絶海の島の悲しき犀

 
『奄美迷走物語』の最終回で、サイカブトについて書いた。
その文の中で、日本にもう1種いる南大東島に産するヒサマツサイカブト(Oryctes hisamatui)についても少し触れた。
だが、実を言うとアップ直前に何となくヒサマツサイカブトの事が気になったので調べてみた。したら書き進めるうちにズブズブの泥沼にハマッてしまった。ようはサイカブトそっちのけの長大な文章になってしまったのである。本末転倒も甚だしい。いつもながらの事だが、愚かじゃよ。
なので一旦中断して、書きかけのサイカブトの部分を切り離してレイアウトを元に戻して記事をアップした。そして、こうして新たなタイトルを付け、切り離した部分に加筆することにしたのである。

先ずはサイカブトについておさらいしておこう。

【サイカブト(犀兜虫) ♀】

(2021.4.1 奄美大島 朝仁町)

和名の由来は、頭部に動物のサイ(犀)のような短い角があるカブトムシの仲間だからだ。この和名は2000年前後に使われ始めたもので、それ以前はタイワンカブトと呼ばれていた。
学名 Oryctes rhinocerosの小種名”rhinoceros”もサイの事を表している。尚、属名の”Oryctes”は、多分ギリシャ語の”orycho”が語源で「掘る・掘り出す」という意味だろう。これは成虫がヤシなどの内部にトンネルを掘ることからの命名かと思われる。
英名の Coconut Rhinoceros Beetleもサイに因む。ようするに、ココナッツ(椰子)にいるサイみたいな甲虫って事だね。


(出展『小学館の図鑑NEO カブトムシ クワガタムシ』)

鞘翅目 カブトムシ亜科 サイカブト属に分類される甲虫の一種で、外来昆虫とされる。
ヤシの木やサトウキビ、パイナップルを食害する害虫で、その穿坑能力は極めて強く、成虫は茎頂部にトンネルを掘って潜り込んで摂食を行う。そのためヤシなどは成長点を貫通した時点で枯死する。
日本に侵入したのは20世紀初頭とされ、台湾からの物資に紛れ込んで石垣島に上陸し、以降、凄まじいまでの繁殖力で分布を北に拡大し続けている。そして、現在では南西諸島のほぼ全域で定着。九州南部でも見つかっている。
本種の原産地はインドシナ半島周辺とされるが、農作や植栽による人為的な植物の移動に伴い、東南アジアから西はインド・スリランカ、東は中国南部、台湾、果てはハワイにまで分布を拡げており、在来か外来かが判然としない地域も少なくない。

成虫の体長は雌雄共に30〜45mm。
卵はヤシの枯木内の他、畑脇に積み上げられた肥料用の牛糞の中や堆肥、落葉土に産み付けられる。孵化した幼虫は2度の脱皮を経て4ヵ月程で老熟し、それぞれ3〜4週間の前蛹期と蛹期を経て羽化する。成虫の寿命は2〜5ヵ月程だが、成虫、幼虫共に冬季の約2ヵ月を除きほぼ一年中活動している。
本土のカブトムシのように樹液に来ることは殆どなく、基本的には地面を這って生活しているようだ。
♂の大型個体は弓なりの細長い角を頭部に1本持つが、♀も短い角を備えるため、小型個体では雌雄の見分けがつきにくい。但し♀は尾端が毛で覆われていることから、慣れれば判別は比較的容易である。
夜行性で、しばしば街灯に飛来し、路上でひっくり返ってもがいている姿をよく見かけるという。体が分厚いのに足が短いから起き上がれないのだ。
なお、日本にはもう1種この属に含まれるものがいて、南大東島にヒサマツサイカブトが産する。

扠て、ここからが本番である。
『奄美迷走物語』の最終回では、ヒサマツサイカブトについては詳しく書かなかった。理由は冒頭に書いたとおりである。
そういうワケで、気が進まないけど改めて泥沼の話を始める。

【ヒサマツサイカブト 久松犀兜】

(出展『画像あり。(´・ω・`)』)

2002年に新種記載されたもので、サイカブトよりもふた周りくらいデカくて分厚く、胸部背面後方が高くせり上がり、角も長い。
(・∀・)う〜む、カッコイイかもしんない。興味が出てきたので、もっと本格的に調べてみよう。

体長45〜49mm。体色は黒色〜赤褐色で、個体によって変異がある。雌雄共に頭に角を有し、大型の♂では長く発達して後方に強く湾曲する。♀の腹端部には黄褐色の長毛を密生するが、雄は無毛である。

(♂)

(出展『フィールドガイド 日本のクワガタムシ・カブトムシ観察図鑑』)

(♀)


(出展『学研の図鑑 カブトムシ・クワガタムシ』)

この♀は赤褐色型だね。想像してたよりも赤っぽい。戦国武将の兜に、こうゆう色艶のものが有りそうだね。

前胸背板前部は深く陥没し、♂の後縁中央にある山状の弱い突起がサイカブトは2つなのに対し、3つある。
以上の点で充分区別できそうだが、小さい個体だと判然としないのもいるそうだから、一応、他の区別点も列挙しておこう。

▪雄の胸部背面中央の窪みを取り囲んでいる帯状の浅い溝は、サイカブトでは後方で途切れるが、ヒサマツサイカブトでは繋がる。
▪雌は胸部背面の後方中央に長方形の浅い窪みがある。
▪上翅の点刻がサイカブトよりも細かく滑らかで、光沢がある。一方、サイカブトは点刻が粗く、光沢も弱い。

成虫の発生期は、6~11月。
サイカブトは年中いるが、ヒサマツは夏から秋しかいないんだね。
ヤシ科の常緑高木、ダイトウビロウ(ビロウの変種)の林に生息し、灯火に飛来するが、数が少なくて生態については不明な点が多い。

【ビロウ(蒲葵・枇榔)】

(出展『Inaho Farm』)


(出展『宮崎と周辺の植物』)

おそらくサイカブトと同様に幼虫は枯死したビロウの幹の腐植物を餌にしていると推察されている。って事は卵も幼虫も見つかってないの❓
どうやら、しばしば「幻の」とも形容されるくらいに極めて稀な存在で、全部で10頭ちょっとしか採集されていないようだ。レッドデータブックでも沖縄県の絶滅危惧種IA類に指定されており、県内で最も絶滅に瀕した昆虫類の一つとされている。

南大東島には、わざわざハマヤマトシジミを採りに行ったのだが(当時は確実に採れたのは大東諸島だけだった)、面白い島だったし、一瞬採りに行ったろかと思った。けど2019年に種の保存法により採集禁止となっていた。残念なりよ。

【ハマヤマトシジミ♀】


(2013.2.24 南大東島)

ちなみに、6枚目は製糖工場ね。この寂寥感のある独特の風景を見て、とんでもなく遠い所に来たなと実感したっけ。
まるで古き良き昭和の時代にタイムスリップしたみたいで、絶海の島は浪漫ある島だったよ。
もう1回行きたいなあ…。海は綺麗でダイナミックだし、あのメチャメチャ美味いけど3切れ以上食うと、その場で脱糞してしまうという恐るべし魚、インガンダルマも又食べたい。
それに東洋一美しいとも言われる鍾乳洞、星野洞にも結局入れていないもんね。


(出展『ニッポン旅マガジン』)

南大東島はサンゴ礁が隆起してできた島で、ほぼ石灰岩で形成されており、鍾乳洞がおよそ120カ所もあると言われている。
その中でも星野洞は最大級とされ、長さ375m、約1,000坪もの広さがあるのだ。
けれど、入口まで行ったけど入れなかった。入るには事前に予約が必要なのである。

ところで、和名の頭に冠せられる「ヒサマツ」という名の由来は何だろう❓地名のようだが、南大東島にそんな地名あったっけ❓記憶にないぞ。それに地名ならば、普通は「ダイトウサイカブト」と名付けるだろうに。
蝶屋だったら、ヒサマツといえば真っ先に頭に浮かぶのがゼフィルス(シジミチョウのキラキラグループ)界のスター蝶であるヒサマツミドリシジミだ。もしかしてヒサマツサイカブトの名前の由来は、このヒサマツミドリと何か関係があったりして…。

【ヒサマツミドリシジミ 久松緑小灰蝶】

(2014.6.25 京都市杉峠)

ヒサマツミドリシジミの名前の由来は、1933年に鳥取県にある久松山(きゅうしょうざん)で最初に発見されたからだ。命名者が山の名前を読み間違えたのか、ワザと読み換えたのかは諸説あるようで定かではないが、どちらにせよ鳥取県の山と絶海の島に棲むヒサマツサイカブトとに接点があるとはとても思えない。
なので調べてみたら、由来は全然違うサイドからの命名であった。
ヒサマツサイカブトが最初に採集されたのは1957年で、採集したのは愛媛大学の久松定成教授。ようは氏に献名されたというワケだ。人名の可能性がある事をすっかり忘れてたよ。
だから学名の小種名である”hisamatui”も久松氏のことを指す。

でも採れたのは♀2頭だった。すぐに記載されなかったのは、おそらく♂が採れていなかったからだろう。そしてその約40年後の1999年に、佐藤勝氏により初めて♂が採集された。それに拠って新種であることが判明し、2002年に漸く新種記載の運びと相成ったものと思われる。
ただ最近は全く採集されていないという噂もある。2000年前後に南大東島でもサイカブトの侵入が確認された事から、その後、ダイトウサイカブトが生存競争に敗れてしまい、絶滅したのでは❓と憂慮されている。

余談だがネットで『〜大人のための甲虫図鑑〜クワガタムシ・カブトムシの知られざる世界』というクソ長いタイトルのサイトを見つけた。そこのヒサマツサイカブトの欄に、こういう記述があった。
「位置的に、フィリピンやインドネシア、またはミクロネシア方面から海流によってもたらされたものと考えられる。」
たぶん南大東島のみの特産種だから、古い時代にフィリピンやインドネシア、ミクロネシア方面から海流に乗って辿り着き、そこで独自進化したのではないかと云うようなことが仰っしゃりたいのだろう。

あれっ❓このサイトのヒサマツサイカブトの画像って、添付した『フィールドガイド 日本のクワガタムシ・カブトムシ観察図鑑』の画像と同じだね。確認したら、どちらも著者は吉田賢治となっている。ワシは蝶屋だから詳しくは存じ上げないが、それでも名前くらいはお聞きしたことがある。多分、クワガタ界のレジェンドと呼ばれてる人だ。
そんなレジェンドにカブ&クワ素人のワシがおこがましくも言っちゃうけど、この海流に運ばれた説って果たしてホントかね❓一見、説得力がありそうだけど、どうも納得がいかない。そもそも何が漂着して、ヒサマツサイカブトに進化したのだ❓書いてないからワカランぞなもし。画像を使わせてもらっといて申し訳ないけど、そうゆうのは書いとくべきでしょうよ。まあ紙面の関係とかもあるんだろうとは思うけどさ。

で、調べた結果、どうやら考えられるのは Oryctes gnuのようだ。ちなみに、和名はオオサイカブトムシ・グヌサイカブト・オオハビロサイカブトと3つもある。以下、和名は学名そのままのグヌサイカブトで話を進めてゆきます。

(グヌサイカブト)

(出展『小学館の図鑑NEO カブトムシ クワガタムシ』)

55〜72mm。ヒサマツよりも大型だが、外部形態から近縁種とされ、インドシナ半島、マレー半島、インドネシア(ボルネオ島・スマトラ島・ジャワ島・スラウェシ島)、フィリピンに分布する。サイトによっては、スリランカやニューギニアも分布地に含めている。
にしても、ミクロネシアは入ってないぞ。何だか胡散臭いな。
一応ネットで検索したら、ミクロネシア連邦のサイカブト関連記事にはヒットせず、出てくるのはその北に位置する北マリアナ連邦のものばかりだった。どうやらグァム島にサイカブトが侵入してヤシの木を食害しているようだ。2007年辺りに侵入が確認され、その後、急速に被害が拡大しているみたいだ。

一瞬、海流じゃなくて地史と関係あるかも…という考えがよぎった。太古の昔には大陸と沖縄本島は陸続きだった。ゆえに南大東島も陸続きになっていたかもしれないと思ったのだ。その繋がっていた時代に祖先種がやって来て、後に大部分の陸地が海の底に沈み、島に取り残されたものが独自に進化したのではあるまいか…。
けんど、すぐに気づいた。南大東島は海洋島で、一度もどこの陸地とも繋がってはおらんのだ。となると、まさかフィリピンやインドシナ半島から飛んでは来れないだろうから(たぶん体が重過ぎて長距離は飛べない)、やっぱ海流に運ばれて来た可能性が高いという事になる。
だとすれば、グヌサイカブトの分布域の中で、ヒサマツの故郷である可能性が一番高い場所は何処だろう❓
それをさぐる前に、南大東島と各地域との位置関係を確認しておこう。


(出展『風景印のある風景100選』)

絶海の孤島みたいなもんですな。大東諸島は沖縄県だが、沖縄本島から東に約400キロも離れており、間に島らしい島はない。

お次は、一応のミクロネシア連邦。


(出展『ミクロネシア連邦大使館』)

そして、アジアの地図である。


(出展『アジア地図』)

フィリピンの真下のKの形をした島がスラウェシ島で、その左隣の島がボルネオ島である。えーい、面倒くせー。インドネシアとマレー半島、インドシナ半島の位置関係が解る地図を貼付じゃい❗


(出展『旅行のとも、Zen Tach』)

これでジャワ島とスマトラ島の位置も御理解戴けたかと思う。それにしても、えらく大ごとになってきたな。嫌な予感がするよ。ぬかるみの迷路に入り込んだ可能性大だ。

距離だけを考えれば、一番近いのがフィリピンである。次はベトナム(インドシナ半島)だろう。その次が微妙で、ボルネオ島かスラウェシ島、或いはグヌサイカブトが分布するかどうかワカランがミクロネシアかな。以下、目測だけどニューギニア、ジャワ島、スマトラ島の順になるかと思われる。
とはいうものの、距離だけでは場所の特定はできない。海流に運ばれてきたのなら、大東諸島へ繋がる海流でなくてはならないからだ。いくら距離的に近くとも、海流が逆向きなら辿り着けないのである。


(出展『国際深海科学掘削計画』)

アメリカ大陸から流れてきた北赤道海流はフィリピン付近で主に北上する。コレが所謂ところの黒潮という奴だね。と云う事は、グヌサイカブトはフィリピンから流れて来た可能性が十分にある。
一方、フィリピンより下の海流は南下している。となれば、スラウェシ島やジャワ島、スマトラ島に棲むグヌサイカブトは、海に乗り出しだとしても南大東島には辿り着けないだろう。

ではインドシナ半島&マレー半島、ニューギニア、ミクロネシアの可能性はどうだろう❓
しかし、この図には示されていない。他の図を探そう。


(出展『VEHA』)

この図では、ミクロネシアならば北上する海流もあるから、南大東島に辿り着ける可能性はある。でも微妙なところではある。なぜなら、西へと向かう流れなら北上できるが、並行して東へと流れる海流もあるのだ。とは言うものの、グヌサイカブトは、たぶんミクロネシアには居なさそうだもんなあ。
インドシナ半島&マレー半島周辺の海流は南に向かって流れてるね。ニューギニア周辺の海流も北上はしてなさそうだ。
でも、もうちょいインドシナ半島周辺の海流を詳しく知りたいところだ。


(出展『東京情報大学 水圏研究計画』)

この図によると、インドシナ半島を北上する海流もあるね。これならベトナムからの渡航の可能性も有り得るかもしれない。しかし、沖合を南下する流れの方が強そうだ。それに北上できたとしても、海南島を過ぎた辺りで南向きの海流に押し戻されそうである。そして、たとえ一部が沿岸ぞいの流れで北上できたとしても、台湾と中国との間(台湾海峡)を通る潮流に乗ってしまい、次に合流するのは対馬暖流っぽい。これでは南大東島には辿り着けそうにない。

となると、やはり距離的にも海流的にもフィリピンの可能性が一番高そうだ。
ならば、グヌくんの黒潮に乗った壮大なる冒険の旅を検証してみよう。


(出展『日本大百科全書』)

大東諸島の近くには黒潮反流というのが流れているらしい。沖合を南西方向に流れ、その流速は1km内外だそうだ。コレに捕まったら、反対方向の流れだから島には着けないね。余談だが、南大東島は沖縄本島との文化交流はあまりなく、むしろ伊豆諸島の文化が入り込んでいる。うろ憶えだが、開拓前に八丈島辺りから漁師がこの黒潮反流に乗って漂着したと云う記録がある筈だ。後に明治時代に島に入植したのも八丈島の島民だったと思う。入島した時は鬱蒼としたビロウの密林だったらしい。きっとその頃にはヒサマツサイカブトも沢山いたに違いない。その後、開拓により森の大半は失われ、数を急激に減らしたのだろう。

話を本筋に戻そう。
そうなると、黒潮反流の南を流れる亜熱帯反流に乗らなければ島には辿り着けない。運次第のかなり厳しい旅だ。辿り着ける確率はかなり低い。それでも最も可能性があるのはフィリピンだろう。

しかしネットで調べたら、辿り着ける確率はもっと低そうだ。
『比蝶のブログ』には、フィリピンのグヌサイカブトについて以下のように書かれてあった。
「スマトラやボルネオでは比較的多く見られるのだが、ここフィリピンではとんでもなく集まりが悪い。それなりにここでがんばってきたがフィリピンでは珍品なのは間違いない。レイテ・サマールやカタンドゥアネス島などは年数回みる機会があったが、究極に難しいのがパラワン島のOryctes gnu。極稀にしか正体を現さない・・・。年間1頭どころか数年に1頭レベルの激レア産地なのである。」

こんなレアものが偶然に海流に流され、たまたま絶海の島に辿り着く可能性って、果たしてどれくらいあるのだろう❓殆ど奇跡に近いよね。

続いて、他の地域に生息するグヌサイカブトについても検証してみよう。
と思ったが、その前に驚愕の資料を見つけてしまった。
何気に『フィールガイド 日本のクワガタムシ・カブトムシ観察図鑑』をもう一度見たら、見逃していたが解説欄もあった。


(出展『Amazon』)

そこには以下のような事が書かれてあった。

「小型種
体長 45〜55mm
[形態]
♂♀共に黒色で、身体は大きく太い。♂♀共に身体は厚く楕円形で頭部が小さく、上翅には縦筋がある。♂♀共に頭には突起物があり、♂は♀よりもやや大きい程度。♂の前胸中央はやや凹む。」

♂♀共に…連発で変な文章だな。
あれっ❓、他の文献だと体長は45〜49mmじゃなかったっけ❓6mmも大きいじゃないか。なのに小型種とある。ワケわかんねーぞ。それに赤褐色の個体には触れてないね。
「上翅には筋がある。」という記述も気になる。だって、サイカブトもヒサマツサイカブトも筋はあるからだ。コレは何を言わんやとしているのだろう❓まあいい、先に進もう。
いや、ちょっと待て。
「♂♀共に頭には小さな突起角があり、♂は♀よりやや大きい程度。」とな。
(・o・;)えっ、小さな❓♂♀共に小さな突起角❓♀の角は小さいけど、♂の角は小さくないのでは❓

「[生態]1年1化型。
夏に生まれた幼虫は翌年の5〜7月に変態し、羽化した成虫は10日ほど蛹室内にとどまった後、発生する。発生は6月に始まり、7月にピークを迎える。7月中旬〜8月初旬に個体数を最も増す。8月下旬になるとあまり見られなくなる。ミミズの死体や動物の糞にも来る。やや夜行性が高く、夜間の活動が中心。」

先ず驚いたのは、生態に不明な点が多いと聞いていたけど、幼生期まで解ってるの❓それに発生についても詳しく書かれている。でもって、この書き方だとそこそこ採れるような感じじゃないか。10頭ちょっとしか採れてなかったんじゃないの❓
でもレジェンドなんだから、極めて有効な採集方法を編み出してタコ採りしたのかもしれない。
ミミズの死体や動物の糞にも来るってのも驚きだ。最初は、へー、肉食性でもあるんだと思った。けれど近縁のサイカブトには、そうゆう生態は見受けられなかった筈だ。
一応、隣のサイカブトのページを見たら、全く同じ事が書いてあった。それって、やや近縁で肉食性のコカブトの生態と混同してないかい❓
或いは、生態が不明だとか極めて稀だとかの、ワシがヒサマツサイカブトについて調べて知った情報は古いのか❓
それはさておき、「やや夜行性が高く、夜間の活動が中心。」って何だ❓それって表現が矛盾してないか。ややって何だ❓これだと昼間4、夜6の割合で活動してるけど、夜中心に活動してまーすと言ってるようなもんだ。レジェンドは天才だから独特の物言いをするのかもしれんが、だとしたらワシら凡人には理解できましぇーん。

「インドネシア(ニューギニア島を含む)、フィリピン方面からの外来種。サイカブトが棲息していることから、独立繁殖など定着はしないと考えられる。また、タイ地域にほぼ同じものが分布していることからタイからの外来種とも考えられる。」

おいおい、外来種かよ❓ヒサマツサイカブトって、南大東島の固有種じゃなかったんじゃないの❓それにサイカブトが棲息しているから独立繁殖が出来ずに定着はしないって、どうゆう事だ❓元々、島にはヒサマツサイカブトがいて、後からサイカブトが侵入してきた筈だぞ。
「独立繁殖など定着はしない」ってのも意味不明だ。これだと何だかたまに流されて来るけど迷蝶みたいなもんで、繁殖できずに定着はしないって言ってるようにしか聞こえん。完全に外来種扱いじゃないか。
それともサイカブトと交配して特徴が埋没してしまうって事❓まさかの、密かに交配実験を何度も繰り返した上での意見❓

「タイ地域にほぼ同じものが分布しているのでタイからの外来種と考えられる」ってのも、乱暴だなあ。ほぼ同じだからって同種扱いして、挙句には外来種にまで仕立ててしまうなんて荒技すぎるわ。もしかして生態面や発生期についても、ほぼ同じと考えてるタイ産のモノの事を流用して書いているのか❓だとしたら、言ってる事の辻褄は合ってくる。とはいえ、何らそれについての説明がない。もしもタイ産の生態ならば、そう書くべきだ。
それに大きさはヒサマツサイカブトが45〜49mmに対してグヌサイカブトは55〜72mmだから、グヌの方が明らかにデカイ。となると、同種扱いにするのはオカシイ。「ほぼ同じもの」ってグヌの事じゃないの❓もしやグヌじゃなくて、別な種類のサイカブトだったりして…。

にしても、タイから海流に乗ってやって来たというのも信じ難い。ベトナムより遠いじゃないか。
タイの国土は南北に長く、1620kmもある。そして上半分が内陸である。つまり、上半分の内陸部からは来れないと云うことだ。海に面しているのは下半分のバンコクから南、マレー半島北部までだが、そのうち外洋に面しているのはマレーシアと隣接した僅かな部分しかない。そこから南大東島に辿り着くなんて至難のワザだ。内湾部からなら尚更だ。フィリピンからの漂着でさえ奇跡的な事なのに、その確率たるや目眩(めまい)がしそうだ。

でも、海流に運ばれて南大東島に来たのは間違いなさそうだ。何れにせよフィリピンかどっかから、はるばる旅して来たのだろう。そして、その旅はとても長かった筈だ。飢えに耐え抜いたという証左でもある。これも又、奇跡だろう。偶然にヤシの木ごと流されたのかもしれない。木の内部にいる時に、そのまま流されたとかさ。それでも過酷極まりない状況下での旅には変わりあるまい。
グヌサイカブトの冒険の旅に想いを馳せる。波に揉まれ、熱帯の灼熱の太陽に灼かれ、そして時には嵐にも翻弄されただろう。でも、ひょんな事からお魚の友達ができて、励ましてくれたかもしれない。で、お約束のようにサメに襲われて絶体絶命のピンチになるのだ。
何だかドラマチックだなあ。ディズニー映画の題材になりそうじゃないか。

「[産卵・幼虫]
♀は朽木が土化したものに産卵する。幼虫期間は約9〜10ヶ月。」

さっき書いたけど、これだと幼生期も判明している事になる。
けど、累代飼育とかの話は全然聞かない。あっ、採集、飼育、売買はおろか、譲渡でさえも禁止されてる天下の悪法「種の保存法」に指定されてるから無理か…。けれど指定されたのは2019年だ。ならば、それ以前の記録なり噂なりがある筈なのに、とんと聞かない。

一応、ワシが妄想で書いていると思われても困るので、観察図鑑の解説ページの画像も貼り付けておこう。


(出展『フィールドガイド 日本のクワガタムシ・カブトムシ観察図鑑』)

そして、その下に囲い込みがあった。もう面倒だから、これも画像を貼り付けておく。

10頭ちょっとしか採れてないと言われる珍品の採集難易度が、やや容易の★★星2つだとー❓❗
(-_-メ)ナメとんかワレ❗❗
武闘派の血が騒ぎ、一瞬、気色ばむ。
でもやっぱレジェンドはプロ中のプロの筈だから、きっと南大東島でタコ採りしたんだろう。で、標本が出回っていないのは、ヒサマツが絶滅する事を見越して誰にも譲渡も売買もしていないのだろう。後々、値段がハネ上がるからね。だとしたら、流石のレジェンドだ。いや、だからこそレジェンドと呼ばれるのだろう。
あー、でも種の保存法に指定されちゃったから売り飛ばせないか。だったら捕らぬ狸の皮算用だったのね。いやいや待てよ。レジェンドなら、指定される噂を事前にキャッチして高値で売り捌いたに違いない。買った方は法律上それを口外できないし、しないから完全犯罪だ。あっ、施行前だから犯罪にはならないか。

でもなあ…、大きさを45〜55mmと他文献よりも大型サイズの表記にしている事からも、やはりタイ産とか海外産の事を指している可能性が高い。でも本のタイトルには「日本の」と付いてるぞ。
それはさておき、その下の採集方法にも(? _ ?)だわさ。樹液採集が入っとるじゃないか。
サイカブトはサトウキビの維管束や腐果を餌としているが、本土のカブトムシのように樹液に来ることは殆どない筈だぞ。ならヒサマツも同じ生態の可能性が高い。おかしな事だらけだから、もしかしてレジェンド、テキトーに書いてるのか❓採るのと飼育するのはプロでも、学術的な知識にはやや欠けるのかも…。
いや、レジェンドなんだから、んなワケなかろう。そうじゃない事を祈るよ。近縁だからって生態が全く同じだとは言えないからね。ワシの見立てが間違ってて、樹液にも来るのかもしれない。
ピコリーン💡。そうだ、もっと詳しい最新の図鑑を見てみよう。それで事実がすんなり判明するかもしれない。

先ずは、2012年発行の『日本産コガネムシ上科標準図鑑』を見る。多分それが一番手っ取り早く、正確且つ新しい情報だと考えたのだ。


(出展『学研出版サイト』)

図版には冒頭に掲げた赤茶色の♀と同じ個体のみしかなく、♂は図示されていなかった。と云う事は、珍稀種である事を如実に物語っていそうじゃないか。
とはいえ、解説を読んでみないとね。けど、段々ダレてきた。書き写すのが邪魔くさいので写真を撮って貼付しちゃう。

やはり「採集例が少なく、生態など不明な点が多い。」と書いてあるじゃないか。分布も「南大東島だけから知られており、最近の採集記録はない。」とあるし、生態も「未詳」とある。
(ノ`Д´)ノ彡┻━┻どりゃあ〜、何がタイからの外来種じゃい❗

それに2014年に発表された大東生物相研究グループによる『大東諸島の固有生物相を支えるダイトウビロウの保護に関する緊急調査』という論文も見つけた。
その論文には「大型のカブトムシの仲間であるにもかかわらず近年になって記載された南大東島の固有種である(Nagai 2002)。これまでに発見された個体は極めて少なく,その生息状況や生態については全く知られていない。(田川 2003)」と紹介されている。つまり研究者のあいだでは、間違いなく南大東島の固有種として認識されているのである。
この論文には、生態面についても興味深い記述があるので、併せて紹介しておこう。

「今回,南大東島の住民から聞き取り調査を行なった結果,30年以上前に海岸部の山火事で立ち枯れ状態になったダイトウビロウの幹の腐植物の中からヒサマツサイカブトムシと思われる個体を採集したとの情報を60歳代の男性から得られた。また20年ほど前に自宅に植栽されていたダイトウビロウが枯死し,立ち枯れ状態となったダイトウビロウの内部から,ヒサマツサイカブトムシと思われる成虫や幼虫を複数採集したとの情報も得た。これらの個体が,タイワンカブトムシ(サイカブト)であった可能性も考えられるが,同時期に南大東島で採集されたタイワンカブトムシの標本はこれまでに発見されておらず,いずれもかなり大きなカブトムシであったとのことからヒサマツサイカブトムシである可能性が高いものと思われる。このような聞き取り調査の結果からも,本種がダイトウビロウの枯死木で繁殖している可能性は極めて高いものと思われる。」

あくまでも聞き取り調査である事を忘れてはならないが、信憑性はそれなりに高そうだ。

詳細な採集データもあった。
「一方,採集データが保存されていた11個体の成体の採集日は,6月1日,6月8日,6月21日,7月22日,7月23日,8月2日,8月(日付不明),8月(日付不明),9月5日,9月15日,11月15日であった.これらの採集情報からは本種の成虫は,おもに6月上旬から11月中旬にかけて活動しているものと思われる。また,採集地点の詳細が明らかな6個体については,いずれも内幕のダイトウビロウ林周辺で灯火に飛来した個体であった。また,各標本の性別は雄が5個体で雌が6個体であった。」

10頭ちょっとというのはこの事だろね。それにしても♂はかなり珍しいと思ってたけど、結構採れてるんだね。
(・o・;) ん❓ちょっと待てよ。ネットの『読者メーター』で、♂を最初に見つけた佐藤氏の著者『珍虫ハンターの海外旅行記』が紹介されてたけど、その読者感想レビューには♂は1頭しか採れてないとか書いてなかったっけ❓
確認したら、矢張りそうだった。
「あと、ヒサマツサイカブトの♂はこの筆者の佐藤勝さんが発見した1匹しかいないとは知らなかった。」
って事は、その後にオスが4つ採れたっていう事❓それはちょっと怪しくないかい❓何かヒサマツサイカブトの情報って錯綜していて、どれがホントでどれが間違ってるのかワケわかんないぞ。

とにかく、この論文とコガネムシ図鑑の解説とで固有種である事には間違いなかろう。一件落着だ。
けど、確認のために『フィールドガイド 日本のクワガタムシ・カブトムシ観察図鑑』の出版年も見ておこう。

(┛◉Д◉)┛彡┻━┻どひゃあ〜💦
何と2015年になっとるやないけー。となれば、この図鑑の情報が一番最新って事になっちまうぜよ。
かくなる上は、アジアの他の種類のサイカブトをあたってみるしかない。タイに別種のサイカブトがいたら、そいつがヒサマツサイカブトそのもので、そやつが流されて来たかもしれないのだ。

しかし、今森さんの『世界のカブトムシ』にはグヌサイカブトさえ載っていないし、岡島秀治著、黒沢良彦監修の『世界のカブトムシ1』には、サイカブトとグヌサイカブトしか載っていなかった。

もう頼りは水沼さんの『Giant Beetles コレクションシリーズ テナガコガネ・カブトムシ』くらいしかない。

そこには、サイカブト、グヌの他に「O.heros」というチモール島特産の珍品と「O.centaurus」というニューギニア産のサイカブトしか載っていなかった。ちなみに、サイカブトの仲間の多くはアフリカに分布している。アフリカで生まれ、分化してアジアにも分布を広げたのだろう。

(Oryctes heros ♂)

頭部の角状突起が非常に長いが小型種である。なのでコヤツが南大東島に渡ってヒサマツになったとは思えない。珍品だし、チモール島は遠すぎだろ。

(Oryctes centaurus)

3と5が♂で4が♀である。グヌと大きさ的にも形態的にも似ているが、前胸背の窪みの上部の形、つまり後縁中央にある山状の弱い突起の形が違うようだ。
コレなら可能性はあるかもしれないが、より分布の広いグヌの方が漂着する可能性が断然高いだろう。あっ、もしかしたらレジェンドはコヤツをグヌのニューギニア亜種と考えて、ニューギニアを分布地に含めたのか❓
とにかくアジアには、これ以外の別種のサイカブトはいない。つまり、権威である水沼さんでさえもインドシナ半島にはサイカブトとグヌサイカブトしかいないと言ってるのと同じだ。やはりレジェンド吉田氏の書いてる事はオカシイ。しかし発行年は『世界のカブトムシ1』が1985年、水沼さんの図鑑が1999年だから、何れもレジェンドの観察図鑑よりも古い。となると、その後に新たな分類が提示され、インドシナ半島のグヌは別種になったかもしれないのだ。可能性は低いとは思うけどさ。けど、海外の論文までは追いきれないから真偽のほどは分からない。
他に海外産のカブトムシ関係の図鑑は見つけられなかったし、月刊むしの『世界のカブトムシ』は上巻の南北アメリカ編しか出てない。まだ下巻は発行されてないのだ。もうお手上げである。
(༎ຶ ෴ ༎ຶ)ダァー。誰か、正しい分類を教えてくれよー。

何だか頭がグチャグチャになってきた。もしかしてヒサマツサイカブトはグヌサイカブトから分化したものではなく、O.rhinoceros、普通のサイカブトからの分化だったりして…。

でも『日本産コガネムシ上科図説』には、ハッキリと書いてあった。

生態の欄には、不明(生態が)とあり、最後の方に「東南アジアに分布する O.gnu Mohnike 1874 のグループに属する。」と明瞭に書いてある。
やっぱ、ヒサマツサイカブトと最も近い関係にあるのはグヌサイカブトだったじゃないか。

けど、話はコレで終わらない。
改めて図版の解説を読んでコケる。

雌雄の区別の欄に、何と「外見上の差異はほとんどなく、交尾器による区別が確実。」と書いてあるではないか。
そして驚いた事に図版の1から4は♂で、5と6が♀らしい。
え━━━━\(◎o◎)/━━━━っ❗
全部♀だとばかり思っていたが、♂なのに角が♀みたく短いじゃないか。
謎が謎呼ぶ、新たな謎の登場である。ちなみにこの図鑑の発行年は2006年だから、♂は既に発見されている。つーか、既に記載されてんだから、著者は角の長い♂がいる事は知ってた筈だ。それを図示しないばかりか、触れてもいない。
でも、右下には♂の交尾器まで図示されてるもんなあ…。8が♂交尾器背面で、9は♂交尾器側面とある。ならば、たとえ角が短くともコヤツは♂なのだろう。

ここで漸く思い出す。そういや小型個体は雌雄の判別がつきにくいんだっけ❓いや、小型の個体だとサイカブトと間違えやすいんだったっけ❓何か記憶回路がショートしてきた。冷静になろう。
考えてみれば、レジェンドの観察図鑑には「♂♀共に頭には小さな突起角があり、♂は♀よりやや大きい程度。」と書いてあったな。という事は、レジェンドの見立ては正しかったのか…。だったら、それについてはゴメンなさいだ。

思い出した。♀は腹端部に黄褐色の長毛を密生するが、雄は無毛だった筈だ。ソレで解決だろう。改めて図版の裏面写真を見る。
(-_-;)ビミョー…。♀と比べて毛は少ないのだが、無毛ではないのである。

生態欄にも混乱するような事が書かれていた。
「標本のほとんどは1950〜60年代の採集品であり、再発見が期待される。」とある。
再発見が期待される❓もしかして、この著者達は1999年に発見された角の長い♂の標本を見ていないのだろうか❓となると、新種記載の時にタイプ標本に指定された個体も見てないって事❓何だか矛盾だらけじゃないか。そんなんで図鑑なんて書いていいのか❓おかげで益々の謎だらけじゃないか。
w(°o°)wあっ、もしかして角の長い♂は、佐藤氏が1999年に採集したモノだけだったりして…。じゃあ、佐藤氏が採ったのは本当にヒサマツサイカブトなのか❓それこそグヌサイカブトだったりして…。ここへ来て、また新たなる謎の壁にぶつかった。

けれども、それも含めてヒサマツサイカブトの数々の謎は永遠に解けないかもしれない。
既に述べだが、最近は全く採集されていないようなのだ。2014年に発表された大東生物相研究グループの論文『大東諸島の固有生物相を支えるダイトウビロウの保護に関する緊急調査』でも「過去5年間で数個体の発見例しかなく、生息個体数は極めて少ないものと推察される。」と書かれてあったし、調査の際にヒサマツが採れたとも書いていなかった。
そんな状況にも拘らず、年々農地整備や道路設置などによりビロウ林の減少や分断が進んでおり、生息環境が悪化しているという。ヒサマツが生き延びるには、繁殖場所となるビロウの枯死木が常に供給されるような大きなビロウ林が必要なのだ。
そして、既に触れたが2000年前後に南大東島にもサイカブトが侵入し、ビロウ林に大きな被害を与えている。ならばサイカブトとの種間闘争は避けられないだろう。そして、その闘いはヒサマツにとっては極めて不利だ。サイカブトは年中活動しているが、ヒサマツの発生期は夏から秋と短いし、大きな体の分だけ餌の量もサイカブトよりも必要だろう。またその期間も、より長くなる可能性が高い。繁殖力に大きな差があるのだ。これでは対抗できるワケがない。
さらには、近年は外来種であるオオヒキガエルとミヤコヒキガエルが激増して高密度に生息しており、灯火に飛来した昆虫類をガンガンに捕食しているため、本種への影響も懸念されている。
ヒサマツさん、絶体絶命だ。一応、サイカブトをトラップで駆除しているらしいが、あまり効果はないようだしさ。
えっ(☉。☉)、トラップで駆除❓おいおい、ヒサマツサイカブトムシの小型個体は、研究者でもサイカブトとの識別が困難じゃなかったっけ❓そんなの、島民が駆除する際に判別できんのかよ❓ヒサマツを誤って捕殺する可能性は高いよな。
こりゃ、きっと限りなく絶滅に近い状態だな。いや、既に絶滅している可能性の方が高い。あげなサトウキビ畑だらけの小さな島だ。そもそも棲息可能な場所は極めて狭いのだ。そこで探しても見つからないという事は、自ずとそうゆう公算が高いと言わざるおえないだろう。記載からたった20年くらいで消えてしまうなんて例が果たして過去にあるのだろうか❓あったとしても、前例は極めて稀なんじゃないか❓もし絶滅してたら酷い話だし、日本の恥でしょうよ。環境省、糞喰らえだ。

絶滅ならば、まだ解明されてない生態は永遠の謎として残ることになる。
又この論文では、学術的な意義として「海洋島である南大東島の昆虫相の形成過程やOryctes属の海洋分散と種分化を研究する上で重要な種である。」と評価している。その検証も儘ならないという事になりそうだ。

書けば書くほど、何だか悲しくなってきた。
南大東島は元々はビロウの原始林に覆われた島だったのだから、かつてはヒサマツサイカブトにとって天国のような所だったに違いない。なのに人間が入って来たばかりに、この世から永遠に消えようとしているのだ。
絶海の島の悲しき犀。奇(く)しくも動物のサイと同じような運命を辿っているんだね。なんだか哀れだよ。

あの南大東島の星降る夜空を思い出して見上げる。
せめて祈ろう。此の世からいなくなってしまう生き物なんて有ってはならないのだ。

                  おしまい

 
追伸
環境省には、せめてもの罪滅ぼしに、自ら音頭をとってDNA鑑定をして、種の解明くらいはして欲しいよね。まだ絶滅したとは決まってないけど。

参考文献
◆『学研の図鑑 カブトムシ・クワガタムシ』
◆『小学館の図鑑NEO カブトムシ クワガタムシ』
◆吉田賢治『フィールドガイド 日本のクワガタムシ・カブトムシ観察図鑑』
◆『日本大百科全書』小学館
◆『日本産コガネムシ上科標準図鑑』岡島秀治・荒谷邦男
◆『大東諸島の固有生物相を支えるダイトウビロウの保護に関する緊急調査』大東生物相研究グループ 2014
◆酒井香・藤岡昌介『日本産コガネムシ上科図説』
◆岡島秀治著 黒沢良彦監修『パーフェクトシリーズ22 世界のカブトムシ1』講談社
◆水沼哲郎『Giant Beetles コレクションシリーズ テナガコガネ・カブトムシ』ESI
◆今森光彦『世界のカブトムシ』アリス館

インターネット
◆『Wikipedia』
◆『画像あり。(´・ω・`)』
◆東 和明『南大東島まるごとミュージアムを確立する』
◆『http;//www.pref.okinawa.jp』
◆吉田賢治『〜大人のための甲虫図鑑〜クワガタムシ・カブトムシの知られざる世界』
◆『比蝶のブログ』
◆『国際深海科学掘削計画』
◆『VEHA』
◆『東京情報大学 水圏研究計画』
◆『Inaho Farm』
◆『宮崎と周辺の植物』

 

シルビアの迷宮 第二章

 
第二章『シルビアン・ミステリー』

  
でも、論文(註1)をチラッと見てアレルギー反応が出た。
シルビアの謎に翻弄され、もうウンザリなのだ。真面目に読む気にもなれない。ここは一旦、種解説にでも逃げよう。ケースによっては、そのまま逃亡、クロージングになってもいいや。

 
【シルビアジジミ】
シジミチョウ科(Lycaenidae)、ヒメシジミ族(Polyommatini)、シルビアシジミ属(Zizina)に分類される前翅長8~14mmの小型のシジミチョウ。

♂の翅表は紫色がかった青藍色で、春と秋の型に比べて夏型は外縁の黒帯が広くなる。♀の翅表は夏型は黒に近い暗褐色。春型と秋型は翅表基部にも弱い青藍色斑が出る。図鑑等には書かれていないが、私見では秋型の♀は晩秋になると、その青が広がる傾向があるように思う。
裏面は灰白色~暗灰白色で、小黒斑が散らばっている。秋と春には暗灰白色になる傾向が強い。
普通に産する近似種のヤマトシジミと比べ、表翅がより青く(ヤマトは水色系)、前翅裏面の中室内に黒点が無いこと、後翅裏面の外側より3列目の黒点列の前より2番目の黒点が内側にズレるために黒点の形成する円弧がここで分断される点で区別される。
基本。図鑑からパクったけど(*`Д´)ノ!!!でーい、こんなクソ難解な説明、一般ピーポーにはワカランわい❗特に後半はチンプンカンプンじゃい❗❗
もう画像を貼っとくワ。そっちの方がよほど解りやすかろう。

 
【シルビアシジミ 春型♂】

(2017.4.26 伊丹市)

 
相対的に春型が一番大きく、秋型、夏型の順に小さくなる。但し、あくまでも相対的であって、個体差の大小は結構ある。秋でも、たまに春並みに大きい個体もいたりするからだ。

(/ロ゜)/あっ❗、ここでヤマトシジミの画像を貼ろうとして気づく。
ヤマトシジミなんて、何処にだっているドがつく普通種である。ゆえに殆んど展翅したことがない。となれば、数ある標本箱の中から探し出すのは大変そうだ。採りに行った方が余程早い。そう思い、近所の公園に行くことにした。ヤマトくんなんぞ、その辺の児童公園に行きゃあ、大概いるのである。一般ピーポーでも、すぐ見つけられるよん💕。それくらいド普通種なのさ。ある意味、最も都会の環境に順応した賢(かしこ)チョウかもしれない。

しっかし、都会で網出すのって恥ずかしいねー。完全に挙動不審のオッサンだ。大の大人が網持って都市部をウロウロしてるんだから、そりゃあ注目浴びますよ。
網を出すか出さざるまいか迷ってたら、天気が悪くなり始めた。おまけに風も出てきた。
(*`Д´)ノえーい、もうしゃあないわい。人々の好奇の目を頭から追いやり、カバンから網を取り出す。
シャキーン(=`ェ´=)ノ❗いざ、ゆかん。チビどもを殲滅してくれるわ。

しかし思いの外、飛ぶのが速い。風も強くて、網を振ろうとしたら、スッ飛ばされていったりもする。段々、腹が立ってきて、アミ持って追いかけまくる。
ε=ε=(ノ≧∇≦)ー〇 待てぇ~、コンニャロー。
もうオジサン、ヤケクソである。もはや挙動不審者として通報されても仕方あるまい。

頑張って、何とか数頭を確保。

 
(2019.11.11 大阪市浪速区)

 
シルビアほどではないが、小さい。
一応、画像を拡大しておこう。

 

 
たぶん、♂だな。
パリエーションがそれなりにあるので、別個体の♂も貼っておこう。

 

 
シルビアよか、地色が白っぽい。
同じ灰色でも灰白色って感じだ。

♀の裏は微妙に色が異なる。

 

 
メスは薄い黄土色なのだ。
とはいえ、きっとオスみたく微妙な色なのもいるんだろうなあ…。ヤマトなんぞマジメに採った事ないから、どんだけバリエーションの幅があるのかワカラン。

まっ、前回のシルビィーちゃんと見比べてくんろ。

 

 
地色だけでなく、斑紋も微妙に異なることが解るかと思う。

お次は表側だ。

 
【ヤマトシジミ♂】
(2019.11.11 大阪市浪速区)

 
シルビアと比べて、色が水色っぽい青なのだ。
例外もあるが、ヤマトの方が下翅の縁にある黒点が目立つ個体が多い。

 
【シルビアシジミ 春型♀】
(2017.5.2 伊丹市)
 
【同春型♀】
(2017.4.26 伊丹市)

 
【ヤマトシジミ♀】

  
♀も色が違う。
どっちかというと、ヤマトは青というか紺色っぽい奴が多いんだけど、例外もあったりするから注意が必要。ヤマトの方が青が暗い色のものが多いかな。

そういえば、変なのもいた。

 

 
晩秋になると青くなる低温期型の♀かなと思ったが、腹部は♂っぽい。たぶん、♂かな…。普段、ヤマトシジミなんて採らないから、ホント、ワケわかんねえや。

翌日、間違いなく低温期型の♀を見つけた。

 
【低温期型♀】

 
やっぱ、変だと思った奴は♂だな。質感が全然違う。

採って時間が経ってるのに無理に生展翅したら、触角が折れた。結構、青が広がっている良い型なのに勿体ない。
何か悔しいので、標本箱を探したら、低温期型のメスが見つかった。

 

 
古い標本ゆえか、色が褪せて紫色になっている。
でも、こんだけ青い領域が広いとヒマつぶしに探してもいいなと思えてくる。

 
【シルビアシジミ裏面】
(2017.4.26)

 
【ヤマトシジミ裏面】

 
ヤマトは後翅中央斑列が弧を描くが、シルビアは列が乱れる。また後翅外縁の斑紋の感じが違う。外縁の内側2列目の紋が大きい傾向がある。あんまし図鑑には書いてないけど、自分はどっちかというと、そこで判別している。但し、ヤマトでも紋が大きいものはいるので、そういう場合は他の部分も含めて総合的に判断している。

まあ、これで違いがワカラン人は何度説明してもワカランちゃよ。

ついでに今一度ヒメシルビアシジミの画像も貼っておこう。

 
【ヒメシルビアシジミ Zizina otis ♂ 】
(2013.2.24 沖縄県南大東島)

 
こうして改めて見ると、表側は殆んどシルビアシジミと同じだな。別種になった事に納得いってない人もいるだろね。両者の区別点を書いているものがあまり見当たらないから、尚更だろう。
両種の形態的な違いは、シルビアはヒメシルビアよりも裏面各室の小黒斑が大きく、前後翅亜外縁の黒斑列が各室の小黒斑と同等に発達している点、後翅表面外縁の黒斑列はシルビアでは波状になり、ヒメシルビアシジミでは線状となる傾向が強いなどだそうである。

 
【同♀】
(2013.2.24 沖縄県南大東島)

  
たぶん低温期型の♀で合ってると思うけど、間違ってたらゴメンなさい。通常は青色鱗が発達せず、黒褐色です。

 
【裏面】
(2013.2.23 沖縄県南大東島)

 
裏面はシルビアとかなり印象が変わる。
特に低温期型は、このように斑紋が殆んど消失しかける。
手持ちの通常型がナゼか見つからないので、画像をお借りしよう。

 
【裏面通常型】
(出典『双尾Ⅱ 変異・異常型図鑑』)

 
だいたいがこんなもんだ。シルビアと比べて斑紋が小っちゃくて薄いのだ。
それにしても、ネット上でヒメシルビアの展翅写真が殆んど見つからないのはナゼ? 小さ過ぎて、みんな展翅がまともに出来なかったりして…。ワテの展翅も酷いもんな。これだけ小さいと、肉眼で見て頭が歪んでるなんてワカランもん。しゃあないわいな。

この際、他の近似種も並べておこう。
小難しい言葉を並べたくはないので、各種の判別は印象で書く。細かい判別法は図鑑を見て下され。

 
【ハマヤマトシジミ Zizeeria karsandra ♂】
(2013.2.24 沖縄県南大東島)

 
ハマヤマトの♂は紫色だ。シルビアは青いので、それで大まかな区別はつく。だが、南大東島では最初のうちはどっちがどっちかワケわかんなかった。
いる場所も同じで、荒れ地など草丈の低いところで混飛しているので、ややこしい。飛んでいるのを見て、紫色っぽいのがハマヤマトの♂なのだが、どっちなのか微妙なのもいて、採ってみないとワカンナイのだ。
因みに、ヤマトは微妙に生息環境が違い、もう少し草丈が高いところを好む。南大東島では、同じポイントに3種同時にいたが、ヒメシルビア&ハマヤマトとヤマトのいる場所には明確な境界線があった。
また飛び方も違う。ヒメシルビアとハマヤマトは地面スレスレに飛ぶ地這い型だが、ヤマトはもっと高いところを飛ぶ傾向があり、スピードも緩やかだ。

 
【同♀】
(2013.2.24 沖縄県南大東島)

 
正直、♀は飛んでる両者の識別が全然出来なかった。結局、♂も♀も採って確認するしかないのだ。

 
【裏面】
(2013.2.24 沖縄県南大東島)

 
上翅の黒点がハッキリしていて、濃いのが特徴だ。他の近似種はこんなに黒くはなくて、もっと茶色っぽい。だから、採って最初に確認するのがソコ。

 

 
こうして上翅の黒点が目立つのだ。
しかしこれは♀で、♂となると微妙になってくる。

 

 
暫くジッと見てから、ようやくハマヤマトだと特定することができる。

 
【ホリイコシジミ Zizula hyiax ♂】(出典『chariot』)

 
採った事はあるのだが、標本を探すのが億劫なので、画像をお借りした。
これは、Zizula hylax attenuataというオーストラリアの亜種なのだが、まあ基本的にはそんなに変わらんからエエやろ。左の♂の色が実物よりも紫色なのが気になるけど(実物はもっと青っぽい)、許してくれ。正直、ホリイコもネットでググっても標本写真があんま無いのである。ヒメシルビアと同じく生態写真は山ほどあるのにね。たぶん小さ過ぎて、まともな展翅ができる人が少ないから、あまり表には出てこないのだろう。
英名は、Tiny Grass-blue(ちっぽけな草原に棲む青い蝶)っていうくらいだから、とにかく小さい。世界で最も小さな蝶の一つなのだ。
その矮小さが理解できる画像が見つかったので、貼っつけておこう。

 
(2013.10.4 石垣島)

 
ほら、笑けるほど小さいでしょ。
アッシは腕は長いけど手が小さい。ゆえにサイズ感的には、ホントはもっとチビッコです。

言い忘れたけど、日本で迷蝶として採集されるものはインドをタイプ産地とする原名亜種とされている。

近似種との区別点は他と比べて小さいことだが、ヒメシルビアやハマヤマトにも極めて小さな個体もいるので、注意が必要。他の区別点としては、♂の腹部が長いこと、翅形が幅広くて丸いことだろう。あと決定的違いといえば、裏面の前翅前縁に2個の褐色小点があることかな(他の近似種は0~1個)。でも、ボロや擦れた個体だと丸っきりワカランとです。

また寄り道になった。
シルビアの話に戻ろう。

 
《成虫の発生期及び幼虫の食餌植物》
4月下旬より11月頃まで年に数回(4~6回)発生する。幼虫の食草はマメ科で、主な食草はミヤコグサ。他にヤハズソウ、コマツナギ、ウマゴヤシ、シロツメクサ(クローバー)などにもつく。飼育する場合、インゲンマメとエンドウマメ(スナップエンドウ)が代用食になる。で、スナップエンドウで飼育すると巨大化するようだ。但し、無農薬のものでないと緑色の液を吐いて死ぬそうなので、お気をつけあそばせ。

越冬態は幼虫。
時々思うんだけど、幼虫で越冬するって寒くねえか❓
夜間の気温はマイナスになることだってあるし、ゼッテー寒いだろうに。卵や蛹の方があったかそうに思えるんだけどなあ。人間側目線からの、ただの思い込みでしかないのかもしれんけど…。
誰かこの問いに答えられる人おらんかのう❓

 
《学名》Zizina emelina

Zizina otis となっていたのを、emelinaに書き直す。あっ!、それで思い出したわ。ここの項って、第一章を書き始めて、さして間もなく先に途中まで書いてたんだわさ。だから学名は、Z.otisだとばかり思って書き始めているのだ。学名なんかは決まり事なので、比較的早めにチャチャッと草稿を書いてしまう事が多いのである。
まっ、いっか…。順番が相前後するだけで、内容は同じだ。このまま書き直さずに進めよっと。というワケで、先ずはヒメシルビアから。

学名の小種名「otis」の語源はギリシア語で「敏感な」の意かな? 古いドイツ語の「裕福な」ということも考えられるけどさ。また、これは人の名前のオーティスだとも考えられるからして、オーティスさんに献名された可能性もあるだろう。どれが正しいのかな?
ここはまた、平嶋義宏氏の『蝶の学名-その語源と解説-』の力をお借りするしかあるまい。

それによると「一般に男性の名」とあった。ということは、オーティスさんへの献名ってことかな?

同じくシルビアの「emelina」も人名由来。
女性名のEmeliaに因み、「エメリナの」の意となっていた。

おっと、属名のことをスッ飛ばしてるわ。カトカラの事をシリーズで書いているので、属名はいつも端折ってる癖がついてんだね。
Zizina(ジッジーナ)というジジイがどーしたこーした的な属名は、同じシジミチョウ科のZizera属を元に作られたもので、強いて言えば「Zizera様の」の意なんだそうだ。でもZizeraはそもそもムーアの造語で、単なる文字の組合せによるもので意味はない。ムーアって、語源がワケわかんねぇような学名を乱発しまくってるんだよなあ。ツマベニチョウなんかの属名も意味不明だもんな(註2)。

 
《英名》Lesser grass blue

これは「草原の、より小さなブルーの蝶」、或いは「草原の、より少ないブルーの蝶」という意味だろう。🐼ジャイアントパンダに対するレッサーパンダみたいなもんかな?ということは、ジャイアントパンダは大型の青いシジミ、例えばアリオンゴマシジミなんかを指してて、それよりも小さいって意かな。

他に「Common grass blue」というのもあるようだ。こちらは「草原のありふれた青い蝶」という意味である。
これはおそらくヒメシルビア(Z.otis)に宛てられたものだろう。確かにヒメシルビアはシルビアよりも更に小さいし、南西諸島には何処にでもいる普通種だ。
国外では…と、その分布を書きかけて筆が止まる。wikipediaを孫引きしようとしたのだが、「朝鮮半島南部、台湾、中国よりインド、南はオーストラリアにかけて東洋熱帯に広く分布する。」と書いてあるのを見て気づいた。これは分類がまだ細かく分けられていない時代につけられた英名に違いない。種ヒメシルビア(Z.otis)そのものにつけられたものではなく、謂わば、otis種群全体に対してつけられたものだろう。

ともかく種としての Z.otis(ヒメシルビアシジミ)とは反対に、シルビアジジミは何処にでもいるようなものではなくて、稀種に入る。一方はド普通種で一方は稀種となると、生態他の性向が全く違うという事だろう。両者が別種であると云うのも頷けるわ。
関西の蝶屋の間では、シルビアは大阪空港とその周辺というベリーイージーな場所にいるから軽視されがちだけど、全国的にみれば、かなり珍しいチョウである。
関東から九州の種子島まで分布するが、生息地は局所的で絶滅危惧種にランクされている。フェルトンが最初に見つけた栃木県のさくら市では天然記念物に指定されてもいる。
環境省RDBカテゴリでは、絶滅危惧ⅠB類(EN)に選定され、東京都、埼玉県、愛知県、岐阜県、滋賀県、和歌山県(註3)、高知県、愛媛県では絶滅、福岡県などその他分布域のほとんどの府県が絶滅危惧Ⅰ類に選定している。

もともと里山や平野部などの人間生活に近い場所に生息しているため、土地開発によって大きな影響を受け、1980年以降、全国的に著しく減少しているそうだ。
またその理由として坂本女氏は、本種は発生時期において各個体が羽化するタイミングの同調性が低くて成虫の寿命が短いこと、昆虫類特有の感染症の影響、移動性が低いために地域ごとに異なる遺伝子のタイプをもっていることから近親交配による弱勢が進み、各個体群ごとの遺伝的多様性が低下して個体数が著しく減少していると書いておられる。シルビーちゃんの未来は暗いねぇ~。

前述したが、幼虫の主な食草はマメ科のミヤコグサ。同じマメ科のヤハズソウやコマツナギも食草としている。
しかし、大阪空港とその周辺にはミヤコグサは無い。コマツナギも無いようだ。じゃあ、ここのシルビアシジミは何食ってんのかと云うと、主にシロツメクサ(クローバー)で、一部がヤハズソウ(何れもマメ科)を食草として利用している。シロツメクサは食草転換したとされ、近年になって利用されるようになったと言われる。
(# ̄З ̄)ホントかよ。単に見つからなかっただけで、昔から食ってたんじゃねーの❓
だいちクローバーに食草転換したとして、何故にその必要性があったのだ?食草転換した理由は何なのさ。誰か教えてくれよ。

たぶんシロツメクサを食草としているシルビアが見つかったのは大阪空港周辺が最初だったんじゃないかな。それ以後、千葉などでもシロツメクサを利用している種群が見つかっているようだ。
因みに此所の個体群は兵庫県南西部の個体群よりもサイズが大きいとの報告もあるようだ(2014’京大蝶研SPINDA19)。シロツメクサを食ったらデカくなるのかな?それともシロツメクサは沢山生えてるから、餌資源が豊富だから大きくなるのかな❓
それにしても、シロツメクサを食草とするならば、もっと分布を拡げても良さそうなものなのに、空港周辺にしかおらんのは何で❓ シロツメクサなんて「🍀四つ葉のクローバー」のクローバーなんだから、何処にでも生えている。それを辿っていけば、分布の拡大なんて楽勝なのにさ。謎だよね。羽があるのに、そんなに移動能力が低いのかよ❓

                     つづく

 
追伸
まだ終わらんのだよ。
自分でもウンザリなのだ。次回、益々ワケわかんないラビリンス世界にズブズブに嵌まってゆきます。

 
(註1)論文
『シルビアシジミの生活史と遺伝的多様性に関する保全生態的研究』(坂本佳子 2013’大阪府立大 博士論文)

(註2)ツマベニチョウの属名も意味不明だ
ゴメン、勘違い。平嶋義宏氏の『蝶の学名-その語源と解説-』によると、Hubner(ヒューブナー)の命名でした。彼もムーア同様に難解な創作学名が多いそうだ。
ツマベニチョウの属名 Hebomoia(ヘボモイア)は、おそらく神話由来で、ギリシア語のhebe(青春の女神という意)=青春+ギリシア語のhomos(同一の)。共通の+接尾辞-iaと書いてあった。
何だそりゃ❓造語ということは解るが、意味があんましワカラン。日本語は難しいのう( ̄З ̄)

(註3)和歌山県では絶滅
南紀に、おるけどなあ…。