すぐきと千枚漬け(後編)

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すぐきも好きだけど、千枚漬も好きだ。
でも、関西以外の人はあまり食べた事がないかもしれない。いや、最近は漬け物離れが進んでいるというし、若い子なんかは食べた事がない人も多いかもしれない。
一応、ざっと解説しとくか…。

千枚漬とは京都を代表する漬物の一つで、すぐき、柴漬けと共に京都三大漬け物に数えられる。
現在販売されているものは概ねカブを薄く切って昆布、唐辛子とともに酢漬けにしたものである。
但し、カブといっても京野菜の聖護院蕪(かぶら)を使ったものでないと千枚漬けとは名乗れない。たまにパチもんも見るので、買う時は注意しましょう。

名前の由来は、蕪を薄く切り、樽に漬け込む枚数が千枚以上であるとか、蕪を千枚と言えるほど薄く切って作るからと伝えられている。
御所の料理人であった大黒屋藤三郎が江戸時代に考案したとされる。本来は聖護院蕪をスライスし、塩漬をして余分な水分を取り除き、その後、良質の昆布だけで本漬を行い乳酸発酵をさせたもので、蕪の甘味、乳酸発酵の酸味、昆布の旨味のバランスが良い漬物である。
しかし、第二次世界大戦後は砂糖、酢、調味料を使ったものが大量生産されるようになり、現在の酢漬けの千枚漬が大半を占めるようになった。
聖護院かぶらの生産期(11~3月)に合わせて漬け込みが行われ、販売時期もこの期間に限定される。

そろそろ千枚漬の季節も終わりだね。
もっと食っときゃよかったよ。今冬は2度しか買わなかったのだ。
何でそないな事になったのかというと、なんば高島屋の『大安』が無くなっちやったからである。

 
(出典『大安 ホームページ』)

 
近所だから、いつもなら他の買い物をした折りに、ついでに買うことが多いのだ。
ならば、他の店の千枚漬を買えばいいではないかと言われそうだが、(# ̄З ̄)👆Non・non・non・no.
千枚漬は店によって全然味が違うのだ。
例えば、大安の差し向かえに『西利』なんかは少し甘めなのだ。西利さんも老舗だがら、好きな人は多いと思う。しかし、残念ながら自分の好みには合わないのである。
自分の中での「千枚漬」とは、昆布でぬるぬるヌメヌメのヤツで、旨みがあって酸味と甘みが強くないものなのだ。大安はそのバランスが良い。
化学調味料は使ってなくて、上質な酢と味醂、塩を控えめに使ってるという感じなのだ。

では、もっと他の千枚漬を探せばいいではないかとも言われそうだが、千枚漬は高いのである。そうおいそれとは、のべつまくなしには試せないのだ。

で、唯一試したのがコレ。

 

 
村上重本店の千枚漬。
コチラも老舗中の老舗である。
たかが漬物なのに、千円もした。
ねっ、高いでしょ。

中身はこんな感じ。

 

 
ヌメヌメのぬるぬるじゃよ。
これなら期待値も上がろうというもの。
昆布が分厚いなあ…。とりあえず細切りにしよう。

盛りつけてみる。

 

 
食ってみる。
Σ(゜Д゜)わっ❗、パンチ効いてる。
クセが強いんじゃあ~。
でも慣れてくると美味い。旨みが強くて、味が濃い。
甘みは調味料の甘みではなく、蕪の甘みだ。変に甘ったるくない。酸味も酢の酸味ではない。乳酸発酵❓
となれば、これが本来の千枚漬け。藤三郎由来の元々の千枚漬ってことか…。
旨いなあ…。千枚漬の概念が少し変わったよ。

だが、デカくて食べにくい。それに一気食いみたくなって、何だか勿体ない。

半分に切った。

 

 
旨かったので、また買った。

 

 

 
千枚漬は、酒の肴というよりも断然ご飯のお友である。
そのまま食ってもいいが、昆布を乗せ、ちょいと醤油を垂らして食うと旨みが増し、益々ご飯にあう。

そういえば、去年の春先に買った千枚漬けがあったなあ…。

 

 
『江州の郷 さくら千枚漬』。

 
桜の葉入りの千枚漬である。
江州といえば、京都ではなく滋賀県じゃないか。
しかも国内産カブ使用とある。その時点で、聖護院蕪を使ってないことは明白だ。完全にまがいモンである。

 

 
やはりというか、これが全然もって旨くなかった。
桜の香りは悪くないのだが、やたらめったらに甘酸っぱいのである。お菓子かよ(=`ェ´=)❓
やはり、千枚漬は「大安」みたく甘みを抑えたものか、元来の製法のものが美味い。

となると、ここも気になるところではある。

 
(出典『老舗もーる』)

 
『千枚漬本家 大藤』である。
何てったって、本家なのである。創業慶応元年。ここが千枚漬けの元祖と言われている店だ。

どうやら壬生菜を使っているのが特徴のようだ。
なあ~んか見たことあるような気がする。食ったことがあるような記憶もある。
だとしても、かなり昔のことだ。たぶん20年以上前だろう。ならば、食べた事がないと言っても差し支えないでしょう。何せ、味の記憶が全然無いのだ。

本家と謳っていて、まさか化学調味料とか酢とか味醂は使ってないだろう。オラの求める千枚漬の筈だ。
よし。来年は、ここの千枚漬を試してみよう。
けど、ここもきっと高いんだろなあ…。
まあ、旨けりゃ全然いいんだけどさ。

                  おしまい

 

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投稿者:

cho-baka

元役者でダイビングインストラクターであり、バーテンダー。 蝶と美食をこよなく愛する男。

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