シルビアの迷宮 最終章

 
 最終章『さらば、シルビア』

 
大阪空港周辺のシルビアシジミがボルバキア感染しているなんて知らなかったから、とても驚いた(第三章『ボルバキアの陰謀』)。
でも採っても採ってもメスばっかという記憶が全然ないんだよなあ…。もしかして、もうとっくの昔に正常な性比に戻ってんのかあ❓
気になったし、前回訪れた時は♂が一つしか採れなかったしなあ…。しかも思った程には鮮度も良くなかった。あと青い鱗粉が発達した♀もまだ欲しい。
と云うワケで、11月13日に再び伊丹市を訪れることにした。

今回も前回と同じくママチャリで難波から伊丹を目指す。正直、相当遠い。ママチャリで移動する距離ではない。だから行く前からメゲそうになる。でも運動不足だし、途中クロマダラソテツの発生地も見つかるやもしれぬと考えた。たらたら二時間も漕げば、そのうち着くだろう。

今回はいつものポイントは、あえて外すことにした。
なぜなら毎年のように通ってるので、性比異常なんて特にないと知っているからだ。それに前回は3頭しか見かけなかった。おそらく今回も少ないだろう。そもそもが、そんなんじゃ性比異常の調査もヘッタクレもなかろう。そこで、前から居る事は知ってたけど、人が多いだろうから今まで避けていたポイントへ行くことにした。

いつものように先ずは飛行機の着陸を楽しむ。

 

 
これだけ近くで飛行機の着陸を見られる場所は他にあんまり無いと思う。CMでも使われてたしね。
キューン、ゴオーッ❗何せ飛行機が物凄く近くの真上をスゲー迫力で通るのだ。通過したと同時に大きな砂塵が舞うくらいなのだ。

 

 
ひとしきり見て、満足したところでポイントへと移動する。キューン、ゴオーッ。

何やかんやで結局着いたのは、正午前だった。
寄り道をアチコチしたとはいえ、二時間半もかかってしまったなりよ。

 
早速、シルビィーちゃんをゲット。

 

 
相変わらず、何て小さいんざましょ。

 

 
腹のぷっくり感からすると、♀だね。
えー、環境はこんな感じです↙。

 

 
いわゆるシバ型草原というやつだ。
草刈りした人為的な環境だけどね。でも草刈りがされないと、シルビアは生きてはいけない。ほったらかしにすると、あっという間に雑草ボーボーなのじゃ。草丈が高くなると、幼虫の食草であるシロツメクサ(🍀クローバー)やヤハズソウが雑草軍団に負けてしまい、シルビアもそれと共に姿を消してしまう。ここでは、人間様々なのだ。放置するだけが自然保護ではないのだよ。ある種の植物や昆虫にとっては、人為的な環境が保たれないと生存できないのである。

シルビアはここを地を這うように飛ぶ。
しかもチビッコでそこそこ速いから、時々見失う。

試しにスマホで生態写真を撮ってみることにした。
地這いシジミをゆっくりと追いかけ、止まるのを待つ。

止まって直ぐに開翅した。また♀だね。
日光浴をしているのだ。ちょっと愛らしい。

 

 
アハハ( ̄∇ ̄*)ゞ、全然ピント合っとらーん。
スマホで虫を撮るのは至難のワザだ。相当至近距離まで近づかないとピントが合わんのだよ。
這いつくばって撮ったのに、何か腹立つなあー。
しかも中年のブサいくカップルの訝しげな視線に晒されてだ。ブサいくカップルのクセに蔑んだ目で見やがって。プンプンι(`ロ´)ノ。

今度は何とかピントがあった。
でも、このワードプレスのブログに画像を貼ったら、ナゼだか死ぬほど画質が落ちる。ピントが合ってても、ピンボケみたくになる。Facebookだと全然そんな事にはなんないぞ。この糞プロバイダーめがっ(# ̄З ̄)❗

 

 
ホラね。まあ、ワシの生態写真なんかに期待してる人なんて誰もいないから、別にいいんだけどね。
あっ、別によくないぞ。食べ物の回で「文章は良いのに、写真がどうしようもないくらい酷い」とかクソミソに言われたりするのだ。食べ物で写真がダメって致命的じゃないか。

 

 
腹が隠れて見えない。でもこの円い翅形からすると、コヤツもまた♀だな。

どうせスマホではロクな写真なんて撮れやしない。
キレイな♂と青い♀だけ選んで、少しだけ採って帰ろっと。

 

 
\(◎o◎)/ゲゲッ、また♀だ。
鮮度からすると、♂もいなくてはオカシイ。なのにボロの♂さえ飛んでない。もしかして、そうなのか?…。

その後も♀のオンパレードが続く。30頭以上は網に入れたけど、全部♀だった。
ここまでメスばっかだなんて、完全に性比がオカシイ。コレって、どうみてもボルバキア感染じゃなくなくねえか❓
まだ、悪虐ボルバキアは健在だったのね。ここの個体群は完全に奴のコントロール下にあるってワケだ。恐るべし、ボルバキア細菌❗

帰り際に、ようやく♂をゲット。

 

 
ボルバキアに殺されまくるオスも大変じゃのぉー。同じ性の身として、心から同情するよ。
でも、よくよく考えてみれば、コレってオスにとってみればウハウハのハーレムかもしんない。なんだよ、それって選びまくりの、やりまくり三助じゃねえか。(*´∀`)羨ましいにゃあ。

芝生に足を投げ出し、飛行機が轟音と共に着陸してくるのをぼんやりと眺める。
走り回る小さな子供たちに、傾きかけた秋の日射しがやわらかに降り注いでいた。

                    おしまい

 
 
一応、この日採ったシルビアの展翅画像を貼っつけておきます。

 
【シルビアシジミ♂】

 
前回の展翅よか、だいぶとマシになった。
リベンジだし、たった1頭だけだったから真面目にやりましたよ。

 
【シルビアシジミ♀】

 
低温期型の♀だね。
何か気にくわなくって、触角をいじる。

 

 
あれっ?、片方の触角が折れてる❓
大丈夫、大丈夫。折れてなーい。単に右の触角が針穴の跡とくっ付いて見えるだけだった。
でも、触角の角度は前の方が正解だったな。いらん事してもうた。

コレにて終了。もう今シーズンはシルビアに会いに行くこともないだろう。
さらば、シルビア。また来年会おう。

 
追伸

思いの外、長編になってしまった。
最初のタイトルは、ただの『シルビアジジミ』だった。当初は2、3分で読める軽いものを予定していたのだ。取り敢えずシルビアの様子を見に行って来ました~的な簡潔な報告文のつもりだったのさ。
しかし、シルビアの和名の由来が微妙に違うことから脱線が始まった。で、破滅的にどんどん長くなっていったのさ。その中でタイトルも次々と変遷してゆく。
先ずは『ラビリンス・オブ・シルビア』に変えた。何となく『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』というスコセッシの映画っぽいからつけた。(;・∀・)あで❓けどよくよく見れば、あんま似てねえな。もう、そんなの\(^o^)/雰囲気、雰囲気~。
でも何かシックリこなくて『迷宮シルビア』に改題する。それでもどこか納得いかなくって、ひっくり返して『シルビアの迷宮』にした。
しかし、過去にフタオチョウか何かの回で迷宮は使ったもんなあ…。タイトルに矢鱈と迷宮とつけたがる男だとは思われなくないし、ここでまたしても変転。『シルビアのミステリー』となる。しかし、ダサい。
あっ、「しかし」とか「でも」が多くてスマン。
で、またまた変えて、結局のところ今のタイトル『シルビアの迷宮』に戻った。そのかわり各章に分断して、それぞれの章に小タイトルをつけることにした。
けんど、執筆途中に何度また題名を変えてやろうかと思ったことか。けれども、それに代わるものがついぞ頭に浮かんでこなかった。そのうち、どんどん話は迷宮に入っていって、まあそれなりにタイトル的には相応しくなってきたし、まっ、いっか…となったワケ。
まあ、どうであれ、このクソ長い文章を読んで下さった方には感謝です。

余談だけど、最終回の小タイトルは最初『ザ・ファイナル』だった。でもそんなに劇的な展開になるワケでなし、大袈裟過ぎるからやめといた。けんど、いつか使ってやるからね。

虫の次回作は、またカトカラのシリーズに戻ります。
チキショー、年内にはカトカラの連載を終わらせてやるつもりだったのにぃ。それがまさかのシルビア城の迷宮で彷徨ってしまうとはね。何だか足元をすくわれたような気分だよ。
年内だなんて、もう絶対に無理やんけ(=`ェ´=)

 

シルビアの迷宮 第三章

 
 第三章『ボルバキアの陰謀』

 

 
シルビアシジミの話はまだまだ続く。
 
それにしてもシロツメクサ(🍀クローバー)を食草とするならば、もっと分布を拡げても良さそうなものなのに、何で❓ 謎だよね。シルビアシジミって、そんなに移動能力が低いのかよ❓

さあ、そろそろ坂本女氏の論文に戻ろうか。
他にも平井規央氏等のシルビア関連の論文を見つけたので(註1)、それと併せて要約しよう。

平井規央氏の論文によれば、大阪空港周辺で分布調査を行ったところ、空港周辺から離れれば離れるほど個体密度が低下するようで、1㎞も離れると殆んど見つからないそうだ。
そっかあ…、やはり極めて移動性が低いチョウなんだね。

シルビアとヒメシルビアの種間関係だが、遺伝子解析(ミトコンドリアDNA解析)の結果、かなりの相違があることが明らかになり、全く別系統の種であることが判明した。のちに形態の相違点も見つかり、それらが2006年の別種記載の決め手となったようだ。
形態的な違いは、シルビアはヒメシルビアよりも裏面各室の小黒斑が大きく、前後翅亜外縁の黒斑列が各室の小黒斑と同等に発達している点、後翅表面外縁の黒斑列はシルビアでは波状に、ヒメシルビアシジミでは線状となる傾向が強いなどである。

 
(出典『福岡の蝶』)

(出典『カーコとダンナのお出かけ写真』)

 
上がシルビアの裏面の外縁の黒斑列で、下がヒメシルビアのものである。
言われてみりゃ、そんな気もするが、正直言うと微妙だなあ…。このシルビアの個体は比較的波状だとわかりやすいけど、いくつか確認したら判然としない個体も結構ある。識別点としてはファジー過ぎないかい?
とはいえ、両種を並べたら、裏面をパッと見ただけで区別できちゃうんだけどさ。ようはヒメシルビアは小っちゃくて、裏面の斑点が小さくて薄い。それで充分かと思うよ。

ヒメシルビアは最近になって急速に分布を拡げているそうだ。一方シルビアは極めて移動性が低いワケだから、それも両者が別種であるという証明の一助になるのではなかろうか❓
そういう事を書いている文章を見た事ないけどさ。

両種間での交配実験も行われている。
大阪府産のシルビアシジミのメスと沖縄県八重山産のヒメシルビアのオスとを円筒型ネットに入れて配偶行動を観察した結果、ヒメシルビアのオスはシルビアのメスに強い関心を示し、交尾が成立した。その結果、いずれの母チョウから得られた子世代(F1世代)もオスのみが羽化し、オスの約半数のF1個体では幼虫期に発育が遅延し、孵化後50日以上経過しても蛹化に至らなかったという。
羽化したオスは両種の中間的な形質を示すそうだ。

 
(出典『Potential for interspecific hybridization between Zizina emelina and Zizina otis(Lepidoptera: Lycaenidae)』) 
左端がシルビアの♂。右端がヒメシルビアの♀。真ん中2つがハイブリッドの♂である(スケールバーは5mm)。

 
これらと未発表データ(坂本・平井ほか)の交配実験の結果、別種であることが裏付けられるという。ようはF2世代、特にメスがちゃんと羽化してこないから別種だってワケだね。

それでも両者を別種だと認めない人もまだ結構いるようだ。頑固だなあと思うけど、種の概念なんてものは、所詮は人による勝手な線引きでしかすぎないって事の逆説的証明だとも言えるかもね。

それはさておき、問題なのはシルビアがヒメシルビアのオスから求愛行動を受けることが明らかになった事だ。これはシルビアとヒメシルビアが同所的に生息する場合、つまりヒメシルビアがシルビアの分布域に侵入したとしたら、繁殖干渉が起こる可能性があるということだ。
実際、最近になってヒメシルビアが分布を北上させており、屋久島でも確認されるようになった。そのため、隣の種子島にいるシルビアとの交配の可能性が指摘されている。となると、遺伝子汚染が進み、シルビアが絶滅してしまうって事なのかな❓それとも、いずれ新種へと進化してゆくって事❓
何れにせよ、指摘されてから何年か経っているから、或いはもう心配されたことが既に起こっているかもしれないね。

また実験では、ヒメシルビアシジミのメスは個体によってはシルビアの食草ミヤコグサに興味を示し、多数の卵を産み付けたそうな。しかし、孵化した幼虫にミヤコグサを与えたところ、発育は遅延し、多くの個体が若齢期に死亡したという。
反対にシルビアの幼虫に、ヒメシルビアの食草コメツブウマゴヤシを与えて飼育したところ、25℃長日では 4齢を経過し、幼虫期間は15~18日。シルビアシジミとほぼ同様とあった。羽化したとは書いていないが、死亡したとも書いてはいないので、おそらく成虫にはなったのだろう。それにしても、これまた謎だな。一方は育ち、一方は育たないというのは両種間の関係性において、何らかの意味と云うか、示唆されるものがあるのだろうか❓
考えてみたけど、何にも浮かばないや(´▽`;)ゞ
いや待てよ。シルビアはヒメシルビアから派生した種で、元々コメツブウマゴヤシを食べていたものが分布を東アジアに拡大する過程でミヤコグサに食性転換したとは言えまいか。
ありゃ❓、でも遺伝子解析では別系統だとか言ってなかったっけ❓まあ遺伝子解析の結果が絶対ではないもんな。情報を鵜呑みにするのもどうかとは思う。

因みにヤマトシジミのオスもシルビアシジミのメスに強い興味を示すそうだ。
そういえば、昨今シルビアと比較的近縁なヤマトシジミとの交雑種(ハイブリッド)が出現しているというネット情報もあったなあ。両種の特徴がそれぞれ翅裏の斑紋や翅表の色彩等に現れているとか言ってなかったっけ…。

調べてみたら『ホタルの独り言 part2』というサイトの記事だった。それによると、栃木県の鬼怒川流域や千葉県の一部ではヤマトシジミとのハイブリットが出現しているそうだ。ハイブリッド個体は翅形や色彩はシルビアシジミでありながら裏面の班紋はヤマトシジミというものや、翅形と色彩は全くヤマトシジミでありながら裏面の班紋はシルビアシジミという個体がいるそうである。
元ネタの論文はどんなのだろう?と思って探してみたが、それらしき論文は見つけられなかった。
だが『蝶屋(tefu-ya)のブログ』というサイトに、ほぼ同じ文面があった。これはどうやら、そこからの引用のようだ。
ということは、元々は柿澤清美氏の発信って事か…。
となると、私見が強そうだから、ちょっと気をつけないといけないな。けど、もしこれが事実だとしたら、考えさせられるところはある。
そもそも種って、いったい何なのだ❓ 種の概念がワカンなくなってきたよ。

話はまだ終わらん。
 
論文を読んで一番驚いたのは、昆虫類に性比異常を起こさせる事で知られる共生細菌ボルバキア(Wolbachia)の存在だ。
きっかけは、2002年に森地重博氏が飼育した大阪空港周辺の個体の子世代が、全て♀になった事例であった。そこから、坂本女氏や平井氏はボルバキア感染の可能性を疑った。
ボルバキア感染といえば、タテハチョウ科のリュウキュウムラサキが有名だよね。サモアだったっけ(註2)? そこのリュウキュウムラサキは♀ばっかだと聞いたことがある。あとホソチョウの仲間なんかにも例があったと思う。いわゆる細菌によってオスが成長できなくなるチョウの病気だったよね。
それにしても、メスばっかで生き残ってゆけるのかね❓リュウキュウムラサキは♀だけで繁殖できる単為生殖(註3)ではなかったよね❓
そもそも単為生殖のチョウって、この世にいたっけ❓少なくとも自分は聞いた事がない。

ここで一応ボルバキア感染について説明しておこう。
ボルバキア(Wolbachia pipientis)は、節足動物やフィラリア線虫の体内に生息する共生細菌の一種で、特に昆虫では高頻度でその存在が認められる。ミトコンドリアのように遺伝子として母から子へ伝わり、昆虫宿主の生殖システムを自身の都合の良いように変化させることから、利己的遺伝因子の一つであるとみなされている。
また遺伝子解析では、昆虫を殺して体を乗っ取ることで有名なキノコの仲間、冬虫夏草と近縁関係にあることもわかっている。

ボルバキアって、如何にも悪い奴的な名前だよなあ。
『恐怖のボルバキア』『怪人ボルバキアの呪い』『寄生怪獣ボルバキア』『ボルバキア星人の逆襲』『悪辣ボルバキアの罠』『殺戮のボルバキア軍団』etc…。なんぼでも浮かぶわ。シルビア姫に👿悪魔の手が忍び寄るのら。God save the princess silvia. おぉ神よ、シルビア姫を守りたまえ~。

ボルバキア感染には、以下のような4パターンがある。
マジ、ドえりゃあー悪い奴っちゃでぇ~Ψ( ̄∇ ̄)Ψ

〈1〉オス殺し型
オスの卵のみを殺して、メスだけが孵化するようにする。オスを死滅させることで、メスが餌を独り占めする事となり、ボルバキア菌の繁殖には好都合になるという仕組みだ。
(おみゃーに与える飯はねぇだがやー(#`皿´)❗)

〈2〉単為生殖誘導型
メスがオスなしで、メスのみを産んで繁殖できるようにする。
(男なんて、この世に必要ありませんわ、( ̄∇ ̄)オホホホホホ…。)

〈3〉性転換型
宿主のオスをメスに変えてしまう。
(キャア~、世の中みんな総オカマ化よ\(^-^)/)

〈4〉細胞質不和合型
バルボキアに感染したオスが、感染していないメスの繁殖を妨害する。この場合、オスの卵は殺されるが、メスの卵は殺されることなく正常に孵化するため、世代を積み重ねてゆくと、感染したメスのパーセンテージが集団内で高くなってゆくという手の込んだ仕組みである。
(ジワジワ~、ジワジワ~Ψ( ̄∇ ̄)Ψ、真綿で首を絞めるようにあの世に行ってもらいまっせぇ~)

ムチャクチャ悪い奴やんけ。
でも、人間はもっとズル賢いかもしれない。
近年では、このオス殺し、特に細胞質不和合の仕組みを利用して、蚊が媒介するデング熱やジカ熱などを撲滅する試みが為されている。病の原因となるネッタイシマカを人工的にボルバキアに感染させて大量に野外に放ち、病原体の媒介効率を下げようと云うワケだ。
(;・ω・)ん❗❓、でも蚊のオスって血を吸わないんじゃなかったっけ❓血を吸うのはメスだけだよね。だったら、意味なくね❓

その疑問は扠て置き、話を本筋に戻す。

DNA解析で大阪空港周辺のシルビアのボルバキア感染の有無を調査したところ、採集された個体の多くで予想通りにその感染が認められた。確認されたボルバキアは2系統あり、性比異常が認められた母蝶からは共通のボルバキア系統が確認された。この事から、この性比異常は、ボルバキアによって引き起こされる「オス殺し」であることが明らかになった。

一方、もう1系統のボルバキアでは性比異常は確認されていないが、「細胞質不和合」などの寄主操作を行
っている可能性が考えられている。
兵庫県西部など近隣のミヤコグサに依存している個体群では感染が認められなかったようだ。この事から、昆虫の寄主植物利用の変化に体内の共生細菌が深く関わっているという報告もあるので、シルビアにおいても細菌による寄主操作によってシロツメクサに寄主植物の転換が行われた可能性があると推察している。
しかし、その後の実験では、まだそこまでは証明されていないようだ。因みに、千葉県や韓国においてもシロツメクサに依存する個体群がおり、ボルバキアの感染と性比異常を見つかっている。神出鬼没だぜ、ボルバキア。

それにしても、ボルバキアってのはエグいわ。
自身が生き残る可能性を高めるために、宿主をコントロールするだなんて酷いやり口だ。しかも、宿主が産んだ卵の半数であるオスを抹殺するだなんて、血も涙もありゃしない。オスを標的としたテロであり、ジェノサイドだ。男の敵だ。悪虐非道の限りを尽くす、とんでもねぇ野郎だよ。
ここまでくると、もはや謎とかミステリーの範疇じゃなくて、ホラーの世界だな。もうパラサイト・ホラーじゃんか。
人にも、そんな悪い人がいるかもしんないから、皆さん、気をつけてネ。特に若い女子は気をつけなはれ。世の中には、ボルバキア菌みたいな相手を自在にコントロールする悪い男がいるからネ。
嗚呼、アタシもヒモ男になりたい。

 
                     つづく

 
追伸
ここで漸くクロージングに入れると思ったら、また要らぬモノを見つけてしまった。なので、まだ話は次回へと続くのである。
いつまで続くんだ❓この出口の見えないシルビア・ラビリンスのループは❓
もしかしたら、ワシもボルバキア菌みたいなものに知らず知らずに乗っ取られていて、書き続けさせられているのかもしれない。でないと、こんなパラノイア的文章を書き続けている理由の説明がつかんよ。

 
(註1)他にもシルビア関連の論文を見つけたので

・坂本佳子(2015).シルビアシジミの生息域外保全に向けた保全単位の決定(昆虫と自然,50(2))
・坂本佳子 (2015).絶滅危惧種シルビアシジミにおける遺伝子構成とボルバキア感染(昆虫DNA研究会ニュースレター,23,11-18.)
・平井規央(2016).シルビアシジミのホルバキア感染と性比異常(昆虫と自然,51(1))

 
(註2)サモアのリュウキュウムラサキ

【Hypolimnas bolina ♂】

 
サモアとフィジーのリュウキュウムラサキは、rarikっていう亜種なんだけど、画像が見つけられなかった。太平洋のド真ん中だから♀は海洋型でいいのかなあ❓
リュウキュウムラサキの♂は何処でも同じような見た目だが、♀には地域によってヴァリエーションがある。
一応、この下に海洋型の♀の画像を貼っておくけど、サモアのがこのタイプなのかは自信がない。間違ってたらゴメンなさい。

 
(出典 2点共『Alchetron』)

 
サモアのリュウキュウムラサキはオス殺しボルバキアの蔓延が約百年近く続いていたが(Dyson & Hurst,2004)、その後数年でオス殺しに対する宿主の抵抗性遺伝子(優性の胚性因子:Hornett et al,2006)が急速に広まり,集団全体でボルバキアに感染しているのにも拘わらず、オス殺しが起きなくなったことがわかった(Charlat et al,2007;Mitsuhashi et al,2011)。
興味深いことに,オス殺しが起きなくなることによって出現する感染オスは非感染メスと交尾すると細胞質不和合を引き起こすことが明らかとなった(Hornett et al,2008)。つまり、ボルバキアが持つ細胞質不和合を持つ能力はオス殺しによってマスクされていたことになる。
ボルバキア、恐るべしである。

 
(註3)単為生殖
メスがオスと交尾をしなくとも、単独で受精卵を産んでメス世代を繰り返すこと。
因みに、リュウキュウムラサキは単為生殖ではござんせん。

 

シルビアの迷宮 第二章

 
第二章『シルビアン・ミステリー』

  
でも、論文(註1)をチラッと見てアレルギー反応が出た。
シルビアの謎に翻弄され、もうウンザリなのだ。真面目に読む気にもなれない。ここは一旦、種解説にでも逃げよう。ケースによっては、そのまま逃亡、クロージングになってもいいや。

 
【シルビアジジミ】
シジミチョウ科(Lycaenidae)、ヒメシジミ族(Polyommatini)、シルビアシジミ属(Zizina)に分類される前翅長8~14mmの小型のシジミチョウ。

♂の翅表は紫色がかった青藍色で、春と秋の型に比べて夏型は外縁の黒帯が広くなる。♀の翅表は夏型は黒に近い暗褐色。春型と秋型は翅表基部にも弱い青藍色斑が出る。図鑑等には書かれていないが、私見では秋型の♀は晩秋になると、その青が広がる傾向があるように思う。
裏面は灰白色~暗灰白色で、小黒斑が散らばっている。秋と春には暗灰白色になる傾向が強い。
普通に産する近似種のヤマトシジミと比べ、表翅がより青く(ヤマトは水色系)、前翅裏面の中室内に黒点が無いこと、後翅裏面の外側より3列目の黒点列の前より2番目の黒点が内側にズレるために黒点の形成する円弧がここで分断される点で区別される。
基本。図鑑からパクったけど(*`Д´)ノ!!!でーい、こんなクソ難解な説明、一般ピーポーにはワカランわい❗特に後半はチンプンカンプンじゃい❗❗
もう画像を貼っとくワ。そっちの方がよほど解りやすかろう。

 
【シルビアシジミ 春型♂】

(2017.4.26 伊丹市)

 
相対的に春型が一番大きく、秋型、夏型の順に小さくなる。但し、あくまでも相対的であって、個体差の大小は結構ある。秋でも、たまに春並みに大きい個体もいたりするからだ。

(/ロ゜)/あっ❗、ここでヤマトシジミの画像を貼ろうとして気づく。
ヤマトシジミなんて、何処にだっているドがつく普通種である。ゆえに殆んど展翅したことがない。となれば、数ある標本箱の中から探し出すのは大変そうだ。採りに行った方が余程早い。そう思い、近所の公園に行くことにした。ヤマトくんなんぞ、その辺の児童公園に行きゃあ、大概いるのである。一般ピーポーでも、すぐ見つけられるよん💕。それくらいド普通種なのさ。ある意味、最も都会の環境に順応した賢(かしこ)チョウかもしれない。

しっかし、都会で網出すのって恥ずかしいねー。完全に挙動不審のオッサンだ。大の大人が網持って都市部をウロウロしてるんだから、そりゃあ注目浴びますよ。
網を出すか出さざるまいか迷ってたら、天気が悪くなり始めた。おまけに風も出てきた。
(*`Д´)ノえーい、もうしゃあないわい。人々の好奇の目を頭から追いやり、カバンから網を取り出す。
シャキーン(=`ェ´=)ノ❗いざ、ゆかん。チビどもを殲滅してくれるわ。

しかし思いの外、飛ぶのが速い。風も強くて、網を振ろうとしたら、スッ飛ばされていったりもする。段々、腹が立ってきて、アミ持って追いかけまくる。
ε=ε=(ノ≧∇≦)ー〇 待てぇ~、コンニャロー。
もうオジサン、ヤケクソである。もはや挙動不審者として通報されても仕方あるまい。

頑張って、何とか数頭を確保。

 
(2019.11.11 大阪市浪速区)

 
シルビアほどではないが、小さい。
一応、画像を拡大しておこう。

 

 
たぶん、♂だな。
パリエーションがそれなりにあるので、別個体の♂も貼っておこう。

 

 
シルビアよか、地色が白っぽい。
同じ灰色でも灰白色って感じだ。

♀の裏は微妙に色が異なる。

 

 
メスは薄い黄土色なのだ。
とはいえ、きっとオスみたく微妙な色なのもいるんだろうなあ…。ヤマトなんぞマジメに採った事ないから、どんだけバリエーションの幅があるのかワカラン。

まっ、前回のシルビィーちゃんと見比べてくんろ。

 

 
地色だけでなく、斑紋も微妙に異なることが解るかと思う。

お次は表側だ。

 
【ヤマトシジミ♂】
(2019.11.11 大阪市浪速区)

 
シルビアと比べて、色が水色っぽい青なのだ。
例外もあるが、ヤマトの方が下翅の縁にある黒点が目立つ個体が多い。

 
【シルビアシジミ 春型♀】
(2017.5.2 伊丹市)
 
【同春型♀】
(2017.4.26 伊丹市)

 
【ヤマトシジミ♀】

  
♀も色が違う。
どっちかというと、ヤマトは青というか紺色っぽい奴が多いんだけど、例外もあったりするから注意が必要。ヤマトの方が青が暗い色のものが多いかな。

そういえば、変なのもいた。

 

 
晩秋になると青くなる低温期型の♀かなと思ったが、腹部は♂っぽい。たぶん、♂かな…。普段、ヤマトシジミなんて採らないから、ホント、ワケわかんねえや。

翌日、間違いなく低温期型の♀を見つけた。

 
【低温期型♀】

 
やっぱ、変だと思った奴は♂だな。質感が全然違う。

採って時間が経ってるのに無理に生展翅したら、触角が折れた。結構、青が広がっている良い型なのに勿体ない。
何か悔しいので、標本箱を探したら、低温期型のメスが見つかった。

 

 
古い標本ゆえか、色が褪せて紫色になっている。
でも、こんだけ青い領域が広いとヒマつぶしに探してもいいなと思えてくる。

 
【シルビアシジミ裏面】
(2017.4.26)

 
【ヤマトシジミ裏面】

 
ヤマトは後翅中央斑列が弧を描くが、シルビアは列が乱れる。また後翅外縁の斑紋の感じが違う。外縁の内側2列目の紋が大きい傾向がある。あんまし図鑑には書いてないけど、自分はどっちかというと、そこで判別している。但し、ヤマトでも紋が大きいものはいるので、そういう場合は他の部分も含めて総合的に判断している。

まあ、これで違いがワカラン人は何度説明してもワカランちゃよ。

ついでに今一度ヒメシルビアシジミの画像も貼っておこう。

 
【ヒメシルビアシジミ Zizina otis ♂ 】
(2013.2.24 沖縄県南大東島)

 
こうして改めて見ると、表側は殆んどシルビアシジミと同じだな。別種になった事に納得いってない人もいるだろね。両者の区別点を書いているものがあまり見当たらないから、尚更だろう。
両種の形態的な違いは、シルビアはヒメシルビアよりも裏面各室の小黒斑が大きく、前後翅亜外縁の黒斑列が各室の小黒斑と同等に発達している点、後翅表面外縁の黒斑列はシルビアでは波状になり、ヒメシルビアシジミでは線状となる傾向が強いなどだそうである。

 
【同♀】
(2013.2.24 沖縄県南大東島)

  
たぶん低温期型の♀で合ってると思うけど、間違ってたらゴメンなさい。通常は青色鱗が発達せず、黒褐色です。

 
【裏面】
(2013.2.23 沖縄県南大東島)

 
裏面はシルビアとかなり印象が変わる。
特に低温期型は、このように斑紋が殆んど消失しかける。
手持ちの通常型がナゼか見つからないので、画像をお借りしよう。

 
【裏面通常型】
(出典『双尾Ⅱ 変異・異常型図鑑』)

 
だいたいがこんなもんだ。シルビアと比べて斑紋が小っちゃくて薄いのだ。
それにしても、ネット上でヒメシルビアの展翅写真が殆んど見つからないのはナゼ? 小さ過ぎて、みんな展翅がまともに出来なかったりして…。ワテの展翅も酷いもんな。これだけ小さいと、肉眼で見て頭が歪んでるなんてワカランもん。しゃあないわいな。

この際、他の近似種も並べておこう。
小難しい言葉を並べたくはないので、各種の判別は印象で書く。細かい判別法は図鑑を見て下され。

 
【ハマヤマトシジミ Zizeeria karsandra ♂】
(2013.2.24 沖縄県南大東島)

 
ハマヤマトの♂は紫色だ。シルビアは青いので、それで大まかな区別はつく。だが、南大東島では最初のうちはどっちがどっちかワケわかんなかった。
いる場所も同じで、荒れ地など草丈の低いところで混飛しているので、ややこしい。飛んでいるのを見て、紫色っぽいのがハマヤマトの♂なのだが、どっちなのか微妙なのもいて、採ってみないとワカンナイのだ。
因みに、ヤマトは微妙に生息環境が違い、もう少し草丈が高いところを好む。南大東島では、同じポイントに3種同時にいたが、ヒメシルビア&ハマヤマトとヤマトのいる場所には明確な境界線があった。
また飛び方も違う。ヒメシルビアとハマヤマトは地面スレスレに飛ぶ地這い型だが、ヤマトはもっと高いところを飛ぶ傾向があり、スピードも緩やかだ。

 
【同♀】
(2013.2.24 沖縄県南大東島)

 
正直、♀は飛んでる両者の識別が全然出来なかった。結局、♂も♀も採って確認するしかないのだ。

 
【裏面】
(2013.2.24 沖縄県南大東島)

 
上翅の黒点がハッキリしていて、濃いのが特徴だ。他の近似種はこんなに黒くはなくて、もっと茶色っぽい。だから、採って最初に確認するのがソコ。

 

 
こうして上翅の黒点が目立つのだ。
しかしこれは♀で、♂となると微妙になってくる。

 

 
暫くジッと見てから、ようやくハマヤマトだと特定することができる。

 
【ホリイコシジミ Zizula hyiax ♂】(出典『chariot』)

 
採った事はあるのだが、標本を探すのが億劫なので、画像をお借りした。
これは、Zizula hylax attenuataというオーストラリアの亜種なのだが、まあ基本的にはそんなに変わらんからエエやろ。左の♂の色が実物よりも紫色なのが気になるけど(実物はもっと青っぽい)、許してくれ。正直、ホリイコもネットでググっても標本写真があんま無いのである。ヒメシルビアと同じく生態写真は山ほどあるのにね。たぶん小さ過ぎて、まともな展翅ができる人が少ないから、あまり表には出てこないのだろう。
英名は、Tiny Grass-blue(ちっぽけな草原に棲む青い蝶)っていうくらいだから、とにかく小さい。世界で最も小さな蝶の一つなのだ。
その矮小さが理解できる画像が見つかったので、貼っつけておこう。

 
(2013.10.4 石垣島)

 
ほら、笑けるほど小さいでしょ。
アッシは腕は長いけど手が小さい。ゆえにサイズ感的には、ホントはもっとチビッコです。

言い忘れたけど、日本で迷蝶として採集されるものはインドをタイプ産地とする原名亜種とされている。

近似種との区別点は他と比べて小さいことだが、ヒメシルビアやハマヤマトにも極めて小さな個体もいるので、注意が必要。他の区別点としては、♂の腹部が長いこと、翅形が幅広くて丸いことだろう。あと決定的違いといえば、裏面の前翅前縁に2個の褐色小点があることかな(他の近似種は0~1個)。でも、ボロや擦れた個体だと丸っきりワカランとです。

また寄り道になった。
シルビアの話に戻ろう。

 
《成虫の発生期及び幼虫の食餌植物》
4月下旬より11月頃まで年に数回(4~6回)発生する。幼虫の食草はマメ科で、主な食草はミヤコグサ。他にヤハズソウ、コマツナギ、ウマゴヤシ、シロツメクサ(クローバー)などにもつく。飼育する場合、インゲンマメとエンドウマメ(スナップエンドウ)が代用食になる。で、スナップエンドウで飼育すると巨大化するようだ。但し、無農薬のものでないと緑色の液を吐いて死ぬそうなので、お気をつけあそばせ。

越冬態は幼虫。
時々思うんだけど、幼虫で越冬するって寒くねえか❓
夜間の気温はマイナスになることだってあるし、ゼッテー寒いだろうに。卵や蛹の方があったかそうに思えるんだけどなあ。人間側目線からの、ただの思い込みでしかないのかもしれんけど…。
誰かこの問いに答えられる人おらんかのう❓

 
《学名》Zizina emelina

Zizina otis となっていたのを、emelinaに書き直す。あっ!、それで思い出したわ。ここの項って、第一章を書き始めて、さして間もなく先に途中まで書いてたんだわさ。だから学名は、Z.otisだとばかり思って書き始めているのだ。学名なんかは決まり事なので、比較的早めにチャチャッと草稿を書いてしまう事が多いのである。
まっ、いっか…。順番が相前後するだけで、内容は同じだ。このまま書き直さずに進めよっと。というワケで、先ずはヒメシルビアから。

学名の小種名「otis」の語源はギリシア語で「敏感な」の意かな? 古いドイツ語の「裕福な」ということも考えられるけどさ。また、これは人の名前のオーティスだとも考えられるからして、オーティスさんに献名された可能性もあるだろう。どれが正しいのかな?
ここはまた、平嶋義宏氏の『蝶の学名-その語源と解説-』の力をお借りするしかあるまい。

それによると「一般に男性の名」とあった。ということは、オーティスさんへの献名ってことかな?

同じくシルビアの「emelina」も人名由来。
女性名のEmeliaに因み、「エメリナの」の意となっていた。

おっと、属名のことをスッ飛ばしてるわ。カトカラの事をシリーズで書いているので、属名はいつも端折ってる癖がついてんだね。
Zizina(ジッジーナ)というジジイがどーしたこーした的な属名は、同じシジミチョウ科のZizera属を元に作られたもので、強いて言えば「Zizera様の」の意なんだそうだ。でもZizeraはそもそもムーアの造語で、単なる文字の組合せによるもので意味はない。ムーアって、語源がワケわかんねぇような学名を乱発しまくってるんだよなあ。ツマベニチョウなんかの属名も意味不明だもんな(註2)。

 
《英名》Lesser grass blue

これは「草原の、より小さなブルーの蝶」、或いは「草原の、より少ないブルーの蝶」という意味だろう。🐼ジャイアントパンダに対するレッサーパンダみたいなもんかな?ということは、ジャイアントパンダは大型の青いシジミ、例えばアリオンゴマシジミなんかを指してて、それよりも小さいって意かな。

他に「Common grass blue」というのもあるようだ。こちらは「草原のありふれた青い蝶」という意味である。
これはおそらくヒメシルビア(Z.otis)に宛てられたものだろう。確かにヒメシルビアはシルビアよりも更に小さいし、南西諸島には何処にでもいる普通種だ。
国外では…と、その分布を書きかけて筆が止まる。wikipediaを孫引きしようとしたのだが、「朝鮮半島南部、台湾、中国よりインド、南はオーストラリアにかけて東洋熱帯に広く分布する。」と書いてあるのを見て気づいた。これは分類がまだ細かく分けられていない時代につけられた英名に違いない。種ヒメシルビア(Z.otis)そのものにつけられたものではなく、謂わば、otis種群全体に対してつけられたものだろう。

ともかく種としての Z.otis(ヒメシルビアシジミ)とは反対に、シルビアジジミは何処にでもいるようなものではなくて、稀種に入る。一方はド普通種で一方は稀種となると、生態他の性向が全く違うという事だろう。両者が別種であると云うのも頷けるわ。
関西の蝶屋の間では、シルビアは大阪空港とその周辺というベリーイージーな場所にいるから軽視されがちだけど、全国的にみれば、かなり珍しいチョウである。
関東から九州の種子島まで分布するが、生息地は局所的で絶滅危惧種にランクされている。フェルトンが最初に見つけた栃木県のさくら市では天然記念物に指定されてもいる。
環境省RDBカテゴリでは、絶滅危惧ⅠB類(EN)に選定され、東京都、埼玉県、愛知県、岐阜県、滋賀県、和歌山県(註3)、高知県、愛媛県では絶滅、福岡県などその他分布域のほとんどの府県が絶滅危惧Ⅰ類に選定している。

もともと里山や平野部などの人間生活に近い場所に生息しているため、土地開発によって大きな影響を受け、1980年以降、全国的に著しく減少しているそうだ。
またその理由として坂本女氏は、本種は発生時期において各個体が羽化するタイミングの同調性が低くて成虫の寿命が短いこと、昆虫類特有の感染症の影響、移動性が低いために地域ごとに異なる遺伝子のタイプをもっていることから近親交配による弱勢が進み、各個体群ごとの遺伝的多様性が低下して個体数が著しく減少していると書いておられる。シルビーちゃんの未来は暗いねぇ~。

前述したが、幼虫の主な食草はマメ科のミヤコグサ。同じマメ科のヤハズソウやコマツナギも食草としている。
しかし、大阪空港とその周辺にはミヤコグサは無い。コマツナギも無いようだ。じゃあ、ここのシルビアシジミは何食ってんのかと云うと、主にシロツメクサ(クローバー)で、一部がヤハズソウ(何れもマメ科)を食草として利用している。シロツメクサは食草転換したとされ、近年になって利用されるようになったと言われる。
(# ̄З ̄)ホントかよ。単に見つからなかっただけで、昔から食ってたんじゃねーの❓
だいちクローバーに食草転換したとして、何故にその必要性があったのだ?食草転換した理由は何なのさ。誰か教えてくれよ。

たぶんシロツメクサを食草としているシルビアが見つかったのは大阪空港周辺が最初だったんじゃないかな。それ以後、千葉などでもシロツメクサを利用している種群が見つかっているようだ。
因みに此所の個体群は兵庫県南西部の個体群よりもサイズが大きいとの報告もあるようだ(2014’京大蝶研SPINDA19)。シロツメクサを食ったらデカくなるのかな?それともシロツメクサは沢山生えてるから、餌資源が豊富だから大きくなるのかな❓
それにしても、シロツメクサを食草とするならば、もっと分布を拡げても良さそうなものなのに、空港周辺にしかおらんのは何で❓ シロツメクサなんて「🍀四つ葉のクローバー」のクローバーなんだから、何処にでも生えている。それを辿っていけば、分布の拡大なんて楽勝なのにさ。謎だよね。羽があるのに、そんなに移動能力が低いのかよ❓

                     つづく

 
追伸
まだ終わらんのだよ。
自分でもウンザリなのだ。次回、益々ワケわかんないラビリンス世界にズブズブに嵌まってゆきます。

 
(註1)論文
『シルビアシジミの生活史と遺伝的多様性に関する保全生態的研究』(坂本佳子 2013’大阪府立大 博士論文)

(註2)ツマベニチョウの属名も意味不明だ
ゴメン、勘違い。平嶋義宏氏の『蝶の学名-その語源と解説-』によると、Hubner(ヒューブナー)の命名でした。彼もムーア同様に難解な創作学名が多いそうだ。
ツマベニチョウの属名 Hebomoia(ヘボモイア)は、おそらく神話由来で、ギリシア語のhebe(青春の女神という意)=青春+ギリシア語のhomos(同一の)。共通の+接尾辞-iaと書いてあった。
何だそりゃ❓造語ということは解るが、意味があんましワカラン。日本語は難しいのう( ̄З ̄)

(註3)和歌山県では絶滅
南紀に、おるけどなあ…。
 

シルビアの迷宮 第一章

  
   第一章 『可憐な少女』

 
11月初め、伊丹にシルビアシジミの様子を見に行った。

 
(2019.11.5 伊丹市猪名川河川敷)

 
しかし、河川敷のポイントは草刈りされた直後だった(写真とは違う場所です)。
なのかどうかはワカンナイけど、飛んでいるのはヤマトシジミばっかで中々見つからない。
飛んでいる時の姿はヤマトシジミと非常に紛らわしい。だが、慣れると若干シルビアシジミの方が小さく、♂は翅表がより青っぽく見えるので、おおよその区別はできる。飛び方もヤマトよりも敏捷で、地面を這うように飛ぶものが多い。地這いシジミだ。ヒメシルビアシジミ、ハマヤマトシジミもそんな飛び方なので、個人的には「地這いシジミ三姉妹」と呼んでいる。
けど、草が刈られているせいか、ヤマトも地這い飛びしてる。それに数も多くて、ちょっと青っぽいのや小さい個体もいるので段々ワケわかんなくなってきた。

各ポイントを回り、辛うじて3頭だけ確認できた。
そのうちの2つを持ち帰る。

 

 
相変わらず、ちっちゃいねー。
なんで、拡大しときます。

 

 
シルビィーちゃん、可愛ゆす~(о´∀`о)
あっ、自分は個人的に愛着を込めて、そう呼んでます。
秋型だ。春型と同じく裏面がグレーっぽくなるから、採りさえすれば、この時期は近縁のヤマトシジミとは区別し易くなる。

一応、表側はこんな感じです。

 
【シルビアシジミ♂】
(2017.4.26 伊丹市)

 
表側は、もっと可愛い。

シルビアシジミ。いい名前である。
覚えやすいし、響きもいい。また如何にも可憐な少女をイメージさせるところがある。実際小さいし、ピッタリな名前だと思う。
そういえば、その名前の由来も素敵だったね。和名は、或る蝶の研究者が夭逝した自分の娘の名前をつけたんだよね。
でもその程度の知識で、詳しいことは知らない。
んなもんで、一応ネットでググってみた。したら、諸説ある。大まかなところでは同じなのだが、細かいところが異なっているのだ。どうせ皆さん、アタイと同じく孫引きで、自分の勝手な見解も入ってんだろね。

その折りに学名を見て、あれれっ( ゜o゜)❓と思う。学名の小種名が silvia ではなくて、otisってなってるぞ。またエライところに触れてもうた。もう勘でわかる。こんなの調べ始めると泥沼だぞ。
けんど、このまま蓋をしてスルーするのも癪だし、更に詳しく調べてみることにした。

で、やっと見つけたのが、中村和夫氏の『中原シルビア嬢の小墓碑』と題した文章である。これが一番詳しく書かれているから、由来の正伝と捉えることにした。以下、その文の要約と補足である(一部他の知見も入ってます)。

「シルビアシジミの和名はガン学者中原和郎(1896~1937)の夭折した一人娘 Sylvia Nakahara の名に由来する。
しかし、シルビアシジミの最初の発見者は実をいうと別にいる。
東京大学で英語教師をしていたモンタギュ・アーサー・フェントン(Fenton 1850~1973)は、教え子の一人である田中舘の郷里、岩手県福岡村(現 二戸市)へ向かう徒歩旅行の途上,栃木県氏家町(現 さくら市)上阿久津で本種を採取した。奥州街道と鬼怒川が交差する地点である。フェルトンは昆虫の知識も豊富で、これをヤマトシジミとは別種と考え、河床地に限るという生息地の特性をも見抜いた。
そしてフェントンは学生たちと共に周辺を調査し、その食草も突き止めた。ヤマトシジミの幼虫はカタバミなどを食すが、このチョウの幼虫はミヤコグサを食草としていることが判明したのである。フェントンは1880年に帰国し、これを Lycaena alope(Butler 1881)として新種記載した。

フェントンがこの蝶を発見してから約40年後、中原和郎は米国イサカ市のコーネル大学の大学院に留学。米国女性と結婚し、二女シルビアが誕生する。しかし、生後8カ月(7ヶ月説もある)で亡くなってしまう。
その2年後、中原は日本の友人から送られた1920年兵庫県佐用郡久崎町で得られた上記と同一のものを未記載種(新種)と考えた。彼は娘を悼んで、それに Zizera sylvia(Nakahara 1922)の名を与えた。
しかし、Butler、Nakahara、何れの記載も英文誌に発表され、日本では注目を浴びなかった。また英文誌であるゆえに、和名もつけられていなかった。
余談だが、中原氏は癌研究の権威でもあり、国立がんセンター(現国立がん研究センター)の名誉総長も務めた人だ。

話は尚も続く。
旧制成城高校・中学生の成富安信は健康を害し、療養中に蝶を採集していた。そして1938年、知人の紹介で理研の中原に指導を受けるようになった。その時、成富は友人が1940年岡山県下で採集した種名不詳の蝶を中原宅へ持参した。それは中原が記載したものと同じものだった。この再発見を喜んだ中原が成富に要請し、新称シルヴィアシジミの和名が記録された(成富1941)。しかし、この時もフェルトンの記載には未だ気付いていない。
太平洋戦争終了後,古い記録を精査していた昆虫学者の白水隆(1950)が上記の記載が同一種であることを突き止め、世に明らかにした。そして、新たに学名をZizina otisとした。よって学名の sylvia はシノニム(同物異名)になり、無効となってしまう。
また、同一の種にタイワンコシジミ、ヒメシジミの和名が重複して与えられていたが、江崎・白水(1950)は和名としてシルヴィアシジミを採用する。その後,現代カナ遣いでシルビアシジミの表記が用いられるようなった。」

物語があって、素敵な響きのある和名は愛されるという典型だね。
時々、和名なんて海外では全く通用しないから要らないと思うけど、こういう素敵な和名を前にすると、やはり和名はあってよしだと思う。

しかし、これで話は終わらない。
「さらにその57年後には、日本・本州一帯の本種の学名は矢後(2007)のDNA情報に基づく整理によって、新たな学名 Zizina emelina(delʼOrza 1869)が与えられる事となる。」とも書いてあったのだ。
Σ(゜Д゜)何じゃそりゃ❗❓である。
そう思ったが、よくよく考えてみると、従来シルビアジジミの南西諸島亜種とされてきたものが、数年前に別種ヒメシルビアシジミになったんだよね。

 
【ヒメシルビアシジミ Zizina otis ♂ 】
(2013.2.24 沖縄県南大東島)

 
古い標本で、色が褪せている。
展翅もド下手。小さ過ぎて匙を投げた事を思い出したよ。

話を戻そう。
で、今までの学名 Zizina otis はヒメシルビアに付けられて、本土産のシルビアには、Zizina emelina という新たな学名が宛がわれたってワケやね。
一瞬、emelinaって何由来の命名❓と思ったが、これはどうやら本土産の亜種名だったemelinaが、そのまま種名に昇格したようだ。
でも沖縄亜種の亜種名は、riukyuensis(「琉球の」という意)だった筈だ。これは昇格しないのか❓ 何で otis になったのだ❓ だいち、そもそもフェルトンが最初に見つけたものに命名された Lycaena alope は何処へ行ったのだ❓ Lycaenaは属名が変更されたのだろうが、alope は何処へ消えたの❓ワケわかんねえや。
たぶん、これもシノニムになってんだろうなあ…。
フェルトンの記載は1881年だけど、Zizina otisの原記載は Zizina otis otis(Fabricius,1787)となっているから1787年だろう。となると、もっと古い。だから、otisの方に名前の先取権があるのだろう。
あっ、そっか…。何となく謎が解けてきたぞ。沖縄のヒメシルビアの学名が「otis」になっているのは、これが従来の Zizina otis に組み込まれて、むしろ本土産が別種となったのだ。つまり亜種名が消えたワケではなくて、Zizina otis riukyuensis になったってワケだね。一件落着だわさ。

けんど、すぐに新たな疑問が湧いてくる。
emelinaの記載年は1869年になっていて、別種に分けられた年の2007年ではない。つまり、新種ではないことになる。また、フェルトンが記載した1881年とも合致しない。ならば、シルビアシジミが最初に見つかったのは日本ではないことになる。だったら、原記載は何処の国のシルビアなのだ❓ 謎が謎呼ぶシルビアちゃんだ。

探したら、『Lean About Butterflies』というサイトに、Zizina emelina はチベットと中国西部のみに生息するとあった。のみ❓
( ; ゜Д゜)おいおい、日本には居ないことになってるぞ。益々、謎が謎を呼ぶ展開になってきた。藪蛇ってヤツだ。エライとこ、突っついてしまったなりよ。

探しまくって、ようやく『シルビアシジミの生活史と遺伝的多様性に関する保全生態的研究』(坂本佳子 2013’大阪府立大 博士論文)という長ったらしいタイトルの論文を見つけた。
そこには「シルビアシジミ Zizina emelina emelina(以下、本種)は、日本と韓国に分布し、…」という記述があった。ということは韓国で初めに見つかったということになるのかな?…。もう、そういうことにしておこう。

また、「Zizina-nic.funet.it」というサイトでは、下のような記述も見つけた。

Zizina emelina emelina; Yago, Hirai, Kondo, Tanikawa, Ishii, Wang, Williams & Ueshima, 2008, Zootaxa 1746: 32

Zizina emelina thibetensis; Yago, Hirai, Kondo, Tanikawa, Ishii, Wang, Williams & Ueshima, 2008, Zootaxa 1746: 32

たぶん矢後氏他の記載論文か何かだろう。
これでチベットと中国西部のみの分布という謎も解けた。つまり、この記述からすると、チベットと中国西部産のものは別亜種 thibetensis となるワケだ。
ようは、チベットと中国西部のみに生息しているとした『Lean About Butterflies』の記述は間違いだったって事だね。亜種なんだから、チベットや中国のシルビアは最初に見つかった原記載されたものではない。

このサイトは、Zizina属についても言及しているので、ついでに意訳したものを訂正、補足して載せておこう。

「Zizina属には5種が知られています。最も一般的で、広く分布しているのがインドからアジアに分布するotisです。他は以前は全てotisの亜種と見なされていましたが、現在では異なる種として認識されています。Z.antanossaはアフリカ北西部・東部・マダガスカルに見られ、Z.labradusはオーストラリア、Z.oxleyiはニュージーランドに分布しています。」

で、最後に「emelinaはチベットと中国西部にのみ限定されて分布するようです。」と書いてあった。あっ、自信が無いのか断言はしていないね。

但し、この属の分類には他の見解もあって、Zizina属に含まれるアフリカからアジア、オーストラリア、ニュージーランドまで分布するもの全てを同一種とし、それぞれを代置関係にある亜種とする考えも根強くあるようだ。

ついでのついでで、wikipediaにあったのも載せておこう。学名の下側は英名である。

・Zizina antanossa (Mabille, 1877)
dark grass blue or clover blue

・Zizina labradus (Godart, [1824]) common grass blue, grass blue, or clover blue

・Zizina otis (Fabricius, 1787)
lesser grass blue

・?Zizina similus

・?Zizina emelina

あれれ?、気づかんかったけど、Z.oxleyiというのが無くて、替わりにZ.similusってのが入ってんぞ。おまけに❓マーク付きだわさ。emelina にも❓マークが付いてる。ウキ(wikipedia)を書いた人も、不明で扱いに困ったんだろね。

結局、similusというのは、探しても見つけられなかった。近いのが「Zizina-nic.funet.it」にあった下のコレ。

Unknown or unplaced taxa
Polyommatus similis Moore, 1878; Proc. zool. Soc. Lond. 1878 (3): 702; TL: Hainan
Cupido similis; [NHM card]

しかし、similisとなってて、綴りが微妙に違う。しかも、Unknown or unplaced taxaとなっている。ようするにワッカリマセーンってことやね。不明で、定義できない分類群ってワケだすよ。
oxleyiというのは色んなサイトに出てくるから、たぶん5種のうちの一つはコチラが正しいんだろね。

ついでのついでのついでで、Z.otis(ヒメシルビアシジミ)の亜種名も並べておこう。
因みにwikipediaでは、シルビアシジミ(本土産)の学名が Z.emelinaではなく、Zizina otisのままになってるんだよなあ。ネットの多くのサイトでも、シルビアシジミ=Zizina otisとなってるものが多いんだよねぇ…。そりゃ、混乱も呼ぶわいな。
もう、いっか…。謎を掘り進むのにも疲れてきたよ。取り敢えずヒメシルビアの亜種を並べて、この迷宮の出口を探そう。

・Z. o. annetta (Toxopeus, 1929
・Z. o. aruensis (Swinhoe, 1916)
・Z. o. caduca (Butler, [1876])
・Z. o. indica (Murray, 1874)
・Z. o. kuli (Toxopeus, 1929
・Z. o. lampa (Corbet, 1940)
・Z. o. lampra (Tite, 1969)
・Z. o. luculenta (Kurihara, 1948)
・Z. o. mangoensis (Butler, 1884)
・Z. o. oblongata (Kurihara, 1948)
・Z. o. oriens (Butler, 1883)
・Z. o. otis (Fabricius, 1787)
・Z. o. oxleyi (C.& R.Felder, 1865)
・Z. o. parasangra (Toxopeus, 1929)
・Z. o. riukuensis (Matsumura, 1929)
・Z. o. sangra (Moore, 1866)
・Z. o. soeriomataram (Kalis, 1938)
・Z. o. tanagra (Felder, 1860)

wikipediaには、加えて下のような記述がある。

and possibly 2 undescribed subspecies from Sulawesi/Selayar and Banggai.

おそらくコレはインドネシアのスラウェシ/スラヤール島とバンガイ諸島からの2つの未記載の亜種があるって事だね。
何だ❓その曖昧模糊とした言い方は。何で未記載なのだ。わかってんなら記載しろよな。理由がワカラナイ。謎だよ。

それにしても凄い数の亜種だ。
面倒なので各亜種の分布地は調べない。どうせ新たなる謎にブチ当たるに決まってんである。シノニムも仰山あるに違いない。これ以上はもう御免だ。気になる人は自分で調べてね。ほいでもって謎地獄の迷宮に迷い込めばいいのだ。Ψ( ̄∇ ̄)Ψほほほほほ。

よせばいいのに、そういえば学名ではググってなかったなと思い、やってみた。
したら、こんなん出てきましたー。

Molecular systematics and biogeography of the genus Zizina (Lepidoptera: Lycaenidae)
Apr 2008 Masaya Yago、Norio Hirai、Mariko Kondo

見たら、これがどうやら矢後氏他の記載論文だろうと勝手に想像してたものだ。
しかし、そうではなくて、Zizina属のDNA解析の論文のようだ。
そこには、画像もあった。

 

(a:表、b:裏)
5 Zizina emelina emelina 兵庫県小野市
6 Z.emelina thibetensis 雲南省(中国)
7 Z.otis otis 広西チワン族自治区(中国)
8 Z.otis otis ハブロック島、南アンダマン島(インド)
9 Z.otis riukuensis 沖縄県大東島
10 Z.otis ssp フローレス(インドネシア)
11 Z.otis indica マイソール、カルナタカ州(インド)
12、Z.otis antanossa アブリー(ガーナ)
13、Z.otis labradus ケアンズ(オーストラリア)
14、Z.oxleyi ノースカンタベリー(ニュージーランド)

 
論文はDNA解析の結果、Z.labradusとZ. antanossaは種から亜種に降格、Z.otisの亜種としている。すなわち5種が3種に整理されたワケやね。
Z.otis、Z.oxleyi、Z.emelinaの3種は、約250万年前に共通の祖先から分岐したと推定している。
そして、Z.oxleyiとZ.emelinaの祖先は温暖な気候に適応して北半球と南半球で分岐し、それぞれニュージーランドと東アジアで現存する種になったと仮定している。対照的に、Z.otisの祖先は主に熱帯および亜熱帯地域に適応し、現存するものはアフリカ大陸、東洋およびオーストラリアの地域に分散したものだと考えている。またニュージーランドのZ.oxleyiの分布は、Z.otisの侵入に脅かされているという。

( ̄З ̄)う~む。emelinaはotisから種分化したものだと思っていたが、どうやらそうではないらしい。やはりシルビアとヒメシルビアは別系統なのね。

一段落したと思い、坂本女氏の論文を読み始める。
したら、また新たな疑問も生じてきた。ヒメシルビアとの交雑実験とボルバキア感染なんて話まで出てきたのだ。また、他にもネット情報でヤマトシジミとの自然状態でのハイブリットの話まで飛び出す始末。頭が(◎-◎;)💫クラクラしてきたよ。調べれば調べるほど謎が出てくるシルビア蟻地獄じゃ。
でも、論文をチラッと見てアレルギー反応が出た。ウンザリで、真面目に読む気にもならない。ここは一旦、種解説にでも逃げよう。ケースによっては、そのまま逃亡、クロージングになってもいいや。

 
                     つづく

 
追伸
書いているうちに、どんどん深みに嵌まってゆき、ムチャクチャ長くなってしまった。もう泥沼ぬかるみである。というワケで分載することにしました。
アチキ、このあと更に迷宮で彷徨。ノタ打ち回ることになりんすよ。