2018′ カトカラ元年 其の11 最終章

 
  vol.11 シロシタバ act5

     ー解説編ー
 『天鵞絨(びろうど)の褒章』

 
長々と書いてきたが、やっと種の解説だ。
ここまで、ホント長い道程(みちのり)だったよ。

 
【シロシタバ Catocala nivea ♂】

 
【同♀】

 
【♀裏面】

 
【学名】Catocala nivea nivea (Butler,1877)

小種名のnivea(ニヴェア)は、雪(白)、雪のように白いの意。ラテン語のniveusの女性形。

学名の小種名はニベア(ニヴェア)は女性形なんだね。本文中で度々シロシタバを彼女と呼んだのも、あながち間違っていなかったワケだ。

ニベアで最初に連想したのは、あのスキンクリームで有名なニベア。どうやら両者の語源は同じみたいだ。虫採りをやってると賢くなるのら。今度何かで使ったろー。

『キミの素肌はニベアだね。透き通るように美しいよ。』
『えっ、ニベア❓ニベアってあの手とかに塗るクリームの❓』
『そう、そのニベア。元々ニベアとはラテン語で雪のように白いって意味なんだ。クリームのニベアはそこからパクったってワケ。』
『へぇー、そうなんだー。アナタって❤素敵❗』
『いや、キミの美しい素肌の方が何倍も素敵だよ。』

( ☆∀☆)おー、使えんじゃねえかー。
と云うのは、もちろん嘘で、(/ロ゜)/わうっと仰け反るくらいにゲロ安っぽいわ。
(-_-)んなもん使えねえよ、バーカ(# ̄З ̄)である。

深夜に書いてると、アタマがワいてくるニャー(ФωФ)
一人妄想ごっこはコレくらいにして、先へと進めよう。

学名は「雪のように白い」だが、厳密的にはシロシタバの下翅は真っ白ではない。限りなく白に近い質感のあるオフ・ホワイトだ。それが織物のベルベット、もしくはビロードや別珍(ベッチン)みたいで(註1)、それがかえって上品さを醸し出している。蘚(こけ)のような上翅とのバランスが何とも気品があって素敵だ。

余談だが、ジジミチョウ科の Lachnocnema(ラクノクネマ)属に Lachnocnema nivea というのがいる。和名はケブカアシジジミ。脚がモフモフでとても可愛い。

 
【Lachnocnema bibulus】
(出展『iNaturalist』))

 
L.nivea の画像が見つけられなかったので、同属の別種を貼り付けておいた。
他にもシジミチョウ科には、シロシジミ属(Ravenna(ラヴェンナ))に Ravenna nivea という種がいるみたいだ。

 
【和名】
度々、オオシロシタバとの和名の逆転現象が指摘されている。オオシロシタバよりシロシタバの方が明らかに小さいのにオオと付くのは紛らわしいというワケだ。
『原色日本産蛾類図鑑』のシロシタバの解説欄には「前種(オオシロシタバ)よりは常に大きく、その和名は前種と入れかえる方が合理的であるが、永年使用されてきたものであるし、さして不便もないのでそのままにしておく。」と書いてあるから、皆が妙に納得して声高に糾弾するまでには至らなかったのであろう。この図鑑のメインの著書は江崎悌三先生だもんね。偉い先生だから、文句言えないよね。
自分も図鑑に倣(なら)い、このままで良いと思う。シロシタバはシロシタバでよろし。今さら「明日からシロシタバはオオシロシタバになります。オオシロシタバはシロシタバになります。」と言われても困る。そんなの余計にややこしくなるに決まっているのだ。一々、旧シロシタバとか旧オオシロシタバとかと説明するのは面倒くさ過ぎるし、文献だって後々シロ、オオシロのどっちを指しているものなのかがワカンなくなっちゃうぞー。

でもさあ、そもそも何でこんな和名の逆転現象が起きちゃったのだろう❓
名付けた人が単におバカだったのかなあ❓
いくらなんでも、それはないと思うんだよね。裏には驚愕の命名譚が隠されているのかもしれない。
とはいえ、ここで脱線するワケにはいかない。これは宿題としよう。オオシロシタバの回までに何らかの回答を探しておきま~す。

 
【英名】Snow underwing(雪下翅)

ネットの『ギャラリー・カトカラ全集』には、そう書かれてあった。英名としては違和感がない。でも、それを訳した「雪下翅」というのが気にかかる。
確かに「underwing」は直訳すれば下翅(下羽)だが、「カトカラ」と訳す方が適切なのではないだろうか。いや、それなら「underwing moth」でしょうよと云う指摘を受けそうだが、辞書やネットの表記ではカトカラそのものとして「underwing」が適用されているのだ。ゆえに和訳は「雪カトカラ」もしくは「雪のようなカトカラ」が正しいのではないかと思う。

けれど「snow underwing」で検索してもシロシタバは殆んど出てこない。世界的にはポピュラーな称号ではなく、あまり浸透していないみたい。
試しに「white underwing(白いカトカラ)」で検索してみたら、1件だけシロシタバにヒットした。しかし、その殆んどは北アメリカに生息する Catocala relicta というカトカラの称号として出てくる。

 
【Catocala relicta】
(出展『iNaturalist』)

 
ハクトウワシみたいでカッコイイ奴ちゃのー。
でもシロシタバというよりもシロオビシタバだ。もっと言えぱ、印象的なのは上翅の白だから、ウエシロシタバかな。どちらかと云うと「White underwing」というよりかは「White upperwing」だね。しかし、カトカラを「underwing」とするならば、コレはオカシイ。
厳密的には「White upperwing underwing」、もしくは「White-upperwing underwing」になる。けれど、これでは上白羽下羽になってしまい、何ちゃらワカラン錯綜した名前になるからダメじゃないか(笑)。ややこしい。自分でも段々何言ってんのか分かんなくなってきたよ。
幸いコヤツには他のタイプもいて、上翅がグレーなのもいるようだから「White upperwing underwing 」は使えないだろう。一安心だよ。

 
(出展『Butterflies and Mothes of North America』)

 
(出展『Lepidoptera Odonata web Atlas Detail 』)

 
あれっ❗❓、コレって下翅の帯を青紫色にしたら、何かとソックリになると思いません❓
ほら、↙コレなんか近い。

 
(出展『wikipedia』)

 
そう、ムラサキシタバ(註2)様にソックリなのだ。

 
【ムラサキシタバ】
(2019.9月 白骨温泉)

 
何で似てるのかと云うと、両者は近縁種で親戚関係にあるのだ。但し、大きさは違い、ムラサキシタバの方が遥かにデカイようだ。

今、思い出した。そういえぱ、いたなあ…。
「White underwing」といえば、その名に最も相応しいものがいるわ。2007年に中国四川省で見つかったカトカラは下翅が本当の意味で白いのだ。
話がどんどんシロシタバから離れていくが、まっ、いっか。

で、ネット検索したら見つかった。
画像を見た瞬間は「えっ、これがカトカラ❓」と思ったくらいカトカラに見えなかった。帯紋が全く無い下翅もそうだが、上翅がベタで全然カトカラっぽくない。

 
【Catocala uljanae (Sinyaev,Saldaitis&Ivinskid,2007)】
(出展『BOLDSystems v3』)

 
これこそが「White underwing」だよね。
尻が無いが、論文(註3)には尻有り画像もあって、尻まで真っ白なのだ。こんなに腹が白いカトカラって他に類を見ない。
あっ、そうだ。コレって石塚さんの『世界のカトカラ(註4)』にも載ってたよな。

見たら、シロムクシタバと云う和名で載ってました。

 
(出展『世界のカトカラ』)

 
シロムクかあ…、秀逸な和名だすな。中々、白無垢なんて発想は出てこないもんね。素敵な和名だと思う。
図鑑が発刊された2011年の時点では、中国四川省中部の1ヶ所のみから知られる大珍品で、ホロタイプの1個体しかなかったそうだ。
シロシタバとの関係を連想させるが、ゲニタリア(交尾器)の形状などから類縁関係は無いそうだ。

 
【開張(mm)】95~105㎜。

ネットの『みんなで作る日本産蛾類図鑑』にはそうあった。おそらくコレは『原色日本産蛾類図鑑』から、まんま引用したものであろう。一方、岸田先生の『日本産蛾類標準図鑑』には、80~95㎜とあった。随分とズレがある。どっちが正しいのだ❓

もう自分で測っちゃったよ。結果は♀の一番大きなもので、104㎜ほどあった。産地は四條畷だ。
私見では概して西のシロシタバの方が東のものよりも大きい。おそらく『日本産蛾類標準図鑑』では、東の方の標本を基準に検したのだろう。とはいえ、反対に小さい個体は東でも西でも95㎜以下のものもいるから『原色日本産蛾類図鑑』よりも岸田図鑑の方が合っている。まあ、どちらかの記述が正しくて、どちらかの記述が間違っていると云うワケでも無かろう。両者を合わせた開張80~105㎜でエエんでねえの❓
何れにせよ、カトカラの中ではムラサキシタバと並ぶ最大級の大型種である。他のカトカラと比べて、この二つが群を抜いてデカくて迫力がある事に異論はないだろう。

そういえばA木くんに「ムラサキシタバが最大種と言われてるけど、シロシタバとそう変わんないんじゃないの❓」と訊いたら、「似たような大きさだけど、全体的には少しムラサキの方が大きいかなあ…。」という答えが帰ってきたっけ。

ちょっと驚いたのは『原色日本産蛾類図鑑』では、ムラサキシタバの開張が92~102㎜とあり、シロシタバの方は95~105㎜と、シロシタバの方が大きいとされていることだ。発行元の保育社は関西の会社だから、関西の標本を検した結果なのかなあ?…。

ここでまた私見を述べよう。
一般的にはムラサキシタバの方がシロシタバよか大きいとされるが、主に関東方面の意見なんだろね。確かに東日本では、明らかにムラサキシタバの方がデカイと思う。

 

 
上は白骨温泉のムラサキシタバの♂で、下は平湯温泉のシロシタバ♀である。測ったら、ムラサキシタバの開張が100㎜、シロシタバが92㎜だった(一言を添えておくと、一見すると写真では両者は同じ翅幅に見えるけど、下からあおって撮っているので、そう見えます。展翅板の溝幅の違いを見て下されば、御理解いただけるかと思う)。
今のところ中部地方で採ったシロシタバで、ムラサキに匹敵する大きさのものは見たことがない。一方、西日本では同じくらいの翅幅のモノは結構いる。但し、開翅長はそう変わらないが、翅の表面積まで含めるとムラサキシタバに軍配があがると思う。

 
【雌雄の判別法】
何か唐突ではあるが、ここで♂と♀の見分け方を書いておこう。本文の方で、それには一言も触れていないことに気づいたからだ。

♂と♀は翅形が違い、♀は♂と比べて全体的に翅に丸みがある。ゆえに、だいたいはパッと見で判別できるのだが、中には微妙な個体もいたりする。なので、確実な方法は腹を見ることだ。

 
【♂の腹部】

 
【♀の腹部】

 
♂は腹が細く、長い。そして、腹端に毛束があるのが特徴だ。一方♀は腹が太く短い。毛束は無いことはないが、♂と比べて非常に少ない。これで大体の区別はできるだろう。
他に翅の付け根にある毛の数で判別する方法もある。

 
(出展『日本のCatocala』)

 
その刺毛が♂は1本、♀には3本あり、それが一番正確な判別方法なのだが、上翅をめくらないと分からない。なので、素人にはあまり現実的な方法とは言えないだろう。

 
【分布】
北海道、本州、四国、九州。
東日本では普通種だが、西日本では分布が局所的で少なく、関西都市部近郊ではレア。四国でも少なく、九州では珍品だとされる。また、ネット情報だが、北海道でも少ないそうだ。
海外ではインド北部、中国(四川省など)、台湾、朝鮮半島、ロシア沿海州に分布する。

低地から山地帯まで生息域は広いが、個体数はそう多くはないようだ(但し、時に大量に灯火に飛来するケースがある)。
日本では、より局所的に生息するムラサキシタバと比べて分布が広い事から一段下に見られがちだが、海外では逆にムラサキシタバよりも評価が高いそうだ。これは世界的にみれば、シロシタバの方がムラサキシタバよりも分布域が狭いからだろう。アジアの特産種で、特に日本はその分布の中心とされ、他地域と比べて個体数が多いようだ。ゆえに本種の標本は外国の収集家に好まれ、格は逆に一段上とされているという。

 
【亜種】
以下のものが亜種記載されている。

◆Catocala nivea nivea (Butler,1877)
 日本・朝鮮半島・中国(四川省)

日本のシロシタバが原記載亜種のタイプ標本になっている。ようするにシロシタバが最初に見つかったのは日本だということだね。

 
◆Catocala nivea asahinaorum (Owada,1986)
 台湾

(出展 二点共『dearlep.tw』)

 
上が♂で、下が♀。
一見したところ、下翅の黒帯が細くて白い領域が多いように見える。(^^)いいねっ。コレくらい綺麗なら、台湾に行った折りには探してもいいかなと思う。

台湾名は「後雪裳蛾」。
成虫は7月末から9月にかけて発生し、標高1700〜2400メートル付近の森林地帯に生息する。灯火採集をすると、時に3000メートルの山岳地帯にも飛来するという。但し、台湾では稀な種のようだ。
へぇ~、亜熱帯ゆえに日本と比べてかなり標高の高いところに棲んでるんだね。元々は、冷温帯を好む種なんだろね。

 
◆Catocala nivea kurosawai (Owada,1986)
 ネパール

(出展『世界のカトカラ』石塚勝己)

 
石塚さんの図鑑に拠ると、上翅が暗色化するのが特徴なのだそうだ。
記載論文を確認出来ていないが、台湾とネパールの亜種記載者は、おそらく蛾の研究者として知られる大和田守博士であろう。

 
【レッドデータブック】
大阪府:絶滅危惧II類、高知県:準絶滅危惧、佐賀県:情報不足。

こういうのを見ると、レッドデータって間違ってはいないけど、情報量が少ないよね。分布調査って誰がやっているんだろうと思うよ。たぶん、調査してる人員が少ないんだろな。致し方ないところはあるんだろね。

 
【成虫出現期】
成虫期間は比較的長く、7月中旬から現れて10月下旬まで見られる。
新鮮な個体が得られるのは8月下旬から9月上旬迄ってところかな。但し、10月でも新鮮な個体が得られた例もあるようだ。

 
【生態】
最初に断っておくが、生態面については多分に私見が入っている。そういう部分は出来るだけ私見である旨を示すようにするが、微妙な表現もあるかもしれないので、そこんとこ留意されたし。

平地にも見られるが、山地に多く見られる。
長野県などの中部地方では成虫が8月に夏眠するらしい。あまり聞いたことがないし、より暑い関西では8月でもバリバリ活動しているからホントかなと思う。
但し、私見だと西の方が羽がボロになるのは早い。発生期は関西と中部地方との間にそれほど大きな差はないようだから、やっば中部地方とか東では夏眠するのかなあ…。ところで、何を指して夏眠するとしたのだろう。じっとしてて、樹液にも灯火にも集まらないと云うことでいいのかな❓全く活動しないのか、活動が鈍りがちになるのかが書かれていないから、気になるところではある。

成虫は日中、頭を下にして木の幹や岩に静止している。驚いて飛んだ時は上向きに着地し、まもなく下向きとなる。昼間、静止している時は比較的鈍感だという。しかし、自分の経験ではそうでもなく、それなりに敏感だと思った。とはいえ、これは産地や時期、時間帯にもよるものだろう。

それはそうと、何でカトカラって昼間は逆さ(下向き)に止まってんだ❓
これがずっと疑問だった。頭が悪いゆえ、その理由が全く思いつかなかったのだ。
この疑問に対して、どなたかが Facebook で答えておられた。失礼ながら御名前は失念したが、要旨は以下のようなものだったと記憶している。もしも解釈が間違ってたら、ゴメンなさい。

「彼らが下向きに止まるのは、鳥などの天敵から逃れれる為である。つまり、下向きに止まることによって、自重による飛び出しの初速度は上がる。それによって、少しでも天敵に捕まる確率を下げようと云う生き延び戦略だと考えられる。」

なるほど、それだと理にかなってる。
実際、昼間に驚いて飛んでゆくカトカラのスピードは速いもんね。夜、木から飛び立つ時とは大違いだ。上向きに止まっている夜は、逃げる際はパタパタ飛びで、けっして速いとは言えない。それに上に飛ぶ方が目立ち易い。昼間なら、下から鳥にバクッといかれそうだ。反対に低く飛べば、背景に紛れ易いと云うのもある。鳥だって見失いがちだろう。

でもさあ、だったら何で夜も下向きに止まらないのだ❓鳥は活動してはいないものの、コウモリがおるがな。
あっ、コウモリは空中で獲物を捕らえるから、止まってる蛾は襲わないか…。
にしても、遅く飛び出すよりも速いに越したことはないだろう。まさか下向きにばっか止まっていると、血が頭に昇るからとか❓ それは半分冗談にしても、やはり下向きに止まるということは、カトカラにとっても不自然なのだろう。自分がカトカラになった気持ちになってみると、ずっと逆立ちしてるのは耐え難いもんね。生き延びる為に昼間は我慢して逆さに止まってるのかもね。

飛ぶ速度だが、夜は木から飛び立つ時も飛んでゆく時も遅い。樹液に飛来する時も遅い。どこかドタドタ感があるのだ。
だが、灯火に集まって来る際などは速い。空をビュンビュンに飛んでいる。灯火に関係なく、高い位置を高速で飛んでゆくカトカラを見たことも何度かある。本気を出せば速いのだろう。飛ぶのが速い蛾の代表であるスズメガの仲間と翅形が割りと近いから、それは理解できる。
上向きに飛び出すと、トップスピードになるまで時間を要するのかな❓逆にスピードをゆるめるのも下手っぽい。蝶に比べて蛾は胴体が太くて重そうだから、スピードの調整が苦手なのかもしれない。
そういえぱ、夜間上向きに止まっているカトカラは、木から飛び立つ際に、一旦下向きに飛んでから上昇する。体が重いから重力に負けるのかもしれない。だから、採るのは楽勝だ。下から網を持ってゆき、真下をコツンと叩けば、勝手に自ら網に入ってくるのだ。そこを掬い上げるようにカチ上げる。我が秘技の一つ、静居合💥龍昇剣(しずいあいりゅうしょうけん)である(笑)。

夜間、灯火に飛来し、9~10月になると発生地周辺の市街地の街灯にも飛来するという。
灯火採集の経験は少ない。兵庫県の但馬地方と山梨県の大菩薩山麓ぐらいでしか、灯火に来たシロシタバを見た事がない。ゆえに大きな事は言えないが、飛来時間は早くなく、9時半以降だった。尚、灯火に飛来時は、翅を閉じて静止することが多いようだ。自分が見たのも全部閉じていた。

クヌギ、オニグルミ、ハルニレなどの樹液に好んで集まる。腐った果実で吸汁したという例は自分の知る限りでは無い。また花蜜に飛来することは極めて稀で、一例しか観察されていないようだ(池ノ上 2005)。
自分の経験では、樹液に飛来したのは大阪府四條畷市と山梨県大菩薩山麓の2例のみ。何れも遅い時間帯で午後10時を過ぎていた。四條畷では樹液の出ている木の周辺にいるのにも拘わらず、寄って来ないケースを二度見た。何れも日没後、早い時間帯である。一旦、近くまで移動して、夜遅くになって樹液を吸いに来るのかもしれない。

糖蜜トラップにも反応し、比較的よく集まるという。
トラップに寄って来たのは計4回だったと思う。岐阜県と長野県で、それぞれ一回ずつ。四條畷で二回(三回だったかも)だった。時間は何れも夜遅くで、早いものでも9時半だった。
樹液・糖蜜のどちらにも、日没直後に飛来したものは見た事がない。遅々(おそおそ)の御登場なのだ。これは他のカトカラの生態からすれぱ、変わっている。特に樹液・糖蜜に集まる時間が遅いように思われる。多くのカトカラは、日没後、比較的早い時間に樹液に集まって来るのだ。
一応ネットで、シロシタバが樹液・糖蜜に飛来した時刻について言及してあるものを探してみたが、調べた限りでは出てこなかった。

昼間は翅を閉じているが、夜間、樹液や糖蜜を吸汁時には下翅を開く。また、刺激を受けると前翅を広げて目立つ後翅を出すが、これには外敵を驚かす効果があるとされている。この習性を利用として、写真を撮る時は刺激を与えてやるそうだが、やり過ぎると飛んで逃げるので注意が必要みたい。
ところで、下向きに止まっている時は、驚かすと翅を開いて威嚇するのだろうか❓あまり聞いたことがない。おそらく脱兎の如く逃げるんだろな。

下翅を開くで思い出したが、四條畷では夜間はそれ以外の時でも下翅を開いていた。樹液を吸っていない時でも翅を広げているのだ。そんな事はどの図鑑にも一行も書かれていない。
それを確認する為に、翌年再び四條畷を訪れた。

 
(2019.8.11 四條畷市)

 
結果は同じだった。2019年も夜間に木に静止している時は全て下翅を開いていた。
上の写真なんかは、こんな細い木の幹に樹液が出ているワケがないし、実際出ていなかった。露とか他の何かを吸汁していないことも確認している。なのにパンチラなのだ。
もしかしたら、四條畷だけの生態かもしれないけれど、勝手に論を進めてゆく。これは某(なにがし)かの生殖活動、つまり交尾と関係している行為ではなかろうか❓ と言いつつ勘だけの思いつきで言っております(笑)。一瞬、♀が♂に見つけてもらうための行動だと思ったのさ。でも考えてみれば、オスメス関係なしに下翅を開いてたわ。理由は謎のまんまだ。
カトカラ二年生が不遜にも言ってしまうと、カトカラ採集の殆んどが灯火採集で、一部が樹液採集とか糖蜜採集だろう。夜の見つけ採り採集なんてしている人はあまりいるようには思えない。蛾の生態解明が遅れているのは、そういった事も関係しているのではなかろうか。

四條畷では、昼間は翅を閉じて下向きに止まっているが、夜は翅を開いて上向き止まっている事は前述した。ならば、いつぐらいから上向きになり、下翅をいつ開くのだろう❓
これについては、幾つかの観察例を持っているので付記しておく。
下向きから上向きになるのは比較的早いようだ。日が傾き始めた4時、5時台には、上向きに止まっているのを2例ほど見た。但し、下翅は開いていなかった。日没後も薄暮の間は下翅を開いていなかった。これも2例ほど見ている。下翅を開いた個体は暗闇になってからしか見ていない。
来年は見つけても捕獲せず、いつ下向きから上向きに位置を変え、いつぐらいから翅を開くかを観察しようと思う。
朝まで現地にいた事は一度もないので、反対にいつ上向きから下向きになり、翅を閉じるのかも分からない。これも課題で、時間をかけての観察が必要だろう。

交尾は羽化後すぐには行われず、8月下旬頃から行われ、9月に入ってから食樹の根元などに産卵するそうだ。

思うに、シロシタバが生息する場所は河畔、池畔、湿地周辺など、ある程度湿潤な環境ではなかろうか。これは、次に紹介する食餌植物が好む環境と関連しているものと考えている。

 
【幼虫の食餌植物】
バラ科のウワミズザクラ。イヌザクラも食すとされている(両者ともサクラ属ウワミズザクラ亜属に含まれる)。
例外はあるだろうが、主にやや湿潤な環境を好む植物のようだ。

 

 
『原色日本産蛾類図鑑』には、リンゴもあげられている。他にリンゴをあげている図鑑は無いから、ちょっと怪しい。とはいえ、もしかしたら代用食となるのかもしれない。でも同じバラ科でもリンゴ属だから、それも怪しいけど。
なお、シロシタバは「日本産蛾類生態図鑑」にはヤマザクラやソメイヨシノは食べないと書いてある。しかし「日本のCatocala」ではこれらも代用食となると書かれている。自然状態では大抵はウワミズザクラで見られ、孵化幼虫はヤマザクラなどには食いつかないケースが多いそうである。

 
【幼生期】
幼虫を観察したことは全くないので、主に西尾規孝氏の『日本のCatocala(註5)』を参考にさせて戴いた。

 
(出展『フォト蔵』)

 
左下は頭部の画像。
顔がカラフルなんだね。ちょっと可愛い。

 

(出展 2点共『Σ こんちゅーぶ!』)

 
毛虫ではなく、尺取り虫型である。
幼虫の色彩は変化に富み、全体が灰褐色の淡い色調のものから黒い模様が著しく発達したものまでいて、同一種かと疑うほどの差異があるそうだ。

カトカラの幼虫には似通った種が多く、且つ色彩変異が激しいので、同定が難しいと言われている。同定は食餌植物、頭部の斑紋、第5腹節の隆起、分布から総合的に判断する事が必要だという。
ウワミズザクラ及びイヌザクラで幼虫が見つかれば、ほぼシロシタバといっていいだろう。知る限りでは、これらを食樹としているカトカラは他にはいないからだ。但し、絶対ではない。記録されていないだけで、他のカトカラも利用している可能性はあるからだ。
因みにサクラ属を食べるカトカラにはワモンキシタバ、キララキシタバ、ハイモンキシタバの3種がいる。ワモンとキララはウメ、マメザクラ、スモモ等のサクラ属とズミなどのリンゴ属を食する。ハイモンは基本的にはズミなどのリンゴ属だが、サクラ属のスモモも過去に食樹として記録されている。
なるほど。シロシタバもリンゴ属を食う可能性はゼロではないね。

形態からの判別法だが、前述したようにカトカラ類の幼虫には色彩変異があり、同種内でも背面突起がオレンジ、黒、白と様々で、体色も明るい色から黒い色まであって、色だけでは同定は困難とされている。ではどこで見分けるのかというと、区別点として重要なのは第5腹節背面の隆起なんだそうである。シロシタバだけが斑紋がやや横長で幅広い形をしている。ハイモンとノコメは小さめで、ワモンとキララは長く突出するという。また、体表を走るジクザグ模様にメリハリがあって、目立つらしい。

食樹の樹齢15~30年の壮齢木を好む。
若齢幼虫は日中は葉裏に静止しており、成長に従って自身の太さ程の枝に静止するようになる。老熟すると幹の下部や地表近くまで降りてくる。尚、終齢幼虫(5齢)は6月上旬から下旬まで見られ、最終的には80~90mmほどに成長する。
幼虫の葉の食べ方は独特で、枝に止まって葉の主脈から食するため、中央から虫食い穴が出来るそうだ。柔らかい若葉を食べ尽くすと、次には葉柄までも摂食し、食後は尺取り運動で移動する。尚、尺取りで後退も可能なんだそうな。バックもでけるでぇ~なのだ。想像すると、ユーモラスで可愛いかもしんない。それはちょっと見てみたい。

6月下旬辺りから木から降りて、落葉の下などで蛹化する。
ネットでシロシタバの蛹の画像を探したが、見つけることが出来なかった。なので、替わりにムラサキシタバの蛹の画像を添付しておきます。

 
(出展『Lepidoptera and their ecology』)

 
如何にも蛾然とした蛹だね。
細部の形態はシロシタバとは違うのだろうが、基本的な姿はあまり変わらないだろうと思われる。

今年も引き続き生態については観察していこうと思う。けど、夜の森を一人で歩き回るのはヤだなあ…。

                    おしまい

 
あとがき

長かった…。
このカトカラ関連の連載ではシロシタバが最も長くなったのではないだろうか。それだけ思い入れのあるカトカラだったのだろう。
という事は、読む側も大変だったのではなかろうか。
脱線の連続で長かったし、低俗エロ表現も連発だったしね。
それに最後までお付き合いして下さった方は偉い。本当に感謝します。有難う御座ぇますだ。

余談だが、第一章を書き始めた当初は、本気でアミメキシタバの回のように物語仕立てにしてやろうと思っていた。網目男爵に続く白い騎士の物語である。実際、その路線で30行くらいは書いた。
だけど、書いてて直ぐに気づいた。今まで各カトカラについて書き連ねたことはフィクションではない。時々誇張したり、フザけたりもしてきたが、基本はあくまでもノンフィクションである。けれど男爵や騎士の物語となると、フィクションの領域になっちゃう。だいち、フィクションを続けるのは未知の領域だ。小説なんて書いたことが一度もないのである。前回、途中で投げ出した『網目男爵物語』が小説を意識して書いた初の文章なのだ。どうみても無理がある。ただてさえ書くのが大変なのに、そうなると益々まとまりがつかん。そんな事までやりだしたら地獄だもんね。

今回の小タイトルは、当初『攻めた解説』だった。
しかし、つまらないので第四章で使おうとして結局やめてしまった「天鵞絨(びろうど)」という言葉を持ってくることにした。
びろうど(ビロード)はポルトガル語の「veludo」、またはスペイン語の「velludo」からきた言葉で、本来は毛織物の名称だ。この織物はポルトガル商船から京都に伝わり、慶長年間より織り始められたという。結構、歴史は古いのだ。
漢字は、生地が光沢のある白鳥の翼に似ているところから「天鵞絨」の字が宛てられたという。「天鵞」が白鳥を意味し、「絨(じゅう)」が毛の厚い織物を意味している。
と云うことは、もしかしたら「びろうど」とは、元々は光沢のある白い織物のことを指していたのかもしれないと考えた。如何にも、あの美しい下翅に相応しいタイトルじゃないかと思い直したのだ。

褒章は、紫綬褒章とかに使われているから解る人も多いと思うが、勲章という意味。他にメダル、リボンという意味もある。
シロシタバは大きくて立派だし、美しい。世界的に見ても人気があり、評価も高い。それに、最初に見つかった場所が日本というのも褒章に値すると思ったのである。

次回からは、もう少しタイトに書こうと思う。
たぶん書きたくともネタがあまり無いのが2、3あるから、頑張らなくとも短くなる回もありそうだ。ラッキーである。素直に嬉しいわ。

 
(註1)織物のビロードやベッチンみたいで
布製品として両者は見た目では区別がつきづらく、混同され易い。しかし製法に違いがある。
ビロードは、タテ糸パイルの比較的毛足の長い絹やレーヨンで作られたパイル織物の一種。ポルトガル語のveludoが訛ってビロードと称されるようになったとされる。英語ではベルベットと呼ばれる。またスペイン語はベジュド(velludo)、フランス語ではベロア(velours)、和名では天鵞絨(てんがじゅう)と呼ばれる。
一方ベッチン(別珍)は、ヨコ糸パイルの比較的毛足の短い綿で作られたパイル織物の一種を指す。英語名はベルベッティーン(velveteen)。綿ビロードとも呼ばれる。
ベッチンは、日本にはポルトガルからもたらされ、16世紀の戦国武将の帽子や外套に使われた。
また、和名である天鵞絨の天鵞は白鳥の意味であり、伝来した当初は絹製の白い生地を指していたためと書いてあった。
( ̄O ̄)おーっ、自分の見立て通りだ。初期の頃は特に白いビロードの事を指していたのではないかと云う推理は、ビンゴだったってワケだね。

 
(註2)ムラサキシタバ
学名 Catocala fraxini。
日本で最も大きく、最も珍重されるカトカラ。
ヨーロッパから日本まで分布し、日本では北海道、本州中部以北の山地に多い。8~10月に見られ、幼虫はヤマナラシやドロノキの葉を食べる。

 
(註3)論文
New catocala species (lepidoptera, noctuidae) from China

 
(註4)世界のカトカラ

 
月刊むしの昆虫図説シリーズの中の一冊。

 
(註5)日本のCatocala

 
日本のカトカラの生態について最も詳しく書かれた図鑑。特に幼生期の生態解明には大きな足跡を残した。

 

2018′ カトカラ元年 其の11 第四章

 

    vol.11 シロシタバ act4
『2019さまよえるパンチラ捜索隊』

 
いつもなら種解説でクロージングして、2019年の事は『続・~』として別項で書くのだが、今回は思うところがあって趣向を変えてみようと思う。2019年の事も組み込む形にして、一つに纏めてみたい。その方が最後の種解説をスムーズに書けるのではないかと考えたのである。

 
 2019年 7月20日

カトカラ1年生だった2018年は、7月半ばからシロシタバを狙って探していたが、場所の選定を誤ってしまった。
らしくない事に、その場所に変に拘ってしまい、諦めて別な場所を探す決断が大幅に遅れてしまった。その為、最初に採集できたのは8月も下旬近くだった。既に採集適期は終わりかけており、個体数は多かったものの翅が擦れ、欠け、ボロの個体ばかりだった。それでも完品の♂♀が採れたから良いようなものの、完全なる作戦ミスだったと言えよう。
今年は同じ轍は二度と踏むまいと肝に銘じていた。だから7月中旬には始動しようと考えていた。しかし、あろうことかニューのカトカラなんぞを見つけてしまった。のちにマホロバキシタバ(註1)と名付けられる日本で32番目となるカトカラである。発見者の一人としては、当然分布調査をせざるおえず、と云うかしたい。そう云うワケで大幅に計画が狂い、シロシタバは後回しにせざるおえないと覚悟していた。

この日も朝から分布調査で、小太郎くん、マオくん、そしてナゼか甲虫界の重鎮である秋田勝己さんも参戦して下さった。それぞれ手分けして分布調査を行ったのだが、そんな折り、奈良市東部の調査を担当していた小太郎くんから、LINEで『こんなん採れましたあー。』と云うメールが画像付きて送られてきた。

 
(写真提供 小太郎くん)

 
( ☆∀☆)おー、もう出てるんかあ❗
しかも、型の良さそうなド完品の個体じゃないか。
小太郎くん曰く、杉の木に逆さま(下向き)に止まっていたそうだ。しかも2頭並んで。昼間だから、勿論のこと下翅は開いていなかったそうだ。
クソー、マホロバの調査にも飽きてきたし、うかうかしてらんねーや。

 
 
 2019年 7月25日

何とか時間を遣り繰りして、やっとこさ5日後に四條畷のポイントを訪れた。出歯亀探偵、始動である。

 

 
今回も四條畷お約束の分厚い「フレスコ名物 自家製カツサンド」の画(え)から入る。
もはやコレを買うのはゲンかつぎの儀式みたいなもんである。そうでなくともメチャンコ旨いから絶対買うんだけどもね。
あっ、考えてみれば、ほぼ一年振りの再会じゃないか。q(^-^q)へへへへ、楽しみだな。
えー、味云々は書きまへん。興味のある方は当ブログに『フレスコのカツサンド』と題して書いてあるので、そっちを読んでたもれ。

話には全然関係ないけど、道中なぜか道端にド完品のゴマダラチョウが落ちてた。他で使えそうにない画像だから、勿体ないので無理矢理貼り付けとく。

 
【ゴマダラチョウ♂】

 
死んだ直後って感じで、まだ柔らかく、目の色も生きている時そのままの透明感のある黄色だった。ちょっと謎。

話をシロシタバに戻す。
去年はルッキングと樹液のみでの採集だったが、今年は糖蜜トラップを用意した。
甘酸っぱい液を(^.^)/占==3 シュッシュッシューと霧吹きで木の幹なんぞに噴きつけて誘い込み、寄ってきたところをエイやι(`ロ´)ノと手ゴメにしてしまうと云う卑怯千万な作戦である。
卑怯だが、樹液は毎年同じ木から出ているとは限らないのだ。謂わば保険をかけたってワケだ。カトカラ2年生ともなれば、ちぃーとは進化もしているのだ。

真っ暗になってから、その糖蜜トラップに向かってシロシタバが1頭飛んできた。
飛んで来た瞬間は、あまりに馬鹿デカイんで笑ったよ。一年振りだから忘れてたけど、やっぱシロシタバとムラサキシタバは日本のカトカラの中では規格外の大きさだ。
しかし今年最初の1頭目、気合いが入り過ぎてコチラの殺気がメチャンコ出てたのかもしれない。( ̄∇ ̄*)あちゃー、止まらずに慌てて逃げてった。

ふ~ん、なあんだ早い時間帯にもちゃんと甘汁に来るんじゃねえか。去年は一度しか樹液に飛来せず、しかも10時過ぎと云う遅い時間帯だった。だからワケわかんなくなったけど、日没後しばらくしてやって来るなら、他のカトカラ類と同じじゃないか。
逃したのは惜しいが、一つ問題、というか疑問が解決した可能性がある。それだけでも儲けもんだ。気持ちを切り替えよう。そのうちまた飛んで来るじゃろう。それに、どうせそろそろパッカーンと下翅がパンチラになるから見つけるのは簡単ホイホイだもんねー(^^)
そんな感じで、まだこの時点では楽勝気分で余裕ブッこいてた。

しか~し、全然見つかれへーん。仕方なく探す範囲を広げて歩き回るも全然だ、成果なし。
糖蜜トラップに寄って来るのも、キシタバ(C.patala)やマメキシタバ、コシロシタバ、名も知らぬ糞ヤガどものみ。いずれもそこそこの個体数が集まってくるのにも拘わらず、ナゼだかシロシタバだけが姿を見せない。もしかして、さっき糖蜜トラップに寄ってきたのは別に糖蜜に引き寄せられたのではなく、偶然飛んでて、そこに止まりかけただけじゃなかろうか❓また頭の中が(?_?)はてなマークだらけだわさ。

(|| ゜Д゜)次第に焦り始める。或いは、まだ出始めで個体数か少ないのか❓…。
小太郎くんが採った奈良市の場所よりもコッチの方が標高は高い筈だ。その可能性はある。それに今年はチョウの発生が1週間以上も遅れているというではないか。ガだって同じ鱗翅類だ。発生時期が去年とズレていても何らオカシクない。

午後8時半、ようやく山道をフラフラ飛んでいるのを見つけた。
ロケットスタートでダーッシュ💨 タタタタタタッ、走りながら繰り出す。夢想神影流居合🔥陰陽麗斬剣❗ うりゃ💥、マッハで横振りじゃあ❗

おほほ(⌒‐⌒)、ワテの必殺技をナメんなよである。
鮮やかな太刀筋で決まったぜよ。

 

 
やっぱシロシタバって、カッケー( ☆∀☆)
嬉しくって、バシャバシャ写真を撮っちまう。

 

 
一応、裏面も撮っとこっと。

 
【裏面】

 
けれど、後が続かない。
探し回るもパンチラなし。もしかして去年のパンチラ行動は偶然だったのだろうか❓でも偶然が二日も続くかね❓ だいちオッピロゲ状態のは、少なくとも十数頭、下手したら20頭近くは見たぞ。

午後10時過ぎ、帰る間際の時間ギリギリで、やっと糖蜜トラップに1頭が飛来した。最初に来た奴だろうか❓ でも時間が経ってるので分かんない。それにしても、飛来時間が遅いじゃないか。(|| ゜Д゜)えーっ、やっぱりシロシタバは樹液や糖蜜に寄って来るのが遅いのぉー❓ 頭が混乱する。問題、疑問が全然解決してないじゃないか。
でもそれを今考えたところで仕様がない。とにかく採ろう。自分の身長に合わせて糖蜜トラップを噴き付けてあるゆえ、ごっつeasyな高さだ。慎重に毒ビンを被せた。

(^o^)v楽勝でGET。だが浸っているヒマはない。終電の時間を考えて迅速に動く。ここは一刻も早くニべアちゃんを死に至らしめねばならぬ。デカいだけに毒ビンだと死ぬのに時間がかかるのだ。
マッドな注射器💉をすかさずセット。ある程度弱ったところで、毒ビンから取り出し、ブスッ&ブチューとアンモニア液を注射。安楽死させ、ソッコー回収して闇濃い坂道を下った。

翌日、展翅する前に写真を撮っておいた。
日の下で見ると、また感じが違うからだ。

 

 
ベルベットのような白い下翅が美しい。
上翅の樹皮についた苔のようなデザインも渋いね。

 

 
♂だな。たぶん2頭めに採った方だ。
展翅は、こんな感じ。

 
【Catocala nivea シロシタバ♂】

 
カトカラ2年生ともなると、展翅も上手くなってまんがな。一年目みたいに上翅が上がり過ぎていないし、触角も整っとる。カトカラ大明神 石塚先生(註2)の展翅を参考にしたら、格段に上手くなったでごさんすよ。トサカ大明神のカトカラ展翅は世界一とも言われておるのだ。本も貰たし、(^人^)感謝、感謝。
但し、翅のバランスと触角を真っ直ぐするのは参考にはしたけど、触角の角度は先生よりも鋭角にして、下翅をほんの少しだけ下げた。そのまんまのパクリだと芸が無いというのもあるが、元来は蝶屋なので蝶屋的触角バランスの方がカッコイイと思うからだ。賛否はあるだろうが、暫くはこのままのパターンでいく事にした。以下、今年採ったシロシタバの展翅は自分的には完璧に近いかな。
と言いつつも、来年になると去年はまだまだやったなとか宣ってそうだけどさ(笑)。いや、その反対の下手クソに戻ると云うのも有り得るな。だって、そもそも展翅って面倒くさいから嫌いなんだもーん(# ̄З ̄)

もう1頭、最初に採った方が♀だな。

 

 
良い♀なのにナゼに裏面❓と思ったら、あとで裏展翅にしてたわ。最初からそのつもりで裏返し写真を撮ったんだね。でもどうして♂ではなく、あまり採れない♀なのだ❓
どうせ何も考えてなかったんだろな。性格がテキトーなのだ。

 
【裏面展翅♀】

 
完璧を期す為に、脚までキッチリ揃えてやったぜ。
それにしても裏はダメダメだなあ。全然キレイじゃない。

 
 
 2019年 8月5日

 
青春18切符で長野まで遠征した。
まあまあ天才を自負していたが、白馬でボコられ、カトカラ歴の短さと経験値の足りなさを痛感する。関西ではそれなりに結果を出してきてるから、ここまでボコボコの結果は予想外だった。カトカラなんそドヤツでも楽勝で鬼採りじゃいと思ってたけど、ここ信州では気合いとかセンスとか根性では何ともならん事を知る。西とは事情が全然違ってて、オラのスペシャルブレンドの糖蜜が思った程には効かんかったのだ。カトカラの種類や糖蜜のレシピにもよるのだろうが、東日本では糖蜜の効力が西日本よりも低いのかもしれない。

遠征4日目。この日は湿原にいた。
ハンノキが、沢山生えてる。

 

 
狙いはミヤマキシタバだったんだけど、それについては後日また改めて書く。
で、シロシタバも1頭だけ糖蜜トラップに来た。コレは全く想定していなかったから、遠目に見て一瞬何じゃらホイ❓と思ったよ。ひと呼吸おいてシロシタバだと分かって、ガッカリしながらぞんざいに採った。やはり東日本のシロシタバは小さい。四條畷のものと比べて断然小振りだったので、あまり心が踊らなかったのだ。なのか、採った時の画像はない。

飛来時間は正確には覚えていないが、遅い時間帯だったことは確かだ。午後10時は確実に過ぎていたと思う。下手したら11時台だったかもしれない。
ミヤマキシタバに集中していたので、この時は気にも止めなかったけど、今思えば飛来時間はやっぱ遅い。そんなワケないと思うのだが、シロシタバは早い時間帯には樹液や糖蜜に飛来せず、遅い時間に現れる説がドンドン補完されていくじゃないか。

一応、その時に採った個体の展翅画像を添付しておこう。

 

 
♀だったんだね。全然、記憶にないや。
にしても、キレイな個体だね。展翅もバッチリだしさ。

 
 
 2019年 8月11日

 
今日もゆくゆく、パンチラ捜索隊。再び、四條畷のポイントに立つ。
前回、結局採れたのは糖蜜トラップに来たのと空中シバキの2頭だけ。シロシタバは、夜になると下翅をオープンにするという生態的特徴を証明できなかった。
去年、偉そうに周りに吹聴していただけに、このままだと狼少年のレッテルを貼られかねない。それは何としてでも避けたいところだ。とにかく歩き回って出来るだけ多くの個体を見て、正しいか間違っているかの答えを出したい。白黒ハッキリと片をつけたいのだ。もし間違いだったら、素直に謝れぱいい。いずれにせよ、その為には事実を積み重ねてゆくしかない。

そうは言いながらも、気持ち的には楽勝気分である。日付的に今日なら大丈夫だろう。最盛期な筈だから、去年みたいにそこそこの数は見られる筈だ。今日一日で一挙に問題解決といこうじゃないか。

しかれども、今日も状況は芳しくない。日没からだいぶ経ってるのに、まだ1頭も見ないでいる。
\(◎o◎)/どゆ事~❓ワケがワカンナイじゃないか。まさか空中から農薬とか撒いたんじゃねぇだろなー。

午後9時半。やっと最初の1頭が糖蜜トラップにやって来た。

 

 
やっぱ、飛来時刻は遅めだなあ。日没前から糖蜜を撒き散らしているのに、早い時間帯には1頭も来なかったもんなあ…。って事は、益々樹液や糖蜜にやって来る時間は遅めという説が濃厚になってくる。
う~ん、本当にそうなのかなあ…。でも結論づけるのには、まだ早すぎるような気がする。たまたま偶然が重なっただけなんじゃないかと、まだまだ疑ってる。

(^o^)v楽勝でget。このままだと Null(ヌル(註3))になりかねなかったから嬉しくなくはないが、捜してるのはパンチラさんなのだ。ややガッカリ( ´△`)

ありゃ❗、鮮度は悪くないものの、左下翅が少し欠けとる。そろそろ傷み始めの個体が出てきたって事か…。その割りには個体数が少ないよなあ。

少しホッとして、さあここからだと歩き始めた矢先だった。懐中電灯の光が何か白いものを捉えたような気がした。慌てて照準を合わせ直す。距離は約15メートル。なんちゃって千里眼を持つ男だ。ハッキリ見える。間違いない、シロシタバだ❗

\(^o^)/💥パッカーン、おっぴろげジャ━━ンプ❗
( ☆∀☆)フォンテ~~ヌ❤💕 ようやくパンチラ個体を見つけたよ。

あっ、書いてて今、おっぴろげなんて言葉を使うようになった原典が解ったよ。たぶん、っていうか絶対に永井豪の漫画『けっこう仮面(註4)』の影響を受けている事は間違いあるまい。このマンガ、女子から見ればサイテーのエロ漫画である。しかも少年誌の月刊ジャンプに連載されていた筈だ。ジャーンプ!で少年ジャンプを思い出して、芋づる式に記憶が甦った。
笑けるほど下品でバカバカしい漫画で。必殺技のおっぴろげジャンプなんぞは、その極みだもんね。嗚呼、オラもおっぴろげジャンプ喰らいてぇー。悶絶、気絶(◎-◎;)してぇー。だって世の中に、あんなに男子にとって嬉しい必殺技は他にないもんね。
でも現在の社会状況ならば、コンプライアンス的に大問題だろなー。今の世の中、何でもかんでも規制するって感じだもんな。ホント、ツマンねぇ世の中になったよ。清濁、両方相俟ってのメディアが正常だと思うんだけどね。嘘の上に乗っかった清廉などクソ喰らえだ。わしゃ、エログロ復権を断固望むι(`ロ´)ノ❗
めんご、めんご。こう云うどうでもいいような脱線が話を長くしちゃうんだわさ。本編に帰ろう。

慎重に距離を詰める。
腰の辺りと高さは低い。見覚えのある木だ。この木の前は何度も通っている。だから樹液が出ていない事は知ってる。だいち細い。こんな若い木から樹液は滅多な事では出ない。それに、そもそも木の種類が樹液が出るような木ではない。明らかに照葉樹だ。しかも樹液が出るカシ類ではない。

逃げる素振りはない。更に間隔を詰めて確認すると、吸汁のためのストロー(口吻)は出していない。微動だにせず、静止している。つまり樹液を吸っていないのにも拘わらず、下翅を開いていらっしゃるのだ。
となれば、証拠写真をフライデーする絶好のチャンスである。そっと至近距離まで近寄り、スマホを構えて💥パシャ。💥バシャ💥バシャ💥バシャ💥バシャ💥パシャ…。気分は連写で撮ってるエロエロカメラ小僧だ。拙者、接写で撮りまくっておりまする。

 

 
やっぱ、夜は羽開いてるのが普通なんじゃねぇか。
兎にも角にも、これで証拠写真は撮れた。取り敢えずは一安心だ。

♂っぽいね。でも上翅が完全に破れてんなあ。やっぱ、いよいよシーズンも終わりかけって事なのか…。

この日は、コレで終了。
参ったなあ。どうも上手くいかないや。長野では後半持ち直したものの、らしくない絶不調っぷりだったし、秋田さんの言うようにマホロバキシタバの発見で運を使い果たしたのかもなあ…。岸田先生まで、そんなこと言ってたしなあ。この俺様に限って、んなワケあるかいと思ってたけど、何だか段々そんな気になってきたよ。
因みに、この日採ったのは最初の翅が少し欠けていた個体1頭のみ。展翅はしていない。フォトジェニック、2頭めの完全に羽が破れてたのはスルーした。

 
 
 2019年 8月24日
 
パンチラの証拠写真はおさえたとはいえ、まだたったの1頭だ。これでは夜間パンチラを証明するのには、まだ弱い。もっと証拠写真を撮影しといた方が良いだろうと考え、またもや四條畷に出掛けた。

しかし、今宵も中々姿を現さない。パンチラ捜索隊の前途に暗雲が垂れ込める。
まあ、そのうち会えるだろうと思ってたけど、無常にも時間は刻一刻と削られてゆく。時間と共に焦りが増大する。いったい何が起きているのだ❓ワケ、ワカメーやんかあ(T△T)

れれれー(@_@;)、あろうことか、10時になっても1頭も見ずやんけー。この流れだと、ゼロで終わりかねない。出歯亀探偵、窮地に陥る。
去年は多産地だと思ってたけど、考え直さなくてはならぬ。たまたま去年の発生が多かったのかなあ❓これが常態なの❓それとも今年が特別少ないの❓
どちらにせよ、今のところ現実の成果はゼロだ。このままでは帰れない。終電にあう間に合うギリギリまで粘ることにした。最悪の場合、走って山を下りればいい。

(-“”-;)いない…。

 

 
フォースの暗黒面に陥りそうな気分だった。
👿自然破壊魔王、その辺の枝を叩き折りまくりたい衝動に駆られる。そこを何とか踏み堪えて、夜の道を足早に歩く。顔がどんどん歪んでゆくのが自分でもわかる。マジ卍~、ホンマに今年の運を使い果たしてしまったのかもしれない。

(´д`|||)脱力。諦めかけて帰ろうとした10時半。
ぶわ~ん❗と、浮き上がるかのように突然白いものが目の中にジワリと飛び込んできた。ぼやけていた焦点が、ゆっくりと合い始める。
そこには、懐中電灯の光にピン・スポットで照らし出された、白き女王の姿が在(あ)った。
シャーι(`ロ´)ノ、やっと1頭めっけー。
しかも、大サービスでおっぴろげてくれている。
これで夜は下翅を広げて止まっていることを完全に証明できるんじゃないかなと思った。止まっているのは杉の木だから、絶対に樹液に来た個体ではないからだ。

しかしパンチラ写真は撮らなかった。と云うか、撮れなかった。静止している場所が高くて撮影するのには無理があったのだ。遠目でもいいから撮ろうかと思った。けれど、暗すぎてフラッシュを焚いても映らない可能性が高い。それに帰る時間も差し迫っていた。アレやコレやと考えているヒマは無い。直ぐに諦め、ソッコーでネットインして、ソッコーでアンモニア注射を打って〆る。

 

 
一応、写真を撮り、慌ててブツを回収して真っ暗な坂道を走るようにして下った。

今日は暗闇が全然恐くなかった。👻お化けも魑魅魍魎も恐くなかった。そんな事よりもコケたりして大ケガする事の方が余程恐かったから、そっちに集中してて、それどころではなかったのだ。慎重を期しつつも、大胆に駆け降りる。

🎊パンパカパーン\(^o^)/、最速記録更新~。
結局、何事もなく山を降り、終電にも間に合った。
けんど、あんなに苦労して持ち帰った1頭がコレ↙。

 

 
採った時は完品だと思ったが、左下翅に何か変な2本の線が入っとるぅー(T△T)
一瞬、変異個体かと思ったが、たぶん単なる傷だろう。それに右の触角も折れとるぅ~(ToT)

とにかく、これでシロシタバは夜になると樹液などに吸汁に来なくとも下翅を開くという事をある程度は証明できたかと思う。少なくとも此処ではそうだ。今年も翅を閉じているものは1頭も見ていないのだ。去年と二年連続だし、両年合わせれば相当数のパンチラ個体を見ている。どう考えても、一過性のものではないだろう。

そういえば、樹液に飛来した個体を1頭たりとも見ていない。あてにしていた木からは、ちゃんと今年も樹液は出ていて、他の種類のカトカラは変わらず集まって来てたのにね。コレまた謎のままだ。

前述したが、それにしても、もう8月も終わりだというのに、極めて個体数が少ない。今年は何処へ行ってもチョウが少ないと嘆く御仁も多いようだから、ガも少ないのかもしれない。それとも、たまたま去年は発生数が多かったって事なのかな❓
でも、真相は来年にならないと分からないや。それにパンチラ問題の調査もまだ充分とは言えないし、此処には又来るっきゃないな。とはいえ、こんなに個体数が少なければ今年はもうダメだろう。来年、また来ることにしよう。

 
 
 2019年 9月2日

 
再び旅に出た。
今回も青春18切符の旅だ。
しかし、今回はパンチラ捜索隊の任務ではない。

 

 
夕方、岐阜県・平湯温泉に到着。

 

 
いつもの宿で温泉に入って、キンキンに冷えたビールを飲んでから出陣。
探すはエゾベニシタバ、目指すは白谷方面。
しかし、真っ暗けー。

 

 
ここには妖精クモマツマキチョウを採りに何度か訪れているが、夜はこんなにも真っ暗だなんて予想だにしていなかったよ。

 
【クモマツマキチョウ(雲間褄黄蝶)♂】

 
【裏面】
(2019.5.26 岐阜県高山市新穂高)

 
【展翅画像】

 
そういえば思い出した。白谷では、そのクモツキ採りの時に熊の親子連れを見てるわ。此処には、確実に森のくまさんがいるのである。
真っ暗だし、熊は黒い。背後から襲われでもしたら、お手上げだ。((((;゜Д゜)))ブルッとくる。

🎵ラララ…星き~れい~、とか何とか口に出して歌ってはみるが、恐い。マジ卍で熊も闇も恐い。
幸い❓なことに川沿いの道にトラップを噴きつけるのに適した木がないので撤退。温泉の反対側に行くことにした。

その時に採れたシロシタバがコレ。

 

 
写真は二枚だが、同じ個体である。
キレイな個体だ。四條畷では傷み始めたものが多かったけど、コチラでは9月に入ってもまだまだキレイなんだね。やはり西日本よりも発生が遅いのかな❓それとも、どこかに書いてあったように、この辺では夏眠するからなのかな❓

比較的早い時間帯に採れた記憶があるが、それでも9時は軽く過ぎていたと思う。あっ、写真があるから撮影時刻のデータが拾えるか…。
(|| ゜Д゜)ゲッ、確認したら、午後11時09分になってた。どんだけワシの記憶ってエエ加減やねん。
あっ!、これも又もや遅い時間の飛来である。コレだけ糖蜜への飛来時間が遅い例ばかりだと、そんなワケないと思ってたけど、考え直さざるおえない。でもなあ…、そんなカトカラっているのかね❓ 何で遅くにやって来る意味もワカンないしさ。

この日は、この1頭のみ。勿論、糖蜜に来ていたから下翅は開いていらっしゃった。

 

 
♀である。
そして、これが今年最後のシロシタバとなった。

                     つづく

 
追伸

結局、パンチラ問題の証明はある程度は出来たが、まだまだ不充分ではある。引き続き来年も、この件に関しては観察を継続していこうと思う。

その流れで思ったのだが、誤解を怖れずに言う。
蛾屋って、ライト・トラップに頼り過ぎてないかい❓
それで多くの蛾は採集できるかもしれないけど、それだけでは本当の生態は分からない。
真正の蛾屋でもない自分がこう云う事を言うと、激怒される方もいらっしゃると思うが、それって採集方法が片寄ってないか❓ ライト・トラップ自体を否定するつもりは毛頭ないけれど、ターゲットの蛾をライト・トラップで採ると、それだけで満足してしてしまう人が多いのではないかと疑っている。採れたからと、それ以上の生態的興味を失ってしまってないか❓ 勿論、そうでない方も沢山いるだろうけど、どうもそういう気がしてならない。とにかく灯火採集で解るのは生態の極く僅かな一面に過ぎない。もっと自然な状態での生態を観察しなければ、本質は何も見えてこないんじゃないかと思う。各種蛾の生態解明があまり進んでいない原因の一つは、採集をライト・トラップに頼り過ぎているからなのではなかろうか。
つまり、ライト・トラップだけに頼らず、もっと他の方法でも採集、生態観察をする努力をすべきではないかと思うのである。長々とこのシリーズを書いてきた理由の一つは、これが言いたいが為の布石だったとも言える。
図鑑の記述を丸呑みせず、わからない事や疑問があれば積極的に自分で調べる姿勢が必要ではないだろうか。
チョウと比べて、ガには解明されていない事が多い。新たな発見は、まだまだあるだろう。そこにこそ面白味がある。愛好家が生態解明を争うような時代になるように、もっとベテランの人たちの啓蒙活動も必要ではなかろうか。そうなれば、新たに蛾に興味を持つ人の裾野も広がりはしまいか。
今ひとつ上手く言えてないが、言いたい事の根幹はそういうことだ。

  
追伸の追伸

最後の一文は叱られそうだなあ…。まっ、いっか。
叱られるのは構わないが、怒らずにこのシロシタバのパンチラ生態を他の場所でも観察、証明して欲しい。勿論、間違っている事の逆証明でも大歓迎だ。それが不遜、わたくしの願いです。

今回の小タイトルは単なる思いつき。
だから一人でも捜索隊でいいのだぁー。あんましっていうか、全然理屈になってないけど…。
でも、2回も連続でタイトルにパンチラって付けたら、けしからんと思う人もいるんだろなあ…。
もう一言つけ加えておくと、小タイトルは別なものも考えていた。カッコつけた『天鵞絨の~(何ちゃらかんちゃら)』だ。『天鵞絨(びろうど)の刻印』とかさ。けれども、どうしても捜索隊を付けたかったのだ。かといって『天鵞絨捜索隊』じゃあ、漢字だらけでヨロシクないものね。中国のバードウオッチングの団体とか中国雑伎団の名前みたいで、ヤ。

当初は本文に種解説を加えて、今回で最終回にしようと考えてた。けんど、また要らぬ事を沢山書いて長くなってしまい、早々と断念。
(^_^ゞ次は必ずやクロージングしまーす。

 
(註1)マホロバキシタバ

 
2019年7月に奈良県で見つかった新しいカトカラ。
学名 Catocala naganoi mahoroba。惜しくも新種とはならず、新亜種となった。とはいえ、現在のところ分布が確認されているのは、台湾と日本の奈良県の一部のみ。
詳細は「月刊むし」の2019年10月号(No.584)に掲載されてありますので、そちらを読んで下され。

 

 
(註2)石塚先生
カトカラの世界的研究者である石塚勝己氏のこと。
著書『世界のカトカラ』には美しい展翅標本が並んでいる。それを参考にしたでごわす。

 

 
トサカ大明神と、うっかり言ってしまったのはモヒカン頭だから。まだお会いしたことはないけれど、嘘かと思ってたら本当らしい。ファンキー・モスラ・ジジイとは、めちゃめちゃカッコ良すぎるぜd=(^o^)=b

 
(註3)ヌル(Null)
ドイツ語で、Nullは数値の0(ゼロ)を意味し、発音は /nʊl/である。一方、英語においてNullは/nal/と発音される。日本においては「ヌル」という発音が定着しているが、英語読みに近い「ナル」という発音で呼ばれる場合もあるようだ。
初めてこの言葉を蝶屋の先輩達から聞いた時には、意味がワカンナイだけでなく、にゅるっとした感じで何か気持ち悪い言葉だなと思った。しかもダサい。カッコつけたい人が使いだしたのだろうが、カッコつけといてダサいって、どーよ(# ̄З ̄)❓せめてスペイン語のNada(ナーダ)とかにしろよなー。意味は英語でいうところの、nothingにあたり、無し、ゼロってこと。また「虚無」と云う意味でも頻繁に使用されてるようだ。採集しに行って、一つも採れない時などは、まさしく心は虚無。こっちの方が断然良いと思うんだけどね。蝶屋のあいだで流行らしたろかしら(笑)
そう云うワケで、ヌルという言葉は普段は使わない。基本的には、釣りでお馴染みの「ボウズ」を使ってる。

 
(註4)けっこう仮面
ダウンロードした画像を添付しようとしたら、seacretほにゃららみたいな英語の表示が出て不可能でおました。こりゃ、おっぴろげジャンプの画像なんて載せようものなら、何らかのベナルティーを受けかねないな。どうしても見たい人は、ネットで検索しましょうね。

 

2018′ カトカラ元年 其の11 第三章

 

   vol.11 シロシタバact3
   『パンチラを追え』

 
シロシタバの初採集から中2日後に再び出撃した。
中2日間空いたのは甲子園に高校野球を観に行っていたからなのだ(註1)。

 
2018年 8月22日

   

 
これを買っている時点で、又しても四條畷なのらー。
こないだは思いの外、シロシタバが5♂1♀も採れたので今日もシバくのだ(^o^)v
とは言いつつも、本日は小太郎くんが途中から参戦してくる事になっている。四條畷でシロシタバを採った報告をしたら、行きたいと言ってきたのでホントはその案内ってワケ。ゆえに冒頭のスーパーマーケット フレスコの分厚いカツサンド(註2)も彼の為に買ったものだ。マジで旨いから食ってもらいたいと云う気持ちからだったが、今日は車で来るという事なので(註3)、帰りに駅まで送ってもらうつもりだし、まあその駄賃みたいなもんでもある。あの恐怖に満ちた長く辛い夜の山道を一人で下る事を考えれば安いものだ。

 
今宵は月夜。

 

 
懐中電灯なしでも山道も何とか見える。
夜の山を一人彷徨(さまよ)うのにもすっかり慣れた。人工的な明かりが全く無い世界は恐しくもあり、美しくもある。

謂わば、夜の蛾採りはミステリーである。そして、スリルとサスペンスに満ちている。中でもライトを焚かない夜間採集は暗闇が支配する世界。ホラーであり、スリラーでもある。ミステリーな上にスリルとサスペンスに満ち、更にホラーでもあると云う謂わば全部乗せスペシャルなのである。
ここでふと疑問に思って、ついミステリーとサスペンスとスリラーとホラーの違いについて考えてみた。夜の山に一人いると、想念がどこまでも広がりがちだ。闇と対峙しているうちに、普段ある意識と内奥にある意識との間にある薄い膜のようなもの、心理的障壁や夾雑物が消えるのかもしれない。

その手の映画をAはミステリー映画、Bはサスペンス映画と言ったりする事は多い。それをホラーやスリラーとする人だっているかもしれない。ジャンル分けが人によってバラバラなのだ。自分の中でもそれら似たような言葉がゴッチャになってるところがある。その線引きって、どの辺りにあるのかなと思ったワケ。
したら、急に筆がバッシバッシに走り始めた。でも途中で、こりゃマズイ。大脱線になるのは必至だと気づいて急制動。
脱線ばかりしていては話が全然進まない。徒(いたずら)に長くなるから、それについては最近自分でも反省しているのだ。無駄な文章が多すぎ。
このお題に関しては後日、稿を改めて書けたら書こう。だいち、この日は小太郎くんが後から来たから、全然怖くなかったのだ。それだと論旨にリアリティーを欠きそうだし、タイムリーな話題とは言えまい。

暗闇の世界から暫し離れ、待ち合わせ場所へ行く。
小太郎くんが車でやって来たのは、日没後の7時半から8時の間くらいだった。
この日は小太郎くんには2頭ほど採ってもらったっけかなあ?(註4)。でも最初の1頭しか覚えていない。

一番個体数が多かった森に差し掛かった時だった。
森の入口で、小太郎くんが早くも木に止まっているのを見つけた。三日前、自分が最初に採った個体もその木に止まっていたし、止まっている高さもほぼ同じだったから驚いた。御神木かもと思ったよ。もっとも自分の場合は止まっているのに気づかずに飛んでったけどね。その辺のてんやわんやの件(くだり)は前回に詳しく書いたので、そちらを読んで下され。

記憶は朧ろだけど、下翅は開いていなかったと思う。小太郎くんは、止まっているそれを毒瓶を被せて採ったからだ。ワテの毒瓶を貸したのだが、コンビニで売ってるワンカップ焼酎で作ったものゆえ、大きさ的に翅を閉じて止まっているシロシタバでギリの口径なのだ。もし翅を開いていたなら、鱗粉が傷ついてしまうから網で採っていた筈だ。

 
【毒瓶】

 
でも小太郎くん本人に電話で確認したところ、下翅は少しだが開いていたと言う。清純チラ見せパンチラだったワケだね。言われてみたら、翅を開いていたような気もしてきた。
これで人間の記憶が如何にいい加減で曖昧なのかがよく分かったよ。同じ木だっただけに、時間の経過と共に自分が採った夕方4時半の時の記憶とゴタ混ぜになってしまい、いつのまにか夕方なら翅を閉じていた筈だという概念に支配されてしまったようだ。結構、自分の都合の良いように脳が記憶を改竄してるってことは有るんだろなあ…。

ここで今一度、パンチラ問題について説明しておこう。
シロシタバを含むカトカラ(Catocala)属は、上翅が木肌に似た地味な色だが、下翅は黄色や紅色、紫など鮮やかな色を持つものが多い。しかし、普段は昼でも夜でもその鮮やかな色を隠して木に静止している。これは鳥などの天敵から身を守る為だと言われている。つまり上翅の地味な色柄を木と同化させることによって、天敵の眼を欺くと云う高度な生き残り隠遁術なのだ。
そのせいか、下翅を見せる機会は少ない。飛んでいる時と、樹液などの餌を摂取している時くらいにしか下翅を開かないのだ。あとはイレギュラーな例として、天敵に襲われそうになったら、鮮やかな下翅を見せて威嚇するとも言われている。
これがカトカラ属全般の基本的な生態だろう。それが白き女王様ったら、此処では夜になると樹液を吸ってるワケでもないのに、恥ずかしげもなく御開帳。おおっぴらにおっぴろげていらっしゃる。🎵サービス、サービス(あっ、ここ、エヴァ(ヱヴァンゲリヲン)の次回予告の葛城ミサトの口調ねっ❤)。
しかし、こういう生態は自分の知る限りでは聞いた事がない。どこにも書いていないのだ。だから今日はその生態が、はたしてあの日一日だけのものなのか、それとも通常の行動なのかを確かめるという目的もあった。

因みに止まっていた向きは上向きだった。これは覚えているし、小太郎くんにも確認したから間違いない。
カトカラの多くは昼間は下向きに止まっているが、夜になると上向きに止まる。前回書かなかったけれど、一番最初に採った個体だけが日没前の4時半で、驚いて飛び立ったから不明だが、日没後に見た他の5頭は全て上向きに静止していた。
でも何で昼間は下向きに止まってるんだ❓
逆さになって何の得があるのだ❓そこには何らかの理由がある筈なのだが、全くもってその理由がワカラン。

それにもう一つ疑問点がある。では、いつ下向きから上向きになるのだ❓夕方❓夜❓何時何分❓
また、いつ上向きから下向きになるの❓明け方❓朝❓それとも昼❓
これに関しても詳しく書かれたものを見たことがない。
これら疑問については、おいおい解き明かしていくつもりだ。出歯亀探偵、引き続きパンチラも追うぜ。

この日の2頭目は、たぶん自分が見つけたと思う。
池の畔側で、シロシタバがあまり好まない場所なのか、池側ではその一度だけしか見たことがないから覚えてる。上向きに止まっており、下翅は開いていなかった。
後にも先にも日没後に下翅を開いていないノーパンチラ、貞操の固い個体はコレだけだった。この日は前回にも増して個体数が多く、小太郎くん曰く10頭以上は見たそうだが、木の幹に止まっていたものは全て下翅を開いたパンチラ状態だったそうだ。
その割りには採った記憶があまり無いなあと思ってたら、これも小太郎くんの言で疑問が解けた。なぜかと云うと、殆んどの個体が翅が欠けていたり、破れたものばかりで、スルーやリリースしたからみたい。話を聞いているうちに、そういえばそうだったと思い出したよ。
『ほらね、やっぱり下翅を広げてるでしょ。』と小太郎くんに自慢げに言ったわ。彼もちゃんとそのオラの言動は憶えてたし、それで概ね合ってるだろう。
記憶がだいぶ甦ってきたぞ。そういえばこの日はそれだけいたにも拘わらず、1頭たりとも樹液に飛来しなかった。やはり夜遅くにならないと樹液に来ないのか❓そんなワケあるかいと思うのだが、事実なんだから何らかの理由なり意味なりを考えざるおえない。(T_T)もう謎だらけだよ。

情けないことに鮮明に記憶に残っているのは、帰る間際に採ったものくらいだ。
最後に前回♀が採れたウワミズザクラの大木に寄ったのだが、見たところいないので諦めて帰ろうとして振り向いたら背後の木の枝葉に止まっていたのだ。不意だったから、中々に衝撃的だった。
高さは1.8メートルくらいで、幹ではなくて枝と云うか常緑樹の葉っぱに止まっていたのをよく憶えている。葉っぱに止まってるのは珍しいから、映像記憶として鮮明にメモリーされている。勿論、パンチラ全開だった。
今思えば写真を撮っておけば良かったと悔やまれる。パンチラの証拠写真を撮るなら、高さ、近さは申し分なかったし、絵的にも素晴らしいアングルだったのだ。しかも鈍感な子で、近づいても逃げる素振りは微塵も無かった。謂わば最高の条件が揃ったシャッターチャンスだったのだ。終電の時間が気になっていたのだろうが、写真を撮る時間なんてたかがしれている。勿体ない事をした。

結局、この日の個体は翌日に撮った写真しか残っていない。

 

 
お尻の形からすると、♀だね。
次は、たぶん同じ個体の裏面。

 
【裏面】

 
裏面は生成(きなり)色。所謂オフホワイトだ。表よりも薄汚れた感じで、あんまし綺麗じゃない。

探しても展翅写真がナゼか無い。
なので、前回のものをひと纏めに撮ったのを載せて御茶を濁そう。

 

 
この夜に採集したものは、どうせ面倒クセーからと写真を撮らなかったんだろうね。

 
 
2018年 9月7日

 

 
線路の両側の稲穂が金色に輝いていた。

この日は青春18切符で遠路はるばる山梨県までやって来た。
目的は大菩薩嶺の麓で帝王ムラサキシタバ(註5)を狙う為だ。
とはいえ、ライトトラップなんて持ってないからペンションのライトトラップで何とかならんかなと思ったのである。
このペンションは虫屋の間では有名で、毎夜ライトトラップが焚かれているのだ。

 
【ペンション すずらん】

 
ライトトラップはペンションの裏というか横にあり、巨大である。

 

 
横幅が4メートルくらい、高さは3メートルくらいはあったかなあ。
ここにシロシタバが飛んで来た。時刻は比較的早い時間だったと思う。たぶん7時か8時辺りだったかな。

 
【シロシタバ】

 
スマン、間違い。写真のデータを解析したら9時過ぎに撮られたものだったよ。やっぱり古い記憶というものは当てにならん。

ライトトラップに飛来したものはパンチラなし。
灯りに寄って来るカトカラは、翅を閉じるものが多いようだ。ネットの画像なんかでも閉じているものが多い。中々、翅を開いてくれないというコメントも散見されるから、閉じるのが基本だと思われる。
こうして見ると、上翅の黒いスリットのような柄が目立つね。殆んど下翅を開いているものしか見てないから、あまりそっちには目がいかなかったんだろ。シロシタバの苔(地衣類)みたいな上翅は、世界中のカトカラを見回しても唯一無二だが、この黒いスリットが入るカトカラも他には存在しない。
とは言っても、もはや全然興味が無かった。一回やったら飽きるような酷い男なのだ。
それに何だか小さい。四條畷の奴と比べて断然小さく、細いような気もして重量感をあんま感じない。もう魅力半減なのだ。萎えても致し方なかろう。

翌日の夜にはペンション入口の外灯の柱に鎮座していた。飛来時間は同じく9時くらいだったと思う。
この時もパンチラなし。翅は閉じられていた。
翅がコレも少し欠けていたので、蛾LOVEの高校生に譲ったっけ。いや、もしかしたら別な人だったかもしれない。
ここには3泊したが、見たのはその2頭のみだった。

大菩薩山麓で採ったシロシタバ♂を展翅画像を貼り付けとこっと。

 

 
(・。・;あれれっ❓、翅が破れてないぞ。
おっ、そうか。これまた健忘太郎だ。樹液に来たのも採ったんだわさ。たぶん、それだね。
翅は開いていたと思う。なぜなら閉じていたという記憶がないからだ。樹液を吸ってる時は下翅を開くのが当たり前だから、もし閉じていたならば逆に強く印象に残っている筈だ。それが無いという事は、閉じていなかったという三段論法でしかないんだけどもね。
と云うことはライトトラップに来たものは翅が破れていたのでスルーしたんだね。そう云えば持って帰った記憶は1頭しか無い気がする。

あっ、今さら8月22日に四條畷で採った個体の画像が出てきた。随分と後になって撮られたものだから、気づかなかったのだ。

 

 
カトカラの展翅は何が腹立つかって、時間が経って乾燥が進むと触角に狂いが生じてくる事である。
上の画像なんかは、元々はもっと整っていた筈だ。こんなアッチ向いてホイを良しとするワケないのだ。

 

 
両方とも♀だ。
そういえばコレって、たしか秋田さんに蝶屋的展翅だと指摘されてたので、上翅を下げてみたんだよね。
なるほどで納得したよ。確かに、このバランスの方がシックリくる。
同時に、それで画像が後になって撮られた理由も氷解した。展翅バランスが変わったという事は、きっと山梨の個体よりも後に展翅されたものだ。あんまし記憶に無いけど、後になってから軟化展翅したとしたら、話の辻褄が合う。

あっ、よく見ると前肢がもふもふで可愛い(о´∀`о)

 
                     つづく

 
追伸
この第三章から小タイトルを毎回変えることにした。
と云うわけで、第ニ章にも新たにタイトルをつけて、本文も一部手を入れた。
小タイトルの話が出たので、ついでだから書き忘れていたことを書こう。
第一章の小タイトル『ホワイト・ベルベット』のモチーフはデヴィッド・リンチ監督の映画『ブルー・ベルベット』。通の映画好きならば誰もが知っているリンチの代表作であり、カルトムービーの金字塔の一つだ。エキセントリックにしてファンタジック。そしてスタイリッシュ。何度見ても飽きない。
勿論、怪優デニス・ホッパーのガスマスクとか変態っぷりも光るが、一番好きなのはディーン・ストックウェルが「お菓子のピエロ」を歌うシーンだ。映画のストーリーとは直接関係ないのに、とても心奪われる。
そういえば、これまたストーリーとは直接関係ないローラ・ダーンの尋常じゃない泣きじゃくりっぷりがメチャンコ怖いんだよ。全然怖いシーンじゃないんだけど、何だか矢鱈と怖いのだ。
この映画は闇のシーンが多い。それが夜のカトカラ採集と重なり、夜道を歩いている時に珠にこの映画の事を思い出したりもした。更にそこにシロシタバのベルベッドのような下翅とがリンクしたゆえに思いついたタイトルだろう。まあ、映画へのオマージュだね。

第ニ章の『白き、たおやかな女王』のモチーフは北杜夫の小説『白きたおやかな峰』。但し、インスパイアーされたのは題名だけ。ヒマラヤの高峰に臨む登山家たちの話で、その内容とは全く関係がない。

今回の第三章は特に決まったモチーフはない。パンチラという言葉が気に入ったので、単にタイトルに使いたかっただけだ。カッコつけたがると同時にフザけたい人なのだ。
いや、もとい。あるっちゃある。白い下翅を何度も見ているうちに『まいっちんぐマチコ先生』みたいやのうと思った覚えがある。マチコ先生といえば純白パンティーだ。でもってパンチラなのだ。すっかり忘れていたが、その辺が深層心理にあったのだろう。
一瞬、タイトルを『まいっちんぐマチコ先生』に変えてやろうかと今思ったが、やめとく。フザけ過ぎだと叱られそうなんだもん。

次回のタイトルは未だ考えてないから、どうしょっかなあ…。でも全然思い浮かばない。結構、タイトルを考えるのって大変なんだよね。

 
(註1)高校野球を観に行っていたからだ

準決勝と決勝、2日連続で甲子園に行った。

 

 
そう、大阪桐蔭が春夏連覇した時だね。
但し、決勝戦は入場出来ずに近くの喫茶店でTV観戦してた。満杯で入れなかったのだ。下の画像を拡大すると、外野席までもが売り切れになっていることが分かります。

 

 
そういえば毎年恒例の『(@@;)べろ酔い甲子園』と題したシリーズをこの年は結局書いてないんだよねー。選抜の(@@;)ベロ酔いレポートは書いたんだけどさ。

 
(註2)クソ分厚いカツサンド

スーパー・マーケット フレスコの名物カツサンド。
これについては拙ブログにて『フレスコのカツサンド』と題して書いた。

 
(註3)今日は車で来るということなので

こんな事にまで註釈を付ける必要性は無いと思うが、小太郎くんが遂に車を買ったのだ!何か言いたい。
勿論、この日の帰りは車で送って貰ったのだが、車を買って初めて助手席に乗せたのがオラらしい。物凄く残念そうに言われたよ。アンタ如きにと云う気持ちが言外に溢れてとったわさ。
若い女の子じゃなくてゴメンねー(・┰・)

 
(註4)小太郎くんには2頭ほど採って貰ったのかなあ

本人に確認したら、最初の1頭のみだった。この日は発生も終盤なのかボロばっかだったのだ。

 
(註5)ムラサキシタバ

 
日本におけるカトカラの最大種。しかも、美しくて稀な種なので人気が高い。
 

2018′ カトカラ元年 其の11 第二章

 
   Vol.11 シロシタバ act2

  『白き、たおやかな女王』

 
 
うす暗い森の中に足を踏み入れた瞬間だった。
Σ( ̄ロ ̄lll)わちゃっ❗、突然、目の前の木から何かが飛んだ❗
( ̄□ ̄;)デカッ❗❗もしや…と思った次の瞬間、仄暗い中で下翅の白がチラリと見えた。間違いない、白き女王だっ❗❗

しかし、足が固まる。普段ならば即座に反応し、鬼神の如く猛然と走り出すのだが、咄嗟に動けなかった。
目だけで後(あと)を追う。彼女は森の奥へと飛んでゆく。網膜に映る画像がスローモーション化する。
突然訪れたチャンスに驚いて固まってしまったというのもあるが、下手に走って追い掛けると相手に必要以上の恐怖感を与えかねない、これ以上驚かせて本気で逃げられたらマズイと思ったのだ。どうしても採りたいという気持ちが、そう云った慎重な作戦を選ばせたのかもしれない。
それに場所は道なき森の中のキツめの斜面だ。足下が悪過ぎる。追い掛けるにしても飛翔体から目を切ってしまう可能性が高い。一瞬でも目を離してしまえば見失いかねないと判断したのだ。止まった場所をある程度把握できれば、そこからジックリ攻めてけばいい。

彼女は真っ直ぐ森の奥へと向かっている。全身が巨大な目になったかのようになる。しかし、網膜に映るそれはどんどん小さくなってゆく。これ以上離れるとヤバイ。見失う可能性がある。心の中で、止まれ、止まれ、止まってくれと悲痛なまでに念じる。

祈りが通じたのか、やがて途中で大きく右に旋回した。半円を描くような軌道で再び視界に戻ってくる。そして突然、フッと消えた…。

一瞬、見失ったかと思って、(-“”-;)💦焦る。
でも消えたという事は、その周辺の何処かに止まったに違いない。距離は約20mってところか…。その辺りの景色を脳ミソにシッカリと刻み込む。そして、逸る心でザックから網を取り出して組み立て始める。
気持ちを落ち着かせようとするが、組み立ててる間に心がどんどん昂(たか)まってきた。興奮と期待、絶対に結果を出さなくていけないと云うプレッシャー、もし逃がしたら…という怖れと不安、そしてエクスタシーを激しく希求する動物的本能、それらがグジャグジャに交ぜ合わさって溢れ出しそうになる。背中がゾクゾクしてきた。この緊張感、堪んねぇ。久し振りに味わう最高クラスのギリギリ感だ。ワクワクする。

慎重に斜面を登り、距離を詰めてゆく。
やがて近くまでやって来た。目を皿のようにして周辺の木の幹を凝視する。彼女は忍者ばりに木と同化して止まっている筈だ。その木遁の術、見破ってやるぜ。

あれれー?、けどワッカラーンヽ( ´△`)ノ
本当にこの辺に止まったのか❓作戦失敗❓
焦れて一歩踏み出したら、飛んだ❗
\(◎o◎)/ゲッ、何処にいたのだ❓全然ワカランかったぞ。
今度は追い掛けた。危険を感じてか、彼女はスピードを速めてる。コチラもスピードを上げる。ある程度の距離を詰めておかなくては見失いかねない。

止まった❗
よし今度こそ、その隠遁の術を見破ってやる。
しかし、やっぱワカラーン。ワシの眼は節穴か。苛立ってくる。もしかして見失ったか❓
不安に駆られて一歩踏み出したら、また飛びよった。
なしてーε=ε=ε=ε=(ノT_T)ノ。再び追い掛ける。

そして、又しても同じ事を繰り返す。
(ToT)ひぇ~、また飛びやがった❗
走りながら思う。シロシタバって鈍感だと何かに書いてあったけど、全然そんな事ないじゃないか。
それにしても、ワシャ、何をやっとるのだ❓森の妖精の悪戯かよ❓ エンドレスで延々この追いかけっこが続いたりして…。悪い夢でも見てる気分だ。
その間も目は逃すまいと飛ぶ彼女を追尾している。

やがて、森の端で止まった。
(=`ェ´=)追い詰めたぜ。ここなら外からの光が入って明るい。てめぇの姿、次こそ暴いてやる。

5メートル程手前で、やっと視認できた。高さは約2メートル。翅を閉じて静かに止まっている。
やっぱデカイ。今年見てきたカトカラの中では断トツの大きさだ。
今度こそテゴメにしてやり、この追いかけっこに終止符を打ってやる。慎重に木の下まで近づき、そっと下から網を伸ばす。
久々に緊張感で💓ドキドキし過ぎて、網を振る前にフッと笑ったよ。たかが虫にここまで必死って滑稽すぎだろ。我ながらアホだ。笑える。
こういう時はハズさない。力が適度に抜けてるからだ。

網の枠で、止まっている下をコツンと軽く叩く。
ハッ( ̄□ ̄;)❗驚いて右に飛んだ。
でも、そこが狙いじゃい❗
筋肉が収縮し、躍動する。
ダアリャアーι(`ロ´)━○、秘技❇カチ上げ斬撃剣❗
その刹那を見逃さず、ネットを空中でブン殴るようにして左から右上へと💥一閃した。

素早く手首を返して網先を捻る。
ネットを斜め上に掲げたまま一瞬静止する。我ながら美しいフォロースルーである。
(* ̄ー ̄)決まったな…。クリーンキャッチした確信がある。

すかさず網に目をやると、しっかり影が見えた。
感情が爆発する。(#`皿´)ダボがあー❗、ざまー見さらせ。まあまあ天才をナメなよ❗

でも心を弛めるにはまだ早い。肝心なのはここからだ。もし網の横から逃亡されでもしたら、全てが水の泡だ。それだけは何としても避けねばならぬ。己の能力の詰めの甘さを呪って、木の幹に千回、血が出るまで頭を激しく叩きつける事となる。

それはヤだ。この際、毒瓶方式は止めて、確実を期して悪魔的伝家の宝刀、ファイナル・ウェポンを登場させよう。

逃げないように、地面に置いた網の枠を膝でおさえながらザックから注射器を取り出す。用意周到、注射器の中には既にアンモニア液が入っている。
狙いをつけてエイやっ、(`Δ´)💉ブスッ❗
Ψ( ̄∇ ̄)Ψケケケケケ…。死神博士、注射針をブッ刺し、悪魔の毒液を注入する。
クワッ❗、彼女は驚いたように一瞬バッと羽を大きく開いた。そして、次の瞬間にはゆっくりと力を失っていき、静かに事切れた。
もし彼女が声を発する事が出来たなら、毒液を注入した瞬間に断末魔の声をあげていたに違いない。心がちょっとだけ痛む。安楽死とはいえ、殺しには変わらない。酷い所業だ。やってる事は所詮はマッドサイエンティスト。こんな方法で生き物を殺(あや)めまくっとるワシって、ろくな死に方せんで(-“”-;)

しかし、憐憫の情よりも喜悦の感情の方が遥かに勝(まさ)る。ゆっくり、じんわりと幸福感が全身に拡がってゆく。
エクスタシーは狩猟にこそある。それが男性にとって最も大きな本能的快楽なのだ。

我、戦いに勝利せり。全身全霊の渾身の戦いだったぜ。アリガトネ。
網から出して、そっと手の平に乗せる。

 
【シロシタバ Catocala nivea 】

 
地ベタにへたり込む。
朝から探し回って、4時半になって漸く拝めたよ。
安堵が更に身体の力を弛めてゆく。

 

 
手にはズッシリとした感触がある。存在感が半端ない。
シロシタバはその立派な大きさもさることながら、この苔(地衣類)みたいな渋い上翅と下翅のビロードのような白の組み合わせが素晴らしい。上品な美しさを醸し出している。たおやかで、どこか気品があるのだ。去年見たものよりも新鮮なだけに、より美しいと感じる。

あっ、尻に毛束があるから、♂だね。彼女じゃなくて彼だ。とはいえ、蝶も蛾も自分にとっては女性だ。擬似恋愛なのだ。だから男に恋焦がれて追い回すって感覚は受け容れ難い。あちき、バイセクシャルの性癖は無いんじゃもーん。

改めて下翅の白を仔細に見る。
その白は、ただの白ではなくて、ベルベットような質感を持つ白だ。滑らかで色に奥行きがある。ふわふわで撫で撫でしたくなるような毛並みに暫し魅入られる。

次に上翅に目を移す。
渋いグレーにエメラルドグリーンの紋が散りばめられている。(≧∀≦)渋カッケー。神秘的ですらある。宇宙を感じるよ。
こんな柄の上翅を持つカトカラは他にはいない。日本のみならす、海外だっていない。ホントの苔みたいだ。ウメノキゴケとかの地衣類にソックリじゃないか。

 
(出展『いきものは おもしろい!』)

 
そりゃ木肌と同化しちやってワカランわな。精度の高い立派な擬態だ。あんた、偉いね。

 
やがて闇が訪れた。
そして、直ぐに2頭目が採れた。今度も♂である。
木の幹に下翅を広げて止まっていたのだ。楽勝でゲット。

その次も同じく下翅を広げて止まっていた。そのまた次も同じ状況だった。2つとも♂である。
もしかしてシロシタバの♂って、夜は下翅を出して止まっているものなのかあ❓或いは♀へのアピールだったりして…。でもそんな事、図鑑にも文献にも一切書いてなかったぞー。

そして、ウワミズザクラの大木で♀も見つけた。
これまた下翅を広げていた。♀もそうなら、♂のアピールとかは関係ないな。けど、だったら何でパンツ丸見えなの❓まさか男前のワシへのアピールではあるまいに。いやいや♂もパンチラなのだ。だからぁー、オラはバイセクシャルじゃないっつーの(# ̄З ̄)

考えてもコレといった意味が他に思いつかないが、とにかくパンチラは目立つ。ここまで5頭のうちの4頭が下翅を開いていた。夜だとシロシタバの見つけ採りは超簡単やないけ。何処にも書いてないけど、ムラサキシタバ(註1)とかも夜に行けば下翅を開いていて、簡単に見っかったりするんじゃねえの~❓

とはいえ、どこにも書いてないと云う事はたまたま今日だけがそう云う生態なのかもしれない。本日はシロシタバのお祭り、年に一度のパンチラフェスティバルなのかもしれない。
もしくは、この場所のシロシタバだけが特異な生態を持っていると云う事も考えられる。
あまり現実的な考えとは思えないけどさ。

そう云えば、もう一つ疑問点がある。
樹液に飛来したのは最後の6頭目だけだった。しかも時間は帰る間際の午後10時過ぎ。それまで他のカトカラは山ほど樹液に来ていたのにだ。マメキシタバ、オニベニキシタバ、パタラキシタバ、コシロキシタバ、この地に生息するであろうカトカラはシロシタバを除いて日没後すぐに全員集合だった。だから不思議感が拭えない。ゲットしたシロシタバのうちの2頭は樹液の出ている木の周辺の木にいたから、日没後すぐに樹液に来てもオカシクない状況だったのに何で❓
シロシタバが樹液に来るのは遅い時間帯なのか❓
これまた文献には、そういった事はどこにも書かれていない。そもそも常に樹液にそんなに夜遅くに飛来するカトカラなんて聞いたことがないし、経験上も憶えがない(註2)。

色々と疑問は残るが、6頭も採れれば御の字だ。気分は頗(すこぶ)るいい。
午後10時15分撤退。谷を下り始めた。

別に書かなくともいい事だけど、帰りはそこそこ大変だった。メインの下り道が崖崩れで通行止めになっていて、他のルートを使わざるおえなかったのだが、この道が精神的にも肉体的にもキツかった。

満ち足りた気分は下り道を歩き始めて直ぐにフッ飛んだ。昼間でも一度も歩いた事がない道を歩くのは不安なのに、夜ともなるとその精神的負荷は何倍にもなる。ルートを外れて迷う可能性は格段に上がるし、所要時間も読めない。それに付随して終電に間に合わないかもしれないという焦りも生じてくるからだ。

歩き始めてさして間もなく道は真っ暗となり、ビビった( ̄ロ ̄lll)
辺りは樹木が鬱蒼としており、不気味極まりない。今宵は月が隠れていて、光が全く入ってこないのだ。
👻お化けとか本気で恐いマックス怖がり屋さんとしては、チビりそうな様相である。

おまけにダイソーで買った100円の懐中電灯がチンケ過ぎて半泣きだ。光量が弱いし、接触が悪くて時々消えやがる。その都度叩いて復活させるものの、いつブッ壊れてブラックアウトするかもしれへんと思うと、その恐怖感は尋常じゃない。ユルい性格なので、予備の灯りも持ってないのだ。もしも灯りが消えたら、発狂するか、醜態さらしてワンワン泣き喚きそうだ。
オデ、オデ、ココロガオレソウ。ワタス、キオクソウシツニナリマスデス。サヨウナラ。

道もどんどん悪くなり、石がゴロゴロ転がってて歩きにくい。荒れているのは、あまり人が使わない登山道なのだろう。
勾配もかなりキツくなってきた。そしてステップ幅の短い急な階段になった。コケたら、谷下まで転げ落ちるだろう。確実に大怪我するレベルだ。しかも水が滲み出していて滑りやすいときてる。
泣きたくなる心を懸命に抱きしめる。ここで死ぬわけにはいかんのだ。採ったシロシタバをまだ展翅もしてないのに死ねるか、ボケ。死んでも死にきれんわ。

一時間近く歩いて、ようやく住宅街に通じる暗い舗装路に出た。
大きく息を吐き出し、一旦立ち止まる。そしてペットボトルのお茶を飲む。喉が渇いている事さえ忘れていた自分に、何だか可笑しくなって笑みがこぼれる。

道の奥、眼下には街の灯りが瞬いていた。

                    つづく

 
一応、この日に採ったものの展翅画像を並べておこう。

 

 
上3つが♂で、一番下が♀である。
死んでも死にきれんと言ったわりには、酷い展翅だ。
カトカラ一年生、まだまだ展翅が下手クソだよなあ。上翅を上げ過ぎてるし、触角も整えきれてない。まだマシなのは♀くらいか。

あれっ❓、数が合わないな。全部で6頭なのに4つしか展翅画像がない。
おっ、そうだ。翅が破れてたから、修理用にと敢えて展翅しなかったわ。全然、修理してないけど。

 
追伸
この文章は去年酔っ払って書いていたせいか、徒にダラダラに長くなり収拾がつかなくなった。年が明けて文章を整理しようと思ったが、どこをどう切り捨てていいのかも分かんなくなって一部書き直すのみで断念。ソリッドさがないし、テンポも悪いけど、もう書き直すのが嫌になって、そのままいく事にした。絶不調なので投げた感じだ。まあ、そう云う事もある。そのうち調子が出てくることを祈るしかないね。

パンチラ問題は、このあとの回も引き続き取り上げてゆきます。去年2019年までの知見は全部織り込んでゆくつもり。

 
(註1)ムラサキシタバ
(2019.9 白骨温泉)

 
シロシタバに並ぶ大型のカトカラ。且つ美しく稀なことから人気が高い。他のカトカラは既に連載に登場していて画像も紹介しているが、ムラサキシタバのみ未登場なので貼付しておいたなりよ。

 
(註2)常に樹液に遅く飛来するカトカラなんて…
近畿地方の経験だと大概のカトカラは日没後まもなく現れる。カバフキシタバのみが8時を過ぎないと飛来しない。経験値が低いから何とも言えないが、今のところミヤマキシタバ、ベニシタバ、ムラサキシタバも遅めの時間帯の飛来しか見たことがない。中でもムラサキシタバは9時半以降と遅かった。

 

2018′ カトカラ元年 其の11 第一章

 
   Vol.11 シロシタバ

  『ホワイト ベルベット』

 
2018年 7月中下旬辺りから、シロシタバを求めて奈良県の矢田丘陵に何度か通った。
此の場所に狙いを定めたのには理由がある。小太郎くんが此処でシロシタバを採ったことがあると言っていたし、この近辺のカトカラを調査した論文にも記録があったからだ。しかも、そこそこいるようなニュアンスだった。

それで思い出したけど、普段カトカラなんてどうでもいいような口振りの小太郎くんが、このシロシタバとカバフキシタバだけはいかに素晴らしいかを力説してたんだよなあ…。小太郎くんは蝶屋だが(因みにワシも蝶屋)、昆虫全般に興味があり、また詳しくもある。その彼に珍しいとかカッコイイとかと言われると、単純だから影響されちゃうんだよねぇ。おで、バカで単純な性格なんだも~ん( ̄∇ ̄*)ゞ

クソ~、入りは重厚且つロマンチック&カッコつけで入る予定が早くもグダついている。もう最初に言っておこう。今回はスランプだ。いつもにも増して駄作になると思う。

 
2018年 8月10日。

そして、夜の帳が下りた。

 

 
ここを今年訪れるのは何度目だろうか?三度目?それとも四度目か?…。自分でもよく分かんなくなってきてる。
振り返れば、全てはシンジュサン探しから始まった。実物のシンジュサンを見たことがまだ一度も無かったので、6月は此処にターゲットを絞って探し回ってたんだよなあ…(註1)。
それが気がつけば、いつの間にかカトカラ探しに移行してた。フシキキシタバ、ワモンキシタバ、パタラキシタバ、コガタキシタバ、マメキシタバ、コシロシタバ、オニベニシタバと、時期が既に終わっていたアサマキシタバを除いては此処で記録のあるカトカラは順当にゲットしてきた。あとはシロシタバさえ採れれば、ピースが埋まる。ゲットさえすれば、漸く此の場所ともおさらばだ。シンジュサン探しも含めると相当数通ってるのでかなり飽きてきてるし、駅からの長い距離の歩きからもやっと解放される。何せ往復で一時間半以上も歩かねばならないのだ。行程の半分は坂道だしさ。
うーしι(`ロ´)ノ、今日こそはシバいて、この辛いシロシタバ詣でを終わらせてやるわい。そろそろ小太郎くんも遅れて参戦してくる頃だし、その前にサクッと終わらせてドヤ顔で自慢ブッこいてやろう。
さあ、Ψ( ̄∇ ̄)Ψオラオラでイテこましてやろーじゃないの。

(ToT)びえん。
しかし意気込んではみたものの、今宵も影さえも見れなかった。(-∀-;)…またしても惨敗である。如何にまあまあ天才のオラであろうとも(笑)、見もしないものは採れない。惨敗とか言ってる以前の問題だ。
ここまで見れないとなると、現在は極めて稀か、或いは既に絶滅しているのかもしれない…。

帰って調べたら、隣の生駒山地でも記録が少ない。食樹のウワミズザクラもあまり自生していない感じだ。近畿地方の他の山地、六甲や北摂、金剛でも記録はあるようだけれど、何れも単発で少ないという印象だ。わりといるような事が書いてあったのは兵庫県の北西部と高野山くらいだった。
シロシタバは中部地方から東では普通種だが、近畿地方ではどうやら思っていた以上に少ないようなのだ。
但し、所詮は蛾なので探している人じたいが少ないという事は考えられる。意外と近くに多産地が眠っているかもしれない。蛾の愛好家は蝶の愛好家と比べて圧倒的に少ないから情報があまり表に出てこないし、蛾に関する著作物も少ないのだ。
裏を返せば、ライバルが少ないという利点があって、早めに行って必死に場所取りをしなくてもいい。それは助かるし、有り難い事ではある。しかし、その利点を生かすだけの情報量があまりに少ない。何処へ行けば採れるのか、多産地なのか稀なのかがあんましワカランのだ。誰にも会わないと云う利点も、寧ろマイナスなんじゃないかと思えてきたよ。現地で出会う人が極めて稀となれば、情報を訊き出す事さえもままならないのだ。今更ながらに虫採りには情報が如何に大切なのかを痛感したよ。

やがて、8月も半ばに入った。
そう簡単ではないにせよ、そのうち採れるだろうとタカをくくっていたから誤算も誤算だった。このままいけば、時期的にボロしか採れなくなる。💦流石に焦ってきた。

実を云うと、シロシタバの実物は見たことがある。
2017年の秋にA木くんにせがんで、但馬地方にライトラップに連れていってもらった。蛾にもカトカラにも興味は無かったけれど、蛾愛好家以外にも賞賛されるムラサキシタバなるモノをこの目で一度くらいは見ておきたかっのだ。そんな軽い気持ちの謂わば暇潰しだった。

 

 
その折りに、A木くんが飛んできたシロシタバを追っかけて空中で鮮やかに採った。
でも羽が破れてたので『あげますよ。』と渡されたのだった。所詮は蛾だし、カトカラを集める気などさらさら無かったから、正直どうしようか迷った。
でも生来デカくて見栄えの良い奴は好きだ。それに断るのも面倒くさいといえば面倒くさいし、人間関係は円滑にしといた方がいいだろう。こういう場合は、相手の好意を無碍に断わるよりも四の五と言わずに素直に貰っとけばいいのだ。今日の記念にと云うことで、有り難く持って帰ることにした。

翌日の昼間にそれを展翅するのだが、羽を開いてみて、ちょっと驚いた。
夜に見た時とは全然印象が違う。上品さとエキゾチックさが完璧なまでに融合した妖しい魅力を放っていたのである。図鑑で見た記憶では、中途半端なオフホワイトで、パッとせん地味な奴っちゃのうと思っていたが、実物は全然違ってた。
その白は、単なるベタな白ではない。そこには図鑑では分からない精緻な質感があった。白いベルベットのような趣なのだ。しかも、上翅の苔っぽい感じが落ち着いた美しさを醸し出している。他のカトカラとは別次元のオンリーワンの存在だと思った。

 
【シロシタバ♂】
(2016.9. 兵庫県ハチ北高原)

 
考えてみれば、コレって初めてカトカラを展翅した時の一つなんだよね。もしかしたら一番目かもしれない。
当時は展翅の出来はまあまあかなと思ったが、今見れば如何にも蝶屋の展翅然で、上翅と触角を上げ過ぎている。ハッキリ言って下手くそである。
蛾の展翅は難しいや。蝶でさえウザいと思ってるのに、触角が益々どもならんから嫌い。真っ直ぐするのが大変だし、細いから直ぐプチッと切れやがる(-_-#)

もっとボロい個体というイメージがあったが、こうして改めて見ると、羽が破れているだけで鮮度はそんなに悪かない。まあ、わりかし感動したくらいなんだから、鮮度はそう悪いワケないか。
ふと思う。この時のシロシタバがボロボロだったら、どうだったんだろ❓
或いはカトカラなんて集めていなかったかもしれない。となれば、マホロバキシタバの発見も無かったってワケか…。物事と云うのは、色んなファクターが連なっての結果なんだね。
あっ、思い出したわ。この時に来年はシロシタバとムラサキシタバは自分の手で採りたいと思った記憶がおぼろ気ながらにある。もっとも他のカトカラには全く興味がなく、集める気も無かったんだけどさ。
たぶんボロだったら、美しさを認識してなかった筈だ。こんなに必死になって探さなかったかもしれない。どころか、採りに行こうと思った事さえも忘れていたやもしれぬ。ただデカイだけでは食指は動かないのだ。

何か当時のことをどんどん思い出してきたぞ。
2018年は兎に角全然会えなくて、この頃になると恋愛感情みたいなものが芽生え始めていた。
まあまあいい女だけど楽勝で落とせるなと思ってたのに、予想外に手強くてのらりくらりといいようにあしらわれてるって感じだ。そういう時は、よりいい女に見えてきちゃったりするんだよなあ…。で、何が何でも落としてやりたくなって、強引にいって何度もフラれまくるというドツボにハマって💦トッピンシャン。揚げ句、相手の術中に完全にガチ嵌まって翻弄されまくりの恋焦がれ。昔あったなあ…そゆ事。
まあ落としてから逆襲、奈落の底に落としてやったけどさ。あっ、でも別な或る女性には再度地獄に落とされたっけ…。
何れにせよ、何だか心が痛いよ。恋の思い出と云うものは、懐かしく甘美なところもあるが、同時に痛みを伴うものでもある。

モノローグはこれくらいにして、話を本筋に戻そう。
とにかく、ここに通い詰めたところで奇跡でも起きない限りは採れそうにないと思った。だから切り捨てる事にした。この地で今まで充分真摯に戦ってきたではないか。時には名誉ある撤退も必要だ。

改めて文献で近畿地方でシロシタバの採れそうな所を探しまくった。でも記録が多いのはやはり兵庫県北西部で、他は殆んどが偶産と言えるものばかりだった。唯一の場所を除いては。
インターネットの情報だが、そこだけは確実に産していて、個体数もそれなりにいそうな雰囲気だった。
とはいえ、詳しいポイントは分からない。ヒントは町名だけだ。範囲はそれなりに広い。博奕ではある。ポイント探しは、己の経験と勘だけが頼りだ。

 
2018年 8月19日

 

 
このクソ分厚いカツサンド(註2)を購入していると云う事は、四條畷にいるのだ。
桃太郎が鬼ヶ島に行く時の🍡きび団子じゃないが、そんな気分だ。カツサンドで勝つ❗
我、シロシタバ最終作戦に、いざゆかん❗

目的地には午後1時過ぎに着いた。
絵に描いたような青空と入道雲、夏真っ盛りって感じで強烈な光が降り注いでいる。

 

 
こんなに早くに来たのには理由がある。
先ず第一は初めて訪れる場所なので、道と環境をインプットする為である。帰りは夜道を一人で街まで下りなければならない。降り口が分からずに迷ったら地獄だ。ここで夜を明かすとならば、また闇に蠢く魑魅魍魎どもに怯えなければならぬ。チキンハートの男としては、それは是非とも避けたい。
それも大事だが、何よりシロシタバがいそうな環境を昼間のうちに特定しておきたかった。
食樹であるウワミズザクラ(註3)が生えている場所さえ見つかれば、何とかなる。加えて、出来れば昼間のうちに樹液の出る場所も見つけておきたかった。いかにまあまあ天才で(笑)、ここぞと云う時の引きが強かろうとも、現状は惨敗続きなのだ。下調べくらいはしておかないと、またぞろ重い足取りで帰路につかなければならない。おいちゃん、ほぼ背水の陣の状態に追い込まれているのだ。もし又ここでコケたならば、地獄の暗雲ぬかるみ街道爆走になりかねない。

山をあちこち歩き回る。
しかし、ウワミズザクラがワカラン。
一応ネットでウワミズザクラの特徴をアバウトにインプットしてきたものの、ボンクラなので大誤算。花が咲いてるでもなし(普通のサクラ類とは全く花の形が違う)、葉っぱだけでは他のサクラ類と区別がつかんのよ。さすがにソメイヨシノくらいは判別できるものの、他のヤマザクラ類となると何が何だかワカラン(@_@;)❗
やっぱ性格がいい加減で、インプットがゆる過ぎなのである。

成虫の見つけ採りの方もダメ。コシロシタバとオニベニシタバしか見つからん。シロシタバって、あんなにデカイのに何で見つからんのん(ToT)❓
或いは此処も見立て違いで、殆んどいないのかもしれない。(/´△`\)あ~ん、又しても失策かよ。暗黒泥濘怪獣のあんぐり開いた暗い口が見えたような気がした。心がフォースの暗黒面に陥りそうだ。このままでは心がヤバイ。もしも見もしなかったら、怒りの🔥業火で山を焼き尽くしかねないぞ。

もう、形(なり)振りなんて構ってらんない。公園の施設に行って、ウワミズザクラのある場所を訊くことにした。
しかし、スタッフも今イチわかってなくて途方に暮れる。あじゃパー(|| ゜Д゜)

でも捨てる神あれば、拾う神あり。別な施設で尋ねたら、爺さまがウワミズザクラのある場所をピンポイントで教えてくれた。

その場所に行き、やっとウワミズザクラと対面できた。普通のサクラとは幹の感じなんかが全然違う。サクラという概念で探してたら、こんなもん見つからんわい。葉っぱ1つとってもバリエーションや近縁種とのハイブリットがあったりして、植物って同定が難しいなりよ。

葉っぱや幹の木肌などを念入りに脳ミソに記憶させる。葉は裏の葉脈にメリハリが有り、横長の亀甲みたいな柄が目立つ。幹は若い木と老木とでは違うのだろうが、概ね溝があまりなく、灰白色で白っぽい痘痕(あばた)のような斑がある。
3歩あるいたら忘れる鶏アタマゆえ、一応スマホで写真も撮っておいた。

 

 
撮った筈なのにナゼか幹の写真が見つからなかったので、下に京都市左京区で撮ったものを添付しておく。

 

 
一度こういうものだと脳が認識したら、急に見えてきた。多くはないが、ちょこちょことそこかしこにウワミズザクラの木はあるのである。己のポンコツ振りにヘラヘラ笑いになる。網膜に映っていたにも拘わらず、脳には見えていなかったのだ。我ながら、植物を見分ける能力、低っくうー(。>д<)

とにかく食樹を見つけるというミッションはクリアできた。そうなると、急にどんどん良い方向へと転がり始めた。
ここはナラ枯れが激しく、かなりコナラが伐採されてて苦戦していたのだが、森の中まで入って行って、漸く樹液の出ている木も見つけた。カナブンやスズメバチが集まっているから、カトカラが夜間に飛来することは間違いないだろう。ミッション2もクリアだ。

 

 
有り難いことに、周りにウワミズザクラも何本か生えている。これで戦える。もし此処で採れなければ納得もできよう。この場所には居ないと考えていい。この山に固執する必要性も無くなるから、二度と訪れなくとも済む。そう思うと気分は楽になった。これまた良い傾向だ。リラックスすれば、物事も自ずと好転する。引き続き良さげな場所を探査する。

だいぶと日が傾いてきた。時計に目をやると午後4時過ぎだった。
もう一度、樹液の出ている所に戻ることにした。そこで木に止まっている奴を本格的に探そうと思ったのである。あれだけ条件が揃っているのなら、林内にいるんじゃないかと考えたのだ。

うす暗い森の中に足を踏み入れた瞬間だった。

                     つづく

 
追伸
絶不調である。たぶん2ヶ月くらい前から書き始めているけど、全然上手く書けない。何度も書き直している。上手く書けないから色々文章をイジっていたら、徒(いたずら)に長くなるだけで、益々まとまりがつかなくなった。
そう云うワケで、細かく分断して掲載することにした。刻んで刻んで誤魔化し誤魔化しやってるうちに、そのうちキッカケも掴めるだろうと思ったのだ。

 
(註1)その頃は探し回っていたんだね
シンジュサン探しの顛末は、拙ブログに『三日月の女神・紫檀の魁偉』と題して3回にわたって書いた。興味のある方は、そちらの方も読んで下され。

 
(註2)このクソ分厚いカツサンド
スーパー・マーケット、フレスコの名物カツサンド。
これについても拙ブログにて『フレスコのカツサンド』と題して書いた。

 
(註3)ウワミズザクラ
(出展『まったりこたろう』)

 
バラ科ウワミズザクラ属の落葉高木。
学名 Padus grayana。漢字だと上溝桜と書き、和名は古代に亀甲占い(亀卜)をする際、溝を彫った板(波波迦)に、この木が使用された事に由来する。
材は軽くて強い事から建材、彫刻細工、版木、道具の柄などに利用される。香りの良い若い花穂と未熟の実を塩漬にした杏仁子(あんにんご)が新潟県を中心に食用にされている。また、黒く熟した実は果実酒に使われる。

とはいえ、本文ではウワミズザクラで通したが木肌の特徴から近縁種のイヌザクラかもしれない。文中に添付した京都市の幹の画像の葉っぱを確認してみたら、形がイヌザクラっぽい。葉の形が、より細くて先端の形が独特でそれっぽく見える。

 

 
比較のために、改めて四條畷で撮った葉っぱを添付しておこう。

 

 
何れもウワミズザクラ、特に一番下のものはそうだと思うが、間違ってたらゴメンナサイ。。

ネットでウワミズザクラの幹の写真を見たけど、何かシックリいかない。確かにそれ的なものも見受けられるが、異なる画像も多々あるのだ。この四條畷には、ウワミズザクラもイヌザクラも両方自生してるって事なのか❓何だかよくワカンなくなってきたよ。木は若木と老木ではその様相を異にする事が多い。同じ種類の木とは思えないくらいに全然違ってたりするのだ。木肌で樹種を判断するのは素人には難しいですな。