奄美迷走物語 其の15

 

第15話『奄美ドン底迷走物語』後編

 
2021年 3月29日(夜編2)

しかし、そこには🚧立入禁止のバリケードが並んでいた。
(ㆁωㆁ)ぽってちーん。死んだ。

一旦、他のルートがあるかもしれないと先に進んでみたが、直ぐに無理だと悟った。道は益々荒れてきて、どう考えてもそんなもんはありそうにない。
仕方なくバリケードのところまで戻る。

改めて並んでいるバリケードをよく見ると、左端に空間が空いている。隙間は結構あって、スクーターなら何とか通り抜けられそうだ。
入るのは気が引けるが、んなこと言ってる場合ではニャい。
こんな時間に誰かが見回りに来るとは思えないし、それにもし誰かが来て叱られたとしても『すんませーん。暗くてよくワカンなかったでしたー。』とでも言い訳をカマせばいい。あー、でもこんなに目立つバリケードを「目に入りませんでした。」では理屈が通らんか。更に大目玉を喰らいかねない。
(ノ`Д´)ノえーい、ままよ。見つかったら見つかった時のことだ。
『(。ŏ﹏ŏ)オデ、オデ、ワガンね。』
などと脳ミソの足りない言語障害のオジサンの振りをするか、もしくは、
『リップヴァーンウィンクルの話って知ってますかあ❓』
と『野獣死すべし』の松田優作みたく瞬きなしの狂気じみた無表情で言ってやろう。不気味過ぎて向こうの方がビビるに違いない。夜の、しかもこんな人気のない場所で気が狂ってる男と対峙するのは相当恐いだろう。何なら懐中電灯を下から照らしながらでセリフを言ってやってもいい。
あっ、それはやり過ぎか…。フザけんな❗と、かえってメチャクチャ怒られかねない。

勾配のキツい坂道を一気に上がると、目の前がパッと開けた。
手前に駐車場があり、その向こうは展望広場になっている。新しく改装されたみたいで立派なテーブルと椅子が並び、全体的にとてもキレイだ。有り難いことに清潔なトイレもある。

時計を見ると、何と驚きの午後8時45分になっていた。どんだけ時間かかっとんねん。予定していた所要時間は1時間半だったのに、3時間半も要しているではないか。
大幅に時間をロスしたが、今さら悔いたところで仕方がない。辿り着けただけでも良しとしよう。

慌てて灯火採集の用意をする。
問題は何処にライトを設置するかだが、もう四の五と言ってらんない。危ないが先っちょギリギリ、防護柵を越えて設置した。落ちたら間違いなく大怪我だが、なんちゃってライトトラップなんだから、これくらいでもしないとアマミキシタバは採れやしないと思ったのだ。

午後9時過ぎ。
やっとライトを点灯することができた。

 

 
点灯と同時に蛾どもがワッと飛んで来た。
今回の旅では一番飛来数が多い。さすが世界遺産に地域指定されるであろう湯湾岳だ。なんちゃってライトでも効力ありだ。それだけ自然度が高くて、生物相が豊かなのだろう。
さあ、リベンジだ。ここから盛大な祭りといこうじゃないか。

名瀬や知名瀬とは飛んで来る蛾の種類が少し違っていて、見たことのない種類も多い。名前は全然ワカランけどー。
点灯時刻が遅かったせいなのかハグルマヤママユは飛んで来なかったが(註1)、何かと飛んで来るのでそれなりに楽しい。純粋な蛾屋ではないから各種の稀度はワカンナイ。だから殆んどの種類は採らずに無視だけどもね。
とにかく数さえ飛んで来れば、それに応じて確率も高まる。ならば、否応なしに期待値も上がろうというもの。そのうちアマミキシタバだって飛んで来るかもしれない。今までの苦労が報われることを切に祈ろう。

しかし、1時間程でピタリと飛来が止まる。光が弱いから遠くのものは引き寄せられず、周辺にいる奴しか惹きつけられないのだろう。なんちゃってライトトラップの悲しいところだ。
一応バナナトラップを柵にいくつか括り付け、背後の森にもぶら下げていたが、コチラもダメ。相変わらずの閑古鳥だ。寄ってきたのは、お馴染みのオオトモエのみ。
またしても惨敗かと、ポトリと落ちた墨汁がジワジワと広がってゆくように心が黒く染まりはじめる。見上げるこの漆黒の夜空のようにならないうちに何とかせねば…。そう思うが、思ったところで特にやれる事はない。やれる事は全部やっているのだ。あとは運まかせだ。あっ、神頼みがあるか…。
神様〜、(༎ຶ ෴ ༎ຶ)なんとかしてくだせぇーよ。
ワシ、メチャメチャ頑張ってるやないすかあ。努力もしてますやん。もうそろそろ報われたっていい頃じゃありませぬか❓

祈りが通じたのか、次第に辺りに白いヴェールのようなものが掛かってきた。霧だ。もしかして絶好のコンディションになるかも…。ガスれば光が拡散するせいなのか、格段に灯りに寄ってくる蛾の数が増えるのだ。ワチャワチャに寄ってきてくれよー。
とはいえ、天候が悪化してゆくのは好ましくない。雨にならないことを祈ろう。雨でも蛾は寄って来るのだが、アマミキシタバがベチョベチョになったら元も子もない。濡れて鱗粉がハゲちょろけになったとしたら、死んでも死にきれない。

 
【アマミキシタバ】

(出展『DearLep圖錄檢索』)

 
それに雨が降ると帰りが大変だ。雨の中、あの滑りやすい林道を降りるのはゾッとするし、なんと言っても帰り道は長いのだ。長時間にわたって雨に濡れ続ければ、体温を奪われるし、精神的にも相当辛くなる事は火を見るよりも瞭(あき)らかだ。

名前は知らんけど、見たことのないごっつカッコイイ蛾が飛んで来た。

 

 
画像は後日撮った写真である。その時は頭の中がアマミキシタバの事でいっぱいで余裕がなく、写真を撮るのをすっかり忘れていたのだ。

この画像じゃワカランので、いつも参考にしている『蛾色灯』というサイトから画像をお借りしよう。

 

(出展『蛾色灯』)

 
止まっている時は、こんな風に三角形の姿をしている。
蝶は羽を立てて止まるが、蛾の多くはこのように開いて止まるのが定番で、コレが蛾と蝶を見分けるコツの1つとされている(例外は結構ある)。だからワシの手乗り横画像は自然な状態ではない。羽の表面の鱗粉を傷めたくないゆえ、無理矢理あの形にして三角紙に入れていたので、ああなったのである。つまり自然状態では羽を立てて静止することはない。但し、羽化時に羽を伸長させる時は立てている可能性が高い。そうしないと羽をキレイに伸ばせないだろうからね。

捕まえた時に驚いたのは、身体がゴツかった事である。

 

(出展『服部貴照の備忘録 蛾類写真コレクション』)

 
胸部の体高が高くて厚みがある。横幅も広い。
そして、もふもふだ。マジ(◍•ᴗ•◍)❤可愛いっす。

帰ってから調べてみたら、どうやらタッタカモクメシャチホコ(註2)の♂のようだ。
何じゃそりゃ❓というくらいインパクトのある和名じゃないか。最初に「立ったか❓木目鯱鉾❗」と脳内変換が行われたよ。でもって『立てへんのかーい❗』という吉本新喜劇的ツッコミを入れてしまったなりよ。
次に西川のりおがオバQの姿に扮して『🎵ツッタカター、🎵ツッタカター、🎵ツッタカタッタッター』と行進する姿が目に浮かんだ。今思い返しても『俺たちひょうきん族』は凄い番組だった。面白キャラクターの宝庫だったわ。

 

 
絶対、それ由来なワケないけど…(笑)

 

(出展 2点共『エムカクon Twitter』)

 
のりおのセリフじゃないけど、
『あほ〜ぉ〜。』
である。

ネットでアレコレ見ていると、そこそこの珍品のようで「憧れの」とか「恋焦がれた」だの憧憬や称賛の修辞句が並んでいるから、蛾屋の中でも評価が高い種みたいだ。とにかく採った人は皆さん、嬉しそうなのだ。名前も知らんのに、ワシも嬉しかった。スター性があるモノは、何だってひと目で人を惹きつけるのだ。

次のコヤツも印象深かった。

 

(画像は後日展翅時に撮ったもの)

 
ユウマダラエダシャク系の白黒蛾(註3)だ。
実を言うとこの蛾は、最初に着いた時にトイレの外壁に止まっていて気にはなっていた。ユウマダラエダシャク系は本能的にキモいので普段は絶対に採らないのだが、黒っぽくてカッコイイかもしれないと思ったのだ。
しかし一刻も早くライトを設置しなければならなかったからスルーした。設置後はバナナトラップを見回る際にトイレの前を通る折にふれ、採るかどうか迷ってた。でも白黒エダシャクはキモいという概念が邪魔して踏ん切りがつけれないでいた。触るのが嫌だったのだ。で、そのうちいつの間にか姿を消していた。
だから、後々ライトに飛来した時は迷わず採った。

午後11時。
(・∀・)よっしゃー❗、いよいよアマミキシタバが飛んで来るゴールデンタイムに入った。
霧は益々濃くなってきたし、この条件なら採れるかもしれない。いや、採れるっしょ。

しかし、暫くして風も出てきた。
ちょっとヤバいかも…と思った瞬間だった。不意にブワーッと突風が吹いた。
ガッシャーン❗
\(°o°)/エーーーッ❗❗
風で三脚が倒れよった❗
一応、ビニールテープで防護柵と三脚とを繋いでいたので谷底には落ちなくて、(´ω`)セーフ。繋いどいて良かったよ。
でも、立て直した時に気づいた。
Σ( ̄ロ ̄lll)ガビーン❗❗
ライトが1個消えとるやないけー❗

2個あるチビライトの1つが点灯していないではないか。
(ㆁωㆁ)…白目男、茫然と立ちつくす。

戦闘力、大半減だ。でも、やっちまったもんは仕方がない。まあいい。もう1つは生きてて光ってるんだから何とかなるだろう。
だが、明らかに寄って来る蛾の数が目減りしていってる。又もやの想定外のアクシデントに、ドス黒い諦念が広がり始める。
(╯_╰)なしてー。どこまで悪い流れが続くねん。

その後、何も起こらなかった。
午前1時まで粘ったが、ついぞアマミキシタバは飛んで来ずだった。今回も擦りもせずの惨敗である。
期待値が高かっただけにショックは大きい。数々の困難を乗り越えて、こんだけ頑張っても報われないのかよ…。

1時15分。
ズタボロの心と身体を引きずるようにして撤退。

濃い霧で驚くほど前が見えにくいので、山道を慎重且つゆっくり、のろのろ運転で降りてゆく。間違ってカーブで真っ直ぐ行ってもうて、崖から落ちでもしたら洒落になんないもんね。
別に道に迷っていたワケではないのだが、次第に山を彷徨しているような気分になってきた。
あなたが落とした斧は金の斧はですかー❓ それとも鉄の斧ですかあ❓
突然、山の神様が霧の向こうからニュッと現れてもオカシクないような状況なのだ。それくらい現実離れしたような幻想的な風景が続く。
そして、山は息苦しくなるくらいに静寂だ。バイクのエンジン音だけが奇妙な感じで谺している。ハッキリ言って不気味だ。映画やドラマだと絶対何か良くない事が起こりそうなシチュエーションである。
いつしかエンジン音は脳内で変換され、耳の奥ではお約束のように恐ろしげな重低音の音楽が流れている。しかもそれはワシが生涯で最も怖かった映画『シャイニング(註4)』のオープニングで流れていた曲だ。カメラは上空から俯瞰で、山奥の古ホテルへと向かう一家族の車を淡々と追い続けるんだよね。ただそれだけの映像なのに、執拗にリフレインされる不気味な音楽が、これから起こるであろう惨劇を暗示しているようでメチャクチャに怖いのだ。

そんな時だった。
バサバサバサー❗
突然、その静寂を何かが破った。
ヽ((◎д◎))ゝしょえー❗
不意の金切り声と大きな羽ばたき音に激ビビる。
ヤバいもんだったら、発狂しかねないので見ちゃイケないと頭では思うのだが、裏腹に目が勝手にソチラの方を見てしまう。

照らされた方向には鳥がいた。
邪悪な怪鳥だったら、💧涙チョチョギレもんだが、結構デカいものの、ただの鳥じゃないか。驚かせやがってアホンダラー。ホッとして、強張っていた身体の力が一挙に弛む。
とはいえ、顔だけは強張ったままだ。だいたいにおいて夜に鳥が羽ばたいて鳴く時は映画でもドラマでも何かが起こる前兆と相場が決まっている。鵺の鳴く夜は恐ろしいのだ。

見慣れない鳥だが、思い出した。写真で見たことがある。たぶんアマミヤマシギ(註5)っていうシギ(鴫)の1種だ。
そうと分かれば、さらに心は落ち着く。名前なき未知なる異形のモノは恐ろしいが、名前が特定されてしまえば怖るるに足りずである。

その後もアマミヤマシギは現れた。でもって、その度に驚かされた。けど何度も驚かされてると、そのうち慣れてくる。そうなると次第に沸々と怒りが込み上げてきた。
このバカ鳥ども、結構そこいらにいて、誠にもってウザい。敏感にすぐ飛んで逃げてくれればいいのだが、バカだから直前になって目の前で飛びよる。だから瞬間こっちの方がビックリして、その度に肝が冷やされる。コッチは霧で前が見えないゆえ、鳥がいるだなんてワカランのだ。一方、オマエらはバイクのエンジン音が遠くからでも聞こえてる筈だから事前に逃げれんだろうに。鈍クサいこと、極まりない。そんなだからマングースや猫に食われるのだ。おバカ鳥めがっ💢
心がササくれだっているから、マジで轢いたろかと思う。まあ、人として流石にそれはしないけど。

時間はかかったものの、何とか麓まで下りてきた。
でも帰る場所は気が遠くなる程、まだ遥か先だ。
そして眼前には大きな問題が立ちはだかっている。ずっとどっちにするか迷ってた帰るコースを、いよいよ決断せねばならぬ時が来たのだ。
問題は来しなに使った北側のルートと半分未知の南側ルートのどちらで帰るかなのだが、選択を間違えれば地獄が待っている。
そう言いつつも、どちらを選んでも地獄である事には変わりはないんだけどもね。少しだけ、どちらかがマシなだけである。でもその少しの差が今は大きい。それだけ弱っているのだ。少しでも楽な方法で帰りたいという思いが強い。
はてさて、どうしたものか(-_-;)…。
又あの山道を登り降りして帰るのは正直しんどい。どころか道はグネグネでカーブが多いから危険さえ感じる。それを、この心身ともに衰弱しきった状態で走りきる自信はない。
となれば南側ルートだが、コチラは長いトンネルが何本もある。コレがホント長くて辛い。いつまで経っても出口が見えてこないので、心が徐々に蝕まれてゆき、気づいた時には鈍くて重い精神的ダメージをうけているのだ。
それに長いトンネルは睡魔を呼ぶ。ましてや丑三つ時のこの時間帯だ。眠くならないワケがない。けど眠ったら確実に事故る。側溝に突っ込んでバイクもろとも💥大破。運が悪けりゃ、あの世ゆきだ。
あの世で思い出した。こんな夜更けに、そんなトンネルを走るのは全然もって気が進まない理由が他にもある。山のトンネルといえば、イコール心霊スポットだ。あたしゃ、自慢じゃないが、お化け大嫌いの超怖がり男なのだ。
チキンハート野郎は想像する。奄美の妖怪ケンムンを筆頭に魑魅魍魎どもがワンサカ湧いて出てきて、追いかけ回されでもしたら、チビる。いや、チビるどころか小便垂れ流しで泣きじゃくりながら逃げるよ。
ほらね、どっちを選んでも地獄じゃないか。
嗚呼、何もかもがウンザリだ。できれば、その辺に倒れ込んじまって、そのまま深い眠りに落ちてしまいたい。
そうしたくなるような心を必死に抱きかかえて、のろのろと南に向かって走り出す。

南側ルートを選んだのは、アップダウンと急カーブが少ない事と、単に同じルートを走りたくなかったからだ。
あと付け加えると、コチラのルートだと最後には名瀬を通るので、コンビニが幾つかあり、24時間スーパーまであるからだ。酒とツマミを買って帰らないとやってらんない気分だし、酒の力を借りなければ今夜は眠れそうにない。

先ずは住用町役勝を目指す。だが北に行きたいのにルートは一旦、反対方向の南へと針路をとる。コレがスゲー遠回り感がある。ルートはかなり南に下ってから一転、今度は北へ向かうという道筋になっているのだ。理不尽にも、無駄にV字の軌跡を描いて走らねばならない。宇検村から住用町西仲間までを直線距離で結ぶと12kmくらいだが、このルートだと倍以上の30kmくらいを走らねばならんのだ。大きな山塊があるから仕方がないんだけどさ。そもそもアソコにトンネルを通すのは無理があるだろう。技術的には可能だろうが、莫大な費用が掛かるだろうし、通したところで見合うような経済効果は有りそうにない。それに世界遺産になった今なら、そんな計画には許可がおりないだろう。

役勝トンネル辺りで早くも睡魔が襲ってきた。
そして、道は街灯が少なくて暗いから、遠近感までオカシクなってくる。
ワシ、実を言うと夜の運転は苦手がち。鳥目ではないと思うけど、夜はモノを認識する能力が格段に落ちる。で、挙げ句の果てには時々幻覚を見たりもする。トンネルの入口が巨神兵や超巨大なC3POに見えたり、ガードレールにゴブリンが座っていたりするのだ。だからスピードも出せない。

それにしても笑っちゃうくらいに対向車がいない。もちろん人など誰一人として歩いていない。時空が歪んだ別な世界、まるてバラレルワールドにいるような錯覚を覚える。いよいよもってヤバい事になってきた。

住用町の三太郎トンネルの手前辺りで、睡魔が猛烈にやって来て朦朧となる。
意識が半分飛んだまま、トンネルに入る。
この長いトンネル、アホほど長いと知ってるだけに辛い。知らぬまに蛇行運転になってて、堪らずトンネルの真ん中の退避スペースで停まる。

 

 
トンネルの真ん中で停まるのって、あまり気持ちがいいものではない。こうゆう時にもしケンムンや魑魅魍魎どもが襲ってきたりしたら最悪じゃないか。死を覚悟して戦うか、恐怖で脱糞しながら必死で逃げるしかない。何か、さっきも同じような思考回路になっていなかったか❓たぶん、そうだろう。脳ミソが溶け始めている証拠だ。
でも怖いもんは怖い。怖さに耐えきれず、大声を出してみた。自分の声が洞内に反響して奇妙に増幅され、やがて壁に吸い込まれていった。
少しだけだが気分が落ち着き、思い出したように煙草に火を点ける。

煙草を吸いながら、ぼんやりと思う。この上の三太郎峠でもアマミキシタバが採れてる記録があるんだよなあ…。三太郎峠で灯火採集しとけば良かったかなあ…。近くはないが、湯湾岳よりもだいぶ楽な距離だ。
だが、すぐさまその考えを否定する。今さら後悔したってしようがないのだ。それに、こんなに悪い流れ続きだったら、どうせ採れなかっただろうし、また別な大きなトラブルに見舞われてたに違いない。
あー、ダメダメだ。珍しく完全にマイナス思考に囚われているよ。

この時点で、既に時計の針は午前3時を指そうとしていた。ここまで2時間か…。思ってた以上に時間を費やしている。

次の新和賀トンネルは何とか通り抜けたが、朝戸トンネルで再び強い睡魔に見舞われて停車した。
まあいい。今さら急ぐ理由なんて無いのだ。それにこのクソ長いトンネルさえ抜ければ、名瀬の街だ。宿までそう遠くはない。

午前4時。
やっとこさ朝仁まて戻ってきた。安堵と疲労とが同時に全身の隅々にまで広がってゆく。
コンビニの駐車場にバイクを停め、ヘルメットを脱いだら、更なる安堵と疲労感、そして敗北感とが加わった何とも形容し難いような感情に包まれた。
或る種のトランス状態だったのかもしれない。全身がヘトヘトだけど、ヘラヘラ半笑いで、ふらつきながらコンビニに入る。
で、酒を買って、ついこんなもんまで買っちまう。

 

 
結局、マイフェバリットの鶏飯屋『みなとや』には行けてないし、無性に鶏飯を食いたくなったのだ。
だが、宿に帰って敗北感にまみれて酒を飲み始めたら、秒殺でそのまま昏倒してしまった。

しょっぱい夜だった。

                    つづく

 
追伸
この日が、奄美大島で最も過酷な1日だった。
昼間は蝶を採りいーの、夜は蛾を採りいーのの二足の草鞋は正直キツイ。体力的にも精神的にもシンドイのだが、中でも夜に酒飲みに行けないのが辛い。店で美味いもん食いながら酒を飲み、地元の人とワーワーやるのが大いなるカタルシスになっていたんだなと今更ながらしみじみ感じる。虫ばっか採ってると旅が味気なくなる事を痛感したよ。

 
(註1)点灯時刻か遅かったせいかハグルマは飛んで来なかった
Sくん曰く、ハグルマヤママユの灯火への飛来は日没後から1時間くらいが勝負らしい。エゾヨツメと同じで、それ以降は殆んど飛んで来ないらしい。もちろん例外も有るんだろうけどさ。

(エゾヨツメ♂)

(ハグルマヤママユ♂)

 
(註2)タッタカモクメシャチホコ
シャチホコガ科(Notodontidae)に属する中大型蛾。
前翅の地色は純白で、黒い内横線はジグザクで太い。

展翅してみてもカッコイイ。こうゆう白黒のスタイリッシュな蛾はノンネマイマイやキバラケンモンなど科を跨いでいくつかいるが、中でもコヤツはデカくてゴツいから他とは存在感がまるで違う。圧倒的な風格があるのだ。しかも他のものは下翅が純粋に白黒ではなくて、上翅とのデザインの連動性をあまり感じない。一方タッタカは下翅も白黒柄で上翅とデザインが一体化していて、全体に違和感がない。それに背中の柄の黒は、よく見ると群青色なのだ。これが高貴な感じがして♥️萌える。尚、展翅画像はピンチアウトで拡大できるので、そのコバルトブルーを是非とも確認されたし。

(ノンネマイマイ)

(2019.8月 長野県松本市新島々)

(キバラケンモン)

(2020.8月 長野県木曽町開田高原)

(ニセキバラケンモン)

(2020.9月 長野県松本市白骨温泉)

キバラケンモンとニセキバラケンモンは好きだけど、ノンネマイマイはキショイ。カッコイイかもと思って採ったけど、展翅してみたら残念な形と下翅でガッカリした。オマケに腹がピンク色で妙に色っぽいのが許せない。言ってしまえば安っぽい遊女みたいなのだ。
しかも大嫌いなマイマイガの仲間だと知ってからは憎悪さえ抱くようになった。マイマイガは大嫌いだから、成虫も幼虫も一切関わりたくない。
(´ε` )そんなこと言うなよーと言う人もいると思うけど、生理的に受け付けないんだから仕様がないんである。断固、キミたちとは袂を分かつ。

ノンネさんの事はどうでもいい。タッタカさんに話を戻そう。

【学名】Paracerura tattakana (Matsumura,1927)
小種名は、台湾の立鷹峰に由来する。おそらく最初に採集されたのが其処だったのだろう。和名もそれに連動しての命名だと思われる。
立鷹峰は台湾中部の南投県仁愛郷にある山で、蝶の採集地として有名な翠峰や梅峰近辺にあるようだ。ということは標高2000m以上ってことだ。おそらく2300m前後くらいはありそうだ。
尚、この地域にはホッポアゲハやアケボノアゲハ、アサクラアゲハ、スギタニイチモンジ、ダイミョウキゴマダラ、タカサゴミヤマクワガタなどがいる。

余談だが、台湾では「尖鋸舟蛾」と呼ばれている。
も1つピンとこないネーミングだが、コレは触角が鋸状なところからきているようだ。で、舟蛾はシャチホコガ全般を指す言葉なのだろう。確かに横から見れば、舟だと言われれば、そう見えなくもない。

本土産のものが、magniguttata (Nakamura,1978)として亜種記載された事があるが、現在はシノニム(同物異名)扱いになっている。

【開張】 ♂65〜72mm内外。 ♀72〜80mm内外
自分の採ったものは68mmだったから、矢張り♂だろう。

一応、♀の画像も貼り付けておこう。


(出展『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』)

どうやら♀は♂と比して大きく、上翅の幅が広くて翅形が全体的に丸くなるようだ。

【分布】
分布は意外にも広く、ネットの『みんなで作る日本産蛾類図鑑』によると、本州、四国、九州、対馬、屋久島、沖縄本島、西表島、台湾とあった。おいおい、奄美大島が抜けとるぞー。
このサイトは蛾を種名で検索すると、どの種でも必ずと言っていい程に真っ先に出てくる。だから基本情報を知るのには重宝するし、有り難いのだが、重大な問題点もある。どうやら全くアップデートがなされていないようで、情報が致命的に古いのだ。ゆえに概要を知るのはいいとは思うけれど、それをまるっきり鵜呑みにする事はお勧めできない。一応フォローしておくと、何千種といる蛾の殆んど種の画像と解説があるから、その執筆の労苦たるや大変なものだったろう事は想像に難くない。それには素直に頭が下がるし、立派な業績だと思う。礎の役割は十ニ分に果たされておられると言っていいだろう。でもだからといってアップデートされないままの弊害は見過ごせない。間違った情報が流布し、混乱を引き起こすからだ。改善されることを望みます。

そうゆうワケなので、ここからは岸田先生の『日本産蛾類標準図鑑』の解説を混ぜて書き進めていく。この図鑑の情報が現在のところ最も信頼できるからだ。
その標準図鑑によると、分布は上記の他に「奄美大島とその属島」とシッカリ書いてあった。ほらね。
主に西日本に多く見られるが、分布は局所的。国外ではミャンマー、タイ、ベトナム、中国南東部、台湾に分布している。
知る限りでは垂直分布について言及されている文献は見当たらない。唯一見つけられたのが、ブログの記事で、『高知の自然 Nature Column In Kochi』というサイトに「高知県では低山地から標高の高い山まで広く分布している。」書いてあった。図鑑等で垂直分布についての記述がないのは、低地から高地まで広い範囲で得られているからなのだろう。

【レッドデータブック】
宮城県:絶滅危惧I類(CR+En)
京都府:要注目種
岡山県:希少種

【成虫の出現期】 5〜8月
アレっ❓、採ったのは3月下旬だから、かなりズレがある。だから、みんなで作る図鑑は鵜呑みにはできないのだ。
コレに関しても直ぐに標準図鑑で解決した。南西諸島では3月と6月に採れ、本土では6月に出現するとあった。

【成虫の生態】
大概の文献には、夜間に灯火に誘引される事くらいしか書かれていない。それとて、飛来時刻の傾向さえも特には言及されていない。たぶん飛来はアトランダムで、傾向と言えるようなものはないんだろうけどさ。
昼間の静止場所とかも書かれてあるものは知り得ないし、成虫が何を餌にしているのかもワカラナイ。まあ、タッタカに限らず、蝶と違って蛾の生態はまだまだ解明されてない種類だらけなんだけどもね。
んっ❗❓、待てよ。とはいうものの、🎵もしかしてだけどー、🎵もしかしてだけどー、🎵シャチホコ蛾って何も食わんないんじゃないの〜❓

調べてみたら、何と近縁のオオモクメシャチホコの成虫は何も餌を摂らないそうだ。だからタッタカも何も食べない可能性が高い。どうやらシャチホコガ科全般がそうみたい。へぇー、デカいクセに何も食べないんだ…。
更にデカいヤママユの仲間は何も食わないとは知ってたけど、シャチホコくんもそうなんだ…。蝶をやってきた者としては、餌を摂らないなんていう概念は無いから驚きだよ。蝶で餌を摂らない種はいない筈たもんね。だから思ってしまう。
ヤママユもシャチホコも大型蛾だから、そんなんでエナジー保つのかよ❓ある意味、蝶よか進化しているのかもしれない。
ということは、タッタカって寿命は短いのかなあ❓

唯一、成虫の生態の一端を見つけられたのがネットからだ。
ブログ『昆虫ある記』に、タッタカちゃんを手に取ると、時に脚を縮めて腹部を大きく内側に曲げた状態が長く続く事があり、どうやら擬死行動のように見受けられるとの印象が書かれている。


(出展『昆虫ある記』)

自分が採った時には、そのような傾向は一切みうけられなかったが、画像を見ると自分にもそのように見える。
死んだふりする生き物って、わりと好感がもてる。何か健気で可愛いもんね。

【幼虫の食餌植物】ヤナギ科 イイギリ属:イイギリ(飯桐)
葉が大きく、昔は飯をこの葉でくるんだ事から名付けられたようだ。また別名にナンテンギリ(南天桐)があり、コチラは実が南天の実に似ていることに由来する。

標準図鑑によると、イイギリの分布とタッタカの分布は、ほぼ重なるらしい。だから主に西日本に見られるんだね。

(イイギリの分布)

(出展『林弥栄「有用樹木図鑑(材木編)」』)

コレを見て、西日本ではこんなにも普通に生えてる木なのかと思った。だったら探せば意外と何処にでもいて、新たな産地がジャンジャンに見つかるんじゃないかと思った。
しかし調べ進めると、わりかし珍しい木のようで、山地でもあまり見られないそうだ。でないとタッタカが珍しいという説明がつかないもんね。但し、最近は公園樹として植栽されることも増えているらしい。
垂直分布はブナ帯下部らしい。もしタッタカの分布もそれに準ずるならば、標高1200m以下に棲息するものと考えられる。

(イイギリ)

(出展『plantidentifier.ec.ne.jp』)


(出展『葉と枝による樹木図鑑』)


(出展『plantidentifier.ec.ne.jp』)


(出展『庭木図鑑 植木ペディア』)

多分、この木の実は見たこと事がない筈だから、やはり珍しい木なのかもしれない。因みに葉の印象は見たことがあるような無いような微妙な感じだ。でも桐の葉か何かと混同しているかもしれない。ようは同定に自信がないのだ。言い訳させて戴くと、植物の葉は遠縁の種であっても似たような形のものがワンサカある。どころか同じ種内であっても葉の形に変異が多いから、ワシらみたいな素人には植物の同定は容易(たやす)くはないのだ。

幼虫は、どんなだろ❓
でも蛾の幼虫は邪悪な姿をしたものが多いんだよねー。どうせ怖気(おぞけ)るから探すのやめとこっかなあ…。とはいえ気になり始めたら捨て置けない。恐る恐るで探してみたら、😱スゲーのが出てきた。


(出展『鯉太朗のお散歩日記Ⅱ』)

\(◎o◎)/何じゃ、こりゃ❗❓
である。見た瞬間は変過ぎてどっちが頭なのかさえ解らなかった。左側が頭なのだが、ワケわからんくらいに形が歪(いびつ)で、ニョキっとした手を含めての姿勢も何だか変だ。そして何よりも変なのは、その尾っぽである。まるで『帰ってきたウルトラマン』の怪獣、ツインテールみたいな奴ではないか。

(ツインテール)

(出展『怪獣ブログ』)

ツインテールって相当に変テコな奴だと思っていたが、タッタカベイビーの前では地味にさえ感じるじゃないか。自然が造りしもののデザインは、人間の想像力なんぞ遥かに超越しているのである。だいたいツインテールのデザインだって、そのオリジナル性は疑わしい。きっと何かの生物をモチーフにしたパクリもんだろう。
余談だが、ツインテールには「三つ編み(おさげ)」という意味もある。小さい女の子から女子高生とかまでに見られる髪型の事ね。そういや最近は三つ編みの女子高生って見掛けないよね。きっと絶滅危惧種だやね。

越冬態は蛹で、木の枝を噛み砕いて繭を作り、その中で蛹化するそうだ。全然関係ないけど、繭の中でひと冬を越すのって、どうゆう気分なのだろう❓
快適に惰眠を貪れて幸せそうだが、実際はそうでもないかもね。外の気象状況が気になって、おちおち眠れやしなかったりして…。寒波が来襲したり、大雨が降ったり等々、状況如何によっては生死に関わるからさ。生きるって大変なのだ。

尚、言い忘れたが、残念なことに標本からは油が大変出やすいそうだ。だとしたら悲しいよね。今のとこ、出てないけど。

 
(註3)白黒のユウマダラエダシャク系の蛾
このタイプの斑紋を持ったエダシャクは沢山いるからややこしいのだが、どうやらクロフシロエダシャクという種のようだ。

どうやらと書いたのは、にしては黒っぽいからだ。でも調べ進めると、この種は黒色斑紋の大小にかなりの変化があり、個体によっては外縁部が広く暗色で、白色の部分が極めて狭い者もいるらしい。で、ネットで色々と画像を見ると、確かに皆こんなに黒くなくて、そこいらにいる白黒エダシャクとさして変わらないように見える。正直なところ、ワシの嫌いなタイプの白黒エダシャクそのものだ。


(出展『日本産蛾類標準図鑑』)

これがノーマルタイプだろう。もしも黒さがこの程度だったならば、絶対に無視していた筈だ。

似ていて同定間違いしやすいのが、クロフオオシロエダシャクとタイワンオオシロエダシャク。こっちの方が基本的に黒い。

(クロフオオシロエダシャク♂)

(同♀)

(出展『日本産蛾類標準図鑑』)

 
(タイワンオオシロエダシャク♂)

(同♀)

(出展『日本産蛾類標準図鑑』)

この2種と比べてクロフシロエダシャクは、前翅の横脈紋がより明瞭で、その外側の黒色の小紋からなる外横帯をそなえる。後翅は外縁部と亜外縁部がより小型で、並び方は不規則。
専門用語だらけでワケわからんが、ようするに違いは後翅には黒斑が少なくて白い部分が多い。あと一番わかり易いのが、背中側から見た腹部の地色が黄色いことである。他2種は、ここの地色が白いから容易に区別できる。ただ、ボロ個体だと色褪せするから同定は困難になるかもしれない。
変わった見分け方もあって、灯火採集などの折に白布に静止している時は多くの個体が触角を後ろ向き(背中側)にしている事だ。大概の蛾は静止時には触角を前側か真横にしている。エダシャク亜科に属する蛾も、その例に漏れない。だからコレは例外中の例外の事らしい。但し全ての個体がそうではなく、たまに横向きにしているものもいるようだ。

一応、♀の画像も貼付しておこう。

(クロフシロエダシャク♀)

(出展『日本産蛾類標準図鑑』)

雌雄の違いは♂の触角は繊毛状なのに対し、♀は微毛状。また♂の前翅基部に刻孔があり、中脚の基部と腹部基部側面に一対の黒い毛束があるそうだ。
本文中の横向き画像だけでは心許ないので、参考までに反対側の横向き画像も貼り付けておく。

見ると、厳密には確認できないものの、♂っぽい。また♂には脚に毛束があるとも言うし、それはあるみたいだから♂かなあ…。
触角は繊毛っぽいけど、微毛にも見えなくもない。そもそもが繊毛と微毛の定義って何じゃらホイ❓どこまでが繊毛で、どこからが微毛なのだ❓両者の境界が今イチわからん。まあ、♂で間違いなかろうかとは思うけど。

後回しになってしまったが、主たる種解説をしておく。

【学名】Dilophodes eleganus (Butler,1878)
日本産が原記載亜種で、中国西部、インド、ボルネオ島から、それぞれ別亜種が記載されている。
参考までに付記しておくと、Dilophodes属の基準となるタイプ種は本種で、他に本属に含まれるものはインド北部から1種が知られているのみである。

【開張】35〜48mm
『日本産蛾類標準図鑑』ではそうなっていたが、『みんなで作る日本産蛾類図鑑』には39〜43mmとなっている。
因みに今回採集したものを測ると49mmもあった。とゆう事は、もしかして♀❓まあ、どっちだっていいけど。

【分布】
本州、御蔵島(伊豆諸島)、四国、九州、対馬、屋久島、奄美大島、石垣島、西表島で、関東地方より西に多産するそうだ。
(´ε` )チッ、何だ普通種かよ。ガッカリだな。きっと黒いタイプじゃないノーマル型は、知らぬうちに何処かで見ているのだろう。たぶん興味がないから頭の中では厳密には区別されておらず、皆同じに見えているものと思われる。
参考までに書いておくと、以前は北海道も分布地に挙げられていた。しかし確実に分布する地域が見つかっておらず、よって除外されたという経緯があるそうだ。
国外では、台湾、中国、インド、ボルネオ島に分布する。

【レッドデータブック】
宮城県:絶滅危惧I類(CR+En)

【成虫の出現期】
『みんなで作る日本産蛾類図鑑』では、4E-7E,9Mとなっていた。つまり4月下旬から7月下旬と9月中旬に見られるということだ。しかし『日本産蛾類標準図鑑』には3〜5月と7〜8月となっていた。但し、発生は地域によって多少異なるとも書かれてある。おそらく標準図鑑の方が概ね正しく、一部が9月にも見られるのだろう。ザツいけど(笑)。
尚、2化目の個体は1化目と比べて明らかに小型らしい。見つけたのが1化目で良かったよ。これよか小さかったら、たとえ黒くとも無視だったろう。

 
(註4)『シャイニング』


(出展『映画.com』)

1980年に劇場公開されたホラー映画の金字塔。ホラー映画のみならず、ジャンルを超えて、その後の多くの作品に多大な影響を与えたと言われている。
監督は、巨匠スタンリー・キューブリック。天才キューブリックがホラー映画を撮ると、こうなるんだと感銘を受けたのをよく憶えている。キューブリックは難解だとよく言われるが、この作品は比較的わかり易い方なので猿でも楽しめるだろう。
主役を演じるのは、名優であり、怪優でもあるジャック・ニコルソン。あの鬼気迫る表情が、まさかのノーメイクで演じられていたという伝説が残っている。

この映画、何が怖いかって、先ずは子供の乗る三輪車がホテルの廊下を走るシーンだろう。それを背後から追いかけるローアングルの映像が心臓バクバクものなのだ。
幻のBarのシーンも怖い。ジャックとバーテンダーの交わされる会話は一見普通なのだが、ズレがあって、それが見てる側の動揺を誘う。そして、そこには何とも言えない静謐な緊張感が漂っており、表面的な驚かし系の怖さとはまた違ったうすら寒いような怖さがあるのだ。
勿論、徐々に気が狂ってゆくジャック・ニコルソンも怖い。あまりにも怖すぎて、それが突き抜けてしまい、笑っちゃうくらいだ。奥さんの絶叫する顔も恐ろしい。けど一番怖いのは、何といっても双子の女の子だ。アレにはマジで心臓が止まりそうになった。

言い忘れたが、原作はこれまた巨匠であるスティーブン・キングだ。但し小説と映画とでは内容が異なり、キューブリックによって大幅にストーリーが改変されている。キングはコレに激怒し、事あるごとに、この映画とキューブリックを執拗に攻撃し続けている。まあ、全然別な話にすり替えられたようなもんだから、キングが怒るのも理解できる。キングが小説で伝えたかった事が完全に無視されてるからね。
尚、小説の方も読んだけど面白かった。内容は映画と比べて、もっとスピリチュアルな話で、超能力を題材にしたものだったという記憶がある。そうゆう意味では小説の方が奥深い内容ではある。だいぶ昔に読んだので、間違ってたらゴメンナサイだけど。

 
(註5)アマミヤマシギ

(出展『おきなわカエル商会BLOG』)

全長約40cm程のシギ科の鳥で、全身は茶色、頭部に黒い横斑をもつ太ったシギである。日本の固有種で、奄美群島と沖縄諸島にのみ分布する。だが繁殖が確認されているのは奄美群島だけで、同島で繁殖したものの一部が沖縄に渡るのではないかと推測されている。
成熟した常緑広葉樹林に生息し、冬の終わりから春にかけて地上で営巣する。活動は主に夜間で、ミミズなどを捕食する。個体数に関するデータは乏しいが、1990年代になって激減している事が推察され、特に名瀬や龍郷町ではほとんど見られなくなったという。減少要因として、森林の伐採、ネコやマングースなどの外来種による捕食が指摘されている。種の保存法により、1993年に国内希少野生動植物種に指定されており、環境省のレッドデータブックでは絶滅危惧種II類(VU)に指定されている。

 
ー参考文献ー
◆『日本産蛾類標準図鑑1』
◆『日本産蛾類標準図鑑Ⅱ』

(インターネット)
◆『みんなで作る日本産蛾類図鑑』
◆『蛾色灯』
◆『服部貴照の備忘録 蛾類写真コレクション』
◆『昆虫ある記』
◆『高知の自然 Nature Column In Kochi』
◆『DearLep圖錄檢索』
◆ Wikipedia
◆『鯉太朗のお散歩日記Ⅱ』
◆『庭木図鑑 植木ペディア』
◆『林弥栄「有用樹木図鑑(材木編)」
◆『葉と枝による樹木図鑑』
◆『plantidentifier.ec.ne.jp』
◆『エムカクon Twitter』
◆『怪獣ブログ』
◆『映画.com』
◆『おきなわカエル商会BLOG』

 

奄美迷走物語 其の12

 
第12話『手のひらの中の黄色いモスラ』

 
2021年 3月28日 ―夜編―

昨晩、虫屋ツイッター界で有名なSくんに、明日は灯火採集へ連れていってくれとせがんだ。自分の何ちゃってライトトラップよりも遥かに強力なライトセットを持っていると知ったからである。彼は基本的には蝶屋で、今回の主目的はフタオチョウ&アカボシゴマダラ採集のようだが、蛾のハグルマヤママユ(註1)も狙っていて、その為にライトを持参していたのだ。
正直、度重なる惨敗により、自分のライトでは限界を感じていた。何ちゃってなだけに光が届く範囲がメチャンコ狭いのだ。

 

 
となれば、遠くの者は惹き寄せられない。イコール、集まって来る蛾の数や種類数もたかが知れている。徒手空拳だ。日々、その絶望的なまでの貧果に半ば途方に暮れていたのである。ようするに、メインターゲットの1つであるアマミキシタバを採るのは極めて困難な状況下におかれているという事だ。

 
【アマミキシタバ】

(出展『世界のカトカラ』)

 
このままだと惨敗必至だ。負け犬という名の犬が、舌を出してヘラヘラ笑いながら近づいて来るのが目に浮かぶ。いくら上手い言いワケで取り繕ったところで、採れなければ💩ウンチくんだ。もう形振(なりふ)りなんて構ってらんない。どんだけカッコ悪かろうとも千切れんばかりに尻尾を振ってやるぜ。
それに自分もハグルマヤママユは一度は見てみたかった。ヤママユの仲間は蛾にしては好きな方だし、恋い焦がれるという程ではないにせよ、そこそこには憧れてはいたのだ。アマミキシタバが採れて、ハグルマヤママユまで見られれば、万々歳じゃないか。加えて、もう夜の森に一人ぼっちで行くのはウンザリなのだ。マジ怖くて嫌なのだ。
頼むぅー、連れてってくれよー(´ε` )
心の声を、そこまで露骨には言っていないが、それとなくストレートには言った。

『自分のライトでは2時間しか保ちませんが、それでもいいですか❓ 夜遅くまでは付き合いませんよ。』
(☆▽☆)よろしゅうございますとも旦那様。連れて行って下さるのなら何だっていいでがんす。

雨が心配だったが、予報では何とかなりそうな雰囲気だったので出動決定。Sくんの車で知名瀬林道へと向かう。

午後6時半頃、日没と同時にライト点灯。
HIDライトは想像以上に強烈だった。光の束の指先が遠く離れた山肌にまで届いている。コレだけ強い光ならば、かなり遠くにいる蛾も呼び寄せることができるだろう。

実際、すぐにライトの周りは蛾だらけになった。ワシの何ちゃってライトとは効力に天と地ほどの差がある。やっぱ軽くて安いアイテムで、お手軽に済まそうなどというセコい根性では良い虫は採れない。

点灯後、10分と経たずに真っ黄っきーの蛾が向こう正面から近づいて来た。(・o・)何じゃらホイ❓ 遠いし、直ぐには脳のシナプスが繋がらなかった。

Sくんが声を上げる。
『あっ❗、ハグルマヤママユ❗❗』
(☉。☉)えっ❓、あれがそうなの❓もっと大きいものを想像してたよ。

それにしても飛び方がワチャワチャで軌道が無茶苦茶だ。ヤママユガの仲間は飛び方が雑(ザツ)くて、落ち着きがない。最後は地面を転げ回るようにしてライトへ近づいて来るケースも多い。ひっくり返ってジタバタしてたりもするからソッコーで回収しなければならない。でないと、あっという間にボロボロになりかねないのだ。
Sくんも、そのワチャワチャに翻弄されてキャッチできない。ボロにしたくはないから焦ってSくんまでもワチャワチャな動きになっとる(笑)。でも人のことは笑えない。ワシだってエゾヨツメ(註2)の時は、あんな風にドジョウすくいのオッサンみたくなってた可能性が高いからね。
彼が数度空振りして見失った。でもってライトから離れて飛んで行きそうだったゆえ、咄嗟に網を伸ばして入れてしまった。
フォローのつもりだったので、網のままSくんに差し出す。
『悪かったかな❓逃げそうだったからさ。』
人によっては自分で採らないと気が済まなくて、他人が網に入れたものを貰うのを嫌がる人もいるからね。
幸いSくんはそうゆう人ではなくて、問題なく素直に受け取ってくれた。めでたし、めでたしである。アマミキシタバが飛んで来たら貰おうという下心があるから、彼の機嫌を損なうことは絶対に避けねばならぬのじゃ。あっし、アマミキシタバの為なら滅私奉公するのも厭わない所存でごわす。

せっかくだから、写真を撮らせてもらう。

 

 
黄色いチビっ子モスラだ。
思ってた以上に鮮やかな黄色で、思ってた以上に小さい。大きさはヒメヤママユくらいだろう。いや、もっと華奢なような気がする。

彼が直ぐに2頭めを採ったところで、また飛んで来たのでネットイン。
したら、Sくんが
『いいですよ。持ってて下さい。』
と言ってくれた。
優しいねー。アリガトねー(☆▽☆)

 

 
掌の中におさまってしまうサイズだ。
ミニチュアの黄色いモスラみたいでカワイイ💖
さあ、あとはアマミキシタバ様だ。五感爆発、目を皿のようにして飛んで来る蛾たちを素早くチェックする。先に見つけて採ってしまえば、Sくんも進呈してくれるだろうというセコい算段なのだ。まあ、Sくんはアマミキシタバにはあまり興味がなさそうだから、彼が採ったとしても恵んではくれそうなんだけどもね。
でもさあ…、貰うと流石に自分で採ったとは言えないよな。あっ、この言い草ではワシの方が余っぽど自分で採らないと気が済まない主義の人じゃないか。幾つになっても心に余裕が無いわ。誠にお恥ずかしいかぎりである。

そういえばこのあと、自分に向かって飛んで来た大型の蛾がいたなあ…。まだまだ蛾は恐いので、一瞬ビビッて後ろにバックステップしたんだよね。しながらも網先は反応していて、右から左に撫で斬りにしてやった。目ぼしいものがいたら採ってお渡しするという滅私奉公の気持ちを忘れるところじゃったよ。気持ちが悪いので危うくスルーするところだったわい。
Sくんに、「こんなん採れたよー」と網ごと持ってったら、
『コレ、友だちに頼まれてたんですよー。しかも♀じゃないですかあ❗』
という意外な返答が返ってきた。まさか、んなもんに価値があるとはね。何だか知んないけど、お手柄やん、オラ。
どうぞどうぞ、持ってておくんなせぇーだったけど、今にして思えば、アレっていったい何だったのだろう❓
Sくんは種名を口にした筈だが、興味が無かったからインプットされていないのだ。シャチホコガの仲間だったような気がするが、南方系のヤガだったかもしれない。今になって急に気になってきたよ。結構、レアな奴だったかもしれん(-_-;)
べつに惜しくはないけれど、何だったかを知りたいよ。

午後8時過ぎ。月が昇ってきた。

 

 
天気予報では晴れるだなんて情報は皆無だったから驚きだ。
昼間ならば、スーパー晴れ男の面目躍如だと宣いところだが、最悪だ。Sくんも嘆いている。灯火採集に月はヨロシクないのだ。月の光に影響されて、ライトに飛んで来る虫の数がガクンと減るのである。だから曇りの日や新月などの月が隠れた条件の方が断然に良いとされている。
ってことは、
ダァーッ(T0T)、
アマミっち、飛んできぃひんがなー❗

案の定、ピタリと飛来が止まった。
そして、ついぞアマミキシタバはその姿を現す事はなかった。
又しても敗北である
でも、そんなに悪い気分ではなかった。
初めてハグルマヤママユが見れたのは嬉しかったし、Sくんが湯湾岳の灯火採集にも連れてってくれると約束してくれたからね。湯湾岳が一番アマミキシタバが採れる可能性が高いのだ。あそこに行ってSくんのライトがあれば、勝利は半分は約束されたようなものだ。月さえ出なければ何とかなるだろう。
流れは良くなってきている気がするし、
シャアー(ノ`Д´)ノ❗
明日こそは絶対にリベンジしてやる❗

まあるい月を眺めながら、そう心に固く誓った。

                         つづく

 
追伸
午後9時過ぎには撤退した。
この日に採れたハグルマヤママユは、Sくんが4♂、自分が2♂の計6頭で、♀の飛来は無かった。♂の鮮度は良かったような気がするから、或いは♀は未だ羽化していなかったのかもしれない。あくまでも素人的な考えだけどさ。

どうでもいいような事だが、この日に帰って来て食ったものを載せておく。

 
【イカ下足(げそ)とニラの炒め】

 
夕方、キオビエダシャクを採った帰りにスーパーに寄って値引されていた烏賊ゲソを買ったのだ。ニラは前日に2束60円で買ったものの残りだ。
味付けの詳細は忘れたが、旨かったという記憶だけはある。そういや「サトウの御飯」的なものをレンチンしたなあ。たぶん最初は酒の友で、最後には御飯のお友になったんだろね。
あっ、ゴメン。もといです。それは翌日だったわ。残ったものを白飯に乗っけて食ったのだ。この日の炭水化物は↙️コレでげす。

 
【高菜ラーメン】

 
コレもスーパーで買ったものだ。
値段は確か98円だったと思う。安かったのもあるが、九州ローカルのカップ麺だったからだ。
旅に出ると、日本でも海外でも割りと積極的にカップ麺を食う事にしている。その地でしか中々出会えないものだし、現地で食うと旨いような気がするのだ。遠く離れた場所にいるという確固たる証拠みたいなものだから、あ~遠くまで来たんだなあ…というしみじみ旅情にも浸れるしね。

 

 
九州といえば、高菜漬けである。と思って買ったのだが、可もなく不可もなくのフツーの味でした。っていうか、何だか虚しい気持ちになったのを思い出したよ。
考えてみれば全然外に飲みに行けてないじゃないか。行ったのは来島初日の「脇田丸」だけだ。それも小1時間だけで、タケさんも辞めてて全然楽しくなかった。改めて気づいたけど、旅の醍醐味は晩飯を何処で、そして何を食うかなんだよなあ。美味いもん食って、酒をガンガンに飲んで、現地の人たちと話すのが楽しいのだ。それが結局はカタルシスにもなっていたのだ。ひいては翌日の採集にも良い影響を与えていたに違いない。

 
(註1)ハグルマヤママユ
ヤママユガ科(Saturniidae)
ヤママユガ亜科(Saturniinae)
Loepa属

 

 
🥰美しいねー。
鮮やかな黄色にピンク色の眼状紋が配されている。このビビットなコントラストがいい。ボップだ。黄色にピンクというのは可愛らしさ感が満載なのだ。
それを引き締めるかのような黒い波状線がまた何とも心憎い。しかも波状線は黒だけでなく、白や青みを帯びた銀もある。艶やかにして粋(いき)。この美しさには誰しもが瞠目せざるおえないだろう。
ヤママユガ科の蛾は美しいものが多いが、中でもハグルマヤママユはトップクラスに美しいと思う。ヤママユガの中では小さいと云うのもキュートな感じがして好ましい。惜しむらくは尾状突起がない事だ。もしも長い尾っぽがあれば、世界の美しいヤママユたちにも引けを取らない存在になっていただろう。

 
【♂】

 
触角が上手く整形できてないから65点の展翅だな。
なんか面倒くさくなってきて、妥協したのだ。蛾の殆んどの種が触角整形ウザすぎ。ビシッと蝶みたくには決まってくれないのである。たとえ決まったとしても、時間が経つと狂ってくるしさ。そうゆうとこも忌々しい。

【学名】Loepa sakaei Inoue, 1965
属名”Loepa”の由来は調べたがワカラン。
小種名”sakai”は、たぶん人名由来で、坂江?栄?坂枝?漢字はワカランがサカエさんという方に献名されたものだろう。

【和名】
漢字で書くと、たぶん「歯車山繭」となるのだろう。
ヤママユの仲間は皆さん眼状紋があるけど、周りの波状の線のせいで動的に見えるから歯車ってつけたのかな❓いや、単純に波状線がギザギザだから、それが歯車みたく見えるって事か…❓
由来はさておき、中々良い和名だと思う。早口言葉で三回続けて言うと絶対に噛みそうだけどね。
っていうか、ワシなんて早口だと1回だけでも「ハグルママヤヤム」になってしまう。
そういや、ヒメヤママユの事を何度も「ヒメマヤヤム」と発音してしまって、小太郎くんに『それってワザとでしょう❗』とツッコまれたなあ…。しかし、断じてそのような事はござらん。少なくとも最初の頃は完全にナチュラルです。

【英名】GOLDEN EMPEROR MOTH
ゴールデンエンペラーモスということは「黄金の皇帝蛾」ってワケか…。「黄金の」というのはまだ理解できるが、「皇帝」というには小さすぎるよね。せめて”small”は入れて欲しかった。それならば、逆説的な含蓄もあって、惹きつけるネーミングだと思うけどね。

【分布】 奄美大島,徳之島,沖縄本島北部
他に最近では宮古島でも採れているみたいだ。
ハグルマヤママユの類は東南アジアに広く分布しており、似たようなのが沢山いて、従来は”tkatinka”としてひと纏めにされていた。日本のものも、その1亜種とみなされてきたのだが、近年になって分類が進み、その多くが種に昇格したという。日本産も現在は別種とされ、日本固有種となったようだ。

【レッドデータブック】
・国:準絶滅危惧(NT)
・沖縄県:D(希少種)

【開張】♂80mm内外。♀83mm内外。
♀は、より大型で翅に丸みを帯び、触角の枝が短い。また腹部も太いことから、判別は比較的容易みたいだ。

【成虫の発生期と生態】
3月から11月まで見られ、数度にわたって発生を繰り返すという。発生回数と時期は図鑑によって微妙に異なるが、概ね3〜4月、5月下旬〜6月、8〜9月の発生が基本で、10〜11月にかけても少数が発生するのだろう。だが、年3化なのか4化なのかはハッキリわかっていないらしい。
尚、個体数が多いのは5月下旬と9月だという見解があるが、鵜呑みにはしていない。場所やその年の天候にも左右されるだろうし、蛾は有名種でも蝶みたく生態が詳細には解明されていないものが多いからね。
さておき、改めて思ったんだけど、南方系の種だけあって年3化以上もするんだね。本土のヤママユガの仲間は年1化が基本で一部が2化だから、何だかイメージに齟齬を感じるよ。

山間部に見られ、麓ではあまり見られないそうだ。
灯火採集をすると、日没後すぐに飛んで来る。Sくん曰く、一挙に飛んで来て、その後は次第に数を減らし、午後9時を過ぎると殆んど飛んで来ないらしい。だとしたら、エゾヨツメと飛来パターンの傾向が同じだね。個人的見解だが、おそらく採集するには日没後1時間が勝負なのだろう。
 
【幼虫の食餌植物】
ネットの『みんなで作る日本産蛾類図鑑』には、ブドウとあり、ヤブカラシ(ブドウ科)でも飼育できるとあった。しかし『日本産蛾類標準図鑑』には、シマサルナシ(マタタビ科)とあった。補足すると『いもむしハンドブック』には、ツタ(ブドウ科)でも飼育可能と書いてあった。
幼虫は5齢が終齢で、カレハガの幼虫に似ている。ヤママユらしからぬ茶色モジャだす。かなり厳(いか)つくて😱恐いだすよー。
尚、越冬態は何でか知らんけど不明のようだ。

 
(註2)エゾヨツメ


(2017.4 兵庫県宝塚市 武田尾)


(2018.4 兵庫県宝塚市 武田尾)

 
ヤママユガ科(Saturniidae)
エゾヨツメ亜科(Agliinae)
Aglia属

【学名】 Aglia japonica Leech, 1889
属名の”Aglia”は、おそらくギリシャ神話の、輝きを象徴する女神である「Aglaea(アグラエア)」あたりが語源だろう。間違ってたらゴメンやけど…。
小種名の”japonica”は「日本の」という意味である。たぶん最初に日本(北海道)で発見されたからだろうね。
以前は北海道のものを原記載亜種とし、それより南に分布するものには「microtau」という亜種名が与えられていた。しかし明確に区別が出来ない事から、現在では原記載亜種に統一され、この亜種名は使われていない。

【和名】
漢字で書くと「蝦夷四ツ目」となる。つまり北海道で最初に発見され、青い眼状紋が4つあることからの命名でしょう。

【開張】 ♂65mm内外 ♀95mm内外
♀は♂よりも大型で、地色がくすんだ茶色なので雌雄の判別は容易。
とはいえワタクシ、恥ずかしながら未だに♀を採った事がない。だから展翅画像もないんである。
一度、外灯で♂が♀を追いかけ回してるのを見た事があるんだけど、思わずキレイな方を採ってしまったなりよ。採ってから汚い方は♀だったんだと気づいたんだよね。(・o・;)あちゃーって感じだったけど、♀は汚いんでガッカリ感はあまりなかった。だからリベンジしにも行ってないんである。

【分布】 北海道,本州,四国,九州
北海道産はやや小さいそうだ。

【成虫の出現時期】 4〜5月
春の三大蛾の1つとされ(他の2つはオオシモフリスズメとイボタガ)、ヤママユガの仲間では最も早くに現れる。年1化。
猶、エゾヨツメと春の三大蛾については、拙ブログに2017年版と2018年版を書いているので、ヒマな人は読まれたし。

【幼虫の食餌植物】
カバノキ、イヌシデ、ハンノキ(カバノキ科)、ブナ、クリ、コナラ、カシワ(ブナ科)、カエデ(カエデ科)などが記録されている。

 

奄美迷走物語 其の2

 
 第2話『沈鬱の名瀬』 後編

 
何となく物事が上手く流れてないなと感じながら店の外に出た。明日は朝仁に移動しなければならないので、取り敢えずはバスの停留所を探しに行く。
けれども郵便局前のバス停が見つからない。地元の人に声をかけて教えてもらったところは確かにバス停ではあったが、朝仁方面ゆきのバスが無いのだ。ワケわかんねー(´-﹏-`;)
なので明日泊まる宿にLINEで訊いてみた。けれど直ぐには返答がない。仕方なく今日の宿に向かって歩く。途中の入舟町が次のバス停であろうから、道すがら探せばいいだろう。

バス停を何とか見つけたところでLINEが入った。近いから明日は名瀬まで迎えに来てくれるという。✌️(•‿•)ラッキー。流れがよくなってきたんじゃないのー。

 

 
「グリーンストア」の前まで来た。
ここは24時間スーパーで、宿からも近いから随分と世話になった。よく酔っ払った帰りに寄って無駄に惣菜とか買って帰ってたよなあ…。

 

 
「旅館 あづま家」。
より色褪せたような気がするが、見覚えのある景観だ。そうそう、周囲の民家と同化してるから見落としそうになるんだったわさ。横の釣具屋の方に、つい目がいっちゃうんだよね。2011年は奄美に船で着いてからの宿探しだったから、ネットで探して電話で場所を聞いたんだけど、もしも釣具屋が目印だと聞かされていなかったら絶対見落としてたと思う。

 

この入口も懐かしい。完全に普通の民家なのだ。

中で宿の婆さんと話す。
今日の客はオラだけみたい。コロナの影響で客は激減したという。宿代は素泊まり2500円の激安だから、前は長期滞在の工事関係の人なんかも結構泊まってた。けれど公共事業も激減しているらしく、コロナとのダブルパンチで客足はサッパリだという。そんなワケだから、息子には早く宿を畳めと言われているとオバアはとつとつ喋る。
何だか悲しくなってくる。次に奄美に来た時には、きっと廃業しちゃってるんだろなあ…。こんなところにまでコロナの影響が及んでるんだね。ホント、コロナ憎しである。
 
渡された鍵は209号室だった。鍵に何となく見覚えがある。
ここは2階が客室になっており、共用の冷蔵庫なんかもあって何かと便利なんだよね。

 

 
部屋には完全に見覚えがあった。
たぶん一番最初の採集行の時には、この部屋に長期間泊まっていたのだ。

 

 
この押し入れもハッキリと記憶がある。
持ち帰ったクチナシの実をタッパーに入れて此処に置いといたら、翌日には美しいイワカワシジミ(註1)が羽化していたのだ。

 
【イワカワシジミ Artipe eryx ♂】

(2011.9.19 奄美大島)

 

(左下の個体はインドシナ半島のもので、他はたぶん日本産)

 
取り敢えず、そのイワカワシジミを探しに行くことにする。
天気は悪くともイワカワだったら採れる可能性がある。食樹であるクチナシの木に止まっていることが多いからね。それにクチナシの実があれば、蛹や幼虫が入っているものがあるかもしれないし、卵が産んであるものだって見つかるかもしれない。

 
【クチナシの実と卵】

 
【幼虫の開けた穿孔跡のある実】

 
だが、丹念に見るも姿無し。
実もどれも黄色く変色してしまっていて、どうみても既に成虫が羽化した後のものだ。しかも時間がだいぶ経っている古いモノのように見える。
最後に民家のクチナシの大木を見に行く。2011年、そこでイワカワの蛹が入っている実を沢山採ったんだよね。そういや家のオジーとオバーがとても親切で、有難いことにわざわざ高枝切り鋏を持ってきて、指定した枝をジャンジャン切り落としてくれたんだよね。

だが、此処も全く姿なし。蛹や幼虫が入っていそうな実は1つも無く、卵が付いてそうな実も全く無かった。そして、家には人の気配がなく、ひっそりとしている。おそらく廃屋になっているのだろう。オジーとオバーは高齢だったので亡くなられたのかもしれない…。
寂寥感に満たされ、佇んで悄然と空を仰ぐ。胸が痛む。
それに此処にイワカワが居なければ、厳しい状況下にあることを受け止めざるおえない。此処が一番有望なイワカワのポイントなのだ。何だかなあ…。

一応、夜に灯火採集する場所の下見にも行く。
あわよくばアカボシゴマダラ(註2)が飛んで来ないかという淡い期待を持ちつつ登山口に取り付く。

 
【アカボシゴマダラ Hestina assimlis ♂】

(2011.9月 奄美大島)

 
懐かしい急坂を登り、山へ上がる。2011年は何度もこの坂を上がったっけ…。宿から近いから、帰りがけによく寄った。
しかし海から近いゆえ尾根にはモロに風が当たっており、平地と比べてかなり強い風が吹いている。勿論、アカボシの姿はない。これだけ風が強いと蝶が飛ぶことなど望むべくもない。
何だかなあ…。

部屋に帰り、ぼんやりとTVを眺める。
いっそライトトラップなんてやめてやろうかと思う。
日が暮れたら、とっと居酒屋「脇田丸」に行って、酒かっくらって板前のタケさんとバカ話でもしたいというのが正直な気持ちだ。そもそも、わざわざ名瀬に一泊したのはその為でもある。脇田丸に行き、タケさんに会い、アバスの唐揚げを食わねば奄美に来たことにはならない。

だが、グッとその誘惑を抑え込み、日暮れ前に灯火採集の仕度をして出る。
こうゆうツマラン場所でトットとアマミキシタバ(註3)を採って、蝶採りに専念したいところだ。ただでさえ夜の山は怖いのに、ここ奄美には本ハブ殿がいらっしゃるのだ。しかも奄美大島の本ハブ(註4)は最強だと言われており、沖縄本島の本ハブよりも巨大で、性格も凶暴。オマケに毒性も強いとされておるのだ。本ハブは夜行性だかんね。オジサン、涙チョチョ切れ(T_T)で、チビりそうじゃよ。

車に轢かれた直後のものだが、コレ見てよ。

 

(2011.9月 奄美大島)

 
蒲生崎だったけど、優に2mはあったんじゃないかな。
太さは軽くワテの手首以上くらいはあったから、もう大蛇と言っても差し支えないようなものだったっすよ。マジでぇー。

あのねー、あまりにも怖いから、今回は流石にワークマンで折りたたみの長靴を買って履いてきたもんねー。

 

 
風が強いので、当初予定していた場所を諦めて、鞍部にライトを設置する。

 

 
フラッシュを焚かないで撮ると下の写真みたいな感じになる。
周りが如何に暗いか御理解戴けるかと思う。街から近くとも、山へ入るとこれだけ暗いのだ。原始林なんかだと、きっともっと真っ暗けなんだろなあ…。ヤだなあ。

 

 
正直、光量がメチャンコしょぼい何ちゃってライトトラップである。でも、コレしか持ってないんじゃもーん。

点灯後に周りの木に糖蜜を霧吹きで吹き付けてゆく。
いつもは普通の酢を使っているが、今回は奮発して効果が高いとされる黒酢をふんだんにブチ込んでやったスペシャルレシピだっぺよ。アマミキシタバは糖蜜トラップやフルーツトラップにも来るということだから、ライトトラップがダメでもコレで何とかなるっしょ。

しかし、何ちゃってライトには笑けるくらい蛾が寄って来んぞなもし。
やっと大きな蛾が来たと思ったら、オオトモエだった。しかも折からの強風に煽られ、(^。^;)あらら…、飛ばされていってもうた。

 
【オオトモエ Erebus ephesperis】

 
別にオオトモエなんぞどうでもいいけど、何か小さかったから亜種かもしんないと考えたのよ。なんで一応採っておこうかなと思ったのさ。

そして糖蜜トラップに至っては全く何も来ん。
何だかなあ…。

午後9時前には一旦諦めて、ライトをそのままにして脇田丸へと向かう。タケさんと話して楽しく過ごせたら、流れも少しは良くなるかもしれない。もしかしたら11時くらいに様子を見に戻ってみたら、死ぬほどアマミキシタバが集まって来ているやもしれぬ。で、とっと撤収。タケさんと飲みに行くのだ。そうだ、吉田拓郎大好きのダメ男フクちゃんも呼ぼう。でもって朝まで痛飲じゃい❗何事も前向きでいこうじゃないか。

 

 
店構えは概ね同じだが、雰囲気が前と少し違う。たぶん暖簾が新しくなっているからだろう。

再会を期待して店内へ入る。
けど、厨房にタケさんの姿が見えない。休みかなあ…。
確認のために店員を呼び止め、訊いてみる。

(ノ゚0゚)ノえーっ❗、タケさんやめたってかあー❗

腱鞘炎になって1年半ほど前にやめて、今は土方をやっているらしい。
呆然としたままヨロヨロとカウンターに座り、オーダーを取りにやって来た店員に力なく生ビールと答える。

 

 
ヤケクソ気味で一気にゴクゴク飲む。
悲しいかなビールだけは何があっても旨い。裏を返せば有難いことだ。まあビール飲んでりゃ、そのうち御機嫌になるだろう。そう思わなきゃ、やってらんない。
でも追い打ちをかけるように、出されたお通しの大根が信じられないくらいにスジだらけだった。史上サイテーにクソ不味くって半泣きになる。

 

 
キレそうになるが、気持ちを切り替えてメニューを見る。

 

 
幸い「アバスの唐揚げ」は、まだメニューにあった。
けれど値段が690円と高なっとるやないけ。前は490円だった筈だよな。
(-_-メ)ったくよー。どこまでも逆風アゲインストじゃないか。
まあいい。アバスさえ食えれば、そんな瑣末事なんぞ簡単に許せる。アバス様はブリブリの歯応えで、味はとっても上品なんだけど旨味があり、下手なフグの唐揚げなんかよりも数段旨い代物なのだ。
言っておくと、アバスとは奄美の方言でハリセンボンの事をいう。但し、厳密的にはハリセンボンそのものではなくて、近縁のネズミフグやイシガキフグとかの大型フグだろう。タケさんにアバスで作ったフグ提灯みたいなのを見せられたけどデカかったもん。ハリセンボンみたく体型は丸くなく、もっと細長かったから間違いないだろう。

やがて待望の「アバスの唐揚げ」が運ばれてきた。

 

 
見た瞬間に悪い予感がした。
見た目が記憶とは全然違くて、あまりヨロシクないのだ。色が悪いし、匂いからすると、おそらく悪い油で揚げたものだろう。しかも揚げ加減は明らかに技術未熟な者の仕事のように見える。盛り付けにも微塵のセンスも感じられない。

食うと案の定だった。
アバスそのもののポテンシャルは悪くないのだが、解体の仕方が悪いから食べにくいし、油っぽくて揚げ方は最低レベルだ。

因みに、タケさんの調理だとこんな感じだった。

 

 
盛り付け的にも如何にも美味そうだし、下に網があるから油切れも良い。っていうか、それ以前にカラッと揚がってた。
怒りを超えて悲しくなってくる。

コレだけではお腹は満たされない。次に何を頼もうかと迷ったが、メニューを眺めていても何ら期待させられるモノがない。お通しとアバスの唐揚げの状態からして、どうせ結果は目に見えている。憤ること確実だ。

さんざん考えた挙句、「漁師めし」を頼むことにした。
刺身系ならば、まだしも失敗は少ないと判断したのである。

 

 
こんなんだったっけ❓
コレも見た目は違ってたような気がするぞ。
まあいい。腹が減ってるから取り敢えず食べよう。醤油をブッかけて食う。
(ー_ー;)……。

 

 
気を取り直して、真ん中の黄身を潰して食べる。
(ー_ー;)……。
何だか甘ったるくて、全然旨くない。何ゆえにこんなにも甘いのだ❓明らかに記憶の味とは違う。
じゃあ、十年前のアレは何だったの❓スマホで、その時の画像を探す。

 

 
あったけど、(・o・)アレっ❓ご飯がないぞ。
でもコレ見て思い出してきた。この時は漁師めしの飯抜きにしてもらって、ツマミにしたんだったわさ。あと、確かこの時は海がシケ続きで魚が入ってこなくて、タケさんが養殖の黒マグロの良いところをふんだんに使ってくれたんだった。量も多くてトロ鉄火みたいになってたんだよね。
この記憶から甘いという疑問も解けた。タケさんが、いつも特別に普通の醤油を出してくれていたのだ。スッカリ忘れてたけど、実を言うとコッチの醤油は砂糖が大量に入っていて、ベタ甘なのだ。人のせいにはできないけど、何か腹立つわ。

腹はそれなりに膨れたが、虚しい。
11時くらいまでは居るつもりだったが、耐えられなくて10時には店を出た。

再び夜の山へと戻る。
勿論、アマミキシタバが大量にやって来るなんて奇跡は起こらず、ショボい蛾が数頭いただけだった。
取り敢えず見たこと無さそうな奴(註5)を投げやり気分で毒瓶にブチ込む。

 

 
暗闇から街を望み見る。

 

 
何処か違う世界、異次元空間に知らないうちに迷い込んだかのような錯覚に陥る。闇はいつでも人間社会との境界を曖昧にする。

やがて風が益々強くなってきた。たぶん風速は軽く10mは越えていて、最大瞬間風速は18mくらいはありそうだ。
༼;´༎ຶ ۝ ༎ຶ༽逆風烈風やんけ。

 

 
オマケに灯火採集の敵、月まで出てきやがった。

11時半、撤収。
何だかなあ……。

                         つづく

 
追伸
サラッと書くつもりが、どんどん思い出すことが出てきて長くなった。(◡ ω ◡)先が思いやられるよ。
尚、当ブログに『西へ西へ、南へ南へ』という2011年の奄美旅の文章があります。よろしければ、ソチラも読んで下され。
あっ、ついでに言っとくと、イワカワシジミについては第十三番札所『梔子(くちなし)の妖精』の回にて取り上げとります。

 
(註1)イワカワシジミ

【奄美大島産 春型】

 
(裏面)

(出典 2点とも『日本産蝶類標準図鑑』)

 
イワカワシジミは、日本では奄美以南に棲息し(現在は屋久島にも生息するが放蝶由来との噂あり)、蝶好きの間では人気の高い美蝶だ。裏面は日本には他に類を見ない綺麗な翡翠色で、優雅な長い尾っぽを持ち、南国の妖精という言葉がピッタリで可愛らしい。

奄美大島のイワカワシジミは亜種にこそなっていないが、かなり特徴的な姿をしており、表の前翅と後翅の亜外縁に白斑列に表れる。特に第1化の春型の♀の下翅はそれが顕著で、気品があって美しい。

国外ではインドからインドネシア、中国、台湾などの東洋熱帯区に広く分布する。日本でも個体数はそう多くはないが、インドシナ半島では更に少なくて珍品とされているようだ。
とはいえ、ラオスとかタイでちょこちょこ採っているから、ホントなのかな?と思う。因みに日本のイワカワシジミより遥かにデカイゆえ、とても同種とは思えまへん。

 

(2014.4.7 Laos oudmxay)

 
これじゃ、大きさがワカランね。
でも、しっぽ(尾状突起)がより長いのはお解りなられるかと思う。しかも太くて白いし、白帯の領域も明らかに広い。

他にも画像があった筈だから、探してみよう。

 

(2016.4.28 Laos oudmxay )

 
この画像なら、大きさも解って戴けるのではないかと思う。とはいっても、蝶好きな人しかワカランか…。

 

 
これは同日に採った別個体。天女のように美しいね。
どうやらインドシナ半島とかのクチナシの実は大きいから、その分だけデカくなるらしい。噂では超バカみたいにデカイ亜種だか近縁種だかがいるらしい。
意外だったのは、何れも川辺に吸水に来た個体だった事だ。そういえばタイでもそうだった。イワカワが吸水に来るなんて日本では殆んど聞いたことがなかったから驚かされた記憶がある。確か画像の個体は全て3時以降の夕方近くにやって来たような覚えがある。

 
(註2)アカボシゴマダラ
従来、日本では奄美大島と加計呂麻島、徳之島のみに分布していたが、近年になって関東地方で中国の原記載亜種が放蝶され、凄い勢いで分布を拡大している。
この亜種、赤紋がピンクで、しかも輪が醜く崩れているというアカボシゴマダラの名前を穢す許し難いブサいくな奴である。放した者は万死に値すると言いたい。どうせ放すなら、あんなドブスじゃなくて、クロオオムラサキとか放せよなあー。
それはそれで問題あるとは思うけど…(笑)。

 
(註3)アマミキシタバ

【Catocala macula】

(出展『日本産蛾類標準図鑑』岸田泰則)

 
開張60〜66mm。国内の他のカトカラ(シタバガ属)よりも前翅長が突出する。
従来は別属とされていたが、現在はカトカラ(Catocala)属に分類されている。
分布は主に奄美大島だが、他に徳之島、屋久島、沖縄本島でも記録がある。そういや去年には九州南部からも記録が出ていた筈だね。国外では台湾、中国南部からインド北部、スリランカ、インドシナ半島、フィリピン、インドネシアに分布する。

 
(註4)奄美大島の本ハブ
何かで読んだけど、奄美大島の本ハブと沖縄本島の本ハブとでは毒の成分が違うらしく、奄美の方が毒性が強いようだ。DNA解析の結果でも両者はかなり古い時代に分岐したようで、近い将来、両者は別種扱いになる可能性もあるという。
あっ、うろ憶えの情報だから、間違ってたらゴメンナサイ。

 
(註5)取り敢えず見たことの無い奴
たぶん上の画像がカワムラトガリバで、下はツマジロエダシャクかな。コレも間違ってたらゴメンナサイ。