2020’カトカラ3年生 其の弐(3)

  vol.25 ナマリキシタバ 第三章

    『嘆きのコロンビーナ』

 
第三章は種の解説編です。
今回もカトカラ界の両巨匠(註1)の『日本のCatocala』と『世界のカトカラ』のお力をガンガンにお借りして書きます。

 
【Catocala columbina yoshihikoi ♀】

 
前翅の稲妻が走ったような模様が美しい。
この上翅の美しさは、カトカラ属屈指のものだと思う。
でも展翅はほぼ完璧なのに、色の写りが不満だ。『兵庫県カトカラ図鑑』の画像みたく綺麗に撮れない。スマホのカメラが勝手に色補正しやがるので、実物の色の再現性が低いのである。それぞれの画像が別方向に美しさの一部だけを際立たせているって感じなのだ。各々の画像のエエとこを足して3で割ったら実物に近づくかもしれない。
まあ所詮は写真なんてどれだけ美しく撮れようとも、己の眼で見る実物、生きてるものや死後間もない姿の美しさには到底かなわないのだ。生命の持つエネルギーが醸し出す、あの輝くような美しさはフィールドで実際に見た者にしか解らない。

そう云う意味では、まだ生態写真の方が標本よりマシかもしれない。標本なんぞ所詮はミイラなのだ。展翅画像は冷凍庫から出したばかりものだから、まだしも生きてた頃の残滓のようなものがあるが、それも時間と共に失われてゆくだろう。

一応、採った直後の画像も貼り付けておこう。
光を当てると、稲妻模様がビカビカに光ったように見える。

 

(2020.8.8 長野県松本市)

 
展翅画像とは違う美しさはあるのだけれど、肉眼で見た姿とはコレも少し齟齬がある。もっと稲妻模様が浮き立つが如く光って見えた。自分の網膜に映った映像は仰け反るくらいの美しさだったのだ。

青っぽく写ってるのは、水銀灯の灯りの下だったからなのかもしれない。紫外線が強いのだろう。
それはさておき、たとえ紫外線が強くとも、ここまで青く写るカトカラはあまりいない。日本のカトカラを全種採ったワケではないけれど、他はアズミキシタバ(註2)くらいだろう。

 

(2020.7.26 長野県白馬村)

 
一応、現在のところ日本のカトカラの約85%は採っている。ゆえに残りの種類構成から考えても、こうゆう色に写るのは、この2種だけだ。
と云うことは、この2種だけが地色の色が特別だと言っても差し支えあるまい。素人は疑問に対して素直だから、それが何を意味しているのかをつい考えてしまう。考えられるのは、互いの祖先種が共通で近縁の間柄なのか、幼虫の食樹が同じだからだろう。そのどちらか、もしくは両方が羽の色に反映されているのではないか❓それをまだまだ駆け出しのペーペーの身ながら、不遜にもこの中で解き明かせたらと思う。

そんなデカい口を叩いといて、実をいうとまだ♂は採れてない。お恥ずかしい限りである。
なので、他から画像を拝借致します。

 
【ナマリキシタバ♂】

(出典『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』)

 

(出典『www.jpmoth.org』)

 
上と下の写真は出典が違うが、間違いなく同じ個体だろう。
ようするに同じ物でも写真の撮り方によって、こうも色の印象が変わるのである。ワシの写真がああなるのも致し方ないかもね。

♂の特徴は♀よりも腹部が細くて長い。そして尻先に毛束がある。但し、他のカトカラの♂ほど毛の量は多くないと思われる。

一応、小太郎くんに♂の画像を送ってもらった。

 

 
♂もカッコイイ(☆▽☆)
こうゆうの見ると、俄然♂も欲しくなるなあ。

そうゆう体(てい)たらくだから、当然の如く自前の裏面展翅の画像もない。
なので、これまた画像をお借りしよう。

 
【裏面】

(出典『日本のCatocala』)

 
たぶん♀だろうが、ピントがビシッと合ってないし、標本のミイラ化が進んでるので分かりづらいところがある。腹部の先が微妙なのだ。さて、どうしたものか…。

そういや、フィールドでの画像があることを思い出したので貼っつけておく。

 

(2020.8.8 長野県松本市)

 
アズミキシタバと違って、通常のカトカラの♀と同じく尻先に縦のスリットが入り、その下にはハッキリと黄色い産卵管も認められる。アズミはこのスリットが無いように見えるから雌雄の判別でスゲー悩まされるのだ。マジ、ウザい。

そうだ、展翅前に撮った画像もあったわ。

 

 
尻先にスリットが入っているのがシッカリわかるね。
とにかくコレが有れば♀。フィールドで雌雄を確かめるには、この方法が一番有効かつ確実です。

横からの画像もあった。

 

 
腹が太くて短いし、尻先に毛束が無いから間違いなく♀だろね。

 

 
前翅の外側の帯が白っぽいんだね。大概のキシタバ類は地色が全て黄色いから少し毛色が変わってる。また全体的に縁が白いし、後翅の翅頂にある紋も白っぽい。

不完全な翅の開き方ではあるが、表側の写真も出てきた。

 

 
この上翅の色が、一番実物に近いかもしれない。
やっぱ、(´ω`)美しいやねぇ。高貴でエキゾチックだ。

さてさて、私情丸出しの前置きはこれくらいにして、種の解説をしていきませう。

 
 ナマリキシタバ

日本では比較的近年になって発見されたカトカラ(シタバガ属)である。
前翅は、やや青みのある鉛色を帯び、横線は黒く明瞭。後翅は黄色で、中央黒帯は外縁黒帯と繋がらない。外縁黒帯は太く、内縁に接しない。また翅頂の黄斑は明瞭でない。頸部は淡い樺色。胸部は前翅と同じ色調で、腹部は灰褐色。前翅はアズミキシタバに似るが、後翅の斑紋に差異があり(アズミは黒帯が分離する)、地色の黄色にも差異がある(アズミは明るい黄色)。加えてアズミの方が小型なので判別は容易。
またコガタキシタバ(註3)とは後翅の斑紋がよく似るが、前翅の斑紋が全く違い、アズミとは逆に本種よりも大型なので簡単に区別できる。

 
【学名】Catocala columbina Leech, 1900

属名の「Catocala(カトカラ)」はギリシャ語由来で、kato(下)とkalos(美しい)という2つの言葉を繋ぎ合わせた造語。つまり下翅が美しいことを表している。
小種名はラテン語の”columbinus”に由来し、「鳩」または「鳩のような」と云う意味かと思われる。確かに前翅の色柄はハトっぽいちゃハトっぽい。
語尾の「a」はラテン語の名詞の活用語尾で女性名詞だろう。例えば「鼻」は「nasus」と表記するが、この「-us(〜ウス)」で終わる語尾のものの大部分は男性名詞である。同じように「バラ」を意味する「rosa」の「-a(〜ア)」は女性名詞を意味するからね。
余談だが「金」を意味する「aurum」の「-um(〜ウム)」は中性名詞を表すことが多い。

また、英語にcolumbine(カランバイン)という言葉もある。
これは「ハトの、dove-like(ハトのような)」という形容詞みたいだ。ラテン語の”columbinus(ハト)”が、古いフランス語である”colonbin”を経て、14世紀に英語化したものだという。このように英語には個々の動物名に対応して、ラテン語起源の形容詞が別にある。これを外来形容詞と呼ぶそうだ。
「columbine」は少しずつ形を変えて、人名や国名にも使われている。例を挙げておこう。

◆「Columbus(コロンブス)」新大陸の発見者
◆「Colombia(コロンビア)」南米の国
◆「District of Columbia」米国ワシントン市コロンビア特別区
◆「Colombo(コロンボ)」スリランカの首都
◆「Colombo(刑事コロンボ)」TV映画

日本でも企業名や喫茶店の名前などに使われているのをよく見かける。世界的に分布しているハトは人々に馴染み深く、昔から愛される存在だったのかもしれない。平和の象徴でもあるしね。あっ、アレは白い鳩か。じゃ、食べるハト(笑)。ハトはフレンチの高級食材だもんね。

そういや、パリやバルセロナでもいたわ。但し、色柄は日本にいるのと同じだけど顔付きは違ってた。どこか外国人っぽい顔立ちなのだ。人と同じで、住む場所によって顔付きも変わってくるんだろね。
でもオラ、ハトが嫌いだから残念な学名だ。あの首の変な動きや、一応野生動物のクセに緊張感ゼロのゆるさに💢イラッとくるのだ。自転車に乗ってる時などは、ギリギリまでどいてくれないので轢き殺してやろうかと思うことさえある。
それで思い出した。昔、ワシなんかよりも遥かにハトが大嫌いな彼女がいたわ。デート中に、それはそれは恐ろしい憎悪の言葉をハトに投げつけておったわ。そのあまりの口汚さにコチラが引いたくらいだった。

 
【和名】

ナマリキシタバのナマリは、おそらく前翅の色が「鉛色」だからだと思われる。さしづめ漢字にすると「鉛黃下羽」だ。
この名前、嫌いじゃないし、悪いネーミングだとは思わないけど、ツマんないといえばツマんない。何ら捻りがないし、どこか安易さを感じるのだ。蛾には、この「ナマリ」という和名を冠した奴が幾つかいるしね。ナマリキリガとかナマリケンモンとかさ。
それにアズミキシタバの前翅だって鉛色じゃないか。だから雷とか稲妻に因んだ和名でも良かったんじゃないかと思うんだよね。今更こんなこと言っても詮ない話なんだけどもさ。

 
【亜種と近縁種】

(亜種)
◆Catocala columbina columbina Leech, 1990
中国・極東ロシア


(出典『世界のカトカラ』)

 
原記載亜種は大陸のものなんだね。
日本のものと比べて後翅内縁が黄色くなるそうだ。

 
◆Catocala columbina yoshihikoi Ishizuka, 2002
(日本)


(出典『世界のカトカラ』)

 
日本産は別亜種とされ、後翅内縁部が黒化する。
学名の亜種名「yoshihikoi」は、ヨシヒコ氏に献名されたものだろう。おそらく蛾界に貢献された名のある方なのだろうが、元来自分は蝶屋なので蛾界の事はあまり知らない。なので苗字も漢字も不明で、何ヨシヒコさんかはワカランのだ。

ちなみにネットの『ギャラリー・カトカラ全集』には「大陸のものとは別種である可能性が高い。」と書いてあった。だとすれば、学名は亜種名が昇格して”Catocala yoshikoi”となるワケか…。何かつまらんのぉー(´ε` )
できることならば、稲妻や雷などサンダーボルト的な、もっとカッコイイ学名にしてもらえんかのう(´ε` )
例えば「raizin」とか「ikazuchi」「raigeki」とかさ。ちょっとダサいけど「inabikari」でもいいや。一瞬、ラテン語で雷、稲妻を意味する言葉でもいいかもと思ったが、問題ありだと直ぐに気づく。ラテン語の雷といえば「fulminea」だが、でもコレは残念ながら使えない。なぜなら、既にキララキシタバの学名に使われているからだ。キララよか、よっぽどナマリの方が雷っぽいと思うんだけど、まあそこは致し方ないやね。
あっ、でも「fulminea」ってイタリア語だっけか。とはいうものの、イタリア語ってラテン語から派生した言語だもんね。
どっちだっていいや。段々面倒くさくなってきた。たぶんラテン語でも似たような言葉でしょう。

も1つ因みにだけど、後翅中央黒帯の内側が著しく黒化する異常型が知られていると何処かに書かれてあったけど、それに相当するような個体の画像は見たことがないなあ…。

 
シノニム(同物異名)に以下のものがある。

◆Ephesia columbina
◆Mormonia bella splendens Mell, 1933

上の”Ephesia”は古い属名である。下の”Mormonia”も古い属名だが、小種名の”bella”で❗❓と思った。bellaといえば、ノコメキシタバの小種名と同じだからである。
ちなみに、その後ろの”splendens”は亜種名で「素晴らしい」という意味だろう。
先ずは、あまり見たことがない属名”Ephesia”から調べてみよう。

Ephesia columbinaでググると下のような絵が出てきた。

 

(出典『Wikipedia』)

 
パッと見、ナマリキシタバに見えなかった。前翅の稲妻のような黄色が目立たなかったからだ。誰なんだ、アンタ❓
でもナマリキシタバの現在の学名”Catocala columbina”でググっても、この絵が出てくる。
まあいい。これ以上は調べようがない。切り替えて次いこう。
Mormonia bella splendensでググる。

結果、Mormonia bellaでは出てこず、「Mormonia」のみでしかヒットしなかった。そこには、こんな絵があった。

 
 
(出典『Wikipedia』)

 
てっきりノコメキシタバっぽい黄色い下翅のが出てくるかと思いきや、驚きの後翅が紅色じゃないか❗頭が混乱する。
コレって、ちょっとオニベニシタバ(註4)に似てねぇか❓
一応、確認しておこう。

 
(オニベニシタバ Catocala dula)

(2019.7.10 奈良市白毫寺)

 
後翅の黒帯の形は違うが、暗めの赤の色調と前翅の柄はオニベニに似ているようにも見える。絵だから、どこまで信用していいのかワカンナイけどさ。

だいたい、そもそも何でナマリキシタバがノコメキシタバ(註5)になって、オニベニになるのだ❓無茶苦茶だ。
そこで、やっと思い出した。アズミキシタバの解説編でDNA解析を見た時は、ナマリの近縁種はノコメだったような気がするぞ。

 

(出典『Bio One complate』)

 
図は拡大できるものの、トリミングしよう。
 

上がノコメで、真ん中がナマリ。そして下が別なクラスターに入ってるオニベニである。やはりノコメとは近縁であることを示唆している。
でも素人目だと、オニベニは元よりノコメにだって全然似てないじゃないか。
しかしだ。よくよく見れば、下翅は似ていると言わざるおえないかもしれん。ノコメの幼虫の食樹もナマリと同じくバラ科(ズミ)だから、近縁関係にあっても不思議ではないのだ。

 
(ノコメキシタバ Catocala bella)

(出典『世界のカトカラ』)

 
そう云う意味では「Mormonia bella」というシノニムは中々の慧眼だったと言えるかもしんないね。この時代に両者が近縁だと見抜いていた可能性がある。

それにしても、この系統図だと下翅の色は系統とは全然関係ないって事になりはしまいか。益々アタマがウニウニになる。
因みにアズミキシタバはこの図のずっと下にあるから、系統的には離れている。と云うことは羽の色は系統が近いからってワケじゃないのか…。
カトカラの分類って、ワケワカメじゃよ(+_+)

 
近縁種とされるものが幾つかある。

 
◆タイワンナマリキシタバ
Catocala okurai Sugi 1965
台湾


(出典『世界のカトカラ』)

 
ナマリキシタバに似るが、前翅か緑色を帯びるので区別できるという。
成虫は6〜7月頃に出現するが少ない。食樹は不明だが、バラ科シモツケ属が予想される。
参考までに言っておくと、Wikipediaではナマリキシタバの亜種扱いになっていた。

 
◆オビナシナマリキシタバ
Catocala infasciata(Mell,1936)
中国雲南省・ミャンマー


(出典『世界のカトカラ』)

 
後翅の黒帯が表裏ともに全く消失する特異な種で、棲息地は局地的で稀。
前翅の横線はナマリキシタバに類似し、交尾器も似ているらしい。こんなの素人目には、絶対に近縁種と見破れないだろう。
成虫は6〜7月頃に出現する。これも食樹は不明だが、シモツケ属と推察されている。

 
◆ウスズミナマリキシタバ
Catocala jouga Ishizuka,2003
中国南西部〜ベトナム北部


(出典『世界のカトカラ』)

 
ナマリキシタバに似るが、前翅の色調、後翅黒帯の形状などにより区別できる。成虫は6月頃に出現するが少ない。食樹は不明。

(・o・)んっ❗❓
けどコレって、下翅の外側黒帯が離れているように見えるし、地色が明るめの黄色だからアズミキシタバに似てるぞ。
ホントにアズミとナマリって遠縁なのか❓もう何が何だかワカランよ。ヽ((◎д◎))ゝお手上げー。

 
【分布】本州、四国、小豆島、九州

東北から九州に局地的に分布する。北海道からは記録がない。
国外では中国、ロシア南東部(沿海州)に分布する。
長野県では、同じ食樹を利用し、同一場所に発生するフタスジチョウほどには寒冷地に適応していないとみられ、標高1800m以上のシモツケ群落には発生しないようである。

 

(出典『日本のCatocala』)

 

(出典『世界のカトカラ』)

 
上の図は分布域を示し、下図は県別の分布を示している。

最初は奥多摩で発見され(それ以前の1956年に滋賀県鈴鹿山地で既に採集はされていた)、長いあいだ大珍品だったが、その後各地で生息が報告された。しかし、その分布は局地的で個体数も少なく、複数得られることは稀なようだ。ゆえに今でも稀種と言ってもいいだろう。『世界のカトカラ』でも珍品度が星★4つになってるしね。
分布が局地的な理由として、食樹の分布との関連性が指摘されている。これは食樹が崖地や岩場のような乾燥を好む植物ゆえ、謂わば本種は生態的に特殊な環境に依存しているからだと言い換えてもいいかもしれない。また、このような環境は防災上の理由でコンクリート化されやすいゆえ、さらに分布を狭めてもいるのだろう。人知れず絶滅している産地もあるに違いない。

本州中部では松本市や伊那市など長野県下に産地が多いが、やはり局所的。他に本州では東京都奥多摩町、埼玉県秩父市、新潟県糸魚川市、岐阜県白川村、滋賀県鈴鹿山地、兵庫県宝塚市、奈良県十津川村、岡山県高梁市等の産地が知られている。
四国では香川県高松市、小豆島や徳島県の那賀川上流で分布が確認されている。また九州では熊本県矢部町、大分県宇佐市・国東半島で発見されている。

 
【レッドデータブック】

埼玉県:R1(希少種1)
新潟県:地域個体群(LP)
富山県:準絶滅危惧種
岐阜県:情報不足
奈良県:絶滅危惧種Ⅱ類
岡山県:留意種
広島県:準絶滅危惧種
香川県:準絶滅危惧種
高知県:準絶滅危惧種
長崎県:準絶滅危惧種
大分県:情報不足

結構、多いね。こんだけ指定数が多いカトカラは初めて見るかもしんない。ようはそれだけ珍しい種だって事だわさ。

 
【開張】43〜53mm内外

そもそも大きいカトカラではないが、小豆島産は特に小型だと聞いている。確かに『世界のカトカラ』に図示されているものは明らかに小さい。

 

(出典『世界のカトカラ』)

 
右側が小豆島産である。確かに小さい。だけど左は♀だからなあ。相対的に♀の方が大きいようだし、隣の♀と比べたら小さいのも当たり前だと言えなくもない。
そういえば岸田先生の『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』にも小豆島産が載っていたな。

 

(出典『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』)

 
左が長野県産の♂で真ん中が小豆島産の♂である。やっぱ小さいね。
関西からは比較的行きやすい小豆島を訪れなかったのは、この小ささがネックになっていたからだ。憧れのナマリ嬢にガッカリしたくはなかったのである。

でもコレって『世界のカトカラ』と同じ個体のような気がするぞ。たった1例だけの比較だと、小豆島産は小さいと証明する材料としては弱いじゃないか。
けど、小太郎くんの知り合いが小豆島のナマリは小さいってハッキリ言ってるそうだから、きっと小さいんじゃないかな。
それを確かめに1回くらいは小豆島に行ってもいいかもしんない。小豆島には「島宿 真理」っていう泊まってみたい宿があるしね。

 
【成虫の発生期】 7〜9月

7月中旬から現れ、9月中旬まで見られるが、新鮮な個体は8月上旬までとされる。
長野県の生息地、伊那市(1000m イワシモツケ群落)、松本市(1550m アイズシモツケ群落)では7月末から8月にかけて羽化し、没姿するのは9月上旬。個体によっては9月中旬まで見られ、出現期間は約1ヶ月半。伊那市産を室内飼育(22.5℃)した場合の成虫寿命は3〜4週間であったという。

 
【成虫の生態】

食樹であるシモツケ群落が生育する蛇紋岩、石灰岩などの岩礫地に見られる。長野県では川沿いの浸食された段丘崖や渓谷の安山岩地に生育するアイズシモツケ群落にも発生する。

 

 
たぶん、こういう環境を好むのだろう。

思うに東日本では、食樹を同じくするフタスジチョウの産地と分布が重なる可能性があるから、フタスジの既産地から新たな生息地が見つかる可能性があるのではないか❓
また西日本では、この環境だとベニモンカラスシジミの産地で見つかる可能性が高いように思われる。ベニモンカラスの食樹はシモツケ類ではないが、同じような環境に見られるクロウメモドキだからだ。ベニモンカラスはナマリよりも更に局所的な分布なので、ナマリが居るところ=ベニモンカラスが居るとは言えないが、その逆は有り得ると思う。たぶんベニモンカラスの生息地にはナマリも棲息している可能性が高いのではなかろうか❓そういや実際、紀伊半島や中国地方のべニモンの有名産地には少ないながらもナマリの記録があるしね。これは逆にナマリの既産地からベニモンカラスの新産地が見つかる可能性も秘めていると云うワケだ。チャレンジ精神の有る方には、是非ともベニモンカラスの新産地発見にトライして戴きたい。

おっと、それならばクロツバメシジミと混棲している可能性もあるかもしれない。山地の崖に棲息するクロツも同じような環境を好むのだ。クロツの食樹であるツメレンゲは乾燥した崖に生えるからね。
ちょっと待てよ。クロツは河川敷にもいるから、梓川の下流域とかにもナマリが居たりしてね。ナマリは標高の低いところでも生息するから有り得るかも。
問題は食樹の有無だが、イブキシモツケは関西では標高100〜200mくらいの川沿いでも生えているからね。松本盆地の標高は500〜800mだから可能性はあるかもしんない。

成虫はクサボタンやシャジン類などの花に吸蜜に集まるが、上田市の低地(alt.500〜600m)ではクヌギの樹液にもよく飛来するそうだ。高松市内でも樹液に飛来すると聞いたことがある。しかし、兵庫県(alt.190m)で何度も糖蜜トラップを試してみたが、全く飛来しなかった。マオくんも長野県(alt.700〜800m)の多産地で試したが全く来なかったという。また、竹中氏からは紀伊半島の産地で試したがダメだったと聞かされている。
伊那市などの山地(alt.1050m)では成虫の生息数の割には餌を摂る個体数は少なく、摂る時期も発生後半に限られるという。これについて『日本のCatocala』の著者、西尾規孝氏は「低温のため、高温の低地ほど多くの栄養を必要としないかもしれない。」と書かれておられる。
納得できるような出来ないような微妙な説だ。理解できないワケではないのだが、北海道でもカトカラは樹液に集まるというし、自分も長野県の標高1700mで糖蜜トラップを試しているけど、オオシロシタバ、ムラサキシタバ、ベニシタバがそれなりに飛来した。白骨温泉(alt.1500m)ではムラサキ、ベニ、オオシロ、シロシタバ、ゴマシオキシタバ、ヨシノキシタバが飛来したし、平湯温泉(alt.1250m)ではベニとシロが来た。また開田高原(alt.1330m)ではゴマシオ、エゾシロシタバなどが集まった。確かに低地よりも飛来する個体数は少ないような気もするが、それなりには飛んで来るのだ。だとすれば、ナマリの糖蜜への飛来例を殆んど聞かないのはナゼなのだ❓
(´-﹏-`;)ん〜、やっぱメインの餌は花なのかなあ…❓
でも一度は糖蜜トラップでナマリを仕留めねば、気が済まないところがある。今のところ、我がスペシャル糖蜜で採れてないカトカラは、このナマリとアズミキシタバしかいないのだ。来年こそは、ナマリだって糖蜜で採れるということを証明してやろうと思う。

灯火には夜半過ぎに飛来することが多いとされる。
でも自分らのライトトラップには、最初に飛来したのが午後8時40分。以下10時前から10時20分の間、11時過ぎから午前0時過ぎ迄の間で、それ以降は全く姿を現さなかった。
マオくんも早い時間帯でも飛んで来ますよと言っていたから、夜半過ぎに飛来すると云うのは、あくまでもそうゆう傾向があると捉えた方がいいかもしれない。飛来時刻は、その日の気象条件に大きく影響されるのであろう。

アズミキシタバ程ではないが、地這い飛びで灯火にやって来る傾向があり、光源からやや離れた地面にいる事も多かった。しかしアズミみたく特に白布の下部に好んで止まるという事はなかった。アズミと同じく敏感で落ち着きがなく、近づくとすぐ飛び立ち、ムカつく。但し、これらは1回だけの経験なので、それが通常の行動パターンなのかどうかはワカラナイ。
尚、分布は局地的で少ないと言われるが、食樹の群生地では時に多数の個体が灯火に集まる事があるという。

昼間、成虫は頭を下にして石灰岩や安山岩に静止している。前翅は岩肌によく似ていて発見は容易ではないという。

 

(出典『日本のCatocala』)

 
こんなの、至近距離でも見逃しそうだ。遠目だったら、間違いなく見つけることは至難だろう。
まだ試したことはないが、昼間に生息地の崖を網で叩いて採るという方法もあるらしい。驚いて飛び出したものを採集するようなのだが、また崖に止まったらワカランぞなもし。それに葉っぱに止まってくれることは滅多に無さそうだから、蝶のゼフィルス(ミドリシジミの仲間)採集よりも難しそうだ。
体力と根性が必要だから、やる人は少ないかもしれないね。だって灯火採集の方が遥かに楽だもん。酒飲めるしさ。
そんなだから蛾屋さんは普段ネットを振ることが殆んどない。採集はライトトラップ&毒瓶が主なのだ。ゆえにハッキリ言って網さばきが下手な人が多い。あっ、しまった。謀らずもディスってしまった。でもマオくんみたいな天才や蝶屋との2足のワラジの青木くんなどは別として、大半の人がそうだと思う。野球、テニス、ゴルフ、卓球、バトミントンetc…、道具を使う球技と同じだ。普段から、また昔からシッカリ振り込んできてないと、対象物をジャストミート、芯で捕えることは出来ないのである。

驚いて飛び立つと、上向きに着地して、瞬時に体を下向きに反転させる。

交尾の情報は極めて少なく、『日本のCatocala』の各種カトカラの交尾を表に纏めたものに、深夜午後11時〜午前2時とあるのしか見たことがない。どうやら飼育下の観察だから、おそらく自然状態ではまだ見つかっていないものと思われる。とはいえ、表には出てないだけかもしれないけどね。

産卵行動についての記述は全く見つけられなかった。
推察だが、おそらく同環境に棲むアズミキシタバのように崖や岩に生える苔類に産卵するものと思われる。

 
【幼虫の食餌植物】
 
バラ科 シモツケ属のイワガサ、イワシモツケ、イブキシモツケ、アイズシモツケ、ミツバイワガサが記録されている。

1981年、増井武彦氏により本種が香川県小豆島でイワガサを食樹にしていることが初めて明らかにされた。それをキッカケに、その後同属のシモツケ種群からも幼虫が発見された。

 
(イワガサ)

(出典『天草の植物観察日記』)


(出典『www.plant.kjmt.jp』)

 
学名 Spiraea blumei
海岸や山地の日当たりの良い岩場などに生育し、高さ1~1.5mになる落葉低木。漢字で書くと「岩傘」。名前の由来は岩場に生えて花序の形が傘に見えることからだそうだ。
分布は本州の近畿以西、四国、九州、朝鮮半島、中国。
若枝は緑色〜褐色で無毛、又はほぼ無毛で稜角がない。枝はしばしば弓なりに曲がる。
葉は互生し、長さ1.5~3.5cm、幅1~3cmの倒卵形~菱状卵形。時に3裂し、不規則な欠刻状の鋸歯がある。表面の脈はやや凹む。葉や葉柄は、ほぼ両面とも無毛。
一見すると同属のイブキシモツケと似るが、若枝や葉裏に毛の無いことから区別される。
花は5月に見られ、白色の5弁花を20~30個ほどつける。

変種にミツバイワガサ(別名タンゴイワガサ)がある。福井県以西の日本海側の海岸の岩場に生育し、兵庫県下ではイワガサと共に見られる。イワガサよりも葉が大きく広卵形。浅く3つに裂ける。

 
(ミツバイワガサ)


(出典『blog花たちとの刻』)

 
この特徴的な葉が名前の由来だろね。
各種図鑑には食樹としての記録は無いが、『兵庫県カトカラ図鑑』には、2012年に兵庫県美方郡新温泉町城山公園で幼虫が発見されていると書かれてある。

 
(イワシモツケ)

(葉)

 
学名 Spiraea nipponica
バラ科シモツケ属の落葉低木。漢字にすると「岩下野」。
日本固有種で、近畿地方以北に分布し、高い山地の日当たりの良い蛇紋岩地や石灰岩地に生育する。
高さ1〜2mになり、よく分枝する。若枝は淡褐色、古い枝は黒褐色を帯びて毛は無い。
葉は変異が多く、狭長楕円形、倒卵形、倒卵円形、広楕円形または楕円形になり、近縁種とされてきたマルバシモツケとナガバシモツケは現在では同種とされている。葉質は厚く、両面とも無毛で裏面は粉白色または淡色。縁は全縁か先端に2〜3個の鈍鋸歯があり、互生する。
花期は5〜7月。5弁花を多数つける。

尚、今のところアズミキシタバの自然界での食樹は、このイワシモツケのみが知られている。但し、飼育した場合は他のシモツケ類でも順調に育つようだ。

 
(イブキシモツケ)

(出典『風の翼』)


(2020.6月 兵庫県武田尾渓谷)


(出典『六甲山系の植物図鑑』)

 
学名 Spiraea dasyantha
「伊吹下野」と書き、名の由来は滋賀県の伊吹山で最初に発見されたため。別名にマンシュウシモツケ(満州下野)、ホソバイブキシモツケ(細葉伊吹下野)、キビノシモツケ(吉備下野)、トウシモツケ(唐下野)がある。
分布は本州の近畿以西、四国、九州。山地や海岸の日当たりの良い岩礫地に生え、高さ1~1.5mになる落葉低木。石灰岩地域の崖に多く、流紋岩質凝灰岩でも見られる。
枝はよく分枝し、やや弓なりに曲がる。若い枝は淡い赤褐色で、褐色の短毛が密に生える。
葉は互生し、長さ1.5~7cm、幅0.7~2cmの卵形~菱状楕円形となる。葉縁は不規則な欠刻状の鋸歯があり、しばしば3浅裂する。葉の質は硬く、葉の表面の脈は凹み、若い葉では軟毛が密に生え、裏面には褐色の毛が密生し、葉脈は隆起する。葉柄は長さ0.2~1.1cmで、ここにも軟毛が生える。
花期は4~6月。花は白色で、5弁花の小さな花を多数つける。

 
(アイズシモツケ)


(出典『Wikipedia』)

 
学名 Spiraea chamaedryfolia
漢字は「会津下野」。由来は福島県の会津地方で発見されたことによる。
日本では北海道、本州の中部地方以北、九州の熊本県に分布し、山地の日当たりのよい崖地や岩場、林縁に生育する。アジアでは東アジア、シベリアに分布する。基本種はヨーロッパからシベリアに分布する。
樹の高さは2mに達する。若枝は赤褐色を帯び、稜角があり、無毛、もしくは白軟毛がある。
葉は互生し、長さ3〜6cm、幅1.5〜3.5cm。形は卵形から広卵形または狭卵形。葉の先端は鋭頭で、基部は円形または広い切形。葉の表面は無毛か短伏毛があり、裏面は若葉時には軟毛があり、のちに無毛となる場合がある。葉の縁には基部以外の部分に鋭い重鋸歯がある。
花期は5〜6月。直径10mmの白色の5弁花を多数咲かせる。

紛らわしいものに、ミツバシモツケがある。
ミツバイワガサの誤表記かと思ったが、実際にそうゆう名前の植物は存在するようだ。しかし、およそシモツケの仲間には見えない。花も葉も全然似てないのだ。

 
(ミツバシモツケ)

(出典『garakuta box』)

 
調べたら、このミツバシモツケは北アメリカ原産のギレニア属の宿根草で、シモツケとは同じバラ科だが別属のようだ。

  
幼虫は、これらシモツケ類の比較的大きな株を好む傾向があるという。
尚、長野県下の飼育例では、ユキヤナギ、コデマリ、ヤブデマリ等の各種シモツケ類の柔らかい葉が幼虫の代用食になるそうだ。

 
【幼生期の生態】

先ずは卵から。

 
(卵)


(出典『日本のCatocala』)

 


(出典『flickriver photos from kobunny 』)

 
ナゼか同じサイトに別な色の卵もあった。

 

 
卵はやや背の高いまんじゅう型で、ベニシタバ、アズミキシタバ、ノコメキシタバに似る。縦隆起条は太く、気孔が明瞭に開口する。この形態は幼虫の食餌植物がバラ科やヤナギ科のカトカラの特徴のようだ。環状隆起は二重前後花弁状紋は2層、横隆起状の間隔は前極側で広く、後極側で狭くなる。

他のカトカラ(オニベニ、ムラサキ、シロ、ゴマシオなど)のように卵が一斉に孵化するのではなく、長期間に渉ってダラダラと孵化する。また孵化時期も他のカトカラよりも遅く、孵化に要する有効積算温度も、より必要なんだそうだ。これについて西尾氏は「日が当たると高温になる岩場表面での生活に適応した現象と思われた。」と推察されておられる。北海道には分布しないというし、寒冷系のカトカラではないんだろうね。
でもだったら、ナゼに武田尾みたいな低山地であれだけ糖蜜トラップを掛けたにも拘らず、1頭も寄って来なかったのだ❓標高が低い分、活発に動く筈だから、エネルギー源も必要だろうに。それに、この時期の武田尾には花なんてロクに咲いてなかったと思う。なんだから樹液とか糖蜜に寄って来るでしょうに。なのに、なして来んの❓キイーッ(`Д´)ノ❗、全くもって解せん。葉っぱの露でも飲んでるとしか思えん。
(´-﹏-`;)むぅ〜、まさか夏眠とかすんじゃねぇだろなあ。

 
(1・2齡幼虫)

(出典『日本のCatocala』)

 
左が1齡幼虫、右が2齡幼虫。

 
(3齡幼虫)

(出典『日本のCatocala』)

 
(5齡幼虫)


(出典『日本のCatocala』)

 
この5齡が終齢となる。

幼虫の体色変異は比較的あり、全体が白化したものや黒化したものが見られる。
3齡前後の幼虫は食餌植物の枝先にいるが、終齢になると日中は葉などの目立つところにはあまりおらず、木の根元や地表近くの枝、枯れてブラ下がった枝にいるようだ。また時に根元付近の岩上や草で見つかることもあるという。
ゆえにビーティング採集よりも、食樹を丹念にルッキングで探す方が効率は良いとされる。

4・5齡幼虫の食痕は、枝先の葉柄部と茎を残す形のようだ。

 

(出典『日本のCatocala』)

 
アズミキシタバの幼虫と似るが、頭部の模様で区別できる。

 
(ナマリキシタバ終齢幼虫の頭部)

(出典『日本のCatocala』)

 
カトカラの幼虫の判別には、この頭部の特徴が極めて重要なのだという。参考までにアズミキシタバの頭部も載せておこう。

 
(アズミキシタバの幼虫頭部)

(出典『日本のCatocala』)

 
似ているが、よく見ると違うね。
ついでだから、アズミの幼生期全般も載せておこう。

 
(アズミキシタバの卵)

(出典『日本のCatocala』)


(出典『flickriver photos from kobunny』)

 
(アズミキシタバの2齢幼虫)

 
(5齢幼虫)

(出典『日本のCatocala』)

 
体色が灰色のナマリと比べて赤みがかるが、他のステージも含めて全般的に似てるね。どちらも2齢幼虫は黒いしさ。やはり幼虫や卵が似ているのは両者の食樹が同じで、成虫の前翅の色が似てるのとも関係があるのかもしれない。
では、下翅が似ていると言われてるコガタキシタバとはどうだろう❓

 
(コガタキシタバの卵)

 
(コガタキシタバ終齢幼虫)

 
(終齢幼虫頭部)

(出典『日本のCatocala』)

 
全然、(@_@)似てねぇー。
まあDNA解析の系統樹でも両者は離れてるからね。

では、DNA解析だと近縁とされているノコメキシタバとではどうだろうか❓

 
(ノコメキシタバの卵)


(出典『日本のCatocala』)

 
ナマリキシタバと比べて隆起状の数が40本以上あること(ナマリは40本未満)で区別できる。またアズミとは隆起状の間隔で判別できる。アズミは間隔が広く、それに比してナマリとノコメは間隔が狭いという。

 
(ノコメキシタバ終齢幼虫)

 
(終齢幼虫頭部)

(出典『日本のCatocala』)

 
幼虫は変異が多そうだから何とも言えないところがあるが、卵と終齢幼虫の頭部は似ている。自分はDNA解析に対しては懐疑的なところがあるが、これはその解析結果と合致していると言ってもいいだろう。

ついでだから、オニベニの幼生期の画像も添付しておこう。

 
(オニベニシタバの卵)

 
 
(オニベニシタバ終齢幼虫)

 
(終齢幼虫頭部)

(出典『日本のCatocala 』)

 
\(◎o◎)/超絶似てねぇー。
コレは完全に別系統であろう。全くもって的外れもいいところである。そもそもオニベニの食樹はバラ科ではない。全然違うクヌギなどのブナ科コナラ属だもんね。違ってて当たり前かもしんない。

来年はナマリさんの終齢幼虫探しをしてもいいかなぁ…。
あまりにも成虫が採れんし、非効率的過ぎるもん。だからか、多くの皆さんは幼虫採集で標本を得ているみたいだ。成虫採りよりも、よっほど楽に新鮮な標本が得られるという。
終齢だと飼育の苦労も少なそうだし、滅多に飼育をしないワシでも何とかなりそうだ。

とはいえ、成虫採りをやめたワケじゃない。
本当の恋は、まだ始まったばかりなのだ。

                        おしまい

 
追伸
書き忘れたが、蛹化場所についての情報も見つけられなかった。おそらく自然状態での蛹は見つかっていないのだろう。
それにしても崖だと何処で蛹化するのだろう❓まさか地面まで降りては来ないだろうから、崖の窪みに溜まった落葉の下辺りで蛹化するんだろね。

今回の第三章もタイトルを付けるのに苦労した。
どれがどの章に対してのモノなのかはハッキリ思い出せないが、以下のような候補のメモがあった。

『稲妻レェドゥン』
『稲妻コロンビーナ』
『雷雲と稲妻』
『雷神を追い求めて』
『雷撃レッド』
『雷(いかづち)の蹉跌』
『イカロスが幾たりも来ては落っこちる』
『Nの昇天』
『カラビナ 鎖の掟』

とはいえ、メモっといて何で候補としたのか思い出せないものもある。ザッとした草稿は随分前に書いてあったのだ。タイトルは最初に決めてから書き出す場合と書いてる途中で思いつく場合とがあるのだ。
それはそうと、特にレッドと云うのが、よくワカラン。記憶を辿ってみよう。

『稲妻レェドゥン』は、サザンの「稲村ジェーン」がモチーフとなっている。レェドゥン(leaden)の意味は「鉛色の」がベースだが、他に「意気消沈した、重苦しい、陰鬱な」といった意味合いもある。これは、ようは第一章を想定したものだろう。ホント、その通りだったからね。思い出しても辛い9連敗だったよ。
このタイトルのことはすっかり忘れてて、第一章には『汝、空想の翼で駆け、現実の山野にゆかん』というタイトルを付けたけど、そんな仰々しいものよりもコチラの方が良かったかもしれない。まだしもこっちの方が少しはセンス有りじゃろう。今からでも改題してやろうかしら。

『雷撃レッド』は、そこからの更なる聯想だったと記憶している。レェドゥン(leaden)でググッたら「reddn(レェドゥン)」というのが出てきた。意味は「赤く染める」だが、他に「赤面させる」「(恥、怒り、興奮などで)赤を赤らめる」という意味合いもある。9連敗もして屈辱的だったから、タイトルとして考えたのだろう。レッドは、たぶんレェドゥンの略をモジったものじゃろう。『電撃レェド』よか『電撃レッド』の方が何となくカッコイイからね。で、雷撃はそのショックを表してるんだろね。

『雷神を追い求めて』『雷(いかづち)の蹉跌』『イカロスが幾たりも来ては落っこちる』も又、第一章の為に考えられたものだ。

一番最初の『雷神を追い求めて』は、タイトルまんまの意味だろうから説明不要でしょう。
とはいえ、もしかしたらどっかでプルーストの長編小説「失われた時を求めて」を意識したものだったのかもしれない。どちらもクソ長いものだからさ。でもきっと良いアレンジが浮かばなかったんだろう。その辺の事は全く記憶に無いけど。どうあれ、このままじゃベタ過ぎて使えないもんね。

『雷(いかづち)の蹉跌』は、挫折を表している。そんなに悪くないタイトルだと思うが、蹉跌の文字はハイモンキシタバの回(『銀灰(ぎんかい)の蹉跌』)で使ったのでカブるのを避けた。

『イカロスが幾たりも来ては落っこちる』も挫折の日々を表している。翼を得たイカロスが調子ブッこいて太陽に向かって飛ぶのだが、蝋(ろう)で作られた翼ゆえ、やがて太陽の熱に溶かされて墜死するという神話が下敷きになっている。
このイカロス神話で思い出したのが、梶井基次郎の短編小説「Kの昇天ー或はKの溺死ー」。その中の一節「イカルスが幾人も来ては落っこちる。」を思い出し、そこに少し手を加えてタイトルとした。
尚、イカロス(イーカロス)は古代ギリシア語の表記で、ラテン語読みだとイカルスと表記される。
余談だが、このギリシア神話の物語は人間の傲慢さやテクノロジーを批判するものとして有名である。

その「Kの昇天」からモロにパクったのが『Nの昇天』。
Nとは勿論ナマリキシタバの頭文字のNである。これは第二章に流用しようとした。結局使わなかったのはタイトルにするには色々と文章に仕掛けが必要だったからである。伏線となる文章を散りばめないとタイトルが薄っぺらくなっちゃうからね。けど、そんな筆力は持ち合わせていないので断念。

『雷雲と稲妻』も第二章を意識してのタイトルだ。
でもコレとて、そのまんまだと薄っぺらいから仕掛けが必要となる。けど同じく筆力なしゆえの断念だったね。

『カラビナ 鎖の掟』。
何だかVシネマのタイトルみたいだ(笑)。たぶんコレというモノが浮かばなくて、ヤケクソ気味で捻り出したのだろう。そもそも学名はコロンビナなのにね。頭の中でコロンビナとカラビナが鎖のように絡まってたんだろうけど、どうやって鳩からカラビナに持っていこうとしてたんだろ?かなりの力技が必要だから謎です。まさかのダジャレで何とかしようとしてたりしてね(笑)
これは何章に宛がわれたとかは、特に無かったように思う。

まあ、こんな屑ブログでも、タイトルを付けるのにはそれなりの苦労があるんである。

最後に今回のタイトル『嘆きのコロンビーナ』について少し触れて終わりにしよう。
嘆いているのは、コロンビーナ(ナマリキシタバ)ではない。ワタクシ自身だ。トラップに来ないことに嘆き、灯火に来ないことに嘆き、どうやって採ればいいのか分からなくなって嘆き、飛んで来たはいいが翻弄されまくって嘆き、上手く展翅写真が撮れずに嘆きで、全面嘆きだらけだったのだ。
そして、この今書いている文章にだって嘆いている。何度も何度も書き直しているのだ。一度完成してからも、解体、組み替えを繰り返している。つまりナマリキシタバの採集と同じく出口の見えないドン底状態に陥っていたのである。いつもにも増して時間と労力を費やしておったのだ。まあ、時間と労力を費やしたからって、優れたものになるとは限らないけどね。
やれやれだよ。

 
(註1)カトカラ界の両巨匠
世界的なカトカラ研究者である石塚勝己さんと日本のカトカラの生態解明に多くの足跡を残された西尾規孝さんのこと。
それぞれ『世界のカトカラ』『日本のCatocala』という蛾界に多大なる影響を与えた著書がある。

 
【世界のカトカラ】

 
【日本のCatocala】

 
どちらもカトカラを深く知るには必読の書である。

 
(註2)アズミキシタバ


(2020.7.26 長野県北安曇郡)

 
日本では長野県白馬村と新潟県奥只見にのみ棲息する最小のカトカラ。幼虫の食樹はイワシモツケ。
アズミキシタバについては、拙ブログに「2020’カトカラ3年生 其の壱」に『白馬わちゃわちゃ狂騒曲』『黃衣の侏儒』と題して2篇の文章を書いている。

 
(註3)コガタキシタバ

(2020.6月 兵庫県西宮市)

 
低地の雑木林に広く見られるが、同じマメ科を食樹とするキシタバ(C.patala)よりも個体数は少なく、見る機会はそれほど多くはない。稀種と言われていたフシキキシタバの方が寧ろ多いくらいだ。
コガタキシタバについては過去に『ワタシ、妊娠したかも』、その続編『サボる男』という2篇を書いた。それにしても、両方ともフザけたタイトルだよなあ。内容は全然もって覚えてないけど…。

 
(註4)オニベニシタバ
低地の雑木林に棲む下翅が紅色系統のカトカラ。
オニベニシタバについては本ブログの「2018’カトカラ元年」シリーズの其の8に『嗤う鬼』と題した文章がある。

 
(註5)ノコメキシタバ
主に高原に生息するカトカラ。
本ブログに『ギザギザハートの子守唄』『お黙りっ❗と、ベラは言った』という文章がありんす。

 
ー参考文献ー

◆西尾規孝『日本のCatocala』
◆石塚勝己『世界のカトカラ』
◆岸田泰則『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』
◆江崎俤三『原色日本産蛾類図鑑』

(ネット)
◆『ギャラリー・カトカラ全集』カトカラ同好会
◆『みんなで作る日本産蛾類図鑑』
◆『Wikipedia』
◆『兵庫県カトカラ図鑑』きべりはむし
◆『天草の植物観察日記』
◆『六甲山系の植物図鑑』
◆『風の翼』
◆『blog花たちとの刻』
◆『garakuta box』

 

2019’カトカラ2年生 其の六 解説編

 
    vol.23 ノコメキシタバ

       ー解説編ー

 『お黙りっ❗と、ベラは言った』

 
 
【ノコメキシタバ Catocala bella ♂】

  
【同♀】


(以上4点共 2019.8.6 長野県上田市)

 
正直、展翅をするとハイモンの方が綺麗だ。
下翅が思ってた以上に黒くて汚いのは致し方ないにしても、売りである前翅のギザギザまでもハッキリしてない。ワシの撮影技術と展翅がイマイチなせいだとはいえ、あまりにも不憫だ。ここは図鑑『世界のカトカラ』の画像をお借りしよう。

 


(出典 2点共『世界のカトカラ』)

 
上が♂で、下が♀でやんす。
ちゃんとノコギリ紋がビシッと出てるね。

雌雄の判別は、♂は腹部が細くて尻先に毛束があり、♀は腹部が太くて尻先の毛が少ない。また裏側から見ると尻先にスリットが入り、黄色い産卵管が見える。上の画像の♀なんかは尻先からピッと飛び出ているゆえに表側からでも判別可能だ。

前翅はハイモンキシタバに似るが、より暗い灰褐色で、鋸歯状の横線(ギザギザ)は黒くハッキリしている。
後翅はハイモンキシタバの明るい黄色と比べてオレンジ色に近い黄色で面積が狭い。外縁黒帯は太くて内縁に接する。内側の黒帯はやや幅広い。また後翅の翅頂の黄色紋は明瞭でない。頸部は淡い樺色、胸部は前翅と同様の色調、腹部は灰褐色。また前脚脛節にも針を有する。

 
【♂裏面】


(2019.8.6 長野県上田市)

 


(2020.8.9 長野県木曽町)

 
(♀裏面)


(2019.8.6 長野県上田市)

 
最近になって新たな画像が出てきて驚いた。2019年に展翅する前に撮った横向き画像である(上から2番目と1番下)。昼間なのでフラッシュは焚かれていない。今年の、ほぼ同じ条件で撮った木曽町のボロ(上から3、4番目)とは色が全然違う。
そっかあ…、鮮度が落ちれば落ちるほど前翅の色が薄くなって白くなるんだ。本来の色は淡い黄色とかクリーム色なんだね。

展翅画像はボロ個体ゆえに黒帯も薄いから、本来的なものではないだろう。なので、他から画像をお借りして貼りつけておこう。

 

(出典『日本のCatocala』)

 
参考までにハイモンキシタバの裏面画像も添付しておこう。

 
【ハイモンキシタバ裏面】

(出典『日本のCatocala』)

 
ハイモンは下翅の翅頂部の黄紋が広くて、外縁の黒帯が途中で分断される。一方、ノコメは黄色と白のコントラストが強く、翅頂黄紋が小さいので判別は容易である。

尚、ノコメとハイモンは食樹が同じで、見てくれも似ていることから近縁種だと思われがちだが、系統は全く違うとされている。遺伝子解析の結果では、驚いたことに全然似てないナマリキシタバと同じクラスターに入っていて、『世界のカトカラ』でも両者はノコメ、ナマリの順で並べられている。一方ハイモンは、ワモンキシタバ&キララキシタバのグループに入れられている。これまた見た目はあまり似てない。カトカラの遺伝子解析は蝶と違って首を傾げてしまうことが多い。見た目と結果に齟齬が多いのだ。だから、どこまで信用していいのかが分からなくなる。

 
【学名】Catocala bella Butler, 1877

属名の「Catocala(カトカラ)」はギリシャ語由来で、kato(下)とkalos(美しい)という2つの言葉を繋ぎ合わせた造語。つまり下翅が美しいことを指している。
小種名の bella(ベラ・ベッラ)は、平嶋義宏氏の『蝶の学名ーその語源と解説』によると「愛らしい、上品な、美しい」という意で、ラテン語のbellusの女性形となっていた。
まあ、これなら納得の語源だね。
ネットで更に調べると、他に「戦争」を意味する第2変化中性名詞 bellum,-īn.の複数・対格と云うのも出てきたが、これは無視してもいいだろう。たかだか蛾に「戦争」チョイスは有り得んだろう。

 
   🎵闇に隠れて生きる
    俺たーちゃ、妖怪人間なのさ
    人に姿を見せられぬ
    獣のようなこの身体
    (早く人間になりたーい)
    暗い宿命(さだめ)を吹っき飛ばっせー
    (ベム!、ベラ!、ベロー!)
    妖怪人間

ベラで思い出したのが「妖怪人間ベム」の紅一点、ベラ様だ。
子供心にも怖いオバサンだったが、何となくドキドキもしたよね。ケバいんだけどエロくて、幼少のみぎりにも何となくゾワゾワしたような記憶がある。

 

(以下3点共 出典『原寸画像検索』)

 

 
切れ長のツリ目と真っ白な肌に真っ赤な口紅。そして濃いアイシャドウがエロティックというか、艶めかしい感じがした。オッパイがデカくて肉感的なのも、それに拍車をかけていたのではなかろうか❓ いやはや、性の目覚めだねー。( ≧▽≦)σこのこの〜、マセたエロ餓鬼があー。

 

(左からベム、ベロ、ベラ。)

 
ほらね、おっぱいデカいっしょ。生地の薄い感じとドレープも男のリビドーを刺激する。
驚いたのは、その年齢だ。ググったら、ベラは20代後半らしい。どう見ても30代半ばから40代の熟女だよなあ。オマケに甲高く笑い、その口調が完全にSMの女王様のそれなのだ。もうエロ過ぎ〜♥️

そういや、このお顔で、

💥ベラのムチは痛いよー。

とか、怖い顔でおっしゃるのである。
腕にブレスレットみたいなのが巻き付いてんだけど、それをビシュッと解くとムチになんだよね。
適当な画像が見つからないので、イラスト画像を貼付しときましょう。

 

(出典『ニコニコ動画』)

 
ワシは痛いのヤだから遠慮するが、この表情でビシビシいかれたら、ドMの人は堪らんだろな。
折角ググったんだから、ベラ様の基本情報も付け加えておこ〜っと。
特殊能力満載で、蘇生術や幻術、雷を呼び起こしたり、時には口から冷気も出せる。それらで人を助けたり、悪い奴らを懲らしめるのだ。だが口が悪く、短期で感情が激しいゆえ、時にやり過ぎてベムに諌められたりする事もある。でも心は温かく、人間味あふれる素敵な女性でもある。ベラさん、いい女だす。

変身すると、こんな感じ。

 

(出典『原寸画像検索』)

 
シンプルに怖い。
まあ、妖怪人間だかんね。そういや、ベロがよく子供に「おいら、怪しい奴じゃないよ。」と言って話し掛けてたけど、「オマエ、全身真っ赤で変な髪型なんだから充分怪しいっつーの」と子供心にもツッコミ入れてたなあ…。
とはいえ、一応3人とも正義の味方なんだけどなあ…。でもどう見ても悪役キャラだよね。絵のタッチも画面背景もダークだし、鬼太郎とは対極にある異彩を放つアニメだった。今の時代ならば、コンプライアンス的に引っ掛かる描写なりセリフがテンコ盛りだったと思われる。何でもありの昭和は面白い時代だったのだ。何でもかんでも清廉潔白なのは気持ち悪い。

ちなみにアニメのリメイク版(2019年)もあるみたいだけど、エロさが全然足りない。

 

(出典『TV東京』)

 
今風だし、何だか女子高生みたいだ。オドロオドロしさが微塵も感じられない。
今どき、エログロは流行らんのだ。(`Д´#)ケッ、何でもかんでもマイルドの薄味にしやがって。昭和は酢いも辛いも包含してた良き時代だったよ。

実写版もあって、ベラを女優の杏が演じている。

 

(出典『スポニチÂANNEX』)

 
罵り方とか、かなりいい線いってたけど、如何せん細い。肉感さが足りないから、あんまエロくないのだ。深キョン(深田恭子)のボディラインで、キャラは菜々緒が理想かもね。

そういや、『ダウンタウンのごっつええ感じ』に「妖怪人間」という漫才トリオがいたなあ…。アレ、笑ったよなあ。

 

(出典『Shoの気ままなライフ』)

 
松ちゃんがベロ、今田耕司がベム、Youがベラに扮して漫才をやるのだが、これがベタな下ネタで妙に面白かった。
気になる人はYou Tubeに動画があるから探してみてね。

お黙りっ❗いい加減にしなっ。

ベラ様の声とムチの音が聞こえたような気がした。
アカン、何やってんだ俺。どんだけ大脱線しとんねん。
いいかげん、話を学名に戻そう。

記載者はバトラー。バトラーについてはシリーズ前々回のミヤマキシタバの第二章『灰かぶりの黄色きシンデレラ』に解説文がありますので割愛します。気になる人はソチラを見てくだされ。

ちなみに同じ”bella”の小種名を持つものに、チョウ目 タテハチョウ科 ヒメミスジ属の、Lasippa bella(ベラヒメミスジ)がいる。
画像は見つけられなかったが、たぶん見た目は属的にオレンジ色のちびっ子ミスジチョウだろう。

 
【和名】
どこにもその命名由来は書かれていないようだが、普通に考えれば、おそらく「鋸の目」。「目」には「〜のように見える」という意味もあるから、すなわち前翅のノコギリの刃みたいなギザギザ模様を指しての命名だろう。ノコギリの事を世間一般では「ノコ」と略すのは通例だからね。それに他に考えうる可能性って、どう考えても無いもんね。
まさかの「野米さん」という人に献名されたとかだとしたら驚きだけどもね。それって面白いけど、即座にヤッさんみたく「怒るで、しかしー。」とツッコミ入れちゃうぞ。
野米さんが蛾類界に大きな足跡を残してたのならともかく、そんな人、聞いたことないもんね。
ふと思う。脈絡なく全然関係ない人の名前を和名に付けちゃったという勇気ある人って過去にいないのかなあ。単にファンだからという理由だけで、ヒバリ(美空ひばり)とかモモエ(山口百恵)、アキナ(中森明菜)、セイコ(松田聖子)、ナナセ(相川七瀬)、あゆ(浜崎あゆみ)なんてアイドルの名前をつけちゃった人とかさ。
もしも自分が超マイナーな虫に興味を持ち、バンバンに新種を見つけたとしたら、フザけた変な名前や意味不明とか難解な和名をいっばい付けてやろうと思う。

 
【亜種】
◆Catocala bella bella Butler, 1877
(日本)

日本のものは原記載亜種とされる。ホロタイプに指定されている標本は”Yokohama”となっているようだ。だたし、まだ自然が残っていた時代とはいえ、標高的にノコメが横浜に分布していたとは考えられない。神奈川県の記録もないようだしね。おそらく採集されたのは別な地で、その標本が横浜から送られてきたとか、そうゆう事だろう。

異常型として、後翅外縁の黒帯が発達したものや中央黒帯の内側が黒化するものが知られている。

 


(出典 3点共『世界のカトカラ』)
 
 
おそらく、こうゆう型のことを言ってるのであろう。
一番下の黒化が進んだものは長野県となっているが、トリミングの問題であって、本当は群馬県で採られたものである。また一番上のものも同様で、上部の北海道の文字は無視されたし。コチラは逆に長野県産と図鑑ではなってます。

 
◆Ssp.serenides Staudinger, 1888
(ロシア南東部(沿海州)、中国中北部、朝鮮半島)

大陸のものが別亜種として記載されている。

 


(出典 2点共『世界のカトカラ』)

 
図版で見る限りでは、日本のものよりも下翅の黄色が明るめなせいか、黄色の面積が広く見えるね。こっちの方が綺麗だね。

 
【開翅長】
『原色日本産蛾類図鑑』では、58〜65mm。『日本産蛾類標準図鑑』では、55〜65mm内外となっている。

 
【分布】 北海道、本州(中部地方以北)
『原色日本産蛾類図鑑』やネットのサイトの多くが分布域に九州を入れているが、これは間違いかと思われる。記録を探せなかったし、最近の図鑑では分布地から外されているからね。
海外では、極東ロシア(アムール・ウスリー)、中国中北部、朝鮮半島に分布する。

標高500mから1700mに見られるが、冷温帯を好む寒冷地性の種で、主に標高1000m前後以上に見られる。食樹であるズミが多く生育する高原地帯では多産し、中部地方の高原では最も普通種のカトカラの一つとされるが、その他のところでは少ない。
低標高の産地は1980年代から減少し始め、1990年代には殆んど見られなくなったという。高原地帯でも以前よりも減少しているところが増えていると聞く。
東北地方での産地は散発的で、古い図鑑だと福島県を北限として東北地方のほぼ全域と北海道南部にわたって分布の空白があるとしている。しかし、その他の地域の北海道には広く分布するという。
w(°o°)wえっ❗❓、同じ寒冷地型のハイモンは東北にも万遍なくいるのに何で❓謎だよね。何かまた変なところに足を突っ込みそうだ。😱ヤバい。またしても長大になる兆候が濃厚だよ。

解りやすいように分布図を貼付しておこう。

 

(出典『日本のCatocala』)

 

(出典『世界のカトカラ』)

 
分布を示す黒塗りされているところが微妙に違うのは『世界のカトカラ』の方が刊行年が少し遅くて、秋田県と宮城県が追加されたのと、上図は分布域を示し、下図は県別の分布図であるせいだろう。下の分布図だと或る県で1頭だけでも記録があれば、その県は塗り潰されるからである。にしても、分布域図でも北海道南部に空白が無いね。多分、北海道南部でも見つかったんじゃろう。そゆ事にしておこう。下手な疑問は抹殺じゃ。
猶、ネットの『ギャラリー・カトカラ全集』から東北地方の分布の空白について次のようなコメントが見つかった。
「東北地方ではほとんど採れていないのは、日本への侵入経路・時期に由来しているのかもしれない。」

とゆう事はだな。ハイモンとノコメの日本への侵入時期が違うという事か…。何だか面倒くさい事になってきたよ。HSPだけど、答えの見えない迷宮地獄になりそうなのでスルーしてコマしたろか。

でも、気づいたら「日本列島の成り立ち」で検索してた。
やれやれである。
以下、Wikipediaからの抜粋、編集したものである。ここから答えをさぐっていこう。

『現在の日本列島は、主に付加体と呼ばれる海洋で出来た堆積物からなっている。かつて日本付近はユーラシア大陸の端で、古生代には大陸から運ばれてきた砂や泥が堆積していた(現在の北陸北部、岐阜県飛騨地方、山陰北部など)。そこへ、はるか沖合で海洋プレートの上に堆積した珊瑚や放散虫などからなる岩石(石灰岩やチャート)が移動してきて、それが海溝で潜り込むときに、陸からの堆積物と混合しながらアジア大陸のプレートに押しつけられて加わった(付加)、この付加が断続的に現在まで続いたため、日本列島は日本海側が古く太平洋側に行くほど新しい岩盤でできている。

このようなメカニズムで大陸側プレートに海洋プレートが潜り込む中で、主にジュラ紀〜白亜紀に付加した岩盤を骨格に、元からあった4〜5億年前のアジア大陸縁辺の岩盤と、運ばれてきた古いプレートの破片などを巻き込みながら日本列島の原型が形作られた。この時点では日本はまだ列島ではなく、現在の南米のアンデス山脈のような状況だったと考えられる。

その後、中新世になると今度は日本列島が大陸から引き裂かれる地殻変動が発生し、大陸に低地が出来始めた。2100〜1100万年前には更に断裂は大きくなり、西南日本は長崎県対馬南西部付近を中心に時計回りに40〜50度回転し、同時に東北日本は北海道知床半島沖付近を中心に反時計回りに40〜50度回転したとされる。これにより今の日本列島の関東以北は南北に、中部以西は東西に延びる形になった。いわゆる「観音開きモデル説」である。そして、およそ1500万年前には日本海となる大きな窪みが形成され、海が侵入してきて、現在の日本海の大きさまで拡大した。』

途中だが、ここで少しでも理解しやすくするために、日本列島の成り立ちの大まかな図を貼付しておく。

 

(出典『出雲平野と神戸川をめぐる自然史』)

 
『1600万年前から1100万年前までは西南日本(今の中部地方以西)のかなり広い範囲は陸地であった。東北日本(今の東北地方)は広く海に覆われ、多島海の状況であった。』

この時期にノコメは西から日本に侵入したって事か❓
しかし、東北地方は大部分が海に沈んでいたから分布を東に拡大できなかったのかもしれない。

『その後、東北日本は太平洋プレートなどによる東西からの圧縮により隆起して陸地となり、現在の奥羽山脈・出羽丘陵が形成されるにいたった。
北海道はもともと東北日本の続き(今の西北海道)と樺太から続く南北性の地塊(中央北海道)および千島弧(東北海道)という三つの地塊が接合して形成されたものである。』

ということは北海道のノコメキシタバは北から侵入して来たのではあるまいか。そして、今の西北海道が東北日本の続きの一部であったのならば、中央北海道や東北海道とは海で隔たれており、それ以上は南下できなかったのではなかろうか。北海道西南部にノコメが分布していないとされるのは、それで何とか説明できそうだ。

『西南日本と東北日本の間は浅い海であったが、この時代以降の堆積物や火山噴出物で次第に満たされながら、東北日本が東から圧縮されることで隆起し中央高地・日本アルプスとなった。』

では何故に西日本のノコメが、この後に分布を東に拡げて東北地方に侵入しなかったのだろう❓食樹であるズミはあるのに何でざましょ❓
考えられるとすれば、フォッサマグナ(深い溝)だ。
ほらほら、やっぱ大げさな話になってきたじゃないか。

『西南日本と東北日本の間の新しい地層をフォッサマグナといい、西縁は糸魚川静岡構造線、東縁は新発田小出構造線と柏崎千葉構造線で、この構造線の両側では全く異なる時代の地層が接している。』

イメージとしては、こんな感じだろうか?

 

(出典『www.shinnshu-u-ac.jp』)

 
フォッサマグナの成り立ちだが、図CとEがそれにあたる。

そういえば、このエリアを境に東と西とでは生物相が異なるって、よく聞くよね。多くの生物種群において、東西日本での遺伝的分化が認められる研究結果が多々あった筈だ。
となれば、中部地方と北海道のノコメキシタバは別種か別亜種の可能性が高いと考えられなくはないか❓でも両者は亜種区分さえされていない。これはどうゆう事なのよ❓
『世界のカトカラ』の著者であり、カトカラの世界的研究者でもある石塚勝己さんは、キララキシタバとワモンキシタバが別種である事を証明するために、ゲニ(ゲニタリア=♂の交尾器の一部)を切りまくって、執念でその差異を見つけたと聞いている。その石塚さんが、この問題を看過するワケがない。きっと調べ済みの筈だ。って事は両者の交尾器に違いを見い出せなかったって事か…。ならば本州産のノコメも北海道産のノコメも全くの同種であるということになってしまう。密かに北海道のものは大陸の亜種”ssp.serenides”じゃねえかと思ってたんだけどねー。
(+_+)くちょー、やっぱ迷宮ラビリンスじゃねえか。

置いといて、ではハイモンキシタバはいつ日本に侵入したのだろうか❓ Wikipediaの記述を続けよう。

『こうして不完全ながらも今日の弧状列島の形として現れたのは、第三紀鮮新世の初め頃であった。その後も、特に氷期の時などには海水準が低下するなどして、大陸と陸続きになることがしばしばあった。例えば、間宮海峡は浅いため、外満州・樺太・北海道はしばしば陸橋で連絡があった。津軽・対馬両海峡は130〜140メートルと深いため、陸橋になった時期は限られていた。』

この時代のどこかでハイモンが日本列島に侵入したのかな❓にしても、ハイモンは一応、日本固有種となっている。どゆこと❓
これは、おそらくニセハイモンキシタバ(C.agitatrix)が日本に渡り、長年隔離されて分化し、別種になったのだろう。その後、陸地化した東北地方、中部地方に分布を拡げ、その過程で北海道のものとも亜種分化したとは考えられないだろうか❓
けれど、そうなればだな、それ以前に日本に侵入していたノコメよりも進化(分化)スピードが早いということになる。って事でいいのかな❓
確かに生物は、それぞれ進化のスピードが同じではない。シーラカンスのように太古の昔から殆んど姿を変えていないものもあれば、ガラパゴス諸島のダーウィン・フィンチのように島ごとに進化して嘴の形が変わったものもいる。ダーウィン・フィンチは環境に合わせて適応放散的に進化したことの例証として有名だけど、これは種によって進化を促進する因子の有無や多い少ないがあるのかもしれない。
でも進化スピードは、東北地方にノコメキシタバがいない事の理由とは直接関係はない。先に進もう。

『また南西諸島ではトカラ海峡(鹿児島以南)、ケラマ海峡(沖縄島以南)は共に1000メートルを超す水深であり、第四紀後半に陸橋になった可能性はまず考えられない。南西諸島の生物相に固有種が多く、種の数が少ないなどの離島の特徴を示すことは、大陸から離れた時代が極めて古いためと考えられている。陸橋問題では、津軽海峡は鮮新世末まで開いており、対馬海峡は日本海塊開裂時代には開いていたが、その後の中新世末から鮮新世には閉じたと考えられている。
最後の氷期が終わり、マイナス約60mの宗谷海峡が海水面下に没したのは更新世の終末から完新世の初頭、すなわち約1万3000年から1万2000年前である。
中新世前期には、沈み込みによる大陸辺縁の分離が活発化する。鮮新世後期〜更新世前期には、日本海の拡大は終息して島孤は現在に近い配置になっている。更新世の終わり2万年前頃には、ほぼ現在に近い地形であるが、最終氷期最盛期のため海面が低下し日本海と外洋を繋ぐ海峡は非常に狭かった。』

今まで触れなかったが、ここで西から侵入したノコメキシタバが、なぜ中部地方から西には居なくなったかについて考えてみよう。
思うに、氷河期が終わり、気候が温暖になってゆくに伴って西日本に広く分布していたノコメキシタバの生息域は次第に狭められていったのではなかろうか。そこには食樹の減少も関係していただろう。そして、現在のように冷涼な気候の中部地方にのみ生き残ったと考えれば、一応の説明はつく。
けど、これも東北地方にノコメが居ない理由の直接的な理由とは関係ない。フォッサマグナが現在の分布に何らかの影響を与えているとしたら何なのだ❓現在は陸続きなんだから、東北に分布をナゼに拡大しないのだ❓そこには何の障壁があるのだ❓もしくはナゼに移動しようとしないのだ❓移動性が低い種だとか❓けど、だったらそもそも大陸から日本には侵入してないよね。理由が皆目ワカラン。
嗚呼、とまどうペリカンだ。自身の力の無さを痛感して、この辺でステージから降りる。グダグダの結末でスマンが、話を本道に戻して先へ進める。

ノコメの西側の分布は福井県、京都府、大阪府に僅かな記録があるのみで、それ以外の地域からは未知。
大阪府の記録は箕面のようだ。しかし標高が低く、開発も進んでいるので再発見は不可能かと思われる。それにそもそも、本当にいたのかね❓古い記録だから同定間違いなんじゃないかと疑りたくもなる。中国地方で見つかれば、信憑性も出てくるんだけどもね。発見されたらいいのになあ…。

垂直分布はハイモンキシタバよりも高く、ハイモンのように低地の渓谷や湿地には進出していない。ハイモンは名古屋市内でも発見されているが、ノコメは棲息が確認されてないからね。つまりハイモンと比べて、より冷温帯を好む種だと思われる。

 
【レッドデータブック】

宮城県:絶滅危惧II類(Vu)

東北地方で指定されているのは、宮城県のみである。
秋田県もレッドリストに指定されて然りなのにね。まあ実状はこんなもんだろ。絶滅危惧種とか準絶滅危惧種とかはアテにならんのだ。恣意的なモノもあるしね。
東北地方の他県で近年発見されてないかと調べてみたが、有望そうな岩手県ではズミのある高原や湿原でも全く見られないという。
ネットを見てると「K’s Life list」というサイトに次のような記事があった。

「こうした東北を飛ばして中部山岳と北海道に隔離分布するタイプの蛾は結構多い.亜高山・高山性のものや北東北には少ない針葉樹食いのものに多いが,本種のように普通に山地性で食樹もありふれたものでは珍しい.」

へぇ〜、蛾ってそうゆう分布をするのが結構多いんだ。蝶にはいないからね。あと「普通に山地性で食樹もありふれたものでは珍しい。」というのも、へぇーって感じ。
あっ、ちょっと待てぇー。蝶にもおるわ。中部地方と北海道に分布するのに東北地方には分布せえへん、もしくは点在分布しかせえへん奴がおる。シジミチョウ科のアサマシジミがそうだよね。但し、北海道では今や絶滅しかかってるけどね。
考えてみれば、他にもいるわ。コヒオドシ、ベニヒカゲ、クモマベニヒカゲ、フタスジチョウ、ヒョウモンチョウ、コヒョウモン、あとはウラジャノメが一部中国地方にもいるが、近い分布をしている。これはいったい何を意味しているのだ❓
あー、また問題を蒸し返しとるがな。
でも、その分布形態の理由が書いてある記述を見たことないがないし、聞いたこともないぞ。

調べたみたけど、やはり明確に書いてある論文は見つけられなかった。もうウンザリだから、必死には調べてないけど…。
改めて思うに、やはり中部地方のものと北海道のものとでは侵入経路が違うのではなかろうか。中国地方に僅かに残るウラジャノメは、西から侵入したものの生き残りではあるまいか。だとしたら、やはり中国地方でも見つかる可能性はあるかもしれない。でもこれも東北地方には居ない理由にはなってないけどさ。
ゴメン、やっぱリタイア(ㆁωㆁ)

 
【成虫の出現期】
7月中旬から出現し、9月中旬まで見られる。
『日本のCatocala』によれば、標高の低い場所(500〜800m)では7月上旬から見られ、8月中には没姿するという。また群馬・長野県の1500m以上の高原では8月から現れると書いてあった。
同所的に見られることの多いハイモンキシタバと比べて発生が1週間ほど遅れ、発生初期に両者の出現が重なる。

尚、『ギャラリー・カトカラ全集』には「山地帯ではかなり多く、普通種のイメージがあるが、意外と新鮮な個体を採集するのは難しい。出現期の早い時期に採れる個体はしっとりとしており、なかなかのものである。」と書かれてある。
また「この種の素晴らしさが理解できれば、カトカラ愛好者として上位者である。」とも書かれていた。

 
【成虫の生態】
クヌギ、ミズナラ、ヤナギ、ハルニレなどの樹液に好んで集まる。
糖蜜にも誘引され、高原で見られるカトカラの中では最も糖蜜に集まる種類の一つなんだそうだ。
午後7時半、深夜の午後11時15分と午前0時20分に飛来したのを見ている。

わずかながら、花(アレチマツヨイグサ)での吸蜜やアブラムシの分泌物を吸汁していた例があるようだ。

灯火にも集まる。
見たのは午後9時半以降だったと思われるが、ボロばっかだったので、あまりハッキリとは憶えてない。ナマリキシタバやアズミキシタバなど他のバラ科を食樹とする種は灯火への飛来は遅い傾向があるので、そんなに早くには飛来しないのかもしれない。ただし灯火への飛来は傾向性はあっても、その日の気象条件にかなり左右されるので、何とも言えないところはある。

成虫は昼間、頭を下にしてカラマツなどの樹幹に静止している。驚いて飛翔すると着地時には上向きに止まるが、瞬間的に体を反転させて下向きとなる。その際、後翅の黄色がよく目立つ。

交尾は深夜11時から午前2時の間に観察されている。
羽化後、数日後には交尾・産卵を繰り返すものと思われる。

産卵行動は2001年の8月6日に長野県真田町の標高1250mの高原で確認されている。日没後に1頭の♀が食樹であるズミの根元の樹皮下に産卵しようとしている様子が観察され、翌春にはその木の下の落葉から複数の受精卵が見つかったという。他のカトカラと比べて産卵はアバウトで、食樹周辺の枯葉や枝などに適当に産み付けるそうだ。

 
【幼虫の食餌植物】
バラ科:ズミ、エゾノコリンゴなどのリンゴ属。他に野生のナシが記録されているが、ナシは暖地性の植物なので、本来の食餌植物ではないと思われる。また、時に栽培されたリンゴでも幼虫が見い出される。

ズミ、エゾノコリンゴについては、ハイモンキシタバの回で詳しく書いたので割愛する。

 
【幼生期の生態】
毎度の事ではあるが、幼生期については西尾規孝氏の『日本のCatocala』におんぶに抱っこさせてもらおう。

 
《卵》


(出典『日本のCatocala』)

 
卵はやや背が高いマンジュウ型で、ナマリキシタバとアズミキシタバに似る。だが隆起条の数が40本以上と多く、横隆起条の間隔が狭くて整然としている。
ちなみにハイモンキシタバの卵とは似てない。食樹が同じで、成虫の見た目が似ていることから両者は兄弟みたいに思われがちだが、遺伝子解析では系統的にはかなり掛け離れている。だから卵が似ていないのは当然なのかもしれない。
それにしても、顕微鏡写真まで撮るなんて西尾氏は凄いな。この『日本のCatocala』は、国内のカトカラにおいては他に追随を許さぬ最高峰の図鑑だと思う。

長野県女神湖(標高1500m)での孵化時期は5月上、中旬。5齡幼虫は6月中旬から7月上旬に見られる。同県上田市(600m)では、6月中旬に5齡幼虫が見られたという。

  
《幼虫の生態》
幼虫は比較的若い木に発生し、樹齢40年以上の古木にはあまり見られない。

 
(2齡幼虫)

(出典『日本のCatocala』)

 
日中、若齡幼虫は葉上や付近の枝に静止している。3〜4齡期の幼虫も枝に静止している。

 
(5齡幼虫)


(出典『日本のCatocala』)

 
5齡が終齢。老熟幼虫の昼間の静止場所は枝や樹幹で、地表近くに潜んでいる場合も見受けられる。しかし、ハイモンキシタバほどには樹幹下部には降りないようだ。
高原のズミには多数の幼虫が群れていることかあり、5齡幼虫は昼間でも活動している事があるという。このような群生と摂食習性はハイモンキシタバには観察例がないそうだ。
野外では体色に色彩変異が見られ、側線付近の白い模様が幅広くなるものや全体に白化したものがある。

食樹を同じくするハイモンキシタバとは、顔面の模様が違うことから区別できる。

 
(5齡幼虫の頭部)

 
(ハイモンキシタバ5齡幼虫の頭部)

(出典『日本のCatocala』)

 
だいぶ違うね。
カトカラの幼虫の同定には、この頭部が一番重要だと言われているのがよく解るね。

室内飼育では、室温が25℃以上になると死亡率が高くなることかあるという。やはり寒冷地性なんだね。

蛹化場所については未知のようだ。
蛾のなかでは人気種のカトカラであっても、蛹に関しての記述は殆どない。野外での蛹化場所が見つかっていないカトカラも多いのだ。その点、蝶と比して研究が遅れてるなと思う。たった32種類なのに食樹がまだ判明していないものだっているのだ(註1)。
最近は東京を中心に関東方面では蛾熱が高まっているともいうし、人海戦術で探せるような時代が来ればいいのにね。蝶みたく分母の人数が多ければ、生態の解明は格段に進むだろう。
こんな一銭にもならない連載を書き続けている理由の半分、いや1/3は、それを後押したい気持ちもあるからだ。ヒントが提示されなければ、人は動かないものだ。

                        おしまい

  
追伸
今年は狙って採りに行かなかったけど、来年はハイモンと一緒にシッカリ採ろう。標本が酷くて、こんなんじゃ不満なのだ。

今回のタイトルは全然浮かばなくて悩んだ。細かいところを書き直すうちに、妖怪人間ベラが降臨した。で、突如挿入。それがタイトルのヒントになった。
でもそこから中々決まらなくて、「ベラは言った、お黙りと」に始まり、「お黙り、とベラは言った」「お黙り。とベラはそう言った」「お黙り。と、ベラは言った」「お黙りっ❗そうベラは言った」とマイナーチェンジを繰り返して、最後に「お黙りっ❗と、ベラば言った」に落ち着いた。「、」に拘った結果だ。
けど、いまだもってしてどれが正解なのかはワカラナイ。

 
(註1)食樹がまだ判明していないものだっているのだ
食樹が見つかっていないのは、ヤクシマヒメキシタバとマホロバキシタバ。但し、ヤクシマヒメキシタバは既にウバメガシで飼育されており、野外でのメインの食樹として有望視されている。けど、そこからは進んでいないようで、未だ自然界では幼虫が発見されていないようだけどもね。蛾の文献は簡単には集められないので、古いものしか見れてないから間違ってたら御免だけど。
新種マホロバキシタバは現地の植物相からしてイチイガシが予想されている。たぶんイチイガシで間違いないかと思われる。卵を含めて幼性期は全くの未知。一応、今年探したけど、見つけられなかった。意外と幼虫探しは難航するかもしれない。なぜならイチイガシは大木が多く、もしも大木を好む種ならば、発見はそう簡単ではないからだ。今のところメス親からの採卵、飼育が成功したという話も聞いていない。2019年には採卵が試みられたけど、産まなかったそうだ。
ちなみにアマミキシタバも食樹が長年判明していなかったが、去年(2019年)に解明されたようだ。候補の植物を片っ端から幼虫に与えた結果、判明したんじゃなかったかな。でも自然状態での発見は為されていないかも…。論文を読んでないので詳細はワカランのだ。ネット情報で辛うじて知っただけで、正確性に欠けるかもしれない。あと知っているのはカトカラ類の基本である年1化ではなく、多化性であると云うことくらいだ。
アマミキシタバは従来カトカラには含まれていなくて、別属である Ulothrichopus属に含まれていた。それが近年になって新たにカトカラ属に加えられたものだ。アフリカに多く生息するこの属をカトカラに含めてしまうと分類に混乱をきたすと、どこかで聞いたことがあるような気がするけど細かいことは分からない。多化性だから、たぶん同じシタバガ亜科のクチバの類とかって考えている人がいるのかもしれないね。でも所詮は蝶屋なので、蛾の属のことは全然ワカリマセンというのが本音だ。

 
ー参考文献ー

◆西尾規孝『日本のCatocala』
◆石塚勝己『世界のカトカラ』
◆岸田泰則『日本産蛾類標準図鑑』
◆江崎悌三『原色日本産蛾類図鑑』
◆平嶋義宏『蝶の学名-その語源と解説』

インターネット
◆『みんなで作る日本産蛾類図鑑』
◆ギャラリー・カトカラ全集
◆Wikipedia
◆K’s Life list

  

2019’カトカラ2年生 其の六

 
    vol.23 ノコメキシタバ

  『ギザギザハートの子守唄』

 
前々回のハイモンキシタバの採集記と基本的には途中まで同じなので、その続きとして書きます。つまり前々回と連なる文章として読んで戴きたい。
 

2019年 8月6日

闇が、より濃くなっている気がした。
ここにも熊がいることを思い出す。恐怖が心をサッと撫でる。
深夜の森の中は閑としていて、不気味なまでに静かだ。自分の足音だけが空気を震わせている。
真っ暗な道を何度往復しただろうか…。次第に焦りと後悔がどんよりと澱のように心の底に溜まってゆく。

思えば、日没後さして間もない8時15分に奴は糖蜜トラップにやって来た。なのに網を組み立てている刹那に逃げられた。
dont ‘worry.ドン・ウォリー、気にすんな。自分に言い聞かせるように軽く一人ごちる。

まだ早い時間帯だったから、そのうち戻って来るだろうと思ってたら、その5分後にまた同じ木に飛んできた。
( ̄ー ̄)しめしめ。飛んで火にいる夏の虫。食い意地はってっと、アンタ💀死ぬよ。

しかし近づくと、何かさっきのとは違うような気がするぞ。
( ̄□ ̄;)ハッ❗、ノコメキシタバじゃない❗
コレって…、見た目が似ているハイモンキシタバじゃねえの❓

ハイモンも採ったことが無かったから渡りに船ではあるけれど、その瞬間、気分が楽になった。この時点ではハイモンはノコメよりも珍しくないと思い違いをしてたからだ。こっちではハイモンは普通種だから、どうせこのあとには何んぼでも飛んで来ると思ったのだ。しかし本当は逆である。ノコメが普通種で、ハイモンの方が珍しい。それに気づくのは帰ってから暫くしてからである。我ながら情けない。考えが雑いのだ。
そうゆうワケで、リラックスして簡単にゲット。

 
【ハイモンキシタバ Catocala mabella ♀】


(2019.8.9 長野県上田市)

 
ハイモンも一応ターゲットだったのでそれなりに嬉しかったし、前後が逆になっただけで次はノコメだろうと、まだこの時点は気分上々の楽勝気分だった。
けれどその後、全く想像していなかった展開になった。それ以来、何も飛んで来なくなったのだ。
『嘘でしょ❓』と半ば冗談でウソぶくも、少しずつ自信と楽観気分が砂のように削られてゆく。
見たんだから此処に居ることは分かってる。絶対にいるのだ。もしや見間違え❓ そんなわきゃ無かろう。確かに実物を見た。まさか幻でもあるまいに。心が揺れ動く。
(-_-;)クソッ。何であの時、ターゲットから目を離したのだ。悔やんでも悔みきれない。

真っ暗な道を何度往復しただろうか。
時は徒(いたずら)に過ぎてゆく。
そして、採れない焦燥感と闇の重圧に耐えきれなくなったのか、勝手に歌が口から溢(こぼ)れ出した。ささくれ立った心の声が外に漏れたのだ。

  🎵ちっちゃな頃から悪ガキで
   15で不良と言われたよ
   ナイフみたいに尖っては
   触るものみな傷つけた
   あーぁ わかってくれとは言わないが
   そんなに俺が悪いのか
   ララバイ ララバイ おやすみよ
   ギザギザハートの子守唄

チェッカーズのヒット曲『ギザギザハートの子守唄』だ。
それくらい心はヤサグレていたのである。

深夜午後23時になった。
いよいよ背水の陣を呈してきた。顔が歪んできてるのが自分でもわかる。
俺は深夜の森の中で、いったい一人で何をやっておるのだ❓
次第に何のために此処にいるのかも曖昧になってゆく。
半ばヤケクソで『ギザギザハートの子守唄』を呪文のように歌い続ける。

午後23時15分。
懐中電灯の光の束が指す先、遠目だが何かいるなと思った。木はノコメもハイモンも来た、あの木だ。近づくと、鮮やかな下翅の黄色を覗かせてカトカラが鎮座していた。

来たっ❗❗
でもノコメ❓ハイモン❓どっち❗❓

まだ間隔が離れてるから微妙で、よくワカラン。どっちも上の翅が同じような鈍びた灰色なのだ。
確認のために慎重にゆっくりと距離を詰める。

距離約3m。ようやく上翅に黒いギザギザの線が見えた。ハイモンじゃない。待望のノコメだっ❗
ドクン💕ドクン💕。心臓が急に脈打ち始める。
心を落ち着かせるために『ギザギザハートの子守唄』を再び口ずさむ。でもここは、あえて一番ではなく2番だろう。

  🎵恋したあの娘と二人して
   街を出ようと決めたのさー
   駅のホームで捕ま〜ってー
   力まかせに殴られた
   あーぁ わかってくれとは言わないが
   そんなに俺が悪いのか
   ララバイ ララバイ おやすみよ
   ギザギザハートの子守唄

歌い終わるやいなや、
💥チェ〜スト━━━━━━━━━━❗

気合で網先で幹の下を突き、飛んだところを空中でブン殴る。

入った❗❗
間違いなく網に吸い込まれるのが見えた。

(。•̀ᴗ-)✧やりぃ❗
見ると確かに入っている。しかし、中で狂ったようにメチャンコ暴れてる。慌てて毒瓶を中に突っ込む。しかし更に暴れまくって中々毒瓶に入ってくんない。

(༎ຶ ෴ ༎ຶ)お願━━━い。
暴れないでぇ━━━❗
ボロボロになっちゃ━━━━う❗❗

すったもんだの末になんとか取り込み、息絶えたところで手のひらに乗せる。

 

 
ハイモンと比べて上翅の黒いギザギザがよく目立つ。間違いなくノコメキシタバだ。
しょこたん(註1)風に言うと、ギザカッコイイ。
とは言っても右側だけだ。左側は擦れ擦れでギザギザが消えかかっている。しかも網の中で大暴れしたので、背中が激禿げチョロケのズルむけスーパー落ち武者にさせてしまった。
まあいい。この際、採れたには採れたんだから良しとしよう。ゼロと1とでは雲泥の差なのだ。
とにかく重圧からやっと解放された。これで自己採集のカトカラは23種目となったわけだ。

裏返してみる。

 

 
裏面はハイモンとは全然違うんだね。外側は白で、内側は明るく鮮やかな黄色だ。コントラストが強くて美しい。こんな裏面のカトカラは見たことないかも。たぶん他にはいないよね。
一見、腹が長いので♂かと思ったが、腹先には毛束がなくて産卵管が見える。どうやら♀のようだ。

最初に採ったハイモンよりもコッチの方が表も裏も断然カッコイイような気がするぞ。まあ、こっちの方が珍しいというし、苦労の末のゲットだから欲目がだいぶ入ってるかもしんないけどさ。

午前0時20分。
さらにもう1頭ゲット。

 

 
これもギザギザだから、ノコメだ。
さっきよりも鮮度はマシで、前翅のギザギザがハッキリと見える。
だが、コヤツも落ち武者になっとる。けんど、もうどうだっていいや。もはや採れればいいのである。

裏返してみる。

 

 
バンザイ姿が可愛いね。
良かった良かったの、ワシも\(^o^)/万歳じゃよ。

こちらは腹が細くて産卵管が無いので♂のようだ。
一応、オスメスの雌雄が揃ったぞい(◍•ᴗ•◍)

見上げると、木々の間から天の河が見えた。
空を見上げる余裕もなかったんだね。

暗闇で見る星空はとても綺麗だ。
スッと力が抜け、これで漸くテントに帰ってグッスリ眠れると思った。

                        おしまい

 
一応、おしまいにしたが、オマケで翌日のことも書く。
ストレージが溜まっているので画像を消したいのである。

 
翌朝、早朝から死ぬほど走らされている高校生たちをあとにして撤収、上田駅まで戻ってきた。
もう蕎麦にはウンザリなので、スーパーで昼飯を買って食う。

 

 
298円の鶏の炭火ハラミ焼(塩ダレ)を食い、🍺ラガーをグビグビいき、百円引きの海鮮バラちらし(¥298)を一口食って、またラガーをグビグビいって、ダアーッ。テーブルに突っ伏す。
途中、1日だけカプセルホテルに泊まったが、これでテント生活も5日目なのだ。うちテント野宿が2回。しかも酷い靴ズレ状態で、足は絆創膏だらけだ。それでも熊の恐怖と戦いつつ夜の森を歩き回り続けておったのだ。身も心もボロボロなのじゃよ。

駅前から巡回バスに乗る。

 

 
行き先はココだ。

 

 
(南櫓)

 
そう、上田といえば真田の上田城跡公園である。
何で城なんかに来たのかというと、単に城好きだからだ。それに上田といえば、戦国武将ランキングの常に上位にランクされる真田幸村(信繁)の故郷でもある。大阪人としては、大阪城を獅子奮迅で守った幸村に強い思い入れがあるのだ。行かねばなるまい。

上田城は天正11年(1583)、幸村の父である真田昌幸によって築城された。日本百名城にも選出されており、第一次・第二次上田合戦で徳川軍を二度にわたって撃退した難攻不落の城として知られる。城マニアの評価も高く、とあるTV番組では堂々の第1位に選ばれたこともあった筈だ。
ここ南櫓の下も、かつて千曲川の緩やかで深い分流があり、天然の堀となっていたそうだ。この場所を「尼ヶ淵」と称したことから上田城は別名「尼ヶ淵城」とも呼ばれていたという。
その後、城主は時代の変遷と共に真田氏から仙石氏、松平氏へと移っていった。

でも、訪れた理由はそれだけではない。この上田城跡に、ケンモンキシタバとエゾベニシタバ、あとノコメキシタバの記録もあるからだ。あわよくばの一石二鳥で昼間の見つけ採りも狙っていたのである。

 

 
櫓らしきものが見えてきた。
ちなみに上田城には元々天守閣がない(註2)。

 
(本丸入口)

 
いいなあ。
やっぱ、城って好きだなあ。
左が南櫓、正面が東虎口櫓門である。写っでいないが、この右側には北櫓がある。

 
(真田石)

 
石垣とかって、ずっと見てれるかもしんない。
左下の大きな石が真田石だ。この大きな石が権力と財力を示すものとして、当時の戦国武将がこぞって櫓門の石垣に大きな石を配したと言われている。

 
(真田神社)

 
真田幸村の神霊を「知恵の神様」として崇めており、試験や就職、スポーツなどの勝利祈願の神社としても知られるそうだ。
今更なあ…。昨日、蕎麦なんか食わずにコッチ来ときゃよかったかもね。

 
(北櫓)

 
(西櫓)

 
城跡だけあって、歩くと結構広い。

 

 
あっ、コレってもしかしてハルニレの大木じゃね❓植物の同定には、あんま自信ないけどさ。とにかくハルニレといえば、ケンモンの食樹だよね。どっか、止まってねぇかなあ…。
城跡の端っこのミニ農園みたいなところには、大きなリンゴの木も2、3本あった。林檎類はノコメとハイモンの食樹だね。
城内にはジョナスの食樹であるケヤキも沢山あり、エゾベニの食樹のヤナギ類も一応あった。
でも、つぶさに木を見て歩いたが、残念ながら何も見つけられなかった。あまり期待はしていなかったから、別にショックは無いんだけどね。

 

 
百日紅(さるすべり)の花が咲いている。
夏も真っ盛りだなあと思う。

 

 
城を出て街なかに戻ると、白い入道雲が湧き上がっていた。
今年のオラの夏休みも、そろそろ終りかなあ…。

                    おしまいのお終い

 
と言いつつ、話は尚も続く。

翌2020年は、8月8日(標高約700m)と8月9日(標高約1300m)に他のカトカラ目的で灯火採集した折りに何頭か見た。だが、既にズタボロばかりだった。だから殆んどスルーした。
唯一持ち帰った個体がコレ↙️

 

(2020.8.9 長野県木曽町)

 
尻が細くて長いから♂だね。
採った時はそうでもないと思ったけど、裏を見ると超ボロい。
カトカラの鮮度は表よりも裏の方が如実に出るね。鮮度は裏で見るべしなのだ。

2019年の展翅前の横向き裏面画像も出てきた。
上の個体とは、だいぶ印象が変わる。

 
(♂)

(♀)

 
そっかあ…、鮮度が落ちれば落ちるほど前翅が白くなるんだ。本来の色は淡い黄色、クリーム色なんだね。

♀は横から見ると腹部が太いことがよくわかる。
あと、随分と前翅が丸いように見える。沢山の個体を見たワケではないが、図鑑等の画像を含めて♀にはそうゆう傾向が見受けられるような気がする。微妙な奴もいるだろうから、同定には補足としてしか使えないけどね。

これらの展翅画像は後ほど解説編に貼付します。

               おしまいのお終いのおしまい

 
追伸
今回も1回のみの掲載を試みた。実際に完成もしたのだが、やはり解説編で脱線と迷走を繰り返し、厖大な長文になったゆえに分けることにした。

えー、ハイモンキシタバの回から比較的間隔を置かずに記事をアップできたのは、ハイモンの回と同時進行で書いていたからです。同時進行の方が早く書けて、間違いも少ないと考えたワケやね。

 
(註1)しょこたん
マルチタレント・歌手の中川翔子のこと。

 

(出典『Wikipedia』)

 
『しょこたん』の愛称で知られ、オタクだけでなく一般的な知名度も獲得している。
アキバ系タレントの先駆けの1人として活動を開始した後、自身のブログが爆発的な人気を集め、「新・ブログの女王」と呼ばれた。ネット文化に影響を受けた特有の話し方はしょこたん語と呼ばれている。本文で使った「ギザ」もその一つである。

 
(註2)ちなみに上田城には元々天守閣がない
仙石氏時代の上田城には天守閣が無かったことは明らかではあるが、真田氏時代の有無は定かではなかった。しかし近年、金箔瓦が出土していることから天守が築かれていた可能性が指摘されている。
なお第一次上田合戦の際には「天守もなく小城」と徳川軍が侮ったとする記録があるので、天守があったとすれば、造営はその後だと考えられる。

 
 

2019’カトカラ2年生 其の五 弐の章

 
   vol.22 ハイモンキシタバ

          弐の章
   『銀翼のマベッラ』

 
 
 ー解説篇ー

 
【ハイモンキシタバ♂】

 
【同♀】

(以上2点共『世界のカトカラ』)

 

(2019.8.6 長野県上田市)

 
鮮度の良いものは前翅が銀色で、白灰色の紋が有るんだね。
下翅の黄色は明るく鮮やかで美しい。
ちなみに前回の採集記で書いたように激ヤラかしちまったので、手持ちの標本はこんなんしかない。

 

(2020.8.9 長野県木曽町)

 
来年は銀々にして、ギンギンの羽化したての奴を手ゴメにしてやろう。

さてとー、気持ちをリセットして解説を始めますかね。

前翅は灰褐色で腎状紋付近から前縁にかけて、比較的大きな白灰色の斑紋を有する。後翅中央黒帯と外縁黒帯は繋がらず、後翅は明るい黄色で翅頂の黄紋は明瞭。また北海道のものを除いて後翅外縁黒帯が下部で明確に分離する。頚部は樺色、胸部は灰色、腹部は褐色を呈する。
一見ノコメキシタバに似るが、前翅に灰白紋が有ること、後翅がレモンイエローで、外縁の黒帯が繋がらないことで判別できる。
補足しておくと、ノコメキシタバの後翅の色はオレンジ系統の黄色で、より外縁黒帯が太く、外縁近くまでぴっちぴっちに広がる。

 
【裏面】

(出典『日本のCatocala』)

 

(出典『garui.dremgate.nd.jp』)

 
(♀裏面)

(2019.8.6 長野県上田市)

 
裏面下翅の中央の黒帯はノコメと比べて細くなる傾向があるようだが、決定的な違いは何といっても外縁の黒帯にある。表と同じく途中で黒帯が分断されるのだ。また、他のカトカラと比べて外側の黄色い部分が淡く、白っぽく見える。但し、ノコメはそこが更に白く、下翅内側の黄色い部分とのコントラストが強い。
比較のためにノコメキシタバの画像も載せておこう。

 
(ノコメキシタバ Catocala bella)

(出典『世界のカトカラ』)

 

(2020.8.9 長野県木曽町)

 
よく見れば、両者にはかなりの差異がある事が解って戴けるかと思う。
ちなみに裏面の画像は飛び古した個体ゆえ、黒帯の色がかすれて薄くなっている。

 
【学名】Catocala mabella Holland, 1889

しかしネットで見ると、学名が違う。ほとんどのサイトが学名を「Catocala agitatrix mabella」としているので、まごつく。おいおいである。冒頭からいきなり躓いたんじゃないかと思ってビクついたよ。採集記のみならず、解説編まで蹉跌パターンとなれば目も当てられない。
しかし、落ち着いて考えてみると、小種名”agitatrix”に続く後ろに、件(くだん)の”mabella”がある。と云うことは元々は亜種名に使われていた言葉みたいだね。その”mabella”が亜種名から小種名に昇格して、”agitatrix”とは別種になったのではあるまいか。たぶん、それに間違いないかと思われる。

では、”Catocala agitatrix”とは何じゃらホイ❓
調べたら、わりと簡単に見つかった。どうやら大陸側にいる近縁種のことのようだ。

 
《Catocala agitatrix Graeser, [1889]》

(出典『世界のカトカラ』)

 
上部のロシア云々というデータはキララキシタバのもので、関係ないゆえ無視して下され。
特徴は前翅の灰紋が小さくて、黒い鋸歯線がぼやけてて不鮮明なことだろう。お世辞にも綺麗だとは言えないやね。
 
よく見れば、学名の記載年が括弧で括られているぞ。って事は、これは何かあった証拠だろう。(・o・;)あっ、記載者も別な人になってる。ようは記載年が括弧に入っているので記載後に記載年が変更されたって事❓
でもハイモンキシタバの記載年も1889年になってて同じ年だぞ。変更されたのならば、どっちかが別な年にならないといけないんじゃないのか❓
それに、ナゼに記載者名が変わっておるのだ❓ハイモンキシタバの従来の記載者名は”Graeser, 1889″となっているのだ。それが如何なる理由で”Holland, 1889″となったのさ。これはいったい何を意味してんのよ❓全然ワカンないや。謎ですわ。

和名は「ニセハイモンキシタバ」となっている。
分布は中国・ロシア南東部(沿海州)・朝鮮半島。海を隔ててはいるが、それに連なる地域だ。つまりは両者は元々は同種とされていて、後年に日本のものが別種として分けられたってことか…。それゆえ日本産は固有種となったと云うわけだね。まあ最初から薄々そう思ってたけどね。
あれっ❓だったら和名は”mabella”が後から分けられたんだから「ニセハイモンキシタバ」になるんでねぇの❓
でも今更和名をハイモンキシタバからニセハイモンキシタバに変えるのも妙な話だ。和名なんだから、そこまで厳密にする必要性はないし、変えたら混乱を引き起こすからデメリットはあっても何らメリットはないもんね。これでいいだろう。
何か学名を筆頭に全体的にモヤモヤするけど、突っ込めば迷宮世界に迷い込むこと必至なので、これ以上はアンタッチャブルじゃよ。

ハイモンキシタバと似るが、本種には前翅腎状紋周辺にハイモンほどの大きな白灰紋がなく、より小さいか消失するようだ。
また、前後翅裏面が全面黄色いことからも区別できるという。
裏面の画像を探そう。

 

(出典『gorodinski.ru』)

 
(・o・)あっ、確かに裏面は全面黄色いや。
あと、この個体は前翅の白灰紋が消失してるね。

成虫は6〜8月に見られるが、あまり多くないという。
食樹はハイモンと同じくバラ科リンゴ属だと判明しているようだ。その意味でもハイモンとは極めて近縁な関係にあるものと思われる。

亜種に以下のものがある。

 
◆Catocala agitatrix shaanxiensis Ishizuka,  2010


(出典『世界のカトカラ』)

 
中国の陝西省のものだ。
これも上部のデータは関係ないゆえ、無視して下され。
さておき、下翅の帯が細いね。他の特徴は原名亜種と同じに見える。

とはいえ、調べ進めるうちにワケワカンなくなってきた。
Wikipediaでは、”Catocala mabella”が”agitatrix”のシノニム(同物異名)扱いになってんだよね。
それにネットの『ギャラリー・カトカラ全集』では日本固有種と書いてあるのに、学名は”agitatrix”のままになってる。ワケわかめじゃよ(@_@) 本当のところは、現在どういう扱いになってるんざましょ❓

おっと、肝腎の学名の語源について書くのを忘れてたね。
ライフワークって程じゃないけど、学名の語源については極力知っておきたい。名前を付けた古(いにしえ)の人たちが、その種にどんな思いを込めて名付けたのか興味があるのだ。きっとそこには時代背景があり、各々に何らかの物語があろう。歴史を辿るようで、そこにロマンを感じるのだ。

属名の「Catocala(カトカラ)」はギリシャ語由来で、kato(下)とkalos(美しい)という2つの言葉を繋ぎ合わせた造語。つまり下翅が美しいことを表している。
小種名の「mabella」はラテン語読みだとマベラかな? 或いはマベッラだろう。感じとしては女性の名前っぽい。「bella」はラテン語の「美しい」の女性形だしね。そういや、ハイモンの学名は「Catocala bella」だったね。それって何か関連があんのかな?

mabellaで検索したら、最初に「美しい海」を意味すると出てきたので楽勝かと思いきや、mabellaではなく、綴りが微妙に違う「marbella」の事であった。
マルベーリャはスペイン南部のアンダルシア州の都市で、地中海に面し、コスタ・デル・ソル(太陽海岸)有数の保養地として知られている。そういえば、あっしもバイクでユーラシア大陸を横断した時に通ったよ。

次にヒットしたのは小惑星 mabella(メイベラ)。たぶん女性名っぽいから、発見した学者が恋人とか奥さんの名前を付けたのだろう。
他にないのかと探していたら、意外なものに行き着いた。
Cyrestis thyodamas mabella。何とイシガケチョウの亜種名に、この”mabella”がある。ヒマラヤ西部~中国に分布するものを指し、日本産もこの亜種に含まれる。
補足しておくと、屋久島以北のものを”kumamotensis”とする見解もある。また台湾産も亜種(ssp.formosana)とされる。
尚、原記載亜種はタイやベトナムにいるようだ。南限のマレー半島北部のモノはどうなるのかな?
『東南アジア島嶼の蝶』で調べてみっか…。
完全にパラノイアとかHSPだよな。これだから話が大幅に逸れて文章が長くなるに違いない。

 


(出典『東南アジア島嶼の蝶』)

 
この図を見ると、マレー半島北部のものも原記載亜種に含まれそうだね。

おっ、そうだ。イシガケチョウの画像を貼付しないとね。
勿論、アチキは蝶屋であるからして標本はあるのだが、探すのが面倒なので図鑑から画像をパクらせて戴こう。

 

(出典『日本産蝶類標準図鑑』)

 
こうして改めて見ると、相当にエキゾチックだね。だからってワケじゃないけど、基本的にガッキーは好きだ。小さい頃は関西では和歌山とか紀伊半島南部にしかいなかったから憧れの蝶だったしね。

よし、これを足掛かりにして語源を探っていこう。
ここは先ず、いつもお世話になってる平嶋さんの『蝶の学名ーその語源と解説』に頼ろう。それが一番の近道の筈だ。

(。•̀ᴗ-)✧ビンゴ❗狙い通りだ。イシガケチョウの項からこの亜種の語源が見つかった。
それによると「女性名Mabella=Mabel。ヴィクトリア朝時代に好まれた名。」とあった。
納得いったような、いかないような微妙な気分だ。MabellaにしろMabelにせよ、その語源を調べなければ意味がなかろう。

さらに調べると、比較的簡単に見つかった。
メイベル(Mabel)とは、ラテン語の「愛らしい、魅力的な」と云う意味らしい。ハイモンキシタバが愛らしいかどうかはさておき、スッキリしたよ。まあ「魅力的な」と言われれば、そうとも言えるしね。

「agitatrix」もついでに調べとくか…。
これは語尾が「〜rix」となっているので、たぶんラテン語の女性形の一つであろう。

ウィクショナリーには「Constructed as latin agitatrix feminine of agitator.」と書いてあった。どうやら英語だけでなく、ラテン語にも「agitator」という言葉があるようだ。
agitatorは、英語だと「扇動者,運動員,攪拌器」という意味だから、意訳すると「ラテン語と同じ由来で、女性のアジテーター(扇動者)」ってこと❓

「〜rix」で検索すると、Viatrixとbeatrixというのが出てきた。
Viatrixは、ラテン語の女性の名前で「旅する女」という意味がある。viatorは「旅人」の女性形で、viaは「道」を意味する名詞からの変則的な派生形とあった。beatrixは(人を)幸せにする女という意味だ。
ここから”agitatrix”にも「〜する女」という動詞的な意味合いがあるのではないかと考えた。
けど、その「〜する女」の「〜」が分からない。何をしてる女なのだ❓

あてどないネットサーフィンをしても、以下のようなものしか見つけられなかった。
agitatores=agitator(御者(馬を操る人)、騎手)の複数agitatoresの対格とか、agitatr=運転者だとか、今ひとつジャストフィットするものがない。
agitatorのラテンの語源は、名詞のactio(英語でいうところのaction, doing)で、第3変化動詞 agere(=to set in motion(動かす), drive(走らせる,御する),forward(前へ)等)の完了受動分詞actusから派生した女性名詞だと言われてもなあ…。もう何のこっちゃかわかりゃせんよ。けど、わかりゃせんなりに意地で続ける。ウザいなと思った人は、この項は飛ばしてくだしゃんせ。でも、もう少しで終わるから、もちっと我慢しておくんなまし。

「actioとagereに関連するラテン単語には、acta,activus,actus,agilis,agitatio,agitare等があります。尚、agereの現在分詞は、agens(属格はagentis)であり、英語のagent(代理人)に繋がります。」

どうやら、これら運動と関連せしめる言葉の1つとしてアジデーターがあるという事らしい。いずれにせよ、難し過ぎてワシの足りない脳ミソでは、もうついていけんよ。

ここで一旦、原点に戻ろう。
agitatorの語源とも言える「agitate」は「扇動する,心をかき乱す,動揺させる,一人で苛々する,ゆり動かす,かき混ぜる,波立たせる,(盛んに)論議する,(熱心に)検討する,関心を喚起する」といった意味がある。
ならば、ここから良さげな言葉をチョイスして、agitatrixは「心をかき乱す女」「心を揺り動かす女」「心惹かれる女」と意味とはならないかね。これらならば、この学名が名付けられた理由としては得心がいく。
第一章の『銀灰の蹉跌』で書いたように、アチキもハイモンキシタバに心をかき乱されたのだから、もうマベッラは「心かき乱す女」でいいじゃないか。
(人´∀`)。゚アハハ…。こりゃ、完全にヤケクソ男のコジ付けだな。
あ~、やめた、やめた。アタマ、雲丹じゃよ。ここいらで限界だ。白旗です。誰か分かる人は教えてくんなまし。

 
【和名】
前翅に灰白色の紋があることからつけられたものと思われる。
こういう解りやすい和名はいいね。全くもって意味がワカランような和名は、和名をつける意味がない。そんなだったら潔く学名ほぼそのまんまの、例えばジョナスキシタバとかの方が余程いいと思う。

とはいえハイモンだと、ちょっと素っ気ないところがある。灰色よりも銀色を前面に押し出した和名も有りだったんじゃないかと思えなくもない。和名には、どこか色気があって想像力を掻き立てるようなものがいい。

 
【亜種】
■Catocala mabella mabella
本州のものが原記載亜種とされる。

■Ssp.kobayashii Ishizuka, 2010
北海道のものは後翅外縁の黒帯が分離しないものが多く、亜種として分けられている。

 

(出典『世界のカトカラ』)

 
確かに僅かだが、黒帯が繋がっている。
亜種名の”kobayashi”は、蛾の研究者で小林という名字の人に献名されたものだろう。
まさか、マオくん(註1)の事だったりしてね。彼の名字は小林で、記載者の石塚さんとも懇意にしているみたいだからね。確かめたいところだが、こんな事で連絡するのも気がひける。何か重要な案件でもあれば、ついでに訊けるんだけど、んなもん無いし…。

 
【開張(mm)】
ネットの『みんなで作る日本産蛾類図鑑』だと58〜60mmとなっているが、『日本産蛾類標準図鑑』では56〜66mmとなっている。まあ、この範囲内と考えればいいでしょう。
意外と数値的に大きく思えるが、これは横に広い形だからだろう。表面積はそれほど広くはない。形的にはスッキリしてて、カトカラの中ではカッコイイ方だと思う。

 
【雌雄の判別】
♂は尻が細くて長く、尻先に毛が多い。♀はその反対であるからして大体の区別はつく。でも裏返してみるのが一番てっとり早い。

 

 
縦にハッキリとスリットが入っている。これがあって、この先から黄色い産卵管が覗いているか出ていれば、間違いなく♀だ。
カトカラの中には、このスリットが分かりづらい種もいるが、どうやらハイモンは分かりやすいタイプの側のようだ。

 
【分布】 北海道,本州(中部地方以北)


(出典『日本のCatocala』)

 

(出典『世界のカトカラ』)

 
補足説明をしておくと、『日本のCatocala』は分布領域を示しているが、『世界のカトカラ』は県別の分布を示している。
どちらにせよ、今のところは愛知県尾張地方辺りが南限で、近畿地方以西では見つかっていない。
ノコメキシタバの分布のように東北地方から北海道南西部にかけての空白地帯は無く、東北地方の内陸部にも全県にわたって見られる。
引っ掛かるのは西限とされる福井県だ。県の蛾類目録では記録が有ることになっているが(具体的地名は無し)、福井市自然史博物館のPDFでは未記録になっていた。
但し、岐阜県揖斐郡藤崎村(現 揖斐川町)に記録がある。ここは福井との県境だから、福井県にも分布している可能性はあるだろう。

寒冷な高原地帯のズミによく発生し、以前は1000mを越える高原に多かったが、地球温暖化の影響か近年は減少しているという。
食樹を同じくするノコメキシタバとは共棲することも多いが、ノコメよりも遥かに個体数は少ないとされる。実際、ネットの画像も思いのほか少ない。
にも拘わらず、驚いたことにどの都道府県のレッドデータリストにも準絶滅危惧種にさえ指定されていない。環境省や各都道府県のその手の部署って、ホント糞だ。指定しなくてもいいものを指定して、指定すべきものを指定しなかったり、指定はしても、指定しただけで保護や環境保全はおざなりだったりって事も多い。
それはさておき、何で西日本には居ないのだろう。食樹であるズミは九州まで自生しているのにね。しばしば、東からきて近畿地方に入るとパッタリと分布しなくなる昆虫は見受けられるけれど、中国地方には分布するものは多いのだ。中国地方や兵庫県西部で見つかってもよさそうなものなのにね。冷涼な気候を好むからかな?と一瞬考えたが、濃尾平野の低地にも確実に棲息しているから、それだけでは説明できない。でも他に理由が全然思いあたらないよ。ものすご〜く謎だ。

 
【成虫の出現期】
低地では6月中旬から、高地では7月から出現し、8月下旬まで見られ、ノコメのように9月まで生きのびることはない。尚、新鮮な個体が得られるのは8月初めまでだとされる。

 
【生態】
寒冷地性で、標高1000〜1700mのズミの多い高原や渓谷など冷涼な気候の地で見られることが多いが、名古屋市内や尾張旭市の低地でも棲息が確認されている。

クヌギやヤナギなどの樹液に好んで集まるが、標高の高いところでの採餌行動は発生数に比べて少ないという。
他に成虫の餌として観察されているのは、花蜜(ヤナギラン)と果実(桃の腐果)。しかし、観察例は少ない。

糖蜜トラップにも誘引される。一度だけだが、自分のトラップにも飛来した(標高1250m)。尚、飛来時刻は午後8時15分だった。ゆえに樹液や糖蜜トラップに訪れる時間帯についての知見はない。幼虫がブナ科食のカトカラは日没後直ぐに集まるが、バラ科食のカトカラは一時間ほど遅れる傾向にあると思うのだが、バラ科食のハイモンくんはどうなのだろう?興味深いところだ。

灯火にも飛来する。但し、文献を見ても特に飛来時刻の傾向が書かれているものは無かった。
ちなみに2020年に木曽町で灯火に飛来した時刻はハッキリとは憶えていないが、午後9時半から10時台だったと云う覚えがある。

昼間、成虫はカラマツなどの樹幹に頭を下にして静止している。驚いて飛ぶと別な木に上向きに止まり、瞬時に姿勢を反転して下向きに変えるという。

交尾時刻は、深夜の11時から午前2時の間とされる。羽化して数日後から交尾、産卵を繰り返すものとみられており、ジョナスキシタバなどのように夏眠後からの産卵パターンではないようだ。

産卵例は、2001年8月6日の上田市の高原での記録がある。
日没後、♀が食樹であるズミを次々と渡り、樹皮下に産卵しているのが観察されている。

 
【幼虫の食餌植物】
バラ科:ズミ、エゾノコリンゴなどのリンゴ属。

本州ではズミが基本食樹のようだが、リンゴの台木として植栽された山麓のエゾノコリンゴにもよく付くという。また放置されたリンゴ園でも見られ、時に栽培されたリンゴからも幼虫が見つかることがあるそうだ。参考までに言っておくと、1例だけだがウワミズザクラから卵が見つかっている。ちなみに孵化幼虫に同じバラ科のウメやサクラの葉を与えても摂食しない例が多いと言われている。

 
(ズミ (酸実・桷) Malus toringo)

(出典『www.forest-akita.jp』)

 
高さ10mほどの落葉小高木で、リンゴに近縁な野生種である。
同じリンゴ属のカイドウやリンゴ、ナシ属に似ていて、古くからリンゴ栽培の台木として使われてきた事から、ヒメカイドウ(姫海棠)、ミツバカイドウ(三葉海棠)、ミヤマカイドウ(深山海棠)、コリンゴ(小林檎)、コナシ(小梨)など多くの別名がある。しかし、現在は台木とされることはあまりなく、マルバカイドウ(註2)に取って代わられているそうだ。

語源は樹皮を煮出して黄色の染料にした事から染み(そみ)が転化したもの、或いは実が酸っぱいことから酢実(すみ)が訛ったものとも言われる。

北海道から九州までの広い範囲に自生する。日のよく当たる高原や湿原を好み、時に群生する。
4〜6月にかけてオオシマザクラやカイドウに似た白い小花を枝いっぱいに咲かせる。咲き始めはピンク色を帯び、徐々に純白へと変化する。

 
(花)

(出典『Wikipedia』)

 
(若葉と花)

 
(夏葉)

(2点共 出典『庭木図鑑 植木ペディア』)

 
(幹)

(出典『ケン坊の日記』)

 
幹から直接生じる葉には切れ込みが入り、似たような木と見分ける手掛かりとなる。
小枝はトゲ状。材は硬く、斧や鉈などの柄に使われる。また樹皮は前述したように染料にもなるが、明礬などを加えて絵の具にもする。

 
(実) 

(出典『庭木図鑑 植木ペディア』)

 
9月~10月にかけて小さいリンゴのような赤または黄色の実を付ける。実は酸味が強いが、霜が降りる頃には多少の甘みが出てくるので生食のほかジャムや果実酒に用いることができる。中に含まれる種を撒くと発芽する率は高い。

盆栽などで知られるヒメリンゴは、ズミとセイヨウリンゴの雑種とされる。しかし、人工的に作られた園芸品種であり、天然の分布はない。

 
(エゾノコリンゴ(蝦夷小林檎) Malus baccata)

(出典『四季の山野草』)

 
(花)

(出典『greensnap.jp』)

 
(葉)

 
(樹幹)

 
(実)

(以上3点共 出典『四季の山野草』)

 
分布は北海道、本州(中部地方以北)で、ズミとは近縁。
和名はリンゴよりも実が小さく、北海道に多く産することに由来するという。別名サンナシ、ヒロハオオズミ。
主に山地〜海岸の湿地とその周辺に生え、5〜6月頃に白い花を付ける落葉の小高木。高さは8~10mになる。秋には1cm足らずの赤い実を沢山付ける。

材質は重くて硬く、割れにくいために斧、鍬などの柄に用いられたという。また、ズミと同じく嘗てはリンゴの台木としても用いられた。
ズミとの違いは葉で、ズミには葉の中に3~5裂するものが混じるが、エゾノコリンゴの葉は裂けないことで見分けられる。

ここで緊急的に文章をブチ込む。
追伸まで全部書き終え、さあ最終チェックという段階で、たまたまTVで『ブラタモリ』を見てたら、高尾山の樹林相(落葉広葉樹と常緑広葉樹の分布)の話になった。落葉広葉樹は冷たい気候を好み、常緑広葉樹(照葉樹)は暖かい気候を好むとかそんな話だ。常緑広葉樹は確かにそうだが、落葉広葉樹は例外だらけやんけと思ってたら、説明のための植生図が出てきた。
こんな風な図だ。

 

(出典『雑木林の遊歩道』)

 
それを見て驚いた。落葉広葉樹の植生とハイモンキシタバの分布図がソックリじゃないか❗
この図では濃いグリーンが常緑広葉樹、黄緑色が落葉広葉樹の分布を表している。
さらに驚いのは2つの広葉樹の分布は年平均気温が約13℃を境に分かれていて、13℃以上は常緑広葉樹、13℃以下は落葉広葉樹となると解説されていたことだ。この13℃云々というのは目から鱗だった。何となく感じてはいたが、こうして具体的な数値をあげられると、にわかにリアルなものに見えてくる。
ならば当然、ズミの西日本での分布は限られてくると想像される。上図でも西日本の黄緑色に塗られた地域はかなり狭い。

と云うワケで、ちゃんとズミの分布を調べてみたら、西日本では産地が内陸部の高地に限られ、数も少ないことが明らかになってきた。
となれば、ハイモンキシタバが西日本で見られない理由も自ずと解ってくる。食樹の分布が重要なファクターだからだ。
ハイモンが中国地方あたりで発見される可能性はゼロではないが、寒冷地性なので居るとしても山頂に近いごく限られた場所でしか生き延びられないだろう。勿論、食樹があっての話だ。
100%納得したワケではないが、自分の中では一応の解決にはなったかな。

 
【幼生期の生態】
例によって幼生期に関しては今回も『日本のCatocala』におんぶに抱っこである。西尾さん、いつもすいません。

 
(卵)


(2点共『日本のCatocala』)

 
円盤状で、受精卵の色彩は黒褐色ないし茶褐色。横に走る斑紋は黃白色で、ケンモンキシタバの卵に似る。
食樹の薄い表皮や樹皮の裏に1個から2、3個、稀に5〜6卵ずつ産付される。根元の苔にはあまり産卵されない。反対に食樹を同じくするノコメは、この苔の部分で卵がよく見つかるという。
但しハイモンとノコメは食樹が同じで見た目が似ていることから兄弟の如く並べて語られる事が多いが、種としての両者は系統的には掛け離れているそうだ。

 
(1齢幼虫と2齢幼虫)

(出典『日本のCatocala』)

 
左側が1齢、右が2齢幼虫。
孵化期はかなり早く、上田市の標高500mでは4月上旬。終齢の5齢幼虫は5月中旬には見られる。尚、終齢は標高1000mでは5月中・下旬、1200〜1500mでは5月下旬から6月上旬に見られるそうだ。何れの産地でも同じくズミを餌とするノコメキシタバよりもよりも幼生期が1週間程度早く推移する。

幼虫は葉の他に花や蕾も摂食する。
比較的若い木を好み、樹齢40年以上の古木にはあまり見られない傾向があるそうだ。

 
(5齢幼虫)


(出典『日本のCatocala』)

 
5齢幼虫の昼間の静止場所は地表近くの枝や樹幹。時に地表で見つかることもあるという。

色彩変異は顕著で、寒冷地では白化して側線の模様が黒く目立つ個体がよく見られる。ノコメキシタバの白化した個体と識別が困難な場合もあるが、頭部の斑紋で判別できる。

 
(終齢幼虫頭部)

  
(ノコメキシタバの頭部)

(出典 2点共『日本のCatocala』)

 
カトカラの幼虫の同定には、この顔の模様がかなり重要みたいだね。確かに全然違う顔だわ。

幼虫の天敵として、Winthemia cruentataという寄生蝿が記録されている。他に天敵として考えられるのは、鳥を筆頭にスズメバチ、寄生バチ、クモ、サシガメ等が考えられるが、特に記録は見当たらなかった。

蛹は知る限り野外では見つかっていないが、飼育しても丈夫な繭を作らない事から、おそらく落葉の下などで蛹化するものと思われる。

                        おしまい

 
追伸
前回の追伸(の追伸)でも書いたが、ハイモンキシタバについては、いつものように複数回ではなくて1回のみで終える予定だった。実際、この解説編も含めて順調に書き進め、一応の完成はみた。しかし、いざ発表の段になって最終チェックのために読むと、これがクソみたいに長い。特に学名の項などは迷走しまくりで、エンドレス状態なので2回に分けることにしたってワケ。

にも拘らず、その原因となった学名について再び書く。
“agitatrix”の語源が消化不良なまま終わり、どっか心の隅っこで気になっていた。なので図書館へ行き、ラテン語の辞書で調べ直してみることにした。我ながらシツコイ。
『羅和辞典』には、agitatrixという単語そのものは載っていなかった。載ってたのは agitatorと、その他どちらかというと動的な意味のものが並んでいた。
もう面倒くさいので画像を貼り付けちゃえ。画像を指でピッチアウトすると拡大できます。

 

 
これらを見ると、agitatrixは何らかの能動的なアクションを表している言葉だろう。

一応、agitatorの部分を拡大しておこう。

 

 
動物を駆る者❓一瞬、猟師かいなと思ったけど、後ろに農夫と出てきたので牛だの馬だのを操る人なのだと解った。それにしても戦車のドライバーとはね。これが語源だったら、相当面白いや。

どうやら「agitator」の起源は、「agito」と云う言葉らしい。アジト❓ 秘密基地かよ。
意味は以下のとおりである。

 
 
(出典 以上4点共 研究社『羅和辞典』)

 
これらのどれかが学名の語源と関係するのだろうが、やはり特定は出来ない。結局、明白な答えには行き着けなかったね。ハイモンには蹉跌つづきだったってワケだ。敗北感、濃いわ。

 
(註1)マオくん
ラオス在住のストリートダンサーであり、蛾の研究者でもある小林真大くんのこと。蛾界の若きホープで、一言で言うなら虫採りの天才だ。ネットで「小林真大 蛾」で検索すれば、彼のInstagramやTwitterにヒットします。

 
(註2)マルバカイドウ

(出典『土の中の力持ち』)

学名:Malus prunifolia var. ringo。
中国北部・シベリア原産のバラ科リンゴ属の耐寒性落葉高木。
イヌリンゴの変種で白紅色の花を咲かせる。花が咲いた後に林檎に似た小さな赤い実を付けるが、あまり食用には適さない。
セイシ、キミノイヌリンゴ等の別名がある。

 
ー参考文献ー

◆西尾規孝『日本のCatocala』
◆石塚勝己『世界のカトカラ』
◆岸田泰則『日本産蛾類標準図鑑』
◆平嶋義宏『蝶の学名-その語源と解説』
◆塚田悦造『東南アジア島嶼の蝶』
◆白水隆『日本産蝶類標準図鑑』

インターネット
◆『みんなで作る日本産蛾類図鑑』
◆ギャラリー・カトカラ全集
◆Wikipedia
◆庭木図鑑 植木ペディア
◆四季の山野草

 

2019’カトカラ2年生 其の五

 
    vol.22 ハイモンキシタバ

   『銀灰(ぎんかい)の蹉跌』

 
 
2019年 8月6日

白馬で3連続惨敗に終わり、別な場所で何とかミヤマキシタバを採って溜飲を下げた。しかし、翌日には松本市でナマリキシタバを狙うも、かすりもせずで再び惨敗を喫した。
ナマリとはメチャメチャ相性が悪い。このままでは再び悪夢のような流れになりかねないので、スパッとリベンジを諦め、この日は上田市へと移動することにした。

電車だと不便そうなので、バスを選択する。

 

 
平日とはいえ、車内はガラガラだった。
途中、ナマリキシタバの産地として知られる三才山を越えて、上田盆地へと入る。

1時間半ほどで上田駅前に到着。

 

 
時刻は昼過ぎ。目的地行きのバスにはまだ時間があるし、昼飯でも食おう。

長野と云えば蕎麦である。ここ上田も蕎麦で有名だ。
観光案内所で、お薦めの蕎麦屋を幾つか教えてもらう。
で、吟味した結果、安くて量が多く、一番流行っているという店へ行くことにした。

 

 
結構、行列が出来ていた。
並ぶのが死ぬほど嫌いな男だが、せっかくここまで歩いてきたし、上田に来るのは初めてで、この先来ることなど滅多とないだろうから我慢して並ぶことにした。

 

 
意外と列は進み、思ってたほど待たなくとも済んだ。

 

 
店内はレトロな感じで好ましい。

 

 
周りの人たちに目を向ける。食べているのをチラッと見ると、田舎そばって感じだ。

 

 
メニューを見る。
ここは矢張り王道の、もりそばだろう。蕎麦といえば、もりそはに決まってんである。
650円也のもりそば(中)をたのむ。長野県にしては良心的な価格設定だ。
 
ハイハイ、きましたよ〜。

 

 
つゆと薬味の設(しつら)えも良い感じだ。期待値が跳ね上がる。

 

 
しかれども、何だかボソボソしてて全然旨くない。麺の太さもバラバラだ。素朴で野趣あふれる感じは嫌いじゃないが、それも旨いという前提があってこその話だ。
ブッちゃけ言っちゃうと、長野で蕎麦食って旨かったためしが一度もない。その上、高い店が多いから腹が立つ。関西人としては、福井のおろし蕎麦や兵庫は出石の皿そばを擁護したくもなる。
小太郎くんも同意見で、この件に関してはいつも文句タラタラだ。その憤りはワシなんかよりも遥かに強く、もう憎悪と言っても差支えないくらいだ。普段、食いもんに文句を言わない人だけに、その怨みは極めて深い。

いったい何があったのだ❓小太郎くん❗

理由は知ってるけどさ(笑)。

これで何か悪い予感がするなと思ったら、案の定、店を出たら天気は下り坂になっていた。
そして、バスに乗ったら、風雲、急を告げるってな感じになってきた。行き先はどうみてもヤバヤバの黒雲ワールドだ。

 

 
おいら、スーパー晴れ男なのに何で❓ポロポロ( ;∀;)
白馬村で辛酸を舐め、大町市で何とか持ち直して、この地へと移動してきた。なのに又しても地獄の輪廻の再開かと思うと、戦々恐々だよ。

1時間近くバスに揺られ、午後4時前にバスを降りる。
歩き始めると、雨がポツポツと落ちてきた。これは強くなるなと思ったら、案の定、すぐに本格的に降ってきた。
慌てて出荷作業中のレタス農家に飛び込み、雨宿りさせてもらう。長野県民、特に北側は不親切な人が多いけど、スタッフは皆さん親切で色々気遣いして戴いた。ありがとうございました。

雨がやんだら、急速に晴れ始めた。スーパー晴れ男の面目躍如である。基本、強く願えばワシの居るところは晴れることになっとるのだ(笑)。

ここはラグビーの夏の合宿地としてファンならば誰しもが知っている裏の聖地とも言える地だ。
ゆえに、ポイントと決めた場所には沢山の若きラガーマンたちが夕暮れまでマジ走りでランニングをしていた。
たぶん高校生だろう。地獄の合宿ってところだ。
Ψ( ̄∇ ̄)Ψケケケケケ…、血ヘドを吐くまで走りなはれ。それも時間が経てば、悪い思い出じゃなくなるんだからさ。

そういうワケで、キッチリ歩いてポイントの概要は下調べしておいた。

 

 
狙いはノコメキシタバとハイモンキシタバ、そしてケンモンキシタバである。
ノコメ、ハイモンの食樹のズミ(バラ科リンゴ属)とケンモンの食樹ハルニレ(ニレ科)の木は既に確認済みである。ミヤマキシタバで溜飲を下げ、流れも良くなってきてる。本日もミッションを遂行して凱歌をあげるつもりだ。まあまあ天才が調子に乗ったら、連戦連勝は当たり前なのだ。
Ψ( ̄◇ ̄)Ψおほほ星人が見える時は強いぜ、バーロー。

学生たちは去り、辺りは闇に包まれようとしていた。
さあ、戦闘を開始だ。ズミが多くあるところとハルニレだと思われる大木の周りに糖蜜を吹き付けてゆく。

午後7時半。日没後さして間もなく糖蜜にノコメキシタバがやって来た。幸先がいい。
とっとと採っての、とっとーとで勢いをつけて、そのままエンジン全開といこうぜ。マホロバ発見の呪いだと揶揄する秋田さんや岸田先生の期待を何が何でも裏切らねばならぬ。再び笑い者にされるのは御免蒙りたいのじゃよ。ここからは連戦連勝といこうじゃないか。

しかし、網を組み立てて、よっしゃ行くぞと気合を入れて見たら、忽然と消えていた。
……(。ŏ﹏ŏ)、嘘だろ❓マジかよ❓

おいおいだが、反応があったのは一安心だし、そのうち又飛んで来るじゃろうて。どんまいどんまい、Don’t mind.

取り敢えずは糖蜜を撒いた各所を巡回する。
次に飛んで来たのは8時15分だった。同じ木だったし、さっきのノコメが戻って来たのだろうと思った。しめしめである。
しかし何かさっきのとは、ちょっと違うような気がする。
💡ピコリン。😲あっ、ハイモンかあ…。ホントはノコメが一番欲しいんだけど、ハイモンも採ったことないし、まっ、良しとすっか…。

毒瓶を被せるか、網を使うか迷ったが、一応さっきの事もある。また逃すのは嫌だし、早く初物は何でもいいから採っておきたかったので網を選択する。ゼロと1とでは心の有りようが天と地ほどの大違いなのだ。さっさと採って、一刻も早く心を落ち着かせたい。

慎重に距離を詰め、止まってる下を網枠でコツンと軽く叩く。驚いて飛んだところを瞬時に振り抜く💥。
斜め斬り光速剣ハヤブサ❗
(. ❛ ᴗ ❛.)へへへ、決まったな。

 

 
フラッシュ焚いたら、羽が銀色に輝いた。
でもベタで斑紋にメリハリがないな。それに、けっこう素早く取り込んだつもりだったが、背中の毛を剥げチョロケにさせてしまった。(´-﹏-`;)何だかなあ…。
どうせまた飛んで来るだろうし、まっいっか。

裏返してみる。

 

 
たぶん♀だ。
裏面の外側は黄色が薄くて白っぽいんだね。カトカラではあまり見たことのない裏面かもしれない。
マオくん(註1)は時期的にハイモンは厳しいんじゃないですかね。採れても激ボロですよと言ってたから、ちょい嬉しい。
後で報告したら、お褒め戴いた。でもケンモンキシタバだと思ってた奴がワモンだと指摘されて、スゲー恥かいたけど(笑)。

結局、この日飛んで来たのは、まさかのコヤツ1頭のみだった。
まっ、いっか…。深夜ギリギリになって何とか目的のノコメキシタバが採れたしね。

しか〜し、やっちまったな(-_-;)

撤退する前に何気に戦利品を確認したら、なぜか採った筈のハイモンが無い。

無いっつったら、無いっ❗❗

もしや神隠しにでも遭ったのだろうか❓
ヽ((◎д◎))ゝもうパニック寸前てある。

ここで漸く思い当たる。
写真を撮ったあとに蘇生しそうな感じだったので、もう一度毒瓶にブチ込んだような気がする。もしかして、それを回収してなかったりとかして…(-_-;)
恐る恐る左ポケットから、今回あまり使ってなかった毒瓶を取り出す。

😱NOー❗、ガッデーム❗❗

あろう事か、同定できない程にボロッボロッになっていた。
たぶん歩きまくってたから、毒瓶の中でウルトラシャッフルされたのである。
〇¶〆〓§⊿∞✤□➷✫✘ドギャぶぎゃわ、痛恨の失態なり。

 
ぽ〜い(┛◉Д◉)┛彡┻━┻

怒りに任せて捨ててやってまっただよ。
ゆえに標本は無い。大いなる蹉跌だね。写真は撮ってあるから採ったと云うせめてもの証明にはなるが、大ボーンベッドだ。まあ、ノコメじゃなかったからいいか…。
しかし、これもまた大いなる間違いであった。正直この時点ではハイモンよりもノコメの方が珍しいと誤解してたし、上翅もノコメの方が複雑でハイモンはベタでツマラナイと思ってた。だから、のちに小太郎くんに「鮮度の良いハイモンはギラギラのシルバーでめっちゃカッコイイですよ。」と言われた時は焦った。それにノコメよりも下翅が鮮やかな黄色で美しいことも失念してた。当時は上翅ばかりに目がいってて、下翅をロクに見てなかったし、展翅もしてないから気づかなかったのだ。銀灰の蹉跌である。

だから、2020年は密かに完品を名古屋方面で狙っていた。
現地の交通の便も良さそうだし、大阪からは一番近いからサクッとリベンジしてサクッと帰ってこようと思ってた。しかし連日クソ暑いし、何やかんやとあって、その機をいつの間にか逸してしまっていた。

8月に長野県に行った時に灯火採集の外道で採れたから、一応その時の個体の写真を貼っ付けておく。

 

 
同じ個体を手の平に乗せてみる。

 

 
よりみすぼらしく見えるや(笑)
腹が細長いので♂だすな。
次の個体も♂だった。
 
 


(2020.8.9 長野県木曽町)

 
8月のものだから鮮度は当然良くない。
つーか、標高は1300mくらいあったのに両個体とも酷い有様でボロッボロだ。みすぼらしい事、この上ない。やっぱマオくんの言ってたとおりだね。7月中旬辺りに狙いにいかないとギンギラギンのには会えないってワケやね。
そう考えると、あの2019年唯一のハイモンの鮮度は時期的にみれば、かなり良かったということになる。返す返すも痛恨の極みである。

一応、展翅はした。
個体の順番は上の横向きの画像と同じである。

 

 
まあ、こんなもんじゃよ。
上の個体の上翅なんて銀灰色がほぼ消えて、そこだけ見たら何者かワカランくらいに小汚くて、辛うじて下翅でハイモンだと解るというレベルだ。
そうゆうワケで、情けないことにまともな展翅写真がない。
仕方がござらんので、次回の解説編は画像をお借りして話を進めてゆきます。ぽてちーん(T_T)

                         つづく

 
追伸
今回はワモンキシタバの続編『False hope knight』の文章を一部抜粋して使いました。そのワモンの続編では、このあと更にフザけた文章になっていきます。興味がある方は、そちらも併せて読んで下され。
また、この採集記の部分は前回のミヤマキシタバや次回のノコメキシタバの回にも連なっている。そして、ひいては過去のベニシタバの回や今後登場するカトカラにも連なってゆくものと思われる。謂わば隠れたシリーズものなのだ。

ちなみにタイトルの中の銀灰(ぎんかい)という言葉は世間的には馴染みが薄いが、実際にある色(銀灰色)で、文字通り銀色を帯びた灰色を指す。英語でいうところのシルバーグレーのことですな。ハイモンキシタバの上翅にはピッタリだと思って使用した。
蹉跌の方は分かると思うし、これ以上精神的にエグられるのも嫌なので割愛させて戴く。ワカンない人は自分で調べましょうね。
クソッ、何だか思い出してきて、沸々と怒りが込み上げてきたよ。来年はボッコボコにシバいちゃるからね。

 
追伸の追伸
実をいうと、今回は一回のみで終える予定だった。実際、次の解説編も含めて順調に書き進め、一応の完成はみた。しかし、いざ発表の段になって最終チェックのために読むと、これが長い。学名の項などは迷走しまくりで、エンドレス状態だ。
なので、2回に分けることにしたってワケ。

 
(註1)マオくん
ラオス在住のストリートダンサーであり、蛾の研究者でもある小林真大くんのこと。蛾界の若きホープで、一言で言うなら虫採りの天才だ。ネットで「小林真大 蛾」で検索すれば、彼のInstagramやTwitterにヒットします。