台湾の蝶6 タカサゴイチモンジ

 
     タテハチョウ科 その5

      第6話『碧緑の銀河』

  
緑系イナズマチョウの第3弾である。

【Euthalia formosana タカサゴイチモンジ♂】
(2017.6.20 台湾南投県仁愛郷南豊村)

この蝶も前回とりあげたスギタニイチモンジと同じように、光の当たる条件によって色が幻妖に変化する。

(2017.6.15 台湾南投県仁愛郷南豊村)

特に羽化後間もないものは鱗粉に蒼がのり、美しい。
しかし、その蒼はやがて失われ、すぐに白茶けた色に変わってしまう。

(2015.7.13 台湾南投県仁愛郷親愛村)

2016年は採れども採れどもそんな擦れた♂ばかりだった。仕方なく殆んどはリリースした。
ようやく2017年に綺麗な個体を拝めたのだが、2、3日後にはもう羽が擦れ始めていた。たぶん♂はテリトリーを張って他の個体を追い回したり、樹林内を縫うようにして飛ぶので羽の損傷が早いのだろう。

裏面の画像も添付しておきましょう。

タカサゴイチモンジは淡いグリーンがかった色だったが、こちらは黄色い。
これはこれで美しくはあるが、何とも惜しい。
個人的には裏が淡いグリーン系のユータリアであって欲しかった。もし翡翠色だったら、ユータリア有数の美蝶となってたのにね。

参考までに淡いグリーン系の裏面とは、こんな感じ。

【Euthalia Patala パタライナズマ 裏面】
(2014.4 Laos oudmxay)

美しい。
まるで冥界を彩る幽玄なる翠だ。この世の色とは思えない。

タカサゴイチモンジもスギタニくんと同じで、標本になってしまえば独特の輝きを失ってしまう。色も何だか地味な感じになっちゃう。渋いっちゃ、渋いんだけどね。

比較的まだ美しさは残っているが、たぶん時間が経てば色褪せてしまうに違いない。

一応、去年の擦れた個体も添付しておくか。

帯が白くなっちゃうんだよね。
ちよっと別種に見えなくもない。それくらい印象に差がある。やはり、タカサゴイチモンジは是非とも鮮度の良い実物を見てほしい。でないと、その本当の魅力は解らない。

( ; ゜Д゜)あっ!、胴体に黴が生えとるぅ~。
完品じゃないし、まっいっか…。

さあ、続いてはメスでごしゃるよ。
スギタニもそうだったけど、タカサゴもメスが白眉だ。ユータリアの魅力の真髄はやはりメスにある。

(2017.7.4 台湾南投県仁愛郷南豊村)

♂よりもかなり大きいし、帯が太くなる。
スギタニイチモンジの回で、飛ぶさまはオオイチモンジを彷彿とさせると書いたが、本当はこっちの方がオオイチの♀っぽい。梢の上を雄大に飛んでいるのを見掛けると、ワタクシ、オートマチックに萌えまする。

その蒼によろめきそうだ。

(2016.7.15 台湾南投県仁愛郷南豊村)

美しいよねえ…。
下翅の帯の周辺は、まるで天の川に散りばめられた銀河のようだ。碧緑が妖しく耀いている。
或いは、天の蒼白きカーテン。オーロラにも見える(画像は拡大できます。鱗粉がヤバイです)。

実を言うと個人的な好みとしては、台湾のLimbusa亜属(緑系イナズマチョウ)の中では、このタカサゴイチモンジが一番好きだ。これだけ帯が広いユータリアは、たぶんタカサゴ以外にはいないのではないかと思う。イナズマチョウ分布の東端、極東に棲むユータリアだけあって、独自進化した特異な存在といえよう。似たようなもんだらけのリンブサ界(緑系イナズマ)にあって、ソックリさんがいないというのは、極東特産種の面目躍如ってところでしょう。

他にも、好きがゆえなのか♀の写真は沢山ある。

(2016.7.5 台湾南投県仁愛郷南豊村)

たぶん、下3つは初めて採ったメスだな。
この時も、感動と安堵で指先が震えたよね。
個体差はあるけれど、総じてオオイチの♀よりも大きいのではないかと思う。立派なのですよ。
その迫力と玉虫色の翅に( ☆∀☆)萌え~なのだ。

まだまだ画像はある。
お次は黄色く写ったヴァージョン。

(2016.7.7)

(2016.7.29)

(2017.6.26)

(2017.6.20)

飽きた…。画像はまだまだあるけど、もうええやろ。

こんなにも色が変わって写るのは、たぶん背景の色と無関係ではないと思う。にしても、カメラがそんなにビビットに反応すると云うことは、よほど鱗粉が複雑な色の組み合わせで成り立っているのだろう。

一応、裏面の画像も添付しておきましょうネ。

♂の時に黄色いとコメントしたが、厳密的には緑がかった黄色と云うのが正しい。

おっと、忘れてはならぬ。♀の標本写真も添付じゃけえ。

しもた。翅がちょこっと欠けとるやんか。
ならば、これで許してけろ。

触角がやや気になるが、まあまあの出来だね。
もっと完璧な奴もある筈だが、探すのはメンドーだからヤメ。筆を前へ進めよう。

忘れてはならぬ。裏面画像も添付じゃよ。

さてと、そろそろ出口が見えてきた。今回はどうやら迷宮にハマらずに済みそうだ。このまま怒濤のガブリ寄りで乗り切ろう。
ではでは、最後に種解説をしときますね。

【生態】
台湾特産種。学名の小種名formosanaは「台湾の」と云う意味。補足すると、formosa(フォルモサ)とはヨーロッパでの台湾の別称で、ポルトガル語から来ており、「麗しき島」を意味する。
そういえば前回書き忘れたけど、スギタニイチモンジの小種名の「insulae」はラテン語で「島」を意味します。奇しくも、両種とも島に関連した学名がついているんだね。

台湾での呼称は「臺灣(台湾)綠蛺蝶」。
如何にも台湾の固有種だと解るネーミングだ。
他に、臺灣翠蛺蝶、高砂綠一文字蝶、臺灣綠一字蝶、臺灣蛺蝶と云う呼び名もあるようだ。

図鑑によると、台湾全土(厳密的には中北部から中南部)の低中山地に分布するが、中部の山地に多く見られるという。
しかし、中部でも何処にでもいるというワケではなく、その分布はある程度局所的なのではないだろうか。まあ、ホリシャイチモンジやスギタニイチモンジと比べると、会える確率は遥かに高いけどね。
垂直分布はスギタニイチモンジに比べて低く、標高150~2700mの間の常緑広葉樹林周辺に見られるとあった。
自分の経験では、標高800~1300mの間でしか見た事がない。中でも1000m前後で多く見うけられた。低山地には、あまりいないんじゃないかと思う。
また、拓けた場所ではあまり見られず、生息環境は樹林帯が中心だろう。しかし疎林には見られず、樹の密生した深い森を好む。
そういえば渓では殆んど見たことがなく、尾根や山頂、林道で見かける事が多かった。

年1回の発生で、早いものは4月から現れ、11月まで見られるが、6~8月に多い。
しかし完品を観察したければ、8月は厳しいかと思われる。埔里周辺では、♂は6月上~中旬、♀は6月下旬~7月上旬が適期かと思う。とはいえ、年によって発生がズレる場合もあるかと思われるので、鵜呑みにはしないように。文句は一切受け付けませんから、あしからず。

♂♀ともに梢上を飛び、飛翔は敏速と書かれているサイトもあったが、イナズマチョウの中では圧倒的にトロい。飛ぶスピードがマッハのユータリア軍団(イナズマチョウ属)にしては遅いし、それに超敏感なこの種群にあっては明らかにアホだ。

♂は午前中に林縁でテリトリーを張る。高さはそれほど高くなく、だいたい3~5mくらいの場合が多かった。但し、その地の樹高の高低もあるので、これがノーマルな生態とは断言できないところはある。
埔里周辺での観察では、午後になると♂が林縁やその内部を縫うようにして緩やかに飛び始める。多分、メスを探す探雌行動ではないかと推測される。
♀は林縁から少し入った暗い環境にいる事が多かった。飛翔は緩やかで、すぐ止まるので捕獲はユータリアの♀にしては容易。とはいえ、♂よりも敏感だし、森の奥に入られると厳しい。
♂♀ともに落下発酵した果実、獣糞、樹液に集まる。又、たま~に林道上に翅を広げて止まっている。

アメブロに書いた『発作的台湾蝶紀行』では、第8話「麗しき女王、フォルモサ」、第13話「歪む空間、痛恨のバックファイアー」等々の回に登場します。興味のある方は、探してみてちょ。

【幼虫の食餌植物】
五十嵐 邁・福田晴夫『アジア産蝶類生活史図鑑』には、こうあった。

「トウダイグサ科 Matllotus philippensis クスノハガシワに産卵するものが内田春男により採集され(1999年)、飼育に成功した。この他、ブナ科のLithocarpus ternaticupulus ナンバンガシから数個の蛹の脱け殻が発見されており、この植物が本種の食餌植物であることはほぼ確実と考えられる。アラカシ、アカガシを用いてもきわめて良好な結果が得られることから推察して、さらにトウダイグサ科、ブナ科の食餌植物が発見されることはありうる。」

ネットで見つけた『DearLep 圖録検索』のページには、以下のものが食樹として列記されていた。

・Cyclobalanopsis longinux longinux
・粗糠柴 Mallotus philippensis
・三斗石櫟 Pasania hancei ternaticupula naticupula
・青剛櫟 Quercus glauca

1番目は和名を特定できないが、ブナ科 カシ類だね。2番目はトウダイグサ科のクスノハガシワで、3番目は属名は違っているが、たぶんナンバンガシの事だろう。そして、4番目はブナ科 アラカシの事だね。
ようするに、幼虫くんはブナ科とトウダイグサ科の植物を広く餌にしているのだろう。
それにしても、幼虫の邪悪度が凄いわ。
画像、添付しちゃうかどうか迷ったが、えーい載せてやれ!
女子やお子ちゃまは、閲覧注意じゃよ。

(出典『臺灣生物多様性資訊入口網』)

(出典『DearLep 圖録検索』)

何度見てもユータリア属の幼虫は、Σ(-∀-;)ワチャーってなるわ。
スーパーにゲジゲジで、いかにも毒がありそうだ。
そういえば、毒があると書いてる論文があったような気がするなあ…。ラオスの変人さんのだっけ?
もしこんなのが、ふと見たら目の前に止まっておったりしたら、おいちゃん、\(◎o◎)/発狂するね。
今、想像してΣ(´□`;)ゾクゾクッって背中に悪寒が走ったわ。

                  おしまい

 
追伸
今回のタカサゴイチモンジは台湾特産種であり、亜種も無いので、めでたしめでたしの迷宮は無しで、すんなりとクローズできました。
この先も平穏無事に文章が書けることを祈ろっと。

暗黒ダークサイドの即席めん図鑑

 
酔っ払うと、なぜかカップ麺を買うクセがある。
でも買ったら何だか満足してしまい、シンク下の暗黒ダークサイドの保存庫に放り込まれる。そして遥か1万光年、忘却の彼方へ。

で、年末に大掃除したら、いつしかこないな事になっとった。

しかも確認したら、半分以上が既に賞味期限切れである。
やれやれ、地球防衛軍をもってしても解決できないレベルに達しつつある。何せ、これはあくまでも全種類の即席めんを一種類ずつ並べたにすぎないのだ。本当は各種複数あったりする。
※@●△‰*♯■☆ガジバルビベンバゾルゴジャリ❗
アタマわいて、思わず謎の呪文を唱えたちったよ。

一瞬、年始を前に、この際賞味期限切れのものは思いきって捨ててやろうかと思った。
イヤイヤ、そんな大それた事がセコい男に出来るワケがない。勿体なくて結局捨てられなかったとですよ。

でだ、これから暫くは『暗黒ダークサイドの即席めん図鑑』と題して賞味期限の切れた即席めんを紹介してゆく所存でありまする( ロ_ロ)ゞ
乞う御期待❗
って、そんなもん書いて誰が喜ぶというのだ❓

                  づつく

 
追伸
この文章、夜中に(@_@;)べろべろに酔っ払って書いたもの。いっそ消してやろうかとも思ったが、勿体ないので発表しちゃいました。
というワケで、これから時々インスタント麺のレポートをします。
( ̄ー ̄)ん~、でもホント、そんなもん書いても誰も喜ばんよなあ…。

師走の夕暮れ

 
ガチさびぃ~。
冬はとっても苦手なのだ。
ポチ、できることならマジ冬眠したいよ。

寂しがりやのポチは、ゴージャスな夕焼けを眺め終えると、意を決したようにまた歩き始めた。
天王寺から難波までの帰り道、今度こそは道草しないようにしよう。そう思った。

続きを読む 師走の夕暮れ

台湾の蝶5 スギタニイチモンジ

 

      タテハチョウ科編 4

       第5話 『儚き蒼』

 
ホリシャイチモンジの次とあらば、やはり流れ的に他のイナズマチョウも紹介せねばなるまい。

【Euthalia insulae スギタニイチモンジ♂】
(2017.6.27 台湾南投県仁愛郷 alt1950m)

まだ生きている時の杉谷一文字は実に美しい。
青いのだ。光を浴びると輝き、角度により様々な色に見える。その幻妖に変化するさまは見てて飽きない。

最後は翡翠色だ。

同じ個体で、ここまで違って見えるのである。
謂わば玉虫色なのだ。

しかし、ボロになると白っぽくなる。

(2016.7.12 台湾南投県仁愛郷)

9月や10月に行ってもスギタニイチモンジは採れるらしい。それをもってしてスギタニイチモンジはこんなもんじゃろうと思った人も多いだろう。しかし、その美しさには比較にならないくらいの差があるのだ。そこんところは強調しておきたい。採りたいなら、発生初期に行きなはれ。
そういえばこの時(2016年)、メスはまだ綺麗なのにオスはみんなこんなんばっかだった。思った以上に鮮度が落ちるのが早い蝶なのかもしれない。もしくは、思ってる以上にオスの羽化がメスに比べて早いとも考えられる。
あー、忘れてた。2017年にはもっと標高の低いところ(標高1100m)で採ったオスは、ボロッボロッだったわ。同じ時期の1900m付近では完品だったのにね。

(2017.6.24 台湾南投県仁愛郷)

結構早くに発生してたってワケか…。
或いは、オスはメスを探して結構飛び回るので、損傷が早いのかもしれない。

メスの画像も並べてみよう。

(2017.6.29 台湾南投県仁愛郷)

(2016.7.14 台湾南投県仁愛郷)

(2016.7.13 台湾南投県仁愛郷)

(2016.7.12 台湾南投県仁愛郷)

メスはオスに比べてかなり大きい。
重厚感も加わって威厳さえ感ずる。イナズマチョウは、やっぱメスの方がカッケー( ☆∀☆)
それはそうと、全部鮮度は良さそうには見えるが、こうして並べてみると6月の個体の方が美しい。
もしかしたら羽化後、輝きを保てる期間はごく僅かな間なのかもしれない。

裏面の画像も添付しておきましょう。

(2017.6.29)

(2016.7.12)

黄土色に淡いグリーンが掛かったような色で、裏もまた美しい。落ち着いた大人の色気が漂う。
もし、こういう色の着物を着こなす妙齢のシットリ美人がいたとしたら、オイラ、間違いなくイチコロだ。

でも死んでしまうと、悲しい哉その蒼の輝きは儚くも消えてしまい、翡翠色も褪せてしまう。
そして標本なると、オリーブ色とかカーキー色、黄土色にしか見えなくなる。生きている姿を見たものからすれば、まるで別の蝶のようだ。
これは、Limbusa亜属(緑系イナズマチョウ)全体に言えることで、特に翠の輝きが強い種類ほどその落差は大きい。こんなに生きてる時と死んだ時との落差がある蝶は、他にあまり浮かばない。

参考までに標本写真も並べておきましょう。

多分、♂だね。
スギタニイチモンジは、基本的に♂♀同紋なのだ。
とはいえ、大きさと翅形で雌雄の区別はだいたいつく。慣れれば誰でも解るくらいのレベルでしょう。

下翅内側の内縁が浮いてシワシワになっているのが気になるので、上からテープで抑えて完璧を期す。

展翅は嫌いだが、他人の目を気にする人間は完璧を目指す。バカバカしい限りだ。

いや、ちよっと待て。
たぶんこっちが♂だわさ。

一応、絶対に♀だと思われる展翅写真も貼っておこっと。

ありゃま(^。^;)、本来は完品なのに、お漏らしで翅が汚れちまってるじゃねぇーか。ガッカリだよ。

しゃあない。まだ他に未展翅のものがある筈だけど、一昨年(2016年)の標本写真を出してこよっと。

(ФωФ)ニャオー、これも展翅完璧なのに翅が一部破損しておる。

いやいや、完品もあった筈。
探そう。

(⌒‐⌒)ごじゃりましたよ。
色もこの時点では、まだある程度は残ってるね。
多分これが一番最後に採ったもので、翌日帰国してすぐに展翅した奴だ。

さあさ、満足したところでの種解説なのじゃ。
チヤッチヤッといこうではないか。

にも拘わらずだ…。
Σ(T▽T;)どひゃあー、すぐに眼前に毎度毎度の迷宮ちゃんが立ちはだかってきやがった。
またしても学名問題の勃発である。おいちゃん、気を失いそうになる(@_@;)

「原色台湾産蝶類大図鑑」を見ていたので、スギタニイチモンジは台湾の固有種ではなく、大陸に分布するEuthalia thibetanaの亜種の一つにすぎないと思っていた(亜種名 Euthalia thibetana insulae)。
しかれどもこの図鑑、優れた図鑑ではあるが、如何せん古い。1960年発行でアチキの生まれるだいぶ前からあった図鑑なのである。その辺を差し引きして考えねばならない事は重々頭には入っていた。しかし、もっと後の1997年に発行された「アジア産蝶類生活史図鑑」でも学名はそのままだったから、特に疑問には思わなかったのだ。
それが資料集めしてたら、何と学名が違っているではないか。何ですかそれ❓の、今はどうやら台湾特産種になっているらしいのだ。

新しい学名は亜種名がそのまま昇格した形をとっており、「Euthalia insulae」となっていた。
台湾のサイトでも確認したし、ほぼ間違いなかろう。
亜種名も見つからなかったし、台湾の特産種というのが濃厚だ。
因みに台湾名は「窄帯翠蛱蝶」のようです。
つまり狭い帯の緑色のタテハチョウというワケだすな。

そういえば「ラオスで最近採集された蝶(9)」に、似たようなのが図示されてたなあ…。

やっぱ、ごじゃりました。

(出典 増井暁夫・上原二郎『ラオスで最近採集された蝶(9)』月刊むしNo.403,Sept,2004)

Euthalia dudaと云う種類の♂のようだ。
似てるね。スギタニイチモンジだと言われても、何ら疑問を持たないだろう。

解説によると「本種は一見、台湾のスギタニイチモンジ E.insulaeや大陸のE.thibetanaなどのイチモンジ型斑紋の各種と紛らわしい。6月にごく少数が得られているのみで、ラオスにおける詳細は明らかでない。今までの分布記録はネパールからミャンマー、中国雲南省にかけてまでであり、南東限が伸びたことになる。」とあった。
おー、これはスギタニイチモンジとE.thibetanaは別種であると証明してくれているような文言ではないか。
\(^_^)/ありがてー。今回は迷宮を彷徨(さまよ)わずとも済みそうだ。

一応、ウィキペディアの「Euthalia」のページでも確認してみる。
おっ、種類の欄にはE.insulae、E.thibetana 共に種として表記されてあるから、両者は別種で間違いないでしょう。

ついでに、E.thibetanaの画像も添付しておくか。

(出典『国家动物博物館』)

漢字では「西藏翠蛱蝶」となっていた。
西蔵はチベットと読むから、最初にチベットで発見されたのであろう。和名にすれば、チベットイナズマってところだね。
分布は今一つハッキリしないが、ググった範囲では雲南省と湖北省の標本が見つかった。少なくともチベットからその辺りにまでは生息しているのだろう。

それにしても、E.dudaといい、E.thibetanaといい、見た目は殆んどスギタニイチモンジと変わらないよね。素人には、どう違うのかさっぱりワカランよ。

【生態】
和名にイチモンジとつくが、イチモンジチョウの仲間ではなく、イナズマチョウのグループに属する。
図鑑では台湾中部から中北部の山地帯に局所的に分布し、標高200~3000mの常緑広葉樹の森林付近に見られるとある。だが、低標高では見たことがない。
自分が姿を見たのは標高1200m前後、1950m、2400mの三ヶ所。明らかに垂直分布は次回登場予定のタカサゴイチモンジよりも高く、おそらくその分布の中心は標高1500~2200mの間にあるかと思われる。
年一回の発生で、6月~8月に多く、11月まで見られる。標高にもよろうが、埔里周辺では♂が6月上、中旬が観察適期。♀は6月中下旬から7月上旬が適期かと思われる。

敏感で飛翔は速い。♂は梢上を活発に飛び回り、♀を探雌するような行動がよく見られた。その時は飛翔速度が比較的落ちる。標高1900m地点では午前9時頃から姿を現し、午後になると次第に見られる数が減ってゆく傾向があった。
♀の飛ぶさまはオオイチモンジを彷彿とさせるところがあり、雄大。( ☆∀☆)心躍ります。

♂♀ともに落果発酵した果物、獣糞、樹液に集まる。
自分は桜の樹液に訪れる本種を何度も見たが、真っ直ぐ樹液に飛来するのではなく、先ずは近くに止まり、幹を少し歩き回ってから樹液の出ている箇所に辿り着くものが多かった。

【幼虫の食餌植物】
『アジア産蝶類生活史図鑑』によると、ブナ科 イチイガシ、ナガバシラカシを用いて採卵と飼育に成功した例があるようだ。またトウダイグサ科 クスノハガシワを食う記録もあるという。
台湾のサイト(DearLep 圖録検索)には、食樹としてCyclobalanopsis stenophylloides(ブナ科カシ類)、Quercus gilva(イチイガシ)、Quercus glauca(アラカシ)の3種があげられていた。

【記載・名前の由来など】
1930年にHallが埔里産の1♂に基づいて、「Euthalia thibetana insulae」として記載したが、それ以前にもかなり採れていたようである。しかし、次回紹介予定のタカサゴイチモンジと長い間混同されていたみたいだ。
「原色台湾産蝶類大図鑑」によれば、同じ1930年に杉谷岩彦教授が立鷹、旧ハポンの本種の標本をタカサゴイチモンジの異常型として発表したようだ。和名はその杉谷岩彦教授に因んでつけられたものかと思われる。
付け加えると、この杉谷教授は日本のスギタニルリシジミやオオムラサキのスギタニ型にも名を残しておられる。

またスギタニイチモンジに会いにゆきたいなあ。
でもその前にビヤッコイナズマ Euthalia byakkoを何とかせにゃならんわい。
あっ、そういえば台湾には、マレッパイチモンジ Euthalia malapana という幻になりつつあるイナズマチョウもいるんだよなあ…。

                  おしまい

 
追伸
おーっと、忘れてたよ。
スギタニイチモンジの採集記は『発作的台湾蝶紀行』の第38話 原初的快楽 と第48話 さらば畜牧中心 などにあります。発作的台湾蝶紀行 スギタニイチモンジ と打てば検索できるかと思います。宜しければ読んでやって下さい。

既に予告済みですが、次回はお仲間のタカサゴイチモンジ Euthalia formosana の予定です。
タカサゴイチモンジもスギタニイチモンジに負けず劣らずの佳い蝶です。御期待あれ。

Euthalia thibetana チベットイナズマは、「原色台湾産蝶類大図鑑」によると、中国西部及び中部に原記載亜種(ssp.thibetana)が分布し、雲南省のものは別亜種 ssp.yunnana となっておりました。

鯨ユッケ、怒りのヤキ入れ

 
冷凍の「鯨ユッケ」なるものが半額になってるのを見つけた。

定価の¥248というのもクズみたいな激安価格だが、その半額なんだから、たったの¥124なんである。
安物の鯨の生なんてちよっと怖い。訝しくもなってくる。鯨じゃなくて、🐬イルカさんだったりしてね。
ならば糾弾批判の雨あられじゃね。
でも言っとくけど、生物学的にクジラとイルカの線引きは曖昧なのだ。ハッキリ言ってしまうと、大きいのはクジラ。小さいのがイルカと呼ばれているに過ぎない。
クジラは単なるデッカいイルカでっせーΨ( ̄∇ ̄)Ψ

とにかく百聞は一見に如かずだ。そんな事では、チャレンジャーの好奇心は怯まない。

解凍してパッケージを開けてみる。
ユッケのたれが付いている。
でもユッケのたれに良い思い出は、一度たりともない。大概はクソ甘いんである。
しかし、このクソ安いクジラの生肉に醤油のみをつけて食うのには、あほあほチャレンジャーといえども少々躊躇(ため)われる。激くさ糞マズが、ダイレクトに襲ってきたらと思うと、尻込みもしようと云うものだ。
それに袋に「水産庁長官賞受賞」と書いてあるではないか。ちよっとは期待してもよかろう。
でもなあ…、嫌な予感はするんだよなあ…。

取り敢えず安全策に逃げて、ユッケのたれをかけちまう。根性なしだ。
で、グシャグシャとかき混ぜる。
器に盛って、真ん中に窪みをつくって卵の黄身を乗っける。仕上げに白ゴマを振り、貝割れ大根を飾って完成。

肉がドドメ赤黒なのがやや気にはなるが、一応見た目は旨そうである。

先ずは卵を潰さず、端っこの肉をちょいと摘まんで食ってみる。

!Σ(×_×;)あっまっ❗糞マズッ(#`皿´)❗❗
肉が臭いとかマズとかじゃなくて、味付けがクソ甘くて全体の味を見事にブチ壊しとる。
(# ̄З ̄)なあーにが水産庁長官賞受賞じゃ!、ボケなすがっ❗

卵の黄身を混ぜて食べてみる。
(-_-)…。
何ら事態は改善しておらん。卵の黄身が下手したら甘さを補完しているのではないかとさえ思えてくる。
(-“”-;)死んでしまえばいいのに…。

今後ワシはユッケのたれとは、関係を断絶させて戴く。そして、生涯二度と邂逅する事はないじゃろう。

試しに七味をかけてみる。
ちよっとマシになっただけで、ことさら旨くなったワケではない。
(ー。ー#)死んでしまえばいいのに…。

次に山椒をかけてみる。
どんなものでもそこそこ何とかなる山椒でも味の改善は特にみられない。
(#`皿´)死んでしまえばいいのに❗

(ノ-_-)ノ~┻━┻💥とぅーす。
諦めた。

でも、所詮は¥124だと思えば冷静になる。
と思ったら、大間違い。
おどれ、たっぷりヤキ入れちゃるけーの❗
Ψ( ̄∇ ̄)Ψケケケケ、よっしゃー、オマエに改造手術を加えてやるわい。

鯨ユッケに胡椒を振りかける。
ナツメグも振りかける。
パン粉もパラパラ入れよう。
玉ねぎは荒微塵切りして、レンジで1分チン。
さあ、何をしようとしているかも見えてきましたね。
そう、鯨ハンバーグをつくるつもりなのだ。
しかし、調子に乗って残った卵の白身をブチまけて混ぜたら、ヌルヌルのズルズルになりおった(@_@;)

しかし、もう後戻りはでけん。
不幸な事に、冷蔵庫に他に肉はござらんのだ。だから、肉増量作戦もとれん。
頭を巡らせ考える…。

そのまま焼く事にした。
けんど、ヌルヤラ過ぎて絶望的に成形不可能。
えーい(*`Д´)ノ、どうとでもなれ、油をひいたフライパンに皿ごとダイブ。
べっちょり~(´д`|||)
ホント、マジに軟弱やらやら野郎なのである。
こんなもん、果たしてちゃんとひっくり返せるのか?
取り敢えず弱火でじっくり火を入れてゆく作戦をとる。ここは慎重に進めよう。丸焦げにしては、不幸の上塗りだ。

頃合いをみて、フライ返しをツッ込み、フライパンを傾けて(ノ`△´)ノどっせー、一挙にひっくり返す。

奇跡的に崩れずにひっくり返ってくれた。
とにかく最悪の事態だけは避けられた。

皿に盛る。

はははは(´ω`)、不味そうだ。
そもそもが決して旨そうに見えないビジュアルなのに、器の選択までも間違えると云う致命的にミスをおかしておる。こういうのを世間では、蛙のツラに小便、泣きっ面に蜂なんぞというのだ。
おでおで、死んだ方がマシ。

気を取り直して食ってみる。
味はついている筈なので、一応まずはそのままで。

(;・∀・)ふむふむ。
火入れは完璧、外カリカリの中ふわっ。

むー、決して旨いとは言えないが、そこそこ食える。
試しに醤油をちょいと垂らしてみたら、もっと食える代物になった。
一瞬、(*´∀`)♪小踊りする。
しかし、すぐにアホらしくなってやめた。
いったいオラは何が嬉しくって、こんな事をしておるのだ。そう気づいたからである。何ら全く喜ぶほどの事ではない。

窓に目を移すと、相変わらず雨が降っていた。
天気と同じで、何だかもやもや気分だ。
地球防衛軍、地球防衛軍。
と意味不明の言葉を呟き、残った缶ビールの残りを一気にあおった。

                  おしまい

 
追伸
何だかワケのわからんシュールの終わり方をしてしまった。
人間、誰しも時々壊れるものなのである。

台湾の蝶4 ホリシャイチモンジ

    第4話 『壮重なる紫』

【Euthalia kosempona ホリシャイチモンジ♀】
(2017.6.20 台湾南投県仁愛郷)

タテハチョウ科 イナズマチョウ属のホリシャイチモンジのメスじゃけぇ。
マジ、渋カッケー( ☆∀☆)
オスとは全然見た目が違うから、昔は別種と考えられていて、ダイトウイチモンジ(Euthalia hebe daitoensis)なる名前がついていたそうだ。
ホリシャイチモンジはオスもあまり見掛けないが、メスにはもっと出会えない。ワテもこの1頭しか出会った事がない。

と云うワケで慎重に展翅したあるよ。
今回はタイワンタイマイとは反対に上翅をギリギリまで上げた。なぜなら、下翅の上側が黄泉(よみ)の国に通ずる妖しき闇を想起させる高貴なる紫だからだ。それが上翅に隠れて見えなくなるのは何としてでも避けたい。ゆえに、下翅を限界まで下げてから上翅を調整したのでありまする(`◇´)ゞ。

採れたのは、前述したようにこの1頭のみ。
珍しく緊張のあまり振り逃がして、死ぬほど追いかけ回して最後はダイブ。何とかギリギリで仕留めたのを思い出す。

下翅上部の紺色と紫が混じりあったような色が、何とも言えない美しさだ。

裏面はこんな感じ。

心拍数バクバクの急上昇、ハーハー、ゼェーゼェー状態で天を仰いで拳を突き上げ『エーイドリアーン❗』と叫んだっけ…(アホなのだ)。
で、膝をついたまま写真を撮ったんだよね。その時、突然指が震え出したのを鮮明に思い出す。指が震えたのは久し振りだった。
昔は初めて採った蝶には毎回指が震えたものだが、慣れてくると滅多にそんな事は無くなった。
物事は知れば知るほど面白くもなるのだが、それと背反して知れば知るほど純粋なる感動とは乖離してゆく。
人の生業(なりわい)とは、常に大いなる矛盾を孕みながら流れている。時々、何故に❓と立ち止まらざるおえない時がある。一つの真理なんて何処にも無いのかもしれない。全ての物事には二律背反する二つの真理が存在している。逆もまた然りだ。

話が逸れた。
続いて♂をホリシャイチモンジのオスを図示しよう。

【ホリシャイチモンジ♂】
(2017.6.15 台湾南投県仁愛郷)

コチラがその裏面。

色が今イチなので採集時の画像も添付しておこっと。

あらためて並べてみると、メスとは色柄が全く違う。
オスとメスが異型の蝶って、そこにきっと何らかの意味があるんだろうなあ…。
だとは思うんだけど、ホリシャイチモンジの場合はよくワカンナイ。何か毒のある奴に擬態してるふしもないしさ…。

生態は、自分的には今イチよくワカンナイところがある。
後々登場するタカサゴイチモンジみたいに♂がテリトリー(占有行動)を張っているのを見たことがないし、路上に出てきたのも一度も見たことがない(唯一♀だけが路上にいたもの)。
また、スギタニイチモンジのように♂が♀を探すような回遊行動も見られなかった。
一昨年2016年の7月に初めて採った時は、二度とも暗い森に入った瞬間にマッハで飛び出てきて咄嗟に振り抜いて得たものだ。トラップには全く来なかった。
一方、2017年はトラップに来たものしか得ていない。

飛翔はバリ速い。年1化、5~10月に常緑広葉樹周辺に見られるというが、その最盛期は6~7月だろう。
図鑑によれば垂直分布は標高200~2500mとなっているが、採集ポイントでは標高1000m前後という狭い範囲でしか見られなかった。標高も無関係ではないだろうが、比較的限られた自然環境にしか生息できない種なのかもしれない。また、その生息環境からあまり離れたがらない性格なのではないだろうか?それがゆえに採集例が多くなく、局所的分布とされる所以ではなかろうか。

杉坂美典さんのブログに拠れば、分布はインドシナ半島北部から中国南部と台湾。台湾国内では、中南部から中北部の山地帯に局所的に分布するとあった。
でも、このタイプのイナズマチョウは大陸に似たようなのが結構いて、別種になってた奴もいる気がするんだよなあ…。少なくともタイやラオスの北部(インドシナ半島北部)には居ないし、記述されてる程には分布範囲が広いとは思えないんだよなあ。
台湾のものは、固有種(特産種)という可能性はないのかなあ…。
(>o<“)クソーっ、また変なとこに首を突っ込もうとしてるね、オイラ。

他のサイトでは、ホリシャイチモンジは台湾の固有種だという表記もあった。
またしても迷宮に迷い込みましたなあ…。

でもググっても、ろくな資料が出てこない。
亜種名さえも出てこないところをみると、特産種の可能性もあるかもしれない。

そういえば肝心要の『原色台湾産蝶類大図鑑』を見るのを忘れてたよ。

(;゜∇゜)あれま、そこにはこう書いてあった。

「本種は従来台湾の特産種とされているが、対岸大陸には類似種が多く、その分類はさらに再検討を要する。Mell(1923)は南支那(中国)広東省北部の山地から本種の1亜種と思われるもの(Euthalia shinnin albescens Mell)を記載しており、本種は支那産のものと共通種である疑いが濃い。」

「shinnin」とか、また変なのが出てきたよ。
こんな時、横地隆さんの『総説リンブサイナズマ』が
手元にあればなあ…。緑系イナズマのLimbusa亜属といえば横地さんが第一人者なのである。
副題に「南中国・ヒマラヤ地域に生息するユータリアの世界」とあるように、この亜属を網羅した論文だ。これさえ有れば、問題はたぶん一発で解決するに違いない。
しかし、論文はCiNii booksで探しても本文の閲覧は出来なかった。

その替わりに横地さんの別な論文「Revision of the Subgennus Limbusa MOORE,[1897]」というのが目っかった。

らしき画像の学名欄を見ると、何と何と驚いた事にそこには「Euthalia sahadeva kosempona」とあるではないか。えっ、ホリシャイチモンジって、sahadeva サハデバの亜種なの❗❓
じゃあ、shinninとか云うのはどないな扱いになるのん?オジサン、(@_@;)パニックだ。
サハデバの亜種ならば、学名表記も変わってくる筈だけど、記憶では各サイトの学名は「E.kosempona」になってたと思うんだよなあ…。

確認しまくる。
間違いない。台湾のものは皆「Euthalia kosempona」になってる。でも、亜種構成についての記述は見つからない。亜種名が見つからないというのは、どう云うことなのだ?やっぱり台湾のは特産種って事?

ついでに「Euthalia」だけで検索してみる。
これで属の種構成を調べようと云う狙いだ。
ウィキペディアにズラリと並んだ種名を見てゆく。
おっ、先ずは「E.kosempona」が見つかった。
やっぱり独立種扱いじゃないか。
続いて「E.sahadeva」も見つかった。という事は、kosemponaはsahadevaの亜種ではなく、両者は別種と云うことだ。真偽はともかくとして、ウィキではそういう見解ってワケだね。
因みに、そこには「E.shinnin」という種は無かった。

一応、台湾のサイトでも確認する。
ホリシャイチモンジの台湾での呼び名は、連珠翠蛺蝶, 黃翅翠蛺蝶, 甲仙綠蛺蝶, 埔里綠一文字蝶, 埔里綠一字蝶, 甲仙翠蛺蝶, 連珠綠蛺蝶。
いっぱい有るんだね~。日本みたく統一とかしないのかな?不便でしょうに。
もっとも、欧米では一つの種に対して、沢山の地方名があるから、そっちが当たり前なのかしら。

書くのを忘れてたけど、和名を漢字にすると「埔里社一文字」となる。最初に埔里(社)で見つかった一文字模様の蝶と云うワケだろう。
それにしてもイナズマチョウの仲間なのに、この和名はよろしくないね。イチモンジチョウの仲間だと勘違いする人も多かろう。いっそのこと、ホリシャイナズマと改名したらいいのにと思う。こっちの方がよっぽどカッコイイ。

「台湾生物多様性資訊入口網」というサイトで、謎だった「E.shinnin」の事もわかった。
どうもシノニム(同物異名)になっているようなのだ。

・Euthalia hebe subsp. kosempona Fruhstorfer, 1908 (synonym)
・Euthalia hebe daitoensis Matsumura, 1919 (synonym)
・Euthalia hebe shinnin Fruhstorfer, 1908 (synonym)
・Euthalia shinnin Fruhstorfer, 1908 (synonym)

一番最後の行に出ている。
だからウィキペディアには「E.shinnin」が種として出てこなかったんだね。納得だよ。
それにしても、「Euthalia hebe」へーべという種との関連で3つもがシノニムになっている。
たしかへーべという種も別種として存在してたよね。
あっ、2番目は♀の別名であるダイトウイチモンジの事じゃないか❗昔はへーべの亜種とされてたんだね。

これ以上、突っ込んでいったところでろくな事がない。埒も開かないだろうし、ラオス産緑系イナズマの画像を添付して、この件から逃亡します。
ったくよー、毎回毎回落とし穴に嵌まるなあー。

自分の持っている唯一のLimbusa亜属の資料を探す。
あっちこち探してようやく目っける事ができた。

(出典 増井暁夫・上原二郎『ラオスで最近採集された蝶(9)』月刊むし No.403,Sept.2004)

パッと見、左の奴がホリシャイイチモンジの♀にそっくりだなあ…。
おー(_)❗、何とコヤツがEuthalia sahadeva サハデバじゃないか❗これだけ似てりゃ、ホリシャがコヤツの亜種とされるのも解る気がするよ。
でも、よくよく見ると、このそっくりな奴は何と♀ではなく、♂なのだ❗
一瞬、頭がこんがらがる。チミはオカマちゃんなのか❗❓もしくは単なる♀を♂と書き間違えた誤記じゃねえのか?
でも、間違いではなく右隣がその♀なのである。
コレは別種と言わざるおえないよね。
分布はネパールから北タイ、ラオス北部、中国中南部にかけてとの事。

今度は見た目が♂に似たヤツだ。

(出典『ラオスで最近採集された蝶(9)』)

左上が『Euthalia pyrrha』。
解説に拠れば、サハデバの亜種と考えられていた時代もあったようだ。残念ながら、♀は図示されてない。
分布は中国た中南部からベトナム北部にかけて。

その右隣は『Euthalia suprema』。
その下が♀である。マハデバの♀とは見た目が違うし、コレも別種でしょう。2001年に記載された新種だそうで、基産地はサムヌア。

「Euthalia hebe」へーべも載ってましたよ。

(出典『ラオスで最近採集された蝶(9)』)

コレは一見して明らかに違うね。
何だよ、ホリシャイチモンジの♀にはあんま似てないじゃんかよー。
解説には、「中国湖北省長陽を基産地とするが他の地域からの報告は少なく、北ラオス・サムヌアから発見されたことにより、意外に広範囲に分布するのかもしれない。」とあった。

う~ん、この辺までが現時点でのオイラの能力の限界かな。
結局、肝心な事はよくワカンナイや。
ホリシャイチモンジがサハデバやへーべとは別種である事は解ったけど、台湾特産種なのかどうかはワカラン。
もう無理。ここいらで許してケロ。

おっ、そうだ。幼虫の食餌植物の事を書くのを忘れておった。
「原色台湾産蝶類大図鑑」には食樹は未知とあったが、台湾のサイトで見つけることが出来た。
それによると、ブナ科 Quercus glauca アラカシとブナ科 Cyclobalanopsis pachyloma(カシ属)となっていた。おそらく他のブナ科植物も食樹としていると思われる。

因みに、台湾のLimbusaのレア度は、ホリシャイチモンジ、スギタニイチモンジ、タカサゴイチモンジの順かと思います。
あっ、Euthalia malapana マレッパ(マラッパ)イチモンジってのもいましたねー。
でも、15年くらい記録がないらしいですから、これはもう別格の存在でしょう。
地震で道が寸断されて産地に入れなくなって久しいという。今後も道が修復される予定は無いそうだから、今や幻の蝶となりつつある。

それはそうと、このLimbusa亜属群と言われる緑色のイナズマチョウの新鮮な個体は、何れも標本とは美しさに雲泥の差があります。
これほど標本と実物に落差がある蝶って、あんまり記憶にありません。輝きが違うってところでしょうか。また、光の当たる量や角度によって随分違った色に見えます。謂わば玉虫色のスーツみたいなところがある。

【Euthalia Patala パタライナズマ】
(2014.4 Laos)

(2017.3 Thailand)

(2017.5 Laos)

(2014.4 Laos)

同じ種類なのに、こうも違って見えるのである。
一番最後の写真が標本の色に近い。
あー、また会いにいきたいよねー。

                  おしまい

 
追伸
因みにホリシャイチモンジ♂は、『発作的台湾蝶紀行』の第16話「王子様は黄金帯」に登場します。

https://www.google.co.jp/amp/s/gamp.ameblo.jp/iga72/entry-12189188667.html

そういえば、55話の「待ち人ちがい」にも登場しますな。

https://www.google.co.jp/amp/s/gamp.ameblo.jp/iga72/entry-12214192902.html

発作的台湾蝶紀行○○話で検索しても出てくると思います。
そういえばマレッパイチモンジも前に文章を書いたことがあるなあ。たぶん、マレッパイチモンジ 蝶に魅せられた旅人と打てば、これも出てくると思います。

(~_~;)何だか毎回ヘトヘトです。

 

逆噴射、油まみれのポテサラ

 
冷蔵庫のジャガイモから芽が出てきよった。
ヤバい。早速に調理すべし。

ジャガイモの品種は男爵でもないし、メークィンでもない。左の白いのが「ゆきつぶら」、右が「黄爵」と云う品種だ。雪つぶら姫とイエロー男爵だね。ゆきつぶらがメークィン系で、黄爵が男爵系なのかな❓
でも、両方とも男爵系の丸い形だ。
一応、ググってみっか。

(゜ロ゜)あらま、両方とも「とうや」と云う種類の系統らしい。近縁の親戚関係だったのね。
まあ、どっちでもいいや。蝶ほどに種について突き詰めるモチベーションは無い。

メンドクセーので、ラップしてレンジでチン。
出来上がりは、上から指で押してみて軟らかくなってたらOKですぞ。ジャガイモから水分が出るので、忘れずに捨てましょうネ。そのままマヨネーズをブッ込んで混ぜたら、ぐちょぐちょとびっちゃびっちゃになりますぞ。

取り敢えず本来の味を知りたいので、そのまま塩と胡椒を振って味見してみる。

なるほど、両方ともほっこり系というかしっとり系だ。味は黄爵の方がやや濃いかな?
感覚的には共に粘り気があってメークィンっぽい。何れ劣らず食味は良いと思う。これならポテサラにも適しておるでせう。

納得したところで、マヨネーズ投与。
ケケケケΨ( ̄∇ ̄)Ψ、今からおまえらを蝋人形にしてやるわ、もといポテサラ化してやるわい。

マヨネーズは、いつものリアルマヨネーズね。

ぼおーっとTVを見ながら、潰して混ぜる。
因みに、ジャガイモを完全に潰したポテサラが好きな人と潰さないである程度食感を残したポテサラを好む人がいるようだけど、自分はどっちでもいい派かな。

ベーコンと玉ねぎも加える。人参と胡瓜が無いので、今回はパス。彩りと食感には欠けるものの、拘らなければ味的にはそう大差はなかろう。

ところが、ゲゲッΣ(゜Д゜)❗、やってもーたの大失敗。マヨネーズが分離してしまって、油ギドギトになっちまったでよー。
(*ToT)あー、(T_T)うー、その場に崩れ落ちる。
スンマセン。ショックで画像無しです。

ポテサラ作りの鉄則は、冷ましてからのマヨネーズ投与である。それが分離させない為の絶対条件である。
にも拘わらずの、あろう事かの素人以下の大失態だ。

遠因は画像1にある。
普段はジャガイモを洗ったら、皮つきのままレンジでチンする。なのに、今回に限ってジャガイモの見た目の違いを見せたいが為に皮を剥いてしまった。コレが失敗の素となった。
いつもなら、熱いので温度がある程度下がってから皮を剥くのに、今回はその行程が無いゆえ無造作に熱いままのジャガイモにマヨネーズをブッ込んじまったのだ。

酔っ払いは、取り敢えず玉ねぎを増量してみる作戦にでる。水分が出て、再び乳化するのではないかと思ったのだ。
しかし、油が益々、底に溜まってくる始末(_)
ノータリンの浅はかであったよ。
(*`Д´)ノ!!!ガッデームと叫んで、就寝。

翌日確認するも、当然事態は変わらず。むしろ分離化が進んでいるような気さえする。どうすっべよー❓
いっそ、諦めて(-“”-;)捨てたろかいな。

ちゅどーん(ノ-_-)ノ~┻━┻。
いがちゃん、((( ̄へ ̄井)=3=3 逆噴射する。
キャシャーンがやらねば、誰がやる❗
何とかせねば、おのが沽券にかかわると云うものだ。
死ね死ね団を投入してでも、何とかせねばなるまい。

己(おの)が脳ミソに命令する。
🎵何とかせーやの、ククロビン
🎵ネットでググるぜ、カマイタチー

しっかし、m(。≧Д≦。)mノNo ━━━━━━ ❗
次々と不幸な情報がもたらされる。
ポテサラ分離は、どうやらとってもヨロシクない事態のようなのだ。誰もが気をつけなはれーと注意を促しておるだけで、解決策の提示がまるでござらん。
そして、あのAJINOMOTO(味の素)でさえも、一度乳化がとけたマヨネーズは二度と元には戻りませんと断言しておるではないか。おいおい、大手有名マヨネーズメーカーなのに匙を投げんのかよ❗❓

だいぶ探して、ようやく解決策の端緒に辿り着いた。
生卵の黄身に、分離したマヨネーズを少しずつ足しては混ぜ、足しては混ぜしていけば良いという。
しかし、コレはあくまでもマヨネーズの話であって、ポテサラそのものではない。果たしてこの方法でポテサラも再乳化可能なのだろうか?

今一度叫ぶ。キャシャーンがやらねば、誰がやる❗
早速、『姫と男爵救出レインボー作戦』に取り掛かる。因みに作戦名のレインボーに特に意味は無い。単なる思いつきである。作戦名をつけた方が何とかなりそうな気がしただけなのさ、ベイベェー(^-^)v

先ずは卵だ。サイズがMs玉と小さいから2個用意。
だら~ん、鼻垂れ小僧の白身を黄身から引っ剥がす。で、黄身を潰して混ぜ混ぜする。
さあ、ここからが本番だ。黄身に少しずつ少しずつポテサラを入れてはオラオラでかき混ぜる。
( ゜o゜)おー、何だか良い感じになってきたぞ。

でも、辛うじてなんとか乳化していると云う感じだ。
分離さえしていないものの、油が滲み出ている。
このままでは救出作戦成功とは言えまい。
次なる手に打って出る❗

何か奥の手があるかのような力強い宣言だが、実を言うとそんな魔法の一手なんぞは無い。
じゃあ、どーしたのかと云うとだ。単にジャガイモを2個ほど足すことにしただけだ。極めてオーソドックスな正攻法である。もはや作戦と呼ぶも恥ずかしい。

今度はジャガイモを皮つきでレンジでチン。
もう二度と失敗は許されない。何があっても冷ましてから使用する事を固く心に誓う。

冷ましてる間に、鼻垂れ白身小僧をレンジでチン。
勿体ないからポテサラに投与じゃ!でも、熱々を細かく切って投げ込むすんでで止まる。コレも冷まして投与せねぱ努力が水に泡じゃよ。危ういところであったわい。グッと我慢なり。

冷ましたジャガイモに、べっとりポテサラを少しだけ入れて混ぜてみる。
何となく良い感じだ。
ポテサラを少し入れては混ぜ、少し入れては混ぜしてゆく。
おー、少なくともベトベト感は無くなったぞ。

でも、ジャガイモを加えた分だけマヨネーズが足らない。
むー(-“”-;)、思案のしどころじゃよ。
マヨネーズを足すことによって、またしてもシーサンプーターラバラバーで再び分離しないとも限らない。
しかし、ここは勝負だ。果敢にマヨネーズを足しやろうじゃねえか(#`皿´)

今度もざっくり混ぜるのではなく、端っこにマヨネーズを投与。少しずつ本体と混ぜてゆく。
おー、ええ感じじゃね?

完全に本来あるべき姿に戻ったような気がするぞ。
どうやら分離したものでも、乳化したものに少しずつ混ぜれば追従して自ら乳化してゆくものらしい。

器に盛って貝割れ大根を飾り、ゆかりをかけて出来上がり。

うむ、ちゃんとポテサラになっておる。
しかも、旨い。
人間、簡単に諦めちゃダメだよね。

                  おしまい

 
追伸
久々のおバカ文章である。我慢して最後までお付き合い下さった方々、ありがとうごぜえますだ。

マヨネーズの分離化は冷凍庫に入れたり、クソ暑いところに放置しても起こるらしい。
皆さん、お気をつけあそばせ。

台湾の蝶3 タイワンタイマイ

 
第2話のフタオチョウで脱線してしまい、エウダミップスの迷宮、エウダミップスの憂鬱、エゥダミップスの呪縛と三編もの番外編を書いてしまったが、ようやく本編に戻る事が出来た。
やれやれ( ´△`)、先が思いやられるよ。

えーと、手抜きというワケではないのですが、今回から暫くはFacebookに書いた文章を加筆、再構成してお送りしていきたいと思います。
従って、各チョウが属する科は毎回バラバラになるかと思います。その辺は御了承されたし。
それに、タテハチョウでスタートしましたが、何せ台湾のタテハチョウだけでも何十種類といる。ずっとタテハチョウの事ばかり書いてはおれんのである。いくらタテハ好きであったとしても、それは流石に辛いものがある。そこんとこも何卒御理解戴きたい。

 
 
   第3話 『爽やかハンサムさん』

【Graphium cloanthus タイワンタイマイ】

たぶん下翅内縁と腹の感じからすると、メスだと思う。
グラフィウム(アオスジアゲハ属)のメスには中々出会えない。なぜか普通種であっても珍品だったりするのだ。
上翅をもっと上げたいところだが、頭が翅に埋まるのを避ける為と触角の角度を考えての、このバランスになった。
グラフィウムのバンザイ展翅はダサい。
とかく業界では、上翅の下辺を真っ直ぐにすると云うルールに拘泥し過ぎではないかと最近は思い始めている。翅が上がっているのはまだ良いとしても、下がるのは言語道断という雰囲気がどこかにある。
再度言う。グラフィウムのバンザイはダサい。

今は展翅する際、個体それぞれの美しさのバランスのみを追及しようと思ってる。
翅のバランスだけが展翅の絶対条件ではない。翅だけでなく、触角や頭を含めての総合バランスではないかと考えている。
だから触角を基準に、許せるギリギリまで上翅を下げた。
だったら下げたその分、下翅も下げればいいのである。それでも腹が埋まる事はない。余裕たっぷりだ。
美しければ、それで良し。基本は大事だけど、もっとフレキシヴィルでもええやん。

ついでにオスの画像も添付しておきます。

コチラは上翅の下辺を真っ直ぐにしてもバランスがとれた。

因みに裏面はこんな感じ。

(2016年 7月 台湾南投県仁愛郷)

上が♂で、この下のが♀かと思われる。

(2017627 台湾南投県仁愛郷)

爽やかハンサムさんだね(⌒‐⌒)
日本のアオスジアゲハよりも大きくて青緑の部分も広い。尾っぽもあって遥かに優美な姿だ。
飛ぶのも相当速いから、謂わばハンサムで運動神経抜群のイケメンなのだ。
もしこんな男子がいたら、さぞかしモテるだろうね。

英名も『Glassy bluebottle』とお洒落だ。
「硝子(ガラス)の青い瓶」なのである。半透明な翅をガラスになぞらえているのがセンシティブだよね。
もう硝子の青い貴公子みたいなもんさ。💕モテモテ感満載だよ。

一応、一般の人にも解説しておくと、この蝶はアゲハチョウの仲間で、アオスジアゲハのグループに含まれます。
タイマイと云うのは、タイ米の事です。
と云うのは勿論ウソでー(^-^)。おそらく小型の海亀、タイマイ(玳瑁)から来ていると思われる。甲羅が鼈甲(べっこう)の原材料になるウミガメですね。
多分、アオスジアゲハグループにそれっぽい柄の種類がいて、そこから付けられたのだろう。
因みに、コレ全部推測なので、引用する人は気をつけてね。

台湾での名称は「寛帯青鳳蝶」。
ゆったりとした青帯のアゲハチョウって意味でいいのかな?

タイワンタイマイと云う和名がついているが、実を言うと台湾の固有種ではなくて、大陸にも分布しています。

分布図は、こんな感じ。

(出典『原色台湾産蝶類大図鑑』)

インド北部からミャンマー、中国南西部、台湾、飛び離れてスマトラにも分布が知られている。
それにしても前回のフタオチョウといい、こういう分布の仕方をする蝶が多いんだよなあ…。あっ、スマトラは無視しての話ね。
多分、過去の地史や気候と何か関係あるんだろね。

亜種は調べた範囲では4亜種に分けられていた。
cloanthus、clymenus、sumatranum、そして台湾のものにはssp.kugeと云う亜種名がついている(kugeは公家なのかしら?だとしたらお洒落だよね)。
ssp.cloanthus(名義タイプ亜種)はインドに棲んでいるようだ。ssp.clymenusは、何処に分布する亜種を指しているのか今イチわからないが、おそらくインドシナ半島北部から中国南西部の辺りのものだろう。
図鑑『東南アジア島嶼の蝶』で調べればわかるかなあ?調べる機会があれば、この部分は後々書きなおしますね。
3つめのssp.sumatranumは、学名の綴りからしてスマトラ亜種の事でしょう。それにしても、随分とかけ離れた所に分布してんだなあ…。
どんな奴なんだろ?一応、ググってみっか…。

(出典『蝶の標本 麗蝶』)

ありゃまΣ(゜Д゜)、黄緑色やんか。
僅かながら斑紋にも差異がある。分布も随分と離れてるし、前回のフタオチョウの流れならば、別種とされてもおかしかないよな。
分類って、ややこしい。まあ所詮は人が勝手に引いてる線なワケだから十全ではないのも仕方なかろう。

元々個体数は多くない蝶のようで、自分も台湾以外ではタイ北部で一度見たきりだ。
個人的な印象だが、台湾でもそう多くはなく、アオスジアゲハやミカドアゲハに比べて見る機会は遥かに少ない。そういえば図鑑には♂のみしか図示されてなかったなあ…。

低山地から高地(2800m)にかけて棲み、平地では見られないと云う。自分が見たのは標高700m前後と2000m前後。
飛翔は敏速で止まらないが、吸水(♂のみ)や花に吸蜜に来る時に観察できるチャンスがある。

図鑑では、春型は4~5月頃より発生し、夏型は10月頃まで採集記録があると書かれていたが、ネット情報だと2~11月に見られ、年数回に渡って発生するとあった。一応、『アジア産蝶類生活史図鑑』でも確認しておくか…。

(-_-;)…。記述が微妙に違う。
抜粋してみましょう。
「山地性の種で、標高300―3000mの地域に産する。発生は年2回、5月上旬と7月である。♂はきわめて飛翔が迅速。山頂占有癖も強く、他科の蝶に混じって山頂を高く旋回するのがしばしば目撃される。また♂は好んで吸水に湿地に下りるが、多数の個体が集まることはない。」
たしかにアオスジアゲハやミカドアゲハみたいに吸水に多数の個体が集まる事はない。山頂占有性もあるね。
他の記述はだいたい同じだが、発生期と回数が違う。
ワケ、わかんねー(ToT)

( ̄▽ ̄;)あじゃぱー。しかも分布図にスマトラが入ってない❗

(出典『アジア産蝶類生活史図鑑』)

(# ̄З ̄)もー、何でこう毎回、毎回、落とし穴に落ちるのだ。コレ、見てなかったから、そのままスッと終われたのに…。(=`ェ´=)ったく、もー。

発生に関しては、「寛帯青鳳蝶」で検索したら、解決した。どれも一年多代とあったから、多科性で間違いないだろう。

問題はスマトラの奴だ。
類推するに、もしかして、これも日本のフタオチョウ(Polyura weismanni)みたく、最近になって別種になってたりして…。

しかし、ウィキペディアで調べてみても、Graphium cloanthus sumatranum と亜種表記のままだ。

(出典『wikipedia』)

「Graphium sumatranum」で検索したら、そのタクソン(学名)で表記しているサイトも2、3あった。
でも、記載に関しての情報は見つけられなかった。
これ以上探しても泥沼だ。ズブズブにハマる前に撤退あるのみ。
分布図は見なかった事にしよう。

『原色台湾大図鑑』では、幼虫の食餌植物は未知になっていたが、『アジア産蝶類生活史図鑑』にはちゃんと載っていた。
食樹はクスノキ科 クスノキ、ランダイニッケイ、アリサンタブ、オオバゴウバシ。アオスジアゲハとほぼ一緒だね。

因みにタイワンタイマイは、採集記『発作的台湾蝶紀行』では、第20話 「台湾一過」に登場します。

https://ameblo.jp/iga72/entry-12193637539.html

よろしければ、コチラの方も読んで下さいまし。

                  おしまい

 
追伸
もっと完璧な♂の展翅画像が出てきたので添付なのだ。

スナップえんどうとスナックえんどう

 
一人暮らしゆえに、料理を作れば自然と同じようなものを数日間食う破目になる。お正月もまた然りである。
と云うか、正月であれば色んな食材を購入する分、その色合いはより濃くなる。

言わずと知れた数の子である。
元旦から1週間、ずっと食い続けていた。
普通はウンザリだが、数の子偏愛主義者としては何ら問題はなく、寧(むし)ろ至福の日々でごさったよ。
一人暮らしの利点は、好きなものを一人占めに出来る事である。誰に奪われるワケでもないから、大事に長きに渡って食えるのだ。
まあ、その逆もまた然りだから欠点と背中合わせだけどね(笑)



がめ煮(筑前煮)である。
がめ煮とは九州での呼び方です。昔、仲の良かった女の子の影響で、いつの間にかそう呼ぶようになった。

これも3、4日は食い続けていた。
おじさん、野菜不足だし、がめ煮は好きなので不満は特にござらんかった。

そして、なれの果てはこうなった。

上は蒟蒻(こんにゃく)と玉子ヴァージョンで、下は里芋と玉子ヴァージョンなんだけど、ほぼほぼ、おでんみたいなものですなあ。

飾り用に買った絹さやは、マヨネーズを添えて消費。

そういえば、年末は絹さやが1パック350円とかアホみたいに高くって、安いのを探すのに苦労したんだよねー。
あっ、それで思い出した。コレ、絹さやとちゃう!
実を言うと、スナップえんどうの若ざやなんである。
まあ言ってしまえば出来損ないみたいなもんで、たった100円で購入できた。しかも、このスナップえんどう、出来損ないどころかムチャクチャ甘いんである。
茹でたての時なんかは、あまりに美味くてだいぶとツマミ食いした。

それはそうと、スナップえんどうって変な名前だなあ。
「えんどう」はエンドウ豆のエンドウとしても、スナップって何なのだ?あのスナップ効かしてブン殴るとかのスナップかね?スナックの間違いじゃないのか?
そういえば、何度注意してもこのスナップえんどうの事を「スナックえんどう」と言ってたバカな女がいたなあ…。
明るい娘だったけど、元気にしてるのかな。

(-_-;)いや待てよ、「スナックえんどう」という駄洒落スナック菓子ってなかったっけ?

気になるので、ここで一旦筆をおいてググる事にする。

スナップえんどうはアメリカ原産のエンドウ豆の1種で、英名は「snap bean」。
「パキッと折れて、音が鳴る」みたいな所から名付けられたようだ。つまり、スナップの意味自体はあってたのね。

驚いたのは、日本に入ってきた当初は「スナックえんどう」という名前でも結構売っていたらしい。
あのスナックえんどう女、もとい女の子はあながち間違ってなかったというワケだね。
しかし、混乱を招くことから、農林水産省に拠って「スナップえんどう」に統一されたという事だ。

お菓子の「スナップえんどう」もごじゃりました。

(出典『楽天市場』)

右上の「爽快ドラッグ」に目を疑う。
ゲゲッ!、スカッと爽快のドラッグなの❓ヤバくね❓
そんなの堂々と謳っていいの?と思ったが、何の事はない。単に販売している薬局店の名前のようだ。
麻薬のクスリもドラッグだし、普通の薬もドラッグだ。コレって、どうにかならんのかね?

えー、マヨネーズは例によっての「リアルマヨネーズ」です。

酸味がやわらかい分、コチラの方が素材が生きると思うんだよね。

思いの外、脱線して疲れたので、今回はここまで。

                 おしまい

 
追伸
最初、「2018′ お正月の残り物」というタイトルで書き始めたのだが、脱線したので最終的にこのタイトルに差し替えました。

上村松園・松篁・淳之 三代展 前期


初冬の光が、車窓の外で降り注いでいた。
奈良へ向かう電車は人も疎らで、どこかしら寂しげである。
もっとも、風景は見る人の心の有り様によってどうとでも見える。きっと自分の心の奥底に寂寥としたものが巣食っているのだろう。

急に思いついて、独りで『上村松園・松篁・淳之 三代展』を見に奈良の松伯美術館に行こうと思った。
展示は前、後期に分かれ、今回はその前期「四季に詠う」にあたる。

 
近鉄奈良線 学園前駅で下車。
改札を出て、見慣れぬ風景に少しまごつく。

よくよく考えてみれば、学園前駅で降りるのは人生初かもしれない。
結構大きな駅だから、一度くらいは有りそうなものなのに、眼前には全く見覚えのない風景が広がっている。
電車でこの駅を何百回となく行き交いしていると云うのに、そういう事もあるもんなんだね。多分、人と同じで、駅にも人それぞれに縁の有る無しというものがあるのだろう。

北に向かって歩き始める。
美術館へ向かうバスもあるが、歩くことにした。
社会から落ち零れた人間だ。時間はたっぷりある。
それに、知らない土地の知らない風景をゆっくり眺めながら歩くのも悪かない。初めて目にする風景は、いつも人を新鮮な心持ちにさせてくれるのだ。きっとバスに乗ってしまえば5分とかからないだろう。でもあっという間に風景は擦過してしまい、網膜には何も残らない。

20分ほど歩いて左に折れると、池があった。

渡り鳥だろうか、冬枯れの木の向かうで水鳥たちが群れている。
都会の真ん中に住んでいると季節の推移を見逃しがちだが、確実に冬はその季節を前に押し進めているのである。

ぼんやりと鳥たちを眺める。
いくつもの、とりとめのない漠たる想いが去来する。結局のところ、考えたところで物事は為(な)るようにしか為らないんだと独りごちる。

池に架かる橋を渡った先に、美術館はあった。

一旦前を通り過ぎ、少し庭を散策することにした。

周囲は落ち着いた佇まいだ。
春ならば、枝垂れ桜が美しいだろう。

冬の初めの冷たい空気の中、山茶花(さざんか)がたおやかに咲いている。
ふと、もし好きな花は?と尋ねられたら、白梅か山茶花と答えるだろうと思った。
寒さをたずさえ、凛として咲く花が好きなのだ。

入館料を払い、内部に入る。
順路に従って左の小部屋(特別展示室)に入ると、松園の作品があった。

(出典『中井悠美子 「四季の絵文日記」』)

湯上がりの楊貴妃を描いた大きな作品だ。
火照った肌が艶かしいが、決して妖艶ではない。
仄かに匂い立つエロティシズムが、むしろ高貴な印象を与えている。
そして、ふくよかだ。やわらかな豊潤さも湛えている。
それらを醸し出す美人画の名手の筆は、どこまでも繊細だ。

第1展示室へ入った同時に、正面の二枚の大きな絵が目に飛び込んできた。

(出典『日本橋高島屋』)

 
(出典『銀座秋華堂』)

左右同じ大きさの、鹿をモチーフにした作品が対のようにして並んでいる。
人は誰もいない。清謐な時間がゆっくりと流れている。
すうーっと絵の世界へ入ってゆく。

鹿の絵は後回しにして、そばの作品を順に見ていく。

(出典『なら旅ネット』)

上村松篁の『芥子』。
芥子と書いて「けし」と読む。
ケシは麻薬である阿片の原料だが、その花は美しい。

この作品は松篁の代表作の一つで、自分も写真か何かで見たことがあり、以前から知っていた。
しかし、こんな大きな作品だとは思いもよらなかった。ドアくらいの大きさは優にある。
見回すと、全般的に他の作品も大きなものが多い。
そのせいなのか、心が伸びやかになってゆく。

松篁の作品は、どれもが精緻だ。
近づいて見ても美しい。美が細部に宿っている。
心がゆるりとほどけてゆく。

最後に二対の鹿の絵を見る。
2つとも三代目の淳之の作品だ。

しかし、遠目に見た時よりも心の震えは少ない。
絵に、最初に見た時のような美しさが感じられない。

第1展示室を抜け、第2展示室へ。
ここにも誰も人がいなかった。
静かだ。先日の『北斎展』とは大違いである。
でも、これが美術館の本来あるべき姿であってほしい。
静かな環境で、穏やかな心を持って絵と対峙しないと、集中して絵を見ることはできない。

(出典『東京アートビート』)

上村松篁『月夜』。
これも大きな作品だ。

もう、ただただ美しい…。
自然と幽玄なる世界に引き込まれてゆく。
想念が夜の玉蜀黍(とうもろこし)畑へと飛び、物語が紡ぎ出される。

松園『雪』、松篁『鴛鴦(おしどり)』『鳥影起春風』、淳之『秋映』『鵲(かささぎ)』etc…。
他にも美しい絵が並び、それぞれの物語宇宙に浸る。贅沢な時間だ。

第3展示室は、2階にあった。
第1展示室の上の吹き抜け2階をぐるりと囲った形で廊下があり、そこが第3展示室となっている。
絵はその四方の壁に展示されていた。

壁が低い分、ここは標準的な額縁サイズの絵が多い。
並んでいるのは、主に淳之の作品だ。そして、その殆んどに鳥が描かれている。
淳之は無類の鳥好きで、多種多様な鳥を飼っているという。

この展示室で、それまで感じていた事が明瞭になった。
松園、松篁と比べて、淳之の作品は完成度において一段落ちるのではないかと思う。
遠目に見れば気づかないが、近くで見ると線が二人と比較して稚拙なのだ。そのせいか立体感にも欠ける。鹿の絵の印象が変わったのは、多分そのせいだろう。
それに鳥の姿が、松篁と比べて薄っぺらい。画面の構成は甲乙つけ難いが、松篁の鳥の方が眼に力があり、遥かに生き生きとしている。その姿は生命力に溢れていて、生き物の持つ固有の美しさが切り取られた瞬間を見るようだ。
とはいえ、所詮は素人の見立てだ。あっているかどうかは分からない。でも、絵はその人が感じた儘でいいのではないだろうか。

もう一度、第2展示室を通り、第1展示室まで帰ってきた。
ひっそりとした空間に独り佇む至福。
こんなにゆったりとした気分で絵を見るのは、パリ・オランジュリー美術館にあるモネの「睡蓮の部屋」以来かもしれない。

美術館の帰りの空。

快晴も好きだけど、やっぱり雲もある青空の方がいいなと思う。
眺めてても飽きない。

  於 2016.12.9

                   おわり

 
追伸
後期の「生命の詩」は1月5日~2月4日まで。
もう始まってますね。御興味のある方は、お早めに。
自分も行く予定ですが、出来るだけ暖かい日を選んで出掛けてようかと思っております。
それと、言わずもがなだとは思いますが、一言添えておきます。絵の画像を一応添付しましたが、実物はその百万倍くらい美しかったです。

おっ、そうだ。耳寄り情報です。
近鉄の主要駅で割引チケットが売っています。

おっ、ついでに思い出した。
行きしな、駅に着いて遠目に見て変な看板があって、思わず二度見した。

(画像は帰りしなに、わざわざ近づいて撮ったもの)

『何で、こんなとこに鳥の飼育を教えてくれる場所があるのだ?この辺にブランド鶏なんてあったっけ?』と思ったのだ。
それが焼き鳥屋だと気づいたのは、一拍措いてから。
一人でケラケラ笑いました。

今思えば、この日はトリ数珠繋ぎの「トリの日」でしたね。

それはそうと、なぜ昆虫は絵画のモチーフにはあまりならないのだろう。
蝶なんかは、まだ題材として使われる方だが、それでもクローズアップされて使われることは少ない。大概は花に群れ集まる姿や乱舞する様だ。
多分、思うに足がアカンのやと思う。それが普通の人から見れば気持ちが悪いのではないかな?
人は、足がワサワサ沢山あるのと、蛇みたいに全く無いものには、本能的に嫌悪感を覚えるように出来ているのかもしれない。

えー、まだまだ追伸は続きます。
続きますが、これでおしまいです。

今回は、さすがにおフザケ無しで真面目に書きました。だから、絵文字も一切無いのだ。一応、そういう文章も書けるのだ、(=`ェ´=)エッヘン。
あっ、最後に絵文字を使ってもーたやないの。