銀星天蛾と楮を巡るあれこれ

 
連載中の『奄美迷走物語』の最終回の予定だったが、ギンボシスズメの解説をするのを忘れていた。と云うワケで、迷走物語の番外編として書きます。

 
2021年 3月31日
上を見上げる。
フタオの大きな♀だ。しかも今度は新鮮な個体だ。下から見ても羽に破れがない完品だ。おそらく時間的にみて、コレが最後のチャンスだろう。全身をアドレナリンが駆け巡る。

しかし、結果は見事な惨敗だった。

宿に戻ったら、午後5時半を過ぎていた。
夜間採集をするなら飯なんぞ食っているヒマなどない。今夜は朝戸峠に行くのである。今まで避けてきたのは、奄美でも超一級の心霊スポットと名高い場所だからだ。それだけに何としてでも日没前に着いておきたい。休む間もなく用意して出る。

朝戸トンネルの手前の道を右に上がってゆく。
上から朝戸トンネルの入口が見える。あのトンネルも異様に長くて充分ホラーだったが、今から行く旧朝戸トンネルはそんなの目じゃない弩級のヤバさだろう。そう思ったら背中がゾクゾクしてきた。
バイクは不安なまでにグングンと高度を上げてゆく。
眼下には亜熱帯特有のモコモコした森が見える。街のすぐそばなのに、かなり有望な環境だ。考えてみれば、ここは奄美有数の原生林として知られる金作原の裏側にあたるのだ。初めて来るが、環境が良いのも納得だ。

屋台を構える場所を吟味しながら走る。
午後6時半前。旧朝戸トンネルまでやってきた。

異様だ。まだ明るいのにトンネルの入口周辺だけがメチャンコ暗い。チビりそうだ。
行き交う車両は、ここまで皆無だったな…。こんなとこ誰も訪れないのだろう。とても静かだ。それだけに不気味さが際立つ。霊感がないワシでも、ただならぬものを感じる。

昨日、一応ネットで旧朝戸トンネルの心霊現象についてチェックした事を否応なしに思い出す。

『旧朝戸トンネルに女ふたりで行ってトンネルの真ん中でクラクション3回鳴らしてトンネルの先まで行ってUターンして戻る途中に車が進まなくなって後部座席を見たら女の子と女のひとがいる。その後、運転手になにか起こるよ。実際に運転手わボールペンを耳にぶっさして車の前に倒れてた。でも女ふたりぢゃないとなにも起こりません。男が行っても意味ないです
                [匿名さん]』

原文そのままである。句読点が少なくて無茶苦茶だ。なだけに、かえってテンションが掛かったような文章だ。書いた本人も狂っているのでは❓と不安にさせるのだ。
流石にそんな恐ろしきトンネルの横でライト・トラップをやる勇気はない。
なのにトンネルの向こうの環境が見たくなる。もしかして何かに誘(いざな)われているのか…❓魔がさすと云う言葉があるが、それがこうゆう時なのかもしれない。ワシはドがつく程の超ビビリな男なのである。そんな怖がりのオラが、こんなトンネルを潜(くぐ)るのか❓しかも一人で❓
でも、ナゼかトンネルを潜る事を選択してしまう。

けど入ってすぐに後悔した。急に温度が下がり、あまりの冷んやりさにビクッとなった。そして、中は信じられないくらいに真っ暗だ。照明が全くないのだ。しかもピチャピチャと水が滴る音も聞こえる。そのせいか道はじっとりと濡れている。
でも引き返す気はない。性格的に出来ないのだ。それにトンネルは短い。たぶん50mもないだろう。日が暮れていたら怖すぎて無理だろうが、幸いまだ暮れてない。環境を確認しに行くなら今しかない。

抜けたら辺りは鬱蒼としており、見通しが悪くて湿度も高い。典型的にヤバい場所だ。怖くてライトトラップなんぞやれるワケがない。一秒たりともこんな所には居たくない。そう、本能が言っている。
ヾ(・д・ヾ))))))))=3=3=3 ぴゅう━━━━
デンして帰って来た。

何処にライト・トラップを設置するか迷ったが、トンネルより下でやろうと思った。帰りに、闇夜であのトンネルの前を通るのだけは避けたいと思ったのだ。

日没直後に道路沿いに屋台を構える。少しでも光が届くようにと、ガードレールにベタ付きだ。

午後7時45分。
見慣れないスズメガが飛んで来た。
だが、白布の手前で反転してどっかへ消えた。
緑色っぽく見えたけど、何だろ❓緑色のスズメガといえばウンモンスズメだが、それとは違ってたような気がする。

【ウンモンスズメ】

(2018.6.27 奈良市 近畿大学農学部)

まあ、そのうちまた飛んで来るだろう。狙いはアマミキシタバなのだ。たとえキミが採れなくても悔しくはない。

【アマミキシタバ】

(出展『日本産蛾類標準図鑑』)

したら、5分後に又やって来た。今度はシッカリと姿を見た。
ウンモンとは明らかに違う❗そう思った。
一瞬、もしかして
キョウチクトウスズメ❗❗
と思った。
だとすれば、密かに憧れていた蛾だ。迷彩柄の戦闘機みたいなのだ。気分が⤴️上げ上げになる。

【キョウチクトウスズメ】

(出展『紀伊日報』)

でも、にしては小さい気がするぞ…。キョウチクトウスズメは結構デカいと聞いてるし、胴体も、もっと太くてガッチリだった筈だ。
頭の中が(?_?)❓❓❓❓❓❓❓だらけになる。
じゃあ、何なのだ❗❓

そうこうするうちに白布に止まった。
(ー_ー)ジーッと見る。
どう見てもウンモンスズメではない。そして、キョウチクトウスズメでもない。明らかに小さいし、翅の柄も図鑑等で見て記憶しているのとは違う。
とにかく見たことのない蛾である事は確かだ。もしかして、大珍品の迷蛾だったりして…(*´∀`)
となると、絶対に逃せない。逃した魚は大きいという事を、今回の旅では骨の髄まで知らしめられているのだ。

慎重に毒瓶を被せる。
しはらく放置して、気絶したところでアンモニア注射をブッ刺し、昇天させる。

何者かはワカランが、(☆▽☆)渋カッケーぞー。
でも、こんなスズメガって、日本に居たっけ❓
オラ、もってる人だから大金星の大発見だったりしてね。

大阪に帰ってから調べてみると、どうやらギンボシスズメという奴みたいだ。(´ε` )なぁ〜んだである。大発見でも大金星でもない。

【ギンボシスズメ】

緑色を帯びた前翅は美しく、幾何学的模様でカッコイイ。前翅の中に色んな図形と線が入っている。
その幾何学模様に、抽象絵画の創始者とされるカンディンスキーの絵のイメージが重なる。

(カンディンスキー『On WhiteⅡ』)

(出展『note.com』)

カンディンスキーみたく原色多めじゃないけど、デザインは近いものがある。
(・o・)あっ❗、もっと近いのもあったぞ。

(カンディンスキー『インプロヴィゼーショ7』)

(出展『JUGEM』)

兎に角、このギンボシちゃんには一発でファンになったよ。
でも時間が経つと、美しい緑色は失われ、褐色に変色してしまうそうだ。残念至極である。
蛾には、蝶にはあまり見られない美しい緑色を有した種類が多い。だが、大概のモノが同じように色が保たれないみたいだ。惜しいよね。もしも緑色が保たれたなら、蛾の人気はもっと高かったろうに。実に惜しい。薬品とか使って、この美しい緑色を残す方法とか無いのかね❓マニアな人が何とかしてくれんかのう。それを切に願うよ。

これは多分♂だから、♀ってどんなだろ❓

(-_-;)ゲッ、でも頼みの綱の『日本産蛾類標準図鑑』には♂1点のみしか図示されていなかった。


(出展『日本産蛾類標準図鑑』)

しかも汚い。死ぬと色褪せるというのは、こうゆう事なのね。
それにしても1点しか図示されてないという事は、やはりレアなのかな❓でも同亜科内だと、ハガタスズメ、ヒメウチスズメ、アジアホソバスズメ、モンホソバスズメ、フトオビホソバスズメ、タイワンクチバスズメも1点しか図示されていない。どれもソコソコ珍しいような気もするが、スズメガに詳しいワケではないから正直、レア度はワカラン。それに別な亜科であるホウジャク亜科では、普通種のブドウスズメとかハネナガブドウスズメも1点しか図示されてない。と云うことは、単にスペースの問題かもしれない。図鑑というものは効率良く並べて、スペースを上手く埋めなければならないからだ。

仕方なく他を探したら、Wikipediaにあった。


(出展『Wikipedia』)

基本的に色彩斑紋は雌雄変わらないようだが、♀の方が大型で、腹部が太くて前翅が全体的に丸み帯びる。腹先の形も違うような気がする。
比較のために、同じ並びにあった♂の画像を貼っつけておく。

裏面画像もあった。♀の方を載せておく。


(出展『Wikipedia』)

基本は表のデザインと同じだが、後翅は表側よりも複雑な斑紋となり、前翅は逆に表側の中心がシンプルになっている。あべこべで、ちょっと面白い。

和名の由来は、前翅中室に銀白斑が有ることからだろう。
漢字だと『銀星天蛾』と書くらしい。何か高貴で格調高い感じがするね。
嗚呼、でも漫画『北斗の拳』に、
「👊=3👊=3👊=3 アタタタタターッ❗、銀星天蛾昇流拳❗❗」
とか必殺拳を使う奴がいそうでもある。
でも漢字を見てから実物を見させられたらガッカリするかもしれない。漢字から受けるイメージはミッドナイトブルーみたいな濃紺の地色に、ピカピカの銀紋が散りばめられてるって感じなのだ。

余談だが、中国や台湾では『構月天蛾』と呼ばれているようだ。意味はワカランけどー。

 
【分類】
スズメガ科(Sphingidae)
ウチスズメ亜科(Smerinthinae)
Parum属

日本にはスズメガ科は76種おり、そのうちウチスズメ亜科は19種を占め、ギンボシスズメの他に以下の種が含まれる。

・ウチスズメ
・コウチスズメ
・ヒメウチスズメ
・ウンモンスズメ
・エゾスズメ
・ノコギリスズメ
・ホソバスズメ
・フトオビホソバスズメ
・モンホソバスズメ
・アジアホソバスズメ
・トビイロスズメ
・ハガタスズメ
・モモスズメ
・クチバスズメ
・ヒメクチバスズメ
・タイワンヒメクチバスズメ
・オオシモフリスズメ
・ヒサゴスズメ

わりかしカッコいいスズメガが多いグループだ。

Wikipediaに拠れば、このうち”Parum属”とされるのはギンボシスズメのみである。というか、日本だけでなく、世界を見回してもギンボシスズメだけみたい。つまり、1属1種だけで構成される属ということになるのか。だとしたら、何か孤高って感じでカッケーじゃん。
けど『日本産蛾類標準図鑑』には「Parum属は本種をタイプ種として創設された属で、アジア東部に3種が既知である‥」と書いてあった。
(-_-;)うーむ、残念だ。でもここはウィキペディアなんかよりも岸田先生を信用しよう。

 
【学名】Parum colligata (Walker, 1856)
イギリス人昆虫学者フランシス・ウォーカーによって記載された。タイプ標本の産地は中国北部。

属名の”Parum”はラテン語で「親和力」「親和性」を意味するものと思われる。
余談だが、この「Parum」はパラフィン(Paraffin)の語源になってるそうな。レピ屋ならパラフィンといえば、三角紙の素材であるパラフィン紙だよね。同じものでいいのかな❓

小種名の”colligata”は、ラテン語の動詞”colligo”に由来するものと思われる。
colligoは大きく分けて多分2つの方向性の意味がある。

①「結びつける・繋ぐ・接続」「まとめる・結合的」「引き止める」
②「集める」「得る・獲得する」「気を取り直す」「数える」「熟考する・考察する」

並べてみても、種ギンボシスズメのイメージとは今ひとつ繋がらない。何故この小種名になったのか、その意味が全然ワカランぞ。

語尾が「〜ta」に変化するのに対しても脳味噌は沈黙だ。何か法則が有りそうだけど、意味するところが探しても見つからん。何となく「〜的な」って感じがするけど、だとしても明確な意味が掴めない。前翅のデザインが図形と線とで構成されているから「結合、結びつける、繋ぐ」と云うイメージをウォーカーに喚起させたのかもしれない。全然、スッキリしないけど。

参考までにシノニム(同物異名)も並べておく。

・Daphnusa colligata Walker, 1856
・Metagastes bieti Oberthür, 1886
・Parum colligata saturata Mell, 1922
・Parum colligata tristis Bryk, 1944

下2種は亜種記載されたが、無効になったものかな❓

 
【開張(mm)】
『みんなで作る日本産蛾類図鑑』では65〜80mmとあったが、『日本産蛾類標準図鑑』では70〜90mmとなっていた。また『Wikipedia』では69〜90mmとあった。

 
【分布】
北海道,本州,四国,九州,対馬,奄美大島,沖縄本島,西表島。
しかし『日本産蛾類標準図鑑』によると、近年では中部地方南部以西からの記録しかないそうである。もっと言うと、ネットで記事が出てくるのは九州・対馬以西のみだ。
思ってた以上に、そこそこ珍しいのかもなあ…。今まで見たことがないし、ネットの情報も九州・南西諸島を含めても相対的には少ない方だからね。まあ所詮は虫、しかも蛾だから、情報量はそんなもんかもしんないけど…。

一応、レッドデータブックのリストもチェックしておこう。

大阪府:絶滅危惧種Ⅰ類
奈良県:絶滅危惧種Ⅱ類
兵庫県:絶滅危惧種Ⅱ類
宮城県:準絶滅危惧種Ⅱ類
岡山県:情報不足
福島県:情報不足
島根県:情報不足

微妙なところだ。そこそこ珍しいような、そうでもなさそうな…そんな感じである。まあ、最近は蛾に興味を持つ人も増えているみたいだから、そのうち細かい分布も解明されていくだろう。
猶、国外では台湾,朝鮮半島,中国東北部〜南部,マレー半島北部,インドシナ半島,フィリピン(ルソン島)に分布する。


(出展『www.jpmoth.org』)

垂直分布は『DearLep 圖錄檢索』によると、台湾では低中海抜森林となっていた。おそらく他地域でも同じようなものだろう。食樹の植生を考えれば、あまり高所には棲息しないと思われる。

 
【成虫の出現期】 6〜9月
『みんなで作る日本産蛾類図鑑』には、そう書いてあった。
でも自分が採ったのは3月31日だから、全然時期が合致しないぞ。このサイト、重宝しているが鵜呑みにするといけんね。アップデートされてないので、情報が古いのだ。
(・o・)あれれ❗❓『日本産蛾類標準図鑑』でも年2化 6〜9月となってるぞ。どゆ事(?_?)❓
けど、ネットの『服部貴昭の忘備録』というサイトには、4月15日の日付で沖縄県国頭村での画像がアップされていたよな。しかも、幼虫の食樹であるカジノキが多い国頭村では個体数が多いとも書いてあったぞ。とゆうことは間違えて早めに羽化しちゃいましたというような個体ではなく、通常の発生と考えられる。ワケわかんねぇーぞ。
けど、先を読み進むと直ぐに問題は一件落着した。標準図鑑には「南西諸島では多化性の可能性がある。」という追加コメントが載っていたのである。

中国北部では年に1〜2化、5月から7月に成虫が見られる。韓国では5月中旬から9月下旬にかけて記録されている。さらに南の亜熱帯、熱帯地域では最大で年4化するのではと推測されている。
でも、台湾のサイト『DearLep 圖錄檢索』では5〜10月となっていた。台湾は亜熱帯で南西諸島と気候が変わらんけど、コレって合ってのかな❓

 
【成虫の生態】
『服部貴昭の忘備録』には、早い時間帯から灯火に飛来すると書いてあった。確かにワシの時も7時台の終わりに飛んで来た。

スズメガの仲間だから、どうせ花の蜜とか樹液でも吸っとるんじゃろう。そう思ったが、何とウチスズメ亜科の蛾は種により度合いの差はあるものの、口吻が退化傾向にあるらしい。とゆうことは、種によっては全くエサを摂らないということだ。尚、ギンボシスズメの口吻が他と比較してどれくらい退化しているのかを調べたら、短いとは書いてあった。けど、餌を摂る摂らないについての言及はなかった。

面白いのは止まる姿勢である。


(出展『Sphingidae of the Eastern Palaearctic』)

海外のサイトも見たが、こうゆう止まり方をしている画像が結構多い。威嚇なのかなあ❓
指に止まらせると、絶対この止まり方になるようだ。
今度会ったら、自分も試してやろう。

 
【幼虫の食餌植物】
カジノキ、コウゾ (クワ科 コウゾ属)

コウゾといえば、紙の材料となる「コウゾ、ミツマタ」が真っ先に頭に浮かぶけど、そのコウゾなのかな❓

取り敢えず、ウィキペディアでググったら、やはりそのコウゾであった。
以下、要約、文章組み換えーの、ちょいちょいコメント挟みぃーので進めてゆく。

(コウゾ Broussonetia kazinoki )

(出展『庭木図鑑 植木ペディア』)

あれれ❓、学名の小種名が、もう1つの食樹であるカジノキの綴りになっておるではないか。
でも確認したら、間違いなくコレが学名のようだ。何だか錯綜してんなあ。なぞなぞかよ❓


(出展『Wikipedia』)

果実は、何か桑の実みたいだね。アレ、美味いんだよなあ。
でも考えてみれば当たり前かあ。そもそもがコウゾはクワ科の植物だもんね。

漢字だと「楮」と書く。
タイトルの漢字を読めなかった人が大半だと思うけど、「楮」はコウゾなのだ。
してからに、何とコウゾはヒメコウゾとカジノキの雑種らしい。
(☉。☉)えっ❗、雑種なの❓だったらカジノキの方が偉いじゃんか❗
でも、事はもっと複雑で、そう簡単な事でもないようだ。

雑種が作られた起源はかなり古く、いつからかも詳しくは分かっていないようなのだ。
紙の起源は中国で、紀元前2世紀頃。紙の製法が確立されて日本に伝わったのが610年とされる。つまり、大化の改新よりも前だ。その後、日本での製造が確認されているのが702年。ということはコウゾを使って本格的に紙が作られ始めたのは、おそらくそれ以降の奈良時代から平安時代だろう。ようは古すぎて、コウゾを栽培され始めた正確な記録が曖昧なのだろう。
ワザワザ雑種を作った理由は、低木のヒメコウゾをやや大型になる近縁のカジノキと掛け合わせることで、より大きく成長させ、紙を大量生産しようという試みだったのではないかと考えられる。そして雑種であるにも拘らず、コチラの方が価値が高くなり、あたかも母種であるかのごとく単にコウゾと呼ばれるようになったものと思われる。で、いつしか小さい方が元々コウゾなのにヒメコウゾと呼ばれるようになったのではあるまいか。それゆえか、ヒメコウゾの別名をコウゾとする場合もあるようだ。たぶん地方によっては本来の呼び名が残った所もあったのだろう。
ヒメコウゾは雌雄同株異花、カジノキは雌雄異株。よってコウゾはカジノキの性質である雌雄異株を継承していたり、ヒメコウゾのように雌雄同株であったりするという。そうなると、雌雄同株のコウゾとヒメコウゾの判別は難しく、よりカジノキっぽいのか、ヒメコウゾっぽいのか全体的に特徴を捉えて分類するよりない。だから情報が錯綜している感が否めないのだ。
でも所詮は雑種だ。神経質に判別して名前を付けようとする行為自体がナンセンスなのかもしれない。

(雌花)

(出展『Wikipedia』)

(雄花)

(出展『Wikipedia』)

コレが雌雄異株タイプのコウゾ。
ちなみにヒメコウゾの特徴である雌雄同株異花とは、1つの株に雄花と雌花とが両方咲くものをいう。


(出展『植物写真鑑』)

コレがその雌雄同株タイプのコウゾである。

高さ2〜5mの落葉低木で、古来から和紙の材料として知られており、今日でも和紙の主要な原料になっている。
幹の皮を剥いで、それを色んな工程を経て紙にするそうだ。

樹皮は褐色。葉は互生する。6月頃にキイチゴ状の実をつける。赤く熟したものは甘味があって食べられる。ただし、花糸部分が残っていて、ネバ付いて舌触りが悪い。なのでクワの実のような商品価値はない。

扠て、次はカジノキだ。
 
(カジノキ Broussonetia papyrifera)

(出展『Wikipedia』)

何かスゴい見てくれだな。実は、かなり変わってる。

(葉)

(出展『Wikipedia』)

(雌花)

(出展『Wikipedia』)


(出展『庭木図鑑 植木ペディア』)

(雄花)

(出展『松江の花図鑑』)

このように雌雄異株である。

(幹)

(出展『Wikipedia』)

漢字では梶の木と書き、単にカジ(梶)、コウ(構)とも呼ばれる。
梶って、梶原さんとか名字でよく見掛けるけど、そんな木は見たことないぞと思ってた。それが、まさかのカジノキの事だったんだね。

落葉高木とされるが樹高はあまり高くならず、10mほど。葉は大きくて、浅く三裂するか、楕円形。毛が一面に生える。左右どちらかしか裂けない葉も存在し、同じ株でも葉の変異は多い。大木になればなるほど、葉は楕円形になるみたいだけどね。

神道では、古代から神に捧げる神聖な木として尊ばれている。その為、神社の境内などに多く植えられた。主として神事に用いられ、葉が供え物の敷物として使われた。
また、その葉を象った紋様が諏訪神社などの神紋や武家の家紋(梶紋)としても描かれている。


(出展『Wikipedia』)

江戸時代には諏訪氏をはじめ、松浦氏、安部氏など四家の大名と四十余家の幕臣が用いている。また、苗字に「梶」の字のある家が用いる場合もある。

樹皮はコウゾと同様に紙の原料となる。中国の伝統紙である画仙紙(宣紙)は主にカジノキを用いる。又、昔は七夕飾りの短冊の代わりとしても使われたそうだ。
葉は豚や牛、羊などの飼料(飼い葉)になる。また中国では、煙に強いことから工場や鉱山の緑化にも用いられている。

ここまで書いて気づく。
(・o・;)あれれ❓、ウィキペディアには、カジノキもコウゾも分布が書かれてないぞ。コウゾはカジノキとヒメコウゾとの雑種だから、それも理解できるけど、カジノキまで記述がないのはおかしいよね。

『庭木図鑑 植木ペディア』というサイトで確認したら、ありました。本州中南部から九州にかけて自生するらしい。
おいおい、奄美大島とか沖縄本島が含まれていないぞ。コレって、どゆ事〜(´ε` )❓
でも「同類のコウゾ、ヒメコウゾと共に樹皮が和紙や縄、布等の材料になるため各地で栽培され、後に野生化した。」とも書いてあった。けど、奄美や沖縄で紙が作られていたなんて聞いたことがないぞ。

別なサイトでも確認しておこう。
『植物図鑑 エバーグリーン』というサイトには、こう書いてあった。
「中国中南部~マレーシア、太平洋諸島などで広く栽培され、野生化し、正確な原産地は不詳です。日本以外にもアジア全般に分布する。」
ところで、奄美や沖縄にカジノキやコウゾって自生してるのかな❓
いや、待てよ。その前に元々自然状態で自生するヒメコウゾはどうなんだ❓図鑑では食樹には挙げられてないけど、幼虫は間違いなくヒメコウゾも利用している筈だ。ならば、ヒメコウゾの分布もチェックしといた方がいいだろう。

(ヒメコウゾ Broussonetia monoica)

(出展『mirusiru.jp』)

花は雌雄同株だ。


(出展『北信州の道草図鑑』)

ヒメコウゾの分布は、本州(岩手県以南)、四国、九州、奄美大島、朝鮮、中国中南部とあった。
(◠‿◕)やりぃ❗、読み通りだ。奄美には生えてる。
因みに奄美にはコウゾは見られず、カジノキは限られた場所にしか生育していないようだ。となると、奄美に生息するギンボシスズメはヒメコウゾを食樹としている可能性が極めて高い。
ついでに沖縄県での分布についても調べてみた。
結果は、ヒメコウゾは分布しないようだ。でもコウゾはあるみたい。カジノキは成虫の出現期でも触れたように国頭村に自生していて、ギンボシスズメの発生地ともなっている。沖縄ではカジノキのことを古くからガビキと呼んでいるそうだから、今でも各地に見られるのだろう。とゆうことは、ギンボシスズメは沖縄本島では主にカジノキを食樹としていると思われる。

でも、ここで大きく躓く。
『Wikipedia』でのヒメコウゾの学名を見ると、何とコウゾと同じ「Broussonetia kazinoki」という学名になっているではないか❗
気になるから他のサイトを片っ端に見たら、学名がそうなってるものが大半だった。おいおいである。
まあ、コウゾは雑種だし、何かと問題ありなのかもしれないなあ…。雑種の場合は学名はどうなるのだ❓そもそも雑種に学名とか普通に付けていいものなのか❓だったら園芸種のバラなんて無数の雑種があるじゃないか。それらにも学名が付いているのか❓その辺のルールはどうなってるのかね❓もしかして学名に雑種を表す特別な表記法とかあるのかな❓

捜しまくって、漸く『広島の植物ノート』と云うサイトで、その謎が解けた。
江戸を訪れたシーボルト(1830)が日本のコウゾやカジノキに学名を付けて発表した際、彼が聞いた日本名に混乱があったようで両者を混同してしまい、日本名のカジノキの名がコウゾの学名に付けられてしまったようなのだ。
その後、Blume(1852)が、Broussonetia sieboldiiというシーボルトの名を冠した名をコウゾの新たな学名として発表した。しかし、命名規約上は先に発表された名が優先されるため、これは無効となり、錯綜した学名がそのままとなった。
後々、当時実際にコウゾと呼ばれていた植物は純粋な野生種ではなく、カジノキとの雑種である事が判明した。拠って現在では野生種にはヒメコウゾの和名を与えて、栽培種と区別している。
そして、シーボルトが記載した B.kazinokiは、ヒメコウゾにあたるものと考えられていたが、Ohba & Akiyama (2014)によれば、これは雑種のコウゾであることが分かった。それにより雑種コウゾが、B.kazinokiとなり、野生種のヒメコウゾの学名は、Broussonetia monoica Hance(1882)となったそうだ。
『Wikipedia』も十全ではない。100%信用は出来ないという事だ。

台湾のサイトには、以下のものが食樹として挙げられていた。

・小構樹 Broussonetia kazinoki
・Broussonetia monoica
・構樹  Broussonetia papyrifera

一番上が、ようするにコウゾだ。二番目がヒメコウゾ、そして三番目カジノキである。やっぱヒメコウゾも食べるようだね。

それと、これでギンボシスズメの台湾名が、なぜに「構月天蛾」なのかも分かったね。ようするに食樹を指していたワケだ。補足すると、月天蛾は属名である。

 
【幼生期】
(卵)

(出展『Sphingidae of the Eastern Palaearctic』)

(幼虫)


(出展『Sphingidae of the Eastern Palaearctic』)

いわゆるイモ虫型である。
一番上が弱齢幼虫、二番目が中齢幼虫、三番目が終齢幼虫かと思われる。頭はそれぞれ右側、下側、左側です。


(出展『Sphingidae of the Eastern Palaearctic』)

これを見ると、齢数は全部で4齢(終齢)かなあ❓
でも、5齢の可能性もありそうだ。

(蛹)


(出展『Sphingidae of the Eastern Palaearctic』)

蛹は所謂スズメガ型で、土中で蛹化する。

                  おしまい

 
追伸
えー、前半の採集シーンは前回の『奄美迷走物語』18話の縮小版です。しかし、お気づきの方もいるかもしれないが、同じ内容だが文章は結構書き直している。ヒマな人は見比べてくれれば、言葉のチョイスが違うことがワカルだろう。

それから、ギンボシスズメの解説がこのような別稿になったのは、ひとえにこの長くなった食樹の部分のせいです。こりゃ迷宮になるなとすぐに思ったので、いったん切り離して他の部分を書いた。

 
ー参考文献ー
◆『日本産蛾類標準図鑑』

インターネット
◆『Sphingidae of the Eastern Palaearctic』
◆『服部貴昭の忘備録』
◆『DearLep 圖錄檢索』
◆『Wikipedia』
◆『みんなで作る日本産蛾類標準図鑑』
◆『www.jpmoth.org』
◆『広島の植物ノート』
◆『松江の花図鑑』
◆『庭木図鑑 植木ペディア』
◆『植物写真鑑』

 

奄美迷走物語 其の18

 第18話『呪われた夜』

 
2021年 3月31日(夜編)

上を見上げる。
フタオの大きな♀だ。しかも下から見ると羽には全く損傷がない。今度こそ完品だ。おそらく時間的にコレが最後のチャンスとなるだろう。全身をアドレナリンが駆け巡る。

【フタオチョウ♀】

だが、逆光で見えにくい。しかも止まる素振りはあるものの、止まりそうで止まってくれない。そのせいか飛ぶ軌道が不安定だ。読み切れない。どうする❓判断に迷う。最後のひと振りだと思っているから中々踏ん切りがつかない。ヘタに振れば、どっかへ飛び去って二度とチャンスはないのだ。でも時間のリミットは近づいている。夕暮れ近くの今が、そろそろ飛び終わる時間なのだ。
焦る中、網の切っ先がキッと動いた。でも、急に軌道を変えやがった。振りかけてグッと手首と腕で急制動させる。経験で、このまま振っても空振りすると感じたからだ。
でもこの10数秒後には突然プイと舞い上がり、山に向かって勇壮に飛び去って行った。それを茫然と見送る。
ネットを振る事なく、勝負は終わった。慚愧に堪えない。

その後、30分ほど粘ったが、待ち人来たらず。ついぞチャンスは巡っては来なかった。
(´-﹏-`;)惨敗だ…。
暮れゆくトパーズ色の光の中、立ちすくむ。
こんな事ってあるか❓…。蝶採りをやってきて最も半端な終わり方だったかもしれない。状況的に致し方なしと何とか言い訳はできるかもしれないが、自分自身では無理があると認識している。逃した時には人に言い訳しがちだけれど、極力、他人から見て無理があるようなダサい言い訳だけはしないようにしている。口には出さなくとも、意外と人はそれが事実なのか苦し紛れの嘘なのかを見抜いているものだ。
今日の敗因は、ずっと今回の旅で自分に言い聞かせてきた迷わずに振り抜くという当たり前の事が出来なかったからだ。迷ってはならないと頭では解っているのに、いざという時には決断できなかった。結局、メンタルをいつものように余裕のヨッチャン無敵モードには持っていけなかったのだ。
考えてみれば、2019年の夏に日本で初めてマホロバキシタバを採ってから何だかオカシクなったと云うか、潮目が変わったような気がする。その後、何となくスランプ気味なのだ。狙った獲物が全く採れてないワケではないのだが、前みたく連戦連勝とまではいかない。今にして思えば、あの時を境に憑き物が落ちたように虫へのモチベーションが下がった気がする。欲しいと強く思わない者には、欲しい物は手に入らない。なのに希求する心は以前ほどには強くはない。正直なところ、滅多な事では心が跳ねないのだ。
とはいえ、何と言おうがコレとて言いワケだ。ここぞと云うところで、ここぞと云う力を発揮できない人間はニ流だ。そうゆうことだ。オリンピックしかり、最高クラスのカテゴリーのプロスポーツの世界しかり、結局は己のメンタルの強さと迅速な判断が勝敗を分けるのだ。
歳、喰ったかなあ…。老いると云う事は、人を肉体面だけでなく、精神面をも衰退させるのかもしれない。
認めよう、惨敗だ。嘗て最終戦で言いワケ出来ずに惨敗に終わった事などあったっけ…❓あのキリシマミドリシジミの時の5連敗に近い屈辱だ。でも、アレはまだ言いワケできた。どの場所でも一緒に行った人は誰も採れていないのだ。
所詮はコレもまた言いワケにすぎないんだけどもね。とにかく己の虫を採る能力は確実に落ちてきてる。その証左のような終わり方だった。

宿に戻ったら、5時半を過ぎていた。
心は重い。灯火採集に行く気も萎えている。ここは飯でも食ってリセットする事が必要だが、もし予定していた場所に行くならば、飯なんぞ食っているヒマはない。行くなら、今日だけは何があっても日没前にポイントに着いておきたいのだ。
なぜなら、遂に今までは恐ろしくて避けてきた朝戸峠へ行くのである。そしてそこには、奄美でも超一級の心霊スポットとして名高い「旧朝戸トンネル」がある。場合によっては其処を通り抜けねばならないのだ。日があるうちならまだしも、日没後なら絶対に無理だ。きっと背中に天井から何か得体の知れないモノがパサリと落ちてきたりするのだ。そして密かに背中に宿り、人面瘡となるのだ。そんなの想像するだに怖ろしい。
自分で言うのも何だが、アチキは超怖がり男なんである。怖い系のテレビ番組は絶対に見ないし、たまたま映ろうものならマッハでチャンネルを変える。映画も、そうゆう系はできるだけ避ける。観に行くとしても、若い女の子、しかも美人限定だ。なぜなら、怖いから女の子の方から寄ってくるし、じゃない場合は素直に「僕、超怖がり屋さんでしゅー」などと正直に吐露すればよいのだ。
意外と女の子の方が♘ホワイトナイト、白い騎士だから『アタシがついてるからね。』とか言ってくれるのだ。そんな状況下なだけに『😍守ってね。』とでも言って手を握ることなんて事も容易いのだ。流石にオジサンになった今ではキモ過ぎて使えないけど…(笑)。
また👻怪談話も絶対に耳には入れない。ワシにはタブーだ。過去には、ワイが怖がるのを面白がって無理やり耳元で話そうとしてきた輩をタコ殴りにしてやった事だってある。恐ろしさが怒りに転化したのだ。そんなだから、心霊スポットに行く事も殆んどなかった。ワザワザ自分からそんな所に行く気がしれん、バッカじゃないのーと、ずーっと思ってた。
それが何の因果か、今や自分から夜の山に入り、遂には自ら心霊スポットへ行こうとしているのだ。それも、たった一人で。
げに恐ろしきは、憧れの虫を採りたいという強い欲望だ。採りたいという欲望が恐怖をも凌駕してしまっているのである。
それほどまでに、アマミキシタバ(註1)を採りたいのだ。

【アマミキシタバ】

(出展『世界のカトカラ』)

にも拘らず、奄美大島に来て6回も灯火採集をしているのに、いまだ1頭たりとも見ていないのだ。いくらライトトラップが何ちゃっての簡易なもので戦力が低いとはいえ、カスリもしてないのだ。だから今日こそはと思ってる。というか願ってる。チャンスはもう今日しかないんである。明日には大阪に帰らねばならんのだ。

超特急で用意して出る。
無事、日没前までに到着できることを祈ろう。

名瀬市街を抜け、朝戸トンネルの手前を右に入り、坂道を上がってゆく。
上から、あの長い朝戸トンネルの入口が見える。このトンネルも充分ホラーだったが、今から行くトンネルはそれを遥かに超える恐ろしき隧道の筈だ。そう思ったら、背中がビビビッときた。武者震いってヤツだ。
バイクはグングン高度を上げてゆく。
眼下には、こんもりとした森が見える。街からは近いが、かなり有望な環境だ。考えてみれば、ここは奄美でも有数の原生林として知られる金作原のちょうど裏側にあたる。環境が良いのも納得だ。あとは灯火採集の屋台を何処に据えるかだ。場所を吟味しながら走る。

候補地を2箇所ほど見つけ、更に上へと登る。
それにしても、さっきから行き交う車やバイクが1台もない。バイクのエンジン音だけが奇妙な感じで響く。それがホラー映画の何かが起こる前の雰囲気みたいで、ゾワゾワくる。

午後6時半前。
旧朝戸トンネルまでやってきた。

暗渠。地獄の口がパックリとあいている。
まだ明るいのに相当に暗くて、佇まいは異様だ。そして行き交う車は皆無だから、とても静かだ。それだけに不気味さが際立つ。霊感がないワシでも辺りに何かただならぬものが漂っているような気がする。

暗すぎてトンネルの入口がよく見えない。ネットで見た画像よか凄くね❓
参考までにネットの画像を貼付しておきます。


(出展『わきゃしま大好き』)

この画像よりもだいぶ木が大きくなってて、入口を隠すように繁ってるって事だね。下草もボーボーだ。益々、😱怖なっとるやないけ。

因みに、もし何か起こってもいけないと思って、昨日にどのような心霊現象が起こっているのかチェックしておいた。原文のまま貼っつけておく。

『旧朝戸トンネルに女ふたりで行ってトンネルの真ん中でクラクション3回鳴らしてトンネルの先まで行ってUターンして戻る途中に車が進まなくなって後部座席を見たら女の子と女のひとがいる。その後、運転手になにか起こるよ。実際に運転手わボールペンを耳にぶっさして車の前に倒れてた。でも女ふたりぢゃないとなにも起こりません。男が行っても意味ないです
                [匿名さん]』

何だ、この違和感バリバリの変な文章は。書いてる奴まで狂っとるやないけ。トンネルの呪いかね❓
流石に、このようなトンネルのすぐ近くで灯火採集をやる勇気はない。採集中にトンネルの奥からオドロオドロしい呻き声が聞こえてこないとも限らないし、闇の中から白装束のお歯黒の女がボワ〜っと浮いて出てきたりしたら阿鼻叫喚、ムンクちゃんだ。

【上村松園『焔』】

(出展『東京国立博物館』この絵の実物の存在感は凄いです)

でも、もしかしたらトンネルの向こうに灯火採集するのには絶好のポイントがあるかもしれない。そう思うと、どうしてもトンネルの先の環境が見たくなってきた。日が暮れていたら、怖すぎて無理だろうが、幸いまだ暮れてない。行くなら今しかない。中々の緊張感だが、勇気を振り絞って潜(くぐ)る事にする。

けど、入ってすぐ後悔した。中は驚くほど冷んやりとしており、信じられないくらいに真っ暗なのである。照明が全くないのだ。
下に何が横たわっているかワカランので、ゆっくりとバイクを走らせる。死体なんかあったら、動物や鳥でもコトだ。チビるよ。
ピチャピチャと水が滴る音も聞こえる。そのせいか道はじっとりと濡れている。マジで気持ち悪い。
でも、ここまで来て引き返すのは癪だ。入った勇気が無駄になる。それにトンネルは短い。たぶん50mくらいだろう。いや、もっと短いかもしれない。ここは我慢だ。

トンネルの向こうに出ると、辺りは驚くほど鬱蒼としており、暗くてジメジメだった。その先には荒れた林道が続いている。不気味さ、マックスである。こんなとこ、怖すぎて夜には居れるワケがない。2秒で撤退を決意し、ゾクゾクしながら、もう1回トンネルを潜って戻る。

何処にライト・トラップを設置するか迷ったが、トンネルより下でやろうと思った。帰りに、暗い中であのトンネルの前を通るのだけは何があっても避けたいと思ったのだ。

午後6時40分、日没時刻になった。
慌てて道路沿いの開けた場所に、ガードレールにベタ付きでライトを設置する。
正面には原始の森が上から下まで広がっている。ここなら、アマミキシタバも絶対にいるだろう。そもそも日本で最初に彼奴(きゃつ)が発見されたのは此処なのだ。
幸いにも空はいつしか雲に覆われている。天気は下り坂だ。流石に今日は月に邪魔されないだろう。何か採れるような気がしてきた。フタオチョウの完品の♀は採れなかったが、♂は採れてるし、アカボシゴマダラは♂♀両方採れているのだ。まだ運は残ってる筈だ。

【フタオチョウ♂】

【アカボシゴマダラ♂】

【アカボシゴマダラ♀】

それにフタオの♀が採れなくとも、アマミキシタバさえ採れればいい。それで帳消しどころか、お釣りがくる。そもそも奄美に来た理由の第一義はアマミキシタバのゲットなのである。そのミッションさえ果たされれば、他の事には目をつむれる。

後ろ側、道路の山側の枝にはバナナトラップを吊り下げた。
辺りに甘い香りが広がる。発酵が進んで、虫を呼び寄せるのには最高の状態だ。アマミキシタバもこれならライトには寄ってこなくとも、こっちには寄ってくるだろう。

闇の侵食が強くなり始めたところで、ライトを点灯する。
さあ、最後の夜会の始まりだ。

真っ暗になったら、すぐに蛾どもがワンサカ飛んで来た。
ライトが一灯だけになってるのにも拘らず、なんか良さげな兆候だ。最終日で一発逆転があるかもしれない。って云うか、そうなるっしょ❗ものすごく採れそうな気がしてきた。

午後7時45分。
見慣れないスズメガが飛んで来た(註2)。
だが、白布の手前で反転してどっかへ飛んで行っちゃう。
緑色っぽく見えたけど、何だろ❓緑色のスズメガといえばウンモンスズメだが、それとは違ってたような気がする。

【ウンモンスズメ】

(2018.6.27 奈良市 近畿大学農学部)

まあ、そのうちまた飛んで来るだろう。スズメガなんぞ二の次だから、そうガッカリする程の事ではない。

したら、5分後に又やって来た。今度は姿がちゃんと見えた。
ウンモンとは明らかに違う❗そう思った。
一瞬、もしかして
キョウチクトウスズメ❗❗(註3)
と思った。
だとすれば、密かに憧れていた蛾の一つだ。迷彩柄の戦闘機、いや重爆撃機みたいでカッケーのだ。テンションが急激に⤴️上げ上げになる。

【キョウチクトウスズメ】

(出展『紀伊日報』)

でも、にしては小さい気がするぞ…。キョウチクトウスズメは結構デカいと聞いてるし、もっと胴体も太くてガッチリだった筈だ。
頭の中が(?_?)❓❓❓❓❓❓❓だらけになる。
じゃあ、何なのだ❗❓

そうこうするうちに白布に止まった。
(ー_ー)ジーッと見る。
どう見てもウンモンスズメではない。そして、キョウチクトウスズメでもない。明らかにキョウチクトウにしては小さいし、翅の柄も図鑑等で見た記憶とは違う。
兎に角、見たことない蛾である事は確かだ。もしかして大珍品の迷蛾(註4)だったりして…(*´∀`)
となると、絶対に逃せない。逃した魚は大きいという事を、今回の旅では骨の髄の髄まで知らしめられているのだ。それにコレを逃したら、また流れは確実に悪い方向へ行くだろう。何としてでもそれは阻止せねばならぬ。

慎重に毒瓶を被せる。
暫く放置して気絶したところで、アンモニア注射をブッ刺し、昇天させる。気分はマッドサイエンティストだ。

何者かはワカランが、カッコいいぞー(☆▽☆)
気分は上々。今日こそ、この調子で辛酸の日々に幕を下ろそうぞ。

8時過ぎ。
気づいたら、白布に苺ミルクみたいなのがいた(註5)。

とても小さくて可愛い。

プリティーちゃんだ。
こういうのを見ると、蝶よりも蛾の方がデザイン性は高いのではないかと思う。バリエーションも豊富だしさ。

8時15分。
もう1つ見た事のない蛾が飛んで来た(註6)。

柄が何だかウルトラマン怪獣のシーボーズみたいだね。
あの回は『ウルトラマン』の中でも最も心あたたまるストーリーだろう。シーボーズが駄々をこねてイヤイヤするのが可愛いかったよね。

【シーボーズ】

(出展『怪獣ブログ』)


(出展『円谷プロ』)

下の画像は、たぶん拗ねて土とか蹴ってトボトボ歩いてるシーンだよな。
えー、シーボーズとは第35話「怪獣墓場」に登場する亡霊怪獣。「怪獣墓場」から月ロケットにしがみついて地球に落ちてきた迷い子の怪獣だす。戦闘意欲は全くなく、単に宇宙に帰りたがっていただけなのに、パニくって建物とか壊してしまう。やがてそれが解って、科学特捜隊が月ロケットをウルトラマンの姿に変えた「ウルトラマンロケット」で宇宙へ帰す作戦を実行。ウルトラマンの協力もあり、無事に宇宙へと帰っていったのらー。
いい奴だけど、もしも今この姿で現れられたら、メチャメチャ怖いだろうなあ…。いい奴とはいえ、見た目は完全に骸骨だもん。シーボーズだと解ってても、腰抜かすわ。
いかん、いかん。また話が逸れた。シーボーズの事など、どーでもよろし。

その後も何かと飛んで来たが、肝心のアマミキシタバは現れない。バナナトラップの方も閑古鳥だ。まあ、オオトモエしか寄って来ないんだから、コチラにはホントはあまり期待してなかったんだけどもね。
それにしても何でこうも効果がないんだろう❓フタオもアカボシもフル無視だったし、そういやスミナガシも来てない。春にはどれも寄って来ないとは聞いてはいたが、その理由がサッパリわからない。
まあいい。ライト・トラップの方は良い感じなんだから何とかなるだろう。時間はまだまだあるし、アマミキシタバが飛んで来る時間は午後11時以降が多いというから気長に待とう。大体いつでも最後の最後には何とかなって、大団円で終わるのだ。だってオラ、引きが強いもーん<( ̄︶ ̄)>

9時を過ぎると、急に風が出てきた。
おいおい、よろしくない兆候だぞ。ライト・トラップには月が一番よろしくないが、風が強いのもあまりよろしくないのだ。飛来する蛾の数が滅法減るのだ。

9時10分。
突然、突風が吹いた。と思ったら、三脚がグラリと傾いた。慌ててコケるすんでのところでギリで手で抑えた。流石、反射神経の良いオイラだ。危ねえ、危ねえ。危うく大惨事になるところじゃったよ。神様は悪戯好きだよね。意地悪にも程があるよ。でもそんなもんには負けないのだ。

しかし暫くして気づいた。何か寄って来る蛾の数が極端に減ってきてねぇか❓
何気にライトを見る。

ガビ━━Σ( ̄ロ ̄lll)━━ン❗❗
ライト、消えとるやないけー❗

道理で飛んで来なくなったワケだ。
たぶん、倒れはしなかったが、手で抑えた時に何らかの衝撃を与えてしまったのだろう…。

配線とかイジるも、灯りは点かない…。
( ꒪⌓꒪)…やっちまったな。

唖然とする。
まさかのサドンデス。突然降って湧いたようにゲームセットになった。想像だにしてなかった何という終わり方なのだ…。心を何処に持っていけばいいのかワカラナイ。
でもどんだけ嘆こうが現実を受け容れるしかない。バナナトラップだけで最後まで闘おうかとも思ったが、そこまで暢気になれる強靭なメンタリティーは持ち合わせてはいない。心は完全にバンザイしていた。お手上げだ。
早々と白旗をあげるなんて、らしくない。けど今回の旅で続いてきた酷い体たらくの流れだと、半ば納得の結末だ。
結局、アマミキシタバの姿を一度も見る事なく、奄美大島を去ることになりそうだ。それが信じられない。頭の中のストーリーには全く無かったからだ。でも結果は厳然と出たのだ。どれだけ受け容れ難くとも事実からは目を背けられない。

脳が停止したままの状態で、のろのろと後片付けをし、さらに思考を凍土化してバイクに跨がる。これで、敗残者確定だ。
大きく息を吐き出し、エンジンをかける。認めたくはないけど、長い勝負の11日間が、今ここに完全に終わった。屈辱感と、これから先はもう頑張らなくともいいのだと云う安堵感とが入り混じるが、その感情も捨てた。無になる。

それでも、山を降りる途中、ずっと頭の中で何故かイーグルスの『呪われた夜(註7)』がリフレインで流れ続けていた。

 
https://youtu.be/ESc2Tq2HzhQ
イーグルス『呪われた夜』リンク先

 
ワン オブ ディーズ ナイト……
ドン・ヘンリーが嗄(しゃが)れた声で何度もシャウトする。
そして途中、狂おしいギターソロが入る。
頭の中を、ソリッドなギターのメロディーがズタズタに切り裂く。そして、歌詞も相俟ってか、奄美大島での夜会の日々が走馬灯のようにコマ切れでフラッシュバックしてゆく。
ワン オブ ディーズ クレイジー、クレイジー クレイジー ナイツ……。数多(あまた)ある夜の中の一夜(ひとよ)。そのたった一つの夜なのに何かが狂っちまってる…

空を見上げる。
夜空はどこまでも暗く、梢を渡る風は強かった。

                   つづく

 
追伸
フタオの♀に関しては、前回から引っ張いといて、こんなカタルシスのない結末で誠に申し訳ないと思ってる。
言いワケだらけでスマンが、この回との連続性を重視したのだ。夕方の惨敗が夜の惨敗と通底しているという一連の流れは必要だと思ったのだ。それが今回のラストとも繫がる。惨敗で始まり、惨敗で終わるのが、今回の採集行を象徴しているように思えたからだ。
また、前回は結末を先延ばしにして期待を持たせる事によって、次回も読んでもらおうというセコい下心もあった。スンマセン。

この日の、その後の話を少し付け加えておきます。

午後10時前には、ゲストハウスに帰り着いた。
空しさに包まれて晩飯の用意をする。

誰かが冷蔵庫に置いていった豆腐があった。
賞味期限を2日ほど過ぎていたが、火を入れれば大丈夫だろう。取り敢えず、他にも誰かが置いていったものを駆使して何かを作ることにした。

何ちゃって麻婆豆腐、完成。
調味料は何を入れたか全然憶えてないが、置き去りにされたスルメを前日に出汁か何かに入れて、ふやかしたものを使ったのだけは記憶にある。

ご飯は何日か前に自分で買ったものだ。
これをレンチンする。
二度と作れない『何ちゃって麻婆豆腐定食』だ。

食べてみると、自分がいつも作っている麻婆豆腐には遥かに劣るが、それなりに旨い。誰か居たら、そこそこ褒めてくれたかもしれない。でも、宿の共有スペースには誰もいない。ワシ、一人だ。虫屋の若者二人は今朝には帰ったし、この宿に泊まっているのはワシとSくんだけなのである。そのSくんは、おそらく夜間採集に出掛けているのだろう。
とにかく不必要なほどに、シーンとしている。
静寂の中、何ちゃって麻婆豆腐を力なく口に運ぶ。
改めて、全て終わったんだなあ…と思った。

 
(註1)アマミキシタバ
学名 Catocala macula (Hampson, 1891)
屋久島、奄美大島、沖縄本島に分布する”Catocala属”の蛾。
国外ではインドシナ半島北部から中国南部、フィリピン、台湾などに分布する。
以前は、Ulothrichopus属に分類されていたが、近年になってカトカラ属に編入された。しかし、この種をカトカラとして扱うかどうかについては今だに議論がある。

 
(註2)見慣れないスズメガが飛んで来た
帰ってから調べると、どうやらコイツみたいだ。

【ギンボシスズメ】

北海道,本州,四国,九州,対馬,奄美大島,沖縄本島,西表島に記録がある。しかし『日本産蛾類標準図鑑』によると、近年では中部地方南部以西からの記録しかないそうである。
そこそこ珍しいのかもしれないなあ…。今まで見たことがないし、ネットの情報も相対的に少ないからね。
この後、書いてるうちに様々な疑問が生じ、解説があまりにも長くなってしまった。なので、この項は別個に回を設けてソチラに詳しく書く予定です。

 
(註3)キョウチクトウスズメ
漢字で書くと「夾竹桃雀蛾」となる。和名は、幼虫の食樹がキョウチクトウであることから名付けられた。
南方系の蛾で、開張約10センチ。アフリカからインド、東南アジアなどの熱帯に分布し、日本では九州以南に生息している。しかし飛翔力が強く、四国や紀伊半島南部でも珠に採集され、時に繁殖する事もある。

学名 Daphnis nerii (Linnaeus, 1758)
記載はリンネだね。コレもアカボシと同じくリンネが1758年に出版した『自然の体系』第10版で創設したニ名式学名の最初の記載種の中の1つってワケだね。その後、このニ名式学名があらゆる生物の学名の命名法を統一させる事になってゆくのである。
尚、リンネは最初、鱗翅目を「Papilio(蝶)」「Sphinx(スズメガ)」「Phalenae(その他の蛾)」の3つの属に分類している。
つまり、キョウチクトウスズメの最初の学名は今とは違っていて、Sphinx nerii (Linnaeus, 1758)だったと云うワケだ。
Sphinxは、あのスフィンクスの事だよね。何かカッコイイぞ。スズメガの蛹はエジプトの棺の中のグルグル巻きにされたミイラみたいな形だから、それと関係あるのかな❓

英名 Oleander Hawk-moth
Oleanderとは夾竹桃のこと。だから幼虫が夾竹桃を食う鷹みたいな蛾って意味だね。

(分類)
スズメガ科 Sphingidae
ホウジャク亜科 Macroglossinae
Daphnis属

幼虫の食樹は、キョウチクトウの他にニチニチソウ(キョウチクトウ科)が知られている。キョウチクトウには毒があり、それを体内に取り込むことによって鳥の捕食から身を守っているものと考えられている。勿論、幼虫は毒に対する耐性を持っているために中毒死することはない。

 
(註4)迷蛾
本来はそこには分布しない蛾が台風や偏西風等に乗って、遠方地や外国から運ばれてきた場合、その蛾を迷蛾と呼ぶ。したがって蝶の場合は迷蝶となる。
生存戦略の1つともされ、時にその地に定着し、更には分布を拡大する場合もある。しかし、大概は気候風土に適応できずに死滅する。

 
(註5)苺ミルクみたいのがいた。
調べたら、アマミハガタベニコケガという種だった。


(出展『www.jpmoths.jp』)

ギザギザ模様からの歯型紅苔蛾ってワケね。


(出展『日本産蛾類標準図鑑』)

昔は、アマミハガタキコケガ(奄美歯型黄苔蛾)と呼ばれていたそうな。黄色というよりも紅色が印象的だから、改名は妥当だよね。

学名 Miltochrista ziczac (Walker, 1856)
ヒトリガ科(Arctiidae) コケガ亜科(Lithosiinae) Miltochrista属に分類されている。

展翅すらしてないけど、分布は奄美大島と徳之島のみだから結構レアな奴かもしれない。ちなみに以前は奄美大島のみに分布するとされてきたが、2009年に徳之島でも見つかっている。
国外では台湾、朝鮮半島、中国に分布しているが、特に亜種区分はされていないようだ。
4月と8月に採集されているので、おそらく年2化だろう。幼虫の食餌植物は未知。
開張20mm。♂は前翅前縁が中央で出っ張る。
出っ張る❓よくワカラン。図鑑には♀1つのみしか標本が図示されていなかったから、何を言わんとしてるのかが掴めない。

でも調べ直したら、らしき画像を台湾のサイトで見つけた。


(出展『DearLep圖錄檢索』)

確かに出っ張ってる。とゆうことは、採ったのは♀かな❓
でも同じサイトの標本画像を見たら、今一つよくワカラン。


(出展『DearLep圖錄檢索』画像はトリミング拡大している)

腹部の形からすれば、おそらく上が♂で下が♀だろうが、出っ張りがそれほど顕著には見えないのだ。

 
(註6)もう1つ見た事のない蛾が飛んで来た
Facebookで、この画像をアップして「コレ、何すかぁ❓」とコメントしたら、蛾界の重鎮である岸田先生から御回答があった。ムラサキアミメケンモンという名の蛾らしい。
早速でネットでググったら、情報量が極めて少なくて、たった4点しかヒットしなかった。案外、かなりのレア物なのかもしれない。でも先生からは他に特にはコメントがなかっから、そうでもないのかもしれない。

【ムラサキアミメケンモン】


(出展『日本産蛾類標準図鑑』)

学名 Lophonycta nigropurpurata Sugi, 1985
ヤガ科 アミメケンモン亜科 Lophonycta属に分類されている。
開張33〜35mm。近縁種のアミメケンモンと比べて前翅の地色は暗い紫灰色。環・腎状紋が明瞭。翅幅は少し狭く、後角の淡色紋は小さい。後翅は純白で外半が翅脈に沿って暗色となり、わずかに横脈紋と外横線が認められる。
奄美大島と沖縄本島に分布する日本固有種。分布域が狭いから、やはりレアものなのかもしれない。
成虫は4〜5月と8〜10月に見られ、少なくとも年2化以上の発生と考えられている。
幼虫の食餌植物は未知。

コチラも展翅すらしてないと思ってたが、してた。

たぶん、♂だろう。
(・o・)んっ❓でも(-_-;)あれれ❗❓、後翅が白くねぇぞ。
もしかして、まさかのアミメケンモン❓

(アミメケンモン Lophonycta confusa)

(出展『www.jpmoth.org』)

でも、細かく柄を比べて見たが、下翅は白くはないものの、他の特徴はムラサキアミメケンモンだ。特に後角の淡色紋はアミメケンモンと比べて明らかに小さいことで判別できる。自分の採ったものはムラサキアミメケンモンで間違いなかろう。

ところで、下翅が茶色ってのはどうゆう事かな❓
異常型❓それとも褐色型と云う型があるのかな❓

 
(註7)呪われた夜

(出展『hmv.co.jp』)

このオドロオドロしいアルバムジャケットは印象深くて、よく憶えている。山羊の骸骨といえば、悪魔だもんね。鷲鷹的な翼と髭みたくになってる羽根(おそらく鷲鷹のもの)は、よくワカランがインディアン関係か❓
インディアンは鷲を崇めており、最も空高く飛ぶことができる鳥であると信じられている。ゆえに神に最も近づける生物だとも考えられている。そして、鷲こそが人間と絶対神である太陽とを繋ぐ存在であり、又その間を取りもつ役割を担っていると思われているそうだ。それが呪いとどう関係するのかは知らんけどー。あっ、呪いは邦題だから関係ないか。骸骨も山羊じゃなく、牛とかバッファローだったりしてね。

原題『One of These Nights』。
アメリカのロックバンド、イーグルスの1975年に発表されたアルバム第4作『呪われた夜(One of These Nights)』のタイトル曲。
アルバムはバンド初の全米No1を獲得、シングルカットされたタイトル曲も全米ビルボードチャートの1位に輝き、名実ともにビッグバンドへ昇り詰めるキッカケとなった。
作詞ドン・ヘンリー、作曲グレン・フライ。
リード・ボーカルはドン・ヘンリー。イントロのベースとギターをファンキーなリズムにアレンジしたのは、ドン・フェルダー。

尚、最初は本文にYou Tubeと歌詞の和訳を付けていたけど、著作権法上、問題があるようなので削除しました。気になる人はネットで楽曲と訳詞を探してね。

更にクレームがきたので、英歌詞も削除です。世知辛い世の中ですなあ…。とはいえ、理解はしてる。ルールは大事だし、著作権と言われれば致し方ないもんね。

 
追伸の追伸
次回、いよいよの最終回っす。

 
ー参考文献ー
◆『日本産蛾類標準図鑑』
◆『世界のカトカラ』

(インターネット)
◆『みんなで作る日本産蛾類図鑑』
◆『奄美市雑談』
◆『Wikipedia』

 

奄美迷走物語 其の六

 
第6話
『だいたいにおいて夜のダムはヤバい』

 
 2021年 3月23日(夜編)

4時半。諦めてあかざき公園を辞して山を降りる。
意気消沈だが、今夜の予報は雨ではないから夜にも出動しないワケにはゆかない。身も心もヘトヘトなのにね。
(´ε` ) ったくよー、こんなの殆んど拷問じゃないか。思うに蝶も蛾も採るとなると、昼夜問わずのアクションとなるので体力的にも精神的にもかなりキツい。今までなら夕方には帰ってきて、シャワーを浴びてビールを飲みながら今日も一日御苦労さん。それなりに満ち足りた気分で、ゆったりとイブニングアワーを過ごせた。今にして思えば、至福の時間だったよ。
これが夜にも採集となると、そうはゆかない。ローカルな店に行って美味いもんを食いながら酒飲んで、地元の人たちと仲良くなるなんて事も諦めねはならぬ。改めて思うけど、それが旅の醍醐味の一つでもあり、カタルシスでもあったのだ。
(-_-;)クッソー、今のところロクに結果も出てないし、飲みには行けないし、まるっきり楽しくないぞー。蛾の採集の辛いところは飲みに行けないところに尽きる。だから、蛾に対して罵詈雑言を吐きがちになるのかもしれぬ。
正直なところ、アマミキシタバが採れればそれでいい。本音ではヤツが採れたら、その後は夜間採集を全放棄したっていいとさえ思ってる。つまり早めに結果を出せたら、あとはサボりまくったっていいのだ。毎夜、浴びるほど酒を飲んでも何ら問題ないのである。

 
【アマミキシタバ】


(出典『世界のカトカラ』石塚勝己)

 
但し、ハグルマヤママユにも会いたいのはヤマヤマではある。あっ、意図せず中途半端な駄洒落になっとるやないけー。カッコ悪ぅ〜┐(´д`)┌
えー、整理します。現在の立ち位置は、酒とアマミキシタバならば、アマミキシタバを取る。酒とハグルマヤママユならば、酒を取る。これでワタクシ的プライオリティは御理解戴けたかと思う。

シャワーを浴びて少し休んでたら、6時半から宴会だと報された。今日は参加しますよねと小池くんに言われたが、断腸の思いでそれを振り切って夜間採集に出る。
バイクを走らせながら思う。何やってんだか…。それって本当に正しい判断だったのか❓頭の中でエヴァのアスカ(註1)が、

『あんた、バカぁ❗❓』
『これから若い女の子たちと楽しく飲めるのに蛾を採りに行くだなんて、ホント、バッカじゃないのー❗』

と言ってる。

 

(出典『ニコニコ静画』)

 
アスカ殿、その通りでござんすよ。あたしゃ、ダメだダメだダメだダメだ…の馬鹿シンジよりも愚かな男ですよ。酒好きで女好きで通ってきたイガちゃんの名が泣くよ。クッソー、今すぐ引き返してぇー。

途中でコンビニに寄って晩飯を買う。
ちなみに奄美大島にはセブンイレブンも無ければ、ローソンも無い。おそらくヤマザキデイリーストアも無い。コンビニといえば、ファミマ(ファミリーマート)しかないのだ。

 

(出典『ペンション涼風』)

 
それに営業形体が独自だ。地元のパン屋コーナーが併設されてたり、並んでる弁当の半分は地元業者のものだったりする。まあ、そこまではいい。だけど🍙おにぎりには憤りを感じる。ナゼだか知らんが、おにぎりに限ってはファミマブランドではなくて、全部が地元業者のおにぎりなのだ。コレが許せないほどに絶望的に不味い。何も知らずに買って、パサパサであまりにも不味いので、何でや❓と思って表示を見たら地元の会社だったのだ。来島初日にそれを知って、奄美のコンビニでは死んでもおにぎりは買わないと固く心に誓ったのさ。

迷った末に結局は地元業者のBIGチキン竜田弁当(¥510)なるものを買った。おにぎりはダメでも弁当はイケてるかもしれないと思ったのだ。明らかにボリュームがあって、値段も少し安いからね。それにもしかしたら、おにぎりの業者と弁当の業者は違うかもしれないとも考えた。少々イタいめにあってもチャレンジしなくては驚きと云う果実を得られないもんね。調子が悪い時ほどアグレッシブにいこう。それが悪い波からの脱出のキッカケになるかもしれない。

名瀬の街中を突っ切って、西へと向かう。目指す先は、大川ダム。ここはアマミキシタバが日本で初めて採集された朝戸峠からも距離的に近いから選択した。
今、『じゃあ何で朝戸峠に直接行かないのだ❓』と思った人もいるでしょう。そう、そこの貴方ね。
でも、これには重大な理由がある。ネットで朝戸峠を検索したら古い旧トンネルがあり、コレがメッチャクチャに怖そうなんである。画像で見てもチビるくらいヤバい雰囲気なのだ。実際に心霊スポットとして有名なトンネルらしい。

ワキャ(ノ ̄皿 ̄)ノ、スーパーなチキンハートであるオイラが、そんな恐ろしいところに行けるワケがないのだ。

空はまだ明るい。昨日の知名瀬林道では日没後に着いてスゲー怖かったから、今回は日没前に着くように早めに出たのだ。それに明るいうちだと周囲の環境もわかる。なれば何処にライトトラップを設置するかも吟味できると云うワケやね。

朝戸トンネルに入る。

 

(出典『Amamiの書』)

 
たぶん前々回に来た時には西仲間まで行ってるから二度目だ。いや、帰りにも通っているから三度目か。
でも走っていても、いっこうに出口が見えてこない。何だか気が変になりそうだ。
このまま延々とトンネルから出られなくなったりして…。
(ToT)ダアーッ。偶然、時空の歪みにハマって帰って来れなくなるかもしれんポチー。

冷や汗の中、漸く思い出した。名瀬から西へ向かう南側のルートはトンネルだらけで、しかも長いトンネルが多いのだ。
そうと解っても気持ちは揺れ動いて安定しない。長いトンネルって、無条件に人を不安にさせるんだよなあ。

トンネルを出て直ぐに右折し、ダムへと向かう道をのぼる。
途中、民家があり、そこに住む人が訝しげにコチラを見た。こんな時間に山の中へ行くなんて…という顔だ。その驚いたような顔を見て、不安が過(よぎ)る。この先にいったい何があるというのだ❓あっちょんぷりけ。

ダムの奥まで行くと広場に出た。その先は細い山道になっており、入口にはチェーンがかかっていた。たぶんコレが滝へと向かう道なのだろう。夜の滝なんて怖いから、ゼッテー行かないけどさ。

広場の横に建物があった。
そこに何本か水銀灯らしきものが立っている。コレって当たりかもしれない。もし水銀灯が点けば、蛾たちがワンサカ寄って来る可能性がある。だとしたら、ワシの何ちゃってライトトラップの効力をバックアップして余りある強力な助太刀になるじゃないか。労せずしてアマキシGETじゃよ。

良い位置に煉瓦が積んであったので、それを利用することにした。

 

 
お陰でソッコーで屋台を組めたよ。
続いてバナナトラップを山道に仕掛けに行く。
しかし、何となく不気味な感じで、言葉に表せないような気持ち悪さが漂っている。霊感の無いワシでも本能的に身体が奥へ行くことを拒んでいるような気がする。アンタ、悪いことは言わへん。やめときなはれである。マジ怖いので、入口近くに集中して仕掛けることにした。たとえチキンと言われても構わんけん。ワシ、どうせ小心もんじゃけん。

準備が完了したところで弁当を食う。

 

 
不味くはないのだが、旨くもない。肉、かたいし。
ただし、量は多い。途中から食うのがしんどくなってきたくらいだ。

 

(出典『歩鉄の達人』)


(出典『TundaiBlog』)

 
しっかし、異様なまでに淋しい風景だ。さっきから鳥も鳴かんし、風の音さえしないから無音なのだ。オマケに空はどんよりで、辺りはどんどん暗くなってきてる。シチュエーション的に、何かか起こる時って映画でもドラマでもこうゆう異様に静かで不気味な感じなんだよねー。そして惨殺。悪魔が来たりて笛を吹くのだ。

日が完全に暮れた。
だが水銀灯は点かない。とゆう事は廃屋って事か。いや、廃墟と言った方が正しいだろう。廃墟って昼間でも充分怖いのに、夜なんてヤバすぎでしょうに。
いかん、いかん。思考を停止する。極力そうゆう事は考えないようにしよう。想像が恐怖を増幅させるのだ。一番の敵は己の想像力なのだ。暴走させてはならない。

闇が急速に侵食してくる。
(༎ຶ ෴ ༎ຶ)ダム、超怖ぇー。水は真っ黒で、僅かに水面が動いている気配がする。ダムといえば、ゼッテー何か沈んでるよね。あえて、何かって濁しちゃったけど、言ってしまうとコレはもう死体だよね。あー、ワシ言ったよ、言っちゃったよ。それってタブーだよな。それに口に出した瞬間から言葉に魂が宿って言霊になり、現実化すると聞いたことがあるぞ。或いはそれが何かを呼び寄せるとも。だったらワシ、ヤバくね❓
とにかく絶対、誰か殺された人がダムに放り込まれてるに決まってる。もしくは此の世に怨みを持って自殺した人が沈んでるかもしれない。或いは、その両方かも。だから何処でも夜のダムには、ただならぬ雰囲気が醸し出されておるのだ。
だいたいにおいて水が淀んでいるような場所は昔からヨロシクないと言われている。そうゆう所には出ると相場が決まっているのだ。だから、ダムは元より池や沼、湖、川の下流、井戸とかはヤバいと言われているのだ。トンネルなんかも中は水が染み出していることが多いから出るんだろう。空気も淀んでるしね。
そういや此処は、あのスーパー恐ろしげな朝戸峠の旧トンネルからも近い。ということは、怨霊どもが其処とダムとを縦横無尽に往復してたりして…。今、ワシは怨霊黄金ルートの真っ只中に立っているのやもしれぬ。知名瀬林道も怖かったけど、その怖さとは質感が違ってて、よりリアルさを帯びている。

とはいえ、虫たちがジャンジャンに飛んで来れば、そんな恐怖も忘れるだろう。虫を採りたいという欲望は、恐怖をも凌駕するのだ。虫バカになりさえすれば、大丈夫だ。意識をそっちに集中しよう。

しかしライトトラップを点灯するも、何も飛んで来ない。どんな場所でも大体は点灯直後には近くに居た蛾が幾つかは飛んで来るものだが、白布には何も止まっていないのだ。たぶん正面にある山が遠すぎて光が届かないのだろう。でも、そのうち光に吸い寄せられて徐々に数も増えてゆくだろう。そう思うことにしよう。

バナナトラップの様子を見に行く。

 

 
完全暗闇化すると、益々不気味な場所だ。懐中電灯で足元を照らしながら、おずおずと進む。大蛇ハブが這っているかもしれないからだ。自慢じゃないが、わしゃ大のヘビ嫌いなのだ。足もないのに前に進むのが全くもって解せないし、チロチロと舌なめずりはするし、あのヌメヌメした感じもダメだ。
そういや昔、鈴鹿の方にプーさんとミホとでキリシマミドリシジミを採りに行った時に足元から突然シマヘビが出て来たので、
キャァーε≡≡ヘ( ´Д`)ノ
と女の子みたいな声を出して逃げたら死ぬほど笑われたわ。オイラ、それくらいヘビ嫌いなのさ。
シマヘビ如きでそうなんだから、大蛇化する本ハブなんかに遭遇したら心音プッツリかもしれない。

 

(2014.9月 奄美大島 蒲生崎)

 
戻って何気に廃墟に目をやった瞬間だった。

Σ(゚∀゚ノ)ノ❗何か光って動いた❗❗

すわっ🔥鬼火か❓と思って、その場で石化する。そうです、ワタシは石です。生き物ではごじゃりません。だから無視してください此の世の者ならざる存在さんたち。
けれど恐る恐る懐中電灯を周囲にも照らすと、それと連動して光も動いた。そこで漸く気づく。
何のことはない、ただ懐中電灯の光と自分の姿が建物のガラスに反射したにすぎない。
びっくりしたなー、もぅー(´ε` )

午後8時を過ぎてもライトの白布は開店休業状態で閑古鳥が鳴いている。だからアマミキシタバどころかクソ蛾でさえも1つも採れていない。こんなに何も来ないなんて初めてだ。こりゃ呪われとるね。
バナナトラップも15分おきに見回りに行くが、訪問客はキショいゲジゲジしかいない。ゲジゲジは大嫌いだ。脚が多すぎるのも、それはそれで背中がオゾけるのだ。けど、この日は憤りの方が勝って棒で虐待してやった。したら、慌てて逃げていった。
何だか虚しいわ。怖ぇーし、何もおらんから退屈だし、退屈だから色々あらぬことを考えて心が少しづつフォースの暗黒面へと落ちていってる。それが自分でもよくわかる。

午後9時には、その恐怖と退屈に耐えきれなくなって撤退を決意した。これから先、どう考えても良いことが起こりそうにはないもん。目に見えないけど、きっと此処には瘴気が渦巻いているに違いない。これ以上、悪い事が起こらぬ前に帰ろう。

徒労感に包まれて夜道を下り、また朝戸トンネルを抜けて三十分後には宿に帰り着いた。
玄関を入ると、宴もたけなわであった。可愛い女の子2人の力は絶大で、宿泊客だけでなく地元の人も加わって大盛況だ。
クソー、あんな思いをするなら、最初から宴会に参加すべきであった。こうなりゃ、ヤケ酒だ。浴びるほどに飲んでやるわ。

かなり酔っ払ってるゲストハウスの息子さんに、今日は何処行ってたの❓と訊かれて『大川ダム』と答えたら、驚いたような顔で言われた。

『夜に、よくあんなとこに一人きりで行くよねー』

『(・o・)えっ、それってどゆこと❓』

『地元では有名な心霊スポットだからさ』

『Σ( ̄ロ ̄lll)ガビーン。マジすか❓マジすか❓マジスカポリス❗』

どうりで、あんなにも気待ち悪かったのだ。
何なんだ、この負の連鎖は❓
オジサン、泥酔路線まっしぐら。

                         つづく

 
追伸
もうあんなとこには、二度と行かん。
ちなみにダムの写真をお借りしたのは、自分で撮るような精神的余裕が全くなかったんでしょなあ。真っ暗闇の画像も前日か前々日に撮った名瀬か知名瀬林道の画像を転用だしさ。

そういえば、過去にホラーとスリラーとミステリーの違いについて書いたことがあったな。たぶん初期のカトカラシリーズか春の三大蛾の回だ。3つの違いは長くなるので書かない。気になる人は、申し訳ないが自分で探しとくれ。

 
(註1)エヴァのアスカ
アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の弐号機パイロットである惣流・アスカ・ラングレーのこと。性格は快活で主体性・自立心が強く、非妥協的。異常なまでにプライドが高く、自己中心的だが、一方では自己愛が欠如しており、周囲に対して過敏で傷つきやすい面を持つ。この性格は幼少期のトラウマに大きく影響されており、望んだ相手に自分を見てもらえなかったことによって欠けた自己愛を、他人に認めてもらうことで満たそうとする面が強い。謂わば、その強さは脆さと紙一重のものである。

尚、『あんた、バカぁ!?』のセリフは、壱号機のパイロットであり主人公の碇シンジに対して度々放たれる言葉で、他にも事あるごとに『バカシンジ』などと罵ることが多い。
裏腹にシンジに対して好意を持ち、愛を求めるが、彼が都合の良い逃避先として消去法で自分を求めてきた際には強く拒絶した。
アスカ役の声優宮村優子はアスカについて「今で言うところのツンデレ。異性として気になるのはシンジだけど、なかなかそれを表に出すことが出来ない」と評している。