銀ダラの煮付け

 
9月半ばに、高島屋で銀ダラが売られているのを久し振りに見た。値段は微妙な450円だが、銀ダラにしては安い方だ。最近は滅多に会えないことだし、買うことにした。

 

 
昔はどこのスーパーでも売ってるような大衆魚だったのに、今や高級魚だ。なのでスーパーで見掛けることは殆んどなくなった。だから銀ダラと言っても、もはや若い人などはワカンないだろう。オジサン、オバサンも銀ムツやメルルーサとゴッチャになっている人が多いかもしれない。
かく言うワタクシも、時に銀ダラと銀ムツの区別がつかなくなることがある。販売されてても誤表記も多く、パッケージには銀ダラと書いてあっても、ホントは銀ムツだったりする事は結構あるらしいのだ。その逆もまた然りである。
どちらも大型魚ゆえ、切り身で売っているから区別するのは難しいのだ。どうせ消費者なんぞバカだから区別でけんと思ってんだろね。
たぶん皮で見分けがつくと思われるが、恥ずかしながらどっちがどうというのを思い出せないことが多い。まあ両方とも高級魚で、味も美味いから怒るほどのことはないんだけどね。でもあえて言うならば、銀ムツの方が好きかなあ。

銀ムツ(学名 Dissostichus eleginoides)は、マジェランアイナメ(マゼランアイナメ)の事で、別名オオクチとも呼ばれており、スズキ目ノトテニア科の”Dissostichus属”に分類され、南極周辺の深海に生息する肉食性の大型深海魚。市場では銀ムツの他にメロとも呼ばれる。いや、最近はメロ(銀ムツ)と書かれていることの方が多いか。銀ムツはムツじゃないから偽装だとゆうことで、お上から禁止のお達しが出た筈だもんね。
またメルルーサ(属名 Merluccius)は、タラ目メルルーサ科メルルーサ属の総称で、ヨーロッパ、アフリカ西岸沖、北米太平洋岸沖、南米大西洋岸・太平洋岸沖、ニュージーランド沖等大陸棚の縁辺部に分布する大型魚。英国の国民食でもあるフイッシュ&チップスやマクドナルドのフィレオフィッシュの材料としても有名である。あっ、でも高騰が原因で近年は別な魚が使われているらしいけどね。
一方、今回の主役の銀ダラ(学名 Anoplopoma fimbria)は、カサゴ目ギンダラ科に属し、別名ナミアラ・ホクヨウムツとも呼ばれる肉食の大型深海魚である。市場魚貝類図鑑には「同属の他種の登録はありませんでした」と書いてあったが、Wikipediaにはギンダラ科には他にアブラボウズが含まれ、ギンダラ属はこの2種だけで構成される。ちなみにアブラボウズも旨い。ただしコヤツも高級魚クエに偽装されて市場に出回るケースが結構あるそうだ。
ようは3つとも分類が目レベルで違うから、かなり掛け離れた間柄というワケだ。つまり親戚でさえない、完全な他人の関係なのだ。
分布は駿河湾、北海道内湾以北からアリューシャン列島、アメリカ・カリフォルニア州沿岸までの北太平洋だが、分布密度には偏りがあり、アジア側では密度が低くて、アラスカからカナダ沖合では高い。
和名のとおり外見がタラによく似ているが、タラではなくアイナメやホッケに近い魚である。ちなみに、タラはタラ目タラ亜科、アイナメとホッケはカサゴ目。銀ムツもムツとは名打ってるけど、全くムツとは無縁の魚だ。だから偽装販売ということで大問題になった。銀ムツの表記が禁止されるようになり(銀ダラはナゼだかセーフ。たぶん和名がそもそもギンダラ属だからかも)、外国の深海魚だとバレて人気がダダ下がりになった。そしてスーパーの店頭から消えていった。銀ムツだと美味しそうだけど、メロ(銀ムツ)なんていう名前の得体のしれないものは誰も買わんのじゃよ。

さて御託はこれくらいにして、どう調理してこましたろか❓
塩焼きとか西京焼きも考えたが、何となく簡単そうなイメージの煮付けにすることにした。

①先ずは臭みを取るため、銀ダラをザルやまな板に乗せ、布巾やペーパータオルを被せて熱湯を回しかける。布巾を被せるのは皮を剥がれにくくするためである。面倒だからワシはそのまま熱湯を掛けたけどさ。

②鍋に水と酒を同量(40ccくらいずつ)、砂糖大さじ1/3 味醂少々、醤油大さじ1を入れて火にかける。火は弱火でよろしかろう。
甘いのが好きじゃないので、砂糖と味醂は控えめにした。世間一般の甘い味付けの煮付がお好きな方は増量されたし。

③そこに銀ダラを静かに入れる(沸騰してなくてもいい)。落し蓋(クッキングペーパーでも可)し、鍋の蓋もして強めの弱火で7〜10分ほど煮る。自分は熱が入り過ぎるのは嫌なので、7分経ったら火を消し、あとは3分放置の予熱方式にした。

 


 

 
厳かに有田焼の皿に盛って出来上がり。
今回は上に貝割れを乗せたが、青物は小松菜などをサッと煮て添えた方が良かったかもしれない。

(•‿•)脂が乗ってて旨いなあ。
あれっ❗❓、でも記憶の中ではもっと脂が乗ってて、口の中ですぐ溶けたような気がするぞ。
アレは銀ムツの方か❓
えっ、じゃあ銀ダラと銀ムツのどっちが美味いのじゃ❓
 
ここで銀ダラくんの事は冒頭の記述以上には知らないことに思い至る。今度こそ脳ミソにインプットして銀ダラか銀ムツか曖昧的な見識を払拭したい。銀ダラと銀ムツのどっちが美味いかも知りたい。再度、ネットで調べなおそう。

ウィキペディアと、いつもお世話になってるいる『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』の記述を参考にして編集、まとめてみよう。

『ギンダラ(銀鱈)』
体長は1mを超え、最大120cmになる。重量は13kgにもなる個体もある。肉食性で、魚類、甲殻類、頭足類などなんでも食べる。きっと旨いもん食ってるから旨くなるんだね。
寿命は20年以上とみられるらしい。へぇー、長生きなんだ。

 
(銀ダラ)

(出典『clovegarden』)

 

(出典『Mマート』) 

 
今さら言うことでもないが、タラに見た目が似ていて銀色だからギンダラ(銀鱈)と名づけられたのだろう。ホントに銀色かと言われると、微妙だけどもね。
タラのように下顎にヒゲはなく、背鰭が2基しかないことでタラ類とは区別できるという。ちなみにタラの背鰭は3基、アイナメやホッケの背鰭は1基である。
とはいえ、切り身で売ってるから、こんなこと知ってもあまり意味はないな。

英名は、Sablefish, Black cod。
「Sable」はヨーロッパからシベリアに生息するクロテン、またはその毛皮のことのようだ。「cod」はタラのこと。欧米でもタラに似ているという認識があるんだね。いや、輸入業者はそれを知ってたがゆえに、この和名をつけたのかも。

比較のために銀ムツとメルルーサの画像も載っけておこう。

 
(銀ムツ)

(出典『Wikipedia』)

 

(出典『Yahoo!ショッピング』)

 
鱗を除去した切り身の皮を見ると、銀ダラと比べて白くて網目模様の目が粗くて線が太い。そういや、こんな感じだったわ。やはり見分けるポイントは、この皮だね。

 
(メルルーサ)

(出典『ユーラシア大陸はての定置網』)

 

(出典『Mマート』)

 
銀ダラよりも皮が白く、銀ムツと比べて網目模様が薄くて細かい。また身が銀ムツや銀ダラのように白濁しない。この白濁は脂肪なので、だからそれがないゆえにメルルーサの味は淡白なんだね。
 
ここで「マルハニチロ」さんのブログから新たな事実が見つかった。
一部抜粋しよう。
「銀ダラもメロ(銀ムツ)と同様に買い付け競争の激化により、日本に輸入される量がすっかり減ってしまいました。今では高価な魚の部類といえるでしょう。
銀ダラの産地は、アラスカを主漁場とする米国がほとんど。これに若干のカナダ産が加わります。
FAO(世界食糧農業機関)の統計のグラフ見ると、1977年に200海里漁業専管水域が設定される以前は、日本の漁獲量が世界中の大部分を占めていましたが、その後、米国の漁獲量が世界の約9割を占めるようになっていることがわかります。」

どうやら銀ムツを見掛けなくなったのは、名前がメロになって人気が落ちたのではなく、高騰が原因で輸入されなくなったってワケね。昔は外国人はあまり魚を食べなかったから日本が魚資源を独占していたのだが、昨今はすっかり状況が変わったって事ね。寿司なんて世界的に流行らなければよかったのに。

銀ダラに話を戻そう。
特に大陸棚斜面と北東太平洋の海山付近の水深300-2000m程の深海の泥底に生息する。冬に産卵し、孵化した稚魚は浅い海で生活するが、成長するにつれ深海で生活するようになる。
主な漁法は底引き網、延縄。漁期は周年。
大きな魚だけに個体のまま出回ることはほとんどなく、販売時には切り身となっている。肉は白身で脂肪分が多い。煮付け、塩焼き、粕漬け、味噌漬けなど様々な料理で食べられている。

『市場魚貝類類図鑑』での評価も高い。

魚貝の物知り度 ★★★ 知っていたら通人級
味の評価度 ★★★★★ 究極の美味

究極の美味とまで評価しているじゃないか。
ここからは、主にそのぼうずコンニャクさんの『市場魚貝類図鑑』の力をお借りして再編集して書こう。

(地方名・市場名)
ナミアラ。北海道ではホクヨウアラ、ホクヨウムツとも呼ばれている。

(生息域)
海水魚。水深300〜3000mで見られる。
もともとアメリカで人気の高い食用魚だが、北海道、三陸沖などでも獲れる。しかし量的には少ない。。
当初は名前にあるようにマダラの代用品として鍋物用、煮つけ用に売られていた。当時としては脂っぽいところが嫌われて値段的にも安かった。また脂が強いところからムツ(ムツ、クロムツ)の代用品(偽物)として流通していた時代もあった。これが近年の脂嗜好から、後に高騰した。
最近では冷凍ドレス(頭と内臓を除いたもの)やフィレ(三枚下ろし)までも高級となり、スーパーから姿を消した。
アラスカ、カナダなどでは養殖されていて、刺身という新しい用途も生まれている。
マジか❓刺身は食ったことないから、食いたいよなあ。

(市場での評価)
主に冷凍ドレスがカナダやアラスカから流通する。古くは安い魚であったものが、近年は高騰している。特に生は高級。カナダなどからは養殖ものがチルドで輸入されてくる。
へぇー、養殖もあるんだね。ガンガンに輸入してくれんかのう❓ワシ、刺身が食いたいんじゃあ。

(選び方)
冷凍ものは変色、ドリップしていないもの。解凍されたものよりも、冷凍状態のまま購入したほうがよい。

(味わい)
生の旬は秋から冬。鱗は細かくて剥がれやすい。皮は厚みがあり、骨はあまり硬くない。透明感のある軟らかい白身で白濁して脂が混在している。熱を通しても固く締まらない。
珍しいことに液体を介した料理法、煮る・汁などにも、焼くにも向いている。あえて不向きなものを挙げるとソテーだろうか。

(料理法)
ーギンダラの塩焼きー
できれば国産で冷凍していないものを使いたい。切り身にして振り塩をして少し寝かせる。これをじっくりと焼き上げる。焼き始めるとすぐに中から脂が染み出してきて、表面がかりっと香ばしく揚げたような状態になる。その内側には独特の風味を持つ脂が液化している。この表面カリッとして中がジューシーな味わいは無類のうまさである。

ーギンダラの西京漬(白味噌漬)ー
切り身に振り塩をする。少し置き、表面に出て来た水分をペーパータオルで拭き取る。これを白味噌・味醂・酒・砂糖を合わせたものに漬け込む。甘めがイヤなら砂糖は加えない。じっくり焦げないように焼き上げると、白味噌の風味と味醂・砂糖の甘味があいまって魚類屈指のうまさだ。

ーギンダラの煮つけー
冷凍切り身などで最も親しまれているのは煮つけである。食堂や居酒屋などでも定番ものとなっている。切り身は湯通しする。冷水に落として表面のぬめりなどを洗い流す。これを酒・砂糖・醤油で煮る。酒・醤油でも酒・味醂・醤油など味つけはあくまで各人の好み、もしくは地域性を大切にしてやってほしい。

ーギンダラのしゃぶしゃぶー
冷凍していない国産ものが手には入ったらぜひお試し願いたい。三枚に下ろして皮を引く。刺身状に切り、昆布だし・酒・塩で味つけしたなかで振り、好みの火の通り加減で食べる。国産なら中は生という感じがいい。野菜などは最低限にするといいかも。

ーギンダラの刺身ー
近年は養殖され、チルドの状態で入荷してくる。これは刺身になる。味わいはまさにトロ。白身の大トロといったところでマグロとの違いは酸味のあるなし。また国産の冷凍していないものも刺身になる。脂で真っ白で口に入れると溶ける。この脂の強さのなかに適度な食感と魚らしいうま味がある。

ーギンダラのフライパン照焼ー
ギンダラの切り身の表面の水分を丁寧に拭き取る。小麦粉をまぶして脂でじっくりとソテーする。一度取り出してフライパンに味醂・酒・醤油、好みで砂糖を加えて少し煮つめたところに切り身を戻す。ソテーした切り身に煮汁をソースとしてかけてもいい。ソースを最小限にすると御弁当にも使える。

ーギンダラのフライー
冷凍ギンダラの皮を取り、水分をよく取る。塩コショウをして小麦粉をまぶし、溶き卵にくぐらせてパン粉をつけて表面がカリッとするように揚げたもの。温かいうちに食べると中はジューシーに表面は香ばしくて、非常に美味。

なるほどね。どれも旨そうだ。フライなんかは食ったことがないから試してみてもいい。しゃぶしゃぶは惹かれるなあ。王道の塩焼きも捨て難い。また見つけたら、やってみよう。

銀ムツについても同じように調べてみたが、ここでは割愛させて戴く。銀ムツが手に入った時にでもまた書こうかと思う。

さて、さて。銀ダラと銀ムツのどちらが美味いかという話だが、各々の嗜好の違いもあるので、あくまでも傾向として述べておく。
おおむね銀ムツの方が、より脂が乗ってて味が濃厚という意見が多いようだ。ようは旨いという評価だ。
ハッキリ言って、自分も銀ムツの方が美味いと思う。
参考までに言っておくと、値段も銀ムツの方がやや高く、流通量も少ないようだ。
それにしても両方とも高い。ザッと調べた限りでは100gで500円〜1000円もする。平均すると銀ダラが600〜700円、銀ムツが700〜800円といったところだ。たぶん昔と比べてどちらも5〜6倍以上の値にはなってるだろう。
ちなみにメルルーサは100〜300円くらいでした。

銀ムツ、もし売ってたら絶対買おっと。
照り焼きかなあ、塩焼きかなあ…じゅる。

                        おしまい

 

銀ムツの西京焼き

 
このあいだの『冬の献立 総ざらえ』では、サラッとさわりしか書かなかったから、稿を改めての登場です。

 
【銀ムツの西京焼き】

 
銀ムツと言っても、高級魚のムツとは違い外国産の深海魚である。
正式名称はマジェランアイナメ(マゼランアイナメ)。
故郷はアルゼンチン、チリ、南極周辺で、語源はあのマゼラン海峡からきている。因みにマジェランは英語読みですね。

見た目はこんな感じ。

 
(出典『カロリーSlism』)

アイナメと名打っているが、コレも嘘。
マジェランアイナメはスズキ目の魚だが、アイナメはカサゴ目の魚なのだ。

ホンマもんのムツと比べてみよう。

 
(出典『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』)

 
まあ、強引に言えば似てるちゃ似てるけど、やっぱ全然違うわな。
分類学的にも両者は違う。ムツも同じスズキ目だが、ムツ科に属する。一方、マジェランアイナメはノトテニア科という舌を噛みそうな科に属している。
同じスズキ目といっても、目(もく)とあらばその範囲は広汎だ。科が違うだけでも、かなり縁が遠かったりするのである。たぶんコヤツらも相当遠い間柄かと思われる。

じゃあ何で「銀ムツ」という名前なのかというと、コレはもう魚屋の陰謀である。切身にすればムツに似てるから、高級魚ムツの名前にあやかってドサクサで売ってやろうと云う魂胆である。

 
【銀ムツの切身】
(出典『もぐもぐ共和国』)

 
しかし、天罰が下った。お上から、ムツじゃないのにムツと名乗るのはまかりならん。市場が混乱するではないか、(*`Д´)ノバーロー❗❗❗
と云うワケで、銀ムツという表記が2003年に禁止された。
以降、スペイン語の「メロ」と名前を変えて市場に並ぶようになったが、コレがイカンかった。銀ムツだと美味しそうだが、メロでは如何にもマズそうだ。
で、人気急落。スーパーでもいつの間にか姿を見掛けなくなった。

しかし、最近は高級魚として復活しつつある。
アメリカで人気の魚となり、価格が高騰しているようなのだ。日本への入荷量が減ったせいもあるかもしれない。流通が少なければ自然と価格も上がるのが理だ。昔は下魚扱いだったのになあ…。

そして、ほとぼりが冷めたのか、ここ数年前からは百貨店の高級惣菜コーナーなどで再び銀ムツという表記を見掛けるようになってきた。
まだ銀ムツ(メロ)という表記が多いが、某料亭なんかは堂々と銀ムツのみの表記になっていた。

まあ、そんな事はどうでもよろし。
それよりも言いたいのは、嘘ばっかつく忖度野郎の役人どもだ。奴等はクソでバカだ。
そもそも名前を銀ムツからメロなんて名前に変えさせたのが悪い。お陰で安くて美味かった銀ムツが庶民の口に入らなくなったではないか(=`ェ´=)
だいたいムツとか黒ムツなんて高級魚はスーパーに並ぶことなど滅多にないのである。2003年以前だって、状況は今とさして変わらなかったと断言できる。
つまり、市場が混乱するもクソもないのである。厳密主義のバカ学者か、ボケー(#`皿´)
柔軟性の欠片もない。

それに矛盾もある。
例えばシシャモである。
今、スーパーの店頭にシシャモとして売られているのは、実を言うとシシャモではない。
同じキュウリウオ目キュウリウオ科の魚だが、「カラフトシシャモ」と云う別種の魚なのである。
味も全く違う。本当のシシャモの方が遥かに上品で美味い。
役所とか漁業関係者は見た目がソックリだと言うが、
自分からすれば、そんなのはちゃんちゃらオカピーの方便だ。両者は明らかに見た目も違う。カラフトシシャモは銀青色だが、ホンマもんのシシャモは飴色なのである。
形も、よりほっそりとしていてスマートだ。漢字で書くと「柳葉魚」と表される所以は、そこにある。

じゃあ、なぜに偽物が堂々と罷り通るようになったのかと云うと、そこにはこんな背景がある。
以下、面倒くさいので、wikipediaからの抜粋で手を抜く。

『(シシャモは)、世界中でも北海道の太平洋沿岸の一部でしか獲れない。漁獲高の減少のため、キュウリウオや輸入品のカラフトシシャモ(カペリン)が「シシャモ」として食卓に上ることも多く、今日では単に「シシャモ」と言う場合こちらを指すことが一般的である。同じキュウリウオ科に属しているものの、キュウリウオはキュウリウオ属、カラフトシシャモはカラフトシシャモ属の別の魚である。
食味は本ししゃもと大きく異なるが、姿は両者とも非常に似ており漁師以外は外見だけで見分けるのが困難なこと、本シシャモの味を知らない人が多いことを利用し食品偽装の引き金になることがある。
1970年代以降、シシャモの代用魚として輸入が急増したが、資源量の大差から「シシャモ」といえば本種を指し、シシャモは「本シシャモ」などと呼ばれるようになった。 2003年の農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律改訂にともなう販売表示の厳格化を受けた行政指導により、原材料名にはカラフトシシャモと表記される様になったが、商品名は対象外。』

何やかんやと注文をつけてはいるが、ようするにお上もカラフトシシャモをシシャモとして認知する事を完全に容認しているんである。
ホンマもんのシシャモが別にいる事など知らない人が大半を占める現状にあっては、間違いじゃない。方針としてはそれが正しかろう。
だったら、もうメロも銀ムツでいいではないか。どうして、そこんとこ柔軟に対応できないのかね?
それこそ忖度しなさいよ。
あっ、あれは農水省ではなく、財務省とか国交省か…。
え~い(*`Д´)ノ、どうせ役人なんぞ何処も同じじゃわい。大差はなかろう。

怒り疲れたところで、心を鎮めて調理しよう。
といっても市販のものだから、焼くだけ。
けど、でも今や高級魚。真面目に焼こう。
洗うのは❌だが、丁寧に味噌を子削ぎ取りましょうね。味噌がいっぱい付いていたら焦げやすくなるのだ。
原則は遠火の強火だが、家庭では煉瓦やブロックを両脇に置きでもしなければ不可能だ。となると、弱火でじっくり時間をかけて焼くのがよろし。

我ながら、そこそこ上手く焼けたのではないかと思う。
器は織部焼きを出してきた。
久し振りの登場だけど、織部って、(。^。^。)渋くていいねぇ~。

満を持して箸を入れ、口に運ぶ。
いえ~(σ≧▽≦)σ~い。
脂が乗ってムチャクチャ美味い❗❗

久し振りに食うけど、旨いなあ…。
名前はもう、銀ムツでもメロでもどっちだっていいや。とにかく、またスーパーの店頭に庶民価格で並んで欲しいよね。

                 おしまい

 
追伸
言い忘れたけど、ムツとした画像はクロムツです。
昔はムツもクロムツも同種とされていたが、近年、別種に分けられたようだ。ムツも高級魚だけど、クロムツは更に珍重され、超高級魚となっております。
因みにアカムツと云うのもいる。これがあの高級魚ノドグロの本名ですな。

もう1つ言い忘れた。
銀ダラというのもいるが、これも銀ムツとよく混同される。脂が多いので、ムツやクロムツとして売られていた時代もあったようだ。この辺が銀ムツと混同される原因になっているのだろう。

 
【ギンダラ】
(出典『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』)

 
だが両者は完全に別種。コチラは見た目がタラに似ているからの命名だが、タラ目とは違いカサゴ目 ギンダラ科に属する。アイナメやホッケに近い種類だ。
マジェランアイナメがアイナメとは遠くて、銀ダラの方がアイナメに近いのである。何か頭がこんがらがってきたよ。
だが、まだややこしいのがいる。これまた切り身の見た目から混同されやすいメルルーサだ。

 
【メルルーサ】
(出典『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』)

 
昔は白ムツという名前で売られていたらしい。
コレが笑っちゃう事にタラ目なんである。つまりタラに一番近い。味も脂っぽくなくて、タラの肉質に似ている。
何だそりゃ❓の名前の混乱振りである。
漁業関係者の人たちよ、いい加減になさい❗
名前をつけるなら、(# ̄З ̄)もっと考えてつけろよなあー。