鬼と名がつく生物

 

前回のオニベニシタバの回で、オニと名がつく昆虫について触れたが、そこで書き切れなかったことを書こうかと思う。

 
【オニベニシタバ】
(2018年7月 奈良県大和郡山市)

 
前半は前回と重複するところもあるから、前回を読んだ人は暫し我慢して読まれたし。

オニと名のつく生物には、デカイとか厳(いか)ついとか凶暴だとかといった意味が込められたものが多い。
例えば、オニカマス(バラクーダ)、オニイトマキエイ(マンタ)、オニオコゼにオニダルマオコゼ、オニヒトデとかオニヤドガリetc…。
あっ、思い浮かんだのは海の生物ばかりだ。これって、ダイビングインストラクター時代の名残だよね。

改めて思うに、海の生物にはオニの名を冠する強烈なキャラが揃ってるなあ。真っ先にコレらが頭に浮かんだのも納得だよ。
因みにオニカマスは、その厳つい風貌と鋭い歯から名付けられたそうな。

 
(出典『暮らしーの』)

 
ダイバーには、オニカマスよりもバラクーダの名で親しまれている。バラクーダって言った方がインパクトがあってカッコイイからかなあ❓音の響きが如何にもヤバそうな奴っぽいしさ。

よく群れで泳いでいるが、あれはそんなにデカくない。デカイにはデカイが、まだまだ小物だ。あんまし恐くない。(#`皿´)うりゃあ~と、時々トルネードに割って入って蹴散らしてやるくらいだもんね。
むしろヤバいのは単独でいる奴だ。バラクーダは老魚になると群れないのだ(註1)。それが超デカくて、超怖い。顔もさらに厳(いか)つくなって、目が合ったらオチンチンがメリ込むくらいに縮こまりまする。ヤのつく自由業の方々でも、モノホンの親分さんクラスの静かな威厳と侠気があるのだ。絶対逆らってはいけないオーラである。
それで思い出した。
昔、サイパンのオブジャンビーチで、とてつもなく馬鹿デカイのにお会いしたことがある。水深3~4mくらいの中層で辺りを睥睨するかのように浮かんでおり、優に2mくらいはあるように見えた。そして、その周りには光の束が後光のように無数に射しており、神々しくさえあった。だが、目だけはギラギラと動いていた。
あまりにも強烈なオーラに、その場で固まり、背中がスウーッと冷たくなったのを憶えている。
その日はアシスタントで入っていて、お客さんの後ろにいたから、頭の中で念仏を唱えたよ。もしも、お客さんに向かって泳ぎ出したら、身を呈してガードに行かなければならない。「生ける魚雷」と言われるくらいのハイスピードで泳ぐそうだし、あの鋭い歯だ。片腕一本くらいは持っていかれるのを覚悟したよ。
まあ、幸いその場にジッとしていてくれたから、何事も起こらなかったけどさ。そういえば、お客さん守るようにして後ろ向きに泳ぎながら遠ざかったんだよね。あの時は、もっと見ていたいような、早くこの場から立ち去りたいような複雑な気分だった。脳内に、その時の映像は今でも鮮明に残ってる。

 
オニイトマキエイ(マンタ)は、そのデカさからの命名だろう。

 
(出典『オーシャンズダイブツアー』)

 
マンタは石垣島とかで見たけど、やっぱデカイだす。
一度に何枚も現れると、中々凄い光景である。

 
(出典『オーシャナ』)

 
この画像なんかを見るとバットマンだな。
ちょー待てよ。まるで角のある鬼の影絵にも見えるじゃないか。デカイからだけではなく、名前の由来はこのツノ的なものと、そのシルエットにも関係があるのかもしれないね。

 
お次は、ブサいく鬼チームだ。
オニオコゼ、オニダルマオコゼは鬼のように醜くくて厳つい。また背鰭に猛毒もあって危険なことからも名付けられたのではなかろうか。たぶんオニカサゴなんかも同じ意味あいからの命名だろう。

 
【オニオコゼ】
(出典『暮らしーの』)

 
異形(いぎょう)のものだ。
バケモノけだしである。

 
(正面)
(出典『庄内使えるサイト』)

 
顔なんて、ブサ怖い。

 
【オニダルマオコゼ】

 
何度か見たけど、コチラはもっと体が丸い。ゆえにダルマさんなのだ。
海底にジッとしてて、殆んど動かない。英名はストーンフイッシュと言うんだっけ?それくらい岩と同化しているのだ。だから、時々誰かが踏んづけてエライことになる。コヤツも背鰭に猛毒があるからね。アホほど足が腫れるらしい。

 
(正面)
(出典 2点共『暮らしーの』)

 
怨念が籠った顔だ。
創造主である神に対する激しい憎悪やもしれぬ。
(#`皿´)ワシをこんなにも醜い姿で世に産み落としやがって…って顔だ。

 
【オニカサゴ】
(出典『HONDA 釣り倶楽部』)

 
前二つほどではないが、コチラもブサいくだ。
背鰭に毒もある。赤いのも鬼っぽい。
猛毒ブサいく三姉妹ってところか…、最悪だよな。
でも彼女たちの名誉のために言っておくと、皮を剥いだ身は透き通るような白だ。でもって、味はメチャメチャ美味い。刺身に良し、鍋に入れて良し、揚げて良しの高級魚だ。
よくオコゼはブサいくな人へのフォローに使われ、「見た目は悪いけど、付き合ってみたら最高のパートナー」みたく言われる。まあ、理解はできるわな。人は見かけで判断しちゃダメだよね。
そういえばアッシの知り合いのお姉さんの友達に、エゲつない三姉妹がいることを思い出したよ。金魚ちゃん、ミッちゃん、イカスミちゃん(全て仮名)っていうんだけど、何れもデブでブサいくで性格が破綻している。因みに長女の金魚ちゃんは性格は悪くないけど極端に内向的で、何を尋ねても要領を得ない。三女のイカスミちゃんは天の邪鬼(あまのじゃく)且つワガママで性格がネジ曲がっている。二女のミッちゃんが一番ヤバくて柄の悪いトラックの運ちゃんみたいだ。とにかく口が悪くて、直ぐに暴力に訴えかけてくる。粗暴で凶暴なのだ。酒飲むと、ロンパリになって目が据わるしね。でもって何かと絡んでくる。ほんと、タチが悪いのだ。顔も表情も似てるから、ゴマモンガラを思い出したよ。

 
【ゴマモンガラ】
(出典『えいこのモルディブここだけの話&どうでもいい話』)

 
コヤツ、シャブ中患者とかキ○ガイみたく、目が完全にイっちゃってるんである。三白眼っていうのかなあ…、白目がちなんである。それがギョロギョロと落ち着きなく左右バラバラに動く。いわゆるロンパリ的な眼なんである。焦点がどこに合っているのか分からないから恐い。
それに泳ぎ方も変だ。真っ直ぐ泳げなくて、右に左にとヨレて急に横倒しになったりする。完全に狂った者の動きだ。しかも体は50㎝以上、大きなものは1m近くもあるというから恐い。形や色柄も変だし、おぞましいとしか言い様がない。もしも、コヤツの名前にオニがついていたとしても納得するよ。

 
(出典『wikimedia』)

 
この魚、一般の人にはあまり知られてないけれど、ダイバーの間では有名でサメやオニカマスよりも恐れられている。サメとかバラクーダは、のべつまくなしには襲ってこないが、ゴマモンガラはムチャクチャ気性が荒くて、無差別に噛みついてくる。アタマ、オカシイんである。ゴツい歯で指を食いちぎられたとか、ウェットスーツを食い破られて血だらけになったなんて話はよく聞いた。実際、自分の知り合いにもレギュレーターホースを食いちぎられたっていう人がいる。
デブでブサいくまではいいけれど、性格まで悪い女の人には、やっぱ近づかないでおこ~っと。

 
オニハタタテダイは、目の上にある小さな突起を鬼の角に見立てているようだ。

 
【オニハタタテダイ】
(出典『沖縄の魚図鑑』)

 
とはいえ、角は小さい。オニというには、ちょいショボい。しかし、オニハタタテダイはチョウチョウウオやハタタテダイを含む近縁の仲間うちでは、かなりデカイ。最大種か、それに近かったような気がする。どちらかというと、そちらがオニと命名された理由なのかもしれない。いや、両方の合わせ技かな?

 
オニヒトデはデカくてトゲトゲだからだろう。

 
【オニヒトデ】
(出典『水槽レンタル神奈川マリブ』)

 
👿悪そう~。
僕、正義の味方ですぅ~と言われても、誰も信じないだろう。それくらい悪の匂いがビンビンである。
そういえぱ、沖縄発特撮ヒーローもん『琉神マブヤー』の敵役に「オニヒトデイビル」ってのがいたなあ…。結構ボケ倒しの憎めない奴だったけどさ。

 
(出典『おもしろ生物図鑑』)

 
色が赤いのも、如何にも鬼的だ。
但し、色には他にもヴァリエーションがあって、下の画像みたいなものや紫色のもいるようだ。

 
(出典『マリンピア日本海』)

 
性格も荒いそうだ。
ふと思ったのだが、トゲトゲは鬼の角だけでなく、鬼の金棒のイメージでもあるのだろう。
まあ、どうみても邪悪以外の何者でもないことを体現してるよな。沖縄の珊瑚とかガリガリ食いまくってたしさ。

 
オニヤドガリは、毛むくじゃらで獰猛だからかな❓

 
【オニヤドカリ】
(出典『日淡こぼれ話』)

 
コヤツも邪悪そのものだ。
色が赤いのも鬼と言われるに相応しい。
そう云えばコイツ、宮古島にダイビングに行った時にいたわ。綺麗な宝貝を水深5~6mで見つけたので拾ったら、デカいヤドカリが宿借りしていた。貝の中身はたぶんコヤツが食って、その貝殻を羽織ったのだろう。強盗殺人みたいなもんだ。やってる事が凶悪なギャングなんである。

 
(出典『極!泳がせ道』)

 
貝殻から出すと、下半身は驚くほど短小だ。ちょっと情けない。巨漢の男が実を云うと…的みたいで笑ったよ。
でもここが美味い。刺身で食うと、エビ・カニ系とホタテ貝を混ぜたような味なのだ。残った頭とかは味噌汁にブチ込むと良いダシが出る。

旨いで思い出したが、こんなのもいたね。

 
【オニエビ】
(出典『休暇村 竹野海岸』)

 
ゴジラエビとかモサエビなんて呼ばれ方もするが、オニエビも含めて全部その土地土地での地方名だ。
正式名称はイバラモエビという。イバラは植物の棘(茨・荊)から来ているし、ゴジラはあの怪獣ゴジラの背鰭からだ。モサは猛者から来ている。オニエビも、その背中のギザギザ由来だろう。
そういえば、兵庫県の香住ではサツキエビと呼ばれていた。これは五月(さつき)の頃によく水揚げがされるからだ。
この時は生きているのを食った。ても期待していた程には美味くなかった事を覚えている。
実をいうと、海老は新鮮だからといって旨いワケではない。車海老の踊り食いなんてのがよくあるが、あんなもんはプリプリの食感がいいだけで、味はたいしたことない。旨味と甘みが足りないのだ。生きてるボタンエビも食ったことがあるけど、同じようなものだった。魚やイカでもそうなんだけど、必ずしも生きているイコールが最上のものではないのだ。美味いと思っている人は、新鮮=美味と云う思い込み、つまり脳で食ってるからなんである。別にそれはそれで間違いではないけどさ。本人が旨いと思っていれば、それでいいってところは否定できないからね。
肝心なことを言い忘れた。死後硬直がとれたばかりの生はメチャメチャ美味い。甘いのだ。甘エビよりも甘い。焼いても天婦羅にしても美味くて、これまた甘みが強い。クッソー、食いてぇー(T△T)

  
 
植物ならば、オニユリ、オニアザミ、オニバス、オニグルミ、オニツツジ辺りが代表ってところかな。

 
【オニユリ】
(出典『Horti』)

 
オニユリの名の由来は、花が大きくて豪快だとか、花の様子が赤鬼に似ているなど諸説あるようだ。

 
【オニツツジ】
(出典『身近な植物図鑑』)

 
オニツツジなんかも由来は同じようなもんだろう。
因みにオニツツジは俗称で、正式名はレンゲツツジという。この植物、実を云うと有毒である。根や葉茎だけでなく、花やその蜜にまでも毒があるとされている。調子に乗って、子供の頃みたいにツツジの蜜をチューチューしたら死にまっせ(笑)
この毒があるというのも、鬼と冠される理由なのかもしれない。

 
オニアザミやオニバスは、その棘(トゲ)と大きさに由来する。

 
【オニアザミ】
(出典『白馬五竜高山植物園』)

 
オニアザミという言葉は、葉の鋸歯の鋭い大型のアザミの仲間の総称としても使用される。最近はアメリカオニアザミという、もっとトゲトゲの奴があちこちに蔓延(はびこ)り始めているようだ。

 
【アメリカオニアザミ】
(出典『ありのままの風景を』)

 
外来種で、鹿も牛も食べないそうだから激増しているらしい。

 
【オニバス】

(出典 2点共『福原のページ』)

 
葉だけでなく、花や実までトゲトゲなのだ。

 
【オニグルミ】

(2点とも 出典『森と水の郷あきた』)

 
おそらく実ではなく、内部の種(核)が語源だろう。
核面のデコボコが著しく、そのゴツゴツした外観と固さが鬼のようだからだと命名されたと推察する。 

 
 
オニとつく昆虫について書くつもりが、海の生物と植物につい力が入ってしまった。哺乳類と鳥類は駈け足でいこう。

とは言うものの、哺乳類でオニと名のつくものは意外と少ない。ソッコーで片付きそうだ。

 
【アフリカオニネズミ】
(出典『wikipedia』)

 
デカイねぇ~。もう、こんなのウサギじゃん。
コヤツは地雷の除去に貢献しているので、知っている方もおられよう。
タンザニアの団体APOPOはアフリカオニネズミの優れた嗅覚に着目し、その一種であるサバンナアフリカオニネズミを訓練して地雷の探知・除去に役立てる事業を展開している。体重が軽いために地雷に乗っても爆発する可能性が低く、金属探知機よりも高効率で地雷の探索が出来るらしい。凄いぜ、ネズっち。機械よりもネズミの方が優れているなんて、何だか痛快だ。
でも動物虐待だとか言って、正義感を振りかざすバカなのがいそうだなあ…。だったらオマエら、肉も魚も野菜も一生食べんじゃねぇーぞ(#`皿´)

主だったところでは、あと哺乳類はオニテンジクネズミ(カピバラ)くらいだ。これは説明不要だろう。日本にも帰化してるし、動物園でも人気者だもんね。

ところで、何で哺乳類にはオニと名のつく動物が少ないのだろうか❓ 解るような気もするが、いざ答えるとなると明確には答えにくい。まあ、敢えてつける必要もないのだろうとだけ言っておこう。

 
お次は鳥類。

 
【オニオオハシ】
(出典『ナチュマライフ』)

 
オオハシ類の最大種。南米に生息し、その色鮮やかな美しい体色から「アマゾンの宝石」とも呼ばれている。巨大で特徴的な嘴(くちばし)は、体長に占める割合が全鳥類中で最大なんだそうな。

見た目は可愛くて、鬼のようには見えない。おそらくそのグループの最大種ゆえのネーミングだろう。

鳥は他にもオニとつくものが結構多い。
オニゴジュウカラ、オニアオバズク、オニカッコウ、オニヤイロチョウ、オニミズナギドリ、オニクロバンケンモドキ等があるが、如何せんどれもマイナーだ。鳥好き以外で名前を知っている人は少ないだろう。しかも、どれも大型種ではあるが、全然鬼っぽく見えない。厳つくないのだ。強いて鬼っぽいと言えば、オニカッコウぐらいかな。

 
【オニカッコウ】
(出典『wikipedia』)

 
青黒くて目が赤い。ゴツくはないが、精悍な感じだ。
目が紅蓮の炎の如く真っ赤な青鬼に見えなくもない。
だとしたら、由来としてはカッコイイ。
でもおそらくは、名前をつけた人はそんな事までは考えてなくて、単にカッコウ・ホトトギスの仲間の中では大型種だからと云う理由でつけたのだろう。
因みに画像はオスで、メスは茶色い。

 
そろそろ昆虫に行きたいところだが、先ずは他の節足動物から入ろう。

 
【オニサソリ】
(出典『SciELO』)

 
別にオニとつけなくとも、サソリは見てくれがもう全ての種類が十分な鬼的だ。攻撃性が強くて毒もあるから、鬼的要素がほぼ揃っている。
ムカデなんかもそうだろう。因みにオニムカデという和名を持つ種はいないようだ。でも、どっかで聞いたことがあるなあ…と思ったら、ゲームのドラクエ(ドラゴンクエスト)にオニムカデというキャラがいたわ。

 
【オニグモ】
(出典『弘子の写真館』)

 
邪悪だなあ。
オニグモ属最大種にして、属名の基準種でもある。
クモも、そもそも見た目が鬼的だ。なのに、オニグモはそれを強化具現させたかのような存在だわさ。
オニグモ属には数種いて、何れ劣らぬ鬼っぷりである。

 
【キバナオニグモ】
(出典『北の森での散策日記』)

(出典『北海道の生物図鑑』)

 
黄色が入ると、鬼感が増幅されるねー。
野原で遭遇したら、ギョッとするだろう。
鬼とは、そもそもがこの世の者ならざる異形(いぎょう)な存在の総称なのかもしれない。だから、オニとつけるのならば、驚愕される存在であるべきじゃないかと思う。

 
【ヤマシロオニグモ】
(出典『北の森での散策日記』)

 
万歳している👽宇宙人みたいだ。
或いは腹の下の方は、笑っている猫みたいにも見える。

 
【ヤマオニグモ】
(出典『北の森での散策日記』)

 
黒いと邪悪度が増すなあ…。
でもカッコイイっちゃ、カッコイイ。何だかハカイダー(註2)を思い出したよ。

 
【イシサワオニグモ】
(出典『北の森での散策日記』)

 
赤っぽいのも邪悪な感じがする。黄色もそうだけど、赤も警戒色なのである。あたしゃ、危険ですよという印だ。

 
【アカオニグモ】
(出典『まーしーのフォトアルバム』)

 
もっと赤いのもいた。
赤鬼様は毒々しい。しかし、邪悪度も上がるけれど、同時に美しさ度も上がる。見方を変えれば、デザインはポップでさえある。

赤鬼がいるのなら、青鬼もいるんじゃないかと思った。
で、一応調べてみたら、いた。

 
【アオオニグモ】
(出典『博物雑記』)

 
予想に反して青鬼は可愛いかった。
プリプリの白いお尻が、髭のおじさんのコケシ頭みたいだ。邪悪というよりもユーモラスだね。

オニグモって面白いなあ。
ついつい、めっちゃネットサーフィンしてしまったよ。
けど、いつまでこんな事やってんだ?いい加減にクロージングしないとマズイなあ…。

 
長々と書いてきたが、ようするにオニと名がついている生物には、基本的に以下のような特徴があるようだ。

①大きい
②刺(トゲ)、もしくは角がある
③見た目が厳(いか)つい
④凶暴・獰猛である
⑤毒々しい。或いは毒がある
⑥色合いが鬼に似ている
⑦勇壮

思うに、この何れかの特徴を有しているものが、オニと名付けられた模様だ。
言い加えると、①の大きいと⑦の勇壮は重複するところもあるが、大きいからといって勇壮とは限らないので、あえて分けた。

 
扨て、いよいよ昆虫である。
でも書き疲れて、正直どうでもよくなってきた。
と云うワケで、虫のオニ関係は次回後編に回します。

 
                     つづく

 
と、一旦クロージングしたんだけど、後編を書くのならば、導入部でまた前回の流れを汲む説明をしないといけない。それが正直、面倒くさい。しゃあないから、踏ん張って続けて書くことにした。たぶん、前半よか長くなるので、ここまで読んで疲れちゃった人はここで一旦読みのをやめて、二回に分けて読みましょうね(笑)。マジで。

始めるにあたって、今一度鬼の定義を確認しておこう。
ウィキペディアには、こう書いてあった。

『日本語では逞しい妖怪のイメージから「強い」「悪い」「怖い」「ものすごい」「大きな」といった意味の冠詞として使われる場合もある。(中略)。現在、一般的に描かれる鬼は、頭に二本、もしくは一本の角が生え、頭髪は細かく縮れ、口に牙が生え、指に鋭い爪があり、虎の皮の褌(ふんどし)や腰布をつけていて、表面に突起のある金棒を持った大男の姿である。色は赤・青・黒などさまざまで、「赤鬼(あかおに)」「青鬼(あおおに)」「黒鬼(くろおに)」などと呼ばれる。』

OK。自分が指摘したものとだいたい合っている。これを今一度脳ミソにブッ込んで、続きを読まれたし。

さあ、既にどうでもよくはなってきてはいるけれど、本当に言いたいことに向かって書き進めよう。
 
前回、オニシタバの回で書いた要旨はこうだ。
「昆虫でオニといえば、オニヤンマ、オニクワガタ辺りが代表か…。他にもいるようだが、でもこの辺で止(とど)めておく。あまりにもショボい面々揃いなので、更なる脱線、怒気を含む言葉になるのが必至だからだ。コレについては機会があれば、また別稿で書くかもしんない。」
この言葉に対しての異論もあるようなので、理由を書きます。

繰り返すが、昆虫でオニといえばポピュラーなのは、オニヤンマとオニクワガタだろう。

 
【オニヤンマ】
(出典『自然観察日記』)

 
(出典『あにまるじゃんくしょん』)

 
日本最大の勇壮なトンボだから、一般の人でも知っている人は多いだろう。

 
(出典『廿日市市の自然観察』)

 
エメラルドグリーンの眼がとても美しいけど、よく見ると顔は厳(いか)めしい。

 
(出典『メンバラ&身近な自然』)

 
歯もゴツい。
コイツで、あの凶暴なスズメバチなんかもガリガリ食う。オニヤンマは日本有数の肉食昆虫でもあるのだ。
そういえば思い出したよ。随分前に当時の彼女と赤穂方面に旅行に行った時の事だ。龍野市でオニヤンマの巨大なメスが空中でシオヤアブ(註3)をガシッと捕まえて飛んで行った事がある。あれはインパクトあったなあ…。シオヤアブもスズメバチを襲うくらいの凶暴な奴である。その両者が互いに正面から飛んできて、ガチンコで相まみれたのだ。僅かな攻防があった次の瞬間には、アブがバキーッいかれとった。で、そのまま飛んで近くの電線に止まり、ガシガシと囓じり始めた。あまりの迫力に、彼女と二人して震撼。口あんぐりで見てたよ。

和名は、この巨大さと厳つい顔つき、凶暴性から名付けられたのだろう。また、黒と黄色の縞模様から虎皮のパンツを履いた鬼を連想して名づけられたという説もあるようだ。しかし、これはたぶん後付けでしょう。
あっ、二枚目の正面写真も鬼っぽくねえか❓
背中の柄がツリ目で出っ歯の鬼の顔に見えなくもない。これも名前の由来になってないのかなあ❓
とにかく、これだけ鬼の要素が揃っているのである。ネーミングに異論は無かろう。

それに対して、オニクワガタにはガッカリだ。

 
【オニクワガタ】
(出典『THE KAYAKUYA』)

 
たぶん顎の感じが鬼の角みたいだからと名付けられたのだろうが、小さくてマジしょぼい。2、3センチしかないのだ。クワガタといえば、昆虫界のスター軍団だ。デカくてゴツゴツした奴が綺羅星の如くいる。その中にあって、オニクワガタは鬼の名前を冠するのにも拘わらず、どうにも地味なのだ。こんな奴にオニとつけるんなら、タテヅノマルバネクワガタ(註4)とかの方がよっぽど相応しい。断然デカイし、珍しい。今や天然記念物だもんね。
それにオニクワガタはブナ林の中の道をひょこひょこ歩いてるのを時々見かける。結構、普通種なのだ。見ても全然感動がない。

とはいえ、横から見ると確かに鬼的ではある。

 
(出典『フォト蔵』)

 
角の形が鬼を彷彿とさせる。
これならば、オニという名前でもギリギリ許せる範囲内だ。
とはいえ、小さい奴にはあんまりオニとはつけて欲しくないなあ。
オニクワガタというのなら、⬇コレくらいの迫力はあって欲しいものだ。

 
【ローゼンベルグオウゴンオニクワガタ】
(出典『W.B.B-01◆KING◆ブログ』)

 
オウゴンオニクワガタは幾つかの種に分けられているが、この種はインドネシア・ジャワ島に棲むもので、体長は大きなものは80㎜くらいもある。まさに黄金の鬼である。ゴージャス鬼だ。

オニとつくクワガタといえば、コヤツの存在も忘れてはならないだろう。
 
 
【オニツヤクワガタ】
(出典『ゲストハウス プリ/Guest House Puli』)

 
画像は台湾産のオニツヤだ。大きなものだと体長90㎜を軽く越えるものもいるという。

メスでもデカイ。

 

 
メスだってオニクワガタよか遥かにデカイのじゃ。
充分、鬼である。

幼虫がエグい。

 

 
これまた鬼なのである。下手したら成虫よりも凶悪な感じがする。

これら3点の画像は台湾中部、埔里で世話になったナベさんにお借りした画像だ。
ナベさんは埔里でゲストハウスを経営する大のクワガタ好きなのだ。2016年、初めて台湾に蝶採りに訪れた折り、ナベさんのゲストハウスに泊まっていたのだが、その時にこれらの画像を興奮気味に見せてくれたのだった。ナベさん曰く、気性が荒く凶暴なんだそうな。
コヤツは実物を是非この目で見てみたい。次に台湾に行くときは本気で探そうと思う。

因みに、ナベさんは渡辺さんではなくて渡部さんで、渡部と書いてワタベと読む。ワタナベさんではないのだ。でも呼びやすいから勝手にナベさんと呼んでたら「間違ってるけど、もうそれでいいですよー(# ̄З ̄)」と言われた。だから、ナベさんでいいのである。

 
どんどん行こう。

 
【オニオサムシ Carabus barysomus 】
(出典『世界のオサムシ大図鑑』井村有希・水沢清行)

 
体長29~50㎜。
分布はインド北西部カシミール地方、パキスタン北東部。
光沢の強い漆黒の地に、顕著な上翅彫刻と亜属中最大の体長を有する。本亜属の基準種でもある。

ピンチアウトして画像の拡大は出来るけど、分かりやすいようにトリミングしよう。

 
【ssp.hazarensis&ssp.huegeli】

 
黒い鬼だ。この点刻が厳つさを増幅させ、鬼感を醸し出している。デカイと云うのも鬼でしょう。オニの名に異論なしだ。
図示したものは原記載亜種(ssp.barysomus)ではなく、左がカガン渓谷亜種(ssp.hazarensis)で、右がスリナガル東方亜種(ssp.huegeli)である。

 
【ssp.heroicus】

 
コチラも同じくオニオサムシだが、最大かつ最も特殊化したものとされる。ピル・バンジャン山脈西部のブーンチ北方の産する亜種で、こっちも負けず劣らずカッコいい。

 
【カシミールオニオサムシ Carabus caschmirensis】
(出典『世界のオサムシ大図鑑』井村・水沢)

 
体長27~38㎜。
これは wittmerorum というパキスタン北部・スワート地方の亜種で、緑青色を帯びており、とても美しい。
カシミールの青鬼だな。因みに、原記載亜種は黒い。

オニオサムシ亜属(Imaibius)は、大半がインド北西部のカシミール地方からパキスタン北部の標高2000~3000mの高所に棲む。背後は7千、8千メーター峰が連なるカラコルム山脈とヒマラヤ山脈だ。そういうところも、鬼が棲むに相応しい異世界って感じでいい。
スリナガルは当時も旅行者には閉ざされていて、結局行けなかった。でもパキスタン北部にはバイクでユーラシア大陸を横断した折りに立ち寄った。標高四千くらいまでは行ったと思う。もし、その頃に虫採りをやってたとしたら、コヤツらも採れたかもしんない。ヨーロッパに始まり、アフリカを経由してアジアまで旅したから、会おうと思えば相当ええ虫に会えてたんだろうなあ…。モロッコの砂漠なんかにも行ったから、ニセマイマイカブリとか、カッコいいゴミムシダマシにも会えたかもしんない。勿体ねー。

 
【オニミスジ Athyma eulimene 】
(2013.1.20 Indonesia Sulawesi Palopo)

 
見よ、怒れる鬼の形相を想起させるこの出で立ちを❗
オオアカミスジなんていう普通過ぎるダサい和名もあるけど、塚田悦造氏が大図鑑『東南アジア島嶼の蝶』で採用しているオニミスジを断固として推す。
なぜなら前翅長が42㎜くらいはあり、ミスジチョウやシロミスジの仲間の中では最大、もしくは最大級の種だからだ。翅も他のミスジチョウと比べて遥かに分厚いし、体も太くて頑健だ。デカくてゴツいのだ。そして飛ぶのもクソ速い。だから、採った時は到底ミスジチョウの仲間には思えなかった。

 

 
背中に光る金緑色が美しい。
何だか、まるで鬼火のようじゃないか。

 
【ミドリオニカミキリ】
(出典『cerambycodea.com』)

 
南米のカミキリムシだが、鬼そのものとも言える見てくれだ。残虐非道の青鬼様なのだ。
大きさは75㎜もあるそうだ。この厳つい顔、そして前胸のトゲトゲ、青緑色にギラギラ輝く感じ。そこに大きさも加わるのだから、鬼と呼ぶに申し分ない。性格も絶対に悪辣凶暴、極悪に違いなかろう。
オニの名がある虫の中では、コイツが一番鬼を具現化させたような存在じゃないかな。カミキリムシだから、肉食じゃないけどさ。

 
外国の昆虫はコレくらいにして、日本のオニと名のつく虫に戻ろう。

 
【オニホソコバネカミキリ】
(出典『リセント[RECENT]』)

 
(出典『ムシトリアミとボク』)

 
見た目が黄色と黒だし、毛むくじゃらなところは鬼と言って差し支えないだろう。カミキリなのにハチに擬態していると云うのも、何となく邪悪っぽい。
学名は Necydalis gigantea。その学名からカミキリ愛好家たちの間では、ギガンティア、ギカンと呼ばれている。ギガンティアとは、ラテン語で「巨大な」を意味する言葉である。その名のとおり、ネキ(=ネキダリス=ホソコバネカミキリ属)の最大種でもある。まさに鬼の名に相応しい。これも異論なし❗

 
オニクワガタはまあ置いておくとしても、ここまではオニと名付けられていることに何ら違和感のない昆虫たちだ。問題はここからである。
とはいえ、問題視しているのはワテだけかもしれん。ゆえに、ここから先の文句たらたらの文章は、あくまでも個人的見解であることをおことわりしておく。

 
【オニユミアシゴミムシダマシ】
(出典『インセクトアイランズ』)

 
体長22.0~31.2㎜。ユミアシゴミムシダマシの中の最大種である。
ユミアシというネーミングはセンスいいなと思う。
奈良の春日山と九州の大隅半島、福江島(五島列島)くらいでしか採れないようだから珍稀度も申し分ない。脚が太く、見た目もガッツリした感じで黒光りしているから、邪悪な黒鬼に見えなくもない。魅力的なのは認めよう。
だが、この見た目が問題だ。他のユミアシゴミムシダマシの仲間と見てくれはあんまし変わんないのである(註5)。つまりオニユミアシだけが特に鬼っぽいワケではないのだ。
あとはオオユミアシゴミムシダマシやアマミユミアシゴミムシダマシと大きさ的には、さほど差はないというのも気にかかる。オニというからには、圧倒的に巨大であって欲しいという願望があるのだ。
とはいえ、オニユミアシは自分の中では一応セーフかな。オニと名乗ってくれても強く反対はしないし、いたらゼッテー採るもん。

 
【オニヒゲナガコバネカミキリ】
(出典『長野県産カミキリ図鑑』)

 
ちっちゃ❗
調べたら、6~14㎜しかない。
ヒゲナガコバネカミキリの仲間では大きいから名付けられたようだけど、オニってのはどうよ❓小さ過ぎやしないか❓
見てくれは鬼っぽいといえば、鬼っぽくはあるけどさ。

 
(出典『吉崎ネット甲虫館』)

 
でも、カッコいいなあ(о´∀`о)

 
【オニヒラタシデムシ】
(出典『東京昆虫館』)

 
オニとつくのに、体長はたった1㎝くらいしかない。
普通のヒラタシデムシ類でも1.5~2㎝くらいはあるのに解せない。
という事は背中の彫刻柄が鬼みたいってことなのかな❓にしても、オニというほどの複雑怪奇な彫刻柄ではない。鬼というほどのインパクトはあらへん。ネーミングに異議ありだ。
まあ、コイツらシデムシ(死出虫)は字の如く動物の死体に集まるから、その意味では鬼的ではある。鬼みたく死肉を屠(ほふ)るのである。気味悪いが、腐敗菌の蔓延を防ぐ掃除屋でもあるから、必要な存在ではあるんだけどもね。

 
【イシガキオニハネカクシ】

どうやらキシモトツノツツハネカクシの石垣島亜種の別称のようだ。でもイシガキオニハネカクシの画像がダウンロードできない。キシモトツノツツハネカクシの画像も見つからない。と云うワケで、ある程度近いであろうフトツノツツハネカクシの画像を添付してお茶を濁しときます。

 
【フトツノツツハネカクシ】
(出典『フォト蔵』)

 
イシガキオニの頭はこんなにデカくはないけど、だいたいこんな感じだ。角もあるし、見てくれは邪悪な感じがしてオニと言ってもいいだろう。
けどさあ、ハネカクシって、そもそも皆さん鬼的な見てくれだよねぇ。

 
(出典『コトバンク』)

 
しかし、如何せんやっぱり小さい。だいたいハネカクシ全体がチビッコだらけなのだ。

 
【ツツオニケシキスイ】
(出典『最上の自然』)

 
オニケシキスイ亜科 ヨツボシケシキスイ亜属に含まれる。
元々ケシキスイは矮小だけれど、4~6㎜くらいしかない。調べた限りでは他にこの亜属にはオニとつくものが2種、オニケシキスイ亜属にコオニと名のつくものが5種類あった。何でオニケシキスイ亜属がコオニで、ヨツボシケシキスイ亜属の奴らがオニケシキスイなのだ❓謎だよ。さっぱりワカランわ。
一瞬、この黒と赤が鬼を連想するゆえのネーミングかなと思ったが、考えてみればヨツボシケシキスイだって赤と黒なのだ。益々ワカランわ。

 
【オニメクラチビゴミムシ】

画像が見つからなかったので、別種のズンドウメクラチビゴミムシの画像を貼っておく。

 
(出典『俺流エンタメ道場』)

 
見た目はどれもこんな感じの形で赤茶色なので、雰囲気は何となく解ってもらえるかと思う。
メクラチビゴミムシはチビゴミムシ亜科のゴミムシのうちで、地下生活に強く適応した結果、複眼を失った一群の総称である。ようするに盲目なのである、
約300種以上が知られ、多くが体長5㎜前後の小さな昆虫だ。
画像は見つけられなかったが、学名は判明した。
Trechiama oni というらしい。小種名が、まんまの「oni=鬼」じゃねえか。よほど鬼っぽい姿なのかとワクワクしたが、そんなに特異なものならば、もっと言及もされている筈だ。しかし、目ぼしい情報がてんで見つからない。画像も見つけられなかった。
ってゆうことは、それほど特筆すべき奇怪な姿ではないのだろう。となると、鬼的要素として考えられるのは、属内最大種である公算が高い。でも、んな矮小なものにまでオニとつける必要性が果たしてあるのだろうか?

話は変わる。この一連の和名に対して、巷では差別だという批判の声が少なからずあるようだ。過去には改名騒動さえ起こったらしい。
確かに知らない人から見れば、メクラでチビでゴミみたい存在だと言っているように聞こえる。そんなの虫だからって名付けていいのかよ?それって差別だろって事なのだろう。ても、その考え方がメンドくせー野郎だなと思う。
掲げた画像のズンドウメクラチビゴミムシだって、ズンドウ(寸胴)は決して誉め言葉ではない。むしろ、その逆だろう。だからって、何だというのだ。メンドクセー。たかが虫だろ❓虫は悲しんだり傷ついたりはしない。

ウィキペディアには、続けてこうあった。
「和名に差別的に聞こえる要素があるため、日本の昆虫学の研究者の間でも改名すべきか否かで議論が絶えない。」
驚いた事に一般ピーポーではなく、玄人筋からのクレームだったのね。何だそりゃ?である。
クレームをつけている研究者はハッキリ言ってバカだ。言葉に対する感覚がズレている。こういう正義感ぶってる奴に限って、差別を助長していたりするから始末に悪い。所詮は虫なんだから、ありのままでいいのにね。
この手のセンスのない輩どもが、真面目で長ったらしくてクソ面白くもないつまらん和名を乱発しているのだろう。

ウィキペディアでは、それに対して更にこう続けている。
「現在のところ、このグループの研究を日本で牽引してきた上野俊一が、実際の差別と言葉は無関係であり、標準和名は学名に対応しており、変えると混乱を招くとする改名反対の主張を強く行っているため、当面改名されない模様である。」
上野さん、天晴れである。おっしゃる通りだ。
だいたいメクラも盲目も、所詮は同じ意味じゃないか。言い方を変えただけにすぎない。こんなの言葉狩りだろ。メクラという言葉にはそれ相応の歴史があり、その成立過程には様々な物語もあった筈だ。言葉を葬り去るということは過去の歴史をも闇に葬り去るということだ。負の遺産も人類の遺産なのだ。消してしまえば、根本の本当のことはわからなくなる。
そういえば、イザリウオなんかも差別用語だといって、知らぬ間に「カエルアンコウ」にされちゃったんだよねぇ。ようするに、イザリという言葉も葬り去られたワケだが、アレを言葉で説明するの大変だし、面倒くさいぞ。しかも、説明するとなると喋る方も聞く方も妙にリアルな嫌悪感情になるのは避けられんでしょう。
ホント、自主規制とかって馬鹿馬鹿しい。言葉が誕生したのには、それなりの理由があるのだ。

 
【アカオニミツギリゾウムシ】
(出典『昆虫データバンク』)

 
ミツギリゾウムシかぁ…。この仲間は海外で何度か見たけど、変な形だなあと思った記憶がある。コイツはそれよかもっと変な奴だな。触角とか、かなり変わってる。
調べた限りでは分布は狭く、福岡、愛知、奈良、京都の各府県でしか見つかっていないようだ。かなりの稀種なんだね。
灯火に飛来すること以外、生態は未解明だが、アリの巣と関係があるらしい。好蟻性昆虫なのか…、謎だらけだな。何か面白そうだ。

日本では、他にツヤケシオニミツギリゾウムシ、キバナガオニミツギリゾウムシの2種がいるが、これらも稀種のようだ。何れもネットでは五万円の値がついていた。とはいえ情報が少ないから、本当にそれだけの価値があるのかどうかはわからない。生態が分かってないし、探してる人も少ないから、単に需要と供給の問題だけなのかもしれない。

情報が少ないから、語源を探るのも大変だ。それだけマイナーな存在なんだろね。
ツヤケシオニミツギリってのは黒い。キバナガは赤い。勝手に想像すると、日本ではツヤケシが最初に見つかって、次に赤いのが見つかったからアカと名づけたのかな? で、キバナガはその次に見つかり、顎が長いのでキバナガとつけられたと推察する。
しかし記載年を確認したら、アカオニが1963年、ツヤケシが1976年、キバナガが2009年となっていた。見事に読みがハズレましたな。
それにしても何でオニなんだろ?ミツギリゾウムシの中では最大なのかなとも思ったが、たった10㎜くらいしかない。日本にいるミツギリゾウムシには、もっと大きいのが沢山いるから、それも当てはまらない。
オニアカは前胸中央に溝があるのが顕著な事から、セスジミツギリゾウムシという別名がある。もうそっちでいいと思うんだよね。正直、チビッコだし、鬼には見えないもん。

 
【オニコメツキダマシ】
(出典『虫つれづれ@対馬V2』)

 
前胸背の凹凸の彫刻柄が鬼の顔に見えることからついた種名のようである。
でもコレが鬼に見えるって、どんだけ想像力が逞しいねん。大きく張り出した前胸の顔はお地蔵さんにしか見えん。体全体もお地蔵さんやんけー(# ̄З ̄)
しかも、体長は5~11.5㎜と笑けるほど小さい。でもって、ド普通種らしい。
学名 Hylochares harmandi に秘密が隠されているのかと思いきや、そうでもなさそうだ。これはおそらく著名な博物学者のアルマン・ダヴィドに献名されたものだろう。余談だが、アルマンといえば、アルマンオサムシ(ホソヒメクロオサムシ)など多くの昆虫にその名が学名としてつけられている。余談ついでに言っとくと、学名には名前はないけれど、有名なのは中国で博物学調査を行い、ジャイアントパンダの存在をヨーロッパに報じた人物でもありんす。

 
【オニツノキイロチビゴミムシダマシ】
(出典『われら雑甲虫ちっちゃいものクラブ』)

 
ちっちゃ❗
チビとついてあるだけのことはある。

奄美大島にしかいない稀種なんだそうな。奄美って、固有種とか日本ではこの島にしかいないと云う虫が多いよね。フェリエベニボシカミキリとかアカボシゴマダラとかさ。あっ、アカボシゴマダラは今は本土にもクソ品のないクズ外来種がいるな。(# ̄З ̄)死ねばいいのに…。

 
(出典『われら雑甲虫ちっちゃいものクラブ』)

 
まさか触角が鬼に見えるとかじゃないだろうなあ。
だとしたら、無理無理じゃん。
あっ、でもよく見たら角があるわ。

しっかし、クソ長い名前だニャア。どれか1つくらい端折(はしょ)ることが出来なかったのかなあ❓
虫の名前には、とてつもなく長いものが結構ある。アレって、何とかならんのかね❓細かく特徴を現したいのだろうが、かえってワケわかんなくなってないか❓ハッキリ言う。長い和名はダサい。

 
(出典『われら雑甲虫ちっちゃいものクラブ』)

 
( ̄~ ̄;)う~む…。こりゃ、確かに鬼だわさ。
オニの名を認めてもいいような気がしてきた。
でも、それならオニかツノかのどっちか1つにしてもらいたいよね。
けど、オニとするには、やっぱ如何せんちっちゃ過ぎるわ。

 
【オニエグリゴミムシダマシ】
(出典『吉崎ネット甲虫館』)

 
どこがオニなのか、さっぱりわからない。
単に属最大種なのかな❓
でも体長が10.7~12.3㎜しかないし、果たしてオニとつける意味ってあるのかな❓まだまだ昆虫素人にはワカンないや。自分の預かり知らぬ裏事情とかあるのかしら❓

 
【オニツノゴミムシダマシ】
(出典『吉崎ネット甲虫館』)

 
どこに角あるねん(#`皿´)❗と思ったら、ちゃんとある奴も発見。

 
(出典『昆虫採集記』)

 
どうやら角はオスにしか無いようだ。もしくはオスの方が発達してる?

体長は10.8~18.5㎜。コレまた小さい。
属最大種かと思いきや、近縁のミツノゴミムシダマシ(コヅノゴミムシダマシ)の方が13.5~18.5㎜と大きいぞ。昆虫界のオニの基準って何なのさ❓

 
【オニクビカクシゴミムシダマシ】
(出典『吉崎ネット甲虫館』)

 
頭に鬼的突起があるが、申し訳程度だ。鬼というよりも猫耳だ。ネコミミクビカクシゴミムシダマシの方が可愛くて良いのになあ…。
待てよ。そもそもコレって角なのか?小腮か何かじゃないのか❓
まあいい。おそらく猫耳は関係なく、属の最大種なのだろう。けれど、やはり小さい。体長は8.3~10.5㎜しかない。
とはいえ、クビカクシってのは中々秀逸なネーミングかもしんない。特徴をよく捉えていると思う。
 
 
【オニササキリモドキ】
(出典『日本のバッタ・コオロギ・キリギリス』)

 
属の最大種かと思いきや、そうでもないようだ。たった8~10.4㎜しかない。どこがオニやねんである。
調べてゆくと、愛媛県の鬼ヶ城山という地名がボツポツ出てくる。そこで最初に見つかったからなのか❓だとしたら、紛らわしい事この上ない。だったら、オニガシロササキリモドキにしろよなー(# ̄З ̄)
けど、調べるとどうやら基産地は鬼ヶ城山ではなく、篠山という所みたいだ。益々、ワケわかんねえや。
因みに、分布は愛媛県と高知県だけみたい。そこそこ珍しい種なんだろう。しかし、それとオニのネーミングは関係ないんだろなあ…。

 
【オニヒメタニガワカゲロウ】
(出典『ZATTAなホームページ』)

 
鬼なのに姫って、何じゃそりゃ❓である。
オニは主に最大種、ヒメは小型種につけられるのが生物界の常識だが、一般ピーポーにとっては何じゃそりゃ❓である。ミックスされたら、ワケわかんねえだろう。
これはおそらくヒメタニガワカゲロウの最大種であるから、頭にオニとつけられたのだと推測される。
でもヒメタニガワカゲロウというのが、探しても見つからない。フザけんなよである。ヒメは小さいという意味でつけられただけで、属レベルではタニガワカゲロウというワケなんだろね。もう面倒だから確認しないけど。

画像を見てもわかるとおり、葉っぱの大きさと比して大変小さい。ヒメと呼ぶに相応しいと言える。
だとしたら、オニの部分は大きさではなく、その形態によるネーミングではなかろうか?
そういう目で見れば、確かに頭部に突起らしきものがある。それを鬼に模して名付けられた可能性はある。とはいえ、申し訳程度だ。こんなもんがオニと言えるかね。せいぜいツノでよかったんじゃないの~❓

 
【オニヒメテントウ】
(出典『東京23区内の昆虫2』)

 
だからぁー、鬼と姫を一緒にすんなっつーの(# ̄З ̄)
ヒメテントウの最大種らしいが3㎜しかないし、どこがオニやねん。もー、どいつもコイツもチビッコの鬼ばっかじゃねえか。

  
他にもオニヒメハネカクシ(だからぁー、鬼と姫を一緒にすんなよ)、オキナワニセオニハネカクシ、アシナガオニゾウムシ、オニツヤハダチャイロコメツキとか、オニとつく昆虫はまだまだいるけれど、これくらいにしておこう。どうせ皆んなチビだろうしさ。

ようは、簡単に何でもかんでもオニって名前をつけるのはどうかと思うよと言いたいワケ。特にチビッコの虫にオニってつけるのは、もうやめません❓って事なのである。オニとつけるなら、それに相応しい存在であるべきだと思う。オニは鬼らしくである。
それを言うのに、ここまで長い文章を書くのは自分でも御苦労なこったである。( ̄∇ ̄ )ゞまっ、いっか…。

あっ、忘れてたよ。そういえば日本のオサムシにもオニの名を冠したのがいたなあ。

 
【オニクロナガオサムシ】
(出典『世界のオサムシ大図鑑』井村有希・水沢清行)

 
正式には種ではなく、キュウシュウクロナガオサムシの東広島亜種で、その通称がオニクロナガオサムシである。
どうせキュウシュウクロナガオサムシの中で一番デカイから名付けられたんだろうと思っていた。実際、種の中では一番大きいのだが、甲虫屋のAさんから名前の由来を聞いて驚いた。何とオニは人のニックネームから来てるみたいなんである。
これは蛾の著名な研究者、特にシャチホコガの研究で高名な中臣謙太郎氏のアダ名なんだそうである。
長いが、学名を記そう。
Carabus(Leptocarabus)kyushuensis cerberus。
括弧内は、たぶん新たな分類を用いた場合の学名かな?
小種名の cerberus は冥界もしくは地獄の番犬ケルベロス(註6)のことだ。
Aさん曰く、中臣さんの顔が鬼みたいだったからオニの和名がついたそうだ。そんなん有りかいな(笑)。
その鬼に連動して小種名もついたようだ。その辺の事は詳しくは訊いてないけど、或いはケルベロス的な激しい性格の持ち主でいらっしゃるのかもしれない。でも、たとえそうだったとしても、鬼とかケルベロスとかとつけられるのを許した中臣さんは心が広い。

こう云うオニの命名の仕方は想定外だった。目から鱗である。由来が分かりにくい紛らわしいネーミングをすんなよとは思いつつも、でもちょっと愉しい。この由来ならば、納得です。エスプリが効いている。是非残して欲しい和名だよ(註7)。
もしかしたら、他にもコレ的イレギュラーな由来のオニ昆虫もいるかもしれないなあ…。
たぶんいないとは思うけど(笑)。

 
                    おしまい

 
追伸
他人の画像を借りまくりの回になった。自分の画像ってオニベニシタバとオニミスジしかないもんなあ…。ちょっと気が引ける。とにかく、画像を御使用させて戴きました方々、有り難う御座います。礼 m(__)m

今回は頭からケツに順には書かなかった。バラバラに書いて、あとから繋ぎ合わせた。最初に前回の元になる文章を入れて、植物から書き始め、次に海の生物の部分を膨らませていった。あとはオニオサムシの草稿、ついで鳥、戻って哺乳類、クモと書き、オニヤンマからオニツヤクワガタまでを一気に書いた。でもってミドリオニカミキリ、オニホソコバネカミキリを続けて書き、オニミスジを途中に挿入した。で、オニオサムシの稿を完成させた。そこからまた戻ってオニササキリモドキ、オニヒメタニガワカゲロウの項を書いた。してからに、オニクロナガの事とその前にある今回の主題である物言い(文句)を置いた。そして、最後にオニユミアシからゴミムシダマシの項までを順不同でバラバラに書いた。
だから、所々でトーンが微妙に変わっている。こういう書き方は珠にするけど、こごまで継ぎはぎだらけで書いたのは初めてだ。飽きれば別のところを書けばいいので、お陰で長文のわりにはあんまし苦痛ではなかった。でもそのせいで、ウンザリするくらいの長い文章になってしまったけどね。最後まで読んで下さった方には、ただただ感謝である。

 
(註1)バラクーダは老魚なると群れない

当時、先輩インストラクターにはそう聞かされていたのだが、これは間違い。単独行動の奴と群れている奴は別種なんだとさ。単独でいるデカイのがオニカマスで、群れているのはオオカマスだという。大型カマス類には何種類かあるのだが、ダイバーの間では全部ひっくるめてバラクーダと呼ばれている。だから種類が混同されているのだ。ブラックフィンバラクーダとかも、学術的には別種なんだろね。

 
(註2)ハカイダー
(出典『プレミアム バンダイ』)

 
特撮番組『人造人間キカイダー』及び『キカイダー01』に登場した悪役キャラクター。ダーティヒーローだ。
フィギュア、欲しいなあ…。

 
(註3)シオヤアブ
(出典『メンバラ&身近な自然』)

 
双翅目ムシヒキアブ科。体長23~30mm。
時にスズメバチをも襲う。オニヤンマも襲われることがあるみたい。返り討ちにあうことも多いそうだけど。

 
(註4)タテヅノマルバネクワガタ
(出典『気ままに昆虫採集』)

 
以前はチャイロマルバネクワガタ以外の全種全亜種が「タテヅノマルバネクワガタ」として、ひと括りにされていた。
現在はアマミマルバネクワガタ、ウケジママルバネクワガタ、オキナワマルバネクワガタ、ヤエヤママルバネクワガタ、ヨナグニマルバネクワガタの5種類に分けられている。
マルバネクワガタは見たことがない。蝶屋だから夜は虫採りなんかしなかったのだ。そういえば、ヨナグニマルバネは禁止になる前年に与那国島にいて、しかもベストシーズンだった。それ狙いの人も沢山来ていた。今思うと、毎晩呑んだくれてる場合じゃなかったよ。
wikipediaには「今日知られる分類は水沼哲郎氏の熱心な研究によるところが大きい。」とあった。水沼さんは優しくて飄々としたお爺ちゃんだけど、やっぱスゴい人なんだね。

 
(註5)他のユミアシゴミムシダマシとそう変わらない

一見したところ、他の大型ユミアシゴミムシダマシとあまり変わらない。体長もそれほど大きな差はない。

 
【オオユミアシゴミムシダマシ】
(出典『こんなものを見た』)

 
体長21.8~27.9㎜。
そういえば初めてユミアシゴミムシダマシを採ったのは小学生の頃で、場所は長居公園の臨南寺だった。大阪のド真ん中だけど、まだ小規模ながら古い社寺林が残っていた時代だ。一部は原始に近い照葉樹林で、そこにはオオゴキブリやマイマイカブリ、オオゴミムシとかオオスナハラゴミムシなどの大型ゴミムシ、そういえばオオゴモクムシなんかもいた。オニユミアシは古くて豊かな照葉樹林にいるみたいだから、もしかしたらアレはオニユミアシだったりしてね。残念ながら標本は残っていないから確かめようがないけれど。

 
【アマミユミアシゴミムシダマシ】
(出典『インセクトアイランズ』)

 
体長23.8~29.3㎜。
前述したが、オニユミアシは22.0~31.2㎜。つまり大きさはオニユミアシ、アマミユミアシ、オオユミアシの順となる。

 
(註6)ケルベロス
(出典『世界の神話・伝説』)

 
ギリシア神話に登場する犬の怪物。冥界の入口を守護する番犬で、三つの首を持ち、青銅の声で吠える恐るべき猛犬とされる。また、文献によって多少の差異はあるが、三つ首プラス竜の尾と蛇のたてがみを持つ巨大な犬や獅子の姿で描かれることが多い。
学名はラテン語なので、読み方はケルベルス。英語では読みはサーベラスとなる。

 
(註7)是非、残して欲しい和名だよ
実際、消えてゆく和名も多い。特にオサムシは亜種名にも和名をつける慣習があるからだ。オニクロナガも今ではキュウシュウクロナガオサムシ広島県東部亜種と表記される機会が増えている。これは日本産オサムシ図説(井村・水沢, 2013)で、この亜種独自の和名を見直し「(種和名+主要分布地域名)亜種」という方式で和名を記載することが提唱されたからだ。この方式は従来方式の和名が「種を指すのか亜種を指すのか明確でない」という見解からだろう。確かに一見合理的ではある。
しかし、分布地域名の表記をなるべく正確かつ統一的なものしようとするあまり、やたらと長くなっているものが数多く見受けられるのも事実だ。従来の方式ならば、表記も喋るのも短くて済む。オニクロナガで済むところを、一々キュウシュウクロナガオサムシ広島県東部亜種なんて言わなきゃならないなんて、どっちが合理的なのかワカンナイぞ。だいち、今は旧名と新名が混ざくりあって、益々何が何だかワカンなくなってて、かえって混乱を引き起こしてねぇか❓また、従来の和名は紀伊とか阿波なとの旧国名や地域名といった歴史ある地名を冠したものが多く、山河による地理的隔離により亜種分化をしてきたオサムシの和名に相応しいものともなっていた。しかし、それを継承しなかった新名もあり、亜種分化の歴史を掴みずらくしてしまったケースもある。オサムシはその形態よりも地方名がついたものが多い。これは見てくれが似たようなのばっかだからそうなったのだろうが、面白いし、かえって合理的でもある。言葉一つで何処に分布する種なのか解るもんね。形態を必死こいて表そうとして、無機質でクソ長ったらしくなった和名よか、余程こちらの方がいいや。
それとは関係ないけど中臣さんの名前を冠したらしきオサムシが、オニクロナガが以外にもう1つある。チュウゴククロナガオサムシ(キュウシュウクロナガオサムシ中国地方亜種)だ。
学名は Carabus (L.) kyushuensis nakatomii 。もしかしたら、オニクロナガも中臣さんに献じようと思ったが、既に nakatomii を使用しているのでアダ名を使ったのかもしれない。

 

台湾の蝶11 オスアカミスジ(後編)

       タテハチョウ科8

   第11話『豹柄夫妻の華麗なる生活』

 
オスアカミスジの後編である。
今回は生態を中心に書きたいと思う。

前回と重複するが、先ずはオスアカミスジの画像を添付しておこう。

【Abrota ganga オスアカミスジ♂】
(2017年 6月 台湾南投県仁愛郷)

【同♀】
(2016年 7月 台湾南投県仁愛郷)

♂♀異形のイナズマチョウの仲間である。
色は違えど、ネコ科肉食獣柄の夫婦だね。
もし豹柄と虎柄紋を着たオバチャン&オッチャン夫婦がいたら、さぞや強烈だろうなあ…。キャラもコッテコテのエッジの立った夫婦に違いない。まあ大阪とかには、現実にいそうだけどさ(笑)

学名の属名のAbrotaはキリシア語のabrotos(不死の、神の、神聖な)をラテン語化したもの。
このAbrota属は、調べた限りでは1属1種。オスアカミスジのみで構成されている。
小種名のgangaはインドの聖なる川、ガンジス川の事である。そういえばインドの聖地ベナレスでは、ガンジス川のことを皆ガンガーと呼んでいたなあ…。インド、ムカつくけど、また行きたいな。

台湾での名称は「瑙蛺蝶」。
瑙というのは瑪瑙(メノウ)のことである。
英語だとAgate(アゲート)だっけか…。鉱石の1種で、縞模様が特徴である。よくパワーストーンとして売られているから、見たことがある人も多いかと思う。

(出典『ヤフオク』)

中々センスのある美しい名前だ。
オスアカミスジよか余程いい。おーっと、早くも和名文句たれ病が始まったよ。けど、またクソ長くなりそうだから今回はやめとく。
あー、でも一言だけ言わしてくれ。ミスジチョウの仲間じゃなくイナズマチョウのグループだと判明したんだから、せめて「オスアカイナズマ」としてくれよな。ややこしくてかなわん。

因みに蛺蝶と云うのは、中国語圏ではタテハチョウの事を指します。
他に雌紅三線蝶、大吉嶺橙蛺蝶、黃三帶蛺蝶という別称もある。
婀蛺蝶というのも良いね。婀は訓読みするとたお(やか)だ。しなやかで美しいさまを表す。
大吉嶺橙蛺蝶と云うのも仰々しい感じがして悪くない。大吉山の橙色の蝶なのだ。

【分布】
台湾以外では、中国(東部、南部、西部)、インドシナ半島北部、ヒマラヤなどに生息し、5亜種に分けられている。

(出典『原色台湾蝶類大図鑑』)

▪Abrota ganga ganga(ブータン,シッキム,アッサム,ミャンマー,メトック)
▪Abrota ganga formosana Fruhstorfer, 1909(台湾)
▪Abrota ganga flavina Mell,1923(中国:広東省)
▪Abrota ganga pratti Leech,1891(西中国: 四川省,雲南省)
▪Abrota ganga riubaensis Yoshino,1997 (中国:陝西省)

一応、各地の標本をネットでいくつか見たが、そう大きな違いは感じられなかった。♂は同じ場所でも個体差に富み、1つとして同じ斑紋のものはいないというから、どちらにせよ素人のワシなんぞにはお手上げじゃよ。
但し、♀は海南島のものなどは白い紋がオレンジ色になるようだ。だから、別称に黃三帶蛺蝶というのもあったんだね。

【生態】
開長65~75mm。
台湾全土に見られるようだが、普通種というワケではなさそうだ。実際、埔里周辺では1ヶ所でしか見かけなかった。タイやラオスでも一度も見たことがない。もっとも、これは夏に行った事がないからなのかもしれないけどね。

垂直分布は、図鑑などでは標高300m前後から2100mまで見られるとなっていたが、おそらく中低山地が棲息域の中心だろう。
因みに自分は1000m前後でしか見たことがない。常緑広葉樹林を好むというから、標高以上に環境が重要なファクターなのだろう。結構深い森の中にいたから、環境条件は思われているよりも限定的なのかもしれない。

♂♀ともに樹液,獣糞や発酵した果実に集まり、地面に吸水におりる。
杉坂美典さんの台湾の蝶のサイトには「各種の花によく集まる。」とも書いてあった。だが、これは聞いた事がないし、そのような生態写真も見たことがない。イナズマチョウ類の生態としては考えにくいし、何かの間違いではないだろうか?
また、「♂は渓流や樹林内の開けた場所で占有行動をする様子を確認することができた。占有行動では,全ての蝶を追い回し,順位的には最も強かった。♀は,林道上によく止まり,吸水行動をしていた。♂も吸水のために地上に下りることはあったが,非常に敏感で,近づくことは容易ではなかった。」とも書いておられる。

占有行動に関しては、他に言及している文献は知り得ないが、それらしき行動は見たことがある。
樹林内のぽっかり開けた場所に如何にもテリトリーを張ってますといった体の♂が葉上に止まっていた。実際占有行動は見ていないが、捕らえて先に進み、暫くして引き返してきたら、また別な♂が同じような所に止まっていた。それも捕らえて、翌日にそのポイントに行ったら、またもや別な♂がいた。これは占有活動を示唆しているとも思える。
但し、同じ場所にタイワンコムラサキもいたが、特に追いかけ回すというワケでもなく、仲良く繁みの端と端にちょこんと止まっていた。

果実トラップには、林縁に仕掛けたものには来ず、♂♀ともに暗い森の中に設置したものに集まった。

♂の飛翔力については文献によってまちまちだ。
台湾のネット情報では、「成蝶飛行快速」と書いてあった。また「原色台湾蝶類大図鑑」には、飛翔はヒョウモン類に似ているとあった。ヒョウモンチョウの仲間は種類によって飛翔力にかなり差があるが、そこそこ速いと云う意味なのだろう。
一方、「アジア産蝶類生活史図鑑」には、「飛翔力はあまり活発ではなく、地上低く滑空方式のものが多い。」と書いてある。
自分の見た印象ではイナズマチョウにしてはトロいが、そこそこ速い。確かにヒョウモンチョウと言われれば、そんな気もする飛翔スピードだ。
敏感さは、タカサゴイチモンジくらい。つまり、イナズマチョウにしては鈍感な部類に入る。

林道上によく止まり吸水するというのは、他の文献でも記述があるから、割りと普通に見られる行動なのだろう。
けれど、吸水も含めて自分は一度も林道上で見たことがない。♂は森の中でしか遭遇した事がないのだ。10頭以上は見たが、全部そうだった。自分としては、ホリシャイチモンジと同じような生態に感じた。
一方、♀は林内よりも林縁で見受けられた。但し、地面に止まっているのは見たことがない。大概は林道を歩いていたら、樹木から驚いて飛び出すというパターンだった。高さはだいたい2m以内。その際、緩やかに飛び、すぐに枝先などに止まる。正直、トロいから、採集は容易だ。

但し、とは言ってもこれらはケースバイケースだろう。飛翔は速い時もあれば遅い時もあるだろうし、敏感さも羽化仕立ての個体と飛び古した個体とでは違う事は有り得る。

【発生期】
年1化。5月の下旬より羽化し始め、7月最盛期。♀は10月下旬まで見られるという。

【幼虫及び食餌植物】
マンサク科 ナガバマンサク Eustigma oblongifolium。
『アジア産蝶類生活史図鑑』には、「台湾と香港に限り自生する植物で、台湾での分布は狭く、日月潭、埔里周辺以外では見出されていない。にもかかわらず、この蝶の分布は台湾ではかなり広いという事実、また中国からインド北部にわたる広汎な分布を考えあわせると、本種は他にも食餌植物を有するのではないかと考えられる。」と書いてあった。
その後、新たな食樹は見つかったのだろうか❓

ネットで探すと、次のような食樹が見つかった。

青剛櫟 Cyclobalanopsis glauca glauca
秀柱花 Eustigma oblongifolium
赤皮 Quercus gilva
青剛櫟 Quercus glauca

上から2番目がナガバマンサクだ。
他は属が違う植物みたいだね。漢字の字面からすると、どうやらカシ類みたいだ。って云うか、この学名は見たことあるぞ。何だっけ?、アラカシ?
あれっ( ゜o゜)❗❓、1番目と4番目は属名は違うけど、どちらも青櫟と書いてある。小種名も同様にglaucaとなっている。これは多分シノニム(同物異名)だね。
で、確認してみたら、やはりアラカシでした。
そして、3番目はイチイガシでありんした。

そうでした。そうでした。
アラカシはタカサゴイチモンジの食樹で、スギタニイチモンジはアラカシとイチイガシの両方ともを食樹としているんでしたね。
ここからもオスアカミスジがAdoliadini(イナズマチョウ族)の一員であることがよく解る。
きっとナガバマンサクは食樹としてはイレギュラーで、基本的にはブナ科カシ類が食餌植物なのだろう。

でも、ヘ(__ヘ)☆\(^^;)ちょっと待ったらんかい❗
たしか『アジア産蝶類生活史図鑑』には、何かカシ類で飼育したけど死んでもうたと書いてなかったっけ❓
慌てて確認してみる。

「Quercus acuta アカガシで採卵、飼育を試みたところ、多数の卵を得て2齢まで成育したが、越冬中に死滅。その後、中齢幼虫、5齢幼虫にこの植物を与えるという試みがなされたが、摂食はするが成育せず、蛹化にいたったものは1匹もいなかった」。

そっかあ…、アカガシはダメだったけど、アラカシとイチイガシはOKだったのね。
また、迷宮に迷い込むかとビビったけど、セーフだ。

幼虫はイナズマチョウ軍団特有の邪悪🐛ゲジゲジさんだ。
気持ち悪いので、ここから先は🚧閲覧注意だすよ。

(出典『アジア産蝶類生活史図鑑』)

(出典『生物多様性資訊入口網』)

スギタニイチモンジやタカサゴイチモンジの幼虫に似ているかな?
どちらにせよ、(|| ゜Д゜)鳥も逃げ出しそうな悪虐非道的な見てくれじゃよ。

前回にイチモンジチョウ類Athyma属との関係性について触れたが、画像を添付し忘れた。

【タイワンイチモンジの幼虫】
(出典『圖録検索』)

(出典『圖録検索』)

(出典『生物多様性資訊入口網』)

Athyma属の幼虫は、ゲジゲジではなくトゲトゲなのだ。これまた毒々しくて邪悪じゃのう(  ̄З ̄)
オニミスジ Athyma eulimeneは、果たしてどんな幼虫なんでしょね?

オスアカミスジに戻りましょう。
卵は1ヶ所にまとめて産みつけられるようだ。
イナズマチョウの仲間は、葉っぱに1卵、1卵分けて産むのが基本だから変わっている。そういう産み方をするのは、他にタカサゴイチモンジくらいしかいないそうだ。

(出典『圖録検索』の画像をトリミング。)

複雑なデザインで美しい。
イナズマチョウといい、Euthalia類の卵はまるで宝石みたいだ。

蛹も美しい。

(出典『生物多様性資訊入口網』)

(出典『圖録検索』の画像をトリミング。)

多分、イナズマチョウの中では最も美しい蛹なのではないかと思う。ガラス細工のようだ。ガレ(註1)が見たら物凄く興奮したに違いない。

                  おしまい

 
追伸
ようやくイナズマチョウのグループが終わった。
でも、まだ9種類の蝶しか紹介していない。台湾の蝶は約350種類もいるのだ。二度の採集行で100
種類しか採っていないとしても、まだまだ先は長い。
正直、うんさりだ。続けていく自信無しである。

今回のタイトルは、最初『豹柄夫婦』であった。
それが夫妻になり、そこに生活が加わり、最後は華麗なるという形容までついてしまった。
「華麗なる」は乗りでつけちゃいました。本文とは何ら関係ないです。どこが華麗やねん!とツッコミが入りそうだが、文句、苦情等は一切受け付けませんので、あしからず。

採集記はアメブロにあります。
『発作的台湾蝶紀行』第9話 空飛ぶ網
例によってURLの貼り方を忘れたので、読みたい方は誠に恐縮ですが、自分で探して下され。

(註1)ガレ
フランスの著名なガラス工芸家、エミール・ガレ(1946~1904)のこと。
生物をモチーフとした作品を数多く残した。
作品はどれも美しい。同時にグロテスクな魅力を放っている。
多分、夏あたりに東京で大きな展覧会(サントリー美術館?)があるのではないかと思う(間違ってたら御免なさい)。関東近辺に住まわれる方は、是非足を運ばれることをお奨めします。

 

台湾の蝶10 オスアカミスジ

 
     タテハチョウ科 その8

    第10話『雲豹の化身』

 
台湾のイナズマチョウグループの最後を飾るのはオスアカミスジ。

【Abrota ganda formosana オスアカミスジ♂】
(2017年 6月 台湾南投県仁愛郷)

長い間、分類学者を悩ませてきた蝶のようだ(註1)。
メスがミスジチョウグループ特有の白黒系デザインなのにオスは赤っぽい事からつけられた和名なのだろうが、メスの見た目からミスジチョウ群に含める学者もいれば、イチモンジチョウ群に含める学者もいたんだろね。
しかし、近年(1994年)ようやく幼生期が解明され、何とイナズマチョウ族(Adoliadini)の仲間と云う事が判明した。
幼虫がどう見てもイナズマチョウグループ特有の邪悪ゲジゲジくんだったから判ったと云うワケやね。
確かによく見れば触角が長くてイナズマチョウっぽいし、形もイナズマチョウ系だ。またミスジチョウ類と比べて翅に厚みがあって体躯(胴体)もより頑強だ。
でも、そんなの言われなきゃワカンないよね。
実際、一昨年台湾で初めて♀を何頭か採ったが、相変わらずの勉強不足でその存在さえも知らなかったゆえ、初見はミスジチョウ?イチモンジチョウ?オニミスジの仲間?ワケわからずの何じゃこりゃ(゜〇゜;)?????の人になってもた。

標本写真はこんな感じ。

【オスアカミスジ♀】
(2016年 7月 台湾南投県仁愛郷)

参考までにミスジチョウの仲間(Neptis)の画像も添付しておこう。

【Neptis pryeri コミスジ?】
(2016年 7月 台湾南投県仁愛郷)

リュウキュウミスジの可能性もあるけど、裏を見ないと分かんない。
それにしても、台湾でもコミスジは胴体の背中が金緑色なんだね。

【Neptis esakii エサキミスジ♀】
(2016年 7月 台湾南投県仁愛郷)

イケダミスジの可能性もあるけど、多分あってると思う。台湾のミスジチョウの中では最稀種だったと思う。

【Neptis hesione アサクラミスジ♀】
(2016年 7月 台湾南投県仁愛郷)

別名カレンコウミスジ。
これも台湾のミスジチョウの中ではトップクラスの稀種でしょう。

このグループの裏面は概ねこんな感じ。

【Neptis phiyra ミスジチョウ】
(2017年 6月 東大阪市枚岡)

日本ではそうでもないけど、台湾では稀種だそうだ。
所変わればで、或る場所では珍品でも他の所ではワンサカいるなんて事はよくあることだ。生物が繁殖する為には、様々なファクターが絡んでいるのだろう。

【Neptis soma タイワンミスジ】
(2016年 6月 台湾南投県仁愛郷)

イチモンジチョウ種群(Limenitis)の画像も添付しておこう。

【Limenitis sulpitia タイワンホシミスジ♂】
(2016年 7月 台湾南投県仁愛郷)

【Athyma arura ナカグロミスジ♂】
(2016年 7月 台湾南投県仁愛郷)

こっちも裏面を添付しておきますね。

【Athyma cama タイワンイチモンジ♀】

【同♂】

オスアカミスジ♀の体の根元から上翅中室に伸びる斜めの白紋は、コイツらにソックリだ。
そりゃ、普通はミスジチョウとかイチモンジチョウの仲間かなと考えるよね。

おまけにコミスジみたいに背中が金緑色なのだ。

(2017年 6月 台湾南投県仁愛郷)

コミスジの標本画像はまだ解りやすいけど、これだと解りづらいかな?(画像は拡大できます)。

一応、野外で撮った写真も添付しておきましょう。

(2017年 6月 台湾南投県仁愛郷)

とはいえ、ミスジやイチモンジ類に比べて胴体は遥かに太く、翅に厚みがある。
そこで頭に浮かんだのが、オニミスジ(オオアカミスジ)だ。

【Athyma eulimene オニミスジ♂】
(2013.1.20 Indonesia Sulawesi Palopo)

上翅中室の槍型の形といい、全体の斑紋形成といいオスアカの♀にソックリだ。胴体は太いし、翅も分厚い。触角だって長い。それにオニミスジも背中が金緑色だ。

オニミスジって、本当にイチモンジチョウグループなの❓オスアカミスジがイナズマチョウの仲間ならば、コイツだってそうなんじゃないの❓(註2)
そういえば、スラウェシ島で初めて採った時は、ミスジやイチモンジと同じグループにはとても思えなかった事を思い出したよ。

とにかく初めてオスアカミスジの♀と出会った時は、台湾にオニミスジなんていたっけ❓と、(゜〇゜;)?????チンプンカンプンになってた。
しかし、裏を見て、こりゃどう見ても別のグループの蝶ではないかと思った。

全然、斑紋系統が違う。
今になって注意深く見れば、目立たないが翅の基部にイナズマチョウ(Euthalia属)の特徴である紋様があることがわかる

【パタライナズマ裏面】

【タカサゴイチモンジ♀裏面】

【ホリシャイチモンジ♂裏面】

【イナズマチョウ♀裏面】

そういえばオスアカミスジの裏展翅はしていない。
去年、台湾で採った蝶を5分の1も展翅していないのだ。
しゃあない。先程の画像を拡大しまひょ。

【オスアカミスジ♀裏面】

一見わかりづらいが、イナズマチョウ群の特徴が見てとれる。

まあ、この辺のくだりはアメブロの採集記『発作的台湾蝶紀行』を読んで下され(註3)。

で、その時は結局♂には一度も会えずじまいだったんだけど、去年は♂のポイントを見つけたので結構採れた。

あっ、♂も背中が金緑色に光ってる。
そういえばヒョウモンチョウの仲間も新鮮な奴は背中が緑色の奴がいるよね。
考えてみれば、オスアカミスジの♂って見た目がヒョウモンチョウっぽい。
もし♂が最初に採れてても、たぶん何じゃこりゃあ~\(゜〇゜;)/?????になってただろうなあ…。ウラベニヒョウモンはいても、こんな大きなヒョウモンチョウなんかいたっけ?って、悩んでいただろう。
よくよく見ると、♀もネコ科の大型肉食獣みたいな柄だ。
♂がレパード(豹)なら、♀はさしずめブラックタイガー、いやオオヤマネコってところか❓
(゜ロ゜)あっ❗、それで思い出したよ。
昔、台湾にも「高砂豹」とか「台湾虎」と呼ばれる大型のネコ科動物がいたのだ。

(出典『東京ズーネット』)

ウンピョウだ。
漢字で書くと雲豹。
雲のような模様を持つ豹という意味であろう。
だが、厳密的にいうとヒョウ属ではなくて、ウンピョウ属という独立した属に分類されている。

ネットで添付用の画像を探す。
あっ、ボルネオ(スンダ)ウンピョウというのもいるようだ。

(出典『子猫のへや』)

こっちの色の方が、よりオスアカミスジの♀に近い。

ウンピョウの分布はインド北東部、ネパール東部、ミャンマー、タイ、ラオス、ベトナム、中国南部と、以前は台湾だった(註4)。
しかし、長い間その姿は確認できず、2013年遂に絶滅が宣言されたという。
何だか、このオスアカミスジの♀が雲豹の化身に見えてきた。そんなワケはないのだが、雲豹の無念の想いがオスアカミスジに憑依したと思いたい。
そう思うと、この蝶がとても愛おしくなってきた。

けれど、開発が進んでいるとはいえ、山深い台湾だ。人間が入れないような地域もまだまだある。
台湾の山河に想いを馳せる。

今もひっそりと何処かで雲豹が生きていると信じたい。

                  つづく

 
追伸
またクソ長くなりそうなので、前、後編に分けることにしました。
次回は生態編になるかと思います。

(註1)長い間、分類学者を悩ませてきた蝶のようだ
台湾のイチモンジチョウ亜科(Limenitinae)は、4つの種群イチモンジチョウ種群(Limenitis)、ミスジチョウ種群(Neptis)、オスアカミスジ種群(Abrota)、イナズマチョウ種群(Euthalia)に分けられている。
『原色台湾蝶類大図鑑』によれば、大雑把に言うとオスアカミスジの交尾器はイナズマチョウ種群とミスジチョウ種群の両方の形質を具えているという。
しかし、交尾器を除く部分はイチモンジチョウ種群とも共通項がかなりある。見た目だけだと、ミスジチョウ種群よりもイチモンジチョウの方が近縁に見えるしね。
当時はまだ幼生期や食樹が判明していなかったので、そんなこんなで分類学者を悩ませていたと云うワケだね。

(註2)オニミスジだってイナズマチョウじゃないの?
でも、裏を見ると、イチモンジチョウとかミスジチョウ系の斑紋なんだよねぇ…。

(出典『Insect.Pro』)

現在、分類学上ではオニミスジはどう云う位置付けになっているのだろうか?
学名の頭、属名はAthymaになっているから、ナカグロミスジやタイワンイチモンジと同じグループに含められているのだろうが、イナズマチョウとの類縁関係はないのかしら?
ところで、果してその幼生期は判明しているのかな?

一応、ネットで探してみたが、見つからなかった。
もしかして、イナズマチョウ的ゲジゲジだったりしてね。

オニミスジは、和名をオオアカミスジと表記される事も多いが、あえて自分は図鑑『東南アジア島岨の蝶』に従って「オニミスジ」を使用した。だって、実際に採った事がある者にとっては、こっちの方が遥かに相応しいと思うからだ。鬼と形容したくなるくらいの迫力があって、魔物のような蝶なのだ。

(註3)
オスアカミスジは、アメブロの『発作的台湾蝶紀行』第9話「空飛ぶ網」と第29話「風雲、急を告げる」の回に登場します。

(註4)
ウンピョウは、台湾だけでなく、中国・海南島でも絶滅したとされている。
現在、生息している場所でも絶滅が危ぶまれている。
人前に滅多に姿を見せないため生態に謎が多く、それが保護をより難しくさせているようだ。

オマケにウンピョウの子猫の画像をお楽しみに下さい。

(出典『よこはま動物園ズーラシアへ行こう』)

子猫、メッチャ可愛いやんか❗