スマの刺身に悶絶するの巻

 
少し前の話である。
スーパーKOHYOに行ったら、見慣れない魚の刺身が数点並んでいた。KOHYOはイオングループなだけに、あまり変わった魚は並んでいないので、最初はスルーしかけた。中トロ鮪だと思ったのである。しかしマグロとは僅かに質感が違うような気がした。
何じゃらほい❓と表示を見たら、「スマ」と書いてある。
(・o・)スマ❓何だったっけ❓
聞いたことがあると脳は反応しているのだが、直ぐにシナプスが繋がらなかった。たぶんコーヨーなんぞにそんなモンがあるワケないという固定観念が思考を邪魔していたのだろう。
程なく記憶が知識のゴミ山の中の1点にフォーカスした。
スマって、あの「幻の魚」とも言われているスマの事か❓
スマの刺身はメチャメチャ美味いという噂は随分前から耳には届いてはいた。しかし「幻の魚」と称されるだけに、中々お目にかかる機会がなかった。それが、まさかこんなところで出会えるとは予想だにしていなかったのだ。

 

 
養殖とあるが、この際もう関係ないだろう。とにかく、どんな味かを知りたい。
それに養殖に成功していたと云うのも、だとしても抜群に旨いと何処ぞに書かれてあったのも脳内にインプット済みだ。そこに一切の迷いはない。

安くなんねぇかなあと思ってたら、直ぐに目の前で半額シールが貼られた。ダブル(◠‿・)—☆ラッキーである。

パッケージの蓋を開けて、ニタつく。
このビジュアル、見るからに旨そうだ。艶(つや)っぽくて、エロティシズムが、しとどに溢れ出している。おたく、ビチャビチャですやん。官能的で、もう見てるだけでも昇天しそうだ。久し振りにエレクトする魚に巡り会ったよ。

織部に盛るか信楽焼に盛るかで悩んだが、土物(つちもの)では失礼だ。ここは高貴さを湛えた有田焼のベッドに横たえるとしよう。ケケケケケψ(`∇´)ψ、じゅる。オジサン、唾を呑み込む。

 

 
見た感じ、マグロとカツオの合の子みたいだ。
質感はトロカツオに近いが、色は赤黒くなくて中トロに近いものがある。🎵フォンティーヌ、なんと艶(なま)めかしいピンクざましょ。
オジサン、もう我慢できない。バルトリン氏腺液、ダダ漏れ気分じゃよ。やおら、箸で乱暴に引っ掴み、たまり醤油にドブンとつける。冒涜だ。綺麗なピンクが黒い醤油まみれになる。穢してやった感にリビドーが屹立する。劣情と背徳感とが錯綜する忘我の喜びに溢れつつ、口に放り込む。

(☆▽☆)♥️あふ〜ん。
体をクネクネさせて、身悶えする。
そして、中空に向けて渾身のパンチ👊💥を繰り出す。
うっめぇ━━━━(≧▽≦)━━━━❗❗

想像を超えて身質は柔らかく、キメが細かくて繊細だ。そして噛むと直ぐに口の中で蕩(とろ)け、旨みがドバドバと口じゅうに溢れ出して蹂躙してくる。甘い❗ そして最後に微かな酸味が鼻腔を心地良く抜けてゆく。
(´ω`)メチャメチャ美味いやんけー❗❗

見た目どうりに食感はトロカツオに近いが、より柔らかい。そしてカツオみたくクセのあるワイルドさはない。どちらかと云うと、やや中トロ寄り。しかも極上クラスのモノの味だが、にしては筋張ったところはなく、身質の繊維が細かくて、しっとりとしている。味は微妙にどちらとも違うのだ。謂わば、両者のエエとこ取りなのである。
オジサン、一発で👼昇天。天に召されましたよ。
以後、愛欲に塗(まみ)れたかのように貪り食う。

世の食いもん好きの皆様、スーパーでも居酒屋でもいい、もしも見掛けたら、少々高くとも何が何でもトライですぞ。

一応、種の解説もしておく。
例によって、ぼうずコンニャクさんの力を主にお借りして編集しやす。

 

(出典『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』)

 
パッと見は、ほぼカツオちゃんである。
スマにしろキツネガツオ、ソウダガツオにしろ、カツオ系の魚は全員が美味なんだね。中でも断トツだろう。

スズキ系スズキ目サバ亜目サバ科スマ属に分類される大型魚。大きなものは体長1m前後、体重10kgに達するが、日本で見かけるものは50cm〜60cm程度のものが多い。体型はカツオなどと同様の紡錘形で鱗は眼の後部・胸鰭周辺・側線周辺にしかない。
名前の由来は、カツオの縦縞に対して「横縞鰹」の意味で「しまがつお」と名付けられたものが「スマガツオ」に変化したものとされる。
なお、漢字は「須満」「須万」「縞鰹」が宛がわれている。

ぼうずコンニャクさんの味の評価も5つ星だ。

魚貝の物知り度 ★★★★ 知っていたら達人級
味の評価度 ★★★★★ 究極の美味

脂の乗りが良く、漁獲場所や季節によってはマグロを凌ぐのではと囁かれているほどなんだそうな。
身はカツオに似た赤身で、秋に入って水温が低下すると脂肪を蓄えて白みを増し、鮮やかなピンク色の身になる。

 
【地方名】
ワタナベ(千葉県)、スマガツオ(東京都)、キュウテン(八丈島)、ホシガツオ(高知県)、ヤイト・ヤイトガツオ(西日本各地)、ヤイトマス(和歌山県)、ヤイトバラ(近畿地方)、オボソ(愛媛県愛南町)などがある。
「ヤイト」の異称は、胸鰭下方の腹部に複数ある黒斑を灸の痕に見立てたのが由来。

 
【分布】
インド洋・太平洋の温帯〜熱帯にかけた海域に広く分布する。
日本では千葉県外房、相模湾〜屋久島の太平洋沿岸、北海道日本海側せたな町、兵庫県浜坂など日本海側〜九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、及び琉球列島沿岸、小笠原諸島に分布する。
国外では朝鮮半島南岸、済州島、インド・太平洋の温帯・熱帯域に生息する。

 
【生態】
肉食性で、魚・甲殻類・頭足類などを捕食する。
カツオほどの大群は作らずに単独か小さな群れで回遊し、南西諸島・小笠原諸島沿岸では通年釣れるが本州太平洋岸では8〜10月に釣期が限られる。相模湾・駿河湾ではソウダガツオ類の群れの中から稀に釣れる程度で、まとまって漁獲されないことから、沿岸の表層をカツオ・ソウダガツオ類・ハガツオなど他のカツオ類に混じって回遊していると考えられている。
産卵期は日本沿岸では夏だが、南方ほど長くなり、北赤道海流沿いでは冬期を除く8か月にわたって産卵が行われる。特定の産卵場は持たず、水面に浮く性質の卵を産む。餌が乏しい外洋域では、約1日で孵化した稚魚は一緒に生まれた兄弟を共食いするという。
寿命は約6年。成長が早く、満1歳で1kgに育ち、満2歳で成熟する。カツオの仲間としては好沿岸性で、島嶼部では磯際まで回遊する。

 
【漁獲法】
カツオ・マグロ・シイラなどを狙った釣り、延縄で漁獲されるほか、巻網、定置網などの沿岸漁業でも混獲される。
フィリピン、マレーシア、パキスタン、インドなどでは重要な漁獲対象となっており、1990年代には年間10万トン前後が水揚げされている。
個体数が少なくて本種単独では大群を作らないため、専門に狙う漁はないが、カツオ・ソウダガツオ類に混じって釣れることが多く、それらと同様に活イワシの泳がせ釣り、一本釣り、ルアー釣りで釣れるほか、島嶼部では磯・防波堤からのカゴ釣り、泳がせ釣りでヒラマサの外道として釣れる場合もある。

 
【旬】
旬は一般的に初秋から春にかけてが旬と言われている。しかし『ぼうずコンニャク市場魚介類図鑑』では冬から夏としている。また夏の産卵後以外あまり味が落ちないとしている。なお、大きい方が美味とされる。

 
【市場での評価】
市場での評価は高く、高級魚として名高い。
季節にもよるが、2キロを超えるものは1キロあたり1500円、時に2000円を超す高値になることもあるようだ。高級魚として名高いノドグロ(アカムツ)の市場価格が1キロあたり1000円後半から2000円台みたいだから、その価格に迫る高級魚だということになる。
関東にはあまり入荷がなく、知名度がまだ低いせいか、やや安いという。

 
【料理法】
熱を通してもあまり縮まない。アラからは良い出汁が出る。
選び方は触って張りのあるもの。硬いもの。
料理法は、刺身、たたき(土佐造り)、なめろう、竜田揚げ、角煮、焼き魚、潮汁、みそ汁、煮つけ、なまり節、炊き込み御飯、粕漬けなど多岐にわたる。
台湾では刺身、スープ、鉄板焼などに利用されている。食用以外にマグロやカジキなどの釣り餌として使われることもある。

尚、ぼうずコンニャクさんは刺身と焼き霜造りを特に絶賛しておられる。

(スマの刺身)
身はしっとりと柔らかく、口に含むと脂が溶け出して、甘い。酸味は少なく、魚らしいうま味がとても豊か。絶品としかいいようがない。

(スマの焼霜造りスマの焼霜造り)
口に入れるととろっとして舌の上に微かな酸味とうま味が強く感じられる。ほどよい食感も楽しめて美味。ここではしょうがとにんにくを添えたが、わさびでもいい。

 
【流通】
高知・室戸岬、鳥取・益田、鹿児島県、長崎県、三重県、和歌山県などで時折水揚げされるが、数が非常に少なく、足の早い魚のために都市部にまで出回ることは殆んどない。

釣りでは、黒潮の通り道の伊豆諸島及び小笠原諸島近海、和歌山県、高知県、鹿児島沖、日本海側の玄界灘や響灘周辺の海域、奄美諸島、琉球諸島などで狙えるそうだ。但し、スマ釣り専門の船はないみたい。カツオやソウダガツオ、ヒラマサ釣りの外道で釣られることが多い。

そんな幻クラスの魚スマだが、近年では愛媛県や和歌山県などで養殖も行われ始めており、味が良くて身質がマグロに近いことから、その代替品として期待されている。
とはいえ、まだ全国に出荷できるほどの水揚げ量ではないようだ。しかし養殖技術も上がってゆくだろうから、そのうち安定して流通し始めるだろう。って云うか、そう願いたいね。

                        おしまい