壮麗なる王女~ヤイロタテハ~(改訂版)

 
ここんとこ、ヤイロタテハの展翅をしてFacebookにあげている。
そこで、ふと思い立って記事を一つに纏めようと思った。本当は台湾の蝶シリーズを書くべきなのだが、次の題材選びに思いあぐねているのだ。当初はアサクラコムラサキの事を書こうと思ったのだが、そうなると、その前にタイワンコムラサキ辺りから始めないと話の流れが悪い。順番は大事である。後々、スムーズにいかなくなる。でもタイワンコムラサキだって、そう簡単に論じられるワケでもないのだよ、明智く~ん(ここんとこ江戸川乱歩関連の番組ばっか見ているのだ)。
そう、コレはブログの年末調整的にお茶を濁そうと云う計画なのである。それが、まさかの出口の見えない無間地獄に又しても陥る事になろうとは、この書き出しの時点ではまだ想像だにしていなかった。
(# ̄З ̄)ったくよー。

今までに、以下のような文章をFathbookにアップしてきた。
ついでだから少し手を入れたが、概(おおむ)ね文章は当時のままである。

 
去年、お嬢にお土産で戴いたマレーシア産のヤイロタテハ。

 
【Agatasa calydonia ヤイロタテハ♂ 裏面】

 
(@_@;)ゲッ、お漏らしで翅がグチャグチャやんか。揚げ句、首チョンパのバラバラ~。あらあら、腐ってたのね~。あと2頭残ってるから、まっ、いっか…。
とはいえ、この個体が最も紋が鮮やかで形もいいんだよなあ…。こういう汚れた蝶を綺麗に修復する方法って、ないものなのかしら。

Σ( ̄ロ ̄lll)ゲッゲッ~❗

 

 
2頭めのヤイロタテハもお漏らしさんだべさー。
フタオチョウとかコイツらって、下(しも)がホントっゆるい。食ってるもんも腐った果実や糞尿とかでサイテーの悪食だしさ。あと、現地でそのままタッパーとかに入れてたら腐るし、蟻にもよくタカられる。
何度も、マジかっ、ワレーΣ( ̄皿 ̄;;になったよ。
展翅も羽のバネが強過ぎて、すぐにズリ下がってきて超ウザイし、ボケ~(ノ-_-)ノ~┻━┻❗❗となる。

えーい、急遽、裏展翅じゃボケ~(* ̄ー ̄)

 

 
思うに、タテハチョウって裏の方がカッコいい奴が多いよね。
幸い裏側は汚れてない事だし、コレはお嬢に帰そっかな。でも、臭いと断られそうだな…。

ここからが、Facebookにアップしていない文章。

3頭めも、やはりお漏らしさんだった。
けれど、汚れがまだ少ない方なので、表展翅することにする。考えてみれば、表展翅は初めてだ。

 

 
ヤイロタテハって、上翅を上げるのはこれくらいが限界だと思う。下翅の下辺を無理に真っ直ぐにしようとすると、頭が翅に埋まってしまう。これはあまりにブサいくだ。再三再四そこかしこで述べているが、昔から言われている蝶の展翅のセオリーに囚われ過ぎるのはナンセンスだと思う。翅だけではなく、全体のバランスを考えて整形すべきだと云うのが、ここ数年で行き着いた結論だ。
とはいえ、人にはそれぞれの好みと云うものがあるからして、正解は一つでは無いんだけどもね。
それにしても、汚物で尻が真っ黒けになっとるやないけー。この蝶、お漏らし大王だから、ウルトラ完品って中々手に入らないのかもなあ…。

3日後、嬉しい事に一番最初に展翅したグチョグチョの個体が復活していた。

 

 
少し汚れてはいるが、コレくらいならセーフだろう。
とはいえ、何となく真っ直ぐに写真が撮れてないような気がするので、後日撮りなおす。

 

余計に歪んだ写真になっとるやん( ̄∇ ̄*)ゞ 
それにしても、美しいね(⌒‐⌒)

そういえば、昔ヤイロタテハについてアメブロに書いた文章があったな。

 
https://www.google.com/amp/s/gamp.ameblo.jp/iga72/entry-12110534183.html?source=images

 
暇な人は読んでみて下され。

とはいえ、自分で書いといて、どんな文章を書いたのか全然憶えてない。気になるので、再読してみることにした。

( ̄~ ̄;)むにゃあ~、不満だ。文章に手を入れたくなる。井伏鱒二先生ほどじゃないが、過去の自分の文章が気に入らなくて弄(いじ)くってしまう癖(へき)がある。それがしょっちゅうって云うか、時にパラノイア的であったりする。
大学の後輩が何年か前に言っていたが、或る種の完璧主義なのかもしれない。面倒くさい性格だ。

以下、改訂版である。

 
今回は謂わばマレーシアの蝶の番外編である。

紹介するのはAgatasa calydonia ヤイロタテハ。
この旅では季節が合わず、結局再会できなかった蝶だ。
平嶋義宏氏の『蝶の学名 その語源と解説』に因れば、学名の属名「Agatasa」は語源不詳だそうである。
とはいえ、ギリシャ語のaga(非常に)とtasis(力、強さ)とを合わせたもの、もしくは発音の類似から聖女で殉教者のアガタ(Agatha)に模した造語ではないかと推察しておられる。
小種名の「calydonia(カリュドニア)」は、古代都市の名前で、神話のカリュードンに因むという。

ここで、はたと気づく。そういえば学名の属名は変更されたんじゃなかったかな❓
確認したら、案の定だった。今はヤイロタテハ族・ヤイロタテハ属「Prothoe calydonia」と云う学名になっている。
「Prothoe」の語源は、ネーレース(海神ネーレウスの50人の娘)たちの一人であるprotho(プーロートー)のフランス名なんだとさ。相変わらずのギリシャ神話由来ばかりだ。もう、うんざりじゃよ。

ついでに言っとくと、英名はglorious begum。
gloriousはまだ解るとしても、begumという単語が何なのかさっぱり分からなかったので、これまた調べてみた。お茶を濁すつもりが、もう大変である。

「begum」とは、どうやらインドやパキスタンのイスラム教徒の位の高い女性を指す言葉らしい。辞書によっては、イスラム教徒の王女、王妃、貴婦人とも書かれている。

ここからが種の解説的なものになるのだが、文章の訂正加筆箇所が少ない事を祈ろう。

 
【Prothoe calydonia ヤイロタテハ】
(2011.2.20 Malaysia cameronhighland )

 
大型のタテハチョウの仲間で、フタオチョウに近い種類である(註1)。
和名の由来は、羽の裏側の豪華絢爛たる色彩からであろう。つまり八色からのヤイロなのだ。

4年前(2011年)、初めてキャメロンハイランドで見た時は、その存在さえも知らなかったので仰け反るくらいに驚いた。想像外のデザインだったのである。悪魔的ですらある、そのおどろおどろしくも美しい姿に畏怖さえ覚えた記憶がある。

前に何処かでチラッと書いたかとは思うけど、そのヤイロタテハのラオス産が出てきた。
師匠に戴いたおこぼれのボロだが、探して展翅しようと思うも見つからずに悶々としていたのだ。それが先日、何とまさかの標本箱から見つかった。
まだ展翅していないとばかり思っていたのに、ちゃんと既に展翅してあったのである。人間の記憶なんてものは、如何にいい加減かという証左である。いや、単に己の記憶力が悪いだけか…(笑)

言い忘れたが、師匠に戴いた頃はヤイロタテハは広く東南アジア全般にいる普通種だとばかり思っていた。
だが、それがどうやら違うようなのである。図鑑を見ると、分布はミャンマー、タイ、ラオス辺りから南にあり、その中心はスンダランドだ。驚いた事には、インドシナ半島には多くの空白地帯がある。

 
(出典 塚田悦造『東南アジア島嶼の蝶』)

 
分布図には、ラオスは入っていない。
しかも、既存の分布圏からもかなり離れている。ワケわかんないぞの混乱(´・∀・`)ぴよこちゃんだ。

ならばと他の図鑑でも確認してみる。

 
(出典 五十嵐 邁・福田晴夫『アジア産蝶類生活史図鑑』)

 
こっちの図鑑でもラオスは分布圏に入ってない。(・。・;)どゆ事❗❓

きっと亜種なのだろうが、じゃあ何と云う亜種に含まれるのだろう❓南ミャンマー亜種 A.belisamaなのか❓それとも新亜種なのかな❓

取り敢えずは二つを並べて見比べてみよう。
先ずはマレーシア産の原名亜種 ssp.calydoniaの裏面画像から。

 
(2011.2.20 Malaysia 19miles )

 
お次はラオス南部産の裏面。

 
(2011.4. Laos Tateng)

 
鮮度が悪いので、あまり色は参考にならないだろう。
しかし、上翅の黄色い領域は確実に広い。紋も細かく見れば違う。特に後翅根元の赤い⚡稲妻紋の形などはかなり違う。
だが、こういうのは個体変異もあるから一概には何とも言えない。この2頭だけで判断するのは意気焦燥だろう。

ならばと、表側も見比べてみる。

 
(マレーシア産)

 
(ラオス産)

 
Σ(-∀-;)びっくりだわっ❗、全然違う。
明らかに下のラオス産の方が、マレーシアのものよりも黒い部分が少ない。♀なのかもしれないが、上翅の形も全然違う。こりゃ、完全に別亜種だわ。
塚田悦造氏の『東南アジア島嶼の蝶』には南ミャンマーの個体は図示されていないが、『黄色味の強い基斑紋が後中央まで拡がった美しいもの』とあるから、マレー半島の原名亜種よりかは、そちらの方に近いかとは思われる。

問題は亜種 belisamaに含まれるのか、それとも新たな別亜種となるのかだ。
でも、塚田図鑑にはbelisamaの画像が無いのだから、両者を見比べられない。ここで行き詰まりだ。結局、何かワカランやんか。

 
一応、他の亜種も参考までに図示しておこう。

 
【c.auricinia スマトラ島亜種】
(出典 『東南アジア島嶼の蝶』。以下、何れも同じ。)

 

原名亜種とほとんど変わらないが、後翅裏面亜外縁の黄条が少し太まる。

 
【c.mahasthama ボルネオ島亜種】

少し小型になり、裏面の白色部が目立ち、後翅の白横条が太くなる。

 
【c.multicolor シンケップ・リンガ島亜種】

これもやや小型になり、♂の翅表第2室の黄斑が外に細まり、同室裏面黄色が濃色となる。♀は裏面の赤色紋が褐色に変わる。

因みに参考までに言っておくと、フィリピンに代置種とされるクリソドノイアヤイロタテハとゆうのがいる。

 
【Prothoe(Agatasa) chrysodonia】 

黄色味が強い。ミンダナオ島ではまだ比較的得られるようだが、ルソン、ミンドロ島では稀で大珍品らしい。

ラオス産の完品を見ないとわからないが、個人的には裏の色が一番濃いと言われる原名亜種が好きだ。
珍しい亜種よりも、種内で一番美しいものを評価すると云うのが基本的スタンスなのだ。
もっと言うと、亜種に限らず蝶全般を、どちらかというと珍しさよりも美しさで評価する傾向が自分の根本にはあると思う。普通種のベニシジミやキアゲハを素直に美しいと思うのだ。もし、これらが珍品ならば、拝み倒している人は多いと思う。この業界、珍しいか否かで美しさの値打ちが変わる傾向があるのだ。
まあ、どんな蝶でもよく見れば、大概はそれぞれ固有の美しさがあるんだけどもね。

                         おしまい

 
追伸
師匠にメールでラオス産のヤイロタテハについて尋ねたが、調べると言ったまま、いまだ返答がない。
だから、この文章は最初に書いてから、だいぶ経っているのだ。終わり方に尻切れトンボ感があるのも、そのせいなのだ。

後々、解ったのだが、どうやらこのラオス産のヤイロタテハは新亜種ではなく、亜種belisamaに含まれるようだ。

 
(註1)フタオチョウ

【Polyura endamipps フタオチョウ♂】
(2011年 4月 Laos)

 
大型のタテハチョウで、湾曲した羽と2本の剣のような尾状突起が💖萌え~である。頑強な体躯で矢のように飛ぶ事も含め、オラの大好きなグループの一つだ。
日本の沖縄本島にも天然記念物に指定されている亜種e.weismanniが棲息している(註2)。
但し、分布の最東端にあたり、別種と見紛うばかりに原記載亜種とは見た目の印象がかなり違う。大きさが下手したら二回りくらい小さくなり、尾突も著しく短くなる。また、白い部分も減退し、全体的にかなり黒っぽい。

 
(『日本産蝶類標準図鑑』より。)

 
見た目どころか、幼虫の食樹も違うし(インドシナ半島ではマメ科植物だが、沖縄ではクロウメモドキ科ヤエヤマネコノチチとニレ科リュウキュウエノキ(クワノハエノキ)、こんなのもう別種でもいいんじゃないかと思う。
それに噂では、幼虫形態やその生態も違うらしい。でも天然記念物であるがゆえに、採集は元より飼育も出来ない事になっているから研究も発表も出来ない状態のようだ。官がつくる昆虫関連の法律は、大概が柔軟性に欠け、結局クソなのだ。

ヤイロタテハは、激レア亜種は別として、大珍品とまではいかない蝶だろう。
かといって普通種でもなく、何処にでもいるという蝶ではない。図鑑の記述に拠ると、どの産地でも個体数は少ないようだ。
つまり、行けば誰でも簡単に見られるというものでは無いと云うことだ。実際、自分もキャメロンハイランド以外では見たことがない。しかも、いまだメスにはお目にかかった事がない。たぶんPolyura(フタオチョウ)と同じで、メスは珍品なんだと思う。
それに、たとえ見たとしても弾丸みたいに飛ぶから、先ず空中では採れないだろう。自分みたく運良く吸水に来たものが偶然採れるくらいだ。トラップが無ければ、基本的に採れない蝶なのだ。
そういえば思い出した。タイのチェンマイでお会いした爺さまが言ってたな。その爺さまは毎年チェンマイに通っているそうで、昔はヤイロタテハも結構いたらしい。それが10年ほど前から全く姿を見掛けなくなったという。きっと他にもそういう場所は多いだろう。
考えてみれば、図鑑『東南アジア島岨の蝶』が世に出てから、もう40年近くも経っているのだ。その頃とは珍稀度が大きく変わっている可能性がある。この蝶は低山地に棲む蝶のようだから、環境破壊の影響も受けやすいに違いない。現在のレア度はかなり高いかもしれない。
それでも東南アジアに行く機会があったなら、ぜひとも自然の中で生きている王女に会ってもらいたい。
その力強さ、威厳、悪魔的な色柄、深いジャングルと云うロケーションetc…。探す価値はある。

王女には、もう一度会いたいなあ…。

 
追伸の追伸
 それにしても、初期の頃の展翅は我ながら下手だねぇ~(笑)
よほど展翅しなおしてやろうかとも思ったが、思いとどまった。この文章の為だけになんて、(=`ェ´=)邪魔臭いわい。そこまで完璧主義ではごさらん。

おっ、そうだ。それで思い出した。そういえば、お嬢に貰ってすぐに展翅した奴があった筈だ。

 

 
(・。・)あれっ!?、2頭もしたっけか❓
それにしても、(´∇`)カッコいいなあ。
地面に止まっているのを見た時は、Σ(-∀-;)ビクッとなって立ち止まったのを思い出したよ。その存在を知りもしなかったので、(; ̄ー ̄Aあはは…、幻覚でも見てるんじゃないかと思った。それほどの衝撃だった。そういえば、下手したら、コヤツ蛾でねえの❓とも思ったなあ…。
震える指先で手のひらに乗せて、じっくり見た時の感想も思い出した。曼荼羅みたいだとか、歌舞伎的やなとも思ったっけ。
残念ながら、その時の画像は無い。興奮し過ぎて撮るのを忘れたのだ。初めての海外採集の、まだ二日めとかだったもんな。

  

 
おっ、表側もある。
と云うことは、やっぱり2頭を展翅したって事だね。

 

 
針を外した画像もあった。

 

 
と云う事は、全部で5頭も戴いたってワケだ。
お嬢、💖ありがとね。
こうなると、やっぱメスも欲しくなるなあ…。この蝶は雌雄同型だけど、メスはもっとデッカイ筈。どんだけデカイんじゃろう❓
何とか並べてみたいもんだよねぇ~。

(註2)
このあと、日本のフタオチョウは亜種から別種に昇格し、学名は Polyura weismanni となった。
この辺の事は拙ブログの台湾の蝶シリーズの第2話『フォルモサフタオチョウ』と、その番外編『エウダミップスの迷宮』、『エウダミップスの憂鬱』に詳しく書いたので、宜しければ併せて読んでつかあさい。

それにしても、文章の細かいところも含めてかなり書き直す破目になった。お陰で大掃除は進まんし、オジサンは疲れたよ。

                  おしまい

 
ここで終わりにするつもりだった。
しか~し、文章をアップする為に読みなおしたら、またドえれーところに気づいちまっただよ。
ヤイロタテハはフタオチョウに近い仲間と書いたが、本当かよ❓と云う疑問がムクムクと頭をもたげてきたのだ。又しても、無間地獄のドツボに嵌まっちまった。

疑問を持ったのは、フタオチョウの遺伝子解析の結果を思い出したからである。コムラサキ亜科とかの真正タテハチョウのグループだとばかり思っていたが、結果はジャノメチョウに近いという事が判明したのだった。
ヤイロタテハの、その頑強な体躯や翅の分厚さ、翅表の配色、後翅の尾突起らしき形状は、如何にもフタオチョウを彷彿とさせる。ゆえに両者は近縁関係だとばかり思っていた。しかし、フタオチョウがジャノメに近いならば、果してヤイロタテハもそうなのか❓虫の世界には、他人のそら似と云うのがよくあるんである。
よくよく考えてみれば、裏側の斑紋パターンはフタオチョウとはかなり違う。どころか同属のルリオビヤイロタテハを除けば、他に似ているものさえいない。
じゃ、あんた何者❓

ヤイロタテハの遺伝子解析の論文を探すが、見つからない。絶対、既に解析済みの筈なんだけどなあ…。学者さんが、その辺を見過ごすワケがないと思うんだよねぇ。
勝山さあ~ん、おせーてよー(ToT)
とはいえ、直接お尋ねする程の面識は無いもんなあ…。

ならば、幼生期の形態で判断じゃ。蝶は幼生期の形態で、大体の類縁関係が分かるのだ。
伝家の宝刀『アジア産蝶類生活史図鑑』を開いてみる。

(;゜∇゜)あぅぅぅ…ゲロリンコ、何じゃお主は❗❓

 

(出展『アジア産蝶類生活史図鑑』)

 
ヘ(゜ο°;)ノ≡3≡3きっしょー、最低クラスの醜さだ。バケモンじゃよ、バケモン。形だけでなく、色までトドメ色で酷いや。おどろゲロリンコ星人やな、おまえー。
それにしても、フタオチョウの幼虫とは全然似てないぞー。

 
【フタオチョウ幼虫】

 
【フタオチョウ頭部正面図】
(出展二点共 手代木 求『日本産タテハチョウ幼虫・成虫図鑑』)

 
一応、コムラサキ亜科特有のナメクジ型ではある。
強いていうならば、目の先の形状がスミナガシの仲間に近いかもしれない。いや、トゲトゲや突起物は無いけれど、ミスジチョウやイチモンジチョウ系の幼虫にも似てるっちゃ似てるか…?
『アジア産蝶類生活史図鑑』の解説を読むと、興味深いことに、その生態はイシガケチョウ属、スミナガシ属、イチモンジチョウ属、ミスジチョウ属など様々なタテハチョウ科の幼虫の色々な習性が混じっているらしい。何じゃ、そりゃ❓

蛹の形状も見てみよう。
左から側面、腹部側正面、背面側正面である。

 
(出展『東南アジア産蝶類生活史図鑑』)

 
解説にも書かれてあるが、蛹の形状は色は違えど何とまた別なタテハチョウ科のEuthalia(イナズマチョウ属)にソックリじゃないか。色が灰色じゃなくて緑色だったら、まんまである。

一応、フタオチョウの蛹も図示しておこう。

 
(出展『日本産タテハチョウ幼虫・成虫図鑑』)

 
違うなあ…。
この事実を見ると、とてもフタオチョウに近縁だとは言えそうにない。
それにしても、イシガケチョウ、スミナガシ、イチモンジチョウ、ミスジチョウの幼虫と行動様式に共通点があって、蛹はイナズマチョウに似てるって、もう鵺(ぬえ)的存在で、何が何だかワカラナイや。

因みに、食樹はバンレイシ科のDesmos chinensisと云う植物らしい。バンレイシ(蕃茘枝)って、たしか果物だよね?別名シュガーアップルとか釈迦頭と言われている奴だ。味はバナナとパインの合の子みたいで甘みが強い。けど、食感は梨みたいなシャリ感のある摩訶不思議な果物だ。
(`ロ´;)クソッ、食樹までも果物界の鵺とかキメラなのかよ。
とにかくバンレイシ科を食ってる蝶の幼虫だなんて、勉強不足かもしんないけど、知る限り記憶にない。上位分類にまで広げるとモクレン目になるが、それとてざっと見る限り、タテハチョウの食樹らしきものは見当たらない。クスノキとかモクレン系が含まれる目だけれど、それはアオスジアゲハとかのアゲハの食樹なんだよなあ。
これじゃ、植物に疎い自分には何に近い種なのか特定しようもない。
スマン。大風呂敷を広げといて、結局はグダグタの結末だ。

結論の無いまま迷宮に取り残され、歳末の夜は静かに更けてゆく。
皆さん、良いお年を。

              今度こそ、おしまい