喋くりまくりイガ十郎

   
1週間ちょっと前(12月7日)、日本鱗翅学会の東海支部総会に招待されて、不肖ワタクシなんぞが講演しに名古屋へ行って参りやした。
お題は今年7月に新発見されたカトカラ、マホロバキシタバ(註1)についてである。

 
【マホロバキシタバ Catocala naganoi mahoroba】
(2019.7月 奈良市)

 
しか~し、いい加減ちゃらんぽらん男のイガちゃんである。なあ~んも考えずにノープランで大阪からノコノコやって来た。

駅から講演会場に行く道すがら、流石にヤバいと思って話す内容を真面目に考え始めた。
それにしても、名城大学って坂が多すぎ。どうも物事を考えるのに坂道というのは向いていないようだ。考えがまとまらぬうちに会場に着いてしまう。

で、受付でチャラける。
受付が大学院生の可愛い女の子たちだったから、ソッコー笑いを取りにいってしまう。往年の悪いクセが出た。オジサンになってもアホはアホのまんまなんである。

で、調子に乗って話し込む。
一人の女の子は苔とハダニの研究をしているそうだ。
こんな若い娘がハダニとな。世の中、ワカンねえよなあ。

でも今は油を売っている場合ではニャーい(ФωФ)
「早く喋る内容を考えなさいよ、イガ十郎くん。アンタ、名古屋は鬼門やろ。恥かくで。」
心の中で自分で自分に軽くツッコミを入れて外に出る。大学構内は全面禁煙なので、外で煙草を吸いながら考えようと思ったのだ。時間はまだ30分ある。何とかなるだろう。っていうか何とかせんとマズイ。

パンフを改めて見る。
わおっ(゜ロ゜;ノ)ノ、特別講演になっとるやないけー。ちょっと背中がムズ痒い。

 

 
講演名は『マホロバキシタバ発見を振り返って』。
自分で考えたのではない。お任せしたら、そうなっていた。まあ題名としては特に問題はないし、解りやすい題名だ。つまりは、それに従って喋ればいいってだけの事だよね。問題は、最後にどうもっともらしい事を言って壇上を降りるかだ。纏まりのない話を延々して終われば、ノータリンと思われかねない。アホなクセに賢く思われたいのだ。
坂道を下りながら考える。登り坂は物事を考えるのには向いていないが、下りながら考えるのには向いている。何となく考えが纏まってきた。
取り敢えず、アタマの入りとケツの〆だけを決めた。真ん中部分は思い付くままをテキトーに箇条書きでメモっておいた。アタマとケツだけシッカリやっとけば、体裁は何とか保てるだろう。
けど、こんなんで1時間も喋れんのか❓と一瞬思った。講演なんて一度もした事がないのである。だったら、ちゃんと準備しとけよなー、俺。
けんど、アッシは昔から根拠の無い自信に満ちた男なのさ。お気楽なんくるないさで、マイナス思考を打ち消す。幼少の頃より何でもぶっつけ本番で生きてきたもんね。
お題について喋ることが無くなって、早く終わりそうになったら、途中から全然関係ない別の話にすり替えれちまえ。ウケさえすれば、聴衆も文句は無かろう。

会場に戻ると司会の若い子が打ち合わせに来た。
『内容は何をどう話される予定ですか?』
『ワカラン。ノープランでぇーす\(^o^)/。その場で適当に考えて喋りまーす。』
フザけた男である。でも、気がつけば口がそう勝手に動いていた。どうせ、お喋り糞野郎の犬の漫才師なのだ。

考えが今イチ纏まらぬうちに、いよいよ犬の漫才師劇場開幕。
流石に、やや緊張する。マイクを持って人前で喋るだなんて、あんまし有ることじゃないもん。そのまま歌でも歌って帰ったろかしらという考えがチラついたが、そんな事は幾らおバカなアチキでも、ようやりまへん。ここは真面目に話すしかない。肚を据える。

喋り出したはいいが、口の中が直ぐにパッサパッサになる。噛みまくりやがな。
こりゃマジイと思って早々と壇上を降り、持参のお茶を取ってきて飲む。( ̄∇ ̄*)ゞカッコわるぅ~。
でもそれで少し落ち着けた。あとは秋田さんの悪口をちょいちょい挟みつつ笑いを取りながらのマシンガントーク。予定の1時間を越える1時間15分も喋ってしまった。犬の漫才師の面目躍如である。

あっ、秋田さん、尊敬している旨もちゃんと話して、フォローも入れときましたから怒らないでネ(^。^)

 

 
画像はアチキが講演している姿ではないが、会場はこんな感じでありんした。

 
因みに自分のあとの講演は以下のようなものでした。

◆鈴木英文「ラオス10年間の蝶類調査の結果」

◆高橋真弓「蝶はなぜそこに棲むのか」の謎を追って

◆大岡啓二「ベトナム北部クックホン国立公園の蝶 2019」

自分もラオスには三度ほど行っているので、鈴木氏の講演は興味深かった。講演後、ビャッコイナズマのポイントも教えてもらったし、🎵ラッキョンキョンキョン。有意義だった。それだけでも来た意味はある。引きだけは強いから他の稀種には会えるのだが、ビャッコだけがナゼだか会えないのだ。

高橋真弓さんには御迷惑をお掛けした。
自分が15分も超過して喋ったので、講演時間を短くさせてしまった。この場を借りて謝らせて戴きます。先生、申し訳ありませんでしたm(__)m
因みに、せんせは女の子みたいな名前だが、男性のお爺ちゃまです。

高橋真弓さんといえば、蝶界の重鎮である。蝶屋で名前を知らない人はいないだろう。
数々の著書もあり、自分も名著と名高い『チョウ-富士川から日本列島へ』を小学生の時に読んだことがある。大人になって虫採りを再開した時にも読み直した。そんな尊敬する先生の時間を、結果的に削るだなんて恐縮しきりである。
その偉業の中でも特筆されるのは、従来1種類と考えられてきたキマダラヒカゲには実を云うと2種類が混じっていると看破したことだろう。
山地にいるものと平地にいるものとでは羽の模様が微妙に違うが、学者はキマダラヒカゲの単なる山地型と平地型だと片付けてきた。ところがどっこい、高橋先生はこの山地型と平地型を別種だと見抜き、生態や幼虫形態などを精査し、1970年に両種が別種であると証明されたのである。そして、それまで山地型とされてきたものを「ヤマキマダラヒカゲ」、平地型を「サトキマダラヒカゲ」と名付けられた。
この「日本産キマダラヒカゲ属 Neope に属する二つの種について」という論文は、全国の蝶愛好家に衝撃を与えたという。
そりゃそうだ。その年代だと海外を含めてまだまだ新種探しに熱かった時代だ。全く見た目が違う未知なる新種を追い求める虫屋が多かっただろう。そんな中にあって、先生はごく普通種のキマダラヒカゲに疑問を持ち、隠された事実を暴き出してその常識を覆してみせた。そして、それが新種として記載されたワケだから皆がビックリ仰天、灯台もと暗しの目から鱗だったようだ。

 
【サトキマダラヒカゲ】
(2018.5.奈良県 信貴山)

 
なんか、このサトキマって白くねぇかあ?…。
写真撮るのに必死で、その時は気づかんかった。スマホで写真を撮るには相当近寄らなくてはいけないので、大変なのだ。今さらだが、写真なんか撮らずに採れば良かったよ。
でもサトキマなんて、自分的チョウのヒエラルキーの中においては最下層なのだ。普段はフル無視で、ウザい存在でしかない。なので展翅画像もない。ゆえに図鑑からパクらせて戴く。

 
【サトキマダラヒカゲ(里黄斑日陰)】
(出展 以下3点共『日本産蝶類標準図鑑』)

 
【ヤマキマダラヒカゲ(山黄斑日陰)】

 
【両種の見分け方】

 
今さらながらに思うけど、見た目が殆んど同じやないけー。バリエーション豊富な同種にしか見えない。
こんなもん、よくぞ別種と見抜いたなあと思う。
高橋せんせは、やっぱ偉いや。

こう云う誰もが見過ごしてきた「当たり前」を覆したという意味では、マホロバキシタバも蛾愛好家たちに同じような衝撃を与えたかもしれない。
蛾の中でも特に人気が高く、愛好者も多いカトカラから今時まさか新種が見つかり、しかも離島や深山幽谷ではなくて、奈良市内で見つかるだなんて誰も想像していなかったのだ。
けんどオラって蛾屋じゃないから、その衝撃度を周りから言われても今イチ実感は湧かなかったんだけどね。
此処は大物のオオトラカミキリやギガンティアもいるカミキリムシ屋の聖地の一つだし、近年ではゴミムシダマシの聖地と言ってもいいだろう。またルリセンチコガネなど糞虫を求めて訪れる人も多い場所だ。蝶屋だって昔はルーミスシジミやオオウラギンヒョウモンを求めて足を運んだ人は相当数いたと思う。そんな虫屋が数多く入ってきた場所にも拘わらず、長い間発見されてこなかったのである。まあ、そこそこ知識のある虫屋なら驚くわな。絶対に、網膜には映った虫屋は何人もいた筈だからね。つまりは、見えてはいるのに見逃してきたのだ。
だから自分の講演の最後には「少しでも変だなと思ったものは採った方がいいっすよ。どんな小さな事でも疑問に思ったことは自分で調べましょう。予断や常識に囚われない事が大事です。そしたら、意外と皆さんの周りでも新たな発見はあるかもしれませんよ。」云々的な事を言って締め括った。

何かさあ、偶然にもさあ、その先駆者である高橋真弓先生を前にしてこんなセリフを喋れてる自分って、超幸せ者だなと思ったよ。会場でコレを堂々と言える特権を有するのは先生とワシだけだと思うと、強い縁を感じたね。コレって、嘘みたいに偶然過ぎやしねえか❓
神様はきっとテキトー過ぎるワシをテキトーに話させないように高橋先生を遣わしたに違いない。今ではそう思ってる。

 
と、カッコつけて、ここで句切りよく「おしまい」としたいところだが、話はもう少し、いやもうそこそこ続く。

そういえば先生は、台湾のキマダラヒカゲについても調べておられ、従来タイワンキマダラヒカゲとワタナベキマダラヒカゲに分けられていたものを1種とし、ワタナベは単なる季節型(註2)だとも看破したんだよね。今度は1種が2種になるのではなく、2種が1種になるというキマダラヒカゲ逆ヴァージョンだね。

 
【タイワンキマダラヒカゲ Neope bremeri 】
(2016.7月 台湾 南投県仁愛郷 alt.1900)

 
う~ん、上翅を上げすぎてんなあ…。
触角は完璧なのにね。まだまだですわ。

 
(裏面)
(2016.7.12 台湾南投県仁愛郷)

 
キマダラヒカゲは日本では何処にでもいる普通種だが、台湾のタイワンキマダラヒカゲは少ない種なのではなかろうか❓
台湾には6月と7月の2度行った事があるが、この蝶にはたったの1回しか出会えていないのだ。その時に訪れた各ポイントの標高は200~3000mに亘るから、この見立ては間違いないと思うんだよね。それぞれ1週間以上は居たしさ。この2回を繋ぎ合わせると、6月中旬から7月下旬になる。発生期としてはド真ん中だと思うんだよね。
台湾にはキマダラヒカゲの仲間は他に明らかに違う別種が3種いるし、ヒカゲチョウの仲間やジャノメチョウ類の種類数は日本よりも遥かに多い。ゆえに食草の競合相手が多すぎるのかなあ…。テキトーに勘で言ってるから間違ってるかもしんないけどさ。まあ何れにせよ、食草を日本ほど独占は出来ないと思う。

珍しい種だと思ったら、途端にカッコ良く見えてくるから不思議だ。いや、違うな。採って見た瞬間には、直ぐに日本のキマダラヒカゲよかカッケーと思った記憶があるぞ。だから、これは後々の印象操作ではないと思う。タイワンキマダラヒカゲは結構カッコいいのだ。

 
最後に講演された大岡啓二氏は全く知らない人かと思いきや、冒頭の自己紹介でアレ?っと思った。面識は無いけれど、お名前は存じている方だったのだ。
まだまだ蝶屋駆け出しだった頃、大岡氏が『みやくに通信』に書かれた「熱帯降雨林における蝶採集法(註3)」と題された文章は何度も読んで参考にさせて戴いたし、ブログ『ジャングルに蝶を求めて!』の海外採集の情報から随分とヒントも得た。特にバンカナオオイナズマとダンフォルディーチャイロフタオの探索に際しては、初動のヒントを貰えたという記憶がある。
それにも増して大岡氏といえば、特異なキマダラルリツバメの発見者として名の通った人だという印象がある。種名は何だったっけ❓ 確か奥さんの名前が付いてたんだよね。

調べてみたら、やっぱそうだった。

 
【Spindasis masaeae マサエキマダラルリツバメ】
(出展『清邁極楽蜻蛉』)

 
(出展『ジャングルに蝶を求めて!』)

  
キマダラルリツバメの仲間の中では異端。一見、異常型に見えるくらいに変わっている。
木村勇之助氏は、図鑑『タイ国の蝶』で、コレに「キッカイキマダラルリツバメ」なる奇っ怪な和名をつけている。まあ、それくらい変なキマルリって事だね。
 
大岡氏によって、1995年の3月にタイ北部チェンマイで2個体が初採集され、2000年4月に関 康夫氏により新種として記載されたものだ。
コレも考えてみれば、きっと目から鱗の発見だったんだろうと思う。まだ蝶採りしてない頃の発見だから、あくまでも想像だけど。

ドイステープ(Doi suthep)はチェンマイの市街地から、かなり近い。中心部からバイクで30分くらいで山の麓まで行ける。上に有名な寺があって観光客も多いからアクセスもいいし、道も良い。そんなワケだから、日本人を含めてかなりの虫屋が訪れている。なのに長年見つかってこなかったのだ。そう云う意味ではマホロバと発見のシチュエーションが似ているかもしれない。つまり、まさかまさかの新発見なのである。つーことは、この会場にはアチキと高橋先生以外に、もう一人同じ立ち位置を経験されてた人がいたんだね。だとしたら、スゴい確率だよなあ…。
大岡さんには怒られるかもしんないけど、神様は更なる一人をアッシの助けに召喚してたんだね。( ̄∇ ̄*)ゞエヘ、どんだけ自分に都合のええ解釈やねん(笑)。

閉会後、真っ直ぐ帰るかどうか迷ったが、結局飲み会にも参加した。
6、7年前だろうか、ヒサマツミドリシジミを京都・杉峠に採りに行った折りに会った若い青年とも再会できた。彼は当時京都在住だったが、その後に名古屋へ居を移したという。とは言っても、彼に言われるまで全然忘れてた。出来事は何とか憶えてはいたものの、顔はのっぺらぼう、おぼろげでしか記憶にない。青年よ、ゴメンね。でも、そんなのはキミに限った事ではない。所詮はニワトリ並みの脳ミソしかない男なのだ。人の事は大概忘れてる。こう云うケースは過去にも多々あるのだ。「どこそこで会いましたよね。」とは、よく言われる。お喋り犬の漫才師の変な人だから、向こうの記憶には残りやすいのかなあ…。

そうだ。あの時の帰りは結構スゴい人に送ってもらったんだよね。
ヒサマツの食樹の発見に関わり、また『楽しい昆虫採集案内』という伝説の採集バイブルの「京都北山」の項を執筆された方に車で出町柳まで送ってもらったのだった。そういえば、オオイチモンジの交尾写真を野外で初めて且つ完璧に撮ったのも自分だと仰って、証拠写真も見せて戴いたっけ…。

飲み会は楽しかった。
知っている人は誰もいないので、名古屋はアウェーなんだけど、全然そういうのは得意というか、物怖じしない。必要以上の気配りは無駄だと思っているのだ。言いたいこと言いまくって、楽しく過ごさせて戴いた。優しき人たちで、良かったー(^o^)

根がミーハーなだけに、最後には高橋先生ともツーショット写真を撮らせて戴いた。

 

 
先生って、柔和で良いお顔をされてるなあ…。
御年80歳だっけ…。まだまだ日本の蝶界には必要な方だから、長生きされてほしいものだ。

 

 
(|| ゜Д゜)ゲッ、それに引きかえアチキの顔が丸い。パンパンやないけー。思ってた以上に太ってんなあ…。
知らんうちに、見た目まで嘗てない程に太っとるわ。今年は夏場でも体重があまり落ちず、ずっと例年よりも5㎏前後オーバーで推移してきてたんだよなあ…。ベスト体重からだと、7㎏オーバーだもんね。
来年は東南アジアに行って、また過酷な旅でもしない限りは戻らんかもなあ…。
そんなことはどうでもよろし。
とにかく東海地区の虫屋の皆様、本当に有り難う御座いました。d=(^o^)=bとても楽しかったです。

                    おしまい

 
追伸
マホロバキシタバ関連の記事は、他に以前に書いた『月刊むし10月号が我が家にやってきた、ヤァ❗ヤァ❗ヤァ❗』と云う文章があります。又この文章以後には、2019’カトカラ2年生のシリーズ連載に2篇書きました。2篇と言っても、マホロバキシタバ発見記『真秀ろばの夏』と題して書いたものの前・後編だけどさ。現時点ではマホロバキシタバについて最も詳しく書かれた文章です。言い切っちゃうけどね(笑)。

 
(註1)マホロバキシタバ
日本においては、32種目のカトカラ。発見の経緯や生態等については『月刊むし』の10月号に詳しく載っているので、興味のある方はソチラを読まれたし。

(註2)単なる季節型
従来ワタナベキマダラヒカゲと呼ばれていたものは、単なるタイワンキマダラヒカゲの春型、もしくは秋冬型なんだそうな。

(註3)「熱帯降雨林における蝶採集法」
宮国(充義)さんが発行してた蝶のミニコミ誌『みやくに通信』の2012年のNo.195号とNo.196号に前・後編に分けて掲載された。
熱帯ジャングルでの蝶の採集法について、疑問に答える形式で基礎から応用まで細かく書かれている。東南アジアに蝶採りに行く人は必見です。

 

フレスコのカツサンド

 
11月にママチャリで伊丹にシルビアシジミ(註1)の様子を見に行った帰りに北浜に寄った。
目的はスーパー「フレスコ」に行って、カツサンドと京都の「ミスターギョウザ」が出している冷凍餃子を買うことだった。

 

 
ここのカツサンドがメチャンコ旨い( ☆∀☆)
時々、無性に食いたくなる。でもマイナーなスーパーゆえ(註2)、近所には無い。というか大阪市内では見たことがない。
というワケで、今回は事前に大阪市内にあるフレスコを調べてワザワザ寄ったのである。

このカツサンドを知ったのは四條畷のフレスコだった。
2018年のゴールデンウィーク、久し振りに四條畷にミヤマカラスアゲハ、スミナガシ、アオバセセリの様子を見に行った帰りに見つけたのだ。

 
【ミヤマカラスアゲハ 春型♂】

(2018.5.28 大阪府四條畷市)

 
数ある日本の蝶の中で、最も美しいと思う人も多い美麗種だ。

 
【スミナガシ 春型♂】

(裏面)

 
見た目も名前も渋くて美しい。
眼が青緑色なのも蜜を吸うストロー(口吻)が紅いのも、日本ではこの蝶だけだ。何かと素敵な奴なのだ。

 
【アオバセセリ 春型♂】

(裏面)

 
野崎観音から登り、尾根を縦走して四條畷に下りたので相当疲れた。だから、ご褒美に駅前でビールでも飲もうとスーパーに寄ったのである。

そこに、こんなポップがあった。

 
(出展『京都で暮らそう』)

 
「スーパーマーケット お弁当・お惣菜大賞」なんて賞が世の中にあるだなんて全く知らなかった。聞いたことがない。ちょっと胡散臭いような気もするが、何せ準大賞なのである。期待をそう裏切ることはないだろう。
値段も350円と安いし、買うことにした。

 

 
見よ、この分厚さを❗

 

 
渇いた喉にグビグビとビール(スマン、この日は発泡酒やった)を流し込む。で、おもむろにカブりつく。

( ☆∀☆)うんめえーっ❗
食べてみて驚いたのは、簡単に歯でスッと噛み切れたことだ。この厚さなのに肉が柔らかいのである。しかも変に脂っぽくない。かといってパサパサでもない。しっとりとしているのである。
ソースも旨い。甘辛さのなかにコクがあるのだ。
この値段で、このクオリティーは正直やるなと思った。
更に驚くべきは、このカツサンドには端っこが使われていないことだ。カツの厚さが全て同じなのである。
分厚いカツサンドは今やそう珍しいものではない。しかし、上から見たら分厚くとも、横から見たら下がスカスカだったりする。ようするにカツの端っこの丸い部分が使われているのだ。謂わば詐欺みたいなものなのだ。何度、騙された事か。イオングループの厚切りロースカツサンドなんて酷い。3切れ入っているのだが、まともなのは真ん中だけで、両端はボリュームに劣る端なのだ。ようは小さめのカツを三分割しているってワケ。
因みにフレスコのカツサンドの端っこの部分は、端っこだけ寄せ集めて少し安い値段で売っている。

その年の夏、シロシタバ(註3)の産地探索の折りにも買った。

 

 
この時は3個入り(¥498)のを買った。
昼過ぎから夜遅くまでの長丁場になる予定だったからだ。

 

 
夜間に駅に戻って来るので、この日は春とは逆に先にカツサンドを買ってから山に入った。
美味いのは勿論だが、背水の陣での探索だったので縁起を担いだというのもある。カツ=勝つというワケだ。
お陰さまで、大勝利だったよ。

あまりにも旨かったので、数日後の再訪の折りには合流予定だった小太郎くんの分も買っていった。

 

 
今年2019年も買って、山へ登った。

 

 
この山には、その後もう1回入ったのだが、その時は買えなかった。売り切れていたのである。それなりに人気商品だから、夕方近くには売り切れてるケースもあるって事だね。ガックリきたよ。

それ程このカツサンドが好きなのだが、1つだけ不満がある。辛子があんま効いていないのである。だからといって、わざわざ山にチューブの辛子を持ってゆくのはバカバカしい。かといって現地で買うというのも何か腹立つ。ようするに虫採りに行くのに、そういう煩わしいことはあまり考えたくはないのだ。

と云うワケで、今回は外で食うのではない。家で食うのだ。カラシなら冷蔵庫にある。思う存分に塗りつけてやる事が出来る。荷物がちょっとでも増えるのが嫌な人なのだ。

 

 
でや❓、思う存分という程ではないが、たっぷりと塗りつけてやったわい。
バクッといったるでぇー(*`Д´)ノ❗

ガブッ❗❗
辛っ❗鼻にツンときたよ。涙もちょい滲んだわ。
それをビールで流し込む。辛いが美味いねぇ。
あ~、でもソースが辛子に負けてるような気もする。バランスがやや悪い。( ̄ヘ ̄メ)ソースも増量したろか。
でも、思いとどまった。これ以上何かを加えると味のバランスがブッ壊れると思ったのである。
きっと辛子の量を減らすのが正解だな。
よし、これからは「551の豚まん」を買う時は辛子を多めに貰おう。で、それを貯めてやろう。
来年、四條畷に行く時は、その貯めた辛子持ってゆくのだ。さすれば、チューブみたくそう邪魔じゃない。
その際、キンキンに冷えたビールも持ってゆこ~っと。

                    おしまい

 
(註1)シルビアシジミ

 
シバ草原に見られる小型のシジミチョウで、絶滅が危惧されている。拙ブログに『シルビアの迷宮』と題した連載ものがあります。謎が謎呼ぶミステリーなので読んでみたい人はどうぞ。

 
(註2)マイナーなスーパーゆえ…
フレスコは京都府に本社を置く株式会社ハートフレンドが運営するスーパーマーケットで、京都ではマイナーではなく、ポピュラーな存在らしい。

 
(3)シロシタバ

 
主に山地に見られ、下翅の雪のような白が特徴的な大型蛾。飛んでいる姿は結構迫力がある。
現在、シロシタバについては執筆中。だが、上手く書けなくて懊悩、呻吟している。時々、呻き声を上げて、シャッシャッシャーと爪でガラス窓を掻きむしったりしておるのだ。

  

シルビアの迷宮 最終章

 
 最終章『さらば、シルビア』

 
大阪空港周辺のシルビアシジミがボルバキア感染しているなんて知らなかったから、とても驚いた(第三章『ボルバキアの陰謀』)。
でも採っても採ってもメスばっかという記憶が全然ないんだよなあ…。もしかして、もうとっくの昔に正常な性比に戻ってんのかあ❓
気になったし、前回訪れた時は♂が一つしか採れなかったしなあ…。しかも思った程には鮮度も良くなかった。あと青い鱗粉が発達した♀もまだ欲しい。
と云うワケで、11月13日に再び伊丹市を訪れることにした。

今回も前回と同じくママチャリで難波から伊丹を目指す。正直、相当遠い。ママチャリで移動する距離ではない。だから行く前からメゲそうになる。でも運動不足だし、途中クロマダラソテツの発生地も見つかるやもしれぬと考えた。たらたら二時間も漕げば、そのうち着くだろう。

今回はいつものポイントは、あえて外すことにした。
なぜなら毎年のように通ってるので、性比異常なんて特にないと知っているからだ。それに前回は3頭しか見かけなかった。おそらく今回も少ないだろう。そもそもが、そんなんじゃ性比異常の調査もヘッタクレもなかろう。そこで、前から居る事は知ってたけど、人が多いだろうから今まで避けていたポイントへ行くことにした。

いつものように先ずは飛行機の着陸を楽しむ。

 

 
これだけ近くで飛行機の着陸を見られる場所は他にあんまり無いと思う。CMでも使われてたしね。
キューン、ゴオーッ❗何せ飛行機が物凄く近くの真上をスゲー迫力で通るのだ。通過したと同時に大きな砂塵が舞うくらいなのだ。

 

 
ひとしきり見て、満足したところでポイントへと移動する。キューン、ゴオーッ。

何やかんやで結局着いたのは、正午前だった。
寄り道をアチコチしたとはいえ、二時間半もかかってしまったなりよ。

 
早速、シルビィーちゃんをゲット。

 

 
相変わらず、何て小さいんざましょ。

 

 
腹のぷっくり感からすると、♀だね。
えー、環境はこんな感じです↙。

 

 
いわゆるシバ型草原というやつだ。
草刈りした人為的な環境だけどね。でも草刈りがされないと、シルビアは生きてはいけない。ほったらかしにすると、あっという間に雑草ボーボーなのじゃ。草丈が高くなると、幼虫の食草であるシロツメクサ(🍀クローバー)やヤハズソウが雑草軍団に負けてしまい、シルビアもそれと共に姿を消してしまう。ここでは、人間様々なのだ。放置するだけが自然保護ではないのだよ。ある種の植物や昆虫にとっては、人為的な環境が保たれないと生存できないのである。

シルビアはここを地を這うように飛ぶ。
しかもチビッコでそこそこ速いから、時々見失う。

試しにスマホで生態写真を撮ってみることにした。
地這いシジミをゆっくりと追いかけ、止まるのを待つ。

止まって直ぐに開翅した。また♀だね。
日光浴をしているのだ。ちょっと愛らしい。

 

 
アハハ( ̄∇ ̄*)ゞ、全然ピント合っとらーん。
スマホで虫を撮るのは至難のワザだ。相当至近距離まで近づかないとピントが合わんのだよ。
這いつくばって撮ったのに、何か腹立つなあー。
しかも中年のブサいくカップルの訝しげな視線に晒されてだ。ブサいくカップルのクセに蔑んだ目で見やがって。プンプンι(`ロ´)ノ。

今度は何とかピントがあった。
でも、このワードプレスのブログに画像を貼ったら、ナゼだか死ぬほど画質が落ちる。ピントが合ってても、ピンボケみたくになる。Facebookだと全然そんな事にはなんないぞ。この糞プロバイダーめがっ(# ̄З ̄)❗

 

 
ホラね。まあ、ワシの生態写真なんかに期待してる人なんて誰もいないから、別にいいんだけどね。
あっ、別によくないぞ。食べ物の回で「文章は良いのに、写真がどうしようもないくらい酷い」とかクソミソに言われたりするのだ。食べ物で写真がダメって致命的じゃないか。

 

 
腹が隠れて見えない。でもこの円い翅形からすると、コヤツもまた♀だな。

どうせスマホではロクな写真なんて撮れやしない。
キレイな♂と青い♀だけ選んで、少しだけ採って帰ろっと。

 

 
\(◎o◎)/ゲゲッ、また♀だ。
鮮度からすると、♂もいなくてはオカシイ。なのにボロの♂さえ飛んでない。もしかして、そうなのか?…。

その後も♀のオンパレードが続く。30頭以上は網に入れたけど、全部♀だった。
ここまでメスばっかだなんて、完全に性比がオカシイ。コレって、どうみてもボルバキア感染じゃなくなくねえか❓
まだ、悪虐ボルバキアは健在だったのね。ここの個体群は完全に奴のコントロール下にあるってワケだ。恐るべし、ボルバキア細菌❗

帰り際に、ようやく♂をゲット。

 

 
ボルバキアに殺されまくるオスも大変じゃのぉー。同じ性の身として、心から同情するよ。
でも、よくよく考えてみれば、コレってオスにとってみればウハウハのハーレムかもしんない。なんだよ、それって選びまくりの、やりまくり三助じゃねえか。(*´∀`)羨ましいにゃあ。

芝生に足を投げ出し、飛行機が轟音と共に着陸してくるのをぼんやりと眺める。
走り回る小さな子供たちに、傾きかけた秋の日射しがやわらかに降り注いでいた。

                    おしまい

 
 
一応、この日採ったシルビアの展翅画像を貼っつけておきます。

 
【シルビアシジミ♂】

 
前回の展翅よか、だいぶとマシになった。
リベンジだし、たった1頭だけだったから真面目にやりましたよ。

 
【シルビアシジミ♀】

 
低温期型の♀だね。
何か気にくわなくって、触角をいじる。

 

 
あれっ?、片方の触角が折れてる❓
大丈夫、大丈夫。折れてなーい。単に右の触角が針穴の跡とくっ付いて見えるだけだった。
でも、触角の角度は前の方が正解だったな。いらん事してもうた。

コレにて終了。もう今シーズンはシルビアに会いに行くこともないだろう。
さらば、シルビア。また来年会おう。

 
追伸

思いの外、長編になってしまった。
最初のタイトルは、ただの『シルビアジジミ』だった。当初は2、3分で読める軽いものを予定していたのだ。取り敢えずシルビアの様子を見に行って来ました~的な簡潔な報告文のつもりだったのさ。
しかし、シルビアの和名の由来が微妙に違うことから脱線が始まった。で、破滅的にどんどん長くなっていったのさ。その中でタイトルも次々と変遷してゆく。
先ずは『ラビリンス・オブ・シルビア』に変えた。何となく『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』というスコセッシの映画っぽいからつけた。(;・∀・)あで❓けどよくよく見れば、あんま似てねえな。もう、そんなの\(^o^)/雰囲気、雰囲気~。
でも何かシックリこなくて『迷宮シルビア』に改題する。それでもどこか納得いかなくって、ひっくり返して『シルビアの迷宮』にした。
しかし、過去にフタオチョウか何かの回で迷宮は使ったもんなあ…。タイトルに矢鱈と迷宮とつけたがる男だとは思われなくないし、ここでまたしても変転。『シルビアのミステリー』となる。しかし、ダサい。
あっ、「しかし」とか「でも」が多くてスマン。
で、またまた変えて、結局のところ今のタイトル『シルビアの迷宮』に戻った。そのかわり各章に分断して、それぞれの章に小タイトルをつけることにした。
けんど、執筆途中に何度また題名を変えてやろうかと思ったことか。けれども、それに代わるものがついぞ頭に浮かんでこなかった。そのうち、どんどん話は迷宮に入っていって、まあそれなりにタイトル的には相応しくなってきたし、まっ、いっか…となったワケ。
まあ、どうであれ、このクソ長い文章を読んで下さった方には感謝です。

余談だけど、最終回の小タイトルは最初『ザ・ファイナル』だった。でもそんなに劇的な展開になるワケでなし、大袈裟過ぎるからやめといた。けんど、いつか使ってやるからね。

虫の次回作は、またカトカラのシリーズに戻ります。
チキショー、年内にはカトカラの連載を終わらせてやるつもりだったのにぃ。それがまさかのシルビア城の迷宮で彷徨ってしまうとはね。何だか足元をすくわれたような気分だよ。
年内だなんて、もう絶対に無理やんけ(=`ェ´=)

 

シルビアの迷宮 第四章

 
 第四章 『断崖のシルビア』

 
ボルバキア感染まで辿り着いて、漸くクロージングに入れると思ったら、また要らぬモノを見つけてしまった。

『石川県能登半島産と日本各地産シルビアシジミの比較検討及び1新亜種』(2016’木村富至)という論文だ。シルビア関連の論文を探してて、ブチ当たってしまったなりよ。
もう何も書きたくないのだが、性格がスルーを許さないのだ。我ながら最悪の性格だよ。

そういえば石川県能登半島西部で、シルビアが17年振りに再発見されたとは聞いたことがある(註1)。たぶん、月刊むしの巻頭カラーだろう。
なぜそんなにも再発見に年月がかかったのかというと、生息環境が全然違うんじゃなかったかな。シルビアといえば、普通は河原や河川敷の堤防、田畑の畔、池の土手といった場所が生息地だが、ソヤツは何と海岸沿いの急峻な断崖絶壁近くの僅かな草地に棲んでいる。だから、そんな場所にまさかいるとは誰も思わなかったのだ。それゆえ、ちょっと特異なシルビアとして記憶している。

この論文タイトルからすると、それを亜種として記載したのだろう。いつの間にそんな事になってたのだ。全然知らなかったよ。

気になるので、調べてみた。
どうやら、Zizina emelina terukoae(Kimura 2015?)という亜種名みたいだ。たぶんテルコさんに献名されたんだろね。きっと奥さんなのだろうが、娘さんだったら驚くなあ。
しかし、困ったことに亜種記載されたらしき冒頭にあげた論文の中身が読めない。仕方なしにネットサーフィンしてたら、能登のシルビアについて色々出てきた。

シルビアフリークの間では、河川の堤防や池の周りの斜面に棲むシルビアのことを「土手ビア」と呼び、海岸沿いに棲むシルビアのことを「海ビア」と呼んでいるそうな。
最初は意味が解らず、土手で飲むビールとか海で飲むビールで、シルビアが採れたらそこで祝杯をあげるのがシルビアフリークの習わしなのかと思った。オデ、バカだからさあ、「中々気持ち良さそうだ。さぞかしビールも旨いだろう」なんて思ったのだ。
でもこれは「土手シルビア」と「海シルビア」の略ってこってすなあ。気づいて苦笑いしたよ。
また、田畑周辺のものを「畔ビア」、能登半島のシルビアを「能登ビア」と呼んでいるサイトもあった。

海ビア(能登ビア)が棲んでいるのは、多分こんな環境なのだろう。

 
(出典『Alis』)

 
写真は能登金剛の関野鼻という景勝地のようだ。
テキトーにキレイな写真を貼っ付けて「能登金剛って有名な観光スポットだし、いつか行きたいものだ」とか何だとか書こうとしたところで、突然、⚡電撃に打たれたかのように脳内でシナプスが繋がった。関野鼻といえば、能登で最初にシルビアが見つかった場所と同じ地名じゃないか。能登にこのような変わった地名が2つあるとは思えない。ならば、これは同一の場所だろう。偶々(たまたま)貼っ付けた画像が、まさかのビンゴだったとはね。何だか嬉しいや。

それにしても、こんなとこにいるとは驚きだな。
前述したが、シルビアといえば河川の堤防や田圃の畦、公園や空港など定期的に手入れされる人為的な場所での発生が殆んどだ。それゆえ、生息地は開発や整備で容易に消滅しやすいし、反対に放置されれば、植物が繁茂して植生が変わってしまい、これまた生きてはいけない。だからこそ、絶滅危惧種になっているのだが、ここは逆に人の手が殆んど入っていない環境だ。ある意味、置かれている環境は端っこと端っこなのだ。何かメタファーみたいなものを感じるよ。でもよくよく考えてみたら、結局好む環境は同じく低草地の所謂(いわゆる)シバ草原的環境なんだけどね。
太古の昔、シルビアは元々こういう厳しい環境に棲んでいるチョウだったのかもしれない。後に人間が作る環境に順応して増えていったとも考えられる。しかし、人間社会に順応したがゆえに、現在の土地開発という新たな局面の中で数を減らしていっているのだろう。何だか皮肉だね。プリンセスは時代の波に翻弄される運命なのだ。

何とか上手いこと纏めたかなと思ったが、ちょい待てよ。能登の環境こそが本来のシルビアシジミの生息環境だと思ったが、むしろ海岸部に追いやられて、細々と生きているといった方が正しいような気もしてきたぞ。河原なんかの方が自然だと思う。
でも、こんなのどっちが正しいのか証明できないよなあ…。

それはさておき、何で17年ものあいだ再発見されなかったのだろう❓
最初に発見された1992年の場所は、シルビアがいる典型的な環境だと勝手に想像してた。だからこそ、まさかそんな断崖絶壁にいるとは誰も考えもしなかったゆえ、発見が遅れたんだと思ってた。しかし、再発見された場所は、関野鼻そのものかどうかはわからないにしても、同じ羽咋郡志賀町だ。と云うことは、同じ場所か近い場所ということになる。となれば、探せば、簡単に再発見できたんじゃないかと勘繰りたくもなる。何で❓謎だよ。

もしかして、誰も探していなかったとか❓
ならば、発表された媒体が地方の昆虫同好会の機関誌か何かで、目に触れる機会が少なかったのではないかと考えた。しか~し、報文が載ったのは、調べてみると『蝶研フィールド』だった。刊行されていた時代には、まだ自分は蝶採りを始めていなかったけど、発行元は蝶研出版だ。蝶マニアにはかなり読まれていた雑誌だと云う認識がある。記事を読んだ人は少なくない筈だ。なのに19年もの空白があるなんて不思議だ。単に怠慢で、誰も探さなかったとしか考えられないじゃないか。でも短報だったとしても、特異な生息環境なんだから、それについての何らかの言及はあった筈。言及されていたのなら、そんな特異な場所にいるシルビアだ、好奇心を持つ蝶屋は居て然りだろう。なのに誰も探さなかったの❓或いは、探しても見つけられなかったのか❓けれど、そういう好奇心を持つ蝶屋ならば、経験値もあり、勘も鋭い優れた蝶屋の可能性が高い。にも拘わらず、見つけられなかったのか❓これまた、謎でしかない。
またしても、迷宮のシルビア・ラビリンスである。

こういう煮詰まった時は他の箇所を書いたりしてると、意外と新たな考えが頭に浮かんだりする。あとがきを先に書いてたら、別な理由が浮かんだ。
或いは1頭だけしか採れなかったから、どうせ偶産だと思われたのかもしれない。つまり、相手にされなかったというか、誰もがバカにしてスルーしたのではあるまいか。これって一番可能性があるような気がしてきたぞ。思い込みとか予断はよくないね。

色んなサイトに能登ビアの生態写真も数多くアップされている。

 
(出典『蝶の生態写真-Photograph of Japanese Butterflies-』)

 
良い写真だね。素晴らしいロケーションだ。
自分の知るシルビアの生息環境とは大きく異なるので、やっぱ、ちょっと驚きだよね。

ここのシルビアは分布の北限にあたる(以前までは栃木県さくら市)。或いはシルビアシジミ属(Zizina)全体の北限にあたるかもしれない。
考えてみたら、この場所は他の棲息地とは随分かけ離れている。今一度、現在の分布状況を確認しておこう。

 
(出典『日本のレッドデータ検索システム』)

 
白い部分は未発見の都道府県。グレーの部分が既に絶滅したと考えられる地で、赤が絶滅危惧種Ⅰ類、オレンジは絶滅危惧種Ⅱ類、黄色が準絶滅危惧種に指定されており、緑色がその他である。
絶滅した場所で一番近い県は岐阜県だけど、これは岐阜市なので意外と遠い。反対にこの図では分布しているとされている群馬県は実際には既に絶滅しているようだ。つまり現存している場所だと一番近い生息地は栃木県という事になる。何れにせよ、それだけ飛び離れた場所で、生息環境も異なるとあらば、生態も違い、DNAレベルでも分化が進んでいて、形態的にも独自進化している可能性はある。ゆえの亜種記載になったのかな❓

ネットを見ていると、食草はミヤコグサみたいだ。
正当派シルヴィーちゃんなんだね。たぶん、ボルバキアには感染していなさそうだ。
ネット情報だと、能登のシルビアには他と違う特徴も見い出だされているようだ。能登ビアの斑紋の特徴の一つは、前翅裏面の上から3つ目の紋が横になる事だそうだ。もう少し詳しく言うと、前翅裏亜外縁の黒点列の一番上が内側にずれ、上から3番目が横長になるというのが北限のシルビアの特徴らしい。

さっき画像をお借りした方の写真が素晴らしいので、再び画像をお借りしよう。良い写真ばかりなので覗いてみられることをお勧めします。

蝶の生態写真-Photograph of Japanese Butterflies –

 
【能登半島のシルビアシジミ】
(以下4点共 出典『蝶の生態写真ーPhotograph of japanese Butterfliesー』)

 

 
前翅裏亜外縁の黒点列の上から3番目の黒点は、確かに横長になっている。
地色なんかも、ちょっと白っぽいような気もするね。でも、色に関しては写真の撮り方にもよるから何とも言えない。それに、そもそもが春・秋型と夏型とでは色に違いがある。♂と♀とでも微妙に違ったりするから、軽率に判断は出来ないよな。

次に、他の産地の裏面を並べてみよう。

 
【兵庫県加古川市のシルビア】

 
【和歌山県白浜市のシルビア】
(出典2点共『蝶の生態写真ーPhotograph of japanese butterfliesー
』)

 
黒点列の一番上が内側にズレるというのは微妙だけど、確かに3番目の黒点には言われているような違いはあるね。コチラは横長にはなっていない。
でも他の写真を見てると、能登産でも微妙なのもいるんだよなあ。

 
【能登ビア】
(出典『Gramho』)

 
コレなんかは、言うほど横長ではない。
逆に別産地のものでも、珠に3番目の黒点が横長になる奴も見受けられる。
おいおい、そんなの亜種としての識別点としては使えんぞ。
大丈夫かよ(# ̄З ̄)、ssp.terukoae❓

更にネットサーフィンしていると、幸い論文と同じ著者である木村富至氏がそれ以前に書いた『能登半島産シルビアシジミの形態的特徴と分布について』という論文を見つけることができた。長いが抜粋しよう。

1.重要な固有の特徴

能登半島産は前翅裏面の外中央斑紋列のなす角度が概ね101°以下の鈍角となり、他産地は101°以上の鋭角となる。ただし、能登半島産春型及び他産地産で稀に角度θが101°前後の紛らわしい個体も出現する。その場合は、同じ季節型同士で比較したり、前翅裏面外中央斑紋の並び方、裏面地色や縁毛と斑紋の色、翅形などを総合的に見て両産地を見比べて判断する必要がある。
外中央の斑紋列は、4室〜5室の黒点が外側に張り出し強く角張った弧を描く(他産地は緩く滑らかな弧を描く)。

2、傾向として見られる特徴

〈1〉♂♀共通の傾向的な特徴

縁毛の色は白色で外縁付近が黒褐色となる(他産地は白色で外縁付近が茶褐色になる)。
前翅裏面の外中央の斑紋列のうち4室の斑紋は5室の斑紋の真下か、やや外側に位置する(他産地は4室の斑紋は5室の斑紋のほぼ真下に位置する)。
1C室の黒点は2室の斑紋の真下から外側に位置する(他産地は真下から内側に位置する)。
前翅の翅形は、幅のやや狭い横長が多い(他産地は、やや幅の広い横長が多い)。
前翅後角部は、やや丸みを帯びる(他産地は、やや角張る)。

〈2〉♂の傾向的な特徴

裏面の地色は青白い灰色系(他産地は茶色味を帯びた灰白色系)。
裏面において、外中央と亜基部の斑紋の色は濃い黒灰 色系でその他の斑紋の色は薄い黒褐色系(他産地は茶褐色系)。

〈3〉♀の傾向的な特徴

裏面地色は青灰色系(他産地は白味を帯びた茶褐色系)。
裏面において、外中央と亜基部の斑紋の色は濃い黒灰色系で、その他の斑紋の色は薄い黒褐色系(他産地は暗い茶褐色系)。

3.幼虫形態で見られた特徴

能登半島産は越冬前の幼虫で食草から落下しないという習性が見られた。他産地では一般的に衝撃や吐息を吹きかけると落下すると報告とされ、また飼育した伊丹市産のものも落下した。但し、今後もっと多くの産地(特に山陰地方(島根半島)の岩場に生息する個体群)で検証する必要がある。

オデ、アタマが悪いので、難しくて今イチわからん。
更に詳しい説明もあるので、それも抜粋しておく。

「能登半島産シルビアシジミシを日本における他産地の個体から区別する最重要地理的変異箇所は、前翅裏面外中央の斑紋の位置にある。具体的には第4室の斑紋の中心からみた第3室と第2室の斑紋の中心の間を結ぶ線と第6室と第5室の斑紋の中心とを結ぶ線が成 す角度θ(以後単に「角度 θ」と称する)が104°以下 (概ね100°以下)が能登半島産であり、他産地は101 °以上(概ね105°以上)の角度になる。標準偏差も小さく他産地とは充分区別できる。但し、線の引き方などにより誤差が、±2.OD程度出る。これらのことを考慮に入れ、春型などの季節型や個体変異を加昧してもこの相違点だけで能登半島産と他産地を少なくとも90 %以上の確率で見分けることができると言える。」

もう何言ってのか全然ワカンナイ。言葉の迷宮じゃよ。
論文には画像もあるので、もう少し解り易いのだが、画像は貼付できないから、今読んでる人はワシより更にワケワカメじゃろう。
何で論文って、こう小難しく書くのだろう?
別にコレは木村氏だけではなくて、他の人も大なり小なりそうだ。木村氏個人を責めているワケではない。もしかして学界(学会?)とかの、「文章は論文らしく難解で格調高くあらねばならぬ」と云う縛りでもあるのかね?小難しい文章でないと、賢く見えないとでも思ってるのかなあ…。

まあいい。そんなことは本題ではない。続けよう。

「ここで間違えてほしくないのは、第6室の外中央斑紋が内側に寄っているのが能登半島の特徴という誤解である。たしかに能登半島産では第6室外中央斑紋が内側に寄る個体が多いがそれほどでもない個体も出現するし、その他の産地でも能登半島産と似たように内側に寄っている個体が出現するので第6室外中央斑紋の位置だけでは角度θを決定する要因になっていない。それでは角度θがこのように能登半島産で安定して狭くなる要因は何かというと実は第6室だけでなく第2室と第3室の外中央斑紋も内側に寄っている。そして、第6室外中央斑紋が内側(外側)に寄ると第2室と第3室の外中央斑紋はその分外側(内側)に寄る傾向がある。つまり角度θは第6室と第2室と第3室の外中央 斑紋の相対的位置関係のバランスにより決定している。この現象は能登半島産もその他の産地も同じである。したがって、第6室外中央斑紋の位置だけで能登半島産を見分けることは難しい。
その他、この能登半島産個体群は一般的な特徴として前翅裏面第4室外中央の斑紋の形状が楕円か横長になるという指摘があるが、山梨、鳥取、岡山、徳島、栃木県産からも多く見られることから能登半島産の特徴とすることは出来ないようだ。」

ようは、巷で言われている能登半島の特徴「前翅裏亜外縁の黒点列の一番上が内側にずれ、上から3番目が横長になる」というのは、亜種としての決定的な相違点ではないと云うことだね。アタマの悪いオイラには、文章が難し過ぎるわ。

「傾向的に見られる相違点としては、縁毛基部の外縁翅脈端付近の色が能登半島産は黒褐色系であり、他産地は茶褐色系である。また、裏面斑紋の色も同様である。この色の違いは汚損した個体では紫外線のため色が劣化したりして見分けにくく、秋型では濃くなるなど季節型の変異などでも見分けにくい。しかし、対象物が小さ過ぎて正確な測定は出来ないものの彩度や明度を考慮してルーペなどで観察すると色が定量的に 表す国際的な尺度の一つであるマンセル表色系(JIS規格のJIS Z 8721を参照)でいうところの色相が違うように見える。その他、第2室と第1C室及び第5室と第4室の黒点の位置関係や翅形(要素が複雑で数値化が難しいし、他産地でも幅の狭い横長の個体が出現する)、裏面地色など総合的に判断するとかなりの確率で見分けることが可能であると思われる。
その他にも他産地では前翅表面第1室外縁付近にはっきりとした白化斑が現れる個体が春型と秋型に出現するが、能登半島産では筆者が被検した個体においてはこの前翅表面第室外縁付近の白化斑がほとんど現れず現れてもかすかに痕跡程度である。」

言わんとしてることは何となく解るけど、やはり難解だね。また、エラいとこ突っついてしまったなりよ。

記載論文を読んでないから、あまり偉そうな事は言えないけど、感想的には角度とか色って微妙過ぎてよくワカンナイや。幼虫の形態ではなく、生態ってのも曖昧で微妙だよなあ…。亜種にする程のことなのかなあ…。あまり能登産シルビアが亜種になりましたという噂を聞かなかったのは、亜種として認めてない人が多いのかもしれない。Zizina emelina terukoaeでググっても殆んど出てこないし、あまり使われていない形跡がある。まあ、その辺の亜種か否かの線引きは素人にはよくワカランよ。
とはいえ、実物を見たことないからなあ…。見たら、瞬時にして違うと感じるかもしんない。経験上、野外で見て直感的に違うと感じたものは、どこがどーのとは具体的に説明できないが、帰って調べてみると大概が別種だったり、亜種だったりすることは多い。海外の蝶なんかは、知識まるで無しで行っても大体それであってたもんね。やっぱり「百聞は一見にしかず」なのだ。
そういえば思い出した。まだヒメシルビアがシルビアの亜種だった時代、石垣島で初めてヒメシルビアに御対面した折りに、直感的に違うと感じた。亜種レベルの違うじゃなくて、別種としか思えなかった。これが何でシルビアの亜種なのか感覚的に理解できなかったのだ。
とにかく「百聞は一見にしかず」である。野外で実物を見ないと、何とも言えないと思う。
いつか、能登半島のシルビアには会いに行かないといけないね。

もう、この辺でいっか…。
第一章から延々と続いてきた迷宮ラビリンスに疲れ切って、もうヘトヘトだよ。
とはいえ、第一章の伊丹市でのシルビアの採集行というか、確認に行った折りの話に戻らないと終えることは出来ない。
 
一応、その時のものを展翅してみた。
ちっこくて大変だ。最近、全く展翅してないしさ。

 
【シルビアシジミ♂】

 
♂だけど、思ってた以上に翅が擦れてる。
裏はキレイだったから、新鮮な個体だと思ったんだけどなあ…。展翅も今イチだし、ガックリくるよ。

 
【シルビアシジミ♀】

 
あっ、低温期型の良い型だ。
秋が深まると、♀はだいぶと青くなるのだ。
なのに、頭が歪んどるやないけー。
このクラスの小ささになると、展翅してても小さ過ぎて細かいとこが見えない。なおすの面倒くさいし、もういいや。

シルビアって小さいし、特別キレイではないけれど、今回のアレやコレやで、より深い魅力を感じた。
ミステリアスな存在は素敵だ。また、来年もシルビアには会いに行こう。そう、思う。

                     つづく

 
追伸
これで終わりかと思いきや、そうではないのだよ。まだ、後日談があるのだ。(ToT)ポテチーン。

一応つけ加えておくと、能登半島のシルビアを亜種と認めていないワケではない。木村氏があれだけ細かく調べて書いておられるのだから、きっとそうなのだろう。ただ、強引に軽微な違いをあげて、亜種としたんじゃないかと考える人もいるだろう。
でもさあ、新種や新亜種の記載をする側の気持ちも解るんだよねぇ。自分も経験があるからだ。今年、蛾のカトカラ(ヤガ科シタバガ属)のニューを見つけ出したんだけど(註2)、記載をお頼みした世界的なカトカラ研究者である石塚勝己さんに『おでぇーかん様~、豪腕で何とか新種にしてくんなせぇー。』とか何とか、恥も外聞もなく頼み込んだもんなあ。新種発見と新亜種発見とでは、響きに雲泥の差があると思ったのである。結局、新亜種になっちゃったんだけどね。正直ガックリきたけど、冷静に考えれば、あれは亜種レベルだと思う。だから、納得はしている。
それでも、実を云うと隠蔽種で、DNA解析したら全然違う別種でしたー、とかってなんねぇかなあと時々思ったりもする(笑)。

 
(註1)能登半島のシルビアの再発見
最初の記録は1992年8月18日、石川県羽咋郡志賀町関野鼻にて小松清弘氏によって採集されたものだった(小松,1993・蝶研フィールド)。だが、その後は全く記録がなく、17年後の2009年に西口 隆氏によって再発見され、まとまった数も採れた(西口,2009・フィールドサロン)。

(註2)カトカラのニュー
Catocala naganoi mahoroba マホロバキシタバ。
『月刊むし』の2019年の10月号にて記載された。

 

シルビアの迷宮 第三章

 
 第三章『ボルバキアの陰謀』

 

 
シルビアシジミの話はまだまだ続く。
 
それにしてもシロツメクサ(🍀クローバー)を食草とするならば、もっと分布を拡げても良さそうなものなのに、何で❓ 謎だよね。シルビアシジミって、そんなに移動能力が低いのかよ❓

さあ、そろそろ坂本女氏の論文に戻ろうか。
他にも平井規央氏等のシルビア関連の論文を見つけたので(註1)、それと併せて要約しよう。

平井規央氏の論文によれば、大阪空港周辺で分布調査を行ったところ、空港周辺から離れれば離れるほど個体密度が低下するようで、1㎞も離れると殆んど見つからないそうだ。
そっかあ…、やはり極めて移動性が低いチョウなんだね。

シルビアとヒメシルビアの種間関係だが、遺伝子解析(ミトコンドリアDNA解析)の結果、かなりの相違があることが明らかになり、全く別系統の種であることが判明した。のちに形態の相違点も見つかり、それらが2006年の別種記載の決め手となったようだ。
形態的な違いは、シルビアはヒメシルビアよりも裏面各室の小黒斑が大きく、前後翅亜外縁の黒斑列が各室の小黒斑と同等に発達している点、後翅表面外縁の黒斑列はシルビアでは波状に、ヒメシルビアシジミでは線状となる傾向が強いなどである。

 
(出典『福岡の蝶』)

(出典『カーコとダンナのお出かけ写真』)

 
上がシルビアの裏面の外縁の黒斑列で、下がヒメシルビアのものである。
言われてみりゃ、そんな気もするが、正直言うと微妙だなあ…。このシルビアの個体は比較的波状だとわかりやすいけど、いくつか確認したら判然としない個体も結構ある。識別点としてはファジー過ぎないかい?
とはいえ、両種を並べたら、裏面をパッと見ただけで区別できちゃうんだけどさ。ようはヒメシルビアは小っちゃくて、裏面の斑点が小さくて薄い。それで充分かと思うよ。

ヒメシルビアは最近になって急速に分布を拡げているそうだ。一方シルビアは極めて移動性が低いワケだから、それも両者が別種であるという証明の一助になるのではなかろうか❓
そういう事を書いている文章を見た事ないけどさ。

両種間での交配実験も行われている。
大阪府産のシルビアシジミのメスと沖縄県八重山産のヒメシルビアのオスとを円筒型ネットに入れて配偶行動を観察した結果、ヒメシルビアのオスはシルビアのメスに強い関心を示し、交尾が成立した。その結果、いずれの母チョウから得られた子世代(F1世代)もオスのみが羽化し、オスの約半数のF1個体では幼虫期に発育が遅延し、孵化後50日以上経過しても蛹化に至らなかったという。
羽化したオスは両種の中間的な形質を示すそうだ。

 
(出典『Potential for interspecific hybridization between Zizina emelina and Zizina otis(Lepidoptera: Lycaenidae)』) 
左端がシルビアの♂。右端がヒメシルビアの♀。真ん中2つがハイブリッドの♂である(スケールバーは5mm)。

 
これらと未発表データ(坂本・平井ほか)の交配実験の結果、別種であることが裏付けられるという。ようはF2世代、特にメスがちゃんと羽化してこないから別種だってワケだね。

それでも両者を別種だと認めない人もまだ結構いるようだ。頑固だなあと思うけど、種の概念なんてものは、所詮は人による勝手な線引きでしかすぎないって事の逆説的証明だとも言えるかもね。

それはさておき、問題なのはシルビアがヒメシルビアのオスから求愛行動を受けることが明らかになった事だ。これはシルビアとヒメシルビアが同所的に生息する場合、つまりヒメシルビアがシルビアの分布域に侵入したとしたら、繁殖干渉が起こる可能性があるということだ。
実際、最近になってヒメシルビアが分布を北上させており、屋久島でも確認されるようになった。そのため、隣の種子島にいるシルビアとの交配の可能性が指摘されている。となると、遺伝子汚染が進み、シルビアが絶滅してしまうって事なのかな❓それとも、いずれ新種へと進化してゆくって事❓
何れにせよ、指摘されてから何年か経っているから、或いはもう心配されたことが既に起こっているかもしれないね。

また実験では、ヒメシルビアシジミのメスは個体によってはシルビアの食草ミヤコグサに興味を示し、多数の卵を産み付けたそうな。しかし、孵化した幼虫にミヤコグサを与えたところ、発育は遅延し、多くの個体が若齢期に死亡したという。
反対にシルビアの幼虫に、ヒメシルビアの食草コメツブウマゴヤシを与えて飼育したところ、25℃長日では 4齢を経過し、幼虫期間は15~18日。シルビアシジミとほぼ同様とあった。羽化したとは書いていないが、死亡したとも書いてはいないので、おそらく成虫にはなったのだろう。それにしても、これまた謎だな。一方は育ち、一方は育たないというのは両種間の関係性において、何らかの意味と云うか、示唆されるものがあるのだろうか❓
考えてみたけど、何にも浮かばないや(´▽`;)ゞ
いや待てよ。シルビアはヒメシルビアから派生した種で、元々コメツブウマゴヤシを食べていたものが分布を東アジアに拡大する過程でミヤコグサに食性転換したとは言えまいか。
ありゃ❓、でも遺伝子解析では別系統だとか言ってなかったっけ❓まあ遺伝子解析の結果が絶対ではないもんな。情報を鵜呑みにするのもどうかとは思う。

因みにヤマトシジミのオスもシルビアシジミのメスに強い興味を示すそうだ。
そういえば、昨今シルビアと比較的近縁なヤマトシジミとの交雑種(ハイブリッド)が出現しているというネット情報もあったなあ。両種の特徴がそれぞれ翅裏の斑紋や翅表の色彩等に現れているとか言ってなかったっけ…。

調べてみたら『ホタルの独り言 part2』というサイトの記事だった。それによると、栃木県の鬼怒川流域や千葉県の一部ではヤマトシジミとのハイブリットが出現しているそうだ。ハイブリッド個体は翅形や色彩はシルビアシジミでありながら裏面の班紋はヤマトシジミというものや、翅形と色彩は全くヤマトシジミでありながら裏面の班紋はシルビアシジミという個体がいるそうである。
元ネタの論文はどんなのだろう?と思って探してみたが、それらしき論文は見つけられなかった。
だが『蝶屋(tefu-ya)のブログ』というサイトに、ほぼ同じ文面があった。これはどうやら、そこからの引用のようだ。
ということは、元々は柿澤清美氏の発信って事か…。
となると、私見が強そうだから、ちょっと気をつけないといけないな。けど、もしこれが事実だとしたら、考えさせられるところはある。
そもそも種って、いったい何なのだ❓ 種の概念がワカンなくなってきたよ。

話はまだ終わらん。
 
論文を読んで一番驚いたのは、昆虫類に性比異常を起こさせる事で知られる共生細菌ボルバキア(Wolbachia)の存在だ。
きっかけは、2002年に森地重博氏が飼育した大阪空港周辺の個体の子世代が、全て♀になった事例であった。そこから、坂本女氏や平井氏はボルバキア感染の可能性を疑った。
ボルバキア感染といえば、タテハチョウ科のリュウキュウムラサキが有名だよね。サモアだったっけ(註2)? そこのリュウキュウムラサキは♀ばっかだと聞いたことがある。あとホソチョウの仲間なんかにも例があったと思う。いわゆる細菌によってオスが成長できなくなるチョウの病気だったよね。
それにしても、メスばっかで生き残ってゆけるのかね❓リュウキュウムラサキは♀だけで繁殖できる単為生殖(註3)ではなかったよね❓
そもそも単為生殖のチョウって、この世にいたっけ❓少なくとも自分は聞いた事がない。

ここで一応ボルバキア感染について説明しておこう。
ボルバキア(Wolbachia pipientis)は、節足動物やフィラリア線虫の体内に生息する共生細菌の一種で、特に昆虫では高頻度でその存在が認められる。ミトコンドリアのように遺伝子として母から子へ伝わり、昆虫宿主の生殖システムを自身の都合の良いように変化させることから、利己的遺伝因子の一つであるとみなされている。
また遺伝子解析では、昆虫を殺して体を乗っ取ることで有名なキノコの仲間、冬虫夏草と近縁関係にあることもわかっている。

ボルバキアって、如何にも悪い奴的な名前だよなあ。
『恐怖のボルバキア』『怪人ボルバキアの呪い』『寄生怪獣ボルバキア』『ボルバキア星人の逆襲』『悪辣ボルバキアの罠』『殺戮のボルバキア軍団』etc…。なんぼでも浮かぶわ。シルビア姫に👿悪魔の手が忍び寄るのら。God save the princess silvia. おぉ神よ、シルビア姫を守りたまえ~。

ボルバキア感染には、以下のような4パターンがある。
マジ、ドえりゃあー悪い奴っちゃでぇ~Ψ( ̄∇ ̄)Ψ

〈1〉オス殺し型
オスの卵のみを殺して、メスだけが孵化するようにする。オスを死滅させることで、メスが餌を独り占めする事となり、ボルバキア菌の繁殖には好都合になるという仕組みだ。
(おみゃーに与える飯はねぇだがやー(#`皿´)❗)

〈2〉単為生殖誘導型
メスがオスなしで、メスのみを産んで繁殖できるようにする。
(男なんて、この世に必要ありませんわ、( ̄∇ ̄)オホホホホホ…。)

〈3〉性転換型
宿主のオスをメスに変えてしまう。
(キャア~、世の中みんな総オカマ化よ\(^-^)/)

〈4〉細胞質不和合型
バルボキアに感染したオスが、感染していないメスの繁殖を妨害する。この場合、オスの卵は殺されるが、メスの卵は殺されることなく正常に孵化するため、世代を積み重ねてゆくと、感染したメスのパーセンテージが集団内で高くなってゆくという手の込んだ仕組みである。
(ジワジワ~、ジワジワ~Ψ( ̄∇ ̄)Ψ、真綿で首を絞めるようにあの世に行ってもらいまっせぇ~)

ムチャクチャ悪い奴やんけ。
でも、人間はもっとズル賢いかもしれない。
近年では、このオス殺し、特に細胞質不和合の仕組みを利用して、蚊が媒介するデング熱やジカ熱などを撲滅する試みが為されている。病の原因となるネッタイシマカを人工的にボルバキアに感染させて大量に野外に放ち、病原体の媒介効率を下げようと云うワケだ。
(;・ω・)ん❗❓、でも蚊のオスって血を吸わないんじゃなかったっけ❓血を吸うのはメスだけだよね。だったら、意味なくね❓

その疑問は扠て置き、話を本筋に戻す。

DNA解析で大阪空港周辺のシルビアのボルバキア感染の有無を調査したところ、採集された個体の多くで予想通りにその感染が認められた。確認されたボルバキアは2系統あり、性比異常が認められた母蝶からは共通のボルバキア系統が確認された。この事から、この性比異常は、ボルバキアによって引き起こされる「オス殺し」であることが明らかになった。

一方、もう1系統のボルバキアでは性比異常は確認されていないが、「細胞質不和合」などの寄主操作を行
っている可能性が考えられている。
兵庫県西部など近隣のミヤコグサに依存している個体群では感染が認められなかったようだ。この事から、昆虫の寄主植物利用の変化に体内の共生細菌が深く関わっているという報告もあるので、シルビアにおいても細菌による寄主操作によってシロツメクサに寄主植物の転換が行われた可能性があると推察している。
しかし、その後の実験では、まだそこまでは証明されていないようだ。因みに、千葉県や韓国においてもシロツメクサに依存する個体群がおり、ボルバキアの感染と性比異常を見つかっている。神出鬼没だぜ、ボルバキア。

それにしても、ボルバキアってのはエグいわ。
自身が生き残る可能性を高めるために、宿主をコントロールするだなんて酷いやり口だ。しかも、宿主が産んだ卵の半数であるオスを抹殺するだなんて、血も涙もありゃしない。オスを標的としたテロであり、ジェノサイドだ。男の敵だ。悪虐非道の限りを尽くす、とんでもねぇ野郎だよ。
ここまでくると、もはや謎とかミステリーの範疇じゃなくて、ホラーの世界だな。もうパラサイト・ホラーじゃんか。
人にも、そんな悪い人がいるかもしんないから、皆さん、気をつけてネ。特に若い女子は気をつけなはれ。世の中には、ボルバキア菌みたいな相手を自在にコントロールする悪い男がいるからネ。
嗚呼、アタシもヒモ男になりたい。

 
                     つづく

 
追伸
ここで漸くクロージングに入れると思ったら、また要らぬモノを見つけてしまった。なので、まだ話は次回へと続くのである。
いつまで続くんだ❓この出口の見えないシルビア・ラビリンスのループは❓
もしかしたら、ワシもボルバキア菌みたいなものに知らず知らずに乗っ取られていて、書き続けさせられているのかもしれない。でないと、こんなパラノイア的文章を書き続けている理由の説明がつかんよ。

 
(註1)他にもシルビア関連の論文を見つけたので

・坂本佳子(2015).シルビアシジミの生息域外保全に向けた保全単位の決定(昆虫と自然,50(2))
・坂本佳子 (2015).絶滅危惧種シルビアシジミにおける遺伝子構成とボルバキア感染(昆虫DNA研究会ニュースレター,23,11-18.)
・平井規央(2016).シルビアシジミのホルバキア感染と性比異常(昆虫と自然,51(1))

 
(註2)サモアのリュウキュウムラサキ

【Hypolimnas bolina ♂】

 
サモアとフィジーのリュウキュウムラサキは、rarikっていう亜種なんだけど、画像が見つけられなかった。太平洋のド真ん中だから♀は海洋型でいいのかなあ❓
リュウキュウムラサキの♂は何処でも同じような見た目だが、♀には地域によってヴァリエーションがある。
一応、この下に海洋型の♀の画像を貼っておくけど、サモアのがこのタイプなのかは自信がない。間違ってたらゴメンなさい。

 
(出典 2点共『Alchetron』)

 
サモアのリュウキュウムラサキはオス殺しボルバキアの蔓延が約百年近く続いていたが(Dyson & Hurst,2004)、その後数年でオス殺しに対する宿主の抵抗性遺伝子(優性の胚性因子:Hornett et al,2006)が急速に広まり,集団全体でボルバキアに感染しているのにも拘わらず、オス殺しが起きなくなったことがわかった(Charlat et al,2007;Mitsuhashi et al,2011)。
興味深いことに,オス殺しが起きなくなることによって出現する感染オスは非感染メスと交尾すると細胞質不和合を引き起こすことが明らかとなった(Hornett et al,2008)。つまり、ボルバキアが持つ細胞質不和合を持つ能力はオス殺しによってマスクされていたことになる。
ボルバキア、恐るべしである。

 
(註3)単為生殖
メスがオスと交尾をしなくとも、単独で受精卵を産んでメス世代を繰り返すこと。
因みに、リュウキュウムラサキは単為生殖ではござんせん。

 

シルビアの迷宮 第二章

 
第二章『シルビアン・ミステリー』

  
でも、論文(註1)をチラッと見てアレルギー反応が出た。
シルビアの謎に翻弄され、もうウンザリなのだ。真面目に読む気にもなれない。ここは一旦、種解説にでも逃げよう。ケースによっては、そのまま逃亡、クロージングになってもいいや。

 
【シルビアジジミ】
シジミチョウ科(Lycaenidae)、ヒメシジミ族(Polyommatini)、シルビアシジミ属(Zizina)に分類される前翅長8~14mmの小型のシジミチョウ。

♂の翅表は紫色がかった青藍色で、春と秋の型に比べて夏型は外縁の黒帯が広くなる。♀の翅表は夏型は黒に近い暗褐色。春型と秋型は翅表基部にも弱い青藍色斑が出る。図鑑等には書かれていないが、私見では秋型の♀は晩秋になると、その青が広がる傾向があるように思う。
裏面は灰白色~暗灰白色で、小黒斑が散らばっている。秋と春には暗灰白色になる傾向が強い。
普通に産する近似種のヤマトシジミと比べ、表翅がより青く(ヤマトは水色系)、前翅裏面の中室内に黒点が無いこと、後翅裏面の外側より3列目の黒点列の前より2番目の黒点が内側にズレるために黒点の形成する円弧がここで分断される点で区別される。
基本。図鑑からパクったけど(*`Д´)ノ!!!でーい、こんなクソ難解な説明、一般ピーポーにはワカランわい❗特に後半はチンプンカンプンじゃい❗❗
もう画像を貼っとくワ。そっちの方がよほど解りやすかろう。

 
【シルビアシジミ 春型♂】

(2017.4.26 伊丹市)

 
相対的に春型が一番大きく、秋型、夏型の順に小さくなる。但し、あくまでも相対的であって、個体差の大小は結構ある。秋でも、たまに春並みに大きい個体もいたりするからだ。

(/ロ゜)/あっ❗、ここでヤマトシジミの画像を貼ろうとして気づく。
ヤマトシジミなんて、何処にだっているドがつく普通種である。ゆえに殆んど展翅したことがない。となれば、数ある標本箱の中から探し出すのは大変そうだ。採りに行った方が余程早い。そう思い、近所の公園に行くことにした。ヤマトくんなんぞ、その辺の児童公園に行きゃあ、大概いるのである。一般ピーポーでも、すぐ見つけられるよん💕。それくらいド普通種なのさ。ある意味、最も都会の環境に順応した賢(かしこ)チョウかもしれない。

しっかし、都会で網出すのって恥ずかしいねー。完全に挙動不審のオッサンだ。大の大人が網持って都市部をウロウロしてるんだから、そりゃあ注目浴びますよ。
網を出すか出さざるまいか迷ってたら、天気が悪くなり始めた。おまけに風も出てきた。
(*`Д´)ノえーい、もうしゃあないわい。人々の好奇の目を頭から追いやり、カバンから網を取り出す。
シャキーン(=`ェ´=)ノ❗いざ、ゆかん。チビどもを殲滅してくれるわ。

しかし思いの外、飛ぶのが速い。風も強くて、網を振ろうとしたら、スッ飛ばされていったりもする。段々、腹が立ってきて、アミ持って追いかけまくる。
ε=ε=(ノ≧∇≦)ー〇 待てぇ~、コンニャロー。
もうオジサン、ヤケクソである。もはや挙動不審者として通報されても仕方あるまい。

頑張って、何とか数頭を確保。

 
(2019.11.11 大阪市浪速区)

 
シルビアほどではないが、小さい。
一応、画像を拡大しておこう。

 

 
たぶん、♂だな。
パリエーションがそれなりにあるので、別個体の♂も貼っておこう。

 

 
シルビアよか、地色が白っぽい。
同じ灰色でも灰白色って感じだ。

♀の裏は微妙に色が異なる。

 

 
メスは薄い黄土色なのだ。
とはいえ、きっとオスみたく微妙な色なのもいるんだろうなあ…。ヤマトなんぞマジメに採った事ないから、どんだけバリエーションの幅があるのかワカラン。

まっ、前回のシルビィーちゃんと見比べてくんろ。

 

 
地色だけでなく、斑紋も微妙に異なることが解るかと思う。

お次は表側だ。

 
【ヤマトシジミ♂】
(2019.11.11 大阪市浪速区)

 
シルビアと比べて、色が水色っぽい青なのだ。
例外もあるが、ヤマトの方が下翅の縁にある黒点が目立つ個体が多い。

 
【シルビアシジミ 春型♀】
(2017.5.2 伊丹市)
 
【同春型♀】
(2017.4.26 伊丹市)

 
【ヤマトシジミ♀】

  
♀も色が違う。
どっちかというと、ヤマトは青というか紺色っぽい奴が多いんだけど、例外もあったりするから注意が必要。ヤマトの方が青が暗い色のものが多いかな。

そういえば、変なのもいた。

 

 
晩秋になると青くなる低温期型の♀かなと思ったが、腹部は♂っぽい。たぶん、♂かな…。普段、ヤマトシジミなんて採らないから、ホント、ワケわかんねえや。

翌日、間違いなく低温期型の♀を見つけた。

 
【低温期型♀】

 
やっぱ、変だと思った奴は♂だな。質感が全然違う。

採って時間が経ってるのに無理に生展翅したら、触角が折れた。結構、青が広がっている良い型なのに勿体ない。
何か悔しいので、標本箱を探したら、低温期型のメスが見つかった。

 

 
古い標本ゆえか、色が褪せて紫色になっている。
でも、こんだけ青い領域が広いとヒマつぶしに探してもいいなと思えてくる。

 
【シルビアシジミ裏面】
(2017.4.26)

 
【ヤマトシジミ裏面】

 
ヤマトは後翅中央斑列が弧を描くが、シルビアは列が乱れる。また後翅外縁の斑紋の感じが違う。外縁の内側2列目の紋が大きい傾向がある。あんまし図鑑には書いてないけど、自分はどっちかというと、そこで判別している。但し、ヤマトでも紋が大きいものはいるので、そういう場合は他の部分も含めて総合的に判断している。

まあ、これで違いがワカラン人は何度説明してもワカランちゃよ。

ついでに今一度ヒメシルビアシジミの画像も貼っておこう。

 
【ヒメシルビアシジミ Zizina otis ♂ 】
(2013.2.24 沖縄県南大東島)

 
こうして改めて見ると、表側は殆んどシルビアシジミと同じだな。別種になった事に納得いってない人もいるだろね。両者の区別点を書いているものがあまり見当たらないから、尚更だろう。
両種の形態的な違いは、シルビアはヒメシルビアよりも裏面各室の小黒斑が大きく、前後翅亜外縁の黒斑列が各室の小黒斑と同等に発達している点、後翅表面外縁の黒斑列はシルビアでは波状になり、ヒメシルビアシジミでは線状となる傾向が強いなどだそうである。

 
【同♀】
(2013.2.24 沖縄県南大東島)

  
たぶん低温期型の♀で合ってると思うけど、間違ってたらゴメンなさい。通常は青色鱗が発達せず、黒褐色です。

 
【裏面】
(2013.2.23 沖縄県南大東島)

 
裏面はシルビアとかなり印象が変わる。
特に低温期型は、このように斑紋が殆んど消失しかける。
手持ちの通常型がナゼか見つからないので、画像をお借りしよう。

 
【裏面通常型】
(出典『双尾Ⅱ 変異・異常型図鑑』)

 
だいたいがこんなもんだ。シルビアと比べて斑紋が小っちゃくて薄いのだ。
それにしても、ネット上でヒメシルビアの展翅写真が殆んど見つからないのはナゼ? 小さ過ぎて、みんな展翅がまともに出来なかったりして…。ワテの展翅も酷いもんな。これだけ小さいと、肉眼で見て頭が歪んでるなんてワカランもん。しゃあないわいな。

この際、他の近似種も並べておこう。
小難しい言葉を並べたくはないので、各種の判別は印象で書く。細かい判別法は図鑑を見て下され。

 
【ハマヤマトシジミ Zizeeria karsandra ♂】
(2013.2.24 沖縄県南大東島)

 
ハマヤマトの♂は紫色だ。シルビアは青いので、それで大まかな区別はつく。だが、南大東島では最初のうちはどっちがどっちかワケわかんなかった。
いる場所も同じで、荒れ地など草丈の低いところで混飛しているので、ややこしい。飛んでいるのを見て、紫色っぽいのがハマヤマトの♂なのだが、どっちなのか微妙なのもいて、採ってみないとワカンナイのだ。
因みに、ヤマトは微妙に生息環境が違い、もう少し草丈が高いところを好む。南大東島では、同じポイントに3種同時にいたが、ヒメシルビア&ハマヤマトとヤマトのいる場所には明確な境界線があった。
また飛び方も違う。ヒメシルビアとハマヤマトは地面スレスレに飛ぶ地這い型だが、ヤマトはもっと高いところを飛ぶ傾向があり、スピードも緩やかだ。

 
【同♀】
(2013.2.24 沖縄県南大東島)

 
正直、♀は飛んでる両者の識別が全然出来なかった。結局、♂も♀も採って確認するしかないのだ。

 
【裏面】
(2013.2.24 沖縄県南大東島)

 
上翅の黒点がハッキリしていて、濃いのが特徴だ。他の近似種はこんなに黒くはなくて、もっと茶色っぽい。だから、採って最初に確認するのがソコ。

 

 
こうして上翅の黒点が目立つのだ。
しかしこれは♀で、♂となると微妙になってくる。

 

 
暫くジッと見てから、ようやくハマヤマトだと特定することができる。

 
【ホリイコシジミ Zizula hyiax ♂】(出典『chariot』)

 
採った事はあるのだが、標本を探すのが億劫なので、画像をお借りした。
これは、Zizula hylax attenuataというオーストラリアの亜種なのだが、まあ基本的にはそんなに変わらんからエエやろ。左の♂の色が実物よりも紫色なのが気になるけど(実物はもっと青っぽい)、許してくれ。正直、ホリイコもネットでググっても標本写真があんま無いのである。ヒメシルビアと同じく生態写真は山ほどあるのにね。たぶん小さ過ぎて、まともな展翅ができる人が少ないから、あまり表には出てこないのだろう。
英名は、Tiny Grass-blue(ちっぽけな草原に棲む青い蝶)っていうくらいだから、とにかく小さい。世界で最も小さな蝶の一つなのだ。
その矮小さが理解できる画像が見つかったので、貼っつけておこう。

 
(2013.10.4 石垣島)

 
ほら、笑けるほど小さいでしょ。
アッシは腕は長いけど手が小さい。ゆえにサイズ感的には、ホントはもっとチビッコです。

言い忘れたけど、日本で迷蝶として採集されるものはインドをタイプ産地とする原名亜種とされている。

近似種との区別点は他と比べて小さいことだが、ヒメシルビアやハマヤマトにも極めて小さな個体もいるので、注意が必要。他の区別点としては、♂の腹部が長いこと、翅形が幅広くて丸いことだろう。あと決定的違いといえば、裏面の前翅前縁に2個の褐色小点があることかな(他の近似種は0~1個)。でも、ボロや擦れた個体だと丸っきりワカランとです。

また寄り道になった。
シルビアの話に戻ろう。

 
《成虫の発生期及び幼虫の食餌植物》
4月下旬より11月頃まで年に数回(4~6回)発生する。幼虫の食草はマメ科で、主な食草はミヤコグサ。他にヤハズソウ、コマツナギ、ウマゴヤシ、シロツメクサ(クローバー)などにもつく。飼育する場合、インゲンマメとエンドウマメ(スナップエンドウ)が代用食になる。で、スナップエンドウで飼育すると巨大化するようだ。但し、無農薬のものでないと緑色の液を吐いて死ぬそうなので、お気をつけあそばせ。

越冬態は幼虫。
時々思うんだけど、幼虫で越冬するって寒くねえか❓
夜間の気温はマイナスになることだってあるし、ゼッテー寒いだろうに。卵や蛹の方があったかそうに思えるんだけどなあ。人間側目線からの、ただの思い込みでしかないのかもしれんけど…。
誰かこの問いに答えられる人おらんかのう❓

 
《学名》Zizina emelina

Zizina otis となっていたのを、emelinaに書き直す。あっ!、それで思い出したわ。ここの項って、第一章を書き始めて、さして間もなく先に途中まで書いてたんだわさ。だから学名は、Z.otisだとばかり思って書き始めているのだ。学名なんかは決まり事なので、比較的早めにチャチャッと草稿を書いてしまう事が多いのである。
まっ、いっか…。順番が相前後するだけで、内容は同じだ。このまま書き直さずに進めよっと。というワケで、先ずはヒメシルビアから。

学名の小種名「otis」の語源はギリシア語で「敏感な」の意かな? 古いドイツ語の「裕福な」ということも考えられるけどさ。また、これは人の名前のオーティスだとも考えられるからして、オーティスさんに献名された可能性もあるだろう。どれが正しいのかな?
ここはまた、平嶋義宏氏の『蝶の学名-その語源と解説-』の力をお借りするしかあるまい。

それによると「一般に男性の名」とあった。ということは、オーティスさんへの献名ってことかな?

同じくシルビアの「emelina」も人名由来。
女性名のEmeliaに因み、「エメリナの」の意となっていた。

おっと、属名のことをスッ飛ばしてるわ。カトカラの事をシリーズで書いているので、属名はいつも端折ってる癖がついてんだね。
Zizina(ジッジーナ)というジジイがどーしたこーした的な属名は、同じシジミチョウ科のZizera属を元に作られたもので、強いて言えば「Zizera様の」の意なんだそうだ。でもZizeraはそもそもムーアの造語で、単なる文字の組合せによるもので意味はない。ムーアって、語源がワケわかんねぇような学名を乱発しまくってるんだよなあ。ツマベニチョウなんかの属名も意味不明だもんな(註2)。

 
《英名》Lesser grass blue

これは「草原の、より小さなブルーの蝶」、或いは「草原の、より少ないブルーの蝶」という意味だろう。🐼ジャイアントパンダに対するレッサーパンダみたいなもんかな?ということは、ジャイアントパンダは大型の青いシジミ、例えばアリオンゴマシジミなんかを指してて、それよりも小さいって意かな。

他に「Common grass blue」というのもあるようだ。こちらは「草原のありふれた青い蝶」という意味である。
これはおそらくヒメシルビア(Z.otis)に宛てられたものだろう。確かにヒメシルビアはシルビアよりも更に小さいし、南西諸島には何処にでもいる普通種だ。
国外では…と、その分布を書きかけて筆が止まる。wikipediaを孫引きしようとしたのだが、「朝鮮半島南部、台湾、中国よりインド、南はオーストラリアにかけて東洋熱帯に広く分布する。」と書いてあるのを見て気づいた。これは分類がまだ細かく分けられていない時代につけられた英名に違いない。種ヒメシルビア(Z.otis)そのものにつけられたものではなく、謂わば、otis種群全体に対してつけられたものだろう。

ともかく種としての Z.otis(ヒメシルビアシジミ)とは反対に、シルビアジジミは何処にでもいるようなものではなくて、稀種に入る。一方はド普通種で一方は稀種となると、生態他の性向が全く違うという事だろう。両者が別種であると云うのも頷けるわ。
関西の蝶屋の間では、シルビアは大阪空港とその周辺というベリーイージーな場所にいるから軽視されがちだけど、全国的にみれば、かなり珍しいチョウである。
関東から九州の種子島まで分布するが、生息地は局所的で絶滅危惧種にランクされている。フェルトンが最初に見つけた栃木県のさくら市では天然記念物に指定されてもいる。
環境省RDBカテゴリでは、絶滅危惧ⅠB類(EN)に選定され、東京都、埼玉県、愛知県、岐阜県、滋賀県、和歌山県(註3)、高知県、愛媛県では絶滅、福岡県などその他分布域のほとんどの府県が絶滅危惧Ⅰ類に選定している。

もともと里山や平野部などの人間生活に近い場所に生息しているため、土地開発によって大きな影響を受け、1980年以降、全国的に著しく減少しているそうだ。
またその理由として坂本女氏は、本種は発生時期において各個体が羽化するタイミングの同調性が低くて成虫の寿命が短いこと、昆虫類特有の感染症の影響、移動性が低いために地域ごとに異なる遺伝子のタイプをもっていることから近親交配による弱勢が進み、各個体群ごとの遺伝的多様性が低下して個体数が著しく減少していると書いておられる。シルビーちゃんの未来は暗いねぇ~。

前述したが、幼虫の主な食草はマメ科のミヤコグサ。同じマメ科のヤハズソウやコマツナギも食草としている。
しかし、大阪空港とその周辺にはミヤコグサは無い。コマツナギも無いようだ。じゃあ、ここのシルビアシジミは何食ってんのかと云うと、主にシロツメクサ(クローバー)で、一部がヤハズソウ(何れもマメ科)を食草として利用している。シロツメクサは食草転換したとされ、近年になって利用されるようになったと言われる。
(# ̄З ̄)ホントかよ。単に見つからなかっただけで、昔から食ってたんじゃねーの❓
だいちクローバーに食草転換したとして、何故にその必要性があったのだ?食草転換した理由は何なのさ。誰か教えてくれよ。

たぶんシロツメクサを食草としているシルビアが見つかったのは大阪空港周辺が最初だったんじゃないかな。それ以後、千葉などでもシロツメクサを利用している種群が見つかっているようだ。
因みに此所の個体群は兵庫県南西部の個体群よりもサイズが大きいとの報告もあるようだ(2014’京大蝶研SPINDA19)。シロツメクサを食ったらデカくなるのかな?それともシロツメクサは沢山生えてるから、餌資源が豊富だから大きくなるのかな❓
それにしても、シロツメクサを食草とするならば、もっと分布を拡げても良さそうなものなのに、空港周辺にしかおらんのは何で❓ シロツメクサなんて「🍀四つ葉のクローバー」のクローバーなんだから、何処にでも生えている。それを辿っていけば、分布の拡大なんて楽勝なのにさ。謎だよね。羽があるのに、そんなに移動能力が低いのかよ❓

                     つづく

 
追伸
まだ終わらんのだよ。
自分でもウンザリなのだ。次回、益々ワケわかんないラビリンス世界にズブズブに嵌まってゆきます。

 
(註1)論文
『シルビアシジミの生活史と遺伝的多様性に関する保全生態的研究』(坂本佳子 2013’大阪府立大 博士論文)

(註2)ツマベニチョウの属名も意味不明だ
ゴメン、勘違い。平嶋義宏氏の『蝶の学名-その語源と解説-』によると、Hubner(ヒューブナー)の命名でした。彼もムーア同様に難解な創作学名が多いそうだ。
ツマベニチョウの属名 Hebomoia(ヘボモイア)は、おそらく神話由来で、ギリシア語のhebe(青春の女神という意)=青春+ギリシア語のhomos(同一の)。共通の+接尾辞-iaと書いてあった。
何だそりゃ❓造語ということは解るが、意味があんましワカラン。日本語は難しいのう( ̄З ̄)

(註3)和歌山県では絶滅
南紀に、おるけどなあ…。
 

シルビアの迷宮 第一章

  
   第一章 『可憐な少女』

 
11月初め、伊丹にシルビアシジミの様子を見に行った。

 
(2019.11.5 伊丹市猪名川河川敷)

 
しかし、河川敷のポイントは草刈りされた直後だった(写真とは違う場所です)。
なのかどうかはワカンナイけど、飛んでいるのはヤマトシジミばっかで中々見つからない。
飛んでいる時の姿はヤマトシジミと非常に紛らわしい。だが、慣れると若干シルビアシジミの方が小さく、♂は翅表がより青っぽく見えるので、おおよその区別はできる。飛び方もヤマトよりも敏捷で、地面を這うように飛ぶものが多い。地這いシジミだ。ヒメシルビアシジミ、ハマヤマトシジミもそんな飛び方なので、個人的には「地這いシジミ三姉妹」と呼んでいる。
けど、草が刈られているせいか、ヤマトも地這い飛びしてる。それに数も多くて、ちょっと青っぽいのや小さい個体もいるので段々ワケわかんなくなってきた。

各ポイントを回り、辛うじて3頭だけ確認できた。
そのうちの2つを持ち帰る。

 

 
相変わらず、ちっちゃいねー。
なんで、拡大しときます。

 

 
シルビィーちゃん、可愛ゆす~(о´∀`о)
あっ、自分は個人的に愛着を込めて、そう呼んでます。
秋型だ。春型と同じく裏面がグレーっぽくなるから、採りさえすれば、この時期は近縁のヤマトシジミとは区別し易くなる。

一応、表側はこんな感じです。

 
【シルビアシジミ♂】
(2017.4.26 伊丹市)

 
表側は、もっと可愛い。

シルビアシジミ。いい名前である。
覚えやすいし、響きもいい。また如何にも可憐な少女をイメージさせるところがある。実際小さいし、ピッタリな名前だと思う。
そういえば、その名前の由来も素敵だったね。和名は、或る蝶の研究者が夭逝した自分の娘の名前をつけたんだよね。
でもその程度の知識で、詳しいことは知らない。
んなもんで、一応ネットでググってみた。したら、諸説ある。大まかなところでは同じなのだが、細かいところが異なっているのだ。どうせ皆さん、アタイと同じく孫引きで、自分の勝手な見解も入ってんだろね。

その折りに学名を見て、あれれっ( ゜o゜)❓と思う。学名の小種名が silvia ではなくて、otisってなってるぞ。またエライところに触れてもうた。もう勘でわかる。こんなの調べ始めると泥沼だぞ。
けんど、このまま蓋をしてスルーするのも癪だし、更に詳しく調べてみることにした。

で、やっと見つけたのが、中村和夫氏の『中原シルビア嬢の小墓碑』と題した文章である。これが一番詳しく書かれているから、由来の正伝と捉えることにした。以下、その文の要約と補足である(一部他の知見も入ってます)。

「シルビアシジミの和名はガン学者中原和郎(1896~1937)の夭折した一人娘 Sylvia Nakahara の名に由来する。
しかし、シルビアシジミの最初の発見者は実をいうと別にいる。
東京大学で英語教師をしていたモンタギュ・アーサー・フェントン(Fenton 1850~1973)は、教え子の一人である田中舘の郷里、岩手県福岡村(現 二戸市)へ向かう徒歩旅行の途上,栃木県氏家町(現 さくら市)上阿久津で本種を採取した。奥州街道と鬼怒川が交差する地点である。フェルトンは昆虫の知識も豊富で、これをヤマトシジミとは別種と考え、河床地に限るという生息地の特性をも見抜いた。
そしてフェントンは学生たちと共に周辺を調査し、その食草も突き止めた。ヤマトシジミの幼虫はカタバミなどを食すが、このチョウの幼虫はミヤコグサを食草としていることが判明したのである。フェントンは1880年に帰国し、これを Lycaena alope(Butler 1881)として新種記載した。

フェントンがこの蝶を発見してから約40年後、中原和郎は米国イサカ市のコーネル大学の大学院に留学。米国女性と結婚し、二女シルビアが誕生する。しかし、生後8カ月(7ヶ月説もある)で亡くなってしまう。
その2年後、中原は日本の友人から送られた1920年兵庫県佐用郡久崎町で得られた上記と同一のものを未記載種(新種)と考えた。彼は娘を悼んで、それに Zizera sylvia(Nakahara 1922)の名を与えた。
しかし、Butler、Nakahara、何れの記載も英文誌に発表され、日本では注目を浴びなかった。また英文誌であるゆえに、和名もつけられていなかった。
余談だが、中原氏は癌研究の権威でもあり、国立がんセンター(現国立がん研究センター)の名誉総長も務めた人だ。

話は尚も続く。
旧制成城高校・中学生の成富安信は健康を害し、療養中に蝶を採集していた。そして1938年、知人の紹介で理研の中原に指導を受けるようになった。その時、成富は友人が1940年岡山県下で採集した種名不詳の蝶を中原宅へ持参した。それは中原が記載したものと同じものだった。この再発見を喜んだ中原が成富に要請し、新称シルヴィアシジミの和名が記録された(成富1941)。しかし、この時もフェルトンの記載には未だ気付いていない。
太平洋戦争終了後,古い記録を精査していた昆虫学者の白水隆(1950)が上記の記載が同一種であることを突き止め、世に明らかにした。そして、新たに学名をZizina otisとした。よって学名の sylvia はシノニム(同物異名)になり、無効となってしまう。
また、同一の種にタイワンコシジミ、ヒメシジミの和名が重複して与えられていたが、江崎・白水(1950)は和名としてシルヴィアシジミを採用する。その後,現代カナ遣いでシルビアシジミの表記が用いられるようなった。」

物語があって、素敵な響きのある和名は愛されるという典型だね。
時々、和名なんて海外では全く通用しないから要らないと思うけど、こういう素敵な和名を前にすると、やはり和名はあってよしだと思う。

しかし、これで話は終わらない。
「さらにその57年後には、日本・本州一帯の本種の学名は矢後(2007)のDNA情報に基づく整理によって、新たな学名 Zizina emelina(delʼOrza 1869)が与えられる事となる。」とも書いてあったのだ。
Σ(゜Д゜)何じゃそりゃ❗❓である。
そう思ったが、よくよく考えてみると、従来シルビアジジミの南西諸島亜種とされてきたものが、数年前に別種ヒメシルビアシジミになったんだよね。

 
【ヒメシルビアシジミ Zizina otis ♂ 】
(2013.2.24 沖縄県南大東島)

 
古い標本で、色が褪せている。
展翅もド下手。小さ過ぎて匙を投げた事を思い出したよ。

話を戻そう。
で、今までの学名 Zizina otis はヒメシルビアに付けられて、本土産のシルビアには、Zizina emelina という新たな学名が宛がわれたってワケやね。
一瞬、emelinaって何由来の命名❓と思ったが、これはどうやら本土産の亜種名だったemelinaが、そのまま種名に昇格したようだ。
でも沖縄亜種の亜種名は、riukyuensis(「琉球の」という意)だった筈だ。これは昇格しないのか❓ 何で otis になったのだ❓ だいち、そもそもフェルトンが最初に見つけたものに命名された Lycaena alope は何処へ行ったのだ❓ Lycaenaは属名が変更されたのだろうが、alope は何処へ消えたの❓ワケわかんねえや。
たぶん、これもシノニムになってんだろうなあ…。
フェルトンの記載は1881年だけど、Zizina otisの原記載は Zizina otis otis(Fabricius,1787)となっているから1787年だろう。となると、もっと古い。だから、otisの方に名前の先取権があるのだろう。
あっ、そっか…。何となく謎が解けてきたぞ。沖縄のヒメシルビアの学名が「otis」になっているのは、これが従来の Zizina otis に組み込まれて、むしろ本土産が別種となったのだ。つまり亜種名が消えたワケではなくて、Zizina otis riukyuensis になったってワケだね。一件落着だわさ。

けんど、すぐに新たな疑問が湧いてくる。
emelinaの記載年は1869年になっていて、別種に分けられた年の2007年ではない。つまり、新種ではないことになる。また、フェルトンが記載した1881年とも合致しない。ならば、シルビアシジミが最初に見つかったのは日本ではないことになる。だったら、原記載は何処の国のシルビアなのだ❓ 謎が謎呼ぶシルビアちゃんだ。

探したら、『Lean About Butterflies』というサイトに、Zizina emelina はチベットと中国西部のみに生息するとあった。のみ❓
( ; ゜Д゜)おいおい、日本には居ないことになってるぞ。益々、謎が謎を呼ぶ展開になってきた。藪蛇ってヤツだ。エライとこ、突っついてしまったなりよ。

探しまくって、ようやく『シルビアシジミの生活史と遺伝的多様性に関する保全生態的研究』(坂本佳子 2013’大阪府立大 博士論文)という長ったらしいタイトルの論文を見つけた。
そこには「シルビアシジミ Zizina emelina emelina(以下、本種)は、日本と韓国に分布し、…」という記述があった。ということは韓国で初めに見つかったということになるのかな?…。もう、そういうことにしておこう。

また、「Zizina-nic.funet.it」というサイトでは、下のような記述も見つけた。

Zizina emelina emelina; Yago, Hirai, Kondo, Tanikawa, Ishii, Wang, Williams & Ueshima, 2008, Zootaxa 1746: 32

Zizina emelina thibetensis; Yago, Hirai, Kondo, Tanikawa, Ishii, Wang, Williams & Ueshima, 2008, Zootaxa 1746: 32

たぶん矢後氏他の記載論文か何かだろう。
これでチベットと中国西部のみの分布という謎も解けた。つまり、この記述からすると、チベットと中国西部産のものは別亜種 thibetensis となるワケだ。
ようは、チベットと中国西部のみに生息しているとした『Lean About Butterflies』の記述は間違いだったって事だね。亜種なんだから、チベットや中国のシルビアは最初に見つかった原記載されたものではない。

このサイトは、Zizina属についても言及しているので、ついでに意訳したものを訂正、補足して載せておこう。

「Zizina属には5種が知られています。最も一般的で、広く分布しているのがインドからアジアに分布するotisです。他は以前は全てotisの亜種と見なされていましたが、現在では異なる種として認識されています。Z.antanossaはアフリカ北西部・東部・マダガスカルに見られ、Z.labradusはオーストラリア、Z.oxleyiはニュージーランドに分布しています。」

で、最後に「emelinaはチベットと中国西部にのみ限定されて分布するようです。」と書いてあった。あっ、自信が無いのか断言はしていないね。

但し、この属の分類には他の見解もあって、Zizina属に含まれるアフリカからアジア、オーストラリア、ニュージーランドまで分布するもの全てを同一種とし、それぞれを代置関係にある亜種とする考えも根強くあるようだ。

ついでのついでで、wikipediaにあったのも載せておこう。学名の下側は英名である。

・Zizina antanossa (Mabille, 1877)
dark grass blue or clover blue

・Zizina labradus (Godart, [1824]) common grass blue, grass blue, or clover blue

・Zizina otis (Fabricius, 1787)
lesser grass blue

・?Zizina similus

・?Zizina emelina

あれれ?、気づかんかったけど、Z.oxleyiというのが無くて、替わりにZ.similusってのが入ってんぞ。おまけに❓マーク付きだわさ。emelina にも❓マークが付いてる。ウキ(wikipedia)を書いた人も、不明で扱いに困ったんだろね。

結局、similusというのは、探しても見つけられなかった。近いのが「Zizina-nic.funet.it」にあった下のコレ。

Unknown or unplaced taxa
Polyommatus similis Moore, 1878; Proc. zool. Soc. Lond. 1878 (3): 702; TL: Hainan
Cupido similis; [NHM card]

しかし、similisとなってて、綴りが微妙に違う。しかも、Unknown or unplaced taxaとなっている。ようするにワッカリマセーンってことやね。不明で、定義できない分類群ってワケだすよ。
oxleyiというのは色んなサイトに出てくるから、たぶん5種のうちの一つはコチラが正しいんだろね。

ついでのついでのついでで、Z.otis(ヒメシルビアシジミ)の亜種名も並べておこう。
因みにwikipediaでは、シルビアシジミ(本土産)の学名が Z.emelinaではなく、Zizina otisのままになってるんだよなあ。ネットの多くのサイトでも、シルビアシジミ=Zizina otisとなってるものが多いんだよねぇ…。そりゃ、混乱も呼ぶわいな。
もう、いっか…。謎を掘り進むのにも疲れてきたよ。取り敢えずヒメシルビアの亜種を並べて、この迷宮の出口を探そう。

・Z. o. annetta (Toxopeus, 1929
・Z. o. aruensis (Swinhoe, 1916)
・Z. o. caduca (Butler, [1876])
・Z. o. indica (Murray, 1874)
・Z. o. kuli (Toxopeus, 1929
・Z. o. lampa (Corbet, 1940)
・Z. o. lampra (Tite, 1969)
・Z. o. luculenta (Kurihara, 1948)
・Z. o. mangoensis (Butler, 1884)
・Z. o. oblongata (Kurihara, 1948)
・Z. o. oriens (Butler, 1883)
・Z. o. otis (Fabricius, 1787)
・Z. o. oxleyi (C.& R.Felder, 1865)
・Z. o. parasangra (Toxopeus, 1929)
・Z. o. riukuensis (Matsumura, 1929)
・Z. o. sangra (Moore, 1866)
・Z. o. soeriomataram (Kalis, 1938)
・Z. o. tanagra (Felder, 1860)

wikipediaには、加えて下のような記述がある。

and possibly 2 undescribed subspecies from Sulawesi/Selayar and Banggai.

おそらくコレはインドネシアのスラウェシ/スラヤール島とバンガイ諸島からの2つの未記載の亜種があるって事だね。
何だ❓その曖昧模糊とした言い方は。何で未記載なのだ。わかってんなら記載しろよな。理由がワカラナイ。謎だよ。

それにしても凄い数の亜種だ。
面倒なので各亜種の分布地は調べない。どうせ新たなる謎にブチ当たるに決まってんである。シノニムも仰山あるに違いない。これ以上はもう御免だ。気になる人は自分で調べてね。ほいでもって謎地獄の迷宮に迷い込めばいいのだ。Ψ( ̄∇ ̄)Ψほほほほほ。

よせばいいのに、そういえば学名ではググってなかったなと思い、やってみた。
したら、こんなん出てきましたー。

Molecular systematics and biogeography of the genus Zizina (Lepidoptera: Lycaenidae)
Apr 2008 Masaya Yago、Norio Hirai、Mariko Kondo

見たら、これがどうやら矢後氏他の記載論文だろうと勝手に想像してたものだ。
しかし、そうではなくて、Zizina属のDNA解析の論文のようだ。
そこには、画像もあった。

 

(a:表、b:裏)
5 Zizina emelina emelina 兵庫県小野市
6 Z.emelina thibetensis 雲南省(中国)
7 Z.otis otis 広西チワン族自治区(中国)
8 Z.otis otis ハブロック島、南アンダマン島(インド)
9 Z.otis riukuensis 沖縄県大東島
10 Z.otis ssp フローレス(インドネシア)
11 Z.otis indica マイソール、カルナタカ州(インド)
12、Z.otis antanossa アブリー(ガーナ)
13、Z.otis labradus ケアンズ(オーストラリア)
14、Z.oxleyi ノースカンタベリー(ニュージーランド)

 
論文はDNA解析の結果、Z.labradusとZ. antanossaは種から亜種に降格、Z.otisの亜種としている。すなわち5種が3種に整理されたワケやね。
Z.otis、Z.oxleyi、Z.emelinaの3種は、約250万年前に共通の祖先から分岐したと推定している。
そして、Z.oxleyiとZ.emelinaの祖先は温暖な気候に適応して北半球と南半球で分岐し、それぞれニュージーランドと東アジアで現存する種になったと仮定している。対照的に、Z.otisの祖先は主に熱帯および亜熱帯地域に適応し、現存するものはアフリカ大陸、東洋およびオーストラリアの地域に分散したものだと考えている。またニュージーランドのZ.oxleyiの分布は、Z.otisの侵入に脅かされているという。

( ̄З ̄)う~む。emelinaはotisから種分化したものだと思っていたが、どうやらそうではないらしい。やはりシルビアとヒメシルビアは別系統なのね。

一段落したと思い、坂本女氏の論文を読み始める。
したら、また新たな疑問も生じてきた。ヒメシルビアとの交雑実験とボルバキア感染なんて話まで出てきたのだ。また、他にもネット情報でヤマトシジミとの自然状態でのハイブリットの話まで飛び出す始末。頭が(◎-◎;)💫クラクラしてきたよ。調べれば調べるほど謎が出てくるシルビア蟻地獄じゃ。
でも、論文をチラッと見てアレルギー反応が出た。ウンザリで、真面目に読む気にもならない。ここは一旦、種解説にでも逃げよう。ケースによっては、そのまま逃亡、クロージングになってもいいや。

 
                     つづく

 
追伸
書いているうちに、どんどん深みに嵌まってゆき、ムチャクチャ長くなってしまった。もう泥沼ぬかるみである。というワケで分載することにしました。
アチキ、このあと更に迷宮で彷徨。ノタ打ち回ることになりんすよ。

 

ゼフィルスなんて、どうでもいい

  
ゆえあってカトカラの連載がひと月ほど書けないので(註1)、キアゲハの回で力尽きていた『台湾の蝶』の連載を再開させる気になった。
再開するに辺り、何をテーマにするかを考えた。
あまり地味過ぎるのも何だし、ここは一発、勢いづけに派手な奴から始めよう。そう考えた。で、今まで一度も取り上げてこなかったゼフィルス(ミドリシジミ類)にしようかなと思った。綺麗だし、とても人気のあるグループだから、再開の第1回目には相応しい。謂わば、再開に花を添えるような存在だと思ったからだ。
因みに、ゼフィルス(Zephyrus)とは「西風」もしくは「西風の妖精」という意味である。

だが、画像を探してるうちに、ワケわかんなくなってきた。整理してなくてグッチャグッチャに並んでるのだ。
これって、何だっけ❓

 

 
エサキミドリシジミ(Chrysozephyrus esakii)❓
でも、よくよく見れば、どうやらただのミドリシジミ(Neozephyrus japonicus)のようだ。
念の為に展翅した日付から野外写真を探すと、間違いなくミドリシジミであることが判明した。

 
(2018.5.27 京都市)

 
スマン。情けないが、ミドリシジミの類って、いまだに同定に自信がないのだ。
正直、ハヤシミドリシジミとヒロオビミドリシジミ、エゾミドリシジミ、ジョウザンミドリシジミの♂を並べられて、『ハイ、どれがどれでしょう❓』と尋ねられたら、すぐにテキパキとは答えられないと思う。ジッと見て考えてからでないと、正しい答えは導き出せないだろう。
♂はまだ何とかなる。♀なんか正しく答えられるかどうか、まるで自信がない。
ゼフィルス好きの人からみれば、ダッせー、アホちゃうかと言われそうだが、蝶屋にしてはゼフ(こう略称するのが通例)なんてどうでもいいと思っているのである。

蝶好きの間の中で最も人気のあるグループといえば、ギフチョウとこのゼフが双璧ではないかと思う。

 
【ギフチョウ】

 
シーズンになると、皆さんゼフの仲間を嬉々として採りに行くし、冬場は卵探しに余念がない。完品の標本を得る為に卵から飼育するのだ。蝶の中で最も飼育されているのがゼフィルスではないかと思う。それくらい人気があるのである。
でも、自分は正直、熱量が低い。宝石のように美しいし、可憐だとは思う。だから嫌いじゃない。寧ろ好きだ。けれど日本産ゼフィルス全種を採ってからは、急速に興味を失った。
正直、採っててあまり楽しくないのである。
ゼフィルスの成虫採りといえば、それぞれの♂が縄張り行動(占有活動)をする時間帯に行って採ると云うのが基本である。これが嫌いだ。だいたいが木の高い所で飛び回るから長竿が必要になってくる。最低でも7mくらいはないと勝負にならない。中には10m以上を持つ猛者もいる。自分のような非力なものは、これを振り回すのがしんどい。シャープに振れないのも苛つく。一閃💥電光石火の如く振り抜きたい性質(たち)なのだ。また、たとえ振り回せたところで、しなるからそれを計算して網を振らなければならない。これが難しい。
それに目線は上になる。下から見ると人の目は距離感が狂うようだ。そのままの視覚で網を振ると、大概は手前を振ってしまうのだ。中には蝶が枝先に止まっているのに、とんでもない手前を振っている輩もいる。つまり、これまた修正、計算しなくてはならないのである。
そして、最も嫌いなのが上をずっと見てるから首が痛くなることだ。自分のような細くて美しい流麗な首を持つものには(笑)、これが誠にもって辛い。

あっ、もっと嫌いなことがあるわ。
ゼフィルスはテリトリーを張る時間帯があって、主にその時間帯に採集するという事を既に述べた。じゃあ、それ以外の時間はどうやって採るのかというと、「叩き出し」と言われる手法が使われる。これはどんな方法なのかというと、網で木の枝先を叩きまくって、驚いて飛び立たせるという戦術だ。やがて蝶はどこかに止まるから、位置を確認して採るのである。
しかし、これが儘ならない。飛び立った蝶が思い通りの場所に止まってくれるとは限らないのである。更に上、網の届かない所に行ってしまう場合も多いし、見失ってしまうケースも多々ある。それに叩けば幾らでも飛ぶというものではない。叩いた回数に対して、蝶が飛ぶ回数は圧倒的に少ない。ダメな時は、どんだけ叩いても全く飛ばないなんてことはよくあるのだ。
夏のクソ暑い、しかも一番湿気の多い時期に上を向き、首の痛みと腕の痛みに耐えてひたすら叩くのである。その頑張りに与えられる対価は極めて低い。殆んど罰ゲームの域である。
これを自分は「労働」と呼んでいる。囚人の無益な労働だ。そこにはクリエイティブなものは無い。自分の好きな採集スタイルではないのだ。

でもなあ…、今年は結局一度もゼフ採りに行かなかったんだよなあ。そうなると何だか淋しい。
あの美しい輝きは何にも変えがたいのだ。『森の宝石』と言われるだけのことはある。
来年は「労働」を厭(いと)わず、会いに行こう。

  
                    おしまい

 
追伸
この文章は7月に書き始めて、途中で投げ出したものである。こんなこと書くと、ゼフィリストに無茶苦茶罵られるのではないかと思ったのである。もとより好んでワザワザ揉め事を起こしたくはない。
しかし、折角書いたのに破棄するのも勿体ないと考え直した。と云うワケで加筆して完成させたのが、この文章である。
ゼフィリストの皆さん、怒らないでネ。

 
(註1)ゆえあってカトカラの連載がひと月ほど書けないので

カトカラのニュー、マホロバキシタバを発見しちゃったので、「月刊むし」に発表されるまでは書けなくなった。連載の次作はカバフキシタバだったのだが、マホロバの発見にカバフが深く関わっていたのである。カバフの事を書くとならば、どうしても場所に触れなければならない。そうなると勘のいい人ならば、マホロバの産地を特定できる可能性が出てくる。まさかそんな事はあるまいとは思ったが、それを見つけて先に記載される可能性が無いとはいえない、との事で、関係者の間で箝口令が敷かれていたのだ。
因みに、月刊むしの10月号は無事に発行され、記載も完了した。一方、カバフの回の方も書き終えることができた。拙ブログに『2018′ カトカラ元年』と題して書いた連載の第5話とその続篇に、その辺のことは書いてあるから御興味のある方は読まれたし。

 

2018′ カトカラ元年 其の九

 
 vol.9 クロシオキシタバ

   『落武者源平合戦』

  
2018年 7月23日。

次のターゲットはアミメキシタバだったが、何だかんだと用事があったので行く暇がなかった。
それでクロシオキシタバも抱き合わせで採れる場所を探した。で、候補に上がったのが両方の記録のある明石城跡公園だった。ここは明石にフツーに遊びに行った折りに何度か訪れているし、駅からも近い。何せプラットホームから丸見えなのさ。山登りもしなくて済むし、楽勝じゃん。
それに明石といえば魚の棚商店街があるから、昼網の新鮮な魚介類が堪能てきるし、名物の明石焼きだってある。夕方早めに行って、寿司か明石焼きを食ってから採りに行く事だって可能だ。或いはトットと採ってソッコー切り上げて、ゆっくりと酒飲みながら旨いもん食うと云う手も有りだ。
あっ、( ̄∇ ̄)それがいいわ。と云うワケで飯食うのは後回しにして、先に下見をすることにした。

探すと、結構樹液が出ている木がある。
カナブンや見たことがないハナムグリが群れている。
下調べの段階で知ったが、コヤツがキョウトアオハナムグリって奴だね。

 
【キョウトアオハナムグリ♂】
(出典『フォト蔵』)

 
このハナムグリは結構珍しい種みたいなんだけど、この明石公園に多産することが分かってからは価値が激落ちしたようだ。記念に1頭だけ採って、あとは無視する。

クロシオの幼虫の食樹であるウバメガシはあまりない。しかし、大木があった。常緑カシ類はどれも似たようなものばかりで区別が苦手だけど、コヤツは簡単にわかる。なぜなら、この木は葉が硬くて生垣によく使われるからそれなりに見慣れている。それに樹肌がお婆ちゃんみたいなのだ。漢字で書くと姥目樫。ようするに老女に見立てている。老女のようなシワシワの木肌だもんね。但し、ウバメガシの新芽、あるいは若葉が茶色いことからきているとする説もある。

櫓の向こうに夕陽が落ちてゆく。

 

 
余談だが、明石城は江戸幕府2代将軍徳川秀忠の命で小笠原忠真が元和5年(1619)に築城したとされる。
因みに天守閣は無い。焼失したとかそういう事ではなくて、最初から無いのだ。勿体ない。
理由は諸説あるが、ここでは書かない。こんな初めの方から大脱線するワケにはいかないのだ。

 

 
夕陽を見送り、いよいよ戦闘体制に入る。
しっかし、ちとやりにくい。けっこうイチャイチャ💕カップルがいて、ベンチの大半を占拠しておるのだ。ベンチの近くに樹液の出ている木もあるから正直気が引ける。それに何度も行ったり来たりしていたら、確実に怪しい人だと思われるだろう。で、そこで網なんか出しでもしたら、益々アンタ何者なんだ?ということになるに決まってんである。

で、そわそわマインドで探し回ったけど、結局飛んで来たカトカラはクソただキシタバのパタラ(C.patala)のみだった。
暇ゆえ、カップルへの意趣返しにカブトムシの交尾にちょっかいをかけてた。
(*`Д´)ノアンタたちー、ここで乳繰り合うのは許しませぬぞ❗

  

 
葉っぱ付きの枝でコチョコチョしたり邪魔して遊んでたら、あっちゅー間にタイムアップ。
結局、寿司も明石焼きも御預けになってしまい、終電で帰った。しょっぱいわ(;つД`)
やはり楽しちゃダメって事だね。イージーに採ろうとしたので、きっと神様にお灸をすえられたのだろう。

 
8月1日。

この日は須磨方面へ行くことにした。
考えた揚げ句、関西でウバメガシが一番多いところをネットで探すことにした。それが須磨周辺だった。
ウバメガシが一番多い場所も特定できたし、地図も手に入れた。準備万端だ。これを電撃⚡黒潮作戦と名付けよう。ここで採れなきゃ神様の胸ぐらを掴んでやるわい(*`Д´)ノ❗❗

海が見える。

 

 
長い間、海を見ていなかった気がする。
やっぱ海はいい。何だかホッとする。

歩きながら、ここへは一度来たことがあるのを思い出した。何年か前、プーさんにウラキンシジミ(註1)の採集に連れて来られたのだった。
しかし、結局1頭も見ずじまいだった。失意のままキツい傾斜を下りたんだよなあ…。須磨は大阪から案外遠いから、時間も電車賃も割合かかるし、徒労感はかなりあった記憶がある。
あの坂を上がるのかあ…。ウンザリだよ。それに此処はそんなワケだから鬼門かもしれない。ナゼか相性の悪い場所ってのはあるのだ。
もしも採れなかったら、神様の胸ぐらを掴むだけじゃすまない。そのまま、(#`皿´)オラオラオラー、テメエどうしてくれんだよーと激しく揺すって揺すぶって、揺すりたおしてやるよ。

15分ほどアスファルトの道を登ると、ウバメガシがチラホラ散見できるようになった。生息地は近い。
で、本格的な登山道に入ったと思ったら、いきなり深いウバメガシ林になった。(;・ω・)えっ、もう❓ これなら当たりをつけていた遠い尾根まで行かなくとも済むかもしんない。
と思ってたら、何かが慌てたように目の前を飛んで逃げた。間違いなく蛾だ。しかもカトカラっぽい。クロシオ❓ やがて、7~8m飛んで木の幹に止まった。
⤴テンションが上がる。ザックからネットと竿を取り出し、迅速に組み立てる。時刻はまだ4時半。明るいうちに採れれば、気分はグッと楽になる。トットと終らせようぜ、イガちゃん。んでもって、三宮辺りで旨いもんでも食おう。

慎重に距離を詰め、止まった辺りを凝視する。
いたっ❗かなり大きい。えっ、もしかして糞パタラ❓でも横向きだし、種を特定できない。けれど、ここはウバメガシ林だ。パタラよりもクロシオの可能性の方が高い。とにかく採ろう。採らなきゃワカランわい。
一歩踏み出し、網を振ろうとした時だった。
( ̄□||||❗❗ゲッ、また飛んだ❗(|| ゜Д゜)あちゃー、何たる敏感さ。慌てて後を追いかける。
しか~し、ガビ━━━ Σ( ̄ロ ̄lll) ━━━ン。森の奥へと消えて行った。
( ̄0 ̄;マジかよ…。やはり此処は鬼門なのか…。
己に言い聞かす。まだ4時半だ、時間はたっぷりある。チャンスはまだまだある筈だ。メゲずにいこうぜ。

暫く進むと、両側が石垣の道になった。そこを歩いていると、左側からいきなり何かが飛んだ。咄嗟にヒュン💥電光石火で網を振った。
手には、入ったと云う確信がある。
覗くと、おった( ☆∀☆)
いえ~d=(^o^)=b~い。運動神経と反射神経がよくて良かったー。

 

 
一見、パタラに似ているが、やや小さい。上翅の柄もパタラとは違うような気がする。それに何よりも色が違う。パタラは緑か茶色っぽいが、コイツは青っぽいのだ。おそらく、コヤツで間違いないだろう。キミがクロシオキシタバくんだね。

ホッとする。1頭でも採れれば、人には一応採ったと言える。その事実さえあれば、最低限のプライドは保たれる。嵌まりかけているとはいえ、いくら蛾の世界では人気があろうと、所詮は蛾風情だ、そうそう連敗するワケにはいかぬ。

さてとぉ~、この先どうすべっか…。
まだ午後4時40分なのだ。日没にはまだまだある。ここにいることはハッキリわかったのだから、この場所で張ってても問題ないだろう。駅にも比較的近いし、帰りも楽だ。でも、あと2時間以上も此処にいるのは精神的にキツい。時間を潰すのが大変だ。それに、動きたい、他にもポイントを見つけたいという生来の性格が此処にとどまることを許さない。だいち樹液の出ている木をまだ見つけていない。となると、闇の中での空中戦になる。それでは満足な数が採れる確率は低かろう。とにかく時間はまだたっぷりある。最初に地図で当たりをつけていた場所まで様子を見に行こう。その途上で樹液の出ている木も見つかるかもしんないし、他にも有望なポイントが見つかるかもしれない。ダメなら、戻ってくればいいだけの事だ。

山頂に向かって歩き始める。斜度は思っていたとおりキツい。あっという間に汗ビッショリになる。でも時折、心地好い海風が吹き、悪くない気分だ。

山頂にもウバメガシの木は沢山あった。でも次のクロシオが目っけらんない。樹液の出てる木も見つからん。
さらに尾根づたいに歩いてゆく。しかし、段々ウバメガシの木が減ってきた。相変わらず樹液の出ている木も見つからない。
道はさっきから下り坂になっている。それなりに傾斜はキツい。これを登り返すのかと思ったら、ゲンナリしてきた。

目指す森まであと3分の1というところで考えた。
帰りのことを考えれば、その森から駅まで戻るのは大変だ。登り返しだし、そのあと今度はキツい下り坂が待っている。時間的ロスもかなりあるだろう。さっきの場所ならば、その心配はない。でもこのまま目的地まで進めば、引き返す時には途中で日没になっている公算が高い。夜道を急いで戻るのは得策ではないし、何らかのトラブルを起こす確率も間違いなく上がるだろう。引き返すならば、今だ。それに道はどんどん狭まってきている。いわゆる痩せ尾根だ。

 

 
そういえば、この辺りが源平合戦で有名なところだったな。あの源義経が大活躍した一ノ谷の戦いは、この麓で行われたのだ。そして、この今いる場所から急峻な斜面を馬で駈け下りるという大奇襲作戦が勝負を決した。あの有名な、世にいう「鵯(ひよどり)越えの逆(さか)落とし」という奴である。平家は有り得ないと思っていた背後からの奇襲に大パニック、そのまま総崩れ、敗走を余儀なくされたのだった。

本当にこんな急斜面を馬で駈け下りたのだろうか❓俄かには信じ難い。絶対、ハナシ盛ってんな。
そういえば昔、TVで本当にそんな作戦が可能だったのかを検証すると云う番組があったな。ここと同じ斜度の別な場所で実験してた。たぶんサラブレッドではなく、ちゃんとその時代の馬に近い丈の低い種類の馬まで用意して実験は行われていた。
結果は途中棄権。確か限りなくアウトに近いものだったと思う。乗馬では無理で、実際は馬を牽いて下りたのではないかとも言ってたっけ…。
そんなことを思い出してたら、突然、心の中を恐怖が擦過した。もしかしたら、平家の亡霊に谷底に引き摺り込まれるやもしれぬ。o(T□T)o落武者じゃあ~。怖いよぉ~。落武者に山中で追いかけ回される映像が瞼の裏に浮かんだ。怖すぎだろ、ソレ。アメユジュトテチテケンジャア~(T△T)(註2)
んでもって、痩せ尾根から足を踏み外し、斜面を止めどなく転がってゆくのだ。最低でも骨折、打ち所が悪けりゃ、あの世ゆきだ。
あっ、でもウチの御先祖は平家だ。それはないでしょうよ。仲間じゃん。でもそんなこと言ったって、片目から目ん玉がドロリと落ちかけた落武者に必死コイて説明、懇願したところで聞いてくれる保証はどこにも無いよね。(ノ_・。)グスン。
そのうち源氏の亡霊どもも続々と現れて、合戦が始まるやもしれぬ。夜な夜な此処ではそんな事が行われてたりして…。そうなったら、もう阿鼻叫喚だ。木の根元で縮こまって震えてるしかない。
それに、落武者は扨ておき、もしも懐中電灯が途中で切れたなら、危険過ぎてその場から動けなくなる。膝小僧を抱いてシクシク泣きながら夜が明けるのを待つしかあるまい。そうなると、落武者以外にも魑魅魍魎がお出ましになるやもしれぬ。いや、ゼッテーおどろおどろしい色んなのが大挙して押し寄せて来るに決まってるんである。やっぱ予備の懐中電灯とか電池は持っとくべきだなあ…。性格なんだろうけど、その辺がいい加減というかユルい。

でも、足は意に反して前へ前へと出る。もしかしたら、何か得体の知れない者に誘(いざな)われているのやもしれぬ…。
冷静になろう。単に性格的に途中で中途半端に引き返すのがイヤなだけなのかもしれん。今まで歩いた分が勿体ないじゃないか❗と云うワケだ。しかし、理由が自分でもどっちがどっちなんだかワカンナクなってくる。( ̄~ ̄;)も~。

目的地が近くなってくると、またウバメガシが増え始めてきた。やがてウバメガシの純林とも言える状態になった。こりゃ、アホほどいるじゃろう。ここを目指したのは正解かもしんない。そう思って歩いてたら、老木にペタペタと何かが付いているのが目に入った。

 

 
あっ、カナブンやんか❗
ということは、樹液が出ているということだ。よく見ると何ヵ所かから樹液が出ている。
Ψ( ̄∇ ̄)Ψフフフ…、賭けに勝ったな。もし此処に飛んで来ないなら、この森にはいないと云う事になる。しかし、これだけ大規模なウバメガシ林にいないなんて有り得ないだろう。それこそ七不思議の落武者の呪いだ。

もう一度樹液の出ている場所を丹念に確認してゆくと、木肌の或る箇所に違和感を覚えた。あらま、木と同化して、既にカトカラくんらしきものが下翅を閉じて止まっているではないか。何だろう❓大きさ的にはフシキとかコガタキシタバくらいの大きさだ。いや、もっと小振りか…。しかも上翅の感じはそれらとは違うような気がする。何かもっと茶色っぽい。とはいえ、下翅は見えないからカトカラじゃない可能性だってある。下翅が小汚い糞ヤガどもも上翅は似たような感じなのだ。
悪いクセだ。グダグダ思い煩う前にさっさと採ろう。

網でドツいて、難なくゲット。

 

 
あっ❗、コレってもしかしてアミメキシタバじゃね❓
また新しく1種増えた。らっき~(^o^)v
そっかあ…、アミメは幼虫の食性の幅が確か広かった筈だ。おそらくウバメガシも食樹になっているのだろう。よし、ならばここに居座ることは、もう決定だな。

夕暮れになっても歩いている人がちょこちょこいる。
さすが六甲だ。住宅街のすぐ上が山なのだ。住民が手軽に来れるというワケだ。
そこで考えた。それだけ登山者が多いと云うことは道も多い筈だ。正直、帰りはもう一回来た道を戻るのはしんどい。所要時間もそれなりにかかるだろう。ならば、この周辺から下へ下りられないか?その方が登りもないし、時間の短縮にもなるだろう。そこで訊いてみることにした。
人の良さそうなオジサンに声を掛ける。そのオジサンによると、一ノ谷を下りる道があるという。分岐も此処から近いそうだ。
でも歩いたことのない道だ。しかも、ましてや夜である。道に迷う可能性は大いにある。下手したら、やっぱりその場で膝小僧を抱いてシクシク泣きながら、夜明けを待つことになりかねない。当然、落武者と魑魅魍魎どもとも戦わねばなるまい。賭けではある。
よっしゃ、決めた。一ノ谷を下りよう。鵯越えの逆落としを義経張りに鬼神の如く勇猛果敢に下ってみせよう。あっ俺、平家だけどいいのか(・。・;❓
まっ、いっか。細かいことは、この際忘れよう。

やがて、闇が訪れた。

 

 
撮影事故ではござんせん。
ライト💡オーフ。試しに懐中電灯を消してみたら、一瞬にして目の前がマジで黒一色の世界になったのだ。エコエコアザラク、エコエコザメラク。
たぶんウバメガシ林が密過ぎて、街の灯が全く届かないから真っ暗けなのだ。京都以来のホラーな漆黒の闇、再びである。
まあ、ここは熊はいないだろうから惨殺されることはないゆえ、あの時ほどの恐怖は無いんだけどさ。
と思った次の瞬間には思い出していた。確かに此処には熊はいないけれど、イノシシがワンサカいるのだ。六甲といえばイノシシというのは有名だ。毎年、人がイノシシに襲われる事件が頻発しているのだ。住宅街にだってウロウロしているくらいなのさ。クソッ、落武者に魑魅魍魎、それにリアル猪かよ。ったくよー(# ̄З ̄)

日没後、すぐにカトカラがワンサカ集まって来た。
作戦的中。ざまー見さらせである。取り敢えずアミメをジャンジャン採る。時期的に最盛期を越えた感じなので、翅が欠けていたり擦れている奴が多い。ゆえに鮮度の良い奴の確保を優先したのだ。
パタラも多数飛来してきた。ウザい。ほんま、オマエら何処にでもおるのぉー(# ̄З ̄)
にしても、パタラの幼虫の食樹はフジなどのマメ科だ。なのに、こんなウバメガシしかないところにもいるんだね。あっ、でも翅がある生き物だもんね。樹液が出てりゃ、余裕で麓から飛んで来るわな。
ここで段々、疑問が芽生えてきた。夕方にクロシオだと思って採った奴は、もしかしたらパタラ、ただのキシタバなんじゃねえか❓それで今一所懸命に採ってるのがアミメではなくて、クロシオなんじゃねえの❓
そもそもクロシオって、そんなに大きかったっけ❓ 付け焼き刃の知識には、そんなことインプットされてないぞ。えー、(ToT)どっちなんだよー。頭の中がこんがらがってグチャグチャになる。この辺がカトカラ1年生のダメなところである。知識と経験値がショボい。
今にして思えば、これが落武者の呪いというか、落武者の悪戯だった。

混乱したままタイムリミットが来た。
急いで尾根を少し戻り、一ノ谷へと下る道に入る。いよいよ鵯越えの逆落としだ。果敢に攻めて、見事下りきってやろうではないか。
しかし、あまり使われていない道のようで、かなり荒れている。おまけに細い。泣く子も黙る更なる超真っ暗闇の中、思考は世話しなく動く。あらゆる物事に対して神経を研ぎ澄ます。闇では己の五感が頼りだ。
やがて崖崩れで道が寸断しかかっている所に出た。
ステップは足幅一つ分である。それが6、7mくらいは続いている。咄嗟に下を見る。真っ暗な崖底が不気味に口を開けている。
どうする❓リスクを冒してそのまま突っ切るか、それとも引き返すべきか…。だが、迷っている時間はない。えーい(*`Д´)ノ、行ったれー❗源氏ではないが、武士の血が流れている男だ。ここで引き下がるワケにはゆかぬ。
慎重に足を置き、バランスを崩さぬよう一気に崖崩れ地帯を渡る。
セーフ❗そのままの勢いで足早に駈け下ってゆく。

その後も所々寸断しかかってる急峻な坂道を慎重且つ大胆に駈ける。いやはや、流石のキツい傾斜だ。闇夜を一人歩くのはスリル満点っす。
分岐と枝道が多く、途中何度かロストしかけた。だがその都度、野生の勘と抜群の方向感覚で何とか乗り切る。

駅に着いた時には汗だくだった。
安堵感がジワリと広がる。無事に間に合った事だけでなく、闇の恐怖やミッションに対するプレッシャーから解放されて、ドッと体の力が抜けたよ。

翌日、展翅しようとして、愕然とする。
アミメはそこそこの個体数を採っているのに、クロシオは、たったの1頭しかなかったのだ。そう、夕方に最初に採った奴だけである。(@_@;)アチャー、やってもた~。パタラと思って無視していた奴、あれがようするにクロシオだったのである。カトカラ1年生、大ボーンベッドである。

それが、この1頭である。

 
【クロシオキシタバ Catocala kuangtungensis】

 
たぶん♂だね。
カトカラ1年生、やっぱり酷い展翅だな。上翅を上げ過ぎてしまっている。

「1頭でも採れたからいいじゃないか。そもそもアンタ、蝶屋でしょ?蛾なんだし、カトカラも所詮はヒマつぶしで採ってんでしょ?そこまで頑張ることないやん」と心の中でもう一人の自分が囁く。
確かにそうかもしれない。でも、このままでは引き下がれない。己のアホさをこのまま捨て置きはできぬ。そんなもんはプライドが許さないのだ。リベンジしてこその自分だ。それが無くなったら自分じゃなくなる。
🎵ボク~がボクであるためにぃ~ 勝ち~続けなきゃ~ならない

三日後、再び同地を訪れた。

 
8月4日。

 
ビーチだ。須磨の海水浴場でありんす。
思えば此処には高校生の頃からの思い出が沢山詰まっている。青春時代の夏と言えば、もう海水浴場っきゃない。ビール、ラジカセ、海の家、日焼けローションの香り、そしてそしての水着GALである。Tバックのお姉ちゃんたちが闊歩していたあの光景は、今考えると異様な時代だったよなー。Tバックのお姉さんの背中にローション塗るだなんて、高校生にとっては刺激が強過ぎて、もう頭の中が💥大爆発でしたよ。
そういえば夜に花火やってて、地元の奴らとモメて乱闘になりかけた事もあったよなー。オイラが原因を作っといて、オイラがその場を治めるというワケがワカンナイ無茶苦茶な展開だった。
何はともあれ、古き良き時代だった…。
このあと水着GALのいるビーチには目もくれず、夜の山に一人で蛾を採りに行こうとしてるんだから隔世の感しきりである。人生って、先のことはわかんないよね。

にしても、須磨の海岸も随分と様変わりした。
須磨といえば水着のお姉ちゃんだらけだったのに、夏真っ盛りというのにも拘わらず、家族連ればっかだ。きっと、今時の女の子は日焼けなんてしたくないのだろう。むしろ今は肌なんて出したくない美白の時代なのだ。嘆かわしい事だ。夏といえば若者の欲望が渦巻いてて当たり前だろ。こんなんじゃ、ナンパでけへんやんか。エロ無くして、日本の未来はないぞ。

 

 
また、キツい斜面をえっちらおっちら登ってきた。

 

 
淡路島が見える。
もう少しすれば、明石海峡大橋の向こうに夕陽が沈んでゆくんだね。六甲山地は山の上から海が見えるのがいいよね。

先日とは違い。不安が無いから気分にザワつきはない。クロシオが採れて当たり前の予定調和だ。採れないワケがない。そのゲット率は100%ではないが、それに近いだろう。突然、雷雨がやってでも来ない限りは大丈夫な筈だ。

美しい夕暮れが空を茜色に染め、やがて色を失い、闇が浸食してくる。
この一瞬に、ちょっとだけ不安がよぎる。物事には絶対はないからだ。もしクロシオが飛んで来なかったとしたら、心は行き場を失うだろう。怒りをどこに持ってゆけばいいのか想像がつかない。

心配は杞憂に終わった。
闇が訪れると、直ぐにジャンジャンやって来た。楽勝だ。それを確実にゲットしてゆく。

この日は神戸の港で花火大会が行われていて、花火を打ち上げる音がボンッ、ボンッと、ものすごーくよく聞こえてくる。しかし、鬱蒼としたウバメガシ林が邪魔して何も見えない。音だけで聞く花火ってのは、人を妙な気分にさせる。不思議な感覚に教われる。歓声を上げたりして、みんな楽しそうに花火を見ているのだろう。一方、自分は一人ぼっちで闇の中で蛾を採っている。何だ、この落差あり過ぎの孤独感は…。
しかし、お陰で闇の恐怖は確実に薄れている。闇の国、異界に隔絶されたような感覚は消え、現世(うつつよ)と繋がっているのだという安心感があるのだ。

乱舞するカトカラを採りまくって、溜飲が下がったところで撤退。帰路につく。

 

 
漆黒の闇地帯を抜けると、燦びやかな夜景が眼前に広がった。花火大会は、とっくに終わっている。
でもやっぱ神戸の夜景は綺麗じゃのう。昔だったらキスしまくりじゃわい。それが蛾とのランデブーとは隔世の感あり。全くもって(^_^;)苦笑しきりである。
とはいえ、やはり神戸の夜景は美しい。
満ち足りた気分で、ゆっくりと坂道を下りる。たぶん、明日も晴れるだろう。何となく、そう思った。

 
                    おしまい

 
クロシオキシタバは上翅にバリエーションがある。

 

 
ここまでが普通の型で、上翅が青っぽい。
上2つが♂で、一番下が♀である。♀は紋にメリハリがあって美しい。

 

 
こういう茶色っぽいのもいる。

 

 
これは白い紋が出るタイプである。カッコイイ。
これも♀である。

上翅がベタ黒のもいた。

 

 
一瞬、黒化型かと思ったが、下翅は別に黒くはないから、黒化型とは言えないだろう。
これも♀だ。もしかしたら、♀の方が変わった型が出やすいのかな❓

 
(裏面)

 
それにしても、全般的に展翅が下手ッピーだ。黒いのなんかは結構珍しいタイプそうなのに勿体ない。
一応、今年の展翅も載せておくか…。

 

 
だいぶ上達している。
触角の整形が、まだまだ甘いけどね。

今回のお題クロシオキシタバは久し振りに2019年版の続編を書きます。自分にとっては最悪だが、他人からすればたぶん笑える話なので、乞う御期待❗

それでは種の解説と参ろう。

 
【学名】
Catocala kuangtungensis sugii(Ishizuka, 2002)

小種名「kuangtungensis」は最後にsisとあるので、おそらく地名由来の学名だろう。kuangtungenで検索したら、広東省と出てきた。きっと最初に広東省で見つかったんだろうね。
亜種名「sugii」は最後に「i」で終わっているので、これは人名由来だろう。たぶん蛾の研究で多大なる功績を残された杉 繁郎氏に献名されたものと思われる。

 
【和名】
和名のクロシオは黒潮から来ている。次項で詳述するけど、これは分布が黒潮が流れる太平洋沿岸部だからでしょう。種の特性を上手く表現していて、良い和名だと思う。

 
【分布】
本州、淡路島、四国、小豆島、九州、屋久島。

本種は1960年代に高知県室戸岬、静岡県石廊崎で発見され、のちに幼虫の食樹がブナ科のウバメガシであることが判明し, この植物の分布するところには多産することが明らかになった。このため日本での本種の産地はウバメガシの分布域と重なり、九州から伊豆半島までの太平洋側沿岸部に見られる。東限はその伊豆半島となり、知多半島、紀伊半島、瀬戸内海沿岸部と家島、淡路島、小豆島などの島嶼、四国南部、屋久島などの産地が知られている。九州本土では少なく、大分、宮崎県下の沿岸部のみで得られているようだ。
飛翔力があり、成虫の寿命も長いことから、ウバメガシが自生しない場所でも稀に見つかる。中には長野県開田高原の地蔵峠など、発生地から150㎞も離れた場所での発見例がある。他に福井県、群馬県に記録がある。
食樹が判明するまでは、かなりの珍品だったようだ。今ではそう云うイメージは無くなってしまっているが、それでも全国的に見ると局地的な分布で、豊かなウバメガシ林があるところ以外では極めて稀な種だろう。

国外では中国南部広東省に原名亜種を産し、陝西省や四川省のような内陸部にも分布している。
👍ビンゴだね。やはり、学名は最初に発見された広東省から来てるんだね。それはさておき、内陸にも分布していると云うのは意外だった。クロシオというイメージからハズレちゃうね。食樹は判明してるのかな?やっぱウバメガシなんかな?でもウバメガシって、そんなに内陸部にあるのかしら?もし食樹が別なものだとしたら、極めて似通った別種の可能性もあると思うんだけど、どうなんだろ❓
とはいえ、日本でも和歌山県大塔山、香川県大滝山など、植生によってはかなり内陸部にも見られるらしいからなあ…。にしても、数十キロだ。中国の内陸産とは、海岸からの距離はとてつもない差があるとは思うけどさ。

 
【亜種と近縁種】
▪Catocala kuangtungensis kuangtungensis(Mell,1931)
中国・広東省の原記載亜種。

▪Catocala kuangtungensis sugii(Ishizuka, 2002)
日本亜種。

▪Catocala kuangtungensis chohien(Ishizuka、2002)
陝西省・四川省亜種。

四川省には、他にも小型の別種 Catocala dejeani(Mell,1936) がいるが、クロシオキシタバの亜種とする研究者もいるようだ。従来、台湾産のクロシオキシタバとされてきたものは、コヤツなんだそうじゃよ。

 
【開張】
大型のキシタバの1つで、パタラキシタバ(C.patala)の次に大きい。なぜかどこにも前翅長が書いていない。これはおそらく『原色日本蛾類図鑑』に大きさが載っていないからだろう。ワシも含めて、みんな孫引きに違いない。誰か自分で測る奴が一人もおらんのかよ。(# ̄З ̄)ったくよー。
と云うワケで、自分で計測してみようとしたが、岸田先生の『日本産蛾類標準図鑑』にはちゃんと載っていて、開張58~68㎜となっていた。そんなもんだと思う。流石、岸田せんせである。

前翅は青灰色の鱗粉が広がり、内横線の外側に白色を帯びた淡色部がある。後翅の外側の帯は内側の帯と接触し、内縁角では黒色紋が分離する.

 
【レッドデータブック】
滋賀県:要注目種、大阪府:準絶滅危惧、兵庫県:Cランク(少ない種・特殊環境の種など)、香川県:準絶滅危惧、宮崎県:準絶滅危惧(NT-g)

 
【成虫出現期】
6月下旬~9月下旬まで見られる。
関西では7月初めから出現し、7月中、下旬に多い。8月に入ると傷んだ個体が増えるので、新鮮なものを得たければ7月中に狙うべきである。
成虫の寿命は長く、室内飼育では2ヶ月間も生きた例があるようだ。

 
【成虫の生態】
豊かなウバメガシ林に見られ、そういう場所では個体数が多い。
昼間は頭を下にして暗い場所の樹幹、岩石、石垣などに静止している。湿った暗い場所が好きなようで、生息地の冷んやりした石垣に止まっているのをよく見た。その際は敏感で、近づくと直ぐに飛び立つ。着地時は上向きに止まり、暫くして逆さまになるそうだ。
ウバメガシやクヌギなどの樹液に好んで集まる。また糖蜜にも寄ってくる。しかし、今のところは樹液の方を好む傾向がある。まあ、レシピ次第ではあろうけどね。
吸汁中は下翅を開く個体が多い。パタラキシタバも下翅を開くので、紛らわしい。しかし、慣れれば上翅の色と柄で区別できる。但し、アチキがやらかしたように、懐中電灯の灯りの色によっては間違うので、注意が必要。
日没直後から姿を現し、吸汁に満足すると、その木や周辺の木に翅を閉じて憩んでいる。おそらくその後数度にわたり吸汁に訪れるものと思われる。
灯りにもよく集まるそうだが、ライトトラップをした事がないので見たことはない。
前述したが、飛翔力があり、成虫の寿命も長いことから、ウバメガシが自生しない場所でも稀に見つかるそうだ。2019年は食樹が殆んどない奈良市若草山近辺や大和郡山市信貴山でも見つかっている。

 
【幼虫の食餌植物】
ブナ科コナラ属のウバメガシ(Quercus phillyraeoides)。
 
ウバメガシは日本産の常緑カシ類では、葉が特に丸くて小さく、また硬い葉を持つカシである。
暖かい地方の海岸部から山の斜面にかけて多く見られ、特に海岸付近の乾燥した斜面に群落を作るのがよく見かけられ、しばしば密生した森を作る。トベラやヒメユズリハとともに、日本の暖地では海岸林の重要な構成樹種の一つとなっている。また乾燥や刈り込みに強いことから生垣や街路樹などとしてもよく使われている。その材は密で硬く、備長炭の材料となることでも有名である。和歌山県では、最高級の炭である紀州備長炭の材料ゆえ、計画的に植栽されている。

 
(出典『庭木図鑑 植木ぺディア』)

 
(出典『イーハトーブ火山局』)

 
しっかし、よくこんな硬い葉っぱ食うよな。若葉だって硬いらしい。でも、クロシオは黄色い系のカトカラの中では二番目に大きいんだよね。不思議だよ。
そういえば、ウラナミアカシジミの亜種とされるキナンウラナミシジミ(註1)は、このウバメガシを食樹としている。ウラナミアカよか小さいのは、通常の食樹であるクヌギやアベマキが無いので、仕方なしにウバメガシを食うも、葉っぱが硬いから大きくならないと言われている。クロシオは関係ないのかな❓
自然状態では、ウバメガシ以外の食樹は見つかっていないが、クヌギなどのナラ類でも容易に飼育できるそうだ。その場合は、どうなのだろう❓巨大化するのかな❓でも、そういう事は聞いたことがない。まあ、飼ったことがある人はそう多くはないと思うけどさ。カトカラは蛾の中では人気種とはいえ、蝶愛好家に比べれば圧倒的に少ないのだ。その中で飼育もするという人となると、数も限られてくるだろう。

ここまで書いて、ふと思った。キナンウラナミって、何でワザワザそんな硬い葉のウバメガシなんか食ってんだ❓紀伊半島ならば、アカガシやイチイガシ、アラカシ、ブナとか他にもブナ科の木はあるじゃないか。何でよりによってウバメガシ❓
気になったので、Wikipediaを真面目に最後まで読むことにした。
それで目から鱗ちゃん、漸く理由が理解できた。ウバメガシは日本に自生するカシ類の中では唯一のコナラ亜属(subgenesis Quercus)に属し、他に日本に自生するアカガシ亜属(subgenesis Cyclobalanopsis)のカシよりはナラ類に近縁なんだそうだ。常緑だし、見た目からしても、全く想像だにしていなかったよ。アカガシやアラガシなんかよりも、クヌギやアベマキに近いんだ。納得です。
また、他の疑問も解けた。ウバメガシの分布は本州の神奈川県以南、四国、九州、それに琉球列島にも分布するとあったから、クロシオは沖縄や奄美大島にはいないのかな?と云う疑問を持っていたのだ。これも沖縄県では伊平屋島と伊是名島、それに沖縄本島から僅かな記録があるのみという事が判明した。つまり南西諸島では珍しい植物なのだ。クロシオの分布は完全に否定できないものの、極めて可能性が低いことを示唆している。
また、日本国外では中国中部、南部、西部とヒマラヤ方向へ分布が広がっている。また、沖縄県が分布の南限である。これでクロシオが中国内陸部でも分布する理由がわかった。また沖縄が分布の南限ということは、その辺りが分布の限界であり、クロシオにとっても生育には適さない環境なのだと想像できる。おそらく暑すぎるのだ。

 
 
追伸
書いてて、ふと思った。
もしかしたら、明石公園で見たパタラキシタバの一部はクロシオだったのかもしれない。一年以上経って初めてその可能性に気づいたよ。おバカだ。我ながら、抜けている。でも、全部パタラだったと思うんだよなあ…。
しかし、これが怪我の功名だったかもしれない。お陰でアミメキシタバが須磨で採れた。もしも明石でクロシオが採れていたら、アミメは大阪の八尾辺りで探し回っててエラい目にあってたかもしんない。あの辺は山が荒れてて、道があまり良くないし、メマトイだらけだしさ。

前述したが、クロシオキシタバについては久し振りに2019年版の続編を書きます。そこで見た目が近いアミメキシタバと日本で初めて見つかったニューのカトカラであるマホロバキシタバの違いについても言及する予定。あっ、アミメの時の方がいっか。いや、マホロバの時でいっか…。まだまだ先の話だけど。

今回のタイトルは、最初『黒潮の詩』『暖流の民』とかを考えていたのだが、どこかシックリこなかったので『電撃⚡黒潮大作戦』で書き始めた。結局、途中で今のタイトル『落武者源平合戦』に変えた。でも、今もって納得はいってない。

 
(註1)ウラキンシジミ
(2017.6月 宝塚市)

 
この時は、何週間か前にプーさんがウラキンシジミの終齢幼虫をパラシュート採集で結構採ったので、成虫もそこそこいるだろうと出掛けたのであった。しかし、結果は惨憺たるものだった。

 
(註2)アメユジュトテチテケンジャア~
宮沢賢治の詩集「永訣の朝」の1節。
拙ブログの過去文にも度々登場し、ピンチの時に発せられる崩壊状態を示す言葉。

 
(註3)キナンウラナミアカシジミ(裏面)
(出典『日本産蝶類標準図鑑』)

 
Japonica saepestriata gotohi(Saigusa,1993)紀伊半島南部亜種。
ウラナミアカシジミの名義タイプ亜種と比べると、前翅長が短く(小さい)、裏面の黒条が発達していて、尾状突起が長いなどの特徴がある。
でもクヌギなどを与えるとウラナミアカ並みの大きさに育ち、名義タイプ亜種と区別がつかないという。そのことから亜種ではなく、一つのフォーム(型)とする見解もある。しかし、若干大きくなるだけで、紀伊半島中部産の名義タイプ亜種の大きさには達しないとする意見もある。

 

鬼と名がつく生物

 

前回のオニベニシタバの回で、オニと名がつく昆虫について触れたが、そこで書き切れなかったことを書こうかと思う。

 
【オニベニシタバ】
(2018年7月 奈良県大和郡山市)

 
前半は前回と重複するところもあるから、前回を読んだ人は暫し我慢して読まれたし。

オニと名のつく生物には、デカイとか厳(いか)ついとか凶暴だとかといった意味が込められたものが多い。
例えば、オニカマス(バラクーダ)、オニイトマキエイ(マンタ)、オニオコゼにオニダルマオコゼ、オニヒトデとかオニヤドガリetc…。
あっ、思い浮かんだのは海の生物ばかりだ。これって、ダイビングインストラクター時代の名残だよね。

改めて思うに、海の生物にはオニの名を冠する強烈なキャラが揃ってるなあ。真っ先にコレらが頭に浮かんだのも納得だよ。
因みにオニカマスは、その厳つい風貌と鋭い歯から名付けられたそうな。

 
(出典『暮らしーの』)

 
ダイバーには、オニカマスよりもバラクーダの名で親しまれている。バラクーダって言った方がインパクトがあってカッコイイからかなあ❓音の響きが如何にもヤバそうな奴っぽいしさ。

よく群れで泳いでいるが、あれはそんなにデカくない。デカイにはデカイが、まだまだ小物だ。あんまし恐くない。(#`皿´)うりゃあ~と、時々トルネードに割って入って蹴散らしてやるくらいだもんね。
むしろヤバいのは単独でいる奴だ。バラクーダは老魚になると群れないのだ(註1)。それが超デカくて、超怖い。顔もさらに厳(いか)つくなって、目が合ったらオチンチンがメリ込むくらいに縮こまりまする。ヤのつく自由業の方々でも、モノホンの親分さんクラスの静かな威厳と侠気があるのだ。絶対逆らってはいけないオーラである。
それで思い出した。
昔、サイパンのオブジャンビーチで、とてつもなく馬鹿デカイのにお会いしたことがある。水深3~4mくらいの中層で辺りを睥睨するかのように浮かんでおり、優に2mくらいはあるように見えた。そして、その周りには光の束が後光のように無数に射しており、神々しくさえあった。だが、目だけはギラギラと動いていた。
あまりにも強烈なオーラに、その場で固まり、背中がスウーッと冷たくなったのを憶えている。
その日はアシスタントで入っていて、お客さんの後ろにいたから、頭の中で念仏を唱えたよ。もしも、お客さんに向かって泳ぎ出したら、身を呈してガードに行かなければならない。「生ける魚雷」と言われるくらいのハイスピードで泳ぐそうだし、あの鋭い歯だ。片腕一本くらいは持っていかれるのを覚悟したよ。
まあ、幸いその場にジッとしていてくれたから、何事も起こらなかったけどさ。そういえば、お客さん守るようにして後ろ向きに泳ぎながら遠ざかったんだよね。あの時は、もっと見ていたいような、早くこの場から立ち去りたいような複雑な気分だった。脳内に、その時の映像は今でも鮮明に残ってる。

 
オニイトマキエイ(マンタ)は、そのデカさからの命名だろう。

 
(出典『オーシャンズダイブツアー』)

 
マンタは石垣島とかで見たけど、やっぱデカイだす。
一度に何枚も現れると、中々凄い光景である。

 
(出典『オーシャナ』)

 
この画像なんかを見るとバットマンだな。
ちょー待てよ。まるで角のある鬼の影絵にも見えるじゃないか。デカイからだけではなく、名前の由来はこのツノ的なものと、そのシルエットにも関係があるのかもしれないね。

 
お次は、ブサいく鬼チームだ。
オニオコゼ、オニダルマオコゼは鬼のように醜くくて厳つい。また背鰭に猛毒もあって危険なことからも名付けられたのではなかろうか。たぶんオニカサゴなんかも同じ意味あいからの命名だろう。

 
【オニオコゼ】
(出典『暮らしーの』)

 
異形(いぎょう)のものだ。
バケモノけだしである。

 
(正面)
(出典『庄内使えるサイト』)

 
顔なんて、ブサ怖い。

 
【オニダルマオコゼ】

 
何度か見たけど、コチラはもっと体が丸い。ゆえにダルマさんなのだ。
海底にジッとしてて、殆んど動かない。英名はストーンフイッシュと言うんだっけ?それくらい岩と同化しているのだ。だから、時々誰かが踏んづけてエライことになる。コヤツも背鰭に猛毒があるからね。アホほど足が腫れるらしい。

 
(正面)
(出典 2点共『暮らしーの』)

 
怨念が籠った顔だ。
創造主である神に対する激しい憎悪やもしれぬ。
(#`皿´)ワシをこんなにも醜い姿で世に産み落としやがって…って顔だ。

 
【オニカサゴ】
(出典『HONDA 釣り倶楽部』)

 
前二つほどではないが、コチラもブサいくだ。
背鰭に毒もある。赤いのも鬼っぽい。
猛毒ブサいく三姉妹ってところか…、最悪だよな。
でも彼女たちの名誉のために言っておくと、皮を剥いだ身は透き通るような白だ。でもって、味はメチャメチャ美味い。刺身に良し、鍋に入れて良し、揚げて良しの高級魚だ。
よくオコゼはブサいくな人へのフォローに使われ、「見た目は悪いけど、付き合ってみたら最高のパートナー」みたく言われる。まあ、理解はできるわな。人は見かけで判断しちゃダメだよね。
そういえばアッシの知り合いのお姉さんの友達に、エゲつない三姉妹がいることを思い出したよ。金魚ちゃん、ミッちゃん、イカスミちゃん(全て仮名)っていうんだけど、何れもデブでブサいくで性格が破綻している。因みに長女の金魚ちゃんは性格は悪くないけど極端に内向的で、何を尋ねても要領を得ない。三女のイカスミちゃんは天の邪鬼(あまのじゃく)且つワガママで性格がネジ曲がっている。二女のミッちゃんが一番ヤバくて柄の悪いトラックの運ちゃんみたいだ。とにかく口が悪くて、直ぐに暴力に訴えかけてくる。粗暴で凶暴なのだ。酒飲むと、ロンパリになって目が据わるしね。でもって何かと絡んでくる。ほんと、タチが悪いのだ。顔も表情も似てるから、ゴマモンガラを思い出したよ。

 
【ゴマモンガラ】
(出典『えいこのモルディブここだけの話&どうでもいい話』)

 
コヤツ、シャブ中患者とかキ○ガイみたく、目が完全にイっちゃってるんである。三白眼っていうのかなあ…、白目がちなんである。それがギョロギョロと落ち着きなく左右バラバラに動く。いわゆるロンパリ的な眼なんである。焦点がどこに合っているのか分からないから恐い。
それに泳ぎ方も変だ。真っ直ぐ泳げなくて、右に左にとヨレて急に横倒しになったりする。完全に狂った者の動きだ。しかも体は50㎝以上、大きなものは1m近くもあるというから恐い。形や色柄も変だし、おぞましいとしか言い様がない。もしも、コヤツの名前にオニがついていたとしても納得するよ。

 
(出典『wikimedia』)

 
この魚、一般の人にはあまり知られてないけれど、ダイバーの間では有名でサメやオニカマスよりも恐れられている。サメとかバラクーダは、のべつまくなしには襲ってこないが、ゴマモンガラはムチャクチャ気性が荒くて、無差別に噛みついてくる。アタマ、オカシイんである。ゴツい歯で指を食いちぎられたとか、ウェットスーツを食い破られて血だらけになったなんて話はよく聞いた。実際、自分の知り合いにもレギュレーターホースを食いちぎられたっていう人がいる。
デブでブサいくまではいいけれど、性格まで悪い女の人には、やっぱ近づかないでおこ~っと。

 
オニハタタテダイは、目の上にある小さな突起を鬼の角に見立てているようだ。

 
【オニハタタテダイ】
(出典『沖縄の魚図鑑』)

 
とはいえ、角は小さい。オニというには、ちょいショボい。しかし、オニハタタテダイはチョウチョウウオやハタタテダイを含む近縁の仲間うちでは、かなりデカイ。最大種か、それに近かったような気がする。どちらかというと、そちらがオニと命名された理由なのかもしれない。いや、両方の合わせ技かな?

 
オニヒトデはデカくてトゲトゲだからだろう。

 
【オニヒトデ】
(出典『水槽レンタル神奈川マリブ』)

 
👿悪そう~。
僕、正義の味方ですぅ~と言われても、誰も信じないだろう。それくらい悪の匂いがビンビンである。
そういえぱ、沖縄発特撮ヒーローもん『琉神マブヤー』の敵役に「オニヒトデイビル」ってのがいたなあ…。結構ボケ倒しの憎めない奴だったけどさ。

 
(出典『おもしろ生物図鑑』)

 
色が赤いのも、如何にも鬼的だ。
但し、色には他にもヴァリエーションがあって、下の画像みたいなものや紫色のもいるようだ。

 
(出典『マリンピア日本海』)

 
性格も荒いそうだ。
ふと思ったのだが、トゲトゲは鬼の角だけでなく、鬼の金棒のイメージでもあるのだろう。
まあ、どうみても邪悪以外の何者でもないことを体現してるよな。沖縄の珊瑚とかガリガリ食いまくってたしさ。

 
オニヤドガリは、毛むくじゃらで獰猛だからかな❓

 
【オニヤドカリ】
(出典『日淡こぼれ話』)

 
コヤツも邪悪そのものだ。
色が赤いのも鬼と言われるに相応しい。
そう云えばコイツ、宮古島にダイビングに行った時にいたわ。綺麗な宝貝を水深5~6mで見つけたので拾ったら、デカいヤドカリが宿借りしていた。貝の中身はたぶんコヤツが食って、その貝殻を羽織ったのだろう。強盗殺人みたいなもんだ。やってる事が凶悪なギャングなんである。

 
(出典『極!泳がせ道』)

 
貝殻から出すと、下半身は驚くほど短小だ。ちょっと情けない。巨漢の男が実を云うと…的みたいで笑ったよ。
でもここが美味い。刺身で食うと、エビ・カニ系とホタテ貝を混ぜたような味なのだ。残った頭とかは味噌汁にブチ込むと良いダシが出る。

旨いで思い出したが、こんなのもいたね。

 
【オニエビ】
(出典『休暇村 竹野海岸』)

 
ゴジラエビとかモサエビなんて呼ばれ方もするが、オニエビも含めて全部その土地土地での地方名だ。
正式名称はイバラモエビという。イバラは植物の棘(茨・荊)から来ているし、ゴジラはあの怪獣ゴジラの背鰭からだ。モサは猛者から来ている。オニエビも、その背中のギザギザ由来だろう。
そういえば、兵庫県の香住ではサツキエビと呼ばれていた。これは五月(さつき)の頃によく水揚げがされるからだ。
この時は生きているのを食った。ても期待していた程には美味くなかった事を覚えている。
実をいうと、海老は新鮮だからといって旨いワケではない。車海老の踊り食いなんてのがよくあるが、あんなもんはプリプリの食感がいいだけで、味はたいしたことない。旨味と甘みが足りないのだ。生きてるボタンエビも食ったことがあるけど、同じようなものだった。魚やイカでもそうなんだけど、必ずしも生きているイコールが最上のものではないのだ。美味いと思っている人は、新鮮=美味と云う思い込み、つまり脳で食ってるからなんである。別にそれはそれで間違いではないけどさ。本人が旨いと思っていれば、それでいいってところは否定できないからね。
肝心なことを言い忘れた。死後硬直がとれたばかりの生はメチャメチャ美味い。甘いのだ。甘エビよりも甘い。焼いても天婦羅にしても美味くて、これまた甘みが強い。クッソー、食いてぇー(T△T)

  
 
植物ならば、オニユリ、オニアザミ、オニバス、オニグルミ、オニツツジ辺りが代表ってところかな。

 
【オニユリ】
(出典『Horti』)

 
オニユリの名の由来は、花が大きくて豪快だとか、花の様子が赤鬼に似ているなど諸説あるようだ。

 
【オニツツジ】
(出典『身近な植物図鑑』)

 
オニツツジなんかも由来は同じようなもんだろう。
因みにオニツツジは俗称で、正式名はレンゲツツジという。この植物、実を云うと有毒である。根や葉茎だけでなく、花やその蜜にまでも毒があるとされている。調子に乗って、子供の頃みたいにツツジの蜜をチューチューしたら死にまっせ(笑)
この毒があるというのも、鬼と冠される理由なのかもしれない。

 
オニアザミやオニバスは、その棘(トゲ)と大きさに由来する。

 
【オニアザミ】
(出典『白馬五竜高山植物園』)

 
オニアザミという言葉は、葉の鋸歯の鋭い大型のアザミの仲間の総称としても使用される。最近はアメリカオニアザミという、もっとトゲトゲの奴があちこちに蔓延(はびこ)り始めているようだ。

 
【アメリカオニアザミ】
(出典『ありのままの風景を』)

 
外来種で、鹿も牛も食べないそうだから激増しているらしい。

 
【オニバス】

(出典 2点共『福原のページ』)

 
葉だけでなく、花や実までトゲトゲなのだ。

 
【オニグルミ】

(2点とも 出典『森と水の郷あきた』)

 
おそらく実ではなく、内部の種(核)が語源だろう。
核面のデコボコが著しく、そのゴツゴツした外観と固さが鬼のようだからだと命名されたと推察する。 

 
 
オニとつく昆虫について書くつもりが、海の生物と植物につい力が入ってしまった。哺乳類と鳥類は駈け足でいこう。

とは言うものの、哺乳類でオニと名のつくものは意外と少ない。ソッコーで片付きそうだ。

 
【アフリカオニネズミ】
(出典『wikipedia』)

 
デカイねぇ~。もう、こんなのウサギじゃん。
コヤツは地雷の除去に貢献しているので、知っている方もおられよう。
タンザニアの団体APOPOはアフリカオニネズミの優れた嗅覚に着目し、その一種であるサバンナアフリカオニネズミを訓練して地雷の探知・除去に役立てる事業を展開している。体重が軽いために地雷に乗っても爆発する可能性が低く、金属探知機よりも高効率で地雷の探索が出来るらしい。凄いぜ、ネズっち。機械よりもネズミの方が優れているなんて、何だか痛快だ。
でも動物虐待だとか言って、正義感を振りかざすバカなのがいそうだなあ…。だったらオマエら、肉も魚も野菜も一生食べんじゃねぇーぞ(#`皿´)

主だったところでは、あと哺乳類はオニテンジクネズミ(カピバラ)くらいだ。これは説明不要だろう。日本にも帰化してるし、動物園でも人気者だもんね。

ところで、何で哺乳類にはオニと名のつく動物が少ないのだろうか❓ 解るような気もするが、いざ答えるとなると明確には答えにくい。まあ、敢えてつける必要もないのだろうとだけ言っておこう。

 
お次は鳥類。

 
【オニオオハシ】
(出典『ナチュマライフ』)

 
オオハシ類の最大種。南米に生息し、その色鮮やかな美しい体色から「アマゾンの宝石」とも呼ばれている。巨大で特徴的な嘴(くちばし)は、体長に占める割合が全鳥類中で最大なんだそうな。

見た目は可愛くて、鬼のようには見えない。おそらくそのグループの最大種ゆえのネーミングだろう。

鳥は他にもオニとつくものが結構多い。
オニゴジュウカラ、オニアオバズク、オニカッコウ、オニヤイロチョウ、オニミズナギドリ、オニクロバンケンモドキ等があるが、如何せんどれもマイナーだ。鳥好き以外で名前を知っている人は少ないだろう。しかも、どれも大型種ではあるが、全然鬼っぽく見えない。厳つくないのだ。強いて鬼っぽいと言えば、オニカッコウぐらいかな。

 
【オニカッコウ】
(出典『wikipedia』)

 
青黒くて目が赤い。ゴツくはないが、精悍な感じだ。
目が紅蓮の炎の如く真っ赤な青鬼に見えなくもない。
だとしたら、由来としてはカッコイイ。
でもおそらくは、名前をつけた人はそんな事までは考えてなくて、単にカッコウ・ホトトギスの仲間の中では大型種だからと云う理由でつけたのだろう。
因みに画像はオスで、メスは茶色い。

 
そろそろ昆虫に行きたいところだが、先ずは他の節足動物から入ろう。

 
【オニサソリ】
(出典『SciELO』)

 
別にオニとつけなくとも、サソリは見てくれがもう全ての種類が十分な鬼的だ。攻撃性が強くて毒もあるから、鬼的要素がほぼ揃っている。
ムカデなんかもそうだろう。因みにオニムカデという和名を持つ種はいないようだ。でも、どっかで聞いたことがあるなあ…と思ったら、ゲームのドラクエ(ドラゴンクエスト)にオニムカデというキャラがいたわ。

 
【オニグモ】
(出典『弘子の写真館』)

 
邪悪だなあ。
オニグモ属最大種にして、属名の基準種でもある。
クモも、そもそも見た目が鬼的だ。なのに、オニグモはそれを強化具現させたかのような存在だわさ。
オニグモ属には数種いて、何れ劣らぬ鬼っぷりである。

 
【キバナオニグモ】
(出典『北の森での散策日記』)

(出典『北海道の生物図鑑』)

 
黄色が入ると、鬼感が増幅されるねー。
野原で遭遇したら、ギョッとするだろう。
鬼とは、そもそもがこの世の者ならざる異形(いぎょう)な存在の総称なのかもしれない。だから、オニとつけるのならば、驚愕される存在であるべきじゃないかと思う。

 
【ヤマシロオニグモ】
(出典『北の森での散策日記』)

 
万歳している👽宇宙人みたいだ。
或いは腹の下の方は、笑っている猫みたいにも見える。

 
【ヤマオニグモ】
(出典『北の森での散策日記』)

 
黒いと邪悪度が増すなあ…。
でもカッコイイっちゃ、カッコイイ。何だかハカイダー(註2)を思い出したよ。

 
【イシサワオニグモ】
(出典『北の森での散策日記』)

 
赤っぽいのも邪悪な感じがする。黄色もそうだけど、赤も警戒色なのである。あたしゃ、危険ですよという印だ。

 
【アカオニグモ】
(出典『まーしーのフォトアルバム』)

 
もっと赤いのもいた。
赤鬼様は毒々しい。しかし、邪悪度も上がるけれど、同時に美しさ度も上がる。見方を変えれば、デザインはポップでさえある。

赤鬼がいるのなら、青鬼もいるんじゃないかと思った。
で、一応調べてみたら、いた。

 
【アオオニグモ】
(出典『博物雑記』)

 
予想に反して青鬼は可愛いかった。
プリプリの白いお尻が、髭のおじさんのコケシ頭みたいだ。邪悪というよりもユーモラスだね。

オニグモって面白いなあ。
ついつい、めっちゃネットサーフィンしてしまったよ。
けど、いつまでこんな事やってんだ?いい加減にクロージングしないとマズイなあ…。

 
長々と書いてきたが、ようするにオニと名がついている生物には、基本的に以下のような特徴があるようだ。

①大きい
②刺(トゲ)、もしくは角がある
③見た目が厳(いか)つい
④凶暴・獰猛である
⑤毒々しい。或いは毒がある
⑥色合いが鬼に似ている
⑦勇壮

思うに、この何れかの特徴を有しているものが、オニと名付けられた模様だ。
言い加えると、①の大きいと⑦の勇壮は重複するところもあるが、大きいからといって勇壮とは限らないので、あえて分けた。

 
扨て、いよいよ昆虫である。
でも書き疲れて、正直どうでもよくなってきた。
と云うワケで、虫のオニ関係は次回後編に回します。

 
                     つづく

 
と、一旦クロージングしたんだけど、後編を書くのならば、導入部でまた前回の流れを汲む説明をしないといけない。それが正直、面倒くさい。しゃあないから、踏ん張って続けて書くことにした。たぶん、前半よか長くなるので、ここまで読んで疲れちゃった人はここで一旦読みのをやめて、二回に分けて読みましょうね(笑)。マジで。

始めるにあたって、今一度鬼の定義を確認しておこう。
ウィキペディアには、こう書いてあった。

『日本語では逞しい妖怪のイメージから「強い」「悪い」「怖い」「ものすごい」「大きな」といった意味の冠詞として使われる場合もある。(中略)。現在、一般的に描かれる鬼は、頭に二本、もしくは一本の角が生え、頭髪は細かく縮れ、口に牙が生え、指に鋭い爪があり、虎の皮の褌(ふんどし)や腰布をつけていて、表面に突起のある金棒を持った大男の姿である。色は赤・青・黒などさまざまで、「赤鬼(あかおに)」「青鬼(あおおに)」「黒鬼(くろおに)」などと呼ばれる。』

OK。自分が指摘したものとだいたい合っている。これを今一度脳ミソにブッ込んで、続きを読まれたし。

さあ、既にどうでもよくはなってきてはいるけれど、本当に言いたいことに向かって書き進めよう。
 
前回、オニシタバの回で書いた要旨はこうだ。
「昆虫でオニといえば、オニヤンマ、オニクワガタ辺りが代表か…。他にもいるようだが、でもこの辺で止(とど)めておく。あまりにもショボい面々揃いなので、更なる脱線、怒気を含む言葉になるのが必至だからだ。コレについては機会があれば、また別稿で書くかもしんない。」
この言葉に対しての異論もあるようなので、理由を書きます。

繰り返すが、昆虫でオニといえばポピュラーなのは、オニヤンマとオニクワガタだろう。

 
【オニヤンマ】
(出典『自然観察日記』)

 
(出典『あにまるじゃんくしょん』)

 
日本最大の勇壮なトンボだから、一般の人でも知っている人は多いだろう。

 
(出典『廿日市市の自然観察』)

 
エメラルドグリーンの眼がとても美しいけど、よく見ると顔は厳(いか)めしい。

 
(出典『メンバラ&身近な自然』)

 
歯もゴツい。
コイツで、あの凶暴なスズメバチなんかもガリガリ食う。オニヤンマは日本有数の肉食昆虫でもあるのだ。
そういえば思い出したよ。随分前に当時の彼女と赤穂方面に旅行に行った時の事だ。龍野市でオニヤンマの巨大なメスが空中でシオヤアブ(註3)をガシッと捕まえて飛んで行った事がある。あれはインパクトあったなあ…。シオヤアブもスズメバチを襲うくらいの凶暴な奴である。その両者が互いに正面から飛んできて、ガチンコで相まみれたのだ。僅かな攻防があった次の瞬間には、アブがバキーッいかれとった。で、そのまま飛んで近くの電線に止まり、ガシガシと囓じり始めた。あまりの迫力に、彼女と二人して震撼。口あんぐりで見てたよ。

和名は、この巨大さと厳つい顔つき、凶暴性から名付けられたのだろう。また、黒と黄色の縞模様から虎皮のパンツを履いた鬼を連想して名づけられたという説もあるようだ。しかし、これはたぶん後付けでしょう。
あっ、二枚目の正面写真も鬼っぽくねえか❓
背中の柄がツリ目で出っ歯の鬼の顔に見えなくもない。これも名前の由来になってないのかなあ❓
とにかく、これだけ鬼の要素が揃っているのである。ネーミングに異論は無かろう。

それに対して、オニクワガタにはガッカリだ。

 
【オニクワガタ】
(出典『THE KAYAKUYA』)

 
たぶん顎の感じが鬼の角みたいだからと名付けられたのだろうが、小さくてマジしょぼい。2、3センチしかないのだ。クワガタといえば、昆虫界のスター軍団だ。デカくてゴツゴツした奴が綺羅星の如くいる。その中にあって、オニクワガタは鬼の名前を冠するのにも拘わらず、どうにも地味なのだ。こんな奴にオニとつけるんなら、タテヅノマルバネクワガタ(註4)とかの方がよっぽど相応しい。断然デカイし、珍しい。今や天然記念物だもんね。
それにオニクワガタはブナ林の中の道をひょこひょこ歩いてるのを時々見かける。結構、普通種なのだ。見ても全然感動がない。

とはいえ、横から見ると確かに鬼的ではある。

 
(出典『フォト蔵』)

 
角の形が鬼を彷彿とさせる。
これならば、オニという名前でもギリギリ許せる範囲内だ。
とはいえ、小さい奴にはあんまりオニとはつけて欲しくないなあ。
オニクワガタというのなら、⬇コレくらいの迫力はあって欲しいものだ。

 
【ローゼンベルグオウゴンオニクワガタ】
(出典『W.B.B-01◆KING◆ブログ』)

 
オウゴンオニクワガタは幾つかの種に分けられているが、この種はインドネシア・ジャワ島に棲むもので、体長は大きなものは80㎜くらいもある。まさに黄金の鬼である。ゴージャス鬼だ。

オニとつくクワガタといえば、コヤツの存在も忘れてはならないだろう。
 
 
【オニツヤクワガタ】
(出典『ゲストハウス プリ/Guest House Puli』)

 
画像は台湾産のオニツヤだ。大きなものだと体長90㎜を軽く越えるものもいるという。

メスでもデカイ。

 

 
メスだってオニクワガタよか遥かにデカイのじゃ。
充分、鬼である。

幼虫がエグい。

 

 
これまた鬼なのである。下手したら成虫よりも凶悪な感じがする。

これら3点の画像は台湾中部、埔里で世話になったナベさんにお借りした画像だ。
ナベさんは埔里でゲストハウスを経営する大のクワガタ好きなのだ。2016年、初めて台湾に蝶採りに訪れた折り、ナベさんのゲストハウスに泊まっていたのだが、その時にこれらの画像を興奮気味に見せてくれたのだった。ナベさん曰く、気性が荒く凶暴なんだそうな。
コヤツは実物を是非この目で見てみたい。次に台湾に行くときは本気で探そうと思う。

因みに、ナベさんは渡辺さんではなくて渡部さんで、渡部と書いてワタベと読む。ワタナベさんではないのだ。でも呼びやすいから勝手にナベさんと呼んでたら「間違ってるけど、もうそれでいいですよー(# ̄З ̄)」と言われた。だから、ナベさんでいいのである。

 
どんどん行こう。

 
【オニオサムシ Carabus barysomus 】
(出典『世界のオサムシ大図鑑』井村有希・水沢清行)

 
体長29~50㎜。
分布はインド北西部カシミール地方、パキスタン北東部。
光沢の強い漆黒の地に、顕著な上翅彫刻と亜属中最大の体長を有する。本亜属の基準種でもある。

ピンチアウトして画像の拡大は出来るけど、分かりやすいようにトリミングしよう。

 
【ssp.hazarensis&ssp.huegeli】

 
黒い鬼だ。この点刻が厳つさを増幅させ、鬼感を醸し出している。デカイと云うのも鬼でしょう。オニの名に異論なしだ。
図示したものは原記載亜種(ssp.barysomus)ではなく、左がカガン渓谷亜種(ssp.hazarensis)で、右がスリナガル東方亜種(ssp.huegeli)である。

 
【ssp.heroicus】

 
コチラも同じくオニオサムシだが、最大かつ最も特殊化したものとされる。ピル・バンジャン山脈西部のブーンチ北方の産する亜種で、こっちも負けず劣らずカッコいい。

 
【カシミールオニオサムシ Carabus caschmirensis】
(出典『世界のオサムシ大図鑑』井村・水沢)

 
体長27~38㎜。
これは wittmerorum というパキスタン北部・スワート地方の亜種で、緑青色を帯びており、とても美しい。
カシミールの青鬼だな。因みに、原記載亜種は黒い。

オニオサムシ亜属(Imaibius)は、大半がインド北西部のカシミール地方からパキスタン北部の標高2000~3000mの高所に棲む。背後は7千、8千メーター峰が連なるカラコルム山脈とヒマラヤ山脈だ。そういうところも、鬼が棲むに相応しい異世界って感じでいい。
スリナガルは当時も旅行者には閉ざされていて、結局行けなかった。でもパキスタン北部にはバイクでユーラシア大陸を横断した折りに立ち寄った。標高四千くらいまでは行ったと思う。もし、その頃に虫採りをやってたとしたら、コヤツらも採れたかもしんない。ヨーロッパに始まり、アフリカを経由してアジアまで旅したから、会おうと思えば相当ええ虫に会えてたんだろうなあ…。モロッコの砂漠なんかにも行ったから、ニセマイマイカブリとか、カッコいいゴミムシダマシにも会えたかもしんない。勿体ねー。

 
【オニミスジ Athyma eulimene 】
(2013.1.20 Indonesia Sulawesi Palopo)

 
見よ、怒れる鬼の形相を想起させるこの出で立ちを❗
オオアカミスジなんていう普通過ぎるダサい和名もあるけど、塚田悦造氏が大図鑑『東南アジア島嶼の蝶』で採用しているオニミスジを断固として推す。
なぜなら前翅長が42㎜くらいはあり、ミスジチョウやシロミスジの仲間の中では最大、もしくは最大級の種だからだ。翅も他のミスジチョウと比べて遥かに分厚いし、体も太くて頑健だ。デカくてゴツいのだ。そして飛ぶのもクソ速い。だから、採った時は到底ミスジチョウの仲間には思えなかった。

 

 
背中に光る金緑色が美しい。
何だか、まるで鬼火のようじゃないか。

 
【ミドリオニカミキリ】
(出典『cerambycodea.com』)

 
南米のカミキリムシだが、鬼そのものとも言える見てくれだ。残虐非道の青鬼様なのだ。
大きさは75㎜もあるそうだ。この厳つい顔、そして前胸のトゲトゲ、青緑色にギラギラ輝く感じ。そこに大きさも加わるのだから、鬼と呼ぶに申し分ない。性格も絶対に悪辣凶暴、極悪に違いなかろう。
オニの名がある虫の中では、コイツが一番鬼を具現化させたような存在じゃないかな。カミキリムシだから、肉食じゃないけどさ。

 
外国の昆虫はコレくらいにして、日本のオニと名のつく虫に戻ろう。

 
【オニホソコバネカミキリ】
(出典『リセント[RECENT]』)

 
(出典『ムシトリアミとボク』)

 
見た目が黄色と黒だし、毛むくじゃらなところは鬼と言って差し支えないだろう。カミキリなのにハチに擬態していると云うのも、何となく邪悪っぽい。
学名は Necydalis gigantea。その学名からカミキリ愛好家たちの間では、ギガンティア、ギカンと呼ばれている。ギガンティアとは、ラテン語で「巨大な」を意味する言葉である。その名のとおり、ネキ(=ネキダリス=ホソコバネカミキリ属)の最大種でもある。まさに鬼の名に相応しい。これも異論なし❗

 
オニクワガタはまあ置いておくとしても、ここまではオニと名付けられていることに何ら違和感のない昆虫たちだ。問題はここからである。
とはいえ、問題視しているのはワテだけかもしれん。ゆえに、ここから先の文句たらたらの文章は、あくまでも個人的見解であることをおことわりしておく。

 
【オニユミアシゴミムシダマシ】
(出典『インセクトアイランズ』)

 
体長22.0~31.2㎜。ユミアシゴミムシダマシの中の最大種である。
ユミアシというネーミングはセンスいいなと思う。
奈良の春日山と九州の大隅半島、福江島(五島列島)くらいでしか採れないようだから珍稀度も申し分ない。脚が太く、見た目もガッツリした感じで黒光りしているから、邪悪な黒鬼に見えなくもない。魅力的なのは認めよう。
だが、この見た目が問題だ。他のユミアシゴミムシダマシの仲間と見てくれはあんまし変わんないのである(註5)。つまりオニユミアシだけが特に鬼っぽいワケではないのだ。
あとはオオユミアシゴミムシダマシやアマミユミアシゴミムシダマシと大きさ的には、さほど差はないというのも気にかかる。オニというからには、圧倒的に巨大であって欲しいという願望があるのだ。
とはいえ、オニユミアシは自分の中では一応セーフかな。オニと名乗ってくれても強く反対はしないし、いたらゼッテー採るもん。

 
【オニヒゲナガコバネカミキリ】
(出典『長野県産カミキリ図鑑』)

 
ちっちゃ❗
調べたら、6~14㎜しかない。
ヒゲナガコバネカミキリの仲間では大きいから名付けられたようだけど、オニってのはどうよ❓小さ過ぎやしないか❓
見てくれは鬼っぽいといえば、鬼っぽくはあるけどさ。

 
(出典『吉崎ネット甲虫館』)

 
でも、カッコいいなあ(о´∀`о)

 
【オニヒラタシデムシ】
(出典『東京昆虫館』)

 
オニとつくのに、体長はたった1㎝くらいしかない。
普通のヒラタシデムシ類でも1.5~2㎝くらいはあるのに解せない。
という事は背中の彫刻柄が鬼みたいってことなのかな❓にしても、オニというほどの複雑怪奇な彫刻柄ではない。鬼というほどのインパクトはあらへん。ネーミングに異議ありだ。
まあ、コイツらシデムシ(死出虫)は字の如く動物の死体に集まるから、その意味では鬼的ではある。鬼みたく死肉を屠(ほふ)るのである。気味悪いが、腐敗菌の蔓延を防ぐ掃除屋でもあるから、必要な存在ではあるんだけどもね。

 
【イシガキオニハネカクシ】

どうやらキシモトツノツツハネカクシの石垣島亜種の別称のようだ。でもイシガキオニハネカクシの画像がダウンロードできない。キシモトツノツツハネカクシの画像も見つからない。と云うワケで、ある程度近いであろうフトツノツツハネカクシの画像を添付してお茶を濁しときます。

 
【フトツノツツハネカクシ】
(出典『フォト蔵』)

 
イシガキオニの頭はこんなにデカくはないけど、だいたいこんな感じだ。角もあるし、見てくれは邪悪な感じがしてオニと言ってもいいだろう。
けどさあ、ハネカクシって、そもそも皆さん鬼的な見てくれだよねぇ。

 
(出典『コトバンク』)

 
しかし、如何せんやっぱり小さい。だいたいハネカクシ全体がチビッコだらけなのだ。

 
【ツツオニケシキスイ】
(出典『最上の自然』)

 
オニケシキスイ亜科 ヨツボシケシキスイ亜属に含まれる。
元々ケシキスイは矮小だけれど、4~6㎜くらいしかない。調べた限りでは他にこの亜属にはオニとつくものが2種、オニケシキスイ亜属にコオニと名のつくものが5種類あった。何でオニケシキスイ亜属がコオニで、ヨツボシケシキスイ亜属の奴らがオニケシキスイなのだ❓謎だよ。さっぱりワカランわ。
一瞬、この黒と赤が鬼を連想するゆえのネーミングかなと思ったが、考えてみればヨツボシケシキスイだって赤と黒なのだ。益々ワカランわ。

 
【オニメクラチビゴミムシ】

画像が見つからなかったので、別種のズンドウメクラチビゴミムシの画像を貼っておく。

 
(出典『俺流エンタメ道場』)

 
見た目はどれもこんな感じの形で赤茶色なので、雰囲気は何となく解ってもらえるかと思う。
メクラチビゴミムシはチビゴミムシ亜科のゴミムシのうちで、地下生活に強く適応した結果、複眼を失った一群の総称である。ようするに盲目なのである、
約300種以上が知られ、多くが体長5㎜前後の小さな昆虫だ。
画像は見つけられなかったが、学名は判明した。
Trechiama oni というらしい。小種名が、まんまの「oni=鬼」じゃねえか。よほど鬼っぽい姿なのかとワクワクしたが、そんなに特異なものならば、もっと言及もされている筈だ。しかし、目ぼしい情報がてんで見つからない。画像も見つけられなかった。
ってゆうことは、それほど特筆すべき奇怪な姿ではないのだろう。となると、鬼的要素として考えられるのは、属内最大種である公算が高い。でも、んな矮小なものにまでオニとつける必要性が果たしてあるのだろうか?

話は変わる。この一連の和名に対して、巷では差別だという批判の声が少なからずあるようだ。過去には改名騒動さえ起こったらしい。
確かに知らない人から見れば、メクラでチビでゴミみたい存在だと言っているように聞こえる。そんなの虫だからって名付けていいのかよ?それって差別だろって事なのだろう。ても、その考え方がメンドくせー野郎だなと思う。
掲げた画像のズンドウメクラチビゴミムシだって、ズンドウ(寸胴)は決して誉め言葉ではない。むしろ、その逆だろう。だからって、何だというのだ。メンドクセー。たかが虫だろ❓虫は悲しんだり傷ついたりはしない。

ウィキペディアには、続けてこうあった。
「和名に差別的に聞こえる要素があるため、日本の昆虫学の研究者の間でも改名すべきか否かで議論が絶えない。」
驚いた事に一般ピーポーではなく、玄人筋からのクレームだったのね。何だそりゃ?である。
クレームをつけている研究者はハッキリ言ってバカだ。言葉に対する感覚がズレている。こういう正義感ぶってる奴に限って、差別を助長していたりするから始末に悪い。所詮は虫なんだから、ありのままでいいのにね。
この手のセンスのない輩どもが、真面目で長ったらしくてクソ面白くもないつまらん和名を乱発しているのだろう。

ウィキペディアでは、それに対して更にこう続けている。
「現在のところ、このグループの研究を日本で牽引してきた上野俊一が、実際の差別と言葉は無関係であり、標準和名は学名に対応しており、変えると混乱を招くとする改名反対の主張を強く行っているため、当面改名されない模様である。」
上野さん、天晴れである。おっしゃる通りだ。
だいたいメクラも盲目も、所詮は同じ意味じゃないか。言い方を変えただけにすぎない。こんなの言葉狩りだろ。メクラという言葉にはそれ相応の歴史があり、その成立過程には様々な物語もあった筈だ。言葉を葬り去るということは過去の歴史をも闇に葬り去るということだ。負の遺産も人類の遺産なのだ。消してしまえば、根本の本当のことはわからなくなる。
そういえば、イザリウオなんかも差別用語だといって、知らぬ間に「カエルアンコウ」にされちゃったんだよねぇ。ようするに、イザリという言葉も葬り去られたワケだが、アレを言葉で説明するの大変だし、面倒くさいぞ。しかも、説明するとなると喋る方も聞く方も妙にリアルな嫌悪感情になるのは避けられんでしょう。
ホント、自主規制とかって馬鹿馬鹿しい。言葉が誕生したのには、それなりの理由があるのだ。

 
【アカオニミツギリゾウムシ】
(出典『昆虫データバンク』)

 
ミツギリゾウムシかぁ…。この仲間は海外で何度か見たけど、変な形だなあと思った記憶がある。コイツはそれよかもっと変な奴だな。触角とか、かなり変わってる。
調べた限りでは分布は狭く、福岡、愛知、奈良、京都の各府県でしか見つかっていないようだ。かなりの稀種なんだね。
灯火に飛来すること以外、生態は未解明だが、アリの巣と関係があるらしい。好蟻性昆虫なのか…、謎だらけだな。何か面白そうだ。

日本では、他にツヤケシオニミツギリゾウムシ、キバナガオニミツギリゾウムシの2種がいるが、これらも稀種のようだ。何れもネットでは五万円の値がついていた。とはいえ情報が少ないから、本当にそれだけの価値があるのかどうかはわからない。生態が分かってないし、探してる人も少ないから、単に需要と供給の問題だけなのかもしれない。

情報が少ないから、語源を探るのも大変だ。それだけマイナーな存在なんだろね。
ツヤケシオニミツギリってのは黒い。キバナガは赤い。勝手に想像すると、日本ではツヤケシが最初に見つかって、次に赤いのが見つかったからアカと名づけたのかな? で、キバナガはその次に見つかり、顎が長いのでキバナガとつけられたと推察する。
しかし記載年を確認したら、アカオニが1963年、ツヤケシが1976年、キバナガが2009年となっていた。見事に読みがハズレましたな。
それにしても何でオニなんだろ?ミツギリゾウムシの中では最大なのかなとも思ったが、たった10㎜くらいしかない。日本にいるミツギリゾウムシには、もっと大きいのが沢山いるから、それも当てはまらない。
オニアカは前胸中央に溝があるのが顕著な事から、セスジミツギリゾウムシという別名がある。もうそっちでいいと思うんだよね。正直、チビッコだし、鬼には見えないもん。

 
【オニコメツキダマシ】
(出典『虫つれづれ@対馬V2』)

 
前胸背の凹凸の彫刻柄が鬼の顔に見えることからついた種名のようである。
でもコレが鬼に見えるって、どんだけ想像力が逞しいねん。大きく張り出した前胸の顔はお地蔵さんにしか見えん。体全体もお地蔵さんやんけー(# ̄З ̄)
しかも、体長は5~11.5㎜と笑けるほど小さい。でもって、ド普通種らしい。
学名 Hylochares harmandi に秘密が隠されているのかと思いきや、そうでもなさそうだ。これはおそらく著名な博物学者のアルマン・ダヴィドに献名されたものだろう。余談だが、アルマンといえば、アルマンオサムシ(ホソヒメクロオサムシ)など多くの昆虫にその名が学名としてつけられている。余談ついでに言っとくと、学名には名前はないけれど、有名なのは中国で博物学調査を行い、ジャイアントパンダの存在をヨーロッパに報じた人物でもありんす。

 
【オニツノキイロチビゴミムシダマシ】
(出典『われら雑甲虫ちっちゃいものクラブ』)

 
ちっちゃ❗
チビとついてあるだけのことはある。

奄美大島にしかいない稀種なんだそうな。奄美って、固有種とか日本ではこの島にしかいないと云う虫が多いよね。フェリエベニボシカミキリとかアカボシゴマダラとかさ。あっ、アカボシゴマダラは今は本土にもクソ品のないクズ外来種がいるな。(# ̄З ̄)死ねばいいのに…。

 
(出典『われら雑甲虫ちっちゃいものクラブ』)

 
まさか触角が鬼に見えるとかじゃないだろうなあ。
だとしたら、無理無理じゃん。
あっ、でもよく見たら角があるわ。

しっかし、クソ長い名前だニャア。どれか1つくらい端折(はしょ)ることが出来なかったのかなあ❓
虫の名前には、とてつもなく長いものが結構ある。アレって、何とかならんのかね❓細かく特徴を現したいのだろうが、かえってワケわかんなくなってないか❓ハッキリ言う。長い和名はダサい。

 
(出典『われら雑甲虫ちっちゃいものクラブ』)

 
( ̄~ ̄;)う~む…。こりゃ、確かに鬼だわさ。
オニの名を認めてもいいような気がしてきた。
でも、それならオニかツノかのどっちか1つにしてもらいたいよね。
けど、オニとするには、やっぱ如何せんちっちゃ過ぎるわ。

 
【オニエグリゴミムシダマシ】
(出典『吉崎ネット甲虫館』)

 
どこがオニなのか、さっぱりわからない。
単に属最大種なのかな❓
でも体長が10.7~12.3㎜しかないし、果たしてオニとつける意味ってあるのかな❓まだまだ昆虫素人にはワカンないや。自分の預かり知らぬ裏事情とかあるのかしら❓

 
【オニツノゴミムシダマシ】
(出典『吉崎ネット甲虫館』)

 
どこに角あるねん(#`皿´)❗と思ったら、ちゃんとある奴も発見。

 
(出典『昆虫採集記』)

 
どうやら角はオスにしか無いようだ。もしくはオスの方が発達してる?

体長は10.8~18.5㎜。コレまた小さい。
属最大種かと思いきや、近縁のミツノゴミムシダマシ(コヅノゴミムシダマシ)の方が13.5~18.5㎜と大きいぞ。昆虫界のオニの基準って何なのさ❓

 
【オニクビカクシゴミムシダマシ】
(出典『吉崎ネット甲虫館』)

 
頭に鬼的突起があるが、申し訳程度だ。鬼というよりも猫耳だ。ネコミミクビカクシゴミムシダマシの方が可愛くて良いのになあ…。
待てよ。そもそもコレって角なのか?小腮か何かじゃないのか❓
まあいい。おそらく猫耳は関係なく、属の最大種なのだろう。けれど、やはり小さい。体長は8.3~10.5㎜しかない。
とはいえ、クビカクシってのは中々秀逸なネーミングかもしんない。特徴をよく捉えていると思う。
 
 
【オニササキリモドキ】
(出典『日本のバッタ・コオロギ・キリギリス』)

 
属の最大種かと思いきや、そうでもないようだ。たった8~10.4㎜しかない。どこがオニやねんである。
調べてゆくと、愛媛県の鬼ヶ城山という地名がボツポツ出てくる。そこで最初に見つかったからなのか❓だとしたら、紛らわしい事この上ない。だったら、オニガシロササキリモドキにしろよなー(# ̄З ̄)
けど、調べるとどうやら基産地は鬼ヶ城山ではなく、篠山という所みたいだ。益々、ワケわかんねえや。
因みに、分布は愛媛県と高知県だけみたい。そこそこ珍しい種なんだろう。しかし、それとオニのネーミングは関係ないんだろなあ…。

 
【オニヒメタニガワカゲロウ】
(出典『ZATTAなホームページ』)

 
鬼なのに姫って、何じゃそりゃ❓である。
オニは主に最大種、ヒメは小型種につけられるのが生物界の常識だが、一般ピーポーにとっては何じゃそりゃ❓である。ミックスされたら、ワケわかんねえだろう。
これはおそらくヒメタニガワカゲロウの最大種であるから、頭にオニとつけられたのだと推測される。
でもヒメタニガワカゲロウというのが、探しても見つからない。フザけんなよである。ヒメは小さいという意味でつけられただけで、属レベルではタニガワカゲロウというワケなんだろね。もう面倒だから確認しないけど。

画像を見てもわかるとおり、葉っぱの大きさと比して大変小さい。ヒメと呼ぶに相応しいと言える。
だとしたら、オニの部分は大きさではなく、その形態によるネーミングではなかろうか?
そういう目で見れば、確かに頭部に突起らしきものがある。それを鬼に模して名付けられた可能性はある。とはいえ、申し訳程度だ。こんなもんがオニと言えるかね。せいぜいツノでよかったんじゃないの~❓

 
【オニヒメテントウ】
(出典『東京23区内の昆虫2』)

 
だからぁー、鬼と姫を一緒にすんなっつーの(# ̄З ̄)
ヒメテントウの最大種らしいが3㎜しかないし、どこがオニやねん。もー、どいつもコイツもチビッコの鬼ばっかじゃねえか。

  
他にもオニヒメハネカクシ(だからぁー、鬼と姫を一緒にすんなよ)、オキナワニセオニハネカクシ、アシナガオニゾウムシ、オニツヤハダチャイロコメツキとか、オニとつく昆虫はまだまだいるけれど、これくらいにしておこう。どうせ皆んなチビだろうしさ。

ようは、簡単に何でもかんでもオニって名前をつけるのはどうかと思うよと言いたいワケ。特にチビッコの虫にオニってつけるのは、もうやめません❓って事なのである。オニとつけるなら、それに相応しい存在であるべきだと思う。オニは鬼らしくである。
それを言うのに、ここまで長い文章を書くのは自分でも御苦労なこったである。( ̄∇ ̄ )ゞまっ、いっか…。

あっ、忘れてたよ。そういえば日本のオサムシにもオニの名を冠したのがいたなあ。

 
【オニクロナガオサムシ】
(出典『世界のオサムシ大図鑑』井村有希・水沢清行)

 
正式には種ではなく、キュウシュウクロナガオサムシの東広島亜種で、その通称がオニクロナガオサムシである。
どうせキュウシュウクロナガオサムシの中で一番デカイから名付けられたんだろうと思っていた。実際、種の中では一番大きいのだが、甲虫屋のAさんから名前の由来を聞いて驚いた。何とオニは人のニックネームから来てるみたいなんである。
これは蛾の著名な研究者、特にシャチホコガの研究で高名な中臣謙太郎氏のアダ名なんだそうである。
長いが、学名を記そう。
Carabus(Leptocarabus)kyushuensis cerberus。
括弧内は、たぶん新たな分類を用いた場合の学名かな?
小種名の cerberus は冥界もしくは地獄の番犬ケルベロス(註6)のことだ。
Aさん曰く、中臣さんの顔が鬼みたいだったからオニの和名がついたそうだ。そんなん有りかいな(笑)。
その鬼に連動して小種名もついたようだ。その辺の事は詳しくは訊いてないけど、或いはケルベロス的な激しい性格の持ち主でいらっしゃるのかもしれない。でも、たとえそうだったとしても、鬼とかケルベロスとかとつけられるのを許した中臣さんは心が広い。

こう云うオニの命名の仕方は想定外だった。目から鱗である。由来が分かりにくい紛らわしいネーミングをすんなよとは思いつつも、でもちょっと愉しい。この由来ならば、納得です。エスプリが効いている。是非残して欲しい和名だよ(註7)。
もしかしたら、他にもコレ的イレギュラーな由来のオニ昆虫もいるかもしれないなあ…。
たぶんいないとは思うけど(笑)。

 
                    おしまい

 
追伸
他人の画像を借りまくりの回になった。自分の画像ってオニベニシタバとオニミスジしかないもんなあ…。ちょっと気が引ける。とにかく、画像を御使用させて戴きました方々、有り難う御座います。礼 m(__)m

今回は頭からケツに順には書かなかった。バラバラに書いて、あとから繋ぎ合わせた。最初に前回の元になる文章を入れて、植物から書き始め、次に海の生物の部分を膨らませていった。あとはオニオサムシの草稿、ついで鳥、戻って哺乳類、クモと書き、オニヤンマからオニツヤクワガタまでを一気に書いた。でもってミドリオニカミキリ、オニホソコバネカミキリを続けて書き、オニミスジを途中に挿入した。で、オニオサムシの稿を完成させた。そこからまた戻ってオニササキリモドキ、オニヒメタニガワカゲロウの項を書いた。してからに、オニクロナガの事とその前にある今回の主題である物言い(文句)を置いた。そして、最後にオニユミアシからゴミムシダマシの項までを順不同でバラバラに書いた。
だから、所々でトーンが微妙に変わっている。こういう書き方は珠にするけど、こごまで継ぎはぎだらけで書いたのは初めてだ。飽きれば別のところを書けばいいので、お陰で長文のわりにはあんまし苦痛ではなかった。でもそのせいで、ウンザリするくらいの長い文章になってしまったけどね。最後まで読んで下さった方には、ただただ感謝である。

 
(註1)バラクーダは老魚なると群れない

当時、先輩インストラクターにはそう聞かされていたのだが、これは間違い。単独行動の奴と群れている奴は別種なんだとさ。単独でいるデカイのがオニカマスで、群れているのはオオカマスだという。大型カマス類には何種類かあるのだが、ダイバーの間では全部ひっくるめてバラクーダと呼ばれている。だから種類が混同されているのだ。ブラックフィンバラクーダとかも、学術的には別種なんだろね。

 
(註2)ハカイダー
(出典『プレミアム バンダイ』)

 
特撮番組『人造人間キカイダー』及び『キカイダー01』に登場した悪役キャラクター。ダーティヒーローだ。
フィギュア、欲しいなあ…。

 
(註3)シオヤアブ
(出典『メンバラ&身近な自然』)

 
双翅目ムシヒキアブ科。体長23~30mm。
時にスズメバチをも襲う。オニヤンマも襲われることがあるみたい。返り討ちにあうことも多いそうだけど。

 
(註4)タテヅノマルバネクワガタ
(出典『気ままに昆虫採集』)

 
以前はチャイロマルバネクワガタ以外の全種全亜種が「タテヅノマルバネクワガタ」として、ひと括りにされていた。
現在はアマミマルバネクワガタ、ウケジママルバネクワガタ、オキナワマルバネクワガタ、ヤエヤママルバネクワガタ、ヨナグニマルバネクワガタの5種類に分けられている。
マルバネクワガタは見たことがない。蝶屋だから夜は虫採りなんかしなかったのだ。そういえば、ヨナグニマルバネは禁止になる前年に与那国島にいて、しかもベストシーズンだった。それ狙いの人も沢山来ていた。今思うと、毎晩呑んだくれてる場合じゃなかったよ。
wikipediaには「今日知られる分類は水沼哲郎氏の熱心な研究によるところが大きい。」とあった。水沼さんは優しくて飄々としたお爺ちゃんだけど、やっぱスゴい人なんだね。

 
(註5)他のユミアシゴミムシダマシとそう変わらない

一見したところ、他の大型ユミアシゴミムシダマシとあまり変わらない。体長もそれほど大きな差はない。

 
【オオユミアシゴミムシダマシ】
(出典『こんなものを見た』)

 
体長21.8~27.9㎜。
そういえば初めてユミアシゴミムシダマシを採ったのは小学生の頃で、場所は長居公園の臨南寺だった。大阪のド真ん中だけど、まだ小規模ながら古い社寺林が残っていた時代だ。一部は原始に近い照葉樹林で、そこにはオオゴキブリやマイマイカブリ、オオゴミムシとかオオスナハラゴミムシなどの大型ゴミムシ、そういえばオオゴモクムシなんかもいた。オニユミアシは古くて豊かな照葉樹林にいるみたいだから、もしかしたらアレはオニユミアシだったりしてね。残念ながら標本は残っていないから確かめようがないけれど。

 
【アマミユミアシゴミムシダマシ】
(出典『インセクトアイランズ』)

 
体長23.8~29.3㎜。
前述したが、オニユミアシは22.0~31.2㎜。つまり大きさはオニユミアシ、アマミユミアシ、オオユミアシの順となる。

 
(註6)ケルベロス
(出典『世界の神話・伝説』)

 
ギリシア神話に登場する犬の怪物。冥界の入口を守護する番犬で、三つの首を持ち、青銅の声で吠える恐るべき猛犬とされる。また、文献によって多少の差異はあるが、三つ首プラス竜の尾と蛇のたてがみを持つ巨大な犬や獅子の姿で描かれることが多い。
学名はラテン語なので、読み方はケルベルス。英語では読みはサーベラスとなる。

 
(註7)是非、残して欲しい和名だよ
実際、消えてゆく和名も多い。特にオサムシは亜種名にも和名をつける慣習があるからだ。オニクロナガも今ではキュウシュウクロナガオサムシ広島県東部亜種と表記される機会が増えている。これは日本産オサムシ図説(井村・水沢, 2013)で、この亜種独自の和名を見直し「(種和名+主要分布地域名)亜種」という方式で和名を記載することが提唱されたからだ。この方式は従来方式の和名が「種を指すのか亜種を指すのか明確でない」という見解からだろう。確かに一見合理的ではある。
しかし、分布地域名の表記をなるべく正確かつ統一的なものしようとするあまり、やたらと長くなっているものが数多く見受けられるのも事実だ。従来の方式ならば、表記も喋るのも短くて済む。オニクロナガで済むところを、一々キュウシュウクロナガオサムシ広島県東部亜種なんて言わなきゃならないなんて、どっちが合理的なのかワカンナイぞ。だいち、今は旧名と新名が混ざくりあって、益々何が何だかワカンなくなってて、かえって混乱を引き起こしてねぇか❓また、従来の和名は紀伊とか阿波なとの旧国名や地域名といった歴史ある地名を冠したものが多く、山河による地理的隔離により亜種分化をしてきたオサムシの和名に相応しいものともなっていた。しかし、それを継承しなかった新名もあり、亜種分化の歴史を掴みずらくしてしまったケースもある。オサムシはその形態よりも地方名がついたものが多い。これは見てくれが似たようなのばっかだからそうなったのだろうが、面白いし、かえって合理的でもある。言葉一つで何処に分布する種なのか解るもんね。形態を必死こいて表そうとして、無機質でクソ長ったらしくなった和名よか、余程こちらの方がいいや。
それとは関係ないけど中臣さんの名前を冠したらしきオサムシが、オニクロナガが以外にもう1つある。チュウゴククロナガオサムシ(キュウシュウクロナガオサムシ中国地方亜種)だ。
学名は Carabus (L.) kyushuensis nakatomii 。もしかしたら、オニクロナガも中臣さんに献じようと思ったが、既に nakatomii を使用しているのでアダ名を使ったのかもしれない。