台湾の蝶10 オスアカミスジ

 
     タテハチョウ科 その8

    第10話『雲豹の化身』

 
台湾のイナズマチョウグループの最後を飾るのはオスアカミスジ。

【Abrota ganda formosana オスアカミスジ♂】
(2017年 6月 台湾南投県仁愛郷)

長い間、分類学者を悩ませてきた蝶のようだ(註1)。
メスがミスジチョウグループ特有の白黒系デザインなのにオスは赤っぽい事からつけられた和名なのだろうが、メスの見た目からミスジチョウ群に含める学者もいれば、イチモンジチョウ群に含める学者もいたんだろね。
しかし、近年(1994年)ようやく幼生期が解明され、何とイナズマチョウ族(Adoliadini)の仲間と云う事が判明した。
幼虫がどう見てもイナズマチョウグループ特有の邪悪ゲジゲジくんだったから判ったと云うワケやね。
確かによく見れば触角が長くてイナズマチョウっぽいし、形もイナズマチョウ系だ。またミスジチョウ類と比べて翅に厚みがあって体躯(胴体)もより頑強だ。
でも、そんなの言われなきゃワカンないよね。
実際、一昨年台湾で初めて♀を何頭か採ったが、相変わらずの勉強不足でその存在さえも知らなかったゆえ、初見はミスジチョウ?イチモンジチョウ?オニミスジの仲間?ワケわからずの何じゃこりゃ(゜〇゜;)?????の人になってもた。

標本写真はこんな感じ。

【オスアカミスジ♀】
(2016年 7月 台湾南投県仁愛郷)

参考までにミスジチョウの仲間(Neptis)の画像も添付しておこう。

【Neptis pryeri コミスジ?】
(2016年 7月 台湾南投県仁愛郷)

リュウキュウミスジの可能性もあるけど、裏を見ないと分かんない。
それにしても、台湾でもコミスジは胴体の背中が金緑色なんだね。

【Neptis esakii エサキミスジ♀】
(2016年 7月 台湾南投県仁愛郷)

イケダミスジの可能性もあるけど、多分あってると思う。台湾のミスジチョウの中では最稀種だったと思う。

【Neptis hesione アサクラミスジ♀】
(2016年 7月 台湾南投県仁愛郷)

別名カレンコウミスジ。
これも台湾のミスジチョウの中ではトップクラスの稀種でしょう。

このグループの裏面は概ねこんな感じ。

【Neptis phiyra ミスジチョウ】
(2017年 6月 東大阪市枚岡)

日本ではそうでもないけど、台湾では稀種だそうだ。
所変わればで、或る場所では珍品でも他の所ではワンサカいるなんて事はよくあることだ。生物が繁殖する為には、様々なファクターが絡んでいるのだろう。

【Neptis soma タイワンミスジ】
(2016年 6月 台湾南投県仁愛郷)

イチモンジチョウ種群(Limenitis)の画像も添付しておこう。

【Limenitis sulpitia タイワンホシミスジ♂】
(2016年 7月 台湾南投県仁愛郷)

【Athyma arura ナカグロミスジ♂】
(2016年 7月 台湾南投県仁愛郷)

こっちも裏面を添付しておきますね。

【Athyma cama タイワンイチモンジ♀】

【同♂】

オスアカミスジ♀の体の根元から上翅中室に伸びる斜めの白紋は、コイツらにソックリだ。
そりゃ、普通はミスジチョウとかイチモンジチョウの仲間かなと考えるよね。

おまけにコミスジみたいに背中が金緑色なのだ。

(2017年 6月 台湾南投県仁愛郷)

コミスジの標本画像はまだ解りやすいけど、これだと解りづらいかな?(画像は拡大できます)。

一応、野外で撮った写真も添付しておきましょう。

(2017年 6月 台湾南投県仁愛郷)

とはいえ、ミスジやイチモンジ類に比べて胴体は遥かに太く、翅に厚みがある。
そこで頭に浮かんだのが、オニミスジ(オオアカミスジ)だ。

【Athyma eulimene オニミスジ♂】
(2013.1.20 Indonesia Sulawesi Palopo)

上翅中室の槍型の形といい、全体の斑紋形成といいオスアカの♀にソックリだ。胴体は太いし、翅も分厚い。触角だって長い。それにオニミスジも背中が金緑色だ。

オニミスジって、本当にイチモンジチョウグループなの❓オスアカミスジがイナズマチョウの仲間ならば、コイツだってそうなんじゃないの❓(註2)
そういえば、スラウェシ島で初めて採った時は、ミスジやイチモンジと同じグループにはとても思えなかった事を思い出したよ。

とにかく初めてオスアカミスジの♀と出会った時は、台湾にオニミスジなんていたっけ❓と、(゜〇゜;)?????チンプンカンプンになってた。
しかし、裏を見て、こりゃどう見ても別のグループの蝶ではないかと思った。

全然、斑紋系統が違う。
今になって注意深く見れば、目立たないが翅の基部にイナズマチョウ(Euthalia属)の特徴である紋様があることがわかる

【パタライナズマ裏面】

【タカサゴイチモンジ♀裏面】

【ホリシャイチモンジ♂裏面】

【イナズマチョウ♀裏面】

そういえばオスアカミスジの裏展翅はしていない。
去年、台湾で採った蝶を5分の1も展翅していないのだ。
しゃあない。先程の画像を拡大しまひょ。

【オスアカミスジ♀裏面】

一見わかりづらいが、イナズマチョウ群の特徴が見てとれる。

まあ、この辺のくだりはアメブロの採集記『発作的台湾蝶紀行』を読んで下され(註3)。

で、その時は結局♂には一度も会えずじまいだったんだけど、去年は♂のポイントを見つけたので結構採れた。

あっ、♂も背中が金緑色に光ってる。
そういえばヒョウモンチョウの仲間も新鮮な奴は背中が緑色の奴がいるよね。
考えてみれば、オスアカミスジの♂って見た目がヒョウモンチョウっぽい。
もし♂が最初に採れてても、たぶん何じゃこりゃあ~\(゜〇゜;)/?????になってただろうなあ…。ウラベニヒョウモンはいても、こんな大きなヒョウモンチョウなんかいたっけ?って、悩んでいただろう。
よくよく見ると、♀もネコ科の大型肉食獣みたいな柄だ。
♂がレパード(豹)なら、♀はさしずめブラックタイガー、いやオオヤマネコってところか❓
(゜ロ゜)あっ❗、それで思い出したよ。
昔、台湾にも「高砂豹」とか「台湾虎」と呼ばれる大型のネコ科動物がいたのだ。

(出典『東京ズーネット』)

ウンピョウだ。
漢字で書くと雲豹。
雲のような模様を持つ豹という意味であろう。
だが、厳密的にいうとヒョウ属ではなくて、ウンピョウ属という独立した属に分類されている。

ネットで添付用の画像を探す。
あっ、ボルネオ(スンダ)ウンピョウというのもいるようだ。

(出典『子猫のへや』)

こっちの色の方が、よりオスアカミスジの♀に近い。

ウンピョウの分布はインド北東部、ネパール東部、ミャンマー、タイ、ラオス、ベトナム、中国南部と、以前は台湾だった(註4)。
しかし、長い間その姿は確認できず、2013年遂に絶滅が宣言されたという。
何だか、このオスアカミスジの♀が雲豹の化身に見えてきた。そんなワケはないのだが、雲豹の無念の想いがオスアカミスジに憑依したと思いたい。
そう思うと、この蝶がとても愛おしくなってきた。

けれど、開発が進んでいるとはいえ、山深い台湾だ。人間が入れないような地域もまだまだある。
台湾の山河に想いを馳せる。

今もひっそりと何処かで雲豹が生きていると信じたい。

                  つづく

 
追伸
またクソ長くなりそうなので、前、後編に分けることにしました。
次回は生態編になるかと思います。

(註1)長い間、分類学者を悩ませてきた蝶のようだ
台湾のイチモンジチョウ亜科(Limenitinae)は、4つの種群イチモンジチョウ種群(Limenitis)、ミスジチョウ種群(Neptis)、オスアカミスジ種群(Abrota)、イナズマチョウ種群(Euthalia)に分けられている。
『原色台湾蝶類大図鑑』によれば、大雑把に言うとオスアカミスジの交尾器はイナズマチョウ種群とミスジチョウ種群の両方の形質を具えているという。
しかし、交尾器を除く部分はイチモンジチョウ種群とも共通項がかなりある。見た目だけだと、ミスジチョウ種群よりもイチモンジチョウの方が近縁に見えるしね。
当時はまだ幼生期や食樹が判明していなかったので、そんなこんなで分類学者を悩ませていたと云うワケだね。

(註2)オニミスジだってイナズマチョウじゃないの?
でも、裏を見ると、イチモンジチョウとかミスジチョウ系の斑紋なんだよねぇ…。

(出典『Insect.Pro』)

現在、分類学上ではオニミスジはどう云う位置付けになっているのだろうか?
学名の頭、属名はAthymaになっているから、ナカグロミスジやタイワンイチモンジと同じグループに含められているのだろうが、イナズマチョウとの類縁関係はないのかしら?
ところで、果してその幼生期は判明しているのかな?

一応、ネットで探してみたが、見つからなかった。
もしかして、イナズマチョウ的ゲジゲジだったりしてね。

オニミスジは、和名をオオアカミスジと表記される事も多いが、あえて自分は図鑑『東南アジア島岨の蝶』に従って「オニミスジ」を使用した。だって、実際に採った事がある者にとっては、こっちの方が遥かに相応しいと思うからだ。鬼と形容したくなるくらいの迫力があって、魔物のような蝶なのだ。

(註3)
オスアカミスジは、アメブロの『発作的台湾蝶紀行』第9話「空飛ぶ網」と第29話「風雲、急を告げる」の回に登場します。

(註4)
ウンピョウは、台湾だけでなく、中国・海南島でも絶滅したとされている。
現在、生息している場所でも絶滅が危ぶまれている。
人前に滅多に姿を見せないため生態に謎が多く、それが保護をより難しくさせているようだ。

オマケにウンピョウの子猫の画像をお楽しみに下さい。

(出典『よこはま動物園ズーラシアへ行こう』)

子猫、メッチャ可愛いやんか❗

 

野菜三昧の夜もある~今は亡き狂女のために~

 
最近、野菜がバカ高いよねー。
下手したら、肉の方が安かったりする世の中なのだ。

そうなると、天の邪鬼の心が持ち上がってくる。
さあ、今宵はひとり野菜祭りのカルナヴァルといこう。

 
【胡瓜の芥子サラダ】

ふと思い出して、20年くらい前によく作っていた個性的なサラダを再現してみることにした。

レシピは、以下の通り。

①胡瓜の側面をピーラーでストライプに剥き、塩を振る。ピーラーで剥いた部分をテキトーに切ったものも入れて、胡瓜本体と共に10分ほど放置する。
で、水分が出たら捨てる。

②ニンニクと玉ねぎを卸がねで擦る。
そこにセパレート・ドレッシングをブチ込む。さらに芥子もテキトーにブチ込む。で、混ぜるのだが、今回はドレッシングが無かったので、土佐酢に太白胡麻油とレモン汁、塩を入れて代用した。

③ほんでもって、胡瓜とドレッシングを混ぜてテキトーに漬ければ出来上がり。一晩くらいおくのが望ましいが、30分程でも浅いなりに旨い。

個性的なツマミだが、酒にあう。特に白ワインや冷酒とは相性がよろしかろう。

 
【オクラのお浸し】

1分ほど茹でたオクラを出汁に一晩つけた。
醤油をちゃらっと垂らして完成。
お好みで鰹節をかけても宜しかろう。

 
【長芋とオクラの出汁あえ】

余ったオクラと長芋のヌルヌルコンビのコラボ。

長芋はテキトーに短冊に切り、ビニール袋にブチ込む。で、ビール瓶とかペットボトルで💢コナクソと殴りまくる。おどれ、(#`皿´)イテもうたるぅー❗
ごめん、そんなに釈迦力に殴らんでもよろし。テキトー、ええ加減でよろしい。これは、あくまでもシャリシャリ感とヌルヌル感の両方を生かす為なのだ。
あとは、テキトーに刻んだオクラと一緒に盛り、醤油をかけて出来上がり。

シンプルに旨い。
マグロのブツ切りとかを入れたら、さらに旨いこと請け合いである。まあ今回は野菜中心だから入れないけど、無くても充分に旨い。

 
【薄揚げの炙り】

薄揚げを3等分にして、フライパンにて弱火で炙る。
外側がカリカリになったら、ネギを散らし、醤油をちゃらっとかけて、すりおろした生姜を添えれば出来上がり。

(-_-;)アカン。厚揚げの方が遥かに旨い。
刻んで、先程のオクラと長芋のたたきに混ぜた。
食感が加わって、パワーアップっす❗
あっ、写真撮るのを忘れたっす( ̄∇ ̄*)ゞ

 
【里芋と椎茸の煮物】

出汁入れて、圧力鍋で炊いただけ。
シンプルな煮物が好きだ。だから、素材は大事。
里芋は福井産のもの、椎茸は大分産。安いなりにモノが良さそうなもんを選んだ。出汁も薄めに設定。煮物は出来るだけ素材そのものを生かしたいんだよね。

圧力鍋は重宝している。素材が短時間で柔らかく仕上がるのだ。
そういえば、この圧力鍋って、今は亡き坪姉に半ば無理矢理買わされたものだった。
壁ドーンされて、ラブホ行こうぜと凄まれたっけ…。
まったくもって、イカれた女だった。勿論、丁重にお断りしましたが、しつこくて閉口したよ。朝の通勤時間の御堂筋でだぜ。メッチャ、道ゆく人にジロジロ見られてスゴく恥ずかしかったことを覚えている。
彼女はうちの店(ショット・バー)の常連客で、押し出しが強くて姉御肌もあり、女性にはそれなりの人気があったようだ。
だが、それが悪い方向にいくと、よくトラブルになった。我が儘を通り越して、コイツ頭がオカシイんじゃないかと思うような行動に出る事がしばしばあったのだ。そして、恐ろしいまでに執念深い。狂ってるんじゃないかと云うくらいに好きになった相手をシツコク追い回すのだ。それに嘘つきが加わり、事がこじれて関係ないのに何度か自分も巻き込まれた事がある。
6年くらい前だろうか?そんな彼女が死んだことを彼氏から電話で伝えられた。死んだ理由は知らない。あえて聞かなかったからだ。

しみじみ、旨いなあ~。
坪姉に、合掌。
御冥福を御祈りします。

 
【蒟蒻の煮物】

残った出汁でコンニャクを茹でた。
あらかじめビニール袋にブッ込み、砂糖を入れてスリスリしてから煮たので味の沁みは良い。
コレ、蒟蒻を煮る時の必殺技なのだ。

芥子は和がらし。
辛いからだ。基本的には洋がらしは買わない人です。

 
【湯豆腐】

これのベースは芽カブの茹で汁。前回クラゲの酢の物をつくった折りに芽かぶを茹でたのだが、その汁を捨てずに活用させて戴いた。昆布と一緒で、芽カブも出汁が結構出るのだ。
塩は入れてない。芽カブに塩味がついているようなのだ。あとは土鍋で椎茸と共に弱火でコトコト煮たら出来上がり。
(^-^)vシンプルにじんわり旨いだす。

 
【菜の花の芥子あえ】

春はまだ遠そうだが、気持ちだけでも。

茹でた菜の花を芥子醤油とあえただけ。
ほろ苦さと辛みが絶妙だね。

皆様、まだまだ寒い日が続きますが、耐え忍んで生きて生きましょう。