台湾の蝶15 ホッポアゲハ

 
      アゲハチョウ科 2

     第15話 『美貌の覇者』

 
ホッポアゲハは台湾で最も採りたい蝶の一つだった。
なぜなら台湾特産種で、しかも台湾屈指の美しさを誇る蝶だからである。
いや、メスならば台湾のみならず世界のAchillides(アキリデス=カラスアゲハ類)、ひいては世界のアゲハの中でも屈指の美しさだろう。

初めて出会ったのは、標高2000m前後の開けた尾根の小ピークだった。
♂だろう。メスを待つために高い樹の梢でテリトリーを張っていた。
テリトリーといっても、ゼフィルス(ミドリシジミの仲間)やタテハチョウのように葉上の先に止まり、別な蝶が飛んできたらスクランブル発進、追尾して追い出し、また同じ場所に戻ってくると云うのではない。止まることなく、回遊しながらパトロールしているといった感じだった。
飛ぶスピードは他の♂を追いかけ回す時以外は、そんなに速くはない。むしろ上昇気流に乗り、ゆったりと飛んでいる。だが、その高さは高い。地上7mから10m。制空権を支配する覇者の如く悠然と飛翔していた。王者の睥睨である(註1)。

 
【Papilio hoppo ホッポアゲハ♂】
(2016年 7月 台湾南投県仁愛郷)

 
その様はラオスやタイで出会ったオオクジャクアゲハを彷彿とさせるものがあった。
♂のテリトリーの張り方が似ているし、その占有する高さも7mくらいが多い(註2)。活動する標高もどちらも2000m前後から上が中心だ。

【Papilio arcutrus オオクジャクアゲハ♂】
(2014.3.28 Laos Samnua)

 
両者は見た目も近いところがある。
それで思い出した。そういえばホッポアゲハは昔はオオクジャクアゲハと同種で、その1亜種とされていた時代もあったのだ。
まあ生態も似ているし、斑紋形態の基本的パターンも近いから、そう考えた学者がいても不思議ではない。
きっとオオクジャクアゲハが東に分布を伸ばし、台湾に到達したものが長く隔離される中で独自に進化していったんだろうね。

但し、裏面はかなり違うし、別種とするのが妥当でしょう。

 
【ホッポアゲハ♂ 裏面】
(2016年 7月 台湾南投県仁愛郷)

 
本来このAchillides(Paris group)の仲間は、下翅裏面に並ぶ紋が一重なのだが、ホッポは何と二重紋になっているのである。
艶やかでゴージャスだ。黒と赤のコントラストに身悶えする。裏面はこのグループの中では最も美しいだろう。これに異論を唱える者はいないでしょう。いたとしたら、美的感覚を疑うよ。

この美しき赤い紋は、同じく台湾特産種であるアケボノアゲハの♂に擬態しているのではと云う説がある。
つまり体内に毒を有するアケボノアゲハに似ることによって、鳥の捕食から身を守っているのではないかと云うワケである。いくら似たいからって、そんなに簡単に似せられるもんかね❓
念じれば何とかなるって凄いな。ワシもあやかりたいよ。明日から王子様 羽生結弦くんになることでも念じてみっか。男の一念、巌(いわお)も通すというではないか。
(・o・)ほよっ?、あれは女の一念だっけか(笑)

兎に角このベーツ型擬態(註3)ってのは、理論として理解できなくもないが、オツムの悪いオラには俄(にわか)には信じがたいよ。そんなに都合よくいくもんかね❓ 学者のコジツケ的推論が、たまたま業界の理解を得て拡がったとは言えまいか…。

とはいえ、時間軸を長くすれば説明は可能かもしれない。
例えば、突然変異で裏面が二重紋で赤が目立つ蝶がたまたま沢山生まれた年があったとする。そして、オオクジャクアゲハのノーマル型よりも鳥に狙われずに済み、生き残ったとしよう。すると、赤い型同士が交尾する機会が増え、そのパーセンテージが徐々に上がってゆく。それが長きに渡って繰り返され、次第にノーマル型が減っていき、やがて消えてしまって別種になったとは考えられないだろうか❓
ダーウィンの自然淘汰説というヤツである。
まあ、実際に見た人はいないだろうから、永遠の謎だけどね。
でも正直言っちゃうと、こんなの必然としての擬態とは言えないよね。蝶本人の意志ではなく、たまたま赤い型がアケボノアゲハに似ていて、たまたま鳥に襲われにくくなったという偶然の結果に過ぎないんじゃないかと思うよ。

 
【Atrophaneura horishana アケボノアゲハ】
(出典『原色台湾蝶類大図鑑』)

 
両種は垂直分布も重なるので(2000m以上の高地)、擬態している可能性はあると思うが、アケボノアゲハの飛んでいる所は見た事がないので個人的には何とも言えない。
しかし、アケボノアゲハはジャコウアゲハの系統なので、飛び方はゆるやかなのは間違いないだろう。
だとすれば、少なくとも飛ぶのがそれよりも明らかに速いホッポの♂の擬態効果は低いのではないかと思う。メスはそれなりにゆったりと飛ぶので、似ていなくもなかろう。だから、擬態効果が発揮されてるとしたらメスの方だろう。

 
一応、参考にオオクジャクの裏面写真も添付しておきます。

 
(出典『蝶の標本 麗蝶』)

 
赤紋は他のカラスアゲハの仲間よりもやや大きく見えるが、基本的にはカラスアゲハ系統の裏面そのものだ。
そう云う意味では、ホッポアゲハはこの亜属(種群)の中では特異な存在と言えよう。
因みに、二重紋といえば想起されるのがクロアゲハだ。一部にそういう型が現出するようである。

 
【Papilio protenor クロアゲハ♀】 
(出典『日本産蝶類標準図鑑』)

 
あっ、コレって表面ではないか。
裏面の二重紋をネットで探そっと。

 
(出典『変異・異常型図鑑』)


いやはや凄いのもいるんだね。
それにしても、コヤツらは擬態しているとしたら何に擬態しているのかね❓
いや、擬態じゃないよね。単なる異常型だよな。何だか頭がこんがらがっちやってきたよ。

  
去年(2017年)は低いところでも採れたので、ちよっと驚いた。

 
(2017年 6月 台湾南投県仁愛郷南豊村)

 
標高700mを切っていたと思う。
正面から飛んできたのを咄嗟にさばいて、網の中を覗いたらホッポだったので(゜ロ゜)ありゃまと思った。
文献では垂直分布は標高1200~4000m近くと聞いていたから、まさかそんな所で採れるとは思っていなかったのだ。
調べたら、alt.455mでの採集記録もあるようだ。
但し、偶産みたい。なぜなら『アジア産蝶類生活史図鑑』に拠ると、低標高で幼虫を飼育するとまともに育たない旨が書いてあったからだ。
あまりにザックリした言い方なので、図鑑から抜粋しよう。

『1200~2500m前後に最も多く、1000m以下の低地からも稀に得られる。しかし、飼育の結果からいえば、このような低地においては人工的な産卵も、幼虫の成育率もきわめて悪く、羽化した成虫も小型のものが多いから、低地における採集例はかなり例外的なものと考えられる。』

あくまでも自分の経験だが、埔里周辺では標高2000m前後から2400mくらいで多く見られた。

因みにだが、オスをメスと間違える人は多いようだから注意が必要だ。実際、ネットにあげられている写真でもちょこちょこ誤同定が見受けられる。
これは♂の表面が明るい緑色だからだ。この緑色が日本のカラスアゲハ類(カラスアゲハ、オキナワカラスアゲハ、ヤエヤマカラスアゲハ、ミヤマカラスアゲハ)の♀の色に近いからだろう。
おまけに、日本のカラスアゲハ類のオスに定番に具わっている性斑が無いのだ。それも間違える原因になっていると思う。あっ、性斑というのは、上翅の表面にあるビロード状のお毛々の事です。

自分も実際、一度だけ見事に間違えてしまった。
午前11時くらいだったと思う。林縁から少し中に入ったところで、羽を広げて静かに止まっていたヤツを偶然見つけた。オスがバンバンにテリトリーを張っている時間帯である。そんな時に林内で休んでいるのは、だいたいにおいて♀である。しかも、色は日本で見慣れた♀の色にそっくりなんだから、てっきりそうだと思い込んでしまったのである。
無事捕らえて、しめしめと思いつつ手にしてから何か変だなと感じて♂だと理解するまでには、たっぷり10秒はかかったかと思う。

(;・∀・)あっ、メスと云う言葉で気づいた。
書いているうちに擬態だとか何だとかと逸れていってしまい、肝心のメスの画像を添付するのを忘れてたよ。

 
【Papilio hoppo ♀】

 
表の赤紋が発達していて美しい。
♂も美しいが、♀のこの白眉なる美しさの前では霞んでしまう。
でも、メスには滅多に会えないんだよね。
蝶がよく飛んでくる花場で1日待っていたとしても、1回飛んでくるか来ないかと云う確率だった。
まあ、日本のカラスアゲハでもメスにはそんなに会えないから当たり前か…。食樹に産卵に来るのを待って採る方が、よほど遭遇する確率は高いだろう。
しかし、食樹だったらどの食樹にでも母蝶が卵を産みに来るワケではないから、その木を探しあてるのは大変だ。短い滞在期間でそんな事はやってらんないよね。
たとえ台湾に行ったとしても、メスの採れる確率は皆さんが思っているほど高くはないですよ。Ψ( ̄∇ ̄)Ψケケケケケ。オラって、性格悪いのだ。

 
【♀裏面】

 
裏面も凄いかと思いきや、オスとあまり変わらない。
まあ、これ以上赤いところが増えたら、擬態効果が無くなっちゃうもんね。

ホッポアゲハの採集記はアメブロの『発作的台湾蝶紀行』にあります。
第11、12話「幻の美女」の前後編、32話「ヤッチマッタナ!」、37話「炸裂秘技大開帳!」39話「揚羽祭」などに登場しています。
例によって不親切なので、URLは貼り付けません。
興味のある方は、御自分で探されて下され。ハツカネズミ並の脳ミソさえあれば簡単に見つかります。

何だか文章が荒れてきてるなあ…。
やさぐれがちなのは、体調が思わしくないのだよ。
文章長いし、苛々してきた。
そろそろ、とっとクロージングに向かおう。

 
標本写真も添付しときまっさ。

(2016年 7月 台湾南投県仁愛郷)

(2016.7 台湾南投県仁愛郷)

(2017.6 台湾南投県仁愛郷)

 
何だか今一つの展翅だ。
まあ去年はたくさん完品が採れたし、そのうち展翅すればいっか…。

 
【ホッポアゲハ♀】

 
これは真面目に展翅したので、自分でも納得の出来。
こういうのを見ると、また会いたいなあと思う。
蝶でも人間でも、美人には同じくらいの恋慕の情がある。他人には理解し難いだろうが、蝶に魅せられると云うのは、そういう事なのだ。マジで盲目になるところがある。

 
比較の為にオオクジャクアゲハの画像も添付しときまっさ。

 
【オオクジャクアゲハ♂】
(2016.4 Thailand Fang)

 
何か真っ直ぐ撮れてなくて、歪んだ写真だなあ…。
気にくわないので、展翅板から外したものも添付。

 

 
今度は真っ直ぐだが、酷い写真だ。
ライティングとかちゃんとしてないとキレイな写真は撮れないんだろな…。
メンドクセーからする気は全くないけどさ。

因みにオオクジャクの♀はホッポみたいに表の赤紋は発達しない。だから♂と♀の見た目はさほど変わらない。
ついでだから言っとくと、オオクジャクはオオとつくだけあってホッポと比べてかなり大きい。と云うかホッポ自体がそもそもあまり大きくない。春型よりも大きいとされる夏型でさえ、日本のカラスアゲハの春型くらいか、やや小さいくらいだ。
だが、春型の方が色が明るくて美しいとされている。
春型も一度は採らねばのう((o( ̄ー ̄)o))

  
【学名とその由来とか何とかetc…】
学名の属名「Papilio」は、ラテン語で蝶と云う意味。
小種名の「hoppo」は地名由来。台湾中北部・新竹県の北埔郷で最初に見つかったことから命名された。
その最初に採集したのが当時の北埔支庁長 渡辺亀作氏。ワタナベアゲハ、ワタナベキマダラヒカゲ、ワタナベシジミは、この渡辺氏に因んだ和名だ。
しかし、氏はこれらの名がつけられたことを知らないままに亡くなられたという。台湾史に残る暴動事件、北埔事件の犠牲になって殉職されたのだ。
ホッポアゲハのあの鮮やかな赤は、血塗られた赤なのかもれない…。などと勝手に結びつけたくなるが、勿論そんなことはない。単なる自分のロマンティシズムだ。美しい蝶には関係のないことだ。

そういえば「アジア産蝶類生活史図鑑」では属名にAchillidesが使用されているが、これは現在はシノニム(同物異名)となっていると思われる。
ついでに言っとくと、Achillidesはラテン語で、たぶんギリシヤ神話の英雄アキレウス(アキレス)の息子を意味していたと思う。

台湾名は「雙環翠鳳蝶」。
「雙」は、二つの、二重の、ダブルといった意味で、「環」とは囲むとか、巡らせたといった意味だから、これは裏面の二重紋の事を指しての命名だろう。
「翠」は緑色。「鳳」は瑞鳥のことで、鶴や鳳凰などのめでたい鳥のことです。付け加えると鳳はオスの鳳凰のことで、凰がメスを表しています。
「鳳蝶」は中国語ではアゲハチョウに冠される名前だから、つまりは二重紋のある緑色のアゲハチョウってワケだね。

他に別称として次のようなものがあった。
重幃鳳蝶、雙環鳳蝶、北埔鳳蝶、重月紋翠鳳蝶、重幃翠鳳蝶。
重幃鳳蝶の幃は日本の漢字では帳(とばり)にあたる。謂わば重厚なカーテンだね。これも裏面の二重紋をベルベットのカーテンに喩えているのだろう。
雙環鳳蝶は翠が無いだけだから、もう説明不要だろう。
北埔鳳蝶は和名そのままに原産地の北埔を採用したものだね。
重月紋翠鳳蝶も裏面を月に喩えていると思われる。
重幃翠鳳蝶も説明不要でしょう。

和名はホッポアゲハでいいと思うけど、普通なら何とかかんとかカラスアゲハ、例えばウラアカカラスアゲハとかの和名和名したコテコテの和名がついてても良さそうなもんだけど、何でそうならなかったんだろね❓
不思議ですよ( ̄З ̄)

えー、ここで全然関係ないけど、ホッポアゲハを花場で待ってる時は、よく鼠先輩の名曲『六本木ーGIROPPONー』をもじった歌を口ずさんでました。

『🎵ホッポポポポポポポッーポー 🎵ホッポッホッポポポポホッポッポッポッポッポー…』
(-“”-;)阿呆である。

鼠先輩「六本木ー GIROPPON ー」
(青いとこポッチで偉大な鼠先輩の曲が聞けます)

待ってても、そんなに頻繁に飛んで来るワケもなく、一人で突っ立ってると退屈なのだ。アホにならんと、やってらんないのである。

で、飛んで来た時も口ずさみ続けて、
『🎵ホッポポポポポポポッーポ🎵ホッポポポポポポポッポッポッ(#`皿´)ポーッ=3❗❗』ってな具合で最後のフレーズで網を💥ガツーンと振ってた。
なぜだか、これがまた見事に採れるんである。もう百発百中で、このパターンで振り逃したことは一度たりともなかった。
嘘だと思うなら、試してみな。Ψ( ̄∇ ̄)Ψケケケケケ

  
【分布と発生期】
台湾特産で、中北部から南部の中高海抜の山地帯に広く分布する。標高1200mから4000m近くまで見られるが、2000~2400mの間に最も多く、1000m以下の低地でも稀に得られる。
3月下旬から11月上旬に渡って見られ、年数回の発生を繰り返す。
埔里周辺では6月から7月に見られたが(おそらく第2化)、7月は鮮度は悪くないものの、鳥にやられたのか翅がザックリいかれた個体ばかりだった。

 

 
何れも2016年の7月10日前後のものである。
結構バチバチにいかれている。裏の赤紋、ホントに鳥に対して擬態効果があんのかね❓
そもそも擬態つっても、人間目線で言ってるに過ぎないのである。効果の程を鳥に直接訊けるワケではないから、本当のところはわからない。
だいたい鳥の眼って四原色(註4)じゃなかったっけ❓三原色でモノが見えてる人間とは、見てる風景がそもそも違うんだよね。
人間って、最初に答えありきで、無理矢理こじつけで論理をくっつけたがるクセがあるからね。
あっ、『オマエもじゃ!』とツッこまれそうだ。
そん時は、ハイ、そうですと認めます。ワタシャ、素直すぎるくらいに素直な人なのだ。

えーと、勿体ないので、コヤツらは合体させてニセ完品を作るつもりです。

この年はたまたま鳥にやられた個体が多かっただけかもしれないけど、完品を撮影や採集したければ、適期は6月中旬だろう(年によって変動はある)。但し、梅雨がまだ明けてるか明けてないかの微妙な時期でもあるので、運が悪ければ連日雨なんてこともある事をつけ加えておきませう。

 
【生態】
♂は午前中8時半くらいから山頂や尾根筋の樹梢でテリトリー(占有行動)を張る。その際、止まる事は殆んどなく、周囲を回遊する。
飛ぶ高さは周囲の木の高低にもよるが、主に7m前後が多かった。時折、低いところに降りてくるので、その時が撮影や採集のチャンス。
その日の天気次第にもよるが、午前10時~10時半くらいにピークがあり、次第に数を減じて、午後になると姿を見なくなる事が多かった。
明るい開けた場所を好み、林内で飛ぶことはない。
♀は何処かで憩んでいるのだろう。飛翔は滅多に見ない。
♂♀ともに花蜜を求めて花を訪れる。吸蜜は主に午前中に行われ、昼を過ぎると一旦姿を見せなくなる。午後2時半くらいから再び現れ、日没近くまで見られる。但し、訪れる個体は午前中の方が圧倒的に多かった。
♀は午前中の早い時間(午前9時前後)と午後4時くらいに現れる事が多かった。
♂は吸水にも訪れ、その時が最も観察しやすい。

 
【幼生期と食樹】
『アジア産蝶類生活史図鑑』によると、野外ではミカン科のEuodia glauca ハマセンダンとToddalia asiatica サルカケミカンの2種が食餌植物として確認されているとあった。

台湾の文献では、次のようなものが食樹として記録されている。

賊仔樹 Tetradium glabrifolium
飛龍掌血 Toddalia asiatica
食茱萸 Zanthoxylum ailanthoides

上から2つめがサルカケミカンだね。
一番上はホソバハマセンダン。三番目はカラスザンショウである。
日本のカラスアゲハ、オキナワカラスアゲハ、ヤエヤマカラスアゲハ、ミヤマカラスアゲハの食餌植物と同じなんだね。
それにしても漢字名が何だか仰々しいよなあ…。

 
それでは恒例のゾグッとくるぜの幼虫写真といきましょう(一応、閲覧注意ね)。

 
【幼虫側面】
(出典『臺灣生物多様性資訊入口網』)

 
さんざんぱら、イナズマチョウ軍団やイチモンジチョウ師団のスーパー邪悪なる姿を見てきた身としては拍子抜けだ。もはや可愛くさえ思えてくる。

次のコレなんかは、キューティーと呼びたくなってくるくらいだ。

  
【幼虫前面】
(出典『アジア産蝶類生活史図鑑』)

 
ちよっと惚(とぼ)けた感じが可愛い。お目々なんて、バリにキュートだ(実際は目ではなくて、そう見える紋だけどね)。

おいおい、長年、毛虫・芋虫を毛嫌いしてきたのに、この傾向は免疫できちやってんじゃねえのか❓
う~む、こういうのって、心理学で云うところの「Door in the face」とかって事なんだろなあ。
ドア・イン・ザ・フェイスってのは、例えば女の子に最初に『たのむから一回やらしてくれ。』と言って断られた後に、すかさず『じゃあ、手だけでも握らせてくれ。』と言って、まんまと手を握る方法である。
あっ、これは今回の例とはまた違うか?
まあいい。何れにせよ、人間の意識なんてものはどうにでもなるのだ。怖いよね。

 
【蛹】
(出典『臺灣生物多様性資訊入口網』)

 
越冬態は蛹。
色は何色なんだろね❓調べたが、よくワカンナイ。
日本でもアゲハ類は蛹で越冬するのだが、その際の色は緑色ではなくて茶色になる事が多い。目立たないように葉が落ちた周囲の色に合わしていると言われている。
でも台湾は亜熱帯で常緑樹が多そうだ。緑色の可能性もありそうだな。

幼虫、蛹ともにオオクジャクアゲハと極めて似ている。写真を見た限りでは、強いて言えば頭部がオオクジャクの方が白っぽい。
何れにせよ、両種はとても近い類縁関係にあるのだろう。

 
【卵】
(出典『アジア産蝶類生活史図鑑』)

 
卵はつるつるで、タテハチョウ科などのように表面に複雑な造形は全く無い。全然もって面白くないのだ。
アゲハの仲間の卵はどれもこんな感じのもんざます。種間にさしたる違いはないのだ。拠って次回からはアゲハの卵は基本的に添付しませんので、あしからず。

                 おしまい

  
追伸
次回もアゲハの予定です。
同じカラスアゲハの系統のタイワンカラスアゲハ、カラスアゲハ、ルリモンアゲハの何れかになるかとは思う。
分類学的にややこしい奴等ばかりなので、書く前からちよっと憂鬱です。迷宮の深みに嵌まらないことを祈ろう。

(註1)王者の睥睨
とはいっても、春先はキボシアゲハやカバシタアゲハの方が強くて、彼らに追いかけ回されるという。
この2種は春のみの年1化の発生なので、繁殖にそれだけ必死なのかもれないね。

(註2)テリトリーを張る高さ
オオクジャクアゲハはラオスのサムヌアでは7mくらいで、その上10m~をテングアゲハが占有していた。タイでも一番北の生息地では同じ構図だった。
しかし、タイの別の生息地では腰から上(1m~2m)の低い所を飛んでいた。これは山頂が草原になっていて、高い木が無かったせいだろう。ホッポアゲハも木が5mくらいのところでは5m前後を飛んでいたから、周りの木の高さに準じて飛ぶ高さが決まってくるのだと思われる。

(註3)ベーツ型擬態
葉や幹、枝などの自然物に自らを似せ、天敵から身を守る(カマキリ等はその逆利用)のが一般的に擬態と呼ばれているものだが、それに対して毒のあるものに自らをそっくりに似せることによって捕食者の目から免れるタイプの擬態は、ベーツ型擬態と呼ばれている。

(註4)四原色
光の四原色の事。
人間と有袋類は、赤、緑、青の光の組合せを眼が感知して色を認識しているが、鳥はこれにプラスして紫外線も見えている。
だから人間には同じ色に見える雌雄の鳥でも、鳥たちには全く違った色に見えているようなのだ。
因みに、昆虫や爬虫類も四原色とされている。だから、モンシロチョウなんかは我々にはオスもメスも白に見えるが、四原色の者からは一方は黒っぽく見える(たぶんメス)ようなのだ。
ついでに言っとくと、哺乳類の殆んどが二原色。
ゆえにネコちゃんには、この世界は白、茶色、黒で構成されたモノクローム的世界に見えているようなのだ。つまり、ネコや犬の世界には赤と青しかなく、緑色が存在しないのである。だから人間みたいに電気信号を脳内で変換して、沢山の色として可視化することが出来ない。
おまけにネコは弱視で、その見ている風景はかなり荒い画像のものだと言われている。それをカバーする為に嗅覚が発達したと云うワケだね。

舌の根の根も渇かぬうちに

 
前回のカニの話の続編である。

文章を書き終わって、スーパーに買い物に行った。
すると、前回に登場した今朝がた売っていた蟹が、なんと半額以下になっていた。980円が、な、何と400円❗生きている生の蟹が980円でも激安なのに、400円とは破格である。
しかし、今しがたスーパーに売っている蟹は大概がハズレで、旨かった試しなど一度たりともなかったと罵詈雑言を並べたばかりなのである。
この期に及んで、何と云うタイミングだ。舌の根の根も渇かぬうちに、ここで蟹を買ってしまえば、学習力ゼロの💫パープリンと言われても致し方なかろう。
むう~(-“”-;)、暫し悩んだ。
慥(たし)かに、この状況でまたぞろ蟹を買ってクソ不味いなんて事になれば、救いようのないアホだ。そんなアホは、カニ型宇宙人にムシャムシャ食われて死んだ方がよろし。

だが、気づけば手にとっており、重さを量っておった。それって、買う意志が無きにしもあらず、いや買う気全然ありやんか( ; ゜Д゜)
いやいや重さを量って、どうせ軽いんだろう? ほら、やっぱり軽いやんけー。誰がそんなクソ蟹なんぞ買うかボケーッ(=`ェ´=)と言いたかっただけなのだ。
と心の中で言いワケかましてみたが、嘘です。買う気、かなりありました。
だってさー( ̄З ̄)、400円なんだもーん。

で、4匹あるうちの一番重いのを買ってしまった。

 

 
前回には紅ズワイガニと書いたが、正体はズワイガニであった。
何で間違えたのかというと、朝方売っている時は魚屋さんみたいにクラッシュアイスの上に平積みにされており、札に紅ズワイガニと書いてあったのだ。しかもカニは全部裏側になってた。表側だと見間違うワケがないが、腹側だとチラ見程度では見分けにくいのだ。

因みに言っとくけど、カニ、特に生の蟹は腹側を上にして売られているモノの方が美味しい可能性大。
そうする事によって、カニ味噌が崩れにくいからである。それだけ店側がカニに対する扱いが丁寧である事をも証明している。
まあ、パックにされた時に表側になってたら世話ないけど(笑)

中を開けてみると、今朝はまだ辛うじて生きていたが、流石に御臨終されておられた。
さて、問題は調理法である。

もう刺身はしません。焼き蟹も蒸し蟹もしません。蟹めしも蟹チャーハンも致しません。
ここはシンプル。原点に帰って、茹で姿蟹にさせていただきやす。

塩水を2L分つくる。水1Lに対しておおよそ大さじ2の塩を入れればよい。
しかし、一番大きい鍋でもカニの幅に足りぬ。
ヤケクソで無理矢理ネジ込み、蓋をして半蒸し煮にしてやった。蒸し煮にした時間はおおよそ15分強。ぬるま湯の状態からブッ込んでやった。低温から徐々に火を入れた方が身質を損なわないのではと思ったのである。まあ、単なる思いつきなんだけどね。

カニの忌まわしいところは、外からではどれだけ火が入っておるのか皆目見当がつかないところだ。
コレは蟹を買う時にも当てはまるから、何とも苛立たしい。見てくれだけでは、どれくらい身が詰まっているのかワカランのだ。持って重さを量ると云う方法も無いではないが、コレとて所詮は相対的なものだ。並んでいるカニの中で一番身が入っていると云う事はわかっても、それがギッシリ詰まっている保証にはならない。魚と違って、目利きもへったくれもありゃしない。

Σ( ̄皿 ̄;;興奮してきた。カニには何度も落胆させらてきたのだ。そういえば、買った冷凍の蟹を解凍したら、青緑色に変色した事もあったな。チキショーめがっ❗

心を落ち着かせよう。
まあ、またクソ蟹だったとしても、所詮は400円なのだ。それほど怒ることはないと自身に言い聞かせる。
とはいえ、マズかったらどうせ怒髪天(#`皿´)にはなるんだろうけどさ。心の狭さはいくつになっても変わらんのだ。

グジャグジャ考えてるうちに茹で上がりましたよん。

 

 
ねっ、無理から鍋に入ってた形でしょ。
ザルの中でほっこり。湯あがりカニ型宇宙人の寛ぎの図。

取り敢えず、温かいうちに食ってみよう。
一番太い足をワッシと折る。で、鋏✂を入れて、まだ湯気の立っているところをそのまま頬張る。

\(◎o◎)/甘っめぇー❗❗❗
火の通り具合は、今しがたギリギリ火が通りましたと云った感じで、しっとりふっくらだ。
( ☆∀☆)ムッチャクチャ旨いやんけー。
身の詰まり具合もスーパーで買ったカニの中では一番だ。あのスカスカだった時のガッカリ感ったらないもんなあ…。

と、ここで近所の姉さんから飲みのお誘いが入った。
後ろ髪引かれる思いだったが、ただ酒という事なのでホイホイ出掛ける事にした。
と云うワケで昨日は文章を発表出来なかったのである。

翌日、残りのカニを食うことにした。

 

 
キレイに並べようと思ったが、既に足を1本食っているのである。左右対称にはならない。と云うワケで、ザックリと皿に盛った。

先ずはちよっとカニ味噌を味見をしてみる。
\(^o^)/うんめぇー。前回のカニ味噌は苦くてクソ不味かったが、ねっとりとして、微かな苦味のなかに旨みがたっぷりとあるではないか。

身をほじり出す。

 

 
うん、良い感じだ。
勿論、何もつける気はない。カニ酢なんぞ邪魔だ。
シンプル・イズ・ザ・ベストが一番である。

食ってみると、茹でたてには負けるが身はやっぱ甘い。
カニはやはり茹でたてが一番美味いんだなと改めて感じ入る。昨日は勿体ないことをしたが、冷えても旨いから許す。

ほじほじ~。ほじほじ~。
至福のほじほじ男の顔からは、微笑みが絶えることはなかった。

                 おしまい