2018′ 選抜高校野球回顧 準決勝

 
今更ながらの第90回選抜高校野球のレポートの第2弾、準決勝である。

  

 
前回に3日連続通ったと書いたが、実をいうと一日空いての4月3日の観戦。なぜかっちゅーと、今は準々決勝と準決勝の間に一日休養日が入るからなのだ。すっかり忘れてたよ。

  

 
強豪名門校が集まりましたなあ。
このうち智弁和歌山、東海大相模、大阪桐蔭は春も夏も優勝経験がある。三重だって昭和44年と、ちと古いが春には優勝した事があるし、2014年の夏には準優勝だってしている。充分強豪校と言っていいだろう。
とにかく強いチーム同士の戦いは、レベルが高いだけに面白くなる確率が高いよね。
実際、高校野球ファンの間では、実力伯仲のチームがぶつかるこの準決勝が一番面白いと言われている。
ベスト8までは組合せや運で進出できる事もあるが、準決勝は実力も運もあるチームでないと中々勝ち進めないからだ。今回はそのセオリーに違(たが)わぬ好チーム同士の白熱した試合になった。

この日はバックネット席は売り切れだったので、外野席に回ることにした。

 
第1試合 智弁和歌山vs東海大相模

 
試合は既に3回表の智弁の攻撃まで進んでいて、4ー0と東海大相模がリードしている。でも、コレは知ってた。なぜかと云うと、家でTVを見ていたからである。初回に東海大相模が2年生投手を攻めたてて一挙4点を先制し、智弁は早くもエースピッチャーを投入せざるおえない展開になったところで、急遽球場に行く事にしたのである。自宅の難波から甲子園までは、30分掛かるか掛からないかで行けてしまうのだ。
全国の高校野球ファン諸君よ、どーだ羨ましいじゃろう。Ψ( ̄∇ ̄)Ψそう~りゃ、Ψ( ̄∇ ̄)Ψそう~りゃ、羨ましがれ~、身をよじって羨ましがれ~。
( ̄ー ̄)フフフ…、あたしゃ性格が悪いのですよ。

 

 
センターのレフト側中段に陣取る。
取り合えずは🍺ビールをゴクゴクいかせてもらう。
ぷは~(≧∀≦)==3
世に働く企業戦士たちを尻目に、こうして青空の下で野球観戦しながら飲むビールは、やっぱ、最高じゃよ。
えー、ツマミは画像が無いので分かりませぬ。とはいえ、わざわざ写真を撮ってないところをみると、どうせ定番の枝豆とか唐揚げとかポテサラじゃろう。
と、アルコール摂取に気をとらわれてる間に智弁が2点返した。智弁は林、東海大相模は森下と云うプロ注目のスラッガーを中心とした強力打線だから、戦前の予想通りの打撃戦になりそうだなと思った。そういう試合は好物。皆はん、打って、打って、打ちまくりなはれ~。

4回表に智弁が3点取って、5ー4と逆転した。
やはり、智弁和歌山打線は伝統的に爆発力がスゴい。打ち出したら止まらないイメージがある。帝京との試合とかは凄かったもんね。

5回裏。東海大相模の攻撃。
1回にスクランブル登板で後続を断ち、ここまでスイスイと投げてきたエース平田くんが、この回もポンポンとツーアウトまで取った。こりゃ、智弁ペースになっていきそうだなと思った矢先、打ち取った筈のショートゴロがバウンドが変わってラッキーなヒットになった。そして、次打者渡辺くんがライトに強烈なツーランホームランを打ち、あっという間に6ー5とひっくり返した。
o(^o^)o面白れぇ~。
オジサンになるにつれ、いつしかどちらかのチームに極端に肩入れをして観なくなった。勝ち負けは2の次。そんな事よりもゲームの内容が大事。今は互いが死力を尽くした熱い試合を見られれば、それで良いと云うスタンスだ。どちらかのチームに強い思い入れを持つと、負けた時にガックリきて疲れるのよ。

6回裏、さらに試合が動いた。
ノーアウトから平田くんがフォアボールを許す。その後ファーストが二塁へ悪送球。更に前進守備のショートが正面のゴロを後ろに逸らす。とどめはサード林の1塁悪送球で、あっという間に10ー5になった。フォアボールに連続エラー連発って、負けるチームの典型だ。この時点で智弁の勝ちはないなと思った。

しかし、智弁は7回に1点返し、8回にはランナーを二人置き、エラーした林がライトフェンス直撃のヒットを放って2点返して10ー8と猛追。
それにしても、林くんよ、ホームランと思って、やったとばかりにカッコつけてバットを放り投げたけど、そのせいでシングルヒットどまりになったやないけ。低めのボール玉につられて空振りばっかしてるし、しっかり走らない選手はアカンえ~。彼は秋にはドラフト3位で広島カープに指名されたけど、そういうプレーをしてるとプロでは大成しないぜ。まあ、とはいえ入ったチームがカープだからシッカリ育ててくれるかな。まあ気合い入れて、お気張りしなはれ。
それはそうと、智弁和歌山の選手ってプロに入ってもあんまり活躍しないのは何故なんだろね。日ハムの西川くらいしか思い浮かばない。何か理由でもあるのかな?

そして更にチャンスは広がり、ツーアウト満塁に。
そこで回ってきたのが前の試合でさよならタイムリーを放った黒川くん。
彼はホント良い打者で、打ちそうなオーラがあるから打つんじゃないかなと思ったら、やっぱりのセンターへの鮮やかなヒットを放つ。これで10ー10と試合はふりだしに戻った。( ☆∀☆)スッゲー。

試合は延長戦に入った。
10回表。智弁はヒットとフォアボールのランナーをバントで進め、1アウト2、3塁とする。

当然の如く智弁アルプススタンドから勝ち越しの狼煙(のろし)、魔曲『ジョックロック』が大音量で押し寄せてくる。

 

 
冨田くんのセンターへの犠飛で1点を勝ち越す。
そして、続く黒川くんが左前適時打でダメ押しの2点目が入った。又しても黒川くん❗これで4打数3安打だ。完全に勝利の女神を呼び込むラッキーボーイだね。

その裏の東海大相模が無得点に終わり、12ー10で智弁和歌山が勝った。いやはや、見応えのある試合でした。

 

 
この日は、ぽかぽかして暖かかったんだよね。
春だなあ…と思った記憶が甦ってきたよ。

 
第2試合 三重vs大阪桐蔭

 
センター左中間寄りから、右中間寄りに席を移す。
客席の空席情況によって、席はよく移動する。場所が変われば、視点も変わるからだ。たぶん生来落ち着きの無いせっかちな性格なのだろう。

冒頭に少し触れたが、三重高校が2014年夏に準優勝した時の相手が大阪桐蔭である。謂わば今回は三重のリベンジがかかっている因縁の試合なのだ。
とはいえ、大阪桐蔭に返り討ちにあうだろうと云うのが戦前の予想だった。しかし、試合は意外な展開で進んでゆく。

3回表、三重の攻撃。先発柿木がレフト前にヒットを打たれ、すかさず盗塁を決められる。このチャンスにここまで5打点と当たっている梶田くんが三遊間を抜いて先制する。さらに右中間への大きな当たりで1点を追加。2ー0とリードする。

一方、大阪桐蔭は度々チャンスを作るも、あと1本が出ない。漸く6回に1点を返すが、流れからではない山田のソロホームランでの得点だった。反撃開始と云う程には、ムードは盛り上がらない。
記録を見ると、ピッチャーは5回表からは柿木に変わって根尾が投げている。思い出したよ。それで、三重打線がすっかり沈黙してしまう。今思えば、このエース柿木をあっさり諦めて根尾に変えた西谷監督の決断が、勝負の流れを呼び込んだのだと思う。西谷監督は、ただの流し目デブではないのだ。まだ若いのに名将と言っていいだろう。チンプンカンプンの迷采配をする浦和学院のモリシや横浜のヒラタ、中京大中京のタカハシとは大違いだ。そういえば、平安のハラダも『お前ら、最高だあー!』とか叫んでて、変だなあ。
でも、モリシの采配はあまりにもおバカ過ぎて笑えるんだよなあ。もうファンと言ってもいいくらいに、その一挙手一投足に魅了されてる。モリシー、来年に夏には待ってるよー。

 

 
7回を終わって、三重が2ー1と大阪桐蔭をリードしている。予想とは違うロースコアの展開だ。 
当時の思いでは、三重って準々決勝は乱打戦で結構相手チームにも打たれているのに何で桐蔭打線が抑えられているのかな❓と疑問しきりだった。
三重の選抜の準々決勝までの戦い振りが気になったので、せっかくだからここでちょっと調べてみよう。

見ると、ここまで日大三高を8ー0、乙訓を2ー1、星稜を14ー9と強豪高を破ってきている。
日大三高は夏の大会にはベスト4まで勝ち進んでいる。そのチームを8ー0と退けているのだから、間違いなく強いチームと言えよう。この日、桐蔭戦で投げている定本くんが先発して、日大三打線を散発7安打、与四死球2で完封している。日大三も強力打線が売りのチームだから、それを完封するとなると、やはり良いピッチャーなのだ。大阪桐蔭打線を苦しめているのも偶然ではなかったと云うことだ。
乙訓は夏の大会には戻ってこれなかったが、選抜では投手力のある好チームだったと記憶している。ベスト4くらいまでは勝ち上がるのではないかと思ったくらいだ。そのチームに接戦で勝ち上がると云う事は、チームに地力があると見ていいだろう。因みに、乙訓戦では定本くんは登板していない。
星稜は夏には2回戦で破れてはいるが、相手はその後ベスト4まで勝ち進んだ済美高校で、しかも延長13回の末にサヨナラ負けしている。つまり、星稜も相当強いチームだったということだ。因みに乱打戦になった星稜との試合では、定本くんは最終回だけの登板で、ピシャリと3人で抑えている。
三重の強さ、半年以上も経って納得なるほどだよ。

そして、試合はとうとうそのまま9回裏まで進んでしまう。球場内に、もしかしたら番狂わせが起こるのではないかという雰囲気が漂い始めている。強いチームが破れる時は、往々にしてこんな試合展開が多いものだ。自分も7、8割の確率で三重が勝つのではないかと思った。今思えば、後に春夏連覇を達成したこのチームにも絶体絶命のピンチがあったんだね。圧倒的な強さで、楽勝で連覇したイメージが強いけど、そうでもないのだ。

 

 
先頭打者の根尾が一度もバットを振ることなく、1塁に歩いた。球場がまた別な意味でざわつく。こういうフォアボールを出すのは、ピッチャーが勝ちを意識して体が固くなっている証拠だ。これで三重の全選手にも緊張が伝染する。観客もその辺のところは敏感に嗅ぎとっているのだ。高校野球の面白さは、メンタルがモロに出てしまうところである。それが予想不能なドラマを起こさせるのである。
ここで前の打席にホームランを打った山田がバッターボックスに入る。どうする❓その色っぽい流し目から全国のデブ専に絶大なる人気を博している西谷監督❗
しかし、山田は何とバントの構え。そうだよな、それが正しかろう。ここは是が非でも二塁にランナーを送り、1点をもぎ取って先ずは同点にする事が肝要だ。
だが、あろうことか山田がバント失敗。キャッチャーフライに倒れる。今度は逆に大阪桐蔭側にプレッシャーが掛かるだろう。こういうミスは流れを変えかねない。三重側に運が回ってしまうことだって、往々にしてある。
続く石川が三遊間ヒットを放ち、1、2塁となった。
こういう場面でヒットを打つなんて、メンタル強いね~。強いチームは技術だけでなく、心も強いから強いのだろう。
そして、次の小泉が外角低めの難しい球を執念でライト前に持っていって、土壇場で追いついた。
(≧∀≦)痺れる試合だね~。
あそこでエンドランをかけるとは、西谷監督って勝負師だねぇ~。エンドランじゃなかったら、打者だってあの球は振っていなかったかもしんない。

  

 
エンドランが掛かっていたので、ライナーは1、3塁。もう1本出れば、サヨナラ勝ちだ。
だが、後続が倒れて延長戦に突入。
準決勝は接戦になることが多いとはいえ、2試合とも延長と云うのは珍しい。ざっと記憶を辿ってみたが、思い出せない。調べてみたところ、28年振りで、選抜史上2度めだそうである。

11回裏。大阪桐蔭がツーアウト2塁のチャンスを迎える。しかし、途中出場の井阪の痛烈なファーストライナーを1塁手が好捕して、ピンチをしのいだ。球場内に呻きと溜め息が地鳴りのように広がる。
ここまで書かなかったが、三重の守備は素晴らしい。
この守備の固さが大阪桐蔭の得点を何度も阻んできたのだ。大阪桐蔭の残塁11が、それを示している。
いや~、それにしても完全に抜けたと思ったよ。それくらい良い当たりだった。

そして、ゲームはとうとう12回の裏までやってきた。
今大会から規程が変わり、今までは15回で引き分け再試合となっていたものが、12回を越えると試合形式がタイブレーク制に変わる事が決まっている。つまり、もし12回が終わっても決着がつかなければ、高校野球史上初めてのタイブレークの試合になると云うワケだ。ちょっとタイブレークを期待する。

ワンアウト後、ショートの悪送球でランナーが出る。
ここまで固い守りでしのいできた三重にとっては、浮き足立ちかねない痛い失策だ。そして、迎えるは打線の中軸である。球場内の空気が再び不穏になる。だが三番中川は三振。ツーアウトとなる。そして、打席に四番のイケメン藤原が打席に入った。
ちょっとタイブレークを見たかったけど、打つと思った。彼は、こういうチャンスに回ってくる巡り合わせみたいなものを持っている。そして、そこでド派手な結果を残すスター性みたいなものがあるのだ。去年の選抜決勝戦でも、2本のホームランをカッ飛ばして一挙に全国区の選手になった。ただの男前ではないのだ。

快音を残して、ドライヴの掛かった打球はグンとホップし、左中間に切れ込むようにして曲がりながら飛んでいった。そして、外野手の間を真っ二つに割って抜けていった。
1塁ランナーが疾駆してホームへ戻ってくる。
滑り込んだその瞬間、ゲームが幕を閉じた。
3ー2。大阪桐蔭のサヨナラ勝ちだ。

 

 
歓声が爆発して、やがて、ゆっくりとざわめきへと変わってゆく。

 

 
緑の芝生に照明灯の影が長く伸びている。そこに、夕暮れ間近の春のやわらかな光が降り注いでいる。
ゆっくりと腰を上げ、大阪桐蔭の校歌を背に球場を後にした。
いつ来ても、甲子園は素敵だ。

                   つづく