無性に鰊(にしん)そばが食べたくなった。
きっかけはスーパーで「ソフトにしん」が半額になっていたからである。
一応言っとくと「ソフトにしん」とは、従来からある「身欠きにしん(註1)」と比べて干し時間が短く、柔らかいものの事をそう呼ぶようになったようだ。
しかし、そこのメーカーのソフトにしんって苦くて美味しくなかったという記憶が残っている。なので取り敢えず他の買物を先にしようと、一旦その場を離れた。
買物をしながら、ぼんやりと久し振りに京都は南座の隣にある『松葉(註2)』の鰊そばを食べたいなあと思った。
京都では鰊そばはポピュラーで、中でも『松葉』のものが一番有名なのだ。そういや、あまり好きじゃなかった鰊そばの本当の旨さに初めて気付かされたのは此処だったよね。
(出展『ことりっぷ』)
でも、値段が高いんだよなあ。¥1300(税込¥1430)もする。
金ねぇし、コロナの緊急事態宣言中だし、京都まで行くのは考えものだ。この際、自分で完璧な鰊そばを作ってみるっぺか。
で、一回りして戻ってきたら、(ㆁωㆁ)ゲッ、オバハンが目の前でワシのソフトにしんをカゴに入れはった。
一瞬、『それ、僕のぉー』と言いかけたが、そんなこと言ったら、狂人のオッサンと思われること必至だ。黙って見送る。
……(-_-;)マジかよ。一周回って漸く意を決して買おうとしただけに何だかとてもショックだ。こうなると、どうしても鰊そばが食いたくなる。それが人情ってもんだ。
けど、そんなの世の女子から見れば、子供じみてるって言われんだろなあ…。ちゃんとした大人は、そんな事で意地になったりはしないのだ。けど、どうせ未成熟とオンナどもに言われてきたオトコだもんねー。今さら治りゃしないのだ。
その代わりっちゃなんだけど、性格は変わらなくとも知恵は以前よりかはついている。棚を見ると、30%引きのがあった。賞味期限を確認すると明日になっている。
(ΦωΦ)フフフ…、勝機を見い出したぜ、マドモアゼル。
経験上、となればコヤツも明日には半額になっている筈だ。だいたいソフトにしんなんてもん、世の主婦で扱える人なんて少ないのだ。たとえ翌日に半額になっていたとしても、直ぐに売れるものではないだろう。余裕で明日来ても売れ残っいる可能性が高い。
翌日、夕方にスーパーへ行ったら、へへへ(◠‿・)—☆、あったぜ。
<( ̄︶ ̄)>オラって、かしこい〜
早速、調理にかかる。
①ソフトニシンは骨や血合いがあれば取り除いておく。
で、鍋に入れて緑茶をドボドボ注いでヒタヒタにする。有れば緑茶のティーバッグでもいい。っていうか、その方が経済的だろう。でも、どうせローソンの百均で買った2L百円のお茶なのだ。贅沢に使っても心は傷まないのさ。
尚、緑茶を使うのは茶葉と煮ることで身欠きにしんの臭みが消え、柔らかく煮上がるからだす。
②中火にかけ、沸騰してきたら弱火にして20分程でザルに上げる。冷めたところで、本当は『松葉』みたく半身そのままにしたかったのだが、半分に切る。「泣いて馬謖を斬る」の苦渋の決断だが、どう考えても今ある家の丼には入りきらないと判断したのだ。
③鍋にニシンとめんつゆを入れて中火にかける。煮立ったら落とし蓋をして弱火で20分程煮る。ニシンが柔らかくなり、照りが出たら火から下ろしませう。
④そばを表示時間よりも1分短めに茹でる。
今回はディーンのボーカルが『マツコの知らない世界』で、イラッとくるくらいに褒めていた『小諸七兵衛』。それなりに満を持したつもりだ。
茹で上がったら、冷水で締める。
⑤別の鍋に『ヒガシマルうどんスープの素』を入れて、熱湯をかけ(300ml)、ニシンの茹で汁を適当に加えて味を調整する。
⑥そこに蕎麦を投入。ひと煮立ちしたら、器に移してニシンと水菜を乗せて完成。
マジで、(☆▽☆)美味い
ニシンも完璧に仕上がってる。全然、苦くなくて、程好い固さだ。味付けも松葉のものと遜色ない。
旨かったので、翌日も食べた。
ニシンに蕎麦を掛ける松葉流の盛り方にしてみた。
けど、見た目は一本ニシンと比べて、何だかみっともない。
それにあまりに素っ気ないので、『松葉』では別添えである葱を乗っける。
こっちの方が見た目は、まだしも良いよね。
味は水菜が葱にチェンジしている分、微妙に違うが、やはり美味い。
まあ、それほど手間もかからないし、是非お試しあれ。
おしまい
(註1)身欠きにしん
干物にしたニシンのこと。冷蔵庫がない時代の魚の保存方法の一つで、ニシンの内臓や頭を取り除いて天日干しにしたもの。
干物にすることで身が引き締まり、骨にそって取れやすいとゆうことから「身欠き」と言われるようになったという。
最近では乾燥度が強くて扱いずらい身欠きニシンよりも、短時間で戻すことができて手間もかからない一夜干し程度のソフトニシンの方が主流となっているみたいだ。
(註2)『松葉』
(出展『360@旅行ナビ』)
正式名称は『総本家にしんそば 松葉』。
鰊そば発祥の店とされ、創業から百五十年を越えている老舗である。
ちなみに隣に写っているのが、顔見世興行で有名な南座。歌舞伎役者も、よく出前を頼んでいるそうな。