『西へ西へ、南へ南へ』終焉のとき

 
蝶に魅せられた旅人アーカイブス
2012-09-15 01:34:27

       ー捕虫網の円光ー
     『西へ西へ、南へ南へ』

     番外編その参(再最終回)

    (第二十二番札所・終焉のとき)

 
 
2011年 9月27日

ミッドナイト・エクスプレスは車内に光の矢を放ちながら、夜の高速をひた走る。

午後10時、 熊本。
午前0時半、下関。
午前3時半、東広島市・小谷。
午前6時、兵庫県・三木。

やがて美しい朝日が昇ってきた。
雲一つない快晴が嬉しいが、何だか憾めしくもある。
想いを馳せる。奄美大島も晴れているだろうか?

東南アジアの長旅からの帰国後も、今年はよく日本を旅したが、日本の風土は本当に美しい。
破壊されているとはいえ、まだまだ森や林も残っている。東南アジアの殺伐に比べれば、まだマシな方かもしれない。

7時15分。
バスは予定より40分も早く大阪駅桜橋口に着いた。
にも関わらず車掌が謝るのを聞いて、いかにも日本的だなと苦笑いする。
他の国では遅れるのが当たり前だし、遅れても謝ることなどまずない。
これもまた平和の証だ。

無事、帰還。

9月終わりの、よく晴れた幸せそのもののような水曜日が始まろうとしている。

なかなか、恰好よくは生きれない。

                  完

 
(subject 写真解説)

【奄美大島 笠利町のビーチ】
奄美大島は、海よし、山よし、人よし、蝶よし、食いもんよしの素敵な島でした。
皆さんも機会が御座いましたら、是非行ってみて下さい。

おまけで、今シリーズで使わなかった画像もついでに紹介しておこう。

【盆踊り】

9月23日の「魚体模型の夜」の回に挿入すべき画像だったのだが、当時(初稿)はあえて使わなかったのではないかな?表題の印象を薄めたくなかったのだろう。
或いは、ほぼ一日遅れの毎日配信だったので、組み込むには時間が足りなくて、端しょたのかもしれない。文章を書くのは、思っている以上に時間がかかるのだ(悲しいかな、駄文であろうとも書くのに要する時間は美文と変わらないのである)。
今回の第3稿では、折角だから盆踊りについても文章にしようと試みてみた。しかし、今や記憶が定かではないし、挿入すると文章全体のバランスも悪くなりそうだったので結局断念した。
おぼろげな記憶をたどると、全体的に照明が暗くて、とても静かな盆踊りだったような気がする。

とここまで書いて、何で9月に盆踊り❓という疑念がようやく頭をもたげてきた。
調べてみると、これは盆踊りではなく、「八月踊り」というそうである。
もっとも、盆踊りとは非常に近い芸能文化なのだそうだ。沖縄にも同じようなものがあって、コチラも八月踊りというようだ。

でも、ここで再び新たな疑問が湧いてきた。9月も半ばなのに、何で八月踊りなのだ❓
この疑問は、すぐに氷解した。八月といっても旧暦の8月(旧盆)のことを指しているんだね。つまり、現在の新暦になおすと9月になるというワケだ。

【ゴーヤ】

脇田丸で、お通しに出たもの。
実を言うと、ゴーヤは苦手だ。苦くて青臭いのが、どうも口に合わない。でも出されたら体には良さそうだし、薬と思って食べることにしてる。
奄美大島でもゴーヤは頻繁に食べるようだし、沖縄とは共通の文化や慣習が多いと思う。

【蝶ライター】

これも使おうと思って使い忘れた画像だ。
このライターは昔の彼女に貰ったもので、蝶採りの時の御守りみたいなもんだった。不思議にこのライターを持っていると、佳い蝶が採れた。
でも今はガスが切れてしまい、持ち歩いていない。それ以降、前ほどには連戦連勝とはいかなくなったような気がするのは気のせいかな…。運だけで蝶を採っているようなものだから困るよね。使い捨てライターにガスを補充する方法とかないのかな?

(魚たち)

これも入れ忘れた画像。
一番左はたぶんノコギリダイだろう。本土ではあまり見掛けない亜熱帯から熱帯に棲む魚だ。
淡白だが意外と旨い魚で、刺身、塩焼き、フライ、煮付けなど何でもイケる。強いていえば、淡白ゆえにバター炒めなど油を使った料理法がベターかな。

 
(あとがき)
人間の記憶とゆうものは曖昧なもので、アメーバのブログ連載を始めるにあたって改めて読みなおしてみると、案外自分でも書いた内容をすっかり忘れていて、幾つかの箇所で思わず吹き出してしまった。
基本、三歩あるくと忘れてしまう鳥アタマだから、仕方がないのだ。

それと気付いたのだが、考えてみれば日本国内でこれだけ長い旅をしたのは初めてではないだろうか? しかも完全に予定が未定の放浪旅だった。

この年は、随分とたくさんの旅をした年だった。
2月から始まった3ヶ月に及ぶ東南アジア縦断放浪旅を皮切りに、帰国後すぐに熊本に行き、その後、岡山に二度、新潟&長野、沖縄本島、福岡&長崎、北アルプス(双六岳)、山梨(八ヶ岳)と旅してきた。
そして最後がこの九州&奄美大島の旅だったとゆうわけである。
思えば、一年の半分近くを旅先で過ごしたと云う事になるわけだ。
その全部が、目的は蝶採りだったわけだから、自分でもバカを通り越した大バカ、愚か者だと思う。
でも、それは裏を返せば、それだけ蝶たちに魅了されていたと云う事なのだろう。
恋をしていたと言っても過言ではない。
愚かだが、しあわせな男だと思う。

長々とその大バカ者で幸せな男の駄文にお付き合い頂き、本当にありがとうございました。礼。

 
         2012年 9月10日 作者

 
 
(あとがきのあとがき)
多分、バーの何人かのお客さんに送っていたオリジナルにもあとがきを書いた筈だから、これは正確にはあとがきのあとがきのあとがきになるんじゃないかと思う。

正直、まさか同じ文章を書き直し書き直しして三回も世に送り出すとは夢にも思わなかった。人生、こんな些末的な事でも先はワカランのである。流石に4回目は無いとは思うけど…。

3回目を書く事になったキッカケは、アメブロからワードプレスにブログを移転した事から始まった。
前のアメブロの記事が編集できなくなっていたので、この際これを機会に記事を移して、そのブログを閉じてやろうと思ったのだ。
だが、これが思った以上に大変な作業になってしまった。誤字脱字と行間などを少し手直しすれば発表できるとばかり思っていたのだが、第二話くらいから説明不足や気に入らないところが出てきて、かなり細かく手を入れる破目になった。一部をいじると、バランスが崩れて他のところも削ったり足したりと結局全体を書き直さなければいけない事もあったりするのだ。
そして、いらんことを始めたと途中で気づいた時には、もう遅い。既に四話くらいまで進んでいた。こうなると、今さら引き返せない。と云うワケで今日に至るのである。
前のブログには、まだ記事が百話くらいある。この先、どうすんでしょね❓
皆さん、何かをする時は、よく考えてから行動しましょうね。

前回のあとがきに書かなかった事を少し書きます。
小タイトルの第○○番札所と云うのは、関所や西国四十四ヶ所巡りなどを意識してつけたものです。一つ一つ難所を通過して、狙った蝶を手中に入れてゆく巡礼の旅をイメージして貰えればと思ったのだ。結局、最後のピースであるアカボシゴマダラの完品のメスは採れず、巡礼の旅は不完全に終わったけどさ…。
だから、捕虫網の円光シリーズの最後はいつも「ここに円は閉じた」の一節で終わるのに、使えなかったのである。

そういえば、もう一つ思い出した事がある。
店の一部のお客さんに円光シリーズを書いていた時は、直接感想なども聞いていた。読者の顔が見えると云うのは恐ろしいもので、飽きられない為に毎シリーズごとに何か新しい試みをしていた覚えがある。
今回みたいな小タイトルの工夫の時もあれば、毎回のように駄句を詠む、芭蕉の「奥の細道」仕立てのシリーズもあった。全編オチャラケ満載のフザけたシリーズもあったし、絵文字だらけにしたシリーズもあった。初期の頃には純文学風のものもあって、文体だって毎シリーズごとに変えていた時期だってある。
今思えば、そういうのを経て、この『西へ西へ、南へ南へ』辺りで、現在の文体に落ち着きはじめたのではないかなと思う。
そろそろブッ壊して、また文体を変えてやろっかなあ…。まあ、そう簡単にはいかないとは思うけど…。

そろそろ、駄文に長々とお付き合い下さいました事に再度お礼を申し上げて文を閉じます。
読んで下さった皆様方、本当にありがとうございました。
また近く、旅に出ます。
いまだ漂泊の想い、やまずである。

 
           2017年 5月26日 作者

『西へ西へ、南へ南へ』番外編1

蝶に魅せられた旅人アーカイブス
2012-09-11 20:29:45

一応、第十九番札所でおしまいですが、退屈なのでオマケ番外編を一部の人にグダグダで送ります。何せ船の中はヒマなのだ(ライブ送信、当時のままの文面です)

       ー捕虫網の円光ー
      『西へ西へ、南へ南へ』
       番外編・その壱

      (第二十番札所・北へ北へ)

 
2011年 9月26日

えーと、ですね。
最終回はシンプルにしたかったから、ゴチャゴチャ必要のない事は極力排除したかったわけよ。で、ああ云う風な形になった。
と云うことで、書かなかった間の事とその後の事を書きます。

バイクを返した後、荷物を預かって貰っていたので宿に戻った。
如才がないので、ちゃっかり風呂まで入らせてもらう。どうせ明日はバス移動で入れんだろうし、フェリーの風呂は、狭くて悲しいくらいに薄茶色だしね。

今度こそ髭そり用のT字カミソリを捨ててやるぞ。
もう、慌ててゴミ箱を漁ることもないだろう。
このあいだは船に乗り遅れたから、必要ないと思って捨てたカミソリを大慌てでゴミ箱から探し出したのだった。

そして、最後の脇田丸へ。

これが多分13回目の来店じゃないかな?
かつて、これだけ短期間で一つの店に通った記憶はない。

今日は竹さんがいた。
魚も活きの良いのがカウンターにズラッと並んどるんじゃないのー(⌒‐⌒)v

カンモンハタ、コクハンアラ、アカハタ、クエ、スジアラ、ミーバイ、アズキハタetc…。本日はハタのオールスター勢揃いだ。
皆んな高級魚じゃよ~(≧∀≦)

迷ったが、竹さん一番のお薦めのスジアラを選択いたしましたよん。

スジアラ刺身(790円)

先ずもって、身が美しい。
白く抜けるような透明感じゃね。
味は淡白だが、噛んでいると奥から甘みが昇ってくる。

アバス唐揚げ(490円)

11回も食ったが、飽きない。
いつ食っても絶品❗(^o^)v

次のお薦めは、鰭長勘八(ヒレナガカンパチ)頭の塩焼き(980円)だった。
焼く前の姿を見せてもらったが、巨大。
食えるかどうか心配でオーダーを躊躇した。
だが、こんなもん次いつ食える機会があるというのだ。男なら、ガツンといっときましょう❗

うおっ(゜〇゜;)❗、まるで肉を食ってるみたいだ。
格闘という言葉が最も当てはまる肉弾戦。食っても食っても減らん(@_@;)
カマの部分は、やや大味。顔面の方が肉質が繊細で美味い。

今日は流石に支払いが3000円を越えたよ。
外は本格的な雨。雨合羽はあるのだが、出すのも着るのも面倒臭いので如才なく店で傘を借りる。いや、返すアテなどないから、貰うか?
8時20分。竹さんと堅い握手をして店を出た。

暗い夜道を港に向かって歩いていると、益々自分が何をしているのかがワカラナクなってくる。
一瞬、もう一日居ようかと云う悪夢のような考えがよぎったが、慌てて打ち消した。

さらば、奄美。
船は暗い海に向かって次第に速度をあげ始めた。

バチバチバチーン( ☆∀☆)★★★
ロビーで信じられないくらいの凄い美人と目が合った。視線が絡み合う。
どちらからともなくデッキに誘った。

暗い夜空の下、二人は抱き合った。
そして、激しく、貪るように互いの口唇を求めあった。
彼女の口から嗚咽が漏れる。
あっふう~~~~~ん❤❤❤❤❤
柔らかな乳房を揉みしだき、男は後ろからオラオラオラー(*`Д´)ノ!!!、猛烈に突き上げた。

というのは、
真っ赤なウソでー(・┰・)
うすら寒い二等客室タコ部屋で、横揺れが強くてコリャ酔うなと思い、早々と睡眠薬を飲んでソッコー寝た。

朝8時40分。
男は、再び火山灰舞う街に降り立った。

                  つづく

 
(subject 写真解説&追伸)
ふざけた文章だから(特に本文後半)、よほど削除しようかと思ったが、色々考えた末にそのままにしておく事にした。それはそれで、その時の気分だったり、ヒマだからゆえのお遊びだったりするのだ。

 
【ハタ・オールスターズ】

右からカンモンハタ?、アカハタ、アオノメハタ?、コクハンアラかな?
他にも数種類のハタくん達がいたのに、全員写ってないのはミステイクです。
ダイビング・インストラクター時代は魚の名前は大概わかった。プロなら当然だと思っていたし、ヒマさえあれば図鑑を見ていたからだ。でも、流石に引退して長いと忘れますね。
因みに右上はアオブダイ、左上が海ブドウと海ゴーヤですね。

【スジアラ刺身】
スジアラもハタの仲間。九州辺りではクエ(ハタ科)をアラと呼んだりするから、この名前になったのだろう。
身が透き通るような白さで、お美しい。
ハタ系の魚は、白身で大体はあっさりはしているのだが、噛んでいると奥から上品な脂と甘みが広がってくるのだ。白身魚はしっかり噛むよし。

【鰭長勘八の頭塩焼き】
ヒレナガカンパチは、文字どおり鰭が長いカンパチさんですな。マグロの代用とされることもあるそうで、高級魚です。
後ろに煙草の箱がありますから、巨大さは解って戴けるかと思います。
やっぱり、こういうもんは何人かでつっつくもんです。他にたくさん種類も頼めるしね。
誰か一緒に脇田丸ツアーに行って欲しいもんだね。
女の子なら、なお良し。

【脇田丸店内】

皆さんはもっとワイルドな店を想像していたと思うけど、意外と店内はオシャレなのだ。
右側がカウンター席です。いっつもここにいました。奥、左から2番目か3番目が定席でした。理由はそこが竹さんのだいたい真正面だったからです。

【二等客船タコ部屋】

結構、殺伐しております。
まあ、それも旅情と云うもんでしょ。

 
〈追伸の追伸〉
残念な話です。
このあと何年後かに(3年後だっけ?)、再び奄美大島を訪れる機会があった。そして、当然のごとく脇田丸に行った。
だが、店は様変わりしていた。
まず、あの並べられていた色んな魚が一切無くなっていた。
魚が傷むからと、やめたそうである。あれが、「さあ今日は何食おっかなあ…」と云う楽しみだったし、竹さんにあれこれ質問してオーダーを決めてゆくのも楽しかったのに…。
値段も随分上がっていたし、上がったのにも拘わらず量が減っていた。おまけにメニュー数も少なくなっていた。
「漁師めし」なんかは消えていたし、380円という驚異的な値段だった「刺身定食」も500いくらかになっていた。
スタッフもだいぶ入れ替わってて、竹さんはいたが、オカマでウルトラ年配熟女好きのフクちゃんは既に辞めていた。

それでも、また奄美大島に訪れることがあったら、脇田丸に行くと思う。
食べ物だけが全てではない。そういうものだ。

『西へ西へ、南へ南へ』23 五臓六腑が哭いている

蝶に魅せられた旅人アーカイブス
2012-09-04 17:40:38

(当時のライブ原文のまま)
君らも、つまらん文章に付き合わされてもうウンザリだろうが、こちらはもっとウンザリなのよ( ´△`)
文章も段々ぞんざいになってきてるのよ。
タイトルも、いっそのこと『何処へ、何処へ』に変えたい気分だよ(つд;*)

 

 
       ー捕虫網の円光ー
      『西へ西へ、南へ南へ』

  (第十八番札所・五臓六腑が哭(な)いている)

 
2011年 9月24日

昨日は脇田丸に行かなかった。
いい加減、魚にも飽きてきた。

鶏飯(けいはん)で有名な『てっちゃん』に行く。
最初は鶏飯にするつもりが、座ったら気が変わった。
鶏飯ラーメン(600円)をオーダー。どうしても麺が食べたくなったのだ。

スープは、鶏ガラベースに醤油。 
少し甘い。ニンニクがこころもち入っている。
麺は細麺のストレート。コシは結構ある。好きなタイプの麺だ。
具は鶏の細切り、干し椎茸、キャベツ、アサツキ(葱)、薄焼き玉子の千切り、胡麻。

点数をつければ、68点と云うところか…。
余談だが、意外にも奄美にはソーキソバ屋は一軒しかないそうだ。奄美では、麺と言えばラーメン。家庭では素麺(チャンプルー)みたいだ。
我々本土人は沖縄の文化と混同しがちだが、奄美は奄美なのだ。断じて沖縄ではない。だいたい、そもそ奄美大島って、沖縄県じゃなくて鹿児島県なんだもんな。

竹さん達と行ったスナックに行った。
どうにも淋しかったのだ。
退屈なので、女の子を口説いてみた。
だいぶと錆び付いてはいるが、まあその辺はね…。

一応、携帯の番号を教えて貰った。でも、何だか虚しいよなあ…。アカボシの♀の方がよっぽど難易度が高いような気がしてならない今日この頃。

そして、明けて今日。

昨日、最初に計画したプランでいく事にした。
予報は曇り後雨。
もう、なるようになれと云う感じ。完全にやさぐれてきた。

先ずは小宿に行き、柑橘畑を探すが居ない。
今のところアカボシゴマダラが樹液に来てるのを見たのは、谷村樹液ポイントと小宿のみ。しかも、小宿では一回しか見ていない。
そういえば図鑑に6月以外は樹液にはあまり来ないみたいな事が書いてあったような気がするなあ…。そんな筈あるわけないと思うんだけどなあ…(註1)。

小学校や中学校では、何処も運動会たけなわ。時々、歓声があがる。みんな楽しそうだ。
今日は日曜日なんだね。今や曜日感覚も熔けてしまっている。

10時に根瀬部に着いた。
空は次第に晴れてきた。
他に誇るべきものはそうないが、この晴れ男振りだけは自慢してもいいんじゃないかと思う。

今日の便で鹿児島に戻るつもりだから、もう迷いはない。躊躇せず、ネットを振る。
ツマベニチョウ、ナガサキアゲハ白♀、スミナガシ、イワカワシジミ、アマカラ(アマミカラスアゲハ)、アカボシゴマダラ♂etc…、バンバン完品が採れる。
だが、唯一つだけピースが足りない。そう、アカボシゴマダラの♀だ。

【アマミカラスアゲハ♀】
(アマカラの新たな画像が出てきたので添付です)

ここ数日で、いつの間にか雑草だらけのポイントに自然と道が出来てしまっている。
ザ・アカボシロードだ。

近隣のおじー、おばーとも、すっかり顔馴染みになった。

『今日は、どうね?』
『あきまへーん。』

12時半。待つ事にも厭き、周辺を探索することにした。
グァバの樹(3日前にスミナガシが来ていた)の近くで♀が翔んだ。いきなりで対応出来ず、茫然と見送ってしまう。見逃し三振。(○_○)死んだ…。

メインポイントに戻る。
1時前、いつも現れる暗い空間に判で押したように♀が登場。
鬼神の如くダッシュして、クワノハエノキに止まったのを迷わず横振り❗

鮮やかに決まったが、ボロ♀。
(T_T)なして~。

移動のリミット2時半前に、再びチャンスが訪れた。
毎度毎度のお馴染みの展開かよ( ̄。 ̄)
どうしてこうも毎回はかったかのように帰る間際ギリギリで、フィクションみたいな現れ方をするのだ。

今度は、完品かも…。
迷わず『五臓六腑の矢を放とう❗』と叫んで空中で捉えた。
Σ( ̄皿 ̄;;オラオラオラオラー、まあまあ天才をナメんじゃないよ❗❗

ガアーΣ(-∀-;)ーン❗
やや擦れてるし、翅も少し欠けている。

(ノ_・。)もう、いいや。この辺りが限界。もう赦してくれ。何度やっても同じだ。縁なしって事よ。
あかざき公園に寄って、さっさと帰ろう。
8時20分の船に乗って、この島を脱出しよう。

3時過ぎ、天気は曇ってきた。
♂が松の木でテリトリーを張っているが、見送るのみ。もう、オスはいらん。それにこちとら、朝から何も食ってない。あんたを採る体力はもう残ってないよ。

どうせ、此処にメスが来る確率は低い。近隣を捜索することにした。まだしも可能性はあるだろう。

いた❗、♀だ。
ふわりふわりと優雅に頭上を飛んでゆく。
目線を切らずに追い掛ける。多分、最後のチャンスだろう。見逃すワケにはいかない。必死で追走する。

やがて、木陰にすうーっと降りてゆくのが見えた。
そして、樹の幹に止まった。
何の木かは分からないが、きっと樹液が出ているに違いない❗

だが、止まったのは枝のYの字の部分。そんな殺生なあ…(T^T)
しかも、下は萱のブッシュで自由に網が振れない。

ゴチャゴチャ言っても始まらない。
やるっきゃない。トライあるのみ。

スコーン➰
ヽ( T▽T*)ノ 無理ー。
採れん。あんなとこ、採れるワケあるかーい。

その後、何度も舞い戻って来たが、イージーチャンス無しで、悉(ことごと)く変な所に止まる。おまけに敏感。
ヤケクソ駄目元で挑むも、外しまくる。
気がフレそうだ。

午後5時半。
気がつくと日も落ち、辺りはいつしか薄紫色に染まっていた。
人っ子一人いない寂しい風景に茫然と佇む。

五臓六腑が、哭いていた。

                 つづく

(subject 写真解説)

【鶏飯ラーメン】
よくよく考えてみれば、飯も入って無いのに「鶏飯ラーメン」って変だよね? 知らない人なら、とんでもないものを想像するかもしれん。飯とラーメンがゴチャ混ぜのネコめし的なヤツとかさ。
因みにラーメンには入って無かった(と思う)が、鶏飯には定番としてパパイヤも入っているんじゃないかな。何となくそれも変ちゃ、変。あっ、そういえぱ粉末のミカンの皮も入ってるぞ。意外や意外。鶏飯って、結構アグレッシブな食い物なのだ。
鶏飯。店にもよるがあっさり雑炊みたいで大好きです。奄美大島に来て、鶏飯を食わないヤツはアホだ。

【ザ・アカボシロード】
毎日通ううちに、ただの草叢にいつしか何本もの道が出来てしまった。
アカボシ巡礼の道だ。
随分と詣でましたなあ…。

【アカボシ♀】
もう、こんなもんで勘弁してくれ。

一見、綺麗な個体に見えるが、上下重なりあった部分の下翅が少し欠けている。
展翅すると、どうしても翅の破れは少しでも気になる。蝶は左右完全なシンメトリーでないと美しくないのだ。

こないだ修復したのは、多分この個体が母体だな。

という事は、その前に採った新鮮だけど上翅がイッちまってた個体も修復できるってことだな。
探そう~っと。

(註1)アカボシゴマダラと樹液
樹液好きの蝶なら、いつの季節でも樹液には来る。当たり前だ。主たる餌だもんね。
記憶が朧ろで、どうやら当時はトラップと樹液の情報を混同してしまっていたようだ。トラップが効くのは、個体数の多い6月だけらしい。
実際、アカボシには全くトラップに寄ってこなかった。もっとも、ワシのトラップの効力レベルが低かったという可能性はあるけどさ…。

追伸
冒頭の一文を見ると、興味深い。
書いた本人はすっかり忘れているが、当時は相当に苛立っていたのが解る。
感情ってのは、時間が過ぎれば忘却の彼方なんだね。その意味では、普段から日記はつけといた方がいいのかもしれない。まあ、自分には無理だけど。

『西へ西へ、南へ南へ』22 無情の雨に

蝶に魅せられた旅人
2012-09-02 01:09:12

       ー捕虫網の円光ー
      『西へ西へ、南へ南へ』

     (第十七番札所・無情の雨に)

 
2011年 9月23日

もう、自分が何をしてるのかも解らなくなってきた。

8時前に起床。
本日の予定は午前中に柑橘畑にアカボシが来ると云う情報を頼りに芦花部に行き、昼過ぎに根瀬部へ、2時過ぎには朝仁に移動すると云う計画だった。
だが、計画なんて所詮計画に過ぎない。

予報は曇り時々雨。
知らん、何とかなる。

9時半に芦花部に着いた。
山越えの思った以上に険しい道だった。
しかし、良さげな場所が見つからない。

空を見た。
気が変わった。
勘で動く。
北に行こう。
多分、その方が天気はもつと読んだ。

が、山越えの長雲峠ルートは土砂崩れで寸断。否応なしに大回りの海岸線の道を走ることになった。

大潮だろうか、潮がかなり引いている。
ちよっとした奇観だ。剥き出しになった岩々が古代恐竜の背骨のように見える。

寒い。
防寒、防風の為、奄美ダイソー(100円ショップ)で買ったぺらっぺらの雨合羽を着て走る。
風に千切れそうな感じが、風を纏っているようでキリッと心が締まる。悪くない気分だ。

遠回りになったが、前向きに考えよう、本来ならこういう道を飛ばすのは好きだ。フルスロットルで駆け抜ける。
乗れてる時は、乗用車にも絶対抜かせん(`Д´)ノ❗
ストレートで車間を詰められても、コーナーで再び差をつける。
ほれほれ~Ψ( ̄∇ ̄)Ψ、ほれほれ~Ψ( ̄∇ ̄)Ψ
乗用車の人よ、(
`Д´)イライラしなはれ~。

アギャ、ぶぎゃわっ!Σ(××;)❗
ギシャジャミジャミー!Σ(×
×;)❗
一瞬、何が起きたのか解らなかった。

どうやら偶然トンボが耳とメットの間に挟まったようだ。そんな事、あるかね❓
自分の発したワケのわからない声に、思わず笑ってしまった(^_^;)

岬を抜けたら、勘は的中。北側の空は明るい。
しかし、やって来た背後は真っ黒だ。いつ追いかけてくるとも知れぬ無気味さで広がっている。

赤尾木にチラッと寄ってみたが、やっぱり知名瀬と同じくアカボシゴマダラの姿は皆無。
この有名ポイント、二つともクソだ。今後、しみったれ芋ポイントと呼ぼう( ̄^ ̄)

11時過ぎに谷村樹液ポイントに着いた。
だが、樹液にいたのは前に来た時にもいたボロ♂のみ。勿論、ムッシング。

待ったが、変化なし。
正午時過ぎには、つまんなくなって移動する。
アカボシはダメだったけど、ビシッと赤紋が入ったアマカラ(アマミカラスアゲハ)の、そこそこ鮮度の良い美しい♀が採れたから、まっいっか…。
カタチ的には無駄骨ではなかったから、判断としては正解でしょう。

本来ならそのまま蒲生崎に行くところだが、まだ時間もあるし、だいち同じ場所にとどまるのには厭きた。
左岸から右岸へと横断し、空港側の道を北上する。
アカボシの記録のある節田、宇宿、笠利、用と回るが、成果なし。
唯一の成果は、リュウキュウムラサキの大きくて綺麗な♀が採れた事くらい。

2時過ぎに蒲生崎に到着。
今日はずっと薄日の射すまあまあの天気だったが、ここにきてどんよりと雲が垂れこめてきた。

アカボシゴマダラのベストポイントに行く途中、やや高い枝先に触角を葉先から出して止まっているのが、たまたま1頭見えた。
面倒臭いが、一応網に入れてみる。

ボロだけどえらくデケえなこの♂。と思ってよく見たら、あれっ!?、お腹が萎んでいるので気付かなかったけど、こりゃ♀だわ。
何だかなあ…(*v.v)。。。

と思っていると、別な♀が頭上高くを通過して行った。羽は破れていない新鮮そうな個体に見えた。
慌てて追いかける。だが、止まらずに山の向こうに消えた。
何だかなあ…(*v.v)。。。

退屈なので、フェリー会社に電話してみる。
次の大阪行きのフェリーは、30日だと言われた。
何だかなあ…(*v.v)。。。

いい加減、ウンザリだ。
いくらアホでも、あと1週間もいられない。
飛行機でも何でもいいから、とっとと大阪に帰ろう。一刻も早く奄美の檻から脱出しないと、鹿児島県人になっちまいそうだ。でも、それはそれでいっか…。

午後3時。
無情にもテリトリーを張る時間になって、小雨が降りだした。
ますます、何だかなあ…(*v.v)。。。

小雨は10分程で上がったが、更に気温がグッと下がった。これじゃ、♂さえ翔ばない。
何だかなあ…(*v.v)。。。

今日は何かアカボシの完メスが採れそうな予感があったんだけどなあ…。やっぱ、根拠のない希望的予感じゃダメだね。

4時。プッツリと気力も切れた。
これ以上待ったところで期待できない。より天気が悪くなる前に谷村樹液ポイントに寄って帰ろう。この精神状態でズブ濡れになったら、最低最悪の気分になるのは明白だ。

道すがら、谷村樹液ポイントもどうせアカボシは居ないだろうし、面倒臭いからスルーしてやろうかとも思った。
けど、一応行ってみようと思い直した。一縷の望みでもあるのならば、その可能性を放棄してはならないと誰かが言ってた。
敗北を認めるまでは、敗北ではないとも。

4時半。谷村樹液ポイント到着。
遠目に、また同じボロ♂が同じ場所に止まっているように見えた。キミ、どんだけ食いしん坊やねん❓

しかし、近付いてみるとデカイ。
えっ(_)!?、♀ですか!?
しかも、完品っぽい((((;゜Д゜)))❗❗❗❗

やっぱ、俺の予感は正しい。
ここで会ったが百年目。祈りを込め、全身全霊、五臓六腑の矢を放とう。

アドレナリン噴火。
クワッとマインドに🔥火が入った。
慎重に近づく。

あっ( ̄□ ̄;)❗❗
あわわわわ…、警戒して翅を開いた瞬間に判ってしまった。完品かと思いきや、反対側の翅の上がザックリいっちまってる。
(´Д`)へにゃりんこ。一挙に脱力した。
緊張することも無く、ネットを幹に向かって強めに叩く。
彼女はへなへなと網の底に落ちた。

美しくて、大きい。
複雑な気持ちだ。
新鮮な個体だけに勿体ない。
o(T□T)o忸怩たる想いの超絶ガックリ。
何だかなあ…(*v.v)。。。。

この辺りが限界ってところだろうなあ…。
運も無いし、流れも悪い。

宿に着いて間も無く強い雨が降り始めた。

                  つづく

 
(subject 写真解説)

【アマミカラスアゲハ♀】
見事な♀だ。好みは青いオスだが、これだけ赤紋が綺麗に出ている♀だと、♂なんかメじゃない。

【リュウキュウムラサキ(琉球紫)】
多分♀。メスはそんなに数多く採った経験があるわけでは無いが、今まで採った中で彼女が一番美しい♀かな。しかも、一番の大型の個体。
リュウムラさんは一応迷蝶と云う扱いになっている。春、夏はあまり見掛けなくて、秋になって急に個体数が増えるので土着には至っていないと云う見解なのだろう。
だいたいは台湾やフィリピン辺りから長い旅をして飛来するのだが、他からも飛来する。だから、♀には無数の型が有り、斑紋がバリエーションに富んでいて面白い。
冬が厳しくて越せないと死滅する蝶なのだが、毎年懲りずに飛来しやはります。生き物の必死に新天地を求める姿は、時に人の心を強く震わせる。

【アカボシゴマダラ♀】

こっちから見ると、完品。
でも、反対側から見るとコレ。

(ToT)ノオ━━━━━━━━ ❗

美しい♀なのに、ホントに勿体無い。
今回は上の翅がイってますが、他は下翅が損傷している。複数の♀を合体させれば完璧な♀の標本ができるのだが、今回はそんな事は絶対にしたくないから、帰ってもしない。
フェイクは何処まで行こうが、どう誤魔化そうが、所詮フェイクに過ぎない。

【アカボシゴマダラ下♂と上♀】

並べると、♂と♀の大きさの違いが解るでしょ?
標本にすれば、上下の羽が重なり合っている部分が広がるので、より大きさの差異が明確になります。

大きさ以外にも♂♀の違いはあって、蝶の形が全体的に♀の方が丸い形のデザインになっていて、ふくよかだ。その辺は人間とも共通するところがある。
この特徴は他の蝶でもそうなんだけど、きっとメスの方が曲線的なのは何か意味あるんだろうね。何でかは明確にはワカンナイけど…。
人間でも出産の為に尻がデカくなるのは解る。健康な子供を産めるからだ。しかし、全体的に曲線になるのはよく解らない。丸くてふくよかな方が蝶のオスでもそそられるのかな?

アカボシゴマダラって、気のせいかゴマダラチョウより少し翅が薄いような気がする…。だから羽が破れやすいのかしら?
私見では、鮮度の割りにはメスの方がオスより破れている率が高いような気がする。
それはきっとメスはわりと藪を縫うようにして翔ぶ性質が関係しているのだからだと思う。
何か完品が採れない言い訳がましいけど…。

5年後にして、いくつかの♀を合体修理させてのニセ完品の製造なのだ。自分も変化しているのだね。

『西へ西へ、南へ南へ』17 梔子の妖精

蝶に魅せられた旅人アーカイブス
2012-08-27 19:09:05

      ー捕虫網の円光ー
     『西へ西へ、南へ南へ』

  (第十三番札所・梔子(くちなし)の妖精)

 
2011年 9月19日

暴風が吹き荒れている。
だが、大したことない。石垣島の時の屋根が取れんじゃねぇの?Σ(T▽T;)というよりかは全然マシ。
あん時は、恐くて死ぬほど酒飲んで寝たんだよね。

仕方なく暇潰しに沖縄本島真夏編『ニライカナイの女王』の最終回を書く。
あーだこーだと文章をこねくりまわしてたら、5時間も掛かってしまった。低能な文章を書くのにも、結構それなりに時間がかかるのだ。

午後3時前、一段落ついたし、雨も上がったので出る。
風はまだ強い。

取り敢えず、一番近いらんかん山へ。
木々が風に煽られ、殴られぱなしのボコボコにされている。
風速は15m、時に20mくらいはあるだろう。
流石にアカボシも翔んどらんだろうと思ったが、1頭だけ翔んでいた。
アンタ、馬鹿ね。だけども偉いね(〃^ー^〃)
今や、そんなアカボシゴマダラに愛を感じるよ。

風がどんどん強くなり、身の危険を感じて4時前には山を降りた。

いつものように帰る道すがら、イワカワシジミを求めて民家の梔子(くちなし)をチエックする。
ここの梔子は立派である。既に肉眼で穴が穿いている実を3つ確認している。しかし、まるで手が届かない。いつも指を咥えて見るのみ。
クチナシって、生け垣とか丈の低いイメージがあるけど、本来はちゃんとした立派な木なんだね。もしかしたら、都会でよく目にするのは園芸種で大きくならないように品種改良されているのかもしれない。

どうせ今日は暇だ。
この際、周辺をじっくり探してみよう。他にもクチナシの木があるかもしれない。

イワカワシジミは奄美以南に棲息し、蝶好きには人気が高い憧れの美蝶だ。
裏面は日本には他に類を見ない綺麗な翡翠色で、優雅な長い尾っぽを持ち、南国の妖精という言葉がピッタリの可愛らしい蝶だ。

周辺を捜し始めて直ぐ、驚いて頭上に飛び上がった個体に出会った。イワカワさんだ。八重山や沖縄本島で採集済みだし、特徴的な姿なので他と見紛うことはない。
しかし、(^。^;)あらら…。折からの強風に煽られ、飛ばされていってもうた。

もしやと思い、目を転ずれば梔子の樹が目の前にあった。丈も高くなくて手頃な大きさだ。

調べてみると、卵が着いている実(註1)があった。

穿孔がある実(註2)もかなり見つかった。 だが、どれも中身は空なような気がする。内部に生きているモノの気配が感じられない。

立派なクチナシのある民家に戻ると、タイミング良く家のおばーが帰ってきた。事情を説明する。
おばーは、おじーを呼びに行った。
再びおじーに事情を説明したら、わざわざ高枝切りバサミを持ってきてくれた。
親切に感謝なりm(__)m
無事に4つ程良さげな実を落として貰った。

結局、その後イワカワの姿は見れずじまい。
まあ、天気は悪かったが、悪いが故に楽しめたかな。
ケッ( ̄ヘ ̄メ)、明日、こやつとアカボシの♀を絶対シバいてみせるぜよ。

今日も判で押したように居酒屋脇田丸へ。

いつものようにアバスの唐揚げを頼みスタート。
相変わらず、下手な河豚より数段旨い。

二品めは、昨日頼んだ漁師めしをご飯抜きでオーダー。海が時化っぱなしで、魚が入ってこず、黒マグロをふんだんに使ったスペシャルなものになった(490円❗)。完全にトロ鉄火状態。量も多い。

【漁師めし】

次に板さんに薦められたのは、アマミウシノシタ(舌ビラメ)のカルパッチョとグルクン(タカサゴ)の一夜干し。
迷う事なく、タカサゴ❗
カルパッチョって、何か中途半端で信用ならない野郎なような気がしてならない。ホントに美味い魚なら、普通の刺身で勝負せえやι(`ロ´)ノ❗と思うのである。

今日も呑んだくれて、夜は更けてゆく。
生ぬるい南国の夜風が心地よい。

                    つづく

 
(subject)

【イワカワシジミ Artipe eryx okinawana】

(裏面)
(出典『日本産蝶類標準図鑑』。標本はあるけど、探すのが面倒なので図鑑から画像を拝借。)

日本では奄美大島から南、与那国島にまで分布する南方系の蝶だ(現在は屋久島にも生息するが放蝶由来)。
奄美大島のイワカワシジミは亜種にこそなっていないが、かなり特徴的な姿をしている。表の前翅と後翅の亜外縁に白斑列にあらわれるのだ。特に第1化の春型の♀の下翅は顕著で、気品があって美しい。

国外ではインドからインドネシア、中国、台湾などの東洋熱帯区に広く分布する。しかし、日本でも個体数は多くはないが、さらに少なくて珍品とされているようだ。
とはいえ、ラオスとかタイでちょこちょこ採っているから、ホントなのかなと思う。因みに日本のイワカワシジミより遥かにデカイから、とても同種とは思えまへん。

(2014.4.7 Laos oudmxay)

これじゃ、大きさワカランか?
でも、しっぽ(尾突)が長いのは解るかと思う。しかも太くて白いし、白帯の領域も明らかに広い。

他にも画像があった筈だから、探してみる。

(2016.4.28 Laos oudmxay )

この画像なら、大きさも解って戴けるのではないかと思う。とはいっても、蝶好きな人しかワカランか…。

これは同日に採った別個体。天女のように美しいね。
どうやらこの辺(インドシナ半島)のクチナシの実は大きいから、その分だけデカくなるらしい。噂では超バカみたいなデカイ亜種?近縁種?がいるらしい。
意外だったのは、何れも川っぺりに吸水に来た個体だった事だ。そういえば、タイでもそうだった。イワカワが吸水に来るなんて日本ではほとんど聞いたことが無かったから、おおいに驚かされた記憶がある。確か、画像の個体は全て3時以降夕方近くにやって来たような覚えがある。
話は全然逸れるけど、この時はビヤッコイナズマEuthalia byakkoとパタライナズマ Euthalia patalaをひたすら待ってたんだよね(パタラに関しては採集記があるので、興味のある人は探してみてね)。

【イワカワシジミの卵】
イワカワシジミはクチナシの実にしか卵を産まない。
幼虫は葉っぱではなく、実の内部を食べて成長するからだ(実のない時期は蕾や花を食べる)。
普段、我々は生け垣や植え込みとして植えられる事が多い園芸種のクチナシしか目にする機会はない。6月に良い香りのする白い花を咲かせるコレね。

(出典『花図鑑』)

オオヤエクチナシ(英名ガーデニア)という品種らしい。何と実はつけないそうだ。って事は、コヤツではイワカワシジミは飼育できないってことだね。

多分、野性種はこんな感じの花だったかと思う。

(出典『デハ712のデジカメ日記2017』)

野性種の本来のクチナシは意外な程に大きい樹だ。大木になることはないとは思われるが、低木とはいえ、クチナシの概念を改めざるおえないような立派な樹である。少なくとも腰丈くらいの灌木と云うイメージは捨て去るべきだろう。だから、最初に八重山に行った時はクチナシの木を見つけるのにかなり苦労した。まさかそんなにデカい樹とは思わなかったからだ。
何でも人間が自分達の都合のいいように作り変える。そういう事だ。

【そして、その穿穴】
ここに幼虫が食い込み、内部を餌とするのだ。蛹化もこの中で行われる。これは穴が大きいので、既に脱出して蝶になっている可能性が高い。

不思議な事にクチナシならば、どの木でも実がなっていると云うワケではない。実のなる季節も特には決まっていないようだ。
又、実が有ったとしても卵や幼虫が必ずしもいるわけではない。様々な細かい条件が揃わなければならないのだろう。いつも驚かされるのだが、自然界の法則は複雑怪奇である。
もっとも、そんなのは所詮ダーウィニズムを筆頭に人間側からのエゴイストな解釈にしか過ぎないのかもしれない。蝶本人たちにとってはごく当たり前の事で、きっと不思議でも何でもないのだろう。

【漁師めし=スペシャルなめろう】
漁師めしとは、ようするに生の魚を大葉や葱、生姜、胡麻、味噌を加えて細かく叩く『なめろう』の親戚みたいなもの。
海苔が入るところが奄美風だったり、脇田丸風だったりするのかな?

 
追伸
結局、今回はけっこう文章に手を入れた(後に海外でのイワカワシジミの知見も増えたしさ…)。
出来るだけ当時のままを尊重して手を入れないようにしているのだが、元々自分の周りにしか送っていないような文章だっただけに、原文ではかなり説明が割愛されている。そもそも説明が嫌いだし、顔見知りに配信していたからコチラのキャラ知ってるんだから行間読めよ、解んだろ?というスタンスだったのだ。でも、今は不特定多数を相手に配信しているので、そういうワケにもいかないんだよね。
まあ、それが良いのかどうかはワカンナイけど…。
説明の多い文章は、だいたいは駄文だかんね。

『西へ西へ、南へ南へ』11 ブルーの肖像

ー蝶に魅せられた旅人アーカイブスー
2012-08-15 19:33:53

      ー捕虫網の円光ー
   『西へ西へ、南へ南へ』第11話

  (第八番札所その2・ブルーの肖像)

ブルーの残像が脳裡に残っている。
自分の不甲斐なさにベソを掻きそうだ。
辛い…。大失恋をした時のような気分だ。
心をどう持ってゆけばいいのかさえわからない。
敗色濃厚。溜め息が何度も洩れる。

正午になった。
空を見ると、帰るべきだと思った。

だが、男は見た蝶を採れないと云うのが許せない。
見ても物理的に採れないノーチャンスの場合は別として、可能性がある場合は何があってもターゲットは落とす。それが男の矜持だ。
今まで、その日のうちにリベンジできなかったのは、キリシマミドリシジミくらいだろう。
現在、ベニモンカラスシジミも3連敗中だが、一度も見たこともないから採れるわけがない。だから、そう悔しくもない。
だが今は、既に何度もチャンスを逃している。
このままおめおめと帰るわけにはいかない。それは、敗北を認めると云うことだ。心が折れた儘で大阪に帰るのは御免だ。

1時40分までリミットを延ばした。
これがアカボシがテリトリーを張る時間に間に合うギリギリの時間だ。修行僧を続けよう。

マジで両手を合わせて、神と仏に祈った。
声に出して、『神様、仏様、お願いですから、もう一度わたくしにチャンスをお与え下さい。』と手を組んで頼んだ。他人から見たら漫画のような光景だが、本人はいたって真剣だ。

1時13分。
緑の間から待望の黒い蔭が現れた。
周囲を弧を描くように滑空している。
だが、様子が今までの奴とは少し違う。飛行時間が長いし、低い。男のすぐ傍らをスーッと通過して行った。違う個体かもしれない。
それが二度繰り返されたから、よっぽど空中で勝負をつけてやろうかとも思った。だが、長竿では素早く振る自信が無かった。
らしくない。きっと慎重になり過ぎているのだ。心が縮こまっている証拠だ。

なかなか止まらない。
止まってくれ、お願いだから止まってくれ。祈りにも似た気持ちで黒い影を目で追う。

止まった❗
あ~(´Д`)
だが、あの幹の樹液ではなく、頭上5mくらいの枝の間に止まった。

(・。・;ほよ❓、何してるだすか❓
見たこともない行動に戸惑う。
そのうち枝を歩き回り始めた。そして、暫くして止まった。
どうやらそこからも樹液が出ているようだ。
でも、あの位置では枝が邪魔になって、かなり難易度が高い。
真下にしゃがみこみ、どうしたもんかなと思案する。
このまま状況が変わるのを待つか、駄目元で勝負をかけにゆくかのどちらかだ。

悩んだ…。
頭の中が破裂しそうだ。
だが、愚図愚図悩んでいる場合ではない。台風が近づいている。天候が急変するのは時間の問題だ。
意を決して勝負にいくことにした。
このまま何もしないうちにプイッと突然消えられたら、激しい後悔で夜も眠れないだろう。
見逃し三振って、ヘタレで最低だ。駄目元でチャレンジして失敗した方がまだ魂は救われる。

何かまるで恋愛を語ってる人みたいである。
中年男の恋の独白みたいで、普通なら笑うところだがそんな余裕はない。

そろりそろりと長竿B・Jを上に伸ばす。
ヤケクソで枝ごと行ったれと思った。

( ̄□||||うわちゃ❗
1mくらい網を近づけたところで、ふわりと逃げた。
(*ToT)止まれ、止まれ、止まってくれ━━。
悲痛に願う。焦燥と緊張で気が変になりそうだ。

(;A´▽`A ふうーい。
よし、何とか3mくらい向こうの枝先に止まってくれた。手前の枝が邪魔だが、さっきよりかはマシだ。これなら採れないこともない。

(;゜∇゜)あちゃー。
またネットを慎重に近づけるが、同じようにふわりと翔んだ。マジですか?

ほっ( ̄▽ ̄)=3
さらに2m程先へと移動して止まった。
今度は邪魔するものはない。存分に網が振れる。
高さは5~6m。テリトリーを張る時と同じように枝先に止まってくれた。葉先から2本の触角が突き出ているのがわかる。
これを逃したら、その場で切腹したくなるだろう。蝶採りなんて即刻やめてやる(=`ェ´=)❗

最初はテリを張っている時のように正面から被せようかと思ったが、状況が違うと思い直した。ここのスミナガシはそんなアホではない。敏感だ。横から払おう。

高さを慎重に合わせる。
息を止め、万感の想いを込めて渾身のスイングを繰り出す。
トゥリャ━━━(*`Д´)ノ❗❗❗
💥横殴りになぎ倒し、マトリックス的にそのまま背後に向かってネットを流す。
手を離し、そのまま体を捻り反転する。
スローモーションのように網が真っ直ぐに落ちてゆく。
手応えはあった。
下は平らなアスファルト。横から逃げられる心配はない。

男は、ゆっくりと近づいていった。

終わった…。
渋いブルーが中で暴れている。
男の体が一挙に弛緩した。と同時にその場にヘタり込みそうになる。

やっぱり、本州のものより明るくて蒼い。
右端の上あたりが擦れているが、この際関係ない。
粋(いき)で美しい。

敗北をすんでのところで免れた安堵と勝利の陶酔感がジワジワと背中を這い登ってきた。
タイミングを図ったかのように強めの雨が降り出した。
男は慌てて役に立たなかったトラップを回収して、バイクのエンジンをかけた。

見上げると、風雲急を告げるように黒い雲が物凄いスピードでこちらに近付いて来ていた。

                   つづく

【追伸】
ラッキーな事に、後日この個体は♀と判明した。
この蝶、♂はそれなりに採れるのだが、♀は滅多に採れないのだ。

【再録にあたっての追伸の追伸】
あれから♀は、石垣島で1頭、沖縄本島で1頭、台湾で数頭採っただけだ。
本州では、その後現在(2017年4月)に至るまでいまだに一度も採った事が無い。あれだけ♂がいる生駒山系でさえも、♀はほとんど見たことがないのだ。スミナガシの♀って、謎だよなあ…。
今年は枚岡でトラップでもかけてやろうかしら。

『西へ西へ、南へ南へ』第9話

蝶に魅せられた旅人アーカイブス
2012-08-11 20:12:01
  

      ー捕虫網の円光ー
     『西へ西へ、南へ南へ』

(第七番札所・地獄の沙汰も崖次第、およよ)

2011年 9月14日

天気予報では曇り時々雨だったが、昨日と同じような天気だ。
台風は、どうなったんだろう?
大方、熱帯低気圧にでもなったんだろう。人生前向きなのだ。

本日の狙いもアカボシ、アマミカラスの♀狙い。
あと、書き忘れていたが、日本一美しいスミナガシ(墨流し)も狙いにいくつもり。奄美のが一番蒼っぽい群青色をしていると言われているのだ。

南西に針路をとる。
先ずは知名瀬だ。昨日、尊敬する蝶の先逹である森さんに電話をしたら、前は村内に♀がそこそこ翔んでたよとアドバイスされた。
谷を詰めれば、スミナガシもいるようだし、イワカワシジミもクチナシを丹念に探せばいるという。

午前10時、知名瀬着。
着いてすぐ、らしきものが翔んでいたから楽勝だと思ったら、クソ普通種リュウアサ(註1)だった。紛らわしい…(-“”-;)
アカボシの♀は、毒のあるリュウアサに擬態しており、ふわふわした翔び方までそっくりに似せているらしい。

日陰の無い村内をぐるぐる回っていたら、すぐにバテバテになった。
一切、姿なし。12時まで三角ケースの中身は空っぽ。
それまで無視していたが、思い直してカバマダラを5つほど摘まんで奥へと向かう。

【カバマダラ】

だが、大したものはいない。
仕方なく尾根近くまで詰めた。

アマミカラスが乱舞している。
あふれる太陽光を反射して、青い翅がハッとするくらいに美しい。
しかし、採っても採っても♂だらけで、そのうちウンザリしてきた。

予定では尾根まで行き、中央林道を南下して三太郎峠でスミナガシを奪取して、上手くいけば東側の西仲間で再びアカボシにチャレンジと云う算段だった。

だが、奄美中央林道は想像とは違い、完全なるノン・アスファルト。所謂(いわゆる)、ただの山道だった。
しかも道は石だらけの悪路である。
そのうち良くなるだろうと思っていたら、どんどん悪くなり、終いにはブッシュだらけの細い登山道になった。
ハブのお好きそうな環境で超ビビる(|| ゜Д゜)
こんな所で咬まれたら、麓に下りる迄に毒が回り、哀れ絶命ご臨終ちゃんになるかもしれない。
大体コブラでもガラガラヘビでも、まず威嚇があるらしいのだが、コヤツはいきなり飛び掛かってくるらしい。だから、被害も多いと云うことだ。

取り敢えずこのまま三太郎峠に行こうとしたら、15㎞進んだ地点で「崖崩れにより通行止め」と云う看板が出てきた。
悪路で時間を大幅にロスしているのに最悪だ。仕方なく西側の海岸に降りるルートを選択する。
道はアスファルトになった。ラッキーと思いきや、濡れた落葉が降り積もっており、滑りやすくてまた一苦労。多分、通る車もほとんど無いのだろう。

5㎞ほど行ったところで、(◎-◎;)およよー。
また崖崩れ通行止めの看板に突き当たった。これで津名久にも降りられなくなった。
困ったことには、地図を見ると更に南のフォレストパークまで行かなければ海岸の主要道路には降りられないようなのだ。
去年の台風の大雨被害の爪痕が、今もって色濃く残っているんだね。特に南部が酷いようだ。そういえば、幹線道路さえも至るところ片側通行だった。当然、山のなかは修復も後回しなのだろう。これで計画は完全に崩壊した。

走っている途中、目の端に蒼黒いものが入った。
うわっとととっとっとーΣ( ̄ロ ̄lll)、急制動する。

木の幹に、逆さに止まっている蝶がいた。
スミナガシだ❗
どうやら樹液に来ているようだ。慌ててネットを組み立てる。
羽をしきりと開閉している。綺麗だ。
確かに本州や八重山のものよりかなり蒼い。

下からいくか、横からバチコーンとカマすかギリギリまで躊躇した。それがいけなかった。慎重になり過ぎて、ネットを動かす手前で逃げられた。もう数秒早く判断していたら充分採れた筈なのに…。
悪路プラス連続通行止めで心が折れ掛かっていたのが、これで完全に折れた。

もう一度やって来ることを願って待つことも考えた。
しかし、一番のターゲットはアカボシの♀だ。今、山を降りなければ、麓のポイントには時間的に間に合わない。断腸の思いだが、明日またじっくり来ればいいと思った。

だが、一度狂った歯車は戻らない。
どころか、せっかく見つけた新鮮なアマミカラスの♀を焦って力一杯振ってしまい翅を大破させてしまう。
バイクを乗り捨てて、あんなにダッシュしたのに…。
もう1頭採ったが、それも上半分がバッサリ無かった。結局、両方とも逃がしてやった。♀は腹ん中に卵を持っているからだ。殺してしまえば、1頭だけではなく、何百もの生命を奪うことになる。無用な殺生は慎むべきだろう。

メスアカムラサキのイージーチャンスも振り逃がし、ようやくたどり着いたアカボシポイントは、♂しかいないような環境でガックリ。
10分足らずで2頭採り、諦めて根瀬部・知名瀬方面に戻る。だが、着いた頃には日没ゲームセット。
お守りの蝶ライターを忘れたのが、まずかったのかな?…。

夜7時に宿に帰った。
そこで台風の詳しい情報を初めて聞いた。
こちらにノロノロで向かっているという。
うねりが強く、取り敢えず明日の鹿児島行きの船の欠航が決まったらしい。
『明後日の便も多分ダメなんじゃないかな。』と宿の親父に言われた。
マジかよ…( ̄▽ ̄;)

男はスーパー晴れ男だが、実を言うと台風男でもある。
ダイビング・インストラクターだったサイパン時代もしょっちゅう飛行機が欠航になった。
ダイビング・ツアーの前のりで三宅島に行った時も、船が欠航してお客さんが来れずにツアー中止。自身も東京に2、3日帰れなかった。
そういえば、初めて行った石垣島でも帰れなかった。
何れの場合もずっと晴れていたのに、帰る段になっての天候急変だった。
まだある。一昨年は、八重山ゆきの飛行機が飛ばず。
去年は石垣・与那国で直撃を喰らった。
まあ帰れなかったがゆえに、楽しい事も一杯あったし、天気が悪いわりには蝶は採れて、目的はほぼ達成してはいるんだけどね(^^ゞ

今日も脇田丸。

ボトルを入れてしまったせいもあるが、気に入ったし、まだまだ食べていない謎のメニューもある。

今日もアバス(ハリセンボンの唐揚げ)から入った。

(画像、使い回しっす。)

これで三連チャン。
それでも、やっぱり絶品ですな。

ハーシビ(トガリエビス)煮付け(690円)。

潜ってる時も、密かにコイツ旨いんじゃないかと思っていた。
白身で脂が乗っているが、上品だ。味は金目鯛やキンキに近い。

画像は無いが、あとのツマミは以下のものだった。

浅蜊と野菜のかき揚げ(390円)。
カラッと揚がっており、申し分なし。

ティラダ(地物の貝)の煮付け(390円)。
普通に旨い。先っちょに鉤爪があり、見た目は完全にヤドカリです。

油ソーメン(390円)。
所謂、ソーメンチャンプルーの1種。外れのない安心オーダー。

因みにまだ頼んでないが、刺身定食はたったの390円です。嘘やろ!?(^o^;)の値段である。

今日もまた痛飲。
明日は、早いんだけどな…。

                   つづく

追伸

【註1】リュウアサ
リュウキュウアサギマダラの略名。漢字で書くと「琉球浅葱斑」となるのかな。つまり南方系の蝶で、日本では主に南西諸島に分布している。

これは石垣島で、初めて採ったものの1つだ。
標本だけで見比べると、アカボシゴマダラゴマダラに間違うワケはないと思うのだが、飛んでいる時は大きさや飛び方がソックリなのだ。
ワシらでも慣れないと見紛うのだから、一般人には区別がつかないだろうし、天敵の鳥に対しても、それなりに効果はあって然りなのかと思われる。

一応、アカボシゴマダラの画像も添付しておきます。

『西へ西へ、南へ南へ』第7話

ー蝶に魅せられた旅人アーカイブス―
2012-08-09 00:18:25

ー捕虫網の円光ー
『西へ西へ、南へ南へ』

第五番札所その3 脇田丸

 

シャワーを浴びて、晩飯を食いに行く。
雨は既に上がっている。夜空を見上げると、雲間からもう星が瞬き始めていた。
南国のスコールというのはザッと降って、そのあとは急速に天気が回復するということが多い。その逆もまた然りで、晴れていたと思ったら、あっという間に空が暗くなってザアーッときたりもする。
だから天候を読むのは難しい。だが、嫌いじゃない。それもまた南国らしさと思えば楽しいものだ。

店が有りそうな方向に向かって歩く。
5分足らずで居酒屋を見つけた。

『海鮮居酒屋・脇田丸』。
名前の最後に丸とついてあるから、漁船を持ってる店か、もしくは昔、漁師をやっていたオヤジの店だろうか❓
勘で、入ることにする。こういう時は直感に身を任す事にしている。大概はそれで上手くいく。今までさんざんぱら飛び込みで店に入ってきているのだ。その経験値が有れば、そう勘は大きく外れない。

入ってみると、カウンターの手前に多種多様な魚たちが並べられていた。

当たりだ。
間違いなく旨いもんを食わせる店だろう。
アカボシゴマダラも採れたし、スコールを上手く掻い潜って宿に帰ってもこれたし、今日のオイラは冴えている。

当然の如くカウンターに座る。
一人旅ならば尚更のことだ。板前の人たちに色々と訊けるし、さみしさも少しは紛れる。

飲み物の注文を取りにきた店員に訊くと、やはり魚屋経営の居酒屋らしい。ちゃんと脇田丸という船も持っているようだ。

カウンターの隣に並べられた魚を物色する。
漁師経営ゆえ、地魚のオンパレードだ。

南国らしい派手な色の魚たちも並ぶ。
元ダイビングインストラクターだっただけに、南国の魚にも詳しい筈だが、ある程度予想はつくものの特定は出来ない。多分、死んだら体色が変わるものが多いからだろう。

メニューを開く。
(@_@;)何じゃこりゃ⁉
メニューにある名詞が理解不能な言葉だらけだじょー。さっぱりワカラン。

基本的にチャレンジャーな性格なので、あえて未知なるものを攻めてゆくことにする。
現地でしか食えない食材との出会いは、いつも新鮮な驚きを与えてくれる。好奇心を刺激されない旅なんてつまらない。

先ずは、刺身の盛り合わせ(690円)から入る。

ラインナップは地鰹、シビ(キハダマグロ若魚)、シマアジ、地蛸、ソデイカ、地マグロ。
美味い❗❗
やる(^_-)≡★ねっ。

お次は揚げ物でいこう。
揚げ物の項を目でなぞってゆく。
変な単語が目に入った。
(・。・;アバス❓
何じゃそりゃ⁉ 語源さえも想像がつかない。
考えても仕方がないので、すかさず板さんに尋ねる。

板さん曰く、アバスとは奄美大島ではフグの事を指すようだ。でも、トラフグは南の海には生息しない筈だ。となると、別の種類の食用フグなのだろう。でも南の海で食えるフグなんてあるのかね❓
気になるので重ねて尋ねたら、ハリセンボンだと云う答えが返ってきた。
ハリセンボン❓
それって、あのトゲトゲで、怒らせるとパンパンに膨らむ奴だよね❓ダイビングインストラクター時代に、よくオモチャにしてた奴だ。
そんなもんを食うなんて聞いた事がないし、それに食べるだけの量の身があるとも思えない。
ホントかよ(-。-;)❓

まあいい。百聞は一見に如かずだ。そのアバスとやらの唐揚げを頼む事にする。

d=(^o^)=bウルトラ絶品❗
歯を心地好く押し返してくる弾力、淡泊ではあるが、滋味あふれる旨みの奥深さ。下手な河豚よりも数10倍旨いぜ。
しかも、たったの390円だ。

三品目は、シマアジのカマの塩焼き(390円)。
この量とこの旨さで、この値段はオカシイだろうが⁉
(=`ェ´=)何か嬉しくて怒っちゃうぞっ。

四品目は、島雲丹(註1)。
こんな南の海で、食えるウニなんていたっけ❓

さばく前の本体を見せてもらった。トゲが白くて短い。何だか饅頭みたいな形をしている。
板さんが、夏場からこの時期にしか出回らない高級ウニだとつけ加える。

記憶が繋がる。
あーっ、これ見たことあるわ。そういえば、沖縄でも奄美でも水中に転がっとったわ。アレって食えるんだ。惜しいことしたなあ…。

やがて、殻付きウニが運ばれてきた。
普段目にするウニよりも色がかなり黄色い。
ちょい引くが、意を決してスプーンで掬い、人生初の島ウニを口に運ぶ。

ハッ(゜〇゜;)❗、美味いぞなもし。
鹿児島で食った阿久津の雲丹には劣るが、このクオリティーで690円は尋常な値段ではない。

思わず、黒糖焼酎・高倉30℃をボトルで頼む。

魚が旨いのは屋久島までだと思っていたが、認識を改めねばなるまい。

板前の兄さんに色々教えて貰いながらの談笑。
意識がどんどん溶けてゆく。

午前0時前、ヘベレケで撤退。
ボトルキープをして、支払いが5千円ちょい。
恐るべし、脇田丸❗彗星の如く現れた店だな。
頼む、大阪に支店を出してくれ!!
出してくれたら、毎日通う。

店の外に出たら、空はいつしか満点の星空になっていた。明日も晴れそうだ。
南国の生暖かい風が、そよと頬を撫でて通り過ぎていった。

 

追伸
結局、二回に分けた事により、オリジナルの文章に大幅に手を入れる事になった。組み替えもしてるし、加筆もかなりした。記事を移すのって思った以上に大変だ。

(註1)島雲丹
島ウニは地方名で、本当の名前はシラヒゲウニという。沖縄では7、8月の夏場に出回り、高値で取引されるらしい。
因みに本文に画像が無いのは、舞い上がって写メを撮り忘れたからです。
一応、ネットで検索した画像を添付しておきます。


(出展『ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑』)

『西へ西へ、南へ南へ』第6話

蝶に魅せられた旅人アーカイブス
2012-08-09 00:18

 
    ー捕虫網の円光ー
 『西へ西へ、南へ南へ』

第五番札所その2・流星レッドスター

 

市の職員二人が下から登ってきた。
リュウキュウマツ(琉球松)の調査だと言う。
確かに赤茶色の松が多い。こんな所にも松枯れの原因、マツノザイセンチュウがいるのか…。
詳しく訊いてみると、媒介を助けるマツノマダラカミキリと共に台湾から入って来たと説明してくれた。

カミキリムシの飛翔力ではこんなところまで翔んでこれるわけもない。多分、貨物の松材か何かに紛れて入って来たのだろう。
離島は外来生物が入って来ると、在来種が駆逐され、簡単に絶滅しやすい。そして、その原因のほとんどは人間様だ。

空を見上げる。
雲行きも怪しくなってきた。多分絶対、南国の雨の洗礼がやって来る。
もう一度だけ詔魂碑まで上がって駄目なら、とっと宿に帰ろうと決めた。体力もそろそろ限界に近い。

登ってすぐ、頭上に気配を感じた。
松の上空をアカボシが流れるように滑空している。
やっとテリトリーを張り始めた❗
鮮やかな赤がよく目立つ。

あたふたと網を組み立てる。
(~O~;)うわっ!、だが無情にもポツポツと大粒の雨が落ちてきた。(゜〇゜;)え━━━っ、 嘘やん!
畜生、スコールがやって来たようだ。慌てて樹下に逃げる。

OH~、神よ、毎度毎度のことながら、この期に及んでまたしても我に試練をお与えなさるおつもりか…。
一挙に状況は逼迫してきた。雨が止むのを心から祈るしかない。止まないのなら、惨敗決定だ。

思いが通じたのか、5分余りで再び晴れ間が顔を覗かせ始め、やがて光が射した。
と同時にアカボシも飛び始めた!!
南国の不安定な天気だ。再び雨が来る前に決着をつけねばならない。

採り方は、近縁の国蝶オオムラサキと変わらない筈である。ならば楽勝だ。網を正面からそっと被せればいい。落ち着いていこう。

しかし、オオムラサキと違って、そんなにバカ蝶じゃなかった。
枝先に止まるが、結構敏感で網を近付けようとすると直ぐに翔んでしまう。三、四度、同じ事が繰り返される。

(-“”-;)クッソ~、残された時間はそうないぞ。いつまた陽が陰り、雨がやって来るとも限らない。
えーい、もう今までみたいにゆっくりと慎重に網を近付ける方式は諦めた。
心頭滅却、ビシッといったるわい(`へ´*)ノ

目測およそ頭上約6m。止まって、一拍おくかおかないかのうちに反応して、間髪措かずに網先を走らせる。
(=`ェ´=)ウリャ!!、腕の筋肉がしなる。
バサリと正面斜めから網を振り被せ、そのまま強引に空間へと逃がす。そして、ホームランを打った時のフォロースルーが如く手から竿を離す。
決まった…。手応え充分の感触がある。
網先を敢えて捻らなかったので、風を孕んでふくらんだ網が真っ直ぐ地面に向かってスローモーションのように落ちてゆく。

地面に落ちたことを確認して、ゆっくりと歩いてゆく。
勇者の如く、まあまあ天才は急がない。

 

 
よっしゃーd=(^o^)=b、今度は完品だ。
手にとり、まじまじと見る。
ひょえ~、お美しい。

蝶採りは、こうでなくっちゃネ d(^-^)
ギリギリの勝負にしか、エクスタシーはないのだ。

 

 
その後、落ち着いて続けざまに3頭を加える事ができた。何れも完品のレッドスターだ。

午後5時半。本格的な強いスコールがやってきた。すんでのところで、公園の東屋に逃げこむ。

30分間待ち、小雨になった間隙を縫って宿まで急いで帰ってきた。
着いたと同時に、再び叩きつけるような豪雨がやって来た。

 

追伸
やはり、文章を二回に分けることにしました。
すんません。次回こそ、食いもんの話です。奄美大島の旨いもんテンコ盛りだすよ。

 

『西へ西へ、南へ南へ』第5話

ー蝶に魅せられた旅人アーカイブスー

いやはや驚いた事にアメブロには第5話が掲載されていない。
どうやら「第五番札所」の回が前後編に分かれている事に気づかずに後編のみをアップしたようだ。重要な回なのにね。よくぞスッ飛ばしたものだ。
だから、第5話は謂わば幻の第5話ってワケだね。

でも正直、心が折れそうになった。なぜなら、どっかに埋もれている原稿を探さねばならないからだ。もし見つからなければ、昔の彼女の誰かに連絡をとらねばならない。連絡もしにくいし(どうせ酷い事をしているのだ)、たとえ連絡したところで原稿が残っているかどうかも分からない。自然、億劫にもなってくる。だから、よっぽど連載を打ち切りにしてやろうかと思った。

でも、一応探したら昔の携帯電話が出てきた。幸いな事に起動もした。そして、何と原稿も残っていた。
というワケで旧い原稿をシコシコ書き移してゆく事にしよう(コピペ出来ないから物凄く大変そうだけど…)。

それでは幻の第5話の始まり始まり~。

      ー捕虫網の円光ー
    『西へ西へ、南へ南へ』

  第五番札所 南国の紅い流れ星

 
2011年9月12日

いつしかフェリー乗り場のロビーには、誰もいなくなっていた。
それぞれがそれぞれの落ち着くべく場所、自分の家やホテルに向かったのだろう。

ホテルを予約していない男には行くあてがない。
午前5時に宿の誰かを叩き起こして嫌われるのもイヤだ。せめて7時くらい迄はここで時間を潰そう。ここなら少なくともクーラーだけは効いている。第四番札所の原稿でも書いていれば、時間も費えるだろう。

美しい朝焼けを眺めながら書き進める。

 

 
7時に名瀬市街に向かって歩き始めた。
遂に来たと云う高揚感とこんなとこまで来てしまったと云う軽い後悔とがない交ぜになった心持ちで海岸線を歩く。

市街地に入ってから宿に電話を入れる。
一発で決まった。
「あづま屋」素泊まり一泊 2500円。
簡単に言えば、飯なしの民宿だ。設備的にはこの値段なら、まあ良い方だろう。唯一の欠点はクーラーがコイン制だということである(150分 100円)。

ひょんなことから、宿のおやじが奄美で一番最初にダイビングショップを始めた事がわかり、驚く。
あえて尋ねなかったが、もしかして師匠とも知り合いかもしれない。
実をいうと、男は奄美大島に訪れるのが今回で三回目になる。過去二回は何れもダイビング・インストラクターをやっていた頃の事である。まだ蝶採りを始めていなかった。

それにしても此処のおやじ、侮れない。持っている玉の柄(竿)を見て、釣りだと言わずに『蝶?』と言ったのには驚いた。

8時半まで部屋で原稿を書き、出来立てほやほやの第4話を読者に送信する。
そして、ササッと5分で用意してスクランブル発進した。船旅で疲れてはいるが、蝶を求める心の方が遥かに強い。もうそれは恋愛感情に近いものだ。望みの蝶に会うことが全てにおいて優先されるのだ。

今回のターゲットはアカボシゴマダラ。
彼女の存在が、はるばるこの島まで男を誘(いざ)ってきた。

【アカボシゴマダラ(赤星胡麻斑)】
学名 Hestina assimilis shiraki。
近縁種ゴマダラチョウに似るが、後翅に赤い輪紋があることにより容易に判別される。
日本では本来、奄美諸島のみに産する固有亜種。
しかし、近年は中国の大陸亜種(a.assimilis)が関東地方に流入し、急速に分布を拡大しており、近似種のゴマダラチョウを圧迫しているという。これが人為的な放蝶なのは明らかだ。つまらん事をする輩もいるものだ。
しかも、この中国の亜種、奄美大島亜種の鮮やかな赤紋とは違い、赤紋がいやらしいピンク色なのだ。そして、輪紋がだらしなく潰れていて下品。場末のピンサロの姉ちゃんみたいで全然美しくないから、男はその存在を絶対にアカボシゴマダラと認めない。アカボシゴマダラに憧れていた者としては、あんなものがアカボシゴマダラだと思われるのは忸怩たるものがある。日本における美蝶の一つだったのに、コイツのせいで確実にアカボシゴマダラのブランド力は下がったと言えよう。
発生は4月、6月、8月、及び9月中旬から10月。
幼虫の食樹はリュウキュウエノキ(クワノハエノキ)。

第二のターゲットは、アマミカラスアゲハ(オキナワカラスアゲハ奄美亜種)。そして、第三のターゲットはイワカワシジミだ。
アマミカラスは後翅の帯状紋が発達しており、美麗。
イワカワシジミも奄美大島のものが特に美しいとされている。

宿のおやじから近くに24時間営業のスーパーマーケットがあると聞き、まずは朝昼兼用の飯を買いに行く。
おにぎりを二つ買って、はやる心で歩き出す。

今日は街のすぐ背後にあるらんかん山(くれないの塔)か拝山に行く予定だ。
こんな市街地近くにもアカボシは棲息しているようだ。元々、里山の蝶だから不思議ではないのだが、感覚的にはちよっと驚きだ。この島はそれだけ自然が豊かなのだろう。

先ずは拝山に行った。
宿から歩いて15分程でポイントに着いた。
九州も暑かったが、当たり前だがもっと暑い。亜熱帯特有のねっとりとした湿気も相俟ってか、直ぐに滝のように汗が流れ出す。九州では秋の兆しもあったのに、完全に真夏に逆戻りだ。

 

 
期待に反して、蝶影は薄い。
クロマダラソテツシジミだけがアホみたいにいる。
数年前までは珍品迷蝶だったが、今やゴミだ。

  
【クロマダラソテツシジミ】
(2016.10月)

 
あとはモンキアゲハくらいしか飛んでいない。ヒマつぶしに網に入れる。みんな羽化したての新鮮な個体だ。
しかし、興味がないから全部リリースしてやる。

糞暑くて早々とグッタリとしていたら、突然、ハイスピードでアマミカラスアゲハが目の前に現れた。
瞬時に反応して鮮やかに決まったが、尾状突起(尾っぽ)の片方が千切れていた。おまけに擦れ個体でガッカリする。時期が合わなければ綺麗な蝶は採れない。不安が頭をもたげる。
南国を象徴する佳蝶、ツマベニチョウもボロ。
そして、憧れのアカボシゴマダラの姿は全く無い。
ダメな所で粘ったところでダメだ。判断の遅い愚図は果実を得られない。
10時過ぎ、ウスキシロチョウの銀紋型のキレイなのだけを三角ケースに収め、諦めて下山した。

下まで降りてきたら、網を持った青年がいた。虫屋だ。
暫し雑談する。千葉の人で、もう1週間も奄美にいるそうだ。
『何を採りに来たんですか❓』と尋ねたら、『何でも。』という答えが帰ってきた。
アカボシについて訊いてみたら、アカボシはまだ一度も見ていないと言う。やっぱり少し発生期には早かったか❓不安がよぎる。
晩飯に誘ったが、レンタカーで寝泊まりしていて、飯はカロリーメイトだと言われたのでやめた。そういう人と飯を食っても楽しくない。

すぐ隣の大島支庁舎前で、惰性でウスキシロチョウを採っていたら、ちよっと不思議な雰囲気のおじいが近づいてきて、いきなり目の前の木の葉っぱを指さし、『これ、食草。』とおっしやった。
更にコレコレと指さし、あっという間に幼虫を見つけて、『1令幼虫だ』と呟く。
するってえと、この木がナンバンサイカチ❓それとも園芸種のゴールデンシャワーかな❓多分、支庁舎に植えられているくらいなんだから、綺麗な花の咲くゴールデンシャワーだろう。尋ねようとしたら、既におじーは歩き始めている。まっ、いっかと思ったら、おじーは暫く歩いてからふわっと振り返って、おいでおいでする。何となく手招きされるままに歩み寄る。
ついてゆくと、ひょいひょいと支庁舎の敷地内に入ってゆく。おじー、どこ行くの❓
そして、迷うことなく何やら細い通路に入ってゆく。半信半疑で後ろをついてゆく。おじー、何者❓

路地を抜けたら、目の前に小屋が現れた。
入口の横に看板が掛かっている。
『大島支庁 ハブ対策室』。
なぬっ(゜ロ゜;⁉、おじーはそのまま建物へと入ってゆく。一瞬躊躇したが、続いて入る。
すると、おじーにスタッフ達が挨拶する。何とおじーは大島支庁のハブ対策室の室長だったのだ。

檻の中には沢山のハブがいた。
Σ( ̄ロ ̄lll)ゾワッ❗
そっか…(^_^;)アハハ。すっかり忘れていたが、奄美大島には毒蛇ハブがいるのだ。しかも、本ハブだ。そして、本ハブの中でも奄美大島のものが一番デカくて最強だと言われている。
あちゃー、今回も危険なミッションかよ…( ̄▽ ̄;)
虫捕りって、リスクあんなあ…。

そん事を考えていたら、袋を持ったおじさんが入ってきた。
袋の中身はどうやらハブらしい。奄美大島では捕獲したハブをお役所が買い取るという制度があると聞いた事がある。それだけハブの被害が多いって事でもあるんだろう。Σ( ̄ロ ̄lll)ヤバいぞ、奄美大島。

袋の中には7匹のハブが入っていた。でも小さい。
その場で2万8千円が支払われた。何と買い取り価格4千円である(現在はもっと下がっているそうだ)。
こんなチビハブで2万8千円ってボロ儲けじゃないか。訊くと、買い取り価格に大きさは関係ないそうである。
『こんなん仕事に出来るんちゃいますのん❓』とおじーに尋ねたら、実際職業にしている人も結構いるらしい。住民も小遣い稼ぎ感覚で捕獲しているようで、タクシーの運転手などは必ず蛇の捕獲用具をトランクに入れているという。

それにしても臭い。室内にケダモノの悪臭が立ち込めている。蛇って無臭なイメージだったが、臭いんだ…。

お茶を御馳走して戴き、雑談が続く。涼しいし、蛇が臭いこと以外は快適だ。
袖すりあうのも多少の縁と言うではないか。どうせ今日はアカボシは無理そうだし、まあいいや。

昼過ぎ。少し体力も回復したので、おじーにお礼を言い、らんかん山に向かう。

らんかん山も拝山と同じようなもんだった。蝶影が薄い。
仕方なしに猫と遊ぶ。
猫と遊ぶのは好きだ。腹をさすってやると、気持ち良さそうに目を細める。

 

 
遊んでいたら、アマミカラスがふわりと何処からともなく現れた。
咄嗟に網を拾い上げ、ダメ元で慌てて振ったら、キレイに入った。

 

 
今度は、ほぼ完品。♂だ。
やっぱり羽が傷んでいないものは、ドキッとするくらいに美しい。

しかし、相変わらずアカボシの姿は見えない。
午後1時20分。半ば諦めて山道を歩いていたら、横の灌木から驚いた蝶が飛び出した。
そして、2mくらい先の枝先にとまった。

うわっ(゜〇゜;)、アンタやん❗❗
まごうワケがない。白黒の格子模様に流れるような赤の輪っかの列。間髪入れずに網先が動いた。キレイに振り抜く。

 

 
想像していたよりも小さい。
だが、それでも一目惚れだよ(≧∀≦)

美人蝶だ。指先が震える。
白黒のコントラストがハッキリしていて、エッジが効いている。それを鮮やかな赤が更に引き締めている。

だが、何か呆気ない幕切れでもあった。
アカボシゴマダラは夕方にテリトリーを張ると聞いていたから、これからが本番だと思っていたのに、いきなりの出会い頭だ。しかも、ほとんど間を措かず網を振り抜いたから、緊張している暇もあまり無かった。
この見つけた時から網を振るまでの間が蝶採りのクライマックスであり、醍醐味なのだ。その先にはエクスタシーか絶望がが待っている。だから心が千々に乱れ、心拍数もハネ上がる。謂わば、この刹那が手に汗にぎる瞬間でもあるのだ。
正直、朝からのこの展開だと、もっと苦労する事を予想していた。それが予想だにしなかった展開で、わりかし簡単に手にする事が出来た。採れてホッとはしたが、でも何だか複雑な気持ちだ。簡単に採れるに越したことはないが、とこか拍子抜けなところがある。心は、どうやらもっと高いハードルを望んでいるようだ。

でも、よく見ると反対側の羽が破れている。
残念だが、これで逆にモチベーションが取り戻せる。完品を採ってこそ、ストーリーは完結するのだ。

とはいっても、この破れた個体をどう解釈すべきかと思い悩む。破れてはいるものの、比較的鮮度が良いから判断が難しい。
もう発生しているんだなと最初は安心したが、この状態では何とも言えぬ。最盛期の8月に羽化する筈の個体が、たまたま遅れてこの時期に出てきたものを偶然に捕まえたという可能性も否定できない。
それに、もし9月の第4化目が発生しているのなら、有名産地なんだからもっと数を見かけてもよい筈だ。
いや、もしかしたら6月以外は個体数が少ないと云うから、こんなもんなのか?だとしたら、相当少ないって事になる。そんなに採集難易度が高いのか❓
虫屋の青年もまだ一度も見てないと言ってたし、そういえば宿のおやじも『アカボシ、昔に比べて最近はとんと見かけなくなったねぇ。』とも言ってた。確かに減ったと云う話は文献など巷でもよく聞く。

頭の中が整理できないままに山道を歩く。
だが、指標となる次のアカボシには出会えない。
次第に不安が募ってゆく。

腕時計に目をやる。
針は、いつの間にか午後3時半を指していた。

                   つづく

  
ー追伸ー
ハブの件(くだり)なんかは、かなり説明不足だったし、他もちょこちょこ訂正加筆した。だから、結局書くのにかなりの時間を擁した。
次回は美味い食いもんが一杯出てきます。
でも、もしかしたら2回に分けるかもしれない。

 
追伸の追伸
1年ぶりに読んだが、結構面白い。
でも当時は完璧な出来だと思っていたか、やっぱり手を入れる所はちょこちょこと見つかる。
てにをはの間違いや誤字脱字もあったし、気に入らないので一部つけ足したり、削ったところも有りです。
文章を書くのは、思った以上に難しいよね。