2019’カトカラ2年生 其の1第ニ章

 
   No.18 アサマキシタバ(2)

    『コロナ禍の狭間で』

 
2020年 5月24日

日本はもとより全世界を席捲している新型コロナウイルス禍は少し勢いを減じていた。それでも終息の兆しはまだ見えないと云う状況下、生駒山地の枚岡へと出撃した。

1週間ほど前から、そろそろアサマキシタバが発生しているのではないかと気にはなっていた。

【アサマキシタバ Catocala streckeri ♂】

(2019.5.23 奈良県大和郡山市 矢田丘陵)

だが去年みたく、たかだかアサマキシタバなんぞにフライングしたくなかった。あの二の舞は避けたい。それに今回求めているのはメスだ。少し遅めの始動で丁度よろしかろう。そう考えて、この日を選んだ。

午後5時半。
🚲ママチャリで難波を出る。
そう、アホはチャリで生駒まで行こうとしているのである。ここから枚岡神社まで優に15キロはある。ママチャリで上町台地を越え、生駒山地の途中まで登らねばならぬのだ。
普通の人間だったら、そんなおバカなことは考えない。電車で行けば30分だ。じゃあ何でそんな事を考えたのかというと、アホだからである。と言っては身も蓋もないので、もっともらしい理由を考えよう。
そうそう、運動不足だからである。それに此処にはスミナガシに会うため、5月のアタマに一度ママチャリで来ているのだ。つまり、自分の中ではもう普通の行動範疇なのである。
勿論、出来るだけ人との接触を避けたいと云う気持ちも根底にはあった。コロナを伝染(うつ)されたくないし、伝染したくもない。加えて、あのマスクと云うのが苦手だ。マゾじゃないから、ああゆう拘束具みたいなのは大嫌いなのだ。ストレスが高いわ。
ついでに言っとくと、その浮いた電車賃で高めの食材でも買うたろうかと思ったと云うのもある。今日は帰ったら、美味いもん食って、酒ガブ呑みじゃヽ(`Д´)ノ❗

難波⇒日本橋⇒上本町⇒鶴橋⇒今里⇒布施⇒永和⇒小阪⇒八戸ノ里⇒若江岩田⇒河内花園⇒東花園⇒瓢箪山と近鉄奈良線に沿って走る。しっかし、やっぱマジ遠いわ(;´∀`)
瓢箪山から枚岡駅までは地獄の坂じゃ。途中、立ち漕ぎも出来ないくらいのキツイ坂になった。仕方なくチャリを押して喘ぎながら登る。生駒山地は勾配がキツイんじゃ。日本一勾配のキツイ国道、最大斜度37%の国道308号もすぐ近くを通っておる。もう何で電車に乗らなかったんだろうと後悔しきりである。思えば後悔ばかりの人生だよ、おっかさん。

ようやくチャリが漕げる所まで上がって来たら、夕陽が沈もうとしていた。日が沈むまでには着いちゃる❗
鉄砲玉、ぴゅう━━━(((((((((((((((( ヘ(* – -)ノ

午後7時、ようやく枚岡駅に着いたところで、ちょうど陽が沈んだ。

(||´Д`)ハァハァー、(;;;´Д`)ゼェーゼェー。
ここまで1時間半かあ…。結構かかってる。けど電車だって30分かかる。そのたった3倍の時間で済んでると考えれば、まだ早い方なんじゃないか?

汗だくでヘトヘトだが、息つくヒマもなく準備を始める。
と言っても、懐中電灯をザックから出しただけなんだけどね。

さてさて、ここからが本番じゃよ。
今回の課題は、2つある。

①アサマの♀の触角って、もしかして短くねぇんでねえの❓
②アサマって、はたして糖蜜トラップにも反応しまんの❓

前回を読んでない人のために少し補足説明をすると、オスと比べてメスの触角が短いんではないかという疑念を持った。それを確認しようと云うワケなんである。んなワケなかろうとは思ってるけど。

2つ目は、去年はアサマを樹液でしか採っていないから、はたして糖蜜トラップにも寄ってくるのかどうかを確かめたかったからだ。
多くのカトカラが糖蜜トラップに誘引されるが、殆んど反応しない種もいる。正直、同じカトカラ属といってもワケわかんねぇところが多々あるのだ。例えば去年、カバフキシタバが樹液よりも糖蜜トラップに圧倒的に反応したなんてのは予想外の出来事だった。普通は逆なんである。当然、自然物の樹液に集まる昆虫の方が多いのである。そう云う例もあったゆえ、一通り実験しようと思ったのだ。調べていくうちに、糖蜜に集まる奴と集まらない奴との何らかの差異が見えてくるかもしれないと考えたのである。
また、標高が高いところではカトカラは糖蜜トラップに集まらないと云う定説があるが、ナマリキシタバなんかは標高の低い場所でも寄って来なかったりもする。でも樹液に来た例はあったりする。もうワケワカメなんである。糖蜜トラップをかけ続けることによって、この疑問にも答えが見つかるかもしれない。

枚岡神社を抜け、住宅街を通って椋ヶ根橋までやって来た。
辺りには誰もいない。そら、居るワケないわな。こんな時間に誰が山登りすんねん。

暗き森の入口に立つ。
超ビビリ男、((;゚Д゚))ブルッときた。武者震いだ。
いよいよ今年も始まりましたなあ。闇の絵巻、魑魅魍魎どもが跳梁跋扈する闇世界への潜入捜査が。
今更ながらに一人で夜の山に入るだなんて、どーかしてるぜ。嗚呼、虫採りなんかやめて、一般ピーポーに戻りたいよ。

意を決し、心を鎮めて急坂を登り始める。懐中電灯の光だけが闇を切り取っている。それが現世と幽世(註1)、現実の世界と冥界との境界線だ。要らぬことは考えずに足もとを照らす。勿論、👺👻👹👽魑魅魍魎どもはメチャメチャ怖いが、ここは先ずはマムシなどの🐍蛇に心を砕くべきだ。目の前の現実に集中してさえいれば、化け物どもも怖くない。敵は我が心中にあり。自身の紡ぎ出す想像と妄想こそが一番の敵なのだ。

7時20分。目的の尾根に辿り着いた。

風に木々がザワザワと揺れる。
(||゚Д゚)怖いですねー。(((( ;゚Д゚)))恐ろしいですねー。

ヤバい精神傾向だ。想念を遮断して、樹液の確認に行く。
(゜o゜;ゲッ❗、去年アサマが3頭飛来したクヌギの壮齢木の樹液が渇れとるがな。(++)ヤッベー💦
あと残るは、もう1本。アケビコノハがいた去年最初に見つけた木がダメなら、(@
@)アーパープーパーだ。

よっしゃ、ε-(´∀`*)セーフ。
幸いそのコナラの木の樹液は健在だった。っていうか、去年よりも確実に樹液量が増えていて、コクワガタが3頭も来ている。ちゅー事はアサマキシタバもそのうちやって来るだろう。取り敢えずは一安心だ。でも去年は安心したら、その後に大コケしたので予断を許さない。

( –)/占==3 シュッシュラシュッシュッシュッー。
霧吹きで糖蜜を木の幹に吹きつけてゆく。
辺りに甘い匂いが立ち込める。今回の糖蜜は何が入ってんだっけ❓ 嗅いでみるが、複雑過ぎてワカラン。たぶん焼酎とかビールとかのアルコール類に、甘系ジュースだの酢だのその他モロモロが入っとるんだろなあ。去年、王者ムラサキシタバを採りに行った時(註2)に使った残りだから、憶えてねえや。

何か痒いなと思ったら、🦟蚊がワンサカ寄ってきとるー。
(≧▽≦)しもたー。虫除けスプレーを忘れた。カトカラ開幕戦ゆえに携行品に漏れがあったか…。のっけから躓いた感じでヨロシクない流れだよ。

7時28分。
早くも樹液にアサマキシタバがやって来た。
取り敢えず、写真でも撮っとくか。

しかし、スマホではクソしょーもない写真しか撮れん。被写体が小さくしか写らんし、懐中電灯を照らして片手で撮ってるからブレブレだ。
仕方なく至近距離まで近づいて撮ろうしたら、(-_-)チッ、逃げやがった。
何やってんだ❓、俺。先ずは撮る前に採れよなー。余裕カマし過ぎだぞ。
とはいえ、まあそのうちまた戻って来んだろ。去年の記憶では、1頭飛んで来たら立て続けに飛んで来たもんね。

しかし、後が続かない。
糖蜜トラップには、雑魚キャラのキマワリとヨツボシケシキスイ、名前も知らんクソ蛾とオオクロナガオサムシしか寄ってこん。

誰じゃ、おまはん❓
名前もワカランし、無視する。

クロナガオサムシ系とマイマイカブリは樹液とか糖蜜が好きなんだなと改めて思う。でも、オオオサムシとかヤコンオサムシなどの Ohomopterus属は見たことがない。地面に埋めた糖蜜トラップには来るのに何で❓木に登るのは苦手なのかな❓

デカい百足(ムカデ)もやって来た。
( `ε´ )ったくよー。見た目といい、生き様といい邪悪過ぎるんだよ、テメェ。
そういえば、去年クロシオキシタバを採りに行った折り(註3)、ムカデに耳を思いきし咬まれたんだよなあ…。
突然、💥バチーッと、もう火箸でも押し付けられたんじゃないかと思うくらいの鋭い痛みが走って、飛び上がりそうになった。あとはズキズキした痛みが続いて、涙チョチョ切れだったよ。思い出したら、何かフツフツと怒りが込み上げてきた。復讐のジェノサイド、オドレ、虐殺したろか٩(๑`^´๑)۶
でも小さい奴でもあんだけ痛かったんだから、このクラスだと咬まれたらどんだけ痛いっちゅーねん。ムカデって、どう見ても暴君って感じだもんなあ。やめとこ。君子、危うきに近寄らずである。

8時になった。流石に💦焦ってくる。
アサマって、日没後早めにワッと飛んで来るんじゃなかったっけ❓だとすれば、今はゴールデンタイム。来ないのはどゆ事❓
最悪のシナリオが頭を掠める。
もしもあの、写真なんか撮ってて逃げられた奴が今日の最初で最後の1頭になったりして…。そう思うと顔が強張る。ならば、ここまで必死こいてチャリで来た努力も、闇の恐怖に耐えてきたことも、全ては無駄になる。
いかーん。頭の中で『スターダストクルセイダース』の大悪党、ディオのスタンド(註4)が無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄…と高速パンチを繰り出してる映像が浮かんどるやないけー。

何かのメタファー(暗喩)かよ。
木々がまたザワザワと騒ぎだした。
 
                        つづく

 
追伸
3話構成で完結させる予定が、無駄無駄無駄無駄無駄…無駄な事を書き過ぎて4話以上の完結になる事、決定であ〜る。
何やってんだ、オラ。

(註1)幽世
幽世(かくりょ)。隠世とも書き、常世(とこよ)とも言われる。
幽世・常世とは、永久に変わらない神域。死後の世界でもあり、黄泉もそこにあるとされる。「永久」を意味し、古くは「常夜」とも表記した。日本神話や古神道、神道の重要な二律する世界観の一方であり、対義語として「現世(うつしよ、げんせ)」がある。

 
(註2)王者ムラサキシタバを採りに行った折り
拙ブログの、2018’カトカラ元年 其の17第四章に『パープル・レイン』と題して書いた。読まれる方は、第一章から読んでね。クソ長いけど(笑)

【ムラサキシタバ♂】

(2019.9月 長野県松本市)

 
(註3)クロシオキシタバを採りに行った時に
拙ブログにクロシオキシタバの続篇として『絶叫、発狂、六甲山中闇物語』と題して書いた。

【クロシオキシタバ】

(2019.7月 神戸市須磨区)

註釈を入れるのを忘れたが、カバフキシタバの糖蜜トラップ云々の話(『リビドー全開❗逆襲のモラセス(後編)』)も書いたので、ソチラもヨロシクです。

【カバフキシタバ】

(2019.7月 兵庫県宝塚市)

 
(註4)ディオのスタンド
荒木飛呂彦の漫画『ジョジョの奇妙な冒険』第3部「スターダストクルセイダース」のヒール、ディオのスタンドであるザ・ワールドのこと。アニメの中で無駄無駄…と連呼して連続で攻撃しまくる。めちゃんこ強いのだ。
なお、第5部 黄金の風で、その息子ジョルノのスタンド、ゴールドエクスペリエンスも無駄無駄…と連呼してタコ殴りしよります。

【ザ・ワールド】

(出典 プレステ『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル』)

こんな感じっす。


(出典『ミドルエッジ』)

 

2019’カトカラ2年生 其の1

No.18 アサマキシタバ 前編

『晩春と初夏の狭間にて』

 
2018年にカトカラ(シタバガ属)を集めようかと思い始めた頃には、既にアサマキシタバの時期は終わっていた。
なので、2019年はまだ見ぬアサマくんからのスタートとあいなった。

思えば、カトカラを追い掛けるキッカケになったのはシンジュサン探しからだった。
蝶採りにも飽きてきて、この年はまだ見ぬ有名な昆虫たち、例えばオオトラカミキリとかオオチャイロハナムグリなんかを探そうと思っていた。予定調和は面白くない。未知なるモノを全智全能を傾けて採るから楽しいのだ。
そのリストの中にシンジュサンも入っていた。つまり、恥ずかしながらも実物のシンジュサンを一度も見た事がなかったのである。虫捕りを始めた時には、そう珍しいものではないだろうから何処かでそのうち会えるだろうと思っていたが、なぜか一度も出会えなかった。
で、この年は真面目に探し始めたんけど、これがどうにも見つからない。んなわけなかろうと、途中から必死モードになったんだよね(笑)。たぶんシンジュサンって、今や普通種じゃないんでねえの❓
その辺の苦労話は拙ブログに『三日月の女神・紫檀の魁偉』と題して書いたので、宜しければ読んでつかあさい。

【シンジュサン(神樹蚕)】


(2018.6月 奈良市)

その折りに、副産物としてフシキキシタバとワモンキシタバが採れて、ちょっとカッコイイかもしんないと思ってしまった。それが黄色いカトカラに本格的に興味を持ち始めた切っ掛けになった。
そういえば、その1ヶ月程前の5月中旬くらいにシンジュサンが見たくてA木くんにせがんでライト・トラップをしてもらったんだった。
場所をお任せしたら、彼は金剛山地の持尾方面を選定した。
だが。結局飛んで来たのはベニスズメとかコスズメくらいで、そのうち雨が強くなって早々と撤退。結局、シンジュサンは見れずじまいだった。
その時に、A木くんから『もう、アサマキシタバも出てるかもしれませんよ。』と言われたんだっけな…。
でも、アサマキシタバと言われてもピンとこなかった。よくワカンなかったから、生返事しか出来なかったように思う。言われてキシタバの仲間だろうと云う事くらいは何となく想像できたが、頭の中には図鑑等でインプットされた画像は一切無かったのである。
だから、もしもこの年、2018年に最初に出会ったカトカラがアサマキシタバだったならば、黄色い系のカトカラには全く興味を持たなかったかもしれない。正直、アサマキシタバは黄色いカトカラ類の中にあっては一番小汚いのだ。蛾は基本的に忌むべきものだったから、(`ェ´)ケッと思ったに違いない。汚いのは蛾の概念の域を出ない気色の悪い存在でしかないのである。

 
2019年 5月18日

小太郎くんに『アサマは見られる時期がわりと短いですよ。鮮度の良いキレイな個体を採りたければ、早めに行っといた方がいいんじゃないですか。』と事前には聞かされていた。たしかに去年ここを最初に訪れた時は6月上旬だったけど、ボロでさえも一つも見なかった。
今年は蝶の発生が例年よりも早いと言われているし、もう出ているだろうと思い、この日はその奈良県大和郡山市の矢田丘陵へと出掛けた。

この季節を人々は初夏と呼ぶが、自分の中では晩春だ。なぜなら、1年を夏は6,7,8月。秋は9,10,11月。冬を12,1,2月。そして、春を3,4,5月と便宜上区切っているからだ。だから、3月1日がどんなに寒かろうとも春だと自分に言い聞かせて気持ちを切り替えるようにしてきた。
とはいえ現実の感覚とか心は、けっしてそんな風には割り切れないところがある。今日はまだ5月だが、既に気分は半分夏だ。あれっ?自分で何を言いたいのかワカンなくなってるぞ。
まあいい、いつも通り構成を考えずに書き始めておるのだ。そのうち思い出すだろう。

ポイントへ行く道すがら、アルテミスと出会った。ギリシャ神話の月の女神だ。

【オオミズアオ】

あっ、今はアルテミスじゃないんだったな。本種の日本産の学名は Actias artemis から Actias aliena に変わっちゃんだよね。ものスゴくガッカリだよ。別種になったみたいだから、致し方ないんだろうけどさ。

そんな事はどうあれ、その儚き翠(みどり)はいつ見ても幽玄で美しい。
もうオイラの心の中ではアルテミス、月の女神でいいじゃないか。そうゆう事にしておこう。と云うワケなので、女神に会ったんだから幸先良いスタートだ。たぶん、この調子でアサマも余裕のヨッちゃんで楽勝ゲットだろう。前向き軽薄男は御都合主義のプラス思考なのだ。

(ー_ー゛)……。
しかし、去年カトカラがわんさか集まっていた樹液出まくりのクヌギの大木には何にも居なかった。
たぶん樹液が出ていないのだ。😰あっちゃっちゃー。そんな事はまるで予測していなかったので、ものスゴ〜く💦焦る。どうせ樹液で採れるからと糖蜜トラップは持ってきてないし、此処では外灯に集まって来る個体は樹液に集まるものよりも遥かに少ないからだ。余裕のヨッちゃん気分が一気にフッ飛ぶ。

オラ、もう必死のパッチで他に樹液が出ている木を探しましたよ。そいだらこと縁起が悪いべよ。開幕戦からー、コケるのはー、何としてでもー、避けねべならねっ。
で、何とか3本の木を見つけることが出来た。しかし、どれも少量の樹液しか出ていない。もしもコクワガタくんが来てくれていなけりゃ、見つけられんかったよ。それくらい心もとない樹液滲出状況なのだ。
こりゃ採れんかもしれん…。林内の闇の中空に、行き場を失った不安が所在なげに浮遊する。
いかん、いかん。悲観的な考えは後で恰好な言い訳の材料になる。ダサいぞ、俺。そんなもんは直ぐ様うっちゃって、プラス思考に切り替えよう。でないと、益々採れんくなる。
樹液状況が芳しくないとはいえ、コクワガタくんが来てるんだから大丈夫っしょ。飛んで火に入る夏の虫、デヘデヘ🥵。悪意に満ちたストーカー変態男が待伏せているとも知らずに、そのうちノコノコやって来るっぺよ。
危うしアサマくん、Σ(゚∀゚ノ)ノキャアー、逃げてぇー。
ひとしきり一人遊びしたところで、いつもの前向きオチャラケ男に戻る。

(ー_ー;)……。
(。ŏ﹏ŏ)……。
༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ༽……。

けれども、待てど暮せどアサマキシタバはいっこうに姿を見せない。
もしかしてフライング❓ それとも今年はムチャクチャ発生数が少ないとか❓ 或いは何らかの理由で、ここでは既に絶滅してたりとか❓ だから去年、6月上旬でも見れなかったのかもしれない…。頭の中をあっちゃこっちゃ色んな思考が駆け巡る。

とにかく、まさかの展開である。アサマって嘗ては珍品だったらしいけど、最近は普通種に成り下がったと聞いていたし、2015年には大発生したみたいで、その時の話も散々ぱら聞かされてもいた。何と大阪市内や神戸市内、果ては関西空港の外灯にもいたらしい。そんなワケだから、戦う前から楽勝気分だったのだ。
もしかして、樹液に来るのはメチャメチャ遅い時間だったりして❓ 前向きに考えるも、でもそんな情報、聞いたことがない。だいち、もしもそんな特異な生態をもっていたならば、沢山採ったことのある小太郎くんが必ずや言及している筈だ。

🙀ゲロゲロー。
結局、樹液に来たのはコクワガタとクロカタビロオサムシくらいだった。
クロカタビロオサムシが樹液を吸汁するなんて聞いたことがなかったから、一応証拠写真を撮っとくことにした。オサムシ屋さんにとっては、多分それなりに価値ある例だろう。オイラ、こう見えても小学生の時は、日浦(勇)さんに「オサムシ少年」と呼ばれていたのだ。オサムシの知識のベースはそれなりにある。

【クロカタビロオサムシ】

(2019.5.18 奈良県大和郡山市 矢田丘陵)

この画像を Facebookに載せたら、オサムシの研究で知られる神吉正雄さんからワザワザ連絡があったくらいだから、かなり珍しい例のようだ。と云うことで、この写真はニュー・サイエンス社の学術誌『昆虫と自然』にも掲載された。
エヘヘ(^^)ゞ、タダではコケない男なのである。

(ノД`)グスン。そんなこと言ったって、所詮は負け犬の遠吠えである。現実は惨敗なのだ。夜道を1時間半、暗澹たる思いで駅まで歩いて帰ったよ。

 
2019年 5月23日

前回採れなかったので、満を持して5日後に再訪した。
5月下旬ならば、絶対に発生している筈だ。それでも会えないとなれば、ここには居ないということだ。捜索は振出しに戻る。つまりイチから場所の選定をし直さなければならない。

まさか、そんなわきゃなかろう。たかだかアサマキシタバだ。大丈夫だろう。そうは思うが、正直なところ半信半疑だった。
夜の森を一人でウロウロしてるだけでもストレスなのに、また採れないとなると最悪な気分になること必至だ。それだけは何としてでも避けたいところだ。
それにアサマで2連敗なんかしたら、小太郎くんあたりに何を言われるかワカったもんではない。もし今日も採れなかったら、黙っておこう。2連敗の事実は闇に永遠に葬り去ろう。

午後7時。
やがて日が沈んだ。この黄昏から夜へと移る時間帯は毎回心がゾワゾワする。逢魔が刻(おうまがとき)なのだ。この時間帯が暗闇よりも寧ろ恐かったりもする。これは来たるべく黒い闇を怖れて心が敏感になっているからだろう。口裂け女が現れるのも、この時間だというしね。

『ワタシ、キレイ❓』

😱ゾクッときた。口裂け女のセリフを思い出して、背中に悪寒が走ったのだ。そして、もしも口裂け女が出たらと想像してしまったのである。マジ、それ怖すぎー😭。
あんなもんに横走りで追い掛け回されたら、😭涙チョチョギレで超マッハで走らねばならぬ。でも口裂け女は100メートルを5秒で走るというから、小学校6年間と中学3年間、ずっとリレーの選手でトップかアンカーをつとめ、100メートルを12秒フラットで走れたワシでもソッコー追いつかれるだろう。そして、そして…。
次々と、その後のヤバい展開の映像が浮かんでくる。
いかん。恐怖の連鎖反応じゃ。恐怖が恐怖を呼んでおる。想像力こそが恐怖を増幅させるのだ。これ以上想像したら、発狂してしまう。
 
負の脳内物語を全て頭から遮断し、心頭を滅却させる。
 
٩(๑`^´๑)۶、ヤアーッ❗

『臨、兵(びょう)、闘、者、皆(かい)、陣、烈、在、前(ざん)、オンソワカー❗』(註1)
 
左腰から右上に手刀でキレッキレで、空を「九字切り」する。
念の為に同じ呪文を唱えながら、神様の形を真似て手指を結び、「契印(手印結び)」も行う。
もう気分は、陰陽師 安倍晴明じゃよ。式神も出したろか、ワレ。
  
7時20分。
空はまだ仄かに明るかったが、森の中は真っ暗になった。
闇の物語の始まりじゃあ〜と思ったら、らしきものが直ぐにパタパタと飛んで来た。そして、先日クロカタビロオサムシがいた木と同じところに止まった。
たぶんアサマキシタバで間違いなかろう。この時期にいるカトカラはアサマしかいない。何だかε-(´∀`*)ホッとする。

ヘッドライト、オーン💡
網を構えて距離を詰める。緊張感は、さしてない。会えたと云う安堵の心の方が強かったのだろう。
取り敢えず、💥ダアリャー。網を幹に強く叩きつける。すると、驚いた彼奴(きゃつ)は自ら網の中に飛び込んできた。
もう、この採り方もお手の物である。網の面を正確に幹と合わせる事と、力加減さえ間違えなければ、ほぼ百発百中だ。

今思えば、この頃(2019年初夏)はまだ、こんな博奕度の高い採り方をしてたんだね。もっと楽勝の採り方を編み出したのは、もう少し後の事だったわ。たぶんカバブキシタバかマホロバキシタバの時だね(註2)。

素早く毒瓶にブチ込み、〆る。
暫く経ったところで取り出し、手の平に乗せる。

【アサマキシタバ ♂】

(裏面)

冒頭に『もしもこの年、2018年に最初に出会ったカトカラがアサマキシタバだったなら、黄色いカトカラには興味を持たなかったかもしれない。』と書いたように、その第一印象は酷いものだった。カトカラを本格的に集めようと思っていたから、採れたのは素直に嬉しかったが、一方、右脳は別な評価を下していた。
『チビだなあ…。それに何だよ、コイツの下翅。黄色いとこが少ないし、オマケにその黄色に鮮やかさがまるて無いじゃないか。薄汚れてて美しくないなあ。それに何だか毛深いや。』
正直、お世辞にも全然魅力的には見えなかったのである。

その後、この日は4、5頭程が飛来した。
ド普通と聞いてたけど、今回そうでもないと実感したよ。その年により発生数の増減が激しい種なのかもしれない。

 
2019年 6月3日

♀があまり採れていなかったので、もう1回訪れた。
この日は小太郎くんも参戦してくれた。

コナラにウスタビガの幼虫がいた。

【ウスタビガ 終齢幼虫】

一瞬、持って帰ったろかと思ったが、やめた。
面倒くさがりやの自分には飼育は向いていないからだ。それに、尻の一部が茶色い。小太郎くん曰く、寄生されてるかも…と云う意見もあったしさ。

この日も日没後、暗くなったら、アサマくんたちが樹液に飛来した。やはり飛来時刻は早い。
で、いくつか連続でゲットしてソッコー飽きた。

 
2019年 6月6日

この日は、夕方に生駒山地の枚岡にウラジロミドリシジミの様子を見に行った。

【ウラジロミドリシジミ ♂】

こんなに美しいのに、酷い和名だなと思う。
何で、この色にフォーカスしないのさ。

たぶん、この裏面からのネーミングだと思うけど、もっと他に名付けようがあっただろうに。
学名は、Favonius saphirinus。小種名の語源は宝石のサファイアだぜ。学名が先に有りきの和名の命名だろうから、より想像力の欠如と言わざるおえない。

折角だからと、ゴージャスな夕日を見て帰ることにした。

けど、ついでに夜までいた。
 

 
べつに夜景を見たかったワケではない。理由は他にある。
生駒山地の昆虫調査をしている東さんが、フシキキシタバの記録が無いと言っていたのを思い出したのだ。
矢田丘陵にフシキキシタバがいるなら、隣の生駒山地にいないワケがなかろう。それって、蛾屋の怠慢じゃないか❓だったら、それをお茶の子さいさいで証明してやろうと云う心が芽生えたのである。負けず嫌いのイヤらしい性格なのだ。
しかし、同時にこうも思っていた。東さんは協力者が少ないのに真面目に調査してはるみたいだし、世話になってるところもあるから少しは貢献しようとも思ったのである。嘘じゃなくて、そう云う殊勝な心もちゃんとあったんだかんね。

それに樹液が出ている木を探しておいて損はない。
10年ここに通っているが、いまだもってスミナガシ(註3)の♀が一度も採れていないんである。どころか見たことさえ殆んど無い。どうやらメスは、ほぼ樹液でしか採集は望めないようなのだ。でも、枚岡って意外と樹液がバシバシ出てるような御神木的な木が無いのだ。だから、そういう木を昔から探しているのだが、標高の低いイージーな場所では、ナゼか見つからない。昼間に樹液の出ている木を探すのは意外と難しいのだ。むしろ夜の方が意外と見つけ易かったりする。その事に気づいたのは、カトカラ採りもするようになった去年(2018年)だった。夜は視界が制限されるから、かえって集中力が高まるし、蛾、特にヤガの仲間は懐中電灯の光が当たると目が光るから目印になるのだ。また昼間よりも樹液に集まる昆虫が多いので、目につきやすい。昼間はあまり見ない夜行性のカブトムシやクワガタなどの大型甲虫も集まるから、よく目立つのである。

日没後、ウロウロしていると懐中電灯の光がアケビコノハの姿を捉えた。

【アケビコノハ】

(2019.6.13 )

コヤツが木に下翅を開いて止まっていると云うことは、樹液が出ている証拠だ。(^3^♪オホホ、ソッコーでフシキがおることも証明したるわい(ノ`Д´)ノ❗

そして、別な木だが樹液に来てるアサマも3頭見つけた。
しかし、3頭とも羽が傷んでいたのでリリース。場所は違えど、初見からまだ10日だぞ。ボロになるのが早過ぎやしないか❓
 
アサマがいるなら、フシキも採れんだろ。採れなきゃ採れないで、いないって逆証明にもなりうる。ただ、季節的には発生初期だろうから、まだ発生していない可能性もある。かりに発生していても、出始めで個体数は少ないだろう。

結局、フシキキシタバは樹液には来なかった。
だが、帰りの夜道で飛んでるのをシバいたった。

【フシキキシタバ ♂】

やはり、いたね。
ザマー、見さらせである。センスを証明されたいがために虫採りやってんのかもなあ。
 
 
2019年 6月12日

この日はアサマではなく、フシキキシタバを探しに矢田丘陵へとやって来た。

ガクアジサイがひっそりと咲いており、夕暮れのそよ風に嫋(たお)やかに揺れている。

予想したとおり、フシキキシタバは最盛期に入ろうとしていた。

【フシキキシタバ♂】

どれも新鮮な個体ばかりだ。

【同♀】

アサマと比べたら、遥かに美しい。

アサマも飛んで来たが、既に古びたボロ個体ばかりで数も少なかった。見たのは2頭だけだ。初見から20日足らずで、この状態とあらば、やはりアサマって発生期間が短いようだね。
 
 
2019年 6月13日

翌日に兵庫県宝塚市にカバブキシタバの下見に行った時も、大量のフシキキシタバに混じってボロボロのアサマを1頭だけ見た。この例からも、成虫の発生期は他のカトカラと比べて、比較的短いのではないかと思う。

2019年に採ったアサマキシタバの展翅画像を貼り付けておこう。

【Catocala streckeri アサマキシタバ♂】

形はカッコイイと思うんだけど、下翅が汚い。
それにしても、酷い展翅だな。上から3、4つまではまあまあだけど、段々酷くなっていってる。

【同♀】

更にメスは目を覆いたくなるような出来だよ。このテキトーさ加減、対象に対する愛が感じられないねぇ。これは年を越えたゆえ、カトカラに対する概念がリセットされて、アサマを見て改めて所詮は蛾だと云う認識に逆戻りしたのかもしれなーい。オイラ、元々は生粋の蛾嫌いなのだ。

それはさておき、何か♀の触角が短くないかい❓

【♂裏面】

【♀裏面】

裏展翅のコレも♀の触角が短いぞ。
気になるから、石塚さんの『世界のカトカラ』を開いてみた。

♂と比べて、やっぱ少し短くなくねぇか❓
今一度、アチキが展翅した♂の画像と見比べて戴きたい。明らかに♂の触角は長いよね。でも、この一つだけじゃ何とも言えない。慌てて他の♀画像に目を転じる。

あっ、コレも短い。と一瞬思ったが、左の触角はそうでもない。
٩(๑`^´๑)۶ハッとさせんじゃないよ。

一瞬、これも短いと思ったが、コチラは右の方の触角が長い。
長い方が本来の長さだろうから、たぶん♀の触角が短いなんて気のせいだろう。

あっ、短い❗とコレも思ったが、よく見れば左側が少し長いな。やっぱ、きっと気のせいなんだろうな。
 
それはさておき、しかしこうも触角の先って切れるもんかね❓
何か理由があるのかもしれない。元々メスは左右の触角が同じじゃない個体が多いとか、メスって極めて触角の先が折れやすいとかさ…。
(ノ´・ω・)ノ ミ ┻━┻、んなワケあるかーい。理由として論理的に苦しいわ。アカンな。
 
おーっと、そうだ。オスも見てみよう。
 

 
ヽ(`Д´#)ノクソッ、コイツもかよ。右の触角が折れとるのか短いじゃないか。アサマって、そんなにも触角が折れやすい種なのか❓
それはさておき、左の触角はメスよかオスの方が長いような気がする。けど、微妙な長さではあるんだよね。上から3番目、番号10のメス個体も触角が長めだからなあ。
ならばと他のオスを探すが、(・o・)ありゃま。でも他にオスの標本が図示されてない。オスはこの1個体だけなのだ。それじゃサンプルが少な過ぎて、これ以上は何とも言えないや。
 
異常型だが、メスをもう1点。


(以上すべて、石塚勝己『世界のカトカラ』より)

これは明らかに短いような気がするぞ。
けど短い感じたものが偶々(たまたま)連続したから、そうゆう印象を最初に持ってしまっただけなのかもしれない。こんなどうでもいいような事をグダグダ書いてたら、レベルが低いと笑われそうだな。声高に論じるテーマとも思えんしなあ…。

まあ気のせいだとは思うけど、今年(2020年)、確認しに行こう〜っと。
 
                         つづく
 
 
追伸
終わりそうで終わらない物語みたいでヤだけど、アサマキシタバの話は尚も続きます。このままいくと3話構成にはなる。3話で終わることを祈るよ。

えー、この文章は3月の時点で下書きが粗方出来上がっておりました。でも、触角問題と生態面でハッキリとしないところがあって一旦お蔵入りになってました。そこにある程度の目処(めど)がついたので、晴れて蔵出しとあいなったワケである。
けんど、シリーズ初回にも拘らず、改めて文章の手直しを始めだら、大脱線。要らぬところで筆が止まらず、大幅訂正加筆の1.5倍以上に膨れ上がってしまった。我ながら、愚かじゃよ。

愚か者ゆえに、次回は触角問題に切り込むでぇ〜。まだ一行も書いてないけどー。
嗚呼、次もどうせ大脱線になりそうだ。自分にウンザリだよ。
 
 
(註1)『臨、兵、闘、者、皆、陣、烈、在、前』オンソワカ
悪霊退散の呪文の1つ。九字を唱える事でその場を清め、結界を張ることも出来る。
これは「仏の言葉」や「秘密の言葉」と言われる真言の一種で「神様の軍隊が通るため、立ち去るように」という最終通告を意味している。
また九字護身法には、悪霊や邪気、災いを祓う浄化効果だけでなく、その人が持つ霊力を高めて幸福へと導く開運効果もあるとされている。

オンソワカの「オン」は、真言の頭につける慣用句。「帰命する」という意味。
「ソワカ」は聖句の末尾につけられ、「成就あれ」の意味。

 
(註2)カバブキシタバかマホロバキシタバの時だね

【カバブキシタバ】


(2019.6 兵庫県宝塚市)

上がオスで、下がメスである。次のマホロバも同じ。

 
【マホロバキシタバ】


(2019.7 奈良市)

木の幹に止まったカトカラの簡単採集法は、たぶんカバブキシタバの時の後半辺りで気づき、マホロバの時に確立した。採り方は、マホロバの回の時にでも詳しく書くつもりだ。まあ、蛾捕りの天才であるマオ(小林真央くん)も、その採り方を実践してたから、知ってる人は知ってんだろうと思うけどね。

 
(註3)スミナガシ 
タテハチョウ科に属するチョウの一種。

【スミナガシ 春型♂】

 
(裏面)

(2018.4.28 東大阪市枚岡公園)

名前の由来は、平安時代から続く伝統的な芸術技法であり、遊びの一種でもある「墨流し」から。墨汁を水に垂らした際に出来る模様、及びそれを紙に写したもので、その模様を布に染めた物のことも指す。

 

2018’カトカラ元年 其の17 最終章

   vol.17 ムラサキシタバ
       最終章
      『紫の肖像』

 
さてさて、早くも第四章から中ニ日でのシリーズファイナルの解説編である。そう、いよいよの泣いても笑ってもお終いの、シリーズ完結編なのだ。
また苦労を強いられそうだが、最後の力を振り絞って書こう。

 
【ムラサキシタバ Catocala fraxini ♂】

(2019.9月 長野県 白骨温泉)

 
【同 ♀】

(2018.9月 長野県 白骨温泉)

 
【裏面】

(2019.9月 長野県白骨温泉)

 
このムラサキシタバが、Schank(1802)によって最初のシタバガ属(Catocala属)として記載された。つまり、カトカラ属の模式種であり、会員ナンバー1番なのである。もう、無条件に偉い。
それだけでも偉いのに、このムラサキシタバ、他にも賞賛される要素がてんこ盛りなのである。下翅にカトカラ属で唯一の高貴なる青系の色を有しており、属内では有数の大きな体躯を持ち合わせている。まだまだある。美しき後翅と前翅とのコントラストの妙、バランスのとれたフォルム、そこそこの稀種で簡単には見られないと云う絶妙なレア度etc……。蛾嫌いでも興味を唆られる、謂わば蛾界のトップアイドルであり、スター蛾なのだ。
そもそも図鑑(原色日本産蛾類図鑑)でさえも「見事な蛾で、それを得たときのうれしさはまた格別である。」なんて云う、図鑑の解説を逸脱したような個人的見解が入っているのだ。
だから、めちゃんこ人気が高い。かくいうワタクシも憧憬の想い、いまだ止(や)まずである。

 
【学名】Catocala fraxini (Linnaeus, 1758)

属名の「Catocala」は、ギリシャ語の「Cato=下」と「Kalos=美しい」を合わせた造語である。

小種名「fraxini(フラクシーニ)」は、ブログ『蛾色灯』によると、ラテン語で「灰」という意味なんだそうな。そして「後翅の紫には触れないのか…。」と云う感想を述べられている。
確かに「fraxini ラテン語」でググると「灰」と出てくる。ムラサキシタバの上翅は灰色だから、これは理解できなくもない。だが、何で鮮やかな下翅の紫色を無視して灰色なのだ❓アッシも解せないよなあ…。だとしたら記載者の Linnaeus って、相当なひねくれ者だよな。
(・o・)んっ⁉️
この”Linnaeus”という人物ってさあ、もしかして「分類学の父」とも呼ばれ、動植物の学名方式を発明した博物学者のあのリンネのこと❓リンネのラテン語名はカロルス・リンナエウス(Carolus Linnaeus)だった筈。ってことは、リンネ大先生って偏屈者の変人だったのかな❓

けどさあ…、だとしてもだ。「灰」というのは何か納得できないよなあ。
と云うワケで、植物の学名で同じようなものはないかと思って検索してみた。

すると、Pterocarya fraxinifolia(コーカサスサワグルミ)というのが出てきた。
小種名の由来は、Fraxinus(トネリコ属)➕foliaの造語で「トネリコの葉のような」という意味なんだそうな。
そこで🖕ピンときた。ムラサキシタバが最初に記載されたヨーロッパでは、🐛幼虫の食樹としてトネリコ属も知られていた筈だからである。

あ~、のっけから迷宮に迷い込みそうな予感だ。いや、これって最早たぶん、下手に足を突っ込んどるパターンとちゃうかあ…。

次にトネリコ属 Fraxinus(フラキシヌス)の学名の由来を調べてみることにした。
トネリコ属はモクセイ科に分類され、英語名は、Ash(アッシュ)のようだ。ここでまたピンときた。アッシュといえば思い浮かぶのが、アッシュカラーや木材のアッシュだよね。

アッシュを英語で直訳すると「灰」だ。そこから転じてアッシュカラーは、灰色、ねずみ色、鉛色を意味している。
一方、木材としてのアッシュは、ネットで見ると主にセイヨウトネリコ(Fraxinus excelsior)のことを指すようだ。木には、古い英語で“spear(槍)”の意味があるんだそうな。更にラテン語の Fraxinusも同じく「spear(槍)」の意味があるという。或るサイトでは、“灰”の ash とは関係ないみたいだとも書いてあった。
と云うことは、学名の語源は「灰」ではないってワケかな❓
何か、益々ややこしくなってきたぞ。

とりあえず、「トネリコ」で検索ちゃん。
それによると、日本のトネリコには「Fraxinus japonica」という学名が付いてて、日本の固有種のようだ。
余談だが、野球のバットの原材料として知られるアオダモもトネリコ属に含まれる。

(ノ∀`)あちゃー。他のサイトを見て、ズッコケそうになる。
一部、抜粋要約しよう。

『学名の Fraxinus は「折れる」を意味するラテン語に由来する。これは木が容易に裂けることからだといわれる。
北欧神話では世界樹ユグドラシルはトネリコ(セイヨウトネリコ)であるといわれ、最高神オーディンに捧げられたほか、セイヨウトネリコからは人類最初の男性であるアスク(Ask)が作られたという伝説がある。
また、木材が槍の柄に使われたところから、槍、さらには戦闘を意味するようになり、そのためかギリシャ神話やローマ神話では戦争の神マルス(マレス、アレス)の木とも言われている。ゆえに、ヨーロッパ北部では持ち主を保護する木として家の周りに植えられた。
花言葉は「高潔」「荘厳」「思慮分別」「私といれば安心」。
占星術では獅子座の支配下にあるとされる。』

「槍」かあ…。「灰」より、もっとワケがワカランぞ。
いったいムラサキシタバと槍がどう繋がるというのだ❓
こうなると、さらに突っ込んで調べるしかあるまい。

「折れる」関係で探してみたら『Fraxとは略語で骨折。語源は、fracture=折れる。』というのが出てきた。
となれば、コレも候補になる。でも「折れる」とムラサキシタバにどういう結び付きがあるのだ❓
もうサッパリわからんよ。迷宮世界だ。

遠回りかもしれないが、ここは原点に帰って、根本から攻めていこう。語尾に何かヒントはないだろうか❓

トネリコの属名の「Fraxinus」はラテン語の形容詞の男性形であろう。
接尾語の~inusは「の様な、~に属する」を付した派生語男性形かな…❓
(ㆁωㆁ)アカン…。早くも脳ミソがワいてきた。
さらに調べてると、ムラサキシタバの学名「fraxini」は、もしかして「fraxin」の語尾に「i」を付け加えた男性の形容詞の最上級ではないか?とも思えてきた。書いてて、 益々アタマがこんがらがってくる。
或いは、属格の名詞で、語尾に「~i」が付くケースで、「トネリコの」的な意味でいいのか❓
属格だの接尾語だの自分でも何言ってるのかワケワカンなくなってきた。だいたい昔から外国語の文法も日本語の文法も苦手なのである。目的語とか所有格とか知るか、ボケー💢😠なのである。

(@_@)んー、だいち、こんなんで解決にはならーん。

ヤケクソでクグリまくってると、昆虫で同じ小種名のものにヒットした。
どうやらアメリカに、Arubuna fraxini という蛾がいるようだ。英語版の Wikipedia によると、以下のように解説があった。何となく、良い予感がした。鉱脈に当たったか❓

「Albuna fraxini, the Virginia creeper clearwing, is a moth of the family Sesiidae. It is known from the northern United States and southern Canada.」

翻訳すると「Arubuna fraxiniは「ヴァージニア・クリーパー・クリアウィング(ヴァージニア州の透明な翅を持つ這う昆虫の意)」と呼ばれるスカシバガ属の蛾の一種。アメリカ北部とカナダ南部から知られている。」といったところだ。

更に読み進めると、以下のような記述が出てきた。

「The larvae feed on Virginia creeper, white, red, green, and European ash, and sometimes mountain-ash.」

これは幼虫の食餌植物はトネリコ属のホワイトアッシュ、レッドアッシュ、グリーンアッシュ、ヨーロッパアッシュ。マウンテントネリコであることを示している。

 
(Arubuna fraxini)

(出典『Butterflies and Moths of North America』)

 
つまり、学名は食樹に由来していると云うワケだ。となれば、ムラサキシタバの学名も、その由来は「灰」ではなく、幼虫の食樹である可能性が高いと思われる。もう、そゆことにしておこう。間違ってたら、ゴメンなさいだけどー😜

にしても、食樹が学名とはダサくねぇか❓
これほど立派な見た目なんだから、もっと粋なネーミングがあって然りだろう。
もしかしてリンネって、賢いけどセンスねえんじゃねえの❓
まあ、リンネのオッサンのセンスは、この際どうでもよろし。
よし、兎に角とりあえずは、第一関門突破じゃ。

 
【和名】ムラサキシタバ

紫といっても色の範囲は広い。

 

(出典『泉ちんの「今日も、うだうだ」』)

 

(出典『フェルト手芸の店 もりお!』)

 
青紫もあるし、赤紫だってある。そういえば藤色や藤紫、菫色なんてのもあるなあ。
日本の色表現だと、かなり細かく分けられていて「江戸紫」「葵色」「京籘」「若紫」「桔梗色」「竜胆色」「茄子紺」「紫紺」「二人静」「紫檀色」「紫苑色」等々、何十種類もがある筈だ(註1)。

正直言うと、帯の色は自分の感覚的には紫というよりも、青に近い感覚で見てる。
だからといって、和名を否定するつもりは毛頭ない。
なぜなら、「アオキシタバ」では何となく語呂が悪いからだ。ムラサキシタバが大好きな青木くんは喜ぶかもしんないけどさ(笑)。字面の見た目で、青キシタバか青木シタバなのか脳が混乱しがちだし、ムラサキシタバの方が言葉のリズムとしては断然に良いのではないかと思うからだ。
だいち日本では、古来より紫色が一番高貴な色とされてきた。聖徳太子が制定した「冠位十二階」でも、紫は最上位の色とされてる。だから天皇や上級貴族しか身につけられなかった。それに、布を紫色に染める染料が大変高価だった為、富のある者しか身につけられなかったようだ。
また、紫は天皇の色とされ、一般庶民を筆頭に使用が禁じられていた時代もあった筈だ。紫色の衣服が庶民にも着られるようになったのは、江戸時代以降だったんじゃないかな。
そういえばローマ帝国や中国王朝でも、紫は最も高貴な色とされ、身分の高い者しか身につけられなかったよな。
ならば、青よりも高貴なる紫の方が、この蛾には相応しい色ではないか。オイチャンは、そう思うのである。

 
【英名】Blue underwing or Clifden nonpareil

「Blue underwing」の underwing は、カトカラ(シタバガ属)そのもののことを指すから、さながら”青いカトカラ”と云うことでいいだろう。
ふ〜ん、英語名は紫を示すパープルでもヴァイオレットでもなく、ブルーなんだね。欧米人の目線では、青に見えているのだね。前述したように、オラの目にも、どっちかというと青に見えている。

一方、クリフデン・ノンパレイルという名前の由縁は、イギリスでは18世紀のバークシャー・クリフデン地方で最初に見つかったからだろう。たぶん場所は現在の21世紀では、U・K(ユナイテッド・キングダム)ではなく、アイルランドだ。因みにノンパレイユはフランス語で「無比の、比較を越えたもの、比類なき、飛び切りの、特別な、最上の、逸材」といった意味があるそうな。つまり「クリフデンの比類なき者」ってところか。英国方面でも評価が高いんだね。

だが、1960年代には絶滅してしまったそうだ。これは戦後の施策により林業形態が変化し、針葉樹の森を植栽するために幼虫の食樹であるポプラ類が伐採されたからだとされている。
その後、何十年もの間、大陸側からの飛来で稀に記録されるだけだったが、近年になって目撃例が増え、さらには定着が確認されて、分布を各地に拡大しているらしい。
あっ、英文からのワシ意訳なので、間違ってたらゴメンね。

因みにドイツでも評価が高く「Blaues Ordensband」という名前が冠されている。
訳すと「青い勲章の綬」ということになる。これは勲章を胸に飾るための帯とかリボン、紐のことである。いかにも、この蛾の高貴な意匠にふさわしいじゃないか。
この呼び名は、ナチュラリストで知られるフリードリッヒ・シュナックの『蝶の生活』(岩波文庫)にあるそうだ。原文は読んでないけどさ。
とにかく、粋なネーミングだよね、それと比べて、和名のネーミングはクソ真面目で、マジ酷いものが多い。ルールに変に囚われ、虫の特徴のみを表すところに重点が置かれ過ぎててツマンナイ。粋じゃないのだ。
日本のチョウで、洒落てる名前だなと思うのは、スミナガシ、キマダラルリツバメ、コムラサキ、ヒオドシチョウくらいだろう。あとは横文字の、ルーミスシジミとかシルビアシジミくらいかな。
他にもあったような気もするが、言わんとしていることは解って貰えたかと思う。

 
【亜種】

Wikipediaには、以下のような亜種が表記されていた。

 
・Catocala fraxini fraxini(原記載亜種)

ヨーロッパのものだ。何処で最初に発見されたのだろうと思って探してみたが、『www.nic.funet.fi』で見ても「Europe」としか書かれていなかった。

 
・Catocala fraxini jezoensis Matsumura, 1931(日本亜種)

日本の亜種は、ヨーロッパの元記載亜種よりも大きいようだ。たぶんスペインや中国の亜種にも勝るだろう。
シロシタバなんかもそうだけど、日本のものの方が他国のものよりもカッケーかも。
あっ、学名の項で日本亜種の「jezoensis」について言及してなかったよね。これは語尾に「ensis」とあるから「〜産の」という意味で、前半分は地名を指している。
でも「jezon」って何処だ❓そんな地名、日本にあったっけ❓まさか、高級焼肉店の「叙々苑」でもあるまいし…。嗚呼、何か急に叙々苑に行きたくなってきたよ。マジで誰か連れてってくんないかな。
ネットで調べたら、同じ小種名を持つものにエゾマツがあった。学名は「Picea jezoensis」。それで、ピンときた。たぶん場所は蝦夷地のエゾを指しているんじゃないか❓で、アタマの「j」は発音しないものと思われる。
調べたら、👍ビンゴ。やはりそのとおりだった。ようは、日本では北海道で最初に見つけられたんだろね。

 
・Catocala fraxini legionensis Gómez Bustillo & Vega Escandon, 1975(スペイン亜種)

これまた、語尾からして地名由来のものだろう。
原産地は、”Leon”、”Villanueva de carrizo”となっている。これがヒントになった。おそらくLeon(レオン)はスペイン北部のカスティーリヤ・レオン州のレオンのことであろう。
調べてみると、古典ラテン語のローマ軍を意味する「レギーオ(Legio)」に由来し、910年に建国されたレオン王国を祖といるんだそうな。なるほど、ひとひねりしてる学名ってワケだ。
ところで、バイクでユーラシア大陸を横断した時には、レオンって通ったっけ❓
フランスのパリを出発して、ざっくり言うと、ル・マンを経由して古城で有名なロワール地方のトゥールに行き、さらにボルドー、アルカッションと移動して一番北の国境からスペインのIRUN(イルン)に入った筈だ。そこからサン・セバスチャン、ブルゴス、セゴビア、マドリード、トレドと旅した。その後、国境とは思えないような小さな村からポルトガルに入ったんだよね。何かクソ長い名前の村だったけど、何て名前だったっけ?
おっ、そうだ思い出した。Valencia de Alcantara(バレンシア・デ・アルカンタラ)だ。シェルの地図(註2)が画像で脳にインプットされてたようで、映像記憶ファイルから出てきた。
そこから海岸にあるナザレの町まで走ったんたよね。そうだ、そうだ。岬の横をジェット戦闘機が、超低空を爆音轟かせてド迫力で飛んでったんだよね。
あっ、いかん、いかん。また余談に逸れちゃったよ。そう云うワケだから、たぶんレオンには行っとらん。
しかし、あんな環境に果たしてムラサキシタバなんて、いるもんかね?レオンには行ってないけれど、スペインはフランスと比べて何処も乾燥がちで、森というか疎林といった感じのところばかりだった。つまり、日本の生息地とは、かなり環境を異にする。ナポレオンがピレネー山脈から向こうはアフリカだと言った意味が理解できたのを思い出したよ。それくらいピレネー山脈の北と南とでは様相が違うのだ。

 
・Catocala fraxini yuennanensis Mell, 1936(中国・雲南省亜種)

これも語尾は「ensis」だ。でも字面からも何となく想像できた。産地も”yunnan”となっていたから、雲南省のもので間違いなかろう。
調べたら、分布は雲南省南西部とあった。

参考までに言っとくと、『日本産蛾類標準図鑑』では、他にロシア南東部、中央アジアのものも亜種になっているとのこと。

 
【シノニム(同物異名)】

Wikipedia には、以下のようなシノニムが記されてあった。

 
・Phalaena fraxini Linnaeus, 1758

これは属名が違うから、ムラサキシタバが最初に記載された時には、属名は Catocala属ではなかったという事だね。
因みに、Phalaena(ファラエナ)という属はリンネが命名した大変古い属名で、今よりもっと大きな枠組の分類だったみたい。ドクガやシャクガなど多くの蛾がここに含まれていたようだ。
詳しく調べたら、何とリンネは初めに Lepidopera(鱗翅目)の中に Papilio(パピリオ=蝶)、Sphinx(スフィンクス=スズメガ)、Phalaena(その他の蛾)の3属しか設けていない。リンネはぁ〜ん、ザックリどすなあ。
とにかく、Catocalaという属は、のちに新設された属ってワケやね。

 
・Catocala fraxini var. gaudens Staudinger, 1901

原産地は”Ala tau”となっていた。たぶんカザフスタンと中国との国境に跨がるアラタウ山脈のことかと思われる。

 
・Catocala fraxini var. latefasciata Warnecke, 1919

原産地は”Amur region”、”Ussri”となっているから、アムール地方とウスリーだ。ようはロシア南東部ってことだな。
あれっ⁉️、ちょっと待てよ。一つ前のシノニムはカザフスタンのものだから、産地は中央アジアだ。という事は、亜種の欄でロシア南東部と中央アジアのものも亜種となっているようだと書いたが、たぶん岸田先生はコレらの事を言ってはったんじゃないのか?
おそらく今はカザフスタン、ロシア南東部のモノは、双方ともシノニムになってて、他の亜種に吸収されてしまったのだろう。

 
・Catocala jezoensis Matsumura, 1931

最初、松村松年は日本のものを新種として記載したんだろね。で、のちに亜種に格下げになったと云うワケだすな。あくまで推測だけど。

 
【変異】

上翅の色柄は、著しく白っぽいものから全体が暗化したものまであり、変異幅がある。今回も石塚さんの『世界のカトカラ』から、画像をお借りしまくろう。

 

(出典『世界のカトカラ』)

 
国外のムラサキシタバだが、右下が白化したもので、左上が暗化したものの典型だろう。一応、拡大しとくか。

 

 

 
もっと上翅の斑紋が不鮮明になり、メリハリの無いベタなのもいるようだ。

 
【近縁種】
北米には、本種に近縁のオビシロシタ(Catocala relicta)がいる。本種よりも一回り小型だが、やはりPopuls属(ヤマナラシ属、またはハコヤナキ属)を食樹としており、北アメリカの西から東まで広く分布している。

 

(出典『世界のカトカラ』)

 
これを初めて『世界のカトカラ』で見た時は、カッコ良過ぎて仰け反った。アメリカの国鳥ハクトウワシを彷彿とさせ、めちゃめちゃ貴賓と威厳がある。
とはいえ変異幅が広く、上翅が白ではなくてグレーのものや帯が淡い紫がかっているのもいる。

 

(出典『世界のカトカラ』)

 

(出典『Wikipedia』)

 
画像2枚目の奴なんかは、帯が紫がかってて、ほとんどムラサキシタバだ。帯が細いムラサキの異常型と言われても納得しそうである。

近縁種で思い出したが、ネット上にムラサキシタバと間違えてフクラスズメの写真が載せられていることがよくある。
まあ人間、間違うこともあるだろう。しかし、激怒されること覚悟で、敢えてモノ申す。

それって、マジダサい。

確かに彼奴が驚いて飛んだ時などは、一瞬垣間見える下翅の青色に反応してしまい『すわっ(・o・;)❗、ムラサキかっ⁉️』と思う時はある。でも次の瞬間には即違うことに気づく。ゴツくて汚らしいからだ。あれって、ホント💢腹立つよなー。
それで思い出したよ。山梨県の大菩薩山塊で必死にムラサキシタバを探していた時の事だ。樹液が出てるミズナラから突然、下翅か青い蛾が飛び出した。一瞬にして血が逆流したよ。でもそれがムラサキではなく、フクラスズメだと気づいた時のガッカリ感は半端なかった。同時に、あんなもんに見間違えた自分に激しく憤りを覚えたわ。その後、その木には何頭も寄ってきたから、憎悪の炎🔥が燃えたぎったね。
よく見ると、青い部分は中途半端なデザインだし、それに何よりも糞デフだ。フォルムが全くもって美しくないのである。上翅の柄もメリハリが無いし、まるで乞食爺さんみたいだと思ったよ。そもそも蛾嫌いなオイラにとっては、背中がゾワゾワするような邪悪な見てくれなのだ。

 
(フクラスズメ Arcte coeruta)

 
まだディスる。
こんなもんをムラサキシタバとずっと間違えたまんまの人って、どーかしてるぜ┐(´д`)┌
そういえば、虫屋の飲み会に遅れて行ったら、丁度、兵庫の明石城公園でムラサキシタバを見たと強く主張しているバカがいて、その場で『んなもん、100%フクラスズメじゃ❗そんな海沿いにおるわけないやろ、バーロー(ノ ̄皿 ̄)ノ ⌒== ┫❗』とボロクソ言ってブッ潰したことがある。
ちょっと大人気なかったかもしんない。ワシにボロクソ言われた人、ゴメンなさいね。同じことまだ主張するなら、ディスり殺すけどね( ̄皿 ̄)💢

 
(裏面)

(出典 上2点共『http://www.jpmoth.org』)

 
裏がまた、絶望的に汚ない。美しさが微塵も無いのだ。
しかも、これだけにはとどまらない。幼虫が死ぬほど醜くて超気持ち悪いのだ。あまりにも気持ち悪いから、画像は添付しない。気になる人は自分で探してくれたまえ。んでもって、思いきし鳥肌たてて仰け反りなはれ。
そういや、山梨の時はその気持ち悪さを思い出して益々憎らしくなってきて、マジで全員、網で叩き殺してやろうかと思ったよ。
そういうワケだから、見たことはアホほどあるが、採ったことは一度もない。ゆえに手持ちの標本も皆無。であるからして、ネットから画像をお借りしたのでありんす。
ついでに言っとくと、ムラサキシタバと同じくヤガ上科シタバ亜科に含まれるが、属は違い。フクラスズメ属である。認めたくはないが、意外と類縁関係は近いみたいだ。もう一言書き添えると、スズメガとは関係は浅い。和名は、鳥のスズメが羽毛を逆立てて冬の寒さに耐える様を「ふくらすずめ」と呼び、丸っこくて毛に覆われた様子をこの蛾に当てはめたものである。

 
【レッドデータブック】

福井県:希少種B(県レベル)
兵庫県:Cランク(少ない種・特殊環境の種など)
岡山県:稀少種
高知県:準絶滅危惧種
奈良県:稀少種
和歌山県:準絶滅危惧種

いつも思うんだけど、このレッドデータブックってヤツはどこかユルいわ。もっと指定されててもオカシクない都道府県が有るんでねぇの❓

 
【成虫発生期】

他のカトカラが盛夏に現れるのに対し、真打ち登場ってな感じで最も遅くに現れる。そこに風格、格の違いを感じる。謂わば、紅白歌合戦のトリや横綱みたいなもので、最後の最後に登場する大御所的な存在なのだ。この辺りも人気の高さに帰依しているところがあるのではないだろうか。

ネットの『みんなで作る日本産蛾類図鑑』では「8E-10」となっているが、早いものでは8月上旬、通常は8月中旬頃から現れ、10月下旬まで見られる。
新鮮な個体を得るには9月上旬までに狙うのが望ましいとされているが、時に10月でも新鮮な個体が得られるという。

 
【開張(mm)】

『原色日本産蛾類図鑑』では、92〜102mm。『日本産蛾類標準図鑑』だと、90〜105mm内外となっている。

日本最大のカトカラのみならず、世界的に見ても最大級種である。よくその大きさはシロシタバと並び称されるが、基本的にはムラサキシタバの方が大きいように思う。個人的意見だが、特に東日本では差異を感じる。シロシタバの方が小さいなと感じるのだ。じゃあ、何でそないな風に並び称されるのかと云うと、たぶん開翅長(横幅)だけで論じられることが多く、表面積で語られることが少ないからではなかろうか?

 

 
上が長野県産のムラサキシタバで、下が岐阜県産のシロシタバである。産地はそれぞれ白骨温泉と平湯温泉だから、場所はそう離れてはいない。
再度、個人的見解だと断っておくが、東日本のシロシタバは、ムラサキシタバに比して、どれも大体これくらいの大きさだ。東北地方や北海道で得たことはないから断言は出来ないが、たぶん甲信越地方のものと変わらんだろう。下手したら、もっと小さいかもしれん。
但し、西日本の低地のものはデカい。それでも表面積はムラサキシタバに軍配が上がるかと思われる。
両種ともカトカラ内の横綱であることは間違いないが、シロシタバは自分的には張出横綱って感じで捉えている。

 
【分布】 北海道、本州、四国、九州、対馬

主に中部地方以北に見られ、北海道では比較的個体数が多いようだ。西日本では少なく、近畿地方、中国地方では稀で、四国地方、九州地方では極めて稀。

一応、分布図を添付しておこう。

 

(出展 西尾規孝『日本のCatocala』)

 
石塚さんの『世界のカトカラ』の分布図も添付しておこう。
こちらは県別の分布図になっていることに留意して見られたし。

 

(出展 石塚勝己『世界のカトカラ』)

 
見ての通り、従来は九州では対馬のみからしか記録がなく、長い間、九州本土には分布しないとされてきた。図鑑は元より、ネット情報でも今だに殆どがそうなっている。
ところが、2011年に福岡県添田町英彦山と福岡市南区油山で採集されたそうな。また、この年は長崎県平戸や山口県秋吉台でも採集されている。九州本土内の福岡県,長崎県の個体はほぼ完全なものであったため,遠くから飛来した偶産とは考えにくく,現地付近で発生したものと考えられるそうだ。

中国地方では空白地帯になっていた山口県でも確認されたことにより、全県に記録がある事になった。
記録をあたってみると、岡山県恩原高原、西粟倉村、鳥取県若桜町、島根県鯛丿巣山、琴引山、島根半島で採集されている。広島県は北部にいるらしいが、地名は拾えなかった。

四国では愛媛県四国中央市(塩塚高原)、内子町(小田深山)、高知県香美市物部町、徳島県西祖谷村の記録のみしか拾えなかったが、全県から記録されているようだ。中央に横たわる四国山地の高標高地に局所的に分布するものと思われる。

近畿地方でもかなり少なく、大阪府と三重県には記録がない。
和歌山県は準絶滅危惧種となっていたが、産地は分からなかった。奈良県はレッドデータブックで稀少種になっていた。で、やっぱり産地は分からなかった。京都府は分布することになっているが、全く手がかり無しだった。いるとしたら、北部だろう。滋賀県には記録はあるものの、かなり古いものらしい。レッドデータブックでは情報不足となっている。どうやら思っていた以上に近畿地方では稀なようだ。確実にいるのは、兵庫県北部の但馬地方周辺の高標高地くらいだろう。

西日本では少ない理由は、先ず第一に気温だろう。ムラサキシタバは冷温帯を好む種だからだ。それに西日本では中部地方のように標高の高い山も少ない。つまり冷涼な気候の場所も少ないから、生息に適した環境があまり無いのだろう。

第二の理由は幼虫の食樹である。食樹については別項で詳しく書くが、ムラサキシタバの食樹はヤマナラシとドロノキ、ポプラである、このうちドロノキは分布が中部地方から北海道だから、西日本には自生しない。
次にポプラだが、植栽されたものしか無いから標高の高い冷涼な地域では殆ど見られないだろう。しかも、ポプラは風に弱くて直ぐに倒れるし、カミキリムシの食害にもあいやすい。ゆえに、現在ではあまり植栽されていないのだ。
最後のドロノキだけが、西日本では利用されていると考えられる。しかし、これとて少なく、西日本ではあまり見ない木だ。何故なら、種子が非常に小さいので、競争相手のいない裸地でなければ侵入できない。それにポプラと同じくカミキリムシなどの被害を受けやすく、木の寿命が短いのだ。
これらの理由から、西日本では滅多に見られないのだろう。
逆に北海道に多い理由は、ドロノキやヤマナラシ(エゾヤマナラシ)が多く自生し、冷涼な気候ゆえ、平地のポプラでも発生できるからだろう。

国外では、極東アジアからヨーロッパまでユーラシア大陸に広く分布している。
ヨーロッパでは、中央ヨーロッパと北ヨーロッパのほぼ全域、および南ヨーロッパの一部に分布している。但し、或る資料によると、ポルトガル、地中海の島々(コルシカ島を除く)、ギリシャ、スコットランド北部、スカンジナビア北部、ロシア北部およびロシア南部で絶滅、もしくは激減しているようなことが書かれていた。ヨーロッパ以外では、旧北区からトルコ北部、中国、シベリア、極東ロシア、韓国、日本に分布していることになっている。

分布は広いと知ってはいたが、思ってた以上に広い。
同じく巨体であるシロシタバはアジアの一部にしかいないから、国外の愛好家、特に欧州ではムラサキシタバよりもシロシタバの方が格上で、珍重されているのも解るような気がするよ。
 
 
【雌雄の区別】
他のカトカラは尻の形、及びその先端の毛束の量などで判別するが、ムラサキシタバはそれ以外にもっと簡単な判別法がある。

 
(オスの裏面)

 
♂の腹は♀と比べて細いことが多い。但し、この様に腹が太いものもいるから注意が必要。腹先の毛束は♂の方が多い。コチラの方が、まだ見分けやすい。

 
(メスの裏面)

 
裏の羽と胴体の感じが、ほよ(・ω・)?顔みたいで、初めて見た時は笑ったよ。
それに胸の辺りが、もふもふで可愛い(◍•ᴗ•◍)❤

参考までに言っとくと、鮮度を見るには表よりも裏面の方が分かりやすい。鮮度が良いほど白く見える。この2つだと、♂の方が鱗粉が剥がれていないから、より新鮮な個体だと御理解戴けるかと思う。

いかん、いかん。話が逸れてしまった。雌雄の見分け方だったね。
えー、メスは尻の先に縦にスリットが入るのだ。
より解りやすいように、画像を拡大しよう。

 
(オスの尻先)

 
(メスの尻先)

 
ねっ、全然違うっしょ。
にしても、何でムラサキシタバだけがそうなんざましょ❓
他のカトカラの♀には、こんな明確なスリットは入っていないと思うのだ。

 
【生態】
中部地方では標高1000〜1800mのミズナラ・ブナ林帯に産地が多いが、北海道では平地にも生息している。
生息環境はヤマナラシ、ドロノキが林立する広葉樹林の斜面や渓谷沿いの河辺林、針葉樹と広葉樹との混交林等。北海道などの、より低標高の産地では植栽されたポプラ並木や公園でも発生する。

灯火にも樹液にも集まる。また花(サラシナショウマ)での吸蜜例もある(関,1982)。

採集方法は主に灯火採集で、ライト・トラップを設置するか、外灯巡りをするかだろう。
一晩に数頭飛来すれば御の字だが、雨の前後などガスが発生するような天候の折りには、一晩で数十頭採れることもあるという。

灯火に訪れるのは午後10時くらいからが多いそうだが、日没直後や明け方に飛来するものもいるようだ。これも、その日の気象条件に多分に左右されるからであろう。因みに灯火で自分が見た時刻は、午前10時40分くらいと午前0時前後だった。

灯火採集の経験値が少ないから偉そうなことは言えないけど、周りから聞いた話を総合すると、ライトトラップに寄ってきても上空を高速でビュンビュン飛んでて、中々トラップに止まってくれないそうだ。しかも、止まっても大概は変なとこに止まるから、採りづらいらしい。でもって、かなり敏感で、下手に近づくと直ぐに飛ぶし、逃したら二度と戻って来ないらしい。
また、石塚さんの『世界のカトカラ』によると、コウモリがムラサキシタバを捕らえようと飛来した際は、コウモリから放たれる音波を敏感に察知し、逃れるために急降下するような光景もしばしば見受けられるという。

中部地方では9月中旬以降になると、低標高の長野市、松本市、上田市などの市街地の外灯にも飛来する。夏型の気圧配置が終わって山が2、3日雲で覆われた後や秋雨のあとによく本種が採れるそうである。この事からも、飛翔力は強く、移動性もそれなりに強いのではないかと推測される。

そういえば、高い位置(高さ6、7mくらい)を、らしきモノがかなりのスピードで飛んで行くのを二度ほど見ている。或いは普段は高所を飛んでいるのかもしれない。
前から疑問に思ってたんだけど、カトカラ類が普段どの程度の高度を好んで飛んでいるかについて書かれたものを殆んど見たことがない。ガ全般なら尚更だ。チョウならば、ほぼ全ての種において、飛翔の高さについて言及されているのにナゼに❓
勿論、夜だから目につきにくいというのは当然あろうが、にしても観察例が少な過ぎる。ライト・トラップだけでじゃなく、別な観察方法も必要になってきているのではなかろうか❓
もしくは、ライト・トラップしてるのならば、時にはそのまま暫く放っといて、懐中電灯を持って探しに行けばいいではないか。でも、誰もとは言わないが、あまりそんな事している人はいないんだろなあ…。

クヌギやハルニレなどの樹液やフルーツ(腐果)トラップ、糖蜜トラップに集まるが、観察例はあまり多くない。特に高原や標高の高い山地帯(ブナ帯など)での観察例は極めて少ないようだ。
その理由について西尾規孝氏は『日本のCatocala』の中で、以下のような推察をなされておられる。

「高原や標高の高い山地、とくにブナ帯にいる Catocala は
何を餌として長い成虫期を過ごしているのか不明な点が多い。本種のような冷涼な山地に生息する種の行動はほとんど未知である。山地の生息地ではもともと気温が低い(夜間の気温は10〜20℃)ので、意外と低山地ほど栄養を必要としない可能性がある。」

これは有り得るかもしれないなとは思う。
しかし、そもそもブナ帯で樹液or糖蜜採集を試みている者が少ないというのもあるのではないか?とも思う。蛾を採集する皆さんの間では、ライト・トラップなどの灯火採集が主流なのである。また、低地ではクヌギやコナラから樹液がドバドバ出ているが、そのような樹液ドバドバの木が高標高地では少ないような気がする。高標高だと樹液の出る木はミズナラ、ヤナギ類、カバノキ類になると思われるが、それを見つけるのは結構大変だ。低山地にみたいにカナブンやハナムグリ、クワガタ、カブトムシなどの甲虫やスズメバチは多くないだろうから、ヒントが少なくて探すのは容易ではないのだ。里山の雑木林みたいに、昆虫酒場に群がっているワケではないのである。それにクヌギみたく強い匂いもしないしね。と云うワケで、効率が悪いから真剣に樹液で探している人が少ないんではなかろうか。

非常に敏感で、カトカラの中でも特にムラサキシタバは樹液や枝葉に静止している際にライトを当てると慌てて飛び立つ。
腐果トラップ、糖蜜トラップに飛来した際も同じく極めて敏感で、腹立つくらいにソッコーで逃げよる。こういうところも心憎いところである。ゆえに憧憬が募る。いい女と同じで、簡単には落ちないのだ。

フルーツトラップや糖蜜トラップから飛ぶ際は、他のカトカラと同じくパタパタ飛びで、それほど速くはない。但し、一度だけだが、ライト・トラップに近寄ってきて逃げた際はメチャメチャ速いスピードで飛び去った。

腐果・糖蜜トラップに寄って来る際の姿は見たことがないが、おそらく他のカトカラと同じくパタパタ飛びでやって来るものと推測される。
カトカラ類は翅形からすると、本来はかなり速いスピードで飛翔できるものと思われるが、樹液や腐果&糖蜜トラップに寄って来る際も、また飛び去る際もパタパタ飛びだ。何か鈍臭い感じなのだ。これはもしかしたら、体が重いとか形体のバランスだとか、何らかの理由でトップスピードになるのに時間が掛かるのかもしれない。また反対に、トップスピードから急制動でピタリと止まるのも苦手なのかもしれん。意外と寄って来る際は、高いところから徐々にスピードを緩めて降りて来るのやもしれぬなあ。
我々はライト・トラップも含めて樹液や糖蜜トラップの設置位置の目線でしか物事を見ていないのかもしれない。前述したように、或いはカトカラたちは普段は我々が思っている以上の高所を主なる活動空間にしているって可能性はないのかな?

一応、補足しておくと、カトカラ類は昼間に驚いて飛び去る際、時にかなりのスピードで逃げ去ることがある。これは、その際には下向きに止まっているからなのかな❓自重で落ちる力を利用しているとかさ。

尚、自分は標高1700mで腐果トラップと糖蜜トラップの両方を試してみたが、そのどちらにも飛来した。但し腐果トラップが2例、糖蜜トラップでは1例のみである。
飛来時刻は午後9時前、9時半過ぎ、午前1時半だった。

『日本のCatocala』に拠れば、驚いたことに国内での昼間の静止場所についての記録は殆んどないそうだ。岩場の暗所に潜んでいたという観察例があるに過ぎない(四方,2001)という。
但し、ヨーロッパでは樹幹によく静止しているみたいだ。また、北海道では平地のポプラ並木で時々見掛けるという噂があるようだ。
確かにネットで画像検索すると、日本では昼間に撮られた写真は極めて少なく、壁や板塀(杭)に止まっているものが2点、自然状態と言える樹幹に止まっているものは1点だけしかなかった。因みに、何れも逆さ向きではなく、上向きに静止していた。もしも、昼間も上向きに静止しているのなら(大多数のカトカラは昼間は下向きに静止している)、そういう習性を持つカトカラは他にはジョナスキシタバくらいしかいないのではないかな?(調べたら、エゾベニシタバ、ゴマシオキシタバも上向きに止まっているそうだ)。
上翅の色彩模様は、食樹のヤマナラシやドロノキの樹皮に似ているというから、見つけにくいのかもしれない。でも、樹皮に似ているといっても、この2つの木は幼木と壮齢木、老木とでは、幹の感じがかなり異なる。昼間に探したことはないけれど、そんなに見つからないものなのかなあ❓…。
意外と見つからないのは、他のカトカラみたいに低い位置ではなく、高い所に好んで止まっているのかもしれない。勿論、これは勘だけで言ってるんだけどさ。

メスは三角紙の中でも容易に産卵し、母蛾から比較的簡単に採卵ができるようだ。
自然状態の産卵行動は、同じく『日本のCatocala』に観察例があったので、抜粋要約しよう。

「産卵行動については、ポプラの樹幹上で2例観察している。時刻はいずれも午後9時台であった。メスは樹幹に飛来し、木の下部から産卵を始め、歩行しながら次第に上部へと産卵場所を変えた。何れの場合もメスは光に敏感で、照射した光に直ぐに反応し、逃避した。照射を止めて数分後、再び産卵に訪れるもカメラのストロボ光で逃避し、暫くして再び飛来する行動を数回繰り返した。」

とにかく、懐中電灯の光には矢鱈と敏感なんだね。
よって見つけても採れないケースがあるから、余計に想いが募る人もいて、半ば神格化されるところがあるのだろう。

 
【幼虫の食餌植物】

食樹と幼生期に関しては、今回も西尾規孝氏の名著『日本のCatocala』の力を全面的にお借りしよう。

ヤナギ科:ヤマナラシ、ドロノキ、セイヨウハコヤナギ(ポプラ)などのPopulus属。日本では人によって、これをヤマナラシ属と訳したり、ハコヤナキ属と訳したりしてるからややこしい。でも一般ピーポーのことを考えれば、解りやすいポプラ属の方がエエんでねえの❓と思うよ。

主にヤマナラシ、ドロノキを食樹としているようだが、長野県ではコゴメヤナギやオオバヤナギ、カワヤナギでも卵殻が見つかっている。但し、どの程度利用されているかは調査不充分とのこと。
ヨーロッパでは、トネリコにも寄生することが知られているが、日本ではまだ見つかっていないという。たぶん真剣に探してる人がいないからだと思うけどさ。

『www.nic.funet.fi』によれば、以下のようなものが、食樹として載っていた。

Larva on Populus tremula, Betula sp., Fraxinus excelsior [SPRK], Fraxinus , Quercus , Q. robur, Tilia cordata, Fagus , Alnus , Acer , Ulmus , Salix [NE10], 96 (Beck, Anikin et al.)

ざっくり訳すと「幼虫はヤマナラシ、カバノキ科、セイヨウトネリコにいる。その他、僅かな記録があるのが、トネリコ属、ナラ属ヨーロッパナラ、シナノキ属フユボダイジュ、ブナ属、ハンノキ属、カエデ属、ニレ属、ヤナギ属。」

一番最初にヤマナラシが来ることから、おそらくヨーロッパでも主要となる食樹はヤマナラシなどのPopuls属の木だろう。
と云うことは、学名の由来であるトネリコは、たまたま最初に食樹として判明しただけって事かな❓
そう考えると、「fraxini」という学名は益々もってダサい。

それはそうと、他にも記録されてる別属の植物が矢鱈と多いな。気になるので、植物の系統図を見てみた。

 

(出典『APGⅢ』)

 
ヤマナラシ属の上位分類であるヤナギ科は、さらに上の分類にあたる「目」レベルだとキントラノオ目に分類されている。
他にヨーロッパで挙げられている食樹の分類も見ていこう。
カバノキ科はブナ目。ハンノキ属もそこに含まれる。またナラ属も科は違うが(ブナ科)、同じくブナ目だ。ニレ属はニレ科バラ目。このブナ目とバラ目が、クラスター的にはキントラノオ目にやや近い。とはいっても目レベルだから、かなり縁戚関係は遠いだろう。
次にクラスターが近いのが、シナノキ属のアオイ科アオイ目とカエデ属のムクロジ科ムクロジ目だ。
一方、食樹として認知度が高いトネリコ属は、シソ目モクセイ科に分類される。系統図を見ると、両者は「目」レベルでも、かなりかけ離れた関係である事がわかる。
この結果には驚きだった。ヨーロッパでのムラサキシタバの食性はメチャクチャじゃないか。ワケ、ワカメじゃよ。

いや、待てよ。冷静に考えると、完全に蝶目線で見てたわ。
チョウは幼虫の食餌植物の範囲が狭い。一方、それに対して蛾の幼虫の食餌植物の範囲はかなり広い。属とか科、下手したら目さえ関係なく、何でも食う奴だっていたんじゃないかと思う。その中にあって、カトカラ属は幼虫の食餌植物がチョウと同じようにかなり狭い。だから、ついつい蝶屋的観点で思考してた。でも、所詮は蛾である。元来は何でも食ってたんだろう。それが進化の過程の中で、食樹が収斂されていったのではなかろうか。で、かなり強引だが、時々先祖帰りする奴がいるとか…。そんな事、ないかね❓

 
(ポプラ)

(出典『山手の木々』)

 
(ドロノキ)

(出典『ムシトリアミとボク』)

 
(ヤマナラシ)


(出典 3点共『木々@岸和田』)

 
(セイヨウトネリコ)

(出典『キュー植物園で見られる植物』)

 
飼育する場合はヤマナラシ、ドロノキが望ましいが、ポプラでも育つという。但し、気温の高い平地室内で飼育する場合は、ポプラを与えるよりもヤマナラシを与える方が成長が良好のようだ。
また、シダレヤナギやウンリュウヤナギも代用食となるが、成長不良となる場合もあるという。
猶、飼育を成功させる為には、幼虫の孵化期と餌の葉の柔らかさのタイミング、室内温度の調整が重要となるそうだ。

 
【幼生期の生態】

卵は食樹に付着した蘚苔類や樹皮の裏、裂け目、樹皮の溝、小枝の脱落した跡などに産付され、大木の地表近くでよく見つかる。1箇所への産卵数は1個の場合が多い。
受精卵は黒色ないし黒褐色、褐色で、緑色を帯びるものもあり、孵化直前に白みががる。

 
(卵)


(出典『Lepiforum』)

 
去年、インセクトフェアで卵をタダでもらった。
100卵だったかな。その時に初めて卵の実物を見たけど、あまりにも小さ過ぎて笑ったよ。何せケシ粒くらいしかないのだ。
で、大半を飼育の上手い小太郎くんに無理矢理に預けて、5卵だけ持ち帰った。
しかし、小さ過ぎてハッチアウトがワカンなかった。一応、ポプラの若芽を入れてはいたんだけど、あまりに孵化しないので、諦めて放ったらかしにしてたら、いつの間にか孵ってた。既にその時はポプラの若芽は枯れていたから、人知れず死んでおりましたとさ。ちゃん、ちゃん。
m(_ _)mすまぬ、悪いことしたよ。やっぱ、性格的に飼育には向いておりませぬな。
因みに小太郎くんも飼育に失敗。全滅したらしい。ポプラを与えたけど食いつかず、わざわざヤマナラシを山に採りに行ったらしい。それでもやはり食いつかず、ダメだったそうだ。

長野県の標高700m付近の谷での孵化は5月中旬。終齢幼虫は7月上旬に見られ、群馬県の標高約1600mでは、6月上旬に1齢幼虫が見つかっている(つまり孵化は5月下旬から6月上旬と推定される)。
幼虫は若い木から老齢木まで幅広く見つかるが、比較的大木を好むようだ。

 
(終齢幼虫)

(出典『青森の蝶たち』)

 
幼虫の色彩変異は他のカトカラと比べて乏しいが、野外では時に全体的に暗化したものも見られるという。
ネットで幼虫は紫がかってると書いてある記事を見たけど、実物を見たわけではないので、本当のところはよく分からない。

 

(出展 文一総合出版『イモムシハンドブック2』)

 
終齢幼虫は他の多くのカトカラよりも1齢多い6齢にまで達する。成虫が姿を現す時期が最も遅くなるのは、この辺りにも理由があるのかもしれない。
終齢幼虫の体長は約90mm。体重は40gを越える。
頭幅は5.5〜6mm。幼虫の同定は、この顔面の斑紋形態で他種と区別ができるようだ。

1〜2齢幼虫は食樹の葉裏に静止しているが、中齢幼虫以降は枝に静止し、樹幹には下りない。摂食時間は主に夜間だが、終齢幼虫(6齢)になると、昼間でも活動することがあるそうだ。

1、2齢幼虫の食痕は円形に近い形状で、5、6齢幼虫になると葉柄部分だけを残し、時に葉柄部も切り落とす。この習性は日本ではオオシロシタバにも見られ、北米のカトカラ数種からも同じ生態が報告されているようだ(ハインリッチ,1985)。
ハインリッチは、これを食痕やそこに付いた唾液からハチなど天敵の目標となることを避けるための戦略だと推察している。

蛹化場所についての知見は他のカトカラと同じく少ない。西尾氏は図鑑で、樹皮の裏での脱皮殻の発見例を記しておられるが、多くは落ち葉の下で蛹になるだろうと推察されておられる。

多分、↙️こういうのだね。

 

(出典『青森の蝶たち』)

 
この方、よく見つけはりましたなあ。
驚いたのは、蛹の周りに薄い繭を作るんだそうな。そういうことは、どこにも書いてなかったからだ。写真はそれを少し破って撮影したそうだ。
よく見ると、そんな感じではある。確かに外側に繭っぽいものが見える。

 

(出典『MEROIDA E.COM』)

 
蛹は紫ががってんだね。
マミー。ミイラみたいだ。こういうのを見ると、古代の人たちが蛹から美しい蝶や蛾が羽化するのを目のあたりにして、そこに甦りとか蘇生、輪廻転生と云った神秘的な力を感じたのも頷けるような気がする。
ちなみに、このブログ『青森の蝶たち』にはムラサキシタバの羽化する様子も写真に撮られている。なかなか無い画像だし、素直に美しいと思った。それも併せて見て戴けると、よりオジサンの言ってることが解るかと思う。

サイトはコチラ↙️。 下の空白部分をタップしてね。
 
青森の蝶たち

記事に飛ばない場合もあるので、URLも書いとく。
http://ze-ph.sakura.ne.jp/zeph-blog/index.php?e=1191

中々、神秘的でやんしょ(・∀・)
サイトには、羽が伸びて開翅してる画像らしきものもあるよん。
 
えー、これにて解説編はおしまいでやんす。
してからに、『2018′ カトカラ元年』、完結でごわす。

                        おしまい
 
 
追伸
第四章から、たった中ニ日で記事をアップできたのは、四章と並行して最終章も書いていたからである。
ナゼにそんな事をしてたのかと云うと、単に飽き性だからであるというのもあるが、両方の文章に相互効果があるのではないかと思ったからだ。まあ、ホントに効果があるかどうかワカンナイけどさ。

今回のタイトル『紫の肖像』は、かなり昔の捕虫網の円光シリーズのオオムラサキかヤクシマルリシジミの回で使ったような気がするけど、他に思い浮かばなかったので仮タイトルとしてつけた。で、結局良いタイトルが浮かばず、そのまま最後まできてしまったってワケ。まあ、解説編なんだから、タイトルとしてはそう悪くはないと思うけどさ。

それにしても、長い連載だったなあ…。
改めて、毎回このクソ長い文章の連載を我慢して読んで下さった皆様方、今まで誠に有難う御座いました。感謝、感激、雨あられでやんす。

えーと、マホロバキシタバのことを今シーズンが始まる前までには書こうと思っております。
なので、そのうち気が向いたら、カトカラ2年生の2019年に採ったもので、まだ書いてない奴のことも含めて書くやもしれません。
あくまでも、気が向いたらですけど。

 
(註1)日本の紫色の種類
調べたら、なんと57色もあった。昔の日本人の色彩感覚ってスゴイや。

 
(註2)シェルの地図
Shell石油が発行しているヨーロッパのロードマップ。
道路地図としてはミシュランの方が圧倒的に知名度は高いが、地図としてはシェル地図の方が遥かに優れており、使い勝手がいい。とても見やすく、情報も細かい。お薦めのビューポイントやらキャンプ場等々がマークで記されているし、シェルのガソリンスタンドの位置も一目で解るようになっている。バイクや車で移動する者にとっては、このガソリンスタンドの位置が分かるという事は、地味ではあるが大きい。燃料が無くなりかけた状態でガソリンスタンドを探すのは、精神衛生上よろしくないのだ。それにガソリンスタンドの位置さえ分かれば、その先を見据えて、どの辺で早めにガスを入れといた方がいいとか、もう少し長いスパンの計画も立てやすい。

また、一冊でヨーロッパ全土だけでなく、トルコの西半分やロシアの一部もカバーしている。お陰でトルコの地図を買わなくて済んだ。トルコの真ん中から東側は都市が連なっているワケではないから、道路網も複雑ではないのだ。つまり、大まかな幹線道路を示した地図があれば事足りる。大まかなモノなら、イスタンブール辺りのツーリスト・インフォメーションでもタダで手に入ろう。
但し、このShell地図。本屋では手に入らない。シェルのガソリンスタンドでしか売っていないのだ。しかも、シェルのスタンドなら何処でも売っていると云うワケではなさそうだった。
あっ、一応つけ加えておくと、今も地図が売られているどうかは知らないよん。或いは、もうこの世から消えてるかもしれない。今やGPSの時代だからね。
でも、それじゃ味気ないし、つまらない。GPSは地図を読むという楽しみを奪うものだからね。地図を見て、その情報をあれこれ読み取り、考えることは一種の知的ゲームでもあるのだ。そこには当然の如くリスクもあるけれど、浪漫もある。リスクや浪漫の無い旅なんて、旅じゃない。ただの旅行だ。
ヨーロッパをバイクや車で旅する人がいるなら、是非とも紙の地図の旅をしてほしい。そう思う。

 

2018′ カトカラ元年 其の17 第四章

 
  vol.17 ムラサキシタバ act4

  第四章『パープル・レイン』

 
 2019年 9月3日

もう一晩、此処わさび平小屋周辺で粘るという手もあったが、たぶん同じ事の繰り返しだろう。採れる気が全くしない。
この際、ヨシノキシタバは諦めてムラサキシタバとエゾベニシタバの2つにターゲットを絞りなおそう。両種の幼虫の食樹は被っているから、両方採れる可能性もある。
とは言いつつも、いつの間にか頭の中は女王ムラサキシタバのことだけで占められていた。エゾベニはまだ一度も見たことがないけれど、それよりもムラサキへの想いの方が強いみたいだ。皇帝の前では、他の全てのカトカラは霞んでしまう。それくらい存在感が違うのである。

問題は場所を何処にするかだ。当初はロープウェイ駅まで下りて、そこで勝負することを考えていた。1000〜1200mと頃合の標高だし、付近にはムラサキとエゾベニの食樹であるドロノキも多い。加えて周辺には旅館やホテルもあるから外灯だってあるだろう。そこに寄って来るカトカラもいるかもしれないと思ったのだ。
しかしながら、今や夜間に虫を寄せ集める水銀灯や蛍光灯は世の中から消えつつあると云うのが実情だ。最近は、殆ど虫が集まって来ないLED照明にとって替わられつつあるゆえ、たぶん多くは望めないだろう。それに夜まで時間を潰すのは大変そうだ。チョウさえいてくれれば、何の問題もないのだが、この時期にいる蝶は少ない。さらに言えば、採りたい蝶はキベリタテハくらいしかいない。

 
【キベリタテハ】
(2009.8月 八ヶ岳)

 
けれど困ったことに、この新穂高にはキベリタテハはあまりいないのである。昔、春にボロボロの越冬個体を1頭だけ見たのみだ。それに、沢山いると云う話も聞いた事がない。
考えてみれば、左俣周辺にはキベリタテハの幼虫の食樹となるダケカンバや白樺が少なかった気がする。あるとしたら、ロープウェイで上がった鍋平くらいだろう。しかし、いるかどうかも分からないのに行く気にはなれない。
今になって考えてみると、食樹が同じであるオオイチモンジは確実にいるから、ムラサキも間違いなくいる筈だ。ゆえに、それも悪い選択ではなかったかもしれない。だが、その時は前日の辛いテントでの一夜で、すっかり疲弊してしまっていて、そこまで頭が回らなかったのだ。

(・o・)ん⁉️、ちょっと待てよ。
でもキベリタテハの幼虫ってヤナギ類も食べるよな…。
谷間にはヤナギ類は結構あるのに、何でここいらにはキベリがあんまりおらんのじゃ?
もしかして、ヨシノキシタバもそうだったりして…。
だって、あれだけわさび平小屋周辺に立派なブナ林があるのにも拘わらず、全然見なかったもんな。
同じような環境なのに、居たり居なかったりして、生き物ってよくワカンナイや。

左俣道を降りてゆくが、やはりキベリタテハの姿はない。どころか、何もおらん。いる筈のヒョウモンチョウ類やシータテハ、エルタテハ、コムラサキも全く姿を見ない。
ロープウェイまで降りてきて、何だか全てがイヤになってきた。ここには、何もおらんような気がしてきたのだ。それに身も心も芯まで冷えきっていたから、熱い温泉に浸かるのを本能ちゃんが激しく熱望していた。

そんな気分だった折りに、丁度バスがやって来た。
これも流れだと思った。ならば、それに身を任そう。そのままバスに飛び乗る。

乗った時点で、次は何処へ行くかは決めていた。
だいぶ遠いが白骨温泉へ行こう。そこで温泉に入って鋭気を養い、仕切り直して去年採った場所に行き、確実にムラサキを仕留めよう。そう決心していた。
一旦、バスで平湯温泉へと移動する。そこで白骨温泉ゆきのバスに乗り換えられる筈だ。
だが車内でネットで調べてみると、バスが白骨に到着する頃には公共温泉施設は閉まってしまうことか分かった。ギリでアウトなのだ。おまけに間が悪いことに、温泉旅館の風呂も本日は清掃日にあたっており、入浴できないときてる。
何か完全に呪われとるね( ノД`)…。どないすんねん❓

幸い白骨方面ゆきバスの出発時刻までには、まだ時間があったから、平湯で風呂に入ることにした。
バス停から一番近い日帰り温泉、「平湯の森」へ行く。

 
【平湯の森】
(出展『楽天トラベル』)

 
初めて利用したが、広くて良い風呂だった。
ちょっと、気力も戻る。
これからは日帰りならば、いつものとこよりもコッチの方がいいかもしんない。

白骨温泉へ行くには、いったん沢渡まで行って、そこでまた別なバスに乗り換えなければならない。でもバスで行くのは初めてだから、不安が大きい。バスの本数が極めて少ないので、乗り換えに失敗したら最悪の結果になる。

沢渡で降りたら、雨が降り始めた。
予想はしてたけど、やっぱりか…。我が精緻なるお天気センサーは、ハッキリと答えを出せないでいる。降ったり、止んだりという感じかなあ…としか言い様がない。たぶんこの山域では降ってるところもあれば、降っていないところもあるんだろなと思う。女心と秋の空は変わりやすいというが、正にそれで、読めない。一日雨ということはないだろうが、何時から何時までが雨と云うのまではワカラナイ。おそらく天気予報を見たところで、ピンポイントでは当たりそうにないような微妙な天気なんだと思う。
まあ、とやかく言ったところで、どうしようもない。ようは運次第ってことだろう。

なんとか無事に乗り継げて、バスは4時半前に白骨温泉の上にある泡の湯に到着した。ここから、去年ムラサキシタバが採れた場所まで歩くつもりだ。

歩き出して直ぐに光が射してきた。そして、そのうち青空まで覗き始めた。
スーパー晴れ男の面目躍如と言いたいところだが、あんまし自信がない。センサーは晴れるという明確な信号を送ってはこないのだ。とにかく、このまま回復してゆくことを祈ろう。でも、同時にあまり信用しないようにしよう。それくらい今日の天気は気まぐれな気がする。
今さら思い悩んでも仕方がない。なるようにしかならんのだ。

途中、見覚えのあるような広場に出た。たぶん昔、森さんがオオイチモンジのポイントだと教えてくれた場所だ。温泉街からそう遠くないし、面倒くさくなってきたから、もう此処にしようかなと思った。
けど思いとどまった。ここは確実を期そう。先ずは実績のある場所で確実にムラサキを仕留めたい。ギャンブルを極力避けたいと云う心理が働いてるんだろなと思い、苦笑する。我ながら、気持ち弱ってるなあ…。

坂道は思っていた以上にキツい。喘ぎながら登る。
そして、目的の場所がいつまで経っても現れない。次のコーナーさえ回れば見えてくると何度も思うが、見覚えのある風景は何故だか見えてこない。段々、本当にこの道で合ってるのか不安になってくる。
しかも、ザックの重みが次第に肩に食い込んでくる。自分は荷物が重いのが大嫌いで、普段は必要最低限の物しか持たない主義の超軽装男なのだが、今回は勝手が違う。テントと糖蜜トラップ用の2Lのペットボトル、飲料水用の2Lのお茶も持参している。液体は重たいのだ。
一瞬、お茶を半分捨てたろかと云う衝動に駆られる。とはいえ、山で最も重要なのは飲料水である。これだけはケチれないし、削れない。「命の水」と云うだけあって、これを切らせば虫捕りどころではなくなるのだ。そう云うワケで、ことのほか重くて辛い。心がどんどん磨り減ってゆく。

途中、見晴らしの良い場所に出た。見下ろすと、温泉街は遥か下にあった。
えーっ❗❓、そんなに遠かったっけ❓
車で移動した時は、ものの5分か10分だと思っていたから近いと勝手に思い込んでいたが、とんでもねえや。
冷静に考えてみれば、あの時は下りだったし、思っている以上に車は速い乗り物だ。それは知っている。だから理解はできる。完全に文明の利器の力を侮ってましたよ( ;∀;)
だからといって、折角ここまで登ってきたのだ、今さら戻りたくはない。そもそも引き返すことが性格的に大嫌いなのだ。根性で歩く。
待ってろよ、紫のキミ。無茶苦茶に凌辱しちゃる(`へ´*)ノ

歩いていると、ムラサキの食樹であるドロノキが多いことに気づく。幼木が沢山生えているところも見つけた。そこを拠点にしようかとも考えだが、果たして幼木にメス親が卵を産みに来るのかどうかもワカラナイので、やめておくことにした。冷静な判断といえば聞こえはいいが、益々ハートは大胆さを失っているようだ。

ようやく目的地に着いたのは午後5時半くらいだった。
早速、テントを張る。そう、ここで野宿するつもりなのだ。
でも、この時は熊に対しての恐怖心はあまり持っていなかった。昨日の、新穂高の熊の巣窟に比べれば、どってことないと思ってたのだ。でも後日、小太郎くんに『よくあんな熊がいっぱい居るようなところに、一人でテントなんか張って寝れましたねー。』と言われた。知らぬが仏である。🙏なんまんだあ〜。

しかし恐れたとおり、再び天気は下り坂になった。
そして、さあこれからだと云う日没直後に雨が降り始めた。慌ててテント内に避難する。

寝袋に入り、テントを打つ雨音を聞いていた。
雨粒は間段なく雨のメロディーを奏で続けている。やむ気配は全く無い。
なんでやねん❓と呟く。
やはり、秋田さんや岸田先生の言うように、マホロバキシタバの発見で、今年の運を使い果たしたのかもしれない。
まあまあ天才のオラ(笑)に限って、そんな事はあるまいと思うが、8月からの絶不調振りは呪われているとしか思えない面もある。基本的に運だけのラッキーマンでやってきたから、こんなにコケ続けてるのは、あまり記憶にない。むしろ連戦連勝の方が当たり前なのだ。でもなあ…、今年は例年と比べて絶好調が当たり前というワケでもないんだよなあ…。時々、痛い苦杯を喫してもいる。けれど、その苦杯がマホロバの発見に繋がったんだもんなあ…。
そうだ、昨日、一昨日の敗北やこの雨も、きっと栄光への布石に違いない。そう思おう。
もう、神様ったら~(人´∀`)。゚+、アッシをヤキモキさせといて、結局最後には感動のフィナーレを用意してるんざんしょ❓憎いね、この、このー(☞゚∀゚)☞

一頻り自分をジャッキアップさせたところで、退屈しのぎに雨の歌でも歌うことにした。
一人雨唄歌謡ショー。雨のヒットパレードの開幕である。

 
八代亜紀『雨の慕情』

https://youtu.be/FZMWYN8pzG0
八代亜紀『雨の慕情』You Tubeリンク先

 
雨乞いの歌なんぞ歌ってどないすんねん(#`皿´)❗
でも、私のいい人、連れて来いなのだ。この雨がムラサキシタバを連れて来るのを祈ろう。

 
日野美歌『氷雨』

https://youtu.be/FBC04hXAC7A
日野美歌『氷雨』You Tubeリンク先

 
暗いなあ~。
それはさておき、別に好きな曲じゃないけれど覚えていたね。昔の時代の歌は、覚えやすいメロディーになってたんだろな。
とにかく歌詞にもあるように、採れるまで帰るワケには行かんのだ。

 
井上陽水『傘がない』
 
https://youtu.be/bgUpt00lG1s
井上陽水『傘がない』You Tubeリンク先

 
気分は、行かなくちゃ、君に逢いに行かなくちゃなのだ。
名曲だけど、これも暗いねぇー。
でもムラサキに会いに行かなくっちゃなのである。雨が早く上がることを祈ろう。

 
太田裕美『九月の雨』
 
https://youtu.be/a32fV43B2O4
太田裕美『セプテンバーレイン』You Tubeリンク先

 
まさにセプテンバー レインなのだ。
太田裕美には意外と名曲が多いんだよね。当時は地味な気がしてあまり好きではなかっけど、今見ると太田裕美ってカワイイよね。性格も良さそうだしさ。
にしても、マジで9月の雨は冷たいわ。

 
森高千里『雨』

https://youtu.be/XZfez9KcKcY
森高千里『雨』You Tubeリンク先

 
ムラサキさん、今の私は遠すぎるわ、貴方がなのだ。
改めて聞くと名曲だよなあ。森高千里はルックス的に大好き。昔から涼しそうな女の人には惹かれるのだ。

 
イルカ『雨の物語』
 
https://youtu.be/Oh9Y2Iqzb6o
イルカ『雨の物語』You Tubeリンク先

 
僕はまだキミを愛しているんだろう…
ムラサキよ、こんな雨の中でも待ち続けているんだから、僕はまだキミを愛してるんだろう。
作詞は、元「かぐや姫」のメンバーである伊勢正三だ。イルカの代表曲「なごり雪」も正やんの作詞でやんす。
ところで、イルカさんってどことなくイルカに似てるよね。だから、まさかのアーティスト名になったのかな❓

 
風『通り雨』

https://youtu.be/IlVCiL_NLkI
風『通り雨』You Tubeリンク先

 
淋しいのなら忘れようって言われても、ムラサキ様を忘れるワケにはいかんのだ。
この雨が通り雨だったらいいのにな…。

これも、正やんの歌だ。隠れた名曲だろう。正やんの歌詞は大好きだ。どれも情景が自然と浮かんでくる。

 
オフコース『眠れぬ夜』
 
https://youtu.be/3571xM9Ri8o
オフコース『眠れぬ夜』You Tubeリンク先

 
眠れない夜と雨の日には、忘れかけてた愛が甦るってかー。ホンマに昔の彼女の事を思い出して、何だかせつなくなってきたよ。

まだ、そんなに爆売れしてない頃のオフコースの楽曲です。
たしか、この曲は西城秀樹がカヴァーしてたんだよね。そういやヒデキも死んじゃったなあ…。西城秀樹の歌唱力は掛け値なしに素晴らしいと思う。そこにロックを感じるのだ。ヴォーカリストとして、もっと世間的に評価されるべきだろう。西城秀樹はダダのアイドルではないのだ。いや、アイドルだからこそ色眼鏡で見られて評価されないのか。まあ、自分も秀樹がメチャメチャ歌が上手いと気づいたのは随分あとになってからだからね。

 
稲垣潤一『ドラマチックレイン』

https://youtu.be/1T2NOEvM8Ws
稲垣潤一『ドラマチックレイン』You Tubeリンク先

 
哀愁漂う名曲である。
この曲は車のタイヤのCMにも使われてたね。赤い車だったっけ…。俯瞰の映像がカッコ良かったんだよなー。
さておき、マジでこのあとドラマティックレイン的展開にならんかのう。
 
 
八神純子『みずいろの雨』

https://youtu.be/sPwMDmESXwI
八神純子『みずいろの雨』You Tubeリンク先

 
嗚呼〜、水色の雨、降りしきるのーおーおー。
雨、やまーん❗トホホ😢、何だか泣けてくるよ。
この曲、アタマからパワフルでインパクトあったなあ。
🎵パープルタウン パープルタウン パープルタウン うぅ〜っふーふー。
(@_@)何か壊れてきたよ。勿論、ムラサキシタバの紫と掛けてるんだけどね。

ここで思い出した。昔、同じようにテントで寝転びながら雨の歌合戦をやったことがある。但し合戦だから、一人ではない。相棒とユーラシア大陸をバイクで横断した時に、そうゆう事があった。一人用テントを並べ、入口を開けて歌ってた。
スペインのどっかの小さい町だったっけ。キャンプ場が見つけられずに、仕方なく廃館になっていた美術館だか博物館の軒下で野宿したんだった。
そこで、突然相棒が『ねぇ、雨の歌合戦しましょうよ。』と言い出したのだ。
よっぽど退屈だったのだろう。イヤイヤ応じた記憶がある。
正面には、巨大な工場の煙突群が屹立しており、そこからモクモクと大量の煙が吐き出されてたんだよね。それがオレンジ色の光に照らされて、一種異様な雰囲気を醸し出してたっけ…。まるでSF映画の世界だった。その光景を見ながら、ずっと歌ってたね。

 
吉田拓郎『たどり着いたらいつも雨降り』
 
https://youtu.be/dDrMscLOzJM
吉田拓郎『たどり着いたらいつも雨降り』You Tubeリンク先

 
こっちも、たどり着いたら、いつも雨降りって気分だ。
同時代の歌じゃないけれど、がなる拓郎はカッコイイ。
けど、ライブバージョン限定かな。先にそっちを聴いていたから(伝説の篠島のライブアルバム?)、のちにオリジナルを聴いた時はイメージとは違って、とても優しい曲だったので驚いた記憶がある。
ちなみに、この曲は氷室京介など多くのアーティストがカヴァーしている。だか断然、拓郎のライブヴァージョンの方がいい。
でも、たどり着いたらいつも雨降りって歌詞、今の状況だと確実に力抜けんなあ…。

 
村下孝蔵『初恋』

https://youtu.be/OKizrDxp54c
村下孝蔵『初恋』You Tubeリンク先

 
サビも好きだけど、何といっても🎵五月雨(さみだれ)はーと云う入りが特に好きだ。続く歌詞の🎵緑色〜というのも良い。確かに五月雨の時期は新緑の季節なのだけれど、それをサラッと言えるところが秀逸だ。曲のテーマの、あおはる(青春)とも掛かっている。
この人の曲は繊細な感じがして、どれも好き。
でも、結構早死にしちゃったんだよなあ…。その頃の恋とか思い出して、どんどんモノローグの世界に入っていってるなあ。

 
クール・ファイブ『長崎は今日も雨だった』

https://youtu.be/ynJWpwn5-Hk
クールファイブ『長崎は今日も雨だった』You Tubeリンク先

 
正に状況が、探し探し求めて、一人さまよえばーで嗚呼、今日も雨だったーなのだ。もう今の気分にピッタリじゃないか。
これも別に好きな曲じゃないし、サビしか歌えんかと思ったけど、アタマの一言が出たら一番は完璧に歌えたよ。やはり小さい頃に聞いた曲は覚えてるもんだよね。それにメロディーが良い意味で単純だ。今時の日本の歌は変調や半音が多くて、なかなか頭に残らない。そういえば歌謡曲という言葉も死語になりつつあるな。今は歌謡曲ではなくて、Jポップなのだ。何だか悲しくなってくるよ。

 
とんねるず『雨の西麻布』
雨の西麻布

https://youtu.be/AzJu_Bn5RnU
とんねるず『雨の西麻布』You Tubeリンク先

 
もっとフザけてる曲かと思いきや、意外としっとりで、ムード歌謡の良い曲なんだよね。作詞はたぶん秋もっさんかなあ?

 
小林麻美『雨音はショパンの調べ』

https://youtu.be/lNc4eKmlzqM
小林麻美『雨音はショパンの調べ』You Tubeリンク先

 
彼にはもう会えないの Rainydaysなんてフレーズを聞くと、ズブズブに未来が暗澹となってくるよ。

小林麻美はアンニュイで好きだったなあ。
映画『野獣死すべし』の小林麻美は美しかった。松田優作に殺されるシーンは名シーンだと思う。
そういえば、この曲ってユーミンの作詞だったよね。曲のアレンジもミュージックビデオも当時(80年代)では最先端のモノだった。謂わば、オシャレの最先端。そうゆう時代背景を抜きにしても、どこか気だるさのある美しい曲だと思う。

 
柳ジョージ&レイニーウッド『雨に泣いてる…』

https://youtu.be/TPi7U9k4M5Y
柳ジョージ&レイニーウッド『雨に泣いてる…』You Tubeリンク先

 
ウイッピンク・イン・ザ・レイン。雨の中、一人佇むこの俺さー。歌詞が不意に口から溢れた。記憶から消えてた曲だ。
ワタクシ、現在雨に泣いておりまする。

 
松山千春『銀の雨』

https://youtu.be/SQiac0ezl54
松山千春『銀の雨』You Tubeリンク先

 
結構、甘酸っぱい思い出のある曲。
女の子からの別れの手紙に、この歌詞が書いてあった。
今宵は失恋したくないよなあ…。

 
ASKA『はじまりはいつも雨』

https://youtu.be/Rtewdssxnzc
ASKA『はじまりはいつも雨』You Tubeリンク

 
ドラマの主題曲だったから、何となく覚えてる。いや、映画かもしれない。どっちだっていいけどさ。いやいや『SAY YES』と混同しているかも。どっちだっていいけどさ。何だか段々ヤケクソになってきてる。

 
小泉今日子『優しい雨』

https://youtu.be/LbtXSHfjdNA
小泉今日子『優しい雨』You Tubeリンク先

 
ホント、降りしきる雨に全てを流して
しまえたらいいけどーと、声を大にして歌ったよ。
これもドラマの主題曲だったような気がする。
キョンキョンは幾つになっても可愛いけど、若い頃は死ぬほど可愛いかった。声もキュートだしさ。

 
竜童組『新宿レイニーナイト』

https://youtu.be/iTmML2ToEcc
竜童組『新宿レイニーナイト』You Tubeリンク先

 
東京に住んでいた頃は、よく新宿で遊んでた。あの猥雑な街の感じが懐かしく思い返される。雨の日は、濡れてる舗道に極彩色のネオンの光が滲んでて、まるで映画『ブレードランナー』の世界だった。
この曲は宇崎竜童と所ジョージがやっていた『夜はタマたま男だけ!!』という番組のテーマ曲だった。この番組、とても好きだったから最終回は何だか悲しかったなあ。最終回のゲストは根津甚八と桃井かおりだったのもよく憶えている。そして、ラストは4人ではしゃいでる映像がスローモーションで流れ、そのバックにこの曲が流れてのエンディングだった。

 
チューリップ『虹とスニーカーの頃』

https://youtu.be/bjLm005smqE
チューリップ『虹とスニーカーの頃』You Tubeリンク先

 
自分にとっては、ものすごく甘酸っぱい曲。
夏の雨は寂しくはないけれど、せつない。

 
徳永英明『レイニーブルー』

https://youtu.be/rubfOw6X3d0
徳永英明『レイニーブルー』You Tubeリンク先

 
歌詞のように外は冷たい雨が振り続けている。
何かどんどん、せつなくなってきたなあ…。
基本的に雨の歌って暗いし、ブルーになりがちだわさ。

 
小椋佳『六月の雨』

https://youtu.be/w6M_x9pKnzg
小椋佳『六月の雨』You Tubeリンク先

 
しまった…。切なさを越えて、めちゃめちゃダークに暗いわ。
何で、こないな歌を思い出したんじゃろ…。
ちょっと気分を変えて、明るめの曲を探そう。

 
さだまさし『雨やどり』

https://youtu.be/lrfoEaiKgZA
さだまさし『雨やどり』You Tubeリンク先

 
のほほん系の癒し曲だ。
それにしても古い曲ばかりだ。もう少し新しめのを探そう。

 
大沢誉志幸『そして僕は途方に暮れる』

https://youtu.be/vWC2XYBZYVs
大沢誉志幸『そして僕は途方に暮れる』You Tubeリンク先

 
そして僕は途方に暮れる…。サビを口ずさみながらも雨は止まんし、何か本当に途方に暮れてきた。
にしても、これはもはや雨の歌とは言えないよね(笑)
よくよく考えれば、まだ雨が降ってねえし。
ネタ切れも近いかな?
余談だが、この曲はカップヌードルのCMで流れてて、大ヒットしたんだよね。今にして思えば、何でカップヌードルのCMに使われたんだろ❓オシャレ路線を目指したのか❓

 
福山雅治『Squall』

https://youtu.be/lYE5qWSq3XQ
福山雅治『Squall』You Tubeリンク先

 
私、恋をしている。哀しいくらい。もう隠せないこの切なさは。叶えて欲しい夏の憧れ等々、歌詞の断片が心に突き刺さる。
時々、虫捕りは恋みたいなもんだと思う。特に憧憬する存在に対しては、その感情は殆んど恋と同じだ。
とはいえ、あんまし雨って感じの曲じゃないなあ。あっ、そっか。これって、雨は上がってる曲だわさ。マジ、雨上がれよなー。

 
X JAPAN『ENDLESS RAIN』

https://youtu.be/QhOFg_3RV5Q
X JAPAN『ENDLESS RAIN』You Tubeリンク先

 
サビしか歌えない。
エンドレスレインなんて、縁起でもないよなあ。
このまま降り続けられたら、マジ困る( ;∀;)

 
Mr.children『雨のち晴』

https://youtu.be/lx-ZnX3iMtY
Mr.Children『雨のち晴れ』You Tubeリンク先

 
雨のち晴れ…か。
ちょっとだけ元気出たけどー。歌詞の今日の雨は諦めた感はヨロシクないよねぇ…。今晩のうちに何とかせなアカン。夜が明ける前に雨はやむと信じよう。

 
米津玄師『雨の街路に夜光蟲』

https://youtu.be/nBj0FqfUCv8
米津玄師『雨の街路に夜光蟲』You Tubeリンク先

 
タイトルには雨とあるけど、あまり雨が主題になっている曲じゃないな。段々、引き出しが無くなってきた。
はたと思う。2000年代に入ると、雨を題材とした名曲がグンと少なくなるよね。否、ヒット曲が少ない。色んな有名アーティストたちが雨の曲を作ってる筈だけど、誰もが知っているような曲って、あんまし浮かばない。

 
童謡『あめふり』

https://youtu.be/O6xq62tP9HY
童謡『あめふり』You Tubeリンク先

 
雨雨降れ降れ、母さんがー、蛇の目でお迎え嬉しいなーときて、ぴっちぴっちちゃっぷちゃっぷ らんらんらんなのだ。
これこそが誰しもが知ってる名曲だよな。にしても、だいぶネタ切れになってきたな(笑)
でも、明るい曲だから気分は少しは上がったよ。

二番を歌おうと思ったが、全然出てけえへん。
意外と、みんなも知らんのとちゃうかあ?
仕方がないので、三回続けて歌ってやった。

 
ドラマ挿入曲『子連れ狼のテーマ』

しとしとぴっちゃん しとぴっちゃん
しと~ぴ~っちゃんという秀逸なフレーズが耳に残る。で、哀しく冷たい雨すだれという言葉も情感があって良い。

https://youtu.be/fE7SspUv0Yc
橋幸夫『子連れ狼』You Tubeリンク先

 
ついに、こんなもんまで引っ張ってきただすか(笑)。
昔の時代劇『子連れ狼』のテーマ曲みたいなヤツだよね。
そろそろ、ホンマにネタ切れじゃ(`ロ´;)

ならば、洋楽なんてどうだ❓

 
BJ・トーマス『雨にぬれても』

https://youtu.be/mFvqHri0SZI
BJトーマス『雨にぬれても』You Tubeリンク先

 
Raindrops are falling on my head…から入るこの曲は、タイトルは知らなくとも誰もが聞いたことがあるだろう。
もちろん英詞は完璧に歌えてなくて、一部は鼻歌。
軽快なメロディーで歌詞の内容も前向きだから、ちょっと気持ちが上がる。
これって、たしか名画『明日に向かって撃て』で流れてた曲だよな。ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードのコンビは最高でした。

 
ジーン・ケリー『雨に唄えば』

https://youtu.be/edvN1DfRTZI
ジーンケリー『雨に唄えば』You Tubeリンク先

 
🎵ジャ、スィーギンザレイン(just singing in the rain)、バン、バーン(`Д´)ノ❗❗
ジャ、スィーギンザレイン、バン、バーン(
`Д´)ノ❗❗
あかん…。これは傘で物をバンバンにドツクという癖があったわ。それで何本の傘をブッ壊してきたことか。

この曲は名作ミュージカル『雨に唄えば』の名シーンで歌われる曲として有名だね。軽やかな曲調で歌詞も前向きだから、コレも気分が少し跳ねる。おーし、徐々に元気出てきたぞー。

 
欧陽菲菲『雨の御堂筋』

https://youtu.be/3jrBS9DLXoI
欧陽菲菲『雨の御堂筋』You Tubeリンク先

 
アップテンポで、何か乗ってきたねぇー\(^o^)/
気持ちもピッタリだし、フルコーラスで歌ってもうたわ。
よし、もっと気持ち作っていこ。
で、ノリノリで替え歌『雨の白骨温泉』まで歌ってやったワイ。著作権の関係で、歌詞は載せれないけどさ。
このままいくと、この心悩ます夜の雨の中、出ていくしかあるまい。そして貴方はいずこと、ムラサキの影を求めて一人ぼっちで泣きながら探し回るのさ。

 
THE MODS『激しい雨が』

https://youtu.be/kJ_voZJNfFA
THE MODS『激しい雨が』You Tubeリンク先

 
(ノ`Д´)ノおりゃー、気合いも入ってキタ━━(゚∀゚)━━❗❗
たとえ激しい雨が俺を洗おうとも、激しいビートが俺を奮い立たせる。そう、何もかもが変わり始める筈だ。

 
RCサクセション『雨上がりの夜空に』

https://youtu.be/yqPzwSEu8_0
RCサクセション『雨上がりの夜空に』You Tubeリンク先

 
いよいよ、この雨にやられてアタマいかれちまったぜ。フルコーラスで歌ってからの替え歌じゃい(*`Д´)ノ❗❗。フルパワーで『雨上がりの森たちに』を熱唱。勿論、著作権の関係で歌詞は載せれないけどさ。

(^3^♪よーし、元気出たぞー。
雨よ、どうぞ勝手に降ってくれ。もはや雨が降ろうが降るまいが関係ない。こんな夜だからってムラサキが採れないなんて許せない。こんな夜だからってネットが振れないなんて耐えられない。
目を閉じる。雨上がりの星降る夜空に、輝くパープルバンドが閃めく。そして同時に、白き羽裏を見せて悠然と羽ばたく姿を想い浮かべる。よっしゃ、エンジンはギンギンだぜ。いつものようにキメて、シバキ倒そうぜ。

半ばヤケクソで外を覗いて見る。
いつのまにか雨は上がっているようだった。
時刻は既に10時過ぎになっている。長かったが、一人歌謡祭のおかげで随分と時間がつぶせたよ。
にしても、オデって、やってる事がバカだなあ( ̄∇ ̄*)ゞ

準備をして外に出る。
すっかり夜は更けている。闇は濃く、静か過ぎるくらいに静かだ。そして不気味だ。武者震いする。

実際には、完全に雨は止んでいるわけではなくて、細かい霧雨が降っていた。
気にならないではないが、この先また雨が強くなるとも限らない。少ないチャンスでもヤルっきゃないのだ。それに少し雨が降っているくらいの方が、かえって蛾の活動が活性化するとも聞いたことがある。前向きに捉えよう。全ての舞台装置は、劇的フィナーレのお膳立てだと思えばいい。

さあ、ここからが本番だ。全身に力をみなぎらせ、頭の中で、プリンスの『パープルレイン』を流しながら、ゆっくりと戦地へと赴く。

 
https://youtu.be/DHRyPjXeKZ4
プリンス『パープルレイン』You Tubeリンク先

 
辺りから雨上がりの靄が煙のように立ち昇っている。それが脳内で紫色のスモークの幻影と化す。まるで自分がステージに向かうミュージシャンのように思えてくる。全てがスローモーションになる。

今回は車ではないので、昨年みたいにトラップを2ヶ所に分けて仕掛けると云うワケにはいかない。去年採れた場所付近に一点集中、其処に全てを賭けることにした。

鬱憤を晴らすかのように、\(◎o◎)/ウキャキャキャー。ここぞとばかりに、霧吹で狂ったように糖蜜を撒き散らしまくる。
さあ準備万端、ステージは整った。あとは飛んで来ることを祈るのみ。そして、再び己に向かって気合を注入する。去年みたいに、もし採れなければ虫捕りなんか一生やめたらぁー宣言まではしないものの、このままおめおめと帰るワケにはいかない。結果を出して、気持ち良く今期の最終戦を終えようではないか。

暫くして、何かカトカラらしきものが来た。
瞬時に心を戦闘モードにシフトする。

(# ̄З ̄)ケッ、オオシロかよ。
と思うが、真剣に採りにいく。大事な場面でミスしないためにも、ウォーミングアップは必要だろう。

でも、結構敏感で、近づく前に逃げられた。
(  ̄皿 ̄)クソ忌々しい。機嫌の悪いオッチャンをナメんなよ。

(ノ ̄皿 ̄)ノうりゃ❗、暫くして戻って来たところを空中で鮮やかにシバいてやったワイ。
(・o・)あっ、でもこの採集方法では、特殊過ぎて練習にはならんわ。

 
【オオシロシタバ】

 
ボロッボロッやないけー(´д`|||)
去年よか2週間も早い来訪なのに、それよりもボロとは、どうゆうこっちゃねん❓
まあいい。何も来んよりかはマシだ。帝王の露払いとでも考えよう。

その後もポツポツとオオシロが飛んで来た。しかしボロばっか。闇夜で絶叫しそうになる心を必死に抱き止める。

時間は無情にも刻一刻と削り取られてゆく。
夜気が冷たくなってきた。時計に目をやる。針は、いつの間にか午前0時を指し示していた。
何も考えるな。集中力を保て。五感を研ぎ澄ませよ。心が病めば、採れるものも採れなくなる。

午前1時。
顔が懊悩で歪んできているのが自分でも解る。それはきっと、醜い有様でベッタリと顔面に貼り付いているに違いない。他人様(ひとさま)には、とても見せられないような顔だろう。

午前1時半過ぎ。
もう何度、期待を膨らませて懐中電灯で樹幹を照らしただろう。時間の感覚さえも失われつつある。半分諦めの体(てい)で、惰性で何気に遠くから木を照らす。

 
(⑉⊙ȏ⊙)いるっ‼️‼️

 
距離約20m。闇を切り取る光の束の先に、微かに青い下翅が見えた。
慌てて懐中電灯のスイッチを一旦切る。去年は懐中電灯の光で照らしただけで逃げたことを思い出したのだ。奴の敏感さは半端ねぇと心に刻まれているのだ。
そのまま後ずさりして、急いでテントにデカ毒瓶を取りにゆく。この日のために、巨大なムラサキシタバを確実に取り込もうと用意したものだ。けど、ポケットに入らないのでテントに置いていたのである。
その刹那にも既に逃げているかもしれないと、気が気でない。半ば錯乱状態で毒瓶を引っ掴む。
そしてヘッドライトを点け、赤外線モードにする。赤外線ならば女王を刺激しないと考えたのだ。大丈夫、冷静だ。

慎重を期して、懐中電灯を直接当てないように、遠めから中心をズラして照らす。

(◠‿・)—☆よっしゃ、逃げてない。まだいる❗
網を構え、そろりそろりと距離を詰めてゆく。

距離15m。
❤️❤️❤️ドクン、ドクン。

距離10m。
❤️❤️❤️❤️❤️❤️❤️ドクン、ドクン、ドクン。

距離10mを切った。鼓動が急に高鳴る。
💕💕💕💕💕💕💕💕💕💕💕ドクン、ドクン、ドクン、ドクン……。

距離5m。
💕💕💕💕💕💕💕💕💕💕💕💕💕💕💕💕💕
😱ヤッベー、ドキドキが止まらんくなる❗

距離2m。
去年採った木と全く同じ木だ。しかも止まっている位置も全く同じの地上から1.5mくらいだ。一瞬、デジャヴ(既視感)の反転なのか、現実なのかが解らなくなる。パラレルワールド❓時空間が歪んでいるのかもしれない。
何が何だかワカンなくなってきて、さらに心臓を脈打つスピードが倍加する。
💞💞💞💞💞💞💞💞💞💞💞💞💞💕💕💕💕💕💕💕💕
リズムはバクバクのデスメタルやんけ。口から心臓が迫り出しそうだ。

(@_@)どうする⁉️、(ノ ̄皿 ̄)ノどうする⁉️
このまま木の幹を💥バチコーン叩くか❓
それとも網を下から持っていき、下をコツンと小さく叩いて、驚いて飛んだ瞬間に一閃するか迷った。
にしても、赤外線ライトは暗い。ちょっとでも視界から外れれば、闇に紛れて見失うのは必定だ。今日は小太郎くんが後ろでフォローしくれているワケではない。そう、サポートは無いのだ。頼れるのは己の力のみだ。
もしもハズしたら…。最悪のシナリオを想像して、恐怖が心の襞(ひだ)を切れ味鋭く擦過する。
しかし、迷っているヒマはない。逡巡している間に逃げられでもしたら、その場で首カッ切って死ぬしかない。
ならば死なばもろとも。意を決して懐中電灯をいったん下に向けて点けてから、静かに口に咥えた。
いなや一歩、二歩、軽やかなステップで前へと踏み出した。と同時に、止まっている女王のすぐ下を網先で突っついた。

🤯(⑉⊙ȏ⊙)飛んだっ‼️
 
リアクション、早っ(@_@)❗❗
だが、体は瞬時に反応していた。

嵐陰流奥義 秘技💜紫返し💥‼️

(ノ ̄皿 ̄)ノ だありゃあ~❗

👹鬼神の如く中空を下から斜め左上へと切り裂く。
 
振り切り、すかさず網先を捻る。
(゜o゜;手応えは…。
あったような気がする。
でも、本当のところはわからない。
もしかしたら、中を見れば木の葉か何かに化けているやもしれぬ。こんな山奥の、しかも深夜の丑三つ時だ。この世の者ならざる闇の支配者に幻覚を見させられているかもしれない。

恐る恐る、中を見る。

 
(ノ≧∇≦)ノ しゃあー‼️‼️

 
そこには、紛れもない紫の女王がいた。
(☆▽☆)カッケー‼️ 全身の血が逆流する。
(´ω`)やったぜ。何とか首の皮一枚で仕留められた…。

しかし、毒瓶にブチ込むまでは、まだ勝負の行方はワカラナイ。
😱ヒッ、😱ヒッ、😱ヒッ、お願いだから暴れないでね、暴れちゃダメよー。心が焦りでワヤクチャになる中、素早く網の中に毒瓶をブッ込み、電光石火で中に追い込む。

毒が回って動きが止まったところで、念のためにアンモニアを注射を射ち、トドメをさす。これで、突然蘇生することもないだろう。

 

 
この目を見張る大きさ。そして上品な前翅の柄とわずかに覗く紫の帯。幻ではない。どう見てもムラサキシタバ様だ。

安堵して、手のひらに乗せる。

 

 
デカイ。ずっしり感がオオシロなんかとはケタ違いだ。

 

 
この神々しき青紫色。ぴゃあ〜\(☆▽☆)/
俺は今、星 飛雄馬ばりに猛烈に感動している༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ༽

一応、フラッシュを焚いても撮る。

 

 
w(°o°)wあちゃー。
素早く毒瓶に放り込んで〆た筈なのに、背中が落ち武者ハゲちょろけになっとるぅー(༎ຶ ෴ ༎ຶ)

 

 
(-_-;)やっちまったな…。
思いきし高速で網を振ったせいなのかなあ❓
まっ、いっか…。
気を取り直して、裏面写真も撮っとこっと。

 

 
あっ、この腹先の形からすると、♂だね。
去年のは♀だったから、これで一応雌雄が揃ったことになる。何とか最低限の結果は残せたってワケだ。地獄の底から這い戻ってこれたことに心底ホッとする。

女王を三角紙に収めて、腕時計に目をやる。
針は午前1時45分を指していた。

長く厳しい戦いは終わり、ここに円は閉じた。
立ち上がると、再び頭の中で「パープルレイン」のイントロが鳴り始めた。

 
                         つづく

 
実を云うと、ラストには更に以下のような文章が続いていた。

「勝利者だけに許される満ち足りた感じで、煙草に火を点ける。
大きく煙を吸い込み、天に向かってゆっくりと吐き出す。
その煙が風にふわりと揺れ、すうーっと流されていった。
煙が去った夜空には、いつしか星が瞬いていた。
今日は間違いなく晴れるだろうと思った。」

でも、記事のアップ直前に削った。
何かカッコつけ過ぎがシツコイかなと思ったのだ。

この続きの話も少し書いておこう。
その後、なぜだかピタリとカトカラたちの飛来は止まり、オオシロさえも飛んで来なくなった。
と云うワケで、午前2時半には諦めてテントに戻り、熊の存在も忘れて即💤爆睡した。

一応、この時に採集した個体の展翅画像を添付しておきます。

 

 
カトカラ2年生の終わりともなると、流石に上達してますなあ。
これから先は、この翅と触角のバランスでいこうと思う。

 朝方、またえっちらおっちら白骨温泉まで歩いて下り、念願の白濁温泉にも入ることができた。

 
(白骨温泉公共野天風呂)

 
3年間も閉鎖されていたそうだが、この春に漸く再開されたという。

 


 
 
一番乗りだったから、ワシの独り占め。
湯舟から見る風景は、朝の光にキラキラしてた。
りら〜っくす。(´ω`)はあ〜、堪りまへんなあ。
何か知らんが「登別カルルス、ブチ込んでようー。」と言ってしまう。昔はよく、入浴剤の「登別カルルス」をブチ込んで風呂に入ってたのだ。で、毎回湯に浸かる度にそれ言ってた。謂わば、当時の俺的リラックスワードだったのだ。

 

 
ここの温泉玉子がバカみたいに旨かった。
食べろと言われれば、10個くらいは食える自信がある。あー、もう1回食いてぇー。

でもって、その日のうちに帰阪した。へとへとだったと云うのもあるが、露天風呂に入って何か完結した感があったからだ。それに明後日に用事があったしさ。
でもあろうことか、その用事が帰ったらドタキャンになった。
石塚(勝己)さんからのライトトラップのお誘いをお断りしてまで帰ったのに、ガックリ😔やったわ。迷わずに、石塚さんとこに行っときゃ良かったよ。お誘いのライトトラップの日まで、この日を含めて2日あったワケだから、もっとムラサキも採れただろうし、エゾベニを狙うこともできた筈だ。
まあ、今さら後悔したところで、どうにもならないんだけどさ。

 
追伸
今回は問題作にして、野心作でんなあ(笑)。
雨の歌のオンパレードだなんて、虫関係のブログでは有り得ない展開だ。でも、それでいいのでござる。別に虫の事だけを書きたいから文章を書いているワケではないのだ。
参考までに言っとくと、最初のタイトルは『深山幽谷 爆裂💥雨の歌謡祭』だった。さすがにそれだとテーマからハズレてるし、フザけ過ぎだと思って今のタイトルに変えた。

えーと、次回の解説編にて、いよいよこの連載も完結です。
解説編は調べ事が多いし、毎回のように謎にカラめ取られて迷宮を彷徨うことになるから、何だか気が重いなあ。
まあ、最終回なんだから、何とか頑張って書くけどさ。

〈追伸の追伸〉
この文章を書いた約二年後の2022年、問題作がホントに問題作になってしまった。サーバーから歌詞が著作権法に触れるとの事でクレームがきた。

「該当記事における楽曲の歌詞箇所と解釈等の関係において、歌詞に対して、歌詞の説明・要約・紹介としての記述では主従関係の要件を満たしていない為、著作権法第32条1項の規定による利用には該当せず、現状のままではご利用いただく事ができません。
また、冒頭に歌詞を全文掲載する利用は、同規定の「公正な慣行、正当な範囲内」に収まるものではありません。歌詞の一部であっても、該当楽曲と判断できるものに関してはご利用いただくことができません。」

難解な文章で、頭の悪いアッシにはチンプンカンプンだが、自分なりに解釈して、肝の部分だけを残して大幅に歌詞部分を削った。全体の文章のバランスはズタズタになったけど、致し方あるまい。ゆえに気になる人は歌詞とメロディーを探して、頭の中で雰囲気を復元して下さいね。
 と一度は書いたものの、それでもクレームが来そうだ。なので、いっその事、歌詞を全部削ってリンクを貼り付けてやった。ついでに大幅加筆もした。おかげで、かなり時間が掛かったが、コッチの方が返って全体的には良くなったかも。むしろクレームに感謝かもしんないね。

          2023.1.3 極寒の公園にて

(追伸の追伸の追伸)
それでも許可が出なくて、四日後に更に書き直した。
まっ、お陰で更に文章は良くなったけどね。コレで通る事を切に祈ろう。
 

2018′ カトカラ元年 其の17 第三章

 
  vol.17 ムラサキシタバ

   『2019′ 紫への道』

 
今回も、初期の頃みたいに『続・~』というような続編形体にはせず、2019年版を本編に組み込むことにした。

シロシタバやベニシタバの回と被るところも多々あるけれど、新たに書き直すので、飛ばさずに我慢して読まれたし。尚、フィナーレを書いているうちに長くなったので、2回に分けることにした。そう云う意味でも読んでおいて戴きたい。

 
 2019年 9月2日

8月も青春18切符の旅だったが、懲りもせず、再び長く辛い旅に臨んだ。

 

 

 
大阪駅の人混みは疎らだった。
10時20分くらいの電車に乗る。今回は時刻表をバッチリ見たから、この時間の出発でも大丈夫なのだ。早く出たからといって、早く着くとは限らないのが青春18切符の旅だ。

米原、大垣と乗り継ぎ、岐阜駅で下車。乗換の時間まで30分程あったので、煙草を吸いに外に出る。

 

 
駅前の風景を見るのは何十年か振りだ。岐阜駅も随分と変わったなと思う。その頃は勿論こんな高層ビルは建っていなかった。あの頃、岐阜には何しに来たんだっけ?
あっ、そうだ。大学時代の友達の新婚家庭に遊びに行ったんだったわ。岐阜城とか案内してもらったんだよね。

そういえば降りる時にチラと駅の反対側方面も見たが、金津園の寂れた感があまりにも哀れで声を失った。

ソープランドという言葉も、最近はあまり聞かなくなった。
ソープといえば、すすきの、吉原、川崎・堀ノ内、西川口、金津園、雄琴、神戸・福原あたりが有名だったけど、今は寂れてしまっているところも多いという。雄琴なんかは、近年は普通の温泉街へと変貌しつつあると聞いたことがある。
エロの形体も多様化し、変わってきているのだろう。
「泡踊り」なんて言葉も、そのうち死語になりそうだ。いや、もう既になっているかもね。
淋しいが、時代と共に朽ちていくものもある。

ちなみに、物凄く思い入れがあるようなことを書いてるけど、ソープランドには若い頃に1回か2回しか行ったことないんだけどもね。
知らず知らずのうちに、昭和という時代に対するノスタルジーが年々強くなっているのかもしれない。

 

 
前回は名古屋で中央本線に乗り換えて長野方面へ行ったが、今回はここで高山本線に乗り換え、飛騨方面へと向かう。

 

 
電車は飛騨古川駅まで行くようだ。ということは、今回は途中で乗り継ぎせずに済む。前回のことを思えば、かなり楽だ。乗り換えは気分が変わるから嫌いじゃないけど、時間を喰う。回数が多いと、いつ着くんだと思って、段々気持ちが疲弊してくるのだ。

 

 

 
下呂駅で5分ほど停車した。
下呂といえば、下呂温泉だ。昔、大学を卒業して何年間かは、毎年、大学時代の友だちが集まって旅行してた。でも、ここ下呂温泉が最後となった。
何でかというと、全然面白くなかったからだ。そう記憶している。あまりにツマランかったから、翌年から誰も旅行に行こうとは言わなくなったのだ。で、そのままフェイドアウトとなった。

 

 
飛騨萩原駅でも、ちょっとだけ停車時間があった。
正面右側に真っ直ぐな道が奥まで続いているのを見て、突然下車したいと云う強い衝動に駆られた。背後のこんもりとした山との組み合わせが素晴らしく、何ともいい風情の通りで、旅愁を誘う。

旅と旅行とは違う。少なくとも自分の中では明確な線引きがある。スケジュールが予め決まっているものが旅行で、予定は未定であって、しばしば変更、ゆきあたりバッタリというのが旅だと思ってる。

勿論、踏みとどまって降りなかった。今年もムラサキを採らねばならぬのだ。
ふと思う。虫捕りって、色んなことを阻害してるなあ…。虫捕りをしてると、何やかんやと様々なことが犠牲になる。自由も奪われてるような気がしてきたよ。

高山駅が近づいてきた。
突然、フラッシュバックで記憶が甦る。蝶採りを始めて初の遠征が高山方面だった。当時の彼女と平湯温泉に泊まり、新穂高の左俣へオオゴマシジミに会いに行ったのだった。カッコ悪いことに彼女に先にオオゴマを見つけられんだよね。
帰りしなは高山の街も観光したっけ…。その時のあれやこれやの記憶が数珠繋ぎで思い出される。
青春18切符の旅の好きなところは、過去の自分と向きあえることだ。謂わば、ノスタルジィーの旅なのだ。

 

 
高山駅に着いて、違和感を覚える。自分の知っている高山駅とは全然違っていたからだ。

 

 
外に出て驚く。改築されて、メチャメチャお洒落になってるじゃないか。

 

 
噴水まで出よるがな。

でも、昔の駅舎の方が好きだ。新しい建物には風情というものがない。

 

 
これが昔の駅舎だ。写真を探し出してきて貼付した。
懐かしいなあ。思い出の中の高山駅は全部これなのだ。当時はこんなもん撮ってどうすんだ?と思ったが、写真、撮っておいて良かったよ。

ここで、バスに乗り換える。

 

 
8月の時は乗り継ぎが上手くいかず、名古屋駅と中津川駅、松本駅で随分と無駄に時間を過ごしたが、今日はかなりスムーズにいってる。バスの待ち時間も短かかった。
このバスに乗るのも久し振りだ。4、5年程前まてはオオイチモンジに会う為に毎年訪れていたが、いつの間にか足が途絶えていた。

 
【オオイチモンジ ♀】
(2012.7月 岐阜県高山市)

 
【♂ 裏面】
(2013.7月 岐阜県高山市)

 
1時間ほどバスに揺られて、やっと今日の目的地である平湯温泉までやって来た。今回は全部で約8時間の移動だった。何度も言うが、8月の時と比べれば、だいぶ楽だ。

既に陽は沈んだようで、辺りは暗くなり始めている。

 

 
常宿だった宿泊施設に入り、温泉に直行。
で、すかさず下の居酒屋でキンキンに冷えた生ビールを頼む。

 

 

 
でも、そのキンキンに冷えた生を飲み、ホルモン焼を食って、やる気をなくす(笑)

 
嗚呼、蛾採りなんかやめて、このままビール飲んで旨いツマミ食って、ヘラヘラしていたい。
けど行かなきゃ、何しに来たかワカラナイ。重い体を引き摺って出陣の用意をする。
時々、一人で虫を追い求めていると、バカバカしくなってくる。そういえば普通の旅をしなくなってから、もう随分になる。観光なしの旅って、どこか歪(いびつ)だ。

今回の旅のターゲットは、夏に結局会えなかったエゾベニシタバとヨシノキシタバ。そして帝王ムラサキシタバである。ムラサキは去年、白骨温泉で採ったが、翅が少し破れてたし、採れたのは♀1頭のみ。完品が欲しいし、♂も見てみたい。もっと言うと、厭きるくらいにタコ採りしたい。

 
【Catocala fraxini ムラサキシタバ♀】

 
本当は一挙に新穂高まで行きたいところだったが、そこまで行ってしまうと、着いた時には完全に夜だ。それに安い宿泊施設はあまりないし、その時間帯は外で飯を食えるところもない。一気にポイントまで行くにしても、夜道を1時間くらいは登らないといけない。移動に疲れた心には、あまりにも過酷だ。根性無しなので、一旦温泉につかって、ビール飲まないとリセットできないのだ。まあ、それでやる気が益々なくなったんだけどもね(笑)

目指すは白谷方面。狙うはエゾベニシタバ。運が良ければムラサキにも会えるかもと期待している。
此処を選んだのは、白谷の下の道路沿いには川が流れており、エゾベニの幼虫の食樹であるヤナギ類がいっぱい生えていたと記憶しているからだ。それに、その近辺でオオイチモンジを見たこともある。ならば、ムラサキに会える可能性だってあると考えたのだ。

今年は果物トラップではなく、糖蜜トラップを用意した。嵩張らないし、ゴミも出ないから導入したのだ。カトカラ2年生ともなれば、如何なアホのオイラでも、それなりに進化しておるのじゃ。

しかし、真っ暗けー。

 

 
温泉街を外れると、外灯もニャーい(ФωФ)

ここには妖精クモマツマキチョウを採りに何度か訪れているが、夜はこんなにも真っ暗だなんて予想だにしていなかったよ。

 
【クモマツマキチョウ(雲間褄黄蝶)♂】

 
【裏面】(2019.5.26 岐阜県高山市新穂高)

 
【展翅画像】

 
そういえば思い出した。白谷では、そのクモツキ採りの折りに熊の親子連れを見てるわ。つまり、此処には確実に森のくまさんがいるのである。
真っ暗だし、熊は黒い。背後から襲われでもしたら、お手上げだ。((((;゜Д゜)))ブルッとくる。

🎵ラララ…星き~れい~、とか何とか口に出して歌ってはみるが、恐い。マジ卍で熊も闇も恐い。
幸い❓なことに川沿いの道に糖蜜トラップを噴きつけるのに適した木がない。道から木が遠いのだ。と云うワケで撤退。温泉街の反対側へ行くことにした。
言っとくけどオラ、チキンじゃないからね(=`ェ´=)
いや、本当はチキンだけど、目的の前ではチキンじゃないぞ。何か言い訳がましいが、そんなに悪い判断ではなかったと思う。だって雰囲気がヤバかったんだもん。心の奥で、やめとけ警告音が鳴ってたんだも~ ん。

糖蜜を噴き付けて、だいぶ経ってから漸くカトカラが飛んで来た。
しかし、エゾベニではない。低い位置、地表近くを飛んでいたので、すぐにベニシタバだと理解した。
けど、トラップには寄り付かず、笹藪の端をチマチマとホバリングしながら飛んでいる。
見たところ♀だ。もしかしたら、卵を産みに来たのかもしれないと思った。でも近くに食樹であるヤナギ類なんてなかったぞ。しばらく見てたが、笹藪の中に入りそうになったので、網を一閃。ゲットしてしまった。

 
【ベニシタバ】

 
他には、シロシタバが糖蜜に飛んで来た。

 
【シロシタバ】

 
飛来は結構早い時間だと記憶してたけど、確認すると時刻は午後11時09分になってた。
西日本では日没と共にカトカラが樹液や糖蜜トラップに寄って来るけど、ナゼか東日本だと遅い時間の飛来ばかりである。8時半くらいになって、やっと飛んで来るという感じで、日没後すぐの飛来は少ない。一番多いのが夜10時を過ぎてからだ。西と東で違うなんて、そんなワケないと思ってたけど、コレだけ飛来時間が遅い例ばかりだと考えざるおえない。何か要因があんのかなあ…。でも、遅くにやって来るワケってある❓ もし気温が原因だったら、この時期は真夏よりも夜はだいぶと過ごしやすい。だったら、もっと早くに飛んできてもオカシクないじゃないか。それに西日本だと真夏でも日没後にワッと飛んで来るのは何でだ❓ カトカラにも暖地系と寒冷地系があって、それに因るとか❓ となると、西日本にいる寒冷地系カトカラって何だ❓ 段々、自分でもワケがワカンなくなってきた。もう、たまたま偶然に飛来時間が遅いパターンばっか続いただけなんじゃないのう❓ できれば、そうであって欲しいよ。中々、飛んでこないと待ってるのが辛いのだ。オイラ、どんな事であろうと、待つのは大ッ嫌いだかんね。

ベニとシロが1頭ずつだけで、この日は他のクソ蛾さえも殆んど寄り付かずだった。糖蜜のレシピを間違ったやもしれぬ。いい加減に作ったもんなあ…。
ましてやヨシノやエゾベニには糖蜜はあまり効果がないとされている。何で糖蜜や樹液にやって来るカトカラと、そうでないカトカラが居るのだ❓何でかが全然ワカンナイ。
とにかく序盤から劣勢だわさ。
そうだ、ワシってキベリタテハを採りに来たのじゃ。

 
【キベリタテハ】

 
カトカラ採りは、そのついでだ。
そゆことにしておこっと( ̄∇ ̄*)ゞ

 
 
 2019年 9月3日

平湯から新穂高へ移動した。

 

 
左俣を登ってゆく。
この時期は、殆んど蝶がいない。退屈過ぎて、途中でキンモンガなんぞを採ってしまう。

 
【キンモンガ】

 
本日のターゲットはヨシノキシタバとエゾベニシタバ。あとはムラサキシタバとゴマシオキシタバってところか。
ここは、わさび平小屋付近に大きなブナ林があるし、その下部にはドロノキやヤナギ類もある。わさび平にヨシノがいると聞いたことはないけど、絶対いるじゃろうと思ったのだ。
もしダメでも、このどれかは採れるだろうと読んだのである。併せ採り狙いの、効率重視の男なのだ。

 
【わさび平小屋】

 
この右横の奥のサイトにテントを張った。

 

 
改めて見ると、周りはブナだらけだ。

 

 
こんだけ生えてりゃ、ヨシノもいるだろう。
否が応でも期待値が上がる。

夜まではまだ時間があるので散歩してたら、アサマイチモンジがいた。

 

 
遊ぼうと思って、地面に止まってたのを手に移す。

 

 
邪気を消して自然体で接すれば、意外と簡単だよん。
不思議なもので、てめぇ、ブッ殺すかんなーとか思うと逃げる。蝶だって殺気は解ってるよね。バッドテイストのオーラには感づくのだ。
蝶採りをしてると、時々、草木などに止まっている蝶と目が合うことがある。そういう時は、蝶の考えてることが手に取るように解る。

 
『( ; ゜Д゜)えっ!?、もしかして目っかった❓』

『(^_^;)あー、来ないでね。』

『( ; ゜Д゜)あっ、やっぱ近づいて来てるぅー。』

『(/´△`\)来ないで、来ないでー。』

『\(ToT)/きゃあ━━━❗』

パタパタパタ~。

 
だいたい、こんな感じだ。
まあ、飛ぶ前に💥ネット一閃。大概はスルーせずにシバいてるけどね。

それにしても、オーラって目に見えないのに、アレって何でワカンだろね。視覚が5原色くらい見える目だったら、可視化できんじゃないか❓
因みに人間は3原色、犬や猫が2原色。鳥や昆虫は4原色であるとされている。

余談だけど、知り合いに占い師のお姉さんがいて、この人の占いがメチャメチャ当たった。店で月1回、そのお姉さんに占いに来て貰ってたんだけど、怖いぐらいに当たるんで、みんなビビってたもんね。
ワシも占ってもらったけど、マジでヤバかった。具体的な事をズバズバ言い当てるのである。普通の占い師みたいに、やたらと「あなた、○○でしょう?」と訊いてきたりはしない。ほぼ断言なのだ。そんな事、何でアンタが知ってるんだ❓ということまで言わはる。

例えば、或るお客さんなんて、「あなたは金属が苦手で、普通のスプーンでカレーを食べるのは嫌でしょう。」とか言われてたのだ。それが当たっているんだから恐い。

 

 
寄って来るのは、こうして汗だのミネラルだのを吸いに来るのだが、ワシ、今日は汗をそんなにかいとらんぞ。

頑張って、手のひらまでもってくる。

 

 
ほいっ、手乗り蝶の出来上がり~。

でも手乗り蝶をやると、前のサカハチチョウみたく、その後は悲惨な結果になるんじゃないかと云う思いがよぎった。悪いジンクスだ。
でもこういう事を思うじたい、絶不調なのだろう。らしくないや。メンタル弱ってんなあ…。

夕方になって強い雨が降った。悪いジンクスが当たったかなと心配したが、何とか日没前には上がった。
さあ、戦闘開始である。ブナ林を中心に霧吹きで糖蜜を噴き付けていく。

撒き終わったところで、真っ暗になった。
(T_T)マジで恐い。
看板は特に設置されてないが、ここには熊が沢山いる事は周知の事実である。知り合いの目撃例も多い。ワシも此処のすぐ近くで見たことがある。だから、さすがに今日は熊鈴をジャンジャン鳴らしたよ。前日以上に恐怖に怯えながら、夜道を歩き回る。

しかし、ブナ林は不気味なまでに静かで、糖蜜トラップには何も来ん。泣きたくなってくる。

小屋の灯りに寄って来た名前もワカランような蛾を、退屈しのぎについ採ってしまう。末期的症状だ。

 

 
渋いなあ…。名前は調べてないから、いまだにワカラズじまいだ。

時間が経っても状況は変わらない。東日本では、糖蜜トラップがカトカラにはあまり通用しないことをヒシヒシと痛感する。ヨシノやエゾベニどころか、ゴマシオ、エゾシロさえも寄って来ん。
やっぱライト・トラップが無いとアカンわ。だいぶと前の回に「灯火採集にばかり頼りきりの蛾屋ってダサい。」と言ったけど、前言撤回。灯火採集は蛾を採るためには必要不可欠のアイテムざんす❗
蛾屋の皆様、m(__)mゴメンなさい。

結局、来たのはベニシタバ2頭のみ。それと、なぜか標高1500mにも桃色クソ蛾ムクゲコノハちゃんが複数飛来した。おまんら、低地の蛾とちゃうんけ❓

それが、コチラは全く採る気もないのに、いっちょまえにも一々敏感に反応して、慌てて飛んで逃げよる。
おどれら、( ̄ヘ ̄メ)ナメとんかである。毒々しいし、形も気持ち悪いからブッ殺したくなる。

 
【ムクゲコノハ】

 
ホント、何処にでもおるやっちゃのー(=`ェ´=)
💧涙チョチョギレそうやわ。(*ToT)ダアーッ。

10時半頃に雨が降り始めたので、小屋で雨宿りする。止みそうにない雨だ。たぶんこのまま、降り続けるだろう。ジ・エンドだ。
小屋に前払いしておいたビールを水桶から取り出す。川の水を引いた天然の冷蔵庫だ。

 

 
暗闇で飲むビールは苦かった。

テントに入ると同時に、雨は激しくなった。
やがて、テントの下は川となり、凍えながら眠った。

                     つづく

 
追伸
( ;∀;)ボロボロの大惨敗でしたねー。

冒頭にも書いたように、本当は2019年版は第三章として一回で終わらせる予定だった。しかし、この翌日のことを書いているうちに色々と思い出してきて、全体的にとても長くなりそうだった。なので一旦書くのをやめて、2つに分けることにしたのである。
次回、いよいよ話は佳境に入る。乞う、御期待あれ❗

因みに、ワードプレスとの契約は先月で切れているので、いつ突然に記事がアップできなくなるか分からない。いつまで経っても次回がアップされないようだったら、アメブロで同じタイトルのサイトを探してね。

 
 

2018′ カトカラ元年 其の17

 
  vol.17 ムラサキシタバ

  第一章『青紫の幻神』

 
この回を書きたいがために、この連載を始めた。
お陰で、ここまで大変な労苦で書き続ける破目になってまったけどね。

ムラサキシタバに初めて出会ったのは、まだカトカラを殆んど見たことがない2017年の秋だった。

 
 2017年 9月23日

日本の蝶も粗方採ったし、東南アジアでの採集にも厭きていた。全てが予定調和になりつつあったのだ。だから、心の何処かで新たなモチベーションを求めていた。虫採りの最大のエクスタシーは、まだ見ぬ、心が震えるような凄い奴らに会うことだ。その為にワザワザ現地に赴き、其処で生きている姿を見た時の感動は何をもにも換え難い。そこには特別な幸福感が在る。謂わば、オイラは痺れる瞬間を求めて虫捕りをしているのだ。

そこで考えたのが、蝶以外で昔から気になっていた別のカテゴリーの虫たちに会ってみようというアイディアだった。
そう云う有名どころ、謂わばスター昆虫は意外と見たことがなくて、まだまだ残っている。
例えば甲虫ならば、最初に思い浮かぶのはオオクワタだ。恥ずかしいことに、いまだに天然物は見たことがないのだ。そのうち偶然会えるだろうと、探しにすら行ったことがない。
他にも結構ある。ヤンバルテナガコガネ、オオチャイロハナムグリ、ダイコクコガネ、オオトラカミキリ、ギカンティア(オニホソコバネカミキリ)、フェリエベニボシカミキリ、ツシマカブリモドキ、キタマイマイカブリ、オオルリオサムシ、アイヌキンオサムシ、シャープゲンゴロウモドキetc…、っといった辺りだろうか。
甲虫以外なら、あとはタガメ、マルタンヤンマ、マダラヤンマかな。
蝶以外の鱗翅類、つまり蛾ならば、イボタガ、オオシモフリスズメ、メンガタスズメ、キョウチクトウスズメ、イブキスズメ、シンジュサン、ハグルマヤママユ、キマエコノハ、そして今回の主役であるムラサキシタバだった。

その手始めに、この年の春先、イボタガとオオシモフリスズメに会いに灯火採集に連れて行ってもらった。連れていってくださったのは虫捕りの天才の御二人だ。だから、ゲスト気分だった。

 
【イボタガ】

 
【オオシモフリスズメ】

 
その夜は、これらに加えてエゾヨツメまで採れて、楽しい夜だった。オオシモフリなんてフィナーレにアホほど飛んできてシッチャカメッチャカになり、笑てもうた。

 

 
虫捕りの天才お二人の手に、オオシモフリてんこ盛りである(笑)

その第2弾として、同じくお手軽方式で画策したのが、ムラサキシタバに会いにゆくと云うものだった。

ムラサキシタバの素晴らしさは、蝶屋である自分の耳にも以前から届いていた。周りの蝶屋の爺さんたちにも、アレは別格だと度々聞いていたからだ。デカくて美しく、しかもそう簡単には会えないらしい。オマケに会えても敏感で、中々採れないとも聞いている。ネットで見ても、皆さんがこの蛾のことを矢鱈と持ち上げていらっしゃる。それ程のものならぱ、是非一度、お目に掛かりたいものではないか。

と云うワケで、蝶屋でもあり、蛾屋でもあるA木くんにせがんで兵庫県のハチ北高原に連れて行ってもらった。彼はライト・トラップのセットを持ってるし、何度もムラサキシタバを採っているのだ。

 

 
ゲスト気分でついてゆくと云うのは春と同じで、気持ち的には見るだけで良かった。イボタガ、オオシモフリスズメと邂逅したとはいえ、まだまだ蛾に対する嫌悪感が強かったのだ。幼少の頃から植え付けられてきた「蛾=気持ち悪い」と云う概念はちょっとやそっとでは拭い去れないものなのだ。

その日はパタラキシタバ、ジョナスキシタバ、ベニシタバ、シロシタバが飛んできた。でも「ふ~ん、カトカラってこんなんなのね。」というのが、正直な感想で、特に心は動かなかった。今思うと、時期的に遅くて鮮度が悪かったせいもあるかもしれない。

 
【パタラキシタバ】

 
【ジョナスキシタバ】

 
【ベニシタバ】

 
【シロシタバ】

 
一応、参考までに各種の画像を並べたが、画像は全て別な日、別な場所のものである。以下、特に採集日を記していないものはそうだと理解されたし。あっ、上のオオシモフリとイボタガもそうです。
 
待望のムラサキシタバが飛んできたのは、深夜の11時近くだった。A木くんが急に左手の闇に向かって慌てて走り出した。何事かいな?と思って見てたら、網が空中で閃いた。次の瞬間、A木くんが『採ったあー、ムラサキ❗』と叫んだ。

おー、やったやん。見せて見せてー、ってな感じで近づいてった。してからに、ワシがアンモニア注射を射ったのを何となく覚えてる。シロシタバを見た後だから、それほどデカイ!というインパクトは無かったが、立派だとは思った。折角だから、写真を撮らせてもらった。

 

 
翅が破れてたから、これも他のカトカラみたいに進呈されるのかと思いきや、御本人のお持ち帰りだった。
見ると、欲しがるのが虫屋の性(さが)ゆえ、ちょっぴり残念だった。でも今にして思えば、この時に貰わなくて良かった。貰っていたなら、満足して完全に興味を失っていたかもしれない。手に入らなかったことが、逆にその後のモチベーションになったところはある。

 
 
 2018年 6月

翌年の6月半ば、シンジュサンを探していた折りにカバフキシタバとワモンキシタバが採れた。鮮度も良くて、結構カッキレーだなと思い、少し興味を持った。

 
【カバフキシタバ】

 
【ワモンキシタバ】

 
この時に、小太郎くんにカトカラについての基本的レクチャーを受けたと云うのも影響があるだろう。中でも、日本のカトカラではトップクラスに珍しいと言われるカバフキシタバの魅力について熱く語られたのが大きい。そんなに珍しいのならば、そんなもんワテが一年目にサラッと仕留めたろやないかと思ったのだ。
意外にもシンジュサンに難儀して、その頃は再びシバキ魂に火が灯りかけてた頃だったから、それがカッ🔥と燃え上がった恰好になった。
虫には採ったり、飼ったり、集めたりと色々楽しみがあるけれど、自分は圧倒的に採るのが好きだ。採集難易度が高いモノであればあるほど、採るには己の全知全能を総動員しなければならぬ。ゆえにゲーム性が高い。謂わば狩猟なのだ。だから何よりも燃えるのである。しかも、難易度が高いものほど負けん気とやる気のスイッチがブチッと入る。

 
【シンジュサン】

 
【カバフキシタバ】

 
カバフキシタバを仕留めたところで、あとはシロシタバとムラサキシタバをシバいてフイニッシュにしてやろうと考えていた。それで取り敢えず蛾は一旦おしまい。次は甲虫を視野に入れていた。

 
 
 2018年 8月

近畿地方の近場での情報が少なく、かなり苦労を強いられたが、何とか自力でポイントを見つけてシロシタバも落とした。

 
【シロシタバ】

 
これで機運は高まった。残る真打ちムラサキシタバもイテこまして、気分良くフィナーレを飾ろうと思った。

 
 
 2018年 9月1日

強力なライト・トラップセットを持っている植村を焚き付け、満を持して再び兵庫県北部のハチ北高原を訪れた。因みに植村は何ちゃって蛾屋から蝶屋に転身した天才なのかアホなんかワカラン男である。

天気は曇り。しかもガスってると云う灯火採集には最高のコンディションだった。

 

 
思ったとおり、水銀灯二灯焚き➕ブラックライトの大伽藍に、アホほど蛾が集まってきた。

しかし、カトカラは何故かパタラしか来ない。設置場所の選定をシクったかもと思った。のんびり屋の植村が迎えに来たのが遅かったせいもあって、良い場所を探している時間があまり無かったのだ。
でも、所詮そんなのは言いワケだ。この場所に決めたのはワシだから、全部ワシのせいじゃ。A木くんに泣き入れて、去年のポイントを使わせて貰うべきだったと激しく後悔する。けど、そんなの自分で採った気がしないし、気持ち良く終われない。だいちプライドが許さないじゃないか。正面きって立ち向かってないみたいで、ムラサキシタバに対しても失礼な気がする。ポテンヒットのタイムリーヒットなんかで勝てても、素直には喜べない。

午後10時を過ぎて、漸くジョナスとゴマシオキシタバが現れた。

 
【ゴマシオキシタバ】

 
けれど後が続かず、時刻は午前0時になった。
そろそろ帰らねばならない。仕方なく、屋台を撤収することにした。

ワシが備品を車に運んでいる時だった。背後から声が飛んできた。

『ワッ💦ワッ💦、何かデカイの飛んできた❗❗』

振り向くと、白布をポールから外している植村が叫んでる。確かに何やらデカイ蛾が彼の頭辺りに寄ってきている。デカいスズメガかと思ったが、逆光になってて、影しか見えない。

💥( ̄□||||ハッ❗、けど、もしやと思い駆け出す。だが駆け寄る前に植村はパニくって、それを頭で振り払った。アホ、やめろ!と思った次の瞬間、驚いたソイツは物凄いスピードでスキー場の下の闇へと、あっという間に消えていった。その時にハッキリと鮮やかな青紫の下翅が見えた。

(-“”-;)……。茫然とその場に立ち尽くす。間違いない。ムラサキシタバだ。
青紫の巨大なる神だ。物凄くデカかった。残像が頭の中でリフレインする。

背後から植村の、のほほんとした声が聞こえてきた。

 
『五十嵐さん、アレ何でしたん❓』

 
やっとのことで、絞り出すように答える。

 
『(-“”-;)たぶん…、ムラサキシタバや…。』

 
(ー_ー;)嘘だろ❓と思った。現実が上手く呑み込めない。
あと2分、いや1分でも撤収を遅らせていれば採れてたのに、(#`皿´)何でやねんの、何でやねん(*ToT)
怒りと悲しみがグチャグチャに混ざり合って、心がドス黒いマーブル模様になる。

このままでは帰れない。もう30分だけやろうという事になって、再度屋台を組み直した。

0時45分まで粘った。
だが、紫の君は二度と戻っては来なかった。

 
 
 2018年 9月7日

 
チケットショップで2回分の青春18切符を買って、山梨までやって来た。

このままでは終われない。でもライトトラップは持ってないし、近畿地方ではムラサキシタバはレア中のレアで、簡単には採れない。ゆえに、まだ比較的採れるとされる中部地方まで足を伸ばしたのだ。

 
【ペンションすずらん】

 
ここは関東の虫屋には名の知れたペンションで、常時ライト・トラップが設置されている。

 

 
夜になると、こないな感じになる。

 

 
ネットを見ていると、ここにムラサキシタバが飛んで来るらしい。ダサい採り方だ。そんなにまでしてと自分でも思うが、形振り構っていられない。カッコつけてる場合ではないのだ。本気モードになったのに、一年目に採れないだなんてダサ過ぎて、プライドが許さない。しかも最終戦だ。フィナーレを飾れないなんて辛すぎる。残尿感を抱えて、また来年まで待つなんて、想像しただけでゲンナリだ。

ライトトラップはデカくて強力だとは知っていた。しかし、待ちの姿勢だけで採れるとは思わなかった。此処で何もせずに奇跡をただ待つだなんて、考えが甘すぎる。神様は、そんな他力本願の輩には幸運を授けてはくれまい。そう思っていた。だから今回、カトカラ採りに初めて果物トラップを導入した。🍌バナナや🍍パインに焼酎をブッかけて発酵させ、ストッキングに詰めて木から吊るすのだ。その甘い香りに誘われて虫たちが寄って来ると云う寸法だ。

出来うる限りのやれる事を尽くして天命を待とう。
とはいえ、まあまあ天才と勝手に自負している俺様の人だ。正直、何とかなるじゃろうと思って乗り込んで来てた。基本、なんくるないさの楽観主義なのである。

宿の兄ちゃんにムラサキの幼虫の食樹であるドロノキとヤマナラシの場所を訊ねる。
しかし、返ってきたのはガッカリの答えだった。何とドロノキは、この周辺には無いと言う。ヤマナラシは一応あるが、それも極めて少ないらしい。( ; ゜Д゜)マジかよ。
しかも『此所はムラサキシタバは元々少ないよ。今年は、まだ見てないなあ…。』と言われた。
何だ、多産地じゃないのかよ❓頭の中の、明るかった風景が急に暗くなって、暗闇の中の心もとない1本の蝋燭の炎のようになった。

やや半泣きで場所を訊いたら、車で案内してくれるという。この宿は親切な人ばかりだ。その後も宿の奥さんに随分と世話になった。

ヤマナラシは宿から暫く下ったところにあった。確かに4、5本ほど纏まって生えている。壮齢木が2本、それよりも若い木が何本かって感じだ。

日没前、まだ辺りが明るいうちに下見がてらにトラップを仕掛けに行く。車だと近いと思ったが、歩いてみると遠い。たぶん3㎞くらいはあるだろう。それに道を下ったら、帰りは登らねばならない。往復で6㎞だ。此所と宿のライト・トラップの間を往復せねばならないと考えたら、気が重い。しかも夜道を一人ぼっちで歩かねばならないのだ。👻お化けが怖いなあ…。でも、そっちを心配する前に奴のことを心配すべきだろう。絶対、いるもんね(翌日、やっぱり証拠があったわ)。

 

 
甲信越では、何処でも珍しくないものだが、昼間に活動する蝶屋にとっては殆んど記憶に残らない看板だ。現実的ではないからだ。でも蛾を追いかけるようになってから、矢鱈と目に付くようになった。熊は紛れもなく夜行性なのだ。昼間よりも会う確率は格段に上がる。

 

 
風呂入って、晩飯食って出掛ける。

だいぶと慣れてきたとはいえ、闇、怖えー。

 
👻お化け、怖えー。

熊、怖えーよー(ToT)

 
背中の毛が半分逆立っているのが自分でも解る。

途中で、樹液の出てるミズナラの木を別々に2本見つけた。一つにはベニシタバが来ていたが、逃した。もう1本にはパタラキシタバが来ていたが、ド普通種なので無視。

果物トラップには、なぜかオサムシが来ていた。しかも2頭も。見るとクロナガオサムシの仲間だった。

 

 
近畿地方で見るものよりも、遥かに小さい。多分、別種なのだろう。コクロナガオサムシ?
それにしても、全く知らないワケではなかったが、オサムシも甘いもんに寄って来るんだな。オサムシの餌といえば、基本的にミミズや毛虫、芋虫、カタツムリなどだから、肉食と云うイメージが強い。だから、何か違和感がある。

戻って、ライト・トラップを確認したら、シロシタバとエゾシロシタバ、ジョナスキシタバが来ていた。どれも飛び古した個体で、テンションはあまり上がらない。

 

 
果物トラップに戻ったら、遠目に見たことのないカトカラが来ていた。しかもデカイ。一瞬期待したが、どう見てもムラサキじゃない。よくよく見れば、全く頭になかったオオシロシタバだった。オオシロには初めて会うので、ちょっぴりテンションが上がった。

 
【オオシロシタバ】

 
でも、所詮は外道である。それに、暗い色で渋すぎるわ。

この日は上と下を何往復もして、死ぬほど歩いた。たぶん20㎞以上は優に歩いている。ヘトヘトで風呂入って、爆睡した。ここのペンションは夜中でも風呂に入れる。虫屋に優しいペンションなのだ。有り難いね。

 
 
 2018年 9月8日

翌日は、東京から蛾好きの高校生が父親に連れ添われてやって来た。名前は斎藤くんといったかな?
彼には色々世話になった。別なライト・トラップでは黄色いヤママユを採らせてくれたし、灯台もと暗しのポイントにも案内してくれた。蛾の採り方とか他にも沢山のことを教えてくれた。感謝である。

 

 

 
彼が初めてムラサキを採った時の興奮に満ちた話も聞かされたし、何やかんやと、結構楽しい夜だった。
けれど、この日も紫色の巨神は、一度も姿を見せてはくれなかった。

彼とLINEで連絡先を交換したけど、電話番号を変えたみたいで帰阪後しばらくして連絡がとれなくなった。大学、ちゃんと合格したのかな❓
オジサン、蛾ド素人だったけど、ちょっとはレベルも上げて、翌年には日本では未知のカトカラを新発見したよー(^-^)v

 
 
 2018年 9月9日

いよいよ最終日である。

この日は晴れたので、大菩薩峠を目指した。山の上の環境を見たかったし、気分転換もあった。この辺はキベリタテハの大産地としても有名だしね。キベリは好きだから、真面目に採ってやってもいい。いや、採らせて下さい。

 
【キベリタテハ】
(2016.9 長野県松本市)

 
それに、来たことはないが、大菩薩峠と云う名前には思い入れもある。

バスで登山口まで上がった。

 

 
周囲はブナ林が広がっていた。ブナ林は好きだ。緑が瑞々しくて、心が落ち着く。

 

 
大菩薩峠まで登ってきた。雲が掛かってて富士山は見えなかったけど、眺望は最高だった。

大菩薩峠といえば、中里介山の小説である。盲(めしい)のダーティ天才剣士、ニヒリスト剣士の草分けでもある机 竜之介になった気分だ。この小説は映画化もされている。古い映画だから、勿論のこと後から見たんだけど、市川雷蔵がめちゃんこカッコいいんだよな。

少し戻り、キベリタテハの好きそうなここぞと云う場所で張っていたが、1頭さえも見られなかった。
帰って、宿の女将さんに訊くと、今年は大不作の年らしい。
何だか。何をやっても上手くゆかぬ。

三晩目は高校生に教えてもらった場所、ライト・トラップの裏に果物トラップを仕掛けた。そこに去年、ムラサキが来たらしい。
これで歩き回る距離は格段に短くなったし、移動時間も大幅短縮になった。時間を有効に使おうと云うワケだ。

なぜかライト・トラップには蝶が来ていた。

 

 
どうしてこんなところに❓のベニシジミちゃん。

 

 
何で交尾までしてんねん❓のヤマキマダラヒカゲ。

何か、段々腹立ってきた。
別にキミたちに罪はないんだけど、何で蛾を探してるのに蝶が来んねんと思ってテンションが限りなく下がったわ。ワシを蝶界に引き戻したいんかい❓

この夜、少し心が躍ったのは、ヒゲナガカミキリとベニシタバくらいだった。

 

 

 
そう、何も起こらなかったのだ。

満天の星空を仰ぐ。綺麗だ。
でも、三日連続で熊とお化けの恐怖に耐えて死ぬほど歩いたが、ついぞムラサキシタバは現れなかった。
途中で採れる気が全くしなくなって半ば諦めかけてはいたが、こうして結果が出てしまうと、やはり暗然たる思いにはなる。

そういえば、思い出した。
そろそろお開きにしようとしたところで、耳の穴に蛾が入り、奥に潜り込んでエレー事になったんだよね。パニくって、宿の人に泣きついたよ。ホント、(;´д`)トホホの結末だったわ。

翌日、朝風呂に入り、しみじみアカンかったなあ…と思う。

 

 
失意をどっぷりと纏って帰路についた。

 

 
空は心を映すように、どんよりだ。
また青春18切符で戻るかと思うと、益々心は重くなる。

 

 
途中、何処かで蕎麦を食う。

 

 
負け犬の、ほぼ夢遊病者だから記憶は殆んどないが、たぶん中津川駅辺りだろう。

 

 
やっとこさ米原まで戻ってきた。
日が沈み、夜との狭間の僅かな時間の空が美しい。その色は、まだ見ぬ青紫のようだった。

                     つづく

 
追伸
ワードプレスのプロバイダー契約は2月いっぱいなのに、ナゼかまだ文章が書ける。しかし、いつダメになるやらワカランので急ぎ書いている。ダメになったら、アメブロに書きます。

今回登場した各カトカラやイボタガ&オオシモフリ、シンジュサンについては個別に拙ブログに文章があります。宜しければ、ソチラも探して読んで下され。

 

夜に彷徨(さまよ)う

 

ワードプレスのブログの契約が2月いっぱいで切れた筈なのに、ナゼかホームにアクセスできる。そう云うワケで、書きかけの文章を完成してアップしちゃおう。

蛾(ガ)採りはミステリーである。そして、蛾の夜間採集はスリルとサスペンスに満ちている。中でもライトを焚かない夜間採集はホラーであり、スリラーだ。
ミステリーな上にスリルとサスペンスに満ち、更にホラーでもあると云う全部乗せスペシャルなのである。

と、ここで脱線。この際だから、これら似たような言葉を定義しておこう。皆さん、多分これらの意味がゴッチャになっておられると思われるので、今一度整理しておこうと云うワケである。
そんなもん知っとるわいι(`ロ´)ノ❗という方々も、暫しその説明にお付き合い下され。
あっ、何でも知ってる賢い人は飛ばしてね。

スリルとは緊張感を指し、スリラーとは人に緊張を強いる物語である。
サスペンスとは、緊張感を孕んだ謎解き物語だ。
ホラーは恐怖を下敷きにした物語。
ミステリーは謎が主題の物語だ。
スリラーもサスペンスも、メインになるのは緊張感や緊迫感、不安感ということになる。
その上で、こう定義してみよう。
「恐怖に重きを置くもの」をスリラーと呼び、
「謎に重きを置くもの」をサスペンスと呼ぶ。

これだけで解る人は、次を飛ばしてね。でも今一つワカンナイ人のために、個別にもう少し詳しく書いておこう。

 
【ホラー(horror)】
髪の毛が逆立つことが語源だそうである。
髪の毛が逆立つって、どんだけ怖いねん。ホラーは苦手だよ。

1.恐怖、恐ろしさ、恐ろしい人、物、事(terrorとは違い、嫌悪感を伴う)。

2.転じて、心霊や怪物、嫌悪感を伴う恐怖を扱った「ホラーもの」「ホラー作品」のこと。

3.憎悪、嫌悪。

4.ぞっとする気持ち。ふさぎ込み。アルコール中毒の病的震え。恐怖。戦慄

 
【ミステリー(mystery)】
「謎」「不可思議」「神秘的」「怪奇」「推理小説」などの意味を持つ単語である。

 
【サスペンス(suspense)】
不確定要素から起こる心理的不安定感を意味し、未解決・不安・気がかりの意。多くは小説・ドラマ・映画作品などに冠に使われ、筋の展開や状況設定などによって、読者や観客に不安感や緊張感を与える事を主軸・主体に置いたもの。その後の展開が『犯人』や『動機』『目的』『原因』などが不明な事により、先の見えない“不安定”な状態にさらされるものを指す。語源である「suspended(宙ぶらりん状態)」をイメージされたら良いかと思う。

 
【thriller(スリラー)】
語源はスリル(thrill)で、恐怖や極度の期待からくる緊張感。はらはら、どきどきする感じ。「スリル満点」などが、言葉としてよく使われる。

1.スリルを与える人[もの]。

2.怪奇小説や演劇、映画などの恐怖を主題とした作品ジャンルの一つ。

これで、だいたいの事は理解して戴けたかと思う。
ガ採りは、これら全ての要素が入っている。

『怖いですねぇ。恐ろしいですねー。』

口からポロッっと、勝手に淀川長治の決まり文句が出てきちやったよ。
淀川長治(1909~1998)と云えば、日曜の午後9時からTVでやってた『日曜洋画劇場』だ。約32年にわたって映画の前後に短い解説をしてはった。

 
(出展『❓』見つかりません)

 
いつも笑顔で、好好爺って感じの爺さんだった。
でも見た目がカラクリ人形みたいで、子供の頃は誰かが下で操作しとるんちゃうかと疑ってた。
締め括りに必ず「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ。」と強調して言う独特の語り口が全国的に有名で、多くの視聴者に親しまれていた。知らない人はいなかったんじゃないかな。
でもさあ、上記の、ホラー映画やサスペンス映画など怖い映画の時に言う、これまた常套句の『怖いですねー。恐ろしいですねー。』と言ってる眼鏡の奥の目がまったく笑ってなかったんだよね。それが逆にメチャメチャ怖かった。そう云う人が一番ヤバイ。この人、善人に見えて、本当は相当な悪なんじゃないかと思ったのだ。今はそんなことないと思うけど。

( ̄∇ ̄)あちゃー、又しても大脱線だ。
スマン。ここからが本題。

夜の蛾(ガ)採りは、ミステリーとホラーとサスペンスに満ちている。

それを知ったのは、2017年の春だった。

水沼さんと森さんにライトトラップに連れてってもらった。化け物、オオシモフリスズメを一度はこの眼で見てみたかったのである。

 

 
ライトトラップは車の横に1つと1㎞ほど離れたとこに1つと、二ヶ所に設置されていた。

車のそばで飲み会になった。ワテはチャンスと思い、酒をガブ飲みした。蛾が恐かったのである。酔っ払いさえすれば、怖いもん無しになれると思ったのである。

しかし、細かな霧雨の降るライトトラップには絶好のコンディションなのにも拘わらず、日没と共にエゾヨツメが飛んで来たあとは、サッパリワヤであった。

 

 
時刻は、いつの間にか午後11時半になっていた。水沼さんは既に就寝されていた。

森さんに『もう1つのトラップを覗きに行きません❓』とお誘いしたが、『行かへん。一人で行ってこいや。』とニベもなく、却下された。一人は怖いので、もう一度懇願したが、『アホか、懐中電灯貸したるから、一人で行ってこんかい。』と言われた。

ホントはガキの頃からの超怖がり屋である。でも『僕も行きませんわ。』なんて言いでもしたら、『おまえ、怖いんやろ?』とでも言われ、せせら笑われるに決まってんである。それは絶対に嫌だ。恐怖よりもプライドを取る。

真っ暗な夜の山中を、一人で歩く経験は殆んど無いから半泣きで歩き始めた。背中がゾワゾワする。

歩き始めたら、周囲の黒く濃い闇が気になって仕方ない。闇の奥に魑魅魍魎どもが潜んでいるのではないかと思って、気ぜわしく周囲に目を走らせながら歩いた。

もし出たら、

懐中電灯で、コメカミを死ぬほどブン殴ってやる(#`皿´)❗

マジで、そう思ってた。

着いたら、イボタガが杭に止まっていて、ビックリしてチビりそうになった。カッコイイ蛾ではあるが、見方を変えれば、異形の者、悪魔の化身じゃないか。

 

 
で、近づこうとしたら、羽を広げて威嚇された。目玉模様がカッと目立つ。
Σ( ̄ロ ̄lll)ビビって、反射的に飛び退いてもうた。

 

 
そのうち、羽をぶるんぶるんやり始めた。
怒っていらっしゃるんでしょうか❓
酔いが一挙に醒める。

 

 
しかし持ち帰らねば、嘘つき呼ばわりされかねない。半ベソ掻きながら、毒瓶に無理矢理突っ込む。

震える心で、さあトットと帰ろうと思って、何気に視線を移した。網膜に映る映像に、何か違和感を感じた気がした。

\(◎o◎)/ゲロゲロー。

陰に怪物が鎮座していた。

 

 
間違いない。オオシモフリスズメ大王様だ。その禍々(まがまが)しい出で立ちに、夜の闇は、こんなとんでもないもんを産み出すのかと思った。

ヤケクソのフルパワーで、毒瓶に突っ込む。

 

 
デカくて、ジャックナイツみたいな翅だ。これはヤバイっしょ(-“”-;)

この時の事は拙ブログに、『2017’春の三大蛾』と題して書いている。アホみたいで結構面白いから、よかったら読んでつかあさい。参考ながら、2018年にも、この春の三大蛾について書いてます。

画像が暗くて実物が分かりにくいので、展翅画像も添付しておきますね。

 
【エゾヨツメ】

 
【イボタガ】

 
【オオシモフリスズメ】

 
 
この日は大量のオオシモフリが飛来したのだが、♀は採れなかったので、翌週に箕面公園に行った。

 

 

 
ライト・トラップの時と違い、今夜は一人だ。
外灯はあるものの、夜に山中を一人で歩くのは怖い。この外灯に蛾が集まってくるのだが、水銀灯なので色が冷たい感じがする。うすら寒いと言ってもいい。慣れてないから、それが何とも不気味なのだ。ホラー映画のオープニングみたいな、いや~な雰囲気なのだ。足の無い奴やドロドロの体の奴が出てきてもオカシかない。

因みに、写真を撮ると、こんな風に緑色っぽく映る。

 

 

 
公衆トイレの灯りなんかにも集まるから、一応寄るんだけど、これがまた気持ちが悪い。ヤバイもんがいそうな雰囲気バリバリである。完全にホラー映画のシチュエーションだ。
それに壁やドアに気持ち悪い蛾ともが沢山止まってたりすると、オゾける。何度も言うが、本来アッシは蛾が大嫌いなのだ。一応、蛾でも触れるのはカトカラやスズメガの仲間とヤママユ系だけだ。今はだいぶ慣れたが、それでも何でも好きと云うワケではない。

そういえば、この時は帰り道の途中にあるトンネルまで降りてきたら、

(◎-◎;)ドォ━━━━━━━ン❗❗❗

心臓が止まりそうになった。

突然、黒いトンネルの横に並んで立っている異形(いぎょう)の者たちが目に飛び込んできた。その周りには、漫画みたいに斜線がいっぱい入ったよ。それくらい映像が強調された。

頭の中で、すぐに思い浮かんだのが、人生で最も怖かった映画『シャイニング』に出てくる双子の少女だ。突然、脈絡もなく、その画像がカットインで入ってくるのだが、これが意味なくメチャンコ恐ろしい。狂ったジャック・ニコルソンよりも遥かに怖いのだ。それを思い出して、俺、終わったな。殺されると思った。しかも二人とも女装のオカマなのだ。違和感バリバリじゃないか。深夜の山中、真っ暗な口を開けたトンネルの横に変な格好のオカマ二人組…。狂っている奴らとしか思えん。猟奇的変態かもしれん。ワシ、惨殺されて、山に埋められるんかのー(ToT)

殺されるにしても、せめてそのリボンと髪の毛は引きちぎってやろうと思った。

二人と目があった瞬間、『こんばんわ。』と言われた。
狂った人間が吐き出す言葉なら、相当ヤバいセリフだ。それで近寄ってでも来たりしたら、殺人鬼決定だ。
でもその声は普通の人の、普通の挨拶の声と口調だ。すかさず顔をまじまじと見た。化粧は半ば剥がれていて、異様な感じではあるが、その目は狂った者の目ではなかった。

小さな声で、『こんばんわ』と返した次の瞬間には言ってた。

あー、(|| ゜Д゜)ビックリしたぁー。

心の中に、大きな安堵と共に怒りが込み上げてきた。(#`皿´)バーロー、こんな山ん中でオカマがイチャつくんじゃねえーよ。

この話なんかは完全にホラーだ。
夜のトンネルは、バリバリ怖い。

それで思い出したよ。

 

 
武田尾のJRの廃線になったトンネルだ。昼間でも無気味だ。
このトンネルはまだ短いが、長いものも結構あって、それは先が見えなくて、たとえ日中でも懐中電灯が無いと歩けんところなのだ。

2018年は夜に2度訪れているが、2度とも恐くてトンネルの中には入れなかった。霊感の無いワシでも、何かヤバイものが出そうで、とてもじゃないが無理だった。だいたい心霊スポットと云えば廃墟、廃屋かトンネルだと相場が決まっているのだ。チキンハートのワテが入れるワケがない。しかも、一人ぼっちだ。何かあっても、誰も助けてくれない。

そんなの絶対に無理(*`Д´)ノ❗

しかし、去年(2019年)は遂に中に入っちまった。
ここには、ナマリキシタバと云う珍品の美しい蛾がいて、関西で確実にいるのは此処しかないと言われている。しかも、街から近いのだ。

2度も惨敗を喫したのは、トンネルが怖いので生息地の中心ではない端っこで採ろうとしたからだ。甘かったと痛感したよ。で、形振り構ってらんなくなって、勇気を振り絞ってトンネルに入ったってワケ。虫屋の採りたい欲望、巌(いわお)も砕くだ。

二つ目のトンネルで、前からスマホの懐中電灯で歩いてくるバカップルがいたので、奇声をあげて脅かしてやった。死ぬほどビビってるのを見て、『ゴメン、ゴメン。足元をネズミが走りよってーん。』とか言って誤魔化した。ケケケケケ…Ψ( ̄∇ ̄)Ψ、アタシャ、性格が悪いんである。

これなんかは、向こうから見れば、完全にホラーだろな。ついでにワシの顔を下から懐中電灯でかざしてやればよかった。それだとギャグになっちゃうか(笑)

戻りもトンネルを通らねば帰れない。「行きはよいよい、帰りは怖い」である。だいたいがヤバイ話は帰りしなに何か起こるのだ。
真っ暗な中に懐中電灯の光の束だけが真っ直ぐに伸びている。鳥肌立つね。光が変なものだけは照らさないでねと祈る。
夜遅くだったし、もちろん一人だから小走りでトンネルを抜けた。頭の中は余計な事を考えず、終電の時間のことだけを考えた。

この頃には、だいぶと心頭滅却が出来るようになっていたのだ。極意は、ミッションに集中することだ。目的以外の他の事は遮断する。いらぬことは考えてはならない。いらぬ事を考えれば考えるほど、恐怖は増大してゆくものなのだ。『幽霊と思いきや、正体見たり、枯れ尾花』と言うではないか。恐怖とは、想像することなのである。だから、想像力が豊かな人ほど怖がり屋が多いかもしれない。

 

 
誰そ彼(誰ですか、あなたは)。黄昏だ。
やがて陽が落ち、夜の帳が降りる。
逢魔が刻(とき)でもある。魑魅魍魎たちが跳梁跋扈する時間の訪れだと、いつも思う。そして、変なもんを見ないことを祈る。自慢じゃないが、肝っ玉は小さいのだ。

今宵も夜を彷徨(さまよ)う。

 

 
木々の影は、時に化け物を連想させる。風にそよぐと、まるで生きているかのようだ。本当に何かが宿っているような気持ちになる時だってある。
闇は人の心をざわめかせる。普段は考えないような事も考える。色濃く人の心に翳を落とすのだ。

 

 
月夜は美しい。でも、何だか恐くもある。

 

 
そして、ミステリアスだ。

 

 
アルテミス。月の化身だ(註1)。
幽玄なる美しさがある。

 

 
アブラゼミの羽化。青白い色は儚く、透明感がある。
蝉の羽化はいつ見ても、神秘的だと思う。

  

 
小さいけど、とても美しい蛾だ。
名前は知らない。

 

 
シンジュサン。巨大な羽を羽ばたかせて、夜空を飛ぶ姿には見惚れる。
コヤツも月の化身だ。
学名 Samia cynthia の「Cynthia(シンシア)」は、月の女神アルテミスの別名キュンティアーの英語読みなのである。

陽の光のもとで見ると、そこには紫檀の美しさが在る。

 

 
スタイリッシュなデザインでもある。

 

 
蛍の姿も、よく見た。
でも、一番最初は🔥鬼火かと思って、相当ビビった。
その光がゆっくり、スウーッと空に舞い上がる様は、刻(とき)を静謐にさせる。時間の流れも緩やかになる。
そして、群れ飛ぶ姿は幻想的だ。黄泉の国の入口みたいだ。

これらを見ていると、その全ての生き物たちに精霊が宿っているのではないかと思う。そして皆、ミステリアスだ。

 

 
外灯の下に立つ。夜中に一人歩いていると、不思議な気分になる。時々、自分は何をやってるんだろうと思う。自分とは、いったい何者なのか?だとも。
しかし、長く闇に包まれていると、親密な気分にもなってくる。段々、闇に体が馴染んでくるのだ。やがて、自分の輪郭が滲んで朧になり、闇に溶けてしまうのではと思う。

闇にまだ慣れてない頃で、一番怖かったのはカバフキシタバを採りに行った京都だった。

 
【カバフキシタバ】

 
先ずは、この看板。

 

 
これには正直、心理的な影響をかなり受ける。熊に襲われたら、洒落にならんからだ。

真っ暗けー。

 

 
漆黒の闇だ。今宵は新月。空に月はない。
オマケにここは外灯が一切なく、街の灯も全く届かない地形になっている。四方、八方、笑けるほど黒いのだ、まるで太古の闇だ。熊が近くにいても全くワカランだろう。背後からガバッと来られたら、一貫の終わりである。スリル満点じゃないか。しかも映画とかの擬似じゃない。リアル・スリル満点なのだ。

ここは樹液でのカバフキシタバの採集だったのだが、森の奥まで入らねばならないし、メチャンコ、斜面がキツい。

覆い被さる木々に、さらに闇が濃くなってような気がする。試しに懐中電灯を消してみた。
遠近感ゼロ。誰かに鼻を摘ままれてもワカランような、まさに太古の闇だ。言葉に表せない不思議な感覚に囚われる。心だけが闇に浮かんでいるような奇妙な気分になる。

もし、森の中で懐中電灯が切れたら、道までは戻れないだろう。そうなれば、動くことは危険だ。ずっと此処で膝小僧を抱いて(ToT)シクシク泣きながら、朝が来るまで待つしかない。そう云う意味では、これもまたスリル満点だ。安物の百均の懐中電灯なのだ。接触も悪いし、いつ電池が切れるかもワカラナイ。予備も持ってないから、ひやひやものだ。想像しただけで、チキンスキンになる。関西風に言うと「さぶイボ」出たわである。

その時だった。
森の奥から動物の太く激しい咆哮が森に谺した。その場でフリーズする。

3、40mくらいか…。結構近い。
動物の野太い咆哮は、尚も続いている。それを聞いてると、段々腹が立ってきた。まだカバフキシタバも採れてないんである。って云うか、採り逃がした。これでは何しに来たかワカラナイ。このまま此処に朝までとどまっているワケにはいかないのだ。

熊が何ぼのもんじゃい。
(#`皿´)キレた。

うっせー、ジャカわっしゃーい❗(#`皿´)ブッ殺すぞー❗

声は闇夜をつんざくように辺りに反響した。
( ̄▽ ̄;)あちゃー、思わず大声で叫んでまった。
しもた。冷静さの欠片(かけら)もない愚行だ。
だが、その気迫に怯んだのか、吠え声はピタリとやんだ。伊達に長く舞台役者をやっていたワケではないのだ。
でもなあ…。怒って静かに背後から忍び寄られ、ガバッと襲われるかもしれない。そうなると、命を賭して闘うしかあるまい。死闘だ。物語はスリラーだけにとどまらず、バイオレンスの要素まで加わってくるじゃないか。スゴい物語だが、怖すぎるわ。

結末は、カバフキシタバの回を読んでくれたまえ。

因みに、中部地方はどこ行っても熊の恐怖に苛まれた。

 

 
こんな看板が何処にでも普通にあるのだ。
長野、岐阜、山梨は、どこへ行っても、熊の恐怖に怯えながらも自分で良いポイントを探さねばならなかった。どこにトラップを仕掛ければいいか必死に考えねばならぬ。謂わば、謎解きもしなければならないのだ。そう云う意味では、毎回が物語はミステリーであり、恐怖が加わればスリラーであり、サスペンスでもある。怪物やお化けや魑魅魍魎、霊的なものへの恐怖も加わればホラーにだってなるのだ。

それでは皆さん、

『サヨナラッ、サヨナラッ、サヨナラッ』

                    おしまい

 
追伸

次回も記事が投稿でけるかどうかはワカランので、あしからず。

追伸の追伸
色んな蛾が出てきたが、今は採ってるのは主にカトカラだけ。熊の恐怖に出てきた下翅の黄色いヤツが同じグループに含まれる。下翅が美しい蛾で、上翅も渋美しいものが多いから、ついでに幾つか並べておく。

 
【ベニシタバ】

 
【エゾベニシタバ】

 
【シロシタバ】

 
【コシロシタバ】

 
【オオシロシタバ】

 
【ウスイロキシタバ】

 
【ムラサキシタバ】

 
【クロシオキシタバ】

 
【パタラキシタバ】

 
【フシキキシタバ】

 
【ワモンキシタバ】

 
【ゴマシオキシタバ】

 
【ミヤマキシタバ】

 
【マホロバキシタバ】

 
個体によるバリエーションもあって、今のところまだ飽きてない。

 
(註1)アルテミス。月の化身だ。
オナガミズアオもオオミズアオも勝手にアルテミスと呼んでいる。但し、今は日本にはアルテミスと云う学名のものはいない。昔はオオミズアオの学名にギリシア神話の月の化身アルテミスが使われていたが、日本産の学名は Actias artemis から Actias aliena に訂正されているからだ。

因みに画像はオナガミズアオ。
学名はActias gnoma。小種名は意味は「地の精」。

 

2018′ カトカラ元年 其の16 後編

    
   vol.16 ベニシタバ
      解説編

     『紅、燃ゆる』

 
【Catocala electa ベニシタバ ♂】 
(2019.9.3 岐阜県高山市新穂高 )

 
(同♀)
(2019.9.3 岐阜県高山市新穂高)

 
(裏面)
(2019.8.2 長野県大町市)

 
世界有数のカトカラ研究者である石塚勝己さんは、ベニシタバのことをこう評しておられる。

「新鮮な個体の後翅は、息を呑むほど綺麗な淡紅色で、目本産の鱗翅類で敵うものはない。まさに日本で最も美しい鱗翅類である(やどりが 217号,2008)」

そこまでは美しいとは思わないけど、言わんとしておられることは解る。確かに鮮度が良い個体はハッと目を見張るほどの美しさだ。羽化後、間もないものを見た時は、闇夜に燃ゆる紅の炎を見たような気がした。暫し見惚れたのを思い出したよ。
ピンクとグレーの組合わせと云うのもベストな配色だろう。ピンクを最も美しく見せる色といえば、グレーなのだ。しかも、この明るいグレーとの組合せが一番キレイだ。
ここで、『ι(`ロ´)ノそれって白か黒でしょうよ!』と云うツッコミが入りそうだが、白と黒は他の色でも抜群に合う組合わせなので除外しての話だ。白と黒は赤であろうと青であろうが何にでも合うからだ。黄色だって、緑だって、果ては茶色やドドメ色にだって合うのだ。そこは、あえて言う程のことではないと思ったのさ。
蝶には、こういう鮮やかなピンク色の翅を持つものは殆どいないから(註1)、素直にこんなピンキーな蝶が日本にも居たらいいのにな。

ふと思ったんだけど、美の概念は世評や常識に邪魔されやすい。例えば蝶と蛾の中で美しいと言われているものを蝶蛾の区別なくアトランダムに一同に並べたとしよう。それを愛好家ではなく、一般ピーポーに見せて美しいと思うものに投票してもらったとしたら、どうだろう❓意外な結果になるかもしれない。
あえて愛好家を外したのは、業界で言われている評価、既存の概念に左右され易いからだ。そこには純粋な美しさ以外の珍品度とか、採集の難易度、個人的な思い入れ等が加味されがちだ。また、蛾というだけで、美しさが毒々しいという感情に反転することもあるだろう。
知識のない一般ピーポーならば、その心配はない。
そうなると、ベニシタバなんかは若い女の子たちから高評価を得て、上位に食い込むかもしれない。普通種のベニシジミ(春型)なんかも票を集めるかもね。

好みは男女の差もあるゆえ、評価が割れるものもあるだろう。ベニシタバも乙女のカッちゃん辺りだと高い点数をつけそうだが、普通の男性の評価は低いかもしれない。男でピンク好きは乙女かロリコン星人だと相場が決まっているのだ。
それに男なのにピンクを好きだと公言したら、何言われるかワカンナイ。たとえ好きでも、隠れキリシタンみたく地下に潜るだろう。エロエロエッサイム、エロエロエッサイム、きっとそこで夜な夜なピンクのド派手な衣裳を纏った者どもが狂乱の宴にトチ狂うのだ。きっと淫靡なことも行われているに違いない。羨ましい限りである。ピンク色は人を惑わせ、狂わせる色なのかもしれない。

一方、自分は青系に極めて反応する人なので、青とか青緑色のモノを選ぶんだろな。冷静沈着の男なのだ(笑)
人の好みって千差万別だよね。

こうなってくると、世間一般の男女別好きな色はどうなってるんじゃろ❓と気になってくる。調べよっと。

ネットで見た或るアンケート調査によれば、こないになっていた。

男性の好きな色 ━ 青、赤、緑、黒、水色
女性の好きな色 ━ ピンク、青、水色、緑、赤

ほおーっ、やっぱり女性はピンクが好きなんだね。
とはいえ、これは2006年と少し古いアンケート結果みたいなので、最新のもの(2019年)も見てみた。

男性の好きな色 ━ 青、緑、黒、赤、白
女性の好きな色 ━ ピンク、白、青、オレンジ、緑

少し変わっているが、やはりピンクは強いね。女性がこんなにもピンク好きだとは思ってもみなかったよ。思ってた以上に好きなんだね。

参考までに嫌いな色も書いとこう。

男性の嫌いな色 ━ 無し、ピンク、紫、金、茶色
女性の嫌いな色 ━ 無し、ピンク、紫、赤、灰色

男性が嫌いな色の上位にピンクが入るのは予想通りだったけど、何と女性の嫌いな色でも単独だと1位に入っている。ピンクって、そんなにも好き嫌いがハッキリしている色なのね。驚いたよ。

前置きが長くなった。毎度の事ではあるが、またしても話が大幅に逸脱。しかものっけからでスマン、スマン。

それでは、そろそろ解説編を始めよう。

 
【学名】Catocala electa zalmunna Butler,1877

今回も頼みの綱である平嶋義宏氏の『蝶の学名-その語源と解説-』には同じ学名が載っていなかった。
仕方がないので、今回もネットでググる。

最初に見つけたのは、植物の学名に関するサイトだった。
キク科に、Tagetes erecta センジュギク(千寿菊)、クワ科イチジク属には、Ficus erecta イヌビワに同じ小種名が付けられている。イヌビワといえぱ、イシガケチョウの食樹だったね。
それによると、erectaは「直立した」を意味するラテン語なんだそうだ。ソレって、エレクトしたアレの事とちゃうん❓ 基本、頭の中がエロ妄想充満だから、即そう思ったよ。
妄想はどんどん膨らんでゆく。ベニシタバがピンクでエロチックだから、記載者のバトラーが興奮してオッ勃てたのか❓ バトラー、やっぱり変態やんけー❗

でも何のことはない。語源は、木が真っすぐなことに由来しとるんだそうだ。左曲がりのダンディー、先走りのエロバカである。

早々と解決。めでたし、めでたしである。
しかし、どこか違和感を感じた。
( ̄O ̄)あらま❗、よく見ると綴りが微妙に違うわ。ベニシタバは綴りの2番目が「l」だけど、コヤツらは「r」になっとるがな。そうすっと、全然意味が変わってくるじゃないか。またイチからやり直しだ。ゲンナリする。この作業って、結構大変なんだよね。

しかし、( ´△`)あらら。ネットには、ゼニアのスーツのことがズラズラと出てきよる。道、険し。苦難が待っていそうだ。

エルメネジルド・ゼニア(Ermenegildo Zegna)といえば、イタリアを代表する世界的ファッションブランドだ。
このロゴマークを見たことがある人もいるだろう。

 

 
高級紳士服ブランドであり、高級スーツの最高峰としても有名だ。スーツは持ってないけど、ネクタイは何本か持ってる。非常に上質な織りで、質感が何段も上だ。手触りが違い、触るだけで幸せになれる。

内容を見ると、思った通りのスーツの広告だった。
あまり期待してなかったけど、そこには「electa」の意味もちゃんと書いてあった。

『「エレクタ」とは、ラテン語で高品質で優れた素材という意味があり、完成度が高く、高級感があります。」

何となく意味は解るが、「高品質で優れた素材」と言われてもなあ…。どう繋げてよいものやら…。
ちょっとここで、一旦頭の中を整理しよう。解りやすく説明する為に、どなたかがゼニアのスーツに関して書いた文章を添えておこう。
「ゼニアのスーツを着てみてわかるのが、スーツ生地の上質さ。軽くてなめらかで、生地の表面には上質なツヤがあります。あらゆる良質なものを知り尽くしたエグゼクティブたちが魅了されてしまうほどの質感なのです。」

「electa」は、如何にベニシタバが素晴らしい種なのかを讃えるに、悪い言葉ではない。しかし「高品質で優れた素材」というには抵抗感がある。なぜなら、ベニシタバは人工的に作られたものじゃないし、素材でもないからだ。言葉としてはそぐわない。
もっと彼女にとって相応しい言葉が他にある筈だ。探そう。

こんなんが出てきた。

主格 女性 単数形のēlēctus
主格 中性の 複数のēlēctus
対格 中性の 複数のēlēctus
呼応 女性 単数形のēlēctus
呼応 中性 複数のēlēctus

ēlēctusの女性形ってことか。女性と云うのは納得だが、あとは解るようでよくワカラン説明だ。だいたい「e」の上のウニウニの棒線って何なのだ?オデ、バカだからワカンねぇよ。もっと解りやすいのを探そう。

それで、やっと辿り着いたのが、コレ。

「候補者、選ばれた」。

何だそりゃ(;・∀・)❓である。
何の候補者で、誰に選ばれたのだ❓

ここで漸くラテン語「electa」が英語の「elect」の語源だと気づく。意味は「(投票で)選挙する、~に選ぶ、~を選ぶ、決める、選択する」。
同時に植物の学名の「erecta」は英語の「erect」の語源だとも気づいたよ。おバカちゃんである。

更に調べると、英語に対応した翻訳もあった。
「candidate」とあるから、コレは候補者でいいだろう。けど候補者って、いったいベニシタバとどうリンクするんだ❓ カトカラ人気投票でもあったんかい?何かズレてる感じで、シックリこない。
次の「選ばれた」は「one chosen」になっていた。これで納得がいった。翻訳すると、意味は「選ばれし者」だからである。これならゼニアの説明とも繋がる。高品質で優れた素材とは、謂わばオンリーワン、唯一の「選ばれし者」なのである。そして、そのスーツを着た者はエグゼクティブであり、また「選ばれし者」でもあると云うことだ。
つまり、この学名は美しきベニシタバに対する「選ばれし者」という最大の賛辞なのである。そう解釈すれば、スッキリする。間違ってたら、ゴメンだけど。

ついでに日本産に宛がわれた亜種名「zalmunna」についても調べてみよう。

一応、旧約聖書に出てくるコレかな❓

「Zalmunna(ツァルムナ)。ミディアンの王たちの一人。その軍と同盟者たちは、ギデオンが裁き人になる前の7年間、イスラエルを虐げました。ギデオンの少人数の部隊はこの侵略者たちを敗走させ、逃げる軍勢を追跡し、王のゼバハとツァルムナを捕らえて殺しました。」

誰かの翻訳だろうが、キリスト教徒じゃないから何を意味してるのかがサッパリわからん。
オマケに、おいおいの、王様だけどツァルムナ、ブチ殺されとるやないけー\(◎o◎)/

何で、Butlerがこう名付けたのかは皆目わからない。スンマヘン、匙を投げさせていただく。

 
【英名】The rosy underwing

underwingはカトカラのことを指すから、「薔薇色のカトカラ」ってところか。異論なしである。

 
【亜種】

Wikipediaには、以下の亜種が並べられていた。

・Catocala electa electa(原記載亜種)
・Catocala electa tschiliensis Bang-Haas, 1927
・Catocala electa zalmunna Butler, 1877

しかし、亜種の生息域は書いていなかったので、自分で調べたよ。

1番上は、ヨーロッパに分布するもので、これが原記載亜種(名義タイプ亜種)となる。
記載者は、Verbreitungで、記載年は1790年になっていた。

2番目の「tschiliensis(註2)」は、語尾に「ensis」とあるから、どこか場所を指しているものと思われる。
やや苦労したが、以下のような記述を見つけた。

Horae macrolep. pal. reg. 1: 89, Taf.11: 4, (Holot.: China, Chingan-Berge, Tschili, MNHU, Berlin)

「China, Chingan」は中国の長安のことだろう。長安は古い都の名前で、現在は西安と名前を変えている。西安は中国中央部にある陝西省の省都で、「Berge,Tschili」は5つの聖なる山の一つである華山(华山)の事を指しているのではないかと思う。

これが果して、その亜種なのかどうかはわからないが、一応中国産ベニシタバの画像を貼り付けておこう。

 
(出展『世界のカトカラ』)

 
画像を見ても、日本のものとどこがどう違うのかワカラン。

3番目は日本の亜種ですな。但し『ギャラリー・カトカラ全集』に拠ると、アジアのものは別種である可能性が高いらしい。根拠は特に書かれてないけどさ。

 
【シノニム(同物異名)】

・Noctua electa Vieweg、1790
・Catocala zalmunna Butler、1877

Butlerの記載はシノニムになってるんだね。
これを見ると、バトラーは「Catocala zalmunna」の学名で記載したって事かな❓でも既にViewegによって百年近く前に記載されていたことが分かり、亜種名に降格されって事かいな❓

けど、Viewegの記載もシノニムになっている。
何かややこしくねぇか❓
まあ、たぶん属名が「Noctua」から「Catocala」に変更になったことに伴うものだろう。

 
【開張(mm)】

岸田先生の『日本産蛾類標準図鑑』によれば、69~82㎜内外とあった。『原色日本蛾類図鑑』には、75㎜内外とだけあった。真面目に採った個体を一々測ってはいないが、たぶんそれくらいの大きさが平均だろう。

 
【分布】北海道、本州、四国、九州

西日本では少なく、四国、九州では極めて稀。
四国では剣山、天狗高原、瓶ヶ森林道などに記録がある。ブログ『高知の自然』によると「1960年代は夏に四国中央山地に行くと当時の弱い光源にもかかわらずいつも一夜に10頭近くも飛来するごく普通種だった。しかし年々数が減り、近年は図鑑の通りなかなか出会えないまれな種となってしまったことは残念で寂しい。」と記述されている。気候変動とか環境の変化とか色々あるんだろね。
九州では、福岡市脊振山,糸島市雷山,添田町英彦山,北九州市大蔵,久留米市高良山,八女市熊渡山、釈迦岳など福岡県を中心に九重・阿蘇の山地帯に記録があるが、他では散発的な記録しかないようだ。
中国地方では、ググると冠高原(広島県)、高梁市(岡山県)などに記録かあるようだが、他はようワカラン。
ι(`ロ´)ノえーい、面倒クセー。分布図を貼り付けとく。

 
(出展『日本のCatocala』)

 
(出展『世界のカトカラ』)

 
微妙に違うけど、下の分布図は県別なので注意されたし。
一応、両方とも中国地方には全県に記録かあるようだね。

近畿地方でも、奈良県以外は記録があるものの少ない。和歌山県では、護摩壇山から数例の記録がある。京都府は、京大の芦生演習林で記録されている。滋賀県と大阪府の記録は拾えなかった。兵庫県には比較的多くの記録があり、氷ノ山やハチ北高原など西播磨から但馬にかけての山地帯における個体数は少なくないという。但し、低地での記録は少ない。
気になったのは、その出現期で、8月中旬~9月下旬に見られるとあった。発生期としては、かなり遅めだからだ。まだよく調べられていない可能性もあるが、もしそうなら、興味深い。気温と何らかの関係があるかもしれないからだ。低地での記録が少ないと云うのが、解明の鍵となるのかな?

国外の分布は、ヨーロッパからウクライナ、中国、朝鮮半島、ウスリー、アムールと広いが、途中の中間地帯では分布を欠くという。

この下翅が赤系統のカトカラは、海外ではユーラシア大陸や北米に何種類もいて、そこそこ繁栄している。日本にも赤系のカトカラは、ベニシタバの他にオニベニシタバ、エゾベニシタバがいる。但し、系統はそれぞれ違うようだ。オニベニは幼虫の食樹がコナラ属なので、ベニ、エゾベニとは全く違うから容易に想像がつくが、食樹が同じであるエゾベニとも系統はかけ離れているという。

 
(オニベニシタバ)
(2019.7月 奈良市)

 
(エゾベニシタバ) 
(出展『世界のカトカラ』)

 
近縁種には、中国四川省や雲南省にハイイロベニシタバ(S.martyrium)が、中国南部からインド北部にかけて、アカハラベニシタバ(C.sponsalis)がいる。

 
(ハイイロベニシタバ)

 
(アカハラベニシタバ)
(出展 2点共『世界のカトカラ』)

 
アカハラベニシタバって、最初はキレイだなと思った。けど、何かに似てるんだよなあ…と思ってよくよく考えてみれば、あの気色の悪くて大っキライなカシワマイマイ(註3)の♀に似てる。そう思ったら、急激に嫌いになったよ。

北米には近縁種が4種(C.amatrix、C.cara、C.carissma、C.concumbens)いて、これらは地史を考えれば、古い時代に北米大陸に渡って本種群から分化したと推察されるそうだ。因みに古い時代とは、第三紀中新世あたりかを推測されている。
補足すると、これはカトカラにはユーラシア大陸とアメリカ大陸に共通種がいないことからの推論だろう。
例えばチョウでは、パルナシウス(ウスバシロチョウ属)やコリアス(モンキチョウ属)は両大陸に共通種が幾つかいる(ウスバキチョウやミヤマモンキチョウなど)。この違いは何かと云うと、幼虫の食餌植物に起因するものと想像される。すなわちカトカラの食樹は木本植物であり、地史的に古い時代にユーラシアから北米へと適応放散していった(ユーラシア大陸と北米大陸が繋がっていた時代があった)。カトカラはそれに連動して分布を拡げ、進化したものと考えられる。一方、ウスバキチョウ属やモンキチョウ属の食餌植物は草本植物(ケマン亜科コマクサとスノキ科クロマメノキ)で、もっと後の新しい時代に適応放散したものと考えられている。それに伴いチョウも分布を拡大、進化した。この食性の違いが、両大陸に共通種の有り無しの差となっているというワケだね。

 
(出展『世界のカトカラ』)

 
上から、C.cara、C.carissma、C.amatrix、C.concumbensの順になる。

 
【レッドデータブック】

和歌山県:学術的重要
宮崎県:絶滅危惧II類(VU-R)

 
【成虫出現月】7~9月

成虫は7月初め頃から出現し、10月下旬まで見られるが、新鮮な個体が見られるのは8月中旬頃まで。
しかし、7月から9月に発生すると云う文献もあった。ちょっと信じがたいが、言われてみれば9月初旬に新鮮な個体を幾つか見てる。冒頭の展翅したものも9月の採集だが、鮮度が良い。標高は1500mだった。或いは、標高の高い発生地では羽化が遅れるのかもしれない。
何れにせよ、新鮮な個体を得たければ、基本的には7月から8月中旬に探しに行かれるのがよろしかろう。美しさのレベルが一段違うからね。
あっ、冒頭でベニシタバの美しさについて書いたが、言い忘れた。残念ながらその鮮やかなピンクは、鮮度が落ちると色褪せてくる。新鮮なものでも標本にすると、時間と共にその美しさが褪せてきて、十全には残らないのだ。

 
【生態】

垂直分布はエゾベニシタバよりも低く、エゾベニほど低温は好まないようである。自分が見た地点の標高は、750、820、830、1200、1250、1400、1500mだった。但し、環境は渓谷、高原、山麓、湖、湿原などと様々だった。

灯火にも樹液にも飛来する。珍品という程のものではないが、一度に多数が採集されることはあまりないようだ。自分も色んなところで見ているが、多くて2、3頭で、一度に多数の個体を見たことがない。
理由は色々考えられるけど、どれも弱くて決め手に欠け、結局よくワカンナイ。分布は広いが、どこでも個体数が少ないと言われる鱗翅類は他にもいるけど、その理由について述べられてるものをあまり見たことがない。本当は個体数は多くて、他に効率の良い採り方が判ってないだけだったりしてね。

灯火で見たのは1ヶ所だけだから、これについてはたいしたことは言えない。
9月の中旬に灯火採集に連れて行ってもらったのだが、その時に数頭見た。飛来時刻は比較的早く、8時台だったと思う。印象的だったのは、ライトトラップの周辺まで飛んで来るものの、そばまでは近寄って来なくて、光に照らされた夜空をビュンビュンに飛んでいたことだ。かなりのスピードで、飛ぶことが速いことで知られるスズメガの仲間とさして変わらないと思った。カトカラはマジ飛びすると、速いのだ。

樹液やフルーツ(腐果)トラップ、糖蜜トラップにも好んで集まる。樹液への飛来はミズナラで何度か見ている。時刻は午後9時くらいだったと思う。トラップには、8月だと早いもので日没直後に飛来したものもいたが、殆んどは午後8時を過ぎてからの飛来だった。深夜までポツポツと飛んで来る。9月は午後10時台以降にしか寄って来なかった。けんど、これはたまたまかもしんない。飛来条件は、気温や湿度、天気、標高などのその他諸々が複雑に絡まっているのだろう。
一つのトラップに、複数の個体が同時に集まったケースは一度もなく、全て単独での飛来、吸蜜だった。
但し、これもまだまだ経験値としてのサンプルは少ないので、飛来する時間や生態については断言は出来ないところがある。そういう傾向があったと云うくらいにとどめておかれたい。
文献によれば、果実への飛来例もあるようだ。ただ、何の果物かは書かれていなかった。
ベニシタバは、わりかし食いしん坊なカトカラなんだと思う。

長野県でサラシナショウマの花に訪れた例があり、兵庫県でもリョウブの花での吸蜜例がある。他に、山地高原で日中に花に訪れたという観察例もある。また、川原の砂地での吸水も観察されている。

成虫は日中、岩やカラマツ、アカマツなどの幹に頭を下にして静止している。『日本のCatocala』では、地面が明るい砂地だと、地面に近いヤナギに上向きに静止している事があるという。これは光の方向で止まる向きを定位させているとみられると書いてあったが、何のこっちゃやら意味があんましワカラン。地面からの光の反射の影響って言いたいのかな❓

静止時は他のカトカラと比べて鈍感なんだそうだ。トラップに飛来した時も、特に敏感だと云う印象を受けたことはないし、それほどビビッドなカトカラではないのだろう。
因みに、驚いて飛び立つと、着地時は上向きに止まり、一瞬紅色の後翅を見せて下向きになるそうだ。

発生初期に川沿いの小屋などの壁面に一時的に多数の個体が静止している事があるという。羽化直後の行動とみられ、その数日後には分散していたそうだ。エゾベニのように岩面に多数の個体が長期間見られることはなく、どちらかと云うと岩面よりも樹幹で見掛ける事の方が多いみたいだね。

 
【幼虫の食餌植物】

ヤナギ科のイヌコリヤナギ、バッコヤナギなどのヤナギ属(Salix属)全般を食樹としている。

 
(イヌコリヤナギ)
(出展『三河の植物観察』)

 
(出展『鎌倉発”旬の花”』)

 
余談だが、ガーデニングで人気のハクロニシキ(白露錦)は本種の園芸品種である。

他にケショウヤナギ、オオバヤナギ、ウラジロハコヤナギ、セイヨウハコヤナギ(ポプラ)でも幼虫が見つかっている。
ふと思ったんだけど、その辺に植わってるシダレヤナギ Salix babylonica は食わないのかな?また、飼育する場合の代用食にはならないのかな?一応同じSalix属だしさ。でも、そげな事は調べた限り、何処にも書いてなかった。

ヤナギ科でググってみると、ヤナギ類の同定は極めて困難みたいだ。日本には30種を軽く越えるヤナギ属の種があり、これらは全て雌雄異株。花が春に咲き、その後に葉が伸びてくるもの、葉と花が同時に生じるもの、展葉後に開花するものがある。同定のためには雄花の特徴、雌花の特徴、葉の特徴を知る必要がある。しかも、自然界でも雑種が簡単にできるらしい。
食樹をヤナギ属全般としているのは、そう云う事情もあるのかもしれない。植物のプロレベルでもないと、正確な同定は困難なのだろう。
少し気になるのは、ポプラを食うことだ。ポプラを食うのなら、同じヤナギ科ヤマナラシ(Populus)属のヤマナラシやドロノキにも付く筈だが、調べた限りでは何処にもそげな事は書いてなかった。

前述したが、因みに日本にいる後翅が赤系統の他のカトカラは、オニベニシタバがブナ科のQuercus属、エゾベニシタバがヤナギ科全般を食樹にしている。しかし、食樹の違うオニベニだけでなく、食樹が同じであるエゾベニとも系統は違うみたい。見た目だけでは測り知れないところがあるのね。

石塚勝己氏の『日本で最も美麗な鱗翅類、ベニシタバ(やどりが 217号,2008)』に拠ると、北米にいる後翅の赤いカトカラはヤナギ科やブナ科の他、マメ科、バラ科を食樹にしているものもいる。ユーラシア大陸には食樹は不明だが、形態等からバラ科食と予想されているものが幾つかあるという。
ベニシタバとエゾベニシタバは、何れもヤナギ科食で あるが、系統的にはかなり離れているそうだ。またヤナギ科食のカトカラには、ベニシタバともエゾベニシタバとも異なる系統のベニシタバ類もいる。ブナ科食の赤系カトカラ類にしても、オニベニシタバ種群と異なるいくつかの系統があるそう。ややこしいねぇ。
カトカラは食樹からある程度の系統が推測できるもの(北アメリカのクルミ科食のものなど)もいくつかあるが、全く推測できないものも多い。
このようにベニシタバと称されるカトカラでも、いくつもの系統があり、それらの系統ごとの関係もまだ明らかでないそうだ。

ベニシタバ種群は現時点でヨーロッパからウクライナ辺りに1種(東アジア産とは別種に分けてる?)、東アジアに3種、北アメリカに4種が知られている。これに対してエゾベニシタバ種群の種数は圧倒的に多いようだ。

 
【幼生期の生態】

(出展『イモムシ ハンドブック』文一総合出版)

 

今回も、この項は西尾規孝氏の『日本のCatocala』のお力を借りよう。

幼虫は比較的若い木に発生するが、エゾベニシタバが発生しないような低木にも発生する。また植栽されたポプラの老齢木でも発生することもある。
幼虫は5齢を経て蛹化する。幼虫の色彩は変異があるが、エゾベニシタバほどではなく、全体が白化したものや暗化したものがいる。
低山地にもよく発生し、エゾベニシタバよりもやや低標高地を好む。本州中部地方で多く見られるのは標高700~1500m。生息地は高原のイヌコリヤナギの灌木林からヤマナラシ・ドロノキ林、河川沿いのケショウヤナギ群落、崩壊地や河川の氾濫跡に繁茂し始めたヤナギ類の幼木など様々。
あっ、ヤマナラシとドロノキが出てきた。でも食樹としてはハッキリ書いてないんだよね。

卵で越冬し、長野県の標高1000mでの幼虫の孵化は5月上旬。1、2齢幼虫は葉裏や葉柄にいる。移動する際は尺取り虫にやや近い動きをするみたい。補足すると、尺取り虫も蛾の幼虫で、その姿が親指・人差し指で長さを測る様子を連想させることから「尺取り虫」と呼ばれいる。英語においても同様の発想から inchwormと呼ばれる。その特有な歩み方は、見る人によってはユーモラスで可愛らしい。
2齡期の途中から枝に静止している。5齢(終齡)幼虫は6月中旬から下旬に見られ、自身と同じ太さの枝や直径20㎝以下の幹に降りる。エゾベニのようにヤナギ類の大木の樹幹下部には降りない。
蛹化場所についての知見は無いそうだが、おそらく落葉の下で行われるものと思われる。

                    おしまい

 
追伸
次回、いよいよこの連載のシリーズ最終話になります。
しかし、ワードプレスのブログは金がかかるので、今日でお終いにします。たぶんまたアメブロに書きます。

 
(註1)ピンク色の翅を持つ蝶は殆んどいないから
全世界の蝶を知っているワケではないけど、鮮やかなピンク色の翅を持つ蝶といえば、アグリアス(ミイロタテハ)とスカシジャノメくらいしか頭に浮かばない。
日本にも、一応ベニモンアゲハというのが沖縄方面にいる。だけど、ピンクが印象的なのはベニモンアゲハくらいで、しかも裏面。ベニモンアゲハで、台湾固有種のアケボノアゲハの存在を思い出したが、これとて鮮やかなピンクは裏面である。

(註2)亜種「tschiliensis」
カトカラの世界的研究者である石塚勝己さんから、有り難いことに以下のような御指摘を戴いた。

「ブログ読ませていただきました。ベニシタバでtschiliensisという亜種は記載されたことがありません。間違いだと思います。おそらくケンモンキシタバの亜種として記載されたものです。」

ウィキペディアの野郎~Σ( ̄皿 ̄;;、騙しやがって。
前から解ってたけど、ウィキペディアの記述が全て正しいというワケではない。間違いも多いのだ。
一応、「Wikipediaによると…」と、一言ちゃんと書いといて良かったよ。

(註3)大っキライなカシワマイマイ
拙ブログにある『人間ができてない』の回を読まれたし。

  

2018′ カトカラ元年 其の16

 
   vol.16 ベニシタバ

   『薄紅色の天女』

 

 2017年 9月23日

蛾は気持ち悪くて嫌いだったけど、誰もが賞賛するムラサキシタバは一度見ておきたかった。蛾屋じゃない蝶屋の人でも、アレは別格だと言ってる人が何人かいたので前から気になっていたのだ。
そういうワケで、蝶と蛾の二刀流のA木くんにせがんで灯火採集に連れて行ってもらった。
といっても、この時はカトカラ全体に特別興味はなかった。黄色いキシタバグループなんて、どれがどれだか全然区別がつかんのである。何で人気なのかサッバリわからんかった。

 

 
場所は兵庫県の但馬地方だった。
その時にベニシタバにも会えた。ちょっとだけ嬉しかった。ベニシタバも綺麗だと云う話は聞いていたからだ。
それに、こういう色を持つ蝶は日本にはあまりいない。強いていえば、南国にいるベニモンアゲハくらいだろう。それとて裏面下翅の外縁くらいにしか紅色は配されていない。だから、実物の色をちょっと見てみたかったのだ。

ライト・トラップに2つほど飛んできたのだが、持って帰る気はさらさらなかった。ムラサキシタバでさえ、その気はなかった。所詮は蛾だからだ。蛾って、デブだし、大概は色が汚ない。夜に活動するのも気味悪いし、鱗粉を撒き散らすのも許せない。おいら、ガキの頃から蛾に対しての心理的アレルギーが強いのである。だから、写真さえ撮ってない。

ライト・トラップに飛んできたのは2頭だけで、あと1、2頭はトラップの近くをビュンビュン飛んでた。夜空をスゴいスピードで飛んでて、ちょっと驚いた。そんなに高速で飛ぶものだとは全然知らなかったのである。高速で飛ぶことで知られるスズメガと、さして変わらん。カトカラに対しての興味がそれで上がったワケではないが、アスリートの魂は刺激された。蝶採りは半分スポーツだと思ってるところがあるから、おいちゃん、空中でバチコーン💥シバくのが大好きなのである。そこに大いなるエクスタシーとカタルシスがある。

しかし、見てるだけー(;・∀・)
高さは6、7mくらいで、網が届かん。一瞬でも降りてきたら、その瞬間に電光石火で💥バチーッしばいたろかと構えていたが、全く降りてこんかった。

A木くんに、白布に寄って来たベニシタバを『記念に持って帰れば❓』と言われた。逡巡はあったが、持ち帰ることにした。折角連れてきてもらったのに、礼を欠くのではないかと思ったのだ。下手に断って、気まずくなるのも何だしね。正直、持って帰ってから捨てても、バレなきゃOKじゃろうと思ってた。

翌日、一応三角紙を開いてみた。

 

 
ボロボロだな。
こうして見ると、カトカラの鮮度の良し悪しは表よりも裏面の方がよくわかるかもしれない。

捨ててやろうかとも思ったが、折角だから展翅してみた。

 
(2017.9.23 兵庫県香美町ハチ北高原)

 
上が♀で、下が♂だ。
上翅を上げ過ぎてる蝶屋的な酷い展翅だすな。
秋田さんにボロクソ言われそうだ。
蝶は蛾みたいに両上翅の間の空間が、こんなにも空かない。蝶と蛾の一つ大きな違いだろう。全ての種がそうではないにせよ、蛾と蝶の翅のバランスは全然違うのだ。ゆえに蝶の展翅の時と同じような感覚で展翅してしまった。クセで左右の上翅との空間と触角のバランスを重視してしまうから、それに伴って上翅もつい上げてしまったのだろう。

その後、カトカラの事は完全に忘れてた。
この日は、所詮は一日限りの遊び、ヒマ潰しでしかなかったのだ。カトカラなんぞ、正直どうでもよかった。

しかし翌年、シンジュサンを探しに行った折りに、たまたまフシキキシタバやワモンキシタバが採れた。それで、少し興味を持ち始めた。小太郎くんの惹句のせいである。彼は人を乗せるのが上手い。
とはいえ、まだカトカラに完全に嵌まっていたワケではない。

   
 2018年 9月6日

翌年の9月初旬、ムラサキシタバを求めて山梨を訪れた。その数日前に兵庫県のハチ北高原にムラサキを求めて行ったのだが、惨敗に終わり、すこぶる口惜しかったのだ。負けることは大嫌いだ。だから、これを採らないと終えれないと思っていた。裏を返せば、ムラサキシタバさえ採れれば、カトカラを追いかけるのも、この年でお終いにする予定だった。外野が蝶屋じゃなくて、蛾屋だと囃し立てるのに我慢ならなかったのだ。

 

 
久し振りに青春18切符を使った旅だった。
線路の両側に広がる金色の稲穂に、何だかホッとした。
遠くへ行くのは好きだし、知らない場所に行くのも好きだ。旅人の時の自分は悪くない感じだ。キツいけど、らしい自分だと思える。きっと生来、放浪とか流浪が好きなのだ。多くの生物には、そういう遺伝子を持つ者が何パーセントかいるらしい。死滅海遊魚とかもそうだけど、そう云う一部の者が分布の拡大に寄与しているらしい。けど、だいたいがオッ死ぬけどね。所詮は死屍累々の特攻隊なのだ。

 

 
大阪駅から米原、大垣、名古屋、中津川、塩尻、甲府と乗り継いで、やっとこさ着きました。

 

 
こうして見ると、意外と東京と山梨って近いんだね。
高尾や八王子まで、あとちょっとだ。

ペンションのお姉さんに駅まで迎えに来てもらった。
このお姉さんが良い人で、後々世話になった。こういう奥さんだったら、旦那も幸せだろう。

 
【ペンションすずらん】

 
この連載ではもう、お約束みたいな画像だ。
関東方面の虫屋には知れた場所で、大きなライト・トラップが常設されている。

 
【ライト・トラップ】

 
これ又コメントは毎回ほぼ同じだ。
皆さん、もうウンザリのくだりだとは思うが、こっちはもっとウンザリなのだ。アンタらより、こっちはとうに一番に飽きとるわい。

この初日に、ベニシタバは見てる。
樹液の出ているミズナラを見つけたら、そこに来ていたのだ。

この日は蛾屋の人が二人ほどいて、その話をしたら、よく樹液の出てる木なんて見つけられたよねと褒められた。
(;・∀・)えっ❓、そんな事で褒められんの❓と思ったことを憶えてる。
批判を恐れずに言うが、蛾屋って、たいしたことないなと思った。勿論、そうじゃない人も当然いるとは思う。でも全体的にはライト・トラップに頼り過ぎな人が多すぎる。歩き回る人が少ないわ。だから、そんな弛いコメントが出てくるのだろう。

話を戻す。
結果を先に言うと、でもそのベニシタバは採れなかった。やる気というか、必死さも足りなかったのだろうが、状況が悪かった。あまり太くない木で、細い枝が沢山横から出てて、さらに周りからは他の木の枝が張り出してた。ようするに藪だ。おまけに樹液が出ている場所が少し裏側に被ってて、ブラインド気味だから視認しづらい状態だった。
まあ、それでも自信過剰な男は、何とかなると思ってた。刺激を与えて驚いて飛んだところを空中でシバく予定だった。しかし、網の先で突っついたら、あろうことか、藪の奥の方へと逃げていった。脳は反応してても、網先は1センチたりとも動かせなかった。振っても、無駄だと思ったのだ。下手に強引に振れば、網が破けかねないと判断したのである。
まあいい。ターゲットはベニシタバじゃなかったから、特に悔しいとも思わなかった。去年採ってるしね。たとえボロだろうと、一度でも採った事のあるものに対してのモチベーションは低い。そういう性格なのだ。一度、寝た女に対して急速に興味を失うのと似たようなもんだ。
それに、どうせそのうち又会えるだろうと思った。樹液が出てる木を見つけたんだから、その確率は低くない。

 
 2018年 9月9日

そのうち採れるだろうと思っていたが、翌日は姿を見なかった。そして、3日目のこの日が最終日だった。

 

 
昼間は、大菩薩峠方面にキベリタテハを探しに行ったが、惨敗。1頭たりとも見なかった。何か、よろしくないよね。流れが悪い。

昨日は、高校生の蛾屋の子に周辺を案内してもらった。他にも蛾の採り方とか道具とかアレコレ教えてもらう。前言半分撤回。蛾屋も、ちゃんとそれなりに色々工夫してるのを知ったよ。
とっておきのポイントも教えてくれた。そこは、まさかのペンションすずらんのライト・トラップの真裏の森だった。灯台もと暗しだね。
彼がトラップを仕掛けた場所は特別良い場所だとは思えなかったが、蝶屋目線のトラップの設置場所とは違っていたことには目から鱗だった。考えてみれば、夜は昼間とは全然違う世界なのだ。蝶採りのイメージでしか、物事を考えていなかったよ。

高校生が東京に帰ったので、そこにフルーツトラップをかけさせて戴いた。知らない者は知ってる者に対して、基本的に謙虚であるべきだ。彼はそこでムラサキシタバも採ったと言ってたしね。

そのムラサキシタバがやって来たと教えられた同じ木に、ベニシタバがやって来た。時刻は午後10時頃だった。

 

 
嬉しかったのか、他のカトカラは無いのにベニシタバの写真だけはあるんだよね。
これで、カトカラ元年16種類目だ。ホッとしたような記憶がある。当時は日本のカトカラは全部で31種類だったから、その半分くらいは一年目で採っておきたいなと思っていたからだろう。
とはいえ、この年はまだまだカトカラに嵌まっていたワケではない。蝶の時みたいに、日本の蝶を3年で200種類、4年で230種類以上採ってやろうとかと云うギラギラした野心は無かった。もし本気で採りたいと思っていたなら、シーズン頭のアサマキシタバを採りに行っていただろうし、ウスイロキシタバも狙いに行ってた筈だ。でも行かなかった。さらにいうと、もし真剣に取り組んでいたならば、関西では殆んど記録のないノコメキシタバ、ハイモンキシタバ、ケンモンキシタバ、ミヤマキシタバ、エゾベニシタバ辺りも狙いに行ってた筈だ。しかし、シーズン真っ只中の7、8月には甲信越方面には行っていない。行く気もさらさらなかった。マジで採ってやろうと思ったのは、カバフキシタバとシロシタバ、そしてムラサキシタバだけだったのだ。

その時に採ったベニシタバがこれかな。

 

 
♂だね。印象に無いから、たぶん♂♀とかもどうでもよかったんだろう。

上翅は去年よりだいぶ下がってるけど、まだまだ上がり気味だし、触角の整形が全然ダメだな。
当時は蛾の触角を、蝶みたく真っ直ぐにする必要性を感じていなかったからだろう。美人の代名詞に「蛾眉」という言葉もあるし、真っ直ぐじゃない方が自然だと思っていたのだ。

たまたま、上はオニベニシタバだったみたいね。

 

 
オニベニも採った時は綺麗だと思ったけど、こうして並べてみると、やはりベニシタバの方が断然美しい。
あっ、大きさは同じくらいと思ってたが、ベニシタバの方が大きいんだね。これは多分、オニベニの方がデブで重量感があるからだろう。身長は低いけど、圧が強い人がデカく見えるのと同じだ。
それにしても、オニベニの展翅が酷いな(笑)

今回も纏めて2019年のことも書いちゃいます。
疲れた人は、読むのをここで一旦やめて。あとでまた続きを読みましょうね。

 
 2019年 8月1日

青春18切符で信州方面に旅した。
これで二年連続だ。

 

 
大阪駅から米原駅まで行き、大垣、名古屋、中津川、松本と乗り換え、大糸線に入った。もう1回、信濃大町で乗り換えて、ようやく簗場駅に着いた。
11時間くらいかかっとるやないけー。青春18切符の旅も、そろそろ考えなくっちゃいけない歳だよなあ。オジサンにはキツいわ。

 

 
駅から青木湖まで歩く。
下車したのは、自分一人だけだった。遠くまで来た感、あるなあ…。

地図で見たよりも遠くて、日没間近になってやっとキャンプ場に着いた。

 

 
画像は翌日に撮ったもので、予想外の水の美しさに驚いたっけ。

慌てて一人用のテントを組立て、下見に行く。
今回の狙いはミヤマキシタバだった。ポイントを教えてくれたMくんによると、ライトトラップした時はケンモンキシタバやエゾベニシタバも飛んで来たらしい。

だが、全然下見の時間が足りなかった。ミヤマの食樹であるハンノキが沢山ある場所が見つからないうちに暗くなってしまう。
見つけたのは熊出没注意の看板くらいだ。まさか、こんな標高の低いとこにも熊が出没するとはね。(-“”-;)マジかよ。

仕方なく、湖畔を中心に糖蜜を木に吹き付けてゆく。
まあ何とかなるだろう。実力はないけど、引きだけは強いのだ。

しかし、飛んで来るのは糞ただキシタバ(C.patala)や憎っくきフクラスズメばっかで発狂しそうになる。そして、シクった感がどんどん濃厚になってゆく。

午後10時半前、やっと違うカトカラが飛んできた。
裏面から下翅が赤系のカトカラである事は間違いない。エゾベニ❓ と思った次の一瞬、下翅が見えた。
いや、薄紅色の天女だ。優雅にゆっくりと舞いながらトラップに近づいてゆく。闇の中で見るそれは、一種幻想的な光景だった。ちょっと夢まぼろしっぽい。闇夜にうろうろしていると、段々と心が通常の感覚から逸脱してくる。そもそもが、やってることオカシイよな。狂ってるわ。そう思うと、何だか笑けてきた。

トラップに止まり、下翅を開いた。鮮やかな桃色が目に飛び込んでくる。やっぱエゾベニじゃなく、ベニシタバかあ…。ベニがいるなんて想定外だったわ。
一瞬、ガックリくるが、こんなに新鮮なベニシタバを見るのは初めてだ。美しい。そして、セクシーだ。
そう思うと、テンションが上がった。それにこれを逃したら、今日の収穫はゼロだ。何としてでも採らねばならぬ。わりかし緊張感が全身に走る。

必死こいて採ったよ。
写真には、その場にヘタりこんで撮った感がある。
でもそんな事、自分しかワカンナイか…。

  

 
あっ、フラッシュ焚くの忘れてた。

 

 
でも、反対に真っ白になった。
手のひらに乗せ、今度はまたフラッシュなしで撮る。

 

 
こっちの方が質感があっていい。

そう、このピンクだ。( ̄∇ ̄)美しいねぇ。
暫し、見惚れる。

そう云えば、シロシタバが下翅を開くことをパンチラと呼んでいたのを思い出す。
純白パンティーならぬ、妖艶ピンクパンティーのパンチラだ。❤エロだね。
闇の中で、その馬鹿馬鹿しい発想にケラケラ笑ってしまう。ホント、阿呆だ。

  

 
一応、もう1回フラッシュ焚いて撮る。
こっちの方が上翅は美しく写る。明るいグレーがキレイだ。

 
(裏面)

 
裏面は、オニベニとさして変わらないね。エゾベニも多分そう変わらんだろう。

 
 2019年 8月2日

翌日、白馬村へ移動。

駅近くのスーパーで、発泡酒とカツカレーを買い、半分食ったところで、テーブルに突っ伏す。

昨日からのあまりに過酷な旅に、ドッと疲れが出たのだ。長い長い移動と残念な結果に心は擦り減っている。それに、テントの下に敷くマットを忘れたので背中が痛くてあまり眠れなかった。おまけにド・ピーカンで死ぬほどクソ暑いときてる。バロムワンのエネルギーメーターの針も、限りなくゼロに近いところを指しとるのだ。

 

 
バスで移動し、キャンプ場に入った。
狙いはアズミキシタバ。上手くいけばヒメシロシタバも採れるだろうと考えていた。

 

 
夜まで時間があるので、サカハチチョウと遊ぶ。

 

 
手乗りサカハチチョウだ。
10分以上はいた。
手乗り蝶は昔から得意。心頭滅却、良い人になれば、わりかし友達になれる。

この辺までは、まだ余裕があったんだよね。

アズミキシタバのポイントはすぐ近くだ。有名な崖下の周辺に糖蜜を吹き付ける。サラシナショウマも咲いてることだし、いい感じだ。アズミは花に吸蜜に来るというから、楽勝やんけと思った。どうせ時期的にボロだろうが、この際、採れたという事実があればよい。

しかーし、日没後すぐにベニシタバを採って間もなく、✴ピカッ⚡ゴロゴロガッシャーン❗ザーザー降り。
(-o-;)終わったな…。

 
 2019年 8月4日

🎵ズタズタボロボロ、ズタボロロ~。
泥沼無間地獄の3連敗。
昨日はヨシノキシタバ狙いで猿倉まで行くも、糖蜜に他の蛾はぎょーさん寄って来るのに、カトカラはこのズタボロのクソただキシタバだけ。ゴマシオキシタバやエゾシロシタバさえ見なかった。

 

 
泣きたくなる。こっちのハートがズタボロじゃい。

熊の恐怖と闘いつつ歩いて麓まで戻り、夜中にキャンプ場に着いた。新しい靴のせいで足を痛めてて、靴を脱いだら血だらけ。これまた地獄。これほどボコられてるのは海外だってない。

朝起きたら、テントにセミの脱け殻が付いていた。
ここまで登ってきて、羽化したのだろう。

 

 
何かバカにされたみたいで、ガックリくる( ´△`)

今日も大いなる惨敗の予感。
3日連続で連敗が続くと、ここまで弱気になるのね。初めて知ったよ。
虫採りやってて、こんなに絶不調は嘗て記憶にない。(@_@;)ぽてちーん。

白馬駅まで戻ってきた。
一昨日と同じスーパーへ行く。

 

 
今回は「デミグラスハンバーグステーキ弁当」をチョイスした。

 

 
枝豆を2鞘(ふたさや)食って、金麦飲んで突っ伏す。
ハンバーグ弁当を半分食って、再び突っ伏す。

電車に乗り、午後4時くらいに目的の駅に着く。
そこから歩いて湿原へ移動せねばならない。レンタカーを借りればよかったかなあ…。でも今さらどうしようもない。それに今はボンビーおじさんなのだ。

相当歩くことを覚悟していたが、意外と早く着いた。

 
【ハンノキ林】

 
狙いは、ミヤマキシタバ。初日のリベンジである。
ここは文献で調べた所だから、確実にいる筈である。
いなきゃ、もう呪われているとしか思えない。

宿泊施設は無いので、近くにテントを張る。

 

 
ここも熊がいるらしいから💕ドキドキもんだが、最早そんな事は言ってらんない。何も結果が出てないのだ。熊が恐くて、虫捕りがやってられっかであるι(`ロ´)ノ

広範囲に糖蜜かけまくりのローラー作戦で、1ヶ所だけヒットした。もう意地である。

ここでもベニシタバが飛来した。
日没後、暫くして飛んで来た。あとは8時台に複数頭が飛んで来た。しかし、今やどうでもいい存在だ。写真も撮ってない。どんだけ綺麗な女の子でも、結構早めに飽きるという酷い男なのである。

冷や冷やの綱渡りだったが、何とか目的を達成した。
秋田さんや岸田先生にFacebookで『マホロバ(キシタバ)を発見したから、今年の運、全部使い果たしたんじゃないのー?』と笑われていたが、これで公約通りに連敗脱出である。阪神タイガースとは違うのだ。
夜中まで粘って、テントで昏倒、💤爆睡。

その後、3日ほどいて各地を転戦し、怒濤の巻き返しをするもベニシタバは見てない。で、結局最後は力尽きて突っ伏し、帰阪した。

 
 2019年 9月2日

青春18切符の旅、再び。

 

 
今回は大阪駅から米原、大垣、岐阜、美濃太田と乗り継いで、高山までやって来た。

高山駅が改築されて、メチャお洒落になってるのに驚く。

 

 
噴水まで出よる。

 

 
でも、昔の駅舎の方が好きだ。新しい建物には風情というものがない。

 

 
バスに乗り換える。

1時間ほどバスに揺られて、やっと目的地の平湯温泉までやって来た。今回は約8時間の移動だった。

 

 
既に陽は沈んでいる。
常宿に旅装を解き、温泉に直行。
で、すかさず居酒屋でキンキンに冷えた生ビールを頼む。

 

 
 
でも、そのキンキンに冷えた生を飲んで、やる気をなくす(笑)

嗚呼、蛾採りなんかやめて、ビール飲んで旨いツマミ食って、ヘラヘラしていたい。
でも、それじゃ何しに来たかワカラナイ。重い体を引き摺って出陣。
探すはエゾベニシタバ、目指すは白谷方面。
しかし、真っ暗けー。

 

  
ここには妖精クモマツマキチョウを採りに何度か訪れているが、夜はこんなにも真っ暗だなんて予想だにしていなかったよ。

 
【クモマツマキチョウ(雲間褄黄蝶)♂】

 
【裏面】
(2019.5.26 岐阜県高山市新穂高)

 
【展翅画像】

 
そういえば思い出した。白谷では、そのクモツキ採りの時に熊の親子連れを見てるわ。つまり、此処には確実に森のくまさんがいるのである。
真っ暗だし、熊は黒い。背後から襲われでもしたら、お手上げだ。((((;゜Д゜)))ブルッとくる。

🎵ラララ…星き~れい~、とか何とか口に出して歌ってはみるが、恐い。マジ卍で熊も闇も恐い。
幸い❓なことに川沿いの道にトラップを噴きつけるのに適した木がないので撤退。温泉の反対側に行くことにした。
言っとくけど、チキンじゃないからね。いや、本当はチキンだけど、目的の前ではチキンじゃないぞ。何か言い訳がましいが、そんなに悪い判断ではなかったと思う。

午後10時半くらいに漸くカトカラが飛んで来た。
しかし、エゾベニではない。低い位置、地表近くを飛んでいたので、すぐにベニだとわかった。
けど、トラップには寄り付かず、笹藪の端をちまちまとホバリングしながら飛んでいる。見たところ♀だ。もしかしたら、卵を産みに来たのかもしれないと思った。でも近くに食樹であるヤナギ類なんてないぞ。暫く見てたが、笹藪の中に入りそうになったので、網を一閃。ゲットしてしまった。

糖蜜には他にシロシタバが1頭飛んで来ただけで、クソ蛾さえも殆んど寄り付かずだった。糖蜜のレシピを間違ったやもしれぬ。いい加減に作ったもんなあ…。
ましてやヨシノやエゾベニには糖蜜はあまり効果がないとされている。序盤から劣勢だわさ。
そうだ、ワシってキベリタテハを採りに来たのじゃ。カトカラ採りはついでだ。
そゆことにしておこう( ̄∇ ̄*)ゞ

 
 2019年 9月3日

平湯から新穂高・わさび平小屋へ。
ターゲットはヨシノキシタバとエゾベニシタバ。あとはムラサキシタバとゴマシオキシタバってところか。
ここは大きなブナ林があるし、その下部にはドロノキやヤナギ類もある。わさび平にヨシノがいると聞いたことはないけど、絶対いるじゃろうと思ったのだ。もしダメでも、このどれかは採れるだろうと読んだのである。効率重視の男なのだ。

 
【わさび平小屋】

 
この右横の奥のサイトにテントを張った。

 

 
アサマイチモンジと遊ぶ。

 

 
でも手乗り蝶をやると、前みたいにその後は悲惨な結果になるんじゃないかと云う思いがよぎった。
こういう事を思うじたい、絶不調なのだろう。らしくない。メンタル弱ってんなあ。

ここには熊が沢山いる事は周知の事実である。ワシも此処のすぐ近くで見たことがある。前日以上に恐怖に怯えながら、夜道を歩き回った。
しかし、ブナ林は不気味なまでに静かで、糖蜜トラップには何も来ん。泣きたくなる。
東日本では、糖蜜トラップがカトカラにはあまり通用しないことをひしひしと痛感する。ヨシノやエゾベニどころか、ゴマシオ、エゾシロさえも寄って来んかった。
やっぱライト・トラップが無いとアカンわ。だいぶと前に遡るけど、前言撤回。灯火採集は蛾採りには必要不可欠だ。
蛾屋の皆様、m(__)mゴメンなさい。

結局、来たのはベニ2頭のみ。

 

 
それと、なぜか標高1500mに桃色クソ蛾ムクゲコノハちゃん(註1)が複数飛来。
何処にでもおるやっちゃのー(=`ェ´=)、💧涙チョチョギレそうやわ。(*ToT)ダアーッ。

 

 
雨が降り始めたので、小屋で雨宿りする。
暗闇で飲むビールは苦かった。

                     つづく

 
追伸
雨はやがて激しくなった。
テントの下は川となり、凍えながら眠った。ボロボロの大惨敗である。
その後、1ヶ所だけ転戦して大阪に帰った。

一応、2019年に採ったベニシタバの展翅画像のいくつかを貼り付けておこう。

 
【Catocala electa ベニシタバ】

 

 

 
【同♀】

 

 
【裏面】

 
展翅もだいぶ上手くなっとる。
幾つかは『ひゅう~、完璧じゃねえのd=(^o^)=b』と勝手に自画自賛しちゃうぞ。
これからは、上翅を心持ち上げえーの、触角を真っ直ぐしいーの、やや上げえーの路線でゆきまーす。

触角に関しては、以前に蛾眉的な形の方が自然で良いだとか何だとかホザいたが、撤回。よくよく考えてみれば、生きてるカトカラの触角は真っ直ぐだと気づいたのである。つまり、むしろ真っ直ぐな方が自然なのだ。

次回、ベニシタバの種解説編の予定っす。

 
(註1)ムクゲコノハちゃん

 
同じピンクでも毒々しいなあ。
おらにとっての、ザ・蛾だよ。正直、背中がおぞける。

 

2018′ カトカラ元年 其の14

   vol.14 オオシロシタバ
  『その名前に偽りあり』

 
2018年 9月7日

オオシロシタバを初めて採ったのは、エゾシロシタバと同じく山梨県甲州市塩山だった。

 
【ペンションすずらん】

 
但し、ジョナスやエゾシロシタバのようにペンションすずらんのライトトラップではない。
じゃ何かというと、果物トラップで採れたのだ。糖蜜ではないところが、いかにも蝶屋らしい。蝶屋はあまり霧吹きシュッシュッの糖蜜は使わないのだ。
簡単な方法はストッキングにバナナやパインをブチ込み、焼酎をブッかけて発酵させたものを木に吊るす。
だから、翌日に蛾マニアの高校生が霧吹きを持ってシュッシュシュッシュやってるのを見て、衝撃を受けた。彼はライトトラップも別な場所でやってたしなあ。純粋なる蛾好き魂に触れたような気がするよ。

 

 
そういえば、この日が初めてのカトカラ狙いでのフルーツトラップだったんだよね。でもって、同時に初ナイトフルーツトラップでもあったわけだ。
カトカラにそこまで嵌まっていたワケではなかったから、そうまでして採ろうとは思わなかったのだ。
でも、ムラサキシタバとなれは話は別だ。大きさ、美しさ、稀少性、どれを取っても別格のカトカラなのだ。彼女だけは何としてでも採りたかった。だからカトカラ目的で遠征したのもこの日が初めてだったし、トラップまで用意したのだろう。

果物は何を使ったっけ❓
一つは即効性の高い🍌バナナを使ったことは間違いないが、ミックスしたもう1種類が思い出せない。普通で考えればパイン🍍なのだが、それは沖縄や東南アジアでの話だ。中部地方では、勿論のこと露地物のパインなんぞ栽培されているワケがない。ゆえに誘引されないかもしれないと考えた記憶がある。因みにバナナも中部地方に露地物はないだろうが、トラップとしては万能だと言われている。だから選んだ。実際、過去に効果もあったしね。
となると、もう1種はリンゴか梨、桃、スモモ辺りが考えられる。
🍎リンゴは発酵するのに時間がかかるし、一度も使った記憶が無いから有り得ないだろう。
梨かあ…。今、テキトーに並べたけど、もともと梨なんて考えてもしなかったよ。使ってるって聞いたことないもんな。でも産卵させる為に親メスを飼う場合は餌として梨がよく使われている。有りかもなあ…。機会があったら試してみよっと。でもリンゴと同じく発酵には時間がかかるかもしれない。
🍑桃は効き目がありそうだが、高価だ。ズルズルになるのもいただけない。それに季節的にもう終わってるよね。コレも無いだろう。
となると、スモモの可能性が大だ。そういえばオオイチモンジを採るのに使ったことがあるけど、効果あったわ。たぶんスモモだろね。そう思うと、そんな気もしてきたわ。

 
【オオイチモンジ】

 
場所は標高1400mにあるペンションすずらんから30分程下った所だった。となれば、標高1300~1200mってとこだろう。
何で、そんな遠い場所にトラップを仕掛けたのかというと、コレにはちゃんとした理由がある。宿のオッチャンに尋ねたところ、その付近にしかムラサキシタバの食樹であるヤマナラシが生えていないと言われたからだ。
だんだん思い出してきたわ。ペンションとそこを何度も往復したんだよね。コレが肉体的にも精神的にもキツかったんだよなあ。一晩に何10㎞と歩いたし、一人で夜道を歩くのはメチャメチャ怖かった。お化けの恐怖もあったけど、何といってもクマ🐻ざんすよ。近畿地方の低山地じゃないんだから、100パーおるもん(T△T)

時間は午後9時台だったと思う。
降りてきたら、ヤマナラシの幹に縛り付けておいたトラップに見慣れぬ大型の蛾が来ていた。
しかし、見ても最初は何だか理解できなかった。けど下翅を開いて吸汁していたのでカトカラの仲間であることだけは判った。でも何じゃコレ(;・ω・)❓である。
10秒くらい経ってから漸くシナプスが繋がった。

『コレって、オオシロシタバじゃなくなくね❓』

ムラサキシタバしか眼中になかったから、全くターゲットに入ってなかったのだ。それに『日本のCatocala』には、オオシロは花には好んで集まるが、樹液には殆んど寄ってこない云々みたいな事が書いてあった。ネットの情報でも糖蜜トラップでオオシロを採ったという記述は記憶にない(註1)。だから、こう云うかたちで採れるとは思ってもみなかったのだろう。

採った時は、そこそこ嬉しかった。
思った以上に大きかったし、予想外のモノが採れるのは嬉しいものだ。それに良い流れだと感じたことも覚えている。ムラサキシタバの露払いって感じで、モチベーションが⤴上がったもんね。
だが同時に、薄汚いやっちゃのーとも思った。その証拠に、この時撮った写真が1枚たりとも無いもんね。
発生から1ヶ月くらい経っているから致し方ないのだろうが、このカトカラって他のカトカラよりもみすぼらしくなるのが早くねぇかい(・。・;❓

此処には3日間通ったが、毎日複数頭が飛来した。
おまけに、シラカバの樹液を吸っている個体も見た。
ということは、偶然ではない。間違いなくオオシロシタバは樹液やフルーツトラップに誘引される。そう断言してもいいだろう。
そういえば、この時には思ったんだよなあ。シロシタバは夜間、樹液で吸汁する時以外でも下翅を開いて樹幹に止まっているものが多いなんて(註2)何処にも書いてなかったし、こんな風にオオシロシタバの生態も間違っていたから、何だよ、それ❓ってガッカリした。蛾は、蝶みたく全然調べられてないじゃないかと軽く憤慨しちゃったもんね。でも、今考えると、それも悪いことじゃない。殆んど調べ尽くされているものよりも、そっちの方がよっぽど面白い。性格的にも、そういう方が合ってる。先人たちをなぞるだけの採集なんてツマラナイ。

 
【Catocala lara オオシロシタバ】

 
その時に採った比較的マシな個体だ。
全然、シロシタバ(白下翅)って感じじゃない。どちらかというと黒っぽい。コレを白いと思う人は少ないと思うぞ。
下翅の帯が白いから名付けられたのだろうが、それとて純粋な白ではない。せいぜい良く言ってクリーム色だ。悪く言えば、薄黄土色じゃないか(上にあげた画像が白く見えるのは鮮度が悪いくて擦れているから。後に出てくる野外で撮った写真を見て下されば、言ってる意味が解ると思う)。
和名はオオシロシタバよか、シロオビシタバの方がまだいいんじゃないかと思うよ。
その下翅の帯だが、この形の帯を持つものは日本では他にムラサキシタバしかいない。両者って類縁関係はどうなってんだろね?(註3)

オオと名前が付いているのにも不満がある。
初めて見た時は大きいと思ったが、明らかにシロシタバより小さい。重厚感も全然足りてない。なのにオオなのだ。完全に見た目と名前が逆転現象になってる。名前に偽りありだ。何がどうなったら、そうなってしまうのだ。謎だよ。

 
2018年 9月16日

その1週間後、また中部地方を訪れた。
とはいえ、今度は長野県。そして、一人ではなくて小太郎くんが一緒だった。
小太郎くんの目的はミヤマシジミとクロツバメシジミの採集だったが、ついでにムラサキシタバの採集をしてもいいですよと言うので、車に乗っけてもらったのだ。
この時は殆んど寝ずの弾丸ツアーだったので、幻覚を見るわ、発狂しそうになるわで、アレやコレやと色々あって面白かった。
しかし、そんな事を書き始めたら膨大な文章になるので、今回は端折(はしょ)る。

場所は白骨温泉周辺だった。
この日もフルーツトラップで勝負した。
たぶん前回使ったものに果物を足して、更に強化したものだ。車の後部座席の下に置いたら、小太郎くんが『うわっ、甘い匂いがスゴいですねー。』とか言ってたから、間違いなかろう。

トラップを設置して、直ぐにオオシロシタバが現れた。勿論、もう感動は1ミリたりともない。擦れた個体だったし、みすぼらしい汚ない蛾にしか見えなかった。
それでも一応、1頭目は採った記憶がある。

 

 
その後も、オオシロくんは何頭もトラップに飛来した。
これで、やはりオオシロシタバはフルーツトラップに誘引されると云うことを100%証明できたぜ、ざまー見さらせの気分だった。
けど、フル無視やった。もうゴミ扱いだったのである。だから、この日もオオシロシタバの画像は1枚もない。

そういえば、この日は白骨温泉の中心でもオオシロを見ている。外灯に飛んで来たものだ。図鑑やネットを見てると、オオシロの基本的な採集方法は灯火採集のようだ。
思うに、この灯火採集が蛾界の生態調査の進歩を妨げている部分があるのではないだろうか❓
確かに、この採集方法は楽チンで優れている。一度に何種類もの蛾を得られるから効率がいい。その地域に棲む蛾の生息を調べるのには最も秀でた方法だと思う。しかし一方では、生態面に関しての知見、情報はあまり得られないのではなかろうか❓せいぜい何時に現れるとか、そんなもんだろ。
まだまだ蛾の初心者のオイラがこう云うことを言うと、また怒られるんだろなあ…。
まっ、別にいいけどさ。変に忖度なんかして感じたことを言えないだなんて、自分的にはクソだもんな。

今回も2019年版の採集記を続編として別枠では書かない。面倒くさいし、そこには何らドラマ性も無いからだ。書いても、すぐ終わる。
と云うワケで2019年版も引っ付ける。

 
2019年 9月5日

2019年のオオシロシタバとの出会いも白骨温泉だった。
ポイントも同じ。違うところは、細かいところを除ければ、一人ぼっちなところと1週間ほど時期が早いことくらいだ。

天気がグズついてて、ようやく雨が上がったのが午後10時過ぎだった。やっとの戦闘開始に気合いが入る。
霧吹きで、しゅっしゅらしゅしゅしゅーと糖蜜を噴きつけまくる。
そうなのだ。フルーツトラップから糖蜜にチェンジなのじゃ。( ̄ー ̄)おほほのホ、一年も経てぱバカはバカなりに少しは進化しているのである。
フルーツトラップは天然物なだけに、効果は高い。但し、問題点もある。荷物になるのだ。それに電車やバスに乗ってて、甘い香りを周りに撒き散らすワケにはいかないのだ。されとて、ザックの中に入れるワケにもゆかない。液漏れでもしたら、悲惨なことになる。だいち重いし、かさ張る。ようするに邪魔なのだ。今回のように全く車に頼れない時は、そういう意味ではキツい。一方、糖蜜トラップは蓋をキッチリしめてさえいれば、匂いが漏れる心配はない。荷物もコンパクトにできる。液体が減れば、当然軽くもなるし、補充も現地で何とかなる。山の中で売ってる果物を探すのは至難だが、ジュースや酒ならまだしも手に入る。

糖蜜トラップのレシピは覚えてない。
なぜなら、決まったレシピが無いからだ。基本は家にあるものをテキトーに混ぜ合わせるというアバウトなものなのさ。
たぶん焼酎は入ってる。ビールは入っているかもしれないが、入ってないかもしれない。
果実系のジュースも何らかのものは入っていた筈だ。ただ、それが🍊オレンジジュースなのか、🍇グレープジュースなのかは定かではない。下手したら、それすら入ってなく、カルピスやポカリスエットだった可能性もある。勿論、それら全部がミックスされていた可能性だってある。
酢は入れなかったり、入れたりする。普通の酢の時もあれば、黒酢の時もある。気分なのだ。ゆえにワカラン。
この時は絶対に入ってないと思うが、作り始めた初期の頃などは黒砂糖なんかも入れていた。効果は高いけど、溶かすのが面倒くさいから次第に入れなくなったのだ。
コレってさあ、普段自分が作る料理と基本的な流れが同じだよね。やってることは、そう変わらない。もちろん料理の場合は基礎が必要だけれど、最終的にはセンスとかひらめきとか云う数値にできない能力で作ってる部分が多い。でも料理より酷いハチャメチャ振りになる。たぶん自分で食ったり飲んだりしないから、必然もっとテキトーでチャレンジャーになってしまうのだ。
それでも何とかなってしまうところが怖い。って云うか、だから努力を怠るのでダメなんだけどもね。メモさえ取らないから、いつも行き当たりバッタリの調合で成長しないのだ。自分で、まあまあ天才なんて言ってるけど、少しばかりセンスのある単なるアホだ。基本的に論理性に欠けるのだ。だって右脳の人なんだもん。

結果は、やっぱり撒いて程なくオオシロくんが来た。
そして、やっぱりボロばっかだった。
違うのは、それでも一応写真は撮っておいたところくらい。この時には、もう既にカトカラシリーズの連載を書き始めてだいぶ経っていたゆえ、さすがに必要だと思ったのさ。

 

 
【裏面】

 
酷いな。やっぱり汚ないや。腹なんて毛が抜けて、テカテカになっとるがな。ここまで腹がデカテカなカトカラは初めて見るかもしれんわ。
そう云えば、たぶん『日本のCatocala』にメスは日が経ってるものは腹の鱗粉がハゲていると書いてあったな。それは多分、産卵するために樹皮の間に腹を差し込むからだろうとも推定されていた筈だ。
何か樹液の件で文句言っちゃったけど、やはり著者の西尾則孝氏はスゴイ人だ。日本のカトカラの生態についての知識量は断トツで、他の追随を許さないだろう。この図鑑が日本のカトカラについて述べたものの中では最も優れていると思う。

けど、コレって♀か❓
まあ、いいや( ・∇・)

その時に採ったものを展翅したのがコチラ↙

 

 
二年目の後半ともなれば、展翅もだいぶ上手くなっとるね。如何せん、鮮度が悪いけどさ。

今年は、もし真剣に採る気ならば8月上旬に行こうかと思う。鮮度が良い本当のオオシロシタバの姿を知るためには、それくらいの時期に行かないとダメだね。
実物を見たら、オオシロシタバに対する見方も大幅に変わるかもしれない。

次回、解説編っす(`ー´ゞ-☆

                    つづく

 
追伸
実を云うと、この回は先に次回の解説編から書いている。
そっちがほぼ完成に近づいたところで、コチラを書き始めた。その方が上手く書けるのではないかと思ったのだ。まあまあ成功してんじゃないかと自分では勝手に思ってる。

 
(註1)ネット情報でも糖蜜トラップでオオシロを採ったという記述は記憶にない

ネットで糖蜜トラップでの採集例は見つけられなかったが、樹液での採集を2サイトで見つけた。青森でミズナラとヤナギ類で吸汁しているのが報告されている。もう片方のサイトでは、樹液に来たとは書いていたが、具体的な樹木名は無かった。

 
(註2)シロシタバは樹液吸汁時以外も下翅を開いてる

これについてはvol.11のシロシタバの回に詳しく書いた。気になる人は、そっちを読んでけれ。

 
(註3)両者って類縁関係はどうなってんだろね?

実を云うと、先に次回の解説編を書いた。
あれっ、それってさっき追伸で書いたよね。兎に角そう云うワケで、時間軸が歪んだ形でDNA解析について触れる。えーと、説明するとですな、これを見つけたのは解説編を書いている時なのだよ。

 
(出展『Bio One complate』)

 
石塚勝己さんが新川勉氏と共にDNA解析した論文である。
(/ロ゜)/ありゃま。オオシロ(C.lara)とムラサキシタバ(C.fraxini)のクラスターが全然違うじゃないか。
つまり、この図を信じるならば、両者に近縁関係はないと云うことだ。共にカトカラの中では大型だし、帯の形だけでなく、翅形もわりと似てるのにね。DNA解析は、従来の見た目での分類とは随分と違う結果が出るケースもある。蝶なんかはワケわかんなくなってるものが結構いるから、見た目だけで種を分類するのは限界があるのかもしれない。違う系統のものが環境によって姿、形が似通ってくるという、いわゆる収斂されたとする例も多いみたいだしさ。
まあ、とは言うものの、DNA解析が絶対に正しいとは思わないけどね。