2019’カトカラ2年生 其の弐(1)

 

  vol.19 ウスイロキシタバ

   『象牙色の方程式』

 
カトカラを本格的に採り始めた2018年は、ウスイロキシタバを探しに行かなかった。
フシキキシタバ(註1)を偶然に採って、カトカラに少し興味を持ち始めたばかりの頃だったので、カトカラ1年生の触り、謂わば黎明期。また本格的にカトカラを集める気なんてサラサラ無かったのである。
だいちウスイロキシタバなんて、カトカラの中でも一番汚い奴っちゃと思っていた。下羽が鮮やかな者が多いこのグループの中にあって、ウスイロは下羽に鮮やかさが微塵も無いのである。
それにカトカラ同好会のホームページ(註2)のウスイロキシタバの項には「関東以北の愛好者にとっては憧れのカトカラだが、関西の愛好者にとってはなんということのない種である」云々といったようなことが書かれてあった。ゆえに、そのうちどっかで採れるだろうと思っていたのだ。
しかし、2018年は結局どこでも会うことはなかった。

それでも2019年には、どうにでもなると思っていた。
そうゆう事実はスパッと忘れていて、いつものように根拠の無い自信に溢れていた。そう、相変わらずのオメデタ楽観太郎になっていたのである。

 
2019年 6月13日
 
夏の青空が広がっている。
時期的にはもう梅雨に入っていてもオカシクない筈だが、ここのところ天気は頗(すこぶ)る良い。この先の予報も晴れ続きだ。何でもかんでも異常気象で片付けるのもどうかとは思うが、やっぱりここ数年の天気は何だかオカシイ。

この日は宝塚方面へ行った。

 

 
第一の目的は、来たるカバフキシタバ(註3)のシーズンに備えての下見だった。ライトトラップを持ってないので、現状は樹液採集に頼らざるおえないのだ。その為には予め樹液の出てる木を探しておきたい。天才肌なので(笑)、いつもは下見なんぞ面倒臭くてしないのだが、天下のカバフ様である。手は抜けない。それに此処にはウスイロキシタバの記録もあるので、あわよくばと云うのもあった。謂わば、一石二鳥の作戦ってワケ。

山を歩き回るが、樹液の出ている木は1本しか見つけられなかった。しかもバシバシに樹液が溢れ出ているような木ではない。誠に心許ないようなチョロチョロ状態だ。もしその木に何も寄って来ないようなら、暗闇の中を山に登って探しなおすしかない。昼間歩いている時に樹液の甘い香りがしたのだが、どの木から出ているのか分からなかったのだ。それを探すしかないってワケ。
実をいうと、樹液の出ている木は昼間よりも夜の方が見つけやすい。カブトムシやクワガタは目立つし、クソ蛾どもが複数飛んでいたら、その周辺から樹液が出ている可能性が高いのだ。それに昼間だと視界が広過ぎて視認センサーが散漫になりやすい。対して夜だと見えるのは懐中電灯の照らす範囲だけなので余計なものは目に入らず、見逃す確率が格段に減るのである。

ようやく暗さが増し始めた午後7時20分、その唯一の樹液ポイントへと行く。
だが、来ていたのはヤガらしいクソ蛾が1頭だけだった。
まあいい。クソ蛾であっても蛾が誘引される樹液であると云う証明にはなる。希望はゼロではないということだ。ゼロと1とでは雲泥の差がある。明るい未来を想像しましょう。

とは言いつつも、正直この木だけでは厳しい。取り敢えず此処は置いといて、新たな樹液ポイントを探しに夜の山道を歩き始める。
10分ほど歩いたところで、空気中に微かな樹液の匂いを感じた。見つけられなかった木は、この辺だったような気がする。立ち止まり、咄嗟に懐中電灯をその方向へと向けた。下から上へと灯りを移動させる。
❗Σ( ̄□ ̄;)ワッ、地上約4mくらいのところでカトカラが乱舞していた。
どうりで見つけられなかったワケだよ。昼間見つけられなかったのは、樹液が出ている箇所が高かったからだね。
それにしても凄い数だ。少なくとも10頭以上は飛んでいる。いや、20頭くらいはいるだろう。こんなに沢山のカトカラが乱舞している光景を見るのは初めてだ。
時期的に考えれば、勿論カバフではないだろう。まだ早い。黄色いからウスイロである可能性も無さそうだ。ウスイロは名前通りに色が薄いのだ。だとしたら、フシキかな❓コガタ(註4)にもちょっと早い気がするしね。あっ、ワモン(註5)の可能性も無いではないね。でもワモンにしても出始めの頃だろうから、こんなに沢山いる筈はない。だいちワモンは何処でも個体数が少ないと言われているので、こんだけ大量にいたら事件だ。可能性、却下だ。逆にアサマ(註6)は、もう姿を消している頃だ。同様に、こんなに大量にいるワケがない。
黄色が鮮やかに見えるし、感じからすっと、たぶん全部フシキキシタバで間違いないだろう。最近、網膜にインプットされた画像と同じに見えるもん。

とやかく考えていても話は始まらない。
網をスルスルと伸ばして、空中でエイやっι(`ロ´)ノ❗と掬い採る。たぶん一度に3つ入った。
中を見ると、予想通りの3つともフシキだった。どうやら飛んでるのは皆、フシキくんのようだ。
どこが珍品やねん٩(๑`^´๑)۶❗嘗(かつ)ては、そうだったらしいけど、今や普通種の域だ。

樹液への飛来時間の謎を解きたいので、ガツガツ採らずに目についた型の良さそうなものだけを選んでチョビチョビ採る。
いくつか採り、落ち着いたところで周辺を見ると、やはり思ったとおり、周囲の木の幹に止まっている個体が複数いた。樹液の出ている木の上部や下部で憩(やす)んでいるものもいる。
おそらく宵になると直ぐに餌を摂りに樹液にやって来て、お腹いっぱいになったら周辺で憩んでいるのだ。で、また腹が減ると、再び樹液に訪れるものと思われる。その合間に交尾も行われるのではなかろうか。それだと、途中でピタリと飛来が止まる謎にもスッキリと説明がつく。餌場はオスとメスとの出会いの場でもあるのだ。

 
【フシキキシタバ】

 
しかし、交尾しているカップルは1つも見つけられなかった。出歯亀作戦、失敗である。

ウスイロキシタバは、結局1頭も飛んで来なかった。
とはいえ、さしたるショックは無かった。昼間に山の植物層を見て、殆んど諦めてたもんね。
ウスイロキシタバの幼虫の食樹はアラカシだと言われている。どうやら、そのアラカシが多く生える豊かな照葉樹林が棲息地みたいなのだ。でも此処は乾燥した二次林って感じで、あまり居そうには見えなかったのである。
まあ、そのうち会えるっしょ。

 
2019年 6月17日

この日から本格的なウスイロ探しが始まった。
でも場所の選定には迷った。『ギャラリー・カトカラ全集』には、関西なら何処にでも居るような事が書いてあったが、調べてみると意外と文献記録が少ないのだ。ネットを見ても、関西のウスイロの記事は少ない。

場所は武田尾方面と決めた。
理由は、わりかし最近の記録があるし、ナマリキシタバの下見もしておこうと思ったのだ。またしても一石二鳥作戦である。虻蜂取らずにならぬ事を祈ろう。

 

 
ここは国鉄時代の旧福知山線が走っていたのだが、跡地が遊歩道になっている。
でもトンネルだらけで、昼間でもメッチャ怖い((( ;゚Д゚)))

 

 
昼間でコレなんだから、夜なんて想像に難くない。チビるに充分なシュチエーションだろう。
いや、超怖がり屋としては恐怖のあまり発狂するやもしれぬ。2年目ともなると夜の闇にもだいぶ慣れてきたとはいえ、トンネルはアカンで、Σ(゚Д゚|||)アカンでぇー。

 

 
トンネルを抜けたら、又トンネルってのが何度も続く。長くて出口が見えないトンネルだってあるから、バリ怖い。カッちゃんだったら、髪の毛ソッコー真っ白やな。

 

 
ナマリキシタバは流紋岩や蛇紋岩の岩場環境に棲息するとされている。ここは流紋岩だろう。この感じ、如何にもナマリが居そうな環境だ。

ナマリの食樹であるイブキシモツケも結構そこかしこにある。

 

 
これでミッション1はクリアだ。ナマリも何とかなりそうな雰囲気だね。7月半ば過ぎ辺りに来れば大丈夫だろう。

メインミッションの方も着々と進んでいた。
アラカシの多い森で、樹液の出ているクヌギの木を1本見つけた。有望なポイントだろう。そして、クヌギが主体だがアラカシも結構混じる雑木林でも樹液がドバドバ出ている木を見つけた。一安心だ。取り敢えず、これで戦える態勢は整った。この2つのうちのどっちかにポイントを絞ろう。

とはいえ夜が訪れるまでには、まだまだ時間がある。ナマリキシタバの幼虫記録は生瀬にもあるから、そこまで歩くことにした。それに生瀬辺りに、行きしの電車の車窓から見て気になる場所があった。山頂に赤い鳥居があって、その山が何か環境的にいい感じなのだ。そこも確かめておきたかった。もしソチラの方が良さげなら、ポイントを変えてもいい。夜の森は何処でも怖いが、トンネルは特別だ。ホラー度マックスなのだ。アソコは避けれるものなら避けたい。それが偽らざる心情だ。
その場でググると、アラカシ林も有るようだ。今日のオラ、冴えてるかも。<( ̄︶ ̄)>へへへ、早くも楽勝気分になる。

だが、生瀬までの道程はつまらなかった。イブキシモツケは結構生えているのだが、如何せん交通量の多い車道沿いなのだ。成虫のポイントとしては使えない。いくら何でも、こんなところで網を振る勇気は無い。危険だし、通報されかねない。気分が少し下がる。

生瀬に到着。
しかし、麓が住宅地で道が入り組んでおり、赤い鳥居の神社への登り口が中々見つけられない。そして、ウロウロしているうちに日が暮れてきたので断念。やむなく武田尾方面に戻ることにした。無茶苦茶歩いてるからヘトヘトだし、何だか雲行きが怪しくなってきた。

迷ったが、アラカシの森を選択することにした。ウスイロの方程式はアラカシの森だ。それに従おう。
午後7時を過ぎて暫くすると、突然闇が濃くなったような気がした。(-_-;)怖っ…。戦々恐々だが、やるっきゃない。

 

 
午後8時を過ぎても、ウスイロは姿を見せない。飛んで来たカトカラはフシキキシタバだけだった。嫌な予感が走る。
このままだと決断を迫られる事になる。此処に残って粘るか、思い切って移動するかを判断せねばならぬ。

8時半になっても、姿なし。どうする❓
この時間になっても飛んで来ないと云うことは、此処には居ないのかもしれない。それに闇の恐怖にも耐えきれなくなってきた。照葉樹の森の中は、ことさらに暗いのだ。
ヽ(`Д´)ノえーい、しゃらクセー。クヌギの雑木林に移動することを決断した。判断に迷ったら「動」だ。攻めよう。何もせずに戦いに敗れるなんて耐えられない。無策に終わる奴は滅びればよい。

樹液がドバドバ出ている木には、いっぱい蛾が集まっていた。
クソ蛾も多いが、カトカラも結構いる。
採ってみると、大半がフシキキシタバだったが、コガタキシタバも混じっていた。

だが、結局ついぞウスイロは1頭たりとも現れなかった。
(ㆁωㆁ)…。闇の中で💥💣爆死。白目オトコと化す。

 
2019年 6月19日

この日も天気が良い。
日付的には、とっくに梅雨に入っている筈なのに連日晴天が続いている。ライト・トラップをするわけではないので、特に問題があるワケではないが、連日の晴れも考えものかもしれない。乾燥し過ぎるのも良くないような気がする。ウスイロキシタバは紀伊半島なんかでライト・トラップをすると、ヤクシマヒメキシタバと一緒に飛んで来るそうなのだが、その際、雨が降ると活動が活発になると聞いたことがある。おそらくヤクヒメと同じく湿気の多い環境を好む種なのではあるまいか。そう思ったりもするからだ。

生瀬駅で降り、あの頂上に赤い鳥居がある場所を目指す。リベンジだ。
前回は北側の斜面からアプローチを試みたのだが、結局登山口を見つけられずに時間切れとなった。だから、今回は駅を出て一旦右に針路をとり、北西側から回り込んでルート探査することにした。

しかし斜面はアホほどキツいし、山へはフェンスで囲まれていて入れない。結構アラカシも生えているし、環境的には悪くないのに何でやねん❓
オマケに直射日光に晒され、((o(∵~エ~∵)o))アジィィ〜 。たちまち汗ダクになる。でもって、再び住宅地に迷い込む。もう最悪である。
結局、ぐるりと歩いて山の南東側までやって来てしまった。このままいくと、前回歩いた所にまで行きついてしまう。だったら、何処から登れというのだ❓もしかして、謎の霊的な山だったりして…。結界じゃよ、結界❗そんな山に、夜一人ぼっちで入るのか❓絶対、魑魅魍魎どもに拐(さら)われるな…(ー_ー;)
また要らぬ事を考えてしまう。基本的に超がつく怖がり屋さんだし、チキンハートのビビりなのだ。

山の南東の端まで降りてきて、やっと道が見つかった。しかも、この前に引き返した辺りだ。まさか学校の裏に登山口があるとは思いもよらなかったよ。(╯_╰)徒労感、激しいわ。ものスゲー遠回りしたし、せっかく登ったのに降りてきて、また登るのかよ。

斜面を登ってゆくが、意外と山は乾燥している。住宅地のそばだし、致し方ないか…。アラカシもあるにはあるのだが、思っていた程にはない。

山頂に辿り着く。

 

 
幟(のぼり)に光照稲荷大明神とある。「あまてらすいなりだいみょうじん」と読むのかと思いきや、まんまの「こうしょういなりだいみょうじん」と読むんだそうな。

 

 
眼下に生瀬の町が見える。
眺めは気持ちいいくらいに抜群に良い。さぞや夜景も綺麗だろう。でもここじゃ、多くは望めそうにない。また惨敗の可能性大だ。

こうゆう事もあろうかと思って、第2の候補地として岩倉山方面の下調べもしてあった。塩尾寺周辺にアラカシ林があるらしい。それに、この近くにもウスイロの記録がある。

麓に降り、宝塚駅まで歩く。郊外の一駅は遠いわ。
甲子園大学の横を抜け、山を登り始める。しかし、あまりにも坂がキツくて半泣きになる。忘れてたけど、六甲山地の斜面はキツイのだ。去年、クロシオキシタバ(註7)の時に散々ぱらそれを味わった筈なのにね。見事なまでに忘れておる。六甲と云えば、あの源平合戦の一ノ谷の戦いの鵯越えで有名なのだ。半端ない坂なんじゃよ。

「人間とは、忘却し続ける愚かな生命体である。」
          by イガリンコ・インタクタビッチ

言葉に含蓄ありそで、全くねぇー。底、浅ぇー(◡ ω ◡)
3歩あゆめば忘れる鶏アタマ。単に阿呆なだけだ。

午後5時半に塩尾寺に到着。

 

 
マジ、しんどかった。
標高は350mだが、平地から一気に登っているので、かなり高いとこまで来た感がある。

寺を越えて尾根道に入る。
樹液の出ている木を探すが、中々見つけられない。クヌギやコナラの木は結構あるのに、何で❓
それに尾根にはアラカシがあまり生えていない。見た感じではアラカシ林はもっと下にあり、そこへゆく道はどうやら無さそうだ。ピンチじゃのう。完全に負のスパイラルに入りつつある。否、既に入っとるわ。

あっちこっち探してるうちに日が暮れ始めた。

 

 
夜になれば見つけられるかもしれないと思って、日没後も探してみたが、ねぇっぺよー(༎ຶ ෴ ༎ຶ)
こりゃダメだと思い、標高を下げることにした。
そこで漸く樹液の出ている木を1本だけ見つけた。しかし、出てる樹液の量は少なく、寄って来るのはクソ蛾のみ。

 

 
夜景が綺麗だが、それも今は虚(むな)しく見える。焦りからか、心に余裕が全然ないのだ。
まだウスイロを採ったことがないので、その方程式が見えない。どうゆう環境を好むのかがワカラナイ。前回に惨敗してるから、尚更イメージ出来なくなってる。もしかしたら、これってオドロ沼にハマったのかもしれん。蝶の採集では、そうゆうことは滅多に無かったからパニックになりそうだ。何で小汚いウスイロ如きが採れんのだ。関西では普通種だと聞いてたけど、ホントかよ(-_-メ)❓
まさかの躓きに、暗澹たる気分に支配される。

午後8時40分。
このままでは惨敗必至だと思った。採れるイメージが全然湧かないのである。この感覚は大事にしてて、そうゆう時は蝶での経験で大概は惨敗に終わると知っている。ここにずっといてもロクな事は無い。ダメな場所でいくら粘ろうともダメなものはダメなのだ。
もう一人の俺が、動けと命令している。
意を決して、ここを離脱することにした。まだ今ならギリギリで何とかなる。駆け足で山を下った。

記憶では、汗ダクになりながら9時20分くらいの武田尾方面ゆきの電車に飛び乗った。
一発逆転。イチかバチかの博打(ばくち)だ。勝負師ならば、大胆に最後の一手を打とう。そこに一縷の望みを賭けよう。

                        つづく
 

追伸
2019年の採集記は1回で終わる予定だったが、結局長くなって2回に分けることにした。毎度ですが、頭の中の草稿構成力が甘い。というか、アバウト過ぎるのだ。よく考えもせず書き始めるから、こうゆう事になる。書いてるうちに構成が決まってきて、それに肉付けしてるうちに結局長くなっちゃうんだよね。熟思黙考には向いてない人なんである。喋ってるうちにするすると言葉が出てきて、自分でも、へーそうゆうこと思ってたんだねと感心しちゃうようなタイプなのだ。

 
(註1)フシキキシタバ

(Catocala separans)

上が♂で下が♀。
詳細は拙ブログの、2018’カトカラ元年シリーズの『不思議のフシキくん』とその続編『不思議なんてない』を読まれたし。

 
(註2)カトカラ同好会のホームページ
ホームページ内の『ギャラリー・カトカラ全集』のこと。
日本のカトカラ各種の写真と簡潔な解説が付与されており、カトカラの優れた入門書になっている。

(註3)カバフキシタバ

(Catocala mirifica)

(♂)

(♀)

日本のカトカラの中では、トップクラスの珍品だが、去年タコ採りしたので、本当にそうなのかな?と思ってる。
これまたカトカラ元年シリーズの『孤高の落武者』と『リビドー全開❗逆襲のモラセス』の前後編を読んでおくれやす。

  
(註4)コガタ=コガタキシタバ

(Catocala praegnax)

(♂)

(♀)

同じくコチラも元年シリーズのvoi.4『ワタシ、妊娠したかも…』と、その続編『サボる男』を読んでけろ。
それにしても、フザけたタイトルだよなあ…。

 
(註5)ワモン=ワモンキシタバ

(Catocala xarippe)

(♂)

(♀)

 
詳細は、元年シリーズのvol.2『少年の日の思い出』と、その続編『欠けゆく月』、続・続編『アリストテレスの誤謬〜False hope knight〜』を読んでたもれ。

 
(註6)アサマ=アサマキシタバ

(Catocala streckeri)

(♂)

最新作の『2019’カトカラ2年生』の解説編の第5章『シュタウディンガーの謎かけ』と第6章『深甚なるストレッケリィ』を読んで下され。暇な人は第一章の『晩夏と初夏の狭間にて』から読みませう。

こうして黄色い下翅のカトカラの幾つかを並べてみると、矢張りアサマだけが雌雄の触角の長さに相違がある。まだ全種の触角を確認してはいないけど、今のところアサマの♀だけが触角が短い傾向がある。これについては第1章から第4章にかけて書いとります。

因みに、この日は1頭だけアサマがいた。勿論、ボロボロでした。

  
(註7)クロシオキシタバ

(Catocala kuangtungensis)

(♂)

(♀)

カトカラ元年vol.9『落武者源平合戦』と、その続編『絶叫、発狂、六甲山中闇物語』を読んでおくんなまし。

何だか今回は、自分のブログの宣伝ばっかになっちゃったなあ…。

 

2018′ カトカラ元年 その四

  『ワタシ、妊娠したかも…』 

   vol.4 コガタキシタバ

 
 
『ワタシ、妊娠したかも…』と彼女は言った…。

 
正直言うと、コガタキシタバは最初に採った時の記憶があまりない。

 
【コガタキシタバ Catocala praegnax ♀】

 
(裏面)

  
場所は矢田丘陵なのは間違いないが、細かいシチュエーションの記憶が殆んどないのだ。確認すると、日付は7月10日となっている。

小太郎くんが『あっ、コガタキシタバですよ。まだ採ったことないでしょ。採らないんですか?』と言って、『ワカッター、じゃあ一応採っとくー。』的な会話があったような気もするが、定かではない。

当時のFacebookにあげた記事を遡ると、こんな風に書いてあった。

『たぶん、コガタキシバかな?
だとしたら、採ったことがないから素直にちょっと嬉しい。
なのに蝶じゃないから、触角はアグレッシブに天突く怒髪天にしてみた。蛾の展翅は知らない分だけ自由な感性で勝手にやれるからお気楽。』

これだけである。
しかも、展翅写真もこの♀だけしか残されていない。
稀種じゃないから、この1頭しか見てない筈はないんだけど、無いと云うことは興味があまり無かったのだろう。パタラキシタバ(=キシタバ Catocala patala)を小型にしたような奴で、特別個性を感じなかったのかもしれない。
いや、たぶん1頭採れれば充分だと思ったような気がする。デブだしさ。
ワモンキシタバの回で、フシキキシタバ、ワモンキシタバと美しいカトカラが続いたから、完全にカトカラにハマっとか書いたが、よくよく考えてみればアレって嘘である。全くの嘘ではないが、正直ムラサキシタバとカバフキシタバ、シロシタバ、ナマリキシタバ辺りにしか興味はなかった気がする。ようは、根がミーハーなんである。美しいカトカラは採りたいと思ったが、他はどうでもいいやとでも思っていたのだろう。

 
【分類】
ヤガ科(Noctuidae) シタバガ亜科(Catocalinae)
カトカラ属(Catocala) Schrank, 1802

 
【学名】
Catocala praegnax praegnax(Walker,1858)

ネットで最もポピュラーなサイトである jpmoth(みんなで作る日本産蛾類図鑑)では、aegnax が2つ連なってるから、たぶん日本のものが原記載亜種なのだろう。

( ̄▽ ̄;)あれっ❗❓
でも『世界のカトカラ』には「日本のものは亜種 olbiterata Menetries 1864とされる。」とあった。おそらくコチラが正しいかと思われる。
おいおい、jpmoth(みんなで作る日本産蛾類図鑑)っていい加減だなあ。ワモンキシタバの学名も変わってないしさあ。蛾を名前検索したら、大概は一番先に出てくるサイトなのに問題有り有りだよ。

ゲゲッΣ( ̄皿 ̄;;、『原色日本産蛾類図鑑(下)』では、亜種名が esther(Butler)となっている。ワケわかんねえや。
まあ、『世界のカトカラ』が一番新しい図鑑だから、その亜種名が正しいんだろね。それに著者の石塚さんはカトカラの世界的研究者だからね。

「praegnax」の語源をネットで調べてみたら以下のようなものが出てきた。

・妊娠した,(…で)充満して,意味深長な,含蓄のある,示唆的な,工夫に富む。

・ラテン語 prae-(前の)+gnascor(誕生する)+-ans(状態)>genh-(産む)が語源。

・「出産までの状態」がこの単語のコアの意味nation(国家)と同じ語源をもつ。

一番アタマの「意味深長な,含蓄のある,示唆的な,工夫に富む。」辺りが語源と言いたいところだが、圧倒的に出てくるのは妊娠なので、となると「妊娠した」が語源になるのかなあ…❓デブで腹ボテだから❓

 
【和名】
コガタキシタバというが、それほど小さくはない。フシキキシタバなんかと同じくらいの大きさだ。『原色日本産蛾類図鑑(下)』には開張50~58㎜とある。となれば、中型のカトカラだ。
これは多分、パタラキシタバに似ていて、それと比べて小型だからということから名付けられたのだろう。
大きさを除けば、確かにパッと見は両者はよく似ている。少なくとも初心者にはそう見える。

 
【パタラキシタバ Catocala patala 】

 
両者の幼虫の食餌植物(マメ科フジ)も重なるところがあるから、きっと兄弟とか姉妹だと考えたんだろね。
しかし、近年の遺伝子解析の結果、両者に類縁関係はないようだ。他人の空似ってヤツだね。
確かによく見ると、下翅の柄もかなり違う。馬蹄形の形が異なるし、パタラキシタバと比べて帯が細く、橙黄色の部分が広い。あと、上翅の色柄も明らかに違う。コガタキシタバの上翅はバリエーションに富むが、パタラキシタバみたいに緑色を帯びることは基本的にない。
今にして思えば、この頃はまだ初心者で、黄色い下翅のカトカラは全部同じに見えたんだね。だから黄色系のカトカラは、一見して区別できてカッコいいカバフキシタバやナマリキシタバくらいにしか興味がなかった。

因みに、昔は「コガタノキシタバ」という名前だったみたい。実際、自分の見た『原色日本産蛾類図鑑(下)』の古い版でもそうなってた。

 

 
これって名前を耳で聞いたって、それが果たしてコガタノキシタバを指しているのか、それとも小型のキシタバ(パタラキシタバ)を指しているのかがワカンナイ。改名は妥当だね。

 
【分布】
北海道、本州、四国、九州、対馬、種子島、屋久島。
国外では、中国、台湾、朝鮮半島、ロシア沿海州にも分布しているようだ。

 
【レッドデータブック】
滋賀県が要注目種にしている程度なので、そう珍しいものではないと思われる。
しかし『世界のカトカラ』では少ないとあるし、『日本のCatocala』でも同じようなニュアンスの記述があった。
でも近畿地方では、何処にでもそこそこいると云う印象だ。但し、パタラキシタバみたいにクソみたいに沢山いると云うワケではない。どこでも、いくつかは見るって感じだ。これは後述する幼虫の食餌植物と関係があると思われる。

 
【成虫出現期】
『世界のカトカラ』では6月中旬から出現し、9月上旬まで見られるとある。一方、『日本のCatocala』には「近畿地方では6月下旬から既に得られるが、一般には7~8月に多い。」とあった。だが、近畿地方では6月中旬には見られる。
順番で云うと、フシキキシタバに少し遅れて発生する。そして両者が同時に見られる期間も短いながらあるようだ。実際、2019年の6月17日は両方が半々くらい樹液に訪れていた。
また『日本のCatocala』によると、寿命は比較的短く、室内飼育だと3週間だったようである。近畿地方では7月中旬ともなると汚損した個体が多いので、寿命はそんなもんなのかもしれない。

  
【生態】
クヌギやコナラなどの樹液によく集まる。糖蜜トラップにもよく来た。飛来時間は日没後、比較的早く現れる印象があり、深夜まで断続的に飛来する。
成虫は昼間、頭を下にして樹幹に静止しており、飛翔➡着地時は上向きに止まり、しばらくして下向きになるという。
毎度言うが、何で昼間はわざわざ逆さまに止まるの❓
全然、理由が思いつかない。

 
【幼虫の食餌植物】
jpmothには「ブナ科コナラ属:ミズナラ、ナラガシワ(※KD)、マメ科:ハギ属、フジ属」とあった。
やっぱ、jpmoth はダメだな。間違ってはいないが、順番がオカシイ。東日本では最も好むのがマメ科のハギ類で、次に続くのが同じマメ科のフジのようだ。ブナ科を利用しているのは西日本だけで、東日本ではブナ科から幼虫は発見されていないという。また飼育しても幼虫は摂食しないそうだ。
この辺が東日本では個体数が少なく、西日本では多い原因なのかもしれない。

 
全然関係ない話だけど、学名 praegnax の語源を調べてて、突然、フラッシュバックで記憶が甦った。
大学時代の彼女が何でもない会話の途中で、急にワッと泣き出して『ワタシ、妊娠したかも…。』と言った事を思い出した。青天の霹靂。あれはフリーズしたね。
脳が真空状態みたいな感覚で『おまえが産みたいなら、いつでも父親になる覚悟はあるよ。』とか何とか言った覚えがある。
結局、妊娠はしてなかったんだけど、でも今思えば、あの時に彼女が本当に妊娠してて、学生結婚とかしてた方が幸せだったかもしれない。

 
                 おしまい

 
追伸
ものスゴい実験的な入りからの終わりになっちゃいましたなあ。
まあ論文じゃないんだから、こういうのもあっていいだろう。それに、こんなの読んでる人、少ないと思うしさ。

展翅は、この時はそこそこ上手いやんかと思ってたけど、今見ると上翅を上げ過ぎだね。50点。
今年2019年は上翅を少し下げてみた。

 
(2019.6.17 西宮市名塩)

 
結局、怒髪天にはなってるけど(笑)
因みに性別は♂である。♂はデブじゃないのだ。
続いて♀。

 

 
妊娠しとるやないけー(ー。ー#)