黄昏のナルキッソス 第二話

第2話 亡霊ナルキッソス

 
2019年 11月5日

2019年もシンジュキノカワガを求めて伊丹市昆陽池公園に行った。

(シンジュキノカワガ Eligma narcissus)

行程は2017年と全く同じだった。先ずはママチャリで伊丹空港横の猪名川河川敷に行った。シルビアシジミの様子をみるためだ。

(猪名川河川敷)

シルビアは健在だった。
稀種シルビーちゃんが、これほど都会のド真ん中にいて、しかもこれほど沢山いる場所は他にはないだろう。

(シルビアシジミ)

そこから、えっちらおっちら昆陽池へと向かったが、結果は未発生。痕跡は全くなく、又しても惨敗に終わった。

 
2020年 9月22日

この年はJR大和路線の三郷駅へ行った。
カッちゃんが、この駅でシンジュキノカワガの死体を拾ったのである。今はどうなっているのか分からないが、まだ当時の構内の灯りは蛍光灯で、虫がそこそこ飛来していたのだ。最近は殆んどの灯りがLEDに変わってしまい、全然虫が寄ってこないから貴重な場所だった。春にはマイコトラガ、夏にはシンジュサン、秋にはウスタビガもやって来てたからね。

カッちゃん曰く、最初の1頭は踏まれてペッチャンコだったそうだ。で、二匹目のドジョウを求めて通ったらしい。そして何回目かは聞いていないが、目論見通りに2頭目に出会ったのである。しかし不幸にも、その個体もまた踏まれていた。とはいえ、まだ踏まれて間もなかったみたいで、かろうじて原形はとどめていたらしい。しかも羽化したばかりのような新鮮個体だったそうな。もう少し早く到着していれば…と随分と悔しがってたなあ。
余程もったいなかったのか、確かその個体は持って帰って修復展翅したんだよね。でも頑張りはしたものの、どうにもならんかったらしいけどさ。

それはともかく、2頭もいたと云うことは、間違いなく近辺で発生していると云うことになる。そう判断して自分も出掛けたのだった。

駅構内を地面や壁を凝視しながら歩き回る。
一般ピーポーから見れば、完全に怪しい人だよね。狂気の沙汰もシンジュキノカワガ次第なのだ。虫屋ってホント、頭オカシイわ。

結果は、又しても完封負け。戦果は地面に落ちてたナカグロクチバくらいだった。

実物を初めて見たけど、前翅の柄が幾何学模様でスタイリッシュだ。
それと比べて裏面は地味。

蛾って、表は複雑なデザインのものが多いのに、裏は概して地味なものばかりだ。その点、ナルキッソスは裏も素晴らしい。

(シンジュキノカワガ 裏面)

デニムブルーと鮮やかな黄橙色の対比が美しい。ブルーの中に、放射線状に水色が入っているのもオシャレである。まるで月と帳が下りたばかりの夜空みたいだ。どこかゴッホの絵画を彷彿とさせるところがある。糸杉とかカフェの絵とかさ。

(星月夜)

(出典『CASIE MAG』)

「星月夜」もそうだけど、何と言っても、やっぱりコレだね。

(夜のカフェテラス)

(出典『巨匠の美術館〜誰もが知っている有名画まるかじり!〜』)

色合いだけでなく、その配色の構図までもナルキッソスっぽい。

それに表と裏のデザインが全然違うってのも素敵だよね。しかも両面とも色鮮やかなのだ。蝶は蛾と比べて裏も美しいものが多いと思うが、それでも裏も表もここまで華美なものは少ない。

 
一応、ナカグロクチバの解説をしておこう。

(ナカグロクチバ Grammodes geometrica)

ヤガ科 シタバ亜科 クチバ属に分類される蛾。
南方系の種で、元々は南西諸島にしかいなかった。なので昔は本州では偶産蛾扱いされてきた。それが地球温暖化に伴い急速に北上、今や北関東にまで分布を拡げている。
7~10月の夏から秋にかけて発生し、イヌタデ,エノキグサ,コミカンソウ,ブラジルコミカンソウ,ヒメミソハギ,ホソバヒメミソハギ,サルスベリ,ザクロなどの各種雑草を食餌植物としている。そのため、河川敷などでよく見られるという。
結構珍しいと云うイメージがあったが、今や本州でも普通種になってるみたいだね。ガッカリだ。

この年は、多分もう1回くらいは三郷駅へ行ったと思う。勿論、結果は言うまでもない。これで6連敗だ。

 
2021年

2021年は、画像は残っていないけど、大阪市鶴見区の鶴見緑地公園へ行っている。ネットでシンジュの木がある場所を探していたら、どなたかのブログにそこそこあるようなことが書いてあったからだ。
確か、ママチャリで行ったんだよね。昆陽池公園ほどではないにせよ、鶴見緑地も遠かったよ。

シンジュの木は確かにあった。ひこばえも各所で見つけた。でも大きな木は期待してたほどなかった。どうやら台風で何本かが倒れたらしい。

結果は、木を丹念に見回って幼虫と繭を探すも、見つけられずじまいだった。未発生の可能性が高い。
それでも一応夜までいて、灯火巡りもしてみた。だが、空振り。どうやら照明が全部LEDになってしまっているようで、虫が全然寄って来ない。LEDからは紫外線が殆んど出ないので、虫たちは誘引されないのである。昔は何処でも灯りに夥しい数の蛾が集まっていて気持ち悪いくらいだったが、今やLEDだらけで、灯火を巡っての採集なんて不可能に近い。まあ、その分死ぬ虫は減るけどもね。コウモリとかクモなどに捕食される数は減るだろうし、人に踏まれる事もない。

後で知るのだが、この年は昆陽池公園でナルキッソスが発生していたようだ。伊丹昆虫館のホームページに、10月21日に公園の生き物調査が行われた旨が書かれており、そこにシンジュキノカワガの幼虫と蛹の記録があった。ショックだった。去年は行ったのに、どうして今年は行かなかったのだ❓ 痛恨の極みである。激しく悔やんだね。でも幾ら悔やんだところで、後の祭りだ。
この頃には、流石に心が折れかけていた。ナルキッソスとは一生縁がないんじゃないかとさえ思い始めていたのだ。もはや亡霊みたいな存在だ。そして、その正体不明の亡霊を追いかけて、あてどなく彷徨っているような気分だ。でも、未だその存在のシッポさえも掴めないでいる。五里霧中。先の見えない徒手空拳の戦いは辛い。

 
2022年 10月上旬

画像が無いから正確な日付は分からないが、10月初旬辺りに昆陽池に行っている。連続で今年も発生しているのではないかと云う淡い期待を持ったのだ。

しっかし、またしても痕跡ゼロであった。これで8連敗だ。重苦しい徒労感が襲う。

 
2022年 10月下旬

この日も正確な日付はワカラナイが、鶴見緑地へ行った。ママチャリではなく、電車で行ったと思う。
情報源は小太郎くん。ツイッターだったっけか❓ 誰かがSNSに鶴見緑地で撮ったナルキッソスの画像を上げていると教えてくれたのだった。
クソッ、鶴見緑地だって去年行ったじゃないか。なのに何でよりによって今年の発生なのだ❓この悪戯なズレって、誰かの悪意すら感じる。なんだか亡霊におちょくられているような気かしてきた。

行ったら、パッと見にはシンジュらしき木が見当たらない。
一瞬、切られた❓と思った。だが、どうやら葉が全て落ちてしまっているからのようだ。幹の木肌は何となく憶えているので、らしき木の幹に繭がないか探しまわる。
しっかし、一つも見つけられなかった。夜までいようかとも思ったが、どうせLEDだから成果は望めない。諦めて、そういや中央環状線沿いの大きな釣具屋まで歩いて行ったんだよね。で、戻りしなに撤退まじかの鶴見緑地アウトレットに寄って帰ったっけ。ナルキッソスが光に集まって来てるんじゃないかと淡い期待もしたが、勿論そんな奇跡みたいな事は起こらなかった。8連敗決定である。

 
2022年 11月27日

こんな遅い時期に出動する事になったのは、幼虫好きのN女氏が8月に池田市東山でシンジュキノカワガの幼虫を見たと教えてくれたからである。同年内に、居るとか居たと云う確実な情報を得たのは初めてだ。俄然、士気が上がる。今度こそ亡霊ではなくなるかもしれない。
そうだ今回は、なんちゃってライトトラップも持っていこう。なんなら糖蜜だって用意してもいい。最善の努力を怠ってはならない。まだ其処に居ることを祈って出掛けた。

阪急池田駅からバスに乗り、山裾近くで降りる。ここは昔、クロヒカゲモドキを初めて採った思い出の場所だ。そういや同じ目的で来てた爺さんに、採ったと言ったら『お前みたいな駆け出しに採れるワケがない❗大方クロヒカゲと間違えてんだろ。見せてみろ。』と偉そうに言われたんだよねー。なので蝶の入った三角紙を見せた。中を覗いた時のジジイの表情は今でも鮮明に憶えている。それは驚愕と恥辱にまみれた醜い顔だった。そして、態度をコロッと変えて猫撫で声で「何処で採ったのー❓。」と訊いて来たんだよね。アレには笑ったよ。
場所を案内してあげたけど、もちろん採れる筈もない。だって、そっちこそド素人のセンスなしだったからだ。クロヒカゲモドキは、昼間にはススキに止まって休んでいるのだ。それすら知らなかったからね。

(クロヒカゲモドキ)

その日は他にも採集者が結構入っていたけど、結局のところ自分しか採れなかったんだよね。あの頃は連戦連勝で、超絶引きが強かった。それが今や蛾に連戦連敗の体たらくだ。多分、どうしても採らねばならぬと云う強い気持ちが薄れてきてるんだろなあ…。どうしても欲しいと云う強い欲望と絶対に採ると云う強い意志が、運をも引き寄せていたのだろう。
そのクロヒカゲモドキも今や絶滅していて、もう此処にはいないらしい。あの頃には、既に絶滅の危機に瀕していたのだろう。

師走も近い晩秋の山は、燃えるような紅葉に彩られていた。
その中をシンジュの木を探しながら登ってゆく。

でもシンジュらしき木は中々見つからない。
神社を過ぎ、更に奥へと向かう。

500mほど進んだところで、ようやくそれらしき木を見つけた。
葉は、殆んど落ちている。この時期にはさすがに幼虫は居ないだろうから、繭を探すことにする。
しかし、幹には繭なんぞ1つもへばりついとらーん。もはや新たな地を求めて旅立ったのかもしれない。いや、そうゆうマイナス思考は止めておこう。きっと別な他の木が発生木だったと考えよう。単にそれが見つけられなかっただけの話だ。だからきっとまだ此処には居る筈。そうとでも思わなければ、やってらんない。

午後5時半、ライト点灯。
さあ試合開始だ。今日こそ亡霊ナルキッソスの正体を暴き、亡霊ではなくしてしまおう。

続いて糖蜜を木の幹に撒きまくる。シンジュキノカワガが樹液に来ると云う話は聞いたことがない。だが、だからといって樹液には絶対来ないという証明にはならないからね。やれるべき事はやる。

何だか気分は、こないだのサッカーW杯の日本VSドイツの試合前みたくだ。どう考えても劣勢が予想される状況下におかれている。どころか、まだしも日本がドイツに勝つパーセンテージの方が高いんじゃねぇか❓正直この試合、奇跡でも起きなければ勝てそうにない。

暫くして何か来た。

見たことのない蛾だ。
下翅が白くて、まあまあ渋カッコイイ。もしかして、珍品だったりして…。ならば、せめて少しは報われる。少なくとも此処へ来た意味は生じる。

退屈だから、スマホのレンズ機能で画像検索でもすっか…。
けど、名前がサッパリわからんちゃ。候補の蛾がたくさん出てきてワケわからんくなった。コレだというモノが見つからないのだ。

あと20分くらいで、日本のW杯第2戦のコスタリカ戦が始まる。なのにテレビ観戦を放棄してまで、こんな人っ気のない淋しい山に一人で、しかも夜に居るだなんて、どう考えても馬鹿げている。ホント、何やってんだかなぁ……。

それにしても寒い。この時期の夜の山は冷える。
そうゆうワケだからか、灯りに集まって来る昆虫も少ない。

午後7時半。
あまりにも静かだ。
暇すぎて白布に止まっている蛾を数えたら、微小なモノも含めて15頭しかいなかった。糖蜜トラップにいたっては誘引数ゼロだ。1頭たりとも何も寄って来てない。

午後8時。
何も起こりそうにない雰囲気に、もう耐えられない。心が折れた。クソ寒いし、撤退を決める。

帰りの電車から降りて、迂闊にもスマホを開いてしまった。したら、いきなり目の中に日本0-1コスタリカの文字情報が飛び込んできた。時間的にみて、試合は既に終わってる筈だ。と云う事は、まさか日本が負けたって事か…❓ 帰って録画したのをじっくり観ようと、今まで慎重に情報を遮断してきたのに…。車内の会話でさえも聞こえないようにと、わざわざイヤホンで音楽を聴いてまでいたのだ。その努力も全て水の泡だ。ナルキッソスは採れなかっし、ダブルショックでガックリだ。
💢クソッ、速報とか別に望んでないのに勝手に送りつけてきやがって…。そうゆう一見便利なサービスは邪魔。ハッキリ言ってアリガタ迷惑なんだよなー。
それにしても、勝てるだろうと踏んでいたコスタリカに、まさか負けるとはね。ドイツに勝ったのに、何やってんだよー😓💢。

と云うワケで、帰宅後は先ずは唯一持ち帰った名前不明の蛾を展翅した(註1)。

その後、じっくりと戦犯探しをしながら試合を観た。
で、試合内容を観て、もう怒りで打ち震えたね。

(戦犯1)
コレはもう、中途半端にクリアミスしたDFの吉田でしょう。
キャプテンやろ、ワレー💢(⁠ノ⁠`⁠Д⁠´⁠)⁠ノ⁠彡⁠┻⁠━⁠┻

(戦犯2)
途中から左サイドバックに入った伊藤洋輝。バックパスばかりで、何故か前にいる三笘にパスを出さなかった。たとえ三笘が相手に囲まれていようとも、パスを通すためにチャレンジしないと勝てるワケがない。そのクソ消極振りは、万死に値する。

(戦犯3)
FW上田。下手くそ過ぎ。足元でボールをおさめられず、ポストプレーが全くできていなかった。

(戦犯4)
左ウィングの相馬。シュートをフカシまくり。

とは言っても、全てはコレらの選手を起用した森保監督のせいだよな。ちんたらした試合状況の前半のうちに手を打つべきだったと思うよ。
次の対戦相手は強国スペインだ。ドイツよりも強いだろう。コレでほぼ予選敗退は決まりだな。ドイツに歴史的勝利をおさめたから俄然盛り上がったのに、心は激しぼみだよ。

このように2022年は、散々な結果に終わった。
コレで、フラれ続けての9連敗。亡霊は亡霊のままだ。ぼんやりと思う。一生、彼女には会えないのかもしれない。

                  つづく

 
追伸
ご存知の通り、その後日本はスペインを2ー1で撃破。奇跡的な大勝利をおさめて決勝トーナメントに進出する。そしてクロアチアに1一1と引き分けるも、PK戦で負けるのである。今度こそベスト8の壁を打ち破れると思ったのになあ…。まあ次の2026年のW杯に期待するとしよう。もし出られたとしたなら、次はタレントが揃ってるからネ。
余談だが、次回は初のカナダ・メキシコ・アメリカの3カ国開催。出場国が大幅に増えて、36カ国から48カ国になる。

 
(註1)名前不明の蛾
後にホソバハガタヨトウ Meganephria funesta と云う名前だと判明した。
開張50〜55mm。『みんなが作る日本産蛾類図鑑』ではヤガ科 ヨトウガ亜科となっているが、『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』では、ヤガ科モクメキリガ亜科に分類さるている。分布も『みんなが作る…』では本州、対馬となってるが、標準図鑑では他に四国、九州、佐渡ヶ島が追加されている。
『みんなが作る…』は、こうゆう事が多いんだよなあ…。分類が変わったり、新たに分布地が発見される事は当然あるんだから、記述内容が古くなるのも仕方のない事だ。でも変更があったり新たな知見が加わったのに書き替え、つまりアップデートが全くなされていないのだ。コレは何とかしてほしい。と云うか、種名検索したら大概が真っ先に出てくるような影響力大のサイトなんだから、間違った情報は一刻も早く書き変えるべきだろう。
幼虫の食餌植物はニレ科ケヤキ。成虫の出現月は11月で、12月まで見られるようだ。晩秋の発生なんだね。なるほど、だから見たことがなかったんだね。そんな時期まで虫採りしている人は、ごく一部だかんね。
けど、残念ながら珍品でも何でもなく、里山を生息地とする普通種みたいだ。行った意味なーし(⁠+⁠_⁠+⁠)

 
ー参考文献ー
・『みんなで作る日本産蛾類図鑑』
・『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』
・『伊丹昆虫館ブログ』

 

2019年の空たち 冬・春編

 
空を見るのが好きだ。

 

 
画像は去年の師走、12月17日に撮ったものだ。
ドン突きまで並ぶ雲に奥行きがあって、モノ凄い遠近感を感じたので、つい撮ってしまったのだ。

でも、スマホのストレージが溜まってきたので、そろそろ消去しなければならない。しかし、このまま日の目を見ずに此の世から人知れず永遠に消えてしまうには忍びない画像だ。そこで去年に撮った空の写真を纏めてアップしてから消すことにした。

 

 
2019年、最初に撮った空だ。
紅梅が晩冬の空の下、凛と咲いている。

日付は2月23日になっている。昔の彼女と久し振りに会って、天下茶屋から昭和町まで歩いた時に撮ったものだ。たぶん途中の公園で咲いてた紅梅が美しかったから撮ったと記憶してる。
その後すぐ、何故かアチキは突発的に布施明の『シクラメンのかほり』を歌いたくなって、アカペラで情感たっぷりで熱唱。元カノに脱力で笑われた。

 
 

 
4月3日。
青春18切符の旅が、また始まった。
福井県南越前町まで足を伸ばす。

 

 
天気は良好。ぽかぽか陽気の中で、ギフチョウたちが沢山舞っていた。

 

 
スプリング・エフェメラル。春だけに現れる妖精だ。
毎年のように会っているが、最初の1頭には毎回ハッとさせられる。忘れているワケではないが、改めてその美しさに心奪われるのだ。

 

 
敦賀まで戻り、寂れた歓楽街を彷徨う。
人影は無く、時間の流れが止まったかのようだ。空には一点の雲も無いので余計にそう感じる。動くものが何もないのだ。

 

 
氣比神宮の鳥居の向こうに、空も石畳もトパーズ色に染めて夕陽が沈んでゆく。

 

 
敦賀駅まで戻ってきたら、喫茶店のスピーカーからボズ・スキャッグスの名曲『ウィ・アー・オール・アローン』が流れてきた。

 

(※画像をタップすると曲が流れますよ〜ん。)

 
あまりにも曲と夕景とがピッタリで泣きそうになった。
我々は皆、所詮は一人ぼっちなのだ。

 
 
4月6日。
青春18切符 ONEDAYトリップの2日めは、武田尾方面のギフチョウに会いに行った。

 

 
空の青とピンク色の花とのコントラストが美しい。
大きな木ではないが、やはり枝垂れ桜は華やかだ。正直、ソメイヨシノよりも綺麗だと思う。
そういや、去年は紅枝垂桜を見てない。たぶんコロナウィルスのせいだな。山なら人と接触することは少ないけれど、シダレザクラで有名な平安神宮なんかだと、そうともゆかぬ。で、断念。
ベニシダレザクラ、見たかったなあ…。だって桜の中では圧倒的にゴージャスだからね。
今年は何とか行ければいいけど…。

この日は、一旦武田尾から離れて夜にまた舞い戻ってきた。 
何でかっつーと、春の三大蛾(註1)がいないかなあと思ったのだ。

 

 
天気予報は夜には曇ってくると云うことだったが、夜遅くになっても、あいにく夜空には満月。
虫たちは晴れの日よりも曇りや小雨の日に灯火に飛来する事が多いと言われている。月の光が邪魔なのだ。だから満月の月夜は最悪のコンディションとなる。
結局、どれ1つとして目的の面々とは会えなかった。
まあいい。春のちょっと肌寒い夜空に浮かぶ朧月(おほろづき)は美しい。ことに満開の桜の夜ならば、尚の事だ。考えてみれば、極上の月見ではある。

 

 
真っ黒な夜空の下で咲く桜は、いつ見ても妖艶だ。暗い想念が仄かに蠢く。

 
 

 
4月7日。
ちょっと悔しいので、翌日には箕面を訪れた。

天気予報は今宵もハズレ、満月が昇ってきた。
まだ芽吹いていない裸木の枝が、月をより美しく見せている。
だが、当然ながら結果は又しても惨敗だった。

 
 

 
4月8日。
青春18切符の旅、3日目である。
行先は兵庫県西脇市。又してもギフチョウに会うためだった。
蝶好きのギフチョウ愛は強く、ワシなんぞはギフチョウ愛が足りないと言われるクチだが、それでも、それなりにギフチョウ愛はちゃんとある。特別な蝶の一つではあるのだ。

この日も快晴。でも春特有の霞が掛かったような空だった。
そういや、雲雀(ヒバリ)が喧しく歌いながら天高く飛んでいったのを思い出したよ。しみじみ春だなあと思った。
こうゆう時は、横に誰か女性が居て、互いに黙して風景を見ていたいものだと思う。

 

 
乗り降り自由の切符だからアチコチ回って、最後に桜ノ宮で夜桜を見てから帰った。

黄昏どきの桜も美しい。
青の色を失いつつある空が、心をゆらゆらと揺らす。

 
 

 
4月12日。
青春18切符の旅の最終日は、和歌山へと向かった。
先ずは道成寺駅で下車。

 

 
この日の空は澄んだ青だった。
雲も白い。

 

 
田辺へと向かう車窓に突然、空と海とが飛び込んできた。
フレームの中で青と青が、せめぎ合う。
けれど春の空も春の海も、どこか優しい。やわらかな陽射しの中で、たゆたっている。

田辺の街をぶらぶらと歩く。

 

 
南方熊楠顕彰館の隣にある旧熊楠邸では、ミツバツツジが咲いていた。やはりピンクの花は青空と合うんだね。何だか、ほっとする。

 

 
田辺の夕暮れ間近の歓楽街を歩く。
細い舗道には誰もいなくて、何処かの時代へタイムスリップしたかのような錯覚に陥る。そこには長い年月がゆっくりと削り取った時間の澱みたいなものの残滓がある。
それを、人はノスタルジーと呼んでいるのかもしれない。

 
 

 
5月2日。
これは一瞬、画像を見ても自分でも何だか分からなかった。
前後の画像を見て漸くコシアブラの木だったと思い出した。この日は四條畷に山菜採りに来たのだった。

 
(コシアブラ)

 
他には、イタドリとワラビくらい。

 

 
そういや、タカノツメも採ったね。
植物学的にはコシアブラと近いものらしいが、味は劣る。

 

 
ついでにカバフキシタバ(註2)の食樹であるカマツカ探しも兼ねていたかな。

 

 
ふと、スミナガシ(註3)にも会おうと思い立ち、場所を移動して大阪平野を望む。
ぼんやりとした春の空の下(もと)、街はベールが掛かったかのように、けぶっている。
昔は春が好きじゃなかったけど、今はとても好きだ。冬がどんどん嫌いになっているから、ホント待ち遠しい。

 
 

 
伊丹空港(大阪空港)だ。
日付は5月7日。とゆうことは、シルビアシジミ(註4)の様子でも見に行ったのだろう。
空港には、真っ青な空がよく似合う。

 
 

 
上の写真は瓢箪山駅の手前だとすぐに分かった。山並みの形が見慣れた生駒山地だったからだ。
だが日付を見ると、5月13日となっている。どうせアサマキシタバ(註5)でも採りに行ったのだろうと思っていたが、時期的にはまだ微妙に早い。じゃあ、何しに行ったのだ❓

💡ピコリン。
そっか、思い出したよ。スミナガシを採りに行ったんだ。四條畷では何故か現れなかったので、仕方なしに生駒に来たんだった。しかも、難波からママチャリで。マジ、遠かったわ。
あとは去年の初冬にカマツカの木を見つけたけど、本当にそうなのかを確認するためでもあった。あの特徴的な花が咲いてさえいれば、確定だからね。

生駒から大阪の街を見下ろすのは好きだ。
此処まで登ってくれば、空を遮るものは背後の生駒山だけだし、空が広いのは気分がいい。それに何となく街を支配したかのような気分になれる。

 
 

 
5月24日。
枚岡神社の手前辺りで日が沈んだ。
この時間帯に此の地点に居るという事は、今度こそ目的はアサマキシタバだろう。彼女たちは夜に活動するからね。
そして、眺め的に間違いなく又してもチャリである。遠いだけでなく、山の中腹まで登らねばならんから、もうクソみたいにしんどいのだ。
難波から、こんなとこまでママチャリで来るなんてのは、どう考えても中学生レベルの発想だな。ようはアホである。全然成長してない。

 

 
夜の空。
当たり前だが、夜の空は暗い。
懐中電灯を消すと、一瞬は真っ黒けだ。けど、そのうち目が慣れてくると、ぼんやりと色んなものが形を成してくる。そして夜の空にも表情がある事に気づく。雲は昼間と同じように動いており、けっしてとどまることはなく、風景は一様ではないのだ。

 

 
山側の空は暗いが、大阪平野側は街の灯が明るいから、それに照らし出される空も明るい。
でも曇っているから、見ようによっては不気味だ。
きっと、そのうち悪魔共が空をヒュンヒュンでワンサカ飛び交いだし、やがて大阪の街は火の海と化すのだ。ψ(`∇´)ψケケケケケ…。

夜の山に一人でいると、ロクなことを考えない。

                         つづく

 
追伸
(ー_ー゛)う〜む。今更ながら武田尾辺りの文章を書いてる時に思い出したよ。すっかり忘れていたが『青春18切符の旅 春』と題した連載が、武田尾駅まで戻ってきたところで中断、っていうか頓挫、第二章の途中でプッツンの未完のまま放ったらかしになっておるのだ。
そっから、またアッチコッチ行って夜桜に繋がるのである。
我ながら割りと面白い紀行文ゆえ、宜しければ読んで下され。そのうち続きも書きます。

次回は後編の夏・秋冬編。
空が写ってる画像はもっと少ないかと思ってたが、意外と多かったので2回に分けることにしたのだ。

 
(註1)春の三大蛾
エゾヨツメ、イボタガ、オオシモフリスズメのこと。

 
【エゾヨツメ】

(2018.4 兵庫県宝塚市)

光の加減によっては、目玉模様がコバルトブルーに光る。

 
【イボタガ】

(2018.4月 兵庫県宝塚市)

デザインに似た者がいない、類を見ない唯一無二の大型蛾。
このモノトーンの幾何学模様には、何度見ても不思議な気持ちにさせられる。多分、その翅には太古の昔の財宝の在り処が示されているに違いない(笑)。

 
【オオシモフリスズメ】

(2018.4 兵庫県宝塚市)

異形の者、化け物、魑魅魍魎。悪魔のステルス戦闘機。
日本最大のスズメガで、鵺の如きに鳴く(笑)。
でも慣れると可愛い(´ω`)

これらはギフチョウと同じく年一回、春先だけに現れ、何れも人気が高い蛾である。
気になる人は、当ブログにて『春の三大蛾祭』とかと題して2017年と2018年の事を分けて書いたので読んでけろ。コミカル・ホラーでっせ(笑)。

 
(註2)カバフキシタバとカマツカ

【カバフキシタバ】

ヤガ科カトカラ属の稀種。主に西日本に局所的に分布する。
カバフキシタバの事もカトカラシリーズで何編か書いている。
そういや最初に書いた『孤高の落ち武者』もコミカル・ホラー的な文章だったかもしれない。

 
【カマツカ】

バラ科の灌木。名前の由来は材が硬くて鎌の束などに使われた事から。

 
(註3)スミナガシ

【♀】

 
【♂】

タテハチョウ科スミナガシ属の中型の蝶。
名前の由来は古(いにしえ)の宮中の遊び「墨流し」から。
日本の蝶の中では唯一、眼が青緑色でストロー(口吻)が紅い。
稀種ではないが、かといって何処にでもいる蝶ではなく、その渋美しい姿からも人気が高い。
たぶん、スミナガシの事もちょくちょく書いてる。でも詳細は全然思い出せないので、自分で自分の書いた文章を検索すると云う変な事になる。
えー、本ブログ内の奄美大島に行った時の紀行文『西へ西へ、南へ南へ』の中に「蒼の洗礼」と題して書いている。アメブロの方の「蝶に魅せられた旅人」には『墨流し』と題して書いている。他には台湾の採集記にも出てくる筈だ。

 
(註4)シルビアシジミ

全国的に数が少なく絶滅危惧種だが、何故か伊丹空港周辺には普通にいる。
シルビアシジミの事も『シルビアの迷宮』と云う長編に書いた。内容はミステリー仕立てだったような気がするけど、あんま憶えてない。

 
(註5)アサマキシタバ

【♂】

(2019.5 奈良県大和郡山市)

 
カトカラの中では発生が最も早く、5月の半ばから現れる。
そのせいなのかはどうかは知らないけど、最も毛深いカトカラだと思う。
採集記と種の解説は、拙ブログのカトカラの連載に『晩春と初夏の狭間にて』『コロナ禍の狭間で』『深甚なるストレッケリィ』と云う題名で、それぞれ前後編の6編を書いた。詳しく知りたい人は、ソチラを読んで下され。
 
 

『燃えよ麺助』ってどーよ❓


先日、念願だった『燃えよ麺助』に行った。
この店、大阪では超有名なラーメン屋で行列が絶えない。
トリップアドバイザーの評価では5点満点の「4.5」、食べログでも「3.78」という高得点で、2017年と2018年には『食べログラーメン百名店WEST』にも選出されている。
そして『ラーメンWalkerグランプリ2019』では並居る名店を押し退けての総合部門1位にも輝いている。
また、姉妹店『麦と麺助』は同年にミシュランガイドのビブグルマン入りも果たしている。ついでに言っとくと、『秘密のケンミンSHOW』でも取り上げられていたそうだ。
そこまで評価が高いのならば、自ずと期待値もマックスにならざるおえない。

場所は大阪駅から1つ先、環状線の福島駅を降りて直ぐにある。



夕方の部の開店時間午後6時の5分程前に店前に着く。
(☉。☉)あっ❗、並んでる人が少ない。
新型コロナの影響だろうが、2、3人しかいないじゃないか。予測は何となくしていたけれど、思ってた以上に少ない。
実をいうと、去年この店には一度だけ並んだ事がある。しかし並ぶの大の苦手な男ゆえ、10分で痺れを切らして行列から離脱した。



コロナ対策のせいか今日は入口が開いているが、前回来た時は閉まっていた。だから全体が白壁で窓らしい窓がなく、一文字型の細い窓から辛うじて店内が覗けた。つまり、およそラーメン屋とは思えない外観なのである。 それで思い出した。このカッコつけた外観にも嫌な感じがして、行列から離脱したのだった。



暖簾が短くて、お洒落でやんす。

程なくして、店員に促されて店内に入る。
しかし、ここで💢イラッとくる。一見丁寧な接客なのだが、どこか偉そうで慇懃無礼な匂いを感じた。客に対して食わしてやってるみたいな雰囲気が嗅ぎ取れたのである。まあいい、若者だ。有りがちの事だろ。若者ってもんは、店の看板という虎の偉を借りて猫なのに虎になった気分に成りがちってもんだ。かまへん、かまへん。だいち、そんな些事で自らラーメンを不味くしてしまうのは愚かなことだ。心を平静にリセットするっぺよ。

入って直ぐ右手に自動券売機があり、そこでチケットを買う方式になっている。この自動券売機パターン、あまり好きではない。後ろに人が並ぶので、どこか急かされたような気持ちになるからだ。それにそもそも背後につかれる事を極端に嫌う男でもある。世が世ならば、振り向きざまに袈裟がけにしかねない危ない人なのだ(笑)。

この店は「紀州鴨そば」と「金色貝そば」の二本柱。前回並んだ時に、それくらいは学習している。そこで思い出した。前回並んだ時は前にいたカップルの男の方が、横のブスに如何に「紀州鴨そば」が「金色貝そば」よりも旨いかを力説しておったのだ。それも相俟ってか💢イラッときて離脱したんだったわさ。短気だね〜。
しかし、ここは素直に彼の言に倣って鴨そばにしよう。
でも小さな字がズラズラと並ぶボタンを見て、一瞬パニくりかける。この辺も自動券売機が嫌いなところである。
何とか見つけたものの、再び選択を迫られる。「紀州鴨そば」¥890と『味玉紀州鴨そば』¥990のどちらかにするか迷ったのだ。ちょいとお高いが、もともと味玉好きだし「味玉紀州鴨そば」の方をチョイスする。
それにしても、最近のラーメンって高いよなあ…。千円前後が当たり前になりつつある。スープなど素材に金が掛かってるのだろうが、どこか納得いかないところがある。昭和の男は安くて旨いのがラーメンって云う概念が強いからだ。その辺の食堂の定食よか高いって、どーよ❓
とはいえ、時代も変わりつつあるのだろう。そのうち千円越えのラーメンが当たり前の世界になるかもしれない。全ての料理の調理技術を注入した究極の料理がラーメンだとか芸術作品だとか言い始めたら、そうなりかねない。けど千円越えのラーメンなんて食ってたまるかの所存だけどね。

店内はカウンター10席のみ。思ってた以上に狭い。
そりゃ、行列にもなるわな。きっと店の戦略なのだろう。
これは行列効果というもので、バンドワゴン効果とも呼ばれている。多くの人がある選択肢をとると(この場合は行列)、さらにその選択肢をとる人が増えていく現象を指す。つまり、人は行列=人気があると感じ、よっほど旨いんだろうなと考える。で、「とりあえず多くの人に同調しておこう」と云う心理が働き、情報をあまり吟味せずに並んでしまうと云う心理効果のことをいう。ワシもそれに完全に引っ掛かっとるワケやね。
店としての戦略なんだから、べつにそれを否定しているワケではない。自分が逆の立場だったら、同じこと考えるもんね。

驚いたことに、こんな狭いのにスタッフが4人もいる。
多くないかい❓この店の規模なら3人で充分だと思うんだけど…。
人件費は意外と高い。店の経費の多くを占めている。勿論、それはラーメンの価格にも反映されて然りだろう。スタッフを一人減らせば、ラーメンの価格も安くなりそうなもんだけどね。

店内にはジャズが静かに流れている。こういうお洒落風情のラーメン屋って、最近やたらと増えてねえか❓ 目の前には、スタイリッシュな金属のコップと脇には透明でデザイン性の高い水入れ。何処までもお洒落路線である。
気づいてはいたが、目の前のスタッフもまるでシェフみたいなユニフォームである。解った、解ったよ。コンセプトはそうゆうことなのね。店主の目指すところが、よくワカリマシタ。自分の店なんだから、大いになさってよろしである。店をどうしようが、それは店主の特権だかんね。ただ、自分は洒落たラーメン屋が何となく気持ち悪いだけだ。
そこでまた記憶がフィードバックする。といっても、もっと時間的には近い話である。さっき来る時にたまたま筋を一本間違えて店の裏を通った。その時、このスタッフたちが裏通りでたむろしてたわ。あくまでも私見だが、その感じは嫌なものだった。だるそうな雰囲気で、客をナメた人たちだとセンサーは反応していた。料理人のバックステージなんてものはどこも似たようなものだが、目についたから覚えていたのであろう。

コロナウィルスの影響か、こういうのもカウンターにあった。



3列目が引っ掛かる。 「咳、くしゃみエチケットを守ってくださいますようお願いいたします(原文のまま)」
一瞬、「、」が無いから、くしゃみエチケットって何ぞや?と思ったが、咳やクシャミはエチケットを守って下さいという事 なのだろう。でも、このエチケットというのが今ひとつよくワカラン。咳やクシャミをするなって事なのか❓でもこの2つは咄嗟に止められるものではないだろう。どうせよというのだ❓咳やクシャミをしても迷惑をかけない為にマスクがあるのではないか❓マスクしてても、咳やクシャミはしてはいけないのか❓それとも咳やクシャミをするなら、手で口や鼻を覆うのではなく、欧米のエチケットみたく自分の肩に鼻と口を付けてせよって事なのか❓はたまた、コレはマスクをしていない人に対して言ってるのか❓だったら、マスクしてない人の入店を断れよ。入口にその旨、張り紙なさい。
何か、ものを食うには最悪の精神状況になりつつあるが、忘れよう。そういう負の感情は切り捨ててリセット、ここはラーメンに集中しよう。ラーメンさえ旨けりゃ、そんなもんは払拭される。お洒落であろうが無かろうが、その他云々も関係ない。そんなものに味のジャッジメントが影響されてはならない。それが昔からのモットーだ。例えば、どんだけムカつくオヤジの店であったとしても、旨けりゃいいのである。そこに人間性は関係がない。旨けりゃ、再訪するだけのことだ。問題はない。そうゆうスタンスなのだ。

5分と経たずしてラーメンがやって来た。驚くほど早い。



運ばれて来た時に、微かに柚子の香りがした。矢張り、そっち系か…。とはいえ、柚子は好きなので全然許せる。

見た目はインスタ映えしそうなお洒落なレイアウトだ。
具はレアチャーシュー、鴨肉、支那竹(メンマ)、白ネギ、三つ葉ってところだ。そこにトッピングと言ってもいい、味玉が加わる。

先ずはスープから。
レンゲで一口すすって、🙄アレレ❓と思った。期待していた程には旨くないのである。
ならばと丼鉢を持って直接すすってみる。スープ表面の脂との関係で、そうした方がスープ本来の旨さが解るからである。
しかし、やっぱり感動するような旨さはない。
一瞬、ワシもコロナを発症したのではないかと思ったよ。でも味も香りもするから、冷静に考えればコロナではない。首を傾げる。
名前通りの鴨と、たぶん鶏ベースの醤油味かな?…。けど、それだけではない複雑な味わいがあるから、他に魚介系と昆布の出汁も少し入っていそうだ。
旨味とコクはあるがどこかサッパリとしており、上品な顔のスープだ。女子の評価が高そうである。
けど正直、鴨だしって感じがあまりしない。自分が知っている鴨だしとは遠い。鴨なら、もっと深みと旨味があって、鴨独特の脂が感ぜられる筈だ。
それに何よりいけないのが、如何せん口に残る後味が甘い。一瞬、鴨の甘みかな?とも思ったが、それにしては違和感大だ。素材の自然な甘みではないような気がする。
(-_-;)うーむ、これはおそらく四国や九州で好まれる甘い醤油を使っているからではなかろうか❓そう思った。あの、醤油に大量の砂糖を入れた甘醤油、昔からどうも好きになれないんだよねぇ。関西の西の端あたりから、この甘い醤油が幅を効かせており、皆さん、刺身とかにも好んでかけらっしゃるのだ。
それにしても世の中、こんなにも甘いもん好きの人が多いのかね❓ラーメンに甘みは、野菜の甘み以外は要らんだろ❓ そりゃ、長らくスィーツブームだって続くわさ。
とはいえ、途中で柚子を混ぜたらバランスが少し良くなった。

麺は中細のストレート麺。コシがあり、心地好い歯ざわりがある。スープとの絡みも良い。感覚的に加水率は高くないようだし、個性的な麺と言っていいと思う。
思うに、何となく蕎麦の雰囲気もある麺だ。柚子や三つ葉が入っているせいもあるし、スープも相俟ってか途中から段々ラーメン食ってる気かしなくなってきた。頭の中がちょっと混乱する。麺も旨いような、そうでもないような気がしてきて、益々混乱が広がる。
そして、何だか麺が途中からどんどんスープを吸っていく感じがして、段々マズくなっていってるような気もしてきた。

スープと麺を別々に評したので、説明がバラバラになってしまっているきらいがあるが、今さら書き直すのも面倒だ。このままの路線でいく。具についても個別にコメントしていこう。

レアチャーシューは素直に旨い。でも感動する程ではない。
味玉も旨い。味の染み具合といい、黄身の半熟度合いといい申し分ない。たぶん何処かのブランド玉子なのだろう、黄身がオレンジ色でコクがあり、旨味が強い。
それらをも凌駕するのが、支那竹だ。「しな」と打っても支那と出てこない。今どき、その名称って差別用語でマズイんだっけ❓たかが食いもんにまで差別とか言う世の中って、恐いよな。今や言葉狩り社会だ。
スマン、スマン。また危うく大脱線するとこじゃったよ。この手の話をしだすと終わんなくなっちゃうからね。変換が面倒だし、以後メンマで通します。
このメンマ、極太で唯一無二なくらいに美味い。よくある甘ったるくて濃くてどうでもいいようなオマケ的存在のメンマではないのだ。抜群に歯応えがあり、噛むとスープとは別な系統の洗練された出汁が溢れ出す。存在感があって、メチャンコ美味いのである。これにはマジ感動したよ。
しかし、炙り鴨がそれらのハーモニーを致命的にブチ壊した。
口に入れた瞬間に直ぐ違和感を感じて、本能的に解った。傷んでて腐りかけているのである。その場で、よほど吐き出そうかとも思ったが、カッコ悪いので我慢して飲み込んだ。気分、最悪である。こんなもんを客に出すって言語道断だろう。全てを台無しにするダーク・インパクトな代物だ。
一応フォローしておくと、もし傷んでなかったら、それなりに評価されて然るべきものだとは容易に想像がつく。おそらく、前日に余ったモノの保存状態がよろしくなかったのであろう。

このラーメンの自分の印象を一言で纏めてしまうと、パンチがない。ドロドロ濃厚なラーメンは好きじゃないけれど、上品なラーメンもあまり好きではないのかもしれない。意外と自分のラーメンの好みのレンジは狭いのかもね。ようはラーメンほど各人の好みが分かれる食いもんはないものと思われる。だから。あそこは美味いけど、ここのは認めないなどという各人バラバラの意見が飛び交うのだろう。

結果、ディスりまくってしまったが、ゴメンやけど嘘はつけない。正直、これなら店主の弟が出した店、近鉄の難波(大阪難波)駅構内にある「なにわ麺次郎」の方がまだ旨いと思ったよ。



コッチもジャズが流れるお洒落系ラーメン屋である。




まあ、コチラでは貝だしの「金色貝そば」を食ったから、比べることじたいがフェアではないんだけどね。

さらに言えば、同じ福島ならジャンルは違うけど、個人的には鶏白湯麺が売りの「ラーメン人生JET」の方が好きかな。店を出て、正直そっち行っとけば良かったと思ったよ(ちなみに煮干しラーメンで有名な『烈志笑魚油 麺香房 三く』もあまり好きじゃない)。
もっと言うと、店を出た前、斜め隣にある「大洋軒」の唐揚げ定食を食っときゃ良かったと思った。行ったことないけど、その店は「第8回からあげグランプリ」中日本醤油だれ部門金賞を受賞してもいるのである。オラ、唐揚げフリークだかんね。
因みに唐揚げ定食は¥780である。それからすると、やはりラーメンが¥990って納得いかんなあ…。

帰って食べログの口コミ欄を見たら、何と大半の人が★5つとか4つを付けていた。皆の舌がオカシイのか、ワシの舌がバカなのかマジで悩んだよ。 しかし少数だが、★2つとか3つの意見もあった。読むと、スープが甘いとかワシの感想と近いものもあった。それで少しホッとしたよ。ワシのような感想を持った人もいるってことは、全く的外れな意見ってワケでもないからね。 とはいえ、世間の評価が高いのも事実だ。嫌味でもなんでもなく、行きたい人はワシの意見など無視して行かれるがよろしかろう。こんだけ評価が高いなら、かなり満足できる筈だ。
ワシは二度と行かんけどね。

                        おしまい

追伸
因みにあとで調べたら、店主は「金久右衛門 本店」の御出身のようだ。
金久右衛門といえば「大阪ブラック」が有名で、食べログ大阪ベストラーメン3年連続No.1(2009〜2011年)、関西1週間大阪ベストラーメン受賞、大阪ラーメン覇王決定戦 準優勝、東京ラーメンショー2012 第一幕優勝など数多くの受賞歴を持つ関西を代表する醤油ラーメン専門店である。
自分も本店と道頓堀店に行ったことがあるけど、納得の旨さだった記憶がある。でも醤油の甘さは記憶にない。たぶん九州や四国の醤油もブレンドして使っているのだろうが、ようは気になるか気にならないかは、味のバランスにもよるのだと思われる。気にならない程度の甘さはラーメンのスープには必要なのかもしれない。

スープには紀州鴨と阿波尾鶏の鶏ガラ、魚介のスープ、昆布だしが入っているらしい。一応ビンゴのようだが、古い記事も混じっているだろうから今もそうなのかはワカラナイ。現在は違っている可能性はあるだろう。真面目な店ならば現状に満足せず、日々スープも改良を重ねているからね。因みに或る記事には、ポルチーニ茸オイルも入っているとか書いてあった。全然ワカランかったけど。
醤油ダレは小豆島の醤油に数種の醤油をブレンドしているようだ。小豆島の醤油ならば、瀬戸内だから甘い可能性大だね。醸造元が分からないから何とも言えないけどさ。
いや、待てよ。小豆島は香川県だけど、たしか四国みたく醤油は甘くなかった筈だ。となると、このスープの甘さは醤油由来のものではないと云うことか…❓でも、あの甘ったるさは鴨ダシ由来ではないと思うんだよなあ…。だったら何なのだ❓ワッカリマセーン\(◎o◎)/

麺は、昔は森製麺に特注したものを使っていたようだが、現在は自家製麺。全粒粉と最近流行りの高級小麦「はるゆたか」もブレンドして使っているそうだ。そのわりには、あまり小麦の香りを感じなかったけど。

味玉は「赤うま卵(旨赤卵?)」という鹿児島の卵を使っているらしい。やはりブランド卵だったのね。

メンマは、無添加熟成メンマを4日間かけて戻し、鰹だしに一晩つけたそうだ。

炙り鴨の鴨ロースは和歌山県湯浅町「太田養鶏場」にて育てられた純国産紀州鴨で、藁(わら)で炙っているそうな

レアチャーシューは豚肩ロースを特製塩ダレに漬け、香ばしく焼き上げた後に低温でじっくりと火を通したみたい。

驚いたのは、香辛料として胡椒と祇園「原了郭」の黒七味が置いてあると云う記述が散見されたことだ。そんなもんはワシの目の前には無かったぞ。あったら、絶対に黒七味かけまくり必至であったろうに。誠にもって無念じゃよ。
しかしそれは昔の話であって、現在は置かれていないのかもしれない。もしかして、うちのラーメンは旨いんだから、何にもかけんなよって事かね❓客には味変する権利も自由も与えられないってワケね。それって餃子屋に何も調味料が置いてないのと同じじゃないか。味が付いてますのでそのままどうぞと言われても、飽きてくるから醤油やラー油、胡椒、酢をつけたい人だっているだろうに。せめて胡椒か山椒、七味のどれか一つくらいは置いて欲しいな。人間の舌は皆同じじゃないんだからさ。ブツブツ(ー_ー゛)
何か結局最後までディスりまくりで終わってしまったよ。店主さん、ごめんなさいね。バカ舌男の戯れ言だと思って許してつかあさい。

話は全然変わる。
実を云うと、ラーメンを食ったのは伊丹空港周辺にシルビアシジミの様子を見に行った帰りです。しかもミナミの難波からママチャリ🚲で。

【シルビアシジミ♂】


今年は発生が早かったようで、ゴールデンウィーク後半のこの日には既にボロ個体ばかりだった。おそらく4月下旬が適期だったのだろう。しかも1箇所を除いて個体数も少なかった。但し、晴れだったけど風が強かったから何とも言えない部分がある。風が強いと蝶はあまり飛ばないからね。
個体数が多いところは♀ばかりだった。バルボキア感染は継続して起こっているようだ。このバルボキア感染について知りたい方は、拙ブログ『シルビアの迷宮』の第三章 バルボキアの陰謀の回を探して読んで下され。URLを貼り付けるのは面倒なので、申し訳ないけど自分で探してね。
そういうワケだから、今回は1つも持ち帰らなかった。あまりにボロばっかなので早々と諦め、蝶の写真を撮っていた爺様とずっと喋っとりました。

帰りにスカイパークにも寄った。



関空なんかの画像をTVで見てると飛べない飛行機がズラズラと並んでいるが、そんな様子は見受けられなかった。通常通りとは言えないが、思ってた以上に飛行機の離着陸がある。

調度着いたところで、ボーイング777-200/-200ERの離陸が始まった。ラッキーである。現在の大阪空港ではジャンボ機は就航しておらず、こやつとボーイング777-300/-300ERくらいしか大型機は見られないのだ。



スピード、遅くねえか❓
ドタドタと重そうに滑走路を走ってゆくのを見て、よくこんな鉄の塊が空に浮かぶなと思う。小さい飛行機ならまだしも理解できるが、このクラスの大きさになると俄に信じ難い。飛行機嫌いの、あんな鉄の塊に乗れるかい云々の意見も解るような気がしたよ。

フレスコのカツサンド

 
11月にママチャリで伊丹にシルビアシジミ(註1)の様子を見に行った帰りに北浜に寄った。
目的はスーパー「フレスコ」に行って、カツサンドと京都の「ミスターギョウザ」が出している冷凍餃子を買うことだった。

 

 
ここのカツサンドがメチャンコ旨い( ☆∀☆)
時々、無性に食いたくなる。でもマイナーなスーパーゆえ(註2)、近所には無い。というか大阪市内では見たことがない。
というワケで、今回は事前に大阪市内にあるフレスコを調べてワザワザ寄ったのである。

このカツサンドを知ったのは四條畷のフレスコだった。
2018年のゴールデンウィーク、久し振りに四條畷にミヤマカラスアゲハ、スミナガシ、アオバセセリの様子を見に行った帰りに見つけたのだ。

 
【ミヤマカラスアゲハ 春型♂】

(2018.5.28 大阪府四條畷市)

 
数ある日本の蝶の中で、最も美しいと思う人も多い美麗種だ。

 
【スミナガシ 春型♂】

(裏面)

 
見た目も名前も渋くて美しい。
眼が青緑色なのも蜜を吸うストロー(口吻)が紅いのも、日本ではこの蝶だけだ。何かと素敵な奴なのだ。

 
【アオバセセリ 春型♂】

(裏面)

 
野崎観音から登り、尾根を縦走して四條畷に下りたので相当疲れた。だから、ご褒美に駅前でビールでも飲もうとスーパーに寄ったのである。

そこに、こんなポップがあった。

 
(出展『京都で暮らそう』)

 
「スーパーマーケット お弁当・お惣菜大賞」なんて賞が世の中にあるだなんて全く知らなかった。聞いたことがない。ちょっと胡散臭いような気もするが、何せ準大賞なのである。期待をそう裏切ることはないだろう。
値段も350円と安いし、買うことにした。

 

 
見よ、この分厚さを❗

 

 
渇いた喉にグビグビとビール(スマン、この日は発泡酒やった)を流し込む。で、おもむろにカブりつく。

( ☆∀☆)うんめえーっ❗
食べてみて驚いたのは、簡単に歯でスッと噛み切れたことだ。この厚さなのに肉が柔らかいのである。しかも変に脂っぽくない。かといってパサパサでもない。しっとりとしているのである。
ソースも旨い。甘辛さのなかにコクがあるのだ。
この値段で、このクオリティーは正直やるなと思った。
更に驚くべきは、このカツサンドには端っこが使われていないことだ。カツの厚さが全て同じなのである。
分厚いカツサンドは今やそう珍しいものではない。しかし、上から見たら分厚くとも、横から見たら下がスカスカだったりする。ようするにカツの端っこの丸い部分が使われているのだ。謂わば詐欺みたいなものなのだ。何度、騙された事か。イオングループの厚切りロースカツサンドなんて酷い。3切れ入っているのだが、まともなのは真ん中だけで、両端はボリュームに劣る端なのだ。ようは小さめのカツを三分割しているってワケ。
因みにフレスコのカツサンドの端っこの部分は、端っこだけ寄せ集めて少し安い値段で売っている。

その年の夏、シロシタバ(註3)の産地探索の折りにも買った。

 

 
この時は3個入り(¥498)のを買った。
昼過ぎから夜遅くまでの長丁場になる予定だったからだ。

 

 
夜間に駅に戻って来るので、この日は春とは逆に先にカツサンドを買ってから山に入った。
美味いのは勿論だが、背水の陣での探索だったので縁起を担いだというのもある。カツ=勝つというワケだ。
お陰さまで、大勝利だったよ。

あまりにも旨かったので、数日後の再訪の折りには合流予定だった小太郎くんの分も買っていった。

 

 
今年2019年も買って、山へ登った。

 

 
この山には、その後もう1回入ったのだが、その時は買えなかった。売り切れていたのである。それなりに人気商品だから、夕方近くには売り切れてるケースもあるって事だね。ガックリきたよ。

それ程このカツサンドが好きなのだが、1つだけ不満がある。辛子があんま効いていないのである。だからといって、わざわざ山にチューブの辛子を持ってゆくのはバカバカしい。かといって現地で買うというのも何か腹立つ。ようするに虫採りに行くのに、そういう煩わしいことはあまり考えたくはないのだ。

と云うワケで、今回は外で食うのではない。家で食うのだ。カラシなら冷蔵庫にある。思う存分に塗りつけてやる事が出来る。荷物がちょっとでも増えるのが嫌な人なのだ。

 

 
でや❓、思う存分という程ではないが、たっぷりと塗りつけてやったわい。
バクッといったるでぇー(*`Д´)ノ❗

ガブッ❗❗
辛っ❗鼻にツンときたよ。涙もちょい滲んだわ。
それをビールで流し込む。辛いが美味いねぇ。
あ~、でもソースが辛子に負けてるような気もする。バランスがやや悪い。( ̄ヘ ̄メ)ソースも増量したろか。
でも、思いとどまった。これ以上何かを加えると味のバランスがブッ壊れると思ったのである。
きっと辛子の量を減らすのが正解だな。
よし、これからは「551の豚まん」を買う時は辛子を多めに貰おう。で、それを貯めてやろう。
来年、四條畷に行く時は、その貯めた辛子持ってゆくのだ。さすれば、チューブみたくそう邪魔じゃない。
その際、キンキンに冷えたビールも持ってゆこ~っと。

                    おしまい

 
(註1)シルビアシジミ

 
シバ草原に見られる小型のシジミチョウで、絶滅が危惧されている。拙ブログに『シルビアの迷宮』と題した連載ものがあります。謎が謎呼ぶミステリーなので読んでみたい人はどうぞ。

 
(註2)マイナーなスーパーゆえ…
フレスコは京都府に本社を置く株式会社ハートフレンドが運営するスーパーマーケットで、京都ではマイナーではなく、ポピュラーな存在らしい。

 
(3)シロシタバ

 
主に山地に見られ、下翅の雪のような白が特徴的な大型蛾。飛んでいる姿は結構迫力がある。
現在、シロシタバについては執筆中。だが、上手く書けなくて懊悩、呻吟している。時々、呻き声を上げて、シャッシャッシャーと爪でガラス窓を掻きむしったりしておるのだ。

  

シルビアの迷宮 最終章

 
 最終章『さらば、シルビア』

 
大阪空港周辺のシルビアシジミがボルバキア感染しているなんて知らなかったから、とても驚いた(第三章『ボルバキアの陰謀』)。
でも採っても採ってもメスばっかという記憶が全然ないんだよなあ…。もしかして、もうとっくの昔に正常な性比に戻ってんのかあ❓
気になったし、前回訪れた時は♂が一つしか採れなかったしなあ…。しかも思った程には鮮度も良くなかった。あと青い鱗粉が発達した♀もまだ欲しい。
と云うワケで、11月13日に再び伊丹市を訪れることにした。

今回も前回と同じくママチャリで難波から伊丹を目指す。正直、相当遠い。ママチャリで移動する距離ではない。だから行く前からメゲそうになる。でも運動不足だし、途中クロマダラソテツの発生地も見つかるやもしれぬと考えた。たらたら二時間も漕げば、そのうち着くだろう。

今回はいつものポイントは、あえて外すことにした。
なぜなら毎年のように通ってるので、性比異常なんて特にないと知っているからだ。それに前回は3頭しか見かけなかった。おそらく今回も少ないだろう。そもそもが、そんなんじゃ性比異常の調査もヘッタクレもなかろう。そこで、前から居る事は知ってたけど、人が多いだろうから今まで避けていたポイントへ行くことにした。

いつものように先ずは飛行機の着陸を楽しむ。

 

 
これだけ近くで飛行機の着陸を見られる場所は他にあんまり無いと思う。CMでも使われてたしね。
キューン、ゴオーッ❗何せ飛行機が物凄く近くの真上をスゲー迫力で通るのだ。通過したと同時に大きな砂塵が舞うくらいなのだ。

 

 
ひとしきり見て、満足したところでポイントへと移動する。キューン、ゴオーッ。

何やかんやで結局着いたのは、正午前だった。
寄り道をアチコチしたとはいえ、二時間半もかかってしまったなりよ。

 
早速、シルビィーちゃんをゲット。

 

 
相変わらず、何て小さいんざましょ。

 

 
腹のぷっくり感からすると、♀だね。
えー、環境はこんな感じです↙。

 

 
いわゆるシバ型草原というやつだ。
草刈りした人為的な環境だけどね。でも草刈りがされないと、シルビアは生きてはいけない。ほったらかしにすると、あっという間に雑草ボーボーなのじゃ。草丈が高くなると、幼虫の食草であるシロツメクサ(🍀クローバー)やヤハズソウが雑草軍団に負けてしまい、シルビアもそれと共に姿を消してしまう。ここでは、人間様々なのだ。放置するだけが自然保護ではないのだよ。ある種の植物や昆虫にとっては、人為的な環境が保たれないと生存できないのである。

シルビアはここを地を這うように飛ぶ。
しかもチビッコでそこそこ速いから、時々見失う。

試しにスマホで生態写真を撮ってみることにした。
地這いシジミをゆっくりと追いかけ、止まるのを待つ。

止まって直ぐに開翅した。また♀だね。
日光浴をしているのだ。ちょっと愛らしい。

 

 
アハハ( ̄∇ ̄*)ゞ、全然ピント合っとらーん。
スマホで虫を撮るのは至難のワザだ。相当至近距離まで近づかないとピントが合わんのだよ。
這いつくばって撮ったのに、何か腹立つなあー。
しかも中年のブサいくカップルの訝しげな視線に晒されてだ。ブサいくカップルのクセに蔑んだ目で見やがって。プンプンι(`ロ´)ノ。

今度は何とかピントがあった。
でも、このワードプレスのブログに画像を貼ったら、ナゼだか死ぬほど画質が落ちる。ピントが合ってても、ピンボケみたくになる。Facebookだと全然そんな事にはなんないぞ。この糞プロバイダーめがっ(# ̄З ̄)❗

 

 
ホラね。まあ、ワシの生態写真なんかに期待してる人なんて誰もいないから、別にいいんだけどね。
あっ、別によくないぞ。食べ物の回で「文章は良いのに、写真がどうしようもないくらい酷い」とかクソミソに言われたりするのだ。食べ物で写真がダメって致命的じゃないか。

 

 
腹が隠れて見えない。でもこの円い翅形からすると、コヤツもまた♀だな。

どうせスマホではロクな写真なんて撮れやしない。
キレイな♂と青い♀だけ選んで、少しだけ採って帰ろっと。

 

 
\(◎o◎)/ゲゲッ、また♀だ。
鮮度からすると、♂もいなくてはオカシイ。なのにボロの♂さえ飛んでない。もしかして、そうなのか?…。

その後も♀のオンパレードが続く。30頭以上は網に入れたけど、全部♀だった。
ここまでメスばっかだなんて、完全に性比がオカシイ。コレって、どうみてもボルバキア感染じゃなくなくねえか❓
まだ、悪虐ボルバキアは健在だったのね。ここの個体群は完全に奴のコントロール下にあるってワケだ。恐るべし、ボルバキア細菌❗

帰り際に、ようやく♂をゲット。

 

 
ボルバキアに殺されまくるオスも大変じゃのぉー。同じ性の身として、心から同情するよ。
でも、よくよく考えてみれば、コレってオスにとってみればウハウハのハーレムかもしんない。なんだよ、それって選びまくりの、やりまくり三助じゃねえか。(*´∀`)羨ましいにゃあ。

芝生に足を投げ出し、飛行機が轟音と共に着陸してくるのをぼんやりと眺める。
走り回る小さな子供たちに、傾きかけた秋の日射しがやわらかに降り注いでいた。

                    おしまい

 
 
一応、この日採ったシルビアの展翅画像を貼っつけておきます。

 
【シルビアシジミ♂】

 
前回の展翅よか、だいぶとマシになった。
リベンジだし、たった1頭だけだったから真面目にやりましたよ。

 
【シルビアシジミ♀】

 
低温期型の♀だね。
何か気にくわなくって、触角をいじる。

 

 
あれっ?、片方の触角が折れてる❓
大丈夫、大丈夫。折れてなーい。単に右の触角が針穴の跡とくっ付いて見えるだけだった。
でも、触角の角度は前の方が正解だったな。いらん事してもうた。

コレにて終了。もう今シーズンはシルビアに会いに行くこともないだろう。
さらば、シルビア。また来年会おう。

 
追伸

思いの外、長編になってしまった。
最初のタイトルは、ただの『シルビアジジミ』だった。当初は2、3分で読める軽いものを予定していたのだ。取り敢えずシルビアの様子を見に行って来ました~的な簡潔な報告文のつもりだったのさ。
しかし、シルビアの和名の由来が微妙に違うことから脱線が始まった。で、破滅的にどんどん長くなっていったのさ。その中でタイトルも次々と変遷してゆく。
先ずは『ラビリンス・オブ・シルビア』に変えた。何となく『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』というスコセッシの映画っぽいからつけた。(;・∀・)あで❓けどよくよく見れば、あんま似てねえな。もう、そんなの\(^o^)/雰囲気、雰囲気~。
でも何かシックリこなくて『迷宮シルビア』に改題する。それでもどこか納得いかなくって、ひっくり返して『シルビアの迷宮』にした。
しかし、過去にフタオチョウか何かの回で迷宮は使ったもんなあ…。タイトルに矢鱈と迷宮とつけたがる男だとは思われなくないし、ここでまたしても変転。『シルビアのミステリー』となる。しかし、ダサい。
あっ、「しかし」とか「でも」が多くてスマン。
で、またまた変えて、結局のところ今のタイトル『シルビアの迷宮』に戻った。そのかわり各章に分断して、それぞれの章に小タイトルをつけることにした。
けんど、執筆途中に何度また題名を変えてやろうかと思ったことか。けれども、それに代わるものがついぞ頭に浮かんでこなかった。そのうち、どんどん話は迷宮に入っていって、まあそれなりにタイトル的には相応しくなってきたし、まっ、いっか…となったワケ。
まあ、どうであれ、このクソ長い文章を読んで下さった方には感謝です。

余談だけど、最終回の小タイトルは最初『ザ・ファイナル』だった。でもそんなに劇的な展開になるワケでなし、大袈裟過ぎるからやめといた。けんど、いつか使ってやるからね。

虫の次回作は、またカトカラのシリーズに戻ります。
チキショー、年内にはカトカラの連載を終わらせてやるつもりだったのにぃ。それがまさかのシルビア城の迷宮で彷徨ってしまうとはね。何だか足元をすくわれたような気分だよ。
年内だなんて、もう絶対に無理やんけ(=`ェ´=)

 

シルビアの迷宮 第三章

 
 第三章『ボルバキアの陰謀』

 

 
シルビアシジミの話はまだまだ続く。
 
それにしてもシロツメクサ(🍀クローバー)を食草とするならば、もっと分布を拡げても良さそうなものなのに、何で❓ 謎だよね。シルビアシジミって、そんなに移動能力が低いのかよ❓

さあ、そろそろ坂本女氏の論文に戻ろうか。
他にも平井規央氏等のシルビア関連の論文を見つけたので(註1)、それと併せて要約しよう。

平井規央氏の論文によれば、大阪空港周辺で分布調査を行ったところ、空港周辺から離れれば離れるほど個体密度が低下するようで、1㎞も離れると殆んど見つからないそうだ。
そっかあ…、やはり極めて移動性が低いチョウなんだね。

シルビアとヒメシルビアの種間関係だが、遺伝子解析(ミトコンドリアDNA解析)の結果、かなりの相違があることが明らかになり、全く別系統の種であることが判明した。のちに形態の相違点も見つかり、それらが2006年の別種記載の決め手となったようだ。
形態的な違いは、シルビアはヒメシルビアよりも裏面各室の小黒斑が大きく、前後翅亜外縁の黒斑列が各室の小黒斑と同等に発達している点、後翅表面外縁の黒斑列はシルビアでは波状に、ヒメシルビアシジミでは線状となる傾向が強いなどである。

 
(出典『福岡の蝶』)

(出典『カーコとダンナのお出かけ写真』)

 
上がシルビアの裏面の外縁の黒斑列で、下がヒメシルビアのものである。
言われてみりゃ、そんな気もするが、正直言うと微妙だなあ…。このシルビアの個体は比較的波状だとわかりやすいけど、いくつか確認したら判然としない個体も結構ある。識別点としてはファジー過ぎないかい?
とはいえ、両種を並べたら、裏面をパッと見ただけで区別できちゃうんだけどさ。ようはヒメシルビアは小っちゃくて、裏面の斑点が小さくて薄い。それで充分かと思うよ。

ヒメシルビアは最近になって急速に分布を拡げているそうだ。一方シルビアは極めて移動性が低いワケだから、それも両者が別種であるという証明の一助になるのではなかろうか❓
そういう事を書いている文章を見た事ないけどさ。

両種間での交配実験も行われている。
大阪府産のシルビアシジミのメスと沖縄県八重山産のヒメシルビアのオスとを円筒型ネットに入れて配偶行動を観察した結果、ヒメシルビアのオスはシルビアのメスに強い関心を示し、交尾が成立した。その結果、いずれの母チョウから得られた子世代(F1世代)もオスのみが羽化し、オスの約半数のF1個体では幼虫期に発育が遅延し、孵化後50日以上経過しても蛹化に至らなかったという。
羽化したオスは両種の中間的な形質を示すそうだ。

 
(出典『Potential for interspecific hybridization between Zizina emelina and Zizina otis(Lepidoptera: Lycaenidae)』) 
左端がシルビアの♂。右端がヒメシルビアの♀。真ん中2つがハイブリッドの♂である(スケールバーは5mm)。

 
これらと未発表データ(坂本・平井ほか)の交配実験の結果、別種であることが裏付けられるという。ようはF2世代、特にメスがちゃんと羽化してこないから別種だってワケだね。

それでも両者を別種だと認めない人もまだ結構いるようだ。頑固だなあと思うけど、種の概念なんてものは、所詮は人による勝手な線引きでしかすぎないって事の逆説的証明だとも言えるかもね。

それはさておき、問題なのはシルビアがヒメシルビアのオスから求愛行動を受けることが明らかになった事だ。これはシルビアとヒメシルビアが同所的に生息する場合、つまりヒメシルビアがシルビアの分布域に侵入したとしたら、繁殖干渉が起こる可能性があるということだ。
実際、最近になってヒメシルビアが分布を北上させており、屋久島でも確認されるようになった。そのため、隣の種子島にいるシルビアとの交配の可能性が指摘されている。となると、遺伝子汚染が進み、シルビアが絶滅してしまうって事なのかな❓それとも、いずれ新種へと進化してゆくって事❓
何れにせよ、指摘されてから何年か経っているから、或いはもう心配されたことが既に起こっているかもしれないね。

また実験では、ヒメシルビアシジミのメスは個体によってはシルビアの食草ミヤコグサに興味を示し、多数の卵を産み付けたそうな。しかし、孵化した幼虫にミヤコグサを与えたところ、発育は遅延し、多くの個体が若齢期に死亡したという。
反対にシルビアの幼虫に、ヒメシルビアの食草コメツブウマゴヤシを与えて飼育したところ、25℃長日では 4齢を経過し、幼虫期間は15~18日。シルビアシジミとほぼ同様とあった。羽化したとは書いていないが、死亡したとも書いてはいないので、おそらく成虫にはなったのだろう。それにしても、これまた謎だな。一方は育ち、一方は育たないというのは両種間の関係性において、何らかの意味と云うか、示唆されるものがあるのだろうか❓
考えてみたけど、何にも浮かばないや(´▽`;)ゞ
いや待てよ。シルビアはヒメシルビアから派生した種で、元々コメツブウマゴヤシを食べていたものが分布を東アジアに拡大する過程でミヤコグサに食性転換したとは言えまいか。
ありゃ❓、でも遺伝子解析では別系統だとか言ってなかったっけ❓まあ遺伝子解析の結果が絶対ではないもんな。情報を鵜呑みにするのもどうかとは思う。

因みにヤマトシジミのオスもシルビアシジミのメスに強い興味を示すそうだ。
そういえば、昨今シルビアと比較的近縁なヤマトシジミとの交雑種(ハイブリッド)が出現しているというネット情報もあったなあ。両種の特徴がそれぞれ翅裏の斑紋や翅表の色彩等に現れているとか言ってなかったっけ…。

調べてみたら『ホタルの独り言 part2』というサイトの記事だった。それによると、栃木県の鬼怒川流域や千葉県の一部ではヤマトシジミとのハイブリットが出現しているそうだ。ハイブリッド個体は翅形や色彩はシルビアシジミでありながら裏面の班紋はヤマトシジミというものや、翅形と色彩は全くヤマトシジミでありながら裏面の班紋はシルビアシジミという個体がいるそうである。
元ネタの論文はどんなのだろう?と思って探してみたが、それらしき論文は見つけられなかった。
だが『蝶屋(tefu-ya)のブログ』というサイトに、ほぼ同じ文面があった。これはどうやら、そこからの引用のようだ。
ということは、元々は柿澤清美氏の発信って事か…。
となると、私見が強そうだから、ちょっと気をつけないといけないな。けど、もしこれが事実だとしたら、考えさせられるところはある。
そもそも種って、いったい何なのだ❓ 種の概念がワカンなくなってきたよ。

話はまだ終わらん。
 
論文を読んで一番驚いたのは、昆虫類に性比異常を起こさせる事で知られる共生細菌ボルバキア(Wolbachia)の存在だ。
きっかけは、2002年に森地重博氏が飼育した大阪空港周辺の個体の子世代が、全て♀になった事例であった。そこから、坂本女氏や平井氏はボルバキア感染の可能性を疑った。
ボルバキア感染といえば、タテハチョウ科のリュウキュウムラサキが有名だよね。サモアだったっけ(註2)? そこのリュウキュウムラサキは♀ばっかだと聞いたことがある。あとホソチョウの仲間なんかにも例があったと思う。いわゆる細菌によってオスが成長できなくなるチョウの病気だったよね。
それにしても、メスばっかで生き残ってゆけるのかね❓リュウキュウムラサキは♀だけで繁殖できる単為生殖(註3)ではなかったよね❓
そもそも単為生殖のチョウって、この世にいたっけ❓少なくとも自分は聞いた事がない。

ここで一応ボルバキア感染について説明しておこう。
ボルバキア(Wolbachia pipientis)は、節足動物やフィラリア線虫の体内に生息する共生細菌の一種で、特に昆虫では高頻度でその存在が認められる。ミトコンドリアのように遺伝子として母から子へ伝わり、昆虫宿主の生殖システムを自身の都合の良いように変化させることから、利己的遺伝因子の一つであるとみなされている。
また遺伝子解析では、昆虫を殺して体を乗っ取ることで有名なキノコの仲間、冬虫夏草と近縁関係にあることもわかっている。

ボルバキアって、如何にも悪い奴的な名前だよなあ。
『恐怖のボルバキア』『怪人ボルバキアの呪い』『寄生怪獣ボルバキア』『ボルバキア星人の逆襲』『悪辣ボルバキアの罠』『殺戮のボルバキア軍団』etc…。なんぼでも浮かぶわ。シルビア姫に👿悪魔の手が忍び寄るのら。God save the princess silvia. おぉ神よ、シルビア姫を守りたまえ~。

ボルバキア感染には、以下のような4パターンがある。
マジ、ドえりゃあー悪い奴っちゃでぇ~Ψ( ̄∇ ̄)Ψ

〈1〉オス殺し型
オスの卵のみを殺して、メスだけが孵化するようにする。オスを死滅させることで、メスが餌を独り占めする事となり、ボルバキア菌の繁殖には好都合になるという仕組みだ。
(おみゃーに与える飯はねぇだがやー(#`皿´)❗)

〈2〉単為生殖誘導型
メスがオスなしで、メスのみを産んで繁殖できるようにする。
(男なんて、この世に必要ありませんわ、( ̄∇ ̄)オホホホホホ…。)

〈3〉性転換型
宿主のオスをメスに変えてしまう。
(キャア~、世の中みんな総オカマ化よ\(^-^)/)

〈4〉細胞質不和合型
バルボキアに感染したオスが、感染していないメスの繁殖を妨害する。この場合、オスの卵は殺されるが、メスの卵は殺されることなく正常に孵化するため、世代を積み重ねてゆくと、感染したメスのパーセンテージが集団内で高くなってゆくという手の込んだ仕組みである。
(ジワジワ~、ジワジワ~Ψ( ̄∇ ̄)Ψ、真綿で首を絞めるようにあの世に行ってもらいまっせぇ~)

ムチャクチャ悪い奴やんけ。
でも、人間はもっとズル賢いかもしれない。
近年では、このオス殺し、特に細胞質不和合の仕組みを利用して、蚊が媒介するデング熱やジカ熱などを撲滅する試みが為されている。病の原因となるネッタイシマカを人工的にボルバキアに感染させて大量に野外に放ち、病原体の媒介効率を下げようと云うワケだ。
(;・ω・)ん❗❓、でも蚊のオスって血を吸わないんじゃなかったっけ❓血を吸うのはメスだけだよね。だったら、意味なくね❓

その疑問は扠て置き、話を本筋に戻す。

DNA解析で大阪空港周辺のシルビアのボルバキア感染の有無を調査したところ、採集された個体の多くで予想通りにその感染が認められた。確認されたボルバキアは2系統あり、性比異常が認められた母蝶からは共通のボルバキア系統が確認された。この事から、この性比異常は、ボルバキアによって引き起こされる「オス殺し」であることが明らかになった。

一方、もう1系統のボルバキアでは性比異常は確認されていないが、「細胞質不和合」などの寄主操作を行
っている可能性が考えられている。
兵庫県西部など近隣のミヤコグサに依存している個体群では感染が認められなかったようだ。この事から、昆虫の寄主植物利用の変化に体内の共生細菌が深く関わっているという報告もあるので、シルビアにおいても細菌による寄主操作によってシロツメクサに寄主植物の転換が行われた可能性があると推察している。
しかし、その後の実験では、まだそこまでは証明されていないようだ。因みに、千葉県や韓国においてもシロツメクサに依存する個体群がおり、ボルバキアの感染と性比異常を見つかっている。神出鬼没だぜ、ボルバキア。

それにしても、ボルバキアってのはエグいわ。
自身が生き残る可能性を高めるために、宿主をコントロールするだなんて酷いやり口だ。しかも、宿主が産んだ卵の半数であるオスを抹殺するだなんて、血も涙もありゃしない。オスを標的としたテロであり、ジェノサイドだ。男の敵だ。悪虐非道の限りを尽くす、とんでもねぇ野郎だよ。
ここまでくると、もはや謎とかミステリーの範疇じゃなくて、ホラーの世界だな。もうパラサイト・ホラーじゃんか。
人にも、そんな悪い人がいるかもしんないから、皆さん、気をつけてネ。特に若い女子は気をつけなはれ。世の中には、ボルバキア菌みたいな相手を自在にコントロールする悪い男がいるからネ。
嗚呼、アタシもヒモ男になりたい。

 
                     つづく

 
追伸
ここで漸くクロージングに入れると思ったら、また要らぬモノを見つけてしまった。なので、まだ話は次回へと続くのである。
いつまで続くんだ❓この出口の見えないシルビア・ラビリンスのループは❓
もしかしたら、ワシもボルバキア菌みたいなものに知らず知らずに乗っ取られていて、書き続けさせられているのかもしれない。でないと、こんなパラノイア的文章を書き続けている理由の説明がつかんよ。

 
(註1)他にもシルビア関連の論文を見つけたので

・坂本佳子(2015).シルビアシジミの生息域外保全に向けた保全単位の決定(昆虫と自然,50(2))
・坂本佳子 (2015).絶滅危惧種シルビアシジミにおける遺伝子構成とボルバキア感染(昆虫DNA研究会ニュースレター,23,11-18.)
・平井規央(2016).シルビアシジミのホルバキア感染と性比異常(昆虫と自然,51(1))

 
(註2)サモアのリュウキュウムラサキ

【Hypolimnas bolina ♂】

 
サモアとフィジーのリュウキュウムラサキは、rarikっていう亜種なんだけど、画像が見つけられなかった。太平洋のド真ん中だから♀は海洋型でいいのかなあ❓
リュウキュウムラサキの♂は何処でも同じような見た目だが、♀には地域によってヴァリエーションがある。
一応、この下に海洋型の♀の画像を貼っておくけど、サモアのがこのタイプなのかは自信がない。間違ってたらゴメンなさい。

 
(出典 2点共『Alchetron』)

 
サモアのリュウキュウムラサキはオス殺しボルバキアの蔓延が約百年近く続いていたが(Dyson & Hurst,2004)、その後数年でオス殺しに対する宿主の抵抗性遺伝子(優性の胚性因子:Hornett et al,2006)が急速に広まり,集団全体でボルバキアに感染しているのにも拘わらず、オス殺しが起きなくなったことがわかった(Charlat et al,2007;Mitsuhashi et al,2011)。
興味深いことに,オス殺しが起きなくなることによって出現する感染オスは非感染メスと交尾すると細胞質不和合を引き起こすことが明らかとなった(Hornett et al,2008)。つまり、ボルバキアが持つ細胞質不和合を持つ能力はオス殺しによってマスクされていたことになる。
ボルバキア、恐るべしである。

 
(註3)単為生殖
メスがオスと交尾をしなくとも、単独で受精卵を産んでメス世代を繰り返すこと。
因みに、リュウキュウムラサキは単為生殖ではござんせん。

 

シルビアの迷宮 第二章

 
第二章『シルビアン・ミステリー』

  
でも、論文(註1)をチラッと見てアレルギー反応が出た。
シルビアの謎に翻弄され、もうウンザリなのだ。真面目に読む気にもなれない。ここは一旦、種解説にでも逃げよう。ケースによっては、そのまま逃亡、クロージングになってもいいや。

 
【シルビアジジミ】
シジミチョウ科(Lycaenidae)、ヒメシジミ族(Polyommatini)、シルビアシジミ属(Zizina)に分類される前翅長8~14mmの小型のシジミチョウ。

♂の翅表は紫色がかった青藍色で、春と秋の型に比べて夏型は外縁の黒帯が広くなる。♀の翅表は夏型は黒に近い暗褐色。春型と秋型は翅表基部にも弱い青藍色斑が出る。図鑑等には書かれていないが、私見では秋型の♀は晩秋になると、その青が広がる傾向があるように思う。
裏面は灰白色~暗灰白色で、小黒斑が散らばっている。秋と春には暗灰白色になる傾向が強い。
普通に産する近似種のヤマトシジミと比べ、表翅がより青く(ヤマトは水色系)、前翅裏面の中室内に黒点が無いこと、後翅裏面の外側より3列目の黒点列の前より2番目の黒点が内側にズレるために黒点の形成する円弧がここで分断される点で区別される。
基本。図鑑からパクったけど(*`Д´)ノ!!!でーい、こんなクソ難解な説明、一般ピーポーにはワカランわい❗特に後半はチンプンカンプンじゃい❗❗
もう画像を貼っとくワ。そっちの方がよほど解りやすかろう。

 
【シルビアシジミ 春型♂】

(2017.4.26 伊丹市)

 
相対的に春型が一番大きく、秋型、夏型の順に小さくなる。但し、あくまでも相対的であって、個体差の大小は結構ある。秋でも、たまに春並みに大きい個体もいたりするからだ。

(/ロ゜)/あっ❗、ここでヤマトシジミの画像を貼ろうとして気づく。
ヤマトシジミなんて、何処にだっているドがつく普通種である。ゆえに殆んど展翅したことがない。となれば、数ある標本箱の中から探し出すのは大変そうだ。採りに行った方が余程早い。そう思い、近所の公園に行くことにした。ヤマトくんなんぞ、その辺の児童公園に行きゃあ、大概いるのである。一般ピーポーでも、すぐ見つけられるよん💕。それくらいド普通種なのさ。ある意味、最も都会の環境に順応した賢(かしこ)チョウかもしれない。

しっかし、都会で網出すのって恥ずかしいねー。完全に挙動不審のオッサンだ。大の大人が網持って都市部をウロウロしてるんだから、そりゃあ注目浴びますよ。
網を出すか出さざるまいか迷ってたら、天気が悪くなり始めた。おまけに風も出てきた。
(*`Д´)ノえーい、もうしゃあないわい。人々の好奇の目を頭から追いやり、カバンから網を取り出す。
シャキーン(=`ェ´=)ノ❗いざ、ゆかん。チビどもを殲滅してくれるわ。

しかし思いの外、飛ぶのが速い。風も強くて、網を振ろうとしたら、スッ飛ばされていったりもする。段々、腹が立ってきて、アミ持って追いかけまくる。
ε=ε=(ノ≧∇≦)ー〇 待てぇ~、コンニャロー。
もうオジサン、ヤケクソである。もはや挙動不審者として通報されても仕方あるまい。

頑張って、何とか数頭を確保。

 
(2019.11.11 大阪市浪速区)

 
シルビアほどではないが、小さい。
一応、画像を拡大しておこう。

 

 
たぶん、♂だな。
パリエーションがそれなりにあるので、別個体の♂も貼っておこう。

 

 
シルビアよか、地色が白っぽい。
同じ灰色でも灰白色って感じだ。

♀の裏は微妙に色が異なる。

 

 
メスは薄い黄土色なのだ。
とはいえ、きっとオスみたく微妙な色なのもいるんだろうなあ…。ヤマトなんぞマジメに採った事ないから、どんだけバリエーションの幅があるのかワカラン。

まっ、前回のシルビィーちゃんと見比べてくんろ。

 

 
地色だけでなく、斑紋も微妙に異なることが解るかと思う。

お次は表側だ。

 
【ヤマトシジミ♂】
(2019.11.11 大阪市浪速区)

 
シルビアと比べて、色が水色っぽい青なのだ。
例外もあるが、ヤマトの方が下翅の縁にある黒点が目立つ個体が多い。

 
【シルビアシジミ 春型♀】
(2017.5.2 伊丹市)
 
【同春型♀】
(2017.4.26 伊丹市)

 
【ヤマトシジミ♀】

  
♀も色が違う。
どっちかというと、ヤマトは青というか紺色っぽい奴が多いんだけど、例外もあったりするから注意が必要。ヤマトの方が青が暗い色のものが多いかな。

そういえば、変なのもいた。

 

 
晩秋になると青くなる低温期型の♀かなと思ったが、腹部は♂っぽい。たぶん、♂かな…。普段、ヤマトシジミなんて採らないから、ホント、ワケわかんねえや。

翌日、間違いなく低温期型の♀を見つけた。

 
【低温期型♀】

 
やっぱ、変だと思った奴は♂だな。質感が全然違う。

採って時間が経ってるのに無理に生展翅したら、触角が折れた。結構、青が広がっている良い型なのに勿体ない。
何か悔しいので、標本箱を探したら、低温期型のメスが見つかった。

 

 
古い標本ゆえか、色が褪せて紫色になっている。
でも、こんだけ青い領域が広いとヒマつぶしに探してもいいなと思えてくる。

 
【シルビアシジミ裏面】
(2017.4.26)

 
【ヤマトシジミ裏面】

 
ヤマトは後翅中央斑列が弧を描くが、シルビアは列が乱れる。また後翅外縁の斑紋の感じが違う。外縁の内側2列目の紋が大きい傾向がある。あんまし図鑑には書いてないけど、自分はどっちかというと、そこで判別している。但し、ヤマトでも紋が大きいものはいるので、そういう場合は他の部分も含めて総合的に判断している。

まあ、これで違いがワカラン人は何度説明してもワカランちゃよ。

ついでに今一度ヒメシルビアシジミの画像も貼っておこう。

 
【ヒメシルビアシジミ Zizina otis ♂ 】
(2013.2.24 沖縄県南大東島)

 
こうして改めて見ると、表側は殆んどシルビアシジミと同じだな。別種になった事に納得いってない人もいるだろね。両者の区別点を書いているものがあまり見当たらないから、尚更だろう。
両種の形態的な違いは、シルビアはヒメシルビアよりも裏面各室の小黒斑が大きく、前後翅亜外縁の黒斑列が各室の小黒斑と同等に発達している点、後翅表面外縁の黒斑列はシルビアでは波状になり、ヒメシルビアシジミでは線状となる傾向が強いなどだそうである。

 
【同♀】
(2013.2.24 沖縄県南大東島)

  
たぶん低温期型の♀で合ってると思うけど、間違ってたらゴメンなさい。通常は青色鱗が発達せず、黒褐色です。

 
【裏面】
(2013.2.23 沖縄県南大東島)

 
裏面はシルビアとかなり印象が変わる。
特に低温期型は、このように斑紋が殆んど消失しかける。
手持ちの通常型がナゼか見つからないので、画像をお借りしよう。

 
【裏面通常型】
(出典『双尾Ⅱ 変異・異常型図鑑』)

 
だいたいがこんなもんだ。シルビアと比べて斑紋が小っちゃくて薄いのだ。
それにしても、ネット上でヒメシルビアの展翅写真が殆んど見つからないのはナゼ? 小さ過ぎて、みんな展翅がまともに出来なかったりして…。ワテの展翅も酷いもんな。これだけ小さいと、肉眼で見て頭が歪んでるなんてワカランもん。しゃあないわいな。

この際、他の近似種も並べておこう。
小難しい言葉を並べたくはないので、各種の判別は印象で書く。細かい判別法は図鑑を見て下され。

 
【ハマヤマトシジミ Zizeeria karsandra ♂】
(2013.2.24 沖縄県南大東島)

 
ハマヤマトの♂は紫色だ。シルビアは青いので、それで大まかな区別はつく。だが、南大東島では最初のうちはどっちがどっちかワケわかんなかった。
いる場所も同じで、荒れ地など草丈の低いところで混飛しているので、ややこしい。飛んでいるのを見て、紫色っぽいのがハマヤマトの♂なのだが、どっちなのか微妙なのもいて、採ってみないとワカンナイのだ。
因みに、ヤマトは微妙に生息環境が違い、もう少し草丈が高いところを好む。南大東島では、同じポイントに3種同時にいたが、ヒメシルビア&ハマヤマトとヤマトのいる場所には明確な境界線があった。
また飛び方も違う。ヒメシルビアとハマヤマトは地面スレスレに飛ぶ地這い型だが、ヤマトはもっと高いところを飛ぶ傾向があり、スピードも緩やかだ。

 
【同♀】
(2013.2.24 沖縄県南大東島)

 
正直、♀は飛んでる両者の識別が全然出来なかった。結局、♂も♀も採って確認するしかないのだ。

 
【裏面】
(2013.2.24 沖縄県南大東島)

 
上翅の黒点がハッキリしていて、濃いのが特徴だ。他の近似種はこんなに黒くはなくて、もっと茶色っぽい。だから、採って最初に確認するのがソコ。

 

 
こうして上翅の黒点が目立つのだ。
しかしこれは♀で、♂となると微妙になってくる。

 

 
暫くジッと見てから、ようやくハマヤマトだと特定することができる。

 
【ホリイコシジミ Zizula hyiax ♂】(出典『chariot』)

 
採った事はあるのだが、標本を探すのが億劫なので、画像をお借りした。
これは、Zizula hylax attenuataというオーストラリアの亜種なのだが、まあ基本的にはそんなに変わらんからエエやろ。左の♂の色が実物よりも紫色なのが気になるけど(実物はもっと青っぽい)、許してくれ。正直、ホリイコもネットでググっても標本写真があんま無いのである。ヒメシルビアと同じく生態写真は山ほどあるのにね。たぶん小さ過ぎて、まともな展翅ができる人が少ないから、あまり表には出てこないのだろう。
英名は、Tiny Grass-blue(ちっぽけな草原に棲む青い蝶)っていうくらいだから、とにかく小さい。世界で最も小さな蝶の一つなのだ。
その矮小さが理解できる画像が見つかったので、貼っつけておこう。

 
(2013.10.4 石垣島)

 
ほら、笑けるほど小さいでしょ。
アッシは腕は長いけど手が小さい。ゆえにサイズ感的には、ホントはもっとチビッコです。

言い忘れたけど、日本で迷蝶として採集されるものはインドをタイプ産地とする原名亜種とされている。

近似種との区別点は他と比べて小さいことだが、ヒメシルビアやハマヤマトにも極めて小さな個体もいるので、注意が必要。他の区別点としては、♂の腹部が長いこと、翅形が幅広くて丸いことだろう。あと決定的違いといえば、裏面の前翅前縁に2個の褐色小点があることかな(他の近似種は0~1個)。でも、ボロや擦れた個体だと丸っきりワカランとです。

また寄り道になった。
シルビアの話に戻ろう。

 
《成虫の発生期及び幼虫の食餌植物》
4月下旬より11月頃まで年に数回(4~6回)発生する。幼虫の食草はマメ科で、主な食草はミヤコグサ。他にヤハズソウ、コマツナギ、ウマゴヤシ、シロツメクサ(クローバー)などにもつく。飼育する場合、インゲンマメとエンドウマメ(スナップエンドウ)が代用食になる。で、スナップエンドウで飼育すると巨大化するようだ。但し、無農薬のものでないと緑色の液を吐いて死ぬそうなので、お気をつけあそばせ。

越冬態は幼虫。
時々思うんだけど、幼虫で越冬するって寒くねえか❓
夜間の気温はマイナスになることだってあるし、ゼッテー寒いだろうに。卵や蛹の方があったかそうに思えるんだけどなあ。人間側目線からの、ただの思い込みでしかないのかもしれんけど…。
誰かこの問いに答えられる人おらんかのう❓

 
《学名》Zizina emelina

Zizina otis となっていたのを、emelinaに書き直す。あっ!、それで思い出したわ。ここの項って、第一章を書き始めて、さして間もなく先に途中まで書いてたんだわさ。だから学名は、Z.otisだとばかり思って書き始めているのだ。学名なんかは決まり事なので、比較的早めにチャチャッと草稿を書いてしまう事が多いのである。
まっ、いっか…。順番が相前後するだけで、内容は同じだ。このまま書き直さずに進めよっと。というワケで、先ずはヒメシルビアから。

学名の小種名「otis」の語源はギリシア語で「敏感な」の意かな? 古いドイツ語の「裕福な」ということも考えられるけどさ。また、これは人の名前のオーティスだとも考えられるからして、オーティスさんに献名された可能性もあるだろう。どれが正しいのかな?
ここはまた、平嶋義宏氏の『蝶の学名-その語源と解説-』の力をお借りするしかあるまい。

それによると「一般に男性の名」とあった。ということは、オーティスさんへの献名ってことかな?

同じくシルビアの「emelina」も人名由来。
女性名のEmeliaに因み、「エメリナの」の意となっていた。

おっと、属名のことをスッ飛ばしてるわ。カトカラの事をシリーズで書いているので、属名はいつも端折ってる癖がついてんだね。
Zizina(ジッジーナ)というジジイがどーしたこーした的な属名は、同じシジミチョウ科のZizera属を元に作られたもので、強いて言えば「Zizera様の」の意なんだそうだ。でもZizeraはそもそもムーアの造語で、単なる文字の組合せによるもので意味はない。ムーアって、語源がワケわかんねぇような学名を乱発しまくってるんだよなあ。ツマベニチョウなんかの属名も意味不明だもんな(註2)。

 
《英名》Lesser grass blue

これは「草原の、より小さなブルーの蝶」、或いは「草原の、より少ないブルーの蝶」という意味だろう。🐼ジャイアントパンダに対するレッサーパンダみたいなもんかな?ということは、ジャイアントパンダは大型の青いシジミ、例えばアリオンゴマシジミなんかを指してて、それよりも小さいって意かな。

他に「Common grass blue」というのもあるようだ。こちらは「草原のありふれた青い蝶」という意味である。
これはおそらくヒメシルビア(Z.otis)に宛てられたものだろう。確かにヒメシルビアはシルビアよりも更に小さいし、南西諸島には何処にでもいる普通種だ。
国外では…と、その分布を書きかけて筆が止まる。wikipediaを孫引きしようとしたのだが、「朝鮮半島南部、台湾、中国よりインド、南はオーストラリアにかけて東洋熱帯に広く分布する。」と書いてあるのを見て気づいた。これは分類がまだ細かく分けられていない時代につけられた英名に違いない。種ヒメシルビア(Z.otis)そのものにつけられたものではなく、謂わば、otis種群全体に対してつけられたものだろう。

ともかく種としての Z.otis(ヒメシルビアシジミ)とは反対に、シルビアジジミは何処にでもいるようなものではなくて、稀種に入る。一方はド普通種で一方は稀種となると、生態他の性向が全く違うという事だろう。両者が別種であると云うのも頷けるわ。
関西の蝶屋の間では、シルビアは大阪空港とその周辺というベリーイージーな場所にいるから軽視されがちだけど、全国的にみれば、かなり珍しいチョウである。
関東から九州の種子島まで分布するが、生息地は局所的で絶滅危惧種にランクされている。フェルトンが最初に見つけた栃木県のさくら市では天然記念物に指定されてもいる。
環境省RDBカテゴリでは、絶滅危惧ⅠB類(EN)に選定され、東京都、埼玉県、愛知県、岐阜県、滋賀県、和歌山県(註3)、高知県、愛媛県では絶滅、福岡県などその他分布域のほとんどの府県が絶滅危惧Ⅰ類に選定している。

もともと里山や平野部などの人間生活に近い場所に生息しているため、土地開発によって大きな影響を受け、1980年以降、全国的に著しく減少しているそうだ。
またその理由として坂本女氏は、本種は発生時期において各個体が羽化するタイミングの同調性が低くて成虫の寿命が短いこと、昆虫類特有の感染症の影響、移動性が低いために地域ごとに異なる遺伝子のタイプをもっていることから近親交配による弱勢が進み、各個体群ごとの遺伝的多様性が低下して個体数が著しく減少していると書いておられる。シルビーちゃんの未来は暗いねぇ~。

前述したが、幼虫の主な食草はマメ科のミヤコグサ。同じマメ科のヤハズソウやコマツナギも食草としている。
しかし、大阪空港とその周辺にはミヤコグサは無い。コマツナギも無いようだ。じゃあ、ここのシルビアシジミは何食ってんのかと云うと、主にシロツメクサ(クローバー)で、一部がヤハズソウ(何れもマメ科)を食草として利用している。シロツメクサは食草転換したとされ、近年になって利用されるようになったと言われる。
(# ̄З ̄)ホントかよ。単に見つからなかっただけで、昔から食ってたんじゃねーの❓
だいちクローバーに食草転換したとして、何故にその必要性があったのだ?食草転換した理由は何なのさ。誰か教えてくれよ。

たぶんシロツメクサを食草としているシルビアが見つかったのは大阪空港周辺が最初だったんじゃないかな。それ以後、千葉などでもシロツメクサを利用している種群が見つかっているようだ。
因みに此所の個体群は兵庫県南西部の個体群よりもサイズが大きいとの報告もあるようだ(2014’京大蝶研SPINDA19)。シロツメクサを食ったらデカくなるのかな?それともシロツメクサは沢山生えてるから、餌資源が豊富だから大きくなるのかな❓
それにしても、シロツメクサを食草とするならば、もっと分布を拡げても良さそうなものなのに、空港周辺にしかおらんのは何で❓ シロツメクサなんて「🍀四つ葉のクローバー」のクローバーなんだから、何処にでも生えている。それを辿っていけば、分布の拡大なんて楽勝なのにさ。謎だよね。羽があるのに、そんなに移動能力が低いのかよ❓

                     つづく

 
追伸
まだ終わらんのだよ。
自分でもウンザリなのだ。次回、益々ワケわかんないラビリンス世界にズブズブに嵌まってゆきます。

 
(註1)論文
『シルビアシジミの生活史と遺伝的多様性に関する保全生態的研究』(坂本佳子 2013’大阪府立大 博士論文)

(註2)ツマベニチョウの属名も意味不明だ
ゴメン、勘違い。平嶋義宏氏の『蝶の学名-その語源と解説-』によると、Hubner(ヒューブナー)の命名でした。彼もムーア同様に難解な創作学名が多いそうだ。
ツマベニチョウの属名 Hebomoia(ヘボモイア)は、おそらく神話由来で、ギリシア語のhebe(青春の女神という意)=青春+ギリシア語のhomos(同一の)。共通の+接尾辞-iaと書いてあった。
何だそりゃ❓造語ということは解るが、意味があんましワカラン。日本語は難しいのう( ̄З ̄)

(註3)和歌山県では絶滅
南紀に、おるけどなあ…。