閃光のインペラトリックス

 
 
2月の初めに大阪でインセクトフェア(昆虫展示即売会)があった。
この日は余程のものがない限りは何も買うまいと決めていた。キリギリスも、いよいよ崖っぷちなんである。
しかし、そろそろ帰ろうとした時に出谷さん(註1)とこのブースで見慣れない蝶の三角紙標本を見つけてしまった。

 

 
正直、見たこともない蝶だったので、嘘でしょ❓と思った。蝶採りを始めて10年を越えているから、世界の蝶の事は凡そは知っていると云う自負があったゆえ、こんなに目立つ蝶をまさか見逃してるとは思えなかったのだ。
学名は「Cirrochroa imperatrix」とある。
学名から鑑みると、謂わば女王の蝶だ。そんなものを見逃しているなんて信じられなかった。もしかして最近見つかった新種だったりして…。でも、こんなにも凄い奴が新たに発見されていたならば、噂になって然りだ。テーゲーなワシの耳にだって入っていた筈だ。

タテハチョウの仲間であることは見た目で解るが、属名を見てもピンと来ない。Cirrochroaって何だっけ❓見たことのある属名のような気がするが思い出せない。翅形的には日本に同属のものはいないと思われる。強いて言えばヒカゲチョウの仲間、クロヒカゲなんかの翅形にやや近いような気もするが、蛇の目が無いし、本能的には違うだろうとも感じてる。

値段を見ると¥1500の値が付いていた。安い。けど出谷さんとこだと高額の部類に入る。カルナルリモンアゲハがA品で600円。アマンダベニボシイナズマはペアで1500円。あの巨大な怪蝶タンブシシアナオオゴマダラだって1200円くらいだったからね。

 
(アマンダベニボシイナズマ)

(2013.4月 スラウェシ島)

 
(タンブシシアナオオゴマダラ)

 
タンブシシアナは出谷さんとこで買って自分で展翅したものです。スラウェシ島の特産だが、細かいデータが今はちょっとワカンナイ。探すのが邪魔くさいだけなんだけどね。
たぶん、Idea tambusisiana hideoiという原名亜種よりも北部で見つかった亜種で、より黒いのが特徴。

蝶の価格は未展翅で売っているもので1500円を越えていれば、例外はあるにせよ珍品の部類だろう。とゆうことは、たとえ現地に行ったとしても、おいそれとは簡単には採れないクラスのかなり珍しい蝶だろう。それに青好きのオイラには見逃せない代物だ。買うことにした。

一つタガがハズレると、駄目だ。ついカルナとパリスの亜種も買ってしまった。ジャワ島には行ったことないから、採ったことがないのさ。

 

(右がカルナルリモンアゲハで、左がルリモンアゲハ東ジャワ亜種。)

 
青い蝶の学名の下には「Biak」とあるから、たぶんビアク島産の蝶だろう。
ところでビアクってどこだっけ❓インドネシアのどっかの島だとはわかるけど、どの辺りだったかが思い出せない。

調べてみたら、ニューギニアの方だった。

 

(出展『昆虫万華鏡』拡大すると右上にあります。)

 
地図で見た感じだと絶海の孤島とゆうワケではなくて、ニューギニア島からそんなに離れていないように見える。しかし、そう思い込むのは危険かもしれない。縮小地図だからそう見えるだけであって、実際はニューギニア島から何百キロも離れていたりするかも。淡路島とか佐渡ヶ島との距離感とはワケが違うのだ。地図の縮尺が全然違うって事を忘れてはならない。

翌日、先ずは青い蝶の学名の記載者から調べることにする。もしも記載年が近年であれば、間違いなく新種だからである。

だが、学名の後ろには Grose-Smith, 1894 とあった。
これは英国の昆虫学者グローズ・スミスによって1894年に記載されたとゆうことを示している。つまり新種ではござらんとゆう事だ。じゃあ何で今まで存在を知らなかったんだろ❓
単にワシがドアホなだけだったりして…。

三角紙を開き、中を確認してみた。

 

 
あっ、裏は青くないんだね。
さておき、コレはどう見てもヒカゲチョウの仲間ではなさそうだ。でも似たような裏面のチョウをどっかで見た気がするぞ。
えーと、たぶんネッタイヒョウモンとかミナミヒョウモンと言われてる仲間だったんじゃないかな❓でも確信がもてない。

ところで、和名は何だろう❓そこから何の仲間かが特定できるのではないかと考えたのだ。
しかし、ネットで検索しても和名では出てこない。
これはもう塚田さんの『東南アジア島嶼の蝶(註2)』で確認するしかあるまいて。

 

(出展『ばれろん堂』)

 
大阪市立自然史博物館へ行く。
ここの書庫で塚田図鑑が閲覧できるのだ。

 

(画像は第1巻のアゲハチョウ編です。)

 
タテハチョウ科はシリーズ第4巻で上下2巻あるが、たぶん下巻ではなくて上巻に載っている筈だ。下巻の方はフタオチョウやらイナズマチョウなどのスター蝶がズラリと並んでいるから何度も閲覧している。だから、もしそこに件(くだん)の蝶が載っていたならば、絶対に気づいていた筈だ。青好きのオラがスルーするワケがない。

同じものではないが、青い蝶を見つけた。
これの系統の近縁種なのかな❓

 

(出展 塚田悦造『東南アジア島嶼の蝶 第4巻(上)』)

 
一瞬そう思ったが、青の表面積が狭いし、翅形も違う。だいち、裏面が全く違う。

 

(出展『東南アジア島嶼の蝶 第4巻(上)』)

 
この感じの裏は、たぶんハレギチョウの仲間だろう。
ネッタイヒョウモンorミナミヒョウモンの仲間とは分類学的にはそう遠くない関係だとは思われるが、ここまで裏面が違うと、両者は別系統だろう。謎の青い蝶はハレギチョウの類ではなかろう。

解説ページを見ると、名前は、Cethosia lamarcki ラマルキィハレギチョウとあった。やはりハレギチョウの仲間だったのね。

一応、分布図も見てみよう。

 

(出展『東南アジア島嶼の蝶 第4巻(上)』)

 
分布はロンボク島とかの小スンダ列島だから、ビアク島とはかなり離れてる。

パラパラと見て、次に目に止まったのが、Vagrantini(オナガタテハ族)のコレ↙。

 

(出展『東南アジア島嶼の蝶 第4巻(上)』)

 
翅形は全然違うが青いし、それに何よりも裏面の色柄に近いものを感じる。近縁種かもしれない。
そういや、コレって自分で採ったことがある気がするぞ。

 

(2015.4月 マレー半島)

 
やはり有りましたな。
んっ❓、デザインは似てるけど、翅形が全然違う。
これはビロードタテハのマレー半島亜種かな❓(註3)
でもビロードタテハって変異幅が広いから、亜種区分はされていないかもしれない。何かややこしい分類のされ方をしてたという記憶がある。

 
(ビロードタテハ Terinos atlita miletum)

(2011.3月 ラオス)

 
初めてビロードタテハを採ったのはラオスのタボックで、このイメージだったから、マレー半島のものが同種だと分かった時にはビックリした。どうみても見た目は別種だもんね。

邪魔くさいけど、ビロードタテハ(Terinos)属の別な種の画像を探し直そう。
 
 

(2015.5月 マレー半島)

 
あった。
名前はテルパンダービロードタテハ(Terinos terpander)だったっけ❓ その名前でググッたら、自分のアメブロのブログが先頭でヒットしたよ(笑)(註4)。

 

(裏面)

(2016.3月 マレー半島)

 
たぶん上はタイ南部ラノーン辺りで採ったもので、下は更に南部のマレーシアのコタティンギ辺りのものだろう。
でもビロードタテハ類と青い蝶とは属名が違うから、やはり謎の青い者はネッタイヒョウモン(ミナミヒョウモン)の仲間なのかもしれない。

ページをめくると、チャイロタテハ(コウモリタテハ)も一連の並びにあった。和名はコウモリタテハの方が馴染みがあって、チャイロタテハなんぞと云う凡庸な和名よりも余程いいと思うのだが、塚田図鑑に従って以下チャイロタテハと表記します。

 

(出展『東南アジア島嶼の蝶 第4巻(上)』)

 
大型で、形はそれなりにカッコいい。でも東南アジアには♂はわりと何処にでもいて、ソッコーでウザい存在になる。但し、♀の方には滅多と会えない。♂は吸水に多数集まるが、♀は全く来ないのだ。花に吸蜜に来たのしか見たことがない。

 
(♂)

(2016.4月 ラオス)

(♀)

(2016.3月 タイ・チェンマイ)

  
種の解説部分を読んで思う。
今までチャイロタテハ属(Vindula)の近縁種や類縁関係なんて全く意識していなかったから軽く驚いたよ。まさかドクチョウ亜科だったとはね。

日本では西表島に土着しているタイワンキマダラも同じドクチョウ亜科にカテゴライズされ、キマダラタテハ属(Cupha)を形成している。
 
 
(タイワンキマダラ Cupha erymanthis)

(出展『日本産蝶類標準図鑑』)


(2016.4月 ラオス)

 
左翅が羽化不全の個体ですな。
コヤツはコウモリタテハよりもウザい。東南アジアには何処にでもいると云う印象があり、八重山諸島のものと殆んど変わらないように見える。別種も混じっていたかもしれないけど、ほぼフル無視に近い存在だった。とゆうか、むしろ憎悪の対象だった。大概は♂がテリトリー(占有行動)を張っていて、佳い蝶まで追いたててしまうのでホント邪魔なのだ。小汚いし、形も野暮だから「出しゃばりブス蝶」と呪詛を込めて呼んでたなあ…。

日本にはいないが、オナガタテハ属(Vagrans)もドクチョウ亜科に組み込まれている。

 

(出展『東南アジア島嶼の蝶 第4巻(上)』)

 
コヤツらも、そこそこ見るから次第にフル無視になりがちだ。
こちらも細かく見れば、別種も含まれていた可能性があるものの、直ぐに真面目に採らなくなった。

お次は以前日本にもいたウラベニヒョウモン属(Phalanta)。

 

(出展『東南アジア島嶼の蝶 第4巻(上)』)

 
コレも直ぐにどうでもいい存在になった。コイツにしろタイワンキマダラ、コウモリタテハにせよ、皆さん茶色で絶望的に地味なんである。真正のヒョウモンチョウからは、そんなに地味な印象はうけないのにね。より大型でオレンジっぽく見えるからかな❓
蝶採りを始めた頃にはウラベニヒョウモンは日本(八重山諸島)では既に絶滅していて、ちょっとした憧れをもっていた。しかし初めて海外で見た時は、あまりにも小さくて華奢なんでガッカリしたのをよく憶えている。
参考までに言っておくと、ヒョウモン(豹紋)とは名はつくが、見た目が似ている日本にいるウラギンヒョウモンやクモガタヒョウモンなどの真正ヒョウモンとは違う系統だ。

 
(オオウラギンスジヒョウモン♀)

(2015.7月 岐阜県高山市)

 
これは♀だから、あまりオレンジっぽくないね。
スマン、オレンジ色なのは♂の方でした。

 

(2015.7月 平湯温泉)

 
分類単位だと両者は同じドクチョウ亜科(Heliconiinae)には含まれるものの、族が違う。ヒョウモンチョウ類はオナガタテハ族(Vagrantini)ではなく、Argynnini(ヒョウモンチョウ族)に分類されている。見た目は同じに見えても、遠縁なのである。

改めてドクチョウ亜科を並べておく。

■ホソチョウ族
(Tribe Acraeini Boisduval, 1833)

■ドクチョウ族
(Tribe Heliconiini Swainson, 1822)

■ヒョウモンチョウ族
(Tribe Argynnini Swainson, 1833)

■オナガタテハ族
(Tribe Vagrantini Pinratana & Eliot, 1996)

ここ最近は急速にDNA解析による研究が進み、整理がされてきたタテハチョウの一族なのだが、グループによっては見た目が大きく違うので「ヒョウモンチョウって、ドクチョウの仲間なの?」と少なからず違和感を覚えた記憶がある。
ついでに言っておくと、最初に登場したハレギチョウもドクチョウ亜科に含まれ、ホソチョウ族ハレギチョウ(Cethosia)属に分類されている。

でもって、オナガタテハ族がまた幾つかの属に分かれる。
それが前述したビロードタテハ属(Terinos)、チャイロタテハ属(Vindula)、ウラベニヒョウモン属(Phalanta)、キマダラタテハ属(Cupha)、ミナミヒョウモン属(Cirrochroa)やアフリカビロードタテハ属(Lachnoptera)、アフリカヘリグロヒョウモン属(Smerina)、キスジヒョウモン属(Algia)、Algiachroa属に分けられている。
裏面に共通性を感じたのは同族だからなんだね。考えてみれば、日本にいるヒョウモンチョウ類の裏とは全然違うもんね。

となると裏の感じからみて、謎の青い蝶に一番近いのは多分ミナミヒョウモン(ネッタイヒョウモン)属だ。ならば、この属に含まれる種である可能性が高いだろうと推察した。
話は逸れるが、塚田図鑑では、この属の和名はミナミヒョウモン属だが、ネッタイヒョウモン属と表記される事も多い。外国の蝶は、こうゆう風に和名が幾つも存在しているケースがあって誠にややこしい。各々が勝手に和名をつけてるって感じなのだ。先の Vindula属だって、チャイロタテハと云う和名とコウモリタテハと云う2つの和名が存在するからね。
こうゆうのはホント困る。何とか統一するシステムなり、機関を作って欲しいよ。

 
(Cirrochroa tyche ティケミナミヒョウモン♂)

(出展『東南アジア島嶼の蝶』)

 
コレは結構見た記憶がある。

 

(2016.4月 ラオス)

 
一応、画像が残っていた。
いや、待てよ。こっちかもしれない。

 
(Cirrochroa thule ツーレミナミヒョウモン♂)

 
いやいや待てよ。やはりティケミナミヒョウモンみたいだ。図示した画像がページの先頭にあったから、てっきり基亜種かと思いきや、なんと”aurica”と云うマレー半島南部のアウル島にいる亜種みたいだ。そんな島には行ってないから、違うね。

基亜種はコチラ↙。

 
(ティケミナミヒョウモン原記載亜種♂)

 
本音は、何だっていいんだけどさ。
正直に吐露すると、コイツら地味だから興味が全くもって湧かないのである。

 
(Cirrochroa eremita エレミタミナミヒョウモン♀)

 
上記2種の裏面は、謎の青い蝶の裏面と近い。
なれば青い蝶は間違いなく、このグループだろう。

 
(Cirrochroa emalea エマレアミナミヒョウモン♀)

 
(Cirrochroa menones メノネスミナミヒョウモン♂)

(出展『東南アジア島嶼の蝶』第4巻(上))

 
コレは採った記憶があるな。

 

(2016.3月 ラオス)

 
やはり採ってるね。
いや、翅の外帯の太さが違うぞ。だいちメノネスの分布はフィリピンだ。
とゆう事は、エマレアの♂か Cirrochroa malaya だろう。

 
(Cirrochroa emalea エマレアミナミヒョウモン♂)

 
(Cirrochroa malaya マラヤミナミヒョウモン♂)

(出展『東南アジア島嶼の蝶』)

 
コイツら皆んな似てるから、現地だと種名がよくワカンナイんだよねー。興味があんましないから真面目に採ってなくて、何となく違うと感じたものだけは採ってた。

そういやもう1種、似てるけどもっとカッコイイのも採った筈だよな。

 
(Cirrochroa orissa)


(2015.4月 マレーシア)

 
名前も思い出した。オリッサミナミヒョウモンだ。ツマグロネッタイヒョウモンなんていう別な和名もあったと思う。
これはあまり見たことがなくて、かなり敏感だったから出会いの瞬間も憶えている。それに他のミナミヒョウモンやウラベニヒョウモン、タイワンキマダラなんかとは一線を画すところがあって、同じ茶色でも美しくて品があるから印象深い。
但し、珍しいかどうかは地域や季節にもよるだろうからワカンナイ。

 
(Cirrochroa semiramis セミラミスミナミヒョウモン♂)

(同♀)

(出展 以上『東南アジア島嶼の蝶 第4巻(上)』)

 
中でもコレの裏面が謎の青い蝶に一番似通っている。しかも外側に青い部分もある。かなりゴールに近づいてる気がするぞ。
期待を込めて次のページをめくる。
(。ŏ﹏ŏ)むにゅう〜。
しかーし、塚田図鑑には載ってにゃーい\(◎o◎)/
頭の中が(?_?)❓❓❓マークで埋め尽くされる。ナゼに載っておらんのだよー༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ༽❓
落ち着こう。冷静になって考えてみれば、載ってないからこそ、この青い蝶の存在を知らなかったのかもしれない。
取り敢えず、ここは図鑑のミナミヒョウモン属のページの解説を読もう。ヒントがあるかもしれない。

「和名の通り南方に生息圏をもつヒョウモンチョウ亜科(註5)の一員。北インドから中国南部、インドシナ半島、スンダランドを経て、フィリピン、セレベス(スラウェシ)、ニューギニアまで広く分布する仲間である。全18種からなる。中略。本属はビアック島の imperatrix を除いて地色は赤褐色の前後翅裏面中央部に明瞭な白又は淡褐色の帯を持ち(niasicaを除く)…」

とあった。出てきたね。コレで一挙に疑問が氷解した。
すっかり忘れていたが『東南アジア島嶼の蝶』が対象としているのは東洋区の南部〜南東部とウォーレシア(註6)に生息する蝶であって、オーストラリア区の蝶は含まれていないのである。だからヨコヅナフタオやオオルリアゲハ、トリバネアゲハは載ってないんだったわさ。

 

 
ようは、この塗り潰された地域である。すなわちマレー半島、スマトラ島、ボルネオ島、ジャワ島、バリ島、小スンダ列島、スラウェシ島、北マルク(モルッカ)諸島、スラ諸島、フィリピン諸島である。尚、南マルクのアンボン島やブル島は含まれていない。だからブルキシタアゲハやマデンシスフタオ、パンダルスムラサキという大物も載っていないのである。
但し、亜種が域外にいる場合は掲載されているケースはある。

参考までに書いておくと、ミナミヒョウモン属を塚田さんは3つの種群に分けておられる。

1.Clagia種群
(clagia、tyche、emalea、orissa、chione、aoris、nicobarica、niasica)

2.Thais種群
(thais、satellita、surya、malaya)

3.Regina種群
(regina、semiramis、imperatrix)

さて…、謎の青い蝶が何者かは解ったが、種の詳しい解説はなされていないから直ぐに行き詰まる。ネットで検索しても、日本語の解説が殆んどないのである。頼みの『ぷてろんワールド』にも図示されていない。とゆうことは、やはりかなりの珍品なのかもしれない。

ここで💡ピコン❗
妙案が浮かんだ。この博物館の書庫には手代木さんの『世界のタテハチョウ図鑑』もあった筈だ。

探したら、思った通りあった。

 

 
で、中を見たらビンゴ👍❗あった。

 

(出展 手代木求『世界のタテハチョウ図鑑』)

 
スゲー色だな。冒頭の画像よりもバッキバキにビューティフルだ。でも明らかにフラッシュを焚いて撮った写真だな。こうゆうのって過度に美しく写るから、どうかと思うよ。このままの見た目を信じる人だっているだろうに。だとすれば、問題ありでしょうに。

和名はルリネッタイヒョウモンとある。
だが、手代木さんは自分的和名をつける方なので、この和名がどこまで一般的なのかはワカラナイ。但し、ミナミヒョウモンよりもネッタイヒョウモンの方が和名としては優れているとは思う。ミナミ(南)の範囲が何処から何処までを指すかはイメージしづらい。幅が広すぎるのだ。一方、ネッタイは熱帯なんだから、もっと範囲が明確に限定される。実際、このグループの分布は赤道付近の熱帯から亜熱帯だからね。
それに「ミナミヒョウモン」で検索すると、トップにはコレが出てくる。

 

(出展『世界のウミウシ』)

 
海の生物であるウミウシくんだ。ウミウシは美しいものが多くて変異もあるから人気が結構ある。自分がダイビングインストラクターになった頃からブームか始まったのだが、直ぐに一般向けのウミウシ図鑑も発売されたくらいだから、世間的にはコチラの方が断然ポピュラーな存在なのだ。
ウミウシと混同されるのもややこしいし、個人的には和名はネッタイヒョウモンに一票を投じたい。

短い解説があったので、書き移しておく。

【成虫】
翅表全体が青藍色の金属光沢に輝き、ネッタイヒョウモンの中では特異な色彩である。

【卵】【幼虫】【蛹】【食草】
未解明。

【分布】
インドネシアのビア島 Biakのみに分布する。

『東南アジア島嶼の蝶』の時代と変わらず、現在もビアク島だけに棲む固有種なんだね。
それはさておき、蝶の和名だけでなく、島の和名までが表記がバラバラなんだね。塚田図鑑ではビアック島となってるし、この図鑑ではビア島だ。でも英語の綴りで検索すると、出てくるのは圧倒的にビアク島が多い。おそらくビアク島が最も一般的な呼称なのだろう。

この図鑑では、スラウェシ島特産の”C.semiramis”も凄い派手な色に写っている。

 

(出展『世界のタテハチョウ図鑑』)

 
そして和名はルリヘリネッタイヒョウモンとなっている。
やはり、こちらも手代木さんの独自命名のようだ。Cirrochroaと云う属名もミナミヒョウモン属ではなく、ツマグロネッタイヒョウモン属になっている。つまりは手代木さんは、C.orissa(オリッサミナミヒョウモン)を属の基準和名としたワケか。そこはネッタイヒョウモン属でいいと思うけどね。
参考までに言っておくと『ぷてろんワールド』では「オオアカネルリツヤタテハ」というまた別な和名が付けられている。コチラの方が見た目をよく表しているような気はする。しかし惜しむらくは、この名前ではタテハチョウ科の中の何グループなのかがワカラン。なので、☓な和名だろう。
それにしても、異なる和名がセミラミスミナミヒョウモン、ルリヘリネッタイヒョウモン、オオアカネルリツヤタテハと3つもあると云うのは、誠にもってややこしい。しかも全部後半まで違う。和名だけではカテゴリーまでもが違う蝶に思えてしまう。
まあ、和名が特徴をよく表していなかったり、ダサいネーミングも多いから、付け直したいという気持ちも解らないでもないけどね。
でもなあ…、例えばアンビカコムラサキ Mimathyma ambica なんぞは、他にキララコムラキとか、カグヤコムラサキ、ニジイロコムラサキ、シロコムラサキ、イチモンジコムラサキと計6つもの和名がある。学名が頭にインプットされていなければ、何でんのんそれ❓のワケワケメじゃよ。和名が幾つも存在してると何かと困るのだ。
個人的には学名そのままのアンビカコムラサキでいいと思うけどね。基本的に和名なんぞ海外では通じないのだ。学名そのままの和名で憶えておいた方が現地で困らない。和名だと現地で会った同好者やガイドには何のチョウだか通じないからね。キララやカグヤでは通じないけど、アンビカだと通じるのだ。その点、塚田さんの表記法は理にかなっている。でも、その表記法だと、どんな蝶なんだか全くイメージできないマイナスもあるんだけどもね。海外の蝶の初心者からすれば、文句の一つも言いたくもなるだろう。

 
(アンビカコムラサキ Mimathyma ambica♂)

(2011.4月 ラオス・バンビエン)

 
しつこく和名表記の相違の話を続ける。他にもティケミナミヒョウモンは『世界のタテハチョウ図鑑』では、チョイロネッタイヒョウモンと云う冴えない和名が付けられている。ちなみに冒頭部分に登場するラマルキィハレギチョウには、ルリハレギチョウと云う和名が付与されている。
あと参考までに記すと『ぷてろんワールド』だと、エマレアミナミヒョウモンはフチグロミナミヒョウモンに、ツーレミナミヒョウモンはオオミナミヒョウモンとなっている、
だが、もうこの際、個別の和名の良し悪しの是非は捨て置く。最早どれが最も優れた和名だとかを論じる気にもなれないのだ。この和名の乱立状態、マジで業界の誰か偉いさんとかが何とかしなさいよと思う。

『東南アジア島嶼の蝶』には載っていないが、Regina種群の基準種である「Cirrochroa regina」の画像もあった。

 

(出展『世界のタテハチョウ図鑑』)

 
和名は「ミイロネッタイヒョウモン」となっている。
一応言っとくけど、コチラは『ぷてろんワールド』では「アカネルリツヤタテハ」なる和名が付けられている。是非は論じないと言ったそばから言っちゃうけど、レジーナかレッジーナネッタイヒョウモンでいいと思うけどなあ…。アマンダとか女性の名前っぽい名前は、何だか素敵だもんね。蝶は基本的に女性だと思ってるからね。

種の解説もしておこう。
スラウェシ島の”semiramis”の代置種とされ、更にメリハリのある斑紋が特徴。分布はニューギニア島とその周辺の島々(オビ、バチャン、ハルマヘラ)。
ちなみに『世界のタテハチョウ図鑑』では、imperatrixだけでなく、semiramisも幼生期が未解明となっていたが、この種だけは解明が進んでいる模様だ。

【幼生期】
五十嵐・福田(2000)を参考に記載する。

【卵】
未確認。

【幼虫】
黒色で気門下線に白色斑紋を配する。黒色の長い棘状突起を有する。

【蛹】
タイワンキマダラに似ているが、地色が白色である。胸部〜腹部背面に長大な突起を生じ、先端は黒色で基部は橙色である。

【食草】
イイギリ科のFlancourtia ryparosa、ベニノキ科のHydoncarpus wightianaの記録がある。

この事から青い女帝インペラトリックスも、ハリギリ科、もしくはベニノキ科の植物を食餌植物としている可能性が高いものと思われる。
ちなみに「五十嵐・福田(2000)」とあるから、おそらくコレは五十嵐邁&福田晴夫氏共著の『アジア産蝶類生活史図鑑』からの引用であろう。

『世界のタテハチョウ図鑑』には、Cirrochroa属の幼生期の形態画は載っていなかったが、同族の別属が図示されている。概ね見た目は近いものと推測されるのでネジ込んでおく。

 
(ビロードタテハ幼生期)

 
(ヒメチャイロタテハ幼生期)

 
(タイワンキマダラ幼生期)

 
(ウラベニヒョウモン幼生期)


(出展 以上、何れも『世界のタテハチョウ図鑑』)

 
いつ見ても、手代木さんの細密画は美しいと思う。
写真なんかよりも、よっぽどいい。
細密画は載っていないが、図鑑には一応”Cirrochroa属”の幼生期について言及されてはいる。

【卵】
基本的な本族の形態で、色彩は白〜黄色。

【幼虫】
棘状突起の配列は本族内だが、著しく長くて疎らの小突起が分枝する。色彩は背面が褐色〜黒色で下腹面は白色。

いやはや、それにしても凄く奇っ怪なデザインだすなあ。特に蛹なんかは凄い事になってる。もう怪獣とか怪人だわさ(笑)。
タテハチョウ科の幼生期はデザインの宝庫だよな。凡そ考えもつかないような個性的な形態をしているものが多い。邪悪さもあるから結構楽しめる。一人で、『😱キショ❗』とか言って盛り上がれるのだ。

また、ネッタイヒョウモン族の系統図と族全体の解説もあったので、載せておこう。

【分類学的知見】
幼生期が未知な属が多いために検証は不十分であるが、Simonsen et al.(2006)による構成はほぼ次のようである。

 

 
【成虫】
色彩斑紋は多様で、必ずしも豹紋型の斑紋ではない。

【幼虫】
幼生期形態は共通し、ヒョウモンチョウ族よりも長い棘状突起を生じる種が多い。

【蛹】
原色の鮮やかな色彩だったり種々の長い突起を有していたり、この族内の特色がある。

【食草】
スミレ科、イイギリ科(ヤナギ科)、トケイソウ科などで、いずれも新エングラー植物分類体系のスミレ目に属し、ドクチョウ亜科内の食草である。

【分布】
東南アジア〜オセアニア、アフリカに分布する。

う〜ん、でも矢張りこの種群が、どんな幼虫と蛹なのか知りたい。インペラトリックスは無理だとしても、せめて『アジア産蝶類生活史図鑑』に載っているという近縁種”regina(ルリヘリネッタイヒョウモン)”だけでも見ておきたい。図鑑を探そう。

 

(出展『アジア産蝶類生活史図鑑』)

 
\(◎o◎)/ゲロリンコ❗この図鑑では「ヘリグロタテハ」と云う又新たな和名が付けられている。(。ŏ﹏ŏ)ったくよー。
「ヘリグロ」とはまたイージーな…。正直、わざわざ新たに付ける程のものではござらん。マジでダサいと思う。
ちなみに、同属の中では裏面が一番美しいのは、このレジーナだと思う。ネットでフラッシュが焚かれている画像はメチャメチャ綺麗だかんね。

 
(終齢幼虫)

 
真っ黒で邪悪どすなあ。トゲトゲが長いとゆうのも邪悪度に拍車が掛かっとりまんな。

 

(出展『アジア産蝶類生活史図鑑』蛹は頭が下に写っているが、そのままにしておく。おそらく自然状態では、こうなのだろう。)

 
オナガタテハ族の中では、タイワンキマダラの幼生期に最も似ている気がする。
それにしても凄いデザインの蛹だ。そして美しい。貴婦人を思わせるような上品さと高貴さを兼ね具(そな)えている。インペラトリックスの蛹はコレを超えるものであってほしいね。

一応、解説文を転載しておく。
「パプアニューギニアにおいて本種は平地、低山地の樹林に生息し、周年発生をくりかえす普通種である。♂は樹林の日当たりのよい空地を敏速に飛ぶ。♀の飛翔は♂にくらべてはるかに緩慢、樹林内の日だまりを食餌植物を求めて飛ぶ。そして0.5〜2mくらいの低い食餌植物を見つけて産卵する。産卵場所の決定に迷いが多く容易に決まらず、葉の上を歩き回る。そして、若い葉の裏面に翅を閉じてとまり、1卵を産みつける。また花や実にも産卵する。興味深いのはクモの巣に産むことが珍しくないことで、これは近縁の Cupha erymanthis タイワンキマダラなどでも観察されている習性である。幼虫は1齢から終齢まで食餌植物あるいは枝が相接するほかの植物の葉の裏面に静止する。刺激に対して敏感で、すぐに歩き始める。歩行は速い。若い柔らかい葉だけを食い、硬い古葉は受け容れない。」

分布図も貼り付けておこう。

 

(出展『アジア産蝶類生活史図鑑』)

 
ビアク島にもいるのかなあ…。
いたら一石二鳥なんだけどな。あっ、でもパプア全土にいるんだからイリアンジャヤにも当然いそうだ。たぶん何処かで会えるだろう。

図鑑には、同属の「Cirrochroa tyche ティケミナミヒョウモン」の画像もあった。

 

 
コチラにも「ウスイロタテハ」という別な和名が付けられている。申し訳ないが、これまたダサいと言わざるおえない。まあ、そもそも成虫の見た目がパッとしないから、それも仕方のない事なのかもしれないけどさ。

 
(卵と若齢幼虫)

 
(幼虫)

 
より邪悪な見てくれである。もしフィールドで出会ったなら、間違いなく飛び退くだろう。毛虫はマジで苦手なのだ。

 
(蛹)

(出展『アジア産蝶類生活史図鑑』)

 
コチラの蛹も個性的なデザインだ。
まるでウミウシみたい。実際、こうゆうデザインの奴もいたような気がする。
どうやら、この”Cirrochroa属”は蛹が白いのが特徴みたいだね。だとしたら女王インペラトリックスも白い可能性が高い。なれば相当美しいものじゃろう。白地に青の斑紋だったら、悶絶必至だ。是非とも見てみたいやね。

長々と書いたが納得したので、漸く展翅する気になった。
引っ張るつもりはなかったけど、展翅するのが億劫とゆうのもあって、こうゆう順番の展開になった。スマン、スマン。

改めて見るが、裏も美しい。

 

 
軟化展翅するのは久し振り。
針を根元に刺して、筋肉を破壊してボンドを薄めたのを染み込ませてから翅を開く。

 

 
\(◎o◎)/ワオッ❗
ビカビカの青やんか❗❗
これは陽光の下で見てみたくなるね。外に出て検証しよう。

 

 
光が当たっていないと、青黒い紺色というか藍色だ。
曇りだったが、徐々に光が射してきた。晴れ男が望めば晴れるのである(笑)。

 

 
光が当たってる部分が輝き始めた。
どうやら構造色のようだ。光の角度によって色が違って見えるのだろう。

 

 
完全に晴れたら、とてつもない色になった。モルフォチョウの輝きと遜色ないピッカリ✨ブルーに仰け反る。
『世界のタテハチョウ図鑑』の標本画像を批判したけど、フラッシュを焚いてはいるのだろうが近いものがある。

構造色ならば、反対からの方が輝きは強いのでないかと考えて、上下を返してみる。

 

 
凄い色だね。海よりも青いコバルトブルーにゾクゾクくる。
これは展翅が楽しみじゃよ(☆▽☆)
さあ、気合を入れてキメるぜ。

ガビー∑( ̄皿 ̄;;)ーン❗❗❗❗❗😱😱😱😱
しかし、( ≧Д≦)やっちまっただよー。
頭が真っ直ぐならないのでコチャコチャやってたらば、ダアーッ༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ༽、あろうことか知らぬうちに触角が折れてもうてたー。
しかも折れた部分は行方不明。
(╥﹏╥)痛恨の極みである。海よりも深い溜息をつく。

覆水、盆に帰らず。やっちまったものはどうしようもない。クソッ、メタクソにしたろか(-_-;)…。心はささくれだってヤケ糞になりそうになる。だが、グッと堪え、キレずに完璧を期して展翅する。

 
(Cirrochroa imperatrix ♂)


(jan.20 Biak)

 
ネットで出てくる展翅標本の中では、文句なく一番美しいと言い切れる出来なのに…( ;∀;)うるうる。
みんな、💀死ねばいいのだ。心はウルトラダークの、フォースの暗黒面に真っ逆さまじゃよ。

スマホが勝手に補正して撮りよるので凄く青く写っているが、実際に部屋で肉眼で見ると、こんな感じが近い。

 

 
でも再現性は低い。納得いかないので、前のスマホで撮りなおすことにした。

 

 
コレが一番実物に近い。
普通の写真を撮った時はそうでもないのだが、標本写真を撮ると何故だかオート補正が強くなるんだよなあ。だから最近はあとで彩度を抑え気味に補正し直すことも多い。

٩(๑`^´๑)۶えーい、オラもフラッシュ焚いてやれ❗

 

 
ドえりゃあ〜色に写りよったよ(笑)。

下記のサイトの画像を見ると雌雄同型で、♀は♂よりも遥かに大型のようだ。
何故かリンクを貼り付けられないので、興味のある人はコピペして検索してね。

https://insectnet.proboards.com/thread/3495/cirrochroa-imperatrix

また、画像だと♀は外縁近くの帯が淡くて水色に見える。
他の♀画像が見れてないので、雌雄の違いが本当にそうなのかはワカンナイけどさ。

心がまだ折れてるので書く気があまりしないけど、一応、種の解説をしとくか…。
 
【学名】Cirrochroa imperatrix Grose-Smith, 1894

平嶋義宏氏の『蝶の学名‐その語源と由来』に拠ると、属名の「Cirrochroa(キロクロア)」はギリシャ語の女性名詞で、kirrhos(黄色の)+chroa(皮膚・色)の合成語。ただし、正しい綴りは「cirrhroa」であるべき云々とあった。
小種名の「imperatrix(イムペラトリックス)」はラテン語由来で、意味は「女帝」。綴りでググると「皇后」「后」という訳も出てくる。
毎回、学名にイチャモンをつけがちだけど、この小種名に関しては不満はない。相応しいと思う。この属の中では圧倒的に美しいんだから当然だ。
ちなみにインペラトリックスの方は英語読みだと思われる。タイトルに英語読みの方を採用したのは、そっちの方が音の響きが良いと思ったからです。

この蝶について日本語で言及されているものは極めて少ない。他に見つけられたのは、森中定治氏の『Cirrochroa imperatrix GROSE−SMITH(Nymphalidae)との出会い』と題したものくらいしかヒットしなかった。1980年12月にビアク島に実際に採集に行かれた時のことを書いたもので、そこには生態についての記述もあるので一部抜粋しよう。

「裏面はやはりグループ特有の模様・色調をもつものの表面は紺一色、メタリックな輝きをもつ美しい色調の変わり種である。このグループはDOHERTYの時代から特異な色彩をもつものとして知られ、PAUL SMARTの百科にも、D’ABRERAの図鑑にも示されている。中略。小道を挾んで片側はやや急な斜面の草原であり、もう片側はブッシュとなっていた。午前7:30〜8:30分頃、ここを”C.imperatrix”が飛翔した。一方通行である。斜面の上方から、一頭、また一頭、ビュンビュンともう片側のブッシュへ突っ込む。地上スレスレの50cm〜1m位の高さである。この飛翔は9時頃には全く見られなくなった。もう一度、このチョウを見た。昼下がり、どこからか飛んできて、民家付近の樹木の葉に止まった。地上2〜3mである。採集しようと、そっと近づいたが、あっという間に力強く一直線に飛び去ってしまった。Biakでの採集全日程を通して、このチョウを見たのは、後にもに先にもこのニ度だけであった。」

ネッタイ(ミナミ)ヒョウモンの類に、そんなに速い飛翔イメージはないから少し驚いた。でも、そっちの方がむしろ望むところではある。チョウやトンボ、甲虫でも憧れの入っているものは簡単には採れない方がいい。手強い方がファイトが湧くし、物語にロマン性が生まれる。それに何よりドラマチックな展開になった方が、採った時のエクスタシーも大きいのだ。

タイトルに「閃光」とつけたキッカケは『InsectNet Forum』というサイトだった。そこのコメント欄を見てたら、突然、バァーンと「blue flashs」という文字が目に飛び込んできたのである。

「 I caught one on Biak in 2009, it is a fascinating lep who launchs blue flashs when flying. Very impressive.
And really hard to find on Biak, we were 5 collectors collecting all day long during one week and we found only 2 of them. 」

和訳すると、以下のようになる。
「私は2009年にビアクで1頭を捕えた。飛んでいる時に青い閃光を放つ魅力的な鱗翅類で、とても印象的なものだった。
そして、ビアクで見つけるのは本当に困難だった。我々5人は1週間にわたり一日中採集していたが、そのうちの2人しか見つけることが出来なかった。」

このサイトの記述からも、森中さんの文章と同じく遭遇のチャンスは極めて少ないことが伺える。オマケに飛翔も速いとなれば、採りに行くとしたらワクワク度と不安が入り混じった状態からの旅が始まるだろう。女帝に強い想いを馳せるだろうから、島に行くまでのプロセスから既に物語が始まっていそうだ。そうゆうプロローグって好きだ。浪漫があるではないか。
ビアク島は地図上ではニューギニア島西部のイリアンジャヤからは、そう離れてはいない。だからイリアンジャヤでトリバネアゲハどもをしこたまシバき倒した後で、ついでに寄って採れるんじゃないかと思ったりもする。上手くすれば、reginaも手ごめに出来るんじゃないかとまで思う。イメージは、毎度の凱旋将軍なのさ。
ニューギニアには、死ぬまでに一度は行きたいね。

                        おしまい

 
追伸
『THE Insect Collector’s Forum』と云う別なサイトのコメント欄でも下のような記述を見つけた。

「 If you are interested in knowing more about it, this is the biotope where I have found it in Biak (a Papuan island in the North of W. Papua). It was a very hot and humid day in a rather dense forest. It was very tiring to hunt, and after one month in Papua, I was very tired. But I have seen some blue “flashes” inside a bush (I guess Morpho are doing the same kind of flashes) and it was him. Delias dohertyi also flies there. 」

必要なところだけを意訳する。
「その日はとても​​蒸し暑い日だった。そこはかなり鬱蒼とした森の中で、私はそのブッシュ内で幾つかの青い閃光を見た。それは、私にはモルフォと同じような輝きに見えた。それが彼だった。そこには、Delias dohertyi(ドヘルティシロチョウ)も飛んでいた。」

また、他のコメント欄には晴れの日の熱帯の強い陽光の中ではモルフォのように光るみたいな事も書いてあったし、「私が人生で飛んでいる蝶を見た中では、最も素晴らしいものの一つである。」とも書いてあった。
こうなると、益々フィールドで飛ぶ姿を見たくなるってもんじゃないか。ドヘルティーにも会ってみたいし、誰か一緒に行ってくんねぇかなあ❓

タイトルは「青い閃光」にしようかとも思ったが、躊躇した。自らの眼で生きてる実物を見たこともないくせに、おこがましいと云うか厚顔無恥というか、そこまであざとくはなれない。流石に己の良心が許さなかったのだ。だから自分で捕らまえない限りは、タイトルとしては使えないと思った。おバカでも、それくらいの矜持はある。
で、閃光だけ使うことにした。展翅するために翅を開いた時のインパクトは、閃光と云う言葉に相応しいと思ったからだ。
 
(註1)出谷さん
バリ島在住の標本商、出谷裕見氏の事。
標本商として世界的に有名な方であり、デタニツマベニチョウやセタンフタオなどを発見した伝説の人でもある。
いつもは息子さんしか来日しないが、この日は珍しく御本人もいらっしゃった。

 
(註2)『東南アジア島嶼の蝶』
1980年から刊行が始まった塚田悦造氏による全5巻からなる図鑑。日本が世界に誇るべき図鑑であり、東南アジアの蝶関連の図鑑では最も信頼できうるものでもある。
内訳は、第1巻がアゲハチョウ編。第2巻はシロチョウ・マダラチョウ編。第3巻はジャノメチョウ・ワモンチョウ・テングチョウ編。第4巻はタテハチョウ科で、上・下巻に分かれている。
しかし発刊は1991年で止まっており、シジミチョウとセセリチョウの巻は発行されておらず、未完結となっている。
理由は知らないが、おそらくシジミもセセリも種類数が膨大である事と、種の同定が困難なグループだからではないかと推察する。どちらのグループも似たようなものだらけだからね。あと、セセリは人気がないから発売しても売れそうにないとゆうのも理由としてはあっただろう。

 
(註3)ビロードタテハのマレー半島亜種かな❓
木村勇之助氏の図鑑、『タイ国の蝶 vol.3』で確認したら、黄色い紋がない全体的に紫色のビロードタテハは、どうやら別種 Terinos clarissa になっているようだ。
塚田図鑑の記述はうろ覚えだから、亜種区分云々は単なるワシの思い違いだったのかもしれないし、後に別種に分けられたのかもしれない。
でも南部には黄色い紋が淡い紫色になっているビロードタテハ(T.atlita)もいるからなあ…。しかも黄色いものとは亜種区分はされていない。手許に塚田図鑑が無いから確認出来ないし、木村図鑑は全体的に色の発色が悪くて画像も小さいから、細かい部分がよくワカンナイんだよなあ…。
おまけに、一方の Terinos clarissaも色彩や斑紋の変異幅が大きいんだよなあ…。
すまぬが、詳細を知りたい方は、御自分で真偽の程を確認して下され。

 
(註4)自分のアメブロのブログ
このワードプレスのブログの前にはアメブロでブログを書いていた。その中の東南アジア蝶紀行のシリーズに『熱帯の憂鬱、ときどき微笑』と題した一連の文章がある。そのマレーシア編の41話等にテルパンダービロードタテハが登場するようだ。
「ようだ」と書いたのは、自分でも書いたことを、すっかり忘れていたからだ。6年前の旅だが、スマホがブッ壊れたり、移動で苦労したりと結構大変な旅だったように思う。
まあ、ダンフォルディーフタオやキャステルナウイホソカバタテハ、シコラックスハゲタカアゲハの♀など結構佳い蝶が採れたから楽しかったけどもね。

 
【ダンフォルディーフタオ♂】

 
【キャステルナウイホソカバタテハ♂】

 
【シコラックスハゲタカアゲハ♀】

 
これらを久し振りに見て思った。4年ほど海外にも行ってないし、最近は今回みたいな形体の文章が多いけど、自分は本当は紀行文、それも長い旅の紀行文を書きたい人なんだなと思う。

 
(註5)ヒョウモンチョウ亜科
『東南アジア島嶼の蝶』は、1980年代に発行された古い図鑑なので、当時はヒョウモンチョウ亜科に分類されていたのだろう。

 
(註6)ウォーレシア
深い海峡によって東南アジアともオーストラリア大陸の大陸棚とも隔てられたインドネシアの島嶼の一群を指す言葉。
ワラセア(Wallacea)とも呼ばれ、生物地理学的な区分では東洋区とオーストラリア区との境界部分にあたる。
スンダランド(マレー半島,スマトラ,ボルネオ,ジャワ島,バリ島)の東側であり、オーストラリアやニューギニアを含むニア・オセアニアの北側、西側に位置する。

 

『出展『Wikipedia』』

 
赤い部分がウォーレシアである。 青線は生物境界線の一つウェーバー線。
ウォーレシアの名前の由来は、19世紀に活躍したイギリス人の生物学者であり、探検家でもあったアルフレッド・ラッセル・ウォレスの名から。
ウォレスはダーウィンとも親交があり、ダーウィンの進化論に大きな刺激を与えた。同時代にダーウィンはガラパゴスで、ウォレスはウォーレシアで生物進化の自然選択説に行き着いた。

 

(出展『進化の歴史 科学の』)

 
簡潔に言ってしまうと、ウォレスはスラウェシ島から東と西とでは全く生物相が違う事に気づいた。それが自然選択説(進化論)に辿り着くキッカケとなった。ウェーバー線は、後にウェーバ氏ーによって新たに引かれた生物境界線である。
この2つの線は、どちらの境界線が正しいとか間違っているとかと云うワケではなくて、この両線の間には東洋区、オーストラリア区両方の生物がいて、独自に特異な進化をしたというのが現状だろう。線ではなく、帯とするのが妥当じゃないかな。

 
ー参考文献ー

◼塚田悦造『東南アジア島嶼の蝶』第4巻(上) プラパック

◼手代木求『世界のタテハチョウ図鑑』北海道大学出版会

◼木村勇之助『THE BUTTERFLIES OF THAILAND タイ国の蝶 vol.3』木曜社

◼森中定治『Cirrochroa imperatrix GROSE−SMITH(Nymphalidae)との出会い』やどりが 1989年 136号

◼平嶋義宏『蝶の学名−その語源と解説』九州大学出版会

◼五十嵐邁・福田晴夫『アジア産蝶類生活史図鑑』東海大学出版会

 
(インターネット)
◼『InsectNet Forum』

◼『THE Insect Collector’s Forum』

◼『ぷてろんワールド』

◼蝶に魅せられた旅人
東南アジア蝶紀行『熱帯の憂鬱、ときどき微笑』

◼『Wikipedia』

 

(/´△`\)ガッカリやわ

 
こないだの日曜日は、大阪昆虫同好会の総会&新年会だった。
で、標本をオークションに出した。
お金に困っているのだ。

結果はガッカリだった。
みんな酒飲んでるし、オークションに出てた標本数も多かったし(ホイホイ結審になる)、外国の蝶は価値が解らない人も多いから致し方ないんだけどさ。おまけにショバ代も引かれるから思ってた程にはならなかった。

 
【アルボプンクタータオオイナズマ】

 
アルボプンクタータは大好きな蝶だ。特に♀は佳蝶と言っても差し支えなかろう。
場所はラオスのLak Sao(ラクサオ)のものだ。
知る限りでは、記録は殆んど無い所だと思う。たかってくる小蝿に苦しめられながら採ったんだよね。

このアルボは長谷さんのもとへ。
これはOK。長谷さんの標本は何処かちゃんとした機関に寄贈される可能性が高いからいいのだ。後世に残るだろうから、ゴミにならなくて済む。

 
【ヤイロタテハ】

 
これまた佳蝶ですな。
画像のように裏が厳(いか)つくて美しい。
初めて海外採集に行ったマレーシアのキャメロンハイランドで採ったものだ。存在を全く知らなかったので、見た時はメチャメチャ何じゃこりゃ\(◎o◎)/❗❗と思ったものだ。
再展翅までして完璧に仕上げたのに、ガッカリの金額で落札された。

 
【アンビカコムラサキ♂】

 
個人的には世界で最も美しいコムラサキだと思う。
これも存在を全く知らなかったので、初めて見た時は何じゃこりゃだった。場所はラオスのバンビエン。
裏が白くて(裏も美しい)、最初はチビ系のフタオチョウかなと思って採ったら、網の中で青紫の幻光色が青い炎のようにビッカビカッに光った。ものすごーくビックリしたっけ。
外野から『♀ないんかーい!』と言葉が飛んだが、『採っとるわ、ボケー。』と思わず言ってもうた。酒の席じゃ、許せ。
確かに♀はかなりの珍品だ。でも、幻光色がないから全然綺麗ではない。それと言っとくけど、♂は珍品じゃないけれど、行けば確実に採れるというものでもない。イモと引きの弱い人は採れまへんえ。

 
【オオウラギンヒョウモン】

 
長崎の自衛隊演習場で採ったものだ。
今は採集禁止になっていると思われる。
♀もデカ♂も結構採った。その2つがいる微妙な環境が読めたので、その時に来ていた人の中ではダントツで採った筈。この頃が一番感性が研ぎ澄まされていたと思う。
福岡の高島さんと御一緒した思い出深い採集行だ。
それなのに激安で落札(T_T)

 
【コヒョウモンモドキ】

 
岐阜県の湿原でタコ採りした。
普段はある程度採るとすぐ飽きる人なので、あまり数は採らない。だから、昔はよく叱られていた。
なんだけど「そのうちおらんようになるから、今採っとかないとアカンでぇー。」と言われて頑張った。長靴を持ってなかったので、結構大変だったけど面白かった。
なんぼで売れたか知らんけど、安かったんじゃなかったかな。

 
【カトカラセット】

 
特に珍しいものは入ってないゆえ、800円で出した。
1つ百円➕箱代である。千円で落札されたかと思う。
これは、どうせ売れ残ると思ってからラッキー。

来年は屑チョウをアホほど並べて、セコく小銭を稼いだろかしら。

                    おしまい

 

台湾の蝶12 タイワンイチモンジ

 
      タテハチョウ科 9

    第12話『真なる一文字の紋章』

 
前回のオスアカミスジの回で、漸く台湾のイナズマチョウ族全種を紹介する事ができた。
しかし、連続でタテハチョウの事ばかり書いてきて、正直飽きた。
次々に疑問点が押し寄せてきて、そのせいで文章は長くなるし、時間もかかったから、すっかり疲弊しきってしまったのである。

だから、ここは気分を変えて他の科の蝶の事を書こうと思い、ホッポアゲハの事を書き始めた。でも半分ほど書き進めたところで、ハタと思った。
前回にイチモンジチョウ族の事にも少し触れたが、考えてみれば台湾のイナズマチョウ族6種のうち、何と4種(タカサゴイチモンジ、スギタニイチモンジ、ホリシャイチモンジ、マレッパイチモンジ)もがイチモンジという和名がついているのだ。
今後、真正のイチモンジチョウ族が登場した時に、もし両者が遠く分断して書かれていたら、知らない人にとっては混乱極まりないのではないかと思ったのだ。
だだでさえ、書いている本人がしばしば錯乱状態になってあらぬ方向に行ってしまうのである。極力流れは大事にしたい。このままイチモンジチョウの仲間も紹介してしまおう。

それにしても、和名って鬱陶しい。
たぶんタカサゴイチモンジとかは、最初に発見した人あたりがイチモンジチョウに似ているし、コイツはイチモンジチョウの仲間だろうと思ってつけたのだろう。
まあ、それは仕方がないとしても、イナズマチョウの仲間だとわかった時点で誰か発言力のあるお偉方が修正しろよなと思う。
そのくせ、和名がアホみたいに複数ある蝶も存在する。和名がよろしくないからと勝手に新しくつけるのだろうが、混乱の極みだ。素人は堪ったもんではない。
例えばアンビカコムラサキ Mimathyma ambica なんぞは、この他にキララコムラキとか、カグヤコムラサキ、ニジイロコムラサキ、シロコムラキ、イチモンジコムラサキと合計6つもの和名がある。学名が頭にインプットされていなければ、何でんのそれ?のワケワケメじゃよ。

【Mimathyma ambica アンビカコムラサキ♂】
(2011年 4月 Laos vang vieng)

これまた誰かお偉いさんが音頭をとって、どれか一つに統一してくんないかなあ。

早くも和名に対する悪態毒舌癖が発病してしまったが、続ける。
蝶採りを始めた当初は、学名そのままを頭につけた外国の蝶の和名に対して軽く憤りを感じていた。
ザルモキシスオオアゲハとかアルボプンクタータオオイナズマ、ベラドンナカザリシロチョウなんぞと言われても、初心者には下は何となく想像できても、頭についた名前からはどんな蝶なのか全く想像もつかない。横文字なんぞやめて、取り敢えずアホでも解るような和テイストな名前をつけろよなー(=`ェ´=)と思っていたのだ。
しかし、海外に出て蝶を採るようになって考え方が変わった。なぜなら、外国では和名なんて全く通じないのである。
例えばオオルリオビアゲハ Papilio blumeiを採りたいとする。でも現地でガイドに和名を連呼したところで、まず通じない。
コレがもしブルメイアゲハという和名がついていたならば、ブルメイと言えば簡単に通じる。つまり、海外では共通語として学名で呼ぶのが普通なのである。

【Papilio blumei ブルメイアゲハ】
(2013年 2月 Indonesia Sulawesi Palopo)

正直、外国の蝶はテングアゲハやシボリアゲハなど既に和名として定着していて秀逸なものだけを残して、他はみな学名を冠につけた和名でいいのではなかろうか?
だから、Mimathyma ambicaは、アンビカコムラサキ。それでスッキリすると思うんだよね。

とはいえ、和名を残すものと残さないものを振り分けるのは大変だ。喧々諤々で揉めるよなあ…。

何か不毛な事を言ってる気がしてきた。
いい加減、本題に戻るとしよう。

 
【Athyma cama タイワンイチモンジ♂】
(2016年 7月 台湾南投県仁愛郷黄肉渓)

♀は全然柄が違う。

【Athyma cama タイワンイチモンジ♀】
(2016年 7月 台湾南投県仁愛郷眉原)

雌雄異型の蝶なのである。
メスはオスと比べて一回り大きく、羽の形が全体的に円くなる。♂は一見して日本の南西諸島にもいるヤエヤマイチモンジに似るが、上翅にオレンジの紋があるので容易に区別できる。
そういえば♀は最初、オスアカミスジの♂かと思って必死に追いかけて採ったんだよね。
でも、何か違うなあと暫し考えて、あっ、タイワンイチモンジの♀なんじゃねえの?とようやく考え至ったのである。
台湾の蝶の事をろくに調べずに発作的に行ったので、こういうパープリン振りが多々あったのだ。
因みに、採集記はアメブロの『発作的台湾蝶紀行』第29話 「風雲急を告げる」の回にあります。

裏の画像も添付しておこう。

上が♂で、下が♀である。
裏は表ほど劇的には違わない。

学名の属名「Athyma アティーマ(シロミスジ属)」はギリシア語で、無気力な、元気のないと云う意味である。小種名の「cama」は、インド神話の神。あの古代インドの性の教典カーマスートラのカーマであろう。でもエロと何の関係がごさる?(-“”-;)ワカラン。
台湾のものはssp.zoroastesという亜種名がついている。ゾロアスター教と何か関係あるのだろうか?
それともその開祖であるザウスシュトラそのものを指しているのか?或いは預言者という意味が込められているのだろうか?
でも、台湾とゾロアスター教って関係ないよね?
これも、よーワカラン。

因みに『原色台湾蝶類大図鑑』では、学名の属名が「Tacoraea」になっていたので、また迷宮に迷いこむのかと思って、マジ(|| ゜Д゜)ビビった。
前述した近縁種ヤエヤマイチモンジやシロミスジなどもこのTacoraeaという属名になっていたから、正直また脳ミソが腐りそうになったよ。

しかし、コレは比較的簡単に解決がついた。
どうやら現在、Tacoraeaはシノニム(同物異名)になっているようだ。つまり、学名として使われなくなったと云う事だね。

あっ( ̄▽ ̄;)、多分、この学名をオスアカミスジの回でも使ったような気がするなあ…。
まっ、いっか…。忘れよう。

台湾での名前は雙色帶蛺蝶。
雙色というのは、二色を表し、二つで一組になるという意味みたい。中々、考えた名前である。
でも、帶という字がついてるな。という事は二色のツートンカラーの帯を持つタテハチョウって意味か?
ケッ(=`ェ´=)、途端に何だかつまらねぇ名前に見えてきたよ。

他に臺灣一文字蝶、臺灣單帶蛺蝶、臺灣一字蝶、圓弧擬叉蛺蝶、分號蛺蝶という別称もあるようだ。
台湾も一つの蝶に沢山の名前があって、面倒くさそう。さぞや不便じゃろうて。
臺灣一文字蝶は和名をそのままの訳したものだね。
臺灣單帶蛺蝶は単帯とあるから、オスに焦点をあてた名前ってことかな?
臺灣一字蝶は、まんまである。
圓弧擬叉蛺蝶は直訳すると、円い弧が二股モドキのタテハチョウってことになる。たぶん♂の斑紋を指しているんだろうけど、今一つピンとこない。
分號蛺蝶は、オスとメスの柄が別々という意味で使われているのであろう。

英名は、「Orange Staff Sergeant」。
訳すと二等軍曹(米陸軍海兵隊)、或いは3等軍曹(米空軍)となる。それほど敬意が払われてないね(笑)

(|| ゜Д゜)しまった…。こう云うどうでもいいような事に興味を持ってしまうから文章が長くなるのだ。

一応、標本写真も並べておこう。

はっ!Σ( ̄□ ̄;)、ここで気づいた。
ごたいそうに胴体にまで紋が入っているじゃないか。
ここで一度野外写真に戻ってもらいたい。
特に♂は白くて目立つから、名前のとおり正に一文字になっているではないか。
ん~、でも翅が左右均等になっていないから、今一つ説得力がない。ここはどなたかの画像をお借りしよう。

(出展『commons.wikimedia.org』)

これこそ、真なる一文字だ。
日本のイチモンジチョウなんて、これに比ぶれば屁だ。

【イチモンジチョウ Ladoga camilla】
(出展『STEP BY Step 自分らしさを』)

人の画像を拝借しといて何だが、胴体に白い紋が無いから、正確には一文字に繋がっていない。しかも、どちらかというとVの字じゃないか。
いっそイチモンジの看板を下ろして、ブイノジチョウにしたらどうだっつーの(# ̄З ̄)
ついでにタカサゴイチモンジとかのイチモンジもやめちまって、タカサゴイナズマにしちくりよー。

またまた本題から逸れたような気がするので、さくっと生態面を書いて終わりにしよう。

 
【分布】
台湾以外にも中国南部、インドシナ半島、マレー半島、海南島、アッサム、西北ヒマラヤなどに分布する。

(出展『原色台湾蝶類大図鑑』)

和名がタイワンイチモンジなれぱ、当然のこと台湾の固有種だと思っちゃうよね。それがこんなに広域に分布しているのだ。この誤解を生むタイワンイチモンジという名称もどうかと思うよ。他にもこういうタイワンとついてはいるが、台湾以外にも分布している蝶が結構いるんだよね。どれくらいあるのかな?試しに挙げていこう。

タイワンビロウドセセリ、タイワンアオバセセリ、タイワンキコモンセセリ、タイワンキマダラセセリ、タイワンチャバネセセリ、タイワンオオチャバネセセリ、タイワンジャコウアゲハ、タイワンタイマイ、タイワンモンキアゲハ、タイワンカラスアゲハ、タイワンモンシロチョウ、タイワンシロチョウ、タイワンスジグロシロチョウ、タイワンヤマキチョウ、タイワンキチョウ、タイワンウラナミシジミ、タイワンイチモンジシジミ、タイワンミドリシジミ、タイワンサザナミシジミ、タイワンカラスシジミ、タイワンフタオツバメ、タイワンツバメシジミ、タイワンクロボシシジミ、タイワンルリシジミ、タイワンヒメシジミ、タイワンアサギマダラ、タイワンキマダラ、タイワンミスジ、ホシミスジ、タイワンクロヒカゲモドキ、タイワンキマダラヒカゲ、そしてタイワンイチモンジだ。

ハハハハハ(^o^;)、何と全部で32種類もいる。
名前にタイワンとつける必然性がないんだから、和名をつけ直すべきだと思うんだけど、どうして誰も言い出さないのかな?

原色台湾蝶類大図鑑によると、亜種は以下のようなものがある。

▪Athyma cama cama 西北ヒマラヤ~アッサム
▪ssp.camasa トンキン(ベトナム北部の古い呼称)
▪ssp.zoroasters 台湾
▪ssp.agynea マレー半島高地

 
【生態】
北部から南部にかけて普通だが、次回紹介予定のヤエヤマイチモンジよりかは少ないようだ。
台湾では4月~10月にわたって見られ、年数回の発生を繰り返す。
常緑広葉樹周辺に見られ、その垂直分布は「アジア産蝶類生活史図鑑」には300~2700mとあったが、台湾のサイトには海岸林等低中海抜となっていた。何れにせよ、その中心は500m前後から700mくらいだろう。
♂の飛翔は敏速。地上低く飛び、よく地面に羽を広げて止まる。♀は♂ほど活発ではなく、頻繁に草木の歯の表面に止まる。
♂♀ともに花や腐果に集まり、♂は地面に吸水によく訪れる。

 
【幼生期】
幼虫の食餌植物は「アジア産蝶類生活史図鑑」によると、トウダイグサ科のGlochidion lanceolatum キイルンカンコノキ、Glochidion rubrum ヒラミカンコノキ、Glochidion zeylanicum カギバカンコノキ。
台湾のサイト、「圖録検索」では以下のようなものがあげられていた。

菲律賓饅頭果 Glochidion philippicum
細葉饅頭果 Glochidion rubrum
裏白饅頭果 Glochidion triandrum

上から二つ目はヒラミカンコノキだけど、キイルンカンコノキとカギバカンコノキはあげられていない。
まあカンコノキの類を広く利用しているのだろう。
因みに1番目は和名が見つけられなかったが、たぶんフィリピン由来のカンコノキだろう。3番目はウラジロカンコノキ(ツシマコンコノキ)という和名があり、長崎県では絶滅危惧種Ⅰ類に指定されていた。

さてさて、いよいよ恒例のおぞましき幼虫の姿の登場である。閲覧注意ですぞ。とは言っても、既に視界に入っちゃってるとは思うけど(笑)

(出展 2点ともに『圖録検索』)

オスアカミスジの回にも添付した画像だが、その時は何でこんなに色が違うんだろうとは思いつつスルーした。書き疲れていて、調べるのが面倒くさかったのだ。

でも、その疑問が今回解けた。

(出展『世界のタテハチョウ図鑑』)

両方とも終齢幼虫なのだが、どうやら老熟すると黄色くなるようなのだ。絶対食われたくないという思いが、絶対食うなよな(#`皿´)に転化して、その強い気持ちがあの毒々しい色の警戒色を生んだのかもしれない。

蛹も特異な形だ。

(出展『世界のタテハチョウ図鑑』)

(出展『圖録検索』)

ウルトラマン最強の敵、ゼットンみたいな形だね。
タテハチョウの蛹は造形美の極致みたいなものが多くて面白い。穴が空いてるだなんて斬新すぎる。そこにいったい何の意味があるというのだ?全然、理由が想像つかないよ。

最後は卵。

(出展『圖録検索』)

これも造形美。宝石みたいだ。
どうやら卵塊を作らず、一つ一つ産むようだ。
同じタテハチョウ科の蝶でも、産み方がそれぞれ違う。
自然って不思議だなと思う。

                 おしまい