黄昏のナルキッソス 第四話

 
最終話 『蠱惑のナルキッソス』

 
2023年 9月23日

奈良から蛹と幼虫を持ち帰ったら、直ぐに近所のスーパーにダンボール箱を2個ほど貰いに行った。
一つは、その中で蛹を羽化させるためだ。もう一つは、幼虫に繭を作ってもらい、中で蛹化してもらうためである。ちなみに、ダンボールはお菓子のカールのチーズ味と湖池屋のポテトチップスのストロングサワークリーム味である。

一応、幼虫の食餌植物であるシンジュ(ニワウルシ)の葉も近所から取ってきた。木を這い回る幼虫のみを選んで持って帰ったから、たぶん摂食はせずにそのまま繭になるとは思ったが、念のために用意したのだ。

先ずは幼虫を移すことにする。
シンジュの枝の切り口を水中で斜めにカットし、濡らした脱脂綿で覆って、更にその上からアルミホイルで包む。それをダンボールに入れたら、幼虫を傷つけないように筆に乗せて移す。
幼虫は3頭だとばかり思ってたけど、4頭いた。
移し終えたら、ガムテープで蓋をする。部屋内に置こうと思ったが邪魔だし、だいち夜中に逃げ出して、体をモゾモゾと這い回りでもされたらコトだ。😱💦キショ❗ 想像しただけでも背中に悪寒が走ったよ。慌ててベランダに出す。

次は蛹である。箱の下にクッションがわりのティッシュを敷く。あとは其処に蛹を背中向きに置いていくだけである。なぜ背中側にするかというと、繭の中の蛹の向きと同じにするためである。
そして、さあ蛹を移そうとタッパーの蓋を開けた瞬間だった。
いきなり目の中に鮮やかな黄色と青が飛び込んできた。
😲w⁠(⁠°⁠o⁠°⁠)⁠w何じゃこりゃ❗❓

面食らって一瞬、何が起きているのか理解できなかった。でもどこかで見た覚えがある姿だ。そして、次の瞬間には全てを理解した。たぶんアレがアレになったのだ。

羽化が近そうだった蛹が、早くもタッパーの中で羽化し終えていたのだ。まさか、そんなに早く羽化するとは思ってもみなかったし、それに裏側だったので起こっている事の意味が余計飲み込めなかったのだ。ネット上でも、裏面画像は少ないからね。当然、脳にインプットされた情報量は少ない。ゆえに印象も薄い。よって直ぐには脳内シナプスが繋がらなかったのだろう。
でも、何で裏側❓ 何ゆえヒックリ返っておるのだ❓ それに飛んで逃げないのはナゼ❓
あわててタッパーを引き寄せる。それで漸く事態が飲み込めた。どうやらポケットティッシュの空袋に頭から突っ込んで動けなくなっているようなのだ。そういや蛹を傷つけまいと、クッションがわりにテイッシュを使ったのだが、全部使い果たしたんだよね。で、その空袋をそこいらに捨てるワケにもいかず、一番上に置いて、タッパーのフタをしたんだわさ。って事は、羽化して底から這い登ってきて、偶然にも空袋に入ったって事か。しかも裏向きで。だとすれば、すごい確率だ。殆んど奇跡に近い。
待てよ。でも何がどうなったら裏側になるのだ❓ 裏向きに袋に入ってゆくシチュエーションが全然想像できない。それとも表向きに入って行って、中でヒックリ返ったのか❓ けど、どうやったらヒックリ返れるのだ❓ どちちにせよ、謎だらけだ。

でも惜しいかな、この時の画像はない。なぜなら、この状態で暴れられでもしたら、背中の毛がハゲチョロケ、醜い落武者化してしまいかねないからだ。それはマズイ。救出には、一刻の猶予も許されない。写真なんか撮っているヒマなどない。そう思って、慌ててテイッシュ袋から脱出させたのだ。

真ん中にあるシミは、おそらく羽化後に出した体液であろう。だとすれば、蛹から脱出して羽も伸びきらぬうちに空袋に入ったのか❓ それとも完全に羽が伸びきってから入ったの❓
蝶の場合だと、体液を排出するのは後者だった筈だ。と云う事は、羽が伸び切ってからか❓
バカバカしくなってきた。それが、どうしたというのだ。詮索したところで何の意味もない。もう、どっちでもいいや。

一応、裏面展翅の画像を貼り付けておく。
コレ⬇が上のティッシュの空袋に入っていたと想像してみてほしい。

(シンジュキノカワガ Eligma narcissus 裏面)

かっなりインパクトがあるっしょ❓
蓋を開けたら、コレがバーンと目に飛び込んできたら、誰だって面食らうだろうし、直ぐには事態が呑み込めなかったのも御理解戴けるかと思う。

それにしても、蛹を得てからこんなに早く成虫に会えるとは思っていなかったし、まさか初めて見るのが裏側だなんて想像だにしていなかった。衝撃的な巡り逢いだよね。簡単に恋に落ちる典型的シチュエーションだ。

袋を開くと、彼女は慌てたようにパタパタと飛んで行き、ベッドの端に静止した。それを優しく手に移し、カーテンに止まらせた。驚くほど従順だ。素直な愛(う)い娘じゃ。

幸いにも背中はハゲチョロケにはなっていないようだ。

前脚を揃えて止まっている。何か律儀と云うか、お行儀が良くて可愛い。オラを惑わすだなんて、蠱惑のナルキッソスだね。

(⁠⁠´⁠ω⁠`⁠⁠)ほよ。前脚はモフモフだねぇー。
直ぐに殺すには忍びないので、暫く彼女を肴にして酒を飲むことにする。何か、ええ気分やわ。

あれから既に4時間くらい経っているが、段々と愛着が湧いてきて殺せないでいる。取り敢えず、このままスルーして眠りまーす。

 
2023年 9月24日

したら、翌朝には忽然と消えていた。
慌てて探し回る。しかし、何処をどう探しても見つからない。💦焦る。
部屋は閉め切っていたから、外には逃亡はしていない筈だが、どっかタンスの裏にでも潜られたらオシマイだ。引っ越しするまで見つからない。で、ボロボロになっている可能性大だ。もしそうなったとしたら、泣くに泣けない。情けなんぞ掛けずに、早めにシメておけば良かったと後悔する。

時々、思い出したように探し回るが、昼を過ぎても見つからない。まさか神隠しにでもあったのか❓そなた、いずこへ❓

さておき、小太郎くんに電話しよう。
昨日、現地から採集できた御礼のLINEを送ったら、すぐに返信が返ってきた。

「夜までやってライト焚いたら、成虫も来るかも?」

でも、そんな気力は無かった。
「考えたけど、あのクソ重たいポータルバッテリーを持って此処まで歩くのは辛い。なので今回は断念。あっ、明日付き合ってくれるなら、やるけどー。」と返した。その確認のための電話である。

現在、羽化した奴が行方不明中である事と、その成り行きを説明したら、笑って言われた。
「夜行性なんだから電気を消したら、そりゃ飛び回りますよー。」
そりゃ、そーだー。ツンマセーンm(_ _)m

幼虫の様子も気になったので、ベランダに出た。
したら、何とガムテープの端が剥がれており、フタが浮いておるではないか。慌てて箱を開けて中を確認する。
ひー、ふー、みー、…。アレっ❗❓ 一つ足りない。畜生めがっ、おのれ、逃亡しおったな。だが周りを見回すも、姿なし。
けど自分のミスだから仕方がないよね。まっ、いっか…。取り敢えず、ついでに洗濯物を取り込もう。

洗濯物を取り込んで、何気に窓側を振り返ってピンときた。部屋の中からは死角になっている部分がある。もしやと思い、窓に向かって目を凝らす。
ハッ❗いたっ❗ 何と真ん中の窓枠の裏側に止まっておるではないか。どうりで見つけられなかったワケだ。勿論、窓際のチェックを怠っていたワケではない。何度も捜索している。でも前に置いてあるテーブルが邪魔で、窓枠の裏側はブラインドになっていて見えなかったのだ。

向かって右側が部屋。左側がベランダである。

また、前脚を前に出していらっしゃる。
どうやら、それが基本姿勢のようだね。

あれっ❗❓ 前脚の左横から何か毛束のようなものが出ているように見える。性フェロモンを出すヘアペンシルみたいなモノかな❓ いや、でも蛾がフェロモンを出すといえば、尻先からだったよな。じゃあ、コレは何❓
まあいい。とにかくキュートだ。こんなにオラをヤキモキさせておいての、この可愛い子ちゃん振り。蠱惑すぎる。もう少し生かしておこう。

とはいえ、2時間後には気が変わった。
今夜は出かけるのである。留守中、夜になって飛んで、また行方不明になられても困る。意を決して捕まえにかかる。

でも止まっている位置が悪い。よく見えるであろう左側からは、タンスとテーブルが邪魔で毒瓶を被せようにも手が届かない。かといって右側からだとテーブルが邪魔だし、ブラインドになってて見えないのだ。正確な位置が分からなければ、毒瓶は被せられない。大体の位置が分かっているからといって、闇雲に被して的をハズしたら、背中がハゲチョロケになりかねないのだ。それはマズい。もしかしたら、コレが最初で最後の成虫になるかもしれないのだ。なぜなら他の蛹や幼虫が謎の病気に罹って次々と斃れてゆき、全滅する可能性だってあるのだ。だから、落武者化だけは絶対に避けたい。完品の標本が1つも手に入らないと云う事態は、何が何でも避けねばならぬ。

ここは慎重にいこう。
先ずは正攻法、刺激を与えて飛ばそうと思った。したら、何処か壁にでも止まるだろうから、あとは上から毒瓶を被せればいいだけだ。

けれども、窓を勢いよくガラガラと動かしても飛ばない。二度、三度と繰り返すも反応なし。
難儀じゃのう。棒を持ってきて、左側から突っつくことにした。

けど、突っついたら、
ボトッ❗、😲落ちた❗❗
で、動かない。普通なら飛んで暴れるのにナゼ❓
えっ❗、もしかして死んでるの❓

慌てて右側に周り、サッシの溝でヒックリ返っているのを広い上げようとするも、体勢が悪くて指では上手く掴めない。溝にスッポリ嵌ってしまっているのだ。
(´ε` )もー、難儀な奴っちゃのー。
ピンセットを持ってきて何とか拾い上げる。

それにしても、何で死んだんやろ❓
まさかショック死とか❓ そんな事ってある❓ まだ羽化してから24時間と経っていないのに、サドンデスとかって聞いたことがない。カゲロウじゃあるまいし、そんなに寿命が短いワケないだろ。

脚を広げて、腹部を内に折り曲げている。
手の中で、コロコロと転がすも動かない。どうみても死んどるなー。何がどうなったら、こうなるのだ❓
ハッ( ゚д゚)❗でもこのような形って、どこかで見た事があるぞ…。
あっ、そうだ❗ 今年の春、奄美大島に行った時にタッタカモクメシャチホコ(註1)が、同じような姿勢になってピクリとも動かなくなったのを思い出したよ。擬死ってヤツだ。天敵など捕食者から身を守るための方法の1つで、死んだふりをする事によって相手が姿を見失ったり、興味を失ったりするらしい。

15秒?、それとも30秒くらいだったろうか、テレビに目を遣りつつ暫く見てると、ゆっくりと動き始めた。
あら、やっぱり死んだふりだったのね。完全に騙されたよ。お見事です。ナルキッソスちゃんったら、そんな技まで身につけてるのね。驚きだ。あんさん、スゲーな。

面白いから、もう1回突っついてやると、また死んだふりになりはった。それを表に返してみる。

あっ、脚は途中までは鮮やかな黃色だが、先の方は黒っぽい。へぇー、ツートンカラーなんだ。脚までオシャレさんなんだね。
暫く、蘇生しそうになる度ごとに突っついてやった。オラを騙した罰である。
あとで知ったのだが、刺激を与えると再び擬死するが、その持続時間は次第に短くなり、5回を越すと反応しなくなるという(1974 上田)。反応しなくなるという事はなかったが、確かに、そうゆう傾向はあった。
お嬢、徐々に思ったんだろなあ。「このままじゃ、ダメかしら❓ もしかして、もうバレてる❓」。そういった感情の流れが、そのままインターバルの長さの推移に表れていて、それが手に取るようにわかった。そうゆうところもコケティッシュだ。

ちょっと気が引けたが、毒瓶にブチ込む。ゴメンね、小悪魔さん。

標本写真など従来の展翅画像の多くが、上翅を上げ過ぎてるような気がしたので、思い切って下げて展翅してみた。

こっちの方が自然で正しいのかもしれないけど、あんましカッコよくない。もう少し上げてもよかったかなあ…。
やり直そうかとも思ったが、でも時間がない。慌てて用意して家を出る。

 
小太郎くんとは、17時30分に近鉄奈良駅で待ち合わせていた。
辺りは、もう暮れなずみ始めている。すっかり、日が落ちる時刻も早くなったね。6月とかは、真っ暗になるのは8時近くだったもんな。

小太郎くんの車で昨日の場所へと向かう。歩きだと1時間近くかかるけど、車だと直ぐだ。たぶん10分程度だろう。文明の利器に感謝だ。

灯火採集するのに適した場所を探すが。此処だと云う場所が見つからない。比較的まだ良さ気な橋の袂に陣取ることにする。

午後6時半に点灯。

でも、待ち人来たらず。
アホほどカメムシが寄ってきただけであった。ロクな蛾は飛んで来ず、永遠の天敵スズメバチどもを駆逐する。悪いが対馬でツマアカスズメバチにしこたま刺されて以来、トラウマになっているのだ。次もし刺されたら、アナフィラキシーショックで、おっ死んでしまうかもしれんからね。悪いが、アタシャそんなに心は広くないのだ。

 
2023年 9月26日

幼虫に1頭逃亡されたので、昨日のうちにカールさん(ダンボール)を部屋に移しておいた。

一応言っとくと、下の湖池屋さんには蛹、上のカールさんには老熟幼虫が入っている。

シンジュの葉を取り除くと、既に2頭が繭を形成していた。
ダンボール箱に入れたのには理由がある。幼虫は周りにある素材を噛み砕いて、自身の吐く糸と混ぜ合わせて繭を作るからだ。

このように基本的には、シンジュの樹皮を顎で削って混ぜ合わせる。幼虫の顎は強靭で、時には土砂、腐蝕した鉄、塗料、モルタルの吹付け、コンクリートなどをも材料にしてしまうらしい。ならば、ダンボールなんぞは朝飯前だろうと考えたのさ。

だが1頭めはダンボールではなく、シンジュの葉を材料にしたようだ。シンジュの木に付いた繭とは趣きが違う。淡いグリーンで美しい。色紙とかを入れておけば、或いはカラフルな繭が出来るかもしれない。

2頭めも、シンジュの葉を利用している。だが、趣きは違う。葉を沢山使っているらしく、濃い緑色だ。とはいうものの、作りは雑い。上の方は葉っぱを使ってないし、途中で面倒くさくなったと云う感じだ。

尚、2つとも基本通りにダンボールの横壁に繭を作った。
遅れて3頭めも繭を作り始めていたが、なぜか底面であった。

あとで見たら、繭作りは全然進んでいなかった。中途半端にも、ここ迄で終わりのようだ。途中で力尽きたか、邪魔くさくなったのだろう。それにしても、めちゃくちゃ雑な作りである。スカスカじゃないか。
たぶん幼虫にも、それぞれに性格とか個性があるんだろうね。

ちなみに繭の完成には7〜8時間を要するそうだ。その後、前蛹を経て3日程で蛹化するという。

  
2023年 9月27日

転がしていた蛹から3頭が羽化してきた。

裏返してみて、腹端の形に2タイプがあることに気付いた。どちらかがオスで、どちらかがメスだと云うことだね。

(裏面A)

腹の先が∪字型になるのが特徴。そして、腹が全体的に太いモノが多いような気がする。あくまでも傾向としてだけど。

(裏面B)

腹端に縦にスリットが入っており、複雑な形をしている。交尾器だね。たぶん、コチラがメスだろう。ムラサキシタバなどカトカラの仲間の♀は、皆そうだからね。

【ムラサキシタバ♀】

(2023.9.2 長野県白骨温泉)

画像を拡大して戴ければ解ると思うが、我ながら触角がビシッと決まった完璧な展翅だ。


(2018.9.17 長野県白骨温泉)

腹端に縦のスリットが入っており、その先には産卵管らしきものが見える。
と云うワケで、画像の裏面Aが♂オスで、裏面Bがメス♀でヨロシイのではないかと思う。

とはいえ、間違ってたらゴメーン。ワシの雌雄の見立てが本当に正しいのかどうかはワカラナイのら。だって幾ら探しても、シンジュキノカワガの雌雄の見分け方は何処にも載ってなかったんだもーん。

と、ここまで書いたところで、ペンが止まる。でも、♂と思われる個体の方が、どっちかといえば腹ボテなんだよなあ…。つまり、沢山お腹の中に卵を抱えている可能性が高いように思えてきた。逆なんじゃねっ❓
そう思うと、スリットはアゲハチョウのオスの交尾器であるバルバ(把握器)にも見えてきた。ヤットコみたくガシッとメスの腹先を掴むのに如何にも適していそう形じゃないか。となれば、そっちがオスと云うことになる。

改めてアゲハの交尾器を見直そう。

(ナミアゲハ オス)

(同メス)

(出典 2点共『趣味のアゲハ館』)

何かコッチの方が、形的に合致してんじゃねーの❓
そう考え始めると、止まらなくなる。正しいのはコッチじゃないかという想いが強くなり。暫くの間、自分の中では雌雄が完全に逆転していた。
だがそのうち、段々また自分の見立てに自信が持てなくなってきた。その見立てだと、交尾器の構造的に何処かオカシイような気がしてならない。違和感が拭えないのだ。あんな形で、はたしてメスの腹端を掴めるのか❓ にしては、間が広過ぎないか❓
考え直そう。さんざん偉そうな事を書いておいて、もしも雌雄を間違えていたとしたら、大恥を掻くことになる。めちゃめちゃカッコ悪い。
よし、もう一度イチから調べ直そう。絶対に何処かからヒントが見つかる筈だ。

色んな言葉を取っかえ引っかえ入れ替えて検索し、漸く重要な手掛かりに辿り着いた。
『On the copulation mechanism of Eligma narcissus (Cramer) (Lepidoptera: Noctuidae)』(K. Ueda, T. Saigusa 1982)と云う英論文である。
和訳すると『Eligma narcissus(クラマー) (鱗翅目:ヤガ科)の交尾機構について』と云うタイトルになる。
「Eligma narcissus」はシンジュキノカワガの学名だから、つまりシンジュキノカワガの交尾について述べられている論文と云う事になろう。

そこに交尾器の図も載っていた。

論文に「male」とあったので、コレがオスだね。やっべー、大恥を掻くところだった。

そして、こちらは「female」とあるから、メスの交尾器だ。
(´ε` )危ねぇ、危ねぇ。一番最初の見立てで合っていたのに、わざわざ変えちゃってたって事だね。

コチラは交尾のメカニズムを描いだ図だ。こうして見ると、オスには左右に開くバルバ(左図下側↙↘)がちゃんとあって、こうゆう風に隠されていたんだね。とても解りやすい図で、納得したよ。

この流れで、ふと、蛹の段階で雌雄が見分けられるのではないかと考えた。早速、比べてみる。
しっかし、ワカラン。残りの蛹を検分したが、全部同じにしか見えんのだ。よくよく考えてみれば、そもそも雌雄が混じっているかどうかもワカランのだ。全部メスかもしれないし、オスかもしれんのだ。
なので後々、改めて抜け殻で比べてみた。

(抜け殻 背中側)

(抜け殻 腹側)

コレを見ると、当たり前だが背中側が割れて出てくるのだね。

コチラは、どちらかがメスで、どちらかがオスの筈だが、見たところ違いはない。但し、取り違えた可能性もある。その時はまだ、そこまで気にかけて回収したワケではないからね。

ズラリと抜け殻を並べてみる。コレだけあれば、絶対に雌雄が混じっている筈だ。

(⁠ノ⁠≧⁠∇⁠≦⁠)⁠ノ⁠ ⁠ミ⁠ ⁠┻⁠━⁠┻ワッカラーン❗
絶対どこかに性比を示す差異がある筈なのだが、ワシの眼力では見抜けなかった。尾端の形は、どれも同じにしか見えない。

今度は前翅を上げ気味に展翅した。

(シンジュキノカワガ♂)

(2023年9月 奈良市白毫町 蛹採集)

また自画自賛で申し訳ないが、我ながら美しい仕上がりだ。
やっぱコッチの方がカッコいい。
ようは、誰もが見て美しいと思えるモノが正解なのだ。

次は上と1頭めとの中間を意識して仕上げた。

(同♀)

コチラも悪くない。と云うか、一番このバランスが自然かもしんない。
触角はあえて真っ直ぐにはせず、蛾眉調にした。面倒くさいというのもあるが、邪悪な感じを出したかったのだ。
ありゃ❗❓それはそうと、コイツには後翅に青紋が殆んどないぞ。ほぼ消失しかかっている。こう云うタイプの画像は見たことがない。つまり異常型と言っても差し支えないのではないかと思う。

もう1頭は裏展翅にした。

(シンジュキノカワガ♂ 裏面)

表が美しい蛾だが、裏もまた美しい。個人的には、寧ろ裏の方がスタイリッシュなんじゃないかとさえ思ってる。なのにネットで見ても、殆んど裏展翅の画像が出てこないのは何でやろ❓
右側の真ん中の脚は、後で何とか整形するつもりじゃきぃ。

 
2023年 10月1日

次の週も奈良市にナルキッソスを探しに行った。
もっともっと欲しいと思ったからだ。完全に虜になっている。

今回は、ダイレクトに病院へ行くバスに乗った。病院の送迎バスではなく、路線バスの方ね。

先ずは蛹から探してゆく。

取り敢えず4つ確保。
まあ、それだけ採れれば良い方だろう。小太郎くんも言ってたけど、前回に来た時には、幼虫が鈴なりになっているような場所は無かったからね。

少ないながらも、まだ幼虫はいた。
今回は積極的に網を伸ばして採る。幼虫の下に網を持っていき、揺らしたり突いたりすると落下してくる。遂にこんな毒々しい幼虫を自ら進んで採る事になるだなんてね。いよいよ常人には理解不能の、アブノーマルな領域に足を踏み込んだな。コレでアタマおかしい人たちの仲間入りじゃよ。

基本的には蛇とか芋虫・毛虫類など脚が無いような系はオゾましいが、顔はパンダみたいでちょっと可愛い。


(出典『円山原始林ブログ』)

結果は蛹が4に、終齢幼虫が6頭。幼虫は全て終齢だが、そのうち約半分は黄色みが強いので、おそらく蛹化が近い老熟幼虫だろう。残りは、より色が淡くて明るい黄色ゆえ、まだ摂食が必要かと思われる。
因みに画像は、まだ摂食が必要な幼虫。側面が薄い黄緑色をしていることから判別できる。文献に拠ると、一般に夏の暑い時期の幼虫は黒化が強く、晩秋の頃の幼虫は色が淡いようである。

まだ摂食が必要と思われる幼虫の為に、シンジュの蘖(ひこばえ)から喜びそうな若葉を摘む。そして、幼虫が入ったビニール袋にバサッと入れて持ち帰った。

尚、各ステージの期間は、卵が6日。初齡幼虫は3日。2齡幼虫4日、3齡幼虫3日、4齡は5日。終齢が5日。そして蛹の期間が12〜14日間だそうである。と云う事は、卵から親になるまでは38〜40日間となる。意外に短い。
あと、孵化直後の初齡は白色で、2齡以降から黄色と黒の阪神タイガースカラー、いわゆる虎縞模様が次第に明瞭となる。また、3齡頃までは葉裏などで集団を形成するが、その後には分散するようだ。

因みに、此処ではシンジュの大木には付かず、殆んどが若木や幼木で発生していた。また、道路の東側の森には殆んどおらず、もっぱら西側の開けた場所にある木で発生していた。

帰宅して、蛹と老熟幼虫をそれぞれ分けてダンボールに移す。
摂食が必要そうな幼虫は、より大きなビニール袋を用意して針で細かな穴を開けて、そこに移した。コレだと、葉が萎れにくいと考えたからだ。中が蒸れて、幼虫が病気になるかもしれんけどー。

 
2023年 10月2日

翌日、前週のモノから1♀が羽化した。

こっちの画像の方が、腹端のスリットが鮮明に写ってるね。
更にその内側には複雑な構造物が有りそうだ。

展翅の方向性も決まってきた。

腹の真ん中が沈んでいたので、調整しなおす。

う〜ん、暫くはこのバランスでいこう。
飽きたら、また変えればいい。

 
2023年 10月3日

さっきからずっと、ダンボール内から『チッ、チッ、チッ…』と連続的に繭が鳴いている声がしている。何が起ってんだ❓
中を開けてみたら、1週間前に最初に繭になった奴の右隣で、老熟幼虫が新たな繭を作り始めていた。その振動に反応して最初の奴が鳴いているらしい。「迷惑だよなー」とでも思ってんだろなあ…。同情するよ。
体力を使い過ぎて羽化できなくなるんじゃないかと心配になったが、考えてみれば自然状態では繭が寄り添うように集団を形成するから大丈夫だろう。

あっ、黄色い幼虫の姿が透けて見えるね。
どうやらダンボールは材料にはしないみたいだ。今のところ、ダンボールを材料に使った形跡のある繭は1つもないのだ。
ちなみに右下に見える緑色のモノは、繭の外壁を作りかけた跡である。最初は其処で繭を作り始めたのだが、堤を少し作ったところで、どう云うワケか気が変わったようで、やめて近くの繭の隣に繭を作り始めたのである。ちなみに、どの幼虫も先ずは左側の外壁から作り始めていた。偶々かもだけど。
もしかしたら、途中でやめたのは、この外壁を作るのが面倒くさくなったのかもしれない。繭の隣に重ね合わすように繭を作れば、省エネで左側の工程の一部を端折れるのかもしれない。

 
2023年 10月5日

葉を摂食していた幼虫が、ビニール袋の中で繭を作った。
でも、葉は噛み砕かずに、そのまま綴り合わせたようだ。繭の上に葉をクッ付けたような形になった。
ハサミで切り取って、裏返してみる。

まだ完全には蛹になっていないようだ。前蛹と蛹の中間状態みたいなモノなのかな❓ それとも前蛹から蛹になる直前か直後❓
とにかくコレで黄色い蛹の説明がつくね。

やはり蛹化後すぐは黄色なのだと推察できる。その後、徐々に茶色になってゆくのだろう。

 
2023年 10月7日

黄色かった蛹が、茶色に変わっていた。
見立ては間違ってなかったという事だね。

こう云う変化を観察できたのは、ビニール袋に入れて飼育したお陰だな。たまたまやけど。

柄が浮き出ている羽化間近の蛹も見つけた。

しかも3つもだ。今晩から羽化ラッシュが始まるかもしれない。

 
2023年 10月8日

翌朝、そっとダンボールを開けたら、3つとも羽化していた。

(シンジュキノカワガ♀)

(同♂)

(同♂)

今までの感じからだと、どうやら羽化は夜から明け方にかけて行われるようだ。ネット上に、昼間に写したであろう羽化画像も幾つかあったから、昼夜に関係なく羽化するのかなと思っていたが、アレはイレギュラーだったんだね。


(出典『ささやま通信』)

ちなみに、羽化して翅を伸ばす時は、蝶のように翅を立てるようだ。1回も見れてないけど。

さておき、展翅しても腹部以外では雌雄の区別がつかんな。
例えば蝶なんかは、比較的に雌雄異型が多く、オスに比べてメスは大型で、全体的に翅形が円くなる傾向がある。
だが仔細に見比べてみたけど、特徴的な斑紋の違いは見つけられなかった。大きさも雌雄それぞれバラバラだし、翅形も同じだ。蛾は雌雄で触角の形が違うものが多いが、それも無し。全く同じだ。つまり腹端の交尾器の形でしか判別できないのだ。
話が少しズレるけど、思うに、蛾って雌雄の斑紋が違う種って少ないよな。そこはツマンナイとこだよね。やっぱ、雌雄異型の方が素敵だもんな。採っててモチベーション上がるしさ。

 
2023年 10月9日

翌日も羽化してきた。

♂である。
今のところ、雌雄アトランダムに羽化してきてる。つまり決まった傾向は見られない。蝶なんかは、先ずはオスが羽化して、暫くしてからメスが遅れて羽化してくるモノが多い。たぶんオスの精巣が成熟するまでには、ある程度の時間を要するのだろう。蛾のカトカラの仲間なんかも、特にメスが遅れて羽化してくると云う感じは見受けられないし、蛾って皆そうゆうものなのかなあ❓

 
2023年 10月11日

今日の様子を見ようと、重ねていたダンボールの上を除けたら、蓋の上に鎮座しておった。

いちいち毎回のようにガムテープを剥がすのが邪魔くさいので、フタがわりにダンボールを上に置いていたのだ。
あっ、背中が落武者ハゲチョロになっているではないか。きっと隙間から無理に脱出したせいだろう。
ならば、急いで殺す事もなかろう。暫く放ったらかしにする事にした。普段、どう云う風に過ごしているのかも知りたい。

飛ばして、布団の上に止まらせる。

指で軽く触っても翅を少し開く程度で、飛び立つ気配はない。反応が薄く、おとなしいのだ。でも小悪魔ナルキッソスのことだ。猫かぶってるのかもしれない。油断してはならない。
でも布団の上は邪魔なので指に移らせてカーテンに止まらせたら、そのままジッとしていた。おそらく日中は木陰とかで休んでおり、殆んど活動しないものと思われる。姫路で昼間に、ホバリングするように上空を飛んていたと云うのは例外なのだろう。

夜になったら、急に活発に活動し始めた。天井の照明付近で、巧みにホバリングするように飛んでいる。飛び方は軽くて、エアリー。力強さはなく、意外にも優雅な飛び方なのだ。翅も薄そうだし、それも納得だね。
しかし、下翅を震わすスピードは、けっして遅くはない。かなり速い方だ。パタパタ飛びかもしれないが、モンシロチョウみたいなフワフワ飛びではないだろう。もしも本気を出して飛べば、おそらく速い部類だ。翅形から見ても、鈍足なワケねぇだろ。
かといってヤママユガ系やススメガ系みたくバカみたいに暴れ飛びするってタイプではない。直ぐに壁に止まり、暫くはジッとしている。まあ、狭い部屋の中だからね。自由に飛べないゆえ、そうなってしまうのかもしれない。

翌朝に見たら、就寝前とは違う場所に止まっていた。夜中には、それなりに飛び回っていたのだろう。
その後の観察を含めて参考までに言っておくと、基本的には壁に真っ直ぐに止まっている。カトカラみたく、上下逆さまに止まることは殆んどなかった。一度だけ、頭を右斜め下にして止まっていた事があるだけだ。天井に止まる事は、時々あった。計3度見た。向きは一定していない。あとは、あまり低い所には止まらない。大体が天井近くに止まっていた。或いは野外では、木のかなり高い位置に止まっているのかもしれない。

この個体は、ハゲチョロケなので裏展翅にした。

(♀裏面)

メスだね。生きている時には気付かなかったが、青い部分の色が他と比べて暗くて黒っぽい。裏にも、それなりに変異はありそうだ。

 
2023年 10月13日

最初の蛹採集から既に2週間以上が経っているが、羽化してこないモノが幾つかいる。もしかして死んでんの❓

拾い上げて見ると、黒ずんでいる。しかもカチカチになっていた。完全に死んでまんな。
生きている蛹は柔らかくて、色にツヤがあるのだ。

(生きている蛹 腹側)

(背中側)

だが、内部を食われたような形跡もないし、脱出孔らしき穴も見当たらない。と云う事は、寄生蜂や寄生蝿にヤラれたワケではなさそうだ。じゃあ何で死んだん❓
理由を探してみたが、全然思い浮かばない。強いて言えば、乾燥❓

 
2023年 10月18日

久し振りの羽化である。
性別はオスだね。

展翅は、触角を真っ直ぐにしてみた。

でもシンジュキノカワガって触角が短いから、なんかカッコ悪いんだよね。

 
2023年 10月19日

翌日にも羽化があった。♂である。
実をいうと、この個体を使ってヤラセ写真を撮ったんだよね。

そうしようと考えた時に、たまたまオスだったから使えると思ったのだ。

成虫との初めての出会いが衝撃的だった事は、既に書いた。でも画像を撮っていなかったので、それではヴィジュアルが伝わりにくいと思った。文章力が無いから、正確に読者に伝える自信が無かったのである。なので、ヤラセ写真を撮ろうと考えたと云うワケだね。けど、浅墓だった。

あの時みたいな大きく上下に翅を広げた形には、どうしても出来なかったのだ。死んでる個体は翅の付け根の筋肉が弛緩しているから、基本的に無理があるみたい。ましてやビニールはツルツルだから、前日の画像みたく何処かに引っかかって広がってくれる事もない。
で、一応は写真を撮ったはものの、こんなんじゃかえってイメージを損ねてマイナスだと思ったので、使うのを断念したのである。神様が、ヤラセはアカンって言うてんねやろ。

今度は、昔の図鑑風の触角にしてみた。

何か、より蛾っぽく見える。キショい。
まだまだ蛾に対しての偏見があるかもなあ…。

いよいよ蛹も、あと残り1つとなった。
お楽しみも、そろそろ終わりだね。

 
2023年 10月21日

最後の1頭か羽化してきた。
コレで全部の羽化が終了したことになる。

心苦しいが、予定があるので〆た。

此処まで延べ6年。本当に長くて色々あったけど、円は閉じた。物語は終ったのだ。
寂しくなるな…。

 
2023年 10月22日

朝、目覚めて、ぼんやりと天井を見ると、見覚えのある形と色のモノが、へばり付いていた。

幻覚か❓ まさか黄泉の国から舞い戻って来たとでもいうのか…。
寝ぼけ眼(まなこ)をこすって、二度見する。
だが、どう見ても間違いなく実物のシンジュキノカワガだ。
でも何で❓ まさか寂しがってたアチキに、わざわざ会いに来てくれたの❓ だとしたら、蠱惑すぎる。でも、たとえ幻惑であろうとも素直に嬉しい。もう、いくら小悪魔に翻弄されようとも構わない。それで地獄に落ちたとしても後悔はない。地獄の道行き、共に落ちるところまで落ちよう。
(⁠⁠´⁠ω⁠`⁠⁠)ハハハハハ。自分でも何を言ってるのかワカラナイ。まるでコアな恋愛話じゃないか。オジサンの恋狂い。イカれポンチだ。

せっかくだから、飼おっかなあ…。
砂糖水を脱脂綿に染み込ませて、飼育箱の天井からブラさげたら、何度も吸汁に来るそうだし、長いものは28日間も生存したらしいからなあ…(1983.阿部)。
でもなあ…。飼育箱なんて無いし、部屋の天井からブラ下げるには、どうすれば良いのだ❓ 何か工夫して考えなければいけない。だいち、床にボトボトと砂糖水が落ちたらベトベトになるじゃないか。それは、やだなあ。
ʕ⁠ ⁠ꈍ⁠ᴥ⁠ꈍ⁠ʔふう〜。どうするかは、明日また考えよう。

さておき、成虫は餌を摂るんだね。と云うことは、去年に糖蜜を撒いたのも、あながち間違いではなかったワケだね。
けど冷静に考えると、それも当たり前かもしれない。遠く中国から長旅をするような種なんだから、エネルギーを補給しないと旅を続けられないからさ。

 
2023年 10月23日

悩んだ挙げ句、〆る事にした。
やっぱり飼うのは邪魔くさい。親に小さい頃から「口のある者を飼う時には、心して責任をもって飼え。」と諭されてきたからね。
それに、よくよく考えてみると、生きていた繭&蛹の数と羽化した成虫との数が何となく合わないような気がしていたのだ。きっと、こっそりダンボールから脱け出していたのである。奇跡でも何でもないのだ。小悪魔に騙されてはいけない。魔法を解こう。

毒瓶を被せた。
中で激しく暴れている。苦しいよね。ゴメンね。
何だか、愛し過ぎるがゆえに愛する人の首を絞めて殺すような気分だ。昔、そんな悲しいドラマがあったよね。

御臨終…。

でも、いざ殺してしまうと、悔いが残る。
けれども、どれだけ悔いたところで彼女は、もう戻ってはこない。
オイラ、なんて事をしたのだ…。

 
2023年 10月24日

流石にコレで打ち止めだろうと思っていたら、あろう事か目覚めたら、また見覚えのある姿、形が壁に張り付いているではないか。
今度こそ、幻覚だと思った。きっと良心の呵責が生んだ亡霊だ。もしくは化けて出たとか❓ 何れにせよ、俄かには信じ難い光景だ。

現実かどうか確かめるべく、網を取り出して、捕まえにかかる。網の中に入れたら、フッと消えたりして…。

網を下に持っていき、網枠で壁をコツンと叩いた。
すると彼女は飛んで、自ら網の中へと飛び込んで来た。

でも、彼女は消えたりなんかしなかった。
そして、手で掴むと死んだふりをした。
暫し、弄(もてあそ)ぶ。ψ(`∇´)ψほれほれ〜、ほれほれ〜。騙した罰じゃよ〜。

よくよく見ると、羽の先が少し傷んでいる。おそらく羽化してから何日か経っている。たぶん、夜には活発に飛んでいたのであろう。

でも殺すには忍びないと思った。
取り敢えずカーテンに止まらせ、この原稿の後半を書き始めた。時折、チラリ、チラリと目をやりながら書き進めるも、頭の何処かでは考えていた。何とか生かす手立てはないものか…。

あっ、そうだ。メスなんだからトラップに使えないだろうか❓
いわゆるフェロモントラップってヤツだね。未交尾のメスは、オスを呼び寄せるためにフェロモンを出す。そして寄って来たオスの中から相手を選んで交尾をするのだ。つまりは、その習性を利用しようと云うワケだ。
故郷の奈良の都まで持って行けば、アホほどオスが群がって来るかもしれない。蠱惑のナルキッソスの本領発揮だ。
それに、まだ野外で成虫を見たことがないから、もう一度灯火採集に出掛けようとは思っていたのだ。
そして、もしも交尾を始めたら、そのままそっとしておいてやろう。逃がしてやれば、きっと何処かで卵を産み、次の世代へと命を繋いでくれるだろう。美しい別れじゃないか。恋の終わりとしては相応しい。ならば、優しい男を演じきろうじゃないか。
それにそうなれば、少しは今まで殺(あや)めてきた罪滅ぼしにもなる。

だが、思考はそこでピタリと止まる。
そんな事しても無駄だ。たとえ次世代に命を繋げたとしても、やがてはその命も断絶する。その先には残酷な運命が待っている事を、すっかり忘れてたよ。どうせ蛹にまでなったところで、冬の寒さに耐え切れずに全て繭の中で死滅するのだ。それが流浪の民たちの末路なのだ。
美談に酔っていた自分が呪わしい。そして虚(むな)しくなってきた。
ふらふらと立ち上がり、毒瓶を持った。
殺してしまおう。

コレで魔法から醒めたような気がした。蠱惑な小悪魔の呪縛からは解き放たれたのだ。来年は、たぶんもう彼女を追い掛けはしないだろう。たぶん…ね。

窓の外に目をやる。
いつしか空は鮮やかな橙黄色に染まり始めていた。

                おしまい

 
 
追伸
ナルキッソスシリーズ、ようやっと完結である。
この最終話は特に時間がかかった。足したり削ったり、何度書き直した事か。バイオリズムも最悪で、マジしんどかった。
とはいえ、長々とした文章に御付き合い下された方々には、ほんまに感謝です。相変わらずの駄文でスンマセン。

結局、持ち帰った蛹&幼虫21頭のうち、16頭が羽化してきた。他の内訳は、幼虫が1頭逃亡。蛹のまま死亡した者が3頭。寄生された者はゼロ。羽化不全が1頭と云う結果となった。

(羽化不全の個体)

コレは葉を噛み砕かずに綴り合わせて繭を作った個体だ。蛹の色が黄色から茶色に変化するのを観察できた奴だね。

あっ、ゴメン。こっちが裏面(腹側)だったね。
裏返す。もとい、表返す。

下部に何本かの太い縦線が透けて見える。この縦線と蛹の背中のヤスリ状器官とを擦り合わせて音を出すんだね。

別の繭を分解した画像があるので、分かり易いように貼り付けておきます。

内部下側に太い線が縦に並んでいるのが、よく分かる。
自ら楽器を作るだなんて驚きだね。神秘的だ。昆虫にも未来に対する明瞭な思考や意志があるのだろうか❓ 何がどうなって楽器を自分で作る事になったのだ❓

ナルキッソスは、繭が音を奏でるし、幼虫は阪神タイガースカラーで、顔はパンダ。親は美しく、1000キロを旅して日本へやって来る流浪の民で、神出鬼没。オマケに死んだふりまで出来る。そして冬になれば死滅してしまうと云う悲しくも潔い運命。全てが愛おしく、ドラマチックで魅惑的だった。彼女には深く感謝している。久し振りに虫に対して恋する事ができたからね。虫捕りは、ロマンてあり、ラブストーリーてないといけない。でないと、面白くない。

スマン、話が逸れた。
中がどうなっているのかが気になって、繭を取り除いてみた。

(背面)

(腹面)

首の辺りに太い横糸が強く絡みついていた。どうやらそれが原因で脱出できなかったようだ。

あっ、今まで気付かなかったけど、口吻(ストロー)は黄色いんだね。おっしゃれー。

有り難い事に、逃亡した幼虫を除くと羽化率は、20分の16。つまり8割だ。この打率の高さは自然界では驚異的な数字である。蝶だと、百匹分の卵に対して、せいぜい親になれるのは1頭か2頭だと言われているからだ。勿論、ナルキッソスだって鳥やクモなどに捕食されるだろうし、病死や事故死する者もいるだろうから、実際の生存率はもっと低いだろう。にしても、蛹が1つも寄生されていなかったと云うのは、他の鱗翅類では普通は有り得ない。つまり、コレはシンジュキノカワガが外来種であり、日本には定着していない事を示しているのではなかろうか。もし定着しているのなら、もっと寄生バチやら寄生バエに寄生されてるからだ。それもかなりの率で。シンジュキノカワガも全く寄生されないワケではないようだが、その例は極めて少ないみたいだ。ようするに、定着していないがゆえに、まだあまり寄生相手として認識されていないのではないだろうか。でも今後、もし温暖化が進んで定着したとするならば、必ずや本格的にターゲットにする寄生者が現れるだろう。

 
(註1)タッタカモクメシャチホコ

(2023.3月 奄美大島)

学名 Paracerura tattakana
南方系のシャチホコガの1種。大型でスタイリッシュなデザイン、また何処にでもいるような種ではない事から人気が高い。特に関東以北では少ないゆえ、憧れの対象になっているようだ。
自分も初めて奄美大島で出会った時は、そのゴツい体躯と美しい姿に一発で魅了された。名前も知らなかったけど、ひと目見て大物だと感じるくらいの存在感があった。
「🎵ツッタカター、🎵ツッタカター」の西川のりおを思い起こさせるリズミカルで個性的な和名だが、リズム系のエピソードがあるワケではない。由来は台湾の立鷹峰に因んでいる。
なお、幼虫の食餌植物はヤナギ科のイイギリで、主に原生林が残された地域に生息し、環境指標性が高い種のようだ。

死んだふり画像と標本写真も載せておこう。


(出典『散策レポ』)

上からではなく横からの画像だけれど、それでも充分に伝わるのではないかと思われる。検索してもタッタカの死んだふり画像は殆んどないから、コレでも貴重な写真なのだ。そうゆう変わった生態の画像は、他の種でも少ないのである。あん時、ワシも撮っときゃ良かったよ。
あっ、ならばシンジュキノカワガの死んだふり画像だって、あまり無かった筈だ。やったね。


(2021.3月 奄美大島)

今年は、わりと沢山見たが、全てオスであった。♀は灯火に滅多に飛んで来ないから、かなりの珍品らしい。いつか会いたいものだ。

 
ー参考文献ー

・宮田彬『日本の昆虫④ シンジュキノカワガ』文一総合出版

・『On the copulation mechanism of Eligma narcissus (Cramer) (Lepidoptera: Noctuidae)』
上田恭一郎 三枝豊平 1982

・岸田泰則『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』学研

(インターネット)
・『昆虫漂流記』ー「シンジュキノカワガ 採集から飼育 2023年9月2、3日 以降の観察」

・『趣味のアゲハ館』

・『みんなで作る日本産蛾類図鑑』

・『ささやま通信』

・『散策レポ』

・『円山原始林ブログ』

・『Wikipedia』

 

奄美迷走物語 其の15

 

第15話『奄美ドン底迷走物語』後編

 
2021年 3月29日(夜編2)

しかし、そこには🚧立入禁止のバリケードが並んでいた。
(ㆁωㆁ)ぽってちーん。死んだ。

一旦、他のルートがあるかもしれないと先に進んでみたが、直ぐに無理だと悟った。道は益々荒れてきて、どう考えてもそんなもんはありそうにない。
仕方なくバリケードのところまで戻る。

改めて並んでいるバリケードをよく見ると、左端に空間が空いている。隙間は結構あって、スクーターなら何とか通り抜けられそうだ。
入るのは気が引けるが、んなこと言ってる場合ではニャい。
こんな時間に誰かが見回りに来るとは思えないし、それにもし誰かが来て叱られたとしても『すんませーん。暗くてよくワカンなかったでしたー。』とでも言い訳をカマせばいい。あー、でもこんなに目立つバリケードを「目に入りませんでした。」では理屈が通らんか。更に大目玉を喰らいかねない。
(ノ`Д´)ノえーい、ままよ。見つかったら見つかった時のことだ。
『(。ŏ﹏ŏ)オデ、オデ、ワガンね。』
などと脳ミソの足りない言語障害のオジサンの振りをするか、もしくは、
『リップヴァーンウィンクルの話って知ってますかあ❓』
と『野獣死すべし』の松田優作みたく瞬きなしの狂気じみた無表情で言ってやろう。不気味過ぎて向こうの方がビビるに違いない。夜の、しかもこんな人気のない場所で気が狂ってる男と対峙するのは相当恐いだろう。何なら懐中電灯を下から照らしながらでセリフを言ってやってもいい。
あっ、それはやり過ぎか…。フザけんな❗と、かえってメチャクチャ怒られかねない。

勾配のキツい坂道を一気に上がると、目の前がパッと開けた。
手前に駐車場があり、その向こうは展望広場になっている。新しく改装されたみたいで立派なテーブルと椅子が並び、全体的にとてもキレイだ。有り難いことに清潔なトイレもある。

時計を見ると、何と驚きの午後8時45分になっていた。どんだけ時間かかっとんねん。予定していた所要時間は1時間半だったのに、3時間半も要しているではないか。
大幅に時間をロスしたが、今さら悔いたところで仕方がない。辿り着けただけでも良しとしよう。

慌てて灯火採集の用意をする。
問題は何処にライトを設置するかだが、もう四の五と言ってらんない。危ないが先っちょギリギリ、防護柵を越えて設置した。落ちたら間違いなく大怪我だが、なんちゃってライトトラップなんだから、これくらいでもしないとアマミキシタバは採れやしないと思ったのだ。

午後9時過ぎ。
やっとライトを点灯することができた。

 

 
点灯と同時に蛾どもがワッと飛んで来た。
今回の旅では一番飛来数が多い。さすが世界遺産に地域指定されるであろう湯湾岳だ。なんちゃってライトでも効力ありだ。それだけ自然度が高くて、生物相が豊かなのだろう。
さあ、リベンジだ。ここから盛大な祭りといこうじゃないか。

名瀬や知名瀬とは飛んで来る蛾の種類が少し違っていて、見たことのない種類も多い。名前は全然ワカランけどー。
点灯時刻が遅かったせいなのかハグルマヤママユは飛んで来なかったが(註1)、何かと飛んで来るのでそれなりに楽しい。純粋な蛾屋ではないから各種の稀度はワカンナイ。だから殆んどの種類は採らずに無視だけどもね。
とにかく数さえ飛んで来れば、それに応じて確率も高まる。ならば、否応なしに期待値も上がろうというもの。そのうちアマミキシタバだって飛んで来るかもしれない。今までの苦労が報われることを切に祈ろう。

しかし、1時間程でピタリと飛来が止まる。光が弱いから遠くのものは引き寄せられず、周辺にいる奴しか惹きつけられないのだろう。なんちゃってライトトラップの悲しいところだ。
一応バナナトラップを柵にいくつか括り付け、背後の森にもぶら下げていたが、コチラもダメ。相変わらずの閑古鳥だ。寄ってきたのは、お馴染みのオオトモエのみ。
またしても惨敗かと、ポトリと落ちた墨汁がジワジワと広がってゆくように心が黒く染まりはじめる。見上げるこの漆黒の夜空のようにならないうちに何とかせねば…。そう思うが、思ったところで特にやれる事はない。やれる事は全部やっているのだ。あとは運まかせだ。あっ、神頼みがあるか…。
神様〜、(༎ຶ ෴ ༎ຶ)なんとかしてくだせぇーよ。
ワシ、メチャメチャ頑張ってるやないすかあ。努力もしてますやん。もうそろそろ報われたっていい頃じゃありませぬか❓

祈りが通じたのか、次第に辺りに白いヴェールのようなものが掛かってきた。霧だ。もしかして絶好のコンディションになるかも…。ガスれば光が拡散するせいなのか、格段に灯りに寄ってくる蛾の数が増えるのだ。ワチャワチャに寄ってきてくれよー。
とはいえ、天候が悪化してゆくのは好ましくない。雨にならないことを祈ろう。雨でも蛾は寄って来るのだが、アマミキシタバがベチョベチョになったら元も子もない。濡れて鱗粉がハゲちょろけになったとしたら、死んでも死にきれない。

 
【アマミキシタバ】

(出展『DearLep圖錄檢索』)

 
それに雨が降ると帰りが大変だ。雨の中、あの滑りやすい林道を降りるのはゾッとするし、なんと言っても帰り道は長いのだ。長時間にわたって雨に濡れ続ければ、体温を奪われるし、精神的にも相当辛くなる事は火を見るよりも瞭(あき)らかだ。

名前は知らんけど、見たことのないごっつカッコイイ蛾が飛んで来た。

 

 
画像は後日撮った写真である。その時は頭の中がアマミキシタバの事でいっぱいで余裕がなく、写真を撮るのをすっかり忘れていたのだ。

この画像じゃワカランので、いつも参考にしている『蛾色灯』というサイトから画像をお借りしよう。

 

(出展『蛾色灯』)

 
止まっている時は、こんな風に三角形の姿をしている。
蝶は羽を立てて止まるが、蛾の多くはこのように開いて止まるのが定番で、コレが蛾と蝶を見分けるコツの1つとされている(例外は結構ある)。だからワシの手乗り横画像は自然な状態ではない。羽の表面の鱗粉を傷めたくないゆえ、無理矢理あの形にして三角紙に入れていたので、ああなったのである。つまり自然状態では羽を立てて静止することはない。但し、羽化時に羽を伸長させる時は立てている可能性が高い。そうしないと羽をキレイに伸ばせないだろうからね。

捕まえた時に驚いたのは、身体がゴツかった事である。

 

(出展『服部貴照の備忘録 蛾類写真コレクション』)

 
胸部の体高が高くて厚みがある。横幅も広い。
そして、もふもふだ。マジ(◍•ᴗ•◍)❤可愛いっす。

帰ってから調べてみたら、どうやらタッタカモクメシャチホコ(註2)の♂のようだ。
何じゃそりゃ❓というくらいインパクトのある和名じゃないか。最初に「立ったか❓木目鯱鉾❗」と脳内変換が行われたよ。でもって『立てへんのかーい❗』という吉本新喜劇的ツッコミを入れてしまったなりよ。
次に西川のりおがオバQの姿に扮して『🎵ツッタカター、🎵ツッタカター、🎵ツッタカタッタッター』と行進する姿が目に浮かんだ。今思い返しても『俺たちひょうきん族』は凄い番組だった。面白キャラクターの宝庫だったわ。

 

 
絶対、それ由来なワケないけど…(笑)

 

(出展 2点共『エムカクon Twitter』)

 
のりおのセリフじゃないけど、
『あほ〜ぉ〜。』
である。

ネットでアレコレ見ていると、そこそこの珍品のようで「憧れの」とか「恋焦がれた」だの憧憬や称賛の修辞句が並んでいるから、蛾屋の中でも評価が高い種みたいだ。とにかく採った人は皆さん、嬉しそうなのだ。名前も知らんのに、ワシも嬉しかった。スター性があるモノは、何だってひと目で人を惹きつけるのだ。

次のコヤツも印象深かった。

 

(画像は後日展翅時に撮ったもの)

 
ユウマダラエダシャク系の白黒蛾(註3)だ。
実を言うとこの蛾は、最初に着いた時にトイレの外壁に止まっていて気にはなっていた。ユウマダラエダシャク系は本能的にキモいので普段は絶対に採らないのだが、黒っぽくてカッコイイかもしれないと思ったのだ。
しかし一刻も早くライトを設置しなければならなかったからスルーした。設置後はバナナトラップを見回る際にトイレの前を通る折にふれ、採るかどうか迷ってた。でも白黒エダシャクはキモいという概念が邪魔して踏ん切りがつけれないでいた。触るのが嫌だったのだ。で、そのうちいつの間にか姿を消していた。
だから、後々ライトに飛来した時は迷わず採った。

午後11時。
(・∀・)よっしゃー❗、いよいよアマミキシタバが飛んで来るゴールデンタイムに入った。
霧は益々濃くなってきたし、この条件なら採れるかもしれない。いや、採れるっしょ。

しかし、暫くして風も出てきた。
ちょっとヤバいかも…と思った瞬間だった。不意にブワーッと突風が吹いた。
ガッシャーン❗
\(°o°)/エーーーッ❗❗
風で三脚が倒れよった❗
一応、ビニールテープで防護柵と三脚とを繋いでいたので谷底には落ちなくて、(´ω`)セーフ。繋いどいて良かったよ。
でも、立て直した時に気づいた。
Σ( ̄ロ ̄lll)ガビーン❗❗
ライトが1個消えとるやないけー❗

2個あるチビライトの1つが点灯していないではないか。
(ㆁωㆁ)…白目男、茫然と立ちつくす。

戦闘力、大半減だ。でも、やっちまったもんは仕方がない。まあいい。もう1つは生きてて光ってるんだから何とかなるだろう。
だが、明らかに寄って来る蛾の数が目減りしていってる。又もやの想定外のアクシデントに、ドス黒い諦念が広がり始める。
(╯_╰)なしてー。どこまで悪い流れが続くねん。

その後、何も起こらなかった。
午前1時まで粘ったが、ついぞアマミキシタバは飛んで来ずだった。今回も擦りもせずの惨敗である。
期待値が高かっただけにショックは大きい。数々の困難を乗り越えて、こんだけ頑張っても報われないのかよ…。

1時15分。
ズタボロの心と身体を引きずるようにして撤退。

濃い霧で驚くほど前が見えにくいので、山道を慎重且つゆっくり、のろのろ運転で降りてゆく。間違ってカーブで真っ直ぐ行ってもうて、崖から落ちでもしたら洒落になんないもんね。
別に道に迷っていたワケではないのだが、次第に山を彷徨しているような気分になってきた。
あなたが落とした斧は金の斧はですかー❓ それとも鉄の斧ですかあ❓
突然、山の神様が霧の向こうからニュッと現れてもオカシクないような状況なのだ。それくらい現実離れしたような幻想的な風景が続く。
そして、山は息苦しくなるくらいに静寂だ。バイクのエンジン音だけが奇妙な感じで谺している。ハッキリ言って不気味だ。映画やドラマだと絶対何か良くない事が起こりそうなシチュエーションである。
いつしかエンジン音は脳内で変換され、耳の奥ではお約束のように恐ろしげな重低音の音楽が流れている。しかもそれはワシが生涯で最も怖かった映画『シャイニング(註4)』のオープニングで流れていた曲だ。カメラは上空から俯瞰で、山奥の古ホテルへと向かう一家族の車を淡々と追い続けるんだよね。ただそれだけの映像なのに、執拗にリフレインされる不気味な音楽が、これから起こるであろう惨劇を暗示しているようでメチャクチャに怖いのだ。

そんな時だった。
バサバサバサー❗
突然、その静寂を何かが破った。
ヽ((◎д◎))ゝしょえー❗
不意の金切り声と大きな羽ばたき音に激ビビる。
ヤバいもんだったら、発狂しかねないので見ちゃイケないと頭では思うのだが、裏腹に目が勝手にソチラの方を見てしまう。

照らされた方向には鳥がいた。
邪悪な怪鳥だったら、💧涙チョチョギレもんだが、結構デカいものの、ただの鳥じゃないか。驚かせやがってアホンダラー。ホッとして、強張っていた身体の力が一挙に弛む。
とはいえ、顔だけは強張ったままだ。だいたいにおいて夜に鳥が羽ばたいて鳴く時は映画でもドラマでも何かが起こる前兆と相場が決まっている。鵺の鳴く夜は恐ろしいのだ。

見慣れない鳥だが、思い出した。写真で見たことがある。たぶんアマミヤマシギ(註5)っていうシギ(鴫)の1種だ。
そうと分かれば、さらに心は落ち着く。名前なき未知なる異形のモノは恐ろしいが、名前が特定されてしまえば怖るるに足りずである。

その後もアマミヤマシギは現れた。でもって、その度に驚かされた。けど何度も驚かされてると、そのうち慣れてくる。そうなると次第に沸々と怒りが込み上げてきた。
このバカ鳥ども、結構そこいらにいて、誠にもってウザい。敏感にすぐ飛んで逃げてくれればいいのだが、バカだから直前になって目の前で飛びよる。だから瞬間こっちの方がビックリして、その度に肝が冷やされる。コッチは霧で前が見えないゆえ、鳥がいるだなんてワカランのだ。一方、オマエらはバイクのエンジン音が遠くからでも聞こえてる筈だから事前に逃げれんだろうに。鈍クサいこと、極まりない。そんなだからマングースや猫に食われるのだ。おバカ鳥めがっ💢
心がササくれだっているから、マジで轢いたろかと思う。まあ、人として流石にそれはしないけど。

時間はかかったものの、何とか麓まで下りてきた。
でも帰る場所は気が遠くなる程、まだ遥か先だ。
そして眼前には大きな問題が立ちはだかっている。ずっとどっちにするか迷ってた帰るコースを、いよいよ決断せねばならぬ時が来たのだ。
問題は来しなに使った北側のルートと半分未知の南側ルートのどちらで帰るかなのだが、選択を間違えれば地獄が待っている。
そう言いつつも、どちらを選んでも地獄である事には変わりはないんだけどもね。少しだけ、どちらかがマシなだけである。でもその少しの差が今は大きい。それだけ弱っているのだ。少しでも楽な方法で帰りたいという思いが強い。
はてさて、どうしたものか(-_-;)…。
又あの山道を登り降りして帰るのは正直しんどい。どころか道はグネグネでカーブが多いから危険さえ感じる。それを、この心身ともに衰弱しきった状態で走りきる自信はない。
となれば南側ルートだが、コチラは長いトンネルが何本もある。コレがホント長くて辛い。いつまで経っても出口が見えてこないので、心が徐々に蝕まれてゆき、気づいた時には鈍くて重い精神的ダメージをうけているのだ。
それに長いトンネルは睡魔を呼ぶ。ましてや丑三つ時のこの時間帯だ。眠くならないワケがない。けど眠ったら確実に事故る。側溝に突っ込んでバイクもろとも💥大破。運が悪けりゃ、あの世ゆきだ。
あの世で思い出した。こんな夜更けに、そんなトンネルを走るのは全然もって気が進まない理由が他にもある。山のトンネルといえば、イコール心霊スポットだ。あたしゃ、自慢じゃないが、お化け大嫌いの超怖がり男なのだ。
チキンハート野郎は想像する。奄美の妖怪ケンムンを筆頭に魑魅魍魎どもがワンサカ湧いて出てきて、追いかけ回されでもしたら、チビる。いや、チビるどころか小便垂れ流しで泣きじゃくりながら逃げるよ。
ほらね、どっちを選んでも地獄じゃないか。
嗚呼、何もかもがウンザリだ。できれば、その辺に倒れ込んじまって、そのまま深い眠りに落ちてしまいたい。
そうしたくなるような心を必死に抱きかかえて、のろのろと南に向かって走り出す。

南側ルートを選んだのは、アップダウンと急カーブが少ない事と、単に同じルートを走りたくなかったからだ。
あと付け加えると、コチラのルートだと最後には名瀬を通るので、コンビニが幾つかあり、24時間スーパーまであるからだ。酒とツマミを買って帰らないとやってらんない気分だし、酒の力を借りなければ今夜は眠れそうにない。

先ずは住用町役勝を目指す。だが北に行きたいのにルートは一旦、反対方向の南へと針路をとる。コレがスゲー遠回り感がある。ルートはかなり南に下ってから一転、今度は北へ向かうという道筋になっているのだ。理不尽にも、無駄にV字の軌跡を描いて走らねばならない。宇検村から住用町西仲間までを直線距離で結ぶと12kmくらいだが、このルートだと倍以上の30kmくらいを走らねばならんのだ。大きな山塊があるから仕方がないんだけどさ。そもそもアソコにトンネルを通すのは無理があるだろう。技術的には可能だろうが、莫大な費用が掛かるだろうし、通したところで見合うような経済効果は有りそうにない。それに世界遺産になった今なら、そんな計画には許可がおりないだろう。

役勝トンネル辺りで早くも睡魔が襲ってきた。
そして、道は街灯が少なくて暗いから、遠近感までオカシクなってくる。
ワシ、実を言うと夜の運転は苦手がち。鳥目ではないと思うけど、夜はモノを認識する能力が格段に落ちる。で、挙げ句の果てには時々幻覚を見たりもする。トンネルの入口が巨神兵や超巨大なC3POに見えたり、ガードレールにゴブリンが座っていたりするのだ。だからスピードも出せない。

それにしても笑っちゃうくらいに対向車がいない。もちろん人など誰一人として歩いていない。時空が歪んだ別な世界、まるてバラレルワールドにいるような錯覚を覚える。いよいよもってヤバい事になってきた。

住用町の三太郎トンネルの手前辺りで、睡魔が猛烈にやって来て朦朧となる。
意識が半分飛んだまま、トンネルに入る。
この長いトンネル、アホほど長いと知ってるだけに辛い。知らぬまに蛇行運転になってて、堪らずトンネルの真ん中の退避スペースで停まる。

 

 
トンネルの真ん中で停まるのって、あまり気持ちがいいものではない。こうゆう時にもしケンムンや魑魅魍魎どもが襲ってきたりしたら最悪じゃないか。死を覚悟して戦うか、恐怖で脱糞しながら必死で逃げるしかない。何か、さっきも同じような思考回路になっていなかったか❓たぶん、そうだろう。脳ミソが溶け始めている証拠だ。
でも怖いもんは怖い。怖さに耐えきれず、大声を出してみた。自分の声が洞内に反響して奇妙に増幅され、やがて壁に吸い込まれていった。
少しだけだが気分が落ち着き、思い出したように煙草に火を点ける。

煙草を吸いながら、ぼんやりと思う。この上の三太郎峠でもアマミキシタバが採れてる記録があるんだよなあ…。三太郎峠で灯火採集しとけば良かったかなあ…。近くはないが、湯湾岳よりもだいぶ楽な距離だ。
だが、すぐさまその考えを否定する。今さら後悔したってしようがないのだ。それに、こんなに悪い流れ続きだったら、どうせ採れなかっただろうし、また別な大きなトラブルに見舞われてたに違いない。
あー、ダメダメだ。珍しく完全にマイナス思考に囚われているよ。

この時点で、既に時計の針は午前3時を指そうとしていた。ここまで2時間か…。思ってた以上に時間を費やしている。

次の新和賀トンネルは何とか通り抜けたが、朝戸トンネルで再び強い睡魔に見舞われて停車した。
まあいい。今さら急ぐ理由なんて無いのだ。それにこのクソ長いトンネルさえ抜ければ、名瀬の街だ。宿までそう遠くはない。

午前4時。
やっとこさ朝仁まて戻ってきた。安堵と疲労とが同時に全身の隅々にまで広がってゆく。
コンビニの駐車場にバイクを停め、ヘルメットを脱いだら、更なる安堵と疲労感、そして敗北感とが加わった何とも形容し難いような感情に包まれた。
或る種のトランス状態だったのかもしれない。全身がヘトヘトだけど、ヘラヘラ半笑いで、ふらつきながらコンビニに入る。
で、酒を買って、ついこんなもんまで買っちまう。

 

 
結局、マイフェバリットの鶏飯屋『みなとや』には行けてないし、無性に鶏飯を食いたくなったのだ。
だが、宿に帰って敗北感にまみれて酒を飲み始めたら、秒殺でそのまま昏倒してしまった。

しょっぱい夜だった。

                    つづく

 
追伸
この日が、奄美大島で最も過酷な1日だった。
昼間は蝶を採りいーの、夜は蛾を採りいーのの二足の草鞋は正直キツイ。体力的にも精神的にもシンドイのだが、中でも夜に酒飲みに行けないのが辛い。店で美味いもん食いながら酒を飲み、地元の人とワーワーやるのが大いなるカタルシスになっていたんだなと今更ながらしみじみ感じる。虫ばっか採ってると旅が味気なくなる事を痛感したよ。

 
(註1)点灯時刻か遅かったせいかハグルマは飛んで来なかった
Sくん曰く、ハグルマヤママユの灯火への飛来は日没後から1時間くらいが勝負らしい。エゾヨツメと同じで、それ以降は殆んど飛んで来ないらしい。もちろん例外も有るんだろうけどさ。

(エゾヨツメ♂)

(ハグルマヤママユ♂)

 
(註2)タッタカモクメシャチホコ
シャチホコガ科(Notodontidae)に属する中大型蛾。
前翅の地色は純白で、黒い内横線はジグザクで太い。

展翅してみてもカッコイイ。こうゆう白黒のスタイリッシュな蛾はノンネマイマイやキバラケンモンなど科を跨いでいくつかいるが、中でもコヤツはデカくてゴツいから他とは存在感がまるで違う。圧倒的な風格があるのだ。しかも他のものは下翅が純粋に白黒ではなくて、上翅とのデザインの連動性をあまり感じない。一方タッタカは下翅も白黒柄で上翅とデザインが一体化していて、全体に違和感がない。それに背中の柄の黒は、よく見ると群青色なのだ。これが高貴な感じがして♥️萌える。尚、展翅画像はピンチアウトで拡大できるので、そのコバルトブルーを是非とも確認されたし。

(ノンネマイマイ)

(2019.8月 長野県松本市新島々)

(キバラケンモン)

(2020.8月 長野県木曽町開田高原)

(ニセキバラケンモン)

(2020.9月 長野県松本市白骨温泉)

キバラケンモンとニセキバラケンモンは好きだけど、ノンネマイマイはキショイ。カッコイイかもと思って採ったけど、展翅してみたら残念な形と下翅でガッカリした。オマケに腹がピンク色で妙に色っぽいのが許せない。言ってしまえば安っぽい遊女みたいなのだ。
しかも大嫌いなマイマイガの仲間だと知ってからは憎悪さえ抱くようになった。マイマイガは大嫌いだから、成虫も幼虫も一切関わりたくない。
(´ε` )そんなこと言うなよーと言う人もいると思うけど、生理的に受け付けないんだから仕様がないんである。断固、キミたちとは袂を分かつ。

ノンネさんの事はどうでもいい。タッタカさんに話を戻そう。

【学名】Paracerura tattakana (Matsumura,1927)
小種名は、台湾の立鷹峰に由来する。おそらく最初に採集されたのが其処だったのだろう。和名もそれに連動しての命名だと思われる。
立鷹峰は台湾中部の南投県仁愛郷にある山で、蝶の採集地として有名な翠峰や梅峰近辺にあるようだ。ということは標高2000m以上ってことだ。おそらく2300m前後くらいはありそうだ。
尚、この地域にはホッポアゲハやアケボノアゲハ、アサクラアゲハ、スギタニイチモンジ、ダイミョウキゴマダラ、タカサゴミヤマクワガタなどがいる。

余談だが、台湾では「尖鋸舟蛾」と呼ばれている。
も1つピンとこないネーミングだが、コレは触角が鋸状なところからきているようだ。で、舟蛾はシャチホコガ全般を指す言葉なのだろう。確かに横から見れば、舟だと言われれば、そう見えなくもない。

本土産のものが、magniguttata (Nakamura,1978)として亜種記載された事があるが、現在はシノニム(同物異名)扱いになっている。

【開張】 ♂65〜72mm内外。 ♀72〜80mm内外
自分の採ったものは68mmだったから、矢張り♂だろう。

一応、♀の画像も貼り付けておこう。


(出展『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』)

どうやら♀は♂と比して大きく、上翅の幅が広くて翅形が全体的に丸くなるようだ。

【分布】
分布は意外にも広く、ネットの『みんなで作る日本産蛾類図鑑』によると、本州、四国、九州、対馬、屋久島、沖縄本島、西表島、台湾とあった。おいおい、奄美大島が抜けとるぞー。
このサイトは蛾を種名で検索すると、どの種でも必ずと言っていい程に真っ先に出てくる。だから基本情報を知るのには重宝するし、有り難いのだが、重大な問題点もある。どうやら全くアップデートがなされていないようで、情報が致命的に古いのだ。ゆえに概要を知るのはいいとは思うけれど、それをまるっきり鵜呑みにする事はお勧めできない。一応フォローしておくと、何千種といる蛾の殆んど種の画像と解説があるから、その執筆の労苦たるや大変なものだったろう事は想像に難くない。それには素直に頭が下がるし、立派な業績だと思う。礎の役割は十ニ分に果たされておられると言っていいだろう。でもだからといってアップデートされないままの弊害は見過ごせない。間違った情報が流布し、混乱を引き起こすからだ。改善されることを望みます。

そうゆうワケなので、ここからは岸田先生の『日本産蛾類標準図鑑』の解説を混ぜて書き進めていく。この図鑑の情報が現在のところ最も信頼できるからだ。
その標準図鑑によると、分布は上記の他に「奄美大島とその属島」とシッカリ書いてあった。ほらね。
主に西日本に多く見られるが、分布は局所的。国外ではミャンマー、タイ、ベトナム、中国南東部、台湾に分布している。
知る限りでは垂直分布について言及されている文献は見当たらない。唯一見つけられたのが、ブログの記事で、『高知の自然 Nature Column In Kochi』というサイトに「高知県では低山地から標高の高い山まで広く分布している。」書いてあった。図鑑等で垂直分布についての記述がないのは、低地から高地まで広い範囲で得られているからなのだろう。

【レッドデータブック】
宮城県:絶滅危惧I類(CR+En)
京都府:要注目種
岡山県:希少種

【成虫の出現期】 5〜8月
アレっ❓、採ったのは3月下旬だから、かなりズレがある。だから、みんなで作る図鑑は鵜呑みにはできないのだ。
コレに関しても直ぐに標準図鑑で解決した。南西諸島では3月と6月に採れ、本土では6月に出現するとあった。

【成虫の生態】
大概の文献には、夜間に灯火に誘引される事くらいしか書かれていない。それとて、飛来時刻の傾向さえも特には言及されていない。たぶん飛来はアトランダムで、傾向と言えるようなものはないんだろうけどさ。
昼間の静止場所とかも書かれてあるものは知り得ないし、成虫が何を餌にしているのかもワカラナイ。まあ、タッタカに限らず、蝶と違って蛾の生態はまだまだ解明されてない種類だらけなんだけどもね。
んっ❗❓、待てよ。とはいうものの、🎵もしかしてだけどー、🎵もしかしてだけどー、🎵シャチホコ蛾って何も食わんないんじゃないの〜❓

調べてみたら、何と近縁のオオモクメシャチホコの成虫は何も餌を摂らないそうだ。だからタッタカも何も食べない可能性が高い。どうやらシャチホコガ科全般がそうみたい。へぇー、デカいクセに何も食べないんだ…。
更にデカいヤママユの仲間は何も食わないとは知ってたけど、シャチホコくんもそうなんだ…。蝶をやってきた者としては、餌を摂らないなんていう概念は無いから驚きだよ。蝶で餌を摂らない種はいない筈たもんね。だから思ってしまう。
ヤママユもシャチホコも大型蛾だから、そんなんでエナジー保つのかよ❓ある意味、蝶よか進化しているのかもしれない。
ということは、タッタカって寿命は短いのかなあ❓

唯一、成虫の生態の一端を見つけられたのがネットからだ。
ブログ『昆虫ある記』に、タッタカちゃんを手に取ると、時に脚を縮めて腹部を大きく内側に曲げた状態が長く続く事があり、どうやら擬死行動のように見受けられるとの印象が書かれている。


(出展『昆虫ある記』)

自分が採った時には、そのような傾向は一切みうけられなかったが、画像を見ると自分にもそのように見える。
死んだふりする生き物って、わりと好感がもてる。何か健気で可愛いもんね。

【幼虫の食餌植物】ヤナギ科 イイギリ属:イイギリ(飯桐)
葉が大きく、昔は飯をこの葉でくるんだ事から名付けられたようだ。また別名にナンテンギリ(南天桐)があり、コチラは実が南天の実に似ていることに由来する。

標準図鑑によると、イイギリの分布とタッタカの分布は、ほぼ重なるらしい。だから主に西日本に見られるんだね。

(イイギリの分布)

(出展『林弥栄「有用樹木図鑑(材木編)」』)

コレを見て、西日本ではこんなにも普通に生えてる木なのかと思った。だったら探せば意外と何処にでもいて、新たな産地がジャンジャンに見つかるんじゃないかと思った。
しかし調べ進めると、わりかし珍しい木のようで、山地でもあまり見られないそうだ。でないとタッタカが珍しいという説明がつかないもんね。但し、最近は公園樹として植栽されることも増えているらしい。
垂直分布はブナ帯下部らしい。もしタッタカの分布もそれに準ずるならば、標高1200m以下に棲息するものと考えられる。

(イイギリ)

(出展『plantidentifier.ec.ne.jp』)


(出展『葉と枝による樹木図鑑』)


(出展『plantidentifier.ec.ne.jp』)


(出展『庭木図鑑 植木ペディア』)

多分、この木の実は見たこと事がない筈だから、やはり珍しい木なのかもしれない。因みに葉の印象は見たことがあるような無いような微妙な感じだ。でも桐の葉か何かと混同しているかもしれない。ようは同定に自信がないのだ。言い訳させて戴くと、植物の葉は遠縁の種であっても似たような形のものがワンサカある。どころか同じ種内であっても葉の形に変異が多いから、ワシらみたいな素人には植物の同定は容易(たやす)くはないのだ。

幼虫は、どんなだろ❓
でも蛾の幼虫は邪悪な姿をしたものが多いんだよねー。どうせ怖気(おぞけ)るから探すのやめとこっかなあ…。とはいえ気になり始めたら捨て置けない。恐る恐るで探してみたら、😱スゲーのが出てきた。


(出展『鯉太朗のお散歩日記Ⅱ』)

\(◎o◎)/何じゃ、こりゃ❗❓
である。見た瞬間は変過ぎてどっちが頭なのかさえ解らなかった。左側が頭なのだが、ワケわからんくらいに形が歪(いびつ)で、ニョキっとした手を含めての姿勢も何だか変だ。そして何よりも変なのは、その尾っぽである。まるで『帰ってきたウルトラマン』の怪獣、ツインテールみたいな奴ではないか。

(ツインテール)

(出展『怪獣ブログ』)

ツインテールって相当に変テコな奴だと思っていたが、タッタカベイビーの前では地味にさえ感じるじゃないか。自然が造りしもののデザインは、人間の想像力なんぞ遥かに超越しているのである。だいたいツインテールのデザインだって、そのオリジナル性は疑わしい。きっと何かの生物をモチーフにしたパクリもんだろう。
余談だが、ツインテールには「三つ編み(おさげ)」という意味もある。小さい女の子から女子高生とかまでに見られる髪型の事ね。そういや最近は三つ編みの女子高生って見掛けないよね。きっと絶滅危惧種だやね。

越冬態は蛹で、木の枝を噛み砕いて繭を作り、その中で蛹化するそうだ。全然関係ないけど、繭の中でひと冬を越すのって、どうゆう気分なのだろう❓
快適に惰眠を貪れて幸せそうだが、実際はそうでもないかもね。外の気象状況が気になって、おちおち眠れやしなかったりして…。寒波が来襲したり、大雨が降ったり等々、状況如何によっては生死に関わるからさ。生きるって大変なのだ。

尚、言い忘れたが、残念なことに標本からは油が大変出やすいそうだ。だとしたら悲しいよね。今のとこ、出てないけど。

 
(註3)白黒のユウマダラエダシャク系の蛾
このタイプの斑紋を持ったエダシャクは沢山いるからややこしいのだが、どうやらクロフシロエダシャクという種のようだ。

どうやらと書いたのは、にしては黒っぽいからだ。でも調べ進めると、この種は黒色斑紋の大小にかなりの変化があり、個体によっては外縁部が広く暗色で、白色の部分が極めて狭い者もいるらしい。で、ネットで色々と画像を見ると、確かに皆こんなに黒くなくて、そこいらにいる白黒エダシャクとさして変わらないように見える。正直なところ、ワシの嫌いなタイプの白黒エダシャクそのものだ。


(出展『日本産蛾類標準図鑑』)

これがノーマルタイプだろう。もしも黒さがこの程度だったならば、絶対に無視していた筈だ。

似ていて同定間違いしやすいのが、クロフオオシロエダシャクとタイワンオオシロエダシャク。こっちの方が基本的に黒い。

(クロフオオシロエダシャク♂)

(同♀)

(出展『日本産蛾類標準図鑑』)

 
(タイワンオオシロエダシャク♂)

(同♀)

(出展『日本産蛾類標準図鑑』)

この2種と比べてクロフシロエダシャクは、前翅の横脈紋がより明瞭で、その外側の黒色の小紋からなる外横帯をそなえる。後翅は外縁部と亜外縁部がより小型で、並び方は不規則。
専門用語だらけでワケわからんが、ようするに違いは後翅には黒斑が少なくて白い部分が多い。あと一番わかり易いのが、背中側から見た腹部の地色が黄色いことである。他2種は、ここの地色が白いから容易に区別できる。ただ、ボロ個体だと色褪せするから同定は困難になるかもしれない。
変わった見分け方もあって、灯火採集などの折に白布に静止している時は多くの個体が触角を後ろ向き(背中側)にしている事だ。大概の蛾は静止時には触角を前側か真横にしている。エダシャク亜科に属する蛾も、その例に漏れない。だからコレは例外中の例外の事らしい。但し全ての個体がそうではなく、たまに横向きにしているものもいるようだ。

一応、♀の画像も貼付しておこう。

(クロフシロエダシャク♀)

(出展『日本産蛾類標準図鑑』)

雌雄の違いは♂の触角は繊毛状なのに対し、♀は微毛状。また♂の前翅基部に刻孔があり、中脚の基部と腹部基部側面に一対の黒い毛束があるそうだ。
本文中の横向き画像だけでは心許ないので、参考までに反対側の横向き画像も貼り付けておく。

見ると、厳密には確認できないものの、♂っぽい。また♂には脚に毛束があるとも言うし、それはあるみたいだから♂かなあ…。
触角は繊毛っぽいけど、微毛にも見えなくもない。そもそもが繊毛と微毛の定義って何じゃらホイ❓どこまでが繊毛で、どこからが微毛なのだ❓両者の境界が今イチわからん。まあ、♂で間違いなかろうかとは思うけど。

後回しになってしまったが、主たる種解説をしておく。

【学名】Dilophodes eleganus (Butler,1878)
日本産が原記載亜種で、中国西部、インド、ボルネオ島から、それぞれ別亜種が記載されている。
参考までに付記しておくと、Dilophodes属の基準となるタイプ種は本種で、他に本属に含まれるものはインド北部から1種が知られているのみである。

【開張】35〜48mm
『日本産蛾類標準図鑑』ではそうなっていたが、『みんなで作る日本産蛾類図鑑』には39〜43mmとなっている。
因みに今回採集したものを測ると49mmもあった。とゆう事は、もしかして♀❓まあ、どっちだっていいけど。

【分布】
本州、御蔵島(伊豆諸島)、四国、九州、対馬、屋久島、奄美大島、石垣島、西表島で、関東地方より西に多産するそうだ。
(´ε` )チッ、何だ普通種かよ。ガッカリだな。きっと黒いタイプじゃないノーマル型は、知らぬうちに何処かで見ているのだろう。たぶん興味がないから頭の中では厳密には区別されておらず、皆同じに見えているものと思われる。
参考までに書いておくと、以前は北海道も分布地に挙げられていた。しかし確実に分布する地域が見つかっておらず、よって除外されたという経緯があるそうだ。
国外では、台湾、中国、インド、ボルネオ島に分布する。

【レッドデータブック】
宮城県:絶滅危惧I類(CR+En)

【成虫の出現期】
『みんなで作る日本産蛾類図鑑』では、4E-7E,9Mとなっていた。つまり4月下旬から7月下旬と9月中旬に見られるということだ。しかし『日本産蛾類標準図鑑』には3〜5月と7〜8月となっていた。但し、発生は地域によって多少異なるとも書かれてある。おそらく標準図鑑の方が概ね正しく、一部が9月にも見られるのだろう。ザツいけど(笑)。
尚、2化目の個体は1化目と比べて明らかに小型らしい。見つけたのが1化目で良かったよ。これよか小さかったら、たとえ黒くとも無視だったろう。

 
(註4)『シャイニング』


(出展『映画.com』)

1980年に劇場公開されたホラー映画の金字塔。ホラー映画のみならず、ジャンルを超えて、その後の多くの作品に多大な影響を与えたと言われている。
監督は、巨匠スタンリー・キューブリック。天才キューブリックがホラー映画を撮ると、こうなるんだと感銘を受けたのをよく憶えている。キューブリックは難解だとよく言われるが、この作品は比較的わかり易い方なので猿でも楽しめるだろう。
主役を演じるのは、名優であり、怪優でもあるジャック・ニコルソン。あの鬼気迫る表情が、まさかのノーメイクで演じられていたという伝説が残っている。

この映画、何が怖いかって、先ずは子供の乗る三輪車がホテルの廊下を走るシーンだろう。それを背後から追いかけるローアングルの映像が心臓バクバクものなのだ。
幻のBarのシーンも怖い。ジャックとバーテンダーの交わされる会話は一見普通なのだが、ズレがあって、それが見てる側の動揺を誘う。そして、そこには何とも言えない静謐な緊張感が漂っており、表面的な驚かし系の怖さとはまた違ったうすら寒いような怖さがあるのだ。
勿論、徐々に気が狂ってゆくジャック・ニコルソンも怖い。あまりにも怖すぎて、それが突き抜けてしまい、笑っちゃうくらいだ。奥さんの絶叫する顔も恐ろしい。けど一番怖いのは、何といっても双子の女の子だ。アレにはマジで心臓が止まりそうになった。

言い忘れたが、原作はこれまた巨匠であるスティーブン・キングだ。但し小説と映画とでは内容が異なり、キューブリックによって大幅にストーリーが改変されている。キングはコレに激怒し、事あるごとに、この映画とキューブリックを執拗に攻撃し続けている。まあ、全然別な話にすり替えられたようなもんだから、キングが怒るのも理解できる。キングが小説で伝えたかった事が完全に無視されてるからね。
尚、小説の方も読んだけど面白かった。内容は映画と比べて、もっとスピリチュアルな話で、超能力を題材にしたものだったという記憶がある。そうゆう意味では小説の方が奥深い内容ではある。だいぶ昔に読んだので、間違ってたらゴメンナサイだけど。

 
(註5)アマミヤマシギ

(出展『おきなわカエル商会BLOG』)

全長約40cm程のシギ科の鳥で、全身は茶色、頭部に黒い横斑をもつ太ったシギである。日本の固有種で、奄美群島と沖縄諸島にのみ分布する。だが繁殖が確認されているのは奄美群島だけで、同島で繁殖したものの一部が沖縄に渡るのではないかと推測されている。
成熟した常緑広葉樹林に生息し、冬の終わりから春にかけて地上で営巣する。活動は主に夜間で、ミミズなどを捕食する。個体数に関するデータは乏しいが、1990年代になって激減している事が推察され、特に名瀬や龍郷町ではほとんど見られなくなったという。減少要因として、森林の伐採、ネコやマングースなどの外来種による捕食が指摘されている。種の保存法により、1993年に国内希少野生動植物種に指定されており、環境省のレッドデータブックでは絶滅危惧種II類(VU)に指定されている。

 
ー参考文献ー
◆『日本産蛾類標準図鑑1』
◆『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』

(インターネット)
◆『みんなで作る日本産蛾類図鑑』
◆『蛾色灯』
◆『服部貴照の備忘録 蛾類写真コレクション』
◆『昆虫ある記』
◆『高知の自然 Nature Column In Kochi』
◆『DearLep圖錄檢索』
◆ Wikipedia
◆『鯉太朗のお散歩日記Ⅱ』
◆『庭木図鑑 植木ペディア』
◆『林弥栄「有用樹木図鑑(材木編)」
◆『葉と枝による樹木図鑑』
◆『plantidentifier.ec.ne.jp』
◆『エムカクon Twitter』
◆『怪獣ブログ』
◆『映画.com』
◆『おきなわカエル商会BLOG』