小女子の季節

  
新子の季節がやって来た。

 
表題をよほど「新子の季節」にしようかとも思ったが、新子にしてしまうと関東では別な魚のことになるから諦めた。
関東で新子といえば、寿司ネタの小肌(こはだ)の更に小さい奴のことを言う。
因みにコハダはコノシロのことだ。出世魚の一つで、その大きさによって名前が変わる。

小女子は「こうなご」と読む。関東ではイカナゴの稚魚のことをそう呼んでいるようだ。
関西では、この稚魚のことをイカナゴとか新子と呼んでいる。神戸方面の人たちは、これを甘辛く煮たものを「イカナゴの釘煮」と呼んで、偏愛している。
成魚のことは、関西ではカマスゴやカナクギと呼ぶ。他の地方では、それぞれまた違う呼び方がされているみたいだから、まことにややこしい。
この魚介類の名前の乱立に関しては、時々ウンザリする。混乱を引き起こすだけなんだから、いっそのこと統一しろよなと思う。でも、実際に統一されてしまえば、何だか味気なくなるだろう。何でもかんでも整理してしまえばよいと云うものでもない。多様性のない世界は無味乾燥な世界でもあるのだ。
しょっちゅう、蝶の名前の乱立で文句を言ってるオイラだが、それとコレとは違う。アタクシ、魚介類の名前の乱立は容認します❗

前置きが長過ぎた。本題に入ろう。

五日ほど前に新子の走りを見つけた。
400円足らずと、ちと高い。けど、一点しか売ってなかったし、即飛びついた。
この季節の新子が、こんまくて一番美味いのである。

冒頭の写真を見てもらいたい。
こんなの、どんな網で獲ってるんだ?と思うくらいに、とにかく小さい。
コヤツには最初は何も手を加えず、そのまま食うことをお薦めする。はんなりした柔らかさで苦味が少なく、繊細な味で、誠に美味いんである。

 
第二投は、大根おろしあえ。

 

 
もちろん大根おろしは辛味大根か、普通の大根を皮ごと擦りおろす。辛くない大根は認めない。

半分は、そのまま食う。
そして、飽きてきたら醤油をかける。

 

 
醤油をかけたものは、炊きたて熱々の白い御飯に乗っけて食うのも、いと旨しである。

余談だが、しらすと大根おろしの食い合わせはヨロシクないらしい。しらすには体の成長に関係する必須アミノ酸のリジンが含まれてるんだけど、大根にはこのリジンの吸収を阻害する物質が含まれているらしい。
とはいえ、一方では大根にはしらす干しに含まれているカリウムやカルシウムの吸収を活発にするビタミンCも含まれているそうだ。
この矛盾を解消するためには、お酢をかければ解決するらしい。
(#`皿´)ッタラー❗❗
ゴメン、悪いけどシラスおろしにそんなことは一生涯しないと思う。

 
第三投は、オリーブオイルあえ。

 

 
エキストラ・ヴァージンオイルをチャラっとかけて、混ぜるだけ。
味見をして薄いと思ったら、塩をチョイ足されたし。

これは酒の肴のエントリーに相応しい。ビール、日本酒、焼酎、白ワイン、酒なら大概のものなら合う。

 
一昨日も別なスーパーで見つけたので、即買い。
今度は二点しか売ってなかった。このサイズのものは入荷が少ないのだ。後述するが、瀬戸内辺りではまだ漁獲が解禁されていないのでありんす。

 
今回も先ずは何も加えずに食う。

 

 
そして、第二投も何も加えずに食う。
今さらながら、それが一番美味いと思い出したのだ。
しかも出回る時期はごく短い。季節の刹那をシンプルに味わうとしよう。あれこれするのは、後に出てくるもっと大きなサイズの時にいくらでも出来る。

 

 
奥さん、もしこの小さい新子を見つけたら、迷わず買いですぞ(*`Д´)ノ!!!
身悶えしながら、春の刹那の味覚を堪能されたし。

とはいえ、解禁後に出回るであろう新子でさえも簡単には口に入らないかもしれない。
去年、一昨年と瀬戸内海での漁獲が激減しているんだそうである。他の地方でもそうみたい。
乱獲や生息環境の悪化および海砂の採集による生育適地の破壊などが原因らしい。乱獲に拍車が掛かっているのは、TVのせいで全国的にその旨さが認知されたのもあるだろう。
だから、伊勢湾や瀬戸内海では年ごとに生育度合いや推定資源量を調査し、その年の漁獲量を決定しているそうだ。
明石辺りでは数日前に既に調査が終了していて、去年、一昨年並みらしい。それで漁期を決めるらしい。
つまり、今年も不漁が予測される。

今年の神戸方面の新子の解禁は3月5日(火)だそう。
中々、今年は口に入りそうもないけど、このニュースが入ってくると、いよいよ春の訪れだなと思う。

 
                 おしまい