどうだ。オキナワカラスの問題も含めて、その方が和名との齟齬がなくて余程スッキリするわい。

もうそろそろ、ええ加減にクローズしたいんだけど、最後に地史との関係を少し書いて終わりにしたい。

 
先ずは地史による南西諸島の成り立ちから始めよう。

 
(1)500万~170万年前(第三紀鮮新世)
(出展『蝶類DNA研究会 ニュースレターNo.2 「カラスアゲハ亜属(Achillides)の系統関係」』。以下、同様。)

 
各図の右上が九州、左下が台湾にあたる。

  
(2)200万~170万年前(第三紀鮮新世末)

 
(3)170万~100万年前(第四紀更新世初期)

 
(4)100万~40万年前(第四紀更新世後期)

  
(5)40万~2万年前(第四紀更新世末期)

 
遺伝子解析の論文では、日本のカラスアゲハがどこから来たかも推測している。
ND5遺伝子を用いた進化速度の計算によると、カラスアゲハが4つの系統に分かれたのが500万~390万年前と推測されるようだ。中国南部・台湾産各個体が互いに分岐し始めたのが約90万年前、奄美大島と沖縄本島産、与那国島産と八重山諸島産が分かれたのが約50万年前と云う結果が出たという。
過去の地史を紐解くと、500万年~170万年前は南西諸島の西側には島尻海と呼ばれる海が広がり、奄美大島と沖縄本島は一つの大きな島、八重山はまた別な大きな島であった。その頃に奄美・沖縄と八重山のカラスアゲハは隔離された(図1)。
その後、島尻海の陸地化の際にも古黄河と古揚子江・古尖閣川によって隔離され続けた(図2)。
南西諸島のすぐ西側は沈降し始めて湿地化していき、やがて陸地化して現在の固有種の祖先の多くが侵入した(図3)。
100万年~40万年前に沖縄トラフの沈降による東シナ海の成立で、現在の南西諸島の形がほぼ出来上がると、奄美と沖縄の間、与那国島と他の八重山の島々との間でさらに隔離が起こった(図4)。たぶん、この年代前後にオキナワカラスとヤエヤマカラスが別種化が進んだのだろう。
氷河時代になって海面が下がり南西諸島は陸地化したが、トカラ海峡、ケラマ海峡、与那国海峡はほとんど陸地化せずに隔離が続いた。一方、台湾は大陸と陸続きに、朝鮮半島と樺太は日本と陸続きになった(図5)。
この頃、大陸と陸続きとなった台湾には中国南部より南方型のカラスアゲハ(Papilio bianor)が侵入した。また、朝鮮半島と陸続きとなった日本本土へは、中国東北部・朝鮮半島に隔離されていた北方小集団のカラスアゲハ(Papilio dehaanii)が、最終氷期かそれに近い時代に分布を拡大し、サハリンに至るまで侵入したと考えられる。しかし、既に成立していたトカラ海峡から南へは進めなかった(これは塩基配列が全く同じであることから、比較的最近(約25万年前以内)の事だと言われている)。
また同時に、このトカラ海峡の存在は南西に分布していた個体群(ssp.amamiensis)の北進も阻んだ。

論文では特に言及はされていないが、一方クジャクアゲハ(polyctor)は、南方のカラスアゲハ(bianor)と陸続きで分布が連続するから完全には分化しえなかったのだろう。
祖先種が四川、雲南省辺りで誕生して東西に分布を拡大したと云う説を聞いた事があるような気がするけど、この系統図でそれは証明できないのかな?

では、ルソンカラスアゲハはどうなんだ❓
探してみたら、こんなんを見つけた。

 
(出展『奄美群島広域事務組合』)

 
ついでに、同じサイトにあった200万年前の図も添付しときます。

 

 
( ☆∀☆)おー、フィリピンと奄美・沖縄が繋がっていた時代があるじゃないか❗❗
でも、インドシナ半島にも繋がっとる。
えっ(-_-;)❗❓、でも1500万年前ってかー。
そんな古い時代には、オキナワカラスアゲハどころか未だAchillides(カラスアゲハグループ)自体が存在してないよね❓
いやそんなことはないか?見落としかもしんないけど、論文にはカラスアゲハグループがミヤマカラスアゲハグループと分岐した推定年代が書いてないんだよなあ。そこには言及しておらず、オキナワカラスアゲハ↔ルソンカラスアゲハ説にも触れてないから、やっぱ、たんなるオラの妄想なのかなあ…。

フィリピン群島の地史をネットで調べてみたけど、求める資料にはヒットしなかった。
この辺がもうド素人の限界だ。書くのにもウンザリだし、おしまいにします。

駄文に最後までお付き合いして戴いた皆様、アリガトごぜえますだ。
ポチは犬小屋に帰ります。

次回は台湾のカラスアゲハの予定です。

                  おしまい

 
  
追伸
えー、先に謝っておきます。御気分を害された方、御免なさい。
批判めいたものも含めて結構言いたい放題言っちゃいましたが、所詮は蝶歴のまだ浅いぺーぺーがギャアギャア何か言ってるなとでも思って大目にみて下され。知識も経験も無い者に限って吠えたがるものです。このようなアホは放っておきましょう。

ふいーっ(´д` )、今回は死ぬほど書き疲れましたわい。
一応、折角ここまで書いたんだから次回の台湾のカラスアゲハについては頑張って書くつもりですけど、それ以降は続けていく自信なしです。
まだまだ台湾には腐るほど多種の蝶がいる。書き終わるまでどれくらいかかるかと考えると、ホント元気のないチ○ポコみたいに萎えてくるよ。

補足しとくと、カラスアゲハグループとミヤマカラスアゲハグループにそれぞれ斑紋が似ている蝶がいるけど(カラスアゲハ↔ミヤマカラスアゲハ、クジャクアゲハ↔ルリモンアゲハ、ルソンカラスアゲハ↔ホッポアゲハなど)、これは系統分岐が先に起こり、後に形態変化が系統とは無関係に起こっていることを示しているらしい。2つの種が系統的には遠く離れていても似たような環境に生息すると、形態的に似た種になるのではないかと云うことだ。いわゆる平行進化とか収斂って言われているやつかな。
えっ、待てよ。形態変化よりも遺伝子変化の方が先なのか?じゃあハチジョウカラスとかトカラカラスの例はどう説明するのよ?それともどっちとも有り?
まあ、どちらにせよ環境が変わると形態が変わると云うのは理解できる。でも水中とか高山に適応した形態に変化するのなら解るけど、何でそれが斑紋なんだ?この斑紋(ルリモンアゲハとクジャクアゲハなど)を見ても、特別なメリットが有るとは思えない。メリットがあると思うのは、せいぜいホッポアゲハくらいだろう(毒のあるアケボノアゲハに擬態していると云う説がある)。
平行進化とか一斉放散は理論としては解らないでもないが、その意味するところは何なのよ?説明としては不充分で何か無理がないかい❓
まあ、こんなこと考えても明確な答えなんて見つからない。進化に全て意味や理由があるとは限らないのだ。それこそ何となくそうなっただけなのかもしんない。たまたまそんな風に形態変化(進化)したら、偶然生き残っちゃいましたー( ̄∇ ̄*)ゞってのが真相だったりしてね。

ついでに言っとくと、遺伝子解析後もカラスアゲハの新しい分類の仕方を良しとしない学者もいるようだ。
全くもってややこしい話である。カラスアゲハなんて、もうどうでもええわい(ノ-_-)ノ~┻━┻

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