鯛の白子を食べたいんだけど、小さかったり鮮度が悪かったり、はたまた値段が高すぎたりと、ナゼか今年は良いものと全くめぐり会えない。
そんな折、たまたま真フグの白子を見つけた。
スーパーで真フグの白子に出会えるのは、そうある事ではない。600円と値段は少し高めだが、量はそこそこあるし、トラフグの白子の事を考えれば超激安だ。買うことにした。
取り敢えずは定番の白子ポン酢をつくる。
酒と昆布だしをあわせたものに白子を沈め、火にかける。弱火でゆっくりと温度を上げてゆき、沸騰する前に火を落とし、あとは余熱で火を通す。
ポン酢をかけて、葱を散らす。かんずりを切らしていたので一味を振った。
しかし、期待したほどには旨くなかった…。
不味いってワケじゃないんだけど、鯛の白子やトラフグの白子と比べれば数段落ちると言わざるおえない。なんていうのかなあ…。旨味に奥行きがなく、薄いのである。美味い白子はゆっくりと旨味が舌に広がってゆき、あとを引くような余韻があるのだ。
それに食感も今一つだ。張りがない。良いものは歯を一瞬押し戻すような感覚があり、次の瞬間には諦めたかのようにはんなりと極薄の薄皮が弾けて中身が溢れ出してくる。そして、口の中いっぱいが滋味で凌辱されるのだ。どこか女性の柔肌と肉叢(ししむら)を想起させるところがある。そう、白子はエロチック。官能的な食べ物なのだ。
個人的意見としては、鯛とトラフグの白子が二大巨頭。次に続くのがサバフグの白子かなあ…。その次がタラの白子で、サイテーなのが鮭の白子だ。鮭は身は勿論のこと、卵(イクラ)だって抜群に旨いのに何でじゃろう❓
真フグの白子は、まだ沢山ある。正直言って、この程度の白子ポン酢ばっか食い続けるのは苦痛だ。はてさて、どうしたものか…。
あーでもない、こーでもないと考えあぐねて、翌日出した答えがパスタだった。
でも、通常の太さのスパデッティーニは切らしており、冷製パスタで使われる細麺のカペリーニしかない。
白子のパスタは今まで作ったことがないし、カペリーニというのも不安だ。
しかし、買いに行くのが面倒なので、カペリーニでいくことにした。テキトーに作っても何とかしてしまう、アタシャまあまあ天才なのだ。何とかなるじゃろう。
先ずはフライパンにオリーブオイル、ニンニク、鷹の爪を入れて、弱火でじっくりと油にニンニクの香りを纏わせる。強火でニンニクをキツネ色のカリカリにするのも悪くはないが、アレは日本だけ。本場イタリアには存在しない。
テキトーなところで厚めの輪切りにした白子を投入。
白子の茹で汁も入れて、塩で味を整える。
同時進行でパスタも茹で始める。パスタの茹で時間は標示よりも1分短くする。これは後に炒め混ぜ合わせることを想定してのことだね。
パスタが茹で上がったらフライパンに移し、オリーブオイルを少しづつ入れながら乳化させる。汁気が無くなったら皿に盛り、クレソンを添えて出来上がり。
( ☆∀☆)マジ、美味い❗❗
ダメな白子が見事に甦った。油と昆布だしが旨味を補い、ニンニクと鷹の爪が味のアクセントとなって絶妙なバランスになっている。程よく潰れた白子がパスタによく絡まるのも堪りまへん(≧∀≦)。細麺にしたのは怪我の功名だったかもしんない。
日は沈み、いつの間にか外はすっかり暗くなっていた。
官能的なパスタを食いつつ、平成の時代は終わりを迎えようとしている。
おしまい