鮪を愛する男

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カツオも好きだが、マグロも好きだ。

 

 

 

 

 

 

 
マグロといえば赤身である。
あの食欲をそそる独特の香りが好きだ。

歳を重ねるうちに段々と赤身が好きになってきた。
大トロはもちろん美味い。でも昔みたく沢山は食べられなくなった。歳を喰った証しなのか、脂ギッシュなのはもうしんどいのである。今や寿司屋に行ってもマグロは赤身と中トロしか頼まない。
(・。・)あっ、もとい。でも〆にはいまだにトロ鉄火を食ってるわ。美味いんだよなあ(о´∀`о)、トロ鉄火。

マグロにはクロマグロ(本マグロ)、インドマグロ(ミナミマグロ)、メバチマグロ、キハダマグロ、ビンナガマグロ(ビンチョウマグロ)などの種類があるが、今回基本的には区別しない。っていうか、画像だけでは今さらマグロの種類を特定なんてできやしない。三歩あるけば忘れてしまうという鶏なみの脳ミソのアホが、過去のそんな細かいところまで覚えているワケがないのだ(註1)。
因みに名前を上げた種類の順に美味いと言われてるだすよ。ワシもそれには賛成じゃ。クロマグロが一番美味いと思う。味が濃厚だけど微かな酸味もあってバランスがいい。インドマグロは最近はナゼだかスーパーでは見かけない。自然、クロマグロかメバチを買う機会が多い。キハダはあまり買わない。味が薄いし、そもそもトロの部分が無いもんね。

ついでに言っとくと、和名にマグロとつくものは他にもあって、結構多い。コシナガマグロ、ヨコワマグロ、ヒッサゲマグロ、メジマグロ、シビマグロ、カジキマグロにイソマグロetc…。

コシナガマグロはマグロとしては小型で、名前通りに尾部側が長く、体型が細長い。主にインド太平洋の熱帯・亜熱帯海域に分布し、日本近海では夏季に捕獲される。だが刺身ではなく、ツナ缶など加工品となることが圧倒的に多いようだ。あまり名前を聞かないし、市場にも出回らないのはそのせいだろう。

ヨコワマグロ、ヒッサゲマグロ、メジマグロはクロマグロの幼魚の地方名。ヨコワ・ヨコワマグロは近畿・四国地方、そしてメジ、メジマグロは中部・関東地方での呼び名とされるが、曖昧な部分も多々あるようだ。東京にいる時、ヨコワと称して売っているのを見たことがある。
ヒッサゲは大きさ由来の名で、ヨコワよりも大きくてマグロよりも小さく、肩から引っさげられるくらいの大きさのモノを言うようだ。
魚介類って地方により名前が違うものが多いから、こんがらがる事が多い。地方名は文化でもあるからして、全国で統一せよとは言わないけど、何だかややこしいよね。

シビマグロはキハダマグロの幼魚のことを言うとされるが、これまた例外もあり、面倒くさいし、ぬかるみにハマるからもうこれ以上詳しくは書かないけどさ。脱線して、もうエライとこに首突っ込んじゃったなー。

カジキマグロ(梶木鮪)やイソマグロ(磯鮪)はマグロとつくが、厳密的にはマグロではない。あくまでも通俗名であって、学術上はマグロ属ではあらしまへん。イソマグロはマグロと同じスズキ目・サバ科だが、属はイソマグロ属に含まれる。
ダイビングインストラクター時代にイソンボ(イソマグロの別称)を見たことがあるけど、あの迫力たるや凄いものがあった。マンタよか興奮したかもしんない。
おっとー、また脱線しそうだ。軌道修正しよう。

カジキは分類学的にもっと離れていて、スズキ目(カジキ亜目)だが、メカジキ科、もしくはマカジキ科に分類される。マグロに似ているのは、共に巨大化した結果、形や生態が収斂されたのではないかと云う説がある。同じ環境に適応してみたら、たまたま似ましたーって感じだろうか。

(;・ω・)何か早くも脱線しまくりだなあ。
蘊蓄(うんちく)は、もういい。気をとりなおして、前へと話を進めよう。

 

 

 

 

 

 
こちらは大トロと中トロだね。

トロや中トロは官能的である。なんか見た目が艶(なまめ)かしいよね。色といい、質感といいエロいわ。でもって美味いから官能的なのだ。口に残る旨味の余韻もいい。エクスタシーなのだ。

あっ、二番目は薬味に「東京ハラペーニョ」を使ってるな。黒いヤツだ。辛味があってマグロにも合うのだ。

 

 
ネギトロである。この一点しかないのは、ネギトロと称して売っているものは紛いモノだらけだからである。ゆえに食べる機会は少ない。
本来のネギトロは、骨の間にある身の「中落ち」に筋の多い部位や皮の裏などの脂身を小削ぎ落としたスキ身を加えて、包丁で細かく叩いたものだ。ゆえに、そもそもはマグロを1本丸ごと買い付けるような店でしか出てこない寿司ダネだった。
なのにこうも巷にネギトロが溢れているのはナゼか。
答えは簡単だ。スーパーの鮮魚売場に行って、ネギトロのパッケージの裏を見るといい。原材料の書いてあるシールには必ずサラダ油、植物油などと多くの調味料が羅列されている筈だ。つまり、現在スーパーや回転寿司などで一般的に提供されているネギトロは紛い物のフェイクなのだ。ようするにマグロの切身を作る際に出る端材に、魚油や植物油などの油脂や調味料、着色料などを加えてペースト状に加工したものなのだ。ゼッテー、体に良くないよね。だから偽物は基本的に選ばないのだ。
余談だが、ネギトロという名称は中落ちをスプーン等で削ぎ取ることを指す「ねぎ取る」という言葉に由来する。しかしながら、一般的には「ネギ」は野菜の葱で、「トロ」は脂の多い部位であるトロのことであると誤解されていることが多い。コレ、意外と知ってる人が少ないんだよね。

肝心なことを言い忘れた。上の写真のモノは中落ちにスキ身、頭の肉などが混ぜ合わされたものだ。記憶だと、黒門市場のマグロ専門店で買ったものだから間違いない。しかも値段も389円とかクズみたいな値だったと思う。もちろん、抜群に美味かった。勿体なくてしなかったけど、これに沢庵(たくあん)を細かく切ったものを混ぜても旨い。いわゆるトロタクってヤツだすな。『英ちゃん福寿司』に誰か連れてってくれないかなあ…。あそこのトロタクってバリ旨なんすよ。

 

 

 

 

 
ビンチョウマグロだね。関西ではビンナガとはあまり言わない。スーパーでの表記もビンチョウマグロしか見たことがない。

これはさすがに簡単に他と区別できるので分けた。
名前の由来は長大な胸鰭を鬢(びん)、つまりモミアゲに見立てたからと言われている。そういえばトンボの羽に見立てたトンボマグロなんていう別称もあったっけな。また、前述したクロマグロの幼魚の地方名と同じシビなる異称もある。これ又ややこしい。世界から日本語が難しい言語だと言われるのは、何にでも多くの別称があるのが原因の一つかもしれない。アメとか同音異義語もいっぱいあるしさ。雨❓、飴❓(`ロ´;)どっちなんだよー。ワシが外国人だったら、ワッケわかんねーと思うよ。

最後の一枚は太白胡麻油をかけて、山椒と塩を振って食ったと思う。旨かった覚えがある。ポイントは普通の胡麻油ではなく、太白胡麻油を使ったところ。普通の胡麻油では個性が強すぎて、正直言って邪魔。

ビンナガには脂の乗ったビントロというのがあるけれど、最近はとんと見ないなあ…。
スーパーに売ってるのは見た目が脂が乗ってそうなのに、食えば大概あっさりでガッカリする。そう太白胡麻油をかけたのは脂と旨味を補う為だったのだよ。
因みにビンチョウは身の色が元々白っぽいから、脂が乗ってるのかどうかが分かりにくいマグロです。

昔、東京のダイビング・ショップに勤めていた頃、先輩の笹さんとよく神田の『養老乃瀧』に「ビントロのにぎり」を食いに行ったっけ。最後の〆に頼むんだけど、コレが脂がメチャメチャ乗っててバリ旨かった。しかも激安だった。たぶん6貫で500円くらいだったんじゃないかな。今思えば、あれはビントロじゃなくてインガンダルマ(註2)とか怪しい深海魚だったんじゃねえか(笑)。
( ̄∇ ̄*)ゞあっ、ウッソでーす。

続けてヅケである。

 

 

 

 

 

 

 
ヅケは醤油に煮きった酒、味醂などを調合したものに刺身を浸けたものだが、単純にみえて奥が深い。
刺身の切り方、調味液の配合、漬ける時間、刺身をそのまま漬けるか表面に軽く火を入れてから漬けるかなど、選択によって味わいにかなりの差が出てくる。薬味も加えれば、バリエーションはもう無限大だ。

最近の好みとしては、調味液に5~10分くらい漬けて取り出し、暫くおいて味を馴染ませてから食うのが定番になりつつある。

 

 
薬味は山葵ではなく、辛子がマイブーム。

 

 
ビンチョウマグロの場合は調味液の配合を味醂多めにする。ビンチョウマグロは味が弱いので、少しアクセントをつけたいからである。但し、甘くし過ぎると最悪。

次へ進もう。

 

 

 

 

 

 

 
いわゆるマグロの山かけというやつである。
思ってた以上にこさえてるなあ。意識したことないけど、何気に山かけ好きなんだろなあ…。
ところで何で山かけなんだあ❓海のものなのに山かけとは、これ如何に❓
調べてみたら、山かけの山は山芋のことらしい。山芋がけを略したんだとさ。なるほどね。でもスーパーで売ってるのは殆んどが栽培された長芋ばっかだ。山芋なんて滅多に見ないから、頭の中で繋がらなかったよ。単に上から山のようにかけるからだとばかり思ってた。
でもさあ、山芋とか長芋は牛タンとコラボしてる機会も多いけど、自分の知る限りでは牛タンの山かけとは言わないよね。とろろとかの方が圧倒的に多くねえか❓
文句言いてえなあ。山芋なんて高価なものは滅多に掛けらるねえんだから、マグロの長芋かけとかマグロの長かけに改名しろよな(# ̄З ̄)。紛らわしいよ、バーロー。
あっ、「マグロの長かけ」なんて略したら益々ワケわかんねーな。この際、いっそのこと、マグロの山かけなんて名前は廃名したらどうだ❓全国山かけ連合会なるものがあったらスマヌが、「とろろ」の方が余程ポピュラーで、誰だって意味はわかる。
もう「とろろ鮪」か「鮪とろろ」でええでねえの❓

 
ここから先は変化球。

 

 

 

 
卵の黄身系アレンジである。時々、飽きるとこういう事するんだけど、思っている程には劇的旨くはならない。何ていうか、想像した通りの味なんである。酒の肴というよりか、白ごはんに乗っけて食った方が旨い代物だと思う。

一番上の画像が一番シンプルなもの。生卵の黄身の上にビンナガを盛り、そこに後で醤油をかけたものだ。
二番目は半熟卵を使ったもの。火がある程度入っているので、微妙に味わいが違う。
三番目は黄身に胡麻油を加えて、グチョグチョに混ぜたもの。正直、ネギは要らんと思う。

 

 
下に敷かれているのは、海草のメカブだったと思う。コレもそこそこ旨いが想像を越えるものではない。

 

 
アボカドとのコラボだね。アボカドを初めて食ったのは中学生くらいの頃だったと思う。おかんが買ってきて、山葵醤油で食うとトロの味がすると言って出してきた。うちのおかん、食材に関してはチャレンジャーだったから、結構幼少の頃から色んな珍しいもんを食わしてもらってきた。だから、おかんには感謝してる。
とにかく、その初アボカドのことは今でもよく憶えてて、スライスされたものが出てきたのだが、食べて先ず、その食感に驚いた。おかんに言われて頭の中は完全にマグロになってたのに、当たり前だが刺身の食感とは違っていたからだ。正直、とまどった。刺身ではないにしても野菜のそれともまた違う固さで、噛んでいるうちに口の中で何やら化学変化が起こり、最後にトロっぽい後味が残るのだ。不思議な感じで、ちょっと騙されたような気分になった。

今でこそアボカドは熟成させるのが当たり前だし、料理法によって切り方も変わることは知られている。当時は情報も殆んど無なかったと思われる。大人になっても、料理法を教えてくれと電話がかかってきたことがある。ほんのまだ10年程前のことだ。それが今や置いてないスーパーは無い時代だもんなあ。時代は変わるのだ。

というワケで、上の写真のアボカドは適度に熟成させたものだ。切り方も考えてわざとブツ切りにしてある。勿論、事前に色止めのためにレモン汁もかけてある。
コレ、ものすごく美味かった記憶があるんだけど、レシピを全然覚えてない。山葵醤油は入ってる筈だけど、ちょっとだけマヨネーズも入れたような気がする。

 

 
コレもアボカドとのコラボだが、見た目を考えずにグチャグチャに混ぜてから海苔をフュチャーしてみた。たぶんレモン汁で色止めさえしてない。当然、およそ食欲をそそるものではなくなった。でも味はそこそこ旨かったと思う。アボカド、山葵醤油、海苔の組み合わせはマグロのベストマッチの一つでもあるからして、当然ちゃ当然なんだけどね。

そして最後は御飯もの。

 

 
ヅケ丼。ご飯は酢めしにした。
クリーンヒット。こういうのは間違いない旨さだね。

 

 
コチラはビンナガのヅケ丼だね。
海苔で味を補った。

 

 
漬け込み浅めのヅケ乗っけごはん。

 

 
漬け込み強めのヅケ乗っけごはん。
こっちは、お茶とか出汁をブッかけても旨い。そう、いわゆるお茶漬けというヤツね。

そういえばこの前、TV番組で言ってたけど、回転寿司ではマグロが1、2位を争う高コストらしい。つまりマグロを食いまくるのがコスパが高いってことね。
今度、回転寿司に行ったらマグロしか食わんといたろかしら。まあマグロを愛する男だけど、そんなこと無理だと思うけど。

 
                 おしまい

 
追伸
カツオの回の姉妹編だすな。
カツオも好きだけど、マグロも好きなのだ。

昨日にアップ予定の記事だったけど、急遽甲子園に行くことにしたので、今日にズラした。

スマホのストレージが溜まってて画像を消したいがゆえのやっつけ回のつもりだったが、書いてるうちに思いのほか長くなってしまった。性格でしょうな。

 
(註1)細かいこと覚えているワケがないのだ
覚えてないとは言ったけど、写真を見るかぎりでは、一番目と四番、五番目は本マグロ、三番、六番目がメバチマグロ、二番目はメバチかキハダか微妙ってとこかな。

 
(註2)インガンダルマ
深海数百メートルに棲む深海魚。正式名称はバラムツ。脂が乗っててメチャンコ美味いんだけど、二切れもしくは三切れ食ったら尻の穴から無意識に💩ウンコを洩らしてしまうという超絶ヤバイもの。多量に摂食して昏睡状態に陥ったという重篤な症例も報告されている。法律でも販売も禁止されており、謂わば禁断の食い物だ。パンパース装着必須じゃよ。
でも絶海の島、大東島に行けば食えまっせ。刺身も美味いけど、焼いた方が美味。因みに、なぜ洩らすのかというと、脂が蝋的なもので人間には消化できない成分らしい。勇気ある人は試されたし。因みにオラは島のオジサンたちに煽られて、調子こいて7切れも食った。結果は言わない(笑)。

 

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投稿者:

cho-baka

元役者でダイビングインストラクターであり、バーテンダー。 蝶と美食をこよなく愛する男。

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