闇の中の小さな幽玄

  
太古の森の中で、ひっそりとヒメハルゼミが羽化していた。

 

 
何という美しさであろう。
闇の中に浮かび上がる、その透き通るような美しさは幽玄で儚い。

 

 
何れも産卵管が長く伸びているからメスだね。
ここにいるとは知ってはいたが、肉眼で見るのは初めてだ。
見慣れたクマゼミやアブラゼミと比べて、大変小さい。まるで妖精だね。

妖精ならば、そっとしておこう。
それにそもそも、ここは採集禁止だしね。まあ、たとえそうじゃなくとも持って帰らないけどさ。蝶だけでも標本箱だらけなのだ。他の虫まで集め始めたら大変な事になる。
セミは好きなんだけどね。元々、少年の頃は「セミ採り名人」と言われてたしさ。何だか懐かしい。少年の頃の思い出が映像となって、頭の中を次々と流れてゆく。

羽が乾くと、こんな感じになる。

 


(出展 2点共『セミの図鑑 zikade.world.coocan.jp』)

 
ヒメハルゼミの事はあまり知らないので、ちょいとWikipediaで調べてみた。

ヒメハルゼミ(姫春蟬)
学名 Euterpnosia chibensis
カメムシ目(半翅目)・セミ科に分類されるセミの一種。
西日本各地の照葉樹林に生息し、集団で「合唱」することが知られる。他のセミは生息分布域が面であるのに対し、ヒメハルゼミは点で表される。
(・∀・)ん❗❓ どうゆう意味❓ようするに分布が極めて局所的って事か…。
自分の言葉に変換した方が良さそうだ。以下、要約しよう。

飛翔力があまり強くなく、分布を広げようとしない性格に加え、生息条件も限られるために稀少なセミである。
成虫の体長はオス24-28mm、メス21-25mm、翅端まで35mmほどで、ハルゼミと同じくらいの大きさである。

 
【ハルゼミ♂】

【同♀】

(出展『セミの家』)

 
えっ❓ハルゼミと同じ大きさなのに何でヒメハルゼミなの❓ 普通、昆虫の名前にヒメと冠される場合は、その仲間の中では小さいモノであることを指す。なのに、同じ大きさなのに、何でヒメ❓
まあいいや。掘り下げるとロクな事がなさそうなので、スルーしておこう。

外見はハルゼミに似るが、ハルゼミより体色が淡く、褐色がかっている。前翅の翅脈上に2つの斑点があり、さらにオスの腹部には小さな突起が左右に突き出る。頭部の幅は広いが、体は細長い。オスの腹部は共鳴室が発達しており、ほとんど空洞となっていて、外観も細長い。一方メスは腹部が短く、腹部の先端に細い産卵管が突出する。
それにしても産卵管が異様に長いよね。木のどっかのメチャメチャ奥に産卵すのかな❓

 
【分布】
基亜種ヒメハルゼミ E. c. chibensis は西日本の固有種で、新潟県・茨城県以西の本州・四国・九州・屋久島・奄美大島・徳之島に分布する。
学名の小種名 “chibensis” は「千葉の(に棲む)」の意である。地名に因んだ学名の場合は、後ろに「ensis」が付けられからね。
生息域はシイ、カシなどからなる丘陵地や山地の照葉樹林で、人の手が入っていない森林に集団で生息する。

 
【生態】
成虫は6月下旬頃から現れ、8月上旬頃まで見られる。
オスの鳴き声はアブラゼミに強弱をつけたようで「ギーオ、ギーオ…」「ウイーン、ウイーン…」などと表現され、集団で合唱する習性をもつ。1頭が鳴き始めると周囲のセミが次々と同調し、やがて生息域全体に広がる。同様に鳴き終わる時は次々と鳴き止んでゆく。局所的に生息するために鳴き声を聞く機会は少ないが、発生期に生息地の森林に踏み入ると「森の木々が鳴いている」とも表現される蝉時雨に見舞われる。特に夕方に連続してよく鳴く。
走光性が強く、成虫や羽化直前の幼虫は光に集まる。
セミに走行性があるのは知っていたが、へぇー、幼虫まで光に集まるのね。

 
【保全状況】
照葉樹林が開発で伐採されることにより生息地が各地で減少しているが、同時に各地での保護活動も盛んである。
分布の北限に近い3ヶ所の生息地が、国の天然記念物に指定されている。

茨城県笠間市  片庭ヒメハルゼミ発生地(1934年指定)
千葉県茂原市  鶴枝ヒメハルゼミ発生地(1941)
新潟県糸魚川市 能生ヒメハルゼミ発生地(1942)

他にも、神奈川県箱根湯本の早雲寺周辺=箱根町指定天然記念物,岐阜県揖斐郡谷汲村花長下神社天然記念物 =岐阜県指定天然記念物,愛知県蒲郡市相楽町=愛知県指定天然記念物など.福井県,鳥取県,山口県などで愛知県蒲郡市相楽町など自治体レベルで絶滅危惧種や天然記念物に指定している所が数多くある。

 
【亜種】
オキナワヒメハルゼミ(沖縄姫春蝉)
E. c. okinawana Ishihara, 1968
 

(出展『インセクトアイランド』)

 
ダイトウヒメハルゼミ(大東姫春蝉)
E. c. daitoensis Matsumura, 1917


(出展『生物多様性センター』)

 
南大東島・北大東島に分布する固有亜種。体長25-30mmで、基亜種よりやや大きい。海岸部のアダンやススキなどからなる群落に生息し、成虫は3月~4月(西海岸の産地では6月~7月)に発生する。基亜種とは多くの差異があり、隔離分布地で独自の種分化を遂げたと考えられている。また個体変異も著しく、色彩・模様の両極端な個体を並べると、とても同一亜種とは思えないほどである。海岸部の開発で生息地が減少しており、環境省レッドリストで絶滅危惧II類(VU)に指定されている。南大東島では楽観はできないものの、比較的持ち直しつつある傾向が見られるが、北大東島では主な生息地に近年道路が造られ、種の存続が大いに危ぶまれている。

基亜種のヒメハルゼミとは随分と棲息環境が違うんだね。深い照葉樹林と海岸のアダンやススキとでは、棲む環境が天と地ほどに違う。大東島といえば絶海の孤島だ。昔々、何かの拍子に偶然に流れ着いたヒメハルゼミが、仕様がなしに島の環境に適応したんだろね。ガンバレ❗、ダイトウヒメハルゼミちゃんって感じだな。。
そういえばハマヤマトシジミを探しに南大東島に行った時に、いねえかなあと思ってたんだよね。でも2月だったから、まだ発生していなかった。大東島は面白かったから、また行きたいな。

他に同属種にイワサキヒメハルゼミがいる。

イワサキヒメハルゼミ(岩崎姫春蝉)
E. iwasakii (Matsumura, 1913)


(出展『インセクトアイランド』)

 
ヒメハルゼミの亜種ではなく別種とされる。体長19-28mmで、ヒメハルゼミよりも更に細長い体型をしている。石垣島・西表島・与那国島に分布し、成虫は4〜8月に発生する。種名は八重山諸島の自然を研究し功績を残した岩崎卓爾に対する献名である。

その他ヒメハルゼミ属のセミは東南アジア・中国・台湾にかけての熱帯・亜熱帯域に広く分布する。

                       おしまい