vol.19 ウスイロキシタバ
最終章『穢なきインタクタ』
第五章の最終章は、種の解説編である。
ここまでやっとこさ辿り着いたんだから、また迷宮に囚われてクソ長くならないことを祈ろう。
【ウスイロキシタバ
】



スマホの自動画像補正機能の関係で下翅の色の再現性が低い。実際に肉眼で見る新鮮な個体の下翅の色は3番目が一番近い。スマホを買い替えて機能がアップしたと喜んでたけど、まさかこんな落とし穴があるとはね。前の機種にはあった画像をシャープにする機能も見当たらないし、ピンボケ写真が増えそうだ。機能アップも考えもんだよ┐(´(エ)`)┌
【同
】



前翅の地色は明るい灰白色。波状の内横線は前半が巾広い黒色で縁取られ、前縁中央に大きな黒斑がある。後翅の地色は淡い黄白色で、中央黒帯と外縁黒帯は繋がらない。以上の事から他のキシタバ類とは容易に区別できる。
ヤガの大家であった杉 繁郎氏(故人)は、このウスイロキシタバを論文(註1)の中で褒め称えており「極めて顕著で優美な蛾である。」と書いておられる。
【
裏面】


【
裏面】

何か画像が暗いから撮り直しするっぺよ。

裏面は他のキシタバ類と比べて全体的に黒帯が細く、地色はやや淡い黄色である。
近縁種と思われるヤクシマヒメキシタバ(以下ヤクヒメ)の裏面と相似するが、以下の点で容易に区別できる。
【ヤクシマヒメキシタバ Catocala tokui】

(出展『日本のCatocala』)
①ヤクヒメはウスイロと比して上翅の黒帯、特に中央の黒帯が太い。
②ウスイロは上翅の頭頂部(先端)に黄色い小紋が入るが、ヤクヒメには入らない。
③ヤクヒメは下翅中央の黒帯が外側に向かって膨らみ、丸く弧を描くような曲線を示す。また、その内側に「くの字形」の小紋が入る。
④ヤクヒメは下翅外側の黒帯が太い。一方、ウスイロはその黒帯が細く、外縁から離れて見える。また上部で帯が消失する。
【分類】
ヤガ科(Noctuidae)
シタバガ亜科(Catocalinae)
カトカラ(シタバガ)属(Catocala)
【学名】Catocala intacta intacta Leech, 1889
記載者は、Leech(リーチ(註2))。
冒頭の杉 繁郎氏の論文『ウスイロキシタバ(改称)の採集記録』に拠れば、1886年の7月にリーチ自身が滋賀県長浜で採った1頭により記載されたものらしい。ようは最初に日本で発見されたってワケだね。
属名の「Catocala」は、ギリシャ語のkato(下)とkalos(美しい)の2つの言葉を合わせた造語。つまり後翅が綺麗な蛾であることを表している。
小種名 intacta の語源は、頼みの綱である平嶋義宏氏の『蝶の学名―その語源と解説―』には載っていなかった。ゆえに仕方なく自分で探すことにした。
学名にはラテン語が使われることが多いので、おそらく由来はラテン語であろう。
ならば綴りの語尾が「a」で終わっていることから女性名詞かな? ラテン語の名詞には男性・女性・中性の3つの文法上の性がある。例えばラテン語で「バラ」を意味する「rosa」の(〜a・〜ア)なんかが女性名詞となる。
いや待てよ。誰か女性に献名されたとは考えられないだろうか? だとしたら、ややこしい事になる。ここは外堀から攻めずに正面突破、先に綴りだけでググッておこう。それで見つかればラッキーちょんちょん。話が早い。
調べてみると、有り難いことにラテン語から同じ綴りの言葉が見つかった。
意味は「完全なままの、失われた部分がない、手つかずの、完全なる、完璧な」とあった。意訳すると「穢(けがれ)のない」「純潔の」といったところか。
更に”intact”の語源を辿ってゆくと、”intactus”に行き着いた。in(否定)+tactus(touchに相当)=untouched という構造になっているらしい。多分これがラテン語の語源中の語源で「intacta」はそこから派生した言葉だろう。何れにせよ、おそらく学名の由来はここらへんに違いなかろう。
だとしたら、ツッコミどころ満載の学名じゃないか。
どこが完全、完璧で、穢れなき純潔な存在やねん
と言いたいアナタ、気持ちは解らんでもない。
記載者であるリーチが自分で見つけたからって、それはジャッキアップし過ぎの贔屓(ひいき)の引き倒しだろう。図鑑の画像なんかを見ると、中途半端な下翅の色はお世辞にも美しいとは言えない。つまり完璧だとは言い難い。そう思う人も多いだろう。
でも上翅は文句なく美しいから、もしも下翅が鮮やかな黄色だったとしたら完璧かもしんない。或いは純白ならば、それこそ純潔の証、穢れなき完璧な存在だ。そう考える人だっているかもしんない。
とはいえ、たとえそうじゃなくとも冒頭で書いたように杉 繁郎氏は「極めて顕著で優美な蛾である。」と述べられておられる。御大、アンタもリーチと同じで贔屓の引き倒しかよ。と言いたくなる向きもあろう。アチキも自分て採る前なら、そう言っていたに違いない。
しかしである。そこまで贔屓の引き倒しじゃないけれど、自分で採った今はアッシも優美な蛾だと思う。標本と生きている新鮮な個体とでは、まるで印象が違うのだ。実物を見て、素直に(☆▽☆)カッケーと思った。スタイリッシュな上翅はもとより、下翅も渋い象牙色で、思ってたよりも遥かに美しいのだ。これについては「成虫の生態」の項で改めて書くつもりだ。
因みに、全然関係ないんだけど、巨大衝突で周惑星円盤を経てない衛星を「intact moon」と言うらしい。
んっ(・∀・)
、何故にムーンなのだ
いかん、いかん。危うく早くも脱線するところであった。気になる人は自分で調べてみて下され。
【和名】ウスイロキシタバ
キシタバ(黄下羽)の名を冠するが、後翅は鮮やかな黄色ではなく、淡い黄白色なことから名付けられたのだろう。色の薄いキシタバってワケだね。
昔はチャイロシタバとかチャシタバなんて云う酷い名前が付けられていたそうだ。しかし故 杉 繁郎氏によって名称が変更された。その経緯を前述の論文から一部抜粋しよう。
「従来チャシタバ(三宅,動物学雑誌,15:384,1903),チャイロシタバ(松村,日本毘蟲大図鑑:775,1931)の和名があるが、余りに不適当でおそらく実物を見ずにつけられたものであろう。幸にまだ多く使われていないので私達はここに改めてこの和名を提唱しておく。」
そういえば論文には、こうも書いてあった。
「原記載の図はよくできているが、SEITZ(ザイツ)の図はきわめて出来が悪く、前翅は褐色に、後翅の地色は強い黄色に描かれていて、およそ実物とは似つかぬものとなっているから注意する必要かある。」
それって、Wikipediaに載ってたコレの事かなあ

(出展『Wikipedia』)
コレ見たら、確かにチャイロと付けたくもなるかもね。
ウスイロキシタバもどうかとは思うが、チャシタバとかチャイロシタバよりかは遥かにマシだ。
って云うか、そもそも「うすいろ」の使い方、間違ってないか
薄色って、たぶん薄い紫っぽい色じゃなかったっけ
『コトバンク』には、次のような説明があった。
ー薄色(うすいろ)ー
浅紫うすむらさきともいう。薄く、ややくすんだ紫色のこと。平安時代には紫系統の色が好まれ、最高位は深紫こきむらさきであった。薄色はそれに次ぐ序列の色。

(出典『カラーセラピーランド』)
ほらね。生成り色とかオフホワイト系の色じゃないのだ。
それはさておき、もしこの淡い紫が下翅だったら、かなり優美だよね。たおやかな美しさだろうから、ムラサキシタバと人気をニ分していたかもしれない。でも「ウスイロシタバ」だと、語源を知らない人ばっかだろうから、ダサいと言われそうだ。
何で「フジイロシタバ」とちゃうねん(ノ`Д´)ノ彡┻━┻
と怒る人もいるだろね。
それはさておき、古(いにしえ)の色の呼び名って良いよね。
古色を使って、もっと雅(みやび)で渋カッコイイ名前って付けれなかったのかなあ…。
参考までに書き添えておくと、カトカラ同好会のホームページにある『ギャラリー・カトカラ全集(註3)』には「キシタバと称されているが、後翅は黄色ではない。薄クリーム色で、ほとんど白色である。ウスキシロシタバというような和名の方が的を射ている。」と云う一文がある。
まあ、それも解らないワケでもないが、あまりピンと来ない。って云うか反論しちゃうと、採れたての新鮮な個体は標本よりも下翅が断然黄色っぽい。飛び古した個体や死んで時間が経ったものが白っぽく見えるのではないかと個人的には思っている。シロスジカミキリと同じようなもんじゃなかとね
シロスジカミキリは新鮮な個体だと白筋カミキリではなく、黄筋カミキリだもんね。
しかし、生きている時の色を命名の基本とするか、標本の色を命名の基本とするかはジャッジメントが難しいところではある。逆にモンキアゲハなんかは生きてる時は紋が白くて、死ぬと紋が黄色くなったりするからさ。生きている時の見た目で、もしも「モンシロアゲハ」と名付けてたとしたら、「どこがモンシロやねん。モンキやないけ、ダボがっ(-_-メ)」とツッコミが入ることは想像に難くない。
段々、頭の中がこんがらがってきて、自分でも何言ってんのかワカンなくなってきた。こんな事に正否を追い求めること自体がナンセンスなのかもしんない。
でもさあ…。
黄色いんだよなあ。
(
)

(
)


象牙色か、それよりやや黄色味が強い。
いっそのこと、シンプルにキナリシタバやゾウゲシタバ。或いはゾウゲキシタバとかじゃダメだったのかな
まっ、これとてベストとは言えないけどさ。
そういえば『日本産蛾類標準図鑑2(註4)』には、黄色い下翅の個体が図示されてたな。

(出展『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』)
ウスイロって元々は下翅が黄色くて、進化の過程で色が薄くなっていったのかな
だったら、基本は名前の後ろにキシタバと付けるのが妥当かしらね。
因みに変なのはコレくらいで、調べた限りでは他に顕著な異常型は見つけられなかった。この種には大きな変異幅はあまりないようだ。
話を和名に戻そう。
この際だから言っちゃうと、下翅じゃなくて美しい上翅に目を向けるという手もある。例えばモザイクシタバとかさ。
(´-﹏-`;)う〜ん、あんまシックリこないな。ダサいかも(笑)
偉そうなこと言っちゃってるけど、和名を付けるのって難しいや。簡単じゃないやね。
【英名】
英語では、カトカラの仲間は「〜underwing」と呼ばれているが、調べた限りではウスイロキシタバには特に英名は付けられていないようだ。
もし名付けるとするならば「Off white underwing」あたりが妥当かな? 或いは「Ivory underwing」「Ivory white underwing」とかだろね。個人的には、オフホワイトよかアイボリーの方がシックリくるな。
まあ、英名なんてどっちだっていいけどさ。
【亜種と近縁種】
■Catocala intacta intacta Leech, 1889(日本)
日本で発見されたので、日本産が原記載(名義タイプ)亜種となる。
■Catocala intacta taiwana Sugi, 1965(台湾)
1965年に杉 繁郎氏によって記載された台湾亜種。
日本のモノとはどう違うんだろ
でも『世界のカトカラ(註5)』にはナゼか台湾産の標本写真が載ってなかった。もしかして珍しいのかも
探したけど、画像はこんなんしか見つけれんかった。
情報が少ないと云うことは、どうやら台湾では稀そうだな。



(出典 3点共『台湾生物多様性資訊入口網』)
何となく日本のものとは違うような気がするが、標本が古くて真面目に検証する気が起こらない。
そうだ。日本人の記載だし、それも蛾の大家である杉さんだったら、アホなワシでも何とか記載論文を見つけられそうだ。
(◠‿・)—☆ありましたー
わりかし簡単にネットで目っかったよん。
『Illustrations of the Taiwanese Catocala,with Descriptions of Two New Species :Noctuidae of Taiwan1(Lepidoptera)』と云うタイトルの論文なのだが、全面英文で書かれていた。(╯_╰)メンドくせー。
たぶん、両者の違いについて書かれているのは、この箇所あたりだろう。
「differs from the nominate subspecies in the reduced median and marginal bands of hindwing, otherwise nearly identical.」
意訳すっと「原記載亜種とは異なり、後翅中央の黒帯、並びに外側の黒帯が減じ、細くなる。それ以外はほぼ同じである。」てな感じだろうか。
確かに日本のモノと比べて明らかに下翅の黒帯が細い。
亜種となるのも納得である。
余談だが、ネットには台湾名に『白裳蛾』と云う漢字を宛がっているサイトがあった。
大陸側の中国(中国浙江省の西天目山)でも分布が確認されているが、ソヤツは特に亜種区分は為されていないようだ。
『世界のカトカラ』には台湾産は無かったけど、中国産は図示されていた。


(出展『世界のカトカラ』)
台湾産みたく下翅の黒帯は細くなく、日本のものと特に変わったところは見当たらない。亜種区分されてないのも納得だね。
近縁種に、Catocala hoferi Ishizuka&Ohshima(ヒメウスイロキシタバ)という中国南東部に分布するものがいる。
ウスイロキシタバと比べて小型で、後翅の色調は暗い。成虫は5月頃に出現するそうだ。
【Catocala hoferi Ishizuka&Ohshima,2003】

(出典『世界のカトカラ』)
ウスイロというよりも、ヤクシマヒメキシタバの方がパッと見的には近い。それにしても子汚い奴っちゃのー。★4つだから、珍品みたいだけどね。
何となくネットサーフィンしてたら、変なのが出てきた。
(図1)

(出典『ResearchGate』)
(図2)

(出典『BioOne』
Catocala becheri Kons&Saldaitis といい、最近になってベトナム中部から発見され、2017年に記載されたようだ。どうりで石塚さんの『世界のカトカラ』にも載ってなかったワケだね。
画像1枚目の1.2.3が新種で、4.5.6がウスイロだ。ちなみに4は日本産(多治見)、5が中国江西省・武夷山、6は中国福建省のものだ。浙江省以外にもいるんだね。
この新種、一見してウスイロとソックリだ。けど上翅の黒い斑が濃く、外側も黒ずんでてメリハリが強い。後翅は茶色っぽくて黒帯が減退しがちだ。そして外側の黒帯が太い。
論文の触り(抄録)には、ウスイロや Catocala hoferi とは
交尾器の形態が明らかに異なると書いてあった。
試しに学名でググッたら、ラオス在住の蛾採りの天才 小林真大(まお)くんのツイッター(Moth Explorer LAOS)にヒットし、そこに灯火に飛来した C.becheri の写真があった。画像は貼っつけれないけど、物凄く黒っぽくて、ウスイロとはかなり印象を異にする。黒い魔術師と白い魔術師ってな感じだから、ちょっと自分の標本箱に並べてみたくなったよ。
発生は3月からのようで、日付は3.26となっていた。一瞬、エラく早いなと思ったが、よくよく考えてみれば3月、4月の雨季前のこの時期は蝶も多い。ラオスは亜熱帯だかんね。この時期でもクソ暑い。
あー、またラオス行きてぇー。長いこと行ってないもんね。
論文の標本写真のラベルは5月になっていたから、少なくとも2ヶ月くらいの寿命はあるのだろう。発生は3月下旬、もしくは中旬から始まるものと思われる。ビャッコイナズマだけがまだ採れてないし、行きたいなあ…。
画像2枚目は、A.B.C.Dがベトナムの新種。E.Fはラベルがネパール産となっている。G.Hが日本の原記載のウスイロ。IとJはウスイロの台湾亜種だ。
論文を読めてないので、E.Fが何なのかがよくワカンナイ。ウスイロはネパールに分布しないから、これも新種 C.becheriになるのかな? それともウスイロの新亜種なのかな? 上翅はウスイロでも新種でもない変な感じだ。強いて言えば、その中間? 但し、新種は裏面上翅の帯がウスイロよりも太い。ネパール産のモノも太い。コレって何者なんざましょ
ところで、図鑑等では並びになっている Catocala tokui ヤクシマヒメキシタバとの類縁関係はどうなっているのだろうか
何となく似てるし、並んでるから近縁だと思ってたけど、他人の空似という事はないのかね
DNA解析では、どうなってたっけ

(出典『Molecular Phylogeny of Japanese Catocala Moths Based on Nucleotide Sequences of the Mitochondrial ND5 Gene』)
図は拡大できるが、探すのは大変だろうからトリミングしよう。

近いっちゃ近い。
でもクラスターは上の Catocala streckeri アサマキシタバの方が近縁に見える。
この疑問に関してはアサマキシタバの回でも書いたが、世界的カトカラの研究者である石塚勝己さんから次のような御指摘があった。
「ブログ、楽しく読ませていただきました。
引用されているDNA系統樹は、新川さんにやっていただいたミトコンドリアND5をMLで処理したものです。これでアサマとウスイロが近縁と判断するのは誤りです。ここで類縁が指摘されているのはワモンとキララ、オオシロとcerogama、ムラサキとrelicatだけです。そのほかのものは類縁関係は判断できません。おそらくミトコンドリアND5の解析ではカトカラの系統を推定するのは無理なのだと思います。
」
つまり、ウスイロとヤクヒメの類縁関係は証明されていないとゆう事だね。
【開張(mm)】
ネットの『みんなで作る日本産蛾類図鑑』では、58-60mmとなっていた。一方、岸田先生の『日本産蛾類標準図鑑』では54〜61mm内外となっていた。『みんなで作る〜』は古い図鑑、たぶん『原色日本産蛾類図鑑』の表記をそのまま採用していると思われるので、岸田先生の図鑑の54〜61mmを支持する。但し、58〜60mmくらいの個体が多い。
【分布】
本州(中部地方以西)、四国、九州、対馬、屋久島。
国外では中国南部・台湾に分布する。

(出展『日本のCatocala』)

(出展『世界のカトカラ』)
杉 繁郎氏の『ウスイロキシタバ(改称)の採集記録』によると、タイプ産地の滋賀県長浜でリーチが1886年7月に採集して以来、その後ほとんど採集されず、僅かにMELIが神戸で採集した1
の記録(1936)のみしか長年無かったそうだ。つまり、嘗(かつ)ては大珍品だったのである。そんな時代、永井洋三氏が1956年に静岡市北安東にある静岡県農業試験場の予察燈で本種を採集し、その分布が意外にも本州南岸に沿って東に延びている事が知られるようになった。その後、静岡県金谷町、長野県下伊那郡など東日本の各地でも少ないながら分布が確認されるようになったようである。また、日本海側では福井県武生市山室町(北限)でも見つかっている。
暖温帯系の種で、主に九州から山梨県南部(東限)に分布する。西尾規孝氏の『日本のCatocala(註6)』には、成虫の分布は食樹であるアラカシの分布と重なると書いてあった。
この事からも、たぶん垂直分布は低くて平地から低山地に棲むカトカラだろう。
北から順に調べた範囲内での主な産地を並べてみよう。
東日本では山梨県南巨摩郡身延町、長野県下伊那郡、岐阜県美濃加茂市、愛知県豊田市、豊川市平尾町、北設楽郡に記録がある。
ネットを見ると、愛知県や岐阜県南部では比較的多く見られるようだ。
関西では、京都市八瀬、京都府美山町芦生原生林。滋賀県長浜市、八日市。大阪府能勢町、池田市、箕面市。奈良県上北山村、川上村。和歌山県田辺市中辺路町、日置川町。三重県紀伊長島町、海山町、紀和町の記録がある。
人伝ての話だと、どうやら紀伊半島南部には広く分布するようだ。この地域は植林地も多いが、原始からの暖帯照葉樹林も結構残っているから解る気がする。気になるのは沿岸部の紀伊長島町の記録。探したら、意外と沿岸部の産地が沢山見つかるかもしれない。案外、キナンウラナミシジミと分布が重なったりしてネ。でもキナンウラナミの食樹はアラカシではなくてウバメガシだからなあ…。全然、的外れかもしんない。
大阪府南部に記録がないのも気になる。それなりに暖帯照葉樹林はあるし、記録の多い紀伊半島南部とも連なるから探せば見つかるかもしれない。
兵庫県の記録も比較的多く、神戸市の他にも宝塚市、西宮市、姫路市豊富町、丹波市山南町、赤穂市上郡町、相生市矢野町、佐用郡佐用町などの記録があり、よく調べられているといった感がある。
だが『兵庫県のシタバガ(註7)』には「県下では南部の平坦地に分布するが確認されている地点は少ない。」と書かれてあった。ならばと『兵庫県のカトカラ(註8)』で確認すると、やはり★★の「分布は限られるが、産地では個体数が多い」というカテゴリーに入れられていた。
これで疑問が解けたよ。
カトカラ同好会の『ギャラリー・カトカラ全集』には「関西の愛好者にとってはなんということのない種であるが、関東以北の愛好者にとっては憧れのカトカラの一つである。」と書かれてあったから、正直採る前から楽勝気分だった。でも全然そんな事はなかったからね。カトカラ同好会に所属しているAくんも姫路でしか見たことが無いと言ってたし、小太郎くんも赤松か加西のサービスエリアで1回だけしか見たことがないと言ってた。自分も各地を探してみたが池田市と箕面市で惨敗。生駒・金剛山地では記録は無いようだし、他のカトカラを採りに行った折りに偶然出会った事も無い。それで何処にでもいると云うイメージは完全に吹っ飛んだ。食樹であるアラカシは何処にでもあるのだが、何処にでもいないのだ。分布は関西でも局所的で、そんなに簡単に採れるような普通種ではないと思う。
中国地方では、岡山県吉備中央町、倉敷市、広島県庄原市、島根県三瓶町、大田市などからの記録が拾えた。岡山県南部から中部では普通に見られ、北部では少ないという。
四国は高知県土佐市宇佐町、高松市の記録しか見つけられなかった。しかし、上の分布図によると四国全県に記録はあるみたいだ。
九州地方は福岡県のレッドデータブックによると、九州での記録は少なくて局地性が強いという。西に行けば行くほど生息地が増え、普通種となるのかと思いきや、意外とそうでもないんだね。とはいえ、コチラも分布図を見ると全県に記録があるみたいだ。
福岡県内では、過去に大牟田市勝田で記録されただけであったが、近年朝倉市山田で確認された。そして朝倉市の記録は大分県日田市内の記録の延長線上にあると考えられると添えられていた。その大分県は他に佐賀関町、深耶馬渓に記録がある。耶馬渓には個体数が多く、散発的に日田市内まで見られるという。宮崎県は延岡市に記録がある。佐賀県、熊本県の記録は見つけられなかった。但し、熊本県は耶馬渓に隣接する地域には棲息すると思われる。鹿児島県は屋久島の記録しか見つけられなかった。長崎県も対馬の記録しか見つけられなかったが、多産するみたいだ。因みに何処にも書いていないけど、対馬のものは普通の型の他に黒っぽいタイプもいるみたいだ。

(出展『世界のカトカラ』)

(出展『撮影・採集した対馬の興味ある蛾』)
これについては、たまたま黒っぽい個体が目についただけだから、真偽の程には自信が無いことをお断りしておく。
それはそうと、下の個体って新種 C.becheri に似てなくね
話を戻そう。
西尾規孝氏の論文『環境指標としてのカトカラ(やどりが 204号 2005)』には、各カトカラの希少度を数値で示した表が載っていた。それによると、希少度が一番高いのがアズミキシタバで数値は338。以下、ヤクシマヒメキシタバ331、フシキキシタバ312、カバフキシタバ311、ナマリキシタバ310、ミヤマキシタバ304、ヒメシロシタバ283。そして、ウスイロキシタバとケンモンキシタバが278という順になっていた。
この時代の日本のカトカラは全部で30種(今は32種)だった筈だから、同率だが8位って事はかなり上位にランクされている。それはそうと、昔はフシキって相当な珍品だったのね。今や関西なら何処にでも居るけどさ。あっ、フシキを除けば実質7位じゃないか。7位と云うのは、かなり珍しい部類と言えるよね。
ようは全般的にウスイロの分布は局所的で、やはり何処にでもいると云うワケではなさそうだ。情報を何でもかんでも鵜呑みにしちゃダメだね。同時に書く方も気をつけなきゃいけないと思ったよ。実際、ネットには孫引きで関西には多いと書いているブログをよく目にする。そういや、まだカトカラ1年生でウスイロを見たことがない頃、山梨で会った関東の高校生に「関西はウスイロが簡単に採れていいですよねぇ。」と言われた事があったわ。きっと東日本の人が関西へ来て、誰かに現地を案内された場合、産地には個体数が多いから何処にでも沢山居ると思い込むケースなんてのもあったのだろう。『ギャラリー・カトカラ全集』の記述とそれらが『関西では普通種』という説が伝播していった原因になったのかもしれない。
おそらく西日本でも自然度が高い環境の良い照葉樹林(常緑カシ林)にのみ生息するものと思われる。類推するに、+アルファで起源の古い大きな森でアラカシの大木があり、すぐそばには川があって湿度の高い環境を好むのではなかろうか
自分が見た兵庫県と三重県の生息地は、どちらもこれらの条件を満たす環境だった。紀伊半島南部ではヤクシマヒメキシタバと同時に得られることが多く、個体数も多いと聞いたことがある。そういえば、規模が大きな林であれば個体数は少なくないようなことが何処かに書いてあったな。居ないところも多いが、居る所には沢山いるって感じなのだろう。
でもなあ…、規模の大きい照葉樹林がある奈良市春日山で探し回っても見つからんかった。もしかしてクヌギやコナラの混じる照葉樹林の方が良いのかなあ…。 けどそんな環境だったら、関西だと何処にだってある。ワケわかんねえよ(@_@)
一方、ネットのブログ『尾張の蛾、長話』の「ウスイロキシタバ覚え書き」には、愛知県豊田市では以前は居なかった場所でも見つかるようになり、分布が広がっているようなことが書かれてあった。そして以下のような一文で締め括られていた。
「近年、放棄された森林にアラカシやツブラジイが侵入し、照葉樹林化していることが分かってきているが、その影響なのか?地球温暖化もあり、北限もそのうち更新されるかもしれない。」
この文章の雰囲気だと、原生林と云うよりも放置された二次林にいるような感じだ。でも棲息環境については詳しく書かれていない。それくらい書いてくれても良さそうなものなのにね。何でこうも大概のブログは秘密主義ばっかなのだ。詳しい産地まで書く必要性はないとは思うが、生態面や観察時刻まで秘密にする必要性は無いと思うんだよね。でも、あんましそれらを書いているサイトはあらへん(この人はまだ書いてる方だ)。特に蝶の写真しかやってない人たちが酷い。露出とかシャッタースピードなんてどうでもよろし。対象物に対する観察記述が殆んど見られないから正直使えない情報ばっかで、糞オナニーかよと思う。写真だけで、何の生態データもほぼ無いに等しいものだらけなのだ。そんなの文献としての価値はゼロだ。オナニーなら、魅せるオナニーをしろよな。画期的なオナニー方法なら、オラも知りたいよ。
もし目の前で「ネットマン」とか揶揄してくる奴がいたら、その場でボッコボコにしたるわい(ノ`Д´)ノ
あっ、いかん、いかん。酒飲みながら書いてるから、つい熱くなってしまったなりよ。撮る人も採る人も仲良くやった方がいいよね。マナーを守って互いに情報交換すれば有益だと思うんだけどな。特に蛾なんて生態が解明されてない種が多いから、協力しあった方がいいに決まってる。一応言っとくけど、撮影する人とは何処でも上手くやってまーす。楽しい方がいいもんね。腹立つのは、カメラやってる人の網を持ってる人へのネットでの陰湿な攻撃なのさ。٩(๑`^´๑)۶プンプン。
けんど、よくよく考えてみると蛾好きに写真しかやってない人なんているのかね
たぶん居ないよね。だって夜だもん。蝶の写真を撮ってる人とゴッチャになっとるわ。酒、呑み過ぎー

やっぱり脱線してまっただよ。
それはそうと、果たしてウスイロは二次林に進出したアラカシと共に分布を拡げているのだろうか
もし愛知県ではそうなら、関西でも事情は同じ筈だろう。放置された雑木林がカシ類の進出により各地で薮化しているからね。でも何処にでも居るような感じにはなってなさそうだ。アラカシの若木に幼虫が寄生するなら、とっくに関西でも普通種になってる筈じゃないか。でもあまり見ないし、簡単には北限なんて更新されるとは思えない。
いや待てよ。分布の端っこに行けば行くほど生態は変わるという例はよくある。或いは食樹も含めて新たな生活様式を獲得して進化しているのかもしれない。けど、愛知県は分布の端っこではないか…。ないよね。酔いが回っとるわ。
まあ、こっちはまだカトカラ三年生だし、所詮は考えの浅いド素人だ。バカの放言でしかない可能性もあるからして、蛾のベテランさん達は怒らんといてやー。アホな奴の戯言だと思って流して下され。
【レッドデータブック】
滋賀県:絶滅危惧種
高知県:情報不足
宮崎県:情報不足
蛾類については、この情報不足と云うのが多い。
やっぱ蝶なんかと比べて愛好者が少ないんだろなあ…。
【雌雄の判別法】
野外の暗い中では、意外と雌雄を間違え易い種だと思う。
多くのカトカラの
は腹が細長く、尻先に毛束がある。
はその反対の見た目だからパッと見で大体区別がつく。それに対してウスイロはその特徴がやや弱いところがある。
でも腹がそんなに長くないし、結構太かったりもする。加えて尻先の毛束もボーボーじゃないから、ややこしいのだ。最近は老眼も入ってきてるしさ。細かいとこが見えんのじゃ。
やっぱ決定的な差異は、裏側から見た尻先だろね。そこが判別のキモだ。
(
裏面)

は尻先に毛束がある。
画像は拡大できるが、拡大図も載せておこう。

でも、あんまし毛束が無いのもいるから、ややこしい。

ピンボケでスマンが、
なのにあまり毛束がないことは分かるかと思う。
一応、同じ個体の展翅画像を拡大したのも貼っつけておこう。

ねっ、
なのに毛束があんまし無いっしょ。
(
裏面)


は尻先に縦にスリットが入り、産卵管らしきものが見える。
コチラも画像は拡大できるが、展翅画像をトリミングしたものを貼っつけておこう。

でも、
こんなワケわかんないのもいる。

腹太だから一見すると
に見えるが、尻先にスリットが無く、産卵管も見えない。となると、
ということになる。こんなのがいるから、ワケわかんなくなるのだ。
因みに横から見ても判別は大体できる。
(
横面)

(
横面)

腹の太さと尻先の形で、おおよそは判別可能だ。
は腹が太くて尻先が尖って見える。この尖って見えると云うのが重要な区別点だ。それが横からだとよく分かる。
他に
の方が前脚のモフ度がやや高いというのもあるが、アサマキシタバ程には差が無いし、飛び古した個体は毛が抜け落ちてるので補助的にしか使えない。また
の方が翅に丸みを帯びるというのもあるが、微妙なのもいるから同様に補助的にしか使えまへん。
【成虫の発生期】
ネットの『みんなで作る日本産蛾類図鑑』には6ー7。『日本産蛾類標準図鑑』では「6月上旬から出現し、7月下旬まで見られる」とあり、『世界のカトカラ』もそれと同じ発生期になっていた。『日本のCatocala』でも基本は同じだが、ごく一部の個体が8月上旬まで生き残るとあった。但し、7月上旬を過ぎると大半は姿を消す。ゆえに新鮮な個体を得たければ6月下旬までだろう。場所にもよるだろうが、7月に入ると傷んた個体ばかりになる。このカトカラは鮮度が命。新鮮な個体でなければ魅力は半減する。傷んだ個体は他のカトカラと比べて色が薄いだけに、より擦れ擦れに見えるのだ。
【成虫の生態】
成虫はコナラやアベマキ、クヌギなどの樹液に飛来する。
『日本のCatocala』には「一般に糖蜜採集では採集困難…」とあったが、自分の糖蜜トラップには楽勝で飛んで来た。レシピ次第では樹液をも凌駕する。ちなみに今年は常にワシの勝ちじゃったよ。カバフキシタバの時もワンサイド勝ちだったから、ワシって糖蜜トラップ作りの天才じゃね
けど、毎回テキトーに作ってるからレシピは自分でもワカラン。だから再現でけへんねん(笑)。ようはアホなのである。
飛来時は白っぽく見えるからウスイロだと直ぐに分かる。
白いゆえ他のカトカラと比べて上品な感じがして、(´▽`)
萌え〜。まさに「穢れなきインタクタ」だ。リーチも最初は闇の中で飛んでいるのを見たのかもしれない。その時に無垢なる印象を強く持ったことは充分に考えられる。だったら、この学名にも納得だ。標本だけを見て、あーだこうだ言うのは考えもんだね。標本は所詮はミイラなのだ。生きている時の本当の美しさは損なわれている。
樹液に飛来した時刻は、早いもので日没後間もない7時半頃。とはいえ、フシキキシタバやコガタキシタバよりも遅れて飛来し、大体は8時くらいから活性が入り始める。暫くして飛来が一旦止まり、9時半前後からまたポツポツと飛んで来て、午後10時〜11時台にかけて再び小規模だが活性が入る。但し、これはその日の気象条件によっても変わり、午後8時半を過ぎても飛来しなかった事もあった。
尚、吸汁時には殆んどの個体が下翅を開く。敏感度は普通ってところかな。
調べた限りでは、樹液以外の餌となりうる花蜜、果実、アブラムシの甘露での観察例は無いようだ。また吸水に来た例も見つけられなかった。
灯火にもよく飛来し、一晩に何十頭と飛んで来る事もあるという。個体数が多い所では樹液や糖蜜採集よりも灯火採集の方が効果があるという説を又聞きだが聞いたことがある。
因みにアチキの何ちゃって小型ライトトラップには午後9時半頃と10時15分、11時過ぎに飛んで来た。これまた又聞きだが、灯火への飛来時刻は夜更けになってからが多いみたい。
個人的な意見だが、多数の個体を望まないなら、樹液や糖蜜トラップの方が早めに片が付く。おそらく樹液に集まるカトカラ類は、先ずは吸汁してから、その後に灯火に飛来するのだろう。
日中、成虫は頭を下にして樹幹に静止しているというが、見たことはない。驚いて飛ぶと、おそらく着地時は上向きに止まり、暫くして下向きに姿勢を変えるものと思われる。
交尾記録は、少ないながらも午後11時から午前2時の間で確認されている。
【幼虫の食餌植物】
ブナ科コナラ属のアラカシ(Quercus glauca)。
幼虫の好む樹齢については調査されていないようで不明。
自然界ではアラカシのみが知られるが、クヌギやアベマキでも代用食になり、累代飼育も可能なようだ。
思うに、自然状態でもアラカシ以外の樹種を利用しているのだろう。ガって、チョウみたいに食餌植物に対してあまり厳密的ではなく、属レベルどころか科も関係なく何でも食う奴は多いからね。
【幼生期の生態】
いつものように幼生期は西尾さんの『日本のCatocala』に全面的に頼らせて戴く。西尾さん、いつもすいません。
(卵)


(出展『日本のCatocala』以下この項の写真は同出展)
卵は食樹の樹皮の裏などに産まれるが、観察例は少ないという。飼育下だが、卵の孵化の時期はナラ属を餌とするカトカラの中では早い方で、アミメキシタバよりも1週間から10日ほど早く、5月中には蛹化するという。
(3齢幼虫)

(5齢幼虫)



(5齢幼虫の頭部と、その脱皮殻)


終齢は5齢で、昼間は細めの枝に静止しているようだ。色彩変異は野外でも飼育下でも認められないという。
幼虫を高密度で飼育すると、4、5齢時に幼虫同士が口器で互いを噛じり合って傷をつけ、死亡する場合があるそうだ。
蛹については、よく分からないが、おそらく落葉の下で蛹化するものと思われる。
チョウやガは、互いが近縁種かどうかは幼生期の形態で大半は分かるとされている。なので、ついでだからヤクシマヒメキシタバの幼生期の写真と比較してみよう。
(ヤクシマヒメキシタバの卵)

幼虫は自然状態では見つかっておらず、食樹は不明だが、ウバメガシで良好に育つことが知られている。
(3齢幼虫)

(5齢(終齢)幼虫)


飼育下では、ウスイロと同じく色彩変異は認められていないようだ。
(5齢幼虫の頭部と、その脱皮殻)


卵は全然似ていないけど、終齢幼虫は結構似ているかも。
カトカラの幼虫の識別には頭部の柄の違いが重要だと言われているが、顔も似ている。親戚くさいぞ。
微妙ではあるが、両者は近縁関係にあると言えなくもないってところか…。
おしまい
追伸
やれやれ。今回も長おましたな。書いてて酷く疲れたよ。下書きはサラッと書けたのになあ…。
次回は2019年に目っかった新しきカトカラ、マホロバキシタバの予定。
とはいえ、今年の調査が終わってから書くかもしんない。たった一年の調査で偉そうな事を書いて恥かきたくないしさ。
どうしても知りたい人は、『月刊むし』の2019年10月号を買いましょう。その採集記に、現時点で知ってる事は全部書いてある。
(註1)杉繁郎氏の論文
杉 繁郎・永井洋三『ウスイロキシタバ(改称)の採集記録』
(蝶と蛾 8(3),34-35,1957 日本鱗翅学会)
(註2)LEECH
John Henry Leech(ジョン・ヘンリー・リーチ)
[1862年12月5日〜1900年12月29日]

(出典『Wikipedia』)
鱗翅目と甲虫目を専門とするイギリスの昆虫学者。日本や韓国、中国の昆虫を数多く記載した。日本ではギフチョウを記載したことで知られるから、その名に記憶がある人は多いかもしれない。他にゴイシツバメシジミの記載者にも、その名がある。
日本のカトカラでは、ウスイロキシタバの他にフシキキシタバやナマリキシタバの記載を行っている。
(註3)『ギャラリー・カトカラ全集』
カトカラ同好会のネットサイト。日本のカトカラ各種についての説明がコンパクトに書かれている。カトカラについて知る入門書としては打ってつけのサイトだろう。
(註4)『日本産蛾類標準図鑑』

蛾類学会の会長でもある岸田泰則氏編著の、今のところ日本の蛾類について最も詳しく書かれた図鑑。全4巻からなる。2011年に学研から出版されており、ジュンク堂書店など大きな本屋に行けば売っている。
(註5)『世界のカトカラ』

世界的なカトカラ研究者である石塚勝己氏によって書かれた本。世界中のカトカラの標本写真が掲載されており、カトカラ属全体を俯瞰して見るには格好の書。2011年に、むし社から出版されている。
(註6)『日本のCatocala』

2009年に西尾規孝氏により自費出版された日本のカトカラについて最も詳しく書かれた本。生態面に関しては他の追随を許さぬ優れた生態図鑑である。
(註7)『兵庫県のシタバガ』
高島 昭 きべりはむし 31(2)
「きべりはむし」は兵庫昆虫同好会の機関誌だが、活動休止に伴い、2009年4月からは「NPO法人こどもとむしの会」が引き継いでPDF管理している。
(註8)『兵庫県のカトカラ』
阪上 洸多・徳平 拓朗・松尾 隆人 きべりはむし 39(2)
兵庫県のカトカラについては、これを読めば全て解ると言っても過言ではないくらいによく調べられている。兵庫県は関西で最もカトカラの種類が記録されているから、ひいては関西のカトカラの事もこれを読めば大体解るという優れた報文。
近年、新たに市川町でヤクシマヒメキシタバも見つかっているらしいので(※)、是非とも改訂版を執筆して戴きたい。
(※)
坪田 瑛:ヤクシマヒメキシタバを兵庫県市川町で採集
誘蛾燈No.234 2018
中身は読んでない。誰か詳しい場所を教えてくれんかのう。