2020’カトカラ三年生 其の四 第一章

 
   vol.27 ヨシノキシタバ

    『吉野物語』前編

 
2019年 8月3日

青春18切符の旅の3日目である。
1日目は湖の畔でミヤマキシタバを狙うも惨敗。昨日は白馬村のキャンプ場に移動してアズミキシタバを狙うが、これまた惨敗。そして今日はヨシノキシタバ狙いで山の上に行く予定だ。

ヨシノには密かに憧れている。愛好家の間でも人気が高く、最も美しい前翅を持つカトカラだと評する人もいるくらいだ。また分布は局所的で個体数も少なく、稀種ともされている。石塚さんの『世界のカトカラ』でも★星4つと高評価だ。この★が4つ以上のカトカラは他に6種だけで、カバフキシタバ、ナマリキシタバ、アズミキシタバ、ヤクシマヒメキシタバ、ミヤマキシタバ、ムラサキシタバという綺羅星の如き面々が並んでいる。

ヨシノという名前もいい。ヨシノといえば古来から桜の名所として知られ、また歴史ある土地としても有名な「吉野」が思い起こされるし、麗しき女性の名前も想起される。「佳乃」「吉乃」「愛乃」「美野」「与志乃」など何れも古風で雅びな風情があり、また響きもいい。「よしの」という名前の女性は、だいたい美人と決まっておるのだ。
今宵は、お嬢にめぐり逢えることを心から祈ろう。そして恋に落ちよう。

昼過ぎ、バスターミナルまで行く。
着いたらバスが出たあとで、次の便まで1時間以上もあった。タイミング、最悪だ。
なのでヒマを持て余して、夕飯にする予定だったローソンで買った麻婆豆腐を食ってしまったなりよ。

 

 
この麻婆豆腐、結構旨かった。
最近のコンビニはレベル上がってると聞いていたけど、ホントなのね。普段あまりコンビニで食いもんは買わないし、買っても🍙おにぎりとかサンドイッチくらいだから全然気づかなかったよ。

で、食い終わって突っ伏したんだよね。無駄に待ってる事もそうだけど、惨めな連敗続きとテント生活で身も心も疲弊していたのだ。にも拘らず、今から無謀な計画を敢行しようとしている自分に、何やってんだ俺❓と思って突っ伏したのだった。いい予感が何処にもない。

車窓を流れる風景をぼんやりと眺めていると、心底バカバカしくなってきた。たかだか蛾を採りたいばかりに今から山中の暗闇を一人ウロつくのだ。一般ピーポーからすれば、どう考えても狂気の沙汰だ。しかも当然の事ながら夜のバス便なんてないから、帰りのバスは無いときてる。つまり、行きっぱなしの片道切符なのだ。
戻るには、朝まで過ごして始発のバスに乗るか、歩いてキャンプ場まで帰るかしかない。歩くのなら、下りとはいえ多分1時間半、いや2時間、下手したら3時間くらいかかるかもしれない。車窓から見た限りでは麓まで街灯は皆無だ。夜は真っ暗闇になる事は必定だろう。熊が出たら一巻の終わりである。誰も助けてくれん。(ノД`)シクシク。

猿倉荘に着いたのは午後3時半くらいだったように思う。

 

 
確かに周辺はブナだらけだった。
ブナの森は美しい。何だか人の心をホッとさせるものがある。巨樹も多いし、精霊が宿っているような気がするのである。たぶんヨシノキシタバも精霊に違いない。

 

(画像は別の場所です。)

 
ヨシノキシタバ(Catocala connexa)の食樹はブナだから此処に居ることは確実だろう。
問題は、ヨシノが果たして糖蜜トラップに寄って来るかどうかだ。いくら沢山いようとも糖蜜に寄ってこなくては徒手空拳である。ライトトラップは持ってないのだ。
文献を見ると、東日本では樹液に殆んど寄って来ないらしい。糖蜜トラップでの採集例も知る限りでは無い。よくそれで来たなと自分でも思う。
けど、蛾の生態情報は眉唾で見てる。どこか信頼できないところがあるのだ。だから糖蜜には来ないと言われてても鵜呑みにはしないようにしてる。実際、今まで図鑑とは違う生態を幾つも確認しているしね。従来オオシロシタバは花蜜を好み、樹液にはあまり来ないとされてきたが、糖蜜にはよく集まる。稀種とされ、灯火採集が当たり前のカバフキシタバだって糖蜜でタコ採りしてやったもんね。カバフは樹液よりも糖蜜の方が採れるのだ。ならば、樹液にあまり来ないと言われてるヨシノだって糖蜜なら楽勝かもしれない。ゆえに何とでもなると思ったのさ。とゆうワケで、我がスペシャルレシピの糖蜜だったら、んなもん粉砕じゃい(ノ ̄皿 ̄)ノ❗と意気揚々と信州まで乗り込んで来たのである。

 
【オオシロシタバ Catocala lara】

(2020.8月 長野県木曽町)

 
【カバフキシタバ Catocala mirifica】

(2020.7月 兵庫県宝塚市)

 
蛾の情報を鵜呑みしないのは、情報量が少なすぎるからだ。少ないゆえ、それが本当に事実なのか、それとも間違った情報なのかを見極めることは難しい。
これは蛾の愛好家が少ないからだろうが、それだけではないような気もする。その情報が本当に正しいのかどうか疑問を持って調べるような気概のある輩が少ないような気がするのだ。情報を鵜呑みにして、そこに疑問を持たない蛾屋さんが多い気がしてならない。ネットを見てても、新たな知見を書いている人は少ないように思う。
勿論、そうじゃない人もいるのは知ってはいる。別にディスりたくてディスっているのではない。元々蝶屋のオラが言うと怒りを買うのは解っているが、是非とも奮起して戴きたいのだ。蛾は蝶と比べて判明していない事が多い。自らで新たな発見をし、世に知らしめるチャンスがまだまだある世界だ。つまり、蝶と比べて浪漫がある世界なのだ。情報を鵜呑みにするなんて勿体ないではないか。
蛾屋諸君よ、勃ちなはれ❗エレクトしなければ、虫採りは面白くない❗❗
とはいえ、最近の若手蛾屋の活躍は目を見張るものがある。こんなこと言う必要性は無いかもね。

偉そうなことを宣(のたま)ったが、その新たな地平を切り裂いてやれと云う気持ちも、正直なところ昨日、一昨日の2連敗で足元から揺らぎ始めている。糖蜜に寄って来ないワケではないのだが、関西にいる時みたいに今一つ爆発力がない。東日本では糖蜜があんまし効かんのかもと思い始めていたのである(註1)。
それだけじゃない。ここは標高が1230m以上もある。ヨシノが発生しているかどうかは微妙だ。未発生の可能性も充分に考えられるのだ。バクチ度はかなり高いよなあ…。けんどバクチを打たなきゃ、欲しいものは手に入らない。

 
夜が来るまで、凄く長かった。

 

 
ブナの他にミズナラとかも結構あるし、ゼフィルス(ミドリシジミの仲間)でも採ってヒマを潰そうと思ったが、1匹もおらんのだ。どころか蝶が全くと言っていいほど何もおらん。長野に来てから何やってもダメだ。

 

 
半分ふて腐れて砂利道に仰向けになる。
空が青いなあ…。何だか採れる気が全然しないや。
なのにナゼここにいるのだ❓いる意味あるのか❓益々、自分で自分が何やってんのかワカランくなる。

 
午後7時半。ようやく闇が訪れる。長かった…。

 

 
糖蜜の用意をしていたら、変な蛾がシツコク体に纏わりついて邪魔してきた。何ゆえワシの足に止まるのだ❓
見たこと無い奴のような気がするが、どうせクソ蛾だろう。小馬鹿にしやがって(-_-メ)
何だかなあ…。昔から好きじゃない女に追いかけ回されてる時は調子が悪いのだ。たぶん生体エネルギーが落ちているんだろう。えてして、そうゆう時はオーラが弱まっているから悪い気が入り込みやすい。だからロクでもないものが寄って来るんである。詐欺師など悪い人は弱ってる奴を狙うって言うからね。嫌な予感が過(よ)ぎったよ。

その予感は見事に的中した。
ブナ林では普通種のゴマシオキシタバくらいは、いくら何でも寄って来るだろうと思ってたが、殆ど何も飛んで来んかった。
飛んで来たカトカラは、8時10分に来たコレだけ。

 

 
ゴマシオだと思いつつもヨシノだったらいいなと思って採ったカトカラは、まさかの何とズタボロのキシタバ(C.patala)だった。ボロ過ぎて何者なのかワカランかったのだ。
何で低山地にいるド普通種のキシタバ(註2)が、よりによってこんな所におるのだ❓しかもスーパーにボロ。こんな高い標高で屑キシタバを、それも糞ボロを採るだなんて可能性は確率的にモノ凄く低いものと思われる。ある意味、スゴい引きである。逆説的奇跡だ。
何やってんだ俺(´-﹏-`;)❓やるせない気分を闇に投げつける。

 

 
ヤケクソで、見たことのない蛾を1つだけ採って(註3)、9時半には下山を開始した。

暗い。

 
  

 
とにかく暗い。笑けるほど真っ黒だ。試しに懐中電灯を消したら何も見えなくなった。四方八方がウルトラブラックの世界の中で、遠近感ゼロになる。対象物が何も見えなければ、人間の目は何処にも焦点が合わないのだ。
発狂しそうになったので慌てて灯りを点ける。光の束が何とか闇を押し退ける。コレって、もし何かの突発的トラブルで懐中電灯が壊れたら…。(ㆁωㆁ)死ぬな。持ってる懐中電灯は百均で買ったもので極めて劣悪なる製品なのじゃ。恐ろしいことにしばしばサドンデスしよる。ブラッキャウト(BLACK OUT)❗熊の餌食になる前に発狂死かもな…。

五感を研ぎ澄まして尚も坂を下る。風は死んでいる。自分の歩く音だけが闇に変な感じに強調されて谺する。
一刻も早くこの地獄から脱出したい。そう思うから急ぎたいのたが、さっきから足の指と踵が痛みだしている。新しい登山靴のせいで昨日から靴ズレになっているのだが、それがドンドン酷い状態になっていってるのが自分でもよくわかる。
痛みは更に増してゆき、やがて足を引きずるような歩き方になった。もし今ここで熊に襲われたら走れないなと思う。恐怖に駆られて、慌ててザックから網を出して組み立てる。これを上に掲げておれば、熊だって何者かと恐れをなして近寄って来ないかもしれないと考えたのだ。網の円が顔に見えたら相当デカい生物に見える筈だ。それにもし襲って来たとしても、柄でメッタ打ちのタコ殴りくらいはできる。何なら柄の底で目を突いて潰してやるぜ。どうせ死ぬのなら、相手に襲ったことを後悔させるくらいのダメージを与えてやる。

熊の気配を敏感に嗅ぎとろうと五感をマックスに研ぎ澄ましつつも、同時に目は飛翔物を探している。あわよくばヨシノが飛んでないかと期待もしていたのだ。地獄の沙汰も蛾次第なのである。因果な趣味だよ。

それにしても遠い。歩いても歩いても坂道は延々と続き、漆黒の闇は終わらない。もしや異次元ワールドにでも迷い込んだのでは❓と段々不安になってくる。ここで👽異星人が出現でもしたら、熊よかシャレにならん。発狂寸前男は、ラバウル小唄を口ずさむ。

漸く「おひなたの湯」の灯りが見えてきた。
温泉に入れてもらえんやろけ❓ とっても足が痛いんじゃー。湯治させてくれんかのー(´ε` )
一縷の望みにかけるが、着いたら閉まっていた。宿じゃないんだから、こんな時間にやってるワケがないよね。期待したアタイが馬鹿だったよ。

でもここまで来たら、行きのバスの記憶ではキャンプ場まではそう遠くない筈だ。車での所要時間を徒歩に換算すると、実際はとんでもなく遠かったりするんだけどもね。
それでも此処まで来たら、熊の恐怖もだいぶ薄まった事だし、気持ちはだいぶと楽だ。まだ油断はできないけど…。

取り敢えず、一旦休憩しよう。この場所なら外灯があるから、まさか熊も襲って来んじゃろうて。

靴下を脱ぐと、両足とも血だらけになっていた。
もう身も心も満身創痍である。そして、地獄の3連敗がほぼ確定だ。標高的に採れる確率は絶望的に低い。
ペシャンコになったオニギリを食いながら、深い溜息をつく。心は熊の恐怖から開放された安堵感と惨めな敗北感とがない混ぜになった奇妙な気分だった。
見上げると、星が死ぬほど綺麗だった。涙が出そうになった。

案じたとおり、世の中そんなに甘くなかった。その後もかなり歩いた。やはり車って速いわ。レンタカーを借りるという考えは全然浮かばなかったんだから仕方ないよね。

ボロボロになってキャンプ場に着いたのは、午前0時過ぎだった。ここまで2時間半以上も掛かったワケだ。
後で調べたら、猿倉荘からキャンプ場までは約9Kmだった。普段の自分なら普通に歩いても1時間半もあれば着く距離だ。「飛天狗」とも呼ばれた韋駄天のワタクシだ。本気の高速歩きなら1時間以内で歩けただろう。

酒でも飲みたい気分だが手に入るワケもなく、絶望を抱いて寝袋に潜り込む。やがて、泥のような眠りが訪れた。

翌朝、テントを見たらセミの抜け殻が付いていた。
昨夜は全然気づかなかったが、地面を這って此処まで登ってきて羽化したのだろう。

 

 
何もこんなところで羽化することないじゃないか。周りに他に登れそうな木はいっぱいあるのに何で❓ 何だかセミにまでもバカにされたような気分だった。
コヤツを見て、村を出ようと決心した。これ以上ここに居てもマイナスのスパイラルから脱け出せないだろう。セミにバカにされるような男には、エンドレスにヨシノなんて採れるワケがない。今年はもうヨシノ嬢のことは諦めよう。
珍しく弱気なのは、ヒドいフラれ方で完全に心が折られていたからだ。昔から惚れた女に何度も告るほどの強靭なメンタリティーは持ち合わせていない。

 
                       つづく

 
追伸
この旅での惨敗で、東日本での糖蜜採集の限界を痛いほど知らしめられた。それで2020年は灯火採集へと半分シフトした。結果、蛾屋の皆さんたちが主に灯火採集をする理由も理解したよ。
しかし、今後とも糖蜜採集があまり効果がないとされているカトカラに対してもチャレンジすることはやめないだろう。得られる生態面の情報は灯火採集よりも多いからね。新たな発見があるからこそ面白いのだ。灯火トラップは採集効率はいいかもしれないが、生態面に関しては大した知見は得られない。
とは言いつつ、それでも生態を紐解く鍵は僅かながらも有るとは思う。けれどもネットなんかはユルい孫引きばかりだ。ライトしましたー。何々が飛んで来ましたー。ハイ、おしまい。それじゃ観察眼が無さ過ぎる。何の参考にもならんのだ。詳しい場所を書けとまでは言わないが、せめて日付や飛来時刻、その日の天候や気温、標高くらいは書いておいてくれと思う。もしかして、教えてたまるかの😜アッカンべー精神❓ だったとしたらセコ過ぎる。
まあ、時代だろね。こっちだってホントなら採集地もキッチリ書きたいところだが、周りに止められてるから最近は詳しく書けてないしね。情報が下手に回れば、ルール無視の人間が場を荒らすから明かさないというのは理解できる。でも地名は、よっぽど細かく書かなければ問題ないと思うんだけどなあ…。例えば松本市だけじゃ探しようがないくらい広いけど、その下の郡とか町レベルまではいいんじゃないかと思う。トレジャーハンティングじゃないけど、あまりにヒントが無いと面白くないよね。やる気が起こらないのだ。それじゃ人も育ちまへんで。

ちなみに、この時の青春18切符の旅は連作となっている。
前日譚はアズミキシタバの回に『白馬わちゃわちゃ狂騒曲』と題して書いた。前々日譚はベニシタバの回『薄紅色の天女』の後半部分と繋がってる。後日談は翌日のミヤマキシタバの『突っ伏しDiary』に始まり、以下ナマリキシタバの『汝、空想の翼で駆け、現実の山野にゆかん』、ワモンキシタバの『アリストテレスの誤謬』、ハイモンキシタバの『銀灰の蹉跌』、ノコメキシタバの『ギザギザハートの子守唄』、ヒメシロシタバの『天国から降ってきた小さな幸せ』へと順に連なってゆく。それで、この時の旅の全貌が分かる仕掛けになっている。暇な人は読んでみて下され。
次回は後編の2020年の採集記です。

 
(註1)東日本では、あまり糖蜜が効かんのかも…

そんな事はないのだが、そんな傾向も無きにしもあらずというのが現在においての見解である。
この翌日にはミヤマキシタバとベニシタバが糖蜜でけっこう採れた。その翌々日は、多くはないが上田市でワモンキシタバ、ノコメキシタバ、ハイモンキシタバも採れた。その後も長野県や岐阜県ではそれなりの成果を上げてはきた。しかし関西ほどに爆発的成果は上げていない。寄って来るには来るのだが、全体的に数が少ないのだ。
思うに、どうもこれは標高と関係しているのではなかろうか。比較的飛来数の多かったミヤマ、ベニのポイントは標高800mくらいだったが、上田市は1300mだった。他に試した場所の標高は1200〜1700mで、何れも全般的にカトカラの飛来数は多くはなかった。もしかしたら標高1000m、特に1300mをこえると活発に食物摂取をしないのかもしれない。そもそも標高が高ければ高いほど樹液が出ているような木は少なくなる筈だから、或いは花蜜など別なものを主体に摂取しているのかもしれん。まさかの水飲んで生きてたりしてね。

因みに1700mでも結構来たのはオオシロシタバである。花蜜を好むとされてたから、これは意外だった。ムラサキシタバやベニシタバも高い標高でも割りと来る。

 
(註2)ド普通種のキシタバ

あの画像では、どんなカトカラなのかワカランし、どんだけボロかもワカランので、まともな画像も貼っつけておきます。

 
【キシタバ Catocala patala】

 
関西なら何処にでもいるド普通種。それゆえ「ただキシタバ」と呼ばれる事が多い。ただのキシタバだからだ。他に「テブキシタバ」「ブタキシタバ」「クソキシタバ」「クズキシタバ」など更に酷い呼ばれ方もされている。
もし普通種でなければ、そこそこ高い評価をされて然るべきカトカラなのにね。何てったって日本最大のキシタバであり、ユーラシア大陸を含めてもコレに匹敵するキシタバ類は他にタイワンキシタバ(C.formosana)くらいしかいないんである。実際にヨーロッパ辺りでは、かなり評価が高いらしいしね。
そもそも和名も悪い。ただの「キシタバ」だから、それがキシタバ類全般を指しているのか、それとも種そのものを指している言葉なのかが分かりにくいので、こうゆう「タダ」だの「デフ」「クソ」だのをアタマに付されるのである。もしも学名そのままの「パタラキシタバ」や、デカイので「オニキシタバ」とでも名付けられていたならば、ここまでボロカスに言われることはなかったろうに。
今まで折りに触れ言ってるけど、早急に改名して欲しいよ。

おっと言い忘れた。この時はまだカトカラ2年生なので知らなかったが、標高1200mでもキシタバは採れる。但し、数は低地ほどには多くはない。けどライトトラップでの話だから、もしかしたら麓から飛んで来た可能性もある。キシタバは飛翔力あるからネ。でも猿倉のこの個体は麓から飛んで来た可能性は極めて低い。いくらワシのスペシャルな糖蜜の匂いがスゴかろうとも(笑)、麓までは匂いは届かんだろう。ゆえに元々周辺に居たことになる。💢何処にでもいやがって(-_-;)

 
(註3)ヤケクソで見たことのない蛾を一つだけ採って

名前は、ハガタキリバ(Scoliopteryx libatrix)というらしい。
調べた時は最初、芳賀田切羽かと思った。だが芳賀田さんが発見したからではない。正しいのは歯形切羽で、前翅の形からの命名だろう。
開張は約46mm。
分布は北海道、本州、四国、九州と広くて、生息地も丘陵地から比較的高い山地と広い。しかし個体数は何処でも少ないようだ。そこそこ珍しいから初めての出会いだったんだろね。
出現期は5~9月で、春と夏の年2化だそうだ。でもって成虫越冬らしい。そんなに長生きだとは、ちょっと意外だった。
成虫はクヌギやコナラの樹液に集まるみたい。だから糖蜜トラップにも来たんだね(飛来時刻は午後8時)。
幼虫はヤナギ科のバッコヤナギ、カワヤナギ、ポプラの葉を食べるそうだ。という事はベニシタバの生息地にはいる可能性が高そうだ。

雌雄の違いは触角で簡単に見極められるようで、♂だけ触角が鋸歯状になるという。画像に写ってる個体は鋸歯状・櫛状になってないから♀だね。

展翅画像はない。おそらく心が折れてて、展翅する気すら起きなかったのだろう。でも下翅がどんなのか気になる。ネットで展翅画像を探そう。

 

(出典『www.jpmoth.org』)

 
コレが♂のようだね。上翅が美しい。
でも後翅は多くの蛾と同じく地味。もし下翅も美しかったら相当に魅力的だから、蛾の素人のワシでさえも存在くらいは知っていただろう。
まあ下翅の地味さを差し引いても思ってた以上にフォルムはカッコイイ。展翅してやってもいいかもしんない。でも去年のものだし、探すのは大変そうだ。

 
ー参考文献ー

◆石塚勝己『世界のカトカラ』
◆西尾規孝『日本のCatocala』
◆『むしなび』
◆『www.jpmoth.org』

 

2019’カトカラ2年生 其の四(1)

 
     vol.21 ミヤマキシタバ

     『突っ伏しDiary』

 
マホロバキシタバの調査が一段落したので、信州方面に出掛けることにした。

 
2019年 8月1日

大阪駅から東海道線で米原、大垣と乗り換えて名古屋へ。

 

 
名古屋からは中央本線で高蔵寺、中津川と乗り換え、塩尻へ。

 

 
そして塩尻から松本へ。
そう、今年もまた青春18切符の旅が始まったのだ。

 

 
松本駅に着いた頃には、いつの間にか日は傾き始めていた。長い旅になりそうだ。
さらに松本で大糸線に乗り換える。目的の駅までは、あと1回か2回は乗り換えなくてはならないだろう。

 

 
こうゆうローカル線に乗ると思う。嗚呼、随分と遠くまで来たんだなと。

 

 
🎵線路は続くよ、どこまでも。

 

 
駅に降りたのは午後6時過ぎだった。
日没前までには目的地に着きたいところだ。重いザックを背負って湖に向かって歩き出す。今回は普段の超軽装と比べてテントや予備も含めたトラップ用の糖蜜等々荷物が多いので、早くもストレスを感じる。案の定、ちょっと歩いただけで瞬く間に汗ダラダラになる。何だか先が思いやられるや(´ε` )

当初はカトカラの中でも難関と言われるミヤマキシタバ狙いで他の場所に行くつもりだった。けど、信頼しうる筋からの情報が入り、ここならミヤマキシタバの他にもケンモンキシタバ、エゾベニシタバも狙えると聞いた。ならば、マホロバキシタバを発見した勢いを借りて、まだ採ったことのないソヤツらも纏めて片付けてやれと思ったのだ。7月にはマホロバの発見だけでなく、稀種であるカバフキシタバもタコ採りしてやった事だし、今のところ絶好調なのだ。

キャンプ場に着いたのは日没近くだった。
先にテントを張るか、ハンノキ林を確認する為にロケハンするか迷ったが、テントを建てる方を選んだ。久し振りのテント張りだ、暗くなってから組み立てるのが不安だったのだ。暗い中でのテントの組み立ては慣れてないと大きなストレスになる。設置が遅れれば遅れるほど採集時間も削られる。それも大きなストレスになりかねない。それに長旅で疲れていた。一刻も早く落ち着ける場所が欲しかったのだ。古今東西、昔から優れた男というものは、先ずは基地を作りたがるものだしね。

テントを張り終わった頃には辺りは闇に侵食され始めていた。早速、糖蜜トラップを用意して出る。
しかし薄闇の中、湖の畔を歩き回るもハンノキ林が見つからない。まあいい。どうせ湖沿いのどこかには生えている筈だ。とりあえず良さげな木の幹に糖蜜を噴射してゆく。今はマホロバの発見で乗りに乗っているのだ。ソッコーで片付けてやるよ。

しかし飛んで来るのは、ド普通種のパタラ(C.patala)、いわゆる普通のキシタバとフクラスズメばかりだ(註1)。
ハッキリ言って、コイツら死ぬほどウザい。どちらも何処にでもいるし、クソ忌々しいデブ蛾でデカいから邪魔。どころか、特にフクラスズメなんぞは下手に敏感だから、すぐ逃げよる。それにつられて他の採りたいものまで驚いて逃げるから、誠にもって始末が悪い。
おまけにフクラの野郎、カトカラの王様であるムラサキシタバにちょとだけ似てるから、飛び出した時は一瞬だけだが心ときめいてしまうのだ。で、すぐに違うと解ってガッカリする。それが、ものスゲー腹立つ。あたしゃ、本気で奴を憎悪してるとまで言ってもいいだろう。それくらいムカつく奴なのだ。

あっ、また飛んで来やがった。

(#`皿´)おどれら、死ねや❗

よほど怒りに任せてブチ殺してやろうかとも思ったが、彼らに罪はない。だいち、そんな事したら人間のクズだ。何とか踏みとどまる。

結局、夜中まで粘ったが惨敗。姿さえ見ずで狙ってたものは1つも採れなかった。
今日の唯一の救いは、新鮮な紅ちゃんを2頭得られたことくらいだろう。

  
【ベニシタバ Catocala eleta】

(裏面)

 
ベニちゃんを見るのは初めてじゃないけど、新鮮なものはこんなにも美しいんだね。その鮮やかな下翅だけに目が行きがちだが、上翅も美しい。明るめのグレーの地に細かなモザイク模様と鋸歯状の線が刻まれ、上品な渋さを醸し出している。
上翅と下翅の色の組み合わせも綺麗だ。考えみれば、ファッションの世界でもこの明るいグレーと鮮やかなピンクのコーディネートは定番だ。美しいと感じるのも当たり前かもね。ファッションに疎い男子にはワカンないかもしんないけどさ。

 
2019年 8月2日

翌朝、湖を見て驚く。
湖といっても、どうせ池みたいなもんだろうと思ってたけど、意外にも綺麗な青緑色だった。とても美しい。

 

 
こんだけロケーションがいいのならもう1日いて、昼間はじっくりハンノキ林を探しながら湖畔を散歩しても良いかなと思った。
しかし、昨日の貧果から多くは望めないと考え直した。もう1回アレを繰り返したら、ハラワタが煮えくり返ってホントに奴らに危害を加えかねない。
湖を後にして、白馬村へと向かう。

 

 
此処ではキャンプ場を拠点にして各所を回るつもりだ。

移動して温泉入ってテント張ったら、もう夕方になった。
蜩(ひぐらし)の悲しげな声が辺りに侘しく響く。その何とも言えない余韻のある声を聞いていると、何だかこっちまで物悲しくなってくる。夏もいつかは終わるのだと気づかされてしまうからだ。でも、そんな夏の夕暮れこそが夏そのものでもある。嫌いじゃない。

岩に腰掛けて、ぼおーっと蜩たちの合唱を聞いていると、サカハチチョウがやって来た。

 

 
夕闇が訪れるまでの暫しの時間、戯れる。
こちらにフレンドリーで穏やかな心さえあれば、案外逃げないものだ。慣れれば手乗り蝶も意外と簡単。心頭を滅却して無私になれない人はダメだけど。
たぶん20分以上は遊んでたんじゃないかな。お陰で心がリセットされたよ。ありがとね、サカハっちゃん。

此処での狙いは、アズミキシタバ、ノコメキシタバ、ハイモンキシタバ、ヒメシロシタバ、ヨシノキシタバである。この場所も、とある筋からの情報だ。こんだけ居りゃあ、どれか1つくらいは採れんだろ。

 


 

 
🎵ズタズタボロボロ、🎵ズタボロロ~。
だが、各地でことごとく敗退。新しきカトカラは何一つ採れず、泥沼無間地獄の3連敗となる。

1日目はアズミキシタバ狙いだったが、さあこれからというと段になって⚡ガラガラピッシャーン❗ 本気の雷雨がやって来て、チャンチャンで終わる。
2日目は猿倉の奥に行くも、糖蜜には他の蛾はぎょーさん寄って来るのにも拘わらず、カトカラはスーパーにズタボロな糞ただキシタバだけだった。

 

 
思わずヨシノキシタバかと思って採ったけど、この時期にこんなにボロのヨシノは居ないよね。今なら出始めか、下手したら未発生の可能性だってある。それにヨシノはこんなにデカくはない。惨め過ぎて、コヤツにも己に対しても💢ブチ切れそうになったわい。

熊の恐怖と戦いながら闇夜を歩いて麓まで降り、夜中遅くに何とかキャンプ場に辿り着いた。途中、新しい靴で酷い靴ズレになり、両足とも血だらけ状態で見た満天の星空は一生忘れないだろう。
そうまでして頑張ったのに報われず、泣きたくなってくる。これほど連続でボコられてるのは海外だってない。
身も心もボロ雑巾でテントに倒れ込む。

 
2019年 8月4日

 

 
翌朝、テントに付いてるセミの脱け殻を見て、セミにまで馬鹿にされてる気分になった。
そして、悪代官 秋田伊勢守に”Facebook”で言われてしまう。

『マホロバで運を全部使い果たしんじゃないの〜。』

その呪いの言葉に、温厚な岸田先生まで賛同されていた。
きっと、この地は負のエネルギーに満ち満ちているに違いない。こんなに連チャンで負け倒したことは過去に記憶がない。こう見えても虫採りのまあまあ天才なのだ。って云うか、実力はさておき、運というか引きはメチャメチャ強いのである。

(ノ ̄皿 ̄)ノ ⌒== ┫どりゃあ〜。
もう、人に教えられたポイントなんぞ行かんわい❗
最初に自分で考えてた場所に行こう。楽して採ろうなんて考えたからバチが当たったのだ。それに我がの力で採った方が楽しい。人に採らさせてもらった感が極力ない方がカタルシスとエクスタシーは大きいのだ。

 

 
大糸線、笑けるほど本数が少ない。
(´-﹏-`;)知ってはいたけどさ…。

仕方なく白馬駅近くのスーパーへ昼飯を買いに行く。
それにしても死ぬほど糞暑い。燦々と降り注ぐ強烈な太陽光が弱った心をこれでもかと云うくらいに容赦なく苛(さいな)む。

デミグラスハンバーグステーキ弁当と枝豆、発泡酒を買って、イートインコーナーへ。

 

 
全身、頭の先から足の爪先まで心身共にボロボロ状態で枝豆をふたサヤ食い、金麦をグビグビ飲んでテーブルに突っ伏す。
ハンバーグ弁当を半分食って、再び突っ伏す。

 

 
(╥﹏╥)ダメだあ〜、帰りたい。ズブズブの敗残者のメンタルや…。

でもこのあと熊がいると云う湿原に行くのだ。チップス先生、さようなら( ;∀;)

しーさんぷーたー。バラバラになった気力を何とか拾い集め、白馬から当初予定していたミヤマキシタバのポイントへと移動する。

 

 
ここはハンノキ林が多い。この場所でミヤマキシタバが採れなければ終わりだ。いよいよ本当に運を使い果たしたと認めざるおえない。

 

 
キャンプ場は無いので、今夜はテント野宿だ。
幸いにも工事用のトイレがあり、その横にスペースも結構あった。ゆえに充分な距離をおいてテントを設置できた。いくら何でもトイレの真横は嫌だもんね。
トイレ問題は重要だ。野糞は出来なくはないけど、やはりトイレは有った方がいいに決まってる。この精神状態で野糞なんかしたら、ますます惨めになるだろう。こういう一見小さな事が意外とボディーブローのように効いてきて、心の決壊に繋がることはままあるのだ。とにもかくにも1つ問題が解決してホッとする。

残る問題は奴の存在である。当初の予定通りにそこへ行くよとマオくんにLINEしたら、熊がいるから気をつけて下さいという返信があったのだ。まさかそんな標高の低い所にもいるとは思いもしなかった。完全に想定外だったよ。でも考えてみれば、湖にも熊が出まっせ看板があったもんなあ…。(༎ຶ ෴ ༎ຶ)くちょー、キミら何処にでもおるんかいのう。

湿原周辺を歩き回り、良さげなポイントを探す。
しかし、ぐるっと1周回ると思いの外(ほか)広い。ポイントらしき場所を幾つか見つけたが、そのポイント全部を回れそうにはなさそうだ。厳密的には回れなくはないのだが、移動の時間的ロスが大きい。だいち、熊が恐えよ。奥に行けば行くほど遭遇率は高まりそうだもん。
ゆえに場所を大きく2箇所に絞ることにした。一方は壮齢木の多い暗いハンノキ林内、もう一方は比較的明るい若いハンノキ林の林縁を選定した。環境を少し変えたのは、確率を考えての事だ。ミヤマキシタバを採ったことがないゆえ、どんな環境を好むか分かんないのだ。負けっぱなしなだけに慎重にならざるおえない。
その2箇所に広範囲に糖蜜かけまくりのローラー作戦を敢行することにする。もしダメなら、別なポイントに行くしかない。
にしても、どの時点で見切りをつけるかだ。ウスイロキシタバの時は見切りをつけるのが早過ぎて失敗したからね。かといって判断が遅いと手遅れになりかねない。ゴールデンタイムは8時前後から8時半なのだ。それを過ぎると一旦個体数が減る種が多い。特に9時台は止まる。つまり8時を過ぎても飛んで来なければ、ヤバい。しかし、日によっては全体的に飛来時刻が遅れる場合もあるし、カバフキシタバのように8時半になってから漸く現れる種もいるのだ。ミヤマがそっちタイプの可能性だって有り得るのである。悩ましいところだ。判断次第では大コケしかねない。選定した場所が当たりであることを祈ろう。

淋しき夕暮れが終わると、闇の世界の支配が始まった。
暗い。というか黒い。懐中電灯の光で切り取られる湿地はチビりそうなくらいに不気味だ。大体、澱んだ水のある場所ってヤバいんだよね。出ると相場が決まっている。そうゆう所は、京都の深泥池のように心霊スポットになってる場所が多いのである。😱想像して背中が怖気(おぞけ)る。お化けの恐怖と熊の恐怖に怯えながら糖蜜を木に噴きつけてゆく。

暫くしてベニシタバがやって来た。
しかも、立て続けに。

 
【ベニシタバ】

 
美しいけど白馬にもいたし、もう感動は無い。
会いたいのはアナタじゃないのよー(´ε`;)。お目にかかりたいのは、灰かぶりの黄色いシンデレラなのだ。

午後8時近くになってもシンデレラは現れない。
(ー_ー;)ヤバいかも…。
それって、マズくなくなくね❓
普通、糖蜜を撒いたら、大概のカトカラは日没後直ぐか、少し間をおいて集まってくるものだ。まさかのカバフタイプ❓けれども、そんな奴はカバフしか知らない。その確率は低そうだ。やっぱミヤマキシタバって、難関と言われるだけあって採集は難しいのかなあ…。確か「世界のカトカラ(註2)」でも採集難易度が★4つになってた筈だし、灯火採集でも深夜0時を回らないとやって来ないというしさあ。

シンデレラ〜が、死んでれら(ŎдŎ;)

思わずクズみたいな駄洒落を呟いてしまう。重症だ。連敗続きでコワれかけてる。でもクズみたいな冗談でも言ってないと、心の平静が保てないのだ。

駄洒落を言ってる間にも、時間は刻一刻と過ぎてゆく。

さっき、チビッコの死ね死ね団が足元を走っていったような気がする。

心がピンチになると珠に見る幻覚だ。いよいよ、それだけ追い詰めらてる証左って事か。ここでミヤマキシタバが採れなければ、心は完全に崩壊して、チビッコ死ね死ね団くらいでは済まないかもしれない。ダダっ子ぽよぽよ団まで登場すればお終いだ。
焦燥感に居た堪(たま)れなくなって、腕時計に目をやる。
時刻は8時15分になっていた。(-_-;)マジ、ヤバいかも…。
場所を変えるべきか悩みつつ、2箇所を往復する。此処を諦めてポイントを変えるなら8時半、少なくとも9時前までには決断しなければならないだろう。でも靴ズレの痛みが増してきてる。いよいよもって崖っぷちだ。この心と体で、はたして移動できるのだろうか…。

午後8時半過ぎ。
完全にヤバい時間になったなと思いつつ、若木ポイントへと入る。
Σ( ̄□ ̄||)ハッ❗❓
糖蜜を噴きつけた1本目の木に近づこうとして足が止まった。見慣れないカトカラが吸汁にやって来ていたのだ。

コレって、ミヤマキシタバじゃなくなくね❗❓

いや、そうだ。図鑑を何度も見て、姿を脳ミソにインプットしたのだ。間違いなかろう。急速にヤル気モードで全身が武装化される。ここで会ったが百年目、漸くチャンスが巡ってきた。武者震いが走る。
しかし問題はどう採るかだ。網を使うか毒瓶を使うかで迷う。網を使えば、中で暴れて背中がハゲちょろけになる公算が高まる。かといって毒瓶を上から被す方法だと落ち武者にはなりにくいが、逃げられる可能性大だ。
でも迷ってるヒマはない。その間に逃げられたら噴飯ものだ。コヤツが最初で最後の1頭かもしれないのだ。このチャンス、何があっても絶対に逃すわけにはいかぬ。ならば、この戦法しか有るまい。

ここは肉を切らして骨を断つ❗

よし、網で採ろう。先ずは採ることが先決だ。たとえハゲちょろけになろうとも、採れたという事実さえあれば良い。ゼロと1とでは雲泥の差なのだ。それに網で採ったからといって、ハゲちょろけになると決まったワケではない。細心の注意を払って取り込めば何とかなる。

慎重に近づく。ここで逃したら、ダダっ子👻🤡👽🤖ぽよぽよ団たちに捕まって担ぎ上げられ、エッサホイサと運ばれて沼に沈められるやもしれん。で、河童に尻子玉を抜かれるのだ。尻子玉が何たるかはよくワカランが、気合を入れ、心頭を滅却する。
網の柄をスウーッと体の中心、丹田に持ってゆく。そして右足を後ろに引いて腰を落とし、斜めに構える。な、いなや、標的の直ぐ真下に向かって撞きを繰り出す。

とぅりゃあ〜∑(#`皿´ )ノ
秘技✨撞擲ウグイス返し❗

驚いて飛び立った瞬間に💥電光石火でカチ上げ、すかさず網先を捻る。一連の鮮やかな網の軌跡が残像となって脳内に余韻を残す。

(◡ ω ◡)決まったな。

しかし、悦に入っとる場合ではない。急がなければ背中がズルむけ赤チ○ポになりよる。慌てて駆け寄り、ポケットから毒瓶を取り出して網の中に突っ込む。
しかし、驚いたワイのシンデレラちゃんが暴れ倒して逃げ回り始めた。


(@_@)NOーッ、暴れちゃダメ〜。
お願いだから大人しくしてぇー❗
(`Д´メ)テメェ、手ごめにすんぞっ❗

´Д`)ハァ、ハァ。(゚Д゚;)ぜぇー、ぜぇー。
強姦まがいの力づくで何とか毒瓶に取り込んだ。

 

 
けど、(-_-;)やっちまったな…。
見事なまでのキズ物、スーパー落ち武者にしてしまった。

どうやらメスのようだね。メスなのに落ち武者って、何だそりゃ? 自分でも何言ってるのかワカンナイ。しかもシンデレラがハゲてるって、ムチャクチャだ。想像してアホらしくなる。

 

 
翅が他のカトカラと比べて円く、上翅のデザインに独特のメリハリがあって美しい。灰色の帯やギザギザの線が絶妙な位置に配され、上品且つスタイリッシュな魅力を放っている。
思ってた以上に(☆▽☆)キャッコいいー。あっ、久し振りに指が震えとるやないけ。これこそが虫採りの醍醐味であり、エクスタシーだ。だから、こんなにもボロボロにされても網を握れるのだ。やめらんねぇ。

 
(裏面)

 
腹が太くて短いから、やはりメスのようだね。
落ち武者にさせてしまったが、とにかく採れて良かった。心の底からホッとする。全身の力がゆるゆるとぬけてゆく。
これで”Facebook”で公約した通り連敗脱出。秋田さんの呪いの言葉も拭いさられただろう。もう意地である。阪神タイガースとは違うのだよ、クソ阪神タイガースとは。普段カッコつけてる分、そうそう負け続けるワケにはいかないのだ。
ここからは、怒濤の巻き返しの倍返しじゃ(#`皿´)❗

 

 
その後、憑き物が落ちたかのように彼女たちは続けて飛んで来た。しかし、ヒットしたのはこの周辺だけだった。ハンノキ林だったら何処にでもいると云うワケではなさそうだ。そこが珍品たる所以だろう。

 

 
コチラはオスだね。
尻が長くて、先っちょに毛束がある。

その後、何頭目かに漸く落ち武者化させずに回収することができた(画像は無い)。
だが、午前0時を過ぎると、全く姿を見せなくなった。シンデレラは魔女との約束を守って舞踏会から姿を消したのかもしれない。夜中2時まで粘ったが、二度と現れることはなかった。
それでも何とか計8頭が採れた。個体数は何処でも多くないと聞いていたから、まあこの数なら御の字だろう。

疲れ切った体でテントに転がり込む。
四肢を力なく広げて突っ伏し、目を閉じる。
熊の恐怖が一瞬、脳裡を過(よぎ)る。もしかしたら寝ている間に熊に襲われるかもなあ。
だが、あまりにも疲れ過ぎていた。

ミヤマキシタバも採った事だし…。
もう熊に食われてもいいや…。

そう思いつつ、やがて意識は次第に薄れていった。

                         つづく

 
その時に採った雌雄の展翅画像を貼っつけておきます。

 
【Catocala ella ミヤマキシタバ♂】

 
下翅中央の黒帯が一本で、外縁の黒帯と繋がらないのが特徴だ。日本ではソックリさんのキシタバは他に居ないので、まあ間違えることは無かろう。

 
【同♀】

 
この♀は、下翅がやや黒化している。
私見では♀は♂と比べて上翅の柄にメリハリがあるような気がする。けど、どこにもそんな事は書いてないし、言うほど沢山の個体を見ているワケではないので断言は出来まへん。

それはさておき、♀の展翅が前脚出しいのの、触角は怒髪天の上向き仕様になっとる。この時期はまだまだ展翅に迷いがあったのだろう。模索している段階で、どれが正しいのかワカンなくなってた。今でも迷ってるところはあるけどね。

 
追伸
やっぱり一回では終らないので、つづきは何回かに分けて書きます。
なお今回、ミヤマキシタバをシンデレラに喩えているのを訝る向きもありましょうが、意味するところは後々明らかにされてゆきますですよ、旦那。

えー、どうでもいい話だけど、前回に引き続き今回もアホほど書き直す破目になった。草稿は2週間前に書き終えてのにさ。
まあ、文才がないゆえ致し方ないのだろうが、やれやれだよ。

 
(註1)ただキシタバとフクラスズメ

【キシタバ】

 
何処に行ってもいるカトカラ最普通種だが、冷静に見れば大型で見栄えは悪くない。もし稀種ならば、その立派な体躯は賞賛されているに違いなかろう。実際、欧米では人気が高いそうだ。

それにしても、この和名って何とかならんかね。他のキシタバはミヤマキシタバとかワモンキシタバとかの冠が付くのに、コヤツはただの「キシタバ」なので、一々ただキシタバとか普通キシタバなどと呼ばなければならない。それがウザい。そうゆうところも、コヤツが蔑まれる原因になってはしまいか?
ちなみにアチキは「デブキシタバ」、小太郎くんは「ブタキシタバ」と呼んでいる。アレッ?「ブスキシタバ」だっけか? まあ、どっちだっていい。とにかく、どなたか偉い方に改名して欲しいよ。それがコヤツにとっても幸せだと思うんだよね。
そういえば、この和名なんとかならんのかと小太郎くんと話し合った事がある。その時に彼が何気に言った「オニキシタバ」とゆうのが個人的には最も適していると思う。ダメなら、学名そのままのパタラキシタバでいいんじゃないかな。

 
【フクラスズメ】

(出典『http://www.jpmoth.org』

 
手持ちの標本が無いので、画像をお借りした。不便だから1つくらいは展翅しておこうと思うのだが、そのままになってる。今年も何度も見ているのだが、採ることを毎回躊躇して、結局採っていない。正直、気持ち悪いのだ。邪悪イメージの蛾の典型的フォルムだし、ブスでデブでデカいから出来れば関わりたくないと思ってしまう。奴さん、性格も悪いしね。こんなもんが、覇王ムラサキシタバと間違えられてる事がしばしばあるのも許せない

 
【ムラサキシタバ】

 
色、柄、フォルム、大きさ、品格、稀度、人気度etc…、全てにおいて遥かにフクラスズメを凌駕している。月とスッポンとは、この事だ。

 
(註2)世界のカトカラ

 
カトカラの世界的研究者である石塚勝己さんの世界のカトカラをほぼ網羅した図鑑。日本のカトカラを知る入門書ともなっている。

 

2019’カトカラ2年生 その弐(4)

 
   vol.19 ウスイロキシタバ

 第四章『瓦解するイクウェジョン』

 

2020年 6月17日

取り敢えずウスイロキシタバの新鮮な個体を雌雄共に確保できたので、新たな産地を探すことにした。

 
【ウスイロキシタバ Catocala intacta ♀】

 
これまでの結果、ウスイロが樹液、糖蜜トラップ、ライトトラップに飛来することは分かった。となれば残る象牙色の方程式の解明は、その棲息環境だろう。予測ではアラカシの大木が有るような古い起源の照葉樹林で、且つある程度の広さを有する湿潤な環境を好むのではないかと考えていた。
そういう場所となると、近畿地方では何処だろう❓
そこで真っ先に浮かんだのが奈良県の春日山原始林だった。あそこなら、これらの条件が完璧に揃っている。広大な原始林は常緑照葉樹を主体としており、そこに落葉広葉樹が混じる。幼虫の食樹であるアラカシも有り、古い起源の森だから勿論のこと大木もみられる。またイチイガシなどのアラカシ以外のカシ類も豊富だから、それらを二次的に利用する事も充分可能な環境でもある。加えて成虫の餌である樹液の供給源、クヌギやコナラ、アベマキも点在する。そして、原始林内には川も数本流れており、湿潤な環境という要素も満たしている。ようは、ここにいなきゃ何処にいるのだ❓というような場所なのだ。もしかしたらウスイロばかりか、ヤクシマヒメキシタバ(註1)だっているかもしれない。

 
【ヤクシマヒメキシタバ】

(出展『www.jpmoth.org』)

 
もしヤクヒメが見つかったら、ちょっとしたニュースだろう。マホロバキシタバ(註2)に次ぐ2匹目のドジョウじゃないか。そんな風に想像してたら、ニヤついてきた。今年も連戦、連勝じゃーいヽ(`Д´)ノ❗

ただ、一つ気掛かりなのは此処でのウスイロの記録が探しても見つけられなかった事だ。調べた範囲では奈良県の記録は上北山村ぐらいにしか無い。まあどうせ調査が行き届いてないんだろうけどさ。所詮は世の嫌われ者の蛾だ。調べた人が少なくて、しかもイモばっかだったのだろう。
あっ、でも甲虫屋とか蝶屋もよく訪れるところだから、記録があってもよさそうなもんじゃないか…。
いやいや、だったらマホロバもとっくに発見されて然りだった筈だ。それがあれだけ長年にわたり多数の虫屋が入ってきたのにも拘らず、去年まで見つからなかったのだ。ようは皆さん、蛾なんて無視なのだ。だから記録もない。そうゆう事にしておこう。

この日はマホロバの予備調査も兼ねていたので、小太郎くんも参戦してくれた。勿論、春日山と奈良公園一帯は昆虫採集は禁止されているので、公園事務所の許可を得ての調査だ。

 

 
今年、マホロバの採集を目論んでる方は、採集禁止エリアを調べてから出掛けることをお薦めします。許可なく夜の原始林内をウロウロしてトラブルを起こすリスクをわざわざ冒さなくとも、禁止エリア外でも結構採れますから。

マホロバの事も考えて、原始林とその周辺にかけて樹液の浸出状況を確認してゆく。その経過の中で、どうせウスイロも見つかるだろうと思っていたのだ。

しかし、何処でも姿は全く見られない。どころか、別なカトカラの仲間さえ殆んど見ないし、他の蛾たちも数が少ない。居るのはノコギリクワガタばっか。あまりにも何もいないので、つい普段はムッシングするクソ夜蛾を採ってしまう。

 

 
羽を閉じて止まっているのを見て、体の真ん中の白い線(上翅下辺)が目立ったから、見たことない奴だと思ったのだ。
名前がワカンなくて、Facebookに載っけたら、何と有り難いことに石塚(勝己)さんから、ノコメセダカヨトウだという御指摘を受けた。けんど驚いたでやんす。まさか奴だとは微塵も思ってなかったからね。

ノコメセダカヨトウといえば、だいたいはこんな感じだ。

 

(出展『茨城の蛾』)

 
コヤツなら、何処へ行ってもウザいくらいにアホほどいる。
なので、(⑉⊙ȏ⊙)マジか❓と思ったワケ。でもよく見ると、コヤツの上翅の下辺にも白い縁取りがある。
石塚さん曰く「普通種ですが、色調の変異は多様です。」との事。ふ〜ん、これは謂わば黒化型みたいなもんだね。
けど、ネットで検索しても、ここまで黒いのは見つけられなかった。もしかして、コレってレアな型❓
所詮はデブ蛾だから、どっちゃでもえーけど。

最後に若草山の山頂をチェックして、この日の調査を終えることにした。

 

 
若草山の山頂は夜景スポットとして人気があり、観光客が結構来ていた。
駐車場から山頂までの遊歩道の途中で、小太郎くんが上空を飛ぶカトカラを見つけた。それなりに高くて網が届かない位置だったから見送るしかなかったのだが、アレって何だったんだろう❓という話になった。かなり裏面が全体的に黄色っぽく見えたのだ。
消去法でいくと、キシタバ(C.patala)は特別大きいから可能性は低いだろう。だいち裏面はウスイロとは全然違うから間違えるワケがない。

 
(パタラキシタバ 裏面)

 
因みに、キシタバ(註3)の回で小太郎くんの事をキシタバ虐待男と書いたが、今や蔑視度は更に上がって「デブキシタバ」と呼んでいらっしゃる。但し、その憎悪も突き抜けてしまい、虐待にも値しないようだ。キシタバくん、良かったね。悪いお兄さんは、もう怖くないよ(•‿•)

あと、この時期に此処で見られるキシタバの仲間もいえば、コガタキシタバとフシキキシタバくらいしかいない。
でもコガタは裏面が黒っぽいから、ウスイロと間違うことはない。除外していいだろう。

 
(コガタキシタバ 裏面)

 
となると、フシキかウスイロのどちらかしかない。
けど、ウスイロって飛んでるのを下から見た事って、あんましないんだよね。採ってた場所は木が密生していて、上に大きな空間が無く、皆さん横に飛んで行かはるケースが多かったのだ。
しかし、小太郎くんは、アレはフシキじゃなかったと思うと言う。たしかにフシキならば、もっと黄色が濃くて鮮やかな気がする。

 
(フシキキシタバ 裏面)

 
(ウスイロキシタバ 裏面)

 
ならば、おそらくウスイロだろうと思った。あの飛んでるのを下から見たという一点だけで充分だった。居るならば、そのうち採れる。だからその後、探し回ることも無く、直ぐにワモンキシタバを求めて平群町へと移動した。
時期的に、そろそろワモンを採っとかないとボロばっかになる。優先順位はワモンさんなのだ。ウスイロはもう新鮮な個体は採ったし、ここではボロだって構わない。居るという事実さえ掴めばいいのだ。

で、帰る時間ギリで何とか採って帰った。

 
【ワモンキシタバ Catocala xarippe ♂】

 
ワモンって、渋カッコいいから好きなのだ。
あれっ?待てよ、自分は見たことないけど、そういえば小太郎くんが若草山にもワモンがいるって言ってたな。

あの見送った奴はワモンの可能性もあるかもしれない。たぶんワモンの裏面も黄色は薄かった筈だ。

 
(ワモンキシタバ 裏面)

 
でも、こんなに黒帯は太くはなかった筈だから、ワモンでもなかったと思われる。益々、ウスイロの可能性大だ。
 
 
 
2020年 6月20日

前回は様子見だったが、この日はマジ探しだった。
一番可能性の高そうな春日山遊歩道に狙いをつけて入った。
ここは照葉樹の原始林の真っ只中だし、道の横には川が流れているからだ。予測した環境としては申し分ない。どうせ居るだろうから、まあサクッと居ることを確認して、とっとと帰ろう。

 

 
森の中、真っ暗けー。

そういえば、去年は若草山でカバフキシタバを探したが見つけられず、早めに見切ってこの道を降りたんだよね。その時も真っ暗で、相当ビビりながら歩いた。オマケに思ってた以上に道のりが長かったから、途中でバリ不安になった。もしや別な異次元世界にでも迷い込んだんじゃないかと思って、パニくり寸前の半泣きどした。
そうだ、そうだ。思い出してきたよ。その後にカバフキシタバを採ったのに、あろう事か取り込みで逃しちまったんだよな。まあそれが結局はマホロバの発見に繋がったんだけどね。人生、何が幸いするのかはワカランもんだね。

 
【カバフキシタバ】

 
樹液の出てる木は見当たらないので、取り敢えず糖蜜を霧吹きで吹き付けてゆく。
しかし、少し時間が経っても何も寄って来ない。いつもなら、このスペシャル糖蜜に何らかの虫が直ぐに寄って来る筈なのだが…。
あっ、霧吹きを振ってから、かけるの忘れてた。下にエキスが沈殿するので、振って混ぜないと効力が半減するんだったわ。
とゆうワケで、今度は振ってから掛けようとしたら、シュコシュコ、シュコシュコ。シュコシュコシュコシュコシュコシュコ…。焦って何度もやるが、暗闇にシュコ音だけが空しく響くだけで液体は全く出てこない。
(-_-;)やっちまった…。こりゃ完全にノズルが詰まったな。
慌てて霧吹きを分解するも、だが事態を打開できない。何度試してもダメ。ただ握力だけが鍛えられるのみである。

まあいい。一回分だけでも、そのうち寄ってくんだろ。我が糖蜜トラップは無敵なのじゃよ。それに今回は採るのが目的ではない。何なら写真だけでもいいのだ。とにかく1頭だけでも飛んで来て、ここに居ることさえ証明できればいいのである。

だが、待てど暮せど、見事なまでに何もいらっしゃらない。
結局、9時過ぎまで待ったが何の音沙汰もなかった。諦めて下山し、樹液や灯火に来ていないかを確認しながら駅まで歩いた。他のカトカラも殆んどおらず、パタラが1頭だけ樹液に来ているのを見たのみで終わった。

 
【Catocala patala】

 
つまり、まさかの大惨敗を喫したってワケ。
あまりの惨事に、たぶん鬼日と言われる異常な日だったんだと思う事にした。でないと、プライドが保てない。

 
 
2020年 6月22日

何で、こないだはダメだったんだろ❓
本当にあの日は、たまたま鬼日に当たっただけなのだろうか❓
もしかしたら、純然たる照葉樹林よりも少しクヌギやコナラ、アベマキなどの広葉樹が混じる環境の方が良いのではと思い始めた。成虫の餌資源が有った方が良好な環境ではないかと思い直したのである。
そうゆうワケで、この日は滝坂の道を選んだ。

ここは道の左側(北)が春日山の原始林で、右側が広葉樹の混じる森だからである。道沿いに川が流れているので、空中湿度も高い。もう此処に居なけりゃ、何処にいるのだ❓という環境なのだ。

しかし、矢張り結果は同じだった。
(・o・;)マジかよ❓である。コレで完全に心が折れた。
で、調査打ち切りにした。何にも採れないって面白くないのだ。面白くない虫探しはしないというのがオラのモットーなのだ。
別に方程式なんて解けなくてもいいや。所詮はアマチュア。そこまで調べる義理は無い。どうせワシ、根性なしの二流虫屋やけん。
(TОT)ダアーッ。

                        つづく

 
追伸
なんとも冴えない終わり方である。
想定していたイクウェジョン、方程式は見事に瓦解した。象牙色の方程式は、また来年に持ち越しだよね。
因みに6月29日にも行ったが、ついぞウスイロを見つけることは出来なかった。こんだけ探しても見つからないということは、いないのかなあ❓…。絶対いる筈なのになあ…。いるけど、めちゃめちゃレアだとか❓
それはそうと、ならば小太郎くんと見送ったアレは何だったのだ❓フシキかなあ?…。でもフシキなんかとは間違えるワケないと思うんだよなあ。
ワテは根性なしなので、もういいやと思ってるけど、誰か根性がある人に是非とも此処でウスイロを見つけて欲しいよね。

次回、解説編で閉店ざんす。

 
(註1)ヤクシマヒメキシタバ
屋久島で最初に発見され、1976年に記載された。その後、九州、対馬、四国、紀伊半島でも分布が確認されている。

 
(註2)マホロバキシタバ

【Catocala naganoi mahoroba ♂】

2020年の7月に春日山原始林とその周辺で新たに見つかったカトカラ。しかし、国内新種にとどまり、最終的には台湾特産のキリタチキシタバ(Catocala naganoi)の新亜種として記載された。

 
(註3)キシタバ

各所で何度も書いているが、Catocala patalaの、このキシタバと云う和名、何とかならんもんかと思う。
毎度説明するのが面倒クセーんだけど、しなけりゃ論が進められないので説明します。カトカラ類の中で、この下翅が黄色いグループのことを総称して、皆さんキシタバと呼んでいる。でも、この C.patala の和名がキシタバだから、誠にもってややこしい。「キシタバ」と言った場合、それがキシタバ類全体を指しているのか、それとも種としてのキシタバを指しているのかが分かりづらいのだ。だから種としてのキシタバのことをいう場合、一々「ただキシタバ」とか「普通キシタバ」「糞キシタバ」「屑キシタバ」、又は小太郎くんのように「デブキシタバ」と呼ばねばならんのだ。にしても、人によって普通とか糞とかデブの概念が違ったりするから伝わらないこともあって、それはそれでヨロシクない。
そこで、自分は学名そのままの「パタラキシタバ」を極力使うようにしていると云うワケだ。パタラだったら、パタライナズマ(註4)と云う佳蝶もいる事だし、神話の蛇神様なんだから少しは尊敬の念も出よう。
とはいえ、ずっともっと他に相応しい和名があるのではないかと思ってた。で、こないだ小太郎くんとたまたまオニユミアシゴミムシダマシの話になって、そこから「オニ」と名のつく生き物の話に発展した。そこでワイのオニ和名に対する講釈が爆発したのだが(これについては拙ブログに『鬼と名がつく生物』と題して書いた)、その流れの中で、小太郎くんがボソッと言った。

「キシタバとか、いっそオニキシタバにしたらどうですかね❓」

これには、目から鱗だった。たしかに、このグループの中では圧倒的にデカい。鬼のようにデカいし、上翅は緑っぽいから青鬼と言っても差し支えなかろう。それに鬼のパンツは黄色と黒の縞々だと相場が決まってるんだから、まさに相応しいじゃないかの灯台もと暗し。即座に「それ、いいやんか。」と返した。
だが、言った本人の小太郎くんは奴を憎んでおるから「えー、あんな奴にオニをつけるんですかあ?」と不満そうだったけどね(笑)。

カトカラ界の頂点に立たれる石塚さん辺りが、この和名を改称してくんないかなあ…❓
風の噂では新しい図鑑を出す御予定もあると云うし、ねぇ先生、この際だから和名を改称しませんか。もちろん最初に和名を付けられた方に対しての敬意を失ってはいけないのでしょうが、この問題を解決できる良い機会だと思うんだけどなあ…。
あっ、でもカトカラには他にオニベニシタバってのがいるなあ。まっ、問題はべつにないか…。オニキにオニベニの青鬼と赤鬼の揃いぶみでございやせんか。悪かないと思うよ。

 
(註4)パタライナズマ

【Euthalia patala】

(裏面)

(2016.3月 Thailand)

ユータリア(イナズマチョウ属)属、Limbusa亜属の最大種。
激カッコ良くて、裏まで美しい。そしてデカい。しかも、レアものときてる。
パーターラ(pātāla)とは、インド神話のプラーナ世界における7つの下界(地底の世界)の総称、またはその一部の名称。また、この世界はナーガ(Naga)と呼ばれるインドの伝説と神話に登場する上半身が人間の蛇神の棲んでいる世界だともされている。
パタライナズマについては、拙ブログの初期の頃に何編か書いとります。興味がある方は探してみてくだされ。

 

2019’カトカラ2年生 其の弐(2)

 
    vol.19 ウスイロキシタバ

   『象牙色の方程式』後編

 
えー、前回の2019年 6月19日の後半部分です。

 
2019年 6月19日

黒い車窓に自分の顔がぼんやりと映っている。
酷い顔だ。屈辱と焦燥が入り混じった顔は疲れきっている。
でも、やるっきゃない。出来うる限りのやれる事をやらないで敗北するのは、それこそ負け犬だ。たとえ敗北したとしても、毅然たる心持ちでいたい。でないと、己の誇りに傷がつく。

頭の中で考える。
問題は、こないだのアラカシの森とクヌギを主体とする雑木林のポイントのどちらを選ぶかだ。
ポイントで実際に使える時間は、アラカシの森だと40分か多くて50分。雑木林だと1時間10分から20分くらいだろう。どっちを選ぶかは賭けだ。両方を回ることも可能だが、せわしないし、どっちつかずで終わりかねない。それこそ虻蜂取らずだ。それに、そんな思い切りの悪い男に神様は幸運を与えてはくれないだろう。
(ノ`Д´)ノ彡┻━┻えーい、ままよ。雑木林にターゲットを絞った。

駅に着いた。
時刻は午後9時40分過ぎ。
駅を出て走る。Dead or alive。背中の毛が逆立つ。

期待を込めて、雑木林の樹液が出ている木を照らす。
昆虫酒場は大盛り上がりだ。クワガタさんもいる。
しかし、鱗翅類で居たのは名前の分からないクソ蛾どもとアケビコノハ。カトカラはフシキキシタバとコガタキシタバのみ。
アケビコノハは、新鮮で美しい個体だったので、もっと近くで見ようかなと思って一歩近づいたら、嘲笑うかのようにサッと飛んで逃げて行きよった。

 
【アケビコノハ】

 
べつに欲しいとも思わなかったのに、自意識過剰な女みたいにクソ忌々しい奴めっ❗もし今度飛んで来たら、網の枠でブン殴ってやらあ(`Д´)ノ❗ナメとったらあかんど、ワレー(-_-メ)

( ゚д゚)ハッ❗、いかん、いかん。危うくアケビちゃん虐待男になるところだったわい。
冷静になろう。冷静でないと採れるものも採れなくなる。それに虐待なんかしたら、どこかで神様が見てて、罰をお与えになるかもしれない。敗北という名の、今の自分にとって一番の罰を。
もうこうなったら、採れるんなら神頼みでも何でもする。

神様の旦那あ〜、ボロでも何でもいいから、オラにウスイロを採らせて下せぇー。

もはやプライド、ゼロである。
でもこの際、採れればプライドなんぞ、どうだっていい。

しかし、時は刻一刻と残酷なまでに抉(えぐ)り取られてゆく。悲痛な思いで、頻繁に懐中電灯で木を照らすも状況は変わらない。
やはり持ち時間は少なくとも、正攻法でアラカシの森を攻めるべきだったか❓ ざわざわと漣(さざなみ)のような後悔か心の内壁で寄せては返す。

午後10時50分。
帰る電車のタイムリミットまで、あと5分か10分。いよいよ崖っぷちまで追い詰められた。

神様の野郎、ブン殴ってやろうか(`Д´)ノ

天に唾(つばき)す。
そうか解ったよ。アンタなんかにゃ頼らん❗テメェの力で何とかしてやるよ、ダボがっ( ̄皿 ̄)ノ❗❗、🔥ゴオーッ。

懐中電灯で下から順に上へと木を照らす。
この木は根元から上の方まで数か所から樹液が出ているのだ。

いなーい(--;)
いなーい(ب
ب)
いなーい(◡ ω ◡)
いなーい(ー_ー゛)

(☉。☉)何かおる❗❗

高さ4m程の1番上の樹液に見たことがない蛾がいた。
色はグレーっぽい。大きさや形的にはカトカラも含まれるヤガ科の蛾に見える。でも下からなのでハッキリわからない。確認しようと後退るが、道が狭くて大して下がれないから状況はあまり変わらない。それに斜め横向きに止まっているので、下翅の柄もチラッとしか見えない。
アナタ、誰❓ 🎵放出(はなてん)中古車センター〜〜〜(註1)。
冗談を言っとる場合かよ。

でも、直感的に思った。

『ウスイロじゃ、なくなくねっ❗❓』

考えとるヒマはない。帰るリミットは迫っている。
とっとと採って、確認しよう。違うなら、八つ当たりで木に憤怒のドロップキックをカマすまでだ。
網をするすると伸ばす。だが、緊張感はマックスではない。時間が無いのでブルッてるヒマは無いのだ。それにもしクソ蛾だったら…と思うと変に期待できない。過度な期待を掛けて糠喜びだったりしたら、それこそ怒り爆発💥オロナミシCだ。何のコッチャかワカランけど、そうゆう事だ。
ややブラインドになっていて採りにくい角度だが、逡巡はしない。

💥バチコーン、横から強く網を幹に叩きつけた。

入った❗❓、それとも逃した❗❓
手応えも無ければ、逃したという感触もない。とにかく素早く網先を捻り、そのまま大胆かつ慎重に下に落とした。その刹那に、網の中に何かの影がチラリと見えた。どうやら逃してはいないようだ。でも、ただのクソ峨だったりして…。疑心暗鬼になりつつ、慌てて駆け寄る。

彼女は暴れることも無く、何があったのか解らないといった感じで静かに鎮座していた。

(☆▽☆)ぴきゅう〜❗
ウスイロ❓だよね❗❗

その特徴的な上翅のデザイン、間違いなくウスイロキシタバだっ❗❗
(´ω`)やっと採れた…。
ヘタヘタとその場にヘタり込みそうになる。だが、そんなヒマは無い。網の上からマッハでアンモニア注射をブッ刺す。
一瞬、彼女はクワッ❗と羽を広げ、次の瞬間にはゆっくりと羽を閉じてゆき、フェイドアウトで事切れる。
ゴメンなちゃいね。哀悼の念で軽く手を合わせる。

満ち足りた気分で、三角紙に収めようとして、写真を撮っとかなきゃいけない事を思い出す。

 

 
上翅の柄が独特で、他のカトカラとは全く斑紋が違う。
図鑑などの画像では、その特異な薄黄色い下翅に目がいっていたが、上翅も特異だったんだね。

 

 
メリハリが効いてて、カッコイイかもしんない。
いんや、カッコイイと断言してしまおう。バカにしてたけど、実物は標本写真なんかよりも遥かに美しい。玄人好みの渋い魅力がある。

おそらくメスだね。
裏返す。

 

 
あっ、他のカトカラとは全然違う。明らかに黒帯が細くて黄色い領域が多い。(•‿•)いいじゃん、(^o^)いいじゃーん。

でも、ニヤけ顔で浸っている場合ではない。終電の時刻がパッツンパッツンに迫っている。
震える手で慌てて三角紙に収め、闇を小走りで離脱した。

夜空には、星が瞬いていた。
早足で歩きながら、もう少しすれば七夕だなと思った。

                        おしまい

 
と言いたいところだが、話はまだまだ続く。

翌日、展翅した。
展翅しながら思う。はたして、あの雑木林の中にアラカシが混じる環境がウスイロキシタバの棲む場所を解く方程式なのかと。例えばアラカシの純林よか、アラカシの混じる雑木林の方が寧ろ適性な環境ではないかと一瞬、考えたのだ。
でもあんな環境なら、関西でも何処にでもある。だったら、もっと何処にでも居てもよさそうなものだが、どうもそんな感じではないような気がする。ならば、あそこから比較的近いアラカシの森から飛んで来たって事か❓となると、もう1回行ってアラカシの森で確かめねばなるまい。
けど、それはあんまり気が進まないんだよなあ…。あの森、暗くて怖いんだもん(。ŏ﹏ŏ)

アレコレ考えてているうちに展翅完了。

 
【ウスイロキシタバ Catocala intacta ♀】

 
展翅して、よりその美しさに魅了された。
特徴的な上翅のデザインが渋カッケー。下翅の色も、そんなに汚くは見えない。象牙色だ。薄色とか薄黄色だなんて言うからババちく見えるのだ。
名前って大事だ。名付け親になる人は愛をもって命名しないといけないよね。だからセンスの悪い人は誰かに相談しましょうね。
あっ、センスが悪い人は自覚がないから人には相談しないか❓ それでいいと思ってんだから、人には相談なんかいったし〜ませーん❗

 
2019年 6月21日

一応、ウスイロは採れたが、たった1頭だけだったので、別な所で探すことにした。他にもっと多産するところを見つけて、ゴッチャリ採ってやろうと云う皮算用である。それに象牙色の方程式を解きたい。色んな環境を見ることによって、自ずとその解も見つかるだろう。

文献から大阪府池田市にターゲットを絞る。
五月山に記録があったからだ。だったら駅から近いし、何なら昼間は其処から近い東山でクロヒカゲモドキ(註2)を探してもいい。絶滅危惧種のモドキちゃんは渋カッコイイのだ。

 
【クロヒカゲモドキ】

(2016.6.20 大阪府箕面市)

 
結局、クロヒカゲモドキは探しには行かず、昼めしを食ってから出掛けた。
クロヒカゲモドキのポイントはダニだらけなので、ダニが体のどっかに食いついてんじゃないかと思いながら夜道を歩き回るのは精神衛生上ヨロシクない。そう考えたのである。

池田駅には何度か降りているが、五月山に来るのは初めてだ。
遠目に見て、意外と山は険しいんだよなあ。だから今まで避けてたところがある。

 
【五月山】

(出展『MUJI✕UR』の画像をトリミング)

 
午後3時前に登山口に到着。
五月山にもアラカシが案外あることは、ネット検索済みだ。
望海亭跡への道を登り始めると、直ぐに照葉樹林が始まり、そこを抜けるとコナラやクヌギの混じる雑木林になった。これは居そうな環境かも?と思った。ただ、林内が乾燥がちなのが気になるところではある。とはいえ、今年は空梅雨だからね。そのせいで、そう感じたのだろうと思うことにした。
何事も前向きなのさ。でないと、虫採りなんぞ、やってらんない。虫採りは基本、苦行だと思ってるもんね。欲しいものを得るための道程(みちのり)は、けっして平坦ではないのだ。

🎵タラタラッタラー、イガちゃんスペシャル甘汁〜。
<( ̄︶ ̄)>フフフフフフ…、秘密兵器の登場である。
今回は満を持して糖蜜トラップを用意したのだ。前回の六甲みたく樹液の出る木を探して彷徨うのは、もうゴメンなのだ。
何で糖蜜トラップを今まで試さなかったのかと云うと、生態に関して最も信頼できる文献『日本のCatocala(註3)』のウスイロキシタバの項には、樹液には集まるが糖蜜トラップには集まらないみたいな事が書いてあったからだ。
疑問に思わないワケでも無かったが、信頼している文献なので素直にそれに従ったのである。糖蜜が効かないなら無駄だし、だいち勿体ない。それに荷物が増えるのは大嫌いだもんね。

日が暮れ、闇の時間が訪れた。
さあ、ここでタコ採りして、方程式の答えに近づこう。

だが、寄って来るカトカラはフシキとコガタキシタバのみ。しかも、個体数は少ない。効いてんのか❓、マイトラップ。
けんど、樹液に来るのも糖蜜に来るのも、さしたる数の差はあるようには見えない。

 
【フシキキシタバ】

 
【コガキシタバ】

 
午後9時半。
何かデカいのが糖蜜トラップに飛んで来た。
一瞬、何者❓と思ったが、次の瞬間には理解した。
ただキシタバのパタラキシタバ(C.patala)だ。今年初めて見るけど、やっぱデカい。その大きさは他の黄色い下翅を持つカトカラの中にあって、頭一つ抜きん出ている。あっ、パタラとはキシタバ(註4)の事ね。

今年初めての個体だし、一応採るか…。
でも、網を構える前に逃げよった。ただキシタバの分際で生意気である。(ー_ー゛)ちっ、パタラのクセにエラく敏感じゃねえか。

パタラといえば、鈍感というイメージがある。樹液に来ている時は夢中で吸汁しているから、かなり近づいても逃げない。そして樹液を吸い終わった者は、その周辺の木にベタベタと止まっていることが多いが、その際もあまり逃げない。

 
【パタラキシタバ】

 
スマホだって、楽勝でこれくらいは近づけるのである。
距離的に10センチ以内まで寄らないと、ここまでは撮れない。
やっぱ発生初期で、個体数が少ないから敏感なのかな❓
最盛期になって個体数が増えれば、段々鈍感になってゆくのかも。だいたい虫なんてものは、発生数が多ければ大概はバカになる。こんだけいりゃあ、ワシ一人が死んだところで我が一族は滅びんやろとかテーゲーなるのかな❓人間だって周りに人がそれなりに居たら、何となく安心するもんね。それって家畜みたいで、ヤだけど。

何度か攻防があったが、最終的にはシバいたった。
でも、それでタイムリミットとなった。惨敗である。
どうにも上手くいかないや。

 
2019年 6月22日

この日は大阪府箕面市へ行った。勿論、ウスイロ探しである。
個体数は少なさそうだけど、此処にもウスイロの記録があったからだ。因みに、この場所は前回の五月山と連なる山地だ。一帯に広く薄く棲息しているのかもしれない。

でも、夕方になって人が増えてきた。その多さに訝しがる。
箕面は滝があって観光客は多いけど、もうすぐ夜だぞ。何で❓

滝への道沿いに水銀灯があるので、一応そっちの様子から見ることにした。
暫く歩くと、人が多い謎が解けた。
闇の中を、すうーっと緑色の光が走ったのだ。そうゆう事か。皆さん、蛍狩りにいらっしゃったのだ。箕面にはホタルがいるとは知ってたけど、こんなにも有名だったのね。

 
【箕面大滝】

(夜に滝なんて撮らないので、昼間の写真です)

 
一応、奥の外灯まで行ったが、何もいなかった。
降りて来ると、更に人は増えていた。こんなところで恥ずかしくて網なんか出せやしない。しかも、蛾なんて採っていようものなら、一般人から見れば完全に狂人だ。方針を転換して、展望台に登ることにした。

石段を登ってゆくと、周りは照葉樹の多い森になった。少し期待する。
それはさておき、傾斜がキツくてしんどい。普通の人たちは蛍狩りしてんのに、ワシ、何やってんだ❓と思う。つくづく、虫屋って愚かな変人だ。

展望台に着いた。
夜景が見える。そして、イチャつきカップルもいた。二人きりでイチャイチャしたいが為に、ここまで登ってきたのか。エロという名の欲望、恐るべしである。

 

 
夜景を見ながら、己のアホさ加減にガックシくる。蛍狩りよかイチャ付いてる方が、もっと楽しそうじゃないか。全てがアホくさくなる。
でも、ここまで登ってきたのだ。その労力、無駄にしたくはない。尾根筋を少し歩き、そこで糖蜜を撒きまくる。闇は濃いが、そんなことも今やどうだってよくなる。

五月山の時に書き忘れたが、液体の糖蜜トラップを使うのは、あの時が初めてだった。前年にムラサキシタバ(註5)を採りに行った時にトラップは使ったが、それは蝶屋らしく果物トラップだった(言っとくけど、ワシって基本は蝶屋だかんね)。
バナナやパインをストッキングに入れて、上から酒を掛けて発酵させたものを木に括りつけるのだ。蝶屋の間ではポピュラーなものだが、蛾屋の間ではマイナーな手法のようだ。大概の蛾屋はジュースなどに酢と酒を混ぜ合わせたものを霧吹きに詰めて、(。・_・)r鹵~<巛巛巛シュッシュラ、シュッシューと幹や葉っぱに吹き付けて、お目当てのものを誘引するのだ。
そして、この日がその糖蜜トラップの2回目ってワケ。

大いなる期待値は、時間の経過と共に無残にも萎々(しおしお)になってゆく。何かの可能性が少しづつ失われてゆくのを見るのは、とても辛いものだ。やはり、ウスイロは糖蜜に反応しないのか❓…。
けれど樹液に来て、糖蜜に来ないってのは、どう考えても変だ。理屈に合わない。それとも、オラの作った糖蜜のレシピがダメなのか❓ 他のカトカラには問題なくとも、ウスイロさんにはお気に召さないってこと❓ どんどん頭の中がウニ化する。

結局飛んで来たのは、糞チビ蛾どもと鬱陶しいアケビコノハのみだった。正直、アケビコノハに当たり散らす気力も湧かなかった。
帰りしなに、己の心を少しでも和ませたいがゆえ、何とかコケガ(苔蛾)とかいうスタイリッシュで可愛い蛾の写真を撮って帰った。
言うまでもなく、今回も惨敗決定だ。

 
【アカスジシロコケガ】

 
電車の中で確認すると、ピントまでズレとるがな。 
又しても惨敗を喫した事実をひしひしと思い出した。ダメ押しでヘコむ。

これで、象牙色の方程式が全く見えなくなった。
誰やねん❓ ウスイロキシタバは、西日本ではどって事ないって言った奴。記録地でも、かすりもせんやないけ。情報を鵜呑みにした、アチキが馬鹿だったよ。

  
2019年 6月24日

再び武田尾の渓谷にやってきた。
まだ1頭しか採れていないのだ。謎とか方程式とか、もうどうでもいい。次の1頭が欲しい。

今回は一番最初に来た時に、ここぞと思ったアラカシの森に布陣することにした。泰然自若。今度は何があっても動かない。此処で心中する覚悟で臨む。
あの時は8時半を過ぎても飛んで来なかったから、焦れて雑木林に移動したが、やはりこの環境が最もウスイロキシタバが好む場所に相応(ふさわ)しいと判断したのだ。
ここでコケれば、我が軍は総崩れである。象牙色の方程式が解けないまま、この先1年間はエレファント凍土の迷宮に閉じこめられることになる。それを避けたければ、背水の陣で結果を出すしかない。

午後7時過ぎ。
今宵は7時半前くらいが日没時刻だったような気がするが、既に森の中は闇の世界に支配されようとしている。鬱蒼とした森が覆いかぶさって光を遮っているのだ。
Σ(゚∀゚ノ)ノ暗いよ、怖いよー(TOT)

 

 
オノレ、地底星人の仕業か。おおかた魑魅魍魎どもを操っているのも、お主たちであろう。ならば、北辰一刀流免許皆伝の抜刀術で目の前の邪魔者は全て一刀両断に斬るのみ❗、斬るのみ❗殺戮のセレナーデとなろう。
あかん…。明日のジョーの「打つべし❗、打つべし❗」の変形ヴァージョンになっとるやないけ。闇が怖すぎて妄想が酷い。

(。・_・)r鹵~<巛巛巛シュッシュラ、シュッシュー。
心を落ち着かせて糖蜜を吹き付けてゆく。
これで寄ってこなけりゃ、オラの糖蜜レシピが駄作なのか、やはり樹液には寄ってきても糖蜜には反応しないのか、はたまた此処には居ないのかが、ある程度は明らかになるだろう。
どっちにせよ、今日で終わりにしよう。これ以上、心を折られたら再起不能だ。負け慣れてないので打たれ弱いのだ。

午後8時になった。
やっぱダメなのかなあと諦めて( ´ー`)y-~~煙草を吸ってたら、目の前の糖蜜トラップにパタパタとあまり見覚えない蛾が飛んできてピタッと止まった。

(⑉⊙ȏ⊙)ゲゲッ❗、ウスイロやん❗❗❗❗

ここで会ったが百年目。慌てて煙草を揉み消し、そろりそろりと近づく。緊張感はあるが、初めての1頭ではないからか、意外と心は落ち着いている。すうーっと息を吐き、💥バチコーンいったった。
次の瞬間、驚いて飛んで網に入ったのが見えた。

中を確認して、ホッとする。
これで何とかエレファント凍土に閉じ込められなくて済んだ。

この日は、結局2♂2♀が採れた。
しかも、全部が樹液ではなく、糖蜜トラップに誘引された。
(・3・)何だよー、やっぱ糖蜜にも来るじゃんか。寧ろ樹液よか効果があるぞ。こんなんだったら、最初から使っておけば良かったよ。

これで象牙色の方程式が、全部じゃないけど、ある程度は解けた。
やはり、基本的な棲息環境は照葉樹林だろう。中でも昔から在るような古い照葉樹林ではなかろうか❓
樹液にも来るが糖蜜トラップにも反応する事も分かった。飛来時刻は情報不足だが、おそらく特別遅くはないだろう。これは断言出来ないから来年の課題だけどさ。
好む環境も完全に把握できたワケではないし、他にも幾つか疑問点は残った。でも翅の傷み具合から、そろそろ発生期も終盤みたいだし、これらは又、来年の宿題としよう。

満ち足りた気分で帰途につく。
車窓に映る今日の自分の顔は悪くないなと思った。

                         つづく

 
一応、この日の個体を並べておこう。

 

 
我ながら、ド下手な展翅だすな。
完品ではなかったから、ヤル気なし蔵だったのもあるけど、理由の一番は酔っ払って展翅したせいです。酔っ払うと、ただでさえテキトーな性格が益々テキトーになるのである。
それと、ウスイロキシタバは鮮度が落ちると、途端にみすぼらしくなるというのもあった。何かメリハリが無くなるのである。モチベーション、だだ下がりだ。
ウスイロキシタバを採りたい人は、発生初期に行かれることをお薦めします。

 
追伸
今回は、後半をバタバタで書いた。
酔っ払って寝ようとしてる時に、3分の2程まで書いていた文章に少し手を入れようとしたのがマズかった。朦朧としてて、書きかけの文章をそのままアップしてしまったのだ。それでいっぺんに酔いが醒めた。で、朝までかかって残りの3分の1を書いた。最悪やったわ。

次回は解説編か、もしくは続編の『2020’カトカラ3年生』になる予定です。

 
(註1)アナタ誰❓ 🎵放出中古車センタ〜〜〜
昔、関西ローカルで、そうゆうCMが流れてた。
ちょい、セクシーなCMでした。

 
(註2)クロヒカゲモドキ

全国的に減少しており、各地で絶滅危惧種や準絶滅危惧種に指定されている。
しかも、見つけても直ぐに藪の中へ逃げ込むので、あまり採れない。産地に行っても全く採れない事もある蝶の1つだろう。
因みにオラとは相性が良くて、何処へ行っても採れなかったことはない。その日、来てる人の中でオラだけ採った事も何度もある。
そういえば、3、4年ほど採りに行ってないね。でも関西では何処でもダニとセットだから、あんまし気が進まないんだよなあ…。最後に行った時は、あまりのダニの多さにポイントに着いて30分で帰った。採集に行って家に帰った最短記録である。この超絶短い滞在記録は今後とも塗り替えられる事はないだろう。あっ、言っとくけど滞在時間30分でも、ちゃんと採ったさー。

参考までに書いとくと、クロヒカゲモドキについては昔のブログ(アメブロ)に『へろへろ(@_@;)、箕面モドキ軍団殲滅作戦』と題して書いた事がある。他にも数篇の関連文章がある筈だ。ヒマな人は探してみてね。

 
(註3)日本のCatocala

西尾規孝氏によって書かれた日本のカトカラの生態図鑑。
その生態観察力は、飛び抜けている。

 
(註4)キシタバ

(Catocala patala ♂)

(♀)

 
日本のキシタバグループの最大種。和名がただの「キシタバ」だから、ややこしい事この上ない。「キシタバ」という言葉が種としてのキシタバを指しているのか、それともグループとしてのキシタバを指しているのか、判断に一瞬迷うから誠にもってややこしいのだ。
だから、それを避けるために出来るだけ学名のパタラを使うようにしている。誰か偉い人の鶴の一声で和名を変えて欲しいよね。
キシタバ(C.patala)くん本人としても、「ただキシタバ」とか「糞キシタバ」「屑キシタバ」「デブキシタバ」なんて酷い呼ばれ方をするのは心外だろう。
パタラキシタバについてもっと詳しく知りたい人は、拙ブログの、2018’カトカラ元年シリーズのvol.3『頭の中でデビルマンの歌が流れてる』の回と続編『黃下羽虐待おとこ誕生』を読んでね。
前回の註釈の項でも、ナメたタイトルが列挙されていたが、これまたフザけたタイトルざます。けど最近はカッコつけたタイトルが多いので、またおバカなタイトルをつけたいね。

 
(註5)ムラサキシタバ

(Catocala fraxini ♂)

(同♀)

カトカラの女王。日本最大種にして最美とも言われ、人気が高い。
詳しくは、拙ブログ内の『2018′ カトカラ元年』vol.17の連載を是非とも読まれたし。

 

2018′ カトカラ元年 其の12 前編

 
  vol.12 ジョナスキシタバ

   『ジョナス隊長』

 
実を云うと、人生で初めて採ったカトカラはジョナスキシタバだった。
ムラサキシタバを一目見たくて、A木くんにライトトラップに連れていってもらった時の事である。

 

 
場所は兵庫県但馬地方。
日付を確認すると、2017年の9月23日となっている。
行ったのは結構遅かったんだね。

日没後、暗くなってから直ぐにそこそこ大きい蛾が飛んで来て、目の前の地面にボトッと落ちた。
元来が蛾嫌いなので、瞬間Σ( ̄ロ ̄lll)ヒッ❗と思って、一歩後ろに飛び退いた。ワタクシ、それくらい蛾が怖い人だったのである。

落ちた刹那、僅かに羽を開いたので、ちらりと下翅の黄色が見えた。これが世に言うカトカラって奴なのかなと思った。しかし、下翅の黄色いカトカラは似たようなのが沢山いて、素人目にはさっぱりワカラン。興味が無いから尚更である。すかさず、A木くんを呼んだ。

『あっ、ジョナスですね。結構少ないカトカラですよ。』
『ジョ何❓ジョナサン❓』

思わず訊き返した。そんなカタカナのカトカラがいるなんて初耳だったので、何じゃそりゃ❓と思ったのである。

『ジョナサンじゃなくて、ジョナスです。』

なあ~んだ。ジョナサンじゃないのかあ…。ジョナサンだったら「かもめのジョナサン(註1)」みたくで面白いのに…と思ったのをよく憶えている。
でも、蛾は気持ち悪い。怖々でしゃがんで暫く見てた。元より持って帰る気などさらさら無かったのである。
したら、A木くんが言った。

『採らないんですか❓近畿では中々いませんよ。採っといた方がいいですよ。』

そう言われると、虫屋の性(さが)として、何だか急に惜しくなってくる。
で、記念にもなるしと思って、一応持って帰ることにしたんだっけ。でも当時は蛾を素手で触るなんて到底出来なかった筈だ。どうやって〆たとか全然記憶にない。おそらく優しきA木くんが取り込んでくれたのだろう。
当時のジョナスの記憶は他にあまりない。
あるのは、この日はジョナスの飛来が比較的多かったらしく、A木くんが『今年はジョナスの発生が多いのかも。こんなに飛んで来たのは初めてです。』と言っていた事と、ジョナスという言葉の響きが気に入ったので、飛んで来る度に『ジョナ━━━ス❗』とか叫んでた事くらいだ。アホである。

そういや、この日はただキシタバ(註2)=パタラキシタバ(C.patala)も飛んで来て、そっちの方がデカくて下翅も黄色いので、見映えがいいなとか思ったんだよね。今や屑扱いだけど。

 
【Catocala jonasii ジョナスキシタバ♂】
(2017.9.23 兵庫県香美町)

 
その時のジョナスである。
上翅が尖ってるので、比較的簡単に他のキシタバとは区別がつく。あと、尻が長いのも特徴だろう。
何かシャープでソリッドな感じがして、カトカラ特攻隊の隊長みたいだ。だから、この日から勝手に心の中では「ジョナス隊長」と呼んでいる。

展翅は上翅は上がっているものの、自分的にはバランス良く仕上がってると思う。

 
【同♀】

 
♀は♂程には翅先が尖らず、外縁部に丸みがある。腹も短くて太い。
翅形も腹の形も明らかに♂とは違うので、雌雄の判別が一番容易なカトカラかもしれない。

両方並べてみた。

 

 
形はカトカラの中ではカッコイイ方だと思う。
しかし、如何せん下翅の黄色が薄くて、くすんでいる。残念なことに鮮やかさに欠ける黄色なのだ。今一つ人気がないのも、その辺に原因があるんざましょ。

お気づきの方もおられるかと思うが、このシリーズ連載は採集した順番になっている。だから、何故にジョナスをトップに持って来ないのだ?そう疑問を持たれた方もいるだろう。しかし自分の中では、この2017年のライトトラップはカウントに入れていない。なぜかと云うと、積極的に採ったワケではないからだ。元々蛾を集めようとは露ほども思っていなかったし、この日に採った何種類かのカトカラも記念品みたいなものだった。だから、これがキッカケとなってカトカラを集めようと思ったワケではない。そういう気は全然起きなかった。だいち、所詮は人のライトトラップで採らして貰ったものである。道具、ポイント、移動手段、全てがA木くんのお膳立てである。自分の力はゼロなのだ。とてもじゃないが、自分で採ったとは言えない。貰ったも同然じゃないか、そう考えている。だから、カウントしないのだ。
覚醒したのは、翌年の2018年になってからだ。それゆえの、このメインタイトル『2018’カトカラ元年』なのである。

 
 
2018年 9月1日

 
この日はムラサキシタバを求めて、アホなのか虫採りの天才なのか分からない植村を焚き付けて、兵庫県但馬方面にライトトラップにやって来た。
植村は、ごっつい光量のライトトラップセットを持っているのだ。そのクセ、カトカラはまだあまり採っていない。たぶん、とこでも採れるド普通種くらいだ。そのクセ、珍品カバフキシタバを採ってたりするから、アホなのか天才なのかワカラン奴なのだ。

 

 
しかし、山ほど蛾は飛んで来たが、カトカラはゴマシオキシタバとジョナスのみだった。しかも、それぞれ1頭のみ。A木くんに連れていってもらったポイントはマズイと思って、別な場所に屋台を構えたのだが、見事にコケた。

 
(2018.9.1 兵庫県香美町)

 
♂である。展翅、下手だなあ…。
この頃は、まだまだ上翅を上げ過ぎていた時代だったんだね。

 
 
2018年 9月7日

この日もムラサキシタバを求めて山梨県にやって来た。
大菩薩山麓に、常時ライトトラップが設置されているペンションがあるのだ。

 

 
すずらんというペンションで、関東方面の虫屋にはお馴染みの宿だ。
そういえば、ペンションのお姉さんには、よくしてもらったなあ。楽しかったし、また行けたらと思う。

 

 
ここにジョナスが1頭飛来した。時間は早いと云うイメージも遅いと云うイメージも無いから、7時台か8時台くらいだったのだろう。

 

 
上は、その時の個体である。これまた♂である。
三晩いたが、飛来したのは全部で2、3頭。持って帰ったのは、この1頭のみだった。他はボロボロだったのだ。

 
 
2019年 7月17日

今回も続編を書かずに、2019年の分も組み込んじゃいます。

奈良市でマホロバキシタバの分布調査をしていた時だった。
樹液の出る木の上部に、変なカトカラが翅を閉じて静止していた。小太郎くんはマホロバだと言ったが、自分的には違うと思った。しかし高さは4m程あったので、よく分からない。

 
取り敢えず網の中に入れてみて、何じゃこりゃ(?_?)
❓❓❓❓❓❓…はてな、はてなの嵐。何者かが分からなかったのだ。見た事があるような気がするのだが、何かワカラナイ。一瞬、ヤガ科の糞ヨトウガかなと思ったが、網の中に入った時に裏がチラリと見えたからカトカラの仲間の筈だ。化けた❓まさかと思い、下翅を覗いて見ると、やっぱり黄色いからカトカラだ。くすんだ黄色だから、アサマキシタバかなと思った。

でも、この辺ではアサマキシタバの時期はとうに終わってる筈だ。5月の中旬に現れて、6月半ば頃には姿を消す。今時いるとは思えない。たとえ居たとしても、ボロボロだろう。こんなに鮮度が良いワケがない。(@_@)わにゃにゃにゃにゃあ~、頭が混乱する。
もしかして、また新種見つけちゃんたのう❓だとしたら、オラって天才じゃないか( ̄∇ ̄*)ゞ

『今、ゴチャゴチャ考えても仕方ないですよー。』とか小太郎くんに言われそうだったし、取り敢えずアンモニア注射をブッ刺し、〆る。

  

 
じっくり見る。
ハッ、Σ( ̄ロ ̄lll)
そこで、ようやく記憶のシナプスが繋がった。

声に出して言う。
『コレって、ジョナスキシタバだわさー❗❗』

 

(2019.7.17 奈良市)

 
まさか、こんなところにジョナスが居るワケないと思ってるから、全く頭に無かったのだ。
東日本では、ジョナスは普通種に近い扱いだが、西日本では分布が局所的で少ないのだ。ネットとかで見ても、都市近郊のジョナスの記録は殆んど無いのである。近畿地方で確実に産するのは兵庫県の西部から北部にかけてと、紀伊半島南部の標高の高い所にしかいないとされてきたのだ。後々、A木くんに訊いたが、奈良市内で採れた事に驚いてたくらいなのだ。

 
【裏面】

 
翌日にも、写真を撮った。

 

 
展翅したもの↙。

 

 
【同裏面】

 
上翅は下げているが、触角はLet it be.なすがままで整えた。この時期、まだ触角を殊更(ことさら)に真っ直ぐするつもりはなかった。女性の美しい眉を蛾眉と言うが、蛾の触角とはそうゆうものだと思っていたからだ。自然な感じの方が良いんではないかと思ってたんだよね。けんど、この後くらいから段々と触角が真っ直ぐになってゆく。なぜかと云うと、よくよく考えてみれば、カトカラの触角って生きてる時は真っ直ぐなのである。
もー(# ̄З ̄)、そのまま真っ直ぐになっとけよー。何で死んだら曲がるんだよぉ~。

 
                   つづく

 
追伸
予想以上に解説編が長くなってまったので、分けて次回、後編の方に回します。

前回のシロシタバの英名の項で「Snow underwing 」に文句カマしたんだけど、Facebookにて石塚さんから次のようなコメントを戴いた。

「どうでもいいことですが、シロシタバの英名は Hollandが Snowy Underwing と名付けています。yを加えたほうがいいかも。」

Snowyには「雪の、雪的な、雪の降る、雪の多い、雪の積もった、雪におおわれた、雪白(純白)の、清浄な」と云う意味があるから、ワタクシもそれで宜しいかと存じます。「純白の」とか「清浄な」と云う意味も混じっているのがグッドですな。

考えてみれば、と云うか考えてみなくとも、ジョナスを人にエラそうに語れる程には見ていない。たぶんトータルで15頭にも満たないだろう。だから次回の解説編では、キレが悪いかもしんない。それでも果敢に攻めるとこは攻めようと思う。個人的見解はバシバシ言うつもりだ。

  
(註1)かもめのジョナサン
『かもめのジョナサン』(Jonathan Livingston Seagull)は、リチャード・バックによる寓話的小説。1970年にアメリカで出版され、最初は当時のアメリカのヒッピー文化とあいまって口コミで徐々に広がり、1972年6月以降に大ヒットした。日本では1974年に五木寛之の訳で出版され、120万部の大ベストセラーになった(累計270万部以上)。
食べる時間すら惜しんで飛ぶ事に打ち込み、飛ぶとは何かを探究し、「真に飛ぶこと」を求めた1羽のカモメの物語である。
そこに、キリスト教の異端的潮流ニューソートの思想が反映されていると指摘する者や、禅の教えを表しているとする者もいる。読者たちを精神世界の探究、宗教的な探究へと誘(いざな)う一種の自己啓発本のようにも読まれていた。

  
(註2)ただキシタバ
ジョナスキシタバやカバフキシタバ等と、下翅が黄色いカトカラには後ろにキシタバとつけるのが慣例みたいだ。日本には、この黄色い下翅を持つカトカラが圧倒的に多く、キシタバ類を総称してキシタバと呼ぶ事も多い。
しかし、名前の上に何もつかないキシタバ(C.patala)と云うのがいるから、ややこしい。

 
【キシタバ Catocala patala ♀】
(2019.6月 大阪府池田市)

 
黄色いカトカラの基準となった種だからなのだろうが、これがしばしば混同される。種としてのキシタバそのものを指しているのか、黄色いカトカラの総称としてのキシタバを指しているのかが分かりづらいのである。それを避けるために、種としてのキシタバを普通キシタバとか、ただキシタバと呼ぶのである。これが面倒くさい。だからか、口の悪い人間なんぞは、腹立ちまぎれに糞キシタバとか屑キシタバと呼んでいる。ゆえに、呼称にパタラキシタバを提唱しているのだが、何処にでもいて邪魔なので、つい糞キシタバと言ってしまう(笑)

 

続・キシタバ

 
  『黄下羽虐待おとこ誕生』

 
2019年、カトカラ二年生のキシタバとの再会は、6月21日だった。

 
【Catocala patala キシタバ♂】

 
場所は大阪府池田市にある五月山公園。
目的はウスイロキシタバの探索だった。しかし全然飛んで来ず、暇をもて余しているところにキシタバが飛んで来た。ワテの糖蜜トラップに誘引されたのである。
それにしても、久し振りに見るとやっぱデカい。

ケッ、ただキシタバか(# ̄З ̄)…と思いつつ、一応採ってやるかと近づいたら、敏感に反応して逃げた。
(#`皿´)クソッ、キシタバ風情が生意気にも逃げやかって。オイちゃん、イラッ(ー。ー#)ときたね。

書いてると何かこのキシタバと云う名前、ウザい。
前回も言ったが、キシタバと云う名前は羽の下が黄色いカトカラの総称としても使われる事が頻繁にあるので、ややこしいのだ。例えば、誰かと採集に行った折りなどは一々「ただキシタバ」とか「普通キシタバ」と言いなおさなければならないケースが多い。これが誠に鬱陶しい。だから最近では「糞キシタバ」と呼んでいる。因みに小太郎くんは「屑キシタバ」って呼んでる。何れにせよ、どこにでもいるから、こないな扱いになる。
んなワケで、以降キシタバのことをその学名である Catocala patala からとって、パタラキシタバと呼ぶことにしよう。ついでに言っとくと、コモンセンスからの「コモンキシタバ」も考えたが、コモンを小紋と取られかねない。オデなんかアホだから、蝶の「コモンタイマイ」のことをずっと「小紋タイマイ」と思ってたもんね。ゆえに却下。

以後、飛んできては逃げ、また飛んできては逃げが三、四度繰り返された。こうなるとハンターの血が🔥燃える。昔からナメられることが死ぬほど嫌いな男なんである。何としてでもシバき倒すと決意した。おどれ、ナメとったらあかんど、Σ( ̄皿 ̄;;シャーき倒したるど、ワレーである。

最後は逃げた瞬間に空中で豪腕の振りでシバキ倒してやった。ワシの鬼神の如き本気の網振りをナメとったらあかんど。おとといきやがれの、ざまあ見さらせである。
その時に採ったものが上の個体である。羽化したてのような新鮮な個体で、まだ前脚がもふもふだったので展翅はその前脚を思いきり出してやった。

以下、今年採って展翅したものを並べよう。

 

 
これも♂である。採集場所は奈良県大和郡山市。下の4つも同じ場所だ。

メスはこんなん⬇

 

 
デブである。だから糞キシタバ、もといパタラキシタバはあまり好きになれない。いつもより展翅写真か少ないのも、邪魔だからコレだけしか採っていないのである。
それにデカくて何処にでもいるからウザい。ウザい上に、樹液に飛来した時などは他のカトカラを蹴散らすから腹が立つ。
この大和郡山の時も小太郎くんが邪魔だと言って、思いきり指でデコピンしてた。フッ飛んだキシタバは地面でひっくり返って、ビビッ、ビビッと痙攣してた。
キシタバ虐待おとこの誕生である。

『アンタ、酷いことすんなあ。糞キシタバとはいえ、それって虐待やでー。』
『大丈夫ですよ、コイツら。そのうち生き返りますよ。クソ邪魔だから、いいっしょ。』

こないだのカバフキシタバの時も、樹液や糖蜜トラップに来た糞キシタバに指でパチキかましまくっとった。
どうした小太郎くん、何かあったのかね❓ キミの心の中の深い闇を見たような気がするよ。
小太郎くんはマジメで優しく、穏やかな青年とばかり思っていたが、彼にも時に邪悪なものが憑依するのだね。
でも許す。確かにカバフ様を蹴散らす糞キシタバは邪魔だ。退治してよろし。

そして、一昨日の大発見の折りも糞キシタバをことごとくデコピンしてた。挙げ句の果てにはコッチに投げてきやがった。小太郎くん、キミの心の闇はそんなにも深いのか…。

『おいおい、キミの心の闇は、どんだけ深いねん❓』
『いやあ、コレって力の入れ加減がケッコー難しいんですよ。でも、下はあらかた屑キシタバいなくなったでしょ。』

そうなのだ、この日はオラが斜面の上にいて、小太郎くんが下にいたのだ。
確かに見ると、幹の下側にはキシタバは一つもいない。
でも、許す。この日は糞キシタバ、もといパタラキシタバがブンブン飛んでて、それに刺激されて他のカトカラも飛び回って中々止まってくれなかった。スゲー、ウザいから、ブチのめしてくれてケッコー。どんどんおやりなさいだった。

そんな小太郎くんだが、今日は来られないらしい。
ならばオイラも、今日は心を鬼にして黄下羽虐待オトコと化してやるか。
 

                 おしまい

 
追伸
もちろん、そんな悪いことはしません。だってオラ、心の闇なんて無いもーん(⌒‐⌒)

おーっと、裏展翅もしたんだった。

 
【裏面】

 
表は黒帯が太くて黄色い領域が狭いけど、裏はかなり黄色い。だから飛んでるとこを下から見ると、たまーにアケビコノハと間違える。いや、アケビコノハをキシタバと間違えると言った方が正しいか(笑)

 

2018′ カトカラ元年 その參

 

『頭の中でデビルマンの歌が流れてる』

     vol.3 キシタバ

 
 
 2018年 7月4日 黄昏。

いつものように階段を登ってたら(註1)、5Fのエレベータ前の壁に結構大型の蛾が止まっていた。
遠目に見て、どうせ糞フクラスズメだろうと思って近づこうとしたら、飛んだ❗えっ(°Д°)、4mは離れてたのにもう飛ぶの❓
メッチャ敏感やんと思った瞬間に灯火の下で明るい黄色が火花のように明滅した。
!Σ( ̄□ ̄;)WAOっ❗
大阪のド真ん中、難波の自宅マンションにカトカラ❗
嘘やん(@_@;)❗❓こんな都会にカトカラとは驚きざます。
急いで部屋に帰って、興奮しながら殺戮道具の注射器とアンモニア、毒瓶と捕虫網を用意した。

戻ったら、カトカラくんは天井にへばりついていた。
写真を撮ろうかとも思ったが、強烈な逆光だし、いつ住人がエレベーターで昇ってくるやもしれぬ。見つかったら、どう考えても挙動不審の怪しいオジサンだ。
瞬時に悟る。ここは刹那の時間との勝負である。
しかし、一見して手を伸ばしても毒瓶では距離的に届かない。となれば、ネットを出すしかあるまい。
(;゜∇゜)マジっすか❓マンションに虫網男。間違いなく異様な光景だわさ(°Д°)
💓もう心臓はバクバク。💓ドキドキのハラハラだよ。半ば震える手でソッコーで網を組み立てて、エレベーターの階数表示に目をやる。大丈夫だ。1Fに止まったまんまだ。昇ってくる気配はない。いや、そんなのワカンナイぞ。油断大敵だ。いつ昇ってくるやもしれぬ。予断は許さない。

🎵だあーれも知らない 知られちゃいけなーい
🎵デビルマンが だぁーれなのかー
🎵何も言えなーい 話ちゃいけなーい
🎵デビルマンが だぁーれなのかー

頭の中でデビルマンの歌が流れている。
何があっても、この姿をマンションの住人に見せるワケにはいかぬ。驚きと蔑みの冷たい目に晒され、恥にまみれるわけにはいかないのだ。
階数表示を横目に見ながら、💥バチコーン、電光石火で下から網を叩きつけた。
ネットイン❗ 網に蛾を入れたまんま素早く反転する。ソルジャーは機敏でなくては戦場で命を落とす。
撤退❗、てったあーい❗心の中で叫ぶ。
ダッシュで塹壕、いや階段の踊り場へと退却。ここなら上の階からも下の階からもブラインドになって見えない筈だ。もしも誰かがエレベータから降りてきたとしても身を隠せる。
💦あたふた、💦あたふた、慌てて毒瓶に放り込んで、ぷぴゅーε=ε=(ノ≧∇≦ ノ 脱兎の如くその場から逃走だべさ。もうバリバリ犯罪者の気分である。
そこには背徳感とスリル、禁忌を冒す悦楽とが入り交じった興奮がある。そう、悪い事をするのはエクスタシーなのだ。人は悪に惹かれるものなのだ。
あっ、べつに悪りい事はしてねえか( ̄▽ ̄)ゞ

部屋に帰ったら、なんだかバカバカしくなってきて、
笑いが込み上げてきた。大の大人がやってる事にしては、あまりにもアホ過ぎる。
でも、久し振りの面白き((o(^∇^)o))ワクワクでありんした。危地にこそ、アドレナリンやエンドルフィンなどの脳内麻薬物質が溢れる。それこそがエクスタシーだ。虫採りにそれが無くなったら、いつでも辞めてやる所存だ。

コヤツがほぼ何者だかはもう解っているけど、毒瓶の中を改めて確認してみる。
大阪のド真ん中ミナミで捕らえたカトカラは、思ったとおりキシタバだった。

その日のうちに展翅したので、大丈夫かと思いきや、ソッコー触角が折れた。矢張りカトカラの触角は細くて長いので、生展翅でもキチッとお湯なり水なりで濡らしてからでないと折れちゃうのね。
下翅も欠けてることだし、まっ、( ̄▽ ̄)ゞいっか…。

 

 
( ̄∇ ̄*)ゞハハハハハ。
上翅がバンザイになってて、我ながら酷い展翅だ。
恥ずかしいかぎりである。思うに去年はまだまだカトカラの展翅のイメージが掴めてなかった。ほぼ蝶の展翅しかしてこなかったから、触角を含む左右上翅の間の空間が空き過ぎるのが何となく嫌だった。それを避けようとして、無意識に必要以上に上翅を上げてしまう傾向があったのだと思われる。

それはそうと、幼虫は何を食ってこんな都会で育ったんじゃ❓ 疑問に思って調べてみたら、食餌植物はフジとコナラみたい。都会には基本的にコナラは無いから、きっとフジだね。近くの公園に藤棚もあるしさ。
どうあれ都会で人間に捕まるなんざー、普通では有り得ない。捕まるパーセンテージは限りなくメッチャメッチャ低い筈だ。つくづく不幸なキシタバくんだよね。合掌。

実を云うとキシタバに出会ったのは、この時が初めてではない。前年の秋に既に会っている。帝王ムラサキシタバに一度くらいは会っておきたいと思ったので、A木にライトトラップに連れていってくれとせがんだのだ。その時に一応は採っている。

とはいえ、人さまのライトトラップにお邪魔して採集したものだ。自身の力ではない。だからカトカラ採りを始めるにあたって、この時のものはカウントしない事にした。だから、vol.3 なのだ。

マンションでキシタバを捕らえてから数日後、矢田丘陵で又もやキシタバに会った。しかも大量の。
樹液の出ている木に行ったら、その周りの樹木の幹にベダベタと止まっていたのだ。数えたら、30近くはいた。この日は午後9時くらいに訪れたから、おそらく1回目の食事を終えて、憩んでいたのだろう。
10時半くらいからまた樹液に集まりだした。これでカトカラの生態の一端が垣間みえてきた。樹液の出ている木の周囲にはカトカラが止まっているケースは多い。採集する時は、樹液に求むターゲットがいなくとも、周囲を探されたし。それで案外採れる。そんな事、図鑑とか文献のどこにも書いてないけど…。

 
樹液ちゅーちゅー( ̄З ̄)、キシタバくん。

 

 
たくさんいると警戒心がゆるまるのか、スマホでも至近距離で写真が撮れる。
この個体は上翅が緑色っぽくて中々美しい。
この日は採ろうと思えば50くらいは採れたけど、4つくらいで飽きた。
後日、別な場所に行っても必ずそこそこの数がいた。ド普通種なんだと納得じゃよ。

しかし黄色系のカトカラの中では世界最大級種なので、国外での評価は高いらしい。
でもなあ…、慣れてくると、あんま魅力ないんだよなあ。どこでもいるから、段々存在がウザくなってきたというのもある。コレクターは普通種をクズみたいな目で見がちなのだ。それを差し引いても魅力をあまり感じない。なぜなら総体的に上翅が美しくないのだ。柄にメリハリが無いし、基本的には地味な茶色のものが多い。また変異幅も少ない。それに何よりデブだ。デブだから蛾感が強まるし、優美さにも欠ける。ようするに、どこか野暮ったいのだ。

 
【学名】
Catocala patala (Felder & Rogenhofer,1874)

おっ、小種名 patala はオラの大好きなチョウ、パタライナズマ(註2)と同じ学名じゃないか。
patala の語源の由来は、最初は小アジアのリュキア地方南西部の地中海沿いにあった古代の港湾・商業都市パタラ(patara)であり、リュキア連邦の首都だとばかり思っていた。しかし、綴りが違うことに気づいた。語尾はraではなく、laなのだ。
で、再度調べなおし。

パーターラ(pātāla)とは、インド神話のプラーナ世界における7つの下界(地底の世界)の総称、またはその一部の名称の事だそうである。
またこの世界はナーガ(Naga)と呼ばれるインドの伝説と神話に登場する上半身が人間の蛇神の棲んでいる世界だともされてるみたいだ。たぶん、語源はこっちだね。キシタバは上翅が緑っぽいのもいるから、案外蛇神さまになぞらえたのかもしれない。

 
【和名】
このキシタバ(黄下翅)という名前は、カトカラの中で下翅が黄色いグループの土台名にもなっているので、おそらくこのグループで最初に和名がつけられた種だと推察される。まあ、基準種みたいなもんだね。
しかし、これがややこしくて、何とかならんもんかなと思う。なぜなら、このキシタバは下翅が黄色いグループの総称としても用いられることも多いからだ。だから、キシタバと書かれたり、言われたりするそれが、はたしてキシタバ(Catocala patala)という種そのものを指すのか、それともキシタバグループ全体(キシタバ類)を指しているのかが解りにくい面が多々あるのだ。
だから、会話では一々「ただキシタバ(ただのキシタバ)」とか「普通キシタバ」などと言わなければならない。
これが誠にもって面倒くさくて、(-_-#)イラッとくる。そのせいか、最近ではクソキシタバと呼んでいる。もういっそのこと、そのクソキシタバとかデブキシタバと呼んだらどうだと思うくらいだ。
まあそれは無理があるにしても、ホント何とかしてほしいよ。その際、下手に凝った名前やメルヘンチックな名前、カッコつけたキラキラネーム、如何にも学者が考えたシャチホコばった名前は何卒よしてもらいたい。
ここはシンプルに学名そのままの「パタラキシタバ」でいいと思う。もしくはド普通種なんだから、「コモンキシタバ」でも構わない。
パタラキシタバかあ…。名前の響きも悪くない。そう聞くと、途端にカッコよく思えてくるから不思議だ。名前は大事だす。

 
【開張(mm)】
69~74㎜。
日本産キシタバグループの最大種。北米大陸を除く旧大陸では、これと肩を並べる大型種はタイワンキシタバ Catocala formosana くらいしかいないようだ。
だから、他のキシタバとの区別は比較的簡単である。とにかくデカいのだ。しかし、たまに矮小個体がいるので、判別方法を一応書いておきますね。
後翅の黒帯はよく発達し太く、外帯の後縁付近で内側に突起し、中央部の黒帯に接する。他のキシタバ類はアミメキシタバとヨシノキシタバを除き、ここが繋がらない。また、アミメキシタバとヨシノキシタバはキシタバと比べて小型で、上翅の柄も違うので容易に判別できる。

 
【分布】
ネットで最もポピュラーなサイトの『みんなで作る日本史蛾類図鑑(www.jpmoth.org)では、本州、四国、九州、対馬、中国、朝鮮、インドとなっていた。
と云うことは学名からすると、原記載はインドかな?
しかし『世界のカトカラ』では北海道南部にも生息すると書かれている。『原色日本産蛾類図鑑(下)』にも北海道は分布域に入っていた。また、『日本のCatocala』でも北海道に分布する旨が書いてある。地球温暖化のせいか、最近は採集記録が増加しており、定着した可能性が高い云々ともあった。
その言葉尻だと、昔は北海道には分布していなかったのかも。にしても、jpmoth の情報って古いって事だよね。もしかしたらワモンキシタバの学名が以前のままになっているのも、そのせいかもなあ。蛾業界の人は、そうゆうこと誰も指摘しないのかなあ…。

 
【成虫出現期】
その www.jpmoth.org では、7月~8月となっている。
『世界のカトカラ』では、6月中旬から出現し、10月下旬まで見られるとある。また、新鮮な個体は7月中旬頃までだが、秋に新鮮な個体が採れることもあるので、あまり盛夏には活動しないのかもしれないと記述されている。
盛夏に活動しないかもしれないかあ…。中部地方以北では、それも有り得るのかもしれないが、少なくとも去年の関西の知見ではそんな兆候は見受けられず、継続していつでも何処にでもいた。今年も果たしてそうなのかは心に留めておこうと思う。
『日本のCatocala』の解説では、長野での羽化時期は7月以降で、10月まで見られ、11月の記録もあるそうだ。因みに、他の論文からの引用で、岡山県では6月下旬から見られるとの付記もある。
またそこには、こういう文章もあった。
「Catocalaの中では出現期は長いが、メスの交尾嚢や翅の新鮮さからみると、9月中旬以降に見られる個体は遅く羽化した個体であることが示唆された。9月から10月まで連日メスを採集して交尾回数と新鮮さを調査したことがあった。10月のメスに比べ、9月上旬に採集した個体の方が汚損していて交尾回数は多かった。」

これは『世界のカトカラ』の秋に新鮮な個体が採れることもあるので、盛夏には活動しない云々に対する答えの一つにはなっていないだろうか❓

今年2019年も含めての自分の感覚としては、6月中旬から姿を見せ、徐々に個体数を増やして7月上、中旬辺りにピークを迎えるといった感じがする。

 
【生態】
樹液にも灯火にも好んで集まるとされる。
自分の経験でも、そのようた。
灯火には結構早い時間帯から集まり、夜遅くまで断続的に飛来する。
樹液には日没後、フシキキシタバやコガタキシタバなんかと比べてやや遅れてやって来ることが多い。また同じ個体が時間を措いて何度も訪れ、驚いて逃げても暫くしたら戻ってくるケースが多い。吸汁時間はわりと長い印象がある。
樹液には日没から夜明け近くまで訪れるが、空が白み始めると一斉に飛び立ち、森の奥へと消えてゆく。その際、近くの樹木に静止するものはいなかった。

『日本のCatocala』に因ると「成虫は日中、頭を下、もしくは上、時に横にして樹幹や暗い岩影、石垣の隙間などに静止している。はっきりした静止時の姿勢はない。着時は上向きに着地し、そのまま静止する。昼間のはっきりした静止姿勢が認められないことは、Catocalaとしてはむしろ異例とみられる。」とある。
たしかに自分が昼間に見た1例は、逆さま向きではなくて左斜め向きに止まっていた。

 
【幼虫の食餌植物】
マメ科 フジ属のフジ。
食樹の樹齢に関係なく付くようだが、古木はあまり好まないらしい。
他にブナ科コナラ属も稀に利用するとされるが、飼育しても育たないケースが結構あるようだ。

 
お粗末ながら、この年のキシタバの展翅を並べて終わりとしよう。

 

 
上が♂で下が♀である。
あっ、これは2017年にA木くんに初めてライトトラップに連れていってもらった時のものだね。
ということは9月に採集したものだね。そのわりには意外と翅が傷んでいない。やはり遅くに羽化するものもいるのだろうか?

それでは、以下2018年のもの。

 
【♂】

 
【♀】

 
いやはや酷い展翅である。
ほぼほぼ形が\(^_^)/バンザイになっとるやないけー。

中ではこれが一番マシかなあ…。

 

 
これも上翅はバンザイだが、バランスはそれほど悪くない。悪魔的な感じがして、これはこれで有りなんじゃないかと云う気がしないでもない。

最後に裏側も載せておこう。

 

 
結構、黄色い。
生態のところで書き忘れたけど、飛翔中でも他の下翅の黄色いカトカラとは区別は割かし容易である。なにしろデカくて黄色い。間違え易いのはクロシオキシタバくらいだろう。あと、カトカラとは違うけど、下からだと一瞬アケビコノハに騙される。

 
【アケビコノハ】

 
表は全然違うけど、裏は一瞬カトカラに見えるのだ。

 
【裏面】
(出典『フォト蔵 monro』)

でも、もっとデカイから違うと気づいて脱力する事、多々ありである。

それはそうと、こうしてキシタバくんを並べてみると、ただデカイだけで面白味の無いカトカラだなあ。
上翅の柄が、とにかく地味。色も汚い。下翅も変化が殆んど綯い。調べてないけど、おそらく日本全国どこでも変わりばえしないじゃないかなあ。亜種レベルに近いものがいるという話も聞かないしね。因みに、これらは全て近畿地方で採集したものである。

もう1つ出てきた。
たぶん9月に山梨に行った時のものだ。

 

 
これは結構いい線いってる。
何でだろう❓ と思ったら、すぐに思い当たった。
そういえばシロシタバの展翅について、とあるトップクラスの甲虫屋さんから上翅を上げ過ぎだという御指摘を戴いた。きっと、そのあとだったからだね。
今にして思えば、有り難き御言葉だった。
秋田さん、感謝してまーす\(^o^)/

一応、今年2019年の最初に展翅したものも、参考までに貼付しておこう。

 

 

 
上が♂で下が♀です。
この辺りが正解かな。

 
                 おしまい

 
《参考文献》
西尾 規孝『日本のCatocala』自費出版
石塚 勝巳『世界のカトカラ』月刊むし社
江崎悌三『原色日本産蛾類図鑑(下)』保育社

 
追伸
 
(註1)いつものように階段を登ってたら
普段は極力9Fの部屋まで階段を登るようにしている。虫採りは体が資本。それを訛らせないためなのさ。体力が維持できてる間は先鋭的虫採りができる。

 
(註2)パタライナズマ
ユータリア(イナズマチョウ属)の中の緑系イナズマである Limbusa亜属の最大種。インドシナ半島北部などに分布する。

 
【Euthalia patala パタライナズマ】
<img src=”http://iga72.xsrv.jp/wp-con(2016.3 タイ)

 
裏面もカッコイイ。

 

 
♀はオオムラサキと遜色ない。

 

 
コチラの個体はラオス産。
こういうの見ると、また会いたくなってくる。
蝶採りに戻ろっかなあ…。

 

2018′ カトカラ元年 その1

 
  『不思議のフシキくん』

  Vol.1 フシキキシタバ

 
前回のプロローグに続き、いよいよ第1回である。
とはいえ時間が経っているので、ヒマな人はプロローグを読み返してね。

 
突然、去年からカトカラ(Catocala)に嵌まっている。
キッカケは6月上旬に奈良県大和郡山市の矢田丘陵にシンジュサンを探しに行った折りだった(註1)。

午後11時。水銀灯のそばの柱に、見慣れない蛾が止まっていた。
(;゜∀゜)あっ❗、もしかしてカトカラ❓
直感的にカトカラの中でもキシタバの仲間だと感じた。しかも、見たことがない奴だと思った。インスピレーションが走った時は大概は☝ビンゴだ。
ぞんざいに近づいたら、驚いて僅(わず)かに下翅の鮮やかな黄色を覗かせた。
(;・ω・)びっくりしたなー、もぅー。威嚇かよ。

 
(出展『フォト蔵』)

 
にしても、小憎らしいチラリズムだ。
男と云う生き物は、とってもチラリズムに弱いのだ。
( ☆∀☆)黄色いパンティー🎵
(@_@)黄色い逆さパンティー❤
\(◎o◎)/キャッホーッ💕

去年(2017年)、下翅が黄色い系統のカトカラはジョナスキシタバとキシタバを採った経験があったが(註2)、それらよりも明らかに鮮やかな黄色だと感じた。

少し離れた所にいる小太郎くんを呼ぶ。
彼は蝶屋だけど(ワシも蝶屋だす)、オイラなんかよりも遥かに蛾に詳しいのだ。って云うか、小太郎くんは虫の事だったら何だって詳しい。若いけど尊敬しちゃうよ。蛾初心者のオイラとしては誠に頼もしい存在だ。
 
『これって、キシタバ系じゃなくなくね❓』
 
と尋ねたら、小太郎くんが事もなげに答える。

『あっ、カトカラですね。この時期だと多分フシキキシタバかな。結構珍品ですよ。だとしたら、奈良県での記録はたぶん無かった筈てす。初記録かも。』

あんた、何でも知ってはるなあ。やっぱ、マジ尊敬するよ。いつまで経っても、ワシ二流でぇ~す( ̄∇ ̄*)ゞ

にしても捕らえて確認せねば、どうしようもない。
上から毒瓶をかぶして、薬殺する。
酷い所業だ。これで、アッシも立派なマッド・サイエンティストの仲間入りじゃよ、Ψ( ̄∇ ̄)Ψケケケケケ…。きっとロクな死に方をせんじゃろうて。

暫く経って、昇天を確認したところで取り出す。

 

 
表の柄は渋いっちゃ渋いけど、所詮は蛾風情。地味だ。
ならばと、裏返してみる。

 

 
(;゜0゜)おっ❗、この特徴的な黄色と黒の縞模様は間違いなくキシタバの仲間だね。馬鹿なオイラだって、それくらいのことは解る。

小太郎くんが言う。
『間違いなく、フシキですね。』
真面目に名前を聞いてなかったので、改めて何だそりゃ?と思って訊き返す。
『フシキ❓、フシギ(不思議)じゃなくて(・。・;❓』

フシギノモリノオナガシジミとか、また誰かがメルヘンチックな名前でも付けたのかと思ったが、小太郎くん曰く、間違いなくフシギじゃなくてフシキだそうだ。
にしても、語源がワカンねえよ。兎に角、蛾トーシロ(素人)には聞いたこともない名前のキシタバだった。
名前なんて別にどっちゃでもええけど、カトカラはカッコ渋美しいから、蛾にしては好きな方かなと思った。
でも、ことさら集めようという気は起こらなかった。

そういえば、こん時はこんな事も考えてたっけ…。
去年も思ったんだけど、このカトカラグループの柄って、サイケデリックっぽくねっ❓
サイケデリック・アートにはカラフルな渦巻きみたいな柄があって、なんかジッと見てると引き込まれそうというか、(◎-◎;)目が回りそうになる。幻覚系ドラッグやってたら、コレってヤバいくらいにウルトラ立体的に見えるのかな❓(勿論、やんないけどー(^o^))
インドで出会った学生ジャンキーくんは、L・S・D をやったら、そんな風に見えたりすると言ってたなあ…。
アイツ、相当なジャンキーだったけど、まだ生きとんのかなあ…。

んな事を考えつつ、そっと上翅を少し上げてみた。
と、同時に色鮮やかな黄色がバァーンと目に飛び込んできた。
黄色はあまり好きな色じゃないけど、素直にとても綺麗だと思った。でも写真は撮らなかった。そんな事よりも意識はまだ見ぬシンジュサンの方に集中してたからだ。その美しさに心を動かされたとはいえ、所詮は前座だと思っていた。いつシンジュサンが飛んでくるかワカランのだ。かまけているヒマなどない。

その夜、💥ビシッとシンジュサンをシバいて、翌朝に帰った。この日が記念すべきオーバーナイト・モスだったワケだね。冷静に考えてみれば、蛾を求めて徹夜するだなんてビョーキだよなあ。我ながら脱力系で笑ってしまうよ。

一眠りしてから展翅してみて、(;゜0゜)驚いた。
日の光の下で見るそれは、もっと鮮烈な黄色だった。

 
【フシキキシタバ Catocala separans ♂】
(2018.6.7)

 
深くて濃い、どこか透明感のある山吹系の黄色だ。見ようによってはオレンジ色にも見える。
これを見て気持ちが一変した。
カトカラの中の所謂(いわゆる)キシタバと言われるグループは下翅が皆さん黄色くて、日本ではこのタイプのカトカラが圧倒的に多い。でも素人目には、どれも似ていて何が何だかワカンない。区別がつかねえもんは面倒クセー。だから敬遠してた。生来ミーハーだから、カトカラと云えば、こん時まではムラサキシタバしか眼中になかったのである。けんど、こんなに美しいのなら集めてみてもいいなと思った。それにスタートからいきなりの珍品で、しかも奈良県では未記録と云うのも何だか気分が良い。俄然、やる気になった。

後々知ることになるのだが、後翅の黄色部は他の黄色系カトカラと比べて、このフシキキシタバが群を抜いて美しい。その理由は他種と比べて下翅の黒帯が細いことにある。即ち、黄色い領域が広いということだ。少し毛色が違うが、この黄色の美しさに対抗しうるのはカバフキシタバくらいだろう。あと、蛾にしてはあんまりデブじゃないのも好感がもてた。
もしも最初に自分の力だけでゲットしたのが、少し前に発生する地味なアサマキシタバだったとしたら、おそらくカトカラには嵌まっていなかっただろう。いや、嵌まるにしても、もっと後だったかもしんない。
そういえばこの年は、ちょっと前の5月半ばにA木くんに『そろそろアサマキシタバの季節ですよ。今年は蝶の発生が全般的に早いから、もう出てるかもしれませんね。』と言われたのだった。けんど、言われても全然ピンとこなかった。そういうのもいたなあ…と云う程度で、あまり興味が無かったのだ。やっぱ、蒐める気がさらさら無かったのね。

 
後日、♀らしきものも採れた。

 
(2018.6.17)

 
♀の方が帯が細くて、より黄色いね。偶々かなと思ったが、図鑑等で確認すると、その傾向はあるようだ。
とはいえ、雌雄の決定的な違いはおそらく腹だろう。
♂は腹が細長く、その先端に尻毛(毛束)があるが、♀には無い。腹も短くて太い。加えて、翅形は♀の方がやや丸っこい。他にも判別点はありそうだが、蛾はトーシロだからワカンねえや。

とにかくコレを機に、フシキキシタバ、ひいてはカトカラ全般について調べてみようと思った。

フシキキシタバは、かつては大珍品だったようだ。
1889年に記録されてから、近年まで記録が無かったそうだ。それくらいレアだった。再発見されたのは1956年で、場所は兵庫県。何と67年ものインターバルがある。(・o・)何で❓
その後、岩手県、山梨県、北陸地方や近畿地方各地での発見が相次いだそうな。

ネットの『カトカラ全集』の県別カトカラ記録を見ると、小太郎くんの言うとおり奈良県では未記録になっていた。でも、これは単に正式な発表がされてないだけだと思う。とは云うものの、調べれば調べるほど珍品じゃなくなってきてるみたいだし、当然奈良県でも採れているという情報も入っている筈だろう。じゃなければカトカラ界の情報ネットワークが余程狭いのか、愛好者が少ないのか、もしくは管理者の怠慢を疑っちゃうよ。

 
【学名】Catocala separans(Leech,1889)

属名Catocalaの語源は、ギリシャ語の kato(下、下の)と kalos(美しい)を組み合わせた造語。つまり、後翅が美しい蛾ということだね。
小種名の「separans」は、おそらくラテン語由来。
意味は「分離」だろう。これは上翅と下翅の色が違うことからきてるのかと思ったが、それじゃテキトー過ぎる。他のカトカラもそうだからだ。
想像だが、たぶん下翅中央の黒帯が途中で分離、もしくは分離しがちだからではないかと考える。間違ってたら、ゴメンナサイ。

フシキキシタバは、英国人リーチによって1889年に富山県高岡市伏木と滋賀県長浜から得られたものから記載された。和名の由来はその辺からだと思われるが、なぜナガハマキシタバではなく、フシキキシタバになったのかと云う経緯はわからない。
どうあれ語源は、まさかの地名だったのね。納得だが、ちょっとガッカリだ。想像では、もっと複雑でドロドロしたややこしいミステリアスな命名ストーリーを描いていたからさ。
(-_-)フシキキシタバ殺人事件。ナガハマキシタバを主張した男は消されたな。アカン、また変な妄想がワいてきた。脳を強制停止じゃ。

分布は本州、四国、対馬。北限は青森県だが、その分布は局所的で記録の無い都道府県も結構ある。国外では朝鮮半島、中国北東部、ロシア沿海州にも分布するとされている。

成虫の開張は55㎜。図鑑等には6月初旬から現れ、8月下旬まで見られるとあるが、実際は7月に入ると殆んど見られなくなった。いても、驚く程みすぼらしいボロだった。新鮮な個体を得られる期間は短いのかもしれない。

フシキキシタバは下翅の黒帯が細く、黄色い領域が広いのが特徴だが、実をいうと日本には同じような特徴を持つものがもう1種いる。Catocala duplicata マメキシタバだ。
けど両者の判別は簡単。名前のとおりマメキシタバの方が遥かに小さいからだ(開張46~48㎜)。それに上翅の斑紋が全然違う。発生時期も1ヶ月近く後ろにズレるから、間違うことはまず無いでしょう。マメちゃんが登場する頃には、フシキさんはボロボロなのだ。少なくとも関西から西はそうだろう。

 
【マメキシタバ Catocala duplicata ♀】
(2018.8 大阪府四條畷市)

 
何か野暮ったいなあ…。
たぶん上翅のデザインにメリハリが無いからだ。それに、下翅の黄色にフシキのような透明感のある輝きが感じられない。どこか燻(くす)んで見える。

話をフシキくんに戻そう。
幼虫の食樹はブナ科コナラ属のクヌギ、アベマキ。
飼育する場合、同じコナラ属であるミズナラやコナラ、カシワが代用食になるというが、産地により受け付けない事もあるそうだ。

先にも触れたけど、フシキキシタバは近年までは指折りの大珍品だった。しかし、最近では関東地方の平野部など各地から多産地が見つかっているという。
これは食樹が判明し、灯火にあまり飛来しないこと、樹液によく集まること、発生期が比較的早くて期間も短いこと、昼間の見つけ採りでも得られることが分かったからのようだ。珍種と言われるものでも生態が分かってしまえば、普通種に成り下がることはままある。
とはいえ、かつては不思議キシタバとも言われるくらいに謎多き存在だったみたいだ。謎とかそういうのって掛け値なしに好き。謎があれば、そこには浪漫があるからだ。興味は尽きない。
これは想像だが、不思議だとされたのは、①記載されてから長い間再発見されなかった事。②再発見されてから突然各地で記録が急に増えた事。③蛾の主たる採集法であるライトトラップや外灯にはあまり飛来しない事。④前年には沢山見られたのに、翌年は全く見かけなくなったりする事。そして、⑤幼虫の食樹が何処にでもあるクヌギやアベマキだからだろう。
幼虫の食餌植物がレアなものなら、珍品たる理由も理解しやすい。それが、まさかの何処にでもあるクヌギの木となると、首を傾げざるおえない。

①と②は後回しにして、③からその理由を紐解いてゆこう。カトカラ1年生の空想、戯れ言だと思って聞いて戴きたい。

③だが、灯火にはあまり飛来しないとあるが、自分は灯火に飛来した個体を5頭以上は見た。但し、何れも深夜11時以降(註3)、遅いものは午前4時過ぎに飛来した。因みに飛来が多かったのは、午前1時前後である。
たぶんライトトラップや灯火まわりは、皆さんそれほど深夜遅くまでやらないから、それで会えなかったのではあるまいか。ゆえに灯火にはあまり飛来しないと考えたのではなかろうか。たった1年の経験だが、フシキは灯火への飛来が遅いタイプという可能性はあると思う。

④は、単に大発生した後の次の年には極めて個体数が減るからではないかと思う。大発生じゃなくとも、多かった年の翌年は個体数が減ると思われる。蝶なんかは、そういう例が結構多い。蛾でも有り得るだろう。

⑤が最大の不思議だった。どこにでもあるクヌギやアベマキが幼虫の食樹なのに、なぜ珍品だったのかが謎過ぎる。これを単にカトカラ愛好家の怠慢だと片付けるのには無理がある。クヌギをホストとするカトカラは他にもいるからだ(註4)。となれば、カトカラ愛好家さんたちがフシキキシタバがいるような環境に行く機会は少なくなかった筈だ。のみならず、その環境ならば甲虫屋だって訪れる機会は多い。甲虫屋の多くが蛾に興味を持っているとは思えないが、情報が入る確率はゼロではない。長い年月の間には、情報がもたらされる事もあって然りだろう。それでも稀にしか見つからなかったという事は、やはり昔は極めて稀な種だったと思われる。

発見されにくいのは、発生が比較的早いからだとも考えたが、コヤツの前にアサマキシタバが発生する。また、フシキの後にはすぐワモンキシタバや、ただキシタバ(Catocala patala)も発生する。前後どちらかを採集に行った折りに、会える可能性はそこそこあるだろう。だから、それも理由とはなりにくい。やっぱ不思議だわさ。

とはいえ原因のない結果は存在しない。きっとそこには某(なにがし)かの理由がある筈だ。
例えば、昔と今とでは里山の環境に何か変化はないだろうか❓地球温暖化とか、乾燥化とか、天敵の減少とかさ。
💡ピコリン❗そこで、はたと閃いた。
クヌギは昔から里山に住む人々に利用されてきた。成長が早く、植林から10年ほどで木材として利用できるからだ。材質は硬く、建築材や各種器具、車両、船舶に使われる他、薪や椎茸栽培の榾木(ほだぎ)、炭(薪炭用材)としても用いられてきた。伐採しても切り株から萌芽が更新し、再び数年後には樹勢を回復する事から、持続的利用が可能な樹木の一つとして農村では重宝されていた。それゆえ下草刈りや枝打ち、定期的な伐採など人の手が入ることによって林は維持されていた。これがいわゆる日本人のイメージする雑木林で、里山の風景の典型を成してきた。しかし、近代化と共に日本人の生活様式や農業そのものの有り様が変化した。そして、今では利用されることも少なくなり、放置されることが多くなった。
つまり、雑木林が放置されることにより伐採が減って、クヌギやアベマキの大木が増えたのではないだろうか。
クロミドリシジミの幼虫がアベマキの大木を好むらしい。そして、最近になって各地で増えているとも聞いている。フシキキシタバの幼虫も大木好きで、クヌギやアベマキの成長が進み、それに伴って増えたのではあるまいか❓ それだとキレイに説明がつく。どこにも、そんな事は書いてなかったけど…。

①は、⑤と関連性があるのではないかと思う。
記載されて長い間再発見されなかったのも、昔はクヌギの大木が少なかったからではないかな。

②も⑤とリンクしていて、再発見されてから急に各地で見つかり始めたのも全国的にクヌギやアベマキの大木が増えたからだろう。時代の流れで、里山の生活様式が想像以上に各地でワッと一斉に変わったんだろね。
個体数が増えると、観察される機会も増える。当然、詳しい生態もわかってくる。それが発表されれば、伝播は早い。加速度的に情報量が増えたから、発見が各地で相次いだのではないかと推察する。

再度言うけど、蛾初心者の戯れ言だと思って聞いて戴きたい。
色々と文献をあたってみたけど、調べた限りではこういった推察なり意見なりは見受けられなかったし、奈良県の記録は今年見ても空白のままだ。カトカラ愛好家って、もしかしてシャイなの❓

怒られそうだ。カトカラ愛好家の皆様方、けっして喧嘩を売っているのではござりませぬ。初心者ゆえにワケもワカラズ、素直に疑問をぶつけただけでござる。納得できる説明を御教示してくだされば、直ぐに謝罪、意見を引っ込める所存でありまする。
納得できねば引っ込めませんけどー。ツゥンマセーン。
あっ、このモノ言い、絶対怒られるなあ。
まあいい。どうせ周りでカトカラを集めているのはA木くんくらいしかいないし、滅多に遊んでもらえない。だったら、勝手な事をゴチャゴチャ言う一人ぼっちカトカラ愛好家になろう。
でも、本当は一人で夜出歩くのは嫌なんだよなあ…。
👻お化け、怖いし。

ここまでを酔っ払って一気に書いた。
翌日、読んでみて、ヤバいかなあと思った。偉そうなことを書いちゃったので、不安になってきたのだ。
そういえば、西尾規孝さんの『日本のCatocala』のフシキキシタバの項を読んでないんだよなあ…。去年の秋の終わりに大阪の自然史博物館で読ましてもらったんだけど、既に採った事のあるカトカラは無視して、まだ採ったことのないものを中心に読んだのだ。採ってしまえば、急速に興味を失う性格が仇になっちまっただよ。
とにかく、ここは是が非でも確認せねばなるまい。もう慌てて、ソッコーで自然史博物館に行ってきましたよ。

 
件の本には、アッシの考えたような事がちゃ~んと書いてあった。

「本種は比較的最近になってあちこちで産地が知られるようになった。老齢木にもつくようである。今から20年前にコシロシタバやマメキシタバ、オニベニシタバの多産した上田市のクヌギ林の樹齢は20年前後であった。40年になるとCatocala はつきにくくなるような印象を持っている。老齢木のタンニンは幼虫の成長阻害要因である。ミドリシジミの類の方がもっと顕著で、30年以上のクヌギにはクロミドリシジミ以外はまずつかない。近年の薪炭材の放置による林の老齢化がCatocala相に影響を与え、結果的に本種の多産につながっている可能性がある。」

別項の食樹についての欄にも関連した記述があった。

「幼虫はコシロシタバが特に発生する10年前後の幼齢の木にはほとんど発生しない。20年以上の大木によく発生する。」

Σ( ̄ロ ̄lll)やっベー、もう少しで大恥をかくとこじゃったよ。ちゃんと考えてはる人は、おるんやね。或いはカトカラ好きの間では、こんなの常識だったりして…。
カトカラ愛好家の皆さま、m(__)mゴメンナサイ。

それにしても、この西尾さんの本ってスゴいよなあ。
日本のカトカラについて、これ程までに突き詰めて書かれてある本は他に無い。幼生期も含めて、よくぞここまで調べ上げられたなと思う。生態写真もふんだんに盛り込まれているし、しかもキレイ。これはもうカトカラ界の金字塔的遺産でしょうよ。しかも自費出版なんだから驚きだ。生意気なカトカラ1年生も、その努力と執念、鋭い観察眼には感服させられましたよ。

 
そういえば、裏側の画像を添付してなかったな。

 
(裏面♂)

 
斜めってて、酷いな(笑)
写真を撮るのがテキトーすぎた。撮り直そうかと一瞬思ったが、もう、いいや。面倒クセーもん。
それはそうと、あんまし考えてなかったけど上翅の裏は黄色いんだね。裏はボオーッと見てたわ。もしも翅の表もこのデザインで、色鮮やかだったとしたら相当カッコイイぞー。

 
(裏面♀)

 
下翅は表の柄とある程度は連動してるっぽいな。
となると、キシタバグループの中では一番明るいのかな?とはいえ、表みたいに黄色が鮮やかではないから、どってことないけど。
そういえば、図鑑には裏側の標本写真が殆んど載ってないんだよなあ~。何でかなあ❓そのうち全種揃ったら、一同に並べてやろう。

とにかく、このフシキキシタバをキッカケに、このあとカトカラにハマって邁進する事とあいなった。
結果、1年で17種類が採れた。日本のカトカラは全部で31種類だから、半分は越えている。近畿地方以外の遠征は秋の山梨と長野の2回だけだった事を考えれば、結構頑張った方だと思う。

ここで「おしまい」と書いて、あっさりクロージングする予定だったが、やめた。らしくない。最後に饒舌男の一言を付け足して終りませう。

フシキキシタバは珍品の座を滑り落ちたが、他の場所でその姿を見る事は一度も無かった。今や大珍品じゃないかもしんないけど、分布は今もそこそこ局所的で、けっして普通種なんかではないと思う。誰にもポイントを教わらずに自分の力だけで見つけ出すことはそう簡単ではない筈だ。レア度のランクは下がったやもしれぬが、美しいことに変わりはないし、個人的には特別さはそんなに失われていないと思ってる。
何よりも黄色いカトカラの魅力を最初に教えてくれた種だ。この先、初恋の相手を悪く言うことはないだろう。最初に惚れた女を蔑(ないがし)ろにするような男にだけはなりたくない。
 
                  おしまい

 
追伸
第1回なのに、のっけから攻撃的な回になってしまったなりよ(^o^;)
カトカラ1年生なのに、生意気だよね。途中で書き直そうかとも思ったが、そのままにしておくことにした。理由の一番は面倒くさいからだけど、一旦吐いた(書いた)言葉は呑み込みたくないし、本音を言うのを厭わない方だからコレで良しとした。批判があれば、素直に謝罪なり反論なりすればいいことだ。

展翅は今思うと上翅を上げすぎたなあ。
蝶の展翅の時みたく、触角の角度と上翅との間隔(空間)を重視して展翅したからだろう。
あと、蛾ビギナーなので、図鑑を持っていないと云うのもある。お手本が無いのでイメージが湧かないのである。自然、テキトー俺流となる。
そういえば、蛾だから邪悪な感じにしたかったと云うのもあったな。上翅を上げ気味にした方がそう見えっからね。蝶じゃないから気楽で自由なのさ。蝶ほどに大切ではないゆえ、失敗しても別にいいやと思ってっからチャレンジャーにもなれるってワケ。
段々、思い出してきたよ。踏み込んで言うと、当時は世間の蛾の展翅に対して、あんまキレイじゃないなと云う印象を持っていた。ならば、ルール無用の悪党のワシがトレンドを作っちゃるーくらいの気分だったのである。我ながら尊大なアホだよねぇ(笑)。
でも実際は違った。今では思う。蛾の展翅は蝶よりも遥かに難しい。蛾は形がバラバラで、その造形は多岐に渡る。個性的なのだ。だから、種によってバランスが全然違ったりもする。やってて、何が正解なのか分からなくなってくるのである。おまけに触角にも色々なバリエーションがあるから、ややこしい。でもって、カトカラなんぞは髪の毛よりも細いから直ぐにブチッと切れるし、真っ直ぐになんないし、左右対称にするのは至難の技。ほとんど不可能と言っていい。
そんなワケで、今回のコレはコレで一つのそういうデザインと考えれば、そこそこカッコイイかもしんないと密かに思ってたりもするんだよねぇ…。
けんど、今年は上翅をもっと下げよ~っと。
先ずは基礎を学んでからでないと、トレンドとか崩しもヘッタクレもあらしまへん。遊ぶなら、もっと上手くなってから遊ぼっと。それに、秋田さんに褒めてもらいたいしね。

と、昨日はここまで書いて、註釈も含めてほぼほぼ文章を完成させてから生駒山地にウラジロミドリシジミの様子を見に行った。テリトリー(占有活動)を張り終える日没近くまでいたから、折角だし樹液が出てる場所を探すことにした。誰もいない真っ暗な山道を懐中電灯を持ってウロウロする。
で、たまたま照らした斜め上にカトカラらしきものが飛んでた。瞬時に反応して片手で網を振り抜いた❗
飛んでる時に裏側が鮮やかな黄色に見えたから、マジ振りである。アサマキシタバではない筈だから、もしやと思ったのだ。勿論、そういう時は滅多とハズさない。
網の中を確かめて、闇に向かって、『俺って、まあまあ天才。』と呟いたよ。

すかさず、毒瓶に放り込む。

 

 
ひゃっほー((o(^∇^)o))❗❗
( ☆∀☆)チラリズムの逆さ黄色いパンチィー❤❤❤
やっぱフシキちゃんだった。

 

 
期せずして、この日は去年初めてフシキキシタバを採った日にちと同じ6月7日だ。

《「この黄色がいいね」とオラが言ったから六月七日はフシキ記念日》

今日から6月7日は『フシキ記念日』と呼ぼう。
\(◎o◎)/おーっ、何と元ネタの俵万智の短歌『サラダ記念日』の日付の七月六日と入れ替わりの反対じゃないか。運命感じるぅー(σ≧▽≦)σ

フザけるのはこれくらいにして、展翅するなりよ。

 

(2019.6.7 東大阪市枚岡公園)

 
出来立て、ほやほやだよ~ん。
上翅の大きさが右側が少し小さいので、ビミョーに変だが、まっ、こんなところでしょうかね。
触角をきっちり整えるのを試みてみたが、(^_^;)無理だわ。これに関しては自然に任す方向で整えるしかないね。

とはいえ、下げたものの全然邪悪感がないなあ。
皆さんは、どっちがカッコイイと思いますぅ―❓
なんだか何が正しいのか、よくワカンナクなってきたよ。

 
(註1)シンジュサンを採りに行った折りに…
そん時のことは、拙ブログに『三日月の女神・紫檀の魁偉』と題した三回シリーズに書いとります。

 
(註2)ジョナスキシタバとキシタバを採った経験…
2017年の秋にA木くんに、ムラサキシタバを見てみたいとせがんだら、兵庫県北部にライト・トラップ採集に連れてってくれた。その時に採れた。といっても、採らしてもらったと云う方が近い。今でも自分の力では採ったとは思ってない。ようするに、お客さんだったワケだね。もっと言うと、最初は持ち帰る気はさらさら無かった。飛んで来たから思わず網に入れたものの、基本的に蛾は苦手だからどうしたものかと思ったのだ。でもA木くんが『持って帰ればいいじゃないですか。』と言うので、記念として持ち帰った。謂わば、この2017年の採集は、1回切りのお遊びだったワケ。だからがゆえの『2018′ カトカラ元年』なのだ。

 
(註3)深夜11時以降…
シンジュサンの回でフシキの飛来を午後10時半と書いたが、知らぬうちに己の記憶を勝手に都合のいいように改竄していたみたいだ。写真の撮影時刻を確認したら、午後11時過ぎになっていた。感覚と印象だけで言っちゃって、すいません。
ついでに補足しておくと、小太郎くんがシンジュサンを1頭持ち帰ったというのも間違い。持ち帰ったのは別な日で、しかもシンジュサンではなくてオナガミズアオでした。小太郎くんからの指摘で判明した。
人間の記憶なんてものは、思った以上に曖昧らしい。
自尊心と思い込みが強い人間は、気をつけた方がエエですな。

 
(註4)クヌギをホストとするカトカラは他にもいる
クヌギは、マメキシタバ、コシロシタバ、オニベニシタバ、アサマキシタバ、アミメキシタバ、コガタキシタバの食樹でもある。

 
 
《参考文献》

1971 保育社『原色日本産蛾類図鑑 下』-江崎悌三ほか

 
1971年の改訂版を参考にした。このあと1981年に、もう1回改訂版が出ているようだ。因みに初版は1958年の発行です。

 
・2011 むし社『世界のカトカラ』石塚勝巳
 

 
初心者がカトカラの世界を知るには、この本が一番だろう。解りやすくて、よく纏まっている。平易な言葉が使われているし、図版の写真も綺麗。レイアウトもスッキリしている。また、日本のみならず世界のカトカラまで紹介しているから、属全体を俯瞰で見られるところも素晴らしい。

 
・2009『日本のCatocala』西尾規孝
 

 
自信の表れだろうか、シンプルで渋い表装だ。
素直にカッコイイと思う。