2018′ カトカラ元年 其の14 後編

 vol.14 オオシロシタバ 後編
      解説編

    『沈黙の妖精』

 
前々回、エゾシロシタバの解説の学名欄で、その小種名である「dissimilis」についての疑問をとりとめもなくダラダラと書いた。主な論調は、その学名の意味する「~と似ているが異質なもの」がいったいどの種に対して似ていて、異質なのかと云う探索譚だった。
これについて、記載者のBremerがらみで博学の松田真平氏に御伺いする機会を得た。エゾシロシタバの追伸に、追記として既に書き加えてあるが、次のようなコメントを戴いたので、紹介しておこう。

「エゾシロシタバの学名は、オオシロシタバCatocala laraに似ているということでCatocala dissimilisと名づけられたのではないでしょうか。1861年にBremerが、東シベリアからアムール付近からもたらされた採集品をタイプ標本にして記載した3種のCatocalaの中で、この2種が色彩的に似ているという意味だと思います。もう1種のオニベニシタバは色彩的に無関係ですね。」

ようするに、Bremerは先にオオシロシタバを見て、その後にエゾシロシタバを見たのではなかろうか。どちらも下翅が黒っぽい事から似ていると思って、学名の小種名を「dissimilis」と名付けたのだろうと云うワケだ。
見た目も大きさも結構違うから、正直、似てるかあ❓とは思う。でも真平さんは、古い時代の事だし、当時のレベルはそんなもんちゃうかと云う旨のことを仰ってもいた。確かに、その時代は記載されているカトカラの数も少なかっただろうから、狭い範疇の中では似ていると思うのも理解できなくはない。

前置きが長くなったが、それではオオシロシタバの解説と参ろう。

 
【オオシロシタバ♀】
(2018.9 山梨県 大菩薩山麓)

 
(同♂)(2019.9 長野県 白骨温泉)

 
(裏面1)
(出展『日本のCatocala』)

 
鮮度にもよるけど、こんなに黄色くはないよなあ…。
スマホの露出がよろしくないせいもあるかもしれん。

 
(裏面2)

 
ボロ過ぎると、今度は白っぽくなってしまう。

 
(裏面3)
(出展『Colour Arras the Siberian Lepidoptera』)

 
ロシア産のものだが、これが一番近いように思う。

 
【学名】Catocala lara lara Bremer, 1861

平嶋義宏氏の『蝶の学名-その語源と解説-』によると、「Lara(ララ・ラーラ)。ラティウムのアルモー河神の娘。美貌だが、おしゃべりなニンフ(妖精)。多言のため、jupiter大神に舌を抜かれた。」とあった。

補足すると、Laraは同じくラテン語のLarunda(ラールンダ)と同義語で、ローマ神話における美しくお喋りなニュンペー(妖精・精霊)で、ナーイアデス(泉や川の妖精)の1人でもある。長母音を略してラルンダとも表記される。
ユートゥルナとユーピテルの間の情事をユーノーに漏らしたため、怒ったユーピテルがラールンダの舌を切り取り、口をきけなくした。そしてメルクリウスに冥界へ連れて行くことを命じた。しかし二人は恋に落ち、ラールンダは二人の息子(ラレース)を産む。その後は「唖者」を意味するムートス(ラテン語: Mutus)と呼ばれるようになった。

早くも余談になるが、この本によれば「Lara」は蝶の学名にも幾つか付けられている。

・タテハチョウ科 アメリカイチモンジ属
 Adelpha lara ベニモンイチモンジ

・シジミチョウ科 Leptomyrina属
 Leptomyrina lara

・セセリチョウ科 キバネセセリ属
 Bibasis lara

ちなみにこのセセリは現在、B.gotamaの亜種になっているようだ。
何れもキュートな奴らで、これらの蝶たちも気になるところだが、また話が逸れまくりそうなのでやめておく。気になる人は自分で調べてね。

扠て、オオシロシタバの話に戻ろう。
記載者はロシア人の Bremer。同じ年(1861年)にエゾシロシタバとオニベニシタバもアムール地方から記載している。
Bremerが、どうしてオオシロシタバに「Lara」という妖精の名をつけたのかはワカラン。上記の蝶たちは多分ちょこまかと妖精の如く動くだろうと想像がつくけど、オオシロシタバからはそんな感じは見てとれない。それに妖精にしては地味。お喋りなオジサンとしては納得いかない。
💡( ・∇・)あっ、そっか。想像を逞しくすると、舌を抜かれて大人しくなったから、Laraなのかもしれない。それにつれて見た目も地味になったとか?
地味になったとかはさておき、そうだと思えば、どこかこのカトカラには聾唖(おし)黙った静かな雰囲気がある。沈黙の妖精と考えれば納得できるかもしんない。だいぶ大柄な妖精だけどさ(笑)。

 
【和名】
度々、オオシロシタバとの和名の逆転現象が指摘されている。シロシタバよりもオオシロシタバの方が明らかに小さいのにオオと付くのは紛らわしいというワケだ。
『原色日本産蛾類図鑑(下)』のシロシタバの解説の項にも、それについて触れられている。

「前種(オオシロシタバ)よりは常に大きく、その和名は前種と入れかえる方が合理的であるが、永年使用されてきたものであるし、さして不便もないのでそのままにしておく。」

と書いてあるから、皆が妙に納得して声高に糾弾するまでには至らなかったのであろう。この図鑑のメインの著書は江崎悌三先生だもんね。偉い先生が言うんだから、文句言えないよね。
自分も図鑑に倣(なら)い、このままで良いと思う。シロシタバはシロシタバでよろし。オオシロシタバはオオシロシタバでよろし。今さら「明日からシロシタバはオオシロシタバになります。オオシロシタバはシロシタバになります。」と言われても困る。そんなの余計にややこしくなるに決まっているのだ。一々、旧シロシタバとか旧オオシロシタバとかと説明するのは面倒くさ過ぎるし、文献だって後々シロ、オオシロのどっちを指しているものなのかがワカンなくなっちゃうぞー。

とは言うものの、シロシタバより小さいのにオオシロシタバという和名は変。知らない人からすれば、それって、❔なぞなぞかと思うぞ。
じゃあ、何でそんな和名をつけたんだろう❓

或いはコレって目線がそもそも違ってたのかも。シロシタバ比較ではなく、コシロシタバ、もしくはエゾシロシタバ目線で、それらよりも大きいという意味での命名だったのかもしれない。そう解釈すれば、解らないでもない。
もしも日本で見つかった順番が、コシロシタバ(エゾシロシタバ)➡オオシロシタバ➡シロシタバだったとしたら、成立しうる話だ。オオシロシタバって付けたあとに、もっとデカイのが見つかったとしたら、オオオオシロシタバとは付けられないもんね。でも、だったらオウサマシロシタバとでも付ければいいではないかと云うツッコミが入りそうだけどさ。
それになあ…。この順番で見つかったとは考えにくいところがある。シロシタバはデカイし、垂直分布も広い。それに中部以北では普通種だから目立つだろう。発見は、この中では一番早かった公算が高い。オオシロシタバよりも遅く見つかったとは考えにくいもんね。
けど、日本で見つかった順番なんて、どうやって調べればいいのだ❓誰か教えてよ(ToT)

一応、参考までに付記しておくと、記載の順番と現記載地(タイプ標本の産地)は以下のようになっている。

・オオシロシタバ(1861年 アムール(ロシア南東部))
・エゾシロシタバ(1861年 アムール(ロシア南東部))
・コシロシタバ(1874年 日本)
・シロシタバ(1877年 日本)

ここで又しても本筋から逸れるが、ネットで色々と調べてたら、こんなんが出てきた。

  
(出展『Bio One complate』)

 
カトカラのDNA解析図だ。
あっ、表題を見ると『Molecular Phylogeny of Japanese Catocala Moths Based on Nucleotide Sequences of the Mitochondrial ND5 Gene』となっている。
そっかあ…、コレが石塚さんが新川勉さんに依頼したというDNA解析かあ…。探したけど、全然見つからんかった論文だ。
コレを見ると、オオシロシタバとエゾシロシタバの類縁関係がまあまあ近いじゃないか❗
だとするならば、Bremerさんがオオシロに近いと感じてエゾシロに「dissimilis」と云う学名をつけたのは慧眼だったのかもしれない。すげー直感力かも。
とはいえ、DNA解析が本当に正しいかどうかはワカンナイけどね。
嗚呼、どうあれ、またエゾシロシタバの解説編を書き直せねばならぬよ( ノД`)…。

また、この和名には別な面でも問題がある。
オオシロシタバというが、白というよりも黒のイメージの方が強い。後翅には白い帯紋があるものの、真っ白じゃないので、どっちかと云うと黒の方が目立つ。全体的に見ても、黒っぽさが勝っている。これじゃ、和名として二重にダメじゃないか。
思うに、そもそもの間違いはコシロシタバ、ヒメシロシタバ、エゾシロシタバにシロシタバと名付けたのがヨロシクなかったんじゃないかと言わざるおえない。コイツら皆、下翅が黒っぽいんだからクロシタバとしとけば良かったのだ。
前言撤回❗
オオクロシタバでもシロオビクロシタバでもいいから、名前を変えればいいんでねぇーの❓そうすればシロシタバとの大きさ逆転問題も解決する。シロシタバは、そのままシロシタバにしておけばいいから混乱は最小限にとどめられる。間違ってもシロシタバをオオシロシタバに変えるだなんて要らぬ愚行さえしなけれぱ、何の問題も無くなるじゃないか。
バンバン(*`Д´)ノ!!!、今からでもいい、そうなさい(笑)。
とはいえ、どなたか偉いさんが言わないと無理だよね。

こうなってくると、誰がこのダメ和名を付けたのか、どうしても気になってくるよね。
おいおい( ̄ロ ̄lll)、又それって危険なとこに足を突っ込むことになりかねないぞ。いんや、絶対に泥沼になる。いやいや、もう既に泥沼になっとるから、底無し沼だわさ。

『原色日本蛾類図鑑』の下巻が発行されたのが1958年(昭和33年)。そこにオオシロシタバの和名についての錯綜振りが書いてあるワケだから、それ以前に刊行された図鑑のどれかから、その和名が世に出てきたことは疑いあるまい。
とはいえ、江戸時代の図譜レベルとは考えにくい。となると、明治、大正と昭和前半の時代のものが候補だろう。

調べてみると、これが結構大変。古い時代のものだけに、あまりネットに情報が上がってこないのだ。
そう云うワケで、漏れているものもあるかもしれないことを先にお断りしておく。

・『日本千虫図解』松村松年(1904年 明治37年)

・『蛾蝶鱗粉転写標本』名和昆虫研究所(1909 明治42)

・『日本昆虫図鑑』石井悌・内田清之助他(1932 昭和7)

・『分類原色日本昆虫図鑑』加藤正世(1933 昭和8)

・『原色千種昆虫図譜』平山修次郎(1933 昭和8)

・『日本昆虫図鑑 改訂版』(1950 昭和25)
 
この、どれかじゃろう。けど結構あるなあ。
上から2番目の『蛾蝶鱗粉転写標本』は鱗粉転写本だから、そう多くの種類は掲載できないだろうし、鱗粉転写に地味な色の蛾を選ぶ可能性は極めて低いものと思われる。除外してもいいだろう。
残りはどれも怪しい。とにかく、これらを順を追って遡ってゆけば、誰が命名したのかが特定できそうだ。
探偵さんは解決が見えてきて、ぷかぁ~(-。-)y-~、余裕で煙草をくゆらせるもんね。

しか~し、🚨問題発生、🚨問題発生。
近場の図書館や古本屋では、見れるところがなーい❗

唯一、辛うじて見れたのが、1950年(昭和25)に発行された改訂版の『日本昆虫図鑑』だけだった(大阪市立中央図書館蔵)。
そこには平仮名で「おおしろしたば」の名があり、執筆担当者は河田薫とあった。

 
(出展『日本昆虫図鑑 改訂版』北隆館)

 
命名は、この河田さんの可能性も無いではないが、確率は低いだろう。なぜなら『原色日本蛾類図鑑』には「永年使用されてきたものであるし…」という記述があるからだ。たかだか8年やそこらで永年とは言わんだろう。
いや、改訂版の前の昭和7年の初版も見なければ何とも言えないな。そこでも解説を河田氏が執筆していたならば、有り得ることだ。

しかし、ここで早くも頓挫。討ち死にする。他の図鑑は探せなかったのだ。
( ´△`)もう、別にいいや。犯人探しをして突き止めたところで、何になるというのだ❓それに、その方はとっくに鬼籍に入っておられる筈だ。死者にムチ打ってどうする。死んでるのに恥かかせたら、👻化けて出られるかもしれん。それは困るぅ━━(ToT)
どうしても気になる人は、御自身で調べておくんなまし。で、ワテに教えて戴きたいでごわす。

 
【開張(mm)】78~85㎜
『みんなで作る日本産蛾類図鑑』にはそうあったが、岸田先生の『日本産蛾類標準図鑑』では、70~85㎜となっている。『みんなで作る…』は古い図鑑の『原色日本蛾類図鑑』からのパクリと思われるので、岸田先生の記述を支持する。

ネット上の『ギャラリー・カトカラ全集』には、次のようなコメントがあった。

「シロシタバより小さいオオシロシタバだが、東(旧大陸)の三役(大関は無理だから関脇か小結あたりか)に入れてもいいだろう。」

たぶん、これは大きさからの番付だろう。確かにオオシロシタバはムラサキシタバ、シロシタバに次ぐ大きさだ。でも、見た目などのイメージも付加すれば、関脇でも役不足のような気がするぞ。世間で評価されてる感じが全然しないもん。
学名は舌を抜かれた妖精だし、ネットで検索しても必ず「もしかして:コシロシタバ」なんて云うお節介な文字が頭に出てくる始末。ようは検索エンジンにさえ、あまり認識されていないのだ。何だか段々オオシロちゃんが不憫に思えてきたよ。
とはいえ、評価する向きもある。ネットのブログを見ると「渋めの前翅と後翅が素晴らしく、翅を開いた時の総合的な美しさはカトカラ随一である。」なんて書いたりしている方もおられるのである。但し、最後に括弧して(と思う)となってるけどね。
でも確かにそう言われてみれば、鮮度が良いものからはモノトーンの渋い美しさを感じる。

 
(出展『我が家周辺の鱗翅目図鑑』)

 
きっと、これまた和名が悪いんだろなあ。
もっと横文字のカッコイイ和名だったなら、評価も変わっていたかもしれない。それはそれで、ツッコミ入ってたかもしんないけど…。(゜o゜)\(-_-)
やっぱり不憫だぜ、オオシロちゃん。

 
【分布】北海道、本州、四国、九州、対馬
主に中部地方以北に分布するが、食餌植物の分布が限定されるので産地は限られる。棲息地は標高1000m以上のところが多いが、北海道では平地にも産し、個体数も多いようだ。
西日本からの記録は少なく、局所的である。九州では福岡県・熊本県・大分県・長崎県の高標高地から数件の記録がある。ただし,長崎県対馬では近年記録が増加しているという。四国では石鎚山系や愛媛県の天狗高原に、中国地方は山口県太平山、島根県松江市長江町、鳥取県伯耆大山、広島県冠高原、岡山県蒜山などに散発的な記録がある。四国・九州では非常に稀なカトカラなのだ。
近畿地方でも少なく、ネットの『ギャラリー・カトカラ全集』では、兵庫県、大阪府、滋賀県、和歌山県に記録があるとしている。しかし『世界のカトカラ』や『日本のCatocala』の分布図では、和歌山県は空白になっている。

 
(出展『世界のカトカラ』)

(出展『日本のCatocala』)

 
とはいえ、紀伊半島南部には標高が高い山もあるので、分布していても不思議ではない。おそらくいるだろう。
大阪府と滋賀県の産地は拾えなかった。
確実に産するのは兵庫県西北部で、氷ノ山やハチ北高原などで採集されている。ハチ北では、2018年の8月に一晩で10頭以上がライトトラップに飛来したそうだ。

海外ではアムール(ロシア南東部・沿海州)、ウスリー、樺太、朝鮮半島、中国中北部に分布する。
伊豆大島、カムチャッカ半島などのシナノキが自生していないところでも記録されており、遠距離移動する可能性が示唆されている。

見たところ、特に亜種区分されているものは無いようだが、シノニム(同物異名)に以下のものがある。

・Catocala pallidamajor Mell, 1939

ユーラシア大陸では本種に近縁なものは知られていないが、北アメリカに近いと思われる種がいる。

 
【Catocala cerogama オビキシタバ】
(出展『世界のカトカラ』)

 
帯が濃い黄色ゆえ全然違うように見えるが、仔細に見ると両者が似ていることが理解できる。
幼虫もオオシロシタバと同じく、Tilia(シナノキ属)を食樹としているし、上のDNA解析図でも極めて近縁な関係にあることが示されている。

 
【変異】
前翅中央部が著しく黒化するものが知られる。

 
(出展『世界のカトカラ』)

 
この型は渋くてカッコイイかもしんない。

 
【レッドデータブック】
絶滅危惧II類:福岡県、長崎県
準絶滅危惧種:大阪府、広島県

上記の場所にかかわらず、西日本では何処でも同じようなカテゴリーに入るものと思われる。

 
【成虫出現月】
年1化。早いものは7月下旬から出現するが、発生のピークは8月中旬~9月初旬。10月でも生き残りの個体が見られる。

 
【生態】
冷涼な気候を好み、標高1000~1800mの間の山地に見られる。平地にも棲息する北海道を除けば、棲息地はわりと局所的なようだ。但し、産地では比較的個体数は多いみたいだ。

『日本のCatocala』によれば、発生数の多い年は昼間も活動し、サラシナショウマ、フジウツギ、ツリガネニンジン、クサボタンなどの花に吸蜜に訪れるという。発生数が通常時の場合は、夜間にサラシナショウマに吸蜜に訪れる。
また図鑑には、稀に低山地のクヌギの樹液で摂食する姿が観察されていると書いてあり「日本産Catocala 成虫の餌」という表でも花蜜は◎、樹液は△となっていた。
しかし、この記述に関しては疑問を持っている。
なぜなら、高標高地(1400~1700m)でもフルーツトラップや糖蜜、シラカバの樹液に寄って来たからだ。トラップにかなりの個体数が飛来しているのを見ているので、偶然ではないことは明白だろう。むしろ他のカトカラよりも誘引される傾向が強いと言ってもいいくらいだ。
樹液に飛来した例は他にクヌギ、ミズナラ、ヤナギがあるようだ。
尚、吸汁時には下翅を開く。結構敏感で、慎重に近づかないと飛んで逃げる傾向が強かった。しかし、これは時期や場所、時間帯にもよるかもしれない。
飛来時間は午後9時前後からが多かった。但し、これも観察がもっと必要だろう。

灯火にもよく飛来し、最もポピュラーな採集方法になっているものと思われる。自分はあまり灯火採集はやったことがないが、A木くんの話だと、居るところでは多数飛んで来るらしい。飛来時刻は主に9時以降だとするネット情報があった。しかし他のサイトでは、日没直後にまとめて飛来したと書いてあるものもあった。調べた限りでは他に言及されているものはなかった。
因みに、自分は灯火に来た個体は一度しか見たことがない。白骨温泉の外灯に来ていたものだ。時刻は深夜0時を過ぎていた。

『日本のCatocala』によると、昼間は樹木の幹や岩陰などで頭を下向きにして静止している。人の気配などに驚いて飛び立ち、その後に着地する際は、頭を上にする個体と下にする個体があり、上向きに着地した場合は暫くしてから下向きに姿勢を変えるという。
ちょっと驚いたのは、この記述だと、いきなり下向きに止まる個体がいると云うことだ。多くのカトカラは上向きに着地してから、頭を下向きに変えるからだ。いきなり下向きに止まるだなんて、ちょっとサーカス的じゃないか。となれば、飛んでて着地する手前でクルッと回転、でんぐり返って止まるって事じゃん。だとすれば、器用と言うしかない。本当にそうなら、そのアクロバティックな技を是非一度見てみたいものだ。

 
【幼虫の食餌植物】
シナノキ科 シナノキ(科の木、級の木、榀の木)。

あんまりシナノキって馴染みがない。植物の知識がないせいもあってか、見た記憶が殆んど無い。イメージが湧かないので、Wikipediaで調べてみよう。

「学名 Tilia japonica。日本特産種である。
新エングラー体系やクロンキスト体系ではシナノキ科、APG体系ではアオイ科シナノキ属の落葉高木に分類されている。
シナはアイヌ語の「結ぶ、縛る」に由来するという説がある。長野県の古名である信濃は、古くは「科野」と記したが、シナノキを多く産出したからだとも言われている。それが由縁なのか、長野市の「市の木」に指定されている。
九州から北海道までの山地帯、本州の南岸を除いた日本全国の広い範囲に分布し、特に北海道に多い。」

なるほど。オオシロシタバが北海道に多いのは、そゆ事なのね。
でも、そうなると紀伊半島にはシナノキって自生してるのかな❓(註1)
無ければ和歌山県の記録は偶産の可能性大になるね。

「幹の直径は1m、樹高は20m以上になる。樹皮は暗褐色で表面は薄い鱗片状で縦に浅く裂けやすい。
葉は互生し、長さ6-9cm、幅5-6cmで先の尖った左右非対称のハート型。周囲に鋸状歯がある。春には鮮やかな緑色をしているが、秋には黄色に紅葉する。
5~7月に淡黄色の小さな花をつける。花は集散花序で花柄が分枝して下に垂れ下がる。花序の柄には苞葉をつける。果実はほぼ球形で、秋になって熟すと花序と共に落ちる。」

これじゃ、ワシら素人にはワケワカメだよ。やっぱ画像がいるな。

 

(出展『神戸市立森林植物園』)

(出展『Wikipedia 』)

 
見たことあるような無いような木だ。
植物は同定するのが難しいよね。

木は色んなものに利用されているようだ。

「樹皮は「シナ皮」とよばれ、繊維が強く主にロープの材料とされてきたが、近年は合成繊維のロープが普及したため、あまり使われなくなった。水に強く、大型船舶の一部では未だに使用しているものがある。
アイヌ人などにより、古くは木の皮の繊維で布を織り衣服なども作られた。現在でもインテリア小物等の材料に使われる事がある。
木部は白く、年輪が不明瞭。柔らかくて加工しやすいが耐久性に劣る。合板や割り箸、マッチ軸、鉛筆、アイスクリームのヘラ、木彫りの民芸品などに利用される。
また、花からは良質の蜜が採取できるので、花の時期には養蜂家がこの木の多い森にて採蜜を営む。」

そういえば、この花にはカミキリムシが集まると聞いたことがあるなあ。

シナノキは日本特産種だが、結構近縁種があるみたい。
「シナノキ属(ボダイジュの仲間)はヨーロッパからアジア、アメリカ大陸にかけての冷温帯に広く分布している。ヨーロッパではセイヨウシナノキ(セイヨウボダイジュ)がある。シューベルトの歌曲『リンデンバウム』(歌曲集『冬の旅』、邦題『菩提樹』)で有名。
また、1757年にスウェーデン国王アドルフ・フレデリックが「分類学の父」と呼ばれる植物学者カール・フォン・リンネを貴族に叙した際に、姓としてフォン・リンネを与えたが、リンネとはセイヨウシナノキを指し、これは家族が育てていた事に由来するものである。」

( ̄O ̄)おー、あの偉大なリンネ(註2)の名前はシナノキ由来なんだね。

「日本では、他にシナノキ属にはオオバボダイジュが関東北部以北に、ヘラノキが関西以西に分布するとされるが、他にもあるようだ。

ブンゴボダイジュ
日本では大分県の山地にまれに生育する。

シコクシナノキ(ケナシシナノキ)
四国の山地に生育する。

マンシュウボダイジュ
環境省の絶滅危惧IA類(CR)に選定されている。日本では岡山県、広島県、山口県に分布し、高地の谷間などの冷涼地にまれに生育する。日本以外では朝鮮半島、中国大陸(北部、東北部)に分布する。

ツクシボダイジュ
環境省の絶滅危惧IB類(EN)に選定されている。日本では大分県の九重山周辺にまれに生育する。日本以外では朝鮮半島にも生育する。

モイワボダイジュ
北海道、本州の東北地方に分布し、山地に生育する。ときに本州中部地方北部にも見られる。

ボダイジュ(註3)
中国原産で、日本ではよく社寺に植栽されている。

ノジリボダイジュ
シナノキとオオバボダイジュの交雑種と考えられ、長野県と新潟県に見られる。

主な海外種
アメリカシナノキ、フユボダイジュ、アムールシナノキ、タケシマシナノキ、モウコシナノキ、ナツボダイジュ、セイヨウシナノキ。

属名のTiliaは、ボダイジュに対するラテン語古名。語源は ptilon「翼」で、翼状の総苞葉が花序の軸と合着している様子から。属名のTiliaは繊維を意味するギリシア語tilosとする説もある。」

オオシロシタバは他のシナノキの仲間では発生しないのかなあ❓
日本のシナノキ属だけでなく、海外のセイヨウシナノキ(セイヨウボダイジュ)、オランダシナノキなども結構植林されているようだしさ。
でも標高がある程度高くないと無理か…。
『日本のCatocala』にも、シナノキ科ボダイジュ類からは幼虫の採集例はないと書かれていたし、意外と代用食となるものは少ないのかもしれない。

 
【幼生期の生態】
幼虫に関しては、そもそも蝶の飼育さえしない男なのでオリジナルの知見ゼロである。ここは全面的に西尾則孝氏の『日本のCatocala』の力をお借りしよう。

それによると、幼虫は林縁部や牧場周辺の残存林といった開放的な場所のシナノキによく見られ、壮齢木から大木の老齢木に付くそうだ。

野外での幼虫の色彩は変化に富み、著しく濃淡が強く出るものや全体が暗化した個体も見られるそうだ。室内など高温下で飼育すると、著しく黒化するみたい。
また飼育時、たまたま餌にしたシナノキに付いていたキリガの幼虫をしばしば捕食していたという。
コレには驚いた。肉食性のカトカラなんて聞いたこともなかったからだ。(# ̄З ̄)邪悪じゃのう。

昼間、若齢幼虫はシナノキの葉の間に、中齢幼虫は葉の上に静止している。終齢幼虫(5齢)は他の多くのカトカラのように樹幹には降りず、枝に静止している。
終齢幼虫の食痕には特徴があり、葉の部分だけを食べて葉柄を残す。または葉柄を囓じって切り落とす。
これはアメリカの近縁種 Catocala cerogama(オビキシタバ)でも、同じような生態が観察されている(1985 ハインリッチ)。ハインリッチは他の数種のカトカラについても同様の観察をしており、その理由として、食痕やそこに付着した幼虫の唾液から蜂など天敵に見つからない為の行動だと推定している。日本でも、オオシロシタバの他にムラサキシタバの幼虫が食樹の葉柄を齧じり落とすことが観察されている。

長野県の標高1000mの高原では、孵化は5月上旬から中旬、終齢幼虫は6月上旬~下旬に見られる。蛹化場所についてはハッキリ調べられていない。

 
                    おしまい

 
追伸
またしても泥濘(ぬかるみ)に嵌まったよ。
正直、あんまり色んなことに疑問を持つのもどうかと思うよ。

因みに、今回は先に解説編を書いてから本編(前回)を書き始めた。どうせ1話で完結しないと思ったからだ。毎回、文章を切り取って移すのは面倒だと思ったのだ。いつも1話で完結することを目指して書いてるんだけど、無駄な努力だと悟ったのだ。

 
(註1)紀伊半島にはシナノキって自生してるのかな❓

和歌山県の植物について書かれた報告書(https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/032000/032500/yasei/reddata_d/fil/shokubutu.pdf)によれば、和歌山県のシナノキは絶滅危惧IA類(CR)に指定されていた。
絶滅危惧IA類とは、ごく近い将来に絶滅する危険性が極めて高い生物に対して付与される記号みたいなものだ。略号はCR(Critically Endangered)。

そんなに絶滅に瀕している木ならば、食樹転換でもしてない限り、オオシロシタバが和歌山に生息する確率は極めて低いね。

シナノキそのものの分布図は見つけられなかったが、下のような図を見つけた。

 
(出展『広葉樹林化技術の実践的体系化研究』)

 
上部の図を見ると、厳密的にはシナノキの分布図ではないにしても、何となくオオシロシタバが西日本では極めて珍しいのも理解できるね。ただ、注目すべきは中国地方。意外とシナノキがありそうだ。もしかしたら、探せば中国地方ではもっと生息地が見つかるかもしれない。

 
(註2)リンネ
カール・フォン・リンネ(Carl von Linné)。
生没年1707~1778。スウェーデンの博物学者、生物学者、植物学者。同名の息子と区別するために大リンネとも表記される。
「分類学の父」と称され、それまで知られていた動植物についての情報を整理して分類表を作り、生物分類を体系化した。その際、それぞれの種の特徴を記述し、類似する生物との相違点を記した。これにより、近代的分類学が初めて創始された。
生物の学名を、属名と小種名の2語のラテン語で表す二名法(または二命名法)を体系づけた。生物の学名を2語のラテン語に制限することで、学名が体系化されるとともに、その記述が簡潔となった。現在の生物の学名は、リンネの考え方に従う形で、国際的な命名規約に基づいて決定されている。
分類の基本単位である種のほかに、綱、目、属という上位の分類単位を設け、それらを階層的に位置づけた。後世の分類学者たちがこの分類階級をさらに発展させ、現代おこなわれているような精緻な階層構造を作り上げた。
リンネの発案により、初めて植物の雄株と雌株に記号を用いられるようになった。この記号は、もともとは占星術に用いられてきたもので、火星(♂)をつかさどる戦の神マルス=男性的=オス、金星(♀)をつかさどる美の女神ビーナス=女性的=メスとした。それが他の生物にも転用されてゆくことになる。
また、人間を霊長目に入れ,ホモ−サピエンスと名づけた。

 
(註3)ボタイジュ
菩提樹。日本へは臨済宗の開祖栄西が中国から持ち帰ったと伝えられる。釈迦は菩提樹の下で悟りを開いたとされる事から、日本では各地の仏教寺院によく植えられている。しかし、これは間違って移入、広まったたもので、本来の菩提樹は本種ではなく、クワ科のインドボダイジュ(印度菩提樹 Ficus religiosa)のこと。中国では熱帯産のインドボタイジュの生育には適さないため、葉の形が似ているシナノキ科の本種を菩提樹としたと言われる。

 
主な参考文献
・石塚勝巳『世界のカトカラ』
・西尾則孝『日本のCatocala』
・岸田泰則『日本産蛾類標準図鑑』
・江崎悌三『原色日本蛾類図鑑』
・カトカラ同好会『ギャラリー・カトカラ全集』
・インターネット『みんなで作る日本産蛾類図鑑』

 

2018′ カトカラ元年 其の14

   vol.14 オオシロシタバ
  『その名前に偽りあり』

 
2018年 9月7日

オオシロシタバを初めて採ったのは、エゾシロシタバと同じく山梨県甲州市塩山だった。

 
【ペンションすずらん】

 
但し、ジョナスやエゾシロシタバのようにペンションすずらんのライトトラップではない。
じゃ何かというと、果物トラップで採れたのだ。糖蜜ではないところが、いかにも蝶屋らしい。蝶屋はあまり霧吹きシュッシュッの糖蜜は使わないのだ。
簡単な方法はストッキングにバナナやパインをブチ込み、焼酎をブッかけて発酵させたものを木に吊るす。
だから、翌日に蛾マニアの高校生が霧吹きを持ってシュッシュシュッシュやってるのを見て、衝撃を受けた。彼はライトトラップも別な場所でやってたしなあ。純粋なる蛾好き魂に触れたような気がするよ。

 

 
そういえば、この日が初めてのカトカラ狙いでのフルーツトラップだったんだよね。でもって、同時に初ナイトフルーツトラップでもあったわけだ。
カトカラにそこまで嵌まっていたワケではなかったから、そうまでして採ろうとは思わなかったのだ。
でも、ムラサキシタバとなれは話は別だ。大きさ、美しさ、稀少性、どれを取っても別格のカトカラなのだ。彼女だけは何としてでも採りたかった。だからカトカラ目的で遠征したのもこの日が初めてだったし、トラップまで用意したのだろう。

果物は何を使ったっけ❓
一つは即効性の高い🍌バナナを使ったことは間違いないが、ミックスしたもう1種類が思い出せない。普通で考えればパイン🍍なのだが、それは沖縄や東南アジアでの話だ。中部地方では、勿論のこと露地物のパインなんぞ栽培されているワケがない。ゆえに誘引されないかもしれないと考えた記憶がある。因みにバナナも中部地方に露地物はないだろうが、トラップとしては万能だと言われている。だから選んだ。実際、過去に効果もあったしね。
となると、もう1種はリンゴか梨、桃、スモモ辺りが考えられる。
🍎リンゴは発酵するのに時間がかかるし、一度も使った記憶が無いから有り得ないだろう。
梨かあ…。今、テキトーに並べたけど、もともと梨なんて考えてもしなかったよ。使ってるって聞いたことないもんな。でも産卵させる為に親メスを飼う場合は餌として梨がよく使われている。有りかもなあ…。機会があったら試してみよっと。でもリンゴと同じく発酵には時間がかかるかもしれない。
🍑桃は効き目がありそうだが、高価だ。ズルズルになるのもいただけない。それに季節的にもう終わってるよね。コレも無いだろう。
となると、スモモの可能性が大だ。そういえばオオイチモンジを採るのに使ったことがあるけど、効果あったわ。たぶんスモモだろね。そう思うと、そんな気もしてきたわ。

 
【オオイチモンジ】

 
場所は標高1400mにあるペンションすずらんから30分程下った所だった。となれば、標高1300~1200mってとこだろう。
何で、そんな遠い場所にトラップを仕掛けたのかというと、コレにはちゃんとした理由がある。宿のオッチャンに尋ねたところ、その付近にしかムラサキシタバの食樹であるヤマナラシが生えていないと言われたからだ。
だんだん思い出してきたわ。ペンションとそこを何度も往復したんだよね。コレが肉体的にも精神的にもキツかったんだよなあ。一晩に何10㎞と歩いたし、一人で夜道を歩くのはメチャメチャ怖かった。お化けの恐怖もあったけど、何といってもクマ🐻ざんすよ。近畿地方の低山地じゃないんだから、100パーおるもん(T△T)

時間は午後9時台だったと思う。
降りてきたら、ヤマナラシの幹に縛り付けておいたトラップに見慣れぬ大型の蛾が来ていた。
しかし、見ても最初は何だか理解できなかった。けど下翅を開いて吸汁していたのでカトカラの仲間であることだけは判った。でも何じゃコレ(;・ω・)❓である。
10秒くらい経ってから漸くシナプスが繋がった。

『コレって、オオシロシタバじゃなくなくね❓』

ムラサキシタバしか眼中になかったから、全くターゲットに入ってなかったのだ。それに『日本のCatocala』には、オオシロは花には好んで集まるが、樹液には殆んど寄ってこない云々みたいな事が書いてあった。ネットの情報でも糖蜜トラップでオオシロを採ったという記述は記憶にない(註1)。だから、こう云うかたちで採れるとは思ってもみなかったのだろう。

採った時は、そこそこ嬉しかった。
思った以上に大きかったし、予想外のモノが採れるのは嬉しいものだ。それに良い流れだと感じたことも覚えている。ムラサキシタバの露払いって感じで、モチベーションが⤴上がったもんね。
だが同時に、薄汚いやっちゃのーとも思った。その証拠に、この時撮った写真が1枚たりとも無いもんね。
発生から1ヶ月くらい経っているから致し方ないのだろうが、このカトカラって他のカトカラよりもみすぼらしくなるのが早くねぇかい(・。・;❓

此処には3日間通ったが、毎日複数頭が飛来した。
おまけに、シラカバの樹液を吸っている個体も見た。
ということは、偶然ではない。間違いなくオオシロシタバは樹液やフルーツトラップに誘引される。そう断言してもいいだろう。
そういえば、この時には思ったんだよなあ。シロシタバは夜間、樹液で吸汁する時以外でも下翅を開いて樹幹に止まっているものが多いなんて(註2)何処にも書いてなかったし、こんな風にオオシロシタバの生態も間違っていたから、何だよ、それ❓ってガッカリした。蛾は、蝶みたく全然調べられてないじゃないかと軽く憤慨しちゃったもんね。でも、今考えると、それも悪いことじゃない。殆んど調べ尽くされているものよりも、そっちの方がよっぽど面白い。性格的にも、そういう方が合ってる。先人たちをなぞるだけの採集なんてツマラナイ。

 
【Catocala lara オオシロシタバ】

 
その時に採った比較的マシな個体だ。
全然、シロシタバ(白下翅)って感じじゃない。どちらかというと黒っぽい。コレを白いと思う人は少ないと思うぞ。
下翅の帯が白いから名付けられたのだろうが、それとて純粋な白ではない。せいぜい良く言ってクリーム色だ。悪く言えば、薄黄土色じゃないか(上にあげた画像が白く見えるのは鮮度が悪いくて擦れているから。後に出てくる野外で撮った写真を見て下されば、言ってる意味が解ると思う)。
和名はオオシロシタバよか、シロオビシタバの方がまだいいんじゃないかと思うよ。
その下翅の帯だが、この形の帯を持つものは日本では他にムラサキシタバしかいない。両者って類縁関係はどうなってんだろね?(註3)

オオと名前が付いているのにも不満がある。
初めて見た時は大きいと思ったが、明らかにシロシタバより小さい。重厚感も全然足りてない。なのにオオなのだ。完全に見た目と名前が逆転現象になってる。名前に偽りありだ。何がどうなったら、そうなってしまうのだ。謎だよ。

 
2018年 9月16日

その1週間後、また中部地方を訪れた。
とはいえ、今度は長野県。そして、一人ではなくて小太郎くんが一緒だった。
小太郎くんの目的はミヤマシジミとクロツバメシジミの採集だったが、ついでにムラサキシタバの採集をしてもいいですよと言うので、車に乗っけてもらったのだ。
この時は殆んど寝ずの弾丸ツアーだったので、幻覚を見るわ、発狂しそうになるわで、アレやコレやと色々あって面白かった。
しかし、そんな事を書き始めたら膨大な文章になるので、今回は端折(はしょ)る。

場所は白骨温泉周辺だった。
この日もフルーツトラップで勝負した。
たぶん前回使ったものに果物を足して、更に強化したものだ。車の後部座席の下に置いたら、小太郎くんが『うわっ、甘い匂いがスゴいですねー。』とか言ってたから、間違いなかろう。

トラップを設置して、直ぐにオオシロシタバが現れた。勿論、もう感動は1ミリたりともない。擦れた個体だったし、みすぼらしい汚ない蛾にしか見えなかった。
それでも一応、1頭目は採った記憶がある。

 

 
その後も、オオシロくんは何頭もトラップに飛来した。
これで、やはりオオシロシタバはフルーツトラップに誘引されると云うことを100%証明できたぜ、ざまー見さらせの気分だった。
けど、フル無視やった。もうゴミ扱いだったのである。だから、この日もオオシロシタバの画像は1枚もない。

そういえば、この日は白骨温泉の中心でもオオシロを見ている。外灯に飛んで来たものだ。図鑑やネットを見てると、オオシロの基本的な採集方法は灯火採集のようだ。
思うに、この灯火採集が蛾界の生態調査の進歩を妨げている部分があるのではないだろうか❓
確かに、この採集方法は楽チンで優れている。一度に何種類もの蛾を得られるから効率がいい。その地域に棲む蛾の生息を調べるのには最も秀でた方法だと思う。しかし一方では、生態面に関しての知見、情報はあまり得られないのではなかろうか❓せいぜい何時に現れるとか、そんなもんだろ。
まだまだ蛾の初心者のオイラがこう云うことを言うと、また怒られるんだろなあ…。
まっ、別にいいけどさ。変に忖度なんかして感じたことを言えないだなんて、自分的にはクソだもんな。

今回も2019年版の採集記を続編として別枠では書かない。面倒くさいし、そこには何らドラマ性も無いからだ。書いても、すぐ終わる。
と云うワケで2019年版も引っ付ける。

 
2019年 9月5日

2019年のオオシロシタバとの出会いも白骨温泉だった。
ポイントも同じ。違うところは、細かいところを除ければ、一人ぼっちなところと1週間ほど時期が早いことくらいだ。

天気がグズついてて、ようやく雨が上がったのが午後10時過ぎだった。やっとの戦闘開始に気合いが入る。
霧吹きで、しゅっしゅらしゅしゅしゅーと糖蜜を噴きつけまくる。
そうなのだ。フルーツトラップから糖蜜にチェンジなのじゃ。( ̄ー ̄)おほほのホ、一年も経てぱバカはバカなりに少しは進化しているのである。
フルーツトラップは天然物なだけに、効果は高い。但し、問題点もある。荷物になるのだ。それに電車やバスに乗ってて、甘い香りを周りに撒き散らすワケにはいかないのだ。されとて、ザックの中に入れるワケにもゆかない。液漏れでもしたら、悲惨なことになる。だいち重いし、かさ張る。ようするに邪魔なのだ。今回のように全く車に頼れない時は、そういう意味ではキツい。一方、糖蜜トラップは蓋をキッチリしめてさえいれば、匂いが漏れる心配はない。荷物もコンパクトにできる。液体が減れば、当然軽くもなるし、補充も現地で何とかなる。山の中で売ってる果物を探すのは至難だが、ジュースや酒ならまだしも手に入る。

糖蜜トラップのレシピは覚えてない。
なぜなら、決まったレシピが無いからだ。基本は家にあるものをテキトーに混ぜ合わせるというアバウトなものなのさ。
たぶん焼酎は入ってる。ビールは入っているかもしれないが、入ってないかもしれない。
果実系のジュースも何らかのものは入っていた筈だ。ただ、それが🍊オレンジジュースなのか、🍇グレープジュースなのかは定かではない。下手したら、それすら入ってなく、カルピスやポカリスエットだった可能性もある。勿論、それら全部がミックスされていた可能性だってある。
酢は入れなかったり、入れたりする。普通の酢の時もあれば、黒酢の時もある。気分なのだ。ゆえにワカラン。
この時は絶対に入ってないと思うが、作り始めた初期の頃などは黒砂糖なんかも入れていた。効果は高いけど、溶かすのが面倒くさいから次第に入れなくなったのだ。
コレってさあ、普段自分が作る料理と基本的な流れが同じだよね。やってることは、そう変わらない。もちろん料理の場合は基礎が必要だけれど、最終的にはセンスとかひらめきとか云う数値にできない能力で作ってる部分が多い。でも料理より酷いハチャメチャ振りになる。たぶん自分で食ったり飲んだりしないから、必然もっとテキトーでチャレンジャーになってしまうのだ。
それでも何とかなってしまうところが怖い。って云うか、だから努力を怠るのでダメなんだけどもね。メモさえ取らないから、いつも行き当たりバッタリの調合で成長しないのだ。自分で、まあまあ天才なんて言ってるけど、少しばかりセンスのある単なるアホだ。基本的に論理性に欠けるのだ。だって右脳の人なんだもん。

結果は、やっぱり撒いて程なくオオシロくんが来た。
そして、やっぱりボロばっかだった。
違うのは、それでも一応写真は撮っておいたところくらい。この時には、もう既にカトカラシリーズの連載を書き始めてだいぶ経っていたゆえ、さすがに必要だと思ったのさ。

 

 
【裏面】

 
酷いな。やっぱり汚ないや。腹なんて毛が抜けて、テカテカになっとるがな。ここまで腹がデカテカなカトカラは初めて見るかもしれんわ。
そう云えば、たぶん『日本のCatocala』にメスは日が経ってるものは腹の鱗粉がハゲていると書いてあったな。それは多分、産卵するために樹皮の間に腹を差し込むからだろうとも推定されていた筈だ。
何か樹液の件で文句言っちゃったけど、やはり著者の西尾則孝氏はスゴイ人だ。日本のカトカラの生態についての知識量は断トツで、他の追随を許さないだろう。この図鑑が日本のカトカラについて述べたものの中では最も優れていると思う。

けど、コレって♀か❓
まあ、いいや( ・∇・)

その時に採ったものを展翅したのがコチラ↙

 

 
二年目の後半ともなれば、展翅もだいぶ上手くなっとるね。如何せん、鮮度が悪いけどさ。

今年は、もし真剣に採る気ならば8月上旬に行こうかと思う。鮮度が良い本当のオオシロシタバの姿を知るためには、それくらいの時期に行かないとダメだね。
実物を見たら、オオシロシタバに対する見方も大幅に変わるかもしれない。

次回、解説編っす(`ー´ゞ-☆

                    つづく

 
追伸
実を云うと、この回は先に次回の解説編から書いている。
そっちがほぼ完成に近づいたところで、コチラを書き始めた。その方が上手く書けるのではないかと思ったのだ。まあまあ成功してんじゃないかと自分では勝手に思ってる。

 
(註1)ネット情報でも糖蜜トラップでオオシロを採ったという記述は記憶にない

ネットで糖蜜トラップでの採集例は見つけられなかったが、樹液での採集を2サイトで見つけた。青森でミズナラとヤナギ類で吸汁しているのが報告されている。もう片方のサイトでは、樹液に来たとは書いていたが、具体的な樹木名は無かった。

 
(註2)シロシタバは樹液吸汁時以外も下翅を開いてる

これについてはvol.11のシロシタバの回に詳しく書いた。気になる人は、そっちを読んでけれ。

 
(註3)両者って類縁関係はどうなってんだろね?

実を云うと、先に次回の解説編を書いた。
あれっ、それってさっき追伸で書いたよね。兎に角そう云うワケで、時間軸が歪んだ形でDNA解析について触れる。えーと、説明するとですな、これを見つけたのは解説編を書いている時なのだよ。

 
(出展『Bio One complate』)

 
石塚勝己さんが新川勉氏と共にDNA解析した論文である。
(/ロ゜)/ありゃま。オオシロ(C.lara)とムラサキシタバ(C.fraxini)のクラスターが全然違うじゃないか。
つまり、この図を信じるならば、両者に近縁関係はないと云うことだ。共にカトカラの中では大型だし、帯の形だけでなく、翅形もわりと似てるのにね。DNA解析は、従来の見た目での分類とは随分と違う結果が出るケースもある。蝶なんかはワケわかんなくなってるものが結構いるから、見た目だけで種を分類するのは限界があるのかもしれない。違う系統のものが環境によって姿、形が似通ってくるという、いわゆる収斂されたとする例も多いみたいだしさ。
まあ、とは言うものの、DNA解析が絶対に正しいとは思わないけどね。

 

マグロの醤油洗い

留意して戴きたいのは、けっして鮪のヅケではなくて、鮪の醤油洗いと云うことだ。

先ずは鮪の切り落としをニタニタ笑いながら醤油で洗う。
ニタニタ笑いは別にせんでもええが、ニタニタ笑ってると「妖怪 醤油洗い」がやって来て、美味しくしてくれるのだ。
じゃぶじゃぶ洗って、振り向いてニヤリだ。
「醤油洗い」に倣(なら)って、自分でもやってみる。
 

じゃぶじゃぶ洗って、ニヤリ(ФωФ)
 

Σ( ̄ロ ̄lll)ハッ❗
そんな妖怪いたっけ❓それって「小豆洗い」とちゃうのん❓一人でツッコンでケタケタ笑う。
深夜に酒呑みながら料理を作っていると、たまに時空のエアポケットに落ちる。時々、何かが憑依するのだ。

酔っ払って買い物してるので正確性に欠くが、たぶん鮪は半額で¥150くらいだったかな。
でもって醤油洗いしたのを笊にあげる。本当は笊にあげるのが面倒くさくて、パックに直接に醤油をかけて混ぜ、トレイを斜めにして醤油を切った。セコい男はトレイに溜まったそれを再利用しようと考えたワケである。

これで仕事は、あらかた終了である。あとはテキトーに器に盛るだけだ。つまりだ、煮きった酒や味醂などを入れてない。だからヅケではないのであ~る。

 

 
卵黄は、この際その問題とは関係ない。そこも留意して戴きたい。

 

 
薬味は葱と本山葵。貝割れ大根と和芥子でも合う。
いや、寧ろそっちの方が合う。そっちもちょい試したのだ。

それをグシャグシャに混ぜて食う。
(^o^)vニコリ~ぃ。
普通にメチャメチャ旨い酒の肴じゃよ。

でも、ホントは酒の肴として作ったワケではない。
御飯を炊いてあるのだ。そう〆の鉄火丼なのである。
ここで、はたと思いつく。炊き上がった白飯を急遽、酢めしにすることにした。そっちの方が絶対旨いもんね。

 

 
ここで、またハタと思いつく。トレイに溜めておいた醤油が活躍してもらおうではないか。
酒の肴の味つけとしては申し分ないんだけれど、酢めしと一緒に食うには弱い。と云うワケで、既に飯の上に乗っけてはいるが、食べる時にはもう1回その醤油につけて食わねばならぬ。
面倒くさいけど、バリ旨~((o(^∇^)o))

 

(/´△`\)ガッカリやわ

 
こないだの日曜日は、大阪昆虫同好会の総会&新年会だった。
で、標本をオークションに出した。
お金に困っているのだ。

結果はガッカリだった。
みんな酒飲んでるし、オークションに出てた標本数も多かったし(ホイホイ結審になる)、外国の蝶は価値が解らない人も多いから致し方ないんだけどさ。おまけにショバ代も引かれるから思ってた程にはならなかった。

 
【アルボプンクタータオオイナズマ】

 
アルボプンクタータは大好きな蝶だ。特に♀は佳蝶と言っても差し支えなかろう。
場所はラオスのLak Sao(ラクサオ)のものだ。
知る限りでは、記録は殆んど無い所だと思う。たかってくる小蝿に苦しめられながら採ったんだよね。

このアルボは長谷さんのもとへ。
これはOK。長谷さんの標本は何処かちゃんとした機関に寄贈される可能性が高いからいいのだ。後世に残るだろうから、ゴミにならなくて済む。

 
【ヤイロタテハ】

 
これまた佳蝶ですな。
画像のように裏が厳(いか)つくて美しい。
初めて海外採集に行ったマレーシアのキャメロンハイランドで採ったものだ。存在を全く知らなかったので、見た時はメチャメチャ何じゃこりゃ\(◎o◎)/❗❗と思ったものだ。
再展翅までして完璧に仕上げたのに、ガッカリの金額で落札された。

 
【アンビカコムラサキ♂】

 
個人的には世界で最も美しいコムラサキだと思う。
これも存在を全く知らなかったので、初めて見た時は何じゃこりゃだった。場所はラオスのバンビエン。
裏が白くて(裏も美しい)、最初はチビ系のフタオチョウかなと思って採ったら、網の中で青紫の幻光色が青い炎のようにビッカビカッに光った。ものすごーくビックリしたっけ。
外野から『♀ないんかーい!』と言葉が飛んだが、『採っとるわ、ボケー。』と思わず言ってもうた。酒の席じゃ、許せ。
確かに♀はかなりの珍品だ。でも、幻光色がないから全然綺麗ではない。それと言っとくけど、♂は珍品じゃないけれど、行けば確実に採れるというものでもない。イモと引きの弱い人は採れまへんえ。

 
【オオウラギンヒョウモン】

 
長崎の自衛隊演習場で採ったものだ。
今は採集禁止になっていると思われる。
♀もデカ♂も結構採った。その2つがいる微妙な環境が読めたので、その時に来ていた人の中ではダントツで採った筈。この頃が一番感性が研ぎ澄まされていたと思う。
福岡の高島さんと御一緒した思い出深い採集行だ。
それなのに激安で落札(T_T)

 
【コヒョウモンモドキ】

 
岐阜県の湿原でタコ採りした。
普段はある程度採るとすぐ飽きる人なので、あまり数は採らない。だから、昔はよく叱られていた。
なんだけど「そのうちおらんようになるから、今採っとかないとアカンでぇー。」と言われて頑張った。長靴を持ってなかったので、結構大変だったけど面白かった。
なんぼで売れたか知らんけど、安かったんじゃなかったかな。

 
【カトカラセット】

 
特に珍しいものは入ってないゆえ、800円で出した。
1つ百円➕箱代である。千円で落札されたかと思う。
これは、どうせ売れ残ると思ってからラッキー。

来年は屑チョウをアホほど並べて、セコく小銭を稼いだろかしら。

                    おしまい

 

2018′ カトカラ元年 其の13 後編

  vol.13 エゾシロシタバ 後編

      解説編

   『dissimilisの謎を追え』

 
エゾシロシタバの解説編である。
前回、エゾシロをろくに採ってない事は話した。なので御理解戴けるかと思うが、解説編でも生態面に関して何ら新しい事は書いていない。よって、殆んどが文献からのパクリになろうかと思う。というワケなので「~らしい、~みたいだ、○○なんだそうだ」の連発になりそうだ。おまけに初のオリジナル画像無しにもなりそうだ。早くも、そうだ、そうだの連発で先行き不安だが、それでも自分なりの解釈もあろうかと思う。面白く書けることを祈ろう。

 
【エゾシロシタバ】
(出展『世界のカトカラ』)

 
(出展『日本のCatocala』)

 
【学名】Catocala dissimilis Bremer,1861

小種名の dissimilis(ディッシミリス)の語源は、頼みの綱である平嶋義宏氏の『蝶の学名-その語源と解説-』にも近いものを含めて載っていなかった。
だが、おそらくlatin(ラテン語)由来だろう。何とかなりSODA。ちゅーワケで自分で探すことにした。

ネットでググりまくったら、わりと昆虫の学名には付けられているようだ。日本でもアマミノコギリクワガタ(Prosopocoilus dissimilis)やエゾスズメ(Phillosphingia dissimilis)に、その名がある。この2つ辺りが代表だろうが、ざっと見たところ他にも幾つかある。

・チャモンナガカメムシ Dieuches dissimilis
・ウスチャオビキノメイガ Yezobotys dissimilis
・テンウスイロヨトウ Athetis dissimilis
・アナズアリヅカムシ Batrisceniola dissimilis
・キアシチビメダカハネカクシ Stenus dissimilis

昆虫以外の鳥や貝などにも、この小種名がつけられているものがいるようだ。それだけあれば、何らかのヒントはつかめるだろう。

綴りとラテン語で検索すると、怖れた程には苦労せずにヒントが見つかった。
造語で、dis-➕similis(“resembling, like”)となっている。それで、だいたいの意味は窺えた。
resemblingは、resembleの現在分詞で「○○に似ている」だし、likeは「○○のような」という意味だ。
でも、いったい何と比して似ているのだ❓ 今一つピンとこない。対象物が浮かばん。

更に踏み込んで調べてゆく。
ラテン語だと、disには「二つに分かれて、分離の、逆に、甚だしく」の意味があるようだ。
また違うのが出てきた。嫌な予感がする。ぬかるみ世界が顔を覗かせとるがな。でも何かと似ていて、そこから分離されたと解釈できないこともない。

ググり続けていると、ようやく「dissimilis」そのものにヒットした。
意味は「異なった、異なる、異質の、~とは異なり、違う」。コレまた言葉は違(たが)えど、~と似ているが異なるものと解釈すれば、意味は同じともとれる。

おそらく学名に込められた意味は、これらをひっくるめたもので間違いなかろう。
例えば、Prosopocoilus dissimilis(アマミノコギリクワガタ)なんかの学名は、日本本土にいる普通のノコギリクワガタ(P.inclinatus)を基準に名付けられたものだろうと推察される。即ち見慣れたノーマルのノコギリクワガタと較べて異質で、別種として分離されるべきものだから「dissimilis」と名付けられるに至ったのではないかと想像する。
またアマミノコギリは南西諸島特産で島ごとに変異があり、7亜種(アマミノコギリ・トカラノコギリ・トクノシマノコギリ・オキノエラブノコギリ・オキナワノコギリ・イヘヤノコギリ・クメジマノコギリ)に分けられている。どの亜種も形や色にそれぞれ少しづつ変わった特徴を備えている事も関係しているかもしれない。これもまた、似ているが違うものだからね。
それらのパターンに則れば、エゾシロシタバの学名由来も似たような理由だと思われる。だとしたら、問題はエゾシロシタバが何と較べて異質で、何から分離されたかである。似ているが異なるモノの根本の存在を突き止めねばならぬ。

慌てる乞食は貰いが少ない。先ずは外堀から埋めていこう。答えのヒントは学名に隠されている筈だ。
記載者 Bremerはロシアの昆虫学者であり、自然主義者の Otto Vasilievich Bremer(オットー・ヴァシリエヴィッチ・ブレマーの事かと思われる。没年が1873年11月11日とあるから、活躍した時代とも合致するし、間違いないと思うんだけど…。もし間違ってたら、もう謝り倒すしかないね。けど同じ時代に、同じ名前の昆虫学者はそう何人もいないと思うんだよね。

Bremerといえば、セセリチョウの研究で有名ではなかったかな❓
『日本産蝶類標準図鑑』によれば、日本のセセリチョウだけでもイチモンジセセリ、コキマダラセセリ、チャマダラセセリ、ヒメキマダラセセリ、ヘリグロチャバネセセリ、ギンイチモンジセセリ、ミヤマセセリの記載者にその名がある。
因みに日本のカトカラではオニベニシタバとオオシロシタバの記載者名に、このBremerの名がある。カトカラの記載年は全て1861年。セセリは1852年と1861年の二つに分かれている。
もしやと思い、日本の蝶で他にBremerが記載したものはないかと探してみたら、あった。
オオミスジ(1852)、サカハチョウ(1861)、ミヤマシロチョウ(1861)、クロシジミ(1852)、トラフシジミ(1861)と5つある。そして、全てが1852年か1861年のどちらかの記載だった。蛾は分からないが、日本の蝶に関しては見る限り他の記載年はない。これは何処かから、その年に纏めて送られたきたものに命名したか、実際に其所に本人が訪れて採集したことを示唆してはいまいか❓もしかして、それは日本❓
となると、これら各種の分布が気になってくる。この中に日本固有種がいれば、ある程度それが証明できる。エゾシロシタバのタイプ産地も日本である可能性が出てくる。

だが探した結果、残念ながら日本固有種はいなかった。
(|| ゜Д゜)おいおい、また別のぬかるみにハマっとるやないけー。迷走必至のパターンじゃよ。
但し、共通項はあった。何れの種も日本、朝鮮半島、沿海州(ロシア南東部)、中国東北部に分布していることが分かった。ならば、その何処かである。即ち、タイプ産地が分かればいいワケだ。もう1回、図鑑を仔細に見直す。

ありました❗
ミヤマシロチョウの解説欄に、名義タイプ亜種のタイプ産地はロシア南東部と書いてあるではないか。だとすれば、他の蝶もタイプ産地はロシア南東部なのかな❓
日本がタイプ産地になっているものがある可能性を無視できないところだが、そう云う事にしておこう。調べるのが段々イヤになってきたし、それを追うことが本稿の第一の目的ではない。既にだいぶ本筋から逸脱しているのだ。

遠回りになったが、これらの事からエゾシロシタバに似ているカトカラはロシアにいる筈だ。
もしも本当にBremerがロシア人のO.V.Bremerその人ならば、ロシアに分布するカトカラを見て、エゾシロシタバを「dissimilis」と名付けたのだろう。だから、ロシアにいるカトカラの中からエゾシロに似ていて非なるものを探せばいい。或いは一見エゾシロに似ていないが、よく見れば似ているのを探せばいいのかな。ちょっと脳ミソが錯綜しかけているが前へと進めよう。

世界のカトカラを網羅した文献といえば、石塚さんの『世界のカトカラ』だ。
それ見りゃ、ソッコーで解決でけるんちゃうけー。楽勝やろ。
解決したも同然の気分で『世界のカトカラ』を開く。

 

 
ガ、ガビ━━━Σ( ̄ロ ̄lll)━━━ン❗無い❗❗
無いと云うワケではないが、相当するものが無い。下翅が黒いカトカラが殆んどおらんのだ。アメリカ大陸にはぎょーさんおるのに、ユーラシア大陸には1種類しかいないのだ。それもロシアじゃなく、トルコだ。

 
【Catocala viviannae ターキィクロシタバ】
(出展『世界のカトカラ』)

 
分布地はトルコで、非常に稀な種らしい。トルコ以外にはいないみたいだし、それにエゾシロシタバみたく小さくない。クロシオキシタバくらいはありそうだ。だいち下翅は黒いといっても全然似てないじゃないか。コレとエゾシロが似ているなんて言う輩がいたら、目が腐っとるとしか思えん。
それに決定的なのは記載年だ。記載は1992年。Bremerは百年以上前(1873年)に死んどるわい。有り得ん。

アメリカ大陸にしても、黒い下翅のカトカラは沢山いるのにも拘わらず、似てる奴が1つもおらん。デカイのばっかだし、皆さん上翅がカッコいい。

 
【Catocala flebilis カリモガリクロシタバ】
(出展『世界のカトカラ』)

 
カッコいいので、他にも幾つか並べちゃおう。

 
【Catocala agrippina アグリピナクロシタバ】

 
【Catocala epiona フチシロクロシタバ】

 
【Catocala palaeogama クルミクロシタバ】

 
【Catocala sappho カバフクロシタバ】

 
チンケなエゾシロシタバと比べられたとしたら、一緒にすな!と、みんな怒るで。
他にもカッコいいクロシタバはいるが、それは図鑑を買って見ましょうネ。

( ゜o゜)あらま、見逃していたが小さいのもいた。

 
【Catocala judith ユディトクロシタバ】
(出展 以下5点共『世界のカトカラ』)

 
下翅に白斑はないが、そこそこ似ている。大きさ的にもエゾシロシタバと同じくらいだ。
だが記載されたのは、Bremerが没した翌年の1974年。エゾシロよりも後の記載なので、似て非なる者にはあたらない。

見過ごしていたが、更に後ろの方にも小型のクロシタバが幾つかいた。

 
【Catocala miranda ミランダクロシタバ】

 
記載年は1881年だから、これも既にBremerは他界している。当然、候補から脱落だ。だいち、分布は局地的で非常に稀なカトカラみたい。有り得んな。

 
【Catocala orba ヒメクロシタバ】

 
これまた記載は1903年。枠外だね。

 
【Catocala andromedae コケモモクロシタバ】

 
似ているかもしんない。背景が白くて分かりにくいが、面積は小さいものの下翅の白斑の位置が同じだ。それに同じくらいの大きさか、やや小さいくらいで、エゾシロと大差ない。
記載は1852年。Bremerがバリバリ活動していた時期である。エゾシロよりも早い記載だし、普通種みたいだから、これは有り得るなあ…。
でも、わざわざ遠く離れたアメリカ大陸のカトカラを意識して学名を付けるものだろうか❓考えにくいところではある。判断が難しいところだ。
いや、この時代には下翅の黒いカトカラは、まだ現在みたいに沢山は発見されていない筈である。ならば、当然比較の対象になりうる。

一応調べたら、殆んどがBremerの死後以降の記載だった。生前以前の記載はコケモモクロシタバ、カリモガリクロシタバ、フチシロクロシタバ、クルミクロシタバ、ヒアイクロシタバ、ヤモメクロシタバの6種だった。クロシタバは全部で20種くらいだから少ない。やはり多くは1861年以降の記載と云うワケだ。6種だけなら、カトカラ全体の記載数もまだ少なかった時代だと推測される。ならば、Bremerが比較の対象をアメリカ大陸にも広げていたことは充分考えられる。
その6種のうち小型なのはコケモモクロのみである。
つまりアメリカ大陸に棲む下翅の黒いカトカラの中では、コヤツしか該当する条件を満たす者はいないと云うことだ。暫定だが、筆頭候補としよう。

他に考えうるとすれば、アジアのマメキシタバか…。
たしかマメキシタバは日本以外にも居たよね。

 
【マメキシタバ Catocala duplicata ♀】

(2019.8月 大阪府四條畷市)

 
マメちゃんは一見したところ、エゾシロシタバとは全然似てない。だが研究者の間では類縁関係が示唆されており、岸田先生の『日本産蛾類標準図鑑』には「翅の基本パターン、ゲニタリア(交尾器)の形態、幼虫の形態など類似点も多い。」とあった。だが、類縁関係は明らかでないとも書いてあった。

マメキシタバはロシア南東部にはいないようだが、日本や朝鮮半島、中国にはいる。エゾシロと分布が重なる地もあるのだ。その何処だかは分からないが、そこで両者が二つに分化した可能性はある。ちょっとだけ謎の解明に近づいたかもしれない。

ここで原点に戻ろう。学名「dissimilis」の語源と意味に、今一度立ち返ろうではないか。
これまで調べた語源と意味を全部並べてやれ。
「~に似ている、~のような、二つに分かれて、分離の、逆に、甚だしく、異なった、異なる、異質の、~とは異なり、違う」。
コヤツらを強引、豪腕で組み替えて1つにしたろ。

「エゾシロシタバとマメキシタバは共通の祖先種から二つに分かれて、更に分離が進み、やがて甚だしく違う異質なものとなった。しかし、両者は違うように見えて、よく見れば逆に似ている。」

ムチャクチャである。強引にも程がある。
Ψ( ̄∇ ̄)Ψケケケケケ…。もう行き詰まってて、マッドな男になっているのだ。
このままだとクロージングできない。もうヤケクソでバカボンのパパ風に言ってやる。

コレで、いいのだ。

学名はマメキシタバに比して付けられたとしよう。
もう、それでいいではないか。オジサン、疲れたよ。

Σ( ̄ロ ̄lll)え━━━━━━━っ❗❓
しかし、マメキシタバの記載年を確認して、ひっくり返る。マメキシタバの記載は1885年だ。Bremerは、もう死んどるぅー(T▽T)
マメキシタバは、その対象者じゃなかったって事だ。
もおーっ、どいつと似てて、異質なのぉー(*ToT)

う~ん。現時点では、エゾシロシタバはコケモモクロシタバと比して似ているが異なるモノとせざるおえない。
しかし、この「dissimilis」の語源の見立てそのものが間違っているのではないかと思えてきたよ。なぜにこの学名が採用されたのだ❓

お手上げだ。
参考までにシノニムを付記して、この頃を終えることにしよう。

Wikipediaによれば、シノニム(同物異名)には以下のようなものがある。

◆Ephesia nigricans Mell, 1939(nec Mell, 1939)
◆Catocala nigricans
◆Ephesia griseata Bryk, 1949
◆Catocala hawkinsi Ishizuka, 2001
◆Ephesia fulminea chekiangensis Mell, 1933

 
【和名】
シロシタバとつくが、シロシタバと類縁関係はない。
というか、下翅が白くない。白い部分は有るにしても、申し訳程度だ。大部分が黒い。なのにシロシタバなんである。初心者に混乱を引き起こしかねない酷いネーミングだ。命名者のセンスを疑うよ。脳ミソの中で、どれがどうなったら白シタバという名前が出てくるのだ❓
エゾクロシタバに改名した方がええんでねぇの❓

上につくエゾも酷いっちゃ酷い。エゾは蝦夷(註1)のことで、主に北海道を指しているのだが、これも安易。北海道で発見されたものや北海道や東日本に多いとか、北方系と考えられるものに、このエゾが付けられる場合が矢鱈と多いはしまいか❓
実際、昆虫の名前にはエゾが付くものは多い。
例えばエゾゼミ、エゾハルゼミ、エゾマイマイカブリ、エゾカタビロオサムシ、エゾシロチョウ、エゾスジグロシロチョウ、エゾミドリシジミ、エゾイトトンボ、エゾシモフリスズメ、エゾカメムシetc…と枚挙に暇(いとま)がない。
でもエゾゼミは九州にだっている。もともとエゾゼミはコエゾゼミとは異なり、南方系のセミらしいぞ。夏でも気温があまり上がらず涼しい北海道よりも、むしろ長野県や東北南部で多く見られる傾向があるというではないか。エゾハルゼミだって九州にいるし、エゾカタビロオサムシにいたっては奄美大島にまでいるみたいだぞ。何やソレ❓ってツッコミ入れたなるわ。

(-“”-;)んぅ❗❓ちょっと待てよ。もしも、記載は日本の北海道で採れたものからされたならば、和名をエゾとしても不思議ではない。北海道で最初に採れたんだったとしたら、その和名は有りでしょう。
しかし、ネットで調べてもタイプ産地が何処なのかワカラヘーン\(◎o◎)/
結局、Holotype=基産地が何処なのか見つけられなかった。おまえの探し方が悪いんじゃと言われそうだが、皆さんが思っている以上のパープリンなのだ。能力は低いもんね。
石塚さんが、新たなカトカラ図鑑を作っているという噂を聞いたけど、もし本当なら次の図鑑にはタイプ産地も載せて欲しいなあ。あと、裏面の画像も。図鑑でもネット情報でも裏面写真があまり無いから困るんである。種の同定をするには、裏面も大事だと思うんだよね。

因みに、Bremerのタイプ標本の大半はロシアのサンクトペテルブルグにある動物博物館にあるらしい(やどりが 190号 2001年 松田真平)。
言明はしないけど、総合的に考えると、たぶんエゾシロのタイプ標本はロシア南東部(沿海州)の可能性が高いかな…。明日、真平さんに会うだろうから訊いてみよっと。

 
【亜種】

◆Catocala dissimilis dissimilis
◆Catocala dissimilis melli Ishizuka, 2001

他にもあるかもしれないが、Wikipediaではそうなってた。

 
【変異】
前翅が著しく白化する個体がいるようだ。
↙こう云うヤツのことを言ってるのかな↘

 
(出展『東京昆虫館』)

 
どうやら白化と言っても、翅の付け根部分までは白くならないようだ。

また、黒化するものもいるという。
こんなんかな?↘

 
(出展『世界のカトカラ』)

 
何かカトカラじゃないみたいだ。小汚ないヤガの仲間にしか見えないぞ。

 
【開張(mm)】 45~50㎜
『みんなで作る日本産蛾類図鑑』には、そうある。『日本産蛾類標準図鑑』では44~51㎜内外となっていた。何れにせよ、日本ではマメキシタバ、ヤクシマヒメキシタバと並び、最も小さいカトカラである。
あっ、ナマリキシタバやアズミキシタバも小さいか…。

 
【分布】北海道・本州・四国・九州・対馬

『世界のカトカラ』の県別分布図によると、日本で記録のない都道府県は千葉県、奈良県、福岡県、沖縄県のみである。一方『日本のCatocal』の分布図では千葉県、山口県、福岡県、沖縄県が空白になっていた。

おそらく分布は主要な食樹であるミズナラとカシワの分布と重なるものと考えられる。
従って東日本に多く、西日本では少ない傾向にある。近畿地方の中心部では稀。九州でも稀。たぶん四国でも稀だと思われる(註2)。
何れもミズナラが自生する冷温帯、比較的標高の高い山地に棲息する。中国地方にはカシワが自生するので、西日本の中では比較的多いようだ。

ネット上に解りやすいミズナラとカシワの分布図があったので、添付しよう。

 
(ミズナラ分布図)

 
(カシワ分布図)
(出展 2点共『www.ffpri.affrc.go.jp』)

 
この二つを重ね合わせたものが、エゾシロシタバの実際の分布に近いのではなかろうか?
これを見れば、近畿地方の真ん中がポッカリ空いているし、九州地方に少ないのも理解できる。
四国にはカシワはないが、ミズナラは中央の四国山地に案外あるなあ…。結構いるのかもしれない。

近畿地方では全府県で記録されているようだ。
但し、前述したように少ない。ネットで記録を拾っただけだが、以下の場所で記録されている。

大阪府 貝塚市和泉葛城山
奈良県 奈良市近畿大学奈良キャンパス
京都府 京都大学芦生演習林
和歌山県 龍神村護摩壇山

『世界のカトカラ』では奈良県は空白になっていたが、一応奈良県にも記録はあるみたい。滋賀県と三重県は分布するとされているが、記録を拾えなかった。でもミズナラの分布図からすれば、少なくとも滋賀県には居そうだな。
兵庫県内では記録が多い。西播から但馬地方などの西側北部に限られるが、生息地での個体数は多いようだ。

日本国外では、沿海州(ロシア南東部)、樺太、朝鮮半島、中国(四川省北部・甘粛省南部)に分布する。

 
【成虫出現月】7~9
7月から出現し、10月頃まで見られるが、新鮮な個体が得られるのは8月初めまでのようだ。

 
【生態】
ネットを見ていると、その殆んどが灯火採集によって得られている。飛来数は多く、クズ扱いされてる感じだ。特に東日本では、居るところにはドッチャリいるみたいだね。東日本では、普通種扱いになってるのも理解できる。

西尾規孝氏の『日本のCatocala』に拠れば、低山地ではクヌギ、ヤナギなどの樹液によく集まる。しかし、標高の比較的高いミズナラ帯では採餌行動は殆んど観察されていないそうだ。
どうりで標高の高いブナ林帯では糖蜜に寄って来なかったワケだ。ただし、その場所に分布していたのかどうかはワカンナイけど。

 

 
日中は頭を下にして樹幹や岩などに静止している。驚いて飛翔した時は上向きに着地して、数10秒以内に姿勢を変えて下向きになるという。また、着地するのは飛び立った木とは反対面に止まることが多いらしい。この行動パターンはマメキシタバと全く同じなんだそうな。
マメキシタバって、そうだったっけ❓
昼間にそれなりの数を見ている筈だが、記憶にない。
おそらくは敏感で、すぐに飛び立ち、小さいから見失ってしまうのだろう。それに所詮はマメなので、フル無視だ。追いかけて探したりまではしないもんね。

 
【幼虫の食餌植物】
主要な食樹はブナ科コナラ属のミズナラとカシワ。
だが『日本のCatocala』によると、低山地(長野県の標高700~1000m付近の谷沿い)ではクヌギ、コナラも食樹になっているようだ。但し、ミズナラの場合よりも遥かに幼虫は少ないという。
つまり、幼虫の主な生息地は山地のミズナラ帯である。長野県の白馬村や大町市といった標高1000mのカシワ林ではマメキシタバ、ヒメシロシタバと混生する場合があるが、どのような場所でも主要な発生木はミズナラみたいである。
飼育する場合、コナラ属(Quercus ssp,)全般が代用食になるという。幼虫は樹齢15~40年の木によく付き、標高の高いところでは巨木に発生することもあるそうだ。

 
【幼生期の生態】
もう、ここは全面的に西尾氏の『日本のCatocala』に頼る。だいちと云うか、そもそもが幼虫期に関してここまで詳しく書かれたものは他に無いのだ。

卵から孵化後、幼虫はマメキシタバと同じく暫く動き回り、物に糸でぶら下がって静止していることが多い。
終齢幼虫は5齢。飼育すると、ごく一部が6齢に達するという。昼間、若齢から中齢幼虫は裏に静止している。終齢になると、太い枝や樹幹に降りてくる。
野外での終齢幼虫の出現時期は、長野県の低山地で6月上・中旬。1600mの蓼科高原では6月末~7月上旬。

 
(出展『フォト蔵』)

 
野外で見つかる幼虫には色彩変異があり、濃淡の強い個体や全体が暗化したり、淡色化した個体までいるんだそうだ。

幼虫はマメキシタバの幼虫と似ていて、高標高のものは白っぽくて殆んど区別できないものもいるという。マメキシタバとの識別点は腹部下面に列生する肉突起。いわゆるフィラメントの有無による。マメキシタバにはフィラメントがあるが、エゾシロにはないそうだ。
これだけ幼生期を詳しく調べられている西尾氏でも、蛹化場所についての知見は無いという。普通カトカラの蛹は落葉の下から見つかるから、発見できないのはちょっと不思議だね。

成虫も幼虫も生態面諸々がこれだけマメキシタバに似ているとなると、無視できないものがある。
学名の項で既に触れているが、もう一度両者について考えてみよう。

と思ってたら、『世界のカトカラ』の末尾に別項で言及されているのを見つけた。
見る時はいつもテキトーにパラパラやってるから、全然気づかなかったよ。けど、タイミングが良いと云えば良い。知らずに全て書き終えた後に気づいてたら最悪だったもんね。本を持っているのに見てないだなんて、アイツは能無しだとバカにされること明白だわさ。

『闇の中の光』と題した文中の「外見が著しく異なる近縁種」のページから抜粋しよう。

「マメキシタバ duplicataーエゾシロシタバ dissimilis
以前からこの2種は近縁と言われてきた。確かに成虫は後翅が黄色いか黒化しているかで、基本的な斑紋パターンやゲニタリアは似ている。幼虫も似ている。外観的には、前述の北アメリカの3組(※)とほぼ同様であり、類縁関係はある筈なのだが、ミトコンドリアDNA、ND5の塩基配列では明瞭な類縁関係は認められない。おそらくCatocalaが最初に一斉に適応放散した頃にこの2種は種分化し、その後あまり形態的変化を生じないまま今日に至っているのではないだろうか。」

※後翅が黄色と黒と著しく異なる近縁種の組合せ

Catocala consores ━ Catocala epione
Catocala palaeogama ━ Catocala lacrymosa
Catocala gracilis ━ andromedae
の3組のこと。

えーい、こんなんじゃ解りづらかろう。
図鑑の画像ばっかパクってるので心苦しいが、ブッ込む。

 

(出展『世界のカトカラ』)

 
ようは一見すると遠縁に思えるが、共通の祖先種から各々分化したと予想されると云うことだ。上翅の斑紋を見ると、それが何となく解る。

また、次のコシロシタバとヒメシロシタバの項にもマメとエゾシロについて触れられている。要約しよう。

「ユーラシア大陸にはコシロシタバ、ヒメシロシタバ、エゾシロシタバ、ターキィクロシタバ、C.nigricans(アサグロシタバ)、チベットクロシタバ(C.xizangensis)という5種類の後翅が黒化したカトカラがいる。」

と、ここで早くも躓く。
アサグロシタバ❓、チベットクロシタバ❓(・。・)何だそりゃ❗❓
ちょっと待て。ユーラシア大陸には黒い下翅のカトカラは、エゾシロシタバ、コシロシタバ、ヒメシロシタバを除けば、ターキィクロシタバしかいないと思っていたけど、他にもおるんかい❗❗
ネットの『ギャラリー・カトカラ全集』にも「北アメリカに後翅が黒化したカトカラが多いが、旧大陸ではターキイクロシタバと本種の2種が後翅が黒化したカトカラとして知られているだけで…」とあったから、ターキィのみだとばかり思ってた。でも、そうじゃないんだ❓ここまで来て、青天の霹靂の急展開じゃないか。おいおいである。
早速、慌てて図版を見返す。

 

 
(-“”-;)あった…。
でも何じゃそりゃである。

 
【コシロシタバ&ヒメシロシタバ】
(出展『世界のカトカラ』)

 
気が引けるし、裏面くらいは自分の画像を使おう。

 
【コシロシタバ裏面】

 
【アサグロシタバ&チベットクロシタバ】
(出展『世界のカトカラ』)

 
チベットクロはバカでかいものの、何のことはない、コヤツらみんなコシロシタバと殆んど同じである。
コシロとヒメシロシタバのページに埋もれてて、見逃しておったわ。我ながらダセーな。

いやいや、ちょと待て、ちょと待て、お兄さん。
もしかしたら、コシロ、ヒメシロ、アサグロ、チベットクロの何れかがエゾシロシタバの学名「dissimilis」の似ているが非なる者の語源になったカトカラかもしれない。灯台もと暗し。盲点じゃったよ。まさかコシロやヒメシロとは考えもしなかった。両者とエゾシロとは上翅の斑紋パターンが違うし、地色や下翅の白紋の位置も違うのだ。
もしそうだったとしたら、🎵チャンチャンのオチじゃないか。まあ、解決すればスッキリするから、それはそれで良いんだけどさ。

(|| ゜Д゜)あちゃー。
けど、それも有り得ない。
コシロの記載年は1874年。ヒメシロが1924年でアサグロは1938年。そしてチベットクロが1991年なのだ。何れもエゾシロシタバの記載年1961年よりも後の記載なのである。
又もや謎は解けなかった。益々もって混迷は深まるばかりだ。

話を石塚さんの文章に戻そう。

「それら(下翅の黒いカトカラ)に対応する後翅が黄色い種がいると考えたが見当たらない。外観からコシロシタバとアミメキシタバ、ヒメシロシタバとヨシノキタバが近い関係とも推測されたが、ゲニタリア(交尾器)が全く違う。この点から従来の常識では類縁関係は認められない。
しかし、日本産のカトカラをDNA解析した結果、コシロシタバとアミメキシタバ、またヒメシロシタバとキシタバに僅かながらの類縁関係が認められた。もしこの結果が正しければ、交尾器の相違は類縁関係を反映していないことになる。」

この結果に対して石塚さんは、こう見解されている。
「地史的に比較的新しい時期に種分化したものはゲニタリアは似ているが、古い時期に種分化したものはゲニタリアにまで著しい違いが出てくる可能性があるのかもしれないが、全くの謎である。
現時点では、マメキシタバとエゾシロシタバもアミメキシタバとコシロシタバもそれぞれ互いの類縁関係はないと解釈するしかない。後翅の黒化は、北アメリカでは地史的に比較的最近の出来事であるが、旧大陸ではかなり古い時代にいろいろな系統内で生じたのではないかと思われる。」

DNA解析の結果ではマメキシタバとエゾシロシタバは類縁関係はないとされるが、互いの成虫の交尾器、形態、大きさ、生態は似ているし、幼虫の形態・生態も似ている。つまり、どう考えても近縁種と思われるのに、類縁関係が無いとはどうゆうこっちゃ❓と云うワケだ。
確かに謎だよね。
石塚さんが「DNA鑑定が100%正しいかどうかは分からない。」云々みたいなことをおっしゃっていた意味がようやく解った気がするよ。自分もDNA鑑定が十全で、絶対だとは思わない。種を規定するにはDNAだけでなく、総合的な観点が必要だと思う。カトカラではないが、外部形態に差異が見出だせないのに、DNAは全然違う昆虫だっているみたいなんである。ならば肉眼では区別できないと云うことだ。そもそも種の分類とは、人間が区別するためにあるものだろう。それだと意味ないじゃないか。意味ないは言い過ぎかもしれないけど、目で区別出来ないものを別種とするのには抵抗感がある。

そう云えば思い出した。オサムシのDNA解析の結果を論じた中で、平行進化という言葉があったな。
平行進化とは、異なった種において似通った方向の進化が見られる現象を指し、その進化の結果が収斂となる場合があるという説。簡単に言うと、全く別系統な種が、例えばカタツムリを餌とすることによって、より容易(たやす)く餌を摂取する為に進化し、首が伸びるとかアゴが強大化して、結果、互いの外観が似ちゃいましたーって事ね。
でも、一部のカトカラの下翅が黒くなる理由を明確に答えられる自信がないし、平行進化を何にどう宛がっていいのかもワカンナイ。これ以上、変なとこに首を突っ込みたくない。やめとこ。

話は戻るが、もう一度DNA鑑定をやったら、また違った結果が出たりしてね。最初にDNA鑑定をしてから年数が随分と経っている。その時よりも手法や精度だって進歩してる筈だし、今なら、より正確な事が分かるんじゃないかな?誰か、やり直してくんないかなあ。

 
                    おしまい

 
追伸
謎が解決するどころか、益々謎が深まっちゃったよ。
前回、ボロクソ言ったけど、エゾシロシタバって奥が深いわ。エゾシロちゃん、ゴメンね。
今年はまた違った観点でエゾシロシタバに向き合えそうだ。糖蜜がどこまで通用するかも試してみたい。

今回は、石塚さんの『世界のカトカラ』と西尾則孝氏の『日本のCatocala』に頼りっきりで書いた。お二人の偉大さを改めて感じたでござるよ。末尾ながら感謝である。

それにしても、結局またクソ長くなったなあ。
エゾシロシは一番楽勝で書き終えられると思ってたのに大誤算だわさ。

 
追伸の追伸

エゾシロシタバの小種名dissimilisは、どの種を基準にして名付けられたかと云う問題に対して、松田真平さんから以下のような回答を戴いた。

「エゾシロシタバの学名は、オオシロシタバCatocala laraに似ているということでCatocala dissimilisと名づけられたのではないでしょうか。1861年にBremerが、東シベリアからアムール付近からもたらされた採集品をタイプ標本にして記載した3種のCatocalaの中で、この2種が色彩的に似ているという意味だと思います。もう1種のオニベニシタバは色彩的に無関係ですね。」

まさかだが有り得るよね。
真平さんは追記で、次のような見解もされておられる。

「カトカラ類が世界で初めて記載された時の三種。後翅表面が白黒で近いというだけですが、この時は時代的にまだそういう研究段階なのだろうと。原記載を読めばさらに面白いと思うのは私くらいかなあ。」

ようするに、昔はアバウトだったって事か。まあ、そう言わてみれば、そんな気もする。昔のまだ色んな事がわかっていない時代の観点と今の色んな事がわかっていて、それが当たり前だと云う立ち位置とでは、当然モノの見方も変わってくるもんね。
一応補足すると、世界で初めて記載されたカトカラ3種と云うのは世界でと云うワケではなくて、エゾシロ、オオシロ、オニベニの事を言うてはるのかなと思います。因みにカトカラで一番古い記載は、たぶん1755年のコオニベニシタバ Catocala promissa。

 
【Catocala promissa】
(出展『世界のカトカラ』)

 
追伸の追伸の追伸

オオシロシタバの解説編の為にネットで色々と調べていたら、こんなんが出てきた。

 
(出展『Bio One complate』)

 
カトカラのDNA解析だ。
あっ、表題を見ると『Molecular Phylogeny of Japanese Catocala Moths Based on Nucleotide Sequences of the Mitochondrial ND5 Gene』となっている。
そっかあ…、コレが石塚さんが新川勉さんに依頼したというDNA解析かあ…。探したけど、全然見つからんかった論文だ。
コレを見ると、オオシロシタバとエゾシロシタバの類縁関係がそこそこ近いじゃないか。
だとするならば、Bremerさんがオオシロに近いと感じてエゾシロに「dissimilis」と云う学名をつけたのは慧眼だったのかもしれない。
とはいえ、DNA解析が本当に正しいかどうかはワカンナイけどね。

 
(註1)蝦夷
Wikipediaには、以下のような解説がある。
「蝦夷(えみし・えびす・えぞ)は、大和朝廷から続く歴代の中央政権から見て、日本列島の東方(現在の関東地方と東北地方)や北方(現在の北海道地方)などに住む人々の呼称である。中央政権の支配地域が広がるにつれ、この言葉が指し示す人々および地理的範囲は変化した。近世以降は北海道・樺太・千島列島・カムチャツカ半島南部にまたがる地域の先住民族で、アイヌ語を母語とするアイヌを指す。大きく「エミシ、エビス(蝦夷・愛瀰詩・毛人)」と「エゾ(蝦夷)」という2つの呼称に大別される。」

 
(註3)たぶん四国でも稀だと思われる
1970年代と古い時代の資料だが、以下のような記述を見つけた。
「石鑓山系(小島,1964)や 剣山(永井・富永,1971)など四国中央山地に分布が知られていたが、香 川と徳島の県境に位置する阿讃山地の尾根にも広く分布するようでもあり,県下(香川県)のカトカラの中で は比較的個体数の多い種である。」(「四国の蛾の分布資料(1)香川県のカトカラ」増井武彦,1976)

やはり中央山地には結構いるんだね。
ブログなどにも割りとエゾシロは出てくるから、どうやら四国での分布は広いようだ。しかし、そんなに多いものでもない旨の文章もあった。

 
 

2020″ 立春の献立

 
書き忘れたが、節分の翌日の2月4日は立春だった。
立春の料理で特にポピュラーなものはないようだが、春を意識して献立を考えてみた。

 

 
まだ芥子醤油はかけてないが、菜の花の芥子醤油あえ。
菜の花の料理といえば、真っ先にコレが頭に浮かぶくらい好き。芥子の辛みと菜の花のホロ苦さが相俟って旨いんだよね(^o^)

 

 
バカ貝の芥子酢味噌あえ。
バカ貝というのは別称で、ホントは青柳という。
オレンジの下みたいな部分を貝からダラッと出しているから、バカみたいに見えるのでバカ貝なのだ。

ダブル芥子攻撃❗
市販の芥子酢味噌に芥子をふんだんに入れてやった。甘過ぎる芥子酢味噌は酒の肴として許せないからだ。
(*´∀`)うむ、普通にメッチャ旨い。

 

 
蕗の薹味噌。
フキノトウは、いつもなら蝶採りのついでに野外で採ってくる。だから買うことは無い。だが流石にまだ早い。でも、LIFEでお務め品が150円で売ってたから買った。

フキノトウといえば、真っ先に浮かぶのが天ぷらだが、天ぷらは支度も後片付けも面倒だ。量も少ないから、苦労のしがいもない。と云うことで、ふきのとう味噌にすることにした。

①フキノトウを軽く洗って、かたいので外側の紫の部分を取り除く。
フライパンに植物性の油をしき、弱火にかけておく。
(゜〇゜;)あらま、菜種油が残り少なかったので、仕方ないのでオリーブオイルを足してやった。

②味噌を大さじ2くらい。味醂を大さじ1くらい入れて混ぜておく。こう書いたが、普段は目分量です。
あんまり甘くなるのは嫌なので、砂糖は入れなかった。

③フキノトウを刻んでゆく。
食感を活かしたいのなら縦に、柔らかさを重視するならば横に切る。今回は斜めに切った。
フキノトウは切ったそばから黒ずんでゆくが、気にせず素早くどんどん切ってフライパンに放り込んでゆく。気にせずと書いたが、あんまり黒くなるのも嫌なので、フライパンを予め火にかけて、切ったそばから入れてったのじゃ。

④フキノトウを全部入れたら、火を強めて炒める。
火が通ったら、②の調味料を加えて火を弱め、キレイに混ざるまで炒めて出来上がり。
あっ、そうだ。途中で味見してボヤけた味だったので、少しだけ砂糖を足した。

酒の肴にもいいが、これはやっぱり白めし。
ほかほか御飯に乗せて食うと、御飯の甘みと蕗の薹の大人の苦みが口の中で渾然一体となってニャー(ФωФ)❗
笑みが思わずこぼれてしまうくらい旨い。

今年は暖冬というけれど、寒いことには変わりない。
早く、もっとあったかくなってほしいなあ。

 
                    おしまい
 

手巻き寿司、その後

手巻き寿司を食ったあと、酒が足りなくなったので午前0時過ぎに再びスーパーを訪れた。

で、行ったら恵方巻きが半額になり始めた。
恵方巻きをクサしといて、どうかとは思ったが買ってしまう。心の弱い人間なのである。

 

 
だって、太巻きだよー。この量で500円は安いし、消費期限は午後3時なんだもーん。お昼に食べればいいと思ったのよ。

お腹いっぱいだけど、やっぱり今食べたい。
これも酔っぱらいの為せるワザである。
で、一切れだけ食うことにした。

 

 
勿論、もう節分ではないので、西南西に向いて黙って食ったりはしない。だいたい酔っぱらいなのだ。そんな意識は、とうにフッ飛んどるわい。

(^o^)あっ、旨いかも。数の子の歯応えがアクセントになっていい。
チラシを見ると、具は海老、マグロ、サーモン、玉子焼、カンパチ、胡瓜、穴子、数の子、イカ、大葉だそうである。手巻き寿司よか、豪華な具じゃん。

 

 
翌日、また食う。
デカイから、細めに切った。
一口で纏めて具材を全部味わうのが得策だろうと考えたのさ。

でも、器の選択をシクった。古伊万里なんだけど、数を盛り過ぎた。盛り付けは器に対して少なめがセオリーなのだ。
けど、旨いからいいのだ。

                    おしまい

 

節分の手巻き寿司

 
昨日の夕方、スーパーに買い物に行ったら惣菜売場が物凄い人だかりになってた。
一瞬、何事かと思った。しかし直ぐに理由が解った。
恵方巻きに群がる人たちである。そういえば今日は節分だったな。家庭では今や節分といえば豆まきではなく、恵方巻きなのだ。

小さい頃には既に恵方巻きはあったが、それは大阪とか関西だけの風習だったようで、全国的に広まったのは2000年代に入ってからなのだそうだ。
海苔業界と寿司業界から始まった陰謀をコンビニが更なる陰謀へと膨らませた結果である。それにまたスーパーが便乗して急速に広まったというワケである。

もう一軒スーパーに寄ったが、そっちもドえりゃあ~人、人、人、人だらけ。
うんざりである。正直、アホかと思た。完全に陰謀に踊らされておるやないの。
何か癪なので、恵方巻きなんか絶対買ってやるものかと思った。
で、手巻き寿司を作ることにした。手巻き寿司だったら、具を自由に組合せれるもんね。
(・。・)んぅ❓、これだって充分踊らされとるんちゃうんけ❓まっ、いっか…。

 

 
今回の具たちである。
真ん中がスモーク・サーモン、上が錦糸玉子、あとは時計回りに胡瓜、ツナマヨ、蟹味噌とカニ身の和えたやつ、三つ葉、ぶりトロ(腹身)の葱トロかな。

 
酢めし作って、海苔あぶって準備完了。

 

 
サーモンと錦糸玉子と貝割れ大根。
今年の向きは西南西だっけ?
あらあら、完全に踊らされとる。

恵方巻きを食べてる時は、誰かに話しかけられても喋ってはいけないそうだ。
でも大丈夫。ロンリーマンの一人ぼっちだから、誰にも話し掛けられる心配はない。話し掛けられたら、それこそ(|| ゜Д゜)ホラーじゃよ。

それにしても、誰がそんなルールを決めたんじゃ。恵方巻きなんて誕生してから大して経ってないだろう。せいぜい50年とか60年じゃなかったっけ❓百年は絶対経ってない。そう思うと、何か腹立つなあ。お寺とか神社とかの由緒ある風習の成り立ちとは全然違うだろう。そこには元々意味なんて無かった筈だ。誰かが、もっともらしく見せるために、そういう向きとか喋っちゃダメとかのルールを考え出したのに違いない。
まあ、お寺とか神社とかのルールも元はそんなもんだったのかもしれないけどね。

御託はコレくらいにして、かぶりつく。
っていうか、一口で頬張る。

旨い。サーモンと錦糸玉子の組合せが失敗なワケないんである。

 

 
葱ブリトロと貝割れ大根。
旨い❗鰤の脂と甘みが口に広がり、堪りまへん。
葱ブリトロというのは、鰤の腹身を包丁で細かく叩き、葱を混ぜたものである。ようするにマグロの葱トロのブリ版ってワケやね。

 

 
ツナマヨと貝割れ大根と胡瓜。
普段は手巻き寿司でツナマヨなんて有り得ない。そんな邪道で貧乏たらしいもんを出してくる時点で、我が家計の現況を如実に表しているというワケだ。
何か、さっきから「ワケ」を連発してるな。言いワケかますと、何も考えてなくてダラダラ書いてるだけなんである。

まあ、この組合せも普通に旨いわな。

 

 
蟹味噌と三つ葉。
缶詰の蟹と瓶詰めの蟹味噌を和えただけ。
こういうのは好き。蟹味噌の苦味と三つ葉の苦味がいい。大人の味だ。大人の恋のようにホロ苦いところがよろし。大人の恋してぇなあ…。

 

 
鰤ネギトロとサーモン、錦糸玉子。
つつましやかな手巻き寿司の中での贅沢組合せ。
裏切らない旨さだ。ビールから熱燗にスイッチ。

 

 
蟹味噌と胡瓜、錦糸玉子。
旨いよ。旨いけど、段々説明すんのが面倒になってきた。だって、この組合せの味を説明するのは無理があるんだもん。複雑な味としか言い様がない。

 

 
鰤ネギトロと錦糸玉子、貝割れ。
新たに錦糸玉子が加わったバージョン。
味は書かない。んなもん、旨いに決まっとるやないけー。

 

 
スモークサーモンとツナマヨと胡瓜&貝割れ。
如何にもジャンクな組合せだ。だが、ジャンクは旨い。

 

 
ツナマヨ、蟹味噌、胡瓜、三つ葉。
蟹味噌にツナマヨを合わせるのは、ちょっと冒険だった。一歩間違えば、蟹味噌が台無しになる。
でも、心配することなかった。マヨネーズが入れば、何だってそれなりに旨くなるもんね。

 

 
サーモン、葱ブリトロ、胡瓜、ツナマヨ、錦糸玉子、三つ葉、貝割れ。
画像では隠れているが、サーモンの下に葱ブリトロもいる。そう、オールスターなのだ。

\(^o^)/うみゃーい❗何か知らんけど美味い。
噛んでるうちに色んな味が沸き上がってきて、楽しいや。口の中、ちらし寿司だな。

これで邪気も払えた事であろう。
今年も無病息災でいきまひょ。

 
                    おしまい

 

2018′ カトカラ元年 其の13

   vol.13 エゾシロシタバ

    『黒い虚無僧』

 
また、最初に訂正とお詫び。
前回の記事をアップ後、直ぐに読まれた方もおられると思われる。既に修正済みだが、学名の記載者と記載年の()問題でシクった。『日本産蝶類標準図鑑』が恰(あた)かも全部の記載者、記載年を()で括っているかのような事を書いたが、そんな事はござんせん。ぼおーっとしてました。酒飲みながら書いてるから、やらかしたんだけど、たまたま開いたページ周辺が全部()だらけだったので、勘違いしてそう書いてしまったのだ。酔っ払いは物事を深く考えないのである。
学名の属名が変更された場合は、()で括るというルールが有る。まず命名者については、命名者名が括弧で括られ、その後に変更者の名前を書くことになってる。
よくよく考えてみれば、そのページはタテハチョウ科の項で、タテハチョウは属名が変更になってるものが多いという事をすっかり失念していた。スンマセン。

気を取り直して、本編に進もう。

 
2018年 9月7日

 

 
台風一過。関西を直撃した台風21号の翌々日に旅立った。翌日に発つ予定だったが、被害状況によっては電車が走っていないケースもあると考えて、一日様子をみることにしたのだ。
目的地は山梨県甲州市の「ペンションすずらん」。狙うはムラサキシタバだった。

 
【ペンションすずらん】

 
此処は関東方面の虫屋には名の知れたペンションで、デカいライト・トラップがあるのだ。
この頃はまだカトカラ1年生の終わりかけ。言うほどカトカラに嵌まっていたワケではない。カバフキシタバとシロシタバ、ムラサキシタバさえ採れればいいと思ってた。ムラサキシタバを採ってフイニッシュ。この年でカトカラ採りはやめるつもりでいた。所詮は蝶採りの合間の、ほんの気まぐれから始めたことなのだ。だからライトトラップの道具なんて持っているワケがないのである。だいちライトトラップのセットは高額だ。買う気なんぞ、さらさらなかった。
でもムラサキシタバは、どうしても採りたい。なので最後の手段として、この地を訪れたのだった。

 

 
ここで、ジョナスのあとにエゾシロシタバが飛来した。
しかし情けないことに、止まっているのをコレ何❓って、蛾好きの高校生に訊いたんだっけ…。
でもって、半ば呆れ顔で『エゾシロシタバですね。』と教えてもらったような気がする。だってエゾシロシタバの存在なんて、全く頭の中に無かったのだ。

採ってみての第一印象は、カトカラらしくない小汚ないヤッちゃのーだった。下翅が黒っぽくて、全然鮮やかじゃない。そんなに目立たなくして、アンタ、虚無僧かよと思った。しかもチビである(-“”-;)
正直、何の感動も無かった。採ったことがないカトカラが1種類増えてプチラッキーだとか、その程度にしか思わなかった。見てくれは、ワタクシが元来嫌っている蛾の典型みたいなもので、みすぼらしいんだもーん。
なのか、その時の写真は残っていない。ようするに1枚も撮っていないのだ。目的はカトカラの最美麗種とも言われるムラサキシタバのみだったので、完全に雑魚扱い。眼中に無かったのであろう。撮るに足りないと判断したんだろね。

結局、この遠征では全部で7、8頭が灯りに飛んで来たと記憶している。時刻は8時とか9時台の比較的早い時間だったと思う。静止時は全て羽を閉じていた。
で、持ち帰ったのは2頭か3頭だったと思う。殆んどがボロボロだったからだ。
そう云うワケなんで、展翅した画像しかない。

 
【エゾシロシタバ Catocala dissimilis】

 
♂かなあ…。
展翅したのは、この1点のみ。他の画像は無い。何せコレが一番マシな個体だったのだ。他は展翅すらしていないのさ、(# ̄З ̄)ぷっぷっプー。
しかも、展翅がド下手。愛情ゼロ、やる気が1ミリも感じられない展翅だ。

ゆえに、他からもっとマシな画像をお借りしよう。

 
【♀】
(出展『ww.nkis.info』)

 
鮮度が良い個体でも地味だねぇ~。もっと黒いのかと思いきや、薄汚れた茶色というのもいただけない。見た目が似ているコシロシタバはもっと黒っぽい濃紺で、渋い美しさがある。なのに、こんなんじゃねぇ…。おまけに東日本では普通種とゆうじゃないか。チビでブスで普通種。そりゃ、人気も出ぇーしまへんわ。

 
【コシロシタバ Catocala actaea ♀】
(2019.7月 奈良市)

 
エゾシロシタバと一見似ているが、白斑の位置が全然違う。だいち大きさが違う。コシロはもっと大きいのだ。ふた回りくらいの差がある。

裏面写真も撮ろうと思えば撮れるんだけど、鮮度が悪いので、ここはネットから画像をお借りしよう。

 
(出展『The insects from the Palaearctic region』)

 
画像の左側が表で、右側が裏面である。
自分の標本写真の鮮度が悪いゆえ、表の画像が一緒になってるコレが好都合かと思い、使用させて戴いた。

Σ( ̄ロ ̄lll)あっ❗、よく見ると下翅に帯の痕跡のようなものがある。採った時は全然知らなかったけど、マメキシタバと近縁なんだそうな。

 
【マメキシタバ Catocala duplicate ♀】
(2019.8月 大阪府四條畷市)

 
パッと見は全然似てない。でも、そう言われてみれば、帯の形や角度、太さはマメキシタバに似ていなくもない。前翅の斑紋パターンも近いものがある。

こうして見ると、エゾシロシタバって裏も酷いな。
下翅の根元が汚ないし、お世辞にも美しいとは言えない。コシロシタバには幽玄の美しさが有るのになあ…。

 
【コシロシタバ ♀裏面】
(2019.7月 奈良市)

 
とはいえ、エゾシロシタバにはその後も会っていないし、まだ生きている新鮮な個体は見たことがない。百聞は一見にしかずである。案外、実物はそんなに悪くないのかもしれない。
今年は一応狙って採ってみるか…。

                     つづく

 
追伸
この時は来年の2019年には、どうせまた会えるだろうと思っていた。なのに結果は2回の信州遠征でも1頭たりとも見なかった。いる所にはアホ程いるが、いないところも結構あって、意外と分布は局所的なのかもしれない。

解説編は次回に回します。1回で終える予定だったのだが、学名の項でぬかるみの世界にズブズブにハマってしまったのだ。
(‘ε’*)クショー、書くのは楽勝のカトカラだと思ってたのにぃー。

2018′ カトカラ元年 其の12 後編

 
  vol.12 ジョナスキシタバ
      解説編

  『カトカラのジョナサン』

 
前回に納まりきれなかった解説編です。

本編を始める前に一言。
前回アサマキシタバの発生期を5月下旬からとしたが、間違い。中旬に修正しときました。

それでは、今回もハリきっていきまひょ。

 
【ジョナスキシタバ Catocala jonasii ♂】

 
【♀】

 
【♂裏面】

 
【野外写真など】

 
【学名】Catocala jonasii
記載は、1877年にButlerによって為されたが、今後、記載者と記載年は省く。今まで括弧付きで載せてきたが、学識ある方にオカシイと指摘されたからだ。一般の人には括弧付きでないと、どこまでが学名か分かりにくいと思ったのだ。けど、考えてみれば一般人が記載者や記載年に興味を持つワケでなし、外してもいいだろう。そう判断した。

学名の小種名の語尾に「ii」が付くと云うことは人名由来で(註1)、おそらくジョナス氏に献名されたものであろう。問題はそのジョナス氏が何処のジョナスさんかと云うことである。全く昆虫に関係ない人物だと、歴史上に名前が残り難(にく)い。調べようがないのだ。近所の喫茶店のオッチャンなんかに献名でもされていようものなら、お手上げなのだ。どんな人物で、なぜ献名されたのかが全く辿れなくなる場合が多い。

いつも御世話になっている平嶋義宏氏の『蝶の学名-その語源と解説-』を紐解くと、「i」は一つ足りないが、jonasiという学名のモノが見つかった。
( ゜o゜)んっ?、コレって、どっか見覚えがあるぞ。
と思ったら、何のことはない。ムモンアカシジミだった(学名 Shirozua jonasi)。そういえばムモンちゃんって、そんな学名だったわ。
蝶屋なんだから勿論採った事はあるんだけど、標本を探すのが面倒なので図鑑から画像をパクろう。

 
【ムモンアカシジミ】
(出展『日本産蝶類標準図鑑』)

 
その『蝶の学名』から、語源の解説文を抜粋しよう。

「jonasi(ジョナシ)ムモンアカシジミ。ジョナス氏の、意。ジョナス F.M.Jonas(1851-1924)は1872年に来日して横浜に住み、日本の葉煙草をロンドンに輸出したイギリス人で、蝶の熱心な採集家(江崎,1956)」

おー、蝶好きのイギリス人がいるわいな。たぶん欧州人ゆえに蝶と蛾の区別は特にしないだろうから、蛾も採ってた筈だ。と云うことは、ジョナスキシタバの学名も、このジョナスさんに献名された可能性が高い。

調べてゆくと、Wikipedia の英語版には、以下のような文があった。

「Catocala jonasii is a moth in the family Erebidae first described by Arthur Gardiner Butler in 1877. It is found in Japan.」。

訳すと、こんな感じかな。
「Catocala jonasiiは、1877年にArthur Gardiner Butlerによって最初に記載され、日本で発見された。」と謂った感じになる。
日本で発見されたということは、年代的にもムモンアカと同じだし、横浜のジョナスさんに献名されたものと断定していいだろう。間違ってたら相当カッコ悪いけど、そういう事にしておこう。

(@_@)ゲロゲロピー。でも何気にムモンアカシジミの記載者と記載年を見て驚く。
「Janson, 1877」となってて、記載年はいいとしても、何と記載者がButlerではなく、Jansonとなっているではないか。これは別な人がジョナスさんに献名したって事になる。本当に同じジョナスさんかえ❓
でも記載年は共に1877年と、ムモンアカもジョナスキシタバも同じである。或いはジョナス氏は蝶の標本をJansonに、蛾はButlerに送ったのかもしれない。
やめとこ。コレ以上首突っ込むと煙草屋ジョナスさんの物語になり、泥濘(ぬかるみ)世界に囚われること必至だ。ケツをまくろう。どうしても気になる人は、自分で調べましょうね。

 
【和名】
学名の小種名をそのまま和名に転用したものだろうが、日本のカトカラの中では唯一このジョナスのみが横文字和名である。何でかはワカラナイ。コレも泥濘世界必至なのでスルーしよう。
それはともあれ、横文字が入った和名はカッコイイよね。ヤンコウスキーキリガとかシルビアシジミ、マルタンヤンマとかさ。よくあるパターンのトガリキシタバなんてのを付けるよりも、よっぽど良い和名だと思う。

参考までに言っとくと、旧名にジヨナスキシタバがある。

 
【開張(mm)】 65~68㎜
ネットの『みんなで作る日本産蛾類図鑑』には、そうあったが、まんま『原色日本蛾類図鑑(註2)』下巻からのパクリだろう。
怒られそうだが、この『みんなで作る日本産蛾類図鑑』には不満がある。どんな蛾でも名前で検索すると、このサイトが一番上にくるのだ。だからブログを書いている人などは皆、この情報を孫引きしている。ワシも初めはそうだった。しかし『原色日本蛾類図鑑(下)』といえば、1958年の発行だ。情報が古い。ゆえに間違った記述もある。それでもこのサイトが訂正、更新された形跡は全く無い。つまり古い間違った情報がネットで拡散し続けていると云うことだ。それを蛾界の人々は誰も直そうとしたり、指摘していないのが不思議でならない(してたら、ゴメンナサイ)。
だいたい65~68㎜って、範囲幅が狭くねぇか❓ チビの虫じゃないんだから、普通はそれなりにもっと大きさの幅があって然りでしょうよ。そこに疑問を感じない時点で、何も考えずにそのまま図鑑から書き移したとしか思えない。

一方、近年出版された岸田先生の『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ(註3)』では、64~74㎜内外となっている。ジョナスを沢山採ったワケではないが、おそらくコチラの方が正しいかと思われる。

 
【分布】北海道(南部)?・本州・四国・九州
北海道を❓としたのは、『世界のカトカラ(註4)』など各種蛾類図鑑には北海道にも分布すると書かれているが、『日本のCatocala(註5)』では含まれていないからだ。理由は以下の通りである。

「記録は北海道から鹿児島県まであるが、生息地は幼虫の食餌植物であるケヤキの分布に左右される。したがって、北海道では発生しておらず、当地の記録(函館など)は移動個体と判断される。」

調べてみたら、確かに北海道には食樹であるケヤキが自生していない。されとて、この図鑑だって発行されて、もう10年以上になる(2009年発行)。近年は地球温暖化が声高に言われているし、状況は変わっているかもしれない。
ケヤキは街路樹や木材利用に植栽されることが多い木だ。北海道にだって人為的に植えられている可能性は高い(註6)。青森辺りから飛来したものが、その後に植栽されたもので発生を繰り返し、定着している事だって無きにしも有らずだ。現況はどうなってるのかしらね。

ジョナスの分布に戻ろう。
東日本各地に多く、本州では青森県が分布の北限。
近畿地方では『ギャラリー・カトカラ全集』の都道府県別カトカラ記録表によると、全府県に記録があるようだ。しかし、数は少ない。特に中央部の都市近郊では、調べた限りだと確実な産地が見当たらない。安定して採集されているのは兵庫県西部~西北部と紀伊半島南部の高地帯くらいだろう。中でも兵庫県での記録が多く、西播磨北部・但馬地方の山地帯に多産、佐用町や姫路市にも少ないながら生息しているという。
また、四国や九州でも数は少ないようだ。中国地方は全県に記録があるようだが、詳細はよく分からなかった。とはいえ、そう多いものではないだろう。

とにかく近畿地方では一部を除き、記録は局所的がちで少ない。幼虫の食樹であるケヤキなんて何処にでもあるのに何で❓ そう常々思っていた。
これは別項で詳しく後述するが、西日本では自生するケヤキは案外少ないみたいだ。元々暑いところを好まない木らしい。都市部では公園や並木などでよく見るし、そういう意識が無かった。だから、これには意外だった。
じゃあ、何でケヤキが都会に植えられてるの❓
大阪市なんて緑が全国一少ない都市だから、夏場はヒートアイランド現象で死ぬほど暑いぞ。まさか都会に植えられているケヤキは、品種改良された暑さにメチャンコ強い奴でもあるまいに…。

『日本のCatocala』には、ジョナスは暑さを嫌うような事が書いてあった(これについては生態面で詳しく書く)。たしかに、それは一利ある。関西では但馬地方は降雪量が多く、どちらかと云うと寒い地域だ。紀伊半島南部の高地でも、冬は雪が積もる。だから近畿地方中央部の都市近郊の山地で見られないのは、ケヤキが少ないのとクソ暑いんだからだと思ってた。

そんな折り、前回書いたように奈良市で2019年の7月17日にジョナスが採れた。

 
(2019.7.17 奈良市白毫寺町)

 
マホロバキシタバ(註7)の分布調査をしていた時に偶然見つけたものだ。まさかこんな場所にジョナスなど居るワケないと思ってたから、(◎-◎;)たまげた。
偶産かと思いきや、その後、小林真大くんが若草山周辺でも2、3頭採っている。この事実から、偶産ではなく、定着していることは間違いないだろう。
にしても、標高は白毫寺町で120m前後だぞ。若草山にしたって、たったの342mだ。しかも採れたのは山頂近くではないから、標高はもっと低い。この周辺には特別高い山は無いし、おまけに奈良市は盆地だぞ。夏場はクソ暑い。避暑なんて出来ない筈だから、ずっと此所で世代を繰り返してきた公算になる。あんた、暑くとも生きれるやんか。
となると、六甲山地や生駒山地にいても不思議ではないということだ。詳しく分布調査すれば、意外と各地で見つかるかもしれない。

海外では朝鮮半島、中国南部に分布するが、特に亜種区分はされていないようだ。因みに、台湾には近似種とされる Catocala wuschensis Okano,1964(註8)というのが産する。

 
【変異】
特に亜種区分されているものはいないが、上翅に変異がある事が知られている。

 
(出展『世界のカトカラ』)

 
(出展『フォト蔵』)

 
上翅が著しく黒化するものや、真ん中部分が黒化するものが各地で報告されている。下の画像なんかはカバフキシタバの異常型みたいでカッコイイ。

九州産は白っぽくなり、本州産とは趣をかなり異にするという。また本州産と比べると型も大きいそうだ。

 
【レッドデータブック】
千葉県:D(一般保護生物)、宮崎県:準絶滅危惧種(NT-R)

近畿地方なんて、現状では多くの府県で準絶滅危惧種になってても可笑しかない。たぶん、ろくに調査されとらんのだろう。

 
【成虫出現月】7~9
『みんなで作る日本産蛾類図鑑』にはそうあったが、
比較的新しい図鑑の記述を総合すると、6月中旬から出現し、11月上旬まで見られるというのが妥当だろう。カトカラの中では最も成虫が見られる期間が長い。しかし、新鮮な個体が得られるのは8月初めまでだそうだ。
『日本のCatocala』に拠ると、長野県上田市(alt.550m)では7月の15~20日が羽化のピーク。その後、8月に入ると姿を消し、9月に入って再び纏まった数が見られるといい、夏眠が示唆されている。但し、実際には、まだ夏眠は証明されていないようだ。

そっかあ…、夏眠の可能性有りなのかあ。
だとしたら、謎が一つ解ける。去年、2019年の8月に長野に行ったのだが、行く前はジョナスなんて東日本では普通種なんだし、どうせ何処にでもいると思ってた。しかし行ってみれば、1頭たりとも出会えなかった。もしも夏眠するならば、どうりで見なかったワケだ。だったら納得いくよ。

 
【生態】
先にコチラを書いてから分布の項を書いたので、内容が重複するが、書き直すのが骨ゆえ、そのままにしておく。何卒「忍」の一文字で我慢して読んでくだされ。

成虫は平野部よりも丘陵地の斜面林や山地の谷沿いのケヤキ林に多く見られる。
灯火にも樹液にもよく集まるそうだ。まだ見たことはないが、おそらく糖蜜にも好んで寄ってくるだろう。
少ないながら花蜜に訪れた例がある(矢島 1978)。調べた限りでは、アブラムシ等の甘露、地面等での吸水の観察例は無いようだ。

自分が見たり、採ったりしているのは殆んどが灯火である。おこがましくも少ない経験の中で言わしてもらえれば、灯火に飛来する時刻は比較的早い。日没後、暗くなると直ぐに複数が飛んで来た。午後8時前後にピークがあって、あとはだらだらと飛んで来たという印象が残ってる。

『日本のCatocala』に拠ると、ケヤキの自生しない標高2500mの高山帯の灯火にもよく飛んで来るらしい。ケヤキの垂直分布の上限は1200mだから、標高差は1300mだ。この事から、著者の西尾氏は低地での高温を嫌うのかもしれないと書いておられる。また、成虫期の温度適応による生息場所選択の可能性があるとも書いておられる。ようするに、暑さに弱く、気温によって涼しい場所を求めて移動する種ではないかとおっしゃってるワケだ。
これは蝶なんかでもよく言われてる事で、ヒョウモンチョウの仲間などが例にあげられている。羽化後は周辺にいるが、暫くしてから低地では見掛けなくなり、秋にまた同じ場所て群れていたりする。この事から、従来は夏場の暑い時期は活動せず、夏眠しているとされてきた。しかし、盛夏に標高の高い所で見つかるケースもよくある。つまり、夏眠ではなくて、涼しい場所に移動するのではないかと云う説だ。

じゃあ、奈良市のジョナスはどうなのだ❓
夏眠するのか❓でも動かなくとも標高120mの盆地は暑いぞ。それとも涼しい高地に移動するのかね❓
けど奈良市の周辺に高い山なんて無い。じゃあ、盛夏は何処へ行くのだ❓ 滋賀県の伊吹山❓ 標高は1377mあるから打ってつけだが、奈良市から伊吹山までは約150㎞もあるぞ。まあ、カトカラは飛翔力があるというから、飛んで行けなくもないとは思うけどさ。にしても、遠くねぇか。オラだったら行かないね。って云うか伊吹山麓に住むよ。
だったら大阪府最高峰の金剛山なんてどうだ❓ 標高は1125m、距離は約65㎞だ。全然行けそうだけど、やっぱり金剛山麓に住むわ。ところで、金剛山ってジョナスの記録って有るのかな❓

例えば仮説として、奈良市のジョナスは暑さに適応しているってのはどーだ❓
しかも見てくれはソックリだが、隠蔽種の別種だったりして…。更に論を飛躍させると、西日本と東日本のジョナスは別種で、西日本は暑さに適応して東日本のものからウン千年万前に分化したとか(笑)。ここまで飛躍するとムチャクチャだ。フザけ過ぎだと叱られそうなので、この辺でやめとく。
とにかく、奈良市のジョナスは謎だよ。
果たしてジョナスは本当に涼しいところがお好みなのだろうか❓それとも適応力が高く、暑さにも意外と耐えられる種なのだろうか…。

交尾は9月に入って行われ、産卵は9月の下旬頃になるそうだ。交尾回数は、他のカトカラと比べて少ないらしい。

生態面で特に面白いと思ったのは、昼間のジョナスだ。これも西尾氏の『日本のCatocala』に書かれていた事である。要旨は以下のようなものです。

「成虫は日中、頭を上にして物に静止している。驚いて飛翔した時は上向きに着地し、静止する。」

つまり、逆向き(下向き)には静止しないと云うことだ。他のカトカラは、日中は殆んどが下向きに止まっている。また飛翔後、着地時は上向きに止まるが、暫くしてから下向きになるというのが常道だ。その点からすると、ジョナスは異端の存在と言えよう。
翅先が尖っているから、飛ぶスピードがムチャクチャ速いのかもしれない。カトカラが下向きに止まるのは、それによって天敵に襲われても自重を利用して素早く逃げる為だと云う説がある。でもジョナス隊長はクソ速く飛べるので、そうする必要がないからとかかなあ…❓ コレばっかは、隊長に訊いてみないとワカンナイけどさ。
そういえば、ジョナスは昼間はメチャメチャ敏感らしい。人の気配を少しでも感じると、すぐに飛び立つそうだ。小太郎くんも、白山方面に蝶採りに行った時に、歩いてるとジョナスがバンバン飛んで逃げてたと言ってたわ。元来、飛ぶのが好きなのかもね。
或いは、もしかしたら『かもめのジョナサン(註9)』みたく、ジョナスは飛ぶことに命を燃やし、進化の過程の中で最高の飛行技術を得た一族なのかもしれない。だとしたら、孤高のジョナスと呼びたくなるよね。ジョナスは哲学者なのだ。

 
【幼虫の食餌植物】
この項目も最初の方に書いたので、重複箇所は多いけど、我慢してネ。

ニレ科のケヤキのみが知られている。
世界のカトカラを見回しても、ニレ科を食樹としているものは、今のところケンモンキシタバ(ニレ科ハルニレ)と、このジョナスしかいないようだ。
先に触れたが、近畿地方でもケヤキはわりと何処にでもあるけど、なぜかジョナスをあまり見ない。何でやろ❓
例えば北方系の種で冷温帯を好むからとか、根本的な理由があるのかもしれない。
でも、ちょっと待てー。奈良市のポイントの標高なんぞは、たったの海抜120mくらいだぞ。それにケヤキは北海道には自生していないと云うじゃないか。だったら、北方系というには相応しくない。
気になるので、調べてみよう。

ケヤキは、九州から青森県まで分布しているが、本来シイやカシの類よりも寒いところの樹木で、分布の中心は東日本なんだそうである。そのせいか、県や市のシンボルツリーになっている所も多い。県では、宮城、福島、埼玉各県が県の木として指定いる。膨大な数なので調べないけど、市町村まで含めると指定しているところは相当ありそうだ。因みに西日本ではケヤキを府県の樹木にしているところは一つも無い。この事からも、ケヤキは東日本に多く、人々に身近に親しまれてきたことがわかる。

それはひとまず置くとして、別な理由も考えられる。所詮は忌み嫌われている蛾だ。たとえ人気の高いカトカラといえども、愛好者はまだまだ少数なのだろう。そして、その全ての人が分布調査に余念がないと云うワケでもないだろう。だから、まだちゃんと調べられていない可能性大じゃないかな。分布調査を真面目にやれば、以外と何処にでもいることが分かってくるかもしれない。

 
【幼生期の生態】
幼生期についての経験値はゼロなので、今回も西尾氏の『日本のCatocala』から引用要約します。
幼虫は樹齢10~40年の若い木から壮齢木によくつくが、100年以上の老齢木は好まないという。野外での幼虫の色彩斑紋はバリエーションに富み、黒褐色ものから明るい色のもの、白斑があるものまで発見されている。
終齢は5齢。昼間、5齢幼虫は樹幹下部に降りて静止しており、蛹化は落葉の下などで行われる。

 
書いてるうちに、どんどんジョナスのことが好きになってきた。
今年は、ジョナスの飛行哲学者ぶりをじっくり見てみたいものだと思う。

 
                    おしまい

 
追伸
あっ、採るだけじゃなく、今年は完璧な展翅もしないとなあ。

今回は自分オリジナルの生態観察は少ない。殆んどが文献からのパクリである。考えてみれば、♀なんて1頭しか採っていないんである。偉そうに書いているけど、間違いだらけかもしれない。間違ってたら、ゴメンナサイ。

小タイトルの『カトカラのジョナサン』は、小説『かもめのジョナサン』をもじったものだ。その理由は下欄の註釈10を読んで下され。

 
(註1)学名の小種名の語尾「ii」
平嶋義宏氏の『蝶の学名-その語源と解説-』には、以下のような説明があった。

「例えば、種名の中には、sieboldiとsieboldiiのように、同じ人物の属格でもその語尾が-i-やii という形のものがあることである。動物学の場合、sieboldi にするのが正しいが、sieboldii でも間違いではない。理由は、Siebold氏をいったん Sieboldius とラテン語化して、その属格Sieboldii を採用した種名であるからである。しかし、現在はこの用法は推奨されていない。」

ネットだと、植物の場合だが、以下のような記述を過去に見つけている。

「この属格が「i」になるか「ii」になるかは慣例によっている。この点に関して、国際植物命名規約の勧告によれば、人名の語尾が母音で終わっていれば「i」を付し、語尾が「er」の場合を除き、子音で終わっていれば「ii」を付す、となっている。」

出展は調べ直したが、見つからなかった。
ややこしそうなので、これ以上はこの問題には首を突っ込みません。

 
(註2)『原色日本蛾類図鑑(下)』

 
江崎悌三氏ほか編著の古い図鑑。長年親しまれてきたもので、多くの目に見えない遺産をもたらした。保育者発行。

 
(註3)『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』

 
岸田泰則氏の日本で最も長大な蛾類図鑑。学研発行。
蛾をやるなら、必須アイテムだろう。持ってないけど(笑)

 
(註4)『世界のカトカラ』

 
カトカラの世界的研究者である石塚勝己氏の、世界中のカトカラをほぼ網羅した図鑑。むし社発行。

 
(註5)『日本のCatocala』

 
西尾規孝氏の日本産カトカラの生態図鑑。日本のカトカラを詳しく知るには一番の書。自費出版。

 
(註6)北海道にも人為的植栽がされている可能性は高い
江差町字東山に明治後期に植栽され、百年を超えるケヤキの人工林が有るそうだ。どうやら北海道西南部では、松前藩によって昔から植栽されていたようだ。因みに札幌市にも結構ケヤキの大木が有るという。
こうなると、ジョナスもその時代から土着していたのかもしれない。分布地に北海道を含めるのが正しいのかもね。西尾氏は、ケヤキが自生しないと云う言葉に惑わされた可能性がある。自生していなくとも、長年植栽されていれば関係ないもんね。

 
(註7)マホロバキシタバ

 
学名 Catocala naganoi mahoroba。
2019年、日本で32番目に見つかったカトカラ。

 
(註8)Catocala wuschensis Okano, 1964

(出展『世界のカトカラ』)

 
やはり記載者と記載年は、あった方がいいかな。
記載は50年以上前で、名前からすると、どうやら日本人によるものみたいだね。

石塚さんの『世界のカトカラ』にはキレオビキシタバと云う和名が付けられている。これは下翅の帯が寸断されていることからのネーミングだろう。
石塚さんの見解では「外観はジョナスキシタバに幾分似るが、類縁関係は明らかでない。」とある。食樹は不明で、稀種のようだ。

確かに、パッと見はそんなに似てない。
でも図鑑に載ってたのは、この♀1個体だけだし、一応クグっとくか…。

 

 
♂である。
ジョナス隊長程には上翅が尖ってないね。飛んだら、ジョナスの勝ちだな。

 
【裏面】
(出展 2点共『jpmoth.www』)

 
表よりも裏面の方がジョナスに似ているかもしれない。って云うか、ソックリだ。
日本の蛾の図鑑には殆んど裏面は載ってないから、同定する時に不便なんだよなあ…。大図鑑は無理としても、属レベルの図鑑だったら裏も載せれると思うんだけど、どうしてかな?何とかならんかね❓

台湾のサイトには生態写真もあった。

 
(出展『Dearlep.tw』)

 
コレなんか見ると、表側(前翅)も一見するとジョナスっぽい。類縁関係は有りそうだ。

台湾名は「霧社裳夜蛾」というらしい。霧社ということは、南投県霧社で最初に発見されたって事かな?
但し、この個体は新竹県観霧で撮影されたものだ。
霧社は台湾で蝶を採ってる時に前をよく通った。だから周辺のどっかでも採れんじゃねーの❓
出ましたねー。自称まあまあ天才、でも引きだけが強い男の楽観的展望(笑)

サイトに種解説もあったので、ついでに載せとこっと。

描述
本種前翅長約36mm;屬於中大型的裳蛾物種,整體鐵灰色,前中線為黑褐色短斜帶,於近臀緣端曲折,後中線鋸齒狀,於近臀脈端較粗並強烈彎曲向前緣,腎紋下方具有一淡黃色梯形斑紋。後翅底色鮮濃黃色,於中央區段、頂角以及臀角具有帶狀黑紋。

生態學
中海拔原生林,稀見,成蟲發生於夏秋季6~10月

分布
臺灣,特有種。

乱暴に要約しちゃうと、前翅長36㎜。中大型のカトカラで、中海抜(1000m前後?)の原生林に生息する。6~10月まで見られるが稀。台湾特産種。
( ・◇・)ん❗❓、前翅長36㎜❓そんなに小っちゃいの❓
でも『世界のカトカラ』の図版だと、ジョナスと同じ大きさだどー。開翅長じゃなくて、前翅長だからか❓けど、前翅長って、どこの長さだっけ❓開翅長とどう違うんだっけ❓ようワカラン。

 
(註9)かもめのジョナサン
『かもめのジョナサン』(Jonathan Livingston Seagull)は、リチャード・バックによる寓話的小説。1970年にアメリカで出版され、最初は当時のアメリカのヒッピー文化とあいまって口コミで徐々に広がり、1972年6月以降に大ヒットした。日本では1974年に五木寛之の訳で出版され、120万部の大ベストセラーとなった(累計270万部以上)。
食べる時間すら惜しんで飛ぶ事に打ち込み、飛ぶとは何かを探究し、「真に飛ぶこと」を求めた1羽のカモメの物語である。
そこには、キリスト教の異端的潮流ニューソートの思想が反映されていると指摘する者や、禅の教えを表しているとする者もいる。読者を精神世界の探究、宗教的な探究へと誘(いざな)う一種の自己啓発本のようにも読まれていた。(参考『Wikipedia』他)

   
《参考文献》
・西尾則孝『日本のCatocala』
・石塚勝己『世界のカトカラ』
・岸田泰則『日本産蛾類標準図鑑』
・江崎悌三ほか『原色日本蛾類図鑑』
・阪上洸多・徳本拓朗・松尾隆人『兵庫県のカトカラ』きべりはむし39(2)
・カトカラ同好会『ギャラリー・カトカラ全集』