黄昏のナルキッソス 第二話

第2話 亡霊ナルキッソス

 
2019年 11月5日

2019年もシンジュキノカワガを求めて伊丹市昆陽池公園に行った。

(シンジュキノカワガ Eligma narcissus)

行程は2017年と全く同じだった。先ずはママチャリで伊丹空港横の猪名川河川敷に行った。シルビアシジミの様子をみるためだ。

(猪名川河川敷)

シルビアは健在だった。
稀種シルビーちゃんが、これほど都会のド真ん中にいて、しかもこれほど沢山いる場所は他にはないだろう。

(シルビアシジミ)

そこから、えっちらおっちら昆陽池へと向かったが、結果は未発生。痕跡は全くなく、又しても惨敗に終わった。

 
2020年 9月22日

この年はJR大和路線の三郷駅へ行った。
カッちゃんが、この駅でシンジュキノカワガの死体を拾ったのである。今はどうなっているのか分からないが、まだ当時の構内の灯りは蛍光灯で、虫がそこそこ飛来していたのだ。最近は殆んどの灯りがLEDに変わってしまい、全然虫が寄ってこないから貴重な場所だった。春にはマイコトラガ、夏にはシンジュサン、秋にはウスタビガもやって来てたからね。

カッちゃん曰く、最初の1頭は踏まれてペッチャンコだったそうだ。で、二匹目のドジョウを求めて通ったらしい。そして何回目かは聞いていないが、目論見通りに2頭目に出会ったのである。しかし不幸にも、その個体もまた踏まれていた。とはいえ、まだ踏まれて間もなかったみたいで、かろうじて原形はとどめていたらしい。しかも羽化したばかりのような新鮮個体だったそうな。もう少し早く到着していれば…と随分と悔しがってたなあ。
余程もったいなかったのか、確かその個体は持って帰って修復展翅したんだよね。でも頑張りはしたものの、どうにもならんかったらしいけどさ。

それはともかく、2頭もいたと云うことは、間違いなく近辺で発生していると云うことになる。そう判断して自分も出掛けたのだった。

駅構内を地面や壁を凝視しながら歩き回る。
一般ピーポーから見れば、完全に怪しい人だよね。狂気の沙汰もシンジュキノカワガ次第なのだ。虫屋ってホント、頭オカシイわ。

結果は、又しても完封負け。戦果は地面に落ちてたナカグロクチバくらいだった。

実物を初めて見たけど、前翅の柄が幾何学模様でスタイリッシュだ。
それと比べて裏面は地味。

蛾って、表は複雑なデザインのものが多いのに、裏は概して地味なものばかりだ。その点、ナルキッソスは裏も素晴らしい。

(シンジュキノカワガ 裏面)

デニムブルーと鮮やかな黄橙色の対比が美しい。ブルーの中に、放射線状に水色が入っているのもオシャレである。まるで月と帳が下りたばかりの夜空みたいだ。どこかゴッホの絵画を彷彿とさせるところがある。糸杉とかカフェの絵とかさ。

(星月夜)

(出典『CASIE MAG』)

「星月夜」もそうだけど、何と言っても、やっぱりコレだね。

(夜のカフェテラス)

(出典『巨匠の美術館〜誰もが知っている有名画まるかじり!〜』)

色合いだけでなく、その配色の構図までもナルキッソスっぽい。

それに表と裏のデザインが全然違うってのも素敵だよね。しかも両面とも色鮮やかなのだ。蝶は蛾と比べて裏も美しいものが多いと思うが、それでも裏も表もここまで華美なものは少ない。

 
一応、ナカグロクチバの解説をしておこう。

(ナカグロクチバ Grammodes geometrica)

ヤガ科 シタバ亜科 クチバ属に分類される蛾。
南方系の種で、元々は南西諸島にしかいなかった。なので昔は本州では偶産蛾扱いされてきた。それが地球温暖化に伴い急速に北上、今や北関東にまで分布を拡げている。
7~10月の夏から秋にかけて発生し、イヌタデ,エノキグサ,コミカンソウ,ブラジルコミカンソウ,ヒメミソハギ,ホソバヒメミソハギ,サルスベリ,ザクロなどの各種雑草を食餌植物としている。そのため、河川敷などでよく見られるという。
結構珍しいと云うイメージがあったが、今や本州でも普通種になってるみたいだね。ガッカリだ。

この年は、多分もう1回くらいは三郷駅へ行ったと思う。勿論、結果は言うまでもない。これで6連敗だ。

 
2021年

2021年は、画像は残っていないけど、大阪市鶴見区の鶴見緑地公園へ行っている。ネットでシンジュの木がある場所を探していたら、どなたかのブログにそこそこあるようなことが書いてあったからだ。
確か、ママチャリで行ったんだよね。昆陽池公園ほどではないにせよ、鶴見緑地も遠かったよ。

シンジュの木は確かにあった。ひこばえも各所で見つけた。でも大きな木は期待してたほどなかった。どうやら台風で何本かが倒れたらしい。

結果は、木を丹念に見回って幼虫と繭を探すも、見つけられずじまいだった。未発生の可能性が高い。
それでも一応夜までいて、灯火巡りもしてみた。だが、空振り。どうやら照明が全部LEDになってしまっているようで、虫が全然寄って来ない。LEDからは紫外線が殆んど出ないので、虫たちは誘引されないのである。昔は何処でも灯りに夥しい数の蛾が集まっていて気持ち悪いくらいだったが、今やLEDだらけで、灯火を巡っての採集なんて不可能に近い。まあ、その分死ぬ虫は減るけどもね。コウモリとかクモなどに捕食される数は減るだろうし、人に踏まれる事もない。

後で知るのだが、この年は昆陽池公園でナルキッソスが発生していたようだ。伊丹昆虫館のホームページに、10月21日に公園の生き物調査が行われた旨が書かれており、そこにシンジュキノカワガの幼虫と蛹の記録があった。ショックだった。去年は行ったのに、どうして今年は行かなかったのだ❓ 痛恨の極みである。激しく悔やんだね。でも幾ら悔やんだところで、後の祭りだ。
この頃には、流石に心が折れかけていた。ナルキッソスとは一生縁がないんじゃないかとさえ思い始めていたのだ。もはや亡霊みたいな存在だ。そして、その正体不明の亡霊を追いかけて、あてどなく彷徨っているような気分だ。でも、未だその存在のシッポさえも掴めないでいる。五里霧中。先の見えない徒手空拳の戦いは辛い。

 
2022年 10月上旬

画像が無いから正確な日付は分からないが、10月初旬辺りに昆陽池に行っている。連続で今年も発生しているのではないかと云う淡い期待を持ったのだ。

しっかし、またしても痕跡ゼロであった。これで8連敗だ。重苦しい徒労感が襲う。

 
2022年 10月下旬

この日も正確な日付はワカラナイが、鶴見緑地へ行った。ママチャリではなく、電車で行ったと思う。
情報源は小太郎くん。ツイッターだったっけか❓ 誰かがSNSに鶴見緑地で撮ったナルキッソスの画像を上げていると教えてくれたのだった。
クソッ、鶴見緑地だって去年行ったじゃないか。なのに何でよりによって今年の発生なのだ❓この悪戯なズレって、誰かの悪意すら感じる。なんだか亡霊におちょくられているような気かしてきた。

行ったら、パッと見にはシンジュらしき木が見当たらない。
一瞬、切られた❓と思った。だが、どうやら葉が全て落ちてしまっているからのようだ。幹の木肌は何となく憶えているので、らしき木の幹に繭がないか探しまわる。
しっかし、一つも見つけられなかった。夜までいようかとも思ったが、どうせLEDだから成果は望めない。諦めて、そういや中央環状線沿いの大きな釣具屋まで歩いて行ったんだよね。で、戻りしなに撤退まじかの鶴見緑地アウトレットに寄って帰ったっけ。ナルキッソスが光に集まって来てるんじゃないかと淡い期待もしたが、勿論そんな奇跡みたいな事は起こらなかった。8連敗決定である。

 
2022年 11月27日

こんな遅い時期に出動する事になったのは、幼虫好きのN女氏が8月に池田市東山でシンジュキノカワガの幼虫を見たと教えてくれたからである。同年内に、居るとか居たと云う確実な情報を得たのは初めてだ。俄然、士気が上がる。今度こそ亡霊ではなくなるかもしれない。
そうだ今回は、なんちゃってライトトラップも持っていこう。なんなら糖蜜だって用意してもいい。最善の努力を怠ってはならない。まだ其処に居ることを祈って出掛けた。

阪急池田駅からバスに乗り、山裾近くで降りる。ここは昔、クロヒカゲモドキを初めて採った思い出の場所だ。そういや同じ目的で来てた爺さんに、採ったと言ったら『お前みたいな駆け出しに採れるワケがない❗大方クロヒカゲと間違えてんだろ。見せてみろ。』と偉そうに言われたんだよねー。なので蝶の入った三角紙を見せた。中を覗いた時のジジイの表情は今でも鮮明に憶えている。それは驚愕と恥辱にまみれた醜い顔だった。そして、態度をコロッと変えて猫撫で声で「何処で採ったのー❓。」と訊いて来たんだよね。アレには笑ったよ。
場所を案内してあげたけど、もちろん採れる筈もない。だって、そっちこそド素人のセンスなしだったからだ。クロヒカゲモドキは、昼間にはススキに止まって休んでいるのだ。それすら知らなかったからね。

(クロヒカゲモドキ)

その日は他にも採集者が結構入っていたけど、結局のところ自分しか採れなかったんだよね。あの頃は連戦連勝で、超絶引きが強かった。それが今や蛾に連戦連敗の体たらくだ。多分、どうしても採らねばならぬと云う強い気持ちが薄れてきてるんだろなあ…。どうしても欲しいと云う強い欲望と絶対に採ると云う強い意志が、運をも引き寄せていたのだろう。
そのクロヒカゲモドキも今や絶滅していて、もう此処にはいないらしい。あの頃には、既に絶滅の危機に瀕していたのだろう。

師走も近い晩秋の山は、燃えるような紅葉に彩られていた。
その中をシンジュの木を探しながら登ってゆく。

でもシンジュらしき木は中々見つからない。
神社を過ぎ、更に奥へと向かう。

500mほど進んだところで、ようやくそれらしき木を見つけた。
葉は、殆んど落ちている。この時期にはさすがに幼虫は居ないだろうから、繭を探すことにする。
しかし、幹には繭なんぞ1つもへばりついとらーん。もはや新たな地を求めて旅立ったのかもしれない。いや、そうゆうマイナス思考は止めておこう。きっと別な他の木が発生木だったと考えよう。単にそれが見つけられなかっただけの話だ。だからきっとまだ此処には居る筈。そうとでも思わなければ、やってらんない。

午後5時半、ライト点灯。
さあ試合開始だ。今日こそ亡霊ナルキッソスの正体を暴き、亡霊ではなくしてしまおう。

続いて糖蜜を木の幹に撒きまくる。シンジュキノカワガが樹液に来ると云う話は聞いたことがない。だが、だからといって樹液には絶対来ないという証明にはならないからね。やれるべき事はやる。

何だか気分は、こないだのサッカーW杯の日本VSドイツの試合前みたくだ。どう考えても劣勢が予想される状況下におかれている。どころか、まだしも日本がドイツに勝つパーセンテージの方が高いんじゃねぇか❓正直この試合、奇跡でも起きなければ勝てそうにない。

暫くして何か来た。

見たことのない蛾だ。
下翅が白くて、まあまあ渋カッコイイ。もしかして、珍品だったりして…。ならば、せめて少しは報われる。少なくとも此処へ来た意味は生じる。

退屈だから、スマホのレンズ機能で画像検索でもすっか…。
けど、名前がサッパリわからんちゃ。候補の蛾がたくさん出てきてワケわからんくなった。コレだというモノが見つからないのだ。

あと20分くらいで、日本のW杯第2戦のコスタリカ戦が始まる。なのにテレビ観戦を放棄してまで、こんな人っ気のない淋しい山に一人で、しかも夜に居るだなんて、どう考えても馬鹿げている。ホント、何やってんだかなぁ……。

それにしても寒い。この時期の夜の山は冷える。
そうゆうワケだからか、灯りに集まって来る昆虫も少ない。

午後7時半。
あまりにも静かだ。
暇すぎて白布に止まっている蛾を数えたら、微小なモノも含めて15頭しかいなかった。糖蜜トラップにいたっては誘引数ゼロだ。1頭たりとも何も寄って来てない。

午後8時。
何も起こりそうにない雰囲気に、もう耐えられない。心が折れた。クソ寒いし、撤退を決める。

帰りの電車から降りて、迂闊にもスマホを開いてしまった。したら、いきなり目の中に日本0-1コスタリカの文字情報が飛び込んできた。時間的にみて、試合は既に終わってる筈だ。と云う事は、まさか日本が負けたって事か…❓ 帰って録画したのをじっくり観ようと、今まで慎重に情報を遮断してきたのに…。車内の会話でさえも聞こえないようにと、わざわざイヤホンで音楽を聴いてまでいたのだ。その努力も全て水の泡だ。ナルキッソスは採れなかっし、ダブルショックでガックリだ。
💢クソッ、速報とか別に望んでないのに勝手に送りつけてきやがって…。そうゆう一見便利なサービスは邪魔。ハッキリ言ってアリガタ迷惑なんだよなー。
それにしても、勝てるだろうと踏んでいたコスタリカに、まさか負けるとはね。ドイツに勝ったのに、何やってんだよー😓💢。

と云うワケで、帰宅後は先ずは唯一持ち帰った名前不明の蛾を展翅した(註1)。

その後、じっくりと戦犯探しをしながら試合を観た。
で、試合内容を観て、もう怒りで打ち震えたね。

(戦犯1)
コレはもう、中途半端にクリアミスしたDFの吉田でしょう。
キャプテンやろ、ワレー💢(⁠ノ⁠`⁠Д⁠´⁠)⁠ノ⁠彡⁠┻⁠━⁠┻

(戦犯2)
途中から左サイドバックに入った伊藤洋輝。バックパスばかりで、何故か前にいる三笘にパスを出さなかった。たとえ三笘が相手に囲まれていようとも、パスを通すためにチャレンジしないと勝てるワケがない。そのクソ消極振りは、万死に値する。

(戦犯3)
FW上田。下手くそ過ぎ。足元でボールをおさめられず、ポストプレーが全くできていなかった。

(戦犯4)
左ウィングの相馬。シュートをフカシまくり。

とは言っても、全てはコレらの選手を起用した森保監督のせいだよな。ちんたらした試合状況の前半のうちに手を打つべきだったと思うよ。
次の対戦相手は強国スペインだ。ドイツよりも強いだろう。コレでほぼ予選敗退は決まりだな。ドイツに歴史的勝利をおさめたから俄然盛り上がったのに、心は激しぼみだよ。

このように2022年は、散々な結果に終わった。
コレで、フラれ続けての9連敗。亡霊は亡霊のままだ。ぼんやりと思う。一生、彼女には会えないのかもしれない。

                  つづく

 
追伸
ご存知の通り、その後日本はスペインを2ー1で撃破。奇跡的な大勝利をおさめて決勝トーナメントに進出する。そしてクロアチアに1一1と引き分けるも、PK戦で負けるのである。今度こそベスト8の壁を打ち破れると思ったのになあ…。まあ次の2026年のW杯に期待するとしよう。もし出られたとしたなら、次はタレントが揃ってるからネ。
余談だが、次回は初のカナダ・メキシコ・アメリカの3カ国開催。出場国が大幅に増えて、36カ国から48カ国になる。

 
(註1)名前不明の蛾
後にホソバハガタヨトウ Meganephria funesta と云う名前だと判明した。
開張50〜55mm。『みんなが作る日本産蛾類図鑑』ではヤガ科 ヨトウガ亜科となっているが、『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』では、ヤガ科モクメキリガ亜科に分類さるている。分布も『みんなが作る…』では本州、対馬となってるが、標準図鑑では他に四国、九州、佐渡ヶ島が追加されている。
『みんなが作る…』は、こうゆう事が多いんだよなあ…。分類が変わったり、新たに分布地が発見される事は当然あるんだから、記述内容が古くなるのも仕方のない事だ。でも変更があったり新たな知見が加わったのに書き替え、つまりアップデートが全くなされていないのだ。コレは何とかしてほしい。と云うか、種名検索したら大概が真っ先に出てくるような影響力大のサイトなんだから、間違った情報は一刻も早く書き変えるべきだろう。
幼虫の食餌植物はニレ科ケヤキ。成虫の出現月は11月で、12月まで見られるようだ。晩秋の発生なんだね。なるほど、だから見たことがなかったんだね。そんな時期まで虫採りしている人は、ごく一部だかんね。
けど、残念ながら珍品でも何でもなく、里山を生息地とする普通種みたいだ。行った意味なーし(⁠+⁠_⁠+⁠)

 
ー参考文献ー
・『みんなで作る日本産蛾類図鑑』
・『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』
・『伊丹昆虫館ブログ』

 

2019’カトカラ2年生 其の弐(2)

 
    vol.19 ウスイロキシタバ

   『象牙色の方程式』後編

 
えー、前回の2019年 6月19日の後半部分です。

 
2019年 6月19日

黒い車窓に自分の顔がぼんやりと映っている。
酷い顔だ。屈辱と焦燥が入り混じった顔は疲れきっている。
でも、やるっきゃない。出来うる限りのやれる事をやらないで敗北するのは、それこそ負け犬だ。たとえ敗北したとしても、毅然たる心持ちでいたい。でないと、己の誇りに傷がつく。

頭の中で考える。
問題は、こないだのアラカシの森とクヌギを主体とする雑木林のポイントのどちらを選ぶかだ。
ポイントで実際に使える時間は、アラカシの森だと40分か多くて50分。雑木林だと1時間10分から20分くらいだろう。どっちを選ぶかは賭けだ。両方を回ることも可能だが、せわしないし、どっちつかずで終わりかねない。それこそ虻蜂取らずだ。それに、そんな思い切りの悪い男に神様は幸運を与えてはくれないだろう。
(ノ`Д´)ノ彡┻━┻えーい、ままよ。雑木林にターゲットを絞った。

駅に着いた。
時刻は午後9時40分過ぎ。
駅を出て走る。Dead or alive。背中の毛が逆立つ。

期待を込めて、雑木林の樹液が出ている木を照らす。
昆虫酒場は大盛り上がりだ。クワガタさんもいる。
しかし、鱗翅類で居たのは名前の分からないクソ蛾どもとアケビコノハ。カトカラはフシキキシタバとコガタキシタバのみ。
アケビコノハは、新鮮で美しい個体だったので、もっと近くで見ようかなと思って一歩近づいたら、嘲笑うかのようにサッと飛んで逃げて行きよった。

 
【アケビコノハ】

 
べつに欲しいとも思わなかったのに、自意識過剰な女みたいにクソ忌々しい奴めっ❗もし今度飛んで来たら、網の枠でブン殴ってやらあ(`Д´)ノ❗ナメとったらあかんど、ワレー(-_-メ)

( ゚д゚)ハッ❗、いかん、いかん。危うくアケビちゃん虐待男になるところだったわい。
冷静になろう。冷静でないと採れるものも採れなくなる。それに虐待なんかしたら、どこかで神様が見てて、罰をお与えになるかもしれない。敗北という名の、今の自分にとって一番の罰を。
もうこうなったら、採れるんなら神頼みでも何でもする。

神様の旦那あ〜、ボロでも何でもいいから、オラにウスイロを採らせて下せぇー。

もはやプライド、ゼロである。
でもこの際、採れればプライドなんぞ、どうだっていい。

しかし、時は刻一刻と残酷なまでに抉(えぐ)り取られてゆく。悲痛な思いで、頻繁に懐中電灯で木を照らすも状況は変わらない。
やはり持ち時間は少なくとも、正攻法でアラカシの森を攻めるべきだったか❓ ざわざわと漣(さざなみ)のような後悔か心の内壁で寄せては返す。

午後10時50分。
帰る電車のタイムリミットまで、あと5分か10分。いよいよ崖っぷちまで追い詰められた。

神様の野郎、ブン殴ってやろうか(`Д´)ノ

天に唾(つばき)す。
そうか解ったよ。アンタなんかにゃ頼らん❗テメェの力で何とかしてやるよ、ダボがっ( ̄皿 ̄)ノ❗❗、🔥ゴオーッ。

懐中電灯で下から順に上へと木を照らす。
この木は根元から上の方まで数か所から樹液が出ているのだ。

いなーい(--;)
いなーい(ب
ب)
いなーい(◡ ω ◡)
いなーい(ー_ー゛)

(☉。☉)何かおる❗❗

高さ4m程の1番上の樹液に見たことがない蛾がいた。
色はグレーっぽい。大きさや形的にはカトカラも含まれるヤガ科の蛾に見える。でも下からなのでハッキリわからない。確認しようと後退るが、道が狭くて大して下がれないから状況はあまり変わらない。それに斜め横向きに止まっているので、下翅の柄もチラッとしか見えない。
アナタ、誰❓ 🎵放出(はなてん)中古車センター〜〜〜(註1)。
冗談を言っとる場合かよ。

でも、直感的に思った。

『ウスイロじゃ、なくなくねっ❗❓』

考えとるヒマはない。帰るリミットは迫っている。
とっとと採って、確認しよう。違うなら、八つ当たりで木に憤怒のドロップキックをカマすまでだ。
網をするすると伸ばす。だが、緊張感はマックスではない。時間が無いのでブルッてるヒマは無いのだ。それにもしクソ蛾だったら…と思うと変に期待できない。過度な期待を掛けて糠喜びだったりしたら、それこそ怒り爆発💥オロナミシCだ。何のコッチャかワカランけど、そうゆう事だ。
ややブラインドになっていて採りにくい角度だが、逡巡はしない。

💥バチコーン、横から強く網を幹に叩きつけた。

入った❗❓、それとも逃した❗❓
手応えも無ければ、逃したという感触もない。とにかく素早く網先を捻り、そのまま大胆かつ慎重に下に落とした。その刹那に、網の中に何かの影がチラリと見えた。どうやら逃してはいないようだ。でも、ただのクソ峨だったりして…。疑心暗鬼になりつつ、慌てて駆け寄る。

彼女は暴れることも無く、何があったのか解らないといった感じで静かに鎮座していた。

(☆▽☆)ぴきゅう〜❗
ウスイロ❓だよね❗❗

その特徴的な上翅のデザイン、間違いなくウスイロキシタバだっ❗❗
(´ω`)やっと採れた…。
ヘタヘタとその場にヘタり込みそうになる。だが、そんなヒマは無い。網の上からマッハでアンモニア注射をブッ刺す。
一瞬、彼女はクワッ❗と羽を広げ、次の瞬間にはゆっくりと羽を閉じてゆき、フェイドアウトで事切れる。
ゴメンなちゃいね。哀悼の念で軽く手を合わせる。

満ち足りた気分で、三角紙に収めようとして、写真を撮っとかなきゃいけない事を思い出す。

 

 
上翅の柄が独特で、他のカトカラとは全く斑紋が違う。
図鑑などの画像では、その特異な薄黄色い下翅に目がいっていたが、上翅も特異だったんだね。

 

 
メリハリが効いてて、カッコイイかもしんない。
いんや、カッコイイと断言してしまおう。バカにしてたけど、実物は標本写真なんかよりも遥かに美しい。玄人好みの渋い魅力がある。

おそらくメスだね。
裏返す。

 

 
あっ、他のカトカラとは全然違う。明らかに黒帯が細くて黄色い領域が多い。(•‿•)いいじゃん、(^o^)いいじゃーん。

でも、ニヤけ顔で浸っている場合ではない。終電の時刻がパッツンパッツンに迫っている。
震える手で慌てて三角紙に収め、闇を小走りで離脱した。

夜空には、星が瞬いていた。
早足で歩きながら、もう少しすれば七夕だなと思った。

                        おしまい

 
と言いたいところだが、話はまだまだ続く。

翌日、展翅した。
展翅しながら思う。はたして、あの雑木林の中にアラカシが混じる環境がウスイロキシタバの棲む場所を解く方程式なのかと。例えばアラカシの純林よか、アラカシの混じる雑木林の方が寧ろ適性な環境ではないかと一瞬、考えたのだ。
でもあんな環境なら、関西でも何処にでもある。だったら、もっと何処にでも居てもよさそうなものだが、どうもそんな感じではないような気がする。ならば、あそこから比較的近いアラカシの森から飛んで来たって事か❓となると、もう1回行ってアラカシの森で確かめねばなるまい。
けど、それはあんまり気が進まないんだよなあ…。あの森、暗くて怖いんだもん(。ŏ﹏ŏ)

アレコレ考えてているうちに展翅完了。

 
【ウスイロキシタバ Catocala intacta ♀】

 
展翅して、よりその美しさに魅了された。
特徴的な上翅のデザインが渋カッケー。下翅の色も、そんなに汚くは見えない。象牙色だ。薄色とか薄黄色だなんて言うからババちく見えるのだ。
名前って大事だ。名付け親になる人は愛をもって命名しないといけないよね。だからセンスの悪い人は誰かに相談しましょうね。
あっ、センスが悪い人は自覚がないから人には相談しないか❓ それでいいと思ってんだから、人には相談なんかいったし〜ませーん❗

 
2019年 6月21日

一応、ウスイロは採れたが、たった1頭だけだったので、別な所で探すことにした。他にもっと多産するところを見つけて、ゴッチャリ採ってやろうと云う皮算用である。それに象牙色の方程式を解きたい。色んな環境を見ることによって、自ずとその解も見つかるだろう。

文献から大阪府池田市にターゲットを絞る。
五月山に記録があったからだ。だったら駅から近いし、何なら昼間は其処から近い東山でクロヒカゲモドキ(註2)を探してもいい。絶滅危惧種のモドキちゃんは渋カッコイイのだ。

 
【クロヒカゲモドキ】

(2016.6.20 大阪府箕面市)

 
結局、クロヒカゲモドキは探しには行かず、昼めしを食ってから出掛けた。
クロヒカゲモドキのポイントはダニだらけなので、ダニが体のどっかに食いついてんじゃないかと思いながら夜道を歩き回るのは精神衛生上ヨロシクない。そう考えたのである。

池田駅には何度か降りているが、五月山に来るのは初めてだ。
遠目に見て、意外と山は険しいんだよなあ。だから今まで避けてたところがある。

 
【五月山】

(出展『MUJI✕UR』の画像をトリミング)

 
午後3時前に登山口に到着。
五月山にもアラカシが案外あることは、ネット検索済みだ。
望海亭跡への道を登り始めると、直ぐに照葉樹林が始まり、そこを抜けるとコナラやクヌギの混じる雑木林になった。これは居そうな環境かも?と思った。ただ、林内が乾燥がちなのが気になるところではある。とはいえ、今年は空梅雨だからね。そのせいで、そう感じたのだろうと思うことにした。
何事も前向きなのさ。でないと、虫採りなんぞ、やってらんない。虫採りは基本、苦行だと思ってるもんね。欲しいものを得るための道程(みちのり)は、けっして平坦ではないのだ。

🎵タラタラッタラー、イガちゃんスペシャル甘汁〜。
<( ̄︶ ̄)>フフフフフフ…、秘密兵器の登場である。
今回は満を持して糖蜜トラップを用意したのだ。前回の六甲みたく樹液の出る木を探して彷徨うのは、もうゴメンなのだ。
何で糖蜜トラップを今まで試さなかったのかと云うと、生態に関して最も信頼できる文献『日本のCatocala(註3)』のウスイロキシタバの項には、樹液には集まるが糖蜜トラップには集まらないみたいな事が書いてあったからだ。
疑問に思わないワケでも無かったが、信頼している文献なので素直にそれに従ったのである。糖蜜が効かないなら無駄だし、だいち勿体ない。それに荷物が増えるのは大嫌いだもんね。

日が暮れ、闇の時間が訪れた。
さあ、ここでタコ採りして、方程式の答えに近づこう。

だが、寄って来るカトカラはフシキとコガタキシタバのみ。しかも、個体数は少ない。効いてんのか❓、マイトラップ。
けんど、樹液に来るのも糖蜜に来るのも、さしたる数の差はあるようには見えない。

 
【フシキキシタバ】

 
【コガキシタバ】

 
午後9時半。
何かデカいのが糖蜜トラップに飛んで来た。
一瞬、何者❓と思ったが、次の瞬間には理解した。
ただキシタバのパタラキシタバ(C.patala)だ。今年初めて見るけど、やっぱデカい。その大きさは他の黄色い下翅を持つカトカラの中にあって、頭一つ抜きん出ている。あっ、パタラとはキシタバ(註4)の事ね。

今年初めての個体だし、一応採るか…。
でも、網を構える前に逃げよった。ただキシタバの分際で生意気である。(ー_ー゛)ちっ、パタラのクセにエラく敏感じゃねえか。

パタラといえば、鈍感というイメージがある。樹液に来ている時は夢中で吸汁しているから、かなり近づいても逃げない。そして樹液を吸い終わった者は、その周辺の木にベタベタと止まっていることが多いが、その際もあまり逃げない。

 
【パタラキシタバ】

 
スマホだって、楽勝でこれくらいは近づけるのである。
距離的に10センチ以内まで寄らないと、ここまでは撮れない。
やっぱ発生初期で、個体数が少ないから敏感なのかな❓
最盛期になって個体数が増えれば、段々鈍感になってゆくのかも。だいたい虫なんてものは、発生数が多ければ大概はバカになる。こんだけいりゃあ、ワシ一人が死んだところで我が一族は滅びんやろとかテーゲーなるのかな❓人間だって周りに人がそれなりに居たら、何となく安心するもんね。それって家畜みたいで、ヤだけど。

何度か攻防があったが、最終的にはシバいたった。
でも、それでタイムリミットとなった。惨敗である。
どうにも上手くいかないや。

 
2019年 6月22日

この日は大阪府箕面市へ行った。勿論、ウスイロ探しである。
個体数は少なさそうだけど、此処にもウスイロの記録があったからだ。因みに、この場所は前回の五月山と連なる山地だ。一帯に広く薄く棲息しているのかもしれない。

でも、夕方になって人が増えてきた。その多さに訝しがる。
箕面は滝があって観光客は多いけど、もうすぐ夜だぞ。何で❓

滝への道沿いに水銀灯があるので、一応そっちの様子から見ることにした。
暫く歩くと、人が多い謎が解けた。
闇の中を、すうーっと緑色の光が走ったのだ。そうゆう事か。皆さん、蛍狩りにいらっしゃったのだ。箕面にはホタルがいるとは知ってたけど、こんなにも有名だったのね。

 
【箕面大滝】

(夜に滝なんて撮らないので、昼間の写真です)

 
一応、奥の外灯まで行ったが、何もいなかった。
降りて来ると、更に人は増えていた。こんなところで恥ずかしくて網なんか出せやしない。しかも、蛾なんて採っていようものなら、一般人から見れば完全に狂人だ。方針を転換して、展望台に登ることにした。

石段を登ってゆくと、周りは照葉樹の多い森になった。少し期待する。
それはさておき、傾斜がキツくてしんどい。普通の人たちは蛍狩りしてんのに、ワシ、何やってんだ❓と思う。つくづく、虫屋って愚かな変人だ。

展望台に着いた。
夜景が見える。そして、イチャつきカップルもいた。二人きりでイチャイチャしたいが為に、ここまで登ってきたのか。エロという名の欲望、恐るべしである。

 

 
夜景を見ながら、己のアホさ加減にガックシくる。蛍狩りよかイチャ付いてる方が、もっと楽しそうじゃないか。全てがアホくさくなる。
でも、ここまで登ってきたのだ。その労力、無駄にしたくはない。尾根筋を少し歩き、そこで糖蜜を撒きまくる。闇は濃いが、そんなことも今やどうだってよくなる。

五月山の時に書き忘れたが、液体の糖蜜トラップを使うのは、あの時が初めてだった。前年にムラサキシタバ(註5)を採りに行った時にトラップは使ったが、それは蝶屋らしく果物トラップだった(言っとくけど、ワシって基本は蝶屋だかんね)。
バナナやパインをストッキングに入れて、上から酒を掛けて発酵させたものを木に括りつけるのだ。蝶屋の間ではポピュラーなものだが、蛾屋の間ではマイナーな手法のようだ。大概の蛾屋はジュースなどに酢と酒を混ぜ合わせたものを霧吹きに詰めて、(。・_・)r鹵~<巛巛巛シュッシュラ、シュッシューと幹や葉っぱに吹き付けて、お目当てのものを誘引するのだ。
そして、この日がその糖蜜トラップの2回目ってワケ。

大いなる期待値は、時間の経過と共に無残にも萎々(しおしお)になってゆく。何かの可能性が少しづつ失われてゆくのを見るのは、とても辛いものだ。やはり、ウスイロは糖蜜に反応しないのか❓…。
けれど樹液に来て、糖蜜に来ないってのは、どう考えても変だ。理屈に合わない。それとも、オラの作った糖蜜のレシピがダメなのか❓ 他のカトカラには問題なくとも、ウスイロさんにはお気に召さないってこと❓ どんどん頭の中がウニ化する。

結局飛んで来たのは、糞チビ蛾どもと鬱陶しいアケビコノハのみだった。正直、アケビコノハに当たり散らす気力も湧かなかった。
帰りしなに、己の心を少しでも和ませたいがゆえ、何とかコケガ(苔蛾)とかいうスタイリッシュで可愛い蛾の写真を撮って帰った。
言うまでもなく、今回も惨敗決定だ。

 
【アカスジシロコケガ】

 
電車の中で確認すると、ピントまでズレとるがな。 
又しても惨敗を喫した事実をひしひしと思い出した。ダメ押しでヘコむ。

これで、象牙色の方程式が全く見えなくなった。
誰やねん❓ ウスイロキシタバは、西日本ではどって事ないって言った奴。記録地でも、かすりもせんやないけ。情報を鵜呑みにした、アチキが馬鹿だったよ。

  
2019年 6月24日

再び武田尾の渓谷にやってきた。
まだ1頭しか採れていないのだ。謎とか方程式とか、もうどうでもいい。次の1頭が欲しい。

今回は一番最初に来た時に、ここぞと思ったアラカシの森に布陣することにした。泰然自若。今度は何があっても動かない。此処で心中する覚悟で臨む。
あの時は8時半を過ぎても飛んで来なかったから、焦れて雑木林に移動したが、やはりこの環境が最もウスイロキシタバが好む場所に相応(ふさわ)しいと判断したのだ。
ここでコケれば、我が軍は総崩れである。象牙色の方程式が解けないまま、この先1年間はエレファント凍土の迷宮に閉じこめられることになる。それを避けたければ、背水の陣で結果を出すしかない。

午後7時過ぎ。
今宵は7時半前くらいが日没時刻だったような気がするが、既に森の中は闇の世界に支配されようとしている。鬱蒼とした森が覆いかぶさって光を遮っているのだ。
Σ(゚∀゚ノ)ノ暗いよ、怖いよー(TOT)

 

 
オノレ、地底星人の仕業か。おおかた魑魅魍魎どもを操っているのも、お主たちであろう。ならば、北辰一刀流免許皆伝の抜刀術で目の前の邪魔者は全て一刀両断に斬るのみ❗、斬るのみ❗殺戮のセレナーデとなろう。
あかん…。明日のジョーの「打つべし❗、打つべし❗」の変形ヴァージョンになっとるやないけ。闇が怖すぎて妄想が酷い。

(。・_・)r鹵~<巛巛巛シュッシュラ、シュッシュー。
心を落ち着かせて糖蜜を吹き付けてゆく。
これで寄ってこなけりゃ、オラの糖蜜レシピが駄作なのか、やはり樹液には寄ってきても糖蜜には反応しないのか、はたまた此処には居ないのかが、ある程度は明らかになるだろう。
どっちにせよ、今日で終わりにしよう。これ以上、心を折られたら再起不能だ。負け慣れてないので打たれ弱いのだ。

午後8時になった。
やっぱダメなのかなあと諦めて( ´ー`)y-~~煙草を吸ってたら、目の前の糖蜜トラップにパタパタとあまり見覚えない蛾が飛んできてピタッと止まった。

(⑉⊙ȏ⊙)ゲゲッ❗、ウスイロやん❗❗❗❗

ここで会ったが百年目。慌てて煙草を揉み消し、そろりそろりと近づく。緊張感はあるが、初めての1頭ではないからか、意外と心は落ち着いている。すうーっと息を吐き、💥バチコーンいったった。
次の瞬間、驚いて飛んで網に入ったのが見えた。

中を確認して、ホッとする。
これで何とかエレファント凍土に閉じ込められなくて済んだ。

この日は、結局2♂2♀が採れた。
しかも、全部が樹液ではなく、糖蜜トラップに誘引された。
(・3・)何だよー、やっぱ糖蜜にも来るじゃんか。寧ろ樹液よか効果があるぞ。こんなんだったら、最初から使っておけば良かったよ。

これで象牙色の方程式が、全部じゃないけど、ある程度は解けた。
やはり、基本的な棲息環境は照葉樹林だろう。中でも昔から在るような古い照葉樹林ではなかろうか❓
樹液にも来るが糖蜜トラップにも反応する事も分かった。飛来時刻は情報不足だが、おそらく特別遅くはないだろう。これは断言出来ないから来年の課題だけどさ。
好む環境も完全に把握できたワケではないし、他にも幾つか疑問点は残った。でも翅の傷み具合から、そろそろ発生期も終盤みたいだし、これらは又、来年の宿題としよう。

満ち足りた気分で帰途につく。
車窓に映る今日の自分の顔は悪くないなと思った。

                         つづく

 
一応、この日の個体を並べておこう。

 

 
我ながら、ド下手な展翅だすな。
完品ではなかったから、ヤル気なし蔵だったのもあるけど、理由の一番は酔っ払って展翅したせいです。酔っ払うと、ただでさえテキトーな性格が益々テキトーになるのである。
それと、ウスイロキシタバは鮮度が落ちると、途端にみすぼらしくなるというのもあった。何かメリハリが無くなるのである。モチベーション、だだ下がりだ。
ウスイロキシタバを採りたい人は、発生初期に行かれることをお薦めします。

 
追伸
今回は、後半をバタバタで書いた。
酔っ払って寝ようとしてる時に、3分の2程まで書いていた文章に少し手を入れようとしたのがマズかった。朦朧としてて、書きかけの文章をそのままアップしてしまったのだ。それでいっぺんに酔いが醒めた。で、朝までかかって残りの3分の1を書いた。最悪やったわ。

次回は解説編か、もしくは続編の『2020’カトカラ3年生』になる予定です。

 
(註1)アナタ誰❓ 🎵放出中古車センタ〜〜〜
昔、関西ローカルで、そうゆうCMが流れてた。
ちょい、セクシーなCMでした。

 
(註2)クロヒカゲモドキ

全国的に減少しており、各地で絶滅危惧種や準絶滅危惧種に指定されている。
しかも、見つけても直ぐに藪の中へ逃げ込むので、あまり採れない。産地に行っても全く採れない事もある蝶の1つだろう。
因みにオラとは相性が良くて、何処へ行っても採れなかったことはない。その日、来てる人の中でオラだけ採った事も何度もある。
そういえば、3、4年ほど採りに行ってないね。でも関西では何処でもダニとセットだから、あんまし気が進まないんだよなあ…。最後に行った時は、あまりのダニの多さにポイントに着いて30分で帰った。採集に行って家に帰った最短記録である。この超絶短い滞在記録は今後とも塗り替えられる事はないだろう。あっ、言っとくけど滞在時間30分でも、ちゃんと採ったさー。

参考までに書いとくと、クロヒカゲモドキについては昔のブログ(アメブロ)に『へろへろ(@_@;)、箕面モドキ軍団殲滅作戦』と題して書いた事がある。他にも数篇の関連文章がある筈だ。ヒマな人は探してみてね。

 
(註3)日本のCatocala

西尾規孝氏によって書かれた日本のカトカラの生態図鑑。
その生態観察力は、飛び抜けている。

 
(註4)キシタバ

(Catocala patala ♂)

(♀)

 
日本のキシタバグループの最大種。和名がただの「キシタバ」だから、ややこしい事この上ない。「キシタバ」という言葉が種としてのキシタバを指しているのか、それともグループとしてのキシタバを指しているのか、判断に一瞬迷うから誠にもってややこしいのだ。
だから、それを避けるために出来るだけ学名のパタラを使うようにしている。誰か偉い人の鶴の一声で和名を変えて欲しいよね。
キシタバ(C.patala)くん本人としても、「ただキシタバ」とか「糞キシタバ」「屑キシタバ」「デブキシタバ」なんて酷い呼ばれ方をするのは心外だろう。
パタラキシタバについてもっと詳しく知りたい人は、拙ブログの、2018’カトカラ元年シリーズのvol.3『頭の中でデビルマンの歌が流れてる』の回と続編『黃下羽虐待おとこ誕生』を読んでね。
前回の註釈の項でも、ナメたタイトルが列挙されていたが、これまたフザけたタイトルざます。けど最近はカッコつけたタイトルが多いので、またおバカなタイトルをつけたいね。

 
(註5)ムラサキシタバ

(Catocala fraxini ♂)

(同♀)

カトカラの女王。日本最大種にして最美とも言われ、人気が高い。
詳しくは、拙ブログ内の『2018′ カトカラ元年』vol.17の連載を是非とも読まれたし。