台湾の蝶13 ヤエヤマイチモンジ

 
 
      タテハチョウ科10

      第13話『月の使者』

 
今回はタイワンイチモンジに引き続き、近縁種のヤエヤマイチモンジ。

 
【Athyma selenopora ヤエヤマイチモンジ♂】
(2016年 7月 台湾南投県仁愛郷黄肉渓)

 
日本の八重山諸島にもいるし、台湾ではド普通種だ。
見た目が日本のものと変わらないし、沢山いてウザいから真面目に採る気にはなれなかったんだよね。
だから、探したが♀の画像は撮っていなかったようで見つけられなかった。沖縄のも無し。
と云うワケで、画像をお借りしまひょ。

 
【同♀】
(出展『臺灣胡蝶誌』をトリミング。)

この蝶もタイワンイチモンジと同じく雌雄異型で、メスの方が一回り大きく、羽に丸みがある。

 
展翅したものも並べておこう。

(2016年 7月 台湾南投県仁愛郷黄肉渓)

(2016年 7月 台湾南投県仁愛郷)

ボロだが、1頭だけ♀も採っていたようだ。
普通種だけど♀は♂ほど姿を現さないので、意外と狙って採れるもんでもないと思う。もっともヤエヤマイチモンジなんて、たとえ♀だってどうしても採りたい人なんていないと思うけど(笑)

♂は前回のタイワンイチモンジに似てるけど、赤い紋が無いので容易に判別できます。
と書いたところで、手が止まる。
ちょい待ちなはれ。赤い紋のあるヤエヤマイチモンジって居なかったっけ?どっかで採った事があるような気がするぞ。いや、あれはタイワンイチモンジ?
突然、頭の中がシッチャカメッチャカになる。

確かあれは2011年、初めて海外に蝶を採りに行った時だ。慌てて画像を探す。

(2011年 4月 Laos Vang vieng)

ごじゃりました。
赤がアクセントになっていて、中々にカッコイイ。
胴体に白線が無いから、タイワンイチモンジではないね。赤紋の位置もタイワンイチモンジとは違うからヤエヤマイチモンジだろう。色もより赤い。
コレって帰国後、師匠にヤエヤマイチモンジやねんでと教えられたんだよね。まさかヤエヤマイチモンジとは考えていなかったので、とても驚いた。と云うか、にわかに信じられなかった。日本にいる蝶でも、遠く離れれば随分と違った姿になるんだなと思った記憶がある。アジア全体からの視点で日本の蝶をみるキッカケになった蝶かもしれない。

 
参考までにタイワンイチモンジの写真も添付しておきましょう。

(2016年 4月 台湾南投県仁愛郷黄肉渓)

 
裏面の写真も無いので、図鑑から拝借しよう。
とは言っても日本産です。

(出展『日本産蝶類標準図鑑』)

タイワンイチモンジとよく似ている。しかし、斑紋も微妙に違うが、何よりも色が違う。より濃い焦げ茶色なので区別は比較的容易です。

 
【学名の由来と台湾での名称】
学名の小種名の「selenopora」は、月形の斑紋があるという意で、ギリシア語のselene(月)➕phero(担う、保持する)が合わさったもの。
何か月の使者みたいで、風情のある学名ではないか。
そう思うと、急に素敵な蝶に見えてきたよ。

台湾のものは亜種ssp.laelaとされる。
語源は『蝶の学名ーその語源と解説ー』には載っていなかったが、アラビア語にlaelaという語があった。
女性の名前に使われ、夜の美しさを表す言葉だから、イメージには合致するし、この辺が語源になっているのかもしれない。

台湾での名称は異紋帶蛺蝶。
雌雄が異紋のタテハチョウって事だね。
他に以下のような別称がある。
玉花蝶、小一文字蝶、小單帶蛺蝶、新月帶蛺蝶、臺灣小一文字蝶、臺灣小一字蝶、棒帶蛺蝶。

玉花蝶の玉花は、天然石(翡翠)の玉の事。装飾品です。翡翠は緑色なので今一つ解せないが、白い翡翠もあるには有るんだよね。
因みに、玉は中国語では美しさの象徴として使われることも多い。

小一文字蝶、小單帶蛺蝶、臺灣小一文字蝶、臺灣小一字蝶、棒帶蛺蝶は、全部横一文字の紋を表している。

新月帶蛺蝶は学名由来だろう。風情のある優雅な名前だ。和名にするとシンゲツイチモンジだ。ヤエヤマイチモンジも悪くないけど、シンゲツイチモンジの方が個人的には好きだね。

英名は「Staff Sergeant」。
タイワンイチモンジのOrange Sergeantと意味はほぼ同じで、二等軍曹(米陸軍、海兵隊)、3等軍曹(米空軍)、曹長(英陸軍)のこと。

 
【分布】
西は西北ヒマラヤより東はジャワ、ボルネオ島、日本の八重山諸島にまで至り、東洋熱帯に広く分布する。

(出展『原色台湾蝶類大図鑑』)

 
図鑑には次のような亜種が列記されていた。

▪Athyma ssp.selenopora 西北ヒマラヤ~シッキム
▪ssp.bahula アッサム
▪ssp.batilda トンキン(ベトナム)、ミャンマー、タイ
▪ssp.leucophryne 海南島(中国)
▪ssp.laela 台湾
▪ssp.ishiana 八重山諸島(日本)
▪ssp.ambarina マレー半島
▪ssp.amhara ボルネオ島
▪ssp.epbaris スマトラ島
▪ssp.jadava ジャワ島
▪ssp.gitgita バリ島

赤紋のあるタイプは、たぶん3番目のssp.batildaと云う亜種に含まれるのだろう。
台湾はssp.laelaという亜種。日本産はssp.ishianaとされる。亜種名は石の意であるが、この石は石垣島を指すものと思われる。

八重山諸島のモノも台湾亜種に含まれるとばかり思っていたが、違うんだね。知ってたら、もう少し真面目に採っていたかもしれない。
でも、どこがどう違うんだ❓

 
(出展『日本産蝶類標準図鑑』)

♂の翅表前翅端に近い白斑が台湾のものと比べて細まっているように見える。
けど、たしか沖縄のヤエヤマイチモンジって、春型と夏型ってのがあって、夏型は一番下の白斑が消失しがちなんだよね。こうなると、自分のような素人にはお手上げだ。同定する自信なし。
ところで、台湾にも春型とか夏型とかあるのかね❓
特に記述は無かったような気がするが、どうなんだろ?

♀は全体的に沖縄のものの方が白斑が大きいように思われる。他の写真でもそういう傾向が見られるような気がする。でも、こんなのは沢山の標本を検してでないと、何とも言えないんだよね。
まあ、交尾器が微妙に違うから亜種になってるんだろうし、発言はこれくらいにとどめておこう。

 
【生態】
台湾本土に広く分布し、海岸林から標高2500mまで見られるが、その中心は低中海抜だろう。
飛翔は敏速だが、すぐ地上に止まるので観察、採集はそう難しくない。
常緑広葉樹周辺に見られ、♂は低木の樹葉上などで占有行動をとり、♀は林縁、林間を緩やかに飛ぶ。
花蜜、樹液を好み、♂は地上で吸水しているものがよく見かけられる。
年間を通して見られ、数回の発生を繰り返す。
越冬態は不定で、卵、幼虫、蛹など様々なステージで冬を越す。

 
【幼生期および食餌植物】
『アジア産蝶類生活史図鑑』によると、トウダイグサ科のGlochidion rubrum ヒラミカンコノキ、アカネ科のWendlandia formosana アカミズキ、Mussaenda pubescens ケコンロンカ、M.parviflora コンロンカがあげられている。

因みに日本で食草として記録されているのは、アカミズキ、コンロンカ、ヤエヤマコンロンカなどのアカネ科。

台湾の文献では、以下の植物が食餌植物として記されていた。

風箱樹 Cephalanthus naucleoides
毛玉葉金花 Mussaenda pubescens
臺灣鉤藤 Uncaria hirsuta
嘴葉鉤藤 Uncaria rhynchophylla
水金京 Wendlandia formosana
水錦樹 Wendlandia uvariifolia

2番目はケコンロンカ、5番目がアカミズキだね。
1番目、3番目、6番目は和名は無いが、アカネ科の植物。4番目はカギバカズラ。これもアカネ科だ。
ようするに幼虫はアカネ科の植物を広く食すのだろう。きっと食性が広いから繁栄していて、普通種なんだろね。

それでは恒例の幼虫のおぞましき姿の登場っす。
今さら遅いけど、閲覧注意ですぞ。

(出展『圖録検索』)

トゲトゲくんだ。
でも、タイワンイチモンジみたく老熟した奴が黄色くならないから、まだ気持ち悪さはマシだよ。

お次は蛹くん。

(出展『圖録検索』)

タイワンイチモンジと同じくゼットン型だ。
けど横から見ると、ちと違う。

(出展『台湾生物多様性資訊入口網』)

コチラはタイワンイチモンジみたく空洞にはなっていない。
一応ここまでは日本のヤエヤマイチモンジと殆んど変わらないように思える。細かくは見てないから、御叱りを受けるかもしんないけど…。

そうだ。日本のヤエヤマイチモンジの蛹の画像も添付しておこう。

(出展『南島漂流記』)

基本的には台湾のものと同じ形だ。
ではなぜに添付したのかと云うと、光の辺り具合によっては金属光沢があるように見えるみたいなのだ。これはおそらく八重山産に限った事ではなく、台湾産でも同じかと思われる。

 
最後は卵。

(出展『圖録検索』)

タイワンイチモンジとさして変わらない。
後々出てくるミスジチョウのグループもこんな感じだから、両者は非常に近い関係であることがよく解る。
蝶に関しては、成虫よりか幼生期の方が類縁関係を知る上では重要なんだなと改めて感じた次第だすよ。

                  おしまい

 
追伸
たかだかヤエヤマイチモンジなんでサラッと終わらせるつもりが、意外と長くなった。この調子だと先が思いやられるよ。バカなことを始めたなと後悔しきりである。いつ挫折してもオカシクないです。

次回は最後のイチモンジチョウであるムラサキイチモンジの予定。
書くには、ちよっとすんなりとはいかないかもなあ…。迷宮に迷い込まない事を祈ろう。

台湾の蝶12 タイワンイチモンジ

 
      タテハチョウ科 9

    第12話『真なる一文字の紋章』

 
前回のオスアカミスジの回で、漸く台湾のイナズマチョウ族全種を紹介する事ができた。
しかし、連続でタテハチョウの事ばかり書いてきて、正直飽きた。
次々に疑問点が押し寄せてきて、そのせいで文章は長くなるし、時間もかかったから、すっかり疲弊しきってしまったのである。

だから、ここは気分を変えて他の科の蝶の事を書こうと思い、ホッポアゲハの事を書き始めた。でも半分ほど書き進めたところで、ハタと思った。
前回にイチモンジチョウ族の事にも少し触れたが、考えてみれば台湾のイナズマチョウ族6種のうち、何と4種(タカサゴイチモンジ、スギタニイチモンジ、ホリシャイチモンジ、マレッパイチモンジ)もがイチモンジという和名がついているのだ。
今後、真正のイチモンジチョウ族が登場した時に、もし両者が遠く分断して書かれていたら、知らない人にとっては混乱極まりないのではないかと思ったのだ。
だだでさえ、書いている本人がしばしば錯乱状態になってあらぬ方向に行ってしまうのである。極力流れは大事にしたい。このままイチモンジチョウの仲間も紹介してしまおう。

それにしても、和名って鬱陶しい。
たぶんタカサゴイチモンジとかは、最初に発見した人あたりがイチモンジチョウに似ているし、コイツはイチモンジチョウの仲間だろうと思ってつけたのだろう。
まあ、それは仕方がないとしても、イナズマチョウの仲間だとわかった時点で誰か発言力のあるお偉方が修正しろよなと思う。
そのくせ、和名がアホみたいに複数ある蝶も存在する。和名がよろしくないからと勝手に新しくつけるのだろうが、混乱の極みだ。素人は堪ったもんではない。
例えばアンビカコムラサキ Mimathyma ambica なんぞは、この他にキララコムラキとか、カグヤコムラサキ、ニジイロコムラサキ、シロコムラキ、イチモンジコムラサキと合計6つもの和名がある。学名が頭にインプットされていなければ、何でんのそれ?のワケワケメじゃよ。

【Mimathyma ambica アンビカコムラサキ♂】
(2011年 4月 Laos vang vieng)

これまた誰かお偉いさんが音頭をとって、どれか一つに統一してくんないかなあ。

早くも和名に対する悪態毒舌癖が発病してしまったが、続ける。
蝶採りを始めた当初は、学名そのままを頭につけた外国の蝶の和名に対して軽く憤りを感じていた。
ザルモキシスオオアゲハとかアルボプンクタータオオイナズマ、ベラドンナカザリシロチョウなんぞと言われても、初心者には下は何となく想像できても、頭についた名前からはどんな蝶なのか全く想像もつかない。横文字なんぞやめて、取り敢えずアホでも解るような和テイストな名前をつけろよなー(=`ェ´=)と思っていたのだ。
しかし、海外に出て蝶を採るようになって考え方が変わった。なぜなら、外国では和名なんて全く通じないのである。
例えばオオルリオビアゲハ Papilio blumeiを採りたいとする。でも現地でガイドに和名を連呼したところで、まず通じない。
コレがもしブルメイアゲハという和名がついていたならば、ブルメイと言えば簡単に通じる。つまり、海外では共通語として学名で呼ぶのが普通なのである。

【Papilio blumei ブルメイアゲハ】
(2013年 2月 Indonesia Sulawesi Palopo)

正直、外国の蝶はテングアゲハやシボリアゲハなど既に和名として定着していて秀逸なものだけを残して、他はみな学名を冠につけた和名でいいのではなかろうか?
だから、Mimathyma ambicaは、アンビカコムラサキ。それでスッキリすると思うんだよね。

とはいえ、和名を残すものと残さないものを振り分けるのは大変だ。喧々諤々で揉めるよなあ…。

何か不毛な事を言ってる気がしてきた。
いい加減、本題に戻るとしよう。

 
【Athyma cama タイワンイチモンジ♂】
(2016年 7月 台湾南投県仁愛郷黄肉渓)

♀は全然柄が違う。

【Athyma cama タイワンイチモンジ♀】
(2016年 7月 台湾南投県仁愛郷眉原)

雌雄異型の蝶なのである。
メスはオスと比べて一回り大きく、羽の形が全体的に円くなる。♂は一見して日本の南西諸島にもいるヤエヤマイチモンジに似るが、上翅にオレンジの紋があるので容易に区別できる。
そういえば♀は最初、オスアカミスジの♂かと思って必死に追いかけて採ったんだよね。
でも、何か違うなあと暫し考えて、あっ、タイワンイチモンジの♀なんじゃねえの?とようやく考え至ったのである。
台湾の蝶の事をろくに調べずに発作的に行ったので、こういうパープリン振りが多々あったのだ。
因みに、採集記はアメブロの『発作的台湾蝶紀行』第29話 「風雲急を告げる」の回にあります。

裏の画像も添付しておこう。

上が♂で、下が♀である。
裏は表ほど劇的には違わない。

学名の属名「Athyma アティーマ(シロミスジ属)」はギリシア語で、無気力な、元気のないと云う意味である。小種名の「cama」は、インド神話の神。あの古代インドの性の教典カーマスートラのカーマであろう。でもエロと何の関係がごさる?(-“”-;)ワカラン。
台湾のものはssp.zoroastesという亜種名がついている。ゾロアスター教と何か関係あるのだろうか?
それともその開祖であるザウスシュトラそのものを指しているのか?或いは預言者という意味が込められているのだろうか?
でも、台湾とゾロアスター教って関係ないよね?
これも、よーワカラン。

因みに『原色台湾蝶類大図鑑』では、学名の属名が「Tacoraea」になっていたので、また迷宮に迷いこむのかと思って、マジ(|| ゜Д゜)ビビった。
前述した近縁種ヤエヤマイチモンジやシロミスジなどもこのTacoraeaという属名になっていたから、正直また脳ミソが腐りそうになったよ。

しかし、コレは比較的簡単に解決がついた。
どうやら現在、Tacoraeaはシノニム(同物異名)になっているようだ。つまり、学名として使われなくなったと云う事だね。

あっ( ̄▽ ̄;)、多分、この学名をオスアカミスジの回でも使ったような気がするなあ…。
まっ、いっか…。忘れよう。

台湾での名前は雙色帶蛺蝶。
雙色というのは、二色を表し、二つで一組になるという意味みたい。中々、考えた名前である。
でも、帶という字がついてるな。という事は二色のツートンカラーの帯を持つタテハチョウって意味か?
ケッ(=`ェ´=)、途端に何だかつまらねぇ名前に見えてきたよ。

他に臺灣一文字蝶、臺灣單帶蛺蝶、臺灣一字蝶、圓弧擬叉蛺蝶、分號蛺蝶という別称もあるようだ。
台湾も一つの蝶に沢山の名前があって、面倒くさそう。さぞや不便じゃろうて。
臺灣一文字蝶は和名をそのままの訳したものだね。
臺灣單帶蛺蝶は単帯とあるから、オスに焦点をあてた名前ってことかな?
臺灣一字蝶は、まんまである。
圓弧擬叉蛺蝶は直訳すると、円い弧が二股モドキのタテハチョウってことになる。たぶん♂の斑紋を指しているんだろうけど、今一つピンとこない。
分號蛺蝶は、オスとメスの柄が別々という意味で使われているのであろう。

英名は、「Orange Staff Sergeant」。
訳すと二等軍曹(米陸軍海兵隊)、或いは3等軍曹(米空軍)となる。それほど敬意が払われてないね(笑)

(|| ゜Д゜)しまった…。こう云うどうでもいいような事に興味を持ってしまうから文章が長くなるのだ。

一応、標本写真も並べておこう。

はっ!Σ( ̄□ ̄;)、ここで気づいた。
ごたいそうに胴体にまで紋が入っているじゃないか。
ここで一度野外写真に戻ってもらいたい。
特に♂は白くて目立つから、名前のとおり正に一文字になっているではないか。
ん~、でも翅が左右均等になっていないから、今一つ説得力がない。ここはどなたかの画像をお借りしよう。

(出展『commons.wikimedia.org』)

これこそ、真なる一文字だ。
日本のイチモンジチョウなんて、これに比ぶれば屁だ。

【イチモンジチョウ Ladoga camilla】
(出展『STEP BY Step 自分らしさを』)

人の画像を拝借しといて何だが、胴体に白い紋が無いから、正確には一文字に繋がっていない。しかも、どちらかというとVの字じゃないか。
いっそイチモンジの看板を下ろして、ブイノジチョウにしたらどうだっつーの(# ̄З ̄)
ついでにタカサゴイチモンジとかのイチモンジもやめちまって、タカサゴイナズマにしちくりよー。

またまた本題から逸れたような気がするので、さくっと生態面を書いて終わりにしよう。

 
【分布】
台湾以外にも中国南部、インドシナ半島、マレー半島、海南島、アッサム、西北ヒマラヤなどに分布する。

(出展『原色台湾蝶類大図鑑』)

和名がタイワンイチモンジなれぱ、当然のこと台湾の固有種だと思っちゃうよね。それがこんなに広域に分布しているのだ。この誤解を生むタイワンイチモンジという名称もどうかと思うよ。他にもこういうタイワンとついてはいるが、台湾以外にも分布している蝶が結構いるんだよね。どれくらいあるのかな?試しに挙げていこう。

タイワンビロウドセセリ、タイワンアオバセセリ、タイワンキコモンセセリ、タイワンキマダラセセリ、タイワンチャバネセセリ、タイワンオオチャバネセセリ、タイワンジャコウアゲハ、タイワンタイマイ、タイワンモンキアゲハ、タイワンカラスアゲハ、タイワンモンシロチョウ、タイワンシロチョウ、タイワンスジグロシロチョウ、タイワンヤマキチョウ、タイワンキチョウ、タイワンウラナミシジミ、タイワンイチモンジシジミ、タイワンミドリシジミ、タイワンサザナミシジミ、タイワンカラスシジミ、タイワンフタオツバメ、タイワンツバメシジミ、タイワンクロボシシジミ、タイワンルリシジミ、タイワンヒメシジミ、タイワンアサギマダラ、タイワンキマダラ、タイワンミスジ、ホシミスジ、タイワンクロヒカゲモドキ、タイワンキマダラヒカゲ、そしてタイワンイチモンジだ。

ハハハハハ(^o^;)、何と全部で32種類もいる。
名前にタイワンとつける必然性がないんだから、和名をつけ直すべきだと思うんだけど、どうして誰も言い出さないのかな?

原色台湾蝶類大図鑑によると、亜種は以下のようなものがある。

▪Athyma cama cama 西北ヒマラヤ~アッサム
▪ssp.camasa トンキン(ベトナム北部の古い呼称)
▪ssp.zoroasters 台湾
▪ssp.agynea マレー半島高地

 
【生態】
北部から南部にかけて普通だが、次回紹介予定のヤエヤマイチモンジよりかは少ないようだ。
台湾では4月~10月にわたって見られ、年数回の発生を繰り返す。
常緑広葉樹周辺に見られ、その垂直分布は「アジア産蝶類生活史図鑑」には300~2700mとあったが、台湾のサイトには海岸林等低中海抜となっていた。何れにせよ、その中心は500m前後から700mくらいだろう。
♂の飛翔は敏速。地上低く飛び、よく地面に羽を広げて止まる。♀は♂ほど活発ではなく、頻繁に草木の歯の表面に止まる。
♂♀ともに花や腐果に集まり、♂は地面に吸水によく訪れる。

 
【幼生期】
幼虫の食餌植物は「アジア産蝶類生活史図鑑」によると、トウダイグサ科のGlochidion lanceolatum キイルンカンコノキ、Glochidion rubrum ヒラミカンコノキ、Glochidion zeylanicum カギバカンコノキ。
台湾のサイト、「圖録検索」では以下のようなものがあげられていた。

菲律賓饅頭果 Glochidion philippicum
細葉饅頭果 Glochidion rubrum
裏白饅頭果 Glochidion triandrum

上から二つ目はヒラミカンコノキだけど、キイルンカンコノキとカギバカンコノキはあげられていない。
まあカンコノキの類を広く利用しているのだろう。
因みに1番目は和名が見つけられなかったが、たぶんフィリピン由来のカンコノキだろう。3番目はウラジロカンコノキ(ツシマコンコノキ)という和名があり、長崎県では絶滅危惧種Ⅰ類に指定されていた。

さてさて、いよいよ恒例のおぞましき幼虫の姿の登場である。閲覧注意ですぞ。とは言っても、既に視界に入っちゃってるとは思うけど(笑)

(出展 2点ともに『圖録検索』)

オスアカミスジの回にも添付した画像だが、その時は何でこんなに色が違うんだろうとは思いつつスルーした。書き疲れていて、調べるのが面倒くさかったのだ。

でも、その疑問が今回解けた。

(出展『世界のタテハチョウ図鑑』)

両方とも終齢幼虫なのだが、どうやら老熟すると黄色くなるようなのだ。絶対食われたくないという思いが、絶対食うなよな(#`皿´)に転化して、その強い気持ちがあの毒々しい色の警戒色を生んだのかもしれない。

蛹も特異な形だ。

(出展『世界のタテハチョウ図鑑』)

(出展『圖録検索』)

ウルトラマン最強の敵、ゼットンみたいな形だね。
タテハチョウの蛹は造形美の極致みたいなものが多くて面白い。穴が空いてるだなんて斬新すぎる。そこにいったい何の意味があるというのだ?全然、理由が想像つかないよ。

最後は卵。

(出展『圖録検索』)

これも造形美。宝石みたいだ。
どうやら卵塊を作らず、一つ一つ産むようだ。
同じタテハチョウ科の蝶でも、産み方がそれぞれ違う。
自然って不思議だなと思う。

                 おしまい