汝、北寄貝の(@_@;)逆襲に備えよ

 
『我、ツブ貝にΣ( ̄皿 ̄;;激怒す』の続編である。

あの激闘から3日後、同じスーパー玉出で北寄貝(ほっきがい)が3個 358円で売っていた。下処理されてない、丸のまんまで。
しかも、どうやら生きていらっしゃる。

 
(出展『旬の食材百科』)

 
正直、この値段はバカ安だと思う。でも、数日前に生きているツブ貝に翻弄されたから、ちょっと買うのを迷った。
たかが貝にあそこまでバカにされ、捌(さば)くのに大変な労苦を強いられた記憶が、まだありありと頭の中に残っているのである。
だが、この値段で新鮮な北寄貝が口に入る事など滅多とない。寿司屋なら高級ネタの範疇に入る。それにツブ貝は巻き貝だが、ホッキ貝は所詮はアサリやハマグリと同じ二枚貝だ。あれほどの辛酸を舐めさせられる事はないだろう。ここはイクっきゃない(=`ェ´=)❗

お家に帰って、気づく。買ったはいいが、考えてみれば北寄貝なんぞサバいた事がない。
( ̄▽ ̄;)ゞあちゃー、コレはツブ貝の時と同じパターンじゃないか。学習能力がニワトリ並みだな(笑)

取り敢えずここは、先ずは北寄貝について知ろう。
相手を理解せずして、攻略はできない。

ホッキ貝とは北海道での呼び名で、正式名はウバガイという。漢字だと姥貝と書く。老婆の貝ってワケだ。
日本海北部と茨城県以北の太平洋、北海道からシベリア沿岸まで分布し、冷水域の外洋に面した浅い海の砂底に生息する。
ウバガイと云う名は、もとは福島から銚子当たりまでの呼び名なんだそうだ。貝殻が薄汚れて見え、姥(老婆)を思わせる為だからみたい。
ウバガイなんて云うクソバハアを冠した名前では、馴染みのない場所では見向きもされないよね。売れるワケがない。だから北海道での呼び名の北寄貝が、積極的に使われるようになったのだろう。

分類上は、二枚貝綱異歯亜綱バカガイ上科バカガイ科の1種だとされる。
へぇー、バカガイに近い種類なんだね。バカガイと云えば、舌をだらりと出した姿がバカみたいに見えることから名付られた名前だ。一般的には「青柳(あおやぎ)」と云う名で関東を中心に流通している。
ようするに、ホッキ貝は謂わばバカガイのデッカイ奴ってワケだな。ちょっと強引だが、そうゆうことにしておこう。
現在、国内での漁獲量資源は減っており、消費量の大半は輸入に依っているようだ。最近は、カナダ、ペルー産のナガウバガイという同属の貝が冷凍品で流通しているそうだ。スーパーで、ホッキ貝のサラダとして売られているモノの大半は、おそらくコヤツだろう。

ホッキ貝は1年を通して食べることができ、旬は不明だとするサイトも多かった。しかし、旬はちゃんとあって、1月~3月なんだそうな。産卵前の冬~初春の寒い時期のものが肉厚で味が良いとされてるみたい。
って事は、3月初めの今のこの時期が、旬の真っ只中じゃないかo(^o^)o

さあ、気持ちも整ったことだし、ジェノサイド、申しワケないが心を鬼にして殺戮させてもらう(-_-)
ネットで見たところ、サバき方は割かし簡単そうだ。
バカみたいに口を開けてるから、そこに貝開けやステーキナイフなどを差し入れ、貝柱を切ればいいだけみたい。

 
(出展『旬の食材百科』)

 
自前の写真が無いので、画像をお借りした。
今思えば戦々恐々、貝に挑む気持ちが強過ぎて写真を撮り忘れてたよ。
それにしてもデカイっしょ? そこそこ重いしね。

上の画像では横向きにナイフを入れているが、オイラは貝を縦向きにして立てた。だらしなく口を開けてるところにナイフを突っ込む。
(о´∀`о)楽勝やんけーと思った、その瞬間である。結構な勢いで貝の口が閉じてゆく。
え━━ Σ( ̄ロ ̄lll) ━━っ❗❗と思っている間に右手人指し指と親指が完全に挟まれた。しかも思った以上の強い力で締め付けてくる。
!Σ(××;)!痛ててててててて……❗
予想外のババアの逆襲に、おいちゃん、(@
@;)とっても焦ったね。万力で指が潰されるような恐怖を感じた。
昔、ガソリンスタンドでバイトしてる時に電動ジャッキに指を挟まれた時の記憶が甦る。大事な指がグチャグチャに潰れれば、マジで大変な事になる。オッパイだって揉めなくなるぅーΣ(T▽T;)❗❗それは困る。絶対にヤダ❗❗ (#`皿´)ノぬおりゃあーっ❗、火事場の馬鹿力で左手一本だけでジャッキを押し上げたのだった。危うく指が千切れるとこじゃったよ。
その時の記憶がフルパワーを呼び覚ました。
何さらしとるんじゃ、ワレー(#`皿´)❗
ブッ殺す(=`ェ´=)❗、ブッ殺す(=`ェ´=)❗❗、ブッ殺ーす(=`ェ´=)❗❗❗
心に憤怒の激流が走る。(*`Д´)ノ!!!たりゃあ~、左手で貝の口を持ち、一挙にこじ開けにかかる。おどれ、八つ裂きにしちゃる。めりめりめりー。
やめてくだされ、やめてくだされ、お代官さまー。
Ψ( ̄∇ ̄)Ψケケケケケ…、諦めるんだな。泣こうが喚こうが、この納屋には誰も来ぬわ。
(#`皿´)ンガガガガガガ……、キコキコキコキコ。
\(T△T)/あれぇ~~~~~~~~。
パッカ━━━\(^o^)/━━━━ ン❗
無理矢理開いて、片方をネジ切る。

(-。-;)ハー、ハー、Σ(´□`;)ゼェー、ゼェー。
勝った…。アドレナリンの余韻の中で貝柱を切り離す。
中身はグショグショのヌルヌル。
ここから先は不要な部分を取り除いてゆくのだが、グロいので割愛。どうしても見たいと云う変態さんは、ネットで探してくれ。動画はいっぱいあるぜよ。

各パーツに切り分ける。そこに粗塩を振って、手でゴシゴシやってヌメりをシッカリと取る。塩攻め地獄である。悪魔の如き所業じゃよ。
舌先みたいな所は、上から爼(まないた)にビッタン、ビッタン叩きつける。ピシャッと叩きつけると、貝が『あうっ!』ってな感じで身悶えする。それを見て、ニヤニヤしてしまう。完全にSM変態男だ。

残酷貝物語は猶も続く。それに包丁で細かい切れ目を入れるのだ。その後は切り刻むワケだから、見方を変えれば、やってる事は倒錯変質者の猟奇的凶悪殺人鬼だ。酷いよね。

貝殻に大葉を敷いて、その上に盛り付ける。

 

 
北寄貝といえば、先っぽが朱色なのが特徴だが、生の状態だと汚ない茶色なのだ。

先ずは塩で食べる。
歯触りが良い。歯を押し返してくる弾力と歯切れの良さが心地好い。そして、貝特有の香りが鼻に抜ける。
噛んでいると、奥から貝の甘みと旨みが立ち昇ってくる。

次に醤油で食してみる。
コチラは醤油の旨みが加わる。勿論、旨い。
薬味は色々試したが、山葵とか生姜は今イチ。基本は要らないんじゃないかと思う。強いて言うならば、辛味大根のおろしや貝割れ大根とかが合うんじゃないかな。

貝の鮮度にもよるが、良ければ塩、少し落ちるなら醤油で食すのがよろしいかと思う。

残りの2個には火を入れた。
酒入りの熱湯にブチ込み、火を切って放置。余熱で
火を通す。

1個は、そのまま口に放り込んで食った。
口いっぱいに貝のジュースが溢れ出てきて旨い。
でも、少しジャリっときた。砂が少し残っていたようだ。あとで知ったのだが、ホッキ貝は砂抜きしても、完全には砂を取り除けないようだ。

と云うワケで、3個目は切り分けて、砂がありそうな部分を取り除いて盛り付けた。

 

 
火が入っているので、色が鮮やかになっている。
これも先ずは塩で、次は醤油で戴く。
(・ω・)ふむふむ。
生よりも甘みが強く感じられ、肝のほろ苦さとコクが旨い。但し、食感がゴムみたくなるので、噛み切りにくい。もっと小さく切るべきだったかもしれない。

生と茹で、両方とも旨いと思う。甲乙つけ難いね。
歯ざわりと香りならば、生に軍配を挙げたい。甘みと調理のし易さならば、茹でに票を投じるってとこだね。個人的には生を塩で食うのが一番好きだね。
皆しゃあーん、北寄貝を捌く時は、くれぐれもお気をつけあそばせ。汝、北寄貝の(@_@;)逆襲に備えよ。ナメとったら、逆襲に遇いまっせ。

 
                  おしまい

 
追伸
茹でた残り汁は捨てずに活用しましょうネ。
今回は塩と薄口醤油、昆布だしで調整して、余りものの卵白を入れた。

 

 

ハマグリには負けるが、まあまあ旨かった。

 

台湾の蝶29『宮島さんはミステリアス』

  
  第29話『宮島三筋』

又しても、Neptis(ミスジチョウ属)の蝶である。
三連発なんで自分でも少々食傷気味だが、前回、前々回と連なる部分もあるので取り上げることにした。
と云うワケで、第3弾はミヤジマミスジ。

 
【Neptis reducta ミヤジマミスジ♂】

(2017.6.20 南投県仁愛郷)

 
白紋が全体的に横長になり、下翅の白帯が他の近縁種と比べて太くなるのが特徴だ。

裏面は、こんなの。
 

 
前回と前々回に取り上げたアサクラミスジやエサキミスジの裏側とはかなり異なる。だが、このタイプの裏側こそが Neptis(ミスジチョウ属)の典型であり、主流の斑紋パターンである。

♀は採ってるかもしれないけど、ワカンナイ。展翅されていないミスジチョウの仲間が、まだまだ冷凍庫で眠ってるんである。
探してきて展翅するのは億劫なので、ここは画像を他からお借りしよう。

 
【ミヤジマミスジ♀】

 
♀は♂に比べてやや大きくなり、羽に丸みを帯びる。

 
(裏面)
(出展 二点とも『アジア産蝶類生活史図鑑』)

 
レア度はエサキミスジ、アサクラミスジには敵わないが、滅多に会えない蝶の一つではあるだろう。
とはいえ、ミヤジマミスジのみが台湾特産種で、エサキ、アサクラよりも分布域が狭い。さすれば世界的見地からすれば、その珍稀度に遜色はなかろう。いや、下手すりゃコッチの方が珍しい可能性だってある。

そんだけ珍しいのにも拘わらず、実を言うとミヤジマミスジを採った記憶が殆んど無い。
度々述べているが、発作的に台湾ゆきを決め、その三日後には機上の人となっていたのである。だから、有名な数種を除いてどんな種類がいるのか殆んど知らなかったのだ。当然、何が珍しいのかも今イチわかんなかった。
もっとも、たとえ下調べしていたとしても、ワケわかんなかったと思うけどさ。何せ台湾には、似たようなのが沢山いるのである。

 
(出展『原色台湾蝶類大図鑑』以下二点も同じ)

  

 

 
(;・ω・)ねっ、ワケワカンナイっしょ❓
こんなもん、飛んでたら最初は全部おんなじに見えるわい(-“”-;)❗

図版1は、コミスジなどの小型種群である。
左列が♂の表、中央列がその裏面。右列が♀の表裏となる。
図版2つめはミスジチョウなどの中大型種群で、全て♂。左列が表、右列がその裏面である。
図版3の左下の黄色いの3つはキンミスジで、これだけは厳密にいうとNeptisではなく、Pantoporia(キンミスジ属)だ。但し、両者は同じNeptini族に含まれるから、かなり近縁の間柄ではある。

数えたら、台湾には何と14種類もの Neptis属の蝶がいる。それに比して、日本にはたった6種類しかいない。しかも台湾の面積は九州くらいしか無いのだ。その多種多様さが理解して戴けるだろう。
つけ加えると、似たようなのはこればかりではない。
他にもいるんである。

 

 
(出展 二点とも『原色台湾蝶類大図鑑』)

 
コイツらは、Limenitis イチモンジチョウのグループである。Neptisとは縁戚関係にあり、両者ともイチモンジチョウ亜科(Limenitinae)に含まれる。
そして、このグループとミスジチョウのグループが、渓谷とか林縁など大体同じような環境で見られる。中でも吸水に集まる場所では、両グループの何種類かが入り乱れて飛んでいて、マジで何が何だかワカンねぇ(@_@;)

前置きがあまりにも長くなり過ぎたが、ようは台湾採集1年生の、しかも勉強不足のワタクシにですな、コレら似たような、しかも飛んでいるモノたちを正確に識別するだなんて、どだい無理な話なんである。
明らかに見た事がないと解るアサクラミスジやエサキミスジならまだしも、ミヤジマミスジなんて日本のコミスジとそう変わらんのである。ゆえに、何となぁ~く違うなと感じたものは一応採ってみると云う姿勢で臨んでいた。

 
【ミヤジマミスジ】
(出展『DearLep 圖錄檢索』)

 
野外写真をお借りしたが、やっぱ日本にもいるコミスジと見た目は殆んど同じだ。こんなのが強く印象に残るワケがない。
だから「実を言うと、ミヤジマミスジを採った記憶が殆んど無い」と言ったワケなんだすな。

でも、帰国後に図鑑で調べてもワケワカランかった。
特にコミスジ系が、どれもメチャンコ似たような奴ばっかなのだ(図版1)。正直、おでアホだから、図鑑と実物を見比べてもよくワカンナイ。それぞれの特徴とされる識別点が曖昧というか、例外も多々あるので、幾つかの識別点を鑑みて総合的に判断するしかないのである。
図版とニラメッコしてると、脳ミソが爛れてきそうになる。♂はまだしも、♀ともなれば何がなんだかマジでワケワカメじゃよ。裏面まで含めて検討していると、脳の回路がショートしてフリーズしてしまう。脳がそれ以上考えることを拒否するのだ。
勿論、この無間地獄のループにはミヤジマミスジも含まれている。♂は比較的まだ判別しやすいが、♀ともなると、お手上げだ。
一応、「原色台湾蝶類大図鑑」の識別点のくだりを抜粋して載せておく。それを読んで、アンタらも脳ミソぐしゃぐしゃになりなはれ、Ψ( ̄∇ ̄)Ψケケケケケ…。

 
「翅表における前翅中央白斑列、後翅中央白帯の発達は他の4種に較べて最も強く、前翅第2、3室及び第5、6室の白斑が大きく横長であること、前翅中室白条はその先端部が外縁に向かって伸長し、その先端部が第3及び第5室白斑の内側縁を結ぶ線に達することによって一見近似の他種より識別できる場合が多い。裏面の地色はスズキミスジよりは濃色、やや赤味を帯びることが多い。後翅裏面において中央白帯は前翅より後端に亘りその幅は殆んど等幅、中央白帯の幅は外側白帯のそれよりかなり幅広く、その2倍近くに達する。亜外縁白条は外側白帯と翅の外縁の中央より心持ち外縁寄りを走り、外縁白条の出現は弱く全く消失する場合が多い。前翅裏面翅端部のB斑の強さはA斑と殆んど同様、A2斑の大きさはBの各斑と殆んど等大。」

 
(-_-#)何かのナゾナゾかよ❓
こんな文章読んだら、一般人は意味わかんなくて発狂するぞ。

識別点を大雑把に纏めてみよう。

①白帯が太く、斑紋が大きい。

 
(出展『アジア産蝶類生活史図鑑』)

 
斑紋は横長になる。
比較のために、コミスジの♂らしきものを貼り付けておこう。

 

 
上翅の紋は大きいが、横長にはならない事が解るかと思う。

 

 
これはタイワンミスジの♂かな。
紋が小さくて、帯も細い。

  
②上翅の上側にある筆みたいな紋の先っぽが長め。

 

 
筆先が右上の白い紋の下まで伸びている。
また筆がスズキミスジ、リュウキュウミスジのように太くはならないというが、これは決定的な判別点ではないと思う。個体により結構太さに幅があるようだから、注意が必要だろう。

一応、リュウキュウミスジの場合はこんなんです。

 

 
筆先が太くて短いのが、よくわかる。
但し、所詮は解りやすい例を挙げているに過ぎない。
スズキミスジとかコミスジは、もっと微妙な形だ。

 
③触角の先が黒い。

 

 
コミスジや他の多くの種は、先の部分が白い(死んだら黄色くなる)。
スズキミスジも黒いみたいだけど、裏側は白くなるという。だが、よくワカンないところがある。スズキミスジとされる色んな画像を見たが、結構微妙なのだ。もしかしたら、それら画像の種の同定がそもそも間違っているケースもあるやもしれぬ。そういうのが、更なる混乱を助長するんだろね。

触角が黒いし、スズキミスジは多分これかなあ…。

 

 
一応、先が黄色いのも挙げておきます。

 

 
おそらくコミスジと思われるモノの触角。
少し解りにくいかもしれないが、先っぽが黄色い。

  
④裏面の地色が濃く、下翅の外縁の白条が消失する

 

 
地色が濃く、赤みを帯びる。
とはいっても、こんなの熟練者でもなければ、並べてみなきゃ分からないレベルだ。野外で判別するのは至難の技だろう。
また、他の近縁種では外縁の一番端に白条があるのだが、ミヤジマミスジはそれが消失する。
解り易いように、コミスジかと思われる個体の下翅裏面の画像も添付しておきます。

 

 
一部消失しているが、外側にもう1本の線があるのが御理解戴けるかと思う。

こんなもんで許してくれ。
もう、(;つД`)ウンザリだ。先へ進ませてくれ。

ガビ━━ Σ( ̄ロ ̄lll) ━━━━━ ン❗❗
しかし、ここで重大な事に気づく。
何と、冒頭に添付した展翅画像が、よくよく見るとミヤジマミスジではなく、コミスジではないか❗❗
マジ、ワケわかんねぇっすよ(ToT)

♂は比較的まだ判別しやすいなんて言っちゃって、コレだもんなあ…。恥ずかしい限りだよ。
(# ̄З ̄)ったくよー。ブツブツ言いながら、台湾産の蝶が入ったタッパーをひっくり返し、チマチマと確認しながら宮島くんを探す。もし見つからなければ、この文章そのものが御蔵入りする事になる。そうなれば、最悪の展開だわさ(ノ_・,) アタイの今までの努力はどうなるのさ。全て水の泡どすえ。

で、結構追い込まれつつも、らしきモノを何とか見つけて、どうにか軟化展翅した。
それを写真に撮って、再び貼り付けなおした。だから、皆さんが見た冒頭の写真はミヤジマミスジです。
マジ、疲れる。自分の同定力の無さにもガックリだ。
因みに、最初に貼り付けられていた画像はこんなんですわ。

 
(南投県仁愛郷 alt.400m)

 
下翅の白帯が、他と比べて明らかに太いから、ミヤジマミスジだと思ったのだ。
しかし、識別点について書き終わったところで触角の先が真っ黒でない事にハタと気づいた。そこで、各部の判別点を仔細に点検しなおしてみると、どう考えてもコミスジだと云う結論に達した。

因みに、普通のコミスジはこんなんです↙

 
(2016.7 南投県仁愛郷 alt.500m)

 
どうやら、コミスジには白帯が太くなるタイプが珠にいるようだ。
危うく大恥を掻くところじゃったわい。

 
【和名】
本シリーズで、あえて和名の項を設けた事は無いかと思う。なのにわざわざ設けたのには理由がある。
考えてみれば、この台湾のミスジチョウグループには矢鱈と人名らしき名前がついている。改めて、何でやろ?と思ったのだ。

ミヤジマミスジは元よりアサクラミスジ、エサキミスジ、イケダミスジ、スズキミスジがいて、イチモンジチョウグループにまで範囲を広げると、さらにヒラヤマミスジ、シラキミスジ、ニトベミスジまでいる。たぶん違うとは思うけど、ナカグロミスジだって中黒さんが由来の可能性がある。
何で、そんなに多いんだ❓
コレはたぶん誰かに献名されたものか、発見者の名前がつけられたのだろう。ここまでは容易に想像できる。
問題は、かようなまでに何故そこまで過剰に人名が採用されたかだ。
思うに、あまりにも似たような種類が多すぎて、見た目の特徴で和名をつけるのには限界があり、また混乱を避けるためではないかと推察する。
さすれば、先人の配慮に感心せざるおえない。
ヒロオビミスジとか、ホソスジミスジとかつけてゆくのには限界がある。揚げ句にウラアカミスジとかなんか付けられたら最悪だ。大概のモノは、裏は赤っぽいといえば赤いのだ。つまり、無理に特徴を表す名前をつけようとすると、混乱を生じさせるだけだと思ったのではないだろうか?

折角だから、それぞれの和名の語源なり、由来なりを書き止めておこう。
ミスジチョウ属とイチモンジチョウ属がゴッチャに混じるが、由来が分かるものから順に書いていくので許されたし。

 
「アサクラミスジ」
台湾で標本商を営んでいた朝倉喜代松氏に起因する。
他にもアサクラコムラサキ、アサクラアゲハなど氏の名前が冠された蝶が幾つかある。これは、氏が新種を研究者に提供した際につけられたものだろう。

 
「エサキミスジ」
著名な昆虫学者 江崎悌三博士が由来。御本人が採集された標本が記載(ホロタイプ)にも使われた(記載は野村健一博士かと思われる)。
因みに、エサキキチョウやエサキオサムシなど「エサキ」とついた昆虫名は数多くある。人徳ですな。

 
「イケダミスジ」
本種は池田成実氏が台湾北部の拉拉山(ララサン)で採集した1♀に基づいて、白水 隆博士が新種として記載したものである。
たぶん、その功績を讃えてのものだろう。

 
「シラキミスジ」
松村松年博士が、その命名に用いたタイプ標本は昆虫学者の素木得一博士が埔里で得た1♂だったという。たぶん、それ由来だろう。
シラキは白木さんかと思いきや、素木さんだったんだ。素木をシラキとは中々読めないものだよね。
そういえば、この人がフトオアゲハを新種記載したんじゃなかったっけ…。
調べてみると、やはりそうで、応用昆虫学のかなり偉い先生だったようだ。農作物害虫の防除などで先駆的な研究をなし、日本だけでなく台湾でも活躍されたみたい。台湾総督府農事試験場昆虫部長、台北帝大教授、名誉教授を歴任し、植民地統治下の台湾の農作物害虫を調査・研究を行ない、多大な功績を挙げたそうだ。

 
「ヒラヤマミスジ」
たぶん、昆虫学者の平山修次郎氏の名前を冠しているのではないかと推察する。
氏は昭和初期に昆虫図鑑『原色千種昆蟲図譜』を刊行し、当時の昆虫少年に多大なる影響を与えた。また平山昆虫博物館を開設し、昆虫採集ブームを牽引したと言われている。漫画家 手塚治虫は少年時代に同級生が学校に持ってきた本書を借り、食い入るように読んだという。そして、その中のオサムシをモチーフに、本名の治(おさむ)に虫(むし)の一字を加えてペンネームとしたのは有名な話である。

 
「ニトベミスジ」
由来は、おそらく新渡戸稲雄かな?
とはいえ、原記載はFruhstorfer(1912)だし、その記載に用いられたタイプ標本の採集者も日本人ではなく、Sauterとある。ちょっと怪しくなってきたが、まあよろし。それはおいといて、新渡戸路線で突き進もう。
新渡戸稲雄は日本の昆虫学者。リンゴの害虫研究について多くの研究成果を残した。教育者・思想家としても知られ、国際連盟初代事務次長にもなった。あの五千札にもなった新渡戸稲造は従兄にあたる。
東北帝国大学農科大学(現・北海道大学)にいた松村松年教授の元に多くの標本を送り、研究を依頼した。その結果、ニトベギングチバチなど多くの学名や和名に「ニトベ」がつけられたようだ。これらの功績から、青森県で最初に科学的な昆虫研究をした学者として名を残すこととなったという。
松村松年博士が出てきた時点で、この新渡戸稲雄氏が和名に関係している可能性は濃厚だと思った。
それに台湾とも所縁(ゆかり)がある人物だ。
従兄の稲造が台湾総督府民政部殖産局長心得の職に就いていた事により、1906年に台湾総督府農業試験場に勤務。台湾においても害虫研究で成果を上げたが、帰国直後にアメーバ赤痢に罹り、1915年に32歳で死去した。
稲雄がニトベミスジの発見者という記述は見つからないから、稲雄は直接ニトベミスジとは関係ないのかもしれない。でも、松村さんが若くして逝去した氏を思って名前をつけたと云う事は有り得ると思う。

 
「スズキミスジ」
スズキが鈴木姓を指していることは間違いないだろう。しかし、台湾と関係のある鈴木という名の昆虫学者など聞いたことがないし、『原色台湾蝶類大図鑑』のスズキミスジの項にも、その命名の由来を示唆する記述がない。困った事に、それ以上は手掛かり見つからなかった。
しかし、シラキミスジの項でフトオアゲハが出てきた事から、ヒントが見つかった。フトオアゲハの新種記載は素木博士と楚南仁博氏だが、発見者は別にいて、鈴木利一という人だとわかった。台湾宜蘭県の農業学校で教師をしていた人みたいで、1932年 台湾東部の宜蘭県羅東鎮烏帽子の川辺で発見したという。
とはいえ、そこから先へは進めずじまい。結局スズキミスジと鈴木利一氏との関連は見い出だせなかった。
しかし、この鈴木さんしか該当するような人物は見つからないから、矢張この人がスズキミスジの由来なんじゃないかなあ?…。
もしかしたら、フトオアゲハにスズキアゲハという和名がつけてあげられなかったから、お詫びに別な蝶に名前をつけるんで許してケロとかって無いのかなあ?(笑)
だとしたら、交換条件としては酷いよね。一方は台湾を代表する珍稀なる美蝶、もう一方は囚人服柄の、しかも似たような兄弟だらけの中の一は匹だ。あまりにも両者には落差があるではないか。オイラだったら、怒っちゃうね。
或いは松村さんなり、白水さんなりが、このイチモンジチョウ亜科の蝶たちの名前に、台湾の蝶に所縁(ゆかり)のある人たちの名前をつけたらオモロイやんけーと思って片っ端から付けたとかないのかね❓

 
「ミヤジマミスジ」
そして最後はミヤジマミスジだ。コレが一番謎である。
調べまくったけど、由来として考えられうるのは、宮島幹之助という人くらいしかいない。
宮島幹之助は、明治〜昭和期の寄生虫学者で、後に衆院議員(民政党)にもなったようだ。
彼は日本の近代医学の父とも呼ばれる、あの北里柴三郎の弟子の一人なんだそうな。1903年 内務省所管で北里柴三郎が所長をつとめていた国立伝染病研究所に入所。痘苗製造所技師となり、ツツガムシ、マラリア、日本住血吸虫、ワイル病の研究に従事したという。
その後、マレー半島のマラリア調査、ブラジル移民の衛生状態調査、台湾地方病および伝染病調査委員の嘱託など、たびたび海外に派遣された。

こうして経歴を見ると、台湾とも所縁は有りそうだ。
しかし、寄生虫といっても昆虫ではないから、蝶とは繋がらない。困っただすよ。

更に調べてゆくと、ようやく蝶とリンクした。
どうやら『日本蝶類図説』(1904年発行)という日本人の手で最初に作られた蝶譜(図鑑)の著者でもあるみたいだ。
日本の蝶史を紐解くと、Pryerと Leechの集成によって日本の蝶研究の土台が出来上がり、宮島幹之助がその大要を編纂して紹介したことによって、その知識が広く普及したとされる。
へぇー、そうなんだ。勉強になるねぇー。

でもなあ…、台湾の蝶と繋がるような情報が出てこないんだよなあ。それどころか、宮島幹之助が蝶の採集をしていただとか、蝶の愛好家であったとかと云う記述が見当たらないのだ。
そもそも、寄生虫学者の宮島幹之助と「日本蝶類図説」の著者である宮島幹之助は同一人物なのかな❓(註1)
同じ紙面に「寄生虫学者であり、蝶愛好家でもあった…」などとはどこにも書いていないから、両者がどうにも繋がらないのである。
再び壁にブチ当たって、前へ進めない。
ここでも、結局のところ謎のままで終わってしまうじゃないか、宮島くん。

 
【学名】Neptis reducta (Fruhstorfer,1908)

属名の Neptis はラテン語で「孫娘、姪」の意。
小種名 reducta はラテン語由来だと思われるが、どうも今一つピンとこない。なぜなら、どうやら「減退・減少・簡略化」とか云う意味らしいのだ。「削る・切り下げる・ちんけな」なんて云う意味合いもある。だとしたら、ちょっと酷いではないか。
まあ、それは置いておくとしても、命名の意図が解らない。この種は下翅の白帯が減退どころか広くなるし、紋だって他のものと比べて発達している。それが、この蝶の最大の特徴なのである。なのに減退だとは、これ如何に❓である。謎すぎて、(;・∀・)キョトンとなるよ。
考えても、まるで謎が解けないので、話を先に進める。

台湾特産種なので、亜種は無い。
でも「原色台湾蝶類大図鑑」の解説を読んで、又しても脳ミソが固まる。

「種 nandina は西はインドから東はフィリピン、ボルネオ、ジャワ、小スンダ列島にかけて記録されているが、その同定には疑義が残っており、その分布についても再検討が必要と思われる。」

(・。・;はあ❓
何で、この期に及んでインドだのフィリピンだのが出てくるのだ❓コレだと亜種とかもいそうな口振りではないか。またもや新たなる謎の勃発である。
(# ̄З ̄)なあ~んじゃそりゃ❗❓
今回はサクサク進んで、ソッコーで書き終えれると思ったのにー。
(=`ェ´=)ったくもう…。

でも、一呼吸おいてピンときた。もしやと思い、図鑑の学名を確認してみる。
❗Σ( ̄□ ̄;)ゲッ、学名が全然違う❗❗

Neptis nandina formosana(Shirôzu, 1960)となっているではないか。
やっぱ、そゆことかあ…(´д`|||)

気を取り直して調べてみたら、どうやらこれは現在、シノニム(同物異名)となっているようだ。つまり、途中で誰かが別種だと言い出したって事だ。それが認められたってこってすな。どこで、どないなってそうなったのかは残念ながらわからない。謎です。

一応、平嶋義宏氏の『蝶の学名-その語源と解説-』で、学名を確認してみる。
でもコレが何と、学名が昔のまんまの nandina となっているではないか。補足しておくと、ネタ元は旧版の方ではなく、比較的最近に刊行された新版(改訂版)の方です。
これはおそらく氏が学名が変更になっていることに気づかなかったのであろう。そうしておこう。

せっかくだから、nandina の語源も載せておきます。
nandina(ナンディーナ)は、シヴァ神の称。梵語(サンスクリット語)由来。シヴァ神とはインドの神様だね。ヒンドゥー教の最高神の一人で、破壊と創造を司るとされている。仏教の伝来と共にシヴァも日本に入ってきて、それが変じて大黒さん(大黒天)になったと言われている。
コチラの学名の方が余程格調高い。改めて reducta は酷い学名だと思うわ。自分の見立てが間違ってなかったとしてだけど…。
亜種名 formosanaは「台湾の」と云う意味だね。
平嶋さんは他の亜種 Susruta(スシュルタ)にも言及されている。コチラも梵語由来である。
「〈よく聞いた〉が原意で、〈よくヴェーダを学んだ〉という形容詞。また高名なインド医学者の名前。インド医学アーユルヴェーダの聖典の一つとされるスシュルタ・サンヒターの著者(針貝,1989,1992)。この亜種名もMooreの命名。」

正直、ギリシア神話よりも梵語由来の方が、まだ身近に感じられる。やはり、そこは自分もアジア人の一人なんだからだろうね。

 
【台湾名】無邊環蛺蝶

無邊とは中国語で「無限」。環は「回る」。蛺蝶はタテハチョウのこと。環蛺蝶でミスジチョウを指す言葉になる。直訳すると、無限ループじゃん。今の心境にピッタリだ。謎だらけで、答えを見つけられずに延々回り続けてるってヤバイよね。永久運動し続ける変テコな装置に自分が組み込まれ、その部品の一部になっている図を想像した。(T▽T;)地獄じゃないか。

別名に以下のようなものがある。
寬紋三線蝶、寬環蛺蝶、寬紋環蛺蝶、回環蛺蝶、清義三線蝶、闊三線蝶がある。
寬紋三線蝶、寬環蛺蝶、寬紋環蛺蝶の「寛」は、広いと云う意味。ようするにこの蝶の特徴である広い帯(紋)を表しているワケだね。
闊三線蝶の「闊」も広いと云う意味だ。
回環蛺蝶の「回」は「帰る、返す、戻る」なんて意味がある。その飛び方を表しているのだろうか?意味は解るようで、今イチわからん。
清義三線蝶の「清義」は中国語で「清く正しく」が基本だけど、どうやら別な意味もあって、この場合は清らかな渓谷の事を指すようだ。謂わば、清らかな渓谷に棲む三本線の蝶だね。
「清く正しく義を貫く三本線の蝶」というのも、それはそれでエエけどね(笑)。

 
【英名】

「Great Yellow Sailer」というのを見つけた。
偉大なる黄色い帆船という意味だね。
ミスジチョウ属の英名は Glider だとばかり思っていたが、Sailerってのもあるんだね。Gliderは滑るように飛ぶものを意味するから、海の上を滑るように航行する帆船とは共通点がある。つまり、この属のチョウの飛び方を表しているワケだから違和感はない。しかし、Yellowというのが気になる。全然、黄色くないからだ。
自分で英名をつけるとしたらどうだろう?
一瞬、『Milkyway Glider(天の川を滑空する者)』と云うのが浮かんだが、盛り過ぎだろう。そこまで素晴らしい蝶ではない。
まあ『White Wideband Glider』辺りが妥当かな。

 
【生態】

開張 50~57㎜。
発生期は3月~11月上旬。年数回発生するとされる。
台湾北部~中部の低・中標高(400m~1600m)の常緑広葉樹林周辺に見られるが、発生地が局部的で個体数も多くないようだ。
とはいえ、ソックリな奴が多いので見逃されているケースは多いと思う。台湾を訪れる採集者も最初は小型のミスジチョウを採るだろうが、そのうち飽きて採らなくなるだろうし、飛んでいるものをミヤジマミスジと見抜ける人はそうはいないだろう。またミヤジマミスジ狙いだけで台湾を訪れる人もあまりいないかと思う。ミヤジマミスジだけを血眼になって探す人に遭遇したら、恐いなあ…。尊敬するけどさ。

成虫は地面に吸水に集まり、また動物の糞尿にも好んで集まる。岩場を好むらしいが、確認はしていない。

 
【幼虫の食餌植物】
Trema olientalis❓

『アジア産蝶類生活史図鑑』には、アサ科(旧ニレ科)のTrema olientalis(ウラジロエノキ)だと書かれている。
世界の蝶の幼生期を次々と解明してこられた五十嵐 邁さんと福田晴夫さんの巨匠コンビの図鑑だから、食樹はそのウラジロエノキなる木で何の疑いも持たなかった。
しかし、前回にも少し触れたが念のためネットで調べてみたら、驚いたことに何もヒットして来なかった。嫌な予感がした。その予感は的中して、最も信頼しているサイトである『DearLep 圖錄檢索』でも食樹の欄はこうなっていた。

寄主資訊
 中名   學名
(未填寫) (未填寫)

未填寫というのは、未解明という意味だろう。つまり、食樹は未知だと云うことである。
( ̄▽ ̄;)謎である。
台湾本国のサイトで何も出てこないということは、未知である可能性が高いではないか。それに『アジア産蝶類生活史図鑑』の刊行は1997年である。それから12年間も経っているのに、台湾の学者や研究者がそれに気づかないなんておかしい。そこには何らかの理由が隠されているに違いない。
とはいえ、図鑑には厳然たる証拠として幼生期の写真が在る。と云うことは、食餌植物の同定間違いなのか?

取り敢えず食餌植物から検証していこう。
ウラジロエノキをWikipediaで調べてみた。

「ウラジロエノキ Trema orientalis (L.)Blumeは、アサ科(ニレ科)の樹木。エノキにはさほど似ていない。成長が早く、アジアの熱帯域におけるパイオニア植物(註1)の一つ。
日本では屋久島、種子島以南の琉球列島に見られる。国外では台湾、中国南部、東南アジア、インド、マレーシア、オーストラリアにまで分布する。また、アフリカにおいてもセネガルやスーダンから南アフリカ共和国の旧ケープ州にかけての降雨量の多い2200メートルまでの場所で見られる。
エノキと同じくアサ科に属するが、属は異なる(ウラジロエノキ属)。同属のものは熱帯域を中心に20種以上があるが、日本にはもう一種、T.cannabina キリエノキ(コバフンギ)だけがある。」

 
(出展『沖縄植物図鑑』)

 
普通のエノキよりも葉が細長いね。

「材は柔らかくて器具や建材に使われる。成長が早くて10-20年で利用でき、下駄材としてはキリに次ぐ。樹皮からはタンニンが取れるほか、その繊維から紙が作られる。成長が早いことから護岸用に植栽されることもある。」

おいおい、ポピュラーで全然珍しくない木じゃないか。

 
(出展『welcome stewartia.net』)

 
これなんて、背景からすると明らかにマンションの空き地に生えとるやないけー。
だとしたら、ミヤジマミスジの食樹としては疑念を抱(いだ)かざるおえない。そんなにポピュラーな植物ならば、もっとミヤジマミスジが沢山いてもおかしくないではないか❓ なのに数が少ないのは解せない。
稀種と言われるチョウが少ないのには幾つかの理由があるが、最も有力なのは食樹の分布が局所的で珍しい植物だからだ。それに伴いチョウの数も少ないと考えられている。そのセオリーからすれば、幼虫がウラジロエノキ食いだとするならば、個体数が少ない理由が謎すぎる。

因みに近縁のスズキミスジもウラジロエノキを食樹として利用しているようだ。
スズキミスジの幼虫を飼育する際に、ミヤジマミスジの幼虫も一緒に見つかっても良さそうなもんだけどなあ…。けど、考えてみれば、スズキミスジを飼育した人がどれだけいるというのだ?絶対数はおそらくムチャムチャ少ないやろね。だいち代用植物は他にいくらでもあるから(註2)、ウラジロエノキで育てる人は更に少なかろう。そんな中で、稀なるミヤジマミスジの幼虫が見つかるなんて奇跡に等しい。

ここで、ふと思った。もしかしたら、ミヤジマミスジの幼生期の死亡率が以上に高かったりして…。
卵の孵化率が異常に低く、幼虫がすぐ病気になり、寄生率も超絶高いとかさ。
そんなもん、とうに絶滅しとるわい(*`Д´)ノ!!!
ツッコミが入りそうだ。それに、何でそうなるのかと問われれば、周りを納得させる理由が見つからないわな。
思うに、ウラジロエノキの他に本来利用している食樹があり、稀にウラジロエノキにも産卵されて、ちゃんと親まで育つものもいるのではないだろうか?

諦めずに手掛かりを探していると、ネットの『OTTOの蝶々ブログ』というサイトで、答えの一端を見つける事ができた。

「ミヤジマミスジは、食樹が判明しているそうですが、その楡(ニレ)科のケヤキの一種には、まだ正式な学名がなく、台湾名の植物名さえも付けられていないのだとか。このケヤキは台湾特産でごく限られた場所で生育が確認されているだけだそうですが、ミヤジマミスジが非常に珍しいのはその食樹の希少性のためだということです。」

ガイドを伴っての台湾採集記の中にある一節だ。
エノキではなくケヤキと書いているのが気になるところだが、日本人同士の会話ではないから、コレは単なる言葉の問題で、相互理解にズレが生じただけなのかもしれない。おそらくケヤキではなく、エノキの類だと推察するが、ケヤキの可能性も否定できない。何れにせよケヤキとエノキは類縁関係にある植物だ。たとえケヤキであれ、そうは驚かない。
ガイドは林春吉氏で、記事の中で羅錦吉氏の所にも訪ねておられるから、指摘はそのどちらか、もしくは両方の言だろう。お二方とも台湾の蝶の研究者としてはトップクラスだから、ケヤキにせよエノキにせよ、ニレ科の植物であると云う話の信憑性は高い。

謎が完全に解けたワケではないが、これで一安心だ。
落ち着いたところで、幼虫と蛹の画像を添付しておこう。

 
(終齢幼虫)
(出展『アジア産蝶類生活史図鑑』以下二点とも同じ)

 
紛うことなくミスジチョウ属系統の幼虫形態だが、お尻近くに朱色系の紋が入るモノは他にはいない。同じ種群のコミスジ、リュウキュウミスジ、スズキミスジ、タイワンミスジの幼虫とは見た目が明らかに違うので、間違いなくミヤジマミスジの幼虫だろう。

 
(幼虫正面図)

 
(≧∀≦)ハハハハハ…、まるで乞飯じいさんだよ。
基本的にはミスジチョウ属の幼虫の特徴である「なんちゃってバットマン」とか「なんちゃってキャットウーマン」、或いは「なんちゃってクリオネ」、もしくは「おじいちゃんになって落ちぶれて、風呂にも入らなくなった汚れピカチュウ」であるからして、この属の仲間であることに異論はないだろう。
最初は笑っていたが、見ようによっては可愛らしいかもしんない。でも、こういうのを可愛いとか言い出し始めたらヤバいよね。

 
(蛹)

 
何だか脱け殻みたいな蛹だにゃあ。
反射率が高い蛹なのかな? 実物は銀紙みたいにピカピカしているのかもしれない。
この色と形の蛹はコミスジ種群の特徴だから、このグループの仲間であることに疑いはなかろう。

ちょっと驚いたのは、図鑑のミヤジマミスジの解説が他種と比べて著しく短くて素っ気がないことだ。解説を抜粋してみよう。

「成虫は近縁の他のNeptis(ミスジチョウ属)と混生するので、識別ができず、詳しい生態は確認されていない。標高500m~1200mの地域における採集品に混じって発見されるが、同属他種に比べて個体数が少ない。幼虫は食餌植物の地上1m前後の位置の枝先に静止ものが発見された。いずれも中脈を食べ残して、これに静止していた。」

通常の解説文の3分の1にも満たない量だ。憶測や推察も加えられていない。
これは何を示唆しているのだろうか?
もしかしたら、言及するには飼育期間が短すぎて情報量があまりにも少なかったのかもしれない。或いは食樹の同定も含めて自信が無かったと云うか、他も含めて色々と半信半疑だったからなのかもしれない。
何でこんな短い文章になったのかを、解説の執筆者である五十嵐さんに訊いてみたいよね。
でも、残念なことに既に五十嵐さんは鬼籍に入っておられる。だから、これは永遠の謎だ。

謎が謎呼ぶ、宮島さん。
何だかさあ、見た目はそれほど綺麗な女の子でもないのにメッチャ振り回されたような気分だ。
いたなあ…、そういう娘(こ)。
ちょっとミステリアスな、謎多き女の子だった。
 
 
                 おしまい

 
追伸
いやはや、マジで今回は疲れました。
謎だらけだし、同定間違いでテンヤワンヤにはなるし、完成するのに物凄く時間がかかった。カラスアゲハ関係の回と匹敵するくらい苦しめられたかもしれない。
にも拘わらず、お題目が地味だし、日の目をみない文章になるんだろうなあ…。どうせ注目も評価もされないだろうしさ。何だかバカバカしいやなあ。

ミヤジマミスジには直接触れていないが、ミスジチョウ軍団の似かよいっぷりは、別ブログの『発作的台湾蝶紀行』にも書きました。

 
台湾の蝶6『豹柄女はフェイクなのさ』

 
オスアカミスジがメインの回だが、当時の混乱ぶりが少しは伝わるかと思う。

 
(註1)同一人物なのかあ?
同一人物のようです。宮島幹之助に関する文章には、寄生虫学者&蝶愛好家と云う記述が同じ紙面に無い云々と書いたが、ウィキペディアにあった。とはいえ解説欄には蝶に関する事は一切出てこないのだが、著者欄に「日本蝶類図説」があった。
幹之助は、本当に蝶好きだったのかなあ?

(註2)パイオニア植物
低地~山地の崩壊地や造成地にいち早く侵入する先駆的な植物のこと。日当たりのよい適潤なところを好む傾向がある。

(註3)スズキミスジ幼虫の代用食
この蝶の食樹はマメ科全般と旧ニレ科のエノキ属が中心だが、他の科の植物も利用しており、その嗜好は多岐にわたる。

 

おどろおどろの緑ポテトサラダ

 

面妖なものを、またこの世に産み落としてしまった。

 

 
おどろおどろしき緑色のポテトサラダである。
ポテサラに青汁を混ぜてみた。
と云うのは真っ緑なウソでぇーす(・ ┳ ・)
もとい、真っ赤なウソでぇーす。いくらアチキがトチ狂ってるからといって、そこまで👿悪魔のような所行は致しませんよ。

えーとですなあ。事の発端はジャガイモである。
冷蔵庫の奥底で長い間放置されていたジャガイモが、このたび2個発掘された。
半分ミイラ化が進んでおり、お肌はカサカサのシワシワ。芽がボコボコと腫瘍みたいに醜く成長している。
オジサンは短く、ヒッ❗と叫び。軽く仰け反りながら顔をそむけた。
ぶしゅ~(@_@;)、結構ホラーである。
『また、やっちまったな…。』
周りに誰彼いるでもなく、小さく呟く。
軽い己に対する軽侮の念が心の中を擦過する。

 
     愚かなる哉(かな)
     イカロスが
     いくたりも来ては落っこちる

 
さて、どうしたものか…。
当面の問題は、この邪鬼の如く醜い物体の今後についてだ。自分ともう一人の自分とで、対峙して話し合わねばならぬ。
ちっ、まわりくどい言い方だ。まるで心が病んでいる人間のモノ言いじゃないか。ようするに、自問自答しろって事だ。

選択は二つに一つだ。

①ゴミ箱にありったけの憎悪でもってダンク❗

②マッドサイエンティストよろしく魔の力をもってして、新たなる創造物を誕生させる。

又しても、まわりくどい言い方だ。言葉遊びはよせ。
夢を見るのはよせ、憎むのはよせ。愛するのはよせ。

ダフルスペース。上がって、下りてきた。
ところで、はたしてタイガースの藤浪は復活するのか❓
藤浪のことはどうでもいい。どうでもよくないが、今はどうでもよろし。ようは捨てるか、料理するかだ。
ここは祖は武士の家系、敵前逃亡など有り得ぬ。果敢に料理で打って出ようではないか。

ジャガイモをレンジでチンして皮を剥く。
予想に違(たが)わぬ緑っぷりである。
きゃあ~ε=ε=(ノ≧∇≦)ノ
青酸じゃ、青酸じゃ、殺してたもれ(註1)。

ジャガイモには毒がある。芽や緑化した部分にはソラニンやチャコニンと云う天然毒素が多く含まれれているのだ。これらを多く含むジャガイモを食べると、吐き気や下痢、嘔吐、腹痛、頭痛、めまいなどの症状が出ることがあるのさ、(# ̄З ̄)ぷぷぷぷぷぷー。

でもさー、ジャガイモで死んだ奴なんて聞いたことある❓ 無いよね。
ここは、マッドサイエンティストとして強引に攻める。緑色のままで勝負じゃい(◎-◎;)❗❗

軽くジャガイモを潰す。
味付け前に、ちょいと味見をする。
Σ(-∀-;)ゲッ、苦くてエグみがあるんでやんの。
毒だよ、毒。
でも、そんな事では怯まない。バカだからである。

そこに先ずはスライスした玉ねぎを加える。一応、塩をして軽く水分を搾ったものだ。フザけた料理であったとしても、基本を蔑(ないがし)ろにはしない。質実剛健、武士の末裔なのだ。

さらにそこに、余りもんのフランクフルト・ソーセージ、ゆで玉子2個、マヨネーズを入れる。塩、胡椒も振る。
しか~し、コレでは真の緑色にはならない。そこで、ビートルジュースの青汁を…。

ウソ、ウソ、ウソー(^o^;)
こんなところで青汁を投与しようものなら、全ては台無しだ。ノリだけで料理をして、良い結果など奇跡でも起きない限り得られるワケはないのだ。

で、何を入れたかというと、女子が好きなアボカドだ。
(  ̄▽ ̄)フフフ…、ジャガイモの色もあるけど、主な緑色の正体はアボカドだったのである。

嫌いじゃないし、マズいとは言わないが、ナゼにアボカドなんぞを女子は珍重するのかね❓
ヘルシーって言うけど、脂肪だらけやんけ(=`ェ´=)

グダグタ思いなから割ってみたら、状態があまりヨロシクない。青臭くて、食感にネットリ感が足りないのだ。ハズレだ。呪われている。きっと女子の悪口を言ったせいだ。
生で使うには問題ありと判断して、一部の熟成していそうな所を残してレン・チン。あら熱をとってブチ込んでやる。
万編なく混ぜたら、暫く冷蔵庫で寝かす。
味を馴染ませるためだ。

見た目ヨロシクちょっと変わった味だが、何だか旨いぞ。全然、イケる。段々、ハマまってくるくらいだ。
オラって、無駄にまあまあ天才だなと思いながらビールを飲む。

TVでは、コカインで捕まったピエール瀧の画像が流れている。残念だなと思う。
おどろおどろの緑色のポテトサラダのほろ苦さを、ビールで流し込んだ。

                  おしまい

 
(註1)青酸じゃ、青酸じゃ、殺してたもれ
子供の頃は、このジャガイモの緑色の部分には青酸が含まれていると教えられた。当時はそれがポピュラーな意見ではなかったかな。
きっと緑色だから青酸という安易な連想からの、ガセですな。大人は信用できません。

 

嗚呼、初鰹(* ̄∇ ̄*)

 
そろそろ初鰹が出回り始めた。
初鰹といえば5月初めというイメージだが、最近は早い。なんでかっつーと、九州辺りの鰹が入荷してくるからである。つまり、昔と比べて流通網が発達してるからだね。九州では、2月くらいから獲れ始めるのである。
これには、ちょっと感慨深いものがある。鰹好きとしては、早くも鰹が口に入るのは嬉しい。けど気持ち的には、もっと暖かくなった4月の終わりくらいに食べたい気分なのだ。初夏の走りの食材のイメージなのだ。

スーパーで、生の初鰹が安く手に入った。
たった200円くらいだったけど、モノは頗(すこぶ)る良い。良い鰹は色が鮮やかで、切り身の断面に虹色的なものがあまりかかってない。

先ずは付け合わせのクタクタの大根のツマを洗い、暫く水につけてシャキッとさせる。
鰹の体液で大葉は使い物にならないくらいショボショボ、クタクタになっていたので、新しいのを使った。

 

 
エッジの効いた思った以上に良いカツオのたたきだった。鮮やかな赤が食欲をそそる。
これだけ良いカツオならぱ、薬味は邪魔だ。
スライスしたニンニクも生姜も要らない。醤油さえも要らない。塩のみで充分だ。
とはいえ、一応柚子胡椒と醤油をスタンバイさせておく。勿論、付属のタタキのタレなんぞは使わない。あんな甘ったるいものは、カツオの味を損ねるだけだ。カツオに対する冒涜でしょう。きっと、昔のカツオは鮮度が悪かったから、こんなものが編み出されたのであろう。それが慣習として定着したと推察する。

ヒマラヤ産のピンク岩塩を削る。

 

 
先ずは、その塩のみで食す。

(≧∀≦)ん ━━━━ まいっ❗❗
旨みと微かな酸味、仄かな血の味わいと苦味とが混じりあって、カツオ本来の複雑な味が舌に広がる。そして、最後に炭火で炙ったような香ばしい香りが鼻から抜ける。
濁点つきの嗚呼、とかウーとかという声が漏れる。
戻り鰹も美味いけど、初鰹もまた違った意味で美味い。初鰹には、どこか野性的な魅力がある。

試しに、塩と柚子胡椒で食ってみる。
美味い。でも、柚子胡椒の個性が強すぎる。
お次は柚子胡椒+醤油。
コレも美味い。
でも、コレまたカツオ本来の原初の旨さが消えがちだ。ようするに、カツオ本体が旨いから当たり前的に旨いという範疇なのだ。

いよいよ冬も終わったなと思う。
良い鰹が手に入ったら、是非とも塩のみでトライされたし。
そこには、鰹本来の味わいと力強さがある。
 
                  おしまい

 
追伸
因みに最高に旨い鰹を食いたいなら、高知に飛ぶべし。
鰹は傷みの早い魚だから、水揚げされてすぐが美味いと言われている。高知の近海であがったものでも、セリと流通の関係で、関西なら一日遅れで市場に入ってくるらしい。それだけでも味がグンと落ちるみたい。

 

我、ツブ貝にΣ( ̄皿 ̄;;激怒す

 
1週間くらい前の話である。
スーパー玉出で、ツブ貝が3個で298円で売っていた。

 

 
鳥取産のもので、剥き身ではなく丸々のヤツだ。
しかも、どうやら生きている。
自分で捌ける技術と根性、そして目利きがあれば、スーパー玉出は安くて鮮度の良い魚介類が手に入る。
但し、魚などは一匹買いに限られる。切り分けられたものや刺身盛りは極端に鮮度が落ちるから買わない。

しかし、よくよく考えてみれば、ツブ貝を捌いたことなどない。
で、YouTubeで捌き方を学習する。

どうやらマイナスドライバーで貝の横っちょに穴を開け、そこからドライバーを入れて貝柱を切って、身を取り出すようだ。

 

  
しかし、これがウルトラ糞ドライバー。
昔、100均のダイソーで買ったもので、頭の部分を付け替えれるタイプである。つまり、1本でマイナスドライバーにもプラスドライバーになる便利なドライバーってワケだ。
だが、コレがまるで使いもんにならん。何がダメかって、先端が磁石だけでくっついているから、あるまじきヤワさなのである。ちょっと力を入れると、ポロッと先端が落ちる。硬い貝なら尚更である。貝の硬さに負けて、何度やっても力が入る前に先端が取れる。
さっきまでだらしなく口を開けていたツブ貝は、それに身の危険を感じたのか、口を固く閉ざした。
どいつもコイツもナメとんのか、ワレー(-_-#)

Σ( ̄皿 ̄;;キィ ━━━━━━━ ッ❗❗
死んでまえ(`Д´)ノ❗❗、死んでまえ(`Д´)ノ❗❗
使えんヤツは排除されるべーし❗
(ノ-_-)ノ~┻━┻ たありゃー❗、ダーンク❗❗
ドライバーをゴミ箱に叩き捨てる。
これでは埒(らち)が開かん。怒り狂って、新たな道具を求めてダイソーに走る。

クソー、あのドライバーめがっ、まだ売ってやがる。
何年も庶民を騙し続けてやがるとは、フテー野郎だ。
しかし、店員に文句を言っているヒマはない。一刻も早くとってかえして、ヤツを惨殺せねばならん。

 

 
ハンマーとアイスピックを買ってきた。
これで、風穴を開けちゃるΨ( ̄∇ ̄)Ψ
ダメなら、粉砕。🔨ハンマーで叩き割ってやるまでよ。
『ドラゴン、怒りの鉄槌』である。

(#`皿´)うりゃあ~❗、
殺人鬼よろしく渾身の力でアイスピックを突き立てる。
ハァー、ハー(゜〇゜;)、ゼェー、ゼー(;>_<;)
何とかドラゴンの怪鳥音の雄叫びを上げずに穴を開ける事が出来た。
やおらアイスピックを穴に突っ込む。
グリグリグリー。アイスピックを中で掻き回す。
アイスピックから中でツブ貝が身悶えしているのが感じられる。
Ψ( ̄∇ ̄)Ψほりゃほりゃほりゃー、ええんかい、えんかい。オッチャンはサディスティックに尚も攻める。
頭の隅で、ワシは何をやっておるのだ?と思いつつも、しかけたオ○○はやめられない。

ツブ貝本体の力が抜けた。
おそらく貝柱を切られて、踏ん張る力を失ったのだ。
( ̄∇ ̄)フフフ、いきおったわ。

今度はアイスピックを口の根元にブッ刺し、左手で貝を回しながら身を引っ張り出した。
(・。・;ふぅ~、これで一段落ついた。
しかし、画像はありません。あまりにもグロいからです。

お次は、身と肝とヒモに切り分け、食べられない部位を取り除く。肝は肝醤油にすることも考えたが、グロいゆえ茹でることにした。
そして、最後の仕込みに身とヒモに粗塩をたっぷり振って、手でゴシゴシやってヌメりを取る。
それを水で洗い、キッチンペーパーで水気を拭いたら、あとは切って盛り付けたら出来上がり。

 

 
いやはや、美味い。
心地好い歯応えのあとに、貝の旨みと甘さが立ち上がってくる。
3個で¥298なワケだから、これ1個だと百円換算になる。これが百円の酒の肴だなんて凄すぎるぜ。
でも、オラの人件費を考えれば五百円ではすまんな。

  
残り2つをどうするかを考えたが、ドラゴン、もう疲れちゃった。甘辛めのダシ汁で煮ることにした。
とはいえ、ややこしいことは一切しない。沸騰した煮汁にツブ貝をブチ込んで、火を止めて放置。余熱で火を通すだけだ。
でも、コレにはちゃんと意図があって、身が硬くなり過ぎないように考えているのである。

 

 
火を入れさえすれば、殻から身を取り出すのは簡単。
とはいえ、慎重を要する。強引に引っ張り出そうとすると、肝の部分が千切れてしまうからだす。

翌日、1個は口をあんぐり開けて、そのまま丸々食った。
d=(^o^)=b イェ━━━━イ。
貝の旨みと苦みが口の中で渾然一体となって、メチャ旨やん。

そして、最後の1個は再び切り分けて盛りつけた。

 

 
コレまた美味い。
歯応えが煮アワビのそれだ。貝の香りもいいネ(^^)

怒り先行だったけど、最後は満面の笑みで終わりましたな。
終わり良ければ全て良しなのだ。

                 おしまい

 

自家製ハタハタの一夜干し


  
小振りの鰰(ハタハタ)が1パック100円で売ってた。
激安だ。ハタハタ好きとしては見逃せない。一夜干しにして、酒の肴にしてみることにした。

 

 

 
それを弱火でじっくりと炙って食うのだが、これが誠にもって美味い。

作り方は、わりかし簡単。
ハタハタの頭を落として内蔵を取り除き、軽く洗ってぬめりを取る。それを立て塩に浸けて陰干しするだけだ。
立て塩とは、10~15%の塩水のこと。水1Lに対して大さじ1足らずの塩を入れてつくる。そこにハタハタを入れて30分から1時間浸けて下味をつける。
で、あとはベランダで一晩陰干しにする。
今回は天気があまり良くなかったので一日半放置。

干す道具は、釣具屋やホームセンターで売ってる吊り下げタイプの一夜干しネットみたいなものがベスト。
今回は無いので笊で代用。この場合、猫やカラスなどの鳥にパクられる可能性があるので、覚悟されたし。
途中、何度かひっくり返して、満遍なく適度に水分を抜く。綺麗な飴色になり、しっとりとしたええ感じになったら完成。

 

 
出来上がったものは、冷蔵庫で3~4日程はもつ。
それをじっくりと弱火で焼く。
七輪や網で焼くのがベターだが、フライパンにクッキングシートを敷いて焼いても大丈夫。自分も今回はそうした。

それにしても、今更ながら酷い盛り付けだ。
本来なら、織部あたりに盛り付けるべきなのだが、既に酒がそこそこ入ってて、面倒くさかったのだ。

酒を飲みつつ頬張り、ふと考える。
そろそろハタハタの季節も終わりだなあ。

                  おしまい

 

台湾の蝶28『真昼のデジャヴ』

 

  第28話『江崎三筋』

  
今回は、前回取り上げたアサクラミスジとの姉妹編になります。

 
アサクラミスジを採った翌日のことだった。
この日も南投県の同じポイント、標高約1900mの尾根筋に入った。狙いも同じくホッポアゲハである。
そして、やはりこの日もホッポがピタッと飛んで来なくなった。
で、クソあじぃ~し、同じようにゲンナリ気分で地べたに座り込んでいたのである。
そこへ、又しても右手からふらふらと低空飛行でミスジチョウの仲間が飛んできた。
何なんだ、この既視感は。(;・ω・)デジャヴじゃね❓
天気も同じだし、時間もさして変わらない。全てが昨日のシチュエーションとほぼ同じだ。一瞬、暑さでアタマがオカシクなって、白昼夢でも見てるのかと思った。
裏の淡い色の感じからすると、昨日採ったアサクラミスジかなと思った。どこまでデジャヴやねん( ̄ロ ̄lll)
ヨッコラショと立ち上がって、ぞんざいに網を振る。

網の中を見て、アサクラミスジの♀かなと思った。
昨日のものより一回り大きくて横幅か広かったからだ。蝶の♀と云えば、殆んどの種が♂よりも一回り大きくて横長になりがちというのが相場なのだ。

実を言うと、この時に撮った写真は1枚も無い。
アサクラミスジは昨日に証拠写真を撮ったから、もういいやとでも思ったのだろう。クソ暑いと大概のことが面倒くさくなるのである。

それが宿に帰ってから、その日の戦利品を整理していて、あれれ(;・∀・)?????、何か変だなと気づいた。
昨日の奴って、こんなだったっけ❓ 違和感を感じたのである。どこか雰囲気が違う気がしたのだ。
慌てて昨日の奴と見比べてみると、明らかに裏面の斑紋が違うではないか。線がギザギザじゃない。それに大きさも全然違ってて、デカイ。
こりゃ、どう見ても別種だわさ。でも、その時点では何という種類の蝶なのかは分からなかった。

帰国後に調べてみると、コレが何と台湾におけるミスジチョウの仲間では、最稀種のエサキミスジだった。
しかも、たぶん中々採れないであろう♀だぜd=(^o^)=b

 
【エサキミスジ Neptis sylvana esakii ♀】
(2016.7.12 南投県仁愛郷 alt.1900m)

 
(^o^ゞハハハ、1年以上ほったらかしだったから、胴体が埃まみれになっとるやないけー。
相変わらず、ええ加減な性格やのう。

アサクラミスジと同じく、ちょっと上翅を上げすぎたかなあ…。
でも、ミスジチョウの類は上翅を下げると、寸詰まりになる。それって何だかモッチャリしててカッコ悪いんだよなあ…。今後の課題です。
まあ、展翅も既存のイメージに囚(とら)われてはならないと思うし、コレはコレでカッコイイような気もするから、良しとしよう。

  
【裏面】

 
確か、この写真は展翅前に撮った写真だな。
あらためてアサクラミスジと見比べてみよう。

【アサクラミスジ ♀】 

 
こうして並べてみると、似てはいるけど全然違うことがよく解る。アサクラミスジは紋がギザギザだ。
斑紋だけでなく、翅形も違う。アサクラミスジの方が丸っこい。
大きさも違うし、こんなの間違うかね?と思うが、きっと裏がこんな色したミスジチョウが他にもまさかいるとは思っていなかったのだろう。だいたいがだ、そもそもが発作的に初の台湾行きを決めて、3日後には出発だったのである。だから旅の仕度で手一杯で、台湾の蝶を調べてるヒマなど無かったのだ。

採れたのは、この♀らしき1頭のみだから、♂の画像を探して引っ張ってこよう。

 

(出典『原色台湾蝶類大図鑑』)

 
ネットでググったが、なぜか標本写真が自分のもの以外は一点も見つからなかった。
情報量が少ないので、せめてでも生態写真を貼りつけておこう。

 

(出典『台湾生物多様性資訊入口網』)

 
イケダミスジなんかにもよく似ているが、裏面の色が全然違う。

 
(出典『原色台湾蝶類大図鑑』)

 
とにかく、採ったのは間違いなくエサキミスジだね。
落ち着いたところで、前へ進もう。

『原色台湾産蝶類図鑑』の解説には、こうあった。

「本種は現在の知見では台湾の特産種。同島産大型ミスジチョウ属の中でも最も稀な1種で、従来記録されたものは4頭にすぎない。」

アサクラミスジもそこそこの稀種だと思われるが、もっと珍しいってことだね。
その4頭の内訳も書いてあった。

 
1♂ 台中州東勢郡(ウライ~ピスタン~サラマオ)1932.7.16 江崎悌三教授採集(本種の記載標本)

1♂ 高雄州阿里山沼ノ平 1932.5.21 梅野明・平貞市採集

1♀ 台北州文山郡檜山 1935.7.1 和泉泰吉採集

1♀ 台北州文山郡チャゴン~檜山 1935.6.28 和泉泰吉採集

 
州となっているのは、昔の台湾の行政区分の時代だからだろう。現在は縣(県)となっている。因みに、図鑑は1960年刊行である。

それにしても、たった4頭かあ…。
ネットで調べても画像は少ないから、おそらく現在でも稀種の座にあるものと思われる。

 
【学名】Neptis sylvana (Oberthür, 1906)

台湾のものは亜種 esakii(Nomura, 1935)とされている。
原色台湾蝶類大図鑑では、「Neptis esakii」という学名になっていたので、てっきり独立種で台湾の固有種かと思いきや、亜種なんだね。
昔の図鑑と今の図鑑とでは学名が変わっていることがしばしばあるので、注意が必要だすな。

属名 Neptisはラテン語の「孫娘、姪」の意。
小種名 sylvana(シルバニア)の語源もラテン語で「森林、樹林、森の土地」を意味するものと思われる。
亜種名 esakiiは日本の昆虫学者 江崎悌三博士(註1)に献名されたもの。和名もそれに因んでいる。

 
【台湾名】深山環蛺蝶
 
訳すと、深山に棲むミスジチョウって事だね。
別名に、林環蛺蝶、淺色三線蝶、森環蛺蝶、江崎環蛺蝶、江崎三線蝶がある。
林環蛺蝶と森環蛺蝶は、学名の小種名由来であろう。
淺色三線蝶は、淡い色のミスジチョウという意味で、裏面の色を指しての命名だろう。
江崎環蛺蝶と江崎三線蝶は、和名からの命名であるに違いあるまい。

 
【英名】
 
特に無さそうだ。
ミスジチョウ属の英名はGlider(滑空するもの)だから、もしつけるとすれば『Deep Forest Glider』辺りが妥当かな。

  
【分布】
 
台湾では、北部から中部の山地帯に見られる。
台湾以外では、中国南西部(雲南省)とミャンマー北部に分布する。
中国南西部のものが原名亜種 sylvana sylvana となる。台湾の他には亜種は無いようなので、ミャンマーのものも原名亜種に含まれるものと思われる。

分布図は、今回も杉坂美典さんからお借りしよう。

 
(出典 杉坂美典『台湾の蝶』)

 
中国南西部と台湾とにかけ離れて孤立分布しているのがよく解る。分布が狭いゆえ、アサクラミスジよりも稀種度が高いのも容易に想像できるね。
でも、こんなに分布が離れてるなら、もう別種でええんとちゃうのん❓などと素人は考えちゃうなあ。
両者が分断してから相当長い時間が経っているワケだし、遺伝子解析したら別種って事になるんでねえの❓

 
【生態】

開長55~65mm。
「原色台湾蝶類大図鑑」によれば、「資料より判断すれば本種は台湾中北部~中部のかなりの山地帯に産するもので、その出現期は5~7月。食草・幼生期は勿論未知。」とある。
一方、杉坂美典さんのブログには、台湾の北部・中部の低・中・高標高(600m~2500m)に産し、発生は5~8月の年1化としている。
両者の記述に大きな齟齬はないが、気になるのは標高についてである。低地でも得られているのだろうが、自分の採集地点や台湾名の深山環蛺蝶と云う名前からも、おそらく垂直分布は高地寄りだろう。

ネットの情報だと、常緑の広葉樹林の林縁および林冠で見られるという。
林冠で活動するとなれば、アサクラミスジよりも活動場所は高所なのかもしれない。日本のミスジチョウも梢上を好むので、同じような生態だと考えられなくもない。一方、コミスジなどはわりかし低い所を好むから、アサクラミスジはコミスジ寄りの生態なのやもしれぬ。同じば場所で、互いに空間を上下に棲み分けている可能性はある。
森林性が強く、湿地で吸水したり、動物の糞尿に集まる習性もあるようだ。

雌雄同形で、♀は♂よりも一回り大きく、翅形が丸みを帯びると考えられる。
アサクラミスジと同じく♂は前脚に毛が密生するが、♀には殆んど見られない。
コレは両種の裏面横からの画像でも確認できるので、ヒマな人は拡大してみて下され。両種とも♀だと解ります。

 
【幼虫の食餌植物】

台湾のサイト『DearLep 圖錄檢索』では、こうなってた。

寄主資訊
中名  學名
(未填寫) (未填寫)

未填寫というのは、未解明という意味だろう。つまり、食樹は未知だと云うことである。
しかし、ネットの『台湾生物多様性資訊入口網』には、幼虫はブナ科植物の葉を食べると書いてあった。だが、それ以上の詳しい記述は無く、具体的な植物名は挙げられていなかった。
ブナ科かぁ…。何かの間違いじゃないのか❓ミスジチョウとブナ科なんて全然イメージに無い。ブナ科を食ってるミスジチョウなんていたっけか❓

世界的にみると、Neptis属の食樹はマメ科やアサ科(旧ニレ科)のエノキ属、及びアオギリ科が多い。
ここは一度原点に帰って、改めて日本のNeptis属の食樹を確認しておこう。
『日本産蝶類標準図鑑』に拠れば、以下のようなものが食樹が挙げられている。

(コミスジ)
ハリエンジュ、フジ、ハギなど各種マメ科。稀にクロツバラ(クロウメモドキ科)、ケヤキ、ハルニレ、エノキ、ムクノキ(旧ニレ科)、アオギリ(アオギリ科)、タチアオイ(アオイ科)にも幼虫がつくことがある。

(リュウキュウエノキ)
コミスジと同じくマメ科全般を食う。奄美大島では旧ニレ科のクワノハエノキ(リュウキュウエノキ)からも幼虫が発見されている。

(フタスジチョウ)
ユキヤナギ、シモツケ、コデマリなどのバラ科。

(ホシミスジ)
フタスジチョウと同じくユキヤナギなどのバラ科。
シバザクラ(ハナシノブ科)でも幼虫が見つかっている。

(オオミスジ)
ウメ、アンズ、スモモ、モモ、エドヒガンザクラなどのバラ科。

(ミスジチョウ)
イロハモミジなどのカエデ科全般とカバノキ科のアカシデ、クマシデ、サワシバ。

ここで驚くべき記述にブチ当たった。
「ブナ科も食草となる記録もあり、クヌギで幼虫を発見し、飼育した結果、羽化したという報告、飼育中の幼虫3頭が横にあったナラガシワにうつり、ナラガシワを食べて蛹化、羽化したという報告があり、大きさは正常のものと違わなかったという。」

これは、エサキミスジの食樹がブナ科というのも有り得ると云う事だね。ブナ科だとすれば、はたして何だろう?
常緑のカシ類なのかな、それとも落葉性のコナラ類なのかなあ?上の例だと、おそらく落葉性のコナラ属かと思うが果たしてどうだろう?ブナ科とは全く別な意外なものが食樹になっている可能性もあるので、まあ予断はよしておこう。本当は他の科の植物がメインのホスト植物で、ブナ科はあくまでもサブ的な食餌植物というケースも無きにしもあらずだからだ。

ついでながら言っておくと、日本には他にもミスジと名のつくシロミスジというのが与那国島に土着している。しかし、これは似てはいるものの Neptis属ではなく、近縁関係のAthyma(ヤエヤマイチモンジ属)に含まれるので、除外した。食樹はトウダイグサ科のヒラミカンコノキ。

気になるので、台湾の他のNeptis属の食樹も可能な限り調べてみた。

(チョウセンミスジ)
カバノキ科 クマシデ属のCarpinus kawakamii。他にホソバシデ、シマシデなども食し、シデ類やハシバミ類を好むようだ。

(スズキミスジ)
アサ科エノキ属(ナンバンエノキ等)とマメ科(クズ等)が中心だが、シクシン科、アオイ科、イラクサ科の記録もある。

(タイワンミスジ)
主にマメ科と旧ニレ科(エノキ類)を食し、アオギリ科、イラクサ科、トウダイグサ科、シソ科など他の広葉樹も広く利用している。普通種たる所以だ。

こうして各ミスジチョウの食樹をみると、はたと思う。
食樹の嗜好傾向で、ある程度グループ分けが出来るのではないだろうか❓。
コミスジなどの小型種はマメ科と旧ニレ科のエノキ属を中心に幅広く色んな植物を利用している広食型で、これにはコミスジの他にリュウキュウミスジ、スズキミスジ、タイワンミスジなどが挙げられる。一方、ミスジチョウなどの中大型種は、マメ科、旧ニレ科とは別な科の植物を食樹としていて、決まった科以外の植物はあまり食べない狭食性のものが多いのではないだろうか。ミスジチョウ、オオミスジ、ホシミスジ、チョウセンミスジ、アサクラミスジなどが、このグループに含まれる。たぶん、同じNeptis属でも、両者は種群が違うのではなかろうかと推察する。

(ホリシャミスジ)
これも後者のグループに含まれるかと思う。
エサキミスジとは裏の地色が異なり、一見かなり違う印象をうける。しかし、よく見れば裏も表も斑紋パターンが似ていて、一番近い関係なような気もする。

 

 
(裏面)

 
コレだけではちょっと分かりにくいから、図鑑の両者が並んでいる画像を貼りつけよう。

 
(出典『原色台湾蝶類大図鑑』)

 
上がホリシャで下がエサキである。 
こうして並んでいるのを見ると、両者の関係がかなり近いように見えてくる。

圖錄檢索に拠れば、ホリシャミスジの食餌植物に以下のようなものが挙げられていた。

樟樹 Cinnamomum camphora
クスノキ科 ニッケイ属 クスノキ

長葉木薑子 Litsea acuminata
クスノキ科 タブノキ属 ホソバタブ(アオガシ)

黃肉樹 Litsea hypophaea
クスノキ科 タブノキ属 タブノキ

假長葉楠 Machilus japonica japonica
クスノキ科 ハマビワ属 バリバリノキ

豬腳楠 Machilus thunbergii
クスノキ科 ハマビワ属 タイワンカゴノキ

臺灣雅楠 Phoebe formosana
クスノキ科 タイワンイヌグス属 タイワンイヌグス

 
何とクスノキ科を食っている❗変わり者だわさ。
コレには驚いた。クスノキを食ってるミスジチョウがいるだなんて、夢にも思わなかった。タテハチョウ科で、クスノキ食ってる奴なんて珍しいよね。そんな奴、いたっけ?クスノキといえば、食樹にしてるのは、アゲハ類くらいだろう。
でも、エサキミスジの食樹がクスノキ科とは思えない。もしそうだったとしたら、こんなに稀種なワケがなかろう。いや、待てよ。非常に特殊で稀なクスノキ科の植物だけを食べている可能性も捨てきれないよね。

まあいい。それよりも問題なのはミヤジマミスジだ。
『アジア産蝶類生活史図鑑』に拠れば、アサ科のTrema olientalis(ウラジロエノキ)だと判明している。しかし、DearLep 圖錄檢索だと、エサキミスジの項と同じように未填寫となっているのだ。つまり、エサキの食樹が未知かどうかも疑っておくべきだと云うことだ。
とは云うものの、エサキミスジの幼生期の画像は一切見つからない。一番近い関係なのではないかと推察するホリシャミスジの幼生期もナゼか一切見つからない。お手上げである。この辺が潮時だろう。
仕方がないので、参考としてアサクラミスジとミスジチョウの幼生期の画像を添付して終わりにしましょう。

 
【アサクラミスジ】

(出典『DearLep 圖錄檢索』)

 
【ミスジチョウ】

(出典 手代木 求『日本産蝶類幼虫・成虫図鑑 タテハチョウ科』)

 
遠く台湾の山河に思いを馳せる。
またいつかエサキミスジに会えるだろうか❓
脳裡に、高い梢の上を滑るようにして優雅に舞う姿が浮かんだ。その空は、どこまでも青かった。

 
                 おしまい

 
追伸
エサキミスジの採集記は別ブログにあります。

 
発作的台湾蝶紀行39『揚羽祭』

 
発作的台湾蝶紀行40『ダブルレインボー』

 
発作的台湾蝶紀行57『踊る台湾めし』

 
青文字をタップすれば記事に飛びます。
また、当ブログには、オスアカミスジの回にチラッと登場します。

 
台湾の蝶10『オスアカミスジ』

 
よろしければ、コチラも読んでくだされば幸いです。

 
(註1)江崎悌三博士
えさき・ていぞう(1899年生~1957没)
明治生まれの著名な昆虫学者。東京に生まれ育ち、1923年(大正12年)東京帝国大学理学部動物学科卒。同年九州帝国大学助教授に就任。1924年、研究のため渡欧し、1928年に帰国。1930年九州帝国大学教授となる。のちに九州大学農学部長、教養部長、日本学術会議会員、日本昆虫学会会長、日本鱗翅学会会長などを歴任した。水生半翅類(タガメ、ミズカマキリなどの類)の世界的権威で、国際昆虫学会議常任委員として国際的にも活躍した。昆虫全般、動物地理学、動物関係科学史にも造詣が深く、全国の昆虫研究者の尊敬と信頼を集め、また昆虫少年たちにも多大なる影響を与えた。水生半翅類の分類のほか、日本とその近隣のチョウ、ミクロネシアの動物相、ウンカの生態などの研究にも大きく貢献した。
昆虫の名前に博士の名を冠したものも多く、エサキミスジの他にもエサキオサムシ、エサキキチョウ、エサキモンキツノカメムシ、エサキタイコウチ、エサキキンヘリタマムシ等々多数の名前が残っている。
著書に「動物学名の構成法」「土壌昆虫の生態と防除」「太平洋諸島の作物害虫と駆除」などがある。
昆虫関連の共著・監修には以下のようなものがある。

・『日本昆蟲圖鑑』石井悌,内田清之助,川村多実二,木下周太,桑山覚,素木得一,湯浅啓温共編 北隆館 1932
・『原色日本昆虫図説』堀浩、安松京三共著 三省堂 1939
・『原色少年昆虫図鑑』河田党共著 北隆館 1953
・『原色昆虫図鑑 学生版 第2 甲虫・半翅類篇』素木得一,高島春雄共著 北隆館 1955
・『原色幼年昆虫図鑑』共監修 北隆館 1956
・『原色図鑑ライブラリー 第22 蝶』監修 北隆館 1956
・『天然色昆虫図鑑』監修 学習研究社 天然色生物図鑑シリーズ 1956
・『原色日本蛾類図鑑』一色周知、六浦晃、井上寛、岡垣弘、緒方正美、黒子浩共著 保育社の原色図鑑 1957-58

また、翻訳も手掛けてられている。

・ビー・ピー・ウヴァロフ『昆虫の栄養と新陳代謝』国際書院 1931
・ヘンリー・ジェームズ・ストヴィン・プライヤー『日本蝶類図譜』白水隆校訂 科学書院 1982

ほかに雑文や著作を纏めたものもある。

・『江崎悌三随筆集』江崎シャルロッテ編 北隆館
・『江崎悌三著作集』全3巻 思索社 1984

著作集は、日本の蝶の学名の命名に関して興味深い記事もあり、蝶屋必見のようだが、読んだことはないです。
また、随筆集を編んだのは妻であるシャルロッテ。
ドイツ留学中に恋に落ち、博士は365日間毎日欠かさずに彼女にラブレターを送ったという。夫人は日本で、ドイツとの文化交流にも尽力し、名を残しているので、興味がある方は調べてみてもよろしかろう。
因みに本文の最後のエサキミスジが飛ぶ一節には、この夫人のイメージも重なっている。夫や子供たちを空から見守る姿であったりとか、2頭が江崎夫婦のように仲睦まじく飛んでいる姿であったりとかがリンクして、頭の中にはあった。それを文章化する事も考えたが、そうなると1から文章を組み直さなければならないので断念した。もしも、そうなってたらタイトルも『華麗なる一族』とかになっていたかもしれない(笑)
余談はまだまだあって、博士の母方は江戸時代の蘭学者として有名な杉田玄白の家系にも繋がっている。また、息子は「よど号ハイジャク事件」の時のパイロットである。その他、親戚縁者には名前がある人が多いようだ。

 

殿、御狼藉。雛ちらし寿司祭

 
昨日は雛祭でおましたなあ。
ワテは男衆やし、関係あらしまへん。
せやけど、スーパーは雛まつり一色やんかあ。
海老も特売りどすし、自分でもこさえまひょ。

海老は赤海老どした。
アルゼンチン御出身でごわす。それが1匹33円ざました。3月3日で、33円セール。イージーな語呂合わせでおますなあ。

先ずは海老の頭を取り、殻を剥きますねん。それを捨てずに熱湯にブチ込むんでっせ。海老から出汁を取るんだす。地獄の釜もさもありなん。あんじょう成仏してやってやあ~。
その出汁に海老をサッとくぐらせ、霜降りにしやし。
こうすると、海老の色が鮮やかになって甘みも増すんどすえー。
殻を取り除いて、その出汁で米を炊きまする。
で、炊き上がったら「すしのこ」かけて、ポン酢もチャチャとかけて熱いうちに混ぜ合わせましょ。人肌まで温度が下がったら盛り付けでおます。

あらかじめ作っておいた錦糸玉子をご飯の上に敷き詰めまひょ。
青物は春らしく菜の花を飾ろうと思ったのだが、スーパーの陰謀でバカ高いゆえ見送りもうした。

 

 
海老にちょぼっとお醤油をつけて食べませう。
(о´∀`о)おほほ、海老の出汁が効いてて、美味しおすなあ。
海老の頭は味噌が詰まってるので、チュウチュウしまひょ。はたから見たら、アホぼんみたいに見えまっせ。

実を申しますと、もっと絢爛豪華にしてやろ思いましてなあ、鯛の刺身も用意してたんおすえ。
せやけど、到底乗っかりそうもおまへんので、二部構成にしたんどすえ。豪華ひな祭ちらし寿司二段構えでおます。

 

 
向きが決まりまへん。
何度も器をあっちゃこっちゃ回して写真を撮りますえ。

 

 
こっちは鯛の刺身を削ぎ切りにして、白胡麻を振っただけどす。

(・∀・)……、むぅ…。
美味しいんどすえ。美味しいんどすけど、海老出汁の寿司めしがちょいと邪魔しやはります。鯛は美味しいどすけど、ちょっとだけミスマッチかもしれへんわ。

そして、お雛さんといえば、これどっしゃろなあ。

 

 
そうどす。蛤の吸いもんだす。
昆布だしに塩、酒、薄口醤油を入れて沸騰させる。
そこへ蛤姫を強引にブチ込む。

お殿様、そんなごむたいな。
やめておくれやす、やめておくれやす。
Ψ( ̄∇ ̄)Ψぬはははは…、やめてくれと申して誰がやめるものがおるかあー。お主は買われてきた身、こうなる事は百も承知であろうが、観念しいや、グフグフグフ。
体が火照って、熱おす。
堪忍しておくれやす、堪忍しておくれやすぅー。
くるくるくるくるくる~。
なりませぬ、お殿様なりませぬぅ~。
パッカァ ━━━━━━━━ ン。

口が空いたところで、やおらグッタリとなったハマグリ娘を一旦取り出す。適度な余熱で火を通すためでごしゃるよ、服部半兵衛。
で、ガッとダシ出汁の温度をあげる。煮立ったら、器に移しておいた蛤にかけて出来上がり~。

( ☆∀☆)ピキャー、美味いのう。
いやはや、この蛤の吸い物というのは堪りまへんなあ。コハク酸の旨みが心を蕩けさせ、陶然となる。柔らかな蛤の身もエロチックに美味いなりよ。
 

                  おしまい

 
追伸
いつもにも増して低能な文章を書いてしまった。
ここんとこ、蝶の話が多かったので、ストレスが溜まってたんだろね。

因みに少しだけ余った御飯は、夜に自家製の茗荷の梅漬けを乗っけて食べた。

 

 
これまた抜群に旨かったっす(*´∀`)♪

 
 

台湾の蝶27『朝倉の君(きみ)』

 
   第27話『朝倉三筋』

  
アサクラミスジに会ったのは一回だけだ。

標高約1900m。尾根筋でホッポアゲハを待っていた時だった。
ホッポが全然飛んで来なくて、クソ暑いし、グッタリ気分で所在なげに座っていたら、低空飛行で右横からパタパタ飛びでやって来た。
ミスジチョウの仲間にしては何か変やなあと思いつつ、ぞんざいに網を振ったら、こんなんやった。

 
(2016.7.11 南投県仁愛郷)

 
東南アジアでは見たこともないミスジチョウだったので、驚いた。沈みがちの心に、💡ポッと灯りがともったような気がしたのを憶えている。

 
展翅すると、こんな感じ。

 

 
今思えば、上翅を上げ過ぎたかもしれないなあ…。
触角の角度と頭の位置、および上翅との距離を基準に展翅してるから、こないな風になったんだろね。お手本が少なくてイメージがインプットされてない蝶だと、ままそんな事もあるわな。

それにしても、コレって翅が丸くて♀っぽいけど、♀なのかなあ❓
この1頭しかないので、雌雄と裏面の画像をネットから引っ張ってこよう。

  
(出典『OXFORD ACADEMIC』)

 
上が♂で下が♀である。
(゜ロ゜)ありゃま、♂も翅が円いんでやんの。困りましたなあ。
しかし、あとで調べたらどうやら♀のようだ。♂は前脚に毛が密生しているが、♀は無毛らしい。冒頭の写真の前脚は無毛だから♀でいいかと思う。根元の基節が体毛に埋まってて微妙だけど、たぶん間違いなかろう。

それにしても、やはりこの裏面はミスジチョウ類としては独特のデザインで変わってる。色も薄い。この仲間は、だいたいが焦げ茶や濃い赤茶色なのだ。

 
【ミスジチョウ】

 
【タイワンミスジ?】

 
上は日本のミスジチョウ。下は台湾のもの。
タイワンミスジ?としたのは、台湾には似たようなミスジチョウの仲間が沢山いて、同定がややこしいのだ。
まあ、たぶんタイワンミスジであってるとは思うけど。

 
【学名】Neptis hesione podarces(Nire, 1920)

Nymphalidae タテハチョウ科 Neptis ミスジチョウ属に分類される。

属名 Neptis はラテン語の『孫娘、姪』のこと。
小種名の hesione はギリシア神話の女神ヘーシオネー(ヘシオネ)が由来だろう。
ヘシオネはトロイア(トロイ)王ラーオメドーン(ラオメドン)の娘で、ティートーノス、ラムポス、ヒケターオーン、クリュティオス、ポダルケース(プリアモス)、キラ、アステュオケーと兄弟である。サラミース島の王テラモーン(テラモン)との間にテウクロスを産んだ。

ちょっと引用が長いけど、亜種名とも繋がるのでもう少し補足説明しよう。

ヘシオネの父ラオメドンは、アポロンとポセイドンを雇ってトロイアに城壁を築いたが報酬を支払わなかった。このためトロイアは神の怒りに触れ、ポセイドンは海の怪物を送り込んでトロイア人を襲せた。ラオメドンは災厄から逃れるため神託に従ってヘシオネを怪物に捧げた。そのときヘラクレスがやって来て、怪物を倒し、ヘシオネを救い出した。しかしラオメドンはヘラクレスにも報酬を払おうとしなかった。ヘラクレースは復讐を誓ってトロイアを去っていった。
後にヘラクレスはトロイアを征服し、ヘシオネはラオメドンや他の兄弟と共に捕らわれた。ヘシオネはヘラクレスに助けてほしい者を1人選べと言われ、ポダルケスを選んだ。さらに何か代償を払えと言われたので、頭からヴェールをとって代償とし、ポダルケスを自由の身にした。ラオメドンと他の兄弟たちは殺され、ヘシオネはテラモンに与えられて、その妻となる。またポダルケースはこれにちなんでプリアモスと呼ばれるようになった

亜種名 podarces は、おそらくギリシア神話のポダルケスに因んだものだろう。ポダルケースとも言い、イピクロス(ラオメドン)の子で、トロイア王プリアモス(註1)の本名でもある。
姉はヘシオネだから、何と学名に姉と弟の名前が並んでいるのだね。ちょっと微笑ましい。

この蝶は、仁礼景雄氏(1920)が1918年6月に埔里で得られた1♂をもとに、亜種として記載されたものである。
同年7月に花蓮港(花蓮県の昔の呼び名)で得られた1♀によって松村博士の記載した Neptis karenkonis は、タッチの差でシノニム(同物異名)になっている。アサクラミスジの別名カレンコウミスジは、おそらくその辺からの由来だろう。

原名亜種 Neptis hesione hesione(Leech,1890)は、「原色台湾蝶類大図鑑」によれば中国西部にいて、翅表の白帯が濃黄色を呈する。

 

(出典『jpmoth.org 』)

 
へぇ~、キミスジみたくなるんだ。面白い。
Neptisには斑紋が黄色い系統がいるのは知ってるけど、白い系統と黄色い系統はそれぞれ別な系統だと勝手に思ってた。ところがどっこい、一つの種に黄色いのも白いのも内包されてるんだね。
とゆうことは、環境、その他の要因に拠って、そもそも白にも黄色にもなり得る遺伝子みたいなものが本属の中にはあるって事なのかな?

上に示した画像の個体は、四川省で採られたもののようだ。
たぶん四川省と台湾の間には、濃い黄色と白い斑紋との中間的なクリーム色のものがいそうだ。或いは、黄色いのと白いのが両方混在する移行地帯みたいな所があるかもしれない。

杉坂美典さんのブログ『台湾の蝶』によれば、中国の南西部・南部・東部に分布しており、西蔵自治區、雲南省、四川省、湖北省、広西自治區、湖南省、広東省、浙江省、福建省に記録があるそうだ。
「原色台湾蝶類大図鑑」の時代と比べて、分布地が随分と増えている。これはその後に分布調査が進んだと云う事なんだろね。
一応、杉坂さんのサイトの分布図をお借りして貼付しておきましょう。

  
(出典 杉坂美典『台湾の蝶』)

  
この分布図ならば、ラオス北部なんかに居てもおかしかない。もしかして、コレって採った事あるのでは?
と一瞬思ったが、この特徴的な裏面からそれは無いなと直ぐに考え直した。採ってれば、この特徴的な裏面ならば憶えてる筈だもん。

 
【台湾名】蓮花環蛺蝶

花蓮じゃなくて、蓮花?
なぜ前後がひっくり返っているのかワカンねえや。
蛺蝶はタテハチョウのことだから、環はおそらくミスジチョウ属(Neptis)の模様を指しているのだろう。

別名に花蓮三線蝶、朝倉三線蝶、齒紋環蛺蝶などがある。
三線は表翅の三本の線を表し、朝倉は和名に因んだものだと推察される。
齒紋は中国の字体だけど、ようするに歯みたいな紋だと言いたいのだろう。きっと後翅裏面の鋸歯状の紋のことだね。

 
【英名】

特に無し。
英名のある蝶はヨーロッパやアメリカなどの欧米のものには当然ついているとしても、他は限られてくると云うのが現状だ。欧米以外では、インドなど欧米に植民地支配されていた地域には英名がついているものがそこそこある。あとは特別に美しいとか、非常に個性的な蝶には英名がついている場合がある。
例えば日本のオオムラサキには、「The Great Puple Emperor」という英名がついている。
一応、Neptis(ミスジチョウ)属は「Glider(滑空するもの)」と呼ばれているようだ。
例を挙げると、コミスジには「Comon Glider」という英名がある。Comonは「普通の」とか、「民衆の」とかだね。Gliderは、おそらくその飛び方に対しての命名だろう。ミスジチョウは余り羽ばたかずに、スウーッ、スウーッと滑るように飛ぶからだろう。

と云うワケで、勝手に独断と偏見でアサクラミスジにも英名をつけてしまおう。

取り敢えず『Muse Glider』なんてのはどうだろうかしら❓「女神」由来でつけてみた。
悪かないけど、自分的には今一つシックリこない。

ならば、『Princess Glider』。
なんて、ヽ(・∀・)ノでや❓
プリンセスはお姫様とか王女と云う意味だから、トロイの王女には相応しい。それにアサクラミスジはミスジチョウとしては小さい。姫と云うイメージにも合致する。しかも稀種なれば、異論はそうはなかろう。

蛇足だと思うけど、台湾亜種にも英名をつけちゃおう。
『Last Troy King』。
トロイの最後の王だからなんだけど、捻り一切無しだな。他に良いのが浮かばないし、暫定ということで、次へ進みましょう。

 
【生態】
開長45~52㎜。♀は、若干翅形が丸くなり、♂は前脚に長毛が密生し、♀は無毛なので区別できる。
台湾では、北部から中部の低山地から高地(300m~2500m)にまで見られるが、その分布は局所的。
『原色台湾蝶類大図鑑』によれば「個体数は極めて少ないものと思われる。」とある。
同図鑑によれば、発生期は年一化。成虫は6~9月に発生するとされている。一方、杉坂さんのブログには、成虫は3月下旬~9月上旬に現れ、羽化期にかなりのズレがあって長期にわたって見られることから、発生回数が複数である可能性もあると云う見解を述べておられる。

成虫は各種の花を訪れ、獣糞にも集まる。♂は吸水にも訪れるようだ。
一度しか採った事はないが、おそらく基本的な飛び方は他のミスジチョウ類と同じで、そう速くはないだろう。飛ぶ高さも概ね低いと思われる。

 
【食餌植物】

2016年に、以下の論文で台湾産のアサクラミスジの生活史が明らかになったようだ。

Huang, C. L. & Hsu, Y. F., Immature Biology of Nep-
tis hesione podarces(Lepidoptera: Nymphalidae)
in Taiwan, With Discussion on Its Frass Chain
Function. Annal. Entomol. Soc. America. 109(3):357
-365<D>

表題訳は「台湾産アサクラミスジの生活史」。
これにより、本種の食餌植物がクワ科イタビカズラであることが正式に発表された。

ネットで調べたら、Ficus sarmanetosaと出てきたから、それで再度検索しなおしたら、ネパール原産の食用イチジクが出てきた。食用イチジク❓
んなもん、台湾にだってあるだろう。なのに何でアサクラミスジは稀種なんだ❓ワケワカンねえなあと思って、今度はイタビカズラで検索したら漸くらしきものが出てきた。

見ると、実が小さい。ようするに、食用イチジクと聞いて日本の食用イチジクを想像してたワケである。
その後、ちゃんとした食樹名もわかった。

珍珠蓮 Ficus sarmentosa nipponica

 

(上3点とも出典『松江の花図鑑』)

 
日本のものと同じ学名だから、同種みたいだ。
このイタビカズラは新潟・福島から沖縄まで分布する。蔓(つる)性植物ゆえに最近は壁面緑化にも使われているようだから(註2)、誰かが放蝶すれば日本でも定着するかもしれない。誰ぞか、そゆ事しないかなあ(笑)
でも滅多に採れない蝶だし、ましてや♀を捕まえるのは至難だろう。それを生かして日本まで持って帰り、さらに卵を産ませて飼育して、数をある程度累代で増やしてからでないと放蝶はできないだろう。
ハードル高いから、無理っぽいネ。

Neptis属の食餌植物は、マメ科とアサ科(旧ニレ科)のエノキ類が多い。他にアオギリ科をホストとするものもいる。しかし、知る限りではクワ科の植物を食うものはクロミスジ(Neptis harita)くらいしか知らない(註3)。ミスジチョウの仲間としては珍しいクワ科の植物を食樹とする事が、幼生期の解明が遅れた原因の一つともいえるだろう。

 
【幼生期】

最近になって幼生期が判明したので、いつも御世話になっている『アジア産蝶類生活史図鑑』にも、もちろん載っていない。
しかし、探したら台湾のサイトに画像があった。

卵はこんなのです↙。

 
(出典『圖錄檢索』)

 
ちょっとイナズマチョウの卵に似てるけど、典型的なミスジチョウ属の卵である。
デザイン性があって、中々キレイな卵だ。蝶の卵って色んな柄や色と形があって、アートだと思う。

 
幼虫はこんなの↙。

  
(出典『圖錄檢索』)

  
たぶん終齢幼虫だろう。
(^_^;)グロいなあ…。怪獣みたいやんけ。
左が尻で、右が顔みたいだね。
顔だけ白いって、何なん❓

とはいえ、基本的な形態はミスジチョウ属の幼虫だ。
ホシミスジの幼虫に少し似ているかもしれない。近縁と思われるエサキミスジやイケダミスジの幼虫画像は見つけられなかった。参考までにミスジチョウの幼生期を紹介しておこう。

 

(出典 手代木 求『日本産蝶類幼虫・成虫図鑑 タテハチョウ科』)

 
この属独特の顔が笑える。なんちゃってバットマンというか、キャットウーマンというか、はたまたなんちゃってクリオネというか、顔にしまりがなくてダサい。まあ、愛嬌はあるけどね。

残念ながら、なぜか蛹の写真は無かった。
でも幼虫の形態からして、おそらく近似種とそう変わらないと推察する。仕方がないので、ミスジチョウとホシミスジの蛹の画像を貼付しておきましょう。

 

 
(出典 手代木 求『日本産幼虫・成虫図鑑 タテハチョウ科』)

 
上がミスジチョウで、下がホシミスジです。
色も形も少し違うが、基本的には同じような見てくれだ。
だが、アサクラミスジの方が幼虫にワサワサした突起物が多いから、もしかしたら蛹にも何らかの突起物がある異形の者かもしれない。
稀種は稀種ゆえに幼生期も特別なもので、他のモノとは一線を画す個性的な姿であってほしいよね。

 
 
       君が飛ぶ
       日長くなりぬ
       山たづね
       迎えへか行かむ
       朝倉の君(きみ)

 
アサクラミスジとも随分と会っていない。
2016年の夏だから、もう二年以上も経っている。
それも、たった一度きりの逢瀬だった。
今度はいつ逢えるのでしょうか、朝倉の君よ。

 
                  おしまい

  
追伸
今回は、前回のアサクラコムラサキに引き続いてのアサクラ並びで、稀種並びでもある。
当初は残り3つのコムラサキ亜科のどれかを書く予定だったのだが飽きた。本当は読み手のことを考えて、同じ系統のものは纏めて書くべきなのだろうが、このペースだとタテハチョウ科から抜け出すのだって膨大な時間を要するのは明らかだ。と云うワケで、これからも書きたい蝶のことをアトランダムに好きに書いてゆくつもりであります。

アサクラミスジについては、採集記が別ブログにあります。

 
発作的台湾蝶紀行32『(-“”-;)ヤッチマッタナ!』

 
また、本ブログ内に関連記事あり。

 
台湾の蝶10 オスアカミスジ

 
よろしければ、併せて読んでくだされ。

 
最後の創作和歌については、註釈の(4)としてに末尾に解説しておきます。

(註1)プリアモス
ギリシア神話におけるトロイの最後の王。ラオメドン(イピクロス)の息子。トロイがヘラクレスに攻略された時に父王らは殺されたが,彼は幼かった為に命拾いをし,のちに王位を継承した。最初,アリスベを妻としたが,その後ヘカベを妃に迎え,彼女との間にヘクトル,パリス,ポリュドロス,クレウサ,ポリュクセネ,カッサンドラらの子をもうけた。トロイ戦争ではヘクトルをはじめ息子たちの戦死にあい,自らは落城の際,アキレウスの息子ネオプトレモスに殺され,妻や娘たちは捕虜としてギリシア方に連れ去られた。

  
(註2)最近は壁面緑化にも使われている
イタビカズラも使われるが、より葉の大きいオオイタビカズラの方がよく使われるらしい。
オオイタビ(Ficus pumila)はクワ科イチジク属の常緑つる性木本。東アジア南部に分布し、日本では関東南部以西、特に海岸近くの暖地に自生し、栽培もされる。茎から出る気根で固着しながら木や岩に這い登る。オオイタビの名は、イタビカズラに似て大型であることによる。台湾に生育する変種のアイギョクシ(F.pumila var.awkeotsang)は果実を食用に用いる。愛玉子と書き、その果実から作られるゼリーのデザートをオーギョーチ(台湾語のò-giô-chíから)という。
 
(註3)クワ科を食うものはクロミスジしか知らない
「アジア産蝶類生活史図鑑」に拠れば、食餌植物はクワ科の植物であろうと云う推論の域でしかない。マレー半島で幼生期が解明されたのだが、植同定が極めて難しい植物らしい。と云うことはクワ科だとしても、イチジク属ではない可能性が高いのではなかろうか。

(註4)創作和歌について
万葉集の歌のパクリです。
原典は磐之媛命(磐姫皇后)が仁徳天皇に宛てて詠んだもので、『君が行き 日長くなりぬ 山たづね 迎へかん 待ちにか待たむ』です。
訳すと「あなたと離れてからずいぶん長い月日が経ってしまった。あの山道をたずねて迎えに行こうかな。やっぱり待っていようかな」といった意味です。
これは謂わば嫉妬の歌で、妾宅に行ったまま戻って来ない天皇に対するサヤ当ての歌でもあるようだ。
因みに文中の和歌はアサクラミスジを男性ではなく、女性に見立てておりまする。

余談だが、飛鳥時代の豪族に朝倉の君と云う人がいて、光徳天皇に可愛がられたそうだ。
正確な名は不明で「日本書紀」によれば、東国国司の長官 紀麻利耆拕(きの・まりきた)らに勝手に馬の品定めをされたり、弓や布を取り上げられるなどのイジメをうけていた。彼らは罪に問われたが、結局恩赦をうけて罰せられなかったようだ。何か現代社会でもありそうな話で、可哀想だぜ、朝倉の君。
でもイジメたくなるような人だったのかもしれんね。

そういえば、朝倉といえば戦国大名の朝倉義景を頭に浮かばれた方もいると思うが、今回の朝倉の君のモチーフにはなっておりませぬ。あんなダメ大名は無視なのじゃ。

 

小女子の季節

  
新子の季節がやって来た。

 
表題をよほど「新子の季節」にしようかとも思ったが、新子にしてしまうと関東では別な魚のことになるから諦めた。
関東で新子といえば、寿司ネタの小肌(こはだ)の更に小さい奴のことを言う。
因みにコハダはコノシロのことだ。出世魚の一つで、その大きさによって名前が変わる。

小女子は「こうなご」と読む。関東ではイカナゴの稚魚のことをそう呼んでいるようだ。
関西では、この稚魚のことをイカナゴとか新子と呼んでいる。神戸方面の人たちは、これを甘辛く煮たものを「イカナゴの釘煮」と呼んで、偏愛している。
成魚のことは、関西ではカマスゴやカナクギと呼ぶ。他の地方では、それぞれまた違う呼び方がされているみたいだから、まことにややこしい。
この魚介類の名前の乱立に関しては、時々ウンザリする。混乱を引き起こすだけなんだから、いっそのこと統一しろよなと思う。でも、実際に統一されてしまえば、何だか味気なくなるだろう。何でもかんでも整理してしまえばよいと云うものでもない。多様性のない世界は無味乾燥な世界でもあるのだ。
しょっちゅう、蝶の名前の乱立で文句を言ってるオイラだが、それとコレとは違う。アタクシ、魚介類の名前の乱立は容認します❗

前置きが長過ぎた。本題に入ろう。

五日ほど前に新子の走りを見つけた。
400円足らずと、ちと高い。けど、一点しか売ってなかったし、即飛びついた。
この季節の新子が、こんまくて一番美味いのである。

冒頭の写真を見てもらいたい。
こんなの、どんな網で獲ってるんだ?と思うくらいに、とにかく小さい。
コヤツには最初は何も手を加えず、そのまま食うことをお薦めする。はんなりした柔らかさで苦味が少なく、繊細な味で、誠に美味いんである。

 
第二投は、大根おろしあえ。

 

 
もちろん大根おろしは辛味大根か、普通の大根を皮ごと擦りおろす。辛くない大根は認めない。

半分は、そのまま食う。
そして、飽きてきたら醤油をかける。

 

 
醤油をかけたものは、炊きたて熱々の白い御飯に乗っけて食うのも、いと旨しである。

余談だが、しらすと大根おろしの食い合わせはヨロシクないらしい。しらすには体の成長に関係する必須アミノ酸のリジンが含まれてるんだけど、大根にはこのリジンの吸収を阻害する物質が含まれているらしい。
とはいえ、一方では大根にはしらす干しに含まれているカリウムやカルシウムの吸収を活発にするビタミンCも含まれているそうだ。
この矛盾を解消するためには、お酢をかければ解決するらしい。
(#`皿´)ッタラー❗❗
ゴメン、悪いけどシラスおろしにそんなことは一生涯しないと思う。

 
第三投は、オリーブオイルあえ。

 

 
エキストラ・ヴァージンオイルをチャラっとかけて、混ぜるだけ。
味見をして薄いと思ったら、塩をチョイ足されたし。

これは酒の肴のエントリーに相応しい。ビール、日本酒、焼酎、白ワイン、酒なら大概のものなら合う。

 
一昨日も別なスーパーで見つけたので、即買い。
今度は二点しか売ってなかった。このサイズのものは入荷が少ないのだ。後述するが、瀬戸内辺りではまだ漁獲が解禁されていないのでありんす。

 
今回も先ずは何も加えずに食う。

 

 
そして、第二投も何も加えずに食う。
今さらながら、それが一番美味いと思い出したのだ。
しかも出回る時期はごく短い。季節の刹那をシンプルに味わうとしよう。あれこれするのは、後に出てくるもっと大きなサイズの時にいくらでも出来る。

 

 
奥さん、もしこの小さい新子を見つけたら、迷わず買いですぞ(*`Д´)ノ!!!
身悶えしながら、春の刹那の味覚を堪能されたし。

とはいえ、解禁後に出回るであろう新子でさえも簡単には口に入らないかもしれない。
去年、一昨年と瀬戸内海での漁獲が激減しているんだそうである。他の地方でもそうみたい。
乱獲や生息環境の悪化および海砂の採集による生育適地の破壊などが原因らしい。乱獲に拍車が掛かっているのは、TVのせいで全国的にその旨さが認知されたのもあるだろう。
だから、伊勢湾や瀬戸内海では年ごとに生育度合いや推定資源量を調査し、その年の漁獲量を決定しているそうだ。
明石辺りでは数日前に既に調査が終了していて、去年、一昨年並みらしい。それで漁期を決めるらしい。
つまり、今年も不漁が予測される。

今年の神戸方面の新子の解禁は3月5日(火)だそう。
中々、今年は口に入りそうもないけど、このニュースが入ってくると、いよいよ春の訪れだなと思う。

 
                 おしまい