奄美迷走物語 其の七

 
  第7話『マリア様の島』

 
2021年 3月24日

今日も天気が悪い。
空は雨の予感を孕んでいる。酒がまだ残っていて、体も重い。
けれど少しでも可能性があるならば、尻っぽを振って逃げるワケにはゆかぬ。本日もバイクのレンタル代を払って知名瀬へと向かう。

 

 
朝9時半にポイントに着くが、案の定、何も飛んでいない。
する事もないので、とりあえず煙草に火を点けようとした時だった。突然、頭の中でナレーターの声が流れ始めた。

🎵チャチャッチャッチャーー。
その時、正義の味方イガ厶ワンのイガリンお天気メータの針は、ゼロを指していた❗ぽてちーん

すまぬ。わかりにくいだろうが、超人バロムワン(註1)が変身できなくてピンチに陥った時の気分なのだ。ピンチの際に必ず入るナレーションが『その時、バロムメーターの針はゼロを指していた。』なのだが、それが頭の中でテロップ付きで流れたって感じ。つまり頑張ってフィールドに出たはいいが、二日酔いと厳しい現状を目の当たりにしてパワーメーターの数値は限りなくゼロに近かったのだ。

🎵ヤゴヤゴヤ〜ゴの子守唄〜
🎵聴けば いつでも眠くなるー
🎵ふわぁ~と眠りが忍び寄るー
🎵ねんねんヤーゴよ ヤゴねむり~

しまったなり。二日酔いの腐った脳ミソはワケワカラズ、今度はいつの間にか敵の怪人ヤゴゲルゲ(註2)の唄を歌ってしまってるなりよ。

オデ、オデ、ブッ壊れそう(ㆁωㆁ)
何ら事態が好転する材料がないのである。本日の天気予報は最悪なのだ。あらゆる予報サイトが終日にわたって雨マークを示している。そして、明日も雨の予報だ。出発前の週間予報は比較的良かったのに、こっちへ来てからは信じられないくらいにドンドン悪い方向、悪い方向へと変わり続けてる。女心という女子共通の理解不能な心模様よりも酷い心変わりようじゃないか。女心を知るエキスパート&スーパー晴れ男の看板が泣いてるぜ。

1時間後、センサーが予知していたとおりポツポツ来た。
即座にコレはいかんと判断し、慌ててバイクに跨る。肌の雨センサーが動けと命じているのだ。こうゆう場合、様子見をしようだなんて悠長に構えている奴は、大概がズブ濡れになる。熱帯や亜熱帯では、雨に対する退避の決断が遅いと致命的になりかねないのだ。

慎重かつ大胆な走りで林道を引き返しながらも、冷静に頭を巡らせる。確か知名瀬の町に教会があった筈だ。民家だと気が引けるが、あそこなら問題なく雨宿りできるだろう。

 

 
教会に着き、バイクを降りたと同時にワッと雨が強くなった。急いで離れみたいな建物の下に駆け込む。ギリギリ、セーフ。我ながら迅速かつナイスな判断だった。もしも出発が1分でも遅れていれば、ここに着くまでにズブ濡れになっていただろう。それくらいの土砂降りだ。

30分程で小やみになってきたので、奥の空き地の草むらの様子を見に行くことにする。雨宿りしている間に思い出したのだが、2011年に訪れた時には、この集落の民家の庭でカバマダラが発生していた。位置的にみて、たぶん此処はそのすぐ裏手にあたる筈だと考えたのだ。飛んでいた環境も似ているしさ。

 
【カバマダラ】


(2010年 10月 大阪市福島区)

 
蝶採りを始めたばかりの頃は、カバマダラに対して普通種のイメージを持っていた。図鑑には宮古島以南では普通にいるみたいな事が書いてあったし、初めて採ったのは何と南の島ではなくて、大阪市内の淀川河川敷だったからだ。迷蝶として飛来したものが二次発生したものだろうが、そんなに遠くから飛んで来るという事は、現地には腐るほどいるものとばかり思っていたのだ。実際、その時はかなりの数が発生していた。
だがその後、実際に南西諸島に行ってみると、見るのはスジグロカバマダラばかりで、カバマダラは殆んど見かけなかった。

 
【スジグロカバマダラ】

(出展『日本産蝶類標準図鑑』)

 
結局、南西諸島で会ったのは、いまだに2箇所だけ。西表島で1頭と、此処で発生していた5,6頭だけだ。
翌年の春にインドシナ半島を旅して、日本で迷蝶として捕らえられる種の大半は何処にでもいる普通種なのだという事を改めて理解した。個体数か少なくて森林性の蝶が渡って来る確率は物理的に極めて低いのだ。補足すると、迷蝶はオープンランドに棲むタイプの蝶が圧倒的に多い。ちなみにカバマダラもオープンランドの蝶だ。なのにインドシナ半島でもカバマダラを見た記憶が殆んどない。他に採った明確な記憶があるのは、インドネシア・スラウェシ島の黒化した亜種だけだ。

 

(2013年 2月 Slawesi palu)

 
とはいえ、たまたまインドシナ半島では発生期の狭間だった可能性があるけどね。又はカバちゃんは人家のそばや空き地とかツマラナイ場所にいる事が多いから、そうゆう場所にはあまり行かないゆえに遭遇できなかった可能性もあるかもしれない。

草地の方向に歩いてゆくと、マリアの銅像が建っていた。

 

 
とても穏やかで、慈愛に満ちた美しい顔だ。
クリスチャンでも何でもないのに、思わず胸の前で手を組む。

おねげーですだ。アマミカラスアゲハの♀を採らせておくんなせー
 
草地を確認したが、カバマダラの姿も幼虫の食草であるトウワタも無かった。発生してないか…。また退屈に逆戻りだ。
手持ちぶたさで、教会の前までゆく。
今まで、あまりまじまじと見たことはなかったけれど、改めて前に立つと、何とも言えない風情があって美しいと思った。

 

 
あっ、ザビエルだ。フランシスコ・ザビエルの像があると云うことは、カトリックの教会っていうことかな。
考えてみれば、奄美大島って割りかし教会が多かったような気がする。島内各地で幾つか見た憶えがあるぞ。そういや、北部の笠利町にも一風変わった教会があったな。

 
【カトリック大笠利教会】

(出展『キリストとともに』)

 
なぜこの島には教会が多いのだろう❓
雨はまだ上がらなそうだし、退屈しのぎでググってみることにした。

理由はどうやら島の悲しい歴史と深い関係があるようだ。
江戸時代、薩摩藩の藩政下の奄美は年貢として黒糖の生産を厳格に課せられていた。米の栽培を一切認められず、貨幣の流通も禁止されていた。そのため島民は米などの生活に必要な物資を比率の悪い物々交換で得るしかなかった。
明治維新後、中央政府は黒糖の自由売買を認める。しかし鹿児島県はそれに先んじて県肝煎りの商社を作り、本土の商人に黒糖や大島紬の権限を牛耳らせた。西南戦争で県側が政府に負けると、ようやく島民も黒糖を自由に売買できるようになったものの、その後も県や警察による様々な圧力を受け、人種差別と仕組まれた経済格差に苦しみ続けられる。
当時の島の方言は沖縄のウチナーグチと似た方言で、本土では言葉が通じなかった。それが要因で明治初頭に起きた黒糖自由売買運動に失敗したとされ、その事がキリスト教の宣教師の招聘に繋がってゆく。
地元出身の検事や名瀬の有力者達は、このような奄美の位置付け、状況を変えるには先ずは島民意識を変える必要があると考えた。そこで「万民は平等」という西洋思想、つまりキリスト教の導入、布教を促すことにした。
1891年(明治24年)、鹿児島市ではプロテスタント、ロシア正教などのキリスト教各派が既に布教していたが、奄美からの要請にいち早く応じたのがカトリックだった。そして、その年の暮れにはザビエル教会の神父が島に渡る。教会はハンセン病などの診療所や教会建設などで島の人々に現金収入を得る機会を与えた。そして神父の知識、生活様式なども島の人々の好奇心をくすぐった。当時、島はノロやユタなど土着宗教が中心で、仏教もまだ浸透していなかったため、やがて多くの人々がこの新しい思想が信仰してゆくことになる。
しかし、不幸は終わらない。新しい宗教として島に浸透していったカトリックだが、その一方でローマを頂点とするピラミッド型の組織形態が軍部の警戒を呼ぶことになる。世界規模で拡大する戦乱により激動する時代、変わりゆく文化はやがて村落共同体の内部対立をも引き起こしてゆく。
そして大正時代になり、カナダ宣教会が入り、ミッション系女学校の大島高等女学校の運営を引き受けたことが「奄美大島カトリック迫害事件」の発端となった。
1923年にカトリック信徒の中学生2人が高千穂神社の参拝を拒否して退学となった。鹿児島新聞はこの事件にふれ「現在同島の三分の一はキリスト信者となり、その結果、過激な言動をなすものが増加し来たり」と報道した。とはいえ当時の実際の信者数は全体の5.6%にすぎなかったそうた。
さらに鹿児島新聞は、大島高女が教育勅語を奉読していないとして非難を強めた。
問題は昭和になっても燻り続け、カトリックに対する世間の風当たりは次第に強まってゆく。1933年(昭和9年)には邪教排撃運動が起こり、名瀬町民大会は国体に反するとされた大島高女の即時撤廃を求めることを決議、宣言し、それにより翌年の3月31日限りで廃校とすることが文部省により認可、1934年の臨時議会で廃校が決定される。
「スパイの学校」と非難された女学校がつぶれても、排撃運動は終わらず、宣教師には「南方要害の地、奄美大島にスパイとして送り込まれたのではないか?」という嫌疑がかけられる。地元の新聞は、その軍部などからの情報に乗っかり、スパイ視報道を展開するようになる。やがて全国紙の新聞にも「南の要塞の島で広大な土地を米英の宣教師が買い占めしている」「外国人宣教師はスパイか」「教育勅語に不敬罪か」などの過剰な見出しが紙面に踊るようになる。これは当時の政権への批判を、奄美大島が何処にあるかも知らない大多数の国民の目から逸らさせるためのスケープゴートとして捏造されたものだと言われている。
その年には、やむなくカトリック教会は時勢を鑑み、奄美大島から全ての外国宣教会、宣教師を引き上げさせる。
当時の奄美大島要塞司令部の報告書には「カ教教義は国体・国民精神と相容れず、かつ部落の統一・平和を害する」と書かれてあり、日本陸軍の教唆によるカトリック信徒への迫害が益々激化し、奄美大島は戦前最大のクリスチャン受難の地となってゆく。
1936年には、瀬戸内国防協会は大会を開いて「国土防衛の生命線たる奄美大島におけるスパイ容疑外人、並びに邪教カトリックの徹底的殲滅を期す」と決議。奄美のカトリック信者は改宗を強要され、軍幹部は各集落に出向いて「非国民だ」と恫喝して信徒を集めて監禁し、改宗しないと殺すとまで脅した。
弾圧方法は多岐にわたり「名士の啓発講座」や講演会などの名目で「全ての村民にキリスト教徒であることを止めさせれば、あなたも日本人になれる」などという姑息な方法も用いられた。「あなたも日本人になれる」というフレーズだが、補足説明すると、大正時代の奄美大島に住む小学生の夢は「日本人になりたい」だったという。つまり当時の島民は真の日本人として認められていなかったのだ。これは中央政府による巧妙な島民統治で、キリスト教徒弾圧に積極的に参加すれば「日本人になれる=民族自決権を勝ち取れる」と考えた島民もいたため、そこに目をつけて島民たちを分断させ、一致団結させないという意図があったようだ。
その統治方法は企みどおりとなる。青年団員がカトリック信者の墓を破壊したり、信徒宅に押し入って十字架、ロザリオ、祈祷書を奪い、かわりに天照大神の札を貼ったりという事件が頻発する。また憲兵たちからも迫害され「天皇とキリストのどちらが偉いか」などと詰問されたという。多くの教会が襲撃をうけ、笠利の教会は放火されて焼失した。そして11月には14のカトリック教会が鹿児島県に無償譲渡され、翌1937年には町村に無償で払い下げられた。役場となった聖心教会の十字架は切り倒され、替わりに日の丸国旗が掲げられた。改宗しないカトリック信者宅は、防空演習の標的となって消防団に放水され、家中が水浸しにされた。肺病の少女がいたカトリックの家も一連の防空演習により、少女が寝ていた布団ごと水浸しにされた。このような弾圧は第二次世界大戦が激化し、食糧事情が劣悪化するまで続いたそうだ。

現在、奄美大島にあるカトリック教会は全部で31カ所。
うち4つの教会ではミサは行われておらず、空き家のような状態で、この10年で信者の数は500人以上も減っているという。
それでも迫害時期を生き抜いた信者、その子孫は今も信仰に厚いという。

驚いたのは、暗殺されたアメリカ大統領 ジョン・F・ケネディーの葬儀で使われた祭壇が島内の教会にあるらしい。
調べると名瀬市街にある「カトリック名瀬聖心教会」だった。役場にされ、十字架を切り倒された教会だ。
それにしても、ナゼに名瀬にミスタープレジデントと縁(ゆかり)のある教会があるのだ❓
あっ、しまった。つい「ナゼに名瀬」なんてベタなダジャレを言ってしまったなりよ。

 

(出展『まだ死んでない』)

 
あら、この教会なら見たことあるぞ。と云うか、アカボシゴマダラを拝山に探しに行った帰りに何度も前を通っている。

教会内部とケネディーの祭壇の画像も貼り付けておこう。

 

 
(出展『奄美なひととき』) 

 
その由来も分かった。この祭壇は元々アメリカのワシントン大司教区、司教座聖堂聖マテオ教会にあったもので、本来は取り壊される予定だったそうだ。だが1962年に聖心教会のルカ神父が休暇でアメリカへ帰国した折りに偶々その祭壇に出会った。神父は壊してしまうならば奄美大島へ寄贈して欲しいと願い出て、譲渡の約束を取り付けたようだ。
そして、その翌年の1963年にケネディー大統領の祭壇として使用され、1964年には約束通りに奄美大島へ運ばれてきたそうだ。

ふ〜んと納得したところで、教会の敷地内に黒い車が入って来た。誰かは分からないが、教会の人だったら挨拶しておこうと思って立ち上がる。
やがて車から黒い僧衣を纏った神父さんが出てきた。まさか神父さんが出てくるとは思っていなかったので、ちょっと驚く。
その佇まいは落ち着いていて、そこはかとない厳かな雰囲気が漂っていた。慌てて、その場で頭を下げ、声をあげて雨宿りしている旨を伝える。
神父さんは静かに頷いただけだった。そして教会には入らず、直ぐにまた車内に戻り、何処かへ行ってしまった。
それを見送ると、また静寂が訪れた。何だか不思議な気分に包まれ、その穏やかに頷く表情が暫くのあいだ頭に残った。
今まで何かの宗教と深く関わるという経験とは縁なく生きてきたが、宗教を信じるという敬虔な気持ちの一端に触れたような気がした。長年、宗教を信じることに対して警戒心を抱(いだ)いてきたが、初めて信心深い人たちの気持ちを理解できたような気がしたのだ。絶対的なものを信じることで得られる安心感や喜び、そして神に感謝するという気持ちが心のうちにすんなりと入ってきたのだ。
旅情が心に広がる。次に奄美大島に来る時には、雨ならば教会巡りをしてもいいかもしれない。そして、改めて島の歴史に思いを馳せよう。

午後1時。ようやく雨が上がった。
空をグルッと見渡す。ネットのお天気サイトは相変わらず全て雨予報なのだが、雲の色や流れ方、風の方向と強弱、湿度等々の万物から感じるものを総合して、雨は暫くは降らないと思った。天気予報なんかよりもワシが肌で感じるものの方が、よっぽど正確なのだ。
幸い気温は低くない。これならアマミカラスアゲハも飛びそうだ。それに意外とこうゆう天気の方が♀が採れたりもする。秋に来た時は夕方4時以降によく見掛けたし、本土でも近縁のカラスアゲハやミヤマカラスの♀は夕方に飛ぶイメージがある。午後3時には蝶影は薄くなるから帰ってしまう採集者が多いが、アゲハ類の♀はそれ以降に現れることが多いのだ。あくまでも自分の経験値からの話だけどさ。

アゲハの集まるポイントに戻る。
ここは三度目の正直といこうじゃないか。マリア様にもお祈りした事だし、何とかしてくれるだろう。正直そうとでも思わなければ、やってらんない。今日もブヨにタカられっぱなしで、心はササクレ立っているのだ。

だが、時折アマミカラスの♂は飛んで来るが、♀はいっこうに姿を見せない。

クソがっ❗( ̄皿 ̄)マリアの野郎~
敬虔な気持ちも、結果が出なけりゃ手を返したようにフッ飛ぶわい。どうせ人としての修行が足りない男なのだ。

2時20分。諦めてそろそろ移動しようかと思った時だった。
谷の向こうから漸く♀が舞い降りて来た。
♂とは違い、その飛翔はゆるやかで優雅だし、チラッと鮮やかな赤紋が見えたから間違いない。マリア様の降臨だ。
やる気マックスのエネルギーが全身を駆け巡るが、頭は冷静だ。驚かせないように、ゆっくりと追いかける。今度は昨日みたいな無様な結果は何としてでも避けねばならぬ。心を落ち着かせながら細かいステップで距離を詰める。
そしてミカンの花に吸蜜に来た瞬間には網が下から上にカチ上げられていた。

( ゚д゚)❗
中を見ると、しっかり入っている。赤紋がデカいから紛うことなき♀だね。

 

 
やっぱアマカラの春型の♀は赤紋が凄いね。艶やかだ。夏型よりも遥かに美しいし、オキナワカラスアゲハの春型よりも綺麗だ。

 

(2011年 9月)

 
夏型は紋が赤じゃなくてオレンジ色のモノが多いし、メリハリも無くて全体的に野暮だ。春型と比べてデカくなるのも、もっちゃりでヨロシクない。
但し、夏型でも珠に凄いのもいるけどね。

 

(2011年 9月)

 
裏面も美しい。

 

 
オキナワカラスの前翅裏面の白帯は、ほぼ平行で、ミヤマカラス並みに幅広い。その亜種であるアマミカラスは白帯が更に発達し、赤い弦月紋もが大きくなるのが特徴だ。
ちなみに小太郎くんとカッちゃんが言ってたけど、稀に赤紋が二重紋になるのもいるらしい。だとしたら、ホッポアゲハみたくなるって事か。なら、相当ビューティフルだね。
(・∀・)んっ❓、よく見りゃ、この個体は赤紋の上部の隣にちょっとだけ赤紋が出てて、二重紋になりかけてるぞ。この程度では、とてもじゃないが二重紋とは呼べないけどさ。
一応、参考までにホッポアゲハの♀の裏面画像を貼っつけておきませう。

 

(2016年 7月 台湾・南投県仁愛郷)

 
世界のアゲハチョウの中で、裏面が最も美しいのはどれか❓と問われれば、このホッポアゲハを一番にあげるかもしれない。それくらい艶やかな出で立ちだ。

何はともあれ、狙い通りに♀が採れたからご機嫌だよ。
(^_^)vへへへ、してやったりだ。球際に強い、流石の猿飛のワシやんけ。
∠(`・ω・´)/バッローーーム❗❗

 

(出展『yanakazuのブログ』)

 
バロムポーズでキメてみせる。

でも本当は流石の猿飛のワシの力なんかではなくて、きっとマリア様の思し召しだ。
手を胸の前で合わせ、目を閉じる。
マリア様、ありがとう

2時半。
満ち足りた気持ちで、あかざき公園へと向かう。

昨日と同じく3時に到着。しかし雨こそ降っていないが、天気は悪くて風も強い。これではアカボシゴマダラもフタオチョウも現れそうにない。
ならばとイワカワシジミを探すことにする。あかざき公園はイワカワシジミの幼虫の食樹であるクチナシが多い。そしてイワカワは食樹とその周辺の葉に止まっている事が結構あるので、それを探そうというワケだ。

 

(2014年 9月)

 
しかし探し回るも、1頭たりとも姿を見ない。
クチナシの実に卵や幼虫がいないかと探してみたが、そちらも全く成果なし。

 

(2014年 9月)

 
どころか実が殆んど無い。古い実さえないから、もしかしたら採集者に根こそぎ持っていかれたのかもしれない。そゆ事、すんなよなあ。イワカワは去年も一昨年も大不作だったと言われてるのに益々減るじゃないか。ホント欲深い虫屋が多いわ。

夜は雨の予報だったし、昨日みたいな怖い思いをするのもイヤだったので、今日は宴会に参加することにした。

 

 
鶏肉のホイル焼と海老のアヒージョ。
ゲストハウスの娘さん(💖美人)が作ってくれた。結構美味しい。

聞くと、今夜はお好み焼パーティーらしい。

 

 
しかし、焼かれているお好み焼に何か違和感がある。
あれれっ❓よく見ると表面に豚肉の存在がない。
娘さんに『豚肉は入れないの❓』と尋ねたら、『入ってるよー。』の答え。『えっ、どこに❓』。『中にー。』
何だと❗、粉モン大好き関西人としては許しまじき行為だ。

( ̄皿 ̄)ダボがっ、ワレお好み焼をナメとんのかっ❗
とは、勿論のこと口が裂けても言わない。美人には弱いのだ。優しくレクチャーする。先ずは豚バラ肉を焼き、その上から生地を乗っける。そうすれば外側がコーティングされるから、ひっくり返す時に崩れにくくなるし、豚の脂が生地に行き渡るのだ。それに、この方法ならば無駄に油を追加しなくて済む。

ひっくり返す段になって、今日来た若者二人(虫屋)のうちの一人に、返し係を任じる。しかし見事に失敗して割れてしまう。
『ψ(`∇´)ψケケケケ…、素人じゃのう』と笑ったら、すかさず『じゃあ、次の時は御手本をみせて下さいね』と返された。
(◎o◎)ゲロリンコ、まさかの逆襲である。マジかよ❓言った手前、失敗したら超カッコ悪いじゃないか。美人さんたちも揃ってきたから、かなりのプレッシャーが掛かるよ。失敗も避けたいところだが、敵前逃亡して美人にイケてないと思われるのは、もっと最悪だ。元来のええカッコしいとしては逃げるワケにはゆかぬ。翻して考えれば、ヒーローになるチャンスでもあるからして、ここでズバッとエエとこ見せたろやないの。
でも本当は、お好み焼を返したことなど長い間ない。たぶん中学生の時以来だろう。普段、家でお好み焼なんて作らないし、店でも最近は自分で焼くシテスムは消えかかっているのだ。
衆目が注目する中、躊躇を捨てて思い切って、えいや❗と一挙に返す。

٩(๑`^´๑)۶どんなもんじゃい❗❗
思ってた以上にキレイに返り、心の中では我ながら上手くいったとホッとしつつも、さもありなんの余裕のヨッちゃんのドヤ顔で若造に目をやる。そうさ、オイラは球際に強い男なのだ。結構プレッシャーがエネルギーになるタイプなのだ。
そして、すかさず言う。
『キミとは違うのだよ、キミとは。キミみたいにビビって躊躇すると失敗するに決まっておるのじゃ。ハートが弱いのだよ。虫捕りでも恋愛でも大胆さは不可欠なのだよ、ψ(`∇´)ψウシャシャシャシャー。』

 

 
自分で言うのも何だが、旨い。やっぱ焼き方は大事だ。
ちなみに若者にはリベンジを促し、彼は次の機会には見事キレイに返した。パチパチパチパチー👏

 

 
後半はチーズを乗せた洋風お好み焼なんぞも登場した。
味は全然覚えてない。どうせ大した事なかったんだろう。やはり、お好み焼は王道の「豚玉」に限る。

 

 
楽しくって、オジサンまたしても痛飲。
まあ、流れも良くなってきてるので、コレでいいのだ。

                         つづく

 
追伸
えー、前回の文章の一部に手を入れ直しました。知名瀬林道と大川ダムとの怖さの質感の違いを伝え忘れてたからね。ものすごくヒマな人は読み直して下され。文章は、たった一言の有る無しで随分と印象が変わることもあるから難しい。

この日に採ったアマミカラスの♀と、比較のための♂とオキナワカラスの♀の画像も貼っつけておきます。

 
【春型♀】 

【春型♂】

【オキナワカラスアゲハ春型♀】

(2013.2.28 沖縄県名護市)

 
(註1)超人バロムワン
東映、よみうりテレビ制作の特撮ヒーロードラマ『超人バロム・1(ワン)』のこと。「超人バロムワン」と表記される事が多いが、正しくは「超人バロム・1」と間に「・」が入る。
1972年(昭和47年)4月2日から同年11月26日まで日本テレビ系にて毎週日曜19:30〜20:00に全35話が放映された。
原作はあの『ゴルゴ13』の、さいとう・たかをの漫画『バロム・1』。しかし設定の一部の流用を除き、タイトルをはじめ、ストーリー、バロム・1のコスチュームデザイン等々は東映側によって大幅に変更されている。

ストーリーをかい摘んで書いておきます。
宇宙で何千年ものあいだ、正義の象徴コプーと悪の象徴である魔人ドルゲは戦い続けていた。

 
【魔人ドルゲ】

(出展『改造墓場A』)

 
やがて地球の侵略を開始したドルゲに対し、コプーはそれを阻止するために地球の少年(小5)白鳥健太郎と木戸猛の2人に正義のエージェントであるバロム・1の力を与える。2人は友情のエネルギーで互いの右腕を交差(バロムクロス)させることによって超人バロム・1に合体変身、悪の化身ドルゲに立ち向かう。
二人の役割は分担され、健太郎の頭脳がバロム・1の知性となり、猛の体力がバロム・1のパワーとなる。変身が完了すると同時に両目とヘルメットのエネルギーチャージランプが矢印の方向に光り出し、身体全体にバロムエネルギーが充填される。但し両目の中で会話する場面が度々挿入され、変身前の自我も残っているため、二人が喧嘩をしたり互いを信頼しない状況に陥った場合には変身は解けてしまい、信頼関係が回復するまで再び変身することはできない。その際、2人の友情エネルギーは手の平サイズのボップの裏のバロムメーターに針で表示され、友情エネルギーが300バロム以下になればバロム・1に変身できない。

 
【ボップ】

(出展『☆月光のあれこれ日記☆』)

 
なおボッブには、ドルゲに反応するレーダーや発信機、サーチライト、バロム・1の乗物であるマッハロッドへの変型、仲間の危険を知らせる機能などがある。また武器としても使え、投げつければ戦闘員のアントマンを一撃で倒すこともできる。

作品は特異性が高く、敵の首領ドルゲの見てくれが邪悪度満載、作戦も邪悪で弱い心を持つ人間を操るものが多く、おどろおどろしい雰囲気を醸し出している。ドルゲによって送り込まれる魔人たちも怪奇性が強調されたグロテスクなものが多い。特に後半以降はエスカレートし、人間の身体の一部をモチーフにしたウデゲルゲやクチビルゲ、クビゲルゲ、ヒャクメルゲなどのインパクト有りまくりの魔人が次々と登場し、より怪奇性の強い展開となった。子供心にも、コレってマジィんじゃないの❓というくらいにキワドイ見ためのものが多い。

 

(出展『やさしい嘘からはじめよう』)

 
上段左上からクチビルゲ、ヒャクメルゲ。中段がツメゲルゲ、クビゲルゲ。下段はノウゲルゲ。
もう、ここまでくるとホラーだよなあ(笑)

 

(出展『SAWANP☆西荻サブカル酒場』)

 
上段左からヒャクメルゲ、タコゲルゲ、キノコルゲ。下段はカミゲルゲ、クビゲルゲ、ウデゲルゲ、ノウゲルゲ。

ムッチャクチャである。今だったら、こんなの絶対にクレームの嵐だろう。身体障害者に対する配慮が足りないとかね。
けれども何でもかんでも差別に繋げて、声高に非難する昨今の風潮って気持ち悪いし、何だか怖いよ。色んな表現があって玉石混交の作品があるからこそ、世の中オモシロいのに、それを許さない社会って懐があまりに狭すぎる。だから、毒気を抜かれた最近のテレビはツマラナイのだ。

 
(註2)ヤゴゲルゲ
「超人バロム・1」に登場したドルゲ魔人の一人。人じゃないから一人じゃなくて一体か…。そんなことはどうでもよろし。

 

(出展『とうふプードル』)


(出展『つやつやみお』)

 
1972年8月6日放送の第19話「魔人ヤゴゲルゲが子守唄で呪う」に登場する。
で、「ヤゴゲルゲの子守唄」とは、そのヤゴ魔人がお化け屋敷に入った子供達を誘拐する際に歌ったものである。それにより子供達は操られて連れ去られてしまう。また、この子守唄の破壊力は凄まじく、我がんところの戦闘員のアントマンの脳細胞を破壊し、バロム1の手足を痺れさせたり、意識を失わせる程の威力を有していた。
が、何よりも威力を発揮したのはお茶の間の子供たちに対してであった。その低く響き渡る不気味な唄に衝撃を受けたという子供達は多く、トラウマになったお子ちゃまが続出したといわれる。かくいうワタクシも、その一人である。重低音で覚えやすいメロディーなので、妙に頭にコビり付くんである。
それゆえか、ダウンタウンもネタにした事があり、探偵ナイトスクープでもヤゴゲルゲの子守唄を歌われてトラウマを植え付けられた妹が、兄に復讐したいという依頼の回もあった。
隠れた名作とも言える特撮ソングだった為、2007年に発売された放送35周年記念「超人バロム・1」音楽集にも、当初は収録予定だった。しかしマスターテープが行方不明で、結局収録される事はなかった。巷では、これはヤゴゲルゲの子守唄の呪いではないかと囁かれている。

それはさておき、何ゆえトンボとかヤンマではなくてヤゴなのだ❓トンボに比べて弱いだろうに…。
あっ、そうか。魔人たちの名前の語尾には必ず「〜ルゲ」が付く。そして大多数にはクチビルゲ、ウデゲルゲ、クビゲルゲ、ノウゲルゲ、ツメゲルゲと、ルゲの前に濁点が入るのだ。「ヤンマルゲ」では濁らないから示しがつかんのだろう。
あれっ❓でもトンボルゲならOKだぞ…。よしワカッタ。トンボルゲだとマヌケな感じがするから✖なのだ。ヤゴゲルゲの方が遥かに語呂がいい。そうゆう事にしておこう。

一応、You Tubeの『ヤゴゲルゲの唄』を貼っつけておきます。下の空白欄をタップするとサイトに飛びます。

 
ヤゴゲルゲの唄

奄美迷走物語 其の三

 
 第3話『ラーメン大好き小池くん』

 
 2021年 3月22日

朝9時に宿の前に出る。
今日泊まる朝仁のゲストハウスのスタッフが宿の前まで迎えに来てくれるのだ。
だが9時15分を過ぎても来ない。LINEすると渋滞で遅れているらしい。南の島なんだから時間にテーゲー(テキトー)なんだろう。気にしない、気にしない。ゆったり気分でいこう。なんくるないさー。

宿のオーナーのオジーがさっきから横で空をしきりに見上げている。何じゃらホイと思って尋ねてみたら、カラスが横の桜の木に来て、車の上を糞だらけにするので近づかせないようにしているという。見ると確かに木は桜の木だ。しかし花は無くて葉っぱが生い茂っている。オジー曰く、奄美大島ではソメイヨシノは生育しなくて、桜といえばヒガンザクラ(註1)なんだそうな。花が咲くのは早く、1月下旬頃から咲き始めて2月中旬には散ってしまうという。ゆえに既に実がなっていて、それをカラスが食いに来るようだ。なるほどね。

9時半過ぎに迎えが来た。
LINEのコメントの感じからだと、もしかして若い娘かと期待していたが、迎えに来たのはオジーだった。若い可愛い女の子だったら、俄然テンションが上がるのになあ。何でもいいから上昇気流に乗っかるキッカケが欲しいよ。

車中でオジーに尋ねたのだが、今年の奄美の3月の天気は例年よりも温かいという。それが吉と出ることを祈ろう。

 

 
ゲストハウス涼風。
此処を拠点にしたのは宿代が安くて何日か泊まれば値引きしてくれる事(1日1980円換算になった)と、泊まるとレンタルバイク代が破格の1500円になるからだ。この島でのレンタルバイクの相場は1日2千円くらいだ。それが何日も続けば結構な額になる。十日だと差額は5千円だもんね。
ちなみに言っとくと、車を借りる事も考えないではなかった。が、離島ではバイクを借りるケースの方が圧倒的に多い。理由は何といっても何処でも簡単に停められるからである。蝶を採集する場所は林道など狭い道のところが多い。必然、車の場合だと、おいそれとはそこいらには駐車できないのだ。一方バイクだと、山に入っている間は網を袈裟がけにして走っているから、飛んでるのを見つけたら素早く端に停めて追いかける事も可能なのだ。つまりフレキシブルってワケ。それに風を感じるのが好きなのだ。風には匂いがある。それは土地土地によって微妙に違ったりする。その風の匂いを嗅ぐと、島に来たって実感が湧いてくるのだ。燃費もいいのも利点だ。ガソリン代は何百円とかの単位なのだ。
難点は雨に弱いことだ。南国は天気が急変しやすいから突然ザァーっと雨が降ってくることが結構あるからね。けれど、それも持ち前の天気センサーが変化を敏感に察知するから大丈夫なのら。だから、実を言うと日本でも海外でも虫採り中にズブ濡れになったことは殆んどない。それに常に素早く雨宿りできる場所を頭に入れながら走ってるからね。
偉そうに御託をつらつらと並べたが、本当は単に車よりバイクの運転の方が好きなだけなんだけどもね。

部屋はドミトリーだ。でもバイクでのユーラシア大陸横断の旅の時にさんざんぱら泊まったし、4、5年前の台湾でもずっとドミトリーだったしね。よほど変な奴と同部屋にでもならなければ大丈夫っしょ。

 

(出展『エアトリ』)

 
ドミ部屋には既に先客がいた。小池くんという東京から来たという明るい青年だ。有給休暇の消化で前日から泊まっているという。大学の後輩の中越とどこか風貌が似ていて、調子のいいところもソックリだ。中越って元気にしてるのかなあ?アホだけど、憎めない奴だったよ。

『名前、ラーメン大好き小池さんでインプットしとくわ。』と言ったら、『それよく言われるんですよー。俺、ラーメン好きなんで全然構わないんですけどねー。』と返してきた。
その会話の流れで、二人してラーメン屋に昼メシを食いに行く事になった。さっきゲストハウスのオジーにお薦めの食いもん屋を尋ねたら、ちょっと前に近所にラーメン屋が開店して毎日行列ができてると教えてくれた。それを言ったら、ラーメン大好きを演出したポーズなのか本気なのかはよくワカランが、小池くんが俄然興味を示したのだ。天気も悪りいし、妥当な選択だろう。

だが、開店時間の11時半に行ったけど閉まっていた。どうやら月曜日は定休日らしい。やっぱ流れ悪いや。
窓に貼ってあるラーメンの写真を見ると、どうやら二郎系のようだ。いわゆる平打ち太麺でモヤシてんこ盛りのガッツリ豚骨醤油ラーメンの系統である。奄美大島で二郎系とはね。全く頭になかったから、ちょっとした驚きだった。きっと島民にとっては、もっと衝撃的だったろうから、行列になるのも頷ける。
後に小池くんが先にこのラーメン屋に行くことになるのだが、彼曰く、やはり二郎系だったそうだ。
『けど二郎系にしては少し味が薄めですね。俺、二郎系についてはウルサイんすよー。テーブルに醤油ダレみたいなのがあるので、それ入れたら丁度良くなりました。』などとノタまう。流石、ラーメン大好き小池さんである。コメントからラーメン偏差値の高さが伺える。調子こいて言ってるだけだと思ってたけど、本当にラーメン好きだったんだね。

戻りしな、道でサソリモドキ(註1)がペシャンコになっていた。

 

 
何かと上手くいかないのは、きっとサソリモドキの呪いのせいじゃよ。全ては極悪非道のヤツの仕業で、悪い方向へいくように裏で手を回してやがるのだ。そうとでも思わなければ、やってらんない。
そういや、初めてサソリモドキを見たのは奄美だった。根瀬部で何気に石をひっくり返したらコヤツが出てきたので、腰を抜かすほど(☉。☉)オッタマゲーになったのだった。見てくれはどうみてもサソリだもんな。(꒪ꇴ꒪|||)⚡日本にもサソリがいるのか❗❓と一瞬パニクったもんね。でもサソリモドキの存在を一応知識としては知っていたから、直ぐに冷静になれたけどもね。
刺したりはしないけれど、超酸っぱい毒液を引っ掛けてくるらしい。それが目や鼻の穴に入るとメッチャクチャ痛いらしく、失明するとかしないとか言われてるようだ。ふにゃふにゃなサソリみたいだけど、それなりに邪悪なのだ。

天気はどんよりで寒いが、雨は降ってないので下見の為にバイクを借りる。小池くんもバイクを借りているし、原生林に行くと言ったら自分も行きたいと言ってきたので、二人して昼飯を食う店を探しがてらのツーリングとあいなった。

先ずは隣町の小宿に行く。
郵便局に入り、オバちゃんに飯食える場所を訊く。それが一番の早道だと思ったのだ。
しかし、教えてもらった店も定休日だった。まあ、たとえ開いていたとしても、島外の者は入店お断りの可能性が高いとオバちゃんに言われてたから、結果は同じだったっぽいけどさ。こんなところにまでコロナの影響が及んでいるんだね。
あと西側方面で飯が食えるとこがある可能性は大浜海浜公園くらいだろう。取り敢えず行ってみてダメならば、名瀬方面に戻るしかあるまい。

海沿いを走る。
とにかく風がべらぼうに強い。走行中にバイクが横風に煽られ、テールが流されて転倒しそうになったくらいだ。

 

 
海浜公園に到着。
プチレストランみたいなのがあったので、そこで飯を食うことにする。 
小池くんは海亀バーガーをオーダー、ワシはカレーを選んだ。小池くんの攻めたオーダーと比べて、あまりにも無難なチョイスだ。せめて激辛にしようとしたら、店員さんにメチャメチャ辛いですよと言われて怯む。で、迷った末に普通の辛口にしただすよ。根性なしである。完全に置きにいってる。昨日から悉くと言っていい程に選択が裏目がちなのだ。冒険回避のチキン野郎にもなろう。

 

 
食った瞬間は辛口で正解だったと思った。しかし直ぐに慣れてきて、物足りなくなってしまう。激辛にすべきだったかも…。調子が悪いと、つい消極的になりがちになるという悪い例だ。らしくないよなあ…。
因みに海亀バーガーは海亀の肉を使ったバーガーではなくて、単にバンズが海亀の形をしているってだけでした。

ビーチに出る。

 

 
なるほどね。此処は日本有数のウミガメの産卵地らしいが、この砂浜ならば、それも納得だ。
それにしても風が強い。海はウサギだらけの白波立ちまくりである。そして、とても寒い。気温は10℃くらいだろう。
こんなとこに居たら、どんどん体温を奪われるわい。とっと移動じゃよ。そそくさと切り上げてバイクの停めてある場所へと戻る。

『(ΦωΦ)フフフ…、こんな事もあろうかと思ったので、ワシャ、手袋を持ってきたのじゃよー。備えあれば憂い無しなのさ。ケケケケケψ(`∇´)ψ』
『えー、マジっすかあ❓』
『ワハハ、頭のデキかキミとは違うのだよ、キミとは。
ψ(`∇´)ψホレホレー、指が凍えて感覚なくなりなはれー。』
🎊🎉チャッチャラ〜❗ヘラヘラ顔でポケットから手袋を取り出す。
(・∀・)ん❓けどポケットから出したモノに違和感があった。
(・o・;)あれっ❓と思って広げてみたら、何と手袋ではなく靴下であった。色が同じ黒で布地の質感も似ていたので、間違えて持ってきてしまったのだ。
『☜(↼↼)備えあれば憂い無しですよねー。』小池くんがニタニタ笑いながら言う。
(+
+)クッソー、やらかし半兵衛じゃよ。やっぱ調子ワリィー。バイオリズム最悪だわさ。

更に隣町の知名瀬まで行き、そこから金作原(きんさくばる)原生林へと向かう。
ここは奄美大島の山々の中でも天然の亜熱帯広葉樹が数多く残っている地域で、生きた化石とも言われる巨大なヒカゲヘゴなどの亜熱帯植物が茂り、国指定天然記念物のアマミノクロウサギやルリカケスなどの稀少な生物も生息している。たぶんフェリエベニボシカミキリやアマミシカクワガタ、アマミマルバネクワガタ(註3)などもいるだろう。

 

(出展『鹿児島県観光サイト どんどんかごしまの旅』)

 
別に自分にとってはそう珍しい景観でもないゆえ写真を撮らなかったので、画像を拝借させて戴いた。この画像のようにシダの化け物みたいなヒカゲへゴ(註4)が繁茂していて、恐竜の闊歩した時代、いわばジュラ紀を思わせるような景観なのだ。

奥に向かって走るにつれ、記憶が甦ってきた。アマミカラスアゲハ(オキナワカラスアゲハ奄美大島亜種)やスミナガシがいたポイントも鮮明に思い出した。

 
【スミナガシ Dichorragia nesimachus okinawaensis♀】

(2011.9月 奄美大島大和村)

 
途中、小池くんがついて来なくなったので少し戻ると、彼は地面をジッと眺めていた。
何してんの❓と尋ねると『糞があるんですよー。コレって天然記念物のアマミノクロウサギのですかねぇ❓』と真顔で訊いてくる。
見ると、確かに鹿みたいなチョコボール的な糞が落ちている。
暫し考えてから答える。
『たぶんクロウサギなんじゃない。シカは奄美大島には居ない筈だし、ネズミとかの糞だと、こんなに大きいワケないからさ。』
奄美には過去3回来ているが、実をいうとアマミノクロウサギは一度も見たことがない。クロウサギは夜行性だから、積極的に夜に山に行かないと会えないのだ。別にそこまでして見たいワケでもなかったから、ずっとスルーしてたのだ。まあ、今回は夜の山を徘徊する事になるから、遭遇する事になりそうだけどさ。

尾根まで辿り着く。ここから先は、今はガイドと一緒じゃないと入れない事になっている。でも入る気などサラサラない。10年前に突っ込んでエラい目にあっているのだ。林道とは名打ってはいるものの、完全に未舗装の普通の山道なのだ。ブッシュだらけのところもあったし、オマケに当時は南側の住用方面に降りる道が全て土砂崩れで通行止めになっていて、かなり先まで進まざるおえず、結局フォレストポリスまで行って漸く海岸に降りることができたのだった。その時、二度と行くかいと心に誓ったもんね。

下りて来ると、晴れ始めた。

 

 
流石のスーパー晴れ男である。
小池くんが『ホントに晴れてきたー。』と驚いている。出発時に彼に向かって『ワシ、スーパー晴れ男やねん。そのうち、ワシらのおるとこだけ晴れるでー。』と宣(のたま)っていたのである。まあ驚いて当然じゃろう。天気予報は悪かったし、どう考えても、今日は晴れ間が出るような空模様ではなかったからね。

谷状の如何にもアゲハたちが集まってきそうなミカン畑で、劇的にパッと周りが明るくなった。景色は一変。光溢れる世界になった。と同時に蝶たちが一斉に飛び始めた。乱舞の様相である。この時期はミカンの花が咲いているので、蝶たちが吸蜜にやって来たのだ。ずっと天気が悪くて寒かったから、お腹すいてたんだね。

今回のターゲットの一つであるアマミカラスアゲハ(註5)も飛んで来た。

 
【アマミカラスアゲハ(オキナワカラスアゲハ奄美亜種)♂】

 
アマミカラスは3月上旬、早い年には2月下旬から発生しているらしいから鮮度が心配だったが、バッチシだ。
春型を見るのは初めてだけど、美しいねぇ。夏型よりも後翅外縁の弦月紋が発達している。でもって沖縄本島のオキナワカラスの春型よりも表面の青が強くて綺麗な気がするぞ。

 
(裏面)

 
裏面の赤紋もカラスアゲハやヤエヤマカラスアゲハと比べて大きい。中には、この赤紋が二重になっている奴もいるらしい。いわゆる異常型だから、かなり稀なものだろうけどね。

しかし晴れ間は10分程で終わり、再び鉛色の空になった。
結局その間に採れたのは、他にモンキアゲハ、ナガサキアゲハ、アオバセセリ、クロセセリのみだった。

 
【モンキアゲハ♂】

【ナガサキアゲハ♂】

【アオバセセリ】

【クロセセリ】

 
(展翅嫌いだから、今もってロクに展翅していないのである。奄美から帰ってきて2週間以上経ったが、やったのはアマミカラスとフタオ、アカボシゴマダラ、蛾3つだけなのだ。)

 
体が冷えているので風呂に行こうという話になった。
銭湯好きとしては、是非とも奄美大島の銭湯には入っておきたいところだ。提案したら、小池くんも銭湯好きらしく即決定。
その場で小池くんがネットで調べてくれる。したら、名瀬に「千代田湯」という銭湯があることがわかった。

 


(出展『鹿児島県公衆浴場業生活衛生同業組合』)

 
昭和レトロな雰囲気があって、いい感じだ。ソソるね。
しかし、電話しても繋がらない。仕方なく他のところを探す。
2軒ほど小池くんが電話すると、そのうちの1つで「銭湯は休業、もしくは廃業になっているのではないか」と云う情報がもたらされた。奄美大島唯一の銭湯に入れないとは無念である。こうして日本全国の銭湯が人知れずひっそりと消えてゆくのだね。嘆かわしいことだ。

その情報をくれた奄美ポートタワーホテルへ行くことにする。
サウナがあって値段もタオル代込みで900円ならば、許せる範囲内だ。

 

(出展『奄美大島ブログ』)


(出展『奄美まるごと情報局』この右奥にサウナがある)

 
湯舟につかって体を洗ったあと、サウナと水風呂の往復を3セット繰り返す。
激アツのサウナでギリギリまで我慢してから水風呂に入って仰向けで浮かぶと、喉の気道がスゥースゥーして超絶気持ちいいんだよねー。
全身、スゲーりら〜っくす。

✧\(´∀`)*/✧整いましたあー。

                         つづく

 
追伸
短くするつもりが、書いてるうちに色々出てきて結局また長文となった。この調子だと、連載がいつ終わるかワカンねぇよなあ…。次の註釈の項も長いしさ。文章を書く時の性格はパラノイアかもしれんわ。
なお、2011年の奄美採集記『西へ西へ、南へ南へ』ではスミナガシは第八番札所「蒼の洗礼」など、アマミカラスアゲハは第十七番札所「無情の雨に」などの回に登場します。あとサソリモドキも何処かの回に登場します。

 
(註1)ヒガンザクラ
その時はてっきり彼岸桜の事かと思ったが、何か違和感があったので調べてみたら全く別物の桜だった。


(出展『奄美まるごと情報局』)



(出展『庭木図鑑 植木ペディア』)

名瀬の宿のオヤジさんは確かにヒガンザクラと言ったが、正式名称は「ヒカンザクラ」。漢字で書くと「緋寒桜」となる。だがネットで見ると、ヒガンザクラと書いてあるものもあり、現地では濁って発音する人も多いのかもしれない。別種のヒガンザクラ(彼岸桜)と混同されやすい事から、最近では「カンヒザクラ(寒緋桜)」と表記される事が増えているようだ。尚、漢字表記は、寒い時期に緋色(鮮やかな赤)の花を咲かせる事からきているものと思われる。
奄美大島や沖縄及び台湾・中国南部に見られるサクラの1種で、日本では最も早く開花する桜の一つ。奄美や沖縄で桜といえばこの種を指し、1月~2月に開花することから「元日桜」との別名もある。また、釣鐘状に咲く花の様子は一般的な桜と異なるため、見慣れぬ者には梅や桃の花と間違われやすいという。
台湾を中心に園芸品種が多く、日本で「~カンザクラ」と呼んでいるものは本種を片親にしているケースが多いそうだ。

ちなみにヒガンザクラ(彼岸桜)の方は、コレね↙。


(出展『PAKUTASO』)



(出展『庭木図鑑 植木ペディア』)

本州中部以西に分布するバラ科の小高木。カンザクラに次いで早期に咲く品種であり、春の彼岸の頃(3月20日前後)に開花するためヒガンザクラと命名された。寒い時季に緋色の花を咲かせるカンヒザクラ(寒緋桜)や母種であるエドヒガン(江戸彼岸桜)との混乱を避けるためコヒガン、コヒガンザクラと呼ぶことも多いようだ。

 
(註2)サソリモドキ

(2011.9.22 奄美大島 根瀬部)

蠍擬。サソリモドキ目に属する節足動物の総称。頑強な触肢と鞭のような尾をもつ捕食者であり、酸性の強烈な匂いを放つ噴出液で自衛をすることが知られる。名に「サソリ」と付くが、ウデムシやクモに近縁であり、サソリとは別系統の生物である。
総称である「サソリモドキ」は、かつては日本産の種(サソリモドキ Typopeltis stimpsonii)の和名として使われてきた。しかし、後に2種が含まれていたことが分かり、それぞれにアマミサソリモドキ、タイワンサソリモドキという新たな和名がつけられた。前者は九州南部から奄美大島、後者は沖縄本島から八重山諸島、台湾に分布している。
英名の「whip scorpion」「vinegaroon」からムチサソリ、ビネガロンとも呼ばれている。ビネガロンには笑ったよ。まるでビネガー(酢)怪獣みたいな名前じやないか。まあ、巨大化すれば、間違いなく怪獣の体だけどさ。酸っぱくて臭い液を街にメチャンコ撒き散らすのだ(笑)。

 
(註3)フェリエベニボシカミキリやアマミシカクワガタ、アマミマルバネクワガタ

【フェリエベニボシカミキリ Rosalia(Eurybatus) ferriei】

(出展『Weblio辞書』)

体長23~31mm。
見た目も美しいが、名前も素敵だ。
我が国に生息する数少ないルリボシカミキリ属4種のうちの1種で(他はルリボシカミキリ・コエレスティスルリボシ・ベニボシカミキリ)、日本では奄美大島のみに見られる固有亜種。2013年に条例により採集禁止種に指定された。
成虫は6月〜7月に見られる。スダジイやイジュなどの太い立ち枯れの木に集まり、林道を飛翔する姿も見られるというが、発生期は短く、個体数もあまり多くないようだ。
名前のフェリエは、明治時代に南西諸島で布教活動をしながら昆虫採集を行い、この地域の昆虫の研究に寄与したフェリエ神父に由来している。

 
【アマミシカクワガタ Rhaetulus recticrnis】

(出展『mushiya.com』) 

体長 ♂18〜48mm ♀19〜32mm。
奄美大島・徳之島・加計呂麻島・請島にのみ分布する固有種。
採集は非常に難しく、数も少ない稀少種とされ、2013年より採集禁止種に指定された。とはいえ2012年以前に採集された親から累代飼育されたものが市場に出回っているようだ。
日本唯一のシカクワガタにして、世界のシカクワガタ属中の最小種。小型〜中型の個体は大アゴが強く湾曲しないが、大型の個体は鹿の如く湾曲する。成虫は5月から9月頃に活動し、標高300m以上の照葉樹林に生息する。スタジイなどの樹液に集まり、灯火や果物トラップにもやって来る。野外では小型個体が多いが、飼育下では菌糸ビン飼育や発酵マット飼育で大型個体を容易に育てることができ、♂には56mmの記録があるそうだ。

 
【アマミマルバネクワガタ Neolucanus protogenetivus】

(出展『六畳一間』)

体長 ♂40-62mm(飼育下では最大68.3mm)。♀は55mm。
奄美大島・徳之島の固有種。請島に亜種ウケジママルバネクワガタがいる。このクワガタの仲間は主に熱帯から亜熱帯に分布し、奄美のマルバネクワガタがその北限種にあたる。
旧タテヅノマルバネクワガタ亜種群の中で最もオスの大顎の発達が悪く、大歯型は極めて稀。
8月中旬から9月下旬にかけて見られ、国産マルバネクワガタ類の中では成虫の出現期が最も早い。とはいえ、奄美のクワガタの中では最も発生時期が遅い種である。
スダジイの老木の樹洞に潜み、その腐朽部のみを食し、樹液には集まらず、灯火にも稀にしか飛来しない。なので人目につかず、大型種であるにも拘らず発見は遅れたようだ。主に夜間、山間部のスダジイの樹上や道路歩行中ものが観察される。
環境省第4次レッドリストでは絶滅危惧II類(VU)に指定されており、2020年に奄美大島&徳之島の全市町村で条例により捕獲が禁止された。減少した理由として、開発による自然林の消失、それにより大きな樹洞を持つスダジイが減少した事に加え、成虫採集、幼虫採集とその餌となる腐植質採取の横行、林内の乾燥化などが挙げられている。また近年、さらなる減少要因の一つとして、リュウキュウイノシシによる成虫と幼虫の捕食も指摘されている。

奄美大島には固有種や固有亜種が多く、他にも採集禁止に指定されている昆虫が多数いる。漏れがあるかもしれないが、一応以下に並べておきます。
アマミミヤマクワガタ、マルダイコクコガネ、アマミキンモンフタオタマムシ、ヒメフチトリゲンゴロウ、アマミナガゴミムシ、ヨツオビハレギカミキリ、ハネナガチョウトンボ。
甲虫が圧倒的に多いが、奄美大島が世界遺産になったら、もっと採集禁止の種は増えて蝶や蛾も指定される可能性がある。下手したら全ての昆虫が採集禁止にだってなりかねない。
でも、それでいて開発の波は加速するんだろね。世界遺産になったら訪れる観光客は倍加するだろうからさ。当然ホテルの建設ラッシュでしょうよ。禁止にするなら、ちゃんと環境も保護してもらいたいものだね。とはいえ、どうせ経済が優先されるんだろなあ…。木は伐採され、山も削られるだろう。道路は拡張され、森は益々乾燥化する可能性大だ。あの美しい海もきっと間違いなく汚れるぜ。

 
(註4)ヒカゲヘゴ
大型の常緑木生シダで、日本最大のシダ植物である。奄美大島や沖縄本島から八重山諸島にかけての森林部でよく見られる。
高さが平均5~6m、最大で15mほどになる。葉柄から先だけでも2m以上ある。
ヒカゲヘゴはその大きさから古生代に栄えた大型シダ植物を髣髴させるものがあり、その生き残りと呼ばれることもあるが、ヘゴ科の植物はシダ植物の中では比較的新しく、約1億年前に出現したものである。
海外では台湾、中国福建省、フィリピンなどに分布するが、中国では自然状態のものは数少なくなっており、山中に比較的豊富に見られた台湾でも2006年頃より枯死する例が増え、絶滅が危惧されている。

新芽、及び高く成長した幹の芯は食べることができる。新芽は80cm程度に成長したものが食用に適し、茹でて灰汁抜きしたあとに天麩羅や酢の物にして食べる。芯は煮込むと大根のような食感となる。また、煮たヒカゲヘゴの芯は八重山諸島では祭りの際に欠かせない食べ物であり、石垣島などでは水煮したものなどの販売もされている。
もしかして脇田丸でお通しで出たクソ不味い大根は、ヒカゲへゴだったりしてね。

 
(註5)アマミカラスアゲハ
(春型)

(夏型)

アマミカラスアゲハはオキナワカラスアゲハの亜種だが、蝶屋の間では通称アマミカラス、もしくはアマカラという更なる略称で呼ばれている。
なワケで、学名は以下のとおりになる。
Papilio okinawensis amamiensis (Fujioka, 1981)
参考までに言っとくと「Papilio」とはラテン語で「蝶」を意味し、”ぱたぱたする”という意味の「pal」に由来する。
「okinawensis」は「沖縄の」、「amamiensis」は「奄美の」という意味である。
漢字で書くと「奄美鴉揚羽」もしくは「奄美烏揚羽」じゃね。

生態はオキナワカラスアゲハ(Papilio.okinawensis okinawensis Fruhstorfer, 1898)とほぼ変わらないので、ウィキペディアから抜粋、独自編集して解説しときます。

チョウ目アゲハチョウ科アゲハチョウ属に分類される蝶の1種で、2亜種(ssp.okinawensis・ssp.amamiensis)に分けられている。
以前はカラスアゲハ(P.dehaanii)と同種と考えられていたが、交配実験やミトコンドリアDNA解析の結果から現在では別種であると考えられている。だが、bianor(ヤエヤマカラスアゲハ)の亜種とする研究者や ryukyuensis Fujioka,1975 とする見解もある。
このようにカラスアゲハ類の分類は錯綜していて、以前は別種だった polyctor(クジャクアゲハ)が bianorに組み込まれたり、台湾の takasago(タカサゴカラスアゲハ)やトカラカラス(トカラ列島)、ハチジョウカラス(八丈島)とかなんかの位置づけも絡まって複雑な様相を呈している。そういや、どの種にどの学名を宛がうかでも揉めてたんだよね。
この辺のややこしい問題は拙ブログの台湾の蝶シリーズの16 1/2話に『さまよえるカラスアゲハ』と題して詳しく書いたので、興味のある方は読んでくんなまし。

カラスアゲハやヤエヤマカラスアゲハと比べて翅形がボックス型で、四角い印象をうける。翅の表面の地色はより暗く、後翅の青色鱗は基半部のみに見られ、外半部には殆んど見られない。しかし後翅外縁の青色弦月紋(♀の場合は赤色弦月紋)はよく発達する。雌雄の翅の違いはカラスアゲハとほぼ同じで♂の翅は濃い青や緑だが、♀は淡い緑色で、縁に向かうにつれて黄色みを帯びる。そして♂には性標(ビロード状の毛)がある。しかし、この性標がカラスアゲハよりも発達する。因みに♀には性標はなく、後翅の弦月紋は他のカラスアゲハ類と同じく♂よりも発達し、艶やかとなる。
前翅裏面の黄白帯は鮮明で、ほぼ同幅。外縁と平行に走り、ミヤマカラスアゲハに似る。また後翅外縁凹入部の黄白色部は大きく、且つ明瞭である。

アマミカラスはオキナワカラスと比べて表面の青色が強く、前翅裏面黄白帯も発達している。また♀の後翅外縁の赤色弦月紋は更に強く発達する。
ようはアマミカラスの方がオキナワカラスよりも美しいということだ。特に♀は、より美しい。

分布は、奄美群島(奄美大島、加計呂麻島、請島、与路島、徳之島)及び沖縄諸島(沖縄本島、渡嘉敷島、座間味島、阿嘉島、久米島)。

第1化(春型)は早い場合には2月から現れ、3月中旬から下旬に最盛期となる。以後10月中・下旬までに年4回ほど発生すると考えられている。成虫は林縁や林道などを飛翔し、各種の花を訪れ、♂は地面に吸水にもやって来る。
幼虫の食草は沖縄諸島ではハマセンダン、奄美群島ではハマセンダンの他にカラスザンショウも報告されている。

 
参考文献
◆『Wikipedia』
◆『庭木図鑑 植木ペディア』

 

未だ見ぬ日本の美しい蛾2


年末に岸田先生の『世界の美しい蛾(註1)』について書いたが、本には海外の美麗蛾のみならず、日本の美しい蛾も数多く紹介されている。
今回も前回に引き続き日本に分布する未だ見たことがない憧れの美しい蛾たちである。

 
【ハグルマヤママユ Loepa sakaei】
(出展『世界の美しい蛾』)

 
鮮やかな黄色にアクセントとなる赤褐色の眼状紋が配されている。このビビットなコントラストが美しい。それを引き締めるかのような黒い波状線がまた何とも心憎い。艶やかにして、粋(いき)。この美しさには誰しもが瞠目するだろう。
ヤママユガ科(Saturniidae)の蛾は美しいものが多いが、中でもハグルマヤママユが最も美しいと思う。ヤママユガ科の中では、やや小さいと云うのもキュートな感じがして好ましい。

漢字で書くと、おそらく「歯車山繭」だろう。
ヤママユの仲間は皆さん眼状紋があるけど、波状の線が目立つゆえ動的に見えたから歯車ってつけたのかな?
由来さておき、中々良い和名だと思う。早口言葉で三回続けて言うと絶対に噛みそうだけどね。

分布は奄美大島、徳之島、沖縄本島北部とされているが、宮古島なんかでも採れているみたいだ。
ハグルマヤママユ類は東南アジアに広く分布しており、似たようなのが沢山いるものの従来はtkatinkaとして一まとめにされ、特に種としては分けられていなかったようだ。日本のものも、その1亜種とみなされてきた。しかし近年になって分類が進み、多くが種に昇格したという。日本産も別種とされ、日本固有種となったようだ。

年3回の発生で主に3月、5月、8~10月に見られるとある。ヤママユの仲間は年1化が多く、一部が2化すると云うイメージだが、南方系の種だけあって年3化もするんだね。

何だか久々に奄美大島に行きたくなってきた(註2)。
奄美にはハグルマヤママユもいるし、キマエコノハもいるもんね。それにベニモンコノハの記録も一番多い。上手くいけば憧れの美しい蛾が三つとも採れるかもしれない。
蝶だって美しいものが多い。この島特有の美しいアカボシゴマダラやアマミカラスアゲハがいるし、春ならば、日本で最も美しいとされる白紋が発達したイワカワシジミだっている。

 
【アカボシゴマダラ♂】

 
【オキナワカラスアゲハ奄美大島亜種 夏型♂】

【同♀】

 
【イワカワシジミ】
(各地のものが混じってます。)

 
そうそう、思い出したよ。そういえば最近は沖縄本島にしかいなかったフタオチョウも土着しているというじゃないか。フタオチョウは沖縄県では天然記念物で採集禁止だが、鹿児島県ならばセーフだ。あのカッチョいいフタオチョウを大手を振って採れるのだ。

 
【フタオチョウ♀】

 
つまりレピ屋には、奄美はとっても魅力的な島なのだ。
それに奄美の海はとても綺麗だ。食いもんだって沖縄とは桁違いに旨い。アバスの唐揚げとか死ぬほど美味いもんな。
(ToT)嗚呼、奄美行きてぇー。

                     おしまい

 
追伸
冒頭に蛾たちと書いたし、数種を紹介する予定でいたが、早くも力尽きた(笑)。
やっぱ不調なのである。ボチボチ書いていきます。

 
(註1)世界の美しい蛾

グラフィック社より出版されている。
今のところ、ジュンク堂など大きな書店に行けば売ってます。

 
(註2)久々に奄美大島に行きたくなった
本ブログに『西へ西へ、南へ南へ』と云う奄美大島の紀行文があります。自分的には好きな文章。昔の方が良い文章を書いてたと思う。よろしければ読んで下され。

 

『西へ西へ、南へ南へ』15 すべてはミックスジュースのように曖昧になってゆく

 
ー蝶に魅せられた旅人アーカイブスー
2012-08-22 20:16:58

     

      ー捕虫網の円光ー
     『西へ西へ、南へ南へ』

(第十一番札所・すべては、ミックスジュースのように曖昧になってゆく)

 
2011年 9月18日

旅に出て10日が過ぎた。
時間の感覚が無くなりつつある。
いつ帰るとも知れないと、益々自分の輪郭が形を失い、朧(おぼ)ろになってゆく。
今日は何曜日だっけ❓

いつの間にか、また真っ黒になっている。もはや土人だね。

朝6時に起き、昨日のスミナガシ・谷村ポイントに行った。トラップの見廻りの為だ。
しかし、スミナガシもアカボシもいない。ルリタテハが来ていたが、完全に無視。
今回、トラップが全く役に立っていない。
アカボシは6月以外はトラップにほとんど来ないと聞いていたが、やっぱりそうなのか…。

9時に諦め、帰って支度し直した。
台風なので先は読めない。読めないが前に進む。
ずぶ濡れはもう経験済みだ。どうとでもなれだ。契約を延長して、今日もバイクを駆ることにした。
止まってたまるか❗失速しない為には駆け続けるしかない。
男は蒲生崎にバイクのフェンダーを向けた。

アカボシもアマミカラスも個体数はここが一番多い。あれだけ♂がいるんだから、♀だって同数いる筈だ。
完品のレッドスター・レディーを何としても手中にするのだ。

天気は今日もいつしか快晴。
台風男ではあるが、やっぱり晴れ男なのだ。
取り敢えず、谷村さんに教えて貰った民家横のポイントへ。
ミカンの木の樹液に1頭ボロ♂が来ていたが、リリースしてやる。以降、この個体を計3回も掴まえてしまう。
矢張り父っちゃん坊や谷村氏に一網打尽されてしまったか…。
エノキの木に蛹の脱皮殻が3つほどあったので、蛹を探してみたが発見出来なかった。

集落の更に奥を目指した。
コーナーを曲がったら、突然眼下に青い海と白いビーチが飛び込んできた。
夢のような美しいビーチだ。
日本じゃないみたい。
奄美の海は、この条件下でもこれだけ美しいんだからスゴい。

蒲生崎には午後1時に着いた。
相変わらずアマミカラスが一杯翔んでいるが、ことごとく♂だ。翅に光が真上から当たるとキラキラ青光りして宝石みたいに美しい。

1時半、真っ青な空をバックに大きなアカボシが真上を優雅に通過して行った。
デカかった…。多分♀だろう。
必死に周囲を探してみたが、結局見つからなかった。

2時くらいから風が強くなった。
雲がビュンビュン通過してゆく。
風の音が不気味である。人を不安にさせる音だ。

2時半、1頭だけアカボシがテリトリーに翔んできた。しかし、単発であった。
本格的に翔びだしたのは、やはり3時からだった。これで昼間は基本的に飛ばないという事が決定的になった。
それにしてもこの蝶、風が強くても構わず飛んでいる。雨さえ降らなければいいようだ。それよか、昼間飛べよなー(# ̄З ̄)
近縁のゴマダラチョウは昼間でもジャンジャン翔んでるぞ。どっちかというと、やっぱり性格はオオムラサキ的だね。

14、5頭、ネットインしたが、半分はリリースした。奄美に来て約1週間、段々ボロが増えてきた。

4時過ぎ。移動しようとしたら、アマカラの♀らしき影がカラスザンショウの木に翔んできた。葉っぱに止まり、お尻を曲げている。産卵だ。完品のようだ。
ごめん、悪いがネットイン。
一部、スリットが入っているが、今迄で一番綺麗な♀だ。

だが、あまり感動はない。
アマカラは♂の方が綺麗だと思う。

4時20分。それで出発が遅れた。
谷村ポイントに一縷の望みを賭けて行ってみたが、既に陽が陰ってしまい、ジ・エンド。
本日も彼女に袖にされた。
レディーは、いったい何処に行けばいるの?(T_T)

一日回転寿司に浮気したが、今日も脇田丸へ。

本日のチャレンジ・メニュー。

【イラブチャー(アオブダイ)の唐揚げ(390円)】

巨大なエビ天みたいになっとりまんなあ。
一応、沖縄辺りでは味が良いとされ、高級魚だったんじゃないかな。でもトロピカルブルーの魚だから、本土の人間にはかなり引く見てくれだ。

(出典『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』)

沖縄や八重山で何度か刺身で食ったことはあるが、唐揚げは初めてだ。

皮に弾力があって美味い。
が、ハリセンボンちゃん(アバス)には敵わない。
それにしてもこの店、揚げ方が上手いよなあ。毎回感心する。外はカラッと、中はジューシーなのだ。

グルクン(タカサゴ)の塩焼き(390円)。
沖縄だけじゃなく、奄美でもグルクンと呼ぶんだね。
大体、唐揚げにすることが多い魚だから、塩焼きは珍しい。多分、初めてだ。
ふむふむ。塩焼きも中々のもの。味は同じ青魚系のアジに近いが、身質はもっと弾力がある。
一匹丸々で、この値段だから嬉しい。

ボトルを飲みきったので、今日はひたすらラガーの中瓶を飲んでいた。
前カノから電話があり、嬉しくて痛飲。へべレケで帰った。
お代は1960円。いつもながらにクソ安い。

今日も沖縄発の船は全便欠航。
沖縄では海が荒くれてんのかなあ…。

酔っぱらいながらの帰り道。
信号機が濡れた舗道に映り、艶やかに滲んでいるのを見てふと思った。
帰れないことは、不幸ではない。
寧(むし)ろ、此処に長くいれる事はしあわせなんだと。

                   つづく
 

【subject】

奄美大島のビーチ。

海が荒れると、海中は濁る。
台風が近づいていると云う状況下で、この美しさはハンパない。
自分は昔ダイビング・インストラクターをやっていて色んな海に潜ってきたが、その中でも奄美地方の海の綺麗さは三本の指に入る。それくらいに美しい。

奄美のビーチ・その2。

ビーチには一家族しか居なかった。
贅沢です。

おまけ画像です。
お洒落にミラーに海を入れようとして失敗。

 
【追伸】
イラブチャーをアオブダイとしましたが、正確にはナンヨウブダイ。アオブダイはパリトキシンという猛毒があり、食用には向かないようだ。
両者は似てるし、ナンヨウブダイをアオブダイと表記する事もあるから、ややこしい。でも、これだけ混同されると、ヤバイじゃないの❓和歌山なんかにもいるそうだから、釣人は注意されたし。結構、死亡例も多いぞー。
あっ、本土の人はこんな派手派手の魚は食わないか?

『西へ西へ、南へ南へ』13 停滞という名の失望

ー蝶に魅せられた旅人アーカイブスー
2012-08-18 19:28:28

       ー捕虫網の円光ー
      『西へ西へ、南へ南へ』

    (第九番札所・停滞という名の失望)
                                               
2011年9月16日

朝、一応船会社に電話する。
船は既に今日の便は欠航しているので、次の20日の便を予約する。

9時半にバイクを返しに行った。
そこから近いし、雨が降ってないので拝山に行ってみる。

だが、何もいない。
ナガサキアゲハの♀が寄ってきたので、一応それだけ採った。
白くて綺麗だが、やや擦れ。

ついでにハブ対策室に寄るも、おじーは休みで居なかった。職員に電話番号を教えてもらってかけたが、あまり大した情報は得られなかった。
昔は市街地でもアカボシをよく見たらしいが、今はすっかり姿を消したという話を聞いて暗くなる。

因みに捕まえたハブを売りに来た人がたまたまいた。
全部チビばかりで9頭。大きさに関係なく市が一匹4千円で買い取ってくれるらしい。しめて3万6千円かあ…。いいアルバイトだな。絶対にやらないけど。
それにしても、ハブの一杯いる檻は猛烈に臭かった。
スタッフにハブ酒にでもするんですか?と尋ねたところ、全部焼却するとのこと。何だかハブも憐れだ。

そのまま、らんかん山に向かって住宅街と山裾の間を舐めるようにして歩く。
アカボシの♀は山麓のリュウキュウエノキにいるんじゃないかと思ったからだが、おじーの言によると期待は出来ない。
まあ、どうせすることもないんだし、ダメ元だ。

途中、船会社から電話があった。
20日の便も欠航が決まったと云う連絡だった。今後どうゆうタイムテーブルになってゆくのか分からないが、本来の次の便は25日。いよいよ絶望的に帰れなくなってきた。

続けて電話が入った。
自称虫捕りのプロ・谷村さんからだった。
毎日、ラブコールが来る。いつ家に遊びに来るかというお誘いだ。面倒臭いが、スミナガシをくれると言うし、情報も欲しいから晩に会う事にした。

名瀬市街は、湾内のせいか静かだ。風もあまりない。
天気は曇り時々雨。市内なら雨が降っても、いつでも直ぐに雨宿りができるから気分は楽だ。

一度部屋に帰り、昼飯を食う。
昨日、酔っ払って買った半額冷やし中華である。
宿には共同の冷蔵庫があるから有り難い。ビールも採集した蝶も放りこめる。南国だと蝶が腐り易いので管理が大変だが、冷蔵庫があれば心配ない。

(-。-;)…。
蒸し暑い。
曇っていても関係ない。じっとしているだけでも汗が噴き出してくる。

2時過ぎに再び出た。
らんかん山に向かって歩く。
♀が駄目なら、せめて♂でもと思ったからだ。運が良ければ、蒲生崎みたいに♀も翔んでくるかもしれない。
しかしそれにしても、あれだけ♂がいるんだから♀だって同数いる筈なのにまるで見ないよなあ。
なぜか大概の蝶は、♂は採れても♀はあまり採れない。大方、天敵に襲われないようにじっとしてる事が多いんだろうとは思うのだが、何だか理不尽だ。
そう考えると、♂って皆なリスキーな生き方してるんだよなあ…。♀を探す為にテリトリーを張ったり、ウロウロしたりして目立つと云う事は、それだけ天敵に捕食されやすいって事でもある。
メスの為なら死を賭してでも頑張っちゃうのが、オスと云う生き物なのだ。

3時過ぎからアカボシのテリトリー行動が始まった。
晴れている時みたいに活発ではないが、雨さえ降らなければ活動するようだ。
ただ、あまり止まらないし、この間より飛ぶのが速い気がする。それに位置が高いし、敏感だ。
1頭めは昨日リリースしてやったボロだった。その後、ことごとく逃げられ、やっと新鮮なのを計2つだけ採った。状況によっては、案外採れない蝶なのかもしれない。

アマミカラスの♀も2つ採ったが、2つ共ギリギリ展翅に耐えられる擦れとキレ。

この悪い状況下で両方完品の♀を採れば、やっぱり俺ってまあまあ天才、かなりカッコイイと思ったんだけどなあ…。

いっぱい蚊に喰われて5時に撤退。
帰りぎわ、イワカワシジミがいそうな山梔子(クチナシ)を見つけた。成虫は確認できなかったが、実に穴が空いていた。中に幼虫や蛹がいる可能性があると云うことだ。
しかし、民家なんでスルーした。怪しい人に間違われたら、事だ。

7時に谷村さんが迎えに来る予定だが、連絡がない。
気が進まないし、まあいいんだけどさ…。
でも、何となく腹が立つ。連絡すると言って連絡してこない奴はクズだと思う。

一応、何かあったのかもしれないので電話してみる。
コール音がわりにサザン・オールスターズのファンキーな曲が大音量で延々と鳴っている。しかも音質が最悪。音が絶望的に割れていて、何の曲だか分からない。
唖然…( ; ゜Д゜)
おっさん、サザンが好きなのか…。
サザンが悪いわけではない。だけど何かおっさんとの組み合わせがどうにもイタ過ぎるぞ。

8時にやっと電話があった。
24時間スーパーまで迎えに来ると言う。

助手席は信じられないくらいにゴミだらけだった。
変な臭いもする。
やっぱ、この人イタい。

促されるままに助手席に座る。
捲し立てるように話しかけてくるが、この厚縁眼鏡の小太りオヤジ、滑舌が悪くてそのほとんどが聞き取れない。
やがて、とっちゃん坊やはニコニコしながら『あげるよ。』と言って、額を差し出した。

Σ( ̄ロ ̄lll)❗❗
戦慄が走る。
そこには、古ぼけたツマベニチョウとスミナガシの標本が並んでいた。それは、いつの時代のものなのかというくらいに色褪せており、ガラスの下でひしゃげたように磔りついている。標本と云うよりも、まるで蝶のミイラだ。何だか磔(はりつけ)獄門の刑みたいで、おぞましささえ漂っている。
それに、何だか手に突起物が当たったので裏返してみると、思いっきり針が裏まで貫通していた。よく見ると、その針は蝶を突き刺すにはあまりにも太い。昆虫標本用の針ではないだろう。多分、裁縫用の長い針とかだ。こんなもの、自慢気にプレゼントするかね❓
やっぱこの人、ウルトラ級にイタい。

展翅もお世辞にも巧いとは言えない。
ハッキリ言ってド下手だ。触角が不細工に左右あさっての方向に向いている。
あんた、プロじゃなかったの❓
やっぱこの人、全てにおいてイタいかも…。
頭の中にゴルゴタの丘、五寸釘、藁人形という言葉が浮かぶ。
丁重に御辞退申し上げ、お返しした。怨念の詰まったようなもんなんぞ、受け取れん。

スミナガシのポイントも訊いたが、地元民なのにもう一つ要領を得ない。しどろもどろだ。
このまま家に連れて行かれるのは、どうもなあ…。
ある意味残念な地獄絵図が待ってる事は間違いないだろうし、家は此処から案外遠い。かなり奥まった所だから、歩いて帰るには距離がある。結果、泊まっていけだなどと言われた日にゃ、大変なことになると思ったので、上手く話を切り上げて車から辞去した。
谷村さんは、ちよっとションボリしていた。きっと、さみしがり屋なのだ。
けど、同情は禁物だ。あのゴミだらけの助手席を見たら、家の中は言わずもがなだろう。多分、ゴミ屋敷だ。

その足で脇田丸へ。
今日もアバス(ハリセンボンの唐揚げ)から始める。これで5日連続だ。今や完全なる儀式と化している。

今日の珍しいオーダーは以下の通り。
相変わらず食い気が勝ってしまい、画像を撮り忘れてしまい、今回もあんま無いです。

ズーズルビキ(スズメダイ)の煮付け(490円)
意外だが、結構美味い。板前さん曰く、身が薄いけど、ツノダシもおんなじ味らしい。
因みにツノダシはこんな魚です。

(出展『魚類図鑑・ツノダシ』)

こんなエンジェルさんを奄美大島では食べるのね。
まあ、そんなのはコチラの勝手な概念だけどさ。

【しぶり(冬瓜)と鶏肉の煮物(390円)】

冬瓜がホッとする味だ。
それにしても、沖縄ならともかく奄美大島にもワケのワカンナイ方言がたくさんあるんだね。言葉だけだと、何のコッチャなのか想像がつかないものだらけだ。何で冬瓜が「しぶり」なのか語源が全くもってワカランよ。

すっかり仲良くなった板さんが、こっそりキビナゴの塩漬け(塩辛)を持って来てくれた。

癖があるので、評価の分かれるところだが、焼酎にはピッタリだ。

酔いが回ってくる。
段々、刺身のツマの大葉(青ジソ)が、アカボシの食樹リュウキュウエノキ(クワノハエノキ)に見えてきた。

♀が木に卵を産みにくるかもと、そればっか探していたから、つい反応してしまった。確かによく似てるんだよねぇ。

【リュウキュウエノキ】

今日のお代は、1670円でした。
相変わらず、クソみたいに安い。

ふらふらと宿に向かって歩く。
街は、夜と雨の匂いに満ちていた。

                 つづく

追伸
サラッと手直して記事をアップできるかと思ったが、結局のところ大幅訂正加筆になった。次の回は、前のアメブロではゴッソリ1回分が丸々抜けてるから、昔の携帯を探してきて1から書き移さなければならない。
( ´△`)うんざりだよね。

春の献立の事を書きたいのだが、アフリエイトがまだ出来ないので書く気が起こんない。っていうか、サボり過ぎ。ダメ男だよなあ…。

『西へ西へ、南へ南へ』第9話

蝶に魅せられた旅人アーカイブス
2012-08-11 20:12:01
  

      ー捕虫網の円光ー
     『西へ西へ、南へ南へ』

(第七番札所・地獄の沙汰も崖次第、およよ)

2011年 9月14日

天気予報では曇り時々雨だったが、昨日と同じような天気だ。
台風は、どうなったんだろう?
大方、熱帯低気圧にでもなったんだろう。人生前向きなのだ。

本日の狙いもアカボシ、アマミカラスの♀狙い。
あと、書き忘れていたが、日本一美しいスミナガシ(墨流し)も狙いにいくつもり。奄美のが一番蒼っぽい群青色をしていると言われているのだ。

南西に針路をとる。
先ずは知名瀬だ。昨日、尊敬する蝶の先逹である森さんに電話をしたら、前は村内に♀がそこそこ翔んでたよとアドバイスされた。
谷を詰めれば、スミナガシもいるようだし、イワカワシジミもクチナシを丹念に探せばいるという。

午前10時、知名瀬着。
着いてすぐ、らしきものが翔んでいたから楽勝だと思ったら、クソ普通種リュウアサ(註1)だった。紛らわしい…(-“”-;)
アカボシの♀は、毒のあるリュウアサに擬態しており、ふわふわした翔び方までそっくりに似せているらしい。

日陰の無い村内をぐるぐる回っていたら、すぐにバテバテになった。
一切、姿なし。12時まで三角ケースの中身は空っぽ。
それまで無視していたが、思い直してカバマダラを5つほど摘まんで奥へと向かう。

【カバマダラ】

だが、大したものはいない。
仕方なく尾根近くまで詰めた。

アマミカラスが乱舞している。
あふれる太陽光を反射して、青い翅がハッとするくらいに美しい。
しかし、採っても採っても♂だらけで、そのうちウンザリしてきた。

予定では尾根まで行き、中央林道を南下して三太郎峠でスミナガシを奪取して、上手くいけば東側の西仲間で再びアカボシにチャレンジと云う算段だった。

だが、奄美中央林道は想像とは違い、完全なるノン・アスファルト。所謂(いわゆる)、ただの山道だった。
しかも道は石だらけの悪路である。
そのうち良くなるだろうと思っていたら、どんどん悪くなり、終いにはブッシュだらけの細い登山道になった。
ハブのお好きそうな環境で超ビビる(|| ゜Д゜)
こんな所で咬まれたら、麓に下りる迄に毒が回り、哀れ絶命ご臨終ちゃんになるかもしれない。
大体コブラでもガラガラヘビでも、まず威嚇があるらしいのだが、コヤツはいきなり飛び掛かってくるらしい。だから、被害も多いと云うことだ。

取り敢えずこのまま三太郎峠に行こうとしたら、15㎞進んだ地点で「崖崩れにより通行止め」と云う看板が出てきた。
悪路で時間を大幅にロスしているのに最悪だ。仕方なく西側の海岸に降りるルートを選択する。
道はアスファルトになった。ラッキーと思いきや、濡れた落葉が降り積もっており、滑りやすくてまた一苦労。多分、通る車もほとんど無いのだろう。

5㎞ほど行ったところで、(◎-◎;)およよー。
また崖崩れ通行止めの看板に突き当たった。これで津名久にも降りられなくなった。
困ったことには、地図を見ると更に南のフォレストパークまで行かなければ海岸の主要道路には降りられないようなのだ。
去年の台風の大雨被害の爪痕が、今もって色濃く残っているんだね。特に南部が酷いようだ。そういえば、幹線道路さえも至るところ片側通行だった。当然、山のなかは修復も後回しなのだろう。これで計画は完全に崩壊した。

走っている途中、目の端に蒼黒いものが入った。
うわっとととっとっとーΣ( ̄ロ ̄lll)、急制動する。

木の幹に、逆さに止まっている蝶がいた。
スミナガシだ❗
どうやら樹液に来ているようだ。慌ててネットを組み立てる。
羽をしきりと開閉している。綺麗だ。
確かに本州や八重山のものよりかなり蒼い。

下からいくか、横からバチコーンとカマすかギリギリまで躊躇した。それがいけなかった。慎重になり過ぎて、ネットを動かす手前で逃げられた。もう数秒早く判断していたら充分採れた筈なのに…。
悪路プラス連続通行止めで心が折れ掛かっていたのが、これで完全に折れた。

もう一度やって来ることを願って待つことも考えた。
しかし、一番のターゲットはアカボシの♀だ。今、山を降りなければ、麓のポイントには時間的に間に合わない。断腸の思いだが、明日またじっくり来ればいいと思った。

だが、一度狂った歯車は戻らない。
どころか、せっかく見つけた新鮮なアマミカラスの♀を焦って力一杯振ってしまい翅を大破させてしまう。
バイクを乗り捨てて、あんなにダッシュしたのに…。
もう1頭採ったが、それも上半分がバッサリ無かった。結局、両方とも逃がしてやった。♀は腹ん中に卵を持っているからだ。殺してしまえば、1頭だけではなく、何百もの生命を奪うことになる。無用な殺生は慎むべきだろう。

メスアカムラサキのイージーチャンスも振り逃がし、ようやくたどり着いたアカボシポイントは、♂しかいないような環境でガックリ。
10分足らずで2頭採り、諦めて根瀬部・知名瀬方面に戻る。だが、着いた頃には日没ゲームセット。
お守りの蝶ライターを忘れたのが、まずかったのかな?…。

夜7時に宿に帰った。
そこで台風の詳しい情報を初めて聞いた。
こちらにノロノロで向かっているという。
うねりが強く、取り敢えず明日の鹿児島行きの船の欠航が決まったらしい。
『明後日の便も多分ダメなんじゃないかな。』と宿の親父に言われた。
マジかよ…( ̄▽ ̄;)

男はスーパー晴れ男だが、実を言うと台風男でもある。
ダイビング・インストラクターだったサイパン時代もしょっちゅう飛行機が欠航になった。
ダイビング・ツアーの前のりで三宅島に行った時も、船が欠航してお客さんが来れずにツアー中止。自身も東京に2、3日帰れなかった。
そういえば、初めて行った石垣島でも帰れなかった。
何れの場合もずっと晴れていたのに、帰る段になっての天候急変だった。
まだある。一昨年は、八重山ゆきの飛行機が飛ばず。
去年は石垣・与那国で直撃を喰らった。
まあ帰れなかったがゆえに、楽しい事も一杯あったし、天気が悪いわりには蝶は採れて、目的はほぼ達成してはいるんだけどね(^^ゞ

今日も脇田丸。

ボトルを入れてしまったせいもあるが、気に入ったし、まだまだ食べていない謎のメニューもある。

今日もアバス(ハリセンボンの唐揚げ)から入った。

(画像、使い回しっす。)

これで三連チャン。
それでも、やっぱり絶品ですな。

ハーシビ(トガリエビス)煮付け(690円)。

潜ってる時も、密かにコイツ旨いんじゃないかと思っていた。
白身で脂が乗っているが、上品だ。味は金目鯛やキンキに近い。

画像は無いが、あとのツマミは以下のものだった。

浅蜊と野菜のかき揚げ(390円)。
カラッと揚がっており、申し分なし。

ティラダ(地物の貝)の煮付け(390円)。
普通に旨い。先っちょに鉤爪があり、見た目は完全にヤドカリです。

油ソーメン(390円)。
所謂、ソーメンチャンプルーの1種。外れのない安心オーダー。

因みにまだ頼んでないが、刺身定食はたったの390円です。嘘やろ!?(^o^;)の値段である。

今日もまた痛飲。
明日は、早いんだけどな…。

                   つづく

追伸

【註1】リュウアサ
リュウキュウアサギマダラの略名。漢字で書くと「琉球浅葱斑」となるのかな。つまり南方系の蝶で、日本では主に南西諸島に分布している。

これは石垣島で、初めて採ったものの1つだ。
標本だけで見比べると、アカボシゴマダラゴマダラに間違うワケはないと思うのだが、飛んでいる時は大きさや飛び方がソックリなのだ。
ワシらでも慣れないと見紛うのだから、一般人には区別がつかないだろうし、天敵の鳥に対しても、それなりに効果はあって然りなのかと思われる。

一応、アカボシゴマダラの画像も添付しておきます。