『西へ西へ、南へ南へ』12 修行僧成仏

蝶に魅せられた旅人アーカイブス
2012-08-17 23:51

      ー捕虫網の円光ー
     『西へ西へ、南へ南へ』

   (第八番札所その3・修行僧成仏)

走っているうちに、どんどん雨と風が激しくなり始めた。
海岸まで降りれば少しはマシになるかなと思ったが、むしろ悪くなった。怒った白波が暴れている。
修行は終わらない。再び艱難辛苦が訪れた。

暴風雨の中、走る。
前が雨で白く染まっている。
雨をまともに受けて、視界がロクに効かない。さらに進むと、天候はいよいよガンガンに荒れ狂い始めた。
容赦なく降りしきる雨粒が刺すように痛い。強過ぎて本当に痛いのだ。
だからスピードは上げられない。時速30㎞が限界だ。
いつしか、道は川のようになっている。アップダウンの繰り返しが続き、苦痛はどんどん増してゆく。タイヤが水に乗り、時々ハイドロプレーニング現象で滑る。早く帰りたいが、事故るよりかはマシだ。慎重に運転する。
既に、パンツの中まで絶望的にグッショリと濡れている。そのうち、指先かかじかんで感覚も無くなってきた。

男は思った。
何故、こうなることをある程度予測していながら、こんなリスキーな選択をしてるんだろう?と。
蝶が採りたいと云う一心なのだが、馬鹿を通り越して気狂いだ。
ふと頭の中にSM嬢ツボの言葉が浮かぶ。
『貴方はSでもMでもなく、状況によって替わるスイッチャーだ。』と。
自分ではドSだと思っていたし、周りもそう評価しているが、蝶採りのせいで最近は大概のことにも耐えられるようになってきた。未だ、それを楽しむと云う領域にはなっていないが…。
とにかく、ツボの見たてはある意味慧眼だったと云う事なのか?

ようやく知名瀬の村が見えてきた。
村を過ぎればあと少しだ。20分もあれば宿につくだろう。既に寒さで体がガタガタと小刻みに震え始めている。体力と気力が残っているうちに辿り着かねば…。
スミナガシをギリギリで採れた事だけが、辛うじて男の強い支えになっていた。

3時ちょうどに生還した。
靴の中までズブズブ水浸しの全身濡れ鼠で、そのまま風呂に直行。

熱いシャワーを浴び続ける。冷えきって暫くは手の感覚がなかった。

だが、キチガイは天候がやや回復したので、5時前に短パンでらんかん山まで行った。
♀を期待したが、世の中そんなに甘くはない。ボロ♂が一つだけ採れただけ。勿論、リリース。

今日も脇田丸へ。
いつものように、あばす(ハリセンボン)の唐揚げからオーダーした。これで4日連続だ。

海ゴーヤ(390円)なる変な名前のものがあったので、頼んでみる。

見た目はゴーヤというよりも杉の葉。
味は海ブドウに近いが、食感がシャキシャキしている。
食べ方は、海ブドウと同じくドレッシングで食べるのが定番のようだ。しかし、一口食って、店の人にマヨネーズを少し貰うことにした。そこに醤油をかけて混ぜ混ぜしたものをつけて食う。
うん、これやd=(^o^)=b❗
これが海ブドウを食うときの一番好きな食い方なのだから、正解に決まっているのら。

お次はコブシメ(イカ)の刺身(390円)。
肉厚で甘みが強い。塩とスダチを所望して試してみたら、更に絶品❗❗
これで390円って、信じられんよなあ。
あっ、写メ撮るの忘れた。あまりにも美味そうだったので、完全にそっちに気持ちがいってた。

魚(キハダマグロ)ホルモンの煮物(390円)。

珍味。
七味唐辛子をかけて御賞味をとの事。

胃袋は完全に肉のモツ。この食感は、黙って出されたら何の疑いもなく肉だと思って食ってるだろう。
肝は少し苦味があって、これが中々に良いのだ。黒糖焼酎とバッチシ合うんだよね。

今日も痛飲。
本日のお代は、1960円でした。奇跡の居酒屋だな。

外に出たら、再び雨が強くなっていた。

                つづく

P・S
因みに誤解されない為に言っておきますが、ワタクシ、残念ながら一度もSMクラブには行ったことがありません。
ツボと云う人は、前の店(ショット🍸バー)のお客さんでした。デブだが、痩せたらさもありなんと云う美人だろうという顔立ちで、頭も勘もいい女性でした。デブ專のことはよくワカンナイけど、その筋には極上の女だったんじゃないのかなあ…。
考えてみれば、前の店のお客さんはバラエティーに富んでいて、面白い人が多かったんだなと改めて思いますね。
今の店もそうなればなあと思って居ります。

ええと、アーカイブスならではの補足です。
自分は当時男性の約8割がマゾヒストで2割がサディストだという持論を持っていたが、ツボによると男性の約7割はマゾで2割がサド。1割がスイッチャーだということだ。仕事でやってたんだから、この彼女なりのリサーチの結果は、ほぼ間違いないのだろう。だって来るお客は、偽る必要のない真性のMとかSなんだから。
彼女には訊かなかったけど、多分女性はこのスイッチャーの割合が男性よりも断然多いんじゃないのかなあ。

『西へ西へ、南へ南へ』11 ブルーの肖像

ー蝶に魅せられた旅人アーカイブスー
2012-08-15 19:33:53

      ー捕虫網の円光ー
   『西へ西へ、南へ南へ』第11話

  (第八番札所その2・ブルーの肖像)

ブルーの残像が脳裡に残っている。
自分の不甲斐なさにベソを掻きそうだ。
辛い…。大失恋をした時のような気分だ。
心をどう持ってゆけばいいのかさえわからない。
敗色濃厚。溜め息が何度も洩れる。

正午になった。
空を見ると、帰るべきだと思った。

だが、男は見た蝶を採れないと云うのが許せない。
見ても物理的に採れないノーチャンスの場合は別として、可能性がある場合は何があってもターゲットは落とす。それが男の矜持だ。
今まで、その日のうちにリベンジできなかったのは、キリシマミドリシジミくらいだろう。
現在、ベニモンカラスシジミも3連敗中だが、一度も見たこともないから採れるわけがない。だから、そう悔しくもない。
だが今は、既に何度もチャンスを逃している。
このままおめおめと帰るわけにはいかない。それは、敗北を認めると云うことだ。心が折れた儘で大阪に帰るのは御免だ。

1時40分までリミットを延ばした。
これがアカボシがテリトリーを張る時間に間に合うギリギリの時間だ。修行僧を続けよう。

マジで両手を合わせて、神と仏に祈った。
声に出して、『神様、仏様、お願いですから、もう一度わたくしにチャンスをお与え下さい。』と手を組んで頼んだ。他人から見たら漫画のような光景だが、本人はいたって真剣だ。

1時13分。
緑の間から待望の黒い蔭が現れた。
周囲を弧を描くように滑空している。
だが、様子が今までの奴とは少し違う。飛行時間が長いし、低い。男のすぐ傍らをスーッと通過して行った。違う個体かもしれない。
それが二度繰り返されたから、よっぽど空中で勝負をつけてやろうかとも思った。だが、長竿では素早く振る自信が無かった。
らしくない。きっと慎重になり過ぎているのだ。心が縮こまっている証拠だ。

なかなか止まらない。
止まってくれ、お願いだから止まってくれ。祈りにも似た気持ちで黒い影を目で追う。

止まった❗
あ~(´Д`)
だが、あの幹の樹液ではなく、頭上5mくらいの枝の間に止まった。

(・。・;ほよ❓、何してるだすか❓
見たこともない行動に戸惑う。
そのうち枝を歩き回り始めた。そして、暫くして止まった。
どうやらそこからも樹液が出ているようだ。
でも、あの位置では枝が邪魔になって、かなり難易度が高い。
真下にしゃがみこみ、どうしたもんかなと思案する。
このまま状況が変わるのを待つか、駄目元で勝負をかけにゆくかのどちらかだ。

悩んだ…。
頭の中が破裂しそうだ。
だが、愚図愚図悩んでいる場合ではない。台風が近づいている。天候が急変するのは時間の問題だ。
意を決して勝負にいくことにした。
このまま何もしないうちにプイッと突然消えられたら、激しい後悔で夜も眠れないだろう。
見逃し三振って、ヘタレで最低だ。駄目元でチャレンジして失敗した方がまだ魂は救われる。

何かまるで恋愛を語ってる人みたいである。
中年男の恋の独白みたいで、普通なら笑うところだがそんな余裕はない。

そろりそろりと長竿B・Jを上に伸ばす。
ヤケクソで枝ごと行ったれと思った。

( ̄□||||うわちゃ❗
1mくらい網を近づけたところで、ふわりと逃げた。
(*ToT)止まれ、止まれ、止まってくれ━━。
悲痛に願う。焦燥と緊張で気が変になりそうだ。

(;A´▽`A ふうーい。
よし、何とか3mくらい向こうの枝先に止まってくれた。手前の枝が邪魔だが、さっきよりかはマシだ。これなら採れないこともない。

(;゜∇゜)あちゃー。
またネットを慎重に近づけるが、同じようにふわりと翔んだ。マジですか?

ほっ( ̄▽ ̄)=3
さらに2m程先へと移動して止まった。
今度は邪魔するものはない。存分に網が振れる。
高さは5~6m。テリトリーを張る時と同じように枝先に止まってくれた。葉先から2本の触角が突き出ているのがわかる。
これを逃したら、その場で切腹したくなるだろう。蝶採りなんて即刻やめてやる(=`ェ´=)❗

最初はテリを張っている時のように正面から被せようかと思ったが、状況が違うと思い直した。ここのスミナガシはそんなアホではない。敏感だ。横から払おう。

高さを慎重に合わせる。
息を止め、万感の想いを込めて渾身のスイングを繰り出す。
トゥリャ━━━(*`Д´)ノ❗❗❗
💥横殴りになぎ倒し、マトリックス的にそのまま背後に向かってネットを流す。
手を離し、そのまま体を捻り反転する。
スローモーションのように網が真っ直ぐに落ちてゆく。
手応えはあった。
下は平らなアスファルト。横から逃げられる心配はない。

男は、ゆっくりと近づいていった。

終わった…。
渋いブルーが中で暴れている。
男の体が一挙に弛緩した。と同時にその場にヘタり込みそうになる。

やっぱり、本州のものより明るくて蒼い。
右端の上あたりが擦れているが、この際関係ない。
粋(いき)で美しい。

敗北をすんでのところで免れた安堵と勝利の陶酔感がジワジワと背中を這い登ってきた。
タイミングを図ったかのように強めの雨が降り出した。
男は慌てて役に立たなかったトラップを回収して、バイクのエンジンをかけた。

見上げると、風雲急を告げるように黒い雲が物凄いスピードでこちらに近付いて来ていた。

                   つづく

【追伸】
ラッキーな事に、後日この個体は♀と判明した。
この蝶、♂はそれなりに採れるのだが、♀は滅多に採れないのだ。

【再録にあたっての追伸の追伸】
あれから♀は、石垣島で1頭、沖縄本島で1頭、台湾で数頭採っただけだ。
本州では、その後現在(2017年4月)に至るまでいまだに一度も採った事が無い。あれだけ♂がいる生駒山系でさえも、♀はほとんど見たことがないのだ。スミナガシの♀って、謎だよなあ…。
今年は枚岡でトラップでもかけてやろうかしら。

『西へ西へ南へ南へ』10 蒼の洗礼

蝶に魅せられた旅人アーカイブス
2012-08-14 20:18:17

     ー捕虫網の円光ー
    『西へ西へ、南へ南へ』

     第八番札所 蒼の洗礼
 

2011年9月15日

朝6時前に起き、支度を始める。
天気予報では晴れのち雨。
降水確率は午前と午後、それぞれ40%と90%だ。
台風が近づいている。時間との競争だ。

24時間スーパーに行って、濡れるのは必至とみてポイントマップをcopyした。原本をcopyさせて貰ったのをそのまま持ってきたから損傷を避けたかったのだ。

昨日、酔っぱらって買ってしまった(半額だった)奄美名物・鶏飯(けいはん)をレンジで温める。これが昼兼用の朝食だ。

この先どうなるか分からない。生死を分かつトラブルに会わないとも限らない。取り敢えず何か腹に入れておいた方が良いだろう。
それにしても、久し振りに食うがやっぱり鶏飯は旨い❗

一応、カッパも探してみたがスーパーには無かった。
まあいい。どうせ今日は最初から濡れる覚悟なのだ。たとえ有ったとして、台風ならば役に立つかどうかも疑問だ。

目指すは、昨日スミナガシ(註1)がいた樹だ。
実物を見てしまうと、プライオリティーが変わった。
アマミカラスの♀もアカボシの♀もかなり魅力的だが、元々男は大の墨流し好きなのだ。

【Dichorragia nesimachus スミナガシ】(2014.5.11 大阪府東大阪市額田尾根)

すっかり忘れていたが、蝶採りを始めてまだ二年目の春だった。
大和葛城山で会った居酒屋を経営する酔っ払い爺々の家に招待された事がある。
その時見せて貰った標本箱に収まっていた奄美大島産の蒼いスミナガシが、男の胸に燦然と甦ってきた。

ジジイは、自慢気に『奄美大島のスミナガシは特別に蒼くて、珍品だよ。簡単には採集できない!』と言ってたなあ。

多分、朝早くから樹液に来ている筈だと読んだ。
進んで地獄へ向かうのだ。期待を込めてそう思わないとやってらんない。
上手く片が付けば、早めに山を降りて、そのあとアカボシ、アマカラの♀を狙えば良い。

用意にとまどい、やっと出れたのは7時。
先ずはガソリンを入れに行く。
悪天候が予想される中、ほとんど誰も通らない林道でガス欠でスタックでもしたら危険過ぎる。

天気は意に反して既に雨雲の勢力が領空を制圧しようとしている。
飛ばして一時間で着けば御の字だ。
帰りの事を考えれば顔が引きつるが、自分で決めたことだ、怯むわけにはいかない。

1時間10分でポイントに着いた。
横目で樹を確認した。

いる❗
読み通りだ。
いきなりのクライマックスだ。
アドレナリンが全身に駆け巡る。
サッサと片付けてやる❗

バイクを停め、早る気持ちを抑えてネットを組み立てる。
息を詰め、忍び足で近づく。

樹の下まで来た。
さあ、とっとと終わらせるぞと思ったが、白網の中に小枝が入っているのがつい気になった。蝶が枝にぶつかって羽が損傷したら元も子もない。

えっ(;゜∀゜)❓
だが、枝を取り除いて見上げたら、スミナガシの姿はもうそこにはなかった。忽然と消えていたのだ。目を外して数秒と経ってない。

あうぅ…( ̄0 ̄;
殺気が出てたのか…。
昨日に引き続き網さえ振ってない。

小雨が降り始めた…。
気を取り直して、樹の周辺に果物トラップを仕掛ける。戻ってきてくれることを祈ろう。

その後、降ったり止んだり、時々晴れ間が覗いたりの繰り返しが続く。
だが、彼女は姿を見せない。焦燥と退屈で身が引き裂かれそうだ。

9時半、ようやく翔んできた。
かなり警戒している様子だ。
周囲を気にしながらも樹液に止まった。

一回、静かに深呼吸した。
暇だったから、頭の中で作戦はシュミレーション済みだ。網を下から近づけて、翔んだ瞬間に反射神経で空中でシバいてやろうと思った。

そっと網を寄せる。
白網はもしかしたら警戒されるのではと思い、わざわざ赤に付け替え済みだ。

だが、際まで持っていったのに逃げない。
( ̄▽ ̄;)焦る。
仕方なく触れてみた。

ビュン❗
その瞬間に⚡電光石火、軌道も予想と違う無茶苦茶で翔び去った。

(-o-;)……痛恨だ。
自分を慰める術(すべ)さえない。

雲の流れる速度がドンドン速くなってきている。
リミットは、12時と決めた。
それを過ぎると、たぶん嵐に巻き込まれる。

この場所は他の蝶を採りながら待つというわけにはいかないポイントである。
アマミカラスアゲハは沢山翔んでいるが、高いし速い。採集難度が高いし、こちゃこちゃ網を振り回して、スミナガシが寄り付かなくなるのもこわい。
仕方なく、時間潰しに樹を横目で見ながら同時進行的に文章を走り書きで思いつくままにザアーっと書いてゆく。あとで推敲すればよい。

11時40分。
永かった…。
一日千秋の想いで待った甲斐があった。
2時間待ちだ。普通の生活でなら、とっくにキレてる。

また深呼吸する。
まあまあ天才なんだから、もうミステイクは許されないだろう。

今度は横からバチコーンと強く幹を叩くように被せて、驚いた反動でネットの底に入れてやろうと決めていた。
ジリジリと近づいてゆく。網を振るまでのこの瞬間は、他では味わえない堪んない緊張感だ。
今度こそ大丈夫だと自分に言い聞かせる。

照準を合わせて、思い切りよく💥バチコーンいったった❗

黒い影が一瞬網に入ったようだが、確認できない。
素早く道路に網を叩き下ろした。

慌てて近寄り中身を確認する。
あれ!? あれ!? あれ!?
居ない( ̄0 ̄;❗
嘘やん!?( ̄▽ ̄;)……。

網の口径より樹の幹の方が細いので、すんでのところで脇から逃げたのだ。

小次郎、破れたり。
原生林の中に男の哄笑が谺した。
精神の限界を超えると、笑い出すってホントだ。

                  つづく

追伸
(註1)スミナガシ
タテハチョウ科に属し、その分布は東南アジアから東アジアまでと広く、多くの亜種に分かれる。
日本では、北は東北地方から南は八重山諸島(石垣島・西表島)にまで産し、屋久島以北の本土産亜種(n.nesiotes)、沖縄本島・奄美大島亜種(n.okinawensis)、八重山亜種(n.ishigakianus)の3亜種に分けられいるが、何れの地方でも一般的に個体数は少ないとされる。
飛翔は敏速。樹液等に集まる。♂は午後2時から夕暮れにかけて山頂などで占有活動(縄張り争い)を行う。
幼虫の食樹はアワブキ、イヌビワなどのアワブキ科。
和名スミナガシの由来は、むかし、宮中で行われていた遊びの一つ”墨流し”(流水に墨を流して、その変化を見て楽しむ)からだろう。

墨流しってネーミングした人はセンスがあると思う。
だいたい学者がつける名前ってもんは、まんまで何の捻りも無くつまんないモノが多いんだよね。
アタマ、硬いんだよね。何でも遊び心が必要です。

『西へ西へ、南へ南へ』第9話

蝶に魅せられた旅人アーカイブス
2012-08-11 20:12:01
  

      ー捕虫網の円光ー
     『西へ西へ、南へ南へ』

(第七番札所・地獄の沙汰も崖次第、およよ)

2011年 9月14日

天気予報では曇り時々雨だったが、昨日と同じような天気だ。
台風は、どうなったんだろう?
大方、熱帯低気圧にでもなったんだろう。人生前向きなのだ。

本日の狙いもアカボシ、アマミカラスの♀狙い。
あと、書き忘れていたが、日本一美しいスミナガシ(墨流し)も狙いにいくつもり。奄美のが一番蒼っぽい群青色をしていると言われているのだ。

南西に針路をとる。
先ずは知名瀬だ。昨日、尊敬する蝶の先逹である森さんに電話をしたら、前は村内に♀がそこそこ翔んでたよとアドバイスされた。
谷を詰めれば、スミナガシもいるようだし、イワカワシジミもクチナシを丹念に探せばいるという。

午前10時、知名瀬着。
着いてすぐ、らしきものが翔んでいたから楽勝だと思ったら、クソ普通種リュウアサ(註1)だった。紛らわしい…(-“”-;)
アカボシの♀は、毒のあるリュウアサに擬態しており、ふわふわした翔び方までそっくりに似せているらしい。

日陰の無い村内をぐるぐる回っていたら、すぐにバテバテになった。
一切、姿なし。12時まで三角ケースの中身は空っぽ。
それまで無視していたが、思い直してカバマダラを5つほど摘まんで奥へと向かう。

【カバマダラ】

だが、大したものはいない。
仕方なく尾根近くまで詰めた。

アマミカラスが乱舞している。
あふれる太陽光を反射して、青い翅がハッとするくらいに美しい。
しかし、採っても採っても♂だらけで、そのうちウンザリしてきた。

予定では尾根まで行き、中央林道を南下して三太郎峠でスミナガシを奪取して、上手くいけば東側の西仲間で再びアカボシにチャレンジと云う算段だった。

だが、奄美中央林道は想像とは違い、完全なるノン・アスファルト。所謂(いわゆる)、ただの山道だった。
しかも道は石だらけの悪路である。
そのうち良くなるだろうと思っていたら、どんどん悪くなり、終いにはブッシュだらけの細い登山道になった。
ハブのお好きそうな環境で超ビビる(|| ゜Д゜)
こんな所で咬まれたら、麓に下りる迄に毒が回り、哀れ絶命ご臨終ちゃんになるかもしれない。
大体コブラでもガラガラヘビでも、まず威嚇があるらしいのだが、コヤツはいきなり飛び掛かってくるらしい。だから、被害も多いと云うことだ。

取り敢えずこのまま三太郎峠に行こうとしたら、15㎞進んだ地点で「崖崩れにより通行止め」と云う看板が出てきた。
悪路で時間を大幅にロスしているのに最悪だ。仕方なく西側の海岸に降りるルートを選択する。
道はアスファルトになった。ラッキーと思いきや、濡れた落葉が降り積もっており、滑りやすくてまた一苦労。多分、通る車もほとんど無いのだろう。

5㎞ほど行ったところで、(◎-◎;)およよー。
また崖崩れ通行止めの看板に突き当たった。これで津名久にも降りられなくなった。
困ったことには、地図を見ると更に南のフォレストパークまで行かなければ海岸の主要道路には降りられないようなのだ。
去年の台風の大雨被害の爪痕が、今もって色濃く残っているんだね。特に南部が酷いようだ。そういえば、幹線道路さえも至るところ片側通行だった。当然、山のなかは修復も後回しなのだろう。これで計画は完全に崩壊した。

走っている途中、目の端に蒼黒いものが入った。
うわっとととっとっとーΣ( ̄ロ ̄lll)、急制動する。

木の幹に、逆さに止まっている蝶がいた。
スミナガシだ❗
どうやら樹液に来ているようだ。慌ててネットを組み立てる。
羽をしきりと開閉している。綺麗だ。
確かに本州や八重山のものよりかなり蒼い。

下からいくか、横からバチコーンとカマすかギリギリまで躊躇した。それがいけなかった。慎重になり過ぎて、ネットを動かす手前で逃げられた。もう数秒早く判断していたら充分採れた筈なのに…。
悪路プラス連続通行止めで心が折れ掛かっていたのが、これで完全に折れた。

もう一度やって来ることを願って待つことも考えた。
しかし、一番のターゲットはアカボシの♀だ。今、山を降りなければ、麓のポイントには時間的に間に合わない。断腸の思いだが、明日またじっくり来ればいいと思った。

だが、一度狂った歯車は戻らない。
どころか、せっかく見つけた新鮮なアマミカラスの♀を焦って力一杯振ってしまい翅を大破させてしまう。
バイクを乗り捨てて、あんなにダッシュしたのに…。
もう1頭採ったが、それも上半分がバッサリ無かった。結局、両方とも逃がしてやった。♀は腹ん中に卵を持っているからだ。殺してしまえば、1頭だけではなく、何百もの生命を奪うことになる。無用な殺生は慎むべきだろう。

メスアカムラサキのイージーチャンスも振り逃がし、ようやくたどり着いたアカボシポイントは、♂しかいないような環境でガックリ。
10分足らずで2頭採り、諦めて根瀬部・知名瀬方面に戻る。だが、着いた頃には日没ゲームセット。
お守りの蝶ライターを忘れたのが、まずかったのかな?…。

夜7時に宿に帰った。
そこで台風の詳しい情報を初めて聞いた。
こちらにノロノロで向かっているという。
うねりが強く、取り敢えず明日の鹿児島行きの船の欠航が決まったらしい。
『明後日の便も多分ダメなんじゃないかな。』と宿の親父に言われた。
マジかよ…( ̄▽ ̄;)

男はスーパー晴れ男だが、実を言うと台風男でもある。
ダイビング・インストラクターだったサイパン時代もしょっちゅう飛行機が欠航になった。
ダイビング・ツアーの前のりで三宅島に行った時も、船が欠航してお客さんが来れずにツアー中止。自身も東京に2、3日帰れなかった。
そういえば、初めて行った石垣島でも帰れなかった。
何れの場合もずっと晴れていたのに、帰る段になっての天候急変だった。
まだある。一昨年は、八重山ゆきの飛行機が飛ばず。
去年は石垣・与那国で直撃を喰らった。
まあ帰れなかったがゆえに、楽しい事も一杯あったし、天気が悪いわりには蝶は採れて、目的はほぼ達成してはいるんだけどね(^^ゞ

今日も脇田丸。

ボトルを入れてしまったせいもあるが、気に入ったし、まだまだ食べていない謎のメニューもある。

今日もアバス(ハリセンボンの唐揚げ)から入った。

(画像、使い回しっす。)

これで三連チャン。
それでも、やっぱり絶品ですな。

ハーシビ(トガリエビス)煮付け(690円)。

潜ってる時も、密かにコイツ旨いんじゃないかと思っていた。
白身で脂が乗っているが、上品だ。味は金目鯛やキンキに近い。

画像は無いが、あとのツマミは以下のものだった。

浅蜊と野菜のかき揚げ(390円)。
カラッと揚がっており、申し分なし。

ティラダ(地物の貝)の煮付け(390円)。
普通に旨い。先っちょに鉤爪があり、見た目は完全にヤドカリです。

油ソーメン(390円)。
所謂、ソーメンチャンプルーの1種。外れのない安心オーダー。

因みにまだ頼んでないが、刺身定食はたったの390円です。嘘やろ!?(^o^;)の値段である。

今日もまた痛飲。
明日は、早いんだけどな…。

                   つづく

追伸

【註1】リュウアサ
リュウキュウアサギマダラの略名。漢字で書くと「琉球浅葱斑」となるのかな。つまり南方系の蝶で、日本では主に南西諸島に分布している。

これは石垣島で、初めて採ったものの1つだ。
標本だけで見比べると、アカボシゴマダラゴマダラに間違うワケはないと思うのだが、飛んでいる時は大きさや飛び方がソックリなのだ。
ワシらでも慣れないと見紛うのだから、一般人には区別がつかないだろうし、天敵の鳥に対しても、それなりに効果はあって然りなのかと思われる。

一応、アカボシゴマダラの画像も添付しておきます。

『西へ西へ、南へ南へ』第8話

蝶に魅せられた旅人アーカイブス
2012-08-09 21:07:59

段々、ライヴ配信ではおっつかなくなってきた(当時の原文のまま)。

   ー捕虫網の円光ー
 『西へ西へ、南へ南へ』

(第六番札所・🐍スネーク・パニック)

2011年 9月13日

クーラー無しでは、矢張り夜を越えられなかった。
あまりの寝苦しさに起きた。
コイン投入。温度を激下げにしてやった。
これで切れても、しばらくはもつだろう。

午前7時にアラームが鳴った。
シコシコと文章を書く。
8時に半分やっつけで書き終わる。
用意をして、レンタルバイク屋に電話した。
9時にオープンらしいので、行く旨を伝えて、トラップ作りを開始する。
昨日、帰りにスーパーでバナナと焼酎は購入済みだ。

目星をつけていたサンドイッチ屋で、こだわりカツサンドと玉子たっぷりサンドを買い、レンタルバイク屋に行く。

9時15分。
危ないところだった。焦れて帰るオババを外ですんでのところで捕まえた。
あまりにサンドウイッチがうまそうなので、その場(喫茶室)で半分食ったのが、まずかったね。

24時間 1200円。安っすぅ❗
取り敢えず、2日分の料金を払った。

借りたメットが髑髏でカッコイイ。
オババに不良宣言をして出発した。
長竿B・Jを袈裟懸けして走っているので、気分は佐々木小次郎。サムライみたいでカッチョいい。

やっぱり、原付といえどもバイクは好きだ。運転していると、自然と笑みがこぼれてくる。

今日の狙いは、アカボシ、アマミカラスそれぞれの♀である。基本的にどんな蝶でも♀を採るのは難しい。偶然に頼らざるおえない場合も多い。

【アカボシゴマダラ】

【アマミカラスアゲハ】

北に進路を取る。
和光ダメ、仲勝ダメ、本茶峠ダメ、赤尾木もダメ。
調べておいた産地の何処にもターゲットの姿はない。
不安が走るが、一応♂はそれぞれ完品をGETしているので、焦燥感はさしてない。偵察と思えばよい。バイクを走らせているだけで、今は気分爽快なのだ。
とにかく、蒲生崎を目指そう。

半島に入ると、左手に海が見え始めた。
やっぱり奄美の海は群を抜いて美しい。
ブルーが層になっている。
快適なドライブになった。

手前の手花部で、アマミカラスが目に入った。
バイクを急遽停める。
有名産地どころでは、殆ど姿さえ見なかったのに案外いる。
先日他界された、「閻魔(えんま)」とも称された蝶採り名人・田中さん譲りの赤ネットは、ここ奄美でも絶大の効力だ。アゲハたちが、ザンザンに寄ってくる。
立て続けに3つ採る。空中で綺麗に仕とめるのは気持ちがいい。

2時には出ようと思っていた矢先、横を通過しようとした白い乗用車が急制動で止まった。

事態にチヨットだけ緊張した。
降りてきたのは小太りの中年男だった。
明らかに虫屋の匂いがした。
話しかけられる。
だが、滑舌が悪くて半部以上は何を言ってるのか聞き取れない。何とか聞き取れたお名前は、谷村さん。奄美在住の虫採りのプロらしい。
いきなり、アカボシの♀を千円でどうだと言われた。
基本的に金を出して蝶を買う趣味はないから断った(業界では、蝶を買うのは一般的に普通です)。
勘違いしたのか、笑うくらいに値段がどんどん下がってゆく。
(^。^;)だから、要らないって…。
悪い人ではないが、ちょいイタい人の匂いがした。
アカボシは、採ったのかと訊かれた。
yes。
幾つか?
5つ。
新鮮か?
yes。内、4新鮮。
買うか?
だから、要らないって( ̄ヘ ̄メ)❗❗

まあ、そう害は無かろうと、尋ねられたので電話番号を教えた。
そしたら、急に秘密の場所を教えてやるからついてこいと言い出した。
よくわからないが、ここから近いと言うし、ついてゆく事にする。場所を知っておいて損はなかろう。

あらら、着いたのは完全に民家横の私有地だ。
『バイクを隠せ、網を出すな!』と言われた。
大家が五月蝿(うるさい)らしい。
当たり前だ。君みたいな怪しい奴が勝手に敷地内に入ってきたら、俺だって即座に追い出す。いや、撃ち殺す❗

見ると、アカボシゴマダラの食樹であるリュウキュウエノキ(琉球榎)の立派な木が3本並んでいる。
蛹の脱皮殻も見せられた。すぐ横はミカン畑で、樹液も出ている。たしかに生息条件的には揃ってはいる。

今日は採り尽くしたから、もういないかもと下卑た笑いをして、『このポイントは黙っててね。』と言い残し、彼は程なく去って行った。
こんな面倒な場所教えるか、バーロー(*`Д´)ノ!!

一応、5分いた。
天敵の犬にも吠えられだしたし、長居は無用だろう。不法侵入で通報されたらエライ事だ。
当初の予定通り岬を目指すことにした。

蒲生崎に向かう林道には、いっぱいアマミカラスが飛んでいた。
何だよ、苦労してわざわざ本茶峠まで越えたのに…。ちえっ、拍子抜けだ。
おまけにここのはみんなへなへな、ふわふわ翔びである。楽勝だ。綺麗なものだけを選んで採る。

ゲロッ(;゜∇゜)❗
看板を見つけた。
リアル過ぎる看板だ。
『この辺りは毒蛇(ハブ)が多い。』
って…、モロやん(^_^;)

午後3時にポイントに着いた。
早くもアカボシ2頭がテリトリーを争って追いかけっこをしている。
昨日の場所よりも明らかに敏感で翔ぶのも早いが、止まってくれればそのうち何とかなるだろう。
谷村さんは、蒲生崎なんて今はおらんよと言っていたが、数は結構多い。あんた、ホントにプロかよ❓

だが、食樹が見つからない。
取り敢えず、♀採りの為にパンストに詰めたトラップを良さげな樹にかけて回る。

アカボシゴマダラが快晴の空をバックに滑空する姿は、本当に素晴らしい。
赤が思った以上に鮮烈で、南国の澄んだ青空にスゴくあう。

ジャンジャン、シバいてやった。
全部で16頭。内、♀1頭。
アマミカラス15頭。内♀1頭。

♀は、悲しいことに両方とも新鮮なのに、片方の後翅がザックリと欠けている。多分、鳥にやられたんだろう。

5時半撤退。
帰り道の林道だった。

アギャッ((((;゜Д゜)))❗❗❗
思わず声に出し、悲鳴をあげた。
キキ━━ッ💥❗
急ブレーキをかけ、天然記念物・特産アマミノクロウサギみたいにバイクごと飛び逃げた。
うわっちゃー!Σ(×_×;)❗
ホンマもんのハブデービル(註1)やん❗❗
Σ( ̄ロ ̄lll)凍りついたが、恐る恐る振り向くと既に轢死している。
それにしても、想像以上にデカイ。
ブルッときた。武者震い。
ヤバすぎ。充分、大蛇でオロチ様だ。
しっかり、あの看板のすぐ近くだった。
( ̄▽ ̄;)……あう。
ヘ(・・ヘ)。。。。。。退散。

長く伸びた影を従えて走る。
今度は右手に海が見える。

ほぼフルスロットルで飛ばす。
何人(なんぴと)たりとも抜かせない❗
寧ろ、歩道を使って車も何もかんも牛蒡抜きじゃい!!
乗れてるワシをナメとったらあかんど、ワレ━━。
行きの約半分の55分で、宿まで帰ってきた。

部屋で携帯を見たら、谷村さんから着信が3回もあった。
留守電を聞いてみたら、グズグズ、ボソボソ、グダグタ…。何を言ってるのか全く理解不能。おまけに異常なまでに長いロングメッセージ。
やっぱ、この人イタい。

今日も脇田丸へ。
座って直ぐに谷村さんから電話があった。
明日は、どうするか?と訊かれたので、今日教えて貰ったとこに行くと適当に答えたら、ぼく午前中に行くから午後に行ってと言われた。
アホか、あんたの後だと意味無いじゃん❗ 誰が行くかっ、ボケ(# ̄З ̄)‼‼
長くなりそうだったので、半ば強引に電話を切った。下手に付き合ってるとエンドレス必至だ。

今日もアバス(ハリセンボンの唐揚げ)を頼む。
やっぱり絶品❗❗
他にはアカフエダイの刺身(あっさりしていて、上品)。

島の野生の猪(これは❌、固くて血の味がする。処理の仕方が悪いんだろう。)。等々…。あと記憶なし。

また痛飲。
お代は、1270円。
(;゜0゜)何じゃそりゃ⁉の金額。

今日も月が冴えざえとして、美しい。

                 つづく

追伸
 久々の、捕虫網の円光『西へ西へ、南へ南へ』。
今回はあまり文章に手を入れずに済んだ。だいたいにおいてテンポのいい文章はなおさなくて済む。というか、下手に入れると悪くなるから手を入れにくいのだ。

【註1】ハブデービルやん!
ハブデービルとは、沖縄限定で放映されていたローカルヒーロー番組『琉神マブヤー』に出てくる敵方の首領のこと。結構ボケをカマすし、お茶目なところがあって愛すべき怪人。
何でハブデービルなんかが出てきたのかというと、この年の夏には沖縄本島に蝶採りに行っていた。その時にマブヤーを初めて知って、完全にハマったのである。車を運転中にラジオをかけてたんだけど、よくこのマブヤーの主題歌が流れていて、完璧に覚えてしまったのだ。
だから影響を受けて、個人向けに配信していたその時の旅行記(ブログにはアップされてない幻の沖縄・真夏編『ニライカナイの女王』)には、ふんだんにマブヤーネタが散りばめられていた。って云うか、歌の歌詞は出てくるし、沖縄の方言てんこ盛りの捕虫網の円光だったよなあ…。かなりハチャメチャで面白かった記憶があるから、探して読もうっと。
とにかくそんなかんなで、この時もまだ自分の中では琉神マブヤーブームが続いていたのだろう。

🎵琉神、琉神マブヤー
🎵正義のヒーロー、マブヤー AH~
🎵チャッチャーチャララッチャーチャーチャー
🎵チャッチャーチャララッチャーチャーチャー
🎵ウチナーがあぶない デージ超やばい
🎵悪のマジムンやあ~ってくるぅ~
(でーじなとーん❗)
🎵ティーダの力で平和を守るんだ
🎵アチココーのハートで勝利をつかめー

あは(´▽`;)ゞ、全然まだ歌えるやん❗

『西へ西へ、南へ南へ』第7話

ー蝶に魅せられた旅人アーカイブス―
2012-08-09 00:18:25

ー捕虫網の円光ー
『西へ西へ、南へ南へ』

第五番札所その3 脇田丸

 

シャワーを浴びて、晩飯を食いに行く。
雨は既に上がっている。夜空を見上げると、雲間からもう星が瞬き始めていた。
南国のスコールというのはザッと降って、そのあとは急速に天気が回復するということが多い。その逆もまた然りで、晴れていたと思ったら、あっという間に空が暗くなってザアーッときたりもする。
だから天候を読むのは難しい。だが、嫌いじゃない。それもまた南国らしさと思えば楽しいものだ。

店が有りそうな方向に向かって歩く。
5分足らずで居酒屋を見つけた。

『海鮮居酒屋・脇田丸』。
名前の最後に丸とついてあるから、漁船を持ってる店か、もしくは昔、漁師をやっていたオヤジの店だろうか❓
勘で、入ることにする。こういう時は直感に身を任す事にしている。大概はそれで上手くいく。今までさんざんぱら飛び込みで店に入ってきているのだ。その経験値が有れば、そう勘は大きく外れない。

入ってみると、カウンターの手前に多種多様な魚たちが並べられていた。

当たりだ。
間違いなく旨いもんを食わせる店だろう。
アカボシゴマダラも採れたし、スコールを上手く掻い潜って宿に帰ってもこれたし、今日のオイラは冴えている。

当然の如くカウンターに座る。
一人旅ならば尚更のことだ。板前の人たちに色々と訊けるし、さみしさも少しは紛れる。

飲み物の注文を取りにきた店員に訊くと、やはり魚屋経営の居酒屋らしい。ちゃんと脇田丸という船も持っているようだ。

カウンターの隣に並べられた魚を物色する。
漁師経営ゆえ、地魚のオンパレードだ。

南国らしい派手な色の魚たちも並ぶ。
元ダイビングインストラクターだっただけに、南国の魚にも詳しい筈だが、ある程度予想はつくものの特定は出来ない。多分、死んだら体色が変わるものが多いからだろう。

メニューを開く。
(@_@;)何じゃこりゃ⁉
メニューにある名詞が理解不能な言葉だらけだじょー。さっぱりワカラン。

基本的にチャレンジャーな性格なので、あえて未知なるものを攻めてゆくことにする。
現地でしか食えない食材との出会いは、いつも新鮮な驚きを与えてくれる。好奇心を刺激されない旅なんてつまらない。

先ずは、刺身の盛り合わせ(690円)から入る。

ラインナップは地鰹、シビ(キハダマグロ若魚)、シマアジ、地蛸、ソデイカ、地マグロ。
美味い❗❗
やる(^_-)≡★ねっ。

お次は揚げ物でいこう。
揚げ物の項を目でなぞってゆく。
変な単語が目に入った。
(・。・;アバス❓
何じゃそりゃ⁉ 語源さえも想像がつかない。
考えても仕方がないので、すかさず板さんに尋ねる。

板さん曰く、アバスとは奄美大島ではフグの事を指すようだ。でも、トラフグは南の海には生息しない筈だ。となると、別の種類の食用フグなのだろう。でも南の海で食えるフグなんてあるのかね❓
気になるので重ねて尋ねたら、ハリセンボンだと云う答えが返ってきた。
ハリセンボン❓
それって、あのトゲトゲで、怒らせるとパンパンに膨らむ奴だよね❓ダイビングインストラクター時代に、よくオモチャにしてた奴だ。
そんなもんを食うなんて聞いた事がないし、それに食べるだけの量の身があるとも思えない。
ホントかよ(-。-;)❓

まあいい。百聞は一見に如かずだ。そのアバスとやらの唐揚げを頼む事にする。

d=(^o^)=bウルトラ絶品❗
歯を心地好く押し返してくる弾力、淡泊ではあるが、滋味あふれる旨みの奥深さ。下手な河豚よりも数10倍旨いぜ。
しかも、たったの390円だ。

三品目は、シマアジのカマの塩焼き(390円)。
この量とこの旨さで、この値段はオカシイだろうが⁉
(=`ェ´=)何か嬉しくて怒っちゃうぞっ。

四品目は、島雲丹(註1)。
こんな南の海で、食えるウニなんていたっけ❓

さばく前の本体を見せてもらった。トゲが白くて短い。何だか饅頭みたいな形をしている。
板さんが、夏場からこの時期にしか出回らない高級ウニだとつけ加える。

記憶が繋がる。
あーっ、これ見たことあるわ。そういえば、沖縄でも奄美でも水中に転がっとったわ。アレって食えるんだ。惜しいことしたなあ…。

やがて、殻付きウニが運ばれてきた。
普段目にするウニよりも色がかなり黄色い。
ちょい引くが、意を決してスプーンで掬い、人生初の島ウニを口に運ぶ。

ハッ(゜〇゜;)❗、美味いぞなもし。
鹿児島で食った阿久津の雲丹には劣るが、このクオリティーで690円は尋常な値段ではない。

思わず、黒糖焼酎・高倉30℃をボトルで頼む。

魚が旨いのは屋久島までだと思っていたが、認識を改めねばなるまい。

板前の兄さんに色々教えて貰いながらの談笑。
意識がどんどん溶けてゆく。

午前0時前、ヘベレケで撤退。
ボトルキープをして、支払いが5千円ちょい。
恐るべし、脇田丸❗彗星の如く現れた店だな。
頼む、大阪に支店を出してくれ!!
出してくれたら、毎日通う。

店の外に出たら、空はいつしか満点の星空になっていた。明日も晴れそうだ。
南国の生暖かい風が、そよと頬を撫でて通り過ぎていった。

 

追伸
結局、二回に分けた事により、オリジナルの文章に大幅に手を入れる事になった。組み替えもしてるし、加筆もかなりした。記事を移すのって思った以上に大変だ。

(註1)島雲丹
島ウニは地方名で、本当の名前はシラヒゲウニという。沖縄では7、8月の夏場に出回り、高値で取引されるらしい。
因みに本文に画像が無いのは、舞い上がって写メを撮り忘れたからです。
一応、ネットで検索した画像を添付しておきます。


(出展『ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑』)

『西へ西へ、南へ南へ』第6話

蝶に魅せられた旅人アーカイブス
2012-08-09 00:18

 
    ー捕虫網の円光ー
 『西へ西へ、南へ南へ』

第五番札所その2・流星レッドスター

 

市の職員二人が下から登ってきた。
リュウキュウマツ(琉球松)の調査だと言う。
確かに赤茶色の松が多い。こんな所にも松枯れの原因、マツノザイセンチュウがいるのか…。
詳しく訊いてみると、媒介を助けるマツノマダラカミキリと共に台湾から入って来たと説明してくれた。

カミキリムシの飛翔力ではこんなところまで翔んでこれるわけもない。多分、貨物の松材か何かに紛れて入って来たのだろう。
離島は外来生物が入って来ると、在来種が駆逐され、簡単に絶滅しやすい。そして、その原因のほとんどは人間様だ。

空を見上げる。
雲行きも怪しくなってきた。多分絶対、南国の雨の洗礼がやって来る。
もう一度だけ詔魂碑まで上がって駄目なら、とっと宿に帰ろうと決めた。体力もそろそろ限界に近い。

登ってすぐ、頭上に気配を感じた。
松の上空をアカボシが流れるように滑空している。
やっとテリトリーを張り始めた❗
鮮やかな赤がよく目立つ。

あたふたと網を組み立てる。
(~O~;)うわっ!、だが無情にもポツポツと大粒の雨が落ちてきた。(゜〇゜;)え━━━っ、 嘘やん!
畜生、スコールがやって来たようだ。慌てて樹下に逃げる。

OH~、神よ、毎度毎度のことながら、この期に及んでまたしても我に試練をお与えなさるおつもりか…。
一挙に状況は逼迫してきた。雨が止むのを心から祈るしかない。止まないのなら、惨敗決定だ。

思いが通じたのか、5分余りで再び晴れ間が顔を覗かせ始め、やがて光が射した。
と同時にアカボシも飛び始めた!!
南国の不安定な天気だ。再び雨が来る前に決着をつけねばならない。

採り方は、近縁の国蝶オオムラサキと変わらない筈である。ならば楽勝だ。網を正面からそっと被せればいい。落ち着いていこう。

しかし、オオムラサキと違って、そんなにバカ蝶じゃなかった。
枝先に止まるが、結構敏感で網を近付けようとすると直ぐに翔んでしまう。三、四度、同じ事が繰り返される。

(-“”-;)クッソ~、残された時間はそうないぞ。いつまた陽が陰り、雨がやって来るとも限らない。
えーい、もう今までみたいにゆっくりと慎重に網を近付ける方式は諦めた。
心頭滅却、ビシッといったるわい(`へ´*)ノ

目測およそ頭上約6m。止まって、一拍おくかおかないかのうちに反応して、間髪措かずに網先を走らせる。
(=`ェ´=)ウリャ!!、腕の筋肉がしなる。
バサリと正面斜めから網を振り被せ、そのまま強引に空間へと逃がす。そして、ホームランを打った時のフォロースルーが如く手から竿を離す。
決まった…。手応え充分の感触がある。
網先を敢えて捻らなかったので、風を孕んでふくらんだ網が真っ直ぐ地面に向かってスローモーションのように落ちてゆく。

地面に落ちたことを確認して、ゆっくりと歩いてゆく。
勇者の如く、まあまあ天才は急がない。

 

 
よっしゃーd=(^o^)=b、今度は完品だ。
手にとり、まじまじと見る。
ひょえ~、お美しい。

蝶採りは、こうでなくっちゃネ d(^-^)
ギリギリの勝負にしか、エクスタシーはないのだ。

 

 
その後、落ち着いて続けざまに3頭を加える事ができた。何れも完品のレッドスターだ。

午後5時半。本格的な強いスコールがやってきた。すんでのところで、公園の東屋に逃げこむ。

30分間待ち、小雨になった間隙を縫って宿まで急いで帰ってきた。
着いたと同時に、再び叩きつけるような豪雨がやって来た。

 

追伸
やはり、文章を二回に分けることにしました。
すんません。次回こそ、食いもんの話です。奄美大島の旨いもんテンコ盛りだすよ。

 

『西へ西へ、南へ南へ』第5話

ー蝶に魅せられた旅人アーカイブスー

いやはや驚いた事にアメブロには第5話が掲載されていない。
どうやら「第五番札所」の回が前後編に分かれている事に気づかずに後編のみをアップしたようだ。重要な回なのにね。よくぞスッ飛ばしたものだ。
だから、第5話は謂わば幻の第5話ってワケだね。

でも正直、心が折れそうになった。なぜなら、どっかに埋もれている原稿を探さねばならないからだ。もし見つからなければ、昔の彼女の誰かに連絡をとらねばならない。連絡もしにくいし(どうせ酷い事をしているのだ)、たとえ連絡したところで原稿が残っているかどうかも分からない。自然、億劫にもなってくる。だから、よっぽど連載を打ち切りにしてやろうかと思った。

でも、一応探したら昔の携帯電話が出てきた。幸いな事に起動もした。そして、何と原稿も残っていた。
というワケで旧い原稿をシコシコ書き移してゆく事にしよう(コピペ出来ないから物凄く大変そうだけど…)。

それでは幻の第5話の始まり始まり~。

      ー捕虫網の円光ー
    『西へ西へ、南へ南へ』

  第五番札所 南国の紅い流れ星

 
2011年9月12日

いつしかフェリー乗り場のロビーには、誰もいなくなっていた。
それぞれがそれぞれの落ち着くべく場所、自分の家やホテルに向かったのだろう。

ホテルを予約していない男には行くあてがない。
午前5時に宿の誰かを叩き起こして嫌われるのもイヤだ。せめて7時くらい迄はここで時間を潰そう。ここなら少なくともクーラーだけは効いている。第四番札所の原稿でも書いていれば、時間も費えるだろう。

美しい朝焼けを眺めながら書き進める。

 

 
7時に名瀬市街に向かって歩き始めた。
遂に来たと云う高揚感とこんなとこまで来てしまったと云う軽い後悔とがない交ぜになった心持ちで海岸線を歩く。

市街地に入ってから宿に電話を入れる。
一発で決まった。
「あづま屋」素泊まり一泊 2500円。
簡単に言えば、飯なしの民宿だ。設備的にはこの値段なら、まあ良い方だろう。唯一の欠点はクーラーがコイン制だということである(150分 100円)。

ひょんなことから、宿のおやじが奄美で一番最初にダイビングショップを始めた事がわかり、驚く。
あえて尋ねなかったが、もしかして師匠とも知り合いかもしれない。
実をいうと、男は奄美大島に訪れるのが今回で三回目になる。過去二回は何れもダイビング・インストラクターをやっていた頃の事である。まだ蝶採りを始めていなかった。

それにしても此処のおやじ、侮れない。持っている玉の柄(竿)を見て、釣りだと言わずに『蝶?』と言ったのには驚いた。

8時半まで部屋で原稿を書き、出来立てほやほやの第4話を読者に送信する。
そして、ササッと5分で用意してスクランブル発進した。船旅で疲れてはいるが、蝶を求める心の方が遥かに強い。もうそれは恋愛感情に近いものだ。望みの蝶に会うことが全てにおいて優先されるのだ。

今回のターゲットはアカボシゴマダラ。
彼女の存在が、はるばるこの島まで男を誘(いざ)ってきた。

【アカボシゴマダラ(赤星胡麻斑)】
学名 Hestina assimilis shiraki。
近縁種ゴマダラチョウに似るが、後翅に赤い輪紋があることにより容易に判別される。
日本では本来、奄美諸島のみに産する固有亜種。
しかし、近年は中国の大陸亜種(a.assimilis)が関東地方に流入し、急速に分布を拡大しており、近似種のゴマダラチョウを圧迫しているという。これが人為的な放蝶なのは明らかだ。つまらん事をする輩もいるものだ。
しかも、この中国の亜種、奄美大島亜種の鮮やかな赤紋とは違い、赤紋がいやらしいピンク色なのだ。そして、輪紋がだらしなく潰れていて下品。場末のピンサロの姉ちゃんみたいで全然美しくないから、男はその存在を絶対にアカボシゴマダラと認めない。アカボシゴマダラに憧れていた者としては、あんなものがアカボシゴマダラだと思われるのは忸怩たるものがある。日本における美蝶の一つだったのに、コイツのせいで確実にアカボシゴマダラのブランド力は下がったと言えよう。
発生は4月、6月、8月、及び9月中旬から10月。
幼虫の食樹はリュウキュウエノキ(クワノハエノキ)。

第二のターゲットは、アマミカラスアゲハ(オキナワカラスアゲハ奄美亜種)。そして、第三のターゲットはイワカワシジミだ。
アマミカラスは後翅の帯状紋が発達しており、美麗。
イワカワシジミも奄美大島のものが特に美しいとされている。

宿のおやじから近くに24時間営業のスーパーマーケットがあると聞き、まずは朝昼兼用の飯を買いに行く。
おにぎりを二つ買って、はやる心で歩き出す。

今日は街のすぐ背後にあるらんかん山(くれないの塔)か拝山に行く予定だ。
こんな市街地近くにもアカボシは棲息しているようだ。元々、里山の蝶だから不思議ではないのだが、感覚的にはちよっと驚きだ。この島はそれだけ自然が豊かなのだろう。

先ずは拝山に行った。
宿から歩いて15分程でポイントに着いた。
九州も暑かったが、当たり前だがもっと暑い。亜熱帯特有のねっとりとした湿気も相俟ってか、直ぐに滝のように汗が流れ出す。九州では秋の兆しもあったのに、完全に真夏に逆戻りだ。

 

 
期待に反して、蝶影は薄い。
クロマダラソテツシジミだけがアホみたいにいる。
数年前までは珍品迷蝶だったが、今やゴミだ。

  
【クロマダラソテツシジミ】
(2016.10月)

 
あとはモンキアゲハくらいしか飛んでいない。ヒマつぶしに網に入れる。みんな羽化したての新鮮な個体だ。
しかし、興味がないから全部リリースしてやる。

糞暑くて早々とグッタリとしていたら、突然、ハイスピードでアマミカラスアゲハが目の前に現れた。
瞬時に反応して鮮やかに決まったが、尾状突起(尾っぽ)の片方が千切れていた。おまけに擦れ個体でガッカリする。時期が合わなければ綺麗な蝶は採れない。不安が頭をもたげる。
南国を象徴する佳蝶、ツマベニチョウもボロ。
そして、憧れのアカボシゴマダラの姿は全く無い。
ダメな所で粘ったところでダメだ。判断の遅い愚図は果実を得られない。
10時過ぎ、ウスキシロチョウの銀紋型のキレイなのだけを三角ケースに収め、諦めて下山した。

下まで降りてきたら、網を持った青年がいた。虫屋だ。
暫し雑談する。千葉の人で、もう1週間も奄美にいるそうだ。
『何を採りに来たんですか❓』と尋ねたら、『何でも。』という答えが帰ってきた。
アカボシについて訊いてみたら、アカボシはまだ一度も見ていないと言う。やっぱり少し発生期には早かったか❓不安がよぎる。
晩飯に誘ったが、レンタカーで寝泊まりしていて、飯はカロリーメイトだと言われたのでやめた。そういう人と飯を食っても楽しくない。

すぐ隣の大島支庁舎前で、惰性でウスキシロチョウを採っていたら、ちよっと不思議な雰囲気のおじいが近づいてきて、いきなり目の前の木の葉っぱを指さし、『これ、食草。』とおっしやった。
更にコレコレと指さし、あっという間に幼虫を見つけて、『1令幼虫だ』と呟く。
するってえと、この木がナンバンサイカチ❓それとも園芸種のゴールデンシャワーかな❓多分、支庁舎に植えられているくらいなんだから、綺麗な花の咲くゴールデンシャワーだろう。尋ねようとしたら、既におじーは歩き始めている。まっ、いっかと思ったら、おじーは暫く歩いてからふわっと振り返って、おいでおいでする。何となく手招きされるままに歩み寄る。
ついてゆくと、ひょいひょいと支庁舎の敷地内に入ってゆく。おじー、どこ行くの❓
そして、迷うことなく何やら細い通路に入ってゆく。半信半疑で後ろをついてゆく。おじー、何者❓

路地を抜けたら、目の前に小屋が現れた。
入口の横に看板が掛かっている。
『大島支庁 ハブ対策室』。
なぬっ(゜ロ゜;⁉、おじーはそのまま建物へと入ってゆく。一瞬躊躇したが、続いて入る。
すると、おじーにスタッフ達が挨拶する。何とおじーは大島支庁のハブ対策室の室長だったのだ。

檻の中には沢山のハブがいた。
Σ( ̄ロ ̄lll)ゾワッ❗
そっか…(^_^;)アハハ。すっかり忘れていたが、奄美大島には毒蛇ハブがいるのだ。しかも、本ハブだ。そして、本ハブの中でも奄美大島のものが一番デカくて最強だと言われている。
あちゃー、今回も危険なミッションかよ…( ̄▽ ̄;)
虫捕りって、リスクあんなあ…。

そん事を考えていたら、袋を持ったおじさんが入ってきた。
袋の中身はどうやらハブらしい。奄美大島では捕獲したハブをお役所が買い取るという制度があると聞いた事がある。それだけハブの被害が多いって事でもあるんだろう。Σ( ̄ロ ̄lll)ヤバいぞ、奄美大島。

袋の中には7匹のハブが入っていた。でも小さい。
その場で2万8千円が支払われた。何と買い取り価格4千円である(現在はもっと下がっているそうだ)。
こんなチビハブで2万8千円ってボロ儲けじゃないか。訊くと、買い取り価格に大きさは関係ないそうである。
『こんなん仕事に出来るんちゃいますのん❓』とおじーに尋ねたら、実際職業にしている人も結構いるらしい。住民も小遣い稼ぎ感覚で捕獲しているようで、タクシーの運転手などは必ず蛇の捕獲用具をトランクに入れているという。

それにしても臭い。室内にケダモノの悪臭が立ち込めている。蛇って無臭なイメージだったが、臭いんだ…。

お茶を御馳走して戴き、雑談が続く。涼しいし、蛇が臭いこと以外は快適だ。
袖すりあうのも多少の縁と言うではないか。どうせ今日はアカボシは無理そうだし、まあいいや。

昼過ぎ。少し体力も回復したので、おじーにお礼を言い、らんかん山に向かう。

らんかん山も拝山と同じようなもんだった。蝶影が薄い。
仕方なしに猫と遊ぶ。
猫と遊ぶのは好きだ。腹をさすってやると、気持ち良さそうに目を細める。

 

 
遊んでいたら、アマミカラスがふわりと何処からともなく現れた。
咄嗟に網を拾い上げ、ダメ元で慌てて振ったら、キレイに入った。

 

 
今度は、ほぼ完品。♂だ。
やっぱり羽が傷んでいないものは、ドキッとするくらいに美しい。

しかし、相変わらずアカボシの姿は見えない。
午後1時20分。半ば諦めて山道を歩いていたら、横の灌木から驚いた蝶が飛び出した。
そして、2mくらい先の枝先にとまった。

うわっ(゜〇゜;)、アンタやん❗❗
まごうワケがない。白黒の格子模様に流れるような赤の輪っかの列。間髪入れずに網先が動いた。キレイに振り抜く。

 

 
想像していたよりも小さい。
だが、それでも一目惚れだよ(≧∀≦)

美人蝶だ。指先が震える。
白黒のコントラストがハッキリしていて、エッジが効いている。それを鮮やかな赤が更に引き締めている。

だが、何か呆気ない幕切れでもあった。
アカボシゴマダラは夕方にテリトリーを張ると聞いていたから、これからが本番だと思っていたのに、いきなりの出会い頭だ。しかも、ほとんど間を措かず網を振り抜いたから、緊張している暇もあまり無かった。
この見つけた時から網を振るまでの間が蝶採りのクライマックスであり、醍醐味なのだ。その先にはエクスタシーか絶望がが待っている。だから心が千々に乱れ、心拍数もハネ上がる。謂わば、この刹那が手に汗にぎる瞬間でもあるのだ。
正直、朝からのこの展開だと、もっと苦労する事を予想していた。それが予想だにしなかった展開で、わりかし簡単に手にする事が出来た。採れてホッとはしたが、でも何だか複雑な気持ちだ。簡単に採れるに越したことはないが、とこか拍子抜けなところがある。心は、どうやらもっと高いハードルを望んでいるようだ。

でも、よく見ると反対側の羽が破れている。
残念だが、これで逆にモチベーションが取り戻せる。完品を採ってこそ、ストーリーは完結するのだ。

とはいっても、この破れた個体をどう解釈すべきかと思い悩む。破れてはいるものの、比較的鮮度が良いから判断が難しい。
もう発生しているんだなと最初は安心したが、この状態では何とも言えぬ。最盛期の8月に羽化する筈の個体が、たまたま遅れてこの時期に出てきたものを偶然に捕まえたという可能性も否定できない。
それに、もし9月の第4化目が発生しているのなら、有名産地なんだからもっと数を見かけてもよい筈だ。
いや、もしかしたら6月以外は個体数が少ないと云うから、こんなもんなのか?だとしたら、相当少ないって事になる。そんなに採集難易度が高いのか❓
虫屋の青年もまだ一度も見てないと言ってたし、そういえば宿のおやじも『アカボシ、昔に比べて最近はとんと見かけなくなったねぇ。』とも言ってた。確かに減ったと云う話は文献など巷でもよく聞く。

頭の中が整理できないままに山道を歩く。
だが、指標となる次のアカボシには出会えない。
次第に不安が募ってゆく。

腕時計に目をやる。
針は、いつの間にか午後3時半を指していた。

                   つづく

  
ー追伸ー
ハブの件(くだり)なんかは、かなり説明不足だったし、他もちょこちょこ訂正加筆した。だから、結局書くのにかなりの時間を擁した。
次回は美味い食いもんが一杯出てきます。
でも、もしかしたら2回に分けるかもしれない。

 
追伸の追伸
1年ぶりに読んだが、結構面白い。
でも当時は完璧な出来だと思っていたか、やっぱり手を入れる所はちょこちょこと見つかる。
てにをはの間違いや誤字脱字もあったし、気に入らないので一部つけ足したり、削ったところも有りです。
文章を書くのは、思った以上に難しいよね。

『西へ西へ、南へ南へ』第4話

蝶に魅せられた旅人アーカイブス
2012-08-04 17:57:42

 
       ー捕虫網の円光ー
      『西へ西へ、南へ南へ』

  (第四番札所・クィーンズコーラルプラス)

 

バスから降りると、潮の香りがした。
おんぼろフェリー乗場の待合所には人がごった返していた。何処か懐かしいような昭和の匂いがする。古い建物のせいなのか、風景がセピア色なのだ。
同時にまた、そこにはアジアの猥雑と混沌がいまだ交差している雰囲気がある。日本もまたアジアなのだ。

6時発の奄美大島・名瀬経由、沖縄・那覇ゆきの船に乗った。馬鹿だ。

5F建てクィーンズコーラルプラス号は予想を遥かに越える巨大さだった。ちよっと面喰らう。
4Fまで上がる。貧乏な旅人は、当然の如く2等の雑魚寝大部屋に荷を解く。

船内は食堂、売店、風呂、ゲームセンターなどと、小さいながらも何でもある。正直、風呂は頭に無かったのでちよっと嬉しい。

甲板に出た。
間近に見える桜島がダイナミックだ。
しかし、風が強く火山灰が舞っている。既に甲板のそこかしこに黒く積もり始めている。
ろくに目も開けていられないので、早々と退散。

 

 
6時05分。いっこうに出発する気配が無いので、イラッとして外を見たら、既に船は動いていた。
湾内だし、デカイから波の影響をあまり受けないのだろうが、気づかなかった。

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『西へ西へ、南へ南へ』第3話

  
蝶に魅せられた旅人アーカイブス
2012-08-02 16:42:52

 
       ー捕虫網の円光ー
      『西へ西へ、南へ南へ』

      第三番札所 薩摩美食三昧

 

2011年9月10日~9月11日

ほとんど脱水状態、夢遊病者のようにふらふらになりながら駅に着いた。
浴びるように清涼飲料水を2本立て続けに飲む。これで小一時間で4本目だ。こりゃ、ほとんど熱射病かもな。

最初に降りた時にわざわざ写メまで撮ったのに…。
そう思いつつ、時刻表を仰ぎ見る。
宮崎行きの電車は10分程前に出たばかりのようだ。
田舎なので、電車は一時間に一本くらいしかない。無人駅のベンチにへたりこむ。

駅舎の外にぼんやりと目をやる。
黄色いランタナが風に揺れている。
一拍おいて、一陣の風が傍らを通り抜けていった。
涼やかな風だった。もう夏の風じゃないと感じた。秋風だ。
ふと見上げると、空も秋の色だ。青い。季節は人知れずその歩を確実に歩めているのである。

空をぼんやりと眺めていて、発作的に思った。
鹿児島まで行こうと。
遠いが、青春18切符ならば今日中は何処へ行こうが乗り降りは自由だ。
大阪に帰るバス代は宮崎も鹿児島もどうせ同じ額である。だったら、桜島を見たい。

16時09分の都城行きに乗った。
一瞬、いったい鹿児島までどれくらい掛かるんだろうかと軽く後悔した。
だが、宮崎に引き返す気持ちにはなれなかった。何処までも落ちて行きたい。前に進みたい。西へ西へ。

都城で15分待って、鹿児島中央行きの列車に乗り換える。

夕なずむ空に噴煙を上げる桜島は、雄大で男性的だ。
列車は、錦江湾の弓なりになった海岸線をのんびりと進んでゆく。

約3時間後の午後6時55分。鹿児島中央駅にたどり着いた。
これで青春18切符5回分を使いきったことになる。

 

 
通常料金ならば、
JR難波➡佐伯駅までが10500円。
佐伯駅➡田野駅までが3150円。
田野駅➡鹿児島中央駅までが2070円。
計15720円かかる。
青春18切符は5枚つづりで11500円した。ということは、➗5で1枚が2300円という計算になる。それを2枚分使ったから、2300円✖2で4600円。
つまり大阪から九州の端の鹿児島まで来るのに、たったの4600円で済んだってワケだ。・

全身ボロ雑巾の体を引きずり、先ずは観光案内所へ。
土曜とはいえども、都会の鹿児島市内だ。宿の数はそれなりにある筈だ。何処かには泊まれるだろう。とにかく、この汗でべとべとの体を一刻も早く洗い流したい。

案内所で紹介された、駅からすぐそばのビジネスホテルを訪ねた。

ビジネスホテル石原荘。
シングル1泊 3880円(安っ❗)
即決する。
 


 

シャワーを浴び、ビーサン、Tシャツ、サーフパンツに着替える。それだけで、だいぶと生き返った。

案内所のお姉さんにも訊いたが、一応フロントでもお奨めの旨い寿司屋を尋ねた。
錦江湾を見て、絶対に寿司を食おうと決めていたのだ。
ホテル一階にある料亭の女将の超お奨めの寿司屋に行くことにする。女将はこれを差し出しなさいと自分の名刺を渡してくれて、途中まで案内してくれた。
鹿児島の人たちも親切そうだ。

寿司『いっせい』。
入ったらガランとしていて、急に不安になった。
だが、今さら他を探すのはもう面倒臭い。正直、腹ペコでそんな気力の欠片(かけら)も残ってない。

カウンターに座った。
とりあえず、瓶ビールとアテに酢の物を頼む。

お通しの、雲丹の乗っかった木綿豆腐をつつく。
木綿豆腐は疑問だが、雲丹は美味い。

次いで、蛸、赤貝、鯖etc…の酢の物がきた。
最初に口に運んだ針魚(さより)にまず驚かされた。何と昆布締めにしてある。味付けも関西風で、はんなりした薄味だ。あまり期待していなかっただけに、俄然楽しくなってきた。

端向かいに座っていた御夫婦と直ぐに仲良くなる。
さみしがりやは、御夫婦や店の大将とも堰を切ったように、まあ、喋る喋る。

続いておまかせ握り11貫をたのむ。
全て旨かったが、中でも絶品は中トロ、雲丹、鯖、玉子焼き、海老、そして、じゅん菜の椀物だった。

海老は地物のサイマキエビ。上品な甘さだ。
玉子焼きはだし巻き風で変に甘ったるくない。
中トロは肉質の目が細かく、ねっとりと纏わりつくような旨さだ。
椀物は薄い銀あんで、じゅん菜を上手く生かしている。
鯖は韓国・濟州島産で小振りなのに脂が乗っており、甘みと旨みが凄い。
雲丹は阿久津産ムラサキウニ(アカウニ)。旨味と甘みがこれでもかと広がってゆく。そして、口の中で味の余韻が尾を引く逸品だった。淡路島・由良産の高級雲丹よりも美味いんじゃないかと思った。

最後に、鯖の棒寿司4分の1サイズを特別に作ってもらった。周りをバッテラ(薄い昆布)ではなく、海苔で巻いているのが珍しい。

 

 
見よ、このキメ細かな油の粒❗キラキラ輝いている。
味はトロ鉄火の鯖版というのが近い。が、抜けがいい。スーッと脂が消えてく感じだ。

お代は7000円余り。妥当な額だ。いや、むしろ値段以上に安いと思った。昨日のホテル代が浮いていると思えれば安いものだ。

午前1時、ようやく就寝。
43時間振りの睡眠だ。
目を瞑って即、意識が飛んだ。

 
(部屋から見た風景。)

 
翌朝7時に目が覚めた。深い眠りだった。そのまま9時半まで寝たり覚めたりで、ごろごろしていた。

10時チエックアウト。
クソ重いザックをフロントに預かって貰い、駅ビルに向かう。

本屋でガイドブックを片っ端から手に取る。
まず街全体の地図を頭に入れておきたかった。観光スポットもチエックする。
しかし、当面の一番の興味は昼飯に何を食べるかだ。
一人旅の楽しみは食いもんくらいだ。
蝶採りは甘美ではあっても修行に近い。否、修行そのものであったりもする。

鹿児島といえばラーメン、黒毛和牛、黒豚、薩摩地鶏ってところが有名かな?

ラーメンは早々と除外した。
大阪でも、探せば旨い鹿児島ラーメンの店はあるだろう。
薩摩地鶏には惹かれるが、昼間っから焼鳥というのも何だかイメージが湧かない。
黒毛和牛と黒豚なら、やっぱ黒豚だよなあ…。
鹿児島で黒豚料理といえば、黒豚しゃぶしゃぶ、とんかつ、せいろ蒸しが代表のようだ。
悩んだ末に残った候補は、フロントのお姉さんに紹介された黒豚のしゃぶしゃぶ屋と2軒のトンカツ屋、あとはマスコミで話題の「激安!黒マグロ丼」1000円の店だ。

一軒目のトンカツ屋は発見できず。どうやら通り過ぎてしまったようだ。
マグロ丼の店はまだ開いていなかった。開店まであと15分だけど、このクソ暑いのに待ってらんない。だいち、考えてみれば鹿児島まで来てマグロもないだろう。ここは、やはり王道の黒豚でいこう。

11時半前、『黒かつ亭』には既に行列が出来ていた。
何だよ、この炎天下で並ぶのかよと思ったが、流行ってるんだから確実に美味いもんにはありつける筈だ。並ぶのが大嫌いな男だが、今度いつ鹿児島に来るとも知れぬのだ。我慢しよう。
そう思って煙草に火をつけた。だが、二口くらい吸ったところで、店員の女の子に5人ゴボウ抜きで招き入れられた。
ラッキー(^^)v、さっき一応店に入って、店員の女の子にワザと一人なんですけど空いてます?とジッと目を見て訊いておいて正解だ。女は目で殺すべし(笑)

黒かつ亭ランチ定食 980円をたのむ。
ロースとヒレ両方が楽しめると云う人気No.1定食である。

 

 
ロース、うんまっ( ̄0 ̄;❗❗
豚肉の甘みが半端ねぇ。

満足至極で店を出る。
取り敢えずは、大阪に帰る深夜バスの状況でも確認に行こう。

さっきから何度か目の中にゴミが入り、何だかチカチカする。
ハッ( ̄□ ̄;)❗、駐車中のドロドロの車を見て気付いた。火山灰だ❗
鹿児島は美人が多そうだし、美味い食いもんも一杯あるから住んでもいい町だなと思っていたが、却下。火山灰の降る街は何かと大変そうだ。住めそうもない。

観光しようかとも思ったが、糞暑いし、火山灰が鬱陶しい。体調もまだ完全には戻っていない。再び駅ビルに戻り、涼みながらこれを書いている。

煙草を吸いたくなったので、喫茶店にでも行こうかと考えた。
それで思い出した。そうだ❗、どうせなら鹿児島名物・南国しろくまを食おう。このクソ暑さにはうってつけじゃないか。

だが、適当な喫茶店が見つからない。
とりあえずダイエーで訊いてみたら、店でも売っていると言う。

 

 
南国しろくま(268円)とは、ようするにアイスクリーム?が混じっている練乳のかき氷に金時や缶詰めフルーツが乗っかった氷菓だ。
親の仇(かたき)みたいにカチンコチンに氷らせてあるのが特徴だ。スプーンがまるで役に立たない。

 

 
(><*)ノちびてぇー。
アッタマ、痛てぇー…。
途中から拷問になってきた。結局、蓋をあけてから25分もかかって食べ終えた。恐るべし南国しろくま!!
南極しろくまの間違いなんじゃないの?
あっ、でも南極にはシロクマはいないわ。シロクマの本名はホッキョクグマだもん。

午後4時45分。
男は、何故か鹿児島新港・南埠頭行きのバスに乗っていた。

                  つづく

 
追伸
原文があるんだから、ちよっと手直してして簡単に記事をアップできると思っていたが、そんな事はない。画像を入れなおさなければならないし、文章も細かいところを触りだすとキリがない。意外と手直しには時間がかかるなあ…。