奄美迷走物語 其の十

 
第10話『メリーゴーランドは回り続ける』

 
2021年 3月27日

夜は天気が悪かったが、朝になると再び晴れだした。
誤算続きだが、それだけがまだしもの救いだ。

連日通った根瀬部に行くか、それとも朝からあかざき公園に行くか迷ったが、あかざき公園を選択した。
理由の第一は、根瀬部でフタオチョウを狙っても網が届かない事を痛いほどに知らしめられたからだ。今のところ、それに対する打開策もない。となれば、行っても結果はまた同じで、返り討ちになりかねないと判断したのだ。
と言っても、あかざき公園のフタオのポイントは知らない。知らないが、樹高は根瀬部よりも比較的低い。ゆえにポイントを探しあてれば、何とかなるんじゃないかと考えたのだ。

 
【フタオチョウ 夏型♀】

 
第二の理由は、昨日あかざき公園でアカボシゴマダラを見たからだ。根瀬部では見ていないから、まだ発生していない可能性がある。つまり、あかざき公園ではフタオとアカボシの両方を見ているだけに、2種類とも採れるチャンスがあるのではないかと考えたのだ。

 
【アカボシゴマダラ 夏型♀】

 
第三の理由は、あかざき公園にはイワカワシジミの食樹が沢山ある。なのでフタオを早々とゲットできれば、素早くそっちの探索に切り替えられると思ったのだ。この2種が落とせれば、あとは一番難易度が低いアカボシだ。夕方に占有活動をとるから、それに会えさえすれば何とかなる。あかざき公園のアカボシは何度も採っているので、ワシの網でも届く場所を知っているのだ。判断が置きにいってるきらいもあるが、決めたならば突き進むしかなかろう。3種類とも採れれば、走者一掃の逆転スリーベースだ。今までの誤算と失態を全てチャラにできる。俺なら、それが出来る❗キャシャーンがやらねば誰がやる❗

 
【イワカワシジミ】

 
今回の旅では、朝からあかざき公園に来るのは初めてだ。
意外にもアマミカラスアゲハが結構いる。

 
【アマミカラスアゲハ 春型♀】

 
道路沿いが蝶道になっており、飛ぶ高さも低い。取り敢えず♂でもいいから採りたいという人には、お薦めの場所かもしれない。
けれどもミカンの花は見た限りではないから、♀を採るのは難しいかもしれない。ちなみにアゲハ類が好きなツツジの花は一部で沢山咲いている。しかし吸蜜に訪れたものは雌雄ともに一つも見ていない。但し、ずっと花場で張っていたワケではないから偶然見かけなかっただけなのかもしれない。ゆえにコレに関しては情報を鵜呑みにはなさらぬように。

取り敢えず、道路の一番奥まで行ってみた。ここまで入ったのは初めてだ。実を言うと、秋に来た時には直ぐにアカボシのポイントが見つかったので、ポイントを探して公園全部を隈なく歩いてはいない。

 

 
やっぱ、奄美の海はキレイだ。
たぶん半島の左側の集落が知名瀬で、山の向こう側が根瀬部だろう。
海の手前の林縁の連なりを暫し見渡す。いかにもフタオやアカボシがいそうな環境に見えたからだ。ここなら見渡しが良いから、ワシの千里眼ならば居ればすぐにワカル。段々ヤル気が出てきたよ。本気になれば、新たなポイントも見つかるだろう。

しかし、30分くらい居たけど姿なし。仕方なく他を探すことにする。(・o・)何で❓ 結構、ポイントを読む能力には自信あったのになあ…。どうやら完全に迷路の住人だ。足元の砂が波に崩れてゆくような感じだ。徐々に自信と時間が削り取られてゆく。

 

 
そういやレンタルバイクの写真を1枚も撮ってないなあ。
そう思って、今更ながらに撮る。ようするにヒマなのである。フタオもアカボシもイワカワも1つもおらん。

 

 
思うに、この赤いメットが全ての元凶なのかもしれない。以前は名瀬でレンタルバイクを借りていたのだが、その時にいつもカブっていたメットが験担ぎ(げんかつぎ)のアイテムみたいになっていた。

 

 
(-_-メ)ワリャ、シバキ倒すぞ❗
である。

 

 
この💀ドクロマークが気にいってて、当時は何かパワーの源みたいになっていたのだ。謂わば気合い注入装置みたいなもので、これをカブると心にビシッとキックが入ったのだ。でもって、バンバンに蝶が採れたのである。
だが、そのレンタルバイク屋は廃業したから、今や借りたくとも借りられない。べつにモノに頼って採集しているワケではないけれど、ある程度はモノや物事には依拠はする。自分の心を強化するために使えるものは何でも使う主義なのだ。前向きになれる材料を積極的に取り込まなくては、弱い人間は簡単に心が折れかねないのだ。
世の中には、本当の意味で強い人間は存在しない。いるのは、弱い人間と強い振りができる弱い人間だけだ。

今まで気にも止めていなかったが、ふと見るとナンバープレートが可愛い。なので、つい写真を撮ってしまう。

 

 
デザインにアマミノクロウサギとヒカゲヘゴがあしらわれている。そして下側には「世界自然遺産へGo!!」の文字がある。
そういや、宿のオジーが「島では、十年ほど前から毎年のように世界遺産、世界遺産と騒いでいるが、もはや何も期待していない」云々みたいなことを言ってたな。
その後、大阪に帰ってから奄美大島と徳之島、沖縄本島北部が世界自然遺産に7月に選定されることが5月にほぼ確実になった。喜ばしい事ではあるが、観光客がドッと押し寄せて来て、かえって自然破壊が進まないことを祈ろう。
そして正式決定すれば、どうせ採集禁止種や禁止区域がまた増えるんだろね。そのくせリゾートホテルの建設とかは野放しで、平気でバンバンに木を伐って、ポコポコ建ちそうだけどさ。所詮、世界遺産も経済の発展を目論んでのもので、それ無くしては推進されない面があるのだ。嘆かわしいが、金儲けが全てにおいて優先されるのが現代社会なのである。
エコとかも、所詮は金儲けの手段にすぎないと思ってる。ヤシの実洗剤やヤシの実石鹸のせいで、どれだけの貴重な森が伐採されてパーム椰子(アブラヤシ)畑に変えられた事か。今や東南アジアは何処もパームとゴムの木だらけだ。何が「手肌と地球に優しい」だ。偽善じゃないか。正義の御旗を偉そうに振る奴にロクな者はいない。

結局、探しあてられずに慰霊塔へ行く。

 

 
でも、見せ場なしのノールック、ノーチャンス。
結局、フタオ、アカボシ、イワカワのどれ1つとさえ見ること叶わなかった。見もしないものを採れるワケがない。
だとしても、何が「キャシャーンがやらねば誰がやる❗」だ。ちゃんちゃらオカピーだ。偉そうに啖呵(タンカ)切っといて、結果がコレかよ。
(;_:)あー、もう何をどうしたらいいのかワカンナイや。
まるで同じところを延々と回り続けるメリーゴーランドの馬に乗ってるような気分だ。何処にも行けないし、何処にも辿り着けない。

                         つづく

 
追伸

話は尚も続く。
ネットの天気予報の全てが夜からは雨マークだったので、今宵も夜間採集には出ないことにした。たとえ雨じゃなくとも、どうせ多くは望めない。こんな体たらくだと、さらなる返り討ちにあって、益々惨めな気分にさせられるだけだ。

今朝にはラーメン大好き小池くんも東京に帰ってしまったし、ゲストハウス涼風には誰も今夜も遊びに来ない。連日のパーリーがウソだったんじゃないかと云うくらいの落差だ。
それでも昨日よりかはマシか…。入れ替わりに、新しく東京から来た医大生と二人組の若者が増えた。何れも虫屋である。医大生のSくんに、若者2人が興奮していた。虫屋でツイッターをしている者ならは、誰でも知ってる有名人らしい。そうゆうSくんも、ブログやFacebookでワシのことを知っていたので驚いた。まあまあワシも有名らしい。ホンマかいな❓
若者2人は最近になってツイッターで知り合い、それぞれ大阪と東京に住んでいるのにも拘らず、奄美大島に一緒に来たという。意気投合したのだろうが、ネット上で知り合って、しかもまだ日が浅いのによく二人で旅行なんて出来るよな。知らない人がネット上でワシのことを知っているという事も含めて、オジサンには考えられない世界だ。時代は虫屋の世界でも急速に変貌しつつあるのだ。
ちなみに医大生は蝶屋、若者2人は甲虫屋で、大阪の子がカブトムシとクワガタ好きの所謂(いわゆる)カブクワ屋。東京の子は驚きの「ドロムシ屋(註1)」だった。あっ、ドロムシ云々は間違ってたらゴメン。たぶんそれであってる筈だけど、あまりにも興味がなかったゆえ、テキトーにしか話を聞いていなかったから断言はできない。それでも水溜まりとかにいる極小の甲虫だと言ってた覚えがあるので、ドロムシ&ヒメドロムシハンターであってると思う。

それはさておき、若いのにいきなりマイナーな虫から入るってのも驚きだ。通常は蝶とかカブクワとかカミキリムシなどのメジャーな虫から入って、徐々にマイナーな虫へと興味の対象が移行してゆくものだからね。小太郎くんから、最近はそうゆう若い子が増えていて、知識量も相当あるとは聞いてはいたが、ホントだったんだね。そういや、医大生くんはドロムシの話に全然ついていけてたな。小太郎くんもそうだけど、若い子はオールラウンダーが多いのかもしれない。だとしたら、ポテンシャルは高い。

若者二人組が唐揚げ(何の唐揚げだったかは忘れた。或いは天ぷらだったかもしれない)を作り始めた。でも料理作りに慣れていないせいか、見てらんないくらいの出鱈目っぷりだった。本人たちからすれば上手くいったみたいだが、オラからすれば、どうみても失敗作だ。
かなり酔っ払っていたが、それを見て若者たちに美味いもんを食わせてやろうとカッコつけたのがいけなかった。ここで、この日最後にして最大の誤算が起こる。
タコに軽く火を入れて霜降りの半生状態にしようと思い、酒と水とでサッとボイルした。それをザルにあけて冷水で冷やすために鍋をシンクに素早く移動させようとイキってノールックで振り返った時だった。

💥( ゚∀゚)o彡ガッシャーン❗

あいだにあった洗い物の山にガーンと鍋がぶつかって、その勢いで熱湯が大きくハネて、ワシの胸に思いきしかかったのだ。
酔っ払ってるので、そんなに熱くは感じなかったが、一応洗面所に行って水で冷やした。
しかし時間が経つにつれてジンジンと痛みだした。それでも酔っ払ってるので、その時はたいした事ないだろうと思ってた。でも翌朝みたら、『北斗の拳』のケンシロウみたく左胸の上から右胸の下にかけて、斜めザックリに大きな火傷キズができてた。
誤算のドミノ倒し、ここに極まれり。まさか自分が奄美大島に来て火傷を負うとはミジンコほどにも思ってなかったよ。目的の蝶が採れないのも全くもって想定外ではあったが、大きな枠組からみれば想定内ではある。天気がずっと悪かったとか、網がブッ壊れただとかのアクシデントは、パーセンテージとしては低いものの、充分あり得るからね。でも火傷するなんてウルトラ想定外の大誤算だ。又しても誤算続きの一日で、最後の最後にはコレかよ❓
(ㆁωㆁ)白目、剥きそうやわ。
迷走と誤算のループは、リインカネーションのように負のエネルギーを再生し続けている。

                     つづくのつづく

 
一応、その時の料理の画像を貼っつけておく。

 
【蛸の霜降り ニラ醤油漬け】

 
勿論、若者たちには好評であった。
しかし、今となっては細かい記憶が曖昧だ。
ニラはスーパーで2束60円くらいで売ってたものだ。それは憶えているのだが、酔っ払ってたせいか肝心の料理のレシピが思い出せない。火傷したんだから、流石にタコを霜降りにしたのは憶えてる。問題は味付けだ。ワシが醤油だけで味付けするなんて事は有り得ないから、酒とか味醂を入れたのだろう。或いは冷蔵庫にあった袋入りの何かのタレ的なものを使って醤油と混ぜて調整したのかもしれない。
あと、画像を見ると上に香辛料らしきものが乗っている。コレの正体もワカラン。全く記憶にないのだ。色からして生姜や辛子ではない。となると柚子胡椒か山葵だろう。
まあ、若者二人は喜んでくれたし、自分の記憶でも旨かったという事だけは残ってるから、まっいっか。
 
今回もカタルシスがなくて、誠に申し訳ない。特に今回は何ら盛り上がるシーンもなかったから、尚のこと読み手側はツマランかっただろう。ホンマ、すいませんm(_ _)m
しかし事実であってフィクションではないんだから、仕方がないのである。

 
(註1)ドロムシ屋
ドロムシとは、ドロムシ科とヒメドロムシ科に属する甲虫の総称。世界各地に分布し、一部を除き水生で、夜間に活動する。日本にはドロムシ科が3種、ヒメドロムシ科が45種前後産することが知られている。

 
【ムナビロツヤヒメドロムシ】

(出展『mongoriz‐2のブログ』)

 
極小昆虫だ。下に方眼紙が敷いてあるので、如何に小さいかがよくわかりますな。敬意を込めて言うが、こんなの採るなんて変態だ。裏を返すとスゴい事だと思う。探すの大変そうだもんね。とてもじゃないが、自分には真似できない。
で、そのドロムシやらヒメドロムシの愛好家のことを「ドロムシ屋」と呼ぶ。虫好きの間では、この「〜屋」という言葉がしばしば用いられ、各ジャンルのマニアの称号として後ろに付けられる。例えばワシならば「蝶屋」だ。つまり蛾好きなら「蛾屋」、カミキリムシ好きなら「カミキリ屋」、カブトムシ&クワガタ好きならば「カブクワ屋」ってワケだすな。

冒頭の説明では簡素すぎるし、ちょっと興味が湧いたので、もう少し調べてみることにした。

ネットの『山陰のヒメドロムシ図鑑』によると、以下のように書いてあった。
「分類上はコウチュウ目のヒメドロムシ科・ドロムシ科に属しています.体長1-5mmほどの小さな甲虫です.川の底にすんでいて,石や流木などに,鋭いツメでつかまっています.呼吸は水中の酸素を直接取り込むとされています.外見からはあまり水生昆虫らしく見えませんが,高度な呼吸方法を持っている昆虫なのです.山陰の川にはたくさんのヒメドロムシがすんでいますが,あまりに小さいため,これまでほとんど注目されていませんでした.さらに調査を行えば,きっとたくさんの発見をすることができるでしょう.」

高度な呼吸法について補足すると、この類は一般に体の下面に微毛が密生し、そこに蓄えられた空気の薄い層が気門と連なることによって水中で呼吸が可能なんだそうだ。なので水底にある石に付着したり、砂中に潜っていることができるんだとさ。尚、幼虫も同じく水生である。

いずれも10ミリメートル以下の小さな甲虫で、殆んどの種が長めの楕円形から細長い形であるが、卵円形のものもいる。殆んどの種が暗色だが、淡色紋を有するものや全体が明るい褐色のものもいる。肢は細長いが、ツメは大きく発達し、岩などに掴まるのに適している。触角は多くは糸状であるが、一部の種、特にドロムシ科では太くて短く、棍棒状をなす。

ドロムシ・ヒメドロ類を採集するには大きく二つの方法があるそうだ。一つは灯火採集法(ライト・トラップ)。多くの種が灯りに集まる習性があるので、それを利用するというワケだね。
しかし灯りには来ない種もいるから、そういう種は川から直接採集する。謂わば正攻法ですな。これが2つ目の採集方法。
成虫は川底の石などにくっ付いているから、川底を撹拌してやると体が浮き上がって下流へと流されてゆく。しかし鋭いツメを持っているので、すぐさま石や流木などに掴まることができる。その直ぐモノに掴まる習性を利用して、流れ下るのを底に穴をあけた目の細かなネットや手ぬぐいなどの白布を使ってキャッチするんだとさ。
ふ〜んである。世の中には色んな虫がいて、それを工夫して採られている方もいるんだね。

余談だが、以前は奄美のムナビロツヤヒメドロムシは別亜種とされてきたが、近年になって別種として分けられ(Jung&Bae 2014)、「リュウキュウムナビロツヤヒメドロムシ」という新たな和名が付けられている。東京のドロムシ屋の子は、たぶんコレを採りに来たんだろね。
それにしても、クソ長い名前だよなあ。なんと数えたら16文字もあったわい。亜種から別種に昇格したゆえ、やむなしなところはあるが、もちっとネーミングに工夫があってもいいんじゃないかと言いたくなる。このクソ長い和名問題は他にも多数あるから、そうゆうのを見るたびに軽い苛立ちを感じるよ。虫屋って全体的にセンス悪い人が多いんじゃないかと勘ぐりたくもなる。まあ、子供の名前も同じようなものだから、虫屋だけじゃないんだろうけどさ。

 

奄美迷走物語 其の八

 
  第8話『白き騎士』

 
2021年 3月25日

今日も腐ったアタマで起きる。
時計を見ると既に10時。また痛飲でござるよ。
まあどうせ予報通り雨だろうと思ってカーテンに目を移すと、何だか様子がオカシイ。もしやと思ってベランダに出ると、何と快晴だった。

 

 
そういえば昨夜、酔っ払って小池くんに『明日は晴れる❗まっかせなさーい❗』とか言ってたが、半分希望的観測で言ってただけなのだ。何となくそんな気がして口走ったのだが、夜は採集に出ずで空を見てないから確信があったワケではない。スーパー晴れ男の面目躍如と言いたいところだが、南国の天気はワケわからんわい。こっちの天気予報って何なん❓全然信用でけんやないの。

大急ぎで支度してバイクを駆って西へ。
今回は知名瀬林道をスルーして、更に西へと進む。
毎回、同じポイントに行くのは、実を言うと好きではない。本来的には飽き性なのだ。何度も通ったのは単に知名瀬がアマミカラスアゲハの♀が採れる可能性が一番高いと判断したからにすぎない。でも♀は昨日採れたから、自分的にはもう行かなくても済むやって気持ちなのだ。

やがて、右手に海が広がり始めた。
まだ白波が立っているから奄美本来の海の青さではないが、それでも青い。ワンテンポ遅れて潮の香りが鼻腔にカウンターパンチを送ってくる。海だなあ…。心がほわっとゆるむ。
いい感じに地平線の上も青空だ。本来は海の男ゆえ、俄然テンションが上がる。やっぱ南の島は、こうでなくっちゃね。

午前11時過ぎ、根瀬部の集落へと入ってゆく。
懐かしい風景だ。昔と殆んど変わっていない。

林道の入口横にバイクを停め、小道に入る。先ずはイワカワシジミを探そう。この道の途中にイワカワシジミの食樹であるクチナシがあった筈だ。
足元が覚束ない。何だかヽ((◎д◎))ゝフラフラする。正直言って、体調は奄美に来てから最悪のコンディションだ。まさか晴れるとは思っていなかったら、調子に乗って飲み過ぎた。風景は微妙にゆらゆらするし、自分でもまだ酔っ払ってるのがワカる。
腐った脳ミソで川沿いに歩くと、フェンスのある明るい場所に出た。そこにはまだクチナシの木があった。この木で何度かイワカワシジミを採っているのだ。

 
【イワカワシジミ各種】

 
しかし上から見下ろしたところ、姿は見えない。
仕方なく引き返そうとしたところで、フェンスの向こうから猛烈な犬の吠え声が飛んできた。見ると、奥の檻の中で2、3匹の犬が狂ったように吠えている。
檻の中にいるから恐怖心はない。しかし犬は大っ嫌いだ。天敵と言っていいほどに相性が悪い。何処へ行っても吠えられるから、いつも憎悪を滾(たぎ)らされてる。東南アジアでは犬が放し飼いになってる事が多いから、常にバトルだもんね。
吠えられてるうちに沸々と怒りがせり上がってきた。背中からメラメラと青白き焔が沸き立ち、💢プッツンいく。

(`Д´#)黙れ❗テメェ、ブッ殺すぞー❗

大声で激烈に叫んだら、吠え声がピタリとやんだ。
(`Д´)ボケがっ❗、気合勝ちじゃ。ワシの覇王色の覇気をナメんなよ。今後ワシにまた吠えたら、あらゆる方法で恐怖を骨の髄まで植えつけてやるわ。

道路に戻って少し歩くと、川向うの木で何かが飛んで直ぐに着地した。見ると蝶が羽を広げて日光浴している。
脳ミソが腐ってるから、最初はそれが何なのか理解できなかった。ムラサキツバメ❓ムラサキシジミ❓ウラギンシジミ❓記憶のシナプスが繋がらない。
5秒ほどしてから、漸くそれが何であるのかが解った。イワカワシジミの♂だ。けど尾状突起が無くて羽も擦れてる。
少し迷ったがスルーすることにした。あんなの採っても、どうせ展翅しないだろうから無駄な殺生になる。それに欲しいのは♀なのだ。

さらに進むと曲がり角に網を持ったオジサンが立っていた。

『こんにちわー。何、採ってはるんですかあ❓』
『フタオチョウだよ。』
『えっ、此処にもいるんですか❓』
『いる、いる。分布をドンドン拡大してて、最近では瀬戸内町でも見つかってるよ。』
『もう発生してるって事ですよね。例年、春型はいつくらいから発生してるんですかね❓』
『今年は20日くらいから発生してたね。もう4♂1♀ほど採ってるよ。』
そっか♀まで発生しているのか…。そういや自分もあかざき公園で見たもんなあ。と云うことは時期的にはまだ最盛期ではないにせよ、鮮度的にはベストな時期かもしれない。

 
【フタオチョウ Polyura weismanni ♂】

(裏面)

 
【同♀】

(裏面)

(出展『日本産蝶類標準図鑑』)

 
フタオチョウ(註1)は奄美大島には本来いないチョウだった。
てっとり早く説明する為に奄美新聞社の記事をお借りしよう。

「沖縄県の県指定天然記念物のチョウ・フタオチョウが近年、奄美大島でもよく目撃されるようになってきている。奄美市笠利町から名瀬までの広範囲で目撃情報があり、特にヤエヤマネコノチチなどの樹木の周りで見られやすいという。
フタオチョウはタテハチョウ科フタオチョウ亜科フタオチョウ属のチョウ。台湾や東南アジアに生息する。幼虫のエサはヤエヤマネコノチチやクワノハエノキといった植物。成虫は樹液や腐敗した果物に飛来する。
日本では従来、沖縄本島のみに生息し、同県の指定天然記念物となっていた。2016年ごろから奄美大島北部でも目撃・捕獲されるようになった。
奄美昆虫同好会の富川賢一郎会長によると、沖縄から何らかの原因で迷蝶として飛来した可能性もあるとのこと。」

補足すると、迷蝶ではなくて誰かが沖縄産を放蝶したものが増えたと考える意見の方が多いようだ。自分もその見解を支持する。なぜならフタオチョウが迷蝶として採集された記録が少ないからだ。台湾と与那国島は近いが、台湾のフタオチョウが与那国島で見つかった例はない筈だし、沖縄本島のものが別な島で見つかった例も極めて少ないからだ。たぶん石垣島の1例のみしかなかったんじゃないかな。それも目撃情報で、しかも2018年だから奄美のモノを石垣に放した事が疑われる。
そもそもフタオチョウのような森林性の蝶はオープンランドの蝶みたく海を越えるような大移動はあまりしないと言われている。ゆえに沖縄本島から奄美まで飛んで来たという可能性は極めて低いと考えるのが妥当だろう。両島は距離にして340kmも離れているのである。
他に可能性が考えられるのは、たまたま卵や幼虫・蛹が付いた食樹が植栽されたというパターンだが、ヤエヤマネコノチチやリュウキュウエノキなんて誰も他から持ってきて植栽しないだろう。花がキレイなワケでもなく、食用にされるワケでもないから、植栽する価値のない植物だし、そもそも両方とも奄美には自生しているのだ。

ヤエヤマネコノチチには馴染みがないので、Fさんにどんな木ですか?と尋ねたら、わざわざ生えている場所まで案内してくださった。いい人である。

 
【ヤエヤマネコノチチ】

 
奄美に入って、たぶんコレなんじゃないかと思ってた植物とは全然違ったものだった。ワシって飼育をしないから植物の同定能力がアッパッパーなのである。

ポイントに戻ってきたら、Fさんが空を指さした。
『ほらほらアソコ❗、フタオが飛んでるよ❗』
見ると、青空をバックに白い蝶が高速で飛んでいる。しかし、グルッと一周すると反転して、アッという間に何処かへ消えてしまった。
形と大きさからして、たぶんオスだろう。
いる事が分かったら何だか安心した。いる場所さえ分かれば、楽勝で採れると思ったのだ。ゆえにフタオの事はさておいて、Fさんと暫く雑談する。ここは情報収集の方が大事だろう。

Fさんは奄美在住で、標本商をされているという。奄美のフタオの最初の発見者ではないが、2017年には逸早くフタオについての報文を書いておられ、土着している事実を突き止めたのは氏らしい。
また、奄美で日本屈指の美迷蛾であるベニモンコノハ(註2)を見つけて、大量に採ったのもFさんなんだそうな。

 
【ベニモンコノハ】

(出展『世界の美しい蛾』)

 
ベニモンコノハについては、当ブログにて『未だ見ぬ日本の美しい蛾1』と題して書いたから、その時に論文を読んでいる。たぶん20頭くらいタコ採りされたんじゃなかったかな。
蝶だけでなく蛾も採られるというのは渡りに舟だ。せっかくだからアマミキシタバの事も訊いておくことにした。

 
【アマミキシタバ Catocala macula】

(出展『日本産蛾類標準図鑑』)

 
『アマミキシタバって根瀬部にもいるんですかね❓』
『いるよ。数は多くないけど、この辺だったら何処にでもいるよー。』

『灯火採集だと、何時くらいに飛んで来るんすかねー❓』
『基本的には11時を過ぎないと飛んで来ないかなあ。』

『あと糖蜜とかバナナトラップにも来ますかね❓』
『来る、来る。全然寄って来るよ。』

『ところで幼虫の食樹が去年判明したみたいですけど、アレって何の木ですかね❓』
長年、アマミキシタバの幼虫の食樹は不明とされてきたが、去年に飼育下においてだが判明したそうなのだ。しかし論文が見つけられず、詳細は分からなかったのである。
『たぶん、ウドだったんじゃないかなあ。』
『えっ、ウド❗❓ウドってあのウドの大木のウドですか❓』
『いや、そのものじゃなくて、別種のウドの仲間じゃなかったかなあ。』
ウドなんて全く想定外の植物だったから驚いた。
『あともう一つ別な系統の植物を食ってた筈だよ。けど思い出せないなあ。何だったっけかなあ❓』

結局、Fさんは思い出せなかった。ウドというのも俄に信じ難いところもあるから、本当の事はワカラナイ。Fさんの記憶違いかもしれないし、自分の聞き間違いというかメモリーエラーかもしれない。何せ二日酔いで脳ミソが腐ってたからね。

他に行く所があるからと、Fさんは昼過ぎには去って行った。
色々と御教示下さり、有り難う御座いました。礼(`・ω・´)ゞ
正直、ラッキーだった。数々の重要な情報を得られたからね。昨日、アマミカラスの♀が採れた辺りから流れが良くなってきてる。Fさん曰く、オスがテリトリーを張るのは午前11時くらいから午後2時くらいまでらしい。つまり、まだまだ時間的余裕がある。この調子で楽勝街道爆進じゃい❗

誠に恥ずかしい話だが、正直に吐露しておくとフタオがテリ張りするのは、アカボシゴマダラやオオムラサキ、スミナガシなんかと同じく午後3時前くらいから夕方にかけてだとばかり思い込んでいた。タテハチョウ科のオスの縄張り争いは時刻のズレこそ多少あるものの、知る限りでは全てそうなのだ。ゴマダラチョウ然り、コムラサキ然りだし、他にもアカタテハ、ルリタテハ、メスアカムラサキ、リュウキュウムラサキも夕方なのである。だから昼間に占有行動するなんてコレっぽっちも考えなかったのだ。
それに図鑑によってはフタオチョウが占有行動をする事が書かれていない事もあり、また書かれていても時刻については言及されていないのである。あの蝶の生態について最も詳しく書かれていると云う『原色日本蝶類生態図鑑』の第2巻 タテハチョウ編でさえ占有時間帯は書かれていないのである。

雑談中もフタオは何度か飛んで来たが、何れも高い位置を飛んでおり、全く止まらなかった。とゆう事は、もっと他に採り易いポイントを探した方が良さそうだ。
とりあえず裏へ回ってみたら、ミカン畑になっていた。コチラ側の方が見通しがいい。おそらく飛び回っていた個体はコチラ側の何処かに止まっており、時折飛び出して辺りを見回っていたのだろう。ならば此処で待ってれば採れそうだ。
麓の林縁もチェックしようとしたら、左手から白い蝶が猛スピードで飛んで来た。高さは2mから3mくらい、届く範囲だ。しかし振ろうとした瞬間に軌道を変えて、射程外になった。
後ろ姿を見送りながら、❗❓と思った。大きさ的には♂のフタオと同じか少し小さいくらいだろうが、フタオにしては白すぎる。黒い紋が殆んど入っていないように見えた。とゆうことは、たぶんフタオではない。おそらくウスキシロチョウかウラナミシロチョウだろう。でもウスキシロならば、もっと黄色いからウラナミシロの可能性大だ。

 
【ウラナミシロチョウ♂】

【同♀】

(出展『Aus−lep』)

 
林縁まで来ると、今度は頭上5mくらいをタテハチョウらしき白い蝶が滑空していた。何だよコッチだったかと思ったが、飛び方が滑るようだし、フタオほど高速ではない。
暫く下から様子を見て、漸く気づいた。たぶんガッキー、イシガケチョウだろう。

 
【イシガケチョウ】

(出展『日本産蝶類標準図鑑』)

 
何かヤキが回ってるなあ…。
どうしようもなく感覚が鈍(なま)ってる。考えてみれば、去年は蝶採りに行ったのは数えるほどだ。ギフチョウが3回、スミナガシの春型が1回、夏に長野県で小太郎くんとムモンアカシジミ&オオゴマシジミで2日間、あとは同じく小太郎くんと行った蝶採りとしてはユルい河川敷のミヤマシジミ&クロツバメシジミくらいだ。そういやルーミスにも行ったな。でも3人で行って3人とも1頭たりとも見なかったから、網を振った回数はゼロだから、行ったうちに入らない。ようは何が言いたいかというと、実戦から遠ざかると腕も鈍るという事だ。野球でも何でもそうだけど、振り込まないと実力は上がらないし、サボると下手ッピーになるのだ。

また裏側ポイントに戻ると、突然、梢から蝶が飛び出して来た。逆光だが飛び方を見てコイツかあ❗と身構えたが、直ぐにその姿はアオスジアゲハに変わった。

 
【アオスジアゲハ】

 
アゲハの仲間(Graphium)だから、厳密的にはタテハチョウとは飛び方が少し違うのだが、かなり近い飛び方なのだ。大きさ的にも同じくらいだし、逆光もあったから見間違えたのだ。逆光だと緑色が飛んで白っぽく見えてしまうのである。緑色のとこを白に塗れば、デザイン的に両者は案外似ていなくもないしさ。とはいえ、アオスジアゲハと間違えるだなんてダサ過ぎ。ヤキまわりまくりである。

そのうち曇り始めた。おいおいである。フタオチョウは基本的には光が射していないと飛ばないのだ。

いたずらに時間が過ぎてゆく。
暇つぶしにアマミカラスの♀をいくつか採った。ここはブヨもいないし、知名瀬よりも安心して採れる。先にこのボイントを見つけていれば、あんなに苦労しなかったのにね。
ガックリだが、あれはあれでいっか…。あれキッカケで奄美の教会の美しさや、その悲しい歴史を知ることができたからね。

午後2時半。
また晴れ始めたと思った途端、白い蝶が現れた。南国の青い空を背景に悠然と飛翔している。2つの剣のように尖った尾状突起もハッキリと見えた。まるで誇り高き白き騎士だ。相手にとって不足なし。瞬時に戦闘態勢に入る。
だが、睥睨するかのように頭上を飛び、飽きたように突然プイと踵(きびす)を返して梢の向こうへと消えていった。
間違いなくフタオチョウだ。もうインプットした。これから先は他の蝶と間違うこともないだろう。高さも一番低いところでは5mくらいだったから、今回持ち込んだ6.3mの長竿でも届く。たぶん此処はパトロールのルート上にあるに違いない。

その後、フタオは2度と飛んで来なかったが、これで心には余裕が生まれた。飛んで来るルートが解り、採集可能な場所さえ見つければ、コッチのものだ。明日には間違いなく採れるだろう。まあまあ天才をナメてもらっては困るのだ。

午後3時半に、あかざき公園に移動してきた。
フタオチョウが発生しているのは解った。あとはアカボシゴマダラが発生していれば、目的は果たされるだろう。居ないもんは採れんが、居るとわかればどうにかなる。
だが、慰霊塔で待つも、ついぞアカボシもフタオも姿を現さなかった。たぶんフタオよりもアカボシの方が発生は少し遅れるのだろう。とはいえ、もうそろそろ発生するだろうから明日辺り両方まとめて採れんだろ。そう、いつものメンタルならば、いつも通りの結果が出るっしょ。

宿に帰る。
今日の宴会は蛸パーティらしい。
昨日、女の子たちのために地元のアンちゃんたちがタコと伊勢海老を獲ってきたのだ。可愛くて明るい女の子は得だよね。
その女の子たちが作ってくれた蛸の刺身を食う。

 

 
旨いんだが、少し生臭い。
たぶん塩揉みが足りなかったのだろう。タコは大量の塩でシツコイくらいに揉まないと生臭みが取れないのだ。だから一番簡単な方法は洗濯機にブチ込むことだ。とはいえ家庭では精神衛生上、中々できるものじゃないけどね。自分もそれは無理だわさ。もしシャツやパンツが生臭かったら泣くもんね。生のタコって、下手すれば魚よりも生臭かったりするのだ。

🐙蛸パーティということは、今日はたこ焼きパーティなのかなあ❓でも関西ならまだしも、奄美大島なんかにタコ焼き器とか売ってんのかね❓御存知な方もいるだろうと思うけど、関西地方、特に大阪では一家に一台たこ焼き器があるのだ。たこ焼きパーティならば、またワイの腕の見せどころだな。でもどうせ今日は夜間採集に出るから、たこ焼きパーティなろうとなかろうと関係ないか。

他の料理はまだ出てきなさそうなので、『ホームラン軒』なるカップ麺を食う。

 

 
行ったことはないけど、大阪に『ホームラン軒』という有名ラーメン店がある。そこの監修のカップ麺じゃないかと思って買ったけど、百円だったから違う可能性大だ。味もどってことない。百円で買ったカップ麺に期待してはいけないね。

再び根瀬部を目指す。
今回も日没前にポイントに入った。
先ずは林道を少し入った所に「何ちゃってライトトラップ」を設置する。でもって周囲2箇所にバナナトラップも仕掛けた。

お次は、昼間にフタオチョウが飛んでいたポイントの林縁3箇所にバナナトラップを仕掛ける。Fさん曰く、ここにもアマミキシタバがいるということだから、今日こそはお会いしたいものだ。今夜アマミキシタバが採れれば、明日にはフタオとアカボシが採れるだろうから、一挙にほぼミッション完遂だ。夜に山を徘徊しなくとも済む。

犬に吠えられるのにビクビクしながらも、バイクで2地点を行ったり来たりする。まあ吠えられれば吠えられたで現実世界にいる事が確かめられるし、お化けを追い払ってくれるかもしれないから別に構わないんだけどもね。お化けよりかはまだしも犬の方が友だちになれる。暗黒世界の住人とは、一生友だちにはなれぬよ。
とはいえ、今日はそれほど闇に対する恐怖心はない。慣れてきたというのもあるけれど、人里から近いし、ライトを設置した場所も林道に入ってからすぐの所だからだ。真っ暗な林道を奥へ行けば行くほど恐怖感が澱のように積もってゆくのだ。夜の森では、想像力を逞しくすることは禁物なのだ。

大川ダムよりかはマシだが、集まって来る蛾の数はショボい。
バナナトラップにはオオトモエだけが何頭も寄ってくる。勿論のこと無視である。コッチへ来てからずっとコヤツしか来ないってのは何なのだ❓ 呪われてんのかよ。

 
【オオトモエ】

 
午後11時。
いよいよアマミキシタバが飛んで来る時間帯に入った。
ライトに集まる蛾の数も増えてきた。否(いや)が応でも期待値もハネ上がる。

午後11時20分。
ライトに見たことのないシャクガ(註3)が飛んで来た。

 

 
普段はシャクガなんぞ無視する事が多いのだが、寄って来るのは小汚いチビ蛾ばっかだから退屈でつい採ってしまう。

シャクガを三角紙に収め、ふとバナナトラップの方に目をやると、明らかにオオトモエじゃない大型の蛾が寄ってきてる。

もしやヒメアケビコノハ❓
もしヒメアケビコノハならば、採った事がないから欲しい。
ゆっくりと近づく。この旅での4度の夜間採集の中では初めてのドキドキかもしれない。この感覚が享受できなくっちゃ、夜の森に来る意味なんてゼロだ。

目の前まで来た。いやアケビコノハか❓とも思ったが、アケビっちよりも明らかに小さい。とゆうことはヒメアケビコノハか❓
えーい、グチュグチュ考えたところで蛾のとーしろ(素人)のオイラにワカルわけがない。ここは採って確かめるしかない。

網先で蛾の止まってる少し下を軽く突っつく。

(# ゚Д゚)わりゃ、逃がすかい❗

驚いて飛んだ瞬間に、マッハロッドで💥ズババババーン❗(註4)、電光石火⚡で網を下から上へとシバキ上げる。

 

 
(・∀・)うにゃにゃ❓
何だかアケビコノハっぽいぞ。ヒメアケビコノハの前翅は、こんなに枯れ葉っぽくなかったような気がする。
裏返してみよう。

 

 
(-_-;)う〜む。アケビコノハっぽいかも…。ヒメアケビコノハは外側の黒帯がもっと太かったような気がする。でも記憶は定かでない。アケビコノハにしてはかなり小さいし、脳はヒメアケビコノハだと信じたがってる。もしそうなら、此処へ来た意味もある。
ネットで調べようかとも思ったが、どうせ山の中だから電波が届かないだろうし、帰ってからのお楽しみにしよう。

その後、アマミキシタバどころか目ぼしいモノは何も飛んで来なかった。
午前0時半には諦めて撤退。
相変わらず、今一つ波に乗れないなあ…。

                         つづく

 
追伸
宿に帰って調べてみたら、やはりヒメアケビコノハではなくて、ただのアケビコノハであった。

 
【アケビコノハ Eudocima tyrannus】

 
ヒメアケビコノハは、もっと後翅外縁の黒帯が太いし、裏面も黒っぽいのだ。

 
【ヒメアケビコノハ Eudocima phalonia ♂】

【同♀】

【裏面】

(出展『jpmoth.org』)

 
調べたら、開張は90〜100mmもあり、アケビコノハと大きさは殆んど変わらないらしい。じゅあ、何で「ヒメ」なんて小さいことを表すような和名を付けたのよ❓解せんわ。

主に南西諸島で見られる南方系の蛾だが、本州,四国,九州,対馬,北海道でも記録がある。元々は迷蛾(偶産蛾)とされていたようだが、2000年代に入ってから採集例が増えており、本州でも見つかる機会が増えているそうだ。但し、確実に土着している場所は未だ見つかってないという。
国外では、台湾,インド,南大平洋諸島,オーストラリア,アフリカなどに分布している。広域分布だし、きっと移動性が強い種なのだろう。海の真っ只中で、船の甲板から見つかった例もあるようだしね。
主に8〜10月に見られ、樹液や果物に吸汁に集まる。
幼虫の食餌植物はツヅラフジ科のコウシュウウヤク、コバノハスノハカズラ、オオツツヅラフジ。

 
(註1)フタオチョウ
フタオチョウについては、台湾の蝶のシリーズの第2回で『小僧、羽ばたく』と題して書いたものを筆頭に『エウダミップスの憂鬱』『エウダミップスの迷宮』『エウダミップスの呪縛』と全部で4編も書いている。そちらの方を読んでもらいたいのだが、長いので要約して書いておく。

 
【学名】Polyura weismanni (Dobleday, 1443)
従来まではインドを基産とする「Polyura eudamippus」とされ、日本産には”weismanni”という亜種名が宛てられていた。尚、Polyura eudamippusは、ヒマラヤ西北部(ネパール,インド北東部)からインドシナ半島,マレー半島(キャメロンハイランド),ブータン,雲南省と海南島を含む中国西部,中部,南部,台湾まで分布する。日本産はそれに連なる最東端のモノだと位置づけられていたワケだ。しかし近年になって成虫や幼虫の形態、食樹が他の産地のものとは異なる事から別種となり、学名は亜種名が小種名に昇格した形になっている。
でも、この事実を知っている蝶愛好家はまだ少ないようで、ネットに掲載されている情報では、ほぼほぼ学名が以前の古い学名のままになっている。たぶん今ある図鑑も旧学名のままの筈だ。
尚、インドの原記載亜種(基産地アッサム)やインドシナ半島のもの(亜種 nigrobasalis)と基本的には同じデザインなのだが、実際にフィールドで見ると、かなり違った印象を享ける。

 
【Polyura eudamippus nigrobasalis♂】

(2011年 4月 ラオス・タボック)

 
とにかくバカでかいんである。♂でもこの大きさなのだ。
そして白くて、尾状突起が剣のように鋭く長い。日本のモノより先にインドシナ半島の奴に会っているので、その時に白い騎士のイメージが植えつけられた感がある。

 

 
裏面は日本のものと比べて帯が細く、色も黄色みが強くなる。
個人的にはコッチの方が美しいし、迫力があるから好きだ。

 
【和名】フタオチョウ
別種となったが、和名はそのままで「ニッポンフタオチョウ」や「リュウキュウフタオチョウ」「オキナワフタオチョウ」にはなっていない。正直、ダサいから変えないのが正解だね。
逆に従来フタオチョウと呼ばれていた原名亜種には「タイリクフタオチョウ」なる和名が提唱されている。微妙な和名ではあるが、解りやすいので受け容れてもいいかなあ。

和名は「双尾蝶」「ニ尾蝶」の意で、後翅にある2本の尾状突起に基づく。
尚、日本産のタテハチョウ科の中ではニ双二対の尾突を持つものは他にはいない。日本産の全ての蝶を含めても2本以上の尾突を持つものは、他にはキマダラルリツバメしかいない。
また前翅も特異な翅形であり、色柄デザインも特異である点からも他に類する種はいない。つまり日本では唯一無二の存在であり、沖縄の天然記念物に指定されている稀少性も相俟ってか愛好家の間では人気の高い蝶の一つである。

 
【分布】沖縄本島,古宇利島,奄美大島
現在のところこうなっているが、奄美大島では分布を南部に拡大しており、そのうち加計呂麻島や徳之島でも発見されるかもしれない。
尚、近似種”Polyura eudamippus”の一番近い分布地は台湾で、かなり見た目は近い。

 
【Polyura eudamippus formosana ♂】


(2016年 7月 台湾南投県仁愛郷)

 
weismanniに似ているが、白い部分が少し広がり、尾状突起もやや長いから、慣れれば区別できる。
違いは裏面の方がより顕著だ。”weismanni”の帯は太いが、それに対して台湾産は細い。その色も微妙も違うような気がするが、個体差にもよるし、自分の印象も多分に入っているので断言はできない。
大きさ的には同じようなものだろう。さっきの項で画像を載せ忘れたが、インドシナ半島のものと比べて遥かに小さい。

 

 
おそらく大陸のモノが台湾に隔離され、さらにそれが沖縄に隔離されて長い年月の中で少しずつ形を変えていったのだろう。

 
【生態】
沖縄本島では3月下旬〜5月、6月下旬〜8月、9月〜10月の年3回見られるが、秋は個体数が少ない。
成虫の飛翔は敏速で、梢上を高飛する。樹液や腐果(パイナップルなど果物が発酵したもの)に好んで集まり、吸汁する。吸汁し始めると夢中になり、鈍感なので手で摘める事さえある。また、時に吸汁し過ぎて飛べなくなり、地上にボトッと落ちる個体もいたりする。結構、アホなのである。
オスは占有活動を行い、高い木の梢や突出した枝先などに静止して、同種の♂のみならず他の蝶が飛んで来ても追尾して追い払う。
尚、eudamippusは台湾産を含めて動物の糞尿やその死体、湿地に吸水(♂のみ)によく集まるが、weismanniでの観察例は少ない。この点からも別種説を推したい。中には、まだ別種とは認めないという人もいるのだ。

 
【幼虫の食餌植物】
ヤエヤマネコノチチ(クロウメモドキ科)
リュウキュウエノキ(ニレ科)

元々の食樹はヤエヤマネコノチチであったが、沖縄本島では食樹転換が起きており、リュウキュウエノキ(クワノハエノキ)も食するようになった。それによってヤエヤマネコノチチが自生しない南部にも進出、分布を拡大している。
奄美大島ではリュウキュウエノキを食樹にするアカボシゴマダラが生息する事から競合が予想され、アカボシゴマダラの個体数に影響を及ぼすのではないかと心配されているが、今のところ特には減っていないようだ。尚、奄美にはヤエヤマネコノチチも自生しており、主にそちらを食樹としているようだ。競合を避け、棲み分けをしているのかもしれない。
参考までに書いておくと、ネットなんかの飼育例をみるとヤエヤマネコノチチでは無事に羽化するが、リュウキュウエノキで飼育すると羽化しないという記事があった。或いは先祖帰りと云うか、本来の食樹帰りしているのかもしれない。
しかし、奄美在住のFさんはリュウキュウエノキでも難なく飼育できると言ってはった。

付け加えておくと、Polyura eudamippusの食樹はマメ科である。そして多くのフタオチョウ属(Polyura属)がマメ科の植物を食樹としている。この点からも、日本の”weismanni”は特異で、別種とされたのも頷ける。

 
【幼生期の形態】


(出展『日本産蝶類幼虫・成虫図鑑』)


(出展『浦添大公園友の会』)


(出展『(c)蝶の図鑑』)

 
見た目はプレデターだ(笑)
或いはコレがプレデターのモチーフになってたりしてね。

最も近縁とされる台湾の Polyura eudamippus formosanaの幼虫も貼付しておこう。

 


(出展『アジア産蝶類生活史図鑑』)


(出展『日本産蝶類幼虫・成虫図鑑』)

 
日本のフタオの終齢幼虫には帯がないが、台湾のものには帯がある。また顔面の模様も異なる。幼虫の食樹もマメ科だし、これはもう別種レベルに分化が進んでいると言っていいだろう。

 
(註2)ベニモンコノハ
学名 Phyllodes consobrinus Westwood, 1848
Noctuidae(ヤガ科)・Catocalinae(シタバガ亜科)に分類される。

 

(出展『断虫亭日乗』)

 
(;゜∇゜)ワオッ❗、馬鹿デカイね。
開張120〜130mmもあるらしい。

宮崎県,鹿児島県(九州本土),種子島,トカラ列島宝島,奄美大島,沖縄本島などからの記録があり、従来は土着種とされ、小型なことから別亜種として記載された。しかし二町一成氏の論文によると、2011年に奄美大島で纏まって採れたのは、たまたま海外から飛来したものが、その年に二次発生した可能性が高いと述べており、現在では偶産蛾とする見解が優勢のようだ。
国外では台湾,中国南部,ベトナム,インド,インドネシアなどに分布する。尚、日本での記録は7〜8月に多い。
下翅にある紋が日の丸みたいだなと思ってたら、岸田先生の『世界の美しい蛾』には、その紋様から標本商の間では「日の丸」と呼ばれることもあると書いてあった。
生態的にちょっと変わってるなと思ったのは、ライトトラップには誘引されなくて、バナナやパイナップルなどのフルーツトラップに集まるそうだ。
ちなみに幼虫は無茶苦茶エグキモくて笑える。
気になる人は、拙ブログにある『未だ見ぬ日本の美しい蛾1』を閲覧されたし。

 
(註3)見たことないシャクガ
帰ってから調べてみると、アサヒナオオエダシャクという蛾の♂であった。

 

 
アサヒナオオエダシャク
科:シャクガ科(Geometridae)
エダシャク亜科(Ennominae)
属:Amraica Moore, 1888

 
【学名】 Amraica asahinai (Inoue, 1964)】

小種名の”asahinai”は、トンボやゴキブリの研究で有名な朝比奈正二郎博士に献名されたものである。おそらく和名もそれに準じてつけられたものだろう。

とくに亜種区分はされていないようだ。だがウスイロオオエダシャクと似ているため、最初はその南西諸島亜種として記載されたそうだ(ウスイロは屋久島以北に生息する)。しかし下甑島と屋久島では同所的に生息していることが判明し、別種になったと云う経緯がある。

 
【ウスイロオオエダシャク Amraica superans】

(出展『むしなび』)

 
相前後するが詳細に説明すると、日本のウスイロオオエダシャクは従来ではインドの”Amraica recursaria (Walker)と同一種とされ、本土の個体群は”ssp.superans”、屋久島以南の個体群は”ssp.asahinai”として扱われてきた。
だが下甑島と屋久島にて、それぞれ同一地点で両亜種が同時に採集された事から再検討が行われた。結果、共に独立種として扱うべきであり、更にそれらは”recursaria”とも異なる種であることが明らかになった。
またウスリー・朝鮮半島の”confusa”は、”superans”の亜種であり、台湾のものも”superans”ではあるが、色彩斑紋に明らかな差があることから別亜種として扱うべきことも判明した。これによりインド北部〜インドネシアに分布するものが原名亜種(Amraica recursaria recursaria)となった(Sato,2003)。

何でこんな事が起こったのかというと、Amraica属の各種は外観に比較的安定した違いがあるにも拘らず、種による交尾器の差異が雌雄ともに少ないそうだ。その上、個体変異も多いから、この属は種の見きわめは大変難しいようなのだ。だから、こうゆう記載のバタバタが起こったんだろうね。

尚、アサヒナオオエダシャクとウスイロオオエダシャクとの違いだが、アサヒナは前翅の外縁が反り、細長く見えるのに対してウスイロは前翅の外縁が反らない等の点で区別できる。

 
【開張】 ♂49〜66mm ♀69〜88mm
雌雄の判別は、大きさ以外に前翅からも可能。♂の前翅にはメリハリのある斑紋があるが、♀は全体的に暗色で斑紋が目立たない。
決定的な違いは触角の形状。♂の触角は鋸歯状になるが、♀はそうならなくて糸状なので判別は容易である。

 
【分布】
九州(宮崎県・鹿児島県),下甑島,種子島,屋久島,トカラ列島(中之島),奄美大島,徳之島,沖縄本島,久米島,伊江島,宮古島,石垣島,西表島,与那国島。
国外では、台湾,中国南部,ミャンマー,ベトナム,ネパールに分布する。

 
【生態】
3月と8月を中心に採集されているが、徳之島で6月、石垣島では12月にも得られている。この事から年2〜3化の発生だと考えられている。
♂は灯火によく飛来するが、♀が飛来することは稀である。
ちなみに、♂は稀に黒化した個体が得られる。

 
【幼虫の食餌植物】
ネットの『みんなで作る日本産蛾類図鑑』では不明となっているが、『日本産蛾類標準図鑑』にはリョウキュウマユミ(ニシキギ科)とある。尚、おそらく標準図鑑の表記は誤植で、本当はリュウキュウマユミのことだろう

 
(註4)マッハロッドで💥ズババババーン
マッハロッドとは、特撮TVドラマ「超人バロム・1」に登場するバロム・1の乗り物であるスーパーカーの事である。

 

(出展『メタボの気まぐれ』)

 
健太郎と猛がバロム・1に合体変身する際に使用するアイテムのボップが変形したもので、バロム・1が「マッハロッド、ボーップ❗」と叫んで空中に投げることで出現する。
最高速はマッハ2。飛行も可能で、水中や地中も走行できる。
マッハ2って、どないやねん(笑)。オープンカーなんだから、マッハで走ればワヤムチャになってまうやないの。空中とか水中、地中走行なんかは、もっとツッコミどころ満載である。
ちなみに画像は番組前期の車両で、ベースの車は NISSANのフェアレディZなんだそうだ。

マッハロッドはオープニングの唄に矢鱈と登場する。歌詞にも出てきて、そこに「マッハロッドでズバババーン」という文言が出てくるのだ。

You Tubeの動画を貼っつけておきます。

  

 
歌うのは、あの『ゼーット❗』の水木一郎である。
ありゃ❗、でも「マッハロッドでブロロロロー」だわさ。完全に歌詞を間違えて記憶してたわ。
歌詞を載せておきまーす。レジェンド水木さんの独自に語尾を伸ばすところが堪りまへん。
あと、擬音が萌え〜(人´∀`)。

 
『ぼくらのバロム1』
https://youtu.be/BdegVh82aFA
『ぼくらのバロム1』
 
ズババババーンは「やっつけるんだズババババーン」でごわした。スマン、スマン。

 
ー参考文献ー
◆白水隆『日本産蝶類標準図鑑』
◆保育社『原色日本蝶類生態図鑑(Ⅱ)』
◆手代木求『日本産蝶類幼虫・成虫図鑑 1 タテハチョウ科』
◆手代木求『世界のタテハチョウ図鑑』
◆五十嵐邁・福田晴夫『アジア産蝶類生活史図鑑』
◆岸田泰則『日本産蛾類標準図鑑(Ⅰ)』
◆岸田泰典『世界の美しい蛾』
◆2020.8.9『奄美新聞』
◆二町一成,柊田誠一郎,鮫島 真一『2011年奄美大島にて多数採集されたベニモンコノハ Phyllodes consobrinus Westwood, 1848』やどりが 236号(2013年)
◆『みんなで作る日本産蛾類図鑑』
◆『ピクシブ百科事典』
◆Wikipedia
◆You Tube

 

未だ見ぬ日本の美しい蛾2


年末に岸田先生の『世界の美しい蛾(註1)』について書いたが、本には海外の美麗蛾のみならず、日本の美しい蛾も数多く紹介されている。
今回も前回に引き続き日本に分布する未だ見たことがない憧れの美しい蛾たちである。

 
【ハグルマヤママユ Loepa sakaei】
(出展『世界の美しい蛾』)

 
鮮やかな黄色にアクセントとなる赤褐色の眼状紋が配されている。このビビットなコントラストが美しい。それを引き締めるかのような黒い波状線がまた何とも心憎い。艶やかにして、粋(いき)。この美しさには誰しもが瞠目するだろう。
ヤママユガ科(Saturniidae)の蛾は美しいものが多いが、中でもハグルマヤママユが最も美しいと思う。ヤママユガ科の中では、やや小さいと云うのもキュートな感じがして好ましい。

漢字で書くと、おそらく「歯車山繭」だろう。
ヤママユの仲間は皆さん眼状紋があるけど、波状の線が目立つゆえ動的に見えたから歯車ってつけたのかな?
由来さておき、中々良い和名だと思う。早口言葉で三回続けて言うと絶対に噛みそうだけどね。

分布は奄美大島、徳之島、沖縄本島北部とされているが、宮古島なんかでも採れているみたいだ。
ハグルマヤママユ類は東南アジアに広く分布しており、似たようなのが沢山いるものの従来はtkatinkaとして一まとめにされ、特に種としては分けられていなかったようだ。日本のものも、その1亜種とみなされてきた。しかし近年になって分類が進み、多くが種に昇格したという。日本産も別種とされ、日本固有種となったようだ。

年3回の発生で主に3月、5月、8~10月に見られるとある。ヤママユの仲間は年1化が多く、一部が2化すると云うイメージだが、南方系の種だけあって年3化もするんだね。

何だか久々に奄美大島に行きたくなってきた(註2)。
奄美にはハグルマヤママユもいるし、キマエコノハもいるもんね。それにベニモンコノハの記録も一番多い。上手くいけば憧れの美しい蛾が三つとも採れるかもしれない。
蝶だって美しいものが多い。この島特有の美しいアカボシゴマダラやアマミカラスアゲハがいるし、春ならば、日本で最も美しいとされる白紋が発達したイワカワシジミだっている。

 
【アカボシゴマダラ♂】

 
【オキナワカラスアゲハ奄美大島亜種 夏型♂】

【同♀】

 
【イワカワシジミ】
(各地のものが混じってます。)

 
そうそう、思い出したよ。そういえば最近は沖縄本島にしかいなかったフタオチョウも土着しているというじゃないか。フタオチョウは沖縄県では天然記念物で採集禁止だが、鹿児島県ならばセーフだ。あのカッチョいいフタオチョウを大手を振って採れるのだ。

 
【フタオチョウ♀】

 
つまりレピ屋には、奄美はとっても魅力的な島なのだ。
それに奄美の海はとても綺麗だ。食いもんだって沖縄とは桁違いに旨い。アバスの唐揚げとか死ぬほど美味いもんな。
(ToT)嗚呼、奄美行きてぇー。

                     おしまい

 
追伸
冒頭に蛾たちと書いたし、数種を紹介する予定でいたが、早くも力尽きた(笑)。
やっぱ不調なのである。ボチボチ書いていきます。

 
(註1)世界の美しい蛾

グラフィック社より出版されている。
今のところ、ジュンク堂など大きな書店に行けば売ってます。

 
(註2)久々に奄美大島に行きたくなった
本ブログに『西へ西へ、南へ南へ』と云う奄美大島の紀行文があります。自分的には好きな文章。昔の方が良い文章を書いてたと思う。よろしければ読んで下され。

 

壮麗なる王女~ヤイロタテハ~(改訂版)

 
ここんとこ、ヤイロタテハの展翅をしてFacebookにあげている。
そこで、ふと思い立って記事を一つに纏めようと思った。本当は台湾の蝶シリーズを書くべきなのだが、次の題材選びに思いあぐねているのだ。当初はアサクラコムラサキの事を書こうと思ったのだが、そうなると、その前にタイワンコムラサキ辺りから始めないと話の流れが悪い。順番は大事である。後々、スムーズにいかなくなる。でもタイワンコムラサキだって、そう簡単に論じられるワケでもないのだよ、明智く~ん(ここんとこ江戸川乱歩関連の番組ばっか見ているのだ)。
そう、コレはブログの年末調整的にお茶を濁そうと云う計画なのである。それが、まさかの出口の見えない無間地獄に又しても陥る事になろうとは、この書き出しの時点ではまだ想像だにしていなかった。
(# ̄З ̄)ったくよー。

今までに、以下のような文章をFathbookにアップしてきた。
ついでだから少し手を入れたが、概(おおむ)ね文章は当時のままである。

 
去年、お嬢にお土産で戴いたマレーシア産のヤイロタテハ。

 
【Agatasa calydonia ヤイロタテハ♂ 裏面】

 
(@_@;)ゲッ、お漏らしで翅がグチャグチャやんか。揚げ句、首チョンパのバラバラ~。あらあら、腐ってたのね~。あと2頭残ってるから、まっ、いっか…。
とはいえ、この個体が最も紋が鮮やかで形もいいんだよなあ…。こういう汚れた蝶を綺麗に修復する方法って、ないものなのかしら。

Σ( ̄ロ ̄lll)ゲッゲッ~❗

 

 
2頭めのヤイロタテハもお漏らしさんだべさー。
フタオチョウとかコイツらって、下(しも)がホントっゆるい。食ってるもんも腐った果実や糞尿とかでサイテーの悪食だしさ。あと、現地でそのままタッパーとかに入れてたら腐るし、蟻にもよくタカられる。
何度も、マジかっ、ワレーΣ( ̄皿 ̄;;になったよ。
展翅も羽のバネが強過ぎて、すぐにズリ下がってきて超ウザイし、ボケ~(ノ-_-)ノ~┻━┻❗❗となる。

えーい、急遽、裏展翅じゃボケ~(* ̄ー ̄)

 

 
思うに、タテハチョウって裏の方がカッコいい奴が多いよね。
幸い裏側は汚れてない事だし、コレはお嬢に帰そっかな。でも、臭いと断られそうだな…。

ここからが、Facebookにアップしていない文章。

3頭めも、やはりお漏らしさんだった。
けれど、汚れがまだ少ない方なので、表展翅することにする。考えてみれば、表展翅は初めてだ。

 

 
ヤイロタテハって、上翅を上げるのはこれくらいが限界だと思う。下翅の下辺を無理に真っ直ぐにしようとすると、頭が翅に埋まってしまう。これはあまりにブサいくだ。再三再四そこかしこで述べているが、昔から言われている蝶の展翅のセオリーに囚われ過ぎるのはナンセンスだと思う。翅だけではなく、全体のバランスを考えて整形すべきだと云うのが、ここ数年で行き着いた結論だ。
とはいえ、人にはそれぞれの好みと云うものがあるからして、正解は一つでは無いんだけどもね。
それにしても、汚物で尻が真っ黒けになっとるやないけー。この蝶、お漏らし大王だから、ウルトラ完品って中々手に入らないのかもなあ…。

3日後、嬉しい事に一番最初に展翅したグチョグチョの個体が復活していた。

 

 
少し汚れてはいるが、コレくらいならセーフだろう。
とはいえ、何となく真っ直ぐに写真が撮れてないような気がするので、後日撮りなおす。

 

余計に歪んだ写真になっとるやん( ̄∇ ̄*)ゞ 
それにしても、美しいね(⌒‐⌒)

そういえば、昔ヤイロタテハについてアメブロに書いた文章があったな。

 
https://www.google.com/amp/s/gamp.ameblo.jp/iga72/entry-12110534183.html?source=images

 
暇な人は読んでみて下され。

とはいえ、自分で書いといて、どんな文章を書いたのか全然憶えてない。気になるので、再読してみることにした。

( ̄~ ̄;)むにゃあ~、不満だ。文章に手を入れたくなる。井伏鱒二先生ほどじゃないが、過去の自分の文章が気に入らなくて弄(いじ)くってしまう癖(へき)がある。それがしょっちゅうって云うか、時にパラノイア的であったりする。
大学の後輩が何年か前に言っていたが、或る種の完璧主義なのかもしれない。面倒くさい性格だ。

以下、改訂版である。

 
今回は謂わばマレーシアの蝶の番外編である。

紹介するのはAgatasa calydonia ヤイロタテハ。
この旅では季節が合わず、結局再会できなかった蝶だ。
平嶋義宏氏の『蝶の学名 その語源と解説』に因れば、学名の属名「Agatasa」は語源不詳だそうである。
とはいえ、ギリシャ語のaga(非常に)とtasis(力、強さ)とを合わせたもの、もしくは発音の類似から聖女で殉教者のアガタ(Agatha)に模した造語ではないかと推察しておられる。
小種名の「calydonia(カリュドニア)」は、古代都市の名前で、神話のカリュードンに因むという。

ここで、はたと気づく。そういえば学名の属名は変更されたんじゃなかったかな❓
確認したら、案の定だった。今はヤイロタテハ族・ヤイロタテハ属「Prothoe calydonia」と云う学名になっている。
「Prothoe」の語源は、ネーレース(海神ネーレウスの50人の娘)たちの一人であるprotho(プーロートー)のフランス名なんだとさ。相変わらずのギリシャ神話由来ばかりだ。もう、うんざりじゃよ。

ついでに言っとくと、英名はglorious begum。
gloriousはまだ解るとしても、begumという単語が何なのかさっぱり分からなかったので、これまた調べてみた。お茶を濁すつもりが、もう大変である。

「begum」とは、どうやらインドやパキスタンのイスラム教徒の位の高い女性を指す言葉らしい。辞書によっては、イスラム教徒の王女、王妃、貴婦人とも書かれている。

ここからが種の解説的なものになるのだが、文章の訂正加筆箇所が少ない事を祈ろう。

 
【Prothoe calydonia ヤイロタテハ】
(2011.2.20 Malaysia cameronhighland )

 
大型のタテハチョウの仲間で、フタオチョウに近い種類である(註1)。
和名の由来は、羽の裏側の豪華絢爛たる色彩からであろう。つまり八色からのヤイロなのだ。

4年前(2011年)、初めてキャメロンハイランドで見た時は、その存在さえも知らなかったので仰け反るくらいに驚いた。想像外のデザインだったのである。悪魔的ですらある、そのおどろおどろしくも美しい姿に畏怖さえ覚えた記憶がある。

前に何処かでチラッと書いたかとは思うけど、そのヤイロタテハのラオス産が出てきた。
師匠に戴いたおこぼれのボロだが、探して展翅しようと思うも見つからずに悶々としていたのだ。それが先日、何とまさかの標本箱から見つかった。
まだ展翅していないとばかり思っていたのに、ちゃんと既に展翅してあったのである。人間の記憶なんてものは、如何にいい加減かという証左である。いや、単に己の記憶力が悪いだけか…(笑)

言い忘れたが、師匠に戴いた頃はヤイロタテハは広く東南アジア全般にいる普通種だとばかり思っていた。
だが、それがどうやら違うようなのである。図鑑を見ると、分布はミャンマー、タイ、ラオス辺りから南にあり、その中心はスンダランドだ。驚いた事には、インドシナ半島には多くの空白地帯がある。

 
(出典 塚田悦造『東南アジア島嶼の蝶』)

 
分布図には、ラオスは入っていない。
しかも、既存の分布圏からもかなり離れている。ワケわかんないぞの混乱(´・∀・`)ぴよこちゃんだ。

ならばと他の図鑑でも確認してみる。

 
(出典 五十嵐 邁・福田晴夫『アジア産蝶類生活史図鑑』)

 
こっちの図鑑でもラオスは分布圏に入ってない。(・。・;)どゆ事❗❓

きっと亜種なのだろうが、じゃあ何と云う亜種に含まれるのだろう❓南ミャンマー亜種 A.belisamaなのか❓それとも新亜種なのかな❓

取り敢えずは二つを並べて見比べてみよう。
先ずはマレーシア産の原名亜種 ssp.calydoniaの裏面画像から。

 
(2011.2.20 Malaysia 19miles )

 
お次はラオス南部産の裏面。

 
(2011.4. Laos Tateng)

 
鮮度が悪いので、あまり色は参考にならないだろう。
しかし、上翅の黄色い領域は確実に広い。紋も細かく見れば違う。特に後翅根元の赤い⚡稲妻紋の形などはかなり違う。
だが、こういうのは個体変異もあるから一概には何とも言えない。この2頭だけで判断するのは意気焦燥だろう。

ならばと、表側も見比べてみる。

 
(マレーシア産)

 
(ラオス産)

 
Σ(-∀-;)びっくりだわっ❗、全然違う。
明らかに下のラオス産の方が、マレーシアのものよりも黒い部分が少ない。♀なのかもしれないが、上翅の形も全然違う。こりゃ、完全に別亜種だわ。
塚田悦造氏の『東南アジア島嶼の蝶』には南ミャンマーの個体は図示されていないが、『黄色味の強い基斑紋が後中央まで拡がった美しいもの』とあるから、マレー半島の原名亜種よりかは、そちらの方に近いかとは思われる。

問題は亜種 belisamaに含まれるのか、それとも新たな別亜種となるのかだ。
でも、塚田図鑑にはbelisamaの画像が無いのだから、両者を見比べられない。ここで行き詰まりだ。結局、何かワカランやんか。

 
一応、他の亜種も参考までに図示しておこう。

 
【c.auricinia スマトラ島亜種】
(出典 『東南アジア島嶼の蝶』。以下、何れも同じ。)

 

原名亜種とほとんど変わらないが、後翅裏面亜外縁の黄条が少し太まる。

 
【c.mahasthama ボルネオ島亜種】

少し小型になり、裏面の白色部が目立ち、後翅の白横条が太くなる。

 
【c.multicolor シンケップ・リンガ島亜種】

これもやや小型になり、♂の翅表第2室の黄斑が外に細まり、同室裏面黄色が濃色となる。♀は裏面の赤色紋が褐色に変わる。

因みに参考までに言っておくと、フィリピンに代置種とされるクリソドノイアヤイロタテハとゆうのがいる。

 
【Prothoe(Agatasa) chrysodonia】 

黄色味が強い。ミンダナオ島ではまだ比較的得られるようだが、ルソン、ミンドロ島では稀で大珍品らしい。

ラオス産の完品を見ないとわからないが、個人的には裏の色が一番濃いと言われる原名亜種が好きだ。
珍しい亜種よりも、種内で一番美しいものを評価すると云うのが基本的スタンスなのだ。
もっと言うと、亜種に限らず蝶全般を、どちらかというと珍しさよりも美しさで評価する傾向が自分の根本にはあると思う。普通種のベニシジミやキアゲハを素直に美しいと思うのだ。もし、これらが珍品ならば、拝み倒している人は多いと思う。この業界、珍しいか否かで美しさの値打ちが変わる傾向があるのだ。
まあ、どんな蝶でもよく見れば、大概はそれぞれ固有の美しさがあるんだけどもね。

                         おしまい

 
追伸
師匠にメールでラオス産のヤイロタテハについて尋ねたが、調べると言ったまま、いまだ返答がない。
だから、この文章は最初に書いてから、だいぶ経っているのだ。終わり方に尻切れトンボ感があるのも、そのせいなのだ。

後々、解ったのだが、どうやらこのラオス産のヤイロタテハは新亜種ではなく、亜種belisamaに含まれるようだ。

 
(註1)フタオチョウ

【Polyura endamipps フタオチョウ♂】
(2011年 4月 Laos)

 
大型のタテハチョウで、湾曲した羽と2本の剣のような尾状突起が💖萌え~である。頑強な体躯で矢のように飛ぶ事も含め、オラの大好きなグループの一つだ。
日本の沖縄本島にも天然記念物に指定されている亜種e.weismanniが棲息している(註2)。
但し、分布の最東端にあたり、別種と見紛うばかりに原記載亜種とは見た目の印象がかなり違う。大きさが下手したら二回りくらい小さくなり、尾突も著しく短くなる。また、白い部分も減退し、全体的にかなり黒っぽい。

 
(『日本産蝶類標準図鑑』より。)

 
見た目どころか、幼虫の食樹も違うし(インドシナ半島ではマメ科植物だが、沖縄ではクロウメモドキ科ヤエヤマネコノチチとニレ科リュウキュウエノキ(クワノハエノキ)、こんなのもう別種でもいいんじゃないかと思う。
それに噂では、幼虫形態やその生態も違うらしい。でも天然記念物であるがゆえに、採集は元より飼育も出来ない事になっているから研究も発表も出来ない状態のようだ。官がつくる昆虫関連の法律は、大概が柔軟性に欠け、結局クソなのだ。

ヤイロタテハは、激レア亜種は別として、大珍品とまではいかない蝶だろう。
かといって普通種でもなく、何処にでもいるという蝶ではない。図鑑の記述に拠ると、どの産地でも個体数は少ないようだ。
つまり、行けば誰でも簡単に見られるというものでは無いと云うことだ。実際、自分もキャメロンハイランド以外では見たことがない。しかも、いまだメスにはお目にかかった事がない。たぶんPolyura(フタオチョウ)と同じで、メスは珍品なんだと思う。
それに、たとえ見たとしても弾丸みたいに飛ぶから、先ず空中では採れないだろう。自分みたく運良く吸水に来たものが偶然採れるくらいだ。トラップが無ければ、基本的に採れない蝶なのだ。
そういえば思い出した。タイのチェンマイでお会いした爺さまが言ってたな。その爺さまは毎年チェンマイに通っているそうで、昔はヤイロタテハも結構いたらしい。それが10年ほど前から全く姿を見掛けなくなったという。きっと他にもそういう場所は多いだろう。
考えてみれば、図鑑『東南アジア島岨の蝶』が世に出てから、もう40年近くも経っているのだ。その頃とは珍稀度が大きく変わっている可能性がある。この蝶は低山地に棲む蝶のようだから、環境破壊の影響も受けやすいに違いない。現在のレア度はかなり高いかもしれない。
それでも東南アジアに行く機会があったなら、ぜひとも自然の中で生きている王女に会ってもらいたい。
その力強さ、威厳、悪魔的な色柄、深いジャングルと云うロケーションetc…。探す価値はある。

王女には、もう一度会いたいなあ…。

 
追伸の追伸
 それにしても、初期の頃の展翅は我ながら下手だねぇ~(笑)
よほど展翅しなおしてやろうかとも思ったが、思いとどまった。この文章の為だけになんて、(=`ェ´=)邪魔臭いわい。そこまで完璧主義ではごさらん。

おっ、そうだ。それで思い出した。そういえば、お嬢に貰ってすぐに展翅した奴があった筈だ。

 

 
(・。・)あれっ!?、2頭もしたっけか❓
それにしても、(´∇`)カッコいいなあ。
地面に止まっているのを見た時は、Σ(-∀-;)ビクッとなって立ち止まったのを思い出したよ。その存在を知りもしなかったので、(; ̄ー ̄Aあはは…、幻覚でも見てるんじゃないかと思った。それほどの衝撃だった。そういえば、下手したら、コヤツ蛾でねえの❓とも思ったなあ…。
震える指先で手のひらに乗せて、じっくり見た時の感想も思い出した。曼荼羅みたいだとか、歌舞伎的やなとも思ったっけ。
残念ながら、その時の画像は無い。興奮し過ぎて撮るのを忘れたのだ。初めての海外採集の、まだ二日めとかだったもんな。

  

 
おっ、表側もある。
と云うことは、やっぱり2頭を展翅したって事だね。

 

 
針を外した画像もあった。

 

 
と云う事は、全部で5頭も戴いたってワケだ。
お嬢、💖ありがとね。
こうなると、やっぱメスも欲しくなるなあ…。この蝶は雌雄同型だけど、メスはもっとデッカイ筈。どんだけデカイんじゃろう❓
何とか並べてみたいもんだよねぇ~。

(註2)
このあと、日本のフタオチョウは亜種から別種に昇格し、学名は Polyura weismanni となった。
この辺の事は拙ブログの台湾の蝶シリーズの第2話『フォルモサフタオチョウ』と、その番外編『エウダミップスの迷宮』、『エウダミップスの憂鬱』に詳しく書いたので、宜しければ併せて読んでつかあさい。

それにしても、文章の細かいところも含めてかなり書き直す破目になった。お陰で大掃除は進まんし、オジサンは疲れたよ。

                  おしまい

 
ここで終わりにするつもりだった。
しか~し、文章をアップする為に読みなおしたら、またドえれーところに気づいちまっただよ。
ヤイロタテハはフタオチョウに近い仲間と書いたが、本当かよ❓と云う疑問がムクムクと頭をもたげてきたのだ。又しても、無間地獄のドツボに嵌まっちまった。

疑問を持ったのは、フタオチョウの遺伝子解析の結果を思い出したからである。コムラサキ亜科とかの真正タテハチョウのグループだとばかり思っていたが、結果はジャノメチョウに近いという事が判明したのだった。
ヤイロタテハの、その頑強な体躯や翅の分厚さ、翅表の配色、後翅の尾突起らしき形状は、如何にもフタオチョウを彷彿とさせる。ゆえに両者は近縁関係だとばかり思っていた。しかし、フタオチョウがジャノメに近いならば、果してヤイロタテハもそうなのか❓虫の世界には、他人のそら似と云うのがよくあるんである。
よくよく考えてみれば、裏側の斑紋パターンはフタオチョウとはかなり違う。どころか同属のルリオビヤイロタテハを除けば、他に似ているものさえいない。
じゃ、あんた何者❓

ヤイロタテハの遺伝子解析の論文を探すが、見つからない。絶対、既に解析済みの筈なんだけどなあ…。学者さんが、その辺を見過ごすワケがないと思うんだよねぇ。
勝山さあ~ん、おせーてよー(ToT)
とはいえ、直接お尋ねする程の面識は無いもんなあ…。

ならば、幼生期の形態で判断じゃ。蝶は幼生期の形態で、大体の類縁関係が分かるのだ。
伝家の宝刀『アジア産蝶類生活史図鑑』を開いてみる。

(;゜∇゜)あぅぅぅ…ゲロリンコ、何じゃお主は❗❓

 

(出展『アジア産蝶類生活史図鑑』)

 
ヘ(゜ο°;)ノ≡3≡3きっしょー、最低クラスの醜さだ。バケモンじゃよ、バケモン。形だけでなく、色までトドメ色で酷いや。おどろゲロリンコ星人やな、おまえー。
それにしても、フタオチョウの幼虫とは全然似てないぞー。

 
【フタオチョウ幼虫】

 
【フタオチョウ頭部正面図】
(出展二点共 手代木 求『日本産タテハチョウ幼虫・成虫図鑑』)

 
一応、コムラサキ亜科特有のナメクジ型ではある。
強いていうならば、目の先の形状がスミナガシの仲間に近いかもしれない。いや、トゲトゲや突起物は無いけれど、ミスジチョウやイチモンジチョウ系の幼虫にも似てるっちゃ似てるか…?
『アジア産蝶類生活史図鑑』の解説を読むと、興味深いことに、その生態はイシガケチョウ属、スミナガシ属、イチモンジチョウ属、ミスジチョウ属など様々なタテハチョウ科の幼虫の色々な習性が混じっているらしい。何じゃ、そりゃ❓

蛹の形状も見てみよう。
左から側面、腹部側正面、背面側正面である。

 
(出展『東南アジア産蝶類生活史図鑑』)

 
解説にも書かれてあるが、蛹の形状は色は違えど何とまた別なタテハチョウ科のEuthalia(イナズマチョウ属)にソックリじゃないか。色が灰色じゃなくて緑色だったら、まんまである。

一応、フタオチョウの蛹も図示しておこう。

 
(出展『日本産タテハチョウ幼虫・成虫図鑑』)

 
違うなあ…。
この事実を見ると、とてもフタオチョウに近縁だとは言えそうにない。
それにしても、イシガケチョウ、スミナガシ、イチモンジチョウ、ミスジチョウの幼虫と行動様式に共通点があって、蛹はイナズマチョウに似てるって、もう鵺(ぬえ)的存在で、何が何だかワカラナイや。

因みに、食樹はバンレイシ科のDesmos chinensisと云う植物らしい。バンレイシ(蕃茘枝)って、たしか果物だよね?別名シュガーアップルとか釈迦頭と言われている奴だ。味はバナナとパインの合の子みたいで甘みが強い。けど、食感は梨みたいなシャリ感のある摩訶不思議な果物だ。
(`ロ´;)クソッ、食樹までも果物界の鵺とかキメラなのかよ。
とにかくバンレイシ科を食ってる蝶の幼虫だなんて、勉強不足かもしんないけど、知る限り記憶にない。上位分類にまで広げるとモクレン目になるが、それとてざっと見る限り、タテハチョウの食樹らしきものは見当たらない。クスノキとかモクレン系が含まれる目だけれど、それはアオスジアゲハとかのアゲハの食樹なんだよなあ。
これじゃ、植物に疎い自分には何に近い種なのか特定しようもない。
スマン。大風呂敷を広げといて、結局はグダグタの結末だ。

結論の無いまま迷宮に取り残され、歳末の夜は静かに更けてゆく。
皆さん、良いお年を。

              今度こそ、おしまい

  

エウダミップスの憂鬱

 
       台湾の蝶 番外編
    『エウダミップスの迷宮』後編

 
もう主タイトルも「エウダミップスの迷宮」から「エウダミップスの憂鬱」に変わっとるやないけー(笑)
迷宮で彷徨(さまよ)っているうちに嫌んなってきて、ポチは憂鬱になりましたとさ。
でも、とにかく何らかの形で終わらせねば仕様がないのだ。頑張って書きましょうぞ。

え~と、何だっけ?
ごめん、アマタが上手く働かないのである。脳ミソが思考を拒んでいるのやもしれぬ。
まあいい。その整理出来てない腐った脳ミソで、ポンコツはポンコツなりの気概を持ってフォースの暗黒面に立ち向かおうぞ。

先ずは前回のおさらい。
従来、日本のフタオチョウは台湾や大陸に広く分布するフタオチョウ Polyura eudamippus の亜種とされてきた。しかし、ごく最近になって日本のフタオチョウがそこから独立して別種 Polyura weismanni となった(でも誰がいつどこで記載したのかは不明。謎です。)。

(;゜∇゜)ほんまかえー?と思ったポチは、成虫のみならず幼虫・卵、蛹、幼虫の食餌植物、生態等々あらゆる面からその検証を行った。
そして、ポチ捜査員が出した見解はこうだった。

『問題点は幾つかあるが、取り敢えずは別種でエエんとちゃいまっしゃろか。まあ、厳密的にいえば別種になる一歩手前の段階と言えなくもないんだけどね…。
でもさー、そんなことを言い始めたら収拾がつかん。
別種、別種~、日本のフタオチョウは独立種です❗』

だが、オラにここで新たな疑問が湧いてきた。
台湾のフタオチョウと日本のフタオチョウは似ているが、原名亜種(名義タイプ亜種)を含むインドシナ半島から西に分布するものは、同種とは思えんくらいに見た目も大きさも全然違うんだよなあ…。

と、ここまでが前回までのあらすじ。
で、こっからが新たなる展開なのだ。

オイチャンは思ったね。
だったら、そのインドシナ辺りから西の奴らと台湾とその周辺の中国の奴らもさー、この際、別種として分けちやってもエエんとちゃうのん❓

でもポチ捜査員、冷静にカンガルー。もとい、考える。
とは言うものの、たぶん台湾からインドまで連続して分布するから、明確には分けられないのだろう。
つまり、分布の東から西へ少しずつ見た目が変わってゆき、その境界線が判然としない。だから、別種とまでは言えなくて、全部を亜種扱いにせざるおえないと思われる。
しかし、だとしたらどこいら辺りに台湾とインドシナとの中間的な特徴を持つ個体群がいるのだろうか❓
そういえば、そういうオカマちゃん的な標本を見た記憶がないんだよなあ…。

取り敢えず、参考までにインドシナ半島、台湾、沖縄の個体を並べておこう。

先ずはタイ・ラオス北部等に分布する亜種から紹介しよう。

【Polyura eudamippus nigrobasalis 】

【裏面】

(2点共 2011.4.1 Laos Tadxaywaterfall )

続いて台湾亜種。

【Polyura eudamippus formosana 】

【裏面】
(2点共 2016.7.7 台湾南投県仁愛郷)

続いて沖縄のフタオチョウ。

【Polyura weismanni 】

【裏面】
(2点共 出典『ニライカナイの女王』)

ねっ、インドシナ半島のものは、見た目がだいぶ違うでしょ?
もう断トツに白いのである。尾状突起も遥かに長くて優美だ。そして、大きさがまるで違う。日本や台湾のものと比べて圧倒的にデカイんである。
個人的にはコッチの白い奴の方がカッコイイと思う。
双尾と呼ぶに相応しい尾突といい、そのタージ・マハルを連想させる白といい、断然ソフィスケートされてる。迫力も雲泥の差だ。体はゴツいし、飛翔力も半端ねぇ。

上の画像では大きさがわからないだろうから、採集した時の写メを添付しておこう。

【台湾産フタオチョウ】

【ラオス産フタオチョウ】

これで大体の大きさは理解してもらえたかと思う。
けどなあ…ちよっと解りづらいかもしれないなあ…。
面倒くさいけど、もっとハッキリ解るように両者の標本を並べておきましょう。

順番が逆になったが、上がラオス産フタオチョウで、下が台湾産である。
もう説明は不用だろう。まるで大人と子供だ。勿論、両方とも♂である。因みにラオス産フタオの♀はバカでかい。Polyura界の女王様だ。
但し、オラは野外で姿を見た事は一度たりともない。
メスは珍品なのである。オスはそこそこいるんだけど、メスはトラップにも殆んど来ないし、いったい何処で何してんだろ?大いなる謎だよ。
そういえば沖縄や台湾のフタオは、そう機会は多くないとはいえ、それなりにメスは見られるようだ。
生態的に違えば、それ即ち別種だとは言い切れないけれど、それも別種とする一因として考えられなくはない。とにかく、メスの生態は日本や台湾のフタオとは違い、今のところ未知に近いのだ。

あっ、幼虫はどうなのだ❓
台湾と沖縄のフタオは、幼虫の形態がかなり違ってた。それも別種とされた理由の1つに違いない。ならば、もしラオス産フタオの幼虫形態が全然違ってたら、別種となりはしないか❓

いかん(;゜∀゜)、カウパー腺液チョロチョロの先走りじゃよ。
取り敢えず、幼虫云々は後回しだ。その前にエウダミップスの分布と各亜種を整理しておこう。そこんとこ、ちゃんと言及しておかないと、後々、益々何が何だか解らなくなる。

【フタオチョウの分布図】
(出典『原色台湾産蝶類大図鑑』)

古い図鑑なので日本産も地図に入っている。
それはさておき、分布が西北ヒマラヤからインドシナ半島、マレー半島、中国を経由して台湾にまで達しているのがお解りになられるかと思う。
但し、実際にはこんなにベタに何処にでもいるワケではなく、分布の空白地帯もある筈だ。わかる範囲ではマレー半島の産地は飛び離れていて、高所にのみ分布していたと記憶する。
だいたい分布図なんてものは、大まかなんである。
特に広い範囲を示す分布図はざっくりだ。情報を鵜呑みにしてはならない。

あっ、そういえば『アジア産蝶類生活史図鑑』にも分布図があった筈だ。そちらの方が新しいから、まだしも正確だろう。

(出典『アジア産蝶類生活史図鑑』)

あっ、やっぱりマレー半島だけ分布か飛び離れている。あとは中国北部が少し膨らむ程度で、大体同じだね。

ここまで書いて、不意に微かな記憶が甦る。
そういえばエウダミップスには乾季型と雨季型というのがあって、雨季型は小型になり、且つ黒っぽくなって尾突も短くなる。そうどこかで聞いた事があるような気がする。
おいおい、亜種に加えて更に季節型まであるとなると、ワケがわからぬわー(ノ-_-)ノ~┻━┻

この際、それは取り敢えず置いておこう。シッチャカメッチャカになるから、先ずは亜種区分からだ。

『原色台湾産蝶類大図鑑』では、以下のように11亜種に分けられていた。

①Polyura eudamippus eudamippus(原名亜種)
西北ヒマラヤ、ネパール、シッキム、ブータン、Naga Hills、Khasia Hills。
最後2つの横文字は、おそらくインド東部の地名のことだろう。

②P.eudamippus jamblichus
テナッセリウム(アンナン)。
テナッセリウムは、たぶんミャンマー南部の街の事かな?でも、アンナンというのがわからない。

③P.eudamippus nigrobasalis
シャム、ビルマ(Shan States)、カンボジャ。
シャムは現在のタイのことだろう。かなり古い図鑑である事を実感するよ(1960年発行)。ビルマも現在はミャンマーという国名である。Shanというのはおそらく北東部のシャン州の事を指していると思われる。カンボジャはカンボジアの事だね。

④P.eudamippus celetis
アンナン。
はあ?、またアンナンが出てきた。ワケわかんねえよ。

⑤P.eudamippus peninsularis
マレイ半島。
マレー半島の事だね。

⑥P.eudamippus whiteheadi
海南島。
中国南部のハイナン島の事だろう。

⑦P.eudamippus kuangtungensis
南支那(広東省北部)。
勿論、支那とは現在の中国の事だけど、それっていつの時代の呼び名やねん!とツッコミたくなるよ(笑)

⑧P.eudamippus cupidinius
雲南。
中国の雲南省の事だろね。

⑨P.eudamippus rothschildi
西~中部支那。
中国西部から中部でんな。

⑩P.eudamippus formosana
台湾。

⑪P.eudamippus weismanni
琉球(沖縄本島)。

最後の⑪は別種になったから、全部で10亜種って事か。結構、思っていた以上に多い。

一応、ネットでも調べてみたら、wikipediaに解説があった。

へぇー、英名は『Great Nawab』っていうんだね。
Nawabって聞いたことあるなあ…。何か地位ある偉い人の事だったと思う。気になるので、そちらを先に調べてみる。
辞書には、Nawabとはインド・ムガール帝国時代の地方長官(代官)、知事、太守、領主、蕃王とある。
頭にグレイトと付くんだから、この場合は蕃王や領主を表しているとみえる。日本人には、大名とでも訳すのが解りやすかろう。
たぶん最初にインドで見つかって記載された(原名亜種)から、こういう英名がついたんだろうね。

亜種の話に戻ろう。
ウィキペディアでも、日本の「weismanni」を除けば10亜種になっていた。

③の「e.nigrobasalis」の分布は、タイ、ミャンマーときて、なぜかカンボジアが消えてて、他にインド、中国、雲南省南部が加えられている。カンボジアが消えたのは解せないが、他は単に新たな産地が見つかったから加えられたのだろう。
でも近隣のベトナムがスコッと抜けてるなあ。ベトナムだけいないということは考えられない。それに分布図では、しっかりベトナムの所にも生息を示す斜線が引かれてたぞ。謎だよなあ…。

あれれー(@ ̄□ ̄@;)!!
しかし、ウィキには④の亜種「celetis」ってのが無い❗ 分布がアンナンとある亜種だ。
その替わりに「splendens」という未知の亜種があった。分布は雲南とある。
ワケわかんねえや。そもそもアンナンって何処や?
ミャンマー南部とちゃうんけ?
だいたい雲南省とミャンマー南部はかけ離れているじゃないか。という事は、両者は全くの別物と云うことになる。
これで、産地に雲南省とある亜種が3つもある事になるやんけ(-“”-;)…。
もしかして、雲南省ってバカみたいに広いの?
はてな、はてな(??)❓の嵐が吹き荒れる。
シクシク(ノ
<。)、また迷路じゃよ。

取り敢えず、アンナンを調べてみた。
ここは小さな疑問から片付けていくしかあるまい。

あっ、アンナン(安南)ってベトナムやん!
フランス統治時代のベトナム(北部~中部)の事を、そう呼んでいたらしい。
でも、ベトナムって越南じゃなかったっけ?

アンナンが判明したはいいけど、今度は②の亜種「jamblichus」のテナッセリウム(アンナン)という表記がワケワカメじゃよ。
だってミャンマー(ベトナム)って事になるじゃないか。そこ、どこやねん(@_@;)❓

何だかテナッセリウムまで何処なのか不安になってきたよ。しゃあない、これも調べよう。

コチラはあっていた。テナッセリウムはミャンマー最南部地方の旧名のようだ(現在の地名はタニンダーリ地方)。近くの山脈にテナッセリウム山脈と云う名が残っている。

まあ、ウィキペディアでは、亜種「jamblichus」の分布は南ミャンマーとなっているから、アンナンはたぶん誤記ということにしておこう。

それよりも問題なのは、分布地が雲南とある亜種が3つもあるという事である。
③の亜種「nigrobasalis」はタイ北部とラオスが分布の中心で、それが雲南省南部にも及んでいると解釈すればいいか…。

⑧の亜種「cupidinius」は、図鑑もウィキペディアも分布地は雲南省とだけある。それが雲南省の何処を指すのかは特に書いていない。そして、ウィキペディアに載っている「splendens」と云う亜種も産地は雲南省としかない。そこにはやはり北部とも西部とも書いていないのだ。
もう(◎-◎;)何のコッチャかワカラン。少なくとも3つの亜種がモザイク状には分布しているワケはないから、それぞれ南部なり北部なりの東西南北の何処かに棲み分けてるという事か…。
いや待てよ、この雲南とある2つの亜種のどっちかが高地に隔離されたもので、独自に進化した奴と云う可能性もありはしないか?
何れにせよ、そんだけ雲南省に亜種が幾つもあると云う事は、もしかしたらエウダミップスの祖先種が此処で生まれ、ここから亜種分化が始まったのかもしれない。そして、やがて東西南北に拡がっていき、それぞれの地で更に亜種分化していったとは考えられないだろうか?

(* ̄◇ ̄)=3ふぅ~。ここいらまでが、オラのパープリン頭で考えられる限界だ。
いよいよ自然史博物館にでも行って、塚田図鑑(東南アジア島嶼の蝶)で調べるしかないか。
まあそれで、大概の事は片がつくだろう。

げげっΣ( ̄ロ ̄lll)、アカンわ。
よくよく考えてみれば、塚田図鑑はジャワやスマトラ、ボルネオ、小スンダ列島等に分布している蝶しか載っていないのだ。そこにさえ分布している蝶ならば、マレー半島やインドシナ半島に分布する亜種も解説されているだけだと云うことをすっかり忘れてた。
頼みの綱の塚田図鑑が使えないとあらば、取り敢えずググって探すしかないか…。何だかエライところに足を突っ込んじやったなあ。

それはさておき、先ずは原色台湾産蝶類大図鑑にしか載ってない「celetis」と云う謎の亜種だ。
だが、ググっても「splendens」は出てきても、「celetis」は全く出てこない。
コヤツは、分布がアンナン(ベトナム)となっている事だし、大方は近隣の「nigrobasalis 」に吸収合併されて消えた亜種名なのだろう。もう、そう解釈させて戴く。
その証拠にウィキペディアでは、「nigrobasalis」の分布に中国、雲南省が加わっている。ベトナムはラオスにも雲南省にも極めて近いのだ。

それはそうと、この「nigrobasalis」、ウィキではインドにも分布するとある。えっ、でもインドには名義タイプ亜種の「eudamippus」がいるじゃないか。
ハイハイ、「eudamippus」の分布域より更に東のインド東部の端っこに辛うじて分布が掛かっていることにしよう。
もう勝手に都合よく解釈していくことにした。
でないと、正直、やっとれんのである(# ̄З ̄)

さあ、前へ進もう。フォースの暗黒面に囚われてはならぬ。ルーク・スカイウォーカーは前進あるのみ。

あとは各亜種がどんな姿なのか確認していこう。
それによって、黒っぽくて小型の台湾産と白っぽくて大型のインドシナタイプの中間的な亜種が見つけられるかもしれない。そもそもは両者の分水嶺を知り得る事が最大の目的なのである。でないと、別種だとかどーだとかは論じられない。

各亜種の画像を探していこう。
先ずは原名亜種(名義タイプ亜種)から。

(出典『Annales de Lasociete entomologique 』)

(出典『insectdesigns.com』)

これは原名亜種だけに簡単に見つかった。
パッと見は、図示したラオス産のモノとさして変わらない。強いて言えば、白い部分が多いかな?
あと上翅の白い所にある黒いL字紋の形も特徴的かもしれない。

あっ、そういえばラオスかタイだっけかで、変なエウダミップス(nigrobasalis)を採ったなあ…。

(2011.4.7 Laos vang vieng)

小型で翅形が縦型なんである。
あっ、いらんもん出してもた。これは自分レベルでは言及でけまへん。変異として片付けてしまおう。

次に反対側の、台湾から近い中国の亜種の画像を探そう。

【e.rothschildi 中国・北中西部亜種】
(出典『ebay』)

ハッキリ亜種名は書いてないけど、思った通りに台湾のモノと近い黒いタイプだ。
あれっ?、よく見ると台湾の奴よりも黒っぽいぞ。むしろ日本のモノに近い印象だ。
多分、「rothschildi」だろう。
黒いのは、分布緯度が同じくらいだからなのかもしれない。北に行くと黒化する特性とかがあんのかなあ?

こんな画像も見つかった。

(出典『Bulletin of British Museum』)

図版の47が『rothschildi』だ(画像をタップすると拡大できます)。
これでさっきの黒っぽいのは、「rothschildi」とほぼ言い切ってもよいだろう。
因みに48は台湾の「Formosana」で、46は名義タイプ亜種の「eudamippus」です。

裏面の画像もあった。

図版63が「rothschildi」、64が「formosana」だ。そして、62が「eudamippus」。
w(゜o゜)wありゃま、表は似てても、裏面が台湾の奴とは全然違うじゃないか❗
「rothschildi」の裏面は、どっちかというとインドシナ寄りだなあ…。
そっかあ…、まさかそんな事は考えもしなかったよ。
表と裏の特徴が一致しないとは夢にも思わなかった。
ん~、似てるから中国の亜種も台湾の亜種も同じ亜種に含めてもいいんじゃないかと思っていたが、こりゃ別亜種にもなるな。
それにしても、この事実をどう解釈すればよいのだろうか❓(-.-)ワカラン。

次にその南側の中国亜種「kuangtungensis」を探そう。

だが、画像が全然見つからなくて、ようやくらしきモノにヒットしたのがコレ。

【e.kuangtungensis? 中国南部亜種】
(出典『www.jpmoth.org』)

亜種名の表記が無く、ただchinaとしか書いていないし、画質が悪くて右下の字も読めない。
けんど、先程の「rothschildi」よりも白い部分が多くて台湾産に似ている。「kuangtungensis」の分布域は台湾から一番近いし、両者が似るのは自然だ。ゆえにコレで間違いないと思うんだよね。

裏面もあった。

これも、どう見ても白系エウダミップスの裏面だ。
と云う事は、台湾や日本のフタオの裏面の方が特異なんだね。迷路がまた1本増えましたとさ。

お次は海南島の「whiteheadi」だね。

【e.whiteheadi 海南島亜種】
(出典『proceedings of general meetings』)

印象的には、中国のモノよりもインドシナに近い。
でも、よく見ると前翅の白い部分はインドシナ辺りのモノと比べて減退している。上翅の基部が黒いのも目立つ。しかし、これは雨季型の特徴なのかもしれない。
これがもしかしたら、黒いのと白いのの中間的な亜種になるのかもしれない。
あとは下翅外縁の青みが強いか…。
これだけ青いと美しいな。乾季型の白いのがいるとしたら、見てみたいね。最も美しいエウダミップスになるかもしれない。

他の亜種も探すが、中々画像が見つからない。
もう、うんざりだ。

そして、ようやく見つかったのが、この白黒の古い図版。

(出典『Bulletin of the British Museum 』)

ここに雲南亜種「cupidinius」とマレー半島亜種の「peninsularis」がおった。

図版154が原名亜種「eudamippus」。
以下、155 タイ・ラオス亜種「nigrobasalis」。
156 雲南亜種「cupidinius」。
157 海南島亜種「whiteheadi」。
158 日本「weismanni」。
159 マレー半島亜種「peninsularis」。

こうして並ぶと、別種となった「weismanni」って、やっぱり相当変わってるように見えるなあ。

「peninsularis」は、唯一他の亜種とは分布域が連続しない亜種で、種内では最も南のキャメロン・ハイランドなどの高地に局所的に棲んでいる。
他と形態的差異が大きければ別種となりそうだが、見た目は白系エウダミップスだ。しかし、よく見ると前翅の黒い部分の中にある白斑が著しく減退している。百万年後には、別種だな(笑)

注目は、雲南の「cupidinius」だ。
この亜種と「splendens」がどんな姿をしているのかが、一番知りたかったのだ。

でも、一見したところ「nigrobasalis」とあまり変わらない。やや黒い印象があるくらいだ。
まあ、タイ・ラオスと雲南なんだから地理的には近い。代わり映えしないのも当たり前か…。
しかし、よくよく見ると下翅の黒帯が明らかに太い。全体的にもやや黒っぽくは見える。そう云う意味では中間的特質であると言えなくもない。
もう1つの雲南亜種「splendens」が気になるところではあるが、多分さして変わらないんだろなあ。
もうちよっと劇的な結果を期待してたけど、まあ納得はできたよ。
台湾からインドにかけて少しずつ形態が変わっていってるワケだから、まとめてeudamippusとせざるおえず、それなりに違いのあるものを亜種としたのは妥当な分類だと言わざるおえない。

Σ(◎o◎lll)ぎょへー❗❗
一応、残りの亜種「splendens」と「jamblichus 」の画像を探してたら、エライもんにブチ当たってしまった。
何と他にも亜種記載されているもんが有ったのである。
光が見えたと思ったら、再びダークサイドの真っ只に引き摺りこまれてもうたやんけ。
「エウダミップスの泥沼」、いや底無し沼じゃよ。

分布域はわからないが、以下の5つの亜種を見つけた。亜種名の後ろの()内は記載年と記載者の名前である。

◇ e.lemoulti(1916 Joicey&Talbot)
◇ e.major(1926 Lathy)
◇ e.nigra(1926 Lathy)
◇ e.noko(1939 Matsumura)
◇ e.eclpsis(1963 Murayama&Shimonoya)

(# ̄З ̄)ざけんなよー。5つってかあー?
もう迷宮どころじゃない。ホント、マジ憂鬱。

でも記載年が古いところからみると、結局は誰も認めずに消えていったものだろう。
( ̄∇ ̄)気にしない、気にしない。
「celetis」が見つからないのも、(* ̄ー ̄)気にしない、気にしない。

その後、結局「splendens」の画像は、ついぞ見つけられなかった。
(○_○)気にしない、気にしない。
もはや、達観の域なのだ。

「jamblichus」は、或る文献から辛うじて一点だけ見つかった。
その文献で「lemoulti」、「major」、「nigra」の謎も一応解けた。

画像を取り出せないので、URLを添付しておきます。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/yadoriga/1977/91-92/1977_KJ00006297222/_pdf

森下和彦さんが日本鱗翅学会の機関誌『やどりが』91・92号に書かれた「フタオチョウ」と題した記事です。
白黒のかなり古い記事で、発行は1977年とある。
そこにエウダミップスの分布図があった。

それによると、「major」は北ベトナム亜種となっており、「nigra」は南ベトナム亜種となっていた。
但し、「nigra」は、差異が軽微で強いて亜種区分するものではないと書いてあった。
もっとも「major」も特に形態的特徴は書かれておらず、「北ベトナム Tonkin」と産地名だけしか無かった。
多分、「major」も「nigrobasalis」とさして変わらず、吸収されて名前が消えたのだろう。
因みに、両者とも画像は無しでした。

「lemoulti」は、原名亜種eudamippusの北部に分布するようだ。「rothschildi」に似るが大型、尾突も長いと書いてあった。
あれー、白い「eudamippus」に近い場所なのに、何で黒系の「rothschildi」に似てるの?
何か、それもワケワカメだよなあ。
何れにせよ、両者の中間的な姿なのだろう。でも画像が添付されてないんだよねぇ…。

南ミャンマー亜種「jamblichus」の画像はあった。
一見して特に白いことが解る。解説には「小型で黒色部は少なく、後翅亜外縁の白紋は大型」とあった。
確かに外縁部の白帯が他と比べて太い。

この結果、さらにそれぞれの亜種の特徴が連続した中での変異である事が解った。
中国の亜種が絶滅でもして、ポッカリと分布に空白域でも出来ない限りは、別種には出来ないだろう。

ところで、幼虫形態の方はどうなのだ❓
けど、『アジア産蝶類生活史図鑑』には、日本と台湾でしか食樹が見つかっていないと書いてあったしなあ…。期待は出来ないだろう。
まあ一応、調べてみっか。

わちゃ!Σ( ̄□ ̄;)、あった❗❗
げげっ(@ ̄□ ̄@;)!!、沖縄のものとも台湾のものとも明らかに違う❗
胴体の帯が1本じゃよ。沖縄のP.weismanniは帯なし。台湾のe.formosanaは帯が2本なのだ。
顔も他は模様があるのに、コヤツには全然無い❗

No.28 Great Nawab Caterpillar (Charaxes (Polyura) eudamippus, Charaxinae, Nymphalidae)

画像をそのまま添付出来ないので、見れない人は上のURLをクリックね。

表記には「yunnan」とあるから、産地は中国・雲南省だろう。
葉っぱは、何食ってんだ?
マメ科か?それともニレ科?、クロウメモドキ科?
植物の知識が無いから、さっぱりワカラン。

あっ、でも台湾の奴って、若令期に帯が1本しか無い時期ってなかったっけ?

その前に日本のP.weismanniと台湾のe.formosanaの終令幼虫の画に、再度御登場願おう。

【Polyura weismanni 沖縄】

(出典『日本産蝶類図鑑 幼虫・成虫図鑑 タテハチョウ科編』)

【Polyura formosana 台湾】

(出典『世界のタテハチョウ図鑑』)

あった❗
1本の奴がいる。

(出典『flikr.com』)

やっぱ、3令幼虫は帯が1本だ。
でも、同じ帯が1本でも感じはだいぶと違う。帯がショボいのだ。とても同じ種だとは思えない。

あー、も~、七面倒クセー(#`皿´)。
どりゃー(ノ-_-)ノ~┻━┻💥
知るか、ボケーΣ( ̄皿 ̄;;
別種、別種。もう別種でいいじゃん。
少なくとも、ワシの中ではそうとしよう。
もう、それでええやん。

                 おしまい

 
追伸
( ̄∇ ̄*)ゞいやあー、とうとう最後は匙を投げちまいましたなあ(笑)

それにしても、出口の見えない長いシリーズでした。
正直、書いている意味を見い出だせなくなった時もしばしば御座いました。

赤ん坊はもう疲れたよ。
いつまでも壊れたオモチャで遊びすぎたからね。
もう、サヨナラをするよ。

追伸の追伸
フタオチョウの研究で有名な勝山礼一朗さんから、Facebookにて御指摘がありました。

亜種splendens、celetis、nigra、majorは、全てssp. nigrobasalisのシノニム(異名同種)とするのが一般的だそうです。
因みに斑紋構成上、沖縄のものに最も近いと思われるのはssp. rothschildiとの事。
あと、rothschildiとして引用した一番目の画像(出典『ebay 』)は、ssp. kuangtungensisの間違いだそうです。Ssp. rothschildiに似るが、白色帯がより白く、前翅の基部の黒色部が青い幻光を発すらしい。
確かに画像をよく見ると、青い幻光色らしきものがある。カッコ良かとです。

また新海彰男さんから、ssp.eudamippusだけが年1化(春期)の発生で、他の亜種は皆、多化性だと御教授戴きました。

御指摘、御教授くださいました両氏に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。
有難う御座いました。

エウダミップスの迷宮

 
 
       台湾の蝶 番外編
     『エウダミップスの迷宮』

 
前回本編第2話の『小僧、羽ばたく』と重複する所があるが、おさらいの意味もあるので了承されたし。

『台湾の蝶』第2話で、Polyura eudamippus フタオチョウを取り上げた。しかし、手に余って頓挫してしまった。分類につい触れてしまい、無間地獄(むけんじごく)に嵌まってしまったのだ。
けれど、このまま終えるのも何だか癪だ。素人は素人なりに出来る範囲の中で解説していこうと思う。

2016年に台湾で初めてフタオチョウを採った時は、日本のものとさして変わらないなと云う印象だった。
だが帰国後、日本のフタオチョウと比べてみて、細かいところがかなり違う事に気づいた。そこで本当に同種なのかな?と云う疑問が湧いてきた。
当時、その疑問をFacebookにまんま書いたところ、その道の研究者として名高い勝山(礼一朗)さんからの御指摘があった。
なんと日本のフタオチョウは最近になって、Polyura weismanni と云う別種になったというのだ❗
因みに学名は、亜種名だった「weismanni」がそのまま小種名に昇格した。
この2016年の時点では、まだ日本のフタオチョウは台湾や大陸のものと同じエウダミップスフタオで、その1亜種にすぎないとばかり思っていたから驚いた。

百聞は一見にしかず。ゴチャゴチャ言ってるより、先ずは台湾のフタオチョウと沖縄のフタオチョウの画像を並べて、改めて比べてみよう。

【Polyura eudamippus formosana 台湾亜種】

(2016.7.9 台湾南投県仁愛郷)

 
【Polyura weismanni 沖縄本島産】

(出典『日本産蝶類標準図鑑』。日本では天然記念物に指定されているので、図鑑から画像を拝借です)

パッと見は同じ種類に見える。
だが、じっくりと見比べてみて、だいぶ違ったので思いの外(ほか)驚いた。
沖縄産のフタオは黒いのである。白い部分が少ない。
それに下翅の双つの尾状突起が明らかに短い。プライドある日本男児としては、慚愧に耐えない短小さだ。
ハッΣ( ̄ロ ̄lll)!、また危うく脱線するところだった。今は、んな事はどうでもよろし。

他にも相違点はある。
裏面上翅の黄色い帯が太いし、色も黄色いというよりかオレンジに近い色だ。
細かな点を見ていけば、まだまだ相違点があって、下翅の外縁が青緑色ではなく白い。また、白紋の形や大きさにも差があって、(◎-◎;)あらあら、(・。・)ほぉ~の、(;゜∀゜)へえ~なのだ。

そういえば両者の幼虫の食樹も全く違う。
噂では幼虫形態も違うと聞いた事がある。だから、一部では別種説も囁かれていたのは知ってはいた。
けんど、天然記念物がゆえに許可が降りないと大っぴらには研究は出来ないし、飼育も出来ない。だから研究結果の発表も気軽には出来ないというのが現状なのだ。
そういう理由から日本のフタオチョウの幼生期の情報は少ない。日本の自然保護行政は、クソ問題有りで、色々と難しいところがあるのだ。

また話が逸れていきそうなので、話を元に戻そう。
エウダミップスフタオも含めて、フタオチョウグループの幼虫の食樹はマメ科の植物が基本だ。
台湾のフタオチョウもマメ科のムラサキナツフジが食樹である(与えれば同じマメ科のタマザキゴウカン(アカハダノキ)やフジ(藤)でも飼育可能らしい)。

なのに日本のフタオチョウは、食べる植物の科さえも違っていて、クロウメモドキ科のヤエヤマネコノチチを主食樹にしている。近年は、サブ的食餌植物だったニレ科 クワノハエノキ(リュウキュウエノキ)を積極的に食うようになり、沖縄本島南部にまで分布を拡大しているという(南部にはヤエヤマネコノチチが殆んど生えて無いようだ)。
どちらにせよ、両植物ともフタオチョウグループとしては異例の食樹である。
食べ物が違えば、見た目が変わってくるのも頷ける。
多分、台湾のフタオチョウと遠く離れて分布する事により(日本のフタオチョウは八重山諸島にはおらず、沖縄本島のみに分布する)、長い隔離の中で独自に進化していったのだろう。

でも、何で全く違う系統の植物に食樹転換しちやったのかなあ?マメ科の植物なら、沖縄にだって他にも沢山あるでしょうに?
なぜに猫の乳なのだ?

いや待て待て。そもそも沖縄にはムラサキナツフジやタマザキゴウカン、フジは自生してないのかな?
(ー_ー;)あ~あ。又ややこしい話しになってきたよ。いらん事に気づくのも、どうかなと思う。

調べてみると、フジ(藤)は日本本土の固有種で、南西諸島は分布には入っていない。
ムラサキナツフジの分布は、台湾から中国にかけてだが、既に園芸種として日本に入って来ているようだ。
となると、フジもムラサキナツフジも、園芸種として沖縄本島にも間違いなく入って来てると思う。
ならば、そのうち先祖帰りする奴とかいないのかね?
絶対いるよね。藤やムラサキナツフジが野生化して増えたら、そっちを積極的に食い始める奴がいるのは充分に考えられる。
そうなったら百年、千年後には、また台湾のフタオチョウみたくなっちやって、再び亜種に格下げされたりしてね(笑)

3つめ、最後はついつい脳内で「玉裂き強姦」に変換されちゃうタマザキゴウカンの事を調べましょうね。
あっ!Σ( ̄□ ̄;)、おいおい何とタマザキゴウカン(アカハダノキ)は、石垣島と西表島に自生しているというじゃないか。
多分、フタオチョウは台湾から南西諸島沿いに分布を拡げていき、沖縄本島にまで達したのだろう。
だが、なぜだか他のところでは絶滅してしまい、食樹転換をした沖縄本島のものだけが生き残ったとゆう事か…。

いや、ちょい待ちーや。八重山諸島にも、まだフタオチョウが生き残ってる可能性だってあるかもしれないぞ。
開発が進んだ石垣島は、まあ有り得ないとしても、西表島は人跡未踏のジャングルだらけだ。どこか山奥で生き残っている可能性は無いとは言えないんじゃないか?
見つけたら、国内的には大発見だ。功名心がある人はトライしてみませう。ロマンでっせ。

次は、形態も違うと噂される幼虫を検証してみよう。
たしか『アジア産蝶類生活史図鑑』に台湾のフタオチョウの幼生期の写真が載っていた筈だ。早速、探してみる。

おうーっと、その前に言っとかなきゃなんねー。
えー、一般ピポー、特に女子はこの先閲覧注意です。
ハイ、もう間違いなく仰け反るであろうグロい芋虫さんが登場します。
( ̄ロ ̄lll)ゾワゾワされても、当方としては責任は持てませんからネ。ホント、知りませんからネ。
あっ、でもさー、意外と男子より女子の方が免疫力があるかもしんない。『あら、❤可愛いじゃないのよ。』などと云う前向きなコメントが発せられるとも限らん。その辺、女子の方が視野が広いというか、何でも可愛い化させてしまうのはお上手なのだ。

(出典『アジア産蝶類生活史図鑑』)

!Σ( ̄□ ̄;)うわっ、頭が邪悪じゃよ。
もうエイリアン。まるでプレデターだな。
あっ、そういえば昔、『エイリアンVSプレデター』という映画があったなあ…。
たしかプレデターの方が知能が高くて、エイリアンを狩る側なんだよね。そもそもシュワちゃんを窮地に陥れた強敵だもんね、強いわ。
こういうのを英語だと、ドラゴンヘッドと呼ぶらしい。プレデターの方がピッタリだと思うんだけど、プレデターを知らん人もおるもんなー。どう考えてもドラゴンの方が知名度が圧倒的に高いでしょう。仕方あるまい。

一応、プレデターの画像も添付しておきますか。
きっと、こういう寄り道ばっかしてるから、文章が長くなる原因になってんだろなあ…。
まっ、いっか。

【プレデター】
(出典『キャラネット』)

でも、これほど邪悪ではないよね。
見慣れると、イモムシさんも結構可愛く見えてきたりするものだ。

それはさておき、問題は日本のフタオチョウの幼虫である。探そうとも、幼虫の画像があんま無いのだ。

あっ、ラッキー(о´∀`о)
『イモムシ ハンドブック③』の表紙に、らしき姿があるじゃないか(上段の右端です)。

(出典『うみねこ通販』)

やったぜーd=(^o^)=b、これで簡単解決だ。
早速ページをめくる。

おっ、( ☆∀☆)あった、あった。

(出典『イモムシ ハンドブック③』)

あっ、体に帯が無い❗

いや待てよ。
でも、これってヒメフタオチョウの幼虫じゃないの❓
さっき見た『アジア産蝶類生活史図鑑』の台湾のフタオチョウの隣のヒメフタオの欄に、こんなのがいたような気がする。
だいち、どう見ても成虫写真が明らかにヒメフタオじゃないか。改めて、図鑑に記述されてる事が全て正しいワケではないと認識する。

『アジア産蝶類生活史図鑑』で、再び確認してみよう。

(出典『アジア産蝶類生活史図鑑』)

ほらあ~、やっぱそうじゃんかー❗
『イモムシハンドブック③』の監修者には御大・高橋真弓さんの名前もあったから、つい信用したけど、こりゃ間違いだね。出版社は、即刻なおされたし。

次に見つけたのが、蛭川憲男氏の『日本のチョウ 成虫・幼生図鑑』。

(出典『日本のチョウ 成虫・幼虫図鑑』)

画像、ちいせぇなあ。
あっ、でも全然台湾のとは違うぞ。
やっぱ、帯みたいなのが日本のフタオには無い❗
けど、画像が小さいだけに画質悪いよね。これも又、もしかしてヒメフタオと間違えてんでねえか?
黄色い側線が目立たないから、それは無いとは思うけど、この一点の写真だけでは何とも言えない。

そこで、💡ピコリーン。不意に記憶のシナプスが繋がった。たしか手代木さんがタテハチョウの幼虫図鑑を書いておられた記憶がある。それがたぶん中央図書館の蔵書にあった筈だ。

(^^)vありました。
飼育にはまるで興味が無いからサラッとしか見てなくて、うろ憶えだったけど、ちゃんとフタオチョウの幼虫の細密画がありました。

【終令(5令)幼虫】

【各令の顔面と卵】

【蛹】
(以上4点とも、手代木求『日本産蝶類幼虫・成虫図鑑』)

やっぱり、幼虫に帯紋が無い❗

こうなると今度は逆に、もっと台湾のフタオチョウの幼虫の事を知りたくなってくる。
手代木さんで思い出した。そういえばここ最近、2016年に新著『世界のタテハチョウ図鑑』を上梓された筈だ。
勿論、そんな高い図鑑を持っているワケがない。
知りあいをあたって、見せてもらう。

(二点とも出典『日本産蝶類幼虫・成虫図鑑』)

ほらほらあ~、全然違うじゃないかあー。
日本のフタオは帯紋ねえし、お顔の柄も全然違う。
卵の色だって、日本のは黄緑色だけど、台湾のは黄色い。面倒くさいので割愛したが、蛹もやや違う。
こりゃ、別種とするのも致し方ないところではある。それくらいに明らかな形態的差異はあると思う。

もっとも、個人的な種の概念としては微妙かも…。
さんざんぱら別種説で進めてきたにも拘わらず、言ってしまおう。本能的に、種として完全に分化する前の進化途中の段階、モラトリアムな状態にあると感じている。それが正直な見解なんだよね。

ここまで書いて、やっとネットで幼虫の写真が見っかった。
別にわざわざなんだけど、可愛いので添付。

(出典『(C)蝶の図鑑』)

それはそうと、フタオチョウの和名の方はどうなってんだ?
別種になったんだから、当然の事ながら和名も二つに分けなければならない。でないと区別できない。

でも日本の蝶愛好家だって、まだ多くの人が別種になったとは知らないようだ。その証拠にネット情報では、学名は以前のまま、和名も「フタオチョウ」のままだ。「オキナワフタオチョウ」とか「リュウキュウフタオチョウ」、「ニッポンフタオチョウ」とかの表記は見受けられない。
しかし、一つだけ別種として新学名に変えてあるサイトがあった。
『ぷてろんワールド』である。流石だねd=(^o^)=b

そこには和名も付けられてあった。
( ・∇・)ふむふむ。日本のフタオチョウは「フタオチョウ」、台湾やユーラシア大陸に棲むものは「タイリクフタオチョウ」となっておる。
えっ(;・ω・)❓、原名亜種は大陸にいる奴だから、そっちの方が本家本元だぞ。ならば、そっちを「フタオチョウ」とすべきで、日本のものは「ニッポンフタオチョウ」とかにするのが妥当なんじゃないの❓

でも、暫し考えて納得。日本では「フタオチョウ」という和名が既に浸透している。ならば、混乱を避ける為にそのままにしておく方が得策だろう。それに和名が新しくなれば、図鑑だって何だって今までの表記を全部変えなくてはならなくなる。これまた混乱が起きるし、無駄な労力を生じさせるだけだ。良い御判断だと思う。
しかし、「タイリクフタオチョウ」は一考の余地がありそうだ。台湾は大陸ではないし、大陸って何処の大陸やねん?とツッこむ輩もいるでしょうよ。
個人的には、ここはあえて無理に和名をつけなくてもいいんじゃないのと思う。もう「エウダミップスフタオチョウ」でエエのとちゃいまんのん。

あ~、ユーラシア大陸の原名亜種が出てきたから、コッチも説明せざるおえないじゃないか。これがまた、姿かたちが日本のフタオや台湾のフタオとは全然違うのである。

【Polyura eudamippus nigrobasalis 】
(2011.4.1 Laos Tadxaywaterfall)

だから、ここからが更にややこしい話になってくるんだよなあ…。

オダ、オダ、もうダメだあ~o(T□T)o
ここで再び力尽きる。

これ以上、迷宮にいると危険だ。
脳ミソ、グシャグシャなのである。精神の崩壊も近い。
ここは一旦、『待避~❗、待避~❗全軍撤退❗❗』

というワケなので、部隊を立て直してまた戻ってきます。

                  つづく

追伸
すんません。また頓挫です。

それはさておき、このあと今日(1月2日)午後2時から何とBSーTBSで映画『プレデター』を放映するじゃないか。
いやはや、何というグッドタイミングだ。面白い映画なので、暇な人は見ませう。

台湾の蝶2フォルモサフタオチョウ

  
   第2話『小僧、羽ばたく』

Polyura eudamippus formosana
フタオチョウ 台湾亜種♂

(同個体裏面)
(2016.7.9 台湾南投県仁愛郷)

ヒメフタオの次となれば、同属のエウダミップスフタオチョウ(フタオチョウ)を紹介するのが自然な流れだろう。
しかし、そこまで考えて第1話を書いていなかったというのが偽らざる本音だ。明後日から先の事は考えられない困った性格の人なんである。これはもう宿痾の病だろう。

( ̄▽ ̄;)むぅ~、エライコッチャのそらそうだわなの展開が予想されるゆえ、早くも書く気が挫けがちだにゃあ~(ФωФ)…。
正直、エウダミップスフタオチョウは素人のワイにはお題としては、ちぃーとばかし荷が重すぎるのだ。
オジサン、分類が沖縄のフタオチョウの存在を含めて色々と面倒くさいと云う事をすっかり忘れてたよ。
困ったなあ…。その辺をどう上手く整理して説明すればよいのか皆目見当がつかないよ、おーまいがっと・とぅぎゃざー(ToT)

そもそも、エウダミップスフタオチョウと書いたけど、和名は単に「フタオチョウ」とされるのが一般的だ。
ほ~ら。もうこの時点でややこしい。
和名に関しても色々と問題があるのだ。タイトルをフタオチョウではなくフォルモサフタオチョウとしたのには、それなりに深い事情があるのですよ。

(ー_ー;)…何だかなあ~。
ここまで書いてて、本人的には早くも躓いてる感がある。参ったなあ…。その辺のややこしい説明はおいおいしてゆく予定ではあるが、上手く説明する自信が全然ない。それくらいに分類学的にややこしい種なのだ。
連載2回目にして、早くも継続の危機である。
途中で頓挫、放棄して逃亡しない事だけを祈ろう。
皆さんも祈ってくだせえ。

分類学的な事は措いといて、先ずは台湾のフタオチョウの事から書き進めていこう。

タテハチョウ科 フタオチョウ亜科 Polyura属に含まれる中型のタテハチョウで、前回紹介したヒメフタオと同じくらいの大きさだ。
しかし、胴体はやや太くて、より強靭なイメージがある。ゆえに飛翔力は強い。敏速だ。ビュンと一直線に飛ぶ。フタオチョウ軍団の中では比較的小さい方の部類に入るせいか、とてもすばっしっこく見える。時々、姿を見逃すくらいだ。
初めて会った時も地面に止まっているのに気づかず、足元からパッと羽ばたいて⚡ビュン。気づいたら枝先にピッと止まってた。しかもコチラを向いて。
小回りの効く、韋駄天小僧って感じなのだ。

台湾では全島に渡って分布し、平地から低山地に多い。自分の経験では標高700m以上では見たことがなく、500m前後でよく見かけた。
5月に現れ、7~9月に数を増す。秋には個体数を減じるが、11月まで見られるという。越冬態は蛹。
雌雄ともに樹液、腐果(落下発酵した果物)、ミミズや蛙などの小動物の死体、獣糞に好んで集まる。
オスは、樹の梢付近でテリトリー(占有活動)を張り、地面に吸水に訪れる(ヒメフタオと同じくメスは吸水には来ない)。
前述したように飛翔は敏速だが、わりとすぐ止まってくれるので観察はしやすい。また、腐果などの餌を吸汁をしている時はアホ。一心不乱にお食事されているので、手で摘まめる時さえある。それくらい餌には意地汚いのだ。
フタオチョウのグループは大体皆そうで、美しいクセに悪食。敏感且つマッハで飛ぶクセにどこか抜けている。まあ、そんな賢いのかアホなのかワカンナイところが、自分がこのグループを好きな一因なのかもしれない。

色彩斑紋は♂♀同様だが、メスはオスよりも一回り大きく、下翅の尾状突起が外側に広がる事から区別は比較的容易。

コヤツもヒメフタオ同様に実物のメスは見もしていないので、自前の画像は無い。
ゆえに図鑑から拝借した画像を添付しておきます。

(出典『アジア産蝶類生活史図鑑』)

台湾での幼虫の食餌植物は、マメ科のムラサキナツフジ。与えれば、藤やタマザキゴウカンでも順調に育つという(又おまえかっ!玉裂強姦❗)。

そうだ。野外写真も添付しておかなきゃね。

この写真で思い出した。
たしかコイツ、地面に止まってたんだよなあ…。
で、距離を詰めて上から網を被したはいいけど、横から逃げられそうになった。
!Σ( ̄□ ̄;)ゲッ、慌てて網の外枠を押さえようとして駆け寄った。だが如何せん足場が悪かった。
雨水で削られた溝に足をとられて\(ー_ー)/アッチャー。前にツンのめって、あろうことか網の柄をバキッ💥おーまいがっと・とぅぎゃざあ~Σ( ̄ロ ̄lll)
完全に踏んづけて、真っ二つに折っちまった。あれは、マジで泣いたね(T_T)

この辺の詳しい顛末は、アメブロの『発作的台湾蝶紀行』に書いておりまする。興味のある方は、第24話の「小次郎、死す」の回を読まれたし。

採って実物を見た時の第一印象は、沖縄のフタオチョウと一緒やん!だった。
しかし、帰ってきて沖縄のと見比べるてみると、細かい所がだいぶ違ったので、思いの外(ほか)驚いた。
沖縄産のフタオは黒いのである。それに下翅の双つの尾状突起が明らかに短い。我が日本国の男児としては、慚愧に耐えない短小さだ。
他にも裏面の黄色い帯が太くなるなど、細かな点を見ていけば結構な相違点があって、あらあら(◎-◎;)の、ほう~(・。・)の、(;゜∀゜)え~だった。

そういえば両者の幼虫の食樹も全く違う。噂では幼虫形態も違うと聞いた事がある。だから、一部では別種説も囁かれてたのは知ってはいた。けんど、天然記念物がゆえに許可が降りないと大っぴらには研究も出来ないし、飼育も出来ない。だから研究結果の発表も出来ないという現状なのだ。そういう理由から日本のフタオチョウの幼生時代の情報は極めて少ない。
日本の自然保護行政は、クソ問題有りで、色々と難しいところがあるのだ。

(ー_ー;)ほらね。ややこしい話しになってきたよ。
でも、ここからが更にややこしい話になってくるんだよなあ…。

取り敢えず、沖縄のフタオチョウの画像を添付しておこう(沖縄のフタオチョウは天然記念物に指定されているので、画像は図鑑のものを図示しておきます)。

上2つがオスの裏表。
以下の2つがメスの裏表である。

(以上4点共 出典『日本産蝶類標準図鑑』)。

似てるけど、違うっちゃ違うでしょ?

しかし従来、日本のフタオチョウも台湾のフタオチョウも大陸に分布するフタオチョウと同種とされてきた。台湾のも日本のも1亜種にすぎないと云う扱いである。
だからこの時、2016年の時点では自分はまだ日本のフタオチョウもPolyura eudamippus エウダミップスフタオチョウの一員だとばかり思っていた。
でも、それってオカシイんじゃないの❓と云う感想をブログに書いたら、その道のプロである勝山(礼一郎)さんから、目から鱗の御指摘があった(リンク先のFacebookだったと思う)。
何と、沖縄のフタオチョウは最近別種になったらしいのだ。
学名は、亜種名の weismanni がそのまま昇格しての Polyura weismanni となったようだ。
日本の蝶愛好家の中でも、この事実を知っている人はまだ少ないかと思われる。なぜなら、ネットに掲載されている情報では、ほぼほぼ学名が以前の古い学名のままだからである。

問題はこれにとどまらない。
この大陸にいる奴等、中でも原名亜種を含むインドシナから西に分布するのが、台湾や沖縄にいるのとは同種とは思えんくらいに見た目も大きさも違うんだよなあ…。

(2011.4.1 Laos Tadxay)

ここで限界を感じて筆が止まる。
先を模索してみたが、もうワケワカラン(○_○)…。
それにどうも上手く書けなくて、ここまで何度も何度も書き直しているんである。レイアウトも何度も組み替えたから、もう゜゜(´O`)°゜ヘトヘトだよ。

で、それなりに無い頭で考えたのだが、ここで更に論を展開してゆくのには無理があると思うんだよね。
そもそものテーマは「台湾の蝶」なのだ。なのにこの先、そこからドンドン外れてゆく一方になるのは明白。そりゃ、本末転倒というものでしょう。
そんなワケなので、この続きは稿を改めて番外編として別な機会に書こうかと思ってます。

尻切れトンボでスンマセーンm(__)m

                 おしまい

追伸
我ながら、見事な尻切れトンボ振りだ。
ここまでブチッと唐突に終わるのは、あまり記憶がない。それだけ追い込まれていたんだろネ。草稿の時点では、ボケも一切なしだったしさ。

タイトルをフォルモサフタオチョウとしたのには理由がある。沖縄のフタオチョウが独立種になった事により、和名がグッチャグッチャになったからだ。
亜種名を和名に冠した方が、まだしも解り易かろうと考えた上でのはからいです。

えー、タイトルついでに。
別稿のタイトルは『エウダミップスの迷宮』か『エウダミップスの憂鬱』になる予定。
何だか、まるで推理小説と純文学のタイトルみたいだよな。『エウダミップスの孤独』とか『エウダミップスの逆襲』、『エウダミップスの咆哮』etc…なんていう続編、シリーズものも一杯書けそうだわさ(笑)

再展翅してる場合かよ?

 
標本箱の整理をしていたら、随分と標本に狂いが生じていた。好きな蝶たちだし、再展翅することにした。

再展翅の仕方は、先ずはタッパーか何かの密閉できる容器を用意する。その真ん中にウレタンやコルクなど針が刺せるものを貼りつけ、蝶をセットしたら周りを水でドボドボにしたティッシュペーパーなどで埋めてやる。
で、カビ防止の為の正露丸をバラまいたら蓋をして冷蔵庫に2~3日安置する。
で、柔らかくなっていたら再展翅。

 
【フタオチョウ Polyura eudamippus ♂】
(2017・4月 タイ北部)

日本の沖縄本島にいるモノ(天然記念物)は、従来同種の別亜種とされてきたが、最近別種として分けられたらしい。
P.eudamippusと比べて遥かに小さいし、全体的に黒っぽくて尾突も短くてかなり特異な姿だからして果たして同種なのかなとは思ってた。食樹も全然違うし、幼虫形態にも差があるらしい。ゆえに別種とするのは納得だ。まあ、かなり近い間柄ではあるけどね。
う~ん、でもジッと見ていると、本当のところどうなのかなあとも思う。別種になる一歩手前という段階だと云う気がしないでもない。地理的隔離もあるから何万年か何千年、何百年先には明らかな別種になっている事は間違いないんだろうけどさ。とにかく別種とか亜種とかの線引きは難しいよね。人によって見る観点が違えば、自ずと見解も変わってくるのは当然だもんね。かといって最近流行りの遺伝子解析が万能で絶対だとも思えない。遺伝子が違うけど見た目で区別できない種なんて果たして種に分ける意味ってあんのかよ❓と思う。

【沖縄本島産フタオチョウ】
(出展『日本産蝶類標準図鑑』)

多分、新学名はPolyura weismanniだったと思うけど、間違ってたら御免なさい。

 
【ドロンフタオ Polyura dolon ♂】
(2014・4月 タイ北部)

一見すると上のP.eudamippusにソックリだが、よく見ると斑紋も違うし(特に裏側)、縦長の翅形だ。大きさも少し大きい。
P.eudamippusはラオスにも結構いたが、ドロンは見たことがないから分布域はより狭いと云う印象がある。
両種とも♀は更に巨大で迫力がある(特に4月の個体は大きいようだ)。しかし、中々お目にかかれないらしく、自分も生きている姿をまだ見たことがない。フタオチョウ類のメスは殆どが珍で、トラップをかけないとまず見られないという。

 
【キアニパルダスオオイナズマ Lexias cyanipardus ♀】
(2014.4月 ラオス北部)

メスが水玉模様になるcyanipardus種群の最高峰であり最大種。西日本のオオムラサキのメスくらいは優にある。
う~、完品が欲しい。それにまだ♂も採った事がない。コイツは再挑戦してもいい蝶。でも狙って採れる蝶ではないんだよねえ…。

 
【アルボプンクタータオオイナズマ Lexias albopunctata ♂】
(2011.4月 Laos中部)

これもメスが水玉模様になるcyanipardus種群の一員だが、オスはほぼほぼ真っ黒なので区別しやすい。
このあいだ古いTSUISO(蝶のミニコミ誌)を戴いたんだけど、それに拠ると昔はL.albopunctataもL.cyanipardusもL.bangkanaもまだ別種に分けられていなくて、纏めて全部Lexias cyanipardusとされていたようだ。
アルボはわりと採ってるけど、カッコイイからもっと欲しい。柄もさることながら(特に♀)、長い触角が全体のフォルムを引き締めていて( ☆∀☆)萌え~。
それに異常なまでに敏感だから採集難易度が高い。だから狩猟焦燥感と採った時の快感度はマックス。とにかく採りがいがあるのだ。

 
【アルボプンクタータオオイナズマ♀】
(2017・4月 ラオス)

それにしても、ほったらかしでまだ台湾の蝶もほとんど展翅していないのに、何やってんだろ❓こんな事してていいのかね❓
『続・発作的台湾蝶紀行』も二行だけ書いて頓挫したまんまだしさ。何だか憂鬱だなあ…。