2019’カトカラ2年生 其の1 最終章

 
   No.18 アサマキシタバ(6)

  『深甚なるストレッケリィ』

 
アサマキシタバの解説編の続きである。でもって、今度こそ最終章である。
前回で最終話になる予定が、ドツボに嵌まって💦トッピンシャン。とんでもない大脱線となった。まさか自分でも最初の項目である【学名】で終わるとは夢にも思わなかったよ。

仕切り直しで、アタマからいく。
今度こそ、石塚さんの『世界のカトカラ(註1)』から画像をパクリまくりである。石塚さん、いつもスイマセン。

 
【アサマキシタバ ♂】

 
【同♀】

 
【♂の裏面】

【♀の裏面】

 
今回、♀の裏面の画像を差し替えた。でも同じ個体です。触角が見やすいようにとマチ針を外したのだ。
オスとメスは一見して、かなり見た目が違うのだが、それについては後ほど別項を設けて書きます。

 
【分類】
ヤガ科 Noctuidae
シタバガ亜科 Catocalinae
カトカラ(シタガバ)属 Catocala

 
【学名】
Catocala streckeri staudinger,1888

学名の属名 Catocala の語源は、ギリシャ語の kato(下、下の)と kalos(美しい)を組み合わせた造語。つまり、後翅が美しい蛾ということだね。
小種名 streckeri の語源は、おそらくアメリカの昆虫学者ハーマン・ストレッカーに献名されたものだろう。詳しくは前回を参照されたし。

 
【和名】
アサマキシタバの後半部分の「キシタバ」は、下翅が黄色いシタバガの仲間と云うこと。カトカラ(シタバガ)属の中で、このキシタバと名の付くものは下翅が黄色いグループに含まれる。
前半部分の「アサマ」は、たぶん長野県と群馬県とに跨がる浅間山に因んだものだろう。
蝶にもアサマイチモンシ、アサマシジミってのがいて、由来は最初に浅間山周辺で採集されたからだ。たぶん同じようなもんっしょ。とはいえ、浅間山ならぬ浅間さんが最初に見つけたからだったりして…。
何か冒頭から雑いよなあ。きっと文章を書くのに疲れておるのだ。気を取り直して、前へと進めよう。

 
【亜種】
調べた範囲では、亜種は特に記載されていないようだ。
タイプ産地は、おそらくアムールとか沿海州(ロシア南東部)だろう。この辺りの産地と朝鮮半島のものがわりと下翅の黒帯が細く、黄色い部分が広いような気がする。

 


(出典 2点共『世界のカトカラ』)

 
上が韓国産で、下がロシア産である。
見た目の印象が結構違う。黒っぽい日本のものよりも、キレイだ。
とはいえ、傾向があると云うだけで亜種区分する程のものではないのだろう。
でもググってると、他にも韓国産のアサマキシタバの画像が出てきた。

 


(出典 2点共『www.jpmoth.org』)

 
う〜ん、こんだけ黄色いのが続くと考えちゃうなあ…。
もし分けるとなると、日本の黒っぽいモノの方が別亜種になるんだろね。どこにも誰もそんな事は書いてないけど、黄色いのと日本のような黒っぽいヤツとは大陸では連続的に分布していて、厳密的には線引き出来ないのかもしれない。そうゆう事にしておこっと。

その後、日本の分布について調べてたら、増井武彦氏の『四国の蛾の分布資料(Ⅷ) オオシロシタバとアサマキシタバの発見(註2)』と云う論文に以下のような記述を見つけた。

「5月下旬に本種の1♀を採集することができた。得られた個体は開張55mmでやや大型であり、コガタキシタバを連想させるほど後翅の黄色帯は濃く、やや中部以北産の個体とは趣を異にしている。」

四国のアサマは他と違ってるのか…❓
それで思い出した。そういえば愛媛産のアサマキシタバも、そんな感じだったような気がするぞ。

 

(出典『南四国の蛾』)

 
やはり、黄色い。
でもなあ…個体差もあるしなあ…。明確には分けれないんだろなあ…。
下手に触れればロクな事がない。一々、疑問を持つからドツボにハマり、文章が長くなるのだ。個体差があって。厳密的には分けれない。やっぱり、そうゆう事にしておこっと。

亜種はいないが、ヨーロッパに小型の近縁種がいるもようだ。

 
【Catocala euychea Treitschke,1835】


(出典『世界のカトカラ』)

 
翅の斑紋がアサマとは全然違うけど、♂の交尾器の構造が似通っているそうだ。
地中海周辺から西アジアに分布し、和名にギリシャキシタバの名がある。

一応、カトカラのDNA解析の系統図を見たら、予想外のウスイロキシタバ(Catocala intacta)のクラスターに入れられていた。系統図からは、かなり近縁な関係に見受けられる。

 

(出典『Molecular Phylogeny of Japanese Catocala Moths Based on Nucleotide Sequences of the Mitochondrial ND5 Gene』)

 
とはいえ、DNA解析の結果が100%正しいかどうかは疑問なところもある。本能的に違うんじゃないかと思う解析結果も珠にあるのだ。全く違う系統の種が何らかの収斂の結果(例えばカタツムリ食のオサムシ)、互いに見た目が似通うってことはあるのは理解できる。でもそれとは違う、もっと本能的な違和感を珠に感じるのだ。
とにかく、解析のやり方によっては違う結果が出ることもあるだろう。だから結果を鵜呑みにはしないようにしている。
まあ将来的には検査方法が確立されて精度も高まるだろうから、信頼できるに足るようなものにはなってくんだろうけどさ…。
きっと、オラって肉眼で見えてるものしか信じない旧いタイプの人なんだろね。でも肉眼で区別できないものを分類するのって、はたして必要なのかな?全く不必要だとは言わないが、そんなのまで図鑑に載せ始めたら、混乱するだけだろ。いたずらに細分化するのって、疑問を感じるよ。

記事をアップ後、カトカラの世界的研究者である石塚勝己さんからDNA解析の結果について御指摘があった。折角だから載せておきます。

『引用されているDNA系統樹は、新川さんにやっていただいたミトコンドリアND5をMLで処理したものです。これでアサマとウスイロが近縁と判断するのは誤りです。ここで類縁が指摘されているのはワモンとキララ、オオシロとcerogama、ムラサキとrelicatだけです。そのほかのものは類縁関係は判断できません。おそらくミトコンドリアND5の解析ではカトカラの系統を推定するのは無理なのだと思います。😀』

また、補足のコメントもござった。

『遺伝子解析は有力なデータの一つです。その解析結果をどう解釈するかが問題だとおもいます。』

石塚さんが言ってるんだから、これについては何ら反論は無い。んな事よりも、DNA解析って何なん❓益々、信用でけへんわ。蝶かて、どーよ❓って感じ。サトウラギンとかヤマウラギンとか無視だな。

 
【シノニム(同物異名)】
Ephesia strecceri Hampson, 1913

これは属名が、Ephesiaからcatocalaに変更になったからだろう。
Ephesiaという属名は古い属名で、リンネが鱗翅目を分類した時に命名した4つの属のうちの一つである。

あっ、小種名は字面が似ているから同じ「streckeri」かと思いきや、よく見ると綴りが違うや(・o・)
違うけど、ここは掘り下げないようにしよう。もうウンザリなのだ。こんなの、どうせミスプリントだ。これ以上、迷宮を彷徨うのは御免だ。また前回の学名の項みたくなりたくない。

 
【変異・異常型】
アサマは上翅斑紋が不明瞭なものが多いが、柄にメリハリがあるものもいるようだ。

 

(出典『世界のカトカラ』)

 
他には、稀に後翅の中央黒帯が細まるものや、ほぼ消失する異常型などが知られているそうな。
たぶん、↙こうゆう型のことだろう。

 


(出典 2点共『世界のカトカラ』)

 
岸田先生の『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ(註3)』にも異常型が載っていた。

 

(出典 岸田泰則『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』学研)

 
(・・;んっ❓ 何か違和感を感じた。
触角や後脚が違うが、斑紋は全く同じに見える。
もし見当違いならゴメンなさいです。もしかしてコレって同個体で、展翅をやり直しただけなんじゃないのか❓
どっちが再展翅したモノなのかはワカンナイけど、まあ岸田先生と石塚さんは懇意にされてるみたいだから、そうゆう標本の貸し借りみたいな事はよくあるのだろう。勝手な推測だけど。

 
【開張(mm)】
『原色日本産蛾類図鑑Ⅱ』では、52〜54mm。『日本産蛾類標準図鑑』では、47〜54mm内外となっていた。

日本のカトカラの中では、やや小さい部類に入るだろう。

 
【雌雄の判別】
カトカラは基本的に雌雄同型の斑紋なので、雌雄の判別には慣れが必要である。一応、参考までにアサマキシタバの雌雄の判別法を自分なりに書いておきます。

①同定をする場合、先ずは裏返して尻先と産卵管の有無を確認しましょう。その2つが有れば、間違いなくメスです。

 

 
黄色いのが、おそらく産卵管だろう。
以下、確認されたし(画像はピンチアウトすると拡大できます)。

 

 
一方、オスはこんな感じ。

 

  
一見してオスは毛束が多く、スリットは認められない。
 
補足事項として、以下のような雌雄の特徴が傾向として見受けられる。

②オスは腹部が細くて長い。反対にメスは太くて短いものが多い。また、尻先も丸くなる傾向がある。

③オスは尻先に毛束がある。メスも無くはないが、その量は遥かに少ない。

④オスは前脚(第1脚)と後脚(第3脚)が多くの毛に覆われ、モフモフである。特に新鮮な個体ではコレが顕著である。対するメスは毛があるにはあるが、オスよりも明らかに少なく、モフモフ度は低い。

 
(オスの前脚)

 
(メスの前脚)

 
横からの画像も加えておこう。

(オス)

  
前脚だけでなく、後脚なんかもモフモフなのだ。

 
(メス)

 
但し、この判別法は新鮮な個体に限る。飛び古した個体は体毛が抜け落ちるからだ。

④相対的にメスの方が翅に丸みがある。バランスは横長で、胴体の太さも相俟ってか、ずんぐりむっくりな印象を受ける。それと比して、オスは全体的に細くてシャープに見える。

⑤触角は比較的オスの方が長い傾向にある。

これらは上の画像や冒頭の展翅画像でも確認できる。
但し、補足の②〜⑤の各項には例外もあるので、これらを総合的に鑑みて同定することが必要だろう。

 
【分布】
北海道、本州、四国、九州、対馬。

本種は、杉(1971)によれば、内陸準乾燥地を好む蛾であり、ミズナラ帯にも進入しているので、中部以北、北海道まで広く産する。ところが、近畿以西の西南日本では、マメキシタバと同様に低標高地で発見されているのが特徴である。
たしかに近畿地方では低山地に多い。『世界のカトカラ』には「一般にあまり多くないが、場所によっては多産する。」とあったが、近畿では広く分布していて、何処にでもいると云った印象がある。一瞬、暖帯を好む種なのかと思ったが、九州地方では稀なので、それは考えられない。となると、幼虫の食樹の分布と関係があるのかもしれない。近畿地方では冷温帯に好んで生えるミズナラが少なく、幼虫は主に低山地に生えるクヌギ、コナラ、アベマキ、ナラガシワ、アラカシ、ウバメガシを食樹として利用しているからなのかもしれない。

わかり易いように分布図を貼り付けとこっと。

 

(出典『日本のCatocala(註4)』)

 

(出典『世界のカトカラ』)

 
因みに、三重県が空白になっているが、ネットで見ると三重県北部での採集記録がある。また、茨城県太子町、東京都武蔵村山市、千葉県市川市でも見つかっているようだ。

四国では1978年に増井武彦氏によって香川県で初めて分布が確認され、極めて珍しいものだった。しかし近年になって各地で個体数を増やしており、今では四国全県で見られるという。
記録を拾うと、香川県さぬき市前山、高松市藤尾神社、丸亀市。徳島県八方町(文化の森は総合公園)。愛媛県西条市、松山市。高知県いの(伊野)町などがあった。

中国地方でも従来は少ないとされてきたが、近年は増えつつあるようで、『世界のカトカラ』の分布図では空白になっている島根県でも発見され、現在は全県に記録がある。記録が拾えた産地を列挙しておく。
岡山県美作市、奥矢津。広島県宮島市、広島市東区。鳥取県日野郡。島根県太田市三瓶町。山口県秋吉台、小野田市。

九州では長らく分布しないとされてきたが、2006年に大分県深耶馬溪、釈迦ヶ岳で見つかった。その後、同じく大分県九酔渓、佐賀県作礼山、福岡県北九州市平尾台、長崎県対馬でも分布が確認されている。

国外では、アムール、朝鮮半島、中国東北部に分布している。

 
【レッドデータブック】
以下の都道府県が稀少種に指定しているようだ。

滋賀県:絶滅危機増大種
兵庫県:Cランク(少ない種・特殊環境の種など)
香川県:準絶滅危惧種

わりと居るとされる近畿地方なのに、2県もランクされているじゃないか。兵庫県なんぞは、淡路島から県中部に広く記録があるのに、なして(・ ・)❓
やっぱレッドデータブックって、トンチンカンなとこあるワ。幼虫の食樹はクヌギなどありふれたものなので、そないに減っているものではないだろう。とはいえ、里山の雑木林は放置されてるから将来的にはわからないけど。

 
【成虫出現期】
日本のカトカラの中では、最も早くに現れる。
ネットの『みんなで作る日本産蛾類図鑑』では、5E-7(5月終わりから7月)となっているが、『世界のカトカラ』や『日本産蛾類標準図鑑』では5月中旬から現れ、8月中旬頃まで見られるとある。
近畿地方では、5月中旬頃から現れ、6月中旬には殆んど姿を消す。西日本だと何処でも概ねそんな感じだろう。他のカトカラと比べて発生期間が短いように思う。それと比べて図鑑の発生期が長いのは、たぶん東日本では標高が高かったり、寒冷地であったりして、低山地と比べて発生が遅れる地域があるからだろう。
憶測で言うのも何なんで、一応調べとくか…。

西尾規孝氏の『日本のCatocala』によると、「長野県の温暖な地域では5月下旬から、低山地では6月上、中旬から下旬、標高1000m付近のミズナラやカシワ林では6月中旬から7月上旬に出現する。」とあった。予想通りでおましたな。
ついでに北海道も調べたけど、今一つハッキリとした資料は見つけられなかった。しかし、ネットに7月に撮られた写真が載ってて、かなり新鮮な個体だった。なので、おそらく6月下旬から7月上旬に現れるものと思われる。
また『日本のCatocala』では、出現ピークは1週間から10日。寿命は2、3週間と書いてあった。実際、2020年に生駒山地に樹液採集に行った折は、そんなもんだった。最初に行ったのが5月24日で、この日は新鮮な個体ばかりだった。たぶん発生初期だったかと思われる。しかし、16日後の6月9日に行った時は1頭たりとも見なかった。勿論、全く同じ場所である。つまり、たった16日で消えてしまったと云うことだ。そこから類推すると、発生期間はやはりて2週間から3週間と云うことになる。多くのカトカラの寿命が2、3ヶ月だから、極めて短い。
これは、いったい何を意味するのだろう❓
考えられるとすれば、交尾、産卵するまでの間が極めて短く、羽化後すぐに交尾、産卵するという事だろう。多くのカトカラがメスの卵巣が成熟するまでに時間を要するそうだから、これもカトカラの中では異例と言えるだろう。

 
【成虫の生態】
かつては珍品だったようだが、生態が解明されてからは普通種に成り下がったと書いてあるのを各所で見た。けど、何れも具体的な理由については言及されていなかった。おそらく灯火採集よりも樹液採集の方が得やすいと分かったからだろう。あとは、昔は個体数が少なかった可能性も考えられる。また或いは、カトカラに興味を持つものが当時は少なかったと云うのも可能性としてはあるだろう。誰もが、その珍しいと云う記述を鵜呑みにして疑問を持たなかった事は充分考えられるからだ。

灯火にも樹液にも、よく集まるとされる。
しかし個人的には、その時期にライトトラップをした事が無いので、外灯に来たのを1頭くらいしか見たことがない。
但し、時に大発生し、その時は外灯に多数が集まるようだ。長野県では1981年前後と1999年、2005年から2007年にかけて大発生したそうだ。カトカラ2年生のワシは知らんけど、近畿地方でも2015年前後に大発生して、大阪市内や神戸、西宮、宝塚などの市街地、果ては関西空港でも灯下に集まるものが多く見られたという。大阪市内に良好な発生地があるとは思えないから、飛翔力は、それなりに有りそうだね。ちょっと待て。となると、生駒山地で16日後に消えたのは、移動した事も考えられるな。とは言っても、やはり寿命は短いものと思われる。

灯火への飛来時刻は、調べたが明確な答えは見つけられなかった。参考までに言い添えておくと、近畿地方の大発生の時は、日没後、時間帯に関係なく現れたようだ。そんなに珍しい種類ではないので、あまり注視されてなくて、言及もされないのだろう。

ちょっと面白いのは、多くの昆虫が大発生した翌年には大幅に減少するのに対し、連続で大発生することもあると云う点だ。関西でも翌年も結構いたそうだ。
大発生した者の多くが翌年に減少するのは、それに呼応して天敵も増えるからだと言われている。例えばオニベニシタバが大発生した時は、それに連れて卵に寄生する天敵のトビコバチの1種も増えたそうだ。そういえばマイマイガが大量発生した時は、普段は少ない天敵クロカタビロオサムシも大発生したもんな。

樹液には日没後、比較的早くに集まって来る。午後9時前後に飛来が一旦止まり、10時過ぎくらいからポツポツ飛んできて11時から0時にかけてまた飛来数が増えると云う日が多かった。とはいえ、日没後から間もない方が飛来数は多いと云う印象が強い。
しかし、2020年は日没後7時台に数頭飛んできて、飛来がピタリと止まり、9時台になって活性化した。その後、11時まで継続して飛んで来た(11時以降は帰ったので分からない)。たぶん、その日の微妙な気候条件によっても左右されるのだろう。

糖蜜トラップにも飛来する。
2020年に1回だけしか試した事はないが、最初はフル無視されて、樹液にしか反応しなかった。しかし、なぜか10時台になって急に反応し始め、帰った11時までに6例の飛来があった。

樹液の他に、花にも吸蜜に集まる。記録されている花はヤマウルシ、イボタ、カキ(柿)、ウツギ、クリ。
また熟したクワの実やアブラムシの分泌物にも吸汁に訪れるようだ。

成虫は昼間は頭を下にしてクヌギやコナラなどに静止していると言うが、真面目に探した事がないので見たことはない。
驚いて飛び立つと、上向きに着地して直ぐに下向きに素早く姿勢を変えるという。他のカトカラは着地後、暫くしてから向きを変えるものが多いと云うイメージがあるから、ちょっと変わってるかもしれない。

交尾行動も変わっていて『日本のCatocala』によれば、交尾は樹液近くのクヌギの葉裏で観察されている。多くのカトカラが樹幹で交尾するから、これも特異と言っていいだろう。時間帯は午後11時から深夜2時。ブナ科コナラ属を食樹とするカトカラの多くが日没後、比較的早い時間帯に交尾が観察されているから、これも特異かもしれない。但し、野外でカトカラの交尾が観察されることは稀だから、今後、新しい知見がもたらされて覆される可能性はある。
♀腹部内にある交尾曩の精包数から交尾は複数回行われているようだ。

同じく『日本のCatocala』に拠れば、産卵習性も特異だ。
日没後、メス親は食樹であるナラ類の周辺を飛翔し、樹幹に着地する。その後、歩行して枯れた枝にできたカミキリムシやキクイムシがあけた孔に数10卵を産み、更に入口を分泌物で塞ぐそうだ。したがって卵期にはトビコバチなどの天敵は今のところ見当たらないという。また産卵習性が他のカトカラとは異なることが、大発生時の消長の特異性に関わっているかもしれないと書かれている。なるほどね。
西尾氏の観察力は凄いや。よくぞこんな事まで調べたなと思う。真似できない凄い方です。そうゆうワケで、ここから先も西尾氏の『日本のCatocala』に頼りっきりで書く。

 
【幼虫の食餌植物】
ブナ科コナラ属のクヌギ、コナラ、アベマキ、ミズナラ、アラカシ。
西尾氏は、この他にカシワ、ナラガシワ、ウバメガシを加えておられる。
低山地に生息するものはクヌギ、コナラ、アベマキ、アラカシなどを、1000m付近の山地に生息しているものはミズナラを利用しているものと思われる。北海道にはクヌギ、アベマキ、アラカシ、ナラガシワ、ウバメガシは自生しておらず、コナラも極めて稀なので、おそらく低地ではカシワ、山地ではミズナラを利用しているものと考えられる。

 
【幼生期の生態】
幼生期については全くのド素人ゆえ、毎度の事だが今回も西尾氏の『日本のCatocala』の力を全面的にお借りする。

卵はカミキリムシのあけた孔に纏めて産まれ、互いが分泌液で接着されている。

 
(卵)


(出典『日本のCatocala』)

まんじゅう型で扁平、他種よりも小さい。卵殻は柔らかく、色は黄白色。
これには驚いた。およそカトカラの卵には見えない。こんな色のツンツルテンの卵は他に類を見ないのだ。カトカラの卵といえば、大体こんな感じだもんね。↙

 


(以上4点共 出典『日本のCatocala』)

上からマメキシタバ、フシキキシタバ、オニベニシタバ、ムラサキシタバである。因みにマメとフシキ、オニベニはアサマと同じく食樹はナラ類である。
とにかく、大概の卵はこんな風に基本は溝付きなんである。それに色も殆んどは淡褐色とか暗褐色だ。こんな目立つ色の卵は他にないのだ。これについて西尾氏は、「卵に対する捕食もしくは寄生などの圧力が殆んどかからず、卵の色彩が隠蔽的になるような進化が起きなかった結果と考えられる。」と推察されておられる。
時に連続的に複数年の大発生が見られるのは、或いはこれが原因なのかもしれない。つまり、あまり発生数が天敵に左右されない可能性があるってことだ。
卵塊で産卵されるのも珍しいようだ。飼育下での話だが、他に卵塊性産卵をすると考えられる種は、カバフキシタバとコガタキシタバくらいらしい。

幼虫は5齢を経て、蛹になる。

 
(終齢幼虫)

(出典『明石の蛾達』)

 

(出典『青森の蝶たち』)

 

(出典『フォト蔵』)

 


(出典『日本のCatocala』)

 
野外の幼虫の色彩変異はやや有り、白粉で覆われるために分かりにくいが、著しく白化したものから色彩のコントラストが激しいものまで連続的に変異が見られる。
幼虫は樹齢15〜40年の壮齢木によく付き、卵塊産卵性があるために1本の木から複数の幼虫が見つかることも少なくないという。
若齡幼虫は日中、葉裏に静止している。終齢幼虫になると、細い枝から太い枝や樹幹に降りてくる。しかし、樹幹にまで降りてくる個体はあまり多くない。

 

 
終齢幼虫の体長は約55mm。頭幅は淡色のものが平均3.4mm。黒っぽいものが平均3.2mmと差異が認められるそうだ。

 
(幼虫の頭部)

(出典『日本のCatocala』)

 
各種カトカラの幼虫の識別は、この頭部の斑紋や色彩が重要な手がかりとなるようだ。

蛹化場所も特異で、他のカトカラが落葉の下など地表部なのに対して、食樹上の葉の重なり合った部分から容易に発見されるという。但し、北海道ではカシワ林の落葉の下から蛹が見つかっている(小木,2002)。
繭の構造も特異で、他のカトカラが1重の粗末な作りなのに対し、丈夫な2重構造になっている。西尾氏は、これと樹上での営繭との関連を示唆されておられる。ようは樹上の方が風雨に晒され、気温の変化も激しいから、それに耐えうるために二重構造となったと云うワケだね。

 
(繭と蛹)


(出典 4点共『日本のCatocala』)

 
下2点が葉っぱを開いたものである。
更に繭を破ると、こんな感じ。↙

 


(出典2点共『明石の蛾達』)

 
アサマキシタバって、カトカラの常識を逸脱している事だらけで面白い。地味なカトカラだし、小馬鹿にしていたが、甚だしく奥深きカトカラなんだね。

                        おしまい

 
追伸
やっと終わりました。
アサマキシタバなんぞに、まさかの六章も費やすとは夢にも思わなかったよ。あの美しき女王、ムラサキシタバの連載だって五章までだったのだ。全くの想定外だったよ。でも調べていくうちに面白くなってきてしまった。アサマって小汚いし、あまり興味がなかったけど、どんだけ変わり者やねん。あんた、メッチャおもろいやんけ。人と同じで、見た目だけで判断しちゃダメだね。

前回にも触れたが、この解説編と第一章は3月にはほぼ出来上がっていた。しかし、触角の件と生態面で確認したい事があって暫く寝かしておくこたにした。それが、再度書き始めると、何だかんだとドえりゃー長くなってしまった。この解説編も、かなり加筆する事になった。次回はすんなり終わることを願おう。

 
(註1)世界のカトカラ

カトカラの世界的研究者である石塚勝己さんのカトカラ入門書にして、全世界のカトカラをほぼ網羅した図説。出版元は『(有)むし社』。

 
(註2)『四国の蛾の分布資料(Ⅷ)』
「蝶と蛾」vol.30 No.1&2 1979年

 
(註3)『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』

日本蛾類学会の会長でもある岸田泰則先生編著の、日本の蛾類について最も詳しく書かれた図鑑。全4巻からなる。

 
(註4)『日本のCatocala』

2009年に西尾規孝氏により自費出版された。
日本のカトカラに於いては、圧倒的に最も信頼できる文献。日本のカトカラについて全ての面に於いて西尾氏の高い観察眼が発揮されている。幼生期の生態解明を筆頭に、よくぞここまで調べれられたなと思う。驚嘆せざるおえない。
しかし、自費出版なので目に触れる機会は少ない。しかも一冊8万円くらいなので、手が中々出せない代物。誰か発言力のある偉い人が、どっかの出版社に働きかけて廉価版を出してくんないかなあ。このまま蛾の愛好家の人たちの目に滅多に触れられないなんて勿体ないと思うんだよね。

 

2019’カトカラ2年生 其の1第四章

 
  vol.18 アサマキシタバ(4)

  『ゲシュタルト崩壊』

 

翌朝、展翅しようとしてみて驚いた。
アンモニア注射した最初の1頭以外の全員が、蘇生していらっしゃったのだ。一瞬、墓から一斉にゾンビの如く這い出してくるアサマちゃん軍団の映像が浮かんだよ。
それはもう皆さん、元気、元気。毒瓶に少々ブチ込んだぐらいでは簡単には死なんのだ。恐るべき生命力である。

もう1回、1匹1匹ブチ殺すのも何か気が進まないので、そのまま2日間くらい放置していた。だが、それでもまだお元気でいらっしゃった。段々、不憫に思えてきて、逃してやりたい衝動に駆られそうになったので、全員アウシュビッツ送り。冷凍庫にブチ込んでやった。結局は悪魔の如き所業、虐殺なのである。酷いもんだ。虫屋は死んだら、全員すべからく地獄行きだな。

翌日、冷凍死体安置所から取り出し、遺体解凍を行なう。書いてて、やってる事が変態サイコ野郎だなと思う。やはり虫屋は間違いなく、全員すべからく地獄行きだな。

合掌してから展翅し始める。
しかし、憐憫の情はここまで。死んだもんは、物に過ぎない。(ΦωΦ)フフフ…、これでオスとメスの触角の長さの違いの有無が明らかになるじゃろう。

先ずはオスから。

【アサマキシタバ Catocala streckeri ♂】

(2020.5.24 大阪府東大阪市 枚岡。以下同所)

取り敢えず、触角は自然な感じに仕上げた。
しかし、展翅した後に気づく。今回は触角の長さが重要なのだ。出来るだけ真っ直ぐに伸ばしといた方が比べ易いかもしれん。

で、頑張ってみたのだが、先っちょの湾曲が直せずにどうしても完全に真っ直ぐにはならない。カトカラって生きてる時は触角が真っ直ぐなのに、何で死んだら曲がっちゃうんだろ❓ マジ、面倒くさいわ。

で、頑張り過ぎた結果、右の触角の根元が折れた(TOT)❗
カトカラの触角って細いから、すぐ切れよる。(`Д´#)ムキーッ、いまいましいざんす。
まっ、いっか。触角の長さを比べるにあたって、これくらいなら問題なさそうだ。

♂は3頭いずれも触角が長いねぇ。
目の悪い人は画像をピンチアウトして拡大してネ。

裏展翅したものも貼り付けておこう。

【♂裏面】

♂は前脚がモフモフだね。何かウサギの頬っぺみたいに見えて、ちょっと笑っちゃったよ。
今回、♂は4頭しか採れなかったのて、補足として去年に採った♂個体も幾つか並べておこう。


(2019.5月 奈良県大和郡山市矢田丘陵。以下同所)

右側の触角を見て少し短いかもと思ったが、左側を見ると矢張り長いね。
関係ないけど、♂はモフモフの前脚を思っきし出した方が邪悪度が増して好きかもしんない。

先端の細い部分が湾曲していて少し分かりづらいが、これまた長い。
最初の個体も同様だが、触角は上反りしている方が邪悪な感じがして好きかも。いや、真っ直ぐな方がいいか…。触角の調整の在り方は今でも悩みの種だ。どれが正しいのか、しょっちゅうワカンなくなる。嗚呼、もー。結局、また触角迷宮に迷い込んどるがな。

これまた先が細くて分かりづらいが、コヤツも長い。
以下、酷い展翅だが貼付しておく。

一番下の個体は左側の触角の先が切れているが、右側は切れてないから充分長いでしょう。分かりにくいから、画像を拡大してネ。
アサマの触角の先って、特別に細くねえか❓少なくとも♂はそんな気がする。他のカトカラと比べてないから、断言するのは危険だけどさ。
否、そんなわきゃないか❓早くも混乱が始まってる感じだな。

ともあれ、こうして去年の♂を並べてみても、矢張り♂の触角は長いと云う印象が強い。

さてさて、ここからが本番だ。
続いて、課題だったメスの展翅を始めよう。去年、もしかして♀の触角は♂よか短くね❓と感じた事から端を発した疑問なのだが、メスのサンプルが2、3頭とあまりにも少なかったゆえ、解決には至らなかったのだ。
その疑問の答えが、いよいよ出る。ちょいと💞ドキドキだ。

【アサマキシタバ Catocala streckeri ♀】

(゜o゜;あっ❗、短いかも。
ちなみに右触角の先は見た目よりも、もう少し長くて白いゴミの所で上に湾曲してます。そのままだとマチ針が邪魔して見えにくいので、画像を拡大してみて下され。

でも1頭じゃ、まだ何とも言えないよね。お次はどうだろ❓

これまた短いような気がするぞ。しかし、まだまだ断言は出来ない。更に展翅を続ける。

ここから先は前のスマホで撮った画像を Bluetoothで転送したものだ。最近になってスマホを買い替えたのだが、勝手に画像修整しよるのだ。上の2頭は本当はこんなに黄色くはない。もしも、こんだけ黄色ければ、カトカラ・カーストにおいて、もっと上位にランクされてもいい筈だもんね。カトカラ内におけるアサマちゃんの人気は高くないのだ。

短い。
いやはや、こりゃ♀は♂と比べて絶対に短いぞ❗
待て待て、まだたった3頭だ。検証の数としては少ない。落ち着いて次の個体へとかかる。

ハイ、これもそうだね。
さあ、どんどん行くぞ。

なぜか、どうやっても触角が真っ直ぐにならなかったけど、コレも長いとは言えないだろう。

さっきは触角の調整がままならなかったので、ムカツときた。だから、次は鬼のごたる気持ちで真っ直ぐにしてやっただよ。しかも、早くも遊び心が出て、如何にも蝶屋的な触角の角度にしてやったわい(笑)
こんだけ真っ直ぐにしてやっても短いんだから、そろそろワシの仮説の証明も現実味を帯びてきたんじゃねーの❓
へへへ( ̄ー ̄)、ゴールは近い。

さあ♀は、あと2つだ。ここは完全勝利のパーフェクトゲームといこうじゃないか。
それはちょっと言い過ぎか。もとい。完封勝利といこうじゃないか。

(・o・)へっ❓、コレって長くねえか❓
(゜o゜;えっ❗❓、(☉。☉)えっ❗❓、\(°o°)/えぇーっ❓❗
慌てて、オスの触角と見比べてみる。

(ー_ー;)微妙だなあ…。確認の為に何度も見比べる。
たぶん♂の方が長い。…ような気がする。
でも見れば見るほど微妙な気がしてきて、段々ワケがワカラナクなってきた。いよいよ、ゲシュタルト崩壊の始まりである。きっと脳がパニックを起こして、判定を拒否しておるのだ。

ここは一旦、冷静になろう。
因みに、この個体の右触角は最初から無かった。そうゆうのも何だかミステリアスだ。それって、これからを暗示する何かのメタファー❓

( ゚д゚)ハッ❗、待てよ。
腹が長いし、もしかしてオスの間違い❓ オデって、てーげーな性格だから有り得るぞっ。
そういえば、展翅前に撮った写真があった筈だ。それ見りゃ、オスかメスかが確実に分かる筈だ。

(@_@)れれれれ…❓、どっちだ❗❓
メスにしては腹が長い気がするし、オスにしては短くて腹太のような気がするぞ。
どうぞ、オスであってくんなまし。オスなら触角が長くとも何ら問題なしなんだもーん。

でも、よく見ると腹先が♂っぽくないような…(詳細は後術するが、尻先から産卵管らしきものが出ている)。

ガビ━━━━Σ(゚Д゚))━━━━ン❗❗

ならば、メスだ。
それに前脚も後脚も♂みたくはモフモフじゃないぞ。
メスであれば、メスなのに触角は間違いなく長いじゃないか。
パタッ(ο_ _)ο=З、死んだ。イガ仮説、崩壊。

そうだ❗、オスの写真も撮ってあった筈だぞ。ソイツと比べてみよう。判断はそれからだ。(ノ`Д´)ノまだ死ねん。

(@_@)アチャー、触角の長さは殆んど変わらん。
何度も見比べるが、そうとしか思えん。このままだとゲシュタルト崩壊が止まらなさそうなので、ブレイクアウト。煙草でも吸うことにした。

ぷはぁ〜(-。-)y-゜゜゜
何だかパーフェクトゲーム直前で、センター前にヒットを打たれたみたいな気分だ。
いんや、まだゲームは終わってない。ゲシュタルト崩壊、何するものぞっ❗

落ち着くために、取り敢えず先に最後の8頭目を裏展翅しよう。

【♀裏面】

♀の前脚は、あんまりモフモフじゃないね。これは雌雄を区別する条件の一つと言っていいだろう。

どれどれ触角はどうだ?
見た感じ、それほど短くはないが、♂と比べると矢張り、やや短い。例外はあるものの、これで雌雄の触角の長さに差異がことを、ある程度は証明できたような気がする。とはいいつつも、何となく引っ掛かるものがある。
なので、去年に採った♀と他の展翅前画像も並べてみることにした。
先ずは去年の♀からだ。

2つとも、どう考えても短いよね。まあ、キッカケになった者たちなんだから、知ってて当たり前なんたけどさ。
これだけ条件が揃ってくれば、そうゆう傾向はあるって言ってもいいんじゃね❓
再び乗ってきたところで、次は残った今年の展翅前画像だ。

腹の形や脚のモフモフ度、触角の長さから、これが♂だよね。
w(°o°)wあっ❗ここで気づく。
さっきの♂だと思って貼付した画像は♀だわさ。♂と♀とでは腹の形が違うのだが、あの画像は腹部の横の影のせいで♂に見えたのだ。

その件(くだん)の画像を明るくしてみよう。

ほらね。完全にメスだわさ。
何だか九回裏、パーフェクト目前でレフトのポール際に大ファールを打たれた気分だよ。いや、ホームランの判定が覆ったと言った方がいいか?とにかく首の皮一枚つながったって感じだ。

よっしゃ、試合再開だ。改めてさっき貼付した♂の画像に戻って、触角を見てみよう。

(ー_ー;)……。長いっちゃ長いけど、触角が前にせり出しているので今イチわからない。
ならば、他の♂画像を確認してみよう。

先程の個体は、やや微妙なところもあったが、コレは明らかに♂だろう。腹の形は勿論のこと、前脚と後脚が超モフモフだしさ。

触角はというと…。
かなり長い。長いんだけど、オスと間違えたメスや触角が片方しかないメスとあまり大差ないようにも見える。いや、少し長いか?

しゃあない、次を見てみよう。

左はまだしも、右の触角は角度的に全く参考にならん。使えん。えーい、次だ。

しかし、探しても無い。どうやらこの3個体しか写真を撮っていないようだ。ならばと、去年の画像も探したが、これまた無い。
もわ〜っ(;゚∀゚)=3、イガちゃん仮説に又しても暗雲が垂れ込める。

仕方ない。他の♀からのアプローチを試みよう。

短いね。
それはさておき、この写真を見るとアサマキシタバの触角は先っぽの方が白っぽくなってるのがよくワカル。印象としては特に♀に、こういうのが多いような気がするが、印象なのでハッキリとは断言できないけど…。
おそらく、この白くなるのは触角の上面かと思われる。裏返すと、大体が先まで黒く見えるからだ。つまり下面は黒いってことだ。それらの画像は面倒なので貼り付けないが、気になる方は前回の章で確認されたし。

あと気づいたのは横からでも産卵管らしきものが見えることだ。腹端から少し飛び出ている(以下の画像でも拡大すれば、それとなく確認できる)。

一見これも短く見えるが、こんなに丸まってると何とも言えない。しかも触角が前向きだから、益々ワカラン。またゲシュタルト崩壊が始まりそうな予感がするよ。

コレもパターンは同じだ。
試しに想像力を働かせて、必死に頭の中で触角を真っ直ぐに伸ばしてみる。アホだ。そんな事が出来るワケがない。たとえ出来たとしても、それじゃ何ら科学的根拠は示せない。つくづく、おバカさんだよ。厳密にはゲシュタルト崩壊ではないけれど、また新たなパターンの脳ミソ崩壊が始まったよ。ぽてちーん\(◎o◎)/

話は逸れるが、こうしてメスの前脚をいくつか見てると、やはり♀のお手手はモフ度が低いわ。

コヤツも前向き触角になってもうとる。先っちょも丸まっとるしなあ…。それでも全体的に何となく♀の方が短いような気もしないでもないが、何とも言えないというのが正直な気持ちだ。
もうこうなれば、1個1個の触角を外して軟化させ、真っ直ぐに伸ばしてノギスで計測するしかないだろう。加えて各個体の上翅前縁の長さも測り、触角との比率まで出さなくては違うと断言できまいて。そんな事までしなくてはならぬとなると、テキトー&てーげーな性格なオイラには到底無理だ。そういう事は我慢強くてキッチリした性格の人がやらないと誰もが納得する明確な差異を示す数値は示せない。そうゆうの、誰か替わりにやってくんないかなあ…。

んっ❓、あれっ❓何言ってんだオレ。コイツら既に展翅して触角が短いって分かってる奴らばかりじゃないか。触角を伸ばすとか、ワケわかんないこと言ってんじゃねえよ。完全に脳細胞がイカレポンチになっとるがな。
とは言うものの、ノギスで測って数値化しようという奇特な方かいれば、是非ともやってもらいたいけど。

それに、ここへきて漸く根本的な問題に気づいたよ。そもそも、たかだかこの程度の頭数を比較してアレコレ宣(のたま)ってるのは、賢(かしこ)な人から見れば失笑ものだろう。去年と合わせて雌雄各10頭ずつ程度で結論づけるのは、あまりに乱暴な論理だからだ。やってる事が雑いのである。検証数は少なくとも50体ずつ、いや100体ずつくらいはないと説得力に欠ける。偶然の入る余地を極力減らさねば、結果に信頼性はないとゆうことだ。

ならばとネットでググるが、これが笑けるほど標本画像が無い。有っても触角とかワヤクチャだから、使いもんになんない。カトカラは蛾の中でもトップクラスの人気者だと言われてるが、悲しいけど現状は所詮そんなもんなのだ。最近は蛾もブームになりつつあるそうだが、蛾に興味を持っている人の分母はまだまだ小さいのだろう。

もうコレは図鑑に頼るしかない。
先ずは岸田せんせの『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』の画像をお借りしよう。

図鑑には3点のアサマキシタバの標本が図示されていた。

♂だね。
触角が怒髪天なので分かりづらいが、長いことには間違いないだろう。にしても、何でこないに傾いてはるのん❓

お次は♀だ。

異常型の♀だが、触角は短いように見える。


(以上3点共 出典 岸田泰則『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』)

う〜ん、長いかも知んない。でも♂よりかは短いと思うぞ。
こうなってくると、最早、願望がそう見せているのかもしれないと云う疑念が芽生える。段々、疑心暗鬼になってきた。脳ミソは、時に見えてる画像を自分の都合のいいように勝手に改変するというではないか。もしそうならば、もうゲシュタルト崩壊どころの騒ぎではない。そのうち人格の崩壊まで起こるやもしれない。ピッチョ§△◆♮〓✮‡ブチャカエ❡‰≒➽∌アビバビブ✔♯✪〄∀ダリャホセ〜。(ㆁωㆁ)オデ、オデ、コワレタ。

一応、『原色日本蛾類図鑑』も見てみるか…。

画像は、↙この1点のみ。

古い図鑑だけあって、酷い展翅だ。それでも左触角を見れば、長いことは想像に難くない。
それはさておき、名前が平仮名の「あさまきしたば」となっているのが何だか新鮮だな。優しい感じがする。これは古い図鑑の特徴でもあるのだが、一周まわって何かオシャレだよ。

石塚さんの『世界のカトカラ』の画像は既に第一章で使わせて戴いた。

でも何となくパラパラ見てると、海外のカトカラの欄に韓国産とロシア産のアサマキシタバがあった。


(以上2点共 出典 石塚勝己『世界のカトカラ』)

上が♂で下が♀である。コレも♂の方が少し長い気がする。
もう、そうゆうことにしておこう❗
考えてみれば、そこまで触角に拘る必要性は無い。だって、そんな不確実な雌雄の見分け方に頼らないなくとも、他の方法、腹先のスリットと産卵管の有無で100%見分けられるのである(詳しくは前章を参照されたし)。
『バッカみたい』。昔の彼女の声が、耳の奥で聞こえたよ。

出来れば、このままフェイドアウトで終わりたい。終わりたいが、それじゃあまりにもグダグダ過ぎる終わり方だ。ここまで読んでくれた人に対しても申し訳ない。壊れたアタマなりに、何とかまとめて終わらせよう。

もう、結論から言っちゃうからネ。
えー、アサマキシタバのメスの触角はオスよりも短い❗
そう言い切ってしまおう。
でも、あくまでそれは傾向的なもので、微妙なものもいる。野外で採集した時の雌雄の同定には、ある程度は使えるが、絶対的なものではない。コレでどうだろうか❓

雌雄の同定をする場合、先ずは裏返して尻先と産卵管の有無を確認しましょう。その2つが有れば、間違いなくメスです。
補足事項として、以下のような特徴が傾向として見受けられる。

①オスは腹部が細くて長い。反対にメスは太くて短いものが多い。

②オスは尻先に毛束がある。メスも無いではないが、その量は遥かに少なく、尻先がより丸くなる傾向がある。

③オスは前脚(第1脚)と後脚(第3脚)が毛に覆われ、モフモフである。特に新鮮な個体ではコレが顕著である。対するメスは毛があるにはあるが、オスよりも明らかに少なく、モフモフ度は低い。

④相対的にメスの方が翅に丸みがある。バランスは横長で、胴体の太さも相俟ってか、ずんぐりむっくりな印象を受ける。オスはそれと比して、細くてシャープに見える。

⑤触角は比較的オスの方が長い傾向にある。

但し、各項ともに例外もあるので、これらを総合的に鑑みて同定することが必要だろう。

こんなもんで許してけれ。

今回の結果はどうあれ、対象に対してどこか変だな、違ってるんじゃないかと感じる心は大事だと思う。
きっと去年、マホロバ(キシタバ(註1))を発見できたのも、そうゆう感性や姿勢があったからなんだと思う。

                        つづく

 
追伸
次回、やっとこさの種の解説編。
まだ続くんである(笑)。自分でも、いい加減にしろと言いたいよ。次回で終えれることを心から願おう。

 
(註1)マホロバキシタバ
2019年に奈良県で発見された、日本では32番目となるカトカラ。

【マホロバキシタバ Catocala naganoi mahoroba】

  

2019’カトカラ2年生 其の1第三章

 
   vol.18 アサマキシタバ(3)

  『コロナ禍の狭間で(後編)』

 
午後8時を過ぎてもアサマキシタバは飛んで来ない。
いよいよヤバい展開だ。

8時15分。ようやく樹液に飛んで来た。
ものスゴくホッとする。でも、ここで逃したら元も子もない。ゆえに網で採るか毒瓶で採るか迷った。通常ならば翅の鱗粉の損傷を最小限にとどめる為や背中の毛がハゲちょろけにならないように毒瓶を使用すべきところだ。しかし、今回重視しているのは触角だ。この際、完品とかどうだっていい。それに位置的にやや高い。手の長いオイラのことだから届くだろうが、まあまあギリってとこだろう。ならば、ここは確実に採るために網を選択すべきだと判断した。

網枠で幹をコツンと叩いて、驚いて飛んだ瞬間に網の切っ先がマッハで反応した。下から左上へと海老反りでナギ倒すように振る。

【アサマキシタバ Catocala streckeri】

網さばきは今年も健在なりよ(◠‿・)—☆
おっ、この尻の形からするとオスだな。触角は…長いね。
取り敢えず、やはりオスの触角は長いと言っていいだろう。
それにしても、アサマちゃんって相変わらずあまり美しくないね。所詮はカトカラカーストでは下層民なのだ。

ベンチでアンモニア注射で昇天させ、写真を撮って三角紙に収める。いつもこの最初の1頭を三角ケースにしまうと、心の底からホッとする。ゼロと1とでは精神的にどえりゃー差がある。心の余裕が全然違うのだ。

木に戻ったら、もう1頭来ていた。
コヤツも網で難なくゲット。これも♂だった。で、触角は矢張り長かった。

でも、正直オスはもういい。ターゲットはサンプルの足りないメスなのだ。メスの触角を見なければ、アホっぽいオラの仮説も証明できない。

8時半。また樹液に1頭飛んで来た。
やや小さくて、翅が丸く見えた。たぶんメスだ。

今度は低いところに止まったので、毒瓶を被せることにした。
今思うと、確実に網で採れよな。この辺が直ぐにダレちゃうオラの悪いクセだね。基本、てーげーな人なのだ(註1)。

難なくゲット。
♀っぽいね。一応、裏返してみる。

腹が短いし、太いから多分♀に間違いなかろう。

触角を確認してみる。
あっ、♂よりも明らかに短いぞ(画像をピンチアウトすると拡大できます)。
でも毒瓶を被せた時に千切れたとかないだろうか❓ カッコつけて毒瓶なんか使わなければ良かったよ。

ここでピタリと飛来が止まる。
ヤバいよなあ…。このままいくと、あまり数は望めないかもしれない。
カトカラ2年生、まだまだ少ない経験値で言っちゃうと、多くのカトカラは樹液への飛来が7時半くらいから8時台半ばまでは強い活性があって、9時くらいになると一旦飛来がピタリと止まる。そして10時を過ぎたくらいから再びダラダラと飛来が始まり、11時台の半ばあたりから午前0時過ぎにかけて、もう1回活性のピークがあると云うイメージがある。そのパターンからすると、ヨロシクない傾向だ。2回目のピークは1回目よりも弱いしね。

まっ、いっか…。今日は電車ではなく、難波からママチャリで来ているのだ。ゆえに終電を気にする必要はない。じっくりと対峙できる。
とはいえ、10時迄まだ1時間以上もある。11時なら2時間待ちだ。待つことが誰よりも大嫌いな人間にとっては、地獄だな。それまで闇の恐怖と戦わねばならないと思うと、気が重いよ。

覚悟して、大声で怪鳥の鳴き声を真似て発してやった。
闇を切り裂く高音の怪しき声が山に谺する。鵺(ぬえ)の哭く夜は恐ろしいのである。超恐がりとしては、苦肉の策の逆療法なのだ。逆にこの怪鳥音で魑魅魍魎を震撼させてやろうというセコい作戦ですねん。でも闇の恐怖を紛らわすには効果がある。闇の中で黙っていると、ろくな妄想をしかねないのだ。
それに展望台辺りでキャアーキャアー言ってる小娘どもの声がウザいので、ビビらせやろうとも思った。悪の心が恐怖をも凌駕するのだ。
効果があったのか、小娘どもの嬌声のトーンは落ち、ひそひそ声のキャァキャァになった。ψ(`∇´)ψケケケケケ、おまんら死ぬほどビビって山を下りたらええねん。悪いオジサンは、自分の恐怖を紛らわす為だったら、何だってするのだ。

9時10分。
闇と闘うことに漸く折り合いをつけたところで、アサマが樹液に飛んで来た。

(. ❛ ᴗ ❛.)あらま、予想外の嬉しいお越しだよ。
当然、今度は網でシバく。

なあんだ。また♂か。
でも一瞬、触角を見て戸惑った。短くねえか❓
だがよくよく見れば、触角の先が光の反射か何かのせいで白っぽく見えてるだけのようだ。ちゃんと見ると、♂らしい長さだね。
確認のために裏返してみる。

やはり長いね。
けど♂は、もういい。♀をもっと見んと仮説は証明できん。

9時35分。
待望の♀が飛んで来た。

やっぱ、触角は短く見える。

裏返したら、思ってた以上に長い。それでも♂よりも短い気がする。

9時40分。
連続して飛んで来た。しかも3頭。完全に活性が入った。
気分は殺し屋スナイパー。1つ1つ確実に始末していこう。

♀だ。
これも触角が短い。

でも裏返してみたら、そうでもないような気がしてきた。
いやいや、やはり♂よりも短いぞ。とはいえ、何だか頭の中が少し混乱してきたぞ。

お次も、又しても♀である。

やっぱ、どう見ても短いよなー。

裏返してみたら、コレもそうでもないような…。
けれど、同じく♂よりも短い気がするぞ。と言いつつも、更に頭の中が混乱してきた感あり。

それはさておき、もはや裏返せば瞬時に雌雄が見分けれるようになった。
今一度、並べた画像を見て戴きたい。先ず絶対的に違うのは、尻先だ。♀は尻先に縦にスリットが入り、何やら黄色いものが見える。おそらく産卵管だろう。一方、♂は腹先にスリットが入らないし、毛でフサフサだ。黄色いものは見えない。
ここからは相対的で絶対条件ではないが、気づいた他の判別法も並べておく。

その他①
腹の形は♀は短くて太い。対して♂は細くて長い傾向がある。しかし、腹が長く見える個体もあったりするから、どっちか悩むこと有りです。

その他②
♂は前脚が毛でモフモフだ。♀は、それと比べてモフモフ度が低い。
但し、これは新鮮な個体での話だ。飛び古した♂は毛が抜けてるだろうから、その場合は判別には使えないだろう。

図鑑には、この②と腹のスリット&産卵管については何処にも書いてなかった気がする。そもそも裏面画像が添付されてる図鑑は殆んど無いのだ。知る限りでは、唯一あるのは西尾規孝氏の『日本のCatocala』だけだ。それとて雌雄両方の画像は無い。また、文中で前脚とスリット云々については言及されていなかった筈だ。

その他③
♀の方が翅形が円い。対して♂は上翅からシャープな印象を受ける。
また裏返して見ると、♀の方が下翅が円く見える。
とはいえ、微妙な個体もいるから、これも絶対条件ではない。

その他④
♀の方が全体的に小さい。但し、個体差があり、♀でも大きいものはいる。あくまでも相対的だから、これまた絶対条件ではない。けれど、樹液に飛来した時の目安にはなる。それで、だいたい雌雄の目星がつくことが多い。

時を戻そう。
問題は触角である。雌雄に差があるような気がするけど、でも微妙なんだよなあ…。まだ明確な答えは出せない。今度は♂の触角を見たくなってきた。♂の触角をもう一度見ないと判断は下せないと思った。

3頭いたうちの残り1頭は、いつの間にか樹液から消えていた。
さっきから見てると、コヤツら、どうも全体的に樹液滞在時間が短いような気がする。せわしない感じがして、他の個体や蛾が飛んで来たら直ぐに飛び立つ。で、どっか行っちゃう。何か神経質なのだ。でも去年はそうゆうイメージを抱(いだ)かなかったから、今日だけの事なのかもしれない。或いは去年はボオーッと見てたから気づかなかったのかも…。些細な事だけど、そう感じたので一応書いときました。とはいえ、その日によるものと思われる。

しっかし、それにしても糖蜜トラップに対してアンタら完全にフル無視やのう(。ŏ﹏ŏ)
アサマって、糖蜜にはあまり反応しないのか❓いや、でも文献には好んで集まるみたいな事が書いてあった気がするぞ。んっ❓、あれは糖蜜じゃなくて、樹液の方だったっけ❓ あれあれっ、どっちだっけ❓ 事前に復習して来なかったから、ワカラーン。この勉強不足具合、たかがアサマと云う見下し意識が垣間見えとるよ。

いつしか時計の針は午後10時近くを指していた。
9時台でも樹液に結構来るんだね。樹液の飛来時刻の概念が少し変わったよ。
きっと、その日の天気とか温度、湿度、発生の時期、前日の天気等々、様々な条件が関係しているのだろう。基本的なパターンはあるのだろうが、しばしばイレギュラーがあって、その微妙な条件が人間には感知しえないのだろう。

10時ジャスト。
(☉。☉)!ワオッ、遂に糖蜜トラップに来よった❗

証拠の為に写真を撮る。
でも、やっぱり小さくしか写らない。結構近づいてるんだけどなあ…。スマホのカメラじゃ限界あるよね。センチ単位の至近距離まで近づかないと、まともな写真は撮れなさそうだ。

慎重に接近する。
しかし、さあシャッターを押そうとしたら、(+_+)あちゃま、逃げよった。まあ、しゃあないわな…。

10時10分。
別な木だが、またトラップに来た。でも、さっきの個体とは明らかに違う。もっと大きい。たぶん♂だ。

待望の♂である。
おっ、触角はどう見ても♀よりも長いぞ。
♀の触角が短いなんて気のせいだと思ってたけど、ここまで差異が連続すると、仮説が現実味を帯びてきた。

10時20分。
又してもトラップに飛んで来た。おいおい、急にどうしたんだ❓ その急変振り、全くもって理由がワカラン。

♀だね。そして、これまた触角が短い。
っていうか、メチャメチャ短くね❓切れてんのか❓

『キレてないですよ(註2)。』
思わず、長州力ばりに言っちゃったよ。
でも、ちょっと待てよ。ここで漸く気づいた。よく見ると、根元は黒いけど、段々先に向かって白くなっていってんじゃねえか。先が白いから手の平と同化して短く見えたのだ。
(≧▽≦)何だよー、それー。完全に騙されたわ。
皆さんも、画像を拡大して検証してみてね。

急いで、撮った写真を全部確認してみよう。
いや、その前に裏の確認だ。

けど、白いとこを入れても♀の方が、やや短いような気がするぞ。

慌てて撮った写真を確認してみる。
確かに♀は触角が途中から白くなってる個体が多い。でも、やっぱそれでも♂よりも短いような気がする。
けんど、ジッと画像を見ていると、段々ワケがわからなくなってきた。ゲシュタルト崩壊を起こしそうだ。いや、既に起こしているやもしれぬ。
こんな暗いところで、あーだこうだ考えたところで埒が開かん。帰って、展翅せんと本当のところはワカランぞなもし。

それ以降もアサマはトラップに飛来し、延べ6例の飛来があった。


(PM10:29。ものスゲーピンボケ(笑))

重複個体もあるかもしれないが、少なくとも4個体以上は飛来したものと思われる。そう云うワケだから、アサマキシタバも糖蜜トラップに反応すると云うことは証明できたかと思う。
それはさておき、何で急に反応し始めたのだろう❓空気に触れて、途中から微妙に成分が変わったとか❓まーさかー。

↘上のピンボケ写真の個体。

またもや♀だ。

尚も続けて飛んで来た。
以下、撮影時刻を入れておく。写真屋も偉そうなこと言うなら、撮影時刻くらいチャンと入れろよな(註3)。



(PM10:38)


(PM10:54)

全部メスだ。
しかし、もう触角がどーのこーのと云う思考回路は働かない。完全にゲシュタルト崩壊が起こっておるのだ。もう、うんざりなのだ。

11時前に♂がトラップに来たが、網を構えたら逃げよった。
それで、プッツンいった。触角とか、そんな瑣末な事は、もうどうでもいいわい(ノ`Д´)ノ彡┻━┻❗

今日はチャリで来てるんだから、終電の時刻は気にしなくてもいいんだけど、帰ることにした。とっとと帰って、🍺ビールがぶ飲みじゃい❗

11時過ぎ、撤退。
さあ、光瞬く下界へと降りよう。

翼よ!あれが巴里の灯だ❗(註4)

                        つづく

追伸
その後の話を少ししておく。
真っ暗な坂道を歩いてたら、急に闇への恐怖が芽生えたんだよね。また、口裂け女とか思い出したよ。震撼っす。
降りてきて、11時半に枚岡駅を出発。午前0時半ジャストに帰り着いた。帰りは30分短縮の1時間で帰ってきたってワケ。ママチャリで時速15キロって、速くね❓
えー、何でそんなに早かったのかと云うと、駅ごとに即興で歌を歌って漕いでたからだ。

🎵GO to the つるは〜し(鶴橋)
🎵GO to the つるは〜し
🎵GO GO GO GO GOOー つるは〜し❗

とかね。駅ごとに曲つくって歌ってたのさ。
音楽は力なり(笑)

結局、この日は4♂8♀も採ってしまった。検証の為とはいえ、心情的にはちょっとね。スマヌよ(◡ ω ◡)

本当はこの回で触角問題の解決までいく予定だったが、書いてて長いから力尽きた。今回はあんまり脱線してないのになあ…。
えー、次回いよいよ触角問題の解決編です。

 
(註1)てーげーな人なのだ
「てーげー」とは沖縄県の方言で、物事について深く考えたり、突き詰めて考えたりせず、程々のええ加減で生きていこうという意味の琉球語であり、また概念のこと。
そこには、いい加減を筆頭に「テキトー」「だいたい」「おおよそ」「まずまず」「そこそこ」「なあなあ」といったニュアンスが多分に含まれている。

 
(註2)キレてないですよ
プロレスラー長州力の有名なセリフ。そのモノマネで有名になった長州小力がこのセリフをネタとしており、一時流行った。
しかし、長州自身は実際には『キレてないですよ。』とは言っておらず、正確には『キレちゃいないよ。』と言っている。長州力って滑舌がバリ悪いから、誰もツッ込まないけどね。それに長州自身もバラエティー番組でイジられたら、『キレてないですよ。』と言ってたしね。

 
(註3)撮影時刻くらいチャンと入れろよな
蝶の写真を撮るのを趣味にしている人には、全部が全部じゃないけれど採集する人に対して批判的な人が多い。そうゆう人のブログを見てると、しばしば網を持っている人への強い攻撃性を感じる。最初の頃は同じ蝶屋なんだし、仲良くすればいいじゃないと思っていた。実際、フィールドで会っても仲良く接してきた。だが、最近はブログ内の表現もエスカレードしてきて、採集者を指して『ネットマン』という侮蔑と揶揄たっぷりの底意地の悪い言葉が横行している。それって、如何なものかと思う。マナーの悪い採集者への怒りからだろうけど、ネットマンという蔑称を連発するのもマナーがいいとは言えないよね。
こういう事を書き始めると長くなるし、だいち面倒くさい。なので、冷静でわかり易く書いておられる方の文章をお借りしよう。
リンクを貼っておきます。

『雑記蝶』
https://usubasiro2-exblog-jp.cdn.ampproject.org/v/s/usubasiro2.exblog.jp/amp/21315119/?amp_js_v=a2&amp_gsa=1&usqp=mq331AQFKAGwASA%3D#aoh=15911860661393&amp_ct=1591186079462&referrer=https%3A%2F%2Fwww.google.com&amp_tf=%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%82%B9%3A%20%251%24s&ampshare=https%3A%2F%2Fusubasiro2.exblog.jp%2F21315119%2F

テキストエディタだと、リンクを貼るのが上手くいかない。
かといって今更ヴィジュアルエディタで書くとなると、改行をイチから全部やり直さなければならないんだよね。
一応、このままでも上の空白部分をクリックすると記事には飛びます。それで御勘弁を。

もう一つリンクを貼り付けておきます。

『BUTTERFLY BRINGS☆』
https://rpsbetter-exblog-jp.cdn.ampproject.org/v/s/rpsbetter.exblog.jp/amp/21378006/?amp_js_v=a2&amp_gsa=1&usqp=mq331AQFKAGwASA%3D#aoh=15912263520122&referrer=https%3A%2F%2Fwww.google.com&amp_tf=%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%82%B9%3A%20%251%24s&ampshare=https%3A%2F%2Frpsbetter.exblog.jp%2F21378006%2F

申し訳ないけど、これも空白部分をクリックして下され。

きっと「ネットマン」と云う言葉は、殺してる者に対する憎悪からの発露だろう。謂わば、正義感だ。おまえらは蝶に対して愛はないのかと云うことだ。でも撮る人だけでなく、採る人も間違いなく蝶に対して愛はあるんだよね。この辺の心情は、昔は採っていたけど、撮る側にまわった人は理解できるかと思う。
問題なのは、撮ることから入った人たちだ。そうゆう人たちは正義感を振りかざしやすい。「生き物を殺してはならない」。この言葉は伝家の宝刀みたいなもので、絶対正義だからだ。何か結局ディスる事になりそうだが、続ける。
怒らないで読んで戴きたい。正義を振りかざす人は大抵が底が浅い。単純だからこそ、猪突猛進。平気で強く批判できる。正しいことをやっていると信じている人は強いのだ。世の中のクレーマーの多くが正義感の上に立って行動しているのと同じだ。最近で言えば、コロナウィルスの「自粛警察」とか「コロナポリス」と呼ばれる人たちが、こういう人種だろう。正義が背景にあるから、正義なんだから何やってもいいと逸脱してしまう輩たちだ。そう云う輩は、もうそれは正義を飛び越えて悪になっているのが分からなくなってるから怖い。盲信だ。ホント、こういうのってタチが悪いんだよね。勿論、写真をやっている人全員がそうではないだろう。そうゆう人は一部の人だとは思うけどね。

話を少し戻す。「生き物を殺してはならない」と云うなら、何も食うなよと云う論理にいきがちだが、言いたいところの本意はそこにあるワケではない。たとえ家畜でも生き物だと言いたいワケでもない。言いたいのは、アナタたちが食ってるものは自然をブッ壊した結果、目の前にありものだと云うことだ。作物を作るにしても、家畜を飼うにしても、森は切り拓かれる。それによって、その場の植物や鳥、哺乳類、昆虫、爬虫類、両生類、土壌生物etc、どれだけの生き物が絶滅していることか。我々が食ってるハンバーガーの、その背後に無数の生き物の死がある事を忘れてやしやせんか❓単に目の前の死だけしか見てなくて発言している人が多いから底が浅いって言いたいってワケ。マクドナルドが1店舗増えるごとに結構な広さの森が失われているのだ。その事を忘れないでほしい。

アレッ❗❓、何か脱線してるなあ…。こんな事を言いたかったワケではない。結局ディスってるし。良くないなあ。
えーと、何が言いたかったんだっけ❓
あっ、そうだ。思い出した。

写真をやってる人たちのブログを見てると、そこに有るのは蝶の写真だけで情報量が少なく、何ら参考にならないものが多い。撮影地の地名を載せてないのは、まだ理解できる。直ぐにワンサカ人が集まって来て荒れるからね。でも撮影環境くらい載せてもいいんじゃないかと思う。その蝶がどんな環境に棲んでるか知りたい人もいるだろうに。あっ、でもその写真だけで場所を特定してしまう鋭い人もいるか…。けど蝶そのものだけでなく、棲息環境の写真あっての生態写真だと思うんだよね。
あれっ?、待てよ。写真やってる人のブログって、生態面に殆んど言及されていないものばかりだぞ。そうゆうのって採集者は大事だと解ってるけど、カメラしかやらない人は興味ないのかな?綺麗な蝶の写真さえ撮れればいいのかな?
それじゃ、オナニーと一緒で何ら博物学に寄与していないじゃないか。考えてみれば、撮影日すら書いてないブログも多い。その蝶が、その地域では何日(いつ)ぐらいに発生しているか記録されていれば、貴重な資料になる。環境写真や生態的知見が書かれていれば、それもまた貴重な資料になるのである。写真を撮っている人にはお願いしたい。せめて撮影日くらいは書きましょうよ。できれば撮影時刻も。なぜなら、撮影時刻からでも蝶の生態が類推できるからだ。それで従来の生態的知見がひっくり返る事だって有り得る。それって、スゲーことじゃん。

撮影する人も採集する人も同じ蝶屋なんだから、ちゃんと情報交換や意見交換して仲良くしましょうよ。蝶が趣味の人なんて、世間から見ればキモい極々少数のマイノリティなんだからさ。いがみ合いしてても、何ら良い事はおまへんで。

 
(註4)翼よ!あれが巴里の灯だ
ビリー・ワイルダー監督、ジェームズ・ステュアート主演の1957年上映のリンドバーグの伝記映画。名作です。
勿論、大阪の街はパリじゃないけど、ぽろっと口から言葉が零れた。何となく、そんな気分だったのだ。

 

2019’カトカラ2年生 其の1第ニ章

 
   No.18 アサマキシタバ(2)

    『コロナ禍の狭間で』

 
2020年 5月24日

日本はもとより全世界を席捲している新型コロナウイルス禍は少し勢いを減じていた。それでも終息の兆しはまだ見えないと云う状況下、生駒山地の枚岡へと出撃した。

1週間ほど前から、そろそろアサマキシタバが発生しているのではないかと気にはなっていた。

【アサマキシタバ Catocala streckeri ♂】

(2019.5.23 奈良県大和郡山市 矢田丘陵)

だが去年みたく、たかだかアサマキシタバなんぞにフライングしたくなかった。あの二の舞は避けたい。それに今回求めているのはメスだ。少し遅めの始動で丁度よろしかろう。そう考えて、この日を選んだ。

午後5時半。
🚲ママチャリで難波を出る。
そう、アホはチャリで生駒まで行こうとしているのである。ここから枚岡神社まで優に15キロはある。ママチャリで上町台地を越え、生駒山地の途中まで登らねばならぬのだ。
普通の人間だったら、そんなおバカなことは考えない。電車で行けば30分だ。じゃあ何でそんな事を考えたのかというと、アホだからである。と言っては身も蓋もないので、もっともらしい理由を考えよう。
そうそう、運動不足だからである。それに此処にはスミナガシに会うため、5月のアタマに一度ママチャリで来ているのだ。つまり、自分の中ではもう普通の行動範疇なのである。
勿論、出来るだけ人との接触を避けたいと云う気持ちも根底にはあった。コロナを伝染(うつ)されたくないし、伝染したくもない。加えて、あのマスクと云うのが苦手だ。マゾじゃないから、ああゆう拘束具みたいなのは大嫌いなのだ。ストレスが高いわ。
ついでに言っとくと、その浮いた電車賃で高めの食材でも買うたろうかと思ったと云うのもある。今日は帰ったら、美味いもん食って、酒ガブ呑みじゃヽ(`Д´)ノ❗

難波⇒日本橋⇒上本町⇒鶴橋⇒今里⇒布施⇒永和⇒小阪⇒八戸ノ里⇒若江岩田⇒河内花園⇒東花園⇒瓢箪山と近鉄奈良線に沿って走る。しっかし、やっぱマジ遠いわ(;´∀`)
瓢箪山から枚岡駅までは地獄の坂じゃ。途中、立ち漕ぎも出来ないくらいのキツイ坂になった。仕方なくチャリを押して喘ぎながら登る。生駒山地は勾配がキツイんじゃ。日本一勾配のキツイ国道、最大斜度37%の国道308号もすぐ近くを通っておる。もう何で電車に乗らなかったんだろうと後悔しきりである。思えば後悔ばかりの人生だよ、おっかさん。

ようやくチャリが漕げる所まで上がって来たら、夕陽が沈もうとしていた。日が沈むまでには着いちゃる❗
鉄砲玉、ぴゅう━━━(((((((((((((((( ヘ(* – -)ノ

午後7時、ようやく枚岡駅に着いたところで、ちょうど陽が沈んだ。

(||´Д`)ハァハァー、(;;;´Д`)ゼェーゼェー。
ここまで1時間半かあ…。結構かかってる。けど電車だって30分かかる。そのたった3倍の時間で済んでると考えれば、まだ早い方なんじゃないか?

汗だくでヘトヘトだが、息つくヒマもなく準備を始める。
と言っても、懐中電灯をザックから出しただけなんだけどね。

さてさて、ここからが本番じゃよ。
今回の課題は、2つある。

①アサマの♀の触角って、もしかして短くねぇんでねえの❓
②アサマって、はたして糖蜜トラップにも反応しまんの❓

前回を読んでない人のために少し補足説明をすると、オスと比べてメスの触角が短いんではないかという疑念を持った。それを確認しようと云うワケなんである。んなワケなかろうとは思ってるけど。

2つ目は、去年はアサマを樹液でしか採っていないから、はたして糖蜜トラップにも寄ってくるのかどうかを確かめたかったからだ。
多くのカトカラが糖蜜トラップに誘引されるが、殆んど反応しない種もいる。正直、同じカトカラ属といってもワケわかんねぇところが多々あるのだ。例えば去年、カバフキシタバが樹液よりも糖蜜トラップに圧倒的に反応したなんてのは予想外の出来事だった。普通は逆なんである。当然、自然物の樹液に集まる昆虫の方が多いのである。そう云う例もあったゆえ、一通り実験しようと思ったのだ。調べていくうちに、糖蜜に集まる奴と集まらない奴との何らかの差異が見えてくるかもしれないと考えたのである。
また、標高が高いところではカトカラは糖蜜トラップに集まらないと云う定説があるが、ナマリキシタバなんかは標高の低い場所でも寄って来なかったりもする。でも樹液に来た例はあったりする。もうワケワカメなんである。糖蜜トラップをかけ続けることによって、この疑問にも答えが見つかるかもしれない。

枚岡神社を抜け、住宅街を通って椋ヶ根橋までやって来た。
辺りには誰もいない。そら、居るワケないわな。こんな時間に誰が山登りすんねん。

暗き森の入口に立つ。
超ビビリ男、((;゚Д゚))ブルッときた。武者震いだ。
いよいよ今年も始まりましたなあ。闇の絵巻、魑魅魍魎どもが跳梁跋扈する闇世界への潜入捜査が。
今更ながらに一人で夜の山に入るだなんて、どーかしてるぜ。嗚呼、虫採りなんかやめて、一般ピーポーに戻りたいよ。

意を決し、心を鎮めて急坂を登り始める。懐中電灯の光だけが闇を切り取っている。それが現世と幽世(註1)、現実の世界と冥界との境界線だ。要らぬことは考えずに足もとを照らす。勿論、👺👻👹👽魑魅魍魎どもはメチャメチャ怖いが、ここは先ずはマムシなどの🐍蛇に心を砕くべきだ。目の前の現実に集中してさえいれば、化け物どもも怖くない。敵は我が心中にあり。自身の紡ぎ出す想像と妄想こそが一番の敵なのだ。

7時20分。目的の尾根に辿り着いた。

風に木々がザワザワと揺れる。
(||゚Д゚)怖いですねー。(((( ;゚Д゚)))恐ろしいですねー。

ヤバい精神傾向だ。想念を遮断して、樹液の確認に行く。
(゜o゜;ゲッ❗、去年アサマが3頭飛来したクヌギの壮齢木の樹液が渇れとるがな。(++)ヤッベー💦
あと残るは、もう1本。アケビコノハがいた去年最初に見つけた木がダメなら、(@
@)アーパープーパーだ。

よっしゃ、ε-(´∀`*)セーフ。
幸いそのコナラの木の樹液は健在だった。っていうか、去年よりも確実に樹液量が増えていて、コクワガタが3頭も来ている。ちゅー事はアサマキシタバもそのうちやって来るだろう。取り敢えずは一安心だ。でも去年は安心したら、その後に大コケしたので予断を許さない。

( –)/占==3 シュッシュラシュッシュッシュッー。
霧吹きで糖蜜を木の幹に吹きつけてゆく。
辺りに甘い匂いが立ち込める。今回の糖蜜は何が入ってんだっけ❓ 嗅いでみるが、複雑過ぎてワカラン。たぶん焼酎とかビールとかのアルコール類に、甘系ジュースだの酢だのその他モロモロが入っとるんだろなあ。去年、王者ムラサキシタバを採りに行った時(註2)に使った残りだから、憶えてねえや。

何か痒いなと思ったら、🦟蚊がワンサカ寄ってきとるー。
(≧▽≦)しもたー。虫除けスプレーを忘れた。カトカラ開幕戦ゆえに携行品に漏れがあったか…。のっけから躓いた感じでヨロシクない流れだよ。

7時28分。
早くも樹液にアサマキシタバがやって来た。
取り敢えず、写真でも撮っとくか。

しかし、スマホではクソしょーもない写真しか撮れん。被写体が小さくしか写らんし、懐中電灯を照らして片手で撮ってるからブレブレだ。
仕方なく至近距離まで近づいて撮ろうしたら、(-_-)チッ、逃げやがった。
何やってんだ❓、俺。先ずは撮る前に採れよなー。余裕カマし過ぎだぞ。
とはいえ、まあそのうちまた戻って来んだろ。去年の記憶では、1頭飛んで来たら立て続けに飛んで来たもんね。

しかし、後が続かない。
糖蜜トラップには、雑魚キャラのキマワリとヨツボシケシキスイ、名前も知らんクソ蛾とオオクロナガオサムシしか寄ってこん。

誰じゃ、おまはん❓
名前もワカランし、無視する。

クロナガオサムシ系とマイマイカブリは樹液とか糖蜜が好きなんだなと改めて思う。でも、オオオサムシとかヤコンオサムシなどの Ohomopterus属は見たことがない。地面に埋めた糖蜜トラップには来るのに何で❓木に登るのは苦手なのかな❓

デカい百足(ムカデ)もやって来た。
( `ε´ )ったくよー。見た目といい、生き様といい邪悪過ぎるんだよ、テメェ。
そういえば、去年クロシオキシタバを採りに行った折り(註3)、ムカデに耳を思いきし咬まれたんだよなあ…。
突然、💥バチーッと、もう火箸でも押し付けられたんじゃないかと思うくらいの鋭い痛みが走って、飛び上がりそうになった。あとはズキズキした痛みが続いて、涙チョチョ切れだったよ。思い出したら、何かフツフツと怒りが込み上げてきた。復讐のジェノサイド、オドレ、虐殺したろか٩(๑`^´๑)۶
でも小さい奴でもあんだけ痛かったんだから、このクラスだと咬まれたらどんだけ痛いっちゅーねん。ムカデって、どう見ても暴君って感じだもんなあ。やめとこ。君子、危うきに近寄らずである。

8時になった。流石に💦焦ってくる。
アサマって、日没後早めにワッと飛んで来るんじゃなかったっけ❓だとすれば、今はゴールデンタイム。来ないのはどゆ事❓
最悪のシナリオが頭を掠める。
もしもあの、写真なんか撮ってて逃げられた奴が今日の最初で最後の1頭になったりして…。そう思うと顔が強張る。ならば、ここまで必死こいてチャリで来た努力も、闇の恐怖に耐えてきたことも、全ては無駄になる。
いかーん。頭の中で『スターダストクルセイダース』の大悪党、ディオのスタンド(註4)が無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄…と高速パンチを繰り出してる映像が浮かんどるやないけー。

何かのメタファー(暗喩)かよ。
木々がまたザワザワと騒ぎだした。
 
                        つづく

 
追伸
3話構成で完結させる予定が、無駄無駄無駄無駄無駄…無駄な事を書き過ぎて4話以上の完結になる事、決定であ〜る。
何やってんだ、オラ。

(註1)幽世
幽世(かくりょ)。隠世とも書き、常世(とこよ)とも言われる。
幽世・常世とは、永久に変わらない神域。死後の世界でもあり、黄泉もそこにあるとされる。「永久」を意味し、古くは「常夜」とも表記した。日本神話や古神道、神道の重要な二律する世界観の一方であり、対義語として「現世(うつしよ、げんせ)」がある。

 
(註2)王者ムラサキシタバを採りに行った折り
拙ブログの、2018’カトカラ元年 其の17第四章に『パープル・レイン』と題して書いた。読まれる方は、第一章から読んでね。クソ長いけど(笑)

【ムラサキシタバ♂】

(2019.9月 長野県松本市)

 
(註3)クロシオキシタバを採りに行った時に
拙ブログにクロシオキシタバの続篇として『絶叫、発狂、六甲山中闇物語』と題して書いた。

【クロシオキシタバ】

(2019.7月 神戸市須磨区)

註釈を入れるのを忘れたが、カバフキシタバの糖蜜トラップ云々の話(『リビドー全開❗逆襲のモラセス(後編)』)も書いたので、ソチラもヨロシクです。

【カバフキシタバ】

(2019.7月 兵庫県宝塚市)

 
(註4)ディオのスタンド
荒木飛呂彦の漫画『ジョジョの奇妙な冒険』第3部「スターダストクルセイダース」のヒール、ディオのスタンドであるザ・ワールドのこと。アニメの中で無駄無駄…と連呼して連続で攻撃しまくる。めちゃんこ強いのだ。
なお、第5部 黄金の風で、その息子ジョルノのスタンド、ゴールドエクスペリエンスも無駄無駄…と連呼してタコ殴りしよります。

【ザ・ワールド】

(出典 プレステ『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル』)

こんな感じっす。


(出典『ミドルエッジ』)

 

2019’カトカラ2年生 其の1

No.18 アサマキシタバ 前編

『晩春と初夏の狭間にて』

 
2018年にカトカラ(シタバガ属)を集めようかと思い始めた頃には、既にアサマキシタバの時期は終わっていた。
なので、2019年はまだ見ぬアサマくんからのスタートとあいなった。

思えば、カトカラを追い掛けるキッカケになったのはシンジュサン探しからだった。
蝶採りにも飽きてきて、この年はまだ見ぬ有名な昆虫たち、例えばオオトラカミキリとかオオチャイロハナムグリなんかを探そうと思っていた。予定調和は面白くない。未知なるモノを全智全能を傾けて採るから楽しいのだ。
そのリストの中にシンジュサンも入っていた。つまり、恥ずかしながらも実物のシンジュサンを一度も見た事がなかったのである。虫捕りを始めた時には、そう珍しいものではないだろうから何処かでそのうち会えるだろうと思っていたが、なぜか一度も出会えなかった。
で、この年は真面目に探し始めたんけど、これがどうにも見つからない。んなわけなかろうと、途中から必死モードになったんだよね(笑)。たぶんシンジュサンって、今や普通種じゃないんでねえの❓
その辺の苦労話は拙ブログに『三日月の女神・紫檀の魁偉』と題して書いたので、宜しければ読んでつかあさい。

【シンジュサン(神樹蚕)】


(2018.6月 奈良市)

その折りに、副産物としてフシキキシタバとワモンキシタバが採れて、ちょっとカッコイイかもしんないと思ってしまった。それが黄色いカトカラに本格的に興味を持ち始めた切っ掛けになった。
そういえば、その1ヶ月程前の5月中旬くらいにシンジュサンが見たくてA木くんにせがんでライト・トラップをしてもらったんだった。
場所をお任せしたら、彼は金剛山地の持尾方面を選定した。
だが。結局飛んで来たのはベニスズメとかコスズメくらいで、そのうち雨が強くなって早々と撤退。結局、シンジュサンは見れずじまいだった。
その時に、A木くんから『もう、アサマキシタバも出てるかもしれませんよ。』と言われたんだっけな…。
でも、アサマキシタバと言われてもピンとこなかった。よくワカンなかったから、生返事しか出来なかったように思う。言われてキシタバの仲間だろうと云う事くらいは何となく想像できたが、頭の中には図鑑等でインプットされた画像は一切無かったのである。
だから、もしもこの年、2018年に最初に出会ったカトカラがアサマキシタバだったならば、黄色い系のカトカラには全く興味を持たなかったかもしれない。正直、アサマキシタバは黄色いカトカラ類の中にあっては一番小汚いのだ。蛾は基本的に忌むべきものだったから、(`ェ´)ケッと思ったに違いない。汚いのは蛾の概念の域を出ない気色の悪い存在でしかないのである。

 
2019年 5月18日

小太郎くんに『アサマは見られる時期がわりと短いですよ。鮮度の良いキレイな個体を採りたければ、早めに行っといた方がいいんじゃないですか。』と事前には聞かされていた。たしかに去年ここを最初に訪れた時は6月上旬だったけど、ボロでさえも一つも見なかった。
今年は蝶の発生が例年よりも早いと言われているし、もう出ているだろうと思い、この日はその奈良県大和郡山市の矢田丘陵へと出掛けた。

この季節を人々は初夏と呼ぶが、自分の中では晩春だ。なぜなら、1年を夏は6,7,8月。秋は9,10,11月。冬を12,1,2月。そして、春を3,4,5月と便宜上区切っているからだ。だから、3月1日がどんなに寒かろうとも春だと自分に言い聞かせて気持ちを切り替えるようにしてきた。
とはいえ現実の感覚とか心は、けっしてそんな風には割り切れないところがある。今日はまだ5月だが、既に気分は半分夏だ。あれっ?自分で何を言いたいのかワカンなくなってるぞ。
まあいい、いつも通り構成を考えずに書き始めておるのだ。そのうち思い出すだろう。

ポイントへ行く道すがら、アルテミスと出会った。ギリシャ神話の月の女神だ。

【オオミズアオ】

あっ、今はアルテミスじゃないんだったな。本種の日本産の学名は Actias artemis から Actias aliena に変わっちゃんだよね。ものスゴくガッカリだよ。別種になったみたいだから、致し方ないんだろうけどさ。

そんな事はどうあれ、その儚き翠(みどり)はいつ見ても幽玄で美しい。
もうオイラの心の中ではアルテミス、月の女神でいいじゃないか。そうゆう事にしておこう。と云うワケなので、女神に会ったんだから幸先良いスタートだ。たぶん、この調子でアサマも余裕のヨッちゃんで楽勝ゲットだろう。前向き軽薄男は御都合主義のプラス思考なのだ。

(ー_ー゛)……。
しかし、去年カトカラがわんさか集まっていた樹液出まくりのクヌギの大木には何にも居なかった。
たぶん樹液が出ていないのだ。😰あっちゃっちゃー。そんな事はまるで予測していなかったので、ものスゴ〜く💦焦る。どうせ樹液で採れるからと糖蜜トラップは持ってきてないし、此処では外灯に集まって来る個体は樹液に集まるものよりも遥かに少ないからだ。余裕のヨッちゃん気分が一気にフッ飛ぶ。

オラ、もう必死のパッチで他に樹液が出ている木を探しましたよ。そいだらこと縁起が悪いべよ。開幕戦からー、コケるのはー、何としてでもー、避けねべならねっ。
で、何とか3本の木を見つけることが出来た。しかし、どれも少量の樹液しか出ていない。もしもコクワガタくんが来てくれていなけりゃ、見つけられんかったよ。それくらい心もとない樹液滲出状況なのだ。
こりゃ採れんかもしれん…。林内の闇の中空に、行き場を失った不安が所在なげに浮遊する。
いかん、いかん。悲観的な考えは後で恰好な言い訳の材料になる。ダサいぞ、俺。そんなもんは直ぐ様うっちゃって、プラス思考に切り替えよう。でないと、益々採れんくなる。
樹液状況が芳しくないとはいえ、コクワガタくんが来てるんだから大丈夫っしょ。飛んで火に入る夏の虫、デヘデヘ🥵。悪意に満ちたストーカー変態男が待伏せているとも知らずに、そのうちノコノコやって来るっぺよ。
危うしアサマくん、Σ(゚∀゚ノ)ノキャアー、逃げてぇー。
ひとしきり一人遊びしたところで、いつもの前向きオチャラケ男に戻る。

(ー_ー;)……。
(。ŏ﹏ŏ)……。
༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ༽……。

けれども、待てど暮せどアサマキシタバはいっこうに姿を見せない。
もしかしてフライング❓ それとも今年はムチャクチャ発生数が少ないとか❓ 或いは何らかの理由で、ここでは既に絶滅してたりとか❓ だから去年、6月上旬でも見れなかったのかもしれない…。頭の中をあっちゃこっちゃ色んな思考が駆け巡る。

とにかく、まさかの展開である。アサマって嘗ては珍品だったらしいけど、最近は普通種に成り下がったと聞いていたし、2015年には大発生したみたいで、その時の話も散々ぱら聞かされてもいた。何と大阪市内や神戸市内、果ては関西空港の外灯にもいたらしい。そんなワケだから、戦う前から楽勝気分だったのだ。
もしかして、樹液に来るのはメチャメチャ遅い時間だったりして❓ 前向きに考えるも、でもそんな情報、聞いたことがない。だいち、もしもそんな特異な生態をもっていたならば、沢山採ったことのある小太郎くんが必ずや言及している筈だ。

🙀ゲロゲロー。
結局、樹液に来たのはコクワガタとクロカタビロオサムシくらいだった。
クロカタビロオサムシが樹液を吸汁するなんて聞いたことがなかったから、一応証拠写真を撮っとくことにした。オサムシ屋さんにとっては、多分それなりに価値ある例だろう。オイラ、こう見えても小学生の時は、日浦(勇)さんに「オサムシ少年」と呼ばれていたのだ。オサムシの知識のベースはそれなりにある。

【クロカタビロオサムシ】

(2019.5.18 奈良県大和郡山市 矢田丘陵)

この画像を Facebookに載せたら、オサムシの研究で知られる神吉正雄さんからワザワザ連絡があったくらいだから、かなり珍しい例のようだ。と云うことで、この写真はニュー・サイエンス社の学術誌『昆虫と自然』にも掲載された。
エヘヘ(^^)ゞ、タダではコケない男なのである。

(ノД`)グスン。そんなこと言ったって、所詮は負け犬の遠吠えである。現実は惨敗なのだ。夜道を1時間半、暗澹たる思いで駅まで歩いて帰ったよ。

 
2019年 5月23日

前回採れなかったので、満を持して5日後に再訪した。
5月下旬ならば、絶対に発生している筈だ。それでも会えないとなれば、ここには居ないということだ。捜索は振出しに戻る。つまりイチから場所の選定をし直さなければならない。

まさか、そんなわきゃなかろう。たかだかアサマキシタバだ。大丈夫だろう。そうは思うが、正直なところ半信半疑だった。
夜の森を一人でウロウロしてるだけでもストレスなのに、また採れないとなると最悪な気分になること必至だ。それだけは何としてでも避けたいところだ。
それにアサマで2連敗なんかしたら、小太郎くんあたりに何を言われるかワカったもんではない。もし今日も採れなかったら、黙っておこう。2連敗の事実は闇に永遠に葬り去ろう。

午後7時。
やがて日が沈んだ。この黄昏から夜へと移る時間帯は毎回心がゾワゾワする。逢魔が刻(おうまがとき)なのだ。この時間帯が暗闇よりも寧ろ恐かったりもする。これは来たるべく黒い闇を怖れて心が敏感になっているからだろう。口裂け女が現れるのも、この時間だというしね。

『ワタシ、キレイ❓』

😱ゾクッときた。口裂け女のセリフを思い出して、背中に悪寒が走ったのだ。そして、もしも口裂け女が出たらと想像してしまったのである。マジ、それ怖すぎー😭。
あんなもんに横走りで追い掛け回されたら、😭涙チョチョギレで超マッハで走らねばならぬ。でも口裂け女は100メートルを5秒で走るというから、小学校6年間と中学3年間、ずっとリレーの選手でトップかアンカーをつとめ、100メートルを12秒フラットで走れたワシでもソッコー追いつかれるだろう。そして、そして…。
次々と、その後のヤバい展開の映像が浮かんでくる。
いかん。恐怖の連鎖反応じゃ。恐怖が恐怖を呼んでおる。想像力こそが恐怖を増幅させるのだ。これ以上想像したら、発狂してしまう。
 
負の脳内物語を全て頭から遮断し、心頭を滅却させる。
 
٩(๑`^´๑)۶、ヤアーッ❗

『臨、兵(びょう)、闘、者、皆(かい)、陣、烈、在、前(ざん)、オンソワカー❗』(註1)
 
左腰から右上に手刀でキレッキレで、空を「九字切り」する。
念の為に同じ呪文を唱えながら、神様の形を真似て手指を結び、「契印(手印結び)」も行う。
もう気分は、陰陽師 安倍晴明じゃよ。式神も出したろか、ワレ。
  
7時20分。
空はまだ仄かに明るかったが、森の中は真っ暗になった。
闇の物語の始まりじゃあ〜と思ったら、らしきものが直ぐにパタパタと飛んで来た。そして、先日クロカタビロオサムシがいた木と同じところに止まった。
たぶんアサマキシタバで間違いなかろう。この時期にいるカトカラはアサマしかいない。何だかε-(´∀`*)ホッとする。

ヘッドライト、オーン💡
網を構えて距離を詰める。緊張感は、さしてない。会えたと云う安堵の心の方が強かったのだろう。
取り敢えず、💥ダアリャー。網を幹に強く叩きつける。すると、驚いた彼奴(きゃつ)は自ら網の中に飛び込んできた。
もう、この採り方もお手の物である。網の面を正確に幹と合わせる事と、力加減さえ間違えなければ、ほぼ百発百中だ。

今思えば、この頃(2019年初夏)はまだ、こんな博奕度の高い採り方をしてたんだね。もっと楽勝の採り方を編み出したのは、もう少し後の事だったわ。たぶんカバブキシタバかマホロバキシタバの時だね(註2)。

素早く毒瓶にブチ込み、〆る。
暫く経ったところで取り出し、手の平に乗せる。

【アサマキシタバ ♂】

(裏面)

冒頭に『もしもこの年、2018年に最初に出会ったカトカラがアサマキシタバだったなら、黄色いカトカラには興味を持たなかったかもしれない。』と書いたように、その第一印象は酷いものだった。カトカラを本格的に集めようと思っていたから、採れたのは素直に嬉しかったが、一方、右脳は別な評価を下していた。
『チビだなあ…。それに何だよ、コイツの下翅。黄色いとこが少ないし、オマケにその黄色に鮮やかさがまるて無いじゃないか。薄汚れてて美しくないなあ。それに何だか毛深いや。』
正直、お世辞にも全然魅力的には見えなかったのである。

その後、この日は4、5頭程が飛来した。
ド普通と聞いてたけど、今回そうでもないと実感したよ。その年により発生数の増減が激しい種なのかもしれない。

 
2019年 6月3日

♀があまり採れていなかったので、もう1回訪れた。
この日は小太郎くんも参戦してくれた。

コナラにウスタビガの幼虫がいた。

【ウスタビガ 終齢幼虫】

一瞬、持って帰ったろかと思ったが、やめた。
面倒くさがりやの自分には飼育は向いていないからだ。それに、尻の一部が茶色い。小太郎くん曰く、寄生されてるかも…と云う意見もあったしさ。

この日も日没後、暗くなったら、アサマくんたちが樹液に飛来した。やはり飛来時刻は早い。
で、いくつか連続でゲットしてソッコー飽きた。

 
2019年 6月6日

この日は、夕方に生駒山地の枚岡にウラジロミドリシジミの様子を見に行った。

【ウラジロミドリシジミ ♂】

こんなに美しいのに、酷い和名だなと思う。
何で、この色にフォーカスしないのさ。

たぶん、この裏面からのネーミングだと思うけど、もっと他に名付けようがあっただろうに。
学名は、Favonius saphirinus。小種名の語源は宝石のサファイアだぜ。学名が先に有りきの和名の命名だろうから、より想像力の欠如と言わざるおえない。

折角だからと、ゴージャスな夕日を見て帰ることにした。

けど、ついでに夜までいた。
 

 
べつに夜景を見たかったワケではない。理由は他にある。
生駒山地の昆虫調査をしている東さんが、フシキキシタバの記録が無いと言っていたのを思い出したのだ。
矢田丘陵にフシキキシタバがいるなら、隣の生駒山地にいないワケがなかろう。それって、蛾屋の怠慢じゃないか❓だったら、それをお茶の子さいさいで証明してやろうと云う心が芽生えたのである。負けず嫌いのイヤらしい性格なのだ。
しかし、同時にこうも思っていた。東さんは協力者が少ないのに真面目に調査してはるみたいだし、世話になってるところもあるから少しは貢献しようとも思ったのである。嘘じゃなくて、そう云う殊勝な心もちゃんとあったんだかんね。

それに樹液が出ている木を探しておいて損はない。
10年ここに通っているが、いまだもってスミナガシ(註3)の♀が一度も採れていないんである。どころか見たことさえ殆んど無い。どうやらメスは、ほぼ樹液でしか採集は望めないようなのだ。でも、枚岡って意外と樹液がバシバシ出てるような御神木的な木が無いのだ。だから、そういう木を昔から探しているのだが、標高の低いイージーな場所では、ナゼか見つからない。昼間に樹液の出ている木を探すのは意外と難しいのだ。むしろ夜の方が意外と見つけ易かったりする。その事に気づいたのは、カトカラ採りもするようになった去年(2018年)だった。夜は視界が制限されるから、かえって集中力が高まるし、蛾、特にヤガの仲間は懐中電灯の光が当たると目が光るから目印になるのだ。また昼間よりも樹液に集まる昆虫が多いので、目につきやすい。昼間はあまり見ない夜行性のカブトムシやクワガタなどの大型甲虫も集まるから、よく目立つのである。

日没後、ウロウロしていると懐中電灯の光がアケビコノハの姿を捉えた。

【アケビコノハ】

(2019.6.13 )

コヤツが木に下翅を開いて止まっていると云うことは、樹液が出ている証拠だ。(^3^♪オホホ、ソッコーでフシキがおることも証明したるわい(ノ`Д´)ノ❗

そして、別な木だが樹液に来てるアサマも3頭見つけた。
しかし、3頭とも羽が傷んでいたのでリリース。場所は違えど、初見からまだ10日だぞ。ボロになるのが早過ぎやしないか❓
 
アサマがいるなら、フシキも採れんだろ。採れなきゃ採れないで、いないって逆証明にもなりうる。ただ、季節的には発生初期だろうから、まだ発生していない可能性もある。かりに発生していても、出始めで個体数は少ないだろう。

結局、フシキキシタバは樹液には来なかった。
だが、帰りの夜道で飛んでるのをシバいたった。

【フシキキシタバ ♂】

やはり、いたね。
ザマー、見さらせである。センスを証明されたいがために虫採りやってんのかもなあ。
 
 
2019年 6月12日

この日はアサマではなく、フシキキシタバを探しに矢田丘陵へとやって来た。

ガクアジサイがひっそりと咲いており、夕暮れのそよ風に嫋(たお)やかに揺れている。

予想したとおり、フシキキシタバは最盛期に入ろうとしていた。

【フシキキシタバ♂】

どれも新鮮な個体ばかりだ。

【同♀】

アサマと比べたら、遥かに美しい。

アサマも飛んで来たが、既に古びたボロ個体ばかりで数も少なかった。見たのは2頭だけだ。初見から20日足らずで、この状態とあらば、やはりアサマって発生期間が短いようだね。
 
 
2019年 6月13日

翌日に兵庫県宝塚市にカバブキシタバの下見に行った時も、大量のフシキキシタバに混じってボロボロのアサマを1頭だけ見た。この例からも、成虫の発生期は他のカトカラと比べて、比較的短いのではないかと思う。

2019年に採ったアサマキシタバの展翅画像を貼り付けておこう。

【Catocala streckeri アサマキシタバ♂】

形はカッコイイと思うんだけど、下翅が汚い。
それにしても、酷い展翅だな。上から3、4つまではまあまあだけど、段々酷くなっていってる。

【同♀】

更にメスは目を覆いたくなるような出来だよ。このテキトーさ加減、対象に対する愛が感じられないねぇ。これは年を越えたゆえ、カトカラに対する概念がリセットされて、アサマを見て改めて所詮は蛾だと云う認識に逆戻りしたのかもしれなーい。オイラ、元々は生粋の蛾嫌いなのだ。

それはさておき、何か♀の触角が短くないかい❓

【♂裏面】

【♀裏面】

裏展翅のコレも♀の触角が短いぞ。
気になるから、石塚さんの『世界のカトカラ』を開いてみた。

♂と比べて、やっぱ少し短くなくねぇか❓
今一度、アチキが展翅した♂の画像と見比べて戴きたい。明らかに♂の触角は長いよね。でも、この一つだけじゃ何とも言えない。慌てて他の♀画像に目を転じる。

あっ、コレも短い。と一瞬思ったが、左の触角はそうでもない。
٩(๑`^´๑)۶ハッとさせんじゃないよ。

一瞬、これも短いと思ったが、コチラは右の方の触角が長い。
長い方が本来の長さだろうから、たぶん♀の触角が短いなんて気のせいだろう。

あっ、短い❗とコレも思ったが、よく見れば左側が少し長いな。やっぱ、きっと気のせいなんだろうな。
 
それはさておき、しかしこうも触角の先って切れるもんかね❓
何か理由があるのかもしれない。元々メスは左右の触角が同じじゃない個体が多いとか、メスって極めて触角の先が折れやすいとかさ…。
(ノ´・ω・)ノ ミ ┻━┻、んなワケあるかーい。理由として論理的に苦しいわ。アカンな。
 
おーっと、そうだ。オスも見てみよう。
 

 
ヽ(`Д´#)ノクソッ、コイツもかよ。右の触角が折れとるのか短いじゃないか。アサマって、そんなにも触角が折れやすい種なのか❓
それはさておき、左の触角はメスよかオスの方が長いような気がする。けど、微妙な長さではあるんだよね。上から3番目、番号10のメス個体も触角が長めだからなあ。
ならばと他のオスを探すが、(・o・)ありゃま。でも他にオスの標本が図示されてない。オスはこの1個体だけなのだ。それじゃサンプルが少な過ぎて、これ以上は何とも言えないや。
 
異常型だが、メスをもう1点。


(以上すべて、石塚勝己『世界のカトカラ』より)

これは明らかに短いような気がするぞ。
けど短い感じたものが偶々(たまたま)連続したから、そうゆう印象を最初に持ってしまっただけなのかもしれない。こんなどうでもいいような事をグダグダ書いてたら、レベルが低いと笑われそうだな。声高に論じるテーマとも思えんしなあ…。

まあ気のせいだとは思うけど、今年(2020年)、確認しに行こう〜っと。
 
                         つづく
 
 
追伸
終わりそうで終わらない物語みたいでヤだけど、アサマキシタバの話は尚も続きます。このままいくと3話構成にはなる。3話で終わることを祈るよ。

えー、この文章は3月の時点で下書きが粗方出来上がっておりました。でも、触角問題と生態面でハッキリとしないところがあって一旦お蔵入りになってました。そこにある程度の目処(めど)がついたので、晴れて蔵出しとあいなったワケである。
けんど、シリーズ初回にも拘らず、改めて文章の手直しを始めだら、大脱線。要らぬところで筆が止まらず、大幅訂正加筆の1.5倍以上に膨れ上がってしまった。我ながら、愚かじゃよ。

愚か者ゆえに、次回は触角問題に切り込むでぇ〜。まだ一行も書いてないけどー。
嗚呼、次もどうせ大脱線になりそうだ。自分にウンザリだよ。
 
 
(註1)『臨、兵、闘、者、皆、陣、烈、在、前』オンソワカ
悪霊退散の呪文の1つ。九字を唱える事でその場を清め、結界を張ることも出来る。
これは「仏の言葉」や「秘密の言葉」と言われる真言の一種で「神様の軍隊が通るため、立ち去るように」という最終通告を意味している。
また九字護身法には、悪霊や邪気、災いを祓う浄化効果だけでなく、その人が持つ霊力を高めて幸福へと導く開運効果もあるとされている。

オンソワカの「オン」は、真言の頭につける慣用句。「帰命する」という意味。
「ソワカ」は聖句の末尾につけられ、「成就あれ」の意味。

 
(註2)カバブキシタバかマホロバキシタバの時だね

【カバブキシタバ】


(2019.6 兵庫県宝塚市)

上がオスで、下がメスである。次のマホロバも同じ。

 
【マホロバキシタバ】


(2019.7 奈良市)

木の幹に止まったカトカラの簡単採集法は、たぶんカバブキシタバの時の後半辺りで気づき、マホロバの時に確立した。採り方は、マホロバの回の時にでも詳しく書くつもりだ。まあ、蛾捕りの天才であるマオ(小林真央くん)も、その採り方を実践してたから、知ってる人は知ってんだろうと思うけどね。

 
(註3)スミナガシ 
タテハチョウ科に属するチョウの一種。

【スミナガシ 春型♂】

 
(裏面)

(2018.4.28 東大阪市枚岡公園)

名前の由来は、平安時代から続く伝統的な芸術技法であり、遊びの一種でもある「墨流し」から。墨汁を水に垂らした際に出来る模様、及びそれを紙に写したもので、その模様を布に染めた物のことも指す。