『西へ西へ、南へ南へ』第6話

蝶に魅せられた旅人アーカイブス
2012-08-09 00:18

 
    ー捕虫網の円光ー
 『西へ西へ、南へ南へ』

第五番札所その2・流星レッドスター

 

市の職員二人が下から登ってきた。
リュウキュウマツ(琉球松)の調査だと言う。
確かに赤茶色の松が多い。こんな所にも松枯れの原因、マツノザイセンチュウがいるのか…。
詳しく訊いてみると、媒介を助けるマツノマダラカミキリと共に台湾から入って来たと説明してくれた。

カミキリムシの飛翔力ではこんなところまで翔んでこれるわけもない。多分、貨物の松材か何かに紛れて入って来たのだろう。
離島は外来生物が入って来ると、在来種が駆逐され、簡単に絶滅しやすい。そして、その原因のほとんどは人間様だ。

空を見上げる。
雲行きも怪しくなってきた。多分絶対、南国の雨の洗礼がやって来る。
もう一度だけ詔魂碑まで上がって駄目なら、とっと宿に帰ろうと決めた。体力もそろそろ限界に近い。

登ってすぐ、頭上に気配を感じた。
松の上空をアカボシが流れるように滑空している。
やっとテリトリーを張り始めた❗
鮮やかな赤がよく目立つ。

あたふたと網を組み立てる。
(~O~;)うわっ!、だが無情にもポツポツと大粒の雨が落ちてきた。(゜〇゜;)え━━━っ、 嘘やん!
畜生、スコールがやって来たようだ。慌てて樹下に逃げる。

OH~、神よ、毎度毎度のことながら、この期に及んでまたしても我に試練をお与えなさるおつもりか…。
一挙に状況は逼迫してきた。雨が止むのを心から祈るしかない。止まないのなら、惨敗決定だ。

思いが通じたのか、5分余りで再び晴れ間が顔を覗かせ始め、やがて光が射した。
と同時にアカボシも飛び始めた!!
南国の不安定な天気だ。再び雨が来る前に決着をつけねばならない。

採り方は、近縁の国蝶オオムラサキと変わらない筈である。ならば楽勝だ。網を正面からそっと被せればいい。落ち着いていこう。

しかし、オオムラサキと違って、そんなにバカ蝶じゃなかった。
枝先に止まるが、結構敏感で網を近付けようとすると直ぐに翔んでしまう。三、四度、同じ事が繰り返される。

(-“”-;)クッソ~、残された時間はそうないぞ。いつまた陽が陰り、雨がやって来るとも限らない。
えーい、もう今までみたいにゆっくりと慎重に網を近付ける方式は諦めた。
心頭滅却、ビシッといったるわい(`へ´*)ノ

目測およそ頭上約6m。止まって、一拍おくかおかないかのうちに反応して、間髪措かずに網先を走らせる。
(=`ェ´=)ウリャ!!、腕の筋肉がしなる。
バサリと正面斜めから網を振り被せ、そのまま強引に空間へと逃がす。そして、ホームランを打った時のフォロースルーが如く手から竿を離す。
決まった…。手応え充分の感触がある。
網先を敢えて捻らなかったので、風を孕んでふくらんだ網が真っ直ぐ地面に向かってスローモーションのように落ちてゆく。

地面に落ちたことを確認して、ゆっくりと歩いてゆく。
勇者の如く、まあまあ天才は急がない。

 

 
よっしゃーd=(^o^)=b、今度は完品だ。
手にとり、まじまじと見る。
ひょえ~、お美しい。

蝶採りは、こうでなくっちゃネ d(^-^)
ギリギリの勝負にしか、エクスタシーはないのだ。

 

 
その後、落ち着いて続けざまに3頭を加える事ができた。何れも完品のレッドスターだ。

午後5時半。本格的な強いスコールがやってきた。すんでのところで、公園の東屋に逃げこむ。

30分間待ち、小雨になった間隙を縫って宿まで急いで帰ってきた。
着いたと同時に、再び叩きつけるような豪雨がやって来た。

 

追伸
やはり、文章を二回に分けることにしました。
すんません。次回こそ、食いもんの話です。奄美大島の旨いもんテンコ盛りだすよ。