鰯の頭も信心から、(・┰・)ぺー

 
節分である。
そこそこ美しい夕暮れを眺めながらスーパーへ行く。

恵方巻きでも買おうと思ったら、売場はえらいことになっておった。オバハン軍団が群がっておる。
勿論、オバハンたちに罪はない。しかし、(-。-;)げんなりなって断念。
そもそも、恵方巻きなんぞは所詮は海苔屋の陰謀である。海苔を売らんがために、魚関係とか干瓢(かんぴょう)業界までも巻き込んだ策略に違いない。

昔は恵方巻きは関西にしかなかった風習だったらしい。実際、東京に住んでいた時は誰も恵方巻きなんぞ知らんかった。
それが今や節分となると、日本全国恵方巻きフィーバーだ。
(-_-#)馬鹿馬鹿しい。これはコンビニの陰謀である。宣伝しまくったら、あっという間に日本の隅々にまで伝播しおった。恐るべし哉、コンビニの拡散力よ。

と云うワケで、恵方巻きは諦めて鰯を探す事にした。
恵方巻きなんかより、節分界での歴史は鰯の方が古いんである。「鰯の頭も信心から」という言葉は、もしかしてこの節分から来てんじゃねえか?
昔は、家の入口に鰯と柊(ひいらぎ)を飾ったもんだ。
と言いつつ、自分の餓鬼の頃には既にだいぶと廃れていた風習だ。お金持ちの大きな家でしか見たことがない。

鰯と柊を家の入口に飾るのは、一言でいえば魔除けだそうである。鰯は臭い。焼くと煙が出て、さらに臭い。それが魔除けになるというワケである。たぶん、そんなところではなかったかと思う。

柊を飾る意味は何だっけ?きっと葉が硬くてギザギザだからなんじゃねーの❓
調べれば解るかと思うけど、めんどくせーので、そうゆう事にしておこう。蝶の事で何だかんだとネットサーフィンしまくりで、もうウンザリなのだよ。

そのままの鰯は、除外させていただいた。
だって、臭いんだもん(# ̄З ̄)

で、これを買ってきて焼いただすよ。

鰯明太子どすえ。
腹に、無理矢理に他の魚の卵である明太子を詰め込まれるというセクハラまがいの発想によって生まれたものだ。
セクハラだのパワハラだのうるさい人たちは、いっそ鰯明太も糾弾すればよろしかろう。

フライパンにクッキングシートを敷いて、じっくりと弱火で焼いた。

旨いねぇ~(´∇`)
酒の肴としては、スター性は無いにしても密かに票を集めそうだ。地味にメッチャ旨い。

スンマセンm(__)m。
セクハラ、パワハラと声高に糾弾する人たちよ、頼むから鰯明太はターゲットにせんといてくらはい。

                  おしまい

台湾の蝶8 続 マレッパイチモンジ

 
    第8話『幻の翡翠蝶、再び』

 
本来、第8話はイナズマチョウの予定だったが、マレッパイチモンジの重要な文献、内田春男さんの書かれた『常夏の島フォルモサは招く』が手に入った(顛末は前回を参照)。

読んでみると、新たな情報もいくつか出てきた。
となると、第7話を書き直さなくてはいけない。
しかし、改めて7話を読み直してみて、ハタと立ち止まった。
新知見をつけ加えるといっても簡単ではない。新しい知見を古い情報と入れ替えると、後半の部分との整合性がオカシクなってきたりするのだ。
下手クソが言うのもおこがましいが、曲がりなりにも一つの作品として完成した文章には全体を流れる文脈というものが在る。きっと書いている時の気持ちの流れが文章に反映されるのだろう。
とにかく、間に新しく文章を入れると、全体のバランスがバラバラになりかねないのだ。
というワケで、続編として新たに文章を書くことにした。

内田春男さん曰く、台湾には幻と考えられる珍蝶がいくつかあるが、真に幻の蝶と呼べるのはマレッパイチモンジだけであろうとおっしゃられている。

一応、他に幻の蝶として挙げられているのは、以下のような種類だ(1991年当時)。

①イノウエカラス ②エサキカラスシジミ ③クロボシヒメシジミ ④サンカクホウシジミ

①はネットで調べたら、生態写真がいくつか出てきた。そういえばラオスで会った人がこの蝶についての論文を「日本蝶類学会」に書いたと言ってたなあ…。
時計を拾ってあげたので、ちよっと仲良くなって喋ってくれたのだろう。
②は標本写真が杉坂美典さんのブログ「台湾の蝶」にあった。
③は画像さえ見つけられなかった。まあ、どうせチンチクリンの蝶であろう。
④は杉坂さんのブログに標本写真があった。

なるほど。相当珍しいようだね。
しかし、①と②は所詮はカラスシジミなのである。
余程の眼力がある人でないと、パッと見で他のカラスシジミ類と区別できない。
④もクラルシジミと見た目は同じようなもので、他にもワタナベシジミなどソックリなのがいくつもいる。これまた野外で区別するのは至難の技だろう。

そして、総じて皆んなチビで地味。
殆んどの人が注目しないようなもので、勝手に幻になっとりなはれという感じのものなのだ。

マレッパイチモンジの故郷とされるマレッパ村は眉原の奥、北港渓の上流部にあるようだ。
なるほど、台湾でのマレッパイチモンジの別称に「眉原綠一字蝶」とあったのは、それゆえなのね。或いは眉原近辺でも採集記録があるのかもしれない。
因みに第7話では内田さんはマレッパには訪れた事がないと書いたが、1988年に念願叶い来訪されたらしい。
しかし、第1巻「ランタナの花咲く中を行く」ではマレッパ村から1時間ほど渓を詰めた所に採集地があると書いていたのに、この2巻ではマレッパでの採集ポイントについては一切述べられていない。果たしてマレッパに、この幻の蝶はいるだろうか❓
いまだ、そこは謎のままなんである。

マレッパイチモンジは1958年に発見されたが、その後17年間で採集された記録はたった4頭だけだったそうである。
とはいえ、地元の採集人によると年間数頭ぐらいは採集されていたらしい。但し、殆んどの採集人はこの蝶の事を知らず、標本商のところで整理中に偶然発見されていたようである。つまり、それが生息地の断定を困難にしていた。
また、マレッパイチモンジと識別できる採集人は、高価で売れるこの蝶のポイントを他人に教えるワケもなく、秘密にしていたことから確実な生息地は長きに渡り謎のままだったと云うワケでもある。
その後、蝶の加工業(土産物の額など)が衰退して採集人が減り、益々この蝶は幻と化したようだ。

書きながら読み進んでゆくと、ありゃまΣ(゜Д゜)
噂では数年前(1980年代後半)にマレッパの反対側の天祥で日本人が1頭、20年前(1970年辺り)に翠峰からマレッパ付近に入った、これまた日本人が4頭採集したと云う話が出てきた。
7話で若者が翠峰で4頭採ったという話を書いたが、そんなに古い記録なのかよー❓
杉坂さんが分布に台湾東部をあげていたのは、この天祥の記録の事かえ❓
だが、この2つの噂を内田さんはホリシャイチモンジ(♀)を誤認した可能性が濃厚だと考えられているようだ。
自分もそんな気がする。滅多と採れない珍蝶なのだ。
日本人の採集とあらば、日本国内で噂が表に出てきてもおかしくはない。だが、そんな話は全く漏れ聞かないのだ。

アカン、読みながら書き進むのは効率が悪い。
一旦、筆をおいて最後まで読んでから書こっと。

その後、内田さんはプロジェクトチームを結成し(1988年)、生息地を探す物語になるのだが、とても面白いけど長いので割愛する。
結果、天祥など台湾東部では見つけられず、確実に採集していた採集人、程大富氏の動向から谷関付近にターゲットを絞り込み、石山渓(標高約1000m)で遂に生息地を発見するのである(しかし、18年程前に大規模な崖崩れで谷が崩壊し、道路が寸断。現在も入山不可という)。

それでは、新たな知見を付記しておこう。
先ず発生期だが、6月中下旬と推測したが、他の緑系イナズマチョウよりも発生は少し遅れるようで、7月中旬から現れるそうである。
但し、少ない蝶ゆえ、自分はそれを全面的に信じているワケではない。例えばパタライナズマは、ラオスで4月の頭に採ったが、同じ場所で5月初めにもそこそこ鮮度の良いものを複数採っている。だらだら発生の可能性はあるだろう。

飛翔はメチャクチャ速いらしい。
羽が他のイナズマチョウよりも尖っているからだと言われているが、正直、実際にこの眼で見てみないと解らないと思っている。
羽の形だけでなく、胴体との関係性もあるからだ。
体躯が太く強靭で羽が分厚く、面積が小さい方が物理的に速い。これは現在の最新鋭の戦闘機を思い浮かべて戴ければ解るかと思う。羽の形は一つのファクターにしか過ぎないのだ。
飛翔時は、台湾に棲む他の緑系イナズマチョウに比べてかなり黒く見えるらしい。
確かにホリシャイチモンジの♀も飛んでいる時は、かなり黒く見えた。生きている時は、あの渋くて美しい紫色に見えるかもしれない。

【ホリシャイチモンジ♀】

普段は暗い林内にいて、基本的には明るい所には出て来ず、生態はホリシャイチモンジに近い印象だと書かれていた。
自分の印象も同じだ。ホリシャは暗い林内で遭遇する事が多かった。つまり、普通に林道を歩いていても滅多なことではマレッパイチモンジには会えないと云う事だ。
ゆえに出会うためには、トラップは必須のアイテムといえる。

(出典『常夏の島フォルモサは招く』)

ここで、ようやっとの生態写真の登場でありんす。
色々調べてみたが、生態写真は知る限りこの2枚しか見たことがない。もう、30年も前の写真だぜ。まさに幻だよな。

♂♀ともに、🍍パイナップルに酒を染み込ませて発酵したものに誘き寄せられるようだ。
敏捷な蝶だが、吸汁している時はかなり鈍感みたい。イナズマチョウ(Euthalia irrubescens)に比べれば、撮影は容易らしい。

内田さんは、翌年幼生期の解明にも挑まれた。
しかし9♀も得たのに、結局1卵も産まなかったそうな。
他の緑系イナズマチョウの幼生期からして、カシ類の植物を食うことは予想できるので、付近にあったアラカシ、アリサンアラカシ、ホソバナンバンガシ、シラカシ、ヒシミガシ、ウラジロガシ等を袋がけして採卵を試みたのだが、ダメだったらしい。
一応、現在はツクバネガシだけが食樹として記録されているが、与えれば果たして他のカシ類を食するのだろうか?興味が尽きない。

死後、卵を取り出すと驚くべき事実がわかった。
何とマレッパイチモンジの卵は他のイナズマチョウに比べて遥かに大きくて、台湾産のタテハチョウの類の中では最大だと書いていたのだ。

(出典『常夏の島フォルモサは招く』)

左下がマレッパイチモンジ、右下がタカサゴイチモンジ、上がスギタニイチモンジの卵である。
卵の大きさは2㎜。タカサゴやスギタニは1.2㎜だという。マレッパイチモンジの成虫はスギタニ、タカサゴイチモンジの成虫と比べて小さいから驚きだ。
腹内の保有卵数はタカサゴ、スギタニで約60卵、マレッパは17~20卵だったそうである。

おそらくこの蝶が稀なのは、卵数が少ないというのと、幼虫の食餌植物が限定されているからではないだろうか❓

因みに、産地がバレて1989年には多くの採集者が石山渓に集まったが、その年も相当数採集した程大富氏の姿は石山渓ではついぞ見られなかったそうである。

石山渓の他にも、まだ知られていないマレッパイチモンジの産地はこの世に在るのだ。

                  おしまい

 
追伸
やはり、ロマンのある蝶だと思う。
知られていない産地は確実にあるのだ。
まだ見ぬマレッパイチモンジに想いを馳せる。

添付した画像を改めて見ると、帯が白いから♀だね。
左奥はワモンチョウの♂だろう。ワモンチョウはデカイ。そこから類推すると、♀はそれなりにデカイという事だね。タカサゴイチモンジの小さめの♀くらいはあるかもしれない。

マレッパイチモンジの卵は、台湾のタテハチョウ科の中では最大というけど、オオムラサキより大きいのかなあ❓
まさか、んな事はあるまい。
内田さんも当時は興奮されていたのだろう。

でも、ツッこまれるのも嫌なので、調べてみた。

(_)何だよー、何とオオムラサキの卵は1㎜から2㎜と幅があるじゃないか。
しかし、所詮はネットの情報だから素人風情の記述もあるよね。信用ならない。
しゃあない。手代木求さんの「日本産蝶類幼虫・成虫図鑑 タテハチョウ科」で確認してみよう。
タテハチョウ科の専門家だから、ネット情報よか遥かに信頼できるでせう。図書館でコピーしといて良かったあー。

ゲッ(゜ロ゜;ノ)ノ、1.5㎜とあるじゃないか。
オオムラサキの卵は見たことあるけど、蝶の卵としては相当大きいという記憶がある。それよかデカイ2㎜ってか❗相当デカイよね。
内田さん、ええ加減なこと言うてスンマセン。

【オオムラサキ♂】
(東大阪市枚岡産)

それにしても、マレッパイチモンジとオオムラサキとでは、成虫の大きさは倍近く差がある。
何で、そんなに卵が大きい必要性があるのだろう❓
これまた、謎だわさ。