2019’カトカラ2年生 其の四(2)

 
   vol.21 ミヤマキシタバ 第二章

   『灰かぶりの黄色きシンデレラ』

 
前後逆の順番で書いた2020年版の第三章を含めて今まで長々と書いてきたが、やっとこさクロージングの種解説編である。

 
【ミヤマキシタバ Catocala ella ♂】

 
【同♀】


(以上4点共 2019.8.4 長野県北部)

 
今年採った2020年の♀の画像も加えておこう。

 

 
何か微妙に写真が縒れて撮れてるなあ。撮り直して、もっと拡大しよう。

 

(2020.8.4 長野県木曽町)

 
コチラの♀は下翅の内縁部が、あまり黒くなっていないね。
こっちの方が美しい。やはりカトカラは下翅の色の領域が広い方が綺麗やね。

図鑑等による形態解説を総合すると以下のようになる。

「前翅は僅かに緑色を帯び、中剣紋は黒くて明瞭。亜外縁線が灰白色の帯状となる。後翅は濃い黄色で、内外の黒帯は共に外縁とほぼ平行して走り、中央黒帯は外縁黒帯と繋がらない。外縁に沿う黒帯の幅は太く、中央の黒帯は細い。また、帯は中央付近で殆んど折れ曲がらず、滑らかな曲線を描く。後翅第1室中の黒帯は不明瞭で、翅頂紋は黄色、もしくは白くなる。」

コレって普通の人から見れば、難解過ぎて何言ってんのかワカンないよね(笑)。ワシだって画像なしの文章のみだけなら、何のこっちゃ(@_@)❓の人になりそうだ。
ようは簡単に書くと、他の下翅が黄色いカトカラと比べて、下翅の内側の黒帯が基本的に馬蹄形(U字形)にならない。上翅は丸みのある翅形で、灰白色の帯が目立つ。以上のような特異な特徴から見分けるのは容易である。

とはいえ、馬蹄形とかU字形だって何のこっちゃかワカランか…。一応、画像を貼り付けとこ〜っと。

 
(コガタキシタバ)

(カバフキシタバ)

(ゴマシオキシタバ)

(ジョナスキシタバ)

(クロシオキシタバ)

(ワモンキシタバ)

(キシタバ)

(マホロバキシタバ)

 
内側の帯の形の事を言ってるんだけど、こんなに並べてどうする。パラノイア(偏執狂)かよ。もしくはロンブーの淳がカミングアウトしたHSP(註1)か❓とにかく、ええ加減これくらいでやめておこう。
まあ、コレで下翅が他のキシタバ類とは全然違うことは理解して戴けるでしょう。

 
【♀裏面】

(2019.8.4 長野県北部)

 


(2020.8.4 長野県木曽町)

 
野外では何故か2019年、2020年共に♀の裏面写真しか撮っていない。
『日本のCatocala』に図示されてるものも、どうやら♀みたいだ。

 

(出典『日本のCatocala』)

 
しゃあねぇなあ。既存の標本を裏返して撮ろっと。

 
【♂裏面】

(2019.8.4 長野県北部)

 
今までブログに画像を出してない個体だけど、1年経って触角が狂っとる。カトカラって、展翅が狂いやすいからウザい。

裏面の一番の特徴は下翅の真ん中の黒帯が外側に膨らまない事だろう。あとは外縁部の斑紋の黄色が淡くて白っぽく見えがちだ。似た特徴のカトカラも居ないワケではないが、表の斑紋や大きさなどを総合すれば容易に判別できる。だから、わざわざ裏まで見て同定する必要性のないカトカラだ。
とはいえ、ブログ内で再三再四言っているけど、カトカラの裏面、ひいては蛾類全般に関して裏面は重要かと思われる。各種を同定するにあたり、重要なファクターだからだ。しかし、図鑑を筆頭に他の媒体でも図示されてないことが多い。裏面が全種ちゃんと載ってるのは『日本のCatocala』だけである(出版当時には未記載だったキララキシタバとマホロバキシタバは除く)。ネットだと『みんなで作る日本産蛾類図鑑』が約3分の2くらいを載せているくらいだ。蛾全般を載せた図鑑は種類数が多いから仕方のない面があるとは思うが、ネットまでそれに準ずる必要性は無かろう。にも拘らず、図示されてないものばかりなのは首を傾げざるおえない。裏が軽視され過ぎだよ。せめて科や属単位の図鑑くらいは裏面を載せれるだろうに。それって、裏面が軽視されてる証拠じゃねーの❓
そういえば、ネットだと雌雄が明示されていないものも多い。生態写真は難しい面はあるとは思うが、可能な限り♂か♀かを表示すべきだろう。ヨシノキシタバなんて、生態写真でも雌雄の区別はつくだろうに。
ついでだから、次に雌雄の判別の仕方も書いておく。冒頭の画像を見て比べられたし。

 
【雌雄の判別】
♂は♀と比べて腹が細くて長く。尻先に毛束がある。反対に♀は腹が太くて短めで尻先の毛が少ない。また裏返すと♀には尻先に縦のスリットが入り、産卵管が見える。表側だが冒頭の上から3番目の手のひら写真には尻先から産卵管が出ているのが見える。ちなみに3番目の♀と4番目の♀は別個体です。
あと、あんまし多くの個体を見たワケではないけど、私見だと♂と比べて♀の上翅の方が黒い部分と白い部分とのコントラストが強く、メリハリがあるように思える。
図鑑『世界のカトカラ』の図版もそうゆう傾向が見られるしさ。

 

(左♂で右が♀。)

 
とはいえ偶然かもしんないし、繰り返すが、あくまでも私見ですけど…。

 
ネットの『ギャラリー・カトカラ全集』に拠ると、以前はかなりの珍品だったそうだが、食樹が判明してからは各所で採集されるようになったという。しかし今でも採集するのが難しいカトカラの一つであるとしている。おそらく分布が局所的で、灯火に飛来する時刻が夜半過ぎになることが多いゆえだろう。あとは生息地でも個体数が少ないと聞いたことがあるから、それも得難いものと言われる所以かもしれない。

 
【学名】Catocala ella Butler, 1877
記載者はバトラー(註2)で、日本のものがタイプ産地になる。つまり最初に日本で発見されたカトカラと云うワケだ。
ちなみに記載地は「yokohama」となっている。いくら当時はまだ自然が残っていたとはいえ、分布的にも横浜にミヤマキシタバが居たとは考えられない。だからこれは単に古い時代ゆえの便宜的なものだろう。ブツが横浜から送られてきたとかさ。

小種名の「ella」は英語圏の女性名で、”美しい妖精” という意味があるそうな。
女性名かあ…。女性でエラと云えば、パッと浮かぶのはジャズ歌手のエラ・フィッツジェラルド(1918~1996年)くらいか…。他に聞かない名前だし、あまりポピュラーな女性名ではないようだね。

他の虫の名前から語源を探ってみようと思って調べたら、ミヤマキシタバ以外にも同じ学名が使われているものが幾つかあった。

Hypena ella ソトムラサキアツバ
Orthosia ella ヨモギキリガ

(´ε` ) 蛾ばっかじゃん❗と思ってたら、蝶もいた。

Nephargynnis anadyomene ella(Bremer,1864)。
わりかし好きなクモガタヒョウモンの亜種名に使われているようだ。クモガタちゃんは関西では少ない種なので結構思い入れがある。中々♀が採れなくて、随分と苦労したっけ。

 
(クモガタヒョウモン)

(出典『日本産蝶類標準図鑑』)

 
“ella”はロシア南東部を基産地とする亜種に宛がわれた学名のようだ。
因みに日本産は、Ssp.midas(Butler,1866)と云う別亜種とされている。おっ、コヤツもバトラーの記載だね。
でも、朝鮮半島〜ロシア南東部までの個体と区別できないことから、亜種ellaに含めるべきだとする研究者もいるみたい。

調べ進めると、予想外の”シンデレラ”と云う単語が出てきた。
シンデレラといえば、カボチャの馬車とかガラスの靴のあのシンデレラだよね。(・o・;)えっ❗❓、何でシンデレラなの❓正直そう思った。意外な展開になってきたぞ。
更に驚いたのはシンデレラの語源だ。シンデレラの綴りは英文表記の”Cinderella”と云う一つの固有名詞ではなく、本来的には”Cinder Ella”で、2つの言葉から成るものらしい。どうやら「Cinder=灰」という言葉に「ella」という女性や子供を表すときに付ける接尾語がついたものみたいだ。直訳すると「灰かぶりのエラ」、もしくは「灰まみれのエラ」。シンデレラの本当の名前は、エラちゃんだったんだね。
そして”Cinder Ella”には、シンデレラそのものを指すこと以外にも「灰かぶり姫」「隠れた美人」「隠れた人材」「継子扱いされる人」などの意味がある。
考えてみればミヤマキシタバの特徴の一つは、その灰色の渋い上翅にある。また「隠れた美人」ってのもミヤマキシタバらしい。もっと下翅が鮮やかでインパクトの強いムラサキシタバやベニシタバの鮮やかさの前では目立たないし、下翅が黄色いキシタバ系の中では充分美しいとはいえ、ヨシノキシタバやナマリキシタバの上翅の複雑な美しさの前では影に隠れてしまうところがあるからだ。謂わば「秘して花」的なところがあるのだ。そう云う意味でも”Cinderella”ならば、納得のネーミングだ。
もしもバトラーがミヤマキシタバの学名をシンデレラと掛けて名付けたのだとすれば、とっても心憎いネーミングではないか。

でも所詮は蛾だし、見てくれからも、
「シンデレラ❓どこがやねん❗」
なんてツッコミを入れる向きも有りそうだ。
けれど、もしも疑問に思って語源を調べてみたら、その意図するところに行き着くと云う仕組みならば、ちょいと粋じゃないか。ミヤマキシタバが灯火にやって来るのは午前0時前後だしね。あっ、でも逆かあ。シンデレラは午前0時までにはお家に帰らなければならないからね。
ヽ(`Д´)ノえーい、この際どっちゃでもええわい❗誰しにも心理的大きな分岐点となる特別な時刻である午前0時が重要なファクターになってんだからいいじゃないか。
常々思うのだが、ネーミングにはミステリアスな要素とストーリー性が必要だと思う。意味があるからこそ、動き出す物語はあるのだ。
奇しくも、書いてる今は丁度午前0時だ。酔っ払っているとはいえ、魔法の時刻がこんな事を書かせるのかもしれない。

スゲー妄想だ(笑)。ちょいと冷静になったところで、重大な事に気づく。
“ella”も”Cinderella”も、考えてみれば英語だわさ。学名はラテン語由来が基本だから、この仮説の可能性は低いわ。でもバトラーは英国人だぞ。可能性はゼロではないと思うんだよね。それでもこの仮説にはかなり無理があるとは思うけど…。
あ~、別な意味での午前0時のマジックに惑わされとるやないけ。深夜に文章を書くもんじゃないや。

無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ー❗❗


(出典『ピクシブ百科事典』)

 
大いなる無駄な思考に、ディオのザ・ワールド(註3)ばりの無駄無駄ラッシュをしちまっただよ。イチからやり直しだ。

ラテン語で「ella」を検索しても、出てくるのは「〜ella」で「小さい」を意味する女性接尾語というのしか出てこない。こんなのを学名につけるワケないから✕だ。

他にはスペイン語の「ella(エジャ)」くらいしかヒットせえへん。意味は「彼女が、彼女は」。スペイン語はラテン語から派生したものだから可能性は無くはないけど、ピッタリって感じじゃない。学名に「彼女が」とか「彼女は」は無いっしょ。名付ける意味が、意味不明だよ。

となると、最後は女性の名前と云うことか?…。
もしかしたら、バトラーの彼女とか奥さん、姉妹、娘に献名されたものではないか❓
いや待てよ。それならば学名の最後に「ellae」と語尾に「e」が付く筈だよね。

🎵謎が謎呼ぶシンデレラ〜で「💀死んでれら」。
ホールドアップ。降参だ。
王子様はシンデレラを見つけられたのにね。オジサンはella荒野を彷徨い、おっ死んだよ。

やれやれ。前半から早くも大コケだ。先が思いやられるよ。

 
【和名】
ミヤマキシタバのミヤマとは深山の事だろうが、正確な命名由来は不明。おそらく最初に見つかった場所が深山幽谷だったのだろう。
と言いたいところだが、このミヤマと云う言葉、曲者である。日本ではミヤマと名のつく昆虫は割りとあって、ミヤマクワガタ、ミヤマカラスアゲハ、ミヤマシジミ、ミヤマカラスシジミなどがいるが、何れも深山幽谷に限定して生息しているワケではないからだ。取り敢えずミヤマと付けとけば、深山幽谷に棲む珍しい種と云うイメージがあって格が上がるから付けちゃえと考えたとしか思えないところもある。
とはいえ、この問題は面白そうだ。深堀りすれば、何らかの驚愕の事実が分かるのではないだろうか❓
しかれども、我が嗅覚がズブズブの泥沼を感じている。よって今回はパス。もうウンザリなのだ。これ以上長くなるのは極力避けたい。この件に関しては何れまた稿を改めて書くことになろう。
ゴメン、テキトーに言ってます。書くか書かないかと問われれば、7対3で書かないと言っちゃうと思う。

 
【亜種と近縁種】
亜種には以下のようなものがある。

◆ Catocala ella ella Butler, 1877
図示した日本のものが原記載亜種となっている。

 
◆ Ssp.nutrix Graeser、1889
分布 沿海州(ロシア南東部)、朝鮮半島、中国北東部


(出典『世界のカトカラ』)

 
『世界のカトカラ』に図示されてものしか見ていないが、上翅の柄にメリハリがあまりなくて、全然キレイじゃない。
同図鑑によれば、大陸のモノにこの亜種名が宛がわれている。しかし、ウィキペディアではナゼかシノニム(同物異名)扱いになっている。しかも記載年は1888年になっていた。つまり微妙に記載年が1年ズレておるのだ。コレって何か意味あんのかな❓ 正直、ワケわかんないし、どっちだっていいや。

 
◆ Catocala ella tanakai


(出典『世界のカトカラ』)

 
最近になって北海道の小型で後翅が黒化したものが、どうやら新たに亜種として記載されたようだ。
たぶん上のような奴のことなのだろうが、記載論文は見つけられなかった。よって記載年も記載者も分かりまへーん。たぶん今年(2020年)の記載で、石塚さんだとは思うけど…。

それにしても汚い奴っちゃなあ…。ミヤマキシタバは上翅の美しさに定評があるけど、下翅が汚ければ、こんなにも薄汚なく見えるのね。美しいミヤマキシタバの評判をダダ下がりにするような輩だよなあ…。まあ、この亜種自身に全然もって罪は無いんだけどもね。それにコレを渋くてカッコイイと思う人もいるだろうしさ。
ところで、何で北海道のカトカラは黒化するものが多いんだろう❓ワモンキシタバやケンモンキシタバにも同じ傾向があったんじゃなかったっけ❓…。

 
近縁種に、Catocala ellamajor Ishizuka, 2010 がいる。

 
【Catocala ellamajor オオミヤマキシタバ】

(出典『世界のカトカラ』)

 
オオミヤマキシタバって和名が付いているように、ミヤマキシタバに似ているが遥かに馬鹿デカい。
解りやすいように、もう1点画像を追加しよう。

 

(出典『世界のカトカラ』)

 
ほらね。パッと見、斑紋はソックリだが、これだけ大きさが違うと別種だよな。
中国の四川省から発見されたそうだ。8月頃に現れるが、分布は局地的で稀との事。これは実物を見てみたいなあ。
参考までに言っておくと、左のミヤマキシタバはロシア産亜種の♀だけど、やはり日本産と比べてメリハリに欠ける。

 
【レッドデータブック】
環境省;準絶滅危惧種(Nt)
山梨県;絶滅危惧種Ⅱ類
群馬県;絶滅危惧種Ⅱ類
栃木県;準絶滅危惧種
大阪府;準絶滅危惧種
宮城県:絶滅危惧Ⅱ類(Vu)
岩手県:Dランク

大阪府の準絶滅危惧種指定には笑ろた。んなもん、おらんつーの。いったい何年前の記録なのだ。おそらく何十年も前のものだろう。そんなクソ古い記録からの指定なんて外せよな。どうせ今もいるかどうかなんて調べてないんだろ。準絶滅というのも引っ掛かる。指定するなら絶滅危惧種か情報不足として指定を保留すべきだろう。お役所のこう云うおざなりの仕事ってアホかと思う。

 
【開張(mm)】
『原色日本産蛾類図鑑』とネットの『みんなで作る日本産蛾類図鑑』には、60mmとだけあった。雑いよなあ(笑)。
岸田さんの『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』は流石にちゃんとしていて、51〜61mm内外となっている。試しに自分の採ったものを測ってみると、最大で61mm、多くのものが55mm〜60mm未満だった。

 
【分布】
北海道、本州(主に中部地方以北)。
海外ではロシア南東部(沿海州・アムール)、朝鮮半島、中国北東部に分布する。
日本での分布は一風変わっており、主に中部地方より東に産するが、近畿地方を飛び越えて広島県(芸北町東八幡原)と山口県に記録がある。しかし極めて稀なようだ。今のところ四国、九州地方では見つかっていない。
東日本でも分布は局所的で、関東の平野部には記録はないようだ。だから横浜にゃ居ねぇと言ったのさ。
食樹である湿性のハンノキや山地性のヤマハンノキが豊富にあるような環境を好むが、同じくハンノキ類を食樹とするミドリシジミ(註4)が豊産するような場所でも見られない場合も多いという。又、生息地であっても個体数は少ないらしい。青森、岩手県下には多産地があるというが、調べたらあくまでも一部であって、両県でも分布は局所的みたいだ。

ここで日本を代表するカトカラ図鑑である『日本のCatocala』と『世界のカトカラ』の分布図を並べておこう。ワシの説明なんかよりも、そっちの方が余程わかりやすいもんね。

 

(出典 西尾規孝『日本のCatocala』)

 

(出典 石塚勝己『世界のカトカラ』)

 
そうは言いつつも、両者の西側の分布が微妙に異なっているからややこしい。謎多きシンデレラなのだ。
但し『日本のCatocala』は分布域図で、『世界のカトカラ』は県別の分布図である。特に近畿は微妙だ。『日本のCatocala』では滋賀県、京都府、兵庫県中北部が入っているが、『世界のカトカラ』では空白になっている。逆に大阪府には記録があるから塗りつぶされている。
まあ、大阪府の記録は前述したように疑わしくはあるんだけどね。古い記録だしさ。ところで、大阪府の何処で採集されたのだろう?
調べてみたが、大阪府のレッドデータブックにも詳しくは書かれていない。他からのアプローチでも見つけられなかった。何十年も前の記録となると、そこそこ有名な昆虫採集地ではなかったのではないか?
だとすれば、金剛山か箕面辺りが有望か…。箕面っぽいような気もするが、でも特定は出来ないやね。古い記録だし、標本は残ってるのかなあ?…。何か段々胡散臭い記録のように思えてきたよ。
でも、ふと思う。古い記録だからといって切り捨てるのもどうだろう。かつては本当に居たのかもしれない。信じたいところではある。いや、本当は居た筈だ。なぜなら、こんなもん他のキシタバ類と判別間違いはせんでしょうよ。けど悲しいかな、今や箕面は乱開発によってズタズタだ。箕面での再発見は難しいだろう。

情報量があまりにも少ないので何とも言えないところはあるが、探せば近畿地方でも見つかる可能性は有ると思う。希望的観測ではあるが、そう願いたいものだ。広島や山口でも見つかってるんだからね。
おそらくだが東日本よりも更に局所的な分布で、標高1000m以上の高所に僅かながら生息しているのではあるまいか❓いやもっと言えば、山口県の生息地は調べても分からなかったが、広島県は標高770mくらいだ。千m以上に拘る必要性はないのかもしれない。但し、得られたのはライトトラップのようだから、周辺の高い山、例えば臥竜山(1223m)などの高い山から降りてきた可能性も無くはない。とはいえ、近畿地方だって1200mくらいの山はあるからね。同じような環境の場所もあるだろう。

 
【成虫の発生期】
7月中旬〜9月下旬。稀に10月に入っても見られる。
しかし新鮮な個体に会えるのは8月中旬までだと言われる。

そういえば西尾氏の『日本のCatocala』には、発生期について大変興味深いことが書かれてあった。ちょっと衝撃的だったので抜粋しよう。
「産地により出現時期はさまざま、標高や緯度にはそれほど関係せず、梅雨のない地方(たぶん北海道の事)での羽化時期は早い。夏に酷暑となる中部地方の低山地での出現時期の方が冷涼な山地の高原よりかなり遅れる場合がある。」
又、西尾氏は夏期休眠を蛹の期間で調整している可能性がある事を示唆されておられる。

こんな発生形態を持つカトカラは他に聞いたことがないから、かなり驚いたよ。なぜに発生がそないにバラバラなのだ❓その意味するところがワカランよ。

因みに採った場所2箇所の日付は、奇しくも同じ8月4日だった。2019年は湿地で標高は約800〜850m。2020年は高原で標高は1100〜1300mだった。但し、採集方法は2019年は糖蜜トラップ、2020年はライトトラップだった。ゆえに2020年は発生地を特定できない。
とは言いつつも近くにヤマハンノキがあり、ライト点灯後の割りかし早い時間帯、8時過ぎに飛来した者も居た。
鮮度はどちらも良かったが、あえて言うならば、高原のものの方がビカビカだった。又聞き情報だが、1週間後に同じ場所に行った人によると飛来数は多かったそうだから、この日はまだ出始めだったのだろう。一方、湿地では個体数が比較的多かった事から、おそらく最盛期だったものと思われる。

(・o・;)おいおい、これだと標高が高い所の方が発生が遅れると云う多くの鱗翅類に見受けられる普通パターンと同じじゃないか。こりゃ他の場所でも採ってみないと何とも言えないやね。
夏期休眠を蛹の期間で調整している可能性があるというのも、今ひとつ意味ワカンナイしさ。少しくらい発生期がズレたところで、どっちにせよクソ暑い時期に羽化してくるんだから、意味あんのかね❓

 
【生態】
成虫は樹液に好んで集まる。低山地では主にクヌギ、コナラの樹液を吸汁し、高原地帯など高標高地ではミズナラの樹液を利用しているようだ。

糖蜜トラップにも飛来する。最初の飛来時刻は午後8時半過ぎから8時40分の間だった。カトカラの中ではカバフキシタバと並び飛来時刻が遅い。しかし一日だけの観察なので、ホントの事はワカラナイ。偶然その日は飛来が遅かった可能性もある。
尚、飛来の最終時刻を前々回には午前0時よりも前だと書いたが、写真の撮影時刻を確認し直すと、午前1時前というのが見つかった。一年も経てば人間の記憶なんて曖昧になるんだね。勝手にイメージの中で記憶を都合よく改竄してましたわ。スンマセン。
つけ加えておくと、吸汁時は下翅を開く。敏感度は、まあまあ敏感か普通。特別に敏感だとか鈍感と云う印象はない。

他にカトカラの餌資源と知られる花蜜、果実、アブラムシの甘露や吸水に飛来した例はないようだ。

灯火にも集まるが、一説によると食樹からの移動性が低く、林内での灯火採集が効果的であるらしい。
飛来時刻は遅く。夜半過ぎに現れるとされる。ピークは午前2時という説があるが、参考にはなるものの、その日のコンディションにもよるだろう。灯火への飛来は気象条件にかなり左右されるからだ。
自分の1回だけの灯火採集の経験だと、前回述べたとおり高原では午後8時過ぎと午前1時頃に飛来した。意外と近い所に居るものは早い時間帯でも集まって来るのかもしれない。何れにしろ、引き続き観察が必要だろう。

観察経験が少ないので、以下は文献、主に『日本のCatocala』からの引用に私見を混じえたものである。

成虫は昼間、ハンノキやアカマツ、カラマツなどの樹幹に下向きに静止している。静止場所は地上数mから十数mと、やや高い位置であることが多い。全ての種類のカトカラの静止している状態を見たわけではないが、カトカラの中ではかなり高い位置での静止のように思える。静止時はやや鈍感だそうだが、これは場所にもよるだろう。
驚いて飛翔した個体は上向きに着地し、暫くしてから下向きになるという。

交尾は深夜の午後11時から午前2時の間に行われ、発生期間内の延べ交尾回数は多数回であることが示唆されている。

産卵は9月7日の日没後に観察されている(西尾, 2004)。
ハンノキの樹幹に止まり、樹皮の隙間に産卵管を挿し込み産卵していたという。
他に、ブログ「青森の蝶たち」にハンノキの根元で産卵している写真がある(岩木山麓)。ちょっと驚いたのは産卵中には下翅を開いている事。樹液吸汁中にも開くんだから、当たり前っちゃ当たり前なんだけど、自分としては盲点だった。イメージが全く頭に無かったからね。尚、日付は8月13〜16日となっており、時刻は午後8時13分とあった。てっきり産卵は9月に入ってからではないかと思っていたが、そうでもないんだね。となると、羽化から比較的短期間に産卵する種って事かな。

 
【幼虫の食餌植物】
カバノキ科 ハンノキ属のハンノキ、ヤマハンノキ。
日本のカトカラでは幼虫がカバノキ科を食する唯一の種。また海外でもカバノキ科を食樹とする種は見つかっていない。但しオオミヤマキシタバがカバノキ科を食樹とする可能性が濃厚ではある。

山梨県西部・長野県北部ではハンノキ、長野県南西部(木曽町)ではヤマハンノキを食樹としている事が分かっている。
西尾氏が長野県上田市の平地で飼育した結果、同属のミヤマハンノキ、カワラハンノキ、ヤマハンノキ、ヤシャブシは代用食にならなかったそうである。但し他地域で色々なハンノキ属で育てたら、無事に飼育を完了したと云う話を聞いているとも書かれている。
上田市ではヤマハンノキを与えたが食べなかったようだし、地域により、それぞれ別なハンノキ属内の他種を食ってる可能性はあるかもしれないね。

それにしても、ハンノキなんぞは関西にだって何処にでもあるし、ヤマハンノキだって割りとよく見掛ける。なのに基本的には関西には居ないという事になってる。となれば、本来が冷温帯を好むカトカラなのだろうか❓にしても広島県や山口県でも見つかってるしなあ…。
ちなみに分布域内でハンノキやヤマハンノキが沢山あるところでも生息しない所が多いらしい。成虫の餌資源とか、気温や湿度、その他諸々のシビアな条件があるんでしょうな。良く言えば繊細、悪く言えば神経質なカトカラだね。

 
(ハンノキ Alnus japonica)

 
幹は直立し、樹高は15〜20mくらいのものが多いが、生育条件の良い所では最大で40m程になるそうだ。太い大木はあまり見たことないような気がするが、相対的に大きい木、正確には高い木と云うイメージがある。
材は適度に柔軟であるため鉛筆の材料に使われるが、材木としての流通は稀という。なお、建材として名高いアルダーは北米を原産とするハンノキの仲間である。

 
(ハンノキ林)

 
湿地だと大体こんな感じで纏まって生えているから、わりと目につきやすい。

 
(幹と樹皮)

 
(葉と実)

(以上4点共 出典『Wikipedia』)

 
ハンノキを探す時は生えてる場所と幹の感じ、そして小さな松ぼっくりみたいな実の有無の3つを総合して判別している。中でも実が最も重要で、下図のように古くて茶色になっているのはよく目立つ。

 

(出典『庭木図鑑・植木ペディア』)

 
夏場でもこの実が結構ついているから、コレが恰好の目印になるのである。あと、葉っぱも一応見るけど、最後の補足確認事項みたいなもんだ。葉の形には変異幅があるようだからね。葉ばっか見てるとワケわかんなくなるのだ。ゆえに目安として湿地に生えてて、樹姿、幹、実を確認してから最後に葉っぱを見るって感じ。
偉そうな事を言ってるが、ハンノキについてはそれくらいの事しか知らない。改めて詳しく調べてみよう。

北海道から九州まで(一応、沖縄でも見つかっている)分布する落葉高木。日本以外では朝鮮半島、台湾、中国東北部、ウスリー、南千島に分布する。尚、ハンノキの仲間は北半球の温帯を中心に30種以上が分布し、日本にはそのうちの10数種が分布する。
日本では山野の低地の湿地、沼や低山の川沿いに自生し、湿原のような過湿地においても森林を形成する数少ない樹木。
樹高は4〜20m。幹の直径は60cm程。湿地周辺の肥沃な土地では極めてよく育ち、高さ30m、幹回りの直径は1mを超える。
普通の樹木であれば、土壌中の水分が多いと酸欠状態になって生きられないが、ハンノキは耐水性を獲得したことで湿地でも生き残ることができる。但し、湿地中央部に生える個体は成長は減退して大きくならない。
水に埋もれても育つため、水田の脇や畦に並木状に植えて稲掛けの梁に使われたことから、古名は榛(はり)、梁(はり)の木と呼ばれ、それが転化してハンノキとなったとされる。漢字には「榛の木」の字が宛がわれるが、本来これはオオハシバミの事であったという。近年では水田耕作放棄地に繁殖する例が多く見られる。
根には放線菌(根粒菌)が共生しており、栄養の乏しい場所でも丈夫に育つ。この事から荒地の復旧対策として真っ先に植栽され、河原の護岸や砂防を目的に植えられることも多い。又、公園樹として園内の池周辺にしばしば植えられる。
ちなみに英名は、Japanese Alder。「日本ハンノキ」って事だね。
 
葉は有柄で互生し、細長い楕円形または長楕円状卵形で先端が尖り、縁には不規則なギザギザがある。葉の長さは5~13cm程だが個体差が大きい。葉に毛があるものと無いものがある。葉の寿命は短く、緑のまま次々と落葉する。春先に伸びた1葉や2葉(春葉)の寿命は以降に延びた夏葉よりも短いため、6月から7月になると春葉が集中的に落葉することが報告されている。
花期は冬の11〜4月頃で、葉に先だって単性花をつける。雌雄同株で雄花穂は枝先に1〜5個付き、黒褐色の円柱形で尾状に垂れ下がる。雌花穂は楕円形で紅紫色を帯び、雄花穂の下部の葉腋に1〜5個つける。花はあまり目立たない。またハンノキが密集する地域では花粉による喘息発生の報告がある。
実は10月頃に熟し、小さな松ぼっくり状。翌春に新たな芽が吹くまでの長い間、枝に残る。
冬芽は互生して枝先につく雄花序と、その基部につく雌花序は共に裸芽で柄があり、赤みを帯びる。仮頂芽と測芽はどちらも葉芽、有柄で3枚の芽鱗があり、樹脂で固まる。葉痕は半円形で維管束痕は3個ある。
樹皮は紫褐色から暗灰褐色で、縦に浅く裂けて剥がれる。

良質の木炭の材料となるために以前には盛んに伐採された。材に油分が含まれ、生木でもよく燃えるため、北陸地方では火葬の薪に使用された。葉の中には根粒菌から貰った窒素を多く含んでいて、そのまま葉が散るため、葉の肥料木としても重要である。材は軟質で家具や器具に使われる。樹皮や実は一部の地方で褐色の染料として使われている。また抗菌作用があり、消臭効果が期待されている。ハンノキには造血作用のある成分が含まれるため漢方薬としても用いられる。

(・o・)へぇー、結構役立っている木なんだね。( ゚д゚)ハッ❗、何か完全にハンノキの話になっとるやないけー。
いかん、いかん。ミヤマキシタバの話じゃった。もう1つの食樹であるヤマハンノキについても調べておこう。

 
(ヤマハンノキ)

(出典『はなQ』)

 
(葉の裏面)

(出典『花の日記』)

 
(樹幹)

(出典『樹木検索図鑑』)

 
幹の感じが縦溝のハンノキとは違うね。そういえば、そんなような気もしてきた。

 
(実)

(出典『四季の山野草』)

 
しかしネットで調べてみてもヒット数が少なく、ハンノキとの違いが殆んど書かれていない。さらにネットサーフィンした結果、驚愕の事実にブチ当たる。
何と、どうやらヤマハンノキはケヤマハンノキの変種らしい。ケヤマハンノキの小枝や葉裏に毛がないのがヤマハンノキと云う事らしいのだ。何じゃ、そりゃ❗❓である。
そうゆう事は蛾のサイトでは一切書かれていなかったから、名前からして寧ろケヤマハンノキがヤマハンノキの変種だと思ってたくらいだからね。ヤマハンノキを食うならば、絶対ケヤマハンノキだって食うでしょうよ。しかし、文献には食樹としてケヤマハンノキが出てくる事は殆んどなく、僅かに西尾氏が、その可能性を示唆しているにすぎない。もしかして皆さん孫引きで、だ〜れも調べてなかったりして…。ワシも孫引きだから、人のこと言えないけどさ。
こういうこと書くとまた蛾屋さんに嫌われそうだけどさあ、それってユルくね❓テキトー人間のオイラが言うのもなんだけど、テキトー過ぎなくねぇか❓誰もが情報を鵜呑みにして向上心が感じられないと言わざるおえない。蛾をやってる人は蝶を敢えて選ばなかったんだから、突き詰めて考える我が道を行くような人ばかりじゃないかと勝手に想像してたから残念だよ。蝶ではなく、白い目で見られがちな蛾をやってると云う時点で偉いと密かに尊敬していたのだ。
えー、この項(@_@)ベロベロで書いてまーす。だからこそディスれるのだー。偏見だけど、もう書いちゃったから素面(しらふ)になっても撤回するつもりはない。吐いた言葉は呑み込まないのだ。ミヤマキシタバそのものについての知見が間違ってたとしたら、直ぐに撤回するけどさ。

えー、ここからは翌日で素面です。
失礼な事ばかり宣(のたま)ってスンマセン。吐いた言葉は呑み込まないけど、少々言い過ぎたと反省しておりまする。それにしても酔っ払いの暗い心のパワーはスゴイもんですな。筆に変な推進力があるや。
素面ゆえに書くのが邪魔くさくなってきたけど、このままでは終われないので、ハンノキ属の植物をまとめて紹介してこの項を終わりとしよう

 
(ケヤマハンノキ)

 
(裏面)

(出典 3点共『葉と枝による樹木検索図鑑』)

 
分布;北海道・本州・四国・九州。アジア東北部。
ヤマハンノキも分布は同じである。ヤマハンノキ、ケヤマハンノキともに山の手や溪谷の斜面に生える。
樹高はヤマハンノキと同じく10〜20m。

 
(タニガワハンノキ(コバノヤマハンノキ))


(出典『www.m-ac.jp』)

 
分布;北海道・本州(中部地方以北)
山地の渓流沿いに生える。葉が小さく、ヤマハンノキと同じく裏面に毛がない。樹高15〜20m。

 
(ミヤマハンノキ)


(出典『葉と枝による樹木検索図鑑』)

 
分布は北海道と本州(加賀白山以北)。飛び離れて中国地方の大山山系烏ヶ山の山頂(1448m)にも自生する。基本的には山奥の亜高山帯から高山帯の岩石が多い斜面に生える。樹高1〜2mのブッシュ状になることが多いが、条件の良い場所では10m近くになる。

 
(サクラバハンノキ)


(出典『葉と枝による樹木検索図鑑』)

 
分布は本州(岩手・新潟以西)・九州で、主に西日本で見られる。ハンノキに似るが、本種の方が葉の横幅が広く、側脈数が多いこと、葉の基部が心臓形になることで区別できるそうだ。樹高10〜15m。

ここで各種の違いが解りやすいように、改めてハンノキの画像を添付しておこう。

 
(ハンノキ)


(出典『葉と枝による樹木検索図鑑』)

 
分布;北海道・本州・四国・九州・沖縄。
そうそう、こうゆう葉っぱなんだよな。でも他の科の葉っぱでも似たようなのがいっぱいあんだよね。そういや昔、サクラと間違えた事があるわ。

 
(カワラハンノキ)


(出典『葉と枝による樹木検索図鑑』)

 
分布;本州(東海以西)・四国・九州。
名前のとおり河原や川辺の岩場に生える。樹高5〜10m。

 
(ミヤマカワラハンノキ)


(出典 以上3点共『葉と枝による樹木検索図鑑』)

 
東北地方や北陸地方を中心とした多雪地帯に分布し、山地のやや湿ったところに生える。樹高8〜10m。

 
(ヤハズハンノキ)

(出典『www.botanic.jp』)


(出典 以上2点共『レモちゃんのワクワク植物ランド』)

 
日本固有種で、本州の中部地方・北陸地方から東北地方の日本海側に分布する。山地から亜高山帯の沢沿いなどに生える。葉の先が切れ込み、ハート型になるのが特徴。樹高10~15m。

参考までに言っておくと、他にヤチハンノキやウスゲヒロハハンノキと云うのもあるが、ヤチハンノキはハンノキの別称で、ウスゲヒロハハンノキはハンノキとケヤマハンノキとの雑種である。

食樹としている可能性は低そうだが、一応ヤシャブシ類も紹介しておこう。

 
(ヤシャブシ)


(出典『葉と枝による樹木検索図鑑』)

 
分布 本州(福島県以南の太平洋側)・四国・九州。
葉に光沢がなく、実が1~3個付き、直立または斜上する。
樹高2〜17m。

 
(オオバヤシャブシ)


(出典『葉と枝による樹木検索図鑑』)

 
分布;本州(福島県以南〜和歌山県の太平洋側)。
葉に光沢があり、幅が広くやや三角状。実は1個のみ付き、直立または斜上する。樹高5〜10m。
オオバヤシャブシも緑化によく用いられるそうだ。

 
(ヒメヤシャブシ)


(出典『葉と枝による樹木検索図鑑』)

 
分布;北海道・本州・四国。
葉が細長く、基部が楔形で側脈が20対以上と多い。実は3~6個付き、下垂する。樹高2〜7m。

ヤシャブシ類も根にはフランキア属の放線菌が共生し、窒素固定を行うようだ。そのため比較的やせた土地にも生育する。どうやらハンノキ属の多くが、この特性を持っていそうだ。ハンノキって、スゲーぞっ✧(>o<)ノ✧❗
(・o・;) あれっ❓、何かミヤマキシタバの回なのに完全にハンノキ属の話になっとるやないけー(笑)。

立て直して、改めてミヤマキシタバの分布と食樹の関係について考えてみよう。
北海道亜種の食樹は、各ハンノキ属の分布からハンノキ、ヤマハンノキ、ケヤマハンノキ、タニガワハンノキ、ミヤマハンノキに限定され、その何れか、もしくは全てを利用している可能性がある。
本州の原記載亜種は、ハンノキ、ヤマハンノキ、ケヤマハンノキ、タニガワハンノキ、サクラバハンノキ、カワラハンノキ、ミヤマカワラハンノキ、ミヤマハンノキ、ヤハズハンノキに食樹としての可能性がある。ヤシャブシ類の可能性もないではないが、更に西寄りの分布だから二次的な利用は有り得るものの主食樹ではないだろう。少々乱暴な結論になるが、食樹の分布から、ハンノキを筆頭にヤマハンノキ、ケヤマハンノキがメインのホストプラントだろう。
でも、何れも分布に際立った局所性はなさそうだ。そうなると、シンデレラの分布が局所的な理由が説明できなくなる。食樹の分布からすれば、もっと広範囲にいて当然だからだ。局所的な種となると、ミヤマハンノキ、ミヤマカワラハンノキ、ヤハズハンノキだが、ミヤマカワラハンノキとヤハズハンノキは日本海側の分布だから、産地の木曽町などは当てはまらない。またミヤマハンノキは、亜高山帯から高山帯に生えるからミヤマキシタバの垂直分布とはズレる。カワラハンノキとサクラバハンノキは西よりの分布だから、これも除外していいだろう。
となれば、やはり主な食樹はハンノキ、ヤマハンノキ、ケヤマハンノキで、気象条件、環境が種の生息の有無のファクターに関係している可能性が高い。棲息条件が厳密で、冷温帯の狭い範囲にのみしか適応できないとか、成虫の餌資源が近くにないとダメとかさ。
或いは地史との関係もあるかもしれない。でもなあ…、羽が退化して飛べないオサムシじゃあるまいし、少々の大きな川や高い山があったとしても飛べるから大きな障壁にはなるまい。
でも待てよ。蝶の幾つかの種類はミヤマキシタバに似た分布の者もいるぞ。不思議な事に、分布が主に中部地方以北で、近畿地方の中心に分布がポッカリ空いてて、中国地方(兵庫県西部も含む)になると突然のように分布するものは多いのだ。
例を挙げれば、ハヤシミドリシジミ、クロミドリシジミ、ヒメシジミ、ゴマシジミ、オオルリシジミ(九州)、カラスシジミ、ヒメシロチョウ、ヒョウモンモドキ(東では既に絶滅)、ウラジャノメ、ホシチャバネセセリ、コキマダラセセリ、スジグロチャバネセセリ、キバネセセリ(少ないながら三重県北部に記録がある)、ヒメヒカゲ(かつては大阪府南部の岩湧山頂にのみ居たそうだ)と、かなり多い。嗚呼、w(°o°)wヤバい。この問題、そもそもよくワカンなくて突っ込めば底なし沼必至なのだ。ここは触れないでおく事にしよう。段々、自分でも何を言いたいのかワカンなくなってきたしさ。

視点を変えよう。
はたと思う。よくよく考えてみれば、野外で見るヤシャブシとヤマハンノキ類がゴッチャになってるとこがあるなあ…。山地性のミドリシジミとか、あんま興味ないしさ。
参考までに言っとくと、『日本産蝶類標準図鑑』によれば、ミドリシジミの食樹はハンノキ、ヤマハンノキの他にケヤマハンノキ、ミヤマハンノキ、サクラバハンノキ、カワラハンノキ、ヤチハンノキ(ハンノキの別称)、コバノヤマ(タニガワ)ハンノキが記録されている。また、ヤシャブシでも飼育可能だ。蝶であるミドリシジミでも色んなハンノキ属を利用しているんだから、ミヤマキシタバだって利用している可能性は高いかもしれない。基本的には蝶よりも蛾の方が食性は広いしさ。いっその事、ミヤマキシタバは紹介したハンノキ属はどれでも食うって事でどーだ。もうヤケクソだよ。
いや待てよ。ミドリシジミは普通種だが、ミヤマキシタバは普通種ではない。となると、むしろミヤマキシタバの方が狭食性で、食性が狭いがゆえに少ない種なのかもしれない。ハンノキは何処にでもあるが、或る種の条件が整ったハンノキのみしか食わないとかさ。或いはハンノキの中に隠蔽種が混じってて、見た目は同じでも別種なのがあって、そっちしか食わないとかさ。あとは標高何m以上のハンノキしか食わないとかさ。もしかして、ソヤツがハンノキとは近似種の全くの別種だったりしてね。

やめた。お手上げだ。いくら頭の中で考えたところで限界がある。自然界で利用されている食樹がもっと詳しく解明されない限りは全部が空論に過ぎないのだ。
今一つ食樹の解明が進まないのは、蛾の愛好家は少ないゆえ、食樹について調べてる人が少ないんだろね。蝶みたく愛好家が多ければ、そうゆう地道で大変そうな事を調べる人も増えるんだろうに。つまり、パーセンテージよりも分母の問題なのだ。
因みにワシって、そうゆう事には全然向いてない人なので、調べてやろうという気概は全然もって無いです、ハイ。
最近は蛾の愛好者も増えているという事だし、誰か根性のある人が出てくることを祈ろう。

 
【幼生期の生態】
これも西尾さんの『日本のCatocala』に頼りっきりで書く。
こっからはグロいので、( ̄ー ̄)おどろおどろの閲覧注意やでぇ〜。

 
(卵)

(出典『日本のCatocala』以下、この項目同じ。)

 
卵は食樹に付着した蘚苔類、地衣類、樹皮の裂け目や裏側に産み付けられる。1箇所に産まれる卵数は1〜8個であるが、1個の場合が多い。
形状は小型のまんじゅう型で、受精卵の色彩は黒褐色ないし茶褐色で黄白色の斑紋が横に走る。縦の隆起条は非常に細く、高さも低くて波状。横の隆起条は溝状で、類似した形態の種は他にはいない。とはいえ、卵は極小ゆえ、んなもん顕微鏡で見んとワカランぞい。

幼虫の齢数は5齡。若齢から中齢まで昼間は枝先の葉上や葉柄に静止している。亜終齢幼虫になると枝先の葉柄に、終齢幼虫は枝先の淡緑色をした当年枝に静止している。
種内における幼虫の色彩変異は特にはないようだ。

 
(初齡幼虫と2齡幼虫)

 
基本的に他のカトカラと同じく尺取り虫型でござる。
毛虫じゃないから、これなら飼育初心者のワシでもまだ飼えそうだ。

 
(終齢幼虫)

 
向かって右側が頭部である。
まあまあカラフル。なんだけど、飼育初心者にはかえって気持ち悪いかも…。毒々しいと触れんもん(+o+)

 
(終齢幼虫頭部)

 
😰怖っ❗邪悪なお顔でありんすなあ。芋虫でも、やっぱ苦手だよなあ…。アタシャ、愛する自信がねえや。
顔は黄色いタイプと青緑色のタイプのものがあるようだ。終齢幼虫は黄色っぽくて、カトカラの中では割りと特異なものの1つだろう。

 

(出典『日本のCatocala』)

 
幼虫を刺激すると体を反らし、口から茶色の体液を吐きかけるという。∑( ̄皿 ̄;;)ひいーっ、🤮ビートルジュースやないけー❗気持ちの悪いやっちゃのうー。あっ、ビートルジュースは甲虫の体液だな。となると、キャタピラージュースか。どっちにせよ、😱阿鼻叫喚なりよ。
まあ、仕方なしの一種の天敵から身を守る防御行動だろね。生きるのに必死なのだ。とはいえ、キャタピラージュースを吐くなんざ、最悪だ。やっぱワシ、芋虫とか毛虫はダメだわさ。飼育は一生でけんかもなあ…。

蛹化場所については観察例がないようだが、おそらく落葉の下だと考えられる。

                       おしまい

 
追伸
今回も長くなった。無駄無駄パンチとかフザけ過ぎたのも理由だが、主な原因は食樹の項だ。ハンノキの事を調べてたらズブズブの泥沼にハマってしまった。ハンノキは湿地に生えるゆえ、下はズブズブの泥沼だから、何だか出来過ぎの展開だよ(笑)。

 
(註1)HSP
HSPとは、Highiy Sensitive Person(ハイリ―・センシティブ・パーソン)の頭文字をとった略称で、訳すと「ひといちばい繊細な人」という意味。
1990年代のはじめに繊細な人について研究していたエレイン・アーロン博士によって名付けられたもので、「人の気質」を表した名称の1つ。アーロン博士によると、5人に1人、人口の約20%がHSPだという。この「繊細さ」は生きるもの全てが本来的に持つ生存本能であり、生き残るための戦略の1つであると考えられている。詳しい症状等は御自分で調べてくだされ。

 
(註2)バトラー
おそらく英国人の昆虫学者、Arthur Gardiner Butler(アーサー・ガーディナー・バトラー)のことだろう。
以下、Wikipediaから抜粋、要約しよう。

 
Arthur Gardiner Butler(1844〜1925)

(出典『Wikipedia』)

 
イギリスの昆虫学者・鳥類学者。またクモの研究者としても知られ、それらの分類で足跡を残している。1844年、ロンドンのチェルシーで生まれ、父は大英博物館の次官補であるトーマス・バトラー(1809-1908)。彼自身も大英博物館に勤め、1879年に動物学のアシスタントキーパー(副室長?)、及びアシスタントライブラリアン(たぶん司書と訳すよりも、副専門的文献管理責任者と訳した方が妥当だろう)として、2つの役割を持つ役員に任命された。
彼はまた、オーストラリアのクモやガラパゴス、マダガスカル、およびその他の場所に関する記事を発表したと書かれてある。

日本のカトカラでは、ミヤマキシタバの他にシロシタバ、ゴマシオキシタバ、ノコメキシタバ、ワモンキシタバ、マメキシタバ、ジョナスキシタバ、ヨシノキシタバの記載者名に、その名がある。結構な数だ。
しかし蝶の方はもっと多い。日本でも馴染みのあるものが、ズラリと並ぶ。
調べたところ、ツマキチョウ、エゾスジグロシロチョウ、ウラキンシジミ、ウラクロシジミ、ダイセンシジミ、コツバメ、ヒメウラボシシジミ、カバイロシジミ、ヒョウモンモドキ、ホシミスジ、ウラナミジャノメ、ヒメウラナミジャノメ、リュウキュウヒメジャノメ、キマダラモドキ、クロヒカゲ、ヒメキマダラヒカゲ、ヤマキマダラヒカゲ、シロオビマダラ、スジグロチャバネセセリ、アカセセリ、ミヤマチャバネセセリと、何と数えたら21種もある。(☉。☉)メチャメチャ多いやんけー。

 
(註3)ディオのザ・ワールド
荒木飛呂彦の漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の第3部「スターダストクルセイダーズ」に出てくる最強の悪役ディオのスタンドのこと。「無駄無駄無駄…」を連呼してパンチを繰り出してくる。
尚現在、火曜深夜1時過ぎからBS日テレでアニメが2話ずつ放映されちょります。物語は佳境に入っており、今夜あたりザ・ワールドが登場しそうだ。

 
(註4)ミドリシジミ

【Neozephyrus japonicus ミドリシジミ♂】

(2018.5.29 京都市)

 
北海道・本州・四国・九州に分布し、全国的に広く棲息するが、西南部の暖地では局地的な稀種。小型となる北海道のものは亜種reginaに分けられている。

 
(分布図)

(出典『日本産蝶類標準図鑑』)

 
何となくミヤマキシタバの分布に似てるような気もしないでもない。ややコジツケくさいけどさ。それはさておき、何で紀伊半島南部にいないんだ❓ヤバい、やめとく。これ以上はもう御勘弁。

 
ー参考文献ー

◆『日本のCatocala』西尾規孝 自費出版

 
◆『世界のカトカラ』石塚勝己 むし社

 
◆『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』岸田泰則編著 学研

 
◆『原色日本産蛾類図鑑』江崎悌三編著 保育社

 
インターネット
◆『青森の蝶たち』
◆『みんなで作る日本産蛾類図鑑』
◆『Wikipedia』
◆『葉と枝による樹木検索図鑑』

 

2020’カトカラ3年生 ミヤマキシタバ

 
   vol.21 ミヤマキシタバ 第三章

       『真夜中の訪問者』

 
あえて2020年のことは従来の『続・ミヤマキシタバ』と云う形はとらず、解説編と併せて綴りまする。

2019年はミヤマキシタバをギリ何とか採ったはものの、背中の毛をハゲちょろけにさせてしまった個体も多かった。裏展翅もしてないし、それにカトカラとしては遅い午後8時半以降という糖蜜への飛来時刻の事も気にかかってる。はたして、その行動が通常のものだったのかどうかも確かめたい。そう云うワケで、まだまだシンデレラへのモチベーションは下がってはいなかった。
だが、連日の猛暑続きで気持ちが萎えてたのと、やんごとなき個人的な事情も相俟って、うだうだと出発を決断できないままでいた。
そんな折、『(☉。☉)えーっ❗、今からあ❓』という急な小太郎くんからの長野方面へのお誘いがあった。渡りに船と言いたいところだけれど、あくまでも彼のターゲットは蝶とナマリキシタバだった。ではガッカリかといえば、そうでもなかった。なぜなら自分も優先順位としてはナマリの方がミヤマよか上だったし、久し振りに真面目に蝶採りもしたかったのだ。ゆえに二つ返事でお誘いに乗っかった。まあミヤマは来年でもよろしかろう。一人だと、熊(・(ェ)・)恐えーしさ。

それに蝶屋としての矜持も取り戻さねばとも思った。
最近はブログでも蛾の事ばかり書いてるし、実際、蝶採りも前ほどには熱を入れてやってない。なので、今では周りの蝶屋たちに蛾屋だと囃したてられ、ニヤけた顔でアレやコレやと揶揄されてる始末なのだ。
何かさあ、蝶屋と云う人種は蛾に少しでも興味を示すと、蔑んだような目で見てくる人が多いんだよねぇ。これはきっと近親憎悪みたいなもんで、蛾を「同じ鱗翅類なのに、どうしてお前らは粉だらけで、汚らしくて、ぶっとくてキモいのだ。大半が夜行性なのも気味悪いや。」とでも思われているのだろう。
本来的にはワシも蝶屋なので、その気持ちは解らないでもないけれど、「もうオマエは蝶屋じゃねぇ、蛾に染まった穢れた存在だ」的な態度は酷いやね。
まだ蛾に関しては初心者なのに偉そうに言わしてもらうと、蛾には蝶にはない渋い美しさがある。またデザインは蝶よりも多種多様で、その世界は蝶よりも奥深そうだ。
思うに、どうやら蝶屋には選民意識があるみたいだね。同じ鱗翅類なのに、蛾のことは一段も二段も下に見ているところがある。とはいえアッシも生来の蛾嫌いで、そうゆうところは多々あった。だから、ワシはあくまでもカトカラ屋であって、今のとこ蛾屋になんか転身してないと言い返している自分がいたりもする。
本当はわざわざ蝶と蛾を線引きするのって、狭小でツマンナイ概念なんだろね。とはいっても世間的にみれば、蛾=悪。蝶イコール正義という構図は厳然として存在するからね。
例えば蝶を採っていると言えば、軽蔑されたり、言われなき注意や説教をされる事がある。可愛い蝶ちょを捕まえて殺すとは何事かとゆうワケだ。一方、たとえ蝶を採っていたとしても蛾を採っていると言えば、気味悪がられるだけで文句を言われる事はまずない。むしろ頑張って殲滅してくれとハッパをかけられる事さえある。だから「何を採っているんですか❓」と尋ねられたら、邪魔くさい時はこう答えるようにしてる。

🦋蛾ですっ❗
もしくは、
(ΦωΦ)猫ですっ❗
と。
これで大体は嫌な顔か怪訝な顔をして、その場から去っていってくれる。この手は真面目に答えるのが面倒くさい時によく使うのだが、撃退法としては中々の効力でっせ。興味のある方は使ってみなはれ。結果、どうなるかは責任持たないけどさ。

話が逸れた。とにかく、その時点でミヤマの事はすんなりと諦めてた。一度でも手ゴメにした女には興味がない。とまでは言わないまでも、モチベーションは下がらずにはおえまい。
(-_-;)あっ❗、ちょっと待て。このような物言いだと、まるでワシが女性をモノ扱いしてる酷い人になるではないか。いやいや、そうゆうつもりじゃなくてー。(༎ຶ ෴ ༎ຶ)お姉さ〜ん、冗談ですよ、ジョーダン。

早くも脱線気味だが、今回はその2020年の採集記と種の解説編です。

 
2020年 8月4日

小太郎くんとの遠征二日目。
この日はオオゴマシジミに会いに長野と岐阜の県境の峠へ行った。

 
【オオゴマシジミ】

 
小太郎くん曰く、これはゴマ無しオオゴマという珍しい型らしい。上翅の黒点の大半が消失しかかっている。
参考までに通常のオオゴマシジミの画像を貼り付けておこう。

 

(2014年7月 岐阜県高山市)

 
全然違うことが御理解戴けるかと思う。
でも変異にはあまり興味がないゆえ、小太郎くんとこにお嫁入り。虫でも人でも喜ばれる所に行くのが一番だかんね。価値のわからんワシなんかが持ってても宝の持ち腐れなのだ。

午後になって奈川村へと移動し、ゴマシジミと御対面。
御対面と書いたのは、奈川ではゴマちゃんが採集禁止だからである。と云うワケで写真だけ撮った。

 
【ゴマシジミ】

 
ゴマちゃんって、何だか可愛い💕
改めてゴマシジミって好きな蝶の一つなんだなと思う。オオゴマもゴマも何故だか会うと親愛なる友だちみたいな感じに思えるのだ。だから、あまりオラオラで手ゴメにしてやろうとは思わない。

 

 
小太郎くんなんかはゴマシジミを愛し過ぎて、手乗りゴマとかまでしてた。

オオゴマにもゴマシジミにも会うのは久し振りである。たぶん4、5年振りだ。よくよく考えてみれば、一日のうちで両方とも会ったのは初めてだ。何だかんだ言っても、やっぱ蝶と戯れるのは楽しい。

奈川から松本方面か木曽方面のどっちに行くかと云う事になった。灯火採集を何処でするかと云う話なのだが、どちらも良い場所なだけに迷うところだ。でも小太郎くん所有のライトトラップなので、最終的な決定権は彼にある。
小太郎くんはヤンコウスキーキリガが採れる可能性のある松本方面に行きたそうだったけど『どっちでもいいですよ。』と言うので、遠慮なく木曽町をグイと強く推させて戴いた。なぜなら、勘が木曽に行けと言っていたからだ。自分は己の勘に絶大なる自信を持っている。だから、たいした実力も無いのに何処へ行っても良い虫が採れる。引きが強いと言われるのは、そうゆう事なのである。ようは「お告げ式採集法」なのだ(笑)。
あとは松本よりも木曽町の方が生息するとされるカトカラの種類数が多い事、少しでも関西方面に近い方が帰りが楽だというのもあった。

木曽町には4時前に着き、アイスクリーム屋でソフトクリーム食って、ヤマキチョウとツマジロウラジャノメのポイントの様子を見てから灯火採集が出来そうな場所を探した。

 

 
やがて夕日は声も無く山並みの向こうへと沈んで行った。
そして今宵も虫たちの夜会が始まる。

珍しく日没前にライトトラップを設置する事ができたので、早めに点灯。

 

 
けっして天候は灯火採集に適しているというワケではなかったが、暫くして虫がアホほど飛んで来た。流石、ワシの勘でんがな。「お告げ式採集法」、絶好調だよ(^3^🎵

 

 
小太郎くんが木曽町には多分いないでしょうと言っていたヤンコウスキーも来たもんね。
自分が先に見つけたけど、お譲りもうした。いつも小太郎くんには譲ってもらっているからさ。まっ、お互い様ちゃ、お互い様だけどもね。

午後8時過ぎ。
背後から飛んで来たカトカラがライトの2mほど手前でボトッと地面に落ちた。
止まった姿を見て、すぐに分かった。
と同時に叫んでいた。

(☆▽☆)ミヤマやっ❗❗

でも二人して慌てて近づいたら、\(◎o◎)/アチャー、驚いてどっか行っちゃった。
まあいい。そのうちまた飛んで来んだろう。

此処にミヤマの記録はあるのは知ってたけど、本当に飛んで来るとは思いもよらなかったよ。この周辺には蝶採りで何度も来てるけど、食樹であるハンノキのイメージなんて全然なかったからさ。それにミヤマは夜中にならないとライトに飛来しないと聞いていたからね。謂わば真夜中の訪問者なのだ。まさかこんな時間に飛んで来るとは思ってないゆえ、ちょい驚いたよ。ふ〜ん、こんなに早い時間帯にも来る事があんのねって感じ。

でも、ふと思う。ホントに真夜中の訪問者なのかね❓
何か蛾はあんまり調べられていないせいなのか、図鑑等に書かれてる事が間違ってる場合もチョコチョコあんだよね。だから記述を極力そのまま鵜呑みにはしないように心掛けてる。
まあ、とはいえおそらく偶然近くに居たのだろう。そういや、すぐそばに食樹であるヤマハンノキらしき木があったしさ。

その後、ミヤマっぽい奴が2度ほど飛んで来たが止まらず、どっか行っちゃった。たぶん同一個体だろう。チッ(-_-メ)、クソ忌々しいかぎりである。
どうして珍しい奴に限って、そうゆうのばかりなのだ❓
いわゆる普通種とされる何処にでもいるものは、どいつもこいつも鈍感なのにね。全く逃げない奴や、中には寄って来る奴さえいる。たぶん熱愛する蝶やカトカラの前に立つと、知らぬうちに体から殺気とかがバリバリ出てんだろね。で、体がガチガチになってるから振り逃す人が多いのかも。自分はまだミスショットは少ない方だとは思うけど、それでも時々やらかす。アレってキツいよね。持っていきようのない怒りと落胆度が半端ない。
これって何だか恋愛と似てるね。好き過ぎて全身から焦りまくりの変なオーラが出ちゃって、揚句に空回りして好きな女の子に嫌われるというのは往々にしてありそうな事だもんね。ようは蝶採りでも蛾採りでも、心に余裕がないとダメって事やね。おのが心をコントロールする強い精神力と、その場その場で臨機応変に対応する力がないと女の子にはモテないし、蝶(蛾)も採れないってことだ。勿論、その前段階での緻密な戦略も必要だろう。
あらあら、ますます恋愛と似てるじゃないか。あっ、でもワシには緻密な戦略なんて無いけどね。はじめは完璧な戦略を立てようとは思うのだが、途中で段々面倒くさくなってきて放り出し、いっつも最後は出たとこ勝負なのだ。考え過ぎると、それが呪縛になってかえって自爆しかねないので、恋も虫捕りも結局はその場その場で戦略を組み立ててくタイプみたい。

話が逸れた。自分の恋愛タイプなんぞどうでもよろし。本筋に戻そう。稀な種は敏感という話だったね。
原因は殺気だけではないだろう。もしくは少ない種は捕まえられてしまうと、即それが種の存続の重大な危機に繋がる。死なないためには敏感にならざるおえない。蝶でも個体数が多い年は全体的に鈍感だけど、反対に少ない年には矢鱈と敏感になる傾向があるからね。生きるって大変なのだ。

ようやく見つかったのが、9時ピッタリだった。ライトトラップの裏側の少し離れた所に止まっていた。
小太郎くんを呼んで、採ってもらおう。譲ったのは、彼がまだミヤマキシタバを採った事がないと知っていたからだ。
隙間の変な所に止まっていたけど、無事ゲット。小太郎くん曰く、変なとこに止まってたせいで背中が落ち武者化したそうだけど、鮮度の良い♂だったそうな。
コレで気合入った。次は譲らなくていいから、又ビシッと見つけて手ゴメにしてやろう。オジサン、変態凌辱男へと変貌す。ψ( ̄ー ̄)ψホレホレ〜、ψ( ̄ー ̄)ψホレホレ〜。ワシの毒牙にかかるがよいわ〜。

しかしその後、深夜の11時になっても、日を跨いだ午前0時を過ぎても真夜中の訪問者は現れない。
遅い時間にしか飛んで来ないって、ホントかね❓再び疑問の首がもたげてくる。

午前1時。
何か気配を感じて振り向くと、背後の闇にキシタバ系のカトカラが飛んでいた。ちょっと違和感を感じた。ようやく真夜中の訪問者のお出ましかも(・∀・)❓…
高さ約2m。羽の裏側がハッキリ見えた。次の瞬間にはミヤマだと脳が認識した。と同時に鋭いステップを切って、五、六歩前へと走って左から右へと網を撫で斬りにする。
手に真芯で捕えた感触があった。腰が入った渾身のスウィングだ。野球のバッティングと同じで、こういうキレイな軌跡で網を振れた時は、まず間違いなくスタンドインだ。

中を見る。

へへへへ(。•̀ᴗ-)✧
∠(`Д´)/シャーーーー❗❗
(^o^)v召し捕ったりぃ〜❗

立ったまま毒瓶を網に突っ込み、迅速に取り込む。去年から取り込み方法も少しは進化しているのだ。ハゲちょろけ率は格段に下がってる。

 
【ミヤマキシタバ♀】

 
たぶん新鮮な♀だ。
しかも落ち武者化してない完品だわさ。ケロケロ🐸
お美しい。前翅の複雑な紋様がベキベキに(☆▽☆)キャッコイイじゃないか。この上翅の美しさはカトカラ屈指のものだろう。中でも♀が綺麗。たぶん、絶対♀の方が紋にメリハリがあるやね。

裏返す。

 
【同裏面】

 
ミヤマキシタバは裏面の黄色味が強く、縁が白っぽく見えるのが特徴だ。だから飛んで来た時にすぐにそれと分かったのだ。
こういう裏面は知る限りではフシキキシタバくらいだろう。

 
【フシキキシタバ】

(2019年 6月 東大阪市枚岡)

 
でもこの時期にはフシキはもう姿を消している筈だから間違えることはない。あとナマリも縁が白っぽいけど、断然小さいから区別は容易だ。それにナマリの裏面はこんなに鮮やかな黄色ではない。

腹と尻先の形からすると、やはり♀だね。
♀は腹が太くて短い。また尻先が♂みたく毛ボーボーではなくて、お毛々少なめでスリットが縦に入り、産卵管らしきものがあるのだ。

帰りの事を考えて午前1時半には撤収の予定だったが、この飛来で小太郎くんから延長の申し出があった。もちろん願ったり叶ったりの吝(やぶさ)かではない。午前2時くらいが飛来のピークだと言われているし、期待値が否応なく膨らむ。
さあ、ここからが本番だ。Hey❗、щ(゜ロ゜щ)カモーン。ジャンジャン飛んで来なさーい。悪辣😈連続強姦魔として化してくれるわい❗

だが、一番飛来数が多いと言われている午前2時を過ぎても1つも飛んで来やしなかった。ホントに基本的には深夜に寄って来るカトカラなのかえ❓

疑問符を頭に抱えたまま午前3時にはクローズする事とあいなった。午前2時にバンバン飛来すると云う情報はガセかよ❓
勿論、ガセではないだろう。好んでそんな情報を流す人はいないからだ。いたとしたら、どうしようもないクズだ。クワガタじゃないんだから、ライバルを手の込んだやり口で情報撹乱する必要性があるとは思えない。蛾はマイナーだからね。
結局のところ、蝶と違って蛾の生態はまだまだ調べられてない事だらけなんじゃなかろうか❓だから、その日によって飛来時間が違うことも多いのかもしれない。
蛾ってワケわかんないや。そう思いつつ、蛾まみれの屋台をバラしていった。

 
                        つづく

 
この日、採ったミヤマキシタバの展翅画像を載っけとこう。

 

 
今回は触角を怒髪天ではなく、真っ直ぐにした。
蝶屋的な展翅だと揶揄する向きもあろうが、ほぼ理想通りの出来だ。美しい。
今年採ったのは結局この1頭のみだったので、来年はもっと採りたいな。

 
追伸
「あえて2020年のことは従来の『続・ミヤマキシタバ』と云う形はとらず、解説編と併せて綴りまする。」
冒頭にはこう書いたが、思いのほか長くなってしまったので、思い切って分けることにした。よって種の解説編は次回にまわします。
なので、この文章を『2019’カトカラ2年生 其の四(2)』から『2020’カトカラ3年生 ミヤマキシタバ』と改題して第三章とする。そして次回の解説編を第二章とし、『2019’カトカラ2年生 其の四(2)』とします。
ややこしい話で申し訳ないのだが、ようするに発表の順番が逆になると云うワケだ。ごめんなさい。解説編が上手く書けなくて、こないな事になってまっただよ(╥﹏╥)

今回も草稿を書き終えてからメチャメチャ書き直す破目になった。段々このシリーズを書くのにも飽きてきたから、調子が乗らないのである。書いてて文章に冴えがないからシックリいかず、アレやコレやといじくっているうちに収集がつかなくなった。

数えたら、まだ書いてないのが11種も残ってる。
+α、ボロしか採ってなくてロクな知見も無いのに書いた種が3種もあるから、その改訂版も書かねばならないだろう。
やれやれだ。考えたら、何だか憂鬱になってきた。とはいえ、台湾の蝶シリーズみたく頓挫するのも何だし、年内には新たに2種分くらいは何とか書きたいかなあ…。

 

2019’カトカラ2年生 其の四(1)

 
     vol.21 ミヤマキシタバ

     『突っ伏しDiary』

 
マホロバキシタバの調査が一段落したので、信州方面に出掛けることにした。

 
2019年 8月1日

大阪駅から東海道線で米原、大垣と乗り換えて名古屋へ。

 

 
名古屋からは中央本線で高蔵寺、中津川と乗り換え、塩尻へ。

 

 
そして塩尻から松本へ。
そう、今年もまた青春18切符の旅が始まったのだ。

 

 
松本駅に着いた頃には、いつの間にか日は傾き始めていた。長い旅になりそうだ。
さらに松本で大糸線に乗り換える。目的の駅までは、あと1回か2回は乗り換えなくてはならないだろう。

 

 
こうゆうローカル線に乗ると思う。嗚呼、随分と遠くまで来たんだなと。

 

 
🎵線路は続くよ、どこまでも。

 

 
駅に降りたのは午後6時過ぎだった。
日没前までには目的地に着きたいところだ。重いザックを背負って湖に向かって歩き出す。今回は普段の超軽装と比べてテントや予備も含めたトラップ用の糖蜜等々荷物が多いので、早くもストレスを感じる。案の定、ちょっと歩いただけで瞬く間に汗ダラダラになる。何だか先が思いやられるや(´ε` )

当初はカトカラの中でも難関と言われるミヤマキシタバ狙いで他の場所に行くつもりだった。けど、信頼しうる筋からの情報が入り、ここならミヤマキシタバの他にもケンモンキシタバ、エゾベニシタバも狙えると聞いた。ならば、マホロバキシタバを発見した勢いを借りて、まだ採ったことのないソヤツらも纏めて片付けてやれと思ったのだ。7月にはマホロバの発見だけでなく、稀種であるカバフキシタバもタコ採りしてやった事だし、今のところ絶好調なのだ。

キャンプ場に着いたのは日没近くだった。
先にテントを張るか、ハンノキ林を確認する為にロケハンするか迷ったが、テントを建てる方を選んだ。久し振りのテント張りだ、暗くなってから組み立てるのが不安だったのだ。暗い中でのテントの組み立ては慣れてないと大きなストレスになる。設置が遅れれば遅れるほど採集時間も削られる。それも大きなストレスになりかねない。それに長旅で疲れていた。一刻も早く落ち着ける場所が欲しかったのだ。古今東西、昔から優れた男というものは、先ずは基地を作りたがるものだしね。

テントを張り終わった頃には辺りは闇に侵食され始めていた。早速、糖蜜トラップを用意して出る。
しかし薄闇の中、湖の畔を歩き回るもハンノキ林が見つからない。まあいい。どうせ湖沿いのどこかには生えている筈だ。とりあえず良さげな木の幹に糖蜜を噴射してゆく。今はマホロバの発見で乗りに乗っているのだ。ソッコーで片付けてやるよ。

しかし飛んで来るのは、ド普通種のパタラ(C.patala)、いわゆる普通のキシタバとフクラスズメばかりだ(註1)。
ハッキリ言って、コイツら死ぬほどウザい。どちらも何処にでもいるし、クソ忌々しいデブ蛾でデカいから邪魔。どころか、特にフクラスズメなんぞは下手に敏感だから、すぐ逃げよる。それにつられて他の採りたいものまで驚いて逃げるから、誠にもって始末が悪い。
おまけにフクラの野郎、カトカラの王様であるムラサキシタバにちょとだけ似てるから、飛び出した時は一瞬だけだが心ときめいてしまうのだ。で、すぐに違うと解ってガッカリする。それが、ものスゲー腹立つ。あたしゃ、本気で奴を憎悪してるとまで言ってもいいだろう。それくらいムカつく奴なのだ。

あっ、また飛んで来やがった。

(#`皿´)おどれら、死ねや❗

よほど怒りに任せてブチ殺してやろうかとも思ったが、彼らに罪はない。だいち、そんな事したら人間のクズだ。何とか踏みとどまる。

結局、夜中まで粘ったが惨敗。姿さえ見ずで狙ってたものは1つも採れなかった。
今日の唯一の救いは、新鮮な紅ちゃんを2頭得られたことくらいだろう。

  
【ベニシタバ Catocala eleta】

(裏面)

 
ベニちゃんを見るのは初めてじゃないけど、新鮮なものはこんなにも美しいんだね。その鮮やかな下翅だけに目が行きがちだが、上翅も美しい。明るめのグレーの地に細かなモザイク模様と鋸歯状の線が刻まれ、上品な渋さを醸し出している。
上翅と下翅の色の組み合わせも綺麗だ。考えみれば、ファッションの世界でもこの明るいグレーと鮮やかなピンクのコーディネートは定番だ。美しいと感じるのも当たり前かもね。ファッションに疎い男子にはワカンないかもしんないけどさ。

 
2019年 8月2日

翌朝、湖を見て驚く。
湖といっても、どうせ池みたいなもんだろうと思ってたけど、意外にも綺麗な青緑色だった。とても美しい。

 

 
こんだけロケーションがいいのならもう1日いて、昼間はじっくりハンノキ林を探しながら湖畔を散歩しても良いかなと思った。
しかし、昨日の貧果から多くは望めないと考え直した。もう1回アレを繰り返したら、ハラワタが煮えくり返ってホントに奴らに危害を加えかねない。
湖を後にして、白馬村へと向かう。

 

 
此処ではキャンプ場を拠点にして各所を回るつもりだ。

移動して温泉入ってテント張ったら、もう夕方になった。
蜩(ひぐらし)の悲しげな声が辺りに侘しく響く。その何とも言えない余韻のある声を聞いていると、何だかこっちまで物悲しくなってくる。夏もいつかは終わるのだと気づかされてしまうからだ。でも、そんな夏の夕暮れこそが夏そのものでもある。嫌いじゃない。

岩に腰掛けて、ぼおーっと蜩たちの合唱を聞いていると、サカハチチョウがやって来た。

 

 
夕闇が訪れるまでの暫しの時間、戯れる。
こちらにフレンドリーで穏やかな心さえあれば、案外逃げないものだ。慣れれば手乗り蝶も意外と簡単。心頭を滅却して無私になれない人はダメだけど。
たぶん20分以上は遊んでたんじゃないかな。お陰で心がリセットされたよ。ありがとね、サカハっちゃん。

此処での狙いは、アズミキシタバ、ノコメキシタバ、ハイモンキシタバ、ヒメシロシタバ、ヨシノキシタバである。この場所も、とある筋からの情報だ。こんだけ居りゃあ、どれか1つくらいは採れんだろ。

 


 

 
🎵ズタズタボロボロ、🎵ズタボロロ~。
だが、各地でことごとく敗退。新しきカトカラは何一つ採れず、泥沼無間地獄の3連敗となる。

1日目はアズミキシタバ狙いだったが、さあこれからというと段になって⚡ガラガラピッシャーン❗ 本気の雷雨がやって来て、チャンチャンで終わる。
2日目は猿倉の奥に行くも、糖蜜には他の蛾はぎょーさん寄って来るのにも拘わらず、カトカラはスーパーにズタボロな糞ただキシタバだけだった。

 

 
思わずヨシノキシタバかと思って採ったけど、この時期にこんなにボロのヨシノは居ないよね。今なら出始めか、下手したら未発生の可能性だってある。それにヨシノはこんなにデカくはない。惨め過ぎて、コヤツにも己に対しても💢ブチ切れそうになったわい。

熊の恐怖と戦いながら闇夜を歩いて麓まで降り、夜中遅くに何とかキャンプ場に辿り着いた。途中、新しい靴で酷い靴ズレになり、両足とも血だらけ状態で見た満天の星空は一生忘れないだろう。
そうまでして頑張ったのに報われず、泣きたくなってくる。これほど連続でボコられてるのは海外だってない。
身も心もボロ雑巾でテントに倒れ込む。

 
2019年 8月4日

 

 
翌朝、テントに付いてるセミの脱け殻を見て、セミにまで馬鹿にされてる気分になった。
そして、悪代官 秋田伊勢守に”Facebook”で言われてしまう。

『マホロバで運を全部使い果たしんじゃないの〜。』

その呪いの言葉に、温厚な岸田先生まで賛同されていた。
きっと、この地は負のエネルギーに満ち満ちているに違いない。こんなに連チャンで負け倒したことは過去に記憶がない。こう見えても虫採りのまあまあ天才なのだ。って云うか、実力はさておき、運というか引きはメチャメチャ強いのである。

(ノ ̄皿 ̄)ノ ⌒== ┫どりゃあ〜。
もう、人に教えられたポイントなんぞ行かんわい❗
最初に自分で考えてた場所に行こう。楽して採ろうなんて考えたからバチが当たったのだ。それに我がの力で採った方が楽しい。人に採らさせてもらった感が極力ない方がカタルシスとエクスタシーは大きいのだ。

 

 
大糸線、笑けるほど本数が少ない。
(´-﹏-`;)知ってはいたけどさ…。

仕方なく白馬駅近くのスーパーへ昼飯を買いに行く。
それにしても死ぬほど糞暑い。燦々と降り注ぐ強烈な太陽光が弱った心をこれでもかと云うくらいに容赦なく苛(さいな)む。

デミグラスハンバーグステーキ弁当と枝豆、発泡酒を買って、イートインコーナーへ。

 

 
全身、頭の先から足の爪先まで心身共にボロボロ状態で枝豆をふたサヤ食い、金麦をグビグビ飲んでテーブルに突っ伏す。
ハンバーグ弁当を半分食って、再び突っ伏す。

 

 
(╥﹏╥)ダメだあ〜、帰りたい。ズブズブの敗残者のメンタルや…。

でもこのあと熊がいると云う湿原に行くのだ。チップス先生、さようなら( ;∀;)

しーさんぷーたー。バラバラになった気力を何とか拾い集め、白馬から当初予定していたミヤマキシタバのポイントへと移動する。

 

 
ここはハンノキ林が多い。この場所でミヤマキシタバが採れなければ終わりだ。いよいよ本当に運を使い果たしたと認めざるおえない。

 

 
キャンプ場は無いので、今夜はテント野宿だ。
幸いにも工事用のトイレがあり、その横にスペースも結構あった。ゆえに充分な距離をおいてテントを設置できた。いくら何でもトイレの真横は嫌だもんね。
トイレ問題は重要だ。野糞は出来なくはないけど、やはりトイレは有った方がいいに決まってる。この精神状態で野糞なんかしたら、ますます惨めになるだろう。こういう一見小さな事が意外とボディーブローのように効いてきて、心の決壊に繋がることはままあるのだ。とにもかくにも1つ問題が解決してホッとする。

残る問題は奴の存在である。当初の予定通りにそこへ行くよとマオくんにLINEしたら、熊がいるから気をつけて下さいという返信があったのだ。まさかそんな標高の低い所にもいるとは思いもしなかった。完全に想定外だったよ。でも考えてみれば、湖にも熊が出まっせ看板があったもんなあ…。(༎ຶ ෴ ༎ຶ)くちょー、キミら何処にでもおるんかいのう。

湿原周辺を歩き回り、良さげなポイントを探す。
しかし、ぐるっと1周回ると思いの外(ほか)広い。ポイントらしき場所を幾つか見つけたが、そのポイント全部を回れそうにはなさそうだ。厳密的には回れなくはないのだが、移動の時間的ロスが大きい。だいち、熊が恐えよ。奥に行けば行くほど遭遇率は高まりそうだもん。
ゆえに場所を大きく2箇所に絞ることにした。一方は壮齢木の多い暗いハンノキ林内、もう一方は比較的明るい若いハンノキ林の林縁を選定した。環境を少し変えたのは、確率を考えての事だ。ミヤマキシタバを採ったことがないゆえ、どんな環境を好むか分かんないのだ。負けっぱなしなだけに慎重にならざるおえない。
その2箇所に広範囲に糖蜜かけまくりのローラー作戦を敢行することにする。もしダメなら、別なポイントに行くしかない。
にしても、どの時点で見切りをつけるかだ。ウスイロキシタバの時は見切りをつけるのが早過ぎて失敗したからね。かといって判断が遅いと手遅れになりかねない。ゴールデンタイムは8時前後から8時半なのだ。それを過ぎると一旦個体数が減る種が多い。特に9時台は止まる。つまり8時を過ぎても飛んで来なければ、ヤバい。しかし、日によっては全体的に飛来時刻が遅れる場合もあるし、カバフキシタバのように8時半になってから漸く現れる種もいるのだ。ミヤマがそっちタイプの可能性だって有り得るのである。悩ましいところだ。判断次第では大コケしかねない。選定した場所が当たりであることを祈ろう。

淋しき夕暮れが終わると、闇の世界の支配が始まった。
暗い。というか黒い。懐中電灯の光で切り取られる湿地はチビりそうなくらいに不気味だ。大体、澱んだ水のある場所ってヤバいんだよね。出ると相場が決まっている。そうゆう所は、京都の深泥池のように心霊スポットになってる場所が多いのである。😱想像して背中が怖気(おぞけ)る。お化けの恐怖と熊の恐怖に怯えながら糖蜜を木に噴きつけてゆく。

暫くしてベニシタバがやって来た。
しかも、立て続けに。

 
【ベニシタバ】

 
美しいけど白馬にもいたし、もう感動は無い。
会いたいのはアナタじゃないのよー(´ε`;)。お目にかかりたいのは、灰かぶりの黄色いシンデレラなのだ。

午後8時近くになってもシンデレラは現れない。
(ー_ー;)ヤバいかも…。
それって、マズくなくなくね❓
普通、糖蜜を撒いたら、大概のカトカラは日没後直ぐか、少し間をおいて集まってくるものだ。まさかのカバフタイプ❓けれども、そんな奴はカバフしか知らない。その確率は低そうだ。やっぱミヤマキシタバって、難関と言われるだけあって採集は難しいのかなあ…。確か「世界のカトカラ(註2)」でも採集難易度が★4つになってた筈だし、灯火採集でも深夜0時を回らないとやって来ないというしさあ。

シンデレラ〜が、死んでれら(ŎдŎ;)

思わずクズみたいな駄洒落を呟いてしまう。重症だ。連敗続きでコワれかけてる。でもクズみたいな冗談でも言ってないと、心の平静が保てないのだ。

駄洒落を言ってる間にも、時間は刻一刻と過ぎてゆく。

さっき、チビッコの死ね死ね団が足元を走っていったような気がする。

心がピンチになると珠に見る幻覚だ。いよいよ、それだけ追い詰めらてる証左って事か。ここでミヤマキシタバが採れなければ、心は完全に崩壊して、チビッコ死ね死ね団くらいでは済まないかもしれない。ダダっ子ぽよぽよ団まで登場すればお終いだ。
焦燥感に居た堪(たま)れなくなって、腕時計に目をやる。
時刻は8時15分になっていた。(-_-;)マジ、ヤバいかも…。
場所を変えるべきか悩みつつ、2箇所を往復する。此処を諦めてポイントを変えるなら8時半、少なくとも9時前までには決断しなければならないだろう。でも靴ズレの痛みが増してきてる。いよいよもって崖っぷちだ。この心と体で、はたして移動できるのだろうか…。

午後8時半過ぎ。
完全にヤバい時間になったなと思いつつ、若木ポイントへと入る。
Σ( ̄□ ̄||)ハッ❗❓
糖蜜を噴きつけた1本目の木に近づこうとして足が止まった。見慣れないカトカラが吸汁にやって来ていたのだ。

コレって、ミヤマキシタバじゃなくなくね❗❓

いや、そうだ。図鑑を何度も見て、姿を脳ミソにインプットしたのだ。間違いなかろう。急速にヤル気モードで全身が武装化される。ここで会ったが百年目、漸くチャンスが巡ってきた。武者震いが走る。
しかし問題はどう採るかだ。網を使うか毒瓶を使うかで迷う。網を使えば、中で暴れて背中がハゲちょろけになる公算が高まる。かといって毒瓶を上から被す方法だと落ち武者にはなりにくいが、逃げられる可能性大だ。
でも迷ってるヒマはない。その間に逃げられたら噴飯ものだ。コヤツが最初で最後の1頭かもしれないのだ。このチャンス、何があっても絶対に逃すわけにはいかぬ。ならば、この戦法しか有るまい。

ここは肉を切らして骨を断つ❗

よし、網で採ろう。先ずは採ることが先決だ。たとえハゲちょろけになろうとも、採れたという事実さえあれば良い。ゼロと1とでは雲泥の差なのだ。それに網で採ったからといって、ハゲちょろけになると決まったワケではない。細心の注意を払って取り込めば何とかなる。

慎重に近づく。ここで逃したら、ダダっ子👻🤡👽🤖ぽよぽよ団たちに捕まって担ぎ上げられ、エッサホイサと運ばれて沼に沈められるやもしれん。で、河童に尻子玉を抜かれるのだ。尻子玉が何たるかはよくワカランが、気合を入れ、心頭を滅却する。
網の柄をスウーッと体の中心、丹田に持ってゆく。そして右足を後ろに引いて腰を落とし、斜めに構える。な、いなや、標的の直ぐ真下に向かって撞きを繰り出す。

とぅりゃあ〜∑(#`皿´ )ノ
秘技✨撞擲ウグイス返し❗

驚いて飛び立った瞬間に💥電光石火でカチ上げ、すかさず網先を捻る。一連の鮮やかな網の軌跡が残像となって脳内に余韻を残す。

(◡ ω ◡)決まったな。

しかし、悦に入っとる場合ではない。急がなければ背中がズルむけ赤チ○ポになりよる。慌てて駆け寄り、ポケットから毒瓶を取り出して網の中に突っ込む。
しかし、驚いたワイのシンデレラちゃんが暴れ倒して逃げ回り始めた。


(@_@)NOーッ、暴れちゃダメ〜。
お願いだから大人しくしてぇー❗
(`Д´メ)テメェ、手ごめにすんぞっ❗

´Д`)ハァ、ハァ。(゚Д゚;)ぜぇー、ぜぇー。
強姦まがいの力づくで何とか毒瓶に取り込んだ。

 

 
けど、(-_-;)やっちまったな…。
見事なまでのキズ物、スーパー落ち武者にしてしまった。

どうやらメスのようだね。メスなのに落ち武者って、何だそりゃ? 自分でも何言ってるのかワカンナイ。しかもシンデレラがハゲてるって、ムチャクチャだ。想像してアホらしくなる。

 

 
翅が他のカトカラと比べて円く、上翅のデザインに独特のメリハリがあって美しい。灰色の帯やギザギザの線が絶妙な位置に配され、上品且つスタイリッシュな魅力を放っている。
思ってた以上に(☆▽☆)キャッコいいー。あっ、久し振りに指が震えとるやないけ。これこそが虫採りの醍醐味であり、エクスタシーだ。だから、こんなにもボロボロにされても網を握れるのだ。やめらんねぇ。

 
(裏面)

 
腹が太くて短いから、やはりメスのようだね。
落ち武者にさせてしまったが、とにかく採れて良かった。心の底からホッとする。全身の力がゆるゆるとぬけてゆく。
これで”Facebook”で公約した通り連敗脱出。秋田さんの呪いの言葉も拭いさられただろう。もう意地である。阪神タイガースとは違うのだよ、クソ阪神タイガースとは。普段カッコつけてる分、そうそう負け続けるワケにはいかないのだ。
ここからは、怒濤の巻き返しの倍返しじゃ(#`皿´)❗

 

 
その後、憑き物が落ちたかのように彼女たちは続けて飛んで来た。しかし、ヒットしたのはこの周辺だけだった。ハンノキ林だったら何処にでもいると云うワケではなさそうだ。そこが珍品たる所以だろう。

 

 
コチラはオスだね。
尻が長くて、先っちょに毛束がある。

その後、何頭目かに漸く落ち武者化させずに回収することができた(画像は無い)。
だが、午前0時を過ぎると、全く姿を見せなくなった。シンデレラは魔女との約束を守って舞踏会から姿を消したのかもしれない。夜中2時まで粘ったが、二度と現れることはなかった。
それでも何とか計8頭が採れた。個体数は何処でも多くないと聞いていたから、まあこの数なら御の字だろう。

疲れ切った体でテントに転がり込む。
四肢を力なく広げて突っ伏し、目を閉じる。
熊の恐怖が一瞬、脳裡を過(よぎ)る。もしかしたら寝ている間に熊に襲われるかもなあ。
だが、あまりにも疲れ過ぎていた。

ミヤマキシタバも採った事だし…。
もう熊に食われてもいいや…。

そう思いつつ、やがて意識は次第に薄れていった。

                         つづく

 
その時に採った雌雄の展翅画像を貼っつけておきます。

 
【Catocala ella ミヤマキシタバ♂】

 
下翅中央の黒帯が一本で、外縁の黒帯と繋がらないのが特徴だ。日本ではソックリさんのキシタバは他に居ないので、まあ間違えることは無かろう。

 
【同♀】

 
この♀は、下翅がやや黒化している。
私見では♀は♂と比べて上翅の柄にメリハリがあるような気がする。けど、どこにもそんな事は書いてないし、言うほど沢山の個体を見ているワケではないので断言は出来まへん。

それはさておき、♀の展翅が前脚出しいのの、触角は怒髪天の上向き仕様になっとる。この時期はまだまだ展翅に迷いがあったのだろう。模索している段階で、どれが正しいのかワカンなくなってた。今でも迷ってるところはあるけどね。

 
追伸
やっぱり一回では終らないので、つづきは何回かに分けて書きます。
なお今回、ミヤマキシタバをシンデレラに喩えているのを訝る向きもありましょうが、意味するところは後々明らかにされてゆきますですよ、旦那。

えー、どうでもいい話だけど、前回に引き続き今回もアホほど書き直す破目になった。草稿は2週間前に書き終えてのにさ。
まあ、文才がないゆえ致し方ないのだろうが、やれやれだよ。

 
(註1)ただキシタバとフクラスズメ

【キシタバ】

 
何処に行ってもいるカトカラ最普通種だが、冷静に見れば大型で見栄えは悪くない。もし稀種ならば、その立派な体躯は賞賛されているに違いなかろう。実際、欧米では人気が高いそうだ。

それにしても、この和名って何とかならんかね。他のキシタバはミヤマキシタバとかワモンキシタバとかの冠が付くのに、コヤツはただの「キシタバ」なので、一々ただキシタバとか普通キシタバなどと呼ばなければならない。それがウザい。そうゆうところも、コヤツが蔑まれる原因になってはしまいか?
ちなみにアチキは「デブキシタバ」、小太郎くんは「ブタキシタバ」と呼んでいる。アレッ?「ブスキシタバ」だっけか? まあ、どっちだっていい。とにかく、どなたか偉い方に改名して欲しいよ。それがコヤツにとっても幸せだと思うんだよね。
そういえば、この和名なんとかならんのかと小太郎くんと話し合った事がある。その時に彼が何気に言った「オニキシタバ」とゆうのが個人的には最も適していると思う。ダメなら、学名そのままのパタラキシタバでいいんじゃないかな。

 
【フクラスズメ】

(出典『http://www.jpmoth.org』

 
手持ちの標本が無いので、画像をお借りした。不便だから1つくらいは展翅しておこうと思うのだが、そのままになってる。今年も何度も見ているのだが、採ることを毎回躊躇して、結局採っていない。正直、気持ち悪いのだ。邪悪イメージの蛾の典型的フォルムだし、ブスでデブでデカいから出来れば関わりたくないと思ってしまう。奴さん、性格も悪いしね。こんなもんが、覇王ムラサキシタバと間違えられてる事がしばしばあるのも許せない

 
【ムラサキシタバ】

 
色、柄、フォルム、大きさ、品格、稀度、人気度etc…、全てにおいて遥かにフクラスズメを凌駕している。月とスッポンとは、この事だ。

 
(註2)世界のカトカラ

 
カトカラの世界的研究者である石塚勝己さんの世界のカトカラをほぼ網羅した図鑑。日本のカトカラを知る入門書ともなっている。