『西へ西へ、南へ南へ』20 奄美の檻

蝶に魅せられた旅人アーカイブス
2012-09-01 23:08:02

       ー捕虫網の円光ー
      『西へ西へ、南へ南へ』

    (第十六番札所・奄美の檻(おり))

 
2011年 9月22日

午前4時03分。
(゜ロ゜;ハッとして目が覚め、時刻を見て我が目を疑った。
船の出航時刻は、3時50分。完全に行ったあとだ。

やっちまった……(T^T)
信じられないが、現実だ。

午前2時過ぎくらい迄の記憶はある。
その後、急激な睡魔に襲われたのだ。
一応、目覚ましをかけていたのだが…。

半分望んではいたが、断じて確信犯ではない。
ひきつった半笑いで煙草を一本吸い、考えるのが嫌で睡眠薬を飲んで再び寝た。

朝8時に宿のおばーに会ったら、(゜ロ゜)❗❓ビックリされた。悪いが、こちらもΣ( ̄ロ ̄lll)ビックリなのだよ。(TДT)ぶふゅ~。

9時、バイクを借りに行く。
天気予報は曇りのち雨。部屋で色々思い悩むのもしんどいし、出る事にした。天気がもてば幸いだ。晴れ男の運を信じよう。

3連チャンでまた根瀬部に行った。
アカボシゴマダラの完品の♀を何とかせねばならない。天気よ、恃むから2時くらいまで保ってくれ、心の中は悲痛な叫びで一杯だ。

曇り時々晴れ。
例によって、一時に♀がやって来た。
しかし、明らかに傷んでいる。頭(こうべ)を垂れて、スルーする。どうせ展翅もしないのなら、無駄に生命を奪うべきでない。卵を産む♀なら尚更だ。

しかし、その後待っても待っても♀は姿を現さなかった。
イワカワシジミも見たが、高過ぎて話になんない。
天気はどんどん良くなっていくが、気持ちはどんどん曇っていった。他の蝶を最早採る気にもなれず、ただただ時間は無為に過ぎて行く。
今日は♂さえ、あまりいなかった。
空中で3頭のみシバく。

どうやら此処は、♂の♀探索ポイントではないだろうか?三日間♀と呼応するように現れ、3時前には殆どいなくなる。多分、その後はテリトリーを張る場所に移動するのではなかろうか?
ここでは翔び方が矢鱈と速いし、ほとんど止まらないし、暫くすれば去ってゆくと云うのも他の場所とは違う。テリトリー(占有活動)を張っているという感じではないのだ。
あれれ❓じゃあ、♂がテリトリーを張るって何の意味があるのだ。♀を待つなら、ここでテリトリーを張ればいいんじゃないの❓何でワザワザ尾根とか山頂に向かうのだ。
この占有活動という名の♂同士の縄張り争いは、学説では♀を待つ最良の場所をめぐっての戦いらしい。でも、ずっと疑問に思ってる。同じような場所でテリトリーを張るオオムラサキやスミナガシにしても、そこに♀が飛んで来た事など一度も見た事がないのだ。唯一の目撃例は、ここ奄美大島の蒲生崎で見たアカボシゴマダラの♀だけだ。まだしも同じようにテリトリーを張るゼフィルス(ミドリシジミの仲間)の方が♀を見る機会がある。とはいえ、それとて見た数はしれている。交尾が目的ならば、あまりに効率が悪すぎるではないか。この♂の占有行動には別な意味があるんじゃないかと勘ぐりたくもなる。
いや待てよ、♀は飛んでくるワケではなくて、最初からそこにいて隠れているだけなのかもしれない。そこに後から♂が飛んできて縄張り争いが始まり、そして交尾は占有活動がおさまった後、夕方遅くや日没後、もしくは早朝に行われるのかもしれない。しかし、そんなこと聞いたためしが無いなあ…。
蝶って、謎だらけだ。だからこそ面白いんだけどね。

イラついて朽木を蹴ったら、
ぬわっ( ̄□ ̄;)❗❗
蠍(サソリ)が出てきた。

サソリモドキ❗❓
毒あんのかな❓
いっちょまえに尻を挙げて威嚇なんぞしくさってからに…(^_^;)
畜生、どいつもこいつも馬鹿にしやがって( ノД`)

午後4時。諦めて半ベソで知名瀬に行ったが、全く姿なし。本当に有名ポイントなのかよ(# ̄З ̄)ぶきゅー。
4時半には見切りをつけて、朝仁に移動。こうなりゃ、もうヤケクソだ。

テリトリーを張るギリギリの時間である5時の10分前に着いた。
一応、♂がいた。確認の為だけだから無視して煙草を吸っていたら、ふと目の前を見ると大きな梔子(クチナシ)の木があるではないか。
目視で見ていくと、実に穴も穿いている。イワカワシジミがいるかもしれない。期待を込めて周囲を叩いてみる。

だが、いなかった。
他にもクチナシが有るかもと思い、10m程移動したら、イワカワシジミが目にも止まらないスピードでテリトリーを張っていた。笑けるスピードだ。

惨めさも相俟って、とてつもなく腹が立ってきた。
(#`皿´)アホンだらがぁー❗❗❗❗❗
怒りの一撃で、一発で空中撃破。

だが、完品には程遠い。
溜飲が治まったわけではないが、チヨットだけホッとした。

辺りが夕闇に包まれようとしていた。
気分は難民。船に乗れないボートピープル。

                  つづく

 
(subject)

【サソリモドキ】
多分、サソリの親戚。サソリと全く同じ形だが、所詮ライダーマンみたいなもんで、ホンマもんではないモドキ風情だ。外部は本家みたいに固くない(と思う。触ってないから分からない。誰が、んなもん触るちゅーうんじゃい(‘ε’*)!)。
とにかく中途半端でやわい存在。
毒も子供騙しの筈だったような気がする。
まあ、でも実物を見たときはかなり驚いた。猿飛佐助ばりに飛び退いたね。モドキとはいえ、見た目はかなり邪悪なのだ。

(補足)
サソリモドキに関して何となく出鱈目くさい事を書いていそうである。
文章は翌日とかのほぼライブ配信で奄美大島から送っていたんだけど、サソリモドキの事なんぞ調べようがなかった。この時はスマホではなかったので、その場で検索とかできなかったのだ。
というワケで、調べなおす事にした。

Wikipediaによると、サソリモドキはクモ綱サソリモドキ目に属し、サソリとクモの中間的な特徴を有しているようだ。もちろん肉食性でコオロギやバッタ、時にはミミズなども捕食するらしい。
意外な事に外皮は丈夫で堅いという。サソリみたいに毒腺は無いようだが、尻の付け根の肛門腺から酢酸、カプリル酸の混合物の酸っぱい液を噴射する。英名のビネガロン(怪獣みたいな名前やなあ…)はそこからきているらしい。つまり、ビネガー(酢)って事ね。
これには強い刺激があり、皮膚に触れたり目に入ると火傷様の皮膚炎や角膜炎を起こすことがある。
(@_@;)おいおい、子供騙しではないシッカリとした毒あるやんかあー。触らんかって良かったあー。
とはゆうもののそんなに攻撃的な奴ではないらしい。刺激しないかぎり、自分から積極的に攻撃してはこない模様。また、普段は石の下などに隠れていて、人間の目に触れる機会は滅多になく、被害例も少ないみたい。

因みにサソリモドキは世界三大奇虫に数えられている。
あとの二つは何だっけ❓一つは確かウデムシだよなあ…。あと一つは思い出せない。まあ、何れにせよ全員エイリアンみたいなオドロオドロしい奴らで、あまりお会いしたくないよね。遭遇したら、間違いなく髪の毛逆立つね。

さらに調べていくと、結構記事がある。
日本には九州南部から沖縄本島に棲むアマミサソリモドキと石垣島や西表島など八重山諸島に棲むタイワンサソリモドキの二種類がいるらしい。
しかし、見た目は殆んど変わらんとの事。

(タイワンサソリモドキ)
(出典『Monsters Pro Shop 奇蟲・サソリモドキの味』)


奇蟲・サソリモドキの味

この人、豪の者で何と思いつきで食べはった。
毒を噴射させきって天ぷらにすると、海老のヒゲとか尾っぽの味がして結構美味いらしい。
何にしても凄い人だよね。この人、あの猛毒ハブクラゲを食うのに挑戦したりと、他の記事も面白い。

飼育している人も案外いるのには驚いた。
見ようによってはクワガタに見えなくもない。視点を変えれば、カッコイイと思う人がいてもオカシクはないだろう。自分は何があっても絶対飼いませんけどね。

【イワカワシジミ♂】
何とも言えない淡いグリーンがいい。
長く優美な尾状突起も相俟って、美しい意匠です。
イワカワシジミ、( ☆∀☆)好きです。

イワカワシジミは、八重山採集行二回目の春編・与那国島で主役の一つとして登場します(このブログに記事は無いです)。

奄美の春型が、白い部分が多くて一番美しいとされているけど、秋のものでも充分美しい。写メは裏だが、表も美しい。♂は黒に青、♀は黒に白の紋が入ります。

『西へ西へ、南へ南へ』19 さらば、奄美

蝶に魅せられた旅人アーカイブス
2012-08-31 00:22:19

 

       ー捕虫網の円光ー
      『西へ西へ、南へ南へ』

     (第十五番札所・さらば、奄美)

 
2011年 9月21日

語るにたりない。
語りたくもない。
だが、語らねばならない。

樹間に涌く、無量の感に涙しぼり
地に満つる落葉や雑草にも
無情の声を呑み
天かける白雲に
よしや、骨肉ここに枯れ果つるとも
9月の太陽は燦として
今、天上にある
されば、膝を曲げ、頭を垂れて
奮然、五体の祈りをこめよう
五臓六腑の矢を放とう

(奄美出身・泉芳朗の詩より抜粋、一部改変。)

寒くて、目が覚めた。
昨日の夕方から急激に気温が下がった。暑くて眠れなかったのが嘘のようだ。
いよいよ奄美にも本格的な秋が訪れたみたいだ。

午前7時。最期の仕度をする。
アカボシゴマダラの♀の完品を何としてでも採りたい。いや、採らねばならぬ。

迷ったが、今日も根瀬部に行こう。
上手くいって昼過ぎ迄にカタがつけば、他の場所に転戦するつもりだ。

数えてみれば、奄美にもう12日間もいる。大阪を出て、いつの間にか2週間を越えてしまった。

8時半に小宿の柑橘畑に着いた。
例によって、畑の持ち主のオバアに挨拶して中に入る。

(-“”-;)おらん…。樹液にも来てない。

知名瀬をチラッと経由して、根瀬部へ。
ここでも畑仕事中のおじー、おばーに挨拶する。
奄美の人達は、みな親切だ。

此処が一番早い時間帯から翔んでいると読んだが、矢張り朝昼は翔ばんのか…。

仕方なしに、採るのを半ば無視しがちだったツマベニチョウ(註1)やナガサキアゲハ(註2)、ウスキシロチョウ等をクールにシバき捲る。
昨日は二日酔いのせいでスランプがちだった。ゆえに慎重になりすぎたきらいがある。だから今日は何も考えずに見たら即ネットを振ることにした。
大体、迷うと外す確率が高い。だが、迷わずに済む相手はつまらない。あれほど憧れたツマベニチョウも今や百発百中だ。それはそれで半分悲しいのだが…。

午後1時。待望のアカボシゴマダラの♀が現れた。
木立を抜けて、川の対岸の枝先に止まった。
デカい。明らかに♂よりデカい。しかも、多分完品。
慎重に網を延ばしたが、半分も距離を詰められずに感づかれて翔んでいってしまった。
30分後、近くのエノキの上を滑空しているのを発見。しかし、微妙に届かない。
何だか腹が立ってきたので、♂は全部空中でバスバス、シバいてやった。

夕方4時。最大のチャンスが訪れた。
広場にスウーッと♀が降りてきた。
だが、目の前に停まっていた軽トラが邪魔で躊躇してしまい、結局一度もネットを振らずに終わってしまった。
振らないと入らない。採れるわけがない。
外す事を恐れてただ慎重になっても意味がない。木偶(でく)の坊だ。軽トラをブッ叩いてでもダメ元で振るべきだったのだ。そんな簡単な事も解ってない己の愚かさに反吐が出る。

イワカワシジミも網に入ったのに枝にぶつけてネットがひっくり返り、
(;_;)/~~~バイバーイ。

惨敗。見た蝶で採れなかったのは久し振りだ。心がポッキリ折れて修復できない。
五臓六腑の矢を放つことさえ出来なかった…。

ここは谷状地なので、4時半には日が陰ってしまい、ジ・エンド。

風が冷たい。
秋風が沁みる。

又、奄美に来いとゆうことなのか…。
確かに奄美は、良いところなんだけどね…(ノ_・,)

そして、今日も脇田丸へ。
少し漁があったみたいで、鰹とシビ(キハダマグロ)の良いのが入ったらしく、それを刺身で貰う。

(鰹の刺身(390円))

普段食っている鰹の概念が打ち砕かれた。脂は乗っていないのだが、もちもちの食感で酸味と旨味が渾然一体となっていつまでも口に残るのだ。まるで別物、違う魚みたいだ。

(シビの刺身(390円))

こちらは鰹に比べあっさりしているが、奥にまた違った旨味があって中々のもの。マヨネーズ醤油も合う。

そして、外せないハリセン(アバス)。
実物を見せてもらったが、こっちのは巨大である(あとでよくよく考えたのだが、多分ハリセンボンではなく、ケショウフグかモヨウフグではないだろうか?)。

飲んでいるうちに、段々帰りたくなくなってきた。このまま帰るのも悔しい。
思いつめ始める。
真剣に残る事を考えた。3分の2くらい残る方に傾きかけた。
だが、天気予報を確認して諦めた。
明日の天気は決して良くない。

今日の支払いは、1370円。

大阪行きの船が着港するのは、午前3時半。
もう、11時半だ。そろそろ帰ろう。

この時間だと帰って用意して、眠らずに港に行った方がいいかもしれない。
みんなに別れを告げた。

さらば、奄美。
良い島だったよ。

                           つづく

(subject)
蝶の画像は原文では写メだったんだけど、今回は割愛しました。なぜなら、この時に撮った画像が無くて、他の産地の写真を使ったからです。でも、ツマベニチョウなんかは亜種だし、ナガサキアゲハも多分どこか(海外?)の比較的白い個体の画像を使ってしまったと思う。理由は、その頃に配信していた人たちは蝶屋ではなく、一般の人たちだったから、まあだいたいどんな蝶だか解ってもらえればいいやと思っていたのです。とはいえ、標本は何処かにあるのだが探し出すのが億劫なので、図鑑から失敬させてもらいまする。

【ツマベニチョウ】
(出典『日本産蝶類標準図鑑』)

所謂(いわゆる)、スター蝶の一つ。
南国の女王と言えば、この褄紅蝶である(因みに沖縄本島編で出てくるのは、南海の女王です)。
九州南部から沖縄にかけて分布し、日本のシロチョウ科の中では一番大きくて華やか。
翔ぶスピードも直線的で速く、力強い。ゆえに一般的にハイビスカスなどの花に来た時くらいにしか採るチャンスはない(今回は、結構空中戦でシバいたけど)。
そして、そのハイビスカスに最も似あう蝶でもある。
ツマベニチョウは、初期の八重山編に出てきます。彼女のエピソードはそちらに詳しく書いております、多分。(因みに、この八重山編は店のお客さんに配信されていたもので、このブログには掲載されておりませぬ)。

奄美大島・沖縄本島のものは、前翅の湾曲が強く、♂の橙赤部分が第8室にまで及ぶことにより、それぞれg.liukiuensis、g.conspergataとされてる。
けど、差は軽微だし、個人的には別に亜種にする程の事でもないような気がするんだけどなあ…。

【ナガサキアゲハ(長崎揚羽)♀】
(出典『日本産蝶類標準図鑑』)

こっちの♀は沖縄本島と並んで特別に白く、飛んでいる姿はまるで優雅な貴婦人のようだ。
小さい頃は関西では迷蝶で滅多に見る事は出来なかったが、地球温暖化?で分布を拡げており、最近は関東地方くらい迄到達してるんじゃなかろうか?

一応、本土のものも図示しておこう。

(出典『日本産蝶類標準』)

見た目はかなり違うが、亜種区分は特にされておらず、日本産亜種(Papilio memnon thunbergii)として一本化されている。
因みに西表島産のモノが最も白いのだが、絶滅して久しい。

(出典『日本産蝶類標準図鑑』)

そういえば、標本の展示即売会で120万円で売りに出されているのを見た事があったなあ…。

【ウスキシロチョウ】
(出典『日本産蝶類標準図鑑』)

日本では南西諸島に広く分布し、本土でも迷蝶として採集される事、しばしばである(特に九州)。
しかし、食樹(ナンバンサイカチ、ハネセンナなど)が無い事から定着はしないようだ(気候的に育たない)。しかし、園芸種ゴールデン・シャワー(オシッコの事ではないからねー。ナンバンサイカチの英名です)が改良されて寒さに強いものが生まれれば、わからない。綺麗な花だから人気が出るに違いない。

(2015年 タイ・チェンマイ)

そうなると、あっという間に日本全国に拡がり、ウスキシロチョウも土着するかもしれない。でも、ウスキシロチョウなんか増えても蝶屋でさえ喜ばないかもしれない。沖縄方面に行けば普通種だし、さしてキレイではないからだ。

【鰹の刺身】
鰹は近海ではあまり獲れないから、輸送の段階でどうしても味が落ちてしまうんだろうと思う。
高知や和歌山の周参見なんかの現地で食べる鰹が旨いのは、比較的近海で獲れるからなのかもしれない。

【シビの刺身】
板前の竹さんにはキハダマグロの別名だと言われたが、シビマグロのこと。味も見た目もキハダマグロとは明らかに違っていたから間違いないだろう。
シビは紫尾の意だと思う。多分、尻尾が特徴的なんだろね。あと、確かマグロそのものをシビと呼ぶ地方があったような気がする。間違えてたら御免なさい。

気になるし、調べてみた。
(@_@;)あちゃー、調べれば調べるほどワケワカンナクなってきた。
取り敢えずシビマグロという種類の魚はいなくて、マグロの地方名、もしくはマグロの若魚なんかをそう呼ぶらしい。しかし、クロマグロの若魚とする記述もあるし、キハダマグロ、ビンナガマグロの若魚とするという説もある。
(# ̄З ̄)何なんだよ、それ。納得いかねえよ。気になって、今晩眠れないじゃないか。
意地になって更に調べると、鹿児島ではキハダマグロやビンナガマグロの若魚をそう呼ぶようだ。
まあ、この見た目と味の記憶からすると、多分ビンナガ(備長)だったと思うんだけどね。因みに、備長を音読みしてビンチョウマグロと呼ぶ所も多いようだ。
魚の地方名ってあり過ぎてワケわかんねえよなー。時々、統一したらどうだと思うのだが、チヌがクロダイになったら、それはそれでまたさみしい。まあ、地方名を無くしたら、何だか味気なくてツマンナイかもしれない。このままでいいやと思う。何でもかんでも統一するのが良いというワケでもあるまい。効率だけが全てではないのだ。

『西へ西へ、南へ南へ』18 愚か者、憤死

蝶に魅せられた旅人アーカイブス
2012-08-28 18:17:23

       ー捕虫網の円光ー
      『西へ西へ、南へ南へ』

     (第十四番札所・愚か者、憤死)

 
2011年 9月20日

8時に目覚ましが鳴った。
外を見て愕然。
天気悪っるッ( ̄0 ̄;❗
台風、行っちゃったんじゃないの❓
風、強よッ❗❗( ̄ロ ̄lll)
昨日の天気予報では快晴だった筈なのに…。

それよか、まだ酔っ払っている(//∇//)
昨日、板前の竹さんと従業員(ホール)の福ちゃんに誘われて飲みに行った。
スナックを二軒梯子して、最後はバーに行き、帰ったのは朝4時半。痛飲と云うか、うえーっぷ、泥酔。

愚か過ぎる…。
大体、福ちゃんが『僕は歌が巧い、酒も強い❗』
竹さんも『俺も歌が巧い、酒も強い❗』なんて言い出すからアカンのだ。
こっちは負けず嫌いなんだから…。

板前の竹さんは渋い人だと思ってたら、全然違った。明かる過ぎ。と云うか、駄じゃれ連発やん❗
いきなり、一発目からo(%)○ウルトラマンガイア熱唱やもんなあ。
福ちゃんに至っては、キョンキョンとか、森高千里等女の子の歌しか歌わない。声高過ぎ❗裏声❓
(^^;)知らなかった…。完全におかまちゃんキャラやんか❗❗❗
ついでに大ママに惚れている。いわゆるフケ専ね。でも、大ママは60歳のおぱあちゃんだぜ。もう、ワケわからん。
二人共、面白すぎーρ( ^o^)b
♪♪

何年振りだろうか?、久しく歌なんて歌ってない。
でも、完璧(^o^)v
俺、歌巧すぎー❗完全に周囲を黙らせてやった。(性格、悪っるうーf(^_^))
でも、黒すぎてフィリピーナに『アンタ、フィリピン人だ❗』と笑われた。
何か、おネエーちゃん達もみんな可愛いくて、ぴょんぴょんぴょーん ̄(=∵=) ̄アマミノクロウサギ・ギャグ連発のハシャギ過ぎー❗

9時にバイクを借り、谷村ポイント行ってみた。
どう見ても(@_@;)べろんべろんの完全飲酒運転。
しかも、何もおらん。雨まで降ってきた。
そのうち晴れんだろう。何にしても前向きなのだ。

10時半。フェリー会社から電話が入った。
一応、23日のウルトラ早朝午前3時半の便が出る事になったと云う連絡だった。これで何とか帰れる。

一昨日見つけた小宿の樹液ポイントに行ったが、アカボシはおらず。
根瀬部で、チラッと♂を見たが犬に吠えられ撤退。
山を越え、国直まで行ったが風が凄い。
海、荒れ荒れー。
こんなんで本当に船出るのかよ(^_^;)?

1時半。ようやく陽が射し始めた。
取り敢えず根瀬部に戻る。
エノキもあり、柑橘畑も有りいののベストポイント発見。

おう、翔んどる、翔んどる。
しかし、酔いがやっと醒めたと思ったら完全に二日酔い。
アッタマ、痛てぇー(´Д`)))
オエ━━Σ(-∀-;)、えずきっぱなし。
正直、立ってるだけで精一杯。
一応、ネットを振るがヘナヘナだ。足がもつれてダメダメ星人。

一応♀も採ったが、又バッサリいかれていた。♂もほとんど擦れ、欠け、ボロと傷んでいる。
二日酔いも相俟ってガックリだ。

3時には移動して、知名瀬、小宿経由で4時に谷村ポイントに戻ったが、天気も良くないし、暴風。
1頭だけスーパーおんぼろスミナガシがいただけ。
5時に名瀬のイワカワポイントに行ったが発見出来ず。
正直、己のせいではあるが、最低の一日。

そして、懲りもせず今日も脇田丸へ。
勿論、ハリセンから入った。

ハーシビ(トガリヱビス)の酒蒸し(690円)。

美味すぎ❗ 煮付けも旨かったが、酒蒸しは上品で絶品である。

さてと…、うに丼(890円)でも食っか?

いよいよ、残すところあと一日。
明日がラストチャンスだ。

                  つづく

(subject)

煮付けの写メも入れとこっと。

兎に角、タイ、ノドグロ、キンキ、キンメダイ等の海の赤ピンク系の魚はみんな旨いわ。

【飛べ‼、スミナガシ】

スミナガシの♂はテリトリーを張るので、どんどん採っていかないと新しい奴が入ってこない。
そして、大概は最初に陣取っているのが古参のボロ。仕方なく1頭目のボロを後で逃がしてやるつもりで採ったのだが、忘れてて持って帰ってしまった。
で、部屋から逃がしてやったらなぜか網戸に止まってぶるんぷるん翅を震わせ始めた。
写メでは分かりにくいけど、スミナガシの複眼の色は深いエメラルドグリーンなのだ(画像を拡大すれば少しはわかるかと思う)。真っ赤なストローと相俟って、蝶の中ではかなり特異で妖艶な美しさです。その辺も人気の理由かもしれないですね。
でも、死んだら残念ながらその色は儚く消えてしまう。トンボなんかもそう。オニヤンマのグリーンの複眼は是非生きている時に近くで見て欲しい。どんな美しい宝石も勝てない透明なグリーンなのだ。

S

『西へ西へ、南へ南へ』17 梔子の妖精

蝶に魅せられた旅人アーカイブス
2012-08-27 19:09:05

      ー捕虫網の円光ー
     『西へ西へ、南へ南へ』

  (第十三番札所・梔子(くちなし)の妖精)

 
2011年 9月19日

暴風が吹き荒れている。
だが、大したことない。石垣島の時の屋根が取れんじゃねぇの?Σ(T▽T;)というよりかは全然マシ。
あん時は、恐くて死ぬほど酒飲んで寝たんだよね。

仕方なく暇潰しに沖縄本島真夏編『ニライカナイの女王』の最終回を書く。
あーだこーだと文章をこねくりまわしてたら、5時間も掛かってしまった。低能な文章を書くのにも、結構それなりに時間がかかるのだ。

午後3時前、一段落ついたし、雨も上がったので出る。
風はまだ強い。

取り敢えず、一番近いらんかん山へ。
木々が風に煽られ、殴られぱなしのボコボコにされている。
風速は15m、時に20mくらいはあるだろう。
流石にアカボシも翔んどらんだろうと思ったが、1頭だけ翔んでいた。
アンタ、馬鹿ね。だけども偉いね(〃^ー^〃)
今や、そんなアカボシゴマダラに愛を感じるよ。

風がどんどん強くなり、身の危険を感じて4時前には山を降りた。

いつものように帰る道すがら、イワカワシジミを求めて民家の梔子(くちなし)をチエックする。
ここの梔子は立派である。既に肉眼で穴が穿いている実を3つ確認している。しかし、まるで手が届かない。いつも指を咥えて見るのみ。
クチナシって、生け垣とか丈の低いイメージがあるけど、本来はちゃんとした立派な木なんだね。もしかしたら、都会でよく目にするのは園芸種で大きくならないように品種改良されているのかもしれない。

どうせ今日は暇だ。
この際、周辺をじっくり探してみよう。他にもクチナシの木があるかもしれない。

イワカワシジミは奄美以南に棲息し、蝶好きには人気が高い憧れの美蝶だ。
裏面は日本には他に類を見ない綺麗な翡翠色で、優雅な長い尾っぽを持ち、南国の妖精という言葉がピッタリの可愛らしい蝶だ。

周辺を捜し始めて直ぐ、驚いて頭上に飛び上がった個体に出会った。イワカワさんだ。八重山や沖縄本島で採集済みだし、特徴的な姿なので他と見紛うことはない。
しかし、(^。^;)あらら…。折からの強風に煽られ、飛ばされていってもうた。

もしやと思い、目を転ずれば梔子の樹が目の前にあった。丈も高くなくて手頃な大きさだ。

調べてみると、卵が着いている実(註1)があった。

穿孔がある実(註2)もかなり見つかった。 だが、どれも中身は空なような気がする。内部に生きているモノの気配が感じられない。

立派なクチナシのある民家に戻ると、タイミング良く家のおばーが帰ってきた。事情を説明する。
おばーは、おじーを呼びに行った。
再びおじーに事情を説明したら、わざわざ高枝切りバサミを持ってきてくれた。
親切に感謝なりm(__)m
無事に4つ程良さげな実を落として貰った。

結局、その後イワカワの姿は見れずじまい。
まあ、天気は悪かったが、悪いが故に楽しめたかな。
ケッ( ̄ヘ ̄メ)、明日、こやつとアカボシの♀を絶対シバいてみせるぜよ。

今日も判で押したように居酒屋脇田丸へ。

いつものようにアバスの唐揚げを頼みスタート。
相変わらず、下手な河豚より数段旨い。

二品めは、昨日頼んだ漁師めしをご飯抜きでオーダー。海が時化っぱなしで、魚が入ってこず、黒マグロをふんだんに使ったスペシャルなものになった(490円❗)。完全にトロ鉄火状態。量も多い。

【漁師めし】

次に板さんに薦められたのは、アマミウシノシタ(舌ビラメ)のカルパッチョとグルクン(タカサゴ)の一夜干し。
迷う事なく、タカサゴ❗
カルパッチョって、何か中途半端で信用ならない野郎なような気がしてならない。ホントに美味い魚なら、普通の刺身で勝負せえやι(`ロ´)ノ❗と思うのである。

今日も呑んだくれて、夜は更けてゆく。
生ぬるい南国の夜風が心地よい。

                    つづく

 
(subject)

【イワカワシジミ Artipe eryx okinawana】

(裏面)
(出典『日本産蝶類標準図鑑』。標本はあるけど、探すのが面倒なので図鑑から画像を拝借。)

日本では奄美大島から南、与那国島にまで分布する南方系の蝶だ(現在は屋久島にも生息するが放蝶由来)。
奄美大島のイワカワシジミは亜種にこそなっていないが、かなり特徴的な姿をしている。表の前翅と後翅の亜外縁に白斑列にあらわれるのだ。特に第1化の春型の♀の下翅は顕著で、気品があって美しい。

国外ではインドからインドネシア、中国、台湾などの東洋熱帯区に広く分布する。しかし、日本でも個体数は多くはないが、さらに少なくて珍品とされているようだ。
とはいえ、ラオスとかタイでちょこちょこ採っているから、ホントなのかなと思う。因みに日本のイワカワシジミより遥かにデカイから、とても同種とは思えまへん。

(2014.4.7 Laos oudmxay)

これじゃ、大きさワカランか?
でも、しっぽ(尾突)が長いのは解るかと思う。しかも太くて白いし、白帯の領域も明らかに広い。

他にも画像があった筈だから、探してみる。

(2016.4.28 Laos oudmxay )

この画像なら、大きさも解って戴けるのではないかと思う。とはいっても、蝶好きな人しかワカランか…。

これは同日に採った別個体。天女のように美しいね。
どうやらこの辺(インドシナ半島)のクチナシの実は大きいから、その分だけデカくなるらしい。噂では超バカみたいなデカイ亜種?近縁種?がいるらしい。
意外だったのは、何れも川っぺりに吸水に来た個体だった事だ。そういえば、タイでもそうだった。イワカワが吸水に来るなんて日本ではほとんど聞いたことが無かったから、おおいに驚かされた記憶がある。確か、画像の個体は全て3時以降夕方近くにやって来たような覚えがある。
話は全然逸れるけど、この時はビヤッコイナズマEuthalia byakkoとパタライナズマ Euthalia patalaをひたすら待ってたんだよね(パタラに関しては採集記があるので、興味のある人は探してみてね)。

【イワカワシジミの卵】
イワカワシジミはクチナシの実にしか卵を産まない。
幼虫は葉っぱではなく、実の内部を食べて成長するからだ(実のない時期は蕾や花を食べる)。
普段、我々は生け垣や植え込みとして植えられる事が多い園芸種のクチナシしか目にする機会はない。6月に良い香りのする白い花を咲かせるコレね。

(出典『花図鑑』)

オオヤエクチナシ(英名ガーデニア)という品種らしい。何と実はつけないそうだ。って事は、コヤツではイワカワシジミは飼育できないってことだね。

多分、野性種はこんな感じの花だったかと思う。

(出典『デハ712のデジカメ日記2017』)

野性種の本来のクチナシは意外な程に大きい樹だ。大木になることはないとは思われるが、低木とはいえ、クチナシの概念を改めざるおえないような立派な樹である。少なくとも腰丈くらいの灌木と云うイメージは捨て去るべきだろう。だから、最初に八重山に行った時はクチナシの木を見つけるのにかなり苦労した。まさかそんなにデカい樹とは思わなかったからだ。
何でも人間が自分達の都合のいいように作り変える。そういう事だ。

【そして、その穿穴】
ここに幼虫が食い込み、内部を餌とするのだ。蛹化もこの中で行われる。これは穴が大きいので、既に脱出して蝶になっている可能性が高い。

不思議な事にクチナシならば、どの木でも実がなっていると云うワケではない。実のなる季節も特には決まっていないようだ。
又、実が有ったとしても卵や幼虫が必ずしもいるわけではない。様々な細かい条件が揃わなければならないのだろう。いつも驚かされるのだが、自然界の法則は複雑怪奇である。
もっとも、そんなのは所詮ダーウィニズムを筆頭に人間側からのエゴイストな解釈にしか過ぎないのかもしれない。蝶本人たちにとってはごく当たり前の事で、きっと不思議でも何でもないのだろう。

【漁師めし=スペシャルなめろう】
漁師めしとは、ようするに生の魚を大葉や葱、生姜、胡麻、味噌を加えて細かく叩く『なめろう』の親戚みたいなもの。
海苔が入るところが奄美風だったり、脇田丸風だったりするのかな?

 
追伸
結局、今回はけっこう文章に手を入れた(後に海外でのイワカワシジミの知見も増えたしさ…)。
出来るだけ当時のままを尊重して手を入れないようにしているのだが、元々自分の周りにしか送っていないような文章だっただけに、原文ではかなり説明が割愛されている。そもそも説明が嫌いだし、顔見知りに配信していたからコチラのキャラ知ってるんだから行間読めよ、解んだろ?というスタンスだったのだ。でも、今は不特定多数を相手に配信しているので、そういうワケにもいかないんだよね。
まあ、それが良いのかどうかはワカンナイけど…。
説明の多い文章は、だいたいは駄文だかんね。

『西へ西へ、南へ南へ』16 奄美の黒兎ぴょーん

ー蝶に魅せられた旅人アーカイブスー
2012-08-25 22:25:00

      ー捕虫網の円光ー
     『西へ西へ、南へ南へ』

  (第十二番札所・奄美の黒兎ぴょーん)

 
2011年 9月18日

台風がいよいよその重い腰を上げ、ようやく北上を始めたようだ。
流石に今日はどんよりとした天気だ。風も強い。
二日酔い気味だし、10時くらいまで部屋でゴロゴロしていた。

捕虫網の円光・沖縄本島真夏編『ニライカナイの女王』の最終回の続きを書きだしたが、やっぱり嫌になって投げ出す。佳境のところをどう書けば良いのかがわからない。

大の字になる。
首を傾けて外を見ると、雨は小雨になっていた。
部屋で煩悶してるよりかはマシだ。出る事にした。
バイクは今日の天気を見越して既に昨日返してある。荒天の中、返しに行くのは大変だと思ったからだ。

取り敢えず、アカボシゴマダラの偵察にでも行こう。
知名瀬の手前、小宿やあかざき公園にもアカボシの記録があった筈だ。

【アカボシゴマダラ奄美大島亜種】

だが、歩きでは遠い。かといってバイクを借りるのにはチト勿体無い距離である。むうー(;・ω・)
ならば、チャリンコを借りられないかなと考えた。
しかし、何処で借りればよいのか分からない。
取り敢えず、観光案内所に行くことにした。訊けばわかるだろう。
ついでに近所の郵便局にも寄っておこう。そろそろ手持ちの金も底をついてきた。

観光案内所には、二人の女性がいた。
一人は島の女性で、30台前半とゆうところ。もう一人のオッパイのデカい方は20台後半とゆうところか…?こちらは内地から移り住んだ女性だ。
チャリンコのレンタルできる場所を訊き、ついでにお奨めの食いもん屋も訊くことにした。

島育ちの女性が、大ボケでツッコミどころ満載だった。
色々ボケ倒してくれたが、極めつけは『鶏飯(けいはん)の一番美味い店は何処?』と尋ねたら、しばらく黙り込み、
『うちの家です。』と答えた辺りだ。
『(・。・;はあ❓、あんたんとこ、鶏飯屋かよ❓』

勿論、なワケねー。違った。
鶏飯は元々は奄美大島の家庭料理で、島民は外では食わないとゆう事を言いたかったのだろうが、それじゃ質問してる側からすれば、身も蓋もないでしょ?
『じゃあ、アンタの家で食わしてよ❓』と冗談で言ったら、再びしばらく黙りこみ、けっこうな間が空いてから『それは無理です。』と答えた。冗談なのに、たぶん真剣にどうすべきかを考えていたんだろう。
この状況なら、可愛い人だ。(o^O^o)ちょっと面白くなってきたぞ。

他にお奨めの店はないかと尋ねたら、備え付けの観光案内冊子の中のトンカツ屋を得意気に指さした。
奄美大島で、トンカツ❓
『そこは特に何が美味しいの?、ロースカツ?』
と訊いたら、
『行ったことないです。』
と云う力強い答えが帰ってきた。
(゜ロ゜;えっ !?と言ったら、彼女はそれを無視して、『ねっ、美味しそうでしょ?』と満面の笑みを返してきた。
そして、キッパリと『絶対に行ってみたい店だ。』と真顔で付け加えた。
\(◎o◎)/アマミノクロウサギ(註1)、ぴょーん❗
(^ー^;)おいおい、それって、あんたの希望的観測だよね。フツー、自分が行った事ない店を堂々と紹介するかね❓

他に訪れる観光客も無く、ずっとそんな調子で爆笑クロウサギトークが続き、笑いの渦に捲き込んでやった。久々、ツッコミ能力を発揮したって感じ。
なんやかんやで、楽しい時間を過ごせたし、お蔭で暇潰しにもなった。
旅は、こういう現地の人とのふれあいがあってこそ面白くなる。

思いの外、時間が経った。まあ、それもよろし。
1時過ぎ、紹介されたチャリンコ屋に行く。
レンタル代 8時間 500円。

いつ急変するとも知れない怪しい天気の中、30分で目星をつけていた運動公園に着いた。
しかし、住所表記は小宿になっている。どうやら此処はあかざき公園ではないようだ。
まあ、いい。気をとりなおして、強風の中、ポイントになりそうな場所を探して回る。
この何日間かで、アカボシゴマダラは昼間ほとんど活動しない事が解った。春と秋には、トラップにほとんど来ないことも判明した。♂のテリトリーの場所に♀は滅多に来ないと云う事もほぼ確定だろう。
そうなると、産卵に来る食樹を見つけるか、餌場の樹液が出ている樹を探すしかない。

できるだけ山に近いミカン畑を探す。本土ではイメージはないが、柑橘類からも樹液が出るのだ。

程無く、良さげなミカン畑を見つけた。
おっ(^o^)/、見ると吸汁に来たアカボシが木に止まっている。

フンッ( ̄З ̄)、天気が悪くとも何とかする男なのだ、( ̄^ ̄)エッヘン。
この蝶、鮮やかな赤い紋が目立って、止まっていたら意外と簡単に見つけやすい。
それにしても、よくこんな暴風の中、アンタも居るよね。

しかし残念ながら♂で、しかもボロだった。
網を近付けようとしたら、感づいて逃げた。
奄美に来る前の想像とはだいぶと違って予想外だったのだが、この蝶、意外と馬鹿ではない。結構、敏感なのだ。普通、樹液に来た蝶は食事に夢中になって警戒心がかなり薄まるものだが、そんな事はなさそうだ。近縁のオオムラサキの方がよほどおバカさんでしょう。
とにかく、樹液ポイントが見っかった。それだけでも大きな収穫だ。これで♀が採れる可能性が少し拡がった。

朝仁に戻って、あかざき公園を探す。
町のオバーに尋ねたら、あかざき公園は普通の平地の公園ではなくて(なら、楽勝だと思った)、山全体が自然公園なんだと云うことか判明した。考えてみれば、近所の小さい公園だけでなく国立公園も国定公園も同じ公園だもんな。日本語はややこしいよね。

とにかく、チャリンコではとてもじゃないが登れない。それにそれじゃ♂ポイントだ。
諦めて、いつものらんかん山に行った。
3時前。そろそろテリトリーを張る時間だ。だが、流石に暴風になってきているから翔んでない。
これ以上居ても期待は持てないし、どうせ♂ばっかだ。いつ大雨が来るかも分からない。サッサと切り上げた。

そして、いつも通りの脇田丸へ。
やっぱり、アバス(ハリセンボン)の唐揚げから始める。

今日のチャレンジメニューはコレ。

【ホタ(アオダイ)の酒蒸し()】

690円だったか、390円だったかの記憶定かで無し。
アッサリしている。やや磯臭いが、頭周辺は身がしっとりとしていてかなり美味い。

今から、ずっと気になっていた漁師めし(なめろう風)を頼もうかと思う。

どうせまだ2~3日は帰れそうにない。
ボトルをまた入れてやった。

風が本格的に台風っぽくなってきた。
まだまだ、夏休みは終らない。

                   つづく
 

(picture subject)

【アバス(ハリセンボン)の唐揚げ】
いよいよ登場。これがハリセンボンの唐揚げ。
のちに皮で作った大きなハリボテを見せて貰ったのだが、正確にはハリセンボンではないと思う。そんな巨大なハリセンボンはいない。多分、モヨウフグかケショウフグだと思う。これでも、自分はダイビングインストラクターだったのだ。この二種はサイパンで何度か見ている。

この記述を読むと、ほぼライブ配信の当時はアバスの唐揚げの画像アップするのにだいぶと引っ張ったみたいだね。あんだけアバス、アバスと書いといて、この日まで画像無しって事は、半分くらいは意図的だったんだろう。当時は、如何に読者をワクワクさせてやろうかとか考えてたんだと思う。

【ホタ(アオダイ)の酒蒸し】
南方系の魚だと思う。多分、磯に棲む魚なんだろう。

上は当時のコメントだが、今回改めて調べてみたら、新たなる知見を得た。
アオダイはスズキ目フエダイ科に属し、伊豆諸島・小笠原諸島から高知、鹿児島、沖縄などで水揚げされている魚だそうだ。但し、どこでも漁獲量は少なくて高級魚とされているみたい。特に関東ではアオゼと呼ばれ、珍重されているそうな。どんな調理法でも美味いらしいから、評価も高いのだろう。

(新しいボトル)
今回は『天海』。こっちの方が更に飲みやすいと思う。奄美大島と言えば、黒糖焼酎。奄美は食いもんも旨いが、酒も旨い!
そういえば思い出した。15年くらい昔の話だが、酒はだいたい何でもござれの自分だったが、唯一焼酎だけが飲めなかった。
それが、2005年ダイビングの仕事でここ奄美大島で訪れた時に黒糖焼酎に出会い、やがて焼酎全般へと開眼していたのだった。黒糖焼酎は癖が少ないので入口として入りやすいと思う。と云うわけで、今や酒の完全オールラウンダーだべさ。

(アマミノクロウサギ)
どうせ、みんな知ってるだろうと思ってたけど、一応今回を機に説明しときます。
アマミノクロウサギは、世界の中で日本の奄美大島にのみ生息する黒くて小さいウサギ。
でもというか、だからこそなのかも知れないが、映像を見てるとドンくさい。よくぞ、生き残ってこれたもなだなと思う。多分、アカボシゴマダラもアマミノクロウサギも古い時代には沖縄本島にもいた筈だ。でも、両者とも今はいない。そう云う意味では、奄美大島の自然は稀有ではあるよね。

『西へ西へ、南へ南へ』15 すべてはミックスジュースのように曖昧になってゆく

 
ー蝶に魅せられた旅人アーカイブスー
2012-08-22 20:16:58

     

      ー捕虫網の円光ー
     『西へ西へ、南へ南へ』

(第十一番札所・すべては、ミックスジュースのように曖昧になってゆく)

 
2011年 9月18日

旅に出て10日が過ぎた。
時間の感覚が無くなりつつある。
いつ帰るとも知れないと、益々自分の輪郭が形を失い、朧(おぼ)ろになってゆく。
今日は何曜日だっけ❓

いつの間にか、また真っ黒になっている。もはや土人だね。

朝6時に起き、昨日のスミナガシ・谷村ポイントに行った。トラップの見廻りの為だ。
しかし、スミナガシもアカボシもいない。ルリタテハが来ていたが、完全に無視。
今回、トラップが全く役に立っていない。
アカボシは6月以外はトラップにほとんど来ないと聞いていたが、やっぱりそうなのか…。

9時に諦め、帰って支度し直した。
台風なので先は読めない。読めないが前に進む。
ずぶ濡れはもう経験済みだ。どうとでもなれだ。契約を延長して、今日もバイクを駆ることにした。
止まってたまるか❗失速しない為には駆け続けるしかない。
男は蒲生崎にバイクのフェンダーを向けた。

アカボシもアマミカラスも個体数はここが一番多い。あれだけ♂がいるんだから、♀だって同数いる筈だ。
完品のレッドスター・レディーを何としても手中にするのだ。

天気は今日もいつしか快晴。
台風男ではあるが、やっぱり晴れ男なのだ。
取り敢えず、谷村さんに教えて貰った民家横のポイントへ。
ミカンの木の樹液に1頭ボロ♂が来ていたが、リリースしてやる。以降、この個体を計3回も掴まえてしまう。
矢張り父っちゃん坊や谷村氏に一網打尽されてしまったか…。
エノキの木に蛹の脱皮殻が3つほどあったので、蛹を探してみたが発見出来なかった。

集落の更に奥を目指した。
コーナーを曲がったら、突然眼下に青い海と白いビーチが飛び込んできた。
夢のような美しいビーチだ。
日本じゃないみたい。
奄美の海は、この条件下でもこれだけ美しいんだからスゴい。

蒲生崎には午後1時に着いた。
相変わらずアマミカラスが一杯翔んでいるが、ことごとく♂だ。翅に光が真上から当たるとキラキラ青光りして宝石みたいに美しい。

1時半、真っ青な空をバックに大きなアカボシが真上を優雅に通過して行った。
デカかった…。多分♀だろう。
必死に周囲を探してみたが、結局見つからなかった。

2時くらいから風が強くなった。
雲がビュンビュン通過してゆく。
風の音が不気味である。人を不安にさせる音だ。

2時半、1頭だけアカボシがテリトリーに翔んできた。しかし、単発であった。
本格的に翔びだしたのは、やはり3時からだった。これで昼間は基本的に飛ばないという事が決定的になった。
それにしてもこの蝶、風が強くても構わず飛んでいる。雨さえ降らなければいいようだ。それよか、昼間飛べよなー(# ̄З ̄)
近縁のゴマダラチョウは昼間でもジャンジャン翔んでるぞ。どっちかというと、やっぱり性格はオオムラサキ的だね。

14、5頭、ネットインしたが、半分はリリースした。奄美に来て約1週間、段々ボロが増えてきた。

4時過ぎ。移動しようとしたら、アマカラの♀らしき影がカラスザンショウの木に翔んできた。葉っぱに止まり、お尻を曲げている。産卵だ。完品のようだ。
ごめん、悪いがネットイン。
一部、スリットが入っているが、今迄で一番綺麗な♀だ。

だが、あまり感動はない。
アマカラは♂の方が綺麗だと思う。

4時20分。それで出発が遅れた。
谷村ポイントに一縷の望みを賭けて行ってみたが、既に陽が陰ってしまい、ジ・エンド。
本日も彼女に袖にされた。
レディーは、いったい何処に行けばいるの?(T_T)

一日回転寿司に浮気したが、今日も脇田丸へ。

本日のチャレンジ・メニュー。

【イラブチャー(アオブダイ)の唐揚げ(390円)】

巨大なエビ天みたいになっとりまんなあ。
一応、沖縄辺りでは味が良いとされ、高級魚だったんじゃないかな。でもトロピカルブルーの魚だから、本土の人間にはかなり引く見てくれだ。

(出典『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』)

沖縄や八重山で何度か刺身で食ったことはあるが、唐揚げは初めてだ。

皮に弾力があって美味い。
が、ハリセンボンちゃん(アバス)には敵わない。
それにしてもこの店、揚げ方が上手いよなあ。毎回感心する。外はカラッと、中はジューシーなのだ。

グルクン(タカサゴ)の塩焼き(390円)。
沖縄だけじゃなく、奄美でもグルクンと呼ぶんだね。
大体、唐揚げにすることが多い魚だから、塩焼きは珍しい。多分、初めてだ。
ふむふむ。塩焼きも中々のもの。味は同じ青魚系のアジに近いが、身質はもっと弾力がある。
一匹丸々で、この値段だから嬉しい。

ボトルを飲みきったので、今日はひたすらラガーの中瓶を飲んでいた。
前カノから電話があり、嬉しくて痛飲。へべレケで帰った。
お代は1960円。いつもながらにクソ安い。

今日も沖縄発の船は全便欠航。
沖縄では海が荒くれてんのかなあ…。

酔っぱらいながらの帰り道。
信号機が濡れた舗道に映り、艶やかに滲んでいるのを見てふと思った。
帰れないことは、不幸ではない。
寧(むし)ろ、此処に長くいれる事はしあわせなんだと。

                   つづく
 

【subject】

奄美大島のビーチ。

海が荒れると、海中は濁る。
台風が近づいていると云う状況下で、この美しさはハンパない。
自分は昔ダイビング・インストラクターをやっていて色んな海に潜ってきたが、その中でも奄美地方の海の綺麗さは三本の指に入る。それくらいに美しい。

奄美のビーチ・その2。

ビーチには一家族しか居なかった。
贅沢です。

おまけ画像です。
お洒落にミラーに海を入れようとして失敗。

 
【追伸】
イラブチャーをアオブダイとしましたが、正確にはナンヨウブダイ。アオブダイはパリトキシンという猛毒があり、食用には向かないようだ。
両者は似てるし、ナンヨウブダイをアオブダイと表記する事もあるから、ややこしい。でも、これだけ混同されると、ヤバイじゃないの❓和歌山なんかにもいるそうだから、釣人は注意されたし。結構、死亡例も多いぞー。
あっ、本土の人はこんな派手派手の魚は食わないか?

『西へ西へ、南へ南へ』14 迷走男と迷走台風

蝶に魅せられた旅人アーカイブス

     ー捕虫網の円光ー
   『西へ西へ、南へ南へ』

   (第十番札所・迷走男と迷走台風)

2011年 9月17日

起きたら、意外と天気が良い。風もない。
まさか、台風が忽然と消えたりなんかしたりして…。
どっちでもいい。とにかくこの晴れ間を逃すわけにはいかない。

8時半に慌てて出て、らんかん山の登山口に行った。
入口横の民家に大きなリュウキュウエノキがある。 ここがアカボシゴマダラの発生地と睨んだ。ということは、♀が卵を産みにくるんじゃないかと予測したのだ。

【アカボシゴマダラ奄美大島亜種】

しかし、陽が射しても♀は現れない。
9時半まで待ったが、姿はない。
仕方なく上に様子を見に行った。

♂も翔んでいない。
だが、テリトリーを張る場所の松の枝に1頭が静かに止まっているのが見えた。アカボシの♂だ。
この蝶、何故か松が好きな変わり種だ。普通の蝶は、松にはあまり止まりたがらない。そもそも、針葉樹に止まる蝶は少ないのだ。
記憶にあるのは、杉や桧にわりと停まるギフチョウとヒサマツミドリシジミ。あとはハイマツに止まるタカネヒカゲ等の高山蝶くらいだろう。

【タカネヒカゲ】

網を近づけたら、めんどくさそうに他の枝に移った。もう一度近づけたら、再びめんどくさそうに梢の向こうに消えていった。
春と夏とではどうか分からないが、この蝶、やっぱり日中は不活発なんじゃないかと思う。昼間に翔んでいるのを未だ見たことがない。

10時過ぎ、どんどん晴れ間が拡がってきた。
昨日の天気予報では完全に雨だったから、この先まったく天候が読めないが、駄目元でチャレンジしようと思った。
一度、部屋に帰り、レンタルバイク屋に電話して借りる旨を伝えた。

昨日、酔っ払って買った半額ぶっかけウドンを急いでカッ込み、10時半にバイク屋へ。

最初はアカボシの個体数が一番多い蒲生崎に行く予定をしていたが、スミナガシ、イワカワシジミも狙える南東部の西仲間、三太郎峠に変更することにした。
出来れば行った所のない違う場所の方がいい。未知なる場所は新鮮だから楽しい。ようするに飽き性なのだ。

58号線は、海岸線みたいにアップダウンがないから楽だ。そのかわりにトンネルが多い。涼しくて良いのだが、3〜4㎞と長いトンネルばかりで、案外疲れる。それにトンネルって、ちよっと気持ち悪い。

西田、小湊、西仲間と回るが成果はあがらない。
せめてイカワカワシジミの幼虫でもとクチナシの木を見て回るが、実がほとんど無い。
よく見ると誰かが採集に入ったような形跡があり、所々枝先がカットされている。有望なクチナシの実を持って帰ったのだろう。これじゃイワカワシジミの幼虫は全く期待できない。

三太郎峠にも行った。
だが、嫌な予感が的中して、崖崩れで通行止めだった。

さらに南の湯湾岳まで行ってしまうことも考えたが、名瀬まで帰ってくるには遠すぎる。
それに一応、台風が向かって来ているのだ。いつ天候が豹変し、荒れ狂いだすとも限らない。南部は山ばっかで避難できる場所も少ないのだ。こないだみたいに雨風に晒され続けて走る苦難は避けたい。

思案の末、とっちゃん坊やの谷村さんがぼわっと教えてくれた微妙なポイントに行くことにした。
名瀬からは比較的に近いので、最悪の事態は免れるだろう。雨宿りできる場所もあるし、天候が急変したとしても被害は最小限に食い止められる筈だ。

午後3時。
勘で林道を上がって行った。
尾根近くまで上がってきたら、( ̄□ ̄;)❗
ここじゃないか?という環境に出た。
と同時に黒い影がよぎった。
スミナガシだ❗

伊達にスミナガシを採ってきていない。生息環境を読む力は、だいぶ上がっている。
更に上を見上げると、アカボシも翔んでいるではないか。
谷村さん、アカボシがいるなんて一言も言ってなかっぞー。(# ̄З ̄)あんにゃろー。

きっと、あんまり教えたくなかったんだろう。
だから、曖昧にしかポイントを教えなかったんだろうなあ…。
フンッ(=`ェ´=)、見つけられるわけないと思っていたようだが、ところがドッコイ、まあまあ天才をなめて貰っては困るのだよ( ̄^ ̄)V

周りをみると、吊り下げ型のフルーツ・トラップもあった。ここに間違いない。

スミナガシは枯れ枝の真ん中に止まっている。
アカボシもかなり高い所を滑空している。どちらも網が届きそうにない。

一応、トラップを幾つか掛けて廻り、そそくさとその場を後にした。もっと上に良い場所がある筈だ。

読み通り、少し開けた切通しでスミナガシたちが追っかけっこをしていた。
楽勝だヽ(^。^)ノ

だが、なかなか止まってくれない。
おまけに敏感だ。本州なら正面から被せればイージーなのだが、ここでは網を被せる前に気付いて翔んでいってしまう。
赤い網が悪いのかと思い、緑に付け替えるが、結果は同じ。
止まったら、素早く横振りでいくしかない。
何度か外した。蚊にいっぱい咬まれたし、(#`皿´)イライラしてくる。

いいかげん怒りに🔥火が入った。
翔ぶ軌道をあらかじめ予測すりゃいいんだろ、ボケがっ( ̄ヘ ̄メ)。空中で仕留めたるわい❗

んなろー、小癪なっ💥❗❗
気合いを入れたら、一発で決まった。
怒った方が採れるって、どゆこと❓でも、そっちの方が案外成績良かったりするんだよねー( ̄∇ ̄*)ゞ
結局のところ、原動力は喜怒哀楽の怒なのだ。

擦れ、欠け、ボロが3つ。綺麗なのが2つ。計5頭採れた。
だが、一昨日のよりも此処のはみんな小さい(註1)。本州の春型と同じくらいだ。
でも、一つかなり蒼いのが採れたから嬉しい。

アカボシも別なもっとイージーな場所を見つけて、駆け込みで2♂捕らえた。
やっぱり、3時から5時というのが♂の占有活動の時間帯のようだ。

山を降りて、道路沿いの回転寿司屋(註2)に行った。
どうしても、寿司が食いたくなったのだ。

だが、失敗。
こんなところで美味い寿司が食えるわけがない。行くなら、ちゃんとした寿司屋に行くべきだった。

(@_@)
飲酒運転で帰る。

結局、軽い夕立があったが、ほぼ晴れの一日だった。
台風どこ?

                   つづく

追伸
えー、今回は四番だっけ?五番札所だっけ?かに続き、アメブロでは抜けてた回でした。
色々理由はあるのだが、多分当時はやらされてた感があったのだろう。共同経営の店の為のブログだったのだ。

(註1)一昨日のより小さい…。
部屋に帰ってからようやく気づいたのだが、一昨日に採れたのは♀でした。

(註2)奄美大島の回転寿司屋
当時は、多分ここが島唯一の回転寿司屋だったのではないかと思う。地魚は全然無くて、ヤケクソのようにマグロばっか食ってやった。
でも、普通のマグロ。せめて近代マグロなら、まだマシだったんだけど…。単なる冷凍マグロでおました。

『西へ西へ、南へ南へ』13 停滞という名の失望

ー蝶に魅せられた旅人アーカイブスー
2012-08-18 19:28:28

       ー捕虫網の円光ー
      『西へ西へ、南へ南へ』

    (第九番札所・停滞という名の失望)
                                               
2011年9月16日

朝、一応船会社に電話する。
船は既に今日の便は欠航しているので、次の20日の便を予約する。

9時半にバイクを返しに行った。
そこから近いし、雨が降ってないので拝山に行ってみる。

だが、何もいない。
ナガサキアゲハの♀が寄ってきたので、一応それだけ採った。
白くて綺麗だが、やや擦れ。

ついでにハブ対策室に寄るも、おじーは休みで居なかった。職員に電話番号を教えてもらってかけたが、あまり大した情報は得られなかった。
昔は市街地でもアカボシをよく見たらしいが、今はすっかり姿を消したという話を聞いて暗くなる。

因みに捕まえたハブを売りに来た人がたまたまいた。
全部チビばかりで9頭。大きさに関係なく市が一匹4千円で買い取ってくれるらしい。しめて3万6千円かあ…。いいアルバイトだな。絶対にやらないけど。
それにしても、ハブの一杯いる檻は猛烈に臭かった。
スタッフにハブ酒にでもするんですか?と尋ねたところ、全部焼却するとのこと。何だかハブも憐れだ。

そのまま、らんかん山に向かって住宅街と山裾の間を舐めるようにして歩く。
アカボシの♀は山麓のリュウキュウエノキにいるんじゃないかと思ったからだが、おじーの言によると期待は出来ない。
まあ、どうせすることもないんだし、ダメ元だ。

途中、船会社から電話があった。
20日の便も欠航が決まったと云う連絡だった。今後どうゆうタイムテーブルになってゆくのか分からないが、本来の次の便は25日。いよいよ絶望的に帰れなくなってきた。

続けて電話が入った。
自称虫捕りのプロ・谷村さんからだった。
毎日、ラブコールが来る。いつ家に遊びに来るかというお誘いだ。面倒臭いが、スミナガシをくれると言うし、情報も欲しいから晩に会う事にした。

名瀬市街は、湾内のせいか静かだ。風もあまりない。
天気は曇り時々雨。市内なら雨が降っても、いつでも直ぐに雨宿りができるから気分は楽だ。

一度部屋に帰り、昼飯を食う。
昨日、酔っ払って買った半額冷やし中華である。
宿には共同の冷蔵庫があるから有り難い。ビールも採集した蝶も放りこめる。南国だと蝶が腐り易いので管理が大変だが、冷蔵庫があれば心配ない。

(-。-;)…。
蒸し暑い。
曇っていても関係ない。じっとしているだけでも汗が噴き出してくる。

2時過ぎに再び出た。
らんかん山に向かって歩く。
♀が駄目なら、せめて♂でもと思ったからだ。運が良ければ、蒲生崎みたいに♀も翔んでくるかもしれない。
しかしそれにしても、あれだけ♂がいるんだから♀だって同数いる筈なのにまるで見ないよなあ。
なぜか大概の蝶は、♂は採れても♀はあまり採れない。大方、天敵に襲われないようにじっとしてる事が多いんだろうとは思うのだが、何だか理不尽だ。
そう考えると、♂って皆なリスキーな生き方してるんだよなあ…。♀を探す為にテリトリーを張ったり、ウロウロしたりして目立つと云う事は、それだけ天敵に捕食されやすいって事でもある。
メスの為なら死を賭してでも頑張っちゃうのが、オスと云う生き物なのだ。

3時過ぎからアカボシのテリトリー行動が始まった。
晴れている時みたいに活発ではないが、雨さえ降らなければ活動するようだ。
ただ、あまり止まらないし、この間より飛ぶのが速い気がする。それに位置が高いし、敏感だ。
1頭めは昨日リリースしてやったボロだった。その後、ことごとく逃げられ、やっと新鮮なのを計2つだけ採った。状況によっては、案外採れない蝶なのかもしれない。

アマミカラスの♀も2つ採ったが、2つ共ギリギリ展翅に耐えられる擦れとキレ。

この悪い状況下で両方完品の♀を採れば、やっぱり俺ってまあまあ天才、かなりカッコイイと思ったんだけどなあ…。

いっぱい蚊に喰われて5時に撤退。
帰りぎわ、イワカワシジミがいそうな山梔子(クチナシ)を見つけた。成虫は確認できなかったが、実に穴が空いていた。中に幼虫や蛹がいる可能性があると云うことだ。
しかし、民家なんでスルーした。怪しい人に間違われたら、事だ。

7時に谷村さんが迎えに来る予定だが、連絡がない。
気が進まないし、まあいいんだけどさ…。
でも、何となく腹が立つ。連絡すると言って連絡してこない奴はクズだと思う。

一応、何かあったのかもしれないので電話してみる。
コール音がわりにサザン・オールスターズのファンキーな曲が大音量で延々と鳴っている。しかも音質が最悪。音が絶望的に割れていて、何の曲だか分からない。
唖然…( ; ゜Д゜)
おっさん、サザンが好きなのか…。
サザンが悪いわけではない。だけど何かおっさんとの組み合わせがどうにもイタ過ぎるぞ。

8時にやっと電話があった。
24時間スーパーまで迎えに来ると言う。

助手席は信じられないくらいにゴミだらけだった。
変な臭いもする。
やっぱ、この人イタい。

促されるままに助手席に座る。
捲し立てるように話しかけてくるが、この厚縁眼鏡の小太りオヤジ、滑舌が悪くてそのほとんどが聞き取れない。
やがて、とっちゃん坊やはニコニコしながら『あげるよ。』と言って、額を差し出した。

Σ( ̄ロ ̄lll)❗❗
戦慄が走る。
そこには、古ぼけたツマベニチョウとスミナガシの標本が並んでいた。それは、いつの時代のものなのかというくらいに色褪せており、ガラスの下でひしゃげたように磔りついている。標本と云うよりも、まるで蝶のミイラだ。何だか磔(はりつけ)獄門の刑みたいで、おぞましささえ漂っている。
それに、何だか手に突起物が当たったので裏返してみると、思いっきり針が裏まで貫通していた。よく見ると、その針は蝶を突き刺すにはあまりにも太い。昆虫標本用の針ではないだろう。多分、裁縫用の長い針とかだ。こんなもの、自慢気にプレゼントするかね❓
やっぱこの人、ウルトラ級にイタい。

展翅もお世辞にも巧いとは言えない。
ハッキリ言ってド下手だ。触角が不細工に左右あさっての方向に向いている。
あんた、プロじゃなかったの❓
やっぱこの人、全てにおいてイタいかも…。
頭の中にゴルゴタの丘、五寸釘、藁人形という言葉が浮かぶ。
丁重に御辞退申し上げ、お返しした。怨念の詰まったようなもんなんぞ、受け取れん。

スミナガシのポイントも訊いたが、地元民なのにもう一つ要領を得ない。しどろもどろだ。
このまま家に連れて行かれるのは、どうもなあ…。
ある意味残念な地獄絵図が待ってる事は間違いないだろうし、家は此処から案外遠い。かなり奥まった所だから、歩いて帰るには距離がある。結果、泊まっていけだなどと言われた日にゃ、大変なことになると思ったので、上手く話を切り上げて車から辞去した。
谷村さんは、ちよっとションボリしていた。きっと、さみしがり屋なのだ。
けど、同情は禁物だ。あのゴミだらけの助手席を見たら、家の中は言わずもがなだろう。多分、ゴミ屋敷だ。

その足で脇田丸へ。
今日もアバス(ハリセンボンの唐揚げ)から始める。これで5日連続だ。今や完全なる儀式と化している。

今日の珍しいオーダーは以下の通り。
相変わらず食い気が勝ってしまい、画像を撮り忘れてしまい、今回もあんま無いです。

ズーズルビキ(スズメダイ)の煮付け(490円)
意外だが、結構美味い。板前さん曰く、身が薄いけど、ツノダシもおんなじ味らしい。
因みにツノダシはこんな魚です。

(出展『魚類図鑑・ツノダシ』)

こんなエンジェルさんを奄美大島では食べるのね。
まあ、そんなのはコチラの勝手な概念だけどさ。

【しぶり(冬瓜)と鶏肉の煮物(390円)】

冬瓜がホッとする味だ。
それにしても、沖縄ならともかく奄美大島にもワケのワカンナイ方言がたくさんあるんだね。言葉だけだと、何のコッチャなのか想像がつかないものだらけだ。何で冬瓜が「しぶり」なのか語源が全くもってワカランよ。

すっかり仲良くなった板さんが、こっそりキビナゴの塩漬け(塩辛)を持って来てくれた。

癖があるので、評価の分かれるところだが、焼酎にはピッタリだ。

酔いが回ってくる。
段々、刺身のツマの大葉(青ジソ)が、アカボシの食樹リュウキュウエノキ(クワノハエノキ)に見えてきた。

♀が木に卵を産みにくるかもと、そればっか探していたから、つい反応してしまった。確かによく似てるんだよねぇ。

【リュウキュウエノキ】

今日のお代は、1670円でした。
相変わらず、クソみたいに安い。

ふらふらと宿に向かって歩く。
街は、夜と雨の匂いに満ちていた。

                 つづく

追伸
サラッと手直して記事をアップできるかと思ったが、結局のところ大幅訂正加筆になった。次の回は、前のアメブロではゴッソリ1回分が丸々抜けてるから、昔の携帯を探してきて1から書き移さなければならない。
( ´△`)うんざりだよね。

春の献立の事を書きたいのだが、アフリエイトがまだ出来ないので書く気が起こんない。っていうか、サボり過ぎ。ダメ男だよなあ…。

『西へ西へ、南へ南へ』12 修行僧成仏

蝶に魅せられた旅人アーカイブス
2012-08-17 23:51

      ー捕虫網の円光ー
     『西へ西へ、南へ南へ』

   (第八番札所その3・修行僧成仏)

走っているうちに、どんどん雨と風が激しくなり始めた。
海岸まで降りれば少しはマシになるかなと思ったが、むしろ悪くなった。怒った白波が暴れている。
修行は終わらない。再び艱難辛苦が訪れた。

暴風雨の中、走る。
前が雨で白く染まっている。
雨をまともに受けて、視界がロクに効かない。さらに進むと、天候はいよいよガンガンに荒れ狂い始めた。
容赦なく降りしきる雨粒が刺すように痛い。強過ぎて本当に痛いのだ。
だからスピードは上げられない。時速30㎞が限界だ。
いつしか、道は川のようになっている。アップダウンの繰り返しが続き、苦痛はどんどん増してゆく。タイヤが水に乗り、時々ハイドロプレーニング現象で滑る。早く帰りたいが、事故るよりかはマシだ。慎重に運転する。
既に、パンツの中まで絶望的にグッショリと濡れている。そのうち、指先かかじかんで感覚も無くなってきた。

男は思った。
何故、こうなることをある程度予測していながら、こんなリスキーな選択をしてるんだろう?と。
蝶が採りたいと云う一心なのだが、馬鹿を通り越して気狂いだ。
ふと頭の中にSM嬢ツボの言葉が浮かぶ。
『貴方はSでもMでもなく、状況によって替わるスイッチャーだ。』と。
自分ではドSだと思っていたし、周りもそう評価しているが、蝶採りのせいで最近は大概のことにも耐えられるようになってきた。未だ、それを楽しむと云う領域にはなっていないが…。
とにかく、ツボの見たてはある意味慧眼だったと云う事なのか?

ようやく知名瀬の村が見えてきた。
村を過ぎればあと少しだ。20分もあれば宿につくだろう。既に寒さで体がガタガタと小刻みに震え始めている。体力と気力が残っているうちに辿り着かねば…。
スミナガシをギリギリで採れた事だけが、辛うじて男の強い支えになっていた。

3時ちょうどに生還した。
靴の中までズブズブ水浸しの全身濡れ鼠で、そのまま風呂に直行。

熱いシャワーを浴び続ける。冷えきって暫くは手の感覚がなかった。

だが、キチガイは天候がやや回復したので、5時前に短パンでらんかん山まで行った。
♀を期待したが、世の中そんなに甘くはない。ボロ♂が一つだけ採れただけ。勿論、リリース。

今日も脇田丸へ。
いつものように、あばす(ハリセンボン)の唐揚げからオーダーした。これで4日連続だ。

海ゴーヤ(390円)なる変な名前のものがあったので、頼んでみる。

見た目はゴーヤというよりも杉の葉。
味は海ブドウに近いが、食感がシャキシャキしている。
食べ方は、海ブドウと同じくドレッシングで食べるのが定番のようだ。しかし、一口食って、店の人にマヨネーズを少し貰うことにした。そこに醤油をかけて混ぜ混ぜしたものをつけて食う。
うん、これやd=(^o^)=b❗
これが海ブドウを食うときの一番好きな食い方なのだから、正解に決まっているのら。

お次はコブシメ(イカ)の刺身(390円)。
肉厚で甘みが強い。塩とスダチを所望して試してみたら、更に絶品❗❗
これで390円って、信じられんよなあ。
あっ、写メ撮るの忘れた。あまりにも美味そうだったので、完全にそっちに気持ちがいってた。

魚(キハダマグロ)ホルモンの煮物(390円)。

珍味。
七味唐辛子をかけて御賞味をとの事。

胃袋は完全に肉のモツ。この食感は、黙って出されたら何の疑いもなく肉だと思って食ってるだろう。
肝は少し苦味があって、これが中々に良いのだ。黒糖焼酎とバッチシ合うんだよね。

今日も痛飲。
本日のお代は、1960円でした。奇跡の居酒屋だな。

外に出たら、再び雨が強くなっていた。

                つづく

P・S
因みに誤解されない為に言っておきますが、ワタクシ、残念ながら一度もSMクラブには行ったことがありません。
ツボと云う人は、前の店(ショット🍸バー)のお客さんでした。デブだが、痩せたらさもありなんと云う美人だろうという顔立ちで、頭も勘もいい女性でした。デブ專のことはよくワカンナイけど、その筋には極上の女だったんじゃないのかなあ…。
考えてみれば、前の店のお客さんはバラエティーに富んでいて、面白い人が多かったんだなと改めて思いますね。
今の店もそうなればなあと思って居ります。

ええと、アーカイブスならではの補足です。
自分は当時男性の約8割がマゾヒストで2割がサディストだという持論を持っていたが、ツボによると男性の約7割はマゾで2割がサド。1割がスイッチャーだということだ。仕事でやってたんだから、この彼女なりのリサーチの結果は、ほぼ間違いないのだろう。だって来るお客は、偽る必要のない真性のMとかSなんだから。
彼女には訊かなかったけど、多分女性はこのスイッチャーの割合が男性よりも断然多いんじゃないのかなあ。

『西へ西へ、南へ南へ』11 ブルーの肖像

ー蝶に魅せられた旅人アーカイブスー
2012-08-15 19:33:53

      ー捕虫網の円光ー
   『西へ西へ、南へ南へ』第11話

  (第八番札所その2・ブルーの肖像)

ブルーの残像が脳裡に残っている。
自分の不甲斐なさにベソを掻きそうだ。
辛い…。大失恋をした時のような気分だ。
心をどう持ってゆけばいいのかさえわからない。
敗色濃厚。溜め息が何度も洩れる。

正午になった。
空を見ると、帰るべきだと思った。

だが、男は見た蝶を採れないと云うのが許せない。
見ても物理的に採れないノーチャンスの場合は別として、可能性がある場合は何があってもターゲットは落とす。それが男の矜持だ。
今まで、その日のうちにリベンジできなかったのは、キリシマミドリシジミくらいだろう。
現在、ベニモンカラスシジミも3連敗中だが、一度も見たこともないから採れるわけがない。だから、そう悔しくもない。
だが今は、既に何度もチャンスを逃している。
このままおめおめと帰るわけにはいかない。それは、敗北を認めると云うことだ。心が折れた儘で大阪に帰るのは御免だ。

1時40分までリミットを延ばした。
これがアカボシがテリトリーを張る時間に間に合うギリギリの時間だ。修行僧を続けよう。

マジで両手を合わせて、神と仏に祈った。
声に出して、『神様、仏様、お願いですから、もう一度わたくしにチャンスをお与え下さい。』と手を組んで頼んだ。他人から見たら漫画のような光景だが、本人はいたって真剣だ。

1時13分。
緑の間から待望の黒い蔭が現れた。
周囲を弧を描くように滑空している。
だが、様子が今までの奴とは少し違う。飛行時間が長いし、低い。男のすぐ傍らをスーッと通過して行った。違う個体かもしれない。
それが二度繰り返されたから、よっぽど空中で勝負をつけてやろうかとも思った。だが、長竿では素早く振る自信が無かった。
らしくない。きっと慎重になり過ぎているのだ。心が縮こまっている証拠だ。

なかなか止まらない。
止まってくれ、お願いだから止まってくれ。祈りにも似た気持ちで黒い影を目で追う。

止まった❗
あ~(´Д`)
だが、あの幹の樹液ではなく、頭上5mくらいの枝の間に止まった。

(・。・;ほよ❓、何してるだすか❓
見たこともない行動に戸惑う。
そのうち枝を歩き回り始めた。そして、暫くして止まった。
どうやらそこからも樹液が出ているようだ。
でも、あの位置では枝が邪魔になって、かなり難易度が高い。
真下にしゃがみこみ、どうしたもんかなと思案する。
このまま状況が変わるのを待つか、駄目元で勝負をかけにゆくかのどちらかだ。

悩んだ…。
頭の中が破裂しそうだ。
だが、愚図愚図悩んでいる場合ではない。台風が近づいている。天候が急変するのは時間の問題だ。
意を決して勝負にいくことにした。
このまま何もしないうちにプイッと突然消えられたら、激しい後悔で夜も眠れないだろう。
見逃し三振って、ヘタレで最低だ。駄目元でチャレンジして失敗した方がまだ魂は救われる。

何かまるで恋愛を語ってる人みたいである。
中年男の恋の独白みたいで、普通なら笑うところだがそんな余裕はない。

そろりそろりと長竿B・Jを上に伸ばす。
ヤケクソで枝ごと行ったれと思った。

( ̄□||||うわちゃ❗
1mくらい網を近づけたところで、ふわりと逃げた。
(*ToT)止まれ、止まれ、止まってくれ━━。
悲痛に願う。焦燥と緊張で気が変になりそうだ。

(;A´▽`A ふうーい。
よし、何とか3mくらい向こうの枝先に止まってくれた。手前の枝が邪魔だが、さっきよりかはマシだ。これなら採れないこともない。

(;゜∇゜)あちゃー。
またネットを慎重に近づけるが、同じようにふわりと翔んだ。マジですか?

ほっ( ̄▽ ̄)=3
さらに2m程先へと移動して止まった。
今度は邪魔するものはない。存分に網が振れる。
高さは5~6m。テリトリーを張る時と同じように枝先に止まってくれた。葉先から2本の触角が突き出ているのがわかる。
これを逃したら、その場で切腹したくなるだろう。蝶採りなんて即刻やめてやる(=`ェ´=)❗

最初はテリを張っている時のように正面から被せようかと思ったが、状況が違うと思い直した。ここのスミナガシはそんなアホではない。敏感だ。横から払おう。

高さを慎重に合わせる。
息を止め、万感の想いを込めて渾身のスイングを繰り出す。
トゥリャ━━━(*`Д´)ノ❗❗❗
💥横殴りになぎ倒し、マトリックス的にそのまま背後に向かってネットを流す。
手を離し、そのまま体を捻り反転する。
スローモーションのように網が真っ直ぐに落ちてゆく。
手応えはあった。
下は平らなアスファルト。横から逃げられる心配はない。

男は、ゆっくりと近づいていった。

終わった…。
渋いブルーが中で暴れている。
男の体が一挙に弛緩した。と同時にその場にヘタり込みそうになる。

やっぱり、本州のものより明るくて蒼い。
右端の上あたりが擦れているが、この際関係ない。
粋(いき)で美しい。

敗北をすんでのところで免れた安堵と勝利の陶酔感がジワジワと背中を這い登ってきた。
タイミングを図ったかのように強めの雨が降り出した。
男は慌てて役に立たなかったトラップを回収して、バイクのエンジンをかけた。

見上げると、風雲急を告げるように黒い雲が物凄いスピードでこちらに近付いて来ていた。

                   つづく

【追伸】
ラッキーな事に、後日この個体は♀と判明した。
この蝶、♂はそれなりに採れるのだが、♀は滅多に採れないのだ。

【再録にあたっての追伸の追伸】
あれから♀は、石垣島で1頭、沖縄本島で1頭、台湾で数頭採っただけだ。
本州では、その後現在(2017年4月)に至るまでいまだに一度も採った事が無い。あれだけ♂がいる生駒山系でさえも、♀はほとんど見たことがないのだ。スミナガシの♀って、謎だよなあ…。
今年は枚岡でトラップでもかけてやろうかしら。