2019’カトカラ2年生 其の四(2)

 
   vol.21 ミヤマキシタバ 第二章

   『灰かぶりの黄色きシンデレラ』

 
前後逆の順番で書いた2020年版の第三章を含めて今まで長々と書いてきたが、やっとこさクロージングの種解説編である。

 
【ミヤマキシタバ Catocala ella ♂】

 
【同♀】


(以上4点共 2019.8.4 長野県北部)

 
今年採った2020年の♀の画像も加えておこう。

 

 
何か微妙に写真が縒れて撮れてるなあ。撮り直して、もっと拡大しよう。

 

(2020.8.4 長野県木曽町)

 
コチラの♀は下翅の内縁部が、あまり黒くなっていないね。
こっちの方が美しい。やはりカトカラは下翅の色の領域が広い方が綺麗やね。

図鑑等による形態解説を総合すると以下のようになる。

「前翅は僅かに緑色を帯び、中剣紋は黒くて明瞭。亜外縁線が灰白色の帯状となる。後翅は濃い黄色で、内外の黒帯は共に外縁とほぼ平行して走り、中央黒帯は外縁黒帯と繋がらない。外縁に沿う黒帯の幅は太く、中央の黒帯は細い。また、帯は中央付近で殆んど折れ曲がらず、滑らかな曲線を描く。後翅第1室中の黒帯は不明瞭で、翅頂紋は黄色、もしくは白くなる。」

コレって普通の人から見れば、難解過ぎて何言ってんのかワカンないよね(笑)。ワシだって画像なしの文章のみだけなら、何のこっちゃ(@_@)❓の人になりそうだ。
ようは簡単に書くと、他の下翅が黄色いカトカラと比べて、下翅の内側の黒帯が基本的に馬蹄形(U字形)にならない。上翅は丸みのある翅形で、灰白色の帯が目立つ。以上のような特異な特徴から見分けるのは容易である。

とはいえ、馬蹄形とかU字形だって何のこっちゃかワカランか…。一応、画像を貼り付けとこ〜っと。

 
(コガタキシタバ)

(カバフキシタバ)

(ゴマシオキシタバ)

(ジョナスキシタバ)

(クロシオキシタバ)

(ワモンキシタバ)

(キシタバ)

(マホロバキシタバ)

 
内側の帯の形の事を言ってるんだけど、こんなに並べてどうする。パラノイア(偏執狂)かよ。もしくはロンブーの淳がカミングアウトしたHSP(註1)か❓とにかく、ええ加減これくらいでやめておこう。
まあ、コレで下翅が他のキシタバ類とは全然違うことは理解して戴けるでしょう。

 
【♀裏面】

(2019.8.4 長野県北部)

 


(2020.8.4 長野県木曽町)

 
野外では何故か2019年、2020年共に♀の裏面写真しか撮っていない。
『日本のCatocala』に図示されてるものも、どうやら♀みたいだ。

 

(出典『日本のCatocala』)

 
しゃあねぇなあ。既存の標本を裏返して撮ろっと。

 
【♂裏面】

(2019.8.4 長野県北部)

 
今までブログに画像を出してない個体だけど、1年経って触角が狂っとる。カトカラって、展翅が狂いやすいからウザい。

裏面の一番の特徴は下翅の真ん中の黒帯が外側に膨らまない事だろう。あとは外縁部の斑紋の黄色が淡くて白っぽく見えがちだ。似た特徴のカトカラも居ないワケではないが、表の斑紋や大きさなどを総合すれば容易に判別できる。だから、わざわざ裏まで見て同定する必要性のないカトカラだ。
とはいえ、ブログ内で再三再四言っているけど、カトカラの裏面、ひいては蛾類全般に関して裏面は重要かと思われる。各種を同定するにあたり、重要なファクターだからだ。しかし、図鑑を筆頭に他の媒体でも図示されてないことが多い。裏面が全種ちゃんと載ってるのは『日本のCatocala』だけである(出版当時には未記載だったキララキシタバとマホロバキシタバは除く)。ネットだと『みんなで作る日本産蛾類図鑑』が約3分の2くらいを載せているくらいだ。蛾全般を載せた図鑑は種類数が多いから仕方のない面があるとは思うが、ネットまでそれに準ずる必要性は無かろう。にも拘らず、図示されてないものばかりなのは首を傾げざるおえない。裏が軽視され過ぎだよ。せめて科や属単位の図鑑くらいは裏面を載せれるだろうに。それって、裏面が軽視されてる証拠じゃねーの❓
そういえば、ネットだと雌雄が明示されていないものも多い。生態写真は難しい面はあるとは思うが、可能な限り♂か♀かを表示すべきだろう。ヨシノキシタバなんて、生態写真でも雌雄の区別はつくだろうに。
ついでだから、次に雌雄の判別の仕方も書いておく。冒頭の画像を見て比べられたし。

 
【雌雄の判別】
♂は♀と比べて腹が細くて長く。尻先に毛束がある。反対に♀は腹が太くて短めで尻先の毛が少ない。また裏返すと♀には尻先に縦のスリットが入り、産卵管が見える。表側だが冒頭の上から3番目の手のひら写真には尻先から産卵管が出ているのが見える。ちなみに3番目の♀と4番目の♀は別個体です。
あと、あんまし多くの個体を見たワケではないけど、私見だと♂と比べて♀の上翅の方が黒い部分と白い部分とのコントラストが強く、メリハリがあるように思える。
図鑑『世界のカトカラ』の図版もそうゆう傾向が見られるしさ。

 

(左♂で右が♀。)

 
とはいえ偶然かもしんないし、繰り返すが、あくまでも私見ですけど…。

 
ネットの『ギャラリー・カトカラ全集』に拠ると、以前はかなりの珍品だったそうだが、食樹が判明してからは各所で採集されるようになったという。しかし今でも採集するのが難しいカトカラの一つであるとしている。おそらく分布が局所的で、灯火に飛来する時刻が夜半過ぎになることが多いゆえだろう。あとは生息地でも個体数が少ないと聞いたことがあるから、それも得難いものと言われる所以かもしれない。

 
【学名】Catocala ella Butler, 1877
記載者はバトラー(註2)で、日本のものがタイプ産地になる。つまり最初に日本で発見されたカトカラと云うワケだ。
ちなみに記載地は「yokohama」となっている。いくら当時はまだ自然が残っていたとはいえ、分布的にも横浜にミヤマキシタバが居たとは考えられない。だからこれは単に古い時代ゆえの便宜的なものだろう。ブツが横浜から送られてきたとかさ。

小種名の「ella」は英語圏の女性名で、”美しい妖精” という意味があるそうな。
女性名かあ…。女性でエラと云えば、パッと浮かぶのはジャズ歌手のエラ・フィッツジェラルド(1918~1996年)くらいか…。他に聞かない名前だし、あまりポピュラーな女性名ではないようだね。

他の虫の名前から語源を探ってみようと思って調べたら、ミヤマキシタバ以外にも同じ学名が使われているものが幾つかあった。

Hypena ella ソトムラサキアツバ
Orthosia ella ヨモギキリガ

(´ε` ) 蛾ばっかじゃん❗と思ってたら、蝶もいた。

Nephargynnis anadyomene ella(Bremer,1864)。
わりかし好きなクモガタヒョウモンの亜種名に使われているようだ。クモガタちゃんは関西では少ない種なので結構思い入れがある。中々♀が採れなくて、随分と苦労したっけ。

 
(クモガタヒョウモン)

(出典『日本産蝶類標準図鑑』)

 
“ella”はロシア南東部を基産地とする亜種に宛がわれた学名のようだ。
因みに日本産は、Ssp.midas(Butler,1866)と云う別亜種とされている。おっ、コヤツもバトラーの記載だね。
でも、朝鮮半島〜ロシア南東部までの個体と区別できないことから、亜種ellaに含めるべきだとする研究者もいるみたい。

調べ進めると、予想外の”シンデレラ”と云う単語が出てきた。
シンデレラといえば、カボチャの馬車とかガラスの靴のあのシンデレラだよね。(・o・;)えっ❗❓、何でシンデレラなの❓正直そう思った。意外な展開になってきたぞ。
更に驚いたのはシンデレラの語源だ。シンデレラの綴りは英文表記の”Cinderella”と云う一つの固有名詞ではなく、本来的には”Cinder Ella”で、2つの言葉から成るものらしい。どうやら「Cinder=灰」という言葉に「ella」という女性や子供を表すときに付ける接尾語がついたものみたいだ。直訳すると「灰かぶりのエラ」、もしくは「灰まみれのエラ」。シンデレラの本当の名前は、エラちゃんだったんだね。
そして”Cinder Ella”には、シンデレラそのものを指すこと以外にも「灰かぶり姫」「隠れた美人」「隠れた人材」「継子扱いされる人」などの意味がある。
考えてみればミヤマキシタバの特徴の一つは、その灰色の渋い上翅にある。また「隠れた美人」ってのもミヤマキシタバらしい。もっと下翅が鮮やかでインパクトの強いムラサキシタバやベニシタバの鮮やかさの前では目立たないし、下翅が黄色いキシタバ系の中では充分美しいとはいえ、ヨシノキシタバやナマリキシタバの上翅の複雑な美しさの前では影に隠れてしまうところがあるからだ。謂わば「秘して花」的なところがあるのだ。そう云う意味でも”Cinderella”ならば、納得のネーミングだ。
もしもバトラーがミヤマキシタバの学名をシンデレラと掛けて名付けたのだとすれば、とっても心憎いネーミングではないか。

でも所詮は蛾だし、見てくれからも、
「シンデレラ❓どこがやねん❗」
なんてツッコミを入れる向きも有りそうだ。
けれど、もしも疑問に思って語源を調べてみたら、その意図するところに行き着くと云う仕組みならば、ちょいと粋じゃないか。ミヤマキシタバが灯火にやって来るのは午前0時前後だしね。あっ、でも逆かあ。シンデレラは午前0時までにはお家に帰らなければならないからね。
ヽ(`Д´)ノえーい、この際どっちゃでもええわい❗誰しにも心理的大きな分岐点となる特別な時刻である午前0時が重要なファクターになってんだからいいじゃないか。
常々思うのだが、ネーミングにはミステリアスな要素とストーリー性が必要だと思う。意味があるからこそ、動き出す物語はあるのだ。
奇しくも、書いてる今は丁度午前0時だ。酔っ払っているとはいえ、魔法の時刻がこんな事を書かせるのかもしれない。

スゲー妄想だ(笑)。ちょいと冷静になったところで、重大な事に気づく。
“ella”も”Cinderella”も、考えてみれば英語だわさ。学名はラテン語由来が基本だから、この仮説の可能性は低いわ。でもバトラーは英国人だぞ。可能性はゼロではないと思うんだよね。それでもこの仮説にはかなり無理があるとは思うけど…。
あ~、別な意味での午前0時のマジックに惑わされとるやないけ。深夜に文章を書くもんじゃないや。

無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ー❗❗


(出典『ピクシブ百科事典』)

 
大いなる無駄な思考に、ディオのザ・ワールド(註3)ばりの無駄無駄ラッシュをしちまっただよ。イチからやり直しだ。

ラテン語で「ella」を検索しても、出てくるのは「〜ella」で「小さい」を意味する女性接尾語というのしか出てこない。こんなのを学名につけるワケないから✕だ。

他にはスペイン語の「ella(エジャ)」くらいしかヒットせえへん。意味は「彼女が、彼女は」。スペイン語はラテン語から派生したものだから可能性は無くはないけど、ピッタリって感じじゃない。学名に「彼女が」とか「彼女は」は無いっしょ。名付ける意味が、意味不明だよ。

となると、最後は女性の名前と云うことか?…。
もしかしたら、バトラーの彼女とか奥さん、姉妹、娘に献名されたものではないか❓
いや待てよ。それならば学名の最後に「ellae」と語尾に「e」が付く筈だよね。

🎵謎が謎呼ぶシンデレラ〜で「💀死んでれら」。
ホールドアップ。降参だ。
王子様はシンデレラを見つけられたのにね。オジサンはella荒野を彷徨い、おっ死んだよ。

やれやれ。前半から早くも大コケだ。先が思いやられるよ。

 
【和名】
ミヤマキシタバのミヤマとは深山の事だろうが、正確な命名由来は不明。おそらく最初に見つかった場所が深山幽谷だったのだろう。
と言いたいところだが、このミヤマと云う言葉、曲者である。日本ではミヤマと名のつく昆虫は割りとあって、ミヤマクワガタ、ミヤマカラスアゲハ、ミヤマシジミ、ミヤマカラスシジミなどがいるが、何れも深山幽谷に限定して生息しているワケではないからだ。取り敢えずミヤマと付けとけば、深山幽谷に棲む珍しい種と云うイメージがあって格が上がるから付けちゃえと考えたとしか思えないところもある。
とはいえ、この問題は面白そうだ。深堀りすれば、何らかの驚愕の事実が分かるのではないだろうか❓
しかれども、我が嗅覚がズブズブの泥沼を感じている。よって今回はパス。もうウンザリなのだ。これ以上長くなるのは極力避けたい。この件に関しては何れまた稿を改めて書くことになろう。
ゴメン、テキトーに言ってます。書くか書かないかと問われれば、7対3で書かないと言っちゃうと思う。

 
【亜種と近縁種】
亜種には以下のようなものがある。

◆ Catocala ella ella Butler, 1877
図示した日本のものが原記載亜種となっている。

 
◆ Ssp.nutrix Graeser、1889
分布 沿海州(ロシア南東部)、朝鮮半島、中国北東部


(出典『世界のカトカラ』)

 
『世界のカトカラ』に図示されてものしか見ていないが、上翅の柄にメリハリがあまりなくて、全然キレイじゃない。
同図鑑によれば、大陸のモノにこの亜種名が宛がわれている。しかし、ウィキペディアではナゼかシノニム(同物異名)扱いになっている。しかも記載年は1888年になっていた。つまり微妙に記載年が1年ズレておるのだ。コレって何か意味あんのかな❓ 正直、ワケわかんないし、どっちだっていいや。

 
◆ Catocala ella tanakai


(出典『世界のカトカラ』)

 
最近になって北海道の小型で後翅が黒化したものが、どうやら新たに亜種として記載されたようだ。
たぶん上のような奴のことなのだろうが、記載論文は見つけられなかった。よって記載年も記載者も分かりまへーん。たぶん今年(2020年)の記載で、石塚さんだとは思うけど…。

それにしても汚い奴っちゃなあ…。ミヤマキシタバは上翅の美しさに定評があるけど、下翅が汚ければ、こんなにも薄汚なく見えるのね。美しいミヤマキシタバの評判をダダ下がりにするような輩だよなあ…。まあ、この亜種自身に全然もって罪は無いんだけどもね。それにコレを渋くてカッコイイと思う人もいるだろうしさ。
ところで、何で北海道のカトカラは黒化するものが多いんだろう❓ワモンキシタバやケンモンキシタバにも同じ傾向があったんじゃなかったっけ❓…。

 
近縁種に、Catocala ellamajor Ishizuka, 2010 がいる。

 
【Catocala ellamajor オオミヤマキシタバ】

(出典『世界のカトカラ』)

 
オオミヤマキシタバって和名が付いているように、ミヤマキシタバに似ているが遥かに馬鹿デカい。
解りやすいように、もう1点画像を追加しよう。

 

(出典『世界のカトカラ』)

 
ほらね。パッと見、斑紋はソックリだが、これだけ大きさが違うと別種だよな。
中国の四川省から発見されたそうだ。8月頃に現れるが、分布は局地的で稀との事。これは実物を見てみたいなあ。
参考までに言っておくと、左のミヤマキシタバはロシア産亜種の♀だけど、やはり日本産と比べてメリハリに欠ける。

 
【レッドデータブック】
環境省;準絶滅危惧種(Nt)
山梨県;絶滅危惧種Ⅱ類
群馬県;絶滅危惧種Ⅱ類
栃木県;準絶滅危惧種
大阪府;準絶滅危惧種
宮城県:絶滅危惧Ⅱ類(Vu)
岩手県:Dランク

大阪府の準絶滅危惧種指定には笑ろた。んなもん、おらんつーの。いったい何年前の記録なのだ。おそらく何十年も前のものだろう。そんなクソ古い記録からの指定なんて外せよな。どうせ今もいるかどうかなんて調べてないんだろ。準絶滅というのも引っ掛かる。指定するなら絶滅危惧種か情報不足として指定を保留すべきだろう。お役所のこう云うおざなりの仕事ってアホかと思う。

 
【開張(mm)】
『原色日本産蛾類図鑑』とネットの『みんなで作る日本産蛾類図鑑』には、60mmとだけあった。雑いよなあ(笑)。
岸田さんの『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』は流石にちゃんとしていて、51〜61mm内外となっている。試しに自分の採ったものを測ってみると、最大で61mm、多くのものが55mm〜60mm未満だった。

 
【分布】
北海道、本州(主に中部地方以北)。
海外ではロシア南東部(沿海州・アムール)、朝鮮半島、中国北東部に分布する。
日本での分布は一風変わっており、主に中部地方より東に産するが、近畿地方を飛び越えて広島県(芸北町東八幡原)と山口県に記録がある。しかし極めて稀なようだ。今のところ四国、九州地方では見つかっていない。
東日本でも分布は局所的で、関東の平野部には記録はないようだ。だから横浜にゃ居ねぇと言ったのさ。
食樹である湿性のハンノキや山地性のヤマハンノキが豊富にあるような環境を好むが、同じくハンノキ類を食樹とするミドリシジミ(註4)が豊産するような場所でも見られない場合も多いという。又、生息地であっても個体数は少ないらしい。青森、岩手県下には多産地があるというが、調べたらあくまでも一部であって、両県でも分布は局所的みたいだ。

ここで日本を代表するカトカラ図鑑である『日本のCatocala』と『世界のカトカラ』の分布図を並べておこう。ワシの説明なんかよりも、そっちの方が余程わかりやすいもんね。

 

(出典 西尾規孝『日本のCatocala』)

 

(出典 石塚勝己『世界のカトカラ』)

 
そうは言いつつも、両者の西側の分布が微妙に異なっているからややこしい。謎多きシンデレラなのだ。
但し『日本のCatocala』は分布域図で、『世界のカトカラ』は県別の分布図である。特に近畿は微妙だ。『日本のCatocala』では滋賀県、京都府、兵庫県中北部が入っているが、『世界のカトカラ』では空白になっている。逆に大阪府には記録があるから塗りつぶされている。
まあ、大阪府の記録は前述したように疑わしくはあるんだけどね。古い記録だしさ。ところで、大阪府の何処で採集されたのだろう?
調べてみたが、大阪府のレッドデータブックにも詳しくは書かれていない。他からのアプローチでも見つけられなかった。何十年も前の記録となると、そこそこ有名な昆虫採集地ではなかったのではないか?
だとすれば、金剛山か箕面辺りが有望か…。箕面っぽいような気もするが、でも特定は出来ないやね。古い記録だし、標本は残ってるのかなあ?…。何か段々胡散臭い記録のように思えてきたよ。
でも、ふと思う。古い記録だからといって切り捨てるのもどうだろう。かつては本当に居たのかもしれない。信じたいところではある。いや、本当は居た筈だ。なぜなら、こんなもん他のキシタバ類と判別間違いはせんでしょうよ。けど悲しいかな、今や箕面は乱開発によってズタズタだ。箕面での再発見は難しいだろう。

情報量があまりにも少ないので何とも言えないところはあるが、探せば近畿地方でも見つかる可能性は有ると思う。希望的観測ではあるが、そう願いたいものだ。広島や山口でも見つかってるんだからね。
おそらくだが東日本よりも更に局所的な分布で、標高1000m以上の高所に僅かながら生息しているのではあるまいか❓いやもっと言えば、山口県の生息地は調べても分からなかったが、広島県は標高770mくらいだ。千m以上に拘る必要性はないのかもしれない。但し、得られたのはライトトラップのようだから、周辺の高い山、例えば臥竜山(1223m)などの高い山から降りてきた可能性も無くはない。とはいえ、近畿地方だって1200mくらいの山はあるからね。同じような環境の場所もあるだろう。

 
【成虫の発生期】
7月中旬〜9月下旬。稀に10月に入っても見られる。
しかし新鮮な個体に会えるのは8月中旬までだと言われる。

そういえば西尾氏の『日本のCatocala』には、発生期について大変興味深いことが書かれてあった。ちょっと衝撃的だったので抜粋しよう。
「産地により出現時期はさまざま、標高や緯度にはそれほど関係せず、梅雨のない地方(たぶん北海道の事)での羽化時期は早い。夏に酷暑となる中部地方の低山地での出現時期の方が冷涼な山地の高原よりかなり遅れる場合がある。」
又、西尾氏は夏期休眠を蛹の期間で調整している可能性がある事を示唆されておられる。

こんな発生形態を持つカトカラは他に聞いたことがないから、かなり驚いたよ。なぜに発生がそないにバラバラなのだ❓その意味するところがワカランよ。

因みに採った場所2箇所の日付は、奇しくも同じ8月4日だった。2019年は湿地で標高は約800〜850m。2020年は高原で標高は1100〜1300mだった。但し、採集方法は2019年は糖蜜トラップ、2020年はライトトラップだった。ゆえに2020年は発生地を特定できない。
とは言いつつも近くにヤマハンノキがあり、ライト点灯後の割りかし早い時間帯、8時過ぎに飛来した者も居た。
鮮度はどちらも良かったが、あえて言うならば、高原のものの方がビカビカだった。又聞き情報だが、1週間後に同じ場所に行った人によると飛来数は多かったそうだから、この日はまだ出始めだったのだろう。一方、湿地では個体数が比較的多かった事から、おそらく最盛期だったものと思われる。

(・o・;)おいおい、これだと標高が高い所の方が発生が遅れると云う多くの鱗翅類に見受けられる普通パターンと同じじゃないか。こりゃ他の場所でも採ってみないと何とも言えないやね。
夏期休眠を蛹の期間で調整している可能性があるというのも、今ひとつ意味ワカンナイしさ。少しくらい発生期がズレたところで、どっちにせよクソ暑い時期に羽化してくるんだから、意味あんのかね❓

 
【生態】
成虫は樹液に好んで集まる。低山地では主にクヌギ、コナラの樹液を吸汁し、高原地帯など高標高地ではミズナラの樹液を利用しているようだ。

糖蜜トラップにも飛来する。最初の飛来時刻は午後8時半過ぎから8時40分の間だった。カトカラの中ではカバフキシタバと並び飛来時刻が遅い。しかし一日だけの観察なので、ホントの事はワカラナイ。偶然その日は飛来が遅かった可能性もある。
尚、飛来の最終時刻を前々回には午前0時よりも前だと書いたが、写真の撮影時刻を確認し直すと、午前1時前というのが見つかった。一年も経てば人間の記憶なんて曖昧になるんだね。勝手にイメージの中で記憶を都合よく改竄してましたわ。スンマセン。
つけ加えておくと、吸汁時は下翅を開く。敏感度は、まあまあ敏感か普通。特別に敏感だとか鈍感と云う印象はない。

他にカトカラの餌資源と知られる花蜜、果実、アブラムシの甘露や吸水に飛来した例はないようだ。

灯火にも集まるが、一説によると食樹からの移動性が低く、林内での灯火採集が効果的であるらしい。
飛来時刻は遅く。夜半過ぎに現れるとされる。ピークは午前2時という説があるが、参考にはなるものの、その日のコンディションにもよるだろう。灯火への飛来は気象条件にかなり左右されるからだ。
自分の1回だけの灯火採集の経験だと、前回述べたとおり高原では午後8時過ぎと午前1時頃に飛来した。意外と近い所に居るものは早い時間帯でも集まって来るのかもしれない。何れにしろ、引き続き観察が必要だろう。

観察経験が少ないので、以下は文献、主に『日本のCatocala』からの引用に私見を混じえたものである。

成虫は昼間、ハンノキやアカマツ、カラマツなどの樹幹に下向きに静止している。静止場所は地上数mから十数mと、やや高い位置であることが多い。全ての種類のカトカラの静止している状態を見たわけではないが、カトカラの中ではかなり高い位置での静止のように思える。静止時はやや鈍感だそうだが、これは場所にもよるだろう。
驚いて飛翔した個体は上向きに着地し、暫くしてから下向きになるという。

交尾は深夜の午後11時から午前2時の間に行われ、発生期間内の延べ交尾回数は多数回であることが示唆されている。

産卵は9月7日の日没後に観察されている(西尾, 2004)。
ハンノキの樹幹に止まり、樹皮の隙間に産卵管を挿し込み産卵していたという。
他に、ブログ「青森の蝶たち」にハンノキの根元で産卵している写真がある(岩木山麓)。ちょっと驚いたのは産卵中には下翅を開いている事。樹液吸汁中にも開くんだから、当たり前っちゃ当たり前なんだけど、自分としては盲点だった。イメージが全く頭に無かったからね。尚、日付は8月13〜16日となっており、時刻は午後8時13分とあった。てっきり産卵は9月に入ってからではないかと思っていたが、そうでもないんだね。となると、羽化から比較的短期間に産卵する種って事かな。

 
【幼虫の食餌植物】
カバノキ科 ハンノキ属のハンノキ、ヤマハンノキ。
日本のカトカラでは幼虫がカバノキ科を食する唯一の種。また海外でもカバノキ科を食樹とする種は見つかっていない。但しオオミヤマキシタバがカバノキ科を食樹とする可能性が濃厚ではある。

山梨県西部・長野県北部ではハンノキ、長野県南西部(木曽町)ではヤマハンノキを食樹としている事が分かっている。
西尾氏が長野県上田市の平地で飼育した結果、同属のミヤマハンノキ、カワラハンノキ、ヤマハンノキ、ヤシャブシは代用食にならなかったそうである。但し他地域で色々なハンノキ属で育てたら、無事に飼育を完了したと云う話を聞いているとも書かれている。
上田市ではヤマハンノキを与えたが食べなかったようだし、地域により、それぞれ別なハンノキ属内の他種を食ってる可能性はあるかもしれないね。

それにしても、ハンノキなんぞは関西にだって何処にでもあるし、ヤマハンノキだって割りとよく見掛ける。なのに基本的には関西には居ないという事になってる。となれば、本来が冷温帯を好むカトカラなのだろうか❓にしても広島県や山口県でも見つかってるしなあ…。
ちなみに分布域内でハンノキやヤマハンノキが沢山あるところでも生息しない所が多いらしい。成虫の餌資源とか、気温や湿度、その他諸々のシビアな条件があるんでしょうな。良く言えば繊細、悪く言えば神経質なカトカラだね。

 
(ハンノキ Alnus japonica)

 
幹は直立し、樹高は15〜20mくらいのものが多いが、生育条件の良い所では最大で40m程になるそうだ。太い大木はあまり見たことないような気がするが、相対的に大きい木、正確には高い木と云うイメージがある。
材は適度に柔軟であるため鉛筆の材料に使われるが、材木としての流通は稀という。なお、建材として名高いアルダーは北米を原産とするハンノキの仲間である。

 
(ハンノキ林)

 
湿地だと大体こんな感じで纏まって生えているから、わりと目につきやすい。

 
(幹と樹皮)

 
(葉と実)

(以上4点共 出典『Wikipedia』)

 
ハンノキを探す時は生えてる場所と幹の感じ、そして小さな松ぼっくりみたいな実の有無の3つを総合して判別している。中でも実が最も重要で、下図のように古くて茶色になっているのはよく目立つ。

 

(出典『庭木図鑑・植木ペディア』)

 
夏場でもこの実が結構ついているから、コレが恰好の目印になるのである。あと、葉っぱも一応見るけど、最後の補足確認事項みたいなもんだ。葉の形には変異幅があるようだからね。葉ばっか見てるとワケわかんなくなるのだ。ゆえに目安として湿地に生えてて、樹姿、幹、実を確認してから最後に葉っぱを見るって感じ。
偉そうな事を言ってるが、ハンノキについてはそれくらいの事しか知らない。改めて詳しく調べてみよう。

北海道から九州まで(一応、沖縄でも見つかっている)分布する落葉高木。日本以外では朝鮮半島、台湾、中国東北部、ウスリー、南千島に分布する。尚、ハンノキの仲間は北半球の温帯を中心に30種以上が分布し、日本にはそのうちの10数種が分布する。
日本では山野の低地の湿地、沼や低山の川沿いに自生し、湿原のような過湿地においても森林を形成する数少ない樹木。
樹高は4〜20m。幹の直径は60cm程。湿地周辺の肥沃な土地では極めてよく育ち、高さ30m、幹回りの直径は1mを超える。
普通の樹木であれば、土壌中の水分が多いと酸欠状態になって生きられないが、ハンノキは耐水性を獲得したことで湿地でも生き残ることができる。但し、湿地中央部に生える個体は成長は減退して大きくならない。
水に埋もれても育つため、水田の脇や畦に並木状に植えて稲掛けの梁に使われたことから、古名は榛(はり)、梁(はり)の木と呼ばれ、それが転化してハンノキとなったとされる。漢字には「榛の木」の字が宛がわれるが、本来これはオオハシバミの事であったという。近年では水田耕作放棄地に繁殖する例が多く見られる。
根には放線菌(根粒菌)が共生しており、栄養の乏しい場所でも丈夫に育つ。この事から荒地の復旧対策として真っ先に植栽され、河原の護岸や砂防を目的に植えられることも多い。又、公園樹として園内の池周辺にしばしば植えられる。
ちなみに英名は、Japanese Alder。「日本ハンノキ」って事だね。
 
葉は有柄で互生し、細長い楕円形または長楕円状卵形で先端が尖り、縁には不規則なギザギザがある。葉の長さは5~13cm程だが個体差が大きい。葉に毛があるものと無いものがある。葉の寿命は短く、緑のまま次々と落葉する。春先に伸びた1葉や2葉(春葉)の寿命は以降に延びた夏葉よりも短いため、6月から7月になると春葉が集中的に落葉することが報告されている。
花期は冬の11〜4月頃で、葉に先だって単性花をつける。雌雄同株で雄花穂は枝先に1〜5個付き、黒褐色の円柱形で尾状に垂れ下がる。雌花穂は楕円形で紅紫色を帯び、雄花穂の下部の葉腋に1〜5個つける。花はあまり目立たない。またハンノキが密集する地域では花粉による喘息発生の報告がある。
実は10月頃に熟し、小さな松ぼっくり状。翌春に新たな芽が吹くまでの長い間、枝に残る。
冬芽は互生して枝先につく雄花序と、その基部につく雌花序は共に裸芽で柄があり、赤みを帯びる。仮頂芽と測芽はどちらも葉芽、有柄で3枚の芽鱗があり、樹脂で固まる。葉痕は半円形で維管束痕は3個ある。
樹皮は紫褐色から暗灰褐色で、縦に浅く裂けて剥がれる。

良質の木炭の材料となるために以前には盛んに伐採された。材に油分が含まれ、生木でもよく燃えるため、北陸地方では火葬の薪に使用された。葉の中には根粒菌から貰った窒素を多く含んでいて、そのまま葉が散るため、葉の肥料木としても重要である。材は軟質で家具や器具に使われる。樹皮や実は一部の地方で褐色の染料として使われている。また抗菌作用があり、消臭効果が期待されている。ハンノキには造血作用のある成分が含まれるため漢方薬としても用いられる。

(・o・)へぇー、結構役立っている木なんだね。( ゚д゚)ハッ❗、何か完全にハンノキの話になっとるやないけー。
いかん、いかん。ミヤマキシタバの話じゃった。もう1つの食樹であるヤマハンノキについても調べておこう。

 
(ヤマハンノキ)

(出典『はなQ』)

 
(葉の裏面)

(出典『花の日記』)

 
(樹幹)

(出典『樹木検索図鑑』)

 
幹の感じが縦溝のハンノキとは違うね。そういえば、そんなような気もしてきた。

 
(実)

(出典『四季の山野草』)

 
しかしネットで調べてみてもヒット数が少なく、ハンノキとの違いが殆んど書かれていない。さらにネットサーフィンした結果、驚愕の事実にブチ当たる。
何と、どうやらヤマハンノキはケヤマハンノキの変種らしい。ケヤマハンノキの小枝や葉裏に毛がないのがヤマハンノキと云う事らしいのだ。何じゃ、そりゃ❗❓である。
そうゆう事は蛾のサイトでは一切書かれていなかったから、名前からして寧ろケヤマハンノキがヤマハンノキの変種だと思ってたくらいだからね。ヤマハンノキを食うならば、絶対ケヤマハンノキだって食うでしょうよ。しかし、文献には食樹としてケヤマハンノキが出てくる事は殆んどなく、僅かに西尾氏が、その可能性を示唆しているにすぎない。もしかして皆さん孫引きで、だ〜れも調べてなかったりして…。ワシも孫引きだから、人のこと言えないけどさ。
こういうこと書くとまた蛾屋さんに嫌われそうだけどさあ、それってユルくね❓テキトー人間のオイラが言うのもなんだけど、テキトー過ぎなくねぇか❓誰もが情報を鵜呑みにして向上心が感じられないと言わざるおえない。蛾をやってる人は蝶を敢えて選ばなかったんだから、突き詰めて考える我が道を行くような人ばかりじゃないかと勝手に想像してたから残念だよ。蝶ではなく、白い目で見られがちな蛾をやってると云う時点で偉いと密かに尊敬していたのだ。
えー、この項(@_@)ベロベロで書いてまーす。だからこそディスれるのだー。偏見だけど、もう書いちゃったから素面(しらふ)になっても撤回するつもりはない。吐いた言葉は呑み込まないのだ。ミヤマキシタバそのものについての知見が間違ってたとしたら、直ぐに撤回するけどさ。

えー、ここからは翌日で素面です。
失礼な事ばかり宣(のたま)ってスンマセン。吐いた言葉は呑み込まないけど、少々言い過ぎたと反省しておりまする。それにしても酔っ払いの暗い心のパワーはスゴイもんですな。筆に変な推進力があるや。
素面ゆえに書くのが邪魔くさくなってきたけど、このままでは終われないので、ハンノキ属の植物をまとめて紹介してこの項を終わりとしよう

 
(ケヤマハンノキ)

 
(裏面)

(出典 3点共『葉と枝による樹木検索図鑑』)

 
分布;北海道・本州・四国・九州。アジア東北部。
ヤマハンノキも分布は同じである。ヤマハンノキ、ケヤマハンノキともに山の手や溪谷の斜面に生える。
樹高はヤマハンノキと同じく10〜20m。

 
(タニガワハンノキ(コバノヤマハンノキ))


(出典『www.m-ac.jp』)

 
分布;北海道・本州(中部地方以北)
山地の渓流沿いに生える。葉が小さく、ヤマハンノキと同じく裏面に毛がない。樹高15〜20m。

 
(ミヤマハンノキ)


(出典『葉と枝による樹木検索図鑑』)

 
分布は北海道と本州(加賀白山以北)。飛び離れて中国地方の大山山系烏ヶ山の山頂(1448m)にも自生する。基本的には山奥の亜高山帯から高山帯の岩石が多い斜面に生える。樹高1〜2mのブッシュ状になることが多いが、条件の良い場所では10m近くになる。

 
(サクラバハンノキ)


(出典『葉と枝による樹木検索図鑑』)

 
分布は本州(岩手・新潟以西)・九州で、主に西日本で見られる。ハンノキに似るが、本種の方が葉の横幅が広く、側脈数が多いこと、葉の基部が心臓形になることで区別できるそうだ。樹高10〜15m。

ここで各種の違いが解りやすいように、改めてハンノキの画像を添付しておこう。

 
(ハンノキ)


(出典『葉と枝による樹木検索図鑑』)

 
分布;北海道・本州・四国・九州・沖縄。
そうそう、こうゆう葉っぱなんだよな。でも他の科の葉っぱでも似たようなのがいっぱいあんだよね。そういや昔、サクラと間違えた事があるわ。

 
(カワラハンノキ)


(出典『葉と枝による樹木検索図鑑』)

 
分布;本州(東海以西)・四国・九州。
名前のとおり河原や川辺の岩場に生える。樹高5〜10m。

 
(ミヤマカワラハンノキ)


(出典 以上3点共『葉と枝による樹木検索図鑑』)

 
東北地方や北陸地方を中心とした多雪地帯に分布し、山地のやや湿ったところに生える。樹高8〜10m。

 
(ヤハズハンノキ)

(出典『www.botanic.jp』)


(出典 以上2点共『レモちゃんのワクワク植物ランド』)

 
日本固有種で、本州の中部地方・北陸地方から東北地方の日本海側に分布する。山地から亜高山帯の沢沿いなどに生える。葉の先が切れ込み、ハート型になるのが特徴。樹高10~15m。

参考までに言っておくと、他にヤチハンノキやウスゲヒロハハンノキと云うのもあるが、ヤチハンノキはハンノキの別称で、ウスゲヒロハハンノキはハンノキとケヤマハンノキとの雑種である。

食樹としている可能性は低そうだが、一応ヤシャブシ類も紹介しておこう。

 
(ヤシャブシ)


(出典『葉と枝による樹木検索図鑑』)

 
分布 本州(福島県以南の太平洋側)・四国・九州。
葉に光沢がなく、実が1~3個付き、直立または斜上する。
樹高2〜17m。

 
(オオバヤシャブシ)


(出典『葉と枝による樹木検索図鑑』)

 
分布;本州(福島県以南〜和歌山県の太平洋側)。
葉に光沢があり、幅が広くやや三角状。実は1個のみ付き、直立または斜上する。樹高5〜10m。
オオバヤシャブシも緑化によく用いられるそうだ。

 
(ヒメヤシャブシ)


(出典『葉と枝による樹木検索図鑑』)

 
分布;北海道・本州・四国。
葉が細長く、基部が楔形で側脈が20対以上と多い。実は3~6個付き、下垂する。樹高2〜7m。

ヤシャブシ類も根にはフランキア属の放線菌が共生し、窒素固定を行うようだ。そのため比較的やせた土地にも生育する。どうやらハンノキ属の多くが、この特性を持っていそうだ。ハンノキって、スゲーぞっ✧(>o<)ノ✧❗
(・o・;) あれっ❓、何かミヤマキシタバの回なのに完全にハンノキ属の話になっとるやないけー(笑)。

立て直して、改めてミヤマキシタバの分布と食樹の関係について考えてみよう。
北海道亜種の食樹は、各ハンノキ属の分布からハンノキ、ヤマハンノキ、ケヤマハンノキ、タニガワハンノキ、ミヤマハンノキに限定され、その何れか、もしくは全てを利用している可能性がある。
本州の原記載亜種は、ハンノキ、ヤマハンノキ、ケヤマハンノキ、タニガワハンノキ、サクラバハンノキ、カワラハンノキ、ミヤマカワラハンノキ、ミヤマハンノキ、ヤハズハンノキに食樹としての可能性がある。ヤシャブシ類の可能性もないではないが、更に西寄りの分布だから二次的な利用は有り得るものの主食樹ではないだろう。少々乱暴な結論になるが、食樹の分布から、ハンノキを筆頭にヤマハンノキ、ケヤマハンノキがメインのホストプラントだろう。
でも、何れも分布に際立った局所性はなさそうだ。そうなると、シンデレラの分布が局所的な理由が説明できなくなる。食樹の分布からすれば、もっと広範囲にいて当然だからだ。局所的な種となると、ミヤマハンノキ、ミヤマカワラハンノキ、ヤハズハンノキだが、ミヤマカワラハンノキとヤハズハンノキは日本海側の分布だから、産地の木曽町などは当てはまらない。またミヤマハンノキは、亜高山帯から高山帯に生えるからミヤマキシタバの垂直分布とはズレる。カワラハンノキとサクラバハンノキは西よりの分布だから、これも除外していいだろう。
となれば、やはり主な食樹はハンノキ、ヤマハンノキ、ケヤマハンノキで、気象条件、環境が種の生息の有無のファクターに関係している可能性が高い。棲息条件が厳密で、冷温帯の狭い範囲にのみしか適応できないとか、成虫の餌資源が近くにないとダメとかさ。
或いは地史との関係もあるかもしれない。でもなあ…、羽が退化して飛べないオサムシじゃあるまいし、少々の大きな川や高い山があったとしても飛べるから大きな障壁にはなるまい。
でも待てよ。蝶の幾つかの種類はミヤマキシタバに似た分布の者もいるぞ。不思議な事に、分布が主に中部地方以北で、近畿地方の中心に分布がポッカリ空いてて、中国地方(兵庫県西部も含む)になると突然のように分布するものは多いのだ。
例を挙げれば、ハヤシミドリシジミ、クロミドリシジミ、ヒメシジミ、ゴマシジミ、オオルリシジミ(九州)、カラスシジミ、ヒメシロチョウ、ヒョウモンモドキ(東では既に絶滅)、ウラジャノメ、ホシチャバネセセリ、コキマダラセセリ、スジグロチャバネセセリ、キバネセセリ(少ないながら三重県北部に記録がある)、ヒメヒカゲ(かつては大阪府南部の岩湧山頂にのみ居たそうだ)と、かなり多い。嗚呼、w(°o°)wヤバい。この問題、そもそもよくワカンなくて突っ込めば底なし沼必至なのだ。ここは触れないでおく事にしよう。段々、自分でも何を言いたいのかワカンなくなってきたしさ。

視点を変えよう。
はたと思う。よくよく考えてみれば、野外で見るヤシャブシとヤマハンノキ類がゴッチャになってるとこがあるなあ…。山地性のミドリシジミとか、あんま興味ないしさ。
参考までに言っとくと、『日本産蝶類標準図鑑』によれば、ミドリシジミの食樹はハンノキ、ヤマハンノキの他にケヤマハンノキ、ミヤマハンノキ、サクラバハンノキ、カワラハンノキ、ヤチハンノキ(ハンノキの別称)、コバノヤマ(タニガワ)ハンノキが記録されている。また、ヤシャブシでも飼育可能だ。蝶であるミドリシジミでも色んなハンノキ属を利用しているんだから、ミヤマキシタバだって利用している可能性は高いかもしれない。基本的には蝶よりも蛾の方が食性は広いしさ。いっその事、ミヤマキシタバは紹介したハンノキ属はどれでも食うって事でどーだ。もうヤケクソだよ。
いや待てよ。ミドリシジミは普通種だが、ミヤマキシタバは普通種ではない。となると、むしろミヤマキシタバの方が狭食性で、食性が狭いがゆえに少ない種なのかもしれない。ハンノキは何処にでもあるが、或る種の条件が整ったハンノキのみしか食わないとかさ。或いはハンノキの中に隠蔽種が混じってて、見た目は同じでも別種なのがあって、そっちしか食わないとかさ。あとは標高何m以上のハンノキしか食わないとかさ。もしかして、ソヤツがハンノキとは近似種の全くの別種だったりしてね。

やめた。お手上げだ。いくら頭の中で考えたところで限界がある。自然界で利用されている食樹がもっと詳しく解明されない限りは全部が空論に過ぎないのだ。
今一つ食樹の解明が進まないのは、蛾の愛好家は少ないゆえ、食樹について調べてる人が少ないんだろね。蝶みたく愛好家が多ければ、そうゆう地道で大変そうな事を調べる人も増えるんだろうに。つまり、パーセンテージよりも分母の問題なのだ。
因みにワシって、そうゆう事には全然向いてない人なので、調べてやろうという気概は全然もって無いです、ハイ。
最近は蛾の愛好者も増えているという事だし、誰か根性のある人が出てくることを祈ろう。

 
【幼生期の生態】
これも西尾さんの『日本のCatocala』に頼りっきりで書く。
こっからはグロいので、( ̄ー ̄)おどろおどろの閲覧注意やでぇ〜。

 
(卵)

(出典『日本のCatocala』以下、この項目同じ。)

 
卵は食樹に付着した蘚苔類、地衣類、樹皮の裂け目や裏側に産み付けられる。1箇所に産まれる卵数は1〜8個であるが、1個の場合が多い。
形状は小型のまんじゅう型で、受精卵の色彩は黒褐色ないし茶褐色で黄白色の斑紋が横に走る。縦の隆起条は非常に細く、高さも低くて波状。横の隆起条は溝状で、類似した形態の種は他にはいない。とはいえ、卵は極小ゆえ、んなもん顕微鏡で見んとワカランぞい。

幼虫の齢数は5齡。若齢から中齢まで昼間は枝先の葉上や葉柄に静止している。亜終齢幼虫になると枝先の葉柄に、終齢幼虫は枝先の淡緑色をした当年枝に静止している。
種内における幼虫の色彩変異は特にはないようだ。

 
(初齡幼虫と2齡幼虫)

 
基本的に他のカトカラと同じく尺取り虫型でござる。
毛虫じゃないから、これなら飼育初心者のワシでもまだ飼えそうだ。

 
(終齢幼虫)

 
向かって右側が頭部である。
まあまあカラフル。なんだけど、飼育初心者にはかえって気持ち悪いかも…。毒々しいと触れんもん(+o+)

 
(終齢幼虫頭部)

 
😰怖っ❗邪悪なお顔でありんすなあ。芋虫でも、やっぱ苦手だよなあ…。アタシャ、愛する自信がねえや。
顔は黄色いタイプと青緑色のタイプのものがあるようだ。終齢幼虫は黄色っぽくて、カトカラの中では割りと特異なものの1つだろう。

 

(出典『日本のCatocala』)

 
幼虫を刺激すると体を反らし、口から茶色の体液を吐きかけるという。∑( ̄皿 ̄;;)ひいーっ、🤮ビートルジュースやないけー❗気持ちの悪いやっちゃのうー。あっ、ビートルジュースは甲虫の体液だな。となると、キャタピラージュースか。どっちにせよ、😱阿鼻叫喚なりよ。
まあ、仕方なしの一種の天敵から身を守る防御行動だろね。生きるのに必死なのだ。とはいえ、キャタピラージュースを吐くなんざ、最悪だ。やっぱワシ、芋虫とか毛虫はダメだわさ。飼育は一生でけんかもなあ…。

蛹化場所については観察例がないようだが、おそらく落葉の下だと考えられる。

                       おしまい

 
追伸
今回も長くなった。無駄無駄パンチとかフザけ過ぎたのも理由だが、主な原因は食樹の項だ。ハンノキの事を調べてたらズブズブの泥沼にハマってしまった。ハンノキは湿地に生えるゆえ、下はズブズブの泥沼だから、何だか出来過ぎの展開だよ(笑)。

 
(註1)HSP
HSPとは、Highiy Sensitive Person(ハイリ―・センシティブ・パーソン)の頭文字をとった略称で、訳すと「ひといちばい繊細な人」という意味。
1990年代のはじめに繊細な人について研究していたエレイン・アーロン博士によって名付けられたもので、「人の気質」を表した名称の1つ。アーロン博士によると、5人に1人、人口の約20%がHSPだという。この「繊細さ」は生きるもの全てが本来的に持つ生存本能であり、生き残るための戦略の1つであると考えられている。詳しい症状等は御自分で調べてくだされ。

 
(註2)バトラー
おそらく英国人の昆虫学者、Arthur Gardiner Butler(アーサー・ガーディナー・バトラー)のことだろう。
以下、Wikipediaから抜粋、要約しよう。

 
Arthur Gardiner Butler(1844〜1925)

(出典『Wikipedia』)

 
イギリスの昆虫学者・鳥類学者。またクモの研究者としても知られ、それらの分類で足跡を残している。1844年、ロンドンのチェルシーで生まれ、父は大英博物館の次官補であるトーマス・バトラー(1809-1908)。彼自身も大英博物館に勤め、1879年に動物学のアシスタントキーパー(副室長?)、及びアシスタントライブラリアン(たぶん司書と訳すよりも、副専門的文献管理責任者と訳した方が妥当だろう)として、2つの役割を持つ役員に任命された。
彼はまた、オーストラリアのクモやガラパゴス、マダガスカル、およびその他の場所に関する記事を発表したと書かれてある。

日本のカトカラでは、ミヤマキシタバの他にシロシタバ、ゴマシオキシタバ、ノコメキシタバ、ワモンキシタバ、マメキシタバ、ジョナスキシタバ、ヨシノキシタバの記載者名に、その名がある。結構な数だ。
しかし蝶の方はもっと多い。日本でも馴染みのあるものが、ズラリと並ぶ。
調べたところ、ツマキチョウ、エゾスジグロシロチョウ、ウラキンシジミ、ウラクロシジミ、ダイセンシジミ、コツバメ、ヒメウラボシシジミ、カバイロシジミ、ヒョウモンモドキ、ホシミスジ、ウラナミジャノメ、ヒメウラナミジャノメ、リュウキュウヒメジャノメ、キマダラモドキ、クロヒカゲ、ヒメキマダラヒカゲ、ヤマキマダラヒカゲ、シロオビマダラ、スジグロチャバネセセリ、アカセセリ、ミヤマチャバネセセリと、何と数えたら21種もある。(☉。☉)メチャメチャ多いやんけー。

 
(註3)ディオのザ・ワールド
荒木飛呂彦の漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の第3部「スターダストクルセイダーズ」に出てくる最強の悪役ディオのスタンドのこと。「無駄無駄無駄…」を連呼してパンチを繰り出してくる。
尚現在、火曜深夜1時過ぎからBS日テレでアニメが2話ずつ放映されちょります。物語は佳境に入っており、今夜あたりザ・ワールドが登場しそうだ。

 
(註4)ミドリシジミ

【Neozephyrus japonicus ミドリシジミ♂】

(2018.5.29 京都市)

 
北海道・本州・四国・九州に分布し、全国的に広く棲息するが、西南部の暖地では局地的な稀種。小型となる北海道のものは亜種reginaに分けられている。

 
(分布図)

(出典『日本産蝶類標準図鑑』)

 
何となくミヤマキシタバの分布に似てるような気もしないでもない。ややコジツケくさいけどさ。それはさておき、何で紀伊半島南部にいないんだ❓ヤバい、やめとく。これ以上はもう御勘弁。

 
ー参考文献ー

◆『日本のCatocala』西尾規孝 自費出版

 
◆『世界のカトカラ』石塚勝己 むし社

 
◆『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』岸田泰則編著 学研

 
◆『原色日本産蛾類図鑑』江崎悌三編著 保育社

 
インターネット
◆『青森の蝶たち』
◆『みんなで作る日本産蛾類図鑑』
◆『Wikipedia』
◆『葉と枝による樹木検索図鑑』