奄美迷走物語 其の十

 
第10話『メリーゴーランドは回り続ける』

 
2021年 3月27日

夜は天気が悪かったが、朝になると再び晴れだした。
誤算続きだが、それだけがまだしもの救いだ。

連日通った根瀬部に行くか、それとも朝からあかざき公園に行くか迷ったが、あかざき公園を選択した。
理由の第一は、根瀬部でフタオチョウを狙っても網が届かない事を痛いほどに知らしめられたからだ。今のところ、それに対する打開策もない。となれば、行っても結果はまた同じで、返り討ちになりかねないと判断したのだ。
と言っても、あかざき公園のフタオのポイントは知らない。知らないが、樹高は根瀬部よりも比較的低い。ゆえにポイントを探しあてれば、何とかなるんじゃないかと考えたのだ。

 
【フタオチョウ 夏型♀】

 
第二の理由は、昨日あかざき公園でアカボシゴマダラを見たからだ。根瀬部では見ていないから、まだ発生していない可能性がある。つまり、あかざき公園ではフタオとアカボシの両方を見ているだけに、2種類とも採れるチャンスがあるのではないかと考えたのだ。

 
【アカボシゴマダラ 夏型♀】

 
第三の理由は、あかざき公園にはイワカワシジミの食樹が沢山ある。なのでフタオを早々とゲットできれば、素早くそっちの探索に切り替えられると思ったのだ。この2種が落とせれば、あとは一番難易度が低いアカボシだ。夕方に占有活動をとるから、それに会えさえすれば何とかなる。あかざき公園のアカボシは何度も採っているので、ワシの網でも届く場所を知っているのだ。判断が置きにいってるきらいもあるが、決めたならば突き進むしかなかろう。3種類とも採れれば、走者一掃の逆転スリーベースだ。今までの誤算と失態を全てチャラにできる。俺なら、それが出来る❗キャシャーンがやらねば誰がやる❗

 
【イワカワシジミ】

 
今回の旅では、朝からあかざき公園に来るのは初めてだ。
意外にもアマミカラスアゲハが結構いる。

 
【アマミカラスアゲハ 春型♀】

 
道路沿いが蝶道になっており、飛ぶ高さも低い。取り敢えず♂でもいいから採りたいという人には、お薦めの場所かもしれない。
けれどもミカンの花は見た限りではないから、♀を採るのは難しいかもしれない。ちなみにアゲハ類が好きなツツジの花は一部で沢山咲いている。しかし吸蜜に訪れたものは雌雄ともに一つも見ていない。但し、ずっと花場で張っていたワケではないから偶然見かけなかっただけなのかもしれない。ゆえにコレに関しては情報を鵜呑みにはなさらぬように。

取り敢えず、道路の一番奥まで行ってみた。ここまで入ったのは初めてだ。実を言うと、秋に来た時には直ぐにアカボシのポイントが見つかったので、ポイントを探して公園全部を隈なく歩いてはいない。

 

 
やっぱ、奄美の海はキレイだ。
たぶん半島の左側の集落が知名瀬で、山の向こう側が根瀬部だろう。
海の手前の林縁の連なりを暫し見渡す。いかにもフタオやアカボシがいそうな環境に見えたからだ。ここなら見渡しが良いから、ワシの千里眼ならば居ればすぐにワカル。段々ヤル気が出てきたよ。本気になれば、新たなポイントも見つかるだろう。

しかし、30分くらい居たけど姿なし。仕方なく他を探すことにする。(・o・)何で❓ 結構、ポイントを読む能力には自信あったのになあ…。どうやら完全に迷路の住人だ。足元の砂が波に崩れてゆくような感じだ。徐々に自信と時間が削り取られてゆく。

 

 
そういやレンタルバイクの写真を1枚も撮ってないなあ。
そう思って、今更ながらに撮る。ようするにヒマなのである。フタオもアカボシもイワカワも1つもおらん。

 

 
思うに、この赤いメットが全ての元凶なのかもしれない。以前は名瀬でレンタルバイクを借りていたのだが、その時にいつもカブっていたメットが験担ぎ(げんかつぎ)のアイテムみたいになっていた。

 

 
(-_-メ)ワリャ、シバキ倒すぞ❗
である。

 

 
この💀ドクロマークが気にいってて、当時は何かパワーの源みたいになっていたのだ。謂わば気合い注入装置みたいなもので、これをカブると心にビシッとキックが入ったのだ。でもって、バンバンに蝶が採れたのである。
だが、そのレンタルバイク屋は廃業したから、今や借りたくとも借りられない。べつにモノに頼って採集しているワケではないけれど、ある程度はモノや物事には依拠はする。自分の心を強化するために使えるものは何でも使う主義なのだ。前向きになれる材料を積極的に取り込まなくては、弱い人間は簡単に心が折れかねないのだ。
世の中には、本当の意味で強い人間は存在しない。いるのは、弱い人間と強い振りができる弱い人間だけだ。

今まで気にも止めていなかったが、ふと見るとナンバープレートが可愛い。なので、つい写真を撮ってしまう。

 

 
デザインにアマミノクロウサギとヒカゲヘゴがあしらわれている。そして下側には「世界自然遺産へGo!!」の文字がある。
そういや、宿のオジーが「島では、十年ほど前から毎年のように世界遺産、世界遺産と騒いでいるが、もはや何も期待していない」云々みたいなことを言ってたな。
その後、大阪に帰ってから奄美大島と徳之島、沖縄本島北部が世界自然遺産に7月に選定されることが5月にほぼ確実になった。喜ばしい事ではあるが、観光客がドッと押し寄せて来て、かえって自然破壊が進まないことを祈ろう。
そして正式決定すれば、どうせ採集禁止種や禁止区域がまた増えるんだろね。そのくせリゾートホテルの建設とかは野放しで、平気でバンバンに木を伐って、ポコポコ建ちそうだけどさ。所詮、世界遺産も経済の発展を目論んでのもので、それ無くしては推進されない面があるのだ。嘆かわしいが、金儲けが全てにおいて優先されるのが現代社会なのである。
エコとかも、所詮は金儲けの手段にすぎないと思ってる。ヤシの実洗剤やヤシの実石鹸のせいで、どれだけの貴重な森が伐採されてパーム椰子(アブラヤシ)畑に変えられた事か。今や東南アジアは何処もパームとゴムの木だらけだ。何が「手肌と地球に優しい」だ。偽善じゃないか。正義の御旗を偉そうに振る奴にロクな者はいない。

結局、探しあてられずに慰霊塔へ行く。

 

 
でも、見せ場なしのノールック、ノーチャンス。
結局、フタオ、アカボシ、イワカワのどれ1つとさえ見ること叶わなかった。見もしないものを採れるワケがない。
だとしても、何が「キャシャーンがやらねば誰がやる❗」だ。ちゃんちゃらオカピーだ。偉そうに啖呵(タンカ)切っといて、結果がコレかよ。
(;_:)あー、もう何をどうしたらいいのかワカンナイや。
まるで同じところを延々と回り続けるメリーゴーランドの馬に乗ってるような気分だ。何処にも行けないし、何処にも辿り着けない。

                         つづく

 
追伸

話は尚も続く。
ネットの天気予報の全てが夜からは雨マークだったので、今宵も夜間採集には出ないことにした。たとえ雨じゃなくとも、どうせ多くは望めない。こんな体たらくだと、さらなる返り討ちにあって、益々惨めな気分にさせられるだけだ。

今朝にはラーメン大好き小池くんも東京に帰ってしまったし、ゲストハウス涼風には誰も今夜も遊びに来ない。連日のパーリーがウソだったんじゃないかと云うくらいの落差だ。
それでも昨日よりかはマシか…。入れ替わりに、新しく東京から来た医大生と二人組の若者が増えた。何れも虫屋である。医大生のSくんに、若者2人が興奮していた。虫屋でツイッターをしている者ならは、誰でも知ってる有名人らしい。そうゆうSくんも、ブログやFacebookでワシのことを知っていたので驚いた。まあまあワシも有名らしい。ホンマかいな❓
若者2人は最近になってツイッターで知り合い、それぞれ大阪と東京に住んでいるのにも拘らず、奄美大島に一緒に来たという。意気投合したのだろうが、ネット上で知り合って、しかもまだ日が浅いのによく二人で旅行なんて出来るよな。知らない人がネット上でワシのことを知っているという事も含めて、オジサンには考えられない世界だ。時代は虫屋の世界でも急速に変貌しつつあるのだ。
ちなみに医大生は蝶屋、若者2人は甲虫屋で、大阪の子がカブトムシとクワガタ好きの所謂(いわゆる)カブクワ屋。東京の子は驚きの「ドロムシ屋(註1)」だった。あっ、ドロムシ云々は間違ってたらゴメン。たぶんそれであってる筈だけど、あまりにも興味がなかったゆえ、テキトーにしか話を聞いていなかったから断言はできない。それでも水溜まりとかにいる極小の甲虫だと言ってた覚えがあるので、ドロムシ&ヒメドロムシハンターであってると思う。

それはさておき、若いのにいきなりマイナーな虫から入るってのも驚きだ。通常は蝶とかカブクワとかカミキリムシなどのメジャーな虫から入って、徐々にマイナーな虫へと興味の対象が移行してゆくものだからね。小太郎くんから、最近はそうゆう若い子が増えていて、知識量も相当あるとは聞いてはいたが、ホントだったんだね。そういや、医大生くんはドロムシの話に全然ついていけてたな。小太郎くんもそうだけど、若い子はオールラウンダーが多いのかもしれない。だとしたら、ポテンシャルは高い。

若者二人組が唐揚げ(何の唐揚げだったかは忘れた。或いは天ぷらだったかもしれない)を作り始めた。でも料理作りに慣れていないせいか、見てらんないくらいの出鱈目っぷりだった。本人たちからすれば上手くいったみたいだが、オラからすれば、どうみても失敗作だ。
かなり酔っ払っていたが、それを見て若者たちに美味いもんを食わせてやろうとカッコつけたのがいけなかった。ここで、この日最後にして最大の誤算が起こる。
タコに軽く火を入れて霜降りの半生状態にしようと思い、酒と水とでサッとボイルした。それをザルにあけて冷水で冷やすために鍋をシンクに素早く移動させようとイキってノールックで振り返った時だった。

💥( ゚∀゚)o彡ガッシャーン❗

あいだにあった洗い物の山にガーンと鍋がぶつかって、その勢いで熱湯が大きくハネて、ワシの胸に思いきしかかったのだ。
酔っ払ってるので、そんなに熱くは感じなかったが、一応洗面所に行って水で冷やした。
しかし時間が経つにつれてジンジンと痛みだした。それでも酔っ払ってるので、その時はたいした事ないだろうと思ってた。でも翌朝みたら、『北斗の拳』のケンシロウみたく左胸の上から右胸の下にかけて、斜めザックリに大きな火傷キズができてた。
誤算のドミノ倒し、ここに極まれり。まさか自分が奄美大島に来て火傷を負うとはミジンコほどにも思ってなかったよ。目的の蝶が採れないのも全くもって想定外ではあったが、大きな枠組からみれば想定内ではある。天気がずっと悪かったとか、網がブッ壊れただとかのアクシデントは、パーセンテージとしては低いものの、充分あり得るからね。でも火傷するなんてウルトラ想定外の大誤算だ。又しても誤算続きの一日で、最後の最後にはコレかよ❓
(ㆁωㆁ)白目、剥きそうやわ。
迷走と誤算のループは、リインカネーションのように負のエネルギーを再生し続けている。

                     つづくのつづく

 
一応、その時の料理の画像を貼っつけておく。

 
【蛸の霜降り ニラ醤油漬け】

 
勿論、若者たちには好評であった。
しかし、今となっては細かい記憶が曖昧だ。
ニラはスーパーで2束60円くらいで売ってたものだ。それは憶えているのだが、酔っ払ってたせいか肝心の料理のレシピが思い出せない。火傷したんだから、流石にタコを霜降りにしたのは憶えてる。問題は味付けだ。ワシが醤油だけで味付けするなんて事は有り得ないから、酒とか味醂を入れたのだろう。或いは冷蔵庫にあった袋入りの何かのタレ的なものを使って醤油と混ぜて調整したのかもしれない。
あと、画像を見ると上に香辛料らしきものが乗っている。コレの正体もワカラン。全く記憶にないのだ。色からして生姜や辛子ではない。となると柚子胡椒か山葵だろう。
まあ、若者二人は喜んでくれたし、自分の記憶でも旨かったという事だけは残ってるから、まっいっか。
 
今回もカタルシスがなくて、誠に申し訳ない。特に今回は何ら盛り上がるシーンもなかったから、尚のこと読み手側はツマランかっただろう。ホンマ、すいませんm(_ _)m
しかし事実であってフィクションではないんだから、仕方がないのである。

 
(註1)ドロムシ屋
ドロムシとは、ドロムシ科とヒメドロムシ科に属する甲虫の総称。世界各地に分布し、一部を除き水生で、夜間に活動する。日本にはドロムシ科が3種、ヒメドロムシ科が45種前後産することが知られている。

 
【ムナビロツヤヒメドロムシ】

(出展『mongoriz‐2のブログ』)

 
極小昆虫だ。下に方眼紙が敷いてあるので、如何に小さいかがよくわかりますな。敬意を込めて言うが、こんなの採るなんて変態だ。裏を返すとスゴい事だと思う。探すの大変そうだもんね。とてもじゃないが、自分には真似できない。
で、そのドロムシやらヒメドロムシの愛好家のことを「ドロムシ屋」と呼ぶ。虫好きの間では、この「〜屋」という言葉がしばしば用いられ、各ジャンルのマニアの称号として後ろに付けられる。例えばワシならば「蝶屋」だ。つまり蛾好きなら「蛾屋」、カミキリムシ好きなら「カミキリ屋」、カブトムシ&クワガタ好きならば「カブクワ屋」ってワケだすな。

冒頭の説明では簡素すぎるし、ちょっと興味が湧いたので、もう少し調べてみることにした。

ネットの『山陰のヒメドロムシ図鑑』によると、以下のように書いてあった。
「分類上はコウチュウ目のヒメドロムシ科・ドロムシ科に属しています.体長1-5mmほどの小さな甲虫です.川の底にすんでいて,石や流木などに,鋭いツメでつかまっています.呼吸は水中の酸素を直接取り込むとされています.外見からはあまり水生昆虫らしく見えませんが,高度な呼吸方法を持っている昆虫なのです.山陰の川にはたくさんのヒメドロムシがすんでいますが,あまりに小さいため,これまでほとんど注目されていませんでした.さらに調査を行えば,きっとたくさんの発見をすることができるでしょう.」

高度な呼吸法について補足すると、この類は一般に体の下面に微毛が密生し、そこに蓄えられた空気の薄い層が気門と連なることによって水中で呼吸が可能なんだそうだ。なので水底にある石に付着したり、砂中に潜っていることができるんだとさ。尚、幼虫も同じく水生である。

いずれも10ミリメートル以下の小さな甲虫で、殆んどの種が長めの楕円形から細長い形であるが、卵円形のものもいる。殆んどの種が暗色だが、淡色紋を有するものや全体が明るい褐色のものもいる。肢は細長いが、ツメは大きく発達し、岩などに掴まるのに適している。触角は多くは糸状であるが、一部の種、特にドロムシ科では太くて短く、棍棒状をなす。

ドロムシ・ヒメドロ類を採集するには大きく二つの方法があるそうだ。一つは灯火採集法(ライト・トラップ)。多くの種が灯りに集まる習性があるので、それを利用するというワケだね。
しかし灯りには来ない種もいるから、そういう種は川から直接採集する。謂わば正攻法ですな。これが2つ目の採集方法。
成虫は川底の石などにくっ付いているから、川底を撹拌してやると体が浮き上がって下流へと流されてゆく。しかし鋭いツメを持っているので、すぐさま石や流木などに掴まることができる。その直ぐモノに掴まる習性を利用して、流れ下るのを底に穴をあけた目の細かなネットや手ぬぐいなどの白布を使ってキャッチするんだとさ。
ふ〜んである。世の中には色んな虫がいて、それを工夫して採られている方もいるんだね。

余談だが、以前は奄美のムナビロツヤヒメドロムシは別亜種とされてきたが、近年になって別種として分けられ(Jung&Bae 2014)、「リュウキュウムナビロツヤヒメドロムシ」という新たな和名が付けられている。東京のドロムシ屋の子は、たぶんコレを採りに来たんだろね。
それにしても、クソ長い名前だよなあ。なんと数えたら16文字もあったわい。亜種から別種に昇格したゆえ、やむなしなところはあるが、もちっとネーミングに工夫があってもいいんじゃないかと言いたくなる。このクソ長い和名問題は他にも多数あるから、そうゆうのを見るたびに軽い苛立ちを感じるよ。虫屋って全体的にセンス悪い人が多いんじゃないかと勘ぐりたくもなる。まあ、子供の名前も同じようなものだから、虫屋だけじゃないんだろうけどさ。

 

奄美迷走物語 其の九

 

 第9話『誤算のドミノ倒し』

 
2021年 3月26日

翌日も快晴だった。
でも予報では明日からまた天気が崩れるらしい。と云うことは今日もしもフタオチョウやアカボシゴマダラが採れなければ、ワヤムチャ暗黒星雲の只中に呑み込まれるやもしれぬ。こっちへ来てからの天気は基本的にグズつきがちだから、この先ずっと雨が続くことだって有り得るのだ。
そうと解っているだけに気合を入れねばイケんところだが、気持ちは「なんくるないさ」だ。昨日、フタオの飛行ルートは読めたし、経験上アカボシは発生し始めさえすれば楽勝で採れると思ってるから全然追い込まれていないのだ。サクッと終わらせて、とっととイワカワシジミの探索に力を注ごうとさえ思ってた。でもって夜にはアマミキシタバも落として、今日一日で目標を全部達成してやろうとまで企んでいたのである。

 
【Polyura weismanni フタオチョウ 春型♂】

【同♀】

(出展『日本産蝶類標準図鑑』)

 
【夏型♂】

【同♀】

 
【アカボシゴマダラ Hestina assimilis 春型♂】

【同♀】

(出展『日本産蝶類標準図鑑』)

 
【夏型♂】

【夏型♀】

 
午前10時前に根瀬部に到着。

 

 
とりあえずバナナトラップをかけて回る。昨日、用意しなかったのは単に二日酔いで頭が回らず、持って来るのを忘れたからだ。べつになくても採れると思ってたから、さして気にも留めてなかったけどさ。それにそもそも春はフタオもアカボシもトラップにあまり誘引されないと言われている。それを知っていたのも大きな精神的瑕疵にはならなかったのだ。
でも今日は確実を期してトラップを用意した。奄美在住の標本商Fさんも春はトラップには来ないと言っていたが、全く誘引されないなんて事はないだろう。春型だけが餌を摂らないなんて事は有りえへん。エナジー補給なしでは活動でけんがな。何かは食っている筈だ。だいたい春と夏とで習性がそんなにも変わるだなんて俄(にわか)には信じ難い。そんなもん、蝶における都市伝説みたいなもんじゃないのぉー(´ε` )❓
それに『蝶屋(Tefu−ya)のブログ』には、春型のフタオチョウについて、こうも書かれてあった。

「しかし、習性は異なり、1化(春型のこと)は極端に敏感で、上空を旋回、飛翔する個体に合わせてネットを持った採集者など、地上で動く人がいたら100%近くトラップどころか下方には降りてこない傾向のため、トラップ設置場所から多少離れた周辺のミカン畑でカラスアゲハ、ミカドアゲハ、ジャコウアゲハ、ナガサキアゲハ、アオスジアゲハ、また、林道沿いの林縁などではスミナガシ、アオバセセリ、クロセセリ、イワカワシジミなどを採集し、1時間前後してからトラップを見回る。一方2化は周辺に採集者がいても仕掛けたトラップ前方空間を低空で旋回し、空中戦でも容易にネットイン可能である。」

ようするに春には来ないワケではなくて、単に用心深くて中々寄ってこないって事だ。ならばコチラも用心深くしていれば、何とでもなる。テリトリー待ち採集とバナナトラップの2本立てでいけば、どちらかで採れるだろう。

さておき腹が減っては戦はできぬ。
トラップをかけ終わっところで腹ごしらえ。

 

 
今日はカツカレーにした。
カツと勝つをかけたワケやね。我ながら古典的な願掛けだと思うけど、気持ちを少しでもアゲアゲにしようというささやかな努力なのだ。こういう細かな事が意外とメンタルを底支えしてたりもするからね。
しかし、テンションは1ミリも上がらない。見た目が旨そうだったから期待したのに、味は可もなく不可もなくってところで見事に裏切られた。これまた誤算だよ。旨かったら、よし今日はイケるぞ!とか士気も少しは上がるのにさ。こういう小さな躓きばっかで、今一つ波に乗れないのかもなあ。

午後11時になった。
そろそろ飛び始める時刻だが、でもフタオちゃんは姿を現さない。まあ、そのうち飛んでくんだろ。なんくるないさ。

午後12時を過ぎた。
それでも飛んで来ない。絶好の採集日和なのに、まさか1つも飛んで来ないだなんて想定外の誤算だ。( ;∀;)なしてー❓いったい何が起きているのだ❓理由がワカラナイ。まさかの鬼日❓蝶採りをやってると、たまに天気、気温、湿度、時期など全ての条件が揃っているのに、全くターゲットが姿を現さないことがある。そうゆう日を業界では鬼日と呼ぶのである。

村のおじーとおばーが歩いてきたので挨拶する。
『何、採っとるのー❓』
『蝶ちょですぅー。でも目的の奴が全然飛んできまへーん。』
『頑張りんさいねー。』
『ハーイ、頑張りますですぅー。』

ちょっと元気が出た。旅での現地の人とのふれあいは心が和むものだ。だから挨拶は大切だ。なのにロクに挨拶もできない虫屋が多すぎる。ゆえに現地の人に嫌われて採集禁止に繋がったりもするのだ。見ず知らずの人間が挨拶もなく自分の土地をウロウロしてたら、誰だっていい気はしないだろう。
過去にも度々言っているが、挨拶できない奴はクズである。

午後1時。
(◎o◎)ほぇ〜、ホント何が起こっておるのだ❓全く飛んで来ないし、トラップも閑古鳥だ。フタオどころかハエ1匹寄って来ない。
トラップに何か不具合でもあるのかと思って鼻を近づけて匂いを嗅いでみるが、良い感じに発酵していて申し分ない状態だ。なして❓ やはり春はバナナトラップに寄って来ないというのはホントだったんだね。解せないが、事実として受け容れざるおえない。
そうゆうワケで、あまりにもヒマなので少し周囲を歩き回ることにした。

道に出て暫く歩くと、木の梢から蝶が飛び立った。

( ゚д゚)いたっ❗❗

ひと目みてフタオだと解った。もう昨日みたいに他の蝶と間違うことはない。アホはアホなりにちゃんと学習しているのだ。
多分、昨日の個体に違いない。キミ、ここに居たのね。
しかし軽く旋回したかと思うと、直ぐにまた梢に戻って静止した。

 

(正面の木、右梢の一番高い所の右端に羽を閉じて止まっている。画像を拡大すると止まっているのが辛うじてわかります)

 
結構、高そうだ。とりあえず長竿を伸ばしてみる。
でも最初から薄々感づいていた事だが、6.3mでは全然もって届かない。という事は、止まっている位置は優に8m以上はありそうだ。
図鑑等には高い位置に静止すると書いてはあったが、予想以上に高い。まさかの誤算だ。誤算、誤算と、さっきからバカの1つ覚えみたいに並べ立ててる自分に情けなくなってくる。これでは、まるで自分のおバカぶりを自ら喧伝しているみたいじゃないか。いっそ情けないついでに、言い訳をカマしておこう。
実を言うと、海外を含めてもフタオの♂がテリトリーを張っているのを採った事は一度もない。吸水やバナナトラップ、獣糞に来た奴しか採ったことがないのだ。それでも充分採れるから、そんな効率の悪い採り方なんぞ試みたことさえないのだ。そもそもテリトリーを張っているところを見たことさえ殆んどない。
あっ、思い出した。そういやタイとミャンマーとの国境で見たな。あの時も10m以上の梢でドロンかエウダミップスかが何頭かで猛スピードで追い掛け合ってたわ。いやネペンテスだっけか❓まさかのホウセキフタオだったりして…。兎に角、ありゃ採れんわと思ったよ。全然、話にならないって感じ。

 
【エウダミップスフタオ Polyura eudamippus ♂】


(2016.4.14 ラオス バンビエン)

 
【ドロンフタオ Polyura dolon ♂】

(2014.4.13 タイ ファン)


(2016.4.22 ラオス ウドムサイ)

 
画像のドロンフタオのラベルを見て記憶が甦ってきた。エウダミップスの可能性もないではないが、たぶんドロンだ。なぜならタイ北部のFang(ファン)で初めてドロンに遭遇したから、よく憶えているのだ。但し、此処にはエウダミップスもいる。だから最初はエウダミップスだと思った。しかし止まっている姿に違和感があったので、再度仔細に見て『コイツ、違う奴っちゃ❗』と気づいた時には結構な衝撃だった。
海外に蝶採りに行く時は、何がいるかロクに調べて行かないので、こうゆう事はチラホラあった。ちゃんと調べてから行けよと、よくお叱りをうけるが、そっちの方が面白いから今もスタイルは変わっていない。予定調和がない分、楽しめるのだ。今回みたく目的がハッキリしている方が、採れないという事にかえって苦しめられたりもする。それはそれで楽しいのだが、その場合はあくまでも採れてこそのカタルシスであり、エクスタシーなのだ。今みたいな状態だと、殆んど拷問だ。

ネペンテスとホウセキフタオの画像も用意しちゃったんで、せっかくだから貼付しておこっと。

 
【Polyura nepenthes ♂】


(2016.3.11 タイ チェンマイ)

 
【Polyura delphis ♂】

(2015.5 マレーシア キャメロンハイランド)

 
余談だが、ホウセキフタオは裏面に宝石のような鮮やかな色が散りばめられていることから名付けられた和名です。

 

(2011.3.1 マレーシア ランカウイ島)


(2011.2 マレーシア キャメロンハイランド)

 
話を奄美のフタオに戻そう。

(-_-;)参ったなあ…。この状態だと、指を咥えて見ているしかない。再び飛んで、そのうち低いとこに止まるだろうという希望的観測で待つしかあるまい。
だとしても、今できうる事は全てしておこう。
先ずは網の色を赤から白に替える。ラオスやタイで2度ほどフタオが白網に止まったのを思い出したのだ。ちなみに赤網にはアゲハ類やツマベニチョウが寄って来るから使ってた。ターゲットのアマミカラスアゲハにはフル無視されてたけどさ。

 

 
次にトラップを全て回収してきて、フタオの止まっている木の周囲に掛け直す。目の前にいるんだからトラップの匂いに感づかない筈がなかろう。フタオといえば、食いもんに意地汚い事で知られている。吸水に来た時は夢中になってるから手掴みでも採れるし、トラップに来た時は吸汁し過ぎて腹がパンパンになって飛べなくなり、ボトッと下に落ちたりするのだ。そんな食い意地の張った奴に、目の前の御馳走を我慢できるワケがなかろう。

しかし相変わらず止まったまんまで、微動だにしない。他のオスが飛んで来ないせいもあるのだろうが、アオスジアゲハが近くを飛んでも無視だ。オスが縄張り争いをするチョウの大概はライバルである同種のみならず、縄張り内に入って来る別な種でも追い立てるのが普通だ。国蝶オオムラサキなんぞは、自分よりも大きい鳥まで追い掛け回す始末なのだ。

 
【オオムラサキ Sasakia charonda ♂】

(2020.6.26 東大阪市枚岡公園)

 
気まぐれに、たまに思い出したように飛ぶが、あまり遠くへは行かず、直ぐにまた梢に止まる。
これまた誤算である。テリトリーを張るチョウの殆んどはせわしない。興奮気味で頻繁に飛び立ち、あちこちに止まるケースが多いのだ。それによってチャンスも生まれてくる。たまに低い位置にも止まるからね。それがこんなにも不活発だなんて思いもよらなかったよ。そういや昨日も過ごした時間のわりには飛んでる姿を見た回数は少ない。ワケわからんぞ。そんなにも懶惰(ものぐさ)なチョウなのか❓ たまたまこの個体がそうなのかもしれないが、サボんなよなー、働けよ。そんなんじゃメスをゲットできひんぞ。

午後2時前。
トラップはフル無視され続けている。コレまた誤算だ。まるっきり相手にされてない。寄って来る素振りさえ見せないのだ。

午後2時15分。
そろそろテリトリーを張る時間も終わりに近づいている。悲痛な思いで、飛び立つことを願う。
したら、通じたのか飛んだ❗そしてスピードを上げて木からどんどん離れてゆく。すかさず後を追う。
見てると、昨日、Fさんと見た場所で旋回しだした。採るチャンスを求めて裏側に回る。しかし間に合わなかった。左側に旋回して奥へと飛んで行く。またあの木に戻るつもりか❓だがそっちは行き止まりになってて、追い掛けられない。慌てて来た道を引き返す。
走って元の場所まで戻ると、やはりいた。止まらすにまだ上空を飛び回っている。なるほど、ルートは読めたぞ。この木を拠点にして、時折足を伸ばしてパトロールに出るのだろう。しかし、こんな珠にしかパトロールに出ないとなると、蝶道で待つ方法は使えない。あまりにも効率が悪過ぎる。そしてトラップでも採集は望めないとなると、八方塞がりだ。ならば、ここで何とか仕留めておきたい。
やがて白き騎士は左の木に移り、少し高度を下げた。そしてチラチラと細かく羽ばたき始めた。止まりたがってるように見える。止まればチャンス到来だ。あそこならギリギリで届くかもしれない。

止まれ。
止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれー

心の中で、エヴァンの「ダメだダメだ逃げちゃダメだ」の碇シンジばりに連発で唱え続ける。

(☆▽☆)止まった❗
この千載一遇のチャンス、逃してなるものか❗大急ぎで長竿をスルスルと伸ばす。

Σ(゚口゚;)ギャヒーン❗でも微妙に届かん❗

30cmだか50cmだか、あと少しだけ届かんのだ。
クソッ、なり振り構ってらんない。かくなる上は恥も外聞も捨てちゃるわい。スクーターの置いてあるもとへと走る。

─=≡Σ((( つ•̀ω•́)つ ブゥィーン
乗って戻って来て、道路の端ギリッギリに停める。そしてキッと上を見据えて、まだ同じ場所に止まっているかを確かめる。
(◠‿・)—☆いるっ❗
驚かせないようにゆっくりとバイクをさらに前へと進め、位置を調整する。心の中のわさわさ感が急沸騰する中、焦るように長靴を脱ぎ、シートの上によじ登る。
だがスペースは思ってた以上に狭い。おまけに真っ平らではなくて微妙に傾いている。慎重にバランスをとりながら竿をそろりそろりと上へと伸ばしてゆく。しかし竿を伸ばせば伸ばすほどバランスを取るのが難しくなってくる。竿を一段伸ばすごとに重さが腕に乗しかかり、少しの風にもあおられて、生まれたての子鹿みたく足がワナワナするのだ。焦るなオレ、落ち着けオレ。ここで落っこちるワケにはゆかぬ。

あと一段を残したところで、止まっている位置を確かめる。
(*゜0゜)ゲッ❗真下すぎて枝先が被さって蝶の姿が見えない。

だからといってバイクの位置を後ろに下げれば、今度は届かない可能性が出てくる。それに、そうなると竿を一旦縮め直してから再度伸ばさねばならない。もしも、あたふたしている間に飛ばれでもしたら、泣くに泣けない。

肝を据える。ゆっくりと息を吐き、最後の一段を伸ばす。
えーい(ノ ̄皿 ̄)ノ ⌒== ┫、ままよ。
伸ばしきったところで、だいたいのアタリをつけてバサッと上から被せた。

コンマ何秒かが過ぎた。
入ったのか…❓
そう思ったのも束の間、真上をゆっくりとスローモーションのように飛び立ってゆく姿が見えた。


∑( ̄皿 ̄;;)ヒィーッ、やらかしイガ十郎(༎ຶ ෴ ༎ຶ)

採れたと思ったのに、大大誤算じゃないか。

彼はさして驚かされたという風でもなく、王者の如くゆっくりと旋回して、また最初の高い梢に戻って静止した。
なぜハズした❓コースは間違ってなかった筈だ。だとすれば高さだ。もしかしたらアレでもまだ届いていなかったのかもしれない…。となれば、あの位置でも7mはあった事になる。クソッ、持ってくる長竿の選択を完全にミスった。6.3mもあれば充分だろうとナメてかかったのが激しく悔やまれる。

茫然とその場で立ちすくんでいると、さっきのおばーが又戻って来た。
『採れたかねぇ❓』
『採れましぇーん。今さっき逃げられましたー༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ༽

その後、30分近く待ったが、彼は眠りについたかのように強い風が吹いても微動だにせず、二度と舞い上がることはなかった。

                         つづく

 
ここで、キリよく終わりたいところなのだが、話はまだ続く。
2回に分けるとレイアウトをやり直さなければならないし、他にも何だかんだと面倒ごとが増えるのだ。

ショックを引きずったまま、あかざき公園へと向かう。

  

 
慰霊塔でアカボシを待つ。でも心ここにあらずで、半ば呆けてベンチに座っていた。さっきのショックを引き摺ったままで、気力萎え萎えである。

午後4時。
そんな状況下、奥から格子模様の大型の蝶が飛んできた。
でも緩やかな飛び方だったし、リュウキュウアサギマダラだと思った。大きさ的にもそう見えた。アカボシのオスは、もう少し小さかった筈だ。それに此処でメスを見た事はないし、時期的にも未だメスは発生していないだろう。ということは、やっぱリュウアサだろう。だったら無視だ。リュウアサなんて何処にでもいる普通種だから、んなもんを採るためにわざわざ立つ気にもなりゃしない。

 
【リュウキュウアサギマダラ】

 
けど近づいて来たら、にしては地色が白いような気がしてきた。でも立ち上がるのが邪魔くさかった。心が折れているので「わざわざ行ってみたら、リュウキュウアサギマダラでしたー」じゃ、傷口に塩を塗るようなものなのだ。下手すりゃ、立ち直れなくなる。
蝶は6、7m横を通り過ぎて東屋に向かって飛んでゆく。アホ蝶だな、そのまんまだと壁にぶつかるぞと思ってたら、直前で慌てたように左に軌道を変えた。ざまあない。
だが次の瞬間、赤い紋がハッキリと見えた。
(,,゚Д゚)ハッ、じゃなくてアカボシだ❗
そう気づいた時には、時すでに遅し。
慌てて追い掛けるが、早くも壁の左側の空間を抜けようとしている。必死で距離を詰めたはものの、どうみても届きそうにない。網を振るチャンスを逸して見送るしかなかった。

誤算のドミノ倒し。誤算も極まれりの大誤算だ。
そして、フタオの♀が飛んで来た時と同じようなシチュエーションでもあった。つまり初動が遅れて、大チャンスをみすみす逃してしまったワケだ。学習能力ゼロじゃないか。アホは、やっぱり何処までいってもアホだ。
あれだけ大きかったという事は、たぶん♀だったのだろう。♂さえまだ見てないのに、やや遅れて発生する♀がまさかもう飛んでいるだなんて、これっぽっちも考え及ばなかった…。痛恨のボーンベッドである。♀は♂と比べて、そうは採れない。♂ならば、まだまだチャンスもあるだろうが、♀に又会える保証はないのである。それを考えると忸怩たる思いだ。ここぞという時に力を発揮できない者には、神様はけっして果実をお与えにはならないのだ。
アカボシの♀は毒のあるリュウキュウアサギマダラに擬態していて、飛び方までソックリ似せていると言われている。その擬態精度は高いと評価されており、標本商の森さんでさえも騙されたと言ってた。けれど、自分は一度も奄美で騙された事はなかった。んなもん、楽勝で見破れるわいと思っていたのだ。その後、台湾のアカボシゴマダラ(註1)の擬態精度の高さには一瞬は騙されたものの、ソレとて直ぐに違うと気づいた。だから騙されるワケがないという自負があったのだ。

 
【台湾産アカボシゴマダラ♂】

【同♀】

(2016.7 台湾南投県仁愛郷)

 
それがこの期に及んで騙されるとは何たる恥辱、まさかの失態だ。我が絶不調ぶりに、もう膝から崩れ落ちそうだよ。認めたくなかったけど、珍しいくらいに今のオラって何やってもダメダメだ。メンタルとか、もうそうゆうレベルの話ではない。たぶんメフィラス星人(註2)が、何らかの理由でワシのことを悪質な手で妨害しているのだろう。

その後、予想通り二度とアカボシは姿を見せなかった。
これを予想通りって言ってる時点で、メンタルが破壊されてる証拠だ。
もう、┐(´д`)┌お手上げでござんすよ。

                         つづく

 

女の子たちが使いきれなかったタコと伊勢エビを冷蔵庫に残していったので、折角だから調理することにした。
ここ「ゲストハウス涼風」には台所と冷蔵庫があって、自分で食材を持ち込んで料理をすることもできるのである。
とはいうものの、心はボロボロなのだ。わざわざ買物にまで行く気は起こらない。とりあえずは誰かが残していった調味料と食材とで何とかしよう。

①これまた女の子たちが残していったサラダ用の野菜があったので、それをサッと洗ってザルにあげ、水を切って皿に盛っておく。

②伊勢海老を一口大に切る。そこに辛うじて残っていた小麦粉を申し訳程度にまぶす。ちなみに、有れば片栗粉を使ってたと思う。

③フライパンを弱火にかける。温まったところで胡麻油を入れる。そしてそこに冷蔵庫の隅で1万光年は忘却されていたであろうチューブ生姜を少量入れる。

④香りが立ったところで、ガチ戦闘態勢に入る。さあ、こっからが本番だ。一気呵成に攻めねばならぬ。伊勢海老を半生に仕上げたいから、時間との勝負なのだ。
火を強め、煙が出たら伊勢海老を投与。続けて塩、黒胡椒、オイスターソースを怒涛の如く立て続けにブチ込み、奥義を繰り出す。アタタタタタタタ…、電光石火で炒める。おそらくこの間、30秒くらいだったろう。気分は超絶高速で両腕を動かし、残像で千手観音みたくなっとる感じだ。

 

(出展『満天握り月太郎』)

 
千手観音の如くフライパンを振ってる漫画を探したが、見つかんなくて『満天握り月太郎』から拝借させて戴いた。
月太郎は満月の夜にしか必殺技「満月握り」が出せないサイコパス寿司職人なのら〜。
ちなみに本日は満月で、しかもスーパームーンの皆既月蝕だという稀有な日である。何と24年振りの事らしい。
おそらく月太郎は超絶奥義の「月蝕スーパー満月握り」を繰り出すことであろう。

 

 
たぶん、これくらいのサイコ野郎にはなってくれるだろう。

⑤あとは野菜の上に盛って出来上がり。

  
【伊勢海老の怒涛千手観音炒め】

 
(◠‿・)—☆我ながら上出来だ。美味い。制約ある中でのベストなプレーだろう。中々にフレキシブルなパフォーマンスだったと思う。
食べながら、ぼんやりと思う。その優れた資質がナゼにフィールドでは反映されないのだ。今日もスクーターの上に乗っかるとか柔軟でフレキシブルな対応はしていた筈だ。なのに結果が伴わない。
考えてみれば、奄美に来てからずっと誤算続きだ。この迷走のループ、いつまで続くのだろう。

                         つづく

 
追伸
「つづく」が連続して続くという異例の展開だったが、今回は註釈が少ないので、書くのは楽だった。
でも古い展翅標本を多く載せたので、別な意味でのストレスがあった。気にくわない展翅画像がいくつかあるのだ。例えばリュウキュウアサギマダラなんて、今だったら前翅をあんなにも上げないからさ。
それで思い出したよ。後々わかるのだが、この日に見たアカボシは、よくよく考えてみれば、メスではなくてオスだった可能性もある。春型は夏以降に出てくるものよりもデカいのだ。夏以降の個体しか見たことがない者には、その大きさから初見はオスでもメスに見えてしまうのである。もしそれに直ぐ気づいていたならば、リュウアサと見間違うなんていう恥ずかしいミステイクは犯さなかった筈だ。

 
(註1)台湾産アカボシゴマダラ
学名「Hestina assimilis formosana (Moore,1895)」。台湾特産の亜種として記載されている。
台湾産のアカボシについては、拙ブログの『発作的台湾蝶紀行』の42話「気分は上々」等に書いとります。興味のある方は、読まれたし。

 
(註2)メフィラス星人

(出展『メタボの気まぐれ』)

 
『ウルトラマン』の第33話「禁じられた言葉」をはじめ、ウルトラシリーズに度々登場する宇宙人。別名「悪質宇宙人」。
ボスキャラ的存在で、知能が高くて紳士的だが、自分の思い通りに事が運ばないと激昂する。
名言も多く、ハヤタ隊員(ウルトラマン)に対して『お前は宇宙人なのか❓、人間なのか❓』と問いかけたり、『宇宙人同士が戦ってもしようがない。私が欲しいのは地球の心だったのだ。だが私は負けた。子供にさえ負けてしまった。しかし私はあきらめたわけではない。いつか私に地球を売り渡す人間が必ずいるはずだ。また来るぞ。』と言い残して去ったりもする。
だが、一方では『卑怯もラッキョウもあるものか❗』という知性のカケラもない迷言も残している。

 

奄美迷走物語 其の八

 
  第8話『白き騎士』

 
2021年 3月25日

今日も腐ったアタマで起きる。
時計を見ると既に10時。また痛飲でござるよ。
まあどうせ予報通り雨だろうと思ってカーテンに目を移すと、何だか様子がオカシイ。もしやと思ってベランダに出ると、何と快晴だった。

 

 
そういえば昨夜、酔っ払って小池くんに『明日は晴れる❗まっかせなさーい❗』とか言ってたが、半分希望的観測で言ってただけなのだ。何となくそんな気がして口走ったのだが、夜は採集に出ずで空を見てないから確信があったワケではない。スーパー晴れ男の面目躍如と言いたいところだが、南国の天気はワケわからんわい。こっちの天気予報って何なん❓全然信用でけんやないの。

大急ぎで支度してバイクを駆って西へ。
今回は知名瀬林道をスルーして、更に西へと進む。
毎回、同じポイントに行くのは、実を言うと好きではない。本来的には飽き性なのだ。何度も通ったのは単に知名瀬がアマミカラスアゲハの♀が採れる可能性が一番高いと判断したからにすぎない。でも♀は昨日採れたから、自分的にはもう行かなくても済むやって気持ちなのだ。

やがて、右手に海が広がり始めた。
まだ白波が立っているから奄美本来の海の青さではないが、それでも青い。ワンテンポ遅れて潮の香りが鼻腔にカウンターパンチを送ってくる。海だなあ…。心がほわっとゆるむ。
いい感じに地平線の上も青空だ。本来は海の男ゆえ、俄然テンションが上がる。やっぱ南の島は、こうでなくっちゃね。

午前11時過ぎ、根瀬部の集落へと入ってゆく。
懐かしい風景だ。昔と殆んど変わっていない。

林道の入口横にバイクを停め、小道に入る。先ずはイワカワシジミを探そう。この道の途中にイワカワシジミの食樹であるクチナシがあった筈だ。
足元が覚束ない。何だかヽ((◎д◎))ゝフラフラする。正直言って、体調は奄美に来てから最悪のコンディションだ。まさか晴れるとは思っていなかったら、調子に乗って飲み過ぎた。風景は微妙にゆらゆらするし、自分でもまだ酔っ払ってるのがワカる。
腐った脳ミソで川沿いに歩くと、フェンスのある明るい場所に出た。そこにはまだクチナシの木があった。この木で何度かイワカワシジミを採っているのだ。

 
【イワカワシジミ各種】

 
しかし上から見下ろしたところ、姿は見えない。
仕方なく引き返そうとしたところで、フェンスの向こうから猛烈な犬の吠え声が飛んできた。見ると、奥の檻の中で2、3匹の犬が狂ったように吠えている。
檻の中にいるから恐怖心はない。しかし犬は大っ嫌いだ。天敵と言っていいほどに相性が悪い。何処へ行っても吠えられるから、いつも憎悪を滾(たぎ)らされてる。東南アジアでは犬が放し飼いになってる事が多いから、常にバトルだもんね。
吠えられてるうちに沸々と怒りがせり上がってきた。背中からメラメラと青白き焔が沸き立ち、💢プッツンいく。

(`Д´#)黙れ❗テメェ、ブッ殺すぞー❗

大声で激烈に叫んだら、吠え声がピタリとやんだ。
(`Д´)ボケがっ❗、気合勝ちじゃ。ワシの覇王色の覇気をナメんなよ。今後ワシにまた吠えたら、あらゆる方法で恐怖を骨の髄まで植えつけてやるわ。

道路に戻って少し歩くと、川向うの木で何かが飛んで直ぐに着地した。見ると蝶が羽を広げて日光浴している。
脳ミソが腐ってるから、最初はそれが何なのか理解できなかった。ムラサキツバメ❓ムラサキシジミ❓ウラギンシジミ❓記憶のシナプスが繋がらない。
5秒ほどしてから、漸くそれが何であるのかが解った。イワカワシジミの♂だ。けど尾状突起が無くて羽も擦れてる。
少し迷ったがスルーすることにした。あんなの採っても、どうせ展翅しないだろうから無駄な殺生になる。それに欲しいのは♀なのだ。

さらに進むと曲がり角に網を持ったオジサンが立っていた。

『こんにちわー。何、採ってはるんですかあ❓』
『フタオチョウだよ。』
『えっ、此処にもいるんですか❓』
『いる、いる。分布をドンドン拡大してて、最近では瀬戸内町でも見つかってるよ。』
『もう発生してるって事ですよね。例年、春型はいつくらいから発生してるんですかね❓』
『今年は20日くらいから発生してたね。もう4♂1♀ほど採ってるよ。』
そっか♀まで発生しているのか…。そういや自分もあかざき公園で見たもんなあ。と云うことは時期的にはまだ最盛期ではないにせよ、鮮度的にはベストな時期かもしれない。

 
【フタオチョウ Polyura weismanni ♂】

(裏面)

 
【同♀】

(裏面)

(出展『日本産蝶類標準図鑑』)

 
フタオチョウ(註1)は奄美大島には本来いないチョウだった。
てっとり早く説明する為に奄美新聞社の記事をお借りしよう。

「沖縄県の県指定天然記念物のチョウ・フタオチョウが近年、奄美大島でもよく目撃されるようになってきている。奄美市笠利町から名瀬までの広範囲で目撃情報があり、特にヤエヤマネコノチチなどの樹木の周りで見られやすいという。
フタオチョウはタテハチョウ科フタオチョウ亜科フタオチョウ属のチョウ。台湾や東南アジアに生息する。幼虫のエサはヤエヤマネコノチチやクワノハエノキといった植物。成虫は樹液や腐敗した果物に飛来する。
日本では従来、沖縄本島のみに生息し、同県の指定天然記念物となっていた。2016年ごろから奄美大島北部でも目撃・捕獲されるようになった。
奄美昆虫同好会の富川賢一郎会長によると、沖縄から何らかの原因で迷蝶として飛来した可能性もあるとのこと。」

補足すると、迷蝶ではなくて誰かが沖縄産を放蝶したものが増えたと考える意見の方が多いようだ。自分もその見解を支持する。なぜならフタオチョウが迷蝶として採集された記録が少ないからだ。台湾と与那国島は近いが、台湾のフタオチョウが与那国島で見つかった例はない筈だし、沖縄本島のものが別な島で見つかった例も極めて少ないからだ。たぶん石垣島の1例のみしかなかったんじゃないかな。それも目撃情報で、しかも2018年だから奄美のモノを石垣に放した事が疑われる。
そもそもフタオチョウのような森林性の蝶はオープンランドの蝶みたく海を越えるような大移動はあまりしないと言われている。ゆえに沖縄本島から奄美まで飛んで来たという可能性は極めて低いと考えるのが妥当だろう。両島は距離にして340kmも離れているのである。
他に可能性が考えられるのは、たまたま卵や幼虫・蛹が付いた食樹が植栽されたというパターンだが、ヤエヤマネコノチチやリュウキュウエノキなんて誰も他から持ってきて植栽しないだろう。花がキレイなワケでもなく、食用にされるワケでもないから、植栽する価値のない植物だし、そもそも両方とも奄美には自生しているのだ。

ヤエヤマネコノチチには馴染みがないので、Fさんにどんな木ですか?と尋ねたら、わざわざ生えている場所まで案内してくださった。いい人である。

 
【ヤエヤマネコノチチ】

 
奄美に入って、たぶんコレなんじゃないかと思ってた植物とは全然違ったものだった。ワシって飼育をしないから植物の同定能力がアッパッパーなのである。

ポイントに戻ってきたら、Fさんが空を指さした。
『ほらほらアソコ❗、フタオが飛んでるよ❗』
見ると、青空をバックに白い蝶が高速で飛んでいる。しかし、グルッと一周すると反転して、アッという間に何処かへ消えてしまった。
形と大きさからして、たぶんオスだろう。
いる事が分かったら何だか安心した。いる場所さえ分かれば、楽勝で採れると思ったのだ。ゆえにフタオの事はさておいて、Fさんと暫く雑談する。ここは情報収集の方が大事だろう。

Fさんは奄美在住で、標本商をされているという。奄美のフタオの最初の発見者ではないが、2017年には逸早くフタオについての報文を書いておられ、土着している事実を突き止めたのは氏らしい。
また、奄美で日本屈指の美迷蛾であるベニモンコノハ(註2)を見つけて、大量に採ったのもFさんなんだそうな。

 
【ベニモンコノハ】

(出展『世界の美しい蛾』)

 
ベニモンコノハについては、当ブログにて『未だ見ぬ日本の美しい蛾1』と題して書いたから、その時に論文を読んでいる。たぶん20頭くらいタコ採りされたんじゃなかったかな。
蝶だけでなく蛾も採られるというのは渡りに舟だ。せっかくだからアマミキシタバの事も訊いておくことにした。

 
【アマミキシタバ Catocala macula】

(出展『日本産蛾類標準図鑑』)

 
『アマミキシタバって根瀬部にもいるんですかね❓』
『いるよ。数は多くないけど、この辺だったら何処にでもいるよー。』

『灯火採集だと、何時くらいに飛んで来るんすかねー❓』
『基本的には11時を過ぎないと飛んで来ないかなあ。』

『あと糖蜜とかバナナトラップにも来ますかね❓』
『来る、来る。全然寄って来るよ。』

『ところで幼虫の食樹が去年判明したみたいですけど、アレって何の木ですかね❓』
長年、アマミキシタバの幼虫の食樹は不明とされてきたが、去年に飼育下においてだが判明したそうなのだ。しかし論文が見つけられず、詳細は分からなかったのである。
『たぶん、ウドだったんじゃないかなあ。』
『えっ、ウド❗❓ウドってあのウドの大木のウドですか❓』
『いや、そのものじゃなくて、別種のウドの仲間じゃなかったかなあ。』
ウドなんて全く想定外の植物だったから驚いた。
『あともう一つ別な系統の植物を食ってた筈だよ。けど思い出せないなあ。何だったっけかなあ❓』

結局、Fさんは思い出せなかった。ウドというのも俄に信じ難いところもあるから、本当の事はワカラナイ。Fさんの記憶違いかもしれないし、自分の聞き間違いというかメモリーエラーかもしれない。何せ二日酔いで脳ミソが腐ってたからね。

他に行く所があるからと、Fさんは昼過ぎには去って行った。
色々と御教示下さり、有り難う御座いました。礼(`・ω・´)ゞ
正直、ラッキーだった。数々の重要な情報を得られたからね。昨日、アマミカラスの♀が採れた辺りから流れが良くなってきてる。Fさん曰く、オスがテリトリーを張るのは午前11時くらいから午後2時くらいまでらしい。つまり、まだまだ時間的余裕がある。この調子で楽勝街道爆進じゃい❗

誠に恥ずかしい話だが、正直に吐露しておくとフタオがテリ張りするのは、アカボシゴマダラやオオムラサキ、スミナガシなんかと同じく午後3時前くらいから夕方にかけてだとばかり思い込んでいた。タテハチョウ科のオスの縄張り争いは時刻のズレこそ多少あるものの、知る限りでは全てそうなのだ。ゴマダラチョウ然り、コムラサキ然りだし、他にもアカタテハ、ルリタテハ、メスアカムラサキ、リュウキュウムラサキも夕方なのである。だから昼間に占有行動するなんてコレっぽっちも考えなかったのだ。
それに図鑑によってはフタオチョウが占有行動をする事が書かれていない事もあり、また書かれていても時刻については言及されていないのである。あの蝶の生態について最も詳しく書かれていると云う『原色日本蝶類生態図鑑』の第2巻 タテハチョウ編でさえ占有時間帯は書かれていないのである。

雑談中もフタオは何度か飛んで来たが、何れも高い位置を飛んでおり、全く止まらなかった。とゆう事は、もっと他に採り易いポイントを探した方が良さそうだ。
とりあえず裏へ回ってみたら、ミカン畑になっていた。コチラ側の方が見通しがいい。おそらく飛び回っていた個体はコチラ側の何処かに止まっており、時折飛び出して辺りを見回っていたのだろう。ならば此処で待ってれば採れそうだ。
麓の林縁もチェックしようとしたら、左手から白い蝶が猛スピードで飛んで来た。高さは2mから3mくらい、届く範囲だ。しかし振ろうとした瞬間に軌道を変えて、射程外になった。
後ろ姿を見送りながら、❗❓と思った。大きさ的には♂のフタオと同じか少し小さいくらいだろうが、フタオにしては白すぎる。黒い紋が殆んど入っていないように見えた。とゆうことは、たぶんフタオではない。おそらくウスキシロチョウかウラナミシロチョウだろう。でもウスキシロならば、もっと黄色いからウラナミシロの可能性大だ。

 
【ウラナミシロチョウ♂】

【同♀】

(出展『Aus−lep』)

 
林縁まで来ると、今度は頭上5mくらいをタテハチョウらしき白い蝶が滑空していた。何だよコッチだったかと思ったが、飛び方が滑るようだし、フタオほど高速ではない。
暫く下から様子を見て、漸く気づいた。たぶんガッキー、イシガケチョウだろう。

 
【イシガケチョウ】

(出展『日本産蝶類標準図鑑』)

 
何かヤキが回ってるなあ…。
どうしようもなく感覚が鈍(なま)ってる。考えてみれば、去年は蝶採りに行ったのは数えるほどだ。ギフチョウが3回、スミナガシの春型が1回、夏に長野県で小太郎くんとムモンアカシジミ&オオゴマシジミで2日間、あとは同じく小太郎くんと行った蝶採りとしてはユルい河川敷のミヤマシジミ&クロツバメシジミくらいだ。そういやルーミスにも行ったな。でも3人で行って3人とも1頭たりとも見なかったから、網を振った回数はゼロだから、行ったうちに入らない。ようは何が言いたいかというと、実戦から遠ざかると腕も鈍るという事だ。野球でも何でもそうだけど、振り込まないと実力は上がらないし、サボると下手ッピーになるのだ。

また裏側ポイントに戻ると、突然、梢から蝶が飛び出して来た。逆光だが飛び方を見てコイツかあ❗と身構えたが、直ぐにその姿はアオスジアゲハに変わった。

 
【アオスジアゲハ】

 
アゲハの仲間(Graphium)だから、厳密的にはタテハチョウとは飛び方が少し違うのだが、かなり近い飛び方なのだ。大きさ的にも同じくらいだし、逆光もあったから見間違えたのだ。逆光だと緑色が飛んで白っぽく見えてしまうのである。緑色のとこを白に塗れば、デザイン的に両者は案外似ていなくもないしさ。とはいえ、アオスジアゲハと間違えるだなんてダサ過ぎ。ヤキまわりまくりである。

そのうち曇り始めた。おいおいである。フタオチョウは基本的には光が射していないと飛ばないのだ。

いたずらに時間が過ぎてゆく。
暇つぶしにアマミカラスの♀をいくつか採った。ここはブヨもいないし、知名瀬よりも安心して採れる。先にこのボイントを見つけていれば、あんなに苦労しなかったのにね。
ガックリだが、あれはあれでいっか…。あれキッカケで奄美の教会の美しさや、その悲しい歴史を知ることができたからね。

午後2時半。
また晴れ始めたと思った途端、白い蝶が現れた。南国の青い空を背景に悠然と飛翔している。2つの剣のように尖った尾状突起もハッキリと見えた。まるで誇り高き白き騎士だ。相手にとって不足なし。瞬時に戦闘態勢に入る。
だが、睥睨するかのように頭上を飛び、飽きたように突然プイと踵(きびす)を返して梢の向こうへと消えていった。
間違いなくフタオチョウだ。もうインプットした。これから先は他の蝶と間違うこともないだろう。高さも一番低いところでは5mくらいだったから、今回持ち込んだ6.3mの長竿でも届く。たぶん此処はパトロールのルート上にあるに違いない。

その後、フタオは2度と飛んで来なかったが、これで心には余裕が生まれた。飛んで来るルートが解り、採集可能な場所さえ見つければ、コッチのものだ。明日には間違いなく採れるだろう。まあまあ天才をナメてもらっては困るのだ。

午後3時半に、あかざき公園に移動してきた。
フタオチョウが発生しているのは解った。あとはアカボシゴマダラが発生していれば、目的は果たされるだろう。居ないもんは採れんが、居るとわかればどうにかなる。
だが、慰霊塔で待つも、ついぞアカボシもフタオも姿を現さなかった。たぶんフタオよりもアカボシの方が発生は少し遅れるのだろう。とはいえ、もうそろそろ発生するだろうから明日辺り両方まとめて採れんだろ。そう、いつものメンタルならば、いつも通りの結果が出るっしょ。

宿に帰る。
今日の宴会は蛸パーティらしい。
昨日、女の子たちのために地元のアンちゃんたちがタコと伊勢海老を獲ってきたのだ。可愛くて明るい女の子は得だよね。
その女の子たちが作ってくれた蛸の刺身を食う。

 

 
旨いんだが、少し生臭い。
たぶん塩揉みが足りなかったのだろう。タコは大量の塩でシツコイくらいに揉まないと生臭みが取れないのだ。だから一番簡単な方法は洗濯機にブチ込むことだ。とはいえ家庭では精神衛生上、中々できるものじゃないけどね。自分もそれは無理だわさ。もしシャツやパンツが生臭かったら泣くもんね。生のタコって、下手すれば魚よりも生臭かったりするのだ。

🐙蛸パーティということは、今日はたこ焼きパーティなのかなあ❓でも関西ならまだしも、奄美大島なんかにタコ焼き器とか売ってんのかね❓御存知な方もいるだろうと思うけど、関西地方、特に大阪では一家に一台たこ焼き器があるのだ。たこ焼きパーティならば、またワイの腕の見せどころだな。でもどうせ今日は夜間採集に出るから、たこ焼きパーティなろうとなかろうと関係ないか。

他の料理はまだ出てきなさそうなので、『ホームラン軒』なるカップ麺を食う。

 

 
行ったことはないけど、大阪に『ホームラン軒』という有名ラーメン店がある。そこの監修のカップ麺じゃないかと思って買ったけど、百円だったから違う可能性大だ。味もどってことない。百円で買ったカップ麺に期待してはいけないね。

再び根瀬部を目指す。
今回も日没前にポイントに入った。
先ずは林道を少し入った所に「何ちゃってライトトラップ」を設置する。でもって周囲2箇所にバナナトラップも仕掛けた。

お次は、昼間にフタオチョウが飛んでいたポイントの林縁3箇所にバナナトラップを仕掛ける。Fさん曰く、ここにもアマミキシタバがいるということだから、今日こそはお会いしたいものだ。今夜アマミキシタバが採れれば、明日にはフタオとアカボシが採れるだろうから、一挙にほぼミッション完遂だ。夜に山を徘徊しなくとも済む。

犬に吠えられるのにビクビクしながらも、バイクで2地点を行ったり来たりする。まあ吠えられれば吠えられたで現実世界にいる事が確かめられるし、お化けを追い払ってくれるかもしれないから別に構わないんだけどもね。お化けよりかはまだしも犬の方が友だちになれる。暗黒世界の住人とは、一生友だちにはなれぬよ。
とはいえ、今日はそれほど闇に対する恐怖心はない。慣れてきたというのもあるけれど、人里から近いし、ライトを設置した場所も林道に入ってからすぐの所だからだ。真っ暗な林道を奥へ行けば行くほど恐怖感が澱のように積もってゆくのだ。夜の森では、想像力を逞しくすることは禁物なのだ。

大川ダムよりかはマシだが、集まって来る蛾の数はショボい。
バナナトラップにはオオトモエだけが何頭も寄ってくる。勿論のこと無視である。コッチへ来てからずっとコヤツしか来ないってのは何なのだ❓ 呪われてんのかよ。

 
【オオトモエ】

 
午後11時。
いよいよアマミキシタバが飛んで来る時間帯に入った。
ライトに集まる蛾の数も増えてきた。否(いや)が応でも期待値もハネ上がる。

午後11時20分。
ライトに見たことのないシャクガ(註3)が飛んで来た。

 

 
普段はシャクガなんぞ無視する事が多いのだが、寄って来るのは小汚いチビ蛾ばっかだから退屈でつい採ってしまう。

シャクガを三角紙に収め、ふとバナナトラップの方に目をやると、明らかにオオトモエじゃない大型の蛾が寄ってきてる。

もしやヒメアケビコノハ❓
もしヒメアケビコノハならば、採った事がないから欲しい。
ゆっくりと近づく。この旅での4度の夜間採集の中では初めてのドキドキかもしれない。この感覚が享受できなくっちゃ、夜の森に来る意味なんてゼロだ。

目の前まで来た。いやアケビコノハか❓とも思ったが、アケビっちよりも明らかに小さい。とゆうことはヒメアケビコノハか❓
えーい、グチュグチュ考えたところで蛾のとーしろ(素人)のオイラにワカルわけがない。ここは採って確かめるしかない。

網先で蛾の止まってる少し下を軽く突っつく。

(# ゚Д゚)わりゃ、逃がすかい❗

驚いて飛んだ瞬間に、マッハロッドで💥ズババババーン❗(註4)、電光石火⚡で網を下から上へとシバキ上げる。

 

 
(・∀・)うにゃにゃ❓
何だかアケビコノハっぽいぞ。ヒメアケビコノハの前翅は、こんなに枯れ葉っぽくなかったような気がする。
裏返してみよう。

 

 
(-_-;)う〜む。アケビコノハっぽいかも…。ヒメアケビコノハは外側の黒帯がもっと太かったような気がする。でも記憶は定かでない。アケビコノハにしてはかなり小さいし、脳はヒメアケビコノハだと信じたがってる。もしそうなら、此処へ来た意味もある。
ネットで調べようかとも思ったが、どうせ山の中だから電波が届かないだろうし、帰ってからのお楽しみにしよう。

その後、アマミキシタバどころか目ぼしいモノは何も飛んで来なかった。
午前0時半には諦めて撤退。
相変わらず、今一つ波に乗れないなあ…。

                         つづく

 
追伸
宿に帰って調べてみたら、やはりヒメアケビコノハではなくて、ただのアケビコノハであった。

 
【アケビコノハ Eudocima tyrannus】

 
ヒメアケビコノハは、もっと後翅外縁の黒帯が太いし、裏面も黒っぽいのだ。

 
【ヒメアケビコノハ Eudocima phalonia ♂】

【同♀】

【裏面】

(出展『jpmoth.org』)

 
調べたら、開張は90〜100mmもあり、アケビコノハと大きさは殆んど変わらないらしい。じゅあ、何で「ヒメ」なんて小さいことを表すような和名を付けたのよ❓解せんわ。

主に南西諸島で見られる南方系の蛾だが、本州,四国,九州,対馬,北海道でも記録がある。元々は迷蛾(偶産蛾)とされていたようだが、2000年代に入ってから採集例が増えており、本州でも見つかる機会が増えているそうだ。但し、確実に土着している場所は未だ見つかってないという。
国外では、台湾,インド,南大平洋諸島,オーストラリア,アフリカなどに分布している。広域分布だし、きっと移動性が強い種なのだろう。海の真っ只中で、船の甲板から見つかった例もあるようだしね。
主に8〜10月に見られ、樹液や果物に吸汁に集まる。
幼虫の食餌植物はツヅラフジ科のコウシュウウヤク、コバノハスノハカズラ、オオツツヅラフジ。

 
(註1)フタオチョウ
フタオチョウについては、台湾の蝶のシリーズの第2回で『小僧、羽ばたく』と題して書いたものを筆頭に『エウダミップスの憂鬱』『エウダミップスの迷宮』『エウダミップスの呪縛』と全部で4編も書いている。そちらの方を読んでもらいたいのだが、長いので要約して書いておく。

 
【学名】Polyura weismanni (Dobleday, 1443)
従来まではインドを基産とする「Polyura eudamippus」とされ、日本産には”weismanni”という亜種名が宛てられていた。尚、Polyura eudamippusは、ヒマラヤ西北部(ネパール,インド北東部)からインドシナ半島,マレー半島(キャメロンハイランド),ブータン,雲南省と海南島を含む中国西部,中部,南部,台湾まで分布する。日本産はそれに連なる最東端のモノだと位置づけられていたワケだ。しかし近年になって成虫や幼虫の形態、食樹が他の産地のものとは異なる事から別種となり、学名は亜種名が小種名に昇格した形になっている。
でも、この事実を知っている蝶愛好家はまだ少ないようで、ネットに掲載されている情報では、ほぼほぼ学名が以前の古い学名のままになっている。たぶん今ある図鑑も旧学名のままの筈だ。
尚、インドの原記載亜種(基産地アッサム)やインドシナ半島のもの(亜種 nigrobasalis)と基本的には同じデザインなのだが、実際にフィールドで見ると、かなり違った印象を享ける。

 
【Polyura eudamippus nigrobasalis♂】

(2011年 4月 ラオス・タボック)

 
とにかくバカでかいんである。♂でもこの大きさなのだ。
そして白くて、尾状突起が剣のように鋭く長い。日本のモノより先にインドシナ半島の奴に会っているので、その時に白い騎士のイメージが植えつけられた感がある。

 

 
裏面は日本のものと比べて帯が細く、色も黄色みが強くなる。
個人的にはコッチの方が美しいし、迫力があるから好きだ。

 
【和名】フタオチョウ
別種となったが、和名はそのままで「ニッポンフタオチョウ」や「リュウキュウフタオチョウ」「オキナワフタオチョウ」にはなっていない。正直、ダサいから変えないのが正解だね。
逆に従来フタオチョウと呼ばれていた原名亜種には「タイリクフタオチョウ」なる和名が提唱されている。微妙な和名ではあるが、解りやすいので受け容れてもいいかなあ。

和名は「双尾蝶」「ニ尾蝶」の意で、後翅にある2本の尾状突起に基づく。
尚、日本産のタテハチョウ科の中ではニ双二対の尾突を持つものは他にはいない。日本産の全ての蝶を含めても2本以上の尾突を持つものは、他にはキマダラルリツバメしかいない。
また前翅も特異な翅形であり、色柄デザインも特異である点からも他に類する種はいない。つまり日本では唯一無二の存在であり、沖縄の天然記念物に指定されている稀少性も相俟ってか愛好家の間では人気の高い蝶の一つである。

 
【分布】沖縄本島,古宇利島,奄美大島
現在のところこうなっているが、奄美大島では分布を南部に拡大しており、そのうち加計呂麻島や徳之島でも発見されるかもしれない。
尚、近似種”Polyura eudamippus”の一番近い分布地は台湾で、かなり見た目は近い。

 
【Polyura eudamippus formosana ♂】


(2016年 7月 台湾南投県仁愛郷)

 
weismanniに似ているが、白い部分が少し広がり、尾状突起もやや長いから、慣れれば区別できる。
違いは裏面の方がより顕著だ。”weismanni”の帯は太いが、それに対して台湾産は細い。その色も微妙も違うような気がするが、個体差にもよるし、自分の印象も多分に入っているので断言はできない。
大きさ的には同じようなものだろう。さっきの項で画像を載せ忘れたが、インドシナ半島のものと比べて遥かに小さい。

 

 
おそらく大陸のモノが台湾に隔離され、さらにそれが沖縄に隔離されて長い年月の中で少しずつ形を変えていったのだろう。

 
【生態】
沖縄本島では3月下旬〜5月、6月下旬〜8月、9月〜10月の年3回見られるが、秋は個体数が少ない。
成虫の飛翔は敏速で、梢上を高飛する。樹液や腐果(パイナップルなど果物が発酵したもの)に好んで集まり、吸汁する。吸汁し始めると夢中になり、鈍感なので手で摘める事さえある。また、時に吸汁し過ぎて飛べなくなり、地上にボトッと落ちる個体もいたりする。結構、アホなのである。
オスは占有活動を行い、高い木の梢や突出した枝先などに静止して、同種の♂のみならず他の蝶が飛んで来ても追尾して追い払う。
尚、eudamippusは台湾産を含めて動物の糞尿やその死体、湿地に吸水(♂のみ)によく集まるが、weismanniでの観察例は少ない。この点からも別種説を推したい。中には、まだ別種とは認めないという人もいるのだ。

 
【幼虫の食餌植物】
ヤエヤマネコノチチ(クロウメモドキ科)
リュウキュウエノキ(ニレ科)

元々の食樹はヤエヤマネコノチチであったが、沖縄本島では食樹転換が起きており、リュウキュウエノキ(クワノハエノキ)も食するようになった。それによってヤエヤマネコノチチが自生しない南部にも進出、分布を拡大している。
奄美大島ではリュウキュウエノキを食樹にするアカボシゴマダラが生息する事から競合が予想され、アカボシゴマダラの個体数に影響を及ぼすのではないかと心配されているが、今のところ特には減っていないようだ。尚、奄美にはヤエヤマネコノチチも自生しており、主にそちらを食樹としているようだ。競合を避け、棲み分けをしているのかもしれない。
参考までに書いておくと、ネットなんかの飼育例をみるとヤエヤマネコノチチでは無事に羽化するが、リュウキュウエノキで飼育すると羽化しないという記事があった。或いは先祖帰りと云うか、本来の食樹帰りしているのかもしれない。
しかし、奄美在住のFさんはリュウキュウエノキでも難なく飼育できると言ってはった。

付け加えておくと、Polyura eudamippusの食樹はマメ科である。そして多くのフタオチョウ属(Polyura属)がマメ科の植物を食樹としている。この点からも、日本の”weismanni”は特異で、別種とされたのも頷ける。

 
【幼生期の形態】


(出展『日本産蝶類幼虫・成虫図鑑』)


(出展『浦添大公園友の会』)


(出展『(c)蝶の図鑑』)

 
見た目はプレデターだ(笑)
或いはコレがプレデターのモチーフになってたりしてね。

最も近縁とされる台湾の Polyura eudamippus formosanaの幼虫も貼付しておこう。

 


(出展『アジア産蝶類生活史図鑑』)


(出展『日本産蝶類幼虫・成虫図鑑』)

 
日本のフタオの終齢幼虫には帯がないが、台湾のものには帯がある。また顔面の模様も異なる。幼虫の食樹もマメ科だし、これはもう別種レベルに分化が進んでいると言っていいだろう。

 
(註2)ベニモンコノハ
学名 Phyllodes consobrinus Westwood, 1848
Noctuidae(ヤガ科)・Catocalinae(シタバガ亜科)に分類される。

 

(出展『断虫亭日乗』)

 
(;゜∇゜)ワオッ❗、馬鹿デカイね。
開張120〜130mmもあるらしい。

宮崎県,鹿児島県(九州本土),種子島,トカラ列島宝島,奄美大島,沖縄本島などからの記録があり、従来は土着種とされ、小型なことから別亜種として記載された。しかし二町一成氏の論文によると、2011年に奄美大島で纏まって採れたのは、たまたま海外から飛来したものが、その年に二次発生した可能性が高いと述べており、現在では偶産蛾とする見解が優勢のようだ。
国外では台湾,中国南部,ベトナム,インド,インドネシアなどに分布する。尚、日本での記録は7〜8月に多い。
下翅にある紋が日の丸みたいだなと思ってたら、岸田先生の『世界の美しい蛾』には、その紋様から標本商の間では「日の丸」と呼ばれることもあると書いてあった。
生態的にちょっと変わってるなと思ったのは、ライトトラップには誘引されなくて、バナナやパイナップルなどのフルーツトラップに集まるそうだ。
ちなみに幼虫は無茶苦茶エグキモくて笑える。
気になる人は、拙ブログにある『未だ見ぬ日本の美しい蛾1』を閲覧されたし。

 
(註3)見たことないシャクガ
帰ってから調べてみると、アサヒナオオエダシャクという蛾の♂であった。

 

 
アサヒナオオエダシャク
科:シャクガ科(Geometridae)
エダシャク亜科(Ennominae)
属:Amraica Moore, 1888

 
【学名】 Amraica asahinai (Inoue, 1964)】

小種名の”asahinai”は、トンボやゴキブリの研究で有名な朝比奈正二郎博士に献名されたものである。おそらく和名もそれに準じてつけられたものだろう。

とくに亜種区分はされていないようだ。だがウスイロオオエダシャクと似ているため、最初はその南西諸島亜種として記載されたそうだ(ウスイロは屋久島以北に生息する)。しかし下甑島と屋久島では同所的に生息していることが判明し、別種になったと云う経緯がある。

 
【ウスイロオオエダシャク Amraica superans】

(出展『むしなび』)

 
相前後するが詳細に説明すると、日本のウスイロオオエダシャクは従来ではインドの”Amraica recursaria (Walker)と同一種とされ、本土の個体群は”ssp.superans”、屋久島以南の個体群は”ssp.asahinai”として扱われてきた。
だが下甑島と屋久島にて、それぞれ同一地点で両亜種が同時に採集された事から再検討が行われた。結果、共に独立種として扱うべきであり、更にそれらは”recursaria”とも異なる種であることが明らかになった。
またウスリー・朝鮮半島の”confusa”は、”superans”の亜種であり、台湾のものも”superans”ではあるが、色彩斑紋に明らかな差があることから別亜種として扱うべきことも判明した。これによりインド北部〜インドネシアに分布するものが原名亜種(Amraica recursaria recursaria)となった(Sato,2003)。

何でこんな事が起こったのかというと、Amraica属の各種は外観に比較的安定した違いがあるにも拘らず、種による交尾器の差異が雌雄ともに少ないそうだ。その上、個体変異も多いから、この属は種の見きわめは大変難しいようなのだ。だから、こうゆう記載のバタバタが起こったんだろうね。

尚、アサヒナオオエダシャクとウスイロオオエダシャクとの違いだが、アサヒナは前翅の外縁が反り、細長く見えるのに対してウスイロは前翅の外縁が反らない等の点で区別できる。

 
【開張】 ♂49〜66mm ♀69〜88mm
雌雄の判別は、大きさ以外に前翅からも可能。♂の前翅にはメリハリのある斑紋があるが、♀は全体的に暗色で斑紋が目立たない。
決定的な違いは触角の形状。♂の触角は鋸歯状になるが、♀はそうならなくて糸状なので判別は容易である。

 
【分布】
九州(宮崎県・鹿児島県),下甑島,種子島,屋久島,トカラ列島(中之島),奄美大島,徳之島,沖縄本島,久米島,伊江島,宮古島,石垣島,西表島,与那国島。
国外では、台湾,中国南部,ミャンマー,ベトナム,ネパールに分布する。

 
【生態】
3月と8月を中心に採集されているが、徳之島で6月、石垣島では12月にも得られている。この事から年2〜3化の発生だと考えられている。
♂は灯火によく飛来するが、♀が飛来することは稀である。
ちなみに、♂は稀に黒化した個体が得られる。

 
【幼虫の食餌植物】
ネットの『みんなで作る日本産蛾類図鑑』では不明となっているが、『日本産蛾類標準図鑑』にはリョウキュウマユミ(ニシキギ科)とある。尚、おそらく標準図鑑の表記は誤植で、本当はリュウキュウマユミのことだろう

 
(註4)マッハロッドで💥ズババババーン
マッハロッドとは、特撮TVドラマ「超人バロム・1」に登場するバロム・1の乗り物であるスーパーカーの事である。

 

(出展『メタボの気まぐれ』)

 
健太郎と猛がバロム・1に合体変身する際に使用するアイテムのボップが変形したもので、バロム・1が「マッハロッド、ボーップ❗」と叫んで空中に投げることで出現する。
最高速はマッハ2。飛行も可能で、水中や地中も走行できる。
マッハ2って、どないやねん(笑)。オープンカーなんだから、マッハで走ればワヤムチャになってまうやないの。空中とか水中、地中走行なんかは、もっとツッコミどころ満載である。
ちなみに画像は番組前期の車両で、ベースの車は NISSANのフェアレディZなんだそうだ。

マッハロッドはオープニングの唄に矢鱈と登場する。歌詞にも出てきて、そこに「マッハロッドでズバババーン」という文言が出てくるのだ。

You Tubeの動画を貼っつけておきます。

  

 
歌うのは、あの『ゼーット❗』の水木一郎である。
ありゃ❗、でも「マッハロッドでブロロロロー」だわさ。完全に歌詞を間違えて記憶してたわ。
歌詞を載せておきまーす。レジェンド水木さんの独自に語尾を伸ばすところが堪りまへん。
あと、擬音が萌え〜(人´∀`)。

 
『ぼくらのバロム1』
https://youtu.be/BdegVh82aFA
『ぼくらのバロム1』
 
ズババババーンは「やっつけるんだズババババーン」でごわした。スマン、スマン。

 
ー参考文献ー
◆白水隆『日本産蝶類標準図鑑』
◆保育社『原色日本蝶類生態図鑑(Ⅱ)』
◆手代木求『日本産蝶類幼虫・成虫図鑑 1 タテハチョウ科』
◆手代木求『世界のタテハチョウ図鑑』
◆五十嵐邁・福田晴夫『アジア産蝶類生活史図鑑』
◆岸田泰則『日本産蛾類標準図鑑(Ⅰ)』
◆岸田泰典『世界の美しい蛾』
◆2020.8.9『奄美新聞』
◆二町一成,柊田誠一郎,鮫島 真一『2011年奄美大島にて多数採集されたベニモンコノハ Phyllodes consobrinus Westwood, 1848』やどりが 236号(2013年)
◆『みんなで作る日本産蛾類図鑑』
◆『ピクシブ百科事典』
◆Wikipedia
◆You Tube

 

奄美迷走物語 其の七

 
  第7話『マリア様の島』

 
2021年 3月24日

今日も天気が悪い。
空は雨の予感を孕んでいる。酒がまだ残っていて、体も重い。
けれど少しでも可能性があるならば、尻っぽを振って逃げるワケにはゆかぬ。本日もバイクのレンタル代を払って知名瀬へと向かう。

 

 
朝9時半にポイントに着くが、案の定、何も飛んでいない。
する事もないので、とりあえず煙草に火を点けようとした時だった。突然、頭の中でナレーターの声が流れ始めた。

🎵チャチャッチャッチャーー。
その時、正義の味方イガ厶ワンのイガリンお天気メータの針は、ゼロを指していた❗ぽてちーん

すまぬ。わかりにくいだろうが、超人バロムワン(註1)が変身できなくてピンチに陥った時の気分なのだ。ピンチの際に必ず入るナレーションが『その時、バロムメーターの針はゼロを指していた。』なのだが、それが頭の中でテロップ付きで流れたって感じ。つまり頑張ってフィールドに出たはいいが、二日酔いと厳しい現状を目の当たりにしてパワーメーターの数値は限りなくゼロに近かったのだ。

🎵ヤゴヤゴヤ〜ゴの子守唄〜
🎵聴けば いつでも眠くなるー
🎵ふわぁ~と眠りが忍び寄るー
🎵ねんねんヤーゴよ ヤゴねむり~

しまったなり。二日酔いの腐った脳ミソはワケワカラズ、今度はいつの間にか敵の怪人ヤゴゲルゲ(註2)の唄を歌ってしまってるなりよ。

オデ、オデ、ブッ壊れそう(ㆁωㆁ)
何ら事態が好転する材料がないのである。本日の天気予報は最悪なのだ。あらゆる予報サイトが終日にわたって雨マークを示している。そして、明日も雨の予報だ。出発前の週間予報は比較的良かったのに、こっちへ来てからは信じられないくらいにドンドン悪い方向、悪い方向へと変わり続けてる。女心という女子共通の理解不能な心模様よりも酷い心変わりようじゃないか。女心を知るエキスパート&スーパー晴れ男の看板が泣いてるぜ。

1時間後、センサーが予知していたとおりポツポツ来た。
即座にコレはいかんと判断し、慌ててバイクに跨る。肌の雨センサーが動けと命じているのだ。こうゆう場合、様子見をしようだなんて悠長に構えている奴は、大概がズブ濡れになる。熱帯や亜熱帯では、雨に対する退避の決断が遅いと致命的になりかねないのだ。

慎重かつ大胆な走りで林道を引き返しながらも、冷静に頭を巡らせる。確か知名瀬の町に教会があった筈だ。民家だと気が引けるが、あそこなら問題なく雨宿りできるだろう。

 

 
教会に着き、バイクを降りたと同時にワッと雨が強くなった。急いで離れみたいな建物の下に駆け込む。ギリギリ、セーフ。我ながら迅速かつナイスな判断だった。もしも出発が1分でも遅れていれば、ここに着くまでにズブ濡れになっていただろう。それくらいの土砂降りだ。

30分程で小やみになってきたので、奥の空き地の草むらの様子を見に行くことにする。雨宿りしている間に思い出したのだが、2011年に訪れた時には、この集落の民家の庭でカバマダラが発生していた。位置的にみて、たぶん此処はそのすぐ裏手にあたる筈だと考えたのだ。飛んでいた環境も似ているしさ。

 
【カバマダラ】


(2010年 10月 大阪市福島区)

 
蝶採りを始めたばかりの頃は、カバマダラに対して普通種のイメージを持っていた。図鑑には宮古島以南では普通にいるみたいな事が書いてあったし、初めて採ったのは何と南の島ではなくて、大阪市内の淀川河川敷だったからだ。迷蝶として飛来したものが二次発生したものだろうが、そんなに遠くから飛んで来るという事は、現地には腐るほどいるものとばかり思っていたのだ。実際、その時はかなりの数が発生していた。
だがその後、実際に南西諸島に行ってみると、見るのはスジグロカバマダラばかりで、カバマダラは殆んど見かけなかった。

 
【スジグロカバマダラ】

(出展『日本産蝶類標準図鑑』)

 
結局、南西諸島で会ったのは、いまだに2箇所だけ。西表島で1頭と、此処で発生していた5,6頭だけだ。
翌年の春にインドシナ半島を旅して、日本で迷蝶として捕らえられる種の大半は何処にでもいる普通種なのだという事を改めて理解した。個体数か少なくて森林性の蝶が渡って来る確率は物理的に極めて低いのだ。補足すると、迷蝶はオープンランドに棲むタイプの蝶が圧倒的に多い。ちなみにカバマダラもオープンランドの蝶だ。なのにインドシナ半島でもカバマダラを見た記憶が殆んどない。他に採った明確な記憶があるのは、インドネシア・スラウェシ島の黒化した亜種だけだ。

 

(2013年 2月 Slawesi palu)

 
とはいえ、たまたまインドシナ半島では発生期の狭間だった可能性があるけどね。又はカバちゃんは人家のそばや空き地とかツマラナイ場所にいる事が多いから、そうゆう場所にはあまり行かないゆえに遭遇できなかった可能性もあるかもしれない。

草地の方向に歩いてゆくと、マリアの銅像が建っていた。

 

 
とても穏やかで、慈愛に満ちた美しい顔だ。
クリスチャンでも何でもないのに、思わず胸の前で手を組む。

おねげーですだ。アマミカラスアゲハの♀を採らせておくんなせー
 
草地を確認したが、カバマダラの姿も幼虫の食草であるトウワタも無かった。発生してないか…。また退屈に逆戻りだ。
手持ちぶたさで、教会の前までゆく。
今まで、あまりまじまじと見たことはなかったけれど、改めて前に立つと、何とも言えない風情があって美しいと思った。

 

 
あっ、ザビエルだ。フランシスコ・ザビエルの像があると云うことは、カトリックの教会っていうことかな。
考えてみれば、奄美大島って割りかし教会が多かったような気がする。島内各地で幾つか見た憶えがあるぞ。そういや、北部の笠利町にも一風変わった教会があったな。

 
【カトリック大笠利教会】

(出展『キリストとともに』)

 
なぜこの島には教会が多いのだろう❓
雨はまだ上がらなそうだし、退屈しのぎでググってみることにした。

理由はどうやら島の悲しい歴史と深い関係があるようだ。
江戸時代、薩摩藩の藩政下の奄美は年貢として黒糖の生産を厳格に課せられていた。米の栽培を一切認められず、貨幣の流通も禁止されていた。そのため島民は米などの生活に必要な物資を比率の悪い物々交換で得るしかなかった。
明治維新後、中央政府は黒糖の自由売買を認める。しかし鹿児島県はそれに先んじて県肝煎りの商社を作り、本土の商人に黒糖や大島紬の権限を牛耳らせた。西南戦争で県側が政府に負けると、ようやく島民も黒糖を自由に売買できるようになったものの、その後も県や警察による様々な圧力を受け、人種差別と仕組まれた経済格差に苦しみ続けられる。
当時の島の方言は沖縄のウチナーグチと似た方言で、本土では言葉が通じなかった。それが要因で明治初頭に起きた黒糖自由売買運動に失敗したとされ、その事がキリスト教の宣教師の招聘に繋がってゆく。
地元出身の検事や名瀬の有力者達は、このような奄美の位置付け、状況を変えるには先ずは島民意識を変える必要があると考えた。そこで「万民は平等」という西洋思想、つまりキリスト教の導入、布教を促すことにした。
1891年(明治24年)、鹿児島市ではプロテスタント、ロシア正教などのキリスト教各派が既に布教していたが、奄美からの要請にいち早く応じたのがカトリックだった。そして、その年の暮れにはザビエル教会の神父が島に渡る。教会はハンセン病などの診療所や教会建設などで島の人々に現金収入を得る機会を与えた。そして神父の知識、生活様式なども島の人々の好奇心をくすぐった。当時、島はノロやユタなど土着宗教が中心で、仏教もまだ浸透していなかったため、やがて多くの人々がこの新しい思想が信仰してゆくことになる。
しかし、不幸は終わらない。新しい宗教として島に浸透していったカトリックだが、その一方でローマを頂点とするピラミッド型の組織形態が軍部の警戒を呼ぶことになる。世界規模で拡大する戦乱により激動する時代、変わりゆく文化はやがて村落共同体の内部対立をも引き起こしてゆく。
そして大正時代になり、カナダ宣教会が入り、ミッション系女学校の大島高等女学校の運営を引き受けたことが「奄美大島カトリック迫害事件」の発端となった。
1923年にカトリック信徒の中学生2人が高千穂神社の参拝を拒否して退学となった。鹿児島新聞はこの事件にふれ「現在同島の三分の一はキリスト信者となり、その結果、過激な言動をなすものが増加し来たり」と報道した。とはいえ当時の実際の信者数は全体の5.6%にすぎなかったそうた。
さらに鹿児島新聞は、大島高女が教育勅語を奉読していないとして非難を強めた。
問題は昭和になっても燻り続け、カトリックに対する世間の風当たりは次第に強まってゆく。1933年(昭和9年)には邪教排撃運動が起こり、名瀬町民大会は国体に反するとされた大島高女の即時撤廃を求めることを決議、宣言し、それにより翌年の3月31日限りで廃校とすることが文部省により認可、1934年の臨時議会で廃校が決定される。
「スパイの学校」と非難された女学校がつぶれても、排撃運動は終わらず、宣教師には「南方要害の地、奄美大島にスパイとして送り込まれたのではないか?」という嫌疑がかけられる。地元の新聞は、その軍部などからの情報に乗っかり、スパイ視報道を展開するようになる。やがて全国紙の新聞にも「南の要塞の島で広大な土地を米英の宣教師が買い占めしている」「外国人宣教師はスパイか」「教育勅語に不敬罪か」などの過剰な見出しが紙面に踊るようになる。これは当時の政権への批判を、奄美大島が何処にあるかも知らない大多数の国民の目から逸らさせるためのスケープゴートとして捏造されたものだと言われている。
その年には、やむなくカトリック教会は時勢を鑑み、奄美大島から全ての外国宣教会、宣教師を引き上げさせる。
当時の奄美大島要塞司令部の報告書には「カ教教義は国体・国民精神と相容れず、かつ部落の統一・平和を害する」と書かれてあり、日本陸軍の教唆によるカトリック信徒への迫害が益々激化し、奄美大島は戦前最大のクリスチャン受難の地となってゆく。
1936年には、瀬戸内国防協会は大会を開いて「国土防衛の生命線たる奄美大島におけるスパイ容疑外人、並びに邪教カトリックの徹底的殲滅を期す」と決議。奄美のカトリック信者は改宗を強要され、軍幹部は各集落に出向いて「非国民だ」と恫喝して信徒を集めて監禁し、改宗しないと殺すとまで脅した。
弾圧方法は多岐にわたり「名士の啓発講座」や講演会などの名目で「全ての村民にキリスト教徒であることを止めさせれば、あなたも日本人になれる」などという姑息な方法も用いられた。「あなたも日本人になれる」というフレーズだが、補足説明すると、大正時代の奄美大島に住む小学生の夢は「日本人になりたい」だったという。つまり当時の島民は真の日本人として認められていなかったのだ。これは中央政府による巧妙な島民統治で、キリスト教徒弾圧に積極的に参加すれば「日本人になれる=民族自決権を勝ち取れる」と考えた島民もいたため、そこに目をつけて島民たちを分断させ、一致団結させないという意図があったようだ。
その統治方法は企みどおりとなる。青年団員がカトリック信者の墓を破壊したり、信徒宅に押し入って十字架、ロザリオ、祈祷書を奪い、かわりに天照大神の札を貼ったりという事件が頻発する。また憲兵たちからも迫害され「天皇とキリストのどちらが偉いか」などと詰問されたという。多くの教会が襲撃をうけ、笠利の教会は放火されて焼失した。そして11月には14のカトリック教会が鹿児島県に無償譲渡され、翌1937年には町村に無償で払い下げられた。役場となった聖心教会の十字架は切り倒され、替わりに日の丸国旗が掲げられた。改宗しないカトリック信者宅は、防空演習の標的となって消防団に放水され、家中が水浸しにされた。肺病の少女がいたカトリックの家も一連の防空演習により、少女が寝ていた布団ごと水浸しにされた。このような弾圧は第二次世界大戦が激化し、食糧事情が劣悪化するまで続いたそうだ。

現在、奄美大島にあるカトリック教会は全部で31カ所。
うち4つの教会ではミサは行われておらず、空き家のような状態で、この10年で信者の数は500人以上も減っているという。
それでも迫害時期を生き抜いた信者、その子孫は今も信仰に厚いという。

驚いたのは、暗殺されたアメリカ大統領 ジョン・F・ケネディーの葬儀で使われた祭壇が島内の教会にあるらしい。
調べると名瀬市街にある「カトリック名瀬聖心教会」だった。役場にされ、十字架を切り倒された教会だ。
それにしても、ナゼに名瀬にミスタープレジデントと縁(ゆかり)のある教会があるのだ❓
あっ、しまった。つい「ナゼに名瀬」なんてベタなダジャレを言ってしまったなりよ。

 

(出展『まだ死んでない』)

 
あら、この教会なら見たことあるぞ。と云うか、アカボシゴマダラを拝山に探しに行った帰りに何度も前を通っている。

教会内部とケネディーの祭壇の画像も貼り付けておこう。

 

 
(出展『奄美なひととき』) 

 
その由来も分かった。この祭壇は元々アメリカのワシントン大司教区、司教座聖堂聖マテオ教会にあったもので、本来は取り壊される予定だったそうだ。だが1962年に聖心教会のルカ神父が休暇でアメリカへ帰国した折りに偶々その祭壇に出会った。神父は壊してしまうならば奄美大島へ寄贈して欲しいと願い出て、譲渡の約束を取り付けたようだ。
そして、その翌年の1963年にケネディー大統領の祭壇として使用され、1964年には約束通りに奄美大島へ運ばれてきたそうだ。

ふ〜んと納得したところで、教会の敷地内に黒い車が入って来た。誰かは分からないが、教会の人だったら挨拶しておこうと思って立ち上がる。
やがて車から黒い僧衣を纏った神父さんが出てきた。まさか神父さんが出てくるとは思っていなかったので、ちょっと驚く。
その佇まいは落ち着いていて、そこはかとない厳かな雰囲気が漂っていた。慌てて、その場で頭を下げ、声をあげて雨宿りしている旨を伝える。
神父さんは静かに頷いただけだった。そして教会には入らず、直ぐにまた車内に戻り、何処かへ行ってしまった。
それを見送ると、また静寂が訪れた。何だか不思議な気分に包まれ、その穏やかに頷く表情が暫くのあいだ頭に残った。
今まで何かの宗教と深く関わるという経験とは縁なく生きてきたが、宗教を信じるという敬虔な気持ちの一端に触れたような気がした。長年、宗教を信じることに対して警戒心を抱(いだ)いてきたが、初めて信心深い人たちの気持ちを理解できたような気がしたのだ。絶対的なものを信じることで得られる安心感や喜び、そして神に感謝するという気持ちが心のうちにすんなりと入ってきたのだ。
旅情が心に広がる。次に奄美大島に来る時には、雨ならば教会巡りをしてもいいかもしれない。そして、改めて島の歴史に思いを馳せよう。

午後1時。ようやく雨が上がった。
空をグルッと見渡す。ネットのお天気サイトは相変わらず全て雨予報なのだが、雲の色や流れ方、風の方向と強弱、湿度等々の万物から感じるものを総合して、雨は暫くは降らないと思った。天気予報なんかよりもワシが肌で感じるものの方が、よっぽど正確なのだ。
幸い気温は低くない。これならアマミカラスアゲハも飛びそうだ。それに意外とこうゆう天気の方が♀が採れたりもする。秋に来た時は夕方4時以降によく見掛けたし、本土でも近縁のカラスアゲハやミヤマカラスの♀は夕方に飛ぶイメージがある。午後3時には蝶影は薄くなるから帰ってしまう採集者が多いが、アゲハ類の♀はそれ以降に現れることが多いのだ。あくまでも自分の経験値からの話だけどさ。

アゲハの集まるポイントに戻る。
ここは三度目の正直といこうじゃないか。マリア様にもお祈りした事だし、何とかしてくれるだろう。正直そうとでも思わなければ、やってらんない。今日もブヨにタカられっぱなしで、心はササクレ立っているのだ。

だが、時折アマミカラスの♂は飛んで来るが、♀はいっこうに姿を見せない。

クソがっ❗( ̄皿 ̄)マリアの野郎~
敬虔な気持ちも、結果が出なけりゃ手を返したようにフッ飛ぶわい。どうせ人としての修行が足りない男なのだ。

2時20分。諦めてそろそろ移動しようかと思った時だった。
谷の向こうから漸く♀が舞い降りて来た。
♂とは違い、その飛翔はゆるやかで優雅だし、チラッと鮮やかな赤紋が見えたから間違いない。マリア様の降臨だ。
やる気マックスのエネルギーが全身を駆け巡るが、頭は冷静だ。驚かせないように、ゆっくりと追いかける。今度は昨日みたいな無様な結果は何としてでも避けねばならぬ。心を落ち着かせながら細かいステップで距離を詰める。
そしてミカンの花に吸蜜に来た瞬間には網が下から上にカチ上げられていた。

( ゚д゚)❗
中を見ると、しっかり入っている。赤紋がデカいから紛うことなき♀だね。

 

 
やっぱアマカラの春型の♀は赤紋が凄いね。艶やかだ。夏型よりも遥かに美しいし、オキナワカラスアゲハの春型よりも綺麗だ。

 

(2011年 9月)

 
夏型は紋が赤じゃなくてオレンジ色のモノが多いし、メリハリも無くて全体的に野暮だ。春型と比べてデカくなるのも、もっちゃりでヨロシクない。
但し、夏型でも珠に凄いのもいるけどね。

 

(2011年 9月)

 
裏面も美しい。

 

 
オキナワカラスの前翅裏面の白帯は、ほぼ平行で、ミヤマカラス並みに幅広い。その亜種であるアマミカラスは白帯が更に発達し、赤い弦月紋もが大きくなるのが特徴だ。
ちなみに小太郎くんとカッちゃんが言ってたけど、稀に赤紋が二重紋になるのもいるらしい。だとしたら、ホッポアゲハみたくなるって事か。なら、相当ビューティフルだね。
(・∀・)んっ❓、よく見りゃ、この個体は赤紋の上部の隣にちょっとだけ赤紋が出てて、二重紋になりかけてるぞ。この程度では、とてもじゃないが二重紋とは呼べないけどさ。
一応、参考までにホッポアゲハの♀の裏面画像を貼っつけておきませう。

 

(2016年 7月 台湾・南投県仁愛郷)

 
世界のアゲハチョウの中で、裏面が最も美しいのはどれか❓と問われれば、このホッポアゲハを一番にあげるかもしれない。それくらい艶やかな出で立ちだ。

何はともあれ、狙い通りに♀が採れたからご機嫌だよ。
(^_^)vへへへ、してやったりだ。球際に強い、流石の猿飛のワシやんけ。
∠(`・ω・´)/バッローーーム❗❗

 

(出展『yanakazuのブログ』)

 
バロムポーズでキメてみせる。

でも本当は流石の猿飛のワシの力なんかではなくて、きっとマリア様の思し召しだ。
手を胸の前で合わせ、目を閉じる。
マリア様、ありがとう

2時半。
満ち足りた気持ちで、あかざき公園へと向かう。

昨日と同じく3時に到着。しかし雨こそ降っていないが、天気は悪くて風も強い。これではアカボシゴマダラもフタオチョウも現れそうにない。
ならばとイワカワシジミを探すことにする。あかざき公園はイワカワシジミの幼虫の食樹であるクチナシが多い。そしてイワカワは食樹とその周辺の葉に止まっている事が結構あるので、それを探そうというワケだ。

 

(2014年 9月)

 
しかし探し回るも、1頭たりとも姿を見ない。
クチナシの実に卵や幼虫がいないかと探してみたが、そちらも全く成果なし。

 

(2014年 9月)

 
どころか実が殆んど無い。古い実さえないから、もしかしたら採集者に根こそぎ持っていかれたのかもしれない。そゆ事、すんなよなあ。イワカワは去年も一昨年も大不作だったと言われてるのに益々減るじゃないか。ホント欲深い虫屋が多いわ。

夜は雨の予報だったし、昨日みたいな怖い思いをするのもイヤだったので、今日は宴会に参加することにした。

 

 
鶏肉のホイル焼と海老のアヒージョ。
ゲストハウスの娘さん(💖美人)が作ってくれた。結構美味しい。

聞くと、今夜はお好み焼パーティーらしい。

 

 
しかし、焼かれているお好み焼に何か違和感がある。
あれれっ❓よく見ると表面に豚肉の存在がない。
娘さんに『豚肉は入れないの❓』と尋ねたら、『入ってるよー。』の答え。『えっ、どこに❓』。『中にー。』
何だと❗、粉モン大好き関西人としては許しまじき行為だ。

( ̄皿 ̄)ダボがっ、ワレお好み焼をナメとんのかっ❗
とは、勿論のこと口が裂けても言わない。美人には弱いのだ。優しくレクチャーする。先ずは豚バラ肉を焼き、その上から生地を乗っける。そうすれば外側がコーティングされるから、ひっくり返す時に崩れにくくなるし、豚の脂が生地に行き渡るのだ。それに、この方法ならば無駄に油を追加しなくて済む。

ひっくり返す段になって、今日来た若者二人(虫屋)のうちの一人に、返し係を任じる。しかし見事に失敗して割れてしまう。
『ψ(`∇´)ψケケケケ…、素人じゃのう』と笑ったら、すかさず『じゃあ、次の時は御手本をみせて下さいね』と返された。
(◎o◎)ゲロリンコ、まさかの逆襲である。マジかよ❓言った手前、失敗したら超カッコ悪いじゃないか。美人さんたちも揃ってきたから、かなりのプレッシャーが掛かるよ。失敗も避けたいところだが、敵前逃亡して美人にイケてないと思われるのは、もっと最悪だ。元来のええカッコしいとしては逃げるワケにはゆかぬ。翻して考えれば、ヒーローになるチャンスでもあるからして、ここでズバッとエエとこ見せたろやないの。
でも本当は、お好み焼を返したことなど長い間ない。たぶん中学生の時以来だろう。普段、家でお好み焼なんて作らないし、店でも最近は自分で焼くシテスムは消えかかっているのだ。
衆目が注目する中、躊躇を捨てて思い切って、えいや❗と一挙に返す。

٩(๑`^´๑)۶どんなもんじゃい❗❗
思ってた以上にキレイに返り、心の中では我ながら上手くいったとホッとしつつも、さもありなんの余裕のヨッちゃんのドヤ顔で若造に目をやる。そうさ、オイラは球際に強い男なのだ。結構プレッシャーがエネルギーになるタイプなのだ。
そして、すかさず言う。
『キミとは違うのだよ、キミとは。キミみたいにビビって躊躇すると失敗するに決まっておるのじゃ。ハートが弱いのだよ。虫捕りでも恋愛でも大胆さは不可欠なのだよ、ψ(`∇´)ψウシャシャシャシャー。』

 

 
自分で言うのも何だが、旨い。やっぱ焼き方は大事だ。
ちなみに若者にはリベンジを促し、彼は次の機会には見事キレイに返した。パチパチパチパチー👏

 

 
後半はチーズを乗せた洋風お好み焼なんぞも登場した。
味は全然覚えてない。どうせ大した事なかったんだろう。やはり、お好み焼は王道の「豚玉」に限る。

 

 
楽しくって、オジサンまたしても痛飲。
まあ、流れも良くなってきてるので、コレでいいのだ。

                         つづく

 
追伸
えー、前回の文章の一部に手を入れ直しました。知名瀬林道と大川ダムとの怖さの質感の違いを伝え忘れてたからね。ものすごくヒマな人は読み直して下され。文章は、たった一言の有る無しで随分と印象が変わることもあるから難しい。

この日に採ったアマミカラスの♀と、比較のための♂とオキナワカラスの♀の画像も貼っつけておきます。

 
【春型♀】 

【春型♂】

【オキナワカラスアゲハ春型♀】

(2013.2.28 沖縄県名護市)

 
(註1)超人バロムワン
東映、よみうりテレビ制作の特撮ヒーロードラマ『超人バロム・1(ワン)』のこと。「超人バロムワン」と表記される事が多いが、正しくは「超人バロム・1」と間に「・」が入る。
1972年(昭和47年)4月2日から同年11月26日まで日本テレビ系にて毎週日曜19:30〜20:00に全35話が放映された。
原作はあの『ゴルゴ13』の、さいとう・たかをの漫画『バロム・1』。しかし設定の一部の流用を除き、タイトルをはじめ、ストーリー、バロム・1のコスチュームデザイン等々は東映側によって大幅に変更されている。

ストーリーをかい摘んで書いておきます。
宇宙で何千年ものあいだ、正義の象徴コプーと悪の象徴である魔人ドルゲは戦い続けていた。

 
【魔人ドルゲ】

(出展『改造墓場A』)

 
やがて地球の侵略を開始したドルゲに対し、コプーはそれを阻止するために地球の少年(小5)白鳥健太郎と木戸猛の2人に正義のエージェントであるバロム・1の力を与える。2人は友情のエネルギーで互いの右腕を交差(バロムクロス)させることによって超人バロム・1に合体変身、悪の化身ドルゲに立ち向かう。
二人の役割は分担され、健太郎の頭脳がバロム・1の知性となり、猛の体力がバロム・1のパワーとなる。変身が完了すると同時に両目とヘルメットのエネルギーチャージランプが矢印の方向に光り出し、身体全体にバロムエネルギーが充填される。但し両目の中で会話する場面が度々挿入され、変身前の自我も残っているため、二人が喧嘩をしたり互いを信頼しない状況に陥った場合には変身は解けてしまい、信頼関係が回復するまで再び変身することはできない。その際、2人の友情エネルギーは手の平サイズのボップの裏のバロムメーターに針で表示され、友情エネルギーが300バロム以下になればバロム・1に変身できない。

 
【ボップ】

(出展『☆月光のあれこれ日記☆』)

 
なおボッブには、ドルゲに反応するレーダーや発信機、サーチライト、バロム・1の乗物であるマッハロッドへの変型、仲間の危険を知らせる機能などがある。また武器としても使え、投げつければ戦闘員のアントマンを一撃で倒すこともできる。

作品は特異性が高く、敵の首領ドルゲの見てくれが邪悪度満載、作戦も邪悪で弱い心を持つ人間を操るものが多く、おどろおどろしい雰囲気を醸し出している。ドルゲによって送り込まれる魔人たちも怪奇性が強調されたグロテスクなものが多い。特に後半以降はエスカレートし、人間の身体の一部をモチーフにしたウデゲルゲやクチビルゲ、クビゲルゲ、ヒャクメルゲなどのインパクト有りまくりの魔人が次々と登場し、より怪奇性の強い展開となった。子供心にも、コレってマジィんじゃないの❓というくらいにキワドイ見ためのものが多い。

 

(出展『やさしい嘘からはじめよう』)

 
上段左上からクチビルゲ、ヒャクメルゲ。中段がツメゲルゲ、クビゲルゲ。下段はノウゲルゲ。
もう、ここまでくるとホラーだよなあ(笑)

 

(出展『SAWANP☆西荻サブカル酒場』)

 
上段左からヒャクメルゲ、タコゲルゲ、キノコルゲ。下段はカミゲルゲ、クビゲルゲ、ウデゲルゲ、ノウゲルゲ。

ムッチャクチャである。今だったら、こんなの絶対にクレームの嵐だろう。身体障害者に対する配慮が足りないとかね。
けれども何でもかんでも差別に繋げて、声高に非難する昨今の風潮って気持ち悪いし、何だか怖いよ。色んな表現があって玉石混交の作品があるからこそ、世の中オモシロいのに、それを許さない社会って懐があまりに狭すぎる。だから、毒気を抜かれた最近のテレビはツマラナイのだ。

 
(註2)ヤゴゲルゲ
「超人バロム・1」に登場したドルゲ魔人の一人。人じゃないから一人じゃなくて一体か…。そんなことはどうでもよろし。

 

(出展『とうふプードル』)


(出展『つやつやみお』)

 
1972年8月6日放送の第19話「魔人ヤゴゲルゲが子守唄で呪う」に登場する。
で、「ヤゴゲルゲの子守唄」とは、そのヤゴ魔人がお化け屋敷に入った子供達を誘拐する際に歌ったものである。それにより子供達は操られて連れ去られてしまう。また、この子守唄の破壊力は凄まじく、我がんところの戦闘員のアントマンの脳細胞を破壊し、バロム1の手足を痺れさせたり、意識を失わせる程の威力を有していた。
が、何よりも威力を発揮したのはお茶の間の子供たちに対してであった。その低く響き渡る不気味な唄に衝撃を受けたという子供達は多く、トラウマになったお子ちゃまが続出したといわれる。かくいうワタクシも、その一人である。重低音で覚えやすいメロディーなので、妙に頭にコビり付くんである。
それゆえか、ダウンタウンもネタにした事があり、探偵ナイトスクープでもヤゴゲルゲの子守唄を歌われてトラウマを植え付けられた妹が、兄に復讐したいという依頼の回もあった。
隠れた名作とも言える特撮ソングだった為、2007年に発売された放送35周年記念「超人バロム・1」音楽集にも、当初は収録予定だった。しかしマスターテープが行方不明で、結局収録される事はなかった。巷では、これはヤゴゲルゲの子守唄の呪いではないかと囁かれている。

それはさておき、何ゆえトンボとかヤンマではなくてヤゴなのだ❓トンボに比べて弱いだろうに…。
あっ、そうか。魔人たちの名前の語尾には必ず「〜ルゲ」が付く。そして大多数にはクチビルゲ、ウデゲルゲ、クビゲルゲ、ノウゲルゲ、ツメゲルゲと、ルゲの前に濁点が入るのだ。「ヤンマルゲ」では濁らないから示しがつかんのだろう。
あれっ❓でもトンボルゲならOKだぞ…。よしワカッタ。トンボルゲだとマヌケな感じがするから✖なのだ。ヤゴゲルゲの方が遥かに語呂がいい。そうゆう事にしておこう。

一応、You Tubeの『ヤゴゲルゲの唄』を貼っつけておきます。下の空白欄をタップするとサイトに飛びます。

 
ヤゴゲルゲの唄

奄美迷走物語 其の五

 
 第5話『(´ε` )何だかなあ…』

 
 2021年 3月23日

 

 
デイゴの花が咲きかけている。
知名瀬トンネルに向かう道の途中で鮮やかな赤が目に入ったので、思わずバイクを停めたのだ。

花が咲くと、こんな感じだ。

 

(出典『FUNPO』)


(出典『okinawaclip.com』)


(出典『てぃだにすま宮古島』)

 
デイゴの花には青空がよく似合う。
ダイビングインストラクター時代に過ごしたサイパンでも咲いてたなあ…。夏になると島の沿岸がオレンジ色に染まるのだ。
戦前、ミクロネシアの島々は日本に統治されていたため、多くの日本人たちが移り住んでいた。そんな故郷を離れた人たちが日本を懐かしみ、この木を南洋桜と呼んでいたと聞いたことがある。

どうせ天気が悪いから蝶は飛びそうにないので、その場で検索ちゃん。

 


(出典『サイパンの花 SEASHORE BLOG』)

 
(・o・;)あれっ❓、何か違うぞ。
てっきりデイゴだと思っていたサイパンの赤い花は、どうやら火炎樹(フレームツリー)という全く違う種類の木のようだ。
でもフレームツリーで検索すると、火炎樹、火焔木、鳳凰木、南洋桜とか色々出てきてワケわからんくなる(註1)。ラチあかんわい。帰ってから再度検索ちゃんだね。気が向いたらの話だけど。

取り敢えず昨日のミカン畑へと向かう。
途中、網を持った爺さんたちがいたので停まって話をする。現地での情報収集は大事だ。聞いといて損はないだろう。

お二人はイワカワシジミ狙いで来たらしい。しかし全く姿を見ずとの事。ついでに去年ここで発生していたシロウラナミシジミの事を訊いたら、すぐ横を指さされた。見ると、川向うに幼虫の食草であるシュクシャが山ほど生えていた。去年の秋に来た時には、その辺で乱舞していたらしい。でも今回は全く見掛けないと言う。

 
【シロウラナミシジミ Jamides alecto】

(2009.11 石垣島)


(出典『日本産蝶類標準図鑑』)

 
シロウラナミさんは奄美大島には本来はいない蝶だから、さらに南の島から渡ってきた迷蝶扱いとなる。地球温暖化で、そのまま土着しててもおかしくないんじゃないかと思ってたが、寒さに負けて冬を越せなかったのかもなあ。ターゲットであるアカボシゴマダラやフタオチョウ採りの合間にでもチョチョイと摘んでやろうと思っていたが、アテがハズレた恰好だ。
楽勝と思ってたシロウラナミ如きも採れんのか…(´-﹏-`;)
(´ε` )何だかなあ…。

奥に進むと、もう一人網を持った人がいた。
話を聞くと、蝶も採るけどメインは鳥の写真撮影らしい。蛾もやると言うからアマミキシタバの事を尋ねたら、蛾は蛾でも昼蛾がメインらしくって、モンシロモドキなる蛾をわざわざ見せてくれた。良い人だ。

 
【モンシロモドキ】

(出典『Picuki』)

 
見せて貰っといて申し訳ないが、少しは蝶っぽいもんかと思ったら、どう見ても蛾風情だ。ようは何ら有益な情報は得られなかったというワケだ。(-_-;)何だかなあ…。

ポイントに到着するが、相変わらず空はどんよりだ。昨日ほどではないが気温も低い。予想どおり蝶は何も飛んでいない。

モンシロモドキらしきもん(註2)が飛んで来たので、一応採った。どうせコイツら、曇ってても飛ぶんだろなあ。いまだ蛾には偏見ありなのだ。

 

 
蛾にしてはスタイリッシュな気がしないでもない。
さておき、さっき見せてもらったヤツとは少し違うような気がするぞ。
そういやモンシロモドキにも幾つか種類があると言ってはったなあ。でもどうだっていいや。所詮は蛾なのだ。しかも、こうゆう腹が黄色くて白地に黒い点々がある奴って本能的に気持ち悪いんだよなあ。白と黒に黄色が加わると、とたんに自分にとっては最悪の色の組合せになる。だからユウマダラエダシャク系の蛾を見ると背中がブルッときて、殺意が芽生えるのだ。

 
【ユウマダラエダシャク】

(出典『新・ぼちぼち植物などを』)

 
天気は相変わらずだが、気温が少し上がり始めたのでアゲハ類が飛び始めた。しかし昨日みたいにジャンジャン飛んで来るというワケではなくて散発だ。

 
【アマミカラスアゲハ♂】

 
それに♂はチョボチョボ飛んで来るが、狙いの♀は全然飛んで来ない。プーさん曰く、アマカラは赤い網に寄ってくるというが、フル無視だしさ。よくよく考えてみれば、昔、秋に来た時にも赤網だったけど、寄ってきたという記憶は全然ないもんな。ハッキリと効果があったのはツマベニチョウだけだ。

 
【ツマベニチョウ♂】

 
今回、興味を示すのはモンキアゲハだけだ。かえってそれがウザい。おまんらなんぞ、要らんのだ。
段々、💢イライラしてきた。この場所に来てから、ずっと小バエと云うか目まとい(註3)的なモノどもにタカられっぱなしでストレスが溜まりまくりなのだ。

午後2時。何気に振り返ったら♀が目の前をコチラに向かって飛んで来た。
心が瞬時に沸き立つ。しかし網の柄を目一杯に伸ばしていたから、そのままでは近過ぎて振れない。
けどワシのバッティング技術をナメんなよ💢(-_-メ)❗咄嗟に後ろ足を引いて、野球の内角打ちみたく腕を縮めて左下から右上に振り抜く。
 
∑(=゚ω゚=;)ガビーン❗やってもたー
それでもやっぱ近過ぎて、懐に入られて空振り。しかもスウェーしながら振ったからバランスを崩して後ろ向きに尻餅をついた。
何とも不様な恰好である。それを嘲笑うかのように彼女はゆったりと羽ばたきながら優雅に上へと舞い上がり、やがて梢の向こうへと消えて行った。
そして、それっきり二度と♀は姿を現さなかった。
今思えば一旦スルーして、振り向きざまに後方から網を振るべきであった。柄の長さに合わせて間隔を空けてから落ち着いて振れば何て事なかったのだ。間合いは自分で作るべきものなのだ。それが蝶採りの極意なのだが、まだまだ修行が足らんよ。
ここ数年は蛾のカトカラ採りが中心で、ろくに蝶採りをしとらんからこうなるのだ✿§∞◆〆▲□●♯∌ゴニョゴニョ。我ながら言いワケがましい。自己嫌悪で益々落ち込む。身も心も絶不調だよ。

2時半に諦めて移動。あかざき公園へと向かう。
狙いはアカボシゴマダラとフタオチョウだ。今回のターゲットの蝶に敢えて優先順位をつけるとしたら、1位がイワカワシジミの♀、2位アカボシゴマダラの春型、3位フタオチョウの春型、4位がアマミカラスアゲハの♀という順になる。
奄美大島のイワカワの春型♀は白い紋が発達する特異な型で美しい。2位のアカボシの春型は他の時期のものよりも白くて、翅形も違うから欲しい。3位のフタオは元来がフタオチョウ類大好き男だし、春型は見たことがないからだ。とはいえ、夏型と見た目はあまり変わらないらしいから3位なのだ。アマミカラスアゲハの♀は単に美しいから欲しい。特に春型の♀は美しいからね。これらの採集難易度は自分の中では横一列ってところだろうか。此処ではフタオを除き、それぞれ秋には採っているから基本的な生態は知っているからね。正直、何とでもなると思ってる。強いて言うならば、アカボシの♀だろうか。2011年は♀を採るのにかなり苦労したのだ。滅多に姿を見せないし、採れても鳥のせいで翅が一部損傷していて完品がどうしても採れなかったのだ。ある意味、振り回されたと言ってもいいような状況だったのだ。

 

(出典『SEPT』)

 
一番高台に登る。
アカボシゴマダラは午後3時くらいになると、山頂や尾根で雄同士が縄張り争いをするのだ。奄美大島でのフタオチョウとの遭遇は未体験だが、おそらく同じように縄張り争いをするものと思われる。ようは、それらをイテこましてやろうという算段なのだ。

周囲の木に🍌バナナトラップもかける。アカボシもフタオも成虫の餌は樹液や熟して発酵が始まったフルーツだから、
(☉。☉)おっ❗、こんなとこに甘々の御馳走があるやんけー。(^o^)vラッキ〜
ってな具合で寄ってきたところをテゴメにしてやるつもりなのだ。
ψ(`∇´)ψケケケケケ、悪いオジサンの謀略にハマり、毒牙にかかって何処までも落ちてゆけばいいのだ。
この二段構えの布陣で今度こそ結果を出して、そのまま連勝街道の波に乗ろうじゃないか、🎵フォンテーヌ。

しっかし、3時半になっても飛んで来ん。来る気配すらない。
やっぱ晴れんと飛んで来んかあ…。バナナトラップには蝿一匹来ないし、明日も明後日も天気予報は悪いし、何か絶望的な様相だ。
それに、さっきから矢鱈と手と顔が痒い。
見ると、手の甲がヤバいくらいにパンパンに腫れあがってる。

 

 
顔も痒くて、触るとボコボコだ。きっとケンカでタコ殴りされたみたいになってんだろなあ…。男前が台無しだよ。
たぶん目マトイだと思っていた奴らはブヨだったに違いない。この激しい痒みと腫れあがり、岐阜県にタカネキマダラセセリ(註4)に会いに行った時にボコボコに刺された時と同じ症状だ。

 
【タカネキマダラセセリ】

(出典『Wikipedia』)

 
掻きまくって耳の縁が血だらけになって、揚句にはカサブタでボロボロ。で、当時の彼女に『何それ❓かさぶたデビルイヤーやんか。』と笑われたのだった。だから翌年は万全を期して虫除けクリームを塗りたくって参戦した。おかげで被害はゼロだったんだけど、代わりに現地で会った爺さんに蚊柱ならぬブヨ柱がモウモウと立ってた。そっちに集中攻撃とあいなったワケだね。遠目に見て、アレには笑ったもんな。自分もきっとあんな状態になってんだろなあと思うと、二重にオカシかったよ。

午後4時前。
急に自分のいる場所だけ雲が切れ始めて青空が覗いたと思ったら、サァーと陽が射した。我ながらに、そのスーパー晴れ男振りに驚く。天気予報、関係あらへん人なのだ。とにかく良い兆しだ。今度こそ波に乗れるんじゃないかと期待がボワッと膨らむ。

そして、その5分後くらいだった。
高さ約3メートル、青空をバックに大型の白い蝶が正面から猛スピードで飛んで来た。

(°o°)フタオチョウだ❗しかもメス❗❗

だが、茫然と見送るしかなかった。
突然のことで、何が飛んで来たのか直ぐにはワカランかった。で、フタオだと認識した時には既に頭上を通過しようとしていた。振ったところで間に合わない。そして一直線に背後の東屋を越えて行った。幻のような光景だった。一拍おいて現実に立ち戻り、慌てて反転して追いかけて東屋の向こう側に出るも、しかしその姿は忽然と消えていた…。

(´д`)マジかよ❓

そういや知名瀬で会った爺さんの一人が、このポイントはフタオが飛んで来ても止まらずに通過すると言ってたなあ…。
まあいい。それなら空中でシバけばいいだけの事だ。ワシの鬼神の如き網さばきをナメんなよ(-_-メ)

しかし暫くするとまた曇り始め、二度と飛んでは来なかった。
退屈しのぎでキオビエダシャクでも採ろうかと思うが、突然どこからともなく現れて、止まらずに直ぐにどっかへ飛んで行ってしまう。オマケに飛ぶ位置が高くて、殆んど網が届かない。
キオビエダシャクさえも採れんのかと思うと、何だか情けなくなってきた。(;_;)ベソかきそうだよ。
(´ε` ) 何だかなあ…。

                         つづく

追伸
何だかなあ…の連発である。
でもホント、その時は何度もそんな気持ちになっていたのである。負の連鎖に抗うも、ことごとく返り討ち。どうしようもなかったのだ。

以下、解説編だけど、本文よりも解説の方が圧倒的に長いって、それってどうよ❓
(╯_╰)何だかなあ…。

 
(註1)火炎樹、火焔木、鳳凰木、南洋桜とか出てきて…
調べてみたが、正直ワケわからん。ワカランけどワカランなりに整理して解説しよう。

先ずはデイゴから。
学名 Erythrina variegata。マメ科マメ亜科の落葉高木で、漢字だと梯梧と書くそうだ。
インドからマレー半島が原産。日本では沖縄県が北限とされているが、奄美大島の隣の加計呂麻島の諸鈍海岸には約80本の並木道があるなど、あちらこちらで大木が見られる。これは交易船の航海の目印とするため等で沖縄から植栽されたものだといわれている。
春から初夏にかけて花を咲かせるが、毎年満開となるという保証はなく、年毎の差が大きいそうだ。
近年は、台湾方面から飛来・帰化したとされるコバチの一種デイゴヒメコバチ(Quadrastichus erythrinae)による被害が相次いでおり、問題になっている。このハチはデイゴの葉や幹に産卵して虫こぶを作り、木を弱らせて枯らす場合もあるため、沖縄県では対策を急いでいるらしい。

どうやらフレームツリーと呼ばれている木は2〜3種類あるようで、サイパンのものは火炎樹ではなくて、日本では鳳凰木と呼ばれているモノのようだ。

ホウオウボク(鳳凰木)
学名 Delonix regia。マメ科ジャケツイバラ亜科の落葉高木で、原産はマダガスカル島。樹高は10〜15m。樹形は樹冠が傘状に広がり、葉は細かい羽状複葉。直径10cmほどの5弁で蝶形の緋紅色の花を咲かせる。
熱帯地方では街路樹や公園樹として植えられ、日本でも沖縄県などで導入、植栽されている。しかし、これまたホウオウボククチバという蛾の幼虫による葉の食害が問題となっている。

【ホウオウボククチバ Pericyma cruegeri】

(出典『幻日の雑記帳』)

ヤガ科 シタバ亜科に属するそうだが、汚い蛾だねぇ。
もしワシが被害にあってる街の人だったら、🔥ゴオーッ。確実に憎悪の炎を燃やすね。

ネットを見ていると、ブログなんかは素人が書いているから鳳凰木と火炎樹、フレームツリー等々とかゴッチャになっていて、何が何だかワケわからんくなってる。明らかに間違っている記述も多く、どうみても錯綜状態なのだ。
絶対正しいとは言い切れないが、ここはまだしも信頼できるウィキペディアに頼って書き進めていこう。

次に火炎樹だが、検索すると真っ先に出てくるのがカエンボク(火焔木)だった。

 
【カエンボク】

(出典『Wikipedia』)


(出典『夏の柿の実』)


(出典『かぎけん花図鑑』)

学名 Spathodea campanulata。
ノウゼンカズラ科に分類される花木。別名アフリカンチューリップ。ジャカランダ、ホウオウボクとあわせ世界三大花木と称される。
西アフリカ原産の常緑高木で、樹高は12〜25mほどになる。一年を通じて釣鐘形の赤みがかったオレンジ色の花を咲かせる。大きく派手な花を枝先に多数咲かせ続けるので、世界中の熱帯域で街路樹や庭園木、観賞目的の花木として広く移入されている。

確かにノウゼンカズラと似ていて、葉の形からマメ科じゃないことがよく分かる。

【ノウゼンカズラ】


(出典『あきた森づくり活動サポートセンター』)

花は夏に咲く。目にすると、いつも妖艶だなあと思う。何だか心がざわつく花なのだ。

再びカエンボクの話に戻る。
本種の有するパイオニア性や多産性、強靭な生命力といった特徴は、いずれも侵略的外来種とされる植物に共通するもので、実際アメリカやオーストラリアなど太平洋各地で野生化している。ICUNでは本種を世界の侵略的外来種ワースト100の1種に選定しており、ハワイなど多数の固有種からなる植物相を有する太平洋の島嶼部の生態系への侵入を懸念している。
日本では植物園の温室等の他、沖縄県や小笠原諸島で庭木等として植栽されているが、野生化の報告は2008年現在までない。耐霜性がないところから、沖縄や小笠原以外の地域での日本国内での野生化の可能性は薄いが、沖縄や特に固有種の多い小笠原で野生化する可能性については注意を要すると考えられ、外来生物法の要注意外来生物リストに掲載されている。

このサイトで、和名の錯綜に対する1つの解答を見つけた。以下に抜粋する。

「カエンボク」という和名は、オーストラリア産のオオバヤドリギ科植物ヌイチア・フロリブンダ(Nuytsia floribunda 英名 Christmas tree,flame tree)や同じくオーストラリア産でアオイ科(旧アオギリ科)のゴウシュウアオギリ(学名 Brachychiton acerifolius 英名 Illawarra flame tree)に対して用いられた例もある。また、同じ三大花木の1種であるホウオウボクを「カエンジュ(火焔樹)」と称することがあり、本種(カエンボク)と取り違われることが度々ある。ちなみに中国語で火焰樹というと本種のことを指す。

だいぶスッキリした。でも、また新手が出てきたなあ。

 
【Nuytsia floribunda】

(出典『オーストラリアン ワイルドライフ』)

真正双子葉類ビャクダン目に属すオオバヤドリギ科に分類される。西オーストラリアに見られる半寄生植物で、根から近くの植物の養分を吸い取って成長し、10mほどの大木になる。
この科は殆んどが半寄生の低木からなり、他の樹木の枝に着生する所謂ヤドリギ類に含まれるのだが、根に寄生するものは特異で、この1種のみのようだ。
南半球の夏の間、クリスマスの頃に鮮やかで明るい黄色やオレンジ色の花が咲かせることから、クリスマスツリー、西オーストラリアのクリスマスツリーなどと呼ばれている。
和名を探したが、オーストラリアン・クリスマスツリーとしか出てこず、とくにはないようだ。

 
【ゴウシュウアオギリ】

(出典『Wikipedia』)


(出典『園芸手帳』)

アオギリ科 ブラキキトン属。オーストラリア東部原産の高さ10~30メートルになる半常緑高木。ベル形の真っ赤な花を咲かせる。和名の「アオギリ」は濃緑色の樹皮に由来する。

最後に南洋桜について調べて終わろう。

 
【ナンヨウザクラ】

(出典『Health Benefits times』)


(出典『Wikipedia』)

ナンヨウザクラ(南洋桜、Muntingia calabura)は熱帯アメリカ(カリブ海沿岸からペルー)原産の常緑高木。クロンキスト体系ではシナノキ科であったが、APG植物分類体系ではナンヨウザクラ科とされる。世界の熱帯各地で観賞用や食用に栽培されている。
花は5弁で白い。果実は円い液果で赤く熟し、香りと甘味があって食べられる。和名は見かけがサクラに似るためで、英語でもジャマイカンチェリーなどと呼ばれるが、サクラとの類縁関係はない。また、同じように熱帯アメリカ原産で広く栽培されるテイキンザクラもしばしば同じく「南洋桜」と呼ばれるが、これはトウダイグサ科でやはりサクラとの類縁関係はない。

おいおい、また新たなもんが出てきたよー。すんなり終わらせてくれないよなー。

 
【テイキンザクラ】

(出典『Wikipedia』)


(出典『花と観葉植物』)

テイキンザクラ(提琴桜 Jatropha integerrima)は西インド諸島(中米)原産の常緑低木。トウダイグサ科ヤトロファ(ナンヨウアブラギリ)属に分類される。花は5弁で見かけはサクラに似ており、桃色または鮮紅色。
提琴とはバイオリンのことで、葉の形がバイオリンを連想させることに因む。しばしば南洋桜とも呼ばれる。

ネットで見てると、ナンヨウザクラとテイキンザクラもゴッチャになっている。で、日本ではテイキンザクラを南洋桜と呼んでいるケースの方が多いようだ。

やっと終わったと思ったら、このサイトで又しても次なる刺客が現れた。
あとデイゴに似た海紅豆(アメリカデイゴ)も南洋桜と呼ばれるようなのだ。(-_-メ)しゃらくせぇ。

 
【アメリカデイゴ】


(出典『生きもの好きの語る自然誌』)


(出典『庭木図鑑 植木ペディア』)

アメリカデイゴ(亜米利加梯梧 学名 Erythrina crista-galli)は南アメリカ原産のマメ科の落葉低木。和名はカイコウズ(海紅豆)だが、あまり使われておらず、アメリカデイゴと呼ばれることの方が多い。
沖縄県外では奄美群島のほか小笠原諸島にも自生しており、鹿児島県の県木であり、アルゼンチン、ウルグアイの国花でもある。

待てよ。花の蕾は知名瀬近くで見たデイゴと似てねぇか❓
奄美にも自生していて、鹿児島県の県木とあらば、その可能性はあるだろう。
でも、花期は6~9月頃とあるから、違うのかなあ…。まあ、どっちだっていいけど。もう疲れてて、うんざりなのだ。これくらいで勘弁してくれ。

 
(註2)モンシロモドキらしきもん
帰ってから調べてみるとモンシロモドキではなくて、キハラモンシロモドキという別な種類だった。

キハラモンシロモドキ Nyctemera cenis(Cremer,1777)

(2021.3.23 奄美大島 知名瀬林道)

触角は♂が櫛歯状、♀はそうならないから、この個体は♀だね。


(出典『日本産蛾類標準図鑑』)

【開張】 38〜45mm。
モンシロモドキに似るが、前・後翅の中室に黒紋を欠くこと、腹部は橙黄色と黒の縞模様を呈することで区別できる。
【分布】 屋久島,種子島,トカラ列島,奄美大島,沖縄本島,石垣島,西表島。国外では東南アジアからインドにかけて広く分布する。
【生態】 6,7,8月に得られている。
【幼虫の食餌植物】未知
【亜種】亜種区分はされていない。

あれっ❓、岸田先生の『日本産蛾類標準図鑑』には発生期は3月とは書いてなくて、完全に夏じゃないか。どゆ事❓
ネットで調べたら、沖縄本島ではあるが3月の生態写真があった。そのサイトによると、南方からの偶産蛾ではなくて昔からの土着種で、絶滅危惧種なんだそうな。しかも未知となっていた食草もヌマダイコン(キク科)であることが判明しているようだ。蛾は蝶と比べてまだまだ生態が未知なものが多く、書き変えられる事も多いんだろね。

一応、モンシロモドキのことも解説しておく。

モンシロモドキ Nyctemera adversata (Schallel,1788)

(出典『蝶の図鑑』)


(出典『日本産蛾類標準図鑑』)

【開張】 約48mm
【分布】 本州,四国,九州,対馬,屋久島,トカラ列島,奄美大島,徳之島,沖永良部島,与論島,久米島,宮古島,石垣島,西表島
【出現期】 3~10月
八重山諸島では一年中。
【幼虫の食餌植物】 キク科ヒメジョオン,タケダグサ,サワオグルマ,コウゾリナ,スイゼンジナ,ベニバナボロギク
【生態】昼行性のヒトリガで花によく集まる。ヒラヒラと飛ぶ姿がモンシロチョウのように見えることからモンシロモドキの名前がある。触角は雌雄共に櫛歯状だが、♀では櫛が短い。

モンシロモドキには他にも幾つか種類がいるようだ。

ツマキモンシロモドキ Nyctemera lacticinia (Cremer,1977)
【開張】 40mm内外
【分布】 種子島,屋久島,沖縄本島,大東諸島,宮古島,石垣島,西表島。国外では東南アジアからインドまて広く分布する。日本での記録は土着ではなく、南方からの偶産蛾だと考えられている。
【生態】 5,6,10月に得られている。
【幼虫の食餌植物】 ヨブスマソウ(キク科)

 
ネッタイモンシロモドキ Nyctemera coleta (Stoll,1781)
【開張】 49mm内外
胸・腹部は白色で末端は橙黄色。
【分布】 屋久島,石垣島,西表島で、それぞれ1頭ずつが採集されているだけである。国外ではインドから東南アジア、オーストラリアにかけて分布する。
【幼虫の食餌植物】未知

 
デバリモンシロモドキ Nyctemera carissma (Swinhoe,1908)

(出典『日本産蛾類標準図鑑』)

開張45mm内外。
西表島で1963年の3月に得られた1♂のみが唯一の記録。
国外では台湾、中国、インドシナ半島に分布する。

 
オキナワモンシロモドキ Pitasila okinawensis (Inoue,1982)

(出典『日本産蛾類標準図鑑』)

【開張】 43〜48mm
腹部が白色なので、他のモンシロモドキ区別できる。
【分布】 喜界島,徳之島,沖縄本島,宮古島,石垣島,西表島,波照間島,大東諸島,尖閣諸島。国外からは知られていない。
【生態】 2〜10月に得られている。
【幼虫の食餌植物】 モンパノキ(ムラサキ科)

 
(註3)目まとい、メマトイ

(出典『くまもと自転車紀行』)

誠にもって忌々(いまいま)しい存在だが、特定の昆虫を指すのではなく、人の眼の周りにまとわりつく昆虫の総称とされ、小型のハエを指す場合が多い。代表的な種に春先に山地でシツこく眼にまとわりつくクロメマトイやショウジョウバエ科のマダラメマトイがある。ちなみに画像はクロメマトイで、コイツにタカられるケースが圧倒的に多い。この前も生駒山地でタカられまくってチョウ採りどころではなくなり、ひたすら網に入れてはグシャグシャに網を丸めて潰し続けてた。たぶん300匹くらいはジェノサイド、大量虐殺してやったわい。
眼に飛来するのは涙を舐めるためだと言われ、マダラメマトイは犬や猫、人の眼に寄生するセンチュウ(線虫)の一種である東洋眼虫の媒介者でもある。西日本、特に九州では被害例が多いという。
又あるサイトよれば、コヤツらには虫除けスプレーやハッカ油が効かないらしい。小賢しい限りである。ちなみに吸血はしない。それだけが唯一の救いだが、許せない存在であることには変わりない。思い出してもイラつくわい。

 
(註4)タカネキマダラセセリ


(2014.7.12 岐阜県高山市)

学名 Carterocephalus palaemon (Pallas,1771)
日本では長野県・岐阜県・富山県下の北アルプス(飛騨山脈亜種 ssp.satakei)と山梨県・長野県・静岡県下の南アルプス(赤石山脈亜種 ssp.akaishianus)のみに分布する高山蝶。
標高2000m以上の草原に局地的に棲息する稀少種ゆえに飛騨山脈亜種は長野県で、赤石山脈亜種は全県で採集禁止になっている。
国外ではヨーロッパから東アジア北部と北米大陸北部に広く分布している。ちなみに本文中に貼付した画像はヨーロッパ産のもの。理由は単に写真が綺麗だったからである。
6月下旬から8月にかけて見られ、緑の葉上にチョコンと止まる姿はとても愛らしい。ゆえに個人的にはクモマツマキチョウと並ぶ妖精の化身だと思ってる。
幼虫の食草はイネ科のイワノガリヤスで、成虫になるのに足かけ三年をようする。そんなワケなのか、個体数が多い年と、裏年と呼ばれる数が少ない年とが交互に訪れると言われている。また何年かに一度、極めて個体数が少ない裏裏年というのもあるそうだ。最初に探しに行った時は、この裏裏年で、見事なまでの惨敗を喫した。
なお、タカネキマダラセセリについてはアメブロの方の「蝶に魅せられた旅人」に書いている。捕虫網の円光『奥飛騨慕情』と題した連載モノです。よろしければ、そちらの方も読んでくだされ。

  
ー参考文献ー
◆『Wikipedia』
◆岸田泰則『日本産蛾類標準図鑑』
◆白水隆『日本産蝶類標準図鑑』

 

奄美迷走物語 其の四

 
 第4話『亜熱帯の夜は恐ろしい』

 
 2021年 3月22日(夜編)

帰りがけにビールを買い、宿でグビグビいく。
(≧▽≦)プハー。やっぱ風呂上がりの🍺ビールって最高だべさー。ましてやサウナの後なんだから尚更だ。
小池くんも御機嫌だから、ここぞとばかりに夜間採集に誘う。
だって一人で夜に金作原なんて行きたくないもーん(;O;)
ねぇねぇ、あんたアマミノクロウサギを見たいんじゃろう❓行こうよ、行こうよー。
そう口説くが、迷っている様子だ。

取り敢えず灯火採集の用意をしていたら、下の階から若い娘二人が上がってきた。噂で東京から可愛い娘が泊まりに来るというのは聞いていたが、どうせブスだろうと思ってた。けど予想に反して結構可愛い。
これで完全に風向きが変わった。しかもゲストハウス主催で彼女たちを囲んでこれから宴会だというじゃないか。すぐに小池くんが夜間採集をキッパリと断ってきたのも仕様がないよね。解るよ、解る。ワシだってホントはそうしたいもん。
しかし、虫屋の性がそうさせない。何としてでもこの旅でアマミキシタバを採らなアカンのだよ。

 

 
コンビニで買ったハンバーグ弁当を食って、意を決して出る。
プライオリティの最上位は虫なのだ。虫屋って、どうしようもないアホだ。阿呆だが、それが虫屋というものなのだ。ハッキリ言ってビョーキだ。カワイコちゃんとの宴会をうっちゃって出てゆくなんて、どう考えても間違ってる。それも夜の山中に一人で行くのである。夜行性の毒蛇ハブが蠢(うごめ)き、悪鬼羅刹が跳梁跋扈しているであろう魑魅魍魎の世界なのだ。そんなところにワザワザ自ら身を投じるだなんて、飛んで火に入る夏の虫。一般ピーポーからすれば、アホを通り越した狂人だろう。

地獄の沙汰も虫次第。
イカれポンチである。

日没時刻は6時半。それまでにはポイントに着いておきたい。森の闇に怯えながらライトトラップを設置するのは、願わくば避けたい。そんな事になれば、生来が大の怖がり屋なんだからチビりかねないのだ。ヽ(`Д´#)ノムキーッ❗、知名瀬トンネルでショートカットじゃ❗フルスロットルで飛ばす。

昼間に行った金作原に向かう林道に入る。
日は既に沈んでおり、闇が急速に侵食し始めている。林道は薄暗くて、泣きそうなくらい不気味だ。勿論のこと、人っ子一人いない。
場所を昼間のミカン畑に選定する。此処は谷状の地形になっており、三方を山に囲まれているから、広い範囲から虫がやって来ると考えたのだ。

しかし、点灯しても殆んど何も飛んで来ない。
おそらく森から遠すぎて光が届かないのだ。やはりこのライトトラップは開けた場所には向いておらず、林内でしか効力を発揮しないのかもしれない。
1時間後、仕方なく林道に移動して設置し直すことにする。
 
それにしても暗い。試しに灯りを全部消したら、真っ暗けになった。都会の一般ピーポーの殆んどが経験した事がないであろう漆黒の闇だ。小池くんに、この闇を是非とも味わせてやりたかったよ。あのチョーシいい男も慄然として口数が減ったろうに。

 

 
そんな事を想像したら、逆に自分の方が怖くなってきた。
山の中は何処でも真っ暗だが、亜熱帯の原生林は特に闇が濃いような気がする。
(´ω`)アハハ…、もしも、この瞬間に暗闇からヌワッと手が何本も飛び出てきたら、発狂もんだな。林道の奥から行進する軍靴の音が聞こえてきても、その場で気絶だ。恐怖に打ち勝つ一番の方法は意識を失うことなのだ。食われるとか、木に縛りつけられるとか、その後にどうなるかを想像さえしなければ最高の対処法だろう。

何とか設置完了。

 

 
でもさっきよりもマシになったとはいえ、劇的に飛来数が増えたりはしない。ショボい事には変わりはないのだ。やっぱ、何ちゃってライトトラップでは無理があんのかなあ❓

一応、糖蜜も周囲の枝葉に噴き付けたが、前日と同じく何も寄ってこん。或いは黒酢を入れたのは失敗だったかもしれん。普段のレシピどおりにしときゃ良かったよ。

 

 
しかも岸田先生がメッチャ効くと言っていた中国の黒酢だ。そのまんま何も入れずとも効くとマオちゃんも言ってたしさ。他と混ぜるとあんま良くないのかなあ…。悩める男は、暗闇で深く嘆息する。

9時過ぎ、糖蜜トラップの様子を見に行くと、オオトモエ(註1)が来ていた。
何だおまえかよのガッカリだが、ウルトラ退屈なので採ることにした。

 

 
網で採ったから、背中がハゲちょろけたよ。
(´-﹏-`;)何だかなあ…。何やってんだって感じだ。
ワシ、どこまで呪われとんねんと思いつつ、それを三角ケースに収めたその時だった。

ガサガサガサー❗
下の川の茂み付近で音がした。
ウグッ(ㆁωㆁ)、悶絶白目ちゃーん。
心臓が止まりそうになる。
きっと奄美の妖怪、ケンムンだ…(-_-;)

 

(出展『Wikipedia』)

 
背筋から首にかけてが、スゥーっと冷たくなる。 
恐る恐る懐中電灯で、音がした辺りを照らす。
もしも青く光っていたなら、間違いなくケンムン(註2)じゃろう。奴は怪しげに発光していると言われておるのだ。これは燐成分で涎(よだれ)が光るためだとか、指先に火を灯すためだとか、はたまた頭の皿が光るとも頭上の皿の油が燃えているのだとも言われている。
やだなあ…。毛深いらしいし、涎はメチャンコ臭いらしいから絶対友だちになれそうにない。大きさは子供の身の丈ほどだというからボッコボコにシバキ倒してやろうかとも思った。けど顔つきは犬、猫、猿に似ていて、目は真っ赤。目つきが鋭いらしいし、口は尖っているというからなあ…。どう考えてもバケモンだもんなあ…。怯んでボコるどころではなさそうだ。
ならば、タコ🐙を投げつけて追い払うしかない。ケンムンは蛸とシャコ貝をとても嫌っているとどこかに書いてあった筈だ。でも今、んなもん持っているワケがない。持ってたらアタマおかしい人だろう。

色々と想像すればするほど、ドツボにハマってくる。耐えきれず、恐怖のあまり闇に向かって絶叫した。

(`Д´#)ブッ殺ーす❗❗

闇夜に声が奇妙な感じで反響する。
と、同時に再び、ガサガサガサー❗
瞬時にシバキ棒を伸ばし、身構える。向かってきたらメッタ打ちにしてやる所存だ。おどりゃ、(-_-メ)刺し違えてやらあ。

茂みから何かか飛び出した❗
Σ(゚Д゚)ゲロッ❗❗毛むくじゃらだ❗ケンムン❗❓

だが、茂みから出てきたのは2足歩行ではなく4足歩行の生物だった。たぶん哺乳類だ。しかも、あまり大きくない。そうなれば形勢逆転だ。すかさず再度、渾身の怒号を浴びせ掛けてやったら全速力で下流に向かって逃げていった。ダボがっ❗
あの姿は、どう見てもアマミノクロウサギではない。たぶんカタチ的にリュウキュウイノシシ(註3)だわさ…。
( •̀ε•́ )クソ畜生めがぁー、ビックリさせやがってからに。久し振りに肝が凍りついて、チンチンめり込んたよ。
それにしてもイノシシにしてはウリ坊でもないのにかなり小さかった。六甲辺りでよく見るドデカイ奴と比べれば子供みたいなもんだ。そういや、島のイノシシは小さいとタケさんが言ってたなあ。それって所謂ところの、ベルクマンの法則(註4)ってヤツなのかなあ❓

ようやく11時前に大きめの蛾が飛んできた。
たぶんエダシャクの仲間だ。今までずっと何処へ行ってもエダシャクは無視してきたけど、あまりにもヒマなんで採ることにする。それに本土とは別亜種になってる可能性だってあるからね。

 

 
何かコレって見たことあるような気がするぞ。トビモンオオエダシャク(註5)とか云う奴じゃなかったっけ❓
エダシャクなんぞにはコレっぽちも興味がなくて、種名も殆んど知らないけど、コレには見覚えがある。なぜなら、つい最近の3月初めに奈良と大阪の県境に行った時、壁に停まっているのを写真に撮ってFacebookにあげたのだ。したら、カッちゃんだったかなあ…、親切にも名前を教えてくれたのだった。

 

(2021.3.4 大阪府柏原市)

 
あれっ❓、何か違うぞ。待てよ、コレってトビモンオオエダシャクではなくてチャオビトビモンエダシャク(註6)だったんじゃないかな。カッちゃんもそう言ってた気がする。もしかしたら、自分で調べた時にトビモンオオばっか出てきたので、そっちに記憶が引っ張られたのかもしんない。
でも山ん中じゃ電波が届かないので確認しようがない。まあ、どっちだけいいけど。元来が蛾嫌いなのだ。アマミキシタバとハグルマヤママユくらいにしか興味がないのじゃよ。正直、その2つさえ採れればいいのだ。

その後もロクに何も飛んで来ないし、退屈であればあるほど恐怖が頭を掠めがちだ。丑三つ刻には耐えられそうにない。
午前0時前、撤退。
何しに来たかワカラン結果に終わった。
何だかなあ…。

                         つづく

 
追伸
部屋に帰ったら、隣の部屋で小池くんが女の子たちと楽しそうにハシャぐ声が漏れてきた。わざわざ行く気にもなれず、1人缶チューハイを飲みながら後片付けをしていたら、こんな夜更けに若者が部屋に入ってきた。徳之島から来たそうだが、海が荒れてて、船の出発が大幅に遅れたんだそうな。昼間、奄美の海も白波が立ちまくりだったもんなあ。
話を聞くと東京の大学生で、ダイビング部に所属しているという。となれば、元インストラクターとしては饒舌にならざるおえない。
色々話してたら、小池くんが部屋に戻ってきて、『なあ〜んだ帰ってたんですかあ❓全然気づきませんでしたよー。』と調子こいて言う。まあ、そらそうよ。女の子と楽しそうに喋ってたんだから、気づくワケあるまいて。
『一緒に彼女たちと飲みましょうよー。』と言うので、行くことにした。闇に長時間いて、ずっと緊張に晒されてたし、悪夢のような貧果だったから酒でも飲まなきゃやってらんないって気分だったのだ。

女の子二人は、モデルとダンサーだった。
二人とも賢い娘で、男心のくすぐりどころをよく解っていらっしゃる。それでいて根が真面目なのがよくワカル。たぶん、何処へ行ってもモテるタイプだろう。
学生とダイビング談義になって痛飲。オーバードランカーで泥のように眠りに落ちた。何やってんだ、俺❓

 
(註1)オオトモエ

(2021.3月 奄美大島)

 
前々回に解説し忘れていたので、しときます。

ヤガ科(Noctuidae)
シタバガ亜科(Catocalinae)
トモエガ属(Erebus)

【学名】 Erebus ephesperis (Hübner, 1823)
属名の”Erebus”は、おそらくギリシャ神話の冥界の擬人神エレボス、もしくは暗黒界(現世と地獄の間にある死者の棲家)あたりが由来だろう。たぶん南極の活火山エレバス山も命名の由来は同じだろうね。
小種名の”ephesperis”は、よく分かんないけど、ギリシャ語の”Eσπερίς,=Hesperis へスペリス”で、ギリシア神話に登場する黄昏の女神の事かもしれない。ゴメン、蝶とかカトカラじゃないので、必死になって調べたワケじゃないから正しいかどうかワカンナイですぅー(◡ ω ◡)

【開張】 90〜95mm
和名は前翅に巴模様の目玉があることから名付けられたのだろう。してからに、国内のトモエガ類の中では一際大きいがゆえの命名だろう。
だが本土のモノと比べて、かなり小さいという印象だ。その後、結構な数の個体を見たから断言できる。オオトモエにも春型とかあるのかなあ❓でも聞いた事ないよなあ。或いは亜種なのかな❓とも思ったが、本土のものより外横線の白帯が細くなる傾向があるものの、特に亜種区分は為されていないようだ。これもベルクマンの法則に当て嵌まるのかなあ❓

(本土産オオトモエ)

少し印象が異なるが、前翅の地色と白色条の発達具合には個体変異があるそうだ。個人的には、こうゆう地色が黒っぽい方がカッコイイと思う。

【分布】 北海道南部,本州,四国,九州,対馬,屋久島,トカラ列島,奄美大島,沖縄本島,阿嘉島,慶留間島,伊江島,宮古島,石垣島,西表島,与那国島。尚、関東地方南部以北では偶産との見解がある。
国外では台湾,中国,ボルネオ,インドネシア,マレーシア,ミャンマー,インドなどアジアに広く分布する。

【レッドデータブック】 群馬県:準絶滅危惧
普通種のイメージなだけに、まさかの準絶滅危惧種に指定されてる所があるとは思わなんだ。正気かよ、群馬県。

【成虫の出現期】 3〜10月
本土では4〜9月に見られ、年2化とされるが、おそらく南西諸島では年3化くらいするものと思われる。テキトーに言ってるけど、たぶんあってるだろう。

【幼虫の食餌植物】 ユリ科:サルトリイバラ、シオデ
今まで気にも留めなかったが、食樹はルリタテハと同じサルトリイバラなのね。トゲだらけのウザい植物です。とはいえ、意外と利用されていて、西日本ではこのサルトリイバラの葉で柏餅を巻くところが案外多い。余談だが、柏餅といえば本来はカシワ(ブナ科)の葉で包むのがポピュラーだというイメージがあって「西日本では、サルトリイバラの葉で代用する」という話が流布されているが、実は全くのあべこべであって、サルトリイバラの代用としてカシワの葉を用いる方法が江戸時代に考案されたという一説がある。
普段、甘いもんは食わないから柏餅もほとんど口にした事はない。よって、本音はそんなのどっちだっていいんだけどもね。

【成虫の生態】
夜行性だが、昼間に林内を歩いていると、時々足元から飛び出してビックリさせられることがある。夜間、クヌギやコナラなどの樹液に集まり、糖蜜トラップにもよく来る。その際は敏感で、近づこうとするとソッコー逃げよる。これが٩(๑`^´๑)۶ムカつく。
また灯火にもよく飛来し、大型なので不意に飛んで来ると結構驚かされる。

個人的にはマスカレードと呼んでいる。仮面舞踏会のマスクみたいだからだ。改めて見るとカッコいいデザインだし、大きいので存在感もあるから良い蛾だとは思う。最初は感動したような記憶があるもんね。けれど普通種なので次第にどうでもいい存在になっていった。採る気もないから無視しているのに、やたらと敏感だから💢イラッとくるし、たとえ鮮度が良くても大抵は翅がどっか破れてるのも何だか腹が立つ。逃げる時なんかは直ぐに藪の中に突っ込んでゆくから、普段でも平気でそうゆう所を飛ぶ種なのだろう。

 
(註2)ケンムン

(出展『山口敏太郎の妖怪話』)

ケンムンとは、ケンモン(水蝹)とも呼ばれる奄美諸島に伝わる妖怪のこと。河童や沖縄の精霊であるキジムナーと共通する外観や性質が伝えられている。
髪は黒または赤のオカッパ頭。肌は赤みがかった色で、全身に猿のような体毛がある。相撲好きで人に逢えば挑戦してくると言われる。かつては木こりや薪拾いが荷物を運ぶのを手伝い、有益無害な存在だとされていたが、時代を経るにつれ、一転して危険で害を及ぼす忌避すべき存在となった。

体と不釣合いに足と腕が細長く、膝を立てて座ると頭より膝の方が高くなり、先端が杵状だとされる。頭の皿には力水または油を蓄えている。
変幻自在に姿を変える能力を持っており、見た相手の姿に変化したり、馬や牛に化けたりする。また、植物など周囲の背景に化けて姿を消し、行方をくらますこともできるとも言われている。ミラージュ効果みたいなもんか。まるでプレデターだな。
目撃は稀で、人家や人っ気の多いところを忌避する。月と太陽の間に生まれたと言われ、庶子(妾の子、私生児)だったので天から追放された(太陽の妾の子って何よ?星かよ(笑))。はじめは岩礁に住まわされたが、蛸にイジメられたので太陽に新しい住処を求めたところ、密林の中で暮らすよう諭されてガジュマルの木に住むようになったという。ガジュマルの木の精霊とも言われ、木を切ると祟られると恐れられている。ケンムンの祟りの遭うと目を患い、何かで突かれたかのように腫れ上がり、失明寸前になるという。また、それが原因で時には命を落とすこともあるという。

魚や貝を食料としており、特に魚の目玉を好む。漁が好きで夜になると海辺に現れ、指に灯りをともして岩間で漁をする。漁師が魚を捕りに行くとナゼか魚がよく捕れたが、どの魚も目玉を抜かれていたという伝承が残っている。カタツムリやナメクジも食べる。カタツムリは殻を取って餅のように中身を丸めて食べ、ケンムンの住んでいる木の根元にはカタツムリの殻が大量に落ちているという。
蛸やシャコ貝を大変嫌っており、投げつけると追い払える。或いは虚でも何か別の物を蛸と称して投げるか、投げると脅しても効果がある。また河童同様に皿の水が抜けると力を失う。ゆえに相撲を挑まれた際に逆立ちをしたり、礼をしてみせると、ケンムンもそれを真似るので、皿の中身がこぼれて退散すると言われている。

悪口を言われることが嫌いで、体臭のせいか、山の中で「臭い」と言ったり、屁のことを話されることも嫌がっている。
とはいえ、本来は穏健な性格で、基本的に人に危害を与えることはない。前述した薪を運んでいる人間をケンムンが手伝った話や、蛸にイジメられているケンムンを助けた漁師が、そのお礼に籾を入れなくても米が出てくる宝物を貰ったという話も伝わっている。加計呂麻島では、よく老人が口でケンムンを呼び出して子供に見せたという。
しかし河童と同じように悪戯が好きな者もおり、動物に化けて人を脅かしたり、道案内のふりをして人を道に迷わせたりする。食べ物を盗むこともあり、戦時中に空襲を避けた人々がガジュマルの木の下に疎開したところ、食物をケンムンに食べられたという話がよく聞かれたそうだ。その際、ケンムンは姿を消しており、カチャカチャと食器を鳴らす音だけが聞こえたという。
石を投げることも悪戯の一つで、漁師が海で船を漕いでいたところ、遥か彼方の岸に子供のような姿が見えたと思うと、船のそばに次々と巨大な石が投げ込まれたという話がある。
さらに中には性格の荒い者もおり、子供をさらって魂を抜き取ることがある。魂を抜かれた子供はケンムンと同じようにガジュマルの木に居座り、人が来ると木々の間を飛び移って逃げ回る。このような時は藁を鍋蓋のような形に編んで、その子の頭に乗せて棒で叩くと元に戻るという。時に大人でも意識不明にさせられ、無理矢理カタツムリを食べさせられたり、川に引き込まれることもあるという。
これらの悪戯に対抗するには、前述のように蛸での脅しや、藁を鍋蓋の形に編んで被せる他、家の軒下にトベラの枝や豚足の骨を吊り下げる方法がある。ただしケンムンの悪戯の大部分は人間たちから自分や住処を守ろうとしての行動にすぎないので、悪戯への対抗もケンムンを避ける程度に留めねばならず、あまりに度が過ぎると逆にケンムンに祟られてしまうらしい。
ある女性が、この地の大工の神であるテンゴ(天狗)に求婚された。女性は結婚の条件として、60畳もの屋敷を1日で作ることを求めた。テンゴは二千体の藁人形に命を与え、屋敷を作り上げた。この藁人形たちが後に山や川に住み、ケンムンとなったという説がある。
他の起源説もある。昔、ネブザワという名の猟師が仲間の猟師を殺し、その妻に求愛した。しかし真相を知った妻は、計略を立てて彼を山奥へ誘い込み、釘で木に打ちつけた。ネブザワは神に助けられたが、殺人の罰として半分人間・半分獣の姿に変えられた。全身に毛が生え、手足がやたら細長い奇妙な姿となったという。そして彼は、昼間には木や岩陰の暗がりに隠れ、夜だけ出歩くようになった。これがケンムンの元祖だという。また嫁いびりにあい、五寸釘でガジュマルの木に打ち付けられた女性がケンムンになったとも言われている。

第二次世界大戦以後は、それまでに比べてあまり目撃されなくなったが、その大きな要因は乱開発によってガジュマルなどの住処を失ったためだと言われている。
GHQの命令で奄美大島に仮刑務所が作られる際、多くのガジュマルが伐採されたが、島民はケンムンの祟りを恐れ「マッカーサーの命令だ」と叫びながら伐採したという。後にマッカーサーがアメリカで没した際、島民の間では「ケンムンがいなくなったのは、アメリカに渡ってマッカーサーに祟っていたためだ」と話されていた。その暫く後にまたケンムンが現れ始め「ケンムンがアメリカから帰って来た」と噂が立ったそうである。

調べれば調べるほど、ケンムンに愛着が湧いてきた。考えてみれば、妖怪ってどこか悲哀感があるんだよなあ。そこに惹かれるところがあるのかもしれない。

 
(註3)リュウキュウイノシシ

(出展『沖縄リピート』)

琉球猪。学名:Sus scrofa riukiuanus
南西諸島の一部に分布するイノシシの固有亜種である。

主な分布は奄美大島、加計呂麻島、請島、与路島、徳之島、沖縄本島、石垣島、西表島。また上記以外にも慶良間諸島や宮古島にも人為的に移入されている。
奄美群島では元々奄美大島と徳之島にのみ生息していたが、海を渡って加計呂麻島、請島、与路島にまで分布を拡大したと考えられている。

体型は生息する島によって少し異なるが、ニホンイノシシと比較すると概して小さく、頭胴長50〜110cm、体重は20〜50kg程度である。
イノシシの亜種とされるが、頭蓋骨の形状の違い等から別種の原始的なイノシシと考える研究者もいるようだ。また西表島及び石垣島の個体群は、沖縄本島及び奄美群島の個体群と遺伝的に塩基配列が異なる。形態上も上顎骨にある涙骨や口蓋裂の形状が異なり、乳頭の数や位置も相違する事から西表島及び石垣島の個体群を独立した亜種とすることが提唱されている。

雑食性で、シイの実やタケノコ、柑橘類、サツマイモ、サトウキビ等の農作物、昆虫、ミミズ、カタツムリ、ネズミ、ヘビ等の小動物を食べる。近年、奄美群島や八重山列島ではウミガメの卵への食害が問題になっている。
ニホンイノシシの繁殖期が通常年1回であるのに対し、繁殖期は年に2回(10〜12月、4〜5月)ある。

奄美諸島では縄文時代から、西表島でも古くから食用にされ、鍋物(シシ汁)、焼肉、刺身、チャンプルー等の調理法で食されてきた。近年になって個体数が増え、道路や民家周辺にも頻繁に現れるようになったため捕獲され、流通量も増えている。但し、観光客や人口の増加に伴って需要が増大した事により、狩猟圧も高まっており、生息数の減少が懸念されている。

 
(註4)ベルクマンの法則
ドイツの生物学者クリスティアン・ベルクマンにより1847年に発表された学説。
「恒温動物は、しばしば同じ種でも寒冷な地域に生息するものほど体重が増え、近縁な種間では大型の種ほど寒冷な地域に生息する」というもの。これは体温維持のためで、体重と体表面積の関係から生じるものであるとされている。
具体例としてよく挙げられるものにクマがある。熱帯に分布するマレーグマは体長140cmと最も小型だが、日本からアジアの暖温帯に分布するツキノワグマは130〜200cm、温帯から寒帯に生息するヒグマは150〜300cmになり、北極近辺に住むホッキョクグマは200〜300cmにも達する。
また日本国内のシカは北海道から慶良間諸島まで分布するが、北海道のエゾシカが最大であり、慶良間諸島のケラマジカが最も小柄であるのも例証としてよく挙げられている。

 
(註5)トビモンオオエダシャク

(出展『日本産蛾類標準図鑑』)

シャクガ科エダシャク亜科に属する大型の蛾。
上の画像のように♂は色調と斑紋に比較的顕著な個体変異があり、ヴァリエーションに富むそうだ。但し基本的な模様の形状は安定しているという。♀は斑紋が不明瞭で、♂よりも淡色である。

【学名】 Biston robustus Butler, 1879
北海道〜屋久島に分布するものは原記載亜種とされるが、奄美大島以南のものは別亜種とされ、Ssp.ryukyuense という亜種名が与えられており(Inoue, 1964)、前・後翅ともに淡い紫色を帯びる。

属名の Biston(ビストン)は、ステファヌス=ビザンティウムの『Ethnica』(6世紀)によれば、古代トラキアの伝説上の人物が由来で、父は軍神アレース、母はネストス川の神の娘であるとされる。
小種名の”robustus”は、ラテン語で「頑丈な」という意味。

【開張】:♂40~70mm、♀65~75mm
♀は♂より大型で,翅の色調が灰色がかっている。また、触角は♂が両櫛歯状,♀は糸状となる。♀は灯火には殆んど飛来しない事から、目にする機会は少ないという。

【成虫の出現期】2月下旬~5月上旬
年1化。各地で春先に出現する。但し奄美以南亜種は11月下旬から1月上旬には姿を見せるようだ。越冬態は蛹。

【分布】
原記載亜種は北海道、本州、伊豆諸島、四国、九州、対馬、種子島、屋久島に分布する。奄美大島以南亜種は奄美の他に沖縄本島、石垣島、西表島等に分布する。
国外では台湾、朝鮮半島、中国東北部、ロシア南東部に分布し、台湾と朝鮮半島〜ロシア南東部のものが、それぞれ別亜種となっているようだ。

【生態】
広葉樹を中心とする各種樹林内とその林縁,公園などに見られる普通種。夜間多くの花に吸蜜に訪れ、♂は頻繁に灯火に飛来する。

【幼虫の食餌植物】
広食性で、ブナ科、ニレ科、バラ科、マメ科、ニシキギ科、カエデ科、ツバキ科、ミズキ科、モクセイ科、スイカズラ科など多くの樹木につく。

【幼虫】

(出典『芋活.com』)

体を伸ばして静止していると、小枝にソックリである。うっかり土瓶を掛けたら落ちて割れたと云う逸話から、別名「土瓶割り」とも言われるそうな。ようは擬態ってヤツなんだけど、枝に化けることにより鳥などの天敵の目を欺いてるんだね。

移動する時は、こんな感じ↙。


(出典『芋活.com』)

いわゆるところの尺取り虫ってヤツでんな。こうやって尺を取るように体を曲げたり伸ばしたりして前へ進むのだ。

更に検索してたら、ウィキペディアの英語版に興味深い記述を見つけた。何と幼虫は視覚的に擬態しているだけでなく、化学的にも擬態しているというのだ。気になって探してみたら、出典である論文らしきものを見つけた。以下、一部抜粋します。

http://www.naro.affrc.go.jp/archive/nias/seika/nias/h16/nias02005.html
トビモンオオエダシャクの幼虫は化学的にも植物に擬態する

[要約]
餌植物の枝に視覚擬態することで知られているトビモンエダシャク幼虫は体表ワックスの組成でも寄主植物の枝の成分に化学擬態し、天敵であるアリ類からの攻撃を免れている。寄主植物が変わると2回の脱皮を経てトビモンオオエダシャクの体表物質組成が変化する。アリは、植物とそれに化学擬態したエダシャク幼虫を化学的に見分けられない。

[背景・ねらい]
トビモンオオエダシャクの幼虫は外見上植物の枝に良く似た形態と色彩をもち、それによって視覚に頼って餌を探索する鳥類からの捕食を免れている。一方、アリ類は生態系における有力な捕食者であり、視覚よりも嗅覚などの化学感覚によって餌探索をおこなう。しかしながら、トビモンオオエダシャク幼虫をクロヤマアリに遭遇させても、まったく攻撃を受けないことを発見した。

( ゚A゚)へぇーである。

 
(註6)チャオビトビモンエダシャク


(出展『日本産蛾類標準図鑑』)

トビモンオオエダシャクと同じく春に現れるエダシャクで、日本産は亜種 Ssp. hasegawai Inoue, 1955 とされる。
原記載亜種(Biston strataria (Hufnagel, 1767))はヨーロッパ原産で、分布はバルカン諸国、黒海地域から小アジア、コーカサスにまで及ぶ。

【学名】Biston strataria (Hufnagel, 1767)
小種名の”strataria”は、ラテン語の stratum(掛け布団,寝具の意)+aria(接尾辞)。Emmetは、これを翅の形状からの連想に由来すると見なしている。
おそらく日本亜種 ssp.hasegawaiは、人名(長谷川)からの命名だろう。

【分布】 北海道、本州(東北地方から中部地方の山地)
あれっ❗❓、『日本産蛾類標準図鑑』には近畿地方が含まれてないぞ❗もしかしてトビモンオオエダシャクの同定間違い❓
でも、どう見てもチャオビだと思うんだけどなあ…。
ネットで調べたら、広島県や岡山県、四国、そして近畿地方でも記録があるぞ。どゆ事❓
更に調べると『蛾色灯。』というサイトに答えに近い記述があった。それによると、以前はビストン属の中ではレアで出会うのが難しい種類の一つだったが、最近になって目撃例が増えているらしい。個体数が増えてるのかなあ❓…。その流れで西日本でも見つかるようになったのかなあ❓否、にしても短期間でそこまで分布を拡大できるものなのかね❓にわかに信じ難い。また新たなる疑問にブチ当たったよ。

【成虫の出現期】 4月〜5月
本州では4月上旬、北海道では5月上旬から出現するが、産地は限定される。
ヽ((◎д◎))ゝあれれー❓、ワシが採ったのは3月上旬だから、また『日本産蛾類標準図鑑』の記述と相違があるぞー。
確認したら、新しく見つかった産地は3月の目撃例が多い。読み直したら『蛾色灯。』にもそう書いてあった。にしても、急に各地で採れ始めて、しかも発生期が前倒しになってるだなんてミステリーだよなあ。

同時期に現れるトビモンオオエダシャクとの違いは以下の通りである。
①前翅中横線がチャオビは屈曲せず、外横線に近づきながら緩やかな線になるが、トビモンオオでは波状に曲がる。
②チャオビは後翅が前翅よりも淡い色で、中横線がほぼ直線状である。一方、トビモンオオはギザギザになる。
③頭部の周りの毛がトビモンオオでは真っ白になり、チャオビは白くならない。
④静止状態の時はチャオビは三角形、トビモンオオは翅をやや下げて開き気味に静止していることが多い。

(トビモンオオエダシャク静止画像)

(出典『昆虫エクスプローラー』)

こんな感じだ。
比較するのに分かりやすいように、今一度チャオビの静止画像を貼り付けておこう。

やはり止まり方が違うし、頭も白くないからチャオビで間違いないだろう。
とはいえ、確実に同定するために展翅すっか。スゲー、面倒クセーけど。

 

 
三角紙を開いてみて、直ぐに下翅の方が色が淡いことに気づく。間違いなくチャオビだな。写真を撮っておけば証明にはなるから、展翅しなくてもいっか…。邪魔くさいもんな。
でも小太郎くん辺りにお叱りをうけそうなので、やっぱ一応展翅すっか。

 


(2021.3.4 大阪府柏原市)

 
下羽の柄からも、明らかにチャオビトビモンエダシャクの♂だね。

【開張(mm)】♂45〜48mm ♀58mm内外
展翅して気づいたが、トビモンオオエダシャクよりはだいぶと小さいね。

ネットの「蛾色灯。」によると、♀の記録が非常に少なく、未だ国内では片手ほどの状態だという。ホンマかいな。そんなの大珍品っしょ。まあ、採り方が分かれば、珍品でも何でもなくなるんだろうけどね。

【幼虫食餌植物】 不明
とはいえ、ヨーロッパではブナ科、カバノキ科、ヤナギ科、ニレ科など多くの広葉樹につくことが知られており、日本でも広食性の可能性が高い。

 
−参考文献−
◆岸田泰則『日本産蛾類標準図鑑』
◆秋野順治ほか『トビモンオオエダシャクの幼虫は化学的にも植物に擬態する』
◆ウィキペディア
◆『みんなで作る蛾類図鑑』
◆『蛾色灯。』
◆『昆虫エクスプローラー』

 

奄美迷走物語 其の三

 
 第3話『ラーメン大好き小池くん』

 
 2021年 3月22日

朝9時に宿の前に出る。
今日泊まる朝仁のゲストハウスのスタッフが宿の前まで迎えに来てくれるのだ。
だが9時15分を過ぎても来ない。LINEすると渋滞で遅れているらしい。南の島なんだから時間にテーゲー(テキトー)なんだろう。気にしない、気にしない。ゆったり気分でいこう。なんくるないさー。

宿のオーナーのオジーがさっきから横で空をしきりに見上げている。何じゃらホイと思って尋ねてみたら、カラスが横の桜の木に来て、車の上を糞だらけにするので近づかせないようにしているという。見ると確かに木は桜の木だ。しかし花は無くて葉っぱが生い茂っている。オジー曰く、奄美大島ではソメイヨシノは生育しなくて、桜といえばヒガンザクラ(註1)なんだそうな。花が咲くのは早く、1月下旬頃から咲き始めて2月中旬には散ってしまうという。ゆえに既に実がなっていて、それをカラスが食いに来るようだ。なるほどね。

9時半過ぎに迎えが来た。
LINEのコメントの感じからだと、もしかして若い娘かと期待していたが、迎えに来たのはオジーだった。若い可愛い女の子だったら、俄然テンションが上がるのになあ。何でもいいから上昇気流に乗っかるキッカケが欲しいよ。

車中でオジーに尋ねたのだが、今年の奄美の3月の天気は例年よりも温かいという。それが吉と出ることを祈ろう。

 

 
ゲストハウス涼風。
此処を拠点にしたのは宿代が安くて何日か泊まれば値引きしてくれる事(1日1980円換算になった)と、泊まるとレンタルバイク代が破格の1500円になるからだ。この島でのレンタルバイクの相場は1日2千円くらいだ。それが何日も続けば結構な額になる。十日だと差額は5千円だもんね。
ちなみに言っとくと、車を借りる事も考えないではなかった。が、離島ではバイクを借りるケースの方が圧倒的に多い。理由は何といっても何処でも簡単に停められるからである。蝶を採集する場所は林道など狭い道のところが多い。必然、車の場合だと、おいそれとはそこいらには駐車できないのだ。一方バイクだと、山に入っている間は網を袈裟がけにして走っているから、飛んでるのを見つけたら素早く端に停めて追いかける事も可能なのだ。つまりフレキシブルってワケ。それに風を感じるのが好きなのだ。風には匂いがある。それは土地土地によって微妙に違ったりする。その風の匂いを嗅ぐと、島に来たって実感が湧いてくるのだ。燃費もいいのも利点だ。ガソリン代は何百円とかの単位なのだ。
難点は雨に弱いことだ。南国は天気が急変しやすいから突然ザァーっと雨が降ってくることが結構あるからね。けれど、それも持ち前の天気センサーが変化を敏感に察知するから大丈夫なのら。だから、実を言うと日本でも海外でも虫採り中にズブ濡れになったことは殆んどない。それに常に素早く雨宿りできる場所を頭に入れながら走ってるからね。
偉そうに御託をつらつらと並べたが、本当は単に車よりバイクの運転の方が好きなだけなんだけどもね。

部屋はドミトリーだ。でもバイクでのユーラシア大陸横断の旅の時にさんざんぱら泊まったし、4、5年前の台湾でもずっとドミトリーだったしね。よほど変な奴と同部屋にでもならなければ大丈夫っしょ。

 

(出展『エアトリ』)

 
ドミ部屋には既に先客がいた。小池くんという東京から来たという明るい青年だ。有給休暇の消化で前日から泊まっているという。大学の後輩の中越とどこか風貌が似ていて、調子のいいところもソックリだ。中越って元気にしてるのかなあ?アホだけど、憎めない奴だったよ。

『名前、ラーメン大好き小池さんでインプットしとくわ。』と言ったら、『それよく言われるんですよー。俺、ラーメン好きなんで全然構わないんですけどねー。』と返してきた。
その会話の流れで、二人してラーメン屋に昼メシを食いに行く事になった。さっきゲストハウスのオジーにお薦めの食いもん屋を尋ねたら、ちょっと前に近所にラーメン屋が開店して毎日行列ができてると教えてくれた。それを言ったら、ラーメン大好きを演出したポーズなのか本気なのかはよくワカランが、小池くんが俄然興味を示したのだ。天気も悪りいし、妥当な選択だろう。

だが、開店時間の11時半に行ったけど閉まっていた。どうやら月曜日は定休日らしい。やっぱ流れ悪いや。
窓に貼ってあるラーメンの写真を見ると、どうやら二郎系のようだ。いわゆる平打ち太麺でモヤシてんこ盛りのガッツリ豚骨醤油ラーメンの系統である。奄美大島で二郎系とはね。全く頭になかったから、ちょっとした驚きだった。きっと島民にとっては、もっと衝撃的だったろうから、行列になるのも頷ける。
後に小池くんが先にこのラーメン屋に行くことになるのだが、彼曰く、やはり二郎系だったそうだ。
『けど二郎系にしては少し味が薄めですね。俺、二郎系についてはウルサイんすよー。テーブルに醤油ダレみたいなのがあるので、それ入れたら丁度良くなりました。』などとノタまう。流石、ラーメン大好き小池さんである。コメントからラーメン偏差値の高さが伺える。調子こいて言ってるだけだと思ってたけど、本当にラーメン好きだったんだね。

戻りしな、道でサソリモドキ(註1)がペシャンコになっていた。

 

 
何かと上手くいかないのは、きっとサソリモドキの呪いのせいじゃよ。全ては極悪非道のヤツの仕業で、悪い方向へいくように裏で手を回してやがるのだ。そうとでも思わなければ、やってらんない。
そういや、初めてサソリモドキを見たのは奄美だった。根瀬部で何気に石をひっくり返したらコヤツが出てきたので、腰を抜かすほど(☉。☉)オッタマゲーになったのだった。見てくれはどうみてもサソリだもんな。(꒪ꇴ꒪|||)⚡日本にもサソリがいるのか❗❓と一瞬パニクったもんね。でもサソリモドキの存在を一応知識としては知っていたから、直ぐに冷静になれたけどもね。
刺したりはしないけれど、超酸っぱい毒液を引っ掛けてくるらしい。それが目や鼻の穴に入るとメッチャクチャ痛いらしく、失明するとかしないとか言われてるようだ。ふにゃふにゃなサソリみたいだけど、それなりに邪悪なのだ。

天気はどんよりで寒いが、雨は降ってないので下見の為にバイクを借りる。小池くんもバイクを借りているし、原生林に行くと言ったら自分も行きたいと言ってきたので、二人して昼飯を食う店を探しがてらのツーリングとあいなった。

先ずは隣町の小宿に行く。
郵便局に入り、オバちゃんに飯食える場所を訊く。それが一番の早道だと思ったのだ。
しかし、教えてもらった店も定休日だった。まあ、たとえ開いていたとしても、島外の者は入店お断りの可能性が高いとオバちゃんに言われてたから、結果は同じだったっぽいけどさ。こんなところにまでコロナの影響が及んでいるんだね。
あと西側方面で飯が食えるとこがある可能性は大浜海浜公園くらいだろう。取り敢えず行ってみてダメならば、名瀬方面に戻るしかあるまい。

海沿いを走る。
とにかく風がべらぼうに強い。走行中にバイクが横風に煽られ、テールが流されて転倒しそうになったくらいだ。

 

 
海浜公園に到着。
プチレストランみたいなのがあったので、そこで飯を食うことにする。 
小池くんは海亀バーガーをオーダー、ワシはカレーを選んだ。小池くんの攻めたオーダーと比べて、あまりにも無難なチョイスだ。せめて激辛にしようとしたら、店員さんにメチャメチャ辛いですよと言われて怯む。で、迷った末に普通の辛口にしただすよ。根性なしである。完全に置きにいってる。昨日から悉くと言っていい程に選択が裏目がちなのだ。冒険回避のチキン野郎にもなろう。

 

 
食った瞬間は辛口で正解だったと思った。しかし直ぐに慣れてきて、物足りなくなってしまう。激辛にすべきだったかも…。調子が悪いと、つい消極的になりがちになるという悪い例だ。らしくないよなあ…。
因みに海亀バーガーは海亀の肉を使ったバーガーではなくて、単にバンズが海亀の形をしているってだけでした。

ビーチに出る。

 

 
なるほどね。此処は日本有数のウミガメの産卵地らしいが、この砂浜ならば、それも納得だ。
それにしても風が強い。海はウサギだらけの白波立ちまくりである。そして、とても寒い。気温は10℃くらいだろう。
こんなとこに居たら、どんどん体温を奪われるわい。とっと移動じゃよ。そそくさと切り上げてバイクの停めてある場所へと戻る。

『(ΦωΦ)フフフ…、こんな事もあろうかと思ったので、ワシャ、手袋を持ってきたのじゃよー。備えあれば憂い無しなのさ。ケケケケケψ(`∇´)ψ』
『えー、マジっすかあ❓』
『ワハハ、頭のデキかキミとは違うのだよ、キミとは。
ψ(`∇´)ψホレホレー、指が凍えて感覚なくなりなはれー。』
🎊🎉チャッチャラ〜❗ヘラヘラ顔でポケットから手袋を取り出す。
(・∀・)ん❓けどポケットから出したモノに違和感があった。
(・o・;)あれっ❓と思って広げてみたら、何と手袋ではなく靴下であった。色が同じ黒で布地の質感も似ていたので、間違えて持ってきてしまったのだ。
『☜(↼↼)備えあれば憂い無しですよねー。』小池くんがニタニタ笑いながら言う。
(+
+)クッソー、やらかし半兵衛じゃよ。やっぱ調子ワリィー。バイオリズム最悪だわさ。

更に隣町の知名瀬まで行き、そこから金作原(きんさくばる)原生林へと向かう。
ここは奄美大島の山々の中でも天然の亜熱帯広葉樹が数多く残っている地域で、生きた化石とも言われる巨大なヒカゲヘゴなどの亜熱帯植物が茂り、国指定天然記念物のアマミノクロウサギやルリカケスなどの稀少な生物も生息している。たぶんフェリエベニボシカミキリやアマミシカクワガタ、アマミマルバネクワガタ(註3)などもいるだろう。

 

(出展『鹿児島県観光サイト どんどんかごしまの旅』)

 
別に自分にとってはそう珍しい景観でもないゆえ写真を撮らなかったので、画像を拝借させて戴いた。この画像のようにシダの化け物みたいなヒカゲへゴ(註4)が繁茂していて、恐竜の闊歩した時代、いわばジュラ紀を思わせるような景観なのだ。

奥に向かって走るにつれ、記憶が甦ってきた。アマミカラスアゲハ(オキナワカラスアゲハ奄美大島亜種)やスミナガシがいたポイントも鮮明に思い出した。

 
【スミナガシ Dichorragia nesimachus okinawaensis♀】

(2011.9月 奄美大島大和村)

 
途中、小池くんがついて来なくなったので少し戻ると、彼は地面をジッと眺めていた。
何してんの❓と尋ねると『糞があるんですよー。コレって天然記念物のアマミノクロウサギのですかねぇ❓』と真顔で訊いてくる。
見ると、確かに鹿みたいなチョコボール的な糞が落ちている。
暫し考えてから答える。
『たぶんクロウサギなんじゃない。シカは奄美大島には居ない筈だし、ネズミとかの糞だと、こんなに大きいワケないからさ。』
奄美には過去3回来ているが、実をいうとアマミノクロウサギは一度も見たことがない。クロウサギは夜行性だから、積極的に夜に山に行かないと会えないのだ。別にそこまでして見たいワケでもなかったから、ずっとスルーしてたのだ。まあ、今回は夜の山を徘徊する事になるから、遭遇する事になりそうだけどさ。

尾根まで辿り着く。ここから先は、今はガイドと一緒じゃないと入れない事になっている。でも入る気などサラサラない。10年前に突っ込んでエラい目にあっているのだ。林道とは名打ってはいるものの、完全に未舗装の普通の山道なのだ。ブッシュだらけのところもあったし、オマケに当時は南側の住用方面に降りる道が全て土砂崩れで通行止めになっていて、かなり先まで進まざるおえず、結局フォレストポリスまで行って漸く海岸に降りることができたのだった。その時、二度と行くかいと心に誓ったもんね。

下りて来ると、晴れ始めた。

 

 
流石のスーパー晴れ男である。
小池くんが『ホントに晴れてきたー。』と驚いている。出発時に彼に向かって『ワシ、スーパー晴れ男やねん。そのうち、ワシらのおるとこだけ晴れるでー。』と宣(のたま)っていたのである。まあ驚いて当然じゃろう。天気予報は悪かったし、どう考えても、今日は晴れ間が出るような空模様ではなかったからね。

谷状の如何にもアゲハたちが集まってきそうなミカン畑で、劇的にパッと周りが明るくなった。景色は一変。光溢れる世界になった。と同時に蝶たちが一斉に飛び始めた。乱舞の様相である。この時期はミカンの花が咲いているので、蝶たちが吸蜜にやって来たのだ。ずっと天気が悪くて寒かったから、お腹すいてたんだね。

今回のターゲットの一つであるアマミカラスアゲハ(註5)も飛んで来た。

 
【アマミカラスアゲハ(オキナワカラスアゲハ奄美亜種)♂】

 
アマミカラスは3月上旬、早い年には2月下旬から発生しているらしいから鮮度が心配だったが、バッチシだ。
春型を見るのは初めてだけど、美しいねぇ。夏型よりも後翅外縁の弦月紋が発達している。でもって沖縄本島のオキナワカラスの春型よりも表面の青が強くて綺麗な気がするぞ。

 
(裏面)

 
裏面の赤紋もカラスアゲハやヤエヤマカラスアゲハと比べて大きい。中には、この赤紋が二重になっている奴もいるらしい。いわゆる異常型だから、かなり稀なものだろうけどね。

しかし晴れ間は10分程で終わり、再び鉛色の空になった。
結局その間に採れたのは、他にモンキアゲハ、ナガサキアゲハ、アオバセセリ、クロセセリのみだった。

 
【モンキアゲハ♂】

【ナガサキアゲハ♂】

【アオバセセリ】

【クロセセリ】

 
(展翅嫌いだから、今もってロクに展翅していないのである。奄美から帰ってきて2週間以上経ったが、やったのはアマミカラスとフタオ、アカボシゴマダラ、蛾3つだけなのだ。)

 
体が冷えているので風呂に行こうという話になった。
銭湯好きとしては、是非とも奄美大島の銭湯には入っておきたいところだ。提案したら、小池くんも銭湯好きらしく即決定。
その場で小池くんがネットで調べてくれる。したら、名瀬に「千代田湯」という銭湯があることがわかった。

 


(出展『鹿児島県公衆浴場業生活衛生同業組合』)

 
昭和レトロな雰囲気があって、いい感じだ。ソソるね。
しかし、電話しても繋がらない。仕方なく他のところを探す。
2軒ほど小池くんが電話すると、そのうちの1つで「銭湯は休業、もしくは廃業になっているのではないか」と云う情報がもたらされた。奄美大島唯一の銭湯に入れないとは無念である。こうして日本全国の銭湯が人知れずひっそりと消えてゆくのだね。嘆かわしいことだ。

その情報をくれた奄美ポートタワーホテルへ行くことにする。
サウナがあって値段もタオル代込みで900円ならば、許せる範囲内だ。

 

(出展『奄美大島ブログ』)


(出展『奄美まるごと情報局』この右奥にサウナがある)

 
湯舟につかって体を洗ったあと、サウナと水風呂の往復を3セット繰り返す。
激アツのサウナでギリギリまで我慢してから水風呂に入って仰向けで浮かぶと、喉の気道がスゥースゥーして超絶気持ちいいんだよねー。
全身、スゲーりら〜っくす。

✧\(´∀`)*/✧整いましたあー。

                         つづく

 
追伸
短くするつもりが、書いてるうちに色々出てきて結局また長文となった。この調子だと、連載がいつ終わるかワカンねぇよなあ…。次の註釈の項も長いしさ。文章を書く時の性格はパラノイアかもしれんわ。
なお、2011年の奄美採集記『西へ西へ、南へ南へ』ではスミナガシは第八番札所「蒼の洗礼」など、アマミカラスアゲハは第十七番札所「無情の雨に」などの回に登場します。あとサソリモドキも何処かの回に登場します。

 
(註1)ヒガンザクラ
その時はてっきり彼岸桜の事かと思ったが、何か違和感があったので調べてみたら全く別物の桜だった。


(出展『奄美まるごと情報局』)



(出展『庭木図鑑 植木ペディア』)

名瀬の宿のオヤジさんは確かにヒガンザクラと言ったが、正式名称は「ヒカンザクラ」。漢字で書くと「緋寒桜」となる。だがネットで見ると、ヒガンザクラと書いてあるものもあり、現地では濁って発音する人も多いのかもしれない。別種のヒガンザクラ(彼岸桜)と混同されやすい事から、最近では「カンヒザクラ(寒緋桜)」と表記される事が増えているようだ。尚、漢字表記は、寒い時期に緋色(鮮やかな赤)の花を咲かせる事からきているものと思われる。
奄美大島や沖縄及び台湾・中国南部に見られるサクラの1種で、日本では最も早く開花する桜の一つ。奄美や沖縄で桜といえばこの種を指し、1月~2月に開花することから「元日桜」との別名もある。また、釣鐘状に咲く花の様子は一般的な桜と異なるため、見慣れぬ者には梅や桃の花と間違われやすいという。
台湾を中心に園芸品種が多く、日本で「~カンザクラ」と呼んでいるものは本種を片親にしているケースが多いそうだ。

ちなみにヒガンザクラ(彼岸桜)の方は、コレね↙。


(出展『PAKUTASO』)



(出展『庭木図鑑 植木ペディア』)

本州中部以西に分布するバラ科の小高木。カンザクラに次いで早期に咲く品種であり、春の彼岸の頃(3月20日前後)に開花するためヒガンザクラと命名された。寒い時季に緋色の花を咲かせるカンヒザクラ(寒緋桜)や母種であるエドヒガン(江戸彼岸桜)との混乱を避けるためコヒガン、コヒガンザクラと呼ぶことも多いようだ。

 
(註2)サソリモドキ

(2011.9.22 奄美大島 根瀬部)

蠍擬。サソリモドキ目に属する節足動物の総称。頑強な触肢と鞭のような尾をもつ捕食者であり、酸性の強烈な匂いを放つ噴出液で自衛をすることが知られる。名に「サソリ」と付くが、ウデムシやクモに近縁であり、サソリとは別系統の生物である。
総称である「サソリモドキ」は、かつては日本産の種(サソリモドキ Typopeltis stimpsonii)の和名として使われてきた。しかし、後に2種が含まれていたことが分かり、それぞれにアマミサソリモドキ、タイワンサソリモドキという新たな和名がつけられた。前者は九州南部から奄美大島、後者は沖縄本島から八重山諸島、台湾に分布している。
英名の「whip scorpion」「vinegaroon」からムチサソリ、ビネガロンとも呼ばれている。ビネガロンには笑ったよ。まるでビネガー(酢)怪獣みたいな名前じやないか。まあ、巨大化すれば、間違いなく怪獣の体だけどさ。酸っぱくて臭い液を街にメチャンコ撒き散らすのだ(笑)。

 
(註3)フェリエベニボシカミキリやアマミシカクワガタ、アマミマルバネクワガタ

【フェリエベニボシカミキリ Rosalia(Eurybatus) ferriei】

(出展『Weblio辞書』)

体長23~31mm。
見た目も美しいが、名前も素敵だ。
我が国に生息する数少ないルリボシカミキリ属4種のうちの1種で(他はルリボシカミキリ・コエレスティスルリボシ・ベニボシカミキリ)、日本では奄美大島のみに見られる固有亜種。2013年に条例により採集禁止種に指定された。
成虫は6月〜7月に見られる。スダジイやイジュなどの太い立ち枯れの木に集まり、林道を飛翔する姿も見られるというが、発生期は短く、個体数もあまり多くないようだ。
名前のフェリエは、明治時代に南西諸島で布教活動をしながら昆虫採集を行い、この地域の昆虫の研究に寄与したフェリエ神父に由来している。

 
【アマミシカクワガタ Rhaetulus recticrnis】

(出展『mushiya.com』) 

体長 ♂18〜48mm ♀19〜32mm。
奄美大島・徳之島・加計呂麻島・請島にのみ分布する固有種。
採集は非常に難しく、数も少ない稀少種とされ、2013年より採集禁止種に指定された。とはいえ2012年以前に採集された親から累代飼育されたものが市場に出回っているようだ。
日本唯一のシカクワガタにして、世界のシカクワガタ属中の最小種。小型〜中型の個体は大アゴが強く湾曲しないが、大型の個体は鹿の如く湾曲する。成虫は5月から9月頃に活動し、標高300m以上の照葉樹林に生息する。スタジイなどの樹液に集まり、灯火や果物トラップにもやって来る。野外では小型個体が多いが、飼育下では菌糸ビン飼育や発酵マット飼育で大型個体を容易に育てることができ、♂には56mmの記録があるそうだ。

 
【アマミマルバネクワガタ Neolucanus protogenetivus】

(出展『六畳一間』)

体長 ♂40-62mm(飼育下では最大68.3mm)。♀は55mm。
奄美大島・徳之島の固有種。請島に亜種ウケジママルバネクワガタがいる。このクワガタの仲間は主に熱帯から亜熱帯に分布し、奄美のマルバネクワガタがその北限種にあたる。
旧タテヅノマルバネクワガタ亜種群の中で最もオスの大顎の発達が悪く、大歯型は極めて稀。
8月中旬から9月下旬にかけて見られ、国産マルバネクワガタ類の中では成虫の出現期が最も早い。とはいえ、奄美のクワガタの中では最も発生時期が遅い種である。
スダジイの老木の樹洞に潜み、その腐朽部のみを食し、樹液には集まらず、灯火にも稀にしか飛来しない。なので人目につかず、大型種であるにも拘らず発見は遅れたようだ。主に夜間、山間部のスダジイの樹上や道路歩行中ものが観察される。
環境省第4次レッドリストでは絶滅危惧II類(VU)に指定されており、2020年に奄美大島&徳之島の全市町村で条例により捕獲が禁止された。減少した理由として、開発による自然林の消失、それにより大きな樹洞を持つスダジイが減少した事に加え、成虫採集、幼虫採集とその餌となる腐植質採取の横行、林内の乾燥化などが挙げられている。また近年、さらなる減少要因の一つとして、リュウキュウイノシシによる成虫と幼虫の捕食も指摘されている。

奄美大島には固有種や固有亜種が多く、他にも採集禁止に指定されている昆虫が多数いる。漏れがあるかもしれないが、一応以下に並べておきます。
アマミミヤマクワガタ、マルダイコクコガネ、アマミキンモンフタオタマムシ、ヒメフチトリゲンゴロウ、アマミナガゴミムシ、ヨツオビハレギカミキリ、ハネナガチョウトンボ。
甲虫が圧倒的に多いが、奄美大島が世界遺産になったら、もっと採集禁止の種は増えて蝶や蛾も指定される可能性がある。下手したら全ての昆虫が採集禁止にだってなりかねない。
でも、それでいて開発の波は加速するんだろね。世界遺産になったら訪れる観光客は倍加するだろうからさ。当然ホテルの建設ラッシュでしょうよ。禁止にするなら、ちゃんと環境も保護してもらいたいものだね。とはいえ、どうせ経済が優先されるんだろなあ…。木は伐採され、山も削られるだろう。道路は拡張され、森は益々乾燥化する可能性大だ。あの美しい海もきっと間違いなく汚れるぜ。

 
(註4)ヒカゲヘゴ
大型の常緑木生シダで、日本最大のシダ植物である。奄美大島や沖縄本島から八重山諸島にかけての森林部でよく見られる。
高さが平均5~6m、最大で15mほどになる。葉柄から先だけでも2m以上ある。
ヒカゲヘゴはその大きさから古生代に栄えた大型シダ植物を髣髴させるものがあり、その生き残りと呼ばれることもあるが、ヘゴ科の植物はシダ植物の中では比較的新しく、約1億年前に出現したものである。
海外では台湾、中国福建省、フィリピンなどに分布するが、中国では自然状態のものは数少なくなっており、山中に比較的豊富に見られた台湾でも2006年頃より枯死する例が増え、絶滅が危惧されている。

新芽、及び高く成長した幹の芯は食べることができる。新芽は80cm程度に成長したものが食用に適し、茹でて灰汁抜きしたあとに天麩羅や酢の物にして食べる。芯は煮込むと大根のような食感となる。また、煮たヒカゲヘゴの芯は八重山諸島では祭りの際に欠かせない食べ物であり、石垣島などでは水煮したものなどの販売もされている。
もしかして脇田丸でお通しで出たクソ不味い大根は、ヒカゲへゴだったりしてね。

 
(註5)アマミカラスアゲハ
(春型)

(夏型)

アマミカラスアゲハはオキナワカラスアゲハの亜種だが、蝶屋の間では通称アマミカラス、もしくはアマカラという更なる略称で呼ばれている。
なワケで、学名は以下のとおりになる。
Papilio okinawensis amamiensis (Fujioka, 1981)
参考までに言っとくと「Papilio」とはラテン語で「蝶」を意味し、”ぱたぱたする”という意味の「pal」に由来する。
「okinawensis」は「沖縄の」、「amamiensis」は「奄美の」という意味である。
漢字で書くと「奄美鴉揚羽」もしくは「奄美烏揚羽」じゃね。

生態はオキナワカラスアゲハ(Papilio.okinawensis okinawensis Fruhstorfer, 1898)とほぼ変わらないので、ウィキペディアから抜粋、独自編集して解説しときます。

チョウ目アゲハチョウ科アゲハチョウ属に分類される蝶の1種で、2亜種(ssp.okinawensis・ssp.amamiensis)に分けられている。
以前はカラスアゲハ(P.dehaanii)と同種と考えられていたが、交配実験やミトコンドリアDNA解析の結果から現在では別種であると考えられている。だが、bianor(ヤエヤマカラスアゲハ)の亜種とする研究者や ryukyuensis Fujioka,1975 とする見解もある。
このようにカラスアゲハ類の分類は錯綜していて、以前は別種だった polyctor(クジャクアゲハ)が bianorに組み込まれたり、台湾の takasago(タカサゴカラスアゲハ)やトカラカラス(トカラ列島)、ハチジョウカラス(八丈島)とかなんかの位置づけも絡まって複雑な様相を呈している。そういや、どの種にどの学名を宛がうかでも揉めてたんだよね。
この辺のややこしい問題は拙ブログの台湾の蝶シリーズの16 1/2話に『さまよえるカラスアゲハ』と題して詳しく書いたので、興味のある方は読んでくんなまし。

カラスアゲハやヤエヤマカラスアゲハと比べて翅形がボックス型で、四角い印象をうける。翅の表面の地色はより暗く、後翅の青色鱗は基半部のみに見られ、外半部には殆んど見られない。しかし後翅外縁の青色弦月紋(♀の場合は赤色弦月紋)はよく発達する。雌雄の翅の違いはカラスアゲハとほぼ同じで♂の翅は濃い青や緑だが、♀は淡い緑色で、縁に向かうにつれて黄色みを帯びる。そして♂には性標(ビロード状の毛)がある。しかし、この性標がカラスアゲハよりも発達する。因みに♀には性標はなく、後翅の弦月紋は他のカラスアゲハ類と同じく♂よりも発達し、艶やかとなる。
前翅裏面の黄白帯は鮮明で、ほぼ同幅。外縁と平行に走り、ミヤマカラスアゲハに似る。また後翅外縁凹入部の黄白色部は大きく、且つ明瞭である。

アマミカラスはオキナワカラスと比べて表面の青色が強く、前翅裏面黄白帯も発達している。また♀の後翅外縁の赤色弦月紋は更に強く発達する。
ようはアマミカラスの方がオキナワカラスよりも美しいということだ。特に♀は、より美しい。

分布は、奄美群島(奄美大島、加計呂麻島、請島、与路島、徳之島)及び沖縄諸島(沖縄本島、渡嘉敷島、座間味島、阿嘉島、久米島)。

第1化(春型)は早い場合には2月から現れ、3月中旬から下旬に最盛期となる。以後10月中・下旬までに年4回ほど発生すると考えられている。成虫は林縁や林道などを飛翔し、各種の花を訪れ、♂は地面に吸水にもやって来る。
幼虫の食草は沖縄諸島ではハマセンダン、奄美群島ではハマセンダンの他にカラスザンショウも報告されている。

 
参考文献
◆『Wikipedia』
◆『庭木図鑑 植木ペディア』

 

奄美迷走物語 其の2

 
 第2話『沈鬱の名瀬』 後編

 
何となく物事が上手く流れてないなと感じながら店の外に出た。明日は朝仁に移動しなければならないので、取り敢えずはバスの停留所を探しに行く。
けれども郵便局前のバス停が見つからない。地元の人に声をかけて教えてもらったところは確かにバス停ではあったが、朝仁方面ゆきのバスが無いのだ。ワケわかんねー(´-﹏-`;)
なので明日泊まる宿にLINEで訊いてみた。けれど直ぐには返答がない。仕方なく今日の宿に向かって歩く。途中の入舟町が次のバス停であろうから、道すがら探せばいいだろう。

バス停を何とか見つけたところでLINEが入った。近いから明日は名瀬まで迎えに来てくれるという。✌️(•‿•)ラッキー。流れがよくなってきたんじゃないのー。

 

 
「グリーンストア」の前まで来た。
ここは24時間スーパーで、宿からも近いから随分と世話になった。よく酔っ払った帰りに寄って無駄に惣菜とか買って帰ってたよなあ…。

 

 
「旅館 あづま家」。
より色褪せたような気がするが、見覚えのある景観だ。そうそう、周囲の民家と同化してるから見落としそうになるんだったわさ。横の釣具屋の方に、つい目がいっちゃうんだよね。2011年は奄美に船で着いてからの宿探しだったから、ネットで探して電話で場所を聞いたんだけど、もしも釣具屋が目印だと聞かされていなかったら絶対見落としてたと思う。

 

この入口も懐かしい。完全に普通の民家なのだ。

中で宿の婆さんと話す。
今日の客はオラだけみたい。コロナの影響で客は激減したという。宿代は素泊まり2500円の激安だから、前は長期滞在の工事関係の人なんかも結構泊まってた。けれど公共事業も激減しているらしく、コロナとのダブルパンチで客足はサッパリだという。そんなワケだから、息子には早く宿を畳めと言われているとオバアはとつとつ喋る。
何だか悲しくなってくる。次に奄美に来た時には、きっと廃業しちゃってるんだろなあ…。こんなところにまでコロナの影響が及んでるんだね。ホント、コロナ憎しである。
 
渡された鍵は209号室だった。鍵に何となく見覚えがある。
ここは2階が客室になっており、共用の冷蔵庫なんかもあって何かと便利なんだよね。

 

 
部屋には完全に見覚えがあった。
たぶん一番最初の採集行の時には、この部屋に長期間泊まっていたのだ。

 

 
この押し入れもハッキリと記憶がある。
持ち帰ったクチナシの実をタッパーに入れて此処に置いといたら、翌日には美しいイワカワシジミ(註1)が羽化していたのだ。

 
【イワカワシジミ Artipe eryx ♂】

(2011.9.19 奄美大島)

 

(左下の個体はインドシナ半島のもので、他はたぶん日本産)

 
取り敢えず、そのイワカワシジミを探しに行くことにする。
天気は悪くともイワカワだったら採れる可能性がある。食樹であるクチナシの木に止まっていることが多いからね。それにクチナシの実があれば、蛹や幼虫が入っているものがあるかもしれないし、卵が産んであるものだって見つかるかもしれない。

 
【クチナシの実と卵】

 
【幼虫の開けた穿孔跡のある実】

 
だが、丹念に見るも姿無し。
実もどれも黄色く変色してしまっていて、どうみても既に成虫が羽化した後のものだ。しかも時間がだいぶ経っている古いモノのように見える。
最後に民家のクチナシの大木を見に行く。2011年、そこでイワカワの蛹が入っている実を沢山採ったんだよね。そういや家のオジーとオバーがとても親切で、有難いことにわざわざ高枝切り鋏を持ってきて、指定した枝をジャンジャン切り落としてくれたんだよね。

だが、此処も全く姿なし。蛹や幼虫が入っていそうな実は1つも無く、卵が付いてそうな実も全く無かった。そして、家には人の気配がなく、ひっそりとしている。おそらく廃屋になっているのだろう。オジーとオバーは高齢だったので亡くなられたのかもしれない…。
寂寥感に満たされ、佇んで悄然と空を仰ぐ。胸が痛む。
それに此処にイワカワが居なければ、厳しい状況下にあることを受け止めざるおえない。此処が一番有望なイワカワのポイントなのだ。何だかなあ…。

一応、夜に灯火採集する場所の下見にも行く。
あわよくばアカボシゴマダラ(註2)が飛んで来ないかという淡い期待を持ちつつ登山口に取り付く。

 
【アカボシゴマダラ Hestina assimlis ♂】

(2011.9月 奄美大島)

 
懐かしい急坂を登り、山へ上がる。2011年は何度もこの坂を上がったっけ…。宿から近いから、帰りがけによく寄った。
しかし海から近いゆえ尾根にはモロに風が当たっており、平地と比べてかなり強い風が吹いている。勿論、アカボシの姿はない。これだけ風が強いと蝶が飛ぶことなど望むべくもない。
何だかなあ…。

部屋に帰り、ぼんやりとTVを眺める。
いっそライトトラップなんてやめてやろうかと思う。
日が暮れたら、とっと居酒屋「脇田丸」に行って、酒かっくらって板前のタケさんとバカ話でもしたいというのが正直な気持ちだ。そもそも、わざわざ名瀬に一泊したのはその為でもある。脇田丸に行き、タケさんに会い、アバスの唐揚げを食わねば奄美に来たことにはならない。

だが、グッとその誘惑を抑え込み、日暮れ前に灯火採集の仕度をして出る。
こうゆうツマラン場所でトットとアマミキシタバ(註3)を採って、蝶採りに専念したいところだ。ただでさえ夜の山は怖いのに、ここ奄美には本ハブ殿がいらっしゃるのだ。しかも奄美大島の本ハブ(註4)は最強だと言われており、沖縄本島の本ハブよりも巨大で、性格も凶暴。オマケに毒性も強いとされておるのだ。本ハブは夜行性だかんね。オジサン、涙チョチョ切れ(T_T)で、チビりそうじゃよ。

車に轢かれた直後のものだが、コレ見てよ。

 

(2011.9月 奄美大島)

 
蒲生崎だったけど、優に2mはあったんじゃないかな。
太さは軽くワテの手首以上くらいはあったから、もう大蛇と言っても差し支えないようなものだったっすよ。マジでぇー。

あのねー、あまりにも怖いから、今回は流石にワークマンで折りたたみの長靴を買って履いてきたもんねー。

 

 
風が強いので、当初予定していた場所を諦めて、鞍部にライトを設置する。

 

 
フラッシュを焚かないで撮ると下の写真みたいな感じになる。
周りが如何に暗いか御理解戴けるかと思う。街から近くとも、山へ入るとこれだけ暗いのだ。原始林なんかだと、きっともっと真っ暗けなんだろなあ…。ヤだなあ。

 

 
正直、光量がメチャンコしょぼい何ちゃってライトトラップである。でも、コレしか持ってないんじゃもーん。

点灯後に周りの木に糖蜜を霧吹きで吹き付けてゆく。
いつもは普通の酢を使っているが、今回は奮発して効果が高いとされる黒酢をふんだんにブチ込んでやったスペシャルレシピだっぺよ。アマミキシタバは糖蜜トラップやフルーツトラップにも来るということだから、ライトトラップがダメでもコレで何とかなるっしょ。

しかし、何ちゃってライトには笑けるくらい蛾が寄って来んぞなもし。
やっと大きな蛾が来たと思ったら、オオトモエだった。しかも折からの強風に煽られ、(^。^;)あらら…、飛ばされていってもうた。

 
【オオトモエ Erebus ephesperis】

 
別にオオトモエなんぞどうでもいいけど、何か小さかったから亜種かもしんないと考えたのよ。なんで一応採っておこうかなと思ったのさ。

そして糖蜜トラップに至っては全く何も来ん。
何だかなあ…。

午後9時前には一旦諦めて、ライトをそのままにして脇田丸へと向かう。タケさんと話して楽しく過ごせたら、流れも少しは良くなるかもしれない。もしかしたら11時くらいに様子を見に戻ってみたら、死ぬほどアマミキシタバが集まって来ているやもしれぬ。で、とっと撤収。タケさんと飲みに行くのだ。そうだ、吉田拓郎大好きのダメ男フクちゃんも呼ぼう。でもって朝まで痛飲じゃい❗何事も前向きでいこうじゃないか。

 

 
店構えは概ね同じだが、雰囲気が前と少し違う。たぶん暖簾が新しくなっているからだろう。

再会を期待して店内へ入る。
けど、厨房にタケさんの姿が見えない。休みかなあ…。
確認のために店員を呼び止め、訊いてみる。

(ノ゚0゚)ノえーっ❗、タケさんやめたってかあー❗

腱鞘炎になって1年半ほど前にやめて、今は土方をやっているらしい。
呆然としたままヨロヨロとカウンターに座り、オーダーを取りにやって来た店員に力なく生ビールと答える。

 

 
ヤケクソ気味で一気にゴクゴク飲む。
悲しいかなビールだけは何があっても旨い。裏を返せば有難いことだ。まあビール飲んでりゃ、そのうち御機嫌になるだろう。そう思わなきゃ、やってらんない。
でも追い打ちをかけるように、出されたお通しの大根が信じられないくらいにスジだらけだった。史上サイテーにクソ不味くって半泣きになる。

 

 
キレそうになるが、気持ちを切り替えてメニューを見る。

 

 
幸い「アバスの唐揚げ」は、まだメニューにあった。
けれど値段が690円と高なっとるやないけ。前は490円だった筈だよな。
(-_-メ)ったくよー。どこまでも逆風アゲインストじゃないか。
まあいい。アバスさえ食えれば、そんな瑣末事なんぞ簡単に許せる。アバス様はブリブリの歯応えで、味はとっても上品なんだけど旨味があり、下手なフグの唐揚げなんかよりも数段旨い代物なのだ。
言っておくと、アバスとは奄美の方言でハリセンボンの事をいう。但し、厳密的にはハリセンボンそのものではなくて、近縁のネズミフグやイシガキフグとかの大型フグだろう。タケさんにアバスで作ったフグ提灯みたいなのを見せられたけどデカかったもん。ハリセンボンみたく体型は丸くなく、もっと細長かったから間違いないだろう。

やがて待望の「アバスの唐揚げ」が運ばれてきた。

 

 
見た瞬間に悪い予感がした。
見た目が記憶とは全然違くて、あまりヨロシクないのだ。色が悪いし、匂いからすると、おそらく悪い油で揚げたものだろう。しかも揚げ加減は明らかに技術未熟な者の仕事のように見える。盛り付けにも微塵のセンスも感じられない。

食うと案の定だった。
アバスそのもののポテンシャルは悪くないのだが、解体の仕方が悪いから食べにくいし、油っぽくて揚げ方は最低レベルだ。

因みに、タケさんの調理だとこんな感じだった。

 

 
盛り付け的にも如何にも美味そうだし、下に網があるから油切れも良い。っていうか、それ以前にカラッと揚がってた。
怒りを超えて悲しくなってくる。

コレだけではお腹は満たされない。次に何を頼もうかと迷ったが、メニューを眺めていても何ら期待させられるモノがない。お通しとアバスの唐揚げの状態からして、どうせ結果は目に見えている。憤ること確実だ。

さんざん考えた挙句、「漁師めし」を頼むことにした。
刺身系ならば、まだしも失敗は少ないと判断したのである。

 

 
こんなんだったっけ❓
コレも見た目は違ってたような気がするぞ。
まあいい。腹が減ってるから取り敢えず食べよう。醤油をブッかけて食う。
(ー_ー;)……。

 

 
気を取り直して、真ん中の黄身を潰して食べる。
(ー_ー;)……。
何だか甘ったるくて、全然旨くない。何ゆえにこんなにも甘いのだ❓明らかに記憶の味とは違う。
じゃあ、十年前のアレは何だったの❓スマホで、その時の画像を探す。

 

 
あったけど、(・o・)アレっ❓ご飯がないぞ。
でもコレ見て思い出してきた。この時は漁師めしの飯抜きにしてもらって、ツマミにしたんだったわさ。あと、確かこの時は海がシケ続きで魚が入ってこなくて、タケさんが養殖の黒マグロの良いところをふんだんに使ってくれたんだった。量も多くてトロ鉄火みたいになってたんだよね。
この記憶から甘いという疑問も解けた。タケさんが、いつも特別に普通の醤油を出してくれていたのだ。スッカリ忘れてたけど、実を言うとコッチの醤油は砂糖が大量に入っていて、ベタ甘なのだ。人のせいにはできないけど、何か腹立つわ。

腹はそれなりに膨れたが、虚しい。
11時くらいまでは居るつもりだったが、耐えられなくて10時には店を出た。

再び夜の山へと戻る。
勿論、アマミキシタバが大量にやって来るなんて奇跡は起こらず、ショボい蛾が数頭いただけだった。
取り敢えず見たこと無さそうな奴(註5)を投げやり気分で毒瓶にブチ込む。

 

 
暗闇から街を望み見る。

 

 
何処か違う世界、異次元空間に知らないうちに迷い込んだかのような錯覚に陥る。闇はいつでも人間社会との境界を曖昧にする。

やがて風が益々強くなってきた。たぶん風速は軽く10mは越えていて、最大瞬間風速は18mくらいはありそうだ。
༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ༽逆風烈風やんけ。

 

 
オマケに灯火採集の敵、月まで出てきやがった。

11時半、撤収。
何だかなあ……。

                         つづく

 
追伸
サラッと書くつもりが、どんどん思い出すことが出てきて長くなった。(◡ ω ◡)先が思いやられるよ。
尚、当ブログに『西へ西へ、南へ南へ』という2011年の奄美旅の文章があります。よろしければ、ソチラも読んで下され。
あっ、ついでに言っとくと、イワカワシジミについては第十三番札所『梔子(くちなし)の妖精』の回にて取り上げとります。

 
(註1)イワカワシジミ

【奄美大島産 春型】

 
(裏面)

(出典 2点とも『日本産蝶類標準図鑑』)

 
イワカワシジミは、日本では奄美以南に棲息し(現在は屋久島にも生息するが放蝶由来との噂あり)、蝶好きの間では人気の高い美蝶だ。裏面は日本には他に類を見ない綺麗な翡翠色で、優雅な長い尾っぽを持ち、南国の妖精という言葉がピッタリで可愛らしい。

奄美大島のイワカワシジミは亜種にこそなっていないが、かなり特徴的な姿をしており、表の前翅と後翅の亜外縁に白斑列に表れる。特に第1化の春型の♀の下翅はそれが顕著で、気品があって美しい。

国外ではインドからインドネシア、中国、台湾などの東洋熱帯区に広く分布する。日本でも個体数はそう多くはないが、インドシナ半島では更に少なくて珍品とされているようだ。
とはいえ、ラオスとかタイでちょこちょこ採っているから、ホントなのかな?と思う。因みに日本のイワカワシジミより遥かにデカイゆえ、とても同種とは思えまへん。

 

(2014.4.7 Laos oudmxay)

 
これじゃ、大きさがワカランね。
でも、しっぽ(尾状突起)がより長いのはお解りなられるかと思う。しかも太くて白いし、白帯の領域も明らかに広い。

他にも画像があった筈だから、探してみよう。

 

(2016.4.28 Laos oudmxay )

 
この画像なら、大きさも解って戴けるのではないかと思う。とはいっても、蝶好きな人しかワカランか…。

 

 
これは同日に採った別個体。天女のように美しいね。
どうやらインドシナ半島とかのクチナシの実は大きいから、その分だけデカくなるらしい。噂では超バカみたいにデカイ亜種だか近縁種だかがいるらしい。
意外だったのは、何れも川辺に吸水に来た個体だった事だ。そういえばタイでもそうだった。イワカワが吸水に来るなんて日本では殆んど聞いたことがなかったから驚かされた記憶がある。確か画像の個体は全て3時以降の夕方近くにやって来たような覚えがある。

 
(註2)アカボシゴマダラ
従来、日本では奄美大島と加計呂麻島、徳之島のみに分布していたが、近年になって関東地方で中国の原記載亜種が放蝶され、凄い勢いで分布を拡大している。
この亜種、赤紋がピンクで、しかも輪が醜く崩れているというアカボシゴマダラの名前を穢す許し難いブサいくな奴である。放した者は万死に値すると言いたい。どうせ放すなら、あんなドブスじゃなくて、クロオオムラサキとか放せよなあー。
それはそれで問題あるとは思うけど…(笑)。

 
(註3)アマミキシタバ

【Catocala macula】

(出展『日本産蛾類標準図鑑』岸田泰則)

 
開張60〜66mm。国内の他のカトカラ(シタバガ属)よりも前翅長が突出する。
従来は別属とされていたが、現在はカトカラ(Catocala)属に分類されている。
分布は主に奄美大島だが、他に徳之島、屋久島、沖縄本島でも記録がある。そういや去年には九州南部からも記録が出ていた筈だね。国外では台湾、中国南部からインド北部、スリランカ、インドシナ半島、フィリピン、インドネシアに分布する。

 
(註4)奄美大島の本ハブ
何かで読んだけど、奄美大島の本ハブと沖縄本島の本ハブとでは毒の成分が違うらしく、奄美の方が毒性が強いようだ。DNA解析の結果でも両者はかなり古い時代に分岐したようで、近い将来、両者は別種扱いになる可能性もあるという。
あっ、うろ憶えの情報だから、間違ってたらゴメンナサイ。

 
(註5)取り敢えず見たことの無い奴
たぶん上の画像がカワムラトガリバで、下はツマジロエダシャクかな。コレも間違ってたらゴメンナサイ。

 

奄美迷走物語 其の1

 
 第1話『沈鬱の名瀬』前編

 
 2021年 3月21日

 

 
空はたっぷりの水分を孕んで、どんよりと曇っている。
一瞬、嫌な予感が走った。それを慌てて打ち消す。何でもそうだが、強い心を持ち続けることが肝要だ。マイナス思考に囚われてはならない。どんどん悪い方向へと行きかねないからだ。メンタルが壊れれば、良い結果など得られるワケがないのだ。
とはいえ、行先の奄美大島の天候を案じざるおえない。予報は1週間ずっと雨か曇りなのだ。蝶採りはひとえに天気にかかっている。結局のところ、天気如何で大幅に成果は左右されるのだ。

うだうだ考えているうちにバスは関空第2ターミナルへと到着した。相変わらず素っ気なくて、ショボいターミナルだ。店とか何もあらへん。

ピーチの午前10:15発の便に搭乗する。

 

 
(・∀・)あれっ❗❓
ピーチの筈なのに機体カラーがパープルピンクじゃないぞ。この機体カラーってバニラエアっぽいくねぇか❓

 

 
厚い雲を突き抜けると、雲の海が広がっていた。
空の青が濃い。

何気に翼の先に目をやると、バニラエアのマークがある。やはりバニラエアの機体だったのだ。提携とかしてんのかな?まあ、どっちだっていいけど。

12時過ぎ、無事に奄美空港に降り立った。

 

 
奄美に飛行機で来るのは初めてだけど、あまりにも早く着いたんで何だか拍子抜けする。
(・∀・)ん❗❓、違うな。そういや奄美に最初に来たのはダイビングインストラクター時代で、飛行機でだったわ。ダイビングの時と虫採りの時との記憶が完全に切り離されてメモリーされてる。

当初の計画ではレンタルバイクを借りて、先ずは「みなとや」へ行って鶏飯(註1)を食べ、それから蒲生崎の蝶の様子を見に行く予定だった。
「みなとや」は鶏飯発祥の店で、ここの鶏飯がイッチャン美味いのである。そして、蒲生崎にはアカボシゴマダラ、フタオチョウ、イワカワシジミ、アマミカラスアゲハがいる。上手くすれば、初日に今回のターゲットである蝶が全て採れてしまう可能性だってあるのだ。美味いもん食って、蝶もシッカリ採るという幸せ一直線の算段なのさ。密かに引きだけは強いまあまあ天才ならば、それも可能だと思ってた。所詮は。◕‿◕。オホホ星人、基本は根拠のない自信に満ちたオメデタい性格なのさ。
しかし生憎のところ、天気は悪い。奄美でも鉛色の雲が低く垂れ込めている。風も強いし、オマケに気温も低くて肌寒いくらいだ。

諦めてバスに乗り、名瀬へと向かう。

 

 
車窓を懐かしい風景が流れてゆく。考えてみれば、バスで名瀬に向かうのは初めてだ。コチラの記憶は間違いない。インストラクター時代は空港に夏美ちゃんが車で迎えに来てくれたのだ。
夏美ちゃん、可愛かったなあ(´ω`)…。もう結婚して子供とかもいるんだろなあ。ホント、光陰矢の如しだ。
あと2回の虫採りの時は鹿児島からの船便での来訪だったゆえ、名瀬港に着いたもんね。だから奄美初バスなのは間違いない。

1時間程で名瀬の街に入った。
予定では郵便局前で降りるつもりだったが、発作的に「鳥しん」で鶏飯を食おうと思った。でもって急遽、バスの運転手に訊いて末広町で降りることにした。そちらで降車した方が近いと読んだのさ。良い感じだ。ちょっとしたキッカケで流れが変わるから、こうゆう些末にみえる事だって大事なのだ。判断がビシッと決まりだしたら、自然とノッてくるものだ。

だが、少し道に迷った。何だかなあ…。ペースが掴めないとゆうか、ズレを感じる。全てが何か今ひとつ上手くいってないって感じなのだ。
歩いていると、やがて見覚えのある風景になった。
この辺に確かレンタルバイク屋があったんだよなあ。と思ったら、案内の看板があった。しかしマジックで上から棒線が引かれている。どうやら廃業したようだ。だからネットで探しても見つからなかったのね。お陰で計画がだいぶ狂ったんだよなあ…。
いつもなら名瀬を拠点にバイクで動くのだが、そのせいで明日には朝仁に移動しなければならない。

 

 
取り敢えず「鳥しん」に到着。
レンタルバイク屋からは、こんなにも近かったのね。一度も「鳥しん」で鶏飯食べようと思ったことがないから、探したことないのだ。昼間は虫採りで山ん中だし、夜は居酒屋「脇田丸」に入り浸ってたからね。

 

 
屋根の薄汚れたニワトリが怖い。
何だか心まで暗くなるわ。

 

 
店内はガラガラだった。
カウンターに座り、迷わず鶏飯(1200円)をたのむ。
ここ「鳥しん」と「みなとや」「ひさ倉」が奄美大島三大鶏飯店である。鶏飯は何処でも食べられるのだが、どのガイドブックでも、だいたいこの3店が真っ先に出てくるのだ。

最初にお通しみたいなのが出てきた。

 

 
得体のしれない見てくれだ。ゴーヤの素揚げが乗っているのも怪しい。
おそるおそる食べてみると、もろみ味噌(金山寺味噌・なめ味噌)っぽいものだった。
甘いが、味はそこそこ旨い。おそらく店では酒のツマミ的なものとして提供しているのだろう。甘いもん好きではないから酒のツマミとしては敬遠させてもらうけどさ。
初めて食べるが、たぶんコレが蘇鉄味噌とか粒味噌(註2)と呼ばれているものではなかろうか。

 

 
先ずは、この鍋に入った鶏の出汁じる(丸鶏スープ)とお櫃に入った御飯が運ばれてくる。ちなみに御飯は、おかわり自由である。

そして、次にコレが運ばれてきた。

 

 
左上から陳皮(柑橘類(タンカン)を乾燥させた果皮)、鶏肉をほぐしたもの、錦糸玉子、ネギ、パパイヤの漬物、甘辛く煮た椎茸。そして真ん中は海苔である。
コレを御飯の上に乗っけるのだが、「みなとや」と比べて何だかショボい。まずもって鶏肉と陳皮の量が少ないし、椎茸も干し椎茸ではなくて、甘辛く煮たヤツだ。椎茸は特に気にくわないなあ。何でもかんでも甘くしておけばいいと云う昨今の風潮には、断固反対する。

 

 
で、その上から鍋の汁をブッかけて食うのだ。

 

 
まあまあかなあ…。
不味くはないのだが、期待したほどの旨さではない。
「みなとや」では、その旨さに毎回唸ってしまうからガッカリだ。全体的に何かが足りないとゆうか、メリハリがないんだよなあ…。もしかしたら、鶏のスープにパンチが足りないからなのかもしれない。スープ自体は旨いんだけど、どうにも淡白すぎるのだ。
まあ、とはいえ好みの問題だけどもね。「みなとや」よりも「鳥しん」の方が旨いと感じる人だっているだろう。

何だかなあ…。のっけから細かく躓いてる気がする。
鶏飯を食って気分を上げて、良い流れを作ろうと思ったのになあ…。

                         つづく

 
追伸
えー、あまり気が進みませんが、連載開始です。そんなワケで途中で放り出して頓挫するかもです。
ちなみに随分前になるけれども、奄美大島での採集記が当ブログにも有ります。『西へ西へ、南へ南へ』と題した紀行文で、謂わば今回はその続編にあたるってワケかな。 興味のあられる方は読まれたし。今にして思えば、この頃の文体の方が自分的には好きかも。

 
(註1)鶏飯
鹿児島県奄美地方で作られる郷土料理。
鶏飯と書いて「けいはん」と読む。同じく鶏飯と表記されることも多い「とりめし」と同字異読であるために混同されやすいが、それらが炊き込み御飯や丼形式なのに対して出汁茶漬けに近い料理である。
現在、奄美大島で出されている本場の鶏飯は、茶碗に盛った白飯に、ほぐした鶏肉、錦糸卵、椎茸、パパイヤ漬けor沢庵、葱、刻み海苔、陳皮、白胡麻などの具材と薬味を乗せて丸鶏を煮て取ったスープ(鶏ガラではない)をかけて食べる。稀に紅生姜を添える例もある。白飯、具材、薬味、スープは別々の器で出され、お好みの配分で盛り付けて食べる。奄美大島には専門店も複数あり、スープの取り方、素材に地鶏を使うか否かなどの各々の特徴があり、スープの味で料理の味が大きく左右される。
居酒屋など店によっては丼や茶碗に盛ってスープを掛けた状態で客に出す例があり、これも鶏飯と呼ぶことが多いが、鶏飯丼と呼び分けて両方を出す店もある。尚、専門店の鶏飯は茶碗2~3杯分の量があり、白飯も食べ放題ではあるが、鶏飯丼は1杯分だけでお代わりはなく、そのため価格も安い。また奄美域外にもこのような類似の料理があるが、奄美大島の専門店が丸鶏でスープを取っているのに対し、域外では切り分けた鶏肉や鶏がらを使ってスープを取るなど、簡略化している場合が多く、風味に差がある。加えて薬味のパパイヤ漬けやタンカンの皮が島外では入手しづらく、これらの有無も風味に大きく影響する。

奄美大島の鶏飯は、元来は笠利町周辺にかつて存在した郷土料理で、当時はヤマシギやシロハラなどの野鳥を使用していた。江戸時代、島津藩の支配下にあった頃に北部で藩の役人をもてなすために鶏肉が用いられるようになったという。一方、19世紀半ばの島の暮らしを記録した『南島雑話』では、主に豚肉料理についてのみ記述され、鶏飯には触れられていない事から、現在の鶏飯は近代以降に成立したものであるともされる。もともと、奄美大島では正月前に黒豚を捌いて塩漬け肉にし、これと野菜を刻んで炊き込みご飯にした「豚飯」があり、これを鶏肉に代えたものという説もある。また、江戸時代の料理書『名飯部類』『料理網目調味抄』には、茹でた鶏肉を細かく裂いて飯に載せてだし汁をかけるという鶏飯の作り方が載せられており、本土から伝わった料理が奄美大島に残った可能性もあるという。

現在のスタイルの鶏飯は、奄美市笠利町赤木名で1945年に創業した旅館みなとやの館主岩城キネが、開業に際して江戸時代にあった鶏肉の炊き込みご飯にアレンジを加えて供するようにしたのが始まりとされる。
1968年4月に皇太子明仁親王、美智子妃殿下(当時)が奄美大島に来島した際に食したが、その美味しさにおかわりをしたという。その様子が伝えられると地元で観光客の人気を博し、奄美大島を代表する郷土料理となった。

 
(註2)蘇鉄味噌と粒味噌
蘇鉄味噌はソテツの実(雌花の種子)を使って作る味噌で、全国各地の味噌の中でもとりわけ個性的な味噌の1つである。主な産地は奄美諸島や沖縄県の粟国島で、奄美の方言では、なり味噌(なりみそ・なりみす)と呼ばれている。ソテツ(奄美方言すてぃち)の実から取ったデンプンと玄米と大豆を原材料にしており、麹の配合比によってソテツの種子を主原料とするものと玄米を主原料とするものとに分かれる。前者は奄美方言で「しるわーしみす(汁沸かし味噌)」と言い、多くはサツマイモも加えて熟成させ、主に調味料として用い、後者は主になめ味噌として食用にする。塩分は調味用の方が高い。
 
【蘇鉄味噌】

(出展『株式会社ヤマア』)

 
蘇鉄味噌づくりで最も特徴的なのは、微生物の働きでソテツの持つ毒素を取り除く「解毒発酵」が行われていることである。発酵でソテツの実の毒を取り除いてから麹菌を付けていくという独特の製法が用いられている。
特有の風味と甘味があり、奄美や沖縄では古くからお茶請けやツマミとして食べられているようだ。
また、蘇鉄味噌を使った料理も豊富で、魚の身をほぐして混ぜ込んだユーミソや豚の耳や内臓と混ぜたワミソなどがある。

道理で島には至るところにソテツが生えてたワケだ。かなりクロマダラソテツシジミに食害されてたけどさ。

 
【クロマダラソテツシジミ 低温期型♀】

(2018年 和歌山県白浜)

 
参考までに言っておくと、滞在中、クロマダラソテツシジミは1つも見なかった。真面目に探したワケではないが、もし発生していたならば、ソテツの周りでアホみたいな数がチラチラ飛び回ってる筈だから気づかないワケがない。それに吸蜜源のセンダングサの花は何処でも咲いていたから、いたならば1つや2つは目に入っていた筈。おそらく端境期だったのだろう。

奄美大島にはこの他にソテツの実を使わないで作る粒味噌もある。

 
【粒味噌】

(出展『株式会社ヤマア』)

 
粒味噌は島味噌とも呼ばれ、粗めに挽いた大豆を使う奄美の伝統的な味噌。塩分が少なめなのが特徴。見た目は名前のとおり粒々で、お茶うけにされたり、豚味噌や魚味噌、ニガウリ味噌などを作る際にも用いられる。

画像を見ても蘇鉄味噌と粒味噌との違いがワカラン。
見た目、ほぼ同じだもん。よって「鳥しん」で出されたものがどっちなのかは特定できない。白胡麻が振ってあるので、おそらく蘇鉄味噌だと思うんだけど…。でも粒味噌は豚味噌や魚味噌に使われるから、それを作るために店には置いてある筈だからなあ…。まあ、どちらにせよ甘いから、本音はどーだっていいんだけどさ。

-参考文献-
◆Wikipedia

  

閃光のインペラトリックス

 
 
2月の初めに大阪でインセクトフェア(昆虫展示即売会)があった。
この日は余程のものがない限りは何も買うまいと決めていた。キリギリスも、いよいよ崖っぷちなんである。
しかし、そろそろ帰ろうとした時に出谷さん(註1)とこのブースで見慣れない蝶の三角紙標本を見つけてしまった。

 

 
正直、見たこともない蝶だったので、嘘でしょ❓と思った。蝶採りを始めて10年を越えているから、世界の蝶の事は凡そは知っていると云う自負があったゆえ、こんなに目立つ蝶をまさか見逃してるとは思えなかったのだ。
学名は「Cirrochroa imperatrix」とある。
学名から鑑みると、謂わば女王の蝶だ。そんなものを見逃しているなんて信じられなかった。もしかして最近見つかった新種だったりして…。でも、こんなにも凄い奴が新たに発見されていたならば、噂になって然りだ。テーゲーなワシの耳にだって入っていた筈だ。

タテハチョウの仲間であることは見た目で解るが、属名を見てもピンと来ない。Cirrochroaって何だっけ❓見たことのある属名のような気がするが思い出せない。翅形的には日本に同属のものはいないと思われる。強いて言えばヒカゲチョウの仲間、クロヒカゲなんかの翅形にやや近いような気もするが、蛇の目が無いし、本能的には違うだろうとも感じてる。

値段を見ると¥1500の値が付いていた。安い。けど出谷さんとこだと高額の部類に入る。カルナルリモンアゲハがA品で600円。アマンダベニボシイナズマはペアで1500円。あの巨大な怪蝶タンブシシアナオオゴマダラだって1200円くらいだったからね。

 
(アマンダベニボシイナズマ)

(2013.4月 スラウェシ島)

 
(タンブシシアナオオゴマダラ)

 
タンブシシアナは出谷さんとこで買って自分で展翅したものです。スラウェシ島の特産だが、細かいデータが今はちょっとワカンナイ。探すのが邪魔くさいだけなんだけどね。
たぶん、Idea tambusisiana hideoiという原名亜種よりも北部で見つかった亜種で、より黒いのが特徴。

蝶の価格は未展翅で売っているもので1500円を越えていれば、例外はあるにせよ珍品の部類だろう。とゆうことは、たとえ現地に行ったとしても、おいそれとは簡単には採れないクラスのかなり珍しい蝶だろう。それに青好きのオイラには見逃せない代物だ。買うことにした。

一つタガがハズレると、駄目だ。ついカルナとパリスの亜種も買ってしまった。ジャワ島には行ったことないから、採ったことがないのさ。

 

(右がカルナルリモンアゲハで、左がルリモンアゲハ東ジャワ亜種。)

 
青い蝶の学名の下には「Biak」とあるから、たぶんビアク島産の蝶だろう。
ところでビアクってどこだっけ❓インドネシアのどっかの島だとはわかるけど、どの辺りだったかが思い出せない。

調べてみたら、ニューギニアの方だった。

 

(出展『昆虫万華鏡』拡大すると右上にあります。)

 
地図で見た感じだと絶海の孤島とゆうワケではなくて、ニューギニア島からそんなに離れていないように見える。しかし、そう思い込むのは危険かもしれない。縮小地図だからそう見えるだけであって、実際はニューギニア島から何百キロも離れていたりするかも。淡路島とか佐渡ヶ島との距離感とはワケが違うのだ。地図の縮尺が全然違うって事を忘れてはならない。

翌日、先ずは青い蝶の学名の記載者から調べることにする。もしも記載年が近年であれば、間違いなく新種だからである。

だが、学名の後ろには Grose-Smith, 1894 とあった。
これは英国の昆虫学者グローズ・スミスによって1894年に記載されたとゆうことを示している。つまり新種ではござらんとゆう事だ。じゃあ何で今まで存在を知らなかったんだろ❓
単にワシがドアホなだけだったりして…。

三角紙を開き、中を確認してみた。

 

 
あっ、裏は青くないんだね。
さておき、コレはどう見てもヒカゲチョウの仲間ではなさそうだ。でも似たような裏面のチョウをどっかで見た気がするぞ。
えーと、たぶんネッタイヒョウモンとかミナミヒョウモンと言われてる仲間だったんじゃないかな❓でも確信がもてない。

ところで、和名は何だろう❓そこから何の仲間かが特定できるのではないかと考えたのだ。
しかし、ネットで検索しても和名では出てこない。
これはもう塚田さんの『東南アジア島嶼の蝶(註2)』で確認するしかあるまいて。

 

(出展『ばれろん堂』)

 
大阪市立自然史博物館へ行く。
ここの書庫で塚田図鑑が閲覧できるのだ。

 

(画像は第1巻のアゲハチョウ編です。)

 
タテハチョウ科はシリーズ第4巻で上下2巻あるが、たぶん下巻ではなくて上巻に載っている筈だ。下巻の方はフタオチョウやらイナズマチョウなどのスター蝶がズラリと並んでいるから何度も閲覧している。だから、もしそこに件(くだん)の蝶が載っていたならば、絶対に気づいていた筈だ。青好きのオラがスルーするワケがない。

同じものではないが、青い蝶を見つけた。
これの系統の近縁種なのかな❓

 

(出展 塚田悦造『東南アジア島嶼の蝶 第4巻(上)』)

 
一瞬そう思ったが、青の表面積が狭いし、翅形も違う。だいち、裏面が全く違う。

 

(出展『東南アジア島嶼の蝶 第4巻(上)』)

 
この感じの裏は、たぶんハレギチョウの仲間だろう。
ネッタイヒョウモンorミナミヒョウモンの仲間とは分類学的にはそう遠くない関係だとは思われるが、ここまで裏面が違うと、両者は別系統だろう。謎の青い蝶はハレギチョウの類ではなかろう。

解説ページを見ると、名前は、Cethosia lamarcki ラマルキィハレギチョウとあった。やはりハレギチョウの仲間だったのね。

一応、分布図も見てみよう。

 

(出展『東南アジア島嶼の蝶 第4巻(上)』)

 
分布はロンボク島とかの小スンダ列島だから、ビアク島とはかなり離れてる。

パラパラと見て、次に目に止まったのが、Vagrantini(オナガタテハ族)のコレ↙。

 

(出展『東南アジア島嶼の蝶 第4巻(上)』)

 
翅形は全然違うが青いし、それに何よりも裏面の色柄に近いものを感じる。近縁種かもしれない。
そういや、コレって自分で採ったことがある気がするぞ。

 

(2015.4月 マレー半島)

 
やはり有りましたな。
んっ❓、デザインは似てるけど、翅形が全然違う。
これはビロードタテハのマレー半島亜種かな❓(註3)
でもビロードタテハって変異幅が広いから、亜種区分はされていないかもしれない。何かややこしい分類のされ方をしてたという記憶がある。

 
(ビロードタテハ Terinos atlita miletum)

(2011.3月 ラオス)

 
初めてビロードタテハを採ったのはラオスのタボックで、このイメージだったから、マレー半島のものが同種だと分かった時にはビックリした。どうみても見た目は別種だもんね。

邪魔くさいけど、ビロードタテハ(Terinos)属の別な種の画像を探し直そう。
 
 

(2015.5月 マレー半島)

 
あった。
名前はテルパンダービロードタテハ(Terinos terpander)だったっけ❓ その名前でググッたら、自分のアメブロのブログが先頭でヒットしたよ(笑)(註4)。

 

(裏面)

(2016.3月 マレー半島)

 
たぶん上はタイ南部ラノーン辺りで採ったもので、下は更に南部のマレーシアのコタティンギ辺りのものだろう。
でもビロードタテハ類と青い蝶とは属名が違うから、やはり謎の青い者はネッタイヒョウモン(ミナミヒョウモン)の仲間なのかもしれない。

ページをめくると、チャイロタテハ(コウモリタテハ)も一連の並びにあった。和名はコウモリタテハの方が馴染みがあって、チャイロタテハなんぞと云う凡庸な和名よりも余程いいと思うのだが、塚田図鑑に従って以下チャイロタテハと表記します。

 

(出展『東南アジア島嶼の蝶 第4巻(上)』)

 
大型で、形はそれなりにカッコいい。でも東南アジアには♂はわりと何処にでもいて、ソッコーでウザい存在になる。但し、♀の方には滅多と会えない。♂は吸水に多数集まるが、♀は全く来ないのだ。花に吸蜜に来たのしか見たことがない。

 
(♂)

(2016.4月 ラオス)

(♀)

(2016.3月 タイ・チェンマイ)

  
種の解説部分を読んで思う。
今までチャイロタテハ属(Vindula)の近縁種や類縁関係なんて全く意識していなかったから軽く驚いたよ。まさかドクチョウ亜科だったとはね。

日本では西表島に土着しているタイワンキマダラも同じドクチョウ亜科にカテゴライズされ、キマダラタテハ属(Cupha)を形成している。
 
 
(タイワンキマダラ Cupha erymanthis)

(出展『日本産蝶類標準図鑑』)


(2016.4月 ラオス)

 
左翅が羽化不全の個体ですな。
コヤツはコウモリタテハよりもウザい。東南アジアには何処にでもいると云う印象があり、八重山諸島のものと殆んど変わらないように見える。別種も混じっていたかもしれないけど、ほぼフル無視に近い存在だった。とゆうか、むしろ憎悪の対象だった。大概は♂がテリトリー(占有行動)を張っていて、佳い蝶まで追いたててしまうのでホント邪魔なのだ。小汚いし、形も野暮だから「出しゃばりブス蝶」と呪詛を込めて呼んでたなあ…。

日本にはいないが、オナガタテハ属(Vagrans)もドクチョウ亜科に組み込まれている。

 

(出展『東南アジア島嶼の蝶 第4巻(上)』)

 
コヤツらも、そこそこ見るから次第にフル無視になりがちだ。
こちらも細かく見れば、別種も含まれていた可能性があるものの、直ぐに真面目に採らなくなった。

お次は以前日本にもいたウラベニヒョウモン属(Phalanta)。

 

(出展『東南アジア島嶼の蝶 第4巻(上)』)

 
コレも直ぐにどうでもいい存在になった。コイツにしろタイワンキマダラ、コウモリタテハにせよ、皆さん茶色で絶望的に地味なんである。真正のヒョウモンチョウからは、そんなに地味な印象はうけないのにね。より大型でオレンジっぽく見えるからかな❓
蝶採りを始めた頃にはウラベニヒョウモンは日本(八重山諸島)では既に絶滅していて、ちょっとした憧れをもっていた。しかし初めて海外で見た時は、あまりにも小さくて華奢なんでガッカリしたのをよく憶えている。
参考までに言っておくと、ヒョウモン(豹紋)とは名はつくが、見た目が似ている日本にいるウラギンヒョウモンやクモガタヒョウモンなどの真正ヒョウモンとは違う系統だ。

 
(オオウラギンスジヒョウモン♀)

(2015.7月 岐阜県高山市)

 
これは♀だから、あまりオレンジっぽくないね。
スマン、オレンジ色なのは♂の方でした。

 

(2015.7月 平湯温泉)

 
分類単位だと両者は同じドクチョウ亜科(Heliconiinae)には含まれるものの、族が違う。ヒョウモンチョウ類はオナガタテハ族(Vagrantini)ではなく、Argynnini(ヒョウモンチョウ族)に分類されている。見た目は同じに見えても、遠縁なのである。

改めてドクチョウ亜科を並べておく。

■ホソチョウ族
(Tribe Acraeini Boisduval, 1833)

■ドクチョウ族
(Tribe Heliconiini Swainson, 1822)

■ヒョウモンチョウ族
(Tribe Argynnini Swainson, 1833)

■オナガタテハ族
(Tribe Vagrantini Pinratana & Eliot, 1996)

ここ最近は急速にDNA解析による研究が進み、整理がされてきたタテハチョウの一族なのだが、グループによっては見た目が大きく違うので「ヒョウモンチョウって、ドクチョウの仲間なの?」と少なからず違和感を覚えた記憶がある。
ついでに言っておくと、最初に登場したハレギチョウもドクチョウ亜科に含まれ、ホソチョウ族ハレギチョウ(Cethosia)属に分類されている。

でもって、オナガタテハ族がまた幾つかの属に分かれる。
それが前述したビロードタテハ属(Terinos)、チャイロタテハ属(Vindula)、ウラベニヒョウモン属(Phalanta)、キマダラタテハ属(Cupha)、ミナミヒョウモン属(Cirrochroa)やアフリカビロードタテハ属(Lachnoptera)、アフリカヘリグロヒョウモン属(Smerina)、キスジヒョウモン属(Algia)、Algiachroa属に分けられている。
裏面に共通性を感じたのは同族だからなんだね。考えてみれば、日本にいるヒョウモンチョウ類の裏とは全然違うもんね。

となると裏の感じからみて、謎の青い蝶に一番近いのは多分ミナミヒョウモン(ネッタイヒョウモン)属だ。ならば、この属に含まれる種である可能性が高いだろうと推察した。
話は逸れるが、塚田図鑑では、この属の和名はミナミヒョウモン属だが、ネッタイヒョウモン属と表記される事も多い。外国の蝶は、こうゆう風に和名が幾つも存在しているケースがあって誠にややこしい。各々が勝手に和名をつけてるって感じなのだ。先の Vindula属だって、チャイロタテハと云う和名とコウモリタテハと云う2つの和名が存在するからね。
こうゆうのはホント困る。何とか統一するシステムなり、機関を作って欲しいよ。

 
(Cirrochroa tyche ティケミナミヒョウモン♂)

(出展『東南アジア島嶼の蝶』)

 
コレは結構見た記憶がある。

 

(2016.4月 ラオス)

 
一応、画像が残っていた。
いや、待てよ。こっちかもしれない。

 
(Cirrochroa thule ツーレミナミヒョウモン♂)

 
いやいや待てよ。やはりティケミナミヒョウモンみたいだ。図示した画像がページの先頭にあったから、てっきり基亜種かと思いきや、なんと”aurica”と云うマレー半島南部のアウル島にいる亜種みたいだ。そんな島には行ってないから、違うね。

基亜種はコチラ↙。

 
(ティケミナミヒョウモン原記載亜種♂)

 
本音は、何だっていいんだけどさ。
正直に吐露すると、コイツら地味だから興味が全くもって湧かないのである。

 
(Cirrochroa eremita エレミタミナミヒョウモン♀)

 
上記2種の裏面は、謎の青い蝶の裏面と近い。
なれば青い蝶は間違いなく、このグループだろう。

 
(Cirrochroa emalea エマレアミナミヒョウモン♀)

 
(Cirrochroa menones メノネスミナミヒョウモン♂)

(出展『東南アジア島嶼の蝶』第4巻(上))

 
コレは採った記憶があるな。

 

(2016.3月 ラオス)

 
やはり採ってるね。
いや、翅の外帯の太さが違うぞ。だいちメノネスの分布はフィリピンだ。
とゆう事は、エマレアの♂か Cirrochroa malaya だろう。

 
(Cirrochroa emalea エマレアミナミヒョウモン♂)

 
(Cirrochroa malaya マラヤミナミヒョウモン♂)

(出展『東南アジア島嶼の蝶』)

 
コイツら皆んな似てるから、現地だと種名がよくワカンナイんだよねー。興味があんましないから真面目に採ってなくて、何となく違うと感じたものだけは採ってた。

そういやもう1種、似てるけどもっとカッコイイのも採った筈だよな。

 
(Cirrochroa orissa)


(2015.4月 マレーシア)

 
名前も思い出した。オリッサミナミヒョウモンだ。ツマグロネッタイヒョウモンなんていう別な和名もあったと思う。
これはあまり見たことがなくて、かなり敏感だったから出会いの瞬間も憶えている。それに他のミナミヒョウモンやウラベニヒョウモン、タイワンキマダラなんかとは一線を画すところがあって、同じ茶色でも美しくて品があるから印象深い。
但し、珍しいかどうかは地域や季節にもよるだろうからワカンナイ。

 
(Cirrochroa semiramis セミラミスミナミヒョウモン♂)

(同♀)

(出展 以上『東南アジア島嶼の蝶 第4巻(上)』)

 
中でもコレの裏面が謎の青い蝶に一番似通っている。しかも外側に青い部分もある。かなりゴールに近づいてる気がするぞ。
期待を込めて次のページをめくる。
(。ŏ﹏ŏ)むにゅう〜。
しかーし、塚田図鑑には載ってにゃーい\(◎o◎)/
頭の中が(?_?)❓❓❓マークで埋め尽くされる。ナゼに載っておらんのだよー༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ༽❓
落ち着こう。冷静になって考えてみれば、載ってないからこそ、この青い蝶の存在を知らなかったのかもしれない。
取り敢えず、ここは図鑑のミナミヒョウモン属のページの解説を読もう。ヒントがあるかもしれない。

「和名の通り南方に生息圏をもつヒョウモンチョウ亜科(註5)の一員。北インドから中国南部、インドシナ半島、スンダランドを経て、フィリピン、セレベス(スラウェシ)、ニューギニアまで広く分布する仲間である。全18種からなる。中略。本属はビアック島の imperatrix を除いて地色は赤褐色の前後翅裏面中央部に明瞭な白又は淡褐色の帯を持ち(niasicaを除く)…」

とあった。出てきたね。コレで一挙に疑問が氷解した。
すっかり忘れていたが『東南アジア島嶼の蝶』が対象としているのは東洋区の南部〜南東部とウォーレシア(註6)に生息する蝶であって、オーストラリア区の蝶は含まれていないのである。だからヨコヅナフタオやオオルリアゲハ、トリバネアゲハは載ってないんだったわさ。

 

 
ようは、この塗り潰された地域である。すなわちマレー半島、スマトラ島、ボルネオ島、ジャワ島、バリ島、小スンダ列島、スラウェシ島、北マルク(モルッカ)諸島、スラ諸島、フィリピン諸島である。尚、南マルクのアンボン島やブル島は含まれていない。だからブルキシタアゲハやマデンシスフタオ、パンダルスムラサキという大物も載っていないのである。
但し、亜種が域外にいる場合は掲載されているケースはある。

参考までに書いておくと、ミナミヒョウモン属を塚田さんは3つの種群に分けておられる。

1.Clagia種群
(clagia、tyche、emalea、orissa、chione、aoris、nicobarica、niasica)

2.Thais種群
(thais、satellita、surya、malaya)

3.Regina種群
(regina、semiramis、imperatrix)

さて…、謎の青い蝶が何者かは解ったが、種の詳しい解説はなされていないから直ぐに行き詰まる。ネットで検索しても、日本語の解説が殆んどないのである。頼みの『ぷてろんワールド』にも図示されていない。とゆうことは、やはりかなりの珍品なのかもしれない。

ここで💡ピコン❗
妙案が浮かんだ。この博物館の書庫には手代木さんの『世界のタテハチョウ図鑑』もあった筈だ。

探したら、思った通りあった。

 

 
で、中を見たらビンゴ👍❗あった。

 

(出展 手代木求『世界のタテハチョウ図鑑』)

 
スゲー色だな。冒頭の画像よりもバッキバキにビューティフルだ。でも明らかにフラッシュを焚いて撮った写真だな。こうゆうのって過度に美しく写るから、どうかと思うよ。このままの見た目を信じる人だっているだろうに。だとすれば、問題ありでしょうに。

和名はルリネッタイヒョウモンとある。
だが、手代木さんは自分的和名をつける方なので、この和名がどこまで一般的なのかはワカラナイ。但し、ミナミヒョウモンよりもネッタイヒョウモンの方が和名としては優れているとは思う。ミナミ(南)の範囲が何処から何処までを指すかはイメージしづらい。幅が広すぎるのだ。一方、ネッタイは熱帯なんだから、もっと範囲が明確に限定される。実際、このグループの分布は赤道付近の熱帯から亜熱帯だからね。
それに「ミナミヒョウモン」で検索すると、トップにはコレが出てくる。

 

(出展『世界のウミウシ』)

 
海の生物であるウミウシくんだ。ウミウシは美しいものが多くて変異もあるから人気が結構ある。自分がダイビングインストラクターになった頃からブームか始まったのだが、直ぐに一般向けのウミウシ図鑑も発売されたくらいだから、世間的にはコチラの方が断然ポピュラーな存在なのだ。
ウミウシと混同されるのもややこしいし、個人的には和名はネッタイヒョウモンに一票を投じたい。

短い解説があったので、書き移しておく。

【成虫】
翅表全体が青藍色の金属光沢に輝き、ネッタイヒョウモンの中では特異な色彩である。

【卵】【幼虫】【蛹】【食草】
未解明。

【分布】
インドネシアのビア島 Biakのみに分布する。

『東南アジア島嶼の蝶』の時代と変わらず、現在もビアク島だけに棲む固有種なんだね。
それはさておき、蝶の和名だけでなく、島の和名までが表記がバラバラなんだね。塚田図鑑ではビアック島となってるし、この図鑑ではビア島だ。でも英語の綴りで検索すると、出てくるのは圧倒的にビアク島が多い。おそらくビアク島が最も一般的な呼称なのだろう。

この図鑑では、スラウェシ島特産の”C.semiramis”も凄い派手な色に写っている。

 

(出展『世界のタテハチョウ図鑑』)

 
そして和名はルリヘリネッタイヒョウモンとなっている。
やはり、こちらも手代木さんの独自命名のようだ。Cirrochroaと云う属名もミナミヒョウモン属ではなく、ツマグロネッタイヒョウモン属になっている。つまりは手代木さんは、C.orissa(オリッサミナミヒョウモン)を属の基準和名としたワケか。そこはネッタイヒョウモン属でいいと思うけどね。
参考までに言っておくと『ぷてろんワールド』では「オオアカネルリツヤタテハ」というまた別な和名が付けられている。コチラの方が見た目をよく表しているような気はする。しかし惜しむらくは、この名前ではタテハチョウ科の中の何グループなのかがワカラン。なので、☓な和名だろう。
それにしても、異なる和名がセミラミスミナミヒョウモン、ルリヘリネッタイヒョウモン、オオアカネルリツヤタテハと3つもあると云うのは、誠にもってややこしい。しかも全部後半まで違う。和名だけではカテゴリーまでもが違う蝶に思えてしまう。
まあ、和名が特徴をよく表していなかったり、ダサいネーミングも多いから、付け直したいという気持ちも解らないでもないけどね。
でもなあ…、例えばアンビカコムラサキ Mimathyma ambica なんぞは、他にキララコムラキとか、カグヤコムラサキ、ニジイロコムラサキ、シロコムラサキ、イチモンジコムラサキと計6つもの和名がある。学名が頭にインプットされていなければ、何でんのんそれ❓のワケワケメじゃよ。和名が幾つも存在してると何かと困るのだ。
個人的には学名そのままのアンビカコムラサキでいいと思うけどね。基本的に和名なんぞ海外では通じないのだ。学名そのままの和名で憶えておいた方が現地で困らない。和名だと現地で会った同好者やガイドには何のチョウだか通じないからね。キララやカグヤでは通じないけど、アンビカだと通じるのだ。その点、塚田さんの表記法は理にかなっている。でも、その表記法だと、どんな蝶なんだか全くイメージできないマイナスもあるんだけどもね。海外の蝶の初心者からすれば、文句の一つも言いたくもなるだろう。

 
(アンビカコムラサキ Mimathyma ambica♂)

(2011.4月 ラオス・バンビエン)

 
しつこく和名表記の相違の話を続ける。他にもティケミナミヒョウモンは『世界のタテハチョウ図鑑』では、チョイロネッタイヒョウモンと云う冴えない和名が付けられている。ちなみに冒頭部分に登場するラマルキィハレギチョウには、ルリハレギチョウと云う和名が付与されている。
あと参考までに記すと『ぷてろんワールド』だと、エマレアミナミヒョウモンはフチグロミナミヒョウモンに、ツーレミナミヒョウモンはオオミナミヒョウモンとなっている、
だが、もうこの際、個別の和名の良し悪しの是非は捨て置く。最早どれが最も優れた和名だとかを論じる気にもなれないのだ。この和名の乱立状態、マジで業界の誰か偉いさんとかが何とかしなさいよと思う。

『東南アジア島嶼の蝶』には載っていないが、Regina種群の基準種である「Cirrochroa regina」の画像もあった。

 

(出展『世界のタテハチョウ図鑑』)

 
和名は「ミイロネッタイヒョウモン」となっている。
一応言っとくけど、コチラは『ぷてろんワールド』では「アカネルリツヤタテハ」なる和名が付けられている。是非は論じないと言ったそばから言っちゃうけど、レジーナかレッジーナネッタイヒョウモンでいいと思うけどなあ…。アマンダとか女性の名前っぽい名前は、何だか素敵だもんね。蝶は基本的に女性だと思ってるからね。

種の解説もしておこう。
スラウェシ島の”semiramis”の代置種とされ、更にメリハリのある斑紋が特徴。分布はニューギニア島とその周辺の島々(オビ、バチャン、ハルマヘラ)。
ちなみに『世界のタテハチョウ図鑑』では、imperatrixだけでなく、semiramisも幼生期が未解明となっていたが、この種だけは解明が進んでいる模様だ。

【幼生期】
五十嵐・福田(2000)を参考に記載する。

【卵】
未確認。

【幼虫】
黒色で気門下線に白色斑紋を配する。黒色の長い棘状突起を有する。

【蛹】
タイワンキマダラに似ているが、地色が白色である。胸部〜腹部背面に長大な突起を生じ、先端は黒色で基部は橙色である。

【食草】
イイギリ科のFlancourtia ryparosa、ベニノキ科のHydoncarpus wightianaの記録がある。

この事から青い女帝インペラトリックスも、ハリギリ科、もしくはベニノキ科の植物を食餌植物としている可能性が高いものと思われる。
ちなみに「五十嵐・福田(2000)」とあるから、おそらくコレは五十嵐邁&福田晴夫氏共著の『アジア産蝶類生活史図鑑』からの引用であろう。

『世界のタテハチョウ図鑑』には、Cirrochroa属の幼生期の形態画は載っていなかったが、同族の別属が図示されている。概ね見た目は近いものと推測されるのでネジ込んでおく。

 
(ビロードタテハ幼生期)

 
(ヒメチャイロタテハ幼生期)

 
(タイワンキマダラ幼生期)

 
(ウラベニヒョウモン幼生期)


(出展 以上、何れも『世界のタテハチョウ図鑑』)

 
いつ見ても、手代木さんの細密画は美しいと思う。
写真なんかよりも、よっぽどいい。
細密画は載っていないが、図鑑には一応”Cirrochroa属”の幼生期について言及されてはいる。

【卵】
基本的な本族の形態で、色彩は白〜黄色。

【幼虫】
棘状突起の配列は本族内だが、著しく長くて疎らの小突起が分枝する。色彩は背面が褐色〜黒色で下腹面は白色。

いやはや、それにしても凄く奇っ怪なデザインだすなあ。特に蛹なんかは凄い事になってる。もう怪獣とか怪人だわさ(笑)。
タテハチョウ科の幼生期はデザインの宝庫だよな。凡そ考えもつかないような個性的な形態をしているものが多い。邪悪さもあるから結構楽しめる。一人で、『😱キショ❗』とか言って盛り上がれるのだ。

また、ネッタイヒョウモン族の系統図と族全体の解説もあったので、載せておこう。

【分類学的知見】
幼生期が未知な属が多いために検証は不十分であるが、Simonsen et al.(2006)による構成はほぼ次のようである。

 

 
【成虫】
色彩斑紋は多様で、必ずしも豹紋型の斑紋ではない。

【幼虫】
幼生期形態は共通し、ヒョウモンチョウ族よりも長い棘状突起を生じる種が多い。

【蛹】
原色の鮮やかな色彩だったり種々の長い突起を有していたり、この族内の特色がある。

【食草】
スミレ科、イイギリ科(ヤナギ科)、トケイソウ科などで、いずれも新エングラー植物分類体系のスミレ目に属し、ドクチョウ亜科内の食草である。

【分布】
東南アジア〜オセアニア、アフリカに分布する。

う〜ん、でも矢張りこの種群が、どんな幼虫と蛹なのか知りたい。インペラトリックスは無理だとしても、せめて『アジア産蝶類生活史図鑑』に載っているという近縁種”regina(ルリヘリネッタイヒョウモン)”だけでも見ておきたい。図鑑を探そう。

 

(出展『アジア産蝶類生活史図鑑』)

 
\(◎o◎)/ゲロリンコ❗この図鑑では「ヘリグロタテハ」と云う又新たな和名が付けられている。(。ŏ﹏ŏ)ったくよー。
「ヘリグロ」とはまたイージーな…。正直、わざわざ新たに付ける程のものではござらん。マジでダサいと思う。
ちなみに、同属の中では裏面が一番美しいのは、このレジーナだと思う。ネットでフラッシュが焚かれている画像はメチャメチャ綺麗だかんね。

 
(終齢幼虫)

 
真っ黒で邪悪どすなあ。トゲトゲが長いとゆうのも邪悪度に拍車が掛かっとりまんな。

 

(出展『アジア産蝶類生活史図鑑』蛹は頭が下に写っているが、そのままにしておく。おそらく自然状態では、こうなのだろう。)

 
オナガタテハ族の中では、タイワンキマダラの幼生期に最も似ている気がする。
それにしても凄いデザインの蛹だ。そして美しい。貴婦人を思わせるような上品さと高貴さを兼ね具(そな)えている。インペラトリックスの蛹はコレを超えるものであってほしいね。

一応、解説文を転載しておく。
「パプアニューギニアにおいて本種は平地、低山地の樹林に生息し、周年発生をくりかえす普通種である。♂は樹林の日当たりのよい空地を敏速に飛ぶ。♀の飛翔は♂にくらべてはるかに緩慢、樹林内の日だまりを食餌植物を求めて飛ぶ。そして0.5〜2mくらいの低い食餌植物を見つけて産卵する。産卵場所の決定に迷いが多く容易に決まらず、葉の上を歩き回る。そして、若い葉の裏面に翅を閉じてとまり、1卵を産みつける。また花や実にも産卵する。興味深いのはクモの巣に産むことが珍しくないことで、これは近縁の Cupha erymanthis タイワンキマダラなどでも観察されている習性である。幼虫は1齢から終齢まで食餌植物あるいは枝が相接するほかの植物の葉の裏面に静止する。刺激に対して敏感で、すぐに歩き始める。歩行は速い。若い柔らかい葉だけを食い、硬い古葉は受け容れない。」

分布図も貼り付けておこう。

 

(出展『アジア産蝶類生活史図鑑』)

 
ビアク島にもいるのかなあ…。
いたら一石二鳥なんだけどな。あっ、でもパプア全土にいるんだからイリアンジャヤにも当然いそうだ。たぶん何処かで会えるだろう。

図鑑には、同属の「Cirrochroa tyche ティケミナミヒョウモン」の画像もあった。

 

 
コチラにも「ウスイロタテハ」という別な和名が付けられている。申し訳ないが、これまたダサいと言わざるおえない。まあ、そもそも成虫の見た目がパッとしないから、それも仕方のない事なのかもしれないけどさ。

 
(卵と若齢幼虫)

 
(幼虫)

 
より邪悪な見てくれである。もしフィールドで出会ったなら、間違いなく飛び退くだろう。毛虫はマジで苦手なのだ。

 
(蛹)

(出展『アジア産蝶類生活史図鑑』)

 
コチラの蛹も個性的なデザインだ。
まるでウミウシみたい。実際、こうゆうデザインの奴もいたような気がする。
どうやら、この”Cirrochroa属”は蛹が白いのが特徴みたいだね。だとしたら女王インペラトリックスも白い可能性が高い。なれば相当美しいものじゃろう。白地に青の斑紋だったら、悶絶必至だ。是非とも見てみたいやね。

長々と書いたが納得したので、漸く展翅する気になった。
引っ張るつもりはなかったけど、展翅するのが億劫とゆうのもあって、こうゆう順番の展開になった。スマン、スマン。

改めて見るが、裏も美しい。

 

 
軟化展翅するのは久し振り。
針を根元に刺して、筋肉を破壊してボンドを薄めたのを染み込ませてから翅を開く。

 

 
\(◎o◎)/ワオッ❗
ビカビカの青やんか❗❗
これは陽光の下で見てみたくなるね。外に出て検証しよう。

 

 
光が当たっていないと、青黒い紺色というか藍色だ。
曇りだったが、徐々に光が射してきた。晴れ男が望めば晴れるのである(笑)。

 

 
光が当たってる部分が輝き始めた。
どうやら構造色のようだ。光の角度によって色が違って見えるのだろう。

 

 
完全に晴れたら、とてつもない色になった。モルフォチョウの輝きと遜色ないピッカリ✨ブルーに仰け反る。
『世界のタテハチョウ図鑑』の標本画像を批判したけど、フラッシュを焚いてはいるのだろうが近いものがある。

構造色ならば、反対からの方が輝きは強いのでないかと考えて、上下を返してみる。

 

 
凄い色だね。海よりも青いコバルトブルーにゾクゾクくる。
これは展翅が楽しみじゃよ(☆▽☆)
さあ、気合を入れてキメるぜ。

ガビー∑( ̄皿 ̄;;)ーン❗❗❗❗❗😱😱😱😱
しかし、( ≧Д≦)やっちまっただよー。
頭が真っ直ぐならないのでコチャコチャやってたらば、ダアーッ༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ༽、あろうことか知らぬうちに触角が折れてもうてたー。
しかも折れた部分は行方不明。
(╥﹏╥)痛恨の極みである。海よりも深い溜息をつく。

覆水、盆に帰らず。やっちまったものはどうしようもない。クソッ、メタクソにしたろか(-_-;)…。心はささくれだってヤケ糞になりそうになる。だが、グッと堪え、キレずに完璧を期して展翅する。

 
(Cirrochroa imperatrix ♂)


(jan.20 Biak)

 
ネットで出てくる展翅標本の中では、文句なく一番美しいと言い切れる出来なのに…( ;∀;)うるうる。
みんな、💀死ねばいいのだ。心はウルトラダークの、フォースの暗黒面に真っ逆さまじゃよ。

スマホが勝手に補正して撮りよるので凄く青く写っているが、実際に部屋で肉眼で見ると、こんな感じが近い。

 

 
でも再現性は低い。納得いかないので、前のスマホで撮りなおすことにした。

 

 
コレが一番実物に近い。
普通の写真を撮った時はそうでもないのだが、標本写真を撮ると何故だかオート補正が強くなるんだよなあ。だから最近はあとで彩度を抑え気味に補正し直すことも多い。

٩(๑`^´๑)۶えーい、オラもフラッシュ焚いてやれ❗

 

 
ドえりゃあ〜色に写りよったよ(笑)。

下記のサイトの画像を見ると雌雄同型で、♀は♂よりも遥かに大型のようだ。
何故かリンクを貼り付けられないので、興味のある人はコピペして検索してね。

https://insectnet.proboards.com/thread/3495/cirrochroa-imperatrix

また、画像だと♀は外縁近くの帯が淡くて水色に見える。
他の♀画像が見れてないので、雌雄の違いが本当にそうなのかはワカンナイけどさ。

心がまだ折れてるので書く気があまりしないけど、一応、種の解説をしとくか…。
 
【学名】Cirrochroa imperatrix Grose-Smith, 1894

平嶋義宏氏の『蝶の学名‐その語源と由来』に拠ると、属名の「Cirrochroa(キロクロア)」はギリシャ語の女性名詞で、kirrhos(黄色の)+chroa(皮膚・色)の合成語。ただし、正しい綴りは「cirrhroa」であるべき云々とあった。
小種名の「imperatrix(イムペラトリックス)」はラテン語由来で、意味は「女帝」。綴りでググると「皇后」「后」という訳も出てくる。
毎回、学名にイチャモンをつけがちだけど、この小種名に関しては不満はない。相応しいと思う。この属の中では圧倒的に美しいんだから当然だ。
ちなみにインペラトリックスの方は英語読みだと思われる。タイトルに英語読みの方を採用したのは、そっちの方が音の響きが良いと思ったからです。

この蝶について日本語で言及されているものは極めて少ない。他に見つけられたのは、森中定治氏の『Cirrochroa imperatrix GROSE−SMITH(Nymphalidae)との出会い』と題したものくらいしかヒットしなかった。1980年12月にビアク島に実際に採集に行かれた時のことを書いたもので、そこには生態についての記述もあるので一部抜粋しよう。

「裏面はやはりグループ特有の模様・色調をもつものの表面は紺一色、メタリックな輝きをもつ美しい色調の変わり種である。このグループはDOHERTYの時代から特異な色彩をもつものとして知られ、PAUL SMARTの百科にも、D’ABRERAの図鑑にも示されている。中略。小道を挾んで片側はやや急な斜面の草原であり、もう片側はブッシュとなっていた。午前7:30〜8:30分頃、ここを”C.imperatrix”が飛翔した。一方通行である。斜面の上方から、一頭、また一頭、ビュンビュンともう片側のブッシュへ突っ込む。地上スレスレの50cm〜1m位の高さである。この飛翔は9時頃には全く見られなくなった。もう一度、このチョウを見た。昼下がり、どこからか飛んできて、民家付近の樹木の葉に止まった。地上2〜3mである。採集しようと、そっと近づいたが、あっという間に力強く一直線に飛び去ってしまった。Biakでの採集全日程を通して、このチョウを見たのは、後にもに先にもこのニ度だけであった。」

ネッタイ(ミナミ)ヒョウモンの類に、そんなに速い飛翔イメージはないから少し驚いた。でも、そっちの方がむしろ望むところではある。チョウやトンボ、甲虫でも憧れの入っているものは簡単には採れない方がいい。手強い方がファイトが湧くし、物語にロマン性が生まれる。それに何よりドラマチックな展開になった方が、採った時のエクスタシーも大きいのだ。

タイトルに「閃光」とつけたキッカケは『InsectNet Forum』というサイトだった。そこのコメント欄を見てたら、突然、バァーンと「blue flashs」という文字が目に飛び込んできたのである。

「 I caught one on Biak in 2009, it is a fascinating lep who launchs blue flashs when flying. Very impressive.
And really hard to find on Biak, we were 5 collectors collecting all day long during one week and we found only 2 of them. 」

和訳すると、以下のようになる。
「私は2009年にビアクで1頭を捕えた。飛んでいる時に青い閃光を放つ魅力的な鱗翅類で、とても印象的なものだった。
そして、ビアクで見つけるのは本当に困難だった。我々5人は1週間にわたり一日中採集していたが、そのうちの2人しか見つけることが出来なかった。」

このサイトの記述からも、森中さんの文章と同じく遭遇のチャンスは極めて少ないことが伺える。オマケに飛翔も速いとなれば、採りに行くとしたらワクワク度と不安が入り混じった状態からの旅が始まるだろう。女帝に強い想いを馳せるだろうから、島に行くまでのプロセスから既に物語が始まっていそうだ。そうゆうプロローグって好きだ。浪漫があるではないか。
ビアク島は地図上ではニューギニア島西部のイリアンジャヤからは、そう離れてはいない。だからイリアンジャヤでトリバネアゲハどもをしこたまシバき倒した後で、ついでに寄って採れるんじゃないかと思ったりもする。上手くすれば、reginaも手ごめに出来るんじゃないかとまで思う。イメージは、毎度の凱旋将軍なのさ。
ニューギニアには、死ぬまでに一度は行きたいね。

                        おしまい

 
追伸
『THE Insect Collector’s Forum』と云う別なサイトのコメント欄でも下のような記述を見つけた。

「 If you are interested in knowing more about it, this is the biotope where I have found it in Biak (a Papuan island in the North of W. Papua). It was a very hot and humid day in a rather dense forest. It was very tiring to hunt, and after one month in Papua, I was very tired. But I have seen some blue “flashes” inside a bush (I guess Morpho are doing the same kind of flashes) and it was him. Delias dohertyi also flies there. 」

必要なところだけを意訳する。
「その日はとても​​蒸し暑い日だった。そこはかなり鬱蒼とした森の中で、私はそのブッシュ内で幾つかの青い閃光を見た。それは、私にはモルフォと同じような輝きに見えた。それが彼だった。そこには、Delias dohertyi(ドヘルティシロチョウ)も飛んでいた。」

また、他のコメント欄には晴れの日の熱帯の強い陽光の中ではモルフォのように光るみたいな事も書いてあったし、「私が人生で飛んでいる蝶を見た中では、最も素晴らしいものの一つである。」とも書いてあった。
こうなると、益々フィールドで飛ぶ姿を見たくなるってもんじゃないか。ドヘルティーにも会ってみたいし、誰か一緒に行ってくんねぇかなあ❓

タイトルは「青い閃光」にしようかとも思ったが、躊躇した。自らの眼で生きてる実物を見たこともないくせに、おこがましいと云うか厚顔無恥というか、そこまであざとくはなれない。流石に己の良心が許さなかったのだ。だから自分で捕らまえない限りは、タイトルとしては使えないと思った。おバカでも、それくらいの矜持はある。
で、閃光だけ使うことにした。展翅するために翅を開いた時のインパクトは、閃光と云う言葉に相応しいと思ったからだ。
 
(註1)出谷さん
バリ島在住の標本商、出谷裕見氏の事。
標本商として世界的に有名な方であり、デタニツマベニチョウやセタンフタオなどを発見した伝説の人でもある。
いつもは息子さんしか来日しないが、この日は珍しく御本人もいらっしゃった。

 
(註2)『東南アジア島嶼の蝶』
1980年から刊行が始まった塚田悦造氏による全5巻からなる図鑑。日本が世界に誇るべき図鑑であり、東南アジアの蝶関連の図鑑では最も信頼できうるものでもある。
内訳は、第1巻がアゲハチョウ編。第2巻はシロチョウ・マダラチョウ編。第3巻はジャノメチョウ・ワモンチョウ・テングチョウ編。第4巻はタテハチョウ科で、上・下巻に分かれている。
しかし発刊は1991年で止まっており、シジミチョウとセセリチョウの巻は発行されておらず、未完結となっている。
理由は知らないが、おそらくシジミもセセリも種類数が膨大である事と、種の同定が困難なグループだからではないかと推察する。どちらのグループも似たようなものだらけだからね。あと、セセリは人気がないから発売しても売れそうにないとゆうのも理由としてはあっただろう。

 
(註3)ビロードタテハのマレー半島亜種かな❓
木村勇之助氏の図鑑、『タイ国の蝶 vol.3』で確認したら、黄色い紋がない全体的に紫色のビロードタテハは、どうやら別種 Terinos clarissa になっているようだ。
塚田図鑑の記述はうろ覚えだから、亜種区分云々は単なるワシの思い違いだったのかもしれないし、後に別種に分けられたのかもしれない。
でも南部には黄色い紋が淡い紫色になっているビロードタテハ(T.atlita)もいるからなあ…。しかも黄色いものとは亜種区分はされていない。手許に塚田図鑑が無いから確認出来ないし、木村図鑑は全体的に色の発色が悪くて画像も小さいから、細かい部分がよくワカンナイんだよなあ…。
おまけに、一方の Terinos clarissaも色彩や斑紋の変異幅が大きいんだよなあ…。
すまぬが、詳細を知りたい方は、御自分で真偽の程を確認して下され。

 
(註4)自分のアメブロのブログ
このワードプレスのブログの前にはアメブロでブログを書いていた。その中の東南アジア蝶紀行のシリーズに『熱帯の憂鬱、ときどき微笑』と題した一連の文章がある。そのマレーシア編の41話等にテルパンダービロードタテハが登場するようだ。
「ようだ」と書いたのは、自分でも書いたことを、すっかり忘れていたからだ。6年前の旅だが、スマホがブッ壊れたり、移動で苦労したりと結構大変な旅だったように思う。
まあ、ダンフォルディーフタオやキャステルナウイホソカバタテハ、シコラックスハゲタカアゲハの♀など結構佳い蝶が採れたから楽しかったけどもね。

 
【ダンフォルディーフタオ♂】

 
【キャステルナウイホソカバタテハ♂】

 
【シコラックスハゲタカアゲハ♀】

 
これらを久し振りに見て思った。4年ほど海外にも行ってないし、最近は今回みたいな形体の文章が多いけど、自分は本当は紀行文、それも長い旅の紀行文を書きたい人なんだなと思う。

 
(註5)ヒョウモンチョウ亜科
『東南アジア島嶼の蝶』は、1980年代に発行された古い図鑑なので、当時はヒョウモンチョウ亜科に分類されていたのだろう。

 
(註6)ウォーレシア
深い海峡によって東南アジアともオーストラリア大陸の大陸棚とも隔てられたインドネシアの島嶼の一群を指す言葉。
ワラセア(Wallacea)とも呼ばれ、生物地理学的な区分では東洋区とオーストラリア区との境界部分にあたる。
スンダランド(マレー半島,スマトラ,ボルネオ,ジャワ島,バリ島)の東側であり、オーストラリアやニューギニアを含むニア・オセアニアの北側、西側に位置する。

 

『出展『Wikipedia』』

 
赤い部分がウォーレシアである。 青線は生物境界線の一つウェーバー線。
ウォーレシアの名前の由来は、19世紀に活躍したイギリス人の生物学者であり、探検家でもあったアルフレッド・ラッセル・ウォレスの名から。
ウォレスはダーウィンとも親交があり、ダーウィンの進化論に大きな刺激を与えた。同時代にダーウィンはガラパゴスで、ウォレスはウォーレシアで生物進化の自然選択説に行き着いた。

 

(出展『進化の歴史 科学の』)

 
簡潔に言ってしまうと、ウォレスはスラウェシ島から東と西とでは全く生物相が違う事に気づいた。それが自然選択説(進化論)に辿り着くキッカケとなった。ウェーバー線は、後にウェーバ氏ーによって新たに引かれた生物境界線である。
この2つの線は、どちらの境界線が正しいとか間違っているとかと云うワケではなくて、この両線の間には東洋区、オーストラリア区両方の生物がいて、独自に特異な進化をしたというのが現状だろう。線ではなく、帯とするのが妥当じゃないかな。

 
ー参考文献ー

◼塚田悦造『東南アジア島嶼の蝶』第4巻(上) プラパック

◼手代木求『世界のタテハチョウ図鑑』北海道大学出版会

◼木村勇之助『THE BUTTERFLIES OF THAILAND タイ国の蝶 vol.3』木曜社

◼森中定治『Cirrochroa imperatrix GROSE−SMITH(Nymphalidae)との出会い』やどりが 1989年 136号

◼平嶋義宏『蝶の学名−その語源と解説』九州大学出版会

◼五十嵐邁・福田晴夫『アジア産蝶類生活史図鑑』東海大学出版会

 
(インターネット)
◼『InsectNet Forum』

◼『THE Insect Collector’s Forum』

◼『ぷてろんワールド』

◼蝶に魅せられた旅人
東南アジア蝶紀行『熱帯の憂鬱、ときどき微笑』

◼『Wikipedia』