2018′ カトカラ元年 其の17

 
  vol.17 ムラサキシタバ

  第一章『青紫の幻神』

 
この回を書きたいがために、この連載を始めた。
お陰で、ここまで大変な労苦で書き続ける破目になってまったけどね。

ムラサキシタバに初めて出会ったのは、まだカトカラを殆んど見たことがない2017年の秋だった。

 
 2017年 9月23日

日本の蝶も粗方採ったし、東南アジアでの採集にも厭きていた。全てが予定調和になりつつあったのだ。だから、心の何処かで新たなモチベーションを求めていた。虫採りの最大のエクスタシーは、まだ見ぬ、心が震えるような凄い奴らに会うことだ。その為にワザワザ現地に赴き、其処で生きている姿を見た時の感動は何をもにも換え難い。そこには特別な幸福感が在る。謂わば、オイラは痺れる瞬間を求めて虫捕りをしているのだ。

そこで考えたのが、蝶以外で昔から気になっていた別のカテゴリーの虫たちに会ってみようというアイディアだった。
そう云う有名どころ、謂わばスター昆虫は意外と見たことがなくて、まだまだ残っている。
例えば甲虫ならば、最初に思い浮かぶのはオオクワタだ。恥ずかしいことに、いまだに天然物は見たことがないのだ。そのうち偶然会えるだろうと、探しにすら行ったことがない。
他にも結構ある。ヤンバルテナガコガネ、オオチャイロハナムグリ、ダイコクコガネ、オオトラカミキリ、ギカンティア(オニホソコバネカミキリ)、フェリエベニボシカミキリ、ツシマカブリモドキ、キタマイマイカブリ、オオルリオサムシ、アイヌキンオサムシ、シャープゲンゴロウモドキetc…、っといった辺りだろうか。
甲虫以外なら、あとはタガメ、マルタンヤンマ、マダラヤンマかな。
蝶以外の鱗翅類、つまり蛾ならば、イボタガ、オオシモフリスズメ、メンガタスズメ、キョウチクトウスズメ、イブキスズメ、シンジュサン、ハグルマヤママユ、キマエコノハ、そして今回の主役であるムラサキシタバだった。

その手始めに、この年の春先、イボタガとオオシモフリスズメに会いに灯火採集に連れて行ってもらった。連れていってくださったのは虫捕りの天才の御二人だ。だから、ゲスト気分だった。

 
【イボタガ】

 
【オオシモフリスズメ】

 
その夜は、これらに加えてエゾヨツメまで採れて、楽しい夜だった。オオシモフリなんてフィナーレにアホほど飛んできてシッチャカメッチャカになり、笑てもうた。

 

 
虫捕りの天才お二人の手に、オオシモフリてんこ盛りである(笑)

その第2弾として、同じくお手軽方式で画策したのが、ムラサキシタバに会いにゆくと云うものだった。

ムラサキシタバの素晴らしさは、蝶屋である自分の耳にも以前から届いていた。周りの蝶屋の爺さんたちにも、アレは別格だと度々聞いていたからだ。デカくて美しく、しかもそう簡単には会えないらしい。オマケに会えても敏感で、中々採れないとも聞いている。ネットで見ても、皆さんがこの蛾のことを矢鱈と持ち上げていらっしゃる。それ程のものならぱ、是非一度、お目に掛かりたいものではないか。

と云うワケで、蝶屋でもあり、蛾屋でもあるA木くんにせがんで兵庫県のハチ北高原に連れて行ってもらった。彼はライト・トラップのセットを持ってるし、何度もムラサキシタバを採っているのだ。

 

 
ゲスト気分でついてゆくと云うのは春と同じで、気持ち的には見るだけで良かった。イボタガ、オオシモフリスズメと邂逅したとはいえ、まだまだ蛾に対する嫌悪感が強かったのだ。幼少の頃から植え付けられてきた「蛾=気持ち悪い」と云う概念はちょっとやそっとでは拭い去れないものなのだ。

その日はパタラキシタバ、ジョナスキシタバ、ベニシタバ、シロシタバが飛んできた。でも「ふ~ん、カトカラってこんなんなのね。」というのが、正直な感想で、特に心は動かなかった。今思うと、時期的に遅くて鮮度が悪かったせいもあるかもしれない。

 
【パタラキシタバ】

 
【ジョナスキシタバ】

 
【ベニシタバ】

 
【シロシタバ】

 
一応、参考までに各種の画像を並べたが、画像は全て別な日、別な場所のものである。以下、特に採集日を記していないものはそうだと理解されたし。あっ、上のオオシモフリとイボタガもそうです。
 
待望のムラサキシタバが飛んできたのは、深夜の11時近くだった。A木くんが急に左手の闇に向かって慌てて走り出した。何事かいな?と思って見てたら、網が空中で閃いた。次の瞬間、A木くんが『採ったあー、ムラサキ❗』と叫んだ。

おー、やったやん。見せて見せてー、ってな感じで近づいてった。してからに、ワシがアンモニア注射を射ったのを何となく覚えてる。シロシタバを見た後だから、それほどデカイ!というインパクトは無かったが、立派だとは思った。折角だから、写真を撮らせてもらった。

 

 
翅が破れてたから、これも他のカトカラみたいに進呈されるのかと思いきや、御本人のお持ち帰りだった。
見ると、欲しがるのが虫屋の性(さが)ゆえ、ちょっぴり残念だった。でも今にして思えば、この時に貰わなくて良かった。貰っていたなら、満足して完全に興味を失っていたかもしれない。手に入らなかったことが、逆にその後のモチベーションになったところはある。

 
 
 2018年 6月

翌年の6月半ば、シンジュサンを探していた折りにカバフキシタバとワモンキシタバが採れた。鮮度も良くて、結構カッキレーだなと思い、少し興味を持った。

 
【カバフキシタバ】

 
【ワモンキシタバ】

 
この時に、小太郎くんにカトカラについての基本的レクチャーを受けたと云うのも影響があるだろう。中でも、日本のカトカラではトップクラスに珍しいと言われるカバフキシタバの魅力について熱く語られたのが大きい。そんなに珍しいのならば、そんなもんワテが一年目にサラッと仕留めたろやないかと思ったのだ。
意外にもシンジュサンに難儀して、その頃は再びシバキ魂に火が灯りかけてた頃だったから、それがカッ🔥と燃え上がった恰好になった。
虫には採ったり、飼ったり、集めたりと色々楽しみがあるけれど、自分は圧倒的に採るのが好きだ。採集難易度が高いモノであればあるほど、採るには己の全知全能を総動員しなければならぬ。ゆえにゲーム性が高い。謂わば狩猟なのだ。だから何よりも燃えるのである。しかも、難易度が高いものほど負けん気とやる気のスイッチがブチッと入る。

 
【シンジュサン】

 
【カバフキシタバ】

 
カバフキシタバを仕留めたところで、あとはシロシタバとムラサキシタバをシバいてフイニッシュにしてやろうと考えていた。それで取り敢えず蛾は一旦おしまい。次は甲虫を視野に入れていた。

 
 
 2018年 8月

近畿地方の近場での情報が少なく、かなり苦労を強いられたが、何とか自力でポイントを見つけてシロシタバも落とした。

 
【シロシタバ】

 
これで機運は高まった。残る真打ちムラサキシタバもイテこまして、気分良くフィナーレを飾ろうと思った。

 
 
 2018年 9月1日

強力なライト・トラップセットを持っている植村を焚き付け、満を持して再び兵庫県北部のハチ北高原を訪れた。因みに植村は何ちゃって蛾屋から蝶屋に転身した天才なのかアホなんかワカラン男である。

天気は曇り。しかもガスってると云う灯火採集には最高のコンディションだった。

 

 
思ったとおり、水銀灯二灯焚き➕ブラックライトの大伽藍に、アホほど蛾が集まってきた。

しかし、カトカラは何故かパタラしか来ない。設置場所の選定をシクったかもと思った。のんびり屋の植村が迎えに来たのが遅かったせいもあって、良い場所を探している時間があまり無かったのだ。
でも、所詮そんなのは言いワケだ。この場所に決めたのはワシだから、全部ワシのせいじゃ。A木くんに泣き入れて、去年のポイントを使わせて貰うべきだったと激しく後悔する。けど、そんなの自分で採った気がしないし、気持ち良く終われない。だいちプライドが許さないじゃないか。正面きって立ち向かってないみたいで、ムラサキシタバに対しても失礼な気がする。ポテンヒットのタイムリーヒットなんかで勝てても、素直には喜べない。

午後10時を過ぎて、漸くジョナスとゴマシオキシタバが現れた。

 
【ゴマシオキシタバ】

 
けれど後が続かず、時刻は午前0時になった。
そろそろ帰らねばならない。仕方なく、屋台を撤収することにした。

ワシが備品を車に運んでいる時だった。背後から声が飛んできた。

『ワッ💦ワッ💦、何かデカイの飛んできた❗❗』

振り向くと、白布をポールから外している植村が叫んでる。確かに何やらデカイ蛾が彼の頭辺りに寄ってきている。デカいスズメガかと思ったが、逆光になってて、影しか見えない。

💥( ̄□||||ハッ❗、けど、もしやと思い駆け出す。だが駆け寄る前に植村はパニくって、それを頭で振り払った。アホ、やめろ!と思った次の瞬間、驚いたソイツは物凄いスピードでスキー場の下の闇へと、あっという間に消えていった。その時にハッキリと鮮やかな青紫の下翅が見えた。

(-“”-;)……。茫然とその場に立ち尽くす。間違いない。ムラサキシタバだ。
青紫の巨大なる神だ。物凄くデカかった。残像が頭の中でリフレインする。

背後から植村の、のほほんとした声が聞こえてきた。

 
『五十嵐さん、アレ何でしたん❓』

 
やっとのことで、絞り出すように答える。

 
『(-“”-;)たぶん…、ムラサキシタバや…。』

 
(ー_ー;)嘘だろ❓と思った。現実が上手く呑み込めない。
あと2分、いや1分でも撤収を遅らせていれば採れてたのに、(#`皿´)何でやねんの、何でやねん(*ToT)
怒りと悲しみがグチャグチャに混ざり合って、心がドス黒いマーブル模様になる。

このままでは帰れない。もう30分だけやろうという事になって、再度屋台を組み直した。

0時45分まで粘った。
だが、紫の君は二度と戻っては来なかった。

 
 
 2018年 9月7日

 
チケットショップで2回分の青春18切符を買って、山梨までやって来た。

このままでは終われない。でもライトトラップは持ってないし、近畿地方ではムラサキシタバはレア中のレアで、簡単には採れない。ゆえに、まだ比較的採れるとされる中部地方まで足を伸ばしたのだ。

 
【ペンションすずらん】

 
ここは関東の虫屋には名の知れたペンションで、常時ライト・トラップが設置されている。

 

 
夜になると、こないな感じになる。

 

 
ネットを見ていると、ここにムラサキシタバが飛んで来るらしい。ダサい採り方だ。そんなにまでしてと自分でも思うが、形振り構っていられない。カッコつけてる場合ではないのだ。本気モードになったのに、一年目に採れないだなんてダサ過ぎて、プライドが許さない。しかも最終戦だ。フィナーレを飾れないなんて辛すぎる。残尿感を抱えて、また来年まで待つなんて、想像しただけでゲンナリだ。

ライトトラップはデカくて強力だとは知っていた。しかし、待ちの姿勢だけで採れるとは思わなかった。此処で何もせずに奇跡をただ待つだなんて、考えが甘すぎる。神様は、そんな他力本願の輩には幸運を授けてはくれまい。そう思っていた。だから今回、カトカラ採りに初めて果物トラップを導入した。🍌バナナや🍍パインに焼酎をブッかけて発酵させ、ストッキングに詰めて木から吊るすのだ。その甘い香りに誘われて虫たちが寄って来ると云う寸法だ。

出来うる限りのやれる事を尽くして天命を待とう。
とはいえ、まあまあ天才と勝手に自負している俺様の人だ。正直、何とかなるじゃろうと思って乗り込んで来てた。基本、なんくるないさの楽観主義なのである。

宿の兄ちゃんにムラサキの幼虫の食樹であるドロノキとヤマナラシの場所を訊ねる。
しかし、返ってきたのはガッカリの答えだった。何とドロノキは、この周辺には無いと言う。ヤマナラシは一応あるが、それも極めて少ないらしい。( ; ゜Д゜)マジかよ。
しかも『此所はムラサキシタバは元々少ないよ。今年は、まだ見てないなあ…。』と言われた。
何だ、多産地じゃないのかよ❓頭の中の、明るかった風景が急に暗くなって、暗闇の中の心もとない1本の蝋燭の炎のようになった。

やや半泣きで場所を訊いたら、車で案内してくれるという。この宿は親切な人ばかりだ。その後も宿の奥さんに随分と世話になった。

ヤマナラシは宿から暫く下ったところにあった。確かに4、5本ほど纏まって生えている。壮齢木が2本、それよりも若い木が何本かって感じだ。

日没前、まだ辺りが明るいうちに下見がてらにトラップを仕掛けに行く。車だと近いと思ったが、歩いてみると遠い。たぶん3㎞くらいはあるだろう。それに道を下ったら、帰りは登らねばならない。往復で6㎞だ。此所と宿のライト・トラップの間を往復せねばならないと考えたら、気が重い。しかも夜道を一人ぼっちで歩かねばならないのだ。👻お化けが怖いなあ…。でも、そっちを心配する前に奴のことを心配すべきだろう。絶対、いるもんね(翌日、やっぱり証拠があったわ)。

 

 
甲信越では、何処でも珍しくないものだが、昼間に活動する蝶屋にとっては殆んど記憶に残らない看板だ。現実的ではないからだ。でも蛾を追いかけるようになってから、矢鱈と目に付くようになった。熊は紛れもなく夜行性なのだ。昼間よりも会う確率は格段に上がる。

 

 
風呂入って、晩飯食って出掛ける。

だいぶと慣れてきたとはいえ、闇、怖えー。

 
👻お化け、怖えー。

熊、怖えーよー(ToT)

 
背中の毛が半分逆立っているのが自分でも解る。

途中で、樹液の出てるミズナラの木を別々に2本見つけた。一つにはベニシタバが来ていたが、逃した。もう1本にはパタラキシタバが来ていたが、ド普通種なので無視。

果物トラップには、なぜかオサムシが来ていた。しかも2頭も。見るとクロナガオサムシの仲間だった。

 

 
近畿地方で見るものよりも、遥かに小さい。多分、別種なのだろう。コクロナガオサムシ?
それにしても、全く知らないワケではなかったが、オサムシも甘いもんに寄って来るんだな。オサムシの餌といえば、基本的にミミズや毛虫、芋虫、カタツムリなどだから、肉食と云うイメージが強い。だから、何か違和感がある。

戻って、ライト・トラップを確認したら、シロシタバとエゾシロシタバ、ジョナスキシタバが来ていた。どれも飛び古した個体で、テンションはあまり上がらない。

 

 
果物トラップに戻ったら、遠目に見たことのないカトカラが来ていた。しかもデカイ。一瞬期待したが、どう見てもムラサキじゃない。よくよく見れば、全く頭になかったオオシロシタバだった。オオシロには初めて会うので、ちょっぴりテンションが上がった。

 
【オオシロシタバ】

 
でも、所詮は外道である。それに、暗い色で渋すぎるわ。

この日は上と下を何往復もして、死ぬほど歩いた。たぶん20㎞以上は優に歩いている。ヘトヘトで風呂入って、爆睡した。ここのペンションは夜中でも風呂に入れる。虫屋に優しいペンションなのだ。有り難いね。

 
 
 2018年 9月8日

翌日は、東京から蛾好きの高校生が父親に連れ添われてやって来た。名前は斎藤くんといったかな?
彼には色々世話になった。別なライト・トラップでは黄色いヤママユを採らせてくれたし、灯台もと暗しのポイントにも案内してくれた。蛾の採り方とか他にも沢山のことを教えてくれた。感謝である。

 

 

 
彼が初めてムラサキを採った時の興奮に満ちた話も聞かされたし、何やかんやと、結構楽しい夜だった。
けれど、この日も紫色の巨神は、一度も姿を見せてはくれなかった。

彼とLINEで連絡先を交換したけど、電話番号を変えたみたいで帰阪後しばらくして連絡がとれなくなった。大学、ちゃんと合格したのかな❓
オジサン、蛾ド素人だったけど、ちょっとはレベルも上げて、翌年には日本では未知のカトカラを新発見したよー(^-^)v

 
 
 2018年 9月9日

いよいよ最終日である。

この日は晴れたので、大菩薩峠を目指した。山の上の環境を見たかったし、気分転換もあった。この辺はキベリタテハの大産地としても有名だしね。キベリは好きだから、真面目に採ってやってもいい。いや、採らせて下さい。

 
【キベリタテハ】
(2016.9 長野県松本市)

 
それに、来たことはないが、大菩薩峠と云う名前には思い入れもある。

バスで登山口まで上がった。

 

 
周囲はブナ林が広がっていた。ブナ林は好きだ。緑が瑞々しくて、心が落ち着く。

 

 
大菩薩峠まで登ってきた。雲が掛かってて富士山は見えなかったけど、眺望は最高だった。

大菩薩峠といえば、中里介山の小説である。盲(めしい)のダーティ天才剣士、ニヒリスト剣士の草分けでもある机 竜之介になった気分だ。この小説は映画化もされている。古い映画だから、勿論のこと後から見たんだけど、市川雷蔵がめちゃんこカッコいいんだよな。

少し戻り、キベリタテハの好きそうなここぞと云う場所で張っていたが、1頭さえも見られなかった。
帰って、宿の女将さんに訊くと、今年は大不作の年らしい。
何だか。何をやっても上手くゆかぬ。

三晩目は高校生に教えてもらった場所、ライト・トラップの裏に果物トラップを仕掛けた。そこに去年、ムラサキが来たらしい。
これで歩き回る距離は格段に短くなったし、移動時間も大幅短縮になった。時間を有効に使おうと云うワケだ。

なぜかライト・トラップには蝶が来ていた。

 

 
どうしてこんなところに❓のベニシジミちゃん。

 

 
何で交尾までしてんねん❓のヤマキマダラヒカゲ。

何か、段々腹立ってきた。
別にキミたちに罪はないんだけど、何で蛾を探してるのに蝶が来んねんと思ってテンションが限りなく下がったわ。ワシを蝶界に引き戻したいんかい❓

この夜、少し心が躍ったのは、ヒゲナガカミキリとベニシタバくらいだった。

 

 

 
そう、何も起こらなかったのだ。

満天の星空を仰ぐ。綺麗だ。
でも、三日連続で熊とお化けの恐怖に耐えて死ぬほど歩いたが、ついぞムラサキシタバは現れなかった。
途中で採れる気が全くしなくなって半ば諦めかけてはいたが、こうして結果が出てしまうと、やはり暗然たる思いにはなる。

そういえば、思い出した。
そろそろお開きにしようとしたところで、耳の穴に蛾が入り、奥に潜り込んでエレー事になったんだよね。パニくって、宿の人に泣きついたよ。ホント、(;´д`)トホホの結末だったわ。

翌日、朝風呂に入り、しみじみアカンかったなあ…と思う。

 

 
失意をどっぷりと纏って帰路についた。

 

 
空は心を映すように、どんよりだ。
また青春18切符で戻るかと思うと、益々心は重くなる。

 

 
途中、何処かで蕎麦を食う。

 

 
負け犬の、ほぼ夢遊病者だから記憶は殆んどないが、たぶん中津川駅辺りだろう。

 

 
やっとこさ米原まで戻ってきた。
日が沈み、夜との狭間の僅かな時間の空が美しい。その色は、まだ見ぬ青紫のようだった。

                     つづく

 
追伸
ワードプレスのプロバイダー契約は2月いっぱいなのに、ナゼかまだ文章が書ける。しかし、いつダメになるやらワカランので急ぎ書いている。ダメになったら、アメブロに書きます。

今回登場した各カトカラやイボタガ&オオシモフリ、シンジュサンについては個別に拙ブログに文章があります。宜しければ、ソチラも探して読んで下され。

 

2018′ カトカラ元年 其の16

 
   vol.16 ベニシタバ

   『薄紅色の天女』

 

 2017年 9月23日

蛾は気持ち悪くて嫌いだったけど、誰もが賞賛するムラサキシタバは一度見ておきたかった。蛾屋じゃない蝶屋の人でも、アレは別格だと言ってる人が何人かいたので前から気になっていたのだ。
そういうワケで、蝶と蛾の二刀流のA木くんにせがんで灯火採集に連れて行ってもらった。
といっても、この時はカトカラ全体に特別興味はなかった。黄色いキシタバグループなんて、どれがどれだか全然区別がつかんのである。何で人気なのかサッバリわからんかった。

 

 
場所は兵庫県の但馬地方だった。
その時にベニシタバにも会えた。ちょっとだけ嬉しかった。ベニシタバも綺麗だと云う話は聞いていたからだ。
それに、こういう色を持つ蝶は日本にはあまりいない。強いていえば、南国にいるベニモンアゲハくらいだろう。それとて裏面下翅の外縁くらいにしか紅色は配されていない。だから、実物の色をちょっと見てみたかったのだ。

ライト・トラップに2つほど飛んできたのだが、持って帰る気はさらさらなかった。ムラサキシタバでさえ、その気はなかった。所詮は蛾だからだ。蛾って、デブだし、大概は色が汚ない。夜に活動するのも気味悪いし、鱗粉を撒き散らすのも許せない。おいら、ガキの頃から蛾に対しての心理的アレルギーが強いのである。だから、写真さえ撮ってない。

ライト・トラップに飛んできたのは2頭だけで、あと1、2頭はトラップの近くをビュンビュン飛んでた。夜空をスゴいスピードで飛んでて、ちょっと驚いた。そんなに高速で飛ぶものだとは全然知らなかったのである。高速で飛ぶことで知られるスズメガと、さして変わらん。カトカラに対しての興味がそれで上がったワケではないが、アスリートの魂は刺激された。蝶採りは半分スポーツだと思ってるところがあるから、おいちゃん、空中でバチコーン💥シバくのが大好きなのである。そこに大いなるエクスタシーとカタルシスがある。

しかし、見てるだけー(;・∀・)
高さは6、7mくらいで、網が届かん。一瞬でも降りてきたら、その瞬間に電光石火で💥バチーッしばいたろかと構えていたが、全く降りてこんかった。

A木くんに、白布に寄って来たベニシタバを『記念に持って帰れば❓』と言われた。逡巡はあったが、持ち帰ることにした。折角連れてきてもらったのに、礼を欠くのではないかと思ったのだ。下手に断って、気まずくなるのも何だしね。正直、持って帰ってから捨てても、バレなきゃOKじゃろうと思ってた。

翌日、一応三角紙を開いてみた。

 

 
ボロボロだな。
こうして見ると、カトカラの鮮度の良し悪しは表よりも裏面の方がよくわかるかもしれない。

捨ててやろうかとも思ったが、折角だから展翅してみた。

 
(2017.9.23 兵庫県香美町ハチ北高原)

 
上が♀で、下が♂だ。
上翅を上げ過ぎてる蝶屋的な酷い展翅だすな。
秋田さんにボロクソ言われそうだ。
蝶は蛾みたいに両上翅の間の空間が、こんなにも空かない。蝶と蛾の一つ大きな違いだろう。全ての種がそうではないにせよ、蛾と蝶の翅のバランスは全然違うのだ。ゆえに蝶の展翅の時と同じような感覚で展翅してしまった。クセで左右の上翅との空間と触角のバランスを重視してしまうから、それに伴って上翅もつい上げてしまったのだろう。

その後、カトカラの事は完全に忘れてた。
この日は、所詮は一日限りの遊び、ヒマ潰しでしかなかったのだ。カトカラなんぞ、正直どうでもよかった。

しかし翌年、シンジュサンを探しに行った折りに、たまたまフシキキシタバやワモンキシタバが採れた。それで、少し興味を持ち始めた。小太郎くんの惹句のせいである。彼は人を乗せるのが上手い。
とはいえ、まだカトカラに完全に嵌まっていたワケではない。

   
 2018年 9月6日

翌年の9月初旬、ムラサキシタバを求めて山梨を訪れた。その数日前に兵庫県のハチ北高原にムラサキを求めて行ったのだが、惨敗に終わり、すこぶる口惜しかったのだ。負けることは大嫌いだ。だから、これを採らないと終えれないと思っていた。裏を返せば、ムラサキシタバさえ採れれば、カトカラを追いかけるのも、この年でお終いにする予定だった。外野が蝶屋じゃなくて、蛾屋だと囃し立てるのに我慢ならなかったのだ。

 

 
久し振りに青春18切符を使った旅だった。
線路の両側に広がる金色の稲穂に、何だかホッとした。
遠くへ行くのは好きだし、知らない場所に行くのも好きだ。旅人の時の自分は悪くない感じだ。キツいけど、らしい自分だと思える。きっと生来、放浪とか流浪が好きなのだ。多くの生物には、そういう遺伝子を持つ者が何パーセントかいるらしい。死滅海遊魚とかもそうだけど、そう云う一部の者が分布の拡大に寄与しているらしい。けど、だいたいがオッ死ぬけどね。所詮は死屍累々の特攻隊なのだ。

 

 
大阪駅から米原、大垣、名古屋、中津川、塩尻、甲府と乗り継いで、やっとこさ着きました。

 

 
こうして見ると、意外と東京と山梨って近いんだね。
高尾や八王子まで、あとちょっとだ。

ペンションのお姉さんに駅まで迎えに来てもらった。
このお姉さんが良い人で、後々世話になった。こういう奥さんだったら、旦那も幸せだろう。

 
【ペンションすずらん】

 
この連載ではもう、お約束みたいな画像だ。
関東方面の虫屋には知れた場所で、大きなライト・トラップが常設されている。

 
【ライト・トラップ】

 
これ又コメントは毎回ほぼ同じだ。
皆さん、もうウンザリのくだりだとは思うが、こっちはもっとウンザリなのだ。アンタらより、こっちはとうに一番に飽きとるわい。

この初日に、ベニシタバは見てる。
樹液の出ているミズナラを見つけたら、そこに来ていたのだ。

この日は蛾屋の人が二人ほどいて、その話をしたら、よく樹液の出てる木なんて見つけられたよねと褒められた。
(;・∀・)えっ❓、そんな事で褒められんの❓と思ったことを憶えてる。
批判を恐れずに言うが、蛾屋って、たいしたことないなと思った。勿論、そうじゃない人も当然いるとは思う。でも全体的にはライト・トラップに頼り過ぎな人が多すぎる。歩き回る人が少ないわ。だから、そんな弛いコメントが出てくるのだろう。

話を戻す。
結果を先に言うと、でもそのベニシタバは採れなかった。やる気というか、必死さも足りなかったのだろうが、状況が悪かった。あまり太くない木で、細い枝が沢山横から出てて、さらに周りからは他の木の枝が張り出してた。ようするに藪だ。おまけに樹液が出ている場所が少し裏側に被ってて、ブラインド気味だから視認しづらい状態だった。
まあ、それでも自信過剰な男は、何とかなると思ってた。刺激を与えて驚いて飛んだところを空中でシバく予定だった。しかし、網の先で突っついたら、あろうことか、藪の奥の方へと逃げていった。脳は反応してても、網先は1センチたりとも動かせなかった。振っても、無駄だと思ったのだ。下手に強引に振れば、網が破けかねないと判断したのである。
まあいい。ターゲットはベニシタバじゃなかったから、特に悔しいとも思わなかった。去年採ってるしね。たとえボロだろうと、一度でも採った事のあるものに対してのモチベーションは低い。そういう性格なのだ。一度、寝た女に対して急速に興味を失うのと似たようなもんだ。
それに、どうせそのうち又会えるだろうと思った。樹液が出てる木を見つけたんだから、その確率は低くない。

 
 2018年 9月9日

そのうち採れるだろうと思っていたが、翌日は姿を見なかった。そして、3日目のこの日が最終日だった。

 

 
昼間は、大菩薩峠方面にキベリタテハを探しに行ったが、惨敗。1頭たりとも見なかった。何か、よろしくないよね。流れが悪い。

昨日は、高校生の蛾屋の子に周辺を案内してもらった。他にも蛾の採り方とか道具とかアレコレ教えてもらう。前言半分撤回。蛾屋も、ちゃんとそれなりに色々工夫してるのを知ったよ。
とっておきのポイントも教えてくれた。そこは、まさかのペンションすずらんのライト・トラップの真裏の森だった。灯台もと暗しだね。
彼がトラップを仕掛けた場所は特別良い場所だとは思えなかったが、蝶屋目線のトラップの設置場所とは違っていたことには目から鱗だった。考えてみれば、夜は昼間とは全然違う世界なのだ。蝶採りのイメージでしか、物事を考えていなかったよ。

高校生が東京に帰ったので、そこにフルーツトラップをかけさせて戴いた。知らない者は知ってる者に対して、基本的に謙虚であるべきだ。彼はそこでムラサキシタバも採ったと言ってたしね。

そのムラサキシタバがやって来たと教えられた同じ木に、ベニシタバがやって来た。時刻は午後10時頃だった。

 

 
嬉しかったのか、他のカトカラは無いのにベニシタバの写真だけはあるんだよね。
これで、カトカラ元年16種類目だ。ホッとしたような記憶がある。当時は日本のカトカラは全部で31種類だったから、その半分くらいは一年目で採っておきたいなと思っていたからだろう。
とはいえ、この年はまだまだカトカラに嵌まっていたワケではない。蝶の時みたいに、日本の蝶を3年で200種類、4年で230種類以上採ってやろうとかと云うギラギラした野心は無かった。もし本気で採りたいと思っていたなら、シーズン頭のアサマキシタバを採りに行っていただろうし、ウスイロキシタバも狙いに行ってた筈だ。でも行かなかった。さらにいうと、もし真剣に取り組んでいたならば、関西では殆んど記録のないノコメキシタバ、ハイモンキシタバ、ケンモンキシタバ、ミヤマキシタバ、エゾベニシタバ辺りも狙いに行ってた筈だ。しかし、シーズン真っ只中の7、8月には甲信越方面には行っていない。行く気もさらさらなかった。マジで採ってやろうと思ったのは、カバフキシタバとシロシタバ、そしてムラサキシタバだけだったのだ。

その時に採ったベニシタバがこれかな。

 

 
♂だね。印象に無いから、たぶん♂♀とかもどうでもよかったんだろう。

上翅は去年よりだいぶ下がってるけど、まだまだ上がり気味だし、触角の整形が全然ダメだな。
当時は蛾の触角を、蝶みたく真っ直ぐにする必要性を感じていなかったからだろう。美人の代名詞に「蛾眉」という言葉もあるし、真っ直ぐじゃない方が自然だと思っていたのだ。

たまたま、上はオニベニシタバだったみたいね。

 

 
オニベニも採った時は綺麗だと思ったけど、こうして並べてみると、やはりベニシタバの方が断然美しい。
あっ、大きさは同じくらいと思ってたが、ベニシタバの方が大きいんだね。これは多分、オニベニの方がデブで重量感があるからだろう。身長は低いけど、圧が強い人がデカく見えるのと同じだ。
それにしても、オニベニの展翅が酷いな(笑)

今回も纏めて2019年のことも書いちゃいます。
疲れた人は、読むのをここで一旦やめて。あとでまた続きを読みましょうね。

 
 2019年 8月1日

青春18切符で信州方面に旅した。
これで二年連続だ。

 

 
大阪駅から米原駅まで行き、大垣、名古屋、中津川、松本と乗り換え、大糸線に入った。もう1回、信濃大町で乗り換えて、ようやく簗場駅に着いた。
11時間くらいかかっとるやないけー。青春18切符の旅も、そろそろ考えなくっちゃいけない歳だよなあ。オジサンにはキツいわ。

 

 
駅から青木湖まで歩く。
下車したのは、自分一人だけだった。遠くまで来た感、あるなあ…。

地図で見たよりも遠くて、日没間近になってやっとキャンプ場に着いた。

 

 
画像は翌日に撮ったもので、予想外の水の美しさに驚いたっけ。

慌てて一人用のテントを組立て、下見に行く。
今回の狙いはミヤマキシタバだった。ポイントを教えてくれたMくんによると、ライトトラップした時はケンモンキシタバやエゾベニシタバも飛んで来たらしい。

だが、全然下見の時間が足りなかった。ミヤマの食樹であるハンノキが沢山ある場所が見つからないうちに暗くなってしまう。
見つけたのは熊出没注意の看板くらいだ。まさか、こんな標高の低いとこにも熊が出没するとはね。(-“”-;)マジかよ。

仕方なく、湖畔を中心に糖蜜を木に吹き付けてゆく。
まあ何とかなるだろう。実力はないけど、引きだけは強いのだ。

しかし、飛んで来るのは糞ただキシタバ(C.patala)や憎っくきフクラスズメばっかで発狂しそうになる。そして、シクった感がどんどん濃厚になってゆく。

午後10時半前、やっと違うカトカラが飛んできた。
裏面から下翅が赤系のカトカラである事は間違いない。エゾベニ❓ と思った次の一瞬、下翅が見えた。
いや、薄紅色の天女だ。優雅にゆっくりと舞いながらトラップに近づいてゆく。闇の中で見るそれは、一種幻想的な光景だった。ちょっと夢まぼろしっぽい。闇夜にうろうろしていると、段々と心が通常の感覚から逸脱してくる。そもそもが、やってることオカシイよな。狂ってるわ。そう思うと、何だか笑けてきた。

トラップに止まり、下翅を開いた。鮮やかな桃色が目に飛び込んでくる。やっぱエゾベニじゃなく、ベニシタバかあ…。ベニがいるなんて想定外だったわ。
一瞬、ガックリくるが、こんなに新鮮なベニシタバを見るのは初めてだ。美しい。そして、セクシーだ。
そう思うと、テンションが上がった。それにこれを逃したら、今日の収穫はゼロだ。何としてでも採らねばならぬ。わりかし緊張感が全身に走る。

必死こいて採ったよ。
写真には、その場にヘタりこんで撮った感がある。
でもそんな事、自分しかワカンナイか…。

  

 
あっ、フラッシュ焚くの忘れてた。

 

 
でも、反対に真っ白になった。
手のひらに乗せ、今度はまたフラッシュなしで撮る。

 

 
こっちの方が質感があっていい。

そう、このピンクだ。( ̄∇ ̄)美しいねぇ。
暫し、見惚れる。

そう云えば、シロシタバが下翅を開くことをパンチラと呼んでいたのを思い出す。
純白パンティーならぬ、妖艶ピンクパンティーのパンチラだ。❤エロだね。
闇の中で、その馬鹿馬鹿しい発想にケラケラ笑ってしまう。ホント、阿呆だ。

  

 
一応、もう1回フラッシュ焚いて撮る。
こっちの方が上翅は美しく写る。明るいグレーがキレイだ。

 
(裏面)

 
裏面は、オニベニとさして変わらないね。エゾベニも多分そう変わらんだろう。

 
 2019年 8月2日

翌日、白馬村へ移動。

駅近くのスーパーで、発泡酒とカツカレーを買い、半分食ったところで、テーブルに突っ伏す。

昨日からのあまりに過酷な旅に、ドッと疲れが出たのだ。長い長い移動と残念な結果に心は擦り減っている。それに、テントの下に敷くマットを忘れたので背中が痛くてあまり眠れなかった。おまけにド・ピーカンで死ぬほどクソ暑いときてる。バロムワンのエネルギーメーターの針も、限りなくゼロに近いところを指しとるのだ。

 

 
バスで移動し、キャンプ場に入った。
狙いはアズミキシタバ。上手くいけばヒメシロシタバも採れるだろうと考えていた。

 

 
夜まで時間があるので、サカハチチョウと遊ぶ。

 

 
手乗りサカハチチョウだ。
10分以上はいた。
手乗り蝶は昔から得意。心頭滅却、良い人になれば、わりかし友達になれる。

この辺までは、まだ余裕があったんだよね。

アズミキシタバのポイントはすぐ近くだ。有名な崖下の周辺に糖蜜を吹き付ける。サラシナショウマも咲いてることだし、いい感じだ。アズミは花に吸蜜に来るというから、楽勝やんけと思った。どうせ時期的にボロだろうが、この際、採れたという事実があればよい。

しかーし、日没後すぐにベニシタバを採って間もなく、✴ピカッ⚡ゴロゴロガッシャーン❗ザーザー降り。
(-o-;)終わったな…。

 
 2019年 8月4日

🎵ズタズタボロボロ、ズタボロロ~。
泥沼無間地獄の3連敗。
昨日はヨシノキシタバ狙いで猿倉まで行くも、糖蜜に他の蛾はぎょーさん寄って来るのに、カトカラはこのズタボロのクソただキシタバだけ。ゴマシオキシタバやエゾシロシタバさえ見なかった。

 

 
泣きたくなる。こっちのハートがズタボロじゃい。

熊の恐怖と闘いつつ歩いて麓まで戻り、夜中にキャンプ場に着いた。新しい靴のせいで足を痛めてて、靴を脱いだら血だらけ。これまた地獄。これほどボコられてるのは海外だってない。

朝起きたら、テントにセミの脱け殻が付いていた。
ここまで登ってきて、羽化したのだろう。

 

 
何かバカにされたみたいで、ガックリくる( ´△`)

今日も大いなる惨敗の予感。
3日連続で連敗が続くと、ここまで弱気になるのね。初めて知ったよ。
虫採りやってて、こんなに絶不調は嘗て記憶にない。(@_@;)ぽてちーん。

白馬駅まで戻ってきた。
一昨日と同じスーパーへ行く。

 

 
今回は「デミグラスハンバーグステーキ弁当」をチョイスした。

 

 
枝豆を2鞘(ふたさや)食って、金麦飲んで突っ伏す。
ハンバーグ弁当を半分食って、再び突っ伏す。

電車に乗り、午後4時くらいに目的の駅に着く。
そこから歩いて湿原へ移動せねばならない。レンタカーを借りればよかったかなあ…。でも今さらどうしようもない。それに今はボンビーおじさんなのだ。

相当歩くことを覚悟していたが、意外と早く着いた。

 
【ハンノキ林】

 
狙いは、ミヤマキシタバ。初日のリベンジである。
ここは文献で調べた所だから、確実にいる筈である。
いなきゃ、もう呪われているとしか思えない。

宿泊施設は無いので、近くにテントを張る。

 

 
ここも熊がいるらしいから💕ドキドキもんだが、最早そんな事は言ってらんない。何も結果が出てないのだ。熊が恐くて、虫捕りがやってられっかであるι(`ロ´)ノ

広範囲に糖蜜かけまくりのローラー作戦で、1ヶ所だけヒットした。もう意地である。

ここでもベニシタバが飛来した。
日没後、暫くして飛んで来た。あとは8時台に複数頭が飛んで来た。しかし、今やどうでもいい存在だ。写真も撮ってない。どんだけ綺麗な女の子でも、結構早めに飽きるという酷い男なのである。

冷や冷やの綱渡りだったが、何とか目的を達成した。
秋田さんや岸田先生にFacebookで『マホロバ(キシタバ)を発見したから、今年の運、全部使い果たしたんじゃないのー?』と笑われていたが、これで公約通りに連敗脱出である。阪神タイガースとは違うのだ。
夜中まで粘って、テントで昏倒、💤爆睡。

その後、3日ほどいて各地を転戦し、怒濤の巻き返しをするもベニシタバは見てない。で、結局最後は力尽きて突っ伏し、帰阪した。

 
 2019年 9月2日

青春18切符の旅、再び。

 

 
今回は大阪駅から米原、大垣、岐阜、美濃太田と乗り継いで、高山までやって来た。

高山駅が改築されて、メチャお洒落になってるのに驚く。

 

 
噴水まで出よる。

 

 
でも、昔の駅舎の方が好きだ。新しい建物には風情というものがない。

 

 
バスに乗り換える。

1時間ほどバスに揺られて、やっと目的地の平湯温泉までやって来た。今回は約8時間の移動だった。

 

 
既に陽は沈んでいる。
常宿に旅装を解き、温泉に直行。
で、すかさず居酒屋でキンキンに冷えた生ビールを頼む。

 

 
 
でも、そのキンキンに冷えた生を飲んで、やる気をなくす(笑)

嗚呼、蛾採りなんかやめて、ビール飲んで旨いツマミ食って、ヘラヘラしていたい。
でも、それじゃ何しに来たかワカラナイ。重い体を引き摺って出陣。
探すはエゾベニシタバ、目指すは白谷方面。
しかし、真っ暗けー。

 

  
ここには妖精クモマツマキチョウを採りに何度か訪れているが、夜はこんなにも真っ暗だなんて予想だにしていなかったよ。

 
【クモマツマキチョウ(雲間褄黄蝶)♂】

 
【裏面】
(2019.5.26 岐阜県高山市新穂高)

 
【展翅画像】

 
そういえば思い出した。白谷では、そのクモツキ採りの時に熊の親子連れを見てるわ。つまり、此処には確実に森のくまさんがいるのである。
真っ暗だし、熊は黒い。背後から襲われでもしたら、お手上げだ。((((;゜Д゜)))ブルッとくる。

🎵ラララ…星き~れい~、とか何とか口に出して歌ってはみるが、恐い。マジ卍で熊も闇も恐い。
幸い❓なことに川沿いの道にトラップを噴きつけるのに適した木がないので撤退。温泉の反対側に行くことにした。
言っとくけど、チキンじゃないからね。いや、本当はチキンだけど、目的の前ではチキンじゃないぞ。何か言い訳がましいが、そんなに悪い判断ではなかったと思う。

午後10時半くらいに漸くカトカラが飛んで来た。
しかし、エゾベニではない。低い位置、地表近くを飛んでいたので、すぐにベニだとわかった。
けど、トラップには寄り付かず、笹藪の端をちまちまとホバリングしながら飛んでいる。見たところ♀だ。もしかしたら、卵を産みに来たのかもしれないと思った。でも近くに食樹であるヤナギ類なんてないぞ。暫く見てたが、笹藪の中に入りそうになったので、網を一閃。ゲットしてしまった。

糖蜜には他にシロシタバが1頭飛んで来ただけで、クソ蛾さえも殆んど寄り付かずだった。糖蜜のレシピを間違ったやもしれぬ。いい加減に作ったもんなあ…。
ましてやヨシノやエゾベニには糖蜜はあまり効果がないとされている。序盤から劣勢だわさ。
そうだ、ワシってキベリタテハを採りに来たのじゃ。カトカラ採りはついでだ。
そゆことにしておこう( ̄∇ ̄*)ゞ

 
 2019年 9月3日

平湯から新穂高・わさび平小屋へ。
ターゲットはヨシノキシタバとエゾベニシタバ。あとはムラサキシタバとゴマシオキシタバってところか。
ここは大きなブナ林があるし、その下部にはドロノキやヤナギ類もある。わさび平にヨシノがいると聞いたことはないけど、絶対いるじゃろうと思ったのだ。もしダメでも、このどれかは採れるだろうと読んだのである。効率重視の男なのだ。

 
【わさび平小屋】

 
この右横の奥のサイトにテントを張った。

 

 
アサマイチモンジと遊ぶ。

 

 
でも手乗り蝶をやると、前みたいにその後は悲惨な結果になるんじゃないかと云う思いがよぎった。
こういう事を思うじたい、絶不調なのだろう。らしくない。メンタル弱ってんなあ。

ここには熊が沢山いる事は周知の事実である。ワシも此処のすぐ近くで見たことがある。前日以上に恐怖に怯えながら、夜道を歩き回った。
しかし、ブナ林は不気味なまでに静かで、糖蜜トラップには何も来ん。泣きたくなる。
東日本では、糖蜜トラップがカトカラにはあまり通用しないことをひしひしと痛感する。ヨシノやエゾベニどころか、ゴマシオ、エゾシロさえも寄って来んかった。
やっぱライト・トラップが無いとアカンわ。だいぶと前に遡るけど、前言撤回。灯火採集は蛾採りには必要不可欠だ。
蛾屋の皆様、m(__)mゴメンなさい。

結局、来たのはベニ2頭のみ。

 

 
それと、なぜか標高1500mに桃色クソ蛾ムクゲコノハちゃん(註1)が複数飛来。
何処にでもおるやっちゃのー(=`ェ´=)、💧涙チョチョギレそうやわ。(*ToT)ダアーッ。

 

 
雨が降り始めたので、小屋で雨宿りする。
暗闇で飲むビールは苦かった。

                     つづく

 
追伸
雨はやがて激しくなった。
テントの下は川となり、凍えながら眠った。ボロボロの大惨敗である。
その後、1ヶ所だけ転戦して大阪に帰った。

一応、2019年に採ったベニシタバの展翅画像のいくつかを貼り付けておこう。

 
【Catocala electa ベニシタバ】

 

 

 
【同♀】

 

 
【裏面】

 
展翅もだいぶ上手くなっとる。
幾つかは『ひゅう~、完璧じゃねえのd=(^o^)=b』と勝手に自画自賛しちゃうぞ。
これからは、上翅を心持ち上げえーの、触角を真っ直ぐしいーの、やや上げえーの路線でゆきまーす。

触角に関しては、以前に蛾眉的な形の方が自然で良いだとか何だとかホザいたが、撤回。よくよく考えてみれば、生きてるカトカラの触角は真っ直ぐだと気づいたのである。つまり、むしろ真っ直ぐな方が自然なのだ。

次回、ベニシタバの種解説編の予定っす。

 
(註1)ムクゲコノハちゃん

 
同じピンクでも毒々しいなあ。
おらにとっての、ザ・蛾だよ。正直、背中がおぞける。

 

2018′ カトカラ元年 其の15

  vol.15 ゴマシオキシタバ
  『風のように、曇の如く』

 
 
2018年 9月1日

この日は植村を焚き付け、兵庫県のハチ北へライトトラップをしに行った。狙いはムラサキシタバである。

 

 
天気は曇りで、時折霧雨が降るような灯火採集には絶好のコンディションだった。
植村の持ってきたツインターボ水銀灯ギャラクシーセットは強力で、超明るい。当然、ブラックライトも備えておるから万全の体制だ。

おまんら、ι(`ロ´)ノジャンジャン飛んでこいやー❗

とかフザけて言ってたくらいだから、もう勝ったも同然の気分だった。

しかし、蛾はアホほど飛んで来るのに、なぜかカトカラの飛来は少ない。パタラ(C.patala)だけで、ムラサキシタバどころか、ベニもシロもジョナスも飛んで来ない。
場所の選定を間違ったのかもしれん。やっぱ日没前に余裕をもって現地に着いて、設置場所を吟味して考えなきゃダメだね。

飛んで来るのは、相変わらずただキシタバ(C.patala)ばっかで、時間は徒(いたずら)に過ぎてゆく。
午後10時前後、漸くパタラとは違うカトカラが飛んできた。尖った翅の形で、すぐに分かった。ジョナスキシタバだった。
そういえばこの時は、植村が『いいなあ、ジョナス。いいなあ、ジョナス。』と連発してたんだよなあ。

その後、ライトトラップをそのままにして外灯回りに行った。
たいした成果もなく、11時くらいに戻った。
したら、植村が白布に止まっているカトカラらしき奴を見つけた。
それが人生で初めて見るゴマシオキシタバだった。

植村が『コレ、何すかね❓』と言うので、『どうせ、ゴマシオなんじゃねえの。』とぞんざいに答えた覚えがある。
正直、第一印象は、あまり特徴のないツマンねぇカトカラだなと思った。ムラサキシタバに比べれば、雑魚みたいなもんだ。
植村も初めて採ったのにも拘わらず、『ジョナスの方がいいなあ~。』と又も言っていたくらいだから、彼も多分しょーもないカトカラだと思ったに違いない。

これで少し期待したが、その後ジョナスもゴマシオも1頭も飛んで来ず、午前0時半に撤退した。

 

2018年 9月8日
 

お馴染みの「ペンションすずらん」の画像だから、今回も山梨県甲州市での話。

 

 
この日の昼間はキベリタテハを探しに大菩薩峠まで足を伸ばした。
でも、この年は大不作だったようで1頭たりとも会えなかった。

森の写真は峠の下の環境で、ブナとミズナラの混交林が広がっている。

 

 
これまたお馴染みの、ペンションすずらんに常設されているライトトラップ。
ここにゴマシオが複数飛んで来たのだが、何の感動もなかった。どうせ採れるだろうと思ってたし、ボロばっかだったせいもあるが、やっぱりどこか魅力に欠けるのだ。だからか、当時の写真は1枚もない。おそらく撮っていないのだ。

この時は4、5頭は見ている筈だが、1頭しか持ち帰らなかった。別にカトカラにまだハマっていたワケではなかったから、どーでもいい存在には興味が薄かったのだ。どーでもいい存在のボロを持って帰る気にはなれなかったのだろう。一応、採ったという証拠があればいいと云う感じだ。
その時の、それがコレ↙

 

 
展翅、下手クソだなあ…。カトカラ1年生、まだまだ上翅と触角を上げた蝶屋的なクセが出てる。

これで話は大体終わっちゃう。
実を云うと、2019年には1頭も見ていないのだ。
一応、2019年の事も書いておくか。

正直、ゴマシオを狙うと云う意識は全く持っていなかった。ブナがあるところではド普通種だと聞いていたからだ。そのうちどっかで採れるだろうとタカを括っていたのだ。
しかし、他のカトカラ狙いで猿倉、平湯温泉、新穂高左股、白骨温泉とブナがある場所に入ったものの、全く糖蜜トラップには寄って来なかった。今考えると、何でだろ❓と思う。
理由は、そもそも分布していなかったのか、糖蜜トラップに全然反応しなかったかのどちらかだろう。

但し、三角紙に入った手持ちのゴマシオは幾つか持っている。小太郎くんがくれたのだ。
白川村周辺に蝶採りに行った折りに、沢山いたのでお土産に採ってくれたのである。優しい男なのだ。
昼間、蝶採りをしていたら、驚いてジャンジャン飛ぶので、ついでに採ってきたそうだ。結構敏感で、沢山いたけど、大半はどっかに飛んで行ったらしい。

 
(2019.8.2 岐阜県白川村平瀬)

 
ずっと、放ったらかしだったが、この為に今日ようやく展翅することにした。興味の無さが見てとれるよね。

 

 
カトカラ歴二年目の終わりともなれば、上翅を下げ、触角も寝かせ気味にしたカトカラ屋の展翅になってきてる。

♂だな。
それにしても地味だなあ。
テンション、⤵だだ下がるわ。

 

 
(・。・)おっ、お次は上翅が黒い個体だ。
中々にカッコイイじゃないか。
ワザと上翅を少し上げた蝶屋的展翅にしたけど、正解だったかもしんない。黒っぽいだけに、ちょいワル感が出てて、コレはコレで有りだとは思うけどね。

展翅する前は横から見て腹が短いから♀だと思ったけど、展翅したら♂に見えてきたぞ。どっちだコレ❓

 

 
横から見て、コヤツは腹がもっと短いし、間違いなく♀だと思ったんだよね。けど展翅してみたら、やはり腹が細い。だいたい♂にしても、腹先にあまり毛束が生えてないんである。カトカラの仲間の♂は、大概が腹先に毛束が多めに生えている。それで大概は判別できるのだ。
♀はまだ卵を持ってないから、腹がパンパンに膨らんでないのかなあ?
まさかコヤツも♂だったりして…。

 

 
コレも横から見て腹が短いから♀かなと思ったけど、微妙。ワケ、わかんねえや(◎-◎;)
どいつもコイツも上翅が汚いし、雌雄はワカランし、段々腹立ってきたよ( ̄皿 ̄;;

  

 
コレは腹が長いから、絶対に♂だな。腹先の毛も少し多めなような気がする。

どれも鮮度は悪くないのに、やはり魅力に欠けるなあ。大半の個体が上翅にメリハリが無くて、ベタだ。もしも、最も見た目がツマンナイ黄下翅(キシタバ)選手権があったとしたら、間違いなく上位に食い込むね。変異が無いと、ホントつまらんカトカラだな。
展翅も、ぞんざいになってきたわ。体が縒れてるけど、もういいや。なおしません❗
よし、次はもう少し見栄えよく展翅してみよう。

 

 
触角を段階的に上げてきて、ザ・蝶屋風の展翅にしたった。
少しは上翅の柄はマシだけど、こんなもんか…。

あっ、裏展翅したのを忘れてた。

 
(裏面)

 
脚も整えて、完璧してやろうかとも思ったが、たかだかゴマシオなので、やめた。

それにしても何か今イチだ。下翅の内側が擦れてる。
一応、他からも画像を引っぱっとくか。

 
(出展『日本のCatocala』)

 
西尾規孝氏の『日本のCatocala』の標本写真をトリミングしたもの。この図鑑は唯一裏面の画像も載せてくれている図鑑だから助かる。
でも自分の写真の撮り方が悪いせいか、実物より黄色く写っている。
まっ、いっか。んな事よりも斑紋の方が大切だ。それさえ見比べらればいい。あとは雰囲気さえ解ってもらえればええやろ。

さてとー。そろそろ解説編、始めますかあ。

 
【学名】Catocala nubila Butler, 1881

最初に学名を見た時は「nubile」に見えた。
nubileといえば、英語だと性的魅力のある女性とか色気がある女性という意味だ。ようするにエロい女のことである。
だから、(|| ゜Д゜)えぇーっと思った。
記載者のバトラー(Butler)って、ゴマシオキシタバの何処に色気を感じたのだ❓変態じゃねえの❓と思った。しかもマニアックな。
でも、nubileには「年頃の、結婚適齢期の」という意味があるのも直ぐに思い出した。にしても、ゴマシオにつけるには、とても相応しいようには思えない。やっぱり、このロリコン爺じいめっがっ(# ̄З ̄)❗と思ったよ。

しかし、よ~く見ると綴りが違う。最後の文字は「e」ではなくて「a」で終わってる。何だかホッとしたような、ツマンナイような妙な気持ちになったよ。エロ爺じいの性的歪みを暴いてやろうと思ったのにぃー。

お決まりの平嶋義宏氏の『蝶の学名-その語源と解説-』には、同じ学名のものは載っていなかった。
ゆえに仕方なく、ネットで探す。アタマから苦労してるなあ…。

で、出てきたのが、Post nubila Phoebus.(ポスト・ヌービラ・ポエブス)。これがズラズラズラーッと並んでた。どうやら有名な言葉のようで、諺(ことわざ)の定番らしいね。

少し長くなるが、説明しよう。
「post」は対格を支配する前置詞で「後、後ろに」という意味。英語でいえば「behind」と「after」の2つの意味を持ち併せてる言葉のようだ。
「nubila」は中性名詞の nubilum「雲・雨雲」の複数主格/呼格/対格。
「Phoebus」は、太陽神アポロと太陽の2つの意味を持っている。
動詞は省略されているが、estを補うと「雲の後(あと)の太陽」もしくは「雲の後ろにある太陽」という意味になり。これを日本語風に勝手に意訳すると「雨(曇り)のち晴」とか「雨降って地固まる」って云う辺りになる。
さらに意訳すれば、今はどんなに不幸であっても、いつか必ず光が射す。未来に希望を持とうではないか。「人生、苦あれば楽あり」みたいな感じだすな。

他に、nubilaで出てくるのは、キューバロックイグアナの学名「Cyclura nubila」である。キューバに棲むイワイグアナの1種だ。
ゴマシオキシタバと何か共通点がないかと探してみたが、残念ながら見つけられなかった。

nubilaは「雲」もしくは「雨雲」って云うことでいいのかな❓
となると、何ゆえバトラーはそのような学名をつけたのだろう❓
あっ、ヤバイ。こないだ変なとこに足を突っ込まないようにしようと誓ったばかりなのに、またしても泥沼迷宮になりかねない。しかも、まだ解説欄を書き始めたばかりじゃないか。嫌な予感がするよ。

考えられうるのは、先ずは上翅の斑紋だろう。その斑紋をバトラーは、雲に見立てたのではあるまいか。
あー、また始めちった。
しかし、ゴマシオの上翅だけが特別に雲の柄というワケでもない。他のカトカラだって、雲と見れば雲みたいな柄なのは沢山いる。名付けた理由としては弱い。説得力にやや欠けるし、決定打とまではいかない。

次に候補として浮かんだのが生息環境。ゴマシオの棲息場所は主に食樹のあるブナ林帯だ。ということは、標高1000m以上で、上は1500~1600mくらいだろう。そうなれば、雲や靄(もや)が掛かることも多かろう。悪くない理由だ。しかし、これも弱いっちゃ弱い。ゴマシオだけの特性だとは言えないからだ。それくらいの標高を中心に生息するカトカラは他にも幾つかいるのである。

三番目は「Post nubila Phoebus.」という諺だ。ラテン語なんだから、きっと古い諺の筈。バトラーが生きていた時代にもポピュラーで、誰しもが知っていたものと推測される。この馴染みのある諺とリンクさせたとかは考えられないだろうか❓
けど、どうリンクさせんの❓
ダサいカトカラだから不憫に思って、そのうちに良い事あるよと優しい気持ちを込めてつけたとか?
それは理由としては流石に苦しいなあ。コジツケにしても無理が有りすぎる。
ならば、ギアチェンジ。想像力をフル回転させよう。

来日したバトラーは採集に出掛けたものの、悪天候によりブナ林帯の山中で何日も停滞を余儀なくされた。その間、めぼしい採集品は殆んどなかった。数日後、やがて天候が回復し、その最初に採れたのがこのゴマシオキシタバだった。雲の如き上翅をそっと持ち上げると、下から明るい黄色が目に飛び込んできた。まるで雲に隠れていた太陽が顔を出したかのようだった。
それに感激したバトラーは「Post nubila Phoebus」の言葉の一部を、この蛾の学名に宛てましたとさ。
というのは、でや(・。・)❓
想像力が逞し過ぎるか(笑)。

これ以上踏み込みたくないけど、ちょっとだけバトラーさん本人についても調べてみよっと。

Arthur Gardiner Butler(アーサー・ガーディナー・バトラー)。
生没年 1844年6月27日~1925年5月28日
イギリスの昆虫学者、クモ学者、鳥類学者。大英博物館で鳥類、昆虫、クモ類の分類学を研究した。

( ̄O ̄)ほおーっ。生没年からすれば、ゴマシオキシタバの記載は1881年だから、37歳の時の記載なんだね。思ってた以上に若い。変態ジジイじゃなくて、変態オヤジだな。あっ、失敬。語源はエロい女じゃなくて、雲だったね。スマン、スマン。

バトラーといえば、蝶の図鑑を見ていると、やたらと記載者にその名前が出てくる。数えてないけど、たぶん日本の蝶の記載数はバトラーがトップだろう(註1)。

ネットサーフィンをしてたら、そのワケとゴマシオキシタバを解き明かす鍵となりそうなものを見つけた。
『佐賀むし通信19 日本産蝶の命名者のプロフィル(註2)』の中に、以下のような記述があった。要約しよう。

「バトラーは大英博物館で Fenton、その他の日本在住の採集家や旅行家によって送られてきた材料を記載していた。1876年、石川千代松が採集したミスジチョウの標本が1頭しかなく、Fentonが石川千代松が写生した図だけをButlerに送ったところ、Butlerはその図をもとに、Neptis excellens と命名記載した。このexcellensは図が優れていると云う意味からの命名である。
中略。
これが、のちに実物を見ずに図だけで新種を記載したと問題になった。また明治期に来朝した英国のPryerは、Butlerは博物館的分類学者であると、鋭い批判を加えている。」

ようするに、これはバトラーはフィールドに出ずに記載をしていたと云う批判である。
又この文章には、江崎悌三博士が明治の初期に活躍した来朝(来日?)外人に興味をもち、優れた記事を多く書いている(『江崎悌三著作集』1984)とあるが、バトラーが来日したような事は一言も書いていない。Fenton、その他の日本在住の採集家や旅行家によって送られてきた材料を記載していたとも書いてある事からも、おそらくバトラーは、日本には来日していないものと思われる。
だとするならば、バトラーは日本での生息環境を知らずに名前をつけていたと云うことになる。つまり、バトラーは棲息環境を見て名付けたという仮説は成り立たない。もちろん三番目のワタクシが想像力を駆使した物語風仮説も成立しえない。
となると、残るは一番最初の、上翅の斑紋からのネーミングであるというシンプルな仮説だ。
よし、今一度、そこに立ち返ってみようではないか。

(ФωФ)🎵ニャニャニャニャニャーニャニャ、ニャンカニャンニャンニャーニャニャ、ニャンニャンニャーニャニャ、ニャンニャカニャンニャンニャー🎉
🎊ども~、今回もニヒルでお茶目なカトカラ探偵、白毫寺伊賀蔵の登場だぁーす。京極堂の如く(註3)、ホイホイ解決しまっせ、しまくりまっせの憑き物落としじゃ❗

バトラーってさあ、他にも日本のカトカラを記載してるよね。一応、彼が記載した日本の他のカトカラとその記載年を洗い直してみよう。
シロシタバ(1877年)、ミヤマキシタバ(1877)、ノコメキシタバ(1877)、ジョナスキシタバ(1877)、ワモンキシタバ(1877)、ヨシノキシタバ(1881)、マメキシタバ(1885)と7種もいる。このうちゴマシオの記載年である1881年よりも以前の記載は、シロ、ミヤマ、ノコメ、ワモン、ヨシノである。

石塚先生、毎回パクりまくりですが、又もや『世界のカトカラ(註5)』から画像を拝借させて戴きやんす。すんません。

 
上記にあげた各種カトカラの上翅を並べてみよう。

 
(シロシタバ)

 
(ミヤマキシタバ)

 
(ノコメキシタバ)

 
(ワモンキシタバ)

 
(ジョナスキシタバ)

 
(ヨシノキシタバ)

 
そして、最後にゴマシオくん。

 
(ゴマシオキシタバ)
(以上全て出展『世界のカトカラ』)

 
(ー_ー;)う~ん、こう云うのって人によりけりで認識の差がありそうだけど、これらの上翅の柄を見比べてみれば、ゴマシオが一番雲っぽいかもしれない。というか曇天、曇り空っぽい。前翅の斑紋が明瞭でない個体が多く、ベタでメリハリがないのだ。雲と考えれば、どの種も雲に見えるが、曇り空と考えれば、ゴマシオが最もそれに合致しているのではなかろうか。

それにだ、別な観点でこうとも考えられはしまいか。
のちに詳細は後述するが、ゴマシオキシタバはカトカラの中でも特に上翅のデザインのバリエーションが豊富な種なのだ。変異の幅が広いのである。つまり、バトラーは日本から送られてきた複数のゴマシオキシタバの標本を見て、そのバリエーションの多さに驚いた。そこに、雲の如く変幻自在に変わる様を感じたのではないだろうか❓そして「nubila=雲」と名付けた。

こんなもんでどうかね❓、金田一くん。

半分、やっつけ仕事みたいなもんだが、もうウンザリなのだ。ゴマシオに対しての愛がないから、この辺で幕を下ろさせていただく。

 
【和名】
ゴマシオといえば、胡麻塩。あの御飯にかけたり、🍙おにぎりに乗ってるアレだよね。
日本人なら誰もが知っている、焼き塩と炒った黒ゴマを混ぜ合わせた定番のふりかけの1種だすな。
あとは考えられるとしてら、坊主頭に白髪とかが混じったゴマシオ頭のこってすな。ヒゲなんかも白髪混じりだと、ゴマシオ髭なんて言ったりもする。ようは黒と白が点々で混じるものの喩えとして使われる言葉だ。
他は言葉的に、どう考えてもないな。ならば、語源は、そのどっちかだろう。
ふりかけのゴマ塩は黒と白のコントラストがハッキリし過ぎているし、名付けられた時代に調味料としてゴマ塩があったかどうかも怪しい(註4)。あったとしても、今ほどポピュラーなものではなかったろう。
上翅の柄からすると、ゴマシオ頭のゴマシオの方が近いし、多分そっちのゴマシオ起源なんだろな。それでいいと思う。

まあ、和名として、それってワカンなくもないんだけど、クールに言うとダサい名前だよな。名前だけ聞いて、それが良い虫だとは絶対思えないもん。どう足掻いても脇役の名前で、メインキャラであるワケがない。ネーミングって大事だと、今更ながらに思うよ。
かといって、他に良い名前が浮かばないのも確かだ。たぶん、名付けた人も苦し紛れにつけたんだろな。同情するよ。それだけこのカトカラには、コレといった特徴がない。そりゃ人気も出んわな。東では普通種みたいだし、雑魚扱いになってるというのも解るわ。

 
【変異】
前翅斑紋の個体変異が激しく、多様なんだそうな。

 
(出展 石塚勝己『世界のカトカラ』)

 
上のなんかは黒化型みたいなもんなのかな❓
変異を沢山見ているワケではないから、よくワカンナイ。

翅の中央が黒化する型もいる。

 
(出展『世界のカトカラ』)

 
こう云う型を、f.fasciataと呼ぶそうだ。
ふ~ん、型にまで名前が付いてるんだ。
これはカッコイイかもね。

「fasciata(ファスキアタ)」はラテン語で「縞模様とか「ストライプ」を意味する。生物の学名としてはわりかしポピュラーな方で、蝶や蛾の他にも植物とか貝とかにも使われている。
そういや「包帯」なんて意味もあったな。そう考えれば、この型の上翅はまさしく包帯みたいだもんね。

んっ❗❓、でも、f.fasciataの前の「f」って何だ❓ 最初はシノニムなのかな?と思ったが、属名の「Catocala」の略ではないし、亜種のシノニムにしても「nubila」の頭文字の「n」の略でもない。
やめとこ~っと。こんなの調べ始めたら、ロクな事ない。たかが、型の1フォームにズブズブになってたまるかである。

ワオッ❗スゴい異常型もおる。

 
(出展『世界のカトカラ』)

 
ここまでくると、もはやパッと見では、どのカトカラの異常型なのかもワカランわ。
因みに、何故か九州では変異幅が小さいそうだ。

亜種は記載されていないようだが、極く近縁な種が中国にいる。

 
【Catocala ohshimai タイリクゴマシオキシタバ】
(出展『BOLDSYSTEMS』)

 
ゴマシオよりも後翅黒帯が発達する傾向があるという。

また中国・四川省には、やや大型のジョカタキシタバ という近縁種もいる。

 
【Catocala joyokata ジョカタキシタバ】
(出展『世界のカトカラ』)

 
石塚さんが2006年に記載した極珍のカトカラ。
『世界のカトカラ』が刊行された2011年の時点では、Holotypeの1♂しか知られていない。ボロしか載せられていないと云うことは、それだけ珍品度が高いことを示している。他にキレイな個体は無いということだ。但し、ボロボロなのは9月に採集されたものだからみたい。発生は7~8月だろうと推察されている。
記載論文は読んでいないが、四川省北部の標高4500mの高地(宝山?)で得られたようだ。飛んでもねぇ高さだ。そういうのって、浪漫を掻き立てられる。調べた限りでは、他の個体の画像は見つけられなかったから、今も珍品の座にあるのかもしれない。

参考までに言っとくと、DNA解析の結果ではアズミキシタバ(Catocala koreana)に近いようだ。両者の見た目は全然似てないから、ホントかよー❓と思う。DNA解析って、どこまで信じていいのかワカランよ。

 
【開張(mm)】

『原色蛾類図鑑』には、50~57㎜とあり、『日本産蛾類標準図鑑』には、50~62㎜内外とあった。
手持ちのものを計ったら、一番大きなもので58㎜。あとはだいたい55㎜前後だった。

 
【分布】北海道、利尻島、本州、四国、九州

日本の特産種とされているようだ。
北海道ではブナの北限である南西部に多いが、ブナの自生していない東側でも散発的な記録が各地にある。この事からも移動性が高い種だとされるのだろう。日本での北限記録は利尻島、南限は九州の霧島山塊(高隈山)とされている。
本州では中部以北に多い。西日本では、ブナ林が少ないことから分布は高所に限られる。しかし棲息地では個体数が少なくないようだ。シロシタバなど、九州では珍品になるカトカラが多いが、このゴマシオだけは比較的多く採れるみたいである。

四国では、愛媛県石鎚山成就杜、高知県手箱、香川県大滝山、徳島県剣山など全県に記録がある。剣山見越付近(標高1500m)では、本種の発生量はカトカラの中では少なくなく、成虫が見られる期間も一番長いようである(「四国の蛾の分布(Ⅲ)」増井 1978))。
ゴマシオって、発生地では何処でも多いカトカラなのかなあ…。

近畿地方では記録が少なく、『ギャラリー・カトカラ全集』では大阪府と京都府に記録がない。ザッと調べたところ、和歌山県では田辺市に記録があり、奈良県でも上北山村大台ヶ原に記録があることから、紀伊半島南部のブナ帯には広く分布しているのかもしれない。
滋賀県での記録は拾えなかった。だがブナは豊富にあるので、分布はしているだろう。確実に産するのは兵庫県で、西播北部,但馬のブナ帯に分布している。
中国地方でも全県に記録があるようだ。
何か面倒くさくなってきたので、分布図を貼り付けておく。

 
(出展『日本のCatocala』西尾規孝)

 
おいおい、近畿地方に空白地帯が無いぞ。
『世界のカトカラ』の分布図ではどないなっとんのやろ❓

 
(出展『世界のカトカラ』)

 
一見、かなり違うように見えるが、こちらは県別の分布図であることに留意されたし。
見ると、こっちは大阪府と京都府は空白になっている。
この2つの分布図に対しては特に言及はしない。まっ、いっかなのだ。ゴマシオの分布概念が解りゃいいだろう。

日本の固有種だが、国外にも記録がある。朝鮮半島、鬱陵島、ロシア南東部、樺太などだが、偶産的な扱いになっているようだ。これはブナ属の植物が、これらの場所には無いからだと思われる。
しかし、鬱陵島(ウルルン島)の記録は偶産ではない可能性もあるようだ。
朝鮮半島から東、沖合い約130kmに位置するこの島には、ブナ属が自生しているらしい。島の最高峰は聖人峯(ソンインボン 성인봉)で、標高は984mというから、ブナが生えていてもおかしくないよな(註6)。

 
【レッドデータブック】

香川県では、絶滅危惧II類に指定されている。

 
【成虫出現月】

成虫は7月の上旬から出現し、11月上旬まで見られるが、新鮮な個体が得られるのは8月中頃まで。9月以降に見られる個体は翅の損傷が激しい。

 
【生態】

ろくに自分では採っていないワケだから、独自の知見はない。ほぼ他人の文章からのパクりであることを御断りしておく。

本州では、主に標高900m程度の山地から標高1700m程度の亜高山帯に見られ、ブナ帯では最も多く見られるカトカラである。
ただし本種はブナやイヌブナが全くない場所やブナの生育していない低地でも採集されることがよくあり、かなりの距離を飛翔すると考えられることから、強い移動性を持つ種と位置づけられている。特に9月中旬を過ぎると移動性が高まり、低山地だけでなく、時には市街地でも見つかるという。

夜間、灯火によく集まり、東日本では多数の個体が飛来することがしばしばある。東北地方では、一晩に数百頭ものゴマシオが押し寄せたこともあるらしい。
主な飛来時刻は分からない。けれど、特に言及されているものは見ないので、時間にあまり関係なく飛来するのだろう。
また、盛夏に灯火採集をすると、標高2700mの高地でも多数が飛来することがあるそうだ。そういう日は、下界が猛暑日である事が多いという。おそらく暑さを嫌って移動するのではないかと推測されている。

樹液にも集まるというが、『日本のCatocala』で、西尾規孝氏は低地でクヌギの樹液に来ているものは観察したことはあるが、ブナ帯にいる成虫の餌は観察していないという。
ネットで、樹液や糖蜜・果物トラップに飛来した例を探してみたが、青森県での、ダケカンバの樹液での吸汁例しか見つけられなかった。
自分も吸汁しているのを見たことがない。2018年 山梨県甲州市の大菩薩山麓の標高1200~1400mでは、2本のミズナラから樹液が出ていたが見ていないし、果物トラップにも寄って来なかった。高校生が糖蜜を撒いていたが、そちらにも飛来は無かった。
2019年は、長野県の猿倉荘周辺、白骨温泉と岐阜県平湯温泉、新穂高左股わさび平小屋周辺で糖蜜トラップを撒いたが、やはり1頭たりとも見ていない。もしかしたら、1000m以上の比較的高標高地では、あまり餌を摂らないのかもしれない。西尾氏も他のカトカラの解説欄で、そのような旨のことを書いておられる。
或いは、灯火にあまり集まらないカトカラがいるように、樹液や糖蜜にはあまり集まらないカトカラなのかもしれない。
但し、西尾氏は「(ゴマシオキシタバの)成虫を解剖すると、白い糖の液体が入っているので花蜜か甘露を摂食していると推定される。」とも書かれている。
じゃあ、何を栄養にしているのだ❓
因みに、図鑑の中の「日本産Catocala 成虫の餌」という表のゴマシオキシタバの欄には、樹液の項のみにしか○がなく、花蜜の項など他は空欄になっていた。つまり、花への飛来も観察されていないと云うことだ。謎だわさ。

真面目にゴマシオなんて採ろうと思っていなかったから、真剣にトラップで狙ったワケではない。正直、今でも別に採りたいとは思わない。だって、全然魅力がないんだもーん。
とは云うものの、気にはなる。一度、多産地で糖蜜やフルーツトラップを使って実験しないといけんね。
でも、それって誰か今まで実験したことないのかね❓
無いとしたら、驚きだよな。

成虫は日中、頭を下にしてブナなとの樹幹に静止している。静止場所は暗い場所が多い。わりかし敏感で、驚いて飛び立った時は10~30mほど飛翔して樹幹に上向きに着地し、暫くして下向きになる。

西尾氏が解剖した結果、交尾は羽化後、間もなく行われると推定されている。

 
【幼虫の食餌植物】

ブナ科ブナ属 ブナ・イヌブナ。
クヌギが代用食になると云う記録があるようだ。

一応、ブナとイヌブナについて解説しておきます。

ブナ(山毛欅、橅、椈、桕、橿)。
学名:Fagus crenata。 
日本の北海道南部から九州南部に分布。都道府県でブナが自生していないのは千葉県と沖縄県のみ。落葉高木広葉樹で、温帯性落葉広葉樹林の主要構成種であり、日本の温帯林を代表する樹木。

 
(ブナの分布図)
(出展『東北森林管理局』)

 
本州中部では、ほぼ標高1000~1500mまでの地域がブナ林となる。日本の北限のブナ林は、一般的には北海道黒松内町のものが有名であるが、実は最北限のブナ林は隣町の寿都町にある。また、日本のブナの離島北限は奥尻島である。一方、南限のブナ林は鹿児島県高隈山にある。

 
イヌブナ(犬橅)。
学名:Fagus japonica Maxim。
岩手県花巻市以南の本州、四国、九州に分布し、一般にブナよりも温暖で雪の少ない土地を好む。中部地方より寒さの厳しい地域の日本海側では、ほとんど見られない。和名はブナより材質が劣ることから名付けられた。

 
(イヌブナの分布図)
(出展『神戸の自然シリーズ10』)

 
今一度、ブナとイヌブナの違いを整理しよう。

ブナの樹皮は「シロブナ」と呼ばれる事もあるほど樹皮は白っぽくて美しい。樹高は30mほどになり、北海道~鹿児島に分布する。
一方、イヌブナの樹皮は別名「クロブナ」と呼ばれる事もあるほど樹皮は黒っぽく、ザラついた感じ。樹高は25mほどになり、岩手県より南の太平洋側、四国、九州に分布する。

 
(ブナの幹)

 
(イヌブナの幹)
(出展 2点共『Quercusのブログ』)

 
ブナは見慣れているが、イヌブナはこんな幹なんだね。知らなかったよ。
この「Quercusのブログ」というサイトは詳しくて優れているから、葉っぱとか他は、そっちで見てね。

 
(ブナとイヌブナの分布図)
(出展『黒松内町ブナセンター』)

 
一応、他の主な違いも書いておこう。

①葉脈の側脈の数
 ブナ=7~11対
 イヌブナ=10~14対
②葉の質感
 イヌブナの方がやや葉質が薄い
③葉の裏
 ブナ=脈と縁以外は、ほぼ無毛
 イヌブナ=細くて柔らかい長い毛が生える

 
【幼生期の生態】

ここは今回も西尾氏の『日本のCatocala』に全面的にお助けもらおう。
幼虫は壮齢木から大木まで見られる。終齢は6齢で、室内飼育では稀に7齢にまで達するという。これには少し驚いた。多くのカトカラの幼虫の終齢は5齢だからだ。しかも7齢に達するものまでいるというじゃないか。変な奴だな。
野外での幼虫の色彩は、やや緑色を帯びるものや淡色化する個体などがあるくらいで、変異は微少。
多くのカトカラの幼虫が色彩変異に富むから、これも変わっている。
昼間、幼虫は伸びた枝の先の方に静止しており、時に地上10数メートルの高さにいる個体も観察されている。樹幹には降りてこないそうである。

蛹化場所については知られていないが、おそらく落葉の下で蛹化するものと考えられる。でも変な奴だから、変なところで蛹化しているかもしれない。

                    おしまい

 
追伸
ソッコーで終われる回だと思っていたが、解説欄が長くなってしまい、結局長文になってしまった。
今まで記載者なんて気にならなかったのに、前回のオオシロシタバ、いや、その前のエゾシロシタバ辺りから気になり始めてドツボにハマってる。よろしくない傾向だ。

今回のタイトルは、決めるのに随分と時間がかかった。書いている途中もコレといったものが浮かばなかったのだ。
で、つけた最初のタイトルは『胡麻塩少将』。大将には役不足だし、少将にしといた。それに、どっかでゴマ塩を少々ふりかけてぇー的な駄ジャレもカマしたろかいなと考えていたしね。
次に暫定タイトルになったのが『曇りのち晴』。
これはもうお分かりだろう。ラテン語のことわざである「Post nubila Phoebus.」がモチーフだ。
で、その次が『あの雲のように』。イワ(岩)イグアナの件(くだり)で、猿岩石のヒット曲『あの白い雲のように』がピーンと浮かんだのだ。
作詞は藤井フミヤ、作曲は藤井尚之の元チェッカーズの藤井兄弟。プロデュースは秋元康という豪華ラインナップ。曲も風を感じる浪漫溢れる良い曲だ。
この時代の後に一旦消えたけど、有吉も出世したなあ…。
でも「白い」と云う部分の替わりとなる他の言葉が思いつかなかったので却下。ゴマシオキシタバって、どう誤魔化したって、白くないんだもん。まさか「ドドメ色の雲のように」とか「胡麻塩色の雲のように」とは付けれんだろ。だいたい胡麻塩色って、どんな色やねん。
で、そこからマイナーチェンジして『雲の如く』になり、それに落ち着いていた。
しかし、記事のアップ直前に突然閃いて『風のように、曇の如く』に変えた。ロマンがあって、ちょっとカッコいいんでねえの?と思ったのだ。それによくよく考えてみれば、ゴマシオは生まれた場所から離れて遠くへと移動する事が特徴の一つのカトカラだ。きっと、風のように旅するのだろう。
目を閉じ、ゴマシオが風に乗って旅する姿を想像する。なかなか素敵な光景だ。そこには、それぞれの物語があるに違いない。
くれぐれも鳥には気をつけてね。
頭の中で飛ぶゴマシオくんに向かって、そう呟いた。

 
(註1)日本の蝶の記載数はバトラーがトップだろう
佐賀むし通信によると「原色昆虫大図鑑1(蝶蛾編) 北隆館1962)に掲載された211種の蝶の学名の命名者を調べてた結果、多い順から記すと、Butler 38、Fruhstorefer 26、Matsumura 23、Linné 14、Ménétriès 9、Shirôzu 6、C.et R.Felder 6となるそうである。
バトラーさん、断トツである。
 
(註2)プロフィル
資料の原文にはそうあった。間違いか誤字脱字、誤植だろう。でも、これってプロフィール?それともプロファイル?どちらの間違い?

 
(註3)京極堂の如く
京極夏彦の推理小説、京極堂シリーズ(百鬼夜行シリーズ)の終盤に主人公の中禅寺秋彦(別称 京極堂)が、憑き物落としの名の下に「この世には、不思議なことなど何もないのだよ」と言って、事件を鮮やかに解決してゆくこと。電話帳みたく分厚い本で、長々と綴られた文章を読み続ける苦痛のあとにやっと来るそれは、大いなるカタルシスとなっている。

京極さん、いつになったらシリーズの新作『鵺の碑』を出してくれるのかしらね?次回のタイトルを予告してから、もう10年以上も経つぞ。

 
(註4)胡麻塩ふりかけの起源
調べたところ、御飯に塩を振りかけて食べるようになったのは16世紀に「焼塩」が作られるようになってからのことであり、そのバリエーションとして「ごま塩」や「しそ塩」などのふりかけが誕生したと考えられている。
起源は、かなり古いのだ。戦国時代の武将たちは、にぎりめしに胡麻や塩、昆布、または味噌などを混ぜこんで戦場食としていたそうだ。「ごま塩」というふりかけのルーツとは言い難いところもあるが、ひとつの組み合わせとして「ごま」と「塩」が「ごま塩」になるきっかけになった可能性はある。ただ、当時から「ごま塩」と呼ばれていたかどうかは分からない。

でも、ここまでしか分からなかった。胡麻の歴史も塩の歴史も数多の文献があって知ることができるが、ごま塩の歴史に関する情報は殆んどなかったのである。

余談だが、市販品は塩が顆粒状になってゴマと混ぜ合わせられている。これは塩が小さい粒のままではゴマと比べ小さく、比重も大きいため。つまり、次第に塩が下に沈み、振ってもゴマのみが出てくることになるからである。塩を顆粒状にすることでゴマと比重を同程度にし、均等に出てきやすくしたんだね。賢い。

ついでに言っとくと、「胡麻塩頭」は、ふりかけのゴマ塩が起源なんだそうな。塩の白とゴマの黒との対比から、白と黒が混じったものの比喩に用いられ、白髪混じりの黒髪の頭髪を「胡麻塩頭」と呼ぶようになったそうだ。

 
(註5)世界のカトカラ
石塚勝己さんの世界中のカトカラを紹介した図鑑。日本のカトカラの入門編としても優れた内容になっている。

 
(発行元 むし社)

 
(註6)鬱陵島のブナ
タケシマブナ Fagus multinerというブナが自生しているみたい。因みにタケシマはあの韓国と領土問題で揉めてる竹島のことではないようだ。別な竹島みたいだね。

 

2018′ カトカラ元年 其の14

   vol.14 オオシロシタバ
  『その名前に偽りあり』

 
2018年 9月7日

オオシロシタバを初めて採ったのは、エゾシロシタバと同じく山梨県甲州市塩山だった。

 
【ペンションすずらん】

 
但し、ジョナスやエゾシロシタバのようにペンションすずらんのライトトラップではない。
じゃ何かというと、果物トラップで採れたのだ。糖蜜ではないところが、いかにも蝶屋らしい。蝶屋はあまり霧吹きシュッシュッの糖蜜は使わないのだ。
簡単な方法はストッキングにバナナやパインをブチ込み、焼酎をブッかけて発酵させたものを木に吊るす。
だから、翌日に蛾マニアの高校生が霧吹きを持ってシュッシュシュッシュやってるのを見て、衝撃を受けた。彼はライトトラップも別な場所でやってたしなあ。純粋なる蛾好き魂に触れたような気がするよ。

 

 
そういえば、この日が初めてのカトカラ狙いでのフルーツトラップだったんだよね。でもって、同時に初ナイトフルーツトラップでもあったわけだ。
カトカラにそこまで嵌まっていたワケではなかったから、そうまでして採ろうとは思わなかったのだ。
でも、ムラサキシタバとなれは話は別だ。大きさ、美しさ、稀少性、どれを取っても別格のカトカラなのだ。彼女だけは何としてでも採りたかった。だからカトカラ目的で遠征したのもこの日が初めてだったし、トラップまで用意したのだろう。

果物は何を使ったっけ❓
一つは即効性の高い🍌バナナを使ったことは間違いないが、ミックスしたもう1種類が思い出せない。普通で考えればパイン🍍なのだが、それは沖縄や東南アジアでの話だ。中部地方では、勿論のこと露地物のパインなんぞ栽培されているワケがない。ゆえに誘引されないかもしれないと考えた記憶がある。因みにバナナも中部地方に露地物はないだろうが、トラップとしては万能だと言われている。だから選んだ。実際、過去に効果もあったしね。
となると、もう1種はリンゴか梨、桃、スモモ辺りが考えられる。
🍎リンゴは発酵するのに時間がかかるし、一度も使った記憶が無いから有り得ないだろう。
梨かあ…。今、テキトーに並べたけど、もともと梨なんて考えてもしなかったよ。使ってるって聞いたことないもんな。でも産卵させる為に親メスを飼う場合は餌として梨がよく使われている。有りかもなあ…。機会があったら試してみよっと。でもリンゴと同じく発酵には時間がかかるかもしれない。
🍑桃は効き目がありそうだが、高価だ。ズルズルになるのもいただけない。それに季節的にもう終わってるよね。コレも無いだろう。
となると、スモモの可能性が大だ。そういえばオオイチモンジを採るのに使ったことがあるけど、効果あったわ。たぶんスモモだろね。そう思うと、そんな気もしてきたわ。

 
【オオイチモンジ】

 
場所は標高1400mにあるペンションすずらんから30分程下った所だった。となれば、標高1300~1200mってとこだろう。
何で、そんな遠い場所にトラップを仕掛けたのかというと、コレにはちゃんとした理由がある。宿のオッチャンに尋ねたところ、その付近にしかムラサキシタバの食樹であるヤマナラシが生えていないと言われたからだ。
だんだん思い出してきたわ。ペンションとそこを何度も往復したんだよね。コレが肉体的にも精神的にもキツかったんだよなあ。一晩に何10㎞と歩いたし、一人で夜道を歩くのはメチャメチャ怖かった。お化けの恐怖もあったけど、何といってもクマ🐻ざんすよ。近畿地方の低山地じゃないんだから、100パーおるもん(T△T)

時間は午後9時台だったと思う。
降りてきたら、ヤマナラシの幹に縛り付けておいたトラップに見慣れぬ大型の蛾が来ていた。
しかし、見ても最初は何だか理解できなかった。けど下翅を開いて吸汁していたのでカトカラの仲間であることだけは判った。でも何じゃコレ(;・ω・)❓である。
10秒くらい経ってから漸くシナプスが繋がった。

『コレって、オオシロシタバじゃなくなくね❓』

ムラサキシタバしか眼中になかったから、全くターゲットに入ってなかったのだ。それに『日本のCatocala』には、オオシロは花には好んで集まるが、樹液には殆んど寄ってこない云々みたいな事が書いてあった。ネットの情報でも糖蜜トラップでオオシロを採ったという記述は記憶にない(註1)。だから、こう云うかたちで採れるとは思ってもみなかったのだろう。

採った時は、そこそこ嬉しかった。
思った以上に大きかったし、予想外のモノが採れるのは嬉しいものだ。それに良い流れだと感じたことも覚えている。ムラサキシタバの露払いって感じで、モチベーションが⤴上がったもんね。
だが同時に、薄汚いやっちゃのーとも思った。その証拠に、この時撮った写真が1枚たりとも無いもんね。
発生から1ヶ月くらい経っているから致し方ないのだろうが、このカトカラって他のカトカラよりもみすぼらしくなるのが早くねぇかい(・。・;❓

此処には3日間通ったが、毎日複数頭が飛来した。
おまけに、シラカバの樹液を吸っている個体も見た。
ということは、偶然ではない。間違いなくオオシロシタバは樹液やフルーツトラップに誘引される。そう断言してもいいだろう。
そういえば、この時には思ったんだよなあ。シロシタバは夜間、樹液で吸汁する時以外でも下翅を開いて樹幹に止まっているものが多いなんて(註2)何処にも書いてなかったし、こんな風にオオシロシタバの生態も間違っていたから、何だよ、それ❓ってガッカリした。蛾は、蝶みたく全然調べられてないじゃないかと軽く憤慨しちゃったもんね。でも、今考えると、それも悪いことじゃない。殆んど調べ尽くされているものよりも、そっちの方がよっぽど面白い。性格的にも、そういう方が合ってる。先人たちをなぞるだけの採集なんてツマラナイ。

 
【Catocala lara オオシロシタバ】

 
その時に採った比較的マシな個体だ。
全然、シロシタバ(白下翅)って感じじゃない。どちらかというと黒っぽい。コレを白いと思う人は少ないと思うぞ。
下翅の帯が白いから名付けられたのだろうが、それとて純粋な白ではない。せいぜい良く言ってクリーム色だ。悪く言えば、薄黄土色じゃないか(上にあげた画像が白く見えるのは鮮度が悪いくて擦れているから。後に出てくる野外で撮った写真を見て下されば、言ってる意味が解ると思う)。
和名はオオシロシタバよか、シロオビシタバの方がまだいいんじゃないかと思うよ。
その下翅の帯だが、この形の帯を持つものは日本では他にムラサキシタバしかいない。両者って類縁関係はどうなってんだろね?(註3)

オオと名前が付いているのにも不満がある。
初めて見た時は大きいと思ったが、明らかにシロシタバより小さい。重厚感も全然足りてない。なのにオオなのだ。完全に見た目と名前が逆転現象になってる。名前に偽りありだ。何がどうなったら、そうなってしまうのだ。謎だよ。

 
2018年 9月16日

その1週間後、また中部地方を訪れた。
とはいえ、今度は長野県。そして、一人ではなくて小太郎くんが一緒だった。
小太郎くんの目的はミヤマシジミとクロツバメシジミの採集だったが、ついでにムラサキシタバの採集をしてもいいですよと言うので、車に乗っけてもらったのだ。
この時は殆んど寝ずの弾丸ツアーだったので、幻覚を見るわ、発狂しそうになるわで、アレやコレやと色々あって面白かった。
しかし、そんな事を書き始めたら膨大な文章になるので、今回は端折(はしょ)る。

場所は白骨温泉周辺だった。
この日もフルーツトラップで勝負した。
たぶん前回使ったものに果物を足して、更に強化したものだ。車の後部座席の下に置いたら、小太郎くんが『うわっ、甘い匂いがスゴいですねー。』とか言ってたから、間違いなかろう。

トラップを設置して、直ぐにオオシロシタバが現れた。勿論、もう感動は1ミリたりともない。擦れた個体だったし、みすぼらしい汚ない蛾にしか見えなかった。
それでも一応、1頭目は採った記憶がある。

 

 
その後も、オオシロくんは何頭もトラップに飛来した。
これで、やはりオオシロシタバはフルーツトラップに誘引されると云うことを100%証明できたぜ、ざまー見さらせの気分だった。
けど、フル無視やった。もうゴミ扱いだったのである。だから、この日もオオシロシタバの画像は1枚もない。

そういえば、この日は白骨温泉の中心でもオオシロを見ている。外灯に飛んで来たものだ。図鑑やネットを見てると、オオシロの基本的な採集方法は灯火採集のようだ。
思うに、この灯火採集が蛾界の生態調査の進歩を妨げている部分があるのではないだろうか❓
確かに、この採集方法は楽チンで優れている。一度に何種類もの蛾を得られるから効率がいい。その地域に棲む蛾の生息を調べるのには最も秀でた方法だと思う。しかし一方では、生態面に関しての知見、情報はあまり得られないのではなかろうか❓せいぜい何時に現れるとか、そんなもんだろ。
まだまだ蛾の初心者のオイラがこう云うことを言うと、また怒られるんだろなあ…。
まっ、別にいいけどさ。変に忖度なんかして感じたことを言えないだなんて、自分的にはクソだもんな。

今回も2019年版の採集記を続編として別枠では書かない。面倒くさいし、そこには何らドラマ性も無いからだ。書いても、すぐ終わる。
と云うワケで2019年版も引っ付ける。

 
2019年 9月5日

2019年のオオシロシタバとの出会いも白骨温泉だった。
ポイントも同じ。違うところは、細かいところを除ければ、一人ぼっちなところと1週間ほど時期が早いことくらいだ。

天気がグズついてて、ようやく雨が上がったのが午後10時過ぎだった。やっとの戦闘開始に気合いが入る。
霧吹きで、しゅっしゅらしゅしゅしゅーと糖蜜を噴きつけまくる。
そうなのだ。フルーツトラップから糖蜜にチェンジなのじゃ。( ̄ー ̄)おほほのホ、一年も経てぱバカはバカなりに少しは進化しているのである。
フルーツトラップは天然物なだけに、効果は高い。但し、問題点もある。荷物になるのだ。それに電車やバスに乗ってて、甘い香りを周りに撒き散らすワケにはいかないのだ。されとて、ザックの中に入れるワケにもゆかない。液漏れでもしたら、悲惨なことになる。だいち重いし、かさ張る。ようするに邪魔なのだ。今回のように全く車に頼れない時は、そういう意味ではキツい。一方、糖蜜トラップは蓋をキッチリしめてさえいれば、匂いが漏れる心配はない。荷物もコンパクトにできる。液体が減れば、当然軽くもなるし、補充も現地で何とかなる。山の中で売ってる果物を探すのは至難だが、ジュースや酒ならまだしも手に入る。

糖蜜トラップのレシピは覚えてない。
なぜなら、決まったレシピが無いからだ。基本は家にあるものをテキトーに混ぜ合わせるというアバウトなものなのさ。
たぶん焼酎は入ってる。ビールは入っているかもしれないが、入ってないかもしれない。
果実系のジュースも何らかのものは入っていた筈だ。ただ、それが🍊オレンジジュースなのか、🍇グレープジュースなのかは定かではない。下手したら、それすら入ってなく、カルピスやポカリスエットだった可能性もある。勿論、それら全部がミックスされていた可能性だってある。
酢は入れなかったり、入れたりする。普通の酢の時もあれば、黒酢の時もある。気分なのだ。ゆえにワカラン。
この時は絶対に入ってないと思うが、作り始めた初期の頃などは黒砂糖なんかも入れていた。効果は高いけど、溶かすのが面倒くさいから次第に入れなくなったのだ。
コレってさあ、普段自分が作る料理と基本的な流れが同じだよね。やってることは、そう変わらない。もちろん料理の場合は基礎が必要だけれど、最終的にはセンスとかひらめきとか云う数値にできない能力で作ってる部分が多い。でも料理より酷いハチャメチャ振りになる。たぶん自分で食ったり飲んだりしないから、必然もっとテキトーでチャレンジャーになってしまうのだ。
それでも何とかなってしまうところが怖い。って云うか、だから努力を怠るのでダメなんだけどもね。メモさえ取らないから、いつも行き当たりバッタリの調合で成長しないのだ。自分で、まあまあ天才なんて言ってるけど、少しばかりセンスのある単なるアホだ。基本的に論理性に欠けるのだ。だって右脳の人なんだもん。

結果は、やっぱり撒いて程なくオオシロくんが来た。
そして、やっぱりボロばっかだった。
違うのは、それでも一応写真は撮っておいたところくらい。この時には、もう既にカトカラシリーズの連載を書き始めてだいぶ経っていたゆえ、さすがに必要だと思ったのさ。

 

 
【裏面】

 
酷いな。やっぱり汚ないや。腹なんて毛が抜けて、テカテカになっとるがな。ここまで腹がデカテカなカトカラは初めて見るかもしれんわ。
そう云えば、たぶん『日本のCatocala』にメスは日が経ってるものは腹の鱗粉がハゲていると書いてあったな。それは多分、産卵するために樹皮の間に腹を差し込むからだろうとも推定されていた筈だ。
何か樹液の件で文句言っちゃったけど、やはり著者の西尾則孝氏はスゴイ人だ。日本のカトカラの生態についての知識量は断トツで、他の追随を許さないだろう。この図鑑が日本のカトカラについて述べたものの中では最も優れていると思う。

けど、コレって♀か❓
まあ、いいや( ・∇・)

その時に採ったものを展翅したのがコチラ↙

 

 
二年目の後半ともなれば、展翅もだいぶ上手くなっとるね。如何せん、鮮度が悪いけどさ。

今年は、もし真剣に採る気ならば8月上旬に行こうかと思う。鮮度が良い本当のオオシロシタバの姿を知るためには、それくらいの時期に行かないとダメだね。
実物を見たら、オオシロシタバに対する見方も大幅に変わるかもしれない。

次回、解説編っす(`ー´ゞ-☆

                    つづく

 
追伸
実を云うと、この回は先に次回の解説編から書いている。
そっちがほぼ完成に近づいたところで、コチラを書き始めた。その方が上手く書けるのではないかと思ったのだ。まあまあ成功してんじゃないかと自分では勝手に思ってる。

 
(註1)ネット情報でも糖蜜トラップでオオシロを採ったという記述は記憶にない

ネットで糖蜜トラップでの採集例は見つけられなかったが、樹液での採集を2サイトで見つけた。青森でミズナラとヤナギ類で吸汁しているのが報告されている。もう片方のサイトでは、樹液に来たとは書いていたが、具体的な樹木名は無かった。

 
(註2)シロシタバは樹液吸汁時以外も下翅を開いてる

これについてはvol.11のシロシタバの回に詳しく書いた。気になる人は、そっちを読んでけれ。

 
(註3)両者って類縁関係はどうなってんだろね?

実を云うと、先に次回の解説編を書いた。
あれっ、それってさっき追伸で書いたよね。兎に角そう云うワケで、時間軸が歪んだ形でDNA解析について触れる。えーと、説明するとですな、これを見つけたのは解説編を書いている時なのだよ。

 
(出展『Bio One complate』)

 
石塚勝己さんが新川勉氏と共にDNA解析した論文である。
(/ロ゜)/ありゃま。オオシロ(C.lara)とムラサキシタバ(C.fraxini)のクラスターが全然違うじゃないか。
つまり、この図を信じるならば、両者に近縁関係はないと云うことだ。共にカトカラの中では大型だし、帯の形だけでなく、翅形もわりと似てるのにね。DNA解析は、従来の見た目での分類とは随分と違う結果が出るケースもある。蝶なんかはワケわかんなくなってるものが結構いるから、見た目だけで種を分類するのは限界があるのかもしれない。違う系統のものが環境によって姿、形が似通ってくるという、いわゆる収斂されたとする例も多いみたいだしさ。
まあ、とは言うものの、DNA解析が絶対に正しいとは思わないけどね。

 

2018′ カトカラ元年 其の13

   vol.13 エゾシロシタバ

    『黒い虚無僧』

 
また、最初に訂正とお詫び。
前回の記事をアップ後、直ぐに読まれた方もおられると思われる。既に修正済みだが、学名の記載者と記載年の()問題でシクった。『日本産蝶類標準図鑑』が恰(あた)かも全部の記載者、記載年を()で括っているかのような事を書いたが、そんな事はござんせん。ぼおーっとしてました。酒飲みながら書いてるから、やらかしたんだけど、たまたま開いたページ周辺が全部()だらけだったので、勘違いしてそう書いてしまったのだ。酔っ払いは物事を深く考えないのである。
学名の属名が変更された場合は、()で括るというルールが有る。まず命名者については、命名者名が括弧で括られ、その後に変更者の名前を書くことになってる。
よくよく考えてみれば、そのページはタテハチョウ科の項で、タテハチョウは属名が変更になってるものが多いという事をすっかり失念していた。スンマセン。

気を取り直して、本編に進もう。

 
2018年 9月7日

 

 
台風一過。関西を直撃した台風21号の翌々日に旅立った。翌日に発つ予定だったが、被害状況によっては電車が走っていないケースもあると考えて、一日様子をみることにしたのだ。
目的地は山梨県甲州市の「ペンションすずらん」。狙うはムラサキシタバだった。

 
【ペンションすずらん】

 
此処は関東方面の虫屋には名の知れたペンションで、デカいライト・トラップがあるのだ。
この頃はまだカトカラ1年生の終わりかけ。言うほどカトカラに嵌まっていたワケではない。カバフキシタバとシロシタバ、ムラサキシタバさえ採れればいいと思ってた。ムラサキシタバを採ってフイニッシュ。この年でカトカラ採りはやめるつもりでいた。所詮は蝶採りの合間の、ほんの気まぐれから始めたことなのだ。だからライトトラップの道具なんて持っているワケがないのである。だいちライトトラップのセットは高額だ。買う気なんぞ、さらさらなかった。
でもムラサキシタバは、どうしても採りたい。なので最後の手段として、この地を訪れたのだった。

 

 
ここで、ジョナスのあとにエゾシロシタバが飛来した。
しかし情けないことに、止まっているのをコレ何❓って、蛾好きの高校生に訊いたんだっけ…。
でもって、半ば呆れ顔で『エゾシロシタバですね。』と教えてもらったような気がする。だってエゾシロシタバの存在なんて、全く頭の中に無かったのだ。

採ってみての第一印象は、カトカラらしくない小汚ないヤッちゃのーだった。下翅が黒っぽくて、全然鮮やかじゃない。そんなに目立たなくして、アンタ、虚無僧かよと思った。しかもチビである(-“”-;)
正直、何の感動も無かった。採ったことがないカトカラが1種類増えてプチラッキーだとか、その程度にしか思わなかった。見てくれは、ワタクシが元来嫌っている蛾の典型みたいなもので、みすぼらしいんだもーん。
なのか、その時の写真は残っていない。ようするに1枚も撮っていないのだ。目的はカトカラの最美麗種とも言われるムラサキシタバのみだったので、完全に雑魚扱い。眼中に無かったのであろう。撮るに足りないと判断したんだろね。

結局、この遠征では全部で7、8頭が灯りに飛んで来たと記憶している。時刻は8時とか9時台の比較的早い時間だったと思う。静止時は全て羽を閉じていた。
で、持ち帰ったのは2頭か3頭だったと思う。殆んどがボロボロだったからだ。
そう云うワケなんで、展翅した画像しかない。

 
【エゾシロシタバ Catocala dissimilis】

 
♂かなあ…。
展翅したのは、この1点のみ。他の画像は無い。何せコレが一番マシな個体だったのだ。他は展翅すらしていないのさ、(# ̄З ̄)ぷっぷっプー。
しかも、展翅がド下手。愛情ゼロ、やる気が1ミリも感じられない展翅だ。

ゆえに、他からもっとマシな画像をお借りしよう。

 
【♀】
(出展『ww.nkis.info』)

 
鮮度が良い個体でも地味だねぇ~。もっと黒いのかと思いきや、薄汚れた茶色というのもいただけない。見た目が似ているコシロシタバはもっと黒っぽい濃紺で、渋い美しさがある。なのに、こんなんじゃねぇ…。おまけに東日本では普通種とゆうじゃないか。チビでブスで普通種。そりゃ、人気も出ぇーしまへんわ。

 
【コシロシタバ Catocala actaea ♀】
(2019.7月 奈良市)

 
エゾシロシタバと一見似ているが、白斑の位置が全然違う。だいち大きさが違う。コシロはもっと大きいのだ。ふた回りくらいの差がある。

裏面写真も撮ろうと思えば撮れるんだけど、鮮度が悪いので、ここはネットから画像をお借りしよう。

 
(出展『The insects from the Palaearctic region』)

 
画像の左側が表で、右側が裏面である。
自分の標本写真の鮮度が悪いゆえ、表の画像が一緒になってるコレが好都合かと思い、使用させて戴いた。

Σ( ̄ロ ̄lll)あっ❗、よく見ると下翅に帯の痕跡のようなものがある。採った時は全然知らなかったけど、マメキシタバと近縁なんだそうな。

 
【マメキシタバ Catocala duplicate ♀】
(2019.8月 大阪府四條畷市)

 
パッと見は全然似てない。でも、そう言われてみれば、帯の形や角度、太さはマメキシタバに似ていなくもない。前翅の斑紋パターンも近いものがある。

こうして見ると、エゾシロシタバって裏も酷いな。
下翅の根元が汚ないし、お世辞にも美しいとは言えない。コシロシタバには幽玄の美しさが有るのになあ…。

 
【コシロシタバ ♀裏面】
(2019.7月 奈良市)

 
とはいえ、エゾシロシタバにはその後も会っていないし、まだ生きている新鮮な個体は見たことがない。百聞は一見にしかずである。案外、実物はそんなに悪くないのかもしれない。
今年は一応狙って採ってみるか…。

                     つづく

 
追伸
この時は来年の2019年には、どうせまた会えるだろうと思っていた。なのに結果は2回の信州遠征でも1頭たりとも見なかった。いる所にはアホ程いるが、いないところも結構あって、意外と分布は局所的なのかもしれない。

解説編は次回に回します。1回で終える予定だったのだが、学名の項でぬかるみの世界にズブズブにハマってしまったのだ。
(‘ε’*)クショー、書くのは楽勝のカトカラだと思ってたのにぃー。

2018′ カトカラ元年 其の11 第三章

 

   vol.11 シロシタバact3
   『パンチラを追え』

 
シロシタバの初採集から中2日後に再び出撃した。
中2日間空いたのは甲子園に高校野球を観に行っていたからなのだ(註1)。

 
2018年 8月22日

   

 
これを買っている時点で、又しても四條畷なのらー。
こないだは思いの外、シロシタバが5♂1♀も採れたので今日もシバくのだ(^o^)v
とは言いつつも、本日は小太郎くんが途中から参戦してくる事になっている。四條畷でシロシタバを採った報告をしたら、行きたいと言ってきたのでホントはその案内ってワケ。ゆえに冒頭のスーパーマーケット フレスコの分厚いカツサンド(註2)も彼の為に買ったものだ。マジで旨いから食ってもらいたいと云う気持ちからだったが、今日は車で来るという事なので(註3)、帰りに駅まで送ってもらうつもりだし、まあその駄賃みたいなもんでもある。あの恐怖に満ちた長く辛い夜の山道を一人で下る事を考えれば安いものだ。

 
今宵は月夜。

 

 
懐中電灯なしでも山道も何とか見える。
夜の山を一人彷徨(さまよ)うのにもすっかり慣れた。人工的な明かりが全く無い世界は恐しくもあり、美しくもある。

謂わば、夜の蛾採りはミステリーである。そして、スリルとサスペンスに満ちている。中でもライトを焚かない夜間採集は暗闇が支配する世界。ホラーであり、スリラーでもある。ミステリーな上にスリルとサスペンスに満ち、更にホラーでもあると云う謂わば全部乗せスペシャルなのである。
ここでふと疑問に思って、ついミステリーとサスペンスとスリラーとホラーの違いについて考えてみた。夜の山に一人いると、想念がどこまでも広がりがちだ。闇と対峙しているうちに、普段ある意識と内奥にある意識との間にある薄い膜のようなもの、心理的障壁や夾雑物が消えるのかもしれない。

その手の映画をAはミステリー映画、Bはサスペンス映画と言ったりする事は多い。それをホラーやスリラーとする人だっているかもしれない。ジャンル分けが人によってバラバラなのだ。自分の中でもそれら似たような言葉がゴッチャになってるところがある。その線引きって、どの辺りにあるのかなと思ったワケ。
したら、急に筆がバッシバッシに走り始めた。でも途中で、こりゃマズイ。大脱線になるのは必至だと気づいて急制動。
脱線ばかりしていては話が全然進まない。徒(いたずら)に長くなるから、それについては最近自分でも反省しているのだ。無駄な文章が多すぎ。
このお題に関しては後日、稿を改めて書けたら書こう。だいち、この日は小太郎くんが後から来たから、全然怖くなかったのだ。それだと論旨にリアリティーを欠きそうだし、タイムリーな話題とは言えまい。

暗闇の世界から暫し離れ、待ち合わせ場所へ行く。
小太郎くんが車でやって来たのは、日没後の7時半から8時の間くらいだった。
この日は小太郎くんには2頭ほど採ってもらったっけかなあ?(註4)。でも最初の1頭しか覚えていない。

一番個体数が多かった森に差し掛かった時だった。
森の入口で、小太郎くんが早くも木に止まっているのを見つけた。三日前、自分が最初に採った個体もその木に止まっていたし、止まっている高さもほぼ同じだったから驚いた。御神木かもと思ったよ。もっとも自分の場合は止まっているのに気づかずに飛んでったけどね。その辺のてんやわんやの件(くだり)は前回に詳しく書いたので、そちらを読んで下され。

記憶は朧ろだけど、下翅は開いていなかったと思う。小太郎くんは、止まっているそれを毒瓶を被せて採ったからだ。ワテの毒瓶を貸したのだが、コンビニで売ってるワンカップ焼酎で作ったものゆえ、大きさ的に翅を閉じて止まっているシロシタバでギリの口径なのだ。もし翅を開いていたなら、鱗粉が傷ついてしまうから網で採っていた筈だ。

 
【毒瓶】

 
でも小太郎くん本人に電話で確認したところ、下翅は少しだが開いていたと言う。清純チラ見せパンチラだったワケだね。言われてみたら、翅を開いていたような気もしてきた。
これで人間の記憶が如何にいい加減で曖昧なのかがよく分かったよ。同じ木だっただけに、時間の経過と共に自分が採った夕方4時半の時の記憶とゴタ混ぜになってしまい、いつのまにか夕方なら翅を閉じていた筈だという概念に支配されてしまったようだ。結構、自分の都合の良いように脳が記憶を改竄してるってことは有るんだろなあ…。

ここで今一度、パンチラ問題について説明しておこう。
シロシタバを含むカトカラ(Catocala)属は、上翅が木肌に似た地味な色だが、下翅は黄色や紅色、紫など鮮やかな色を持つものが多い。しかし、普段は昼でも夜でもその鮮やかな色を隠して木に静止している。これは鳥などの天敵から身を守る為だと言われている。つまり上翅の地味な色柄を木と同化させることによって、天敵の眼を欺くと云う高度な生き残り隠遁術なのだ。
そのせいか、下翅を見せる機会は少ない。飛んでいる時と、樹液などの餌を摂取している時くらいにしか下翅を開かないのだ。あとはイレギュラーな例として、天敵に襲われそうになったら、鮮やかな下翅を見せて威嚇するとも言われている。
これがカトカラ属全般の基本的な生態だろう。それが白き女王様ったら、此処では夜になると樹液を吸ってるワケでもないのに、恥ずかしげもなく御開帳。おおっぴらにおっぴろげていらっしゃる。🎵サービス、サービス(あっ、ここ、エヴァ(ヱヴァンゲリヲン)の次回予告の葛城ミサトの口調ねっ❤)。
しかし、こういう生態は自分の知る限りでは聞いた事がない。どこにも書いていないのだ。だから今日はその生態が、はたしてあの日一日だけのものなのか、それとも通常の行動なのかを確かめるという目的もあった。

因みに止まっていた向きは上向きだった。これは覚えているし、小太郎くんにも確認したから間違いない。
カトカラの多くは昼間は下向きに止まっているが、夜になると上向きに止まる。前回書かなかったけれど、一番最初に採った個体だけが日没前の4時半で、驚いて飛び立ったから不明だが、日没後に見た他の5頭は全て上向きに静止していた。
でも何で昼間は下向きに止まってるんだ❓
逆さになって何の得があるのだ❓そこには何らかの理由がある筈なのだが、全くもってその理由がワカラン。

それにもう一つ疑問点がある。では、いつ下向きから上向きになるのだ❓夕方❓夜❓何時何分❓
また、いつ上向きから下向きになるの❓明け方❓朝❓それとも昼❓
これに関しても詳しく書かれたものを見たことがない。
これら疑問については、おいおい解き明かしていくつもりだ。出歯亀探偵、引き続きパンチラも追うぜ。

この日の2頭目は、たぶん自分が見つけたと思う。
池の畔側で、シロシタバがあまり好まない場所なのか、池側ではその一度だけしか見たことがないから覚えてる。上向きに止まっており、下翅は開いていなかった。
後にも先にも日没後に下翅を開いていないノーパンチラ、貞操の固い個体はコレだけだった。この日は前回にも増して個体数が多く、小太郎くん曰く10頭以上は見たそうだが、木の幹に止まっていたものは全て下翅を開いたパンチラ状態だったそうだ。
その割りには採った記憶があまり無いなあと思ってたら、これも小太郎くんの言で疑問が解けた。なぜかと云うと、殆んどの個体が翅が欠けていたり、破れたものばかりで、スルーやリリースしたからみたい。話を聞いているうちに、そういえばそうだったと思い出したよ。
『ほらね、やっぱり下翅を広げてるでしょ。』と小太郎くんに自慢げに言ったわ。彼もちゃんとそのオラの言動は憶えてたし、それで概ね合ってるだろう。
記憶がだいぶ甦ってきたぞ。そういえばこの日はそれだけいたにも拘わらず、1頭たりとも樹液に飛来しなかった。やはり夜遅くにならないと樹液に来ないのか❓そんなワケあるかいと思うのだが、事実なんだから何らかの理由なり意味なりを考えざるおえない。(T_T)もう謎だらけだよ。

情けないことに鮮明に記憶に残っているのは、帰る間際に採ったものくらいだ。
最後に前回♀が採れたウワミズザクラの大木に寄ったのだが、見たところいないので諦めて帰ろうとして振り向いたら背後の木の枝葉に止まっていたのだ。不意だったから、中々に衝撃的だった。
高さは1.8メートルくらいで、幹ではなくて枝と云うか常緑樹の葉っぱに止まっていたのをよく憶えている。葉っぱに止まってるのは珍しいから、映像記憶として鮮明にメモリーされている。勿論、パンチラ全開だった。
今思えば写真を撮っておけば良かったと悔やまれる。パンチラの証拠写真を撮るなら、高さ、近さは申し分なかったし、絵的にも素晴らしいアングルだったのだ。しかも鈍感な子で、近づいても逃げる素振りは微塵も無かった。謂わば最高の条件が揃ったシャッターチャンスだったのだ。終電の時間が気になっていたのだろうが、写真を撮る時間なんてたかがしれている。勿体ない事をした。

結局、この日の個体は翌日に撮った写真しか残っていない。

 

 
お尻の形からすると、♀だね。
次は、たぶん同じ個体の裏面。

 
【裏面】

 
裏面は生成(きなり)色。所謂オフホワイトだ。表よりも薄汚れた感じで、あんまし綺麗じゃない。

探しても展翅写真がナゼか無い。
なので、前回のものをひと纏めに撮ったのを載せて御茶を濁そう。

 

 
この夜に採集したものは、どうせ面倒クセーからと写真を撮らなかったんだろうね。

 
 
2018年 9月7日

 

 
線路の両側の稲穂が金色に輝いていた。

この日は青春18切符で遠路はるばる山梨県までやって来た。
目的は大菩薩嶺の麓で帝王ムラサキシタバ(註5)を狙う為だ。
とはいえ、ライトトラップなんて持ってないからペンションのライトトラップで何とかならんかなと思ったのである。
このペンションは虫屋の間では有名で、毎夜ライトトラップが焚かれているのだ。

 
【ペンション すずらん】

 
ライトトラップはペンションの裏というか横にあり、巨大である。

 

 
横幅が4メートルくらい、高さは3メートルくらいはあったかなあ。
ここにシロシタバが飛んで来た。時刻は比較的早い時間だったと思う。たぶん7時か8時辺りだったかな。

 
【シロシタバ】

 
スマン、間違い。写真のデータを解析したら9時過ぎに撮られたものだったよ。やっぱり古い記憶というものは当てにならん。

ライトトラップに飛来したものはパンチラなし。
灯りに寄って来るカトカラは、翅を閉じるものが多いようだ。ネットの画像なんかでも閉じているものが多い。中々、翅を開いてくれないというコメントも散見されるから、閉じるのが基本だと思われる。
こうして見ると、上翅の黒いスリットのような柄が目立つね。殆んど下翅を開いているものしか見てないから、あまりそっちには目がいかなかったんだろ。シロシタバの苔(地衣類)みたいな上翅は、世界中のカトカラを見回しても唯一無二だが、この黒いスリットが入るカトカラも他には存在しない。
とは言っても、もはや全然興味が無かった。一回やったら飽きるような酷い男なのだ。
それに何だか小さい。四條畷の奴と比べて断然小さく、細いような気もして重量感をあんま感じない。もう魅力半減なのだ。萎えても致し方なかろう。

翌日の夜にはペンション入口の外灯の柱に鎮座していた。飛来時間は同じく9時くらいだったと思う。
この時もパンチラなし。翅は閉じられていた。
翅がコレも少し欠けていたので、蛾LOVEの高校生に譲ったっけ。いや、もしかしたら別な人だったかもしれない。
ここには3泊したが、見たのはその2頭のみだった。

大菩薩山麓で採ったシロシタバ♂を展翅画像を貼り付けとこっと。

 

 
(・。・;あれれっ❓、翅が破れてないぞ。
おっ、そうか。これまた健忘太郎だ。樹液に来たのも採ったんだわさ。たぶん、それだね。
翅は開いていたと思う。なぜなら閉じていたという記憶がないからだ。樹液を吸ってる時は下翅を開くのが当たり前だから、もし閉じていたならば逆に強く印象に残っている筈だ。それが無いという事は、閉じていなかったという三段論法でしかないんだけどもね。
と云うことはライトトラップに来たものは翅が破れていたのでスルーしたんだね。そう云えば持って帰った記憶は1頭しか無い気がする。

あっ、今さら8月22日に四條畷で採った個体の画像が出てきた。随分と後になって撮られたものだから、気づかなかったのだ。

 

 
カトカラの展翅は何が腹立つかって、時間が経って乾燥が進むと触角に狂いが生じてくる事である。
上の画像なんかは、元々はもっと整っていた筈だ。こんなアッチ向いてホイを良しとするワケないのだ。

 

 
両方とも♀だ。
そういえばコレって、たしか秋田さんに蝶屋的展翅だと指摘されてたので、上翅を下げてみたんだよね。
なるほどで納得したよ。確かに、このバランスの方がシックリくる。
同時に、それで画像が後になって撮られた理由も氷解した。展翅バランスが変わったという事は、きっと山梨の個体よりも後に展翅されたものだ。あんまし記憶に無いけど、後になってから軟化展翅したとしたら、話の辻褄が合う。

あっ、よく見ると前肢がもふもふで可愛い(о´∀`о)

 
                     つづく

 
追伸
この第三章から小タイトルを毎回変えることにした。
と云うわけで、第ニ章にも新たにタイトルをつけて、本文も一部手を入れた。
小タイトルの話が出たので、ついでだから書き忘れていたことを書こう。
第一章の小タイトル『ホワイト・ベルベット』のモチーフはデヴィッド・リンチ監督の映画『ブルー・ベルベット』。通の映画好きならば誰もが知っているリンチの代表作であり、カルトムービーの金字塔の一つだ。エキセントリックにしてファンタジック。そしてスタイリッシュ。何度見ても飽きない。
勿論、怪優デニス・ホッパーのガスマスクとか変態っぷりも光るが、一番好きなのはディーン・ストックウェルが「お菓子のピエロ」を歌うシーンだ。映画のストーリーとは直接関係ないのに、とても心奪われる。
そういえば、これまたストーリーとは直接関係ないローラ・ダーンの尋常じゃない泣きじゃくりっぷりがメチャンコ怖いんだよ。全然怖いシーンじゃないんだけど、何だか矢鱈と怖いのだ。
この映画は闇のシーンが多い。それが夜のカトカラ採集と重なり、夜道を歩いている時に珠にこの映画の事を思い出したりもした。更にそこにシロシタバのベルベッドのような下翅とがリンクしたゆえに思いついたタイトルだろう。まあ、映画へのオマージュだね。

第ニ章の『白き、たおやかな女王』のモチーフは北杜夫の小説『白きたおやかな峰』。但し、インスパイアーされたのは題名だけ。ヒマラヤの高峰に臨む登山家たちの話で、その内容とは全く関係がない。

今回の第三章は特に決まったモチーフはない。パンチラという言葉が気に入ったので、単にタイトルに使いたかっただけだ。カッコつけたがると同時にフザけたい人なのだ。
いや、もとい。あるっちゃある。白い下翅を何度も見ているうちに『まいっちんぐマチコ先生』みたいやのうと思った覚えがある。マチコ先生といえば純白パンティーだ。でもってパンチラなのだ。すっかり忘れていたが、その辺が深層心理にあったのだろう。
一瞬、タイトルを『まいっちんぐマチコ先生』に変えてやろうかと今思ったが、やめとく。フザけ過ぎだと叱られそうなんだもん。

次回のタイトルは未だ考えてないから、どうしょっかなあ…。でも全然思い浮かばない。結構、タイトルを考えるのって大変なんだよね。

 
(註1)高校野球を観に行っていたからだ

準決勝と決勝、2日連続で甲子園に行った。

 

 
そう、大阪桐蔭が春夏連覇した時だね。
但し、決勝戦は入場出来ずに近くの喫茶店でTV観戦してた。満杯で入れなかったのだ。下の画像を拡大すると、外野席までもが売り切れになっていることが分かります。

 

 
そういえば毎年恒例の『(@@;)べろ酔い甲子園』と題したシリーズをこの年は結局書いてないんだよねー。選抜の(@@;)ベロ酔いレポートは書いたんだけどさ。

 
(註2)クソ分厚いカツサンド

スーパー・マーケット フレスコの名物カツサンド。
これについては拙ブログにて『フレスコのカツサンド』と題して書いた。

 
(註3)今日は車で来るということなので

こんな事にまで註釈を付ける必要性は無いと思うが、小太郎くんが遂に車を買ったのだ!何か言いたい。
勿論、この日の帰りは車で送って貰ったのだが、車を買って初めて助手席に乗せたのがオラらしい。物凄く残念そうに言われたよ。アンタ如きにと云う気持ちが言外に溢れてとったわさ。
若い女の子じゃなくてゴメンねー(・┰・)

 
(註4)小太郎くんには2頭ほど採って貰ったのかなあ

本人に確認したら、最初の1頭のみだった。この日は発生も終盤なのかボロばっかだったのだ。

 
(註5)ムラサキシタバ

 
日本におけるカトカラの最大種。しかも、美しくて稀な種なので人気が高い。